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特表2024-535479ロボット化システムの直接教示中の安全制御のための方法および関連ロボット化システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-30
(54)【発明の名称】ロボット化システムの直接教示中の安全制御のための方法および関連ロボット化システム
(51)【国際特許分類】
   B25J 19/06 20060101AFI20240920BHJP
【FI】
B25J19/06
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024519826
(86)(22)【出願日】2022-09-29
(85)【翻訳文提出日】2024-05-21
(86)【国際出願番号】 IB2022059285
(87)【国際公開番号】W WO2023053053
(87)【国際公開日】2023-04-06
(31)【優先権主張番号】102021000024905
(32)【優先日】2021-09-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524120099
【氏名又は名称】ガイオット・オートメイション・エッセ・ピ・ア
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】フェデリカ・フェラグーティ
(72)【発明者】
【氏名】マッティア・ベルトゥレッティ
(72)【発明者】
【氏名】マッティア・ガンバッツァ
(72)【発明者】
【氏名】マッテオ・ラガグリア
(72)【発明者】
【氏名】チェーザレ・ファントゥッツィ
【テーマコード(参考)】
3C707
【Fターム(参考)】
3C707BS12
3C707KS33
3C707KS35
3C707KV06
3C707LS02
3C707LU06
3C707MS08
3C707MS09
3C707MS27
3C707MS29
(57)【要約】
直接教示を通した、ロボット化システム(1)の安全制御のための方法は、学習ステップを含み、処理ユニット(9)が、ロボットマニピュレータ(3)の少なくとも1つのリンク(L)とオペレータ(O)との間の相対距離(RD)を決定し、少なくとも1つのリンク(L)の相対距離(RD)があらかじめ定義された距離しきい値(TV)を超えるかどうかを制御する。あらかじめ定義された距離しきい値(TV)は、それぞれの最大線形速度(VMAX)から始めて停止するために必要とされる時間量でロボットマニピュレータ(3)によって到達される距離に等しいかまたはそれよりも大きい。相対距離(RD)があらかじめ定義された距離しきい値(TV)よりも小さい場合に、方法は、ロボット(3)を停止させるステップを伴う。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
直接教示中の、ロボット化システム(1)の安全制御のための方法であって、
学習ステップであって、前記学習ステップ中に、オペレータ(O)が駆動アセンブリ(5)を用いて前記ロボット化システム(1)のロボットマニピュレータ(3)のエンドエフェクタ(2)を動かし、前記エンドエフェクタ(2)によって行われた動きが、前記ロボット化システム(1)のストレージユニット(6)に記憶される、学習ステップ
を含み、
前記ロボットマニピュレータ(3)が、関節(J)を介して互いに接続された複数のリンクを含み、
前記学習ステップ中に、処理ユニット(9)が、前記ロボットマニピュレータ(3)の各リンク(L)と前記オペレータ(O)との間の相対距離(RD)を決定し、前記リンク(L)の前記相対距離(RD)があらかじめ定義された距離しきい値(TV)を超えるかどうかを制御し、
前記あらかじめ定義された距離しきい値(TV)が、それぞれの最大線速度(VMAX)から始めて停止するために必要とされる時間量で前記ロボットマニピュレータ(3)によって到達される距離に等しいかまたはそれよりも大きく、
前記相対距離(RD)が前記あらかじめ定義された距離しきい値(TV)よりも小さい場合に、前記方法が、前記ロボットマニピュレータ(3)を停止させるステップを伴う、ことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記処理ユニット(9)が、前記ロボットマニピュレータ(3)の少なくとも1つのリンク(L)と前記オペレータ(O)との間の相対速度(VR)を決定し、前記相対速度(VR)があらかじめ定義されたしきい速度値(TV')よりも小さいように制御し、詳細には、前記処理ユニット(9)が、前記ロボット(3)の各リンク(L)と前記オペレータ(O)との間の前記相対速度(VR)を決定し、前記相対速度(VR)が前記あらかじめ定義されたしきい速度値(TV')を超える場合に、前記方法が、前記ロボットマニピュレータ(3)を停止させるステップを伴う、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記あらかじめ定義されたしきい速度値(TV')が、それぞれのリンク(L)の前記最大線速度に実質的に等しい、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
各リンク(L)が、第1および第2の端部を備え、前記少なくとも1つのリンク(L)と前記オペレータ(O)との間の前記相対速度(VR)が、前記オペレータ(O)と前記リンク(L)の前記第1または第2の端部との間で計算された相対速度のうちの最大のものとして定義される、請求項2または3に記載の方法。
【請求項5】
前記処理ユニット(9)が、前記オペレータ(O)と前記ロボットマニピュレータ(3)の前記エンドエフェクタ(2)との間の、詳細にはオペレータ(O)と前記駆動アセンブリ(5)との間の剛体リンク(L)に基づいて、詳細には、前記オペレータ(O)が前記ロボットマニピュレータ(3)を動かすことを可能にする前記駆動アセンブリ(5)の形状に基づいて、前記オペレータ(O)の位置を決定する、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記オペレータ(O)および少なくとも1つのリンク(L)の位置を決定するために、カプセルおよび/またはシリンダー形状モデル(GM)が使用され、詳細には、各カプセル(CA)が、それぞれのリンク(L)または前記オペレータ(O)の第1および第2の端部の間でそれぞれの球を並進させることによって得られる凸状ケーシングによって定義される、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
2つの形状モデル(GM)間の距離が、それぞれの第1および第2の端部の間の距離の最小値から各それぞれの球の半径を引くことによって計算される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記オペレータ(O)が、単一の形状モデル(GM)、詳細にはカプセルモデル(CA)によってモデル化され、前記単一の形状モデル(GM)は、前記オペレータ(O)が前記ロボットマニピュレータ(3)を動かすことを可能にする前記駆動アセンブリ(5)の形状に基づいて、前記ロボットマニピュレータ(3)の前記エンドエフェクタ(2)に剛体的に接続されるとみなされる、請求項6または7に記載の方法。
【請求項9】
前記オペレータ(O)の位置が、好ましくは前記ロボットマニピュレータ(3)のベースリンク(L)に固定された、慣性基準系に対して決定される、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記駆動アセンブリ(5)が、力/トルクセンサー(8)を備え、前記オペレータ(O)が、前記学習ステップ中に、前記駆動アセンブリ(5)に力および/またはトルクを加え、前記駆動アセンブリ(5)の前記センサー(8)が、かけられた力および/またはトルクを検出する、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
ロボット化システム(1)であって、
生産される物品を処理するように、または生産される物品と相互作用するように構成されたエンドエフェクタ(2)と、
少なくとも3自由度で動かせ、前記エンドエフェクタ(2)が取り付けられたロボットマニピュレータ(3)であって、リンクを通して互いに接続された複数の関節(J)を備える、ロボットマニピュレータ(3)と、
ストレージユニット(6)を備え、空間において前記エンドエフェクタ(2)を動かすために前記ロボットマニピュレータ(3)の動きを制御するように構成された制御システム(4)と、
動きの指示を前記ロボットマニピュレータ(3)に伝えるためにオペレータ(O)によって操作されるように構成された駆動アセンブリ(5)と
を備え、
前記駆動アセンブリ(5)は、
使用中に前記オペレータ(O)が力およびトルクを加えるハンドリングデバイス(7)と、
前記ハンドリングデバイス(7)にかけられた力およびトルクを検出するように構成されたセンサー(8)と、
前記センサー(8)によって検出されたデータに応じて、かつアドミッタンス制御に従って、前記ロボットマニピュレータ(3)にデカルト動き指示を与えるように構成された処理ユニット(9)と
を備え、
前記ストレージユニット(6)は、前記オペレータ(O)によって前記駆動アセンブリ(5)を用いて前記エンドエフェクタ(2)が動かされる間、前記ロボットマニピュレータ(3)によって行われる動きを記憶するように構成され、
前記制御システム(4)が、前記ストレージユニット(6)によって記憶された動きに基づいて、前記エンドエフェクタ(2)の動きを制御するように構成され、
前記ロボット化システム(1)が、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法を実行するように構成される、ロボット化システム(1)。
【請求項12】
セラミック物品の表面の少なくとも一部を覆うために物質の噴射を放出するように構成された吹付ヘッドを備える、請求項11に記載のロボット化システム(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本特許出願は、2021年9月29日に出願され、その開示全体が参照により本明細書に組み込まれているイタリア国特許出願第10202100024905号からの優先権を主張する。
【0002】
本発明は、詳細にはロボットマニピュレータを含む、ロボット化システムの直接教示中の安全制御のための方法、および関連ロボット化システムに関する。
【0003】
本発明は、セラミックスの分野、より詳細にはセラミック物品の施釉における有利な、しかしこれに限らない、適用例を見いだし、以下の説明は、それの一般性を失うことなく明示的にこれに言及する。
【背景技術】
【0004】
セラミック物品を処理する分野では、表面を塗装および/または施釉するために、吹付ヘッドを支持するロボット化デバイスを使用することが知られている。
【0005】
溶接、位置調整、研磨などの他の領域においても使用される、このタイプの手法は、極めて多用途かつ効果的であり、製造速度の向上および工業プロセスの再現性および精度の改善につながっている。
【0006】
近年、産業用マニピュレータ(以下では単にロボットとも呼ばれる)の使用は、根本的に変わり、(物理的障壁を通して得られる)作業空間の完全な分離という考えから、ロボットと人間オペレータが同じ作業空間を共有し、しかも並んで協働するシナリオに移った。このコンテキストでは、物理的人間-ロボット相互作用(physical human-robot interaction:pHRI)は確実に、企業が急速に進化する製品に対処するために製造柔軟性をより大きくする助けとなることができるので、ロボットが、製造の競争力を高める際の主要な要素になりつつある。しかしながら、ロボット化技術の広範な採用は、ロボットプログラミングの本質的に複雑で、時間がかかる性質を含む、いくつかのよく知られている要因によって依然として損なわれている。
【0007】
同じロボットが、異なる形状の物品を塗装および/または施釉することができるということを考慮して、ロボットがどのように行動するかを「教示される」方法は、ますます重要な作業ステップになっており、できる限り簡単かつ直観的であるべきである。
【0008】
産業用マニピュレータをプログラミングするための旧来の方法は一般に、「ポイントツーポイント」プログラミング(PTP)のためにハンドヘルド(教示ペンダント)を使用すること、または「オフライン」プログラミング環境内でマニピュレータの活動をシミュレートすることにある。
【0009】
前者の場合、オペレータは、教示ペンダントを適切に使用することを学習しなければならないだけでなく、これらの装置の固有のポイントツーポイントプログラミングスタイルは、特に簡単な動きに有効であるにすぎない。詳細には、ロボット自体は、ロボットをプログラムするために使用されなければならず(すなわち、製造停止が発生する)、プログラミングは、むしろ複雑であり(経路の各ポイントにおいて、いわゆる「協働」減速でロボットを動かし、その位置を保存することが必要である)、結果の良さを評価可能にするために、プログラムは完成され、その後実行されなければならず、結果が満足のいくものではない場合、これらの動作は繰り返されなければならない。
【0010】
一方、第2の事例(「オフライン」プログラミング)では、プラットフォーム固有のプログラミング言語(および/または専用のプログラミング環境、すなわち専用のIDEプログラム)を知っていることが不可欠であり、したがって機械オペレータのタスクについて人間オペレータから特定の、かつ通常過大な知識を必要とする。
【0011】
「オフライン」および「PTP」プログラミング方法は、複雑で、労力を要するものであり、これがこの方法を、中小規模のバッチの生成には特に非効率的にする。
【0012】
これらの欠点を克服するために、一般に「ウォークスルー」プログラミング(「リードスルー」または「マニュアルガイダンス」プログラミングとも呼ばれる)と定義される直接教示プログラミング戦略が、吹付または溶接などの、最も多様な実際の用途で開発されてきた。これらのプログラミング戦略は、オペレータがマニピュレータをつかみ、特定のプログラミング言語のおよび/または特定のハンドヘルド(教示ペンダント)によって与えられる機能の事前知識なしに、それを所望の位置に手動で導くということによって特徴づけられる。学習ステップ中に、ロボットの制御ユニット(以下ではコントローラとも呼ばれる)が、人間オペレータによって強いられた中間ポイントまたは軌道全体を記録し、マニピュレータ自体が、その後この所望の動きを独立して再生することができるようにする。
【0013】
一般に、直接教示プログラミングアーキテクチャは、2つの主要な要素、すなわち検出システム(センサー)、および制御ユニット(またはコントローラ)によって管理されるアドミッタンス(またはインピーダンス)制御アルゴリズムに基づいている。検出システムは、マニピュレータ上でオペレータによって加えられた相互作用力/トルクを測定することを担っている。
【0014】
上述の目的は、主に2つの方法で、すなわち、マニピュレータの関節でのトルクの直接検出(しかしながらこれは、マニピュレータ製造業者によって顧客には利用可能にされないことが多い、またはデータの頻度および/もしくは解像度の不足によって影響を受ける)を活用することによって、またはマニピュレータのエンドエフェクタ(すなわち、部分/要素/エンドリンク、すなわち最後の関節後)に特殊センサー(たとえば、専用ロードセル)を取り付けることによって達成され得る。
【0015】
どちらの場合も、直接教示プログラミングが、pHRIの最も明確な例の1つを疑いなく決定するが、人間オペレータとロボットとの間の高い近接性が、高速の直接教示プログラミングを妨げる一連の安全問題全体を決定する。いくつかの場合には、マニピュレータ製造業者が直接教示動作のためにそれを許可するとき、特に、マニピュレータの低レベルのリアルタイム制御と直接連係して、高速で連続軌道を記録するために直接教示が使用されるとき、オープンコントロールアーキテクチャが好ましい傾向がある。しかしながら、この手法は、安全の観点からさらなる重大な問題につながる。
【0016】
詳細には、上述の理由のために、250mm/sのデカルト速度制限が、産業マニピュレータの直接教示の安全基準において定義されている。加えて、各関節の最大速度およびそれの加速度もまた、通常制限される。これらの制限は、中間ポイントのみが記憶される必要があるシナリオには適切であるかもしれないが、高速で実行される連続軌道を記録することが必要であるとき、これらの制限は直接教示プログラミングの使用を妨げる可能性がある。たとえば、吹付ロボットは、それらの動きは滑らかであって、吹付システムのパラメータと同期されなければならないので、低デカルト速度で手動で導くことができず、吹付システムを(多くの場合オン/オフ弁も備えている)時間に関して運動学的に調節することができない。溶接、研摩などの他のタイプの適用についても、同じ観測が行われ得る。
【0017】
一般に、産業マニピュレータは、シリアルロボット、すなわち、関節によって互いに接続された(用途および必要とされる自由度に応じた)いくつかの剛体リンクを設けられたロボットであることが多い。詳細には、ウォークスループログラミングでも、安全問題はしばしば、ロボットを構成する剛体リンクとのオペレータの衝突または巻き込み(entrapment)の可能性に左右される。
【0018】
これらの問題を克服するために、ウォークスループログラミングに代わるより安全なものと考える、遠隔操作での直接教示のためのウェアラブル触覚デバイスを含めた、いくつかの解決策が提案されている。しかしながら、直接的な相互作用がないことは、触覚フィードバックおよびリモート視覚システムなどのテレプレゼンス機能の追加によって埋め合わせされなければならず、機器のコストを大きく増やし、これらはビルの取り壊し、原子力発電所の廃炉、災害復旧などの危険性の高い状況においてのみ妥当とされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【特許文献1】イタリア国特許出願第201600097482号(イタリア国特許出願公開第201600097482号明細書)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
本発明の目的は、既知の技術の欠点を少なくとも部分的に克服することを可能にし、それと同時に実現が容易かつ経済的である、詳細には直接教示中に、閉じたロボット化システム、詳細には産業マニピュレータを制御する方法および関連処理プラントを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明によれば、添付の特許請求の範囲の独立請求項で、好ましくは独立請求項に直接または間接的に依存する請求項のいずれかで請求されるように、直接教示中の、詳細にはロボットマニピュレータを含む、ロボット化システムの安全制御のための方法、および関連ロボット化システムが提供される。
【0022】
特許請求の範囲は、本開示の不可欠な部分を形成する本発明の好ましい実施形態を説明する。
【0023】
本文では、「トルク(torque)」は「力のモーメント」(トルク)を意味し、またはいずれの場合も力のモーメント(より正確には、その機能)を含んでいる別の量を意味する。「力のモーメント」(または「機械的モーメント」)は、(平面における)点または(空間における)軸を中心とする剛性本体上の回転を与える力が、その質量中心にかけられないときの、この力の姿勢(attitude)をその共通の意味として有する。
【0024】
本文では、「力(force)」もまた(この用語に通常与えられる意味に加えて)、この力(より正確には、その機能)を含んでいる別の量を意味する。いくつかの実施形態によれば、「力」は、その通常の意味に従った力を意味する。
【0025】
本発明について、実施形態のいくつかの非限定的な例を示す、添付の図面を参照しながら説明する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明によるロボット化システムを明確にするために細部を除去した斜視図である。
図2】ある動作構成の装置1の概略上面図である。
図3】別の動作構成の装置1の概略上面図である。
図4】本発明によるロボット化システムまたはオペレータの2つの部分(剛体リンク)の考えられるモデリングを示す概略図であり、詳細には、概略化およびモデル化された2つの剛体リンク部分の間の最小距離の計算の図式化を非限定的な方法で示す図である。
図5図1のシステムの3次元モデリングの斜視図を概略的に示す図である。
図6図5のロボット化システムの一部分とオペレータとの間の相対速度の幾何学的表現を概略的に示す図である。
図7】本発明による安全制御方法の考えられるブロック図を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明の第1の態様によれば、図1において符号1は、詳細には、限定はしないが物品(それ自体は知られており、図示されず、たとえば衛生陶器)の処理のためのロボット化システムを全体として示す。
【0028】
ロボット化システム1は、生産される物品(たとえばこの物品)を処理するまたはそれと相互作用するように構成されたエンドエフェクタ2を備える。
【0029】
図1および図2の非限定的な実施形態では、エンドエフェクタ2は、吹付ヘッドであり、この吹付ヘッドは、(詳細にはセラミックの)物品の表面の少なくとも一部を覆う物質の噴射を放出するように構成される。他の非限定的および非例示的な実施形態では、エンドエフェクタ2は、溶接ヘッド、グリップヘッド(gripping head)、グリッパー、または他の機械加工ツールである。
【0030】
有利には、ロボット化システム1は、ロボットマニピュレータ3を備え、ロボットマニピュレータ3は少なくとも3(詳細には少なくとも4、より詳細には6)自由度で動かせ、これに端部2(たとえば、吹付ヘッド)が取り付けられる。
【0031】
詳細には、ロボットマニピュレータ3は、機械的(実質的に剛体)L(リンク)によって連続して互いに接続された複数の電動関節Jを備える。好ましくは、関節Jは、知られているタイプの回転関節であり、したがってさらに詳述しない。各リンクLは、前のリンクに対して、それぞれの回転軸Aを中心として回転可能である。軸Aの各々を中心とする回転は、ロボットマニピュレータ3の自由度を表す。図示の実施形態では、ロボットマニピュレータ3は、6自由度を有し、より正確には、6つの回転軸Aを有する。
【0032】
ロボット化システム1はまた、制御システム4と、駆動アセンブリ5とを備える。
【0033】
制御システム4は、ストレージユニット6を備え、エンドエフェクタ2(すなわち吹付ヘッド)を動かすためにロボットマニピュレータ3の動きを制御するように構成される。詳細には、制御システム4はまた、エンドエフェクタ2(たとえば、吹付ヘッド、溶接ヘッドなど)に搭載して取り付けられたツールの動作を調整するように構成される。
【0034】
好ましくは、駆動アセンブリ5は、動きの指示をロボットマニピュレータ3に伝えるためにオペレータOによって操作されるように構成される。詳細には、駆動アセンブリ5はまた、操作指示を端部2(たとえば、吹付ヘッド)に伝えるように構成される。
【0035】
ロボットマニピュレータ3は、一般に人間型産業用ロボットであり、たとえば、Gaiotto Automation SpAによるGA-OLロボットとすることができる。ロボットマニピュレータ3はまた、7以上の自由度(詳細には、7つ以上の回転軸A)を有してもよい。いくつかの非限定的な事例では、自由度は、5つの回転軸および1つの並進運動(たとえば、水平または垂直方向)であってもよい。
【0036】
図1および図2の非限定的な実施形態では、駆動アセンブリ5は、ハンドリングデバイス7を備え、使用中にオペレータOがこれに力およびトルク(接触力とも呼ばれる)を加える。さらに、駆動アセンブリ5は、センサー8を備え、センサー8は、エンドエフェクタ2に接続され、ハンドリングデバイス7によってかけられた力およびトルクを検出するように構成される。加えて、駆動アセンブリ5は、処理ユニット9を備え、処理ユニット9は、センサー8によって検出されたデータに応じて(より正確には検出された力およびトルクに応じて)、およびアドミッタンス(またはインピーダンス)制御に従って、動きの指示をロボットマニピュレータ3に提供するように構成される。
【0037】
詳細には、センサー8は、(少なくとも)6自由度を有し、(少なくとも)3つの力および3つのトルクを(デカルト基準系で)測定することが可能である。センサー8は、上述の機能を実行することが可能ないずれかの既知のデバイスであってよい。
【0038】
特定の非限定的な実施形態によれば、センサー8は、たとえば、FTSensであり、3つの力および3つのトルクを測定すると、それらをCANネットワーク上でデジタルに伝えることができる。FTSensは、ジェノバのIIT (Italian Institute of Technology)によって開発された。この事例では、測定は、ひずみゲージ技術のおかげで、センサーの本体の内部に置かれた(電気/抵抗タイプの)ひずみゲージの変形に基づいて検出される。
【0039】
他の特定の非限定的な実施形態によれば、センサー8は、たとえば、ATI Automationによって開発されたFT Axiaセンサー80であり、これはEtherCAT(登録商標)プロトコルによるデータ交換を実行する。
【0040】
ストレージユニット6は、エンドエフェクタ2が駆動アセンブリ5を用いてオペレータOによって動かされる間にロボットマニピュレータ3によって作成された動きを記憶するように構成される。制御システム4は、ストレージユニットによって記憶された動きに応じてロボットマニピュレータ3の動きを制御するように構成される。詳細には、制御システム4は、ロボットマニピュレータ3がストレージユニット6によって記憶された動きを実質的に(詳細には正確に)繰り返すように、より詳細には、オペレータOがエンドエフェクタ2を動かしながら作成された動きを、エンドエフェクタ2が実質的に(詳細には正確に)繰り返すように、ロボットマニピュレータ3の動きを制御するように構成される。
【0041】
詳細には、「動き(movement)」または「動き(movements)」は、本文では経路および経路に沿った速度を意味する。より正確には、ロボットマニピュレータ3の動きは、空間におけるロボットマニピュレータ5の各可動部分の空間における動きである。
【0042】
詳細には、ハンドリングデバイス7は、ロボット3に(より詳細には、センサー8に)取り付けられる。有利には、必ずしもそうではないが、ハンドリングデバイス7は、ロボットマニピュレータ3に(すなわち、搭載して)取り付けられる。より正確には、ハンドリングデバイス7は、(ハンドリングデバイス7を支持する)センサー8を介してロボット3マニピュレータ5に接続される。
【0043】
詳細には、駆動アセンブリ5は、本出願人によって出願されたイタリア国特許出願第10201600097482号に記載されているタイプである。
【0044】
有利には、ロボット化システム1は、以下で説明する方法を実行するように構成される。
【0045】
本発明の第2の態様によれば、直接教示を通した、ロボット化システムの安全制御のための方法が提供され、ロボット化システムは、本発明の第1の態様の文脈において説明したロボット化システム1の同じ機能を行い、同じ構成要素を含む。より詳細には、ロボット化システム1は、本発明の第1の態様により説明したものと同様である。
【0046】
方法は、学習ステップを含み、学習ステップ中にオペレータOは、力/トルクセンサー8を備えた駆動アセンブリ5を用いて、ロボットマニピュレータ3のエンドエフェクタ2を動かし、エンドエフェクタ2によって作成された動きは、ストレージユニット6に記憶される。
【0047】
好ましくは、方法は、再生ステップをさらに含み、再生ステップは、学習ステップの後に行われ、再生ステップ中に、制御システム4は、エンドエフェクタ2がストレージユニット6に記憶された(詳細には学習ステップ中に作成された)動きを実質的に(詳細には正確に)繰り返すようにロボットマニピュレータ3を操作する。詳細には、学習ステップ中に、オペレータOは、ハンドリングデバイス7をつかむ。
【0048】
詳細には、必ずしもそうではないが、学習ステップ中にオペレータは、ハンドリングデバイス7に力およびトルクを加え(かけ)、これらがセンサー8によって検出される。より詳細には、処理ユニット9は、センサー8によって検出されたデータに応じて、空間におけるロボットマニピュレータ3の動きの指示を取得することによってアドミッタンス制御を実行する。
【0049】
有利には、学習ステップ中に処理ユニット9は、ロボットマニピュレータ3の少なくとも1つのリンクLとオペレータOとの間の現在の相対距離RDを決定し、少なくとも1つのリンクLの相対距離RDがあらかじめ定義された距離しきい値TVよりも大きいことを制御(検証)する。現在の値RDおよび/またはVRがあらかじめ定義された値TVよりも小さい場合に、方法は、ロボットマニピュレータ3を停止することを伴い、すなわちユニット9は、ロボットマニピュレータ3を停止するようにそれを制御する。
【0050】
有利には、あらかじめ定義されたしきい距離値TVは、ロボットマニピュレータ3がそれぞれの最大線速度から始めて停止するために必要とされる時間量で到達することができる距離に等しいかまたはそれよりも大きい。言い換えれば、ロボットマニピュレータ3が最大速度VMAXで動いている間に受け取られる停止信号の伝達から進む距離を推定すると、しきい距離値距離値TVは、少なくとも推定された距離に等しくなる。このようにして、オペレータOの安全を合理的に確実にすることが可能であり、最も極端な場合にはロボットマニピュレータ3は、ほとんど速度がない状態でオペレータOに接触することになる。
【0051】
好ましくは、処理ユニット9は、各リンクLとオペレータOとの間の相対距離RDを決定する。言い換えれば、処理ユニット9は、学習ステップ中に、各リンクLとオペレータOとの間の距離、詳細には各リンクのポイントとオペレータOとの間の距離を、循環的に評価する。
【0052】
有利には、限定はしないが、位置制御に代替的にまたは追加として、学習ステップ中に、処理ユニット9は、ロボットマニピュレータ3の少なくとも1つのリンクLとオペレータOとの間の現在の相対速度VRを決定し、少なくとも1つのリンクLの上記の相対速度VRがあらかじめ定義されたしきい速度値TV'よりも小さいかどうかを制御(検証)する。現在の値VRがあらかじめ定義された値TV'よりも大きい場合に、方法は、ロボットマニピュレータ3を停止することを伴い、すなわちユニット9は、ロボットマニピュレータ3を停止するようにそれを制御する。好ましくは、処理ユニット9は、各リンクLとオペレータOとの間の相対速度VRを決定する。
【0053】
有利には、必ずしもそうではないが、あらかじめ定義されたしきい速度値TV'は、それぞれのリンクLの最大線速度VMAXに実質的に等しい。詳細には、あらかじめ定義されたしきい速度値TV'は、適用例に応じて変動し、たとえば、吹付けの場合は、あらかじめ定義されたしきい速度値TV'は1,500mm/sである。
【0054】
好ましくは、限定的ではないが、しきい距離値TVは、相対速度VRに応じて変動する。実際は、ロボットマニピュレータ3が高速で動く場合でも、オペレータOが同じ方向に動く場合、相対速度VRはより低くなり、ロボットマニピュレータ3がオペレータOにぶつかることは、ロボットマニピュレータ3の逆転(これはより多くの時間を要し、したがってロボットマニピュレータ3がオペレータOを傷つけることになる前にロボットマニピュレータ3を停止させることを可能にする)が不可欠である。
【0055】
いくつかの好ましいが限定的ではない場合には、処理ユニット9は、オペレータOに対するロボットマニピュレータ3の(すなわち、そのリンクLの各々の)相対距離RDおよび相対速度VRをリアルタイムで監視するように構成される。このようにして、制御システム4は、衝撃/巻き込みの高い危険性によって特徴づけられる状況を識別し、結果として緊急停止信号を発することができる。
【0056】
図4に示すものなどの、いくつかの好ましいが限定的ではない実施形態によれば、各リンクLは、第1の端部Aと第2の端部Bとを備える。
【0057】
詳細には、図6の非限定的な実施形態に概略的に示すように、少なくとも1つのリンクLとオペレータOとの間の相対速度VRは、オペレータOとリンクLの端部Aおよび端部Bとの間でそれぞれ計算された相対速度
【数1】
の最大のものとして定義される。
【0058】
図2および図3の非限定的な実施形態によれば、処理ユニット9は、オペレータOとロボットマニピュレータ3のエンドエフェクタ2との間の、詳細にはオペレータOと駆動アセンブリ5との間の剛体リンクRLに基づいて、より詳細には、オペレータOがロボットマニピュレータ3を動かすことを可能にする駆動アセンブリ5の形状に基づいて、オペレータOの位置を決定する。言い換えれば、オペレータOの位置OPは、ハンドリングデバイス7と一体であると考えられ、したがって、好ましくはオペレータOの位置OPは一定の距離で、学習動作の間、ロボットマニピュレータ3のエンドエフェクタ2と一体であると考えられる。
【0059】
有利には、必ずしもそうではないが、図4および図5の非限定的な実施形態に示すように、オペレータOおよび少なくとも1つのリンクLの位置(およびそれらの距離、または2つの異なるリンクL間の距離)を決定するために、カプセルCAおよび/またはシリンダーCY形状モデルGMが使用される。
【0060】
詳細には、ロボット化システム1がその(シミュレートされた)作業空間WSに示された、図5に示す画像からわかるように、各カプセルCAは、それぞれのリンクLのまたはオペレータOの第1の端部Aと第2の端部Bとの間でそれぞれの球S(簡単にするために、そのうちの一部のみが示されている)を並進させることによって得られた凸状ケーシングによって定義される。代替的に、カプセルCAは、シリンダーCYによって定義され、このシリンダーCYの両端部に、シリンダーCYの底面と一致するキャップまたは半球体がある。
【0061】
詳細には、各カプセルCAおよび/または各シリンダーCYは、それぞれの半径R、R'(「クリアランス」としても知られる)によって特徴づけられる。
【0062】
好ましくは、この方法は、各リンクLをそれぞれのカプセルCAを用いてモデル化することを想定する。詳細には、この方法は、オペレータOを単一のカプセルCAを用いてモデル化することを想定する。
【0063】
図2および図3の非限定的な実施形態では、オペレータOのカプセルCAの位置OPは、慣性基準系(inertial reference system)RFに対して、およびロボット3のエンドエフェクタ2に対して図式的に表されている。詳細には、図2図3の両方において、ハンドリングデバイス7に対しても、エンドエフェクタ2に対してもオペレータOのカプセルCAの相対位置(すなわち、距離RLおよびOE)は、慣性基準系RFに対するオペレータOのカプセルCAの位置OPとは異なり、一定のままである(図2図3との間で、詳細には、1つのベースリンクL'だけが動かされたので、角度は変化するが、他のリンクLを動かすことによって、位置ベクトルOPのモジュールもまた変化する)。
【0064】
詳細には、2つの形状モデルGM(すなわち、2つのカプセルCA、2つのシリンダーCY、または1つのカプセルCAおよび1つのシリンダーCY)間の距離は、それぞれの端部AおよびB間の距離の最小値から各それぞれの球S(またはシリンダーCY)の半径R、R'を引くことによって計算される。言い換えれば、図の非限定的な実施形態では、2つの形状モデルGM間(したがって、オペレータOとリンクLとの間または2つのリンクL間)の距離は、距離AB'およびBA'のうちの最小値(この場合はBA')の値に等しく、この値から半径RおよびR'が引かれ、すなわちRD=min(AB',BA')-R-R'である(たとえば、図4の非限定的な実施形態では、RD=BA-R-R'がある)。好ましくは、必ずしもそうではないが、図6の非限定的な実施形態に示すように、リンクLとオペレータOとの間の相対速度VRは、オペレータOのカプセルCAとリンクLの端部AおよびB(好ましくはそれぞれ点AおよびBにおいて球Sの中心に対応する)との間の最大相対速度
【数2】
として定義される。
【0065】
詳細には、図6において、棒線rA-rBは、ロボットマニピュレータ3のリンクLのいずれかを表す。それ自体知られており、したがってさらに詳述しない運動学計算を用いて、処理ユニット9は、(詳細には点Jの角度およびそれらのそれぞれの速度に応じて)点AおよびBの線速度VAおよびVBを計算する。点rA、rBをオペレータOの位置OPに(すなわちオペレータのカプセルCAの軸に)つなぐ方向に沿った、得られた速度VA、VBを射影することによって、オペレータOに対するその特定の点A、Bの速度
【数3】
が計算される。詳細には、この直交射影ORPA、ORPBの結果は、リンクの端部AおよびBがオペレータOに近づいている場合は符号が正であり、リンクの端部AおよびBがオペレータOから遠ざかるときは符号が負である(符号は規則によって逆にされ得ることは明らかである)速度値
【数4】
である。
【0066】
そのような非限定的な実施形態では、リンクLの線速度は、端部Aと端部Bとの間で線形に変化する。したがって、端部A(点rA)または端部B(点rB)は、必然的に最大線速度を有するリンクLの点である。オペレータOのカプセルCAに直交する射影ORPA、ORPBは、線速度VA、VBの座標の線形結合から成るので、点rAまたは点rBのどちらかが必然的に、オペレータOに対する最大相対速度
【数5】
によって特徴づけられるリンクLの点であると再び述べることができる。このようにして、2つの端部AおよびB間の中間点の制御は、回避され得る。
【0067】
いくつかの好ましい非限定的な事例では、オペレータOは、ロボットマニピュレータ3とは異なり、単一の形状モデルGMによって、詳細にはカプセルCAを用いてモデル化され、単一の形状モデルGMは、オペレータOがロボットマニピュレータ3を動かすことを可能にする駆動アセンブリ5の形状に応じて、ロボットマニピュレータ3のエンドエフェクタ2に剛体的に接続されるとみなされる。
【0068】
有利には、必ずしもそうではないが、図2および図3の非限定的な実施形態に示すように、オペレータの位置OPは、好ましくはロボットマニピュレータ3のベースリンクL'に固定された慣性基準系RFに対して決定される。
【0069】
有利には、必ずしもそうではないが、この方法は、リンクLの遠位端Bのみに基づく相対最大速度を計算することを提供する。詳細には、ロボットのカプセルCAが順に配置され、i番目のカプセルの端部Bは(i+1)番目のカプセルの端部Aに対応することから、この方法はしたがって、ロボットマニピュレータ3のベースリンクL'(一般にロボット3の第1のカプセルCAの点Aに対応する)は通常静止しているので(このために、基準系RFを固定することが選択された)、最大相対速度
【数6】
(図6の場合は速度
【数7】
である)は、ロボットマニピュレータ3のカプセルCAのすべてのおよび唯一の点Bの線速度VBをもっぱら射影することによって得られる。言い換えれば、リンクLの連続性(すなわち、i+1番目のリンクLの端部Aがi番目のリンクの端部Bに対応すること)、およびベースリンクL'の端部Aの固定位置に鑑みて、点Bのみの線速度VBを相対距離rB-OPに射影することによって、最大相対速度を計算するために必要な速度すべてが得られ、場合によってはロボットマニピュレータ3の停止信号を発する。
【0070】
有利には、必ずしもそうではないが、この方法は、閉じた安全コントローラ(すなわち、自由にプログラム可能ではない)に送られるように、これまで説明したステップを仮想的安全変数に変換することを提供する。これらのコントローラは、現代のロボットマニピュレータ3によくあり、オペレータおよびプラントの安全を保護するためにロボットマニピュレータ3の機能を厳しく制限する。
【0071】
好ましくは、限定的ではないが、これまで説明した制御方法は、ロボット化システム1の機能的論理内に(すなわち、上述の安全コントローラ外に)割り振られたコードを用いて実行される。
【0072】
図7の非限定的な実施形態によれば、2つのマクロブロックFLおよびSLは、直接教示ステップ中のロボット化システム1の機能的論理LFおよび安全論理LSを概略的に表す。詳細には、ブロック10は、これまで説明したものによる、(それぞれの形状モデルGM、たとえばカプセルCAの)領域、衝突、位置、および相対速度の(リアルタイムの)動的監視を表す。より詳細には、ブロック11は、加速度制御を表し、この加速度制御は、(ロボットマニピュレータ3のTCPすなわちツールセンターポイント(Tool Center Point)を参照して)関節Jの空間において、およびエンドエフェクタ2ではデカルト空間においてそれぞれの加速度制限を定義するために実験データを使用する。好ましくは、ブロック10および/または11は、学習ステップがアクティブ化された場合のみ作動する。
【0073】
ブロック14およびブロック15を通して、ブロック10およびブロック11の上述の制御は、安全変数SV'、SV''(好ましくはブール変数、通常trueまたは1に等しい)に変換される。詳細には、ブロック14およびブロック15は、オペレータOの安全性に危険がある場合に、言い換えれば、相対距離RDがしきい距離値TVよりも小さい場合に、または相対速度VRがしきい速度値TV'よりも大きい場合に、またはさらにエンドエフェクタ2もしくは関節Jのデカルト加速度が、ブロック11の制御によって監視されるそれぞれの基準値を超える場合に、それぞれの安全変数SV'、SV''に「false」(または0)値を送信する。
【0074】
有利には、必ずしもそうではないが、ブロック12およびブロック13は、閉じた安全コントローラ内に一般的に存在するブロックである。詳細には、ブロック12は、それによって(TCPと一体の)エンドエフェクタ2に対してデカルト空間における速度制限を設定する既知のブロックを表し、たとえば、ブロック12は、現在のデカルト速度制限に合わせて較正され、学習ステップにおいてのみ有効にされたSLSc(安全デカルト速度制限(Safe Cartesian Speed Limit))ブロックである。
【0075】
有利には、必ずしもそうではないが、この方法は、先に設定した制限に対応する関節Jの(すなわち、それらのそれぞれの電動化の)最大回転速度を計算することを提供する。詳細には、関節の回転のそのような最大速度は、一度に1つの関節Jで計算され、残りの関節は動かないと仮定する。より詳細には、ブロック13は、その内部に、たとえば、先に識別された値で較正され、学習ステップにおいてのみ有効にされた安全制限速度制御(Safe Limited Speed Control:SLS)ブロックを含む既知のブロックを表す。好ましくは、ブロック13は、ベースリンクL'から始まる第1の3つの関節に対する(言い換えればロボット手首3の関節を除くすべての関節に対する)3つのSLSブロックを含む。
【0076】
安全変数SV'、SV''およびブロック12およびブロック13からの出力のそれらは、ブロックを使用し、論理条件ANDと同等の安全論理LSによって循環的に検証される。このブロックへの入力の値の1つが、他のものとは異なる値を有する場合に、安全論理LSはブロックBLKをアクティブにし、ブロックBLKは、(たとえば、ブラシレスモーターによくある、知られているSTOすなわち安全トルクオフ(Safe Torque Off)機構によって)できるだけ短時間でロボットを停止させる緊急信号を直ちに送る。
【0077】
使用において、学習ステップの実行中に、(安全性に専用の部分の)制御システム4は、リンクLのおよびオペレータOのカプセルCAの位置をリアルタイムで更新し、(図4に示すように)各カプセルCAとオペレータOのカプセルとの間の相対距離RDを計算し、最小相対距離RDが引き続きしきい距離値TVを上回っているかを検証する。緊急停止をかけるために必要とされる時間の間にロボットが最大許容線速度で進むことができる距離で値TVを設定することによって、(安全)制御システム4は、ロボットとオペレータOとの衝突の危険が、高速でも十分に低いことを保証することができる。
【0078】
上記で説明した発明は、実装形態の極めて正確な例に特に言及するが、異なる形状のロボットマニピュレータ5、異なるタイプのエンドエフェクタ、異なる細分の方法のステップなど、添付の特許請求の範囲によって対象に含まれる変形形態、変更形態、または簡略化形態すべてが発明の範囲内に入るので、発明は実装形態のそのような例に限定されない。
【0079】
上記で説明したロボット化システムおよび方法は、多数の利点を有する。
【0080】
第1にこのアーキテクチャは、既知の技術の解決策には存在しない高い安全基準を維持し、したがって高速での直接教示に縛られながら、デカルト空間と関節の空間の両方において高速で作成される軌道をオペレータOが記録することを可能にする。
【0081】
さらに、このようにして、ロボットとオペレータとの機械的衝突の危険は大きく減少すると同時に、オペレータの体のいくつかの部分が巻き込みまたは締め付けを受けることを回避する。
【0082】
加えて、これは、企業が急速に進化しつつある製品に対処するために生産の柔軟性をより大きくすることに役立つことを可能にする。
【符号の説明】
【0083】
1 ロボット化システム
2 エンドエフェクタ
3 ロボットマニピュレータ
4 制御システム
5 駆動アセンブリ
6 ストレージユニット
7 ハンドリングデバイス
8 センサー
9 処理ユニット
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【手続補正書】
【提出日】2024-05-21
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
直接教示中の、ロボット化システム(1)の安全制御のための方法であって、
学習ステップであって、前記学習ステップ中に、オペレータ(O)が駆動アセンブリ(5)を用いて前記ロボット化システム(1)のロボットマニピュレータ(3)のエンドエフェクタ(2)を動かし、前記エンドエフェクタ(2)によって行われた動きが、前記ロボット化システム(1)のストレージユニット(6)に記憶される、学習ステップ
を含み、
前記ロボットマニピュレータ(3)が、関節(J)を介して互いに接続された複数のリンクを含み、
前記学習ステップ中に、処理ユニット(9)が、前記ロボットマニピュレータ(3)の各リンク(L)と前記オペレータ(O)との間の相対距離(RD)を決定し、前記リンク(L)の前記相対距離(RD)があらかじめ定義された距離しきい値(TV)を超えるかどうかを制御し、
前記あらかじめ定義された距離しきい値(TV)が、それぞれの最大線速度(VMAX)から始めて停止するために必要とされる時間量で前記ロボットマニピュレータ(3)によって到達される距離に等しいかまたはそれよりも大きく、
前記相対距離(RD)が前記あらかじめ定義された距離しきい値(TV)よりも小さい場合に、前記方法が、前記ロボットマニピュレータ(3)を停止させるステップを伴う、ことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記処理ユニット(9)が、前記ロボットマニピュレータ(3)の少なくとも1つのリンク(L)と前記オペレータ(O)との間の相対速度(VR)を決定し、前記相対速度(VR)があらかじめ定義されたしきい速度値(TV')よりも小さいように制御し、詳細には、前記処理ユニット(9)が、前記ロボット(3)の各リンク(L)と前記オペレータ(O)との間の前記相対速度(VR)を決定し、前記相対速度(VR)が前記あらかじめ定義されたしきい速度値(TV')を超える場合に、前記方法が、前記ロボットマニピュレータ(3)を停止させるステップを伴う、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記あらかじめ定義されたしきい速度値(TV')が、それぞれのリンク(L)の前記最大線速度に実質的に等しい、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
各リンク(L)が、第1および第2の端部を備え、前記少なくとも1つのリンク(L)と前記オペレータ(O)との間の前記相対速度(VR)が、前記オペレータ(O)と前記リンク(L)の前記第1または第2の端部との間で計算された相対速度のうちの最大のものとして定義される、請求項2または3に記載の方法。
【請求項5】
前記処理ユニット(9)が、前記オペレータ(O)と前記ロボットマニピュレータ(3)の前記エンドエフェクタ(2)との間の、詳細にはオペレータ(O)と前記駆動アセンブリ(5)との間の剛体リンク(L)に基づいて、詳細には、前記オペレータ(O)が前記ロボットマニピュレータ(3)を動かすことを可能にする前記駆動アセンブリ(5)の形状に基づいて、前記オペレータ(O)の位置を決定する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記オペレータ(O)および少なくとも1つのリンク(L)の位置を決定するために、カプセルおよび/またはシリンダー形状モデル(GM)が使用され、詳細には、各カプセル(CA)が、それぞれのリンク(L)または前記オペレータ(O)の第1および第2の端部の間でそれぞれの球を並進させることによって得られる凸状ケーシングによって定義される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
2つの形状モデル(GM)間の距離が、それぞれの第1および第2の端部の間の距離の最小値から各それぞれの球の半径を引くことによって計算される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記オペレータ(O)が、単一の形状モデル(GM)、詳細にはカプセルモデル(CA)によってモデル化され、前記単一の形状モデル(GM)は、前記オペレータ(O)が前記ロボットマニピュレータ(3)を動かすことを可能にする前記駆動アセンブリ(5)の形状に基づいて、前記ロボットマニピュレータ(3)の前記エンドエフェクタ(2)に剛体的に接続されるとみなされる、請求項6または7に記載の方法。
【請求項9】
前記オペレータ(O)の位置が、好ましくは前記ロボットマニピュレータ(3)のベースリンク(L)に固定された、慣性基準系に対して決定される、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記駆動アセンブリ(5)が、力/トルクセンサー(8)を備え、前記オペレータ(O)が、前記学習ステップ中に、前記駆動アセンブリ(5)に力および/またはトルクを加え、前記駆動アセンブリ(5)の前記センサー(8)が、かけられた力および/またはトルクを検出する、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
ロボット化システム(1)であって、
生産される物品を処理するように、または生産される物品と相互作用するように構成されたエンドエフェクタ(2)と、
少なくとも3自由度で動かせ、前記エンドエフェクタ(2)が取り付けられたロボットマニピュレータ(3)であって、リンクを通して互いに接続された複数の関節(J)を備える、ロボットマニピュレータ(3)と、
ストレージユニット(6)を備え、空間において前記エンドエフェクタ(2)を動かすために前記ロボットマニピュレータ(3)の動きを制御するように構成された制御システム(4)と、
動きの指示を前記ロボットマニピュレータ(3)に伝えるためにオペレータ(O)によって操作されるように構成された駆動アセンブリ(5)と
を備え、
前記駆動アセンブリ(5)は、
使用中に前記オペレータ(O)が力およびトルクを加えるハンドリングデバイス(7)と、
前記ハンドリングデバイス(7)にかけられた力およびトルクを検出するように構成されたセンサー(8)と、
前記センサー(8)によって検出されたデータに応じて、かつアドミッタンス制御に従って、前記ロボットマニピュレータ(3)にデカルト動き指示を与えるように構成された処理ユニット(9)と
を備え、
前記ストレージユニット(6)は、前記オペレータ(O)によって前記駆動アセンブリ(5)を用いて前記エンドエフェクタ(2)が動かされる間、前記ロボットマニピュレータ(3)によって行われる動きを記憶するように構成され、
前記制御システム(4)が、前記ストレージユニット(6)によって記憶された動きに基づいて、前記エンドエフェクタ(2)の動きを制御するように構成され、
前記ロボット化システム(1)が、請求項1に記載の方法を実行するように構成される、ロボット化システム(1)。
【請求項12】
セラミック物品の表面の少なくとも一部を覆うために物質の噴射を放出するように構成された吹付ヘッドを備える、請求項11に記載のロボット化システム(1)。
【国際調査報告】