IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ピーアールジー エスアンドテック インコーポレイテッドの特許一覧

<>
  • 特表-デクルシン誘導体の新規な合成方法 図1
  • 特表-デクルシン誘導体の新規な合成方法 図2
  • 特表-デクルシン誘導体の新規な合成方法 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-30
(54)【発明の名称】デクルシン誘導体の新規な合成方法
(51)【国際特許分類】
   C07D 493/04 20060101AFI20240920BHJP
【FI】
C07D493/04
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024519848
(86)(22)【出願日】2022-08-08
(85)【翻訳文提出日】2024-04-01
(86)【国際出願番号】 KR2022011763
(87)【国際公開番号】W WO2023058875
(87)【国際公開日】2023-04-13
(31)【優先権主張番号】10-2021-0132240
(32)【優先日】2021-10-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519379835
【氏名又は名称】ピーアールジー エスアンドテック インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】PRG S&TECH INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100181847
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 かおり
(72)【発明者】
【氏名】キム ミンジュ
(57)【要約】
本発明は、デクルシン誘導体の新規な合成方法に関するものであって、白金触媒及びキサントホスの存在下で3-(3-メトキシ-4-ニトロフェニル)プロパ-2-エン-1-オールのOH基にBoc保護基が導入された中間体化合物とデクルシノールとの間の反応を通じて化合物Iで表されるデクルシン誘導体(PRG-A-04)を高い収率で大量合成することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
3-(3-メトキシ-4-ニトロフェニル)プロパ-2-エン-1-オールのOH基にBoc保護基が導入された中間体化合物(化合物5)とデクルシノール(化合物6)との間の反応を通じて化合物Iで表されるデクルシン誘導体を合成する段階を含む、化合物Iで表されるデクルシン誘導体の合成方法:
【化1】
【請求項2】
前記化合物5は、
i)3-ヒドロキシ-4-ニトロベンズアルデヒドとヨウ化メチル(CHI)とを反応させて3-メトキシ-4-ニトロベンズアルデヒドを合成する第1段階と、
ii)前記3-メトキシ-4-ニトロベンズアルデヒドとジエトキシホスホリルアセテートとを反応させてエチル3-(3-メトキシ-4-ニトロフェニル)-2-プロペン酸を合成する第2段階と、
iii)前記エチル3-(3-メトキシ-4-ニトロフェニル)-2-プロペン酸と水素化ジイソブチルアルミニウム(DIBAL-H)とを反応させて3-(3-メトキシ-4-ニトロフェニル)プロパ-2-エン-1-オールを合成する第3段階と、
iv)前記3-(3-メトキシ-4-ニトロフェニル)プロパ-2-エン-1-オールと二炭酸ジ-tert-ブチル[(Boc)O]とを反応させてBoc保護基が導入された化合物5を合成する第4段階と、
を含んで合成されることを特徴とする、請求項1に記載の合成方法。
【請求項3】
前記デクルシン誘導体を合成する段階は、白金触媒及びキサントホスの存在下で化合物5と化合物6との間の反応を通じて化合物Iで表されるデクルシン誘導体を合成することを特徴とする、請求項1に記載の合成方法。
【請求項4】
前記デクルシン誘導体を合成する段階は、
i)化合物5の溶液に化合物6、Pd(dba)及びキサントホスを含む溶液を投入し、撹拌する段階と、
ii)前記撹拌した反応溶液にN-アセチルシステインを投入し、撹拌する段階と、
iii)前記撹拌した反応溶液を濾過し、有機溶媒層を濃縮する段階と、
iv)前記濃縮された反応溶液を濾過して収集された溶液を濃縮し、アセトンを投入して完全に溶解させる段階と、
v)前記溶解させた反応溶液にイソプロピルアルコールを投与し、洗浄して化合物Iで表されるデクルシン誘導体を収得する段階と、
を含むことを特徴とする、請求項1に記載の合成方法。
【請求項5】
前記化合物5と化合物6は、1:(0.1~1)の重量比で含まれることを特徴とする、請求項4に記載の合成方法。
【請求項6】
前記白金触媒及びキサントホスは、化合物6の100重量部について、それぞれ3~10重量部で含まれることを特徴とする、請求項4に記載の合成方法。
【請求項7】
前記収得されたデクルシン誘導体を再結晶する段階をさらに含むことを特徴とする、請求項4に記載の合成方法。
【請求項8】
前記再結晶する段階は、
i)収得されたデクルシン誘導体にアセトン及びイソプロピルアルコールを投入し、撹拌した後、濾過する段階と、
ii)前記濾過された反応物を洗浄し、乾燥させてデクルシン誘導体を収得する段階と、
を含むことを特徴とする、請求項7に記載の合成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デクルシン誘導体の新規な合成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
筋萎縮性側索硬化症(amyotrophicLateral sclerosis;ALS)は、致命的な神経退行性疾患であって、脊髄内の細胞死によって運動ニューロンが選択的に消失される。約10~20%の患者が遺伝的パターン(家族性ALS、familial ALS;fALS)を示し、残りは、散発性ALS(sporadic ALS;sALS)に分類される。一部の遺伝子が家族性ALSのALS-関連遺伝子座位で知られ、そのうち、SOD1は、fALSで初めて明らかになった遺伝子である。fALS関連遺伝子がsALS発病にも作用すると推測されるが、現在までsALSに対する正確な原因は明らかになっていない。また、ALSは、臨床症状によって典型的なALSと痴呆とを伴ったALS及び非典型的なALSに分類される。実際に、SOD1の突然変異は、典型的なALSを誘発し、C9orf72は、痴呆を伴ったALSと関連している。
【0003】
ALSの重要な特徴の1つは、進行性疾患であって、神経細胞死が神経連結を通じて伝播されるという点である。事実、アルツハイマー及びパーキンソン病も、類似した表現型を示す。前記特徴と関連して、プリオン様伝播機転(prion-like propagation)が提起され、これは、ミスフォールディングされた(misfolded)タンパク質が正常タンパク質を異常タンパク質に変形させるということである。実際に、突然変異アミロイドβ(Amyloid beta;Aβ)は、正常Aβを異常Aβに変形させることができる。最近、突然変異またはミスフォールディングされたSOD1も、疾病が進行する過程から分泌され、伝播されうると報告された。しかし、ALS疾患の治療剤をターゲットとしたSOD1凝集及びミスフォールディング(misfolding)抑制剤については、多くの研究が進められていない。
【0004】
これにより、大韓民国公開特許第10-2021-0052326号では、新規な化合物であるデクルシン誘導体化合物が筋萎縮性側索硬化症(ALS)の予防、改善または治療用途に効果的であるということが立証されたが、デクルシン誘導体化合物の収率が低くて、量産に限界があった。
【0005】
したがって、デクルシン誘導体化合物の収率を高め、量産が可能な新規な合成方法についての研究が必要な実情である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、デクルシン誘導体化合物の収率を高め、量産が可能な新規なデクルシン誘導体の合成方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を果たすために、本発明は、3-(3-メトキシ-4-ニトロフェニル)プロパ-2-エン-1-オール[3-(3-methoxy-4-nitrophenyl)prop-2-en-1-ol]のOH基にBoc保護基が導入された中間体化合物(化合物5)とデクルシノール(化合物6)との間の反応を通じて化合物Iで表されるデクルシン誘導体を合成する段階を含む化合物Iで表されるデクルシン誘導体の合成方法を提供する:
【0008】
【化1】
【発明の効果】
【0009】
本発明によるデクルシン誘導体化合物の新規な合成方法は、収得されるデクルシン誘導体化合物の収率を高めることができ、量産も可能であるという長所がある。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施例によって合成されたデクルシン誘導体(PRG-A-04)のH NMR結果を示した図面である。
図2】本発明の一実施例によって合成されたデクルシン誘導体(PRG-A-04)の13C NMR結果を示した図面である。
図3】本発明の一実施例によって合成されたデクルシン誘導体(PRG-A-04)のDSC結果を示した図面である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を具体的に説明する。
【0012】
本発明者らは、白金触媒及びキサントホスの存在下で3-(3-メトキシ-4-ニトロフェニル)プロパ-2-エン-1-オールのOH基にBoc保護基が導入された中間体化合物とデクルシノールとの間の反応を通じて化合物Iで表されるデクルシン誘導体[(S,E)-7-((3-(3-メトキシ-4-ニトロフェニル)アリル)オキシ)-8,8-ジメチル-7,8-ジヒドロ-2H,6H-ピラノ[3,2-g]クロメン-2-オン[(S,E)-7-((3-(3-methoxy-4-nitrophenyl)allyl)oxy)-8,8-dimethyl-7,8-dihydro-2H,6H-pyrano[3,2-g]chromen-2-one];PRG-A-04]を高い収率で大量合成する新たな合成方法を開発することにより、本発明を完成した。
【0013】
これにより、本発明は、3-(3-メトキシ-4-ニトロフェニル)プロパ-2-エン-1-オールのOH基にBoc保護基が導入された中間体化合物(化合物5)とデクルシノール(化合物6)との間の反応を通じて化合物Iで表されるデクルシン誘導体を合成する段階を含む化合物Iで表されるデクルシン誘導体の合成方法を提供する:
【0014】
【化2】
【0015】
前記化合物5は、i)3-ヒドロキシ-4-ニトロベンズアルデヒド(3-hydroxy-4-nitrobenzaldehyde)とヨウ化メチル(CHI)とを反応させて3-メトキシ-4-ニトロベンズアルデヒド(3-methoxy-4-nitrobenzaldehyde)を合成する第1段階;ii)前記3-メトキシ-4-ニトロベンズアルデヒドとジエトキシホスホリルアセテート(diethoxyphosphoryl acetate)とを反応させてエチル3-(3-メトキシ-4-ニトロフェニル)-2-プロペン酸(Ethyl 3-(3-methoxy-4-nitrophenyl)-2-propenoate)を合成する第2段階;iii)前記エチル3-(3-メトキシ-4-ニトロフェニル)-2-プロペン酸と水素化ジイソブチルアルミニウム(diisobutylaluminium hydride;DIBAL-H)とを反応させて3-(3-メトキシ-4-ニトロフェニル)プロパ-2-エン-1-オールを合成する第3段階;及びiv)前記3-(3-メトキシ-4-ニトロフェニル)プロパ-2-エン-1-オールと二炭酸ジ-tert-ブチル[di-tert-butyl dicarbonate;(Boc)O]とを反応させてBoc保護基が導入された化合物5を合成する第4段階;を含んで合成される。
【0016】
前記デクルシン誘導体を合成する段階は、白金触媒及びキサントホスの存在下で化合物5と化合物6との間の反応を通じて化合物Iで表されるデクルシン誘導体を合成することができる。
【0017】
より詳細には、前記デクルシン誘導体を合成する段階は、i)化合物5の溶液に化合物6、Pd(dba)及びキサントホスを含む溶液を投入し、撹拌する段階;ii)前記撹拌した反応溶液にN-アセチルシステインを投入し、撹拌する段階;iii)前記撹拌した反応溶液を濾過し、有機溶媒層を濃縮する段階;iv)前記濃縮された反応溶液を濾過して収集された溶液を濃縮し、アセトンを投入して完全に溶解させる段階;及びv)前記溶解させた反応溶液にイソプロピルアルコールを投与し、洗浄して化合物Iで表されるデクルシン誘導体を収得する段階;を含みうる。
【0018】
前記化合物5と化合物6は、1:(0.1~1)の重量比で含まれ、前記白金触媒及びキサントホスは、化合物6の100重量部について、それぞれ3~10重量部で含まれうる。前記化合物5、化合物6、白金触媒及びキサントホスの含量が、前記範囲を外れれば、経済性が不足であるか、量産が困難な問題が引き起こされる。
【0019】
本発明では、前記収得されたデクルシン誘導体を再結晶する段階をさらに含みうる。
【0020】
前記再結晶する段階は、i)収得されたデクルシン誘導体にアセトン及びイソプロピルアルコールを投入し、撹拌した後、濾過する段階;及びii)前記濾過された反応物を洗浄し、乾燥させてデクルシン誘導体を収得する段階;を含みうる。
【0021】
本発明の一実施例に基づいて本発明をより詳細に説明すれば、本発明は、3-ヒドロキシ-4-ニトロベンズアルデヒドとヨウ化メチル(CHI)とを反応させて3-メトキシ-4-ニトロベンズアルデヒドを合成する第1段階;前記3-メトキシ-4-ニトロベンズアルデヒドとジエトキシホスホリルアセテートとを反応させてエチル3-(3-メトキシ-4-ニトロフェニル)-2-プロペン酸を合成する第2段階;前記エチル3-(3-メトキシ-4-ニトロフェニル)-2-プロペン酸と水素化ジイソブチルアルミニウム(DIBAL-H)とを反応させて3-(3-メトキシ-4-ニトロフェニル)プロパ-2-エン-1-オールを合成する第3段階;前記3-(3-メトキシ-4-ニトロフェニル)プロパ-2-エン-1-オールと二炭酸ジ-tert-ブチル[(Boc)O]とを反応させてBoc保護基が導入された化合物5を合成する第4段階;及び前記化合物5とデクルシノール(Decursinol;化合物6)とを反応させて化合物Iを合成する第5段階;を含む化合物Iで表されるデクルシン誘導体の合成方法を提供する:
【0022】
【化3】
【0023】
本発明による化合物Iで表されるデクルシン誘導体(PRG-A-04)の合成方法は、次の反応式2でより詳細に記述する:
【0024】
【化4】
【0025】
前記第1段階は、3-ヒドロキシ-4-ニトロベンズアルデヒド(化合物1)、KCO及びDMFを反応器に投入した後、反応溶液の内部温度を20~30℃に調節する段階;反応溶液の温度を20~40℃に保持しながら、前記反応溶液にMeIとDMFとを添加し、反応溶液の温度を20~30℃に保持しながら、16~18時間撹拌する段階;前記反応溶液の温度を-5~10℃に下げた後、反応溶液の温度を-5~10℃に保持しながら、精製水を投入し、-5~10℃で2~6時間撹拌する段階;及び前記反応溶液から生成された固体を濾過し、減圧乾燥して3-メトキシ-4-ニトロベンズアルデヒド(化合物2)を収得する段階;を含みうる。
【0026】
前記第2段階は、2-ジエトキシポスポリルアセテート(diethoxyphosphoryl acetate;DBU)と2-Me-THFとを反応器に投入して撹拌する段階;前記反応溶液に3-メトキシ-4-ニトロベンズアルデヒド(化合物2)と2-Me THF混合溶液とを投入し、20~30℃で8~12時間撹拌した後、精製水を投入し、20~30℃で30~60分撹拌する段階;及び前記撹拌した反応溶液の有機溶媒層に酢酸溶液とNaHCO溶液とを処理した後、得られた有機溶媒層を減圧蒸留して3-(3-メトキシ-4-ニトロフェニル)プロパ-2-エン-1-オール[化合物3]を収得する段階;を含みうる。
【0027】
前記第3段階は、3-(3-メトキシ-4-ニトロフェニル)プロパ-2-エン-1-オール[化合物3]と2-Me-THFとを反応器に投入して撹拌する段階;前記反応溶液にDIBAL-H(toluene溶液、96.5kg、112.2moles、2.5eq)を投入して撹拌する段階;前記反応溶液にセニエット塩(seignette salt)溶液を投入して撹拌する段階;及び前記撹拌した反応溶液の有機溶媒層にセニエット塩溶液、酢酸溶液とNaHCO溶液とを処理した後、得られた有機溶媒層を減圧蒸留し、2-Me THFを投入して3-(3-メトキシ-4-ニトロフェニル)プロパ-2-エン-1-オール[化合物4]溶液を収得する段階;を含みうる。
【0028】
前記4段階は、3-(3-メトキシ-4-ニトロフェニル)プロパ-2-エン-1-オール[化合物4]溶液とジクロロメタン(DCM)とを反応器に投入し、減圧蒸留する段階;前記減圧蒸留した反応溶液にDCMを投入する段階;前記反応溶液にTBAHS(Tetra-butyl-ammonium-hydrogen-sulfate)、(Boc)O(Di-tert-butyl dicarbonate)及びDCMを投入した後、撹拌する段階;前記反応溶液にNaOH水溶液を投入し、撹拌する段階;及び前記撹拌した反応溶液の有機溶媒層に酢酸溶液とNaHCO溶液とを処理した後、得られた有機溶媒層である化合物5の溶液を収得する段階;を含みうる。
【0029】
前記5段階は、化合物5の溶液に化合物6、Pd(dba)及びキサントホスを含む溶液を投入し、撹拌する段階;前記撹拌した反応溶液にN-アセチルシステインを投入し、撹拌する段階;前記撹拌した反応溶液を濾過し、有機溶媒層を濃縮する段階;前記濃縮された反応溶液を濾過して収集された溶液を濃縮し、アセトンを投入して完全に溶解させる段階;及び前記溶解させた反応溶液にイソプロピルアルコールを投与し、洗浄して化合物Iで表されるデクルシン誘導体(PRG-A-04)を収得する段階;を含みうる。
【0030】
また、本発明によって合成された化合物Iで表されるデクルシン誘導体(PRG-A-04)、すなわち、(S,E)-7-((3-(3-メトキシ-4-ニトロフェニル)アリル)オキシ)-8,8-ジメチル-7,8-ジヒドロ-2H,6H-ピラノ[3,2-g]クロメン-2-オンは、大韓民国公開特許第10-2021-0052326号によれば、SOD1凝集及びミスフォールディング抑制剤であって、ALSモデルマウスで筋肉弱化及び運動障害に対する保護効果を示すことによって、ALS疾患の治療剤として有用に活用されうる。
【0031】
以下、実施例を通じて本発明をさらに詳しく説明する。これらの実施例は、単に本発明をより具体的に説明するためのものであって、本発明の要旨によって、本発明の範囲が、これらの実施例によって制限されないということは当業者にとって自明である。
【0032】
<実施例1>PRG-A-04の合成方法
本発明によるPRG-A-04の合成方法は、下記反応式2によって合成された。
【0033】
【化5】
【0034】
より詳細なPRG-A-04の合成方法は、次の通りである。
【0035】
1.化合物2の合成
化合物2は、下記反応式3によって合成した。
【0036】
【化6】
【0037】
化合物1(17.9kg、107.1mol、1eq)、KCO(20.5kg、148.3moles、1.4当量)、DMF(80kg)を反応器に投入した後、反応溶液の内部温度を25℃に調節した。反応溶液の温度を30℃に保持しながら、前記反応溶液にMeI(33.8kg、238.1moles、2.2当量)とDMF(11kg)とを添加し、反応溶液の温度を25℃に保持しながら、17時間撹拌した。反応溶液の温度を5℃に下げた後、反応溶液の温度を5℃に保持しながら、精製水(180kg)を投入し、4時間撹拌した(撹拌温度:5℃)。
【0038】
このように準備された反応溶液から生成された固体を濾過し(濾過器の内部温度:5℃)、濾過された固体を精製水(72kgx2回)で洗浄した。濾過された固体を乾燥器に入れ、20時間減圧乾燥して化合物2[収率:17.53kg(90.4%)、純度:99.9%(HPLC)、含量:99.2%(w/w)、残留DMF<0.0442%(w/w)、残留MeI:176ppm]を収得した(乾燥器の内部温度:50℃)。
【0039】
2.化合物3の合成
化合物3は、下記反応式4によって合成した。
【0040】
【化7】
【0041】
2-ジエトキシポスポリルアセテート(DBU、20.5kg、91.4moles、1.1eq.)と2-Me-THF(130kg)とを反応器に投入し、反応溶液を0℃に調節した。溶液温度0℃を保持しながら、DBU(15.5kg、101.8moles、1.2eq.)を投入し、2時間0℃で撹拌した。前記反応溶液に化合物2(15kg、83.0mol、1.0eq)と2-Me THF(225kg)混合溶液とを投入し、反応溶液の温度0℃を保持した。前記反応溶液を25℃で10時間撹拌した後、精製水(82kg)を投入し、25℃で45分撹拌した。前記撹拌を止め、溶液層が分離されるまで25℃で45分間待った後、水層と有機溶媒層とを分離して、水層は廃棄し、有機溶媒層に10%aq.酢酸溶液[(精製水(156kg)と氷酢酸(16.0kg)混合液、83kg]を投入し、25℃で45分間撹拌した。前記撹拌を止め、溶液層が分離されるまで25℃で45分間待った後、水層と有機溶媒層とを分離して、水層は廃棄し、有機溶媒層に9.6%aq.NaHCO溶液[精製水(176kg、11.7X)とNaHCO(18.1kg)混合液)、84kg]とを投入し、25℃で45分間撹拌した。前記撹拌を止め、溶液層が分離されるまで25℃で45分間待った後、水層と有機溶媒層とを分離して、水層は廃棄し、9.6%aq.NaHCO溶液を投入し、撹拌し、溶液層を分離する工程を繰り返して行った。このように得られた有機溶媒層を減圧蒸留(反応器の温度:50℃以下保持)し、溶液体積がほぼ60L減る時、蒸留を止めた。n-ヘプタン(130kg)を2時間25℃保持し、投入し、反応溶液を25℃で6時間撹拌した後、濾過された固体をn-ヘプタン(17.0kg)で洗浄した。濾過された固体を乾燥器に入れ、20時間減圧乾燥(乾燥器の内部温度:50℃)して化合物3[収率:18.35kg(88%)、純度:99.7%(HPLC)、含量:99.1%(w/w)、残留水分:0.1%(KF)]を収得した。
【0042】
3.化合物4の合成
化合物4は、下記反応式5によって合成した。
【0043】
【化8】
【0044】
まず、溶媒として使われる2-Me-THFに残留水分(KF測定)が0.05%以下であるということを確認した後、反応器内の残留水分を完全乾燥した。化合物3(11.1kg、44.2moles、1.0当量)と2-Me-THF(205kg)とを反応器に投入し、反応溶液を-5~5℃に調節した。1M DIBAL(toluene溶液、96.5kg、112.2moles、2.5eq)を溶液温度0℃を保持し、2時間以上徐々に投入し、0℃の温度を保持し、3時間撹拌した。反応溶液の温度を25℃に調節した後、38.7%aq.セニエット塩溶液[精製水(126kg)及び酒石酸ナトリウムカリウム四水和物(83.4kg)混合液、113kg]を投入し、25℃に保持し、45分間撹拌した。撹拌停止後、溶液層の分離が円滑になるように3時間25℃で待った後、水層は廃棄し、有機溶媒層に38.7%aq.セニエット塩溶液(58kg)を投入し、25℃に保持し、0.5~1時間撹拌した。撹拌停止後、溶液層の分離が円滑になるように25℃で2.5時間待った後、水層は廃棄し、有機溶媒層に10%aq.酢酸溶液(60kg)を投入し、25℃に保持し、45分間撹拌した。撹拌停止後、溶液層の分離が円滑になるように25℃で45分間待った後、水層は廃棄し、有機溶媒層に9.6%aq.NaHCO(60kg)を投入し、25℃に保持し、45分間撹拌した。撹拌停止後、溶液層の分離になるまで25℃で45分間待った後、水層は廃棄し、9.6%aq.NaHCO溶液を投入し、撹拌し、溶液層を分離する工程を繰り返して行った。このように得られた有機溶媒層を減圧蒸留(反応器の温度:50℃以下保持)し、溶液体積がほぼ27L減る時、蒸留を止めた。溶媒2-Me THF(54kg)を投入し、有機溶媒層を減圧蒸留(反応器の温度:50℃以下保持)し、溶液体積がほぼ27L減る時、蒸留を止め、溶媒2-Me THFを投入して減圧蒸留する工程を繰り返した。減圧蒸留が終われば、2-Me THF(120kg)を投入し、溶液内の残留水分が1.0%以下であるということを確認した[収率:化合物4の溶液(in 2-Me-THF)150kg、純度:84.5%(HPLC)、含量:4.1%(w/w)、残留水分:0.4%(KF)]。
【0045】
4.化合物5の合成
化合物5は、下記反応式6によって合成した。
【0046】
【化9】
【0047】
化合物4の溶液(in 2-Me-THF、6.0kg、4.1 w/w%)とジクロロメタン(DCM、46kg)とを反応器に投入し、減圧蒸留した(反応器の温度:50℃以下保持)。溶液体積がほぼ9Lまで減る時、蒸留を止めた。DCM(46kg)を投入した後、減圧蒸留した(反応器の温度:50℃以下保持)。溶液体積がほぼ9Lまで減る時、蒸留を止め、このような工程を繰り返した。DCM(80kg)を投入し、25℃で1時間撹拌した。前記反応溶液にTBAHS(0.8kg、2.4moles、0.1eq)、(Boc)O(12.5kg、57moles、2.0eq)及びDCM(14kg)を投入した後、25℃で撹拌した。5.4%aq.NaOH溶液[精製水(108kg)とNaOH(6.10kg、152.5moles、5.3eq)混合液、80.0kg]を溶液温度25℃を保持し、1時間徐々に投入し、同一温度で9時間撹拌した。撹拌停止後、溶液層の分離になるように25℃で45分間待った後、水層を廃棄し、有機溶媒層に10%酢酸水溶液[精製水(61.4kg)とacetic acidglacial(12.0kg)混合液、36.2kg]を投入し、25℃で45分間撹拌した。撹拌停止後、溶液層の分離になるように25℃で45分間待った後、水層は廃棄し、前記10%酢酸水溶液を処理する工程を繰り返した。有機溶媒層に9.6% NaHCO水溶液[精製水(162kg)とNaHCO(16.9kg)混合液、36.2kg]を投入し、25℃で45分間撹拌した。撹拌停止後、溶液層の分離になるように25℃で45分間待った後、水層は廃棄し、このような工程を繰り返した後、有機溶媒層[化合物5の溶液(in DCM):100.45kg、純度:88.9%(HPLC)、含量:9.3%(w/w)]を収得した。
【0048】
5.PRG-A-04の合成
PRG-A-04は、下記反応式7によって合成した。
【0049】
【化10】
【0050】
まず、乾燥された反応器を窒素で満たし、反応器に窒素を吹き続けながら、化合物6(3.6kg、14.61moles、1.0eq)を投入した。反応器の内部に残留する空気除去の目的として窒素/vacuumを3回交互に交換した後、最後には、反応器の内部を窒素で満たした。前記反応器にPd(dba)[Tris(dibenzylideneacetone)dipalladium(0)、202g、0.22moles、0.015eq.]とキサントホス(Xantphos、255g、0.44moles、0.03eq.)とを投入し、窒素/vacuumを3回交互に交換した後、最後には、反応器の内部を窒素で満たした。
【0051】
DCM(18L)に化合物5(8.1kg、26.3moles、1.8eq.)を溶解した後、ガスを除去した。前記溶液を徐々に溶液の内部温度42℃に保持し、化合物6、Pd(dba)及びキサントホスからなる溶液に4時間投入し、42℃で2時間撹拌後に25℃に溶液温度を調節した。N-アセチルシステイン(0.9kg)を投入し、25℃で18時間撹拌した。Diatomite pad(1.0kg)を配置した濾過器を使用して反応溶液を濾過し、該濾過されたwet cakeをDCM(10L)で洗浄した。濾過して得た溶液を2回水(18Lx2)で洗浄した後、水層を廃棄し、有機溶媒層を50℃以下の温度で10Lまで濃縮した。
【0052】
シリカゲルパッド(10kg)を配置した濾過器を使用して、反応溶液を濾過し、シリカゲルパッドに残留する反応物を収集するために、DCMを使用してシリカゲルパッドを洗浄した。このように収集された溶液を5.4Lまで濃縮し、アセトン(~14.4L)を投入し、溶液を5.4Lまで濃縮し、アセトン(~7.2L)を投入し、溶液を5.4Lまで濃縮し、アセトン(~7.2L)を投入して、あらゆる固体が完全に溶解されるまで35℃で反応溶液を撹拌した。
【0053】
イソプロピルアルコール(IPA、18L)を溶液温度35℃に保持し、5時間撹拌した後、反応溶液を3時間にわたって0℃に調節し、0℃で18時間撹拌した後、濾過し、IPA(7.2L)を使用して濾過された固体を洗浄した。
【0054】
前記収得された固体を再結晶化するために、固体、アセトン(7.2L)、IPA(14.4L)をきれいに準備された反応器に投入し、50℃で8時間撹拌し、3時間にわたって、25℃に溶液温度を調節し、25℃で8時間撹拌した後、濾過した。IPA(3.6L)を使用して濾過された固体を洗浄し、52℃で18時間乾燥して、明るい黄色粉末のPRG-A-04[収率:4.03kg(63%)、純度:98.8%(HPLC)、Chiral purity:99.6%(HPLC)、残留水分:0.02%(KF)、Loss on drying:0.23%、Melting point(DSC):Onset 131.31℃(peaktemp.133.08℃)、277.81℃(peaktemp.301.39℃)、残留Palladium(Pd):17ppm、残留Xantphos:80ppm、残留Pd(dba):104ppm]を収得した。
【0055】
H NMR(CDCl、400MHz):δ7.85(d、J=8.4Hz、1H)、7.57(d、J=9.5Hz、1H)、7.16(s、1H)、7.05-6.97(m、2H)、6.78(s、1H)、6.60(app.dt、J=15.9、1.7Hz、1H)、6.40(app.dt、J=15.9、5.5Hz、1H)、6.22(d、J=9.4Hz、1H)、4.39(ddd、J=13.6、5.4、1.7Hz、1H)、4.24(ddd、J=13.4、5.5、1.6Hz、1H)、3.97(s、3H)、3.59(dd、J=7.1、4.9Hz、1H)、3.11(dd、J=16.7、4.9Hz、1H)、2.87(dd、J=16.7、7.2Hz、1H)、1.43(s、3H)、1.38(s、3H)。
【0056】
13C NMR(CDCl、151MHz):δ161.4、156.8、154.4、153.7、143.2、143.1、138.5、130.7、130.0、128.8、126.5、118.2、116.9、113.4、112.9、111.4、104.9、78.0、76.7、70.1、56.6、27.6、26.0、21.8;
【0057】
IR(film):2921、2851、1722、1625、1603、1585、1561、1511、1132cm-1
【0058】
HRMS:m/z calcd for C2424NO [M+H]:438.1547、found:438.1550。
【0059】
以上、本発明の内容の特定の部分を詳しく記述したところ、当業者にとって、このような具体的な記述は、単に望ましい実施形態に過ぎず、これにより、本発明の範囲が制限されるものではないという点は明白である。すなわち、本発明の実質的な範囲は、特許請求の範囲とそれらの等価物とによって定義される。
図1
図2
図3
【手続補正書】
【提出日】2024-04-01
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
3-(3-メトキシ-4-ニトロフェニル)プロパ-2-エン-1-オールのOH基にBoc保護基が導入された中間体化合物(化合物5)とデクルシノール(化合物6)との間の反応を通じて化合物Iで表されるデクルシン誘導体を合成する段階を含む、化合物Iで表されるデクルシン誘導体の合成方法:
【化1】
【請求項2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0012
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0012】
本発明者らは、パラジウム触媒及びキサントホスの存在下で3-(3-メトキシ-4-ニトロフェニル)プロパ-2-エン-1-オールのOH基にBoc保護基が導入された中間体化合物とデクルシノールとの間の反応を通じて化合物Iで表されるデクルシン誘導体[(S,E)-7-((3-(3-メトキシ-4-ニトロフェニル)アリル)オキシ)-8,8-ジメチル-7,8-ジヒドロ-2H,6H-ピラノ[3,2-g]クロメン-2-オン[(S,E)-7-((3-(3-methoxy-4-nitrophenyl)allyl)oxy)-8,8-dimethyl-7,8-dihydro-2H,6H-pyrano[3,2-g]chromen-2-one];PRG-A-04]を高い収率で大量合成する新たな合成方法を開発することにより、本発明を完成した。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0016
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0016】
前記デクルシン誘導体を合成する段階は、パラジウム触媒及びキサントホスの存在下で化合物5と化合物6との間の反応を通じて化合物Iで表されるデクルシン誘導体を合成することができる。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0018
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0018】
前記化合物5と化合物6は、1:(0.1~1)の重量比で含まれ、前記パラジウム触媒及びキサントホスは、化合物6の100重量部について、それぞれ3~10重量部で含まれうる。前記化合物5、化合物6、パラジウム触媒及びキサントホスの含量が、前記範囲を外れれば、経済性が不足であるか、量産が困難な問題が引き起こされる。
【国際調査報告】