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特表2024-535486パルプ本体に付着されたバリアライナーを備える飲料カプセル
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  • 特表-パルプ本体に付着されたバリアライナーを備える飲料カプセル 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-30
(54)【発明の名称】パルプ本体に付着されたバリアライナーを備える飲料カプセル
(51)【国際特許分類】
   B65D 85/804 20060101AFI20240920BHJP
   B65D 65/46 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
B65D85/804 200
B65D65/46
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024519924
(86)(22)【出願日】2022-10-10
(85)【翻訳文提出日】2024-04-01
(86)【国際出願番号】 EP2022078007
(87)【国際公開番号】W WO2023061891
(87)【国際公開日】2023-04-20
(31)【優先権主張番号】21202831.0
(32)【優先日】2021-10-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】590002013
【氏名又は名称】ソシエテ・デ・プロデュイ・ネスレ・エス・アー
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100140453
【弁理士】
【氏名又は名称】戸津 洋介
(72)【発明者】
【氏名】ハウスマン, ミカエル, カールハインツ
(72)【発明者】
【氏名】ブール, ヴィオレット キャサリン マルグリット
(72)【発明者】
【氏名】ツィマー, ヨハネス
(72)【発明者】
【氏名】ダンネンベルク, クリスティーナ フリーデリケ
【テーマコード(参考)】
3E086
【Fターム(参考)】
3E086AA22
3E086AD06
3E086BA04
3E086BA14
3E086BA15
3E086BB02
3E086BB05
3E086BB41
3E086CA15
(57)【要約】
成形されたセルロースパルプのカップ状本体(2)と、当該本体(2)に付着された閉鎖膜(5)とを備える飲料調製のためのカプセル(1)は、セルロースパルプ本体(2)の内面に付着された多層ポリマーライナー(3)を更に備え、当該ライナーは、(i)10%~800%の破断点伸び、2~4のメルトフローレート(MFR)、及び80℃未満の融点温度を有する最外ポリマー層(7)と、(ii)第1のタイ層(8)と、(iii)バリア層(9)と、(iv)第2のタイ層(10)と、(v)生分解性ポリマーを含む最内ポリマー層(11)とを備え、当該最内層は、10~100μmの厚さを有し、10%~1000%の破断点伸び、4~10のメルトフローレート(MFR)、及び110℃~180℃の融点温度を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カップ状本体(2)と、前記本体(2)に付着された閉鎖膜(5)とを備える飲料調製のためのカプセル(1)であって、前記本体(2)及び前記膜(5)は、閉鎖された原材料区画(6)を画定し、前記カプセルは、前記区画内に圧力下で水を注入するための飲料調製マシンの水注入手段によって穿孔されるように適合され、前記膜(5)は、前記区画内の水圧が所定の値に達したときに、前記区画内で調製された飲料を分配するための前記マシンの開口手段上に穿孔されるように適合され、少なくとも前記カプセル本体は、硬質又は半硬質の成形セルロースパルプから作製され、前記セルロースパルプ本体(2)の内面に付着された多層ポリマーライナー(3)を更に備え、前記ライナーは、
(i)ポリブチレンサクシネート(PBSA/bioPBS)、ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)、デンプン、セルロース誘導体、ポリ乳酸(PLA)、ポリヒドロキシアルカノレート(PHA)、又はこれらの組み合わせのリスト内で選択される生分解性ポリマーを含む最外ポリマー層(7)であって、10~100μmの厚さを有し、10%~800%の破断点伸び、2.16kgの圧力で150℃で10分間測定したときに2~4のメルトフローレート(MFR)を有し、80℃未満の融点温度を有する、最外ポリマー層と、
(ii)180℃~230℃の融点温度及び1~12μmの厚さを有する、生分解性の変性ポリオレフィン又は官能化ポリオレフィンを含む第1のタイ層(8)と、
(iii)ブテンジオールビニルアルコールコポリマー(BVOH)、ポリビニルアルコール(PVOH)又はこれらの組み合わせのリスト内で選択されるポリマーを含み、180℃~230℃の融点温度及び1~15μmの厚さを有する、バリア層(9)と、
(iv)180℃~230℃の融点温度及び1~10μmの厚さを有する、生分解性の変性ポリオレフィン又は官能化ポリオレフィンを含む第2のタイ層(10)と、
(v)ポリブチレンサクシネート(PBSA)、ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)、デンプン、セルロース誘導体、ポリ乳酸(PLA)、ポリヒドロキシアルカノレート(PHA)、又はこれらの組み合わせのリスト内で選択される生分解性ポリマーを含む最内ポリマー層(11)であって、10~100μmの厚さを有し、10%~1000%の破断点伸び、190℃で10分間、2.16kgの圧力で測定したときに4~10のメルトフローレート(MFR)を有し、110℃~180℃の融点温度を有する、最内ポリマー層と、を備える、カプセル(1)。
【請求項2】
前記カップ状本体(2)は、前記閉鎖膜(5)が付着される周縁リム(4)を備える、請求項1に記載のカプセル(1)。
【請求項3】
少なくとも前記最外層(7)、前記最内層(11)、前記バリア層(9)、及び前記タイ層(8、10)は、共押出層である、請求項1又は2に記載のカプセル(1)。
【請求項4】
前記閉鎖膜(5)は、押出被覆紙、繊維紡糸被覆紙、又は適合性ポリマー材料を含むポリマーフィルムから作製されている、請求項1~3のいずれか一項に記載のカプセル(1)。
【請求項5】
前記最内層(11)の前記ポリマーは、アニールされたポリマーである、請求項1~4のいずれか一項に記載のカプセル(1)。
【請求項6】
前記多層ポリマーライナー(3)の前記最外層(7)及び前記最内層(11)は、異なる厚さを有する、請求項1~5のいずれか一項に記載のカプセル(1)。
【請求項7】
前記多層ポリマーライナー(3)の前記最外層(7)及び/又は前記最内層(11)の前記生分解性ポリマーは、バイオベースである、請求項1~6のいずれか一項に記載のカプセル(1)。
【請求項8】
前記原材料は、焙煎され挽いたコーヒーである、請求項1~7のいずれか一項に記載のカプセル(1)。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[技術分野]
本発明は、飲料調製のためのカプセルであって、紙のリサイクルの流れにおいてリサイクル可能であり、圧縮されたセルロースパルプで作製された外側本体を備え、外側本体は、当該パルプ本体にしっかりと接着されたガス及び水分バリアライナーで二重にされているカプセルに関する。
【0002】
[背景技術]
飲料調製マシンにおける飲料調製のためのカプセル及びポッドはよく知られている。それらは、飲料摂取に対する便利で清潔なアプローチである。以下の説明では、「カプセル」という総称が使用され、これは、飲料調製マシンに挿入することによってヒトが消費する飲料を調製するための使い捨てパッケージを包含し、飲料調製マシンは、パッケージ内に収容された原材料と混合するためにパッケージ内に流体(原則として温水)を注入するように適合されている。そのような飲料パッケージの例は、剛性カプセルに限定されず、剛性、半剛性、又は可撓性のポッド、パッド、様々なタイプのカートリッジ、更にはサシェタイプの容器も含む。
【0003】
典型的には、そのようなカプセルは、ポリオレフィン又は生分解性プラスチックなどのプラスチックから製造され、それらは、一般に、注入又は熱成形されてカップを得、カップは、原材料で充填され、次いで、膜で閉じられて、気密及び防湿様式でカプセルを閉じる。
【0004】
近年、包装プラスチックの環境への影響についての認識が高まっており、使用後に生分解性であるか、又はリサイクル可能であるかのいずれかであり、特に、使用済みパッケージを堆肥化するか、又は紙もしくはカートンに適合されたリサイクルストリーム(「紙リサイクルストリーム」)においてリサイクルすることができるような、新しい包装解決策が必要とされている。
【0005】
最近、セルロース繊維パルプ(又は「セルロースパルプ」もしくは「紙パルプ」)で作製された飲料調製カプセルが開発されており、これは、焙煎され挽いたコーヒーなどの飲料前駆物質原材料を収容するための区画を画定する剛性又は半剛性カプセルカップ状本体を形成するように成形される。カップ状本体は、壁、例えば、膜又はフィルムをそれに付着させることによって(例えば封止することによって)閉じられる。
【0006】
カプセルの寿命にわたって、特に使用までの保管中に飲料前駆物質原材料の鮮度を保証するために、セルロースパルプ(ならびに閉鎖膜)に酸素及び水分バリア材料を組み込むことが必要である。バリア材料は、一般に、いわゆる「バリアライナー」の形態をとり、これは、パルプ本体の内面(すなわち、原材料に向けられた表面)に接着される単層又は多層フィルムである。パルプ上へのライナーの接着は、型内で2つを熱成形することによって行われる。
【0007】
飲料調製中、カプセルは、飲料調製マシンの抽出チャンバ内に挿入される。マシンは、カプセル本体の厚さを貫通し、圧力下でその中に水を注入するように設計された一組のブレードなどの水注入手段を備える。水は、飲料を生成する原材料と混合する。水圧が上昇し、あるレベルに達すると、閉鎖膜は外側に撓み、飲料マシンの穿孔手段を穿孔する。膜が穿孔されると、飲料は、カプセルの外側をカップに向かって流れることができる。
【0008】
国際公開第2021/145764(A1)号は、成形繊維マトリクスを含み、その内面に生分解性多層が設けられている容器を開示している。生分解性多層は、内側カバー層及び外側カバー層がある量の生分解性脂肪族ポリエステルを含み、中間層としてPVOHを含む機能性バリア層を組み込んだ5層構造を有する。隣接する層を接続及び/又は封止するための生分解性材料の第1及び第2の中間層が提供される。
【0009】
国際公開第2015/082982(A1)号は、紙材料で作製された本体と、PLA/PVOH/PLAで作製されたプラスチックラミネートとを含むカプセルを提案している。
【0010】
国際公開第2020/114995(A2)号は、セルロース(紙)で作製された本体と、PLA/PVOH/PLAで作製されたプラスチックラミネートであって、ラミネート全体の2%~20%の規定された破断点引張値を有するプラスチックラミネートとを含むカプセルを開示している。
【0011】
上述したようなパルプベースのカプセルによる飲料調製は、パッケージの環境フットプリントを低減するための非常に有望な方法である。しかしながら、マシンの水注入ブレードによるカプセル本体の穿孔中に技術的欠点が発生した。水注入ブレードがカプセルパルプ本体を貫通する時点で、これらのブレードはパルプ材料を捕捉し、それらがカプセルの内部に向かって移動するにつれて、ブレードに付着したパルプの塊がパルプからライナーを剥離し、ライナーを貫通することなくライナーを押す。この剥離効果は、パルプの弾性よりも高いライナーの弾性によって強化される。結果として、ライナーは、穿孔されることなくカプセルの内部に向かって引きずられ、水注入が開始されるとき、水はカプセル区画に入らず、カプセルは遮断され、飲料は外へ出ない。
【0012】
本発明の目的は、成形パルプから作製され、バリアライナーを有する飲料カプセルにおける上述の剥離の課題に対する技術的解決策を提供することである。
【0013】
[発明の概要]
本発明の目的は、カップ状本体と、当該本体に付着された閉鎖膜とを備え、当該本体及び膜は、閉鎖された原材料区画を画定し、当該カプセル壁は、区画内に圧力下で水を注入するために飲料調製マシンの水注入手段によって穿孔されるように適合され、当該閉鎖膜は、区画内の水圧が所定の値に達したときに、当該区画内で調製された飲料を分配するために当該マシンの開口手段上に穿孔されるように適合され、少なくとも当該カプセル本体は、硬質又は半硬質の成形セルロースパルプで作製され、セルロースパルプの内面に付着された多層ポリマーライナーを更に備え、当該ライナーは、
(i)ポリブチレンサクシネート(PBSA)、ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)、デンプン、セルロース誘導体、ポリ乳酸(PLA)、ポリヒドロキシアルカノレート(PHA)、又はこれらの組み合わせのリスト内で選択される生分解性ポリマーを含む最外ポリマー層であって、10~100μmの厚さを有し、10%~800%の破断点伸び、2.16kgの圧力で150℃で10分間測定したときに2~4のメルトフローレート(MFR)を有し、80℃未満の融点温度を有する、最外ポリマー層と、
(ii)接着機能を提供するために無水マレイン酸などの官能基がグラフトされたベースバイオポリエステル分子から得られ、2つの隣接する層と適合性であり、180℃~230℃の融点温度及び1~12μmの厚さを有する、生分解性の変性バイオポリエステル又は官能化バイオポリエステルを含む第1のタイ層(8)と、
(iii)ブテンジオールビニルアルコールコポリマー(BVOH)、ポリビニルアルコール(PVOH)又はこれらの組み合わせのリスト内で選択されるポリマーを含み、180℃~230℃の融点温度及び1~15μmの厚さを有する、バリア層(9)と、
(iv)180℃~230℃の融点温度及び1~10μmの厚さを有する、生分解性の変性ポリオレフィン又は官能化ポリオレフィンを含む第2のタイ層(10)と、
(v)ポリブチレンサクシネート(PBSA/bioPBS)、ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)、デンプン、セルロース誘導体、ポリ乳酸(PLA)、ポリヒドロキシアルカノレート(PHA)、又はこれらの組み合わせのリスト内で選択される生分解性ポリマーを含む最内ポリマー層(11)であって、10~100μmの厚さを有し、10%~1000%の破断点伸び、190℃で10分間、2.16kgの圧力で測定したときに4~10のメルトフローレート(MFR)を有し、110℃~180℃の融点温度を有する、最内ポリマー層と、を備える、飲料調製のためのカプセルを用いて達成される。
【0014】
興味深いことに、本発明に適したポリマーは、生分解性ポリマー、好ましくは家庭で堆肥化可能なポリマーである。家庭堆肥化可能性は、現在、国レベルで十分に定義されており、主に国際標準EN13432に基づいている。したがって、それらは、本明細書において更に詳細に定義する必要はない。これらの規格に準拠する材料又は製品は、それらの家庭堆肥化可能性を示す適合マークによって認識することができる。国家レベルでの家庭用堆肥化可能認定のいくつかの例は、以下を含むが、これらに限定されない。認証機関TUV AUSTRIA BELGIUMは、そのような家庭用堆肥化可能性認定スキームを提供し、DIN CERTCOは、オーストラリア規格AS5810による家庭用堆肥化可能性の認定を提供する。イタリアは、周囲温度での堆肥化に関する国家基準、UNI11183:2006を有する。2015年11月に、フランス規格「NF T51-800プラスチック-家庭堆肥化に適したプラスチックの仕様」が導入された。この規格は、DIN CERTCOスキームで扱われている。
【0015】
本発明の原理によれば、多層ライナーは、中間層として(酸素及び/又は水分に対する)バリアを備える。最内層及び最外層の物理的特性は、注意深く選択される。
パルプと接触する最外層は、パルプに高い凝集力をもたらす低い融点温度(80℃未満)を有する。これは、パルプ本体へのライナーの熱成形プロセス中に、温度が上昇すると、最外層を構成するポリマーが本体のパルプ繊維間を低粘度で急速に流れ、パルプに含浸するという事実に起因する。次に、熱成形工程後に温度が低下すると、ライナーのポリマー層が硬化し、ポリマーがパルプ繊維間に完全に入り組んで、ライナーをパルプ本体から剥離することが不可能になる。更に、
飲料原材料と接触している最内層は、高い融点(110℃超)を有する。最外層よりも高い融点は、パルプを用いたライナーの熱成形中に、当該最外層が非常に速く溶融し、通常の熱成形温度よりも十分に低い融点のために完全に液体状態になり、パルプのセルロース繊維の間に流れ込み、熱成形後に冷却されると、当該最外層を構成する材料がパルプセルロース繊維と入り組んでそれらに付着することを保証する。同時に、最内層は、より高い融点(通常の熱成形温度より高い)に起因して、熱成形プロセス工程中に溶融せず、したがって、ライナーのパルプへの熱成形が完了し、熱成形金型が開いているときに、熱成形プラグから容易に分離する。
【0016】
本発明の1つの有利な実施形態において、最内層は、その破断点伸び特性を低下させるためにアニールされ、したがって、弾性を低下させ、ブレードによる貫通を更に容易にする。
【0017】
「ライナー」とは、押出吹込み、又は押出貼合せ、又は押出キャストによって得られる単層又は多層フィルムを意味する。
【0018】
パルプ基材に適用される単層又は多層ライナーは、パルプ基材をコーティングすることによって得られる単層又は多層とは異なる。成形パルプ基材上にバリア層をコーティングすることは、成形パルプの表面が粗く不均一であるために困難である。結果として、バリア層がコーティングされ得る前に、パルプ表面を平滑化するために、調製表面コーティングの大きい厚さをコーティングすることが必要である。表面が平滑化されない場合、バリア層が不均一に適用され得、一部のゾーンが十分にコーティングされず、したがって物品全体のバリア特性が損なわれるリスクがある。ライナーの適用は、全ての層が均一に予備成形され、ライナーが成形パルプ基材に適用される前に、バリア層が当該ライナーの表面全体にわたって均質であるため、このような問題を引き起こさない。したがって、バリア品質は、得られる物品の表面全体にわたって保証され、コーティングよりも少ないポリマー材料しか必要としない。
【0019】
更に、コーティングは通常、基板材料の平坦なシート上に塗布される。しかしながら、カプセルは、薄い溶融ポリマー層でコーティングすることを不可能ではないにせよ困難にする三次元形状を有する。
【0020】
本発明の好ましい実施形態では、カップ状本体は、閉鎖膜が付着された周縁リムを備える。
【0021】
有利には、少なくとも最外層、最内層、バリア層、及びタイ層は、共押出(押出キャスト)層である。
【0022】
提案された実施形態では、多層ポリマーライナーの最外層及び/又は最内層の生分解性ポリマーは、バイオベースである。
【0023】
本発明の好ましい実施形態では、閉鎖膜は、押出被覆紙、繊維紡糸被覆紙、又は適合性ポリマー材料を含むポリマーフィルムから作製される。これは、カプセルが閉じられるときにライナーと閉鎖膜との間の最適な封止接着を確実にするためである。
【0024】
好ましくは、本発明によるカプセルに収容される原材料は、焙煎され挽いたコーヒーである。
【0025】
本発明の追加の特徴及び利点は、図面を参照して以下に記載の現在好ましい実施形態の説明において記載されており、この説明から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明によるカプセルの概略切断図である。
図2】本発明による多層ライナーの概略切断図である。
図3A】本発明による、バリアライナーをパルプカップ状本体に付着させる異なる工程の概略図である。
図3B】本発明による、バリアライナーをパルプカップ状本体に付着させる異なる工程の概略図である。
図4A】本発明による、バリアライナーをパルプカップ状本体に付着させる異なる工程の概略図である。
図4B】本発明による、バリアライナーをパルプカップ状本体に付着させる異なる工程の概略図である。
図4C】本発明による、バリアライナーをパルプカップ状本体に付着させる異なる工程の概略図である。
図5】本発明による、バリアライナーをパルプカップ状本体に付着させる異なる工程の概略図である。
【0027】
[発明を実施するための形態]
図1の実施形態に示すように、本発明は、酸素及びバリアライナー3によって内面が覆われたカップ状のカプセル本体2を備える飲料調製カプセル1に関する。カプセル本体2は、開口部を取り囲む周縁リム4を更に備え、当該開口部は、リム4上に封止される膜5によって閉じられる。膜5によって閉じられたカプセル本体は、その中に収容される焙煎され挽いたコーヒー原材料のための区画6を画定する。
【0028】
バリアライナー3は多層フィルムであり、その実施形態が図2に示されている。この実施形態において、ライナーは、互いに付着された以下の層を含む。
【0029】
第1に、それは、ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)ベースの配合物で作製された最外ポリマー層7を含む。この最外層は、17μmの厚さ及び600%の破断点伸びを有し、パルプへの接着剤として機能する。それはまた、3のメルトフローレート(MFR)(150℃で10分間、2.16kgの圧力で測定)、及び75℃の融点温度を特徴とする。
【0030】
最外層の厚さは、用途に応じて10~100μmの間で変化し得る。
【0031】
最外層7には、200℃の融点温度及び4μmの厚さを有する、無水マレイン酸でグラフトされたバイオポリエステルから作製された第1のタイ層8が付着されている。タイ層8は、最外層7を以下に説明するバリア層9にしっかりと結合する接着層である。
【0032】
多層ライナー構造の中央に位置するコア層として、200℃からなる融点温度及び8μmの厚さを有する、ブテンジオールビニルアルコールコポリマー(BVOH)から作製されたバリア層9がある。このバリア層は、外気とカプセル区画との間の酸素及び水分の移動に対するバリアを提供する。
【0033】
バリア層9には、200℃の融点温度及び4μmの厚さを有する、無水マレイン酸でグラフトされたバイオポリエステルから作製された第2のタイ層10が付着されている。
【0034】
最後に、図2に示されたこの実施形態におけるライナーは、ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)ベースの配合物で作製された最内ポリマー層11を含む。この最内層は、17μmの厚さ、及び177%の破断点伸びを有する。最内層はまた、2.16kgの圧力で10分間、190℃で測定された6のメルトフローレート(MFR)を特徴とする。この層は115℃の融点温度を有する。
【0035】
最内層の厚さは、用途に応じて10~100μmの間で変化し得る。
【0036】
更に、必要に応じて、多層ポリマーライナー3は、異なる層、特に最外層及び最内層の厚さに応じて対称構造又は非対称構造を有してもよい。
【0037】
好ましくは、多層ポリマーライナーの最外層及び/又は最内層の生分解性ポリマーは、バイオベースである。
【0038】
より正確には、本発明によるライナーの様々な層は、以下の表に従って選択することができ、この表は、異なる層の各々について選択することができる様々な厚さを提供する。
【表1】
【0039】
本発明によるカプセルは、以下の工程で順に製造される。
【0040】
図3Aに示すように、カプセルカップ12は、最初に、乾燥又は湿潤(好ましくは湿潤)パルプ混合物から成形される。セルロースパルプの成形は、当該技術分野において既に知られており、本明細書ではこれ以上詳細に説明しない。パルプカップ12は、焙煎して挽いたコーヒー原材料(図示せず)を充填することができる開口部13を有する。
【0041】
次に、図3B及び図4Aに示すように、バリアライナーフィルム3は、平坦なシート14として提供され、パルプカップ12の開口部13の上に配置され、当該カップ12は、型15内に配置される。
【0042】
次に、図4Bに示すように、プランジャ16が平坦なシート14の表面上に適用され、カップ12の内部に向かって移動され、バリアライナーシートがカップ内部の近傍に押し込まれて、図4Cに示すように、当該ライナーがパルプカップ面に完全に付着される。バリアライナーシート14をパルプカップ12の表面に付着させる技術は、主に熱成形技術に基づいている。
【0043】
バリアライナーシート14のパルプカップ12の内面への付着プロセスが終了すると、周縁リム4は、図5に示されるようにバリア特性を有する空のパルプカプセルが得られるようにトリミングされ(すなわち、正しい直径に切断され)、これはコーヒー粉末が充填される開口部を含む。次いで、充填されたカプセルは、当該カプセルのリム4上に膜5をシールすることによって閉じられる。
【0044】
本明細書で述べる現在の好ましい実施形態に対する様々な変更及び修正が、当業者には明らかとなる点を理解されたい。このような変更及び修正は、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく、並びに本発明の付随する利点を減らすことなく、なされてもよい。したがって、このような変更及び修正は、添付の特許請求の範囲によって包含されることが意図されている。
図1
図2
図3A
図3B
図4A
図4B
図4C
図5
【手続補正書】
【提出日】2024-06-10
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カップ状本体(2)と、前記本体(2)に付着された閉鎖膜(5)とを備える飲料調製のためのカプセル(1)であって、前記本体(2)及び前記膜(5)は、閉鎖された原材料区画(6)を画定し、前記カプセルは、前記区画内に圧力下で水を注入するための飲料調製マシンの水注入手段によって穿孔されるように適合され、前記膜(5)は、前記区画内の水圧が所定の値に達したときに、前記区画内で調製された飲料を分配するための前記マシンの開口手段上に穿孔されるように適合され、少なくとも前記カプセル本体は、硬質又は半硬質の成形セルロースパルプから作製され、前記セルロースパルプ本体(2)の内面に付着された多層ポリマーライナー(3)を更に備え、前記ライナーは、
(i)ポリブチレンサクシネート(PBSA/bioPBS)、ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)、デンプン、セルロース誘導体、ポリ乳酸(PLA)、ポリヒドロキシアルカノレート(PHA)、又はこれらの組み合わせのリスト内で選択される生分解性ポリマーを含む最外ポリマー層(7)であって、10~100μmの厚さを有し、10%~800%の破断点伸び、2.16kgの圧力で150℃で10分間測定したときに2~4のメルトフローレート(MFR)を有し、80℃未満の融点温度を有する、最外ポリマー層と、
(ii)180℃~230℃の融点温度及び1~12μmの厚さを有する、生分解性の変性ポリオレフィン又は官能化ポリオレフィンを含む第1のタイ層(8)と、
(iii)ブテンジオールビニルアルコールコポリマー(BVOH)、ポリビニルアルコール(PVOH)又はこれらの組み合わせのリスト内で選択されるポリマーを含み、180℃~230℃の融点温度及び1~15μmの厚さを有する、バリア層(9)と、
(iv)180℃~230℃の融点温度及び1~10μmの厚さを有する、生分解性の変性ポリオレフィン又は官能化ポリオレフィンを含む第2のタイ層(10)と、
(v)ポリブチレンサクシネート(PBSA)、ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)、デンプン、セルロース誘導体、ポリ乳酸(PLA)、ポリヒドロキシアルカノレート(PHA)、又はこれらの組み合わせのリスト内で選択される生分解性ポリマーを含む最内ポリマー層(11)であって、10~100μmの厚さを有し、10%~1000%の破断点伸び、190℃で10分間、2.16kgの圧力で測定したときに4~10のメルトフローレート(MFR)を有し、110℃~180℃の融点温度を有する、最内ポリマー層と、を備える、カプセル(1)。
【請求項2】
前記カップ状本体(2)は、前記閉鎖膜(5)が付着される周縁リム(4)を備える、請求項1に記載のカプセル(1)。
【請求項3】
少なくとも前記最外層(7)、前記最内層(11)、前記バリア層(9)、及び前記タイ層(8、10)は、共押出層である、請求項1又は2に記載のカプセル(1)。
【請求項4】
前記閉鎖膜(5)は、押出被覆紙、繊維紡糸被覆紙、又は適合性ポリマー材料を含むポリマーフィルムから作製されている、請求項1又は2に記載のカプセル(1)。
【請求項5】
前記最内層(11)の前記ポリマーは、アニールされたポリマーである、請求項1又は2に記載のカプセル(1)。
【請求項6】
前記多層ポリマーライナー(3)の前記最外層(7)及び前記最内層(11)は、異なる厚さを有する、請求項1又は2に記載のカプセル(1)。
【請求項7】
前記多層ポリマーライナー(3)の前記最外層(7)及び/又は前記最内層(11)の前記生分解性ポリマーは、バイオベースである、請求項1又は2に記載のカプセル(1)。
【請求項8】
前記原材料は、焙煎され挽いたコーヒーである、請求項1又は2に記載のカプセル(1)。
【国際調査報告】