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特表2024-535491車両の液圧ブレーキシステムのためのブレーキ装置および車両の液圧ブレーキシステムを動作させる方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-30
(54)【発明の名称】車両の液圧ブレーキシステムのためのブレーキ装置および車両の液圧ブレーキシステムを動作させる方法
(51)【国際特許分類】
   B60T 8/42 20060101AFI20240920BHJP
   B60T 11/34 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
B60T8/42
B60T11/34
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024519984
(86)(22)【出願日】2022-10-05
(85)【翻訳文提出日】2024-04-02
(86)【国際出願番号】 DE2022100738
(87)【国際公開番号】W WO2023057012
(87)【国際公開日】2023-04-13
(31)【優先権主張番号】102021211201.3
(32)【優先日】2021-10-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100177839
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 玲児
(74)【代理人】
【識別番号】100172340
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 始
(74)【代理人】
【識別番号】100182626
【弁理士】
【氏名又は名称】八島 剛
(72)【発明者】
【氏名】ムチュラー,ヤン
(72)【発明者】
【氏名】モイア,アレッサンドロ
【テーマコード(参考)】
3D047
3D246
【Fターム(参考)】
3D047BB45
3D047CC28
3D047FF04
3D047FF13
3D047GG03
3D047KK03
3D246BA02
3D246DA01
3D246GB01
3D246LA04Z
3D246LA15Z
3D246LA43A
3D246LA60Z
3D246LA63A
3D246LA77A
3D246LA79Z
(57)【要約】
【課題】
【解決手段】 本発明は、貯留容積(12)を第1の部分容積(12a)と第2の部分容積(12b)とに分割する、貯留容積(12)内で調整可能なピストン(10)を備え、装置固有または装置外部のブレーキシリンダ(16)が第1の部分容積(12a)に結合されているか、または結合可能であり、装置固有または装置外部のホイールブレーキシリンダ(18)が第2の部分容積(12b)に結合されているか、または結合可能であり、バイパスライン(20)をさらに備え、バイパスライン(20)に配置された逆止弁(22)は、当該逆止弁(20)が、少なくともピストン(10)が通常位置にある場合に開状態であり、通常位置から少なくとも最小調整距離の分だけ調整されるピストン(10)によって閉状態に切り替えられるように、ピストン(10)によって切替可能である、車両の液圧ブレーキシステムのためのブレーキ装置に関する。さらに、本発明は、車両の液圧ブレーキシステムを動作させる方法に関する。
【選択図】 図1a、図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブレーキ装置のモータ(14)の作動により貯留容積(12)内で調整可能なピストン(10)であって、貯留容積(12)を第1の部分容積(12a)と第2の部分容積(12b)とに分割するピストンを備え、装置固有または装置外部のブレーキシリンダ(16)が、前記ブレーキシリンダ(16)と前記第1の部分容積(12a)との間でブレーキ液を移送できるように前記第1の部分容積(12a)に結合されているか、または結合可能であり、装置固有または装置外部のホイールブレーキシリンダ(18)が、前記第2の部分容積(12b)と前記ホイールブレーキシリンダ(18)との間でブレーキ液を移送できるように前記第2の部分容積(12b)に結合されているか、または結合可能であり、
バイパスライン(20)をさらに備え、少なくとも前記ピストン(10)が通常位置にある場合に、ブレーキ液を前記第1の部分容積(12a)および/または前記第1の部分容積に結合された前記ブレーキシリンダ(16)から前記バイパスライン(20)を介して前記第2の部分容積(12b)および/または前記第2の部分容積に結合された前記ホイールブレーキシリンダ(18)に移送可能である一方で、前記バイパスライン(20)を介した前記ブレーキ液の移送は、前記通常位置から少なくとも所定の最小調整距離(Δx)の分だけ調整される前記ピストン(10)によって阻止される、
車両の液圧ブレーキシステムのためのブレーキ装置において、
前記バイパスライン(20)に配置された逆止弁(22)であって、前記逆止弁(22)は、少なくとも前記ピストン(10)が前記通常位置にある場合に開状態であり、前記通常位置から少なくとも最小調整距離(Δx)の分だけ調整される前記ピストン(10)によって閉状態に切り替えられるように、前記ピストン(10)によって切替可能な前記逆止弁を特徴とする、ブレーキ装置。
【請求項2】
前記ピストン(10)が円柱状の基体(10a)を有し、前記基体(10a)において突出するリング部(10b)を有し、前記ピストン(10)の前記リング部(10b)が、前記リング部(10b)の第1の側に位置する前記貯留容積(12)の前記第1の部分容積(12a)を、前記リング部(10b)の第2の側に位置する前記貯留容積(12)の前記第2の部分容積(12b)から液密にシールし、前記円柱状の基体(10a)は、前記リング部(10b)の前記第1の側に位置する第1の切欠き(24a)から前記貯留容積(12)を通り抜けて前記リング部(10b)の前記第2の側に位置する第2の切欠き(24b)まで延びる、請求項1に記載のブレーキ装置。
【請求項3】
前記ピストン(10)が少なくとも1つの案内ピン(38)によって案内されている、請求項1または2に記載のブレーキ装置。
【請求項4】
前記バイパスライン(20)および前記逆止弁(22)が前記ピストン(10)内に形成されている、請求項1から3までのいずれか1項に記載のブレーキ装置。
【請求項5】
前記ピストン(10)内に形成された前記逆止弁(22)は、前記ピストン(10)が前記通常位置にある場合に、前記ブレーキ装置に固定的に配置された前記ピストン(10)の開口(30)内に突出するプランジャ(32)によって開状態に保持される一方で、前記通常位置から少なくとも前記最小調整距離(Δx)の分だけ調整される前記ピストン(10)は、前記逆止弁(22)が閉状態に切り替えられるように前記プランジャ(32)に対して調整される、請求項4に記載のブレーキ装置。
【請求項6】
前記ピストン(10)内に形成された前記逆止弁(22)が弁体(22a)とスプリング装置(22b)とを含み、前記弁体(22a)は、前記ピストン(10)が前記通常位置にある場合に、前記ピストン(10)の前記開口(30)内に突出する前記プランジャ(32)によって前記スプリング装置(22b)の力(F)に抗して、前記開口(30)に形成された狭窄部(34)から離して保持される一方で、前記通常位置からの前記ピストン(10)の少なくとも前記最小調整距離(Δx)の分の調整時点から、前記弁体(22a)と前記狭窄部(34)との機械的接触によって前記狭窄部(34)の第1の側に位置する前記開口(30)の外側部(30a)が前記狭窄部(34)の第2の側に位置する前記開口(30)の内側部(30b)から液密にシールされるように、前記スプリング装置(22b)の前記力(F)が前記弁体(22a)を前記狭窄部(34)に向かって押す、請求項5に記載のブレーキ装置。
【請求項7】
前記ピストン(10)内に形成された前記バイパスライン(20)は、前記貯留容積(12)の前記第1の部分容積(12a)から前記開口(30)の前記内側部(30b)まで延びる、前記ピストン(10)を貫く第1の半径方向接触孔(36a)と、前記開口(30)の前記外側部(30a)から前記貯留容積(12)の前記第2の部分容積(12b)まで延びる、前記ピストン(10)を貫く第2の半径方向接触孔(36b)とを含む、請求項6に記載のブレーキ装置。
【請求項8】
前記ピストン(10)にピン(26)が取り付けられており、前記ピンは前記ピストン(10)と共に調整可能であり、前記ピンは、少なくとも前記ピストン(10)が前記通常位置にある場合に前記逆止弁(22)を開状態に保持する一方で、前記逆止弁(22)は、前記通常位置から少なくとも前記最小調整距離(Δx)の分だけ調整される前記ピストン(10)と一緒に共に調整されるピン(26)によって閉状態に切り替えられる、請求項1から3までのいずれか1項に記載のブレーキ装置。
【請求項9】
車両の液圧ブレーキシステムであって、
請求項1から8までのいずれか1項に記載のブレーキ装置と、
前記ブレーキ装置の前記貯留容積(12)の前記第1の部分容積(12a)に結合された前記ブレーキシリンダ(16)と、
前記貯留容積(12)の前記第2の部分容積(12b)に結合された前記ホイールブレーキシリンダ(18)と、を備える液圧ブレーキシステム。
【請求項10】
貯留容積(12)を第1の部分容積(12a)と第2の部分容積(12b)とに分割する、液圧ブレーキシステムの前記貯留容積(12)内で調整可能なピストン(10)を備える車両の液圧ブレーキシステムを動作させる方法であって、次のステップ、すなわち、
モータ(14)の作動によって前記ピストン(10)を通常位置から少なくとも所定の最小調整距離(Δx)の分だけ調整することによって、少なくとも前記ピストン(10)が通常位置にある場合にブレーキ液を前記第1の部分容積(12a)および/または前記第1の部分容積(12a)に結合されたブレーキシリンダ(16)から前記第2の部分容積(12b)および/または前記第2の部分容積(12b)に結合されたホイールブレーキシリンダ(18)へ移送可能なバイパスライン(20)を介したブレーキ液の移送を阻止するステップを包含する方法において、
前記バイパスライン(20)に配置され、少なくとも前記ピストン(10)が前記通常位置にある場合に開状態である逆止弁(22)が、前記通常位置から少なくとも前記最小調整距離(Δx)の分だけ調整される前記ピストン(10)によって閉状態に切り替えられる(S2)ことを特徴とする、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の液圧ブレーキシステムのためのブレーキ装置および車両の液圧ブレーキシステムに関する。さらに、本発明は、車両の液圧ブレーキシステムを動作させる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1において、アクチュエータ装置のモータによって調整可能なアクチュエータ装置のピストンがアクチュエータ装置の貯留室を第1の部分容積と第2の部分容積とに分割する、液圧アクチュエータ装置を有する車両のブレーキシステムが記載されている。調整可能なピストンの第1の側における貯留室の第1の部分容積は、ブレーキシリンダに結合されたブレーキ操作要素の操作の増加または減少の際に、ブレーキ液をブレーキシリンダと貯留室の第1の部分容積との間で移送できるように、ブレーキシリンダに液圧的に結合されている。ピストンの第2の側における貯留室の第2の部分容積はホイールブレーキシリンダに液圧的に結合されており、それによりブレーキ液を貯留室の第2の部分容積とホイールブレーキシリンダとの間で移送可能である。さらに、ホイールブレーキシリンダがバイパスに液圧的に結合されており、バイパスは、アクチュエータ装置の調整可能なピストンが通常位置にある場合に貯留室の第1の部分容積に連通し、それによりバイパスを介してブレーキシリンダとホイールブレーキシリンダとの間でもブレーキ液の移送が可能である。アクチュエータ装置の調整可能なピストンは、スプリングによって通常位置に保持されている。しかし、アクチュエータ装置の調整可能なピストンを、アクチュエータ装置のモータによってスプリングの力に抗して通常位置から調整することができ、それによって、通常位置からのピストンの少なくとも所定の最小調整距離の分の調整時点から、バイパスを介して行われるブレーキシリンダとホイールブレーキシリンダとの間の液圧的接続が中断される。ブレーキシリンダとホイールブレーキシリンダとの間の液圧的接続の中断後、アクチュエータ装置の調整可能なピストンのさらなる摺動によって、ホイールブレーキシリンダに存在するブレーキ圧を調節可能であるとのことである。
【0003】
しかし、先の段落に記載された特許文献1のブレーキシステムのアクチュエータ装置の動作は、ピストンの第2の側における貯留室の第2の部分容積に隣接する第2の面積よりも大きいピストンの第1の側における貯留室の第1の部分容積に隣接する第1の面積を有する調整可能なピストンの形成を必要とする。それに加えて、ピストンは、第1の部分容積に存在する第1の圧力が第2の部分容積において支配的な第2の圧力よりも大きい場合にのみ、貯留室の第1の部分容積を貯留室の第2の部分容積から液密にシールする。これは、ピストンを通常位置から調整するために、アクチュエータ装置のモータが第1の圧力と第2の圧力との間の圧力差、およびピストンの第1の側における第1の面積とピストンの第2の側における第2の面積との間の面積差の両方を力によって克服しなければならないことを意味する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】欧州特許出願公開第3124344号明細書
【発明の概要】
【0005】
本発明は、請求項1の特徴を有する車両の液圧ブレーキシステムのためのブレーキ装置、請求項9の特徴を有する車両の液圧ブレーキシステム、および請求項10の特徴を有する車両の液圧ブレーキシステムを動作させる方法を提供する。
【0006】
本発明は、車両の少なくとも1つのホイールブレーキシリンダに所望のブレーキ圧を保証するための有利な可能性を提供する。車両とは、2つのみの車輪を有する車両および2つより多い車輪を有する車両の両方と理解することができる。車両は、電動式駆動装置なしの車両またはモータ駆動装置を装備した車両であり得る。本発明は、例えば(筋力により駆動される)自転車、電動式二輪車、電動自転車、オートバイ、ならびに、例えば乗用車または貨物自動車などの自動車に使用することができる。
【0007】
本発明は、それぞれ調整可能なピストンが通常位置にある場合に、ブレーキ液が、隣接する第1の部分容積に結合されたブレーキシリンダと隣接する第2の部分容積に結合されたホイールブレーキシリンダとの間で移送可能である一方で、このブレーキ液の移送が、通常位置から少なくとも所定の最小調整距離の分だけ調整されるピストンによって阻止されるブレーキ装置もしくは液圧ブレーキシステムを提供する。しかし(ピストンの第1の部分容積における第1の圧力とピストンの第2の部分容積における第2の圧力を用いる)前述の従来技術とは異なり、(ピストンの第1の部分容積における同じ第1の圧力とピストンの第2の部分容積における同じ第2の圧力を用いる)本発明によるブレーキ装置の調整可能なピストンは、より少ない力によって、および格段に低減されたエネルギー消費量でその通常位置から所定の最小調整距離の分だけ調整することができる。
【0008】
したがって、本発明によるブレーキ装置もしくは対応する液圧ブレーキシステムは、前述した先行技術と比較して格段に改善された性能と大幅に低減されたエネルギー消費量とを有する。それに加えて、本発明は、従来技術の機能範囲とすべての利点を維持しながら従来技術の弱点の解消を実現する。
【0009】
本発明の実現は、逆止弁以外の能動部品を必要としない。したがって、本発明の技術的実施は比較的安価であり、かつ所要スペースを増加させない/ほとんど増加させない。
【0010】
ブレーキ装置の有利な実施形態では、ピストンが円柱状の基体を有し、基体において突出するリング部を有し、ピストンのリング部が、リング部の第1の側に位置する貯留容積の第1の部分容積を、リング部の第2の側に位置する貯留容積の第2の部分容積から液密にシールし、円柱状の基体は、リング部の第1の側に位置する第1の切欠きから貯留容積を通り抜けてリング部の第2の側に位置する第2の切欠きまで延びる。したがって、ピストンの円柱状の基体を一貫したピストンロッドと言い換えることもできる。それに準じてピストンは、一貫したピストンと称され得る。本明細書に記載されるピストンの有利な形態にもとづいて、第1の部分容積に第1の圧力が存在し、第2の部分容積に第2の圧力が存在する場合のピストンの通常位置からの少なくとも最小調整距離の分の調整に必要な力は、ピストンの第1の部分容積における同じ第1の圧力とピストンの第2の部分容積における同じ第2の圧力を用いる前述した従来技術の場合よりも格段に小さい。これは、本明細書に記載されるブレーキ装置の実施形態のエネルギー消費量を追加的に低減することに寄与する。
【0011】
殊に、ピストンは、少なくとも1つの案内ピンによって案内されている。このようにして、通常位置から少なくとも最小調整距離の分だけ調整されるピストン、もしくは通常位置に戻されて調整されたピストンの不都合な回転を確実に防ぐことができる。
【0012】
ブレーキ装置の好ましい実施形態では、バイパスラインおよび逆止弁がピストン内に形成されている。バイパスラインおよび逆止弁のピストンへの組み込みによって、本明細書に記載されるブレーキ装置の実施形態の所要スペースを、ブレーキ装置の機能範囲を維持しながら低減することができる。
【0013】
有利には、ピストン内に形成された逆止弁は、ピストンが通常位置にある場合に、ブレーキ装置に固定的に配置されたピストンの開口内に突出するプランジャによって開状態に保持され得る一方で、通常位置から少なくとも最小調整距離の分だけ調整されるピストンは、逆止弁が閉状態に切り替えられるようにプランジャに対して調整される。固定的に配置された/固定のプランジャの使用は、ピストンに組み込まれた逆止弁およびピストンを通って延びるバイパスラインを含むピストンを構造上比較的簡単に実現することを可能にする。
【0014】
例えば、ピストン内に形成された逆止弁が弁体とスプリング装置とを含んでいてよく、弁体は、ピストンが通常位置にある場合に、ピストンの開口内に突出するプランジャによってスプリング装置の力に抗して、開口に形成された狭窄部から離して保持される一方で、通常位置からのピストンの少なくとも最小調整距離の分の調整時点から、弁体と狭窄部との機械的接触によって狭窄部の第1の側に位置する開口の外側部が狭窄部の第2の側に位置する開口の内側部から液密にシールされるように、スプリング装置の力が弁体を狭窄部に向かって押す。本明細書に記載されるピストンの形態は比較的安価に作製することができる。
【0015】
特に、ピストン内に形成されたバイパスラインは、貯留容積の第1の部分容積から開口の内側部まで延びる、ピストンを貫く第1の半径方向接触孔と、開口の外側部から貯留容積の第2の部分容積まで延びる、ピストンを貫く第2の半径方向接触孔とを含んでいてよい。本明細書に記載されるピストンを通って延びるバイパスラインの形態は容易に実現することができる。
【0016】
ブレーキ装置の代替的実施形態では、ピストンにピンが取り付けられており、ピンはピストンと共に調整可能であり、ピンは、少なくともピストンが通常位置にある場合に逆止弁を開状態に保持する一方で、逆止弁は、通常位置から少なくとも最小調整距離の分だけ調整されるピストンと一緒に共に調整されるピンによって閉状態に切り替えられる。本明細書に記載されるブレーキ装置の形態も構造上容易に実施することができる。
【0017】
前述した利点は、このようなブレーキ装置と、ブレーキ装置の貯留容積の第1の部分容積に結合されたブレーキシリンダと、貯留容積の第2の部分容積に結合されたホイールブレーキシリンダとを備える車両の液圧ブレーキシステムにおいても保証されている。
【0018】
さらに、車両の液圧ブレーキシステムを動作させるための対応する方法の実行も上記の利点を提供する。ブレーキ装置の上述された実施形態による車両の液圧ブレーキシステムを動作させる方法は発展させることができるということに明確に言及しておきたい。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1a】ブレーキ装置の第1の実施形態の模式図である。
図1b】ブレーキ装置の第1の実施形態の模式図である。
図2a】ブレーキ装置の第2の実施形態の模式図である。
図2b】ブレーキ装置の第2の実施形態の模式図である。
図3】車両の液圧ブレーキシステムを動作させる方法の一実施形態を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、図をもとにして本発明の他の特徴および利点を説明する。
【0021】
図1aおよび図1bは、ブレーキ装置の第1の実施形態の模式図を示す。
【0022】
以下に説明されるブレーキ装置は、車両の液圧ブレーキシステムの一部として使用されていてよい/され得る。ブレーキ装置の使用可能性は、特定のブレーキシステムタイプに限定されない。ブレーキ装置を装備した車両は、選択的に2つの車輪のみを有する車両または2つよりも多い車輪を有する車両であり得る。車両とは、例えば(筋力で駆動される)自転車など、電動式駆動装置なしの車両と理解することもできる。しかし車両は、例えば電動自転車、オートバイ、あるいは、特に乗用車または貨物自動車といった自動車などのモータ駆動装置を装備した車両でもあり得る。
【0023】
図1aおよび図1bに模式的に示されるブレーキ装置は、モータ14の作動によってブレーキ装置の貯留容積12内で調整可能である/調整されるピストン10を有する。ピストン10は、貯留容積12を第1の部分容積12aと第2の部分容積12bとに分割する。貯留容積12の第1の部分容積12a、すなわち第1の部分容積12aのポート(Muendung)12c、および/または第1の部分容積12aに連通する第1のラインコンポーネント15aにブレーキシリンダ16が(液圧的に)結合されているか、または結合可能である。ブレーキシリンダ16は、装置固有または装置外部のブレーキシリンダ16であり得る。ブレーキシリンダ16とは、ブレーキ操作要素の操作の増加または減少により、ブレーキ液がブレーキシリンダ16から押し出されるか、または吸い込まれている/吸い込まれるようにブレーキ操作要素が配置可能/配置されている液圧装置と理解することができる。ブレーキシリンダ16は、例えばマスタブレーキシリンダであり得る。ブレーキ操作要素とは、特にブレーキペダルまたはハンドブレーキレバーと理解することができる。ブレーキシリンダ16は、ブレーキ液がブレーキシリンダ16と第1の部分容積12aとの間で移送可能である/移送されるように貯留容積12の第1の部分容積12aに結合可能である/結合されている。
【0024】
貯留容積12の第2の部分容積12b、すなわち第2の部分容積12bのポート12dおよび/または第2の部分容積12bに連通する第2のラインコンポーネント15bにホイールブレーキシリンダ18が(液圧的に)結合されているか、または結合可能である。これは図1aおよび図1bには図示されていないが、ホイールブレーキシリンダ18に加えてさらに少なくとも1つの別の(図示されない)ホイールブレーキシリンダを第2の部分容積12bに相応に結合できる/結合可能であり得る。(少なくとも1つの)ホイールブレーキシリンダ18とは、選択的に、装置固有のホイールブレーキシリンダ18または装置外部のホイールブレーキシリンダ18と理解することができる。(少なくとも1つの)ホイールブレーキシリンダ18は、ブレーキ液が第2の部分容積12bと(少なくとも1つの)ホイールブレーキシリンダ18との間で移送可能である/移送されるように第2の部分容積12bに結合可能であるか、または結合されている。
【0025】
ブレーキ装置には、少なくともピストン10が、いわゆる通常位置にある場合にブレーキ液が第1の部分容積12aおよび/または第1の部分容積に結合されたブレーキシリンダ16から、バイパスライン20を介して第2の部分容積12bおよび/または第2の部分容積に結合された(少なくとも1つの)ホイールブレーキシリンダ18に移送可能である/移送されるようにバイパスライン20/バイパスも形成されている。バイパスライン20は、例えば第1のラインコンポーネント15aから第2のラインコンポーネント15bまで延びることができる。図1aは、ピストン10が通常位置にあるブレーキ装置を示す。ブレーキ液が第1の部分容積12aおよび/または第1の部分容積に結合されたブレーキシリンダ16からバイパスライン20を介して第2の部分容積12bおよび/または第2の部分容積に結合された(少なくとも1つの)ホイールブレーキシリンダ18に移送可能である限り、第1の部分容積12aに存在する第1の圧力p1は、第2の部分容積12bにおいて支配的な第2の圧力p2に等しい。
【0026】
バイパスライン20には、逆止弁22が配置/形成され、当該逆止弁22は、少なくともピストン10が通常位置にある場合に開状態であり、通常位置から少なくとも所定の最小調整距離Δxの分だけ調整されるピストン10によって閉状態に切り替えられるように、ピストン10によって切替可能である/切り替えられる。したがって、ピストン10によって切替可能な逆止弁22の有利な配置および形態は、ピストン10が通常位置にある場合に実行可能な第1の部分容積12aおよび/または第1の部分容積に結合されたブレーキシリンダ16からバイパスライン20を介して第2の部分容積12bおよび/または第2の部分容積に結合された(少なくとも1つの)ホイールブレーキシリンダ18へのブレーキ液の移送が通常位置から少なくとも所定の最小調整距離Δxの分だけ調整されるピストン10によって阻止されることを保証する。さらに、図1bに示されるように、ピストン10は、通常位置からのピストン10の少なくとも所定の最小調整距離Δxの分の調整時点から、第1の部分容積12aに存在する第1の圧力p1が第2の部分容積12bにおいて支配する第2の圧力p2と異なり得るように第1の部分容積12を第2の部分容積12から液密にシールする。
【0027】
したがって、ピストン10が通常位置にある間、図1aおよび図1bのブレーキ装置を装備した車両の運転者は、ブレーキシリンダ16に配置されたブレーキ操作要素の操作によってバイパスライン20を介して(少なくとも1つの)ホイールブレーキシリンダ18にブレーキをかけ、そのようにして運転者の運転者ブレーキ力によって(少なくとも1つの)ホイールブレーキシリンダ18におけるブレーキ圧の上昇をもたらすことができ、それによって、車両を減速させるか、または停止させる。したがって、ピストン10が通常位置にある場合、ブレーキ装置/ブレーキ装置を備えて形成された液圧ブレーキシステムに機械的フォールバックレベルが存在する。これに加えて、図1aおよび図1bのブレーキ装置では、(少なくとも1つの)ホイールブレーキシリンダ18は、通常位置からのピストン10の少なくとも最小調整距離Δxの分の調整によって、(少なくとも1つの)ホイールブレーキシリンダ18におけるブレーキ圧がピストン10のさらなる調整によって調節され得るように、ブレーキシリンダ16から液圧的に切り離される。したがって、ピストン10の少なくとも所定最小調整距離Δxの分の調整後、ABS機能を実行することができる。したがって、本明細書に記載されるブレーキ装置を装備した液圧ブレーキシステムをABSシステムと呼ぶこともできる。
【0028】
逆止弁22の有利な配置および形成は、追加的に、上記の従来技術が必要とするような、貯留容積12の少なくとも1つの内壁とのピストン10の機械的接触によってバイパスライン20をシールまたは分離するようにもピストン10を形成することを不必要にする。したがって、第1の部分容積12aを分割するピストン10の第1の面積が第2の部分容積12bを分割するピストン10の第2の面積よりも大きいピストン10を形成するという従来技術の必要条件もなくなる。さらに、上記の従来技術ではまだ必要とするような、ピストン10がその直径の拡大によって第1の部分容積12aを第2の部分容積12bから液密にシールするために、第1の部分容積12aにおける第1の圧力p1を第2の部分容積12bにおける第2の圧力p2より高く保つ必要もなくなる。従来必要であるものがなくなることは、本明細書に記載されるブレーキ装置のピストン10を同等の小さい力でその通常位置から少なくとも最小調整距離Δxの分だけ調整できることに寄与する。このようにして、ピストン10を通常位置から少なくとも最小調整距離Δxの分だけ調整するために発生するエネルギー消費量が従来技術と比較して低減される。しかし本明細書に記載される利点にもかかわらず、図1aおよび図1bのブレーキ装置では、ピストン10が通常位置にある場合に機械的フォールバックレベルと、ブレーキシリンダ16からの(少なくとも1つの)ホイールブレーキシリンダ18の液圧的切り離しが、通常位置から少なくとも最小調整距離Δxの分だけ調整されるピストン10によって実現されている。
【0029】
モータ14が停止されると直ちに、(任意的な)復帰用スプリング23によってピストン10を再び通常位置に戻すことができる。その場合、ピストン10が通常位置にある時点から、再びブレーキシリンダ16を介して(少なくとも1つの)ホイールブレーキシリンダ18にブレーキを掛けることができる。さらに、ピストン10が通常位置にある時点から、逆止弁22が再び開状態に移行されることが保証されている。
【0030】
有利には、図1aおよび図1bの実施形態では、ピストン10は、ピストン10が円柱状の基体10aを有し、基体10aにおいて突出するリング部10bを有するように形成/成形されている。リング部10bは、基体10aと固定的に接続されている。殊に、基体10aおよびリング部10bは、コンパクトな部品として、例えば一緒に鋳造/射出鋳造(spritzgegossen)されるなどして、一緒に成形されている。リング部10bは、リング部10bの第1の側に位置する貯留容積12の第1の部分容積12aを、リング部10bの第2の側に位置する貯留容積12の第2の部分容積12bから液密にシールする。これに対して、円柱状の基体10aは、リング部10bの第1の側に位置する第1の切欠き24aから、貯留容積12を通り抜けてリング部10bの第2の側に位置する第2の切欠き24bまで延びる。本明細書に記載されるピストン10の形状は、ピストン10の調整に必要な力の追加的な低減、およびそれに伴いピストン10の調整時に発生するエネルギー消費量にも寄与する。
【0031】
図1aおよび図1bの実施形態では、ピストン10には一例としてピン26が取り付けられており、このピンはピストン10と一緒に調整可能である/一緒に調整される。ピン26もピストン10と一緒にコンパクトな部品として、例えば一緒に鋳造/射出鋳造して製造することができる。ピン26は、少なくともピストン10が通常位置にある場合に逆止弁22を開状態に保持する。さらに、ピン26は、一緒に調整されるピン26によって逆止弁22が閉状態に切り替えられるように、通常位置から少なくとも最小調整距離Δxの分だけ調整されるピストン10と一緒に調整されている/される。特に、ピストン10と一緒に調整されるピン26が逆止弁22から少なくとも最小調整距離Δxの分だけ遠ざかる場合に、逆止弁22が(自動的に)閉状態に移行するように逆止弁22を形成することができる。これは、例えば、逆止弁22がスプリング装置と共に形成され、ピン26が逆止弁22のスプリング装置の力に逆らわなくなると直ちにスプリング装置の力が逆止弁22を閉状態に移行させるように、ばね装置の力が作用することにより実現可能である。しかし本明細書に記載されるピン26が取り付けられたピストン10の形態は、例示にすぎないものと解釈されるべきである。
【0032】
図2a~図2dは、ブレーキ装置の第2の実施形態の模式図を示す。
【0033】
ここに記載される実施形態は、図2aおよび図2bにおいて、それぞれ図2cおよび図2dの線AA‘に沿う断面として示され、図2aおよび図2bの観察者は線AA‘に沿う異なる側を見ることになる。図2a~図2dのブレーキ装置の使用可能性は、特定のブレーキシステムタイプおよび特殊な車両タイプ/自動車タイプに限定されない。
【0034】
図2aおよび図2bは、それぞれ通常位置にあるピストン10を示す。ピストン10は、とりわけ、例示的にねじりスプリングとして形成されていてもよい復帰用スプリング23の力によって通常位置に保持される。補足的に、第1の部分容積12aに存在する第1の圧力p1が第2の部分容積12bに存在する第2の圧力p2よりも大きい場合、その結果として生じる加圧によってもピストン10を通常位置へ押すことができる。モータ14の作動はナット27の回転をもたらし、この回転は、スピンドル28によって通常位置からのピストン10の直線運動に変換される。殊に、スピンドル28はピストン10に押し込まれる。単に一例として、スピンドル28は、ここに示される実施形態では、非セルフロック式の急勾配ねじ山付きスピンドル(Steilgewindespindel)として形成されており、このことは、モータ14がオフに切替得られた場合に復帰用スプリング23の力と、場合によっては加圧にもとづいて、通常位置から調整されるピストン10の通常位置への自動戻り運動をもたらす。したがって、ピストン10を通常位置に戻すためにモータ14の能動的なモータ支援の必要はない。
【0035】
図2a~図2dをもとにして認識できるように、この実施形態では、バイパスライン20および逆止弁22がピストン10内に形成されている。その場合、ピストン10へのバイパスライン20および逆止弁22の組み込みという言葉を用いることもできる。ピストン10内に形成された逆止弁22は、ピストン10が通常位置にある場合に、ブレーキ装置に固定的に配置された、ピストン10の開口30内に突出するプランジャ32によって開状態に保持される。プランジャ32は、モータ14によって調整されるピストン10の調整運動が開口30内でプランジャ32の相対運動をもたらすようにブレーキ装置に固定的に配置されている/取り付けられている。プランジャ32のこの相対運動は、「開口30へのプランジャ32の引き込み」または「開口30からのプランジャ32の引き出し」と言い換えることができる。このようにして、ピストンが通常位置から少なくとも最小調整距離Δxの分だけプランジャ32に対して調整されると直ちに、逆止弁22が閉状態に切り替えられる。
【0036】
開口30は、外側部30aと内側部30bとを含み、外側部と内側部は、開口30の長手方向に対して垂直に向けられた外側部30aの断面の最大面積が開口30の長手方向に対して垂直に向けられた内側部30bの断面の最大面積よりも小さくなるように形成されている。開口において、外側部30aと内側部30bとの間に、例えば半径方向段部34などの狭窄部(Verengung)/狭まり部(Einengung)34が形成されている。
【0037】
有利には、ピストン10内に形成された逆止弁22が弁体22aとスプリング装置22bとを含み、弁体とスプリング装置は開口30内に配置されている。弁体22aは球状に形成されていてもよい。スプリング装置22bを、このスプリング装置の弁体22aから遠ざかる方に向けられた側で支持するために、ピストン10の開口30に球状のスプリングシート33を取り付けることができる。
【0038】
図2aおよび図2bに認識できるように、弁体22aは、ピストン10が通常位置にある場合に、ピストン10の開口30内に突出するプランジャ32によってスプリング装置22bの力Fに抗して、開口30に形成された狭窄部34から遠ざけられる。したがって、ピストン10が通常位置にある場合、弁体22aと狭窄部34との間には機械的接触が存在しない。これに対して、通常位置からのピストン10の少なくとも最小調整距離Δxの分の調整(および少なくとも最小調整距離Δxの分の「開口30からのプランジャ32の引き出し」)の時点から、スプリング装置22bの力Fが、弁体22aと狭窄部34の機械的接触によって開口30の外側部30aが開口30の内側部30bから液密にシールされるように、弁体22aを狭窄部34に向かって押す。
【0039】
ピストン10内に形成されたバイパスライン20は、ピストン10を貫く貯留容積12の第1の部分容積12aから開口30の内側部分30bまで延びる第1の半径方向接触孔36aと、ピストン10を貫く開口30bの外側部30aから貯留容積12の第2の部分容積12bまで延びる第2の半径方向接触孔36bとを含む。
【0040】
ピストン10が通常位置にある場合、弁体22aと狭窄部34との間の機械的接触がプランジャ32によって妨げられるため、貯留容積12の第1の部分容積12aと貯留容積12の第2の部分容積12bとの間のブレーキ液の移送を第1の半径方向接触孔36aと開口30の狭窄部34と第2の半径方向接触孔36bとによって行うことができる。したがって、ピストン10が通常位置にある場合、逆止弁22は開状態にある。これに対して、通常位置からのピストン10の少なくとも最小調整距離Δxの分の調整(および少なくとも最小調整距離Δxの分の「開口30からのプランジャ32の引き出し」)の時点から、第1の部分容積12aと第2の部分容積12bとの間のそのようなブレーキ液の移送が阻止され、かつ逆止弁22が閉状態に移行されるように、開口30の狭窄部34が弁体22aと狭窄部34との機械的接触によってシールされる。逆止弁22が閉じると直ちに、ピストン10のさらなるストロークによって、(少なくとも1つの)ホイールブレーキシリンダ18からの量(Volumen)を貯留容積12に吸い込むことができ、それによって(少なくとも1つの)ホイールブレーキシリンダ18におけるブレーキ圧の調節をもたらすことができる。調節中も弁体22aと狭窄部34との機械的接触が維持されるため、逆止弁22は閉状態のままである。ピストン10が通常位置に戻されて初めて、「開口30へのプランジャ32の引き込み」によって弁体22aと狭窄部34との機械的接触が解消され、逆止弁22が開状態に移行される。
【0041】
図2a~図2dにさらに認識できるように、ピストン10は、少なくとも1つの案内ピン38によって案内されていてもよい。少なくとも1つの案内ピン38はピストン10に取り付けられていてもよく、少なくとも1つのピストン外部のガイド開口内に突出することができる。代替的に、少なくとも1つの案内ピン38はピストン10の外部に取り付けることもでき、ピストン10に形成された少なくとも1つのガイド開口内に突出することができる。図2a~図2dの実施形態では、単に一例として、ピストン10が3つの案内ピン38によって案内されている。
【0042】
図2a~図2dのブレーキ装置の他の特徴および特性とその利点については図1aおよび図1bの説明を参照されたい。
【0043】
図3は、車両の液圧ブレーキシステムを動作させる方法の一実施形態を説明するためのフローチャートを示す。
【0044】
以下に記載される方法は、貯留容積を第1の部分容積と第2の部分容積とに分割する液圧ブレーキシステムの貯留容積内で調整可能なピストンが装備されている車両の(ほぼ)どの液圧ブレーキシステムでも実行することができる。
【0045】
方法ステップS1において、少なくともピストンが通常位置にある場合にブレーキ液を第1の部分容積および/または第1の部分容積に結合されたブレーキシリンダから第2の部分容積および/または第2の部分容積に結合されたホイールブレーキシリンダに移送可能であるバイパスラインが開に切り替えられるおよび/または開に保持される。そのために、バイパスラインに配置され、少なくともピストンが通常位置にある場合に開状態である逆止弁が、ピストンを通常位置に調整および/または保持することによって開状態に移行および/または保持される。
【0046】
これに対して、方法ステップS2において、ピストンを通常位置から少なくとも所定の最小調整距離の分だけ調整することによって、バイパスラインを介した/通じたブレーキ液の移送が中断される。これは、モータの作動によってもたらされる通常位置からのピストンの少なくとも所定の最小調整距離の分の調整によって、逆止弁が、通常位置から少なくとも最小調整距離の分だけ調整されるピストンによって閉状態に切り替えられることにより行われる。
【0047】
方法ステップS1およびS2を交互に実行することができる。
【符号の説明】
【0048】
10 ピストン
10a 基体
10b リング部
12 ブレーキ装置の貯留容積
12a 第1の部分容積
12b 第2の部分容積
12c ポート
14 モータ
15a 第1のラインコンポーネント
15b 第2のラインコンポーネント
16 ブレーキシリンダ
18 ホイールブレーキシリンダ
20 バイパスライン
22 逆止弁
22a 弁体
22b スプリング装置
23 復帰用スプリング
24a 切欠き
26 ピン
27 ナット
28 スピンドル
30 開口
30a 外側部
30b 内側部
32 プランジャ
34 狭窄部、半径方向段部
38 案内ピン
p1 第1の圧力
p2 第2の圧力
Δx 最小調整距離
図1a
図1b
図2a
図2b
図2c
図2d
図3
【手続補正書】
【提出日】2024-04-02
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブレーキ装置のモータ(14)の作動により貯留容積(12)内で調整可能なピストン(10)であって、貯留容積(12)を第1の部分容積(12a)と第2の部分容積(12b)とに分割するピストンを備え、装置固有または装置外部のブレーキシリンダ(16)が、前記ブレーキシリンダ(16)と前記第1の部分容積(12a)との間でブレーキ液を移送できるように前記第1の部分容積(12a)に結合されているか、または結合可能であり、装置固有または装置外部のホイールブレーキシリンダ(18)が、前記第2の部分容積(12b)と前記ホイールブレーキシリンダ(18)との間でブレーキ液を移送できるように前記第2の部分容積(12b)に結合されているか、または結合可能であり、
バイパスライン(20)をさらに備え、少なくとも前記ピストン(10)が通常位置にある場合に、ブレーキ液を前記第1の部分容積(12a)および/または前記第1の部分容積に結合された前記ブレーキシリンダ(16)から前記バイパスライン(20)を介して前記第2の部分容積(12b)および/または前記第2の部分容積に結合された前記ホイールブレーキシリンダ(18)に移送可能である一方で、前記バイパスライン(20)を介した前記ブレーキ液の移送は、前記通常位置から少なくとも所定の最小調整距離(Δx)の分だけ調整される前記ピストン(10)によって阻止される、
車両の液圧ブレーキシステムのためのブレーキ装置において、
前記バイパスライン(20)に配置された逆止弁(22)であって、前記逆止弁(22)は、少なくとも前記ピストン(10)が前記通常位置にある場合に開状態であり、前記通常位置から少なくとも最小調整距離(Δx)の分だけ調整される前記ピストン(10)によって閉状態に切り替えられるように、前記ピストン(10)によって切替可能な前記逆止弁を特徴とする、ブレーキ装置。
【請求項2】
前記ピストン(10)が円柱状の基体(10a)を有し、前記基体(10a)において突出するリング部(10b)を有し、前記ピストン(10)の前記リング部(10b)が、前記リング部(10b)の第1の側に位置する前記貯留容積(12)の前記第1の部分容積(12a)を、前記リング部(10b)の第2の側に位置する前記貯留容積(12)の前記第2の部分容積(12b)から液密にシールし、前記円柱状の基体(10a)は、前記リング部(10b)の前記第1の側に位置する第1の切欠き(24a)から前記貯留容積(12)を通り抜けて前記リング部(10b)の前記第2の側に位置する第2の切欠き(24b)まで延びる、請求項1に記載のブレーキ装置。
【請求項3】
前記ピストン(10)が少なくとも1つの案内ピン(38)によって案内されている、請求項1に記載のブレーキ装置。
【請求項4】
前記バイパスライン(20)および前記逆止弁(22)が前記ピストン(10)内に形成されている、請求項1から3までのいずれか1項に記載のブレーキ装置。
【請求項5】
前記ピストン(10)内に形成された前記逆止弁(22)は、前記ピストン(10)が前記通常位置にある場合に、前記ブレーキ装置に固定的に配置された前記ピストン(10)の開口(30)内に突出するプランジャ(32)によって開状態に保持される一方で、前記通常位置から少なくとも前記最小調整距離(Δx)の分だけ調整される前記ピストン(10)は、前記逆止弁(22)が閉状態に切り替えられるように前記プランジャ(32)に対して調整される、請求項4に記載のブレーキ装置。
【請求項6】
前記ピストン(10)内に形成された前記逆止弁(22)が弁体(22a)とスプリング装置(22b)とを含み、前記弁体(22a)は、前記ピストン(10)が前記通常位置にある場合に、前記ピストン(10)の前記開口(30)内に突出する前記プランジャ(32)によって前記スプリング装置(22b)の力(F)に抗して、前記開口(30)に形成された狭窄部(34)から離して保持される一方で、前記通常位置からの前記ピストン(10)の少なくとも前記最小調整距離(Δx)の分の調整時点から、前記弁体(22a)と前記狭窄部(34)との機械的接触によって前記狭窄部(34)の第1の側に位置する前記開口(30)の外側部(30a)が前記狭窄部(34)の第2の側に位置する前記開口(30)の内側部(30b)から液密にシールされるように、前記スプリング装置(22b)の前記力(F)が前記弁体(22a)を前記狭窄部(34)に向かって押す、請求項5に記載のブレーキ装置。
【請求項7】
前記ピストン(10)内に形成された前記バイパスライン(20)は、前記貯留容積(12)の前記第1の部分容積(12a)から前記開口(30)の前記内側部(30b)まで延びる、前記ピストン(10)を貫く第1の半径方向接触孔(36a)と、前記開口(30)の前記外側部(30a)から前記貯留容積(12)の前記第2の部分容積(12b)まで延びる、前記ピストン(10)を貫く第2の半径方向接触孔(36b)とを含む、請求項6に記載のブレーキ装置。
【請求項8】
前記ピストン(10)にピン(26)が取り付けられており、前記ピンは前記ピストン(10)と共に調整可能であり、前記ピンは、少なくとも前記ピストン(10)が前記通常位置にある場合に前記逆止弁(22)を開状態に保持する一方で、前記逆止弁(22)は、前記通常位置から少なくとも前記最小調整距離(Δx)の分だけ調整される前記ピストン(10)と一緒に共に調整されるピン(26)によって閉状態に切り替えられる、請求項1から3までのいずれか1項に記載のブレーキ装置。
【請求項9】
車両の液圧ブレーキシステムであって、
請求項1からまでのいずれか1項に記載のブレーキ装置と、
前記ブレーキ装置の前記貯留容積(12)の前記第1の部分容積(12a)に結合された前記ブレーキシリンダ(16)と、
前記貯留容積(12)の前記第2の部分容積(12b)に結合された前記ホイールブレーキシリンダ(18)と、を備える液圧ブレーキシステム。
【請求項10】
貯留容積(12)を第1の部分容積(12a)と第2の部分容積(12b)とに分割する、液圧ブレーキシステムの前記貯留容積(12)内で調整可能なピストン(10)を備える車両の液圧ブレーキシステムを動作させる方法であって、次のステップ、すなわち、
モータ(14)の作動によって前記ピストン(10)を通常位置から少なくとも所定の最小調整距離(Δx)の分だけ調整することによって、少なくとも前記ピストン(10)が通常位置にある場合にブレーキ液を前記第1の部分容積(12a)および/または前記第1の部分容積(12a)に結合されたブレーキシリンダ(16)から前記第2の部分容積(12b)および/または前記第2の部分容積(12b)に結合されたホイールブレーキシリンダ(18)へ移送可能なバイパスライン(20)を介したブレーキ液の移送を阻止するステップを包含する方法において、
前記バイパスライン(20)に配置され、少なくとも前記ピストン(10)が前記通常位置にある場合に開状態である逆止弁(22)が、前記通常位置から少なくとも前記最小調整距離(Δx)の分だけ調整される前記ピストン(10)によって閉状態に切り替えられる(S2)ことを特徴とする、方法。
【国際調査報告】