(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-30
(54)【発明の名称】キメラ抗原受容体免疫細胞およびその製造方法と使用
(51)【国際特許分類】
C12N 5/10 20060101AFI20240920BHJP
C12N 5/0783 20100101ALI20240920BHJP
C12N 15/62 20060101ALI20240920BHJP
C12N 15/12 20060101ALI20240920BHJP
C07K 19/00 20060101ALI20240920BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240920BHJP
A61K 35/17 20150101ALI20240920BHJP
A61K 38/02 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
C12N5/10 ZNA
C12N5/0783
C12N15/62 Z
C12N15/12
C07K19/00
A61P35/00
A61K35/17
A61K38/02
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024520518
(86)(22)【出願日】2022-09-29
(85)【翻訳文提出日】2024-05-27
(86)【国際出願番号】 CN2022122839
(87)【国際公開番号】W WO2023051735
(87)【国際公開日】2023-04-06
(31)【優先権主張番号】202111155155.9
(32)【優先日】2021-09-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524123034
【氏名又は名称】グラセル バイオテクノロジーズ(シャンハイ)カンパニー,リミテッド
【氏名又は名称原語表記】GRACELL BIOTECHNOLOGIES(SHANGHAI)CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】12th Floor,Building 1,926 Yishan Road,Xuhui District,Shanghai 200233,CHINA
(74)【代理人】
【識別番号】110003971
【氏名又は名称】弁理士法人葛和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ドン,チー
(72)【発明者】
【氏名】イン,ウェンジエ
(72)【発明者】
【氏名】シェン,リァンジュン
(72)【発明者】
【氏名】ツァオ,ウェイ
【テーマコード(参考)】
4B065
4C084
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA94X
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA24
4B065CA44
4C084AA02
4C084BA44
4C084CA26
4C084CA53
4C084NA14
4C084ZB26
4C087AA01
4C087AA02
4C087BB43
4C087BB44
4C087BB65
4C087NA14
4C087ZB26
4H045AA30
4H045BA09
4H045BA41
4H045DA50
4H045EA20
4H045FA74
(57)【要約】
キメラ抗原受容体免疫細胞およびその製造方法と使用を提供し、前記キメラ抗原受容体免疫細胞は表面に特異的な抗原を標的とする受容体を発現し、同時にシグナル変換タンパク質を発現し、当該シグナル変換タンパク質はドミナントネガティブ受容体TGFBR2の細胞外エレメントおよびIL-7Rαの細胞内エレメントを含む融合タンパク質で、かつその膜貫通領域は任意由来のものである。前記キメラ抗原受容体免疫細胞は、シグナル変換タンパク質を介して腫瘍微環境における免疫細胞の生存に不利なTGF-β免疫抑制因子の抑制シグナルをさらにサイトカイン活性化シグナルに変換することで、顕著に免疫細胞の生存を増強し、そして腫瘍殺傷作用をより持続的にすることができる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
工学的改変免疫細胞であって、T細胞またはNK細胞であり、且つ以下の特徴:
(a)前記免疫細胞は、腫瘍細胞の表面マーカーを標的とする、キメラ抗原受容体(chimeric antigen receptor、CAR)を発現する;ならびに
(b)前記免疫細胞は、前記免疫細胞の細胞膜に位置し、かつ免疫抑制性受容体の細胞外ドメイン、膜貫通領域(または膜貫通ドメイン)および免疫活性化受容体の細胞内ドメインを有する、外因性のシグナル変換タンパク質を発現する;
好ましくは、前記免疫抑制性受容体はTGF-β受容体である;
好ましくは、前記免疫活性化受容体は、IL-7受容体、IL-15受容体、IL-12受容体、IL-2受容体、IL-18受容体、IL-21受容体、またはこれらの組み合わせからなる群から選ばれ、より好ましくは、前記免疫活性化受容体は、IL-7受容体である
を有することを特徴とする、前記免疫細胞。
【請求項2】
前記CARは式IaまたはIbで示される構造を有する、請求項1に記載の工学的改変免疫細胞。
【化1】
(式中において、
L1はなしか、シグナルペプチド配列である。
scFvは抗体を標的とする一本鎖可変ドメインである。
Hはなしか、ヒンジ領域である。
TM1は膜貫通ドメインである。
Cは共刺激シグナルドメインである。
CD3ζはCD3ζ由来の細胞内シグナル伝達配列(野生型、またはその突然変異体/修飾体を含む)である。
Aは2A自己切断ペプチドである。
Sはほかの外因性組み換えタンパク質である。
n1またはn2はそれぞれ独立に0または1である。
Eはシグナル変換タンパク質である。
前記「-」は連結ペプチドまたはペプチド結合である。)
【請求項3】
前記シグナル変換タンパク質は式Vで示される構造を有する、請求項1に記載の工学的改変免疫細胞。
【化2】
(式中において、
L2はなしか、シグナルペプチド配列である。
Z1は免疫抑制性受容体の細胞外ドメインである。
TM2は膜貫通領域である。
Z2は免疫活性化受容体の細胞内ドメインである。
前記「-」は連結ペプチドまたはペプチド結合である。)
【請求項4】
前記シグナル変換タンパク質をコードするアミノ酸配列は、配列番号8における523-933番目、配列番号9における523-908番目、配列番号10における523-936番目、配列番号11における523-911番目、配列番号16における937-1347番目、配列番号17における937-1350番目、配列番号19、配列番号20または配列番号21で示される通りである、請求項1に記載の工学的改変免疫細胞。
【請求項5】
請求項1に記載の工学的改変免疫細胞を製造する方法であって、以下の工程:
(a)改変される免疫細胞を提供する工程;ならびに
(b)前記免疫細胞が前記CAR分子および外因性のシグナル変換タンパク質を発現するように、前記免疫細胞を改変し、それによって請求項1に記載の工学的改変免疫細胞を得る工程
を含むことを特徴とする、前記方法。
【請求項6】
請求項1に記載の工学的改変免疫細胞と、薬学的に許容される担体、希釈剤または賦形剤とを含有することを特徴とする、製剤。
【請求項7】
請求項1に記載の工学的改変免疫細胞の使用であって、癌または腫瘍を予防および/または治療できる薬物または製剤の製造のために用いられることを特徴とする、前記使用。
【請求項8】
前記腫瘍は、固形腫瘍、血液腫瘍、リンパ腫、またはこれらの組み合わせからなる群から選ばれることを特徴とする、請求項7に記載の使用。
【請求項9】
前記腫瘍は、メソテリン、Claudin18.2、MUC1、GPC3、PSCA、Her2、またはこれらの組み合わせからなる群から選ばれるマーカーを発現することを特徴とする、請求項7に記載の使用。
【請求項10】
請求項1に記載の工学的改変免疫細胞を製造するためのキットであって、容器、および容器にある以下のもの:
(1)前記CARを発現するための第一発現カセットを含有する第一核酸配列;および
(2)シグナル変換タンパク質を共発現するための第二発現カセットを含有する第二核酸配列
を含むことを特徴とする、前記キット。
【請求項11】
前記CARのアミノ酸配列は、配列番号8~11、16~17のいずれか1つで示される通りであることを特徴とする、請求項1に記載の工学的改変免疫細胞。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、免疫細胞治療の分野に関し、より具体的に、腫瘍微環境抑制シグナルを活性化シグナルに変換させる機能を有する、固形腫瘍および血液腫瘍をターゲッティングする、工学的改変細胞に関する。
【背景技術】
【0002】
リンパ球療法は、現在、主にαβT細胞療法、NK細胞療法があり、自家と他家の免疫療法を含む。
自家免疫療法は、患者の免疫細胞を、一方、他家免疫療法は同種異系の対象(たとえば、健常者)の免疫細胞を使用する。必要な免疫細胞に対して体外培養、遺伝子編集および増幅を行った後、患者体内に戻し、これらの細胞がMHCに拘束されない形で腫瘍細胞を認識し、生体の免疫を活性化させて増強し、腫瘍細胞を殺傷するようにさせることで、疾患を治療または緩和する目的を果たす。
【0003】
腫瘍関連抗原(TAA)の標的に対し、既にいくかの免疫療法が開発され、このような療法はLAK、DC、CIK、DC-CIK、TCR-T、CAR-T、NK、CAR-NKなどを含む。中では、CAR-T細胞免疫療法は自家と汎用型CAR-T療法を含み、汎用型CAR-Tは同種異系、オフ・ザ・シェルフ(off-the-shelf)などの優勢があり、汎用型CAR-Tによる血液腫瘍および固形腫瘍の治療の市場は将来性が大変あるが、まだ解決されていない課題もある。現在、免疫治療は血液腫瘍では既に突出した治療効果があるが、固形腫瘍では治療効果が満足できるものではない。主な原因は三つあり、一つ目は安全な腫瘍特異的抗原標的で、二つ目は固形腫瘍の異質性で、三つ目はTregやMDSCなどの免疫抑制細胞および免疫抑制因子を含む、複雑な腫瘍細胞微環境などの要素の存在で、それらの存在は免疫細胞の生存に不利であるため、免疫治療の効果を抑制する。
上記のように、本分野では、より有効に、より持続的に固形腫瘍をターゲッティングする免疫療法の開発が切望されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、より有効に、より持続的に固形腫瘍、血液腫瘍をターゲッティングすることができる、キメラ抗原受容体およびその製造方法と使用を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第一の側面では、工学的改変免疫細胞であって、T細胞またはNK細胞で、そして以下の特徴を有する免疫細胞を提供する:
(a) 前記免疫細胞は、腫瘍細胞の表面マーカーを標的とする、キメラ抗原受容体(chimeric antigen receptor、CAR)を発現する;ならびに
(b) 前記免疫細胞は、前記免疫細胞の細胞膜に位置し、かつ免疫抑制性受容体の細胞外ドメイン、膜貫通領域(または膜貫通ドメイン)および免疫活性化受容体の細胞内ドメインを有する外因性のシグナル変換タンパク質を発現する。
【0006】
もう一つの好適な例において、前記免疫抑制性受容体はTGF-β受容体である。
もう一つの好適な例において、前記免疫活性化受容体は、IL-7受容体、IL-15受容体、IL-12受容体、IL-2受容体、IL-18受容体、IL-21受容体、またはこれらの組み合わせからなる群から選ばれる。
もう一つの好適な例において、前記免疫活性化受容体はIL-7受容体である。
【0007】
もう一つの好適な例において、前記膜貫通領域は免疫抑制性受容体、または免疫活性化受容体、またはこれらの組み合わせ由来のものである。
もう一つの好適な例において、前記膜貫通領域は免疫抑制性受容体由来のものでも、免疫活性化受容体由来のものでもない。
【0008】
もう一つの好適な例において、前記膜貫通領域および細胞外ドメインは同様か異なる免疫抑制性受容体由来のものである。
もう一つの好適な例において、前記膜貫通領域および細胞外ドメインは同様か異なる免疫活性化受容体由来のものである。
もう一つの好適な例において、前記免疫細胞は自家または他家のαβT細胞、γδT細胞、NKT細胞、NK細胞、またはこれらの組み合わせを含む。
【0009】
もう一つの好適な例において、前記工学的改変免疫細胞は以下の群から選ばれる:
(i) キメラ抗原受容体αβT細胞(CAR-T細胞);
(ii) キメラ抗原受容体γδT細胞(CAR-T細胞);
(iii) キメラ抗原受容体NKT細胞(CAR-NKT細胞);
(iv) キメラ抗原受容体NK細胞(CAR-NK細胞)。
【0010】
もう一つの好適な例において、前記CARのアミノ酸配列は配列番号8-17のいずれかで示されるものである。
もう一つの好適な例において、前記CARのアミノ酸配列は配列番号8-11、配列番号16-17のいずれかで示されるものである。
【0011】
もう一つの好適な例において、前記CARは式IaまたはIbで示される構造を有する、本発明の第一の側面に記載の工学的改変免疫細胞である:
【化1】
(式中において、
L1はなしか、シグナルペプチド配列である。
scFvは抗体を標的とする一本鎖可変ドメインである。
Hはなしか、ヒンジ領域である。
TM1は膜貫通ドメインである。
Cは共刺激シグナルドメインである。
CD3ζはCD3ζ由来の細胞内シグナル伝達配列(野生型、またはその突然変異体/修飾体を含む)である。
Aは2A自己切断ペプチドである。
Sはほかの外因性組み換えタンパク質である。
n1またはn2はそれぞれ独立に0または1である。
Eはシグナル変換タンパク質である。
前記「-」は連結ペプチドまたはペプチド結合である。)
【0012】
もう一つの好適な例において、前記L1は、それぞれ、CD8、GM-CSF、CD4、CD28、CD137、またはその突然変異/修飾体、あるいはこれらの組み合わせからなる群から選ばれるタンパク質のシグナルペプチドである。
もう一つの好適な例において、L1はCD8タンパク質のシグナルペプチドである。
【0013】
もう一つの好適な例において、前記scFvは、それぞれ、メソテリン、Claudin18.2、MUC1、GPC3、PSCA、Her2、またはこれらの組み合わせを標的とする。
もう一つの好適な例において、scFvはP4ヒト特異的メソテリンを標的とする。
【0014】
もう一つの好適な例において、前記Hは、CD8、CD28、CD137、IgG、またはこれらの組み合わせからなる群から選ばれるタンパク質のヒンジ領域である。
もう一つの好適な例において、HはCD8タンパク質のヒンジ領域である。
【0015】
もう一つの好適な例において、前記TM1は、CD28、CD3ε、CD45、CD4、CD5、CD8、CD9、CD16、CD22、CD33、CD37、CD64、CD80、CD86、CD134、CD137、CD154、CD278、CD152、CD279、CD233、またはその突然変異/修飾体、あるいはこれらの組み合わせからなる群から選ばれるタンパク質の膜貫通領域である。
もう一つの好適な例において、TM1はCD28タンパク質の膜貫通領域である。
【0016】
もう一つの好適な例において、前記Cは、OX40、CD2、CD7、CD27、CD28、CD30、CD40、CD70、CD134、4-1BB (CD137)、PD-1、Dap10、LIGHT、NKG2C、B7-H3、ICAM-1、LFA-1 (CD11a/CD18)、ICOS (CD278)、NKG2D、GITR、OX40L、2B4、TLR、またはその突然変異/修飾体、あるいはこれらの組み合わせからなる群から選ばれるタンパク質の共刺激ドメインである。
もう一つの好適な例において、CはCD28タンパク質のの共刺激ドメインである。
【0017】
もう一つの好適な例において、AはP2A、T2A、またはこれらの組み合わせである。
もう一つの好適な例において、前記Sは、IL-15突然変異体-IL-15Ra、mbIL-15、IL-12p40、IL-2、IL-18、IL-21など、またはこれらの組み合わせからなる群から選ばれる。
もう一つの好適な例において、SはIL-15突然変異体-IL-15Raはある。
【0018】
もう一つの好適な例において、前記Sは配列番号1で示されるアミノ酸配列を有する。
もう一つの好適な例において、前記Eは構成的発現または誘導的発現でもよい。
【0019】
もう一つの好適な例において、前記シグナル変換タンパク質は式Vで示される構造を有する、本発明の第一の側面に記載の工学的改変免疫細胞である:
【化2】
(式中において、
L2はなしか、シグナルペプチド配列である。
Z1は免疫抑制性受容体の細胞外ドメインである。
TM2は膜貫通領域である。
Z2は免疫活性化受容体の細胞内ドメインである。
前記「-」は連結ペプチドまたはペプチド結合である。)
【0020】
もう一つの好適な例において、前記免疫抑制性受容体はTGF-β受容体およびそのサブタイプまたはこれらの組み合わせ(野生型、またはその突然変異体/修飾体を含む)からなる群から選ばれる。
もう一つの好適な例において、前記TGF-β受容体はTGFBR2受容体である。
もう一つの好適な例において、TGFBR2受容体は、TGFBR2受容体アイソフォームAまたはTGFBR2受容体アイソフォームBを含む。
【0021】
もう一つの好適な例において、L2は免疫抑制性受容体のシグナルペプチド配列である。
もう一つの好適な例において、L2はTGFBR2受容体のシグナルペプチド配列である。
もう一つの好適な例において、前記L2は配列番号2で示されるアミノ酸配列を有する。
【0022】
もう一つの好適な例において、前記Z1は、TGFBR2受容体アイソフォームAまたはTGFBR2受容体アイソフォームBからなる群から選ばれるTGF-β受容体の細胞外ドメインである。
もう一つの好適な例において、前記Z1は配列番号3または配列番号4で示されるアミノ酸配列を有する。
【0023】
もう一つの好適な例において、TM2は、IL-7受容体、IL-15受容体、IL-12受容体、IL-2受容体、IL-18受容体、IL-21受容体、またはこれらの組み合わせからなる群から選ばれる受容体の膜貫通領域である。
もう一つの好適な例において、TM2はIL-7およびそのサブタイプまたはこれらの組み合わせ(野生型、またはその突然変異体/修飾体を含む)の膜貫通領域である。
【0024】
もう一つの好適な例において、前記IL-7受容体はIL-7Rαである。
もう一つの好適な例において、TM2はIL-7Rα、IL-7Rα突然変異体の膜貫通領域から選ばれる。
【0025】
もう一つの好適な例において、TM2は、PRTR膜貫通領域、IL-7Rα膜貫通領域、TPOR膜貫通領域からなる群から選ばれる。
もう一つの好適な例において、前記TM2は配列番号5、配列番号6、配列番号22、配列番号23または配列番号24で示されるアミノ酸配列を有する。
【0026】
もう一つの好適な例において、前記免疫活性化受容体はIL-7受容体およびそのサブタイプまたはこれらの組み合わせ(野生型、またはその突然変異体/修飾体を含む)からなる群から選ばれる。
もう一つの好適な例において、前記IL-7受容体はIL-7Rαである。
【0027】
もう一つの好適な例において、Z2はIL-7Rαの細胞内ドメインである。
もう一つの好適な例において、前記Z2は配列番号7で示されるアミノ酸配列を有する。
【0028】
もう一つの好適な例において、前記シグナル変換タンパク質をコードするアミノ酸配列は、配列番号8における523-933番目、配列番号9における523-908番目、配列番号10における523-936番目、配列番号11における523-911番目、配列番号16における937-1347番目、配列番号17における937-1350番目、配列番号19、配列番号20または配列番号21で示されるものである、本発明の第一の側面に記載の工学的改変免疫細胞である。
【0029】
もう一つの好適な例において、キメラ抗原受容体T細胞(CAR-T細胞)であって、以下の一つまたは複数の特徴を有するCAR-T細胞を提供する:
(a) 前記細胞は、腫瘍細胞の表面マーカーを標的とする、キメラ抗原受容体CARを発現する;ならびに
(b) 前記CAR-T細胞は、誘導剤に接触すると、シグナル変換タンパク質の発現を誘導する。
【0030】
もう一つの好適な例において、前記CAR細胞では、CARとシグナルタンパク質はタンデム発現によるものである。
もう一つの好適な例において、前記CAR細胞では、CARとシグナルタンパク質はそれぞれ独立に発現されるものである。
【0031】
もう一つの好適な例において、前記「活性化」とはCARと腫瘍細胞の表面マーカーの結合である。
もう一つの好適な例において、前記「腫瘍の表面マーカー」とは腫瘍の表面の特異的抗原である。
【0032】
もう一つの好適な例において、前記キメラ抗原受容体CARは前記工学的改変免疫細胞の細胞膜に局在化する。
もう一つの好適な例において、前記キメラ抗原受容体CARは前記CAR-T細胞の細胞膜に局在化する。
もう一つの好適な例において、前記シグナル変換タンパク質は前記CAR-T細胞の細胞膜に局在化する。
【0033】
本発明の第二の側面では、本発明の第一の側面に記載の工学的改変免疫細胞を製造する方法であって、以下の工程を含む方法を提供する:
(a) 改変される免疫細胞を提供する工程;ならびに
(b) 前記免疫細胞を改変することにより、前記免疫細胞が前記CAR分子および外因性のシグナル変換タンパク質を発現するようにさせることで、本発明の第一の側面に記載の工学的改変免疫細胞を得る工程。
【0034】
もう一つの好適な例において、工程(b)は、
(b1) 前記CARを発現する第一発現ベクターを前記免疫細胞を導入する工程;および(b2) シグナル変換タンパク質を発現する第二発現ベクターを前記免疫細胞を導入する工程を含み、
ここで、前記工程(b1)は工程(b2)の前、後、同時に、または交替で行われてもよい。
【0035】
もう一つの好適な例において、前記第一発現ベクターおよび第二発現ベクターは同様か異なる発現ベクターである。
もう一つの好適な例において、前記発現ベクターはウイルスベクター、プラスミドを含む。
【0036】
もう一つの好適な例において、前記CARは式IaまたはIbで示される構造を有する。
もう一つの好適な例において、工程(a)における改変される免疫細胞が既にCARを発現する場合、工程(b)に、(b2)シグナル変換タンパク質を発現する第二発現ベクターを前記免疫細胞に導入する工程が含まれる。
【0037】
もう一つの好適な例において、前記第一発現ベクターと第二発現ベクターの転写方向は同向(→→)、対向(→←)、背向(←→)である。
もう一つの好適な例において、前記第一発現ベクター、第二発現ベクターは同様か異なる発現ベクターに位置する。
もう一つの好適な例において、前記第一の発現ベクター、第二の発現ベクターは同一のベクターに位置する。
【0038】
もう一つの好適な例において、前記第一、第二発現ベクターが同一のベクターに位置する場合、前記第一と第二発現ベクターの間に、さらに、2A自己切断ペプチドを発現するための第三発現ベクターが含まれている。
もう一つの好適な例において、2A自己切断ペプチドはP2A、T2A、またはこれらの組み合わせである。
もう一つの好適な例において、前記ベクターはウイルスベクターで、好ましくは前記ウイルスベクターは直列に連結した第一および第二発現ベクターを含有する。
【0039】
もう一つの好適な例において、前記ベクターは、DNA、RNA、プラスミド、レンチウイルスベクター、アデノウイルスベクター、レトロウイルスベクター、トランスポゾン、ほかの遺伝子遷移系、またはこれらの組み合わせからなる群から選ばれる。
もう一つの好適な例において、前記ベクターはFUW系レンチウイルスベクターである。
【0040】
本発明の第三の側面では、本発明の第一の側面に記載の工学的改変免疫細胞と、薬学的に許容される担体、希釈剤または賦形剤とを含有する製剤を提供する。
もう一つの好適な例において、前記製剤は本発明に記載のCAR-T細胞と、薬学的に許容される担体、希釈剤または賦形剤とを含有する。
【0041】
もう一つの好適な例において、前記製剤は液体製剤である。
もう一つの好適な例において、前記製剤の剤形は注射剤を含む。
もう一つの好適な例において、前記製剤の中で、前記工学的改変免疫細胞(たとえば、CAR-T細胞)の濃度が1×103~1×108個細胞/mL、好ましくは1×104~1×107個細胞/mLである。
【0042】
本発明の第四の側面では、本発明の第一の側面に記載の工学的改変免疫細胞の使用であって、癌または腫瘍を予防および/または治療できる薬物または製剤の製造のための使用を提供する。
もう一つの好適な例において、本発明の第一の側面に記載のCAR-T細胞の使用であって、癌または腫瘍を予防および/または治療する薬物または製剤の製造のための使用を提供する。
【0043】
もう一つの好適な例において、前記製剤はCAR-T細胞と、薬学的に許容される担体、希釈剤または賦形剤とを含有する。
もう一つの好適な例において、前記腫瘍は、固形腫瘍、血液腫瘍、リンパ腫、またはこれらの組み合わせからなる群から選ばれる。
【0044】
もう一つの好適な例において、前記腫瘍はメソテリン、Claudin18.2、MUC1、GPC3、PSMA、Her2、5T4、EGFR、CD20、NY-ESO-1、またはこれらの組み合わせからなる群から選ばれるマーカーを発現する。
もう一つの好適な例において、前記腫瘍は、卵巣癌、肺癌、膵癌、肝臓癌、胃癌、乳癌、中皮腫などからなる群から選ばれる。
【0045】
本発明の第五の側面では、本発明の第一の側面に記載の工学的改変免疫細胞を製造するためのキットであって、容器と、容器内にある以下のものとを含有するキットを提供する:
(1) 前記CARを発現するための第一発現カセットを含有する第一核酸配列;および
(2) シグナル変換タンパク質を共発現するための第二発現カセットを含有する第二核酸配列。
【0046】
もう一つの好適な例において、本発明に記載のCAR-T細胞を製造するためのキットであって、容器と、容器内にある以下のものとを含有するキットを提供する:
(1) 前記CARを発現するための第一発現カセットを含有する第一核酸配列;および
(2) シグナル変換タンパク質を共発現するための第二発現カセットを含有する第二核酸配列。
【0047】
もう一つの好適な例において、前記第一、第二の核酸配列は独立したものか、または相互に連結したものである。
もう一つの好適な例において、前記第一、第二の核酸配列は同様の容器か、異なる容器に位置する。
【0048】
もう一つの好適な例において、前記第一、第二の核酸配列は同様のベクターか、異なるベクターに位置する。
もう一つの好適な例において、前記第一、第二の核酸配列は同一のベクターに位置する。
【0049】
もう一つの好適な例において、前記第一、第二核酸配列が同一のベクターに位置する場合、前記第一と第二核酸配列の間に、さらに、2A自己切断ペプチドを発現するための第三発現カセットを含有する第三核酸配列が含まれている。
もう一つの好適な例において、2A自己切断ペプチドはP2A、T2A、またはこれらの組み合わせである。
もう一つの好適な例において、前記ベクターはウイルスベクターで、好ましくは前記ウイルスベクターは直列に連結した第一および第二核酸配列を含有する。
【0050】
本発明の第六の側面では、組み換えのシグナル変換タンパク質であって、細胞膜に位置する膜タンパク質で、かつ免疫抑制性受容体の細胞外ドメイン、膜貫通領域(または膜貫通ドメイン)および免疫活性化受容体の細胞内ドメインを有する外因性のシグナル変換タンパク質を発現するタンパク質を提供する。
もう一つの好適な例において、前記シグナル変換タンパク質は本発明の第一の側面で定義された通りである。
【0051】
本発明の第七の側面では、本発明の第六の側面に記載のシグナル変換タンパク質をコードするヌクレオチド配列を提供する。
【0052】
本発明の第八の側面では、本発明の第七の側面に記載のヌクレオチド配列を含有するベクターを提供する。
【0053】
本発明の第九の側面では、本発明の第八の側面に記載のベクターを含有するか、あるいはゲノムに本発明の第七の側面に記載のヌクレオチド配列が組み込まれた宿主細胞を提供する。
【0054】
本発明の第十の側面では、本発明の第六の側面に記載のシグナル変換タンパク質を製造する方法であって、以下の工程を含むことを特徴とする方法を提供する:
(a)本発明の第九の側面に記載の宿主細胞を培養することで、本発明の第六の側面に記載のシグナル変換タンパク質を発現させる工程。
【0055】
もちろん、本発明の範囲内において、本発明の上記の各技術特徴および下記(たとえば実施例)の具体的に記述された各技術特徴は互いに組合せ、新しい、または好適な技術方案を構成できることが理解される。紙数に限りがあるため、ここで逐一説明しない。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【
図1A】
図1はMesoCAR01、02、03、04、09、10およびE1m1プラスミドがコードするタンパク質配列の概略図を示す。ここで、
図1Fを例とすると、CAR配列は下線で示され、T2Aは太字で、シグナルペプチドTGFBR2は斜体で、TGFBR2(TGFBRIIアイソフォームA NP_001020018.1)細胞外領域は強調符号(.)で示され、IL-7Rα(NP_002176.2)膜貫通領域は太字と下線で示され、IL-7Rα細胞内領域は二重下線で示される。
図1G-1Lは類似する手段で表示される。
【
図1B】
図1はMesoCAR01、02、03、04、09、10およびE1m1プラスミドがコードするタンパク質配列の概略図を示す。ここで、
図1Fを例とすると、CAR配列は下線で示され、T2Aは太字で、シグナルペプチドTGFBR2は斜体で、TGFBR2(TGFBRIIアイソフォームA NP_001020018.1)細胞外領域は強調符号(.)で示され、IL-7Rα(NP_002176.2)膜貫通領域は太字と下線で示され、IL-7Rα細胞内領域は二重下線で示される。
図1G-1Lは類似する手段で表示される。
【
図1C】
図1はMesoCAR01、02、03、04、09、10およびE1m1プラスミドがコードするタンパク質配列の概略図を示す。ここで、
図1Fを例とすると、CAR配列は下線で示され、T2Aは太字で、シグナルペプチドTGFBR2は斜体で、TGFBR2(TGFBRIIアイソフォームA NP_001020018.1)細胞外領域は強調符号(.)で示され、IL-7Rα(NP_002176.2)膜貫通領域は太字と下線で示され、IL-7Rα細胞内領域は二重下線で示される。
図1G-1Lは類似する手段で表示される。
【
図1D】
図1はMesoCAR01、02、03、04、09、10およびE1m1プラスミドがコードするタンパク質配列の概略図を示す。ここで、
図1Fを例とすると、CAR配列は下線で示され、T2Aは太字で、シグナルペプチドTGFBR2は斜体で、TGFBR2(TGFBRIIアイソフォームA NP_001020018.1)細胞外領域は強調符号(.)で示され、IL-7Rα(NP_002176.2)膜貫通領域は太字と下線で示され、IL-7Rα細胞内領域は二重下線で示される。
図1G-1Lは類似する手段で表示される。
【
図1E】
図1はMesoCAR01、02、03、04、09、10およびE1m1プラスミドがコードするタンパク質配列の概略図を示す。ここで、
図1Fを例とすると、CAR配列は下線で示され、T2Aは太字で、シグナルペプチドTGFBR2は斜体で、TGFBR2(TGFBRIIアイソフォームA NP_001020018.1)細胞外領域は強調符号(.)で示され、IL-7Rα(NP_002176.2)膜貫通領域は太字と下線で示され、IL-7Rα細胞内領域は二重下線で示される。
図1G-1Lは類似する手段で表示される。
【
図1F】
図1はMesoCAR01、02、03、04、09、10およびE1m1プラスミドがコードするタンパク質配列の概略図を示す。ここで、
図1Fを例とすると、CAR配列は下線で示され、T2Aは太字で、シグナルペプチドTGFBR2は斜体で、TGFBR2(TGFBRIIアイソフォームA NP_001020018.1)細胞外領域は強調符号(.)で示され、IL-7Rα(NP_002176.2)膜貫通領域は太字と下線で示され、IL-7Rα細胞内領域は二重下線で示される。
図1G-1Lは類似する手段で表示される。
【
図1G】
図1はMesoCAR01、02、03、04、09、10およびE1m1プラスミドがコードするタンパク質配列の概略図を示す。ここで、
図1Fを例とすると、CAR配列は下線で示され、T2Aは太字で、シグナルペプチドTGFBR2は斜体で、TGFBR2(TGFBRIIアイソフォームA NP_001020018.1)細胞外領域は強調符号(.)で示され、IL-7Rα(NP_002176.2)膜貫通領域は太字と下線で示され、IL-7Rα細胞内領域は二重下線で示される。
図1G-1Lは類似する手段で表示される。
【
図1H】
図1はMesoCAR01、02、03、04、09、10およびE1m1プラスミドがコードするタンパク質配列の概略図を示す。ここで、
図1Fを例とすると、CAR配列は下線で示され、T2Aは太字で、シグナルペプチドTGFBR2は斜体で、TGFBR2(TGFBRIIアイソフォームA NP_001020018.1)細胞外領域は強調符号(.)で示され、IL-7Rα(NP_002176.2)膜貫通領域は太字と下線で示され、IL-7Rα細胞内領域は二重下線で示される。
図1G-1Lは類似する手段で表示される。
【
図1I】
図1はMesoCAR01、02、03、04、09、10およびE1m1プラスミドがコードするタンパク質配列の概略図を示す。ここで、
図1Fを例とすると、CAR配列は下線で示され、T2Aは太字で、シグナルペプチドTGFBR2は斜体で、TGFBR2(TGFBRIIアイソフォームA NP_001020018.1)細胞外領域は強調符号(.)で示され、IL-7Rα(NP_002176.2)膜貫通領域は太字と下線で示され、IL-7Rα細胞内領域は二重下線で示される。
図1G-1Lは類似する手段で表示される。
【
図1J】
図1はMesoCAR01、02、03、04、09、10およびE1m1プラスミドがコードするタンパク質配列の概略図を示す。ここで、
図1Fを例とすると、CAR配列は下線で示され、T2Aは太字で、シグナルペプチドTGFBR2は斜体で、TGFBR2(TGFBRIIアイソフォームA NP_001020018.1)細胞外領域は強調符号(.)で示され、IL-7Rα(NP_002176.2)膜貫通領域は太字と下線で示され、IL-7Rα細胞内領域は二重下線で示される。
図1G-1Lは類似する手段で表示される。
【
図1K】
図1はMesoCAR01、02、03、04、09、10およびE1m1プラスミドがコードするタンパク質配列の概略図を示す。ここで、
図1Fを例とすると、CAR配列は下線で示され、T2Aは太字で、シグナルペプチドTGFBR2は斜体で、TGFBR2(TGFBRIIアイソフォームA NP_001020018.1)細胞外領域は強調符号(.)で示され、IL-7Rα(NP_002176.2)膜貫通領域は太字と下線で示され、IL-7Rα細胞内領域は二重下線で示される。
図1G-1Lは類似する手段で表示される。
【
図1L】
図1はMesoCAR01、02、03、04、09、10およびE1m1プラスミドがコードするタンパク質配列の概略図を示す。ここで、
図1Fを例とすると、CAR配列は下線で示され、T2Aは太字で、シグナルペプチドTGFBR2は斜体で、TGFBR2(TGFBRIIアイソフォームA NP_001020018.1)細胞外領域は強調符号(.)で示され、IL-7Rα(NP_002176.2)膜貫通領域は太字と下線で示され、IL-7Rα細胞内領域は二重下線で示される。
図1G-1Lは類似する手段で表示される。
【
図2】
図2はCAR-T表面タンパク質の発現(MSLN、TGFBR2、IL-15R)を示す。
【
図3】
図3は凍結・解凍後のCAR-T増殖率、生存率およびCAR陽性率を示す。
【
図4】
図4は体外瞬時殺傷(RTCA方法、ターゲット:OVCAR3およびHCC70)の効果を示す。
【
図5】
図5はpSTAT5シグナル伝達(+/- TGF-β1)の結果を示す。
【
図6】
図6はCAR-Tを標的細胞と共に培養した後、分析されたCAR-T細胞のアポトーシスの様子を示すが、図に示されたのはアネキシンV染色の結果である。
【
図7】
図7は体外薬効実験-複数回殺傷(A. 設計プラン、B. 殺傷率、C. CAR
+ T細胞陽性率,D. CAR
+ T細胞数)の効果を示す。
【
図8A】
図8は体外薬効実験-複数回殺傷(+TGF-β1 ターゲット:MDA-MB231-E10) (A. 設計プラン、B. 第四、五回持続体外殺傷実験:細胞殺傷率、陽性率および陽性細胞数、C. 異なるCAR-T細胞の複数回殺傷の場合の増殖率の比較、D. PD-1発現)の効果を示す。
【
図8B】
図8は体外薬効実験-複数回殺傷(+TGF-β1 ターゲット:MDA-MB231-E10) (A. 設計プラン、B. 第四、五回持続体外殺傷実験:細胞殺傷率、陽性率および陽性細胞数、C. 異なるCAR-T細胞の複数回殺傷の場合の増殖率の比較、D. PD-1発現)の効果を示す。
【
図8C】
図8は体外薬効実験-複数回殺傷(+TGF-β1 ターゲット:MDA-MB231-E10) (A. 設計プラン、B. 第四、五回持続体外殺傷実験:細胞殺傷率、陽性率および陽性細胞数、C. 異なるCAR-T細胞の複数回殺傷の場合の増殖率の比較、D. PD-1発現)の効果を示す。
【
図8D】
図8は体外薬効実験-複数回殺傷(+TGF-β1 ターゲット:MDA-MB231-E10) (A. 設計プラン、B. 第四、五回持続体外殺傷実験:細胞殺傷率、陽性率および陽性細胞数、C. 異なるCAR-T細胞の複数回殺傷の場合の増殖率の比較、D. PD-1発現)の効果を示す。
【
図9】
図9は体内薬効実験(OVCAR3)の効果を示す。TGIは腫瘍生長抑制(tumor growth inhibition)を表す。
【
図10A】
図10はそれぞれ異なる濃度のTGF-β1、TGF-β2、TGF-β3処理における、MesoCAR01、MesoCAR02およびMesoCAR05のTGFβ/Smadシグナル経路に対する抑制効果を示す。
【
図10B】
図10はそれぞれ異なる濃度のTGF-β1、TGF-β2、TGF-β3処理における、MesoCAR01、MesoCAR02およびMesoCAR05のTGFβ/Smadシグナル経路に対する抑制効果を示す。
【
図10C】
図10はそれぞれ異なる濃度のTGF-β1、TGF-β2、TGF-β3処理における、MesoCAR01、MesoCAR02およびMesoCAR05のTGFβ/Smadシグナル経路に対する抑制効果を示す。
【
図11A】
図11はそれぞれ異なる濃度のTGF-β1処理における、MesoCAR01、MesoCAR03、CAR11、CAR12およびCAR13のTGFβ/SmadおよびSTAT5シグナル伝達経路に対する作用効果を示す。
【
図11B】
図11はそれぞれ異なる濃度のTGF-β1処理における、MesoCAR01、MesoCAR03、CAR11、CAR12およびCAR13のTGFβ/SmadおよびSTAT5シグナル伝達経路に対する作用効果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0057】
本発明者は幅広く深く研究し、大量のスクリーニングを経て、初めて、CAR構造およびシグナル変換タンパク質(たとえば、CARの基本構造およびTGFBR2細胞外領域とIL-7Rα細胞内領域)をCAR-T細胞において共発現するようにできた。体内実験では、ドミナントネガティブ受容体TGFBR2の細胞外構造は、有効にTGF-βシグナル伝達を遮断または減少し、免疫抑制環境の影響からCAR-T細胞を保護することができ、IL-7Rα細胞内ドメインは、さらに、抑制シグナルをサイトカインシグナルに変換し、CAR-Tの増殖能力、疲弊程度および持続性を改善し、治療効果を向上させることができることが示された。
【0058】
既存技術と比較すると、本発明の免疫細胞はCARを介して標的抗原(たとえば、卵巣癌、肺癌、膵癌、乳癌んどの腫瘍細胞の表面の多くの標的抗原で、メソテリン、Claudin18.2、MUC1、GPC3、PSCA、Her2などを含むが、これらに限定されない)を認識することにより、固形腫瘍、血液腫瘍、リンパ腫などの病巣をターゲッティングすることができると同時に、シグナル変換タンパク質を介して、腫瘍微環境における免疫細胞の生存に不利なTGF-β免疫抑制因子の抑制シグナルをさらにサイトカイン活性化シグナルに変換し、免疫細胞の製造および腫瘍殺傷の持続作用を向上させ、腫瘍の再発を減少することができる。これに基づき、本発明を完成させた。
【0059】
本発明において、CAR-T細胞を例とし、代表的に本発明の工学的改変免疫細胞を詳しく説明する。本発明の工学的改変免疫細胞は、前記と後記のCAR-細胞に限定されないが、前記と後記のCAR-細胞と同様または類似の技術的特徴および有益な効果を有する。具体的に、免疫細胞がキメラ抗原受容体CARを発現する場合、NK細胞がT細胞と同等である(あるいは、T細胞をNK細胞に入れ替えてもよい)。
【0060】
用語
本開示が理解しやすくなるように、まず、一部の用語を定義する。本願に用いられるように、本明細書で別途に明確に規定しない限り、以下の用語はいずれも下記の意味を有する。
用語「約」とは当業者によって決定される特定の値または組成の許容される誤差範囲内にある値または組成で、それによって部分的にどのように値または組成を計量または測定するかというのが決まる。
【0061】
用語「投与」とは当業者に既知の様々な方法および送達システムの任意の一つによって本発明の製品を物理的に被験者に導入することで、静脈内、腫瘍内、筋肉内、皮下、腹膜内、脊髄またはほかの胃腸外の投与経路、たとえば注射または輸注によるものを含む。
【0062】
用語「膜貫通ドメイン」、「膜貫通領域」とは、膜タンパク質の細胞外ドメインと細胞内ドメインを連結する連結配列で、入れ替えて使用することができ、通常、当該膜貫通領域は全体または大半が細胞膜の中に位置する。よく見られる膜タンパク質の膜貫通領域は既知のものか、通常の方法によって同定することができる。
【0063】
用語「TGF-β受容体」、「TGF-βR」、「TGFBR」、「TGFBR受容体」とは、トランスフォーミング増殖因子-β受容体で、入れ替えて使用することができ、多くの細胞の表面にTGF-β受容体があり、I、II、III型と三つの形が存在し、その中では、I、II型TGF-βRはいずれも糖タンパク質で、III型受容体はプロテオグリカンである。
【0064】
抗体
本明細書で用いられるように、用語「抗体」(Ab)はグロブリンを含むが、これに限定されず、特異的に抗原に結合し、かつジスルフィド結合を介して互いに連結した少なくとも2本の重(H)鎖および2本の軽(L)鎖あるいはその抗原結合部分を含む。各H鎖は、重鎖可変領域(本明細書でVHと略する)および重鎖定常領域を含む。重鎖定常領域は、3つの定常ドメインCH1、CH2およびCH3を含む。各軽鎖は、軽鎖可変領域(本明細書でVLと略する)および軽鎖定常領域を含む。軽鎖定常領域は、1つの定常ドメインCLを含む。VHとVL領域はさらに相補性決定領域(CDR)と呼ばれる超可変領域に細分してもよく、これらはフレームワーク領域(FR)と呼ばれるより保存的な領域に散在している。各VHとVLは3つのCDRと4つのFRを含み、アミノ末端からカルボキシ末端までFR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4の順で並ぶ。重鎖と軽鎖の可変領域は抗原と相互作用する結合ドメインを含有する。
【0065】
抗原結合ドメイン
本明細書で用いられるように、「抗原結合ドメイン」、「一本鎖抗体断片」とはいずれも抗原結合活性を有するFab断片、Fab’断片、F(ab’)2断片、または単一のFv断片である。Fv抗体は抗体の重鎖可変領域、軽鎖可変領域を含有するが、定常領域がなく、かつすべての抗原結合部位を有する最小の抗体断片である。一般的に、Fv抗体はさらにVHとVLドメインの間のポリペプチドリンカーを含み、かつ抗原結合に必要な構造を形成することができる。抗原結合ドメインは、通常、scFv(single-chain variable fragment、一本鎖可変断片)である。一本鎖抗体は一本のヌクレオチド鎖によってコードされる一本のアミノ酸鎖配列が好ましい。
【0066】
腫瘍関連抗原
メソテリン(mesothelin、MSLN)を例とすると、メソテリンはよく見られる腫瘍関連抗原(TAA)である。文献では、メソテリンは卵巣癌、肺癌、膵癌および乳癌の細胞では高発現され、正常組織では限られた発現であるという報告がある。メソテリンを有効な免疫治療標的とし、その抗体およびメソテリンを標的とするキメラ抗原抗体などの免疫治療方法も報告されている。
【0067】
キメラ抗原受容体(CAR)
本明細書で用いられるように、キメラ免疫抗原受容体(Chimeric antigen receptor、CAR)は細胞外ドメイン、任意にヒンジ領域、膜貫通ドメイン、および細胞内ドメインを含む。細胞外ドメインは、任意にシグナルペプチドおよび標的特異的結合ドメイン(抗原結合ドメインとも呼ばれる)を含む。細胞内ドメインは、共刺激ドメインおよびCD3ζ鎖部分を含む。CARがT細胞において発現される場合、細胞外領域は特異的な抗原を認識し、さらに細胞内ドメインによって当該シグナルが伝達され、細胞の活性化・増殖、細胞溶解毒性およびサイトカイン、たとえば、IL-2やIFN-γなどの分泌を引き起こし、よって腫瘍細胞に生長を停止させるか、死亡させるか、あるいはほかの形で影響し、そして患者の腫瘍負荷の縮小および消失につながる。抗原結合ドメインは、共刺激分子およびCD3ζ鎖から由来する一つまたは複数の細胞内ドメインと融合することが好ましい。
【0068】
キメラ抗原受容体T細胞(CAR-T細胞)
本明細書で用いられるように、用語「CAR-T細胞」、「CAR-T」、「本発明のCAR-T細胞」とはいずれも本発明の第一の側面に記載のCAR-T細胞である。本発明のCAR-T細胞は、メソテリン、Claudin18.2、MUC1、GPC3、PSCA、Her2などを高発現する腫瘍、たとえば、卵巣癌、肺癌、膵癌、乳癌などの治療に有用である。
【0069】
CAR-T細胞はほかのT細胞に基づいた治療手段よりも以下の優勢がある。(1)CAR-T細胞の作用過程はMHCに制限されない。(2)多くの腫瘍細胞が同様の腫瘍抗体を発現するため、ある腫瘍抗原に対するCAR遺伝子の構築が完成されると、幅広く利用することが可能になる。(3)CARは腫瘍のタンパク質抗原も、糖脂質の非タンパク質抗原も利用できるため、腫瘍抗原の標的範囲が広がる。(4)患者の自家細胞を使用するため、拒絶反応のリスクが降下する。(5)CAR-T細胞は免疫記憶機能を有するため、長期間体内で生存することができる。
【0070】
キメラ抗原受容体NK細胞(CAR-NK細胞)
本明細書で用いられるように、用語「CAR-NK細胞」、「CAR-NK」、「本発明のCAR-NK細胞」とはいずれも本発明の第一の側面に記載のCAR-NK細胞である。本発明のCAR-NK細胞は、メソテリン、Claudin18.2、MUC1、GPC3、PSCA、Her2などを高発現する腫瘍、たとえば、卵巣癌、肺癌、膵癌、乳癌などの治療に有用である。
【0071】
ナチュラルキラー細胞(NK細胞)は主要な免疫エフェクター細胞で、非抗原特異的経路を介して生体をウイルス感染および腫瘍細胞の侵襲から守る。工学改変(遺伝子修飾)されたNK細胞により、特異的に腫瘍抗原を認識する能力および増強した抗腫瘍細胞傷害作用を含む新たな機能が得られる。
【0072】
自家CAR-T細胞と比べ、CAR-NK細胞はさらに以下の利点がある。たとえば、(1)パーフォリンおよびグランザイムを放出することによって直接細胞を殺傷するが、生体の正常細胞に殺傷作用がない。(2)僅かなサイトカインを放出するため、サイトカインストームのリスクが降下する。(3)体外で増幅して「既成の」製品になることが非常に容易である。それ以外、CAR-T細胞による治療と類似する。
【0073】
TGF-βおよびその受容体
本明細書で用いられるように、用語「TGF-β」とはトランスフォーミング増殖因子β(Transforming growth factor beta)である。なお、前記用語は野生型と突然変異型TGF-βを含む。本発明において、TGF-βはヒトおよび非ヒト哺乳動物のTGF-βを含む。
【0074】
本明細書で用いられるように、用語「TGF-β受容体」とはトランスフォーミング増殖因子β受容体(Transforming growth factor beta receptor)である。
【0075】
文献では、卵巣癌、乳癌および前立腺癌などの腫瘍細胞が大量のTGF-βサイトカインを分泌し、当該因子は免疫抑制因子として、明らかにT細胞の活性化・増殖を抑制し、そのTregへの分化を促進し、その効果機能を低下させることができることが既に実証された。
【0076】
シグナル変換タンパク質
本明細書で用いられるように、用語「シグナル変換タンパク質(signaling convertor、Scと略す)」、「シグナル変換受容体」、または「本発明のシグナル変換タンパク質」は入れ替えて使用することができ、タンデム発現のドミナントネガティブ受容体TGFBR2の細胞外ドメインおよびIL-7Rαタンパク質の細胞内エレメントで構成される融合タンパク質を指す。意外に、本発明のシグナル変換タンパク質は腫瘍微環境における免疫細胞の生存に不利なTGF-β免疫抑制因子の抑制シグナルをさらにサイトカイン活性化シグナルに変換し、免疫細胞の生存および腫瘍殺傷の持続作用を向上させ、免疫療法の効果を上げ、腫瘍の再発を減少することができる。
【0077】
TGFBR2細胞外ドメインのタイプおよび細胞外ドメインと細胞内ドメインを連結する膜貫通領域のタイプ、すなわち、式VにおけるZ1とTM2の組み合わせにより、シグナル変換タンパク質を異なるタイプまたはサブタイプに分ける。表1に示すように、Z1とTM2の組み合わせに基づき、代表的なタイプの一部は以下のものを含むが、これらに限定されない。
【表1】
【0078】
発現カセット
本明細書で用いられるように、「発現カセット」または「本発明の発現カセット」は第一発現カセットおよび第二発現カセットを含む。本発明の発現カセットは、本発明の第五の側面に記載のように、第一カセットは前記CARをコードする核酸配列を含む。前記第二発現カセットは外因性のシグナル変換タンパク質を発現する。
本発明において、シグナル変換タンパク質は構成的発現または誘導的発現でもよい。
【0079】
誘導的発現の場合、前記CAR-T細胞が相応する誘導剤によって活性化されると、第二発現カセットはシグナル変換タンパク質を発現し、そうすると、本発明のCAR-T細胞が相応する誘導剤と接触していない場合、第二発現カセットはシグナル変換タンパク質を発現しない。
一つの実施形態において、前記第一の発現カセットおよび第二の発現カセットはそれぞれプロモーターおよび/またはターミネーターを含む。第二発現カセットのプロモーターは構成型または誘導型プロモーターでもよい。
【0080】
ベクター
また、本発明は本発明の発現カセットを含有するベクターを提供する。レトロウイルス、たとえばレンチウイルス由来のベクターは長期間の遺伝子遷移を実現させる適切なツールで、それは導入された遺伝子が長期間で、安定して細胞ゲノムに組み込まれ、そして子細胞のゲノムの複製によって複製されるようにできるためである。レンチウイルスは、増殖しない細胞に形質導入することができ、かつ低免疫原性という利点があるため、発癌性レトロウイルス、たとえばマウス白血病ウイルスのベクターを超える利点を持つ。
【0081】
通常、本発明の発現カセットまたは核酸配列を通常の操作によってプロモーターの下流に連結し、そしてそれを発現ベクターに組み込むことができる。当該ベクターは真核細胞のゲノムに組み込まれて共に複製されることができる。典型的なクローニングベクターは、所期の核酸配列の発現を調節するのに使用できる転写と翻訳のターミネーター、開始配列およびプロモーターを含む。
【0082】
本発明の発現ベクターは標準の遺伝子送達プロトコールに供し、核酸免疫および遺伝子療法に使用することもできる。遺伝子送達の方法は、本分野では既知である。たとえば、米国特許番号5,399,346、5,580,859、5,589,466を参照し、ここで引用によって全文を取り込む。
【0083】
前記発現カセットまたは核酸配列は多くの種類のベクターにクローニングすることができる。たとえば、当該発現カセットまたは核酸配列がクローニングできるベクターは、プラスミド、ファージ、ファージ誘導体、動物ウイルスやコスミドを含むが、これらに限定されない。特定の注目されるベクターは、発現ベクター、複製ベクターなどを含む。
【0084】
さらに、発現ベクターはウイルスベクターの形態によって細胞に提供することができる。ウイルスベクターの技術は本分野公知のもので、そしてたとえばMolecular Cloning:A Laboratory Manual (Sambrookら、Cold Spring Harbor Laboratory、New York、2001)およびほかのウイルス学と分子生物学のマニュアルに記載されている。ベクターとして使用できるウイルスは、レトロウイルス、アデノウイルス、アデノ関連ウイルス、ヘルペスウイルスやレンチウイルスを含むが、これらに限定されない。通常、適切なベクターは少なくとも1種類の有機体において作用する複製開始点、プロモーター配列、便利な制限酵素切断部位および1つまたは複数の選択できるマーカーを含む(たとえば、WO01/96584、WO01/29058および米国特許番号6,326,193)。
【0085】
既に多くのウイルスに基づいたシステムが開発され、そして哺乳動物細胞の遺伝子形質導入に利用される。たとえば、レトロウイルスは、遺伝子送達システムのための便利なプラットホームを提供する。本分野で既知の技術によって選択された遺伝子をベクターに挿入してレトロウイルス顆粒にパッケージングすることができる。当該組み換えウイルスは、さらに分離されて体内または体外の対象細胞に送達されてもよい。多くのレトロウイルスシステムは本分野では既知である。一部の実施形態において、レンチウイルスベクターが使用される。多くのDNAウイルスシステムは本分野では既知である。一部の実施形態において、アデノウイルスベクターが使用される。多くのアデノウイルスベクターは本分野では既知である。
【0086】
付加のプロモーターエレメント、たとえばエンハンサーは転写が開始する頻度を調節することができる。通常、これらのエレメントは開始点の上流の30~110 bpの領域に位置するが、最近、多くのプロモーターは開始点の下流の機能エレメントも含むことが明らかになった。プロモーターエレメントの間の間隔は、エレメントが別のエレメントに対して逆さまになったか、移動した場合、プロモーターの機能が維持できるように、可動性のものが多い。チミジンキナーゼ(tk)プロモーターにおいて、プロモーターエレメントの間の間隔は、活性が低下することなく、50 bpまで増加することができる。プロモーターによって、単一のエレメントは共同にまたは独立に作用し、転写を開始させる。
【0087】
適切なプロモーターの一例は、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター配列である。当該プロモーター配列は操作可能にそれに連結した任意のポリヌクレオチド配列を高レベルで発現させることができる強力な構成型プロモーター配列である。適切なプロモーターのもう一例は、伸長因子1α(EF-1α)である。しかし、ほかの構成型プロモーター配列を使用してもよく、シミアンウイルス40(SV40)初期プロモーター、マウス乳癌ウイルス(MMTV)、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)長鎖末端反復(LTR)プロモーター、MoMuLVプロモーター、トリ白血病ウイルスプロモーター、エプスタイン・バールウイルス(Epstein-Barr virus、EBV)前初期プロモーター、ラウス肉腫ウイルスプロモーター、およびヒト遺伝子プロモーターを含むが、これらに限定されず、ヒト遺伝子プロモーターは、たとえばアクチンプロモーター、ミオシンプロモーター、ヘムプロモーターやクレアチンキナーゼプロモーターが挙げられるが、これらに限定されない。さらに、本発明は構成型プロモーターの使用に限定されない。誘導型プロモーターも本発明の一部として考えられる。誘導型プロモーターの使用は分子スイッチを提供し、必要な場合、誘導型プロモーターに連結したポリヌクレオチド配列の発現を開始させ、あるいは必要でない場合、発現を終止させることができる。誘導型プロモーターの例は、メタロチオネインプロモーター、糖質コルチコイドプロモーター、プロゲステロンプロモーターやテトラサイクリンプロモーターを含むが、これらに限定されない。
【0088】
細胞に導入された発現ベクターは選択できるマーカー遺伝子またはレポーター遺伝子のうちの任意の一方または両方を含むようにすることによって、ウイルスベクターで形質導入または感染された細胞群発現細胞を同定および選択することもできる。また、選択できるマーカーは単独のDNA断片に載せて共形質移入のプロセスに使用することができる。選択できるマーカー遺伝子およびレポーター遺伝子の両者の隣接する領域には、いずれも適切な調節配列を有することによって、宿主細胞において発現できるようにしてもよい。有用な選択できるマーカー遺伝子は、たとえば、抗生物質耐性遺伝子、たとえばネオマイシンなどを含む。
【0089】
遺伝子を細胞に導入する方法および細胞において遺伝子を発現させる方法は、本分野では既知である。発現ベクターの内容において、ベクターは本分野における任意の方法によって宿主細胞、たとえば、哺乳動物(たとえば、ヒトT細胞)、細菌、酵母や昆虫の細胞に容易に導入することができる。たとえば、発現ベクターは物理、化学または生物学の手段によって宿主細胞に導入することができる。
【0090】
ポリヌクレオチドを宿主細胞に導入する物理的方法は、リン酸カルシウム沈殿、カチオン複合体トランスフェクション法、リポフェクション法、粒子衝突、マイクロインジェクション、エレクトロポレーションなどを含む。ベクターおよび/または外来核酸を含む細胞を生産する方法は本分野では公知である。たとえば、Molecular Cloning:A Laboratory Manual (Sambrook等、Cold Spring Harbor Laboratory、New York、2001)を参照する。ポリヌクレオチドを宿主細胞に導入する好適な方法は、リポフェクション法およびカチオン複合体ポリエチレンイミントランスフェクション法である。
【0091】
ポリヌクレオチドを宿主細胞に導入する生物学的方法は、DNAおよびRNAベクターを使用する方法を含む。ウイルスベクター、特にレトロウイルスベクターは、すでに最も幅広く使用される、遺伝子を哺乳動物、たとえばヒト細胞に挿入する方法になっている。ほかのウイルスベクターはレンチウイルス、ポックスウイルス、単純ヘルペスウイルスI、アデノウイルスやアデノ随伴ウイルスなどからのものでもよい。例えば、米国特許番号5,350,674および5,585,362を参照する。
【0092】
ポリヌクレオチドを宿主細胞に導入する化学的手段は、コロイド分散系、たとえば大分子複合体、ナノカプセル、マイクロスフェア、ビーズ、および水中油型乳剤、ミセル、混合ミセル、やリポソームを含む脂質に基づいた系を含む。体外および体内の送達ビヒクル(delivery vehicle)として使用される例示的なコロイド系はリポソーム(たとえば、人工膜小胞)である。
【0093】
非ウイルス送達系を使用する場合、例示的な送達ビヒクルはリポソームである。脂質製剤を使用し、核酸を宿主細胞に導入することが考えられる(体外、エクスビボ(ex vivo)または体内)。また、当該核酸は脂質と関連してもよい。脂質と関連した核酸は、リポソームの水性の内部に封入し、リポソームの脂質二重層に散在し、リポソームとオリゴヌクレオチドの両者に連結する連結分子を介してリポソームに接着し、リポソームに取り込まれ、リポソームと複合体化し、脂質を含む溶液に分散し、脂質と混合し、脂質と配合し、懸濁液として脂質に含まれ、ミセルに含まれるか、ミセルと複合体化し、あるいはほかの形態で脂質と結合することができる。組成物と関連する脂質、脂質/DNAまたは脂質/発現ベクターは溶液における具体的な構造のいずれにも限定されない。簡単に溶液に分散し、大きさや形状が異なる集合体を形成してもよい。脂質は脂肪系物質で、天然の脂質でも合成の脂質でもよい。たとえば、脂質は細胞質で自然に発生する脂肪小滴、ならびに長鎖脂肪族炭化水素およびその誘導体、たとえば脂肪酸、アルコール類、アミン類、アミノアルコール類やアルデヒド類のような化合物を含む。
【0094】
本発明の一つの好適な実施形態において、前記ベクターはレンチウイルスベクターである。
【0095】
製剤
本発明は、本発明の第一の側面に記載の工学的改変免疫細胞(たとえばCAR-T細胞と)、薬学的に許容される担体、希釈剤または賦形剤とを含有する製剤を提供する。一つの実施形態において、前記製剤は液体製剤である。好ましくは、前記製剤は注射剤である。好ましくは、前記製剤で、前記CAR-T細胞の濃度が1×103~1×108細胞/mL、より好ましくは1×104~1×107細胞/mLである。
【0096】
一つの実施形態において、前記製剤は、緩衝液、たとえば中性緩衝食塩水、硫酸塩緩衝食塩水など、炭水化物、たとえばブドウ糖、マンノース、ショ糖やデキストラン、マンニトール、タンパク質、ポリペプチドまたはアミノ酸、たとえばグリシン、酸化防止剤、キレート剤、たとえばEDTAやグルタチオン、アジュバント(たとえば、水酸化アルミニウム)、および防腐剤を含んでもよい。本発明の製剤は、静脈内で施用するように調製することが好ましい。
【0097】
治療的使用
本発明は、本発明の発現カセットを含むベクター(たとえば、レンチウイルスベクター)で形質導入された細胞(たとえば、T細胞)で行われる治療的使用を含む。形質導入された細胞は、腫瘍細胞の表面のマーカーでをターゲッティングし、そしてシグナル変換タンパク質を発現し、協同してその腫瘍細胞に対する殺傷効率を顕著に向上させることができる。
【0098】
そのため、本発明は、哺乳動物腫瘍細胞群または組織を標的とするT細胞による免疫応答を刺激する方法であって、哺乳動物に本発明のCAR-T細胞を施用する工程を含む方法も提供する。
【0099】
一つの実施形態において、本発明は、患者の自己T細胞(または異系ドナー)を分離し、活性化させて遺伝子改変し、CAR-T細胞が生成した後、同患者の体内に注入する細胞療法を含む。このような方法では、移植片対宿主反応の発生確率が極めて低く、抗原がT細胞によってMHCに拘束されずに認識される。また、一つのCAR-Tで当該抗原を発現するすべての癌を治療することができる。抗体療法と異なり、CAR-T細胞は体内で複製可能で、持続的に腫瘍を抑える長期間の持久性が生じる。
【0100】
一つの実施形態において、本発明のCAR-T細胞は安定した体内増殖を経て数か月から数年の時間で持続することができる。また、CARによる免疫応答は養子免疫療法の工程の一部でもよく、ここで、CAR-T細胞はCAR抗原結合ドメインによって認識される抗原を高発現する腫瘍細胞に対する特異的な免疫応答を誘導することができる。たとえば、本発明のCAR-T細胞はNKG2Dリガンドを高発現する腫瘍細胞に対する特異的な免疫応答を引き起こす。
【0101】
治療可能な癌は、血管新生がしていない腫瘍または血管新生が基本的にしていない腫瘍、および血管新生がした腫瘍を含む。本発明のCARで治療する癌の種類は、卵巣癌、肺癌、膵癌、肝臓癌、胃癌、乳癌などを含むが、これらに限定されない。
【0102】
通常、本明細書に記載のように、活性化および増殖された細胞は腫瘍などの疾患の治療および予防に使用することができる。そのため、本発明は、癌を治療する方法であって、それが必要な対象に治療有効量の本発明のCAR-T細胞を投与する工程を含む方法を提供する。
【0103】
本発明のCAR-T細胞は単独で投与するか、あるいは薬物組成物として希釈剤および/またはほかの成分、たとえばIL-2、IL-17やほかのサイトカインまたは細胞群と合わせて施用することができる。簡単に言えば、本発明の薬物組成物は、本明細書に記載の標的細胞群を含み、一つまたは複数の薬学または生理学的に許容される担体、希釈剤または賦形剤と合わせてもよい。
【0104】
本発明の薬物組成物は、治療(または予防)が必要な疾患に適する形態によって施用することができる。施用の数量および頻度は、患者の病症、および患者の疾患の種類と重篤度などの要素によって決まるか、臨床試験によって決定する。
【0105】
「免疫学的な有効量」、「抗腫瘍有効量」、「腫瘍抑制有効量」または「治療量」と記載する場合、施用される本発明の組成物の精確な量は、患者(対象)の年齢、体重、腫瘍の大きさ、感染または転移の程度および病症の個体差を考慮し、医師によって決められる。本明細書に記載のT細胞を含む薬物組成物は、104~109個細胞/kg体重の投与量、好ましくは105~107個細胞/kg体重の投与量(範囲内におけるすべての整数値を含む)で施用することができる。T細胞の組成物はこれらの投与量で数回施用してもよい。細胞は、免疫療法で公知の注入技術(たとえばRosenbergら,NewEng.J. of Med.319:1676,1988)によって施用することができる。具体的な患者対する最適な投与量および治療プランは、医学分野の技術者により、患者の疾患の状況をモニタリングすることで容易に決定し、そしてそれによって治療を調整することができる。
【0106】
対象への組成物の投与は噴霧法、注射、経口、輸液、植込みまたは移植を含む任意の便利な手段によって行ってもよい。本明細書に記載の組成物は皮下、皮内、腫瘍内、節内、脊髄内、筋肉内、静脈内注射または腹膜内で患者に施用されてもよい。一つの実施形態において、本発明のT細胞の組成物は皮内または皮下注射によって患者に施用される。もう一つの実施形態において、本発明のT細胞の組成物は静脈内注射によって施用することが好ましい。T細胞の組成物は直接腫瘍、リンパ節または感染の箇所に注入してもよい。
【0107】
本発明の一部の実施形態において、本明細書に記載の方法または本分野で既知のほかのT細胞を治療的レベルに増殖させる方法によって活性化および増殖した細胞を使用し、任意の数量の関連治療手段と合わせて(たとえば、その前、同時またはその後に)患者に施用し、前記治療手段は、抗ウイルス療法、シドフォビルおよびインターロイキン-2、アザシチジン(ARA-Cとして知られる)のような試薬で治療するもの、あるいはMS患者に対するナタリズマブによる治療または乾癬患者に対するエファリズマブによる治療またはPML患者に対するほかの治療を含むが、これらに限定されない。さらなる実施形態において、本発明のT細胞は、化学治療、放射線、免疫抑制剤、たとえばシクロスポリンA、アザチオプリン、メトトレキセート、ミコフェノール酸モフェチルやFK506、抗体またはほかの免疫治療剤と併用することができる。さらなる実施形態において、本発明の細胞組成物は、骨髄移植、化学治療剤、たとえばフルダラビン、外部光線放射線療法(XRT)、シクロホスファミドと併用して(たとえば、その前、同時またはその後に)患者に施用する。たとえば、一つの実施形態において、対象は高投与量の化学治療の後、末梢血幹細胞移植してもよい。一部の実施形態において、移植後、対象は本発明の増殖した免疫細胞の注入を受ける。別の一つの実施形態において、増殖した細胞は外科手術前または外科手術後に施用される。
【0108】
患者に施用する以上の治療の投与量は治療する病症の精確な属性および治療するレシピエントによって変わる。ヒトへ施用する投与量の比率は本分野で許容される実践によって実施することができる。通常、1回の治療または1回の治療クールに、1×105個~1×1010個の本発明の修飾されたT細胞を、たとえば静脈輸液の手段によって、患者に施用することができる。
【0109】
本発明の主な利点
1.本発明の免疫細胞は同時にCARおよびシグナル変換タンパク質を含有することで、より効率的に免疫細胞を活性化させることができる。
2.本発明のシグナル変換タンパク質は、有効にTGF-β免疫抑制因子のT細胞に対する抑制シグナル(TGF-βのT細胞増殖抑制およびアポトーシス誘導などを含む)を遮断または減少すると同時に、これに基づいてさらにTGF-β免疫抑制シグナルをサイトカイン活性化シグナルに変換することで、CAR-T細胞の体内における生存時間を延長し、そして有効に持続的に腫瘍細胞を殺傷し、腫瘍の再発を減少することができる。
3.シグナル変換タンパク質を含有しないCAR-T細胞と比較すると、本発明の免疫細胞は抗原に刺激されると、低発現の疲弊性タンパク質PD-1を示し、腫瘍治療において現れる免疫抑制が減少し、免疫細胞の生存時間が明らかに延長し、治療効果がより良い。
4.本発明のCAR-T細胞が共発現する変換タンパク質の細胞内はほかの外因性組み換えタンパク質の細胞内ドメイン(たとえば、IL-15R、IL-12Rα、IL-2Rα、IL-18R、IL-21Rなど)でもよく、TGFβ免疫抑制シグナルを活性化シグナルに変換し、そして相応する機能を発揮することができる。
5.細胞外TGFBR2およびIL-7Rα細胞内領域を含有するシグナル変換タンパク質を例とすると、それ自身が抑制を活性化に変換すると同時に、ほかの外因性組み換えタンパク質(たとえば、IL-15突然変異体-IL-15Ra融合タンパク質、mbIL-15、IL-12p40、IL-2、IL-18、IL-21など)と共に免疫細胞に導入し、相応する機能を発揮し、そしてCAR構造の機能に干渉せず、たとえば、CAR-T細胞の増幅、生存率および陽性率に不利な影響がなく、ひいては促進作用がある。
【0110】
以下、具体的な実施例によって、さらに本発明を説明する。これらの実施例は本発明を説明するために用いられるものだけで、本発明の範囲の制限にはならないと理解されるものである。下記実施例で具体的な条件が示されていない実験方法は、通常、たとえばSambrookら、「モレキュラー・クローニング:研究室マニュアル」(ニューヨーク、コールド・スプリング・ハーバー研究所出版社、1989) に記載の条件などの通常の条件に、あるいは、メーカーのお薦めの条件に従う。特に説明しない限り、百分率および部は重量百分率および重量部である。
【0111】
材料と方法
CAR分子およびその構造
実施例において、構築されるCAR分子はいずれもMeso-CAR、すなわち、メソテリンを標的とするCAR分子である。Meso-CAR分子の構成は、以下の構造か選ばれる:シグナルペプチド[SPと略す]、メソテリンを標的とする一本鎖可変ドメイン[P4scFvと略す]、CD8ヒンジ領域[CD8Hと略す]およびCD28膜貫通ドメイン[28TMDと略す]、CD28共刺激シグナルドメイン[28CSDと略す]、CD3ζ細胞内シグナル伝達配列[CD3ζと略す]、2A自己切断ペプチド(P2A、T2A、またはこれらの組み合わせ)、シグナル変換タンパク質[Sc型と略す](Sc1型、Sc2型、Sc3型、Sc4型)、免疫抑制性受容体のシグナルペプチド配列(TGFBR2 SP)、免疫抑制性受容体の細胞外ドメイン(TGFBR2 isoA、TGFBR2 isoB)、ほかの外因性組み換えタンパク質IL-15突然変異体-IL-15Ra融合タンパク質[IL-15m1/IL-15Raと略す]の関連構造(IL-15m1/IL-15Ra SP:IgE、IL-15m1、連結ペプチドリンカー、IL-15Ra)、またはこれらの組み合わせ。
【0112】
ここで、対照である第二世代の何らのサイトカインも発現しないMeso-CAR分子をMesoCARと名付けた。
第二世代のMeso-CAR分子に基づいてさらにIL-15突然変異体-IL-15Ra融合タンパク質を発現する第四世代のMeso-CAR分子をE1m1と名付けた。第二世代のMeso-CAR分子に基づいてさらにシグナル変換タンパク質、またはシグナル変換タンパク質の一部の構造のみを発現する第四世代のMeso-CAR分子は、そのアミノ末端からカルボキシ末端の構造におけるTGFBR2細胞外ドメインおよび細胞外ドメインと細胞内ドメインを連結する膜貫通領域のタイプ、すなわち、式VにおけるZ1とTM2の組み合わせにより、それぞれMesoCAR01~MesoCAR10と名付けられた。前記異なるタイプのCAR分子は、構造が具体的に実施例3における表2で示される。
【0113】
アミノ酸配列
配列番号1(Sエレメント:IL-15m1-IL-15Ra)
MDWTWILFLVAAATRVHSNWVNVISDLKKIEDLIQSMHIDATLYTESDVHPSCKVTAMKCFLLELQVISLESGDASIHDTVENLIILANDSLSSNGNVTESGCKECEELEEKNIKEFLQSFVHIVQMFINTSSGGGSGGGGSGGGGSGGGGSGGGSLQITCPPPMSVEHADIWVKSYSLYSRERYICNSGFKRKAGTSSLTECVLNKATNVAHWTTPSLKCIRDPALVHQRPAPPSTVTTAGVTPQPESLSPSGKEPAASSPSSNNTAATTAAIVPGSQLMPSKSPSTGTTEISSHESSHGTPSQTTAKNWELTASASHQPPGVYPQGHSDTTVAISTSTVLLCGLSAVSLLACYLKSRQTPPLASVEMEAMEALPVTWGTSSRDEDLENCSHHL
【0114】
配列番号2(L2エレメント:TGFBR2受容体のシグナルペプチド配列)
MGRGLLRGLWPLHIVLWTRIAS
【0115】
配列番号3(Z1エレメント:TGFBR2受容体アイソフォームA由来の細胞外ドメイン)
TIPPHVQKSDVEMEAQKDEIICPSCNRTAHPLRHINNDMIVTDNNGAVKFPQLCKFCDVRFSTCDNQKSCMSNCSITSICEKPQEVCVAVWRKNDENITLETVCHDPKLPYHDFILEDAASPKCIMKEKKKPGETFFMCSCSSDECNDNIIFSEEYNTSNPDLLLVIFQ
【0116】
配列番号4(Z1エレメント:TGFBR2受容体アイソフォームB由来の細胞外ドメイン)
TIPPHVQKSVNNDMIVTDNNGAVKFPQLCKFCDVRFSTCDNQKSCMSNCSITSICEKPQEVCVAVWRKNDENITLETVCHDPKLPYHDFILEDAASPKCIMKEKKKPGETFFMCSCSSDECNDNIIFSEEYNTSNPDLLLVIFQ
【0117】
配列番号5(TM2エレメント:IL-7Rα由来の膜貫通領域)
PILLTISILSFFSVALLVILACVLW
【0118】
配列番号6(TM2エレメント:IL-7Rα突然変異体由来の膜貫通領域)
PILLTCPTISILSFFSVALLVILACVLW
【0119】
配列番号7(Z2エレメント:IL-7Rαの細胞内ドメイン)
KKRIKPIVWPSLPDHKKTLEHLCKKPRKNLNVSFNPESFLDCQIHRVDDIQARDEVEGFLQDTFPQQLEESEKQRLGGDVQSPNCPSEDVVITPESFGRDSSLTCLAGNVSACDAPILSSSRSLDCRESGKNGPHVYQDLLLSLGTTNSTLPPPFSLQSGILTLNPVAQGQPILTSLGSNQEEAYVTMSSFYQNQ
【0120】
配列番号8(MesoCAR01のアミノ酸配列)
MALPVTALLLPLALLLHAARPQVQLQQSGPGLVTPSQTLSLTCAISGDSVSSNSATWNWIRQSPSRGLEWLGRTYYRSKWYNDYAVSVKSRMSINPDTSKNQFSLQLNSVTPEDTAVYYCARGMMTYYYGMDVWGQGTTVTVSSGILGSGGGGSGGGGSGGGGSQPVLTQSSSLSASPGASASLTCTLRSGINVGPYRIYWYQQKPGSPPQYLLNYKSDSDKQQGSGVPSRFSGSKDASANAGVLLISGLRSEDEADYYCMIWHSSAAVFGGGTQLTVLTTTPAPRPPTPAPTIASQPLSLRPEACRPAAGGAVHTRGLDFACDFWVLVVVGGVLACYSLLVTVAFIIFWVRSKRSRLLHSDYMNMTPRRPGPTRKHYQPYAPPRDFAAYRSRVKFSRSADAPAYQQGQNQLYNELNLGRREEYDVLDKRRGRDPEMGGKPRRKNPQEGLYNELQKDKMAEAYSEIGMKGERRRGKGHDGLYQGLSTATKDTYDALHMQALPPREGRGSLLTCGDVEENPGPMGRGLLRGLWPLHIVLWTRIASTIPPHVQKSDVEMEAQKDEIICPSCNRTAHPLRHINNDMIVTDNNGAVKFPQLCKFCDVRFSTCDNQKSCMSNCSITSICEKPQEVCVAVWRKNDENITLETVCHDPKLPYHDFILEDAASPKCIMKEKKKPGETFFMCSCSSDECNDNIIFSEEYNTSNPDLLLVIFQPILLTISILSFFSVALLVILACVLWKKRIKPIVWPSLPDHKKTLEHLCKKPRKNLNVSFNPESFLDCQIHRVDDIQARDEVEGFLQDTFPQQLEESEKQRLGGDVQSPNCPSEDVVITPESFGRDSSLTCLAGNVSACDAPILSSSRSLDCRESGKNGPHVYQDLLLSLGTTNSTLPPPFSLQSGILTLNPVAQGQPILTSLGSNQEEAYVTMSSFYQNQ
【0121】
配列番号9(MesoCAR02のアミノ酸配列)
MALPVTALLLPLALLLHAARPQVQLQQSGPGLVTPSQTLSLTCAISGDSVSSNSATWNWIRQSPSRGLEWLGRTYYRSKWYNDYAVSVKSRMSINPDTSKNQFSLQLNSVTPEDTAVYYCARGMMTYYYGMDVWGQGTTVTVSSGILGSGGGGSGGGGSGGGGSQPVLTQSSSLSASPGASASLTCTLRSGINVGPYRIYWYQQKPGSPPQYLLNYKSDSDKQQGSGVPSRFSGSKDASANAGVLLISGLRSEDEADYYCMIWHSSAAVFGGGTQLTVLTTTPAPRPPTPAPTIASQPLSLRPEACRPAAGGAVHTRGLDFACDFWVLVVVGGVLACYSLLVTVAFIIFWVRSKRSRLLHSDYMNMTPRRPGPTRKHYQPYAPPRDFAAYRSRVKFSRSADAPAYQQGQNQLYNELNLGRREEYDVLDKRRGRDPEMGGKPRRKNPQEGLYNELQKDKMAEAYSEIGMKGERRRGKGHDGLYQGLSTATKDTYDALHMQALPPREGRGSLLTCGDVEENPGPMGRGLLRGLWPLHIVLWTRIASTIPPHVQKSVNNDMIVTDNNGAVKFPQLCKFCDVRFSTCDNQKSCMSNCSITSICEKPQEVCVAVWRKNDENITLETVCHDPKLPYHDFILEDAASPKCIMKEKKKPGETFFMCSCSSDECNDNIIFSEEYNTSNPDLLLVIFQPILLTISILSFFSVALLVILACVLWKKRIKPIVWPSLPDHKKTLEHLCKKPRKNLNVSFNPESFLDCQIHRVDDIQARDEVEGFLQDTFPQQLEESEKQRLGGDVQSPNCPSEDVVITPESFGRDSSLTCLAGNVSACDAPILSSSRSLDCRESGKNGPHVYQDLLLSLGTTNSTLPPPFSLQSGILTLNPVAQGQPILTSLGSNQEEAYVTMSSFYQNQ
【0122】
配列番号10(MesoCAR03のアミノ酸配列)
MALPVTALLLPLALLLHAARPQVQLQQSGPGLVTPSQTLSLTCAISGDSVSSNSATWNWIRQSPSRGLEWLGRTYYRSKWYNDYAVSVKSRMSINPDTSKNQFSLQLNSVTPEDTAVYYCARGMMTYYYGMDVWGQGTTVTVSSGILGSGGGGSGGGGSGGGGSQPVLTQSSSLSASPGASASLTCTLRSGINVGPYRIYWYQQKPGSPPQYLLNYKSDSDKQQGSGVPSRFSGSKDASANAGVLLISGLRSEDEADYYCMIWHSSAAVFGGGTQLTVLTTTPAPRPPTPAPTIASQPLSLRPEACRPAAGGAVHTRGLDFACDFWVLVVVGGVLACYSLLVTVAFIIFWVRSKRSRLLHSDYMNMTPRRPGPTRKHYQPYAPPRDFAAYRSRVKFSRSADAPAYQQGQNQLYNELNLGRREEYDVLDKRRGRDPEMGGKPRRKNPQEGLYNELQKDKMAEAYSEIGMKGERRRGKGHDGLYQGLSTATKDTYDALHMQALPPREGRGSLLTCGDVEENPGPMGRGLLRGLWPLHIVLWTRIASTIPPHVQKSDVEMEAQKDEIICPSCNRTAHPLRHINNDMIVTDNNGAVKFPQLCKFCDVRFSTCDNQKSCMSNCSITSICEKPQEVCVAVWRKNDENITLETVCHDPKLPYHDFILEDAASPKCIMKEKKKPGETFFMCSCSSDECNDNIIFSEEYNTSNPDLLLVIFQPILLTCPTISILSFFSVALLVILACVLWKKRIKPIVWPSLPDHKKTLEHLCKKPRKNLNVSFNPESFLDCQIHRVDDIQARDEVEGFLQDTFPQQLEESEKQRLGGDVQSPNCPSEDVVITPESFGRDSSLTCLAGNVSACDAPILSSSRSLDCRESGKNGPHVYQDLLLSLGTTNSTLPPPFSLQSGILTLNPVAQGQPILTSLGSNQEEAYVTMSSFYQNQ
【0123】
配列番号11(MesoCAR04のアミノ酸配列)
MALPVTALLLPLALLLHAARPQVQLQQSGPGLVTPSQTLSLTCAISGDSVSSNSATWNWIRQSPSRGLEWLGRTYYRSKWYNDYAVSVKSRMSINPDTSKNQFSLQLNSVTPEDTAVYYCARGMMTYYYGMDVWGQGTTVTVSSGILGSGGGGSGGGGSGGGGSQPVLTQSSSLSASPGASASLTCTLRSGINVGPYRIYWYQQKPGSPPQYLLNYKSDSDKQQGSGVPSRFSGSKDASANAGVLLISGLRSEDEADYYCMIWHSSAAVFGGGTQLTVLTTTPAPRPPTPAPTIASQPLSLRPEACRPAAGGAVHTRGLDFACDFWVLVVVGGVLACYSLLVTVAFIIFWVRSKRSRLLHSDYMNMTPRRPGPTRKHYQPYAPPRDFAAYRSRVKFSRSADAPAYQQGQNQLYNELNLGRREEYDVLDKRRGRDPEMGGKPRRKNPQEGLYNELQKDKMAEAYSEIGMKGERRRGKGHDGLYQGLSTATKDTYDALHMQALPPREGRGSLLTCGDVEENPGPMGRGLLRGLWPLHIVLWTRIASTIPPHVQKSVNNDMIVTDNNGAVKFPQLCKFCDVRFSTCDNQKSCMSNCSITSICEKPQEVCVAVWRKNDENITLETVCHDPKLPYHDFILEDAASPKCIMKEKKKPGETFFMCSCSSDECNDNIIFSEEYNTSNPDLLLVIFQPILLTCPTISILSFFSVALLVILACVLWKKRIKPIVWPSLPDHKKTLEHLCKKPRKNLNVSFNPESFLDCQIHRVDDIQARDEVEGFLQDTFPQQLEESEKQRLGGDVQSPNCPSEDVVITPESFGRDSSLTCLAGNVSACDAPILSSSRSLDCRESGKNGPHVYQDLLLSLGTTNSTLPPPFSLQSGILTLNPVAQGQPILTSLGSNQEEAYVTMSSFYQNQ
【0124】
配列番号12(MesoCAR05のアミノ酸配列)
MALPVTALLLPLALLLHAARPQVQLQQSGPGLVTPSQTLSLTCAISGDSVSSNSATWNWIRQSPSRGLEWLGRTYYRSKWYNDYAVSVKSRMSINPDTSKNQFSLQLNSVTPEDTAVYYCARGMMTYYYGMDVWGQGTTVTVSSGILGSGGGGSGGGGSGGGGSQPVLTQSSSLSASPGASASLTCTLRSGINVGPYRIYWYQQKPGSPPQYLLNYKSDSDKQQGSGVPSRFSGSKDASANAGVLLISGLRSEDEADYYCMIWHSSAAVFGGGTQLTVLTTTPAPRPPTPAPTIASQPLSLRPEACRPAAGGAVHTRGLDFACDFWVLVVVGGVLACYSLLVTVAFIIFWVRSKRSRLLHSDYMNMTPRRPGPTRKHYQPYAPPRDFAAYRSRVKFSRSADAPAYQQGQNQLYNELNLGRREEYDVLDKRRGRDPEMGGKPRRKNPQEGLYNELQKDKMAEAYSEIGMKGERRRGKGHDGLYQGLSTATKDTYDALHMQALPPREGRGSLLTCGDVEENPGPMGRGLLRGLWPLHIVLWTRIASTIPPHVQKSDVEMEAQKDEIICPSCNRTAHPLRHINNDMIVTDNNGAVKFPQLCKFCDVRFSTCDNQKSCMSNCSITSICEKPQEVCVAVWRKNDENITLETVCHDPKLPYHDFILEDAASPKCIMKEKKKPGETFFMCSCSSDECNDNIIFSEEYNTSNPDLLLVIFQ
【0125】
配列番号13(MesoCAR06のアミノ酸配列)
MALPVTALLLPLALLLHAARPQVQLQQSGPGLVTPSQTLSLTCAISGDSVSSNSATWNWIRQSPSRGLEWLGRTYYRSKWYNDYAVSVKSRMSINPDTSKNQFSLQLNSVTPEDTAVYYCARGMMTYYYGMDVWGQGTTVTVSSGILGSGGGGSGGGGSGGGGSQPVLTQSSSLSASPGASASLTCTLRSGINVGPYRIYWYQQKPGSPPQYLLNYKSDSDKQQGSGVPSRFSGSKDASANAGVLLISGLRSEDEADYYCMIWHSSAAVFGGGTQLTVLTTTPAPRPPTPAPTIASQPLSLRPEACRPAAGGAVHTRGLDFACDFWVLVVVGGVLACYSLLVTVAFIIFWVRSKRSRLLHSDYMNMTPRRPGPTRKHYQPYAPPRDFAAYRSRVKFSRSADAPAYQQGQNQLYNELNLGRREEYDVLDKRRGRDPEMGGKPRRKNPQEGLYNELQKDKMAEAYSEIGMKGERRRGKGHDGLYQGLSTATKDTYDALHMQALPPREGRGSLLTCGDVEENPGPMGRGLLRGLWPLHIVLWTRIASTIPPHVQKSVNNDMIVTDNNGAVKFPQLCKFCDVRFSTCDNQKSCMSNCSITSICEKPQEVCVAVWRKNDENITLETVCHDPKLPYHDFILEDAASPKCIMKEKKKPGETFFMCSCSSDECNDNIIFSEEYNTSNPDLLLVIFQ
【0126】
配列番号14(MesoCAR07のアミノ酸配列)
MALPVTALLLPLALLLHAARPQVQLQQSGPGLVTPSQTLSLTCAISGDSVSSNSATWNWIRQSPSRGLEWLGRTYYRSKWYNDYAVSVKSRMSINPDTSKNQFSLQLNSVTPEDTAVYYCARGMMTYYYGMDVWGQGTTVTVSSGILGSGGGGSGGGGSGGGGSQPVLTQSSSLSASPGASASLTCTLRSGINVGPYRIYWYQQKPGSPPQYLLNYKSDSDKQQGSGVPSRFSGSKDASANAGVLLISGLRSEDEADYYCMIWHSSAAVFGGGTQLTVLTTTPAPRPPTPAPTIASQPLSLRPEACRPAAGGAVHTRGLDFACDFWVLVVVGGVLACYSLLVTVAFIIFWVRSKRSRLLHSDYMNMTPRRPGPTRKHYQPYAPPRDFAAYRSRVKFSRSADAPAYQQGQNQLYNELNLGRREEYDVLDKRRGRDPEMGGKPRRKNPQEGLYNELQKDKMAEAYSEIGMKGERRRGKGHDGLYQGLSTATKDTYDALHMQALPPRATNFSLLKQAGDVEENPGPMDWTWILFLVAAATRVHSNWVNVISDLKKIEDLIQSMHIDATLYTESDVHPSCKVTAMKCFLLELQVISLESGDASIHDTVENLIILANDSLSSNGNVTESGCKECEELEEKNIKEFLQSFVHIVQMFINTSSGGGSGGGGSGGGGSGGGGSGGGSLQITCPPPMSVEHADIWVKSYSLYSRERYICNSGFKRKAGTSSLTECVLNKATNVAHWTTPSLKCIRDPALVHQRPAPPSTVTTAGVTPQPESLSPSGKEPAASSPSSNNTAATTAAIVPGSQLMPSKSPSTGTTEISSHESSHGTPSQTTAKNWELTASASHQPPGVYPQGHSDTTVAISTSTVLLCGLSAVSLLACYLKSRQTPPLASVEMEAMEALPVTWGTSSRDEDLENCSHHLEGRGSLLTCGDVEENPGPMGRGLLRGLWPLHIVLWTRIASTIPPHVQKSDVEMEAQKDEIICPSCNRTAHPLRHINNDMIVTDNNGAVKFPQLCKFCDVRFSTCDNQKSCMSNCSITSICEKPQEVCVAVWRKNDENITLETVCHDPKLPYHDFILEDAASPKCIMKEKKKPGETFFMCSCSSDECNDNIIFSEEYNTSNPDLLLVIFQ
【0127】
配列番号15(MesoCAR08のアミノ酸配列)
MALPVTALLLPLALLLHAARPQVQLQQSGPGLVTPSQTLSLTCAISGDSVSSNSATWNWIRQSPSRGLEWLGRTYYRSKWYNDYAVSVKSRMSINPDTSKNQFSLQLNSVTPEDTAVYYCARGMMTYYYGMDVWGQGTTVTVSSGILGSGGGGSGGGGSGGGGSQPVLTQSSSLSASPGASASLTCTLRSGINVGPYRIYWYQQKPGSPPQYLLNYKSDSDKQQGSGVPSRFSGSKDASANAGVLLISGLRSEDEADYYCMIWHSSAAVFGGGTQLTVLTTTPAPRPPTPAPTIASQPLSLRPEACRPAAGGAVHTRGLDFACDFWVLVVVGGVLACYSLLVTVAFIIFWVRSKRSRLLHSDYMNMTPRRPGPTRKHYQPYAPPRDFAAYRSRVKFSRSADAPAYQQGQNQLYNELNLGRREEYDVLDKRRGRDPEMGGKPRRKNPQEGLYNELQKDKMAEAYSEIGMKGERRRGKGHDGLYQGLSTATKDTYDALHMQALPPRATNFSLLKQAGDVEENPGPMDWTWILFLVAAATRVHSNWVNVISDLKKIEDLIQSMHIDATLYTESDVHPSCKVTAMKCFLLELQVISLESGDASIHDTVENLIILANDSLSSNGNVTESGCKECEELEEKNIKEFLQSFVHIVQMFINTSSGGGSGGGGSGGGGSGGGGSGGGSLQITCPPPMSVEHADIWVKSYSLYSRERYICNSGFKRKAGTSSLTECVLNKATNVAHWTTPSLKCIRDPALVHQRPAPPSTVTTAGVTPQPESLSPSGKEPAASSPSSNNTAATTAAIVPGSQLMPSKSPSTGTTEISSHESSHGTPSQTTAKNWELTASASHQPPGVYPQGHSDTTVAISTSTVLLCGLSAVSLLACYLKSRQTPPLASVEMEAMEALPVTWGTSSRDEDLENCSHHLEGRGSLLTCGDVEENPGPGRGLLRGLWPLHIVLWTRIASTIPPHVQKSVNNDMIVTDNNGAVKFPQLCKFCDVRFSTCDNQKSCMSNCSITSICEKPQEVCVAVWRKNDENITLETVCHDPKLPYHDFILEDAASPKCIMKEKKKPGETFFMCSCSSDECNDNIIFSEEYNTSNPDLLLVIFQ
【0128】
配列番号16(MesoCAR09のアミノ酸配列)
MALPVTALLLPLALLLHAARPQVQLQQSGPGLVTPSQTLSLTCAISGDSVSSNSATWNWIRQSPSRGLEWLGRTYYRSKWYNDYAVSVKSRMSINPDTSKNQFSLQLNSVTPEDTAVYYCARGMMTYYYGMDVWGQGTTVTVSSGILGSGGGGSGGGGSGGGGSQPVLTQSSSLSASPGASASLTCTLRSGINVGPYRIYWYQQKPGSPPQYLLNYKSDSDKQQGSGVPSRFSGSKDASANAGVLLISGLRSEDEADYYCMIWHSSAAVFGGGTQLTVLTTTPAPRPPTPAPTIASQPLSLRPEACRPAAGGAVHTRGLDFACDFWVLVVVGGVLACYSLLVTVAFIIFWVRSKRSRLLHSDYMNMTPRRPGPTRKHYQPYAPPRDFAAYRSRVKFSRSADAPAYQQGQNQLYNELNLGRREEYDVLDKRRGRDPEMGGKPRRKNPQEGLYNELQKDKMAEAYSEIGMKGERRRGKGHDGLYQGLSTATKDTYDALHMQALPPRATNFSLLKQAGDVEENPGPMDWTWILFLVAAATRVHSNWVNVISDLKKIEDLIQSMHIDATLYTESDVHPSCKVTAMKCFLLELQVISLESGDASIHDTVENLIILANDSLSSNGNVTESGCKECEELEEKNIKEFLQSFVHIVQMFINTSSGGGSGGGGSGGGGSGGGGSGGGSLQITCPPPMSVEHADIWVKSYSLYSRERYICNSGFKRKAGTSSLTECVLNKATNVAHWTTPSLKCIRDPALVHQRPAPPSTVTTAGVTPQPESLSPSGKEPAASSPSSNNTAATTAAIVPGSQLMPSKSPSTGTTEISSHESSHGTPSQTTAKNWELTASASHQPPGVYPQGHSDTTVAISTSTVLLCGLSAVSLLACYLKSRQTPPLASVEMEAMEALPVTWGTSSRDEDLENCSHHLEGRGSLLTCGDVEENPGPMGRGLLRGLWPLHIVLWTRIASTIPPHVQKSDVEMEAQKDEIICPSCNRTAHPLRHINNDMIVTDNNGAVKFPQLCKFCDVRFSTCDNQKSCMSNCSITSICEKPQEVCVAVWRKNDENITLETVCHDPKLPYHDFILEDAASPKCIMKEKKKPGETFFMCSCSSDECNDNIIFSEEYNTSNPDLLLVIFQPILLTISILSFFSVALLVILACVLWKKRIKPIVWPSLPDHKKTLEHLCKKPRKNLNVSFNPESFLDCQIHRVDDIQARDEVEGFLQDTFPQQLEESEKQRLGGDVQSPNCPSEDVVITPESFGRDSSLTCLAGNVSACDAPILSSSRSLDCRESGKNGPHVYQDLLLSLGTTNSTLPPPFSLQSGILTLNPVAQGQPILTSLGSNQEEAYVTMSSFYQNQ
【0129】
配列番号17(MesoCAR10のアミノ酸配列)
MALPVTALLLPLALLLHAARPQVQLQQSGPGLVTPSQTLSLTCAISGDSVSSNSATWNWIRQSPSRGLEWLGRTYYRSKWYNDYAVSVKSRMSINPDTSKNQFSLQLNSVTPEDTAVYYCARGMMTYYYGMDVWGQGTTVTVSSGILGSGGGGSGGGGSGGGGSQPVLTQSSSLSASPGASASLTCTLRSGINVGPYRIYWYQQKPGSPPQYLLNYKSDSDKQQGSGVPSRFSGSKDASANAGVLLISGLRSEDEADYYCMIWHSSAAVFGGGTQLTVLTTTPAPRPPTPAPTIASQPLSLRPEACRPAAGGAVHTRGLDFACDFWVLVVVGGVLACYSLLVTVAFIIFWVRSKRSRLLHSDYMNMTPRRPGPTRKHYQPYAPPRDFAAYRSRVKFSRSADAPAYQQGQNQLYNELNLGRREEYDVLDKRRGRDPEMGGKPRRKNPQEGLYNELQKDKMAEAYSEIGMKGERRRGKGHDGLYQGLSTATKDTYDALHMQALPPRATNFSLLKQAGDVEENPGPMDWTWILFLVAAATRVHSNWVNVISDLKKIEDLIQSMHIDATLYTESDVHPSCKVTAMKCFLLELQVISLESGDASIHDTVENLIILANDSLSSNGNVTESGCKECEELEEKNIKEFLQSFVHIVQMFINTSSGGGSGGGGSGGGGSGGGGSGGGSLQITCPPPMSVEHADIWVKSYSLYSRERYICNSGFKRKAGTSSLTECVLNKATNVAHWTTPSLKCIRDPALVHQRPAPPSTVTTAGVTPQPESLSPSGKEPAASSPSSNNTAATTAAIVPGSQLMPSKSPSTGTTEISSHESSHGTPSQTTAKNWELTASASHQPPGVYPQGHSDTTVAISTSTVLLCGLSAVSLLACYLKSRQTPPLASVEMEAMEALPVTWGTSSRDEDLENCSHHLEGRGSLLTCGDVEENPGPMGRGLLRGLWPLHIVLWTRIASTIPPHVQKSDVEMEAQKDEIICPSCNRTAHPLRHINNDMIVTDNNGAVKFPQLCKFCDVRFSTCDNQKSCMSNCSITSICEKPQEVCVAVWRKNDENITLETVCHDPKLPYHDFILEDAASPKCIMKEKKKPGETFFMCSCSSDECNDNIIFSEEYNTSNPDLLLVIFQPILLTCPTISILSFFSVALLVILACVLWKKRIKPIVWPSLPDHKKTLEHLCKKPRKNLNVSFNPESFLDCQIHRVDDIQARDEVEGFLQDTFPQQLEESEKQRLGGDVQSPNCPSEDVVITPESFGRDSSLTCLAGNVSACDAPILSSSRSLDCRESGKNGPHVYQDLLLSLGTTNSTLPPPFSLQSGILTLNPVAQGQPILTSLGSNQEEAYVTMSSFYQNQ
【0130】
配列番号18(E1m1のアミノ酸配列)
MALPVTALLLPLALLLHAARPQVQLQQSGPGLVTPSQTLSLTCAISGDSVSSNSATWNWIRQSPSRGLEWLGRTYYRSKWYNDYAVSVKSRMSINPDTSKNQFSLQLNSVTPEDTAVYYCARGMMTYYYGMDVWGQGTTVTVSSGILGSGGGGSGGGGSGGGGSQPVLTQSSSLSASPGASASLTCTLRSGINVGPYRIYWYQQKPGSPPQYLLNYKSDSDKQQGSGVPSRFSGSKDASANAGVLLISGLRSEDEADYYCMIWHSSAAVFGGGTQLTVLTTTPAPRPPTPAPTIASQPLSLRPEACRPAAGGAVHTRGLDFACDFWVLVVVGGVLACYSLLVTVAFIIFWVRSKRSRLLHSDYMNMTPRRPGPTRKHYQPYAPPRDFAAYRSRVKFSRSADAPAYQQGQNQLYNELNLGRREEYDVLDKRRGRDPEMGGKPRRKNPQEGLYNELQKDKMAEAYSEIGMKGERRRGKGHDGLYQGLSTATKDTYDALHMQALPPRGSGATNFSLLKQAGDVEENPGPMDWTWILFLVAAATRVHSNWVNVISDLKKIEDLIQSMHIDATLYTESDVHPSCKVTAMKCFLLELQVISLESGDASIHDTVENLIILANDSLSSNGNVTESGCKECEELEEKNIKEFLQSFVHIVQMFINTSSGGGSGGGGSGGGGSGGGGSGGGSLQITCPPPMSVEHADIWVKSYSLYSRERYICNSGFKRKAGTSSLTECVLNKATNVAHWTTPSLKCIRDPALVHQRPAPPSTVTTAGVTPQPESLSPSGKEPAASSPSSNNTAATTAAIVPGSQLMPSKSPSTGTTEISSHESSHGTPSQTTAKNWELTASASHQPPGVYPQGHSDTTVAISTSTVLLCGLSAVSLLACYLKSRQTPPLASVEMEAMEALPVTWGTSSRDEDLENCSHHL
【0131】
配列番号19(CAR11のアミノ酸配列)
MGRGLLRGLWPLHIVLWTRIASTIPPHVQKSDVEMEAQKDEIICPSCNRTAHPLRHINNDMIVTDNNGAVKFPQLCKFCDVRFSTCDNQKSCMSNCSITSICEKPQEVCVAVWRKNDENITLETVCHDPKLPYHDFILEDAASPKCIMKEKKKPGETFFMCSCSSDECNDNIIFSEECKPDHGYWSAWSPATFIQIPSDFTMNDTTVWISVAVLSAVICLIIVWAVALKKRIKPIVWPSLPDHKKTLEHLCKKPRKNLNVSFNPESFLDCQIHRVDDIQARDEVEGFLQDTFPQQLEESEKQRLGGDVQSPNCPSEDVVITPESFGRDSSLTCLAGNVSACDAPILSSSRSLDCRESGKNGPHVYQDLLLSLGTTNSTLPPPFSLQSGILTLNPVAQGQPILTSLGSNQEEAYVTMSSFYQNQ
【0132】
配列番号20(CAR12のアミノ酸配列)
MGRGLLRGLWPLHIVLWTRIASTIPPHVQKSDVEMEAQKDEIICPSCNRTAHPLRHINNDMIVTDNNGAVKFPQLCKFCDVRFSTCDNQKSCMSNCSITSICEKPQEVCVAVWRKNDENITLETVCHDPKLPYHDFILEDAASPKCIMKEKKKPGETFFMCSCSSDECNDNIIFSEEKVRSIPDHYFKGFWSEWSPSYYFRTPEINNSSGEMDPILLTISILSFFSVALLVILACVLWKKRIKPIVWPSLPDHKKTLEHLCKKPRKNLNVSFNPESFLDCQIHRVDDIQARDEVEGFLQDTFPQQLEESEKQRLGGDVQSPNCPSEDVVITPESFGRDSSLTCLAGNVSACDAPILSSSRSLDCRESGKNGPHVYQDLLLSLGTTNSTLPPPFSLQSGILTLNPVAQGQPILTSLGSNQEEAYVTMSSFYQNQ
【0133】
配列番号21(CAR13のアミノ酸配列)
MALPVTALLLPLALLLHAARPQLCKFCDVRFSTCDNQKSCMSNCSITSICEKPQEVCVAVWRKNDENITLETVCHDPKLPYHDFILEDAASPKCIMKEKKKPGETFFMCSCSSDECNDNIIFSEEYNTSNPDLLLVIFQSDHLVLGLSAVLGLLLLRWQFPAHYRRLRHALWPSLPDLHRVLGQYLRDTAALSPPKATVSDTCEEVEPSLLEILPKSSERTPLPLLEARDEVEGFLQDTFPQQLEESEKQRLGGDVQSPNCPSEDVVITPESFGRDSSLTCLAGNVSACDAPILSSSRSLDCRESGKNGPHVYQDLLLSLGTTNSTLPPPFSLQSGILTLNPVAQGQPILTSLGSNQEEAYVTMSSFYQNQSRSDPKPENPACPWTVLPAGDLPTHDGYLPSNIDDLPSHEAPLADSLEELEPQ
【0134】
配列番号22(TM2エレメント:PRLR由来の膜貫通領域)
CKPDHGYWSAWSPATFIQIPSDFTMNDTTVWISVAVLSAVICLIIVWAVAL
【0135】
配列番号23(TM2エレメント:IL-7R由来の細胞外領域の一部および膜貫通領域)
KVRSIPDHYFKGFWSEWSPSYYFRTPEINNSSGEMDPILLTISILSFFSVALLVILACVLW
【0136】
配列番号24(TM2エレメント:TPOR由来の膜貫通領域の一部)
SDHLVLGLSAVLGLLLL
【0137】
実施例1 ドナー血液からのPBMC分離およびT細胞増幅
末梢血から単核球を分離し、Ficollで密度勾配遠心を行い、そしてT細胞(Pan T kit、ミルテニー)を濃縮し、CD3/CD28磁気ビーズで細胞を活性化培養および増幅し、細胞培養系はx-vivo 15(5% FBS、300IU/mL rhIL-2)を使用し、細胞培養は37℃、5% CO2インキュベーターにおいて連続培養を行った。
【0138】
実施例2 細胞培養および構築
MSLNを発現する細胞系:OVCAR3(ヒト卵巣癌細胞系、ATCC HTB-161)、HCC70(ヒト乳癌細胞系)。培地はATCCに従って調製された。
【0139】
実施例3 CAR構造の設計と形質導入
本発明は第二世代のMeso-CAR分子に基づいて第四世代のMeso-CAR分子を構築し、Meso-CAR、すなわち、メソテリンを標的とするCAR構造は、基本構造がシグナルペプチド、P4 scFV(特異的にヒトメソテリンを標的とする)、CD8ヒンジ領域、CD28膜貫通領域、CD28共刺激シグナルドメインを含み、異なる細胞内領域の共刺激シグナルを使用し、計10種類のMeso-CARを構築し、その具体的な構造の構成は表2に示す。
【表2】
【0140】
ここで、前記CAR分子はそのアミノ末端からカルボキシ末端の具体的な構造が以下の通りである。
MESOCARは、SP、P4scFv、CD8H、28TMD、28CSD、CD3ζが順に直列に連結して構成する。
【0141】
E1m1は、SP、P4scFv、CD8H、28TMD、28CSD、CD3ζ、P2A、IL-15m1/IL-15Ra SP:IgE、IL-15m1、Linker、IL-15Raが順に直列に連結して構成する。
【0142】
MesoCAR01は、SP、P4scFv、CD8H、28TMD、28CSD、CD3ζ、T2A、Sc1型が順に直列に連結して構成する。
MesoCAR02は、SP、P4scFv、CD8H、28TMD、28CSD、CD3ζ、T2A、Sc2型が順に直列に連結して構成する。
【0143】
MesoCAR03は、SP、P4scFv、CD8H、28TMD、28CSD、CD3ζ、T2A、Sc3型が順に直列に連結して構成する。
MesoCAR04は、SP、P4scFv、CD8H、28TMD、28CSD、CD3ζ、T2A、Sc4型が順に直列に連結して構成する。
【0144】
MesoCAR05は、SP、P4scFv、CD8H、28TMD、28CSD、CD3ζ、T2A、TGFBR2 SP、TGFBR2 isoAが順に直列に連結して構成する。
MesoCAR06は、SP、P4scFv、CD8H、28TMD、28CSD、CD3ζ、T2A、TGFBR2 SP、TGFBR2 isoBが順に直列に連結して構成する。
【0145】
MesoCAR07は、SP、P4scFv、CD8H、28TMD、28CSD、CD3ζ、T2A、TGFBR2 SP、TGFBR2 isoA、P2A、IL-15m1/IL-15Ra SP:IgE、IL-15m1、Linker、IL-15Raが順に直列に連結して構成する。
MesoCAR08は、SP、P4scFv、CD8H、28TMD、28CSD、CD3ζ、T2A、TGFBR2 SP、TGFBR2 isoB、T2A、IL-15m1/IL-15Ra SP:IgE、IL-15m1、Linker、IL-15Raが順に直列に連結して構成する。
【0146】
MesoCAR09は、SP、P4scFv、CD8H、28TMD、28CSD、CD3ζ、P2A、IL-15m1/IL-15Ra SP:IgE、IL-15m1、Linker、IL-15Ra、T2A、Sc1型が順に直列に連結して構成する。
MesoCAR10は、SP、P4scFv、CD8H、28TMD、28CSD、CD3ζ、P2A、IL-15m1/IL-15Ra SP:IgE、IL-15m1、Linker、IL-15Ra、T2A、Sc3型が順に直列に連結して構成する。
【0147】
CAR11は、SP、VHH、CD8H、28TMD、28CSD、CD3ζ、T2A/P2A、TGFBR2 SP、TGFBR2 isoA、PRTR膜貫通領域、IL-7R細胞内領域が順に直列に連結して構成する。
CAR12は、SP、VHH、CD8H、28TMD、28CSD、CD3ζ、T2A/P2A、TGFBR2 SP、TGFBR2 isoA、IL-7Rα膜貫通領域(WSXWSを含む)、IL-7R細胞内領域が順に直列に連結して構成する。
【0148】
CAR13は、SP、VHH、CD8H、28TMD、28CSD、CD3ζ、T2A/P2A、TGFBR2 SP、TGFBR2 isoB、TPOR膜貫通領域、IL-7Rα細胞内領域が順に直列に連結して構成する。
ここで、2A自己切断ペプチドP2A、T2Aは入れ替えて使用することができる。
【0149】
以上のMeso-CAR遺伝子をそれぞれレンチウイルスベクターにクローニングし、レンチウイルスパッケージングプラスミドpMD2.G(Addgene、プラスミド#12259)およびpsPAX2(Addgene、プラスミド#12260)と共にPEI形質導入試薬で293T細胞に導入し、ベクターを発現させ、それぞれ48時間と72時間でウイルスを収集し、超遠心濃縮した後、感染させてT細胞を活性化させた。
【0150】
実施例4 CAR-T細胞の調製―レンチウイルス感染、CAR陽性率検出および体外増殖
初代T細胞を48時間活性化させた後、それぞれ実施例3における濃縮されたレンチウイルスを入れ、細胞に感染させて72時間後、CAR陽性率を検出し、それぞれMSLN抗原、TGFBR2およびIL-15R抗体で検出した。
フローサイトメトリーの結果は
図2に示すように、4種類のCAR-T細胞はCAR発現がいずれも10%以上で、MesoCAR01、MesoCAR02およびMesoCAR10 CAR細胞はいずれも表面に同時にTGFBR2およびMSLN CARを発現し、中では、MesoCAR10 CAR細胞は表面に同時にTGFBR2、IL-15RおよびMSLN CARを発現した。
【0151】
形質移入後、T細胞を37℃、5%CO
2インキュベーターにおいて連続培養し、培地はx-vivo15+300IU IL-2+5%FBSを使用し、1日ごとに追加し、Day10で細胞を収穫した。細胞を冷凍保存した後、再生させ、続いて培養し、2~3日ごとにCAR陽性率、生存率および計数を測定し、CAR陽性細胞の増殖率を計算し、実験結果は
図3に示すように、再生後Day0-Day7で、MESOCARとシグナル変換タンパク質を発現するMesoCAR01はCAR-T細胞の増幅、細胞生存率およびCAR陽性率に明らかな差がなかった。
【0152】
実施例5 細胞体外殺傷
実施例4で収穫されたT細胞に対して体外殺傷実験を行った。RTCA方法により、CAR-T細胞を標的細胞と共に3:1、1:1、1:3でインキュベートし、連続1~2日で培養し、リアルタイムで標的細胞の生長状況を記録し、細胞の生存率を検出し、CAR-T細胞の殺傷効率を得た。
結果は
図4に示すように、CAR-T細胞MesoCAR01、MESOCARをそれぞれ腫瘍細胞OVCAR3またはHCC70と共に培養した時(E:T=3:1,1:1,1:3)、殺傷に明らかな差がなかった。無形質導入T細胞(NT)をそれぞれ腫瘍細胞OVCAR3またはHCC70と共に培養した時(E:T=3:1,1:1,1:3)、腫瘍細胞に対して明らかな殺傷がなかった。
【0153】
実施例6 pSTAT5
実施例4で収穫されたT細胞に対して体外殺傷実験を行い、CAR-T細胞を標的細胞OVCAR3と共にE:T=1:1で時間インキュベートし、培養過程において2群に分け、それぞれTGF-β1添加/不添加群で、FACSによって各群の細胞内におけるpSTAT5の発現を検出し、その平均MFI値を計数した。結果は
図5に示すように、TGF-β1がある場合、MesoCAR01のpSTAT5の発現は明らかに上方調節したが、一方、MesoCAR05のpSTAT5の発現は明らかな変化がなかった。MesoCAR01 CAR-TはTGF-β1で0.5時間処理した後、pSTAT5シグナル経路が明らかに活性化されたが、一方、MesoCAR05は細胞内においてサイトカイン伝達シグナルが発現されなかったため、そのpSTAT5シグナル経路が活性化されなかったことが示された。
【0154】
実施例7 アネキシンV染色
実施例4で収穫されたT細胞に対して体外殺傷実験を行い、CAR-T細胞を標的細胞(MDA-MB231)と共に1:2でインキュベートし、連続3日で培養し、培養過程において2群に分け、それぞれTGF-β1添加/不添加群で、CAR-T細胞のアポトーシスの状況を検出した。結果は
図6に示すように、アネキシンVと7-AAD二重陰性細胞で、MesoCAR01 CAR-Tは生細胞の比率が最も高く、80%で、異なる濃度のTGF-βを入れ、その生存率も明らかな変化がなかったが、MESOCAR群では、TGF-β1によって誘導されたアポトーシス細胞がTGF-β濃度に従って向上し、アポトーシス細胞が明らかに増えた。
【0155】
実施例8 体外薬効研究―複数回殺傷
実施例4で収穫されたT細胞に対して体外複数回殺傷実験を行った。実験方法は概略図(
図7A)を参照し、CAR-T細胞を標的細胞と共に1:3でインキュベートし、連続3日で培養し、顕微鏡において標的細胞の生長状況を観察し、共インキュベートの4日目に、半分の細胞を取ってT細胞の表現型および細胞数を検出し、トリプシンで標的細胞を消化した後、計数してCAR-T細胞の殺傷効率=(対照群-実験群)/対照群*100%を得たが、残りの半分の細胞を続いて新たな標的細胞と共に培養し、上記方法によって連続複数回で殺傷させた。
結果は
図7Bに示すように、各群のCAR-TをOVCAR3と共に培養した場合(E:T=1:3)、MesoCAR01は第3回の連続培養後、明らかな殺傷の優勢を示したが、
図7C、7Dに示すように、MesoCAR01は安定したCAR
+ T細胞陽性率および持続的な細胞増幅率を示した。
【0156】
実施例9 体外薬効研究―TGF-βの存在下における複数回殺傷
実施例4で収穫されたT細胞に対して体外複数回殺傷実験を行った。実験プランは
図8Aに示す。CAR-T細胞を標的細胞と共に1:5でインキュベートし、培養過程において異なる濃度の組み換えTGF-βを入れ、2日に1回追加し、連続3日で培養し、リアルタイムに標的細胞生長状況を記録し、共インキュベートの4日目に、半分の細胞を取ってT細胞の表現型、細胞数を検出し、トリプシンで標的細胞を消化した後、計数してCAR-T細胞の殺傷効率=(対照群-実験群)/対照群*100%を得たが、残りの半分の細胞を続いて標的細胞と共に培養し、上記方法によって連続複数回で殺傷させた。
【0157】
結果は
図8Bに示すように、各群のCAR-TをMDA-MB231-MSLN-E10(MDA-MB231細胞にMSLN発現プラスミドを形質移入し、MSLNを高発現する細胞系を構築した)と共に培養した場合(E:T=1:5)、MesoCAR01はの4回目(R4)、5回目(R5)の連続培養後、明らかな殺傷の優勢を示したが、
図8Bおよび8Cに示すように、安定したCAR陽性率および細胞増幅率を示した。
図8Dに示すように、MesoCAR01は1回目、4回目の連続殺傷後、PD-1の発現が明らかにMESOCARよりも低かった結果から、腫瘍治療に不利な免疫抑制作用がさらに低下したことが示された。
【0158】
実施例10 体内薬効研究
NODマウスを取り、5E6 OVCAR3細胞を皮下注射し、連続して腫瘍負荷を検出し、腫瘍が高速生長に達した時、群分けし、各群にマウス2-3匹で、群分けの1日後、尾静脈から200μLのDPBS/マウスと3E6 CAR-T/マウスを注射し、CAR-T注射からのDay1で、少量のマウス血を取ってCAR-T細胞の体内生存数を検出し、その後、週に1回血液をサンプリングし、CAR-T細胞の様々な表現型を検出し、週に2回皮下腫瘍の大きさを検出した。
【0159】
結果は
図9Aに示すように、対照群と比較すると、MESOCARとMesoCAR01細胞を注射したマウスは腫瘍負荷が明らかに減少し、中では、MESOCAR群のマウスはCAR-T注射から20日で、動物の腫瘍体積が回復し、MesoCAR01群は再発がなかった。
図9Bに示すように、CAR-Tを注射した後、MESOCARおよびMesoCAR01群は動物の体重に明らかな変化がなかった。
図9Cに示すように、腫瘍生長抑制率は、MESOCARとMesoCAR01細胞を注射したマウスは腫瘍抑制率が明らかに対照群(NT、ビヒクル)よりも高かった。
【0160】
実施例11 TGFβ/Smadシグナル伝達経路の検出
CAR発現プラスミドを二つのレポーター遺伝子ベクターpNL(NLucP/SBE-RE/Hygro)(TGFβシグナル経路調節エレメント付き)、およびpGL4.51[luc2/CMV/Neo](内部参照レポーター遺伝子)と293T細胞に共形質移入させた。
図10A~10Cに示すように、24時間後、それぞれ異なる濃度のTGF-β1、TGF-β2、TGF-β3を入れ、さらに20時間インキュベートし、Nano-GloR Dual-LuciferaseR Reporter Assay Systemに入れて検出し、光信号値を読み取り、二つの異なるアイソフォームのDNTGFBR2のTGFβ下流シグナルに対する抑制作用を比較した。
【0161】
実験結果から、それぞれ異なる濃度のTGF-β1、TGF-β2、TGF-β3処理において、同様の細胞内変換タンパクおよび細胞外を有し、異なるアイソフォームのTGFBR2受容体を有するMesoCAR01、MesoCAR02はいずれもTGFβ/Smadシグナル経路に対して明らかな抑制効果があったことが示された。中では、低濃度のTGF-β3(0.4-2ng/ml)処理の場合、MesoCAR01のTGFβ/Smadシグナル経路に対する抑制作用がMesoCAR02よりも優れた。
【0162】
実施例12 TGFβ/SmadおよびSTAT5シグナル伝達経路の検出
CAR発現プラスミドを二つのレポーター遺伝子ベクターpNL(NLucP/SBE-RE/Hygro)(TGFβシグナル経路調節エレメント付き)またはpNL(NLucP/STAT5-RE/Hygro)、およびpGL4.51[luc2/CMV/Neo](内部参照レポーター遺伝子)と293T細胞に共形質移入させた。
図11A~11Bに示すように、24時間後、それぞれ異なる濃度のTGF-β1を入れ、さらに5時間インキュベートし、Nano-GloR Dual-LuciferaseR Reporter Assay Systemに入れて検出し、光信号値を読み取り、異なる膜貫通配列のDNTGFBR2のTGFβ/STAT5下流シグナルに対する作用を比較した。
【0163】
実験結果から、
図11Aに示すように、高濃度のTGF-β1を添加した場合、CAR11、CAR12、CAR13はいずれもTGFβ/Smadシグナル経路に対して明らかな抑制作用があり、同時にSTAT5シグナル経路に対して活性化作用があったことが示された。中では、CAR13はTGFβ未添加の場合も、STAT5シグナル経路に対して活性化作用があった。
図11Bに示すように、高濃度のTGF-β1を添加した場合、MesoCAR01、MesoCAR03はいずれもTGFβ/Smadシグナル経路に対して明らかな抑制作用があり、かつMesoCAR03は、TGF-β1未添加でも、STAT5シグナル経路に対して持続的な活性化作用があった。
【0164】
検討
本発明は腫瘍抗原(たとえば、ヒトメソテリン、claudin18.2)を標的とする工学的改変免疫細胞を構築し、当該工学的改変免疫細胞はさらにTGFBR2およびIL-7Rαが融合してなる融合タンパク質を発現し、前記融合タンパク質はシグナル変換タンパク質として、腫瘍微環境における免疫抑制シグナルを遮断し、そしてそれを活性化シグナルに変換することで、顕著かつ意外に免疫細胞の生存および腫瘍殺傷作用を強化させる。また、本発明において、異なる膜貫通領域で連結された融合タンパク質の効果を比較したところ、膜貫通領域由来の改変が融合タンパク質および相応する融合タンパク質を発現する工学的改変免疫細胞の上記効果に影響しないことが見出された。
【0165】
本発明において、腫瘍抗原を標的とするCARおよび本発明のシグナル変換タンパク質(たとえば、TGFBR2とIL-7Rαの融合タンパク質)を有する免疫細胞は、TGF-βのT細胞に対する抑制シグナル(TGF-βのT細胞増殖の抑制、アポトーシス誘導および炎症因子の発生の抑制など)を活性化シグナルに変換し、CAR-免疫細胞(たとえば、CAR-T細胞)の体内における生存時間を延長し、腫瘍微環境に抵抗し、有効かつ持続的に腫瘍細胞を殺傷し、腫瘍の再発を減少することができる。
【0166】
各文献がそれぞれ単独に引用されるように、本発明に係るすべての文献は本出願で参考として引用する。また、本発明の上記の内容を読み終わった後、当業者が本発明を各種の変動や修正をすることができるが、それらの等価の形態のものは本発明の請求の範囲に含まれることが理解されるはずである。
【配列表】
【国際調査報告】