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特表2024-535499物理的配電網の状態を推定するための測定ユニットの最適配置を決定する方法
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  • 特表-物理的配電網の状態を推定するための測定ユニットの最適配置を決定する方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-30
(54)【発明の名称】物理的配電網の状態を推定するための測定ユニットの最適配置を決定する方法
(51)【国際特許分類】
   G06F 17/10 20060101AFI20240920BHJP
   G06F 17/18 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
G06F17/10 Z
G06F17/18 D
G06F17/18 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024520529
(86)(22)【出願日】2022-09-28
(85)【翻訳文提出日】2024-05-28
(86)【国際出願番号】 IB2022059216
(87)【国際公開番号】W WO2023057856
(87)【国際公開日】2023-04-13
(31)【優先権主張番号】21200782.7
(32)【優先日】2021-10-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524122819
【氏名又は名称】クラーケン テクノロジーズ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100116850
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 隆行
(74)【代理人】
【識別番号】100165847
【弁理士】
【氏名又は名称】関 大祐
(72)【発明者】
【氏名】アリザデ マウサビ オミド
(72)【発明者】
【氏名】ムーティス パナイオティス
【テーマコード(参考)】
5B056
【Fターム(参考)】
5B056BB42
5B056BB62
5B056BB64
(57)【要約】
本発明は、物理的配電網の状態を推定するための測定ユニットの最適配置を決定する方法に関する。この方法は、状態推定法に適合する測定ユニットの配置を探索するステップからなり、まず最小ノルム定式化、次いで重み付き最小二乗法による定式化の2段階で実行される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一組のノードおよび一組のブランチを備える物理的な配電網の状態を推定する測定ユニットの最適な配置を決定する方法であって、
I.トポロジ(ノード)、抵抗およびインダクタンスおよび公称容量を有する線路、ならびにすべてのノードにおいて接続されている負荷および発電の公称容量を含む前記配電網のモデルを提供するステップと、
II.前記配電網の前記モデルに対する仮想的な監視インフラストラクチャを規定するステップであって、前記仮想的な監視インフラストラクチャが、少なくとも一つのランダムに配置した測定ユニットを備える(前記仮想的な監視インフラストラクチャに従って測定ユニットを具備する前記配電網のいずれのノードも、以下「測定ノード」と呼ぶ)ステップと、
III.前記監視インフラストラクチャにおける前記少なくとも一つの測定ユニットの配置が、二段階状態推定方法に適合するかどうかを評価するステップであって、前記方法の第一段階が、負荷および発電に関する一組の確率的シナリオに含まれるそれぞれのシナリオに対して最小ノルム状態推定を行うことであり、前記最小ノルム状態推定が、それぞれの特定のシナリオに対する入力として、前記特定のシナリオに対応する測定データを用い(前記少なくとも一つの測定ユニットの配置が前記二段階状態推定方法に適合するためには、前記第一段階の結果が制御可能でなければならない)、前記方法の第二段階が、前記特定のシナリオに対応する前記測定データ、および前記特定のシナリオに対して前記方法の前記第一段階で推定されるゼロでない値をそれぞれの特定のシナリオに対する入力として用いて、前記一組の確率的シナリオのそれぞれのシナリオに対して重み付き最小二乗法(WLS:weighted least square)状態推定を行うことである(前記少なくとも一つの測定ユニットの配置が前記二段階状態推定方法に適合するためには、前記第二段階の結果が観測可能でなければならない)ステップと、
IV.前記少なくとも一つの測定ユニットの配置が前記二段階状態推定方法に適合する場合、前記第二段階の状態推定誤差の平均値および標準偏差を求め、前記少なくとも一つの測定ユニットの配置を、前記平均値および前記標準偏差とともに記録し、測定ユニットの配置が少なくとも100個記録されるまで、ステップIIからIVを繰り返すステップと、
V.最小数の測定ユニットから構成される測定ユニットの配置を、
【数1】
、および/または
【数2】
を満たす、記録した測定ユニットの配置から選択するステップと、
VI.前記物理的な配電網に、ステップVで選択した前記測定ユニットの配置に従って配置した測定ユニットを備える監視インフラストラクチャを提供するステップと、
を含む方法。
【請求項2】
ステップVを行うときに、最小数の測定ユニットから構成される前記測定ユニットの配置を、
【数3】
(たとえば、|μ|<3・σ)も満たす、前記記録した測定ユニットの配置から選択する、請求項1に記載の測定ユニットの最適な配置を決定する方法。
【請求項3】
ステップIおよびステップVの間に追加のステップを含み、
前記追加のステップが、混雑または逆潮流について監視すべきブランチの数の評価に基づいて「r」を求めることであり、
ステップVを行うときに、最小数の測定ユニットから構成される前記測定ユニットの配置を、|μ-r・σ|<εおよび|μ+r・σ|<ε(たとえば、|μ-r・σ|<10-3および|μ+r・σ|<10-3)という二つの条件のうち少なくとも一方も満たす、前記記録した測定ユニットの配置から選択する、請求項1または2に記載の測定ユニットの最適な配置を決定する方法。
【請求項4】
「r」を求める前記追加のステップが、
・混雑または逆潮流に最もさらされる配電網のブランチを特定するサブステップと、
・高精度で監視すべき、特定されたブランチを通る有効電力潮流および無効電力潮流の割合を推定するサブステップと、
・正規分布において、ゼロを中心として約0.5・σ以下の幅を有する許容範囲に含まれるケースの割合が推定した割合に等しくなるように、rを正規分布の平均値(μ)に対する標準偏差(σ)の比として求めるサブステップと、
を含む、請求項3に記載の測定ユニットの最適な配置を決定する方法。
【請求項5】
前記許容範囲が0.5・σの幅を有する、請求項4に記載の測定ユニットの最適な配置を決定する方法。
【請求項6】
ステップIIIが、
a)前記配電網における負荷および発電に関する一組の確率的シナリオを得るサブステップと、
b)前記配電網の各状態を計算するように、前記一組に含まれる前記確率的シナリオのそれぞれについて前記配電網における電力潮流をシミュレーションするために、電力潮流アルゴリズムを用いる(測定ノードについて計算されるノード電圧の値、および測定ノードに流入するブランチについて計算されるブランチ電流の値を、以下「測定値」と呼び、対応する有効電力および無効電力の値も「測定値」と呼ぶ)サブステップと、
c)前記配電網の状態に関する最適化問題を特定するとともに、ステップa)において得られた前記確率的シナリオのそれぞれに対するグリッド状態変数を推定するために、ステップb)においてそれぞれの特定の確率的シナリオについて得られた測定値を、前記特定の確率的シナリオに対する前記グリッド状態変数を推定するための入力として用いつつ、最小ノルムを用いるサブステップと、
d)サブステップc)において特定した前記最適化問題によって、前記配電網が制御可能となる場合、重み付き最小二乗法を用いて、前記配電網の状態に関する目的関数を特定するとともに、ステップa)において得られた前記確率的シナリオのそれぞれに対する前記グリッド状態変数を推定するサブステップであって、ステップc)において推定したグリッド状態変数のゼロでない値、およびステップb)において得られた測定値の両方を、それぞれの特定の確率的シナリオに対して、前記確率的シナリオのそれぞれに対する前記グリッド状態変数を推定するための入力として用いるサブステップと、を含む、請求項1から5 のいずれか一項に記載の測定ユニットの最適な配置を決定する方法。
【請求項7】
・サブステップb)において計算した「測定値」に対して、測定誤差を表すランダムノイズを追加する追加のサブステップを
サブステップb)およびサブステップc)の間に含む、請求項6に記載の測定ユニットの最適な配置を決定する方法。
【請求項8】
・サブステップc)において特定した前記最適化問題によって、前記配電網が制御可能になる場合、ランダムに配置した測定ユニットを前記仮想的な監視インフラストラクチャに追加し、サブステップa)に戻る代替のサブステップと、
・サブステップc)において特定した前記最適化問題によって、前記配電網が制御可能にならない場合、最後に追加した測定ユニットを前記仮想的な監視インフラストラクチャから取り除き、サブステップd)に進む代替のサブステップと、
のうち一方または他方をサブステップc)およびサブステップd)の間に含む、請求項6または7に記載の測定ユニットの最適な配置を決定する方法。
【請求項9】
・サブステップd)で特定した前記目的関数によって前記配電網が観測可能にならない場合、前記仮想的な監視インフラストラクチャの測定ユニットを、ランダムに配置した他の測定ユニットに置き換え、サブステップa)に戻る代替のサブステップと、
・サブステップd)で特定した前記目的関数によって前記配電網が観測可能になる場合、ステップIVに進む代替のサブステップと、
のうち一方または他方をサブステップd)の後に含む、請求項6、7、および8のいずれか一項に記載の測定ユニットの最適な配置を決定する方法。
【請求項10】
ランダムに配置した他の測定ユニットに置き換えられる前記測定ユニットが、最後に追加した、残りの測定ユニットである、請求項9に記載の測定ユニットの最適な配置を決定する方法。
【請求項11】
それぞれの測定ユニットが、特定のノードの電圧(ノード電圧と呼ぶ)、および前記特定のノードにおける負荷もしくは発電から、または前記特定のノードに流入するブランチを介して、前記特定のノードに流入または前記特定のノードから流出する電流(ブランチ電流と呼ぶ)を測定するように配置されており、
前記配電網の状態が、すべてのノード電圧、ならびにブランチの有効電力および無効電力の値によって定義される、すなわち、すべてのノード電圧、ブランチ電流、およびそれぞれの特定のノード電圧と前記特定のノードに流入または前記特定のノードから流出するブランチ電流の間の位相差の値によって定義される、
請求項1から10のいずれか一項に記載の測定ユニットの最適な配置を決定する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配電網の状態を推定するための測定ユニットの最適な配置を決定する方法に関し、より詳細には、最小数の測定ユニットからなる最適なレイアウトを特定することを可能にするような方法に関する。第2の側面によれば、本発明は、配電網の状態を推定するための方法に関し、より具体的には、擬似測定を必要としないような方法に関する。本発明の方法によって、グリッドの線路混雑を特定し、電圧プロファイルを高精度で推定することができる。
【背景技術】
【0002】
一般に、電力システムの状態とは、電力システムの他のすべての変数の値を計算するために使用できる変数の集合を指す。そのような変数のセットの例としては、(i)すべてのノードの電圧振幅および位相角、(ii)すべてのブランチの電流振幅および位相角、(iii)すべてのノードの電圧振幅、およびすべてのブランチの有効電力潮流および無効電力潮流が挙げられる。この文脈では、状態推定(SE)とは、システム内の特定の場所(以下、「グリッド」)で限られた数の測定データを使用して電力システムの状態を推定するプロセスである。SEは、システム運用者にシステムのリアルタイムの状態を知らせたり、システムの故障やイベント、通常の運用を「事後的」に分析したりすることができる。グリッドに計測器を設置するプロセスは、SEの要件だけでなく、グリッドの性質や特性にも依存する。この意味で、配電網レベルのSEと、計測装置を配置する方法について簡単に概説する。
【0003】
配電網のSE手法としては、配電網の一部のSEを準リアルタイムでセットアップする手法[1]、電流ベースの三相定式化[2]、確率論的考慮の重み付き最小二乗法(WLS)定式化[3]、線路電流に基づいてセットアップし、末端顧客のメータデータによって支援する手法[4]、さまざまな測定待ち時間に対してロバストなSE[5]などが代表的である。この分野での最近の取り組みでは、より高速な推定器の定式化や機械学習の利用が追求されている。つまり、[6]では線形配電網SEが提案され、[7]ではロバストで高速なSEのための一定の配電網モデル係数が議論され、[8]では進化的アルゴリズムが採用され、[9]ではニューラルネットワークが最適化されたSEを初期化する。
【0004】
配電網SEの性能と効率には、少なくとも2つの主要な懸念事項が影響する。一つは、特定の配電網における測定装置の設置場所であり、もう一つは、当該特定の配電網における測定装置の設置範囲である。配電網には多数のノードと線路があるため、測定装置の適切な配置は非常に重要である。そのため、そのような装置を大規模に導入することは、法外なコストがかかることを意味する。しかし、実際のグリッド測定値を使用することは、実行されるSEの完全性と精度にとって非常に重要である。実際の測定値は、たとえ多かれ少なかれ欠陥があったとしても(機器の精度自体が考慮の対象となり得る)、その性質はガウス分布である。これは、SEがロバストな方法で測定誤差をヘッジできるため、SEの出力にとって有益である。多くの研究では、SEを適切に実行するためには、任意のフィーダの10~50%をカバーする必要があると推定している[10,11]。しかし、基礎となる電力網モデルにより、SEは非凸問題[13]となり、意味のある時間枠で正確に解くことができないため、推定状態の精度は確率的境界[12]で記述される。配電網の電圧位相角差は非常に小さく、それを測定するための測定精度にはコストがかかるため、フィーダの10%にしか測定装置が装備されていないとしても、コストは法外なものになる可能性がある[14]。配電網で実測値が十分な数得られない場合、この不足を擬似測定(以下、「P/M」)で補うことができる。P/Mは、過去のデータ[15]に基づく予想値または予測値であり、必ずしもガウス分布[16]ではないため、SEの精度に多くの不確実性をもたらす。[17]のセクションIVでは、SEに対するP/Mの影響を抑制しようとする、確率論的手法や機械学習ベースの手法が10以上要約されている。さらに、流通システムにおける履歴データの不足や利用可能性が限られているため、そもそもP/Mが得られないこともある。
【発明の概要】
【0005】
従って、本発明の目的は、従来技術における上述の問題点を軽減することである。本発明は、添付の請求項1に従って測定ユニットの最適配置を決定する方法を提供することにより、この目的等を達成する。
【0006】
測定ユニットの最適配置を決定するための本発明の方法は、グリッド状態推定(SE)が実行される特定の方法を利用する。言い換えれば、一方ではSEのための測定ユニットの最適配置を決定するための方法であり、他方ではそのようなSE方法は、両方とも同じ発明概念に基づいている。本発明によれば、SE法は2段階で実行され、まず最小ノルム定式化が行われ、次いで重み付き最小二乗法が行われる。測定ユニットの最適な配置を決定する方法と、それが機能するSE法は、グリッドの電圧プロファイルも高精度で推定される一方で、グリッドのライン混雑が所定の信頼度で捕捉されることが理論的に保証されている。
【図面の簡単な説明】
【0007】
本発明の他の特徴および利点は、非限定的な例としてのみ与えられ、添付の図面を参照して行われる以下の説明を読めば分かるであろう。
【0008】
図1図1は、20のノード(またはバス)からなる高圧フィーダ(配電レベルのグリッドの一部)の概略図であり、このフィーダは、本発明の方法の例示的な実施のための設定を形成する。
図2図2は、配電網の状態を推定するための測定ユニットの最適配置を決定するための、本発明の方法の特定の実施例を示すフローチャートである。
図3図3Aおよび図3Bは、標準化正規分布の2つの表現であり、図3Aに示す標準化分布は0.5σ間隔に分割され、図3Bに示す標準化分布は0.25σ間隔に分割されている。
図4図4は、図2のボックス02と03を含むループで表されるルーチンの特定の実施例を示す、より詳細なフローチャートである。
図5図5は、図4に示した実施例の代替バージョンを示すフローチャートである。
図6図6は、図1の高圧フィーダの特定の動作ケースにおける、本発明の2段階SEの例示的な実施例の出力を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明が適用される分野は配電網であるため、まず例示的な配電網について説明する。配電網は、物理的なノード(またはバス)の集合と、1つのノードを別のノードに接続するための物理的なブランチ(またはライン)の集合とから構成される。図1は、スイスにある既存の配電網の基幹を形成する「現実の」20バス高圧フィーダの1行図である。配電網内のすべての変圧器(以下、T/F)の測定値は、10フィートの分解能で1年間にわたって記録された。このデータから、多数の運転シナリオの完全なプロファイルを得ることができる。さらに、フィーダの線路インピーダンスと変圧器(T/F)の定格も利用できる。これらのパラメータは、以下の表1に示されている。本発明の方法の例示的な実施例に関する以下の説明では、グリッド状態を定義するために使用される変数のセットは、ノード電圧とブランチ有効電力およびブランチ無効電力で構成されている。しかし、当業者であれば、送電網の状態が異なる変数の集合によって定義される場合に、本例示的な実施態様を適応させることができることに留意すべきである。配電網には、分散型発電および貯蔵は設けられていない。したがって、混雑や逆潮流にとって重要な送電線は、給電側変電所(参照3)に最も近い送電線であることが理解できる。
【表1】
【0010】
配電網の状態を定義するノード電圧とブランチ有効電力および無効電力を推定するには、配電網の複数の場所で電圧と電流の同期した測定値を提供できる監視インフラストラクチャの存在が必要である。このような監視インフラストラクチャは、ネットワークの物理ノードの選択に設けられた測定ユニットで構成される(以下の開示では、測定ユニットを備えるネットワークの物理ノードを「測定ノード」と呼ぶ)。各測定ユニットは、特定の測定ノードの電圧(ノード電圧と呼ばれる)、およびその特定の測定ノードに流入または流出する電流(ブランチ電流と呼ばれる)を測定するように配置することができ、ブランチ電流は、その特定の測定ノードに入射するブランチを流れる電流、またはその特定のノードの負荷または発電に関連する電流のいずれかである。特定の測定ノードに入射するブランチを流れる有効電力と無効電力の流れは、ノード電圧、その特定のブランチを流れるブランチ電流、およびノード電圧とブランチ電流の間の位相差から計算することができる。この計算は、以下のよく知られた関係を用いて、各測定ユニットで局所的に実行することができる。
【数1】
【0011】
さらに、ノードに流入または流出するすべての有効ブランチ電力の正味和をノード有効電力と呼び、ノードに流入または流出するすべての無効電力の正味和をノード無効電力と呼ぶ。
【0012】
また、監視インフラストラクチャは、測定ユニットと少なくとも1つの処理ユニットとの間の通信のために配置された通信手段を備える。通信手段は、必ずしも専用の伝送ネットワークを構成するものではないことに留意すべきである。例えば、監視インフラストラクチャは、モバイルオペレータによって提供される商用セルラーネットワークに依存してもよい。しかし、代替実施態様によれば、監視インフラストラクチャの通信手段は、当業者が適切と考える任意のタイプ(例えば電力線通信を含む)であり得る。
【0013】
しかし、状態推定に使用されるデータが電力網の複数の場所で同期された測定値から得られると言っても、測定ユニットが必ずしも高度に同期されていなければならないという意味ではないことは理解されるべきである。実際、測定ユニットは、共通の時間基準への恒久的な繋がりを持つ高価なPMU(Phasor Measurement Unit)である必要はない。GPSやNTPを時間基準信号として使用し、連続した測定のタイミングをとることができる従来の測定装置でも十分に正確である。
【0014】
図2は、配電網の状態を推定する測定ユニットの最適配置を決定するための、本発明の方法の例示的な実施例を示すフローチャートである。図示されたフローチャートは、6つのボックスから構成される。最初のボックス(参照番号01)は、本方法を適用すべき配電網のモデルを提供する予備ステップの概要を表す。送電網の完全なモデルは通常、送電網のトポロジを含む送電網のアドミタンス行列と、ノードを接続するブランチのコンダクタンスとサセプタンスから構成され、さらに各ブランチの公称容量と各ノードの負荷と発電から構成される。
【0015】
第2のボックス(参照番号02)は、配電網のモデルに対する仮想的な監視インフラストラクチャを指定するタスクを表す。仮想的な監視インフラストラクチャは、ランダムに配置された少なくとも1つの計測ユニットから構成される。仮想的な監視インフラストラクチャに従った測定ユニットを備えた配電網のノードは、仮想的な監視インフラストラクチャの「測定ノード」と呼ばれる。
【0016】
第3のボックス(参照番号03)は、仮想的な監視インフラストラクチャの少なくとも1つの測定ユニットの配置が、本発明の二段階状態推定(SE)方法に適合するかどうかを評価するタスクを表す。状態推定方法の第1段階は、配電網における負荷と発電の確率的シナリオのセットで構成される各シナリオに対して最小ノルム状態推定を実施することからなる。各特定のシナリオに対して、最小ノルムSEはインプットとして「測定データ」を使用する。この「測定データ」は、実際には、仮想的な監視インフラストラクチャに従った測定ユニットを備えた配電網のノードから得られると想定される、シミュレートされた測定データである。「測定データ」は、負荷と発電の特定のシナリオごとに計算される。少なくとも1つの測定ユニット(すなわち仮想的な監視インフラストラクチャ)の配置が二段階SE方法に適合するためには、第1段階の結果が制御可能でなければならない。
【0017】
状態推定方法の第2段階は、確率的シナリオのセットで構成される各シナリオに対して、重み付き最小二乗法(WLS)SEを実施することである。WLS SEは、最小ノルムSEと同じ測定データをインプットとして使用する。さらに、WLS SEは、第1段階で非ゼロ値を持つと推定された状態もインプットとして使用する。第1段階で各シナリオについて最小ノルムSEによって推定され、第2状態で入力として使用される状態変数のことを、本二段階状態推定方法の文脈では「エスティメジャーメント」または「E/Ms」と呼ぶ。少なくとも1つの測定ユニットの配置が二段階SE方法に適合するためには、第2段階の結果が観測可能でなければならない。また、第3のボックス(参照番号03)は、仮想的な監視インフラストラクチャの少なくとも1つの測定ユニットの配置が二段階SE方法に適合する場合、第2段階の状態推定誤差をさらに計算することをも規定する。推定誤差の平均μがAより小さく、
【数2】

標準偏差σがBより小さいとき、
【数3】
誤差の平均と標準偏差は測定ユニットの配置とともに記録される(一例を挙げると、AとBの典型的な値はA=0.15、B=0.60である。これらの値は、ここではp.u.、言い換えれば「単位あたり」で与えられる)。
【0018】
ボックス02と03のタスクを連続して実行するルーチンは、あらかじめ定義された数の配置(たとえば100の配置)が記録されるまで繰り返される。あらかじめ定義された数の配置が記録されると、フローチャートは第4のボックスに移る。
【0019】
第4のボックス(参照番号04)は、主に、|μ±r・σ|<εおよび|μ|<R・σ(ここで、μは第2段階の状態推定誤差の平均値であり、σはその標準偏差である)という条件がともに満たされる測定ユニットの配置を選択することを表す。本発明によれば、R≦3である。「r」を含む条件と「R」を含む条件の両方が、現在説明されている発明の特定の実施態様によって要求される。しかしながら、これらの条件のいずれか一方、または両方を省略できることには注意が必要である。従って、本発明の方法の一つ一つの実施態様においては、そのどちらも存在しない。第4のボックスによって表されるタスクは、選択された測定ユニット配置から、最小数の測定ユニットを有する配置を選択することまでを含む。
【0020】
第5のボックス(参照番号05)は、選択された配置に従って物理的な配電網に測定ユニットを配置するタスクを表している。
【0021】
第6のボックス(参照番号06)は、第1に、混雑または逆電力流のリスクに大きくさらされている配電網のブランチを特定し、第2に、高精度で監視されるべきこれらのブランチの割合ζを評価し、第3に、正規分布の平均値(μ)に対する標準偏差(σ)の比rを決定し、その際、幅が0.5・σ以下であり、μ±r・σすなわち0を中心とする許容範囲に含まれるケースの正規分布におけるパーセンテージがζに等しくなるようにする、というタスクの概要を表している。
【0022】
擬似測定が使用されないことを前提とすると、SE誤差は統計的平均μと分散σを持つ正規分布であると考えることができる。さらに、混雑または逆電力流に大きくさらされるブランチの推定状態変数で構成されるサブセットSの誤差も、平均μと分散σ の正規分布に従う。
【数4】
のとき、μS+r・σSが0を横切ると、S内の少なくともζ<|S|の状態が高精度(低誤差)で推定される;例えば|S|=100でμ+1.25・σ=0±ε(すなわちr=1.25)であれば、約ζ=9の状態が低いSE誤差となる。なぜならば、μ+r・σ=0の近傍が間隔[μ+σ,μ+1.5・σ]に対応すると考えると、正規分布の全サンプルの9.2%がμ+r・σ=0の近傍にあることになるためである(図3A参照)(μ-r・σが0を横切る場合にも同じ分析が適用されることに注意すべきである)。逆に、S中のζの状態を正確に推定しなければならない場合、μ+r・σが0を横切るとき、区間[μ+σ,μ+1.5・σ]が|S|のζに等しい部分を含むようにrを選択することができる。
【0023】
「r」の値は、μ+r・σ=0に近接すると考えられる区間(以下、許容範囲)の幅に依存することに注意すべきである。例えば、許容範囲が以前のように0.5・σに等しい代わりに、0.25・σであり、正確に推定しなければならない状態の数がζ=9のままである場合、正規分布の区間[μ+0.25・σ,μ+0.5・σ]はケースの9.1%を含むため、「r」の推定値は0.375となる(図3B参照)。区間許容範囲が低いほど、「r」の値が小さくなることが理解できる。さらに,μ+r・σ=0なので「r」の値が小さければ小さいほど,μの値も小さくなる。このことから、もし区間許容範囲が小さければ、選択された配置はより多くの測定ユニットを必要とすることになる。一方、許容範囲が0.5・σより大幅に大きいと、正確に推定される状態の数に疑問が生じる。
【0024】
図4は、図2のボックス02と03を含むループで表されるルーチンの特定の実施例をより詳細に示すフローチャートである。図4の一つ目のボックス(ボックス11)は、図2のボックス02と同じである。
【0025】
図4の2番目のボックス(ボックス12)は、配電網の負荷と発電に関する確率的シナリオのセットを得るタスクで構成される。得られたセットには、負荷と発電(すなわち、需要負荷、および分散型発電と貯蔵(DGS)が存在する場合)のための(すなわち、動作条件の)少なくとも約1000の異なるシナリオが含まれている必要がある。負荷と発電の確率的シナリオは、(例えばモンテカルロ法を実行することによる)シミュレーションか、(配電網における負荷と発電の多くの測定プロファイルが利用可能であれば)実際のデータから得ることができる。
【0026】
図4の3番目のボックス(ボックス13)は、前のステップで得られたサンプルに含まれる運転シナリオのそれぞれについて、モデル化された配電網の電力フローをシミュレートし、さらに各シナリオについて配電網の状態を計算するために、電力フローアルゴリズムを実行することで構成されている。仮想的な監視インフラストラクチャの測定ノードにおける電圧、仮想的な監視インフラストラクチャの測定ノードに入射するブランチを通る電流、および仮想的な監視インフラストラクチャの測定ノードにおける電力注入に関連する電流について、電力フローアルゴリズムによって計算された値を、以下では「測定値」と呼び、対応する有効電力および無効電力の値も「測定値」と呼ぶ。
【0027】
図4の4番目のボックス(ボックス14)は、前のステップで得られた「測定値」にランダムなノイズを加えることで構成されている。追加されるノイズは、測定ユニットの精度レベルを代表するものでなければならない。例えば、99.9%の精度を持つ測定装置の場合、追加されるランダムノイズは、「測定値」の平均値0、標準偏差0.1%の正規分布から計算することができる。
【0028】
図4の5番目のボックス(ボックス15)は、配電網の状態に関する目的関数を特定するために最小ノルムを使用することと、第2ステップで得られた運転シナリオのそれぞれについてグリッド状態変数を推定することから構成されている。各シナリオについて、この最小ノルムSEは第4ステップで得られた対応する測定値を入力として使用する。前述したように、本発明の状態推定方法は、まず最小ノルム定式化、次に重み付き最小二乗法の2段階で実行される。したがって、第5のボックス(ボックス15)は、SEの第1段階に相当することが理解できる。
【0029】
第一段階では、SE問題は以下の最小ノルム最適化問題のように定式化できる。
【数5】
【数6】
【0030】
PMUを使用する必要のない例示的な実施によれば、この方法は、バス電圧の大きさの2乗について解いたときに放射状配電網に対して線形である既知の電力フロー近似を使用する[18]。しかしながら、本発明は線形近似を使用する必要はないことを理解すべきである。上述の例示的な実施態様によれば、本発明の2段階SE法の第1段階は以下のように定義される。
【数7】
ここで、V、p、q、r、xは、それぞれバスiとj間の電圧マグニチュード、有効電力フロー、無効電力フロー、線路抵抗、リアクタンスであり、先に定義した変数以外にも、Y、P、QはそれぞれDSアドミタンス行列、有効電力注入量、無効電力注入量を表し、ハットの下の値は測定値を、チルダの下の値は状態変数の第1段階推定値(以下、estimeasurementsまたはE/Ms)を表す。
【0031】
図4の6番目のボックス(ボックス16)は、前のステップで定義された最適化問題をテストし、配電網が制御可能になるかどうかを評価する。テストの結果が否定的な場合、プロセスは最初のボックス(ボックス11)に戻り、以前のバージョンの仮想的な監視インフラストラクチャが新しいバージョンに置き換えられる。新バージョンの仮想的な監視インフラストラクチャにおける測定ユニットの配置は、旧バージョンの測定ユニットの配置と異なっていなければならない。テストの結果が肯定的であれば、プロセスは次のステップに進む(ボックス17)。
【0032】
図4の7番目のボックス(ボックス17)は、配電網の状態に関する目的関数を特定するために重み付き最小二乗法を使用することと、ボックス12で得られた運転シナリオのそれぞれについてグリッド状態変数を推定することから構成されている。各シナリオについて、この重み付き最小二乗法SEは、対応する測定値とボックス15で得られたE/Msを入力として使用する。7番目のボックスはSEの第2段階に相当する。
【0033】
第2段階では、SE問題は以下の重み付き最小二乗問題として定式化できる。
【数8】
【数9】
【0034】
PMUを使用する必要のない例示的な実施態様によれば、本発明の2段階SE方法の第2段階は以下のように定義される。
【数10】
ここで、第1段階と同様に、V、p、q、r、xは、それぞれバスiとj間の電圧マグニチュード、有効電力フロー、無効電力フロー、線路抵抗、リアクタンスであり、Y、P、Qは、それぞれDSアドミタンス行列、有効電力注入量、無効電力注入量である。電圧の大きさの場合、測定値もE/Mも利用できない場合は、公称電圧を一種の擬似測定値(P/M)として使用することができる(すなわち、1 p.u.のP/M)。
【0035】
図4の8番目のボックス(ボックス18)は、前のステップで定義された最適化問題をテストし、配電網を観測可能にするかどうかを評価する。テストの結果が否定的であった場合、プロセスは最初のボックス(ボックス11)に戻り、以前のバージョンの仮想的な監視インフラストラクチャが新しいバージョンに置き換えられる。新しいバージョンの仮想的な監視インフラストラクチャにおける測定ユニットの配置は、以前のすべてのバージョンにおける測定ユニットの配置とは異なるべきである。テストの結果が肯定的であれば、プロセスは次のステップに進む(ボックス19)。
【0036】
第9のボックス(ボックス19)は、まず、推定されたグリッド状態変数のサブセットSに対して第2段階SE誤差を計算するタスクを表す(いくつかの実施例によれば、サブセットSは推定されたグリッド状態変数の全セットに等しい場合がある)。第2段階のSE誤差は、ボックス17で推定されたグリッド状態変数を、ボックス13で事前に計算されたものと比較することによって計算できる。次に、ボックス19は、推定されたグリッド状態変数のサブセットSについて計算された第2段階SE誤差の平均(μ)および標準偏差(σ)とともに、仮想的な監視インフラストラクチャの現在のバージョンにおける測定ユニットの配置を記録するタスクも表す。サブセットSが推定グリッド状態変数のセット全体と等しくない場合、サブセットSは、混雑または逆電力流に著しく曝されていると先に特定された配電網のブランチに関係する推定状態変数から構成されるべきであることを理解されたい。「r」を決定するステップ(図2のボックス06)を含むフローチャートの実施の場合、サブセットSは、「r」を決定する過程で混雑または逆電力流に著しく曝されていると特定された配電網のブランチで構成することができる。
【0037】
図4に示されたルーチン(ボックス11から19で構成される)は、所定回数(例えば100回)繰り返されるので、所定数の測定ユニット配置が、その特定の測定ユニット配置に関連するSE誤差の平均値および標準偏差の値と共に記録される。
【0038】
図5は、図4のフローチャートによって示される本発明の方法の例示的な実施の代替バージョンを示すフローチャートである。図5のボックス21から25によって表されるタスクは、図4のボックス11から15によって表されるボックスと同一であり得る。さらに、図5のボックス28および30は、図4のボックス17および19と同一にすることができる。図4図5のフローチャートの一つ目の違いは、図4のボックス16で表される制御可能性試験の効果に関するものである。実際、図5によれば、制御可能性試験の結果が肯定的である場合、図示されたフローチャートは、ボックス22に戻り、SE手法の第2段階にすぐに移行する代わりに、仮想的な監視インフラストラクチャにランダムに配置された測定ユニットを追加する。一方、制御可能性テストの結果が否定的な場合、ボックス27で示されるように、最後に追加された測定ユニットが、仮想的な監視インフラストラクチャから削除される。最後に追加された測定ユニットを削除すると、配電網は再び制御可能になる。その後、本方法の実施は、ボックス28で示されるSE手法の第2段階に進む。
【0039】
図4図5のフローチャートの2つ目の違いは、ボックス18(図4)で表される観測可能性テストの結果が否定的な場合の処理に関するものである。図4によれば、この場合、プロセスは前述のようにボックス11に戻り、現在のバージョンの仮想的な監視インフラストラクチャは新しいバージョンに置き換えられる。一方、図5によれば、現在の仮想的な監視インフラストラクチャの測定ユニットの1つだけが除去され、ランダムに配置された新しい測定ユニットと置き換えられる。図5のフローチャートによって示される実施態様の好ましいバージョンによれば、除去され、新しいランダムに配置された測定ユニットによって置き換えられる測定ユニットは、最後に追加された残りの測定ユニットである。
【実施例
【0040】
例として、図2のフローチャートで示される方法を図1の20バス高圧フィーダに適用する方法を説明する。先に説明したように、本方法は配電網のモデル(図2のボックス01)を提供するステップから始まる。本実施例の配電網のモデルは、表1に記載されているすべてのコンダクタンスとサセプタンス、および各ブランチの公称容量から構成されている。本実施例では、各支店の公称容量は8MVAに等しい。
【0041】
このグリッド内のすべてのT/Fから、10’ディテールで1年間の測定値が利用可能である(T/Fあたり約53000エントリ)。パワーフローアルゴリズムが実行され、10’間隔ごとにすべての運転データが検索される。検索されたデータは、混雑や逆潮流に最もさらされている配電網のブランチを特定する客観的な方法を提供する。実際、これらのブランチは、(絶対値で)最も高い有効電力と無効電力が流れるブランチである。特定された有効電力と無効電力の流れは、ブランチ1-2を通るp1-2とq1-2、ブランチ2-3を通るp2-3とq2-3、そして最後にブランチ3-9を通るp3-9とq3-9である。部分集合SPは状態変数p1-2、p2-1、p2-3、p3-2、p3-9、p9-3からなり、部分集合SQは状態変数q1-2、q2-1、q2-3、q3-2、q3-9、q9-3からなる。配電網で最も高い有効電力フロー(絶対値)はp1-2、p2-3、p3-9であり、配電網で最も高い無効電力フロー(絶対値)はq1-2、q2-3、q3-9である。したがって、臨界有効電力フロー|S|と臨界無効電力フロー|S|の数はともに6(k=6)に等しいと考えられる。
【0042】
配電網の多数の運転シナリオについて完全なプロファイルが利用可能であるため、(モンテカルロ)シミュレーションの結果を使用する代わりに、負荷の運転シナリオのランダムサンプルを得るために、約1000の異なるケースの電力フローデータを使用する(図4のボックス12および図5のボックス22)。
【0043】
記録されたすべての測定ユニットの配置(図2のボックス03、図4のボックス19、および図5のボックス30)のうち、電圧の大きさの最大推定誤差が1%未満であり、状態変数SおよびSのサブセットに対する測定誤差が、
【数11】
でμ+r・σが0を横切る条件を満たす配置が107件あった。表2は、これらの測定配置のうち4つと、有効電力フローおよび無効電力フローのμおよびσ、ならびに平均および最大電圧の大きさの推定誤差を示している。
【表2】
【0044】
図6は、図1の高圧フィーダのある特定の動作ケースにおける、本発明の2段階SEの例示的な実施の出力を示す。図6のx軸はフィーダの20のバスを示し、左のy軸はp.u.(公称電圧の単位あたり)の電圧を示し、右のy軸は推定値と実際値の誤差を示す。各ノードの推定電圧プロファイルは連続したピンク色で示され、実際の電圧プロファイルは赤破線で示されている。推定電圧と実際の電圧は左のy軸から読み取る必要がある(推定電圧の誤差は10-3のオーダーである)。各ノードの推定誤差の値は点線の茶色で示されている。これらの値は右側のy軸から読み取る。電圧推定誤差は0.004p.u.以下と非常に小さく、一次変電所に近いノード(スラックノード)ではさらに誤差が小さいことが理解できる。

図1
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6
【国際調査報告】