(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-30
(54)【発明の名称】タイヤグレードの高テナシティおよびモジュラスであるリサイクル・ナイロン6.6のヤーンおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
D01F 6/60 20060101AFI20240920BHJP
【FI】
D01F6/60 301Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024520726
(86)(22)【出願日】2021-10-06
(85)【翻訳文提出日】2024-04-16
(86)【国際出願番号】 TR2021051018
(87)【国際公開番号】W WO2023059275
(87)【国際公開日】2023-04-13
(32)【優先日】2021-10-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517272965
【氏名又は名称】コルドサ・テクニク・テクスティル・アノニム・シルケティ
【氏名又は名称原語表記】Kordsa Teknik Tekstil Anonim Sirketi
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100221501
【氏名又は名称】式見 真行
(72)【発明者】
【氏名】アクバシャク,ジャンス
(72)【発明者】
【氏名】チリンギル,セルヴィン
(72)【発明者】
【氏名】フィダン,メフメト サデッティン
(72)【発明者】
【氏名】コップ,エルハン
【テーマコード(参考)】
4L035
【Fターム(参考)】
4L035AA05
4L035FF01
4L035GG05
(57)【要約】
本発明では、タイヤグレードのオイルを塗ったおよびオイルを塗っていないナイロン6.6の延伸ヤーンおよび未延伸ヤーンをリサイクル・ナイロン6,6のペレットに変換する。次に、リサイクル・ナイロン6,6のペレットとバージン・ナイロン6,6のペレットを異なる比率で使用し、タイヤグレードの再生ナイロン6.6糸を製造する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも10%のリサイクル・ナイロン6,6のペレットを含むタイヤグレードのナイロン6,6のモノおよび/またはマルチフィラメントヤーンであって、前記ナイロン6,6のフィラメントヤーンは、ASTM-D885に従って少なくとも8,0gpdのテナシティを有する、タイヤグレードのナイロン6,6のモノおよび/またはマルチフィラメントヤーン。
【請求項2】
リサイクル・ナイロン6,6を20%含む、請求項1に記載のタイヤグレードのフィラメントヤーン。
【請求項3】
ASTM-D885に従って少なくとも1,25gpdの4%SASEを有する、請求項1に記載のタイヤグレードのフィラメントヤーン。
【請求項4】
以下の工程を含む請求項1に記載のタイヤグレードのフィラメントヤーンの製造方法。
工程a)リサイクル・ナイロン6.6のペレットを、
・モノおよび/またはマルチフィラメントヤーンを含むタイヤグレードのオイルを塗ったおよび/またはオイルを塗っていない延伸および/または非延伸ナイロン6.6のファイバースクラップを3~5cmに切断し、ナイロン6.6のチョップドファイバーを得ること、
・最低250℃、最高290℃の6ゾーンを有する押出機に供給し、スクラップヤーンから溶融ナイロン6.6のポリマーを得ること、
・ストランドを冷却すること、
・ペレット形状として成形され、10グラム中300~500ペレットのサイズで切断すること、ここで、リサイクル・ナイロン6.6のペレットは、その中に最大0.05%の仕上げオイルを有する、
により調製すること、
工程b)バージン・ナイロン6.6のペレットを調製すること
バージン・ナイロン6.6のペレットとリサイクル・ナイロン6.6のペレットとを混合すること。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤグレードのナイロン6.6のヤーン(又は糸;yarn)スクラップ(又は屑、又は端材、又は小片、又は廃物;scrap)からのリサイクル・ナイロン6.6のペレット製造に関する。かかるリサイクル・ナイロン6.6のペレットは、バージン・ナイロン6.6のペレットと異なる比率でタイヤグレードのナイロン6.6のヤーン製造に使用される。この研究の目的は、リサイクル・ナイロン6.6のタイヤグレードのヤーンをバージン・ナイロン6.6と比較できる物理的、熱的、機械的特性および製造プロセスを得ることである。また、この研究はグローバルな持続可能性の問題にも貢献するものであり、以下に深く説明する。
【背景技術】
【0002】
ナイロンは、炭素原子数の異なるジアミンとジカルボン酸の繰り返し単位から構成されるポリマーである。重合反応は、圧力、真空、熱を伴うバッチ式または連続式プロセスで行われる。ナイロン6.6熱可塑性ポリマーは、石油化学モノマーから作られ、縮合重合反応によって長鎖を形成するように結合される。
【0003】
石油系ポリマーは、その手軽さ、耐久性、柔軟性、水や他の化学物質に対する反応性の低さから、古くから使用されてきた。近年、地球環境と持続可能性の問題が高まり、人類は石油化学製品の供給源に限りがあることを認識し始めた。これは環境の自然と科学の発展のバランスを危うくする。そのため、環境と人類の発展をいかに両立させるかが、最近の研究の課題となっている。
【0004】
ナイロンは生分解性がなく、環境中にいつまでも残留する。海洋におけるマイクロプラスチック汚染の2大原因は、ナイロン漁網と合成テキスタイルファイバーである。つまり、ナイロンが水環境に与える影響は大きい。その一方で、ナイロンの難分解性という性質は、ナイロンが際限なくリサイクル可能であることを意味しており、現在存在するナイロン素材をすべてリサイクルすれば、現在のナイロンの新規生産を中止しても、ナイロンへの需要を満たすことができる。したがって、一般消費者がナイロンのリサイクル・スキームを利用しやすくする必要がある。
【発明の概要】
【0005】
本発明は、以下に示す2つの主要なプロセスと製品からなる。
i.標準的なタイヤグレードのヤーン製造工程で発生する、タイヤグレードのオイルを塗った(又は有オイル、又は油引き;oiled)およびオイルを塗っていない(又は無オイル、又は非油引き、又は非油オイルを塗った;non-oiled)ナイロン6.6の延伸ヤーンおよび未延伸ヤーンのスクラップからのリサイクル・(又は再生、又は再循環;recycled)ナイロン6.6のペレットの製造。
ii.バージン(又は未加工;virgin)・ナイロン6.6のペレットとリサイクル・ナイロン6.6のペレットを異なるリサイクル・ペレット比率で混合し、同等のプロセスと製品特性を有するタイヤグレードのヤーンの製造。
【0006】
一定の割合のバージン・ナイロン6.6のペレットとリサイクル・ナイロン6.6のペレットからなるペレット混合物は、紡糸プロセスに望ましい相対粘度レベルを得るために、一定の調整温度で固体重合プロセスを経る。バージンとリサイクルのペレットレベルは10:90から90:10、好ましくは80:20から50:50の範囲で生産し、同等の収率、プロセス性能、生産性、生産と製品の持続可能性、さらにヤーンの特性を得る。いずれのフレークタイプも、水分レベルは最大0.5%である。
【0007】
さらに、チョップド(又は切断;chopped)ナイロン6.6のヤーンスクラップの仕上げオイルレベルは、0.7~1.0%である。リサイクル・ナイロン6,6のペレット製造前には、スクラップのオイル除去のための洗浄ユニットはない。
図2で詳述したリサイクル・ナイロン6,6のペレット製造工程では、押出機の真空ゾーンでスクラップポリマーから仕上げオイルを除去する。製造終了時のナイロン6.6のリサイクル・ペレットの仕上げオイルレベルは0.01~0.05%である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
本開示は、以下の図面の詳細な説明を読むことにより、より理解することができる
【0009】
【
図1】
図1:標準ヤーンボビン(1.8)(タイヤグレードのナイロン6.6のヤーンボビン)の製造工程は、バージン・ナイロン6,6のペレット(バージン・ナイロン6,6のペレットフレーク)(1.1)をサイロに供給すること、まずナイロン6,6のペレットをパージする(又は浄化すること;purge)こと(1.2)、次に固体(又は固相、又は固体状態;solid state)重合プロセスを経ること(1.3)、重合ナイロン6,6のペレットを溶融ナイロン6.6ポリマーに変換すること(1.4)、溶融ナイロン6.6ポリマーをダイに通過させて丸いフィラメント形状を得ること(1.5)、ナイロン6.6ポリマーのフィラメントを冷却すること(1.6)、ナイロン6.6のフィラメントは、いくつかのプロセス工程を経て所望の最終的な特性を得ること(1.7)、最後にタイヤグレードのナイロン6.6のヤーンボビン(1.8)を製造すること、からなる。
【0010】
【
図2】
図2:ナイロン6,6のペレットのリサイクル方法は、ヤーン製造中にオイルを塗ったおよびオイルを塗っていないナイロン6.6の延伸ヤーンのスクラップおよび未延伸ヤーンのスクラップを回収する工程(2.1)、ナイロン6.6のヤーンスクラップを短いストランドに切断する工程(2.2)、切断したナイロン6.6のヤーンスクラップを圧縮装置に搬送する工程(2.3)、圧縮したナイロン6.6のヤーンスクラップを押出機に供給する工程(2.4);ナイロン6.6のスクラップを溶融する工程(2.5);溶融ポリマーからのオイルを吸引する工程(2.6);ナイロン6.6のストランドを形成する工程(2.7);ナイロン6.6のストランドを水浴中で冷却する工程(2.8);水浴から出たナイロン6.6のストランドを乾燥する工程(2.9);ナイロン6.6のストランドをペレット化する工程(2.10);リサイクル・ナイロン6,6のペレットを回収する工程(2.11);およびリサイクル・ナイロン6,6のペレットの包装する工程(2.12)を含む。
【0011】
【
図3】
図3:この図は
図1と非常に似ている。唯一の違いは、プロセスの最初に、バージンフレーク(3.1)とリサイクル・フレーク(3.2)が一定の割合で混合システムで均質に混合されることである。
【0012】
タイヤグレードのヤーン:少なくとも8.0gpd(グラム・パー・デニール)のテナシティ(又は引張強度、又は粘り強さ;tenacity)と100~5000dtexの密度レベルを有するナイロン6.6のヤーン。
4%SASE:4%伸長時の応力(gpd)
テナシティ:ヤーンの強度(グラム)/ヤーンの密度(デニール)(gpd)
バージン・ナイロン6,6のペレット:未加工ナイロン6,6のペレット
リサイクル・ナイロン6,6のペレット:スクラップ材から形成されたナイロン6,6のペレット
タイヤグレードのナイロン6.6のヤーン:タイヤのコードに使用されるナイロン6.6のヤーン
オイルを塗ったおよびオイルを塗っていないナイロン6,6の延伸ヤーンのスクラップおよび未延伸ヤーンのスクラップ:加工されたヤーンスクラップと加工されていないヤーンスクラップ
ナイロン6.6のストランド:押出機後の溶融ポリマー(スパゲッティのようなもの)
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、少なくとも10%のリサイクル・ナイロン6,6、好ましくは20%のリサイクル・ナイロン6,6を含むタイヤグレードのナイロン6,6のモノおよび/またはマルチフィラメントヤーンに関し、上記ナイロン6,6のモノまたはマルチフィラメントヤーンは、ASTM-D885に従って少なくとも8,0gpdのテナシティを有する。
【0014】
ASTM-D885は、タイヤコード、タイヤコードファブリック、および人工有機ベースファイバーから作られた工業用フィラメントヤーンの標準試験方法である。
タイヤグレードのナイロン6,6のモノフィラメントおよび/またはマルチフィラメントヤーンは、ASTM-D885に従い、少なくとも1,25gpd 4%のSASEを有する。
【0015】
タイヤグレードのナイロン6,6のモノフィラメントおよび/またはマルチフィラメントヤーンの製造方法は、以下の工程を含む:
工程a)リサイクル・ナイロン6,6のペレットの製造、
-モノフィラメントおよび/またはマルチフィラメントヤーンを含むタイヤグレードのオイルを塗ったおよび/またはオイルを塗っていない延伸および/または未延伸ナイロン6.6のファイバー(又は繊維;fiber)スクラップを3cmから5cmに切断し、ナイロン6.6チョップドファイバーを得ること、
-最低250℃、最高290℃の6ゾーンを有する押出機に供給し、スクラップヤーンから溶融ナイロン6.6のポリマーを得ること、
-ストランドを冷却すること、
-ペレット形状として成形され、10グラム中300~500ペレットのサイズで切断すること、ここで、リサイクル・ナイロン6.6のペレットは、その中に最大0.05%の仕上げオイルを有する、
工程b)バージン・ナイロン6,6のペレットの製造、
工程c)バージン・ナイロン6,6のペレットとリサイクル・ナイロン6,6のペレットを最低20%のリサイクル率で混合し、タイヤグレードのリサイクル・ナイロン6.6のヤーンを製造。
【0016】
このプロセスの最初に、フィラメントヤーンを含むタイヤグレードのオイルを塗ったおよび/またはオイルを塗っていない延伸および/または未延伸ナイロン6.6のファイバースクラップを3cmから5cmの範囲で切断し、ナイロン6.6のチョップドファイバーを得る。チョップドファイバーは押出機に供給され、スクラップヤーンから溶融ポリマーを得る。溶融ポリマーは、一定の直径の溶融ファイバーに成形し、水浴中で冷却する。ファイバーポリマーの冷却後、それらは文献でストランド・ペレタイジング・システムと呼ばれる一定の大きさに切断される。
【0017】
タイヤグレードのリサイクル・ペレットを製造する間、スクラップオイルヤーン製造プロセスで発生するポリマーマトリックス中の仕上げオイルを除去するためにバキュームを使用する。仕上げオイルレベルが高いと、生産収率が低下し、紡糸時の破断レベルが高くなるため、生産にとって非常に重要なプロセスである。主な目的は、リサイクル・ペレット中の仕上げオイルレベルを最小限に抑えることである。
【0018】
タイヤグレードのリサイクル・ペレットとバージンペレットは製造中に混合されるため、均質な混合は固体重合の準備段階におけるもう一つの重要なパラメーターである。サイロ内での分離を防ぐために、2つのペレットグレードのペレットサイズをできるだけ近づける必要がある。そのため、タイヤグレードのリサイクル・ペレットの粒度はタイヤグレードのリサイクル・ヤーン製造のために改善された。
【0019】
ヤーンに含まれるタイヤグレードのリサイクル量は、顧客の期待や最低仕様要件によって異なる。しかし、「グローバル・リサイクル・認証(Global Recycling Certification)」システムによると、最終製品に含まれるリサイクル材の最低要件は20%である。そのため、この規定に従って、タイヤグレードのヤーンに含まれるリサイクル材の20%に焦点を当てた研究を行った。リサイクル・ペレットとバージンペレットを混合し、サイロに供給して調整した。コンディショナー出口で同じRVレベルになるように、新しい混合原料に応じて固体重合度を調整した。
【国際調査報告】