IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ コミッサリア ア レネルジー アトミーク エ オ ゼネルジ ザルタナテイヴの特許一覧

<>
  • 特表-分離膜を備えた固定床管状反応器 図1
  • 特表-分離膜を備えた固定床管状反応器 図2
  • 特表-分離膜を備えた固定床管状反応器 図2A
  • 特表-分離膜を備えた固定床管状反応器 図2B
  • 特表-分離膜を備えた固定床管状反応器 図3
  • 特表-分離膜を備えた固定床管状反応器 図4
  • 特表-分離膜を備えた固定床管状反応器 図5
  • 特表-分離膜を備えた固定床管状反応器 図6
  • 特表-分離膜を備えた固定床管状反応器 図7
  • 特表-分離膜を備えた固定床管状反応器 図8
  • 特表-分離膜を備えた固定床管状反応器 図9
  • 特表-分離膜を備えた固定床管状反応器 図10
  • 特表-分離膜を備えた固定床管状反応器 図11
  • 特表-分離膜を備えた固定床管状反応器 図12
  • 特表-分離膜を備えた固定床管状反応器 図13
  • 特表-分離膜を備えた固定床管状反応器 図14
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-30
(54)【発明の名称】分離膜を備えた固定床管状反応器
(51)【国際特許分類】
   B01J 8/06 20060101AFI20240920BHJP
   B01D 53/22 20060101ALI20240920BHJP
   F28D 7/10 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
B01J8/06 301
B01D53/22
F28D7/10 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024520745
(86)(22)【出願日】2022-10-03
(85)【翻訳文提出日】2024-05-17
(86)【国際出願番号】 FR2022051863
(87)【国際公開番号】W WO2023057711
(87)【国際公開日】2023-04-13
(31)【優先権主張番号】2110519
(32)【優先日】2021-10-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】502124444
【氏名又は名称】コミッサリア ア レネルジー アトミーク エ オ ゼネルジ ザルタナテイヴ
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】フレデリック・デュクロ
(72)【発明者】
【氏名】イザベル・シャンポン
【テーマコード(参考)】
3L103
4D006
4G070
【Fターム(参考)】
3L103AA31
4D006GA41
4D006HA27
4D006MA02
4D006PA01
4D006PB20
4D006PB65
4D006PC80
4G070AA01
4G070AB05
4G070BB03
4G070CA15
4G070CA17
4G070CA30
4G070CB16
4G070DA22
4G070DA23
(57)【要約】
本発明の主な主題は、第1の端部と第2の端部との間で延在している固定床管状反応器(1)であって、中空管(10)の外壁(15)と、中空インサート(20)の内壁(21)との間に位置する環状空間(30)内に閉じ込められた触媒粉末床を含み、中空インサート(20)は、分配チャンバ(40)及び収集チャンバ(50)を含む。管状反応器(1)は、内壁(21)が、少なくとも1つの反応生成物を部分的に除去することができる選択透過性膜(160)で覆われており、少なくとも1つの第1の隔壁(60)によって少なくとも1つの分配チャンバ(40)及び収集チャンバ(50)から分離された少なくとも1つのメイクアップチャンバ(100)を含み、少なくとも1つのメイクアップチャンバ(100)は、少なくとも1つのメイクアップ流体のための入口ポート及び少なくとも1つのメイクアップ流体のための出口ポートを有することを特徴としている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の端部(11)と第2の端部(12)との間で長手方向軸(XX')に沿って延在している固定床管状反応器(1)であって、該反応器(1)は、中空管(10)の外壁(15)と、該中空管(10)に同軸に配置された中空インサート(20)の内壁(21)との間に位置する環状空間(30)内に閉じ込められた触媒粉末床を含み、前記中空インサート(20)は、少なくとも1つの第1の分離壁(60)によって互いに分離された少なくとも1つの分配チャンバ(40)及び少なくとも1つの収集チャンバ(50)を含み、前記少なくとも1つの分配チャンバ(40)及び前記少なくとも1つの収集チャンバ(50)は、それぞれ、第1の端部(11)にガス入口開口部(42)及び第2の端部(12)にガス出口開口部(51)を含み、
前記中空インサート(20)の前記内壁(21)が、少なくとも1つの反応生成物(HO)を部分的に除去するための少なくとも1つの選択透過性膜(160)を含む分離構造(160、170)で覆われており、これにより、前記環状空間(30)が前記外壁(15)及び前記選択透過性膜(160)によって区切られており、
前記反応器(1)は、前記少なくとも1つの第1の分離壁(60)によって前記少なくとも1つの分配チャンバ(40)及び前記少なくとも1つの収集チャンバ(50)から分離された少なくとも1つの供給チャンバ(100)を更に含み、該少なくとも1つの供給チャンバ(100)は、前記第1の端部(11)に、前記少なくとも1つの分配チャンバ(40)及び前記少なくとも1つの収集チャンバ(50)内を循環するガスとは異なる、前記少なくとも1つの反応生成物(HO)を排出するためのフラッシング流体(F')からなる少なくとも1つの供給流体(F')のための入口ポート(110)を有し、前記第2の端部(12)に、前記少なくとも1つの供給流体(F')のための出口ポート(112)を有している、反応器。
【請求項2】
前記選択透過性膜(160)の透過性は、水蒸気(HO)に対して選択的に発揮される、ことを特徴とする請求項1に記載の反応器。
【請求項3】
前記分離構造(160、170)は、前記中空インサート(20)の前記内壁(21)を覆う多孔質支持体(170)を更に含み、該多孔質支持体(170)自体は前記選択透過性膜(160)で覆われており、前記中空インサート(20)は、前記少なくとも1つの反応生成物(HO)を前記ガスから分離して通過させるための開口部(180)を含む、ことを特徴とする請求項1または2に記載の反応器。
【請求項4】
前記中空インサート(20)は、前記少なくとも1つの反応生成物(HO)を前記ガスから分離して通過させる多孔質材料から作製されていると共に、前記選択透過性膜(160)で覆われており、前記中空インサート(20)の前記少なくとも1つの第1の分離壁(60)は、前記反応性ガスに関してシールするためのシール材料、特にセラミック材料を含む、ことを特徴とする請求項1または2に記載の反応器。
【請求項5】
前記第1の端部(11)及び前記第2の端部(12)のそれぞれに、前記中空インサート(20)が配置される分配空間(42)及び収集空間(51)を含む、ことを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の反応器。
【請求項6】
前記管(10)及び前記中空インサート(20)は、前記第1の端部(11)及び前記第2の端部(12)で、それぞれ少なくとも2つの管状保持プレート(33)によって保持されており、該少なくとも2つの管状保持プレート(33)のうちの少なくとも1つ、特に全ての管状保持プレート(33)は、供給流体(F')の入口ポート(110)または出口ポート(112)にそれぞれ流体的に接続され、且つ前記少なくとも2つの管状保持プレート(33)のうちの前記少なくとも1つに形成された入口ダクト(111)または出口ダクト(113)を含み、特に供給流体(F')の横方向の取入れ及び/または抽出を可能にしている、ことを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載の反応器。
【請求項7】
前記管(10)及び前記中空インサート(20)は、それぞれ、前記第1の端部(11)及び前記第2の端部(12)で、少なくとも2つの管状保持プレート(33)によって保持されており、供給流体(F')の入口ポート(110)または出口ポート(112)にそれぞれ流体的に接続された少なくとも1つの入口ダクト(111)または出口ダクト(113)が、前記少なくとも2つの管状保持プレート(33)の外側の分配空間(42)及び収集空間(51)にそれぞれ配置され、特に供給流体(F')の横方向の取入れ及び/または抽出を可能にしている、ことを特徴とする請求項5に記載の反応器。
【請求項8】
前記管(10)及び前記中空インサート(20)は、第1の端部(11)及び第2の端部(12)で、それぞれ少なくとも2つの管状保持プレート(33)によって保持されており、前記少なくとも1つの供給流体(F')のための前記入口ポート(110)及び前記出口ポート(113)は、前記分配空間(42)からの供給及び前記収集空間(51)からの抽出のために、前記中空インサート(20)の上端部及び下端部にそれぞれ形成されており、前記反応器(1)は、少なくとも1つの側部ガス供給ダクト(140)及び少なくとも1つの側部ガス抽出ダクト(141)を更に備え、前記少なくとも1つの側部供給ダクト(140)及び前記分配空間(42)からの供給流体(F')の供給の一方で、前記少なくとも1つの側部抽出ダクト(141)及び前記収集空間(51)からの供給流体(F')の抽出は、他方で、特に、シールされた分離プレート(105)によって分離されている、ことを特徴とする請求項5に記載の反応器。
【請求項9】
前記インサート(20)と前記シールされた分離プレート(105)の各々との間にシール(106)が配置されている、ことを特徴とする請求項8に記載の反応器。
【請求項10】
前記少なくとも1つの供給流体(F')の流れが、少なくとも1つの前記分配チャンバ(40)及び前記収集チャンバ(50)内のガスの流れと並流または向流にされている、ことを特徴とする請求項1~9のいずれか一項に記載の反応器。
【請求項11】
前記触媒粉末が、前記環状空間(30)の各端部において繊維材料のシール(31)によって前記環状空間(30)内に保持されている、ことを特徴とする請求項1~10のいずれか一項に記載の反応器。
【請求項12】
前記中空インサート(20)が一体部品である、ことを特徴とする請求項1~11のいずれか一項に記載の反応器。
【請求項13】
燃料及び可燃物の合成のための吸熱反応または発熱反応を実施することを特徴とする、請求項1~12のいずれか一項に記載の反応器(1)の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、交換反応器の一般的な分野に向けられており、より詳細には、固体触媒、特に粉末状の固体触媒を使用し、吸熱性または主に発熱性の触媒反応を実施するための触媒交換反応器(catalytic exchange reactor)の分野に関する。
【0002】
そのような反応は、特に、燃料及び可燃性物質、例えば、メタノール(MeOH)のような液体燃料、またはメタン若しくは合成天然ガス(SNG:Synthetic Natural Gas)、ジメチルエーテル(DME)、炭化水素またはオレフィンのようなガス燃料を、水素及び炭素酸化物から、または水素及び炭素酸化物の混合物を含む合成ガスから合成するために実施することができる。それらはまた、メタンからの水素の生成、水素及び窒素からのアンモニアの合成、または水素及び液体有機水素担体(LOHC:Liquid Organic Hydrogen Carrier)型の分子を伴う水素化及び脱水素反応にも関係し得る。
【0003】
従って、本発明は、より具体的には、水素の存在下での一酸化炭素または二酸化炭素のメタン化(またはより一般的には炭化水素の生成または水素化反応)等の高度に発熱性の反応に適用することができる。また本発明は、フィッシャー・トロプシュタイプ(Fischer-Tropsch type)の反応、メタン若しくは他の炭化水素の湿式または乾式改質反応、あるいは酸化または脱水素反応にも適用することができる。また、本発明は、例えば、腐食、汚れ等のために頻繁な保守作業を必要とする用途、特にガスを使用する用途のための熱交換器としても使用することができる。
【0004】
従って、本発明は、特に発熱または吸熱有機合成方法(exothermic or endothermic organic synthesis method)を実施することができる固定床管状反応器(fixed-bed tubular reactor)を提供するものである。
【背景技術】
【0005】
固体触媒を使用する触媒反応器は、合成天然ガス(SNG)、ジメチルエーテル、メタノール、炭化水素、更にはオレフィンを含む合成燃料または可燃性物質のような有機化合物の合成に広く使用されている。
【0006】
水素及び炭素酸化物からの炭化水素の製造の範囲内で、またはより一般的には水素化反応に関して、関与する平衡、または以下では主反応(main reaction)と呼ばれる平衡は、一般的に以下のとおりである:
【0007】
【化1】
【0008】
【化2】
【0009】
【化3】
【0010】
3番目の式[化3]によって記述される平衡は、液体有機水素担体(LOHC)型の分子に関する。これは可逆的な反応であり、従って、発熱、次いで吸熱のシーケンスで連続的に行われる。これらの様々な反応は、熱化学の観点から十分に立証されている。それらは、当業者に公知であり、ここには記載されていない副反応(例えば、「水性ガスシフト(WGS:Water Gas Shift)」、「逆水性ガスシフト(RWGS:Reverse Water Gas Shift))、ブードア(Boudouard)の形成等)を引き起こす可能性がある。
【0011】
これらの主反応及び副反応(side reaction)に関与する化学種は、反応器に入る化学種を「反応物(reactant)」、主反応及び副反応によって生成する化学種を「生成物(product)」と呼ぶ。更に、「反応性流体reactive fluid)」とは、これらの反応に関与する全ての種を指す。これらの反応は全て熱力学的条件、圧力及び温度に関連しており、性能目標を考慮するとこれらが優先される。一般に、高圧で作業することは興味深いことであり、また、反応領域から熱を抽出することによってこれらの反応の発熱性を正確に管理することも必要であり、これにより、特に変換速度(conversion rate)、選択性(selectivity)及び触媒の寿命を保証することが可能になる。以下に説明する他の機能も興味深い。
【0012】
吸熱または発熱化学反応の熱制御及び調節のために工業で使用される触媒反応器の多くの構造が既に知られている。発熱反応に関して知られている主なタイプの熱交換反応器を以下に記載する。
【0013】
第一に、最も単純な触媒反応器技術は、「固定床」反応器技術と呼ばれている。カスケードされた断熱固定床反応器(adiabatic fixed-bed reactor)において、発熱は、一般に、第1の反応段階への入口での反応物を希釈すること、例えば、生成物を再循環させること、及び異なる反応器間の反応物-生成物混合物を冷却するための熱交換器を設置することによって管理されている。この構造は製造が簡単であるという利点を有するが、温度上昇を制限するためにガス再循環システムの設置を必要とし、高温で安定な触媒の使用を強いる。これらの反応器は、定常条件下で運転される集中ユニットとして使用される傾向がある。
【0014】
流動床熱交換反応器(fluidised-bed heat exchanger reactor)の技術もある。これらの反応器は固定層における熱伝達の問題を解決するために開発された。これらの反応器は、反応器内の良好な熱均一性の利点を提供し、ホットスポットを回避するが、同等の出力では、固定プラグフロー床(fixed plug-flow bed)の場合よりも大きな反応器容積を必要とする。これらの反応器では、触媒は微粒子の形態であり、その摩滅(attrition)を制御しなければならない。更に、粒子の流動化は、ガス流量の変動範囲を制限しなければならないことを意味し、このことは、これらの反応器を間欠運転に対してフレキシブルではないものにしている。
【0015】
別の交換反応器技術は、化学反応が、外部の熱伝達流体によって連続的に冷却される反応性チャネル内で起こる交換反応器に関する。これらの反応器の殆どはカレンダ・チューブ型(calender-tube type)であり、反応は伝熱槽によって周囲が冷却された反応管中で起こっている。反応性ガスは、例えば粉末状の触媒を含む管内を軸方向に循環している。
【0016】
回収された熱の変換、フレキシビリティまたは再利用を向上するために、同じユニット内の同じ型式または異なる型式の熱交換反応器の組み合わせも考慮することができる。
【0017】
反応器の熱応力の管理は、熱制御の必要性への対応から始まる。これは、以前の技術的解決策に示されているように、多くの方法で達成することができる。すなわち、中間の冷却及び/または希釈及び/または凝縮を伴う全体的な変換を交互に行う等の反応器外の解決策、熱交換反応器の概念への移行、熱交換の促進、反応性チャネルのサイズの縮小(millistructuring)、熱均質化(thermal homogenisation)のための3D導電性構造の統合、及びエネルギー堆積を分配するための反応物注入を交互に行う等の反応器内の解決策である。
【0018】
触媒の寿命の問題に関しては、大量の熱を発生する発熱反応は、触媒の局所的な劣化及び反応器/触媒アセンブリの変換性能の劣化をもたらすホットスポットの出現につながる可能性があることに留意すべきである。言い換えれば、固体触媒の劣化は、その非アクティブ化(deactivation)をもたらし、存在する化学種の変換速度の低下をもたらす可能性がある。関与する反応の選択性も変化する。
【0019】
更に、メタノールの合成またはフィッシャー・トロプシュ合成のような工業的に非常に有用ないくつかの水素化反応は、先の式、[化1]から[化3]で説明したように、平衡状態にあり、通常保持される熱力学的条件に対して低から中程度の変換速度を有している。従って、興味深い戦略は、反応媒体から生成された種、典型的には水を除去するために、選択透過性膜(permselective membrane)を反応性チャネルの1つ以上の壁と関連付けること(associating)であり、それによって反応を不均衡にし、その生産性を増加させている。このような方法の利点は、実験的にも理論的にも実証されている。革新は、2つの主要な要素、すなわち膜及び反応器の統合方法に焦点を当てることができる。
【0020】
チューブ・カレンダ型技術のための、管内に触媒を配置した熱交換反応器の従来の解決策において、問題の1つは、反応の発熱性のためにより高温になるゾーンを制御することである。この現象は、管がその全表面積に亘って集中的に冷却されることを必要とするが、任意の所与の時間において、例えば、反応物の注入及び軸方向循環のために、この表面積のごく一部のみが集中的に冷却される必要がある。この結果の1つは、熱流体の流量が大きすぎることである。
【0021】
これらの問題を克服するために、管の全長に亘って反応物を分配する装置が提供されている。この解決策は、反応器の全長に亘ってより均一な温度を得ることを可能にしている。この点に関して、特許文献1、特許文献2、特許文献3及び特許文献4は、環状分配空間からの反応物の分配を使用する熱交換反応器を提供している。特に、これらの交換反応器は、一般に円筒形であり、反応器の外側から同軸に配置された、管、環状分配空間、触媒負荷及び収集空間を含む。これらの解決策は、チューブ・カレンダ型反応器における冷却の標準であり、すなわち、管の冷却は、カレンダ中の流れによってのみ調節されている。
【0022】
しかしながら、これらの装置は満足できるものではない。実際、触媒負荷の周りに配置された環状分配空間の存在は、触媒から管への熱伝達を制限し、一般的に考えられる冷却システムを非効率的にしている。しかしながら、反応器内に熱伝導要素を挿入することは依然として可能である。しかしながら、そのような解決策は、小さな直径の管を含む反応器とは両立しない。
【0023】
逆に、特許文献5は、管の中心に配置され、固体触媒を収容する環状空間を画定している分配チャンバ及び収集チャンバを有するインサートを採用することを示唆している。しかしながら、この文献に提供されている構成では、環状空間内に均一に分布させることができない。より具体的には、この配置では、固体触媒内で最適な温度プロフィールを得ることができない。
【0024】
特許文献6の図1は、カレンダ・チューブ型反応器の別の例を表している。この反応器は、特に、触媒粉末床(catalytic powder bed)に浸漬され、それに沿って開口が設けられた注入管を備えている。後者は、特に、触媒粉末床の異なるレベルでの反応性ガスの注入を確実にし、従って、この床におけるホットスポットの出現を制限するように構成されている。しかし、この反応器は満足できるものではない。実際、この反応器は、その冷却を確保するために、複数の伝熱流体循環回路の設置を必要とし、これは、その複雑さを更に増大させる。
【0025】
特許文献7、特に図3aは、反応物Aとの反応を目的として、反応物Cの交互注入を可能にするように構成された反応器の別の例を開示している。この反応器は、壁によって分離され、反応物A及び反応物Cのそれぞれの循環を確実にすることを意図した2つのウェブ(すなわちチャネル)を備えている。2つのウェブは更に、それらを分離する壁に設けられた複数の開口によって流体連通している。これらの開口部は、特に、反応物Cと反応物Aとの段階的な混合を確実にするように配置されている。従って、この段階的な混合は、ホットスポットの出現を制限している。しかしながら、反応器がウェブのスタックの形で配置されているという事実は、それがあまりコンパクトでないことを意味している。
【0026】
更に、本出願人の特許文献8では、インサートタイプの装置は、管内の反応性ガスの軸方向の分布、管の内壁とインサートの外壁とによって画定されている環状空間内の触媒床を通る略直交放射方向(orthoradial direction)のガスの循環、及び生成されたガスの軸方向の収集を体系化している。
【0027】
これらのタイプの反応器を改良する必要があり、特に、分離要素の統合及び分離された化学種を排出するための流体の管理を可能にする1つの代替的な流体循環を有するそのようなチューブ・カレンダ型反応器を提供する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0028】
【特許文献1】米国特許第3758279号明細書
【特許文献2】米国特許第4374094号明細書
【特許文献3】欧州特許第0560157号明細書
【特許文献4】米国特許第2997374号明細書
【特許文献5】中国特許出願公開第103990420号明細書
【特許文献6】米国特許第8961909号明細書
【特許文献7】米国特許第7402719号明細書
【特許文献8】仏国特許出願公開第3103714号明細書
【非特許文献】
【0029】
【非特許文献1】“In-Situ H2O removal via hydrophilic membranes during Fischer-Tropsch and other fuel-related synthesis reactions”, M.P.Rhode, Phd Dissertation, KIT Scientific Publishing, 2010
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0030】
従って、本発明の目的は、少なくとも部分的に、前述の必要性及び従来技術の実施形態に関連する欠点を改善することである。
【0031】
本発明は、特に、固体触媒内の反応物のより均一な分布、固体触媒内で発生する熱流のより均一な分布、及びより良好な冷却管理を可能にする固定床管状反応器を提供することを目的としている。加えて、本発明は、従来技術から公知の反応器と比較して(触媒の)信頼性及び寿命が改善され、触媒粉末の固定床へのガスの通過時間を最適化(増加)することを可能にする管状反応器を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0032】
従って、本発明の1つの目的は、その態様の1つによれば、第1の端部と第2の端部との間で長手方向軸に沿って延在している固定床管状反応器であって、この反応器は、中空管の外壁と、該中空管に同軸に配置された中空インサートの内壁との間に位置する環状空間内に閉じ込められた触媒粉末床を含み、中空インサートは、少なくとも1つの第1の分離壁によって互いに分離された少なくとも1つの分配チャンバ及び少なくとも1つの収集チャンバを含み、少なくとも1つの分配チャンバ及び少なくとも1つの収集チャンバは、それぞれ、第1の端部にガス入口開口部及び第2の端部にガス出口開口部を含み、
中空インサートの内壁が、特に部分的または完全に、少なくとも1つの反応生成物を部分的に除去するための少なくとも1つの選択透過性膜を含む分離構造で覆われており、これにより、環状空間が外壁及び選択透過性膜によって区切られており、
反応器は、少なくとも1つの第1の分離壁によって少なくとも1つの分配チャンバ及び少なくとも1つの収集チャンバから分離された少なくとも1つの供給チャンバを更に含み、この少なくとも1つの供給チャンバは、第1の端部に、少なくとも1つの分配チャンバ及び少なくとも1つの収集チャンバ内を循環するガスとは異なる、少なくとも1つの反応生成物を排出するためのフラッシング流体(flushing fluid)からなる少なくとも1つの供給流体のための入口ポートを有し、第2の端部に、前記少なくとも1つの供給流体のための出口ポートを有することを特徴としている。
【0033】
本発明により、特に熱伝達流体の内部循環及び外部循環によって反応ゾーン(反応物、反応生成物及び触媒)を冷却できるようにすることによって、このゾーンの冷却を改善することが可能であり、これは、例えば、全ての水素化反応に有益である。更に、メタノール、オレフィン、炭化水素の合成、更には液体有機水素担体(LOHC)タイプの分子の水素化等の平衡反応の変換速度を改善することができる。
【0034】
本発明による反応器は、更に、以下の特徴の1つまたは複数を、単独で、または任意の可能な技術的組合せに従って含むことができる。
【0035】
選択透過性膜は、有機または無機であり得る。有利には、適合可能であって良い。それは、非特許文献1に記載されている通りであっても良い。
【0036】
選択透過性膜の透過性は、水蒸気に対して有利に選択的に発揮することができる。
【0037】
1つの代替案によれば、分離構造は、中空インサートの内壁を覆う多孔質支持体を更に含むことができ、この多孔質支持体自体は選択透過性膜で覆われており、中空インサートは、少なくとも1つの反応生成物をガスから分離して通過させるための開口部を含むことができる。
【0038】
別の代替例によれば、中空インサートは、前記少なくとも1つの反応生成物を前記ガスから分離して通過させる多孔質材料から作製されていると共に、選択透過性膜で覆われており、中空インサートの前記少なくとも1つの第1の分離壁は、反応性ガスに関してシールするためのシール材料、特にセラミック材料を含むことができる。
【0039】
少なくとも1つの分配チャンバ、少なくとも1つの収集チャンバ、及び少なくとも1つの供給チャンバの各々は、内壁のセクション及び2つの第1の分離壁によって区切られ得る。
【0040】
更に、反応器は、第1の端部及び第2の端部のそれぞれに、中空インサートが配置される分配空間及び収集空間を含むことができる。
【0041】
更に、管及び中空インサートは、第1の端部及び第2の端部で、それぞれ少なくとも2つの管状保持プレートによって保持することができ、これら少なくとも2つの管状保持プレートのうちの少なくとも1つ、特に全ての管状保持プレートは、供給流体の入口ポートまたは出口ポートにそれぞれ流体的に接続され、且つ前記少なくとも2つの管状保持プレートのうちの前記少なくとも1つに形成された入口ダクトまたは出口ダクトを含み、特に供給流体の横方向の取入れ及び/または抽出を可能にしている。
【0042】
管とインサートの軸方向長さは異なっていても良く、管の軸方向長さは特にインサートの軸方向長さより短い。
【0043】
あるいは、管及び中空インサートは、それぞれ、第1の端部及び第2の端部で、少なくとも2つの管状保持プレートによって保持することができ、供給流体の入口ポートまたは出口ポートに流体的に接続された少なくとも1つの入口ダクトまたは出口ダクトが、少なくとも2つの管状保持プレートの外側の分配空間及び収集空間にそれぞれ配置され、特に供給流体の横方向の取入れ及び/または抽出を可能にしている。
【0044】
更に代替的に、管及び中空インサートは、第1の端部及び第2の端部で、それぞれ少なくとも2つの管状保持プレートによって保持することができ、少なくとも1つの供給流体のための入口ポート及び出口ポートは、中空インサートの上端部及び下端部にそれぞれ形成され、分配空間からの供給及び収集空間からの抽出をそれぞれ可能にすることができ、反応器は、少なくとも1つの側部ガス供給ダクト及び少なくとも1つの側部ガス抽出ダクトを更に備えている。
【0045】
前記少なくとも1つの側部供給ダクト及び分配空間からの供給流体の供給の一方で、前記少なくとも1つの側部抽出ダクト及び収集空間からの供給流体の抽出は、他方で、シールされた分離プレートによって分離することができる。
【0046】
更に、インサートとシールされた分離プレートの各々との間にシールを配置することができる。
【0047】
更に、前記少なくとも1つの供給流体の流れは、前記少なくとも1つの分配チャンバ及び収集チャンバ内のガスの流れと並流(co-current)または向流(counter-current)にすることができる。
【0048】
必要に応じて、触媒粉末は、環状空間の各端部において繊維材料のシールによって環状空間内に保持することができる。
【0049】
更に、中空インサートは一体部品であっても良い。
【0050】
更に、他の目的の中でも、本発明の別の目的は、燃料及び可燃物を合成するための吸熱反応または発熱反応を実施することを特徴とする、先に定義した管状反応器の使用である。
【図面の簡単な説明】
【0051】
本発明は、その非限定的な例示的実施の以下の詳細な説明を読むことによって、並びに添付の図面の概略図及び部分図を調べることによって、より良く理解されるであろう。
【0052】
図1】本発明による固定床管状反応器の概略図であり、反応器の長手方向軸を通る断面に沿って、特に図2の縦断面PPに沿って、収集チャンバ及び分配チャンバを見るための部分概略図である。
図2図1の管状反応器の長手方向軸に対して垂直な横断面に沿った断面図である。
図2A図2と同様の図であって、本発明の原理による分離構造を使用する第1の代替例を示すための図である。
図2B図2と同様の図であって、本発明の原理による分離構造を使用する第2の代替例を示すための図である。
図3図2の縦断面P’P’に沿った図1及び図2の管状反応器の概略図であり、側部入口及び出口ポートを介して供給される2つの供給チャンバを示したものである。
図4図1と同様の図であって、触媒を保持するためのシールの使用を示した図である。
図5図3と同様の図であって、触媒を保持するためのシールの使用を説明した図である。
図6図1と同様の図であって、本発明による管状反応器の別の例の概略図である。
図7図6の反応器に関する図3と同様の図である。
図8図1と同様の図による、本発明による管状反応器の別の例の概略図である。
図9図8の反応器に関する図3と同様の図である。
図10図2を参照した平面PP及びP’P’にそれぞれ沿った軸方向断面図であって、カレンダの内側に位置している、図1図5のものと同様の複数の管状反応器を示す図である。
図11図2を参照した平面PP及びP’P’にそれぞれ沿った軸方向断面図であって、カレンダの内側に位置している、図1図5のものと同様の複数の管状反応器を示す図である。
図12図2を参照した平面P’P’に沿った軸方向断面図であって、カレンダの内側に位置している図6及び図7のものと同様の複数の管状反応器を示す図である。
図13】膜が存在する構成及び膜が存在しない構成における、インサートのアーク長の関数としての二酸化炭素の変換の経過を表すグラフである。
図14】モル濃度の推移及び全水フローライン(total water (H2O) flow line)を示す触媒の断面を表すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0053】
図を通じて、同一の参照番号は、同一または類似の要素を示す場合がある。
【0054】
更に、図に示された異なる部分は、図をより読みやすくするために、必ずしも均一な縮尺で描かれていない。
【0055】
本発明は、固定された触媒粉末床を有する管状熱交換反応器に関する。特に、触媒粉末床は、中空管の外壁と呼ばれる1つの壁と、この管に同軸に収容された中空インサートの内壁と呼ばれる別の壁との間に位置する環状空間内に閉じ込められている。触媒粉末床は、特に、粒子として触媒を含むことができる。
【0056】
尚、図1図2及び図3図12の全てにおいて、本発明の原理による選択透過性膜160を含む分離構造は示されていない。従って、この原理を説明する図2A及び図2Bを参照することが適切である。図2A及び図2Bを参照して説明した分離構造の代替実施形態は、図1図2、及び図3図12の実施形態に適用可能であることにも留意されたい。
【0057】
従って、図1及び図2には、本発明による固定床管状反応器の1つの例示的な実施形態が示されている。これらの図1及び図2、並びに以下に説明する全ての図において、矢印Fはガスの進行方向を表していることに留意されたい。他方、特に図3図5図7図9及び図11に見られる矢印F’は、供給流体の移動方向を表している。
【0058】
本発明による管状反応器1は、第1の端部11と第2の端部12との間で長手方向軸XX’に沿って延在している外側中空管10を含む。中空管10は、長手方向軸XX’に関して回転対称であっても良い。従って、長手方向軸XX’は、中空管10の回転軸とすることができることが理解される。
【0059】
中空管10は、金属、特に鉄、アルミニウム合金、銅、ニッケル等から選択される金属を含むことができる。中空管10の直径は、5mmから100mmの間とすることができる。中空管10を形成する外壁15と呼ばれる壁は、0.5mmから10mmの間の厚さを有することができる。中空管10は、内面の直径の10倍から200倍の長さを有することができる。
【0060】
管状反応器1はまた、長手方向軸XX’に沿って延在しており、ほぼ円筒形状を有する中空インサート20を含む。中空インサート20は、特に、中空管10の容積内に中空管と同軸に収容されている。特に、インサート20はまた、内壁21と呼ばれる壁、特に、外壁15と共に環状空間30を区切っているガス透過性壁を備えている。ここで、環状空間30は、触媒粉末が充填されており、管状反応器1を通過しやすい反応性ガスの変換反応の場所となっている。環状空間30は、外壁15と内壁21との間の距離として定義され、中空管10の内面の直径の2%から20%の間の厚さを有することができる。中空インサート20は、一体部品とすることができる。中空インサート20は、例えば、ステンレス鋼、特にはんだ付け方法によって、またはアルミニウムで、特に押出または付加製造法(例えば、3D製造法)によって、またはいくつかの低温反応のためのポリマーによって作られても良い。中空インサート20の様々な開口部は、インサートの製造中に形成することができ、及び/または後の段階で機械加工によって形成することができる。
【0061】
中空インサート20はまた、少なくとも1つの分配チャンバ40及び少なくとも1つの収集チャンバ50を含む。ここでは、簡単にするために、単一の注入点を有する単一の分配チャンバ40及び単一の収集チャンバ50が示されているが、この選択は限定的なものではない。特に、中空インサート20は、1個~4個の分配チャンバ40、及び1個~4個の収集チャンバ50を含むことができる。
【0062】
前記少なくとも1つの分配チャンバ40及び前記少なくとも1つの収集チャンバ50は、有利には、交互に配置され、中空インサート20の全長に亘って延在している。
【0063】
有利には、中空インサート20はまた、供給流体の軸方向循環を構成している少なくとも1つの供給チャンバ100、ここでは2つの供給チャンバ100を含むが、本発明は、追加の供給チャンバ及び流体の数に関して限定されない。
【0064】
従って、図2に見られるように、中空管10の軸XX’に垂直な断面の平面を観察することによって、第1の供給チャンバ100、前記少なくとも1つの収集チャンバ50、第2の供給チャンバ100、及び前記少なくとも1つの分配チャンバ40が連続して存在している。前記少なくとも1つの収集チャンバ50、前記少なくとも1つの分配チャンバ40、及び供給チャンバ100は、更に、第1の分離壁60によって互いに分離されている。従って、分配チャンバ40は、2つの分離壁60と内壁21の一部とによって区切られていることが理解される。同様に、収集チャンバ50もまた、2つの第1の分離壁60及び内壁21の別の部分によって区切られている。更に同等に、供給チャンバ100は、2つの第1の分離壁60及び内壁21の更に別の部分によって分離されている。
【0065】
更に、第1の隔壁60は、中空管10によって画定された容積内で中空インサート20の全長に沿って延在しており、一方のチャンバから他方のチャンバへのガスの直接的な通過を防止するように配置されている。例えば、第1の分離壁60は、長手方向軸XX’を通る平面を形成している。
【0066】
特に、分配チャンバ40の2つの第1の隔壁60は、全体的に細長い形状を有し、第1の端部11から第2の端部12に向かって長手方向軸XX’に沿って延在していて良い。特に、分配チャンバ40の2つの第1の分離壁60は、長手軸XX’と一致する共通の側面を有することができる。
【0067】
更に、反応器1は、中空インサート20の第1の端部11において、分配空間42または入口プレナムを含むことができ、この空間を通って、1種またはそれ以上の種類の反応性ガスが、吸気開口を介して分配チャンバ40内に取り込まれるようになっている。同様に、反応器1は、中空インサート20の第2の端部12において、収集空間51または出口プレナムを含むことができ、この空間を通って、1種またはそれ以上の種類のガスを、排出開口を通して排出することができる。
【0068】
更に、分配チャンバ40は第2の端部12で閉鎖され、収集チャンバ50は第1の端部11で閉鎖されている。
【0069】
内壁21は、少なくとも1つの分配開口部及び少なくとも1つの収集開口部を更に備えることができ、入口プレナム42の吸気開口を介して取り込まれるガスを環状空間30に向かって分配区画に分配し、環状空間30内に分配されたガスを、収集チャンバ50を介して収集することをそれぞれ可能にしている。
【0070】
中空管10は、有利には、2つの管状保持プレート33によって保持されており、その各々は、中空管10を各保持プレート33に密封して取り付けるための第1のシステム34を含む。同様に、中空インサート20は、有利には、2つの保持プレート33によって保持され、各保持プレート33は、中空インサート20を各保持プレート33に密封して取り付けるための第2のシステム35を含む。各保持プレート33内にも分離壁36が存在し、その間に中空管10及び中空インサート20が収容されている。
【0071】
本発明によれば、図2A及び図2Bに見られるように、中空インサート20の内壁21は、反応生成物を部分的に除去し、化学反応の生産性を向上させるための選択透過性膜160を含む分離構造160、170で全体的または部分的に覆われ、その結果、環状空間30は、外壁15及び選択透過性膜160によって区切られている。
【0072】
選択透過膜160の透過性は、水蒸気HOに対して選択的に発揮されることが有利であるが、これに限定されない。
【0073】
このような選択透過性膜160の追加は、アセンブリの性能に有益な化学反応における不平衡(disequilibrium)を生じさせることを有利に可能にしている。膜160は、有機または無機であって良く、好ましくは成形可能である。
【0074】
この膜160は、供給流体F’が除去すべき種、この場合は水蒸気HOを放出するフラッシング流体であることを考慮して、水蒸気HOの一部を除去するために使用することができる。収集チャンバ50は、先験的な(priori)残留HO水蒸気濃度を含む。
【0075】
図2A及び図2Bは、反応生成物、この場合は水蒸気HOを抽出するための選択的構造の2つの代替的な実施形態を表す。図2A及び図2Bにおいて、矢印Dは、膜160を通る拡散を表す。
【0076】
図2Aの例では、分離構造は、インサート20の内壁21を覆う多孔質支持体170を更に含む。この多孔質支持体170は、それ自体が選択透過性膜160で覆われている。更に、中空インサート20は、水蒸気HOを通過させるための開口部180を含む。
【0077】
図2Bの例では、中空インサート20は、水蒸気HOが通過できるように多孔質材料で作られ、選択透過性膜160で覆われている。加えて、中空インサート20の各々の第1の分離壁60は、反応性ガスに対してシールするためのシール材料、特にセラミック材料を含む。
【0078】
従って、本発明は、分離される種、ここでは水蒸気HOの循環及び収集を可能にするために、供給チャンバ100の使用を有利に利用する。
【0079】
図4及び図5に示される1つの有利な態様によれば、触媒粉末は、環状空間30の各端部において、例えば繊維材料からなるシール31によって環状空間30内に保持されている。シール31が繊維材料で作られる限り、後者は必然的に多孔性であり、従って反応性ガスに対して透過性である。この点に関して、繊維材料は、ガラス繊維、セラミック繊維、金属繊維、炭素繊維、ポリマー材料繊維から選択される要素の少なくとも1つを含むことができる。
【0080】
シール31は、特に、編組、シース、コードの形態であっても良く、または単に繊維材料の詰め物を含んでも良い。有利には、繊維材料は、断熱材であり、使用される触媒と実質的に同等の熱伝導率(0.2W/m/K~10W/m/K)を有している。
【0081】
図3は、前述の供給チャンバ100内の、図2の平面P’P’に沿った軸方向の断面図を示すためのものである。各供給チャンバ100は、中空管10の端部11に近接して位置する側部入口ポート110によって供給され、この入口ポート110は、上部保持プレート33に形成された側部入口ダクト111によって供給されている。
【0082】
同様に、各供給チャンバ100は、中空管10の端部12に近接して配置された側部出口ポート112を有し、この出口ポート112は、下部保持プレート33に形成された側部出口ダクト113に流体的に接続されている。このようにして、供給流体F’は、循環によって管状保持プレート33内に入ることができる。
【0083】
有利には、本発明は、このようにして、反応器1の熱化能力(thermalisation capacity)を拡張することを可能にし、特に、例えば、前述の[化1]及び/または[化2]に従って、反応の反応物及び生成物に加えて、供給流体、特にユーティリティ流体または反応性流体を管理及び循環させることを可能にしている。
【0084】
中空インサート20の幾何形状及び外側中空管10の幾何形状は、分配チャンバ40及び供給チャンバ100の別々の供給、並びに収集チャンバ50及び供給チャンバ100の別々の出口を可能にするように画定されている。
【0085】
図1図5の例示的な実施形態では、中空管10及び中空インサート20は異なる軸方向長さを有しており、中空管10は中空インサート20よりも短く、供給流体はダクト111及び113を介して保持プレート33を通して供給及び排出されている。更に、供給流体F’の流れは、軸方向に並流的にガス循環に向けられている。しかし、向流的な概念も興味深い。
【0086】
図6及び図7の例示的な実施形態では、供給チャンバ100は、入口42及び出口51のプレナム内に位置する専用ダクトを介して供給され、もはや保持プレート33内に機械加工されたダクトを介しては供給されない。
【0087】
より正確には、図7に見られるように、供給流体F’を取り入れるための側部入口ダクト111が、上部保持プレート33に沿って、その外側で、反応器1の上部に位置している。同様に、供給流体F’を抽出するための側部出口ダクト112が、反応器1の底部において、下部保持プレート33の外側に沿って配置されている。
【0088】
従って、供給流体F’は、管状保持プレート33の外側に作られ、入口プレナム41及び出口プレナム51の外側との密閉された接続を提供するダクト111、112を介して供給及び排出されている。更に、供給流体F’の流れは、軸方向に並流的にガス循環に向けられている。しかし、向流的な概念も興味深い。
【0089】
図7及び図8の例示的な実施形態では、供給チャンバ100は、入口42及び出口51のプレナム内の追加のタッピングを介して供給されている。
【0090】
より正確には、図7に見られるように、供給流体F’は、中空インサート20の上端部及び下端部を介して供給及び抽出されている。次いで、反応性流体Fは、図9に見られるように、側部反応性流体取り込みダクト140及び抽出ダクト141を介して横方向に導入されている。供給流体F’と反応性流体Fとの間のシールされた分離は、取り外し可能な分離プレート105によって確保されており、この分離プレート105は、入口及び出口プレナムに挿入され、それぞれが中空インサート20の周りに配置されている。そしてシール106が、各分離プレート105と中空インサート20との間に配置されている。
【0091】
有利なことに、一方では図5及び図6の実施形態、他方では図7及び図8の実施形態は、従来の実施形態に近い管状プレート/管アセンブリを可能にしている。
【0092】
図10及び図11は、本発明による、特に図1図5の代替例による、複数の管状反応器1の実施の説明図である。同様に、図12は、図6及び図7の代替例による、本発明による複数の管状反応器1の実施の説明図である。
【0093】
この実施態様は、特に、カレンダC内に互いに平行に配置された4つの管1を含む。管状保持プレート33は、管1を保持し、伝熱流体の供給及び排出システム120によって管1を冷却するための伝熱流体のための循環空間を提供するために使用されている。
【0094】
図10及び図11の例では、分配チャンバ40は、反応物供給システム125を介して入口プレナム42から直接供給されている。次いで、変換されていない生成物及び反応物は、抽出システム126を介して出口プレナム51に排出されている。
【0095】
ここで、外側管はインサート20よりも短く、供給流体F’は、管状保持プレート33内に一体化されたダクト111、113を介してインサート20内に直接分配されている。
【0096】
図12の例では、中空インサート20はより長い。供給流体F’は、保持プレート33の外側に位置するダクト111、113の専用回路によって供給及び抽出されている。
【0097】
本発明による管状反応器1、特に、ユーティリティ流体又は反応性流体を循環させるための供給チャンバ100の採用によって、熱化能力を拡張することを可能にしている。
【0098】
更に、この構成は、触媒粉末、特に粉末形態の触媒を加熱する問題に良好に対応し、従って、ホットスポットの出現を制限している。その結果、より効率的で長持ちするデバイスが得られる。更に、環状空間30内に触媒粉末を配置することにより、その冷却が容易になる。
【実施例1】
【0099】
応用例:メタノール(MeOH)の合成への応用
二酸化炭素(CO)からのメタノール(MeOH)の直接合成を目標として、選択透過性膜160を用いて本発明の原理に基づいて2つの数値モデルを実施した。
【0100】
図2Bの代替案と一致する構成で、1つの管断面のみがモデル化されている。シミュレーション条件は、この反応の化学量論的入口条件として、圧力(P)を50bar、反応物入口温度(T)を200°Cとした。
【0101】
得られた結果は、200℃及び50バールでの、メートル(m)で表される長さL、膜の存在する配置(Cm)及び膜の存在しない配置(Csm)におけるインサート20のアーク長の関数としての二酸化炭素(CCO)の変換の経過を表す図13のグラフ、及びHO種についてのモル/mで表されるモル濃度mの経過及び全水流のLF線を示す触媒の断面を表す図14のグラフ上で特に明らかである。
【0102】
結果は、膜160の分離作用の結果として変換速度の増加を示し、流動様式に従って、触媒の厚さ全体に亘って目に見える反応生成物中のHO濃度の減少を示す。
【0103】
もちろん、本発明は、今説明した例示的な実施形態に限定されない。当業者であれば、種々の変更が可能である。
【0104】
特に、供給チャンバ100、収集チャンバ50、及び分配チャンバ40の数、及びそれぞれの角度配置は変化しても良い。
【0105】
供給チャンバ100内の供給流体F’の循環の方向は、変えることができる。
【0106】
供給流体F’及び反応物Fの供給及び抽出のための位置の選択、特にインサート20の端部又はインサート20のサイドタッピングによる位置の選択は、それぞれ方法に従って変えることができる。
【0107】
供給チャンバ100への供給は、管状プレート33と関連してもしなくても良い。
【0108】
本発明の反応器1は、千鳥状注入手段を備えていても備えていなくても良い。
【0109】
供給チャンバ100が冷却チャンバとして使用される場合、システムの効率は、熱交換を促進することを目的とした当業者に知られている様々な操作によって更に改善することができ、例えば表面の構造化、特に微細構造化、熱水力学的レジームの修正等が挙げられる。
図1
図2
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
【国際調査報告】