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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-30
(54)【発明の名称】大気圧水生成システムおよび方法
(51)【国際特許分類】
   B01D 53/26 20060101AFI20240920BHJP
   F24S 20/00 20180101ALI20240920BHJP
【FI】
B01D53/26 200
F24S20/00
B01D53/26 231
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024520900
(86)(22)【出願日】2021-10-08
(85)【翻訳文提出日】2024-05-20
(86)【国際出願番号】 IB2021059253
(87)【国際公開番号】W WO2023057801
(87)【国際公開日】2023-04-13
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524024018
【氏名又は名称】フレシェイプ ソシエテ アノニム
(74)【代理人】
【識別番号】110001302
【氏名又は名称】弁理士法人北青山インターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】ルビ,マチュー
(72)【発明者】
【氏名】アラゴン カリージョ,セバスティアン
(72)【発明者】
【氏名】オン,チン リー
【テーマコード(参考)】
4D052
【Fターム(参考)】
4D052AA00
4D052CE00
4D052DA06
4D052DB02
4D052FA05
4D052GA01
4D052GA04
4D052GB00
4D052GB04
4D052GB11
4D052HA01
4D052HA02
4D052HA03
4D052HA11
4D052HA21
4D052HA24
4D052HA27
4D052HA33
4D052HA49
(57)【要約】
大気圧水生成システムおよび方法が記載されている。少なくとも2の連続する処理ステージ(AB/VC)を含む少なくとも1の大気水生成ユニットが提供される。各処理ステージ(AB/VC)は、吸着材を含む吸着構造(AB)を含み、この吸着構造(AB)が、隣接する蒸気チャンバ(VC)に結合されて、そこへの蒸気移動を可能にする。吸着フェーズでは、湿った周囲空気が吸着構造を通って循環されて、吸着構造に水が吸着される。脱着フェーズでは、熱エネルギーが吸着構造(AB)に供給されて、吸着構造に吸着された水が水蒸気中に脱着される。この水蒸気は隣接する蒸気チャンバ(VC)に移動し、そこで水蒸気が凝縮して凝縮水となる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1の大気圧水生成ユニット(AWGU、AWGU)を含む大気圧水生成システムであって、
-少なくとも2の連続する処理ステージ(AB/VC;M1~M4;CA/VC)であって、各々が、吸着材を含む吸着構造(AB;CA)を含み、この吸着構造(AB;CA)が、隣接する蒸気チャンバ(VC)に連結されて、そこへの蒸気移動を可能にする、少なくとも2の連続する処理ステージと、
-前記吸着構造(AB;CA)に熱エネルギーを供給する加熱ステージ(HT;HM)と、
-前記蒸気チャンバ(VC)のうちの少なくとも最後の1つの蒸気チャンバにおいて水蒸気の凝縮を引き起こす冷却ステージ(CL;CM)と、
-前記吸着構造(AB;CA)を介して湿った周囲空気を強制的に循環させて、前記吸着構造(AB;CA)に水を吸着させるための回路(C、V)とを備え、
前記少なくとも1の大気圧水生成ユニット(AWGU、AWGU)が、脱着モードで動作するように構成され、この脱着モードでは、前記加熱ステージ(HT;HM)が動作して、この加熱ステージ(HT;HM)により供給される熱エネルギーによって、前記吸着構造(AB;CA)に吸着された水が水蒸気中に脱着し、その水蒸気が隣接する蒸気チャンバ(VC)に移動して、そこで水蒸気が凝縮して凝縮水となるように動作することを特徴とする大気圧水生成システム。
【請求項2】
請求項1に記載の大気圧水生成システムにおいて、
先行する処理ステージ(AB/VC;M1~M3;CA/VC)で生成された水蒸気の凝縮から生じる潜熱が、後続の処理ステージ(AB/VC;M2~M4;CA/VC)の吸着構造(AB;CA)に伝達されて脱着を維持するように、前記少なくとも1の大気圧水生成ユニット(AWGU、AWGU)が構成されていることを特徴とする大気圧水生成システム。
【請求項3】
請求項1または2に記載の大気圧水生成システムにおいて、
前記吸着構造が、吸着材を含む吸着材床(AB)を含み、この吸着材床(AB)が、蒸気透過性分離壁(10)を介して隣接する蒸気チャンバ(VC)に連結されていることを特徴とする大気圧水生成システム。
【請求項4】
請求項3に記載の大気圧水生成システムにおいて、
前記処理ステージ(AB/VC)が、順番に並んで配設され、
先行する処理ステージ(AB/VC)の蒸気チャンバ(VC)が、熱交換プレート(20)を介して後続の処理ステージ(AB/VC)の吸着材床(AB)に結合されて、前記熱交換プレート(20)の表面に沿った水蒸気の凝縮を引き起こすようになっており、
前記熱交換プレート(20)は、蒸気チャンバ(VC)側の熱交換プレート(20)の表面に沿った水蒸気の凝縮から生じる潜熱が、後続の処理ステージ(AB/VC)の吸着材床(AB)に伝達されるように構成されていることを特徴とする大気圧水生成システム。
【請求項5】
請求項4に記載の大気圧水生成システムにおいて、
一連のn個の処理ステージ(AB/VC)を含み、nが2~10の整数であることを特徴とする大気圧水生成システム。
【請求項6】
請求項4または5に記載の大気圧水生成システムにおいて、
前記加熱ステージが、熱交換装置(HT)を含み、この熱交換装置が、処理ステージ(AB/VC)のうちの最初の1つの処理ステージの吸着材床(AB)に結合されて、そこに含まれる吸着材に熱エネルギーを供給し、
前記冷却ステージが、冷却装置(CL)を含み、この冷却装置が、処理ステージ(AB/VC)のうちの最後の1つの処理ステージの蒸気チャンバ(VC)に結合されて、そこに含まれる水蒸気の凝縮を引き起こすことを特徴とする大気圧水生成システム。
【請求項7】
請求項4~6の何れか一項に記載の大気圧水生成システムにおいて、
前記熱交換プレート(20)には、前記熱交換プレート(20)から、先行する処理ステージ(AB/VC)の蒸気チャンバ(VC)内および/または後続の処理ステージ(AB/VC)の吸着材床(AB)内に延びる複数の突出する伝熱要素(200a、200b)が設けられていることを特徴とする大気圧水生成システム。
【請求項8】
請求項7に記載の大気圧水生成システムにおいて、
前記突出する伝熱要素(200a、200b)が、突出するフィン、ピンまたはヒートパイプを含むことを特徴とする大気圧水生成システム。
【請求項9】
請求項3~6の何れか一項に記載の大気圧水生成システムにおいて、
1または複数の伝熱管(25)をさらに含み、前記伝熱管が、前記吸着材床(AB)の少なくとも1つを通って延び、その中に含まれる吸着材に熱エネルギーを供給することを特徴とする大気圧水生成システム。
【請求項10】
請求項9に記載の大気圧水生成システムにおいて、
前記1または複数の伝熱管(25)には、前記少なくとも1の大気圧水生成ユニット(AWGU、AWGU)の先行するステージ(AB/VC;HM、M1~M3)から来る水蒸気が供給され、
各伝熱管(25)は、伝熱管(25)の内壁に沿った水蒸気の凝縮から生じる潜熱が周囲の吸着材床(AB)に伝達されるように構成されていることを特徴とする大気圧水生成システム。
【請求項11】
請求項3に記載の大気圧水生成システムにおいて、
前記少なくとも1の大気圧水生成ユニット(AWGU、AWGU)が、順番に並んで配設された複数の処理モジュール(M1~M4)を備え、各処理モジュール(M1~M4)が、複数の隣接する蒸気チャンバ(VC)の間に介在する複数の吸着材床(AB)を含み、
各処理モジュール(M1~M4)が、1または複数の伝熱管(25)をさらに含み、前記伝熱管が、前記吸着材床(AB)の各々を通って延び、その中に含まれる吸着材に熱エネルギーを供給し、
各処理モジュール(M1~M4)の伝熱管(25)には、前記大気圧水生成ユニット(AWGU、AWGU)の先行するモジュール(HM、M1~M3)の蒸気チャンバ(VC)から来る水蒸気が供給され、
各伝熱管(25)は、伝熱管(25)の内壁に沿った水蒸気の凝縮から生じる潜熱が周囲の吸着材床(AB)に伝達されるように構成され、
各処理モジュール(M1~M4)の蒸気チャンバ(VC)が、前記大気圧水生成ユニット(AWGU、AWGU)の後続のモジュール(M2~M4、CM)に水蒸気を供給することを特徴とする大気圧水生成システム。
【請求項12】
請求項11に記載の大気圧水生成システムにおいて、
前記複数の処理モジュール(M1~M4)の直前に配置された加熱モジュール(HM)と、前記複数の処理モジュール(M1~M4)の直後に配置された凝縮器モジュール(CM)とをさらに備え、
前記加熱モジュール(HM)が、複数の隣接する蒸気チャンバ(VC)の間に介在する複数の吸着材床(AB)を含み、
前記複数の処理モジュール(M1~M4)のうちの最初の1つの処理モジュール(M1)の伝熱管(25)には、前記加熱モジュール(HM)の蒸気チャンバ(VC)から来る水蒸気が供給され、
前記凝縮器モジュール(CM)が、前記複数の処理モジュール(M1~M4)のうちの最後の1つの処理モジュール(M4)の蒸気チャンバ(VC)から来る水蒸気が供給される複数の凝縮チャンバ(CC)を含むことを特徴とする大気圧水生成システム。
【請求項13】
請求項11または12に記載の大気圧水生成システムにおいて、
各処理モジュール(M1~M4)が、n+1個の隣接する蒸気チャンバ(VC)の間に介在する一連のn個の吸着材床(AB)を含み、nが2~6の整数であることを特徴とする大気圧水生成システム。
【請求項14】
請求項11~13の何れか一項に記載の大気圧水生成システムにおいて、
前記少なくとも1の大気圧水生成ユニット(AWGU、AWGU)が、一連のm個の処理モジュール(M1~M4)を含み、mが2~10の整数であることを特徴とする大気圧水生成システム。
【請求項15】
請求項9~14の何れか一項に記載の大気圧水生成システムにおいて、
各伝熱管(25)が、内部で凝縮した凝縮水を排出するための排水口を含むことを特徴とする大気圧水生成システム。
【請求項16】
請求項3~15の何れか一項に記載の大気圧水生成システムにおいて、
前記蒸気透過性分離壁(10)が、メッシュ構造または穴あき箔構造からなることを特徴とする大気圧水生成システム。
【請求項17】
請求項16に記載の大気圧水生成システムにおいて、
前記メッシュ構造または穴あき箔構造が、ポリマーまたは金属からなることを特徴とする大気圧水生成システム。
【請求項18】
請求項1または2に記載の大気圧水生成システムにおいて、
前記吸着構造が、隣接する蒸気チャンバ(VC)内の伝熱構造(30、300a、300b;40)の側面に設けられた被覆吸着層(CA)を含むことを特徴とする大気圧水生成システム。
【請求項19】
請求項18に記載の大気圧水生成システムにおいて、
前記処理ステージ(CA/VC)が、順番に並んで配設され、
先行する処理ステージ(CA/VC)の蒸気チャンバ(VC)が、前記伝熱構造(30、300a、300b;40)を介して後続の処理ステージ(CA/VC)の被覆吸着層(CA)に結合されて、前記伝熱構造(30、300;40)の表面に沿った水蒸気の凝縮を引き起こし、
前記伝熱構造(30、300a、300b;40)は、前記蒸気チャンバ(VC)側の伝熱構造(30、300a、300b;40)の表面に沿った水蒸気の凝縮から生じる潜熱が、後続の処理ステージ(CA/VC)の被覆吸着層(CA)に伝達されるように構成されていることを特徴とする大気圧水生成システム。
【請求項20】
請求項19に記載の大気圧水生成システムにおいて、
一連のn個の処理ステージ(CA/VC)を含み、nが2~10の整数であることを特徴とする大気圧水生成システム。
【請求項21】
請求項19または20に記載の大気圧水生成システムにおいて、
前記加熱ステージが、熱交換装置(HT)を含み、この熱交換装置が、処理ステージ(CA/VC)のうちの最初の1つの処理ステージの伝熱構造(30、300a、300b;40)に結合されて、関連する被覆吸着層(CA)の吸着材に熱エネルギーを供給し、
前記冷却ステージが、冷却装置(CL)を含み、この冷却装置が、処理ステージ(CA/VC)のうちの最後の1つの処理ステージの蒸気チャンバ(VC)に結合されて、その中に含まれる水蒸気の凝縮を引き起こすことを特徴とする大気圧水生成システム。
【請求項22】
請求項19~21の何れか一項に記載の大気圧水生成システムにおいて、
前記伝熱構造(30、300a、300b)が、熱交換プレート(30)を含み、この熱交換プレートには、熱交換プレート(30)から、先行する処理ステージ(CA/VC)の蒸気チャンバ(VC)内および/または前記被覆吸着層(CA)を有する後続の処理ステージ(CA/VC)の蒸気チャンバ(VC)内に延びる複数の突出する伝熱要素(300a、300b)が設けられていることを特徴とする大気圧水生成システム。
【請求項23】
請求項22に記載の大気圧水生成システムにおいて、
前記突出する伝熱要素(300a、300b)が、突出するフィン、ピンまたはヒートパイプを含むことを特徴とする大気圧水生成システム。
【請求項24】
先行する請求項の何れか一項に記載の大気圧水生成システムにおいて、
前記蒸気チャンバ(VC)の一部またはすべてが、内部で凝縮した凝縮水を排水するための排水口を含むことを特徴とする大気圧水生成システム。
【請求項25】
先行する請求項の何れか一項に記載の大気圧水生成システムにおいて、
前記吸着材が、充填シリカゲルまたはゼオライトを含むことを特徴とする大気圧水生成システム。
【請求項26】
先行する請求項の何れか一項に記載の大気圧水生成システムにおいて、
前記少なくとも1の大気水生成ユニット(AWGU、AWGU)が脱着モードで作動しているときに、前記加熱ステージ(HT;HM)が作動して、前記吸着構造(AB;CA)を約80℃~90℃またはそれ以上の温度に加熱することを特徴とする大気圧水生成システム。
【請求項27】
先行する請求項の何れか一項に記載の大気圧水生成システムにおいて、
前記少なくとも1の大気圧水生成ユニット(AWGU、AWGU)が、吸着モードで動作するようにさらに構成され、この吸着モードでは、前記吸着構造(AB;CA)の加熱が停止されるように、または前記加熱ステージ(HT;HM)が前記吸着構造(AB;CA)の冷却に使用されるように、前記加熱ステージ(HT;HM)が動作することを特徴とする大気圧水生成システム。
【請求項28】
請求項27に記載の大気圧水生成システムにおいて、
前記少なくとも1の大気圧水生成ユニット(AWGU、AWGU)が吸着モードで動作しているときに、前記吸着構造(AB:CA)の温度が30℃を超えないように、前記加熱ステージ(HT;HM)が動作することを特徴とする大気圧水生成システム。
【請求項29】
請求項27または28に記載の大気圧水生成システムにおいて、
並列に動作する第1および第2の大気圧水生成ユニット(AWGU、AWGU)を備え、
前記第1の大気圧水生成ユニット(AWGU)は、第1のサイクル中に、脱着モードで動作するように構成される一方、前記第2の大気圧水生成ユニット(AWGU)は、吸着モードで動作するように構成され、
前記第1の大気圧水生成ユニット(AWGU)は、第2のサイクル中に、吸着モードに切り替えられるように構成される一方、前記第2の大気圧水生成ユニット(AWGU)は、脱着モードに切り替えられるように構成されていることを特徴とする大気圧水生成システム。
【請求項30】
先行する請求項の何れか一項に記載の大気圧水生成システムにおいて、
前記少なくとも1の大気圧水生成ユニット(AWGU、AWGU)が、蓄熱装置(TS)に結合されていることを特徴とする大気圧水生成システム。
【請求項31】
先行する請求項の何れか一項に記載の大気圧水生成システムにおいて、
前記少なくとも1の大気圧水生成ユニット(AWGU、AWGU)が、太陽エネルギーまたは産業廃熱プロセスに由来する熱エネルギー源(TES)に結合されていることを特徴とする大気圧水生成システム。
【請求項32】
先行する請求項の何れか一項に記載の大気圧水生成システムにおいて、
脱着中に前記少なくとも1の大気圧水生成ユニット(AWGU、AWGU)を部分真空状態に維持するための低圧システムをさらに含むことを特徴とする大気圧水生成システム。
【請求項33】
請求項32に記載の大気圧水生成システムにおいて、
前記低圧システムが、前記吸着構造(AB;CA)および蒸気チャンバ(VC)内のシステム全体の圧力を低下させるために、凝縮水を回収する1または複数の回収タンクに接続された真空ポンプを含むことを特徴とする大気圧水生成システム。
【請求項34】
請求項32または33に記載の大気圧水生成システムにおいて、
前記低圧システムが、脱着中に前記吸着構造(AB;CA)および蒸気チャンバ(VC)内の圧力を5kPa以下の圧力まで低下させるように構成されていることを特徴とする大気圧水生成システム。
【請求項35】
太陽エネルギー収集システムと組み合わせた、先行する請求項の何れか一項に記載の大気圧水生成システムの使用であって、
前記太陽エネルギー収集システムによって生成された熱が、前記少なくとも1の大気圧水生成ユニット(AWGU、AWGU)の熱エネルギー源(TES)として使用されることを特徴とする使用。
【請求項36】
請求項35に記載の使用において、
前記太陽エネルギー収集システムが、太陽光発電(PV)システムであることを特徴とする使用。
【請求項37】
請求項36に記載の使用において、
前記太陽光発電(PV)システムが、集光型太陽光発電(CPV)システムであることを特徴とする使用。
【請求項38】
大気圧水生成方法であって、
(a)2以上の連続する処理ステージ(AB/VC;M1~M4;CA/VC)を含む少なくとも1の大気水生成ユニット(AWGU、AWGU)を提供するステップであって、各処理ステージが、吸着材を含む吸着構造(AB;CA)を含み、前記吸着構造(AB;CA)が、隣接する蒸気チャンバ(VC)に結合されて、そこへの蒸気移動を可能にする、ステップと、
(b)前記吸着構造(AB;CA)を介して湿った周囲空気を強制的に循環させて、前記吸着構造(AB;CA)に水を吸着させるステップと、
(c)前記吸着構造(AB;CA)に熱エネルギーを供給して、前記吸着構造(AB;CA)に吸着された水を水蒸気中に脱着させ、その水蒸気を隣接する蒸気チャンバ(VC)に移動させるステップと、
(d)前記蒸気チャンバに含まれる水蒸気を凝縮して凝縮水にするステップとを備えることを特徴とする大気圧水生成方法。
【請求項39】
請求項38に記載の大気圧水生成方法において、
先行する処理ステージ(AB/VC;M1~M3;CA/VC)で生成された水蒸気の凝縮から生じる潜熱が、後続の処理ステージ(AB/VC;M2~M4;CA/VC)の吸着構造(AB;CA)に伝達されて脱着を維持することを特徴とする大気圧水生成方法。
【請求項40】
請求項38または39に記載の大気圧水生成方法において、
前記吸着構造が、吸着材を含む吸着材床(AB)を含み、この吸着材床(AB)が、蒸気透過性分離壁(10)を介して隣接する蒸気チャンバ(VC)に連結されていることを特徴とする大気圧水生成方法。
【請求項41】
請求項40に記載の大気圧水生成方法において、
前記処理ステージ(AB/VC)が、順番に並んで配設され、
先行する処理ステージ(AB/VC)の蒸気チャンバ(VC)が、熱交換プレート(20)を介して後続の処理ステージ(AB/VC)の吸着材床(AB)に結合され、
ステップ(d)における水蒸気の凝縮が、前記熱交換プレート(20)の表面に沿って生じ、
前記蒸気チャンバ(VC)側の熱交換プレート(20)の表面に沿った水蒸気の凝縮から生じる潜熱が、後続の処理ステージ(AB/VC)の吸着材床(AB)に伝達されることを特徴とする大気圧水生成方法。
【請求項42】
請求項41に記載の大気圧水生成方法において、
ステップ(a)が、一連のn個の処理ステージ(AB/VC)を提供することを含み、nが2~10の整数であることを特徴とする大気圧水生成方法。
【請求項43】
請求項41または42に記載の大気圧水生成方法において、
ステップ(c)が、前記処理ステージ(AB/VC)のうちの最初の1つの処理ステージの吸着材床(AB)を加熱して、その中に含まれる吸着材に熱エネルギーを供給することを含み、
ステップ(d)が、前記処理ステージ(AB/VC)のうちの最後の1つの処理ステージの蒸気チャンバ(VC)を冷却して、その中に含まれる水蒸気の凝縮を引き起こすことを特徴とする大気圧水生成方法。
【請求項44】
請求項41~43の何れか一項yに記載の大気圧水生成方法において、
前記熱交換プレート(20)には、前記熱交換プレート(20)から、先行する処理ステージ(AB/VC)の蒸気チャンバ(VC)内および/または後続の処理ステージ(AB/VC)の吸着材床(AB)内に延びる複数の突出する伝熱要素(200a、200b)が設けられていることを特徴とする大気圧水生成方法。
【請求項45】
請求項44に記載の大気圧水生成方法において、
前記突出する伝熱要素(200a、200b)が、突出するフィン、ピンまたはヒートパイプを含むことを特徴とする大気圧水生成方法。
【請求項46】
請求項40~43の何れか一項に記載の大気圧水生成方法において、
ステップ(a)が、前記吸着材床(AB)の少なくとも1つを通って延びる1または複数の伝熱管(25)を提供することを含み、
ステップ(c)が、前記1または複数の伝熱管(25)を介して前記吸着材床(AB)に熱エネルギーを供給することを含むことを特徴とする大気圧水生成方法。
【請求項47】
請求項46に記載の大気圧水生成方法において、
ステップ(c)が、前記少なくとも1の大気圧水生成ユニット(AWGU、AWGU)の先行するステージ(AB/VC;HM、M1~M3)から来る水蒸気を前記1または複数の伝熱管(25)に供給することを含み、
各伝熱管(25)の内壁に沿った水蒸気の凝縮から生じる潜熱が、周囲の吸着材床(AB)に伝達されることを特徴とする大気圧水生成方法。
【請求項48】
請求項40に記載の大気圧水生成方法において、
ステップ(a)が、順番に並んで配設された複数の処理モジュール(M1~M4)を提供することを含み、各処理モジュール(M1~M4)が、複数の隣接する蒸気チャンバ(VC)の間に介在する複数の吸着材床(AB)を含み、
ステップ(a)が、各処理モジュール(M1~M4)の吸着材床(AB)の各々を通って延びる1または複数の伝熱管(25)を設けることをさらに含み、
ステップ(c)が、前記少なくとも1の大気圧水生成ユニット(AWGU、AWGU)の先行するモジュール(HM、M1~M3)から来る水蒸気を前記伝熱管(25)に供給することによって、各処理モジュール(M1~M4)の吸着材床(AB)に熱エネルギーを供給することを含み、
各伝熱管(25)の内壁に沿った水蒸気の凝縮から生じる潜熱が、周囲の吸着材床(AB)に伝達され、
ステップ(c)が、各処理モジュール(M1~M4)の蒸気チャンバ(VC)から来る水蒸気を、前記少なくとも1の大気圧水生成ユニット(AWGU、AWGU)の後続のモジュール(M2~M4、CM)に供給することをさらに含むことを特徴とする大気圧水生成方法。
【請求項49】
請求項48に記載の大気圧水生成方法において、
ステップ(a)が、前記複数の処理モジュール(M1~M4)の直前に位置する加熱モジュール(HM)と、前記複数の処理モジュール(M1~M4)の直後に位置する凝縮器モジュール(CM)とをさらに提供することを含み、
前記加熱モジュール(HM)が、複数の隣接する蒸気チャンバ(VC)の間に介在する複数の吸着材床(AB)を含み、
ステップ(c)が、複数の処理モジュール(M1~M4)のうちの最初の1つの処理モジュールの(M1)の伝熱管(25)に、前記加熱モジュール(HM)の蒸気チャンバ(VC)から来る水蒸気を供給することを含み、
前記凝縮器モジュール(CM)が、複数の凝縮チャンバ(CC)を含み、
ステップ(d)が、前記凝縮器モジュール(CM)の凝縮チャンバ(CC)に、前記複数の処理モジュール(M1~M4)のうちの最後の1つの処理モジュール(M4)の蒸気チャンバ(VC)から来る水蒸気を供給することを含むことを特徴とする大気圧水生成方法。
【請求項50】
請求項48または49に記載の大気圧水生成方法において、
各処理モジュール(M1~M4)が、n+1個の隣接する蒸気チャンバ(VC)の間に介在する一連のn個の吸着材床(AB)を含み、nが2~6の整数であることを特徴とする大気圧水生成方法。
【請求項51】
請求項48~50の何れか一項に記載の大気圧水生成方法において、
ステップ(a)が、一連のm個の処理モジュール(M1~M4)を提供することを含み、mが2~10の整数であることを特徴とする大気圧水生成方法。
【請求項52】
請求項46~51の何れか一項に記載の大気圧水生成方法において、
ステップ(d)が、各伝熱管(25)内で凝縮した凝縮水を、排水口を介して排水することを含むことを特徴とする大気圧水生成方法。
【請求項53】
請求項40~52の何れか一項に記載の大気圧水生成方法において、
前記蒸気透過性分離壁(10)が、メッシュ構造または穴あき箔構造からなることを特徴とする大気圧水生成方法。
【請求項54】
請求項53に記載の大気圧水生成方法において、
前記メッシュ構造または穴あき箔構造が、ポリマーまたは金属からなることを特徴とする大気圧水生成方法。
【請求項55】
請求項38または39に記載の大気圧水生成方法において、
前記吸着構造が、隣接する蒸気チャンバ(VC)内の伝熱構造(30、300a、300b;40)の側面に設けられた被覆吸着層(CA)を含むことを特徴とする大気圧水生成方法。
【請求項56】
請求項55に記載の大気圧水生成方法において、
前記処理ステージ(CA/VC)が、順番に並んで配設され、
先行する処理ステージ(CA/VC)の蒸気チャンバ(VC)が、前記伝熱構造(30、300a、300b;40)を介して後続の処理ステージ(CA/VC)の被覆吸着層(CA)に結合され、
ステップ(d)における水蒸気の凝縮が、前記伝熱構造(30、300a、300b;40)の表面に沿って生じ、
前記蒸気チャンバ(VC)側の伝熱構造(30、300a、300b;40)の表面に沿った水蒸気の凝縮から生じる潜熱が、後続の処理ステージ(CA/VC)の被覆吸着層(CA)に伝達されることを特徴とする大気圧水生成方法。
【請求項57】
請求項56に記載の大気圧水生成方法において、
ステップ(a)が、一連のn個の処理ステージ(CA/VC)を提供することを含み、nが2~10の整数であることを特徴とする大気圧水生成方法。
【請求項58】
請求項56または57に記載の大気圧水生成方法において、
ステップ(c)が、処理ステージ(CA/VC)のうちの最初の1つの処理ステージの被覆吸着層(CA)を加熱して、吸着材に熱エネルギーを供給することを含み、
ステップ(d)が、処理ステージ(CA/VC)のうちの最後の1つの処理ステージの蒸気チャンバ(VC)を冷却して、その中に含まれる水蒸気の凝縮を引き起こすことを含むことを特徴とする大気圧水生成方法。
【請求項59】
請求項56~58の何れか一項に記載の大気圧水生成方法において、
前記伝熱構造(30、300a、300b)が、熱交換プレート(30)を含み、この熱交換プレートには、熱交換プレート(30)から、先行する処理ステージ(CA/VC)の蒸気チャンバ(VC)内および/または前記被覆吸着層(CA)を有する後続の処理ステージ(CA/VC)の蒸気チャンバ(VC)内に延びる複数の突出する伝熱要素(300a、300b)が設けられていることを特徴とする大気圧水生成方法。
【請求項60】
請求項59に記載の大気圧水生成方法において、
前記突出する伝熱要素(300a、300b)が、突出するフィン、ピンまたはヒートパイプを含むことを特徴とする大気圧水生成方法。
【請求項61】
請求項38~60の何れか一項に記載の大気圧水生成方法において、
ステップ(d)が、前記蒸気チャンバ(VC)の一部またはすべてにおいて凝縮した凝縮水を排出することを含むことを特徴とする大気圧水生成方法。
【請求項62】
請求項38~61の何れか一項に記載の大気圧水生成方法において、
前記吸着材が、充填シリカゲルまたはゼオライトを含むことを特徴とする大気圧水生成方法。
【請求項63】
請求項38~62の何れか一項に記載の大気圧水生成方法において、
ステップ(c)が、前記吸着構造(AB;CA)を約80℃~90℃またはそれ以上の温度に加熱することを含むことを特徴とする大気圧水生成方法。
【請求項64】
請求項38~63の何れか一項に記載の大気圧水生成方法において、
ステップ(b)が、前記吸着構造(AB;CA)の温度を30℃を超えない温度にすることを含むことを特徴とする大気圧水生成方法。
【請求項65】
請求項38~64の何れか一項に記載の大気圧水生成方法において、
第1および第2の大気圧水生成ユニット(AWGU、AWGU)を並列に動作させることを含み、
前記第1の大気圧水生成ユニット(AWGU)を、ステップ(c)において水蒸気の脱着を引き起こすように第1のサイクル中に動作させる一方、前記第2の大気圧水生成ユニット(AWGU)を、ステップ(b)において水の吸着を引き起こすように動作させ、
前記第1の大気圧水生成ユニット(AWGU)の動作を、ステップ(b)において水の吸着を生じさせるように第2のサイクルにおいて切り替える一方、前記第2の大気圧水生成ユニット(AWGU)の動作を、ステップ(c)において水蒸気の脱着を生じさせるように切り替えることを特徴とする大気圧水生成方法。
【請求項66】
請求項38~65の何れか一項に記載の大気圧水生成方法において、
前記少なくとも1の大気圧水生成ユニット(AWGU、AWGU)を蓄熱装置(TS)に結合することを含むことを特徴とする大気圧水生成方法。
【請求項67】
請求項38~66の何れか一項に記載の大気圧水生成方法において、
前記少なくとも1の大気圧水生成ユニット(AWGU、AWGU)を、太陽エネルギーまたは産業廃熱プロセスに由来する熱エネルギー源(TES)に結合することを含むことを特徴とする大気圧水生成方法。
【請求項68】
請求項67に記載の大気圧水生成方法において、
太陽エネルギー収集システムによって生成された熱を使用することを含むことを特徴とする大気圧水生成方法。
【請求項69】
請求項68に記載の大気圧水生成方法において、
前記太陽エネルギー収集システムが、太陽光発電(PV)システムであることを特徴とする大気圧水生成方法。
【請求項70】
請求項69に記載の大気圧水生成方法において、
前記太陽光発電(PV)システムが、集光型太陽光発電(CPV)システムであることを特徴とする大気圧水生成方法。
【請求項71】
請求項38~70の何れか一項に記載の大気圧水生成方法において、
脱着中に前記少なくとも1の大気圧水生成ユニット(AWGU、AWGU)を部分真空状態に維持するステップをさらに含むことを特徴とする大気圧水生成方法。
【請求項72】
請求項71に記載の大気圧水生成方法において、
部分真空状態が、凝縮水を収集する1または複数の回収タンクに接続された真空ポンプを使用して、前記吸着構造(AB:CA)および蒸気チャンバ(VC)内のシステム全体の圧力を低下させることによって維持されることを特徴とする大気圧水生成方法。
【請求項73】
請求項71または72に記載の大気圧水生成方法において、
前記吸着構造(AB;CA)および蒸気チャンバ(VC)内の圧力を、脱着中に5kPa以下の圧力まで低下させることを特徴とする大気圧水生成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、大気圧水生成システムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
大気圧水生成(頭文字をとって「AWG」とも呼ばれる)または大気圧水採取(「AWH」)は、それ自体が当該技術分野において知られており、持続可能な飲料水生産のための潜在的に実行可能な方法として大きな関心を集めている。実際、淡水不足はますます人類に影響を及ぼしており、飲料水へのアクセス制限に苦しむ人がますます増えており、この問題は日に日に増大している。2025年までには、約18億人が絶対的な水不足地域に住み、世界人口の3分の2が水不足の状況下で暮らすようになると推定されている。2030年までには、世界人口の半数が、水資源の逼迫する状況下、すなわち清潔で新鮮かつ安全な飲料水を利用できない状況で暮らすようになる可能性がある。
【0003】
この問題に対処するため、主に(i)海水淡水化、(ii)大気圧水生成/採取(AWG/AWH)など、様々な解決策が当技術分野で提案されている。海水淡水化は、大量の生産を可能にする適切な解決策である。しかしながら、この解決策は、沿岸地域か、塩分を含む地下水による陸上淡水化が可能な地域でのみ実行可能である。AWGは持続可能な水生産の解決策であり、本質的に空気/大気から水分を捕捉することに依存している。どんなに乾燥した場所でも、空気中の湿度がゼロになることはなく、空気中には常に一定量の水分が存在している。
【0004】
AWG技術は、本質的に、(i)太陽熱蒸留器、(ii)冷却システム/プロセス、(iii)吸着システム/プロセスという3つの主要カテゴリーに分類されるが、さらに別の解決策もある。
【0005】
太陽熱蒸留器は、水のコンテナ、透明な収集器および太陽光だけが必要であるため、セットアップが比較的容易である。この方法では、小川や湖水、塩水、さらには汽水や汚染水などの飲用に適さない水源から蒸留水を生産することができる。しかしながら、このアプローチの主な欠点は、飲料水の生産のために既存の水源を蒸留する必要があるという事実にある。
【0006】
冷却システム/プロセスには、大気圧水採取のために、冷却サイクル、通常はコンプレッサ、凝縮器および蒸発器を使用した蒸気圧縮を展開するための適切なシステムが必要である。利点としては、高い機動性と拡張可能な生産能力が挙げられる。しかしながら、主な欠点は、特に相対湿度(RH)が低い場合、具体的には40%未満の場合に、必要なエネルギー消費量が大きいことである。
【0007】
吸着システム/プロセスは通常、熱乾燥に基づくものであり、吸着材(多孔質固体など)を使用して大気中の水分を吸着し、吸着した水分を脱着した後、凝縮して凝縮水を生成するプロセスである。このアプローチの主な利点は、脱着プロセスが関連駆動力として低位熱しか消費せず、低湿度条件でも展開可能であるという事実にある。吸着プロセス中は、吸着材を介して湿った周囲空気を強制循環させるために、少量の電力が必要となる場合がある。主な欠点は、生産が、使用する吸着材の吸着特性に大きく依存するという事実にある。
【0008】
最も広く展開されているAWG解決策は、通常、(i)蒸気圧縮(冷却およびコンプレッサベース)、または(ii)吸着材による熱乾燥に基づくものである。先に指摘したように、冷却ベースのAWGは電力を消費するが、乾燥材ベースのAWGは、基本的に駆動力として低位熱エネルギーを必要とする。冷却ベースのAWGの場合、必要な電力消費を賄うために、太陽エネルギー源や他の再生可能エネルギー源(風力など)と統合することで、水の生産コストを下げることができる。熱、乾燥材ベースのAWGの場合、太陽熱エネルギー源または産業廃熱源と統合することで、関連する熱エネルギー要件が満たされて、吸着フェーズ中に湿った周囲空気を循環させるのに必要な電力が少量で済むため、水の生産コストが大幅に削減される。
【0009】
AWGに最適な方法はなく、最適なプロセスの選択は、基本的に、実施されるAWG解決策のパフォーマンスと経済的な実現性に依存する。そのような選択のための主な変数としては、以下のものがある。
-外部の大気条件(特に関連するRHレベル)。これは、空気中の水分量を決定し、ひいては水の生成速度と水の回収効率に影響を与える。
-実施されるAWGシステムの複雑度。これは、資本支出(CAPEX)と運転支出(OPEX)に影響を与える。
-エネルギー効率、すなわちシステム全体の効率を高めるための効率的な水回収に必要なエネルギー量。
-関連するエネルギー消費要件を満たし、それによって持続可能なAWGを達成するために、再生可能エネルギー源を統合する能力。
【0010】
蒸気圧縮に基づくAWGシステム/プロセスは、今日の市場で最も一般的に利用可能な解決策である。そのようなAWGシステム/プロセスは、冷却凝縮AWGとも呼ばれ、本質的には除湿機と同様の方法で動作する。より具体的には、コンプレッサは通常、冷媒を凝縮器に通し、その後、周囲の空気を冷却する蒸発器コイルに通して循環させるために使用される。湿った空気は静電エアフィルタを通って吸引され、蒸発器コイルへと導かれる。蒸発器コイルの周囲の湿った空気はその露点未満に冷却され、水が凝縮する。生じた凝縮水はタンク内に集められ、通常は浄化およびろ過システムを通ってシステムから送り出される。蒸気凝縮プロセス中、蒸発器コイルを流れる冷媒の流動沸騰により、湿った空気からの熱が冷媒に伝達される。蒸発した飽和蒸気相の冷媒は、コンプレッサに戻され、より高い飽和圧力/温度に圧縮される。圧縮された気相冷媒は、凝縮器で凝縮する。このような凝縮によって生じる潜熱は、冷媒から乾燥した除湿空気に移動し、環境中に排出される。
【0011】
そのような冷却凝縮AWGの利点は、周囲空気の相対湿度(RH)が60%を超える場合に、適度なエネルギー効率が得られるという事実にある。しかしながら、コンプレッサは多くのエネルギーを消費するため、周囲空気のRHレベルが低い場合、エネルギー効率が問題となる。この解決策のもう一つの欠点は、水蒸気を回収して凝縮させるために、大量の空気をその露点未満に冷却する必要があり、特定の低湿度の周囲条件下ではそれらのシステムが非常に大量のエネルギーを消費することになるという事実にある。
【0012】
熱乾燥に基づくAWGシステム/プロセスは、あまり広く使用されていないが、大きな可能性を秘めている。この技術は、基本的に吸着物(この場合は水分子)の吸引と表面結合を誘導することができる吸着材を利用する。そのような技術による水の採取には、主に3つのフェーズ、すなわち、(i)吸着材を本質的に冷却して、湿った周囲空気を供給し、空気中に含まれる水分子との結合を誘導する間の吸着フェーズと、(ii)吸着材を加熱して、吸着された水を水蒸気中に蒸発させる間の脱着フェーズ(再生フェーズとも呼ばれる)と、(iii)水蒸気を凝縮させて凝縮水とする間の蒸気凝縮フェーズとがある。
【0013】
熱乾燥に基づく既知のAWG解決策は、例えば米国特許US4,146,372A、US6,336,957B1、US6,863,711B2、US7,467,523B2、US9,234,667B1、US10,683,644B2、およびUS10,835,861B2に開示されている。
【0014】
典型的な吸着材としては、シリカ、シリカゲル、ゼオライト、アルミナゲル、モレキュラーシーブ、モンモリロナイト粘土、活性炭、吸湿性塩、ジルコニウムまたはコバルトベースの吸着材などの有機金属骨格(MOF)、親水性ポリマーまたはセルロース繊維、およびそれらの組合せの誘導体が挙げられる。
【0015】
熱乾燥ベースのAWGシステムの利点は、RHレベルの低い地域に導入した場合でも経済的に実現可能であるという事実にある。さらに、そのような解決策は、冷却流のためのコンプレッサやポンプのような可動コンポーネントを必要としないため、より堅牢で、運用コストがより効率的になり、パフォーマンスの耐久性が向上する。
【0016】
したがって、改善された解決策が依然として必要とされている。
【発明の概要】
【0017】
本発明の全体的な目的は、先行技術の解決策の限界や欠点を取り除く大気圧水生成システムおよび関連する方法を提供することである。
【0018】
より具体的には、本発明の目的は、実施および運用が非常に効率的で、しかもコスト効率の高い、そのような解決策を提供することである。
【0019】
本発明の更なる目的は、必要とされるニーズに応じてシステムのスループットを増加および調整するために、モジュール式で容易に拡張可能な、そのような解決策を提供することである。
【0020】
本発明の別の目的は、吸着材の脱着(再生)フェーズを実行するために、複数サイクルにわたって効率的な熱回収と再加熱を保証する、そのような解決策を提供することである。
【0021】
本発明のさらに別の目的は、システムエネルギー消費要件(電気および熱の両方)をより低くし、熱力学的損失を最小限に抑える、そのような解決策を提供することである。
【0022】
本発明の更なる目的は、再生可能エネルギー源、特に太陽エネルギーと適切に組み合わせて統合することができ、かつ/または例えば産業プロセスからの廃熱を最適に利用することができる、そのような解決策を提供することである。
【0023】
本発明のさらに別の目的は、エネルギー効率の高い方法で水と電気の両方のコジェネレーションを可能にすることである。
【0024】
これらの目的および他の目的は、特許請求の範囲に規定された解決策によって達成される。
【0025】
ここで提供されるのは、大気圧水生成システムであり、そのシステムの特徴が、請求項1に記載されている。すなわち、大気圧水生成システムは、少なくとも1の大気圧水生成ユニットを含み、この大気圧水生成ユニットが、
-少なくとも2の連続する処理ステージであって、各々が、吸着材を含む吸着構造を含み、この吸着構造が、隣接する蒸気チャンバに連結されて、そこへの蒸気移動を可能にする、少なくとも2の連続する処理ステージと、
-吸着構造に熱エネルギーを供給する加熱ステージと、
-蒸気チャンバのうちの少なくとも最後の1つの蒸気チャンバにおいて水蒸気の凝縮を引き起こす冷却ステージと、
-吸着構造を介して湿った周囲空気を強制的に循環させ、吸着構造に水を吸着させる回路とを含む。
【0026】
本発明によれば、少なくとも1の大気圧水生成ユニットが、脱着モードで動作するように構成され、この脱着モードでは、加熱ステージが動作して、この加熱ステージにより供給される熱エネルギーによって、吸着構造に吸着された水が水蒸気中に脱着し、その水蒸気が隣接する蒸気チャンバに移動して、そこで水蒸気が凝縮して凝縮水となるように動作する。
【0027】
この大気圧水生成システムの様々な好ましい実施形態および/または有利な実施形態は、従属請求項2~34の主題を形成している。
【0028】
また、本発明の大気圧水生成システムを太陽エネルギー収集システムと組み合わせて使用することも請求されており、この場合、太陽エネルギー収集システムによって生成された熱が、少なくとも1の大気圧水生成ユニットの熱エネルギー源として使用される。このコンテクストでは、太陽エネルギー収集システムを、具体的には、太陽光発電(PV)システム、特に、集光型太陽光発電(CPV)システムとすることができる。
【0029】
さらに提供されるのは、大気圧水生成方法であり、その方法の特徴が、独立請求項38に記載されている。すなわち、大気圧水生成方法は、
(a)2以上の連続する処理ステージを含む少なくとも1の大気水生成ユニットを提供するステップであって、各処理ステージが、吸着材を含む吸着構造を含み、吸着構造が、隣接する蒸気チャンバに結合されて、そこへの蒸気移動を可能にする、ステップと、
(b)吸着構造を介して湿った周囲空気を強制的に循環させて、吸着構造に水を吸着させるステップと、
(c)吸着構造に熱エネルギーを供給して、吸着構造に吸着された水を水蒸気中に脱着させ、その水蒸気を隣接する蒸気チャンバに移動させるステップと、
(d)蒸気チャンバに含まれる水蒸気を凝縮して凝縮水にするステップとを含む。
【0030】
この大気圧水生成方法の様々な好ましい実施形態および/または有利な実施形態は、従属請求項39~73の主題を形成している。
【0031】
本発明のさらに有利な実施形態については後述する。
【図面の簡単な説明】
【0032】
本発明の他の特徴および利点は、本発明の実施形態の以下の詳細な説明を読むことによって、より明らかになるであろう。それら実施形態は、単なる非制限的な例として提示されるものであり、添付の図面によって示されている。
図1図1は、本発明の一実施形態に係る大気圧水生成システム(AWGS)の概略図である。
図2図2は、図1のAWGSの動作を示す部分説明図である。
図3図3は、本発明の別の実施形態に係るAWGSの部分概略図である。
図4図4は、本発明のさらに別の実施形態に係るAWGSの概略図である。
図5図5は、本発明の更なる実施形態に係るAWGSの部分概略図である。
図6図6は、本発明の追加的な実施形態に係るAWGSの部分概略図である。
図7図7Aおよび図7Bは、本発明のさらに別の実施形態に係るAWGSの上面および断面をそれぞれ示す概略図である。
図8図8は、水の連続的で中断のない生産を確保するために並列して動作する第1および第2の大気圧水生成ユニット(AWGU)を利用するAWGSを示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本発明は、様々な例示的な実施形態に関連して説明される。なお、本発明の範囲は、本明細書に開示の実施形態の特徴のすべての組合せおよび部分的な組合せを包含することを理解されたい。
【0034】
本明細書で説明するように、2以上の部品または構成要素が互いに接続され、取り付けられ、固定され、または結合されていると説明される場合、それらは、互いに直接的に、または1または複数の中間部品を介して、そのように接続され、取り付けられ、固定され、または結合され得る。
【0035】
本発明の大気圧水生成システム(AWGS)および関連する方法の実施形態を、特に、脱着フェーズを駆動するための再生可能な熱エネルギー源を提供する太陽エネルギー収集システムと組み合わせた、その応用の特定のコンテクストで以下に説明する。例えば、産業プロセスで生成される廃熱の利用を含む、任意の他の熱エネルギー源も考えられることを理解されたい。
【0036】
図1は、本発明の第1の実施形態に係るAWGSの概略図である。図1には、単一の大気圧水生成ユニット(AWGU)が示されているが、図8を参照して後述するように、AWGSは、並列に温度スイング構成で動作するように設計された第1および第2のAWGUを含む、複数のAWGUを備えることができることを理解されたい。
【0037】
図1には、吸着材を備えた吸着構造をそれぞれ含む複数の処理ステージが示されており、吸着構造が、隣接する蒸気チャンバに連結されて、そこへの蒸気移送が可能となっている。より具体的には、図示の例では、各処理ステージが、吸着材を含む吸着材床ABを含み、この吸着材床ABが、符号10で示される蒸気透過性分離壁を介して、隣接する蒸気チャンバVCに結合されている。
【0038】
吸着材は、例えば、充填シリカゲルまたはゼオライトを含む任意の適切な吸着材であってもよい。しかしながら、本明細書の冒頭で特定した吸着材を含め、他の吸着材も想定され得る。
【0039】
図1の例では、4つの処理ステージ(「エフェクト」ともいう)が示されている。より具体的には、4つの処理ステージは、一列に順番に配設され、先行する各処理ステージ(すなわち、図1の左から見て始めの3つの処理ステージ)の蒸気チャンバVCが、符号20で示される対応する熱交換プレートを介して、次の処理ステージ(すなわち、図1の左から見て後ろの3つの処理ステージ)の吸着材床ABに結合されている。すなわち、3つの熱交換プレート20が、図1に示すように、第1の処理ステージと第2の処理ステージの間、第2の処理ステージと第3の処理ステージの間、並びに、第3の処理ステージと第4の処理ステージの間にそれぞれ示されている。
【0040】
第1の処理ステージの吸着材床ABは熱交換装置HTに結合され、一方、最後の第4の処理ステージの蒸気チャンバVCは冷却(または凝縮)装置CLに結合されている。図示の例では、熱交換器デバイスHTには、加熱入口HTINを介して供給されて、加熱出口HTOUTを介して熱交換器デバイスHTから出る適切な加熱媒体が流される。加熱媒体は、外部の熱エネルギー源によって加熱される任意の適切な加熱媒体(液体など)であってもよい。同様に、冷却装置CLにも、後述するように、水蒸気の凝縮を引き起こすのに十分な低温にされた適切な冷却媒体(例えば冷気など)が流される。冷却媒体は、冷却入口CLINを介して冷却装置CLに供給されて、冷却出口CLOUTで冷却装置CLから出る。
【0041】
図1に概略的に示すAWGUは、本質的に2つの連続するフェーズ、すなわち、(i)湿った周囲空気中に含まれる水を吸着材床ABに(再)充填する間の吸着フェーズと、(ii)吸着材床ABに吸着された水を水蒸気中に脱着させる間の脱着フェーズとに従って、循環的に動作する。吸着フェーズ中、吸着材床ABは低温(通常30℃未満)に保たれる一方、脱着フェーズ中、吸着材床ABは加熱されて、水の蒸発を引き起こすのに十分な温度(通常、再生/脱着を強化するために約80℃~90℃またはそれ以上の温度)にされる。
【0042】
水が採取される湿った周囲空気は、吸着フェーズ中、適切な空気回路Cによって、吸着材床ABの各々を通って循環され、この空気回路は、図示の例では、吸着材床ABを通る空気の強制循環を補助する適切な換気装置Vを含む。図1には示されていないが、吸着材の目詰まりや汚染を避けるために、湿った周囲の空気から望ましくない塵や不純物を分離するために任意選択的な粒子フィルタ(高性能(HEPA)フィルタなど)が使用される。空気は除湿された空気として吸着材床ABから排出され、環境に戻される。周囲の空気が吸着材床ABを通って循環する関連方向は重要ではなく、吸着効率に影響を与えないことが理解されよう。
【0043】
図示の例では、蒸気チャンバVCの各々が、脱着フェーズ中にそこで凝縮した凝縮水の重力による排水を可能にする排水口をさらに備える。そのような凝縮水は、再石灰化後に飲料水として使用するために、適当なタンク(図示せず)に都合良く回収することができる。
【0044】
蒸気透過性分離壁10は、関連する吸着材床ABに含まれる吸着材を保持する一方、脱着フェーズ中に生成された水蒸気が透過して、凝縮水への凝縮が起きる隣接する蒸気チャンバVC内に流入することができるように設計されている。蒸気透過性分離壁10は、好ましくはメッシュ構造または穴あき箔構造であり、特にポリマーまたは金属で作られている。任意の適切なポリマーまたは金属材料を使用することができる。特に、蒸気透過性分離壁10として、例えば鋼またはチタン製の薄い非腐食性の穴あき金属箔、または例えばポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリオキシメチレン(POM)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリプロピレン(PP)またはポリウレタン(PU)製のポリマーメッシュを使用することができる。
【0045】
図2は、図1のAWGSの動作を示す部分説明図である。図2には、説明のために、吸着材床AB、蒸気チャンバVC、蒸気透過性分離壁10および熱交換プレート20、並びに第1の吸着材床ABに結合された関連する熱交換装置HTを含む、始めの2つの処理ステージ/エフェクトのみが示されている。
【0046】
脱着フェーズ中、約80℃~90℃(またはそれ以上)の低位熱エネルギーが、適切な熱エネルギー源(図示せず)に結合された熱交換器デバイスHTを介して第1の吸着材床ABに供給される。前述したように、そのような熱エネルギー源は、太陽熱収集器または集光型太陽光発電(CPV)システムによって生成された熱、または産業廃熱を含む、任意の適切な熱源であってよい。第1の吸着材床ABに供給された熱エネルギーは、吸着材を加熱して、吸着された水の脱着および蒸発を引き起こす。
【0047】
脱着された水蒸気は、吸着材を横切って、蒸気透過性分離壁10を介して隣接する蒸気チャンバVCに移送される。蒸気の凝縮は、概略的に示すように、蒸気チャンバ側の熱交換プレート20の表面に沿って生じる。熱交換プレート20の表面に沿った凝縮水の凝縮から生じる潜熱は、後続(第2)の吸着材床ABに位置する吸着材を効率的に再加熱するために回収される。そのような熱回収は、熱エネルギー消費を低減して、エネルギー使用効率を向上させるという点で特に有利である。
【0048】
このプロセスは、さらに次の処理ステージ/エフェクトに進む際に、すなわち図示の例では左から右に進む際に、同様の方法で繰り返される。図1に示すように、図示の例では4つの処理ステージが使用されている。実際的な観点からは、考えられる処理ステージの整数nは、有利には2~10の範囲であり得る。実際に使用される処理ステージの実際の数は、特に、使用される吸着材の種類、およびシステムが展開される一般的な大気条件および周囲温度に応じて選択される。例えば、周囲温度が低い場合には、より多くのステージ/エフェクトが必要となる場合がある。
【0049】
前述したように、関連する蒸気チャンバVC内で生成された凝縮水は、各蒸気チャンバVCの底部に設けられた適切な排水口を通って重力によりシステムから排出され、この凝縮水は、例えば人間の消費に適した水を生成するために使用することができる。そのような凝縮水は、特に、1または複数の回収タンク(図示せず)内に回収して集めることができる。必要に応じて、凝縮水を飲料水として使用する前に、凝縮水の浄化および/またはその再石灰化を行うことができる。
【0050】
吸着フェーズ中、吸着材床ABの加熱が停止されるか、または吸着材床ABが冷却され、その間に湿った周囲空気が供給され、それにより最適な吸着効率と、その後の新たな脱着のための水による吸着材床ABの(再)充填が確保される。好ましくは、吸着フェーズ中の吸着材床ABの温度は30℃を超えない。吸着材床ABから出る除湿された空気は、その後大気中に戻される。
【0051】
図3は、本発明の別の実施形態に係るAWGSの部分概略図である。図3には、2つの後続の処理ステージ/エフェクトを含む、関連するAWGUの一部のみが示されている。図3に示すAWGUの構成は、本質的に図1および図2に示すAWGUと同様である。同じ参照符号および数字は、すでに述べたものと同じ構成要素を示している。それにより、各処理ステージ/エフェクトについて、蒸気透過性分離壁10を介して隣接する蒸気チャンバVCに結合された吸着材床ABと、第1の処理ステージの蒸気チャンバVCと第2の処理ステージの吸着材床ABとの間に介在する熱交換プレート20とを特定することができる。第2の処理ステージの蒸気チャンバVCの下流端には、熱交換プレート20がさらに設けられている。
【0052】
図3には、2つの吸着材床ABを通って延びる2本の伝熱管25が示されている。各伝熱管25は、関連する吸着材床ABに熱エネルギーを供給するように設計されている。実際には、各吸着材床ABおよび関連する伝熱管25が、関連する蒸気チャンバVCに隣接する対応する吸着材チャンバACを形成する。1または複数のそのような伝熱管25を、各吸着材床AB内に設けることができる。
【0053】
好ましくは、図3に概略的に示すように、熱エネルギーは、AWGUの前のステージから来る水蒸気の循環によって、吸着材床ABに供給される。熱交換プレート20と同様の方法で、水蒸気は伝熱管25の内壁に沿って凝縮し、それにより潜熱が放出される。この潜熱は回収されて周囲の吸着材床ABに位置する吸着材を加熱する。この解決策は、熱抵抗を低減し、吸着材の(再)加熱および再生プロセスを強化する役割を果たす。その結果、ここでも熱エネルギー消費量が低下し、エネルギー使用効率がさらに向上する。
【0054】
図4は、本発明のさらに別の実施形態に係るAWGSの概略図である。前の実施形態とは対照的に、関連するAWGUが、HM、M1~M4およびCMで示される、ステージ/エフェクトごとの複数のモジュールにより構成されている。モジュールHMは、加熱モジュールであり、AWGUの加熱ステージとして機能する一方、モジュールM1~M4は、先行するモジュール、すなわち加熱モジュールHMおよび処理モジュールM1~M3から来る水蒸気が順番に供給される連続する処理モジュールである。モジュールCMは、AWGUの冷却ステージとして機能する凝縮器モジュールであり、先行する処理モジュール、すなわち第4の最終処理モジュールM4から来る水蒸気の供給を受ける。
【0055】
図示の例では、各処理モジュールM1~M4が、複数(すなわち5つ)の蒸気チャンバVCの間に介在する複数(すなわち4つ)の吸着材床ABを含む。蒸気透過性分離壁10も同様に、各吸着材床ABと隣接する蒸気チャンバVCとの間の界面に設けられる。
【0056】
熱交換装置HTと同様に、加熱モジュールHMは、システムに熱エネルギーを供給するように設計され、この加熱モジュールには、加熱入口HTINを介して供給されて加熱出口HTOUTを介して加熱モジュールHMから出る適切な加熱媒体が流される。図示の例では、加熱モジュールHMが、処理モジュールM1~M4と実質的に同様の構成を示し、同様に、複数(すなわち5つ)の蒸気チャンバVCの間に介在する複数(すなわち4つ)の吸着材床ABを含む。蒸気透過性分離壁10は、この場合も、各吸着材床ABと隣接する蒸気チャンバVCとの間の界面に設けられている。加熱媒体は、各吸着材床ABを通って延びる加熱管を介して供給され、脱着を引き起こす。得られた水蒸気は、同様に蒸気透過性分離壁10を通って隣接する蒸気チャンバVC内へと透過する。
【0057】
図示の例では、加熱モジュールHMの蒸気チャンバVCから来る水蒸気は、第1の処理モジュールM1の各吸着材床ABを通って延びる伝熱管25に供給される。同様に、第1の処理モジュールM1の蒸気チャンバVCから来る水蒸気は、第2の処理モジュールM2の各吸着材床ABを通って延びる伝熱管25に供給され、これが第4の最後の処理モジュールM4まで続く。
【0058】
AWGUの下流端では、最後の処理モジュールM4の蒸気チャンバVCから来る水蒸気が、凝縮器モジュールCMの凝縮チャンバCCに供給される。より具体的には、複数(すなわち5つ)の冷却セクションCSの間に介在する複数(すなわち4つ)の凝縮チャンバCCが設けられる。
【0059】
図1に示す冷却装置CLと同様の方法で、凝縮器モジュールCMには、凝縮チャンバCC内で水蒸気の凝縮を引き起こすのに十分な低温にされた適切な冷却媒体が流される。冷却媒体は、冷却入口CLINを介して冷却モジュールCMに供給され、冷却出口CLOUTで冷却モジュールCMから排出される。この冷却媒体は、各冷却セクションCSを通って循環することにより、最適な凝縮効率を確保する。
【0060】
図4に示すように、各処理モジュールM1~M4は、5つの隣接する蒸気チャンバVCの間に介在する一連の4つの吸着材床を含み、各吸着材床ABが、一対の隣接する蒸気チャンバVCによって囲まれている。実際的な観点から、想定され得る吸着材床ABの整数nは、有利には2~6の範囲であるが、より多くの数の吸着材床AB(および隣接する蒸気チャンバVC)も想定され得る。
【0061】
同様に、図4は、一連の4つの処理モジュールM1~M4を示すが、想定され得る処理モジュールの数は変わる可能性がある。実際的な観点から、処理モジュールの整数mは、好ましくは2~10の範囲である。実際に使用される処理モジュールの実際の数は、特に、使用される吸着材の種類や、システムが展開される一般的な大気条件および周囲温度に応じて、同様に選択されることとなる。例えば、周囲温度が低い場合には、より多くのモジュール/エフェクトが必要となる場合がある。
【0062】
図4に示すように、凝縮水の排水は、処理モジュールM1~M4の吸着材床ABを通って延びる伝熱管25の底部および凝縮器モジュールCMの凝縮チャンバCCの底部に設けられた排水口を介して行われることに留意されたい。
【0063】
図5は、本発明の別の実施形態を概略的に示している。図5には、関連するAWGUの一部のみが示されている。図5に示すAWGUの構成は、本質的に図1および図2に示すAWGUと同様である。同じ参照符号および数字は、すでに述べたものと同じ構成要素を示している。それにより、各処理ステージ/エフェクトについて、蒸気透過性分離壁10を介して隣接する蒸気チャンバVCに結合された吸着材床ABと、先行する処理ステージの蒸気チャンバVCと後続の処理ステージの吸着材床ABとの間に介在する熱交換プレート20とを特定することができる。
【0064】
図5に示すAWGUが図1および図2に示す実施形態と異なる点は、各熱交換プレート20が、熱交換プレート20から先行する処理ステージの蒸気チャンバVC内および後続の処理ステージの吸着材床AB内に延びる複数の突出する伝熱要素200a、200bを備える点である。突出する伝熱要素200a、200bは、特に、突出するフィン、ピンまたはヒートパイプを含むことができる。他の実施形態では、突出する伝熱要素が、蒸気チャンバVC内または吸着材床AB内のみに延びるようにしてもよいが、図示の構成が好ましい。蒸気チャンバVC側の伝熱要素200aは、凝縮およびその結果生じる潜熱の伝達に関して有益な効果を有する。吸着材床AB側の伝熱素子200bも、熱分布が改善されて、それにより脱着効率が向上するという有益な効果を有する。
【0065】
図6は、本発明のさらに別の実施形態を概略的に示しており、この場合も、関連するAWGUの一部のみを示している。図6に示すAWGUの構成は、図5の構成といくつかの類似点があるが、注目すべき相違点もある。主な相違点は、吸着構造が、隣接する蒸気チャンバVCの伝熱構造30/300a/300bの側面に設けられた、符号CAで示される被覆吸着層を含むという事実にある。換言すれば、この例では蒸気透過性分離壁は必要なく、吸着材は被覆層として伝熱構造30/300a/300bの関連する側面に直接形成される。
【0066】
図6の伝熱構造30/300a/300bは、図5に示す熱交換器構造20/200a/200bと同様の構成であることに留意されたい。実際のところ、図6の伝熱構造30/300a/300bは、同様に、突出するフィン、ピンまたはヒートパイプのような両側に延びる突出伝熱要素300a、300bを有する熱交換プレート30から構成されている。伝熱要素300aも同様に、隣接する蒸気チャンバVC内に延びて、凝縮を改善するとともに、結果として生じる潜熱の伝達を改善し、一方、伝熱要素300b(被覆吸着層CAの支持構造として機能する)は、熱分布を改善し、それにより脱着効率を改善する。
【0067】
しかしながら、吸着構造として被覆吸着層CAを使用することは、図6に示すような突出する伝熱要素の実装を必要としないことが理解されよう。被覆吸着層CAは、例えば、図7Aおよび図7Bの実施形態に示すように、突出する要素のない熱交換プレートの表面に形成されるものであってもよい。
【0068】
図7Aおよび図7Bに示すAWGUは、同心円状のセクションからなる複数(すなわち4つ)の処理ステージ/エフェクトCA/VCを有する本質的に円形の構造として構成されている。より具体的には、熱交換装置HTが最も外側に設けられ、それにより処理ステージCA/VCのうちの最初の1つの処理ステージの吸着構造、すなわち被覆吸着層CAに、被覆吸着層CAが設けられている熱交換プレート40を介して熱を伝達するようになっている。熱は、前述した原理と同様に、すなわち、各熱交換プレート40の外面に沿った水蒸気の凝縮から生じる潜熱を利用して、熱交換プレート40の反対側に設けられた被覆吸着層CAを(再)加熱することにより、構造体の中心に向けて、他の処理ステージへと順次伝達される。AWGUの中心部分には、同様に、第4の最終処理ステージの蒸気チャンバVC内で水蒸気の凝縮を引き起こすために適切な冷却媒体が流れる冷却装置CLが設けられている。
【0069】
本発明の特に有利な態様(これは、本明細書に記載の実施態様に適用可能な態様)によれば、吸着構造AB、それぞれのCAおよび蒸気チャンバVCのすべてを備えた大気圧水生成ユニットが、適切な低圧システムによって部分真空状態に維持される。理想的には、吸着構造AB、それぞれのCAおよび蒸気チャンバVC内の圧力は、脱着フェーズ中に5kPa(0.05bar)以下の圧力まで下げられて、脱着および蒸気凝縮が促進され、それにより脱着効率が改善され、凝縮が促進される。特に、システム全体の圧力を下げ、脱着中の蒸気輸送抵抗を低下させるために、凝縮水の回収に使用される1または複数の回収タンクに、適切な真空ポンプを接続することができる。
【0070】
図8は、水の連続的で中断のない生成を確保するために並列して動作する、ユニットAWGUおよびAWGUとしてそれぞれ示される第1および第2のAWGUを使用するAWGSを示す概略図である。より具体的には、第1のユニットAWGUと第2のユニットAWGUは、温度スイング構成で動作するように設計されている。換言すれば、第1のユニットAWGUは、第1のサイクル中(例えば、日中)、脱着モードで動作して、排熱するように構成され、一方、第2のユニットAWGUは、吸着モードで動作して、吸着構造に水を再充填するように構成されている。逆に、第1のユニットAWGUは、別のサイクル中(例えば、夜間)、吸着モードに切り替えられるように構成され、第2のユニットAWGUは、脱着モードに切り替えられるように構成されている。このように、第1のユニットAWGUと第2のユニットAWGUの動作は、水の連続的な生産を確保するために、所与のサイクルごとに交互に行われる。
【0071】
図8に示すように、第1のユニットAWGUおよび第2のユニットAWGUは、有利には、蓄熱装置TSに連結される。蓄熱装置TSは、熱エネルギーを蓄えることができる任意の適切な装置、例えば、相変化を起こすことができ、いわゆる「潜熱蓄熱」(LHS)を実行することができる材料(またはいわゆる「相変化材料」/PCM)を含む装置であり得る。例えば、塩、ポリマー、ゲル、パラフィンワックスおよび金属合金など、数多くのPCMを利用することが可能である。他の適切な解決策は、溶融塩や金属など、いわゆる「顕熱蓄熱」(SHS)を実行することができる材料に頼ることができる。「熱化学蓄熱」(TCS)は、熱エネルギー貯蔵を実行するためのさらに別の可能性のある解決策を構成する。
【0072】
図示の例では、蓄熱装置TSから供給される熱源が、脱着モードで動作している2つのユニットAWGU、AWGUのうちの関連する一方に供給され、この熱源を使用して脱着が維持される。脱着モードで動作している関連ユニットから取り出された比較的低温の媒体は、蓄熱装置TSに戻される。図8に示すように、高温の熱源と低温の戻りは、適切なバルブシステムによって、2つのユニットのうちの関連する一方との間で適切に行き来する。
【0073】
脱着を適切に維持するために必要な熱エネルギーは、関連する、好ましくは再生可能な熱エネルギー源TESによって回復されることを条件として、蓄熱装置TSに貯蔵および維持され得る。その点で、熱エネルギー源TESは、理想的には、太陽エネルギーまたは産業廃熱プロセスに由来することができる。好ましくは、熱エネルギー源TESは、太陽光発電(PV)システムを含む、関連する太陽エネルギー収集システムによって生成され得る。集光型太陽光発電(CPV)システムは、通常、抽出する必要がある熱を生成するため、理想的にはその機能を果たすことができる。この点に関して、適切な冷却装置または熱抽出装置によって、例えばCPVシステムから抽出された熱は、本発明のAWGSにおいて脱着を維持するための駆動力として再利用され得ることが理解されよう。
【0074】
添付の特許請求の範囲によって規定される本発明の範囲から逸脱することなく、上述した実施形態に対して様々な変更および/または改良を加えることが可能である。
【0075】
例えば、前述したように、本発明のAWGSのコンテクストにおいて脱着を駆動および維持するために、任意の適切な熱エネルギー源を使用することが可能である。特に、太陽エネルギーのような再生可能なエネルギー源、または産業プロセスで発生する廃熱などの任意の廃熱源も考えられる。
【符号の説明】
【0076】
AB 吸着材(充填シリカゲルまたはゼオライトなど)を含む吸着構造/吸着材床
VC 吸着材床ABに隣接する蒸気チャンバ
AC 吸着材チャンバ
10 吸着材床ABと隣接する蒸気チャンバVCとの間に介在する蒸気透過性分離壁(例えば、ポリマーメッシュ)
20 先行する処理ステージAB/VCの蒸気チャンバと後続の処理ステージAB/VCの吸着材床との間に介在する熱交換プレート
200a 熱交換プレート20に設けられ、隣接する蒸気チャンバVC内に延びる突出する伝熱要素
200b 熱交換プレート20に設けられ、隣接する吸着材床AB内に延びる突出する伝熱要素
25 吸着材床ABを通って延びる伝熱管
CA 吸着構造/吸着材の被覆吸着層
30 片面に被覆吸着層CAを有する熱交換プレート
300a 熱交換プレート30に設けられ、先行する処理ステージの隣接する蒸気チャンバVC内に延びる突出する伝熱要素
300b 熱交換プレート30に設けられ、被覆吸着層CAを担持する突出する伝熱要素
40 片面に被覆吸着層CAを担持する熱交換プレート
C 吸着構造AB、それぞれのCAを介して湿った周囲空気を強制循環させる回路
V 換気装置
HT 最初の処理ステージAB/VC、それぞれのCA/VCの吸着構造に連結された熱交換装置(加熱ステージ)
CL 最後の処理ステージAB/VC、それぞれのCA/VCの蒸気チャンバVCに連結された冷却装置(冷却ステージ)
M1 (第1の)処理モジュール
M2 (第2の)処理モジュール
M3 (第3の)処理モジュール
M4 (第4/最後の)処理モジュール
HM 加熱モジュール(加熱ステージ)
CM 凝縮器モジュール(冷却ステージ)
CC 凝縮器モジュールCMの凝縮チャンバ
CS 凝縮器モジュールCMの冷却セクション
HTIN 加熱ステージHT、それぞれのHMの加熱入口
HTOUT 加熱ステージHT、それぞれのHMの加熱出口
CLIN 冷却ステージCL、それぞれのCMの冷却入口
CLOUT 冷却ステージCL、それぞれのCMの冷却出口
AWGU (第1の)大気圧水生成ユニット
AWGU (第2の)大気圧水生成ユニット
TS 蓄熱装置
TES 熱エネルギー源(例えば、太陽エネルギー収集システムにより生成される熱エネルギー、または産業廃熱源から供給される熱エネルギー)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図8
【国際調査報告】