(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-30
(54)【発明の名称】スロットダイコーター及びこれを含む電極コーティング装置
(51)【国際特許分類】
B05C 5/02 20060101AFI20240920BHJP
B05C 11/00 20060101ALI20240920BHJP
B05C 11/10 20060101ALI20240920BHJP
H01M 4/04 20060101ALI20240920BHJP
H01M 4/139 20100101ALI20240920BHJP
【FI】
B05C5/02
B05C11/00
B05C11/10
H01M4/04 Z
H01M4/139
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024521164
(86)(22)【出願日】2023-07-12
(85)【翻訳文提出日】2024-04-08
(86)【国際出願番号】 KR2023009976
(87)【国際公開番号】W WO2024025219
(87)【国際公開日】2024-02-01
(31)【優先権主張番号】10-2022-0092930
(32)【優先日】2022-07-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521065355
【氏名又は名称】エルジー エナジー ソリューション リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】ジョン-スン・パク
【テーマコード(参考)】
4F041
4F042
5H050
【Fターム(参考)】
4F041AA12
4F041AB02
4F041BA05
4F041BA12
4F041BA17
4F041BA34
4F042AA22
4F042AB00
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4F042BA07
4F042BA08
4F042BA12
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4F042DB18
4F042DF19
4F042DF23
5H050AA19
5H050BA17
5H050CA07
5H050CA08
5H050CA09
5H050CB08
5H050CB09
5H050GA22
5H050GA29
(57)【要約】
スロットダイコーター及びこれを含む電極コーティング装置が開示される。本発明の一実施形態によるスロットダイコーターは、基材の表面にコーティング物質を吐き出すように構成された装置であって、第1の面を備える第1のダイと、前記第1の面と対面する第2の面を備える第2のダイと、前記第1のダイの第1の面と前記第2のダイの第2の面との間に介在して、前記コーティング物質が吐き出されるスロットを形成するように構成されたシムプレートと、を含み、前記第2のダイは、前記スロットの開口の両端からそれぞれ前記基材側へと突出した一対のガイドリップを備える。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材の表面にコーティング物質を吐き出すように構成されたスロットダイコーターであって、
第1の面を備える第1のダイと、
前記第1の面と対面する第2の面を備える第2のダイと、
前記第1のダイの第1の面と前記第2のダイの第2の面との間に介在して、前記コーティング物質が吐き出されるスロットを形成するように構成されたシムプレートと、を含み、
前記第2のダイは、前記スロットの開口の両端からそれぞれ前記基材側へと突出した一対のガイドリップを備える、スロットダイコーター。
【請求項2】
前記一対のガイドリップは、前記基材の表面に吐き出された前記コーティング物質の両サイドエッジ部分と接触して、前記基材の移動に伴う前記コーティング物質の移動を導くように構成されている、請求項1に記載のスロットダイコーター。
【請求項3】
前記第1のダイは、
前記コーティング物質を収容し、前記スロットと連通するように構成された収容溝をさらに備える、請求項1に記載のスロットダイコーター。
【請求項4】
前記第1のダイは、
前記第1の面を備え、先端に前記開口が位置する本体部と、
前記本体部の後端から前記第2のダイ側へと延びて前記第2のダイを支持する支持部と、を含む、請求項1に記載のスロットダイコーター。
【請求項5】
前記第1のダイは、
前記基材側に突出して前記開口の一方の側壁をなす第1のダイリップを備える、請求項1に記載のスロットダイコーター。
【請求項6】
前記第2のダイは、
前記一対のガイドリップの間から前記基材側へと突出して前記開口の一方の側壁をなす第2のダイリップをさらに備え、
前記一対のガイドリップは、前記第2のダイリップよりもさらに長尺状に前記基材側に突出するように構成されている、請求項1に記載のスロットダイコーター。
【請求項7】
前記一対のガイドリップは、
前記基材側に突出した長さが、前記第2のダイリップよりも100μm以上、かつ、300μm以下の範囲においてさらに長尺状に形成されている、請求項6に記載のスロットダイコーター。
【請求項8】
前記一対のガイドリップ及び前記第2のダイリップは、それぞれ所定の厚さをもって前記基材側に突出し、
前記一対のガイドリップは、前記第2のダイリップよりもさらに厚肉状に構成されている、請求項6に記載のスロットダイコーター。
【請求項9】
前記第2のダイは、
前記一対のガイドリップの間から前記基材側へと突出して前記開口の他方の側壁をなす第2のダイリップをさらに備え、
前記第1のダイリップは、前記第2のダイリップよりもさらに長尺状に前記基材側に突出するように構成されている、請求項5に記載のスロットダイコーター。
【請求項10】
前記第2のダイは、
前記第1のダイと一定の間隙をあけて配置されて前記スロットを形成する第1のダイブロックと、
前記一対のガイドリップのうちの第1のガイドリップを備え、前記第1のダイブロックの一方の側に配置される第2のダイブロックと、
前記一対のガイドリップのうちの第2のガイドリップを備え、前記第1のダイブロックの他方の側に配置される第3のダイブロックと、を含む、請求項1に記載のスロットダイコーター。
【請求項11】
前記第1のダイブロックは、
前記第2のダイブロックと対面する前記第1のダイブロックの一方の側面から前記第2のダイブロック側へと突出した第1の支持突起と、
前記第3のダイブロックと対面する前記第1のダイブロックの他方の側面から前記第3のダイブロック側へと突出した第2の支持突起と、を備え、
前記第2のダイブロックは、
前記第1の支持突起を収容して前記第1のダイブロックを支持するように構成された第1の支持溝をさらに備え、
前記第3のダイブロックは、
前記第2の支持突起を収容して前記第1のダイブロックを支持するように構成された第2の支持溝をさらに備える、請求項10に記載のスロットダイコーター。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか一項に記載のスロットダイコーターを含む電極コーティング装置であって、前記スロットダイコーターを用いて電極基材をコーティングする電極コーティング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2022年7月27日付け出願の韓国特許出願第10-2022-0092930号に基づく優先権を主張し、当該出願の明細書及び図面に開示されている内容は、すべて本出願に組み込まれる。
【0002】
本発明は、スロットダイコーター及びこれを含む電極コーティング装置に関し、より詳細には、スロットを介して基材の表面にコーティング物質を吐き出すスロットダイコーター及びこれを含む電極コーティング装置に関する。
【背景技術】
【0003】
一般に、充電と放電を繰り返し行うことが可能な二次電池の電極組立体は、正極(cathode)に相当する第1の電極と負極(anode)に相当する第2の電極との間にセパレーター(separator)を挟持した積層構造体を複数積層したり巻き取ったりする方式により製造される。この場合、それぞれの電極は、アルミニウムもしくは銅素材の電極基材に正極活物質又は負極活物質を含むスラリー(slurry)状態のコーティング物質を塗布して乾燥させることにより製造される。
【0004】
近頃では、このような電極基材のコーティング工程には、スロットダイコーター(slot die coater)が主として用いられている。スロットダイコーターは、スロット(slot)を介してコーティング物質を吐き出してコーティングの対象となる基材の表面をコーティングする装置である。
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示されているように、既存の技術は、スロットダイコーターの内部に圧力を加えて、スロットダイコーターの内部に収容されたコーティング物質を、相対的に広い幅と相対的に非常に低い高さをもったスロットの開口を介して吐き出すが故に、実際にコーティング工程に適用される場合、吐き出されたコーティング物質の幅が吐出圧力と大気圧によってスロットの開口の幅よりもさらに広くなって設計とは異なる結果を招いてしまうという問題がある。
【0006】
さらに、既存の技術は、スロットダイコーターの内部に加えられる圧力の脈動によって前記吐き出されたコーティング物質の幅がばらついてしまうという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】韓国公開特許第10-2019-0060557号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明が解決しようとする技術的課題は、スロットを介して基材の表面に吐き出されたコーティング物質の幅が吐出圧力と大気圧によってスロットの開口の幅よりもさらに広くなってしまう現象と、前記コーティング物質の幅が吐出圧力の脈動によってばらついてしまう現象を防ぐことのできるスロットダイコーター及びこれを含む電極コーティング装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一実施形態によるスロットダイコーターは、基材の表面にコーティング物質を吐き出すように構成された装置であって、第1の面を備える第1のダイと、前記第1の面と対面する第2の面を備える第2のダイと、前記第1のダイの第1の面と前記第2のダイの第2の面との間に介在して、前記コーティング物質が吐き出されるスロットを形成するように構成されたシムプレートと、を含み、前記第2のダイは、前記スロットの開口の両端からそれぞれ前記基材側へと突出した一対のガイドリップを備える。
【0010】
一実施形態において、前記一対のガイドリップは、前記基材の表面に吐き出された前記コーティング物質の両サイドエッジ部分と接触して、前記基材の移動に伴う前記コーティング物質の移動を導くように構成され得る。
【0011】
一実施形態において、前記第1のダイは、前記コーティング物質を収容し、前記スロットと連通するように構成された収容溝をさらに備え得る。
【0012】
一実施形態において、前記第1のダイは、前記第1の面を備え、先端に前記開口が位置する本体部と、前記本体部の後端から前記第2のダイ側へと延びて前記第2のダイを支持する支持部と、を含み得る。
【0013】
一実施形態において、前記第1のダイは、前記基材側に突出して前記開口の一方の側壁をなす第1のダイリップを備え得る。
【0014】
一実施形態において、前記第2のダイは、前記一対のガイドリップの間から前記基材側へと突出して前記開口の他方の側壁をなす第2のダイリップをさらに備え、前記一対のガイドリップは、前記第2のダイリップよりもさらに長尺状に前記基材側に突出するように構成され得る。
【0015】
一実施形態において、前記一対のガイドリップは、前記基材側に突出した長さが前記第2のダイリップよりも100μm以上、かつ、300μm以下の範囲においてさらに長尺状に形成され得る。
【0016】
一実施形態において、前記一対のガイドリップ及び前記第2のダイリップは、それぞれ所定の厚さをもって前記基材側に突出し、前記一対のガイドリップは、前記第2のダイリップよりもさらに厚肉状に構成され得る。
【0017】
一実施形態において、前記第2のダイは、前記一対のガイドリップの間から前記基材側へと突出して前記開口の他方の側壁をなす第2のダイリップをさらに備え、前記第1のダイリップは、前記第2のダイリップよりもさらに長尺状に前記基材側に突出するように構成され得る。
【0018】
一実施形態において、前記第2のダイは、前記第1のダイと一定の間隙をあけて配置されて前記スロットを形成する第1のダイブロックと、前記一対のガイドリップのうちの第1のガイドリップを備え、前記第1のダイブロックの一方の側に配置される第2のダイブロックと、前記一対のガイドリップのうちの第2のガイドリップを備え、前記第1のダイブロックの他方の側に配置される第3のダイブロックと、を含み、前記第1のダイブロックは、前記第2のダイブロックと対面する前記第1のダイブロックの一方の側面から前記第2のダイブロック側へと突出した第1の支持突起と、前記第3のダイブロックと対面する前記第1のダイブロックの他方の側面から前記第3のダイブロック側へと突出した第2の支持突起と、を備え、前記第2のダイブロックは、前記第1の支持突起を収容して前記第1のダイブロックを支持するように構成された第1の支持溝をさらに備え、前記第3のダイブロックは、前記第2の支持突起を収容して前記第1のダイブロックを支持するように構成された第2の支持溝をさらに備え得る。
【0019】
本発明の一実施形態による電極コーティング装置は、上述した実施形態のうちのいずれか1つの実施形態によるスロットダイコーターを含む装置であって、前記スロットダイコーターを用いて電極基材をコーティングするように構成され得る。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、スロットの開口の幅方向の両端からそれぞれコーティングの対象となる基材側へと突出した一対のガイドリップが、前記基材の表面に吐き出されたコーティング物質の両サイドエッジ部分と接触して、前記コーティング物質が前記コーティング物質のサイド方向に広がることを遮断し、前記基材の移動に伴う前記コーティング物質の移動を導くことにより、前記吐き出されたコーティング物質の幅が吐出圧力や大気圧によってスロットの開口の幅よりもさらに広くなってしまう現象を極力抑え、前記吐き出されたコーティング物質の幅が吐出圧力の脈動によってばらついてしまう現象を防ぐことができる。
【0021】
また、前記スロットの開口を形成する2つのダイリップの中で、一方向に移動中である基材と相対的に先に遭遇する第1のダイリップが、前記基材と相対的に後に遭遇する第2のダイリップよりも前記基材側にさらに長尺状に突出するように構成されることにより、前記スロットを介して吐き出されたコーティング物質が吐出圧力や大気圧によって基材の移動方向の反対の方向に漏れてしまう現象を防ぐことができる。
【0022】
さらに、スロットダイコーターをなす第1のダイと第2のダイの中で、前記一対のガイドリップを備えた第2のダイが、前記第1のダイとスロットを形成する第1のダイブロック、前記一対のガイドリップのうちの第1のガイドリップを備える第2のダイブロック、及び前記一対のガイドリップのうちの第2のガイドリップを備える第3のダイブロックの間の結合により構成されることにより、前記一対のガイドリップと前記スロットの開口との間に形成される微小な段差構造を高精細な加工なしに容易に実現することができ、スロットダイコーターの精密性を改善しながらも、製造時間と製造コストを節減することができる。
【0023】
さらにまた、追加のさらなる締結部材を用いなくても、前記第1のダイと前記第2のダイの第1のダイブロックとの間の間隙が保たれるように前記第1のダイブロックを支持する支持構造が設けられることにより、一体形ではなく、ダイブロックの間の結合により構成される前記第2のダイを用いてスロットダイコーターを製造するとしても、前記スロットダイコーターの耐久性と信頼性を保証することができる。
【0024】
さらに、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者であれば、本発明による様々な実施形態が上記において言及されていない色々な技術的課題を解決することができるということを以下の説明から明らかに理解できる筈である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明の一実施形態によるスロットダイコーターを示す斜視図である。
【
図3】
図1に示されているスロットダイコーターを示す分解斜視図である。
【
図4】
図1に示されているスロットダイコーターのA-A’線矢視断面図である。
【
図5】
図1に示されているスロットダイコーターのB-B’線矢視断面図である。
【
図7】本発明の変形された一実施形態によるスロットダイコーターのリップ構造を示す断面図である。
【
図8】本発明の一実施形態によるスロットダイコーターのコーティング方式を示す図である。
【
図9】通常のスロットダイコーターにより形成されるコーティング層を示す図である。
【
図10】本発明の一実施形態によるスロットダイコーターにより形成されるコーティング層を示す図である。
【
図11】本発明の変形された一実施形態によるスロットダイコーターの第2のダイを示す図である。
【
図12】本発明の一実施形態による電極コーティング装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の技術的な課題に対応する解決方案を明確にするために、添付図面に基づいて本発明による実施形態について詳しく説明する。但し、本発明を説明するに当たって、本発明と関連する公知の技術についての具体的な説明が本発明の要旨をかえって曖昧にする恐れがあると認められる場合にはその詳細な説明を省略する。また、この明細書中において用いられる用語は、本発明における機能を考慮して定義された用語であって、これらは、使用者、運用者の意図又は慣例などによって異なってくる可能性があるものである。よって、後述する用語に関する定義は、本明細書の全般に亘っての内容を踏まえて定義されることが妥当なものである。
【0027】
一方、添付図面において、同じ参照符号は、同じ構成要素を指している。また、添付図面に示されている本発明の構成要素または各構成要素の部分の大きさは、本発明の技術的な特徴を効果的に説明するためにやや誇張したり、縮小したり、簡略化したりして示されている場合もある。
【0028】
図1には、本発明の一実施形態によるスロットダイコーター10が斜視図として示されている。
【0029】
図1に示されているように、本発明の一実施形態によるスロットダイコーター10は、所定の搬送手段により一方向に搬送されるターゲット基材の搬送経路上において、スロット12を介してコーティング物質を吐き出して、前記ターゲット基材の表面をコーティングするように構成され得る。このために、前記スロットダイコーター10は、第1のダイ100と、第2のダイ200及びシムプレート(shim plate)300を含み得る。
【0030】
前記第1のダイ100は、前記第2のダイ200と対面する第1の面を備え、前記第2のダイ200と結合されてコーティング物質を収容する収容空間を形成するように構成され得る。
【0031】
この場合、前記第1のダイ100は、前記第1の面を備え、その先端にスロットの開口12aが位置する本体部110と、本体部110の後端から第2のダイ200側へと延びて第2のダイ200を支持するように構成された支持部120と、を含み得る。また、前記第1のダイ100の本体部110は、ターゲット基材側(X軸方向)に突出して前記開口12aの一方の側壁をなす第1のダイリップ(die lip)112を備え得る。
【0032】
前記スロット12の末端に位置している開口12aは、所定の高さと幅を有するが、その高さに比べてかなり広い幅を有し得る。以下において再び説明するが、スロット12の末端に位置している開口12aの幅は、基材の表面に形成されるコーティング層の幅に対応するものであり得る。
【0033】
前記第2のダイ200は、前記第1のダイ100の第1の面と対面する第2の面を備え、前記第1のダイ100と結合されて前記コーティング物質を収容する収容空間を形成するように構成され得る。
【0034】
また、前記第2のダイ200は、前記開口12aの幅方向の両端からそれぞれターゲット基材側(X軸方向)へと突出した一対のガイドリップ222、232を備え得る。
【0035】
前記一対のガイドリップ222、232は、ターゲット基材の表面に吐き出されたコーティング物質の幅方向の両サイドエッジ部分と接触して、前記コーティング物質が吐出圧力や大気圧によりそのエッジ方向に広がることを遮断しながら、ターゲット基材の移動に伴う前記コーティング物質の移動を導くように構成され得る。
【0036】
また、前記第2のダイ200は、前記一対のガイドリップ222、232の間からターゲット基材側(X軸方向)へと突出して前記開口12aの他方の側壁をなす第2のダイリップ212を備え得る。
【0037】
この場合、前記一対のガイドリップ222、232は、第2のダイリップ212よりもさらに長尺状にターゲット基材側に突出するように構成され得る。以下において再び説明するが、前記一対のガイドリップ222、232は、ターゲット基材側に突出した長さが前記第2のダイリップ212よりも100μm以上、かつ、300μm以下の範囲においてさらに長尺状に形成され得る。
【0038】
さらに、前記第1のダイ100の第1のダイリップ112は、第2のダイリップ212よりもさらに長尺状にターゲット基材側に突出するように構成され得る。この場合、前記第1のダイリップ112は、ターゲット基材側に突出した長さが前記第2のダイリップ212よりも100μm以上、かつ、300μm以下の範囲においてさらに長尺状に形成され得る。実施形態に応じて、前記第1のダイリップ112は、第2のダイリップ212と同じ長さに突出するように構成されることもある。
【0039】
一実施形態において、前記第2のダイ200は、第1のダイブロック210、第2のダイブロック220及び第3のダイブロック230を含み得る。前記第2のダイ200は、第1のダイブロック210、第2のダイブロック220及び第3のダイブロック230の結合により形成され得る。すなわち、前記第2のダイ200は、3つのダイブロック210、220、230が前記開口12aの幅方向に沿って並ぶように結合されることにより形成され得る。
【0040】
この場合、前記第1のダイブロック210は、前記第2のダイリップ212を備え、前記第1のダイ100と一定の間隙をあけて配置されて前記スロット12を形成するように構成され得る。
【0041】
前記第2のダイブロック220は、前記一対のガイドリップ222、232のうちの第1のガイドリップ222を備え、第1のダイブロック210の一方の側に配置されるように構成され得る。
【0042】
前記第3のダイブロック230は、前記一対のガイドリップ222、232のうちの第2のガイドリップ232を備え、第1のダイブロック210の他方の側に配置されるように構成され得る。
【0043】
このような第1のダイブロック210、第2のダイブロック220及び第3のダイブロック230は、それぞれボルトなどの締結部材214、224、234により第1のダイ100と結合するように構成され得る。
【0044】
このように、スロットダイコーター10をなす第2のダイ200が、それぞれガイドリップとダイリップのどちらか一方のみを備えたダイブロック210、220、230の間の結合により構成されることにより、前記一対のガイドリップ222、232と第2のダイリップ212との間に形成される微小な段差構造を高精細な加工なしに容易に実現することができ、スロットダイコーターの精密性を改善しながらも、製造時間と製造コストを節減することができる。
【0045】
以下において再び説明するが、前記シムプレート300は、前記第1のダイ100の第1の面と前記第2のダイ200の第2の面との間に介在して、コーティング物質が吐き出されるスロット12を形成するように構成され得る。
【0046】
一方、前記スロットダイコーター10のコーティングの対象となる基材は、二次電池の電極の製造に用いられる電極基材であり得る。この場合、電極基材は、正極又は負極の電極の製造に用いられる金属箔であり得るか、あるいは、セパレーターの製造に用いられるポリエチレン(PE:Polyethylene)又はポリプロピレン(PP:Polypropylene)素材のシートであり得る。
【0047】
また、前記スロットダイコーター10から吐き出されるコーティング物質は、正極活物質又は負極活物質とともに導電剤とバインダーを含むスラリー(slurry)であり得るか、あるいは、セラミック物質が含まれているコーティング物質であり得る。この場合、正極活物質としては、LiCoO2、LiMn2O4、LiFePO4、LiNiCoAlO2、LiNiMnCoO2、またはLi2TiO3などの素材が使用可能である。なお、負極活物質としては、天然黒鉛、人造黒鉛又は低結晶炭素などの素材が使用可能である。
【0048】
図2には、
図1のM1領域が拡大図として示されている。
【0049】
図2に示されているように、第1のダイ100の第1のダイリップ112と、第2のダイ200をなす第1のダイブロック210の第2のダイリップ212とは、シムプレート300の厚さに見合う分だけの間隙をあけて配置されて、コーティング物質を吐き出すスロットの開口12aを形成し得る。
【0050】
さらに、前記第1のダイブロック210の一方の側に配置される第2のダイブロック220の第1のガイドリップ222は、スロットの開口12a又は第1のダイブロック210の第2のダイリップ212よりも基材方向、すなわち、コーティング物質の吐出方向にさらに長尺状に突出し得る。
【0051】
このように、第1のガイドリップ222と第2のダイリップ212との突出長さの差によって設けられる第1の段差面は、スロットの開口12aを介して吐き出されたコーティング物質の移動を導く役割を行うことになる。
【0052】
同様に、第2のダイブロック220の第2のガイドリップ232と前記第2のダイリップ212との突出長さの差によって設けられる第2の段差面もまた、スロットの開口12aを介して吐き出されたコーティング物質の移動を導く役割を行うことになる。この場合、前記第1のガイドリップ222の第1の段差面と前記第2のガイドリップ232の第2の段差面は、互いに平行に対面する平面から構成され得る。
【0053】
また、前記第1のガイドリップ222と第2のガイドリップ232の突出長さは、互いに同じであってもよい。
【0054】
図3には、
図1に示されているスロットダイコーター10が分解斜視図として示されている。
【0055】
図3に示されているように、前記スロットダイコーター10は、第1のダイ100、ダイブロック210、220、230、及びシムプレート300を含み得る。
【0056】
上述したように、前記第1のダイ100は、本体部110と支持部120を含み得る。前記本体部110の先端には、スロットの開口12aを形成する第1のダイリップ112が設けられ得、前記ダイブロック210、220、230と対面する前記本体部110の天面114には、収容溝116が設けられ得る。
【0057】
前記収容溝116は、コーティング物質を収容し、前記スロット12と連通するように構成され得る。このような収容溝116は、前記スロット12にコーティング物質を伝達するマニホールド(manifold)の役割を果たし得る。このために、前記収容溝116は、外部に配設されたコーティング物質供給チャンバー(図示せず)とパイプにより連結されて当該チャンバーからコーティング物質の供給を受けるように構成され得る。
【0058】
実施形態に応じて、前記本体部110は、ダイブロック210、220、230とシムプレート300などを前記本体部110に結合するのに用いられる所定の締結部材が締結される締結溝118を備え得る。
【0059】
前記支持部120は、本体部110の後端から上方へと延びて前記ダイブロック210、220、230を支持するように構成され得る。この場合、前記本体部110と支持部120とは、一体に形成され得る。
【0060】
このような第1のダイ100に結合されるダイブロック210、220、230は、それぞれ前記第1のダイ100の天面114と対面する底面を備え、前記第1のダイ100と結合されて、前記コーティング物質を収容する収容空間と前記コーティング物質を吐き出すスロット12を形成するように構成され得る。
【0061】
このために、前記第1のダイブロック210は、前記第1のダイ100の第1のダイリップ112とともにスロットの開口12aを形成する第2のダイリップ212を備え得る。実施形態に応じて、前記第1のダイブロック210は、前記第1のダイブロック210を第1のダイ100に結合するのに用いられる締結部材が嵌入する嵌合孔216を備え得る。
【0062】
また、前記第2のダイブロック220は、前記一対のガイドリップ222、232のうちの第1のガイドリップ222を備え、第1のダイブロック210の一方の側に配置されるように構成され得る。実施形態に応じて、前記第2のダイブロック220は、前記第2のダイブロック220を第1のダイ100に結合するのに用いられる締結部材が嵌入する嵌合孔226を備え得る。
【0063】
前記第3のダイブロック230は、前記一対のガイドリップ222、232のうちの第2のガイドリップ232を備え、第1のダイブロック210の他方の側に配置されるように構成され得る。実施形態に応じて、前記第3のダイブロック230は、前記第3のダイブロック230を第1のダイ100に結合するのに用いられる締結部材が嵌入する嵌合孔236を備え得る。
【0064】
このような第1のダイ100と第2のダイ200のダイブロック210、220、230は、ステンレス鋼を含む素材から作製され得る。例えば、第1のダイ100と第2のダイ200のダイブロック210、220、230は、SUS304、SUS316LSUS420J2、SUS440C又はSUS630などといったように、加工し易く、しかも、耐食性に優れたステンレス鋼素材から作製され得る。
【0065】
前記シムプレート300は、前記第1のダイ100の天面とダイブロック210、220、230の底面との間に介在して、コーティング物質が吐き出されるスロット12を形成するように構成され得る。前記シムプレート300は、コーティング物質が吐き出されるスロット12の形状を決定する一方、スロットダイコーター10のスロット12以外の部分からのコーティング物質の外部への漏れを防ぐガスケット(gasket)としての役割を果たし得る。
【0066】
このために、前記シムプレート300は、全体的に第1のダイ100の天面114を覆う板構造を有し得る。また、前記シムプレート300は、その中心部に第1のダイ100の収容溝116と対応する形状の中空310が設けられ、その一方の側部に前記中空310と連通する開口320が設けられ得る。
【0067】
このようなシムプレート300は、コーティング物質が吐き出されるスロットの開口12aの形状を決定し得る。すなわち、シムプレート300の厚さTsは、スロットの開口12aの高さを決定し、シムプレート300の開口の幅Wsは、スロットの開口12aの幅を決定し得る。
【0068】
実施形態に応じて、前記シムプレート300は、前記シムプレート300を第1のダイ100に結合するのに用いられる締結部材が嵌入する嵌合孔302を備え得る。
【0069】
図4には、
図1に示されているスロットダイコーター10のA-A’線矢視断面図が示されている。
【0070】
図4に示されているように、第2のダイ200のサイド部分に相当する第3のダイブロック230は、第1のダイ100とシムプレート300を間に挟んで結合され得る。前記第3のダイブロック230のガイドリップ232は、基材方向(X軸方向)に突出し得る。この場合、第1のダイ100のダイリップ112は、前記第3のダイブロック230のガイドリップ232と同じ長さに突出し得る。
【0071】
実施形態に応じて、前記第1のダイ100のダイリップ112は、前記ダイブロック230のガイドリップ232よりもさらに短尺状に突出するように構成される場合もある。
【0072】
前記第2のダイ200の他のサイド部分に相当する第2のダイブロック220は、上述した第3のダイブロック230と対応する構造を有し得る。
【0073】
図5には、
図1に示されているスロットダイコーター10のB-B’線矢視断面図が示されている。
【0074】
図5に示されているように、第2のダイ200の中心部分に相当する第1のダイブロック210は、第1のダイ100とシムプレート300を間に挟んで結合されて、第1のダイ100の収容溝116と連通するスロット12を形成し得る。
【0075】
すなわち、前記第1のダイブロック210の後端部は、シムプレート300を間に挟んで第1のダイ100に結合されて支持され得る。これに対し、前記第1のダイブロック210の先端部は、前記第1のダイ100とシムプレート300の厚さに対応する間隙をあけて離隔することにより、前記スロット12を形成し得る。
【0076】
一方、第1のダイ100のダイリップ112と前記ダイブロック210のダイリップ212は、前記スロットの開口12aを形成し得る。上述したように、前記開口12aの高さは、シムプレート300の厚さに対応し、前記開口12aの幅は、シムプレート300に設けられた開口320の幅に対応するものであり得る。
【0077】
このように形成されたスロットの開口12aを介して吐き出されたコーティング物質は、前記開口12aの幅方向の両端からそれぞれ突出したガイドリップ222、232によりその移動が導かれ得る。
【0078】
図6には、
図5のM2領域が拡大図として示されている。
【0079】
図6に示されているように、第1のダイ100に設けられた第1のダイリップ112と、第2のダイ200のダイブロック210、220、230のうちの第1のダイブロック210に設けられた第2のダイリップ212は、コーティング物質が吐き出されるスロットの開口12aを形成し得る。
【0080】
この場合、第1のダイリップ112の長さL1は、第2のダイリップ212の長さL2よりもさらに長尺状に形成され得る。他の一実施形態において、第1のダイリップ112の長さL1は、第2のダイリップ212の長さL2と同じ長さに形成される場合もある。
【0081】
一方、第2のダイブロック220の第1のガイドリップ222は、一定の厚さをもって前記開口12a側から基材側へと所定の長さLgに見合う分だけ突出し得る。すなわち、前記第1のガイドリップ222は、開口12aの位置を決定する第2のダイリップ212よりも基材側にさらに長尺状に突出し得る。換言すれば、前記第2のダイリップ212は、前記第1のガイドリップ222よりも短尺状に形成され得る。
【0082】
この場合、ガイドリップ222と第2のダイリップ212との長さの差(Lg-L2)は、100μm以上、かつ、300μm以下の範囲において決定され得る。
【0083】
前記長さの差(Lg-L2)が100μm未満であれば、ターゲット基材の表面に吐き出されたコーティング物質の両サイドエッジがほとんど第1のガイドリップ222と接触せずに大気に晒されるため、吐き出されたコーティング物質の幅が前記開口12aの幅よりもさらに広くなることはもとより、ばらついてしまう恐れがある。
【0084】
これに対し、前記長さの差(Lg-L2)が300μmを超えると、第1のガイドリップ222とターゲット基材との間に最小限の間隙を確保するために、前記開口12aがターゲット基材から一定の距離以上離れなければならないため、ターゲット基材に形成されるコーティング層の層厚を調節し難くなる。
【0085】
コーティングギャップ(coating gap)とは、ダイリップの終端と基材との距離のことを意味する。このようなコーティングギャップは、コーティングの際にコーティングビード(coating bead)の圧力を左右して、コーティング幅に影響を及ぼす。コーティングギャップが変わると、コーティング物質の両サイドエッジは、大気圧と平衡をなすまでその幅が変わってしまう。
【0086】
本発明において、前記第1のガイドリップ222よりも前記第2のダイリップ212の方がさらに短いため、前記第1のガイドリップ222の終端におけるコーティングギャップは、前記第2のダイリップ212の終端におけるコーティングギャップよりもさらに小さい。したがって、前記第1のガイドリップ222と接触するコーティング物質のエッジ部分は、空気と遭遇する面積が小さくなり、圧力の変化にも鈍くなる。その結果、前記第1のガイドリップ222と接触する当該エッジ部分の変形が少なくなり、全体のコーティング幅の均一性が確保されることが可能になる。
【0087】
前記第1のガイドリップ222と第2のガイドリップ232の突出長さは、互いに同じであり得る。したがって、前記第1のガイドリップ222と第2のダイリップ212との長さの差によりコーティング幅が均一になる効果は、前記第2のガイドリップ232と第2のダイリップ212との間においても同様に得られる。
【0088】
一方、
図6には、第1のガイドリップ222の長さLgと第1のダイリップ112の長さL1とが同一にもしくは近似に示されているが、実施形態に応じて、第1のガイドリップ222の長さLgが第1のダイリップ112の長さL1よりもさらに長尺状に形成される場合もある。この場合、第1のガイドリップ222と第1のダイリップ112との長さの差(Lg-L2)は、100μm以上、かつ、300μm以下の範囲において決定され得る。
【0089】
図7には、本発明の変形された一実施形態によるスロットダイコーターのリップ構造が断面図として示されている。
【0090】
図7に示されているように、ガイドリップ222’は、所定の厚さTgを有し、基材側に突出し得る。また、前記第2のダイリップ212もまた、所定の厚さTdを有し、基材側に突出し得る。この場合、前記ガイドリップ222’は、前記第2のダイリップ212よりもさらに厚肉状に形成され得る。
【0091】
以下において再び説明するが、スロットの開口12aを介してターゲット基材の表面に吐き出されたコーティング物質は、ターゲット基材に沿ってガイドリップ222’の厚さ方向(例えば、
図7における上側方向)に移動する。したがって、ガイドリップ222’の厚さTgが厚くなれば厚くなるほど、吐き出されたコーティング物質がガイドリップ222’により導かれる距離が長くなる。その結果、吐き出されたコーティング物質がその幅方向の両サイド方向に広がることを遮断し、吐き出されたコーティング物質の移動を導きながら吐き出されたコーティング物質のエッジを均一にするガイドリップ222’の効果をより一層改善することが可能になる。
【0092】
図8には、本発明の一実施形態によるスロットダイコーターのコーティング方式が示されている。
【0093】
図8に示されているように、スロットの開口12aを介して基材Eの表面に吐き出されたコーティング物質Cは、吐出圧力と大気圧により、基材Eの移動方向(または、MD方向)と交差する、基材E又はコーティング物質Cの幅方向(または、CD方向)に広がり得る。
【0094】
この場合、ガイドリップ222は、吐き出されたコーティング物質Cの広がりを遮断しながら、ターゲット基材Eの移動に伴うコーティング物質Cの移動を導き得る。したがって、コーティング幅が変化することを防ぐことができる。のみならず、コーティング物質Cがスロットの開口12aを発つとともに直ちに広がるのではなく、ガイドリップ222により導かれた後にコーティングビードを形成することになるので、コーティング物質のエッジ部分が倒れて穏やかな境界面を形成することになる摺動(sliding)を緩和することができ、摺動の再現性も増加する。
【0095】
一方、スロットの開口12aを介してターゲット基材Eの表面に吐き出されたコーティング物質Cは、吐出圧力と大気圧により、ターゲット基材Eの移動方向の反対の方向に漏れる恐れもある。このように、コーティング物質の一部がダイリップの外において上流側に流失される不安定性は、リーク(漏れ、leaking)と呼ばれる。このようなリークは、予め計量されたコーティング物質の損失を意味し、これによって、最終的なコーティング厚さを予測することができなくなる。このようなリークによってコーティング物質が長期にわたって滞って固化したり、幅方向のコーティング厚さのバラツキが引き起こされたりする。特に、薄膜コーティングの目的があるか、あるいは、コーティング層の幅方向の厚さのバラツキを低減すべく、コーティングギャップを数百μmまで低めた状態で、高い圧力によりコーティング物質を吐き出す場合、上記のようにリークが激しくなることが懸念される。
【0096】
この場合、スロットの開口12aから基材E側へと突出した第1のダイリップ112が、吐き出されたコーティング物質Cと接触して当該コーティング物質Cが前記反対方向に漏れることを遮断することができる。これにより、リークの発生が極力抑えられるのみならず、コーティング幅が吐出圧力の脈動によってばらついてしまうことを防ぐことができ、コーティング物質のエッジ部分と関連して摺動の再現性も増加する。
【0097】
図9には、通常のスロットダイコーター20により形成されるコーティング層が示されている。
【0098】
図9に示されているように、通常のスロットダイコーター20のスロット22を介して基材Eの表面に吐き出されたコーティング物質C1の幅Wc1は、吐出圧力や大気圧によってスロット22の開口の幅Ws1よりもさらに広くなるため、設計意図とは異なる結果が招かれる。
【0099】
さらに、前記コーティング物質C1の幅Wc1は、コーティング物質C1を吐き出す圧力の脈動によって不揃いに形成される。
【0100】
図10には、本発明の一実施形態によるスロットダイコーター10により形成されるコーティング層が示されている。
【0101】
図10に示されているように、本発明の一実施形態によるスロットダイコーター10は、スロットの開口12aの両端から一定の厚さをもって基材E側へと突出する一対のガイドリップ222、232を備える。
【0102】
前記一対のガイドリップ222、232は、基材Eの表面に吐き出されたコーティング物質C2の両サイドエッジ部分と接触して、前記コーティング物質C2がその幅方向(または、CD方向)に広がることを遮断する。その結果、スロットの開口12aの幅Ws2と当該開口12aを介して吐き出されたコーティング物質C2の幅Wc2との差が最小限に抑えられることが可能になる。
【0103】
また、前記一対のガイドリップ222、232は、互いに平行に対面する段差面を介して、前記コーティング物質C2の移動を導きながら、前記コーティング物質C2のエッジを均一にすることができる。その結果、前記コーティング物質C2を吐き出す圧力の脈動によって前記コーティング物質C2の幅Wc2がばらついてしまう現象を防ぐことができる。
【0104】
このように、本発明によるスロットダイコーター10は、従来のスロットダイコーターに比べてコーティング幅の変化の発生要因に鈍くなって、コーティング幅の変化なしにコーティング工程を行うことが可能になる。
【0105】
図11には、本発明の変形された一実施形態によるスロットダイコーターの第2のダイ200’が示されている。
【0106】
図11に示されているように、本発明の変形された一実施形態によるスロットダイコーターの第2のダイ200’は、その中心部分をなす第1のダイブロック210’と、そのサイド部分をなす第2のダイブロック220’及び第3のダイブロック230’と、を含み得る。
【0107】
この場合、前記第1のダイブロック210’は、第2のダイブロック220’と対面する一方の側面から前記第2のダイブロック220’側へと突出した第1の支持突起218aと、第3のダイブロック230’と対面する他方の側面から前記第3のダイブロック230’側へと突出した第2の支持突起218bと、を備え得る。
【0108】
前記第2のダイブロック220’は、第1のダイブロック210’の第1の支持突起218aを収容して第1のダイブロック210’を支持するように構成された第1の支持溝228を備え得る。
【0109】
前記第3のダイブロック230’は、第1のダイブロック210’の第2の支持突起218bを収容して第1のダイブロック210’を支持するように構成された第2の支持溝238を備え得る。
【0110】
このように、追加のさらなる締結部材を用いなくても、第1のダイ100と前記第2のダイ200’の第1のダイブロック210’との間の間隙が保たれるように前記第1のダイブロック210’を支持する支持構造218a、218b、228、238が設けられることにより、一体形ではなく、ダイブロックの間の結合により構成される第2のダイ200’を用いてスロットダイコーターを製造するとしても、前記スロットダイコーターの耐久性と信頼性を保証することができる。
【0111】
図12には、本発明の一実施形態による電極コーティング装置400が示されている。
【0112】
図12に示されているように、前記電極コーティング装置400は、本発明の一実施形態によるスロットダイコーター10を含み、スロットダイコーター10を用いて電極基材の表面をコーティングするように構成され得る。
【0113】
このために、前記電極コーティング装置400は、搬送ユニット410、乾燥ユニット420及び制御ユニット430をさらに含み得る。
【0114】
前記搬送ユニット410は、電極の製造に用いる電極基材Eをスロットダイコーター10を経て乾燥ユニット420に搬送するように構成され得る。このために、前記搬送ユニット410は、アンワインダー412、搬送ロール414、圧延ロール416及びリワインダー418を含み得る。
【0115】
前記アンワインダー412は、一般に、ロール(role)状に巻き取られた電極基材Eを解きほぐして(アンワインドして)移動させるように構成され得る。この場合、アンワインダー412は、ロール状に巻き取られた電極基材Eが固定されるホイール(wheel)と、当該ホイールを予め定められた方向と速度にて回転させてホイールに固定された電極基材Eを解きほぐすモーター(図示せず)などを含み得る。この明細書中において、「電極基材」は、正極製造用シート、負極製造用シート、セパレーター製造用シートなどのように、二次電池の電極組立体の製造に用いられる多種多様なシートを意味することがある。
【0116】
前記搬送ロール414は、電極コーティング装置400の様々な位置に配置されて電極基材Eの移動を円滑にするように構成され得る。
【0117】
前記圧延ロール416は、コーティング層が形成されて乾燥ユニット420により乾燥された電極基材Eを圧延するように構成され得る。
【0118】
前記リワインダー418は、圧延された電極基材Eを巻き戻す(リワインドする)ように構成され得る。このために、リワインダー418は、圧延された電極基材Eを巻き戻すためのホイールと、当該ホイールを予め定められた方向と速度にて回転させて圧延された電極基材Eを巻き戻すモーター(図示せず)などを含み得る。
【0119】
実施形態に応じて、前記電極コーティング装置400は、前記圧延ロール416により圧延された電極基材Eをリワインダー418に搬送する前に、スリッティング(slitting)工程を行うように構成されることもある。
【0120】
一方、前記スロットダイコーター10は、アンワインダー412により解きほぐされて搬送される電極基材Eの表面にコーティング物質を塗布し得る。
【0121】
前記乾燥ユニット420は、コーティング物質が塗布された電極基材Eを乾燥させるように構成され得る。
【0122】
このために、前記乾燥ユニット420は、内部空間を有するチャンバー422と、電極基材Eに熱風を与えるヒートユニット424と、所定の波長帯域の電磁気波を放射するランプ426と、を含み得る。この場合、前記ランプ426は、1400nmから3000nmに至るまでの波長帯域の中赤外線を放射する中波長赤外線(MIR:Medium wave Infra Red)ランプから構成され得る。
【0123】
前記制御ユニット430は、前記電極コーティング装置400の全般的な動作を制御するように構成され得る。特に、前記制御ユニット430は、乾燥ユニット420のチャンバー422内に配置されたヒートユニット424とランプ426の動作を制御するように構成され得る。
【0124】
このために、前記制御ユニット430は、制御ロジックを実行するための汎用プロセッサー、特定用途向け集積回路(ASIC:application specific integrated circuits)、その他のチップセット、論理回路、レジスター、メモリなどのハードウェアを選択的に含み得る。
【0125】
また、制御ユニット430は、前記チャンバー422内の温度を測定する温度センサー432と、前記チャンバー422内のガス濃度を測定するガスセンサー434と、をさらに含み得る。この場合、前記制御ユニット430は、温度センサー432により測定された温度情報と、ガスセンサー434により測定されたガス濃度情報に基づいて、前記ヒートユニット424とランプ426の動作を制御し得る。
【0126】
上述したように、本発明によれば、スロットの開口の幅方向の両端からそれぞれコーティングの対象となる基材側へと突出した一対のガイドリップが、前記基材の表面に吐き出されたコーティング物質の両サイドエッジ部分と接触して、前記コーティング物質が前記コーティング物質のサイド方向に広がることを遮断し、前記基材の移動に伴う前記コーティング物質の移動を導くことにより、前記吐き出されたコーティング物質の幅が吐出圧力や大気圧によってスロットの開口の幅よりもさらに広くなってしまう現象を極力抑え、前記吐き出されたコーティング物質の幅が吐出圧力の脈動によってばらついてしまう現象を防ぐことができる。
【0127】
さらに、前記スロットの開口を形成する2つのダイリップの中で、一方向に移動中である基材と相対的に先に遭遇する第1のダイリップが、前記基材と相対的に後に遭遇する第2のダイリップよりも前記基材側にさらに長尺状に突出するように構成されることにより、前記スロットを介して吐き出されたコーティング物質が吐出圧力や大気圧によって基材移動方向の反対方向に漏れてしまう現象を防ぐことができる。
【0128】
また、スロットダイコーターをなす第1のダイと第2のダイの中で、前記一対のガイドリップを備えた第2のダイが、前記第1のダイとスロットを形成する第1のダイブロック、前記一対のガイドリップのうちの第1のガイドリップを備える第2のダイブロック、及び前記一対のガイドリップのうちの第2のガイドリップを備える第3のダイブロックの間の結合により構成されることにより、前記一対のガイドリップと前記スロットの開口との間に形成される微小な段差構造を高精細な加工なしに容易に実現することができ、スロットダイコーターの精密性を改善しながらも、製造時間と製造コストを節減することができる。
【0129】
また、追加のさらなる締結部材を用いなくても、前記第1のダイと前記第2のダイの第1のダイブロックとの間の間隙が保たれるように前記第1のダイブロックを支持する支持構造が設けられることにより、一体形ではなく、ダイブロックの間の結合により構成される前記第2のダイを用いてスロットダイコーターを製造するとしても、前記スロットダイコーターの耐久性と信頼性を保証することができる。
【0130】
さらに、本発明による実施形態は、当該技術分野はもちろんのこと、関連する技術分野においてこの明細書中に言及されている内容以外の他の色々な技術的な課題を解決することができるということはいうまでもない。
【0131】
これまで本発明について具体的な実施形態を参考にして説明した。しかしながら、当業者であれば、本発明の技術的な範囲において様々な変形の実施形態が実現されることが可能であるということが明らかに理解できるものである。よって、以上において開示されている実施形態は、限定的な視点ではなく、説明的な視点から考慮されるべきである。すなわち、本発明の真の技術的な思想の範囲は、特許請求の範囲に示されており、それと均等な範囲内にあるあらゆる相違点は、本発明に含まれるものと解釈されるものである。
【国際調査報告】