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特表2024-535554治療に用いられる細胞を向上させる方法及びシステム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-30
(54)【発明の名称】治療に用いられる細胞を向上させる方法及びシステム
(51)【国際特許分類】
   C12N 5/077 20100101AFI20240920BHJP
   A61L 27/36 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
C12N5/077
A61L27/36 120
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024521209
(86)(22)【出願日】2022-10-07
(85)【翻訳文提出日】2024-06-07
(86)【国際出願番号】 US2022077782
(87)【国際公開番号】W WO2023060251
(87)【国際公開日】2023-04-13
(31)【優先権主張番号】17/496,391
(32)【優先日】2021-10-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】506115514
【氏名又は名称】ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ カリフォルニア
【氏名又は名称原語表記】The Regents of the University of California
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】アサナシォー、キリアコス、エイ.
(72)【発明者】
【氏名】フー、ジェリー、シー.
(72)【発明者】
【氏名】ブラウン、ウェンディ、イー.
【テーマコード(参考)】
4B065
4C081
【Fターム(参考)】
4B065AA93X
4B065AC20
4B065BB02
4B065BB04
4B065BB12
4B065BB15
4B065BB20
4B065BB25
4B065BB37
4B065BB40
4B065BC03
4B065BC09
4B065BC11
4B065BC26
4B065BD45
4B065CA44
4C081AB01
4C081CD34
4C081DA11
(57)【要約】
組織エンジニアリング用途、例えば、新軟骨の生成のために軟骨細胞等の細胞集団を強化するための方法及びシステム。本発明の方法及びシステムは、細胞単離方法中の細胞への低張バッファの導入を特徴とし、低張バッファにより処理されていないものと比較して、有意に機械的によりロバストな新組織(例えば新軟骨)構築物をもたらす。前記方法及びシステムはさらに、低張バッファにより精製された細胞にサイトカラシンDを導入することを含み得、これにより、細胞の機械的性質及びマトリックス沈着をさらに強化することができる。前記方法及びシステムは、生来の成体関節軟骨と同等の圧縮性を有する、軟骨細胞、例えば胎仔齢組織から操作された新軟骨をもたらす。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下を含む、軟骨細胞のサンプルを強化する方法:
a)軟骨組織から軟骨細胞の前記サンプルを得ること;及び
b)(a)由来の軟骨細胞の前記サンプルを低張溶液による処理に付すこと。
【請求項2】
低張溶液が、塩化アンモニウムカリウム溶解バッファ(ACKバッファ)である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
以下を含む、軟骨細胞のサンプルを強化する方法:
a)軟骨組織から軟骨細胞の前記サンプルを得ること;及び
b)(a)由来の軟骨細胞の前記サンプルを、塩化アンモニウムカリウム溶解(ACK)バッファである低張溶液による処理に付すこと。
【請求項4】
処理が、細胞膨潤を誘導する、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
軟骨細胞のサンプルがヒト軟骨細胞である、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
軟骨細胞のサンプルが肋骨の一部から供給される、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
軟骨細胞のサンプルが非関節軟骨細胞のサンプルである、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
軟骨細胞のサンプルが、非プレアポトーシス細胞及びプレアポトーシス細胞の混合集団を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
(b)の後に、軟骨細胞のサンプルの非プレアポトーシス細胞のパーセンテージが、(b)の前の軟骨細胞の前記サンプルと比較してより高い、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
(b)の後に、軟骨細胞のサンプルのプレアポトーシス細胞のパーセンテージが、(b)の前の軟骨細胞の前記サンプルと比較してより低い、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
(b)の後に生成された軟骨細胞が、以下の1つ又は複数に用いられる、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法:
細胞の直接的使用;
単層、もしくは懸濁培養が挙げられる三次元環境での継代を含む細胞のインビトロ培養;
自己アセンブリが挙げられる無足場系を用いるか、もしくは天然材料及び合成材料を包含する足場ベースの系を用いる組織エンジニアリング;
細胞移植;
組織移植;ならびに/又は
グラフト化。
【請求項12】
(b)の後に、単層又は三次元環境で細胞を継代することをさらに含む、請求項1又は請求項3に記載の方法。
【請求項13】
継代された細胞により新軟骨を生成することをさらに含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
(b)の後に生成された軟骨細胞、又は(b)の後に生成された前記軟骨細胞から操作/作製された組織が、以下の1つ又は2つ以上を含む処理に供される、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法:
成長因子;
細胞骨格修飾剤;
ホルモン;
毒性化合物;
シグナル伝達カスケードの上流で作用する分子;
種々の酸素張力;
架橋剤;
マトリックス分解酵素、マトリックス分子;及び/又は
機械的刺激。
【請求項15】
以下を含むヒト軟骨細胞のサンプルを強化する方法:
a)ヒト軟骨細胞の前記サンプルを得ること;及び
b)(a)由来の軟骨細胞の前記サンプルを、低張溶液による処理に付すこと
ただし、該方法は、複数回の反復を、単独で、又は他の処理と組み合わせて、行える。
【請求項16】
低張溶液が、塩化アンモニウムカリウム溶解バッファ(ACKバッファ)である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
以下を含むヒト軟骨細胞のサンプルを強化する方法:
a)ヒト軟骨細胞の前記サンプルを軟骨組織から得ること;及び
b)(a)由来の軟骨細胞の前記サンプルを、塩化アンモニウムカリウム溶解バッファ(ACKバッファ)である低張溶液による処理に付すこと
ただし、該方法は、複数回の反復を、単独で、又は他の処理と組み合わせて、行える。
【請求項18】
ヒト軟骨細胞のサンプルが非関節軟骨細胞のサンプルである、請求項15~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
ヒト軟骨細胞のサンプルが肋骨の一部から供給される、請求項15~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
処理が、細胞膨潤を誘導する、請求項15~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
ヒト軟骨細胞のサンプルが、非プレアポトーシス細胞及びプレアポトーシス細胞の混合集団を含む、請求項16~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
(b)の後に、ヒト軟骨細胞のサンプルの非プレアポトーシス細胞のパーセンテージが、(b)の前のヒト軟骨細胞の前記サンプルと比較してより高い、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
(b)の後に、ヒト軟骨細胞のサンプルのプレアポトーシス細胞のパーセンテージが、(b)の前のヒト軟骨細胞の前記サンプルと比較してより低い、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
(b)の後に生成されたヒト軟骨細胞が、以下の1つ又は2つ以上に用いられる、請求項15~23のいずれか一項に記載の方法:
細胞の直接的使用;単層、もしくは懸濁培養が挙げられる三次元環境での継代を含む細胞のインビトロ培養;
自己アセンブリが挙げられる無足場系を用いるか、もしくは天然材料及び合成材料を包含する足場ベースの系を用いる組織エンジニアリング;
細胞移植;
組織移植;ならびに/又は
グラフト化。
【請求項25】
(b)の後に、単層又は三次元環境で細胞を継代することをさらに含む、請求項15又は17に記載の方法。
【請求項26】
継代された細胞により新軟骨を生成することをさらに含む、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
(b)の後に生成された軟骨細胞、又は(b)の後に生成された前記軟骨細胞から操作/作製された組織が、以下の1つ又は2つ以上を含む処理に供される、請求項15~26のいずれか一項に記載の方法:
成長因子;
細胞骨格修飾剤;
ホルモン;
毒性化合物;
シグナル伝達カスケードの上流で作用する分子;
種々の酸素張力;
架橋剤;
マトリックス分解酵素、マトリックス分子;及び/又は
機械的刺激。
【請求項28】
以下を含む、非関節軟骨細胞のサンプルを強化する方法:
a)軟骨組織から非関節軟骨細胞の前記サンプルを得ること;及び
b)(a)由来の非関節軟骨細胞の前記サンプルを低張溶液による処理に付すこと。
【請求項29】
低張溶液が、塩化アンモニウムカリウム溶解バッファ(ACKバッファ)である、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
以下を含む、非関節軟骨細胞のサンプルを強化する方法:
a)軟骨組織から非関節軟骨細胞の前記サンプルを得ること;及び
b)(a)由来の非関節軟骨細胞の前記サンプルを、塩化アンモニウムカリウム溶解(ACK)バッファである低張溶液による処理に付すこと。
【請求項31】
非関節軟骨細胞のサンプルがヒト非関節軟骨細胞のサンプルである、請求項28~30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
非関節軟骨細胞のサンプルが肋骨の一部から供給される、請求項28~31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
処理が細胞膨潤を誘導する、請求項28~32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
非関節軟骨細胞のサンプルが、非プレアポトーシス細胞及びプレアポトーシス細胞の混合集団を含む、請求項28~33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
(b)の後に、非関節軟骨細胞のサンプルの非プレアポトーシス細胞のパーセンテージが、(b)の前の非関節軟骨細胞の前記サンプルと比較してより高い、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
(b)の後に、非関節軟骨細胞のサンプルのプレアポトーシス細胞のパーセンテージが、(b)の前の非関節軟骨細胞の前記サンプルと比較してより低い、請求項34に記載の方法。
【請求項37】
(b)の後に生成された非関節軟骨細胞が、以下の1つ又は2つ以上に用いられる、請求項28~36のいずれか一項に記載の方法:
細胞の直接的使用;
単層、もしくは懸濁培養が挙げられる三次元環境での継代を含む細胞のインビトロ培養;
自己アセンブリが挙げられる無足場系を用いるか、もしくは天然材料及び合成材料を包含する足場ベースの系を用いる組織エンジニアリング;
細胞移植;
組織移植;ならびに/又は
グラフト化。
【請求項38】
(b)の後に、単層又は三次元環境で細胞を継代することをさらに含む、請求項28又は30に記載の方法。
【請求項39】
継代された細胞により新軟骨を生成することをさらに含む、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
(b)の後に生成された非関節軟骨細胞、又は(b)の後に生成された前記非関節軟骨細胞から操作/作製された組織が、以下の1つ又は2つ以上を含む処理に付される、請求項28~39のいずれか一項に記載の方法:
成長因子;
細胞骨格修飾剤;
ホルモン;
毒性化合物;
シグナル伝達カスケードの上流で作用する分子;
種々の酸素張力;
架橋剤;
マトリックス分解酵素、マトリックス分子;及び/又は
機械的刺激。
【請求項41】
以下を含む、ヒト軟骨細胞のサンプルを調製する方法:
a)肋骨の一部から供給されるヒト軟骨組織の前記サンプルを得ること;及び
b)(a)由来のヒト軟骨細胞の前記サンプルを、塩化アンモニウムカリウム溶解バッファ(ACKバッファ)である低張溶液による処理に付すこと。
【請求項42】
肋骨の一部が肋骨軟骨組織を含む、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
ヒト軟骨細胞のサンプルを処理に付す前に、肋骨の一部を切断することをさらに含む、請求項41又は42に記載の方法。
【請求項44】
肋骨の一部を切断することにより組織形成に適さない細胞が除去される、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
ヒト軟骨細胞のサンプルを処理に付す前に、肋骨の一部を酵素的に分解することをさらに含む、請求項43に記載の方法。
【請求項46】
軟骨細胞のサンプルが初代細胞サンプルである、請求項1~45のいずれか一項に記載の方法。
【請求項47】
以下を含む方法により製造される、処理された細胞サンプル
(a)軟骨のサンプルを得て、軟骨の前記サンプルを消化して、細胞懸濁液を得ること;及び
(b)前記細胞懸濁液を低張溶液に供して、処理細胞サンプルを得ること
ただし、該処理細胞サンプルは、新軟骨の製造に適している。
【請求項48】
低張溶液が、塩化アンモニウムカリウム溶解バッファ(ACKバッファ)である、請求項47に記載の処理細胞サンプル。
【請求項49】
軟骨のサンプルがヒト軟骨である、請求項47又は48に記載の処理細胞サンプル。
【請求項50】
軟骨のサンプルが非関節軟骨細胞である、請求項47~49のいずれか一項に記載の処理細胞サンプル。
【請求項51】
ヒト軟骨のサンプルが肋骨の一部から供給される、請求項47~50のいずれか一項に記載の処理細胞サンプル。
【請求項52】
軟骨のサンプルが初代サンプルである、請求項47~51のいずれか一項に記載の処理細胞サンプル。
【請求項53】
ACKバッファが、154.4mM塩化アンモニウム、10mM重炭酸カリウム、及び97.3μMエチレンジアミン四酢酸(EDTA)四ナトリウム塩を含む、請求項47~52のいずれか一項に記載の処理細胞サンプル。
【請求項54】
(b)の後に、処理細胞サンプルを遠心分離すること、及び前記細胞サンプルを再懸濁させることをさらに含む、請求項47~53のいずれか一項に記載の処理細胞サンプル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
相互参照
本出願は、2021年10月7日に出願された米国特許出願第17/496,391号明細書の利益を主張し、この明細書は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
政府支援
本発明は、NIHにより認可された認証番号R01 AR067821の下で、政府の支援を受けてなされた。政府は、本発明の一定の権利を有する。
【0003】
本発明は、細胞エンジニアリング及び組織エンジニアリング、ならびに細胞及び組織の移植等の用途に用いられる細胞精製方法に関する。
【背景技術】
【0004】
組織エンジニアリングの目標は、疾患の進行を停止させ、かつ回復に向かわせるために損傷組織を置換することである。初代完全分化細胞が、組織エンジニアリングのための理想的な細胞型であると広く考えられている。前記細胞は表現型的に安定であり、組織特異的細胞外マトリックス(ECM)分子を容易に産生する。子どもの組織源、及びさらには胎仔の組織源は、成体の細胞と比較して、増殖能及び合成能が強化されているため、最も望ましい。幼若細胞から構成される組織エンジニアリング製品が現在、臨床的に使用されている。例えば、幼若軟骨細胞を用いた軟骨の修復用の組織エンジニアリング製品であるRevaFlex(ISTO Technologies)が現在、米国において第III相臨床試験中である。これらの操作された組織は有望性を示すが、生来の組織の性質及び構造をまだ再現していない。
【0005】
子ども及び胎仔の初代完全分化細胞が、組織エンジニアリング用途にとって理想的な細胞型であると広く考えられている。しかしながら、組織エンジニアリングにおけるそれらの細胞の使用は、該細胞が成体レベルの細胞又は健康な細胞で作製されたものと同様の機能的性質を達成するのを妨げる望ましくない細胞型の混入によって、妨害され得る。胎仔期の軟骨細胞から成体レベルへの新軟骨の機械的性質の増大は、これまで達成されていない。
【0006】
初代細胞を用いる組織エンジニアリング的取組みは、望ましくない細胞型による混入によって妨害され得る。血液及び周囲組織による混入は、標的ドナー組織の単離中に起こり得る。さらに、多くの組織は、複数の細胞型から構成されており、それらの全てが組織エンジニアリング用途に適しているわけではない。加えて、疾患状態及び組織の成熟が、望ましくない細胞表現型を、単離される集団中に導入し得る。加齢が進んだ組織は、癌、アテローム性動脈硬化症、及び変形性関節症等の疾患の傾向があるが、活性酸素種、炎症性メディエータ、及びマトリックス分解酵素をますます産生する老齢細胞を含有する。これらの制限は、望ましくない表現型(例えば、望ましくない細胞骨格特性)の存在を排除して、組織エンジニアリングにとって適切な特性を有する細胞が富化された均一な細胞集団を達成するための、単離中の細胞精製方法の使用を必要とする。
【発明の概要】
【0007】
本発明は、治療用の細胞を改良する(improving)ための方法及びシステムを特徴とする。例えば、細胞エンジニアリング及び組織エンジニアリングに資する特性を有する細胞の集団を富化することによって細胞集団を強化する(enhancing)、細胞の精製方法である。
【0008】
関節軟骨組織エンジニアリングは十分に確立されているので、例示的なシステムとして用いることができる。しかしながら、典型的には認識されないが、軟骨細胞において望ましくない細胞表現型が、いくつかの理由に起因して、存在し得る。造血細胞(例えばプロアポトーシス細胞)、又は他の周囲組織由来の細胞による混入が、自家軟骨細胞移植(ACI)等の臨床用途での軟骨生検を行う場合に、起こり得る。血液への軟骨の短期曝露は、血友病を反映するモデルにおいて、軟骨細胞アポトーシスを誘導することが示されている。第2に、臨床現場では、自家又は同種異系の軟骨移植片が、多くの場合、マトリックス分解、表面欠陥、及びフィブリル化を示す成体組織から取られる。変形性関節症等の罹患軟骨は、ECM変性の強化を経験しており、変化した表現型の軟骨細胞を含有する。軟骨ECMに対する変性変化は、軟骨細胞アポトーシスと関連する。他方、胎仔軟骨は、血管が通っている(vascularized)ので、軟骨細胞が単離される組織の塊中に血液及び過多の細胞型を導入する。加えて、健康な組織においてさえ、軟骨の単離自体が組織損傷を引き起こし、その結果、創傷縁にて壊死が生じて、アポトーシスの波が組織中に広がる。赤血球(RBC)混入に加えて、変化した表現型の軟骨細胞による細胞表現型の不均一性が、操作された軟骨性質の、生来の組織の性質に到達する能力を制限する予想外の要因である。
【0009】
軟骨細胞単離中の混入の可能性にも拘わらず、その重要性を実証しようとした研究は、僅かしかない。ハムスター肋骨軟骨全体を2つの画分に連続的に消化するのにコラゲナーゼを使用すると、第2の画分は、分離されていない集団全体と比較して、より均一な軟骨細胞形態を有する細胞集団を含有することが実証された。単離された軟骨細胞を精製する別の方法が、逐次プレーティングによるものである。組織培養プラスチックへの異なる接着によって分離されたラット軟骨細胞単離物は、集団全体をプレーティングした場合の細胞の混合物に対して、8回目のプレーティング後に100%の軟骨細胞を示した。さらに別の方法は、単球及び造血細胞による混入を排除するためのCD14及びCD45等の細胞表面マーカーの使用を示唆する。塩化アンモニウム-カリウム溶解バッファ(ACKバッファ)が、一般に、EDTA処理全血、バフィーコート、及び骨髄等の白血球を含有するサンプル中のRBCを溶解させるのに用いられる。組織エンジニアリング目的のために、ACKバッファは、脂肪由来幹細胞及び間葉系幹細胞等の幹細胞の純粋な集団を単離するのに用いられるが、非幹細胞型(例えば軟骨)の単離においては、まだ検討されていない。完全に分化した細胞の多くの単離物中の混入細胞型は、代替表現型を有する細胞を包含し得るので、ACKバッファ処理は、組織エンジニアリング用途に望ましい細胞集団の精製に有望である。ACKバッファ処理が全ての細胞を溶解させる可能性があるにも拘わらず、本発明は、表現型が変化した細胞(例えばプレアポトーシス細胞)を優先的に破壊して、新組織形成のための好ましい表現型を有する細胞を富化させるのを可能にする。
【0010】
本発明の独特かつ発明的な技術的特徴の1つが、低張溶液(例えばACKバッファ)の、フレッシュに単離された、完全に分化した細胞を処理してプレアポトーシス細胞を除去し、かつ生体機能性組織を形成する能力を強化するための使用である。本発明をいかなる理論にも機構にも限定することを望むものではないが、本発明の方法及びシステムは、特定の細胞集団(例えば、胎仔齢細胞、罹患組織源)から作製された新組織の機械的性質を、成体レベルの細胞又は健康な細胞から作製されたものに向上させることができると考えられる。
【0011】
さらに、先行文献は、本発明から離れて教示している。例えば、先行技術は、胎仔ヒツジ又は幼若ウシから供給される細胞に対する低張溶液の処理を利用するが、低張溶液処理の、ヒトから供給される細胞に対する、プレアポトーシス細胞を除去するための使用を示していない。図18は、ある種(例えば胎仔ヒツジ)由来の細胞に有益な処理が、別の種(例えばヒト)由来の細胞に施される場合、必ずしも有益ではないことを示す。したがって、同じ処理(例えば低張溶液)が、異なる種由来の細胞に対して同様に作用することは自明ではない。
【0012】
加えて、図19は、同じ種(例えば、幼若ユカタンミニブタ)内でさえ、異なる細胞型が、同じ処理又は培養レジメンに異なって反応したことを示す。したがって、同じ有益な効果を達成するために、ある細胞型(例えば関節軟骨細胞)に有益な処理又は培養レジメンを、別の細胞型(例えば肋骨軟骨細胞)に直接施すことができることは自明ではない。
【0013】
驚くべき結果
先行技術は、血球を含有する細胞集団に低張バッファ処理を用いることを教示しているので、非血管組織、例えば軟骨から単離された細胞がACKバッファ処理に応じることは、驚くべきことである。
【0014】
さらに、先行技術は、幹細胞におけるACKバッファ処理の使用を指示しているが、血球を含有しない軟骨細胞は、操作された新軟骨を形成することによる予想外の方法でACKバッファ処理に応じる。
【0015】
軟骨細胞を、既存の望ましくない細胞骨格特性、望ましくない膜特性、及び変化した剛性を有する細胞を選択するACKバッファ等の低張バッファに付すことにより、強化した細胞の集団が得られたことは、驚くべきことであった。
【0016】
若齢の健康な軟骨において望ましくない、例えばプロアポトーシス特性を有する細胞が、操作された新軟骨の形成が当該細胞の存在によって影響を受ける程度に存在することは、驚くべきことであった。
【0017】
驚くべきことに、本発明の方法及びシステムは、本明細書中に記載される処理から得られる強化した完全分化細胞から操作された無足場新軟骨をもたらし、これは、生来の成体関節軟骨と同等の圧縮性を達成することが発見された。胎仔期の軟骨細胞から成体レベルへの新軟骨の機械的性質の増大は、以前に達成されていない。本発明は、新軟骨の発生に適した細胞集団を富化する方法を特徴とし、さらに、細胞骨格を操作して治療用の細胞を向上させる方法を可能にする。例えば、軟骨細胞の精製中に低張バッファを用いると、新軟骨構築物の均一性、マトリックス沈着、及び機械的性質が有意に向上した。低張バッファ及びサイトカラシンDの組合せは、胎仔齢軟骨細胞から操作された新軟骨をもたらし、これは、生来の成体関節軟骨と同等の圧縮性を達成する。本発明を特定のいずれかの理論にも機構にも限定することを望むものではないが、RBC混入を減少させることに加えて、自己アセンブリング方法に対する細胞デトラクタである変化した表現型の軟骨細胞を除去すること、そしてアポトーシス刺激を排除することにより、新軟骨の均一性、軟骨細胞分布、及び新軟骨内のECM沈着が向上するので、処理された細胞により形成される操作された組織の生化学的性質及び機械的性質が強化すると考えられる。
【0018】
これらの結果は、このレベルの機械的ロバスト性が、胎仔軟骨細胞源でこれまで見られたことがなかったので、驚くべきことである。
【0019】
本発明は、細胞を調製する方法又は細胞集団を調製する方法、及び治療用の細胞集団を強化する方法を特徴とする。また、本発明は、組織を調製する方法、及び治療用の組織を強化する方法を特徴とする。
【0020】
本発明は、軟骨細胞のサンプル(例えば、ヒト軟骨細胞のサンプル)を強化する方法を特徴とする。該方法は、軟骨組織から軟骨細胞のサンプルを得ることと;軟骨細胞の上記サンプルを、低張溶液(例えば、塩化アンモニウムカリウム溶解(ACK)バッファ)による処理に付すこととを含み得る。一部の実施形態において、前記方法は、単独で、又は他の処理と組み合わせて複数回繰り返すことができる。
【0021】
一部の実施形態において、本発明は、軟骨細胞(例えばヒト軟骨細胞)のサンプルを調製する方法を特徴とする。該方法は、軟骨細胞(例えばヒト軟骨細胞)のサンプルを得ること(軟骨細胞(例えばヒト軟骨細胞)のサンプルは、非プレアポトーシス軟骨細胞及びプレアポトーシス軟骨細胞の混合集団を含む)と;軟骨細胞の前記サンプルを、処理(例えば、処理は、低張溶液(例えばACK)を含む)に付すこととを含み得る。一部の実施形態において、前記方法は、単独で、又は他の処理と組み合わせて複数回繰り返すことができる。
【0022】
本発明はさらに、ヒト軟骨細胞のサンプルを調製する方法を特徴とする。該方法は、肋骨の一部から供給されるヒト軟骨細胞のサンプルを得ることと、ヒト軟骨細胞の上記サンプルを、低張溶液(例えば、塩化アンモニウムカリウム溶解(ACK)バッファ)による処理に付すこととを含み得る。
【0023】
また、本発明は、(a)軟骨のサンプルを得て、軟骨のサンプルを消化して、細胞懸濁液を得ることと、(b)該細胞懸濁液を低張溶液に供して、処理細胞サンプルを得ることとを含む方法から生成された処理細胞サンプルを特徴とし得る。一部の実施形態において、処理された細胞サンプルは、新軟骨生成に適している。
【0024】
本発明は、細胞集団を強化する方法であって:1)体細胞の集団を得ることと、2)体細胞の該集団を、既存の望ましくない特徴(例えば、既存の望ましくない細胞骨格特性、既存の望ましくない膜表面積特性、又は既存の変更された剛性特性)を有する細胞を選択する処理に付すことと;3)既存の望ましくない特徴を有する細胞を単離かつ除去することと;4)既存の望ましくない特徴(例えば、既存の望ましくない細胞骨格特性、既存の望ましくない膜表面積特性、又は既存の変更された剛性特性)のない細胞が富化された残りの細胞集団を単離かつ保持することとを含む方法を特徴とする。これらのステップは、単独で、又は他の処理と組み合わせて複数回繰り返すことができる。
【0025】
本明細書中に記載されるあらゆる特徴又は特徴の組合せは、そのようなあらゆる組合せに包含される特徴が、文脈、本明細書、及び当業者の知識から明らかになるように、相互に矛盾しない限り、本発明の範囲内に包含される。本発明の追加の利点及び態様は、以下の詳細な説明及び特許請求の範囲において明らかである。
【0026】
本発明の特徴及び利点は、添付の図面に関連して示される以下の詳細な説明の考察から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】ACK処理前後の胎仔ヒツジAC及び幼若ウシACのペレット形態、生存率、及び赤血球(RBC)含量を示す。ACK処理は、細胞ペレットの色の変化、及びRBC含量の有意な減少をもたらした。
【0028】
図2A】新軟骨全体の形態及び選択パラメータを示す。図2Aは、ACK処理が、胎仔ヒツジAC新軟骨における球根状の拡散領域(白色の矢印によって示される)を排除したことを示している。
図2B】新軟骨全体の形態及び選択パラメータを示す。図2Bは、ACK処理が、胎仔ヒツジ新軟骨の厚さを減少させたことを示す。
図2C】新軟骨全体の形態及び選択パラメータを示す。図2Cは、ACK処理が、胎仔ヒツジ新軟骨の湿重量を減少させたことを示す。
図2D】新軟骨全体の形態及び選択パラメータを示す。図2Dは、ACK処理が、胎仔ヒツジの水和に影響を及ぼさなかったことを示す。
図2E】新軟骨全体の形態及び選択パラメータを示す。図2Eは、ACK処理が、幼若ウシAC新軟骨における球根状の拡散領域(白色の矢印によって示される)を排除したことを示す。
図2F】新軟骨全体の形態及び選択パラメータを示す。図2Fは、ACK処理が、幼若ウシ新軟骨の厚さを減少させたことを示す。
図2G】新軟骨全体の形態及び選択パラメータを示す。図2Gは、ACK処理が、幼若ウシ新軟骨の湿重量を減少させたことを示す。
図2H】新軟骨全体の形態及び選択パラメータを示す。図2Hは、ACK処理が、幼若ウシの水和に影響を及ぼさなかったことを示す。
【0029】
図3】新軟骨組織学を示す。胎仔ヒツジ及び幼若ウシACのACK処理は、未処理構築物中に存在する低細胞性の拡散領域を排除し(*)、新軟骨の均一性を強化し、かつGAG、総コラーゲン、及びコラーゲンII染色を強化した。
【0030】
図4A】ACK処理のあり、そしてなしの、胎仔ヒツジAC(foAC)及び幼若ウシAC(jbAC)における新軟骨の生化学的含量を示す。図4Aは、ACK処理が、foACにおけるカスパーゼ活性を有意に低下させたことを示す。
図4B】ACK処理のあり、そしてなしの、胎仔ヒツジAC(foAC)及び幼若ウシAC(jbAC)における新軟骨の生化学的含量を示す。図4Bは、ACK処理が、foACにおけるGAG/WW含量に影響を及ぼさなかったことを示す。
図4C】ACK処理のあり、そしてなしの、胎仔ヒツジAC(foAC)及び幼若ウシAC(jbAC)における新軟骨の生化学的含量を示す。図4Cは、ACK処理が、foACにおけるGAG/DW含量に影響を及ぼさなかったことを示す。
図4D】ACK処理のあり、そしてなしの、胎仔ヒツジAC(foAC)及び幼若ウシAC(jbAC)における新軟骨の生化学的含量を示す。図4Dは、ACK処理が、foACにおけるコラーゲン/WW含量を有意に増大させたことを示す。
図4E】ACK処理のあり、そしてなしの、胎仔ヒツジAC(foAC)及び幼若ウシAC(jbAC)における新軟骨の生化学的含量を示す。図4Eは、ACK処理が、foACにおけるコラーゲン/DW含量を有意に増大させたことを示す。
図4F】ACK処理のあり、そしてなしの、胎仔ヒツジAC(foAC)及び幼若ウシAC(jbAC)における新軟骨の生化学的含量を示す。図4Fは、ACK処理が、jbACにおけるカスパーゼ活性を有意に低下させたことを示す。
図4G】ACK処理のあり、そしてなしの、胎仔ヒツジAC(foAC)及び幼若ウシAC(jbAC)における新軟骨の生化学的含量を示す。図4Gは、ACK処理が、jbACにおけるGAG/WW含量を有意に低下させたことを示す。
図4H】ACK処理のあり、そしてなしの、胎仔ヒツジAC(foAC)及び幼若ウシAC(jbAC)における新軟骨の生化学的含量を示す。図4Hは、ACK処理が、jbACにおけるGAG/DW含量を有意に低下させたことを示す。
図4I】ACK処理のあり、そしてなしの、胎仔ヒツジAC(foAC)及び幼若ウシAC(jbAC)における新軟骨の生化学的含量を示す。図4Iは、ACK処理が、jbACにおけるコラーゲン/WW含量を有意に増大させたことを示す。
図4J】ACK処理のあり、そしてなしの、胎仔ヒツジAC(foAC)及び幼若ウシAC(jbAC)における新軟骨の生化学的含量を示す。図4Jは、ACK処理が、jbACにおけるGAG/WW含量に影響を及ぼさなかったことを示す。
【0031】
図5】新軟骨の機械的性質を示す。ACK処理は、双方の細胞型について測定した全ての機械的性質を有意に増大させた。
【0032】
図6A】新軟骨の肉眼的形態、生化学的含量、及び組織学に及ぼす播種密度の効果を示す。図6Aは、P0継代及びP3R継代においてそれぞれ500万及び400万細胞の播種密度にて肉眼的異常が現れることを示す。
図6B】新軟骨の肉眼的形態、生化学的含量、及び組織学に及ぼす播種密度の効果を示す。図6Bは、P3R新軟骨のGAG/DNが、播種密度依存性効果を示し、P0新軟骨のものを超えることを示す。
図6C】新軟骨の肉眼的形態、生化学的含量、及び組織学に及ぼす播種密度の効果を示す。図6Cは、機械的性質の凝集体弾性率が、P0細胞の播種密度と共に増大し、かつP3R細胞の播種密度と共に低下することを示す。
図6D】新軟骨の肉眼的形態、生化学的含量、及び組織学に及ぼす播種密度の効果を示す。図6Dは、P3R新軟骨のコラーゲン/DNAが、播種密度依存性効果を示し、P0新軟骨のものを超えることを示す。
図6E】新軟骨の肉眼的形態、生化学的含量、及び組織学に及ぼす播種密度の効果を示す。図6Eは、機械的性質の引張弾性率が、P0細胞の播種密度と共に増大し、かつP3R細胞の播種密度と共に低下することを示す。
図6F】新軟骨の肉眼的形態、生化学的含量、及び組織学に及ぼす播種密度の効果を示す。図6Fは、P0新軟骨のピリジノリン含量が、P3R新軟骨のピリジノリン含量を超えることを示す。
図6G】新軟骨の肉眼的形態、生化学的含量、及び組織学に及ぼす播種密度の効果を示す。図6Gは、機械的性質の極限引張強度が、P0細胞の播種密度と共に増大し、かつP3R細胞の播種密度と共に低下することを示す。
図6H】新軟骨の肉眼的形態、生化学的含量、及び組織学に及ぼす播種密度の効果を示す。図6Hは、GAG、I型コラーゲン(col I)、II型コラーゲン(col II)、及び総コラーゲン(総col)についてのH&E染色及び免疫組織化学(IHC)染色を示す。IHC対照は、半月板(M)、関節軟骨(AC)、及び腱(T)である。(相1)。
【0033】
図7】操作された新軟骨の表現型の確認を示す。組織学的対照は、関節軟骨(AC)及び成長板(GP)である。
【0034】
図8A】P3R新軟骨のサイトカラシンD(Cyto D)及びヒアルロニダーゼ(Hya)処理の効果を示す。図8Aは、肉眼的異常が、Hya処理群においてのみ存在したことを示す。
図8B】P3R新軟骨のサイトカラシンD(Cyto D)及びヒアルロニダーゼ(Hya)処理の効果を示す。図8Bは、GAG、I型コラーゲン(col I)、II型コラーゲン(col II)、及び総コラーゲン(総col)についてのH&E染色及びIHC染色を示す。IHC対照は、半月板(M)、関節軟骨(AC)、及び腱(T)である。(相2)。
図8C】P3R新軟骨のサイトカラシンD(Cyto D)及びヒアルロニダーゼ(Hya)処理の効果を示す。図8Cは、GAG/湿重量及び機械的性質が、Cyto D処理により増大したことを示す。
図8D】P3R新軟骨のサイトカラシンD(Cyto D)及びヒアルロニダーゼ(Hya)処理の効果を示す。図8Dは、凝集体弾性率が、Cyto D処理により増大したことを示す。
図8E】P3R新軟骨のサイトカラシンD(Cyto D)及びヒアルロニダーゼ(Hya)処理の効果を示す。図8Eは、コラーゲンの含量が、いずれの処理でも変化しなかったことを示す。
図8F】P3R新軟骨のサイトカラシンD(Cyto D)及びヒアルロニダーゼ(Hya)処理の効果を示す。図8Fは、引張弾性率が、Cyto D処理により増大したことを示す。
図8G】P3R新軟骨のサイトカラシンD(Cyto D)及びヒアルロニダーゼ(Hya)処理の効果を示す。図8Gは、ピリジノリンの含量が、いずれの処理でも変化しなかったことを示す。
図8H】P3R新軟骨のサイトカラシンD(Cyto D)及びヒアルロニダーゼ(Hya)処理の効果を示す。図8Hは、極限引張強度が、Cyto D処理により増大したことを示す。
【0035】
図9】アクチン配置に及ぼすサイトカラシンD処理の効果を示す。サイトカラシンD処理は、P3軟骨細胞及びP3R軟骨細胞の双方におけるアクチンの皮質配置の強化をもたらした(相2)。
【0036】
図10A】P3R新軟骨のサイトカラシンD(Cyto D)及びTCL処理の効果を示す。図10Aは、肉眼的異常を示さない。
図10B】P3R新軟骨のサイトカラシンD(Cyto D)及びTCL処理の効果を示す。図10Bは、GAG、I型コラーゲン(col I)、II型コラーゲン(col II)、及び総コラーゲン(総col)についてのH&E染色及びIHC染色を示す。IHC対照は、半月板(M)、関節軟骨(AC)、及び腱(T)である。
図10C】P3R新軟骨のサイトカラシンD(Cyto D)及びTCL処理の効果を示す。図10Cは、GAG含量に有意差は見られなかったことを示す。
図10D】P3R新軟骨のサイトカラシンD(Cyto D)及びTCL処理の効果を示す。図10Dは、凝集に有意差は観察されなかったことを示す。
図10E】P3R新軟骨のサイトカラシンD(Cyto D)及びTCL処理の効果を示す。図10Eは、Cyto Dと組み合わせたTCL処理(Cyto D+TCL)が、コラーゲン含量を増大させたことを示す。
図10F】P3R新軟骨のサイトカラシンD(Cyto D)及びTCL処理の効果を示す。図10Fは、Cyto Dと組み合わせたTCL処理(Cyto D+TCL)が、引張剛性を増大させたことを示す(相3)。
図10G】P3R新軟骨のサイトカラシンD(Cyto D)及びTCL処理の効果を示す。図10Gは、Cyto Dと組み合わせたTCL処理(Cyto D+TCL)が、ピリジノリン含量を増大させたことを示す。
図10H】P3R新軟骨のサイトカラシンD(Cyto D)及びTCL処理の効果を示す。図10Hは、Cyto Dと組み合わせたTCL処理(Cyto D+TCL)が、強度を増大させたことを示す(相3)。
【0037】
図11A】新軟骨機能的性質の増大を示す。図11Aは、凝集体弾性率が9.6倍増大したことを示す。
図11B】新軟骨機能的性質の増大を示す。図11Bは、剪断弾性率が7.2倍増大したことを示す。
図11C】新軟骨機能的性質の増大を示す。図11Cは、引張弾性率が3.8倍増大したことを示す。
図11D】新軟骨機能的性質の増大を示す。図11Dは、極限引張強度が9.0倍増大したことを示す。
図11E】新軟骨機能的性質の増大を示す。図11Eは、P3R新軟骨が、胎仔及び幼若の生来の組織の値を超え、かつ成体レベルに近づいたことを示す(相1~3)。
【0038】
図12A】P3新軟骨のサイトカラシンD(Cyto D)及びヒアルロニダーゼ(Hya)処理の効果を示す。図12Aは、Cyto D処理が、単に平坦な構築物をもたらしたことを示す。
図12B】P3新軟骨のサイトカラシンD(Cyto D)及びヒアルロニダーゼ(Hya)処理の効果を示す。図12Bは、GAG、I型コラーゲン(col I)、II型コラーゲン(col II)、及び総コラーゲン(総col)についてのH&E染色及びIHC染色を示す。IHC対照(B)は、半月板(M)、関節軟骨(AC)、及び腱(T)である(相2)。
【0039】
図13】表1(相1由来のデータ)を示す。データを平均±標準偏差として示す。統計を、生化学的パラメータ又は機械的パラメータ内の群の全体にわたって算出した。統計的有意性を、異なる文字でマークして群内に示す。
【0040】
図14】表2(相2、P3由来のデータ)を示す。データを平均±標準偏差として示す。統計を、生化学的パラメータ又は機械的パラメータ内の群の全体にわたって算出した。統計的有意性を、異なる文字でマークして群内に示す。
【0041】
図15】表3(相2)を示す。データを平均±標準偏差として示す。統計を、生化学的パラメータ又は機械的パラメータ内の群の全体にわたって算出した。統計的有意性を、異なる文字でマークして群内に示す。
【0042】
図16】表4(相3)を示す。データを平均±標準偏差として示す。統計を、生化学的パラメータ又は機械的パラメータ内の群の全体にわたって算出した。統計的有意性を、異なる文字でマークして群内に示す。
【0043】
図17】圧縮性の要約を示す。サイトカラシンDと共に最適な密度にて播種したACKバッファ処理P3R細胞の凝集体弾性率は、P0対照よりも9.6倍増大した。
【0044】
図18】胎仔ヒツジ関節軟骨又は成体ヒト肋骨軟骨のいずれかから供給される軟骨細胞を、3回継代(P3)して、凝集体再分化(若返り(rejuvenation))を経験させて、自己アセンブリング方法を用いて新軟骨構築物あたり200万細胞にて播種したことを示す。対照構築物は未処理であった。サイトカラシンD(Cyto D)により処理した構築物を、0~2日目に2μMで処理した。胎仔ヒツジ関節軟骨細胞(foAC)により形成された新軟骨構築物にCytoDを使用した場合、圧縮凝集体弾性率及び剪断弾性率の双方が有意に増大した。これは有益である。しかしながら、全く対照的に、Cyto Dを成体ヒト肋骨軟骨細胞(ahCC)に使用した場合、凝集体弾性率及び剪断弾性率は有意に低下した。この例は、ある種由来の細胞に有益な処理が、別の種由来の細胞に使用された場合に有益であることは自明ではないことを明確に示している。
【0045】
図19】幼若ユカタンミニブタ関節軟骨(jyAC)又は幼若ユカタンミニブタ肋骨軟骨(jyCC)のいずれかから供給される軟骨細胞を、3回継代(P3)して、凝集体再分化(若返り)を経験させたことを示す。対照について、200万個のjyAC又はjyCCを自己アセンブリさせて、新軟骨構築物を形成した。実験群について、200万個のjyAC又はjyCCが、最初に新軟骨自己アセンブリを受けてから、構築物の厚さを増大させる目的で、1、2、3、又は4時間後に上部に、第2の200万個の細胞を播種した。細胞の第2の層を1、2、3、及び4時間目にて加えたjyAC由来の新軟骨は、対照構築物よりも有意に厚く、構築物の直径は影響を受けなかった。しかしながら、jyCCに由来する新軟骨では、厚さは、任意の時点にて加えた細胞の追加の層によって影響されなかった。さらに、構築物の直径は、時点毎の細胞の添加と共に有意に低下した。ゆえに、同じ種内であっても、有益な効果を達成するために、ある細胞型に有益な処理又は培養レジメンを、別の細胞型に直接使用できることは自明ではない。
【0046】
図20】成体ドナー及び幼若ドナー由来のACK処理ヒト肋骨軟骨細胞を示す。成人又は小児の肋骨軟骨のいずれかから供給される軟骨細胞を、本明細書中に記載される方法に従って、低張溶液(ACKバッファ)により処理した。簡潔には、肋骨組織からフレッシュに単離される細胞の集団全体を、10分間ACK処理に供して、非プレアポトーシス細胞の集団を富化した。次いで、非プレアポトーシス細胞のこの画分に、新軟骨構築物あたり200万細胞にて、継代3(P3)までの増殖、凝集体再分化(若返り)、及び自己アセンブリを経験させた。結果:成体ドナー及び幼若ドナーから供給されるACK処理ヒト肋骨軟骨細胞は各々、形態学的に正確な(例えば、平坦であり、カールしていない)新軟骨構築物を生成した。新軟骨構築物は、厚さが均一であり、表現型的に正確な細胞外マトリックス及び生軟骨細胞を含有した。また、構築物は、ロバストな圧縮(凝集体弾性率)及び引張(引張弾性率)の機械的性質を示した。
【0047】
用語
特に説明しない限り、本明細書中で用いられる技術用語及び科学用語は全て、開示される発明が属する当該技術の当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。
【0048】
本明細書中で用いられる単数形「a」、「an」、及び「the」は、文脈が明らかにそうでないことを示さない限り、複数形も包含することが意図される。さらに、用語「包含する(including)」、「包含する(includes)」、「有する(having)」、「有する(has)」、「有する(with)」、又はそれらの変形は、詳細な説明及び/又は特許請求の範囲のいずれかで用いられる限り、そのような用語は、用語「含む(comprising)」と同様に包括的であることが意図される。
【0049】
本明細書中で用いられる「アポトーシス」は、多細胞生物において起こるプログラム細胞死の形態を指す。生化学的事象は、特徴的な細胞変化及び死をもたらす。これらの変化として、ブレブ形成、細胞収縮、核断片化、クロマチン凝縮、DNA断片化、及びmRNA分解が挙げられる。
【0050】
本明細書中で用いられる「プレアポトーシス」は、アポトーシスとは異なる変化した状態を指す。一部の実施形態において、プレアポトーシス細胞は、いくつかの特徴をアポトーシス細胞と共有する。しかしながら、プレアポトーシスは可逆的であり、細胞が死滅するには、アポトーシスがこの方法に加えて誘導されなければならない。プレアポトーシス細胞の特徴として、細胞膜表面積の減少、細胞剛性の変化(例えば、望ましくない剛性特性、以下参照)、又は細胞骨格の変化(例えば、望ましくない細胞骨格特性、以下参照)が挙げられ得るが、これらに限定されない。一部の実施形態において、プレアポトーシス(pre-apoptosis)及びアポトーシス(apoptosis)は、2つの異なる細胞状態である。他の実施形態において、プレアポトーシス(pre-apoptotic)及びアポトーシス(apoptotic)は、2つの異なる細胞状態である。
【0051】
本明細書で用いられる「プロアポトーシス」は、他の細胞をプレアポトーシス又はアポトーシスにすることができるタンパク質及び/又は細胞を指す。
【0052】
本明細書中で用いられる「強化」は、細胞/組織エンジニアリングに適した特性、細胞のロバスト性の向上、細胞表現型の向上、及び組織エンジニアリングの向上につながる特性の向上を伴う、細胞の均一性の向上を伴う細胞画分(例えば、処理後の細胞のサンプル)の生成を指す。
【0053】
本明細書中で用いられる「望ましくない細胞型」は、組織エンジニアリング用途に適していない細胞、例えばプレアポトーシス細胞又はプロアポトーシス細胞(例えば赤血球)を指し得る。
【0054】
本明細書中で用いられる「望ましくない細胞骨格特性」は、弱化した、断片化された、破壊された、もしくは修飾された細胞骨格を有する細胞、再モデル化することができないか、もしくはリモデリング能力が低下した細胞骨格を有する細胞、細胞を、処理(例えば、ACKバッファ等の低張溶液による処理)による破壊をより受けやすくする細胞骨格性質を有する細胞、又は前述の特徴の組合せを有する細胞を指す。
【0055】
本明細書中で用いられる「望ましくない膜特性」は、膜表面積が減少した細胞、破壊されたか、もしくは改変された膜を有する細胞、膜が高次構造変化/サイズの変化に適応できない細胞、細胞を、処理(例えば、ACKバッファ等の低張溶液による処理)による破壊をより受けやすくする膜性質を有する細胞、又は前述の特徴の組合せを有する細胞を指す。
【0056】
本明細書中で用いられる「望ましくない剛性特性」は、全体的な剛性が低下した細胞、全体的な剛性が増大した細胞、試験される細胞の領域に応じて剛性が変化する細胞、柔軟性が低下した細胞、細胞を、処理(例えば、ACKバッファ等の低張溶液による処理)による破壊の影響をより受けやすくする剛性を有する細胞、又は前述の特徴の組合せを有する細胞を指す。
【0057】
本明細書中で用いられる「望ましくない」は、有害な効果を有する細胞の特性を指す。例えば、望ましくない特性(望ましくない細胞骨格特性、望ましくない膜特性、望ましくない剛性特性、又はそれらの組合せが挙げられるが、これらに限定されない)を有する細胞は、種々のストレスに適切に応答する可能性が低く、したがって死(例えば、有害な影響)をより受けやすい。加えて、望ましくない特性を有する細胞は、組成が変化した細胞外マトリックス(例えば、コラーゲンIIの代わりにコラーゲンI)を生成し得るか、全体としてより少ない細胞外マトリックスを生成し得るか、又は機械的性質が変化した(例えば、剛性及び強度が低下した)細胞外マトリックスを生成し得る。
【0058】
本明細書中で用いられる「既存の」特性(例えば性質)は、細胞のサンプルの収集中又は収集後に存在するが、本明細書中に記載される方法による細胞集団(又は細胞)の処理後には存在しない細胞(又は細胞集団)の特性を指す。
【0059】
本明細書中で用いられる「軟骨細胞」は、健康な軟骨において見られて、コラーゲン及びプロテオグリカンを含み得る軟骨マトリックスを生成かつ維持する唯一の細胞である。
【0060】
本明細書中で用いられる「軟骨」は、全身に見られる支持結合組織の非血管型である。軟骨には、ヒアリン(例えば、肋骨軟骨等の非関節軟骨)、線維軟骨、及び弾性軟骨の3種類がある。
【発明を実施するための形態】
【0061】
本開示を要約する目的で、本開示の特定の態様、利点、及び新規な特徴が、本明細書中に記載されている。本開示の任意の特定の実施形態に従って、そのような全ての利点が必ずしも達成され得るとは限らないことを理解されたい。ゆえに、本開示は、本明細書中で教示又は示唆され得るような他の利点を必ずしも達成することなく、本明細書中で教示されるような1つの利点又は利点の群を達成又は最適化するように実施又は実行され得る。
【0062】
加えて、本開示の実施形態を詳細に説明したが、本明細書中に記載される全ての特徴及び利益を実現しない実施形態を包含する特定の変形及び修正が、当業者に明らかであろう。本開示は、具体的に開示された実施形態を超えて、他の代替の、もしくは追加の実施形態、ならびに/又はその使用ならびに明らかな修正及び均等物に及ぶことが、当業者によって理解されるであろう。さらに、多数の変形例が、種々詳細に示され、かつ説明されているが、本開示の範囲内にある他の修正は、本開示に基づいて、当業者に容易に明らかとなるであろう。また、実施形態の特定の特徴及び態様の種々の組合せ又は部分的組合せがなされてもよく、依然として本開示の範囲内に含まれることが意図される。したがって、本開示の種々の形態を形成するために、開示された実施形態の種々の特徴及び態様を互いと組み合わせるか、又は置き換えることができることを理解されたい。ゆえに、本明細書中で開示される本開示の範囲は、本明細書中に記載される特定の開示される実施形態によって限定されるべきでないことが意図される。
【0063】
本発明は、軟骨細胞のサンプル(例えば、ヒト軟骨細胞のサンプル)を調製する(例えば強化する)方法を特徴とする。該方法は、軟骨組織から軟骨細胞のサンプルを得ることと;軟骨細胞の上記サンプルを、低張溶液(例えば、塩化アンモニウムカリウム溶解(ACK)バッファ)による処理に付すこととを含み得る。他の実施形態において、前記方法は、単独で、又は他の処理と組み合わせて複数回繰り返すことができる。
【0064】
また、本発明は、非関節軟骨細胞のサンプルを調製する(例えば強化する)方法を特徴とし得る。該方法は、軟骨組織から非関節軟骨細胞のサンプルを得ることと;非関節軟骨細胞の上記サンプルを、低張溶液(例えば、塩化アンモニウムカリウム溶解(ACK)バッファ)による処理に付すこととを含み得る。他の実施形態において、前記方法は、単独で、又は他の処理と組み合わせて複数回繰り返すことができる。
【0065】
本発明は、軟骨細胞(例えばヒト軟骨細胞)のサンプルを調製する(例えば強化する)方法を特徴とし得る。該方法は、軟骨細胞(例えばヒト軟骨細胞)のサンプルを得ることと、軟骨細胞の上記サンプルを、処理(例えば低張溶液、例えばACKバッファ)に付すこととを含み得る。他の実施形態において、前記方法は、軟骨細胞(例えばヒト軟骨細胞)のサンプルを得ることと、軟骨細胞の上記サンプルを、低張溶液(例えばACK)による処理に付すこととを含む。一部の実施形態において、軟骨細胞のサンプル(例えばヒト軟骨細胞)は、非プレアポトーシス軟骨細胞及びプレアポトーシス軟骨細胞の混合集団を含む。他の実施形態において、前記方法は、単独で、又は他の処理と組み合わせて複数回繰り返すことができる。
【0066】
一部の実施形態において、処理後の軟骨細胞(例えばヒト軟骨細胞)のサンプルは、処理前の軟骨細胞のサンプルと比較して、より高いパーセンテージの非プレアポトーシス細胞を有する。一部の実施形態において、処理後の軟骨細胞(例えばヒト軟骨細胞)のサンプルは、処理前の軟骨細胞のサンプルと比較して、より低いパーセンテージのプレアポトーシス細胞を有する。一部の実施形態において、処理後の軟骨細胞(例えばヒト軟骨細胞)のサンプルは、処理前の軟骨細胞のサンプルと比較して、より低いパーセンテージのプロアポトーシス細胞を有する。他の実施形態において、処理後の軟骨細胞(例えばヒト軟骨細胞)のサンプルは、処理前の軟骨細胞のサンプルと比較して、より低いパーセンテージの望ましくない細胞型を有する。
【0067】
また、本発明は、細胞集団を調製する(例えば強化する)方法を特徴とし得る。該方法は、肋骨の一部から供給される細胞のサンプルを得ることと、肋骨の一部から供給される細胞の上記サンプルを、処理(例えば低張溶液、例えばACKバッファ)に付すこととを含み得る。他の実施形態において、前記方法は、肋骨の一部から供給される細胞のサンプルを得ることと、肋骨の一部から供給される細胞の上記サンプルを、低張溶液(例えばACK)による処理に付すこととを含む。一部の実施形態において、肋骨の一部に由来する細胞のサンプルは、非プレアポトーシス細胞及びプレアポトーシス細胞の混合集団を含む。他の実施形態において、前記方法は、単独で、又は他の処理と組み合わせて複数回繰り返すことができる。
【0068】
一部の実施形態において、処理後の肋骨の一部から供給される細胞のサンプルは、処理前の肋骨の一部から供給される細胞のサンプルと比較して、非プレアポトーシス細胞のパーセンテージがより高い。一部の実施形態において、処理後の肋骨の一部から供給される細胞のサンプルは、処理前の肋骨の一部から供給される細胞のサンプルと比較して、プレアポトーシス細胞のパーセンテージがより低い。一部の実施形態において、処理後の肋骨の一部から供給される細胞のサンプルは、処理前の肋骨の一部から供給される細胞のサンプルと比較して、プロアポトーシス細胞のパーセンテージがより低い。他の実施形態において、処理後の肋骨の一部から供給される細胞のサンプルは、処理前の肋骨の一部から供給される細胞のサンプルと比較して、望ましくない細胞型のパーセンテージがより低い。
【0069】
本発明はさらに、非関節軟骨細胞のサンプルを調製する(例えば強化する)方法を特徴とし得る。該方法は、非関節軟骨細胞のサンプルを得ることと、非関節軟骨細胞の上記サンプルを、処理(例えば低張溶液、例えばACKバッファ)に付すこととを含み得る。他の実施形態において、前記方法は、非関節軟骨細胞のサンプルを得ることと、非関節軟骨細胞の上記サンプルを、低張溶液(例えばACK)による処理に付すこととを含む。一部の実施形態において、非関節軟骨細胞のサンプルは、非プレアポトーシス軟骨細胞及びプレアポトーシス軟骨細胞の混合集団を含む。一部の実施形態において、前記方法は、単独で、又は他の処理と組み合わせて複数回繰り返すことができる。
【0070】
一部の実施形態において、処理後の非関節軟骨細胞のサンプルは、処理前の非関節軟骨細胞のサンプルと比較して、非プレアポトーシス細胞のパーセンテージがより高い。一部の実施形態において、処理後の非関節軟骨細胞のサンプルは、処理前の非関節軟骨細胞のサンプルと比較して、プレアポトーシス細胞のパーセンテージがより低い。一部の実施形態において、処理後の非関節軟骨細胞のサンプルは、処理前の非関節軟骨細胞のサンプルと比較して、プロアポトーシス細胞のパーセンテージがより低い。他の実施形態において、処理後の非関節軟骨細胞のサンプルは、処理前の非関節軟骨細胞のサンプルと比較して、望ましくない細胞型のパーセンテージがより低い。
【0071】
また、本発明は、ヒト細胞集団を調製する(例えば強化する)方法を特徴とする。該方法は、肋骨の一部から供給されるヒト細胞のサンプルを得ることと、ヒト細胞の上記サンプルを、処理(例えば低張溶液、例えばACKバッファ)に付すこととを含み得る。他の実施形態において、前記方法は、肋骨の一部から供給されるヒト細胞のサンプルを得ることと、細胞の上記サンプルを、低張溶液(例えばACK)による処理に付すこととを含む。他の実施形態において、前記方法は、単独で、又は他の処理と組み合わせて複数回繰り返すことができる。一部の実施形態において、肋骨の一部に由来する細胞のサンプルは、非プレアポトーシス細胞及びプレアポトーシス細胞の混合集団を含む。他の実施形態において、前記方法は、単独で、又は他の処理と組み合わせて複数回繰り返すことができる。
【0072】
一部の実施形態において、本明細書中に記載される方法はさらに、処理後に単層又は三次元環境で細胞を継代することを含む。他の実施形態において、本明細書中に記載される方法はさらに、前記継代細胞により新軟骨を生成することを含む。
【0073】
一部の実施形態において、サンプルは軟骨細胞を含む。他の実施形態において、サンプルはヒト軟骨細胞を含む。一部の実施形態において、サンプルは非関節軟骨細胞を含む。他の実施形態において、サンプルはヒト非関節軟骨細胞を含む。一部の実施形態において、サンプルは、軟骨に由来する細胞を含み、例えば、サンプルは、ヒアリン軟骨、線維軟骨、弾性軟骨が挙げられるがこれらに限定されないあらゆる軟骨に由来し得る。一部の実施形態において、サンプルは、肋骨の一部に由来する細胞を含む。他の実施形態において、サンプルは、ヒト肋骨の一部に由来する細胞を含む。一部の実施形態において、肋骨の一部は、肋骨軟骨細胞を含む。他の実施形態において、肋骨の一部は、肋骨組織を含む。更なる実施形態において、肋骨の一部は、肋骨軟骨細胞を含む。一部の実施形態において、肋骨組織は軟骨細胞を含む。
【0074】
一部の実施形態において、細胞のサンプルは、軟骨細胞のサンプルである。他の実施形態において、細胞のサンプルは、非関節軟骨細胞のサンプルである。一部の実施形態において、細胞のサンプルは、ヒト細胞である。他の実施形態において、細胞のサンプルは、肋骨の一部に由来する。一部の実施形態において、肋骨は軟骨細胞を含む。一部の実施形態において、軟骨細胞は非関節軟骨細胞である。
【0075】
一部の実施形態において、処理は、低張溶液を細胞のサンプルに加えて細胞膨潤を誘導することを含む。本明細書中に記載される方法に従って、あらゆる低張溶液、例えば塩化アンモニウムカリウム溶解バッファ(ACKバッファ)又は水を用いてもよい。一部の実施形態において、低張溶液は、塩化アンモニウムカリウム溶解バッファ(ACKバッファ)である。他の実施形態において、処理は、低張溶液を、得られた細胞のサンプルに加えることを含む。一部の実施形態において、処理は、細胞の膨潤を誘導する。一部の実施形態において、低張溶液は、細胞の膨潤を誘導する。一部の実施形態において、細胞の膨潤は、細胞死を引き起こす。一部の実施形態において、処理は、プレアポトーシス細胞の膨潤関連死を優先的に誘導する。他の実施形態において、低張溶液は、プレアポトーシス細胞の膨潤関連死を優先的に誘導する。更なる実施形態において、ACKバッファは、プレアポトーシス細胞の膨潤を優先的に誘導する。
【0076】
本発明をいかなる理論にも機構にも限定することを望むものではないが、プレアポトーシス細胞は、処理(例えば低張溶液(例えばACKバッファ)による処理)をより受けやすいと考えられる。なぜなら、プレアポトーシス細胞は、細胞骨格特性(例えば、望ましくない細胞骨格特性)が変化し、そして膜特性(例えば、望ましくない膜特性)が変化していて、細胞が破裂しやすくなっているからである。例えば、処理(例えば低張溶液(例えばACKバッファ)による処理)が、プレアポトーシス細胞及び非プレアポトーシス細胞の混合集団を含むサンプルに施される場合、前記処理は、細胞の双方の集団の膨潤を誘導する。しかしながら、非プレアポトーシス細胞は、細胞内の流体の増大を補償するように、その膜及び細胞骨格を首尾よく再モデル化することができる。プレアポトーシス細胞は、その膜及び細胞骨格を再モデル化することが困難であり、前記処理が施された場合、プレアポトーシス細胞をより破裂させやすくする。
【0077】
これ以外にも、本発明をいかなる理論にも機構にも限定することを望むものではないが、プレアポトーシス細胞及び非プレアポトーシス細胞の混合集団を含むサンプルに、処理(例えば、剪断又は圧縮等の機械的処理)を施す場合、非プレアポトーシス細胞は、機械的ストレスを補償するように、その膜及び細胞骨格を首尾よく再モデル化することができると考えられる。しかしながら、プレアポトーシス細胞は、その膜及び細胞骨格を再モデル化することが困難であり、プレアポトーシス細胞は、施される処理をより受けやすくなる。
【0078】
一部の実施形態において、処理(例えば、処理は、低張溶液、例えばACKバッファを含む)は、サンプル中のプレアポトーシス細胞を減少させる。一部の実施形態において、処理(例えば、処理は、低張溶液、例えばACKバッファを含む)は、サンプル中のプレアポトーシス細胞の一部を除去する。他の実施形態において、処理(例えば、処理は、低張溶液、例えばACKバッファを含む)は、サンプル中のプロアポトーシス細胞を減少させる。一部の実施形態において、処理(例えば、処理は、低張溶液、例えばACKバッファを含む)は、サンプル中のプロアポトーシス細胞の一部を除去する。
【0079】
一部の実施形態において、処理後の細胞(例えば、軟骨細胞、ヒト軟骨細胞、非関節軟骨細胞、肋骨の一部に由来する細胞、その他)のサンプルは、以下のうちの1つ又は複数に用いられ得る:細胞の直接的使用;単層、もしくは懸濁培養が挙げられる三次元環境での継代を含む細胞のインビトロ培養;自己アセンブリが挙げられる無足場系を用いるか、もしくは天然材料及び合成材料を包含する足場ベースの系を用いる組織エンジニアリング;細胞移植;組織移植;ならびに/又はグラフト化。
【0080】
他の実施形態において、処理後の細胞(例えば、軟骨細胞、ヒト軟骨細胞、非関節軟骨細胞、肋骨の一部に由来する細胞、その他)のサンプル、又は生成された細胞の上記サンプルから操作/作製された組織はさらに、以下の1つ又は複数を含む処理に供され得る:成長因子;細胞骨格修飾剤;ホルモン;毒性化合物;シグナル伝達カスケードの上流で作用する分子;種々の酸素張力;架橋剤;マトリックス分解酵素、マトリックス分子;及び/又は機械的刺激。
【0081】
一部の実施形態において、細胞集団を調製する方法はさらに、新軟骨の生成のために非プレアポトーシス細胞の集団を培養することを含む。他の実施形態において、ヒト細胞集団を調製する方法はさらに、新軟骨の生成のために非プレアポトーシス細胞の集団を培養することを含む。一部の実施形態において、本明細書中に記載される方法は、単独で、又は他の処理と組み合わせて複数回繰り返すことができる。
【0082】
本発明は、治療用の細胞を向上させる方法及びシステム、例えば、細胞集団を強化する細胞精製方法を特徴とする。細胞は、組織エンジニアリング用途及び細胞又は組織の移植に用いられる。細胞集団は、軟骨細胞、骨芽細胞、脂肪細胞、心筋細胞等の完全に分化した細胞を含み得る。組織は、脂肪、軟骨、骨、腱、靭帯、筋肉、皮膚を含み得る。
【0083】
細胞集団の強化は、細胞/組織エンジニアリングに適した特性を有する細胞の均一性の向上、細胞のロバスト性の向上、細胞表現型の向上、組織エンジニアリングの向上、例えば、新組織のより速い生成又はより良好な新組織構築物をもたらす特性の向上であると考えられる。
【0084】
本発明は、1)細胞又は組織を、例えばドナー又は供給源から単離することと、2)細胞(例えば軟骨細胞)を化学的又は物理的/機械的に処理することとを含む方法を特徴とする。化学的処理の非限定的な例は、細胞精製方法中の細胞への低張バッファの導入を含み、これは、有意により機械的にロバストな新組織構築物(例えば新軟骨)をもたらす。前記方法は、細胞をペレット化することを含み得る。
【0085】
本発明は、細胞骨格、膜表面積、及び剛性を含む細胞の特性に基づく精製方法を特徴とする。本発明を特定のいかなる理論にも機構にも限定することを望むものではないが、精製処理は、細胞骨格の断片化、膜表面積の減少、及び細胞剛性の変化が挙げられるがこれらに限定されない、既存の、特性が望ましくない細胞又は表現型が変化した細胞(損なわれた細胞)を優先的に選択すると考えられる。これらの損なわれた細胞が除去されて、機能的な細胞及び新組織の発達を助長する特性を有する細胞が富化された細胞集団が得られる。
【0086】
一部の実施形態において、処理によって除去される細胞は、軟骨由来の細胞又は組織の集団の1パーセント以上を含み、除去される細胞は、既存の望ましくない細胞骨格、膜表面積、及び/又は剛性を有すると指定される。本発明に従って用いられる細胞又は組織の集団は、生きている対象由来の軟骨からフレッシュに抽出された細胞、又は以前に凍結されたか、もしくは他の方法で保存された細胞、又は以前にインビトロ培養もしくはインビボ培養された細胞であり得る。
【0087】
一部の実施形態において、既存の望ましくない細胞骨格特性を有する細胞は、弱化した、断片化された、破壊された、もしくは修飾された細胞骨格を有する細胞、再モデル化することができないか、もしくはリモデリング能力が低下した細胞骨格を有する細胞、細胞を、処理による破壊をより受けやすくする細胞骨格性質を有する細胞、又はそれらの組合せを含む。本発明を特定のいかなる理論にも機構にも限定することを望むものではないが、細胞集団(例えば、軟骨形成細胞集団)の少なくとも1%が、既存の望ましくない細胞骨格特性を有すると考えられる。ゆえに、一部の実施形態において、化学的又は物理的方法(例えば、膨潤、剪断、圧縮)を用いる処理は、細胞集団(例えば、軟骨形成細胞集団)の少なくとも1%(だが99%未満)を除去して、既存の望ましくない細胞骨格性質を有する細胞(例えば軟骨細胞)の除去を確実にすることを目標とする。例えば、スクリーニング条件は、その既存の望ましくない細胞骨格特性に基づいて、細胞集団の少なくとも1%(だが99%未満)の除去を引き起こすように設定され得る。一部の実施形態において、処理は、細胞集団の少なくとも5%、又は少なくとも10%、又は少なくとも15%、又は少なくとも20%、又は少なくとも25%、又は少なくとも30%、又は少なくとも35%、又は少なくとも40%、又は少なくとも45%、又は少なくとも50%、又は少なくとも55%、又は少なくとも60%、又は少なくとも65%、又は少なくとも70%、又は少なくとも75%を除去して、既存の望ましくない細胞骨格性質を有する細胞の除去を確実にすることを目標とする。
【0088】
一部の実施形態において、望ましくない膜特性を有する細胞は、膜表面積が減少した細胞、破壊されたか、もしくは改変された膜を有する細胞、膜が高次構造変化/サイズの変化に適応できない細胞、及び細胞を、処理による破壊をより受けやすくする膜性質を有する細胞、又はそれらの組合せを含む。本発明を特定のいかなる理論にも機構にも限定することを望むものではないが、細胞集団(例えば、軟骨形成細胞集団)の少なくとも1%が、既存の望ましくない膜表面積性質を有すると考えられる。ゆえに、一部の実施形態において、化学的又は物理的方法(例えば、膨潤、剪断、圧縮)を用いる処理は、細胞集団(例えば、軟骨形成細胞集団)の少なくとも1%(だが99%未満)を除去して、既存の望ましくない膜表面積性質を有する細胞(例えば軟骨細胞)の除去を確実にすることを目標とする。例えば、スクリーニング条件は、その既存の望ましくない膜表面積特性に基づいて、細胞集団の少なくとも1%(だが99%未満)の除去を引き起こすように設定され得る。一部の実施形態において、処理は、細胞集団の少なくとも5%、又は少なくとも10%、又は少なくとも15%、又は少なくとも20%、又は少なくとも25%、又は少なくとも30%、又は少なくとも35%、又は少なくとも40%、又は少なくとも45%、又は少なくとも50%、又は少なくとも55%、又は少なくとも60%、又は少なくとも65%、又は少なくとも70%、又は少なくとも75%を除去して、既存の望ましくない膜表面積性質を有する細胞の除去を確実にすることを目標とする。
【0089】
一部の実施形態において、望ましくない剛性特性を有する細胞は、全体的な剛性が低下した細胞、全体的な剛性が増大した細胞、試験される細胞の領域に応じて剛性が変化する細胞、柔軟性が低下した細胞、細胞を、処理による破壊の影響をより受けやすくする剛性を有する細胞、又はそれらの組合せを含む。本発明を特定のいかなる理論にも機構にも限定することを望むものではないが、細胞集団(例えば、軟骨形成細胞集団)の少なくとも1%が、既存の望ましくない剛性を有すると考えられる。ゆえに、一部の実施形態において、化学的又は物理的方法(例えば、膨潤、剪断、圧縮)を用いる処理は、細胞集団(例えば、軟骨形成細胞集団)の少なくとも1%(だが99%未満)を除去して、既存の望ましくない剛性を有する細胞(例えば軟骨細胞)の除去を確実にすることを目標とする。例えば、スクリーニング条件は、その既存の望ましくない剛性特性に基づいて、細胞集団の少なくとも1%(だが99%未満)の除去を引き起こすように設定され得る。一部の実施形態において、処理は、細胞集団の少なくとも5%、又は少なくとも10%、又は少なくとも15%、又は少なくとも20%、又は少なくとも25%、又は少なくとも30%、又は少なくとも35%、又は少なくとも40%、又は少なくとも45%、又は少なくとも50%、又は少なくとも55%、又は少なくとも60%、又は少なくとも65%、又は少なくとも70%、又は少なくとも75%を除去して、既存の望ましくない剛性を有する細胞の除去を確実にすることを目標とする。
【0090】
適切な状況では、精製は、細胞の集団を、1)細胞膨潤を誘導する;2)剪断を誘導する;3)衝撃もしくは圧縮を加える、又はそれらの組合せをする処理に付すことを含む。
【0091】
細胞膨潤を誘導する方法の非限定的な例は、低張バッファ(例えばACKバッファ)又は水を加えること、凍結融解サイクルを実行すること、溶解ガスを減圧すること、真空もしくは負圧をかけること、又はそれらの組合せを施すことを含む。
【0092】
剪断を誘導する方法の例として、流体流剪断、マイクロ流体流に対抗させること、細胞を小さなフィルタ/メッシュもしくは経路/トンネルに押し込むこと、溶液を噴霧すること、又はそれらの組合せが挙げられるが、これらに限定されない。本明細書中で用いられる「小さな」フィルタ/メッシュは、100μm未満のフィルタ又はメッシュを指す。一部の実施形態において、小さな「フィルタ/メッシュ」は、約10μm~100μm、又は約10μm~90μm、又は約10μm~80μm、又は約10μm~70μm、又は約10μm~60μm、又は約10μm~50μm、又は約10μm~40μm、又は約10μm~30μm、又は約10μm~20μm、又は約15μm~20μm、又は約50μm~100μm、又は約50μm~90μm、又は約50μm~80μm、又は約50μm~70μm、又は約50μm~60μm、又は約80μm~100μm、又は約80μm~90μmのフィルタ又はメッシュを指す。
【0093】
圧縮に影響を与えるか、又は圧縮を誘導する方法の非限定的な例は、小さなフィルタ/メッシュ又は経路/トンネルに押し込むこと、機械的圧縮を加えること、物理的衝突を加えること、又はそれらの組合せを含む。一部の実施形態において、精製方法はさらに、細胞を高周波振動で処理すること、例えば、超音波処理により処理すること又はキャビテーションを発生させることを含む。一部の実施形態において、「高周波」は、10kHzよりも高い周波数を指す。一部の実施形態において、精製方法はさらに、約10kHz~100kHz、又は約10kHz~90kHz、又は約10kHz~80kHz、又は約10kHz~70kHz、又は約10kHz~60kHz、又は約10kHz~50kHz、又は約10kHz~45kHz、又は約10kHz~約40kHz、又は約10kHz~35kHz、又は約10kHz~30kHz、又は約10kHz~25kHz、又は約10kHz~20kHz、又は約10kHz~15kHz、又は約20kHz~100kHz、又は約20kHz~90kHz、又は約20kHz~80kHz、又は約20kHz~70kHz、約20kHz~60kHz、又は約20kHz~50kHz、又は約20kHz~45kHz、又は約20kHz~約40kHz、又は約20kHz~35kHz、又は約20kHz~30kHz、又は約20kHz~25kHz、又は約50kHz~100kHz、又は約50kHz~90kHz、又は約50kHz~80kHz、又は約50kHz~70kHz、約50kHz~60kHz、又は約80kHz~100kHz、又は約80kHz~90kHzの振動により細胞を処理することを含む。他の実施形態において、精製方法はさらに、約10kHz、又は約15kHz、約20kHz、約25kHz、約30kHz、約35kHz、約40kHz、約45kHz、又は約50kHz、又は約60kHz、又は約70kHz、又は約80kHz、又は約90kHz、又は約100kHzの振動により細胞を処理することを含む。一部の実施形態において、精製方法はさらに、100kHzを超える振動により細胞を処理することを含む。
【0094】
一部の実施形態において、低張バッファは、塩化アンモニウムカリウム(ACK)バッファを含む。ACKバッファは、154mM塩化アンモニウム、10mM重炭酸カリウム、及び97μM EDTA等の配合を有し得る。しかしながら、ACKバッファは、この配合に限定されない。適切な状況では、低張バッファは、Geyバッファ、Tris-HCl、HEPES+EGTA+MgCl、MP-40溶解バッファ、RIPA溶解バッファ、SDS、低張食塩水、希釈PBS、精製水、又はそれらの組合せを含む。本発明は、上記低張バッファに限定されない。
【0095】
ドナー又は供給源から細胞を単離することは、ドナーから組織を得ることと、組織を、コラゲナーゼ、ディスパーゼ、プロナーゼ、又はそれらの組合せを含む酵素により消化することと、酵素により消化した組織から細胞を濾過することと、細胞をバッファ(例えば、低張バッファ又は代替バッファ)又は培養培地中に再懸濁させることとを含み得る。
【0096】
適切なあらゆる細胞集団が用いられ得る。例えば、細胞は、哺乳動物細胞又は植物細胞であり得る。一部の実施形態において、細胞は、軟骨細胞(例えば、初代軟骨細胞)、骨芽細胞、心筋細胞、脂肪細胞、肝細胞、腱細胞、破骨細胞、平滑筋細胞、周皮細胞、神経細胞、線維芽細胞、ケラチノサイト、内皮細胞、筋細胞、間葉系幹細胞、造血幹細胞、脂肪由来幹細胞、又はそれらの組合せを含む。一部の実施形態において、細胞の集団は、細胞型の組合せである。本発明は、上記細胞型にも細胞起源にも限定されない。
【0097】
一部の実施形態において、細胞は健康な細胞である。一部の実施形態において、細胞は、罹患組織又は罹患源(例えば、骨関節炎軟骨)に由来する。
【0098】
本発明の方法はさらに、細胞骨格修飾剤、アクチン重合阻害剤(例えばサイトカラシンD)、及び/又は細胞骨格重合修飾剤(例えば、阻害剤又はエンハンサ、例えば、微小管の重合の阻害剤)を、上記の低張バッファにより既に精製された細胞に導入することを含む。細胞骨格修飾剤及び/又はアクチン重合阻害剤及び/又は細胞骨格重合修飾剤はさらに、細胞の機械的性質及びマトリックス沈着を強め得る。本発明は、サイトカラシンDに限定されない。
【0099】
一部の実施形態において、細胞骨格修飾剤及び/又はアクチン重合阻害剤及び/又は細胞骨格重合修飾剤は、マイクロフィラメント又はアクチン安定剤、重合剤又は重合阻害剤(例えば、サイトカラシンファミリー、代替サイトカラシン、ラトルンクリン、ジャスラキノリド、ファロイジン、スウィンホリド、コルヒチン)、中間径フィラメント安定剤、重合剤又は重合阻害剤、マイクロチューブ安定剤、重合剤又は重合阻害剤、リゾホスファチジン酸、スタウロスポリン、ブレビスタチン、Y27632、セプチン、及びそれらの組合せを含む。これらの剤(細胞骨格修飾剤及び/又はアクチン重合阻害剤及び/又は細胞骨格重合修飾剤)は、細胞骨格に直接的又は間接的に作用する化合物(例えば、ミオシン機能に影響を及ぼすようにシグナル伝達カスケードの上流で作用するY27632)である。非限定的な例として、サイトカラシンDの添加は、低張バッファにより精製されて、複数回継代した軟骨細胞により操作された新軟骨の機械的性質及びマトリックス沈着を向上させ得る。本発明は、上記化合物に限定されない。
【0100】
前記方法はさらに、細胞を低張バッファにより処理する前に、細胞を、細胞骨格修飾剤、アクチン重合阻害剤(例えばサイトカラシンD)、細胞骨格重合修飾剤、又はそれらの組合せにより処理することを含み得る。
【0101】
一部の実施形態において、細胞骨格修飾剤、アクチン重合阻害剤、又は細胞骨格重合修飾剤は、シグナル伝達カスケードの上流で直接的又は間接的に作用する。細胞骨格修飾剤は、細胞骨格を阻害するか、安定させるか、又は強化する。
【0102】
一部の実施形態において、サイトカラシンD(又は細胞骨格修飾剤、アクチン重合阻害剤、及び/もしくは細胞骨格重合修飾剤)が、新軟骨形成中の0~48時間目に使用される。
【0103】
一部の実施形態において、低張バッファは、組織からの細胞単離後、解凍後、単層増殖後、再分化後、又は新組織形成前に導入される。低張バッファは、機械的手段又は灌流を用いて、組織にアプライされ得る。
【0104】
対象を処置する方法は、単離保持された細胞を治療に直接用いることを含み得る。
【0105】
前記方法はさらに、単離保持された細胞を、任意の程度まで単層継代しながら二次元培養に付すことを含み得る。
【0106】
前記方法はさらに、単離、保持された細胞を、以下の1つ又は複数を含む三次元培養に付すことを含み得る:1)懸濁培養;2)あらゆる形状又はサイズの足場、例えば、ヒドロゲル、コラーゲンゲル、アルギナート、脱細胞化膜もしくは組織、脱水膜もしくは組織、凍結乾燥膜もしくは組織、セラミック、例えば全ての化学量論のヒドロキシアパタイト、α-リン酸三カルシウム、β-リン酸三カルシウム、天然マトリックス、例えば絹、合成材料、例えば、ポリ(乳酸)もしくはポリ乳酸もしくはポリラクチド(PLA)、ポリ(乳酸-co-グリコール酸)(PLGA)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリグリコリド(PGA)、ポリカプロラクトン、又はそれらの組合せと共に;3)無足場技術、例えば、自己アセンブリ、ペレット培養、凝集体培養、細胞シート、組織融合、又はそれらのあらゆる組合せ;4)無足場及び足場ベースの組合せ;5)単独で、又は他の種類及び処理の細胞と共に。
【0107】
前記方法はさらに、単離、保持された細胞を(例えば、ペレット化後に)播種することを含み得る。細胞は、非接着ウェル内に播種され得る。前記方法はさらに、例えばペレット化後に、非接着ウェル内に細胞(例えば軟骨細胞)を播種することを含み得、非接着ウェル中に播種された前記細胞は、新軟骨を形成する。本発明は、非接着ウェル内に細胞を播種することに限定されない。
【0108】
一部の実施形態において、得られた新軟骨は、低張バッファ(例えばACKバッファ)により処理されていない軟骨細胞から作製された新軟骨と比較して、機械的性質(例えば、凝集体弾性率、剪断弾性率、引張弾性率、圧縮剛性、引張剛性、及び引張強度のうちの1つ又は複数)が増大している。他の実施形態において、得られた新軟骨は、低張バッファ(例えばACKバッファ)により処理されていない軟骨細胞から作製された新軟骨と比較して、正確な形態(例えば、平坦であり、カールしていない)を有する。
【0109】
一部の実施形態において、新軟骨は、低張バッファにより処理されていない軟骨細胞から作製された新軟骨と比較して、新軟骨マトリックスの合成及び沈着を向上させる。一部の実施形態において、新軟骨は、低張バッファにより処理されていない軟骨細胞から作製された新軟骨と比較して、コラーゲン架橋を向上させ得る。
【0110】
一部の実施形態において、ドナーは、胎仔ドナー、幼若ドナー、又は成体ドナーである。
【0111】
前記方法は、単離、保持された細胞を、化学因子又は生物活性剤にさらに付すことを含み得る。当該因子及び剤の非限定的な例は、活性型及び潜在型の成長因子(例えば、TGFスーパーファミリー、成長分化因子、骨形成タンパク質)、細胞骨格修飾剤(サイトカラシンD)、生物活性剤、ホルモン(例えば、トリヨードチロニン、副甲状腺ホルモン)、マイトジェン、酵素(例えば、コンドロイチナーゼ-ABC、リジルオキシダーゼ、リジルオキシダーゼ、リジルオキシダーゼ様2)、コラーゲン架橋剤、毒性化合物、シグナル伝達カスケードの上流で作用する分子、又はそれらの組合せを含む。
【0112】
前記方法は、単離、保持された細胞を、1つ又はそれを超えるSZP/PRG4、コンドロイチン硫酸、連結タンパク質、ヒアルロナン、ケラチン硫酸、デルマタン硫酸、及びアグリカン、I型、II型、III型、V型、VI型、X型、及びXI型のコラーゲンを含む分子、又はこれらの分子の産生を増大させるあらゆる剤にさらに付すことを含み得る。
【0113】
前記方法は、単離、保持された細胞を、環境酸素不足又は酵素条件によって達成される種々の酸素張力にさらに付すことを含み得る。
【0114】
前記方法はさらに、細胞を、物理的刺激、例えば、静的又は動的直接圧縮、静水圧、剪断、張力、流体流誘発剪断、灌流、又はそれらの組合せにより処理することを含み得る。
【0115】
前記方法はさらに、単離、保持された細胞を、細胞骨格修飾剤、アクチン重合阻害剤、又は細胞骨格重合修飾剤と組み合わせて、ヒアルロニダーゼにより処理することを含み得る。
【0116】
本発明の方法は、細胞集団を強化する。前記方法は、細胞の均一性を向上させ得る。前記方法は、細胞集団のロバスト性を向上させ得る。
【0117】
前記方法はさらに、単離、保持された細胞を、他の調製された細胞及び組織と組み合わせて用いることを含み得る。
【0118】
前記方法は、例えば軟骨組織エンジニアリング等の組織エンジニアリングの目的で、細胞又は組織に使用され得る。前記方法は、例えば自己軟骨細胞移植(ACI)等の細胞移植の目的で、細胞又は組織に使用され得る。前記方法は、例えばモザイク形成等の組織移植の目的で、組織に使用され得る。
【0119】
本発明をいかなる理論にも機構にも限定することを望むものではないが、本発明の方法及びシステムは、胎仔齢細胞から作製された新組織の機械的性質を、成体レベルの細胞から作製されたものに向上させることができると考えられる。本発明をいかなる理論にも機構にも限定することを望むものではないが、本発明の方法及びシステムは、現在標準化された軟骨細胞精製方法がないので、有利であると考えられる。
【0120】
本発明は、エンジニアリング用途に用いられる細胞に限定されない。例えば、本発明の方法及びシステムは、種々の異なる用途、例えば癌細胞用途、細胞精製方法、移植(例えば脂肪移植)に用いられ得る。一部の実施形態において、細胞集団を強化する本方法は、対象を処置する前又は準備中に用いられる望ましい細胞集団を提供する。強化された細胞は、対象に直接投与することができる(強化後使用)。強化された細胞はさらに、対象に投与する前に、単層での継代を包含する二次元インビトロ培養がなされ得る(強化後使用)。強化された細胞はさらに、対象に投与する前に、懸濁培養を包含する三次元インビトロ培養がなされ得る(強化後使用)。強化された細胞はさらに、対象に投与する前に、自己アセンブリを包含する無足場系を用いて、又は天然材料及び合成材料を包含する足場ベースの系を用いて、組織エンジニアリングのためにインビトロ培養がなされ得る(強化後使用)。強化された細胞は、細胞移植、組織移植、及び/又は対象を処置するための移植に用いられ得る(強化後使用)。強化方法の後に、これらの強化後使用のうちの1つ又は複数を行うことができる。
【0121】
本発明は、エンジニアリング用途に用いられる細胞に限定されない。例えば、本発明の方法及びシステムは、種々の異なる用途、例えば癌細胞用途、細胞精製方法、移植(例えば脂肪移植)に用いられ得る。
【0122】
低張バッファは、既存の望ましくない細胞骨格、膜表面積、及び剛性特性を有する細胞を含まない富化細胞集団を作製するために、単層増殖後、再分化後、又は新組織形成前等の、培養におけるあらゆる時点にて導入され得る。前述したように、本発明は、ACKバッファに限定されない。
【0123】
前述のように、細胞骨格修飾剤及び/又はアクチン重合阻害剤(例えばサイトカラシンD)及び/又は細胞骨格重合修飾剤が、場合によっては使用され得る。以下の例4は、サイトカラシンDの使用を説明する。一例として、一部の実施形態において、2μMのサイトカラシンDが、自己アセンブリング方法を介して、新軟骨形成中に0~48時間にて使用され得る。なお、本発明は、例4に限定されない。サイトカラシンDは、以下に限定されないが、自己組織化又は足場ベースの系等の他の軟骨組織エンジニアリング系、ならびに鼻又は耳の軟骨細胞又は骨関節症軟骨細胞等の軟骨細胞の他の供給源に用いられ得る。
【0124】
本明細書中に記載される方法は、独立して、又は組み合わせて用いられ得る。精製処理(例えば低張バッファ)及び/又は細胞骨格修飾剤の使用は、培養の全体を通じて、様々な時点にて施され得る。
【0125】
また、本発明は、精製細胞を用いる関節軟骨等の種々の組織の組織エンジニアリング、又は細胞移植、又は脂肪移植を特徴とする。一部の実施形態において、ペレット化された細胞は、細胞移植のためのもの、又は組織エンジニアリングのためのもの、又は移植のためのものである。一部の実施形態において、ペレット化された細胞は、細胞注入用である。
【0126】
一部の実施形態において、本発明の方法は、ドナーから細胞を単離することと;細胞を低張バッファにより処理することと;細胞をペレット化することと;単層における細胞を継代/増殖させて、細胞を再分化させて、再分化した細胞を播種することとを含む。細胞は、非接着ウェル(例えば、非接着アガロースウェル)内に播種することができる。本発明は、非接着ウェル内に細胞を播種することに限定されない。組織エンジニアリングについての技術は、足場ベースであっても無足場であってもよい。
【0127】
一部の実施形態において、本発明の方法は、機械的性質が成体関節軟骨のものと同様の胎仔齢軟骨細胞から作製された新組織を調製するためのものである。
【0128】
前記方法は、以下に限定されないが、再モデル化することができる無傷の細胞骨格を有する細胞、膜表面積が高い細胞、及び剛性が変化しない細胞(高次構造変化を起こすことができる細胞)が挙げられる、機能的細胞及び/又は新組織形成を助長する既存の特性を有する細胞の集団を富化するためのものであり得る。前記方法は、細胞の集団を向上させて、生来様の新軟骨を設計するためのものであり得る。前記方法は、細胞の集団を向上させて、生来様の新組織を設計するためのものであり得る。
【0129】
一部の実施形態において、本発明の方法は、より低い播種密度の(例えば、新組織生成のための)使用を可能にし、例えば、本発明の方法は、(例えば、他の方法と比較して)より少ない細胞だけが必要とされるように、細胞集団のロバスト性を向上させる。一部の実施形態において、構築物あたり約200万個の細胞の播種密度が用いられる。一部の実施形態において、構築物あたり約200万個の細胞の播種密度を用いると、凝集体弾性率及び剪断弾性率がさらに増大する。
【0130】
本発明では、追加の生化学的処理及び/又は機械的刺激が、(i)低張バッファ;(ii)細胞骨格修飾剤、アクチン重合阻害剤(例えばサイトカラシンD)、細胞骨格重合修飾剤、もしくはそれらの組合せ;又は(iii)低張バッファ及び細胞骨格修飾剤の双方、アクチン重合阻害剤(例えばサイトカラシンD)、細胞骨格重合修飾剤、もしくはそれらの組合せと組み合わせて用いられ得ることに留意されたい。例えば、本発明は:(A)無足場又は足場ベースの系における細胞移植及び/又は組織エンジニアリング用の細胞を調製するための低張バッファの使用((i)調製は、物理的刺激(例えば剪断)の使用を含み得、(ii)調製は、生化学的処理による追加の処理を特徴とし得、(iii)調製は、機械的手段による追加の刺激を特徴とし得、(iv)調製は、生化学的手段及び機械的手段による追加の処理及び刺激を特徴とし得る);(B)操作された新軟骨(無足場系及び足場ベース系の双方)を強化するためのサイトカラシンDの使用((i)調製は、生化学的処理による追加の処理を特徴とし得;(ii)調製は、機械的手段による追加の刺激を特徴とし得;(iii)調製は、生化学的手段及び機械的手段による追加の処理及び刺激を特徴とし得る);ならびに(C)低張バッファ及びサイトカラシンDの併用((i)調製は、生化学的処理による追加の処理を特徴とし得;(ii)調製は、機械的手段による追加の刺激を特徴とし得;(iii)調製は、生化学的手段及び機械的手段による追加の処理及び刺激を特徴とし得る)を特徴とし得る。
【0131】
要約すると、本発明の非限定的な例は、(1)低張バッファ;(2)サイトカラシンD;(3)低張バッファ+サイトカラシンD;(4)低張バッファ+生化学的処理;(5)低張バッファ+物理的刺激;(6)低張バッファ+生化学的処理+物理的刺激;(7)サイトカラシンD+生化学的処理;(8)サイトカラシンD+物理的刺激;(9)サイトカラシンD+生化学的処理+物理的刺激;(10)低張バッファ+サイトカラシンD+生化学的処理;(11)低張バッファ+サイトカラシンD+物理的刺激;(12)低張バッファ+サイトカラシンD+生化学的処理+物理的刺激を含む。なお、上記のサイトカラシンDは、細胞骨格修飾剤、アクチン重合阻害剤、細胞骨格重合修飾剤、又はそれらの組合せにより置き換えられてもよい。
【0132】
本発明の方法及びシステム(例えば、低張バッファの使用、細胞骨格修飾剤及び/又はアクチン重合阻害剤及び/又は細胞骨格重合修飾剤の使用)は、例えば、操作された新組織(例えば関節軟骨)のより大きな機能的性質を達成するために、独立して、又は互いと組み合わせて、又は他の生物活性剤(例えば、成長因子、コンドロイチナーゼABC、リジルオキシダーゼ様2)及び物理的/機械的刺激(例えば、直接圧縮、剪断、静水圧、張力)と組み合わせて用いられ得る。
【0133】
本発明をいかなる理論にも機構にも限定することを望むものではないが、細胞骨格修飾剤及び/又はアクチン重合阻害剤(例えばサイトカラシンD)及び/又は細胞骨格重合修飾剤による処理は、操作された新軟骨において生来様の圧縮性を誘発するのに役立つので、有利であると考えられる。詳細には、自己アセンブリを経験しながらサイトカラシンDにより処理された複数継代の胎仔軟骨細胞は、生来の成体軟骨と同等の圧縮性を有する新軟骨を形成した。このレベルの機械的ロバスト性は、胎仔軟骨細胞源によりこれまで見られたことがない。
【0134】
以下の例は、ウシ胎仔供給源及びウシ幼若供給源由来の軟骨細胞単離物へのACKバッファの使用を記載する。当該処理は、新軟骨構築物の均一性、マトリックス沈着、及び機械的性質の著しい向上をもたらした。
【0135】
例えば、本発明をいかなる理論にも機構にも限定することを望むものではないが、軟骨細胞のサンプルを得るための生検の間に、周囲組織由来の細胞、又は造血細胞(例えばプロアポトーシス細胞)が前記サンプルに混入し得ると考えられる。軟骨サンプルの収集中又は収集後の造血細胞(例えばプロアポトーシス細胞)への軟骨細胞の曝露が、軟骨細胞をプレアポトーシス又はアポトーシスにすることができる。
【0136】
本発明を特定のいかなる理論にも機構にも限定することを望むものではないが、精製方法は、混入細胞(例えば、プレアポトーシス細胞又はプロアポトーシス細胞)を減少させること、特に、細胞骨格が弱くなった細胞、膜表面積が低い細胞、及び剛性が高い細胞が挙げられるがこれらに限定されない、損なわれた細胞の既存の望ましくない特性を有する細胞の集団を減少させることによって、治療用の細胞の機能性を増大させるのに有効であると考えられる。
【0137】
本明細書中の特定の実施形態、例えば本明細書中の方法は、軟骨細胞のサンプルを得ることを含み得る。一部の実施形態において、軟骨細胞のサンプルは、プレアポトーシス軟骨細胞及び非プレアポトーシス軟骨細胞の混合集団を含む。一部の実施形態において、前記方法は、細胞を低張溶液により処理することと、プレアポトーシス軟骨細胞を選択的に除去することとを含む。一部の実施形態において、低張溶液により処理した後の軟骨細胞のサンプルは、より均一である。
【0138】
本明細書中の特定の実施形態、例えば本明細書中の方法は、肋骨の一部から供給される細胞のサンプルを得ることを含み得る。一部の実施形態において、細胞のサンプルは、非プレアポトーシス細胞及びプレアポトーシス細胞の混合集団を含む。一部の実施形態において、前記方法は、細胞を低張溶液により処理することと、プレアポトーシス細胞を選択的に除去することとを含む。一部の実施形態において、低張溶液により処理した後の細胞のサンプルは、より均一である。
【0139】
本明細書中の特定の実施形態、例えば本明細書中の方法は、肋骨の一部から供給されるヒト細胞のサンプルを得ることを含み得る。一部の実施形態において、ヒト細胞のサンプルは、非プレアポトーシスヒト細胞及びプレアポトーシスヒト細胞の混合集団を含む。一部の実施形態において、前記方法は、細胞を低張溶液により処理することと、プレアポトーシスヒト細胞を選択的に除去することとを含む。一部の実施形態において、低張溶液により処理した後のヒト細胞のサンプルは、より均一である。
【0140】
本発明は、細胞のサンプルを調製する方法であって、非プレアポトーシス軟骨細胞及びプレアポトーシス軟骨細胞の混合集団を含む軟骨細胞のサンプルを得ることと、(a)由来の軟骨細胞のサンプルを、サンプル中のプレアポトーシス細胞を減少させる低張溶液に付すこととを含む方法を特徴とし得る。一部の実施形態において、該方法は、単独で、又は他の処理と組み合わせて複数回繰り返すことができる。一部の実施形態において、低張溶液は、塩化アンモニウムカリウム溶解バッファ(ACKバッファ)である。(b)の後に、軟骨細胞のサンプルは、(b)の前の軟骨細胞のサンプルと比較して、非プレアポトーシス細胞のパーセンテージがより高い。
【0141】
また、本発明は、細胞調製物を調製する方法であって、軟骨細胞のサンプルを得ることと、軟骨細胞のサンプルを低張溶液に付すこととを含む方法を特徴とし得る。一部の実施形態において、低張溶液は、塩化アンモニウムカリウム溶解バッファ(ACKバッファ)である。一部の実施形態において、細胞調製物は、最初に得られた軟骨細胞のサンプルと比較して、非プレアポトーシス細胞のパーセンテージがより高い。
【0142】
本発明はさらに、細胞調製物を調製する方法であって、軟骨細胞のサンプルを得ることと、完全に分化した軟骨細胞のサンプルを低張溶液に付すこととを含む方法を特徴とし得る。一部の実施形態において、低張溶液は、塩化アンモニウムカリウム溶解バッファ(ACKバッファ)である。前記方法は、生体機能性組織を形成するサンプルの能力を強化する。
【0143】
本発明はさらに、ヒト軟骨細胞のサンプルを調製する方法を特徴とする。該方法は、肋骨の一部から供給されるヒト軟骨細胞のサンプルを得ることと、ヒト軟骨細胞の上記サンプルを、低張溶液(例えば、塩化アンモニウムカリウム溶解(ACK)バッファ)による処理に付すこととを含み得る。当該方法はさらに、ヒト軟骨細胞のサンプルを処理に付す前に、肋骨の一部を切断することを含み得る。一部の実施形態において、肋骨の一部を切断することにより、組織形成に適さない細胞を除去する(例えば、望ましくない細胞型を除去する)ことができる。当該方法はさらに、ヒト軟骨細胞のサンプルを処理に付す前に、肋骨の一部を酵素的に分解することを含み得る。一部の実施形態において、軟骨細胞のサンプルは、初代細胞サンプルである。
【0144】
また、本発明は、(a)軟骨のサンプルを得て、軟骨のサンプルを消化して、細胞懸濁液を得ることと、(b)該細胞懸濁液を低張溶液に供して、処理細胞サンプルを得ることとを含む方法から生成された処理細胞サンプルを特徴とし得る。一部の実施形態において、処理された細胞サンプルは、新軟骨生成に適している。一部の実施形態において、軟骨細胞のサンプルは、初代細胞サンプルである。前記方法はさらに、(b)の後に、処理された細胞サンプルを遠心分離することと、該細胞サンプルを再懸濁させることとを含み得る。
【0145】
本発明は、本明細書中に記載される方法又は組成物に限定されない。
【0146】

以下は、本発明の非限定的な例である。前記例は、決して本発明を限定することが意図されないことを理解されたい。均等物又は代替物は、本発明の範囲内である。
【0147】
A.細胞骨格性質に基づく精製
例1-低張溶液
例1は、低張溶液を用いて、細胞骨格性質に基づいて細胞を選択する方法を記載する。例1は、フレッシュに単離された、完全に分化した細胞の、低張溶液であるACKバッファによる処理が、生体機能性組織を形成する能力を強化することを示す。胎仔軟骨及び幼若軟骨由来の臨床的に関連する関節軟骨細胞(AC)を、以下の研究において、モデルとして用いた:胎仔ヒツジ関節軟骨細胞(foAC)を、その単離中にACKバッファにより処理した。本発明を特定のいかなる理論にも機構にも属させることを望まないが、低張バッファによる軟骨細胞の処理は、既存の望ましくない細胞骨格特性を有する細胞の数を減少させることによって、生存可能な軟骨細胞純度を増大させるのに有効であると考えられる。したがって、この処理は、望ましくない細胞骨格特性のない生存可能な軟骨細胞が富化された細胞の集団を生成することによって、得られた自己アセンブリング新軟骨の機能的性質を増大させる。また、異なる種及び年齢の動物モデル、特に幼若ウシ関節軟骨細胞(jbAC)由来の細胞に及ぼすACKバッファ処理の効果を試験した。
【0148】
細胞単離:foACを、3頭の胎仔(妊娠120~125日)、雌、ドーパ-クロスヒツジの後膝関節の膝蓋大腿表面から採取した。jbACを、3頭の幼若(2~14日)、雄、ホルスタイン及びジャージーの仔ウシの後膝関節の膝蓋大腿表面から採取した。ヒツジ及びウシ組織のプロセシングは、同じであった。顆及び滑車溝の双方の表面全体由来の関節軟骨を、約1mm片に切り刻んでから、4.5g/Lグルコース及びGlutaMAX(DMEM;Gibco)及び2%(v/v)ペニシリン/ストレプトマイシン/フンジゾン(PSF;BD Biosciences)を含有するダルベッコ改変イーグル培地により3回、洗浄かつ遠心分離(500G、5分間)した。組織を、穏やかに揺らしながら37℃にて18時間、3%(v/v)ウシ胎仔血清(FBS;Atlanta Biologicals)を含有するDMEM中の0.2%(w/v)コラゲナーゼII型(Worthington)中で消化した。消化後、得られた細胞溶液を、70μm細胞ストレーナにより濾過して、遠心分離して(500G、5分間)、ブランクDMEM中に再懸濁させた。AC及びRBCを計数して、ACの生存率をトリパンブルー染色によって評価した。以下で詳細に説明するように、foACの半分及びjbACの半分を、ACKバッファにより処理した。細胞を計数して、ACKバッファ処理後に生存率を再度評価した。未処理細胞を、ACKバッファの代わりにブランクDMEMにより洗浄したが、その他は同じ方法で取り扱った。細胞は、直ちに自己アセンブリを経験した。
【0149】
ACKバッファ処理:ACKバッファは、154.4mM塩化アンモニウム(Sigma)、10mM重炭酸カリウム(Sigma-Aldrich)、97.3μMエチレンジアミン四酢酸(EDTA)四ナトリウム塩(Acros Organics)からなった。これは、1Lの超純水中の8.26g塩化アンモニウム、1.0g重炭酸カリウム、及び0.037gEDTAに相当する。この溶液を、使用前に滅菌濾過した。
【0150】
ACKバッファを導入して軟骨細胞を精製するためのプロトコル:(1)ACKバッファを37℃に温める。(2)50mLコニカルチューブ中に最大1億個の軟骨細胞を入れる。(3)細胞溶液を500Gにて5分間遠心分離する。(4)上清を吸引して、細胞ペレットを10mLのACKバッファ中に穏やかに再懸濁させる。37℃にて3~5分間インキュベートする。(5)ACKバッファ細胞懸濁液を500Gにて5分間遠心分離する。(6)ACKバッファを吸引する。細胞ペレットを、ブランク又は洗浄媒体により2回洗浄してから、プレーティング又は凍結する。
【0151】
新軟骨構築物の播種及び培養:ACKバッファにより処理した(+ACK処理)、そして未処理(-ACK処理)の初代foAC及びjbACを各々、非接着アガロースウェル内で、操作された新軟骨構築物に自己アセンブリさせた。直径5mmの円筒形ポストからなる滅菌ステンレス鋼鋳型を48ウェルプレート中に挿入して、各ウェルに1mLの溶融2%(w/v)分子生物学グレードのアガロース(Thermo)を含有させて、各プレートウェル内に単一のアガロースウェルを作製した。室温にてアガロースを固化させた後に、鋳型を取り外した。アガロースウェルを、化学的に定義された軟骨形成培地(CHG培地)(1%PSF、1%ITS+プレミックス(BD Biosciences)、1%非必須アミノ酸(Gibco)、100nMデキサメタゾン(Sigma)、50mg/mLアスコルバート-2-ホスファート(Sigma)、40g/mL L-プロリン(Sigma)、及び100mg/mLピルビン酸ナトリウム(Sigma)を含有するDMEM)で満たした。CHG培地を5日間にわたって2回交換して、細胞播種前にアガロースの飽和を確実にした。処理した、そして未処理のfoAC及びjbACを各々、構築物あたり100μLのCHG培地中450万細胞にて、5mmアガロースウェル中に播種した。構築物を6日目に拘束解除して(unconfined)、ウェルへの構築物の接着を防ぐためにアガロースでコーティングした、より大きなウェル内に入れた。培地を、拘束解除前は毎日交換し、6週の培養期間の後は、1日おきに交換した。肉眼的形態学的分析、組織学、免疫組織化学(IHC)、グリコサミノグリカン(GAG)及びコラーゲンの定量、ならびに機械的評価を、培養期間の最後に実行した。
【0152】
肉眼的形態学的分析:ImageJソフトウェア(国立衛生研究所)を用いて、構築物の写真から構築物の厚さを測定した。構築物全体を秤量して湿重量を得てから、組織学的、生化学的、そして機械的分析のためにサンプルを分割した。
【0153】
組織学的かつ免疫組織化学的(IHC)評価:サンプルを、10%中性緩衝ホルマリン中で固定して、パラフィン中に包埋して、短軸に沿って5μmの切片に切片化して、構築物の全厚を露出させた。切片を、Hematoxylin及びEosin(H&E)により染色して形態を示し、Safranin O/Fast GreenによりGAGを可視化し、そしてPicrosirius Redによりコラーゲンを可視化した。加えて、コラーゲンI(ab90395、希釈1:250、Abcam)及びコラーゲンII(ab34712、1:4000希釈、Abcam)について、IHCを実行した。
【0154】
生化学的評価:生化学的分析用に分割した構築物サンプルを、秤量して湿重量を測定し、凍結乾燥し、そして再び秤量して乾燥重量を測定した。凍結乾燥前後の重量の差をサンプルの湿重量に対して正規化することによって、構築物の水和を行った。凍結乾燥サンプルを、125μg/mLのパパイン(Sigma-Aldrich)中で65℃にて18時間消化した。GAG含量を、Blyscanアッセイキット(Biocolor)によって定量した。コラーゲン含量を、改変比色クロラミン-Tヒドロキシプロリンアッセイによって定量した。Sircolコラーゲン標準(Biocolor)を用いて、標準曲線を作成した。DNA含量を、PicoGreen dsDNA試薬(Invitrogen)により定量した。コラーゲン含量及びGAG含量の双方を、湿重量、乾燥重量、及びDNA含量に対して正規化した。
【0155】
機械的評価:各構築物由来の直径3mmのパンチに、Creep圧痕圧縮試験を実行した。直径0.8mmの平坦な多孔質圧子先端部を、0.45~2gに及ぶ質量を用いてサンプルに当てて、10~15%の歪みを達成した。半解析的、半数値的、線形二相モデル、及び有限要素モデルを用いて、凝集体弾性率及び剪断弾性率を実験データから得た。引張試験のために、ASTM規格(ASTM D3039)に準拠して、ゲージ長1.92mmのイヌ骨形状標本にサンプルを打ち抜いた。紙タブを、ゲージ長の外側のサンプルに接着させて、TestResourcesマシン(TestResources Inc.)内に把持させて、サンプルが破損するまで毎秒ゲージ長の1%にて引っ張った。ImageJによりサンプルの断面積を測定して、応力-歪み曲線を生成するのに用いた。引張弾性率は、曲線の線形領域の最小二乗適合によって得た。最大応力により、極限引張強度(UTS)が得られた。
【0156】
統計分析:Prism 6(GraphPad Software)におけるStudentのt検定を用いて、生化学的データ及び機械的データを分析した。<0.05のp値は、統計学的有意性を示す。1群あたりn=6のサンプルサイズを用いた。定量的結果を示す図では、同じ符号で示されていない群は、統計的に異なる。全てのデータを、平均±標準偏差として示す。
【0157】
結果:図1は、ACKバッファ処理前の、そして直後の単離細胞ペレット形態及び細胞数を示す。ACKバッファ処理は、双方の細胞型のペレットの形態変化をもたらした。処理前のfoACペレットは、処理の全体にわたって淡い赤色に、そして処理後に乳白色に見えた。jbACペレットは、処理前はピンク色の鋳型により黄褐色に、そして処理後に乳白色に見えた。処理の前及び後のfoACの生存率は、それぞれ84±11%及び82±7%であった。処理前のjbACの生存率は92±7%であり、処理後のjbACの生存率は86±3%であった。foAC及びjbACの総数は、ACK処理により、それぞれ19±7%及び9±3%減少した。RBC含量は、foAC(処理前36±14%及び処理後14±3%)及びjbAC(処理前21±6%及び処理後7±2%)の双方の処理後に有意に減少した。
【0158】
図2は、6週の培養後に自己アセンブルした新軟骨構築物を示す。全ての構築物は、直径が類似するヒアリン様に見えた。球根状のびまん性領域(「不良」細胞が、機能的軟骨を作製することができなかった領域を示す;当該「不良」細胞は、断片化された/不活性な細胞骨格、膜表面積の減少、及び/又は細胞剛性の変化を示した可能性がある)が、foAC及びjbAC未処理群の双方に存在した。ACK処理は、これらの領域を排除して、平坦なfoAC及びjbAC新軟骨を生じさせた。また、ACK処理は、foAC及びjbACの双方の新軟骨構築物の厚さ及び湿重量を減少させた。foAC新軟骨の厚さは、処理なしでは1.2±0.1mmであり、処理により0.7±0.1mmに有意に減少した。jbAC新軟骨の厚さは、処理なしでは0.58±0.1mmであり、処理により0.38±0.1mmに有意に減少した。foAC新軟骨の湿重量は、処理なしでは26.6±0.8mgであり、処理により15.1±0.6mgに有意に減少した。jbAC新軟骨の湿重量は、処理なしでは13.3±0.4mgであり、処理により7.3±0.2mgに有意に減少した。foAC新軟骨の水和は、ACK処理なしでは87.1±0.5%、処理ありでは87.2±0.4%であった。jbAC新軟骨の水和は、ACK処理なしでは89.0±0.3%であり、処理により86.4±0.9%に有意に減少した。
【0159】
図3は、6週の培養後の新軟骨構築物の組織学及び免疫組織化学を示す。組織学は、未処理のfoAC及びjbACの双方の新軟骨において細胞性が低い拡散GAGリッチ領域の存在を示した。ACK処理は、これらの拡散領域を排除して、foAC構築物及びjbAC構築物の双方においてGAG及びコラーゲンについて、均一な組織染色がより強く生じた。強いGAG染色が、全ての群にわたって存在し、これはさらに、foAC構築物及びjbAC構築物の双方について、ACK処理により増大した。コラーゲン染色が、全ての群にわたって存在したが、foAC構築物及びjbAC構築物の双方について、ACK処理によって追加的に強化された。コラーゲンI染色は、未処理の、又は処理されたfoAC構築物及びjbAC構築物のいずれにおいても、存在しなかった。コラーゲンII染色が、未処理のfoAC構築物及びjbAC構築物の双方に存在し、ACK処理によって強化された。
【0160】
図4は、新軟骨構築物の生化学的含量を示す。未処理及びACK処理したfoAC新軟骨GAG/湿重量(GAG/WW)は、それぞれ5.5±0.1%及び5.7±0.2%であった。未処理及びACK処理したfoAC新軟骨GAG/乾燥重(GAG/DW)は、それぞれ42.8±1.5%及び43.1±1.7%であった。未処理のfoAC構築物中のDNAあたりのGAGは、60.4±0.9μg/μgであり、ACK処理により50.54±1.3μg/μgに有意に減少した。ACK処理は、湿重量あたりのjbAC構築物GAGを3.9±0.2%から3.0±0.1%に、そして乾燥重量あたりのGAGを33.5±2.0%から24.8±2.8%に有意に低下させた。ACK処理は、DNAあたりのjbAC構築物GAGを70.65±5.3μg/μgから28.1±1.4μg/μgに有意に減少させた。
【0161】
foAC新軟骨内の湿重量あたりのコラーゲン含量(コラーゲン/WW)及び乾燥重量あたりのコラーゲン含量(コラーゲン/DW)は、ACK処理によって、それぞれ2.0±0.1%から2.3±0.1%及び14.4±0.8%から18.5±0.7%に有意に増大した。未処理及びACK処理foAC新軟骨内のDNAあたりの構築物コラーゲンは、それぞれ20.5±0.9μg/μg及び20.4±0.8μg/μgであった。ACK処理は、湿重量あたりのコラーゲンを、jbAC構築物において1.8±0.1%から2.0±0.1%まで有意に増大させた。未処理のjbAC構築物内の乾燥重量あたりのコラーゲンは、ACK処理構築物において15.2±0.5%及び16.3±1.4%であった。未処理jbAC構築物中のDNAあたりのコラーゲンは、31.7±1.2μg/μgであり、ACK処理により18.6±0.7μg/μgに有意に減少した。
【0162】
図5は、新軟骨構築物の機械的性質を示す。ACK処理は、foAC及びjbACの双方の新軟骨構築物の圧縮、剪断、及び引張性質を有意に強化した。foAC構築物の凝集体弾性率は、ACK処理により37.8±8.1kPaから104.5±13.5kPaに有意に増大した。ACK処理は、同様に、そして有意に、jbAC構築物の凝集体弾性率を83.8±7.0kPaから116.6±8.8kPaに増大させた。foAC及びjbAC新軟骨の剪断弾性率は、ACK処理によって、それぞれ21.6±3.5kPaから49.4±6.4kPa及び38.5±3.3kPaから51.9±4.0kPaに有意に増大した。ACK処理は、foAC構築物の引張弾性率を0.8±0.1MPaから1.5±0.1MPaに、そして最大引張強度(UTS)を0.2±0.1MPaから0.5±0.1MPaに有意に増大させた。ACK処理の結果として、jbAC構築物の引張弾性率は、1.2±0.1MPaから1.8±0.1MPaに有意に増大し、UTSは、0.6±0.1MPaから1.1±0.1MPaに有意に増大した。
【0163】
例2-剪断
例2は、剪断を用いて、細胞骨格性質に基づいて細胞を選択する方法を記載する。例2は、剪断を使用して関節軟骨細胞を精製するためのプロトコルを示す。
【0164】
細胞単離:幼若ヒツジ関節軟骨細胞(joAC)を、動物犠牲の同じ日に、地方の屠殺場(Nature’s Bounty Farms,Dixon,CA)から得た幼若Rambouillet Suffolkクロスヒツジの大腿骨顆及び滑車溝から単離する。軟骨を、1~2mmの立方体に切り刻んで、洗浄培地(Dubelco改変イーグル培地;1%(v/v)PSFを含有するDMEM)により2回洗浄する。切り刻んだ軟骨を、軟骨形成培地+3%(v/v)ウシ胎仔血清(FBS;Atlanta Biologicals)中500単位/mLコラゲナーゼ2型(Worthington Biochemical)により、オービタルシェーカー上で37℃及び10%CO2にて18時間消化する。次いで、細胞を、70μmのストレーナにより濾して、計数する。
【0165】
軟骨細胞を精製するために剪断を導入するためのプロトコル:(1)約30mLの細胞溶液をコニカルチューブ内に入れる。(2)真空が細胞溶液の流を新しいコニカルチューブ中に押し入れるように、15~20μmのメッシュサイズを含有するコニカルチューブフィルタを取り付ける。(3)新しいコニカルチューブを、真空フィルタの対面に取り付けて、フィルタを真空ラインに取り付ける。(4)コニカルチューブ及びフィルタセットアップを反転させて、細胞溶液がフィルタを通って新しいコニカルチューブ中に流れるようにする。全ての溶液がフィルタを通過するまで待つ。(5)フィルタ及び古いコニカルチューブを取り外す。濾過した細胞溶液を洗浄培地により2回洗浄して、残っている細胞を計数する。
【0166】
例3-衝撃/圧縮
例3は、衝撃/圧縮を用いて、細胞骨格性質に基づいて細胞を選択する方法を記載する。例3は、圧縮/衝撃を加えて関節軟骨細胞を精製するためのプロトコルを示す。
【0167】
細胞単離:幼若ヒツジ関節軟骨細胞(joAC)を、屠殺の48時間以内に、地方の屠殺場(Superior Farms,Dixon,CA)から得た1歳のRambouillet Suffolkクロスヒツジの膝蓋大腿表面から単離する(n=8)。顆及び滑車溝の双方の表面由来の軟骨を、約1mm3片に切り刻んで、4.5g/Lグルコース及びGlutaMAX(DMEM;Gibco)及び2%(v/v)ペニシリン/ストレプトマイシン/フンジゾン(PSF;Lonza)を含有するダルベッコ改変イーグル培地により3回洗浄する。次いで、軟骨を、穏やかに揺らしながら37℃にて18時間、3%(v/v)ウシ胎仔血清(FBS;Atlanta Biologicals)を含有するDMEM中の0.2%(w/v)コラゲナーゼII型(Worthington)中で消化する。消化後、得られた細胞溶液を、70μm細胞ストレーナにより濾過する。
【0168】
軟骨細胞を精製するために圧縮/衝撃を導入するためのプロトコル:(1)約30mLの細胞溶液をコニカルチューブ内に入れる。(2)直径0.5~1.25mmの5つのガラスビーズをチューブに加える。(3)コニカルチューブをプレートロッカー上で3分間穏やかに回転させる。(4)細胞溶液を新しいコニカルチューブ中にピペットで入れる。ガラスビーズを洗浄培地により3回洗浄して、これらの洗浄溶液も新しいコニカルチューブに入れる。(5)プロセシングした細胞溶液を洗浄培地により2回洗浄して、残っている細胞を計数する。
【0169】
B.膜表面積性質に基づく精製
例4-低張溶液
例4は、低張溶液を用いて、膜表面積性質に基づいて細胞を選択する方法を記載する。例4は、複数回継代した軟骨細胞を用いて、生来様の新軟骨が達成されることを示す。本発明は、本明細書中に記載される方法又は組成物に限定されない。例4では、自己アセンブリング方法の軟骨エンジニアリングモデルを用いた。本発明をいかなる理論にも機構にも限定することを望むものではないが、低張バッファによる初代軟骨細胞の処理は、既存の望ましくない膜表面積性質を有する細胞の集団を減少させることによって、生存可能な軟骨細胞純度を増大させるのに有効であると考えられる。次いで、この処理は、既存の望ましくない膜表面積特性のない生存可能な軟骨細胞が富化された細胞集団を生成することによって、得られた自己アセンブリング新軟骨の機能的性質を増大させると考えられる。
【0170】
例4は、細胞増殖(軟骨形成的に調整される増殖)、凝縮、分化(凝集体再分化培養)、軟骨マトリックス生成(自己アセンブリ)、及びマトリックス成熟を(低張溶液により精製してから大量に継代した軟骨細胞を用いて)インビトロで模倣することにより、細胞が供給された生来の関節軟骨と同等の機械的性質を有する新軟骨が得られることを示す。例4は、3つの相を記載する。相1では、初代軟骨細胞及び継代/再分化した軟骨細胞の双方について、播種密度、例えば、最大の機能的性質を有する新軟骨構築物をもたらす(そして、必要とする軟骨細胞の数が最も少ない培養系を選択するための)播種密度を判定した。本発明をいかなる理論にも機構にも限定することを望むものではないが、最適化された培養条件下で、軟骨形成的に調整された細胞増殖、凝集、及び凝集体再分化の発生順序を模倣することにより、初代細胞由来の新軟骨と同等の、精製された複数継代細胞由来の新軟骨が得られると考えられる。相2では、増殖した軟骨細胞の軟骨形成再分化をさらに促進するためのサイトカラシンD及びヒアルロニダーゼ処理の有用性を判定した。本発明をいかなる理論にも機構にも限定することを望むものではないが、組合せ処理は、軟骨特異的マトリックス生成を促進して、新軟骨構築物の機能的性質を増大させると考えられる。相3は、新軟骨におけるマトリックス形成及び架橋ベースの成熟を促進した。本発明をいかなる理論にも機構にも限定することを望むものではないが、TGF-β1、c-ABC、及びLOXL2による処理は、細胞が供給された生来の関節軟骨と同等になるように新軟骨の機能的性質を強化すると考えられる。
【0171】
軟骨細胞単離:胎仔ヒツジ関節軟骨細胞(foAC)を、医療廃棄物として得られた妊娠120日目のドーパークロスヒツジ(UC Davis School of Veterinary Medicine)の膝蓋大腿表面から採取した。顆及び滑車溝の双方の表面全体由来の軟骨を、約1mm片に切り刻んでから、4.5g/Lグルコース及びGlutaMAX(DMEM;Gibco)及び2%(v/v)ペニシリン/ストレプトマイシン/フンジゾン(PSF;Lonza)を含有するダルベッコ改変イーグル培地により3回、洗浄かつ遠心分離(500G、5分間)した。組織を、穏やかに揺らしながら37℃にて18時間、3%(v/v)ウシ胎仔血清(FBS;Atlanta Biologicals)を含有するDMEM中の0.2%(w/v)コラゲナーゼII型(Worthington)中で消化した。消化後、得られた細胞溶液を、70μm細胞ストレーナにより濾過した。研究1~3について、foACを、前述のように、超純水中のACKバッファ(154.4mM塩化アンモニウム(Sigma)、10mM重炭酸カリウム(Fisher Scientific)、50mM EDTA四ナトリウム塩(Acros Organics)により3分間洗浄した。次いで、これらの初代(P0)foACを、20%(v/v)DMSO(Sigma)及び10%(v/v)FBS入りDMEM中で凍結した。
【0172】
軟骨細胞の増殖及び再分化:以前に凍結したP0 foACを、T-225フラスコ内に1.5×10細胞/cmにて播種して、2%FBS及び軟骨形成用に調整したTFP補充(1ng/mL TGF-β1、5ng/mL bFGF、10ng/mL PDGF;全てPeproTech製)入りの化学的に定義された軟骨形成培地(CHG培地)(1%PSF、1%ITS+プレミックス(BD Biosciences)、1%非必須アミノ酸(Gibco)、100nMデキサメタゾン(Sigma)、50mg/mLアスコルバート-2-ホスファート(Sigma)、40g/mL L-プロリン(Sigma)、及び100mg/mLピルビン酸ナトリウム(Sigma)を含有するDMEM)中で増殖させた。培地を2~3日毎に交換した。コンフルエンスにて、細胞を0.5%トリプシン-EDTA(Gibco)により5分間リフトしてから、細胞層を0.2%コラゲナーゼII型及び2%FBSを含有するDMEMにより37℃にて約1時間消化して、20分毎にバラバラにした(triturating)。得られた細胞溶液を、70μm細胞ストレーナにより濾過して、T-225フラスコ中に再播種して、3回の継代(P3)を達成した。P3 foACは、前述のように、凝集体再分化(P3R)を経験した。簡潔には、TGB補充(10ng/mL TGF-β1、100ng/mL GDF-5、100ng/mL BMP-2;全てPeproTech製)を含有する750,000細胞/mLのCHG培地を、リン酸緩衝生理食塩水(PBS;Sigma)により作製した1%(w/v)分子生物学グレードのアガロース(Thermo Fisher Scientific)でコーティングした100mm×20mmペトリ皿内で培養して、非接着環境を作出した。凝集培養物を、最初の3日間はオービタルシェーカー上で60rpmにて維持して、14日の再分化期間の残りの間は静置したままにした。培地を2~3日毎に交換した。培養期間の終わりに、凝集体を、0.5%トリプシン-EDTAにより20分間、その後2%FBS入りDMEM中0.2%コラゲナーゼにより37℃にて約2時間消化して、20分毎にバラバラにした。凝集体の解離後、細胞を、70μm細胞ストレーナにより濾過して、計数した。
【0173】
軟骨細胞アクチンの可視化:相2では、細胞骨格媒介軟骨形成再分化に及ぼすサイトカラシンD処理の効果を可視化するために、未処理P0 foAC、ならびにサイトカラシンD処理した、そして未処理のP3及びP3R foACの双方に、F-アクチン染色を実行した。約8×10細胞/cmを、2%FBSの存在下で1時間、ガラススライドに付着させた。非接着細胞を、PBSの2回の交換により洗い流した後に、PBS中3.9%ホルムアルデヒド中で付着細胞を10分間固定した。PBSによりもう2回洗浄した後に、固定細胞をPBS中0.1%Triton-X 100(Sigma)により5分間、透過処理した。PBSによる2回の洗浄後、細胞を、CF594コンジュゲートファロイジン(ビオチン;PBS中で1:200希釈)により30分間染色した。過剰な染色を、PBSの2回の交換により洗い流して、細胞をDAPI含有Vectashield(Vector Laboratories)により対比染色して、カバーガラスで覆って、Texas Red蛍光チャネルを用いて可視化した。
【0174】
新軟骨構築物の播種及び培養:P0、P3、又はP3R foACを、非接着アガロースウェル内で操作新軟骨構築物に自己アセンブリさせた。直径5mmの円筒形ポストからなる滅菌ステンレス鋼鋳型を48ウェルプレート中に挿入して、各ウェルに1mLの溶融2%(w/v)アガロースを含有させて、プレートウェル毎に単一のアガロースウェルを作製した。室温にてアガロースを固化させた後に、鋳型を取り外した。アガロースウェルを、5日間にわたって2回交換するCHG培地で充填して、播種前にアガロースの飽和を確実にした。相毎に、細胞を100μL CHG培地/ウェル内の5mmアガロースウェル中に播種した。相1では、P0又はP3R foACを各々、5つの密度(構築物あたり200万、300万、400万、500万、及び600万細胞)にて播種した。相2では、P3及びP3R foACを、構築物あたり200万細胞にて播種した。相3では、200万個のP3R foACを播種した。全ての構築物を6日目に拘束解除して、構築物の接着を防ぐためにアガロースでコーティングした、より大きなウェル内に入れた。培地を、拘束解除前は毎日交換し、6週の培養期間の後は、1日おきに交換した。相1では、新軟骨培養中に化学処理を施さなかった。相2では、サイトカラシンD(Enzo Life Sciences;播種時及び最初の48時間は2μM)及びヒアルロニダーゼ(播種時に200単位/mL)を完全な要因配置で施した。相3では、前相と同様にサイトカラシンDを施し、TGF-β1(全培養期間を通して10ng/mL)、コンドロイチナーゼABC(c-ABC、Sigma;7日目に4時間2単位/mL)、ならびにリジルオキシダーゼ様2(LOXL2、Signal Chem;0.15μg/mL)、硫酸銅(Sigma;1.6μg/mL)、及びヒドロキシリジン(Sigma;0.146μg/mL)からなるLOXカクテルで構成されるTCL処理も7~21日目に施した。参考までに、単離中にACKバッファにより処理しなかったP0 foAC(P0対照)を、構築物あたり450万細胞にて播種し、新軟骨培養中に他の化学処理を受けさせなかった。全ての新軟骨評価を、培養期間の終了時に実行した。
【0175】
新軟骨の肉眼的形態学的分析:ImageJ(National Institutes of Health)を用いて、写真から新軟骨構築物の直径及び厚さを測定した。構築物全体を秤量することによって湿重量を得てから、組織学的、生化学的、そして機械的分析のためにサンプルを分割した。
【0176】
新軟骨の組織学的かつ免疫組織化学的評価:ホルマリン固定サンプルをパラフィン中に包埋して、短軸に沿って5μm切片に切片化して、構築物の全厚を露出させた。全ての研究において、切片をH&Eにより染色して形態を示し、サフラニンO/ファストグリーンにより染色してグリコサミノグリカン(GAG)沈着を示し、ピクロシリウスレッドにより染色してコラーゲンを可視化した。また、Von Kossa及びアリザリンレッド染色を実行して、ミネラル化を観察した。免疫組織化学(IHC)を実行して、コラーゲンI(Abcam ab34710、希釈1:250)、コラーゲンII(Abcam ab34712、1:4000希釈)を染色した。相1では、IHCも実行して、コラーゲンVI(Abcam ab6588、希釈1:250)及びコラーゲンX(Abcam ab49945、1:200希釈)を染色した。
【0177】
新軟骨生化学的評価:生化学サンプルを秤量して湿重量を測定し、凍結乾燥し、そして再び秤量して乾燥重量を測定した。乾燥したサンプルを、125μg/mLパパイン(Sigma-Aldrich)、5mM N-アセチル-L-システイン、5mM EDTA、100mMリン酸バッファ中で65℃にて18時間消化した。グリコサミノグリカン(GAG)含量を、Blyscanアッセイキット(Biocolor)によって測定した。塩酸を用いる改変比色クロラミン-Tヒドロキシプロリンアッセイによって、コラーゲン含量を測定した。Sircolコラーゲン標準(Bicolor)を用いて、標準曲線を生成した。PicoGreen dsDNA試薬(Invitrogen)を用いて、DNA含量を測定した。新軟骨コラーゲン含量及びGAG含量を、湿重量、乾燥重量、及びDNA含量に対して正規化した。ピリジノリン架橋を、前述のようにピリジノリン標準(Quidel)を用いる高速液体クロマトグラフィ(HPLC)によって定量した。ピリジノリン含量を、湿重量及びコラーゲン含量に対して正規化した。
【0178】
新軟骨の機械的評価:10~15%の歪みを達成するために0.45~2gに及ぶ荷重を用いて、平坦な多孔質圧子先端部(直径0.8mm)を当てることによって、各構築物由来のパンチ(直径3mm)にCreep圧痕圧縮試験を行った。半解析、半数値、線形二相モデル、及び有限要素解析を用いて、凝集体弾性率及び剪断弾性率を実験データから得た。引張試験を、ASTM規格(ASTM D3039)に従って行った。構築物を、ゲージ長1.92mmのイヌ骨形状標本に打ち抜き、紙タブを、ゲージ長の外側の組織に接着させた。紙タブを、TestResourcesマシン(TestResources Inc.)内に把持させて、サンプルが破損するまで毎秒ゲージ長の1%にて引っ張った。実験データ、及びImageJ解析によって測定したサンプル断面積から、応力-歪み曲線を生成した。曲線の線形領域の最小二乗適合を用いて引張弾性率を得、最大応力により極限引張強度(UTS)を得た。
【0179】
機能性指数評価:改変された機能性指数(FI;式1)を用いて、全ての相において操作された新軟骨を、生来の胎仔及び幼若ウシ関節軟骨に対して定量的に評価して、培養条件を選択して各相に進めた。軟骨内の構造-機能関係、関節負荷中の圧縮性及び引張性質の双方の重要性、組織一体化についての生化学的性質の重要性、ならびに機械的完全性への架橋の寄与に基づいて、全ての要因を等しく重み付けした。機能性指数において、GはGAG/WW(%)を表し、Cは総コラーゲン/WW(%)を表し、Pはピリジノリン/コラーゲン(nmol/mg)を表し、Eは(圧縮)凝集体弾性率を表し、Eは引張弾性率を表す。下付き文字nat及びengは、それぞれ生来の組織及び操作された組織を表す。一貫性のない厚さ及び異常な形態、例えば、裂け目、破裂、又は球根状領域を有する構築物は、適していないと考えて、機能性指数評価から除外した。
【0180】
式1:
【数1】
【0181】
統計分析:相1では、Prism 7(GraphPad Software)での2元配置分散分析(ANOVA)及びそれに続くTukeyの事後検定を用いて、2つの継代条件にわたる異なる播種密度の定量的な新軟骨性質及び機能性指標を分析した。相2では、一元配置ANOVA及びそれに続くTukeyの事後検定を実行して、異なる処理群間の定量的新軟骨性質及び機能性指標を分析した。相3では、Studentのt検定を実行して、処理群間で定量的性質及び機能性指標を分析した。1群あたりn=6のサンプルサイズを用いた。全てのデータを、平均±標準偏差として示す。有意性を、P<0.05によって決定し、統計的に異なる群を異なる符号によりマークすることによって定量的結果を示す図中に示す。
【0182】
相1:新軟骨構築物は、継代及び細胞密度に基づいて、形態学の相違を示した(図6参照)。P0新軟骨に対して、構築物の直径、厚さ、及び湿重量は、細胞播種密度が大きくなるにつれ、増大した。200万、300万、400万、500万、及び600万細胞にて播種したP0構築物の直径、ならびに同じ細胞密度にて播種したP3R構築物の直径は、それぞれ5.3±0.2(図6E)、6.2±0.2(図6D)、6.9±0.2(図6C)、7.1±0.3(図6C)、7.2±0.1(図6C)、8.2±0.2(図6A)、8.2±0.1(図6A図6B)、7.8±0.3(図6B)、7.2±0.1(図6C)、及び7.0±0.2(図6C)mmであった。200万、300万、400万、500万、及び600万細胞にて播種したP0構築物の厚さ、ならびに同じ細胞密度にて播種したP3R構築物の直径は、それぞれ0.5±0.0(図6F)、0.5±0.0(図6F)、0.7±0.1(図6E)、0.7±0.2(図6D図6E)、0.9±0.1(図6B図6C)、0.9±0.0(図6B図6C図6D)、1.0±0.0(図6B)、1.2±0.1(図6A)、0.7±0.0(図6C図6D図6E)、0.8±0.1(図6B図6C図6D図6E)mmであった。200万、300万、400万、500万、及び600万細胞にて播種したP0構築物の湿重量、ならびに同じ細胞密度にて播種したP3R構築物の直径は、それぞれ12.8±0.5(図6G)、19.0±0.6(図6F)、30.2±3.5(図6E)、35.2±5.2(図6D)、39.5±1.9(図6D)、49.5±1.9(図6C)、53.6±1.4(図6B図6C)、58.2±1.3(図6A図6B)、59.3±3.6(図6A)、58.4±4.0(図6A)mgであった。200万、300万、及び400万細胞の密度にて播種した構築物は、均一で円盤状に見え、そして各構築物内で一貫した厚さを維持する。一貫した厚さであるが、200万及び300万個の細胞の構築物は湾曲していた一方、400万個の細胞の構築物は平坦であった。500万及び600万細胞にて播種した構築物は、一貫性のない厚さ、ならびに折り畳まれた縁部及び破断した縁部が挙げられる不規則な形態を示した。P3R新軟骨では、一般に、播種密度が大きくなるにつれ、構築物の直径は低下した一方、厚さ及び湿重量は増大した。400万細胞にて播種した構築物は、細胞性がより低い拡散マトリックスの小さく、明確なポケットを示した。500万及び600万細胞の播種密度にて、これらの領域は破裂し、これにより構築物は2つの別個の層を形成し、1つの層のみが完全に無傷であった。これらの構築物について報告される厚さは、無傷の層から測定した。
【0183】
組織学的に、継代及び新軟骨播種密度の関数としての、細胞形態、ならびにGAG、コラーゲン、及びコラーゲンII染色の強度の差異が観察された(図6参照)。H&E染色により、P0構築物及びP3R構築物の双方において、生来の組織内に存在する軟骨細胞よりも大きな軟骨細胞が明らかになった。加えて、P3R構築物中の細胞を取り囲む小腔は、P0新軟骨におけるものよりも大きかった。硫酸化GAGについてのサフラニンO染色は、生来の組織と比較して、P0構築物及びP3R構築物の双方において、より強い染色を示した。サフラニンOは、中央領域と比較して、P0構築物の外側領域において、あまり強く染色されなかった。この外側領域は、P3R構築物において大幅に減少した。GAG染色は、P0新軟骨において、400万細胞の播種密度にて最も強く現れた。P3R新軟骨では、GAG染色は、200万細胞密度にて最も強く、播種密度の増大と共に低下した。コラーゲンについてのピクロシリウスレッド染色は、生来の組織と比較して、P0及びP3Rの新組織の双方において、あまり強くなかった。P0構築物及びP3R構築物の外側領域は、内側領域よりも強く染色され、これらの領域は、P3R新軟骨において、より薄かった。ピクロシリウスレッド染色は、P0新軟骨において400万細胞、そしてP3R新軟骨において200万細胞の播種密度にて、最も強かった。コラーゲンI染色は、全ての群にわたって最小であった。P0新軟骨内で、コラーゲンII染色は、400万細胞の播種密度にてピークに達した。P3R新軟骨内で、コラーゲンII染色は、200万細胞の播種密度にて最も強く、播種密度の増大と共に低下した。コラーゲンVI、コラーゲンX、アリザリンレッド、及びVon Kossaについての追加の染色を図7に示す。P0及びP3Rの双方の新軟骨を、コラーゲンVIについて陽性に染色し、P3R新軟骨が最も暗く染色された。また、P0及びP3Rの新軟骨が、小腔内のコラーゲンXについて微かに染色されたが、新軟骨の周囲のECMについては染色されなかった。全ての継代及び播種密度の新軟骨が、アリザリンレッド又はVon Kossaにより染色されなかった。生化学的含量、機械的性質、及び機能性指数の計算を、図13の表1に列挙し、そして図6に示す。機能性指数により、最適なP0(P0 Opt)及びP3R(P3R Opt)播種密度がそれぞれ400万及び200万細胞/構築物と特定された。優れた機能性指数に基づいて、200万細胞/構築物にて播種したP3R群を、相2に進めた。
【0184】
参考のために、単離時にACKバッファにより処理しなかったP0 foACから成長させた新軟骨も機械的に試験した。これらの構築物を、P0 foACによる以前の研究における方法に基づいて、450万細胞/構築物の密度にて播種した。凝集体弾性率、剪断弾性率、及び透過性は、それぞれ97.7±20.4kPa、43.1±12.1kPa、45.1±15.7×1015/Nsであった。引張弾性率及びUTSは、それぞれ0.8±0.2MPa及び0.2±0.1MPaであった。
【0185】
相2:この相の第1の研究では、サイトカラシンD及びヒアルロニダーゼを調べて、化学処理が継代軟骨細胞を、凝集体再分化を用いずに再分化させることができるかを判定した。P3新軟骨構築物は、P3R新軟骨との大きな形態学的差異を示した。P3新軟骨(図12参照)では、サイトカラシンD(Cyto D)処理が、単に平坦かつ均一な構築物をもたらした。処理なし(未処理)、ヒアルロニダーゼ処理(Hya)、又は二重処理(Hya+Cyto D)は、構築物の中心に、拡散空隙空間を有する丸い新軟骨をもたらした。未処理構築物、サイトカラシンD処理構築物、及び二重処理構築物の直径は、それぞれ2.8±0.2、3.7±0.2、2.6±0.1、及び3.4±0.2mmであった。サイトカラシンDにより処理した新軟骨の直径は、未処理新軟骨、ヒアルロニダーゼ処理新軟骨、及び二重処理新軟骨の直径よりも有意に大きかった。また、二重処理新軟骨の直径は、未処理新軟骨及びヒアルロニダーゼ処理新軟骨の直径よりも有意に大きかった。未処理、ヒアルロニダーゼ処理、又は二重処理から得られた新軟骨の厚さは、それぞれ2.1±0.2、0.4±0.1、2.0±0.2、及び1.5±0.7mmであった。サイトカラシンDにより処理した新軟骨は、他の群の新軟骨よりも有意に薄かった。未処理新軟骨、サイトカラシンD処理新軟骨、及び二重処理新軟骨の湿重量は、それぞれ7.1±0.6、8.4±1.0、6.7±0.4、及び10.1±1.3mgであった。二重処理群の湿重量は、他の群を上回って有意に大きかった。また、サイトカラシン処理群の湿重量は、未処理群及びヒアルロニダーゼ処理群の湿重量よりも有意に大きかった。組織学的に、未処理群、ヒアルロニダーゼ処理群、及び二重処理群には空隙領域が存在した(図12参照)。ヒアルロニダーゼを除く全ての処理は、生来のウシ胎仔関節軟骨よりも濃い染色をもたらした。全群についての総コラーゲン染色は、生来対照についての染色よりも強度が低かった。サイトカラシンD処理は、最も強いGAG及び総コラーゲン染色をもたらした。全ての構築物は、生来の胎仔のヒツジの半月板と同等にコラーゲンIが染色され、内側の拡散領域の周りの未処理新軟骨、ヒアルロニダーゼ処理新軟骨、及び二重処理新軟骨において特に強く染色された。全ての構築物は、コラーゲンIIについて最小限に染色された。P3生化学的データ及び機械的データを図14の表2に示す。凝集体再分化を伴わないサイトカラシンD及びヒアルロニダーゼ処理は、P3新軟骨においてコラーゲンI産生を低下させることができず、コラーゲンII産生を増大させることができなかった。
【0186】
この相の第2の研究では、サイトカラシンDと併せて凝集体再分化を導入して、P3R Opt新軟骨のヒアルロニダーゼ処理を、相1から進めた。P3R新軟骨(図8参照)、P3R Optでは、サイトカラシンD処理(Cyto D)、及び二重処理(Cyto D+Hya)により、均一な厚さの構築物が得られた。ヒアルロニダーゼ処理(Hya)は、構築物の中心に、拡散空隙領域の形成をもたらした。二重処理群を除く全ての構築物は、僅かにボウル形状であった。未処理構築物、サイトカラシンD処理構築物、及び二重処理構築物の直径は、それぞれ8.2±0.2、6.5±0.2、5.9±0.0、及び5.7±0.3mmであった。未処理群の構築物直径は、他の処理群の構築物直径よりも有意に大きかった。サイトカラシンD処理群の構築物直径は、ヒアルロニダーゼ及び二重処理群の構築物直径よりも有意に大きかった。未処理、サイトカラシンD処理、ヒアルロニダーゼ処理、及び二重処理から得られた新軟骨の厚さは、それぞれ0.9±0.0、0.7±0.1、0.8±0.2、及び0.4±0.1mmであった。二重処理された新軟骨の厚さは、他の処理群の厚さよりも有意に小さかった。未処理新軟骨、サイトカラシンD処理新軟骨、及び二重処理新軟骨の湿重量は、それぞれ50.1±3.2、28.1±2.6、23.9±1.4、及び11.8±3.9mgであった。組織学的に、ヒアルロニダーゼ処理群のみに、拡散空隙領域が存在していた(図8参照)。GAG、総コラーゲン、及びコラーゲンII染色は、サイトカラシンD処理新軟骨において最も強かった。生化学的データ及び機械的データ、ならびに機能性指数を、図8及び図15に示す(表3)。優れた機能性指数に基づいて、相3に進むためにサイトカラシンD処理を選択した。
【0187】
軟骨細胞内のF-アクチンの蛍光染色は、細胞継代と処理との間で顕著な差を示した(図9参照)。P0軟骨細胞では、アクチン配置は皮質性であり、各細胞の周囲にリングとして現れた。未処理P3軟骨細胞は、サイズがはるかに大きく、線維芽細胞様細胞内の原線維アクチン配置を示した。P3軟骨細胞のサイトカラシンD処理は、丸みを帯びた細胞形状を誘導し、アクチンは依然として細胞全体に存在していた一方、その殆どが周囲に局在していた。未処理のP3R軟骨細胞は、一部の小さな原線維領域を有する皮質アクチン配置を示した。P3R軟骨細胞のサイトカラシンD処理は、未処理のP3R細胞におけるよりも多くのアクチンを皮質に局在化させた。
【0188】
相3:相1から最適な群としてP3R Optを選択し、相2からP3R Opt新軟骨のサイトカラシンD処理を選択し、相3は、サイトカラシンD処理したP3R Opt新軟骨に及ぼすTCL処理の追加の効果を調べた。サイトカラシンD及びTCLの双方により処理した新軟骨は、サイトカラシンDにより処理した新軟骨と形状が類似しており、かつこれよりも厚いように見えた。サイトカラシンD処理新軟骨、ならびに二重サイトカラシンD及びTCL処理新軟骨の直径は、それぞれ6.5±0.4及び6.4±0.3mmであった。二重処理した新軟骨の厚さは、サイトカラシンD処理した新軟骨の厚さよりも有意に大きかった(それぞれ1.1±0.1及び0.8±0.2mm)。サイトカラシンD処理新軟骨及び二重処理新軟骨の湿重量は、それぞれ87.1±3.6及び88.8±1.3mgであった。組織学的に、双方の群の新軟骨は均一に見えた(図10参照)。双方の群は、生来の胎仔関節軟骨よりも、GAGについて強く染色され、総コラーゲンについて弱く染色された。二重処理群は、GAG、総コラーゲン、及びコラーゲンIIについて、より強く染色された。いずれの群も、コラーゲンIについて染色されなかった。生化学的データ及び機械的データ、ならびに機能性指数を、図10及び図16に示す(表4)。機能性指数は、サイトカラシンD及びTCLの双方により処理した新軟骨が、サイトカラシンD単独により処理した新軟骨よりも優れていることを示した。
【0189】
例4は、精製されてから高度に継代された細胞を用いるインビトロでの組織形成の重要な顕著な態様を模倣することにより、細胞が供給された生来の関節軟骨と同等の機械的性質を有する新軟骨がどのように得られたかを記載する。相1~3を通じた新軟骨機能性の漸進的な発達が図11に示されており、機械的性質の大きな増大を実証している。詳細には、新軟骨凝集体弾性率、剪断弾性率、及び引張弾性率は、P0対照よりも9.6倍、7.2倍、及び3.8倍増大させることが見出された一方、引張強度は9.0倍増大した。これらの継続的な研究から得られた新軟骨は、生来の胎仔軟骨と比較した場合に1.42のFIを、そして生来の幼若軟骨と比較した場合に1.03のFIを達成した。これは、操作された新軟骨が機能性指数によって測定されたパラメータについての生来の組織値を超えたことを示し、成体レベルの性質を達成することが可能であることを示している。
【0190】
相1では、P3R細胞由来の新軟骨は、P0新軟骨性質を達成することができた。最適な密度にて播種したP3R新軟骨の機能性指数は、最適な密度にて播種したP0新軟骨の機能性指数と同等であった。胎仔ヒツジ関節軟骨に対して、P0 Optは0.77のFIを達成し、P3R Optは0.78のFIを達成した。機能的にロバストな組織を操作するための複数の継代細胞の使用は、より少ない細胞を単離して優れた新軟骨を操作することができることを示すので、大きな並進的影響を有する。ゆえに、P3R Opt新軟骨を以降の相に進めた。相2では、サイトカラシンD処理のみが、継代/再分化細胞から優れた新軟骨を産生するのに必要とされることが示された。例えば、P3R Opt新軟骨のサイトカラシンD処理は、圧縮剛性の0.9倍の増大、引張剛性の1.0倍の増大、及び引張強度の2.7倍の増大をもたらし、生来の胎仔軟骨に対して1.1の、そして生来の幼若軟骨に対して0.83のFIをもたらした。ゆえに、P3R Opt新軟骨のサイトカラシンD処理を進めた。相3では、TCL処理の追加は、架橋に基づく成熟を促進して、生来の胎仔軟骨に対して1.42の、そして生来の幼若軟骨に対して1.03のFIを達成する新軟骨の機能的性質を強化することが示された。凝集体弾性率は生来の胎仔軟骨の弾性率を超え、そして引張弾性率は生来のレベルの範囲内であった。この研究は、生体模倣関節軟骨を達成し、そしてこれを行うために複数継代細胞を用いることへの重要なステップを表す。
【0191】
相1では、P3R Opt新軟骨は、P0 Opt新軟骨と同等のFIを達成した。P0新軟骨内では、構築物の機能的性質は、播種密度の増大と共に、プラトーに達するまで増大した。しかしながら、P3R新軟骨では、機能的性質が、播種密度の増大と共に低下した。これは、優れた新組織を生成するには、初代細胞が継代細胞よりも合成的に可能であり、そして多くの細胞数が必要とされると仮定する従来の組織エンジニアリング戦略とは対照的である。この研究では、軟骨細胞を、4,000倍を超えて増殖させて、初代細胞に必要とされるよりも低い密度にて播種して、直径がより大きく、かつ同等のFIを有する新軟骨を達成した。P3R Opt新軟骨の凝集体弾性率、GAG/DNA産生、及びコラーゲン/DNA産生は、P0 Opt新軟骨のものよりも0.3倍、2.2倍、及び2.6倍大きかった(図6参照)。P3R Opt新軟骨中のコラーゲン含量は、P0 Opt新軟骨のコラーゲン含量と同等であったが、P3R Opt新軟骨の引張剛性及び強度は、大幅に減少した。軟骨の引張性質に対するコラーゲン架橋の重要性を考慮すると、相3におけるTCL処理により対処されたように、P3R Opt新軟骨中のピリジノリン含量の減少が、この理由である可能性が高かった。軟骨形成的に調整される増殖及び凝集体再分化法を用いること、かつ自己アセンブリング培養条件を最適化することによって、多重継代細胞由来のロバストな新軟骨を操作することが可能であった。これを達成するのに必要なのは、非継代細胞由来の新生細胞を操作するよりも8,000倍少ない初代細胞であった。
【0192】
継代条件全体で複数の播種密度を調べることによって、継代した軟骨細胞が再較正されて、より未成熟の挙動を示すことができることは、予想外であった。200万、300万、及び400万細胞の播種密度にて、P3R軟骨細胞は、P0軟骨細胞よりも合成的であった。例4は、単層増殖、凝集体再分化、及び自己アセンブリ等のインビトロステップにより発生的に起こる増殖、凝縮、分化、及び組織形成を模倣した。証拠は、そのようにすることにより、P3R軟骨細胞がより未成熟の状態に再較正され、これによりマトリックス分子の生成の増大が可能になったことを示唆している。例えば、P3R軟骨細胞によって分泌されたマトリックスは、初期段階にて、関節軟骨ECMの組成をより良好に反映した。生来の軟骨が成熟するにつれ、ECM全体に存在するコラーゲンVI染色が細胞周囲マトリックスに局在し、かつコラーゲンII染色が増大する。また、生来の軟骨内のピリジノリン含量が、軟骨が成熟するにつれて長期間にわたって大きく増大する。この研究では、P3R新軟骨は、P0新軟骨と比較して、より弱いコラーゲンII染色、より強いコラーゲンVI染色、及びより低いレベルのピリジノリンを示した(図6及び図7参照)。これらのデータは、P3R軟骨細胞がP0軟骨細胞よりも未成熟の状態にあるという主張を支持している。
【0193】
高分子クラウディングと呼ばれる培養技術は、単層内の軟骨細胞による軟骨マトリックスの生成及び成熟を強化するのに用いられているが、3D培養では負の効果を示す。Ficoll 70及びFicoll 40を単層内の軟骨細胞に使用した場合、コラーゲンII発現、ならびにGAG及び総コラーゲンの産生が増大した。しかしながら、3Dペレット培養モデルでは、高分子クラウディング処理は、培養2日目という早い時期に軟骨マトリックスの劣化をもたらした。また、炎症促進性サイトカインIL-6が、高密度培養物の培地内で検出されたが、低密度培養物では検出されなかった。本研究は、P3R軟骨細胞が高度に合成される潜在性を有することを示した。自己アセンブリング新軟骨におけるマトリックス沈着は、細胞播種後1日目という早い時期に始まることが知られている。
【0194】
継代した軟骨細胞は、自己アセンブルした新軟骨において強い軟骨形成表現型を示す。再分化した軟骨細胞、ならびに自己誘導高分子クラウディング及び炎症性サイトカイン調節マトリックス生成の新たに提案された機構を用いて、培養物中の軟骨細胞の表現型の確認が必要である。変形性関節症では、軟骨細胞は、増殖、コラーゲンXを包含するマトリックス分子の合成の増大、肥大、及びミネラル化を示す。P3R新軟骨の軟骨形成表現型を確認するために、P3R新軟骨及びP0新軟骨を、コラーゲンVI、コラーゲンX、アリザリンレッド、及びvon Kossaについて染色した(図7参照)。P3R新軟骨は、P0新軟骨よりもコラーゲンVIについて強く染色された。全ての群が、コラーゲンXについて涙腔内で微かに染色され、その存在が、この研究において実行された軟骨調整増殖及び凝集体再分化等のインビトロ操作によって引き起こされなかったことを示している。アリザリンレッド又はvon Kossaにより染色された群はなく、石灰化がなかったことを示している。コラーゲンXの存在は、P3R新軟骨において観察される大きな小腔に加えて、変性組織又は肥大軟骨細胞表現型を示し得る一方、石灰化は存在しなかった。加えて、高密度P3R新軟骨では、小腔のサイズが小さくなる。コラーゲンVI、コラーゲンX、及び大きな小腔は、未成熟の軟骨の徴候であるので、これらのデータは、継代した軟骨細胞の、未成熟の表現型への再較正が達成されたことをさらに支持している。
【0195】
相2では、継代/再分化細胞のサイトカラシンD処理はさらに、軟骨形成表現型を強化した。P3R Opt新軟骨(相1から進めた)のサイトカラシンD処理は、凝集体弾性率を、未処理群に対して0.9倍(図8参照)、そして成体ヒツジの生来の関節軟骨のレベルまで増大させた。また、引張剛性及び強度は、潜在的にコラーゲン及びピリジノリン含量の僅かな付随する増大に起因して、それぞれ1.0倍及び2.7倍増大した。この処理により、生来の胎仔軟骨に対して1.1、そして生来の幼若軟骨に対して0.83のFIを有する新軟骨が得られた。継代/再分化細胞に対するこの処理の成功は、継代した非再分化(P3)軟骨細胞に及ぼす効果の研究を動機付けた。P3新軟骨のサイトカラシンD処理は、全ての処理の単に平坦な、均一な構築物をもたらした(図12参照)。しかしながら、その作用単独では、強力なコラーゲンI染色、ならびに低い生化学的含量及び機械的性質によって示されるように、構築物の機能的特性の変化を明らかにするのに十分な程度への再分化に影響を及ぼすのに十分ではなかった(図14(表2)参照)。構築物は、緊張状態で試験可能ではなく、かつ形態学的に許容可能でなかったため、いずれの処理のP3新軟骨についても、機能性指数は計算しなかった。P3R軟骨細胞及びP3軟骨細胞内のアクチンを可視化して、P0細胞により観察されるのと同様のサイトカラシンDの作用方法を確認した(図9参照)。サイトカラシンD処理は、P3軟骨細胞及びP3R軟骨細胞におけるF-アクチンの皮質組織化を大幅に向上させた。
【0196】
相3は、生来レベルの引張性質を達成するために、新軟骨マトリックスの沈着及び架橋を強化することによって、組織形成の進行を模倣した。相1では、ピリジノリン/WWは、P0新軟骨と比較して、P3R新軟骨において大幅に減少した。これらのレベルは、相2では一貫して低いままであった。これは、新軟骨が引張性質の向上を達成するのを妨げる一方、他のマトリックス成分と比較して、ピリジノリン架橋の発達が遅いことは、生来の軟骨成熟を模倣する。相3では、コラーゲン含量及びコラーゲンネットワーク内の架橋を増大させることが示されているTCL処理を使用した。この処理は、実際に、圧縮剛性を変化させることなく、コラーゲン/WWの0.9倍の増大及びピリジノリン/WWの2.9倍の増大、ならびに引張剛性の1.7倍の増大及び引張強度の3.5倍の増大をもたらした。これらの引張性質は、幼若ヒツジ関節軟骨について報告されている範囲内である。また、TCL処理新軟骨は、生来の胎仔軟骨に対して1.42、そして生来の幼若軟骨に対して1.03のFIを達成した。これは、この研究において操作された新軟骨の性質が、現在、成人レベルに近づいていることを示している。生来の軟骨形成における重要なステップを模倣し、そしてマトリックスの発達及び成熟の発生的に示唆される順序に従うことで、精製され、継代/再分化した細胞新軟骨が、生来の軟骨の範囲内で引張性質を達成するのを可能にした。
【0197】
生来の軟骨形成の重要な態様を模倣して、発生的に示唆される化学刺激を使用することによって、この研究は、生来の成体軟骨に近づいた機能的性質を有する、4,000倍を超えて増殖した細胞由来の新軟骨を操作することができた。軟骨形成学的に調整した増殖、凝集体の再分化、及び新軟骨の最適化された自己アセンブリに加えて、ACK溶解バッファ、サイトカラシンD、及びTCLによる処理は、本発明者らのグループによって報告された最大機能性指数を有する成熟新軟骨をもたらした。加えて、継代した細胞は、より合成的な状態に再較正され得ることが示された。高密度3D培養物における軟骨マトリックス合成の自己誘導高分子クラウディング及びサイトカイン調節フィードバック阻害に基づく機構は、播種密度依存性マトリックス合成の説得力のある説明を提供する。最後に、組織架橋の重要性を説明するアップデートされた機能性指数を提供した。この研究は、以前の方法よりも8,000倍少ない初代細胞から生来様の操作された新軟骨を作出するためのプロトコルを確立することに向けて、順調に進んでいる。
【0198】
例5-剪断
例5は、剪断を用いて、膜性質に基づいて細胞を選択する方法を記載する。例5は、剪断を使用して関節軟骨細胞を精製するためのプロトコルを示す。
【0199】
細胞単離:胎仔ヒツジACを、妊娠120~125日のドーパークロスヒツジ(UC Davis School of Veterinary Medicine)の膝の大腿顆及び滑車溝から単離する。切り刻んだ軟骨組織をPBSにより洗浄して、軟骨形成培地+3%(v/v)FBS(Atlanta Biologicals、Lawrenceville、GA)中500単位/mLコラゲナーゼ2型(Worthington Biochemical、Lakewood、NJ)により、37℃/10%CO2にて18時間消化する。次いで、細胞を70μmフィルタにより濾して、洗浄培地により洗浄して、計数する。
【0200】
軟骨細胞を精製するために剪断を導入するためのプロトコル:(1)約50mLの細胞溶液をペトリ皿内に入れる。(2)パドルローターをペトリ皿中に沈めて、20rpmにて3分間回転させる。(3)パドルローターを取り出して、プロセシングした細胞溶液を洗浄培地により2回洗浄して、残っている細胞を計数する。
【0201】
例6-衝撃/圧縮
例6は、衝撃/圧縮を用いて、膜性質に基づいて細胞を選択する方法を記載する。例6は、圧縮/衝撃を加えて関節軟骨細胞を精製するためのプロトコルを示す。
【0202】
細胞単離:肋骨軟骨細胞を得るために、幼若ウシ後膝関節由来の軟骨を1~2mm片に切り刻んで、1%ペニシリン/ストレプトマイシン/フンジゾン(PSF)(BD Biosciences)及び3%ウシ胎仔血清(Atlanta Biologicals)入りダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)(Gibco)中0.2%II型コラゲナーゼ(Worthington)中で37℃にて18時間消化する。消化後、軟骨細胞を70μm細胞ストレーナにより濾過して、ブランクDMEM中に再懸濁させて、計数する。
【0203】
軟骨細胞を精製するために圧縮/衝撃を導入するためのプロトコル:(1)約20mLの細胞溶液をコニカルチューブ内に入れる。(2)ペレットが形成されるように、細胞溶液を300gにて5分間遠心分離する。(3)関連するメッシュコニカル乳棒を挿入する。メッシュサイズを必ず15μm未満とする。30秒毎に1回、3分間、メッシュ乳棒により細胞ペレットを穏やかに圧縮する。(4)乳棒を取り出して、プロセシングした細胞溶液を洗浄培地により2回洗浄して、残っている細胞を計数する。
【0204】
C.膜表面積性質に基づく精製
例7-低張溶液
例7は、低張溶液を用いて、剛性に基づいて細胞を選択する方法を記載する。本発明を特定のいかなる理論にも機構にも限定することを望まないが、低張バッファによる軟骨細胞の処理は、既存の望ましくない剛性特性を有する細胞の集団を減少させることによって、生存可能な軟骨細胞純度を増大させるのに有効であると考えられる。したがって、この処理は、望ましくない剛性特性のない生存可能な軟骨細胞が富化された細胞の集団を生成することによって、得られた自己アセンブリング新軟骨の機能的性質を増大させる。
【0205】
例7は、生来の軟骨圧縮性が操作新軟骨において達成されることを示す。本発明は、本明細書中に記載される方法又は組成物に限定されない。
【0206】
例7では、高度に臨床的に翻訳可能な細胞源であるヒツジ胎仔の後膝関節から軟骨細胞を単離した。第1に、一次(P0)胎仔軟骨細胞の、塩化アンモニウム-カリウム溶解バッファ(ACKバッファ)による処理を調べて、細胞単離物内の軟骨細胞純度及び得られた自己アセンブリング新軟骨機能的性質に及ぼす効果を判定した。軟骨細胞純度を、細胞計数によって評価した。圧縮クリープ圧痕、一軸引張試験、GAG、コラーゲン、及びDNAアッセイ、ならびに組織学及びIHCを包含する標準的な一連のアッセイにより、新軟骨の機能的性質を評価した。第2に、自己アセンブリング方法中のP0及び継代再分化(P3R)胎仔軟骨細胞の播種密度を調べた。細胞を、5mm構築物あたり200万、300万、400万、500万、及び600万細胞にて播種して、同じセットのアッセイを用いて、得られた新軟骨の機能的性質を評価した。最後に、サイトカラシンD及びヒアルロニダーゼを、自己アセンブリング方法の開始時に、完全因子設計で使用して、得られた新軟骨の機能的性質をさらに強化する能力を調べた。新軟骨を、標準的な一連のアッセイにより評価した。
【0207】
結果:フレッシュに単離したP0胎仔軟骨細胞のACKバッファ処理は、細胞単離物中の赤血球混入を60%低下させた。ACK処理は、新軟骨の1)凝集体弾性率を1.8倍、2)剪断弾性率を1.3倍、そして3)引張弾性率を0.8倍有意に増大させた。単離中の軟骨細胞の前方ACK処理を続けると、P0軟骨細胞の播種密度は、400万細胞/構築物に最適化され、追加的に、新軟骨凝集体弾性率を0.6倍、そして剪断弾性率を0.8倍増大させた。これらの細胞の継代及び再分化(P3R)後、播種密度は、200万細胞/構築物に最適化され、凝集体弾性率を0.3倍、そして剪断弾性率を0.3倍さらに増大させた。200万細胞/構築物にて播種したACK処理P3R軟骨細胞の自己アセンブリング中のサイトカラシンD使用により、新軟骨凝集体弾性率を、P0対照に対して9.6倍である400kPaに有意に増大させた。
【0208】
前述のように、本発明は、生来の軟骨に概して類似する圧縮性を有する軟骨を操作する方法を特徴とする。該方法は、単離した軟骨細胞を(例えば、低張溶解バッファを介して)精製すること、新軟骨播種密度を最適化すること、初代細胞新軟骨性質が保存されるように新規凝集体培養法によって継代軟骨細胞を再分化させること、及び/又は細胞骨格修飾剤によって軟骨細胞活性を強化することを特徴とする。
【0209】
例8-剪断
例8は、剪断を用いて、剛性に基づいて細胞を選択する方法を記載する。例8は、剪断を使用して関節軟骨細胞を精製するためのプロトコルを示す。細胞単離:ウシ胎仔関節軟骨細胞(foAC)を、妊娠120日のドーパークロスヒツジの後膝関節から単離する。顆及び滑車溝由来の軟骨を、約1mm片に切り刻んで、4.5g/Lグルコース及びGlutaMAX(DMEM;Gibco)及び2%(v/v)ペニシリン/ストレプトマイシン/フンジゾン(PSF;Lonza)を含有するダルベッコ改変イーグル培地により3回、洗浄かつ遠心分離(500G、5分間)する。組織を、穏やかに揺らしながら37℃にて18時間、3%(v/v)ウシ胎仔血清(FBS;Atlanta Biologicals)を含有するDMEM中の0.2%(w/v)コラゲナーゼII型(Worthington)中で消化する。消化後、得られた細胞溶液を、70μm細胞ストレーナにより濾過する。
【0210】
軟骨細胞を精製するために剪断を導入するためのプロトコル:(1)細胞溶液を滅菌10mLシリンジ中に取る。(2)直径75μm~200μmのチャネルを有するマイクロ流体デバイスにシリンジを取り付ける。(3)シリンジプランジャをゆっくりと押し下げて、細胞溶液がマイクロ流体デバイスを通ってコニカルチューブリザーバ中に流入するようにする。(4)シリンジを完全に押し下げて、もう20mLのDMEMをマイクロ流体デバイス中に注入する。(5)プロセシングした細胞溶液を洗浄培地により2回洗浄して、残っている細胞を計数する。
【0211】
例9-衝撃/圧縮
例9は、衝撃/圧縮を用いて、剛性に基づいて細胞を選択する方法を記載する。例9は、圧縮/衝撃を加えて関節軟骨細胞を精製するためのプロトコルを示す。細胞単離:幼若ウシ関節軟骨細胞を、ウシ後膝関節の膝蓋大腿表面から採取する。関節軟骨を、約1mm片に切り刻んで、4.5g/Lグルコース及びGlutaMAX(DMEM;Gibco)及び2%(v/v)ペニシリン/ストレプトマイシン/フンジゾン(PSF;BD Biosciences)を含有するダルベッコ改変イーグル培地により3回、洗浄かつ遠心分離(500G、5分間)する。切り刻んだ組織を、3%(v/v)ウシ胎仔血清(FBS;Atlanta Biological)を含有するDMEM中の0.2%(w/v)コラゲナーゼII型(Worthington)中で37℃にて18時間消化する。消化後、得られた細胞溶液を、70μm細胞ストレーナにより濾過して、遠心分離して(500G、5分間)、ブランクDMEM中に再懸濁させる。
【0212】
軟骨細胞を精製するために衝撃/圧縮を導入するためのプロトコル:(1)約50mLの細胞溶液をペトリ皿内に入れる。0.25~0.5mmの20個のガラスビーズをペトリ皿に加える。(2)パドルローターをペトリ皿中に沈めて、20rpmにて3分間回転させる。(3)パドルローターを取り出して、細胞溶液をピペットでコニカルチューブ中に出す。(4)ガラスビーズを50mL DMEMにより洗浄して、洗浄DMEMを、プロセシングした細胞溶液と共にコニカルチューブ中に入れる。(5)プロセシングした細胞溶液を洗浄培地により2回洗浄して、残っている細胞を計数する。
【0213】
例10
例10は、生来様の新軟骨を操作するために精製かつ増殖された軟骨細胞の翻訳可能性の強化を記載する。本発明は、本明細書中に記載される方法又は組成物に限定されない。
【0214】
胎仔細胞が組織エンジニアリングのための高度に臨床的に関連する細胞型を表すので、胎仔ヒツジの後膝関節から軟骨細胞を単離した。第1に、初代(P0)軟骨細胞のACKバッファ処理は、赤血球混入を60%低下させ、かつ新軟骨凝集体弾性率(1.8倍)、剪断弾性率(1.3倍)、及び引張弾性率(0.8倍)を増大させた。その後、200万細胞/構築物への増殖/再分化(P3R)軟骨細胞の播種密度最適化は、凝集体弾性率(1.0倍)及び剪断弾性率(1.1倍)をさらに増大させた。最後に、サイトカラシンD処理はさらに、未処理のP0対照に対して9.6倍、生来の軟骨と同等の400kPaまで新軟骨凝集体弾性率を増大させた。ACKバッファ及びサイトカラシンDにより処理したP3R細胞は、P0新軟骨の圧縮性を超え、かつ生来の軟骨に類似した圧縮性を有する新軟骨を顕著にもたらした。これらの連続的な研究により、ロバストな新軟骨を操作するのに用いられる一次細胞を4000倍少なくすることができ、具体的には、P0構築物あたり4,000,000個の一次細胞に対してP3R構築物あたり1000個の一次細胞を用いることにより、組織エンジニアリングのための増殖軟骨細胞の臨床的な翻訳可能性を大幅に強化させた。
【0215】
例11
例11は、細胞単離及び処理の方法を記載する。本発明は、以下に記載される方法及び組成物に限定されず、例えば、本発明は、軟骨細胞を肋骨軟骨組織から供給することに限定されず、本発明は、ACKバッファ濃度等に限定されない。前述のように、軟骨細胞は、他の軟骨組織から供給され得る。
【0216】
ヒト肋骨軟骨組織から、サンプルを単離する。肋骨軟骨組織を切断して、本質的には軟骨のみが残るように、筋肉、脂肪組織、及び軟骨膜を除去する。採取した肋骨軟骨をさらに小片に切断してから、遠心分離して洗浄する。次に、肋骨軟骨片を、酵素を用いて消化ステップに供して、例えば、肋骨軟骨片を酵素と一定期間、穏やかに揺らしながらインキュベートして、単一細胞懸濁液を得る。
【0217】
次に、細胞懸濁液を低張バッファに付す。例えば、細胞懸濁液を、塩化アンモニウム、重炭酸カリウム、及びEDTA四ナトリウム塩を含む、予め温めたACKバッファに付す。一部の実施形態において、ACKバッファの成分の濃度は、以下に限定されないが、154.4mM塩化アンモニウム、10mM重炭酸カリウム、及び97.3μMエチレンジアミン四酢酸(EDTA)四ナトリウム塩を包含する。次に、細胞懸濁液を遠心分離して、上清を吸引して、ペレットを低張バッファ(塩化アンモニウム、重炭酸カリウム、及びEDTA四ナトリウム塩を含むACKバッファ)中に再懸濁させる。次に、細胞懸濁液を低張(ACK)バッファと共に一定期間インキュベートしてから、遠心分離する。上清を吸引して、例えば継代のために、細胞ペレットを洗浄してからプレーティングする。
【0218】
一部の実施形態において、採取した肋骨軟骨を、約1mmの小片に切断する。一部の実施形態において、洗浄ステップは、4.5g/Lグルコース及びGlutaMAX(DMEM;Gibco)ならびに2%(v/v)ペニシリン/ストレプトマイシン/フンジゾン(PSF;BD Biosciences)を含有するダルベッコ改変イーグル培地を含む。一部の実施形態において、消化ステップは、以下に限定されないがプロナーゼ及び/又はII型コラゲナーゼ等の酵素の使用を含む。一部の実施形態において、細胞ペレットは、継代のためにプレーティングする代わりに凍結される。
【0219】
本明細書中に記載されるものに加えて、本発明の種々の変更は、前述の説明から当業者には明らかであろう。また、そのような変更は、添付の特許請求の範囲内に含まれることが意図される。本出願において引用される各参考文献は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0220】
本発明の好ましい実施形態を示して説明してきたが、添付の特許請求の範囲を超えない変更を行うことができることは、当業者には容易に明らかであろう。したがって、本発明の範囲は、以下の特許請求の範囲によってのみ限定されるべきである。
【0221】
一部の実施形態において、フレーズ「含む(comprising)」を用いる本明細書中に記載される発明の説明は、「からなる(consisting of)」と記載され得る実施形態を包含するので、フレーズ「からなる(consisting of)」を用いて本発明の1つ又は複数の実施形態を特許請求するための記載要件が満たされる。
【0222】
実施形態
【0223】
以下の実施形態は、例示のみを意図しており、決して限定ではない。
【0224】
実施形態1A:軟骨細胞のサンプルを強化する方法であって:(a)非プレアポトーシス細胞及びプレアポトーシス細胞の混合集団を含む軟骨細胞のサンプルを得ることと、(b)(a)由来の軟骨細胞の該サンプルを処理に付すこととを含み、単独で、又は他の処理と組み合わせて複数回繰り返すことができる、方法。実施形態2A:軟骨細胞のサンプルを調製する方法であって:(a)非プレアポトーシス細胞及びプレアポトーシス細胞の混合集団を含む軟骨細胞のサンプルを得ることと、(b)(a)由来の軟骨細胞の該サンプルを処理に付すこととを含み、単独で、又は他の処理と組み合わせて複数回繰り返すことができる、方法。実施形態3A:前記処理は、低張溶液を加えることを含む、実施形態1A又は実施形態2Aの方法。実施形態4A:軟骨細胞のサンプルを強化する方法であって:(a)非プレアポトーシス細胞及びプレアポトーシス細胞の混合集団を含む軟骨細胞のサンプルを得ることと;(b)(a)由来の軟骨細胞のサンプルを、低張溶液による処理に付すこととを含み、単独で、又は他の処理と組み合わせて複数回繰り返すことができる、方法。実施形態5A:軟骨細胞のサンプルを調製する方法であって:(a)非プレアポトーシス細胞及びプレアポトーシス細胞の混合集団を含む軟骨細胞のサンプルを得ることと、(b)(a)由来の軟骨細胞のサンプルを、低張溶液による処理に付すこととを含み、単独で、又は他の処理と組み合わせて複数回繰り返すことができる、方法。実施形態6A:前記低張溶液は、塩化アンモニウムカリウム溶解バッファ(ACKバッファ)である、実施形態3A~5Aのいずれか1つの方法。実施形態7A:軟骨細胞のサンプルを強化する方法であって:(a)非プレアポトーシス細胞及びプレアポトーシス細胞の混合集団を含む軟骨細胞のサンプルを得ることと、(b)(a)由来の軟骨細胞の該サンプルを、塩化アンモニウムカリウム溶解バッファ(ACKバッファ)による処理に付すこととを含み;単独で、又は他の処理と組み合わせて複数回繰り返すことができる、方法。実施形態8A:軟骨細胞のサンプルを調製する方法であって:(a)非プレアポトーシス細胞及びプレアポトーシス細胞の混合集団を含む軟骨細胞のサンプルを得ることと、(b)(a)由来の軟骨細胞の該サンプルを、塩化アンモニウムカリウム溶解バッファ(ACKバッファ)による処理に付すこととを含み;単独で、又は他の処理と組み合わせて複数回繰り返すことができる、方法。実施形態9A:前記処理は、細胞膨潤を誘導する、実施形態1A~8Aのいずれか1つの方法。実施形態10A:軟骨細胞の前記サンプルは、ヒト軟骨細胞のサンプルである、実施形態1A~9Aのいずれか1つの方法。実施形態11A:軟骨細胞の前記サンプルは、非関節軟骨細胞のサンプルである、実施形態1A~10Aのいずれか1つの方法。実施形態12A:細胞の前記サンプルは、肋骨の一部から供給される、実施形態1A~11Aのいずれか1つの方法。実施形態13A:前記肋骨は軟骨細胞を含む、実施形態12Aの方法。実施形態14A:前記軟骨細胞は非関節軟骨細胞である、実施形態13Aの方法。実施形態15A:(b)の後に、細胞の前記サンプルは、(b)の前の細胞の前記サンプルと比較して、非プレアポトーシス細胞のパーセンテージがより高い、実施形態1A~14Aのいずれか1つの方法。実施形態16A:(b)の後に、細胞の前記サンプルは、(b)の前の軟骨細胞の前記サンプルと比較して、プレアポトーシス細胞のパーセンテージがより低い、実施形態1A~14Aのいずれか1つの方法。実施形態17A:(b)の後に生成された前記細胞は、以下:細胞の直接的使用;単層、もしくは懸濁培養が挙げられる三次元環境での継代を含む細胞のインビトロ培養;自己アセンブリが挙げられる無足場系を用いるか、もしくは天然材料及び合成材料を包含する足場ベースの系を用いる組織エンジニアリング;細胞移植;組織移植;ならびに/又はグラフト化のうちの1つ又は複数に用いられる、実施形態1A~16Aのいずれか1つの方法。実施形態18A:(b)の後に、単層又は三次元環境で細胞を継代することをさらに含む、実施形態1Aの方法。実施形態19A:前記継代された細胞により新軟骨を生成することをさらに含む、実施形態18Aの方法。実施形態20A:(b)の後に生成された細胞、又は前記細胞から操作/作製された組織は、以下:成長因子;細胞骨格修飾剤;ホルモン;毒性化合物;シグナル伝達カスケードの上流で作用する分子;種々の酸素張力;架橋剤;マトリックス分解酵素、マトリックス分子;及び/又は機械的刺激の1つ又は複数を含む処理に供される、実施形態1A~19Aのいずれか1つの方法。
【0225】
実施形態1B:ヒト軟骨細胞のサンプルを強化する方法であって:(a)非プレアポトーシス軟骨細胞及びプレアポトーシス軟骨細胞の混合集団を含むヒト軟骨細胞のサンプルを得ることと、(b)(a)由来の軟骨細胞の該サンプルを処理に付すこととを含み、単独で、又は他の処理と組み合わせて複数回繰り返すことができる、方法。実施形態2B:ヒト軟骨細胞のサンプルを調製する方法であって:(a)非プレアポトーシス軟骨細胞及びプレアポトーシス軟骨細胞の混合集団を含むヒト軟骨細胞のサンプルを得ることと、(b)(a)由来の軟骨細胞の該サンプルを処理に付すこととを含み、単独で、又は他の処理と組み合わせて複数回繰り返すことができる、方法。実施形態3B:前記処理は、低張溶液を加えることを含む、実施形態1B又は実施形態2Bの方法。実施形態4B:ヒト軟骨細胞のサンプルを強化する方法であって:(a)非プレアポトーシス軟骨細胞及びプレアポトーシス軟骨細胞の混合集団を含むヒト軟骨細胞のサンプルを得ることと、(b)(a)由来のヒト軟骨細胞の該サンプルを、低張溶液による処理に付すこととを含み、単独で、又は他の処理と組み合わせて複数回繰り返すことができる、方法。実施形態5B:ヒト軟骨細胞のサンプルを調製する方法であって:(a)非プレアポトーシス軟骨細胞及びプレアポトーシス軟骨細胞の混合集団を含むヒト軟骨細胞のサンプルを得ることと、(b)(a)由来のヒト軟骨細胞の該サンプルを、低張溶液による処理に付すこととを含み、単独で、又は他の処理と組み合わせて複数回繰り返すことができる、方法。実施形態6B:前記低張溶液は、塩化アンモニウムカリウム溶解バッファ(ACKバッファ)である、実施形態3B~5Bのいずれか1つの方法。実施形態7B:ヒト軟骨細胞のサンプルを強化する方法であって:(a)非プレアポトーシス軟骨細胞及びプレアポトーシス軟骨細胞の混合集団を含むヒト軟骨細胞のサンプルを得ることと、(b)(a)由来のヒト軟骨細胞のサンプルを、低張溶液による処理に付すこととを含み、前記低張溶液は塩化アンモニウムカリウム溶解バッファ(ACKバッファ)であり;単独で、又は他の処理と組み合わせて複数回繰り返すことができる、方法。実施形態8B:ヒト軟骨細胞のサンプルを調製する方法であって:(a)非プレアポトーシス軟骨細胞及びプレアポトーシス軟骨細胞の混合集団を含むヒト軟骨細胞のサンプルを得ることと、(b)(a)由来のヒト軟骨細胞の該サンプルを、低張溶液による処理に付すこととを含み、前記低張溶液は塩化アンモニウムカリウム溶解バッファ(ACKバッファ)であり;単独で、又は他の処理と組み合わせて複数回繰り返すことができる、方法。実施形態9B:前記処理は、細胞膨潤を誘導する、実施形態1B~8Bのいずれか1つの方法。実施形態10B:ヒト軟骨細胞の前記サンプルは、非関節軟骨細胞のサンプルである、実施形態1B~9Bのいずれか1つの方法。実施形態11B:ヒト軟骨細胞の前記サンプルは、肋骨の一部から供給される、実施形態1B~10Bのいずれか1つの方法。実施形態12B:前記肋骨の前記一部から供給される前記軟骨細胞は、非関節軟骨細胞を含む、実施形態11Bの方法。実施形態13B:(b)の後に、ヒト軟骨細胞の前記サンプルは、(b)の前のヒト軟骨細胞の前記サンプルと比較して、非プレアポトーシス細胞のパーセンテージがより高い、実施形態1B~12Bのいずれか1つの方法。実施形態14B:(b)の後に、軟骨細胞の前記サンプルは、(b)の前の軟骨細胞の前記サンプルと比較して、プレアポトーシス細胞のパーセンテージがより低い、実施形態1B~12Bのいずれか1つの方法。実施形態15B:(b)の後に生成された前記ヒト軟骨細胞は、以下:細胞の直接的使用;単層、もしくは懸濁培養が挙げられる三次元環境での継代を含む細胞のインビトロ培養;自己アセンブリが挙げられる無足場系を用いるか、もしくは天然材料及び合成材料を包含する足場ベースの系を用いる組織エンジニアリング;細胞移植;組織移植;ならびに/又はグラフト化のうちの1つ又は複数に用いられる、実施形態1B~14Bのいずれか1つの方法。実施形態16B:(b)の後に、単層又は三次元環境で細胞を継代することをさらに含む、実施形態1Bの方法。実施形態17B:前記継代された細胞により新軟骨を生成することをさらに含む、実施形態16Bの方法。実施形態18B:(b)の後に生成された前記ヒト軟骨細胞、又は前記ヒト軟骨細胞から操作/作製された組織は、以下:成長因子;細胞骨格修飾剤;ホルモン;毒性化合物;シグナル伝達カスケードの上流で作用する分子;種々の酸素張力;架橋剤;マトリックス分解酵素、マトリックス分子;及び/又は機械的刺激の1つ又は複数を含む処理に供される、実施形態1B~17Bのいずれか1つの方法。
【0226】
実施形態1C:非関節軟骨細胞のサンプルを強化する方法であって:(a)非プレアポトーシス軟骨細胞及びプレアポトーシス軟骨細胞の混合集団を含む非関節軟骨細胞のサンプルを得ることと、(b)(a)由来の非関節軟骨細胞の該サンプルを処理に付すこととを含み、単独で、又は他の処理と組み合わせて複数回繰り返すことができる、方法。実施形態2C:非関節軟骨細胞のサンプルを調製する方法であって:(a)非プレアポトーシス軟骨細胞及びプレアポトーシス軟骨細胞の混合集団を含む非関節軟骨細胞のサンプルを得ることと、(b)(a)由来の非関節軟骨細胞の該サンプルを処理に付すこととを含み、単独で、又は他の処理と組み合わせて複数回繰り返すことができる、方法。実施形態3C:前記処理は、低張溶液を加えることを含む、実施形態1C又は実施形態2Cの方法。実施形態4C:非関節軟骨細胞のサンプルを強化する方法であって:(a)非プレアポトーシス軟骨細胞及びプレアポトーシス軟骨細胞の混合集団を含む非関節軟骨細胞のサンプルを得ることと、(b)(a)由来の非関節軟骨細胞の該サンプルを、低張溶液による処理に付すこととを含み、単独で、又は他の処理と組み合わせて複数回繰り返すことができる、方法。実施形態5C:非関節軟骨細胞のサンプルを調製する方法であって:(a)非プレアポトーシス軟骨細胞及びプレアポトーシス軟骨細胞の混合集団を含む非関節軟骨細胞のサンプルを得ることと、(b)(a)由来の非関節軟骨細胞の該サンプルを、低張溶液による処理に付すこととを含み、単独で、又は他の処理と組み合わせて複数回繰り返すことができる、方法。実施形態6C:前記低張溶液は、塩化アンモニウムカリウム溶解バッファ(ACKバッファ)である、実施形態3C~5Cのいずれか1つの方法。実施形態7C:非関節軟骨細胞のサンプルを強化する方法であって:(a)非プレアポトーシス軟骨細胞及びプレアポトーシス軟骨細胞の混合集団を含む非関節軟骨細胞のサンプルを得ることと、(b)(a)由来の非関節軟骨細胞の該サンプルを、低張溶液による処理に付すこととを含み、前記低張溶液は塩化アンモニウムカリウム溶解バッファ(ACKバッファ)であり;単独で、又は他の処理と組み合わせて複数回繰り返すことができる、方法。実施形態8C:非関節軟骨細胞のサンプルを調製する方法であって:(a)非プレアポトーシス軟骨細胞及びプレアポトーシス軟骨細胞の混合集団を含む非関節軟骨細胞のサンプルを得ることと、(b)(a)由来の非関節軟骨細胞の該サンプルを、低張溶液による処理に付すこととを含み、前記低張溶液は塩化アンモニウムカリウム溶解バッファ(ACKバッファ)であり;単独で、又は他の処理と組み合わせて複数回繰り返すことができる、方法。実施形態9C:前記処理は、細胞膨潤を誘導する、実施形態1C~8Cのいずれか1つの方法。実施形態10C:非関節軟骨細胞の前記サンプルは、ヒト非関節軟骨細胞のサンプルである、実施形態1C~9Cのいずれか1つの方法。実施形態11C:非関節軟骨細胞の前記サンプルは、肋骨の一部から供給される、実施形態1C~10Cのいずれか1つの方法。実施形態12C:(b)の後に、非関節軟骨細胞の前記サンプルは、(b)の前のヒト軟骨細胞の前記サンプルと比較して、非プレアポトーシス細胞のパーセンテージがより高い、実施形態1C~11Cのいずれか1つの方法。実施形態13C:(b)の後に、非関節軟骨細胞の前記サンプルは、(b)の前の軟骨細胞の前記サンプルと比較して、プレアポトーシス細胞のパーセンテージがより低い、実施形態1C~11Cのいずれか1つの方法。実施形態14C:(b)の後に生成された前記非関節軟骨細胞は、以下:細胞の直接的使用;単層、もしくは懸濁培養が挙げられる三次元環境での継代を含む細胞のインビトロ培養;自己アセンブリが挙げられる無足場系を用いるか、もしくは天然材料及び合成材料を包含する足場ベースの系を用いる組織エンジニアリング;細胞移植;組織移植;ならびに/又はグラフト化のうちの1つ又は複数に用いられる、実施形態1C~13Cのいずれか1つの方法。実施形態15C:(b)の後に、単層又は三次元環境で細胞を継代することをさらに含む、実施形態1Cの方法。実施形態16C:前記継代された細胞により新軟骨を生成することをさらに含む、実施形態15Cの方法。実施形態17C:(b)の後に生成された前記非関節軟骨細胞、又は前記非関節軟骨細胞から操作/作製された組織は、以下:成長因子;細胞骨格修飾剤;ホルモン;毒性化合物;シグナル伝達カスケードの上流で作用する分子;種々の酸素張力;架橋剤;マトリックス分解酵素、マトリックス分子;及び/又は機械的刺激の1つ又は複数を含む処理に供される、実施形態1C~16Cのいずれか1つの方法。
【0227】
実施形態1D:肋骨の一部から供給される細胞のサンプルを強化する方法であって:(a)非プレアポトーシス細胞及びプレアポトーシス細胞の混合集団を含む、肋骨の一部から供給される細胞のサンプルを得ることと;(b)(a)由来の前記肋骨の前記一部から供給される細胞の前記サンプルを処理に付すこととを含み;単独で、又は他の処理と組み合わせて複数回繰り返すことができる、方法。実施形態2D:肋骨の一部から供給される細胞のサンプルを調製する方法であって:(a)非プレアポトーシス細胞及びプレアポトーシス細胞の混合集団を含む、肋骨の一部から供給される細胞のサンプルを得ることと;(b)(a)由来の前記肋骨の前記一部から供給される細胞の前記サンプルを処理に付すこととを含み;単独で、又は他の処理と組み合わせて複数回繰り返すことができる、方法。実施形態3D:前記処理は、低張溶液を加えることを含む、実施形態1D又は実施形態2Dの方法。実施形態4D:肋骨の一部から供給される細胞のサンプルを強化する方法であって:(a)非プレアポトーシス細胞及びプレアポトーシス細胞の混合集団を含む、肋骨の一部から供給される細胞のサンプルを得ることと;(b)(a)由来の前記肋骨の前記一部から供給される細胞の前記サンプルを、低張溶液による処理に付すこととを含み;単独で、又は他の処理と組み合わせて複数回繰り返すことができる、方法。実施形態5D:肋骨の一部から供給される細胞のサンプルを調製する方法であって:(a)非プレアポトーシス細胞及びプレアポトーシス細胞の混合集団を含む、肋骨の一部から供給される細胞のサンプルを得ることと;(b)(a)由来の前記肋骨の前記一部から供給される細胞の前記サンプルを、低張溶液による処理に付すこととを含み;単独で、又は他の処理と組み合わせて複数回繰り返すことができる、方法。実施形態6D:前記低張溶液は、塩化アンモニウムカリウム溶解バッファ(ACKバッファ)である、実施形態3D~5Dのいずれか1つの方法。実施形態7D:肋骨の一部から供給される細胞のサンプルを強化する方法であって:(a)非プレアポトーシス細胞及びプレアポトーシス細胞の混合集団を含む、肋骨の一部から供給される細胞のサンプルを得ることと;(b)(a)由来の前記肋骨の前記一部から供給される細胞の前記サンプルを、低張溶液による処理に付すこととを含み、前記低張溶液は、塩化アンモニウムカリウム溶解バッファ(ACKバッファ)であり;単独で、又は他の処理と組み合わせて複数回繰り返すことができる、方法。実施形態8D:肋骨の一部から供給される細胞のサンプルを調製する方法であって:(a)非プレアポトーシス細胞及びプレアポトーシス細胞の混合集団を含む、肋骨の一部から供給される細胞のサンプルを得ることと;(b)(a)由来の前記肋骨の前記一部から供給される細胞の前記サンプルを、低張溶液による処理に付すこととを含み、前記低張溶液は、塩化アンモニウムカリウム溶解バッファ(ACKバッファ)であり;単独で、又は他の処理と組み合わせて複数回繰り返すことができる、方法。実施形態9D:前記処理は、細胞膨潤を誘導する、実施形態1D~8Dのいずれか1つの方法。実施形態10D:前記肋骨の前記一部から供給される細胞の前記サンプルは軟骨細胞である、実施形態1D~9Dのいずれか1つの方法。実施形態11D:前記肋骨の前記一部から供給される細胞の前記サンプルは、非関節軟骨細胞である、実施形態1D~10Dのいずれか1つの方法。実施形態12D:前記肋骨の前記一部から供給される細胞の前記サンプルはヒト細胞である、実施形態1D~11Dのいずれか1つの方法。実施形態13D:前記肋骨の前記一部は軟骨細胞を含む、実施形態1D~12Dのいずれか1つの方法。実施形態14D:前記軟骨細胞は非関節軟骨細胞である、実施形態13Dの方法。実施形態15D:(b)の後に、肋骨の一部から供給される細胞の前記サンプルは、(b)の前の肋骨の一部から供給される細胞の前記サンプルと比較して、非プレアポトーシス細胞のパーセンテージがより高い、実施形態1D~14Dのいずれか1つの方法。実施形態16D:(b)の後に、肋骨の一部から供給される細胞の前記サンプルは、(b)の前の肋骨の一部から供給される細胞の前記サンプルと比較して、プレアポトーシス細胞のパーセンテージがより低い、実施形態1D~14Dのいずれか1つの方法。実施形態17D:(b)の後に生成された肋骨の一部から供給される細胞の前記サンプルは、以下:細胞の直接的使用;単層、もしくは懸濁培養が挙げられる三次元環境での継代を含む細胞のインビトロ培養;自己アセンブリが挙げられる無足場系を用いるか、もしくは天然材料及び合成材料を包含する足場ベースの系を用いる組織エンジニアリング;細胞移植;組織移植;ならびに/又はグラフト化のうちの1つ又は複数に用いられる、実施形態1D~16Dのいずれか1つの方法。実施形態18D:(b)の後に、単層又は三次元環境で細胞を継代することをさらに含む、実施形態1Dの方法。実施形態19D:前記継代された細胞により新軟骨を生成することをさらに含む、実施形態18Dの方法。実施形態20D:(b)の後に生成された肋骨の一部から供給される細胞、又は前記細胞から操作/作製された組織の前記サンプルは、以下:成長因子;細胞骨格修飾剤;ホルモン;毒性化合物;シグナル伝達カスケードの上流で作用する分子;種々の酸素張力;架橋剤;マトリックス分解酵素、マトリックス分子;及び/又は機械的刺激の1つ又は複数を含む処理に供される、実施形態1D~19Dのいずれか1つの方法。
【0228】
実施形態1E:ヒト非関節軟骨細胞のサンプルを強化する方法であって:(a)非プレアポトーシス軟骨細胞及びプレアポトーシス軟骨細胞の混合集団を含むヒト非関節軟骨細胞のサンプルを得ることと、(b)(a)由来のヒト非関節軟骨細胞の該サンプルを処理に付すこととを含み、単独で、又は他の処理と組み合わせて複数回繰り返すことができる、方法。実施形態2E:ヒト非関節軟骨細胞のサンプルを調製する方法であって:(a)非プレアポトーシス軟骨細胞及びプレアポトーシス軟骨細胞の混合集団を含むヒト非関節軟骨細胞のサンプルを得ることと、(b)(a)由来のヒト非関節軟骨細胞の該サンプルを処理に付すこととを含み、単独で、又は他の処理と組み合わせて複数回繰り返すことができる、方法。実施形態3E:前記処理は、低張溶液を加えることを含む、実施形態1E又は実施形態2Eの方法。実施形態4E:ヒト非関節軟骨細胞のサンプルを強化する方法であって:(a)非プレアポトーシス軟骨細胞及びプレアポトーシス軟骨細胞の混合集団を含むヒト非関節軟骨細胞のサンプルを得ることと、(b)(a)由来のヒト非関節軟骨細胞の該サンプルを、低張溶液による処理に付すこととを含み、単独で、又は他の処理と組み合わせて複数回繰り返すことができる、方法。実施形態5E:ヒト非関節軟骨細胞のサンプルを調製する方法であって:(a)非プレアポトーシス軟骨細胞及びプレアポトーシス軟骨細胞の混合集団を含むヒト非関節軟骨細胞のサンプルを得ることと、(b)(a)由来のヒト非関節軟骨細胞の該サンプルを、低張溶液による処理に付すこととを含み、単独で、又は他の処理と組み合わせて複数回繰り返すことができる、方法。実施形態6E:前記低張溶液は、塩化アンモニウムカリウム溶解バッファ(ACKバッファ)である、実施形態3E~5Eのいずれか1つの方法。実施形態7E:ヒト非関節軟骨細胞のサンプルを強化する方法であって:(a)非プレアポトーシス軟骨細胞及びプレアポトーシス軟骨細胞の混合集団を含むヒト非関節軟骨細胞のサンプルを得ることと、(b)(a)由来のヒト非関節軟骨細胞の該サンプルを、低張溶液による処理に付すこととを含み、前記低張溶液は塩化アンモニウムカリウム溶解バッファ(ACKバッファ)であり;単独で、又は他の処理と組み合わせて複数回繰り返すことができる、方法。実施形態8E:ヒト非関節軟骨細胞のサンプルを調製する方法であって:(a)非プレアポトーシス軟骨細胞及びプレアポトーシス軟骨細胞の混合集団を含むヒト非関節軟骨細胞のサンプルを得ることと、(b)(a)由来のヒト非関節軟骨細胞の該サンプルを、低張溶液による処理に付すこととを含み、前記低張溶液は塩化アンモニウムカリウム溶解バッファ(ACKバッファ)であり;単独で、又は他の処理と組み合わせて複数回繰り返すことができる、方法。実施形態9E:前記処理は、細胞膨潤を誘導する、実施形態1E~8Eのいずれか1つの方法。実施形態10E:ヒト非関節軟骨細胞の前記サンプルは、肋骨の一部から供給される、実施形態1E~9Eのいずれか1つの方法。実施形態11E:(b)の後に、ヒト非関節軟骨細胞の前記サンプルは、(b)の前の肋骨の一部から供給される細胞の前記サンプルと比較して、非プレアポトーシス細胞のパーセンテージがより高い、実施形態1E~10Eのいずれか1つの方法。実施形態12E:(b)の後に、ヒト非関節軟骨細胞の前記サンプルは、(b)の前の肋骨の一部から供給される細胞の前記サンプルと比較して、プレアポトーシス細胞のパーセンテージがより低い、実施形態1E~10Eのいずれか1つの方法。実施形態13E:(b)の後に生成されたヒト非関節軟骨細胞の前記サンプルは、以下:細胞の直接的使用;単層、もしくは懸濁培養が挙げられる三次元環境での継代を含む細胞のインビトロ培養;自己アセンブリが挙げられる無足場系を用いるか、もしくは天然材料及び合成材料を包含する足場ベースの系を用いる組織エンジニアリング;細胞移植;組織移植;ならびに/又はグラフト化のうちの1つ又は複数に用いられる、実施形態1E~12Eのいずれか1つの方法。実施形態14E:(b)の後に、単層又は三次元環境で細胞を継代することをさらに含む、実施形態1Eの方法。実施形態15E:前記継代された細胞により新軟骨を生成することをさらに含む、実施形態14Eの方法。実施形態16E:(b)の後に生成されたヒト非関節軟骨細胞、又は前記細胞から操作/作製された組織の前記サンプルは、以下:成長因子;細胞骨格修飾剤;ホルモン;毒性化合物;シグナル伝達カスケードの上流で作用する分子;種々の酸素張力;架橋剤;マトリックス分解酵素、マトリックス分子;及び/又は機械的刺激の1つ又は複数を含む処理に供される、実施形態1E~15Eのいずれか1つの方法。
【0229】
実施形態1F:肋骨の一部から供給されるヒト細胞のサンプルを強化する方法であって:(a)非プレアポトーシス細胞及びプレアポトーシス細胞の混合集団を含む、肋骨の一部から供給されるヒト細胞のサンプルを得ることと;(b)(a)由来の肋骨の一部から供給されるヒト細胞の前記サンプルを処理に付すこととを含み;単独で、又は他の処理と組み合わせて複数回繰り返すことができる、方法。実施形態2F:肋骨の一部から供給されるヒト細胞のサンプルを調製する方法であって:(a)非プレアポトーシス細胞及びプレアポトーシス細胞の混合集団を含む、肋骨の一部から供給されるヒト細胞のサンプルを得ることと;(b)(a)由来の肋骨の一部から供給されるヒト細胞の前記サンプルを処理に付すこととを含み;単独で、又は他の処理と組み合わせて複数回繰り返すことができる、方法。実施形態3F:前記処理は、低張溶液を加えることを含む、実施形態1F又は実施形態2Fの方法。実施形態4F:肋骨の一部から供給されるヒト細胞のサンプルを強化する方法であって:(a)非プレアポトーシス細胞及びプレアポトーシス細胞の混合集団を含む、肋骨の一部から供給されるヒト細胞のサンプルを得ることと;(b)(a)由来の肋骨の一部から供給されるヒト細胞の前記サンプルを、低張溶液による処理に付すこととを含み;単独で、又は他の処理と組み合わせて複数回繰り返すことができる、方法。実施形態5F:肋骨の一部から供給されるヒト細胞のサンプルを調製する方法であって:(a)非プレアポトーシス細胞及びプレアポトーシス細胞の混合集団を含む、肋骨の一部から供給されるヒト細胞のサンプルを得ることと;(b)(a)由来の肋骨の一部から供給されるヒト細胞の前記サンプルを、低張溶液による処理に付すこととを含み;単独で、又は他の処理と組み合わせて複数回繰り返すことができる、方法。実施形態6F:前記低張溶液は、塩化アンモニウムカリウム溶解バッファ(ACKバッファ)である、実施形態3F~5Fのいずれか1つの方法。実施形態7F:肋骨の一部から供給されるヒト細胞のサンプルを強化する方法であって:(a)非プレアポトーシス細胞及びプレアポトーシス細胞の混合集団を含む、肋骨の一部から供給されるヒト細胞のサンプルを得ることと;(b)(a)由来の肋骨の一部から供給されるヒト細胞の前記サンプルを、低張溶液による処理に付すこととを含み、前記低張溶液は、塩化アンモニウムカリウム溶解バッファ(ACKバッファ)であり;単独で、又は他の処理と組み合わせて複数回繰り返すことができる、方法。実施形態8F:肋骨の一部から供給されるヒト細胞のサンプルを調製する方法であって:(a)非プレアポトーシス細胞及びプレアポトーシス細胞の混合集団を含む、肋骨の一部から供給されるヒト細胞のサンプルを得ることと;(b)(a)由来の肋骨の一部から供給されるヒト細胞の前記サンプルを、低張溶液による処理に付すこととを含み、前記低張溶液は、塩化アンモニウムカリウム溶解バッファ(ACKバッファ)であり;単独で、又は他の処理と組み合わせて複数回繰り返すことができる、方法。実施形態9F:前記処理は、細胞膨潤を誘導する、実施形態1F~8Fのいずれか1つの方法。実施形態10F:前記肋骨の前記一部から供給されるヒト細胞の前記サンプルは軟骨細胞である、実施形態1F~9Fのいずれか1つの方法。実施形態11F:前記肋骨の前記一部から供給されるヒト細胞の前記サンプルは、非関節軟骨細胞である、実施形態1F~10Fのいずれか1つの方法。実施形態12F:前記肋骨の前記一部は軟骨細胞を含む、実施形態1F~11Fのいずれか1つの方法。実施形態13F:前記軟骨細胞は非関節軟骨細胞である、実施形態12Fの方法。実施形態14F:(b)の後に、肋骨の一部から供給されるヒト細胞の前記サンプルは、(b)の前の肋骨の一部から供給されるヒト細胞の前記サンプルと比較して、非プレアポトーシス細胞のパーセンテージがより高い、実施形態1F~13Fのいずれか1つの方法。実施形態15F:(b)の後に、肋骨の一部から供給されるヒト細胞の前記サンプルは、(b)の前の肋骨の一部から供給されるヒト細胞の前記サンプルと比較して、プレアポトーシス細胞のパーセンテージがより低い、実施形態1F~13Fのいずれか1つの方法。実施形態16F:(b)の後に生成された肋骨の一部から供給されるヒト細胞の前記サンプルは、以下:細胞の直接的使用;単層、もしくは懸濁培養が挙げられる三次元環境での継代を含む細胞のインビトロ培養;自己アセンブリが挙げられる無足場系を用いるか、もしくは天然材料及び合成材料を包含する足場ベースの系を用いる組織エンジニアリング;細胞移植;組織移植;ならびに/又はグラフト化のうちの1つ又は複数に用いられる、実施形態1F~15Fのいずれか1つの方法。実施形態17F:(b)の後に、単層又は三次元環境で細胞を継代することをさらに含む、実施形態1Fの方法。実施形態18F:前記継代された細胞により新軟骨を生成することをさらに含む、実施形態17Fの方法。実施形態19F:(b)の後に生成された肋骨の一部から供給される細胞、又は前記細胞から操作/作製された組織の前記サンプルは、以下:成長因子;細胞骨格修飾剤;ホルモン;毒性化合物;シグナル伝達カスケードの上流で作用する分子;種々の酸素張力;架橋剤;マトリックス分解酵素、マトリックス分子;及び/又は機械的刺激の1つ又は複数を含む処理に供される、実施形態1F~18Fのいずれか1つの方法。
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図6C
図6D
図6E
図6F
図6G
図6H
図7
図8A
図8B
図8C
図8D
図8E
図8F
図8G
図8H
図9
図10A
図10B
図10C
図10D
図10E
図10F
図10G
図10H
図11A
図11B
図11C
図11D
図11E
図12A
図12B
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
【国際調査報告】