(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-30
(54)【発明の名称】船舶用再液化システムの漏洩検知システム
(51)【国際特許分類】
B63B 25/16 20060101AFI20240920BHJP
【FI】
B63B25/16 C
B63B25/16 D
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024521771
(86)(22)【出願日】2021-12-27
(85)【翻訳文提出日】2024-04-10
(86)【国際出願番号】 KR2021019905
(87)【国際公開番号】W WO2023075024
(87)【国際公開日】2023-05-04
(31)【優先権主張番号】10-2021-0147144
(32)【優先日】2021-10-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517430897
【氏名又は名称】ハンファ オーシャン カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000305
【氏名又は名称】弁理士法人青莪
(72)【発明者】
【氏名】ソン,ジフン
(72)【発明者】
【氏名】チェ,ウォン ジェ
(72)【発明者】
【氏名】リー,スン チョル
(57)【要約】
船舶用再液化システムの漏洩検知システムが開示される。本発明の漏洩検知システムは、貯蔵タンクに貯蔵される液化ガスから発生した蒸発ガスを圧縮機に供給するガス供給ラインと、圧縮機で圧縮された圧縮ガスを熱交換器で冷却して再液化させて貯蔵タンクに戻す再液化ラインと、熱交換器で圧縮ガスを冷却する冷媒が循環する冷媒循環ラインと、熱交換器で圧縮ガスを冷却した後に熱交換器から排出された冷媒を圧縮する冷媒圧縮機と、冷媒圧縮機で圧縮された後に熱交換器に供給されて冷却された冷媒を膨張させて冷却して、熱交換器に冷媒として供給する冷媒膨張機と、窒素ガスが充填されるインベントリタンクと冷媒循環ラインの冷媒圧縮機より上流側とを接続する冷媒充填ラインとを備える。再液化工程の初期始動時または再始動時に、冷媒充填ラインより窒素ガスを、冷媒循環ラインの冷媒圧縮機より上流側に供給して、冷媒循環ラインの漏洩の有無を確認する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
船舶の貯蔵タンクに貯蔵される液化ガスから発生した蒸発ガスを、圧縮機に供給するガス供給ライン;と、
前記圧縮機で蒸発ガスが圧縮された圧縮ガスを、熱交換器で冷却して再液化させて貯蔵タンクに戻す再液化ライン;と、
前記熱交換器で前記圧縮ガスを冷却する冷媒が循環する冷媒循環ライン;と、
前記冷媒循環ラインに設けられて、前記熱交換器で前記圧縮ガスを冷却した後に前記熱交換器から排出された冷媒を、圧縮する冷媒圧縮機;と、
前記冷媒圧縮機で圧縮された後に前記熱交換器に供給されて冷却された冷媒を、膨張させて冷却して、前記熱交換器に冷媒として供給する冷媒膨張機;と、
窒素ガスが充填されるインベントリタンクと前記冷媒循環ラインの前記冷媒圧縮機より上流側とを接続する冷媒充填ライン;とを備え、
再液化工程の初期始動時または再始動時に、前記冷媒充填ラインより窒素ガスを、前記冷媒循環ラインの前記冷媒圧縮機より上流側に供給して、前記冷媒循環ラインの漏洩の有無を確認することを特徴とする、
船舶用再液化システムの漏洩検知システム。
【請求項2】
前記冷媒循環ラインの前記冷媒充填ラインとの接続点より上流側に設けられる第1バルブ;と、
前記冷媒循環ラインの前記冷媒膨張機と前記熱交換器との間で、前記第1バルブより上流側に設けられる第2バルブ;と、
前記冷媒充填ラインに設けられる第3バルブ;とをさらに備えることを特徴とする、
請求項1に記載の船舶用再液化システムの漏洩検知システム。
【請求項3】
前記第1及び第2バルブを閉鎖し、前記第3バルブを開放して、前記冷媒循環ラインに窒素ガスを供給し、前記冷媒循環ラインの前記冷媒圧縮機より上流側の低圧部から前記冷媒膨張機より下流側の低圧部までの部分の漏洩の有無を確認した後、前記第1及び第2バルブを開放して、前記冷媒循環ラインに窒素冷媒を充填すると共に、前記冷媒循環ラインの前記冷媒膨張機より下流側の低圧部から冷媒圧縮機より上流側の低圧部までの部分の漏洩の有無を確認することを特徴とする、
請求項2に記載の船舶用再液化システムの漏洩検知システム。
【請求項4】
前記ガス供給ラインは、前記熱交換器を介して前記圧縮機に接続され、
前記ガス供給ラインの前記熱交換器より上流側に設けられる第4バルブ;と、
前記ガス供給ラインの前記熱交換器と前記圧縮機との間に設けられる第5バルブ;とをさらに備え、
再液化工程の初期始動時または再始動時に、前記第4及び第5バルブを閉鎖して、前記冷媒循環ラインの漏洩確認と並行して、前記ガス供給ラインを介して蒸発ガスが通過する熱交換器の低圧部の漏洩の有無を確認することを特徴とする、
請求項2に記載の船舶用再液化システムの漏洩検知システム。
【請求項5】
前記ガス供給ラインの前記第4バルブより上流側で前記ガス供給ラインから分岐して、前記ガス供給ラインの前記第4バルブと前記熱交換器との間に接続される予熱ライン;と、
前記予熱ラインに設けられて、前記予熱ラインを通過する蒸発ガスを加熱する予熱器;と、
前記予熱ラインの前記予熱器より下流側に設けられる第6バルブ;と、
前記予熱ラインの前記予熱器と前記第6バルブとの間から分岐し、前記熱交換器を迂回して前記ガス供給ラインの前記圧縮機より上流側に接続されるラインに設けられる、第7バルブとをさらに備える、
請求項4に記載の船舶用再液化システムの漏洩検知システム。
【請求項6】
前記再液化ラインの前記熱交換器より下流側に設けられて、再液化ガスを気液分離する気液分離器;と、
前記再液化ラインの前記熱交換器より下流側から分岐し、前記気液分離器を迂回して貯蔵タンクに接続されるバイパスライン;と、
前記再液化ラインの前記熱交換器より上流側に設けられる第8バルブ;と、
前記再液化ラインの前記バイパスラインの分岐点と前記気液分離器との間に設けられる第9バルブ;と、
前記バイパスラインに設けられる第10バルブ;とをさらに備え、
再液化工程の初期始動時または再始動時に、前記第8乃至第10バルブを閉鎖して、前記冷媒循環ラインの漏洩確認と並行して、前記再液化ラインを介して前記圧縮ガスが通過する前記熱交換器の高圧部の漏洩の有無を確認することを特徴とする、
請求項4に記載の船舶用再液化システムの漏洩検知システム。
【請求項7】
前記再液化ラインの前記圧縮機と前記熱交換器との間で前記再液化ラインから分岐して、前記気液分離器の上部に接続される圧力補償ライン;と、
前記圧力補償ラインに接続され、前記圧力補償ラインに窒素ガスを供給する窒素ブランケットライン;と、
前記圧力補償ラインの前記窒素ブランケットラインとの接続点より上流側に設けられる第11バルブ;と、
前記窒素ブランケットラインに設けられる第12バルブ;と、
前記圧力補償ラインの窒素ブランケットラインとの接続点より下流側に設けられる第13バルブ;とをさらに備え、
前記圧力補償ラインより蒸発ガスまたは窒素ガスを供給することで、前記気液分離器内の圧力が調整されることを特徴とする、
請求項6に記載の船舶用再液化システムの漏洩検知システム。
【請求項8】
前記第8乃至第10バルブ及び第13バルブを閉鎖し、前記第11及び第12バルブを開放して、前記窒素ブランケットラインより窒素ガスを供給し、前記再液化ラインを介して前記圧縮ガスが前記熱交換器を通過する熱交換器の高圧部の漏洩の有無を確認することを特徴とする、
請求項7に記載の船舶用再液化システムの漏洩検知システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、船舶用再液化システムの漏洩検知システムに関する。より詳細には、船舶に設けられる貯蔵タンクで発生する蒸発ガスを再液化させる再液化システムに関し、再液化システムの初期始動時や再始動時に、熱交換器からの冷媒等の漏洩を検知する漏洩検知システムに関する。
【背景技術】
【0002】
天然ガス(Natural gas)は、メタン(Methane)を主成分とし、燃焼時に環境汚染物質を殆ど排出しないことから、環境性に優れた燃料として注目されている。液化天然ガス(LNG; Liquefied Natural Gas)は、天然ガスを常圧で約-163℃に冷却して液化させて得られるものである。液化天然ガスは、気体状態の天然ガスと比べて、その体積が約1/600まで減少することから、海上ルートを利用した長距離輸送に非常に適している。このような理由から、天然ガスは、主に貯蔵や輸送に有利なLNGの液体状態で、貯蔵されて輸送される。
【0003】
天然ガスの液化点は常圧で約-163℃と極低温であることから、LNG貯蔵タンクには、通常、LNGを液体状態で維持するための断熱処理が施されるが、LNG貯蔵タンクに断熱処理を施しても、外部熱を完全に遮断することは難しい。このため、外部熱がLNG貯蔵タンクに継続して伝達されることで、LNG輸送の過程でLNG貯蔵タンク内のLNGが自然気化し、蒸発ガス(BOG;Boil-Off Gas、ボイルオフガス)が発生する。
【0004】
LNG貯蔵タンク内で蒸発ガスが継続して発生すると、LNG貯蔵タンク内の圧力が上昇する。そして、貯蔵タンク内の圧力が設定した安全圧力以上になると、タンク破損(Rupture)等の緊急事態が生じる恐れがあるため、安全バルブを利用して蒸発ガスを貯蔵タンクの外部に排出させる必要がある。しかし、蒸発ガスはLNG損失の1つであり、LNGの輸送効率及び燃料効率の点で重要な問題となることから、貯蔵タンクで発生した蒸発ガスを処理する様々な方法が用いられている。
【0005】
近年、船舶のエンジン等の燃料需要先で蒸発ガスを使用する方法、蒸発ガスを再液化させて貯蔵タンクに回収する方法、または、これら2つの方法を組合せて使用する方法等が開発され、用いられている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
蒸発ガスを再液化させる再液化サイクルを船舶に適用する場合、代表的な再液化サイクルとして、例えばSMRサイクルやC3MRサイクルが知られている。C3MRサイクル(Propane-precooled Mixed Refrigerant Cycle)は、プロパンの単一冷媒を用いて蒸発ガスを冷却した後、混合冷媒を用いて冷却して再液化させ、また、SMRサイクル(Single Mixed Refrigerant Cycle)は、複数の成分から構成される混合冷媒を用いて蒸発ガスを再液化させる。
【0007】
これらSMRサイクルやC3MRサイクルは、混合冷媒が用いられ、液化工程の進行に伴い冷媒が漏洩する。これにより、混合冷媒の組成比が変化することで液化効率が低下するため、混合冷媒の組成比を継続して計測すると共に、不足した冷媒成分を補充することで、冷媒の組成を維持する必要がある。
【0008】
また、再液化サイクルを利用する他の再液化方法として、窒素冷媒が用いられるシングルサイクルの再液化方法が知られている。
【0009】
窒素冷媒は、混合冷媒を用いる冷凍サイクルと比較して、冷却効率は低いが、窒素冷媒は不活性物質であることから安全性が高く、また冷媒の相変化が生じないことから、船舶に適用し易いという利点がある。
【0010】
再液化システムは、蒸発ガスが供給されて、これを圧縮する圧縮機と、圧縮機で圧縮された圧縮ガスを冷媒との熱交換により冷却する熱交換器と、熱交換器で圧縮ガスとの熱交換に用いられる冷媒が循環する冷媒循環部とを備える。また、窒素冷媒を用いる冷凍サイクルが利用される再液化システムの場合、冷媒循環部では、熱交換器での熱交換後に熱交換器から排出された窒素冷媒が圧縮された後、熱交換器に供給されて冷却され、膨張によりさらに冷却された後、熱交換器に再び供給されて、窒素冷媒が循環する。
【0011】
このように再液化システム、特に熱交換器には、極低温の蒸発ガス(LNG)や蒸発ガスよりも低温の窒素冷媒が供給されるが、熱交換器の損傷等により極低温の可燃性物質の漏洩が発生すると、船員や船舶の安全に重大な危険を及ぼす恐れがある。
【0012】
再液化システムの運転中は、熱交換器と接続する各ラインの上流側や下流側に設置される圧力センサの警告信号により、冷媒や可燃性物質等の漏洩が即時に確認される。しかし、再液化システムの初期始動時や再液化システム停止後の再始動時には、圧力センサにより冷媒等の漏洩を検知できず、漏洩を独自に確認できる装置や指針等がない場合には、漏洩の発見が遅れるという問題があった。
【0013】
本発明は、このような問題を解決し、再液化システムの初期始動時や再始動時にも、熱交換器からの冷媒等の漏洩を迅速に確認でき、船舶の安全を確保する方法を提案する。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するため本発明の実施形態では、船舶の貯蔵タンクに貯蔵される液化ガスから発生した蒸発ガスを、圧縮機に供給するガス供給ラインと、前記圧縮機で蒸発ガスが圧縮された圧縮ガスを、熱交換器で冷却して再液化させて貯蔵タンクに戻す再液化ラインと、前記熱交換器で前記圧縮ガスを冷却する冷媒が循環する冷媒循環ラインと、前記冷媒循環ラインに設けられて、前記熱交換器で前記圧縮ガスを冷却した後に前記熱交換器から排出された冷媒を、圧縮する冷媒圧縮機と、前記冷媒圧縮機で圧縮された後に前記熱交換器に供給されて冷却された冷媒を、膨張させて冷却して、前記熱交換器に冷媒として供給する冷媒膨張機と、窒素ガスが充填されるインベントリタンクと前記冷媒循環ラインの前記冷媒圧縮機より上流側とを接続する冷媒充填ラインとを備え、再液化工程の初期始動時または再始動時に、前記冷媒充填ラインより窒素ガスを、前記冷媒循環ラインの前記冷媒圧縮機より上流側に供給して、前記冷媒循環ラインの漏洩の有無を確認することを特徴とする、船舶用再液化システムの漏洩検知システムが提供される。
【0015】
また、好ましくは、前記冷媒循環ラインの前記冷媒充填ラインとの接続点より上流側に設けられる第1バルブと、前記冷媒循環ラインの前記冷媒膨張機と前記熱交換器との間で、前記第1バルブより上流側に設けられる第2バルブと、前記冷媒充填ラインに設けられる第3バルブとをさらに備える。
【0016】
また、好ましくは、前記第1及び第2バルブを閉鎖し、前記第3バルブを開放して、前記冷媒循環ラインに窒素ガスを供給し、前記冷媒循環ラインの前記冷媒圧縮機より上流側の低圧部から前記冷媒膨張機より下流側の低圧部までの部分の漏洩の有無を確認した後、前記第1及び第2バルブを開放して、前記冷媒循環ラインに窒素冷媒を充填すると共に、前記冷媒循環ラインの前記冷媒膨張機より下流側の低圧部から冷媒圧縮機より上流側の低圧部までの部分の漏洩の有無を確認する。
【0017】
また、好ましくは、前記ガス供給ラインは、前記熱交換器を介して前記圧縮機に接続され、前記ガス供給ラインの前記熱交換器より上流側に設けられる第4バルブと、前記ガス供給ラインの前記熱交換器と前記圧縮機との間に設けられる第5バルブ;をさらに備え、再液化工程の初期始動時または再始動時に、前記第4及び第5バルブを閉鎖して、前記冷媒循環ラインの漏洩確認と並行して、前記ガス供給ラインを介して蒸発ガスが通過する熱交換器の低圧部の漏洩の有無を確認する。
【0018】
また、好ましくは、前記ガス供給ラインの前記第4バルブより上流側で前記ガス供給ラインから分岐して、前記ガス供給ラインの前記第4バルブと前記熱交換器との間に接続される予熱ラインと、前記予熱ラインに設けられて、前記予熱ラインを通過する蒸発ガスを加熱する予熱器と、前記予熱ラインの前記予熱器より下流側に設けられる第6バルブと、前記予熱ラインの前記予熱器と前記第6バルブとの間から分岐し、前記熱交換器を迂回して前記ガス供給ラインの前記圧縮機より上流側に接続されるラインに設けられる、第7バルブとをさらに備える。
【0019】
また、好ましくは、前記再液化ラインの前記熱交換器より下流側に設けられて、再液化ガスを気液分離する気液分離器と、前記再液化ラインの前記熱交換器より下流側から分岐し、前記気液分離器を迂回して貯蔵タンクに接続されるバイパスラインと、前記再液化ラインの前記熱交換器より上流側に設けられる第8バルブと、前記再液化ラインの前記バイパスラインの分岐点と前記気液分離器との間に設けられる第9バルブと、前記バイパスラインに設けられる第10バルブとをさらに備え、再液化工程の初期始動時または再始動時に、前記第8乃至第10バルブを閉鎖して、前記冷媒循環ラインの漏洩確認と並行して、前記再液化ラインを介して前記圧縮ガスが通過する前記熱交換器の高圧部の漏洩の有無を確認する。
【0020】
また、好ましくは、前記再液化ラインの前記圧縮機と前記熱交換器との間で前記再液化ラインから分岐して、前記気液分離器の上部に接続される圧力補償ラインと、前記圧力補償ラインに接続され、前記圧力補償ラインに窒素ガスを供給する窒素ブランケットラインと、前記圧力補償ラインの前記窒素ブランケットラインとの接続点より上流側に設けられる第11バルブと、前記窒素ブランケットラインに設けられる第12バルブと、前記圧力補償ラインの窒素ブランケットラインとの接続点より下流側に設けられる第13バルブとをさらに備え、前記圧力補償ラインより蒸発ガスまたは窒素ガスを供給することで、前記気液分離器内の圧力が調整される。
【0021】
また、好ましくは、前記第8乃至第10バルブ及び第13バルブを閉鎖し、前記第11及び第12バルブを開放して、前記窒素ブランケットラインより窒素ガスを供給し、前記再液化ラインを介して前記圧縮ガスが前記熱交換器を通過する熱交換器の高圧部の漏洩の有無を確認する。
【発明の効果】
【0022】
本発明は、再液化システムの初期始動時や再始動時の冷媒循環ラインに冷媒を充填する工程で、熱交換器や熱交換器と接続する各ラインからの冷媒等の漏洩を迅速に確認することができる。
【0023】
また、本発明の漏洩検知システムは、漏洩を検知するために、他の設備等を追加して設置する必要なく、再液化システムや漏洩検知システムの設置費用を削減することができる。また、熱交換器と接続する各ラインに設けられるバルブの開閉操作により、冷媒循環ラインに冷媒を充填する工程中に、熱交換器や熱交換器と接続する各ラインからの冷媒等の漏洩を確認できるため、再液化システムの始動準備時間を短縮すると共に、船舶の安全が確保される。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明の実施形態の船舶用再液化システムの漏洩検知システムにより、熱交換器及び熱交換器と接続する各ラインからの冷媒等の漏洩を検知する工程を模式的に示す。
【
図2】本発明の実施形態の船舶用再液化システムの漏洩検知システムにより、熱交換器及び熱交換器と接続する各ラインからの冷媒等の漏洩を検知する工程を模式的に示す。
【
図3】本発明の実施形態の船舶用再液化システムの漏洩検知システムにより、熱交換器及び熱交換器と接続する各ラインからの冷媒等の漏洩を検知する工程を模式的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面及び図面に記載した内容を参照して、本発明の動作上の利点及び本発明の実施形態により達成される目的を、本発明の実施形態を例に説明する。
【0026】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態の構成及び作用について説明する。なお、各図面の構成要素に付した参照符号について、同一の構成要素には、他の図面上に表示されるものにも可能な限り同一の符号を表記する。
【0027】
後述する本発明の実施形態の船舶としては、液化ガスを貯蔵する貯蔵タンクが設けられる全種類の船舶であり得る。代表的なものとしては、LNG運搬船(LNG Carrier)、液体水素運搬船、LNG RV(Regasification Vessel)等の自走能力を備える船舶をはじめ、LNG FPSO(Floating Production Storage Offloading)、LNG FSRU(Floating Storage Regasification Unit)等の推進能力を有しない海上浮遊式の海上構造物である。
【0028】
また、本実施形態は、ガスを低温で液化させて輸送でき、貯蔵時に蒸発ガスが発生する全種類の液化ガスの再液化サイクルに適用することができる。このような液化ガスとしては、例えば、LNG(Liquefied Natural Gas)、LEG(Liquefied Ethane Gas)、LPG(Liquefied Petroleum Gas)、液化エチレンガス(Liquefied Ethylene Gas)、液化プロピレンガス(Liquefied Propylene Gas)等の液化ガスがある。なお、後述する実施形態では、代表的な液化ガスの1つであるLNGを例に説明する。
【0029】
図1乃至
図3には、本発明の実施形態の船舶用再液化システムの漏洩検知システムにより、熱交換器及び熱交換器と接続する各ラインからの冷媒等の漏洩を検知する工程を模式的に示している。
【0030】
本実施形態の漏洩検知システムを備える船舶用再液化システムは、船舶の貯蔵タンクに貯蔵される液化ガスから発生した蒸発ガスを、ベイパーヘッダー(Vapor header)VHから排出し、排出された蒸発ガスを船内エンジンに燃料として供給する。そして、燃料として供給されずに残った蒸発ガスを再液化させて、貯蔵タンクCTに回収する。
【0031】
図1乃至
図3に示すように、本実施形態の漏洩検知システムが設けられる再液化システムには、ベイパーヘッダーVHと圧縮機100とを接続して、貯蔵タンクCTから排出された蒸発ガスを圧縮機100に供給するガス供給ラインGSLと、圧縮機100で蒸発ガスが圧縮された圧縮ガスを熱交換器200で冷却して再液化させて、貯蔵タンクCTに回収する再液化ラインRLと、熱交換器200で圧縮ガスを冷却する冷媒が循環する冷媒循環ラインCLとが設けられている。
【0032】
冷媒循環ラインCLには、熱交換器200で圧縮ガスを冷却した後、熱交換器200から排出される冷媒を圧縮する冷媒圧縮機300と、冷媒圧縮機300で圧縮された後、熱交換器200で冷却された冷媒を膨張させて冷却し、熱交換器200に冷媒として供給する冷媒膨張機350とが設けられている。また、船内には、窒素ガスが貯蔵されるインベントリタンクが設けられており、インベントリタンクと冷媒循環ラインCLの冷媒圧縮機300より上流側とを、冷媒充填ラインNLが接続する。
【0033】
ガス供給ラインGSLは、貯蔵タンクと圧縮機100とを熱交換器200を介して接続する。ガス供給ラインGSLにより、貯蔵タンクCTから排出されて、圧縮機100に供給される前の非圧縮の蒸発ガスが、熱交換器200に冷媒として供給された後、圧縮機100に供給されて圧縮される。
【0034】
圧縮機100で、蒸発ガスは、例えば船舶の主エンジンの燃料供給圧力まで圧縮される。例えば、DFエンジンが設けられる場合には5.5bargの圧力、X-DFエンジンが設けられる場合には15bargの圧力、ME-GIエンジンが設けられる場合には300bargの圧力まで圧縮される。圧縮された蒸発ガスは、船舶の主エンジン(図示せず)に燃料として供給され、燃料として供給されずに残った蒸発ガスが再液化される。
【0035】
ところで、船舶に関する規定によれば、エンジンに燃料を供給する圧縮機は、緊急事態に備えて冗長設計(Redundancy)することが求められる。なお、本実施形態では、主に1台の圧縮機を例に説明するが、圧縮機は、主圧縮機と予備圧縮機とを備えるように構成してもよい。また、圧縮機は、複数の圧縮部と中間冷却器とを備える多段圧縮機を用いることもできる。
【0036】
圧縮機100で圧縮された蒸発ガスは、再液化ラインRLにより熱交換器200に供給されて、熱交換器200で冷却される。
【0037】
再液化ラインRLには、圧縮機100で圧縮された蒸発ガスを冷却する熱交換器200と、熱交換器200で冷却された蒸発ガスを気液分離し、分離された液化ガスを貯蔵タンクCTに供給する気液分離器400とが設けられている。
【0038】
圧縮された蒸発ガスは、熱交換器200で冷媒循環ラインCLを循環する冷媒により冷却される。冷媒循環ラインCLには、熱交換器200に供給される冷媒が、膨張して冷却される冷媒膨張機350と、熱交換器200で蒸発ガスを冷却した後、熱交換器200から排出された冷媒を圧縮する冷媒圧縮機300とが設けられている。冷媒圧縮機300と冷媒膨張機350とは、シャフトを介して接続され、冷媒の膨張エネルギーを冷媒の圧縮に利用するコンパンダ式のものが設けられる。これにより、冷凍サイクルを駆動するために必要な電力を削減できる。
【0039】
冷媒循環ラインCLを循環して熱交換器200に供給される冷媒としては、例えば窒素冷媒(N2)が用いられる。
【0040】
冷媒圧縮機300で圧縮された窒素冷媒は、熱交換器200で冷却された後、冷媒膨張機350で膨張により冷却され、熱交換器200に冷媒として再び供給され、冷媒循環ラインCLを循環する。これにより、熱交換器200では、圧縮機100で圧縮された蒸発ガス、圧縮機100に供給される前の非圧縮の蒸発ガス、冷媒膨張機350で膨張により冷却された窒素冷媒及び、冷媒圧縮機300で圧縮された窒素冷媒の4つの流れが熱交換される。
【0041】
また、ガス供給ラインGSLの熱交換器200よりも上流側には、熱交換器200にかかる熱応力を最小限に抑えるために、熱交換器200に供給される蒸発ガスの温度を調節する予熱ラインPHLが設けられている。
【0042】
予熱ラインPHLは、ガス供給ラインGSLの熱交換器200より上流側で、ガス供給ラインGSLから分岐して、蒸発ガスの全部または一部を加熱し、加熱された蒸発ガスを、ガス供給ラインGSLの熱交換器200より上流側に供給する。予熱ラインPHLには、蒸発ガスを加熱する予熱器250が設けられている。なお、予熱器250の熱源として、例えば、グリコールウォーター、スチーム、海水や清水(真水)等が供給される。
【0043】
予熱ラインPHLを通過した蒸発ガスは、予熱ラインPHLに供給されずガス供給ラインGSLを通過する蒸発ガスと合流し、熱交換器200に供給される。熱交換器200に供給された蒸発ガスは、圧縮機100で圧縮された後、熱交換器200に再び供給され、冷媒循環ラインCLを流れる窒素冷媒及びガス供給ラインGSLを流れる非圧縮の蒸発ガスとの熱交換により冷却される。
【0044】
熱交換器200で冷却された蒸発ガスは、気液分離器400で気液分離され、分離された再液化ガスが貯蔵タンクCTに供給される。また、再液化ラインRLの熱交換器200より下流側には、再液化ラインRLから分岐し、気液分離器400を迂回して貯蔵タンクCTに接続されるバイパスラインBLが設けられている。バイパスラインBLにより、熱交換器200で冷却された再液化ガスを、貯蔵タンクCTに直接供給することもできる。
【0045】
ここで、気液分離器400内の再液化ガスを貯蔵タンクCTに供給するために、気液分離器400より下流側に設けられるバルブを開放すると、気液分離器400内の圧力が変化する。このような場合でも、気液分離器400内に供給された再液化ガスから発生するフラッシュガス(すなわちオフガス)により、気液分離器400内の圧力を維持することで、気液分離器400内の再液化ガスを貯蔵タンクCTに供給することができる。
【0046】
このとき、窒素冷媒との熱交換により冷却された液化ガスが、過冷却となって気液分離器400に供給される場合、オフガスが殆ど発生せず、気液分離器400より下流側のバルブを開放すると、気液分離器400内の圧力が急激に低下する恐れがある。そのような場合でも、気液分離器400内の圧力を補償して、気液分離器400内の圧力を維持できるよう、本実施形態の漏洩検知システムが設けられる再液化システムには、再液化ラインRLの圧縮機100より下流側で、再液化ラインRLから分岐して、気液分離器400の上部に接続される圧力補償ラインPLと、圧力補償ラインPLに窒素ガスを供給する窒素ブランケットラインBKLとが設けられている。これにより、気液分離器400内の再液化ガスを貯蔵タンクCTに供給する場合に、圧力補償ラインPLより蒸発ガスまたは窒素ガスを気液分離器400に供給することで、気液分離器400内の圧力が維持される。
【0047】
本実施形態の漏洩検知システムが設けられる再液化システムでは、再液化工程の初期始動時や再液化工程停止後の再始動時、再液化工程の始動に先立って、再液化システムの冷媒循環ラインCLに窒素冷媒を充填する必要がある。
【0048】
冷媒循環ラインCLに窒素冷媒を充填する場合には、冷媒充填ラインNLより、窒素冷媒が、冷媒循環ラインCLの冷媒圧縮機300より上流側に供給される。本実施形態では、このような冷媒循環ラインCLに冷媒を充填する工程で、熱交換器200及び熱交換器200と接続する各ラインからの冷媒等の漏洩を同時に検知することができる。これにより、再液化工程を始動するために必要な準備時間を短縮すると共に、船舶の安全が確保される。
【0049】
再液化システムには、各ライン(配管)を開閉するためのバルブが設けられており、本実施形態では、これらのバルブの開閉を操作することで、冷媒循環ラインCLに冷媒を充填する工程中、熱交換器200及び熱交換器200と接続する各ライン(配管)からの冷媒等の漏洩を確認することができる。
【0050】
これらのバルブに関し、
図1乃至
図3に示すように、冷媒循環ラインCLの冷媒充填ラインNLとの接続点より上流側に、第1バルブV1が設けられている。また、冷媒循環ラインCLの冷媒膨張機350と熱交換器200との間には、第2バルブV2が設けられている。また、冷媒充填ラインNLには、第3バルブV3が設けられている。
【0051】
ガス供給ラインGSLの熱交換器200より上流側には、第4バルブV4が設けられている。また、ガス供給ラインGSLの熱交換器200より下流側で圧縮機100より上流側(すなわち、熱交換器200と圧縮機100との間)には、第5バルブV5が設けられている。また、予熱ラインPHLは、ガス供給ラインGSLの第4バルブV4より上流側で、ガス供給ラインGSLから分岐する。また、予熱ラインPHLの予熱器250より下流側には、第6バルブV6が設けられている。また、予熱ラインPHLの予熱器250より下流側で分岐し、熱交換器200を迂回して、ガス供給ラインGSLの圧縮機100より上流側に接続されるラインには、第7バルブV7が設けられている。
【0052】
再液化ラインRLの熱交換器200より上流側には、第8バルブV8が設けられている。また、再液化ラインRLの気液分離器400より上流側には、第9バルブV9が設けられている。また、再液化ラインRLの第9バルブV9より上流側から分岐したバイパスラインBLには、第10バルブV10が設けられている。
【0053】
圧力補償ラインPLの窒素ブランケットラインBKLとの接続点より上流側には、第11バルブV11が設けられている。また、窒素ブランケットラインBKLには、第12バルブV12が設けられている。また、圧力補償ラインPLの窒素ブランケットラインBKLとの接続点より下流側には、第13バルブV13が設けられている。
【0054】
以下、
図1乃至
図3を参照して、再液化工程の初期始動時または再液化工程停止後の再始動時に、熱交換器200及び熱交換器200と接続する各ラインからの冷媒等の漏洩を検知する方法について説明する。
【0055】
まず、
図1に示すように、再液化工程の初期始動時または再液化工程停止後の再始動時には、再液化工程の始動に先立って、インベントリタンク内に貯蔵される窒素ガスが、冷媒循環ラインCLに窒素冷媒として充填される。
【0056】
このとき、第1及び第2バルブV1,V2を閉鎖し、第3バルブV3を開放して、冷媒充填ラインNLよりインベントリタンク内の窒素ガスを、冷媒循環ラインCLの冷媒圧縮機300より上流側から冷媒循環ラインCLに供給し、まずは、冷媒循環ラインCLの冷媒圧縮機300より下流側の高圧部から冷媒膨張機350より下流側の低圧部までの間の部分からの窒素冷媒の漏洩の有無を確認する。
【0057】
また、冷媒循環ラインCLの漏洩検知と並行して、第4及び第5バルブV4,V5を閉鎖して、ガス供給ラインGSLを介して蒸発ガスが通過する熱交換器200の低圧部からの漏洩の有無を確認することができ、また、第8乃至第10バルブV8,V9,V10を閉鎖して、再液化ラインRLを介して蒸発ガスが通過する熱交換器200の高圧部からの漏洩の有無を確認することができる。また、このとき、第6及び第7バルブV6,V7並びに第11乃至第13バルブV11,V12,V13を閉鎖する。
【0058】
図1に示す、冷媒循環ラインCLの冷媒圧縮機300より下流側の高圧部から冷媒膨張機350より下流側の低圧部までの間を含む、第1バルブV1が設けられる位置から第2バルブV2が設けられる位置までの部分の漏洩検知が完了すると、次に、第1及び第2バルブV1,V2を開放して、
図2に示す冷媒循環ラインCLの残りの部分の漏洩の有無を確認する。
【0059】
具体的には、第1及び第2バルブV1,V2を開放し、冷媒循環ラインCLに窒素冷媒を充填して、冷媒循環ラインCLを介して窒素冷媒が通過する熱交換器200の低温部を含む、冷媒膨張機350より下流側の低圧部から冷媒圧縮機300より上流側の低圧部までの間の部分からの窒素冷媒の漏洩の有無を確認する。
【0060】
なお、上述したように冷媒循環ラインCLの漏洩検知と並行して、第4及び第5バルブV4,V5や第8乃至第10バルブV8,V9,V10を閉鎖することで、ガス供給ラインGSLを介して蒸発ガスが通過する熱交換器200の低圧部や、再液化ラインRLを介して蒸発ガスが通過する熱交換器200の高圧部からの漏洩の有無を確認することができる。
【0061】
また、冷媒循環ラインCLの漏洩検知が完了すると、冷媒循環ラインCLへの窒素冷媒の充填を継続すると共に、窒素ブランケットラインBKLより気液分離器400に圧力補償用の窒素ガスを充填して、再液化ラインRLを介して再液化される圧縮ガスが通過する熱交換器200の高圧部からの窒素ガスの漏洩の有無を確認する。
【0062】
具体的には、
図3に示すように、第8乃至第10バルブV8,V9,V10及び第13バルブV13を閉鎖し、第11及び第12バルブV11,V12を開放して、窒素ブランケットラインBKLより窒素ガスを供給し、再液化ラインRLの熱交換器200より上流側に窒素ガスを送り、再液化ラインRLを介して再液化される圧縮ガスが通過する熱交換器200の高圧部からの、窒素ガスの漏洩の有無を確認する。
【0063】
熱交換器200の高圧部の漏洩検知が完了すると、窒素ガスを気液分離器400に供給し、圧力補償用の窒素ガスとして気液分離器400に充填する。
【0064】
以上、本実施形態の漏洩検知システムでは、再液化工程の初期始動や再始動に先立って行わる冷媒循環ラインCLへの冷媒の充填工程で、各ラインに設けられるバルブの開閉を操作することで、熱交換器200及び熱交換器200と接続する各ラインの漏洩を同時に検知することができる。これにより、再液化工程の始動準備時間を短縮すると共に、船舶の安全が確保される。
【0065】
本発明は、上記実施形態に限定されず、本発明の技術的要旨を超えない範囲内で様々な変更または変形ができることは、本発明が属する技術分野の当業者にとって自明である。
【国際調査報告】