(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-30
(54)【発明の名称】電池用正極活物質複合体、二次電池電極及び二次電池
(51)【国際特許分類】
H01M 4/38 20060101AFI20240920BHJP
H01M 4/36 20060101ALI20240920BHJP
H01M 4/505 20100101ALI20240920BHJP
H01M 4/525 20100101ALI20240920BHJP
H01M 4/58 20100101ALI20240920BHJP
【FI】
H01M4/38 Z
H01M4/36 C
H01M4/505
H01M4/525
H01M4/58
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024521772
(86)(22)【出願日】2022-09-07
(85)【翻訳文提出日】2024-04-09
(86)【国際出願番号】 KR2022013488
(87)【国際公開番号】W WO2023063588
(87)【国際公開日】2023-04-20
(31)【優先権主張番号】10-2021-0137901
(32)【優先日】2021-10-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515068085
【氏名又は名称】ドンジン セミケム カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】DONGJIN SEMICHEM CO., LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100139594
【氏名又は名称】山口 健次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100194973
【氏名又は名称】尾崎 祐朗
(72)【発明者】
【氏名】アン ウヒョン
(72)【発明者】
【氏名】キム スンドゥ
(72)【発明者】
【氏名】イム チャンヒョク
(72)【発明者】
【氏名】イ ジュチョル
(72)【発明者】
【氏名】ヤン フィチャン
【テーマコード(参考)】
5H050
【Fターム(参考)】
5H050AA02
5H050AA07
5H050AA12
5H050BA08
5H050BA09
5H050BA13
5H050BA14
5H050BA16
5H050BA17
5H050CA01
5H050CA08
5H050CA09
5H050DA09
5H050FA17
5H050FA18
5H050GA02
5H050GA10
5H050GA22
5H050HA01
5H050HA04
5H050HA05
5H050HA07
5H050HA20
(57)【要約】
本発明は、還元された酸化グラフェンがコーティングされた電池用正極活物質複合体に関し、具体的に正極活物質を含むコア部と、前記コア部を取り囲むように形成されたシェル部とを含み、シェル部は、1層以上の還元された酸化グラフェン(rGO)を含んて、電子伝導性とエネルギー密度に優れた二次電池具現が可能な正極活物質複合体に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極活物質を含むコア部と、
前記コア部を取り囲むように形成されたシェル部とを含み、
前記シェル部は、1層以上の還元された酸化グラフェン(rGO)を含む、電池用正極活物質複合体。
【請求項2】
前記シェル部の平均厚さは、3nm~31nmである、請求項1に記載の電池用正極活物質複合体。
【請求項3】
前記シェル部の厚さ偏差は、シェル部の平均厚さの55%以内である、請求項1に記載の電池用正極活物質複合体。
【請求項4】
前記還元された酸化グラフェンは、酸化グラフェン対比2~12重量%の酸素(O)を含む、請求項1に記載の電池用正極活物質複合体。
【請求項5】
前記還元された酸化グラフェンの縦横比(長軸/厚さの比)は、500~20,000である、請求項1に記載の電池用正極活物質複合体。
【請求項6】
BET比表面積が0.3m
2/g~5m
2/gである、請求項1に記載の電池用正極活物質複合体。
【請求項7】
前記還元された酸化グラフェンは、ドライコーティングされて一つ以上の層を形成し前記シェル部に含まれた、請求項1に記載の電池用正極活物質複合体。
【請求項8】
前記還元された酸化グラフェンは、メカノフュージョン(Mechano-fusion)装置を利用してドライコーティングされた、請求項7に記載の電池用正極活物質複合体。
【請求項9】
前記還元された酸化グラフェンは、前記メカノフュージョン装置を1,000~10,000rpmで10~30分間行ってドライコーティングされた、請求項8に記載の電池用正極活物質複合体。
【請求項10】
請求項1~9の何れか1項に記載の電池用正極活物質複合体を含む、二次電池電極。
【請求項11】
請求項10に記載の二次電池電極を正極として含む二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、還元された酸化グラフェンがコーティングされた電池用正極活物質複合体、二次電池電極及び二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、リチウム二次電池を移動手段に適用するための需要が増加するにつれて、高容量及び高エネルギー密度電池の需要が急増しつつある。高容量電池の開発のために電極の厚さが厚くなる必要があり、集電体から電子をやりとりするために効果的な導電経路を形成する必要がある。その中で次世代物質であるグラフェンは、優れた電子伝導度を有し、高次元(固形状異方性)接触を提供でき、優れた物性として脚光を浴びている。
【0003】
従来、グラフェンを利用して活物質の電子伝導性を高める方法として、炭素材料(グラフェン)と分散剤及び溶媒が含まれたグラフェン分散液を製造した後、前記グラフェン分散液に活物質とバインダー溶液を投入/混合して乾燥するウェットコーティング方法を利用した方法がある。
【0004】
しかしながら、分散性の高いグラフェン分散液を使用しても、電極製造過程と溶媒乾燥過程においてグラフェン間の引力によって、電極内部でグラフェンの均一な組成を維持し難いという問題点があった。これにより、十分な導電効果を付与するために製造時に多い量のグラフェン材料を混合しなければならないが、多い量のグラフェン材料は、電池の容量に寄与できないから、電極のエネルギー密度が低くなるという短所がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のような従来の技術の問題点を解決すべく、本発明の目的は、従来のグラフェンがウェットコーティングされた正極活物質より高い導電性が具現されて、電極のエネルギー密度を向上させることができる電池用正極活物質複合体を提供することにある。
【0006】
本発明の他の目的は、前記電池用正極活物質複合体を含んで、内部抵抗が低く、エネルギー密度が高い二次電池電極を提供することにある。
【0007】
本発明のさらに他の目的は、前記二次電池電極を正極として含んで効率及び寿命が改善された二次電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、本発明の一側面による電池用正極活物質複合体は、正極活物質を含むコア部と、前記コア部を取り囲むように形成されたシェル部とを含み、前記シェル部は、1層以上の還元された酸化グラフェン(rGO)を含むものである。
【0009】
前記シェル部の平均厚さは、3nm~31nmでありうる。そして、前記シェル部の各位置別厚さ偏差は、シェル部の平均厚さの55%以内でありうる。
【0010】
前記還元された酸化グラフェンは、酸化グラフェン対比2~12重量%の酸素(O)を含むことができ、前記還元された酸化グラフェンの縦横比(長軸/厚さの比)は、500~20,000でありうる。
【0011】
前記正極活物質複合体のBET(Brunauer,Emmett,Teller)比表面積は0.3m2/g~5m2/gでありうる。
【0012】
前記還元された酸化グラフェンは、ドライコーティングされて一つ以上の層を形成し前記シェル部に含まれることができ、具体的に前記還元された酸化グラフェンは、メカノフュージョン(Mechano-fusion)装置を利用してドライコーティングされたものでありうる。さらに具体的には、前記還元された酸化グラフェンは、メカノフュージョン装置を1,000~10,000rpmで10~30分間行ってドライコーティングされたものでありうる。
【0013】
本発明の他の一側面による二次電池電極は、前記正極活物質複合体を含むものである。
【0014】
本発明のさらに他の一側面による二次電池は、前記二次電池電極を正極として含むものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明による電池用正極活物質複合体は、導電性ネットワーク形成が容易であるから電子伝導性に優れており、低い比表面積により電解液との副反応による電極の内部抵抗増加を抑制でき、電極に含まれて優れた発達した気孔構造によって電解液含浸率を向上させ、イオンが容易に拡散されうるようにする効果がある。
【0016】
また、本発明による正極活物質複合体を含む二次電池は、電極の優れた電子伝導性とイオン伝導性により電池の効率が高く、これによって高い充放電容量を具現できる。また、正極活物質と電解液間の副反応が抑制されて、電池の寿命特性に優れた効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の一側面による電池用正極活物質複合体の構造を簡略に示したものである。
【0018】
【
図2a】本発明の一実施例による電極用正極活物質複合体10のコア部(NCM 811)とシェル部(Graphene)の一側面を透過電子顕微鏡(TEM)で撮影したものである。
【0019】
【
図2b】本発明の一実施例による電極用正極活物質複合体10のコア部(NCM 811)とシェル部(Graphene)の他の側面を透過電子顕微鏡(TEM)で撮影したものである。
【0020】
【
図2c】本発明の一実施例による電極用正極活物質複合体10のコア部(NCM 811)とシェル部(Graphene)のさらに他の側面を透過電子顕微鏡(TEM)で撮影した図である。
【0021】
【
図3】本発明の一実施例による電池用正極活物質複合体の一部の構成元素をエネルギー分散型分光分析法(EDS)によって分析したデータを示したものである。
【0022】
【
図4a】本発明の一実施例による電池用正極活物質複合体(実施例3)の全体形状を撮影したSEM(走査電子顕微鏡)イメージである。
【0023】
【
図4b】コーティングされない正極活物質(bare、比較例1)の全体形状を撮影したSEM(走査電子顕微鏡)イメージである。
【0024】
【
図4c】カーボンブラックで正極活物質がドライコーティングされた場合(比較例3)の全体形状を撮影したSEM(走査電子顕微鏡)イメージである。
【0025】
【
図5a】
図4aの表面を拡大して撮影したSEM(走査電子顕微鏡)イメージである。
【0026】
【
図5b】
図4bの表面を拡大して撮影したSEM(走査電子顕微鏡)イメージである。
【0027】
【
図5c】
図4cの表面を拡大して撮影したSEM(走査電子顕微鏡)イメージである。
【0028】
【
図6】本発明の実施例1、比較例1及び比較例3に対するC-rateに対する放電容量(Discharge capacity)を示したものである。
【0029】
【
図7】本発明の実施例1、比較例1及び比較例3に対する電気化学インピーダンス分光法(Electrochemical Impedance Spectroscopy、EIS)のデータを示したものである。
【0030】
【
図8a】本発明の一実施例によって製造された電極(実施例3)のSEMイメージである。
【0031】
【
図8b】rGOを正極活物質と単純撹拌した電極(比較例4)のSEMイメージである。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本明細書及び請求の範囲に使用された用語や単語は、通常的または辞書的な意味に限定して解析されてはならず、発明者は、彼自身の発明を最も最善の方法で説明するために用語の概念を適切に定義できるという原則に基づいて、本発明の技術思想に符合する意味と概念で解釈されねばならない。
【0033】
よって、本明細書に記載された実施例及び製造例に示された構成は、本発明の最も好ましい一実施例に過ぎず、本発明の技術的思想を全て代弁するものではないから、本出願時点においてこれらは、代替できる多様な均等物と変形例がありうることを理解しなければならない。
【0034】
以下、図面を参照して、本発明が属する技術分野における通常の知識を有した者が容易に実施できるように、本発明の実施例について詳細に説明する。しかしながら、本発明は、様々な形態により具現化されることができ、ここで説明する製造例及び実施例に限定されない。
【0035】
図1は、本発明の一側面による電池用正極活物質複合体の構造を簡略に示したものである。
図1に示すように、本発明の一側面による電池用正極活物質複合体10は、正極活物質を含むコア部11及びコア部11を取り囲むように形成されたシェル部12を含み、シェル部11は、還元された酸化グラフェン(rGO)が一つ以上の層を形成して含まれたことを特徴とする。具体的に本発明の一実施例による電池用正極活物質を走査電子顕微鏡(SEM)を利用して撮影した写真が
図4aである。
【0036】
本発明の正極活物質複合体10においてシェル部12は、還元された酸化グラフェンフレークが正極活物質の表面においてファン・デル・ワールス相互作用(Van der Waals interaction)により物理的に結合し、還元された酸化グラフェンが単層または幾重に重なった構造を有し一つ以上の層を形成する。
【0037】
シェル部12は、ナノ粒子の還元された酸化グラフェンフレークが正極活物質の表面にファン・デル・ワールス相互作用により結合した後に形成されたもので、シェル部の厚さは薄くかつ均一に形成されることができる。本発明において正極活物質複合体シェル部の平均厚さは、正極活物質の表面において法線方向へ還元された酸化グラフェンの厚さを意味し、前記正極活物質複合体の表面において互いに異なる5地点以上の位置で測定した厚さの平均を意味する。
図2は、本発明の一実施例による電極用正極活物質複合体10のコア部(NCM 811)とシェル部(Graphene)のいろいろな側面を透過電子顕微鏡(TEM)で撮影したものであり、各側面でのシェル部の厚さを示したものである。
図2aは、本発明の一実施例による電極用正極活物質複合体10のコア部(NCM 811)とシェル部(Graphene)の一側面を透過電子顕微鏡(TEM)で撮影したものである。
図2bは、本発明の一実施例による電極用正極活物質複合体10のコア部(NCM 811)とシェル部(Graphene)の他の側面を透過電子顕微鏡(TEM)で撮影したものである。
図2cは、本発明の一実施例による電極用正極活物質複合体10のコア部(NCM 811)とシェル部(Graphene)のさらに他の側面を透過電子顕微鏡(TEM)で撮影したものである。
図2a~
図2cを参照すると、シェル部が部分的にそれぞれ15nm、24nm、23nm、31nm及び10nmの厚さに形成されたことが分かる。シェル部の平均厚さは、具体的に3nm~31nmであることがグラフェンによる伝導性の向上と正極活物質の電池容量の側面において有利である。シェル部の厚さが3nm未満である場合、正極活物質の電子伝導性が大きく低くなって、電池に適用する時、容量が大きくて低下することができ、シェル部の厚さが31nmより厚い場合、正極活物質の内部にリチウムイオンの拡散性が低下して、容量発現が少ないという問題点がある。
【0038】
シェル部に含まれた還元された酸化グラフェンは、ナノフレーク形態でファン・デル・ワールス相互作用により一つ以上の層を形成し、薄くかつ均一な厚さでシェル部が形成されることができる。シェル部の各位置別厚さ偏差を一つの正極活物質複合体平均厚さからシェル部の最大厚さの差または一つの正極活物質複合体平均厚さから最小厚さの差と定義する時、シェル部の各位置別厚さの偏差は、前記シェル部の平均厚さの55%以内でありうる。例えば、
図2を参照すると、本発明の一実施例による
図2の一つの正極活物質複合体の表面において互いに異なる5地点(15nm、24nm、23nm、31nm、10nm)の平均厚さは、20.6nmである。このとき、平均厚さ(20.6nm)と最小厚さ(10nm)の差は10.6nmで、これは平均厚さ値の51.5%であり、平均厚さ(20.6nm)と最大厚さ(31nm)の差は10.4nmで、これは平均厚さ値の50.5%である。前記厚さ偏差が平均厚さの55%を超過する場合、リチウムイオンと電子伝達が局部的に発生して、正極活物質複合体性能の均一性が低下し、電池の寿命劣化を引き起こすことができる。
【0039】
そして、ドライコーティングによりコア部の表面に還元された酸化グラフェンをコーティングしてシェル部を形成する場合、シェル部の最大厚さ部分に結合された還元された酸化グラフェンフレーク粒子がドライコーティング過程でシェル部から脱着されて、シェル部の最小厚さ部分に物理的結合するのが極めて容易になり、シェル部の厚さ偏差を平均厚さの55%以下に容易に調節できる。
【0040】
本発明の電池用正極活物質のコア部は、二次電池に用いられる正極活物質であると、制限無しで使用可能であり、例えばLiCoO2(LCO)、Li[Ni,Co,Mn]O2(NCM)、Li[Ni,Co,Al]O2(NCA)、LiMn2O4(LMO)またはLiFePO4(LFP)などを使用することができ、具体的にニッケル(Ni)、コバルト(Co)及びマンガン(Mn)から構成されたNCM 811を使用することができるが、還元された酸化グラフェンが正極活物質の表面においてシェル部を形成できれば、特に限定されない。
【0041】
本発明の電池用正極活物質のシェル部は、還元された酸化グラフェンを含んで形成されたもので、炭素及び酸素を含む。コア部の正極活物質は、合成過程においてLiOH及びLi2CO3などの不純物によって表面が親水性を帯びる特性がある。このとき、還元された酸化グラフェンに含まれた酸素は、還元された酸化グラフェンに親水性を付与して、還元された酸化グラフェンとコア部の正極活物質が容易に物理的に結合するのに役立つ。シェル部に含まれた還元された酸化グラフェンは、具体的に酸化グラフェンに対して2~12重量%の酸素(O)が含まれたことが均一なコーティングと電子伝導性を考慮する時に有利である。シェル部の還元された酸化グラフェンにおいて酸素(O)が前記範囲より少なく含まれた場合、還元された酸化グラフェンが正極活物質の表面に物理的結合で十分に付着されなくてシェル部の形成が難しいという問題がありえ、前記範囲より多量で酸素が含まれた場合、電子伝導性が大きく低下するという問題がありうる。
【0042】
図3は、本発明の一実施例による電池用正極活物質複合体の一部の構成元素をEDS分析して示したもので、実施例において正極活物質は、NCM 811を使用してNi、CoMnが観察され、これと共に還元された酸化グラフェンの元素としてCとOが観察されるのが分かる。
【0043】
還元された酸化グラフェンの形状は、コア部の正極活物質をコーティングする過程で影響を与えることができる。具体的に還元された酸化グラフェンの形状によってシェル部の形態が決定され、還元された酸化グラフェンの形状のうち、縦横比(長軸/厚さの比)が最も重要な要素として作用できる。本発明において還元された酸化グラフェンの縦横比(長軸/厚さの比)は、還元された酸化グラフェンの板状の最大長さ(幅)と厚さの比を意味し、具体的に板状型の単層または多層構造で形成された還元された酸化グラフェンにおいて板状型の最大長さ(長軸)と厚さの比を意味する。前記定義に従うと、還元された酸化グラフェンの縦横比が500未満である場合、グラフェン面間に凝集力が過度に強くなって、均一なコーティングが難しく、20,000を超過して薄くて広くなる場合、リチウムイオンを迂回して透過するための経路が長くなる難しさがあり得るから、還元された酸化グラフェンの縦横比は、500~20,000のものが好まれることができる。
【0044】
正極活物質複合体の比表面積が小さいほど、電極内で電解液との副反応が抑制されて、比表面積が低いほど有利である。正極活物質複合体の比表面積は、シェル部の平均厚さを調節することによって調節されることができる。具体的にシェル部の平均厚さが厚いほど、正極活物質複合体の比表面積は低くなる傾向にあり、反対にシェル部の平均厚さが薄いほど、複合体の比表面積は高くなる傾向にある。本発明の電池用正極活物質複合体は、実施例として
図4aのような形状に形成されることができ、表面は、
図5a(実施例3)のように形成されることができるから、
図5bの比表面積が正極活物質(b、比較例1);または
図5cのカーボンブラックで正極活物質がドライコーティングされた場合(c、比較例3)より比表面積が大きく低く、具体的に本発明の一実施例による正極活物質複合体の比表面積は、0.3m
2/g~5m
2/gでありうる。還元された酸化グラフェンがフレーク形態で正極活物質の表面につき、シェルが形成される特性上0.3m
2/g未満の比表面積で正極活物質複合体が形成されることは難しく、比表面積が5m
2/gを超える場合、電極に含まれた場合、電解液との副反応頻度が大きく増加して、ガス発生と共に電極の内部抵抗が増加する副反応層が過度に多く形成されるという問題がありうる。
【0045】
正極活物質コア部の表面に還元された酸化グラフェンが一つ以上の層を形成し、複合体の低い比表面積と電極に含む時に高い気孔率を具現するためには、シェル部を形成する過程で還元された酸化グラフェンは、ドライコーティングされることが好まれる。ドライコーティングは、従来のウェットコーティングとは異なり、還元された酸化グラフェンの粒子が静電気的引力で結合されてシェル部を形成し、別の分散剤が不必要な特徴がある。したがって、従来のウェットコーティングにおいて残存する分散剤によって発生する電極の内部抵抗が増加する問題が解決されることができる。また、ドライコーティングの場合、複合体が高い圧縮強度を有するから、ウェットコーティングまたはカーボン物質に比べて圧延後に電極の気孔率が高くなることができ、高い電極の気孔率は、電解液含浸率を向上させるようになり、これによって電池内のリチウムイオンの拡散速度が速くなりうるから、電池効率が向上する効果がある。そして、上述したように、ドライコーティングを介してシェル部の厚さ偏差を調節できるという効果もある。
【0046】
シェル部を形成するために還元された酸化グラフェンでコア部をドライコーティングする方法は、特に限定されないが、メカノフュージョン(Mechano-fusion)装置を利用して還元された酸化グラフェンをドライコーティングする場合より効率的にドライコーティングが可能でありうる。メカノフュージョン装置は、圧縮と剪断力を利用して粒子表面に機械的エネルギーを与えて、大きな粒子の表面にナノ粒子を融合させる方法で、本発明の正極活物質複合体を形成する過程に利用される場合、コア部に該当する比較的大きな粒子である正極活物質の表面にフレーク形態のナノ粒子である還元された酸化グラフェンを融合させ、正極活物質複合体を形成させることができる。メカノフュージョン装置を利用する場合、圧縮により還元された酸化グラフェンがナノ粒子に粉砕されることができ、剪断力により還元された酸化グラフェン粒子が正極活物質の表面全盤に等しく分散され、ファン・デル・ワールス相互作用により正極活物質と還元された酸化グラフェンとが結合されることができる。
【0047】
メカノフュージョン装置を利用してドライコーティングを行う場合、メカノフュージョン装置は、1,000~10,000rpmで10~30分間行うことができ、例えば6,000~10,000rpmで10~30分間行うことが効果的なドライコーティングのために好まれることができる。
【0048】
本発明の他の一側面による二次電池電極は、前記本発明による正極活物質複合体を含むことを特徴とする。前記二次電池電極は、前記正極活物質複合体によって分散剤が使用されなくても良い。また前記電極は、正極活物質を含んで具体的に正極に適用されることができる。
【0049】
本発明のさらに他の一側面による二次電池は、前記二次電池電極を正極として含むことを特徴とする。前記二次電池は、例えばリチウム二次電池でありうるが、正極活物質の種類によって鉛蓄電池、ニッケル-カドミウム電池、ニッケル-水素電池、リチウム-イオン電池など二次電池の種類に特に限定されずに適用されることができる。
【0050】
以下、本発明の理解に役立つために好ましい実施例を提示するが、下記の実施例は、本発明を例示することに過ぎず、本発明の範囲が下記の実施例に限定されるものではない。
【0051】
[製造例:正極活物質複合体の製造]
【0052】
NCM 811正極活物質(L&F社、NIB-X10B)20gと還元された酸化グラフェン(rGO)フレーク0.2g(100:1の割合)をドライコーティング(メカノフュージョン)装備(FRITSCH社、pulverisette 14)に入れて8000rpmで10分間コーティングを行って、本発明の実施例である正極活物質複合体(実施例3)を製造し、実施例1~7は、シェル部の厚さ変化のために、前記正極活物質と前記還元された酸化グラフェンの割合を異なるようにして製造したものである。また、実施例8~24は、前記rGOの縦横比(500~20,000)、シェル部の厚さ偏差及び酸素含有量を変更したものであり、実施例との効果を比較するためにシェル部の構成またはコーティング方法を異なるようにした参考例1及び比較例1~5を共に製造した。実施例及び比較例の構成物質及びコーティング方法を下記の表1に示した。このとき、表1の参考例1及び比較例において「aspect ratio満足」は、グラフェンの縦横比(長軸/厚さの比)が500~20,000の場合を意味する。
【0053】
【0054】
1)比較例4の電極コーティングの場合、単純撹拌によりシェル部が形成されなかった
【0055】
[実験例1:正極活物質複合体の物性評価]
【0056】
製造例1によって製造された実施例1~24に対してシェル部の平均厚さは、TEM(transmission electron microscope)分析で、複合体の比表面積は、BET比表面積測定器で、rGOの縦横比は、AFM(atomic force microscope)で、シェル部の酸素含有量は、XPS(X-ray Photoelectron Spectroscopy)の方法を介して物性を測定し、その結果を下記の表2に示した。
【0057】
【0058】
[製造例2:二次電池正極の製造]
【0059】
製造例1の実施例及び比較例をそれぞれ20g、カーボンナノチューブとカーボンブラックの混合物(カーボンナノチューブとカーボンブラックの重量比=50:50)0.2040g、PVDFバインダー0.2040gが98:1:1の重量比で混合された全体固形分をNMP(溶媒)に分散させて、全体固形分の含有量が76重量%である正極スラリーを製造した。Thincky mixerを利用して前記正極スラリーを800rpmで20分間撹拌した。以後、ブレードを利用して前記撹拌された正極スラリーをキャスティングした後、溶媒を乾燥してローディング量16mg/cm2の電極を製造した。
【0060】
[実験例2:二次電池正極の物性評価]
【0061】
製造例2によって製造された二次電池正極に対して各実施例及び比較例の正極活物質複合体を含む二次電池正極の物性と電気化学的特性を充/放電評価法、粉体抵抗器を利用した方法で測定して、その結果を下記の表3に示した。また、実施例1、比較例1及び比較例3に対してC-rateに対する放電容量(Discharge capacity)を
図6に示し、電気化学インピーダンス分光法(Electro chemical Impedance Spectroscopy、EIS)測定結果を
図7に示した。
【0062】
電解質は、DMC/FEC=7/3(v/v)溶液内に1.15MのLiPF6を添加した組成で使用した。正極は、活物質、導電材、バインダーで構成されており、活物質:導電材:バインダーが98:1:1の重量%で混合されている。バインダーは、PvdFを使用し、NMP溶媒内に固形分のPvdFが約6重量%添加されている。
【0063】
【0064】
表3を参照すると、比較例1~5及び参照例1に比べて実施例1~24の3C高率充放電容量が全体的に全部高いことを確認することができる。また、
図6を通じて比較例1及び比較例3は、3Cでの放電容量(Discharge capacity)が大きく減少するが、実施例1の場合、比較例に比べて放電容量維持率に優れて維持されることを確認することができる。
【0065】
実施例の中でも、rGOの縦横比の観点で、表2、3を参照すると、実施例8のrGOの縦横比(350)と実施例13のrGOの縦横比(25000)は、500~20,000の範囲から外れ、500~20,000の範囲にある残りの実施例の高率充放電容量が実施例8、13に比べて高く測定されるのを確認することができる。これを通じてrGOの縦横比が500~20,000の場合、さらに優れた高率充放電容量が具現されることが分かる。また、実施例13において、縦横比が大きくなると、リチウムイオンが拡散される経路のひずみ(distortion)が発生して粉体伝導度は増加するが、高率充放電容量は低下することを確認することができる。
【0066】
そして、シェル部厚さの観点において、表2、3を参照すると、実施例6は、シェル部の平均厚さが1.5nmで、実施例7は、シェル部の平均厚さが35nmである。シェル部の厚さと複合体比表面積が従属的な関係であることを考慮する時、シェル部の平均厚さが3~31nmに属し(17nm)、他の要素は同一な実施例3と実施例6、7とを比較すると、実施例3の高率充放電容量が優秀であることを確認することができる。すなわち、シェル部の平均厚さが3~31nmである場合、電池の性能がさらに優秀であることが分かる。
【0067】
シェル部の厚さ偏差の観点において、表2、3を参照すると、実施例18は、シェル部の厚さ偏差が55%を超過(65%)し、他の条件が同一な実施例3と比較したとき、実施例3が実施例18より高率充放電容量が優秀であることを確認することができる。これを通じてシェル部の厚さ偏差が55%以内である場合、電池の性能がさらに優秀であることが分かる。そして、シェル部の厚さ均一度がさらに優秀な(厚さ偏差が小さな)実施例14~16の場合、他の要素が同一な実施例3に比べて、高率充放電容量がさらに優秀であることを確認することができる。これは、シェル部の厚さ均一度が増加するほど、複合体の内部にLiイオンが均一に流入(flux)できるからであると解析できる。
【0068】
シェル部の酸素含有量の観点において、表2、3を参照すると、酸素含有量が高い実施例20~24の場合、条件が同じ実施例3に比べて酸素含有量の増加に応じて粉体伝導度が低下するのを確認でき、酸素含有量が特に高い実施例24の場合には、粉体伝導度及び高率充放電容量が全部大きく減少するのを確認することができる。また、シェル部の酸素含有量が低い実施例19の場合、実施例3に比べて高率充放電容量が大きく低下するのを確認することができる。これを通じて、シェル部の酸素含有量が2~12重量%であるとき、電池性能が特に優れていることが分かる。
【0069】
BET比表面積観点において、実施例1~7及び25を互いに対比すると、正極活物質複合体の比表面積が0.3~5m2/gであるとき、3C高率充放電容量と粉体伝導度がさらに高くなる傾向性を確認することができる。
【0070】
そして、
図7は、実施例1、比較例1及び比較例3の電気化学インピーダンス分光法(EIS)データを示したもので、
図7を参照すると、還元された酸化グラフェンをコーティングした実施例1がコーティングしない比較例1と単純にカーボンブラックをコーティングした比較例3より半円の大きさ(副反応層で形成されたSEIの抵抗+電子伝達抵抗)が低いのを確認することができ、これは、還元された酸化グラフェンをコーティングした実施例1が副反応物の形成を抑制し電子伝達経路を適切に形成すると解析できる。また、
図7の結果は、
図6において示した実施例の優れた放電容量維持効果を裏付けると解析できる。
【0071】
図8aは、正極活物質をrGOでドライコーティングし高速撹拌させた実施例3のSEMイメージで、
図8bは、正極活物質とrGOフレークを高圧分散及び単純撹拌した比較例4のSEMイメージである。
図8a及び
図8bを参照すると、本発明によって製造された正極(a)の場合、複合体の形状がよく維持されることが分かるが、ドライコーティング無しで単純にrGOフレークだけを含めた場合、正極活物質の凝集(agglomeration)現象が発生するのを確認することができる。したがって、rGOが単純に含まれるものではない正極活物質の表面にコーティングされ含まれてこそ電池性能の向上に大きく寄与することが分かる。
【0072】
以上、本発明の実施例について詳細に説明したが、本発明の権利範囲は、これに限定されるものではなく、請求の範囲に記載された本発明の技術的思想から外れない範囲内で多様な修正及び変形が可能であるということは、当技術分野における通常の知識を有した者にとって自明であるはずである。
【手続補正書】
【提出日】2024-04-16
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】請求項4
【補正方法】変更
【補正の内容】
【請求項4】
前記還元された酸化グラフェンは、
還元された酸化グラフェン対比2~12重量%の酸素(O)を含む、請求項1に記載の電池用正極活物質複合体。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0010
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0010】
前記還元された酸化グラフェンは、還元された酸化グラフェン対比2~12重量%の酸素(O)を含むことができ、前記還元された酸化グラフェンの縦横比(長軸/厚さの比)は、500~20,000でありうる。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0041
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0041】
本発明の電池用正極活物質のシェル部は、還元された酸化グラフェンを含んで形成されたもので、炭素及び酸素を含む。コア部の正極活物質は、合成過程においてLiOH及びLi2CO3などの不純物によって表面が親水性を帯びる特性がある。このとき、還元された酸化グラフェンに含まれた酸素は、還元された酸化グラフェンに親水性を付与して、還元された酸化グラフェンとコア部の正極活物質が容易に物理的に結合するのに役立つ。シェル部に含まれた還元された酸化グラフェンは、具体的に還元された酸化グラフェンに対して2~12重量%の酸素(O)が含まれたことが均一なコーティングと電子伝導性を考慮する時に有利である。シェル部の還元された酸化グラフェンにおいて酸素(O)が前記範囲より少なく含まれた場合、還元された酸化グラフェンが正極活物質の表面に物理的結合で十分に付着されなくてシェル部の形成が難しいという問題がありえ、前記範囲より多量で酸素が含まれた場合、電子伝導性が大きく低下するという問題がありうる。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0059
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0059】
製造例1の実施例及び比較例をそれぞれ20g、カーボンナノチューブとカーボンブラックの混合物(カーボンナノチューブとカーボンブラックの重量比=50:50)0.2040g、PVDFバインダー0.2040gが98:1:1の重量比で混合された全体固形分をNMP(溶媒)に分散させて、全体固形分の含有量が76重量%である正極スラリーを製造した。Thinky mixerを利用して前記正極スラリーを800rpmで20分間撹拌した。以後、ブレードを利用して前記撹拌された正極スラリーをキャスティングした後、溶媒を乾燥してローディング量16mg/cm2の電極を製造した。
【手続補正5】
【補正対象書類名】図面
【補正方法】変更
【補正の内容】
【国際調査報告】