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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-30
(54)【発明の名称】セパレータの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/417 20210101AFI20240920BHJP
   H01M 50/403 20210101ALI20240920BHJP
   H01M 50/414 20210101ALI20240920BHJP
   H01M 50/42 20210101ALI20240920BHJP
   H01M 50/411 20210101ALI20240920BHJP
   H01M 50/489 20210101ALI20240920BHJP
【FI】
H01M50/417
H01M50/403 B
H01M50/403 D
H01M50/414
H01M50/42
H01M50/411
H01M50/403 A
H01M50/489
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024521787
(86)(22)【出願日】2022-07-25
(85)【翻訳文提出日】2024-04-10
(86)【国際出願番号】 KR2022010877
(87)【国際公開番号】W WO2023090580
(87)【国際公開日】2023-05-25
(31)【優先権主張番号】10-2021-0158598
(32)【優先日】2021-11-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519103067
【氏名又は名称】ダブル・スコープコリア カンパニー,リミテッド
(71)【出願人】
【識別番号】522268535
【氏名又は名称】ダブル-スコープ チュンジュ プラント カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094112
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 讓
(74)【代理人】
【識別番号】100136799
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 亜希
(74)【代理人】
【識別番号】100128668
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 正巳
(74)【代理人】
【識別番号】100189474
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 修
(72)【発明者】
【氏名】キム ビョン ヒョン
(72)【発明者】
【氏名】パク ピョン ヨン
(72)【発明者】
【氏名】チョ クク ジン
(72)【発明者】
【氏名】チェ ヨン フン
(72)【発明者】
【氏名】リー ジュ ホ
(72)【発明者】
【氏名】チェ クヮン ホ
【テーマコード(参考)】
5H021
【Fターム(参考)】
5H021BB01
5H021BB02
5H021BB05
5H021CC02
5H021EE01
5H021EE04
5H021EE05
5H021EE06
5H021EE15
5H021HH01
5H021HH06
5H021HH07
(57)【要約】
本発明の一態様は、(a)第1ポリオレフィンにシラン系化合物がグラフトされた架橋性ポリオレフィン、第2ポリオレフィンからなる非架橋性ポリオレフィンおよび気孔形成剤を含む組成物を押出および延伸し、ベースフィルムを製造する工程;(b)前記ベースフィルムに架橋触媒および抽出溶媒を含む溶液を適用し、前記ベースフィルムから前記気孔形成剤を抽出しながら、前記ベースフィルムの表面に前記架橋触媒を塗布する工程;および(c)前記ベースフィルムに熱およびスチームを加えて、前記ベースフィルムに残留する前記抽出溶媒を除去しながら、前記架橋性ポリオレフィンを架橋させる工程;を含むセパレータの製造方法を提供する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)第1ポリオレフィンにシラン系化合物がグラフトされた架橋性ポリオレフィン、第2ポリオレフィンからなる非架橋性ポリオレフィンおよび気孔形成剤を含む組成物を押出および延伸し、ベースフィルムを製造する工程;
(b)前記ベースフィルムに架橋触媒および抽出溶媒を含む溶液を適用し、前記ベースフィルムから前記気孔形成剤を抽出しながら、前記ベースフィルムの表面に前記架橋触媒を塗布する工程;および
(c)前記ベースフィルムに熱およびスチームを加えて、前記ベースフィルムに残留する前記抽出溶媒を除去しながら、前記架橋性ポリオレフィンを架橋させる工程;を含む、セパレータの製造方法。
【請求項2】
前記第1および第2ポリオレフィンの重量平均分子量(Mw)は、それぞれ1,000~300,000および300,000~2,000,000であり、
前記第2ポリオレフィンの重量平均分子量(Mw)に対する前記第1ポリオレフィンの重量平均分子量(Mw)の比は、0.0005~1である、請求項1に記載のセパレータの製造方法。
【請求項3】
前記第1および第2ポリオレフィンは、それぞれポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレン、ポリメチルペンテン、エチレンビニルアセテート、エチレンブチルアクリレート、エチレンエチルアクリレートおよびこれらのうち2以上の組み合わせから成る群から選択された1つである、請求項1に記載のセパレータの製造方法。
【請求項4】
前記シラン系化合物は、アルコキシ基を含有するビニルシランである、請求項1に記載のセパレータの製造方法。
【請求項5】
前記架橋性ポリオレフィンおよび前記非架橋性ポリオレフィン中、前記架橋性ポリオレフィンの含有量は、5~90重量%である、請求項1に記載のセパレータの製造方法。
【請求項6】
前記架橋性ポリオレフィン中の、前記シラン系化合物の含有量は、10~50重量%である、請求項1に記載のセパレータの製造方法。
【請求項7】
前記(c)工程で、
前記ベースフィルムの少なくとも一面および第1温度を有する加熱部材を接触させて熱を加えなから、前記ベースフィルムの少なくとも一面に噴射部材を用いて第2温度を有するスチームを加える、請求項1に記載のセパレータの製造方法。
【請求項8】
前記第1温度は、40~70℃であり、
前記第2温度は、80~200℃である、請求項7に記載のセパレータの製造方法。
【請求項9】
前記噴射部材は、前記加熱部材の内部および外部のうち少なくとも1つに設けられる、請求項7に記載のセパレータの製造方法。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか一項に記載の製造方法により製造されたセパレータであって、
前記(c)工程の開始後1時間が経過した時点に、熱機械分析器(TMA)を用いて前記セパレータの縦(MD)および横(TD)方向に0.01Nの力を加えた後、5℃/分の速度で昇温させて、前記セパレータが溶融破断される温度で測定した前記セパレータのメルトダウン温度が200~300℃である、セパレータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セパレータの製造方法に関し、詳細には、リチウム二次電池用多孔性セパレータの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウム二次電池は、スマートフォン、ノートパソコン、タブレットPCなど小型化、軽量化が要求される各種電気製品の電源に広く用いられており、スマートグリッド、電気自動車用中大型バッテリーに至るまでその適用分野が拡大するにつれて、容量が大きく、寿命が長く、安定性が高いリチウム二次電池の開発が要求されている。
【0003】
前記目的を達成するための手段として、正極と負極を分離させて内部短絡(Internal Short)を防止し、充放電過程でリチウムイオンの移動を円滑にする微細気孔が形成されたセパレータ(Separator)、その中でも熱誘導相分離(Thermally Induced Phase Separation)による気孔形成に有利であり、経済的であり、セパレータに必要な物性を満足しやすいポリエチレンなどのポリオレフィンを用いた微多孔性セパレータに対する研究開発が活発である。
【0004】
しかしながら、溶融点が135℃程度と低いポリエチレンを用いたセパレータは、電池の発熱によって溶融点以上の高温で収縮変形が起こることがある。このような変形によって短絡が発生すると、電池の熱暴走現象を起こして、発火などの安全上の問題点が発生することがある。このような問題点を解決するために、ポリオレフィンセパレータを架橋させて耐熱性を向上させる方法が提示されている。
【0005】
特許文献1と特許文献2は、シラン変性ポリオレフィンを用いて架橋セパレータを製造することによって耐熱性を向上させる発明を開示する。しかしながら、製造されたセパレータの物性が厚さ25μm、透気度900sec/100ml、穿孔強度200gfであり、現在商用化されたセパレータの物性レベルである厚さ12μm以下、透気度150sec/100ml以下、穿孔強度250gf以上に比べて極めて劣り、実質的な商用化が不可能である。
【0006】
特許文献3は、重量平均分子量が50万以上の超高分子量ポリエチレンをシラン変性ポリオレフィンと混合してセパレータを製造する方法を開示するが、前記超高分子量ポリエチレンは、前記シラン変性ポリオレフィンとの分散性が不良であるという短所がある。これによって、製造されたセパレータの偏りが発生して廃棄率が高く、一部の領域にシラン架橋性ポリオレフィンに偏りが発生し、均一な物性のセパレータを収得できない。
【0007】
特許文献4と特許文献5は、ポリオレフィン、希釈剤、アルコキシ基含有ビニルシランおよび開始剤を押出機に投入して混合した後、反応押出して、シラングラフトされたポリオレフィン溶液を製造した後、延伸、抽出、架橋させてポリオレフィンセパレータを製造する方法を開示するが、反応押出時にアルコキシ基含有ビニルシランが希釈剤にグラフトされて希釈剤の再生が不可能であり、抽出時に未反応のアルコキシ基含有ビニルシランが溶出し、生産性および経済性が悪化する問題がある。
【0008】
特に、特許文献5は、セパレータの架橋に要する時間と費用を減らすために、気孔形成剤を抽出、除去したフィルムに架橋触媒を適用し、水および/またはスチームを加えてフィルムを架橋させる一連の工程をインライン工程で行うことで生産性を改善することができることを開示するが、このようなインライン工程を構成するそれぞれの工程と設備は、互いに独立した別個のものであるため、生産性を一定レベル以上に改善することが難しく、所定のメルトダウン温度を実現するための架橋に要する時間も不明確であり、生産性の改善程度を定量化するのに限界がある。
【0009】
特許文献6は、多孔膜に含まれたシラン変性ポリオレフィンを架橋させるセパレータの製造方法とこれによって製造されたセパレータを開示するが、前記製造方法による架橋は、水分の存在下で行われるものであり、架橋に要する時間が最小10分であり、それ以上の生産性を実現するのに限界があり、セパレータの機械的物性と耐熱性間に存在するトレードオ(trade-off)を適切に解消できない問題がある。また、このようなセパレータを製造するとき、シラン変性ポリオレフィンとマトリックス樹脂間の架橋反応を含む副反応によって製品の表面品質を低下させる欠点が発生し、このような欠点が電池駆動部間のイオンの移動性を阻害し、電池の電気化学的特性を低下させる問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平11-144700号公報
【特許文献2】特開平11-172036号公報
【特許文献3】特許第4583532号公報
【特許文献4】韓国登録特許第1857156号明細書
【特許文献5】韓国公開特許第10-2021-0001785号明細書
【特許文献6】韓国登録特許第1955911号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、前述した従来技術の問題点を解決するためのものであって、本発明の目的は、機械的物性および耐熱性を均衡的に実現しながらも、必要なレベルの機械的物性と耐熱性を実現するための架橋およびその他の工程に要する時間を短縮させて生産性を顕著に改善できるセパレータの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一態様は、(a)第1ポリオレフィンにシラン系化合物がグラフトされた架橋性ポリオレフィン、第2ポリオレフィンからなる非架橋性ポリオレフィンおよび気孔形成剤を含む組成物を押出および延伸し、ベースフィルムを製造する工程;(b)前記ベースフィルムに架橋触媒および抽出溶媒を含む溶液を適用し、前記ベースフィルムから前記気孔形成剤を抽出しながら、前記ベースフィルムの表面に前記架橋触媒を塗布する工程;および(c)前記ベースフィルムに熱およびスチームを加えて前記ベースフィルムに残留する前記抽出溶媒を除去しながら、前記架橋性ポリオレフィンを架橋させる工程;を含むセパレータの製造方法を提供する。
【0013】
一実施形態において、前記第1および第2ポリオレフィンの重量平均分子量(Mw)は、それぞれ1,000~300,000および300,000~2,000,000であり、前記第2ポリオレフィンの重量平均分子量(Mw)に対する前記第1ポリオレフィンの重量平均分子量(Mw)の比は、0.0005~1であってもよい。
【0014】
一実施形態において、前記第1および第2ポリオレフィンは、それぞれポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレン、ポリメチルペンテン、エチレンビニルアセテート、エチレンブチルアクリレート、エチレンエチルアクリレートおよびこれらのうち2以上の組み合わせから成る群から選択された1つであってもよい。
【0015】
一実施形態において、前記シラン系化合物は、アルコキシ基を含有するビニルシランであってもよい。
【0016】
一実施形態において、前記架橋性ポリオレフィンおよび前記非架橋性ポリオレフィン中、前記架橋性ポリオレフィンの含有量は、5~90重量%であってもよい。
【0017】
一実施形態において、前記架橋性ポリオレフィン中、前記シラン系化合物の含有量は、10~50重量%であってもよい。
【0018】
一実施形態において、前記(c)工程で、前記ベースフィルムの少なくとも一面および第1温度を有する加熱部材を接触させて熱を加えなから、前記ベースフィルムの少なくとも一面に噴射部材を利用して第2温度を有するスチームを加えることができる。
【0019】
一実施形態において、前記第1温度は、40~70℃であり、前記第2温度は、80~200℃であってもよい。
【0020】
一実施形態において、前記噴射部材は、前記加熱部材の内部および外部のうち少なくとも1つに設けられてもよい。
【0021】
本発明の他の一態様は、前記方法により製造されたセパレータにおいて、前記(c)工程の開始後1時間が経過した時点に、熱機械分析器(TMA)を用いて前記セパレータの縦(MD)および横(TD)方向に0.01Nの力を加えた後、5℃/分の速度で昇温させて、前記セパレータが溶融破断される温度で測定した前記セパレータのメルトダウン温度が200~300℃であるセパレータを提供する。
【発明の効果】
【0022】
本発明の一態様によるセパレータの製造方法は、ベースフィルムに架橋触媒および抽出溶媒を適用する工程と、前記ベースフィルムを乾燥および架橋させる工程をそれぞれ単一工程によって行うことによって、機械的物性および耐熱性を均衡的に実現しながらも、必要なレベルの機械的物性と耐熱性を実現するための架橋およびその他の工程に要する時間を短縮させて生産性を顕著に改善することができる。
【0023】
本発明の効果は、上記した効果に限定されるものではなく、本発明の詳細な説明または請求範囲に記載された発明の構成から推論可能なすべての効果を含むものと理解すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の一実施形態によるセパレータの製造方法を示す。
図2】本発明の一実施形態による乾燥および架橋のための単一工程を示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下では、添付の図面を参照して本発明を説明する。しかしながら、本発明は、様々な異なる形態で実現することができ、したがって、ここで説明する実施例に限定されるものではない。また、図面において本発明を明確に説明するために、説明と関係ない部分を省略し、明細書全体を通じて類似の部分に対しては類似の参照符号を付けた。
【0026】
明細書全体において、任意の部分が他の部分と「連結」されているというとき、これは、「直接的に連結」されている場合だけでなく、その中間に他の部材を介在し、「間接的に連結」されている場合も含む。また、任意の部分がある構成要素を「含む」というとき、これは、特に反対になる記載がない限り、他の構成要素を除くものではなく、他の構成要素をさらに備えてもよいことを意味する。
以下、添付の図面を参照して本発明の実施例を詳細に説明する。
【0027】
図1は、本発明の一実施形態によるセパレータの製造方法を示す。図1を参照すると、本発明の一実施形態によるセパレータの製造方法は、(a)第1ポリオレフィンにシラン系化合物がグラフトされた架橋性ポリオレフィン、第2ポリオレフィンからなる非架橋性ポリオレフィンおよび気孔形成剤を含む組成物を押出および延伸し、ベースフィルムを製造する工程;(b)前記ベースフィルムに架橋触媒および抽出溶媒を含む溶液を適用し、前記ベースフィルムから前記気孔形成剤を抽出しながら、前記ベースフィルムの表面に前記架橋触媒を塗布する工程;および(c)前記ベースフィルムに熱およびスチームを加えて前記ベースフィルムに残留する前記抽出溶媒を除去しながら、前記架橋性ポリオレフィンを架橋させる工程;を含んでもよい。
【0028】
前記(a)工程で、第1ポリオレフィンにシラン系化合物がグラフトされた架橋性ポリオレフィン、第2ポリオレフィンからなる非架橋性ポリオレフィンおよび気孔形成剤を含む組成物を押出し、Tダイを通じて吐出した後、延伸し、ベースフィルムを製造することができる。
【0029】
前記架橋性ポリオレフィンは、重量平均分子量(Mw、g/mol)が1,000~300,000、好ましくは、1,000~200,000、さらに好ましくは、4,000~100,000であり、分子量分布(Mw/Mn)が3~7である第1ポリオレフィン、シラン系化合物および開始剤を反応させて製造することができ、前記架橋性ポリオレフィン中、前記シラン系化合物の含有量が10~50重量%となるように反応物の量と割合を調節することができる。
【0030】
前記非架橋性ポリオレフィンは、重量平均分子量(Mw)が300,000~2,000,000、好ましくは、300,000~1,000,000、さらに好ましくは、300,000~700,000であり、分子量分布(Mw/Mn)が3~7である第2ポリオレフィンからなってもよい。
【0031】
前記第1および第2ポリオレフィンの分子量分布が3未満であれば、前記気孔形成剤との分散性が低下し、製造されたセパレータの均一性が低下することがあり、7より大きければ、セパレータの機械的物性が低下することがある。
【0032】
前記第2ポリオレフィンの重量平均分子量(Mw)に対する前記第1ポリオレフィンの重量平均分子量(Mw)の比は、0.0005~1、好ましくは、0.001~0.7、さらに好ましくは、0.001~0.5であってもよい。前記第2ポリオレフィンの重量平均分子量(Mw)に対する前記第1ポリオレフィンの重量平均分子量(Mw)の比が前記範囲を外れる場合、前記架橋性ポリオレフィンおよび前記非架橋性ポリオレフィンの相溶性、分散性が低下し、前記セパレータの領域による機械的物性の偏差が大きくなり、製品の信頼性、再現性が低下することがある。
【0033】
前記第1および第2ポリオレフィンは、それぞれポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレン、ポリメチルペンテン、エチレンビニルアセテート、エチレンブチルアクリレート、エチレンエチルアクリレートおよびこれらのうち2以上の組み合わせから成る群から選択された1つであってもよく、好ましくは、ポリエチレンおよび/またはポリプロピレン、さらに好ましくは、ポリエチレンであってもよいが、これに限定されるものではない。
【0034】
前記シラン系化合物は、アルコキシ基を含有するビニルシランであってもよい。前記アルコキシ基を含有するビニルシランは、例えば、トリメトキシビニルシラン、トリエトキシビニルシラン、トリアセトキシビニルシラン、3-(メタクリルオキシプロピル)トリメトキシシランおよびこれらのうち2以上の組み合わせから成る群から選択された1つであってもよく、好ましくは、トリメトキシビニルシランであってもよいが、これに限定されるものではない。
【0035】
前記気孔形成剤は、パラフィン油、パラフィンワックス、鉱油、固体パラフィン、大豆油、油菜油、パーム油、ヤシ油、ジ-2-エチルヘキシルフタレート、ジブチルフタレート、ジイソノニルフタレート、ジイソデシルフタレート、ビス(2-プロピルヘプチル)フタレート、ナフテン油およびこれらのうち2以上の組み合わせから成る群から選択された1つであってもよく、好ましくは、パラフィン油であってもよく、さらに好ましくは、40℃で動粘度が50~100cStのパラフィン油であってもよいが、これに限定されるものではない。
【0036】
前記組成物は、前記架橋性ポリオレフィン1~40重量%、前記非架橋性ポリオレフィン1~40重量%、および前記気孔形成剤40~80重量%を含んでもよい。前記組成物中、前記架橋性ポリオレフィンの含有量が1重量%未満であれば、架橋反応が阻害され、必要なレベルの機械的物性を実現することができず、40重量%より大きければ、商用セパレータに必要な物性の実現が難しいことがある。
【0037】
前記延伸は、一軸延伸、または二軸延伸(逐次または同時二軸延伸)等の公知の方法によって行われ得る。逐次二軸延伸の場合、延伸倍率は、横方向(MD)および縦方向(TD)にそれぞれ4~20倍であってもよく、それによる面倍率は、16~400倍であってもよい。
【0038】
前記(b)工程で、前記ベースフィルムに架橋触媒および抽出溶媒を含む単一溶液を適用し、前記ベースフィルムから前記気孔形成剤を抽出すると同時に、前記ベースフィルムの表面(内部および外部気孔の表面)に前記架橋触媒を塗布することができる。
【0039】
前記抽出溶媒は、前記ベースフィルムから前記気孔形成剤を選択的に抽出、除去することができる。前記抽出溶媒は、例えば、メチルエチルケトン、ヘキサン、ジクロロメタンなどであってもよいが、これらに限定されない。
【0040】
前記抽出溶媒を含む溶液が担持された含浸槽に前記ベースフィルムを既定の時間の間浸漬させることによって、前記気孔形成剤を抽出、除去することができる。抽出後、前記ベースフィルムの表面および/または内部に残留する前記気孔形成剤の含有量は、1重量%以下であってもよい。
【0041】
前記溶液は、前記抽出溶媒および前記架橋触媒を含んでもよい。前記溶液が架橋触媒をさらに含む、後続の前記(c)工程での架橋反応を促進させることができる。このような架橋触媒としては、一般的に、スズ、亜鉛、鉄、鉛、コバルトなどの金属のカルボン酸塩、有機塩基、無機酸および有機酸が使用できる。例えば、前記架橋触媒は、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズジアセテート、酢酸第1スズ、カプリル酸第1スズ、ナフテン酸亜鉛、カプリル酸亜鉛、ナフテン酸コバルト、エチルアミン、ジブチルアミン、ヘキシルアミン、ピリジン、硫酸、塩酸などの無機酸、トルエンスルホン酸、酢酸、ステアリン酸、マレイン酸などの有機酸、1,8-ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデカ-7-エン(1,8-Diazabicyclo(5,4,0)undec-7-ene)などであってもよく、好ましくは、ジブチルスズジラウレートであってもよいが、これに限定されるものではない。
【0042】
前記架橋触媒は、従来架橋性ポリオレフィンの製造時に添加したり、別に準備した架橋触媒溶液をベースフィルムに塗布するなどの方法で適用された。ただし、このような従来の方法では、前記架橋触媒を前記架橋性ポリオレフィンと均一に分散させることが困難である。前述したように、架橋前に前記ベースフィルムに含まれた前記架橋性ポリオレフィンが均一に分散する必要があり、この際、前記架橋性ポリオレフィンの架橋反応に関与する架橋触媒も、均一に分散する必要がある。
【0043】
これに対して、前記架橋触媒を前記抽出溶媒と予混合して製造された単一溶液を、前記ベースフィルムから前記気孔形成剤を抽出、除去し、前記ベースフィルムに前記架橋触媒を塗布することに適用することによって、前記架橋触媒が前記ベースフィルムの表面だけでなく、前記気孔形成剤の抽出、除去によって生成された気孔の内部にインサイチュー(in-situ)充填され、前記ベースフィルムの内部に効果的に浸透、導入され得る。前記ベースフィルムの表面および内部に均一に導入された前記架橋触媒は、前記セパレータの全方向および全領域で前記架橋性ポリオレフィンの架橋反応を均一に行うことによって、前記セパレータの耐熱性と機械的物性を改善するのに寄与することができる。
【0044】
前記溶液中、前記架橋触媒の含有量は、0.01~5重量%であってもよい。前記架橋触媒の含有量が0.01重量%未満であれば、架橋反応を必要なレベルで促進させることができず、5重量%より大きければ、反応速度が必要なレベルに収束するので、経済性、生産性の観点から不利である。
【0045】
前記(b)工程で前記気孔形成剤の抽出、除去および前記架橋触媒の塗布に要する時間は、前記ベースフィルムの厚さ、気孔率などによって決定できるが、前記ベースフィルムの厚さおよび気孔率がそれぞれ10~30μmおよび40~60体積%の場合、10分以下、好ましくは、5分以下、さらに好ましくは、1分以下であってもよい。
【0046】
前記(c)工程で、前記気孔形成剤が抽出され、前記架橋触媒が塗布された前記ベースフィルムに熱およびスチームを加えて前記ベースフィルムに残留する前記抽出溶媒を除去しながら、前記架橋性ポリオレフィンを架橋させることができる。
【0047】
前記(b)工程で適用された前記抽出溶媒中の一部は、前記ベースフィルムの表面および/または内部に残留することができる。残留した前記抽出溶媒は、後続工程とこれを通じて製造されるセパレータの物性を悪化させることができるので、前記ベースフィルムを前記抽出溶媒の沸点以上の温度で適切に加熱し、前記ベースフィルムに残留する前記抽出溶媒を除去することができる。
【0048】
前記(c)工程で前記ベースフィルムの少なくとも一面に熱と共に加えられるスチームは、前記(b)工程で前記ベースフィルムに塗布された前記架橋触媒を活性化させて、前記ベースフィルムに含まれた前記架橋性ポリオレフィンの架橋反応を開始、促進することができる。また、前記スチームが有する固有の熱は、前記ベースフィルムに残留する前記抽出溶媒を除去するのに寄与することもできる。
【0049】
前記(c)工程で同時に加えられる前記熱および前記スチームは、前記ベースフィルムに残留する前記抽出溶媒を除去することができ、このうち前記スチームは、前記ベースフィルムに塗布された前記架橋触媒を活性化させて、前記ベースフィルムに含まれた前記架橋性ポリオレフィンの架橋反応を開始、促進することができる。
【0050】
特に、前記抽出溶媒の除去と前記架橋触媒の活性化を同時に行うことによって、前記熱によって前記架橋触媒中の一部が前記抽出溶媒とともに任意に消失するのを防止し、前記(b)工程で前記ベースフィルムの表面(内部および外部気孔の表面)に塗布した前記架橋触媒の95重量%以上、好ましくは、99重量%以上、さらに好ましくは、全量が前記架橋性ポリオレフィンの架橋反応に参加するように誘導することができる。すなわち、前記(c)工程で前記抽出溶媒の除去と前記架橋性ポリオレフィンの架橋を単一工程によって同時に行うことができるので、前記セパレータの耐熱性と生産性を均衡的に改善することができる。
【0051】
図2は、本発明の一実施形態による乾燥および架橋のための単一工程を示す。図2を参照すると、前記(c)工程で、前記ベースフィルム10の少なくとも一面および第1温度を有する加熱部材100を接触させて前記ベースフィルム10に熱を加えながら、前記ベースフィルムの少なくとも一面に噴射部材200を用いて第2温度を有するスチームSを加えることができる。
【0052】
前記加熱部材100は、前記ベースフィルム10の少なくとも一面と接触し、前記ベースフィルム10に所定の熱を伝達できる熱伝導性部材であってもよい。前記熱伝導性部材は、例えば、金属材質の固定パネル、回転ロールなどであってもよいが、これに限定されるものではない。前記加熱部材100がロールの場合、前記ロールの回転速度は、前記ベースフィルム10が縦方向(MD)に5~100m/min、好ましくは、10~80m/min、さらに好ましくは、15~50m/minの速度で移動するように調節することができる。
【0053】
前記ベースフィルム10に残留する前記抽出溶媒は、前記ベースフィルム10から伝達された熱によって蒸発させて除去することができる。前記抽出溶媒を除去するのに必要な前記加熱部材100の温度、すなわち、前記第1温度は、40~70℃であってもよい。
【0054】
前記噴射部材200は、前記加熱部材100の内部および外部のうち少なくとも1つに設けられてもよく、前記噴射部材200は、水を加熱して前記第2温度を有するスチームを生成するヒーターおよび生成したスチームを既定の位置に噴射するノズルを含んでもよい。前記第2温度は、前記架橋触媒を活性化して前記架橋性ポリオレフィンの架橋反応を開始するのに必要な範囲、例えば、80~200℃、好ましくは、100~150℃に調節することができる。
【0055】
図2(a)を参照すると、前記噴射部材200が前記加熱部材100の外部に別に設けられてもよい。前記スチームSは、前記ベースフィルム10の少なくとも一面に向かって噴射され、前記ベースフィルム10の少なくとも一面に直接加えられてもよく、所定の空間に滞留し、前記ベースフィルム10の少なくとも一面が滞留されたスチームに露出させることができ、両者が組みわせられた方式によって前記ベースフィルム10の少なくとも一面に加えられてもよい。
【0056】
図2(b)を参照すると、前記噴射部材200が前記加熱部材100に内蔵されてもよい。この場合、前記スチームSは、前記ベースフィルム10の少なくとも一面に向かって噴射され、前記加熱部材100と前記ベースフィルム10の接触面に直接加えられてもよい。前記ベースフィルム10の接触面に加えられた前記スチームSは、前記ベースフィルム10の気孔を通じて前記ベースフィルム10を厚さ方向に透過することができる。この過程で前記ベースフィルム10の内部気孔に塗布された前記架橋触媒も、前記スチームSにより適切に活性化することができるので、これを通じて製造された前記セパレータの耐熱性と機械的物性をさらに改善することができる。
【0057】
前記方法により製造されたセパレータは、前記架橋性ポリオレフィンの架橋体および前記非架橋性ポリオレフィンを含んでもよい。前記架橋体は、前記非架橋性ポリオレフィン中に均一に分散することができ、前記架橋体は、前記架橋性ポリオレフィンの主鎖中にグラフトされた前記シラン系化合物のうち少なくとも一部が一定の条件下で相互架橋されて形成されたものであってもよい。
【0058】
前記セパレータを構成する前記架橋性ポリオレフィンおよび前記非架橋性ポリオレフィン中、前記架橋性ポリオレフィンの含有量は、5~90重量%、好ましくは、5~50重量%、さらに好ましくは、10~50重量%である。前記架橋性ポリオレフィンの含有量が5重量%未満であれば、必要なレベルのメルトダウン温度を実現することができず、90重量%より大きければ、セパレータの脆性(brittleness)が増加し、引張強度が低下することがある。
【0059】
前記架橋性ポリオレフィン中、前記シラン系化合物の含有量は、10~50重量%であってもよい。前記架橋性ポリオレフィン中、前記シラン系化合物の含有量が10重量%未満であれば、必要なレベルのメルトダウン温度を実現することができず、50重量%より大きければ、セパレータの脆性(brittleness)が増加し、引張強度が低下するだけでなく、セパレータの製造時に過度なオイル蒸気が発生し、加工性、作業性が低下することがある。
【0060】
前記(c)工程の開始後1時間が経過した時点に、熱機械分析器(TMA)を用いて前記セパレータの縦(MD)および横(TD)方向に0.01Nの力を加えた後、5℃/分の速度で昇温させて、前記セパレータが溶融破断される温度で測定した前記セパレータのメルトダウン温度は、200~300℃であってもよい。
【0061】
前記セパレータにおいて前記架橋性ポリオレフィンの架橋体および前記非架橋性ポリオレフィンは、それぞれ不連続相および連続相を構成することができる。前記セパレータにおいて前記架橋性ポリオレフィンは、前記非架橋性ポリオレフィンからなる連続相マトリックス中で架橋され、前記マトリックスを堅固に支持、固定させることによって、前記セパレータの耐熱性および機械的物性を向上させることができる。
【0062】
本明細書において使用された用語「マトリックス」は、2種以上の成分を含むセパレータにおいて連続相を構成する成分を意味する。すなわち、前記セパレータにおいて前記第2ポリオレフィンを含む前記非架橋性ポリオレフィンが連続相で存在し、その内部で前記架橋性ポリオレフィンの架橋体が不連続相で存在することができる。
【0063】
従来、ポリオレフィンおよび架橋性化合物、例えば、シラン系化合物を含むセパレータの製造工程で、気孔形成剤抽出前のベースシート上にシラン系化合物を塗布後、グラフトさせたり、ポリオレフィンおよびシラン系化合物をプレ混合した後、グラフトおよびベースシートを製造し、架橋したセパレータを製造する方法が試みられたが、この場合、商用セパレータの物性レベルは満足であるが、前記シラン系化合物がポリオレフィン以外にも他の成分および/または組成物とグラフトされ、このような成分および/または組成物を毎工程ごとに廃棄し、製造コストが急激に上昇する短所がある。
【0064】
前記架橋性ポリオレフィンの架橋は、押出、延伸、抽出、乾燥などを含む一連の工程のうち乾燥と同時に行われるので、気孔形成剤が抽出された多孔膜中に前記架橋性ポリオレフィンの分布を均一に調節し、前記架橋体が前記セパレータ中に均一に分布するように調節する必要がある。前記架橋性ポリオレフィンの架橋反応が前記セパレータ中の一部の領域に偏重して起こる場合、必要なレベルの機械的物性を実現することができず、特に、前記セパレータの領域による機械的物性の偏差が大きくなり、製品の信頼性、再現性が顕著に低下することがある。
【0065】
上記のように、前記第2ポリオレフィンを含む前記非架橋性ポリオレフィン中に前記第1ポリオレフィンにシラン系化合物がグラフトされた前記架橋性ポリオレフィンの架橋体が分散した構造のセパレータにおいて、前記セパレータ中、前記架橋体の含有量、前記架橋性ポリオレフィン中、前記シラン系化合物の含有量、および/または前記第1および第2ポリオレフィンの重量平均分子量とその割合を調節し/調節するか、前記(b)および(c)工程で前記ベースフィルムに架橋触媒および抽出溶媒を適用する工程と、前記ベースフィルムを乾燥および架橋させる工程をそれぞれ単一工程によって行うことによって、機械的物性および耐熱性を均衡的に実現しながらも、必要なレベルの機械的物性と耐熱性を実現するための架橋およびその他の工程に要する時間を短縮させて、生産性を顕著に改善することができる。
【0066】
例えば、前記(c)工程の開始後1時間が経過した時点に、熱機械分析器(TMA)を用いて前記セパレータの縦(MD)および横(TD)方向に0.01Nの力を加えた後、5℃/分の速度で昇温させて、前記セパレータが溶融破断される温度で測定した前記セパレータのメルトダウン温度は、200~300℃、好ましくは、205~280℃、さらに好ましくは、230~260℃であってもよい。すなわち、前記セパレータは、前記(c)工程で行われる乾燥および架橋工程に要する時間を1時間以内に短縮しながらも、前記セパレータのメルトダウン温度を200℃以上に増加させることができるので、セパレータの生産性、耐熱性および機械的物性を均衡的に実現することができる。
【0067】
また、前記セパレータは、下記(i)~(viii)の条件のうち1つ以上を満たすことができる。(i)縦方向(MD)の引張強度2,000kgf/cm以上、好ましくは、2,000~2,500kgf/cm;(ii)横方向(TD)の引張強度2,000kgf/cm以上、好ましくは、2,000~2,500kgf/cm;(iii)縦方向(MD)の引張伸率90%以上、好ましくは、90~150%;(iv)横方向(TD)の引張伸率100%以上、好ましくは、100~150%;(v)130℃縦方向(MD)の熱収縮率10%以下、好ましくは、2~10%;(vi)130℃横方向(TD)の熱収縮率10%以下、好ましくは、2~10%;(vii)穿孔強度300gf以上、好ましくは、340gf以上;(viii)セパレータの表面で周辺と異なる明度を有し、2mm以上のサイズを有する表面欠点(明点(white dot)および/または暗点(black dot))の数20個/m以下、好ましくは、15個/m以下。
【0068】
なお、前記(c)工程の後に、(d)架橋された前記ベースフィルムを熱固定する工程をさらに含んでもよい。熱固定は、フィルムを固定させ、熱を加えて、収縮しようとするフィルムを強制的に保持して残留応力を除去することである。熱固定温度は、高いことが収縮率を低減するのに有利であるが、その温度が過度に高ければ、フィルムが部分的に溶けて、形成された気孔が閉鎖され、透過度が低下することがある。
【0069】
熱固定温度は、フィルムの結晶部分の10~30重量%が溶ける範囲で選択されることが好ましい。熱固定温度が前記範囲で選択されれば、フィルム内ポリオレフィン分子の再配列が不十分で、フィルムの残留応力除去効果がない問題と部分的溶融によって気孔が閉鎖されて透過度が低下する問題を防止することができる。
【0070】
前記架橋性ポリオレフィンが架橋されると、前記セパレータの結晶化度(crystallinity)が減少し、これは、無定形(amorphous)領域の増加につながって、熱固定温度が従来の範囲より低くなり得る。例えば、熱固定温度は、120~140℃、好ましくは、123~135℃であってもよく、熱固定時間は、5秒~1分であってもよい。
以下、本発明の実施例について詳細に説明する。
【0071】
製造例1
200℃に余熱した2L丸底フラスコ容器に重量平均分子量(Mw)が4,000g/mol、密度が0.98g/mL、結晶化度が85%、融点が126℃の高密度ポリエチレンを徐々に投入しなから撹拌して溶融させて、液体状態に作った後、トリメトキシビニルシランを徐々に添加した。高密度ポリエチレンとトリメトキシビニルシランの投入比率(重量比)は、それぞれ90:10とした。
【0072】
高密度ポリエチレンとトリメトキシビニルシランが完全に溶融した溶液を製造した後、トリメトキシビニルシランのグラフト反応のための開始剤として2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルペルオキシ)ヘキサンを徐々に投入しなから1時間撹拌して、トリメトキシビニルシランがグラフトされた高密度ポリエチレン(以下、「シラン変性PE」)を製造した。
【0073】
製造例2
200℃に余熱した2L丸底フラスコ容器に重量平均分子量(Mw)が8,000g/mol、密度が0.97g/mL、結晶化度が84%、融点が127℃の高密度ポリエチレンを徐々に投入しなから撹拌して溶融させて、液体状態に作った後、トリメトキシビニルシランを徐々に添加した。高密度ポリエチレンとトリメトキシビニルシランの投入比率(重量比)は、それぞれ90:10とした。
【0074】
高密度ポリエチレンとトリメトキシビニルシランが完全に溶融した溶液を製造した後、トリメトキシビニルシランのグラフト反応のための開始剤として2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルペルオキシ)ヘキサンを徐々に投入しなから1時間撹拌して、トリメトキシビニルシランがグラフトされた高密度ポリエチレン(以下、「シラン変性PE」)を製造した。この際、前記トリメトキシビニルシラン100重量部を基準として前記開始剤1重量部を投入した。前記シラン変性PEを常温に十分に冷却させた後、破砕して、シラン変性PE粉末を製造した。
【0075】
製造例3
200℃に余熱した2L丸底フラスコ容器に重量平均分子量(Mw)が11,000g/mol、密度が0.97g/mL、結晶化度が83%、融点が128℃の高密度ポリエチレンを徐々に投入しなから撹拌して溶融させて、液体状態に作った後、トリメトキシビニルシランを徐々に添加した。高密度ポリエチレンとトリメトキシビニルシランの投入比率(重量比)は、それぞれ90:10とした。
【0076】
高密度ポリエチレンとトリメトキシビニルシランが完全に溶融した溶液を製造した後、トリメトキシビニルシランのグラフト反応のための開始剤として2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルペルオキシ)ヘキサンを徐々に投入しなから1時間撹拌して、トリメトキシビニルシランがグラフトされた高密度ポリエチレン(以下、「シラン変性PE」)を製造した。この際、前記トリメトキシビニルシラン100重量部を基準として前記開始剤1重量部を投入した。
【0077】
製造例4
重量平均分子量(Mw)が100,000、分子量分布(Mw/Mn)が5の高密度ポリエチレン54.5重量部、40℃における動粘度が70cStのパラフィン油30重量部、トリメトキシビニルシラン15重量部、および過酸化ジクミル0.5重量部を混合し、二軸押出機(内径58mm、L/D=56、twin screw extruder)に投入した。200℃、スクリュー回転速度160rpmの条件で前記二軸押出機から5mm口径の多重ストランドダイに吐出させ、水浴とペレットタイザーを通過させて、トリメトキシビニルシランがグラフトされた高密度ポリエチレン(以下、「シラン変性PE」)を製造した。
【0078】
製造例5
重量平均分子量(Mw)が200,000、分子量分布(Mw/Mn)が5の高密度ポリエチレン54.5重量部、40℃における動粘度が70cStのパラフィン油30重量部、トリメトキシビニルシラン15重量部、および過酸化ジクミル0.5重量部を混合し、二軸押出機(内径58mm、L/D=56、twin screw extruder)に投入した。200℃、スクリュー回転速度160rpmの条件で前記二軸押出機から5mm口径の多重ストランドダイに吐出させ、水浴とペレットタイザーを通過させて、トリメトキシビニルシランがグラフトされた高密度ポリエチレン(以下、「シラン変性PE」)を製造した。
【0079】
製造例6
重量平均分子量(Mw)が300,000、分子量分布(Mw/Mn)が5の高密度ポリエチレン54.5重量部、40℃における動粘度が70cStのパラフィン油30重量部、トリメトキシビニルシラン15重量部、および過酸化ジクミル0.5重量部を混合し、二軸押出機(内径58mm、L/D=56、twin screw extruder)に投入した。200℃、スクリュー回転速度160rpmの条件で前記二軸押出機から5mm口径の多重ストランドダイに吐出させ、水浴とペレットタイザーを通過させて、トリメトキシビニルシランがグラフトされた高密度ポリエチレン(以下、「シラン変性PE」)を製造した。
【0080】
実施例1
重量平均分子量(Mw)が350,000、分子量分布(Mw/Mn)が5の高密度ポリエチレン38重量部、前記製造例1で得たシラン変性PE2重量部および酸化防止剤0.5重量部を混合し、定量フィーダで二軸押出機(内径58mm、L/D=56、Twin screw extruder)に投入し、サイドインジェクターで40℃における動粘度が70cStのパラフィン油59.5重量部を投入した。スクリュー回転速度40rpm、200℃の条件で前記二軸押出機から幅が400mmのTダイ(T-Die)で吐出させた後、温度が40℃のキャスティングロール(casting roll)を通過させて、厚さが1,000μmのベースシートを製造した。
【0081】
前記ベースシートを110℃のロール延伸機で縦方向(MD)に6倍延伸し、125℃のテンター延伸機で横方向(TD)に7倍延伸して、ベースフィルムを製造した。前記ベースフィルムをジブチルスズジラウレートの濃度および温度がそれぞれ0.5重量%および40℃に調節されたジクロロメタン溶液を担持した含浸槽に浸漬し、前記ベースフィルムからパラフィン油を抽出、除去すると同時に、前記ベースフィルムの表面(内部および外部気孔の表面)にジブチルスズジラウレートを塗布した。
【0082】
ジブチルスズジラウレートが塗布された前記ベースフィルムの一面を50℃に予熱した状態で回転するロールと接触させて、前記ベースフィルムに残留するジクロロメタンを除去すると同時に、前記ロールと対向して設置されたノズルから前記ベースフィルムの他面に向かって110℃スチームを噴射して、前記ベースフィルムのうち前記シラン変性PEを架橋させた。前記ロールの回転速度は、前記ベースフィルムが縦方向(MD)に20m/minの速度で移動するように調節した。架橋された前記ベースフィルムをテンター延伸機で125℃で加熱した後、横方向(TD)に1.2倍延伸後、弛緩させて、延伸前と比べて0.9倍になるように熱固定させて、セパレータを製造した。
【0083】
実施例2
前記製造例1で得たシラン変性PEを前記製造例2で得たシラン変性PEに変えたことを除いて、前記実施例1と同じ方法でセパレータを製造した。
【0084】
実施例3
前記製造例1で得たシラン変性PEを前記製造例3で得たシラン変性PEに変えたことを除いて、前記実施例1と同じ方法でセパレータを製造した。
【0085】
実施例4
前記製造例1で得たシラン変性PEを前記製造例4で得たシラン変性PEに変えたことを除いて、前記実施例1と同じ方法でセパレータを製造した。
【0086】
実施例5
前記製造例1で得たシラン変性PEを前記製造例5で得たシラン変性PEに変えたことを除いて、前記実施例1と同じ方法でセパレータを製造した。
【0087】
実施例6
前記製造例1で得たシラン変性PEを前記製造例6で得たシラン変性PEに変えたことを除いて、前記実施例1と同じ方法でセパレータを製造した。
【0088】
実験例1
本発明において測定した物性それぞれに対する試験方法は、下記の通りである。温度に対する別途の言及がない場合、常温(25℃)で測定した。
-厚さ(μm):微細厚さ測定機を用いてセパレータ試験片の厚さを測定した。
-気孔率(%):ASTM F316-03に基づいて、PMI社のCapillary Porometerを用いて半径が25mmのセパレータ試験片の気孔率を測定した。
【0089】
-透気度(Gurley,sec/100ml):旭精工社のガーレー透気度試験機(Densometer)EGO2-5モデルを用いて測定圧力0.025MPaで100mlの空気が直径29.8mmのセパレータ試験片を通過する時間を測定した。
-引張強度(kgf/cm):引張強度測定機を用いてサイズが20×200mmのセパレータ試験片に応力を加えて試験片の破断が発生するまで加えられた応力を測定した。
【0090】
-引張伸率(%):引張強度測定機を用いてサイズが20×200mmのセパレータ試験片に応力を加えて、試験片の破断が発生するまで伸びた最大長さを測定し、下記計算式を用いて引張伸率を計算した。
引張伸率(%)=(l-l)/l×100
(前記計算式において、lは、伸張前の試験片の横または縦方向長さであり、lは、破断直前の試験片の横または縦方向長さである。)
【0091】
-穿孔強度(gf):KATO TECH社の穿孔強度測定機KES-G5モデルを用いてサイズが100×50mmのセパレータ試験片に直径0.5mmのスティック(Stick)で0.05cm/secの速度で力を加えて、前記試験片が穿孔される時点に加えられた力を測定した。
【0092】
-メルトダウン温度およびシャットダウン温度(℃):熱機械分析器(Thermomechanical analysis,TMA)を用いてセパレータ試験片の縦(MD)および横(TD)方向に0.01Nの張力を加えた後、5℃/分の速度で昇温させて、前記試験片の変形程度を測定した。
【0093】
-熱収縮率(%):130℃のオーブンで1時間サイズが200×200mmのセパレータ試験片をA4紙の間に入れて放置した後、常温冷却させて、試験片の横および縦方向の収縮した長さを測定し、下記計算式を用いて熱収縮率を計算した。
熱収縮率(%)=(l-l)/l×100
(前記計算式において、lは、収縮前の試験片の横または縦方向長さであり、lは、収縮後の試験片の横または縦方向長さである。)
【0094】
-表面欠点数(ea/m):セパレータ表面で周辺の明度と差異が顕著であり、2mm以上のサイズを有する不均一な微細点(表面欠点)の数を目視で測定した。
前記実施例により製造されたセパレータの物性を測定し、その結果を下記表1に示した。
【0095】
【表1】
【0096】
実施例7
重量平均分子量(Mw)が350,000、分子量分布(Mw/Mn)が5の高密度ポリエチレンおよびシラン変性PEの投入量をそれぞれ36重量部および4重量部に変更したことを除いて、前記実施例5と同じ方法でセパレータを製造した。
【0097】
実施例8
重量平均分子量(Mw)が350,000、分子量分布(Mw/Mn)が5の高密度ポリエチレンおよびシラン変性PEの投入量をそれぞれ28重量部および12重量部に変更したことを除いて、前記実施例5と同じ方法でセパレータを製造した。
【0098】
実施例9
重量平均分子量(Mw)が350,000、分子量分布(Mw/Mn)が5の高密度ポリエチレンおよびシラン変性PEの投入量をそれぞれ20重量部および20重量部に変更したことを除いて、前記実施例5と同じ方法でセパレータを製造した。
【0099】
実施例10
重量平均分子量(Mw)が350,000、分子量分布(Mw/Mn)が5の高密度ポリエチレンおよびシラン変性PEの投入量をそれぞれ4重量部および36重量部に変更したことを除いて、前記実施例5と同じ方法でセパレータを製造した。
【0100】
比較例1
重量平均分子量(Mw)が350,000、分子量分布(Mw/Mn)が5の高密度ポリエチレンおよびシラン変性PEの投入量をそれぞれ39重量部および1重量部に変更したことを除いて、前記実施例5と同じ方法でセパレータを製造した。
【0101】
比較例2
重量平均分子量(Mw)が350,000、分子量分布(Mw/Mn)が5の高密度ポリエチレンおよびシラン変性PEの投入量をそれぞれ2重量部および38重量部に変更したことを除いて、前記実施例5と同じ方法でセパレータを製造した。
【0102】
比較例3
重量平均分子量(Mw)が350,000、分子量分布(Mw/Mn)が5の高密度ポリエチレン36重量部、前記製造例5で得たシラン変性PE4重量部および酸化防止剤0.5重量部を混合し、定量フィーダで二軸押出機(内径58mm、L/D=56、Twin screw extruder)に投入し、サイドインジェクターで40℃における動粘度が70cStのパラフィン油59.5重量部を投入した。スクリュー回転速度40rpm、200℃の条件で前記二軸押出機から幅が400mmのTダイ(T-Die)で吐出させた後、温度が40℃のキャスティングロール(casting roll)を通過させて、厚さが1,000μmのベースシートを製造した。
【0103】
前記ベースシートを110℃のロール延伸機で縦方向(MD)に6倍延伸し、125℃のテンター延伸機で横方向(TD)に7倍延伸して、ベースフィルムを製造した。前記ベースフィルムを25℃のジクロロメタン含浸槽に浸漬し、1分間パラフィン油を抽出、除去し、ジブチルスズジラウレートの濃度が1重量%に調節されたジクロロメタン溶液を担持した含浸槽に浸漬して、前記ベースフィルムの表面(内部および外部気孔の表面)にジブチルスズジラウレートを塗布した後、50℃で5分間乾燥した。
【0104】
乾燥した前記ベースフィルムをテンター延伸機で、125℃で加熱した後、横方向(TD)に1.2倍延伸後、弛緩させて、延伸前と比べて0.9倍になるように熱固定させた。前記ベースフィルムを80℃、湿度90%の恒温恒湿組で1時間架橋させて、セパレータを製造した。
【0105】
比較例4
ポリオレフィンとして重量平均分子量30万の高密度ポリエチレン(大韓油化社、VH035、融点135℃)を準備し、希釈剤として液状パラフィン油(Kukdong油化社、LP350、動粘度40cSt at 40℃)を準備した。また、アルコキシ基含有ビニルシランとして3-アクリルオキシプロピルトリメトキシシラン(Shin-Etsu社、KBM-5103)を準備した。開始剤としては、2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルペルオキシ)ヘキサン(2,5-dimethyl-2,5-di(tert-butylperoxy)hexane)(Sigma-Aldrich社、Luperox 101)を準備した。
【0106】
前記ポリオレフィンと希釈剤は、重量比が35:65となるように準備し、前記アルコキシ基含有ビニルシランは、ポリオレフィンおよび希釈剤の総含有量100重量部に対して0.3重量部となるように準備した。前記開始剤は、アルコキシ基含有ビニルシラン100重量部に対して2重量部となるように準備した。
【0107】
ポリオレフィン、希釈剤、アルコキシ基含有ビニルシランおよび開始剤をL/Dが56の二軸押出機に投入し、混練して、ポリエチレン組成物を作成し、200℃温度の条件で反応押出した。
【0108】
押出した組成物をダイと冷却キャスティングロールに通過させた後、縦方向(MD)に延伸および横方向(TD)に延伸させるテンター型逐次延伸機で二軸延伸させた。MD延伸比とTD延伸比は、いずれも5.5倍とした。延伸温度は、MD延伸時に118℃であり、TD延伸時に123℃であった。
【0109】
前記シートから希釈剤を抽出するために、有機溶媒としてジクロロメタンを準備した。前記ジクロロメタンを浸漬槽に入れた後に、前記シートを浸漬槽に浸漬させて、希釈剤を抽出し、シラングラフトされた多孔性膜を製造した。
【0110】
架橋触媒としてジブチルスズジラウレートを準備し、前記架橋触媒が溶解する溶媒としてアセトンを準備した。前記架橋触媒を溶媒に溶解させて、0.05重量%の濃度を有する架橋触媒溶液を準備し、浸漬槽に漬けて、架橋触媒溶液の温度を45℃に調節した。シラングラフトされた多孔性膜を前記架橋触媒溶液が収容された浸漬槽に通過させて、架橋触媒溶液をシラングラフトされた多孔性膜に適用した。この際、多孔性膜が架橋触媒溶液浸漬槽に滞留する時間は2~3秒であった。また、このような工程によってシラングラフトされた多孔性膜に適用される架橋触媒の量は、ポリオレフィン、希釈剤および架橋開始剤を合わせた100重量部を基準として0.05重量部に該当するものと計算された。
【0111】
次に、シラングラフトされた多孔性膜に60℃の水を1時間適用し、適用方法としては、噴射スプレーを用いた。次に、前記多孔性膜を124℃で熱固定させて、セパレータを製造した。
【0112】
比較例5
シラングラフトされた多孔性膜を噴射スプレーが備えられたチャンバー内に位置させた後、60℃の水の代わりに、110℃スチームを適用したことを除いて、前記比較例4と同じ方法でセパレータを製造した。
【0113】
実験例2
本発明において測定した物性それぞれに対する試験方法は、前述した通りである。温度に対する別途の言及がない場合、常温(25℃)で測定した。
前記実施例および比較例により製造されたセパレータの物性を測定し、その結果を下記表2および表3に示した。
【0114】
【表2】
【0115】
【表3】
【0116】
前述した本発明の説明は、例示のためのものであり、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者は、本発明の技術的思想や必須の特徴を変更することなく、他の具体的な形態で容易に変形が可能であることを理解することができる。したがって、以上で記述した実施例は、すべての面において例示的なものであり、限定的でないものと理解しなければならない。例えば、単一型と説明されている各構成要素は、分散して実施されることもでき、同様に、分散したものと説明されている構成要素も、結合した形態で実施されることもできる。
【0117】
本発明の範囲は、後述する請求範囲によって示され、請求範囲の意味および範囲そしてその均等概念から導き出されるすべての変更または変形された形態が本発明の範囲に含まれると解すべきである。
【符号の説明】
【0118】
100 加熱部材
200 噴射部材
10 ベースフィルム
S スチーム
図1
図2
【国際調査報告】