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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-30
(54)【発明の名称】経口製剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/404 20060101AFI20240920BHJP
   A61P 9/12 20060101ALI20240920BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240920BHJP
   A61K 9/20 20060101ALI20240920BHJP
   A61K 47/38 20060101ALI20240920BHJP
   A61K 47/36 20060101ALI20240920BHJP
   A61K 47/04 20060101ALI20240920BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20240920BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20240920BHJP
   A61P 9/04 20060101ALI20240920BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20240920BHJP
   A61P 21/00 20060101ALI20240920BHJP
   A61P 27/06 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
A61K31/404
A61P9/12
A61P43/00 111
A61K9/20
A61K47/38
A61K47/36
A61K47/04
A61K47/12
A61K47/26
A61P9/04
A61P9/00
A61P21/00
A61P27/06
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024522069
(86)(22)【出願日】2022-10-11
(85)【翻訳文提出日】2024-06-07
(86)【国際出願番号】 GB2022052567
(87)【国際公開番号】W WO2023062351
(87)【国際公開日】2023-04-20
(31)【優先権主張番号】2114564.4
(32)【優先日】2021-10-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522394465
【氏名又は名称】アクティメッド・セラピューティクス・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】ACTIMED THERAPEUTICS LTD
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100156144
【弁理士】
【氏名又は名称】落合 康
(74)【代理人】
【識別番号】100221534
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 志穂
(72)【発明者】
【氏名】ミッセルウィッツ,フランク
(72)【発明者】
【氏名】レニー,ジェイムズ マクスウェル
(72)【発明者】
【氏名】モーテン,エレーヌ
(72)【発明者】
【氏名】ホークス,ロバート ウィリアム ジョン
(72)【発明者】
【氏名】バッタチャルジー,ロビン チャンドラ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA36
4C076BB01
4C076CC01
4C076CC09
4C076CC10
4C076CC11
4C076CC12
4C076CC13
4C076CC46
4C076DD27
4C076DD41
4C076EE30
4C076EE31
4C076EE38
4C076FF05
4C076FF09
4C076FF36
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC13
4C086GA16
4C086MA03
4C086MA05
4C086MA34
4C086MA35
4C086MA52
4C086NA03
4C086ZA33
4C086ZA36
4C086ZA42
4C086ZA94
4C086ZC42
(57)【要約】
本発明は、(a)S-ピンドロールまたはその医薬的に許容される塩である活性物質;(b)製剤の総重量に対して少なくとも15.0重量%の量のデンプン添加剤;および(c)製剤の総重量に対して少なくとも30.0重量%の量のセルロース添加剤を含む、経口投与に適した固形医薬製剤に関する。また、治療、例えばカヘキシーの処置における使用のための固形医薬製剤を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)S-ピンドロールまたはその医薬的に許容される塩である活性物質;
(b)製剤の総重量に対して少なくとも15.0重量%の量のデンプン添加剤;および
(c)製剤の総重量に対して少なくとも30.0重量%の量のセルロース添加剤
を含む、経口投与に適した固形医薬製剤。
【請求項2】
固形医薬組成物が、
(a)S-ピンドロールまたはその医薬的に許容される塩である活性物質;
(b)製剤の総重量に対して少なくとも15.0重量%の量のデンプン添加剤;および
(c)製剤の総重量に対して少なくとも40.0重量%の量のセルロース添加剤
を含む、請求項1に記載の固形医薬製剤。
【請求項3】
活性物質が、S-ピンドロールの医薬的に許容される塩である、請求項1または2に記載の固形医薬製剤。
【請求項4】
活性物質が、(i)S-ピンドロールと(ii)有機酸の医薬的に許容される塩であり、有機酸が、2.5以上のpKa1;およびCxHy(CO2H)zの化学式を有し、式中、xが1~10であり、yが2~20であり、zが1または2であり、
好ましくは、有機酸が、安息香酸、コハク酸、フマル酸、マロン酸、グルタル酸、アジピン酸、酢酸、プロピオン酸、フェニル酢酸、トルイル酸またはナフトエ酸である、
請求項1~3のいずれか一項に記載の固形医薬製剤。
【請求項5】
活性物質が、S-ピンドロール安息香酸塩である、請求項1~4のいずれか一項に記載の固形医薬製剤。
【請求項6】
活性物質が、製剤の総重量に対して1.0~25.0重量%の量で存在し、
好ましくは、活性物質が、製剤の総重量に対して10.0~20.0重量%の量で存在する、
請求項1~5のいずれか一項に記載の固形医薬製剤。
【請求項7】
デンプン添加剤が、製剤の総重量に対して少なくとも20.0重量%の量で存在し、
好ましくは、デンプン添加剤が、製剤の総重量に対して25.0~35.0重量%の量で存在する、
請求項1~6のいずれか一項に記載の固形医薬製剤。
【請求項8】
デンプン添加剤が、デンプンを含み、
好ましくは、デンプン添加剤が、トウモロコシデンプン、コムギデンプン、コメデンプン、キャッサバデンプンおよびココヤムデンプンの1つ以上を含み、
より好ましくは、デンプン添加剤が、トウモロコシデンプンを含む、
請求項1~7のいずれか一項に記載の固形医薬製剤。
【請求項9】
デンプン添加剤が、少なくとも部分的にアルファー化されたデンプンを含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の固形医薬製剤。
【請求項10】
セルロース添加剤が、製剤の総重量に対して少なくとも45.0重量%の量で存在し、
好ましくは、セルロース添加剤が、製剤の総重量に対して50.0~60.0重量%の量で存在する、
請求項1~9のいずれか一項に記載の固形医薬製剤。
【請求項11】
セルロース添加剤が、結晶セルロースを含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の固形医薬製剤。
【請求項12】
固形医薬製剤が、デンプンであるデンプン添加剤;および結晶セルロースであるセルロース添加剤を含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の固形医薬製剤。
【請求項13】
固形医薬製剤が、コロイド状シリカをさらに含み、
コロイド状シリカが、製剤の総重量に対して0.1~1.0重量%の量で存在してもよい、
請求項1~12のいずれか一項に記載の固形医薬製剤。
【請求項14】
固形医薬製剤が、滑沢剤をさらに含み、好ましくは、滑沢剤が、ステアリン酸マグネシウムであり、
滑沢剤が、製剤の総重量に対して0.1~1.0重量%の量で存在してもよい、
請求項1~13のいずれか一項に記載の固形医薬製剤。
【請求項15】
固形医薬製剤が、製剤の総重量に対して10.0重量%未満のラクトースを含み、
好ましくは、固形医薬製剤が、1.0重量%未満のラクトースを含む、
請求項1~14のいずれか一項に記載の固形医薬製剤。
【請求項16】
固形医薬製剤が、
(a)5.0~25.0重量%の、請求項3または4に記載のS-ピンドロールの医薬的に許容される塩;
(b)少なくとも20.0重量%の、請求項7または8に記載のデンプン添加剤;および
(c)少なくとも45.0重量%の、請求項10に記載のセルロース添加剤
を含み、ここで、重量%は製剤の総重量に対するものである、請求項1~15のいずれか一項に記載の固形医薬製剤。
【請求項17】
固形医薬製剤が、
(a)10~20重量%のS-ピンドロール安息香酸塩;
(b)20~30重量%のデンプン;
(c)50~60重量%の結晶セルロース;
(d)所望により、コロイド状シリカ;および
(e)所望により、ステアリン酸マグネシウム
を含み、ここで、重量%は製剤の総重量に対するものである、請求項1~16のいずれか一項に記載の固形医薬製剤。
【請求項18】
固形医薬製剤が、錠剤である、請求項1~17のいずれか一項に記載の固形医薬製剤。
【請求項19】
固形医薬製剤が、
(a)10~20重量%のS-ピンドロール安息香酸塩;
(b)22~30重量%のトウモロコシデンプン、好ましくは部分アルファー化されたトウモロコシデンプン;
(c)50~60重量%の結晶セルロース;
(d)0.1~0.5重量%のコロイド状シリカ;および
(e)0.1~0.5重量%のステアリン酸マグネシウム
を含む錠剤であり、ここで、重量%は製剤の総重量に対するものである、請求項1~18のいずれか一項に記載の固形医薬製剤。
【請求項20】
ヒトまたは動物の身体の処置における使用のための、請求項1~19のいずれか一項に記載の固形医薬製剤。
【請求項21】
カヘキシー、サルコペニア、神経筋障害、筋力低下、高血圧、心不全、心房細動、心臓発作、狭心症、緑内障および不安より選択される疾患または状態の処置または予防における使用のための、請求項1~19のいずれか一項に記載の固形医薬製剤。
【請求項22】
疾患または状態が、カヘキシーまたは筋力低下である、請求項21に記載の使用のための固形医薬製剤。
【請求項23】
対象体において請求項21または22に記載の疾患または状態を処置または予防する方法であって、請求項1~19のいずれか一項に記載の治療有効量の固形医薬製剤を対象体に投与することを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、S-ピンドロールまたはその塩を含む固形経口製剤、特にS-ピンドロールまたはその塩を含む錠剤に関する。本発明はまた、治療、例えばカヘキシーの処置または予防における固形経口製剤の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
S-ピンドロールは、β1受容体拮抗作用、β2受容体部分作動作用および中枢5-HT1A拮抗作用を示す同化/異化変換薬である。S-ピンドロールは、(-)-ピンドロールまたはS(-)-ピンドロールとしても知られ、体系名は(2S)-1-(1H-インドール-4-イルオキシ)-3-(1-メチルエチルアミノ)プロパン-2-オールである。S-ピンドロールの構造を以下に示す。
【化1】
【0003】
S-ピンドロールのラセミ体(すなわちピンドロールラセミ体)は、US3,471,515に記載されており、高血圧の処置のために販売されている。エナンチオマー濃縮S-ピンドロールを用いたカヘキシーおよびサルコペニアなどの消耗性疾患の処置は、WO2008/068477A1、WO2010/125348A1およびWO2014/016585A1に記載されている。
【0004】
S-ピンドロールおよびその塩は、典型的には、例えば錠剤として、経口投与される。S-ピンドロールを含む錠剤製剤は、WO2014/016585A1に記載されている。
【0005】
経口剤形としての医薬化合物の製剤化は、複雑なプロセスである。異なる添加剤は、活性物質と異なる相互作用をし得て、これらの相互作用およびその結果としての剤形の特性がどうなるかを予測することは不可能である。
【0006】
保存中に安定であるS-ピンドロールまたはその塩の経口製剤を開発する必要がある。また、好ましい溶出プロファイルを有する固形経口製剤を製造することも望まれる。
【発明の概要】
【0007】
本発明の驚くべき発見は、S-ピンドロールまたはその医薬的に許容される塩と、添加剤としてデンプンおよび結晶セルロースの両方を相当割合で含む、特定の固形経口製剤が、安定であり、有利な溶出プロファイルを有することである。
【0008】
したがって、本発明は、(a)S-ピンドロールまたはその医薬的に許容される塩である活性物質;(b)製剤の総重量に対して少なくとも15.0重量%の量のデンプン添加剤;および(c)製剤の総重量に対して少なくとも30.0重量%の量のセルロース添加剤を含む、経口投与に適した固形医薬製剤を提供する。
【0009】
したがって、本発明は、(a)S-ピンドロールまたはその医薬的に許容される塩である活性物質;(b)製剤の総重量に対して少なくとも15.0重量%の量のデンプン添加剤;および(c)製剤の総重量に対して少なくとも40.0重量%の量のセルロース添加剤を含む、経口投与に適した固形医薬製剤を提供する。
【0010】
本発明の固形医薬製剤は、典型的には、錠剤である。
【0011】
また、本発明は、ヒトまたは動物の身体の処置における使用のための固形医薬製剤を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0012】
固形医薬製剤は、S-ピンドロールまたはその医薬的に許容される塩である活性物質を含む。S-ピンドロールは、遊離塩基が、場合によっておよび特定の条件下では、保存中に分解または変色し得るため、好ましくは塩として製剤化される。
【0013】
典型的には、活性物質は、S-ピンドロールの医薬的に許容される塩である。医薬的に許容される塩は、典型的には、例えばpKa1が1.5以上または2.5以上である酸と形成される酸付加塩である。pKa1は、酸から解離する第1プロトンの酸解離定数である。1つの酸性プロトンを有する酸について、pKa1は、単に酸解離定数pKaに対応する。本明細書に記載のpKa1値は、25℃で測定される。酸のpKaおよびpKa1値は、当業者に容易に入手できる。
【0014】
活性物質は、典型的には、(i)S-ピンドロールと(ii)有機酸の医薬的に許容される塩であり、有機酸が、1.5以上のpKa1;およびCxHy(CO2H)z(OH)qの化学式を有し、式中、xが1~10であり、yが2~20であり、zが1、2または3であり、qが0、1または2である。有機酸は、例えば、安息香酸、コハク酸、フマル酸、マロン酸、酢酸、プロピオン酸、グルタル酸、アジピン酸、フェニル酢酸、トルイル酸(o-、m-およびp-トルイル酸を含む)およびナフトエ酸(1-および2-ナフトエ酸を含む)、クエン酸または酒石酸であり得る。
【0015】
活性物質は、好ましくは、(i)S-ピンドロールと(ii)有機酸の医薬的に許容される塩であり、有機酸が、2.5以上のpKa1;およびCxHy(CO2H)zの化学式を有し、式中、xが1~10であり、yが2~20であり、zが1または2である。したがって、有機酸は、ヒドロカルビル部分(CxHy、水素および炭素からなる)および1または2つのカルボン酸基(CO2H)を含み得る。典型的には、xは2~7であり、Hは2~6である。CxHy基は、アレーニル(arenyl)基、アルキル基またはアルケニル基であり得る。例えば、CxHy基は、所望により1または2つのメチル基で置換されている、二価のC2-7アルキル基、二価のC2-7アルケニル基または二価のフェニル基であり得る。
【0016】
有機酸は、例えば、安息香酸、コハク酸、フマル酸、マロン酸、酢酸、プロピオン酸、グルタル酸、アジピン酸、フェニル酢酸、トルイル酸(o-、m-およびp-トルイル酸を含む)またはナフトエ酸(1-および2-ナフトエ酸を含む)であり得る。好ましくは、有機酸は、安息香酸、コハク酸またはフマル酸である。より好ましくは、有機酸は、安息香酸またはコハク酸である。典型的には、有機酸は、S-ピンドロール安息香酸塩である。
【0017】
活性物質は、製剤の総重量に対して1.0~45.0重量%の量で存在し得る。活性物質は、典型的には、製剤の総重量に対して1.0~25.0重量%、例えば3.0~25.0重量%の量で存在する。好ましくは、活性物質は、製剤の総重量に対して10.0~20.0重量%の量で存在する。例えば、固形医薬製剤は、製剤の総重量に対して10.0~20.0重量%の量のS-ピンドロール安息香酸塩を含み得る。活性物質は、例えば13.0~17.0重量%の量で存在し得る。あるいは、活性物質は、6.0~9.0重量%または20.0~24.0重量%の量で存在し得る。
【0018】
活性物質は、0.1~50mgのS-ピンドロール遊離塩基に相当する量で存在し得る。典型的には、活性物質は、0.5~20mgのS-ピンドロール遊離塩基に相当する量で存在する。好ましくは、活性物質は、3.0~15.0mgのS-ピンドロール遊離塩基に相当する量、より好ましくは4.0~6.0mgのS-ピンドロール遊離塩基に相当する量で存在する。活性物質は、1.0mg、2.5mg、5.0mg、7.5mg、10.0mg、12.5mgまたは15.0mgのS-ピンドロール遊離塩基に相当する量で存在し得る。例えば、固形医薬製剤は、約7.44mgのS-ピンドロール安息香酸塩(5.0mgのS-ピンドロール遊離塩基に相当)を含み得る。
【0019】
固形医薬製剤は、典型的には、S-ピンドロールまたはその医薬的に許容される塩のエナンチオマー過剰(例えば少なくとも50%、少なくとも90%または少なくとも99%のエナンチオマー過剰)を含む。典型的には、固形医薬製剤は、R-ピンドロールまたはその医薬的に許容される塩を実質的に含まない。例えば、固形医薬製剤は、組成物の総重量に対して1.0重量%未満、0.1重量%未満、または0.01重量%未満のR-ピンドロールまたはその医薬的に許容される塩を含み得る。
【0020】
固形医薬製剤は、デンプン添加剤を含む。固形医薬製剤は、1つ以上のデンプン添加剤を含み得る。デンプン添加剤は、デンプン由来の添加剤であり、デンプンまたは加工デンプンであり得る。デンプンは、アミロース(典型的には20~25重量%)およびアミロペクチン(典型的には75~80重量%)の2つの成分を含む。加工デンプンは、ヒドロキシル基を化学的に処理して、例えばエステル化またはエーテル化によって、デンプンの特性を変化させたデンプンである。
【0021】
好ましくは、デンプン添加剤は、デンプン(所望により、以下で説明するようにアルファー化されていてもよい)を含む。デンプン添加剤は、典型的には、天然源から得られたデンプンを含む。例えば、デンプン添加剤は、トウモロコシデンプン、コムギデンプン、コメデンプン、キャッサバデンプンおよびココヤムデンプンの1つ以上を含み得る。好ましくは、デンプン添加剤は、トウモロコシデンプンを含む。トウモロコシデンプン(maize starch)は、コーンスターチ(corn starch)としても知られている。
【0022】
デンプン添加剤(すなわち、デンプンまたは加工デンプン)は、さらにアルファー化されていてもよい。例えば、デンプン添加剤は、少なくとも部分的にアルファー化されたデンプン(例えばトウモロコシデンプン)を含み得る。
【0023】
少なくとも部分的にアルファー化されたデンプンは、水中に懸濁され、徐々に加熱されて、デンプン顆粒が水を吸収し、その後少なくとも部分的に乾燥された、デンプン顆粒に相当する。デンプンは、典型的には、部分アルファー化されている。部分アルファー化デンプンは、例えば、部分アルファー化トウモロコシデンプンとして市販されている。
【0024】
固形医薬製剤中に存在する部分アルファー化デンプンは、乾燥減量が1.0~15.0重量%、例えば5.0~10.0重量%であり得る。固形医薬製剤に存在する任意の部分アルファー化デンプンの重量割合は、更なる乾燥なしの製剤中に存在する部分アルファー化デンプンの重量(すなわち、製剤の製造中に添加された部分アルファー化デンプンの重量)に基づく。
【0025】
デンプン添加剤は、典型的には、製剤の総重量に対して少なくとも20.0重量%、例えば20.0~40.0重量%の量で存在する。好ましくは、デンプン添加剤は、製剤の総重量に対して25.0~35.0重量%の量で存在する。例えば、固形医薬製剤は、製剤の総重量に対して25.0~30.0重量%の量のデンプンまたは部分アルファー化デンプンを含み得る。
【0026】
固形医薬製剤は、セルロース添加剤を含む。固形医薬製剤は、1つ以上のセルロース添加剤を含み得る。セルロース添加剤は、セルロース由来の添加剤であり、セルロースまたは加工セルロースであり得る。セルロースは、β(1→4)結合したD-グルコース単位で形成される多糖類である。加工セルロースは、ヒドロキシル基を化学的に処理して、例えばエステル化またはエーテル化によって、セルロースの特性を変化させたセルロースである。好ましくは、セルロース添加剤は、セルロースを含む。
【0027】
より好ましくは、セルロース添加剤は、結晶セルロースを含む。結晶セルロースは、市販されており、α-セルロースから合成された部分的解重合セルロースである。
【0028】
結晶セルロースは、典型的には、重合度が400未満または300未満である。結晶セルロースは、重合度が200~250であり得る。重合度は、結晶セルロースに関する米国薬局方モノグラフの固有粘度法(確認試験A)によって測定され得る。方法は、最初に、0.1mgまで正確に秤量した1.3gの結晶セルロースを125mLの三角フラスコに移すことにより溶液を形成し;25.0mLの水および25.0mLの1.0Mカプリエチレンジアミン水酸化物溶液を加え;すぐに溶液に窒素をパージし;栓を挿入し;完全に溶解するまでリストアクションシェーカーで振とうすることにより固有粘度を決定することを含む。適切な量の溶液を、校正された150番のキャノン・フェンスケ粘度計に移す。溶液を、25±0.1℃で5分以上平衡化させ、固有粘度[η]cを測定する。重合度Pを、式(95)[η]c/WS[(100-%LOD)/100]により決定し得て、式中、WSは、採取した結晶セルロースのグラム重量であり、%LODは、乾燥減量試験から得られる値である。
【0029】
結晶セルロースは、典型的には、D50の粒子径分布(粒子径中央値)が80~160μm、好ましくは90~140μm、より好ましくは100~130μmである。本明細書で用いるD50値は、典型的には、Dv50値(体積粒子径中央値)である。本明細書に記載のD50またはDv50値は、典型的には、レーザー回折によって測定され、例えば乾式分散セルを用いてレーザー回折によって測定される。
【0030】
セルロース添加剤は、典型的には、製剤の総重量に対して少なくとも35.0重量%または製剤の総重量に対して少なくとも40.0重量%の量で存在する。セルロース添加剤は、典型的には、製剤の総重量に対して少なくとも45.0重量%、例えば45.0~70.0重量%の量で存在する。好ましくは、セルロース添加剤は、製剤の総重量に対して50.0~60.0重量%の量で存在する。例えば、固形医薬製剤は、製剤の総重量に対して50.0~60.0重量%の結晶セルロースを含み得る。
【0031】
固形医薬製剤は、典型的には、デンプンである(好ましくは、部分アルファー化デンプンである)デンプン添加剤;および結晶セルロースであるセルロース添加剤を含む。固形医薬製剤は、デンプンおよび晶セルロースに加えて、1つ以上の更なるデンプン添加剤およびセルロース添加剤を含み得る。あるいは、固形医薬製剤は、デンプンである1つのデンプン添加剤およびa 結晶セルロースである1つのセルロース添加剤を含み得る。固形医薬製剤は、部分アルファー化トウモロコシデンプンである1つのデンプン添加剤および結晶セルロースである1つのセルロース添加剤を含み得る。
【0032】
固形医薬製剤は、例えば、シリカ;滑沢剤、例えばタルク、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウムまたはカルシウム、および/またはポリエチレングリコール;結合剤、例えばアラビアゴム、ゼラチン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースまたはポリビニルピロリドン;分解剤、例えばデンプン、アルギン酸、アルギン酸塩またはデンプングリコール酸ナトリウム;発泡混合物;染料;甘味剤;および湿潤剤、例えばレシチン、ポリソルベート、ラウリル硫酸より選択される、1つ以上の更なる添加剤を含み得る。
【0033】
固形医薬製剤は、典型的には、コロイド状シリカをさらに含む。コロイド状シリカは、製剤の総重量に対して0.1~1.0重量%の量で存在し得る。例えば、固形医薬製剤は、0.15~0.35重量%のコロイド状シリカを含み得る。
【0034】
固形医薬製剤は、典型的には、滑沢剤をさらに含む。滑沢剤は、例えば、タルク、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウムまたはステアリン酸カルシウムの1つ以上であり得る。滑沢剤は、好ましくは、ステアリン酸マグネシウムである。滑沢剤は、典型的には、製剤の総重量に対して0.1~1.0重量%の量で存在する。例えば、固形医薬製剤は、0.15~0.35重量%の滑沢剤、例えばステアリン酸マグネシウムを含み得る。
【0035】
典型的には、固形医薬製剤は、相当量のラクトースを含まない。例えば、固形医薬製剤は、製剤の総重量に対して10.0重量%未満のラクトースを含み得る。固形医薬製剤は、10.0重量%未満のラクトース一水和物を含み得る。好ましくは、固形医薬製剤は、1.0重量%未満のラクトースを含む。固形医薬製剤は、典型的には、ラクトースを実質的に含まない。固形医薬製剤は、典型的には、ラクトースを含まない。
【0036】
典型的には、固形医薬製剤は、(a)3.0~35.0重量%の本明細書で定義するS-ピンドロールの医薬的に許容される塩;(b)少なくとも20.0重量%の本明細書で定義するデンプン添加剤;および(c)少なくとも45.0重量%の本明細書で定義するセルロース添加剤を含み、ここで、重量%は製剤の総重量に対するものである。
【0037】
典型的には、固形医薬製剤は、(a)5.0~25.0重量%の本明細書で定義するS-ピンドロールの医薬的に許容される塩;(b)少なくとも20.0重量%の本明細書で定義するデンプン添加剤;および(c)少なくとも45.0重量%の本明細書で定義するセルロース添加剤を含み、ここで、重量%は製剤の総重量に対するものである。固形医薬製剤は、組成物の総重量に対して少なくとも90重量%、少なくとも95重量%、または少なくとも99重量%の成分(a)~(c)を含み得る。
【0038】
固形医薬製剤は、
(a)3~25重量%のS-ピンドロール安息香酸塩;
(b)20~35重量%のデンプン、所望により部分アルファー化されたデンプン;
(c)50~65重量%の結晶セルロース;
(d)所望により、コロイド状シリカ;および
(e)所望により、ステアリン酸マグネシウム
を含み得て、ここで、重量%は製剤の総重量に対するものである。
【0039】
固形医薬製剤は、
(a)3~20重量%のS-ピンドロール安息香酸塩;
(b)20~35重量%のデンプン、所望により部分アルファー化されたデンプン;
(c)50~60重量%の結晶セルロース;
(d)所望により、コロイド状シリカ;および
(e)所望により、ステアリン酸マグネシウム
を含み得て、ここで、重量%は製剤の総重量に対するものである。
【0040】
固形医薬製剤は、例えば、
(a)10~20重量%のS-ピンドロール安息香酸塩;
(b)20~30重量%のデンプン、所望により部分アルファー化されたデンプン;
(c)50~60重量%の結晶セルロース;
(d)所望により、コロイド状シリカ;および
(e)所望により、ステアリン酸マグネシウム
を含み得て、ここで、重量%は製剤の総重量に対するものである。
【0041】
固形医薬製剤は、組成物の総重量に対して少なくとも90重量%の成分(a)~(e)を含み得る。例えば、固形医薬製剤は、組成物の総重量に対して少なくとも95重量%または少なくとも99重量%の成分(a)~(e)を含み得る。固形医薬製剤は、成分(a)~(e)からなるかまたはそれらから本質的になり得る。
【0042】
固形医薬製剤は、組成物中に存在する成分を混合、造粒または錠剤化するなどの標準的な製剤方法により製造され得る。
【0043】
固形医薬製剤は、典型的には、錠剤、カプレット剤または顆粒剤の形態である。固形医薬製剤は、好ましくは、錠剤の形態である。
【0044】
固形医薬製剤は、
(a)6~24重量%のS-ピンドロール安息香酸塩;
(b)22~32重量%のトウモロコシデンプン、
(c)50~63重量%の結晶セルロース;
(d)0.1~0.5重量%のコロイド状シリカ;および
(e)0.1~0.5重量%のステアリン酸マグネシウム
を含む錠剤であり得て、ここで、重量%は製剤の総重量に対するものである。
【0045】
固形医薬製剤は、
(a)10~20重量%のS-ピンドロール安息香酸塩;
(b)22~32重量%のトウモロコシデンプン、
(c)50~60重量%の結晶セルロース;
(d)0.1~0.5重量%のコロイド状シリカ;および
(e)0.1~0.5重量%のステアリン酸マグネシウム
を含む錠剤であり得て、ここで、重量%は製剤の総重量に対するものである。
【0046】
固形医薬製剤は、
(a)10~20重量%のS-ピンドロール安息香酸塩;
(b)22~30重量%のトウモロコシデンプン、
(c)50~60重量%の結晶セルロース;
(d)0.1~0.5重量%のコロイド状シリカ;および
(e)0.1~0.5重量%のステアリン酸マグネシウム
を含む錠剤であり得て、ここで、重量%は製剤の総重量に対するものである。
【0047】
固形医薬製剤は、
(a)10~20重量%のS-ピンドロール安息香酸塩;
(b)22~30重量%の部分アルファー化トウモロコシデンプン、
(c)50~60重量%の結晶セルロース;
(d)0.1~0.5重量%のコロイド状シリカ;および
(e)0.1~0.5重量%のステアリン酸マグネシウム
を含む錠剤であり得て、ここで、重量%は製剤の総重量に対するものである。
【0048】
固形医薬製剤は、
(a)13~17重量%のS-ピンドロール安息香酸塩;
(b)24~30重量%の部分アルファー化トウモロコシデンプン、
(c)54~58重量%の結晶セルロース;
(d)0.15~0.35重量%のコロイド状シリカ;および
(e)0.15~0.35重量% ステアリン酸マグネシウム
を含む錠剤であり得て、ここで、重量%は製剤の総重量に対するものである。
【0049】
固形医薬製剤は、
(a)6~9重量%のS-ピンドロール安息香酸塩;
(b)28~33重量%の部分アルファー化トウモロコシデンプン、
(c)59~63重量%の結晶セルロース;
(d)0.15~0.35重量%のコロイド状シリカ;および
(e)0.15~0.35重量% ステアリン酸マグネシウム
を含む錠剤であり得て、ここで、重量%は製剤の総重量に対するものである。
【0050】
固形医薬製剤は、
(a)20~24重量%のS-ピンドロール安息香酸塩;
(b)23~28重量%の部分アルファー化トウモロコシデンプン、
(c)49~54重量%の結晶セルロース;
(d)0.15~0.35重量%のコロイド状シリカ;および
(e)0.15~0.35重量% ステアリン酸マグネシウム
を含む錠剤であり得て、ここで、重量%は製剤の総重量に対するものである。
【0051】
錠剤は、任意の標準的な錠剤化技術によって製造し得る。好ましくは、錠剤は、成分の粉末混合物の直接打錠によって製造する。錠剤は、成分の粉末混合物、すなわち成分(a)~(c)および所望により(d)および(e)の粉末混合物の直接打錠によって製造し得る。
【0052】
医薬用途
固形医薬製剤は、カヘキシー、サルコペニア、神経筋障害、筋力低下、高血圧、心不全、心房細動、心臓発作、狭心症、緑内障および不安より選択される疾患または状態の処置または予防において有用である。典型的には、疾患または状態は、カヘキシーおよび筋力低下より選択される。
【0053】
カヘキシーは、基礎疾患によって引き起こされ得る。例えば、カヘキシーは、癌、心不全、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、肝不全、腎不全、脳卒中、リウマチ性関節炎、重度熱傷またはHIV/AIDSによって引き起こされ得る。筋力低下は、基礎疾患によって引き起こされ得る。例えば、筋力低下は、外傷、筋骨格傷害、手術または固定によって引き起こされ得る。筋力低下は、集中治療室獲得性筋力低下(ICUAW)であり得る。神経筋障害は、例えば、筋萎縮性側索硬化症であり得る。
【0054】
本発明はまた、対象体においてカヘキシー、サルコペニア、神経筋障害、筋力低下、高血圧、心不全、心房細動、心臓発作、狭心症、緑内障および不安より選択される疾患または状態を処置または予防する方法であって、治療有効量の固形医薬製剤を対象体に投与することを含む方法を提供する。
【0055】
また、本発明は、カヘキシー、サルコペニア、神経筋障害、筋力低下、高血圧、心不全、心房細動、心臓発作、狭心症、緑内障および不安より選択される疾患または状態の処置または予防のための医薬の製造における固形医薬製剤の使用を提供する。
【0056】
医薬的に固形の医薬製剤は、典型的には、経口投与される。
【0057】
有効量の固形医薬製剤は、典型的には、単回用量に対して0.1~1000mgのS-ピンドロール遊離塩基に相当するS-ピンドロールまたはその医薬的に許容される塩の量を含む。例えば、固形医薬製剤の単回用量は、2.5~50mgまたは80~160mgのS-ピンドロール遊離塩基に相当するS-ピンドロールまたはその医薬的に許容される塩の量を含み得る。単回用量は、2.5~15mgのS-ピンドロール遊離塩基に相当するS-ピンドロールまたはその医薬的に許容される塩の量であり得る。用量は、1日1回、2回または3回投与され得る。用量は、1、2または3つの固形医薬製剤(例えば1、2または3つの錠剤)を含み得る。
【0058】
以下の実施例は本発明を例示する。
【実施例
【0059】
実施例1 錠剤処方
S-ピンドロール安息香酸塩を含む3つの錠剤処方(製剤A、BおよびC)を、下記の表1、2および3に示す処方で製造した。錠剤を、成分の粉末混合物を直接打錠することにより製造した。
【表1】


【表2】


【表3】
【0060】
実施例2 溶出試験
3つの錠剤処方の溶出プロファイルを、0.1M塩酸中で15分間評価した。結果を表4に示す。
【表4】
【0061】
製剤Aは、製剤Bまたは製剤Cより一貫して高い溶出率を示した。
【0062】
製剤Aは、15秒の急速な崩壊時間を示した。製剤BおよびCは、それぞれ27秒および30秒の崩壊時間を示した。
【0063】
実施例3 安定性試験
25℃/60%RHまたは40℃/75%RHの条件での保存中の製剤AおよびCの安定性を6か月にわたって評価した。
【0064】
製剤Aは、試験したすべての安定性特性について両方の保存条件下で良好に機能することが観察された。製剤Aはまた、25℃/60%RHにて安定性評価の期間中、15分後の溶出率が少なくとも97%を維持した。
【0065】
製剤Cは、製剤Aより有効成分の定量(assay)結果が低くなり、これは保存評価中そのままであった。
【0066】
錠剤の摩損度を評価した。製剤Aは、優れた摩損度(0.0%)を有することが分かった。
【0067】
結論
評価した3つの製剤処方のうち、製剤Aが、最も有利な溶出および安定性特性を有することがわかった。
【0068】
実施例4
表5の組成を有する5mg、10mgおよび15mgのS-ピンドロール相当量の錠剤を製造した。錠剤を、成分を混合および打錠することにより製造した。デンプン1500は、部分アルファー化トウモロコシデンプンである。MCC 102は、結晶セルロースである。
【表5】
【0069】
すべての錠剤は、急速な崩壊および溶出を示し、良好な摩損特定を有していた。
【国際調査報告】