(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-30
(54)【発明の名称】リチウム二次電池からのリチウム前駆体の回収方法
(51)【国際特許分類】
H01M 10/54 20060101AFI20240920BHJP
【FI】
H01M10/54
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024522087
(86)(22)【出願日】2022-10-11
(85)【翻訳文提出日】2024-04-11
(86)【国際出願番号】 KR2022015266
(87)【国際公開番号】W WO2023063677
(87)【国際公開日】2023-04-20
(31)【優先権主張番号】10-2021-0135782
(32)【優先日】2021-10-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】308007044
【氏名又は名称】エスケー イノベーション カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SK INNOVATION CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】26, Jong-ro, Jongno-gu, Seoul 110-728 Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】キム ヒョン ジュン
(72)【発明者】
【氏名】パク ジ ユン
(72)【発明者】
【氏名】キム ジ ミン
(72)【発明者】
【氏名】パク ドン リュル
(72)【発明者】
【氏名】チェ ミン ヒュク
(72)【発明者】
【氏名】ホン スク ジュン
【テーマコード(参考)】
5H031
【Fターム(参考)】
5H031RR02
(57)【要約】
リチウム二次電池の水酸化リチウムの回収方法では、リチウム二次電池からリチウムおよび有価金属を含むパウダーを準備する。前記パウダーを還元処理して、予備リチウム前駆体および有価金属含有粒子を含む予備前駆体混合物を形成する。前記予備前駆体混合物を水(H
2O)で1次水洗してリチウム前駆体水溶液および沈殿物を生成する。前記リチウム前駆体水溶液を前記沈殿物と固液分離してリチウム前駆体を回収する。前記固液分離を経て得られた沈殿物を追加の水洗および固液分離を行ってリチウム前駆体を回収する。カルシウム化合物を、前記1次水洗工程または前記追加の水洗工程でさらに添加する。これにより、酸溶液の湿式ベースの工程からもたらされる複雑な浸出工程、付加工程なしに高純度でリチウム前駆体を得ることができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リチウム二次電池からリチウムおよび有価金属を含むパウダーを準備するステップと、
前記パウダーを還元処理して、予備リチウム前駆体および有価金属含有粒子を含む予備前駆体混合物を形成するステップと、
前記予備前駆体混合物を水(H
2O)で1次水洗して、リチウム前駆体水溶液および沈殿物を生成するステップと、
前記リチウム前駆体水溶液を前記沈殿物と固液分離してリチウム前駆体を回収するステップと、
前記固液分離を経て得られた沈殿物を追加の水洗および固液分離してリチウム前駆体を回収するステップとを含み、
カルシウム化合物を前記1次水洗工程または前記追加の水洗工程でさらに添加することを含む、リチウム前駆体の回収方法。
【請求項2】
前記還元処理は、水素ガスを利用した流動層反応器によって行われる、請求項1に記載のリチウム前駆体の回収方法。
【請求項3】
前記予備リチウム前駆体は、水酸化リチウム、フッ化リチウムおよび炭酸リチウムを含む、請求項1に記載のリチウム前駆体の回収方法。
【請求項4】
前記予備リチウム前駆体に含まれたフッ化リチウムおよび炭酸リチウムは、前記1次水洗工程で水に溶解して水酸化リチウムに変換される、請求項3に記載のリチウム前駆体の回収方法。
【請求項5】
前記沈殿物は、未回収のリチウム化合物、有価金属化合物およびカルシウム化合物の少なくとも1つを含む、請求項1に記載のリチウム前駆体の回収方法。
【請求項6】
前記1次水洗は、流動化水和装置によって行われる、請求項1に記載のリチウム前駆体の回収方法。
【請求項7】
前記1次水洗は、20~70℃の温度で4~6時間行われる、請求項1に記載のリチウム前駆体の回収方法。
【請求項8】
前記追加の水洗は、20~70℃の温度で0.5~2時間行われる、請求項1に記載のリチウム前駆体の回収方法。
【請求項9】
前記パウダーは、正極活物質、負極活物質、正極集電体、負極集電体、電解液、導電材およびバインダーの少なくとも1つに由来する成分を含む、請求項1に記載のリチウム前駆体の回収方法。
【請求項10】
前記1次水洗工程または前記追加の水洗工程は、前記負極活物質、電解液、導電材またはバインダーに由来する成分を前記カルシウム化合物と反応させて少なくとも部分的に除去することを含む、請求項9に記載のリチウム前駆体の回収方法。
【請求項11】
前記負極活物質、電解液、導電材またはバインダーに由来する成分は、フッ素成分および炭素成分を含む、請求項10に記載のリチウム前駆体の回収方法。
【請求項12】
前記1次水洗工程または前記追加の水洗工程は、前記有価金属含有粒子を前記カルシウム化合物と反応させて少なくとも部分的に除去することを含む、請求項1に記載のリチウム前駆体の回収方法。
【請求項13】
前記有価金属はアルミニウムを含む、請求項12に記載のリチウム前駆体の回収方法。
【請求項14】
前記カルシウム化合物は、酸化カルシウムまたは水酸化カルシウムを含む、請求項1に記載のリチウム前駆体の回収方法。
【請求項15】
前記カルシウム化合物は、前記パウダーの全重量に対して2~10重量%の量で投入される、請求項1に記載のリチウム前駆体の回収方法。
【請求項16】
前記1次水洗工程または前記追加の水洗工程は、前記パウダーの全重量に対して200~400重量%の水で行われる、請求項1に記載のリチウム前駆体の回収方法。
【請求項17】
前記パウダーを準備するステップは、前記リチウム二次電池を乾式粉砕することを含む、請求項1に記載のリチウム前駆体の回収方法。
【請求項18】
前記還元処理の前に前記パウダーを熱処理するステップを含む、請求項17に記載のリチウム前駆体の回収方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウム二次電池からのリチウム前駆体の回収方法に関し、より詳細には、廃リチウム二次電池の正極から高純度のリチウム前駆体を回収する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
二次電池は、充電と放電の繰り返しが可能な電池であり、情報通信及びディスプレイ産業の発展につれてカムコーダー、携帯電話、ノートパソコンなどの携帯用電子通信機器に広く適用されてきた。二次電池としては、例えば、リチウム二次電池、ニッケル-カドミウム電池、ニッケル-水素電池などが挙げられる。中でもリチウム二次電池は、動作電圧および単位重量当たりのエネルギー密度が高く、充電速度および軽量化に有利な点で積極的に開発及び適用されてきた。
【0003】
リチウム二次電池は、正極、負極及び分離膜(セパレーター)を含む電極組立体と、前記電極組立体を含浸させる電解液とを含むことができる。前記リチウム二次電池は、前記電極組立体および電解液を収容する、例えばパウチ状の外装材をさらに含むことができる。
【0004】
前記リチウム二次電池の正極活物質としては、リチウム複合酸化物を用いることができる。前記リチウム複合酸化物は、さらに、ニッケル、コバルト、マンガンなどの有価金属を共に含有することができる。
【0005】
前記正極用活物質に前述した高コストの有価金属が用いられることにより、正極材の製造に製造コストの20%以上がかかっている。また、近年、環境保護への関心が高まることによって、正極用活物質のリサイクル方法の研究が進められている。
【0006】
従来は硫酸のような強酸に廃正極活物質を浸出させて有価金属を順次回収する方法が活用されていたが、前記の湿式工程の場合は、再生選択性、再生時間などの面で不利であり、環境汚染を引き起こすことがある。
【0007】
例えば、日本特開2019-178395号では、湿式方法を用いたリチウム前駆体の回収方法を開示している。しかし、この場合には、リチウム前駆体以外の他の材料、成分から発生する不純物に対する純度の低下を考慮していないという問題がある。そこで、乾式ベースの反応を利用してリチウム前駆体を高純度で回収する方法の研究が必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の1つの課題は、廃リチウム二次電池からリチウム前駆体を高純度で回収する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
例示的な実施形態によるリチウム前駆体の回収方法では、リチウム二次電池からリチウムおよび有価金属を含むパウダーを準備する。前記パウダーを還元処理して、予備リチウム前駆体および有価金属含有粒子を含む予備前駆体混合物を形成する。前記予備前駆体混合物を水(H2O)で1次水洗して、リチウム前駆体水溶液および沈殿物を生成する。前記リチウム前駆体水溶液を前記沈殿物と固液分離してリチウム前駆体を回収する。前記固液分離を経て得られた沈殿物を、追加の水洗および固液分離を行ってリチウム前駆体を回収する。カルシウム化合物を、前記1次水洗工程または追加の水洗工程でさらに添加する。
【0010】
いくつかの実施形態では、前記還元処理は、水素ガスを利用した流動層反応器によって行うことができる。
【0011】
いくつかの実施形態では、前記予備リチウム前駆体は、水酸化リチウム、フッ化リチウムおよび炭酸リチウムを含むことができる。
【0012】
いくつかの実施形態では、前記1次水洗工程において、前記予備リチウム前駆体に含まれたフッ化リチウムおよび炭酸リチウムは、水に溶解して水酸化リチウムに変換され得る。
【0013】
いくつかの実施形態では、前記沈殿物は、未回収のリチウム化合物、有価金属化合物およびカルシウム化合物の少なくとも1つを含むことができる。
【0014】
いくつかの実施形態では、前記1次水洗は流動化水和装置によって行うことができる。
【0015】
いくつかの実施形態では、前記1次水洗は20~70℃の温度で4~6時間行うことができる。
【0016】
いくつかの実施形態では、前記追加の水洗は、20~70℃の温度で0.5~2時間行うことができる。
【0017】
いくつかの実施形態では、前記パウダーは、正極活物質、負極活物質、正極集電体、負極集電体、電解液、導電材およびバインダーの少なくとも1つに由来する成分を含むことができる。
【0018】
いくつかの実施形態では、前記1次水洗工程または前記追加の水洗工程は、前記負極活物質、電解液、導電材またはバインダーに由来する成分を前記カルシウム化合物と反応させて少なくとも部分的に除去することを含むことができる。
【0019】
いくつかの実施形態では、前記負極活物質、電解液、導電材またはバインダーに由来する成分は、フッ素成分および炭素成分を含むことができる。
【0020】
いくつかの実施形態では、前記1次水洗工程または前記追加の水洗工程は、前記有価金属含有粒子を前記カルシウム化合物と反応させて少なくとも部分的に除去することを含むことができる。
【0021】
いくつかの実施形態では、前記有価金属はアルミニウムを含むことができる。
【0022】
いくつかの実施形態では、前記カルシウム化合物は、酸化カルシウムまたは水酸化カルシウムを含むことができる。
【0023】
いくつかの実施形態では、前記カルシウム化合物は、前記パウダーの全重量に対して2~10重量%の量で投入することができる。
【0024】
いくつかの実施形態では、前記1次水洗工程または前記追加の水洗工程は、前記パウダーの全重量に対して200~400重量%の水で行うことができる。
【0025】
いくつかの実施形態では、前記パウダーを準備するステップは、前記リチウム二次電池を乾式粉砕することを含むことができる。
【0026】
いくつかの実施形態では、前記リチウム前駆体の回収方法は、前記還元処理の前に前記パウダーを熱処理するステップを含むことができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明の一実施形態によれば、沈殿物に対して追加の水洗処理を行うことにより、投入されたカルシウム化合物が実質的に不純物と反応できるようになる。これにより、リチウム前駆体の回収工程の選択性、効率性をより向上させることができる。
【0028】
本発明の一実施形態によれば、水が予備リチウム前駆体と主に反応するステップと、カルシウム化合物が不純物と主に反応するステップを区分して、リチウム前駆体の回収効率をより向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】
図1は、例示的な実施形態によるリチウム二次電池からのリチウム前駆体の回収方法を説明するための概略的なフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明の実施形態は、リチウム二次電池から高純度、高収率でリチウム前駆体を回収する方法を提供する。
【0031】
以下では、添付の図面を参照して本発明の実施形態について詳細に説明することとする。しかし、これらの実施形態は例示的なものに過ぎず、本発明を限定するものではない。
【0032】
本明細書で使用される用語「前駆体」は、電極活物質に含まれる特定の金属を提供するために、前記特定の金属を含む化合物を包括的に指すことができる。
【0033】
本明細書で使用される用語「パウダー」は、後述する還元性反応処理に投入される原料物質を指すことができる。
【0034】
図1は、例示的な実施形態によるリチウム二次電池からのリチウム前駆体の回収方法を説明するための概略的なフローチャートである。
【0035】
図1を参照すると、リチウム二次電池からリチウムおよび有価金属を含むパウダーを準備することができる(例えば、S10ステップ)。
【0036】
前記リチウム二次電池は、正極と、負極と、前記正極と前記負極との間に介在する分離膜とを含む電極組立体を含むことができる。前記の正極および負極は、それぞれ、正極集電体および負極集電体上にコーティングされた正極活物質層および負極活物質層を含むことができる。
【0037】
例えば、前記正極活物質層に含まれる正極活物質は、リチウムおよび有価金属を含有する酸化物を含むことができる。
【0038】
いくつかの実施形態では、前記正極活物質は、下記化学式1で表される化合物を含むことができる。
【0039】
[化学式1]
LixM1aM2bM3cOy
【0040】
化学式1中、M1、M2及びM3は、Ni、Co、Mn、Na、Mg、Ca、Ti、V、Cr、Cu、Zn、Ge、Sr、Ag、Ba、Zr、Nb、Mo、Al、GaまたはBから選択される有価金属であってもよい。化学式1中、0<x≦1.1、2≦y≦2.02、0<a<1、0<b<1、0<c<1、0<a+b+c≦1であってもよい。
【0041】
いくつかの実施形態では、前記正極活物質は、ニッケル、コバルトおよびマンガンを含むNCM系リチウム酸化物であってもよい。
【0042】
正極は、前述のように正極集電体(例えば、アルミニウム(Al))および正極活物質層を含み、前記正極活物質層は、前述の正極活物質に加えて、導電材及びバインダーを共に含むことができる。
【0043】
前記導電材は、活物質粒子間の電子移動を促進するために含むことができる。例えば、黒鉛、カーボンブラック、グラフェン、カーボンナノチューブのような炭素系物質、またはスズ、酸化スズ、酸化チタン、LaSrCoO3、LaSrMnO3のようなペロブスカイト(perovskite)物質などを含む金属系物質を含むことができる。前述の例示的な導電材は、正極だけでなく負極にも使用することができる。
【0044】
前記バインダーは、例えば、ビニリデンフルオリド-ヘキサフルオロプロピレンコポリマー(PVDF-co-HFP)、ポリビニリデンフルオリド(polyvinylidenefluoride、PVDF)、ポリアクリロニトリル(polyacrylonitrile)、ポリメチルメタクリレート(polymethylmethacrylate)、スチレン-ブタジエンゴム(styrene butadiene rubber、SBR)、ポリビニルアルコール(poly vinyl alcohol)、ポリアクリル酸(poly acrylic acid、PAA)、カルボキシメチルセルロース(carboxymethyl cellulose、CMC)、ヒドロキシプロピルセルロース(Hydroxypropylcellulose)、ジアセチルセルロース(diacetylcellulose)などを含むことができる。前述の例示的なバインダーは、正極だけでなく負極にも使用することができる。
【0045】
例示的な実施形態によれば、前記負極活物質は、リチウムイオンを吸蔵および脱離できる、当技術分野で公知のものを特に制限なく使用することができる。例えば、結晶質炭素、非晶質炭素、炭素複合体、炭素繊維などの炭素系材料;リチウム合金;シリコン(Si)系化合物または錫などを使用することができる。
【0046】
負極は、前述のように負極集電体(例えば、銅(Cu))および負極活物質層を含み、前記負極活物質層は、前述の負極活物質に加えて、導電材及びバインダーを含むことができる。
【0047】
いくつかの実施形態では、前記電解液としては非水電解液を使用することができる。非水電解液は、電解質であるリチウム塩と有機溶媒を含み、前記リチウム塩は、例えば、Li+X-で示すことができる。前記リチウム塩の陰イオン(X-)としては、F-、Cl-、Br-、I-、NO3
-、N(CN)2
-、BF4
-、ClO4
-、PF6
-、(CF3)2PF4
-、(CF3)3PF3
-、(CF3)4PF2
-、(CF3)5PF-、(CF3)6P-、CF3SO3
-、CF3CF2SO3
-、(CF3SO2)2N-、(FSO2)2N-、CF3CF2(CF3)2CO-、(CF3SO2)2CH-、(SF5)3C-、(CF3SO2)3C-、CF3(CF2)7SO3
-、CF3CO2
-、CH3CO2
-、SCN-および(CF3CF2SO2)2N-などが挙げられる。
【0048】
いくつかの実施形態では、前記パウダーを準備するステップは、廃バッテリーをセル単位まで分離するステップを含むことができる。例えば、廃バッテリーのケースと電線を分離し、廃バッテリーをモジュール単位に分離した後、前記モジュール単位を再びセル単位まで分離することができる。
【0049】
いくつかの実施形態では、前記パウダーを準備するステップは、前記セルから正極を分離するステップを含むことができ、前記正極から正極活物質層を分離するステップを含むことができる。
【0050】
例示的な実施形態によれば、前記パウダーを準備するステップは、前記リチウム二次電池を乾式粉砕することを含むことができる。これにより、前記パウダーは粉末状に製造することができる。
【0051】
いくつかの実施形態では、前記乾式粉砕されるリチウム二次電池は、前述のセル単位、正極単位または正極活物質層単位であってもよい。
【0052】
例示的な実施形態によれば、前記パウダーは、正極活物質、負極活物質、正極集電体、負極集電体、電解液、導電材およびバインダーの少なくとも1つに由来する成分を含むことができる。
【0053】
いくつかの実施形態では、前記パウダーは、後述する還元性反応器に投入する前に熱処理を行うことができる。前記導電材および前記バインダーのような不純物は、前記熱処理によって除去または低減され、前記パウダーのリチウム-有価金属酸化物を高純度で前記還元性反応器内に投入することができる。前記熱処理の温度は、例えば、約100~500℃、好ましくは約350~450℃であってもよい。前記範囲では、実質的に前記不純物が除去されることにより、リチウム-有価金属酸化物の分解、損傷を防止することができる。
【0054】
いくつかの実施形態では、前記パウダーの平均粒径(体積累積分布における平均粒径)D50は5~100μmであってもよい。前記範囲では、後述する流動層反応器による還元性反応を容易に行うことができる。
【0055】
例示的な実施形態によれば、前記パウダーを還元処理して、予備リチウム前駆体および有価金属含有粒子を含む予備前駆体混合物を製造することができる(例えば、S20ステップ)。
【0056】
前記有価金属含有粒子は、Ni、Co、Al、NiO、CoO、MnO、Al2O3などを含むことができる。
【0057】
いくつかの実施形態では、前記予備リチウム前駆体は、水酸化リチウム(LiOH)または酸化リチウム(Li2O)を含むことができ、前記負極活物質、電解液、導電材またはバインダーに由来するフッ化リチウム(LiF)または炭酸リチウム(Li2CO3)を含むことができる。
【0058】
例示的な実施形態では、前記パウダーは還元性反応器に投入され、水素ガスを利用して還元処理することができる。
【0059】
前記還元処理時には、水素ガスは還元性反応器の下部に注入することができる。前記水素ガスを前記還元性反応器の下部から供給して前記パウダーと接触することができる。これにより、前記投入されたパウダーが反応器の上部に移動しながら、または反応器本体内に滞留しながら前記還元性反応ガスと反応し、前記予備前駆体混合物に変換され得る。
【0060】
いくつかの実施形態では、前記還元処理時に水素ガスを注入するか、またはキャリアガスを共に注入して、前記還元性反応器内に流動層を形成することができる。したがって、還元性反応器は流動層反応器であり得る。前記キャリアガスは、例えば、窒素(N2)、アルゴン(Ar)などの不活性気体を含むことができる。
【0061】
前記流動層内でパウダーを処理時に上昇、滞留、下降を繰り返すことにより、反応接触時間が増加して粒子の分散を促進することができる。ことにより、均一なサイズの予備前駆体混合物を得ることができる。
【0062】
但し、本発明の概念は必ずしも流動層反応に限定されるものではない。例えば、バッチ(batch)式反応器または管状反応器内に正極活物質混合物を予めロードした後、還元性反応ガスを供給する固定式反応を行うこともできる。
【0063】
例示的な実施形態によれば、還元処理の温度は約400~800℃の範囲で調整することができ、好ましくは約400~600℃、より好ましくは約400~500℃の範囲で調整することができる。また、前記還元処理は、水素濃度、反応温度、還元反応時間などの工程条件によって微調整することができる。
【0064】
例示的な実施形態によれば、前記製造された予備前駆体混合物を水(H2O)で1次水洗してリチウム前駆体水溶液および沈殿物を生成することができる(例えば、S30ステップ)。
【0065】
いくつかの実施形態では、前記1次水洗時に不活性気体を共に注入して水洗処理装置内に流動層を形成することができる。つまり、1次水洗は流動化水和装置によって行うことができる。前記不活性気体は、例えば、窒素(N2)またはアルゴン(Ar)を含むことができ、その種類を限定しない。
【0066】
前記流動化水和装置内で水洗処理を行うとき、予備リチウム前駆体混合物が水溶液中で上昇、下降を繰り返すことによって接触面積、時間を増えることができる。これにより、後述する水と予備リチウム前駆体との反応をより容易に行うことができる。
【0067】
前記不活性気体の混合により、予備前駆体混合物が凝集することなく、均一に混合することができる。これにより、予備リチウム前駆体が有価金属含有粒子と凝集して沈殿することが防止され、リチウム前駆体の回収率を高めることができる。
【0068】
リチウム二次電池の充放電特性、寿命特性、高温安定性などの観点から、リチウム前駆体としては水酸化リチウムが有利であり得る。例えば、炭酸リチウムの場合には、分離膜上に沈積反応を起こして寿命安定性を低下させることがある。
【0069】
また、リチウム前駆体の再生および工程効率の観点から、リチウム前駆体としては水酸化リチウムが有利であり得る。例えば、水酸化リチウムの水に対する溶解度が、炭酸リチウムまたはフッ化リチウムの水に対する溶解度よりも大きく、水洗処理に必要な水の量が少なくてもよい。したがって、装置のサイズ、工程時間を減らすことができる。
【0070】
いくつかの実施形態では、前記予備リチウム前駆体に含まれるフッ化リチウムおよび炭酸リチウムは、前記1次水洗によって水に溶解して水酸化リチウムに変換され得る。これにより、水酸化リチウムの形態に変換された高純度のリチウム前駆体を生成することができる。
【0071】
本発明の一実施形態では、前記1次水洗工程にカルシウム化合物を投入することができる。
【0072】
例示的な実施形態では、前記カルシウム化合物は酸化カルシウムまたは水酸化カルシウムを含むことができる。前記1次水洗工程は、前記負極活物質、電解液、導電材またはバインダーに由来する成分を前記カルシウム化合物と反応させて少なくとも部分的に除去することを含むことができる。
【0073】
いくつかの実施形態では、前記負極活物質、電解液、導電材またはバインダーに由来する成分は、フッ素成分または炭素成分を含むことができる。このフッ素成分および炭素成分がリチウムと反応すると、フッ化リチウム(LiF)および炭酸リチウム(Li2CO3)を形成する。このため、リチウム前駆体の回収率が低下することになる。前記1次水洗工程で投入されたカルシウム化合物は、前記予備前駆体混合物に含まれたフッ素成分および炭素成分と反応することでフッ化カルシウム(CaF2)および炭酸カルシウム(CaCO3)を形成して沈殿し得る。
【0074】
例示的な実施形態では、前記1次水洗工程で投入したカルシウム化合物が沈殿し得る。リチウム前駆体の水に対する溶解速度が、カルシウム化合物に比べて速いので、1次水洗工程でカルシウム化合物を投入した場合には、リチウム前駆体がより速く水に溶解することにより、前記リチウム前駆体水溶液のpHが上昇し得る。これにより、前記リチウム前駆体水溶液に溶解していないカルシウム化合物、または溶解後に析出したカルシウム化合物が沈殿し得る。
【0075】
前記カルシウム化合物が沈殿することにより、1次水洗工程で投入されたカルシウム化合物の炭素成分およびフッ素成分との沈殿反応が容易に起こりにくくなる。また、後述する追加の水洗工程において、実質的に前記カルシウム化合物の炭素およびフッ素成分との沈殿反応が起こり得る。カルシウム化合物が前記負極活物質、電解液、導電材またはバインダーに由来する成分と主に反応する工程は、後述する追加の水洗工程であり得る。この点を考慮して、カルシウム化合物を前記1次水洗工程または後述する追加の水洗工程で選択的に投入することができる。
【0076】
例示的な実施形態では、前記予備前駆体混合物に含まれた前記有価金属含有粒子は、前記1次水洗によって水に溶解または反応することなく沈殿し得る。
【0077】
例示的な実施形態では、前記有価金属含有粒子は、前記1次水洗工程で投入されたカルシウム化合物と反応して沈殿し、後述する固液分離によって除去することができる。
【0078】
例示的な実施形態では、前記カルシウム化合物と反応して沈殿する有価金属はアルミニウムを含むことができる。例えば、前記有価金属含有粒子に含まれるアルミニウム化合物は、カルシウム化合物と反応後に沈殿し、後述する固液分離により除去することができる。前記1次水洗工程でカルシウム化合物が投入された場合には、pHの上昇により、前記アルミニウム化合物がより容易に沈殿し得る。前記アルミニウム化合物の沈殿は、実質的に1次水洗工程で行うことができる。
【0079】
いくつかの実施形態では、前記カルシウム化合物の投入量が増加することにより、沈殿および除去されるアルミニウム化合物の量が増加し得る。
【0080】
例示的な実施形態では、前記1次水洗時に水に溶解しなかった予備リチウム前駆体が沈殿し得る。例えば、前記予備リチウム前駆体は、前記有価金属含有粒子と凝集して沈殿し得る。また、前記予備リチウム前駆体中の水に対する溶解度の低いリチウム化合物は固相に沈殿し得る。
【0081】
例示的な実施形態では、前記沈殿物は、未回収のリチウム化合物、有価金属化合物およびカルシウム化合物の少なくとも1つを含むことができる。
【0082】
例示的な実施形態では、前記カルシウム化合物は、前記パウダーの全重量に対して2~10重量%の量で1次水洗に投入することができる。前記パウダーの全重量に対してカルシウム化合物を2重量%投入すると、バインダー及び導電材に由来する成分を70%以上除去することができる。前記パウダーの全重量に対してカルシウム化合物を5重量%以上投入すると、フッ素成分及び炭素成分を90%以上除去することができる。
【0083】
例示的な実施形態では、前記1次水洗は前記パウダーの全重量に対して200~400重量%の水で行うことができる。200重量%以上を投入すると、予備前駆体混合物と前記カルシウム化合物とが均一に混合され、水酸化リチウムの選択比を向上させることができる。水の投入量は前記範囲に限定されず、前記予備前駆体混合物の粘度と反応器の規格によって調整することができる。
【0084】
例示的な実施形態では、前記1次水洗は、20~70℃の温度で4~6時間行うことができる。70℃の温度で4時間以上行うと、バインダー及び導電材に由来する成分の90%以上を除去することができる。水和温度及び時間は運転状況によって調整することができる。
【0085】
例示的な実施形態によれば、前記リチウム前駆体水溶液を前記沈殿物と固液分離してリチウム前駆体を回収することができる(例えば、S40ステップ)。
【0086】
前記固液分離により、固相に沈殿したカルシウム化合物または有価金属化合物を分離し、高純度のリチウム前駆体を取得することができる。
【0087】
例示的な実施形態では、前記固液分離は遠心分離機によって行うことができる。
【0088】
例示的な実施形態では、前記リチウム前駆体水溶液は水酸化リチウム、炭酸リチウム、フッ化リチウムを含むことができ、実質的に水酸化リチウム水溶液に分離され、水酸化リチウムの形態で高純度のリチウム前駆体を取得することができる。
【0089】
例示的な実施形態によれば、前記固液分離を経て得られた沈殿物を追加の水洗および固液分離してリチウム前駆体を回収することができる(例えば、S50ステップ)。
【0090】
1次水洗および固液分離(例えば、S30ステップ及びS40ステップ)により生成された第1沈殿物を前記追加の水洗(例えば、S50ステップ)を行い、第2リチウム前駆体水溶液および第2沈殿物を生成することができる。
【0091】
前記第1沈殿物中に含まれる前記予備リチウム前駆体は、前記追加の水洗工程で溶解し、第2リチウム前駆体水溶液として回収することができる。
【0092】
例えば、1次水洗(例えば、S30ステップ)の際に、前記有価金属含有粒子と共に凝集して沈殿した前記予備リチウム前駆体を、前記追加の水洗工程(例えば、S50ステップ)で溶解することができる。前記予備リチウム前駆体に含まれたフッ化リチウムおよび炭酸リチウムは、前記追加の水洗工程で水酸化リチウムに変換するか、または水洗して除去することができる。ことにより、水酸化リチウムの形態に変換された高純度のリチウム前駆体を生成することができる。
【0093】
例示的な実施形態では、前記1次水洗工程(例えば、S30ステップ)でカルシウム化合物が投入された場合には、前記1次水洗工程で溶解せずに第1沈殿物に含まれていたカルシウム化合物は、実質的に追加の水洗工程(例えば、S50ステップ)で溶解し、前記負極活物質、電解液、導電材またはバインダーに由来する成分と反応して少なくとも部分的に除去することができる。
【0094】
いくつかの実施形態では、前記負極活物質、電解液、導電材またはバインダーに由来する成分は、フッ素成分および炭素成分を含むことができる。前記追加の水洗工程で溶解したカルシウム化合物は、前記フッ素成分および炭素成分と反応してフッ化カルシウム(CaF2)および炭酸カルシウム(CaCO3)を形成して沈殿し得る。
【0095】
例示的な実施形態では、前記追加の水洗時に、1次水洗工程で投入されたが水に溶解していないカルシウム化合物が沈殿し得る。前記予備前駆体混合物に含まれた前記有価金属含有粒子は、前記追加の水洗によって水に溶解または反応することなく沈殿し得る。前記追加の水洗時に、水に溶解していない予備リチウム前駆体が沈殿し得る。
【0096】
例示的な実施形態では、前記追加の固液分離により、第2チウム前駆体水溶液および第2沈殿物を分離することができる。前記第2沈殿物には、未回収のリチウム化合物、カルシウム化合物および有価金属化合物が含まれ得る。
【0097】
例示的な実施形態によれば、前記カルシウム化合物は、1次水洗工程または前記追加の水洗工程で投入することができる。
【0098】
例えば、前記カルシウム化合物は1次水洗工程中に投入せず、追加の水洗工程で投入することができる。前述のように、1次水洗工程でカルシウム化合物が投入された場合には、リチウム前駆体が溶解することにより、カルシウム化合物がフッ素および炭素成分と反応せずに沈殿し得る。したがって、前記カルシウム化合物を1次水洗工程で投入せずに追加の水洗工程で投入しても本発明の効果を奏することができる。この場合、前述の有価金属の除去効果は、追加の水洗工程で発生することができる。
【0099】
いくつかの実施形態では、前記追加の水洗および固液分離(例えば、S50ステップ)は、複数回繰り返して行うことができる。
【0100】
前記追加の水洗および固液分離により、実質的に前記パウダー中のリチウムを全量回収することができる。
【0101】
前記1次水洗工程でカルシウム化合物を投入した場合、投入されたカルシウム化合物中の前記1次水洗工程で溶解せずに沈殿したカルシウム化合物は、追加の水洗工程で溶解することができる。前記追加の水洗工程では、前記カルシウム化合物が前記不純物と反応してフッ素成分および炭素成分を除去することができ、実質的に前記パウダー中のリチウムの全量を水酸化リチウムの形態として回収することができる。
【0102】
例示的な実施形態では、前記追加の水洗は、前記パウダーの全重量に対して200~400重量%の水で行うことができる。前記追加の水洗は、20~70℃の温度で0.5~2時間行うことができる。
【0103】
前記水の投入量、処理温度および時間は、前述の範囲に限定されず、追加の水洗処理の回数、前記予備前駆体混合物の粘度、運転状況などによって調整することができる。例えば、前記1次水洗後に追加の水洗を一回のみ行う場合には、所望の回収率を達成するためにパウダーの全重量に対して8000重量%の水を投入することができ、70℃の温度で20時間行うことができる。
【0104】
本発明の実施形態によれば、リチウム前駆体として水酸化リチウムを選択比高く回収する方法を提供することができる。
【0105】
例示的な実施形態によれば、前記還元処理の前に前記熱処理を施すことによって、前記バインダーおよび前記導電材に由来する不純物を除去することができる。これにより、リチウム前駆体水溶液に含まれるリチウム化合物における炭酸リチウムおよびフッ化リチウムの含有量を低減することができる。
【0106】
例示的な実施形態によれば、前記還元処理は水素ガスを利用することができ、炭素含有ガスは排除することができる。これにより、前記還元処理により得られた予備前駆体混合物を水洗処理する場合、リチウム前駆体水溶液中の水酸化リチウムの含有量を増加させることができ、炭酸リチウムのような他の形態のリチウム前駆体の副生を防止することができる。
【0107】
前記炭酸リチウム及びフッ化リチウムのような他の形態のリチウム前駆体の副生を防止することによって、投入するカルシウム化合物の量を低減することができる。
【0108】
例示的な実施形態によれば、溶液の使用が排除された乾式還元性反応によってリチウム前駆体が収集される。これにより、副産物が減少して収率が増加し、廃水処理が不要で環境に優しい工程の設計が可能である。
【0109】
以下、本発明の理解を助けるために具体的な実施例を提示するが、これらの実施例は本発明を例示するものに過ぎず、添付の特許請求の範囲を制限するものではない。これらの実施例に対し、本発明の範疇および技術思想の範囲内で種々の変更および修正を加えることが可能であることは当業者にとって明らかであり、これらの変形および修正が添付の特許請求の範囲に属することも当然のことである。
【0110】
実施例
実施例1
廃リチウム二次電池から分離されたセルを放電した後、数cmの単位に切断し、ミリングにより粉砕処理した。前記粉砕処理したセルを450℃で1時間熱処理して、Li-Ni-Co-Mn酸化物を含むパウダーを200g採取した。
【0111】
流動層反応器内に前記の採取したパウダーをロードし、反応器の下部から水素20vol%/窒素80vol%の混合ガスを5.5L/minの流量で4時間注入して還元反応を行った。このとき、流動層反応器内の温度は460℃に維持した。還元反応の進行後に反応器の温度を25℃に減温し、予備前駆体混合物を得た。
【0112】
パウダーの全重量に対して300重量%の水、パウダーの全重量に対して10重量%の酸化カルシウム(CaO)、および前記得られた予備前駆体混合物を流動化水和装置に投入した。30℃で窒素100vol%のガスを12L/minの流量で5時間注入して流動し、遠心分離機により固液分離して、第1リチウム前駆体水溶液および第1沈殿物を得た(1次水洗および固液分離)。
【0113】
前記第1沈殿物をパウダーの全重量に対して300重量%の水と共に水和装置に入れて45℃で1時間攪拌し、遠心分離機により固液分離して、第2リチウム前駆体水溶液および第2沈殿物を得た(2次水洗および固液分離)。
【0114】
前記第2沈殿物をパウダーの全重量に対して200重量%の水と共に水和装置に入れて45℃で1時間撹拌し、遠心分離機により固液分離して、第3リチウム前駆体水溶液および第3沈殿物を得た(3次水洗および固液分離)。
【0115】
前記第3沈殿物をパウダーの全重量に対して200重量%の水と共に水和装置に入れて45℃で1時間攪拌し、遠心分離機により固液分離して、第4リチウム前駆体水溶液および第4沈殿物を得た(4次水洗および固液分離)。
【0116】
第1~第4リチウム前駆体水溶液の各々に残存する水酸化リチウム、炭酸リチウム及びフッ化リチウムの濃度を測定し、水溶液に回収されるリチウム化合物の全重量に対する各第1~第4リチウム前駆体水溶液に含まれる各リチウム化合物の重量比(回収率)を測定した。測定の結果は下記表1に示す通りである。
【0117】
【0118】
実施例2
廃リチウム二次電池から分離されたセルを放電した後、数cmの単位に切断し、ミリングにより粉砕処理した。前記粉砕処理したセルを450℃で1時間熱処理して、Li-Ni-Co-Mn酸化物を含むパウダーを200g採取した。
【0119】
流動層反応器内に前記の採取したパウダーをロードし、反応器の下部から水素20vol%/窒素80vol%の混合ガスを5.5L/minの流量で4時間注入して還元反応を行った。このとき、流動層反応器内の温度は460℃に維持した。還元反応の進行後に反応器の温度を25℃に減温し、予備前駆体混合物を得た。
【0120】
パウダーの全重量に対して300重量%の水、パウダーの全重量に対して17.5重量%の酸化カルシウム(CaO)、および前記得られた予備前駆体混合物を流動化水和装置に投入した。30℃で窒素100vol%のガスを12L/minの流量で5時間注入して流動し、遠心分離機により固液分離して、第1リチウム前駆体水溶液および第1沈殿物を得た(1次水洗および固液分離)。
【0121】
前記第1沈殿物をパウダーの全重量に対して8000重量%の水と共に水和装置に入れて70℃で20時間撹拌し、遠心分離機により固液分離して、第2リチウム前駆体水溶液および第2沈殿物を得た(2次水洗および固液分離)。
【0122】
固液分離により得られた第1及び第2リチウム前駆体水溶液を合わせた最終のリチウム前駆体水溶液中に残存する水酸化リチウム、炭酸リチウム、フッ化リチウム及びアルミニウムの濃度を測定し、水溶液に回収されるリチウム化合物の全重量に対する各リチウム化合物およびアルミニウムの重量比を測定した。測定の結果を下記表3にまとめて示す。
【0123】
実施例3
パウダーの全重量に対して3.5重量%の酸化カルシウム(CaO)を投入した以外は実施例2と同様の工程を行った。測定の結果を下記表3にまとめて示す。
【0124】
実施例4
パウダーの全重量に対して5.25重量%の酸化カルシウム(CaO)を投入した以外は実施例2と同様の工程を行った。測定の結果を下記表3にまとめて示す。
【0125】
実施例5
パウダーの全重量に対して7重量%の酸化カルシウム(CaO)を投入した以外は実施例2と同様の工程を行った。測定の結果を下記表3にまとめて示す。
【0126】
比較例
比較例1
酸化カルシウムを含まなかった以外は、実施例1と同様の工程を行った。測定の結果は下記表2に示す通りである。
【0127】
【0128】
比較例2
酸化カルシウムを含まなかった以外は、実施例2と同様の工程を行った。測定の結果は下記表3にまとめて示す。
【0129】
【0130】
表1及び表2を参照すると、本発明の前述の実施例による範囲内でカルシウム化合物を含むと、水溶液に回収されるリチウム化合物中の水酸化リチウムの割合は増加し、炭酸リチウム及びフッ化リチウムの割合は減少することを確認することができた。水洗処理を一回のみ行った場合は、実施例1よりも比較例1の水酸化リチウムの割合が高かったが、水洗処理を2回以上行った場合は、比較例1よりも実施例1の水酸化リチウムの割合がより高かった。
【0131】
表3を参照すると、本発明の前述の実施例による範囲内でカルシウム化合物を含むと、水溶液に回収されるリチウム化合物中の水酸化リチウムの割合は増加し、炭酸リチウム及びフッ化リチウムの割合は減少することを確認することができた。カルシウム化合物の投入量が増加するにつれて、水溶液中に含まれるアルミニウムの量が減少することを確認することができた。
【国際調査報告】