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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-30
(54)【発明の名称】生体認証センサー付きチップカード
(51)【国際特許分類】
   G06K 19/07 20060101AFI20240920BHJP
   G06K 19/077 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
G06K19/07 200
G06K19/07 180
G06K19/077 244
G06K19/077 196
G06K19/077 296
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024522196
(86)(22)【出願日】2022-10-14
(85)【翻訳文提出日】2024-06-10
(86)【国際出願番号】 FR2022000093
(87)【国際公開番号】W WO2023062293
(87)【国際公開日】2023-04-20
(31)【優先権主張番号】2110915
(32)【優先日】2021-10-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517307773
【氏名又は名称】スマート パッケージング ソリューションズ
【氏名又は名称原語表記】SMART PACKAGING SOLUTIONS
(74)【代理人】
【識別番号】100080447
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 恵一
(72)【発明者】
【氏名】オベール,ダミアン
(72)【発明者】
【氏名】テュルリエ,マチュ
(57)【要約】
本発明は、接触動作式、非接触動作式、または接触・非接触動作式複合型の通信可能な携帯用物品(20)に関しており、該通信可能な携帯用物品は、外部保護層(15、16)を有する本体(50)と前記保護層間に配置されるインサート(40)とを有し、前記インサート(40)は、基板(41)を有し、基板は、第一のボンディングパッド(17)を有する第一の電子構成要素(11、60)を有し、また他方では、機械加工によって得られる本体(50)のキャビティ(51)の中に配置される電子モジュール(12)の形状の少なくとも1つの第二の電子構成要素を有し、前記電子モジュール(12)は、第二のボンディングパッド(18)を有し、また前記インサート(40)はさらに、一方では、前記第一の電子構成要素(11、60)と前記電子モジュール(12)とを接続して、それらの電力供給または相互のデータ転送を保証することを目的とした相互接続用トラック(21、22、23、24)を有し、また他方では、前記第一の電子構成要素(11、60)と前記相互接続用トラック(21、22、23、24)との間の連結用トラック(29)を有し、該通信可能な携帯用物品は、前記連結用トラック(29)が、インサート(40)の電子モジュール(12)と同じ側に位置すること、および前記連結用トラックが、前記キャビティ(50)の機械加工の公差(T)の絶対値に少なくとも相当する厚みを有することを特徴とする。
【選択図】図2B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
接触動作式、非接触動作式、または接触・非接触動作式複合型の通信可能な携帯用物品(20)において、外部保護層(15、16)を有する本体(50)と前記保護層間に配置されるインサート(40)とを有し、前記インサート(40)が、基板(41)を有し、基板が、第一のボンディングパッド(17)を有する第一の電子構成要素(11、60)を有し、また他方では、機械加工によって得られる本体(50)のキャビティ(51)の中に配置される電子モジュール(12)の形状の少なくとも1つの第二の電子構成要素を有し、前記電子モジュール(12)が、第二のボンディングパッド(18)を有し、また前記インサート(40)がさらに、一方では、前記第一の電子構成要素(11、60)と前記電子モジュール(12)とを接続して、それらの電力供給または相互のデータ転送を保証することを目的とした相互接続用トラック(21、22、23、24)を有し、また他方では、前記第一の電子構成要素(11、60)と前記相互接続用トラック(21、22、23、24)との間の連結用トラック(29)を有する通信可能な携帯用物品であって、前記連結用トラック(29)が、インサート(40)の電子モジュール(12)と同じ側に位置すること、また前記連結用トラックが、前記キャビティ(50)の機械加工の公差(T)の絶対値に少なくとも相当する厚みを有することを特徴とする、通信可能な携帯用物品。
【請求項2】
前記第一の構成要素(11)が、電子モジュール(12)に類似した電子モジュールであり、2つの電子モジュール(11、12)が、コーティング樹脂の滴(62)によって保護される超小型電子チップ(60)を備えた基板(70)で構成されることを特徴とする、請求項1に記載の通信可能な携帯用物品(20)。
【請求項3】
各電子モジュール(11、12)における連結用トラック(29)の厚み(Eと記される)が、モジュール(11、12)のキャビティ(51)の機械加工の公差(Tと記される)の絶対値に少なくとも等しく、連結用トラックの電気的連続性を確保するための、キャビティ(51)の機械加工後の連結用トラック(29)の残りの厚みに相当する小さな余裕(Rと記される)が加わるものであり、E=T+Rの関係となって現れることを特徴とする、請求項2に記載の通信可能な携帯用物品(20)。
【請求項4】
前記機械加工の公差(T)の絶対値が、およそ70マイクロメートルであること、また連結用トラック(29)が、およそ80μmの厚みを有することを特徴とする、請求項1から3のいずれか一つに記載の通信可能な携帯用物品(20)。
【請求項5】
2つの電子モジュール(11、12)の基板(70)の厚みの値の間に厚みの差(Dと記される)が存在し、各モジュール(11、12)における連結用トラック(29)の厚み(Eと記される)が、モジュール(11、12)のキャビティ(51)の機械加工の公差(Tと記される)の絶対値に少なくとも等しく、連結用トラックの電気的連続性を確保するための、キャビティ(51)の機械加工後の連結用トラック(29)の残りの厚みに相当する小さな余裕(Rと記される)が加わり、厚みの差(D)が加わるものであり、E=T+R+Dの関係となって現れることを特徴とする、請求項2から4のいずれか一つに記載の通信可能な携帯用物品(20)。
【請求項6】
第一の電子モジュール(11)の基板(70)が、およそ200μmの厚みを有し、第二の電子モジュール(12)の基板(70)が、およそ210μmの厚みを有し、2つの厚みの差Dが、およそ10μmであり、連結用トラック(29)の厚みがおよそ、80+10=90マイクロメートルであることを特徴とする、請求項5に記載の通信可能な携帯用物品(20)。
【請求項7】
前記第二の電子モジュール(12)が、生体認証センサー、とりわけ指紋センサーを有することを特徴とする、請求項2から6のいずれか一つに記載の通信可能な携帯用物品(20)。
【請求項8】
前記第一の構成要素が、インサート(40)の面のうちの一方に「フリップチップ」で取り付けられる超小型電子チップ(60)であることを特徴とする、請求項1に記載の通信可能な携帯用物品(20)。
【請求項9】
前記第一の電子構成要素(11)が、携帯用物品の第二の電子構成要素(12)と同じ面に配置される、接触式モジュールであること、また連結用トラック(29)が、第一の構成要素(11)と第二の構成要素(12)との間の相互接続用トラック(21、22、23、24)と一体となることを特徴とする、請求項1または2に記載の通信可能な携帯用物品(20)。
【請求項10】
前記第一の電子構成要素(11)が、非接触式モジュールまたはデュアル通信インターフェースモジュールであり、インサート(40)が、アンテナ(25)を有し、アンテナが、インサート(40)の面のうちの一方の上に位置するトラックの形状で作製されることを特徴とする、請求項2から8のいずれか一つに記載の通信可能な携帯用物品(20)。
【請求項11】
相互接続用トラック(21、22、23、24)が、基板(41)の一方の面上に位置することを特徴とする、請求項1から10のいずれか一つに記載の通信可能な携帯用物品(20)。
【請求項12】
相互接続用トラック(21、22、23、24)が、10~30マイクロメートルの厚みを有すること、また前記連結用トラック(29)が、70~100マイクロメートルの厚みを有することを特徴とする、請求項1から11のいずれか一つに記載の通信可能な携帯用物品(20)。
【請求項13】
各連結用トラック(29)の第一の端部(29a)が、異方性導電接着剤によって、電子構成要素(11、12)のボンディングパッド(17、18)に接続されることを特徴とする、請求項1から12のいずれか一つに記載の通信可能な携帯用物品(20)。
【請求項14】
各連結用トラック(29)の第二の端部(29b)が、圧着または「クリンプ」による接続(28)を介して、相互接続用トラック(21、22、23、24)の端部に接続されることを特徴とする、請求項1から13のいずれか一つに記載の通信可能な携帯用物品(20)。
【請求項15】
インサート(40)が、25~250マイクロメートル、好ましくは25~50マイクロメートルの厚みのポリマー製基板(41)を有すること、また相互接続用トラック(21、22、23、24)および連結用トラック(29)が、前記ポリマー製シート上にアルミニウム製で作製されることを特徴とする、請求項1から14のいずれか一つに記載の通信可能な携帯用物品(20)。
【請求項16】
前記ポリマー製基板(41)が、2つの反対の面を有すること、また相互接続用トラック(21、22、23、24)が、第一の面上に設けられること、また連結用トラック(29)が、前記基板(41)の第二の面上に設けられることを特徴とする、請求項1から15のいずれか一つに記載の通信可能な携帯用物品(20)。
【請求項17】
前記第一の電子構成要素(11)が、モジュールアンテナ(35)を有する電子モジュールであり、モジュールアンテナが、インサート(40)上に位置する増幅アンテナ(36)と電磁気的に結合し、また同じくインサート(40)上に配置されるアンテナ(25)と電磁気的に結合し、リーダー(27)のアンテナ(26)との無線周波での接続を確保することを特徴とする、請求項2から6のいずれか一つに記載の通信可能な携帯用物品(20)。
【請求項18】
各電子モジュール(11、12)が、固有のモジュールアンテナ(35a、35b)を有し、固有のモジュールアンテナがそれぞれ、インサート(40)上に位置する増幅アンテナ(36a、36b)と結合し、また同じくインサート(40)上に配置されるアンテナ(25)と電磁気的に結合し、リーダー(27)のアンテナ(26)との無線周波での接続を確保することを特徴とする、請求項2から6のいずれか一つに記載の通信可能な携帯用物品(20)。
【請求項19】
ISO規格7810において定義されているID1フォーマットのチップカードの形状をしているか、またはISO規格7810に準じた電子パスポートのID3フォーマットの外観を示していることを特徴とする、請求項1から18のいずれか一つに記載の通信可能な携帯用物品(20)。
【請求項20】
請求項1から19のいずれか一つに記載の通信可能な携帯用物品(20)の製造方法であって、ボンディングパッド(17、18)を備えた少なくとも2つの電子モジュールまたは電子構成要素(11、12、60)の、アンテナ(25、35、35a、35b)のトラックと、前記電子モジュールまたは電子構成要素間に延在する相互接続用トラック(21、22、23、24)とを備えたインサート(40)を準備するステップを有する方法であり、さらに、
- インサート(40)の一方の面に、アンテナ(25、35、35a、35b)のトラックおよび相互接続用トラック(21、22、23、24)の厚みを超える厚みの連結用トラック(29)を設けるステップであって、各連結用トラック(29)は、電子モジュール(11、12)のボンディングパッド(17、18)と相互接続用トラック(21、22、23、24)の端部との間に配置されるステップ、
- 圧着または「クリンプ」によって、連結用トラック(29)の端部(29b)と相互接続用トラック(21、22、23、24)の端部とを相互接続するステップ、
- インサート(40)の両側に保護層(15、16)を組み合わせる、携帯用物品(20)の本体(50)を形成するステップ、
- 携帯用物品(20)の本体(50)の一方の面を機械加工して、電子モジュール(11、12)を収容することができる少なくとも1つのキャビティ(51)をそこに形成するステップ、
- 電子モジュール(11、12)を前記キャビティ(51)の中に装着して、異方性導電接着剤によって接着するステップ、
を有することを特徴とする製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接触動作式、非接触動作式、または接触・非接触動作式複合型の第一の超小型電子モジュールと、特に第一のモジュールにチップカードの使用者の生体認証情報を伝えるために、第一のモジュールと通信することを目的とした生体認証センサーのような第二のモジュールまたは電子構成要素とを備えた、とりわけ銀行カードやチップ付き本人確認書類のような、セキュリティが付与される通信可能な携帯用物品に関する。
【0002】
例として、また説明を簡単にするために、本発明は主に、指紋センサーを備えたチップカードへのその適用の枠内で説明することになるが、だからといって本発明の範囲を、他の携帯用物品や他の形状の要素、および、例えばスクリーンやあらゆる性質の生体認証センサー、さらにはモジュール支持体に取り付けられないディスクリート電子部品のような他のタイプの電子構成要素に対して制限するものではない。
【0003】
銀行用用途のために使用される、ISO規格7816で作製される非接触動作式チップカードは、本発明が適用される本人確認カードの最も広範な例となる。しかし、本発明は他のタイプのセキュリティが付与される文書、特にパスポートやデジタル本人確認用途に使用される他のセキュリティ文書にも適用される。
【背景技術】
【0004】
[現状技術]
既知の非接触式チップカードまたは接触・非接触動作式複合型のデュアルカードの大部分は、カード本体と、カード本体のキャビティの中に挿入される超小型電子チップを備えた、電子モジュールと、カード本体の中に配置されるアンテナとを有する。アンテナは、超小型電子チップの出力電極に電気的に接続されるか、あるいは、チップカードの電子モジュールに直接組み込まれる、より小さいアンテナに誘導的に結合される。2つの構成において、カード本体のアンテナは、チップカードリーダーのアンテナとの無線周波通信を可能にする。
【0005】
カード本体のアンテナは通常、カードの組立て中にカード本体の層とともに圧延されカード本体に組み込まれるインサートまたはフレキシブル基板上に配置される、導電性トラックを用いて作製されるコイルで構成される。
【0006】
あるいは、カード本体がアンテナを有しないもっぱら接触動作式の、チップカードが存在する。
【0007】
多くの用途において、例えば、チップカードの使用者の生体認証による本人確認の目的で生体認証情報を収集して、それらの情報を主モジュールまたは構成要素に伝えることができる生体認証センサーを組み込むために、主モジュールまたは構成要素に対して単数または複数の補足的電子モジュールまたは構成要素をチップカードに組み込むことが必要になる。
【0008】
この場合、例えば図1に示されているカードの場合のように、単数または複数の生体認証センサーおよび接触式または非接触式の主モジュールは、プリント回路またはPCB(英語の表現「Printed Circuit Board」の頭字語)とも呼ばれる板の形状の比較的剛性の支持体上に配置され、該支持体上で構成要素は相互接続される。この配置は、複数の不都合を有する。
【0009】
実際、PCBタイプの支持体上に配置される複数の電子モジュールの相互接続は、概して、チップカードの電子モジュールに組み込まれていない追加の電子構成要素を必要とし、チップカードの従来の製造プロセスを変更する必要があるためコストがかかり、その結果、無視できない追加費用が発生する。それはさらに、製品がその使用中に受けることになるはずの繰り返される屈曲によって、PCB上のモジュール間で実現される電気的相互接続が多かれ少なかれすぐに断たれる恐れがあるため、経時的な信頼性が低い。
【0010】
ところで市場では、一方では接触式または非接触式の主電子モジュールと、他方では生体認証センサーまたは他の副モジュールとを備えたチップカードまたは同等物に対して、より高い信頼性およびより低いコストが求められている。これには、PCB基板をなくす手段を見つけること、また、特にカード保持者の本人確認に使用されるチップカードの主電子モジュールと、生体認証センサーまたは他、例えば指紋センサーなど、とを相互接続するための、より信頼性が高く、よりコストの低い代替手段を見つけることが必要であり、これにより、チップカードのすべての能動および受動電子構成要素は、PCBタイプの支持体を必要とすることなく、主電子モジュールと副電子モジュールとの間に完全に分配されるようになる。
【0011】
国際公開第2018/158644号から、銀行支払い用の第一の電子モジュールと生体認証センサーを備えた第二の電子モジュールとを有し、2つのモジュールが、外部リーダーと通信可能なアンテナに接続された、チップカードが知られている。アンテナは、2つのモジュール間の相互接続と無線周波通信の両方に役立つ。モジュールとアンテナとの間の接続は、単純なはんだ滴または異方性導電フィルムによって行われる。加えられたボンディングパッドは挿入物上に配置されて、モジュールを受け入れるキャビティの機械加工後、モジュールとアンテナとの間の接続を可能にする余分の厚みを局所的に作り出すようになる付加プロセスによって、アンテナに接続される。
【0012】
また、仏国特許出願公開第2776796号明細書から、支払いモジュールと超小型制御装置によって制御される表示装置とを備えたチップカードが知られている。さまざまな構成要素は、単純なフローティング導線によって接続されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】国際公開第2018/158644号
【特許文献2】仏国特許出願公開第2776796号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
[発明の目的]
本発明の全体的な目的はしたがって、上記の不都合のない、通信可能な携帯用物品、とりわけチップカードまたは同等物の新規の構造を提案することであり、特に、ディスクリート電子部品を備えたPCBタイプの支持体を必要とせずに、さまざまな主電子モジュールまたはチップが、チップカードまたは同等のセキュリティ付与された書類内に組み込まれた生体認証センサーのような副モジュールと、相互に通信することを可能にする構造を提案することである。
【0015】
本発明の別の目的は、相互に通信可能な複数の電子モジュールを有するチップカードまたは同等物を提案することであり、しかしながら、すでに存在し、十分に習熟されたチップカードの製造方法、すなわち、カード本体に設けられたキャビティへの厚い電子モジュールの装着、および対応する従来の製造機械全般の使用との互換性を保つことである。
【0016】
本発明の別の目的は、カードの厚みにおいて異なる平面に潜在的に位置するボンディングパッドと、これらの位置の違いを補うことができる相互接続用または連結用トラックとを備えた複数の電子モジュールを有するチップカードを提案することである。
【0017】
本発明の別の目的は、例えば2つの厚いモジュールを備えたチップカードや、1つの厚いモジュールと「フリップチップ」で取り付けられた超小型電子チップとを備えたチップカードなどの、さまざまなアーキテクチャに容易に適合できるインサートを備えるチップカードの構造を提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
[発明の要約]
趣旨としては、本発明は、非対称のインサート(英語の専門用語で「インレイ」とも呼ばれる)を提案することにあり、該インサートは、基板を備えており、該基板は、第一の面に、インサートを組み込んだチップカードのさまざまな電子モジュールまたは構成要素間の相互接続用トラックを実現するための、特にアルミニウム製で、およそ10マイクロメートルのあまり厚くない導電性トラックを有し、また該基板は、第二の面に、相互接続用トラックと相対的に厚い電子モジュールのボンディングパッドとの間を連結するための、典型的にはアルミニウム製でおよそ80マイクロメートルのより厚いトラックを有している。電子モジュールを収容することを目的としたキャビティの機械加工はそのとき、連結用トラックのところになされ、その厚みは、モジュールの基板の厚みと、組み込むモジュールのキャビティの機械加工の公差とに応じて計算される。このようにして、わずかに異なる厚さのモジュール、またはわずかに異なる加工深さを必要とするモジュールを、同じタイプのインサートに組み込むことが可能となり、加工深さの差は、連結用トラックの十分な厚みによって吸収される。
【0019】
本発明はしたがって、接触動作式、非接触動作式、または接触・非接触動作式複合型の通信可能な携帯用物品について、該通信可能な携帯用物品は、外部保護層を有する本体と前記保護層間に配置されるインサートとを有し、前記インサートは、基板を有し、基板は、第一のボンディングパッドを有する第一の電子構成要素を有し、また他方では、機械加工によって得られる本体のキャビティの中に配置される電子モジュールの形状の少なくとも1つの第二の電子構成要素を有し、前記電子モジュールは、第二のボンディングパッドを有し、また前記インサートはさらに、一方では、前記第一の電子構成要素と前記電子モジュールとを接続して、それらの電力供給または相互のデータ転送を保証することを目的とした相互接続用トラックを有し、また他方では、前記第一の電子構成要素と前記相互接続用トラックとの間の連結用トラックを有し、該通信可能な携帯用物品は、前記連結用トラックが、インサートの電子モジュールと同じ側に位置すること、および前記連結用トラックが、前記キャビティの機械加工の公差(T)の絶対値に少なくとも相当する厚みを有することを特徴とする。
【0020】
一実施形態によると、前記第一の構成要素および前記第二の電子構成要素は、電子モジュールであり、コーティング樹脂の滴によって保護される超小型電子チップを備えた基板で構成される。
【0021】
一実施形態によると、各電子モジュールにおける連結用トラックの厚み(Eと記される)は、電子モジュールのキャビティの機械加工の公差(Tと記される)の絶対値に少なくとも等しく、それに、連結用トラックの電気的な連続性を確保するための、各キャビティの機械加工後の連結用トラックの残りの厚みに相当する小さな余裕(Rと記される)が加わるものであり、これはそのときE=T+Rの関係となって現れる。
【0022】
実際に即した一実施例によると、前記機械加工の公差(T)の絶対値は、およそ70マイクロメートルであり、連結用トラックは、およそ80μmの厚みを有する。
【0023】
実際上は、2つの電子モジュールの基板の厚みの値間に厚みの差(Dと記される)が存在する可能性があり、この場合、各モジュール(11、12)における連結用トラック(29)の厚み(Eと記される)は好ましくは、電子モジュールのキャビティの機械加工の公差(Tと記される)の絶対値に少なくとも等しく、それに、連結用トラックの電気的連続性を確保するための、キャビティの機械加工後の連結用トラックの残りの厚みに相当する小さな余裕(Rと記される)が加わり、それに、モジュールの基板の厚みの差(D)が加わるものであり、これはE=T+R+Dの関係となって現れる。
【0024】
例として、第一の電子モジュールの基板は、およそ200μmの厚みを有し、第二の電子モジュールの基板は、およそ210μmの厚みを有し、2つの厚みの差Dは、およそ10μmであり、連結用トラックの厚みはおよそ、80+10=90マイクロメートルである。
【0025】
一実施形態によると、前記第二の電子モジュールは、生体認証センサー、とりわけ指紋センサーを有する。
【0026】
一実施変形態によると、前記第一の構成要素は、インサートの面のうちの一方に「フリップチップ」で取り付けられる超小型電子チップである。
【0027】
一実施形態によると、前記第一の電子構成要素は、携帯用物品の第二の電子構成要素と同じ面に配置される、接触式モジュールであり、連結用トラックは、第一の構成要素と第二の構成要素との間の相互接続用トラックと一体となる。
【0028】
一実施形態によると、前記第一の電子構成要素は、非接触式モジュールまたはデュアル通信インターフェースモジュールであり、インサートは、アンテナを有し、アンテナは、インサートの面のうちの一方の上に位置する導電性トラックの形状で作製される。
【0029】
一実施形態によると、相互接続用トラックは、基板の一方の面上に位置する。
【0030】
一実施形態によると、相互接続用トラックは、10~30マイクロメートルの厚みを有し、連結用トラックは、70~100マイクロメートルの厚みを有する。
【0031】
一実施形態によると、各連結用トラックの第一の端部は、異方性導電接着剤によって、電子構成要素のボンディングパッドに接続される。
【0032】
一実施形態によると、各連結用トラックの第二の端部は、圧着または「クリンプ」による接続を介して、相互接続用トラックの端部に接続される。
【0033】
一実施形態によると、インサートは、25~250マイクロメートル、好ましくは25~50マイクロメートルの厚みのポリマー製基板を有し、相互接続用トラックおよび連結用トラックは、前記ポリマー製シート上にアルミニウム製で作製される。
【0034】
一実施形態によると、前記ポリマー製基板は、2つの反対の面を有し、相互接続用トラックは、基板の第一の面上に設けられ、連結用トラックは、前記基板の第二の面上に設けられる。
【0035】
一実施形態によると、前記第一の電子構成要素は、モジュールアンテナを有する電子モジュールであり、モジュールアンテナは、インサート上に位置する増幅アンテナと電磁気的に結合し、また同じくインサート上に配置されるアンテナと電磁気的に結合し、リーダーのアンテナとの無線周波での接続を確保する。
【0036】
一実施形態によると、各電子モジュールは、その固有のモジュールアンテナを有し、その固有のモジュールアンテナはそれぞれ、インサート上に位置する増幅アンテナと結合し、また同じくインサート上に配置されるアンテナと電磁気的に結合し、リーダーのアンテナとの無線周波での接続を確保する。
【0037】
一実施形態によると、通信可能な携帯用物品は、ISO規格7810において定義されているID1フォーマットのチップカードの形状をしているか、またはISO規格7810に準じた電子パスポートのID3フォーマットの外観を示している。
【0038】
本発明はまた、上記に定義されたような通信可能な携帯用物品の製造方法も対象としており、該方法は、ボンディングパッドを備えた少なくとも2つの電子モジュールまたは電子構成要素の、アンテナのトラックと、前記電子モジュールまたは電子構成要素間に延在する相互接続用トラックとを備えたインサートを準備するステップを有するものであり、該方法はさらに、
- インサートの一方の面に、アンテナのトラックおよび相互接続用トラックの厚みを超える厚みの連結用トラックを設けるステップであって、各連結用トラックは、電子モジュールのボンディングパッドと相互接続用トラックの端部との間に配置されるステップ、
- 圧着または「クリンプ」によって、連結用トラックの端部と相互接続用トラックの端部とを相互接続するステップ、
- インサートの両側に保護層を組み合わせる、携帯用物品の本体を形成するステップ、
- 携帯用物品の本体の一方の面を機械加工して、電子モジュールを収容することができる少なくとも1つのキャビティをそこに形成するステップ、
- 電子モジュールを前記キャビティの中に装着して、異方性導電接着剤によって接着するステップ、
を有することを特徴とする。
【0039】
本発明の他の特徴および利点は、チップカードへの本発明の適用の範囲内で行われる詳細な説明および以下のような添付図面を読むことにより明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0040】
図1】既知の接触・非接触式チップカードを、分解斜視図で示している。
図2A】導電性トラックによって相互接続された2つの電子モジュールを含む本発明によるチップカードとチップカードリーダーとで構成された全体の回路図を示している。
図2B図2Aに示されたチップカードの一実施形態のより詳細な平面図を示している。
図2C図2Bによるチップカードの2つの電子モジュールを通過する、チップカードの簡略化した断面図を示している。
図2D図2Bのチップカードの層の詳細な断面図を示しており、組立て前であり、1つの電子モジュールだけに焦点を当てている。
図2E図2Bのチップカードの層の詳細な断面図を示しており、組立て後である。
図3A】本発明の一実施形態によるチップカード用インサートの平面図である。
図3B】本発明によるチップカードの断面図であり、図3Aによるインサートが組み込まれている。
図4】本発明にしたがってトラックによって相互接続された2つの電子モジュールを備えたチップカードとチップカードリーダーとで構成された全体の回路図の一変形例を示しており、ここでは主電子モジュールだけが増幅器を備えている。
図5】本発明にしたがってトラックによって相互接続された2つの電子モジュールを備えたチップカードとチップカードリーダーとで構成された全体の回路図の一変形例を示しているが、電子モジュールのそれぞれが増幅器を備えている。
【発明を実施するための形態】
【0041】
[詳細な説明]
図1が参照され、該図は、接触・非接触動作式複合型の既知のチップカード10の分解斜視図を示している。このチップカードは、ISO規格7816-1に準じた標準化された接点(表示されていない)を備えた第一の電子モジュール11と、とりわけ指紋センサーのような生体認証センサー(表示されていない)を有する、第二の電子モジュール12とを有する。第一の電子モジュール11は、カード所持者の本人確認情報、特に、カード所持者の生体認証基準指紋を安全に保管する超小型電子チップ(表示されていない)を有する。チップカード10による処理を許可するために、利用者は自分の生体認証指紋を第二の電子モジュール12に提出しなければならず、この指紋は次に第一の電子モジュール11に安全に伝送されなければならない。したがって、第一および第二の電子モジュール11、12間に通信チャネルを設置する必要がある。
【0042】
このために、既知のチップカード10は、2つのモジュール11、12間に複雑な回路を確立することを可能にするプリント回路13(または英語の専門用語「Printed Circuit Board」を表すPCB)を有し、第一のモジュール11から第二のモジュール12への電力供給も、2つのモジュール11、12間のデータ通信も実現する。現状技術において、このプリント回路13は、ディスクリート電子部品(表示されていない)を有し、またチップカードの外部面15、16の間に組み込まれており、これは、単一の電子モジュールを備えたチップカード用に一般に実践されているように、一体式のカード本体の中に設けられるキャビティの中に単一の電子モジュールを単純に装着するのに比べると、実現がより複雑でより費用のかかるものである。
【0043】
図2Aで、導電性トラック21、22、23、24によって相互接続された2つの電子モジュール11、12を備えたチップカード20と、チップカードリーダー27とで構成された全体の回路図を示した。この場合、それは非接触動作式タイプのチップカード20であり、アンテナ25を備えており、該アンテナは、カードが、離れたリーダー27のアンテナ26と、誘導結合による無線周波での接続を確立することを可能にする。
【0044】
一方、2つの電子モジュール11、12、すなわち例えばチップカードの従来の主モジュール11および生体認証モジュール12は、電気的な接続、すなわち、データの送受信に使用される導電性トラック21、22と、リーダー27との誘導接続からそのエネルギーを取り込む主モジュール11から生体認証モジュール12への電力供給に使用される導電性トラック23、24とによって相互に結ばれている。
【0045】
図2Bは、図2Aのチップカード20の概略平面図を示している。主電子モジュール11は、既知の仕方で、6つのボンディングパッド17を有しており、それらはすなわち、一方では、カード本体の縁に沿って延びている、チップカードの大きさに近い、いわゆる「ID1」フォーマットのアンテナである、チップカードのアンテナ25のトラックの第一の端部に接続される2つのボンディングパッド17a、他方では、2つの電子モジュール11、12間の相互接続用トラック21、22、23、24のそれぞれの第一の端部に接続される4つのボンディングパッド17bである。生体認証電子モジュール12は、4つのボンディングパッド18を有し、それらは、2つの電子モジュール11、12間の相互接続用トラック21、22、23、24の第二の端部に接続される。
【0046】
本発明によるチップカード20の製造を簡素化しまた信頼性を高めるために、アンテナ25のトラックおよび相互接続用トラック21、22、23、24は好ましくは、同様の仕方で作製される。それは特に、例えば化学エッチングによって、インサート40の一方の面上に作製される、およそ10マイクロメートルの厚みの、アルミニウム製の薄いトラックである。
【0047】
しかしながら、電子モジュール11、12の厚みの違いと、同一平面上にないこともあるそれらのボンディングパッド17、18の位置とを考慮すると、アンテナ25の端部と相互接続用トラック21、22、23、24とを電子モジュール11、12のそれぞれのボンディングパッド17、18に効果的に接続するために、特別な対策に頼る必要がある。
【0048】
このために、本発明は、アンテナトラック25とモジュール11、12の相互接続用トラック21、22、23、24よりも厚い連結用導電性トラック29を使用することを想定している。これらの連結用トラック29は、3Dで(すなわちチップカードの平面X-Yに垂直な、チップカードの厚みに対応するZ軸に沿って)寸法が決められ、アンテナトラック25の端部、相互接続用トラック21~24の端部と、電子モジュール11、12に位置し、対応するボンディングパッド17、18との間の軸Z上での位置づけの差を補うまたは埋め合わせることができるのに十分な厚みである。言葉を換えれば、連結用トラック29は、アンテナトラック25または相互接続用トラック21~24の端部と、電子モジュール11、12上に位置し、対応するボンディングパッド17、18との間に3Dで広がるトラックであると言うことができる。
【0049】
また、連結用トラック29は、チップカードの中に電子モジュール11、12を挿入するためのキャビティを形成する際に機械加工可能であり、また機械加工されることを目的としている。
【0050】
モジュール11、12が、カード本体の中に機械加工されるキャビティ51の中に位置決めされて、連結用トラック29がそれらの役割を果たしモジュール11、12のボンディングパッド17、18と接触するようになることができるように、連結用トラック29の厚みが各モジュールのところで十分である必要があり、それにより、すべての場合において、キャビティの平面P1の深さ(モジュールのボンディングパッドの支持領域に相当する)は、キャビティの機械加工の際に連結用トラック29に達するが、しかしこれらの連結用トラック29を貫通することなく、機械加工の作業の際にそれらの厚さ全体を削除することもない。したがって、各モジュール11、12における連結用トラック29の厚み(Eと記される)が、モジュール11、12のキャビティ51の機械加工の公差(Tと記される)の絶対値に少なくとも等しく、それに、その電気的連続性を確保するための、キャビティの機械加工後の連結用トラックの残りの厚みに相当する小さな余裕(Rと記される)が加わるものであり、これがそのときE=T+Rの関係となって現れることが必要不可欠である。このように、例として、モジュールのキャビディ51が深さP1+/-35マイクロメートルに機械加工されなければならない場合、連結用トラック29の推奨される厚みは例えば、およそ80マイクロメートルになる。
【0051】
実際に2つのモジュールの基板の厚みの値間に厚みの差Dが存在する場合、連結用トラック29の推奨されるより高い厚みEはそのとき、この差Dの値だけ、増加されなければならない。連結用トラック29の厚みEの推奨される値はそのとき、T+R+Dに等しくなる。例えば、第一のモジュール11が200μmの基板厚みを有し、第二のモジュール12が210μmの厚みを有する場合、差Dは10μmに等しく、連結用トラック29の推奨される厚みはおよそ、80+10=90マイクロメートルとなる。
【0052】
本発明によると、連結用トラック29は、インサート40上に作製され、電子モジュールがチップカード上に組み立てられるときの、電子モジュール11、12と同じカード側に位置決めされ、一方アンテナトラック25および相互接続用トラック21~24は、インサート40の反対側の面に作製される。連結用トラック29の端部29bと相互接続用トラック21~24の端部とは、例えば圧着または「クリンプ」28によって、相互接続される。
【0053】
実際には、およそ800マイクロメートルの厚みを有するチップカードの場合、連結用トラック29は一般的に、およそ70~100マイクロメートルの厚みを有する。
【0054】
連結用トラック29は、電子モジュール11、12の対応するボンディングパッド17、18に向き合って位置決めされる第一の端部29aを有する。この第一の端部29aは、各電子モジュールの収容キャビティ51の機械加工の際に部分的に機械加工される。この機械加工は、連結用トラック29の端部29aの厚みを、電子モジュール11、12のボンディングパッド17、18を位置決めするために想定される正確な高さまで局所的に実現させることを可能にする。この第一の端部29aの機械加工された表面はそのとき、各電子モジュール11、12の固定用接着剤をカード本体のその各々のキャビティの中に塗布するのと同時に塗布することができる、ACFと記される異方性導電接着剤の薄い層によって、モジュール11、12の対応するボンディングパッド17、18に電気的に接続することができる。
【0055】
非接触動作式ひいてはアンテナ25を備えたチップカードの場合(図2B)、連結用トラック29は、アンテナトラック25または相互接続用トラック21~24のうちの1つの端部の正面に位置決めされる第二の端部29bを有する。連結用トラック29の前記第二の端部29bは、ビアメタルを介してまたは英語の専門用語で「クリンプ」とも呼ばれる圧着による接合部28を介して、アンテナトラック25または相互接続用トラック21~24の対応する端部に接続される。
【0056】
図2Cは、図2Bのチップカード20の2つのモジュール11、12を通過する断面図を示している。チップカードのさまざまな層の厚さが薄いことを考慮して、厚みは拡大して表示されており、縮尺通りではないことに留意されたい。
【0057】
第一の電子モジュール11は、従来のデュアル通信インターフェースモジュールであり、基板70を有し、その上面に、ISO規格7816の接点63を有している。超小型電子チップ60は、基板70の下に固定され、封止樹脂の滴62によって保護される。超小型電子チップ60の出力端子は、モジュール11のボンディングパッド17に接続される。
【0058】
第二の電子モジュール12は、類似した構造のモジュールであるが、上面に、生体認証センサー61、例えば指紋センサーを有するモジュールである。このモジュールのチップ60は、モジュール12のボンディングパッド18に接続される。ボンディングパッド17、18は、圧着または「クリンプ」28を介して相互接続用トラック21~24によって相互接続されたそれぞれの連結用トラック29に接続している。
【0059】
図2Dおよび図2Eは、図2Bの点線の切断線に沿った電子モジュール11における図2Bのチップカードの部分断面図に相当している。図2Dは、チップカード20の組立て前の状況に相当する分解図を示している。カード本体50は、上部保護層15、下部保護層16、およびこれら2つの層の間に差し込まれたインサート40を有する。インサート40は、カード本体のキャビティ51の中に挿入され、上面15において電子モジュール11によって塞がれる。この構造は、この図には示されていない、生体認証モジュール12を支えるカード本体の部分においても同じである。
【0060】
インサート40は、プラスチック材料製の基板41を有し、その片面、例えば下面には、モジュール11、12の相互接続のために、特にアルミニウム製の導電性トラック21~24が作製された。基板41の上面には、本発明にしたがって連結用トラック29がある。これらもアルミニウム製で、相互接続トラック21~24よりも厚い。その上部Uは、キャビティ51を機械加工する際に加工されることになる領域に相当する。電子モジュール11がカード本体のキャビティ51に装着されるとき、モジュール11またはモジュール12のボンディングパッド17、18はそれぞれ、異方性導電接着剤30の薄い層によって、連結用トラック29の端部29aの上面に接着される。
【0061】
図2Eは、図2Dと同じ構造を示しており、モジュール11、12をカード本体50に装着した後である。見て分かるように、図2Cに示された連結用トラック29の上部Uは、キャビティ51のそれぞれの機械加工の際に機械加工されたため、消失している。この機械加工は、モジュール11、12の間で場合によっては異なる厚みに適合した深さまで行われる。
【0062】
より正確には、連結用トラック29は、キャビティの機械加工の公差Tを考慮に入れるために、最初はより厚い厚みを有するように設計されており、これにより、モジュールのキャビティ用に準備された領域の中ではみ出していることになる。キャビティの機械加工ステップのおかげで、連結用トラック29の端部29aの余分な厚みは、これらの連結用トラックの最終的な厚みが各モジュール、すなわち本人確認用主モジュール11および第二の電子モジュール12の厚みに適合するまで減少される。
【0063】
このように、各キャビティ51のこの機械加工ステップの後、連結用トラック29の端部の機械加工された表面は、キャビティの底部の、まさしく、各モジュール11、12の基板のそれらのボンディングパッドにおける厚みに相当する深さの地点に位置し、これにより、各モジュールの厚さが異なる場合であっても、各モジュールの正確な挿入および接着が可能になる。
【0064】
図3Aおよび図3Bにおいて、本発明の一実施変形例が示されており、チップカードに組み込まれる電子モジュールまたは電子構成要素のタイプに機能する。
【0065】
これらの図3Aおよび図3B中で、チップカードは、インサート40の基板41の下面に「フリップチップ」で直接接続される超小型電子チップの形状の主構成要素11と、生体認証モジュール12によって形成される第二の構成要素とを備えている。この生体認証モジュールの上面は、指紋センサー61を組み込んでいる。それは、カード本体のキャビティ51の中に入れられた封止樹脂の滴62によって保護された超小型電子チップ60を有している。図3Bで見ることができるように、モジュール12の基板の厚さに相当する、キャビティ51の「P1」と呼ばれる平面の機械加工は、連結用トラック29の厚みを局所的に切り取ったものであり、モジュールのボンディングパッド18はそのとき、連結用トラック29およびクリンプもしくは圧着部28を介して、相互接続用トラック21~24に電気的に接続している。
【0066】
別の実施形態において(表示されていない)、チップカードの同じ面上に配置される2つの電子モジュールを有する、接触のみで動作するチップカードを提案することができる。そのような場合、片面だけがメッキされた単純なインサートを使用することができ、そのとき連結用トラックとモジュール間の相互接続用トラックとは、混同し、同じ厚さ、すなわち、上記で説明されたように、キャビティの機械加工の公差Tに余裕Rを加えたものに少なくとも等しい厚さを有することができる。
【0067】
図4において、本発明にしたがってトラック21~24により相互接続される2つの電子モジュール11、12を備えたチップカード20と、チップカードリーダー27とで構成される全体の回路図の一変形例を示した。本発明のこの実施形態において、主電子モジュール11は、モジュールアンテナ35を備えており、モジュールアンテナは増幅器アンテナ36に結合し、増幅器アンテナ自体は、ID1フォーマットの主アンテナ25に電磁気的に結合している。主アンテナは、今度は、離れたチップカードリーダー27のアンテナ26に結合している。したがって、この実施形態において、トラック21~24と電子モジュール11、12の対応するボンディングパッド17、18との間の相互接続は、改めて、図2の対応する基本の実施形態とまさしく同じ仕方で、連結用トラック29(表示されていない)の助けによってなされている。
【0068】
図5において、本発明にしたがって相互接続用トラックにより相互接続される2つの電子モジュール11、12を備えたチップカード20と、チップカードリーダー27とで構成される全体の回路図の別の変形例を示した。この実施形態において、主電子モジュール11も生体認証モジュール12も、その固有のモジュールアンテナ35a、35bを備えており、モジュールアンテナは各々の増幅器36a、36bに結合し、各モジュール11、12はしたがって、チップカードのアンテナ25とリーダーのアンテナ27との間の電磁結合によってエネルギー供給される。そのような場合、2つの電子モジュール11、12はもはや、データ転送を保証する相互接続用トラック21、22によってしか、電気的に相互接続されていない。図2の実施形態との関連において先に記述されたように、これらの2つの相互接続21、22はさらに、連結用トラック29(表示されていない)によって実現されることができる。
[発明の効果]
【0069】
要するに、本発明は、通信可能な携帯用物品、とりわけチップカード20または電子パスポートを提案し、目ざす目的を達成することを可能にするものである。特に、各電子モジュールの厚さに適合する、キャビティの機械加工の公差を考慮に入れる厚さまで局所的に機械加工できる余分な厚さを持つ連結用トラック29を備えたインサートを使用することにより、プリント回路PCBを使用することなく電子モジュールをより効率的に相互接続することが可能になり、このことはチップカードの製造コストを削減し、製造歩留まりを向上させることに寄与する。
【0070】
さらに、本発明によるチップカードの構造は、カード本体にキャビティを機械加工し、次いでカード本体のこれらの表層キャビティに電子モジュールを組み込むことにある一般の製造プロセスを低コストかつ高い歩留まりで両立できる。
【0071】
提案された技術は、本発明により嵌め込まれるモジュールに接続可能となる構成要素をすでに具備したインサートを、チップカードまたは同等の通信可能な装置に組み込むことを可能にする。
【符号の説明】
【0072】
11 第一の電子構成要素
12 電子モジュール
15 外部保護層
16 外部保護層
17 第一のボンディングパッド
18 第二のボンディングパッド
20 携帯用物品
21 相互接続用トラック
22 相互接続用トラック
23 相互接続用トラック
24 相互接続用トラック
29 連結用トラック
40 インサート
41 基板
50 本体
51 キャビティ
図1
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図3A
図3B
図4
図5
【国際調査報告】