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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-30
(54)【発明の名称】セパレータおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/417 20210101AFI20240920BHJP
   H01M 50/42 20210101ALI20240920BHJP
   H01M 50/414 20210101ALI20240920BHJP
   H01M 50/403 20210101ALI20240920BHJP
【FI】
H01M50/417
H01M50/42
H01M50/414
H01M50/403 B
H01M50/403 A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024522208
(86)(22)【出願日】2022-07-25
(85)【翻訳文提出日】2024-04-12
(86)【国際出願番号】 KR2022010884
(87)【国際公開番号】W WO2023096069
(87)【国際公開日】2023-06-01
(31)【優先権主張番号】10-2021-0165978
(32)【優先日】2021-11-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519103067
【氏名又は名称】ダブル・スコープコリア カンパニー,リミテッド
(71)【出願人】
【識別番号】522268535
【氏名又は名称】ダブル-スコープ チュンジュ プラント カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094112
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 讓
(74)【代理人】
【識別番号】100136799
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 亜希
(74)【代理人】
【識別番号】100128668
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 正巳
(74)【代理人】
【識別番号】100189474
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 修
(72)【発明者】
【氏名】リュウ キョン ソン
(72)【発明者】
【氏名】キム ヒョン ジュ
(72)【発明者】
【氏名】チョン ジン ヒョン
(72)【発明者】
【氏名】キム ビョン ヒョン
(72)【発明者】
【氏名】リー ボム イ
【テーマコード(参考)】
5H021
【Fターム(参考)】
5H021BB01
5H021BB02
5H021BB05
5H021EE02
5H021EE03
5H021EE04
5H021EE05
5H021EE06
5H021EE15
5H021HH00
5H021HH01
5H021HH07
(57)【要約】
本発明の一態様は、ポリオレフィンを含む疎水性領域および前記疎水性領域中に分散した親水性高分子を含む親水性領域を有する多孔性フィルムからなり、前記多孔性フィルム中、前記親水性領域の含有量は、0.1~7.5重量%であるセパレータおよびその製造方法を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオレフィンを含む疎水性領域および前記疎水性領域中に分散した親水性高分子を含む親水性領域を有する多孔性フィルムからなり、
前記多孔性フィルム中、前記親水性領域の含有量は、0.1~7.5重量%である、セパレータ。
【請求項2】
前記ポリオレフィンの重量平均分子量は、200,000~800,000である、請求項1に記載のセパレータ。
【請求項3】
前記ポリオレフィンの重量平均分子量に対する前記親水性領域の含有量の比は、0.1×10-5~1.1×10-5である、請求項2に記載のセパレータ。
【請求項4】
前記ポリオレフィンの重量平均分子量は、900,000~2,000,000である、請求項1に記載のセパレータ。
【請求項5】
前記ポリオレフィンの重量平均分子量に対する前記親水性領域の含有量の比は、0.1×10-5~0.75×10-5である、請求項4に記載のセパレータ。
【請求項6】
前記ポリオレフィンは、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレン、ポリメチルペンテンおよびこれらのうち2以上の組み合わせから成る群から選択された1つを含む、請求項1に記載のセパレータ。
【請求項7】
前記親水性高分子は、エチレンビニルアセテート、エチレンビニルアルコール、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンブロック共重合体、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアセタール、ポリビニルブチラール、セルロース誘導体、グリセロールおよびこれらのうち2以上の組み合わせから成る群から選択された1つである、請求項1に記載のセパレータ。
【請求項8】
前記セパレータの表面に滴加された電解液液滴の滴加直後から5分が経過した時点まで縦方向(MD)の長さ変化率は、15~50%であり、横方向(TD)の長さ変化率は、15~40%である、請求項1に記載のセパレータ。
【請求項9】
前記セパレータの表面に存在し、周辺と異なる明度を有し、2mm以上のサイズを有する表面欠点の数は、10個/m以下である、請求項1に記載のセパレータ。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか一項に記載のセパレータの製造方法であって、
(a)ポリオレフィン、親水性高分子および気孔形成剤を含む組成物を押出機に投入し、ベースシートを成形する工程;
(b)前記ベースシートを延伸した後、前記気孔形成剤を抽出し、ベースフィルムを製造する工程;および
(c)前記ベースフィルムを熱固定する工程;を含む、セパレータの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セパレータおよびその製造方法に関し、詳細には、電解液に対する含浸性が改善されたリチウム二次電池用セパレータおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウム二次電池は、スマートフォン、ノートパソコン、タブレットPCなど小型化、軽量化が要求される各種電気製品の電源に広く用いられており、スマートグリッド、電気自動車用中大型バッテリーに至るまでその適用分野が拡大するにつれて、容量が大きく、寿命が長く、安定性が高いリチウム二次電池の開発が要求されている。
【0003】
前記目的を達成するための手段として、正極と負極を分離させて内部短絡(Internal Short)を防止し、充放電過程でリチウムイオンの移動を円滑にする微細気孔が形成されたセパレータ(Separator)、その中でも熱誘導相分離(Thermally Induced Phase Separation)による気孔形成に有利であり、経済的であり、セパレータに必要な物性を満足しやすいポリエチレンなどのポリオレフィンを用いた微細多孔性セパレータに対する研究開発が活発である。
【0004】
従来、広範囲に使用されているポリオレフィン(polyolefin)系のセパレータは、耐熱性と機械的強度が脆弱な問題があり、これを補完するために、セパレータの表面にセラミック粒子を含む耐熱層をコートする技術が提案された。ただし、耐熱層は、セパレータの性能に非常に重要な影響を及ぼす要素である通気性および導電性(抵抗)と関連して相当な技術的課題を残している。すなわち、多孔性基材の表面にセラミック粒子を含む耐熱層を形成する場合、セパレータの耐熱性は向上するが、前記耐熱層に含まれたセラミック粒子が多孔性基材に形成された気孔を閉鎖し、セパレータの通気性が低下し、それにより、正極と負極間のイオン移動通路が大きく減少し、結果的に、二次電池の充電および放電性能が大きく低下する問題がある。また、電池の内部で前記耐熱層が電解液に持続的に露出することにより、セラミック粒子が多孔性基材から部分的、持続的に脱離し、この場合、セパレータの耐熱性も徐々に低下することがある。
【0005】
なお、リチウム二次電池は、電極集電体上にそれぞれ活物質が塗布されている正極と負極の間に多孔性セパレータが介在した電極組立体にリチウム塩を含む非水系電解質が含浸されている構造で形成されている。
【0006】
リチウム二次電池は、正極および負極を交互に積層し、前記正極および負極の間にセパレータを介在した構造の電極組立体を製造した後、一定のサイズおよび形態の缶(can)またはパウチ(pouch)からなる電池ケースに前記電極組立体を挿入し、最終的に電解液を注入する方式で製造される。この際、電解液は、毛管力(capillary force)により正極、負極およびセパレータの間に入り込む。ただし、素材の特性上、正極、負極およびセパレータは、疎水性であるのに対し、電解液は、親水性であるから、電解液の電極およびセパレータに対する含浸性や濡れ性を改善するためには、相当な時間と厳格な工程条件が要求され、これによって、電解液の含浸性と工程の生産性を均衡的に実現、改善するのに限界がある。
【0007】
このような電解液の含浸性を改善するために、高い温度で電解液を注入したり、加圧または減圧状態で電解液を注入するなどの方法が用いられているが、従来の電極組立体および電解液が熱によって変形され、内部短絡などを起こすなどの問題がある。また、前記工程は、電極組立体を電解液と共に電池ケースに収納した後に行われるので、電極組立体に対する電解液の含浸性が不均一に行われ得、特に、ゼリーロール型電極組立体の場合、巻回中心部と外側部との間に含浸性の不均一が発生し、電池の寿命が短縮される問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、前述した従来技術の問題点を解決するためのものであって、本発明の目的は、機械的物性、外観物性、電解液に対する含浸性および工程の生産性を均衡的に実現することができるセパレータおよびその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様は、ポリオレフィンを含む疎水性領域および前記疎水性領域中に分散した親水性高分子を含む親水性領域を有する多孔性フィルムからなり、前記多孔性フィルム中、前記親水性領域の含有量は、0.1~7.5重量%であるセパレータを提供する。
【0010】
一実施形態において、前記ポリオレフィンの重量平均分子量は、200,000~800,000であってもよい。
【0011】
一実施形態において、前記ポリオレフィンの重量平均分子量に対する前記親水性領域の含有量の比は、0.1×10-5~1.1×10-5であってもよい。
【0012】
一実施形態において、前記ポリオレフィンの重量平均分子量は、900,000~2,000,000であってもよい。
【0013】
一実施形態において、前記ポリオレフィンの重量平均分子量に対する前記親水性領域の含有量の比は、0.1×10-5~0.75×10-5であってもよい。
【0014】
一実施形態において、前記ポリオレフィンは、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレン、ポリメチルペンテンおよびこれらのうち2以上の組み合わせから成る群から選択された1つを含んでもよい。
【0015】
一実施形態において、前記親水性高分子は、エチレンビニルアセテート、エチレンビニルアルコール、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンブロック共重合体、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアセタール、ポリビニルブチラール、セルロース誘導体、グリセロールおよびこれらのうち2以上の組み合わせから成る群から選択された1つであってもよい。
【0016】
一実施形態において、前記セパレータの表面に滴加された電解液液滴の滴加直後から5分が経過した時点まで縦方向(MD)の長さ変化率は、15~50%であり、横方向(TD)の長さ変化率は、15~40%であってもよい。
【0017】
一実施形態において、前記セパレータの表面に存在し、周辺と異なる明度を有し、2mm以上のサイズを有する表面欠点の数は、10個/m以下であってもよい。
【0018】
本発明の他の一態様は、前記セパレータの製造方法において、(a)ポリオレフィン、親水性高分子および気孔形成剤を含む組成物を押出機に投入し、ベースシートを成形する工程;(b)前記ベースシートを延伸した後、前記気孔形成剤を抽出し、ベースフィルムを製造する工程;および(c)前記ベースフィルムを熱固定する工程;を含むセパレータの製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0019】
本発明の一態様によるセパレータは、ポリオレフィンを含む疎水性領域および前記疎水性領域中に分散した親水性高分子を含む親水性領域を有する多孔性フィルムからなり、前記多孔性フィルム中、前記親水性領域の含有量を0.1~7.5重量%に調節することによって、セパレータの機械的物性、外観物性、電解液に対する含浸性および工程の生産性を均衡的に実現することができる。
【0020】
本発明の効果は、上記した効果に限定されるものではなく、本発明の詳細な説明または請求範囲に記載された発明の構成から推論可能なすべての効果を含むものと理解すべきである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下では、本発明を説明する。しかしながら、本発明は、様々な異なる形態で実現することができ、したがって、ここで説明する実施例に限定されるものではない。
明細書全体において、任意の部分が他の部分と「連結」されているというとき、これは、「直接的に連結」されている場合だけでなく、その中間に他の部材を介在し、「間接的に連結」されている場合も含む。また、任意の部分がある構成要素を「含む」というとき、これは、特に反対になる記載がない限り、他の構成要素を除くものではなく、他の構成要素をさらに備えてもよいことを意味する。
【0022】
本発明の一態様によるセパレータは、ポリオレフィンを含む疎水性領域および前記疎水性領域中に分散した親水性高分子を含む親水性領域を有する多孔性フィルムからなり、前記多孔性フィルム中、前記親水性領域の含有量は、0.1~7.5重量%であってもよい。
【0023】
前記セパレータにおいて前記疎水性領域および前記親水性領域は、それぞれ連続相および不連続相を構成することができる。前記セパレータにおいて前記親水性領域は、前記疎水性領域からなるマトリックス中に均一に分散し、前記セパレータの面積および/または厚さ方向による全領域に実質的に均一な親水性を付与することができ、これにより、前記セパレータの電解液に対する含浸性を改善することができる。
【0024】
本明細書において使用された用語「マトリックス」は、2種以上の成分を含むセパレータにおいて連続相を構成する成分を意味する。すなわち、前記セパレータにおいて前記ポリオレフィンを含む前記疎水性領域が連続相で存在し、その内部で前記親水性高分子を含む前記親水性領域が不連続相で分散して存在することができる。
【0025】
前記多孔性フィルム中、前記親水性領域の含有量は、0.1~7.5重量%、好ましくは、1~6重量%、さらに好ましくは、3~6重量%であってもよい。前記親水性領域の含有量が0.1重量%未満であれば、必要なレベルの電解液含浸性を実現することができず、7.5重量%より大きければ、電解液含浸性をさらに改善することができるのに対し、前記ポリオレフィンを通じて実現され得るセパレータの機械的物性、耐熱性が低下することがある。また、前記親水性領域の含有量が7.5重量%より大きければ、前記親水性高分子の分散性が低下し、前記セパレータの表面で周辺と異なる明度を有し、2mm以上のサイズを有する表面欠点の数が増加し、外観品質が低下することがあり、前記セパレータの表面および/または内部で前記親水性高分子が任意に凝集した部位および/または領域で抵抗が急変し、電池の電気化学的特性に悪影響を与える恐れがある。
【0026】
前記ポリオレフィンは、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレン、ポリメチルペンテンおよびこれらのうち2以上の組み合わせから成る群から選択された1つを含んでもよく、好ましくは、ポリエチレンおよびポリプロピレンのうち少なくとも1つを含んでもよく、さらに好ましくは、ポリエチレンを含んでもよいが、これに限定されるものではない。
【0027】
従来ポリオレフィンだけからなるセパレータは、本質的に疎水性であるが、セパレータの製造時にポリオレフィンと一定量の親水性高分子を溶融、混練することによって、前記セパレータに所定の親水性を付与することができる。この場合、前記ポリオレフィンの分子量と前記セパレータ中に前記親水性高分子の含有量を必要なレベルの電解液含浸性を最適化して実現する変数で導き出し、組み合わせることによって、前記親水性高分子を前記ポリオレフィンと溶融、混練するための工程の生産性、前記セパレータの親水性およびそれによる電解液含浸性を均衡的に実現することができる。
【0028】
まず、前記ポリオレフィンが高密度ポリエチレン(HDPE)の場合、前記ポリエチレンの重量平均分子量は、200,000~800,000、好ましくは、250,000~600,000、さらに好ましくは、300,000~500,000であってもよく、前記高密度ポリエチレンの重量平均分子量に対する前記親水性領域の含有量の比は、0.1×10-5~1.1×10-5、好ましくは、0.2×10-5~1×10-5、さらに好ましくは、0.5×10-5~1×10-5であってもよい。
【0029】
前記高密度ポリエチレンの重量平均分子量に対する前記親水性領域の含有量の比が0.1×10-5未満であれば、必要なレベルの電解液含浸性を実現することができず、1.1×10-5より大きければ、電解液含浸性がかえって低下するだけでなく、前記高密度ポリエチレンを通じて実現できるセパレータの機械的物性、耐熱性が低下することがある。また、前記高密度ポリエチレンの重量平均分子量に対する前記親水性領域の含有量の比が1.1×10-5より大きければ、前記親水性高分子の分散性が低下し、前記セパレータの表面で周辺と異なる明度を有し、2mm以上のサイズを有する表面欠点の数が増加し、外観品質が低下することがあり、前記セパレータの表面および/または内部で前記親水性高分子が任意に凝集した部位および/または領域で抵抗が急変し、電池の電気化学的特性に悪影響を与える恐れがある。
【0030】
なお、前記ポリオレフィンが超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)の場合、前記ポリエチレンの重量平均分子量は、900,000~2,000,000、好ましくは、1,000,000~1,500,000であってもよく、前記超高分子量ポリエチレンの重量平均分子量に対する前記親水性領域の含有量の比は、0.1×10-5~0.75×10-5、好ましくは、0.15×10-5~0.6×10-5、さらに好ましくは、0.3×10-5~0.6×10-5であってもよい。
【0031】
前記超高分子量ポリエチレンの重量平均分子量に対する前記親水性領域の含有量の比が0.1×10-5未満であれば、必要なレベルの電解液含浸性を実現することができず、0.75×10-5より大きければ、電解液含浸性がかえって低下するだけでなく、前記超高分子量ポリエチレンを通じて実現され得るセパレータの機械的物性、耐熱性が低下することがある。また、前記超高分子量ポリエチレンの重量平均分子量に対する前記親水性領域の含有量の比が0.75×10-5より大きければ、前記親水性高分子の分散性が低下し、前記セパレータの表面で周辺と異なる明度を有し、2mm以上のサイズを有する表面欠点の数が増加し、外観品質が低下することがあり、前記セパレータの表面および/または内部で前記親水性高分子が任意に凝集した部位および/または領域で抵抗が急変し、電池の電気化学的特性に悪影響を与える恐れがある。
【0032】
前記親水性高分子は、エチレンビニルアセテート、エチレンビニルアルコール、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンブロック共重合体、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアセタール、ポリビニルブチラール、セルロース誘導体、グリセロールおよびこれらのうち2以上の組み合わせから成る群から選択された1つであってもよく、好ましくは、エチレンビニルアセテートであってもよく、さらに好ましくは、ビニルアセテートの含有量が15~30重量%のエチレンビニルアセテートであってもよいが、これに限定されるものではない。エチレンビニルアセテート中、ビニルアセテートの含有量が15重量%未満であれば、セパレータの機械的物性と親水性が低下することがあり、30重量%より大きければ、加工性とそれによる前記親水性高分子の分散性が低下することがある。なお、前記親水性高分子において、前述したもの以外に、主鎖および/または側鎖に親水性官能基であるアミン基、アミド基、ヒドロキシル基、カルボン酸基などを有する多様な種類の高分子が親水性高分子を適用することもできる。
【0033】
前記セパレータの表面に滴加された電解液液滴の滴加直後から5分が経過した時点まで縦方向(MD)の長さ変化率は、15~50%、好ましくは、20~45%であってもよく、横方向(TD)の長さ変化率は、15~40%、好ましくは、20~30%であってもよい。
【0034】
前記セパレータの表面に滴加された電解液液滴の滴加直後の縦方向(MD)および横方向(TD)の最長長さをMD1およびTD1、これから5分が経過した時点の縦方向(MD)および横方向(TD)の最長長さをMD2およびTD2というとき、前記長さ変化率は、次の式1および式2によって算出することができる。
<式1>
縦方向(MD)の長さ変化率(%)=(MD2-MD1)/(MD1)×100
<式2>
横方向(TD)の長さ変化率(%)=(TD2-TD1)/(TD1)×100
【0035】
前記電解液は、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジメチルカーボネート(DMC)、エチルメチルカーボネート(EMC)およびこれらのうち2以上の組み合わせから成る群から選択された1つであってもよく、好ましくは、エチレンカーボネート(EC)、ジエチルカーボネート(DEC)およびジメチルカーボネート(DMC)が既定の割合で混合されたものであってもよいが、これに限定されるものではない。
【0036】
前記電解液が、例えば、LiPFの濃度が1.5Mであり、ビニレンカーボネート(VC)の含有量が1.5重量%であるエチレンカーボネート(EC)、ジエチルカーボネート(DEC)およびジメチルカーボネート(DMC)混合電解液(EC:DEC:DMC=2:2:1(v/v))の場合、前記縦方向(MD)および横方向(TD)の長さ変化率が前記範囲を外れる場合、必要なレベルの電解液含浸性を実現できないものと評価することができる。
【0037】
前記ポリオレフィンが高密度ポリエチレン(HDPE)であり、前記高密度ポリエチレンの重量平均分子量に対する前記親水性領域の含有量の比が0.1×10-5~1.1×10-5である場合、前記電解液液滴の横方向(TD)の長さ変化率に対する縦方向(MD)の長さ変化率の比は、0.9~1.06、好ましくは、1~1.04であってもよい。
【0038】
また、前記ポリオレフィンが超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)であり、前記超高分子量ポリエチレンの重量平均分子量に対する前記親水性領域の含有量の比が0.1×10-5~0.75×10-5である場合、前記電解液液滴の横方向(TD)の長さ変化率に対する縦方向(MD)の長さ変化率の比は、0.9~1.8、好ましくは、1~1.7であってもよい。
【0039】
前記電解液液滴の横方向(TD)の長さ変化率に対する縦方向(MD)の長さ変化率の比が前記範囲を外れる場合、セパレータに対する電解液の含浸が方向によって不均一に行われ、電池の電気化学的特性が低下することがある。
【0040】
前記セパレータの表面に存在し、周辺と異なる明度を有し、2mm以上のサイズを有する表面欠点(明点(white dot)および/または暗点(black dot))の数は、10個/m以下、好ましくは、8個/m以下、さらに好ましくは、6個/m以下であってもよい。前記表面欠点の数が10個/mより大きければ、外観品質が低下することがあり、前記セパレータの表面で前記ポリオレフィンおよび/または前記親水性高分子が任意に凝集した部位および/または領域で抵抗が急変し、電池の電気化学的特性に悪影響を与える恐れがある。
【0041】
前記セパレータは、(a)ポリオレフィン、親水性高分子および気孔形成剤を含む組成物を押出機に投入し、ベースシートを成形する工程;(b)前記ベースシートを延伸した後、前記気孔形成剤を抽出し、ベースフィルムを製造する工程;および(c)前記ベースフィルムを熱固定する工程;を含む方法によって製造することができる。
【0042】
前記(a)工程で、前記ポリオレフィン20~40重量%、前記親水性高分子0.1~5重量%および残量の気孔形成剤を含む組成物を押出機に投入し、ベースシートを成形することができる。前記ポリオレフィンおよび前記親水性高分子の種類、物性、作用効果などについては、前述した通りである。前記ポリオレフィンおよび前記親水性高分子の投入量は、前記セパレータ中、前記親水性高分子を含む前記親水性領域の含有量が0.1~7.5重量%となるように調節することができる。
【0043】
前記気孔形成剤は、パラフィン油、パラフィンワックス、鉱油、固体パラフィン、大豆油、油菜油、パーム油、ヤシ油、ジ-2-エチルヘキシルフタレート、ジブチルフタレート、ジイソノニルフタレート、ジイソデシルフタレート、ビス(2-プロピルヘプチル)フタレート、ナフテン油およびこれらのうち2以上の組み合わせから成る群から選択された1つであってもよく、好ましくは、パラフィン油であってもよく、さらに好ましくは、40℃で動粘度が50~100cStのパラフィン油であってもよいが、これに限定されるものではない。
【0044】
前記(b)工程で、前記ベースシートを延伸した後、前記気孔形成剤を抽出し、ベースフィルムを製造することができる。前記延伸は、一軸延伸、または二軸延伸(逐次または同時二軸延伸)などの公知の方法によって行われ得る。逐次二軸延伸の場合、延伸倍率は、横方向(MD)および縦方向(TD)にそれぞれ4~20倍であってもよく、それによる面倍率は、16~400倍であってもよい。
【0045】
前記(c)工程で、前記ベースフィルムを熱固定することができる。熱固定は、フィルムを固定させ、熱を加えて、収縮しようとするフィルムを強制的に保持して残留応力を除去することである。熱固定温度は、高いことが、収縮率を低減するのに有利であるが、その温度が過度に高ければ、フィルムが部分的に溶けて、形成された気孔が閉鎖され、透過度が低下することがある。熱固定温度は、前記ベースフィルムの結晶部分の10~30重量%が溶ける範囲で選択されることが好ましい。熱固定温度が前記範囲で選択されれば、前記ベースフィルム内ポリオレフィン分子の再配列が不十分で、フィルムの残留応力除去効果がない問題と部分的溶融によって気孔が閉鎖されて透過度が低下する問題を防止することができる。例えば、熱固定温度は、120~150℃、好ましくは、130~145℃であってもよく、熱固定時間は、5秒~10分、好ましくは、10秒~1分であってもよい。
以下、本発明の実施例について詳細に説明する。
【0046】
実施例1-1
重量平均分子量(Mw)が600,000のポリエチレン(PE1,V600,HTC社)31.5重量部、ビニルアセテートの含有量が28重量%のエチレンビニルアセテート(EVA,HTC社)0.5重量部、および40℃における動粘度が70cStのパラフィン油68重量部を混合し、二軸押出機(内径58mm、L/D=56)に投入した。スクリュー回転速度40rpm、200℃の条件で前記二軸押出機から幅が300mmのTダイ(T-Die)で吐出させた後、温度が40℃のキャスティングロール(casting roll)を通過させて、厚さが800μmのベースシートを製造した。
【0047】
前記ベースシートを110℃のロール延伸機で縦方向(MD)に8倍延伸し、125℃のテンター延伸機で横方向(TD)に9倍延伸して、フィルムを製造した。前記フィルムを25℃のジクロロメタン浸出槽に含浸し、1分間パラフィン油を抽出、除去した後、50℃で5分間乾燥した。前記フィルムを140℃で横方向(TD)に25%弛緩させた状態で熱固定して、多孔性セパレータを製造した。
【0048】
実施例1-2
PE1およびEVAの投入量をそれぞれ31重量部および1重量部に変更したことを除いて、前記実施例1-1と同じ方法で多孔性セパレータを製造した。
【0049】
実施例1-3
PE1およびEVAの投入量をそれぞれ30.4重量部および1.6重量部に変更したことを除いて、前記実施例1-1と同じ方法で多孔性セパレータを製造した。
【0050】
実施例1-4
PE1およびEVAの投入量をそれぞれ30重量部および2重量部に変更したことを除いて、前記実施例1-1と同じ方法で多孔性セパレータを製造した。
【0051】
比較例1-1
PE1の投入量を32重量部に変更し、EVAを投入しないことを除いて、前記実施例1-1と同じ方法で多孔性セパレータを製造した。
【0052】
比較例1-2
PE1およびEVAの投入量をそれぞれ29.8重量部および2.2重量部に変更したことを除いて、前記実施例1-1と同じ方法で多孔性セパレータを製造した。
前記実施例および比較例によるセパレータを構成するポリエチレンの重量平均分子量とセパレータ中、エチレンビニルアセテートの含有量(PE1およびEVA中、EVAの含有量)を下記表1に示した。
【0053】
【表1】
【0054】
実験例1
前記実施例および比較例で製造されたセパレータの電解液含浸性を次のような方法で測定した。電解液としては、LiPFの濃度が1.5Mであり、ビニレンカーボネート(VC)の含有量が1.5重量%であるエチレンカーボネート(EC)、ジエチルカーボネート(DEC)およびジメチルカーボネート(DMC)混合電解液(EC:DEC:DMC=2:2:1(v/v))を用い、前記混合電解液2μlをセパレータの表面に滴加した直後、液滴のサイズ(MD1、TD1)と5分経過後に拡散された液滴のサイズ(MD2、TD2)を縦方向(MD)および横方向(TD)に沿って測定した。また、セパレータ表面で周辺の明度と差異が顕著であり、2mm以上のサイズを有する不均一な微細点(表面欠点)の数(ea/m)を目視で測定し、その結果を下記表2に示した。
【0055】
【表2】
【0056】
実施例2-1
重量平均分子量(Mw)が1,000,000のポリエチレン(PE2,VH100U、KPIC社)27.5重量部、ビニルアセテートの含有量が28重量%のエチレンビニルアセテート(EVA,HTC社)0.5重量部、および40℃における動粘度が70cStのパラフィン油72重量部を混合し、二軸押出機(内径58mm、L/D=56)に投入した。スクリュー回転速度40rpm、200℃の条件で前記二軸押出機から幅が300mmのTダイ(T-Die)で吐出させた後、温度が40℃のキャスティングロール(casting roll)を通過させて、厚さが800μmのベースシートを製造した。
【0057】
前記ベースシートを110℃のロール延伸機で縦方向(MD)に8倍延伸し、125℃のテンター延伸機で横方向(TD)に9倍延伸して、フィルムを製造した。前記フィルムを25℃のジクロロメタン浸出槽に含浸して1分間パラフィン油を抽出、除去した後、50℃で5分間乾燥した。前記フィルムを135℃で横方向(TD)に15%弛緩させた状態で熱固定して、多孔性セパレータを製造した。
【0058】
実施例2-2
PE2およびEVAの投入量をそれぞれ27重量部および1重量部に変更したことを除いて、前記実施例2-1と同じ方法で多孔性セパレータを製造した。
【0059】
実施例2-3
PE2およびEVAの投入量をそれぞれ26.4重量部および1.6重量部に変更したことを除いて、前記実施例2-1と同じ方法で多孔性セパレータを製造した。
【0060】
実施例2-4
PE2およびEVAの投入量をそれぞれ26重量部および2重量部に変更したことを除いて、前記実施例2-1と同じ方法で多孔性セパレータを製造した。
【0061】
比較例2-1
PE2の投入量を28重量部に変更し、EVAを投入しないことを除いて、前記実施例2-1と同じ方法で多孔性セパレータを製造した。
【0062】
比較例2-2
PE2およびEVAの投入量をそれぞれ25.8重量部および2.2重量部に変更したことを除いて、前記実施例2-1と同じ方法で多孔性セパレータを製造した。
前記実施例および比較例によるセパレータを構成するポリエチレンの重量平均分子量とセパレータ中、エチレンビニルアセテートの含有量(PE2およびEVA中、EVAの含有量)を下記表3に示した。
【0063】
【表3】
【0064】
実験例2
前記実施例および比較例で製造されたセパレータの電解液含浸性と表面欠点の数を実験例1と同じ方法で測定し、その結果を下記表4に示した。
【0065】
【表4】
【0066】
前述した本発明の説明は、例示のためのものであり、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者は、本発明の技術的思想や必須の特徴を変更することなく、他の具体的な形態で容易に変形が可能であることを理解することができる。したがって、以上で記述した実施例は、すべての面において例示的なものであり、限定的でないものと理解しなければならない。例えば、単一型と説明されている各構成要素は、分散して実施されることもでき、同様に、分散したものと説明されている構成要素も、結合した形態で実施されることもできる。
【0067】
本発明の範囲は、後述する請求範囲によって示され、請求範囲の意味および範囲そしてその均等概念から導き出されるすべての変更または変形された形態が本発明の範囲に含まれると解すべきである。
【国際調査報告】