(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-30
(54)【発明の名称】DHEASアッセイ、そのための試薬、並びにその製造方法及び使用
(51)【国際特許分類】
G01N 33/53 20060101AFI20240920BHJP
【FI】
G01N33/53 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024522234
(86)(22)【出願日】2022-09-23
(85)【翻訳文提出日】2024-04-12
(86)【国際出願番号】 US2022076904
(87)【国際公開番号】W WO2023064670
(87)【国際公開日】2023-04-20
(32)【優先日】2021-10-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508147326
【氏名又は名称】シーメンス・ヘルスケア・ダイアグノスティックス・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100216105
【氏名又は名称】守安 智
(72)【発明者】
【氏名】ジジェン・ジャオ
(72)【発明者】
【氏名】イー・フェン・ヂァン
(72)【発明者】
【氏名】アンドリュー・ライビン
(72)【発明者】
【氏名】ジェームズ・フリーマン
(57)【要約】
デヒドロエピアンドロステロンスルファート-フルオレセイン(DHEAS-FITC)抱合体又はデヒドロエピアンドロステロンスルファート-カルボキシメトキシルアミノ-ジメチルアクリジニウムエステル(DHEAS-CMO-DMAE)抱合体を含有するイムノアッセイ試薬が開示される。DHEAS抱合体の1つ又はそれ以上を含有するイムノアッセイキット及びデバイスも開示される。DHEAS抱合体を製造及び使用する方法がさらに開示される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
デヒドロエピアンドロステロンスルファート-フルオレセイン(DHEAS-FITC)抱合体
を含む、イムノアッセイ試薬。
【請求項2】
DHEAS-FITC抱合体は、DHEAS-CMO-EDA-FITC(DHEAS-カルボキシメトキシルアミノ-エチルジアミン-フルオレセイン)を含む、請求項1に記載のイムノアッセイ試薬。
【請求項3】
DHEAS-FITC抱合体は、DHEAS-CMO-PEG3-フルオレセイン(DHEAS-カルボキシメトキシルアミノ-(ポリエチレングリコール)
3-フルオレセイン)又はDHEAS-CMO-BSA-フルオレセイン(DHEAS-カルボキシメトキシルアミノ-ウシ血清アルブミン-フルオレセイン)を含む、請求項1に記載のイムノアッセイ試薬。
【請求項4】
フルオレセインはフルオレセインイソチオシアネート(FITC)である、請求項1に記載のイムノアッセイ試薬。
【請求項5】
デヒドロエピアンドロステロンスルファート-カルボキシメトキシルアミノ-ジメチルアクリジニウムエステル(DHEAS-CMO-DMAE)抱合体
を含む、イムノアッセイ試薬。
【請求項6】
DHEAS-AE抱合体は、DHEAS-CMO-EDA-DMAE(DHEAS-カルボキシメトキシルアミノ-エチルジアミン-ジメチルアクリジニウムエステル)又はDHEAS-CMO-Z-NSP-DMAE(DHEAS-カルボキシメトキシルアミノ-Z-N-スルホプロピル-ジメチルアクリジニウムエステル)を含む、請求項5に記載のイムノアッセイ試薬。
【請求項7】
デヒドロエピアンドロステロンスルファート-フルオレセイン(DHEAS-FITC)抱合体;
抗フルオレセイン常磁性固相粒子;及び
アクリジニウムエステル標識抗DHEASモノクローナル抗体
を含む、イムノアッセイキット。
【請求項8】
DHEAS-FITC抱合体は、DHEAS-CMO-EDA-FITC(DHEAS-カルボキシメトキシルアミノ-エチルジアミン-フルオレセイン)を含む、請求項7に記載のイムノアッセイキット。
【請求項9】
DHEAS-FITC抱合体のフルオレセインはフルオレセインイソチオシアネート(FITC)である、請求項7に記載のイムノアッセイキット。
【請求項10】
DHEAS-FITC抱合体は、DHEAS-CMO-PEG3-フルオレセイン(DHEAS-カルボキシメトキシルアミノ-(ポリエチレングリコール)
3-フルオレセイン)又はDHEAS-CMO-BSA-フルオレセイン(DHEAS-カルボキシメトキシルアミノ-ウシ血清アルブミン-フルオレセイン)を含む、請求項9に記載のイムノアッセイキット。
【請求項11】
フルオレセイン化された抗DHEASモノクローナル抗体で標識された常磁性固相粒子;及び
デヒドロエピアンドロステロンスルファート-カルボキシメトキシルアミノ-ジメチルアクリジニウムエステル(DHEAS-CMO-DMAE)抱合体
を含む、イムノアッセイキット。
【請求項12】
DHEAS-AE抱合体は、DHEAS-CMO-EDA-DMAE(DHEAS-カルボキシメトキシルアミノ-エチルジアミン-ジメチルアクリジニウムエステル)又はDHEAS-CMO-Z-NSP-DMAE(DHEAS-カルボキシメトキシルアミノ-Z-N-スルホプロピル-ジメチルアクリジニウムエステル)を含む、請求項11に記載のイムノアッセイキット。
【請求項13】
生物学的サンプル中のDHEASの濃度を決定する方法であって、該方法は:
(a)
(1) DHEASを含有すると疑われる生物学的サンプル;
(2) デヒドロエピアンドロステロンスルファート-フルオレセイン(DHEAS-FITC)抱合体;
(3) 抗フルオレセイン常磁性固相粒子;及び
(4) アクリジニウムエステル標識抗DHEASモノクローナル抗体
を、同時に又は部分的にもしくは全体的に連続して混合して、混合物を形成する工程;
(b) (a)において形成された混合物中で、(2)、(3)、及び(4)の互いに対する結合並びに生物学的サンプル中に存在するDHEASに対する(4)の結合を可能にする工程;並びに
(c) 混合物において生成された蛍光シグナルを測定する工程;及び
(d) 生物学的サンプルが存在しない場合に観察される蛍光シグナルと比較した場合に、観察される蛍光シグナルの減少量に基づいて、生物学的サンプル中に存在するDHEASの濃度を決定する工程
を含む、上記方法。
【請求項14】
DHEAS-FITC抱合体は、DHEAS-CMO-EDA-FITC(DHEAS-カルボキシメトキシルアミノ-エチルジアミン-フルオレセイン)を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
DHEAS-FITC抱合体のフルオレセインは、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
DHEAS-FITC抱合体は、DHEAS-CMO-PEG3-フルオレセイン(DHEAS-カルボキシメトキシルアミノ-(ポリエチレングリコール)
3-フルオレセイン)又はDHEAS-CMO-BSA-フルオレセイン(DHEAS-カルボキシメトキシルアミノ-ウシ血清アルブミン-フルオレセイン)を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
工程(d)において、生物学的サンプル中に存在するDHEASの濃度は、蛍光シグナルを較正曲線と比較することにより決定される、請求項14に記載の方法。
【請求項18】
生物学的サンプル中のDHEASの濃度を決定する方法であって、該方法は:
(a)
(1) DHEASを含有すると疑われる生物学的サンプル;
(2) フルオレセイン化された抗DHEASモノクローナル抗体で標識された常磁性固相粒子;及び
(3) デヒドロエピアンドロステロンスルファート-カルボキシメトキシルアミノ-ジメチルアクリジニウムエステル(DHEAS-CMO-DMAE)抱合体;
を、同時に又は部分的にもしくは全体的に連続して混合して、混合物を形成する工程;
(b) (a)において形成された混合物において、(3)の(2)に対する結合又は生物学的サンプル中に存在するDHEASの(2)に対する結合を可能にする工程;並びに
(c) 混合物において生成された蛍光シグナルを測定する工程;並びに
(d) 生物学的サンプルが存在しない場合に観察される蛍光シグナルと比較した場合に、観察される蛍光シグナルの減少量に基づいて、生物学的サンプル中に存在するDHEASの濃度を決定する工程
を含む、上記方法。
【請求項19】
DHEAS-AE抱合体は、DHEAS-CMO-EDA-DMAE(DHEAS-カルボキシメトキシルアミノ-エチルジアミン-ジメチルアクリジニウムエステル)又はDHEAS-CMO-Z-NSP-DMAE(DHEAS-カルボキシメトキシルアミノ-Z-N-スルホプロピル-ジメチルアクリジニウムエステル)を含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
工程(d)において、生物学的サンプル中に存在するDHEASの濃度は、蛍光シグナルを較正曲線と比較することにより決定される、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
サンプル中のDHEASの濃度を決定するためのマイクロ流体デバイスであって、該マイクロ流体デバイスは:
(i) DHEASを含有すると疑われるサンプルを収容することができる第1の区画;
(ii) デヒドロエピアンドロステロンスルファート-フルオレセイン(DHEAS-FITC)抱合体;
(iii) 抗フルオレセイン常磁性固相粒子;及び
(iv) アクリジニウムエステル標識抗DHEASモノクローナル抗体
を含む、上記マイクロ流体デバイス。
【請求項22】
(ii)~(iv)の少なくとも1つは第1の区画に配置される、請求項21に記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項23】
第1の区画と流体連通することが可能な第2の区画を少なくとも含むとさらに定義され、ここで(ii)~(iv)の少なくとも1つは第2の区画に配置される、請求項21に記載のマイクロ流体デバイス。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
関連出願の相互参照/参照による援用の記載
該当なし。
【0002】
連邦政府資金による研究開発の記載
該当なし。
【0003】
背景
デヒドロエピアンドロステロンスルファート(Dehydroepiandrosterone Sulphate)(DHEAS)は、
図1に示される化学構造を有する副腎ステロイドであり、そして異常なレベルのDHEASは、多くの様々な障害及び状態と関連することが当該分野で知られている。例えば、(限定としてではないが)、DHEASの循環レベルの測定は、異常発毛(多毛症)及び女性における禿頭症(脱毛症)の調査において重要である。また、DHEASの血漿レベルは7歳ごろから次第に増加し、その後30代から徐々に減少するので、DHEASレベルの測定は、副腎皮質性思春期徴候及び思春期遅発症の評価において有用である。さらに、DHEASはしばしば、多毛症におけるアンドロゲン過剰症についての初期スクリーニングとして遊離テストステロンと結合してアッセイされ、そして高いDHEASレベルは、多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)においてよく見られる。さらに、女性において700~800μg/dLより高いDHEASのレベルは、ホルモン分泌副腎腫瘍を示唆する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
DHEASの測定のための方法は、ヒト患者におけるDHEASレベルの評価のための機構を提供するために望ましい。しかし、DHEASの検出のためのイムノアッセイは、アッセイ感度、周囲温度効果(ATE)、及びビオチン干渉に対する感受性の問題に直面してきた。
【0005】
従って、新しくかつ改善されたDHEASアッセイ試薬及びアッセイ、さらには生物学的サンプル中のDHEASレベルを検出するためにそれらを製造し使用する方法の必要も当該分野に存在する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】
図1は、デヒドロエピアンドロステロンスルファート(DHEAS)の化学構造を示す。
【
図2】
図2は、本開示に従って構築されたDHEASアッセイフォーマットの1つの非限定的な実施形態を示す。
【
図3】
図3は、本開示に従って構築されたDHEASアッセイフォーマットの別の非限定的な実施形態を示す。
【
図4】
図4は、本開示に従って利用され得るアッセイ試薬の1つの非限定的な実施形態、DHEAS-CMO-EDA-フルオレセインの合成のためのスキームを提供する。
【
図5】
図5は、本開示に従って利用され得るアッセイ試薬の別の非限定的な実施形態、DHEAS-CMO-PEG3-フルオレセインの合成のためのスキームを提供する。
【
図6】
図6は、本開示に従って利用され得るアッセイ試薬の別の非限定的な実施形態、DHEAS-BSA-フルオレセインの合成のためのスキームを提供する。
【
図7】
図7は、本開示に従って利用され得るアッセイ試薬のさらに別の非限定的な実施形態、DHEAS-CMO-EDA-DMAE抱合体の合成のためのスキームを提供する。
【
図8】
図8は、本開示に従って利用され得るアッセイ試薬のさらに別の非限定的な実施形態、DHEAS-CMO-Z-NSP-DMAE抱合体の合成のためのスキームを提供する。
【
図9】
図9は、市販のアッセイ(DHEASを使用する)と対比してアッセイ試薬DHEAS-CMO-EDA-フルオレセインを使用する
図2のDHEASアッセイフォーマットのための結合曲線の試験定義最適化をグラフで示す。試験定義811-833は、DHEASIIフォーマットを使用した試薬添加の様々な順序及びタイミングを取り上げるが、全て市販のDHEASアッセイと比較して改善された結合プロフィールを示す。
【
図10】
図10は、市販アッセイ(DHEASを使用する)と対比してDHEAS-CMO-EDA-DMAE抱合体を使用する
図3のDHEASアッセイフォーマットのための結合曲線をグラフで示す。
【発明を実施するための形態】
【0007】
詳細な説明
例となる用語及び結果によって本開示の少なくとも1つの実施形態を詳細に説明する前に、当然のことながら、本開示は、その出願において、以下の記載において示される成分の構築及び配置の詳細に限定されない。本開示は他の実施形態であることが可能であり、又は本開示を様々なやり方で実施もしくは実行することができる。したがって、本明細書において使用される用語は、最も広い可能な範囲及び意味を与えられることを意図され;そして実施形態は例示的であり、包括的ではないことを意図される。また、当然のことながら、本明細書において使用される表現及び用語は、説明の目的のためのものであり、限定とみなされるべきではない。
【0008】
本明細書において別の定義がなければ、本開示に関連して使用される科学用語及び技術用語は、当業者により一般的に理解される意味を有するものとする。さらに、文脈上別段必要がなければ、単数の語は複数を含むものとし、かつ複数の語は単数を含むものとする。上述の技術及び手順は、概して、当該分野で周知の従来の方法に従って、及び本明細書全体を通して引用されそして考察される様々な一般的及びより具体的な参考文献に記載されるように行われる。本明細書において記載される分析化学、合成有機化学、及び医薬品化学及び製薬化学に関連して利用される命名法、並びにそれらの検査法及び技術は、当該分野で周知でありかつ一般的に使用されるものである。
【0009】
明細書において言及される全ての特許、公開特許出願、及び非特許刊行物は、本開示が属する分野の当業者の技能のレベルを示す。本出願のいずれかの部分において参照される全ての特許、公開特許出願、及び非特許刊行物は、各個々の特許又は刊行物が参照により加入されると具体的かつ個別に示される場合と同じ程度まで、それら全体として参照により本明細書に明示的に加入される。
【0010】
本明細書において開示される組成物/デバイス、キット、及び/又は方法は全て、本開示を考慮すれば過度の実験なしに製造しかつ実行することが可能である。組成物/デバイス、キット、及び/又は方法は特定の実施形態に関して記載されてきたが、本開示の概念、精神、及び範囲から逸脱することなく、本明細書に記載される組成物/デバイス、キット、及び/又は方法並びに方法の工程または工程の順序に、変形が適用され得るということは当業者に明らかである。当業者に明らかである全てのこのような類似した置換及び改変は、添付の特許請求の範囲により定義されるとおりの本開示の精神、範囲、及び概念内であるとみなされる。
【0011】
本開示に従って利用されるように、以下の用語は、別段の指示がなければ、以下の意味を有すると理解されるものとする:
特許請求の範囲及び/又は明細書において用語「含むこと(comprising)」と関連して使用される場合の用語「a」又は「an」の使用は、「1つ」を意味し得るが、「1つ又はそれ以上」、「少なくとも1つ」、及び「1つ又は1つより多く」の意味とも一致する。従って、用語「a」、「an」、及び「the」は、文脈が明確に別段の指示をしていなければ、複数の指示を含む。従って、例えば、「化合物(a compound)」への言及は、1つもしくはそれ以上の化合物、2つもしくはそれ以上の化合物、3つもしくはそれ以上の化合物、4つもしくはそれ以上の化合物、又はより大きな数の化合物を指す。
【0012】
用語「少なくとも1つ」の使用は、1つ、さらには1つより多くの任意の量を含むと理解され、これらとしては、限定されないが、2、3、4、5、10、15、20、30、40、50、100などが挙げられる。用語「少なくとも1つ」は、それが付随する用語に依存して、100又は1000又はそれ以上に及び得る;さらに、より高い上限も満足な結果を生じ得るので、量100/1000は限定とみなされるべきではない。さらに、用語「X、Y、及びZの少なくとも1つ」の使用は、Xのみ、Yのみ、及びZのみ、さらにX、Y、及びZの任意の組み合わせを含むと理解される。
【0013】
序数の用語(すなわち、「第1」、「第2」、「第3」、「第4」など)の使用は、単に2つ又はそれ以上の項目を区別する目的のためであり、そして別段の規定が明確に述べられていなければ、別の項目に対する1つの項目のいずれの順序も順位も重要度も、例えば添加のいずれの順序も示すことは意図されない。
【0014】
特許請求の範囲における用語「又は」の使用は、選択肢のみを指すと明示的に示されていなければ、又は選択肢が相互排他的でなければ、包括的な「及び/又は」を意味するために使用される。例えば、条件「A又はB」は、以下のいずれによっても満たされる:Aが真であり(又は存在し)かつBが偽である(又は存在しない)、Aが偽であり(又は存在せず)かつBが真である(又は存在する)、及びA及びBの両方が真である(又は存在する)。
【0015】
本明細書において使用される場合、「一実施形態」、「実施形態」、「いくつかの実施形態」、「一実施例」、「例えば」、又は「実施例」への任意の言及は、その実施形態に関連して記載される特定の要素、特徴、構造、又は特性が、少なくとも1つの実施形態に含まれるということを意味する。明細書中の様々な箇所における句「いくつかの実施形態において」又は「一実施例」の出現は、例えば、必ずしも全て同じ実施形態を指すわけではない。さらに、1つ又はそれ以上の実施形態又は実施例への全ての言及は、特許請求の範囲に対して非限定的であると解釈されるべきである。
【0016】
本出願全体を通して、用語「約」は、値が、組成物/装置/デバイス、その値を決定するために使用される方法についての誤差の固有の変動、又は試験対象間に存在する変動を含むということを示すために使用される。例えば、限定としてではないが、用語「約」が利用される場合、以下のような変動は開示される方法を実行するために妥当であるので、そして当業者により理解されるように、指定された値は、特定の値からプラス又はマイナス20パーセント、又は15パーセント、又は12パーセント、又は11パーセント、又は10パーセント、又は9パーセント、又は8パーセント、又は7パーセント、又は6パーセント、又は5パーセント、又は4パーセント、又は3パーセント、又は2パーセント、又は1パーセント変動し得る。
【0017】
本明細書及び特許請求の範囲において使用されるように、語「含むこと(comprising)」(並びに「含む(comprise)」及び「含む(comprises)」のような含むことの任意の形態)、「有すること」(並びに「有する(have)」及び「有する(has)」のような有することの任意の形態)、「含むこと(including)」(並びに「含む(includes)」及び「含む(include)」のような含むことの任意の形態)、又は「含有すること」(並びに「含有する(contains)」及び「含有する(contain)」のような含有することの任意の形態)は、包括的又はオープンエンドであり、かつ追加の記載されていない要素又は方法工程を排除しない。例えば、要素のリストを含むプロセス、方法、物品、又は装置は、必ずしもそれらの要素のみに限定されるわけではないが、明示的にリストに記載されていないか又は本来その中に存在する他の要素を含んでいてもよい。
【0018】
本明細書において使用されるように用語「又はそれらの組み合わせ」は、その用語の前のリストに記載された項目の全ての並び替え及び組み合わせを指す。例えば、「A、B、C、又はそれらの組み合わせ」は:A、B、C、AB、AC、BC、又はABC、及び順序が特定の状況で重要な場合には、BA、CA、CB、CBA、BCA、ACB、BAC、又はCABの少なくとも1つを含むことを意図される。この例を用いて続けると、BB、AAA、AAB、BBC、AAABCCCC、CBBAAA、CABABBなどのような1つ又はそれ以上の項目の繰り返しを含有する組み合わせも明示的に含まれる。当業者には当然のことながら、文脈上別段明らかでなければ、典型的に、任意の組み合わせ中の項目の数に制限はない。
【0019】
本明細書において使用されるように、用語「実質的に」は、その後に記載される事象又は状況が完全に発生すること又はその後に記載される事象又は状況が大部分又はかなりの程度まで発生することを意味する。例えば、特定の事象又は状況に関連する場合、用語「実質的に」は、その後に記載される事象又は状況が、少なくとも80%の確率で、又は少なくとも85%の確率で、又は少なくとも90%の確率で、又は95%の確率で発生することを意味する。用語「実質的に隣接する」は、2つの項目が互いに100%隣接していること、又は2つの項目が互いにごく近くにあるが互いに100%隣接してはいないこと、又は2つの項目の一方の一部が他方の項目に100%隣接してはいないが、他方の項目のすぐ近くにあることを意味し得る。
【0020】
本明細書において使用されるように、句「と会合した」は、2つの部分の互いとの直接的な会合及び2つの部分の互いとの間接的な会合の両方を含む。会合の非限定的な例としては、直接結合によるか又はスペーサー基を介した1つの部分の別の部分への共有結合、直接的又は部分に結合された特異的結合対メンバーを用いた1つの部分の別の部分への非共有結合、例えば1つの部分を別の部分中に溶解することにより又は合成により1つの部分を別の部分中に組み込むこと、及び1つの部分を別の部分上にコーティングすることが挙げられる。
【0021】
本明細書において使用されるように用語「液体試験サンプル」は、本開示に従って利用され得る任意の種類の生物学的流体サンプルを含むと理解される。利用され得る生物学的サンプルの例としては、限定されないが、全血又はその任意の部分(すなわち、血漿又は血清)、唾液、痰、脳脊髄液(CSF)、腸液、腹腔内液、嚢胞液、汗、間質液、涙、粘液、尿、膀胱洗浄液、精液、それらの組み合わせなどが挙げられる。本開示に従って利用される液体試験サンプルの体積は、(例えば、しかし限定としてではなく)約0.1μlから約100μlであり得る。
【0022】
本明細書において使用されるように、本開示に従って利用される液体試験サンプルに関連する用語「体積」は、約0.1μl~約100μl、又は約1μl~約75μl、又は約2μl~約60μl、又は約50μlに等しいかもしくは約50μl未満を意味する。
【0023】
用語「患者」はヒト及び獣医学対象を含む。特定の実施形態において、患者は哺乳動物である。特定の他の実施形態において、患者はヒトである。診断/処置の目的のための「哺乳動物」は哺乳動物として分類される任意の動物を指し、これらとしてはヒト、家畜及び産業動物、非ヒト霊長類、及びイヌ、ウマ、ネコ、ウシなどのような動物園、スポーツ又はペットの動物が挙げられる。
【0024】
ここで本発明概念の特定の非限定的な実施形態に戻ると、本開示は、生物学的サンプル中のDHEASの濃度を決定する方法において利用することができるイムノアッセイ試薬(さらにそれを含有するキット及びデバイス)に関する。本開示のイムノアッセイ試薬は新規なDHEAS抱合体を含み、そしてこれらの新規なDHEAS抱合体を利用するイムノアッセイは、現在利用可能なDHEASイムノアッセイにおいて観察されるアッセイ感度、周囲温度効果(ATE)、及びビオチン干渉に対する感受性の問題を克服する。
【0025】
本開示の特定の非限定的な実施形態は、デヒドロエピアンドロステロンスルファート-フルオレセイン(DHEAS-FITC)抱合体を含むイムノアッセイ試薬を含む。本明細書において開示されるか又はその他の企図されるいずれのDHEAS-FITC抱合体も、本開示に従って構築されるイムノアッセイ試薬に含まれ得る。特定の非限定的な実施形態において、DHEAS-FITC抱合体は、DHEAS-CMO-EDA-FITC(DHEAS-カルボキシメトキシルアミノ-エチルジアミン-フルオレセイン)、DHEAS-CMO-PEG3-フルオレセイン(DHEAS-カルボキシメトキシルアミノ-(ポリエチレングリコール)3-フルオレセイン)、又はDHEAS-CMO-BSA-フルオレセイン(DHEAS-カルボキシメトキシルアミノ-ウシ血清アルブミン-フルオレセイン)を含む。
【0026】
DHEAS抱合体の文脈において使用されるように用語「フルオレセイン」は、フルオレセイン単独、さらにフルオレセインイソチオシアネート(FITC)のような(これに限定されないが)フルオレセイン誘導体も指すと理解される。
【0027】
本開示の特定の非限定的実施形態は、デヒドロエピアンドロステロンスルファート-カルボキシメトキシルアミノ-ジメチルアクリジニウムエステル(DHEAS-CMO-DMAE)抱合体を含むイムノアッセイ試薬に関する。本明細書において開示されるか又はその他の企図されるいずれのDHEAS-CMO-DMAE抱合体も、本開示に従って構築されるイムノアッセイ試薬に含まれ得る。特定の非限定的な実施形態において、DHEAS-AE抱合体は、DHEAS-CMO-EDA-DMAE(DHEAS-カルボキシメトキシルアミノ-エチルジアミン-ジメチルアクリジニウムエステル)又はDHEAS-CMO-Z-NSP-DMAE(DHEAS-カルボキシメトキシルアミノ-Z-N-スルホプロピル-ジメチルアクリジニウムエステル)を含む。
【0028】
本開示の特定の非限定的な実施形態は、DHEASの濃度の決定のためのイムノアッセイを都合よく実行するために有用なキットに関する。これらのキットは、本明細書において上で開示されるか又はその他の企図されるDHEAS抱合体のいずれかを、単独で又は本明細書において開示されるかもしくはその他の企図される他のアッセイ試薬と組み合わせて含む。さらに、キットは、本明細書において記載されるか又はその他の企図される特定のアッセイのいずれかを実行するための他の成分及び/又は試薬をさらに含有していてもよい。これらのさらなる試薬の性質は、特定のアッセイフォーマットに依存し、そしてそれらの同定は、当業者の技能の十分範囲内である。
【0029】
本開示の特定の非限定的実施形態において、イムノアッセイキットは、本明細書において開示されるか又はその他の企図されるDHEAS-FITC抱合体のいずれかを、単独で、又は抗フルオレセイン常磁性固相粒子及び/もしくはアクリジニウムエステル標識抗DHEASモノクローナル抗体と組み合わせて含む。
【0030】
当該分野で公知であるか又はその他の本明細書において企図される任意の常磁性固相粒子(PMP)が、本開示に従って利用され得る。用語「常磁性」は、わずかな磁性が導入されて、いずれかの磁極への弱い引力、磁場から取り除く際に失われる状態を生じ得る物質を指す。常磁性物質は、典型的には不対「d」電子を有する。常磁性物質としては、限定されないが、例えば、金属酸化物、及び金属ハロゲン化物のような金属塩;並びに例えば金属元素が挙げられる。限定ではなく例として、金属は、例えば、鉄、クロム、リチウム、ナトリウム、マグネシウム、アルミニウム、マンガン、ストロンチウム、ジルコニウム、モリブデン、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、スズ、サマリウム、ユーロピウム、タングステン、白金、及びそれらの組み合わせであり得る。
【0031】
特定の非限定的な実施形態において、常磁性粒子は、一般的に例えば、約0.02~約100ミクロン、又は約0.05~約100ミクロン、又は約0.1~約100ミクロン、又は約0.5~約100ミクロン、又は約0.02~約50ミクロン、又は約0.05~約50ミクロン、又は約0.1~約50ミクロン、又は約0.5~約50ミクロン、又は約0.02~約20ミクロン、又は約0.05~約20ミクロン、又は約0.1~約20ミクロン、又は約0.5~約20ミクロンの平均直径を有する。いくつかの実施形態において、粒子は、例えば、約0.05ミクロン~約20ミクロン又は約0.3ミクロン~約10ミクロン、又は約0.3ミクロン~約5ミクロンの平均直径を有する。いくつかの実施形態において、限定ではなく例示として、常磁性粒子は、例えば、酸化鉄(II)粒子、酸化鉄(III)粒子、酸化鉄(II)粒子と酸化鉄(III)粒子との混合物、酸化クロム粒子、及びリチウム、ナトリウム、マグネシウム、アルミニウム、マンガン、ストロンチウム、ジルコニウム、モリブデン、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、スズ、サマリウム、ユーロピウム、タングステン、又は白金の酸化物から形成される粒子、並びに上記の2つ又はそれ以上の混合物である。
【0032】
常磁性固相粒子は、コーティングされていてもコーティングされていなくてもよく;コーティングが存在する場合、コーティングは(限定としてではないが、例えば)、アルデヒドコーティング、ポリマーコーティング、コポリマーコーティングなどであり得る。
【0033】
抗フルオレセイン抗体は、当該分野で周知であり、広く市販されており、そして大いに研究されてきた。例えば(限定としてではないが)、抗フルオレセイン抗体のいくつかの商業的供給源としては、Abbexa Ltd(Houston、TX);Abcam(Cambridge、UK);Biorbyt Ltd(St.Louis、MO);Jackson Immuno Research Labs、Inc.(West Grove、PA);Lifespan Biosciences、Inc.(Seattle、WA);Novus Biologicals、LLC(Centennial、CO);RayBiotech Life(Peachtree Corners、GA);Roche Diagnostics(Basel、CH);Rockland Immunochemicals、Inc.(Pottstown、PA);Santa Cruz Biotechnology、Inc.(Dallas、TX);Sigma-Aldrich Corp.(St.Louis、MO);及びThermo Fisher Scientific(Waltham、MA)から入手可能なものが挙げられる。しかし、このリストは包括的ではなく、かつ本開示に従って利用することができる抗フルオレセイン抗体の多くのさらなる商業的供給源がある。従って、当業者は、本開示に従って利用することができる様々な抗フルオレセイン抗体を、明らかにかつ明確に同定し、そして選択することができ、従って、抗ヒトIg抗体又はその特徴のさらなる説明は必要ないとみなされる。
【0034】
さらに、抗体を常磁性固相粒子に結合する方法は、当該分野で広く知られており、かつ当該分野の通常の技術の十分範囲内である。従って、そのさらなる説明は必要ないとみなされる。
【0035】
抗DHEASモノクローナル抗体は当該分野で周知であり、広く市販されており、かつ大いに研究されてきた。例えば(限定としてではないが)、抗DHEASモノクローナル抗体のいくつかの商業的供給源としては、Antibodies Online、Inc.(Limerick、PA);Creative Diagnostics(Shirley、NY);Lifespan Biosciences、Inc.(Seattle、WA);及びMyBioSource、Inc.(San Diego、CA)から入手可能なものが挙げられる。しかし、このリストは包括的ではなく、かつ本開示に従って利用することができる抗DHEASモノクローナル抗体の多くのさらなる商業的供給源がある。従って、当業者は、本開示に従って利用することができる様々な抗DHEASモノクローナル抗体を、明らかにかつ明確に同定し、そして選択することができ、従って、抗ヒトIg抗体又はその特徴のさらなる説明は必要ないとみなされる。
【0036】
さらに、モノクローナル抗体をアクリジニウムエステルで標識する方法は、当該分野で広く知られており、かつ十分に当業者の技術範囲内である。従って、そのさらなる説明は必要ないとみなされる。
【0037】
別の非限定的な実施形態において、イムノアッセイキットは、本明細書において開示されるか又はその他の企図されるDHEAS-CMO-DMAE抱合体のいずれかを、単独で、又はフルオレセイン化(fluoresceinated)抗DHEASモノクローナル抗体で標識された常磁性固相粒子と組み合わせて含み得る。
【0038】
常磁性固相粒子及び抗DHEASモノクローナル抗体は、本明細書において開示されるか又はその他の企図されるいずれかのものであり得る。さらに、モノクローナル抗体をフルオレセインで標識する方法は、当該分野で周知であり、かつ十分に当業者の技術範囲内である。従って、そのさらなる説明は必要ないとみなされる。
【0039】
さらに、本開示のキットは、本開示に従って生物学的サンプル収集及び/又は診断適用を行うための1つ又はそれ以上の他の成分又は試薬をさらに含有し得る。例えば(限定としてではないが)、キットは、1つ又はそれ以上の生物学的サンプル収集デバイス、1つ又はそれ以上のアッセイ試薬、1つ又はそれ以上の較正試薬、1つ又はそれ以上の品質管理試薬、1つ又はそれ以上の洗浄試薬などを含み得る。これらのさらなる成分/試薬の性質は、(限定されないが)生物学的サンプルの種類及び診断アッセイフォーマットのような様々な因子に依存し、そしてその同定は十分当業者の技術範囲内である;従って、そのさらなる説明は必要ないとみなされる。
【0040】
また、キット中に存在する様々な成分/試薬は、成分/試薬の交差反応性及び安定性に依存して、それぞれ別々の容器/区画にあってもよく、又は様々な成分/試薬は1つ又はそれ以上の容器/区画で混合してもよい。キットはさらに、アッセイを実行するための他の別々に包装された試薬を含み得る。さらに、キットは、成分/試薬が適用されるマイクロ流体デバイスを含み得る。
【0041】
キット中に存在する様々な成分/試薬の相対的な量は、アッセイ方法の間に起こる必要がある反応を実質的に最適化する成分/試薬の濃度を提供するため、そしてさらにアッセイの感度を実質的に最適化するために、広く変動し得る。適切な状況下で、キット中の成分/試薬の1つ又はそれ以上は、凍結乾燥粉末のような乾燥粉末として提供され得、そしてキットは、乾燥された試薬の溶解のための賦形剤をさらに含んでいてもよい;このやり方では、本開示に従う方法又はアッセイを行うために適した濃度を有する試薬溶液を、これらの成分から得ることができる。ポジティブコントロール及び/又はネガティブコントロールは、キットに含まれ得る。キットは、キットの使い方を説明する一組の書面での指示をさらに含み得る。この性質のキットは、本明細書において記載されるかまたはその他の企図される方法のいずれかにおいて使用することができる。
【0042】
組成物/キット/方法の試薬は、ここで開示されそして特許請求される本発明の概念に従ってそれらが機能することを可能にする任意の形態で提供され得る。例えば、限定としてではないが、試薬は、単一のアリコートの凍結乾燥された試薬の形態で提供され得る。マイクロ流体デバイスにおいて乾燥された試薬の使用は、米国特許第9,244,085号(その内容全体が参照により本明細書に明示的に加入される)において詳細に記載される。
【0043】
本開示の特定の非限定的な実施形態は、生物学的サンプル中のDHEASの濃度を決定する方法に関する。該方法は:(a)(1)DHEASを含有すると疑われる生物学的サンプル;(2)本明細書において開示されるか又はその他の企図されるデヒドロエピアンドロステロンスルファート-フルオレセイン(DHEAS-FITC)抱合体のいずれか;(3)本明細書において開示されるかまたはその他の企図される抗フルオレセイン常磁性固相粒子のいずれか;及び(4)本明細書において開示されるかまたはその他の企図されるいずれかのアクリジニウムエステル標識抗DHEASモノクローナル抗体を、同時に又は部分的にもしくは全体的に連続して混合して、混合物を形成する工程;並びに(b)(a)において形成された混合物中で、(2)、(3)、及び(4)の互いに対する結合及び生物学的サンプル中に存在するDHEASに対する(4)の結合を可能にする工程を含む。該方法は、(c)該混合物において生成された蛍光シグナルを測定する工程;及び/又は(d)生物学的サンプルが存在しない場合に観察される蛍光シグナルと比較した場合に、観察される蛍光シグナルの減少量に基づいて、生物学的サンプル中に存在するDHEASの濃度を決定する工程をさらに含み得る。すなわち、該方法は、蛍光の量がサンプル中に存在するDHEASの量に反比例する競合フォーマットを利用する。
【0044】
特定の(しかし非限定的)実施形態において、上記方法の工程(d)において、生物学的サンプル中に存在するDHEASの濃度は、蛍光シグナルを較正曲線と比較することにより決定される。
【0045】
本開示の特定の非限定的な実施形態は、生物学的サンプル中のDHEASの濃度を決定する方法に関する。該方法は:(a)(1)DHEASを含有すると疑われる生物学的サンプル;(2)本明細書において開示されるかまたはその他の企図されるフルオレセイン化された抗DHEASモノクローナル抗体で標識された常磁性固相粒子のいずれか;及び(3)本明細書において開示されるかまたはその他の企図されるデヒドロエピアンドロステロンスルファート-カルボキシメトキシルアミノ-ジメチルアクリジニウムエステル(DHEAS-CMO-DMAE)抱合体のいずれかを、同時に又は部分的にもしくは全体的に連続して混合して、混合物を形成する工程;(b)(a)において形成された混合物において、(3)の(2)に対する結合又は生物学的サンプル中に存在するDHEASの(2)に対する結合を可能にする工程を含む。該方法は、(c)混合物において生成された蛍光シグナルを測定する工程;及び/又は(d)生物学的サンプルが存在しない場合に観察される蛍光シグナルと比較した場合に、観察される蛍光シグナルの減少量に基づいて、生物学的サンプル中に存在するDHEASの濃度を決定する工程をさらに含み得る。換言すると、該方法は、蛍光の量がサンプル中に存在するDHEASの量に反比例する競合フォーマットを利用する。
【0046】
特定の(しかし非限定的な)実施形態において、該方法の工程(d)において、生物学的サンプル中に存在するDHEASの濃度は、蛍光シグナルを較正曲線と比較することにより決定される。
【0047】
本開示の特定の非限定的な実施形態は、サンプル中のDHEASの濃度を決定するためのマイクロ流体デバイスに関する。マイクロ流体デバイスは、DHEASを含有すると疑われるサンプルを収容することができる区画、及び本明細書において記載されるかまたはその他の企図されるアッセイ試薬の組み合わせの1つ又はそれ以上を含む。限定としてではないが、例えば、マイクロ流体デバイスは、(i)DHEASを含有すると疑われるサンプルを収容することができる第1の区画と;以下:(ii)本明細書において開示されるかまたはその他の企図されるデヒドロエピアンドロステロンスルファート-フルオレセイン(DHEAS-FITC)抱合体のいずれか;(iii)本明細書において開示されるかまたはその他の企図される抗フルオレセイン常磁性固相粒子のいずれか;及び(iv)本明細書において開示されるかまたはその他の企図されるアクリジニウムエステル標識抗DHEASモノクローナル抗体のいずれかの1つ又はそれ以上とを含み得る。別の非限定的な例において、マイクロ流体デバイスは、(i)DHEAS含有すると疑われるサンプルを収容することができる第1の区画と;以下:(ii)フルオレセイン化抗DHEASモノクローナル抗体で標識された常磁性固相粒子;及び(iii)デヒドロエピアンドロステロンスルファート-カルボキシメトキシルアミノ-ジメチルアクリジニウムエステル(DHEAS-CMO-DMAE)抱合体の一方又は両方とを含み得る。
【0048】
試薬(ii)~(iv)のいずれかはデバイスが本開示に従って機能することを可能にするマイクロ流体デバイスの任意の部分に配置され得る。例えば(しかし限定としてではなく)、(ii)~(iv)の少なくとも1つは、第1の区画に配置され得る。あるいは(かつ/又はそれらに加えて)、マイクロ流体デバイスは、第1の区画と流体連通することが可能な第2の区画を少なくとも含み得、そして(ii)~(iv)の1つ又はそれ以上は第2の区画に配置され得る。さらに、マイクロ流体デバイスは、他の追加の区画を含んでいてもよく、そして試薬(ii)~(iv)は、所望の場合、3つの異なる区画間で分けられ得る。
【0049】
本開示のマイクロ流体デバイスは、サンプルがアプライされ得るサンプル適用チャンバーと、それらと流体連通しており、本明細書の上に記載される試薬の1つ又はそれ以上を収容する1つ又はそれ以上の区画とも流体連通している入口チャネルとを含み得る。デバイスは、そのデバイスが本開示に従って機能する事ができる限り、任意の数の区画、区画の任意の配置、及びそれらの間の成分の任意の分布を備え得る。
【0050】
マイクロ流体デバイスの区画はいずれも、それらの中にアプライされた試薬を実質的に気密性の環境にその使用まで維持するために密閉され得る;例えば、凍結乾燥された試薬を収容する区画は、試薬の任意の意図されない再構成を防止するために密閉され得る。入口チャネル及び区画、さらに2つの区画は、互いに「流体連通することが可能である」と記載され得る;この句は、区画がなお密閉され得るが、区画に又は区画の間に形成された封に穴を開けると2つの区画はその間で流体流動を有することが可能であるということを示す。
【0051】
本開示のマイクロ流体デバイスは、当該分野で公知であるか又はその他の本明細書において企図される任意の他の所望の特徴を備え得る。例えば、限定としてではないが、マイクロ流体デバイスは、読み取りチャンバーをさらに含み得る;読み取りチャンバーは、常磁性固相粒子を収容する区画であり得、又は読み取りチャンバーは、上記区画と流体連通し得る。マイクロ流体デバイスは、限定されないが、洗浄液、希釈溶液、賦形剤、干渉溶液、ポジティブコントロール、ネガティブコントロール、品質管理などのような他の溶液を収容する1つ又はそれ以上の区画をさらに含み得る。例えば、マイクロ流体デバイスは、洗浄液を収容する1つ又はそれ以上の区画を含み得、そしてこれらの区画は、デバイスの任意の他の区画と流体連通することが可能であり得る。別の例において、マイクロ流体デバイスは、1つ又はそれ以上の乾燥試薬の溶解のための少なくとも1つの賦形剤を収容する1つ又はそれ以上の区画をさらに含み得、そして区画はデバイスの任意の他の区画と流体連通することが可能であり得る。さらに、マイクロ流体デバイスは、希釈溶液を収容する1つ又はそれ以上の区画をさらに含み得、そして区画はデバイスの任意の他の区画と流体連通することが可能であり得る。
【0052】
さらに、キット/マイクロ流体デバイス又は本明細書において企図されるのその他のもののいずれかは、単一のキット/デバイスにおいて多重化された多重アッセイを含み得る。
【実施例】
【0053】
実施例が本明細書以下に提供される。しかし、本開示は、その適用において、本明細書以後に開示される特定の実験、結果、及び検査手順に限定されないと理解されるべきである。むしろ、実施例は、単に様々な実施形態の1つとして提供され、かつ包括的ではなく例示的であると意図される。
【0054】
DHEAS(
図1)は副腎ステロイドであり、そしてDHEASの異常なレベルは、上の背景の項で概説されるように、多くの様々な障害及び状態と関連があることが当該分野で知られている。DHEASの測定のための方法は、ヒト患者におけるDHEASレベルの評価のための機序を提供するために望まれる。しかし、DHEASの検出のためのイムノアッセイは、アッセイ感度、周囲温度効果(ATE)、及びビオチン干渉に対する感受性に伴う問題に直面した。
【0055】
現在利用可能なDHEASアッセイの不利な点及び欠陥に応じて、一連の新規なDHEAS誘導体及び抱合体が、アクリジニウムエステル(AE)技術に基づくイムノアッセイプラットフォームにおける使用のために設計され、そして合成された(Natrajanら(2010年);Natrajanら(2011年);及びNatrajanら(2012年))。これらの新規なDHEAS誘導体及び抱合体は、デヒドロエピアンドロステロンスルファート-フルオレセイン(DHEAS-FITC)及びデヒドロエピアンドロステロンスルファート-アクリジニウムエステル(DHEAS-AE)抱合体を含んでいた。これらのDHEAS-FITC及びDHEAS-AE抱合体は、Atellica/ADVIA Centaur免疫測定器(Siemens Healthcare Diagnostics Inc.、Tarrytown、NY)で競合アッセイフォーマットを使用して評価された。DHEAS-CMO-EDA-FITC(8)化合物(抗FITC標識常磁性固相粒子(抗FITC-PMP)と対になったDHEAS-カルボキシメトキシルアミノ-エチルジアミン-フルオレセイン)は、アッセイ要件と比べて優れたアッセイ性能を示し、そしてDHEAS IIイムノアッセイのための有力候補の試薬の1つとして選択されてきた。
【0056】
試薬設計:Atellica/ADVIA Centaur DHEAS試薬は、固相、補助試薬、及びライト試薬を含んでいた。現在の市販のアッセイは、ビオチン化マウスモノクローナル抗体(mAb、補助試薬)と対になったDHEAS-NSP-AE(ライト試薬)及びストレプトアビジン被覆固相を使用する。本開示のアッセイにおいて、ビオチン干渉を防ぐために、ストレプトアビジン被覆粒子の代わりに抗FITC-PMP粒子が固相に選択された。2つのアッセイフォーマットをこのイムノアッセイのために調査した(
図2~3)。フォーマット1(
図2)において、固相試薬は、フルオレセイン化DHEASで標識された磁気粒子を含有し、そしてライト試薬はmAb-AE抱合体を含有する。ライト試薬抗体は、固相上のDHEAS-FITCと結合する。内在性DHEASは、ライト試薬中のmAb-AEに対してDHEAS-FITC結合固相と競合し、較正曲線に対して測定された場合、RLUシグナル強度と内在性分析物濃度との間に反比例関係を生じる。
【0057】
アッセイフォーマット1(
図2)を支持するために、DHEAS-FITC及びmAb-AE試薬の両方を新しく開発し、そして評価する必要があった。AE標識モノクローナル抗体を、当該分野で公知であり特徴づけされている方法により製造した;しかし、DHEAS-FITC抱合体及びその合成方法は、本開示の前には知られておらず、従って、DHEAS IIイムノアッセイにおけるそれらの性能は本開示前には検討されていなかった。
【0058】
第2のDHEAS IIフォーマットも調べた ‐ このアッセイフォーマットはフォーマット2と呼ばれ、
図3に示される。フォーマット2において、固相試薬は、フルオレセイン化mAbで標識された磁気粒子を含有する。ライト試薬はDHEAS-AEトレーサーを含有する。フォーマット2は、フォーマット1と同じ競合的主要部を使用して動作する。患者サンプル由来の内因性DHEASを反応に加えることで、DHEAS-AEトレーサーの固相への結合を妨害し、シグナル生成の減少を生じる。フォーマット2において、ビオチン干渉を排除しながらアッセイ性能を改善する目的で、フルオレセイン化mAb被覆PMP固相と対になった様々なDHEAS-AEトレーサーの合成に設計開発の重点を置いた。
【0059】
フォーマット1(
図2)のために、初期アッセイ研究のための(
図4)DHEAS-CMO-EDA-フルオレセイン(5)を設計し、そしてDHEAS-CMOをEDA-フルオレセインと反応させることにより合成した(
図4)。早期のデータは、この化合物が有望な機能的データを生じたことを示し、現在利用可能な市販のアッセイと比較して周囲温度効果(ATE)を有意に減少させた。代替の親水性リンカー構造がアッセイ性能にさらなる利益を与えるかどうかを評価するためにDHEAS-CMO-PEG3-フルオレセイン(8)も製造した(
図5)。さらに、DHEASとBSA上のフルオレセイン部分との多重化学量論を提供し得るタンパク質リンカーとしてBSAを利用して、DHEAS-BSA-フルオレセイン抱合体を製造した(
図6)。これらの3つの試薬の詳細なアッセイ性能を以下で考察する。
【0060】
アッセイフォーマット2(
図3)のために、初期特徴づけ研究のためのDMAEアクリジニウムエステルへの結合のためにDHEAS-CMOを選択した。早期のデータは、この抱合体を使用して、DHEAS-CMO-EDA-DMAE(15)が有望な標準曲線形状を生じ、そして周囲温度バイアスを有意に減少させたことを実証した。この初期性能を考慮すると、異なるAE構造がいずれかのさらなるATE利益をアッセイに与えるかどうかを決定するために、同じ連結位置でのZ-NSP-DMAEとの抱合体も製造した。両方のDHEAS-AE(15、18)の性能を以下で考察する。両方のDHEAS-AEの合成をそれぞれ
図7~8におけるスキームで示す。
【0061】
DHEAS-FITC抱合体及びDHEAS-AE抱合体の両方の評価を、Siemens Healthcare Diagnostics Inc.、Tarrytown、NYでのイムノアッセイ分析機のADVIA Centaurファミリーを使用して行った。
【0062】
フルオレセイン化抱合体DHEAS-CMO-EDA-FITC、DHEAS-CMO-PEG3-FITC、及びDHEAS-BSA-FITC(それぞれ(5)、(8)、(13))の機能的性能(結合曲線形状、精度推定、及び周囲温度バイアス(ATE))を、DHEAS IIイムノアッセイフォーマット1で評価した。抱合体DHEAS-CMO-PEG3-FITC及びDHEAS-BSA-FITCは、現在利用可能な市販のアッセイと比較して最小の改善を示した(データは示していない)。DHEAS-CMO-EDA-FITC抱合体(5)は、現在利用可能な市販のアッセイと比較して同等の又はより良好な感度で改善された結合プロフィール(
図9)を示した。より重要なことには、表1~2に示されるように、抱合体(5)を用いるアッセイフォーマット1は、ATEを≦10%まで最小化し、市販のアッセイ(%ATE約29%)と比較してアッセイ性能を大きく改善した。
【0063】
2つのDHEAS-AE抱合体(15、18)を、プロトタイプADVIA Centaur DHEAS IIイムノアッセイを使用してアッセイフォーマット2でも評価した。2つのAE抱合体は、市販のアッセイと比較して有望なアッセイ性能を示した(
図10)。両方のAEについてのATE推定は、市販のアッセイより良好であった(表3)。
【0064】
予備的アッセイ性能全体に基づいて、抱合体(5)は試験した試薬の中で最も良いATE及びアッセイ感度を有する。
【0065】
【0066】
【0067】
【0068】
要約すれば、一連のDHEAS-FITC抱合体及びDHEAS-AE抱合体は、首尾よく設計され、合成され、そして、DHEAS IIイムノアッセイ(フォーマット1~2、それぞれ
図2~3)における使用について評価された。アッセイ性能全体に基づいて、DHEAS-CMO-EDA-フルオレセイン(5)(
図4)から誘導されたSP相試薬(フォーマット1)は、有望な低いアッセイ感度を有し、そして現在の市販のアッセイと比較してアッセイでの最も良好な周囲温度効果(ATE)を有する。フォーマット1は、ビオチン干渉の危険性を最小にする2H1-抗FITC PMP固相を使用する。DHEAS-CMO-EDA-フルオレセインは、予備アッセイの要件を満たす優れた候補として選択された(表2及び3)。この抱合体は、市販のATELLICA/ADVIA Centaur DHEAS IIイムノアッセイの開発に重要な成分である。
【0069】
従って、本開示に従って、本明細書の上で示された目的及び利点を完全に満足する、組成物、デバイス、及びキット、さらにはそれらを製造及び使用する方法が提供された。本開示は、本明細書の上に示される特定の図面、実験、結果、及び言語と合わせて記載されてきたが、多くの代替、改変、及び変形が、当業者に明らかであることは明白である。従って、本開示の精神及び広範な範囲内にある全てのこのような代替、改変、及び変形を包含することが意図される。
【0070】
参考文献
以下の参考文献は、本明細書に示されるものを補足する例示的な手順又は他の詳細を提供する程度まで、参照により具体的に本明細書に加入される。さらに、以下は情報開示陳述書であることを意図するのではなく;37CFR§1.97の規定に従う情報開示陳述書は別に提出されるだろう。
【0071】
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