(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-30
(54)【発明の名称】注入器用の駆動モジュール、およびそのような駆動モジュールを使用するシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
A61M 5/20 20060101AFI20240920BHJP
【FI】
A61M5/20 530
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024522264
(86)(22)【出願日】2022-10-13
(85)【翻訳文提出日】2024-06-10
(86)【国際出願番号】 US2022046614
(87)【国際公開番号】W WO2023064497
(87)【国際公開日】2023-04-20
(32)【優先日】2021-10-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518380643
【氏名又は名称】アルタヴィズ,リミティッド・ライアビリティ・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】ALTAVIZ,LLC
(74)【代理人】
【識別番号】110001302
【氏名又は名称】弁理士法人北青山インターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】マッコーリー,マシュー
(72)【発明者】
【氏名】オールド,ジャック,アール.
【テーマコード(参考)】
4C066
【Fターム(参考)】
4C066AA09
4C066BB01
4C066CC01
4C066DD08
(57)【要約】
対象者の体内に薬剤を送達するための注入デバイスは、駆動モジュールおよび注入器モジュールを含む。駆動モジュールは、第1のチャンバ内のキャニスタおよび穿刺機構と、第1のチャンバと連通する第2のチャンバ内のプランジャと、穿刺機構を動かしてその穿刺ピンにキャニスタの隔壁を貫通させ、キャニスタ内のガスを第1のチャンバを介して第2のチャンバ内に流入させるアクチュエータとを含む。プランジャは、ピストンを含む近位端と遠位端とを含み、第2のチャンバ内に入るガスがプランジャを初期位置から、注入器モジュールから1または複数の薬剤を送達するための伸長位置まで移動させるように構成され、ピストンは、キャニスタからのガスがピストンを通ってプランジャの周囲の第2のチャンバ内に入るのを可能にする1または複数の通路を含む。
【選択図】
図5A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象者の体内に1または複数の薬剤を送達するための注入デバイス用の駆動モジュールであって、
第1の端部および第2の端部と、チャンバとを含む細長い駆動ハウジングと、
前記チャンバ内への通路と連通する加圧ガス源と、
ピストンを含む近位端と遠位端とを含み、前記チャンバ内にスライド可能に配置されたプランジャであって、前記通路から前記チャンバ内に入るガスが前記プランジャを初期位置から伸長位置まで移動させるように構成され、前記伸長位置では、前記プランジャの移動に基づいて注入器モジュールから1または複数の薬剤を送達するために、前記プランジャの遠位端が前記駆動ハウジングの第2の端部から延出する、プランジャとを備え、
前記ピストンが、前記チャンバ内に入るキャニスタからのガスが前記ピストンを通って前記プランジャの周りのチャンバ内に入るのを可能にするように構成された1または複数の通路を含むことを特徴とする駆動モジュール。
【請求項2】
請求項1に記載の駆動モジュールにおいて、
前記プランジャが、第2と連通する近位端の開口部から延びるプランジャチャンバを備え、前記チャンバ内に入るキャニスタからの加圧ガスが前記プランジャチャンバを満たすことを特徴とする駆動モジュール。
【請求項3】
請求項1に記載の駆動モジュールにおいて、
前記加圧ガス源から前記通路を通って前記チャンバ内に至る経路を開くためのアクチュエータをさらに含むことを特徴とする駆動モジュール。
【請求項4】
請求項1~3の何れか一項に記載の駆動モジュールにおいて、
前記加圧ガス源が、
前記第1の端部に隣接して前記駆動ハウジング内に、穿刺ピンを含むピンホルダを有する穿刺機構と、
前記穿刺ピンに隣接して配置された貫通可能な隔壁を含む、加圧ガスを収容するキャニスタであって、前記ピンホルダが、前記穿刺ピンが前記隔壁から離間している非作動位置と、前記穿刺ピンが前記隔壁を貫通して、前記キャニスタ内のガスを前記通路を通って第2のチャンバ内に流入させる作動位置とに移動可能である、キャニスタと、
前記ピンホルダを非作動位置から作動位置に導くアクチュエータとを備えることを特徴とする駆動モジュール。
【請求項5】
請求項4に記載の駆動モジュールにおいて、
前記アクチュエータが、
前記ピンホルダを非作動位置に拘束するための、前記ピンホルダに隣接する前記駆動ハウジングの1または複数のキャッチと、
前記駆動ハウジングにスライド可能に配置され、前記1または複数のキャッチよりも遠位側に配置された近位端を含む作動スリーブであって、前記作動スリーブが近位方向に移動することにより、前記1または複数のキャッチの係合が解除され、その結果、前記ピンホルダが非作動位置から作動位置へ自動的に移動して、当該駆動モジュールを作動させる、作動スリーブとを備えることを特徴とする駆動モジュール。
【請求項6】
請求項4に記載の駆動モジュールにおいて、
前記ピンホルダが、前記駆動ハウジングの第1の端部と協働するネジ山を有する送りネジを含み、前記送りネジの回転により、前記送りネジが非作動位置から作動位置に移動するようになっていることを特徴とする駆動モジュール。
【請求項7】
請求項6に記載の駆動モジュールにおいて、
前記アクチュエータが、前記駆動ハウジングの第1の端部に取り付けられ、前記送りネジに結合された回転ハンドルを含み、このハンドルが、前記送りネジを非作動位置から作動位置に導くために前記駆動ハウジングに対して回転可能であることを特徴とする駆動モジュール。
【請求項8】
請求項4に記載の駆動モジュールにおいて、
前記アクチュエータが、前記駆動ハウジングに回動可能に結合されたハンドルと、前記ハンドルと前記ピンホルダとの間に結合されたリンクバーとを備え、ピボットを中心とする前記ハンドルの回転により、前記リンクバーが前記ピンホルダを非作動位置から作動位置に導くようになっていることを特徴とする駆動モジュール。
【請求項9】
請求項4に記載の駆動モジュールにおいて、
前記アクチュエータが、前記駆動ハウジングから延びて前記ピンホルダに結合された作動ボタンを備え、前記作動ボタンが、前記ピンホルダを非作動位置から作動位置に移動させるのに十分な距離だけ前記ピンホルダを遠位方向に導くように前進可能であることを特徴とする駆動モジュール。
【請求項10】
請求項4に記載の駆動モジュールにおいて、
前記キャニスタの隔壁が、前記駆動ハウジング内で近位方向に向けられ、前記穿刺機構が、前記キャニスタよりも近位側に配置され、前記穿刺ピンが前記隔壁に向かって遠位方向を向き、前記ピンホルダの遠位方向の移動により、前記穿刺ピンを遠位方向に移動させて前記隔壁を貫通させるようになっていることを特徴とする駆動モジュール。
【請求項11】
請求項4に記載の駆動モジュールにおいて、
前記キャニスタの隔壁が、前記駆動ハウジング内で遠位方向に向けられ、前記穿刺機構が、前記キャニスタよりも遠位側に配置され、前記穿刺ピンが前記隔壁に向かって近位方向を向き、前記ピンホルダの近位方向の移動により、前記穿刺ピンを近位方向に移動させて前記隔壁を貫通させるようになっていることを特徴とする駆動モジュール。
【請求項12】
患者の体内に1または複数の薬剤を送達するためのデバイスであって、
a)先行する請求項の何れか一項に記載の駆動モジュールと、
b)注入器モジュールとを備え、前記注入器モジュールが、
前記駆動ハウジングに結合され、1または複数の薬剤を含む薬剤チャンバを保持する注入器ハウジングと、
前記薬剤チャンバ内にスライド可能に配置され、前記プランジャの遠位端に結合された注入器ピストンと、
前記注入器モジュールから前記駆動ハウジングの反対側に延びる針であって、前記プランジャが後退位置から伸長位置に移動して前記ピストンを前記薬剤チャンバ内で前進させるときに、前記薬剤チャンバから1または複数の薬剤を送達するために前記薬剤チャンバと連通する針とを備えることを特徴とするデバイス。
【請求項13】
患者の体内に1または複数の薬剤を送達するためのデバイスであって、
駆動モジュールと注入器モジュールとを備え、
a)前記駆動モジュールが、
第1の端部および第2の端部を含む細長い駆動ハウジングであって、前記第1の端部に隣接する第1のチャンバが中間通路を介して前記第2の端部に隣接する第2のチャンバと連通する、細長い駆動ハウジングと、
前記第1の端部に隣接する前記第1のチャンバ内の穿刺機構であって、穿刺ピンを含む穿刺機構と、
前記穿刺ピンに隣接して配置された貫通可能な隔壁を含む、加圧ガスを収容するキャニスタと、
前記穿刺機構および前記キャニスタの一方を動かして、前記穿刺ピンにより前記隔壁を貫通させ、前記キャニスタ内のガスを、前記キャニスタの周りの前記第1のチャンバに通し、さらに前記中間通路に通して前記第2のチャンバ内に流入させるように構成されたアクチュエータと、
ピストンを含む近位端と遠位端とを含む、前記第2のチャンバ内にスライド可能に配置されたプランジャであって、通路から前記第2のチャンバ内に入るガスが前記プランジャを初期位置から伸長位置まで移動させるように構成され、前記伸長位置では、前記プランジャの移動に基づいて前記注入器モジュールから1または複数の薬剤を送達するために、前記プランジャの遠位端が前記駆動ハウジングの第2の端部から延出する、プランジャとを備え、
b)前記注入器モジュールが、
前記駆動ハウジングに結合され、1または複数の薬剤を含む薬剤チャンバを保持する注入器ハウジングと、
前記薬剤チャンバ内にスライド可能に配置され、前記プランジャの遠位端に結合されたピストンと、
前記注入器モジュールから前記駆動ハウジングの反対側に延びる針であって、前記プランジャが後退位置から伸長位置に移動して前記ピストンを前記薬剤チャンバ内で前進させるときに、前記薬剤チャンバから1または複数の薬剤を送達するために前記薬剤チャンバと連通する針とを備え、
前記ピストンが、前記第1のチャンバ内に入る前記キャニスタからのガスが前記ピストンを通って前記プランジャの周りのチャンバ内に入るのを可能にするように構成された1または複数の通路を含むことを特徴とするデバイス。
【請求項14】
請求項13に記載のデバイスにおいて、
前記プランジャが、第2と連通する近位端の開口部から延びるプランジャチャンバを備え、前記第2のチャンバ内に入る前記キャニスタからの加圧ガスが前記プランジャチャンバを満たすことを特徴とするデバイス。
請求項13に記載のデバイスにおいて、
前記注入器が、針ガードをさらに備え、前記針ガードが、前記針を覆う保護位置と、注入を行うために前記針が露出する後退位置とから移動可能であり、前記針ガードが、前記アクチュエータに結合されるとともに、前記駆動ハウジングに沿ってスライド可能であり、後退位置に導かれたときに前記針ガードが前記アクチュエータを作動させるようになっていることを特徴とするデバイス。
【請求項15】
請求項14に記載のデバイスにおいて、
前記針ガードが、保護位置に付勢されていることを特徴とするデバイス。
【請求項16】
請求項15に記載のデバイスにおいて、
前記駆動ハウジングにスライド可能に配置され、前記針ガードに結合された作動スリーブと、
前記作動スリーブと前記駆動ハウジングとの間に結合され、前記針ガードを保護位置に付勢するバネとをさらに備えることを特徴とするデバイス。
【請求項17】
請求項13に記載のデバイスにおいて、
前記穿刺機構が、前記第1の端部に隣接して前記第1のチャンバ内にスライド可能に配置され、前記穿刺ピンを担持するピンスリーブを備え、前記ピンスリーブが、前記穿刺ピンが前記隔壁から離間する非作動位置と、前記穿刺ピンが前記隔壁を貫通する作動位置とから移動可能であり、前記ピンスリーブが、作動位置に付勢され、前記アクチュエータによって非作動位置に拘束されることを特徴とするデバイス。
【請求項18】
請求項17に記載のデバイスにおいて、
前記アクチュエータが、前記ピンスリーブを非作動位置に拘束する前記駆動ハウジングの1または複数のキャッチを備え、前記作動スリーブが、前記1または複数のキャッチから離脱して、前記ピンスリーブが非作動位置から作動位置に自動的に移動することを可能にするように構成されていることを特徴とするデバイス。
【請求項19】
請求項14または15に記載のデバイスにおいて、
ロック機構が解除されるまで、前記針ガードの保護位置からの近位方向の移動を防止するためのロック機構をさらに含むことを特徴とするデバイス。
【請求項20】
請求項13~19の何れか一項に記載のデバイスにおいて、
前記注入器ハウジングが、前記薬剤チャンバ内の前記ピストンの観察を可能にする窓を備えることを特徴とするデバイス。
【請求項21】
請求項13~19の何れか一項に記載のデバイスにおいて、
前記穿刺機構が、前記第1の端部に隣接して前記第1のチャンバ内にスライド可能に配置され、前記穿刺ピンを担持するスリーブを備え、前記スリーブが、前記穿刺ピンが前記隔壁から離間する非作動位置と、前記穿刺ピンが前記隔壁を貫通する作動位置とから移動可能であり、前記スリーブが、作動位置に付勢され、前記アクチュエータによって非作動位置に拘束されることを特徴とするデバイス。
【請求項22】
請求項13~19の何れか一項に記載のデバイスにおいて、
前記注入器モジュールが、前記薬剤チャンバを規定するバレルを含む、前記注入器ハウジング内に取り付けられたシリンジをさらに含み、前記針が前記シリンジの遠位端から延び、前記ピストンが前記バレル内でスライド可能であることを特徴とするデバイス。
【請求項23】
請求項22に記載のデバイスにおいて、
前記シリンジおよび前記注入器ハウジングの一方または両方が、前記シリンジを前記注入器ハウジングの内部に固定するための1または複数のコネクタを備えることを特徴とするデバイス。
【請求項24】
請求項23に記載のデバイスにおいて、
前記注入器ハウジングが、前記駆動モジュールの遠位端に接続可能な近位端を備え、前記注入器ハウジングを前記駆動モジュールに接続する前に、前記シリンジを内部に導入して前記1または複数のコネクタに係合させるための開口部を規定することを特徴とするデバイス。
【請求項25】
請求項123に記載のデバイスにおいて、
前記プランジャの遠位端を前記ピストンに結合して、前記プランジャの移動に直接応答して前記ピストンを移動させるためのプランジャアダプタをさらに備えることを特徴とするデバイス。
【請求項26】
請求項23に記載のデバイスにおいて、
前記注入器ハウジングが、当該デバイスの作動中に前記シリンジを観察するための1または複数の窓を備えることを特徴とするデバイス。
【請求項27】
請求項13に記載のデバイスにおいて、
前記穿刺機構が、前記第1の端部に隣接して前記第1のチャンバ内にスライド可能に配置され、前記穿刺ピンを担持するピンホルダを備え、前記ピンホルダが、前記穿刺ピンが前記隔壁から離間する非作動位置と、前記穿刺ピンが前記隔壁を貫通する作動位置とから移動可能であり、前記アクチュエータが、前記ピンホルダに結合されて、前記ピンホルダを非作動位置から作動位置に移動させることを特徴とするデバイス。
【請求項28】
請求項27に記載のデバイスにおいて、
前記ピンホルダが、前記駆動ハウジングの第1の端部と協働するネジ山を有する送りネジを含み、前記送りネジの回転により、前記送りネジが非作動位置から作動位置に移動するようになっていることを特徴とするデバイス。
【請求項29】
請求項28に記載のデバイスにおいて、
前記駆動ハウジングの第1の端部に取り付けられ、前記送りネジに結合された回転ハンドルをさらに備え、このハンドルが、前記送りネジを非作動位置から作動位置に導くために前記駆動ハウジングに対して回転可能であることを特徴とするデバイス。
【請求項30】
請求項28に記載のデバイスにおいて、
前記アクチュエータが、前記駆動ハウジングに回動可能に結合されたハンドルと、前記ハンドルと前記ピンホルダとの間に結合されたリンクバーとを備え、ピボットを中心とする前記ハンドルの回転により、前記リンクバーが前記ピンホルダを非作動位置から作動位置に導くようになっていることを特徴とするデバイス。
【請求項31】
請求項27に記載のデバイスにおいて、
前記アクチュエータが、前記駆動ハウジングから延びて前記ピンホルダに結合された作動ボタンを備え、前記作動ボタンが、前記ピンホルダを非作動位置から作動位置に移動させるのに十分な距離だけ前記ピンホルダを遠位方向に導くように前進可能であることを特徴とするデバイス。
【請求項32】
請求項27に記載のデバイスにおいて、
前記キャニスタの隔壁が、前記第1のチャンバ内で近位方向に向けられ、前記穿刺機構が、前記キャニスタよりも近位側に配置され、前記穿刺ピンが前記隔壁に向かって遠位方向を向き、前記ピンホルダの遠位方向の移動により、前記穿刺ピンを遠位方向に移動させて前記隔壁を貫通させるようになっていることを特徴とするデバイス。
【請求項33】
請求項13に記載のデバイスにおいて、
前記キャニスタの隔壁が、前記第1のチャンバ内で遠位方向に向けられ、前記穿刺機構が、前記第1のチャンバ内で前記キャニスタよりも遠位側に配置され、前記穿刺ピンが前記隔壁に向かって近位方向を向けられていることを特徴とするデバイス。
【請求項34】
請求項33に記載のデバイスにおいて、
前記アクチュエータが、前記第1のチャンバ内で前記キャニスタを遠位方向に移動させて、前記穿刺ピンに前記隔壁を貫通させるように構成されていることを特徴とするデバイス。
【請求項35】
注入を実行する方法であって
請求項12~34の何れか一項に記載の注入デバイスを提供するステップと、
患者の皮膚に前記針を挿入するステップと、
アクチュエータを作動させて、加圧ガスを供給源から通路を介してチャンバ内に送達し、それにより前記プランジャを初期位置から伸長位置に移動させ、その結果として、前記薬剤チャンバ内のピストンを前進させて、前記針を介して患者の体内に1または複数の薬剤を送達するステップとを備えることを特徴とする方法。
【請求項36】
請求項35に記載の方法において、
前記プランジャが初期位置から移動する前に、加圧ガスが前記プランジャの周囲のチャンバを最初に満たし、それによって前記プランジャが伸長位置に向かって移動する際の力の低下を減少させることを特徴とする方法。
【請求項37】
対象者の体内に1または複数の薬剤を送達するための注入デバイス用の駆動モジュールであって、
第1の端部および第2の端部を含む細長い駆動ハウジングであって、前記第1の端部に隣接する第1のチャンバが中間通路を介して前記第2の端部に隣接する第2のチャンバと連通する、細長い駆動ハウジングと、
前記第1のチャンバ内に穿刺ピンを含む穿刺機構と、
前記穿刺ピンに隣接して配置された貫通可能な隔壁を含む、加圧ガスを収容するキャニスタであって、前記キャニスタおよび前記穿刺機構の一方または両方が、前記穿刺ピンが前記隔壁から離間している非作動位置と、前記穿刺ピンが前記隔壁を貫通して前記キャニスタ内のガスを前記第1のチャンバおよび前記中間通路を介して前記第2のチャンバ内に流入させる作動位置とから移動可能である、キャニスタと、
ピストンを含む近位端と遠位端とを含む、前記第2のチャンバ内にスライド可能に配置されたプランジャであって、前記第2のチャンバ内に入るガスが前記プランジャを初期位置から伸長位置まで移動させるように構成され、前記伸長位置では、前記プランジャの移動に基づいて注入器モジュールから1または複数の薬剤を送達するために、前記プランジャの遠位端が前記駆動ハウジングの第2の端部から延出する、プランジャとを備え、
前記ピストンが、前記第2のチャンバ内に入る前記キャニスタからのガスが前記ピストンを通って前記プランジャの周りの前記第2のチャンバ内に入るのを可能にするように構成された1または複数の通路を含むことを特徴とする駆動モジュール。
【請求項38】
請求項37に記載の駆動モジュールにおいて、
前記プランジャが、前記第2のチャンバと連通する近位端の開口部から延びるプランジャチャンバを備え、前記第2のチャンバ内に入る前記キャニスタからの加圧ガスが前記プランジャチャンバを満たすことを特徴とする駆動モジュール。
【請求項39】
請求項37に記載の駆動モジュールにおいて、
前記穿刺機構および前記キャニスタの一方または両方を非作動位置から作動位置に導くためのアクチュエータをさらに含むことを特徴とする駆動モジュール。
【請求項40】
患者の体内に1または複数の薬剤を送達するためのデバイスであって、
a)請求項37~39の何れか一項に記載の駆動モジュールと、
b)注入器モジュールとを備え、前記注入器モジュールが、
前記駆動ハウジングに結合され、1または複数の薬剤を含む薬剤チャンバを保持する注入器ハウジングと、
前記薬剤チャンバ内にスライド可能に配置され、前記プランジャの遠位端に結合された注入器ピストンと、
前記注入器モジュールから前記駆動ハウジングの反対側に延びる針であって、前記プランジャが後退位置から伸長位置に移動して前記ピストンを前記薬剤チャンバ内で前進させるときに、前記薬剤チャンバから1または複数の薬剤を送達するために前記薬剤チャンバと連通する針とを備えることを特徴とするデバイス。
【請求項41】
注入を実行する方法であって
請求項40に記載の注入デバイスを提供するステップと、
患者の皮膚に前記針を挿入するステップと、
アクチュエータを作動させて、前記駆動モジュール内の穿刺ピンに前記キャニスタの隔壁を貫通させて、前記キャニスタ内のガスを前記第1のチャンバを介して前記第2のチャンバ内に流入させ、それにより前記プランジャを初期位置から伸長位置に移動させ、その結果として、前記薬剤チャンバ内のピストンを前進させて、前記針を介して患者の体内に1または複数の薬剤を送達するステップとを備えることを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、概して、対象者の体内に薬剤を送達するためのデバイスおよび方法に関し、より詳細には、注入デバイスのための自動注入器および/またはガスを動力源とする駆動システム、並びに、そのようなデバイスの製造方法および使用方法に関する。
【0002】
関連出願データ
本出願は、2021年10月14日に出願された同時係属中の米国仮出願第63/255,884号の利益を主張するものであり、その開示全体が、引用により本明細書に明示的に援用されるものとする。
【背景技術】
【0003】
皮下、筋肉内、または他の方法で患者の体内に薬物または他の薬剤を送達することを含む用途が数多く存在する。例えば、患者の皮膚に当てて作動させた後、患者の体内に自動的に送達される予め設定された用量の薬剤を含む自動注入器を利用することができる。通常、そのような自動注入器は、バネ荷重シリンジであり、作動させることでバネが解放されて、それにより、針が皮膚を貫通し、シリンジ内の投与量を送達するのに十分な力が発生する。粘性のある流体の場合、流体の流れを生じさせるのに必要な力が、バネを動力源とするシステムが提供できる力よりも大きくなる可能性がある。バネが使用される場合、比較的大きな力を生成する必要があり、それには質量の大きいバネが必要となる。その結果、そのような自動注入器は、かなりの騒音を発し、ガラス破損につながるシリンジ内の圧力スパイクを生成し、振動し、かつ/または針を患者の皮膚に強く打ち込む可能性があり、それは、特に患者自身が注入を行う場合に、痛みを引き起こし、かつ/または使用者を驚かせる可能性がある。
【0004】
したがって、患者の体内に薬剤を送達するための改良されたデバイスおよび方法が有用であろう。
【発明の概要】
【0005】
本出願は、概して、対象者の体内に薬剤を送達するためのデバイスおよび方法に関し、より詳細には、注入デバイスのための自動注入器および/またはガスを動力源とする駆動システム、並びに、そのようなデバイスの製造方法および使用方法に関する。
【0006】
一実施例によれば、対象者の体内に1または複数の薬剤を送達するための注入デバイス用の駆動モジュールが提供され、この駆動モジュールが、第1の端部および第2の端部と、チャンバとを含む細長い駆動ハウジングと、チャンバ内への通路と連通する加圧ガス源と、ピストンを含む近位端と、遠位端とを含み、チャンバ内にスライド可能に配置されたプランジャであって、通路からチャンバ内に入るガスがプランジャを初期位置から伸長位置まで移動させるように構成され、伸長位置では、プランジャの移動に基づいて注入器モジュールから1または複数の薬剤を送達するために、プランジャの遠位端が駆動ハウジングの第2の端部から延出する、プランジャとを備え、ピストンが、チャンバ内に入るキャニスタからのガスがピストンを通ってプランジャの周りのチャンバ内に入るのを可能にするように構成された1または複数の通路を含む。任意選択的には、プランジャは、第2と連通する近位端の開口部から延びるプランジャチャンバを含み、チャンバ内に入るキャニスタからの加圧ガスがプランジャチャンバを満たすことができる。
【0007】
別の実施例によれば、1または複数の薬剤を患者の体内に送達するためのデバイスが提供され、このデバイスが、a)駆動モジュールを含み、この駆動モジュールが、第1の端部および第2の端部を含む細長い駆動ハウジングであって、第1の端部に隣接する第1のチャンバが中間通路を介して第2の端部に隣接する第2のチャンバと連通する、細長い駆動ハウジングと、第1の端部に隣接する第1のチャンバ内の穿刺機構であって、穿刺ピンを含む穿刺機構と、穿刺ピンに隣接して配置された貫通可能な隔壁を含む加圧ガスを収容するキャニスタと、穿刺機構およびキャニスタの一方を動かして、穿刺ピンにより隔壁を貫通させ、キャニスタ内のガスを、キャニスタの周りの第1のチャンバに通し、さらに中間通路に通して第2のチャンバ内に流入させるように構成されたアクチュエータと、ピストンを含む近位端と遠位端とを含む、第2のチャンバ内にスライド可能に配置されたプランジャであって、通路から第2のチャンバ内に入るガスがプランジャを初期位置から伸長位置まで移動させるように構成されたプランジャとを備え、伸長位置では、プランジャの移動に基づいて注入器モジュールから1または複数の薬剤を送達するために、プランジャの遠位端が駆動ハウジングの第2の端部から延出する。本デバイスは、注入器モジュールも含み、この注入器モジュールが、駆動ハウジングに結合され、1または複数の薬剤を含む薬剤チャンバを保持する注入器ハウジングと、薬剤チャンバ内にスライド可能に配置され、プランジャの遠位端に結合されたピストンと、注入器モジュールから駆動ハウジングの反対側に延びる針であって、プランジャが後退位置から伸長位置に移動してピストンを薬剤チャンバ内で前進させるときに、薬剤チャンバから1または複数の薬剤を送達するために薬剤チャンバと連通する針とを備え、ピストンが、第1のチャンバ内に入るキャニスタからのガスがピストンを通ってプランジャの周りのチャンバ内に入るのを可能にするように構成された1または複数の通路を含む。
【0008】
本明細書のデバイスは、注入を実行するために使用することができ、例えば、患者の皮膚に針を挿入するステップと、アクチュエータを作動させて、加圧ガスを供給源から通路を介してチャンバ内に送達し、それによりプランジャを初期位置から伸長位置に移動させ、その結果として、薬剤チャンバ内のピストンを前進させて、針を介して患者の体内に1または複数の薬剤を送達するステップとを備える方法を実行するために使用することができる。
【0009】
本発明の他の態様および特徴は、添付の図面と併せて、以下の説明を検討することにより明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
本発明は、添付図面と併せて、以下の詳細な説明を読むことにより、最もよく理解される。一般的な慣例によれば、図面の様々な特徴および設計要素は、一定の縮尺ではないことを強調しておく。逆に、様々な特徴および設計要素の寸法は、明確にするために任意に拡大または縮小されている。図面には以下の図が含まれる。
【
図1】
図1は、例示的な自動注入デバイスの側面図である。
【
図2】
図2Aおよび
図2Bは、平面A-Aに沿った
図1の自動注入デバイスの断面図であり、ガスを動力源とする駆動モジュールおよび注入器モジュールの詳細を示している。
【
図3】
図3Aおよび
図3Bは、
図1~
図2Bのデバイスに組み込むことができるガスを動力源とする駆動モジュールの一例の断面図であり、作動前後の駆動モジュールをそれぞれ示している。
【
図4】
図4Aおよび
図4Bは、
図3Aおよび
図3Bに示す駆動モジュールと同様であるが、キャニスタおよびピン機構の向きが逆である、ガスを動力源とする注入器用の駆動装置の代替例の側断面図である。
【
図5】
図5Aおよび
図5Bは、駆動装置のプランジャの前進中の力の低下を最小限に抑えるシリンジ駆動装置の側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
実施例を説明する前に、本発明は、記載の特定の実施例に限定されるものではなく、当然のことながら、変更し得ることを理解されたい。また、本発明の範囲は添付の特許請求の範囲によってのみ限定されるものであるため、本明細書で使用する用語は、特定の実施例を説明することのみを目的としており、限定することを意図したものではないことを理解されたい。
【0012】
値の範囲が与えられる場合、文脈が明確に別段の指示をしない限り、下限値の単位の10分の1までの、その範囲の上限値と下限値との間の各介在値も具体的に開示されているものと理解されたい。任意の記載値または記載の範囲内の介在値と、任意の他の記載値または記載の範囲内の介在値との間の小さい各範囲は、本発明に包含される。それら小さい範囲の上限値および下限値は、それぞれ独立に範囲に含まれることも除外されることもあり、その両方または一方が小さい範囲に含まれる場合においても、またはどちらも小さい範囲に含まれない場合においても、各範囲は、記載の範囲内の特に除外された限界値を条件として、本発明に包含される。記載の範囲が限界値の一方または両方を含む場合、それらの含まれる限界値の一方または両方を除外した範囲もまた本発明に含まれるものとする。
【0013】
別段の定義がない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野における当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書に記載されたものと同様または同等の任意の方法および材料を、本発明の実施または試験に使用することができるが、いくつかの可能性のある例示的な方法および材料をここで説明する。
【0014】
本明細書および添付の特許請求の範囲において、単数形「a」、「an」および「the」は、文脈上明らかに別段の指示がない限り、複数の指示対象を含むことに留意されたい。このため、例えば、「化合物」に対する言及は、複数のそのような化合物を含み、「ポリマー」に対する言及は、当業者に公知の1または複数のポリマーおよびその均等物に対する言及を含む。
【0015】
本明細書では、特定の範囲が、数値の前に「約」という用語が付されて示される。「約」という用語は、本明細書において、その用語の後の正確な数値と、その用語の後の数値に近い数値または近似値に対する文字通りの裏付けを提供するために使用される。ある数値が具体的に言及された数値に近いかまたは近似しているか否かを判断する際に、その近いまたは近似している未言及の数値は、それが提示される文脈において、具体的に言及された数値と実質的に同等のものを提供する数値であり得る。
【0016】
図面に戻ると、
図1~
図3Bは、ガスを動力源とする駆動カートリッジまたはモジュール10と、駆動モジュール10に結合された注入器カートリッジまたはモジュール60とを含む注入デバイス8の一例を示しており、本明細書に記載の例のいずれかと同様の構成要素を含むことができ、かつ/または同様に機能することができる。全体として、デバイス8は、本明細書の他の箇所に記載されるように、作動時に、注入器モジュール60内に含まれる1または複数の薬剤を自動的に送達する力または動力を提供する駆動モジュール10を有する自動注入器であり、これは、例えば、米国特許第11,071,824号(その開示全体は、引用により本明細書に明示的に援用されるものとする)に開示される注入器と同様のものである。本明細書において「薬剤」は、例えば、液体または気体の形態の、溶液または懸濁液中の、および粘性流体などの、1または複数の治療用および/または診断用の化合物または材料を含み得る。
【0017】
図3Aおよび
図3Bは、1または複数の薬剤を対象者の体内に送達するために使用される自動注入器8(または他の注入デバイス)に組み込むことができる駆動モジュール10の一例を示している。
図4Aおよび
図4Bは、キャニスタ40およびピン機構30が逆になっているが、それ以外は同様に動作する駆動モジュール10を示している。一例では、駆動モジュール10が、薬剤を含むシリンジモジュールまたは他の注入デバイスに統合または結合され得る。
【0018】
全体として、駆動モジュール10は、穿刺ピン34を含む穿刺機構30、ガスキャニスタまたは他の加圧ガス源40、およびプランジャ50を収容する細長い駆動ハウジング12を含む。ハウジング12は、長手方向軸18に沿って整列された、密閉された第1の端部または近位端14と、開放された第2の端部または遠位端16とを含む。ハウジング12は、例えば、鋼、アルミニウムなどの金属、プラスチック、および/または複合材料から、冷間引抜き、成形、注型、機械加工などのうちの1または複数により、単一の一体構成要素として形成することができる。代替的には、ハウジング12は、例えば、溶接、半田付け、融着、接着剤による接着、干渉嵌合などのうちの1または複数によって、実質的に恒久的に互いに取り付けられる複数の別個の構成要素から形成することもできる。
【0019】
ハウジング12は、キャニスタ40および穿刺機構30を受け入れるための第1のチャンバ22を規定する、第1の端部14に隣接する第1または近位部分20と、中間通路28を介して第1のチャンバ22と連通する第2のチャンバ26を規定する、第2の端部16に隣接する第2または遠位部分24とを含む。両ハウジング部分20、24は、例えば、実質的に均一な外径および/または内径を規定する、概して円筒形または他の適切な形状を有することができる。
【0020】
図示のように、穿刺機構30は、中間通路28に隣接して第1のチャンバ22内に設けられるようにしてもよく、キャニスタ40は、キャニスタ40の隔壁44が最初は穿刺ピン34から離間した状態で、穿刺機構30よりも近位側に配置されるようにしてもよい。代替的には、穿刺機構30が、第1の端部14にすぐ隣接して第1のチャンバ22内に設けられ、圧縮ガスを収容するキャニスタ40が、穿刺機構30に隣接して第1のチャンバ22内に、例えば同様に、穿刺ピン34が隔壁44から最初は離間した状態で配置されるようにしてもよい。
【0021】
全体として、特に
図3Aおよび
図3Bを参照すると、キャニスタ40は、本体42と、本体42に接合された隔壁46を含むキャップ44とを含み、それにより、キャビティ48内のガスを少なくとも部分的に液化するのに十分な圧力まで圧縮された二酸化炭素またはフルオロカーボンガスなどの液化ガスを含む流体で満たされた密閉されたキャビティ48を提供する。代替的には、アルゴン、窒素、ヘリウムアルゴン、またはそれらの他の組合せなどのガスを含む、ガス状のままである流体をキャビティ48内に貯蔵することもできる。本明細書の他の箇所に記載されているように、キャビティ48内に収容された流体は、注入デバイス8を駆動して、例えば、注入器モジュール60から患者の体内に1または複数の薬剤を注入するために、所望の位置エネルギーまたは放出力を提供するために使用され得る。一例では、本体42およびキャップ44を、ステンレス鋼または他の所望のもしくは適切な金属、プラスチックまたは複合材料から、例えば、絞り加工、プレス加工、機械加工、注型、成形などのうちの1または複数によって形成することができる。例えば、本体42は、1または複数のダイおよびパンチ(図示せず)を使用して、シートメタル、例えば、タイプ305ステンレス鋼の丸いシートメタルブランクから深絞り加工され、主バレル領域42a、密閉された基部または第1の端部42b、テーパ状の肩領域42c、およびキャップ44がその中に取り付けられる開口部または通路を規定する開放されたネック領域または第2の端部42dを形成することができる。使用可能なキャニスタおよびその製造方法に関する追加の情報は、米国公開第2017/0258583号に記載されており、その開示全体は、引用により本明細書に明示的に援用されるものとする。
【0022】
図3Aおよび
図3Bに示す例では、穿刺機構30がピンスリーブ32を含み、このピンスリーブが、第1の端部14に隣接する第1のチャンバ22の周りに、すなわち、キャニスタ40の第2の端部42dおよびキャップ44と近位壁14aとの間にスライド可能に配置され、かつ/または第1のチャンバ22を囲む近位および遠位のOリングによって密封されている。ピンスリーブ32は、穿刺ピン34を担持し、本明細書の他の箇所に記載されているように、第1のチャンバ22内で、例えば、穿刺ピン34が隔壁46から離間している非作動位置(
図3A)と、穿刺ピン34が隔壁46を貫通してキャニスタ40のキャビティ48からガスを放出する作動位置(
図3B)との間で軸方向に移動可能である。
【0023】
ピンスリーブ32は、作動位置に付勢され、例えば、ピンスリーブ32を非作動位置に拘束する駆動ハウジング12の1または複数のキャッチ36によって、非作動位置に拘束されるものであってもよい。例えば、圧縮バネ38がピンスリーブ32の周囲に配置され、かつ/またはハウジング12とピンスリーブ32との間に他の方法で結合され、それにより作動時にピンスリーブ32を非作動位置から作動位置に導くことができる。
【0024】
例えば、
図3Aおよび
図3Bに示すように、バネ38は、ピンスリーブ32の遠位フランジ32aと駆動ハウジング12の近位壁14aとの間に拘束されるようにしてもよい。一対のキャッチ36は、駆動ハウジング12に取り付けることができ、それらは、キャッチ36が遠位フランジ32aに接触してピンスリーブ32の非作動位置からの移動を阻止する外向き姿勢(
図3A)から、キャッチ36が遠位フランジ32aを解放してバネ38がピンスリーブ32を作動位置まで遠位方向に、例えば、穿刺ピン34がキャニスタ40の隔壁46を貫通するのに十分な距離だけ、導くことを可能にする内向き姿勢(図示せず)まで回動可能である。
【0025】
隔壁46が貫通されると、キャビティ48内のガスは、第1のチャンバ22内に放出され、その結果、例えば、ガスがキャニスタ40の周囲を遠位方向に移動し、中間通路28を通って第2のチャンバ26内に流入する。例えば、駆動ハウジング12およびキャニスタ本体42は、本明細書の他の箇所に記載されているように、ガスが第1のチャンバ22内でキャニスタ40の周囲を遠位方向に移動して中間通路28に入るのを可能にするのに十分なクリアランスを提供する、対応する直径を有することができる。
【0026】
任意選択的には、中間通路28は、圧力上昇時間を短縮するための制限器を提供するために、比較的小さな直径を有することができる。代替的には、制限器として機能することが望ましい場合、精密オリフィス(図示せず)を第1および第2チャンバ22、26の間に挿入することができる。例えば、オリフィスは、i)ガスの過渡的な流れを遅くし、プランジャ50に加えられる圧力の上昇を遅らせ、例えば、注入にソフトスタートを提供し、シリンジ内の注入される流体内の圧力衝撃波を低減/除去し、薬剤注入が緩やかに開始されるため、患者の痛みを軽減することが可能であり、かつ/またはii)ガスの定常状態の流れを遅くし、プランジャ50に加えられる他の圧力を低下させ、患者に注入される薬剤の流量に制限効果を与えることができる。
【0027】
図1~
図2Bに戻ると、全体として、注入器60は、注入器ハウジング62を含み、この注入器ハウジングが、駆動ハウジング12に結合され、1または複数の薬物または他の薬剤を収容する薬剤チャンバ72を含むシリンジ70をその中に収容する。例えば、注入器ハウジング62は、例えば、干渉嵌合、1または複数の協働コネクタ、接着剤による接着などのうちの1または複数を使用して、駆動ハウジング12に、例えば、駆動ハウジング12の少なくとも一部が固定され得る外側スリーブ66に、結合され得る第1の端部または近位端62aと、駆動ハウジング12とは反対側の第2の端部または遠位端62bとを含むことができる。一例では、注入器ハウジング62の近位端62aは、注入器ハウジング62の内部64と連通し、遠位端62bは、少なくとも部分的に密閉されている。
【0028】
全体として、シリンジ70は、バレル74と、薬剤チャンバ72を密閉するようにその中にスライド可能に配置されたピストンまたはストッパ76とを含む。針78は、バレル74の閉じた遠位端74aから延びることができる。一例では、シリンジ70が、例えばガラス、プラスチックなどから形成され、例えば患者の1回投与量に相当する予め設定された量の薬剤で充填されたプレフィルドシリンジであってもよい。薬剤チャンバ72は、1または複数の治療用および/または診断用の薬剤、例えば、送達にかなりの力および/または時間を必要とする、水よりも大きい粘度、例えば、約1~2000センチポアズ(1.0~2000cP)の粘度を有する粘性流体、例えば、巨大タンパク質および/または他の薬物を含むことができる。
【0029】
任意選択的には、注入器ハウジング62内の1または複数の戻り止め、隆起または他の特徴部(図示せず)と係合することができる1または複数のフランジまたは他の特徴部75を、バレル74の近位端74bに設けることができる。例えば、製造中または組立中に、シリンジ70(例えば、針78が遠位端62bを通って部分的に延び、かつシリンジ70のフランジ75が注入器ハウジング62の1または複数の特徴部によって捕捉されるまで、注入器ハウジング62の近位端62aを通って内部64に挿入されるシリンジ)を選択することができる。その後、注入器ハウジング62の近位端62aを駆動モジュール10の外側スリーブ66に結合して、構成要素を封入し、使用準備が整った注入器デバイス8を提供することができる。
【0030】
代替的には、注入器モジュール60は、薬剤チャンバ72を規定し、針78を担持する一体型バレル(図示せず)を含むことができる。例えば、注入器ハウジング62は、ピストン76をスライド可能に受け入れる実質的に密閉された薬剤チャンバ(図示せず)を規定し、薬剤チャンバ72内の薬剤を送達するために注入器ハウジング62に恒久的に取り付けられた針78を含むことができる。さらに別の代替例では、シリンジ70(または薬剤チャンバ一体型の注入器ハウジング62)が、針のない遠位ポート(図示せず)を含むことができ、その場合、注入の直前に、または必要に応じて、例えば、ルアーフィッティング、嵌合ネジおよび/または他の協働コネクタを使用して、別個の針(同様に図示せず)をポートに結合することができる。
【0031】
ピストン76は、プランジャ50の遠位端54に、例えば、注入器ハウジング62を外側スリーブ66に組み付ける祭に結合され、本明細書の他の箇所でさらに説明するように、例えば穿刺機構30の作動時に自動的に、その後のプランジャ50の前進により、ピストン76が薬剤チャンバ72内で前進して、1または複数の薬剤が針78を介して患者の体内に導かれるようになっている。任意選択的には、プランジャ50の遠位端54とピストン76との間にインターフェースを提供することができるプランジャアダプタ58を設けることができ、それにより例えば、それらの間にコネクタを提供し、かつ/またはピストン76がプランジャ50と連動して前進するように適切な間隔を確保することができる。
【0032】
プランジャ50は、第2のチャンバ26内にスライド可能に配置された、近位端52および遠位端54を含む細長いロッドまたは他の部材であってよく、このプランジャ50は、初期位置または後退位置(例えば、
図3Aに示される)から、遠位端54が駆動ハウジング12の第2の端部16から延出する最終位置または伸長位置(例えば、
図3Bに示される)まで移動可能となっている。第2のチャンバ26の壁にスライド可能に係合する、ピストンまたは他のシール53、例えば、1または複数のOリングが、プランジャ50の近位端52に設けられている。
【0033】
使用中、駆動モジュール10は、注入器モジュールまたは他の送達デバイスに結合され(またはそのようなデバイスと予め統合され)、送達デバイスの薬剤ハウジング(図示せず)内の1または複数の薬剤を送達するために使用され得る。例えば、注入器モジュールは、米国特許第11,071,824号に開示のデバイスと同様に、その近位端に注入ピストンを含み、遠位端に針を含み、予め設定された量の送達用の薬剤を含むシリンジを収容することができる。
【0034】
送達デバイスが所望の位置に配置されると、例えば、針を対象者の身体の標的位置に挿入すると、送達デバイスのアクチュエータが作動して、穿刺ピン34がキャニスタ40の隔壁44を貫通し、それによりキャニスタ40からの加圧ガスが第1のチャンバ22および中間通路28を通って第2のチャンバ26内に流入する。その結果生じる圧力がピストン53に遠位方向の力を加え、プランジャ50を初期位置(
図3A)から伸長位置(
図3B)まで前進させる。代替的には、遠位端が皮膚に当てられたときに、最初は針が患者の皮膚から離れていてもよく、米国特許第11,071,824号の注入器と同様に、作動により、針が前進して皮膚を穿刺し、薬剤を送達し、かつ/または送達後に針を後退させるようにしてもよい。
【0035】
図3Aおよび
図4Aから分かるように、隔壁44が最初に穿刺されたときに、ガスが満たさなければならない初期容積(キャニスタ40の周囲の第1のチャンバ22およびピストン53よりも近位側の第2のチャンバ26を含む)は比較的小さい。しかしながら、プランジャ50が前進すると、ガスが満たさなければならない第2のチャンバ26内の容積が大幅に増加する。キャニスタ40の初期圧力は固定されている(充填時に設定される)ため、放出されるガスが増加する容積を満たすにつれて、圧力が大幅に低下する。ガスがピストン53に加える遠位方向の力はこの圧力に比例するため、プランジャ50が遠位方向に移動するにつれて、プランジャ50に加えられる力も大幅に減少する。この結果として生じる力の低下により、プランジャ50が前進するにつれて速度が低下する可能性があり、それは、送達時間を遅くし、かつ/または薬剤の送達が不完全となり、特に、送達される薬剤が粘性である場合、力の低下を悪化させる可能性がある。
【0036】
図5Aおよび
図5Bを参照すると、駆動モジュール110の別の例が示されており、この駆動モジュールは、デバイス8のような注入デバイスに組み込むことができ、駆動モジュール10と比較して力の低下を大幅に低減することができる。駆動モジュール10と同様に、駆動モジュール110は、穿刺ピン34を含む穿刺機構30と、ガスキャニスタまたは他の加圧ガス源40と、プランジャ150とを収容する細長い駆動ハウジング112を含む。また、ハウジング112は、キャニスタ40および穿刺機構30を受け入れるための第1のチャンバ122を規定する、第1の端部114に隣接する第1または近位部分120と、中間通路128を介して第1のチャンバ122と連通する第2のチャンバ126を規定する、第2の端部116に隣接する第2または遠位部分124とを含み、それらはすべて、駆動モジュール10とほぼ同様に構成することができる。
【0037】
穿刺機構30およびキャニスタ40は、キャニスタ40の隔壁44が最初は穿刺ピン34から離間した状態で、中間通路128に隣接して第1のチャンバ122内に設けられ、例えば、隔壁は、図示のように遠位方向に向けられるか、または駆動モジュール10と同様に近位方向に向けられる(図示せず)。駆動モジュール10および米国特許第11,071,824号(引用により本明細書に援用される)に開示のデバイスと同様に、穿刺機構30および/またはキャニスタ40の一方または両方を動かして、穿刺ピン34に隔壁44を貫通させてガスを放出させるアクチュエータを設けることができる。
【0038】
プランジャ150は、第2のチャンバ126内にスライド可能に配置された、近位端152および遠位端154を含む細長いロッドまたは他の部材であってよく、このプランジャ150は、初期位置または後退位置(例えば、
図5Aに示される)から、遠位端154が駆動ハウジング112の第2の端部116から延出する最終位置または伸長位置(例えば、
図5Bに示される)まで移動可能となっている。
【0039】
しかしながら、駆動モジュール10とは異なり、プランジャ150は、近位端152にピストン153を含み、このピストンは、ピストン153の近位面と遠位面との間に延びる1または複数の通路153aを含む。例えば、ピストン153は、ピストン153の外周の周りに互いに間隔をあけて配置された複数の円形または他の密閉された通路153aを含むことができる。代替的には、1または複数の通路は、近位面と遠位面との間に延びるピストン153の外面に形成された溝(図示せず)であってもよい。ピストン153は、第2のチャンバ126の壁とスライド可能に係合して、例えば、プランジャ150が初期位置から伸長位置まで移動することができるようなサイズおよび/または形状とすることができるが、Oリングまたは他のシールを必要としない。例えば、ピストン153は、プランジャ150よりも大きな外径を有する円筒形ヘッドであってもよく、プランジャ150と一体成形または他の方法で形成されるか、または別個に製造されて、プランジャ150に恒久的に取り付けられるものであってもよい。
【0040】
図5Aから分かるように、1または複数の通路153aは、ピストン153よりも近位側の第2のチャンバ126の領域と、プランジャ150を取り囲む第2のチャンバ126の遠位側の領域との間を連通している。ハウジング112の第2の端部116は、プランジャ150とスライド可能に係合することができる1または複数のOリングまたは他のシール117を含むことができ、例えば、それによりプランジャ150の軸方向移動を実質的に妨げることなく流体密シールを提供することができる。
【0041】
任意選択的には、プランジャ150は、例えばプランジャ150の開いた近位端152から閉じた遠位端154まで延びる、プランジャチャンバ156も含むことができる。その結果、キャニスタ40の隔壁44が最初に貫通されると、キャニスタ40内のガスは、第1のチャンバ122から中間通路128を通って第2のチャンバ126内に、すなわち1または複数の通路153aを通ってプランジャ150の周囲の第2のチャンバ126に、さらに後述するようにプランジャチャンバ156内に自由に通過することができる。
【0042】
使用中、駆動モジュール110は、注入器モジュールまたは他の送達デバイスに結合され(またはそのようなデバイスと予め統合され)、送達デバイスの薬剤ハウジング(図示せず)内の1または複数の薬剤を送達するために使用され得る。例えば、駆動モジュールは、米国特許第11,071,824号に開示のデバイスと同様に、その近位端にピストンを、遠位端に針を含み、予め設定された量の送達用の薬剤を含むシリンジを収容する注入器モジュールに結合することができる。
【0043】
送達デバイスが所望のように配置されると、例えば、針を対象者の身体の標的位置に挿入した後(または自動注入器を皮膚に当てた後)、送達デバイスのアクチュエータを作動させて、穿刺ピン34によりキャニスタ40の隔壁44を貫通させ、それによってキャニスタ40からの加圧ガスを第1のチャンバ122および中間通路128を通って第2のチャンバ126内に通過させることができる。駆動モジュール10と同様に、結果として生じる圧力がプランジャ150に遠位方向の力を加え、それによりプランジャ150を初期位置(
図5A)から伸長位置(
図5B)に前進させる。
【0044】
しかしながら、
図5Aから分かるように、隔壁44が最初に穿刺されたとき、ガスが満たさなければならない初期容積(キャニスタ40の周囲の第1のチャンバ122、プランジャ150の周囲の第2のチャンバ126、および任意選択的にプランジャ通路156を含む)は、駆動モジュール10よりも実質的に大きくなる。これにより、初期圧力が低下する可能性があるが、プランジャ150が前進するにつれて、ガスが満たさなければならない容積の変化は最小限しか増加しない(例えば、プランジャ150が第2のチャンバ126内で占める容積が、ハウジング112の遠位端116の外に移される)。その結果、容積変化が最小限に抑えられるため、プランジャ150に作用する圧力によって加えられる力は、具体的に駆動モジュール10と比べると、実質的に一定のままであるか、僅かに減少するだけである。このため、プランジャ150に加えられる力の低下を最小限に抑えることができ、特に送達される薬剤が粘性である場合においても、送達デバイスからの薬剤の送達速度をより均一なものにすることができる。
【0045】
駆動モジュール110は、加圧ガスの供給源としてキャニスタおよび穿刺機構を含むが、駆動モジュール110は、作動により加圧ガスを第2のチャンバ126内に、すなわちプランジャ150のチャンバ156の周囲および/または内部に放出して、力の低下を最小限に抑えてプランジャ150を前進させることができる、他の加圧ガスの供給源を含むことができることが理解されよう。例えば、外部のキャニスタまたはガス源が、使用前に駆動モジュール110に接続され、ガスキャニスタが、キャニスタからガスを放出するために隔壁および穿刺ピン以外の構成を含むようにしてもよい。
【0046】
本発明は、様々な変更および代替的な形態が可能であるが、その具体的な例が図面に示され、本明細書で詳細に説明されている。しかしながら、本発明は、開示の具体的な形態または方法に限定されるものではなく、本発明は、添付の特許請求の範囲に含まれるすべての変更物、均等物および代替物を網羅するものであることを理解されたい。
【国際調査報告】