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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-30
(54)【発明の名称】腫瘍マーカー
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/574 20060101AFI20240920BHJP
   G01N 33/577 20060101ALI20240920BHJP
   G01N 33/53 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
G01N33/574 Z
G01N33/577 Z
G01N33/53 S
G01N33/53 T
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024522307
(86)(22)【出願日】2022-10-14
(85)【翻訳文提出日】2024-05-21
(86)【国際出願番号】 EP2022078614
(87)【国際公開番号】W WO2023062181
(87)【国際公開日】2023-04-20
(31)【優先権主張番号】21202753.6
(32)【優先日】2021-10-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515245343
【氏名又は名称】リ・ガリ・ベスローテン・フエンノートシャップ
【氏名又は名称原語表記】LI GALLI B.V.
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】デ・ラート,ウィルヘルムス・ニコラース・ジェラルドゥス・マリア
(57)【要約】
本発明は、ヒトの身体における循環腫瘍マーカーの存在を決定するための方法であって、膣において腫瘍マーカーを検出することを含み、腫瘍マーカーが身体の膣ではない部分に由来する方法に関する。好ましい実施形態では、腫瘍マーカーはアプタマーによって検出される。さらにより好ましくは、アプタマーは膣リング装置内に存在する。膣リング装置は、膣内診断またはそのための測定を実施するための診断装置を適切に備える。本方法は、例えば、腫瘍患者における循環腫瘍マーカーの連続モニタリングにおいて、または腫瘍患者の処置前および処置後のフォローアップにおいて使用することができる。本発明はさらに、本方法を実施するための膣診断リング装置に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒトの身体における循環腫瘍マーカーの存在を決定するための方法であって、膣において前記腫瘍マーカーを検出することを含み、前記腫瘍マーカーが身体の膣ではない部分に由来する方法。
【請求項2】
前記腫瘍マーカーがアプタマーによって検出される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記アプタマーが膣リング装置内に存在する、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記膣リング装置が、膣内診断またはそのための測定を実施するための診断装置を備えており、前記装置が、第1および第2の端部を有する第1の剛性部材と;第3および第4の端部を有する第2の剛性部材と;前記第1および第3の端部の間に連結された第1の可撓性部材と;前記第2および第4の端部の間に連結された可撓性部分と;をさらに備え、前記第1の可撓性部材および/または可撓性部分は、前記第2および第4の端部とを一緒にすることによって前記装置が絞られることを可能にするように構成され、それによって、前記装置が後膣円蓋またはその近傍で使用者の膣内に挿入されることを可能にするために、前記装置の形状を拡張した形状から潰れた形状に変形させ、前記拡張した形状は、実質的に楕円形または環状のリング形状に対応し;前記第1の可撓性部材および可撓性部分の少なくとも一方は、外力が加えられていないときに前記装置が前記拡張した形状をとるように予め付勢されるように、少なくとも部分的に弾性である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
膣における他の生化学的パラメータを決定することをさらに含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
腫瘍患者における循環腫瘍マーカーの連続モニタリングに使用するための、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
腫瘍患者の処置前および処置後のフォローアップに使用するための、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記アプタマーが、新たな検出の準備ができるように検出後にすすがれる、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
膣内診断またはそのための測定を実施するための診断センサーを備える膣診断リング装置であって、前記装置が、第1および第2の端部を有する第1の剛性部材と;第3および第4の端部を有する第2の剛性部材と;前記第1および第3の端部の間に連結された第1の可撓性部材と;前記第2および第4の端部の間に連結された可撓性部分と;をさらに備え、前記第1の可撓性部材および/または可撓性部分は、前記第2および第4の端部とを一緒にすることによって前記装置が絞られることを可能にするように構成され、それによって、前記装置が後膣円蓋またはその近傍で使用者の膣内に挿入されることを可能にするために、前記装置の形状を拡張した形状から潰れた形状に変形させ、前記拡張した形状は、実質的に楕円形または環状のリング形状に対応し;前記第1の可撓性部材および可撓性部分の少なくとも一方は、外力が加えられていないときに前記装置が前記拡張した形状をとるように予め付勢されるように、少なくとも部分的に弾性であり、前記診断装置が腫瘍マーカーを検出するように構成されていることを特徴とする、膣診断リング装置。
【請求項10】
腫瘍マーカー検出がアプタマー技術によって実施される、請求項9に記載の装置。
【請求項11】
前記診断センサーが電気化学アプタマーに基づくバイオセンサーである、請求項10に記載の装置。
【請求項12】
腫瘍マーカーレベルが上昇した場合に警告信号を生成する手段をさらに備える、請求項9~11のいずれか1項に記載の装置。
【請求項13】
前記アプタマーをすすぐための手段をさらに備える、請求項10または11のいずれか1項に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、腫瘍マーカーを検出するための方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
腫瘍マーカーは、癌細胞内に存在するかまたは癌細胞によって産生される任意のものである。腫瘍マーカーはまた、癌に応答する身体の他の細胞によって産生され得るが、特定の良性状態にも応答する。腫瘍マーカーは、攻撃性、それがどのような処置に応答し得るか、処置に応答しているかどうか、または癌が処置後に再び成長し始めるかどうかなどの癌に関する情報を提供する。
【0003】
腫瘍マーカーは、従来、正常細胞よりも癌細胞によって大量に作られるタンパク質または他の化合物の形態で使用されていた。それらは、主に患者の血清中でアッセイされたが、患者の尿、便、腫瘍または他の組織もしくは体液中でもアッセイされた。
【0004】
しかしながら、ますます、腫瘍自体および腫瘍断片に見られる、体液中に放出されるゲノムマーカーが診断に使用されている。
【0005】
多くの異なるゲノム腫瘍マーカーが臨床で使用されており、合計で100を超え、急速に成長している。循環腫瘍マーカーは、例えば、以下のために使用される:
1)癌の種類および病期を決定する
2)予後を推定する
3)残っている疾患を検出する
4)再発性疾患を検出する
5)処置の有効性を評価する
6)処置が機能を停止したかどうかを監視する。
【0006】
腫瘍マーカーはまた、治療中または治療後に定期的に測定され得る。マーカーのレベルが経時的にどのように変化しているかを示すこのような連続的な測定は、通常、単一の測定よりも意味がある。例えば、循環腫瘍マーカーのレベルの連続的な低下は、腫瘍が処置に応答していることを示し得、安定した低レベルは、腫瘍が寛解しており、成長していないことを示し得、上昇するレベルまたは変化しないレベルは、腫瘍が応答または成長していないことを示し得る。
【0007】
腫瘍専門医は、治療前、治療中、および治療後の長時間にわたって、患者において腫瘍マーカーを用いて日常的なフォローアップを行う。明らかに、新しい検査および結果を待つ時間は、患者の高い不安につながる。彼らはまた、サンプルが例えば6ヶ月ごとに採取される場合、安心感を与える陰性結果を有する最後のサンプルの後に、腫瘍が翌日から成長し始めて、監視プロセスの失敗において、この腫瘍マーカーのより高いレベルを明らかにもたらす可能性があることを認識している。より頻繁なサンプリングは、一般にコストがかかりすぎ、効率的でない可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、本発明の目的は、腫瘍マーカーを測定するための方法および装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的は、膣ではない身体の一部に由来する腫瘍マーカーが、膣、特に膣壁液において検出される方法によって達成される。この流体は膣壁に由来する。これは膣分泌物または膣洗浄液とは異なる。実際、膣壁液は、膣壁内の血管から出てくる流体である漏出液を含む。
【0010】
膣は、例えば子宮頸癌または子宮内膜癌のような膣に現れる婦人科癌の存在を除いて、腫瘍マーカーのサンプリングに日常的に使用されていない。
【0011】
いくつかの生化学的パラメータが膣の粘膜壁に存在することが以前に実証された。これらの発見には、プロゲステロン、エストラジオール、FSHおよびグルコースが含まれる。これらのパラメータは、欧州特許第3 359 09号に開示されているように膣用の装置を用いて測定される。欧州特許第3 359 099号に記載されている膣診断装置は、膣内診断またはそのための測定を実施するための診断装置を備える。装置は、第1および第2の端部を有する第1の剛性部材と;第3および第4の端部を有する第2の剛性部材と;第1および第3の端部の間に連結された第1の可撓性部材と;第2および第4の端部の間に連結された可撓性部分と;をさらに備え、第1の可撓性部材および/または可撓性部分は、第2および第4の端部とを一緒にすることによって装置が絞られることを可能にするように構成され、それによって、装置が後膣円蓋またはその近傍で使用者の膣内に挿入されることを可能にするために、装置の形状を拡張した形状から潰れた形状に変形させ、拡張した形状は、実質的に楕円形または環状のリング形状に対応し;第1の可撓性部材および可撓性部分の少なくとも一方は、外力が加えられていないときに装置が拡張した形状をとるように予め付勢されるように、少なくとも部分的に弾性である。
【0012】
本発明の特に好ましい実施形態では、腫瘍マーカーの診断検出は、欧州特許第3 359 099号に開示されている膣リングを使用することによって実施される。この装置は、経時的な継続的な診断、スマートフォンへのデータ転送、および特定の快適ゾーンから化合物のレベルが変化した場合に自動的に警告するアルゴリズムのプログラム可能な挿入を可能にする。リングは、癌の処置を既に受けている患者をモニタリングして、再発の可能性を早期に検出するのに特に有用である。リングは、前記腫瘍に対するマーカーの存在について膣壁液を定期的に試験することができる。
【0013】
したがって、本発明は、膣における腫瘍マーカーを測定するための、欧州特許第3 359 099号に開示されている膣リングの使用にも関する。この目的のために、装置には、膣液、すなわち膣粘膜の漏出液中に存在する腫瘍マーカーを測定することができるセンサーなどの診断手段が設けられる。
【0014】
一実施形態では、腫瘍マーカーはアプタマーによって検出される。アプタマーは、特定の標的分子、すなわち腫瘍マーカーに結合するオリゴヌクレオチドまたはペプチド分子である。
【0015】
一実施形態では、膣リングは、特定の腫瘍マーカーを測定することができる電気化学アプタマーに基づく(E-AB:electrochemical aptamer-based)バイオセンサーを含む。そのようなE-ABは、インビボでの特異的標的結合に応答して電気化学シグナルを生成する能力を有する。信号は、電極を通過するファラデー電流の変化によって測定される。この電流は、リングによって測定することができ、アプタマーに結合した腫瘍マーカーの量の指標を提供するシグナルに変換することができる。測定後、センサーを、次の測定の準備ができるようにすすいでもよい。このために、リングには、液体をすすぐためのリザーバが設けられてもよい。バイオセンサーの特異性は、その中で使用されるアプタマーに依存する。
【0016】
本発明は、以下の実施例においてさらに説明され、腫瘍マーカーが実際に膣において検出され得ることが示される。
【発明を実施するための形態】
【0017】
実施例
膣粘膜の漏出液中の腫瘍マーカーの存在を試験した。試験は、粘膜をスワップ(Salivette)で打ち込み、スワップを遠心分離し、試験した腫瘍マーカーに使用した従来のアッセイでサンプルを分析することによって、微量の漏出液を収集することによって行った。
【0018】
すべての場合において、これは、処置後であるが腫瘍成長の再発および血清中の陽性腫瘍マーカーレベルを有する乳癌患者の場合を除いて、健康な女性ボランティアにおいて行われた。この患者では、腫瘍マーカーCA15.3が膣漏出液において同定されている。患者の血清では、結果は200k(U)/Lであり、スワップの結果は46k(U)/Lであった。スワップ内で10μlの流体を得た後、これを21倍に希釈し、従来のアッセイで使用した。アッセイの検出限界は1.5k[U]/Lであった。その場合、サンプル中の腫瘍マーカーの量は、2.17×21=46k[U]/Lである。比較として、健康な女性をこの同じマーカーについて試験し、マーカーCA15.3を検出できないことが分かった。
【0019】
さらに、膣において様々な腫瘍マーカーを検出することが実際に可能であることを実証するために、健康な女性の漏出液においていくつかの他の腫瘍マーカーを決定した。結果は、マーカーCA125およびCEAが一般に膣壁液中で検出され得ることを示す。しかし、これらのマーカーの濃度が上昇している場合、これは腫瘍の存在の指標である(He S-M et al.,Med Sci Monit,2011;17(11):CR618-625)。
【0020】
CA125がマーカーとして使用される指標は、卵巣癌モニタリング肺癌、乳癌、大腸癌である。CEAの場合、そのような指標は、結腸直腸癌、膵臓癌、腸癌、肺癌、乳癌である。CA15.3は、乳癌マーカーである。
【0021】
同様の方法で行われた様々な試験の結果を以下の表に示す。
【0022】
【表1】
【国際調査報告】