(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-30
(54)【発明の名称】薬剤送達デバイスのための部分組立体
(51)【国際特許分類】
A61M 5/315 20060101AFI20240920BHJP
【FI】
A61M5/315 500
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024522355
(86)(22)【出願日】2022-09-30
(85)【翻訳文提出日】2024-06-11
(86)【国際出願番号】 EP2022077253
(87)【国際公開番号】W WO2023061769
(87)【国際公開日】2023-04-20
(32)【優先日】2021-10-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(32)【優先日】2022-02-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520011887
【氏名又は名称】エスエイチエル・メディカル・アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】オスカル・アレクサンダーソン
【テーマコード(参考)】
4C066
【Fターム(参考)】
4C066BB01
4C066CC01
4C066DD13
4C066EE14
4C066FF05
4C066HH22
(57)【要約】
送達部材(22)を介して薬剤容器(15)から薬剤を吐出するように構成された薬剤送達デバイス(1)のための部分組立体(11、11’)。部分組立体(11、11’)は、近位端(3a)および遠位端(3b、3’b)を有するハウジング(3、3’)と、ハウジング(3、3’)の近位端(3a)に向けて付勢され、ロック部材(30、31)を備える保持スリーブ(9、9’)と、起動されると、薬剤を吐出するように、薬剤容器(15)に作用するように動作可能に構成された、事前に張力が加えられたプランジャロッド(13)と、プランジャロッド(13)をその事前に張力が加えられた状態にロックするように構成されたアーム(17a、17b)を有し、起動されると、アームを動かしてプランジャロッド(13)を解放するように動作可能に構成された作動器(17)と、を備え、保持スリーブ(9、9’)は、保持スリーブ(9、9’)がロック部材(30、31)によって軸方向にロックされるロックアウト動作中に、近位に移動するように動作可能に構成される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
送達部材(22)を介して薬剤容器(15)から薬剤を吐出するように構成された薬剤送達デバイス(1)のための部分組立体(11、11’)であって、前記部分組立体(11、11’)は、
近位端(3a)および遠位端(3b、3’b)を有するハウジング(3、3’)と、
前記ハウジング(3、3’)の前記近位端(3a)に向けて付勢され、ロック部材(30、31)を備える保持スリーブ(9、9’)と、
起動されると、薬剤を吐出するように、前記薬剤容器(15)に作用するように動作可能に構成された、事前に張力が加えられたプランジャロッド(13)と、
前記プランジャロッド(13)をその事前に張力が加えられた状態にロックするように構成されたアーム(17a、17b)を有し、起動されると、前記アームを動かして前記プランジャロッド(13)を解放するように動作可能に構成された作動器(17)と、
を備え、
前記保持スリーブ(9、9’)は、前記作動器(17)の前記アーム(17a、17b)に当接して、前記作動器(17)の前記アーム(17a、17b)の動きを制限することにより、前記プランジャロッド(13)をその事前に張力が加えられた状態にロックするように構成された表面を備え、前記保持スリーブ(9、9’)は、薬剤送達動作中に、遠位に移動するように動作可能に構成されて、それにより、前記作動器(17)の前記アーム(17a、17b)を、前記保持スリーブ(9、9’)の端部(9a)を過ぎて解放させ、前記プランジャロッド(13)を前記解放させることができ、前記保持スリーブ(9、9’)は、前記保持スリーブ(9、9’)が前記ロック部材(30、31)によって軸方向にロックされるロックアウト動作中に、近位に移動するように動作可能に構成される、部分組立体(11、11’)。
【請求項2】
ロックアウト構造(42、50)をさらに備え、前記ロックアウト構造は、前記ロック部材(30、31)とロック係合するように相互作用して、前記保持スリーブ(9、9’)を軸方向にロックするように構成される、請求項1に記載の部分組立体(11、11’)。
【請求項3】
前記ロックアウト構造(42、50)は、前記作動器(17)に、または前記ハウジング(3)に含まれる、請求項2に記載の部分組立体(11、11’)。
【請求項4】
前記ロック部材(30)は、前記作動器(17)に面する前記保持スリーブ(9’)の部分(9’c)に配置される、請求項1から3のいずれか一項に記載の部分組立体(11’)。
【請求項5】
前記ロック部材(30)は、軸方向リブ(30)である、請求項4に記載の部分組立体(11’)。
【請求項6】
前記作動器(17)の前記アームは、前記プランジャロッド(13)をその事前に張力が加えられた状態にロックするように構成された第1のフック部分(41)と、前記第1のフック部分(41)の反対側に構成された第2のフック部分(42)と、を有する端部フック(40)を備え、前記第2のフック部分(42)は、前記ロックアウト構造(42)を形成し、および前記ロック部材(30)と相互作用して、前記保持スリーブ(9’)を軸方向にロックするように構成される、請求項3を引用する場合の請求項4または5に記載の部分組立体(11’)。
【請求項7】
前記ロック部材(31)は、前記ハウジング(3)に面する前記保持スリーブ(9)の部分(9c)に配置される、請求項1から3のいずれか一項に記載の部分組立体(11)。
【請求項8】
前記ハウジング(3)は、前記ロックアウト構造(50)を形成し、および前記ロック部材(31)を受け入れて前記保持スリーブ(9)を軸方向にロックするように構成される開口部(50)を備える、請求項3を引用する場合の請求項7に記載の部分組立体(11)。
【請求項9】
前記ロック部材(31)は、前記ハウジング(3)の前記開口部(50)の中にスナップ嵌めするように動作可能に構成される、請求項8に記載の部分組立体(11)。
【請求項10】
前記保持スリーブ(9、9’)は、遠位の弾性部材(20)により、前記ハウジング(3、3’)の前記近位端(3a)に向けて付勢され、前記遠位の弾性部材(20)は、前記ロックアウト動作において、前記ロック部材(30、31)を介して、前記作動器(17)またはハウジング(3)に対して前記保持スリーブ(9、9’)を押す、請求項1から9のいずれか一項に記載の部分組立体(11、11’)。
【請求項11】
前記部分組立体(11、11’)は、前記ハウジング(3、3’)の前記近位端(3a)に向けて、前記プランジャロッド(13)を付勢する駆動ばね(12)をさらに備える、請求項1から10のいずれか一項に記載の部分組立体(11、11’)。
【請求項12】
前記ハウジング(3、3’)に配置され、前記ハウジング(3、3’)の前記近位端(3a)から近位に延びる送達部材カバー(5)をさらに備え、前記送達部材カバー(5)は、薬剤送達動作中に、延長位置から、前記送達部材カバー(5)が、前記ハウジング(3、3’)にさらに受け入れられる後退位置へと、前記ハウジング(3)に対して直線的に移動するように構成される、請求項1から11のいずれか一項に記載の部分組立体(11、11’)。
【請求項13】
前記保持スリーブ(9、9’)は、前記送達部材カバー(5)に固定して取り付けられる。請求項12に記載の部分組立体(11、11’)。
【請求項14】
送達部材(22)を介して薬剤容器(15)から薬剤を吐出するための薬剤送達デバイス(1)であって、請求項1から13のいずれか一項に記載の部分組立体(11、11’)を備える、薬剤送達デバイス(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に、可撓性のある薬剤容器から薬剤を吐出するための薬剤送達デバイスに関する。詳細には、本開示は、薬剤送達デバイスのための部分組立体に関する。
【背景技術】
【0002】
いくつかの医療状態においては、薬剤送達デバイスから薬剤を高い信頼性で提供することが必要である。薬剤は、通常、薬剤送達デバイス内の薬剤容器に含まれ、その薬剤容器は、針またはノズルなど、何らかのタイプの送達部材により薬剤を吐出するように構成される。
【0003】
近年、様々なタイプの注射器(例えば、ペン注射器、自動注射器、オンボディ(on-body)デバイスなど)を含むいくつかの異なる薬剤送達デバイスが存在する。これらのデバイスの多くは、いくつかの医療状態の管理において、多くの改良点を可能にしているが、現在の技術において、なお様々な欠点が存在する。
【0004】
多くの薬剤送達デバイスは、互いに対して移動可能な構成要素を備える。構成要素間の相対的な動きの1つのタイプは、例えば、薬剤送達デバイスから、送達部材を露出させる、または薬剤の吐出を開始することなど、薬剤送達デバイスを起動させることができる。構成要素間の相対的な動きの別のタイプのものは、2つの構成要素を、例えば、軸方向もしくは半径方向に、1つの構成要素を別のものに固定することにより、またはロック要素を用いることにより、互いに対して固定することができる。相対的な動きを避けるために構成要素を相対的に固定することは、薬剤送達デバイスを使用した後に望ましいことが多い。すなわち、薬剤送達デバイスの最終状態において、構成要素間の相対的な動きは望ましいものではなく、このような相対的な動きは、薬剤送達デバイスの意図しない動作を生ずる可能性がある。このような意図しない動作は、例えば、構成要素の不満足な相対的な固定の結果であり得る。これらの問題を考慮して、本出願人は、現在の市場において、薬剤送達デバイスを向上させるのに役立つ様々な開発を行えるものと理解しており、それをさらに詳細に以下で述べるものとする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示の目的は、したがって、従来技術の問題を解決する、または少なくとも軽減する薬剤送達デバイスを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
したがって、本開示の第1の態様によれば、送達部材を介して薬剤容器から薬剤を吐出するように構成された薬剤送達デバイスのための部分組立体を提供するものであり、部分組立体は、近位端および遠位端を有するハウジングと、ハウジングの近位端に向けて付勢され、ロック部材を備える保持スリーブと、起動されると、薬剤を吐出するように、薬剤容器に作用するように動作可能に構成された、事前に張力が加えられたプランジャロッドと、プランジャロッドをその事前に張力が加えられた状態にロックするように構成されたアームを有し、起動されると、アームを動かしてプランジャロッドを解放するように動作可能に構成された作動器と、を備え、保持スリーブは、作動器のアームに当接して、作動器のアームの動きを制限することにより、プランジャロッドをその事前に張力が加えられた状態にロックするように構成された表面を備え、保持スリーブは、薬剤送達動作中に遠位に移動するように動作可能に構成されて、それにより、作動器のアームを、保持スリーブの端部を過ぎて解放させ、プランジャロッドを前記解放させることができ、保持スリーブは、保持スリーブが、ロック部材によって軸方向にロックされるロックアウト動作中に、近位に移動するように動作可能に構成される。
【0007】
それにより、取得可能な効果は、保持スリーブの向上したロックアウトである。すなわち、使用後に、保持スリーブは、軸方向にそれがロックされる最終状態に構成される。したがって、保持スリーブは、ロックアウト動作の後に軸方向に移動することはできない。保持スリーブが軸方向にロックされるので、それは、保持スリーブの軸方向の動きに直接リンクされた他の構成要素の動きを妨げる。
【0008】
本開示において、「遠位方向」という用語が使用されるとき、これは、薬剤送達デバイスの使用中に、用量送達部位から離れた方向を指す。「遠位部分/端」という用語が使用されるとき、これは、送達デバイスの部分/端を、またはその構成要素の部分/端を指し、それは、薬剤送達デバイスの使用下で、用量送達部位から最も遠くに位置する。それに対応して、「近位方向」という用語が使用されるとき、これは、薬剤送達デバイスの使用中に、用量送達部位に向けた方向を指す。「近位部分/端」という用語が使用されるとき、これは、送達デバイスの部分/端を、またはその部材の部分/端を指し、それは、薬剤送達デバイスの使用下で、用量送達部位の最も近くに位置する。
【0009】
さらに、用語「長手方向の」、「長手方向に」、「軸方向に」、または「軸方向の」は、近位端から遠位端へと延びる方向を、通常、デバイスおよび/または構成要素の最も長く延びる方向にデバイスまたはその構成要素に沿った方向を指す。
【0010】
同様に、用語「横方向」、「横方向の」、および「横方向に」は、長手方向に対して概して直角な方向を指す。
【0011】
さらに、用語「円周」、「円周方向の」、「円周方向に」は、通常、デバイスおよび/または構成要素の最も長く延びる方向に延びる中心軸である、軸に対する円周または円周方向を指す。同様に、「半径の」または「半径方向に」は、軸に対して半径方向に延びる方向を、また「回転」、「回転的な」、および「回転的に」は、軸に対する回転を指す。
【0012】
一実施形態によれば、部分組立体は、ロックアウト構造をさらに備え、ロックアウト構造は、ロック部材とのロック係合により相互作用して、保持スリーブを軸方向にロックするように構成される。それにより、保持スリーブのロック部材は、ロックアウト構造とロック係合して、保持スリーブを軸方向にロックすることができる。好ましくは、ロックアウト構造は、保持スリーブとは異なる部分組立体の構成要素または構造に配置される。
【0013】
一実施形態によれば、ロックアウト構造は、作動器またはハウジングに含まれる。保持スリーブは、通常、ハウジングと作動器の間に配置される、したがって、保持スリーブは、ハウジングの半径方向内側および作動器の半径方向外側に、または作動器のアームの外側に配置される。したがって、ロックアウト構造をハウジングおよび作動器の一方に配置することにより、役立つ場合、保持スリーブを軸方向にロックする。すなわち、作動器およびハウジングが、保持スリーブに隣接して配置されるので、ロック部材およびロックアウト構造は、互いに隣接する部分組立体の構成要素に構成されることになる。したがって、保持スリーブがハウジング内で近位方向に軸方向に移動する、すなわち、ハウジングおよび/または作動器に対して軸方向に移動すると、ロック部材は、ロックアウト構造に係合されて、保持スリーブを軸方向にロックする。
【0014】
一実施形態によれば、ロック部材は、作動器に面する保持スリーブの部分に配置される。したがって、好ましくは、ロックアウト構造は、保持スリーブに面する作動器の部分になど、作動器に含まれる。それにより、ロック部材は、ロックアウト構造と係合されて、保持スリーブを依存した状態で軸方向にロックすることができる。作動器に面する保持スリーブの部分は、部分組立体の中心軸に面する内側を向く部分と呼ぶことができ、保持スリーブに面する作動器の部分は、部分組立体の中心軸から離れた方に面する外側を向く部分と呼ぶことができる。
【0015】
一実施形態によれば、ロック部材は、軸方向のリブである。それにより、ロック機能を提供するために、簡単であるが有効な構造が提供される。軸方向のリブは、軸方向の延び、および半径方向の延びを有し、軸方向の延びは、半径方向の延びよりも大きい。例えば、軸方向のリブは、作動器に面する保持スリーブの部分に沿って軸方向に延び、作動器に向けて半径方向に延びる。
【0016】
一実施形態によれば、作動器のアームは、プランジャロッドをその事前に張力が加えられた状態にロックするように構成された第1のフック部分と、第1のフック部分の反対側に配置された第2のフック部分とを有する端部フックを備え、第2のフック部分は、ロックアウト構造を形成し、およびロック部材と相互作用して保持スリーブを軸方向にロックするように構成される。それにより、ロックアウト機能を提供するための高い信頼性の構造が提供される。さらに、ロック構造を作動器のアームに備えることにより、作動器のアームは、2つの目的に対して働く、すなわち、1つは、プランジャロッドを、その事前に張力が加えられた状態にロックすることであり、他方は、ロックアウト動作中に、保持スリーブのロック部材とロックするように係合して、保持スリーブを軸方向にロックすることである。
【0017】
一実施形態によれば、ロック部材は、ハウジングに面する保持スリーブの部分に配置される。したがって、好ましくは、ロックアウト構造は、保持スリーブに面するハウジングの部分など、ハウジングに備えられる。それにより、ロック部材は、ロックアウト構造に係合されて、保持スリーブを、高い信頼性で軸方向にロックすることができる。ハウジングに面する保持スリーブの部分は、部分組立体の中心軸から離れて面する外側に向いた部分と呼ぶことができ、また保持スリーブに面するハウジングの部分は、部分組立体の中心軸の方向に面する内側を向いた部分と呼ぶことができる。
【0018】
一実施形態によれば、ハウジングは、ロックアウト構造を形成する開口部を備え、ロック部材を受け入れて、保持スリーブを軸方向にロックするように構成される。それにより、ロックアウト機能を提供する高い信頼性の構造が提供される。ロック部材は、ここで、ハウジングに面する保持スリーブの部分から半径方向外側に延びるロック突出し部または弾力のある突片として構成されることが好ましい。さらに、ハウジング内にロック構造を備えることにより、ハウジングは、2つの目的で働き、一方は、部分組立体の構成要素を収容するために、他方は、ロックアウト動作中に、保持スリーブのロック部材とロックするように係合されて、保持スリーブを軸方向にロックすることである。
【0019】
一実施形態によれば、ロック部材は、ハウジングの開口部の中にスナップ嵌めするように動作可能に構成される。これにより、簡単であるが、さらに信頼性のあるロックアウト機能が提供される。例えば、前に述べたように、ロック部材は、ハウジングに面する保持スリーブの部分から半径方向外側に延びる突出し部または弾力のある突片として構成されることが好ましい。保持スリーブの軸方向の動きが近位方向に行われると、突出し部または弾力のある突片は、それが、ハウジングの開口部に遭遇するまで、ハウジングの内面に沿ってガイドされ、それにより、突出し部または弾力のある突片は、ハウジングの開口部の中にスナップ嵌めされる。これにより、保持スリーブは軸方向にロックされる。
【0020】
一実施形態によれば、保持スリーブは、遠位の弾性部材により、ハウジングの近位端に向けて付勢され、遠位の弾性部材は、ロックアウト動作において、ロック部材を介して、作動器またはハウジングに対して保持スリーブを押し付ける。したがって、近位方向の付勢力は、保持スリーブ、ロック部材、およびロックアウト構造を介して作動器またはハウジングに伝えられる。
【0021】
一実施形態によれば、部分組立体は、ハウジングの近位端に向けて、プランジャロッドを付勢する駆動ばねをさらに備える。これにより、プランジャロッドは、作動器および作動器アームにより、ハウジングに対して第1の軸方向位置に軸方向に固定することができ、またプランジャロッドがその第1の軸方向位置から解放されると、駆動ばねからの付勢力に起因して、第1の軸方向位置から解放されてハウジングの軸方向内側に移動することができる。
【0022】
一実施形態によれば、部分組立体は、ハウジングに配置され、ハウジングの近位端から近位に延びる送達部材カバーをさらに備え、送達部材カバーは、薬剤送達動作中に、延長位置から送達部材カバーがハウジングにさらに受け入れられる後退位置へと、ハウジングに対して直線的に移動するように構成される。このような薬剤送達動作の後に、送達部材カバーは、近位方向に軸方向に移動して、再度延長された位置になるように構成される。これにより、送達部材は、送達部材カバーの内側に保護される。
【0023】
一実施形態によれば、送達部材カバーの後退位置において、送達部材カバーの近位端は、延長位置における場合と比較して、ハウジングの近位端に近接して配置される。例えば、後退位置において、送達部材カバーの近位端は、第1の軸方向距離だけハウジングの近位端から離れており、その第1の軸方向距離は、延長位置における、送達部材カバーの近位端とハウジングの近位端の間の第2の軸方向距離よりも小さい。
【0024】
一実施形態によれば、保持スリーブは、送達部材カバーに固定して取り付けられる。これにより、送達部材カバーの軸方向のロックアウトが提供される。例えば、保持スリーブは、送達部材カバーに対して、軸方向に、および回転方向に固定され、したがって、送達部材カバーと共に軸方向に移動可能である。送達部材カバーは、薬剤送達動作の後に、その延長位置に軸方向にロックされて、送達部材カバーにおける送達部材を安全に保護することができる。すなわち、使用した後、保持スリーブは、送達部材カバーと共に軸方向にロックされる最終状態に配置される。したがって、保持スリーブおよび送達部材カバーは、ロックアウト動作の後に軸方向に移動できない。送達部材カバーは、軸方向にロックされるので、送達部材は、再度、露出されることが阻止される。
【0025】
本開示の第2の態様によれば、送達部材を介して薬剤を薬剤容器から吐出するための薬剤送達デバイスが提供され、薬剤送達デバイスは、本開示の第1の態様による部分組立体を備える。
【0026】
本発明の第2の態様の効果および特徴は、本発明の第1の態様に関して上記で述べられたものと大きく類似している。本発明の第1の態様に関して述べられた実施形態は、本発明の第2の態様と大きく互換性がある。
【0027】
概して、特許請求の範囲で使用されるすべての用語は、本明細書において、他のことが明示的に定義されない限り、その技術分野におけるその通常の意味に従って解釈される。「1つの/その(a/an/the)部材、装置、構成要素、手段など」に対するすべての参照は、明示的にその他の形で述べられない限り、部材、装置、構成要素、手段などの少なくとも1つの例を参照してオープンに解釈される。
【0028】
本発明の概念の特定の実施形態が、例として、添付図面を参照して次に述べられる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】薬剤送達デバイスの例の概略的な斜視図である。
【
図3A】部分組立体が、その事前の起動阻止状態にある、
図2の薬剤送達デバイスの部分組立体の少なくとも一部の詳細な横断面図である。
【
図3B】送達部材カバーがその延長位置にあり、その起動許可状態にある
図3Aの部分組立体を示す図である。
【
図3C】送達部材カバーがその後退位置に配置された状態における
図3Aの部分組立体を示す図である。
【
図4A】キャップを除去した後の初期状態における薬剤送達デバイスの断面図である。
【
図4B】薬剤送達動作の開始時において、起動状態にある薬剤送達デバイスの断面図である。
【
図4C】薬剤送達動作中における薬剤送達デバイスの断面図である。
【
図4D】薬剤送達動作の後の薬剤送達デバイスの断面図である。
【
図5A】
図2の薬剤送達デバイスの別の部分組立体の少なくとも一部の詳細な横断面図である。
【
図5B】
図5Aで示された断面図に対して90度の角度の平面における断面図である。
【
図5C】薬剤送達デバイスのさらに別の部分組立体の少なくとも一部の詳細な横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明の概念は次に、例示的な実施形態が示される添付図面を参照して以下でより完全に述べられる。しかし、本発明の概念は、多くの異なる形態で実施することができ、本明細書に記載の諸実施形態に限定されるものと解釈されるべきではなく、そうではなくて、これらの実施形態は、本開示が十分および完全なものとなるように、また本発明の概念の範囲を当業者に完全に伝えるように、例として提供される。同様の番号は、本記述の全体を通して同様の部材を指す。
【0031】
図1は、薬剤送達デバイス1のハウジング3に搭載される薬剤容器15から薬剤を吐出するように構成された薬剤送達デバイス1の例を示す。ハウジング3は、近位端3aおよび遠位端3b、ならびに薬剤容器15の視覚的な検査のために、近位端3aと遠位端3bの間に配置される窓3c、すなわち開口部を有する。
【0032】
薬剤送達デバイス1は、送達部材カバー5を備える。送達部材カバー5は、ハウジング3に配置され、ハウジング3の近位端3aから近位方向に延びる。薬剤送達デバイス1は、送達部材カバー5に取外し可能に配置されたキャップ2をさらに備える。
【0033】
送達部材カバー5は、
図1で示される延長位置から、送達部材カバー5がハウジング3の中にさらに受け入れられる後退位置へと、ハウジング3に対して、直線的に、または軸方向に移動するように構成される。通常、送達部材カバー5は、延長位置に向けて近位方向に付勢される。
【0034】
薬剤送達デバイス1は、送達部材カバー5の、後退位置に向けたハウジング3の中へのさらなる動きによって、薬剤を放出するようにトリガされる。
【0035】
図2は、薬剤送達デバイス1の分解図を示す。まず、薬剤送達デバイス1の全体的な構成が述べられ、次いで、様々な部分組立体10、11、11’の実施形態およびいくつかの態様がより詳細に述べられる。薬剤送達デバイス1の部分組立体は、薬剤送達デバイス1の特定の構成要素を組み合わせることによって画定され得る。
【0036】
薬剤送達デバイス1は、近位端4aから遠位端4bへ長手方向軸に沿って延びる薬剤容器キャリア4を備える。薬剤容器キャリア4は、好ましくは、例えば、スナップロック、または他の従来の係合手段によるなど、薬剤送達デバイス1のハウジング3に固定的に取り付けることができる。代替的に、薬剤容器キャリア4は、ハウジング3の一体部分を形成することができる。薬剤容器キャリア4およびハウジング3は、好ましくは、例えば、プラスチックなどの同じ材料から作ることができる。薬剤容器キャリア4は、薬剤送達デバイス1の内側に、薬剤容器15を収容し、支持するように構成される。薬剤容器キャリア4は、
図3Aから
図3Cを参照してさらに説明される起動ロック6をさらに備える。
【0037】
薬剤送達デバイス1は、
図1を参照して述べられた送達部材カバー5を備える。送達部材カバー5は、近位端5aおよび遠位端5bを備える。薬剤容器キャリア4の起動ロック6は、送達部材カバー5の近位端5aと遠位端5bの間に配置されることが好ましい。
【0038】
薬剤送達デバイス1は、
図1を参照して述べられるキャップ2を備える。キャップ2は、送達部材カバー5に対して取外し可能に配置される。
図2の実施形態において、キャップ2は、把持部分2bと、把持部分2bの遠位に長手方向に延びる突出し部2aとを備える。把持部分2bは、キャップ2を送達部材カバー5から取り外すために、ユーザが相互作用することのできる把持面を備える。
図2で、突出し部2aは、突き出たスリーブ2aである。突き出たスリーブ2aは、長手方向に遠位に延びる。
【0039】
薬剤送達デバイス1は、起動されたとき、近位方向に移動するように動作可能に構成されたプランジャロッド13を備える。したがって、
図2の実施形態では、プランジャロッド13は、ハウジング3の内側で軸方向に、および薬剤容器キャリア4の内側で移動するように構成される。薬剤送達動作中に、プランジャロッド13は、薬剤を吐出するために、第1の軸方向位置から薬剤容器15に向けて移動する。プランジャロッド13は、円筒形の本体を有することができる。
【0040】
薬剤送達デバイス1は、プランジャロッド13を近位方向に付勢するように構成された駆動ばね12を備える。
図2の実施形態では、プランジャロッド13は、送達部材カバー5が、薬剤送達動作の前の延長位置にあるとき、薬剤容器キャリア4およびハウジング3に対して軸方向に第1の軸方向位置に固定される。
【0041】
薬剤送達デバイス1は、プランジャロッド13を事前に張力が加えられた状態にロックするように構成されたアーム17aを有し、また起動したとき、プランジャロッド13を解放するようにアーム17aを動かすように動作可能に構成された作動器17を備える。プランジャロッド13を解放するために、送達部材カバー5が、その後退位置に軸方向に移動すると、送達部材カバー5の遠位端5bは、作動器17と係合してアームを移動させてプランジャロッド13を解放するように構成される。これは、
図4Aから
図4Dを参照してさらに説明される。
【0042】
薬剤送達デバイス1は、ハウジング3の内側で、送達部材カバー5と共に軸方向に移動するように構成された保持スリーブ9を備える。したがって、保持スリーブ9は、送達部材カバー5に対して、軸方向に、および回転方向に固定され得る。送達部材カバー5が、延長位置から後退位置に向けて移動したとき、送達部材カバー5の直線的な動きは、保持スリーブ9の直線的な動きに変換される。保持スリーブ9は、作動器17のアーム17aに当接して、プランジャロッド13をその事前に張力が加えられた状態にロックするように構成された表面を備え、保持スリーブ9は、送達部材カバー5が、その後退位置へと押し込まれると、遠位方向に移動するように動作可能に構成され、保持スリーブ9の端部9aを通過させて作動器17のアーム17aを解放させ、プランジャロッド13を解放する。これは、
図4Aから
図4Dを参照してさらに説明される。
【0043】
薬剤送達デバイス1は、遠位の弾性部材20を備える。遠位の弾性部材20は、例えば、コイルばねなどのばねとすることができる。遠位の弾性部材20は、送達部材カバー5を近位方向に付勢するように構成される。
図2の実施形態では、遠位の弾性部材20は、保持スリーブ9を介して送達部材カバー5を付勢するように構成される。
【0044】
薬剤送達デバイス1は、ハウジング3の遠位端3bにおいて、ハウジング3を閉じるように構成された後方端部19を備える。
【0045】
薬剤送達デバイス1は、薬剤容器15を搭載することができる。薬剤容器15は、通常、針22などの送達部材22と、送達部材22を保護するように構成されたリング針シールド(RNS)23とを備える。薬剤容器15は、RNS針カバー、およびRNSプラスチックキャップ(図示せず)をさらに備えることができる。キャップ2の突出し部2aは、送達部材カバー5からキャップを取り外すとRNC23を除去するように構成され得るので、RNSリムーバと呼ぶことができる。
【0046】
図3Aは、
図2の薬剤送達デバイス1の部分組立体10の少なくとも一部の詳細な横断面図を示す。部分組立体10は、少なくとも薬剤容器キャリア4、送達部材カバー5、およびキャップ2を備える。
図3Aの詳細な図では、薬剤容器キャリア4の起動ロック6が、キャップ2の突出し部2a、すなわち突出しスリーブ2aに隣接して示されている。
図3Aでは、部分組立体10は、事前の起動阻止状態で示されており、その状態では、突出し部2aは、起動ロック6の半径方向内側の移動を阻止するように起動ロック6に隣接しており、それにより、送達部材カバー5の、その後退位置への軸方向の動きが阻止される。より詳細には、スペース80が起動ロック6に隣接して配置されており、
図3Aで示される事前の起動阻止状態では、突出し部2aがそのスペース80に配置され、それにより、起動ロック6の任意の半径方向に導かれる動きは、突出し部2aによって停止されることになる。
図3Aで示されるように、送達部材カバー5の遠位に面する表面5cは、起動ロック6に当接するように構成されて、起動ロック6を越える送達部材カバー5の軸方向の動きを阻止する。遠位に面する表面5cは、送達部材カバー5のスリーブ部分を部分的に画定し、遠位に面する表面5cは、スリーブ部分の円周方向に配置される。より詳細には、起動ロック6は、遠位に面する表面5cと軸方向に位置合せされる近位に面する表面6aを備える。近位に面する表面6aおよび遠位に面する表面5cの位置合せにより、その後退位置への送達部材カバー5の軸方向の動きは阻止される。
【0047】
図3Aの同じ詳細な横断面を示す
図3Bを参照すると、キャップ2が、送達部材カバー5から取り外された、起動が許可される状態のものである。キャップ2を除去すると、突出し部2aは、スペース80から引き抜かれる。さらにRNS23は、突出し部2aと共に薬剤容器15から取り外されており、それにより送達部材22の覆いが外される。
図3Bでは、スペース80は、起動ロック6を受け入れるように構成される。したがって、起動ロック6に適用される半径方向に導かれる力は、起動ロック6をスペース80の中に半径方向内側に移動させ、それにより、送達部材カバー5の、その後退位置への軸方向の動きを可能にする(
図3Cで示される)。したがって、部分組立体10は、
図3Aで示される事前の起動阻止状態、すなわち、突出し部2aが、起動ロック6に隣接しており、起動ロック6が、半径方向内側に移動するのが阻止される状態から、
図3Bで示される起動許可状態、すなわち、起動ロック6が、半径方向に移動することができ、それにより送達部材カバー5のその後退位置への軸方向の動きを可能にする状態へ移動することができる。
【0048】
より詳細には、起動ロック6は可撓性があり、部分組立体10の中心軸に向けて内側に撓むことにより、半径方向に移動するように構成される。好ましくは、起動ロック6は、薬剤容器構造4の近位端4aの一部を形成する。
図3Bで示されるように、起動ロック6は、薬剤容器キャリアの主部分から近位方向に延びる反対側に配置された2つの長手方向アーム4c、4dを備える。長手方向アーム4c、4dのそれぞれは、対応する近位に面する表面6aを備えて構成され、部分組立体10の中心軸に向けて内側に撓むことにより半径方向に動くように構成される。薬剤容器キャリアの主部分は、薬剤容器15の主本体を収容するように構成される。反対側に配置された2つの長手方向アーム4c、4dのそれぞれは、スペース80に対して撓むように配置された端部を有する。
【0049】
図3Bで示すように、近位に面する表面6aのそれぞれは、少なくとも部分的に面取りされる。これにより、起動ロック6をスペース80の中に押し込む動作は容易になる。すなわち、近位に面する表面6aのそれぞれが、少なくとも部分的に面取りされることにより、遠位方向に外部から加えられる力は、遠位に面する表面5cと、近位の面する表面6aとの相互作用に起因して、半径方向の力へと少なくとも部分的に変換され得る。
図3Bで示されるように、近位に面する表面6aは、遠位に面する表面5cから離れて傾斜するように面取りされる。
【0050】
通常、送達部材カバー5の近位端5aは、送達部材カバー5を軸方向に遠位に移動させる外部から加えられる力を受け、したがって、遠位に面する表面5cは、起動ロック6、および近位に面する表面6aに当接して起動ロック6をスペース80の中に押し込む。したがって、遠位に面する表面5cから加えられた力は、起動ロック6を強制して、スペース80の中に半径方向内側に移動させる。したがって、遠位に面する表面5cは、起動ロック6を越えて遠位方向に移動することができ、それにより、送達部材カバー5を、その後退位置へと移動させることができる。このような構成は、
図3Cで示される。送達部材カバー5の後退位置では、送達部材22が露出され、薬剤を吐出するための用意ができる。
図3Bから
図3Cで示されるように、ハウジング3は、薬剤容器キャリア4の外側に配置され、少なくとも部分的に、送達部材カバー5を収容する。したがって、送達部材カバー5は、
図3Bで示された延長位置から、送達部材カバー5がハウジング3にさらに受け入れられる
図3Cで示された後退位置へと、ハウジング3に対して直線的に、または軸方向に移動するようにさらに構成される。
【0051】
図4Aから
図4Dを参照して、薬剤送達デバイス1の動作を、次にさらに詳細に述べるものとする。参照は、主として薬剤送達デバイス1に対して行われるが、そのいくつかの構成要素は、
図3Aから
図3Cを参照して述べられた薬剤送達デバイス1の部分組立体10に属する、または
図5Aから
図5Cを参照して述べられる部分組立体11、11’のいずれかに属することができる。
【0052】
図4Aは、薬剤を送達する前の、またキャップ2を除去した後の初期状態にある薬剤送達デバイス1の断面図を示す。したがって、部分組立体10は、
図3Bを参照して述べられたその起動許可状態に構成される。
【0053】
送達部材カバー5は、遠位の弾性部材20により近位方向に付勢されたその延長位置にある。送達部材カバー5は、保持スリーブ9を介して遠位の弾性部材20により付勢される。送達部材カバー5は、薬剤容器15の送達部材22を覆う。
【0054】
プランジャロッド13は、薬剤容器キャリア4およびハウジング3に対して第1の軸方向位置に軸方向に固定され、駆動ばね12によって近位方向に付勢される。
【0055】
作動器17は、アーム17aが、プランジャロッド13を事前に張力が加えられた状態にロックするように構成される。
図4Bで示されるように、作動器17は、互いに反対側に配置された、以降で作動器アーム17a、17bと呼ばれる2つの長手方向に延びるアーム17a、17bを備える。2つの作動器アーム17a、17bの構造および機能は同様のものであるため、時には作動器アーム17a、17bの一方だけが述べられる。作動器アーム17a、17bは、保持スリーブ9により定位置にロックされる。
図2を参照して説明されるように、保持スリーブ9の表面は、作動器アーム17a、17bに当接して、プランジャロッド13をその事前に張力の加えられた状態にロックするように構成される。保持スリーブ9は、送達部材カバー5の遠位端5bと係合し、したがって、保持スリーブ9は、軸方向に固定されて、送達部材カバー5と共に移動することができる。
【0056】
図4Bは、プランジャロッド13の解放時点において、起動状態にある薬剤送達デバイス1の断面図を示す。薬剤送達デバイス1は、操作者により注入部位に対して押される。したがって、生じた外部から加えられた力は、送達部材カバー5をその後退位置と移動させ、送達部材22が、
図3Cでも示されるように、組織を穿刺するために露出される。したがって、送達部材カバー5の近位端5aは、外部から加えられた力を受けて、送達部材カバー5を、軸方向に遠位に移動させ、したがって、遠位に面する表面5cは、起動ロック6に、および近位に面する表面6aに当接して、
図3Cを参照して述べられたように、起動ロック6をスペース80の中に押し込む。保持スリーブ9は、軸方向に固定され、送達部材カバー5と共に移動することができ、送達部材カバー5がその後退位置へと移動すると、保持スリーブ9は、遠位方向に移動されて、作動器アーム17a、17bを保持スリーブ9の端部9aを過ぎて解放させ、プランジャロッド13を解放する。
【0057】
図4Cは、薬剤送達動作中の薬剤送達デバイス1を示す。プランジャロッド13は、
図4Bで示される第1の軸方向位置から解放されて、薬剤容器15に向けて近位方向に移動する。したがって、プランジャロッド13は、駆動ばね12からの付勢力により、ハウジング3の近位端3aに向けて、および薬剤容器キャリア4の近位端4aに向けて軸方向に移動する。この近位の動きは、プランジャロッド13を薬剤容器15に遭遇させて、送達部材22を通る薬剤容器の内容物を押すことにより、送達部材22を介して薬剤を吐出するようにする。
【0058】
薬剤の吐出の開始において、プランジャロッド13は、作動アーム17a、17bに隣接して軸方向に位置し、したがって、作動アーム17a、17bは、保持スリーブ9によって加えられた半径方向内側の力、および保持スリーブ9に対して設けられた遠位の弾性部材20からの付勢力に耐える。プランジャロッド13が、近位方向にさらに移動し、薬剤容器15の内容物が放出されると、プランジャロッド13は、もはや作動アーム17a、17bに隣接して軸方向に位置しておらず、保持スリーブ9により加えられた半径方向内側の力、および遠位の弾性部材20からの付勢力は、作動器アーム17a、17bを半径方向内側へと強制する。これにより、保持スリーブ9は、
図4Dで示されるように、送達部材カバー5と共に近位方向に移動してロックアウトを達成することができる。したがって、
図4Dは、作動器アーム17a、17bが、プランジャロッド13により残された間隙内に畳まれたときの薬剤送達デバイス1を示す(
図5Bでも示される)。その結果、保持スリーブ9は、遠位の弾性部材20からの付勢力により、近位方向に移動される。送達部材22は、再度、送達部材カバー5によって覆われ、それは、使用後の薬剤送達デバイス1の最終状態を示す。したがって、送達部材カバー5は、再度その延長位置になる。薬剤送達デバイス1は、この最終状態に配置することができ、送達部材22は、送達部材カバー5の内側に保護され得る。送達部材カバー5は、
図5Aから
図5Cを参照してさらに述べられるように、ロック部材30、31、およびロックアウト構造42、50によって、延長位置に軸方向にロックされる。
【0059】
図5Aは、
図2の薬剤送達デバイス1の部分組立体11の少なくとも一部の詳細な横断面図である。
図5Bは、
図5Aで示された断面図に対して90度の角度の平面における断面図を示す。
図5Aおよび
図5Bにおいて、薬剤送達デバイス1の最終状態が、すなわち、使用後が示されており、薬剤が、薬剤容器から吐出されており、
図4Dで示された状態に対応する。
【0060】
部分組立体11は、前に述べたように、近位端3aおよび遠位端3bを有するハウジング3を備える。
図5Aおよび
図5Bには、遠位端3bを含むハウジング3の一部だけが示されている。部分組立体11は、ハウジング3において近位に付勢される保持スリーブ9をさらに備える。保持スリーブ9は、ハウジング3に面する保持スリーブの部分9cから半径方向外側に延びるロック突出し部31の形態のロック部材31を備える。
【0061】
部分組立体11は、前に述べられ、また
図5Bで最もよく示されるその作動器アーム17a、17bを備える作動器17を備える。部分組立体11はまた、プランジャロッド13を備え、それは、
図5Aおよび
図5Bにおいて、薬剤容器(図示せず)と相互作用するように近位に移動されている。したがって、プランジャロッド13は、近位方向にさらに移動しており、薬剤容器15のいずれかの内容物が放出されているので、プランジャロッド13は、
図5Bにおいて、これ以上、作動器アーム17a、17bに隣接して軸方向に位置することはなく、保持スリーブ9により加えられる半径方向内側に向けた力、および遠位の弾性部材20からの付勢力が、作動器アーム17a、17bを半径方向内側に強制する。これにより、保持スリーブ9は、作動器アーム17a、17bの半径方向外側に配置され得る。さらに、プランジャロッド13からの作動器アーム17a、17bに対する支持が除かれると、作動器17は、駆動ばね12によって、ハウジング3の遠位端3bの方向に押される。作動器17が、薬剤送達デバイス1の後方端部19に衝突するので、ユーザに可聴の、および/または触知可能なフィードバックが達成される。
【0062】
さらに、部分組立体11は、プランジャロッド13をハウジング3の近位端3aに向けて付勢する駆動ばね12を備えることができる。したがって、
図5Aおよび
図5Bにおいて、保持スリーブ9は、ロックアウト動作中に、近位に移動されており、その場合、保持スリーブ9は、ここではロック突出し部31の形態であるロック部材31により軸方向にロックされる。
【0063】
図5Aで示されるように、ハウジング3は、保持スリーブ9を軸方向にロックするために、ロック係合で、ロック突出し部31と相互作用するロックアウト構造50を備える。より詳細には、ロックアウト構造50は、ハウジングにおける開口部50により形成される。開口部50は、保持スリーブ9を軸方向にロックするようにロック突出し部31を受け入れるように構成される。すなわち、ロック突出し部31は、ハウジング3に面する保持スリーブ9の部分9cに配置されるので、ロック突出し部31は、ロックアウト動作中に、保持スリーブ9の軸方向および近位の動き中に、開口部50と接触することができる。ロック突出し部31は、開口部50の中にスナップ嵌めされることが好ましい。
【0064】
図5Cは、薬剤送達デバイスの別の部分組立体11’の少なくとも一部の詳細な横断面図である。
図5Cの部分組立体11’は、大部分が
図5Aおよび
図5Bの部分組立体11に対応しているため、主にその違いが以下で述べられる。したがって、部分組立体11’は、
図2の薬剤送達デバイス1の一部を形成することができる。例えば、
図5Aおよび
図5Bの部分組立体11の作動器17、プランジャロッド13、および任意選択で駆動ばね12は、
図5Cの部分組立体11’に含まれる。
図5Cでは、薬剤送達デバイスの最終状態、すなわち、使用後の状態が示されており、
図4Dで示された状態に対応する、薬剤容器から薬剤が吐出されている。
【0065】
部分組立体11’は、ハウジング3’が、保持スリーブ9のロック部材31と相互作用するための対応する開口部50を備えないこと以外は、前に述べられた近位端3’aおよび遠位端を有するハウジング3’を備える。部分組立体11’は、は、ハウジング3’において、近位に付勢される保持スリーブ9’をさらに備える。保持スリーブ9’は、大部分が
図5Aおよび
図5Bの保持スリーブ9に対応するが、ハウジング3に面する部分9cにロック部材を備えるのではなく、ロック部材30が、作動器17に面する保持スリーブ9’の部分9’cに構成される。
図5Cでは、ロック部材30は、軸方向リブ30により形成される。軸方向リブは、軸方向に延び、保持スリーブ9’の部分9’cの半径方向外側に延びる。
【0066】
作動器アーム17a、17bのそれぞれは、端部フック40を備える。端部フック40は、2つの作動器アーム17a、17bと同様またはそれに対応するものであるので、それは、第1の作動アーム17aに対してだけ述べるものとする。端部フック40は、プランジャロッド13をその事前に張力が加えられた状態(
図4Aで示されたものに対応する)にロックするように構成された第1のフック部分41と、第1のフック部分41とは反対側に構成された第2のフック部分42とを備える。第2のフック部分42は、ロックアウト構造42を形成し、したがって、軸方向リブ30と相互作用して、保持スリーブ9’を軸方向にロックするように構成される。部分組立体11は、第1および第2のフック部分41、42を有する、
図5Bで示されたものと同じ作動器17を備えることができる。
【0067】
図5Aから
図5Cで示されるように、部分組立体11、11’は、前に述べた遠位の弾性部材20を備えることができる。遠位の弾性部材20は、作動器17に対して対応する保持スリーブ9、9’を押す(
図5Cの実施形態の場合)、またはロック部材30、31を介してハウジング3を押す(
図5Aおよび
図5Bの場合)ように構成される。
【0068】
さらに、部分組立体11、11’は、前に述べられた送達部材カバー5を備えることができる。したがって、対応する保持スリーブ9、9’は、送達部材カバー5に固定して取り付けられ、それにより、ロックアウト動作中に、送達部材カバー5を軸方向にロックすることができる。
【0069】
本発明の概念は、主として、いくつかの例を参照して上記で述べられてきた。しかし、当業者であれば容易に理解されるように、上記で開示されたもの以外の他の実施形態も、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の概念の範囲に含まれることが同様に可能である。例えば、駆動部材を、例えば、自動的なばね搭載構造に代えて、モータ駆動、または手動による駆動とすることも可能である。
【0070】
いくつかの態様は、以下の節において要約される。
【0071】
1.薬剤送達デバイス(1)のための部分組立体(10)であって、部分組立体(10)は、
近位端(4a)から遠位端(4b)へと長手方向軸に沿って延び、起動ロック(6)を備える薬剤容器キャリア(4)と、
薬剤容器キャリア(4)の少なくとも部分的に近位に配置され、薬剤容器キャリア(4)に対して軸方向に、延長位置から後退位置へと移動するように構成される送達部材カバー(5)と、
送達部材カバー(5)の近位に、少なくとも部分的に取外し可能に配置され、突出し部(2a)を備えるキャップ(2)と、
を備え、
部分組立体(10)は、突出し部(2a)が、起動ロック(6)に隣接して、起動ロックが半径方向に移動することを阻止し、それにより、送達部材カバー(5)のその後退位置への軸方向の動きを阻止する事前の起動阻止状態から、キャップが取り外されて、突出し部(2a)を起動ロック(6)から離し、起動ロック(6)を半径方向に移動できるようにし、それにより、送達部材カバー(5)のその後退位置への軸方向の動きを可能にする起動許可状態へと移動するように構成される、部分組立体(10)。
【0072】
2.送達部材カバー(5)は、遠位に面する表面(5c)を備え、起動ロック(6)は、事前の起動阻止状態において、送達部材カバー(5)のその後退位置への軸方向の移動を阻止するように、遠位に面する表面(5c)と軸方向に位置合せされた近位に面する表面(6a)を備える、節1に記載の部分組立体(10)。
【0073】
3.起動ロック(6)は可撓性を有しており、また起動許可状態において、起動ロック(6)は、部分組立体(10)の中心軸に向けて内側に撓むことにより、半径方向に移動するように構成される、節1または2に記載の部分組立体(10)。
【0074】
4.起動ロック(6)に隣接するスペース(80)をさらに備え、事前の起動阻止状態において、突出し部(2a)は、前記スペース(80)に配置される、節1から3のいずれか一節に記載の部分組立体(10)。
【0075】
5.起動許可状態において、前記スペース(80)は、起動ロック(6)を受け入れて、前記起動許可状態を達成するように構成される、節4に記載の部分組立体(10)。
【0076】
6.送達部材カバー(5)は、遠位方向に外部から力が加えられたとき、遠位に面する表面(5c)を、近位に面する表面(6a)に当接させて、それにより、起動ロック(6)を前記スペース(80)に押し込むように構成される、節2を引用する場合の節5に記載の部分組立体(10)。
【0077】
7.近位に面する表面(6a)は、少なくとも部分的に面取りされる、節6に記載の部分組立体(10)。
【0078】
8.薬剤容器キャリアおよび起動ロック(6)は、薬剤送達デバイスのハウジング(3)の一部を形成する、節1から7のいずれか一節に記載の部分組立体(10)。
【0079】
9.起動されたとき、薬剤容器キャリア(4)の近位端(4a)に向けて、動作可能に移動するように構成されたプランジャロッド(13)をさらに備える、節1から8のいずれか一節に記載の部分組立体(10)。
【0080】
10.事前に張力が加えられた状態で、プランジャロッド(13)をロックするように構成されたアームを有し、および起動時に、アームを移動させてプランジャロッド(13)を解放するように動作可能に構成された作動器(17)をさらに備える、節9に記載の部分組立体(10)。
【0081】
11.送達部材カバー(5)は、近位端(5a)および遠位端(5b)を備え、また起動ロック(6)は、送達部材カバー(5)の近位端(5a)と遠位端(5b)の間に配置される、節1から10のいずれか一節に記載の部分組立体(10)。
【0082】
12.送達部材カバー(5)の遠位端(5b)は、送達部材カバー(5)が、その後退位置へと軸方向に移動すると、作動器(17)と係合してアームを移動し、プランジャロッド(13)を解放するように構成される、節10から11に記載の部分組立体(10)。
【0083】
13.送達部材カバー(5)と共に軸方向に移動するように構成された保持スリーブ(9)をさらに備え、保持スリーブ(9)は、作動器(17)のアームに当接して、プランジャロッド(13)をその事前に張力が加えられた状態にロックするように構成された表面を備え、保持スリーブは、送達部材カバー(5)がその後退位置へと押し込まれたとき、遠位に移動して、作動器(17)のアームを、保持スリーブ(9)の端部(9a)を過ぎて解放させ、プランジャロッド(13)を解放するように動作可能に構成される、節12に記載の部分組立体(10)。
【0084】
14.送達部材(22)を介して薬剤容器(15)から薬剤を吐出するように構成され、節1から13のいずれか一節に記載の部分組立体(10)を備える薬剤送達デバイス(1)。
【符号の説明】
【0085】
1 薬剤送達デバイス
2 キャップ
2a 突出し部
2b 把持部分
3、3’ ハウジング
3a 近位端
3b 遠位端
3c 窓
3’a 近位端
4 薬剤容器キャリア
4a 近位端
4b 遠位端
4c 長手方向アーム
4d 長手方向アーム
5 送達部材カバー
5a 近位端
5b 遠位端
5c 遠位に面する表面
6 起動ロック
6a 近位に面する表面
9、9’ 保持スリーブ
9a 端部
9c、9’c ハウジングに面する部分
10 部分組立体
11 部分組立体
11’ 部分組立体
12 駆動ばね
13 プランジャロッド
15 薬剤容器
17 作動器
17a 作動器アーム
17b 作動器アーム
19 後方端部
20 遠位の弾性部材
22 送達部材
23 リング針シールド
30 ロック部材
31 ロック部材
40 端部フック
41 第1のフック部分
42 第2のフック部分
50 ロックアウト構造、開口部
80 スペース
【国際調査報告】