(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-30
(54)【発明の名称】マルチレベル直流電流コンバータ、フライングキャパシタの電圧制御方法及び制御装置
(51)【国際特許分類】
H02M 3/155 20060101AFI20240920BHJP
【FI】
H02M3/155 H
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024522517
(86)(22)【出願日】2023-06-07
(85)【翻訳文提出日】2024-04-15
(86)【国際出願番号】 CN2023098923
(87)【国際公開番号】W WO2023246512
(87)【国際公開日】2023-12-28
(31)【優先権主張番号】202210715575.6
(32)【優先日】2022-06-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521531171
【氏名又は名称】ファーウェイ デジタル パワー テクノロジーズ カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100229448
【氏名又は名称】中槇 利明
(72)【発明者】
【氏名】ウー,ゥローン
(72)【発明者】
【氏名】ジョーン,シャオホゥイ
(72)【発明者】
【氏名】ウー,ジーチーン
(72)【発明者】
【氏名】ジャオ,ジーン
(72)【発明者】
【氏名】ファン,ジュインタオ
【テーマコード(参考)】
5H730
【Fターム(参考)】
5H730AS05
5H730BB13
5H730DD04
5H730DD12
5H730DD16
5H730EE13
5H730FD21
5H730FD51
5H730FF09
5H730FG05
(57)【要約】
本発明は、マルチレベル直流コンバータ、フライングキャパシタの電圧制御方法及び制御装置を提供する。マルチレベル直流コンバータは、コントローラと、フライングコンデンサと、2つのスイッチングトランジスタ群と、インダクタとを含む。フライングコンデンサの制御方法は、フライングキャパシタの基準電圧とサンプリング電圧との間の差分の絶対値が第1閾値よりも大きいことに応答して、2つのスイッチングトランジスタ群のうちの第1スイッチングトランジスタ間のデューティサイクル差、又は、2つのスイッチングトランジスタ群のうちの第1スイッチングトランジスタのキャリア間の位相差を、インダクタ電流の大きさに基づいて調整するステップを含む。本発明の実施形態によれば、フライングキャパシタの電圧を制御することができ、マルチレベル直流コンバータの動作安定性を向上させることができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マルチレベル直流電流コンバータであって:
少なくとも1つのフライングキャパシタと;
前記フライングキャパシタに接続された2つのスイッチングトランジスタ群と;
前記スイッチングトランジスタ群の各々及び前記マルチレベル直流電流コンバータの低圧電源の正電極に接続されたインダクタと;
前記スイッチングトランジスタ群を制御するように構成されたコントローラと、を備え、
前記スイッチングトランジスタ群はそれぞれ、
第1スイッチングトランジスタ及び第2スイッチングトランジスタを備え、それらのオンオフ状態は相補的であり、
前記第1スイッチングトランジスタは、前記マルチレベル直流電流コンバータの高圧電源の一端に接続されており、
前記第2スイッチングトランジスタは、前記マルチレベル直流電流コンバータの高圧電源の他端に接続されており、
前記コントローラは、
前記フライングキャパシタの基準電圧とサンプリング電圧との間の差分の絶対値が第1閾値よりも大きい場合、前記インダクタ電流の大きさに基づいて、前記2つのスイッチングトランジスタ群のうちの第1スイッチングトランジスタ間のデューティサイクル差、又は、前記2つのスイッチングトランジスタ群のうちの第1スイッチングトランジスタのキャリア間の位相差を調整するように構成されている、
マルチレベル直流電流コンバータ。
【請求項2】
前記コントローラは特に、前記コントローラが前記インダクタ電流の大きさに基づいて、前記2つのスイッチングトランジスタ群のうちの前記第1スイッチングトランジスタの前記キャリア間の位相差を調整すると決定する場合、前記2つのスイッチングトランジスタ群のうちの前記第1スイッチングトランジスタの前記キャリア間の前記位相差を増大させるように構成されており、
前記フライングキャパシタの前記サンプリング電圧は前記フライングキャパシタの前記基準電圧よりも小さい、
請求項1記載のマルチレベル直流電流コンバータ。
【請求項3】
前記コントローラは特に、前記コントローラが前記インダクタ電流の大きさに基づいて前記2つのスイッチングトランジスタ群のうちの前記第1スイッチングトランジスタの前記キャリア間の位相差を調整すると決定する場合、前記2つのスイッチングトランジスタ群のうちの前記第1スイッチングトランジスタの前記キャリア間の前記位相差を減少させるように構成されており、
前記フライングキャパシタの前記サンプリング電圧は前記フライングキャパシタの前記基準電圧よりも大きい、
請求項1記載のマルチレベル直流電流コンバータ。
【請求項4】
前記コントローラは特に、前記インダクタ電流が第2閾値より小さい場合、前記2つのスイッチングトランジスタ群の前記第1スイッチングトランジスタの前記キャリア間の前記位相差を調整するように構成されている、
請求項1乃至3いずれか1項記載のマルチレベル直流電流コンバータ。
【請求項5】
前記コントローラは特に、前記インダクタ電流が第3閾値より大きい場合、前記2つのスイッチングトランジスタ群の前記第1スイッチングトランジスタの前記デューティサイクル差を調整するように構成されている、
請求項1記載のマルチレベル直流電流コンバータ。
【請求項6】
前記コントローラは特に、前記インダクタ電流が第2閾値以上であり、第3閾値以下である場合、以前の瞬間の調整方法にしたがって、前記2つのスイッチングトランジスタ群のうちの前記第1スイッチングトランジスタ間のデューティサイクル差、又は、前記2つのスイッチングトランジスタ群のうちの前記第1スイッチングトランジスタの前記キャリア間の位相差を調整するように構成されている、
請求項1乃至3いずれか1項記載のマルチレベル直流電流コンバータ。
【請求項7】
フライングキャパシタの電圧制御方法であって、
前記フライングキャパシタはマルチレベル直流電流コンバータに使用され、
前記マルチレベル直流電流コンバータは、2つのスイッチングトランジスタ群と、インダクタと、コントローラと、を備え、
前記スイッチングトランジスタ群の各々は、第1スイッチングトランジスタ及び第2スイッチングトランジスタを備え、それらのオンオフ状態は相補的であり、
前記電圧制御方法は:
前記フライングキャパシタの基準電圧とサンプリング電圧との間の差分の絶対値が第1閾値よりも大きい場合、前記コントローラによって、前記インダクタ電流の大きさに基づいて、前記2つのスイッチングトランジスタ群のうちの第1スイッチングトランジスタ間のデューティサイクル差、又は、前記2つのスイッチングトランジスタ群のうちの第1スイッチングトランジスタのキャリア間の位相差を調整するステップを含む、
方法。
【請求項8】
前記コントローラによって、前記インダクタ電流の大きさに基づいて、前記2つのスイッチングトランジスタ群のうちの第1スイッチングトランジスタ間のデューティサイクル差、又は、前記2つのスイッチングトランジスタ群のうちの第1スイッチングトランジスタのキャリア間の位相差を調整するステップは、
前記インダクタ電流の大きさに基づいて前記2つのスイッチングトランジスタ群のうちの前記第1スイッチングトランジスタの前記キャリア間の前記位相差を調整すると決定する場合、前記コントローラによって、前記2つのスイッチングトランジスタ群のうちの前記第1スイッチングトランジスタの前記キャリア間の前記位相差を増大させるステップであって、前記フライングキャパシタの前記サンプリング電圧は前記フライングキャパシタの前記基準電圧よりも小さい、ステップ、又は、
前記インダクタ電流の大きさに基づいて前記2つのスイッチングトランジスタ群のうちの前記第1スイッチングトランジスタの前記キャリア間の前記位相差を調整すると決定する場合、前記コントローラによって、前記2つのスイッチングトランジスタ群のうちの前記第1スイッチングトランジスタの前記キャリア間の前記位相差を減少させるステップであって、前記フライングキャパシタの前記サンプリング電圧は前記フライングキャパシタの前記基準電圧よりも大きいステップ、を含む、
請求項7記載の方法。
【請求項9】
前記コントローラによって、前記インダクタ電流の大きさに基づいて、前記2つのスイッチングトランジスタ群のうちの第1スイッチングトランジスタ間のデューティサイクル差、又は、前記2つのスイッチングトランジスタ群のうちの第1スイッチングトランジスタのキャリア間の位相差を調整するステップは、
前記インダクタ電流が第2閾値より小さい場合、前記コントローラによって、前記2つのスイッチングトランジスタ群の前記第1スイッチングトランジスタの前記キャリア間の前記位相差を調整するステップ、又は
前記インダクタ電流が第3閾値より大きい場合、前記コントローラによって、前記2つのスイッチングトランジスタ群の前記第1スイッチングトランジスタ間の前記デューティサイクル差を調整するステップ、又は
前記インダクタ電流が第2閾値以上であり、第3閾値以下である場合、前記コントローラによって、以前の瞬間の調整方法にしたがって、前記2つのスイッチングトランジスタ群のうちの前記第1スイッチングトランジスタ間のデューティサイクル差、又は、前記2つのスイッチングトランジスタ群のうちの前記第1スイッチングトランジスタの前記キャリア間の位相差を調整するステップを含む、
請求項7又は8記載の方法。
【請求項10】
制御装置であって、
コントローラと、メモリと、を備え、
前記メモリは命令を格納するように構成されており、
前記コントローラは、請求項7乃至9いずれか1項記載の方法を実行するために、前記メモリに格納された前記命令を呼び出すように構成されている、
制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2022年6月23日に中国国家知識産権局に提出された「MULTI-LEVEL DIRECT CURRENT CONVERTER, VOLTAGE CONTROL METHOD FOR FLYING CAPACITOR, AND CONTROL APPARATUS」という名称の中国特許出願第202210715575.6号に基づく優先権を主張するものであり、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
[技術分野]
本発明は、パワーエレクトロニクス技術の分野に関し、特に、マルチレベル直流電流コンバータ、フライングコンデンサの電圧制御方法及び制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
マルチレベル直流電流コンバータは、フライングコンデンサを付加することにより、各スイッチングトランジスタの入力電圧の電圧ストレスを低減することができる。フライングコンデンサを有する3レベル直流電流コンバータを例とし、フライング電圧を用いることによって入力電圧の半分を蓄積することができ、したがって出力レベルは0、1/2、1の3状態となり、出力レベルの変化振幅は2レベルトポロジの半分となる。このようにして、低耐圧のスイッチングトランジスタを用いて、電子システムの性能を向上させることができる。
【0003】
現在、フライングキャパシタの充放電時間は、フライングキャパシタの電圧を制御するために、インダクタの電流方向決定し、スイッチングトランジスタ群の第1スイッチングトランジスタ(又は第2スイッチングトランジスタ)のデューティサイクル間の差を調整することにより調整することができる。しかしながら、インダクタ電流が小さく、インダクタ電流が高周波三角波であり、正負を繰り返し切り替える場合、瞬時電流方向に基づいてフライングキャパシタの電圧を制御することは、制御チップ上の要求が極めて高く、実際のプロジェクトには適用できない。スイッチングトランジスタ群の第1スイッチングトランジスタ(又は第2スイッチングトランジスタ)のデューティサイクル間の差が大きく調整されていても、フライング電圧を有効に増減させることができず、フライングキャパシタの電圧を目標値に安定させるという制御目的を達成することができない。
【発明の概要】
【0004】
本出願の実施形態は、フライングキャパシタの電圧を制御するための、マルチレベル直流電流コンバータ、フライングキャパシタの電圧制御方法及び制御装置を開示する。これにより、マルチレベル直流電流コンバータの動作安定性が向上する。
【0005】
第1態様によれば、本出願の実施形態は、マルチレベル直流電流コンバータ(multi-level direct current converter)を開示する。マルチレベル直流電流コンバータは、少なくとも1つのフライングキャパシタと、フライングキャパシタに接続された2つのスイッチングトランジスタ群と、スイッチングトランジスタ群の各々及びマルチレベル直流電流コンバータの低圧電源の正電極に接続されたインダクタと;スイッチングトランジスタ群を制御するように構成されたコントローラと、を備え、スイッチングトランジスタ群の各々は、第1スイッチングトランジスタ及び第2スイッチングトランジスタを備え、それらのオンオフ状態は相補的であり、第1スイッチングトランジスタは、マルチレベル直流電流コンバータの高圧電源の一端に接続されており、第2スイッチングトランジスタは、マルチレベル直流電流コンバータの高圧電源の他端に接続されており、コントローラは、フライングキャパシタの基準電圧とサンプリング電圧との間の差の絶対値が第1閾値よりも大きい場合、2つのスイッチングトランジスタ群のうちの第1スイッチングトランジスタ間のデューティサイクル差、又は、2つのスイッチングトランジスタ群のうちの第1スイッチングトランジスタのキャリア間の位相差を、インダクタ電流の大きさに基づいて調整するように構成されている。
【0006】
マルチレベル直流電流コンバータ、又はマルチレベル直流電流コンバータと称されることもある、は、直流(direct current、DC)直流電気エネルギー変換を実行するように構成され、例えば昇圧変換を実行することができ、又は降圧変換を実行することができる。マルチレベル直流電流コンバータの具体的な種類は、本願においては限定されず、3レベル直流コンバータ、5レベル直流コンバータ、7レベル直流コンバータ等であることができる。マルチレベル直流電流コンバータに対応するマルチレベルトポロジとは、出力レベルが少なくとも3つの状態を有することを意味する。例えば、出力レベルが1、1/2、0の3つの状態を有するものを3レベルトポロジと称する。出力レベルが1、3/4、1/2、1/4、0の5つの状態を有するものを5レベルトポロジと称する。
【0007】
第1スイッチングトランジスタ及び第2スイッチングトランジスタは、電界効果トランジスタ(field effect transistor、FET)、金属酸化物半導体電界効果トランジスタ(metal oxide semiconductor field effect transistor、MOSFET)、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(insulated gate bipolar transistors、IGBT)、接合電界効果トランジスタ(junction field effect transistor、JFET)、及びそれらの並列ダイオードなどであってもよい。これは、本明細書では限定されない。
【0008】
コントローラは、パルス幅変調(pulse width modulation、PWM)デバイス、PWMベースのバッテリ管理システム(battery management system、BMS)、マイクロ制御ユニット(micro control unit、MCU)、中央処理ユニット(central processing unit、CPU)、別の汎用プロセッサ、デジタル信号プロセッサ(digital signal processor、DSP)、特定用途向け集積回路(application specific integrated circuit (ASIC))、フィールドプログラマブルゲートアレイ(field-programmable gate array、FPGA)又は別のプログラマブルロジックデバイス、個別のゲート又はトランジスタロジックデバイス、個別のハードウェアコンポーネントなどであってもよい。コントローラは、通信接続を有する1つ以上のチップであってもよい。コントローラは、各スイッチングトランジスタに対応する制御ユニットを含むことができるか、又は、スイッチングトランジスタ群に対応する制御ユニット、例えば、スイッチングトランジスタ群のうちの第1スイッチングトランジスタ及び第2スイッチングトランジスタに対応するパルス幅モジュレータを含むことができる。これは、本明細書では限定されない。
【0009】
フライングキャパシタのサンプリング電圧は、収集されたリアルタイム電圧である。フライングキャパシタの基準電圧は、フライングキャパシタに対して調整される目標値である。インダクタの電流はインダクタ電流とも称され、瞬時電流値であり得るか又は平均値であり得る。
【0010】
第1閾値は、本発明においては限定されない。第1閾値は0等であり得る。なお、フライングキャパシタの基準電圧とサンプリング電圧との差の絶対値が第1閾値より大きい場合は、フライングキャパシタの電圧が目標値(例えば、3レベル直流変換器の目標値は、高圧電源の電圧の1/2倍であり得る)に調整されていないことを示す。フライングキャパシタ側のスイッチングトランジスタ間のデューティサイクル差、又は、フライングキャパシタ側の第1スイッチングトランジスタのキャリア間の位相差を調整し続けることができ、フライングキャパシタの電圧を制御し、マルチレベル直流電流コンバータの電圧ストレスを低減することができる。フライングキャパシタのサンプリング電圧と基準電圧との間の差が第1閾値以下であれば、フライングキャパシタの電圧が目標値に調整されたことを示し、電流動作状態を維持してフライングキャパシタを動作させ続けることができる。このようにして、マルチレベル直流電流コンバータの動作安定性を向上させることができる。
【0011】
第1実施形態を参照すると、可能な第1実装において、コントローラは特に、コントローラがインダクタ電流の大きさに基づいて2つのスイッチングトランジスタ群のうちの第1スイッチングトランジスタのキャリア間の位相差を調整すると決定する場合、2つのスイッチングトランジスタ群のうちの第1スイッチングトランジスタのキャリア間の位相差を増大させるように構成されており、フライングキャパシタのサンプリング電圧はフライングキャパシタの基準電圧よりも小さい。このようにして、フライングキャパシタの電圧を増大させることができる。
【0012】
第1実施形態を参照すると、可能な第2実装において、コントローラは特に、コントローラがインダクタ電流の大きさに基づいて2つのスイッチングトランジスタ群のうちの第1スイッチングトランジスタのキャリア間の位相差を調整すると決定する場合、2つのスイッチングトランジスタ群のうちの第1スイッチングトランジスタのキャリア間の位相差を減少させるように構成されており、フライングキャパシタのサンプリング電圧はフライングキャパシタの基準電圧よりも大きい。このようにして、フライングキャパシタの電圧を低減させることができる。
【0013】
第1実施形態又は可能な第1実装又は可能な第2実装を参照すると、可能な第3実装において、コントローラは特に、インダクタ電流が第2閾値より小さい場合、2つのスイッチングトランジスタ群の第1スイッチングトランジスタのキャリア間の位相差を調整するように構成されている。
【0014】
第1実施形態を参照すると、可能な第4実装において、コントローラは特に、インダクタ電流が第3閾値より大きい場合、2つのスイッチングトランジスタ群のうちの第1スイッチングトランジスタのデューティサイクル差を調整するように構成されている。第1実施形態又は可能な第1実装又は可能な第2実装を参照すると、可能な第5実装において、コントローラは特に、インダクタ電流が第2閾値以上であり、第3閾値以下である場合、以前の瞬間又は直前の瞬間における(at a previous moment)調整方法にしたがって、2つのスイッチングトランジスタ群のうちの第1スイッチングトランジスタ間のデューティサイクル差、又は、2つのスイッチングトランジスタ群のうちの第1スイッチングトランジスタのキャリア間の位相差を調整するように構成されている。
【0015】
第2閾値及び第3閾値の値は、本発明では限定されず、第2閾値は第3閾値より小さい。インダクタの電流が第2閾値より小さい場合、インダクタの電流が小さいことを示し、電流が軽負荷であり得ることが理解される。デューティサイクル差を調整しないことを前提として、位相シフト制御方法を用いて、2つのスイッチングトランジスタ群のうちの第1スイッチングトランジスタのキャリア間の位相差を調整し得る。インダクタの電流が第3閾値より大きい場合、インダクタの電流が大きいことを示し、電流は重負荷であり得る。位相差を調整しないことを前提として、デューティサイクル調整方法を用いて、2つのスイッチングトランジスタ群のうちの第1スイッチングトランジスタ間のデューティサイクル差を調整し得る。インダクタの電流が第2閾値以上であり、第3閾値以下である場合、インダクタは軽負荷と重負荷の中間状態であり、調整は以前の瞬間における調整方法で実行され得る。例えば、以前の瞬間において位相シフト制御方法を用いた場合は、引き続き位相シフト制御方法が用いられるか、又は、以前の瞬間においてデューティサイクル調整方法を用いた場合は、引き続きデューティサイクル調整方法が用いられる。このように、上記3つの場合を用いてフライング電圧を制御することができ、したがって、制御されたフライングキャパシタの電圧が滑らかに推移しつづけることができる。
【0016】
第2態様によれば、本発明の実施形態は、フライングキャパシタの電圧制御方法を開示する。フライングキャパシタはマルチレベル直流電流コンバータに使用され、マルチレベル直流電流コンバータはさらに、2つのスイッチングトランジスタ群と、インダクタと、コントローラと、を備え、スイッチングトランジスタ群の各々は、第1スイッチングトランジスタ及び第2スイッチングトランジスタを備え、それらのオンオフ状態は相補的であり、電圧制御方法は:フライングキャパシタの基準電圧とサンプリング電圧との間の差の絶対値が第1閾値よりも大きい場合、インダクタの電流の大きさに基づいて、2つのスイッチングトランジスタ群のうちの第1スイッチングトランジスタ間のデューティサイクル差、又は、2つのスイッチングトランジスタ群のうちの第1スイッチングトランジスタのキャリア間の位相差を調整するステップを含む。このように、フライングキャパシタの電圧が目標値に調整されていると決定される場合、フライングキャパシタ側のスイッチングトランジスタ間のデューティサイクル差、又は、フライングキャパシタ側のスイッチングトランジスタのキャリア間の位相差を調整し続けることができ、フライングキャパシタの電圧を制御することができる。このようにして、マルチレベル直流電流コンバータの動作安定性を向上させることができる。
【0017】
第2実施形態を参照すると、可能な第1実装において、インダクタのインダクタ電流の大きさに基づいて、2つのスイッチングトランジスタ群のうちの第1スイッチングトランジスタ間のデューティサイクル差、又は、2つのスイッチングトランジスタ群のうちの第1スイッチングトランジスタのキャリア間の位相差を調整するステップは:インダクタ電流の大きさに基づいて2つのスイッチングトランジスタ群のうちの第1スイッチングトランジスタのキャリア間の位相差を調整すると決定する場合、2つのスイッチングトランジスタ群のうちの第1スイッチングトランジスタのキャリア間の位相差を増加させるステップであって、フライングキャパシタのサンプリング電圧はフライングキャパシタの基準電圧よりも小さい、ステップを含む。
【0018】
第2実施形態を参照すると、可能な第2実装において、インダクタ電流の大きさに基づいて、2つのスイッチングトランジスタ群のうちの第1スイッチングトランジスタ間のデューティサイクル差、又は、2つのスイッチングトランジスタ群のうちの第1スイッチングトランジスタのキャリア間の位相差を調整するステップは:インダクタ電流の大きさに基づいて2つのスイッチングトランジスタ群のうちの第1スイッチングトランジスタのキャリア間の位相差を調整すると決定する場合、2つのスイッチングトランジスタ群のうちの第1スイッチングトランジスタの前記キャリア間の位相差を減少させるステップであって、フライングキャパシタのサンプリング電圧はフライングキャパシタの基準電圧よりも大きいステップ、を含む。
【0019】
第2実施形態を参照すると、可能な第3実装において、インダクタ電流の大きさに基づいて、2つのスイッチングトランジスタ群のうちの第1スイッチングトランジスタ間のデューティサイクル差、又は、2つのスイッチングトランジスタ群のうちの第1スイッチングトランジスタのキャリア間の位相差を調整するステップは:インダクタ電流が第2閾値より小さい場合、コントローラによって、2つのスイッチングトランジスタ群のうちの第1スイッチングトランジスタのキャリア間の前記位相差を調整するステップを含む。
【0020】
第2実施形態を参照すると、可能な第4実装において、コントローラによって、インダクタ電流の大きさに基づいて、2つのスイッチングトランジスタ群のうちの第1スイッチングトランジスタ間のデューティサイクル差、又は、2つのスイッチングトランジスタ群のうちの第1スイッチングトランジスタのキャリア間の位相差を調整するステップは:電流が第3閾値より大きいことに応答して、コントローラによって、2つのスイッチングトランジスタ群のうちの第1スイッチングトランジスタ間のデューティサイクル差を調整するステップを含む。
【0021】
第2実施形態を参照すると、可能な第5実装において、コントローラによって、電流の大きさに基づいて、2つのスイッチングトランジスタ群のうちの第1スイッチングトランジスタ間のデューティサイクル差、又は、2つのスイッチングトランジスタ群のうちの第1スイッチングトランジスタのキャリア間の位相差を調整するステップは:電流が第2閾値以上であり、第3閾値以下である場合、コントローラによって、以前の瞬間の調整方法にしたがって、2つのスイッチングトランジスタ群のうちの第1スイッチングトランジスタ間のデューティサイクル差、又は、2つのスイッチングトランジスタ群のうちの第1スイッチングトランジスタの前記キャリア間の位相差を調整するステップを含む。
【0022】
第3態様によれば、本発明の実施形態は、制御装置を開示する。制御装置は、コントローラとメモリとを含む。メモリは、命令を記憶するように構成され、コントローラは、第2態様の方法を実行するためにメモリに記憶された命令を呼び出すように構成される。
【0023】
本出願の上記態様の実施及び有益な効果については、相互に参照することができることを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0024】
以下、本出願の実施の形態に用いられる添付図面について説明する。
【0025】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態による光電生成システムの構成を模式的に示す図である。
【
図2】
図2は、本発明の実施形態による3レベル直流電流コンバータの回路図を示す図である。
【
図3】
図3は、本発明の実施形態によるマルチレベル直流電流コンバータの構成を模式的に示す図である。
【
図4】
図4は、本発明の実施形態による3レベル直流電流コンバータの動作モード図を示す図である。
【
図5】
図5は、本発明の実施形態による3レベル直流電流コンバータの動作モード図を示す図である。
【
図6】
図6は、本発明の実施形態による3レベル直流電流コンバータの動作モード図を示す図である。
【
図7】
図7は、本発明の実施形態による3レベル直流電流コンバータの動作モード図を示す図である。
【
図8】
図8は、本発明の実施形態による3レベル直流電流コンバータの動作モード図を示す図である。
【
図9】
図9は、本発明の実施形態による3レベル直流電流コンバータの動作モード図を示す図である。
【
図10】
図10は、本発明によるのデューティサイクル差とフライング電圧との関係及び位相差とフライング電圧との関係を示す図である。
【
図11】
図11は、本発明によるのデューティサイクル差とフライング電圧との関係及び位相差とフライング電圧との関係を示す図である。
【
図12】
図12は、本発明によるのデューティサイクル差とフライング電圧との関係及び位相差とフライング電圧との関係を示す図である。
【
図13】
図13は、本発明によるのデューティサイクル差とフライング電圧との関係及び位相差とフライング電圧との関係を示す図である。
【
図14】
図14は、本発明の一実施形態によるコントローラによるフライングキャパシタの電圧調整の模式的フローチャートを示す図である。
【
図15】
図15は、本発明の一実施形態によるフライングキャパシタの電圧制御方法の模式的フローチャートを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本明細書に記載される「接続」は、直接的又は間接的な接続である。例えば、AがBに接続されているということは、AがBに直接接続されているということであってもよいし、Aが他の1つ以上の電気部品を介してBに間接的に接続されているということであってもよい。例えば、AがCに直接接続され、CがBに直接接続され、AとBがCを使用して接続されていてもよい。この接続は、カップリング、電気接続などと称されることができる。これは、本明細書では限定されない。用語「第1」及び「第2」は、単に説明の目的のために使用され、相対的な重要性の指示又は含意として理解されてはならない。
【0027】
本出願の実施形態は、マルチレベル直流電流コンバータに関するものであるか、又は、マルチレベル直流電流コンバータと称されることができ、直流(direct current、DC)-直流電力変換を実行するように構成され、例えば、ブースト変換を実行してもよく、又はバック変換を実行してもよい。これは、本出願の実施形態では特に限定されない。また、本出願の実施形態においては、マルチレベル直流電流コンバータの適用シナリオは限定されない。マルチレベル直流電流コンバータは、異なる種類の電気機器(電力網又はパワーグリッド、家庭用デバイス、産業用及び商業用電気デバイスなど)に使用されてもよく、ユーザ端末(携帯電話、インテリジェントデバイス、テレビなど)分野や車両分野などの電気機器分野の異なる適用シナリオに使用されてもよく、大型電気デバイス(パワーグリッドや産業機器など)の電力供給シナリオ、中小規模の分散型電気機器(車載電気デバイスや家庭用電気デバイスなど)の電力供給シナリオ、モバイル電気機器(携帯電話やインテリジェント機器など)の電源シナリオなどに使用されてもよい。
【0028】
例えば、
図1は、本出願の実施形態による光電発電システムのアーキテクチャを模式的に示す図である。
図1に示すように、光電発電システムは、光電池モジュールと、マルチレベル直流電流コンバータと、蓄電池群と、インバータ回路と、直流負荷と、交流負荷と、パワーグリッド(power grid)とを含む。光電発電システムでは、太陽エネルギーは、光電池モジュールによって直流エネルギーに変換される。直流エネルギーは、マルチレベル直流電流コンバータを用いてブーストされる。ブーストされた直流エネルギーは、直流負荷に供給されてもよいし、蓄電池群に蓄積されてもよいし、インバータを用いて交流エネルギーに変換されることができ、交流エネルギーは交流負荷に供給されたり、パワーグリッドに接続されたりできる。
【0029】
マルチレベル直流電流コンバータの具体的な種類は、本願に限定されず、3レベル直流電流コンバータ、5レベル直流電流コンバータ、7レベル直流電流コンバータ等であってもよい。マルチレベル直流電流コンバータに対応するマルチレベルトポロジとは、出力レベルが少なくとも3つの状態を有することを意味する。例えば、出力レベルが1、1/2、0の3つの状態を有することを3レベルトポロジと称する。出力レベルは、1、3/4、1/2、1/4、0の5つの状態を有し、これを5レベルトポロジと称する。また、マルチレベルトポロジ回路は、さらに、ダイオードクランプ型マルチレベルトポロジ回路、フライングキャパシタ型マルチレベルトポロジ回路等に分類される。本発明のマルチレベル直流トポロジのトポロジ回路は、フライングキャパシタを含むフライングキャパシタ型マルチレベルトポロジ回路であってもよい。
【0030】
本発明の実施形態で提供される技術的解決策を当業者がよりよく理解できるように、以下では、3レベル直流変換装置を例として説明する。
図2は、本発明の実施形態による3レベル直流電流コンバータの回路図である。
図2に示すように、3レベル直流電流コンバータは、高圧電源V
Hと、キャパシタC
1と、スイッチングトランジスタQ
1と、スイッチングトランジスタQ
2と、スイッチングトランジスタQ
3と、スイッチングトランジスタQ
4と、フライングキャパシタC
flyと、インダクタL1と、キャパシタC2と、低圧電源VLとを含む。
【0031】
スイッチングトランジスタQ1、スイッチングトランジスタQ2、スイッチングトランジスタQ3、及びスイッチングトランジスタQ4は、電界効果トランジスタ(field effect transistors、FET)、金属酸化物半導体電界効果トランジスタ(metal-oxide-semiconductor field effect transistors、MOSFET)、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(insulated gate bipolar transistors、IGBT)、接合電界効果トランジスタ(junction field effect transistors、JFET)、接合電界効果トランジスタに並列接続されたダイオードなどであってもよい。ただし、これに限定されるものではない。
【0032】
スイッチングトランジスタQ1のドレイン電極は、高圧電源VH(並列キャパシタC1)の正端に接続され、スイッチングトランジスタQ1のソース電極は、スイッチングトランジスタQ2のドレイン電極と、フライングキャパシタCflyの一端とに接続されている。フライングキャパシタCflyの他端は、スイッチングトランジスタQ3のソース電極と、スイッチングトランジスタQ4のドレイン電極とに接続されている。スイッチングトランジスタQ2のソース電極及びスイッチングトランジスタQ3のドレイン電極はインダクタL1の一端に接続され、インダクタL1の他端は低圧電源VL(並列キャパシタC2)の負端に接続されている。
【0033】
本発明の実施形態では、フライングキャパシタCflyとスイッチングトランジスタとの間の接続関係に基づいてスイッチングトランジスタをグループ化し、フライングキャパシタCflyに接続された2つのスイッチングトランジスタ群を得ることができる。例えば、スイッチングトランジスタQ1及びスイッチングトランジスタQ4はスイッチングトランジスタ群であり、スイッチングトランジスタQ2及びスイッチングトランジスタQ3はスイッチングトランジスタ群である。さらに、マルチレベル直流電流コンバータのスイッチングトランジスタと高圧電源VHとの接続関係によれば、スイッチングトランジスタ群のうち、高圧電源VHの一端に接続されるスイッチングトランジスタを第1スイッチングトランジスタといい、スイッチングトランジスタ群のうち、高圧電源VHの他端に接続されるスイッチングトランジスタを第2スイッチングトランジスタという。例えば、第1スイッチングトランジスタが高圧電源VHの正端に接続されている場合、第1スイッチングトランジスタはスイッチングトランジスタQ1及びスイッチングトランジスタQ2であり得る。第2スイッチングトランジスタが高圧電源VHの負端に接続されている場合、第2スイッチングトランジスタはスイッチングトランジスタQ4及びスイッチングトランジスタQ3であり得る。
【0034】
スイッチングトランジスタ群のうちの第1スイッチングトランジスタ及び第2スイッチングトランジスタは、それらのオンオフ状態が相補的である。例えば、スイッチングトランジスタQ1及びスイッチングトランジスタQ4は、それらのオンオフ状態が相補的である。この場合、スイッチングトランジスタQ1がオン状態のとき、スイッチングトランジスタQ4はオフ状態となる。スイッチングトランジスタQ1はオフ状態であり、スイッチングトランジスタQ4はオン状態である。このように、スイッチングトランジスタ群のうちの第1スイッチングトランジスタ及び第2スイッチングトランジスタにおいてオン状態となっているスイッチングトランジスタのキャリアを用いて電流信号を伝達することができる。
【0035】
同一のスイッチングトランジスタ群のうちの第1スイッチングトランジスタ及び第2スイッチングトランジスタは、それらのオンオフ状態が相補的であるので、スイッチングトランジスタ群のうちの第1スイッチングトランジスタがオフ状態となった場合には、スイッチングトランジスタ群のうちの第2スイッチングトランジスタをオン状態に制御されるべきである。スイッチングトランジスタ群のうちの第1スイッチングトランジスタが閉状態となった場合には、スイッチングトランジスタ群のうちの第2スイッチングトランジスタをオフ状態に制御されるべきである。以下では、スイッチングトランジスタ群のうちの第のスイッチングトランジスタの制御方法について説明する。スイッチングトランジスタ群のうちの第2スイッチングトランジスタの制御方法については、対応する調整のための第1スイッチングトランジスタを制御する方法の記述を参照する。以下では、スイッチングトランジスタ群のうちの第のスイッチングトランジスタの制御方法について説明する。スイッチングトランジスタ群のうちの第2スイッチングトランジスタの制御方法については、対応する調整のための第1スイッチングトランジスタを制御する方法の記述を参照する。
【0036】
本明細書では、説明のための例として、1つのフライングキャパシタが使用されている。実際には、2つ以上のフライングキャパシタがあってもよく、例えば、
図2には示されていないが、フライングキャパシタCflyに直列に接続されたフライングキャパシタがあってもよい。あるいは、2つのフライングキャパシタが5レベル直流電流コンバータに格納され得、1つのフライングキャパシタは第1スイッチングトランジスタ群及び第2スイッチングトランジスタ群に並列に接続され得る。5レベル直流電流コンバータにおいて、第2スイッチングトランジスタ群は、第1サブスイッチ群及び第2サブスイッチ群を含み、第1サブスイッチ群及び第2サブスイッチ群は、他のフライングキャパシタに並列に接続される。本発明は、インダクタの大きさや数量を限定するものではなく、マルチレベル直流電流コンバータは、インダクタに接続されたコンデンサや抵抗器などをさらに含み得る。
【0037】
3レベル直流電流コンバータは、
図3のスイッチングトランジスタ群を制御するように構成されたコントローラ101をさらに含むことができる。コントローラ101は、パルス幅変調(pulse width modulation、PWM)デバイス、PWM技術に基づくバッテリ管理システム(battery management system、BMS)、マイクロ制御ユニット(micro control unit、MCU)、中央処理ユニット(central processing unit、CPU)、他の汎用プロセッサ、デジタル信号プロセッサ(digital signal processor、DSP)、特定用途向け集積回路(application specific integrated circuit、ASIC)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(field-programmable gate array、FPGA)、又は、他のプログラマブルロジックデバイス、個別のゲート又はトランジスタ論理デバイス、個別のハードウェアコンポーネントなどであってもよい。コントローラは、通信接続を有する1つ以上のチップとして理解することができる。コントローラは、各スイッチングトランジスタに対応する制御ユニットを含み得るか、又は、スイッチングトランジスタ群に対応する制御ユニットを含み得、例えば、スイッチングトランジスタQ
1及びスイッチングトランジスタQ
4に対応するパルス幅モジュレータ、又は、スイッチングトランジスタQ
2及びスイッチングトランジスタQ
3に対応するパルス幅モジュレータを含み得る。ただし、これに限定されない。
【0038】
スイッチングトランジスタQ1、スイッチングトランジスタQ2、スイッチングトランジスタQ3及びスイッチングトランジスタQ4のキャリアは、PWM技術を用いて変調され、スイッチングトランジスタのオン状態及びオフ状態が制御されて、リアルタイム双方向電力フローを実現することができる。3レベル直流電流コンバータの低圧電源VLに負荷が接続されると、3レベル直流電流コンバータの入力端が高圧電源VHであり、3レベル直流電流コンバータの出力端が低圧電源VLであり、3レベル直流電流コンバータの電流は高圧電源VHから低圧電源VLに流れる。3レベル直流電流コンバータの高圧電源VHに負荷が接続されると、3レベル直流電流コンバータの入力端が低圧電源VLであり、3レベル直流電流コンバータの出力端が高圧電源VHであり、3レベル直流電流コンバータの電流は低圧電源VLから高圧電源VHに流れる。
【0039】
さらに、インダクタL1の電流方向を決定することによってフライングキャパシタの充放電時間が調整され、フライングキャパシタの電圧を制御することができる。例えば、スイッチングトランジスタQ1及びスイッチングトランジスタQ3がオンすると、スイッチングトランジスタQ1、スイッチングトランジスタQ3及びインダクタL1を用いて高圧電源VHが低圧電源VLに作用する。インダクタL1の電流が高圧電源VHから低圧電源VLに流れると(電流方向が正)、フライングキャパシタCflyが充電され、電圧が増大する。インダクタL1の電流が低圧電源VLから高圧電源VHに流れると(電流方向が負)、フライングキャパシタCflyが放電して電圧が減少する。スイッチングトランジスタQ2及びスイッチングトランジスタQ4がオンになると、スイッチングトランジスタQ2、スイッチングトランジスタQ4及びインダクタL1を用いて、フライングキャパシタCflyが低圧電源VLに作用する。インダクタL1の電流方向が正の場合、フライングキャパシタCflyが放電して電圧が減少する。インダクタL1の電流方向が負の場合、フライングキャパシタCflyが充電されて電圧が増大する。
【0040】
本発明の実施形態では、フライングキャパシタCflyの電圧を略してフライング電圧と称し、インダクタの電流を略してインダクタ電流と称する。インダクタ電流が小さく、インダクタ電流が高周波三角波で、正負を繰り返し切り替える場合は、軽負荷と称され得る。逆に、インダクタ電流が大きく、常に正又は負である場合は、重負荷と称され得る。デューティサイクル間の差は略してデューティサイクル差と称され、位相のずれや位相間の差は略して位相差と称され得る。位相シフト制御方法は、固定デューティサイクルを前提に位相を調整する方法である。デューティサイクル調整方法は、固定位相を前提にデューティサイクルを調整する方法である。このようにして、調整の統一性を向上させることができ、影響電圧を円滑に変化させることができる。
【0041】
3レベル直流電流コンバータが定常動作する場合、スイッチングトランジスタQ1(スイッチングトランジスタQ3)及びスイッチングトランジスタQ2(スイッチングトランジスタQ4)のデューティサイクルは等しく、位相シフトは180°である。換言すると、スイッチングトランジスタQ1とスイッチングトランジスタQ2とのキャリア間の位相差は180°である。したがって、スイッチングトランジスタQ1とスイッチングトランジスタQ2のデューティサイクルの差(略してデューティサイクル差ともいう)を調整することにより、3レベル直流電流コンバータの定常動作を実現することができる。例えば、高圧電源VHから低圧電源VLに電力が流れる(高圧電源VHから低圧電源VLに電流が流れる)場合には、スイッチングトランジスタQ1のデューティサイクルを増大させ、スイッチングトランジスタQ2のデューティサイクルを低減させることにより、すなわち、スイッチングトランジスタQ1とスイッチングトランジスタQ2とのデューティサイクル差を大きくすることにより、フライング電圧を増大させ、逆に、スイッチングトランジスタQ1のデューティサイクルを低減させ、スイッチングトランジスタQ2のデューティサイクルを増大させることにより、すなわち、スイッチングトランジスタQ1とスイッチングトランジスタQ2とのデューティサイクル差を小さくすることにより、フライング電圧を減少させることができる。低圧電源VLから高圧電源VHに電力が流れる(低圧電源VLから高圧電源VHに電流が流れる)場合には、スイッチングトランジスタQ1のデューティサイクルを低減させ、スイッチングトランジスタQ2のデューティサイクルを増大させることにより、すなわちスイッチングトランジスタQ1とスイッチングトランジスタQ2との間のデューティサイクル差を小さくすることによってフライング電圧を高くすることができ、逆に、スイッチングトランジスタQ1のデューティサイクルを増大させ、スイッチングトランジスタQ2のデューティサイクルを低減させることにより、すなわちスイッチングトランジスタQ1とスイッチングトランジスタQ2とのデューティサイクル差を大きくすることにより、フライング電圧を低くすることができる。
【0042】
しかしながら、軽負荷の場合、瞬間電流方向に基づいてフライングキャパシタの電圧を制御することは、制御チップ上の要求が極めて高く、実際のプロジェクトには適用できない。たとえ、フライングキャパシタに並列接続されたスイッチングトランジスタ群における第1スイッチングトランジスタ(例えば、スイッチングトランジスタQ1及びスイッチングトランジスタQ2)又は第2スイッチングトランジスタ(例えば、スイッチングトランジスタQ3とスイッチングトランジスタQ4)のデューティサイクルの間の差を大きな値に調整したとしても、フライングキャパシタの電圧を効果的に増減させることができなくなり、フライングキャパシタの電圧を目標値に安定させるという制御目標を達成できなくなる。
【0043】
そこで、本発明では、マルチレベル直流電流コンバータを提案する。マルチレベル直流電流コンバータのコントローラは次のように構成されている:フライングキャパシタの基準電圧とサンプリング電圧との間の差の絶対値が第1閾値よりも大きい場合、インダクタ電流の大きさに基づいて、2つのスイッチングトランジスタ群のうちの第1スイッチングトランジスタ間のデューティサイクル差、又は、2つのスイッチングトランジスタ群のうちの第1スイッチングトランジスタのキャリア間の位相差を調整する。
【0044】
フライングキャパシタのサンプリング電圧は、収集されたリアルタイム電圧である。フライングキャパシタの基準電圧は、フライングキャパシタに対して調整されるべき目標値である。例えば、3レベル直流電流コンバータの目標値は、高圧電源の電圧の1/2倍であってもよい。インダクタの電流は、インダクタ電流とも称され、瞬時電流値であってもよいし、平均値であってもよい。なお、第1閾値は特に限定されない。第1閾値は、0等であってもよい。フライングキャパシタの基準電圧とサンプリング電圧との差の絶対値が第1閾値より大きい場合は、フライングキャパシタの電圧が目標値に調整されていないことを示し、フライングキャパシタ側に並列に接続されたスイッチングトランジスタ間のデューティサイクル差、又は、フライングキャパシタ側の第1スイッチングトランジスタのキャリア間の位相差を調整し続けることができ、フライングキャパシタの電圧を制御でき、マルチレベル直流電流コンバータの電圧ストレスを低減することができることが理解されよう。フライングキャパシタのサンプリング電圧と基準電圧との間の差が第1閾値以下であれば、フライングキャパシタの電圧が目標値に調整されたことを示し、電流動作状態は維持されることができ、フライングキャパシタは動作し続けることができる。このようにして、マルチレベル直流電流コンバータの動作安定性を向上させることができる。
【0045】
なお、位相差及びデューティサイクル差の調整方法は、本発明において限定されるものではない。ここでは、スイッチングトランジスタQ1及びスイッチングトランジスタQ2を例として説明する。デューティサイクル差を調整することを決定した後、電流方向に基づく上記調整方法に基づいて調整を行い得る。例えば、高圧電源から低圧電源へと電流が流れる場合に、フライングキャパシタCflyのサンプリング電圧がフライングキャパシタCflyの基準電圧よりも小さいときは、2つのスイッチングトランジスタ群のうちの第1スイッチングトランジスタ間のデューティサイクル差が増大される。換言すると、スイッチングトランジスタQ1のデューティサイクルが増大され、スイッチングトランジスタQ2のデューティサイクルが低減され、フライング電圧が増大されることができる。あるいは、高圧電源から低圧電源に電流が流れる場合に、フライングキャパシタCflyのサンプリング電圧がフライングキャパシタCflyの基準電圧よりも大きいと、2つのスイッチングトランジスタ群の第1スイッチングトランジスタのあいだのデューティサイクル差を低減し得る。換言すると、スイッチングトランジスタQ1のデューティサイクルを低減させ、スイッチングトランジスタQ2のデューティサイクルを増大させて、フライング電圧を低減し得る。あるいは、低圧電源から高圧電源に電流が流れる場合に、フライングキャパシタCflyのサンプリング電圧がフライングキャパシタCflyの基準電圧よりも小さいと、2つのスイッチングトランジスタ群のうちの第1スイッチングトランジスタの間のデューティサイクル差を低減され得る。換言すると、スイッチングトランジスタQ1のデューティサイクルが低減され、スイッチングトランジスタQ2のデューティサイクルが増大され、フライング電圧を増大させ得る。あるいは、低圧電源から高圧電源に電流が流れる場合に、フライングキャパシタCflyのサンプリング電圧がフライングキャパシタCflyの基準電圧よりも大きいと、2つのスイッチングトランジスタ群のうちの第1スイッチングトランジスタのデューティサイクル差を増大させ得る。換言すると、スイッチングトランジスタQ1のデューティサイクルを増大させ、スイッチングトランジスタQ2のデューティサイクルを低減させて、フライング電圧を低減させることができる。このようにして、デューティサイクル差を調整することが決定されると、インダクタ電流の方向に基づいてフライングキャパシタCflyの電圧が調整される。
【0046】
フライングキャパシタCflyの位相差を調整する原理は:フライングキャパシタCflyの充電時間(面積)がフライングキャパシタCflyの放電時間(面積)よりも大きくなるように、第1スイッチングトランジスタ(又は第2スイッチングトランジスタ)のキャリア間の位相差を大きくして、フライングキャパシタCflyの電圧を増大させるか、又は、フライングキャパシタCflyの充電時間(面積)がフライングキャパシタCflyの放電時間(面積)よりも小さくなるように、第1スイッチングトランジスタ(又は第2スイッチングトランジスタ)のキャリア間の位相差を小さくして、フライングキャパシタCflyの電圧を低減させることである。したがって、可能な実施例では、2つのスイッチングトランジスタ群のうちの第1スイッチングトランジスタのキャリア間の位相差をインダクタ電流の大きさに基づいて調整すると決定され、フライングキャパシタCflyのサンプリング電圧がフライングキャパシタCflyの基準電圧よりも小さい場合、2つのスイッチングトランジスタ群のうちの第1スイッチングトランジスタのキャリア間の位相差を調整するステップを含む。あるいは、2つのスイッチングトランジスタ群のうちの第1スイッチングトランジスタのキャリア間の位相差をインダクタ電流の大きさに基づいて調整すると決定され、フライングキャパシタCflyのサンプリング電圧がフライングキャパシタCflyの基準電圧よりも大きい場合、2つのスイッチングトランジスタ群のうちの第1スイッチングトランジスタのキャリア間の位相差を小さくする。
【0047】
本発明では、位相差を調整する方法を使用するか、デューティサイクル差を調整する方法を使用するかは限定されない。まず、マルチレベル直流電流コンバータの動作状態を解析する。
図4~
図9は、本発明による3レベル直流電流コンバータの動作モード図である。V
0は、サイクル開始時のフライング電圧V
flyであり;V
1は、サイクル中の任意の時点のフライング電圧V
flyであり;V
2は、サイクル終了時のフライング電圧V
flyであり;I
Lは、インダクタ電流であり、以下の式でi(t)を用いて表すこともでき;N/A/B/C/Mは、インダクタ電流I
Lのピーク値であり;T
0~T
3は、スイッチサイクルにおける異なる層の時点である。デッドバンドdは、異なるモードで異なるフリーホイーリングループを引き起こす可能性があり、T
0~T
3の値が変化すると考えられ;m/k/nは図中の対応する直線の傾きである。
【0048】
以下では、Pはスイッチサイクルであり、D
1はスイッチングトランジスタQ
1のデューティサイクルであり、D
2はスイッチングトランジスタQ
2のデューティサイクルである。3レベル直流電流コンバータのデューティサイクルDは、理想的な場合におけるコンバータの定常状態のデューティサイクルとして理解することができる。理想的な場合、3レベル直流電流コンバータのデューティサイクルDは、スイッチングトランジスタQ
1のデューティサイクルD
1と等しく、スイッチングトランジスタQ
2のデューティサイクルD
2と等しい。実際には、フライング電圧が目標値から外れるため、スイッチングトランジスタQ
1とスイッチングトランジスタQ
2との間のデューティサイクル差、あるいはスイッチングトランジスタQ
1とスイッチングトランジスタQ
2のキャリアとの間の位相差を調整する必要がある。デューティサイクルDが0.5未満であれば、スイッチングトランジスタQ
1のデューティサイクルD
1及びスイッチングトランジスタQ2のデューティサイクルD
2の両方が0.5未満であることを示す。デューティサイクルDが0.5より大きければ、スイッチングトランジスタQ1のデューティサイクルD
1及びスイッチングトランジスタQ
2のデューティサイクルD2の両方が0.5より大きいことを示す。
図4~
図9は、それぞれモード1、モード2、モード3、モード4、モード5、モード6に対応する。
【0049】
モード1:デューティサイクルDが0.5未満であり、インダクタ電流I
Lが常に正、すなわち高負荷の場合である。
図4を参照すると、T
0=D
1P、T
1=P/2、T
2=P/2+D
2、T
3=P。
【0050】
モード2:デューティサイクルDは0.5未満であり、インダクタ電流I
Lは常に負、つまり重負荷の場合である。
図5を参照すると、T
0=(D
1+2d)P、T
1=P/2’、T
2=P/2+(D
2+2d)P、T
3=P。
【0051】
モード3:デューティサイクルDが0.5未満であり、インダクタ電流I
L(t)が負であっても正であってもよく、すなわち軽負荷の場合である。
図6を参照すると、T
0=(D
1+d)P、T
1=P/2’、T
2=P/2+(D
2+d)P、T
3=P。
【0052】
モード4:デューティサイクルDは0.5より大きく、インダクタ電流I
Lが常に正であってもよく、すなわち重負荷の場合である。
図7を参照すると、T
0=(1-D
1)P、T
1=P/2’、T
2=P/2+(1-D
2)P、T
3=P。
【0053】
モード5:デューティサイクルDは0.5より大きく、インダクタ電流I
Lが常に負であってもよく、すなわち軽負荷の場合である。
図8を参照すると、T
0=[1-(D
1+2d)]P、T
1=P/2’、T
2=P/2+[1-(D
2+2d)]P、T
3=P。
【0054】
モード6:デューティサイクルDが0.5より大きく、インダクタ電流I
Lが負又は正であってもよく、すなわち軽負荷の場合である。
図9を参照すると、T
0=[1-(D
1+d)]P、T
1=P/2、T
2=P/2+[1-(D
2+d)]P、T
3=P。
【0055】
座標系を適切に設定し、
図4~6のインダクタ電流のフリーホイーリングループに基づいて、モード1、モード2及びモード3において、デッドバンドdが統合分析のためにデューティサイクルD
1とデューティサイクルD
2に組み合わされ得る。
図7~9のインダクタ電流のフリーホイーリングループに基づいて、モード4、モード5及びモード6において、デッドバンドdが統合分析のためにデューティサイクルD
1とデューティサイクルD
2に組み合わされ得る。以下では、モード1とモード4を例に説明する。
【0056】
スイッチサイクルにおいて、フライングキャパシタの電圧変動は、フライングキャパシタに流れる電流を積分することにより、例えば式(1)のように求めることができる。
【数1】
【0057】
式(2)は、式(1)の共通部分を計算することにより得られる。
【数2】
【0058】
m、n及びkの値は次式を参照し、式中のLはインダクタの大きさである。
【数3】
【0059】
スイッチングトランジスタQ
1(又はスイッチングトランジスタQ
3)とスイッチングトランジスタQ
2(又はスイッチングトランジスタQ
4)のキャリア間の位相差が180°に固定されていれば、デューティサイクルD
1及びデューティサイクルD
2を調整することにより、異なるデューティサイクル差によるフライング電圧への影響を求めることができる。例えば、D<0.5の場合、モード1の時間T
0~時間T
3を式(2)に代入すると式(3)が得られる。
【数4】
【0060】
D>0.5の場合、モード4の時間T0~時間T3を式(2)に代入すると式(4)が得られる。
【数5】
【0061】
デューティサイクルD
1及びデューティサイクルD
2のデューティサイクルがDに固定され(0~1の任意の固定値であり得る)、スイッチングトランジスタQ
1(又はスイッチングトランジスタQ
4)及びスイッチングトランジスタQ
2(又はスイッチングトランジスタQ
3)のキャリア間の位相差がΔθに調整される場合、異なる位相差によるフライング電圧への影響、すなわち位相シフト制御によるフライング電圧への影響を得ることができる。D<0.5の場合、モード1の時刻T
0~時刻T
3を式(2)に代入すると式(5)が得られる。
【数6】
【0062】
D>0.5の場合、モード4の時刻T
0~時刻T
3を式(2)に代入すると式(6)が得られる。
【数7】
【0063】
式(5)及び式(6)によれば、位相シフト制御下では、フライング電圧は、軽負荷時と重負荷時及び正負の電力流れ方向において一貫した調整方向(a consistent adjustment direction)を有する。換言すると、位相差が大きくなるとフライング電圧は大きくなり、位相差が小さくなるとフライング電圧は小さくなる。この関係は、デッドバンドとは無関係である。
【0064】
次に、
図10~
図13を参照する。
図10~
図13は、それぞれ、本発明におけるデューティサイクル差とフライング電圧、フライング電圧と位相差とインダクタ電流の関係を示す図である。
図10及び
図11を用いて、固定位相差と固定デューティサイクル差の場合における、異なる負荷によるフライング電圧の変化に対する影響を説明する。横軸はインダクタ電流IL、縦軸はフライング電圧の変化量△V
flyである。固定デューティサイクル差に対応する実線は、第1スイッチングトランジスタに対して同じデューティサイクル差を調整した場合の、異なる負荷におけるフライングキャパシタの電圧の調整強度を示す。固定位相差に対応する破線は、第1スイッチングトランジスタに対して同じデューティサイクル差を調整した場合の、異なる負荷におけるフライングキャパシタの電圧の調整強度を示す。
図10では、例としてD<0.5、D=0.34で、式(3)及び式(5)を使用する適用シナリオを使用している。
図11は、例としてD>0.5、D=0.8で、式(4)及び式(6)を使用する適用シナリオを使用している。
図10及び
図11から、軽負荷(インダクタ電流は高周波の三角波であり、正負を繰り返しており、値は比較的小さく、破線が実線より大きく、図中の値0に近い部分であり得る)ではフライング電圧の変化値が小さいことが分かる。また、デューティサイクルを調整すると、フライング電圧は逆に変化する。負荷が徐々に大きくなると、フライング電圧の変化値は徐々に大きくなるので、高負荷ではデューティサイクルを調整することでフライング電圧を制御できる。換言すると、デューティサイクルを調整する方法は、負荷が徐々に小さくなるにつれて、フライング電圧の制御強度が急激に低下する。これに対して、位相シフト制御の制御強度は、軽負荷時に強く、重負荷時に弱いため、軽負荷時に位相シフトを制御することができる。換言すると、位相差を調整してフライング電圧を制御する。
【0065】
図12及び
図13を用いて、固定負荷時のフライング電圧の変化に対する固定デューティサイクル差及び固定位相差の影響について説明する。横軸はデューティサイクルD、縦軸はフライング電圧の変化量△V
flyである。
図12は重負荷に適用されており、
図13は軽負荷に適応されている。
図12及び
図13から、位相シフト制御方式では、デューティサイクルが徐々に大きくなるにつれて、フライング電圧の制御強度が急速に低下することが分かる。しかし、軽負荷時では、位相シフト制御方式の方がデューティサイクル調整方式よりも大きな調整強度を維持することができる。このように、軽負荷時では、位相シフト制御方式を用いてフライング電圧を制御することができる。重負荷時では、デューティサイクルを調整することでフライング電圧を制御することができる。
【0066】
このことから、可能な実施例では、インダクタ電流が第2閾値未満であることに応じて、2つのスイッチングトランジスタ群のうちの第1スイッチングトランジスタのキャリア間の位相差を調整するように制御装置を構成することが考えられる。あるいは、コントローラが、インダクタ電流が第3閾値より大きいことに応答して、2つのスイッチングトランジスタ群のうちの第1スイッチングトランジスタ間のデューティサイクル差を調整するように構成されている。あるいは、コントローラは、インダクタ電流が第2閾値以上かつ第3閾値以下であることに応答して、以前の瞬間における調整方法にしたがって、2つのスイッチングトランジスタ群のうちの第1スイッチングトランジスタ間のデューティサイクル差、又は、2つのスイッチングトランジスタ群のうちの第1スイッチングトランジスタの前記キャリア間の位相差を調整するように構成されている。
【0067】
第2閾値及び第3閾値の値は、本発明では限定されず、第2閾値は、第3閾値より小さい。なお、インダクタの電流が第2閾値より小さい場合は、インダクタの電流が小さいことを示し、電流が軽負荷の場合であり得る。デューティサイクル差を調整しないことを前提として、位相シフト制御方法を用いて、2つのスイッチングトランジスタ群のうちの第1スイッチングトランジスタのキャリア間の位相差を調整し得る。インダクタの電流が第3閾値より大きい場合は、インダクタの電流が大きいことを示し、電流が重負荷の場合であり得る。位相差を調整しないことを前提として、デューティサイクル調整方法を用いて、2つのスイッチングトランジスタ群のうちの第1スイッチングトランジスタ間のデューティサイクル差を調整し得る。インダクタの電流が第2閾値以上、第3閾値以下の場合は、インダクタは軽負荷と重負荷の中間状態であり、調整は以前の瞬間における調整方法で実行され得る。例えば、以前の瞬間において位相シフト制御方法を用いた場合は、引き続き位相シフト制御方法が用いられるか、又は、以前の瞬間においてデューティサイクル調整方法を用いた場合は、引き続きデューティサイクル調整方法が用いられる。このように、上記3つの場合を用いてフライング電圧を制御することができ、したがって、制御されたフライングキャパシタの電圧が滑らかに推移しつづけることができる。
【0068】
例えば、ヒステリシスモジュールと、ヒステリシスモジュールに接続された第1パルス幅モジュレータ及び第2パルス幅モジュレータとを含むことができる。第1パルス幅モジュレータは、フライングキャパシタに接続されたスイッチングトランジスタ群のうちの第1スイッチングトランジスタ(又は第2スイッチングトランジスタ)の位相又はデューティサイクルを調整するように構成され、第2パルス幅モジュレータは、フライングキャパシタに接続された別のスイッチングトランジスタ群のうちの第1スイッチングトランジスタ(又は第2スイッチングトランジスタ)の位相又はデューティサイクルを調整するように構成される。例えば、第1パルス幅モジュレータは、スイッチングトランジスタQ1又はスイッチングトランジスタQ4の位相又はデューティサイクルを調整するように構成され、第2パルス幅モジュレータは、スイッチングトランジスタQ2又はスイッチングトランジスタQ3の位相又はデューティサイクルを調整するように構成される。ヒステリシスモジュールは、デューティサイクルコントローラ及び位相コントローラを含むことができる。デューティサイクルコントローラは、第1パルス幅モジュレータ及び第2パルス幅モジュレータを制御して、デューティサイクル制御ループを実行し、2つのスイッチングトランジスタ間のデューティサイクル差を調整するように構成される。位相コントローラは、第1パルス幅モジュレータ及び第2パルス幅モジュレータを制御して位相制御ループを実行し、2つのスイッチングトランジスタのキャリア間の位相差を調整するように構成される。
【0069】
ヒステリシスモジュールは:フライングキャパシタの基準電圧とサンプリング電圧との間の差の絶対値が第1閾値より大きいことに応答して、インダクタ電流の大きさに基づいて、第1パルス幅モジュレータと、第2パルス幅モジュレータと、を制御し、2つのスイッチングトランジスタ群のうちの第1スイッチングトランジスタのキャリア間の位相差、又は、2つのスイッチングトランジスタ群のうちの第1スイッチングトランジスタ間のデューティサイクル差を調整する、ように構成されている。
【0070】
ヒステリシスモジュールは:ヒステリシスモジュールが、インダクタ電流の大きさに基づいて、2つのスイッチングトランジスタ群のうちの第1スイッチングトランジスタのキャリア間の位相差を調整すると決定する場合、フライングキャパシタのサンプリング電圧がフライングキャパシタの基準電圧より小さい場合、2つのスイッチングトランジスタ群のうちの第1スイッチングトランジスタのキャリア間の位相差を増大させる。あるいは、フライングキャパシタのサンプリング電圧がフライングキャパシタの基準電圧より大きい場合、2つのスイッチングトランジスタ群のうちの第1スイッチングトランジスタのキャリア間の位相差を減少させる。
【0071】
ヒステリシスモジュールは特に以下のように構成されている:ヒステリシスモジュールが、インダクタ電流の大きさに基づいて、2つのスイッチングトランジスタ群のうちの第1スイッチングトランジスタ間の位相差を調整すると決定する場合に、高圧電源から低圧電源に電流が流れると、2つのスイッチングトランジスタ群のうちの第1スイッチングトランジスタ間のデューティサイクル差を増大させ、フライングキャパシタのサンプリング電圧はフライングキャパシタの基準電圧よりも小さいか;又は、高圧電源から低圧電源に電流が流れると、2つのスイッチングトランジスタ群のうちの第1スイッチングトランジスタ間のデューティサイクル差を減少させ、フライングキャパシタのサンプリング電圧はフライングキャパシタの基準電圧よりも大きいか;又は、低圧電源から高圧電源に電流が流れると、2つのスイッチングトランジスタ群のうちの第1スイッチングトランジスタ間のデューティサイクル差を減少させ、フライングキャパシタのサンプリング電圧はフライングキャパシタの基準電圧よりも小さいか;又は、低圧電源から高圧電源に電流が流れると、2つのスイッチングトランジスタ群のうちの第1スイッチングトランジスタ間のデューティサイクル差を増加させ、フライングキャパシタのサンプリング電圧はフライングキャパシタの基準電圧よりも大きい。
【0072】
ヒステリシスモジュールは特に以下のように構成されている:電流が第2閾値より小さいことに応答して、第1パルス幅モジュレータ及び第2パルス幅モジュレータを制御して、2つのスイッチングトランジスタ群のうちの第1スイッチングトランジスタのキャリア間の位相差を調整するか;又は、電流が第3閾値より大きいことに応答して、第1パルス幅モジュレータ及び第2パルス幅モジュレータを制御して、2つのスイッチングトランジスタ群のうちの第1スイッチングトランジスタ間のデューティサイクル差を調整するか;又は、電流が第2閾値以上であり、第3閾値以下であることに応答して、以前の瞬間に調整方法にしたって第1パルス幅モジュレーション及び第2パルス幅モジュレーションを制御して、2つのスイッチングトランジスタ群のうちの第1スイッチングトランジスタのキャリア間の位相差又は2つのスイッチングトランジスタ群のうちの第1スイッチングトランジスタ間のデューティサイクル差を調整する。
【0073】
第1スイッチングトランジスタがスイッチングトランジスタQ
1とスイッチングトランジスタQ
2である例で説明する。
図14は、本発明によるコントローラによるフライングキャパシタの電圧調整の概略フローチャートである。
図14に示すように、ヒステリシスモジュールは、まず、フライングキャパシタのサンプリング電圧V
fly_adとフライングキャパシタの基準電圧V
fly_refとの間の差の絶対値が第1閾値より大きいか否かを判定する。フライングキャパシタのサンプリング電圧V
fly_adとフライングキャパシタの基準電圧V
fly_refとの差が第1閾値より大きく、かつ、インダクタ電流の平均値i
LAVGが第2閾値より小さい場合、デューティサイクルを変化させないように制御する(デューティサイクル制御ループの線形変化を制限する出力を0とする)ことを前提として、位相コントローラに対応する位相シフト制御ループを制御し、したがって、第1パルス幅モジュレータは、デューティサイクル制御ループの電流出力結果を、インダクタ電流の方向に基づいて定常状態のデューティサイクルに適用する。その後、第2パルス幅モジュレータは、位相シフト制御ループの出力結果を、第2パルス幅モジュレータに対応するスイッチングトランジスタのキャリアに加算し、したがって、第1パルス幅モジュレータに対応するスイッチングトランジスタQ
1と第2パルス幅モジュレータに対応するスイッチングトランジスタQ
2とのキャリア間の位相差を180°付近で動的に調整する。i
LAVGが第三の閾値より大きい場合には、制御位相差を変化させないことを前提として、デューティサイクルコントローラに対応するデューティサイクル制御ループを制御し、したがって、第1パルス幅モジュレータ及び第2パルス幅モジュレータは、インダクタ電流の方向に基づいて、位相シフト制御ループの電流出力結果を、第2パルス幅モジュレータに対応するキャリアに適用し、スイッチングトランジスタQ
1とスイッチングトランジスタQ
2との間のデューティサイクル差を0付近で動的に調整する。i
LAVGが第2閾値と第3閾値との間にある場合には、以前の瞬間における調整方法を維持して動作のために位相コントローラに対応する位相シフト制御ループを制御し、したがって、第1パルス幅モジュレータ及び第2パルス幅モジュレータは、スイッチングトランジスタQ
1とスイッチングトランジスタQ
2とのキャリア間の位相差を調整するか、又は、動作のためにデューティサイクルコントローラに対応するデューティサイクル制御ループを制御し、したがって、第1パルス幅モジュレータ及び第2パルス幅モジュレータは、スイッチングトランジスタQ
1とスイッチングトランジスタQ
2との間のデューティサイクル差を調整する。
【0074】
図15は、本発明の一実施形態によるフライングキャパシタの電圧制御方法の模式的フローチャートを示す図である。前記フライングキャパシタはマルチレベル直流電流コンバータに使用され、マルチレベル直流電流コンバータは、少なくとも1つのフライングキャパシタと、フライングキャパシタに接続された2つのスイッチングトランジスタ群と、スイッチングトランジスタ群の各々及びマルチレベル直流電流コンバータの低圧電源の正電極に接続されたインダクタと、スイッチングトランジスタ群を制御するように構成されたコントローラと、を備える。スイッチングトランジスタ群の各々は、第1スイッチングトランジスタ及び第2スイッチングトランジスタを備え、それらのオンオフ状態は相補的である。
図15に示すように、電圧制御方法は、ステップS101を含むことができる。
【0075】
S101:フライングキャパシタの基準電圧とサンプリング電圧との間の差の絶対値が第1閾値よりも大きい場合、コントローラは、インダクタ電流の大きさに基づいて、2つのスイッチングトランジスタ群のうちの第1スイッチングトランジスタ間のデューティサイクル差、又は、2つのスイッチングトランジスタ群のうちの第1スイッチングトランジスタのキャリア間の位相差を調整する。
【0076】
フライングキャパシタの基準電圧とサンプリング電圧との差の絶対値が第1閾値より大きい場合、フライングキャパシタの電圧が目標値に調整されていないことを示し、フライングキャパシタ側に並列に接続されたスイッチングトランジスタ間の位相差、又は、その側に並列に接続されたスイッチングトランジスタ間のデューティサイクル差はさらに調整されることができ、フライングキャパシタの電圧を制御することができる。このようにして、マルチレベル直流電流コンバータの動作安定性が向上する。
【0077】
可能な実施例では、インダクタ電流の大きさに基づいて、2つのスイッチングトランジスタ群のうちの第1スイッチングトランジスタ間のデューティサイクル差又は2つのスイッチングトランジスタ群のうちの第1スイッチングトランジスタのキャリア間の位相差を調整する方法は以下のステップを含む:インダクタ電流の大きさに基づいて、2つのスイッチングトランジスタ群のうちの第1スイッチングトランジスタのキャリア間の位相差を調整すると決定され、かつ、サンプリング電圧がフライングキャパシタの基準電圧よりも小さい場合、2つのスイッチングトランジスタ群のうちの第1スイッチングトランジスタのキャリア間の位相差を増大させるステップ;又は、インダクタ電流の大きさに基づいて、2つのスイッチングトランジスタ群のうちの第1スイッチングトランジスタのキャリアの間に位相差を調整することが決定され、かつ、サンプリング電圧がフライングキャパシタの基準電圧よりも大きい場合、2つのスイッチングトランジスタ群のうちの第1スイッチングトランジスタのキャリア間の位相差を減少させるステップ。このように、2つのスイッチングトランジスタ群のうちの第1スイッチングトランジスタのキャリア間の位相差を大きくすることにより、フライングキャパシタの電圧が増大する。2つのスイッチングトランジスタ群のうちの第1スイッチングトランジスタのキャリア間の位相差を低減することにより、フライングキャパシタの電圧が低減する。
【0078】
可能な実施例では、インダクタ電流の大きさに基づいて、2つのスイッチングトランジスタ群のうちの第1スイッチングトランジスタ間のデューティサイクル差又は2つのスイッチングトランジスタ群のうちの第1スイッチングトランジスタのキャリア間の位相差を調整する方法は以下のステップを含む:ヒステリシスモジュールが、インダクタ電流の大きさに基づいて、2つのスイッチングトランジスタ群のうちの第1スイッチングトランジスタ間のデューティサイクル差を調整すると決定する場合に、高圧電源から低圧電源に電流が流れると、2つのスイッチングトランジスタ群のうちの第1スイッチングトランジスタ間のデューティサイクル差を増大させるステップであって、フライングキャパシタのサンプリング電圧はフライングキャパシタの基準電圧よりも小さい、ステップ;又は、高圧電源から低圧電源に電流が流れると、2つのスイッチングトランジスタ群のうちの第1スイッチングトランジスタ間のデューティサイクル差を減少させるステップであって、フライングキャパシタのサンプリング電圧はフライングキャパシタの基準電圧よりも大きい、ステップ;又は、低圧電源から高圧電源に電流が流れると、2つのスイッチングトランジスタ群のうちの第1スイッチングトランジスタ間のデューティサイクル差を減少させ、フライングキャパシタのサンプリング電圧はフライングキャパシタの基準電圧よりも小さいか;又は、低圧電源から高圧電源に電流が流れると、2つのスイッチングトランジスタ群のうちの第1スイッチングトランジスタ間のデューティサイクル差を増大させるステップであって、フライングキャパシタのサンプリング電圧はフライングキャパシタの基準電圧よりも大きい、ステップ。このように、デューティサイクル差が調整されると決定される場合、フライングキャパシタの電圧は、インダクタ電流の方向に基づいて調整される。
【0079】
可能な実施例では、インダクタ電流の大きさに基づいて、2つのスイッチングトランジスタ群のうちの第1スイッチングトランジスタ間のデューティサイクル差又は2つのスイッチングトランジスタ群のうちの第1スイッチングトランジスタのキャリア間の位相差を調整する方法は以下のステップを含む:インダクタ電流が第2閾値より小さい場合、2つのスイッチングトランジスタ群のうちの第1スイッチングトランジスタのキャリア間の前記位相差を調整するステップ;又は、インダクタ電流が第3閾値より大きい場合、2つのスイッチングトランジスタ群の第1スイッチングトランジスタ間のデューティサイクル差を調整するステップ;又は、インダクタ電流が第2閾値以上であり、第3閾値以下である場合、以前の瞬間における調整方法にしたがって、2つのスイッチングトランジスタ群のうちの第1スイッチングトランジスタのキャリア間の位相差又は2つのスイッチングトランジスタ群のうちの第1スイッチングトランジスタ間のデューティサイクル差を調整するステップ。このように、上記3つの場合を用いてフライング電圧を制御することができ、したがって、制御されたフライングキャパシタの電圧が滑らかに推移を維持することができる。
【0080】
本発明の実施形態は、さらに、制御装置を提供する。制御装置は、コントローラ及びメモリを含む。メモリは、命令を格納するように構成され、コントローラは、メモリに格納された命令を呼び出して、上記態様のいずれか1つの方法を実行するように構成される。
【0081】
当業者は、方法の実施形態のステップのすべて又は一部が、関連するハードウェアを指示するプログラムによって実装され得ることを理解するであろう。プログラムは、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体に格納され得る。プログラムが実行されると、方法の実施形態のステップが実行される。前述の記憶媒体は、取り外し可能な記憶デバイス、読み出し専用メモリ(read-only memory、ROM)、ランダムアクセスメモリ(random access memory、RAM)、磁気ディスク、又は光ディスクなどの、プログラムコードを格納できる任意の媒体を含む。
【0082】
以上の説明は、本発明の具体的な実施例にすぎず、本発明の保護範囲を限定するものではない。本発明に開示された技術的範囲内で当業者が容易に理解できる変形又は置換は、本発明の保護範囲に含まれる。したがって、本発明の保護範囲は、特許請求の範囲の保護範囲に従うものとする。
【手続補正書】
【提出日】2024-04-15
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マルチレベル直流電流コンバータであって:
少なくとも1つのフライングキャパシタと;
前記フライングキャパシタに接続された2つのスイッチングトランジスタ群と;
前記スイッチングトランジスタ群の各々及び前記マルチレベル直流電流コンバータの低圧電源の正電極に接続されたインダクタと;
前記スイッチングトランジスタ群を制御するように構成されたコントローラと、を備え、
前記スイッチングトランジスタ群はそれぞれ、
第1スイッチングトランジスタ及び第2スイッチングトランジスタを備え、それらのオンオフ状態は相補的であり、
前記第1スイッチングトランジスタは、前記マルチレベル直流電流コンバータの高圧電源の一端に接続されており、
前記第2スイッチングトランジスタは、前記マルチレベル直流電流コンバータの高圧電源の他端に接続されており、
前記コントローラは、
前記フライングキャパシタの基準電圧とサンプリング電圧との間の差分の絶対値が第1閾値よりも大きい場合、
インダクタ電流の大きさに基づいて、前記2つのスイッチングトランジスタ群のうちの第1スイッチングトランジスタ間のデューティサイクル差、又は、前記2つのスイッチングトランジスタ群のうちの第1スイッチングトランジスタのキャリア間の位相差を調整するように構成されている、
マルチレベル直流電流コンバータ。
【請求項2】
前記コントローラは特に、前記コントローラが前記インダクタ電流の大きさに基づいて、前記2つのスイッチングトランジスタ群のうちの前記第1スイッチングトランジスタの前記キャリア間の位相差を調整すると決定する場合、前記2つのスイッチングトランジスタ群のうちの前記第1スイッチングトランジスタの前記キャリア間の前記位相差を増大させるように構成されており、
前記フライングキャパシタの前記サンプリング電圧は前記フライングキャパシタの前記基準電圧よりも小さい、
請求項1記載のマルチレベル直流電流コンバータ。
【請求項3】
前記コントローラは特に、前記コントローラが前記インダクタ電流の大きさに基づいて前記2つのスイッチングトランジスタ群のうちの前記第1スイッチングトランジスタの前記キャリア間の位相差を調整すると決定する場合、前記2つのスイッチングトランジスタ群のうちの前記第1スイッチングトランジスタの前記キャリア間の前記位相差を減少させるように構成されており、
前記フライングキャパシタの前記サンプリング電圧は前記フライングキャパシタの前記基準電圧よりも大きい、
請求項1記載のマルチレベル直流電流コンバータ。
【請求項4】
前記コントローラは特に、前記インダクタ電流が第2閾値より小さい場合、前記2つのスイッチングトランジスタ群の前記第1スイッチングトランジスタの前記キャリア間の前記位相差を調整するように構成されている、
請求項1乃至3いずれか1項記載のマルチレベル直流電流コンバータ。
【請求項5】
前記コントローラは特に、前記インダクタ電流が第3閾値より大きい場合、前記2つのスイッチングトランジスタ群の前記第1スイッチングトランジスタの前記デューティサイクル差を調整するように構成されている、
請求項1記載のマルチレベル直流電流コンバータ。
【請求項6】
前記コントローラは特に、前記インダクタ電流が第2閾値以上であり、第3閾値以下である場合、以前の瞬間の調整方法にしたがって、前記2つのスイッチングトランジスタ群のうちの前記第1スイッチングトランジスタ間のデューティサイクル差、又は、前記2つのスイッチングトランジスタ群のうちの前記第1スイッチングトランジスタの前記キャリア間の位相差を調整するように構成されている、
請求項1乃至3いずれか1項記載のマルチレベル直流電流コンバータ。
【請求項7】
フライングキャパシタの電圧制御方法であって、
前記フライングキャパシタはマルチレベル直流電流コンバータに使用され、
前記マルチレベル直流電流コンバータは、2つのスイッチングトランジスタ群と、インダクタと、コントローラと、を備え、
前記スイッチングトランジスタ群の各々は、第1スイッチングトランジスタ及び第2スイッチングトランジスタを備え、それらのオンオフ状態は相補的であり、
前記電圧制御方法は:
前記フライングキャパシタの基準電圧とサンプリング電圧との間の差分の絶対値が第1閾値よりも大きい場合、前記コントローラによって、
インダクタ電流の大きさに基づいて、前記2つのスイッチングトランジスタ群のうちの第1スイッチングトランジスタ間のデューティサイクル差、又は、前記2つのスイッチングトランジスタ群のうちの第1スイッチングトランジスタのキャリア間の位相差を調整するステップを含む、
方法。
【請求項8】
前記コントローラによって、前記インダクタ電流の大きさに基づいて、前記2つのスイッチングトランジスタ群のうちの第1スイッチングトランジスタ間のデューティサイクル差、又は、前記2つのスイッチングトランジスタ群のうちの第1スイッチングトランジスタのキャリア間の位相差を調整するステップは、
前記インダクタ電流の大きさに基づいて前記2つのスイッチングトランジスタ群のうちの前記第1スイッチングトランジスタの前記キャリア間の前記位相差を調整すると決定する場合、前記コントローラによって、前記2つのスイッチングトランジスタ群のうちの前記第1スイッチングトランジスタの前記キャリア間の前記位相差を増大させるステップであって、前記フライングキャパシタの前記サンプリング電圧は前記フライングキャパシタの前記基準電圧よりも小さい、ステップ、又は、
前記インダクタ電流の大きさに基づいて前記2つのスイッチングトランジスタ群のうちの前記第1スイッチングトランジスタの前記キャリア間の前記位相差を調整すると決定する場合、前記コントローラによって、前記2つのスイッチングトランジスタ群のうちの前記第1スイッチングトランジスタの前記キャリア間の前記位相差を減少させるステップであって、前記フライングキャパシタの前記サンプリング電圧は前記フライングキャパシタの前記基準電圧よりも大きいステップ、を含む、
請求項7記載の方法。
【請求項9】
前記コントローラによって、前記インダクタ電流の大きさに基づいて、前記2つのスイッチングトランジスタ群のうちの第1スイッチングトランジスタ間のデューティサイクル差、又は、前記2つのスイッチングトランジスタ群のうちの第1スイッチングトランジスタのキャリア間の位相差を調整するステップは、
前記インダクタ電流が第2閾値より小さい場合、前記コントローラによって、前記2つのスイッチングトランジスタ群の前記第1スイッチングトランジスタの前記キャリア間の前記位相差を調整するステップ、又は
前記インダクタ電流が第3閾値より大きい場合、前記コントローラによって、前記2つのスイッチングトランジスタ群の前記第1スイッチングトランジスタ間の前記デューティサイクル差を調整するステップ、又は
前記インダクタ電流が第2閾値以上であり、第3閾値以下である場合、前記コントローラによって、以前の瞬間の調整方法にしたがって、前記2つのスイッチングトランジスタ群のうちの前記第1スイッチングトランジスタ間のデューティサイクル差、又は、前記2つのスイッチングトランジスタ群のうちの前記第1スイッチングトランジスタの前記キャリア間の位相差を調整するステップを含む、
請求項7又は8記載の方法。
【請求項10】
制御装置であって、
コントローラと、メモリと、を備え、
前記メモリは命令を格納するように構成されており、
前記コントローラは、請求項7乃至9いずれか1項記載の方法を実行するために、前記メモリに格納された前記命令を呼び出すように構成されている、
制御装置。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0001
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0001】
本発明は、パワーエレクトロニクス技術の分野に関し、特に、マルチレベル直流電流コンバータ、フライングコンデンサの電圧制御方法及び制御装置に関する。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0006
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0006】
マルチレベル直流電流コンバータと称されることもある、は、直流(direct current、DC)直流電気エネルギー変換を実行するように構成され、例えば昇圧変換を実行することができ、又は降圧変換を実行することができる。マルチレベル直流電流コンバータの具体的な種類は、本願においては限定されず、3レベル直流コンバータ、5レベル直流コンバータ、7レベル直流コンバータ等であることができる。マルチレベル直流電流コンバータに対応するマルチレベルトポロジとは、出力レベルが少なくとも3つの状態を有することを意味する。例えば、出力レベルが1、1/2、0の3つの状態を有するものを3レベルトポロジと称する。出力レベルが1、3/4、1/2、1/4、0の5つの状態を有するものを5レベルトポロジと称する。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0027
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0027】
本出願の実施形態は、マルチレベル直流電流コンバータに関するものであることができ、直流(direct current、DC)-直流電力変換を実行するように構成され、例えば、ブースト変換を実行してもよく、又はバック変換を実行してもよい。これは、本出願の実施形態では特に限定されない。また、本出願の実施形態においては、マルチレベル直流電流コンバータの適用シナリオは限定されない。マルチレベル直流電流コンバータは、異なる種類の電気機器(電力網又はパワーグリッド、家庭用デバイス、産業用及び商業用電気デバイスなど)に使用されてもよく、ユーザ端末(携帯電話、インテリジェントデバイス、テレビなど)分野や車両分野などの電気機器分野の異なる適用シナリオに使用されてもよく、大型電気デバイス(パワーグリッドや産業機器など)の電力供給シナリオ、中小規模の分散型電気機器(車載電気デバイスや家庭用電気デバイスなど)の電源供給シナリオ、モバイル電気機器(携帯電話やインテリジェント機器など)の電源シナリオなどに使用されてもよい。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0035
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0035】
同一のスイッチングトランジスタ群のうちの第1スイッチングトランジスタ及び第2スイッチングトランジスタは、それらのオンオフ状態が相補的であるので、スイッチングトランジスタ群のうちの第1スイッチングトランジスタがオフ状態となった場合には、スイッチングトランジスタ群のうちの第2スイッチングトランジスタをオン状態に制御されるべきである。スイッチングトランジスタ群のうちの第1スイッチングトランジスタが閉状態となった場合には、スイッチングトランジスタ群のうちの第2スイッチングトランジスタをオフ状態に制御されるべきである。以下では、スイッチングトランジスタ群のうちの第のスイッチングトランジスタの制御方法について説明する。スイッチングトランジスタ群のうちの第2スイッチングトランジスタの制御方法については、対応する調整のための第1スイッチングトランジスタを制御する方法の記述を参照する。
【国際調査報告】