(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-30
(54)【発明の名称】止血クリップリリース用のフック及びループ
(51)【国際特許分類】
A61B 17/128 20060101AFI20240920BHJP
A61B 17/122 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
A61B17/128
A61B17/122
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024523205
(86)(22)【出願日】2022-11-23
(85)【翻訳文提出日】2024-04-17
(86)【国際出願番号】 US2022050944
(87)【国際公開番号】W WO2023097032
(87)【国際公開日】2023-06-01
(32)【優先日】2021-11-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522368684
【氏名又は名称】ボストン サイエンティフィック メディカル デバイス リミテッド
(71)【出願人】
【識別番号】506192652
【氏名又は名称】ボストン サイエンティフィック サイムド,インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】BOSTON SCIENTIFIC SCIMED,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】スミス、ポール
(72)【発明者】
【氏名】アダムス、マシュー ブラッドリー
(72)【発明者】
【氏名】シャルマ、ディーパック クマール
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160DD02
4C160DD16
4C160DD26
4C160MM43
4C160NN01
(57)【要約】
システムは、挿入デバイスの遠位端に取り付けられたアダプタ、クリップ、及び第1の延長部材を含む。クリップは、ジョー同士が離れている挿入構成と、ジョーが互いに引き寄せられた初期展開構成との間で移動可能なジョーを含む。クリップは初期構成に向かって付勢されている。第1のジョーは接続要素を含み、第1のジョー接続要素に解放可能に結合された第1の部材は、クリップに対するアダプタの移動を可能にするのと同時に、第1の部材はクリップに結合されたままであることにより、クリップの視覚的観察を強化する。第1の部材は、クリップをアダプタ上で近位方向に引き込むことにより、クリップがアダプタ上で引き込まれるとクリップが強制的に開き、クリップが留められていた組織からクリップを解放する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
組織を治療するためのクリップシステムであって、
挿入デバイスの遠位端上に取り付けられるように構成された近位端から遠位端まで長手方向に延びるアダプタと、
互いに接続された第1及び第2のジョーを含むクリップであって、前記第1及び第2のジョーは、互いに離れてそれらの間に組織を受け入れる挿入構成と、前記第1及び第2のジョーが互いに向かって引き寄せられて、それらの間にある組織を掴む初期展開構成との間で移動可能であり、前記クリップは前記初期展開構成に向かって付勢されており、前記第1のジョーは、第1のジョー接続要素を含む、前記クリップと、
前記クリップに解放可能に結合されるように構成された第1の延長部材であって、前記第1の延長部材は、前記挿入デバイスの近位端でユーザがアクセス可能な近位端から、前記第1のジョー接続要素に解放可能に結合するように構成された第1の延長部材接続デバイスまで延びており、前記第1の延長部材は、前記第1の延長部材が前記クリップに結合されたまま、前記クリップに対する前記アダプタの移動を可能にするように構成されていることで、前記システムを、前記クリップが前記アダプタから物理的に離されて前記クリップの視覚的観察を強化するレビュー構成に配置し、前記第1の延長部材は、前記クリップを前記アダプタ上で近位方向に引き込むように動作可能であり、前記クリップが前記アダプタ上で引き込まれると前記クリップが強制的に開かれ、前記クリップが留められていた組織から前記クリップが解放される、前記第1の延長部材と
を含むシステム。
【請求項2】
前記ジョー接続要素は前記ジョーのそれぞれを貫通して延びるスロットを含み、前記第1の延長部材接続デバイスはフックを含み、前記スロットは前記フックを解放可能に受け入れる大きさ及び形状である、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記スロットの幅は前記フックの曲率の直径よりも小さい、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記第1の延長部材の遠位端が前記第1のジョー接続要素から解放可能であるように、前記スロットの幅は、前記第1の延長部材の遠位端の幅よりも大きい、請求項2に記載のシステム。
【請求項5】
前記第1のジョー接続要素は、前記第1のジョーから延びるワイヤを含み、前記第1の延長部材接続デバイスは、前記第1の延長部材の遠位端にフック状の湾曲を含み、前記ワイヤは、前記第1の延長部材の前記フック状の湾曲に係合するように構成されたループを含む、請求項1~5のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項6】
前記ワイヤの第1の端部は前記第1のジョーに取り付けられ、前記ワイヤの第2の端部は、前記第1の延長部材の遠位端を介して引っ掛かるような大きさ、形状、及び構成の前記ループを含む、請求項1~5のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項7】
前記ワイヤは、前記第1のジョーを貫通する穴を通ってループを形成することで、前記第1の延長部材の遠位端を介して引っ掛かるように構成された閉ループを形成する、請求項1~5のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項8】
前記ワイヤは第1の端部から第2の端部まで延びており、前記第1の端部及び前記第2の端部のそれぞれが前記第1のジョーの表面に取り付けられていることにより、前記ワイヤは前記第1の延長部材の前記フック状の湾曲を介して引っ掛かるように構成されたループを画定する、請求項1~5のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項9】
前記第2のジョーの第2のジョー接続要素に解放可能に結合された第2の延長部材をさらに含み、前記第2の延長部材接続デバイスは、前記第2のジョー接続要素と係合するために、前記第2の延長部材の遠位端にフック状の湾曲を含む、請求項1~8のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項10】
組織を治療するためのクリップシステムであって、
近位端から遠位端まで長手方向に延びる内視鏡と、
前記内視鏡の遠位端の上に取り付けられるように構成された近位端から長手方向に延びるアダプタであって、前記アダプタのチャネルは前記内視鏡のチャネルと整列している、前記アダプタと、
第1及び第2のジョーを含むクリップであって、前記第1及び第2のジョーは互いに接続されていることにより、前記第1及び第2のジョーは、互いに離れてそれらの間に組織を受け入れる挿入構成と、前記第1及び第2のジョーが互いに向かって引き寄せられて、それらの間にある組織を掴む初期展開構成との間で移動可能であり、前記クリップは前記初期展開構成に向かって付勢されており、前記第1のジョーは、第1のジョー接続要素を含む、前記クリップと、
前記クリップに解放可能に結合されるとともに、前記アダプタに対して移動可能に接続されるように構成された第1及び第2の延長部材であって、前記第1及び第2の延長部材は、内視鏡の近位端でユーザがアクセス可能な近位端から延びており、前記第1の延長部材の遠位端は、前記第1のジョー接続要素に解放可能に接続されるように構成された第1の延長部材接続デバイスを含み、前記内視鏡に対する前記第1の延長部材の長手方向の移動により、クリップが前記挿入構成、前記初期展開構成、及び、前記クリップが前記アダプタから物理的に離されて前記クリップの視覚的観察を強化するレビュー構成の間で移動する、前記第1及び第2の延長部材と
を含むシステム。
【請求項11】
前記第1のジョー接続要素は、そこを貫通して延びるスロットを含み、前記第1の延長部材接続デバイスは、前記第1の延長部材の遠位端のフックを含み、前記スロットは、前記スロットと前記第1のジョーの外縁との間に前記第1のジョーの係合部を画定し、前記係合部は、前記第1の延長部材のフック状の湾曲内に収容されるように構成されている、請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
前記第1のジョーは、それに結合されたワイヤを含み、前記ワイヤは、前記第1の延長部材のフック状の湾曲に係合するように構成されたループを含む、請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
前記ワイヤの第1の端部は前記第1のジョーに取り付けられ、前記ワイヤの第2の端部は、前記第1の延長部材の遠位端を介して引っ掛かるような大きさ、形状、及び構成の前記ループを含む、請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
前記ワイヤは第1の端部から第2の端部まで延びており、前記第1の端部及び前記第2の端部のそれぞれが前記第1のジョーの表面に取り付けられていることにより、前記ワイヤは前記第1の延長部材のフック状の湾曲を介して引っ掛かるように構成されたループを画定する、請求項12に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、内視鏡デバイスに関し、特に、胃腸管に沿った組織を治療するための内視鏡クリップデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
医師は、積極的な介入及び治療的な内視鏡的胃腸(GI)処置を積極的に行うようになってきているが、これは、GI管の壁に穴を開けるリスクを増大させる可能性があったり、処置の一部としてGI管壁の閉鎖が必要となる場合があったりする。このような処置には、例えば、大きな病変の除去、GI管の粘膜層の下にトンネルを形成して粘膜下の問題に対処すること、組織の全層除去、GI管の壁を通過することによるGI管の外側の器官に関わる問題の対処、術後問題(例えば、術後漏れ、外科的ステープルラインの破壊、吻合部の漏れ)の内視鏡治療/修復などが含まれ得る。
【0003】
現在、組織は、スルーザスコープクリップ(through-the-scope clip)やオーバーザスコープクリップ(over-the-scope clip)などの内視鏡閉鎖デバイスによって治療することができる。オーバーザスコープクリップは、特に大きい組織欠損を閉じるのに有用である。これらの内視鏡閉鎖デバイスは、患者に利益をもたらすだけでなく、病院のコストを節約することができる。しかし、場合によっては、現在の内視鏡閉鎖デバイスは使いにくく、配置に時間がかかり、あるいは特定の穿孔、状態、解剖学的構造には不十分な場合がある。例えば、現在のオーバーザスコープクリップは、クリップ自体が操作者に見えない位置からクリップを送り出すことを必要とし得る。すなわち、クリップ留めする前に、操作者は、クリップ留めされる標的組織を観察し、この標的組織の視覚化と、視野に対する目に見えないクリップの位置の理解に基づいて、デバイスの遠位端とクリップの先端が標的組織に対して望ましい位置にあることを判断する場合がある。標的組織の観察に基づいて、操作者はクリップが展開されるまでクリップ自体が見えないままクリップを展開する。このような現在のオーバーザスコープクリップは、一度展開されると、大抵の場合は再配置することができない。
【発明の概要】
【0004】
本開示は、組織を治療するためのクリップシステムに関する。このシステムは、挿入デバイスの遠位端上に取り付けられるように構成された近位端から遠位端まで長手方向に延びるアダプタと、クリップと、第1の延長部材とを含む。前記クリップは、互いに接続された第1及び第2のジョーを含み、前記第1及び第2のジョーは、互いに離れてそれらの間に組織を受け入れる挿入構成と、前記第1及び第2のジョーが互いに向かって引き寄せられて、それらの間にある組織を掴む初期展開構成との間で移動可能である。前記クリップは、前記初期展開構成に向かって付勢されている。前記第1のジョーは、第1のジョー接続要素を含む。前記第1の延長部材は、前記クリップに解放可能に結合されるように構成される。前記第1の延長部材は、挿入デバイスの近位端でユーザがアクセス可能な近位端から、前記第1のジョー接続要素に解放可能に結合するように構成された第1の延長部材接続デバイスまで延びている。前記第1の延長部材は、前記第1の延長部材が前記クリップに結合されたまま、前記クリップに対する前記アダプタの移動を可能にするように構成されていることで、前記システムを、前記クリップが前記アダプタから物理的に離されて前記クリップの視覚的観察を強化するレビュー構成に配置する。前記第1の延長部材は、前記クリップを前記アダプタ上で近位方向に引き込むように動作可能であり、前記クリップが前記アダプタ上で引き込まれると前記クリップが強制的に開かれ、前記クリップが留められていた組織から前記クリップが解放される。
【0005】
一実施形態では、前記ジョー接続要素は前記ジョーのそれぞれを貫通して延びるスロットを含み、前記第1の延長部材接続デバイスはフックを含み、前記スロットは前記フックを解放可能に受け入れる大きさ及び形状である。
【0006】
一実施形態では、前記スロットの幅は前記フックの曲率の直径よりも小さい。
一実施形態では、前記第1の延長部材の遠位端が前記第1のジョー接続要素から解放可能であるように、前記スロットの幅は、前記第1の延長部材の遠位端の幅よりも大きい。
【0007】
一実施形態では、前記第1のジョー接続要素は、前記第1のジョーから延びるワイヤを含み、前記第1の延長部材接続デバイスは、前記第1の延長部材の遠位端にフック状の湾曲を含み、前記ワイヤは、前記第1の延長部材の前記フック状の湾曲に係合するように構成されたループを含む。
【0008】
一実施形態では、前記ワイヤの第1の端部は前記第1のジョーに取り付けられ、前記ワイヤの第2の端部は、前記第1の延長部材の遠位端を介して引っ掛かるような大きさ、形状、及び構成の前記ループを含む。
【0009】
一実施形態では、前記ワイヤは、前記第1のジョーを貫通する穴を通ってループを形成することで、前記第1の延長部材の遠位端を介して引っ掛かるように構成された閉ループを形成する。
【0010】
一実施形態では、前記ワイヤは第1の端部から第2の端部まで延びており、前記第1及び第2の端部のそれぞれが前記第1のジョーの表面に取り付けられていることにより、前記ワイヤは前記第1の延長部材の前記フック状の湾曲を介して引っ掛かるように構成されたループを画定する。
【0011】
一実施形態では、システムは、前記第2のジョーの第2のジョー接続要素に解放可能に結合された第2の延長部材をさらに含む。前記第2の延長部材接続デバイスは、前記第2のジョー接続要素と係合するために、前記第2の延長部材の遠位端にフック状の湾曲を含む。
【0012】
本開示には、組織を治療するためのクリップシステムも含まれる。このシステムは、近位端から遠位端まで長手方向に延びる内視鏡、アダプタ、クリップ、ならびに第1及び第2の延長部材を含む。前記アダプタは、前記内視鏡の遠位端の上に取り付けられるように構成された近位端から長手方向に延びており、前記アダプタのチャネルは前記内視鏡のチャネルと整列している。前記クリップは第1及び第2のジョーを含み、前記第1及び第2のジョーは互いに接続されていることにより、前記第1及び第2のジョーは、互いに離れてそれらの間に組織を受け入れる挿入構成と、前記第1及び第2のジョーが互いに向かって引き寄せられて、それらの間にある組織を掴む初期展開構成との間で移動可能である。前記クリップは前記初期展開構成に向かって付勢されている。前記第1のジョーは、第1のジョー接続要素を含む。前記第1及び第2の延長部材は、前記クリップに解放可能に結合されるとともに、前記アダプタに対して移動可能に接続されるように構成されている。第1及び第2の延長部材は、内視鏡の近位端でユーザがアクセス可能な近位端から延びる。前記第1の延長部材の遠位端は、前記第1のジョー接続要素に解放可能に接続されるように構成された第1の延長部材接続デバイスを含み、前記内視鏡に対する前記第1の延長部材の長手方向の移動により、クリップが前記挿入構成、前記初期展開構成、及び、前記クリップが前記アダプタから物理的に離されて前記クリップの視覚的観察を強化するレビュー構成の間で移動する。
【0013】
一実施形態では、前記第1のジョー接続要素は、そこを貫通して延びるスロットを含み、前記第1の延長部材接続デバイスは、前記第1の延長部材の遠位端のフックを含み、前記スロットは、前記スロットと前記第1のジョーの外縁との間に前記第1のジョーの係合部を画定し、前記係合部は、前記第1の延長部材のフック状の湾曲内に収容されるように構成されている。
【0014】
一実施形態では、前記第1のジョーは、それに結合されたワイヤを含み、前記ワイヤは、前記第1の延長部材のフック状の湾曲に係合するように構成されたループを含む。
一実施形態では、前記ワイヤの第1の端部は前記第1のジョーに取り付けられ、前記ワイヤの第2の端部は、前記第1の延長部材の遠位端を介して引っ掛かるような大きさ、形状、及び構成の前記ループを含む。
【0015】
一実施形態では、前記ワイヤは第1の端部から第2の端部まで延びており、前記第1及び第2の端部のそれぞれが前記第1のジョーの表面に取り付けられていることにより、前記ワイヤは前記第1の延長部材のフック状の湾曲を介して引っ掛かるように構成されたループを画定する。
【0016】
さらに、本開示は、組織を治療する方法に関する。この方法は、内視鏡を介して体管腔内の標的領域にクリップを挿入することであって、前記クリップは、前記クリップのジョーが互いに離れている挿入構成で、アダプタを介して前記内視鏡の遠位端上に取り付けられている、前記挿入すること;組織が前記アダプタのチャネル内及び前記クリップのジョー同士の間に引き込まれるように、前記内視鏡の作業チャネルを介して吸引力を適用すること;前記クリップに結合された延長部材に沿った張力を解放することによって、前記クリップを挿入構成から初期展開構成に向けて移動させることであって、前記移動により、前記ジョーはばねの付勢力下で互いに向かって移動して、それらの間に入った組織を掴む閉構成に戻り、前記延長部材は前記クリップに解放可能に結合されている、前記移動させること;及び前記延長部材が前記クリップに結合したまま、レビュー構成まで前記内視鏡を前記クリップに対して移動させることであって、前記レビュー構成では、前記内視鏡を介した前記クリップの視覚化が強化される、前記移動させることを含む。
【0017】
一実施形態では、前記クリップの再配置が必要であると判断された場合、前記クリップが前記アダプタ上で近位方向に引き込まれて前記挿入構成になるまで、前記延長部材を前記内視鏡に対して近位方向に移動させ、前記クリップを標的領域上に再配置する。
【0018】
一実施形態では、前記方法は、レビュー構成にある間に前記延長部材を前記クリップに対して遠位方向に移動させることで、前記延長部材を前記クリップから外し、前記クリップを最終展開構成へと解放することをさらに含む。
【0019】
一実施形態では、前記延長部材は、互いに向かって又は互いから遠ざかる方向に付勢されており、これにより、前記延長部材が前記クリップから外れると、前記内視鏡及び前記延長部材を身体から近位方向に引き抜くことができる。
【0020】
一実施形態では、前記内視鏡の遠位端を前記クリップに対して横方向に移動させることにより、前記延長部材のそれぞれが前記クリップから独立して解放されるため、前記延長部材のそれぞれが前記クリップに対して独立して移動可能となり、前記クリップから近位方向に引き抜くことができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本開示の例示的な実施形態によるシステムの長手方向側面図を示す。
【
図2】
図1のシステムによるクリップの斜視図を示す。
【
図3】
図1のシステムによるクリップの平面図を示す。
【
図4】レビュー構成にある、
図1のシステムによるクリップの側面図を示す。
【
図5】
図1のシステムによる延長部材の遠位部分の側面図を示す。
【
図6】
図1のシステムによるクリップの部分平面図を示す。
【
図7】本開示の別の例示的な実施形態によるクリップの平面図を示す。
【
図8】本開示の別の例示的な実施形態によるクリップの平面図を示す。
【
図9】本開示のさらに別の例示的な実施形態によるクリップの部分平面図を示す。
【
図10】別の例示的な実施例によるクリップの斜視図を示す。
【
図11】さらなる例示的な実施形態によるクリップの斜視図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
詳細な説明
本開示は、以下の説明及び添付の図面を参照してさらに理解することができ、図面中、同様の要素は同じ参照番号で参照される。本開示は、クリップシステムに関し、特に、クリップの最終展開前にクリップの初期配置を確認し、調整することができるオーバーザスコープ内視鏡クリップシステムに関する。本開示の例示的な実施形態は、アダプタを介して内視鏡の遠位端上に装着可能なクリップであって、前記クリップが、挿入構成、初期展開構成、及び、最終的に展開される前に前記クリップを確認することができるレビュー構成の間で移動することができるように、延長部材に解放可能に結合される前記クリップを備える。
【0023】
特に、各延長部材は、遠位端にフックを含み、このフックは、対応するジョーの一部の上にループを形成するように構成され、延長部材をクリップに解放可能に結合するので、クリップは、延長部材を介して挿入構成、初期展開構成、及びレビュー構成の間で内視鏡に対して移動することができる。挿入構成では、クリップは、クリップの位置が内視鏡視覚システムの視野の遮蔽を最小限に抑えながら、ジョーの間に組織を受け入れる準備ができている挿入構成に維持される近位位置でアダプタ上に取り付けられる。挿入構成は、クリップ留めされる組織に隣接する標的部位への内視鏡の挿入を容易にするように構成され、一方、システムは、初期展開構成でクリップを展開して組織上にクリップ留めすることを可能にする。このデバイスにより、クリップがレビュー構成でデバイスに結合したままの状態で、クリップ及びクリップ留めされている組織から内視鏡を近位方向に引き抜くことができる。
【0024】
クリップが標的組織上の所定の位置に留まったまま内視鏡が近位方向に引き抜かれると、内視鏡の視覚システムの視野が広がり、クリップとそれによってクリップ留めされた組織が表示されるため、操作者はクリップの位置が望ましいか、それとも調整が必要であるかを判断することができる。操作者がクリップが所望どおりに配置されたと判断した場合、クリップを延長部材のフックのついた遠位端から解放することによって展開し、標的組織上にクリップされた状態で留まる。操作者がクリップの位置を調整する必要があると判断した場合、内視鏡とそれに結合されたアダプタは、クリップに隣接する位置まで遠位方向に動かされる。次いで、クリップがアダプタ上で近位方向に引かれ、アダプタの遠位端上で近位方向に引かれたクリップが再び開き、クリップがアダプタ上で挿入構成に向かって近位方向にスライドして戻るときに、自然な付勢力に抗してクリップが強制的に開かれる。
【0025】
クリップが組織から取り外され、挿入構成に戻った後、操作者は、必要に応じて内視鏡とデバイスを再配置し、標的組織をアダプタ内に引き込み(例えば、吸引下、又は内視鏡の作業チャネルを介して適用されるグラスパーの下)、最初の展開位置で標的組織上にアダプタからクリップを再度展開することができる。次に、クリップがデバイスに結合したままで内視鏡が再び近位方向に引かれ、デバイスが再びレビュー構成に移動する。クリップの位置とクリップ留めされた組織が再度観察され、クリップが希望どおりに配置されるまでこのプロセスを繰り返すことができる。クリップが閉じられているところの組織が組織の目的の部分であると操作者が判断した場合、以下に説明するように、クリップを展開してデバイス及び内視鏡から解放することができる。本明細書で使用される近位及び遠位という用語は、それぞれデバイスの使用者に対し向かっていく方向及び遠ざかる方向を指すことを意図していることは、当業者には理解されよう。
【0026】
図1~7に示すように、例示的な実施形態による、組織欠損及び/又は穿孔を治療するためのクリップシステム100は、標的組織をクリップ留めするために、例えば体管腔を通して標的領域まで挿入されるように構成されたクリップ102を含む。クリップ102は、例えば内視鏡106を含む挿入デバイス104を介して標的領域に挿入可能である。クリップ102は、内視鏡106の遠位端108に取り付けられたアダプタ110を介して内視鏡106の遠位端108に取り付け可能であり、クリップ102が解放可能に結合されている延長部材112を介して内視鏡106に対して移動可能である。
【0027】
延長部材112のそれぞれは、クリップ102の対応するジョー114の一部の上に解放可能にループを形成し、挿入構成、初期展開構成、レビュー構成、及び最終展開構成の間で内視鏡106に対するクリップ102の移動を容易にするように構成されたフック状の遠位端116を含む。挿入構成では、クリップ102は、ジョー114が互いから離れてそれらの間に組織を受け入れるように、アダプタ110上に取り付けられる。クリップ102を挿入構成から初期展開構成に向かって移動させるために、延長部材112は内視鏡106に対して遠位方向に移動され、クリップ102がアダプタ110から遠位方向に移動して、ジョー114が閉鎖構成に向かうことを可能にする。閉鎖構成では、ジョー114が互いに向かって移動して、アダプタ110内に引き込まれた組織を掴む。
【0028】
初期展開構成でジョー114を介して組織をクリップ留めすると、延長部材112を内視鏡106から遠位方向に移動させる(又は内視鏡106を拡張部材112に対して近位方向に引く)ことによって、クリップ102をレビュー構成に向かって移動させることができる。その結果、クリップ102は、延長部材112を介して挿入デバイス104に係留されたままでありながら、アダプタ110から遠ざかる。これにより、クリップ102及び標的組織に対する内視鏡視覚システムの視野が広がり、クリップ102に対する内視鏡106のある程度の移動が可能になり、標的組織に対するクリップ102の配置及び/又は位置をより広範囲に観察できるようになる。
【0029】
以下に説明するように、ユーザがクリップ102の位置が正しくないか最適ではないと判断した場合、ユーザは内視鏡106をクリップ102に隣接する位置まで遠位方向に移動させ、次に延長部材112をアダプタ110に対して近位方向に引き戻すことによってクリップ102を近位方向に引き戻し、クリップ102がアダプタ108の遠位端を超えて引き戻されるようにして、クリップ102をアダプタ110上で近位方向に戻るようにスライドさせて挿入構成に戻すときに、クリップ102を強制的に開かせることができる。次いで、ユーザは、内視鏡106及びクリップ102を再配置し、これらのステップを繰り返して、クリップ102の最終的な展開前に、標的組織に対するクリップ102の配置及び/又は位置を調整することができる。すなわち、操作者がレビュー構成においてクリップ102が所望どおりに配置されていないことを確認した場合、クリップ102が再び開かれて組織から除去され、組織の所望の部分の上でクリップ102が閉じられるまでデバイスを再配置することができる。
【0030】
クリップ102が所望の組織上にクリップ留めされたことが確認されると、延長部材112がクリップ102に対して遠位方向に移動され、フック状の遠位端116がジョー114の対応する部分から外されることにより、クリップ102が挿入デバイス104から分離され、クリップ102が体内に展開される。図示されていないが、当業者であれば、挿入構成、初期展開構成、レビュー構成及び最終展開構成の間のクリップ102の移動が、ユーザインターフェースを介して制御され得ることを理解するであろう。一実施形態では、当業者には理解されるように、ユーザインターフェースは内視鏡106の近位端に結合され、特に、延長部材112の近位端に近位及び遠位の動きを与えて延長部材112の遠位端の所望の対応する動作を達成するために、延長部材112の近位端に結合されたアクチュエータを含む。当業者であれば、この実施形態では2つの延長部材112が示されているが、開示された実施形態の範囲から逸脱することなく、任意の所望の数の延長部材112を使用できることが分かるであろう。
【0031】
上記で述べたように、
図1に示す挿入デバイス104は、例えば、任意の標準的な内視鏡106を含む。クリップ102は、内視鏡106の遠位端108上に取り付けられるような大きさ、形状、及び構成のアダプタ110を介して内視鏡106に取り付けられ得る。当業者には理解されるように、内視鏡106は、体管腔を通って体管腔内の標的領域まで挿入されるように構成されており、したがって、体管腔の曲がりくねった経路でもナビゲートできるように十分に柔軟でなければならない。
【0032】
アダプタ110は、内視鏡106の遠位端108に取り付けられるように構成された近位端140から遠位端142まで延びており、アダプタ110を貫通するチャネル144を含む。アダプタ110は、例えば摩擦嵌めによって内視鏡106に取り付けられ、チャネル144が内視鏡106のチャネル146と実質的に長手方向に整列するようにすることができる。したがって、組織は、内視鏡106の光学システムを介してチャネル146を通して観察可能である。別の実施形態では、アダプタ110は、組織の視認性を高めるために透明な材料で形成されてもよい。
【0033】
一実施形態では、アダプタ110は、その壁を長手方向に貫通する一対の穴130を含む。穴130は、延長部材112をスライド可能に受け入れるように構成されている。アダプタ110の外径は、挿入構成において、クリップ102をその上に受け取ることができる大きさ、形状、及び構成にされている。例示的な一実施形態では、アダプタ110は、クリップ102が初期展開形状に向かって付勢されるように、近位端140から遠位端142に向かって先細になっている。
【0034】
ただし、延長部材112に十分な近位方向の張力がかかっていて、延長部材112がクリップ102を所定の位置に保持している限り、クリップ102は、ジョー114が互いに離れた状態で、開いた挿入構成でアダプタ110上に取り付けられたままにすることができる。この張力が延長部材112から取り除かれると、クリップ102の自然な付勢力がジョー114を互いに引き寄せ、延長部材112がクリップ102とともに遠位方向に移動するにつれてクリップ102がアダプタ110から遠位方向に滑り落ちるまで、アダプタ110の先細面上でクリップ102を遠位方向に押す。
【0035】
挿入デバイス104は、一実施形態では、一対の延長部材112を含み、各延長部材112は内視鏡106及びアダプタ110に沿って又はその内部で長手方向に延びており、延長部材112は内視鏡106に対して長手方向に移動可能である。一実施形態では、延長部材112のそれぞれは、他の延長部材に対して独立して移動可能である。別の実施形態では、延長部材112は、内視鏡106に対して同時に移動することができる。延長部材112のそれぞれは、例えばアクチュエータを介してユーザがアクセス可能な近位端からフック状の遠位端116まで延び、フック状の遠位端116は内視鏡106の遠位方向に延びてクリップ102に結合される。
【0036】
上述のように、延長部材112は内視鏡106の中を及び/又は内視鏡106に沿って延び、アダプタ110の穴130内に収容され、遠位端106が穴130から遠位方向に延びてクリップ102と係合する。延長部材112は、内視鏡106に対して長手方向に移動して、それに結合されたクリップ102を内視鏡106の遠位端108に向かって、及び遠位端108から遠ざけるように、挿入構成、初期展開構成及びレビュー構成の間で移動させることができる。
【0037】
例示的な実施形態によれば、フック状の遠位端116のそれぞれは、J字形の曲線138に沿って延びる。特に、フック状の遠位端116のそれぞれは、曲線138に沿って延びており、そのフック先端132は近位方向に(例えば、延長部材112の近位端に向かって)延びている。したがって、以下にさらに詳細に説明するように、フック状の遠位端116がクリップ102の対応する部分を通ってループ状にされ、張力がクリップ102に対して延長部材112に沿って維持されるとき、遠位端116はクリップ102に係合したままになる。
【0038】
一実施形態では、延長部材112の遠位端116は、延長部材112のそれぞれの構成に応じて、互いに近づくか、又は離れるように付勢される。例えば、
図1及び4に示すように、遠位先端132が延長部材112の残りの長手方向長さ(例えば、内視鏡106の長さに沿って延びる延長部材112の一部)に対して半径方向外側の位置に配置される場合、遠位端116は互いに向かって付勢され得る。
【0039】
しかしながら、遠位先端132が延長部材112の残りの長手方向長さに対して半径方向内側の位置に配置されている場合、遠位端116は互いに離れる方向に付勢され得る。ただし、いずれの場合でも、フック状の遠位端116がクリップ102に結合されると、遠位端116は係合構成に向けて拘束される。以下でさらに詳しく説明するように、遠位端116のそれぞれは、クリップ102の対応するジョー114の一部の上でループ状にされ、これにより、延長部材112は、最終展開構成でクリップ102を解放する必要があるまで、クリップ102と係合したままになる。しかし、クリップ102が標的組織上にクリップ留めされ、レビュー構成に向かって動かされると、延長部材112をクリップ102に対して遠位方向に移動させることにより、遠位端116がクリップ102から外れ、遠位端116が付勢された構成に戻ることが可能になり、前記付勢された構成では、遠位端116が互いに対して半径方向内側又は外側に移動する。したがって、遠位端116がクリップ102との係合から外れることにより、挿入デバイス104はクリップ102から近位方向に引き離され、体内から取り出されて、クリップ102だけが体内に展開されたままになる。
【0040】
しかしながら、別の実施形態では、遠位端116は互いに対して付勢される必要はない。むしろ、最終展開構成に向けてクリップ102を延長部材112の遠位端116から外すには、以下でさらに詳細に説明するように、延長部材112のそれぞれを他の延長部材112に対して独立して、かつクリップ102に対して長手方向に移動させる。これにより、内視鏡106の遠位端108が横方向に動かされると、それに対応する延長部材112のうちの所望の1つがクリップ102との係合から外れる。
【0041】
図2~3に示すように、クリップ102は一対のジョー114を含み、この実施形態では、ジョー114のそれぞれは、標的組織を掴むための、例えば歯部などの把持機構118を含む。この実施形態のクリップ102のジョー114は、ヒンジ120を介して互いに接続されている。一実施形態では、ジョー114のそれぞれは、第1の端部122から第2の端部124まで曲線に沿って延びており、1つ目のヒンジ120が各ジョー114の第1の端部122同士を接続し、2つ目のヒンジ120が各ジョー114の第2の端部124同士を接続している。
【0042】
一実施形態では、ヒンジ120はバネ付勢されており、ジョー114の一方の把持機構118がジョー114間に位置する組織に接触するようにジョー114が閉じられる初期展開構成に向けてジョー114を付勢する。特に、初期展開構成では、ジョー118は互いに向かって伸び、例えば、把持機構118を介してジョー114間の標的組織を掴むことができる。しかし、クリップ102が挿入構成でアダプタ110上に取り付けられると、ジョー114はアダプタ110における対向するの部分の上に伸張され、アダプタ110の外面がクリップ102を、ジョー114が互いに離れた開いた状態に維持し、アダプタ110内に引き込まれた標的組織がそれらの間に配置されるようにする。
【0043】
クリップ102がアダプタ110から遠位方向に移動すると、クリップ102はヒンジ120の自然な付勢力の下で自由に閉じることができる。当業者であれば、ヒンジ120及び/又はクリップ102のジョー114は、上述のように、ヒンジ120がジョー114を初期展開構成に向けて付勢し、その付勢が、クリップが最終的に展開された後、クリップ102を標的組織上にクリップ留めされた位置に維持するのに十分な強さである限り、様々な材料のうちの任意のもので形成できることが理解されよう。一例では、クリップ102の一部(例えば、ヒンジ120)は、例えばニチノールなどの形状記憶合金で形成され、閉構成に向けて付勢力を提供し及び/又は付勢力を増大させる。
【0044】
一実施形態では、ジョー114のそれぞれはスロット126も含み、スロット126を介して延長部材112がクリップ102に解放可能に係合する。この実施形態のスロット126は、ジョー114のそれぞれを貫通し、ジョー114の第1及び第2の端部122、124の間の中間に延びている。スロット126は、フック状の遠位端116のそれぞれのフック先端132を受け入れるような大きさ及び形状であり得る。特に、フック先端132は、スロット126の一部及びジョー114のそれぞれの外縁136(すなわち、把持機構118に対向するジョー114の一部に沿った縁)を介して画定される係合部134が、延長部材112のそれぞれのフック状の遠位端116の湾曲138内に受容されるように、スロット126内に受容され得る。言い換えれば、フック状の遠位端116は係合部134上にループ状にされてクリップ102に解放可能に結合される。
【0045】
例示的な実施形態によれば、係合部134は、
図4に示すように、延長部材112がクリップ102と係合したときに、遠位端116がクリップ102を介して把持された組織に押し付けられないように、ジョー114の硬い隆起部によっても画定され得る。言い換えれば、係合部134は、クリップ102が組織上で把持されたときに組織から離れて延びるクリップ102の表面128から突出している。したがって、最終展開構成に向けて、クリップ102を延長部材112から外したい場合に、遠位端116がクリップ102との係合から外れるのに十分な余地がある。
【0046】
図5~6に示すように、延長部材112の遠位端116がクリップ102を必要に応じて係合及び離脱できるように、遠位端116のそれぞれの曲線138の内側の幅A1(例えば、曲線138の直径)は、係合部134の幅A2(例えば、ジョー114の外縁136とそれに最も近いスロット126の縁148との間の距離)よりも大きくする必要がある。さらに、遠位端116の全体の幅B1は、スロット126の幅B2よりも小さくする必要がある。スロット126の幅B2は、縁148と、縁148から最も離れた反対側の縁150の部分との間の距離として定義され得る。当業者であれば、スロット126及び延長部材112の遠位端116の断面は、上述のように、遠位端116がジョー114のスロット126に引っ掛けられ、それと係合/係合解除されるように構成されている限り、様々な形状及びサイズのうちの任意のものでよいことを理解するであろう。
【0047】
クリップシステム100を利用した組織閉鎖のための例示的な方法によれば、クリップ102は、挿入デバイス104(例えば、内視鏡106)を介して、GI管などの体管腔を通して、その体管腔内にある標的領域まで挿入される。上述のように、挿入構成では、クリップ102はアダプタ110を介して内視鏡106の遠位端108に取り付けられ、開構成ではジョー114が互いから離される。クリップ102は、内視鏡の視覚化システムを介して標的領域にガイドされ、標的組織上に配置される。次に、内視鏡104の作業チャネルを通じて把持デバイス又は吸引力が適用され、対象組織がアダプタ110のチャネル144に引き込まれる。したがって、延長部材112に沿った張力を解放することにより(例えば、延長部材112を内視鏡106に対して近位方向に動かすことにより)クリップ102が初期展開構成に向かって移動すると、クリップ102は、標的組織を掴むための付勢された閉鎖構成に向かってアダプタ110に沿って遠位方向にスライドする。
【0048】
この初期展開構成における組織の吸引及び/又は把持が、内視鏡106の結像/光学レンズを妨げることで、ユーザが所望の標的組織が適切にクリップ留めされているかどうかを視覚化及び/又は確認することができない可能性があることは、当業者には理解されよう。したがって、クリップ102を組織に留めたまま、内視鏡106をクリップ102に対して遠位方向に引くことによって、クリップ102をレビュー構成に向かって移動させることができる。アダプタ110とクリップ102との間の距離によって内視鏡106の視野が広がり、クリップ102及びそれによって掴まれた組織を内視鏡106の光学/視覚化システムを介して観察できるようになる。
【0049】
視覚化により、クリップ102を標的組織に対して調整及び/又は再配置する必要があるとユーザが判断した場合、上記で説明したように、クリップ102が開構成に向けてアダプタ110上で近位方向に移動するまで、延長部材112を内視鏡106に対して近位方向に移動させることができる。クリップ102が開構成に向かって移動すると、それによって掴まれていた組織が解放され、必要に応じてクリップ102を標的組織上に再配置できるようになる。次に、クリップ102は、再び初期展開構成に向かって移動し、次にレビュー構成に向かって移動することができる。このプロセスは、必要に応じて、クリップ102が標的組織上に希望どおりにクリップ留めされたことをユーザが視覚的に確認できるようになるまで繰り返され得る。
【0050】
ユーザが、標的組織が希望どおりにクリップ留めされたことを確認したら、クリップ102を延長部材112から解放することにより、クリップ102をレビュー構成から最終展開構成に移動させることができる。上述のように、一実施形態では、延長部材102は、クリップ102に対して遠位方向に移動され得る。延長部材112がクリップ102に対して遠位方向に移動すると、フック状の遠位端116がクリップ102の係合部134から外れる。遠位端116が解放されると、遠位端116は、クリップ102に対する各遠位端116の向きに応じて、付勢された構成に向かって、半径方向に互いに向かって、又は互いから離れて移動する。
【0051】
例えば、
図4に示すように、フック状の遠位端116の曲線138がクリップ102と係合するために半径方向外側に湾曲している場合、遠位端116は互いに対して半径方向内側に付勢され得る。フック状の遠位端116の曲線138が、クリップ102と係合するために半径方向内側に湾曲している場合、遠位端116は互いに対して半径方向外側に付勢され得る。したがって、延長部材112がクリップ102の遠位側に移動すると、遠位端116がクリップ102との係合から外され、遠位端116は付勢された構成に向かって戻ることができるようになり、その結果、延長部材112、及び挿入デバイス104の残りの部分を、クリップ102から遠ざかるように近位方向に移動させて、身体から引き抜くことができる。
【0052】
遠位端116が互いに対して付勢されない別の実施形態では、延長部材112は互いに対して独立して移動される。例えば、クリップ102をレビュー構成から最終展開構成に移動させたい場合、延長部材112のうちの1つ目がクリップ102に対して遠位方向に動かされ、その遠位端116が対応する1つの係合部134から外される。次いで、内視鏡106の遠位端108は、挿入デバイス104の長手方向軸に対して横方向に移動され、これに対応して、第1の延長部材112がクリップ102に対して移動する。内視鏡106の遠位端108は、遠位端106がスロット126のうちの対応する1つと整列するまで移動され、クリップ102に対して第1の延長部材112を近位方向に引くことによって遠位端116をそこから取り外すことができる。
【0053】
第1の延長部材112をクリップ102から取り外すと、第2の延長部材112も、その遠位端116がクリップ102の係合部134の対応する1つから外れるまで同様にクリップ102に対して遠位方向に移動され得る。次いで、内視鏡106の遠位端108は、第2の延長部材112の遠位端116がスロット126の対応する1つと整列するまで、挿入デバイス104の長手方向軸に対して横方向に移動されて、第2の延長部材112がそれに対して近位方向に引き出されると、第2の延長部材112の遠位端116がそこから取り外される。したがって、延長部材112はクリップ102から分離され、挿入デバイス104は身体から取り外され、クリップ102だけが体内に残り、最終展開形態で標的組織上にクリップ留めされる。
【0054】
システム100のクリップ102は、スロット126と、延長部材112のフック状の遠位端116と係合するための係合部134とを含むものとして図示及び説明されているが、クリップ102は、挿入デバイス104のフック状の遠位端116と同様に係合するように構成された様々な係合機構の任意のものを有し得ることが当業者には理解されるであろう。クリップ102の係合機構は、フック状の遠位端116がジョー114の対応する部分に引っ掛けられるかループが形成されてクリップ102に係合し、クリップ102が上記のように挿入構成、初期展開構成、レビュー構成、及び最終展開構成の間で移動可能である限り、様々な構成の任意のものを有することができる。
【0055】
例示的な一実施形態では、
図7に示すように、クリップ202の各ジョー214は、スロットではなく、ジョー214に取り付けられた第1の端部254から第2の端部256まで延びるワイヤ252を含んでもよく、このワイヤ252は、フック状の遠位端116のうちの対応する1つと係合する大きさ、形状、及び構成のループ258を含む。別の例示的な実施形態では、
図8に示すように、クリップ302の各ジョー314は、それを貫通する穴326を含んでもよい。ワイヤ352は、各穴326を通ってループを形成し、フック状の遠位端116のうちの対応する1つを介して係合するように構成された閉ループ358を形成する。さらに別の実施形態では、
図9に示すように、クリップ402の各ジョー414は、フック状の遠位端116のうちの対応する1つを介して係合するように構成されたループ458を形成するために取り付けられたワイヤ452を含んでもよい。ワイヤ452の第1及び第2の端部454、456はジョー414の表面に取り付けられ、ループ458を形成する。
【0056】
さらなる例示的な実施形態では、
図10に示すように、クリップ502の各ジョー514は、スロットではなく、各ジョー514から延びるフック552を含む。この実施形態では、延長部材112のそれぞれは、その遠位端116から延びるスネア554を含む。フック552は、スネア554に係合するような大きさ、形状、及び構成にされている。挿入構成では、延長部材112は、スネア554がフック552の周りにループを形成するように配置される。延長部材112が遠位方向に延長されてクリップ502をアダプタ110から離すと、スネア552はフック552上でループ状になったままになる。
【0057】
クリップ502がアダプタ110から離れて組織上にクリップ留めされると、ユーザは、延長部材112を操作してスネア552をフック552から取り外すことによって(例えば、スネア554のループをフック552の自由端から外すことによって)、クリップを最終展開構成に移動させることができる。スネア554がフック552から取り外された後、ユーザがクリップ502を再配置したい場合、延長部材112を操作して、スネア554をフック552上でループ状に戻すことができる。次いで、ユーザは、前述の実施形態に関して上述したように、延長部材112を近位方向に引っ張って、クリップ502をアダプタ110上に引き戻すことができる。
【0058】
別の例示的な実施形態では、
図11に示すように、クリップ602の各ジョー614は、各ジョー614から拡大ヘッド656まで遠位方向に延びる支柱652を含む。支柱652は、スネア554と係合するような大きさ、形状、及び構成にされている。クリップ502と同様に、挿入構成では、延長部材112は、スネア554が支柱652の周りにループを形成し、拡大ヘッド656が、クリップ602が挿入構成、初期展開構成、及びレビュー構成の間で移動する際にスネア554が支柱652の周りにループを形成した状態を維持するのを助けるように配置される。延長部材112が遠位方向に延長されてクリップ602をアダプタ110から外しても、スネア554は支柱652上にループを形成したままになる。クリップ602がアダプタ110から離れて組織上にクリップ留めされると、ユーザは延長部材112を操作してスネア554を支柱652から取り外すことによって(例えば、スネア552のループを拡大ヘッド656の上に移動させ、支柱652の自由端から外すことによって)、クリップ602を最終展開構成に移動させることができる。スネア654が支柱652から取り外された後、ユーザがクリップ602を再配置したい場合、延長部材112を操作して、スネア554を支柱652上でループ状に戻すことができる。次いで、ユーザは、前述の実施形態に関して上述したように、延長部材112を近位方向に引っ張って、クリップ602をアダプタ110上に引き戻すことができる。
【0059】
当業者であれば、上述のクリップ202~602は、システム100に関して上述した方法と実質的に同様の方法で挿入デバイス104とともに使用できることを理解するであろう。特に、延長部材112がクリップ202~402に係合すると、クリップ202~402は、上述したように、内視鏡106に対して長手方向の延長部材112の移動を介して、挿入構成、初期展開構成、レビュー構成、及び最終展開構成の間で移動することができる。
【0060】
当業者には、本開示の範囲から逸脱することなく、本開示に様々な修正を加え得ることが明らかであろう。さらに、当業者であれば、様々な実施形態の任意の特徴を、実施形態の説明及び/又は機能と矛盾しない任意の方法で組み合わせることができることを理解するであろう。
【手続補正書】
【提出日】2024-04-17
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
組織を治療するためのクリップシステムであって、
挿入デバイスの遠位端上に取り付けられるように構成された近位端から遠位端まで長手方向に延びるアダプタと、
互いに接続された第1及び第2のジョーを含むクリップであって、前記第1及び第2のジョーは、互いに離れてそれらの間に組織を受け入れる挿入構成と、前記第1及び第2のジョーが互いに向かって引き寄せられて、それらの間にある組織を掴む初期展開構成との間で移動可能であり、前記クリップは前記初期展開構成に向かって付勢されており、前記第1のジョーは、第1のジョー接続要素を含む、前記クリップと、
前記クリップに解放可能に結合されるように構成された第1の延長部材であって、前記第1の延長部材は、前記挿入デバイスの近位端でユーザがアクセス可能な近位端から、前記第1のジョー接続要素に解放可能に結合するように構成された第1の延長部材接続デバイスまで延びており、前記第1の延長部材は、前記第1の延長部材が前記クリップに結合されたまま、前記クリップに対する前記アダプタの移動を可能にするように構成されていることで、前記システムを、前記クリップが前記アダプタから物理的に離されて前記クリップの視覚的観察を強化するレビュー構成に配置し、前記第1の延長部材は、前記クリップを前記アダプタ上で近位方向に引き込むように動作可能であり、前記クリップが前記アダプタ上で引き込まれると前記クリップが強制的に開かれ、前記クリップが留められていた組織から前記クリップが解放される、前記第1の延長部材と
を含むシステム。
【請求項2】
前記ジョー接続要素は前記ジョーのそれぞれを貫通して延びるスロットを含み、前記第1の延長部材接続デバイスはフックを含み、前記スロットは前記フックを解放可能に受け入れる大きさ及び形状である、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記スロットの幅は前記フックの曲率の直径よりも小さい、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記第1の延長部材の遠位端が前記第1のジョー接続要素から解放可能であるように、前記スロットの幅は、前記第1の延長部材の遠位端の幅よりも大きい、請求項2に記載のシステム。
【請求項5】
前記第1のジョー接続要素は、前記第1のジョーから延びるワイヤを含み、前記第1の延長部材接続デバイスは、前記第1の延長部材の遠位端にフック状の湾曲を含み、前記ワイヤは、前記第1の延長部材の前記フック状の湾曲に係合するように構成されたループを含む、請求項
1に記載のシステム。
【請求項6】
前記ワイヤの第1の端部は前記第1のジョーに取り付けられ、前記ワイヤの第2の端部は、前記第1の延長部材の遠位端を介して引っ掛かるような大きさ、形状、及び構成の前記ループを含む、請求項
5に記載のシステム。
【請求項7】
前記ワイヤは、前記第1のジョーを貫通する穴を通ってループを形成することで、前記第1の延長部材の遠位端を介して引っ掛かるように構成された閉ループを形成する、請求項
5に記載のシステム。
【請求項8】
前記ワイヤは第1の端部から第2の端部まで延びており、前記第1の端部及び前記第2の端部のそれぞれが前記第1のジョーの表面に取り付けられていることにより、前記ワイヤは前記第1の延長部材の前記フック状の湾曲を介して引っ掛かるように構成されたループを画定する、請求項
5に記載のシステム。
【請求項9】
前記第2のジョーの第2のジョー接続要素に解放可能に結合された第2の延長部材をさらに含み、前記第2の延長部材接続デバイスは、前記第2のジョー接続要素と係合するために、前記第2の延長部材の遠位端にフック状の湾曲を含む、請求項1~8のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項10】
組織を治療するためのクリップシステムであって、
近位端から遠位端まで長手方向に延びる内視鏡と、
前記内視鏡の遠位端の上に取り付けられるように構成された近位端から長手方向に延びるアダプタであって、前記アダプタのチャネルは前記内視鏡のチャネルと整列している、前記アダプタと、
第1及び第2のジョーを含むクリップであって、前記第1及び第2のジョーは互いに接続されていることにより、前記第1及び第2のジョーは、互いに離れてそれらの間に組織を受け入れる挿入構成と、前記第1及び第2のジョーが互いに向かって引き寄せられて、それらの間にある組織を掴む初期展開構成との間で移動可能であり、前記クリップは前記初期展開構成に向かって付勢されており、前記第1のジョーは、第1のジョー接続要素を含む、前記クリップと、
前記クリップに解放可能に結合されるとともに、前記アダプタに対して移動可能に接続されるように構成された第1及び第2の延長部材であって、前記第1及び第2の延長部材は、内視鏡の近位端でユーザがアクセス可能な近位端から延びており、前記第1の延長部材の遠位端は、前記第1のジョー接続要素に解放可能に接続されるように構成された第1の延長部材接続デバイスを含み、前記内視鏡に対する前記第1の延長部材の長手方向の移動により、クリップが前記挿入構成、前記初期展開構成、及び、前記クリップが前記アダプタから物理的に離されて前記クリップの視覚的観察を強化するレビュー構成の間で移動する、前記第1及び第2の延長部材と
を含むシステム。
【請求項11】
前記第1のジョー接続要素は、そこを貫通して延びるスロットを含み、前記第1の延長部材接続デバイスは、前記第1の延長部材の遠位端のフックを含み、前記スロットは、前記スロットと前記第1のジョーの外縁との間に前記第1のジョーの係合部を画定し、前記係合部は、前記第1の延長部材のフック状の湾曲内に収容されるように構成されている、請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
前記第1のジョーは、それに結合されたワイヤを含み、前記ワイヤは、前記第1の延長部材のフック状の湾曲に係合するように構成されたループを含む、請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
前記ワイヤの第1の端部は前記第1のジョーに取り付けられ、前記ワイヤの第2の端部は、前記第1の延長部材の遠位端を介して引っ掛かるような大きさ、形状、及び構成の前記ループを含む、請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
前記ワイヤは第1の端部から第2の端部まで延びており、前記第1の端部及び前記第2の端部のそれぞれが前記第1のジョーの表面に取り付けられていることにより、前記ワイヤは前記第1の延長部材のフック状の湾曲を介して引っ掛かるように構成されたループを画定する、請求項12に記載のシステム。
【国際調査報告】