(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-30
(54)【発明の名称】カルシウムのケイ酸塩を形成する方法
(51)【国際特許分類】
C01B 33/24 20060101AFI20240920BHJP
C04B 14/04 20060101ALI20240920BHJP
B01D 53/50 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
C01B33/24 101
C04B14/04 Z ZAB
B01D53/50
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2024537802
(86)(22)【出願日】2022-08-25
(85)【翻訳文提出日】2024-04-22
(86)【国際出願番号】 US2022041580
(87)【国際公開番号】W WO2023028263
(87)【国際公開日】2023-03-02
(32)【優先日】2021-08-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2022-03-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2022-08-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524071001
【氏名又は名称】ノバフォス・ジプサム・テクノロジー・エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】デイヴィッド・ビー・ブレイク
(72)【発明者】
【氏名】マーク・ヴィニョヴィック
【テーマコード(参考)】
4D002
4G073
【Fターム(参考)】
4D002AA02
4D002AC10
4D002BA03
4D002BA06
4D002CA01
4D002DA07
4D002FA06
4D002FA08
4G073BA11
4G073BA63
4G073BA75
4G073BA76
4G073BD20
4G073CC08
4G073FB11
4G073FB31
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4G073FC07
4G073FC25
4G073FC27
4G073FC30
4G073FD01
4G073FD21
4G073FD23
4G073FD25
4G073GA01
4G073GA11
4G073UB07
4G073UB43
(57)【要約】
方法は、供給凝集体を加熱することによって、反応チャンバ内に供給凝集体を含有する反応床を形成する工程を含む。個々の供給凝集体は、個々の凝集体全体に略均一に分布された石膏源の粒子及びケイ素源の粒子を最初に含有する。供給凝集体中の石膏とケイ素は、反応チャンバ内での加熱過程で反応し、それにより、加熱前の供給凝集体と比較して、カルシウムのケイ酸塩と増加した量の非晶質ケイ素を含有する処理された凝集体を形成する。方法は、反応床から硫黄の酸化物を含有するオフガスを発生させる工程と、処理された凝集体を反応チャンバから取り出す工程とを含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
供給凝集体を加熱することによって、反応チャンバ内に前記供給凝集体を含有する反応床を形成する工程であって、個々の供給凝集体は、個々の凝集体全体に略均一に分布された石膏源の粒子及びケイ素源の粒子を最初に含有する、工程と;
前記反応チャンバ内での加熱過程で、前記供給凝集体中の石膏及びケイ素を反応させ、それにより、加熱前の前記供給凝集体と比較して、カルシウムのケイ酸塩と増加した量の非晶質ケイ素を含有する処理された凝集体を形成する工程と;
前記反応床から、硫黄の酸化物を含有するオフガスを発生させる工程と;
前記処理された凝集体を前記反応チャンバから取り出す工程と、
を含む、方法。
【請求項2】
前記石膏源がリン酸石膏である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記供給凝集体が、前記リン酸石膏に起因するラドン222放出率を呈し、加熱前の前記供給凝集体と比較して、前記処理された凝集体中の前記ラドン222放出率を低下させる工程を更に含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
周囲温度まで冷却した後の前記処理された凝集体の前記ラドン222放出率が0.013ベクレル/グラム(Bq/g)以下である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記供給凝集体が、前記供給凝集体の加熱過程で炭素熱還元を行うのに十分な成分を最初に欠いている、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
個々の凝集体が、酸化カルシウム+二酸化ケイ素に対する二酸化ケイ素の式量比として定義される0.2から0.8までの範囲のシリカ比を最初に供給する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記シリカ比が0.5から0.8までの範囲である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記反応床の少なくとも一部に沿って、前記反応チャンバ内の温度を1200℃から1400℃までに維持する工程を更に含む、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記供給凝集体が前記温度で20分以上の時間にわたり維持される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記反応床の少なくとも一部に沿って、前記反応チャンバ内の温度を1250℃から1300℃までに30分以上の時間にわたり維持する工程を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記供給凝集体が、前記ケイ素との前記石膏の反応性を増大させることになる触媒添加剤を最初に欠いている、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記オフガスから硫黄を回収する工程を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記供給凝集体の加熱が酸化雰囲気中で行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記ケイ素源がシリカである、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記反応チャンバが、ロータリーキルン、ロータリーハース炉、トンネルキルン、又は鉄鉱ペレット化用として知られるストレートグレートによって構成される、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記供給凝集体が、前記供給凝集体の加熱過程で炭素熱還元を行うのに十分な成分を最初に欠いており;
個々の凝集体が、酸化カルシウム+二酸化ケイ素に対する二酸化ケイ素の式量比として定義される0.2から0.8までの範囲のシリカ比を最初に供給し;
前記方法が、前記反応床の少なくとも一部に沿って、前記反応チャンバ内の温度を1200℃から1400℃までに維持する工程を更に含み;
前記供給凝集体が前記温度で20分以上にわたり維持され;且つ
前記供給凝集体が、前記ケイ素との前記石膏の反応性を増大させることになる触媒添加剤を最初に欠いている、
請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記石膏源がリン酸石膏であり、前記ケイ素源がシリカである、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記石膏源がリン酸石膏であり;
前記供給凝集体が、前記リン酸石膏に起因するラドン222放出率を呈し、前記方法が、加熱前の前記供給凝集体と比較して、前記処理された凝集体中の前記ラドン222放出率を低下させる工程を更に含み;
個々の凝集体が、酸化カルシウム+二酸化ケイ素に対する二酸化ケイ素の式量比として定義される0.2から0.8までの範囲のシリカ比を最初に供給し;
前記方法が、前記反応床の少なくとも一部に沿って、前記反応チャンバ内の温度を1200℃から1400℃までに維持する工程を更に含み;
前記供給凝集体が前記温度で20分以上の時間にわたり維持され;且つ
前記ケイ素源がシリカである、
請求項1に記載の方法。
【請求項19】
温度が1250℃から1300℃までであり、シリカ比が0.5から0.8までの範囲である、請求項1、16、又は18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記処理された凝集体が、少なくとも、粒子のうちの少なくとも80%が74μm(200メッシュ)未満の粒子サイズを有する粒子サイズ分布に粉砕された場合に、補助的なセメント系材料に適したポゾラン特性を呈する、請求項1、16、又は18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記処理された凝集体が、2.3wt%以上の植物が利用可能なケイ素含有量を呈する、請求項1、16、又は18のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2022年3月7日に出願された「Methods, Compositions, and Systems for Forming Silicates of Calcium」と題する米国仮特許出願第63/317,447号に対する、並びに、2021年8月25日に出願された「Methods, Compositions, and Systems for Forming Silicates of Calcium」と題する米国仮特許出願第63/236,892号に対する、米国特許法第119条の下で優先権を主張するものであり、それぞれが参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
リン酸石膏(phosphogypsum、PG)は、本明細書に記載の方法において使用され得る潜在的な石膏原材料の一つである。しかし、リン酸石膏は、使用する場合には取り組むべき処理上の問題及び特性を抱える廃棄物である。リン酸石膏は、リン鉱石からリン酸を生産する湿式酸法の主な廃棄物副産物である。フロリダではほぼ50トンのリン酸石膏が毎分生成されており、これに加えて、10億トンを超えるリン酸石膏がすでに大きなスタックで置かれており、それぞれが数百エーカーを覆い、一部は高さ300フィートを超える。世界中で、1億7,000万トンのリン酸石膏が毎年廃棄されているが、リサイクル率はなおも極めて低く、すなわち、5%未満である。貯蔵されたPGの総量は2025年までに70~80億トンに達すると推定されている。同時に、リン酸塩産業の近年の発展により、急速に成長する経済とあいまって、リン酸石膏の生産の大幅な増加がもたらされており、土壌、水及び大気の汚染を回避するための綿密な管理戦略を備えた広い投棄区域が必要である。
【0003】
リン鉱石は、その化学的性質により、かなりの量の自然起源放射性物質(NORM)を含有する場合がある。少量のリン鉱、したがってNORMは、本明細書の方法において使用することができる含リン砂及び含リン泥中にも存在する。リン鉱石は、肥料又はその他の生成物に変えられる前に、硫酸を使用してリン鉱石を溶解させる湿式法を通してリン酸へと変換され、リン酸と硫酸カルシウム(リン酸石膏)の固液混合物(スラリー)を作り出す。所望のリン酸成分は濾過により混合物から分離されて、廃棄物としてリン酸石膏が残る。この処理により、廃棄物中のNORMが濃縮され、リン酸石膏が人為的に高められた自然起源放射性物質(Technologically Enhanced Naturally Occurring Radioactive Material)(TENORM)に変換される。5トンを超えるリン酸石膏が生産されたリン酸の各トン毎に生成される。したがって、リン酸石膏の蓄積を低減すること若しくはリン酸石膏の放射線学的懸念に対処すること、又は両方が有益である可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第4,312,842号明細書
【特許文献2】米国特許第7,378,070号明細書
【特許文献3】米国特許第7,910,080号明細書
【特許文献4】米国特許第8,734,749号明細書
【特許文献5】米国特許第9,783,419号明細書
【特許文献6】米国特許出願第16/358,504号
【特許文献7】米国特許出願第16/914,182号
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Dennis Sebastianら、A 5-Day Method for Determination of Soluble Silicon Concentrations in Nonliquid Fertilizer Materials Using a Sodium Carbonate-Ammonium Nitrate Extractant Followed by Visible Spectroscopy with Heteropoly Blue Analysis: Single-Laboratory Validation、J. of AOAC Intl.、96巻、2版、2013年3月1日、251~259頁、https://doi.org/10.5740/jaoacint.12-243
【非特許文献2】Health Physics Society (「Radiation from granite countertops(花崗岩のカウンターからの放射線)」、2012年)
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
一部の実施形態を、以下の添付の図面を参照して下で説明する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】ケイ酸カルシウムの生産方法及びシステムのフロー図である。
【
図3】比較した材料からのラドン222放出率の棒グラフである。
【
図4】植物が利用可能なケイ素含有量 対 シリカ比のグラフである。
【
図5】コンクリートの硬化時間試験結果(浸透距離 対 時間)のグラフである。
【
図6】コンクリートの圧縮強度 対 時間のグラフである。
【
図7】コンクリートの、透水性の尺度である表面抵抗率 対 時間のグラフである。
【
図9】ケイ酸カルシウムの生産方法及びシステムのフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本明細書の方法、組成物、及びシステムは、植物が利用可能なケイ素(PAS)肥料及び/又は補助的なセメント系材料(SCM)を生産するための、並びに潜在的には利用可能な硫黄を捕捉するための、石膏(CaSO4、カルシウム源)及びシリカを処理するロータリーキルン、ロータリーハース炉、グレートキルン、及び同様の装置の使用に関するいくつかの発見領域を含む。本明細書に記載されている方法、組成物、及びシステムは、CaSO4還元剤として炭素を利用せず、Yinの米国特許第4,312,842号におけるもの等の融解炉の使用を避けて、本明細書で参照される先行特許に記載されているような、固体を生産する。代わりに、シリカ又はシリカ含有廃棄物(例えば、尾鉱砂等)を所定の量で使用して、融解を低下させ且つ望ましい生成物特性の達成及び材料回収の最適化を容易にする。加えて、石膏の代替源(例えば、SO2石灰スクラバーシステムからの石膏廃棄物パイル)を利用することもできる。本明細書の方法によって、ラドン放出を低減するためのラドンカプセル化を通して、湿式リン酸法によって生成されたリン酸石膏廃棄物(例えば廃棄物パイル及びリン酸石膏フィルターケーキ)の使用も可能になる。本明細書で個別に説明される方法、原材料、及びシステムは、それらの1つ以上の組合せで使用することができる。
【0009】
米国特許第7,378,070号、同第7,910,080号、同第8,734,749号、及び同第9,783,419号並びに米国特許出願第16/358,504号(2019年3月19日出願)及び同第16/914,182号(2020年6月26日出願)は、本明細書で記載される方法及びシステムを支持する方法及びシステムの背景説明を含有するものとして参照により本明細書に組み込まれる。
【0010】
リン酸石膏は、リン鉱中に存在することから、かなりの量のウラン並びにラジウム226及びラドン222等のその崩壊生成物を含有する。米国で見いだされるリン鉱中のウランは、0.26~3.7ベクレル/グラム(Bq/g)(7~100ピコキュリー/g(pCi/g))の濃度の範囲である。(出典:米国環境保護庁(USEPA))。
【0011】
湿式法過程で、リン鉱中に存在する放射性核種は選択的に分離され、濃縮される。ラジウム226のおよそ80パーセントがリン酸石膏に濃縮される。リン酸石膏中のラジウム濃度は、0.4~1.3Bq/g(11~35pCi/g)の範囲である。(出典:USEPA)
【0012】
ラジウムの崩壊生成物、ラドン222は、リン酸石膏から放射されるのが見いだされ得る。平均ラドンフラックスは1秒当たり0.06~0.44Bq/m2(1.7~12pCi/m2)の範囲であり、1秒当たり12.6Bq/m2(340pCi/m2)まで達する場合があり、1秒当たり0.25Bq/m2(6.8pCi/m2)の平均値を有する。(出典:USEPA)
【0013】
リン鉱及びリン酸石膏からラジウムを除去するための効率的な精製技法が欠けている。リン鉱石に存在するラジウムは、リン酸石膏に依然として存在する。
【0014】
リン酸石膏中の放射性核種濃度の上昇に対しての懸念から、USEPAは、ラドン及びその他の放射性核種の放出から公衆被ばくを制限するように設計されている工学的スタックにおいて、リン酸石膏を管理することを命じている。所有者と事業者は、使用されていないスタックからのラドン放出を監視及び報告し、ラドン放出を20ピコキュリー毎平方メートル毎秒の規制制限内に維持する策を講じなければならない。
【0015】
幸いなことに、本明細書の方法及びシステムは、石膏を有用な生成物に変換する。加えて、石膏がリン酸石膏であるか、そうでなければ有害なラドン放出率を呈する場合、変換方法によりラドン放出率を低下させることができる。石膏は以下の反応:
CaSO4+SiO2+熱→SO3(g)+CaSiO3(s) (反応1)
で変換されて、三酸化硫黄とカルシウムのケイ酸塩を生産することができる。この例では、反応によりケイ酸一カルシウムが得られる。他の潜在的な反応生成物には、ケイ酸二カルシウム(Ca2SiO4)及びケイ酸三カルシウム(Ca3SiO5又はCa3Si2O7)が含まれる。カルシウムのこれら4つのケイ酸塩のうちのいずれか1つ以上は、石膏の変換の結果生じ得るものであり、特に断りのない限り、本明細書では「ケイ酸カルシウム」という用語によって全てが包含される。
【0016】
石膏の変換は、以下の反応:
Ca10(PO4)6F2+9SiO2+15C+熱→3P2+9CaSiO3+15CO+CaF2 (反応2)
における、リンとカルシウムのケイ酸塩を生産するアパタイトの化学還元と比較され、対比されることができる。いずれの反応も、反応物は、類似の温度に加熱されたカルシウム及びシリカを含み、生成物はカルシウムのケイ酸塩を含む。しかし、反応1では、硫酸カルシウム中の硫黄が酸化物として遊離され、一方、反応2では、フッ化リン酸カルシウム中のリンが元素状リンへと化学的に還元される。また、反応2には、還元剤として炭素が必要であるが(炭素は酸化される)、一方、反応1には炭素又は別の還元剤を必要としない。
【0017】
ケイ素肥料は、本明細書の方法及びシステムから生じ得る有用な一生成物である。ケイ素肥料は、植物が病害及び昆虫の攻撃に抵抗するのに役立ち、植物が好ましくない気候条件に抵抗するのに役立ち、土壌の物理的及び化学的特性を増強し、植物の栄養素を維持する。ケイ素ベースの肥料は、土壌のpHを低くし、土壌からのミネラルの吸収を増加させ、土壌中の適当な栄養素の不足が原因で主に生じる欠乏症を植物が克服するのに役立つ。加えて、こういった生成物は、弾性及び剛性を向上させることによって植物の構造特性を増強し、気候及び感染から植物を保護する。
【0018】
地球のケイ素の大部分はSiO2の結晶形態(例えば、石英)にあるが、この状態のケイ素は不活性であり、植物による摂取に向けて易溶性ではない。生物活性ケイ素としても知られる生物起源ケイ素は通常、ケイ酸カルシウム等の非晶質ケイ酸塩の形態にある。生物起源ケイ素の実験室内試験が、「植物が利用可能なケイ素」(plant-available silicon、PAS)として報告されている。本明細書でPASデータを取得するために使用される適切な試験法は、Dennis Sebastianら、A 5-Day Method for Determination of Soluble Silicon Concentrations in Nonliquid Fertilizer Materials Using a Sodium Carbonate-Ammonium Nitrate Extractant Followed by Visible Spectroscopy with Heteropoly Blue Analysis: Single-Laboratory Validation、J. of AOAC Intl.、96巻、2版、2013年3月1日、251~259頁、https://doi.org/10.5740/jaoacint.12-243に見られる。土壌中で測定されたPASの量と植物中にある生物起源ケイ素の量の間には相関関係が存在する。
【0019】
ケイ素肥料は現在、溶鋼の製造における銑鉄及び/又は鉄スクラップの融解からの副産物である製鋼スラグから生産されている。製鋼スラグは、ケイ素肥料として使用される場合に環境に放出される可能性のある様々な重金属とともにケイ素を含有する。十分な濃度では、いくつかの重金属は、有毒な環境汚染物質、例えば、クロム、ヒ素、カドミウム、水銀、鉛、マンガン、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、セレン、銀、錫、アンチモン、タリウム等、である可能性がある。本明細書の方法及びシステムによって生産されたケイ素生成物の化学組成の予備分析が示すところは、それが製鋼スラグ由来のケイ素肥料として現在生産及び販売されているPASのスペック(2.3%)を上回り、より少ない重金属を含有すること、である(表1を参照されたい)。
【0020】
【0021】
補助的なセメント系材料(SCM)は、本明細書の方法及びシステムから生じ得る別の有用な生成物である。石炭フライアッシュ及び高炉スラグは広く使用されているSCMである。米国のコンクリートの50%超がSCMとしてフライアッシュを含むと推定されている。これらの材料は多くの場合、セメントの約20~30%を取って代わるが、ダム、ローラー圧縮コンクリート舗装、及び駐車場で使用されるマスコンクリートには最大70%が添加される。コンクリート中でセメントをこういったSCMと置き換えることによって、コンクリートの強度を増強すること、有害な化学反応に対する耐性を向上させること、良好なコンクリート打設に向けて作業性を向上させること、並びに硬化時間を遅らせてコンクリート打設及び表面仕上げにより多くの時間を割り当てることができる。米国全州の多くの運輸局(DOT)が、幅広い適用にコンクリート中でのフライアッシュのようなSCMの使用を公式に命令しており、そしてそれは世界中で使用されている。しかし、近年の多くの石炭火力発電所の閉鎖により、石炭フライアッシュは今のところ不足している。本明細書に記載の方法及びシステムによって生産される補助的なセメント系材料は、セメント又はフライアッシュと同等又はそれ以上である。
【0022】
本明細書に記載される発見によれば、同様に本明細書に記載されるシステム及び方法において実装することができるいくつかの解決策が特定される。複数の解決策を実装に向けて組み合わせることができ、その結果、更に他のシステム及び方法が可能になる。発明者らは、個々のシステム及び方法について本明細書に記載される様々な選択肢は、他のシステム及び方法と矛盾する場合を除き、そのように限定されることを意図するものではないことを明示的に企図するものである。本明細書の個々のシステムの特徴及び利点はまた、他に具体的に示されていないとしても、本明細書に記載の方法及び他のシステムと組み合わせて使用することもできる。同様に、本明細書の個々の方法の特徴及び利点はまた、他に具体的に示されていないとしても、本明細書に記載のシステム及び他の方法と組み合わせて使用することもできる。
【0023】
方法Aは、供給凝集体を加熱することによって、反応チャンバ内に供給凝集体を含有する反応床を形成する工程を含む。個々の供給凝集体は、個々の凝集体全体に略均一に分布された石膏源の粒子及びケイ素源の粒子を最初に含有する。供給凝集体中の石膏及びケイ素は、反応チャンバ内での加熱過程で反応し、それにより、加熱前の供給凝集体と比較して、カルシウムのケイ酸塩及び増加した量の非晶質ケイ素を含有する処理された凝集体を形成する。方法Aは、反応床から硫黄の酸化物を含有するオフガスを発生させる工程と、処理された凝集体を反応チャンバから取り出す工程とを含む。
【0024】
用語「反応床」が本明細書で使用される場合、当該用語は、化学反応が起こっている供給凝集体の床の部分を指す。また、用語「略均一に分布された」が本明細書で使用される場合、当該用語は、個々の凝集体全体で必ずしも完全に均一ではないが、粒子の分布が不十分であることが原因で石膏及びケイ素の反応速度が制限されることはないという分布で十分に均一である、粒子の分布を指す。
【0025】
更なる特徴を方法Aにおいて実装することができる。一例として、石膏源はリン酸石膏であってもよい。供給凝集体は、リン酸石膏に起因するラドン222放出率を呈する場合があり、方法Aは、加熱前の供給凝集体と比較して、処理された凝集体中のラドン222放出率を低下させる工程を更に含むことができる。一例として、周囲温度まで冷却した後の処理された凝集体のラドン222放出率は0.013Bq/g以下である。したがって、処理された凝集体は、リン酸石膏よりも廃棄にとって安全であり得る。他の標準材料のラドン放出率の分析については下で説明し、
図3に示す。
【0026】
供給凝集体は、リン鉱の炭素熱還元を伴う方法とは対照的に、供給凝集体の加熱過程で炭素熱還元を行うのに十分な成分を最初に欠いていてもよい。供給凝集体は、相当量のリン若しくは炭素又はその両方を最初に欠いていてもよい、ということになる。「相当量を欠いている」との用語が本明細書で使用される場合、当該用語は、存在するリン若しくは炭素又はその両方の量が、存在するとしても、リンの炭素熱還元を行うのに十分ではないこと、を意味する。相当量のリン若しくは炭素又は両方によれば、炭素熱還元を行うのに十分であることになる。相当量ではない量は、反応物粒子間の物理的な隙間が原因で、不十分であり得る。
【0027】
個々の凝集体は、酸化カルシウム+二酸化ケイ素に対する二酸化ケイ素の式量比(また、モル比)として定義される、0.2から0.8までの範囲のシリカ比を最初に供給することができる。したがって、「シリカ比」=(重量%SiO2/60)/[(重量%CaO/56)+(重量%SiO2/60)]。酸化カルシウム以外のカルシウム源の重量%(wt%)は、シリカ比を算出する前にCaO基準に換算される。二酸化ケイ素以外のケイ素源のwt%も同様にSiO2基準に換算される。シリカ比は、0.5から0.8まで、例えば0.64から0.80まで等の範囲であってもよい。供給凝集体は、30~50wt%の石膏及び40~60wt%の砂を含むことができる。過剰なSiO2の存在により、PAS肥料及びSCMの両方として適切である生成物の生産が可能になり得る。
【0028】
方法Aは、反応床の少なくとも一部に沿って、反応チャンバ内の温度を1200℃から1400℃までに維持する工程を更に含むことができる。供給凝集体は、上記温度で、20~30分又は30~60分を含めて20分以上の時間にわたり維持されてもよい。例えば、温度を、30分間以上、例えば30~60分にわたり、1250℃から1300℃までに維持してもよい。
【0029】
方法Aは、反応チャンバ内の凝集体融解が、より高い温度若しくはより低いシリカ比又はその両方と比較して低下するように、シリカ比及び温度の組合せを選択する工程を更に含むことができる。選択した組合せにより、反応チャンバ内での凝集体融解を回避することができる。
【0030】
供給凝集体は、ケイ素との石膏の反応性を増大させることになる触媒添加剤を最初に欠いていてもよい。用語「触媒添加剤」が本明細書で使用される場合、「触媒添加剤」とは、石膏源にもケイ素源にも天然には存在せず、ケイ素との石膏の反応に対して触媒特性を呈する、添加剤である。供給凝集体は、付加的に、天然に存在する触媒として機能する材料の相当量を欠いていてもよい。用語「相当量を欠いている」が本明細書で使用される場合、当該用語は、天然に存在する触媒の量が、存在するとしても、ケイ素との石膏の反応性を増大させるのに十分ではないことを意味する。相当量の天然に存在する触媒によれば、ケイ素との石膏の反応性を増大させるのに、十分であることになる。
【0031】
触媒の使用は、本明細書の方法及びシステムの有益な特性及びそれらからの生成物を変えるおそれがある。触媒の量及び品質(すなわち、化学組成)次第で、処理された凝集体中に存在するケイ素の量及び非晶質形態が低くなるか変化し、凝集体がSCM又はPASとして不適切となるとともに、ラドンカプセル化のレベルが低下する可能性がある。添加触媒が全くない処理された凝集体の分析が示すところは、処理された材料はラドンを安全にカプセル化し且つSCM又はPASとして有用であること、である。
【0032】
他の石膏熱分解方法が、1916年まで遡って提案されており、これは、炭素源(例えば、コークス、石炭、亜炭、燃料油等)を使用して、硫黄分解のために、ロータリーキルン(Muller-Kuhne及びOSW-Krupp)、循環流動床(ISU及びLurgi社)、又はサーキュラーグレート式焼結機(DMC/FIPRによって提案された)内で硫酸カルシウムを還元した。黄鉄鉱、SiO2、Al2O3、及び/又はFe2O3を含めて、添加剤を、運転温度を下げるために供給原料と混合するか、又は、下流処理の前に排出されたクリンカー固体に添加した。クリンカー固体のSCM及びPASの特性並びにこれらの方法のラドンカプセル化能力については、SCM及びPAS生成物が最初に市場に出回る前に、並びにリン酸石膏のラジウム及びラドンのレベルが最初に規制対象となる前に、方法が開発されていたので、不明である。しかし、運転温度を下げることは、触媒の使用について説明したのと同様の影響を有する可能性があり、処理された凝集体に存在するケイ素の量及び非晶質形態を変化させるか、又はラドンカプセル化のレベルを低下させる可能性があると予想される。
【0033】
ケイ素源はシリカであってもよく、これは、例として本明細書に記載されるいくつかの供給材料を含む、様々な供給材料によって構成されることができる。石膏とケイ素の反応速度に対する物理的制限を低下させるために、石膏源の粒子及びケイ素源の粒子のうちの少なくとも80%が74マイクロメートル(μm)(200メッシュ)未満の粒子サイズを有することができる。
【0034】
適宜、供給凝集体の加熱は酸化雰囲気中で行われてもよい。酸化雰囲気は、多くの場合、還元性雰囲気に比較してあまり困難なく維持される。反応チャンバは、ロータリーキルン、ロータリーハース炉、トンネルキルン、鉄鉱ペレット化用として知られるストレートグレート、又は他の加熱装置によって構成することができる。
【0035】
反応床から発生するオフガスでは、硫黄の酸化物には、三酸化硫黄(SO3)若しくは二酸化硫黄(SO2)又はその両方が含まれ得る。方法Aは、オフガスから硫黄を回収する工程を更に含むことができる。例えば、硫黄は硫酸として回収しても、硫酸アンモニウムとして回収してもよい。
【0036】
処理された凝集体では、カルシウムのケイ酸塩には、ケイ酸二カルシウム若しくはケイ酸三カルシウム又はその両方が含まれ得る。処理された凝集体は、少なくとも、粒子のうちの少なくとも80%が74μm(200メッシュ)未満の粒子サイズを有する粒子サイズ分布に粉砕された場合に、補助的なセメント系材料に適したポゾラン特性を呈することができる。処理された凝集体は、2.3wt%以上の植物が利用可能なケイ素含有量を呈することができる。
【0037】
説明された更なる方法Aの特徴はまた、本明細書の他のシステム及び方法においても実装することができる。
【0038】
方法Bは、供給凝集体を加熱することによって、反応チャンバ内に供給凝集体を含有する反応床を形成する工程と;反応床の少なくとも一部に沿って、反応チャンバ内の温度を1200℃から1400℃までに20分以上の時間にわたり維持する工程と;を含む。個々の供給凝集体は、個々の凝集体全体に略均一に分布された石膏源の粒子及びケイ素源の粒子を最初に含有する。また、個々の供給凝集体は、酸化カルシウム+二酸化ケイ素に対する二酸化ケイ素の式量比として定義される0.2から0.8までの範囲のシリカ比を最初に供給する。更に、個々の供給凝集体は、供給凝集体の加熱過程で炭素熱還元を行うのに十分な成分を最初に欠いている。更に他には、個々の供給凝集体は、ケイ素との石膏の反応性を増大させることになる触媒添加剤を最初に欠いている。供給凝集体中の石膏とケイ素は、反応チャンバ内での加熱過程で反応し、それにより、加熱前の供給凝集体と比較して、カルシウムのケイ酸塩と増加した量の非晶質ケイ素を含有する処理された凝集体を形成する。方法Bは、反応床から硫黄の酸化物を含有するオフガスを発生させる工程と、処理された凝集体を反応チャンバから取り出す工程とを含む。
【0039】
更なる特徴をシステム/方法Bにおいて実装することができる。一例として、石膏源はリン酸石膏とすることができ、ケイ素源はシリカとすることができる。温度は1250℃から1300℃までとすることができ、シリカ比は0.5から0.8までの範囲とすることができる。方法Bは、反応チャンバ内での凝集体融解を回避するシリカ比と温度の組合せを選択する工程を更に含むことができる。
【0040】
処理された凝集体は、少なくとも、粒子のうちの少なくとも80%が74μm(200メッシュ)未満の粒子サイズを有する粒子サイズ分布に粉砕された場合に、補助的なセメント系材料に適したポゾラン特性を呈することができる。処理された凝集体は、2.3wt%以上の植物が利用可能なケイ素含有量を呈することができる。
【0041】
説明された更なる方法Bの特徴はまた、本明細書の他のシステム及び方法においても実装することができる。
【0042】
方法Cは、供給凝集体を加熱することによって、反応チャンバ内に供給凝集体を含有する反応床を形成する工程と;反応床の少なくとも一部に沿って、反応チャンバ内の温度を1200℃から1400℃までに20分以上の時間にわたり維持する工程と;を含む。個々の供給凝集体は、個々の凝集体全体に略均一に分布されたリン酸石膏の粒子及びシリカの粒子を最初に含有する。また、個々の供給凝集体は、酸化カルシウム+二酸化ケイ素に対する二酸化ケイ素の式量比として定義される0.2から0.8までの範囲のシリカ比を最初に供給する。供給凝集体は、リン酸石膏に起因するラドン222放出率を呈する。供給凝集体中のリン酸石膏とシリカは、反応チャンバ内での加熱過程で反応し、それにより、加熱前の供給凝集体と比較して、カルシウムのケイ酸塩と増加した量の非晶質ケイ素を含有する処理された凝集体を形成する。上記反応により、加熱前の供給凝集体と比較して、処理された凝集体中のラドン222放出率が低下する。方法Cは、反応床から硫黄の酸化物を含有するオフガスを発生させる工程と、処理された凝集体を反応チャンバから取り出す工程とを含む。
【0043】
更なる特徴を方法Cにおいて実装することができる。一例として、温度は1250℃から1300℃までとすることができ、シリカ比は0.5から0.8までの範囲とすることができる。方法Cは、反応チャンバ内での凝集体融解を回避するシリカ比と温度の組合せを選択する工程を更に含むことができる。
【0044】
処理された凝集体は、少なくとも、粒子のうちの少なくとも80%が74μm(200メッシュ)未満の粒子サイズを有する粒子サイズ分布に粉砕された場合に、補助的なセメント系材料に適したポゾラン特性を呈することができる。処理された凝集体は、2.3wt%以上の植物が利用可能なケイ素含有量を呈することができる。
【0045】
説明された更なる方法Cの特徴はまた、本明細書の他のシステム及び方法においても実装することができる。
【0046】
図9に示す一方法及びシステム30によれば、石膏源31及びケイ素源32は、凝集35において合わされて、供給凝集体が得られる。供給凝集体は反応チャンバ内で加熱工程37を受け、オフガスを生産する。加熱工程37からのオフガス40は収集され、硫酸又は硫酸アンモニウム等の販売可能な又は再利用可能な形態へと更に処理されることができる。オフガス40と加熱工程37とを接続する破線は、オフガスの収集が任意選択であることを示す。取り出し工程38により、熱処理された凝集体は、反応チャンバから取り出されて、肥料若しくはSCM生成物42又はその両方等のPAS生成物41になる。PAS生成物41及びSCM生成物42と取り出し工程38を接続する破線は、2つの生成物を得ることは任意選択であることを指す。
【0047】
更に詳細には、本明細書に記載される一部の方法及びシステムは、ロータリーハース炉、ロータリーキルン、及び/又はグレートキルンの使用を含むが、その他の実装も考えられる。方法及びシステムは、リン酸石膏からのラドン放出を低減させ、より安全な埋め立て処分並びに/又はケイ素肥料生成物、補助的なセメント系材料の生産、及び他の有用な生成物への更なる処理のための利用可能な硫黄の回収を可能にすることができる。
【0048】
図1に示される別の方法及びシステム20によれば、石膏源1及びケイ素源2等の原材料が混合され3、粉砕される4。原材料は、粉砕4の前に、所望のシリカ比まで混合される3。「シリカ比」又は「SR」という各用語が本明細書で使用される場合、当該用語は、ケイ素(二酸化ケイ素基準)の、カルシウム(酸化カルシウム基準)+ケイ素に対する式量比(また、モル比)として定義される。数学的には、SR=(wt%SiO
2/60)/[(wt%CaO/56)+(wt%SiO
2/60)]。結果として、石膏(CaSO
4)等の、カルシウム源のwt%は、シリカ比を算出する前にCaO基準に換算される。二酸化ケイ素以外のケイ素源のwt%も、同様にSiO
2基準に換算される。
【0049】
凝集5は、ボーリングドラム、ボーリングパン、又はブリケッターのいずれかを使用して、直径3/8~5/8インチ(in.)のペレット又は1~2in.のブリケットを生産する。凝集体は、グレート乾燥機、流動床乾燥機、グレートキルン等で乾燥される6。乾燥された凝集体は、ロータリーキルン、ロータリーハース炉、又はトンネルキルン、鉄鉱ペレット化用として知られるストレートグレート等の他の加熱装置で加熱される7。ストレートグレート法を使用する場合、乾燥、加熱、冷却の各工程が組み合わされる。熱処理された凝集体は冷却され8、冷却された凝集体は固体ハンドリング工程9で処理され、PAS生成物11若しくはSCM生成物12又はその両方として包装および販売される。加熱工程7からのガスが収集され、硫酸、硫酸アンモニウム、又は他の硫酸塩ベースの生成物等の、ガスハンドリング工程13において販売可能な又は再利用可能な形態へと、ガスハンドリング工程10において更に処理されることができる。図面には示されていないが、最終生成物が冷却工程又は造粒工程過程で更なる処理を受けて、他の植物栄養素(例えば、リン、カリウム、窒素、鉄等)をPAS生成物に添加してもよい。キルン、炉等からの廃熱7を捕捉し、凝集体の乾燥工程6に使用することができる。
【0050】
石膏源1には、リン酸石膏、リン酸を生産する湿式酸法からの石膏フィルターケーキ、既知のSO2石灰スクラバーシステムからの廃棄石膏副産物、通常の石膏、又はそれらの組合せが含まれる。ケイ素源2には、砂、尾鉱砂、又はそれらの組合せが含まれ、他のケイ素含有材料が含まれ得る。粉末PAS11又はSCM12生成物は、80%のマイナス200メッシュ材料を含有する(粒子のうちの少なくとも80%は74マイクロメートル(μm)未満のサイズを有する、すなわち、200メッシュスクリーンを通過することになる)。
【0051】
この方法は、カルシウムとケイ素の反応のためのエネルギー及び温度を供給する手段として、ロータリーキルン、ロータリーハース炉、グレートキルン等を使用して、ケイ酸カルシウムを生成することができる。これらの容器内での融解は、処理された材料の継続的な取り出しを可能とする様式で制御されており、その結果、処理された材料が容器内に残存することなく且つ方法のシャットダウンがもたらされることがない。キルン又は炉からの排熱は、水分含有原材料及び/又は凝集体供給を乾燥するのに使用できる。
【0052】
原材料は、混合及び凝集される前に、少なくとも80%マイナス200メッシュへと粉砕され、次いで、ハース床上に層状にされるか、又はキルンへと供給されることができる。ロータリーハース炉用の供給凝集体は、毎分200~300℃、例えば毎分250℃の速度で加熱されてもよい。ロータリーハース炉のプロセス温度は、1200℃~1350℃の範囲で20~30分間維持されてもよい。キルン内の温度、加熱速度、及び保持時間は同じ1200℃~1350℃の範囲内であるが、より遅く(100~200℃毎分)且つより長い(30~60分)。
【0053】
炉又はキルンの内部は、間接ヒーター、又は、炉の屋根及び壁を通して注入されるポートエア並びに/又は酸素富化燃焼エアを用いる燃料ガス、天然ガス又は燃料油の直接燃焼によって加熱することができる。輻射は、ガス及び炉の壁から凝集床への伝熱の主たるモードである。二次伝熱メカニズムは、ガスからの対流及び床と壁からの伝導である。
【0054】
キルン又は炉から排出される処理された材料を冷却してもよい。冷却した生成物はそのまま使用してもよく、続いて粉砕し最終生成物へと造粒してもよい。
【0055】
既知の技術を使用して、オフガスを収集して硫酸及び/又は硫酸アンモニウムを生産することができる。再利用のために微粒子を除去する集塵若しくはスクラビングシステム、及び/又は天然ガスの燃焼から発生するCO2用の二酸化炭素捕捉システムを利用してもよい。
【0056】
図2は、CaO-SiO
2の相図であり、様々なシリカ比及びプロセス温度に対する共晶点を示す。
【0057】
本明細書の方法及びシステムにとって最も望ましいシリカ比は、1250℃以上の温度については0.64で始まり、およそ0.8で終わる。場合によっては、少量の融解及び粘着性であっても、ロータリーキルン内では望ましくない場合がある。安定し且つ熱源の下で稼働する床を有するロータリーハース炉は、融解に対してより耐性があり、その場合、少量の融解は許容される。
【0058】
本明細書に示すように、深刻な融解無しで1250℃をわずかに超える温度で非晶質ケイ素を生産する、およそ0.5のシリカ比を使用することができる。
【0059】
放射線試験。
ラジウム-226を含有するケイ酸カルシウム生成物は、補助的なセメント系材料(SCM)、軽量骨材、土壌安定剤、又は植物が利用可能なケイ素(PAS)肥料としてのその使用により、外部ガンマ線量率を高める永久的なラドン源とはならないことを実証することができる。
【0060】
公衆衛生の観点から、ラドンガスへの被ばくは、ほとんどのNORM含有生成物に関する最も認知されている潜在的な健康への影響である。生成物の表面からどれほどのラドンが出てくるか決定することができる。これは多くの場合、既知の表面積の材料から当該材料を特定時間密閉する特定の体積の容器内へと放出されるラドンを捕捉し測定する「ラドンフラックス」技法によって測定される。リン酸石膏から生産されるケイ酸カルシウムに含有されるラドンのうちどのくらいの割合が放出された量によって表されるかを知るためには、ラドン発生体であるその「親」ラジウム226のケイ酸カルシウム中の放射能濃度が必要であり、この濃度によって、存在する可能性がある、その「娘」であるラドン222の最大量がもたらされることになる。この場合、ラドン娘の放射能濃度がそのラジウム親の放射能濃度を超えることは決してないが、それらは、娘の7半減期(又は3.82日×7≒27日)の後に閉鎖系では等しくなる。
【0061】
生産されたケイ酸カルシウム中の放射性核種の放射能濃度及びそれが放出するラドンガスの割合を特徴付けるために、放射線試験を実施した。これら試験の結果を使用して、未処理の生産されたケイ酸カルシウムに近接する公衆にとって潜在的な線量を決定する。公衆への放射線量は、身体の外部の線源からの直接放射線、又は摂取若しくは吸入からの内部線量が理由で発生する。既知の主因は、ラドンガス及びその固体子孫放射性核種の吸入からの線量、並びに身体に近い線源からのガンマ線への直接被ばくである。
【0062】
Saskatchewan Research Council(SRC)は、原材料インプット及びケイ酸カルシウムアウトプットの放射線分析を実施した。SRCは、ラジウム226(226Ra)の放射能濃度及びラドン222(222Rn)の放出をベクレル毎グラム(Bq/g)表示で分析した。このプロジェクトにとって特に興味深いことは、SRCはラドン放出割合を測定したことであり、ラドン放出割合はしばしばラドン散逸割合又はラドン放出係数(E)と呼ばれる。散逸割合は、材料のラジウム(Ra-226)保有粒子内で生産され、材料の孔隙へと逃げ込むラドンの割合である。したがって、これは、材料から空気中に放出され、ラドン被ばくの源となる潜在的おそれのある、ラドンの量の尺度である。放射能分析の結果を表2に示す。
【0063】
リン酸石膏加工業者が実証し得るのは、ラジウム226含有生成物は、補助的なセメント系材料(SCM)、軽量骨材、土壌安定剤、又は植物が利用可能なケイ素(PAS)肥料としてのそれらの使用により、外部ガンマ線量率を高める永久的なラドン源とはならないことである。こういった放射線試験が示すところは、極めて少ないラドンがケイ酸カルシウムから放出されること、及び、222Rn放射能濃度が永年平衡に近くなることである。すなわち、226Ra及び崩壊連鎖におけるその下位の子孫全ては、ほぼ等しい放射能濃度を有することになる。
【0064】
比較のために、花崗岩からのラドンの散逸割合が、放射線安全の専門家であるHealth Physics Societyによる公称値0.1(又は10%)という状況で、0.03から0.28までと測定されてきた(「Radiation from granite countertops(花崗岩のカウンターからの放射線)」、2012年)。この範囲の上限にある、例えば0.3Bq/g 226Raにある花崗岩のカウンターについて考慮すると、わずか10%又は花崗岩1グラム当たり0.03Bq 222Rnが周囲の空気にとって有効となる。多量の花崗岩を備える小さなキッチンという慎重なシナリオの下で、これは家庭内での使用に安全と考えられる。花崗岩のカウンター1グラム当たり放出されるラドンは、生産されたケイ酸カルシウム1グラム当たりに放出されるラドンよりも略10倍多い。
【0065】
更なる基準点として、SRCはまた、他の材料についても放射線試験を実施した。プロセスインプット、プロセスアウトプット、及びその他の材料に関するSRC放射線試験結果を、比較目的で含め、以下の表2及び
図3にまとめる。加えて、コンクリート対照試料はラドン222放出率0.014Bq/gを有した。
【0066】
【0067】
連邦規則40 CFR第61.204条は、屋外農業目的でのリン酸石膏の流通及び使用を管掌する。本規則では、そこからリン酸石膏が除去されるスタック内の位置で平均ラジウム-226(固体)濃度は10pCi/gを超えてはならないものとすると言明されている表2に、リン酸石膏、含リン粘土、リン鉱、及びケイ酸カルシウムの結果がこの基準を超えていることを示す。ラジウムはこれらの材料中に固体として存在し、リン酸石膏のラジウム制限は、リン酸石膏に含有されるラジウム固体からのラドン放出(ガスとして)の安全レベルを確保することを目的とする。
【0068】
原材料としてのリン酸石膏及び含リン砂の使用により生産されるケイ酸カルシウムからのラドン放射線(ガス)の放出率は、ケイ酸カルシウムがこれら材料の熱分解過程で形成される場合に作り出される「ハウスオブガラス」によって分子レベルで拘束される、と考えられている。2つの物理的パラメータ(多孔性及び比表面積)が、ケイ酸カルシウム生成物からのラドンの放出を制御すると思われる。低透過性バリアの出現は、リン鉱及びリン酸石膏からのラドンのための有力な固定化マトリクスであるように見える。
【0069】
図3に示すように、ケイ酸カルシウムのラドン放出率は、全ての原材料インプット、並びにリン鉱、含リン粘土、花崗岩、及び自然土壌のラドン放出率よりも低い。
【0070】
キッチンカウンターにおける花崗岩の販売及び使用、並びに花崗岩及び自然土壌と比較した場合の生産されたケイ酸カルシウムからのラドン放出に基づいて、本明細書の方法によって生産されるケイ酸カルシウムは、(リン酸石膏と比較して)埋め立て処分にとってより安全であると思われる。また、それは、植物が利用可能なケイ素肥料、補助的なセメント系材料、軽量骨材、及び土壌安定剤としての使用にとっても安全であると思われる。これらの用途ごとに、被ばく経路を制限することができ、ラドンの放出及び生成する線量は、
図3に示す材料のその放出及び線量よりも少ないものであり得る。
【0071】
ウラン及びラジウムのメカニズム、熱分解、及び再配合を決定するための更なる試験及び分析が計画されている。ケイ酸カルシウム生成物からのラドン放出の更なる特性評価を行う予定である。これは、本明細書の方法においてのリン酸石膏の使用に対するUSEPAの承認を支援するためである。
【0072】
その他の実験室内試験。
硫黄の分解/発生 対 温度。
リン酸石膏、廃含リン砂、及び廃含リン粘土を使用して、様々なシリカ比及び温度にわたって実験室内実験を実施して、硫黄分解収率 対 温度について決定した。廃含リン粘土をバインダー源とシリカ源の両方として使用した。炭素を還元剤として使用しなかった。温度を900℃から1300℃の範囲とし、シリカ比を0.29から0.78の範囲とした。各試料を目標温度で30分間保持した。試料を任意の融解特性又は粘着特性について評価した。試料を粉砕し、次いで、St. Joseph、MichiganのLECO Corp.社から入手可能な硫黄分析装置及び誘導結合プラズマ(ICP)を使用して分析した。カーボンるつぼは反応性に影響を与えると思われたので、セラミック製キャスタブルるつぼを使用した。純粋な石膏の試料を作製し且つ試験して、分解が発生し始める際のベースラインを得た。先に公開されたデータは1250℃を示す。
【0073】
データが実証するところは、存在するシリカの量によって硫黄の発生速度が影響されることである。シリカの%が高くなるほど、どの所与の温度でもより多くの硫黄が発生する。上記の反応1がこのことを説明する。過剰なSiO2が反応を駆動して、CaSiO3(ケイ酸一カルシウム)とそれに続いてSO3ガスを作り出すことができる。0.5を超えるシリカ比は、混合物中に過剰なSiO2を有する。
【0074】
SiO2の存在は、より低い温度で硫黄の分解を開始するだけではなく、SiO2なしでCaSO4が分解する温度での融解を減少させる。このことにより、運転上の問題なく、異なるタイプの炉(キルン、ハース、ストレートグレート)の使用が可能となり得る。過剰なSiO2が存在すると、PAS肥料及びセメント代用品の両方として適切である生成物の生産も可能になる。
【0075】
【0076】
このデータに基づくと、所望の供給凝集体は、1250~1300℃の間の運転温度で30~50%の石膏、40~60%の砂、及び10%の粘土を含有する。これらの範囲の硫黄除去結果を、二重枠のセルに示す。これは、均等のSR範囲0.64~0.8である。石膏30~50重量%の範囲でのリン酸石膏混合物(30/60/10~50/40/10)は、セメント代用材料と植物が利用可能なケイ素の両方に適正である固体生成物を生産すると思われる。破線の境界線を備えるセルは、融解するか又は硫黄除去率がより低い混合物を有する。
【0077】
ケイ素肥料の実験室内分析。
実験室内試験が示したところは、不溶性の結晶形態、例えば石英よりはむしろ、ケイ酸カルシウム等のより可溶性の形態のケイ素の存在が、最終生成物中に存在する植物が利用可能なケイ素の量によって実証されることである。ケイ素肥料中の植物が利用可能なケイ素のレベルが高いほど、材料はより望ましいものになる。
図1のシステムの生成物の化学的及び物理的特性は、下記のように、品質を管理し、入力ストリームの量を調整し且つ処理温度を変えることによって制御することができる。
【0078】
図1の生産システムは、様々な原材料の特定のシリカ比を維持することと、熱を使用することであって、様々な運転温度で供給材料の融解を制御することによりケイ酸二カルシウム(Ca
2SiO
4)及び/又はケイ酸三カルシウム(Ca
3SiO
5又はCa
3Si
2O
7)並びに少量のケイ酸一カルシウム(CaSiO
3)及び石英(すなわち、二酸化ケイ素)の形態で非晶質ケイ素を生産するのに好都合であるように熱を使用することと、に基づいている。利用可能なケイ素は、ハース炉、キルン、又はその他の加熱装置への原材料供給として使用される場合、尾鉱砂、石膏、及びリン酸石膏に含有されるカルシウム源及びケイ素源の様々な組合せから、生産することができる。ケイ素肥料の場合、シリカ比を0.64~0.80の間に維持してもよい。
【0079】
ベンチスケール試験及びパイロットプラント試験によれば、生産される利用可能なケイ素のレベルは、原材料の特性、化学的性質(例えば、シリカ比)、及び方法の温度によって制御することができる。一例として、供給成分(リン酸石膏及び含リン尾鉱砂の組合せ)は0.2~0.8のシリカ比を含有し、且つ、植物が利用可能なケイ素肥料生成物を生産するために少なくとも1200℃に加熱されてもよい。
【0080】
PAS 対 シリカ比。
アウトカムに影響を与える多くの可変要素があるが、一般に、非晶質ケイ素としてのケイ酸カルシウムの生産(PASとして測定)は、供給物中の原材料の実験室及びパイロット規模の試験で示されるように、シリカ比と共に変動した。下の例では、供給凝集体を、
図1に示し、且つ、上述した方法に従って調製して、直径3/8~5/8in.の乾燥ペレット又は3/4in.のブリケットを生産した。列記されているシリカ比は、成分の質量及び成分の組成アッセイに基づいて「グリーンボール」について算出した。
【0081】
PASの結果は、リン酸石膏及び含リン尾鉱砂(ケイ素源)の様々な組合せを加熱するための実験炉を使用して得られたものであるが、これにより、表4に示したように、1200℃の温度で30分間保持すると、より高いシリカ比とより低いシリカ比の両方で植物が利用可能なケイ素が生産された。
【0082】
【0083】
このことは、より高いシリカ比の混合物が依然として、許容可能なPAS生成物を生産するとともにセメント代用品として適正であるので、肯定的なアウトカムである。先に議論したように、0.64~0.8の範囲のシリカ比は所望の温度で融解するとは予想されず、一方、シリカ比0.42を有した混合物もまた融解しなかった。
【0084】
図4は、PASの量 対 モル比(SiO
2/(SiO
2+CaO))に影響を与えるものの、より明瞭な図を描く。(SiO
2/(SiO
2+CaO)モル比の影響を例示するために、カルシウム源としての石膏の代用品として、本例では方解石(CaCO
3)を使用した。0.5に達し、右側に移動し続け、ケイ酸カルシウムの生産が少なくなり始めると、PASの量が低下することは、明瞭である。0.5以下で且つ100%ケイ酸カルシウムを作製する場合、PASはピークに達しそして横ばい状態になり、更には低下し始める場合さえある。
【0085】
原材料中のPASのレベル。
ベースラインとして、以下のケイ素含有材料をPASについて分析した。結果が示すところは、表5で述べるように、これらの材料は少量のPASを含有することである。これらの材料はいずれも、ケイ素肥料として単独では有用ではない。
【0086】
【0087】
セメント代用品の試験。
表6及び
図5~
図7に示すように、これまでの全てのデータ(シリカ比0.7及び石膏の代用品として廃棄リン鉱を使用)は、ケイ酸カルシウム処理された凝集体生成物(
図5~
図7ではJ-ROX(商標)と呼ばれる)を、改善された硬化時間、圧縮強度及び耐久性の特性を備えた高品質SCMとして認定しており、こういった特性は、コンクリート混合物中のセメント又はフライアッシュ(セメントの部分置換)と同等又はそれ以上である。廃棄リン鉱又はリン酸石膏のいずれかの処理から生産されるケイ酸カルシウムのセメント特性は同一であると推定される。しかし、このような試験は、廃棄リン鉱に代わって、リン酸石膏を用いて繰り返されることになる。
【0088】
【0089】
パイロットスケールの試験。
パイロットスケール試験を、天然ガスで加熱した5メートルのロータリーハース炉(RHF)を使用して実施した。以下の説明から理解されるように、パイロットスケール試験により確認されたところは、上の表3に列記された混合物(シリカ比)、温度、時間、及び硫黄除去に関する限り、実験室内試験の妥当性である。本明細書では炉について極めて詳細には説明していないが、構成要素の機能は、参照により組み込まれるとして上に列記した米国特許出願第16/914,182号(2020年6月26日出願)に記載されている類似のRHFから、当業者の知識と組み合わせて、理解することができる。
【0090】
炉への供給は、シリカ比0.72の小ブリケットを作製するために使用される、粉砕した(少なくとも80%マイナス200メッシュ)通常の石膏(45wt%)、含リン砂(52wt%)、及びベントナイト(3wt%)の混合物を含有した。本試験の石膏は、0.0wt%でリンを本質的に含まないことを示した。含リン砂は多くの場合、6.6wt%のP2O5を含有する。本試験の場合、供給ブリケットはP2O5 3.5%を含有した。ベントナイトは、本試験用のブリケットを作製するのに役立ったが、商業運転中等の、ブリケティングスキルが向上するにつれて、量的に減少させ、または排除してよい可能性がある。含リン粘土がベントナイトの代わりになる可能性がある。ブリケットは、重さがそれぞれ略3グラムであり、長さ約0.75インチ×幅0.5インチ×厚さ3/8インチの寸法を取った。
【0091】
略700ポンドのブリケットを炉に150分間供給した。炉を、推定床温度1275℃で30分間のホットゾーン保持時間で運転し、所望の硫黄分解を得た。「ホットゾーン」とは、反応に十分な温度への曝露が行われる場所である。この温度は、炉のホットゾーン内の六(6)か所で反応チャンバ内の大気の温度を測定するために使用された一連の熱電対からの読み取り値に基づいている。六か所の熱電対全ての平均温度は1281℃~1307℃の間の範囲であった。稼働中でブリケットの顕著な融解はまったくなく、その結果、融解によって運転が妨害されることはなかった。稼働中の天然ガスの総使用量は3,300標準立方フィートであった。処理されたブリケットはP2O5 3.9wt%を含有し、質量のロスによるパーセンテージの上昇は、リンの実質的な炭素熱還元がないことを示す。
【0092】
炉供給及び炉排出で測定された硫黄レベルの差に基づいて、
図8に示すように、炉供給の硫黄分解は稼働中で、最大93%で、平均86%であった。このことによって、硫酸、及び硫酸アンモニウムを含むその他の硫黄含有化合物として引き続いて行われる回収に利用できる、炉排ガス中での硫黄ガスの放出が可能となった。
【0093】
上記の範囲及び本明細書で指定されるその他の範囲について最小値及び最大値が列記されているが、含まれたより狭い範囲も望ましいものとすることができ、従来技術と識別可能とすることができることを、理解されたい。また、本明細書で議論した処理原理は、含まれたより小さい範囲について更なる基礎を提供することができる。
【0094】
法令に則り、実施形態について、構造的及び体系的特徴に関して概ね具体的な言い回しで説明してきた。しかし、実施形態は、示され且つ記載された特定の特徴に限定されないことを理解されたい。したがって、実施形態は、均等論に従って適当に解釈される添付の特許請求の範囲の適切な範囲内のそれらの形態又は変更形態のいずれかにおいて特許請求されているものである。
【符号の説明】
【0095】
1 石膏源
2 ケイ素源
3 混合される
4 粉砕される
5 凝集
6 乾燥される、乾燥工程
7 加熱される、加熱工程、廃熱
8 冷却される
9 固体ハンドリング工程
10 ガスハンドリング工程
11 PAS生成物
12 SCM生成物
13 販売可能な又は再利用可能な形態へのガスハンドリング工程
20 別の方法及びシステム
30 一方法及びシステム
31 石膏源
32 ケイ素源
35 凝集体
37 加熱工程
38 取り出し工程
40 オフガス
41 PAS生成物
42 SCM生成物
【手続補正書】
【提出日】2024-04-23
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)供給凝集体を加熱することによって、反応チャンバ内に前記供給凝集体を含有する反応床を形成する工程であって、個々の供給凝集体は、個々の凝集体全体に略均一に分布された石膏源の粒子及びケイ素源の粒子を最初に含有
し、
ここで、前記個々の凝集体は、0.5超、最大0.8までであり、過剰なシリカを表すシリカ比を最初に供給し、前記シリカ比は、酸化カルシウム+二酸化ケイ素に対する二酸化ケイ素の式量比として定義され、前記シリカ比を算出する前に、酸化カルシウム以外のカルシウム源の重量%はCaO基準に換算され、かつ、二酸化ケイ素以外のケイ素源の重量%はSiO
2
基準に換算され、前記供給凝集体は、ケイ素との石膏の反応性を増大させることになる触媒添加剤を最初に欠いている、工程と;
(b)前記反応チャンバ内での加熱過程で、前記供給凝集体中の石膏及びケイ素を反応させ、それにより、加熱前の前記供給凝集体と比較して、カルシウムのケイ酸塩と増加した量の非晶質ケイ素を含有する処理された凝集体を形成する工程と;
(c)前記反応床から、硫黄の酸化物を含有するオフガスを発生させる工程と;
(d)前記処理された凝集体を前記反応チャンバから取り出す工程と、
を含む、方法。
【請求項2】
前記石膏源がリン酸石膏である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記供給凝集体が、前記リン酸石膏に起因するラドン222放出率を呈し、加熱前の前記供給凝集体と比較して、前記処理された凝集体中の前記ラドン222放出率を低下させる工程を更に含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
周囲温度まで冷却した後の前記処理された凝集体の前記ラドン222放出率が0.013ベクレル/グラム(Bq/g)以下である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記供給凝集体が、前記供給凝集体の加熱過程で炭素熱還元を行うのに十分な成分を最初に欠いている、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記シリカ比が0.
64から0.8までの範囲である、請求項
1に記載の方法。
【請求項7】
前記反応床の少なくとも一部に沿って、前記反応チャンバ内の温度を1200℃から1400℃までに維持する工程を更に含む、請求項
1に記載の方法。
【請求項8】
前記供給凝集体が前記温度で20分
~60分の時間にわたり維持される、請求項
7に記載の方法。
【請求項9】
前記反応床の少なくとも一部に沿って、前記反応チャンバ内の温度を1250℃から1300℃までに30分以上の時間にわたり維持する工程を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記石膏源がCaSO
4
を含有し、前記ケイ素源がSiO
2
を含有し、CaSO
4
及びSiO
2
が唯一の必須反応物である、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記オフガスから硫黄を回収する工程を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記供給凝集体の加熱が酸化雰囲気中で行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記ケイ素源がシリカである、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記反応チャンバが、ロータリーキルン、ロータリーハース炉、トンネルキルン、又は鉄鉱ペレット化用として知られるストレートグレートによって構成される、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記供給凝集体が、前記供給凝集体の加熱過程で炭素熱還元を行うのに十分な成分を最初に欠いており;
個々の凝集体が、酸化カルシウム+二酸化ケイ素に対する二酸化ケイ素の式量比として定義される0.
5超、最大0.8までの範囲のシリカ比を最初に供給し;
前記方法が、前記反応床の少なくとも一部に沿って、前記反応チャンバ内の温度を1200℃から1400℃までに維持する工程を更に含み;
前記供給凝集体が前記温度で20分
~60分にわたり維持され;且つ
前記石膏源がCaSO
4
を含有し、前記ケイ素源がSiO
2
を含有し、CaSO
4
及びSiO
2
が唯一の必須反応物である、
請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記石膏源がリン酸石膏であり、前記ケイ素源がシリカである、請求項1
5に記載の方法。
【請求項17】
前記石膏源がリン酸石膏であり;
前記供給凝集体が、前記リン酸石膏に起因するラドン222放出率を呈し、前記方法が、加熱前の前記供給凝集体と比較して、前記処理された凝集体中の前記ラドン222放出率を低下させる工程を更に含み;
個々の凝集体が、酸化カルシウム+二酸化ケイ素に対する二酸化ケイ素の式量比として定義される0.
5超、最大0.8までの範囲のシリカ比を最初に供給し;
前記方法が、前記反応床の少なくとも一部に沿って、前記反応チャンバ内の温度を1200℃から1400℃までに維持する工程を更に含み;
前記供給凝集体が前記温度で20分
~60分の時間にわたり維持され;且つ
前記ケイ素源がシリカである、
請求項1に記載の方法。
【請求項18】
温度が1250℃から1300℃までであり、シリカ比が0.
64から0.8までの範囲である、請求項1、1
5、又は1
7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記処理された凝集体が、少なくとも、粒子のうちの少なくとも80%が74μm(200メッシュ)未満の粒子サイズを有する粒子サイズ分布に粉砕された場合に、補助的なセメント系材料に適したポゾラン特性を呈する、請求項1、1
5、又は1
7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記処理された凝集体が、2.3wt%以上の植物が利用可能なケイ素含有量を呈する、請求項1、1
5、又は1
7のいずれか一項に記載の方法。
【国際調査報告】