(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-30
(54)【発明の名称】黒鉛化炉
(51)【国際特許分類】
F27B 3/20 20060101AFI20240920BHJP
F27B 3/14 20060101ALI20240920BHJP
F27D 1/00 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
F27B3/20
F27B3/14
F27D1/00 D
F27D1/00 N
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024541123
(86)(22)【出願日】2023-03-10
(85)【翻訳文提出日】2024-03-19
(86)【国際出願番号】 CN2023080670
(87)【国際公開番号】W WO2023169541
(87)【国際公開日】2023-09-14
(31)【優先権主張番号】202210241349.9
(32)【優先日】2022-03-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524107414
【氏名又は名称】中▲るい▼鄭州有色金属研究院有限公司
【氏名又は名称原語表記】ZHENGZHOU NON-FERROUS METALS RESEARCH INSTITUTE CO., LTD. OF CHALCO
【住所又は居所原語表記】No. 82 Jiyuan Road, Shangjie District, Zhengzhou, Henan 450041, China
(71)【出願人】
【識別番号】524107425
【氏名又は名称】汨羅市▲しん▼高科技服務有限公司
【氏名又は名称原語表記】MILUO XINGAO HIGH TECHNOLOGY SERVICE CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】No. 1, Longzhou North Road Circular Economy Industrial Park, Miluo Yueyang, Hunan 414400, China
(74)【代理人】
【識別番号】110002262
【氏名又は名称】TRY国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】陳 開斌
(72)【発明者】
【氏名】黎 応和
(72)【発明者】
【氏名】劉 建軍
(72)【発明者】
【氏名】羅 鍾生
(72)【発明者】
【氏名】周 常春
(72)【発明者】
【氏名】王 ▲すぃん▼
(72)【発明者】
【氏名】傅 ▲ふ▼
(72)【発明者】
【氏名】孫 麗貞
(72)【発明者】
【氏名】尹 大偉
(72)【発明者】
【氏名】王 玉杰
(72)【発明者】
【氏名】杜 ▲ていん▼▲ていん▼
(72)【発明者】
【氏名】崔 梦倩
【テーマコード(参考)】
4K045
4K051
【Fターム(参考)】
4K045AA04
4K045BA05
4K045DA02
4K045DA09
4K045RA16
4K045RB04
4K051AA05
4K051AB03
4K051AB05
4K051BB02
4K051BB07
4K051BE01
4K051BE03
(57)【要約】
本開示は、黒鉛化炉の技術分野に属されている黒鉛化炉を提供している。黒鉛化炉は、炉体、上方ライニング、絶縁ライニング、下方ライニング、正極及び負極を含む。上方ライニング、絶縁ライニング及び下方ライニングは、共に炉体の内壁に貼り付けて設置される。上方ライニング、絶縁ライニング及び下方ライニングは、上から下までの方向に沿って順次に当接して設置される。また、上方ライニング、絶縁ライニング及び下方ライニングは、共に、基本的に同軸となる第一スルーホールが設置されている。正極は、基本的に鉛直方向に設置される。正極は、下端が上方ライニングに設置される。負極は、基本的に水平設置される。負極には、中央部において、原材料が通るための第二スルーホールが設置される。負極の第二スルーホールと第一スルーホールは、基本的に、同軸になるように設置される。負極は、中央部が下方ライニングの内部に設置される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
炉体と、
いずれも、前記炉体の内壁に貼り付けて設置され、上から下までの方向に沿って順に当接して設置されたと共に、同軸になるように設置された、第一スルーホール、上方ライニング、絶縁ライニング及び下方ライニングと、
正極と負極であって、前記正極が鉛直方向に設置され、前記正極の下端が前記上方ライニングに設置され、前記負極が水平設置され、前記負極は中央部に原材料が通るための第二スルーホールが設置され、前記負極の第二スルーホールと第一スルーホールとが同軸になるように設置され、前記負極が前記下方ライニングの内部に設置される、正極と負極を含む、ことを特徴とする黒鉛化炉。
【請求項2】
前記絶縁ライニングは、鉛直方向に、厚さが30~200mmである、ことを特徴とする請求項1に記載の黒鉛化炉。
【請求項3】
前記絶縁ライニングは、耐火材により注ぎ込まれたものであり、
前記耐火材は、アルミナ質れんが、ジルコニアれんが、コランダムれんが及び粘土れんがのうちの何れかの一つである、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の黒鉛化炉。
【請求項4】
前記上方ライニング、前記絶縁ライニング及び前記下方ライニングは、それらの内径が同じである、ことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の黒鉛化炉。
【請求項5】
少なくとも二つの支持棒をさらに含み、
各前記支持棒は、一方端が前記黒鉛化炉の外部に設けられる一方、他方端が前記黒鉛化炉に設けられると共に前記負極に接続される、ことを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の黒鉛化炉。
【請求項6】
各前記支持棒は、他方端に凹溝が設置されており、前記負極の外周が各前記支持棒の凹溝に挿嵌される、ことを特徴とする請求項5に記載の黒鉛化炉。
【請求項7】
前記上方ライニングは、内側面に、径方向に沿って順次に設置され、周方向及び/又は母線方向に沿って延長した一層又は多層の耐火層を含み、
前記一層又は多層耐火層のうちの少なくとも一層の耐火層は、間隔をおいて設置された複数の第一耐火レンガと第二耐火レンガを含み、
前記第一耐火レンガは、荷重軟化点≧3200℃となり、前記第二耐火レンガの酸化温度が前記第一耐火レンガの酸化温度よりも高い、ことを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の黒鉛化炉。
【請求項8】
前記第一耐火レンガと前記第二耐火レンガは、火に晒された面のサイズがいずれも100~500mm×100~500mmである、ことを特徴とする請求項7に記載の黒鉛化炉。
【請求項9】
前記第一耐火レンガは、高炉用炭素れんが、黒鉛材質炭素れんが及び微孔性複合炭素れんがのうちの少なくとも一つである、ことを特徴とする請求項7又は8に記載の黒鉛化炉。
【請求項10】
前記第二耐火レンガは、アルミナ質れんが、ムライトれんが、シリコンれんが、コランダムれんが、ジルコニアれんが、炭化シリコンれんがのうちの少なくとも一つである、ことを特徴とする請求項7から9のいずれか一項に記載の黒鉛化炉。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、2022年03月11日に出願したものであって、出願番号が202210241349.9となり、発明名称が「黒鉛化炉」であるという中国特許出願に基づいて優先権を主張し、その内容の全てを本明細書に取り込んだものである。
【0002】
本開示は、黒鉛化炉の技術分野に関し、特に、黒鉛化炉に関する。
【背景技術】
【0003】
黒鉛化炉とは、六角形となる炭素原子が平面に網状層で堆積されてきた構成を有する非黒鉛炭素材料を2000℃以上の高温で処理することにより、物理の条件を変化させて非黒鉛炭素材料を、黒鉛が規則的三次元になった構成を有した黒鉛炭素材料に変更する装置である。現在、中国の国内外において、黒鉛化する技術は、電気加熱技術を使わなければ、黒鉛が規則的三次元になった構成への変更が実現できない。電気抵抗を用いて加熱を行うことが一般的である。電気抵抗により加熱を行う加熱炉には、業として適用されてきたのは、アチソン黒鉛化炉、内部並列黒鉛化炉、縦方向式黒鉛化炉などが含まれている。
【0004】
縦方向式黒鉛化炉は、炉体の上部に位置する正極及び炉体の下部に設置されている負極を有する。電流が流れている過程には、正極と負極との間に形成された高温領域により、正極と負極との間に位置する粒子状原材料が高温の状態にあるようになり、しかも、一定の時間だけ維持される。それにより、原材料が黒鉛化する。このような黒鉛化炉は、熱エネルギーを使用する効率が高く、エネルギーを省く効果が著しく、製品の純度が高いものの、正極と負極と間に短絡が極めて発生し易いことから、安全上のリスクが極めて大きい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の技術課題を解決するために、黒鉛化する過程が安定になり、正極と負極が短絡になってしまう安全上のリスクが無くなる、黒鉛化炉を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、炉体と、上方ライニング、絶縁ライニング及び下方ライニングであって、前記上方ライニング、前記絶縁ライニング及び前記下方ライニングは、いずれも、前記炉体の内壁に貼り付けて設置され、前記上方ライニング、前記絶縁ライニング及び前記下方ライニングは、上から下までの方向に沿って順に設置されると共に、前記上方ライニング、前記絶縁ライニング及び前記下方ライニングがいずれもリング状になる上方ライニング、絶縁ライニング及び下方ライニングと、及び、正極と負極であって、前記正極が鉛直方向に設置され、前記正極の下端が前記上方ライニングに設置され、前記負極が水平設置され、前記負極には中央部において原材料が通るためのスルーホールが設置され、前記負極が前記下方ライニングの内部に設置される、黒鉛化炉を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本開示における幾つかの実施例に係る黒鉛化炉を示した構成の模式図である。
【
図2】
図1における上方ライニングを展開した構成の模式図である。
【
図3】
図2における上方ライニングが侵食されている原理図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
当業者に本願を一層詳しく理解させるように、以下、図面を参照しながら、具体的な実施例に基づいて本願の技術手段を詳しく説明する。
【0009】
図1は、本開示における幾つかの実施例に係る黒鉛化炉を示した構成の模式図である。
図1を参照すると、本開示の実施例に係る黒鉛化炉は、炉体1、上方ライニング2、絶縁ライニング3、下方ライニング4、正極5及び負極6を含む。
【0010】
幾つかの実施形態においては、上方ライニング2、絶縁ライニング3及び下方ライニング4が炉体1の内壁に貼り付けて設置されてもよい。上方ライニング2、絶縁ライニング3及び下方ライニング4は、上から下までの方向に沿って順に当接して設置される。また、上方ライニング2、絶縁ライニング3及び下方ライニング4は、いずれも、同軸になる第一スルーホールが設置されている。正極5は、基本的に鉛直方向に設置される。正極5は、下端が上方ライニング2に設置される。負極6は、基本的に水平設置される。負極6には、中央部において、原材料が通るための第二スルーホールが設置されている。また、第二スルーホールと第一スルーホールは、基本的に、同軸になるように設置される。負極6は、下方ライニング4に設置される。幾つかの実施形態において、負極6は、中央部が下方ライニング4の内部に設置される。負極6は、両端が下方ライニング4の側壁を挿嵌したりすり抜けたりしてもよい。
【0011】
出願人が知っている黒鉛化炉では、正極5、原材料及び負極6間に、電流が流れることにより発生された熱量により、原材料を高温処理して黒鉛化する。黒鉛化炉のライニングは、耐蝕性を高めるために、炭素材料により生産されたものである。高温で処理を行う過程に、黒鉛化炉のライニングも黒鉛化する。そうすると、ライニングも導体になり、正極5、ライニング及び負極6間に通路が形成されている。しかし、原材料は、電気抵抗が大きいことから、逆に電流が流れなくなるため、正極5と負極6間に短絡が形成され、安全上の事故が発生し、原材料を黒鉛化させる生産に悪い影響が招致されてしまう。本開示における幾つかの実施形態においては、上方ライニング2と下方ライニング4との間に絶縁ライニング3を設置してもよい。上方ライニング2と下方ライニング4を高温で処理する過程に黒鉛化しても、絶縁ライニング3を設置することにより、上方ライニング2と下方ライニング4との間が短絡状態になり、正極5、原材料及び負極6間に電流が円滑に流れて、黒鉛化をする過程が進み、電気エネルギーを省き、黒鉛化している過程が安定になるように保証することができる。本開示が実現可能な実施例は、正極5と負極6との間に、短絡により招致されてしまう爆発や安全上のリスクが無くなる。電流が流れる方向を効果的に制御でき、エネルギーを集中にさせ、人工電界を形成するように役立ち、黒鉛化炉に温度と製品の品質を高めることができる。
【0012】
幾つかの実施例においては、絶縁ライニング3の強度を保証するように、絶縁ライニング3の厚さを30~200mmとしてもよい。絶縁ライニング3は、厚さが小さすぎる場合に、侵食、アブレーション又は酸化がなされ易く、ひいては、絶縁もできない恐れがある。一方、絶縁ライニング3は、厚さが大き過ぎる場合に、絶縁ライニング3の耐高温性能が悪くなり、軟化がされ易く、強度が低く、炉が崩れてしまうことになる。
【0013】
幾つかの実施例において、絶縁ライニング3は、耐火材により注ぎ込まれたものである。耐火材は、アルミナ質れんが、ジルコニアれんが、コランダムれんが及び粘土れんがのうちの少なくとも一つである。これらの耐火材は、主成分について、酸化アルミニウム、ジルコニアなどを含み、絶縁の効果が良く、さらに、耐蝕性を一定程度備えている。絶縁ライニング3が所在している位置は、底部の付近と近いことから、腐食性を持った気体が上部に集まるので、ここでの腐食現象が著しくない。
【0014】
図1を参照すると、幾つかの実施例においては、上方ライニング2の下端が絶縁ライニング3の上端面に接続され、下方ライニング4の上端が絶縁ライニング3の下端面に接続される。
【0015】
幾つかの実施例において、上方ライニング2、絶縁ライニング3及び下方ライニング4は、それらの内径が共に同じである。そうすると、火室に生じた排気ガスを吸い出すことができる。
【0016】
幾つかの実施例において、黒鉛化炉は、少なくとも二つの支持棒7を含んでもよい。各支持棒7は、一方端が黒鉛化炉の外部に設けられている一方、他方端が黒鉛化炉の内部に設けられていると共に負極6に接続されている。支持棒7は、二つだけ設置されてもよいし、複数設置されてもよい。複数の支持棒7は、黒鉛化炉の中心軸を中心として放射状に設置されてもよい。支持棒7は、負極6を支持するように、耐火材により生産されたものである。
【0017】
他の実施例において、各支持棒7は、他方端に凹溝が設置されており、負極6の外周が各支持棒7の凹溝に挿嵌されている。
【0018】
幾つかの実施例において、
図2と
図3を参照すると、上方ライニング2が複数の耐火層を含んでもよい。上方ライニング2は、内側面に、網状を呈した複数の耐火層を含んでもよい。同じ回りに位置する耐火層は、間隔を置いて設置された複数の第一耐火レンガ201と第二耐火レンガ202を含んでもよい。同一母線に位置する耐火層は、間隔をおいて設置された第一耐火レンガ201と第二耐火レンガ202を含んでもよい。上方ライニング2は、径方向に沿って少なくとも一層だけの耐火層を含む。第一耐火レンガは、荷重軟化点(refractoriness under load)≧3200℃となる。また、第二耐火レンガの酸化温度は、第一耐火レンガの酸化温度よりも高い。
【0019】
他の幾つかの実施例において、
図2と
図3を参照すると、上方ライニング2は、径方向に沿って順に堆積されるように設置され、周方向及び/又は母線方向に沿って延長する一層又は多層の耐火層を含んでもよい。上記の一層又は多層の耐火層のうちの少なくとも一層の耐火層は、間隔をおいて設置された複数の第一耐火レンガ201と第二耐火レンガ202を含んでもよい。上方ライニング2は、内側面に、少なくとも一層耐火層を含んでもよい。上方ライニング2における内側面の少なくとも一層の耐火層は、間隔をおいて設置された複数の第一耐火レンガ201和第二耐火レンガ202を含んでもよい。
【0020】
他の幾つかの実施例において、上方ライニング2における径方向に沿って堆積されて設置された一層又は多層の耐火層には、径方向に沿って順に切り替えて設置された第一耐火レンガ201と第二耐火レンガ202、又は、順に切り替えて設置された第二耐火レンガ202と第一耐火レンガ201を含んでもよい。第一耐火レンガは、荷重軟化点≧3200℃となり、第二耐火レンガの酸化温度が第一耐火レンガの酸化温度よりも高い。
【0021】
幾つかの実施形態において、黒鉛化炉を構築するための耐火材は、一般的に、二種類が存在する。一番目は、良い耐蝕性を持つ一方、抗酸化性質が良い。二番目は、良い抗酸化性質を持つ一方、耐蝕性が悪く、気化が易い。黒鉛化炉により原材料を黒鉛化させる際に、腐食性を持つフッ化水素の気体が発生することはあり、それと同時に、原材料としての炭素にも空気が存在している。従って、フッ化水素の気体は、ライニングと化学反応が発生して、ライニングを腐食することになる。また、空気における酸素はライニングと酸化反応が発生して、アブレーションの反応が招致され、灰分が形成されてしまう。また、黒鉛化をさせる過程には、黒鉛化炉において高温領域の温度が2400℃と高いことから、気化し易いライニングは、物理気化反応が発生して気体になり吸い出されてしまう。故に、耐蝕性が良いが抗酸化性質が悪い耐火材により構築されたライニングを採用する場合に、黒鉛化をさせる過程に存在している酸素により酸化され、アブレーションの反応が招致され、灰分が形成されてしまい、ライニングが不足になり、黒鉛化炉ライニングの使用期間に悪い影響が与えられてしまう。抗酸化性質が良いが耐蝕性が悪く気化が易い耐火材により構成されたライニングを採用する場合に、黒鉛化をさせる過程に発生する腐食性を持つフッ化水素の気体により侵食されることから、黒鉛化炉の使用期間に悪い影響が与えられてしまう。
【0022】
耐蝕性が良い第一耐火レンガ201の周囲には、抗酸化性質が良い第二耐火レンガ202を構築する。従って、黒鉛化炉において、高温領域に位置する雰囲気が、腐食性を持つフッ化水素気体を主に含んだものである場合に、少量の酸素と耐蝕性を持つ第一耐火レンガ201とに酸化・アブレーションの反応が発生する。フッ化水素と第二耐火レンガ202における火に晒された面とに化学腐食反応が発生し、第二耐火レンガ202における火に晒された面に窪み203が形成される。当該窪み203は、側壁に、いずれも、耐蝕性を持つ第一耐火レンガ201が存在している。当該窪み203は、負圧と窪み203の側壁による食い止めの役割により、大量のフッ化水素気体が吸い出されて、僅か少量のフッ化水素気体が当該窪み203に入って、窪みの底部に位置する第二耐火レンガ202と化学腐食反応が発生する。
【0023】
黒鉛化炉における高温領域の雰囲気が酸素を主に含んだものである場合には、第一耐火レンガ201と酸素とに、酸化・アブレーションの反応が発生し、窪み203が形成される。同様に、該窪み203は、上下左右の側壁に、いずれも、抗酸化性質を持つ第二耐火レンガ202が存在している。当該窪み203は、負圧及びと窪み203の側壁による食い止めの役割により、大量の酸素が吸い出されて、僅か少量の酸素が当該窪み203に入って、窪みの底部に位置する第一耐火レンガ201と酸化・アブレーションの反応が発生し、さらに、高温気化反応も発生する。少量のフッ化水素の気体と第二耐火レンガ202と化学腐食反応が発生する。
【0024】
言い換えると、第二耐火レンガ202の周囲に設置された第一耐火レンガ201は、中心に設置された第二耐火レンガ202の化学腐食速度を落とすことができる。在第一耐火レンガ201の周囲に設置された第二耐火レンガ202は、中心に設置された第一耐火レンガ201の酸化・アブレーション速度を落とすことができる。それにより、ライニングの厚さが薄くなる速度を落とし、高温領域に位置するライニングの使用期間を伸ばすことができる。
【0025】
上記第一耐火レンガ201と第二耐火レンガ202は、共に、一つのれんがと見なされてもよいし、複数の耐火レンガにより構築して形成された一つのれんがと見なされてもよい。加工すべきサイズによって、第一耐火レンガ201と第二耐火レンガ202のサイズを自由に選んでもよい。例えば、第一耐火レンガ201は、サイズを50×50×20mmとし、そのうち、50×20mmのサイズに対応する面が火に晒される面である。耐火レンガの加工サイズを50×50×10mmとする場合には、二つの耐火レンガをサイズが50×50×20mmである第一耐火レンガ201に寄せ集めてもよい。第二耐火レンガ202については、一緒であることから、ここで繰り返して説明しない。
【0026】
第一耐火レンガ201は、耐アブレーション性を備え、荷重軟化点≧3200℃となる。
【0027】
第二耐火レンガ202の酸化温度が第一耐火レンガ201の酸化温度よりも高いことから、第二耐火レンガ202が第一耐火レンガ201よりも一層良い抗酸化性を備える。
【0028】
幾つかの実施例においては、第一耐火レンガ201と第二耐火レンガ202における火に晒される面のサイズを、共に、100~500×100~500mmとしてもよい。
【0029】
火に晒される面とは、耐火レンガが黒鉛化炉における雰囲気と接触する面を意味する。第一耐火レンガ201における火に晒される面のサイズが比較的大きい場合に、酸化により腐食された窪み203も併せて比較的大きくなる。炉内においては、酸化性質を主に有する雰囲気に、酸素が窪み203における火に晒される面と接触し易く、酸化作用を遅延させる効果が悪くなる。一方、第一耐火レンガ201における火に晒される面のサイズが小さすぎる場合に、構築にかける時間を延ばすことになる。同様に、第二耐火レンガ202における火に晒される面のサイズが比較的大きく、フッ化水素により化学腐食反応を経て形成された窪み203が比較的大きく、腐食を遅らせる効果が悪くなる。また、第二耐火レンガ202における火に晒される面のサイズが小さすぎる場合に、構築にかける時間を延ばすことになる。幾つかの実施例において、第一耐火レンガ201における火に晒される面のサイズは、第二耐火レンガ202における火に晒される面のサイズと同様にしてもよい。それにより、第一耐火レンガ201と第二耐火レンガ202との間におけるれんがの隙間のサイズが同じであるようになる。
【0030】
幾つかの実施例において、高温領域に位置するライニングは、厚さを50~500mmとしてもよい。高温領域に位置するライニングは、その厚さが厚すぎる場合に、コストが増やされてしまう。高温領域に位置するライニングは、その厚さが薄すぎる場合に、黒鉛化炉の使用期間が短くなり、構築を再度行う頻度が高くなる。高温領域に位置するライニングは、その厚さが、実際に、第一耐火レンガ201と第二耐火レンガ202における火に晒される面と第一耐火レンガ201と第二耐火レンガ202における火に晒される面と反対する面との間の距離である。
【0031】
幾つかの実施例において、第一耐火レンガ201は、高炉用炭素れんが、黒鉛材質炭素れんが、微孔性複合炭素れんがのうちの少なくとも一つを含んでもよいが、それらの限りでない。高炉用炭素れんがと微孔性複合炭素れんがは、共に、均一かつ良好なアブレーション性能を備え、その荷重軟化点が荷重軟化点についての試験を経て得られたものである。荷重軟化点は、荷重変形温度とも呼ばれ、荷重軟化点と簡単に呼ばれると、耐火レンガが温度上昇という条件で、圧力が一定となる負荷により変形が始まる温度を意味する。荷重軟化点は、高温と荷重が両方で作用する場合に耐火レンガの抵抗能力を意味しており、使用条件が一緒である場合に耐火レンガの構成強度を示す。荷重軟化点は、圧力が一定となる負荷により耐火レンガの変形が始まる温度をも示し、当該温度で耐火レンガに軟化が現れ、明らかな塑性変形が生じられる。荷重軟化点が高いほど、耐火レンガの耐アブレーション性能が良い。
【0032】
高炉用炭素れんがは、以下のように生産される。電気焼成高温無煙炭を主な原材料として、添加剤を主な原材料に追加してアスファルトを粘着剤とし、成型された場合に、高温で焼成しながら仕上加工を経たものである。高炉用炭素れんがは、灰分<8%、抗圧強度>29.6MPa、全体気孔率<23%、体積密度>1.5g/cm3、熱伝導率>5.0w/(m・K)3となり、侵食される速度を落とすことができる。微孔性複合炭素れんがは、CN104477902Aという開示番号である中国特許に開示されている高強度黒鉛を採用してもよい。
【0033】
幾つかの実施例において、第二耐火レンガ202は、アルミナ質れんが、ムライトれんが、シリコンれんが、コランダムれんが、ジルコニアれんが、炭化シリコンれんがのうちの少なくとも一つであってもよいが、それらの限りでない。
【0034】
第二耐火レンガの酸化温度とは、酸素雰囲気に酸化が始まる温度を意味する。一般的に、炭素含有耐火レンガ、例えば、上記の炭化シリコンれんがは、酸化がある。一方、アルミナ質れんが、ムライトれんが、シリコンれんが、コランダムれんが、ジルコニアれんがは、炭素を含まないことから、使用されている過程に酸化がない。故に、アルミナ質れんが、ムライトれんが、シリコンれんが、コランダムれんが、ジルコニアれんがの酸化温度は、無限と思われてもよい。
【0035】
アルミナ質れんがは、主成分におけるAl2O3の質量分率が90%よりも高く、ボーキサイト又は他の酸化アルミニウム含有量が比較的高い原材料により、成型と焼成を経てなされたものである。それは、耐火度が1770℃以上、熱安定性が高い。
【0036】
ムライトれんがとは、ムライトを主な結晶相とし酸化アルミニウム含有量が65~75%間にあるアルミニウム含有量が高い耐火材、及び、アルミニウム含有量が高いボーキサイトのクリンカーを主な原材料として、粘土やボーキサイトを結合剤として入れて、成型や焼成を経て生産されたものである。ムライトれんがは、その耐火度が1790℃以上になり、耐火度が高く、荷重軟化が始まる温度が1600~1700℃であり、室温で耐圧強度が70~260MPaである。ムライトれんがは、熱衝撃性が良い。ムライトれんがは、焼成ムライトれんがと電気溶解ムライトれんがという二種類がある。
【0037】
シリコンれんがは、酸性耐火材に所属されることから、酸性クリンカーにより侵食されないよう抵抗する良好な能力を有する。荷重軟化点は、1640~1670℃と高く、高温で長時間にわたって使用しても体積が比較的安定である。シリコンれんがには、酸化シリコン含有量が94%以上になり、荷重軟化が始まる温度が1620~1670℃となる。シリコンれんがは、高温で長時間にわたって使用しても変形がない。シリコンれんがは、天然シリコン石を原材料とし、適当な鉱化剤を入れ、還元雰囲気において1350~1430℃で徐々に焼成を行ったものである。シリコンれんがは、1450℃まで加熱されると、1.5~2.2%だけ体積が膨らむ。シリコンれんがは、このような膨らみにより、シリコンれんが間の隙間を密合することができ、構築されたものに良好な気密性と構成強度を有させることができる。
【0038】
コランダムれんがとは、酸化アルミニウムの含有量が90%よりも大きく、主にコランダムを結晶相とした耐火材の製品を意味する。コランダムれんがは、常温に耐圧強度が340MPaを超え、荷重軟化点が1700℃よりも高く、優れた化学安定性を有し、抗酸化性質が良い。ジルコニアれんがとは、ジルコニアの中空球を主に原材料として生産された断熱耐火製品である。ジルコニアれんがは、鉱物相に占めている主な結晶相の成分が70%~80%となる立方晶ジルコニアであり、耐火度が2400℃よりも大きく、気孔隙率が55~60%となり、熱伝導率が0.23~0.35w/(m・K)となる。
【0039】
炭化シリコンれんがは、主にSiCを原材料として生産された耐火材であることから、酸性クリンカーに対して比較的安定である。炭化シリコンれんがにおけるSiCの含有量が72~99%である。結合相によって、炭化シリコンれんがを、粘土結合、Si3N4結合、Sialon結合、β-SiC結合、Si2ON2結合及び再結晶などのSiC製品に分けてもよく、比較的良い抗酸化性を有する。
【0040】
本開示の実施例が提供している黒鉛化炉は、少なくとも、以下の利点を有している。
1、黒鉛化炉は、正極と負極との間に絶縁ライニングが設置されている。当該絶縁ライニングは、電流が流れる方向を効果的に制御でき、エネルギーを集中にさせ、人工電界の形成に役立ち、黒鉛化炉の温度と製品の品質を高めることができる。しかも、正極と負極には、操作されている過程に短絡が発生して安全上の事故を効果的に避けることができる。
2、耐蝕性を持った第一耐火レンガと抗酸化第二耐火レンガにより構築され網状を呈して千鳥状になった上方ライニングは、ライニングに対する炉内の雰囲気の侵食を効果的に遅らせることができ、黒鉛化炉には、高温領域に位置するライニングを再度構築する頻度を低くして、黒鉛化炉ライニングの使用期間を伸ばすことができる。
【0041】
本願における好ましい実施例を説明したが、当業者は、一旦、基本的な進歩性を備えた概念を知ると、これらの実施例について他の変更や修正も可能である。故に、添付されている請求の範囲は、好ましい実施例、及び、落入本願の範囲に含まれているあらゆる変更や補正を含んでいるものとして解釈すべきである。
【0042】
明らかに、当業者は、本願の趣旨や範囲を超えない限り、本願について様々な変更や変形が可能である。そして、本願については、これらの補正や変形が本願の請求の範囲及びその均等置換による範囲に含まれる場合に、これらの変更や変形を意図的に含む。
【符号の説明】
【0043】
1 炉体
2 上方ライニング
201 第一耐火レンガ
202 第二耐火レンガ
203 窪み
3 絶縁ライニング
4 下方ライニング
5 正極
6 負極
7 支持棒
【手続補正書】
【提出日】2024-03-19
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
炉体と、
いずれも、前記炉体の内壁に貼り付けて設置され、上から下までの方向に沿って順に当接して設置されたと共に、同軸になるように設置された、第一スルーホール、上方ライニング、絶縁ライニング及び下方ライニングと、
正極と負極であって、前記正極が鉛直方向に設置され、前記正極の下端が前記上方ライニングに設置され、前記負極が水平設置され、前記負極は中央部に原材料が通るための第二スルーホールが設置され、前記負極の第二スルーホールと第一スルーホールとが同軸になるように設置され、前記負極が前記下方ライニングの内部に設置される、正極と負極を含む、ことを特徴とする黒鉛化炉。
【請求項2】
前記絶縁ライニングは、鉛直方向に、厚さが30~200mmである、ことを特徴とする請求項1に記載の黒鉛化炉。
【請求項3】
前記絶縁ライニングは、耐火材により注ぎ込まれたものであり、
前記耐火材は、アルミナ質れんが、ジルコニアれんが、コランダムれんが及び粘土れんがのうちの何れかの一つである、ことを特徴とする請求項
1に記載の黒鉛化炉。
【請求項4】
前記上方ライニング、前記絶縁ライニング及び前記下方ライニングは、それらの内径が同じである、ことを特徴とする請求項
1に記載の黒鉛化炉。
【請求項5】
少なくとも二つの支持棒をさらに含み、
各前記支持棒は、一方端が前記黒鉛化炉の外部に設けられる一方、他方端が前記黒鉛化炉に設けられると共に前記負極に接続される、ことを特徴とする請求項
1に記載の黒鉛化炉。
【請求項6】
各前記支持棒は、他方端に凹溝が設置されており、前記負極の外周が各前記支持棒の凹溝に挿嵌される、ことを特徴とする請求項5に記載の黒鉛化炉。
【請求項7】
前記上方ライニングは、内側面に、径方向に沿って順次に設置され、周方向及び/又は母線方向に沿って延長した一層又は多層の耐火層を含み、
前記一層又は多層耐火層のうちの少なくとも一層の耐火層は、間隔をおいて設置された複数の第一耐火レンガと第二耐火レンガを含み、
前記第一耐火レンガは、荷重軟化点≧3200℃となり、前記第二耐火レンガの酸化温度が前記第一耐火レンガの酸化温度よりも高い、ことを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の黒鉛化炉。
【請求項8】
前記第一耐火レンガと前記第二耐火レンガは、火に晒された面のサイズがいずれも100~500mm×100~500mmである、ことを特徴とする請求項7に記載の黒鉛化炉。
【請求項9】
前記第一耐火レンガは、高炉用炭素れんが、黒鉛材質炭素れんが及び微孔性複合炭素れんがのうちの少なくとも一つである、ことを特徴とする請求項
7に記載の黒鉛化炉。
【請求項10】
前記第二耐火レンガは、アルミナ質れんが、ムライトれんが、シリコンれんが、コランダムれんが、ジルコニアれんが、炭化シリコンれんがのうちの少なくとも一つである、ことを特徴とする請求項
7に記載の黒鉛化炉。
【国際調査報告】