(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-30
(54)【発明の名称】1型糖尿病の処置を予後予測するための方法
(51)【国際特許分類】
A61K 39/395 20060101AFI20240920BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20240920BHJP
C12Q 1/54 20060101ALI20240920BHJP
G01N 33/66 20060101ALI20240920BHJP
G01N 33/68 20060101ALI20240920BHJP
C07K 16/28 20060101ALN20240920BHJP
【FI】
A61K39/395 N
A61P3/10
C12Q1/54
G01N33/66 A
G01N33/68
C07K16/28 ZNA
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024541921
(86)(22)【出願日】2022-09-20
(85)【翻訳文提出日】2024-05-16
(86)【国際出願番号】 US2022076702
(87)【国際公開番号】W WO2023044495
(87)【国際公開日】2023-03-23
(32)【優先日】2021-09-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521155829
【氏名又は名称】プロヴェンション・バイオ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】PROVENTION BIO, INC.
(71)【出願人】
【識別番号】524106185
【氏名又は名称】エミリー・ケー・シムズ
(71)【出願人】
【識別番号】524106196
【氏名又は名称】ジェイ・エム・ソーセンコ
(71)【出願人】
【識別番号】524106200
【氏名又は名称】デーヴィッド・カスバートソン
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100216105
【氏名又は名称】守安 智
(72)【発明者】
【氏名】エミリー・ケー・シムズ
(72)【発明者】
【氏名】ジェイ・エム・ソーセンコ
(72)【発明者】
【氏名】デーヴィッド・カスバートソン
(72)【発明者】
【氏名】フランシスコ・レオン
【テーマコード(参考)】
2G045
4B063
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
2G045AA25
2G045CA25
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2G045DA36
4B063QA05
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4C085AA14
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4C085GG04
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045CA40
4H045DA76
4H045EA22
4H045EA27
4H045FA74
(57)【要約】
本明細書の一態様では、1型糖尿病(T1D)の防止またはその発症の遅延における抗CD3抗体の応答性を予後予測する方法が提示される。
【選択図】
図1H
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1型糖尿病(T1D)を処置または防止するための治療剤または予防剤の応答性を予後予測する方法であって、
治療剤または予防剤を、それを必要とする対象に投与する工程;および
経口ブドウ糖負荷試験による平均血糖値および平均Cペプチド値の時間経過にわたる変化を、2次元格子上にプロットすることにより、GCRC(glucose and C-peptide response curve)の変化ベクトルを決定する工程であって、Cペプチドの増大および血糖の減少に向かう変化ベクトルの方向性は、代謝的改善を指し示す工程
を含む方法。
【請求項2】
経口ブドウ糖負荷試験は、1時間経口ブドウ糖負荷試験、2時間経口ブドウ糖負荷試験、4時間経口ブドウ糖負荷試験を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
GCRCによるWQE(Within Quadrant Endpoint)およびODE(Ordinal Directional Endpoint)を計算する工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
治療剤または予防剤は、免疫療法剤を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
免疫療法剤は、抗CD3抗体またはその抗原結合性断片を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
抗CD3抗体は、テプリズマブ、オテリキシズマブ、またはフォラルマブである、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
有効量の治療剤または予防剤は、10~1100マイクログラム/平方メートル(μg/m
2)における抗CD3抗体の、毎日の皮下(SC)注射または静脈内(IV)注入または経口投与による、10~14日のコースを含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
有効量の治療剤または予防剤は、約9000μg/m
2~約14000μg/m
2の総用量における抗CD3抗体による、10~14日のコースを含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
それを必要とする対象に、1~4日目にそれぞれ51μg/m
2、103μg/m
2、207μg/m
2、および413μg/m
2、ならびに5~14日目の各々に826μg/m
2の単回用量の、抗CD3抗体のIV注入による14日コースを投与する工程を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
抗CD3抗体は、テプリズマブ、オテリキシズマブ、またはフォラルマブである、請求項7~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
抗CD3抗体は、テプリズマブである、請求項7~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
対象は、T1Dの病期1、2、3、または4にある、請求項1~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
対象は、T1Dの病期1または2にあり、方法は、T1Dの防止またはその発症の遅延における予防剤についての予後予測のための方法である、請求項1~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
1型糖尿病(T1D)の防止またはその発症の遅延における抗CD3抗体の応答性を予後予測する方法であって、
予防有効量の抗CD3抗体を、臨床的T1Dに対する危険性がある、非臨床的に糖尿病性である対象に投与する工程;および
経口ブドウ糖負荷試験による平均血糖値および平均Cペプチド値の時間経過にわたる変化を、2次元格子上にプロットすることにより、GCRC(glucose and C-peptide response curve)の変化ベクトルを決定する工程であって、Cペプチドの増大および血糖の減少に向かう変化ベクトルの方向性は、代謝的改善を指し示す工程
を含む方法。
【請求項15】
GCRCによるWQE(Within Quadrant Endpoint)およびODE(Ordinal Directional Endpoint)を計算する工程をさらに含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
非臨床的に糖尿病性である対象は、T1Dを伴う患者の血縁者である、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
非臨床的に糖尿病性である対象は、膵島細胞質抗体(ICA)、インスリン自己抗体(IAA)、およびグルタミン酸デカルボキシラーゼ(GAD)、チロシンホスファターゼ(IA-2/ICA512)、またはZnT8に対する抗体から選択される、2つまたはそれ以上の糖尿病関連自己抗体を有する、請求項14~16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
非臨床的に糖尿病性である対象は、(1)亜鉛トランスポーター8(ZnT8)抗体について陰性であり、(2)HLA-DR4+であり、かつ/または(3)HLA-DR3+ではない、請求項14~17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
非臨床的に糖尿病性である対象は、亜鉛トランスポーター8(ZnT8)抗体について陰性である、請求項14~17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
非臨床的に糖尿病性である対象は、HLA-DR4+であり、HLA-DR3+ではない請求項14~17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
非臨床的に糖尿病性である対象は、経口ブドウ糖負荷試験(OGTT)における耐糖能異常を有する、請求項14~20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
OGTTにおける耐糖能異常は、110~125mg/dLの空腹時血糖値、または≧140、かつ、<200mg/dLの2時間後血糖値、またはOGTTの30、60、90分後、または4時間後における、>200mg/dLの随時血糖値である、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
10~1100マイクログラム/平方メートル(μg/m
2)における、抗CD3抗体の皮下(SC)注射または静脈内(IV)注入または経口投与による、10~14日のコースを投与する工程を含む、請求項14~22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
有効量の治療剤または予防剤は、約9000μg/m
2~約14000μg/m
2の総用量における抗CD3抗体による、10~14日のコースを含む、請求項14~23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
1~4日目にそれぞれ51μg/m
2、103μg/m
2、207μg/m
2、および413μg/m
2、ならびに5~14日目の各々に826μg/m
2の単回用量の、抗CD3抗体のIV注入による14日コースを投与する工程を含む、請求項14~24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
抗CD3抗体は、T1Dの臨床診断までの中央値時間を、約50%~約90%遅延させる、請求項14~25のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
抗CD3抗体は、T1Dの臨床診断までの中央値時間を、約12カ月間~約60カ月間遅延させる、請求項14~26のいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
抗CD3抗体は、テプリズマブ、オテリキシズマブ、またはフォラルマブである、請求項14~27のいずれか1項に記載の方法。
【請求項29】
抗CD3抗体は、テプリズマブである、請求項14~27のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、その全開示が、参照により本明細書に組み込まれる、2021年9月20日に出願された、米国仮出願第63/246,184号の利益を主張する。
【0002】
認可に対する政府の権利
本発明は、U01DK127786、R03DK117253、およびR01DK121929の下に、National Institute of Diabetes and Digestive and Kidney Diseasesにより与えられた、政府助成によりなされた。米国政府は、本発明において、一定の権利を有する。
【0003】
配列表
本明細書は、その内容が、参照により本明細書に組み込まれる、2022年9月18日に作成された、以下のサイズ:3,396バイトを有する、178833-011501_ST26.xlmと題されたファイルを含む、本明細書と共に提出される配列表を含む。
【0004】
分野
本開示は、一般に、危険性がある対象における、臨床的1型糖尿病(T1D)を防止する、またはその発症を遅延させる組成物および方法に関し、より特定すると、このような防止または遅延における抗CD3抗体の使用についての予後予測に関する。
【背景技術】
【0005】
1型糖尿病(T1D)は、ランゲルハンス島内のインスリン産生ベータ細胞の、自己免疫性破壊により引き起こされ、生存のために、外因性インスリン注射への依存をもたらす。約1,600万人の米国人が、1型糖尿病を有し、T1Dは、喘息に次いで、最も一般的な小児疾患のうちの1つであり続けている。医療による改善にもかかわらず、T1Dの影響が最も大きな個体は、所望の血糖目標値を安定的に達成することが可能ではない。1型糖尿病を伴う個体には、罹患および死亡の両方の危険性の増大に対する懸念が存在する。近年の2つの研究は、10歳になる前に診断された小児における生存年数17.7年の喪失、ならびに成人で診断されたスコットランド人の男性および女性それぞれについて失われた、11および13年の生存年数について言及した。
【0006】
遺伝的な罹患性個体では、T1Dは、まず、自己抗体の出現(病期1)により、次いで、血糖異常(病期2)により特徴づけられる、明白な高血糖症の前に、無症状期を介して進行する。病期2では、血糖負荷に対する代謝応答が損なわれるが、他の代謝指標、例えば、グリコシル化ヘモグロビンは、正常であり、インスリン処置は必要とされない。これらの免疫学的/代謝的機能は、明白な高血糖症を伴い、インスリン処置が要求される、臨床的疾患の発症の危険性が大きな個体を同定する(病期3)。いくつかの免疫介入は、新規発症の臨床的T1Dで研究されたところ、ベータ細胞機能の減殺を遅延させることが示された。1つの有望な治療は、短期処置が、β細胞機能の喪失を、恒久的に軽減し、診断および処置の後に、観察可能な効果が、7年間にわたり見られることを、いくつかの研究が示した、FcR非結合性抗CD3モノクローナル抗体である、テプリズマブである。薬物は、ベータ細胞の殺滅を引き起こす、重要なエフェクター細胞であると考えられる、CD8+ Tリンパ球の機能を改変する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
現在のところ、臨床診断の前に(すなわち、病期1または2において)開始された介入は、臨床的な病期3のT1Dへの進行を変更していない。したがって、高危険性個体における臨床的T1Dを防止する、またはその発症を遅延させる処置に対する必要が存在する。さらに、このような防止または遅延を予後予測するための方法の改善もまた必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本明細書の一態様では、1型糖尿病(T1D)を処置するための治療剤または予防剤の応答性を予後予測する方法であって、治療剤または予防剤を、それを必要とする対象に投与する工程;および経口ブドウ糖負荷試験による平均血糖値および平均Cペプチド値の時間経過にわたる変化を、2次元格子上にプロットすることにより、GCRC(glucose and C-peptide response curve)の変化ベクトルを決定する工程であって、Cペプチドの増大および血糖の減少に向かう変化ベクトルの方向性は、代謝的改善を指し示す工程を含む方法が提示される。
【0009】
一部の実施形態では、経口ブドウ糖負荷試験は、1時間経口ブドウ糖負荷試験、2時間経口ブドウ糖負荷試験、4時間経口ブドウ糖負荷試験、またはこれらの組合せを含む。
【0010】
一部の実施形態では、1型糖尿病(T1D)を処置するための治療剤または予防剤の応答性を予後予測する方法は、治療剤または予防剤を、それを必要とする対象に投与する工程;および1時間経口ブドウ糖負荷試験による平均血糖値および平均Cペプチド値の時間経過にわたる変化を、2次元格子上にプロットすることにより、GCRC(glucose and C-peptide response curve)の変化ベクトルを決定する工程であって、Cペプチドの増大および血糖の減少に向かう変化ベクトルの方向性は、代謝的改善を指し示す工程を含む。
【0011】
一部の実施形態では、1型糖尿病(T1D)を処置するための治療剤または予防剤の応答性を予後予測する方法は、治療剤または予防剤を、それを必要とする対象に投与する工程;および2時間経口ブドウ糖負荷試験による平均血糖値および平均Cペプチド値の時間経過にわたる変化を、2次元格子上にプロットすることにより、GCRC(glucose and C-peptide response curve)の変化ベクトルを決定する工程であって、Cペプチドの増大および血糖の減少に向かう変化ベクトルの方向性は、代謝的改善を指し示す工程を含む。
【0012】
一部の実施形態では、1型糖尿病(T1D)を処置するための治療剤または予防剤の応答性を予後予測する方法は、治療剤または予防剤を、それを必要とする対象に投与する工程;および4時間経口ブドウ糖負荷試験による平均血糖値および平均Cペプチド値の時間経過にわたる変化を、2次元格子上にプロットすることにより、GCRC(glucose and C-peptide response curve)の変化ベクトルを決定する工程であって、Cペプチドの増大および血糖の減少に向かう変化ベクトルの方向性は、代謝的改善を指し示す工程を含む。
【0013】
一部の実施形態では、方法は、GCRCによるWQE(Within Quadrant Endpoint)およびODE(Ordinal Directional Endpoint)を計算する工程をさらに含む。一部の実施形態では、WQE(Within Quadrant Endpoint)およびODE(Ordinal Directional Endpoint)は、ベースライン座標と、6カ月後座標との間のベクトルについての方向性四分円に基づく。一部の実施形態では、WQE(Within Quadrant Endpoint)およびODE(Ordinal Directional Endpoint)は、血糖の変化パーセント、およびCペプチドの変化パーセントに基づく。
【0014】
一部の実施形態では、治療剤または予防剤は、免疫療法剤を含む。一部の実施形態では、免疫療法剤は、抗CD3抗体またはその抗原結合性断片を含む。一部の実施形態では、抗CD3抗体は、テプリズマブ、オテリキシズマブ、またはフォラルマブである。一実施形態では、抗CD3抗体は、テプリズマブである。
【0015】
一部の実施形態では、有効量の治療剤または予防剤は、10~1100マイクログラム/平方メートル(mg/m2)における抗CD3抗体の、毎日の皮下(SC)注射または静脈内(IV)注入または経口投与による、10~14日のコースを含む。一部の実施形態では、有効量の治療剤または予防剤は、約9000mg/m2~約14000mg/m2の総用量における抗CD3抗体による、10~14日のコースを含む。
【0016】
一部の実施形態では、方法は、それを必要とする対象に、1~4日目にそれぞれ51mg/m2、103mg/m2、207mg/m2、および413mg/m2、ならびに5~14日目の各々に826μg/m2の単回用量の、抗CD3抗体のIV注入による14日コースを投与する工程を含む。
【0017】
一部の実施形態では、抗CD3抗体は、テプリズマブ、オテリキシズマブ、またはフォラルマブである。一部の実施形態では、抗CD3抗体は、テプリズマブである。
【0018】
一部の実施形態では、対象は、T1Dの病期1、2、3、または4にある。一部の実施形態では、対象は、T1Dの病期1または2にあり、方法は、T1Dの防止またはその発症の遅延における予防剤についての予後予測のために使用される。
【0019】
さらなる態様は、臨床的1型糖尿病(T1D)の防止またはその発症の遅延における抗CD3抗体の応答性を予後予測する方法であって、予防有効量の抗CD3抗体を、臨床的T1Dに対する危険性がある、非臨床的に糖尿病性である対象に投与する工程;および経口ブドウ糖負荷試験による平均血糖値および平均Cペプチド値の時間経過にわたる変化を、2次元格子上にプロットすることにより、GCRC(glucose and C-peptide response curve)の変化ベクトルを決定する工程であって、Cペプチドの増大および血糖の減少に向かう変化ベクトルの方向性は、代謝的改善を指し示す工程を含む方法に関する。
【0020】
一部の実施形態では、方法は、GCRCによるWQE(Within Quadrant Endpoint)およびODE(Ordinal Directional Endpoint)を計算する工程をさらに含む。一部の実施形態では、WQE(Within Quadrant Endpoint)およびODE(Ordinal Directional Endpoint)は、ベースライン座標と、6カ月後座標との間のベクトルについての方向性四分円に基づく。一部の実施形態では、WQE(Within Quadrant Endpoint)およびODE(Ordinal Directional Endpoint)は、血糖の変化パーセント、およびCペプチドの変化パーセントに基づく。
【0021】
一部の実施形態では、非臨床的に糖尿病性である対象は、病期1または2のT1Dに罹患している。
【0022】
一部の実施形態では、経口ブドウ糖負荷試験は、1時間経口ブドウ糖負荷試験、2時間経口ブドウ糖負荷試験、4時間経口ブドウ糖負荷試験、またはこれらの組合せを含む。
【0023】
一部の実施形態では、臨床的1型糖尿病(T1D)の防止またはその発症の遅延における抗CD3抗体の応答性を予後予測する方法は、予防有効量の抗CD3抗体を、臨床的T1Dに対する危険性がある、非臨床的に糖尿病性である対象に投与する工程;および1時間経口ブドウ糖負荷試験による平均血糖値および平均Cペプチド値の時間経過にわたる変化を、2次元格子上にプロットすることにより、GCRC(glucose and C-peptide response curve)の変化ベクトルを決定する工程であって、Cペプチドの増大および血糖の減少に向かう変化ベクトルの方向性は、代謝的改善を指し示す工程を含む。
【0024】
一部の実施形態では、臨床的1型糖尿病(T1D)の防止またはその発症の遅延における抗CD3抗体の応答性を予後予測する方法は、予防有効量の抗CD3抗体を、臨床的T1Dに対する危険性がある、非臨床的に糖尿病性である対象に投与する工程;および2時間経口ブドウ糖負荷試験による平均血糖値および平均Cペプチド値の時間経過にわたる変化を、2次元格子上にプロットすることにより、GCRC(glucose and C-peptide response curve)の変化ベクトルを決定する工程であって、Cペプチドの増大および血糖の減少に向かう変化ベクトルの方向性は、代謝的改善を指し示す工程を含む。
【0025】
一部の実施形態では、臨床的1型糖尿病(T1D)の防止またはその発症の遅延における抗CD3抗体の応答性を予後予測する方法は、予防有効量の抗CD3抗体を、臨床的T1Dに対する危険性がある、非臨床的に糖尿病性である対象に投与する工程;および4時間経口ブドウ糖負荷試験による平均血糖値および平均Cペプチド値の時間経過にわたる変化を、2次元格子上にプロットすることにより、GCRC(glucose and C-peptide response curve)の変化ベクトルを決定する工程であって、Cペプチドの増大および血糖の減少に向かう変化ベクトルの方向性は、代謝的改善を指し示す工程を含む。
【0026】
一部の実施形態では、臨床的T1Dに対する危険性がある、非臨床的に糖尿病性である対象は、T1Dを伴う患者の血縁者である。
【0027】
一部の実施形態では、臨床的T1Dに対する危険性がある、非臨床的に糖尿病性である対象は、亜鉛トランスポーター8(ZnT8)について陰性である。一部の実施形態では、臨床的T1Dに対する危険性がある、非臨床的に糖尿病性である対象は、HLA-DR4+である。一部の実施形態では、臨床的T1Dに対する危険性がある、非臨床的に糖尿病性である対象は、HLA-DR3+ではない。一部の実施形態では、臨床的T1Dに対する危険性がある、非臨床的に糖尿病性である対象は、HLA-DR4+であり、HLA-DR3+ではない。一部の実施形態では、非糖尿病性対象は、(1)亜鉛トランスポーター8(ZnT8)について陰性であり、(2)HLA-DR4+であり、かつ/または(3)HLA-DR3+ではない。
【0028】
一部の実施形態では、方法は、臨床的T1Dに対する危険性がある、非臨床的に糖尿病性である対象が、亜鉛トランスポーター8(ZnT8)抗体について陰性であることを決定する工程をさらに含む。一部の実施形態では、方法は、臨床的T1Dに対する危険性がある、非臨床的に糖尿病性である対象が、HLA-DR4+であることを決定する工程をさらに含む。一部の実施形態では、方法は、臨床的T1Dに対する危険性がある、非臨床的に糖尿病性である対象が、HLA-DR4+であり、HLA-DR3+ではないことを決定する工程をさらに含む。一部の実施形態では、方法は、臨床的T1Dに対する危険性がある、非臨床的に糖尿病性である対象が、HLA-DR4+であり、HLA-DR3+ではないことを決定する工程をさらに含む。一部の実施形態では、方法は、臨床的T1Dに対する危険性がある、非臨床的に糖尿病性である対象が、(1)亜鉛トランスポーター8(ZnT8)について陰性であり、(2)HLA-DR4+であり、かつ/または(3)HLA-DR3+ではないことを決定する工程をさらに含む。
【0029】
一部の実施形態では、臨床的T1Dに対する危険性がある、非臨床的に糖尿病性である対象は、膵島細胞質抗体(ICA)、インスリン自己抗体(IAA)、およびグルタミン酸デカルボキシラーゼ(GAD)、チロシンホスファターゼ(IA-2/ICA512)、またはZnT8に対する抗体から選択される、2つまたはそれ以上の糖尿病関連自己抗体を有する。
【0030】
一部の実施形態では、臨床的T1Dに対する危険性がある、非臨床的に糖尿病性である対象は、経口ブドウ糖負荷試験(OGTT)における耐糖能異常を有する。一部の実施形態では、OGTTにおける耐糖能異常は、110~125mg/dLの空腹時血糖値、または≧140、かつ、<200mg/dLの2時間後血糖値、またはOGTTの30、60、90分後、または4時間後における、>200mg/dLの随時血糖値である。
【0031】
一部の実施形態では、抗CD3抗体は、テプリズマブ、オテリキシズマブ、またはフォラルマブである。一部の実施形態では、抗CD3抗体は、テプリズマブである。一部の実施形態では、抗体の予防有効量は、10~1100マイクログラム/平方メートル(μg/m2)における、抗CD3抗体の皮下(SC)注射または静脈内(IV)注入または経口投与による、10~14日のコースを含む。一部の実施形態では、有効量の治療剤または予防剤は、約9000μg/m2~約14000μg/m2の総用量における抗CD3抗体による、10~14日のコースを含む。一部の実施形態では、方法は、1~4日目にそれぞれ51μg/m2、103μg/m2、207μg/m2、および413μg/m2、ならびに5~14日目の各々に826μg/m2の単回用量の、IV注入による14日コースを投与する工程を含む。
【0032】
一部の実施形態では、予防有効量は、T1Dの臨床診断までの中央値時間を、約50%~約90%遅延させる。一部の実施形態では、予防有効量は、T1Dの臨床診断までの中央値時間を、少なくとも12カ月間、少なくとも18カ月間、少なくとも24カ月間、少なくとも36カ月間、少なくとも48カ月間、または少なくとも60カ月間遅延させる。
【0033】
一部の実施形態では、TIGIT+KLRG1+CD8+ T細胞の決定は、フローサイトメトリーによる決定である。
【0034】
一部の実施形態では、方法は、増殖マーカーであるKi67および/またはCD57を発現させるCD8+ T細胞の百分率の低下を決定する工程をさらに含む。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図1-1】
図1A~1Fは、GCRCベクトルの変化が、プラセボ群と、テプリズマブ処置群との間で、逆の方向性を示すことを示す図である。個々の参加者のGCRCの変化ベクトル、ならびに処置群ごとの平均値ベクトルを、ベースラインにおける研究来院(無作為化の時点)から、処置の3カ月後まで(A~D)、およびベースラインから、処置の6カ月後まで(E~H)の間隔にわたりプロットした。A~B:個々のGCRCベクトルの、ベースラインから、処置の3カ月後における変化を、プラセボ群(A)およびテプリズマブ処置群(B)についてプロットした。高危険性値(血糖の増大、Cペプチドの減少)を、破線で示し、低危険性(血糖の減少およびCペプチドの増大)ベクトルを、太線で示す。ベクトルの四分円分布頻度は、処置群間で有意に異なった(p=0.045)。C~D:平均値GCRCは、プラセボ処置群およびテプリズマブ処置群について、無作為化時(ベースライン、実線で示される)、および研究の3カ月後に実施されたOGTT時(破線で示される)にプロットした。血糖/Cペプチド座標についての平均値重心値は、変化ベクトルを表示した、各GCRC内のドットとして描示した。この期間にわたる、GCRC重心値の変化が、プラセボ群について、格子の左上部分への方向性を示すことは、血糖の増大およびCペプチドの減少を指し示す。テプリズマブ処置群が、格子の右下部分への逆の方向性を示すことは、Cペプチドの増大および血糖の減少を指し示す。E~F:個々のGCRCベクトルの、ベースラインから、処置の6カ月後における変化を、プラセボ群(E)およびテプリズマブ処置群(F)についてプロットした。ベクトルの四分円分布頻度は、処置群間で有意に異なった(p=0.0044)。G~H:平均値GCRCは、プラセボ処置群およびテプリズマブ処置群について、無作為化時(ベースライン、実線で示される)、および研究の6カ月後に実施されたOGTT時(破線で示される)にプロットした。血糖/Cペプチド座標についての平均値重心値は、変化ベクトルを表示した、各GCRC内のドットとして描示した。この期間にわたる、GCRC重心値の変化が、プラセボ群について、格子の左上部分への方向性を示すことは、血糖の増大およびCペプチドの減少を指し示す。テプリズマブ処置群が、格子の右下部分への逆の方向性を示すことは、Cペプチドの増大および血糖の減少を指し示す。3カ月後:プラセボについてのn=29;テプリズマブについてのn=41である。6カ月後:プラセボについてのn=24;テプリズマブについてのn=44である。各期間について、個々のベクトル方向四分円についての絶対頻度を、表1に提示する。
【
図2A】方向四分円内のベクトル角を使用する、処置効果についての統計学的評価を示す図である。処置評価項目であるA.WQE(Within Quadrant Endpoint)、およびB.ODE(Ordinal Directional Endpoint)の変化についての、個々の非補正値を、ベースライン~3カ月後の期間、およびベースライン~6カ月後の期間について、処置群ごとにプロットした。3カ月後における、ODEについての処置群間比較のために、年齢およびBMIについての補正前において、p=0.018とし、補正後において、p=0.038とする。6カ月後では、補正前において、p<0.001とし、補正後において、p=0.002とする。3カ月後における、WQEについての処置群間比較のために、年齢およびBMIについての補正前において、p=0.026とし、補正後において、p=0.072とする。6カ月後では、補正前および補正後において、p<0.001とする。
*非補正p値を<0.05とし;
***非補正p値を<0.001とする。3カ月後において、プラセボ処置個体をn=29とし、テプリズマブ処置個体を41例とする。6カ月後において、プラセボ処置個体をn=24とし、テプリズマブ処置個体を44例とする。
【
図2B】方向四分円内のベクトル角を使用する、処置効果についての統計学的評価を示す図である。処置評価項目であるA.WQE(Within Quadrant Endpoint)、およびB.ODE(Ordinal Directional Endpoint)の変化についての、個々の非補正値を、ベースライン~3カ月後の期間、およびベースライン~6カ月後の期間について、処置群ごとにプロットした。3カ月後における、ODEについての処置群間比較のために、年齢およびBMIについての補正前において、p=0.018とし、補正後において、p=0.038とする。6カ月後では、補正前において、p<0.001とし、補正後において、p=0.002とする。3カ月後における、WQEについての処置群間比較のために、年齢およびBMIについての補正前において、p=0.026とし、補正後において、p=0.072とする。6カ月後では、補正前および補正後において、p<0.001とする。
*非補正p値を<0.05とし;
***非補正p値を<0.001とする。3カ月後において、プラセボ処置個体をn=29とし、テプリズマブ処置個体を41例とする。6カ月後において、プラセボ処置個体をn=24とし、テプリズマブ処置個体を44例とする。
【
図3A】GCRC(glucose and C-peptide response curve)が、1型糖尿病の発症に伴い進展する、血糖と、Cペプチドとの間の関係の視覚化および定量を可能とすることを示す図である。A.経口ブドウ糖負荷試験の30(白丸)、60、90、および120分後(白四角)の時点における、典型的な血糖およびCペプチド値を示す仮説的GCRCを、1型糖尿病の診断時(破線)、および診断の6カ月前における個体についてプロットした。血糖/Cペプチド座標についての平均値重心値は、各GCRC内のドットとして指し示す。この期間にわたる、平均値GCRC重心値の変化を示すベクトルが、格子の左上部分への方向性を示すことは、血糖の増大およびCペプチドの減少を指し示す。B.代謝機能の変化を定量する、変化についての方向四分円と、三角形により生成される角との組合せ適用を可能とする右三角形を創出する、GCRCベクトルの適用を提示する概念図である。計算角は、ベクトル(斜辺)と、右三角形の水平線方向の辺との間の角である。C.血糖およびCペプチド値を0に固定した場合の、ベースラインにおける重心から生じる、4つの方向四分円の各々についての、ベクトルの仮説的例である。水平線と、ベクトルとの間の計算角もまた示す。
【
図3B】GCRC(glucose and C-peptide response curve)が、1型糖尿病の発症に伴い進展する、血糖と、Cペプチドとの間の関係の視覚化および定量を可能とすることを示す図である。A.経口ブドウ糖負荷試験の30(白丸)、60、90、および120分後(白四角)の時点における、典型的な血糖およびCペプチド値を示す仮説的GCRCを、1型糖尿病の診断時(破線)、および診断の6カ月前における個体についてプロットした。血糖/Cペプチド座標についての平均値重心値は、各GCRC内のドットとして指し示す。この期間にわたる、平均値GCRC重心値の変化を示すベクトルが、格子の左上部分への方向性を示すことは、血糖の増大およびCペプチドの減少を指し示す。B.代謝機能の変化を定量する、変化についての方向四分円と、三角形により生成される角との組合せ適用を可能とする右三角形を創出する、GCRCベクトルの適用を提示する概念図である。計算角は、ベクトル(斜辺)と、右三角形の水平線方向の辺との間の角である。C.血糖およびCペプチド値を0に固定した場合の、ベースラインにおける重心から生じる、4つの方向四分円の各々についての、ベクトルの仮説的例である。水平線と、ベクトルとの間の計算角もまた示す。
【
図3C】GCRC(glucose and C-peptide response curve)が、1型糖尿病の発症に伴い進展する、血糖と、Cペプチドとの間の関係の視覚化および定量を可能とすることを示す図である。A.経口ブドウ糖負荷試験の30(白丸)、60、90、および120分後(白四角)の時点における、典型的な血糖およびCペプチド値を示す仮説的GCRCを、1型糖尿病の診断時(破線)、および診断の6カ月前における個体についてプロットした。血糖/Cペプチド座標についての平均値重心値は、各GCRC内のドットとして指し示す。この期間にわたる、平均値GCRC重心値の変化を示すベクトルが、格子の左上部分への方向性を示すことは、血糖の増大およびCペプチドの減少を指し示す。B.代謝機能の変化を定量する、変化についての方向四分円と、三角形により生成される角との組合せ適用を可能とする右三角形を創出する、GCRCベクトルの適用を提示する概念図である。計算角は、ベクトル(斜辺)と、右三角形の水平線方向の辺との間の角である。C.血糖およびCペプチド値を0に固定した場合の、ベースラインにおける重心から生じる、4つの方向四分円の各々についての、ベクトルの仮説的例である。水平線と、ベクトルとの間の計算角もまた示す。
【
図4】GCRCの変化ベクトルについての方向四分円に基づき、WQEのために利用された角(qangle;太字で指し示される)を示す図である:血糖およびCペプチドの、6カ月間にわたる代謝的変化は、表示の4つの方向四分円のうちの1つに収まるであろう。各四分円は、ベクトルと水平方向の境界線との間で計算されたベクトル角のほか、ベクトルと垂直方向の境界線との間で計算されたベクトル角を含む。上四分円内に収まるベクトルについて、qangle(評価項目としての使用のために、モデルを最適化するのに使用される角であり、赤色で指し示される)は、ベクトルと、水平方向の境界線との間で計算した。下四分円内に収まるベクトルについて、qangleは、ベクトルと、垂直方向の境界線との間で計算した。この例では、RUQについて、ベクトルと、水平軸との間のベクトル角62°が、WQEの開発のためのqangleとして使用されるであろう。しかし、LRQについては、計算されたベクトル角40°(ベクトルと垂直軸との間で)を、qangleのために利用した。
【発明を実施するための形態】
【0036】
本開示の態様は、1型糖尿病(T1D)を処置するための治療剤または予防剤の応答性を予後予測する方法に関する。本明細書の一部の実施形態では、1型糖尿病(T1D)を処置するための治療剤または予防剤の応答性を予後予測する方法であって、治療剤または予防剤を、それを必要とする対象に投与する工程;1時間経口ブドウ糖負荷試験、2時間経口ブドウ糖負荷試験、または4時間経口ブドウ糖負荷試験による平均血糖値および平均Cペプチド値を、2次元格子上にプロットすることにより、GCRC(glucose and C-peptide response curve)を構築する工程;GCRCの形状および動きの変化を目視により観察して、代謝的改善を決定する工程;ならびに場合により、GCRCによるWQE(Within Quadrant Endpoint)およびODE(Ordinal Directional Endpoint)を計算する工程を含む方法が提示される。
【0037】
本明細書の一態様では、1型糖尿病(T1D)を処置するための治療剤または予防剤の応答性を予後予測する方法であって、治療剤または予防剤を、それを必要とする対象に投与する工程;および経口ブドウ糖負荷試験による平均血糖値および平均Cペプチド値の時間経過にわたる変化を、2次元格子上にプロットすることにより、GCRC(glucose and C-peptide response curve)の変化ベクトルを決定する工程であって、Cペプチドの増大および血糖の減少に向かう変化ベクトルの方向性は、代謝的改善を指し示す工程を含む方法が提示される。
【0038】
一部の実施形態では、経口ブドウ糖負荷試験は、1時間経口ブドウ糖負荷試験、2時間経口ブドウ糖負荷試験、4時間経口ブドウ糖負荷試験、またはこれらの組合せを含む。
【0039】
一部の実施形態では、1型糖尿病(T1D)を処置するための治療剤または予防剤の応答性を予後予測する方法は、治療剤または予防剤を、それを必要とする対象に投与する工程;および1時間経口ブドウ糖負荷試験による平均血糖値および平均Cペプチド値の時間経過にわたる変化を、2次元格子上にプロットすることにより、GCRC(glucose and C-peptide response curve)の変化ベクトルを決定する工程であって、Cペプチドの増大および血糖の減少に向かう変化ベクトルの方向性は、代謝的改善を指し示す工程を含む。
【0040】
一部の実施形態では、1型糖尿病(T1D)を処置するための治療剤または予防剤の応答性を予後予測する方法は、治療剤または予防剤を、それを必要とする対象に投与する工程;および2時間経口ブドウ糖負荷試験による平均血糖値および平均Cペプチド値の時間経過にわたる変化を、2次元格子上にプロットすることにより、GCRC(glucose and C-peptide response curve)の変化ベクトルを決定する工程であって、Cペプチドの増大および血糖の減少に向かう変化ベクトルの方向性は、代謝的改善を指し示す工程を含む。
【0041】
一部の実施形態では、1型糖尿病(T1D)を処置するための治療剤または予防剤の応答性を予後予測する方法は、治療剤または予防剤を、それを必要とする対象に投与する工程;および4時間経口ブドウ糖負荷試験による平均血糖値および平均Cペプチド値の時間経過にわたる変化を、2次元格子上にプロットすることにより、GCRC(glucose and C-peptide response curve)の変化ベクトルを決定する工程であって、Cペプチドの増大および血糖の減少に向かう変化ベクトルの方向性は、代謝的改善を指し示す工程を含む。
【0042】
一部の実施形態では、GCRCの変化ベクトルを決定する工程は、治療剤または予防剤の投与の後で、平均血糖値および平均Cペプチド値を決定し、治療剤または予防剤の投与の前に、ベースライン平均血糖値およびベースライン平均Cペプチド値を決定することを含む。
【0043】
一部の実施形態では、方法は、治療剤または予防剤を、それを必要とする複数の対象に投与し、GCRCの複数の変化ベクトルを決定する工程を含む。一部の実施形態では、Cペプチドの増大および血糖の減少に向かう複数の変化ベクトルの方向性の頻度は、代謝的改善を指し示す。
【0044】
一部の実施形態では、方法は、複数の対象に由来する、ベースラインにおける平均値のGCRC、および複数の対象に由来する、処置後における平均値のGCRCをプロットする工程、ベースラインにおけるGCRCのために、血糖/Cペプチド座標について、ベースラインにおける平均値の重心値、および処置後におけるGCRCのために、血糖/Cペプチド座標について、処置後における平均値の重心値を決定する工程、ならびにベースラインにおける平均値の重心値と、処置後における平均値の重心値との間の変化ベクトルを決定する工程をさらに含む。一部の実施形態では、時間経過にわたる、GCRC重心値の変化、ならびに/またはCペプチドの増大および血糖の減少に向かう変化ベクトルの方向性の変化は、代謝的改善を指し示す。一部の実施形態では、期間は、治療剤または予防剤の投与後3カ月間、4カ月間、5カ月間、6カ月間を含む。
【0045】
一部の実施形態では、方法は、(a)プラセボを、それを必要とする、第1の複数の対象に投与し、GCRCの、第1の複数の変化ベクトルを決定し、Cペプチドの増大および血糖の減少に向かう、第1の複数の変化ベクトルの方向性の頻度を決定する工程、(b)治療剤または予防剤を、それを必要とする、第2の複数の対象に投与し、GCRCの、第2の複数の変化ベクトルを決定し、Cペプチドの増大および血糖の減少に向かう、第2の複数の変化ベクトルの方向性の頻度を決定する工程を含み、この場合、第1の頻度より著明に高度である第2の頻度は、代謝的改善を指し示す。
【0046】
一部の実施形態では、方法は、GCRCによるWQE(Within Quadrant Endpoint)およびODE(Ordinal Directional Endpoint)を計算する工程をさらに含む。一部の実施形態では、WQE(Within Quadrant Endpoint)およびODE(Ordinal Directional Endpoint)は、ベースライン座標と、6カ月後座標との間のベクトルについての方向性四分円に基づく。一部の実施形態では、WQE(Within Quadrant Endpoint)およびODE(Ordinal Directional Endpoint)は、血糖の変化パーセント、およびCペプチドの変化パーセントに基づく。
【0047】
方法は、任意の病期のT1Dの処置または防止における、任意の治療剤または予防剤の予後予測のために使用されることに注目されたい。T1Dは、自己免疫応答を介する、大半のインスリン産生性ベータ細胞の破壊により特徴づけられる。T1Dが確立された患者は、ベータ細胞が残存するが、増殖しても、これらを破壊する自己免疫疾患のために繁殖しない。T1Dには、4つの病期:病期1:複数の(少なくとも2つの)膵島抗体、正常血糖、発症前;病期2:複数の膵島抗体、血糖値の上昇、発症前;病期3:膵島自己免疫、血糖の上昇、症状性;病期4:長年月にわたる1型糖尿病が存在する。本開示の一部の態様では、方法は、ベータ細胞の再生を結果としてもたらす。
【0048】
本明細書の一部の実施形態では、臨床的1型糖尿病(T1D)の防止またはその発症の遅延における抗CD3抗体の応答性を予後予測する方法であって、予防有効量の抗CD3抗体を、臨床的T1Dに対する危険性がある、非臨床的に糖尿病性である対象に投与する工程;および経口ブドウ糖負荷試験による平均血糖値および平均Cペプチド値の時間経過にわたる変化を、2次元格子上にプロットすることにより、GCRC(glucose and C-peptide response curve)の変化ベクトルを決定する工程であって、Cペプチドの増大および血糖の減少に向かう変化ベクトルの方向性は、代謝的改善を指し示す工程を含む方法が提示される。
【0049】
一部の実施形態では、経口ブドウ糖負荷試験は、1時間経口ブドウ糖負荷試験、2時間経口ブドウ糖負荷試験、4時間経口ブドウ糖負荷試験、またはこれらの組合せを含む。
【0050】
一部の実施形態では、臨床的1型糖尿病(T1D)の防止またはその発症の遅延における抗CD3抗体の応答性を予後予測する方法は、予防有効量の抗CD3抗体を、臨床的T1Dに対する危険性がある、非臨床的に糖尿病性である対象に投与する工程;および1時間経口ブドウ糖負荷試験による平均血糖値および平均Cペプチド値の時間経過にわたる変化を、2次元格子上にプロットすることにより、GCRC(glucose and C-peptide response curve)の変化ベクトルを決定する工程であって、Cペプチドの増大および血糖の減少に向かう変化ベクトルの方向性は、代謝的改善を指し示す工程を含む。
【0051】
一部の実施形態では、臨床的1型糖尿病(T1D)の防止またはその発症の遅延における抗CD3抗体の応答性を予後予測する方法は、予防有効量の抗CD3抗体を、臨床的T1Dに対する危険性がある、非臨床的に糖尿病性である対象に投与する工程;および2時間経口ブドウ糖負荷試験による平均血糖値および平均Cペプチド値の時間経過にわたる変化を、2次元格子上にプロットすることにより、GCRC(glucose and C-peptide response curve)の変化ベクトルを決定する工程であって、Cペプチドの増大および血糖の減少に向かう変化ベクトルの方向性は、代謝的改善を指し示す工程を含む。
【0052】
一部の実施形態では、臨床的1型糖尿病(T1D)の防止またはその発症の遅延における抗CD3抗体の応答性を予後予測する方法は、予防有効量の抗CD3抗体を、臨床的T1Dに対する危険性がある、非臨床的に糖尿病性である対象に投与する工程;および4時間経口ブドウ糖負荷試験による平均血糖値および平均Cペプチド値の時間経過にわたる変化を、2次元格子上にプロットすることにより、GCRC(glucose and C-peptide response curve)の変化ベクトルを決定する工程であって、Cペプチドの増大および血糖の減少に向かう変化ベクトルの方向性は、代謝的改善を指し示す工程を含む。
【0053】
一部の実施形態では、方法は、GCRCによるWQE(Within Quadrant Endpoint)およびODE(Ordinal Directional Endpoint)を計算する工程をさらに含む。一部の実施形態では、WQE(Within Quadrant Endpoint)およびODE(Ordinal Directional Endpoint)は、ベースライン座標と、6カ月後座標との間のベクトルについての方向性四分円に基づく。一部の実施形態では、WQE(Within Quadrant Endpoint)およびODE(Ordinal Directional Endpoint)は、血糖の変化パーセント、およびCペプチドの変化パーセントに基づく。
【0054】
一部の実施形態では、方法は、投与する工程の前に、またはこの後で、臨床的T1Dに対する危険性がある、非臨床的に糖尿病性である対象が、臨床的T1Dの防止またはその発症の遅延の成功を指し示す、全CD3+ T細胞中、約5%を超える~約10%を超えるTIGIT+KLRG1+CD8+ T細胞を有することを決定する工程をさらに含む。一部の実施形態では、方法は、TIGIT+KLRG1+CD8+ T細胞の百分率を、フローサイトメトリーにより決定する工程をさらに含む。一部の実施形態では、方法は、増殖マーカーであるKi67および/またはCD57を発現させるCD8+ T細胞の百分率の低下を決定する工程をさらに含む。
【0055】
一部の実施形態では、非臨床的に糖尿病性である対象は、病期1または2のT1Dに罹患している。
【0056】
一部の実施形態では、1型糖尿病(T1D)の防止またはその発症の遅延における抗CD3抗体の応答性を予後予測する方法は、T1Dに対する危険性がある、非臨床的に糖尿病性である対象を用意する工程;予防有効量の抗CD3抗体を、非臨床的に糖尿病性である対象に投与する工程;1時間経口ブドウ糖負荷試験、2時間経口ブドウ糖負荷試験、または4時間経口ブドウ糖負荷試験による平均血糖値および平均Cペプチド値を、2次元格子上にプロットすることにより、GCRC(glucose and C-peptide response curve)を構築する工程;GCRCの形状および動きの変化を目視により観察して、代謝的改善を決定する工程;ならびに場合により、GCRCによるWQE(Within Quadrant Endpoint)およびODE(Ordinal Directional Endpoint)を計算する工程を含む。
【0057】
定義
本明細書の下記では、ある特定の用語が規定される。さらなる定義については、本出願を通して提示される。
【0058】
本明細書で使用される、「ある(a)」、「ある(an)」という冠詞は、その冠詞の、1つまたは1つを超える文法的目的語、例えば、少なくとも1つの文法的目的語を指す。本明細書では、「含む(comprising)」という用語と共に使用される場合の、「ある(a)」または「ある(an)」という語の使用は、「1つの」を意味しうるが、また、「1つまたはそれ以上の」、「少なくとも1つの」、および「1つまたは1つを超える」という意味とも符合する。
【0059】
「約」および「およそ」とは一般に、測定の性格または精度を踏まえた場合に、測定される数量について許容可能な誤差の程度を意味する。例示的な誤差の程度は、所与の値の範囲の、20パーセント(%)以内、典型的に、10%以内であり、より典型的に、5%以内である。「実質的に」という用語は、50%を超える、好ましくは、80%を超えることを意味し、最も好ましくは、90%または95%を超えることを意味する。
【0060】
本明細書で使用される、「含む(comprising)」または「含む(comprises)」という用語は、所与の実施形態に存在する組成物、方法、およびこれらのそれぞれの構成要素(複数可)に言及して使用されるが、指定されていない要素の包含に対しても開かれている。
【0061】
本明細書で使用される、「から本質的になる」という用語は、所与の実施形態に要求される要素を指す。用語は、本開示のこの実施形態の基本的特徴(複数可)、および新規の特徴(複数可)、または機能的特徴(複数可)に実質的に影響を及ぼさない、さらなる要素の存在を許容する。
【0062】
「からなる」という用語は、実施形態についてのこの記載において列挙されない、任意の要素を除外する、本明細書で記載される、組成物、方法、およびこれらのそれぞれの構成要素を指す。
【0063】
本明細書における、「抗体」という用語は、最広義において使用され、それらが、所望の抗原結合活性を呈する限りにおいて、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、多特異性抗体(例えば、二特異性抗体)、および抗体断片を含むがこれらに限定されない、多様な抗体構造を包摂する。
【0064】
「抗体断片」とは、インタクト抗体が結合する抗原に結合するインタクト抗体の部分を含むインタクト抗体以外の分子を指す。抗体断片の例は、Fv、Fab、交差Fab、Fab’、Fab’-SH、F(ab’)2;ダイアボディー;直鎖状抗体;単鎖抗体分子(例えば、scFv);および抗体断片から形成される多特異性抗体を含むがこれらに限定されない。
【0065】
本明細書で使用される、「血糖/Cペプチド応答曲線」という用語は、2時間経口ブドウ糖負荷試験による平均血糖値および平均Cペプチド値の時間経過にわたる変化の、2次元格子上におけるプロットを指す。
【0066】
一部の実施形態では、GCRCは、OGTTによる平均血糖値(y軸)および平均Cペプチド値(x軸)(30、60、90、120分間、および4時間後)を、2次元格子上にプロットすることにより作成される。
【0067】
本明細書で使用される、「予防剤」という用語は、T1Dの防止、処置、管理、またはその1つまたはそれ以上の症状の改善において使用される、テプリズマブなどのCD3結合性分子を指す。
【0068】
本明細書で使用される、「処置する(treat)」、「処置」、および「処置する(treating)」という用語は、鎮静;寛解;状態の重症度の軽減;症状の減殺、または患者にとっての症状、損傷、病態、もしくは状態の忍容可能性の増大;症状の進行速度の低減;症状または状態の頻度または持続期間の減少;または、一部の状況における、症状の発症の防止など、任意の客観的パラメータまたは主観的パラメータを含む、損傷、病態、状態、または症状(例えば、認知機能障害)の処置または改善の成功についての任意の指標を指す。症状の処置または改善は、例えば、身体検診の結果を含む、任意の客観的パラメータまたは主観的パラメータに基づきうる。
【0069】
1型糖尿病に言及して、本明細書で使用される、疾患の「発症」という用語は、American Diabetes Associationにより、1型糖尿病の診断のために確立された基準(Mayfieldら、2006、Am.Fam.Physician、58:1355~1362を参照されたい)を満たす患者を指す。
【0070】
本明細書で使用される、「防止する(prevent)」、「防止する(preventing)」、および「防止」という用語は、予防剤または治療剤の投与から得られる、対象におけるT1Dの1つまたはそれ以上の症状の発症の防止を指す。
【0071】
本明細書で使用される、「プロトコール」は、投与スケジュールおよび投与レジメンを含む。本明細書におけるプロトコールとは、使用法であり、予防プロトコールおよび治療プロトコールを含む。「投与レジメン」または「処置コース」は、治療剤または予防剤複数回投与分の用量の、1~20日間にわたる投与を含みうる。
【0072】
本明細書で使用される、「対象」および「患者」という用語は、互換的に使用される。本明細書で使用される、「対象」および「患者」という用語は、動物、好ましくは、非霊長動物(例えば、ウシ、ブタ、ウマ、ネコ、イヌ、ラット、およびマウス)および霊長動物(例えば、サルまたはヒト)、より好ましくは、ヒトを含む哺乳動物を指す。
【0073】
本明細書で使用される、「予防有効量」という用語は、T1Dの1つまたはそれ以上の症状の発生、再発、または発症の遅延または防止を結果としてもたらすのに十分なテプリズマブの量を指す。一部の実施形態では、予防有効量は、好ましくは、対象のT1Dの発症を、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%遅延させるテプリズマブの量を指す。
【0074】
本開示の多様な態様については、下記でさらに詳細に記載される。さらなる定義については、本明細書を通して明示される。
【0075】
抗CD3抗体および医薬組成物
「抗CD3抗体」および「CD3に結合する抗体」という用語は、抗体が、CD3のターゲティングにおいて、予防剤、診断剤、および/または治療剤として有用であるように、CD3(cluster of differentiation 3)に、十分なアフィニティーで結合することが可能な抗体または抗体断片を指す。一部の実施形態では、例えば、ラジオイムノアッセイ(RIA)により測定される、抗体の、非類縁のCD3以外のタンパク質への結合の程度は、抗体の、CD3への結合の約10%未満である。一部の実施形態では、CD3に結合する抗体は、解離定数(Kd)が、<1μM、<100nM、<10nM、<1nM、<0.1nM、<0.01nM、または<0.001nM(例えば、10-8M以下、例えば、10-8M~10-13M、例えば、10-9M~10-13M)である。一部の実施形態では、抗CD3抗体は、異なる種に由来するCD3の間で保存された、CD3のエピトープに結合する。
【0076】
一部の実施形態では、抗CD3抗体は、ChAglyCD3(オテリキシズマブ)でありうる。オテリキシズマブは、初期に、Belgian Diabetes Registry(BDR)によるフェーズ2研究において査定され、次いで、Tolerxにより開発され、次いで、フェーズ3のDEFEND初発T1D試験(NCT00678886、NCT01123083、NCT00763451)を行うように、Tolerxが、GSKと提携した、ヒト化Fc非結合性抗CD3である。オテリキシズマブは、8日間にわたる注入により、IV投与される。例えば、全てが、参照により本明細書に組み込まれる、Wiczlingら、J.Clin.Pharmacol.50(5)(2010年5型)494~506;Keymeulenら、N Engl J Med.、2005、352:2598~608;Keymeulenら、Diabetologia、2010、53:614~23;Hagopianら、Diabetes、2013、62:3901~8;Aronsonら、Diabetes Care、2014、37:2746~54;Amberyら、Diabet Med.、2014、31:399~402;Boltら、Eur.J.Immunol.lYY、3、23:403~411;Vlasakakisら、Br J Clin Pharmacol(2019)、85、704~714;Guglielmiら、Expert Opinion on Biological Therapy、16:6、841~846;Keymeulenら、N Engl J Med、2005、352:2598~608;Keymeulenら、BLOOD、2010、115巻、6号;Sprangersら、Immunotherapy(2011)、3(11)、1303~1316;Daifotisら、Clinical Immunology(2013)、149、268~278を参照されたい。
【0077】
一部の実施形態では、抗CD3抗体は、ビジリズマブ(また、HuM291とも呼ばれる;Nuvion)でありうる。ビジリズマブは、突然変異型IgG2アイソタイプ、Fcγ受容体への結合の欠如、および活性化T細胞におけるアポトーシスを選択的に誘導する能力により特徴づけられる、ヒト化抗CD3モノクローナル抗体である。ビジリズマブは、移植片対宿主病(NCT00720629;NCT00032279)、ならびに潰瘍性大腸炎(NCT00267306)およびクローン病(NCT00267709)の患者において査定された。例えば、参照により本明細書に組み込まれる、Sandbornら、Gut、59(11)(2010年11月)、1485~1492を参照されたい。
【0078】
一部の実施形態では、抗CD3抗体は、Tiziana Life Sciences,PLC in NASH and T2D(NCT03291249)により開発されつつある、完全ヒト抗CD3モノクローナル抗体である、フォラルマブでありうる。例えば、全てが、参照により本明細書に組み込まれる、Oguraら、Clin Immunol.、2017、183:240~246;Ishikawaら、Diabetes、2007、56(8):2103~9;Wuら、J Immunol.、2010、185(6):3401~7を参照されたい。フォラルマブは、CD3イプシロンに結合する完全ヒトモノクローナル抗体である(参照によりその全体において本明細書に組み込まれる、米国特許第10,688,186号を参照されたい)。
【0079】
テプリズマブ
一部の実施形態では、抗CD3抗体は、テプリズマブでありうる。hOKT3yl(Ala-Ala)(234および235位において、アラニンを含有する)としてもまた公知であるテプリズマブは、膵島のインスリン産生性ベータ細胞の破壊を媒介する、Tリンパ球の機能を変更するように操作された、抗CD3抗体である。テプリズマブは、成熟T細胞上で発現される、CD3ε鎖のエピトープに結合し、そうすることにより、それらの機能を変化させる。テプリズマブの配列および組成については、各々が、参照によりその全体において本明細書に組み込まれる、米国特許第6,491,916号;同第8,663,634号;および同第9,056,906号において開示されている。軽鎖および重鎖の完全配列は、下記に明示される。太字部分は、相補性決定領域である。
【0080】
【0081】
【0082】
一部の実施形態では、本明細書では、医薬組成物が提示される。このような組成物は、予防有効量の抗CD3抗体と、薬学的に許容される担体とを含む。一部の実施形態では、「薬学的に許容される」という用語は、動物における使用のために、米国連邦政府もしくは米国州政府の規制機関により承認されるか、または米国薬局方もしくは他の一般に認知された薬局方において収載されていること、より特定すると、ヒトにおける使用のためにこれらの規制機関により承認されるか、またはこれらの薬局方に収載されていること意味する。「担体」という用語は、治療薬が共に投与される、希釈剤、アジュバント(例えば、フロイントのアジュバント(完全アジュバントまたは不完全アジュバント))、賦形剤、または媒体を指す。このような医薬担体は、水、および石油由来の油、動物由来の油、ラッカセイ油、ダイズ油、鉱物油、ゴマ油など、植物由来の油、または合成由来の油を含む油などの滅菌液体でありうる。水は、医薬組成物が、静脈内投与される場合の、好ましい担体である。生理食塩液およびデキストロース水溶液およびグリセロール溶液もまた、特に、注射用液のための液体担体として援用される。適切な医薬賦形剤は、デンプン、グルコース、ラクトース、スクロース、ゼラチン、オオムギ、コメ、コムギ、チョーク、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、モノステアリン酸グリセロール、滑石、塩化ナトリウム、脱脂粉乳、グリセロール、プロピレン、グリコール、水、エタノールなどを含む(例えば、参照によりその全体において本明細書に組み込まれる、「Handbook of Pharmaceutical Excipients、Arthur H.Kibbe編、2000、Am.Pharmaceutical Association、Washington、D.C.を参照されたい)。
【0083】
所望の場合、組成物はまた、少量の保湿剤もしくは乳化剤、またはpH緩衝剤も含有しうる。これらの組成物は、溶液、懸濁液、エマルジョン、錠剤、丸剤、カプセル剤、粉剤、持続放出製剤などの形態を取りうる。経口製剤は、医薬グレードのマンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、セルロース、炭酸マグネシウムなどの標準的担体を含みうる。適切な医薬担体の例については、E.W.Martinによる「Remington’s Pharmaceutical Sciences」において記載されている。このような組成物は、予防有効量または治療有効量の予防剤または治療剤を、患者への適正な投与のための形態をもたらすのに適する量の担体と併せて、好ましくは、精製形態で含有するであろう。製剤は、投与方式に適するものとする。一部の実施形態では、医薬組成物は、滅菌されており、対象、好ましくは、動物対象、より好ましくは、哺乳動物対象への投与に適する形態にあり、最も好ましくは、ヒト対象への投与に適する形態にある。
【0084】
一部の実施形態では、医薬組成物は、処置を必要とする領域に局所的に投与することが所望され;これは、例えば、限定を目的とせずに述べると、局所注入により、注射により、またはSialastic膜などの膜もしくは繊維を含む、多孔性、非多孔性、もしくはゼラチン性材料であるインプラントにより達成される。好ましくは、抗CD3抗体を投与する場合、抗CD3抗体が吸着しない材料を使用するように、注意が払われなければならない。
【0085】
一部の実施形態では、組成物は、小胞、特に、リポソーム(Langer、Science、249:1527~1533(1990);Treatら、「Liposomes」、「Therapy of Infectious Disease and Cancer」、Lopez-BeresteinおよびFidler(編)、Liss、New York、353~365(1989);Lopez-Berestein、同上、317~327を参照されたい;一般に、同上を参照されたい)により送達される。
【0086】
一部の実施形態では、組成物は、制御放出システムまたは持続放出システムにより送達される。一部の実施形態では、制御放出または持続放出を達成するのに、ポンプが使用される(Langer、前出;Sefton、1987、CRC Crit.Ref.Biomed.Eng.、14:20;Buchwaldら、1980、Surgery、88:507;Saudekら、1989、N.Engl.J.Med.、321:574を参照されたい)。一部の実施形態では、本発明の抗体またはその断片の制御放出または持続放出を達成するのに、ポリマー材料が使用される(例えば、「Medical Applications of Controlled Release」、LangerおよびWise(編)、CRC Pres.、Boca Raton、Fla.(1974);「Controlled Drug Bioavailability」、「Drug Product Design and Performance」、SmolenおよびBall(編)、Wiley、New York(1984);RangerおよびPeppas、1983、J.Macromol.Sci.Rev.Macromol.Chem.、23:61を参照されたい;また、Levyら、1985、Science、228:190;Duringら、1989、Ann.Neurol.25:351;Howardら、1989、J.Neurosurg.71:105;米国特許第5,679,377号;米国特許第5,916,597号;米国特許第5,912,015号;米国特許第5,989,463号;米国特許第5,128,326号;PCT公開第WO99/15154号;およびPCT公開第WO99/20253号も参照されたい)。持続放出製剤中で使用されるポリマーの例は、ポリ(2-ヒドロキシエチルメタクリラート)、ポリ(メチルメタクリラート)、ポリ(アクリル酸)、ポリ(エチレン-co-ビニル酢酸)、ポリ(メタクリル酸)、ポリグリコリド(PLG)、ポリ無水物、ポリ(N-ビニルピロリドン)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリアクリルアミド、ポリ(エチレングリコール)、ポリラクチド(PLA)、ポリ(ラクチド-co-グリコリド)(PLGA)、およびポリオルトエステルを含むがこれらに限定されない。一部の実施形態では、持続放出製剤中で使用されるポリマーは、不活性であり、溶出性の不純物を含まず、保存時に安定であり、無菌であり、かつ生体分解性である。一部の実施形態では、制御放出システムまたは持続放出システムは、特定の治療標的、すなわち、肺の近傍に留置されるので、全身用量の一部しか要求しない(例えば、Goodson、「Medical Applications of Controlled Release」、前出、2巻、115~138頁(1984)を参照されたい)。
【0087】
制御放出システムについては、Langer(1990、Science、249:1527~1533)による総説において論じられている。1つまたはそれ以上の、本発明の抗体またはその断片を含む持続放出製剤を作製するのに、当業者に公知の任意の技法が使用される。例えば、それらの各々が、参照によりその全体において本明細書に組み込まれる、米国特許第4,526,938号、PCT公開第WO91/05548号、および同第WO96/20698号、Ningら、1996、Radiotherapy & Oncology、39:179~89、Songら、1995、PDA J.of Pharma.Sci.& Tech.、50:372~397、Cleekら、1997、Pro.Int’l.Symp.Contorol Rel.Bioact.Mater.、24:853~54、およびLamら、1997、Proc.Int’l.Symp.Control Rel.Bioact.Mater.、24:759~760を参照されたい。
【0088】
医薬組成物は、意図されるその投与経路と適合性であるように製剤化される。投与経路の例は、非経口投与、例えば、静脈内投与、皮内投与、皮下投与、経口投与、鼻腔内(例えば、吸入)投与、経皮(局所)投与、経粘膜投与、および直腸内投与を含む。一部の実施形態では、組成物は、ヒトへの静脈内投与、皮下投与、筋内投与、経口投与、鼻腔内投与、または局所投与に適合された医薬組成物として、常套的な手順に従い製剤化される。一部の実施形態では、医薬組成物は、ヒトへの皮下投与のために、常套的な手順に従い製剤化される。典型的に、静脈内投与のための組成物は、滅菌等張性の水性緩衝液中の溶液である。必要な場合、組成物はまた、注射部位における疼痛を和らげるように、リドカインなどの局所麻酔剤も含みうる。
【0089】
組成物は、注射、例えば、ボーラス注射または連続注入による非経口投与のために製剤化される。注射用製剤は、単位剤形、例えば、アンプルまたは保存剤を添加された複数回投与用容器により提示される。組成物は、油性媒体中または水性媒体中の懸濁液、溶液、またはエマルジョンなどの形態を取り、懸濁剤、安定化剤、および/または分散剤などの製剤化剤を含有しうる。代替的に、有効成分は、使用の前における、適切な媒体、例えば、発熱物質非含有水による構成のための粉末形態の場合もある。
【0090】
一部の実施形態では、本開示は、抗CD3抗体の、数時間または数日間(例えば、ポンプまたはこのような送達のための他のデバイスと関連する期間)の期間にわたる、例えば、1時間、2時間、3時間、4時間、6時間、8時間、10時間、12時間、16時間、20時間、24時間、30時間、36時間、4日間、5日間、7日間、10日間、または14日間にわたる、連続的な投与を可能とする剤形を提示する。一部の実施形態では、本発明は、用量を連続的に増大させる、例えば、24時間、30時間、36時間、4日間、5日間、7日間、10日間、または14日間にわたり、51ug/m2/日から826ug/m2/日に増大させる投与を可能とする剤形を提供する。
【0091】
組成物は、中性形態または塩形態として製剤化される。薬学的に許容される塩は、塩酸、リン酸、酢酸、シュウ酸、酒石酸などに由来するアニオンなどのアニオンと共に形成される塩、およびナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウム、水酸化第二鉄、イソプロピルアミン、トリエチルアミン、2-エチルアミノエタノール、ヒスチジン、プロカインなどに由来するカチオンなどのカチオンと共に形成される塩を含む。
【0092】
一般に、本明細書で開示される組成物の成分は、例えば、活性薬剤の数量を表示するアンプルまたは小袋など、密封容器内の、凍結乾燥粉末または無水濃縮物として、個別に、または単位剤形内に併せて混合されて供給される。組成物が、注入により投与される場合、滅菌医薬グレードの水または生理食塩液を含有する注入ボトルにより分注される。組成物が、注射により投与される場合、成分が、投与の前に混合されるように、注射用の滅菌水または生理食塩液のアンプルが提供される。
【0093】
特に、本開示は、抗CD3抗体またはその医薬組成物が、薬剤の数量を表示するアンプルまたは小袋など、密封容器内にパッケージングされることを提示する。一部の実施形態では、抗CD3抗体またはその医薬組成物は、密封容器内の、滅菌凍結乾燥粉末または無水濃縮物として供給され、例えば、水または生理食塩液により、対象への投与に適する濃度に再構成される。好ましくは、抗CD3抗体またはその医薬組成物は、密封容器内の、滅菌凍結乾燥粉末または無水濃縮物として、少なくとも5mg、より好ましくは、少なくとも10mg、少なくとも15mg、少なくとも25mg、少なくとも35mg、少なくとも45mg、少なくとも50mg、少なくとも75mg、または少なくとも100mgの単位投与量で供給される。本明細書の凍結乾燥予防剤または医薬組成物は、その元の容器内、2℃~8℃の間で保管されるものとし、本発明の予防剤もしくは治療剤または医薬組成物は、再構成後、1週間以内、好ましくは、5日間以内、72時間以内、48時間以内、24時間以内、12時間以内、6時間以内、5時間以内、3時間以内、または1時間以内投与されるものとする。一部の実施形態では、医薬組成物は、薬剤の数量および濃度を表示する密封容器内に、液体形態で供給される。好ましくは、投与される組成物の液体形態は、密封容器内に、少なくとも0.25mg/ml、より好ましくは、少なくとも0.5mg/ml、少なくとも1mg/ml、少なくとも2.5mg/ml、少なくとも5mg/ml、少なくとも8mg/ml、少なくとも10mg/ml、少なくとも15mg/ml、少なくとも25mg/ml、少なくとも50mg/ml、少なくとも75mg/ml、または少なくとも100mg/mlで供給される。液体形態は、その元の容器内、2℃~8℃の間で保管されるものとする。
【0094】
一部の実施形態では、本開示は、本発明の組成物が、抗CD3抗体の数量を表示するアンプルまたは小袋など、密封容器内にパッケージングされることを提示する。
【0095】
組成物は、所望の場合、有効成分を含有する、1つまたはそれ以上の単位剤形を含有しうる、パックまたはディスペンサーデバイスにより提示される。パックは、例えば、ブリスターパックなど、金属製またはプラスティック製のフォイルを含みうる。
【0096】
T1Dと関連する1つまたはそれ以上の症状の防止または改善において効果的である、本発明の組成物の量は、標準的臨床法により決定される。製剤中で援用される正確な用量はまた、投与経路および状態の重篤度にも依存し、医療従事者の判断および各患者の状況に従い決定されるべきである。有効用量は、in vitro試験系または動物モデル試験系による用量反応曲線から外挿される。
【0097】
方法および使用
本明細書で開示される方法は、病期1、2、3、または4を含む、任意の病期のT1Dの処置または防止における、任意の治療剤または予防剤の予後予測のために使用される。一部の実施形態では、本開示は、1型糖尿病を発症する素因があるか、または1型糖尿病の前臨床期を伴うが、1型糖尿病を防止する、もしくはその発症を遅延させ、かつ/またはこのような患者への、外因性インスリンの投与に対する必要を防止する、もしくは遅延させるように、American Diabetes AssociationまたはImmunology of Diabetes Societyにより確立された診断基準を満たさない個体への、テプリズマブなどの抗ヒトCD3抗体の投与を包摂する。
【0098】
一部の実施形態では、新たな代謝評価項目は、投与後における、T1Dの処置または防止に対する、薬剤の効果を検出するのに使用される。GCRC(glucose and C-peptide response curve)は、例えば、経口ブドウ糖負荷試験による平均血糖値および平均Cペプチド値を、2次元格子上にプロットすることにより構築される。GCRCの形状および動きの変化は、プラセボ群と、処置群との間で、目視により比較される。プラセボ群では、GCRCの変化が、顕著な代謝的増悪を反映する一方、処置群におけるGCRC変化が、代謝的改善を示唆する場合、薬剤は、T1Dの処置または防止において効果的である。GCRC変化を指し示す、2つの新規の代謝評価項目である、WQE(Within Quadrant Endpoint)およびODE(Ordinal Directional Endpoint)を含む定量的比較もまた使用される。
【0099】
一部の実施形態では、WQE(Within Quadrant Endpoint)が使用される。具体的に述べると、T1Dの危険性についての予測または予後診断は、360°の連続体を、0°~90°にわたる、その4つの方向四分円に分割することにより増強される。各方向四分円は、モデル内に、併せて組み入れられた場合、全体的危険性を予測しうる、その固有の特徴的危険性を示すと考えられる。方向四分円は、
右上四分円(RUQ)
左上四分円(LUQ)
右下四分円(RLQ)
左下四分円(LLQ)
として指定される。
【0100】
角は、個々の変化ベクトルの方向性四分円に従い形成される、右三角形から計算される。負の計算角は、正の計算角に変換される。y軸上における、血糖重心の、ベースラインから、6カ月後への変化パーセント、およびx軸上における、Cペプチド重心の、ベースラインから、6カ月後への変化パーセントが、角の計算のために使用される。三角形の斜辺は、ベースラインにおけるGCRC重心から、6カ月後におけるGCRC重心までの距離(すなわち、変化についてのベクトルの大きさ)を表す。計算角および斜辺についての式は、下記に示される:
ラジアン=アークタンジェント(血糖の変化%/Cペプチドの変化%)
角=ラジアン×57.296
斜辺=((血糖の変化%×血糖の変化%)+(Cペプチドの変化%×Cペプチドの変化%))の平方根
(式は、三角形の辺の単位を正規化するように、実測値の代わりに、血糖およびCペプチドの変化パーセントを使用する)。
【0101】
各四分円内における、6カ月間にわたる変化についての計算角を、1型糖尿病を予測するための独立変数として組み入れる、コックス回帰モデルが開発される。個々の変化ベクトルは、四分円のうちの1つだけに収まるため、他の四分円の値は、0と指定される。このパラダイムに基づき、モデルは、1型糖尿病を有意に予測することが示される。しかし、ある特定の四分円について、計算角が、90°から控除されれば、他のモデルもまた、予測可能である。
【0102】
下記の式は、経口インスリン群と、プラセボ群との間の最大の差違を検出する例示的モデルのために使用される、方向四分円角(qangle)の係数を示す(p<0.001)。
WQE=0.02455×qangle1+0.01464×qangle2+0.00831×qangle3-0.00465×qangle4
[qangle1=RUQ、qangle2=LUQ、qangle3=LLQ、およびqangle4=RLQとする](個体について、4つの方向四分円のうちの3つは、常に、負となるので、「0」としてコードされる指標変数を使用した)である。
【0103】
下記の概要は、WQEの計算のための工程を示す:
・ベースラインおよび6カ月後におけるGCRC重心についての、血糖/Cペプチド座標の計算。
・血糖/Cペプチド重心座標の変化の、変化パーセントへの転換。
・ベースライン座標と、6カ月後座標との間のベクトルについての方向性四分円を同定する。
・右三角形に基づく標準式を使用して、四分円内で、水平線と、ベクトルとの間の角を計算する。
・方向四分円2および4(qangle2およびqangle4)における負の角を、正の角に転換する。
・qangle1およびqangle2について、計算角を使用する。モデルにおいて、(90°-計算角)を、qangle3および(90-qangle4)に使用する。
【0104】
負から正への角変換、および90°からの角の控除のための手順を下記に示す:
重心の変化についてのベクトルが、RUQ内にある場合、qangle1=計算角である
重心の変化についてのベクトルが、LUQ内にある場合、qangle2=計算角×(-1)である
重心の変化についてのベクトルが、LLQ内にある場合、qangle3=90-計算角である
重心の変化についてのベクトルが、LLQ内にある場合、qangle4=90-計算角×(-1)である。
【0105】
一部の実施形態では、ODE(Ordinal Directional Endpoint)が使用されうる。360°スケールを使用して、1型糖尿病への経時的進行中における随時の方向性についての既往の証拠に従い、下記に指し示される通りに、4つの四分円に値が割り当てられる。
下右四分円(RLQ):0°
下左四分円(LLQ):90°
上右四分円(RUQ):180°
上左四分円(LUQ):270°
【0106】
値は、WQEモデルから得られたqangleの値に加算することができる。次いで、和を、360で除して、最大値を1.00とするスケールを創出する。
【0107】
ODEの計算のための工程の概要は、qangle値を、モデルに挿入する代わりに、qangleを、方向四分円について、上記で指し示された指定値に加算することを除き、WQEの計算のための工程の概要と同じでありうる。
【0108】
一部の実施形態では、素因のある対象の同定のための高危険性因子は、1型糖尿病であると診断された一等親または二等親の血縁者を有すること、空腹時血糖異常(例えば、空腹後(摂食なしの8時間後)における、100~125mg/dlの血糖レベルの、少なくとも1回の決定)、75gのOGTTに応答する耐糖能異常(例えば、75gのOGTTに応答する、2時間後における、140~199mg/dlの血糖レベルの、少なくとも1回の決定)、5.7~6.4%の間のHbA1c、またはHbA1cの、過去12カ月間にわたるHbA1c値と比較した場合の、10%以上の増大、白色人種におけるDR3、DR4、またはDR7のHLA型、アフリカ系人におけるDR3またはDR4のHLA型、日系人におけるDR3、DR4、またはDR9のHLA型、ウイルスへの曝露(例えば、B型コックサッキーウイルス、エンテロウイルス、アデノウイルス、風疹ウイルス、サイトメガロウイルス、エプスタイン-バーウイルス)、当技術分野で許容された基準に従う、少なくとも1つの他の自己免疫障害(例えば、甲状腺疾患、セリアック病)の陽性診断、ならびに/または血清中もしくは他の組織内における、自己抗体、特に、ICAおよび1型糖尿病関連自己抗体の検出を含む。一部の実施形態では、1型糖尿病を発症する素因があると同定された対象は、本明細書で記載され、かつ/または当技術分野で公知の危険性因子のうちの少なくとも1つを有する。本開示はまた、1型糖尿病の発症に素因がある対象の同定も包摂し、この場合、前記対象は、本明細書で開示されるか、または当技術分野で公知である、2つまたはそれ以上、3つまたはそれ以上、4つまたはそれ以上、または5つを超える危険性因子の組合せを提示する。
【0109】
1型糖尿病、または1型糖尿病の発症に対する素因と関連する、血清中自己抗体は、膵島細胞自己抗体(例えば、抗ICA512自己抗体)、グルタミン酸デカルバミラーゼ自己抗体(例えば、抗GAD65自己抗体)、IA2抗体、ZnT8抗体、および/または抗インスリン自己抗体である。したがって、この実施形態に従う具体例では、本発明は、1型糖尿病の発症に対する素因と関連するか、または早期1型糖尿病と関連する、検出可能な自己抗体(例えば、抗IA2、抗ICA512、抗GADまたは抗インスリン自己抗体)を伴う個体の処置を包摂し、この場合、前記個体は、1型糖尿病を伴うと診断されておらず、かつ/または1型糖尿病性者の一等親もしくは二等親の血縁者である。一部の実施形態では、自己抗体の存在は、ELISA、電気化学発光(ECL)、ラジオアッセイ(例えば、Yuら、1996、J.Clin.Endocrinol.Metab.、81:4264~4267を参照されたい)、凝集PCR(Tsaiら、ACS Central Science、20162(3)、139~147)または本明細書で記載されるか、もしくは当業者に公知の抗体の免疫特異的検出のための、他の任意の方法により検出される。
【0110】
治療前、治療中、および治療後におけるβ細胞機能は、本明細書で記載される方法、または当業者に公知の任意の方法により評価される。例えば、Diabetes Control and Complications Trial(DCCT)の調査研究グループは、百分率によるグリコシル化ヘモグロビン(HA1およびHA1c)のモニタリングを、血糖コントロールの査定のための標準法として確立した(DCCT、1993、N.Engl.J.Med.、329:977~986)。代替的に、1日当たりのインスリン必要量、Cペプチドレベル/応答、低血糖挿間、および/またはFPIRも、β細胞機能のマーカーとして、または治療指数を確立するのに使用される(それぞれ、Keymeulenら、2005、N.Engl.J.Med.、352:2598~2608;Heroldら、2005、Diabetes、54:1763~1769;米国特許出願公開第2004/0038867 A1号;およびGreenbaumら、2001、Diabetes、50:470~476を参照されたい)。例えば、FPIRは、Islet Cell Antibody Register User’s Studyのプロトコール(例えば、Bingleyら、1996、Diabetes、45:1720~1728;およびMcCullochら、1993、Diabetes Care、16:911~915を参照されたい)に従い実施されるIGTTの1および3分間後におけるインスリン値の和として計算される。
【0111】
一部の実施形態では、T1Dを発症する素因がある個体は、T1Dを伴う患者の血縁者である、非臨床的に糖尿病性である対象でありうる。一部の実施形態では、非臨床的に糖尿病性である対象は、膵島細胞質抗体(ICA)、インスリン自己抗体(IAA)、およびグルタミン酸デカルボキシラーゼ(GAD)、チロシンホスファターゼ(IA-2/ICA512)、またはZnT8に対する抗体から選択される、2つまたはそれ以上の糖尿病関連自己抗体を有する。
【0112】
一部の実施形態では、非臨床的に糖尿病性である対象は、経口ブドウ糖負荷試験(OGTT)における耐糖能異常を有する。OGTTにおける耐糖能異常は、110~125mg/dLの空腹時血糖値、または≧140、かつ、<200mg/dLの2時間後血糖値、またはOGTTの30、60、または90分後における、>200mg/dLの随時血糖値として規定される。
【0113】
一部の実施形態では、テプリズマブなどの抗CD3抗体に応答する、非臨床的に糖尿病性である対象は、ZnT8抗体について陰性である。一部の実施形態では、このような非臨床的に糖尿病性である対象は、HLA-DR4+である。一部の実施形態では、このような非臨床的に糖尿病性である対象は、HLA-DR3+ではない。一部の実施形態では、このような非臨床的に糖尿病性である対象は、HLA-DR4+であり、HLA-DR3+ではない。一部の実施形態では、このような非糖尿病性対象は、ZnT8に対する抗体について陰性であり、HLA-DR4+であり、HLA-DR3+ではない。一部の実施形態では、テプリズマブなどの抗CD3抗体に応答する、このような非臨床的に糖尿病性である対象は、投与後(例えば、1カ月後、2カ月後、3カ月もしくはそれ以後もしくはそれ以前)における、TIGIT+KLRG1+CD8+ T細胞の、末梢血単核細胞中頻度(または相対量)(例えば、フローサイトメトリーによる)の増大を裏付ける。
【0114】
一部の実施形態では、予防有効量は、10~1100マイクログラム/平方メートル(μg/m2)における、テプリズマブなどの抗CD3抗体の皮下(SC)注射または静脈内(IV)注入による、10~14日コースを含む。一例では、予防有効量は、1~4日目にそれぞれ51μg/m2、103μg/m2、207μg/m2、および413μg/m2、ならびに5~14日目の各々に826μg/m2の単回用量の、テプリズマブなど、抗CD3抗体のIV注入による、14日コースを含む。一部の実施形態では、予防有効量は、T1Dの臨床診断までの中央値時間を、少なくとも50%、少なくとも80%、または少なくとも90%、約50%~約90%遅延させる。一部の実施形態では、予防有効量は、T1Dの臨床診断までの中央値時間を、少なくとも12カ月間、少なくとも18カ月間、少なくとも24カ月間、少なくとも36カ月間、少なくとも48カ月間、もしくは少なくとも60カ月間またはそれ以上、または約12カ月間~約28カ月間、約12カ月間~約24カ月間、約12カ月間~約36カ月間、約12カ月間~約48カ月間、約12カ月間~約60カ月間またはそれ以上遅延させる。
【0115】
一部の実施形態では、テプリズマブなどの抗CD3抗体による投与コースは、2カ月間、4カ月間、6カ月間、8カ月間、9カ月間、10カ月間、12カ月間、15カ月間、18カ月間、24カ月間、30カ月間、または36カ月間の間隔で反復される。一部の実施形態では、テプリズマブなどの抗CD3抗体による処置の効能は、既往の処置に後続する2カ月後、4カ月後、6カ月後、9カ月後、12カ月後、15カ月後、18カ月後、24カ月後、30カ月後、または36カ月後において、本明細書で記載される通りに、または当技術分野で公知の通りに決定される。
【0116】
一部の実施形態では、対象は、T1Dを防止する、処置する、またはその1つまたはそれ以上の症状を改善するように、約0.5~50ug/kg、約0.5~40ug/kg、約0.5~30ug/kg、約0.5~20ug/kg、約0.5~15ug/kg、約0.5~10ug/kg、約0.5~5ug/kg、約1~5ug/kg、約1~10ug/kg、約20~40ug/kg、約20~30ug/kg、約22~28ug/kg、または約25~26ug/kgである、投与1回またはそれ以上の回数分の単位用量の、テプリズマブなどの抗CD3抗体を投与される。一部の実施形態では、対象は、T1Dを防止する、処置する、またはその1つまたはそれ以上の症状を改善するように、約200ug/kg、178ug/kg、180ug/kg、128ug/kg、100ug/kg、95ug/kg、90ug/kg、85ug/kg、80ug/kg、75ug/kg、70ug/kg、65ug/kg、60ug/kg、55ug/kg、50ug/kg、45ug/kg、40ug/kg、35ug/kg、30ug/kg、26ug/kg、25ug/kg、20ug/kg、15ug/kg、13ug/kg、10ug/kg、6.5ug/kg、5ug/kg、3.2ug/kg、3ug/kg、2.5ug/kg、2ug/kg、1.6ug/kg、1.5ug/kg、1ug/kg、0.5ug/kg、0.25ug/kg、0.1ug/kg、または0.05ug/kgである、投与1回またはそれ以上の回数分の単位用量の、テプリズマブなどの抗CD3抗体を投与される。
【0117】
一部の実施形態では、対象は、約5~1200ug/m2、例えば、51~826ug/m2における、投与1回またはそれ以上の回数分の用量の、テプリズマブなどの抗CD3抗体を投与される。一部の実施形態では、対象は、T1Dを防止する、処置する、その進行を緩徐化させる、その発症を遅延させる、またはその1つまたはそれ以上の症状を改善するように、1200ug/m2、1150ug/m2、1100ug/m2、1050ug/m2、1000ug/m2、950ug/m2、900ug/m2、850ug/m2、800ug/m2、750ug/m2、700ug/m2、650ug/m2、600ug/m2、550ug/m2、500ug/m2、450ug/m2、400ug/m2、350ug/m2、300ug/m2、250ug/m2、200ug/m2、150ug/m2、100ug/m2、50ug/m2、40ug/m2、30ug/m2、20ug/m2、15ug/m2、10ug/m2、または5ug/m2である、投与1回またはそれ以上の回数分の単位用量の、テプリズマブなどの抗CD3抗体を投与される。
【0118】
一部の実施形態では、対象は、予防有効量のテプリズマブなどの抗CD3抗体の、1回またはそれ以上の回数の投与を含む処置レジメンを投与され、処置コースは、2日間、3日間、4日間、5日間、6日間、7日間、8日間、9日間、10日間、11日間、12日間、13日間、または14日間にわたり投与される。一部の実施形態では、処置レジメンは、予防有効量の用量を、毎日、隔日、3日ごと、または4日ごとに投与することを含む。一部の実施形態では、処置レジメンは、14回分の用量、13回分の用量、12回分の用量、11回分の用量、10回分の用量、9回分の用量、または8回分の用量が投与されるまで、予防有効量の用量を、所与の週の月曜日、火曜日、水曜日、木曜日投与し、予防有効量の用量を、同じ週の金曜日、土曜日、および日曜日投与しないことを含む。一部の実施形態では、投与される用量は、レジメンの各日において、同用量である。
【0119】
一部の実施形態では、対象は、予防有効量のテプリズマブなどの抗CD3抗体の、1回またはそれ以上の回数の投与を含む処置レジメンを投与され、この場合、予防有効量は、200ug/kg/日、175ug/kg/日、150ug/kg/日、125ug/kg/日、100ug/kg/日、95ug/kg/日、90ug/kg/日、85ug/kg/日、80ug/kg/日、75ug/kg/日、70ug/kg/日、65ug/kg/日、60ug/kg/日、55ug/kg/日、50ug/kg/日、45ug/kg/日、40ug/kg/日、35ug/kg/日、30ug/kg/日、26ug/kg/日、25ug/kg/日、20ug/kg/日、15ug/kg/日、13ug/kg/日、10ug/kg/日、6.5ug/kg/日、5ug/kg/日、3.2ug/kg/日、3ug/kg/日、2.5ug/kg/日、2ug/kg/日、1.6ug/kg/日、1.5ug/kg/日、1ug/kg/日、0.5ug/kg/日、0.25ug/kg/日、0.1ug/kg/日、または0.05ug/kg/日であり;かつ/または予防有効量は、1200ug/m2/日、1150ug、1100ug/m2/日、1050ug/m2/日、1000ug/m2/日、950ug/m2/日、900ug/m2/日、850ug/m2/日、800ug/m2/日、750ug/m2/日、700ug/m2/日、650ug/m2/日、600ug/m2/日、550ug/m2/日、500ug/m2/日、450ug/m2/日、400ug/m2/日、350ug/m2/日、300ug/m2/日、250ug/m2/日、200ug/m2/日、150ug/m2/日、100ug/m2/日、50ug/m2/日、40ug/m2/日、30ug/m2/日、20ug/m2/日、15ug/m2/日、10ug/m2/日、または5ug/m2/日である。
【0120】
一部の実施形態では、1200ug/m2もしくはそれ以下、1150ug/m2もしくはそれ以下、1100ug/m2もしくはそれ以下、1050ug/m2もしくはそれ以下、1000ug/m2もしくはそれ以下、950ug/m2もしくはそれ以下、900ug/m2もしくはそれ以下、850ug/m2もしくはそれ以下、800ug/m2もしくはそれ以下、750ug/m2もしくはそれ以下、700ug/m2もしくはそれ以下、650ug/m2もしくはそれ以下、600ug/m2もしくはそれ以下、550ug/m2もしくはそれ以下、500ug/m2もしくはそれ以下、450ug/m2もしくはそれ以下、400ug/m2もしくはそれ以下、350ug/m2もしくはそれ以下、300ug/m2もしくはそれ以下、250ug/m2もしくはそれ以下、200ug/m2もしくはそれ以下、150ug/m2もしくはそれ以下、100ug/m2もしくはそれ以下、50ug/m2もしくはそれ以下、40ug/m2もしくはそれ以下、30ug/m2もしくはそれ以下、20ug/m2もしくはそれ以下、15ug/m2もしくはそれ以下、10ug/m2もしくはそれ以下、または5ug/m2もしくはそれ以下である、テプリズマブなどの抗CD3抗体の静脈内投与の用量は、1型糖尿病を防止する、処置する、またはその1つまたはそれ以上の症状を改善するように、約24時間、約22時間、約20時間、約18時間、約16時間、約14時間、約12時間、約10時間、約8時間、約6時間、約4時間、約2時間、約1.5時間、約1時間、約50分間、約40分間、約30分間、約20分間、約10分間、約5分間、約2分間、約1分間、約30秒間、または約10秒間にわたり投与される。一部の実施形態では、レジメンの持続期間にわたる総投与量は、のべ、9000ug/m2、8000ug/m2、7000ug/m2、6000ug/m2未満であり、5000ug/m2、4000ug/m2、3000ug/m2、2000ug/m2、または1000ug/m2未満でありうる。一部の実施形態では、レジメンの持続期間にわたる総投与量は、のべ、9000ug/m2、例えば、約9000ug/m2~約14000ug/m2を超える総投与量である。一部の実施形態では、レジメン中に投与される、1日投与量は、100ug/m2~200ug/m2、100ug/m2~500ug/m2、100ug/m2~1000ug/m2、または500ug/m2~1100ug/m2である。
【0121】
一部の実施形態では、用量は、テプリズマブなどの抗CD3抗体の、1日当たりの予防有効量が達成されるまで、処置レジメンの最初の4分の1、最初の2分の1または最初の3分の2の用量にわたり(例えば、1日当たりの投与1回による、10、12、14、16、18、または20日間のレジメンの、最初の2、3、4、5、または6日間にわたり)漸増する。一部の実施形態では、対象は、予防有効量のテプリズマブなどの抗CD3抗体の、1回またはそれ以上の回数の投与を含む処置レジメンを投与され、この場合、予防有効量は、例えば、各日、0.01ug/kg、0.02ug/kg、0.04ug/kg、0.05ug/kg、0.06ug/kg、0.08ug/kg、0.1ug/kg、0.2ug/kg、0.25ug/kg、0.5ug/kg、0.75ug/kg、1ug/kg、1.5ug/kg、2ug/kg、4ug/kg、5ug/kg、10ug/kg、15ug/kg、20ug/kg、25ug/kg、30ug/kg、35ug/kg、40ug/kg、45ug/kg、50ug/kg、55ug/kg、60ug/kg、65ug/kg、70ug/kg、75ug/kg、80ug/kg、85ug/kg、90ug/kg、95ug/kg、100ug/kg、または125ug/kg、増大されるか;または、処置が進むにつれて、各日、例えば、1ug/m2、5ug/m2、10ug/m2、15ug/m2、20ug/m2、30ug/m2、40ug/m2、50ug/m2、60ug/m2、70ug/m2、80ug/m2、90ug/m2、100ug/m2、150ug/m2、200ug/m2、250ug/m2、300ug/m2、350ug/m2、400ug/m2、450ug/m2、500ug/m2、550ug/m2、600ug/m2、または650ug/m2、増大される。一部の実施形態では、対象は、予防有効量のテプリズマブなどの抗CD3抗体の、1回またはそれ以上の回数の投与を含む処置レジメンを投与され、この場合、予防有効量は、テプリズマブなどの抗CD3抗体の、1日当たりの予防有効量が達成されるまで、1.25倍、1.5倍、2倍、2.25倍、2.5倍、または5倍、増大される。
【0122】
一部の実施形態では、対象は、T1Dを防止する、処置する、またはその1つまたはそれ以上の症状を改善するように、200ug/kgもしくはそれ以下、好ましくは、175ug/kgもしくはそれ以下、150ug/kgもしくはそれ以下、125ug/kgもしくはそれ以下、100ug/kgもしくはそれ以下、95ug/kgもしくはそれ以下、90ug/kgもしくはそれ以下、85ug/kgもしくはそれ以下、80ug/kgもしくはそれ以下、75ug/kgもしくはそれ以下、70ug/kgもしくはそれ以下、65ug/kgもしくはそれ以下、60ug/kgもしくはそれ以下、55ug/kgもしくはそれ以下、50ug/kgもしくはそれ以下、45ug/kgもしくはそれ以下、40ug/kgもしくはそれ以下、35ug/kgもしくはそれ以下、30ug/kgもしくはそれ以下、25ug/kgもしくはそれ以下、20ug/kgもしくはそれ以下、15ug/kgもしくはそれ以下、10ug/kgもしくはそれ以下、5ug/kgもしくはそれ以下、2.5ug/kgもしくはそれ以下、2ug/kgもしくはそれ以下、1.5ug/kgもしくはそれ以下、1ug/kgもしくはそれ以下、0.5ug/kgもしくはそれ以下、または0.2ug/kgもしくはそれ以下である、投与1回またはそれ以上の回数分の用量のテプリズマブ、オテリキシズマブ、またはフォラルマブなどの抗CD3抗体を筋内投与される。
【0123】
一部の実施形態では、対象は、T1Dを防止する、処置する、またはその1つまたはそれ以上の症状を改善するように、200ug/kgもしくはそれ以下、好ましくは、175ug/kgもしくはそれ以下、150ug/kgもしくはそれ以下、125ug/kgもしくはそれ以下、100ug/kgもしくはそれ以下、95ug/kgもしくはそれ以下、90ug/kgもしくはそれ以下、85ug/kgもしくはそれ以下、80ug/kgもしくはそれ以下、75ug/kgもしくはそれ以下、70ug/kgもしくはそれ以下、65ug/kgもしくはそれ以下、60ug/kgもしくはそれ以下、55ug/kgもしくはそれ以下、50ug/kgもしくはそれ以下、45ug/kgもしくはそれ以下、40ug/kgもしくはそれ以下、35ug/kgもしくはそれ以下、30ug/kgもしくはそれ以下、25ug/kgもしくはそれ以下、20ug/kgもしくはそれ以下、15ug/kgもしくはそれ以下、10ug/kgもしくはそれ以下、5ug/kgもしくはそれ以下、2.5ug/kgもしくはそれ以下、2ug/kgもしくはそれ以下、1.5ug/kgもしくはそれ以下、1ug/kgもしくはそれ以下、0.5ug/kgもしくはそれ以下、または0.2ug/kgもしくはそれ以下である、投与1回またはそれ以上の回数分の用量のテプリズマブ、オテリキシズマブ、またはフォラルマブなどの抗CD3抗体を皮下投与される。
【0124】
一部の実施形態では、対象は、T1Dを防止する、処置する、またはその1つまたはそれ以上の症状を改善するように、100ug/kgもしくはそれ以下、好ましくは、95ug/kgもしくはそれ以下、90ug/kgもしくはそれ以下、85ug/kgもしくはそれ以下、80ug/kgもしくはそれ以下、75ug/kgもしくはそれ以下、70ug/kgもしくはそれ以下、65ug/kgもしくはそれ以下、60ug/kgもしくはそれ以下、55ug/kgもしくはそれ以下、50ug/kgもしくはそれ以下、45ug/kgもしくはそれ以下、40ug/kgもしくはそれ以下、35ug/kgもしくはそれ以下、30ug/kgもしくはそれ以下、25ug/kgもしくはそれ以下、20ug/kgもしくはそれ以下、15ug/kgもしくはそれ以下、10ug/kgもしくはそれ以下、5ug/kgもしくはそれ以下、2.5ug/kgもしくはそれ以下、2ug/kgもしくはそれ以下、1.5ug/kgもしくはそれ以下、1ug/kgもしくはそれ以下、0.5ug/kgもしくはそれ以下、または0.2ug/kgもしくはそれ以下である、投与1回またはそれ以上の回数分の用量のテプリズマブ、オテリキシズマブ、またはフォラルマブなどの抗CD3抗体を静脈内投与される。一部の実施形態では、100ug/kgもしくはそれ以下、95ug/kgもしくはそれ以下、90ug/kgもしくはそれ以下、85ug/kgもしくはそれ以下、80ug/kgもしくはそれ以下、75ug/kgもしくはそれ以下、70ug/kgもしくはそれ以下、65ug/kgもしくはそれ以下、60ug/kgもしくはそれ以下、55ug/kgもしくはそれ以下、50ug/kgもしくはそれ以下、45ug/kgもしくはそれ以下、40ug/kgもしくはそれ以下、35ug/kgもしくはそれ以下、30ug/kgもしくはそれ以下、25ug/kgもしくはそれ以下、20ug/kgもしくはそれ以下、15ug/kgもしくはそれ以下、10ug/kgもしくはそれ以下、5ug/kgもしくはそれ以下、2.5ug/kgもしくはそれ以下、2ug/kgもしくはそれ以下、1.5ug/kgもしくはそれ以下、1ug/kgもしくはそれ以下、0.5ug/kgもしくはそれ以下、または0.2ug/kgもしくはそれ以下である、テプリズマブ、オテリキシズマブ、またはフォラルマブなどの抗CD3抗体の静脈内投与の用量は、T1Dを防止する、処置する、またはその1つまたはそれ以上の症状を改善するように、約6時間、約4時間、約2時間、約1.5時間、約1時間、約50分間、約40分間、約30分間、約20分間、約10分間、約5分間、約2分間、約1分間、約30秒間、または約10秒間にわたり投与される。
【0125】
一部の実施形態では、対象は、T1Dを防止する、処置する、またはその1つまたはそれ以上の症状を改善するように、100ug/kgもしくはそれ以下、好ましくは、95ug/kgもしくはそれ以下、90ug/kgもしくはそれ以下、85ug/kgもしくはそれ以下、80ug/kgもしくはそれ以下、75ug/kgもしくはそれ以下、70ug/kgもしくはそれ以下、65ug/kgもしくはそれ以下、60ug/kgもしくはそれ以下、55ug/kgもしくはそれ以下、50ug/kgもしくはそれ以下、45ug/kgもしくはそれ以下、40ug/kgもしくはそれ以下、35ug/kgもしくはそれ以下、30ug/kgもしくはそれ以下、25ug/kgもしくはそれ以下、20ug/kgもしくはそれ以下、15ug/kgもしくはそれ以下、10ug/kgもしくはそれ以下、5ug/kgもしくはそれ以下、2.5ug/kgもしくはそれ以下、2ug/kgもしくはそれ以下、1.5ug/kgもしくはそれ以下、1ug/kgもしくはそれ以下、0.5ug/kgもしくはそれ以下、または0.2ug/kgもしくはそれ以下である、投与1回またはそれ以上の回数分の用量のテプリズマブ、オテリキシズマブ、またはフォラルマブなどの抗CD3抗体を経口投与される。一部の実施形態では、100ug/kgもしくはそれ以下、95ug/kgもしくはそれ以下、90ug/kgもしくはそれ以下、85ug/kgもしくはそれ以下、80ug/kgもしくはそれ以下、75ug/kgもしくはそれ以下、70ug/kgもしくはそれ以下、65ug/kgもしくはそれ以下、60ug/kgもしくはそれ以下、55ug/kgもしくはそれ以下、50ug/kgもしくはそれ以下、45ug/kgもしくはそれ以下、40ug/kgもしくはそれ以下、35ug/kgもしくはそれ以下、30ug/kgもしくはそれ以下、25ug/kgもしくはそれ以下、20ug/kgもしくはそれ以下、15ug/kgもしくはそれ以下、10ug/kgもしくはそれ以下、5ug/kgもしくはそれ以下、2.5ug/kgもしくはそれ以下、2ug/kgもしくはそれ以下、1.5ug/kgもしくはそれ以下、1ug/kgもしくはそれ以下、0.5ug/kgもしくはそれ以下、または0.2ug/kgもしくはそれ以下である、テプリズマブ、オテリキシズマブ、またはフォラルマブなどの抗CD3抗体の経口投与の用量は、T1Dを防止する、処置する、またはその1つまたはそれ以上の症状を改善するように、約6時間、約4時間、約2時間、約1.5時間、約1時間、約50分間、約40分間、約30分間、約20分間、約10分間、約5分間、約2分間、約1分間、約30秒間、または約10秒間にわたり投与される。
【0126】
漸増用量が、投与レジメンの最初の数日間にわたり投与される、一部の実施形態では、レジメンの1日目における用量は、5~100ug/m2/日、例えば、51ug/m2/日であり、3、4、5、6、または7日目までに、すぐ上記で列挙された1日用量に漸増する。例えば、対象は、1日目に約51ug/m2/日の用量、2日目に約103ug/m2/日の用量、3日目に約207ug/m2/日の用量、4日目に約413ug/m2/日の用量を投与され、レジメンのそれ以降の日(例えば、5~14日目)に826ug/m2/日の用量を投与される。一部の実施形態では、対象は、1日目に約227ug/m2/日の用量、2日目に約459ug/m2/日の用量、3日目以降に約919ug/m2/日の用量を投与される。一部の実施形態では、対象は、1日目に約284ug/m2/日の用量、2日目に約574ug/m2/日の用量、3日目以降に約1148ug/m2/日の用量を投与される。
【0127】
一部の実施形態では、初期用量は、レジメンの終了時における1日用量の4分の1から2分の1、さらにはそれと等量までであるが、6、8、10、または12時間の間隔で、数回分に分けて投与される。例えば、13ug/kg/日の用量は、抗体の投与により引き起こされるサイトカイン放出のレベルを低減するように、3~4ug/kgの用量で4回、6時間の間隔を開けて投与される。一部の実施形態では、サイトカイン放出および他の有害作用の可能性を低減するために、レジメンの最初の1、2、3、もしくは4回分の用量、または全用量は、静脈内投与により、より緩徐に投与される。例えば、51ug/m2/日の用量は、約5分間、約15分間、約30分間、約45分間、約1時間、約2時間、約4時間、約6時間、約8時間、約10時間、約12時間、約14時間、約16時間、約18時間、約20時間、および約22時間にわたり投与される。一部の実施形態では、用量は、注入を緩徐化させることにより、例えば、20~24時間にわたり投与される。一部の実施形態では、用量は、ポンプにより注入され、好ましくは、注入が進むにつれて、投与される抗体の濃度を増大させる。
【0128】
一部の実施形態では、上記で記載された、分割量のセットを、51ug/m2/日~826ug/m2/日の用量とするレジメンは、漸増用量で投与される。一部の実施形態では、分割量は、上記で記載されたレジメンの1日用量の10分の1、4分の1、3分の1、2分の1、3分の2、または4分の3である。したがって、分割量が10分の1である場合、1日用量は、1日目に5.1ug/m2、2日目に10.3ug/m2、3日目に20.7ug/m2、4日目に41.3ug/m2、および5~14日目に82.6ug/m2となる。分割量が4分の1である場合、用量は、1日目に12.75ug/m2、2日目に25.5ug/m2、3日目に51ug/m2、4日目に103ug/m2、および5~14日目に207ug/m2となる。分割量が3分の1である場合、用量は、1日目に17ug/m2、2日目に34.3ug/m2、3日目に69ug/m2、4日目に137.6ug/m2、および5~14日目に275.3ug/m2となる。分割量が2分の1である場合、用量は、1日目に25.5ug/m2、2日目に51ug/m2、3日目に103ug/m2、4日目に207ug/m2、および5~14日目に413ug/m2となる。分割量が3分の2である場合、用量は、1日目に34ug/m2、2日目に69ug/m2、3日目に137.6ug/m2、4日目に275.3ug/m2、および5~14日目に550.1ug/m2となる。分割量が4分の3である場合、用量は、1日目に38.3ug/m2、2日目に77.3ug/m2、3日目に155.3ug/m2、4日目に309.8ug/m2、および5~14日目に620ug/m2となる。一部の実施形態では、レジメンは、上記で記載されたレジメンのうちの1つと同一であるが、1~4日目、1~5日目、または1~6日目だけにわたる。例えば、一部の実施形態では、用量は、1日目に17ug/m2、2日目に34.3ug/m2、3日目に69ug/m2、4日目に137.6ug/m2、ならびに5および6日目に275.3ug/m2となる。
【0129】
一部の実施形態では、テプリズマブ、オテリキシズマブ、またはフォラルマブなどの抗CD3抗体は、毎日の投与により、複数の日数にわたり投与されず、4時間、6時間、8時間、10時間、12時間、15時間、18時間、20時間、24時間、30時間、または36時間にわたり、連続注入により投与される。注入は、一定の場合もあり、例えば、注入の最初の1、2、3、5、6、または8時間にわたり、低投与量で開始し、次いで、その後、高投与量に増大させる場合もある。注入コースにわたり、患者は、上記で明示された、5~20日間のレジメンにおいて投与される量と同等の用量を施される。例えば、約150ug/m2、200ug/m2、250ug/m2、500ug/m2、750ug/m2、1000ug/m2、1500ug/m2、2000ug/m2、3000ug/m2、4000ug/m2、5000ug/m2、6000ug/m2、7000ug/m2、8000ug/m2、9000ug/m2、10000ug/m2、11000ug/m2、12000ug/m2、13000ug/m2、または14000ug/m2の用量である。特に、注入の速度および持続期間は、投与後の対象における、テプリズマブ、オテリキシズマブ、またはフォラルマブなどの遊離抗CD3抗体のレベルを最小化するようにデザインされる。一部の実施形態では、テプリズマブなどの遊離抗CD3抗体のレベルは、1ml当たりの遊離抗体200ngを超えないものとする。加えて、注入は、少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、95%、または100%のT細胞受容体によるコーティングおよびモジュレーションの組合せを達成するようにデザインされる。
【0130】
一部の実施形態では、テプリズマブ、オテリキシズマブ、またはフォラルマブなどの抗CD3抗体は、1型糖尿病を処置する、防止する、またはその発症もしくは進行を緩徐化もしくは遅延させる、またはその1つもしくはそれ以上の症状を改善するように長期的に投与される。例えば、一部の実施形態では、低用量の、テプリズマブなどの抗CD3抗体は、上記で論じられた6~14日間の投与レジメンに対する代替法として、またはその効果を増強もしくは維持するように、このようなレジメンの投与後、毎月1回、毎月2回、毎月3回、毎週1回、なおまたはより高頻度で投与される。このような低用量は、約5ug/m2、10ug/m2、15ug/m2、20ug/m2、25ug/m2、30ug/m2、35ug/m2、40ug/m2、45ug/m2、または50ug/m2など、1ug/m2~100ug/m2のいずれかでありうる。
【0131】
一部の実施形態では、対象は、テプリズマブ、オテリキシズマブ、またはフォラルマブなどの抗CD3抗体の投与レジメンの投与に後続するある時点において、例えば、1つまたはそれ以上の生理学的パラメータに基づき、再投与される場合もあり、コースとして再投与される場合もある。このような再投与は、投与レジメンの投与の2カ月後、4カ月後、6カ月後、8カ月後、9カ月後、1年後、15カ月後、18カ月後、2年後、30カ月後、または3年後に実施され、かつ/またはこのような再投与の必要は、これらの時点において査定され、処置コースの、6カ月ごと、9カ月ごと、1年ごと、15カ月ごと、18カ月ごと、2年ごと、30カ月ごと、または3年ごとに、無期限の投与を含みうる。
【実施例】
【0132】
実施例1
1型糖尿病の危険性が大きな個体におけるテプリズマブ処置後3カ月以内の急速な代謝低下の抑止
抄録
1型糖尿病防止試験を、より効率的に実施するために、処置効果の早期同定をもたらす評価項目が必要とされる。この目的で、本発明者らは、代謝評価項目が、TrialNetテプリズマブ試験の高危険性個体における、処置後3カ月以内の急速なβ細胞減殺に対するテプリズマブの効果を検出するのに使用されるのかどうかについて評価した。GCRC(glucose and C-peptide response curve)は、2時間経口ブドウ糖負荷試験による平均血糖値および平均Cペプチド値を、2次元格子上にプロットすることにより構築した。群を、GCRCの形状および動きの変化について、目視により比較した。プラセボ群では、無作為化から3カ月以内に、GCRCの変化が、顕著な代謝的増悪を反映した。6カ月後までに、GCRCは、診断時における典型的なGCRCに酷似した。これに対し、テプリズマブ群におけるGCRC変化は、代謝的改善を示唆した。GCRC変化を指し示す、2つの新規の代謝評価項目である、WQE(Within Quadrant Endpoint)およびODE(Ordinal Directional Endpoint)を含む定量的比較は、3および6カ月後の時点における、目覚ましい処置効果についての視覚的印象と符合した。結論として述べると、視覚的証拠を、新規の評価項目と組み合わせる解析法は、テプリズマブは、急速な代謝低下を遅延させ、処置後3カ月以内に、代謝状態を改善し;この効果は、少なくとも6カ月間にわたり持続することを裏付けた。
【0133】
序説
1型糖尿病とは、膵ベータ細胞の破壊に起因するインスリン欠損を結果としてもたらす、自己免疫疾患である(1)。Type 1 Diabetes TrialNet TN10 Anti-CD3 prevention studyでは、Fc受容体非結合性抗CD3εモノクローナル抗体である、テプリズマブによる、単剤14日コースは、自己抗体陽性である、高危険性個体群において、糖尿病の発症を、32.5カ月間遅延させることが可能であった(2;3)。この研究についての経時的追跡解析(3)では、試験への参加の前におけるCペプチド応答の低下の後に、テプリズマブ処置は、平均Cペプチド曲線下面積(AUC)を、6カ月間にわたり改善した。処置はまた、登録の前に観察された、インスリン分泌の低下も反転させた。
【0134】
これらの所見は、代謝評価項目が、テプリズマブの効果についての、より正確な情報を得るために、価値を有しうることを示唆した。こうして、テプリズマブ効果について検討するための、代謝評価項目の有用性は、他の臨床試験における防止処置について評価するように、潜在的に一般化される。経口ブドウ糖負荷試験または混合食負荷試験(OGTT;MMTT)によるCペプチド応答は、主に、糖尿病についての診断の前および後の両方における、β細胞機能について査定するのに利用されている(4)。しかし、今日、いくつかの研究は、刺激された血糖/Cペプチドマーカーの組合せが、1型糖尿病についての予測、自己抗体陽性集団内における異質性の同定、およびβ細胞機能の微細な変化の検出を改善することを示している(5~11)。
【0135】
したがって、本発明者らは、これらの尺度の組合せが、2つの重要な問題:(1)1型糖尿病の危険性が大きな個体の間で、14日処置コース後3カ月以内に、β細胞機能に対する、実質的なテプリズマブ効果が見られるのか、そして、そうだとした場合、この効果は、少なくとも6カ月間にわたり持続するのか;(2)テプリズマブが投与されない場合に、高危険性個体の間で、3カ月以内に、急速なβ細胞減殺の可能性はあるのかについて検討するのに使用されると推論した。本発明者らは、2つの複合血糖/Cペプチドマーカーである、Index60(8、9)およびCペプチドAUC/血糖AUC比(AUC Ratio)を使用して、これらの問題に取り組んだ。加えて、本発明者らは、2次元格子(2dgrid)上において、OGTTから導出された血糖/Cペプチド応答曲線(GCRC)を使用した。近年に導入されたこの方法は、定性法と、定量法との融合を利用することにより、血糖尺度と、Cペプチド尺度との組合せの概念を拡張した。この方法は、1型糖尿病の代謝自然史(12)、診断時における、障害の代謝異質性(13)、および潜在的な防止処置の代謝効果(14)についての研究を、既に容易としている。別の研究では、GCRC(MMTTによる)は、1型糖尿病の診断の後における、代謝変化の、microRNAとの関連について研究するための基礎となった(15)。
【0136】
所見は、テプリズマブが、1型糖尿病の危険性が大きな個体における処置の直後に、β細胞機能を効果的に保存し、これを改善し、この作用が持続することを示すであろう。所見はまた、プラセボ群のいずれの例も、無作為化後3カ月以内に診断されなかったが、この期間中に、既に顕著な代謝的増悪が見られたことも示す。さらに、所見は、複合血糖/Cペプチド評価項目を、GCRCと共に、タンデムで使用することが、1型糖尿病防止試験において、診断評価項目を、単独で使用することにより見逃される、防止処置効果のタイミングおよび大きさに対する、定性的洞察および定量的洞察をもたらすことを裏付ける。
【0137】
調査研究のデザインおよび方法
試験の手順およびデザイン
フェーズ2、無作為化、プラセボ対照、二重盲検化TrialNet TN10 anti-CD3 prevention study(NCT01030861)のデザインについては、既に詳細に報告されている(2)。治験審査委員会による承認は、試験参加の前に、各参加機関において、説明同意文書および賛意により得られた。組入れ基準は、無作為化時における年齢が、≧8歳であること、1型糖尿病を伴う血縁者の既往歴、病期2の糖尿病[≧2つの膵島自己抗体(抗グルタミン酸デカルボキシラーゼ65、マイクロインスリン、抗膵島抗原2、抗亜鉛トランスポーター8、および/または膵島細胞質抗体)についての力価が陽性であること、および血糖異常]であった。HbA1cレベルは、正常範囲[テプリズマブの中央値(四分位範囲):5.2%(4.9%~5.4%);プラセボの中央値(四分位範囲):5.3%(5.1%~5.4%)]内にあった。参加者を、テプリズマブまたは生理食塩液に、無作為に割り当て、IV注入として投与される、14日間の外来コースにより処置した。OGTT Cペプチド/血糖値は、TOSOH C-peptide and Roche glucose assayを使用して、Northwest Lipids Research Laboratoriesが調べた。糖尿病性範囲内のOGTT血糖値は、この解析から除外した。
【0138】
Cペプチドおよび血糖についてのAUC値は、台形規則を使用して計算した(16)。CペプチドAUC/血糖AUC比(AUC Ratio)値は、比×100を計算することにより得た。Index60は、0.3695×(対数による空腹時Cペプチド[ng/mL])+0.0165×60分後における血糖(mg/dL)+0.3644×60分後におけるCペプチド(ng/mL)として計算した(17)。GCRC(glucose and C-peptide response curve)は、OGTTによる平均血糖値(y軸)および平均Cペプチド値(x軸)(30、60、90、120分間、および4時間後)を、2次元格子上にプロットすることにより作成した。
【0139】
解析成分
図3A~3Cは、代謝変化についての解析において使用される、6つの鍵となる成分:血糖をy軸とし、Cペプチドをx軸とする2次元格子、GCRC、重心(GCRCの中心)、ベクトル、ベクトルについての方向四分円、および角を含む。
図3Aに、30、60、90、および120分後における、OGTTによる平均血糖値および平均Cペプチド値から、2次元格子上にプロットされた、同じ個体による、2つの仮説的GCRCを示す。GCRCのうちの一方が、診断の6カ月前に典型的であるのに対し、他方は、診断時に典型的である。各GCRCについての重心を計算した(式を参照されたい)。代謝の低下を指し示す、診断の6カ月前から、診断時への、GCRCの位置の顕著な変化が明らかである。矢印は、診断の6カ月前におけるGCRC重心から、診断時におけるGCRC重心への位置の変化についてのベクトルである。ベクトルの方向および大きさが、ベースライン~6カ月後における、Cペプチドの減少および血糖の増大の関数であることに注目されたい。
【0140】
図3Bでは、右三角形を、
図3Aに重ね合わせた。右三角形は、ベクトル(斜辺)と、血糖(垂直方向の辺)およびCペプチド(水平線方向の辺)の変化とから形成される。右三角形の形成は、ベクトルの角を計算するための手段をもたらす。図に示される通り、この解析のための計算角は、ベクトル(斜辺)と、右三角形の水平線方向の辺との間の角として規定される。
【0141】
図3Cは、4つの方向四分円の各々:右低四分円;右上四分円;左上四分円;左低四分円についてのベクトルの仮説的例を示す。これらの全ては、血糖およびCペプチドの変化を、0に固定した場合の、ベースラインにおける重心から得られる。したがって、ベクトルについての方向四分円は、血糖およびCペプチドの変化が、正であるのか、負であるのかに依存する。水平線と、ベクトルとの間の計算角もまた示す。
【0142】
GCRCの視覚的比較を補完する定量的比較をもたらすために、本発明者らは、6カ月間にわたるGCRCの動きの変化を指し示す、ベクトルおよび角に基づく、2つの新規の評価項目:WQE(Within Quadrant Endpoint)およびODE(Ordinal Directional Endpoint)を開発した。いずれの評価項目も、血糖およびCペプチドの変化を反映する、4つの潜在的な四分円へのGCRCの動きに基づく、コックス回帰モデル化を利用する。これら2つの新規の評価項目の開発の情報については、
図4を参照されたい。
【0143】
重心計算のための式
CPEP重心=(1/3)×(((CPEP30+CPEP60)×((CPEP30×GLUC60)-(CPEP60×GLUC30)))+((CPEP60+CPEP90)×((CPEP60×GLUC90)-(CPEP90×GLUC60)))+((CPEP90+CPEP120)×((CPEP90×GLUC120)-(CPEP120×GLUC90)))+((CPEP120+CPEP30)×((CPEP120×GLUC30)-(CPEP30×GLUC120))))/(((CPEP30×GLUC60)-(CPEP60×GLUC30))+((CPEP60×GLUC90)-(CPEP90×GLUC60))+((CPEP90×GLUC120)-(CPEP120×GLUC90))+((CPEP120×GLUC30)-(CPEP30×GLUC120)))
GLUC重心=(1/3)×(((GLUC30+GLUC60)×((CPEP30×GLUC60)-(CPEP60×GLUC30)))+((GLUC60+GLUC90)×((CPEP60×GLUC90)-(CPEP90×GLUC60)))+((GLUC90+GLUC120)×((CPEP90×GLUC120)-(CPEP120×GLUC90)))+((GLUC120+GLUC30)×((CPEP120×GLUC30)-(CPEP30×GLUC120))))/(((CPEP30×GLUC60)-(CPEP60×GLUC30))+((CPEP60×GLUC90)-(CPEP90×GLUC60))+((CPEP90×GLUC120)-(CPEP120×GLUC90))+((CPEP120×GLUC30)-(CPEP30×GLUC120)))
【0144】
6カ月後WQE(Within Quadrant Endpoint)、および6カ月後ODE(Ordinal Directional Endpoint)の開発
下記の節は、解析およびそれらの定式化において、併せて使用される、2つの新規の評価項目の開発について記載する。
【0145】
解析のための評価項目を選び出すための基礎
潜在的評価項目を、まず、それらによる1型糖尿病の予測について調べた。次いで、1型糖尿病を予測する、潜在的評価項目を、組合せDPT-1/Trial Net経口インスリン試験コホート(n=208;試験と処置との相互作用は見られない)における、経口インスリン処置効果の検出における、それらの性能について評価した。研究される評価項目中で、WQE(Within Quadrant Endpoint)、およびODE(Ordinal Directional Endpoint)は、経口インスリン群または非経口インスリン対照群(非補正のWQEについて、p<0.001であり、非補正のODEについて、p=0.001であり、;血糖AUC、CペプチドAUC、年齢、およびBMIについての補正後における、WQEおよびODEの両方について、p<0.001である)における、281例のDPT-1参加者中の1型糖尿病を予測した。他の評価項目もまた、1型糖尿病を予測したが、WQEおよびODEは、経口インスリン効果の検出において優れていた。表4は、ベースラインの血糖AUC、CペプチドAUC、年齢、およびBMIについての補正後における、WQE(p<0.001)およびODE(p=0.005)についての、プラセボ群と、経口インスリン群との比較を示す。これらの所見に基づき、本発明者らは、WQEおよびODEを利用して、早期テプリズマブの効果について、統計学的に評価した。
【0146】
WQE(Within Quadrant Endpoint)
360°の完全連続体は、1型糖尿病の予測能が低度であった。したがって、本発明者らは、危険性の予測が、360°の連続体を、0°~90°にわたる、その4つの方向四分円に分割することにより増強される可能性を探索した。各方向四分円は、モデル内に、併せて組み入れられた場合、全体的危険性を予測する、その固有の特徴的危険性を示すと考えられるであろう。方向四分円は、
右上四分円(RUQ)
左上四分円(LUQ)
右下四分円(RLQ)
左下四分円(LLQ)
として指定される。
【0147】
図4に示される通り、角は、個々の変化ベクトルの方向性四分円に従い形成される、右三角形から計算した。LUQおよびRLQでは、計算角が負であるので、これらを、正に変換した。y軸上における、血糖重心の、ベースラインから、6カ月後への変化パーセント、およびx軸上における、Cペプチド重心の、ベースラインから、6カ月後への変化パーセントを、角の計算のために使用した。三角形の斜辺は、ベースラインにおけるGCRC重心から、6カ月後におけるGCRC重心までの距離(すなわち、変化についてのベクトルの大きさ)を表す。計算角および斜辺についての式は、下記に示される:
ラジアン=アークタンジェント(血糖の変化%/Cペプチドの変化%)
角=ラジアン×57.296
斜辺=((血糖の変化%×血糖の変化%)+(Cペプチドの変化%×Cペプチドの変化%))の平方根
(式は、三角形の辺の単位を正規化するように、実測値の代わりに、血糖およびCペプチドの変化パーセントを使用する)。
【0148】
DPT-1/Trial Net非経口インスリン/経口インスリン試験(n=281)の対照群によるデータを使用して、本発明者らは、各四分円内における、6カ月間にわたる変化についての計算角を、1型糖尿病を予測するための独立変数として組み入れる、コックス回帰モデルを開発した。個々の変化ベクトルは、四分円のうちの1つだけに収まるため、他の四分円の値を、0と指定した。このパラダイムに基づき、本発明者らは、モデルが、1型糖尿病を有意に予測することを見出した。しかし、本発明者らはまた、ある特定の四分円について、計算角が、90°から控除されれば、他のモデルもまた、予測可能であることを見出した。
【0149】
図4は、ベクトル、四分円、および角が、どのようにして規定されたのかを示す。
図4はまた、最終モデルのために利用される角が、LUQおよびRLQ内の変化パーセントの計算角と、90°から控除された、LLQおよびRLQ内の変化パーセントの計算角とを組み入れたことも、仮説的に示す。加えて、本発明者らは、DPT-1危険性スコア(10)(DPTRS)により、モデル係数を、ベースラインの危険性について補正することにより、モデルが、1型糖尿病を、よりよく予測することを観察した。したがって、最終モデル係数は、DPTRSについての補正に基づく。下記の式は、経口インスリン群と、プラセボ群との間の最大の差違を検出するモデルのために使用された、方向四分円角(qangle)の係数を示す(p<0.001)。
WQE=0.02455×qangle1+0.01464×qangle2+0.00831×qangle3-0.00465×qangle4
[qangle1=RUQ、qangle2=LUQ、qangle3=LLQ、およびqangle4=RLQとする](個体について、4つの方向四分円のうちの3つは、常に、負となるので、「0」としてコードされる指標変数を使用した)である。
【0150】
下記の概要は、WQEの計算に必要な工程を示す:
・ベースラインおよび6カ月後におけるGCRC重心についての、血糖/Cペプチド座標の計算。
・血糖/Cペプチド重心座標の変化の、変化パーセントへの転換。
・ベースライン座標と、6カ月後座標との間のベクトルについての方向性四分円を同定する。
・右三角形に基づく標準式を使用して、四分円内で、水平線と、ベクトルとの間の角を計算する。
・方向四分円2および4(qangle2およびqangle4)における負の角を、正の角に転換する。
・qangle1およびqangle2について、計算角を使用する。モデルにおいて、(90°-計算角)を、qangle3および(90-qangle4)に使用する。
【0151】
負から正への角変換、および90°からの角の控除のための手順を下記に示す:
重心の変化についてのベクトルが、RUQ内にある場合、qangle1=計算角である
重心の変化についてのベクトルが、LUQ内にある場合、qangle2=計算角×(-1)である
重心の変化についてのベクトルが、LLQ内にある場合、qangle3=90-計算角である
重心の変化についてのベクトルが、LLQ内にある場合、qangle4=90-計算角×(-1)である
【0152】
WQEについての例:ベースラインにおけるGCRC重心から、6カ月後におけるGCRC重心への、個体の方向性は、qangleを32°とするLLQ内にある。WQE=0.00831×(32)=0.266である(0.00831は、LLQ方向四分円についての回帰係数である)。
【0153】
6カ月後におけるODE(Ordinal Directional Endpoint)
360°スケールを使用して、本発明者らは、1型糖尿病への経時的進行中における随時の方向性についての既往の証拠に従い、下記に指し示される通りに、4つの四分円に値を割り当てた(15)。
下右四分円(RLQ):0°
下左四分円(LLQ):90°
上右四分円(RUQ):180°
上左四分円(LUQ):270°
【0154】
値を、WQEモデルから得られたqangleの値に加算した。次いで、和を、360で除して、最大値を1.00とするスケールを創出する。
【0155】
ODEの計算に必要な工程の概要は、qangle値を、モデルに挿入する代わりに、qangleを、方向四分円について、上記で指し示された指定値に加算することを除き、WQEの計算に必要な工程の概要と同じである。
【0156】
ODEについての例:ベースラインにおけるGCRC重心から、6カ月後におけるGCRC重心への変化についての、個体のベクトルの方向性は、qangleを49°とするLUQ内にある。この個体についての6カ月後ODEは、
270°+49°=319°/360°=0.87単位
[式中、270°は、LUQについて指定された四分円値を表し、49°は、LUQ内の角の値を表す]
である。
【0157】
潜在的評価項目を、まず、それらによる1型糖尿病の予測について調べた。次いで、1型糖尿病を予測する、潜在的評価項目を、組合せDPT-1/Trial Net経口インスリン試験コホート(n=208;試験と処置との相互作用は見られない)における、経口インスリン処置効果の検出における、それらの性能について評価した。研究される評価項目中で、WQE(Within Quadrant Endpoint)、およびODE(Ordinal Directional Endpoint)は、経口インスリン群または非経口インスリン対照群(非補正のWQEについて、p<0.001であり、非補正のODEについて、p=0.001であり、;血糖AUC、CペプチドAUC、年齢、およびBMIについての補正後における、WQEおよびODEの両方について、p<0.001である)における、281例のDPT-1参加者中の1型糖尿病を予測した。他の評価項目もまた、1型糖尿病を予測したが、WQEおよびODEは、経口インスリン効果の検出において優れていた。表4は、ベースラインの血糖AUC、CペプチドAUC、年齢、およびBMIについての補正後における、WQE(p<0.001)およびODE(p=0.005)についての、プラセボ群と、経口インスリン群との比較を示す。これらの所見に基づき、本発明者らは、WQEおよびODEを利用して、早期テプリズマブの効果について、統計学的に評価した。
【0158】
【0159】
統計学的解析
t検定およびカイ二乗検定を使用して、群を比較した。線形回帰を、変数の補正のために使用する一方、比例ハザード回帰を、評価項目についてのモデルを開発するのに使用した。性別は、解析における共変量として組み入れなかった。全ての解析は、統計学的プログラムである、SAS(version 9.4)を使用して実施した。<0.05の両側p値を、統計学的に有意であると考えた。
【0160】
結果
参加者についての関与性のベースライン特徴を、表5に示す。任意の人口学的尺度、またはベースラインOGTTによる血糖レベルもしくはCペプチドレベルについて、プラセボ群と、テプリズマブ群との間で、有意差は見られなかった。参加者76例中、無作為化の29カ月後における、29例のプラセボ処置個体、および41例のテプリズマブ処置個体、ならびに無作為化の24カ月後における、24例のプラセボ処置個体、および44例のテプリズマブ処置個体について解析するのに十分なOGTTデータが得られた。プラセボ群からの個体5例は、糖尿病についての診断(個体3例)、またはOGTTの血糖値が糖尿病性範囲にあるが、2回連続で糖尿病性範囲となる、OGTTについての診断基準を満たさないこと(個体2例)のために、6カ月後におけるOGTTについての解析から除外した。
【0161】
【0162】
処置の3カ月および6カ月後における、GCRCによる代謝応答の評価
処置後における、テプリズマブの、β細胞機能に対する効果についての早期証拠が得られるのかどうかを決定するために、本発明者らは、無作為化から、3カ月後における、GCRCの変化を、プラセボ群と、テプリズマブ群との間で比較した。
図1Aおよび1Bでは、無作為化から、3カ月後の来院における、重心の変化についてのベクトルを、プラセボ群およびテプリズマブ群における各個体についてプロットした。これらのベクトルプロットにおいて、プラセボ群内の個体29例中11例(37.9%)対テプリズマブ群内の41例中6例(14.6%)のベクトルが、左上方向四分円(Cペプチドの減少および血糖の増大)に方向付けられたことは、代謝機能の増悪を示唆する。これは、テプリズマブ群内の個体41例中11例(26.8%)対プラセボ群内の29例中2例(6.9%)のベクトルが、右下四分円(Cペプチドの増大および血糖の減少)に方向付けられたことは、代謝機能の改善を示唆することと対照的であった。4つの四分円全ての中で、プラセボ処置参加者対テプリズマブ処置参加者の頻度は、有意に異なった(全体のp=0.045)(表1)。
【0163】
【0164】
図1C~1Dに、各OGTT時点についての血糖およびCペプチドの平均値に従い構築されたGCRCを描示するほか、ベクトルは、無作為化から、3カ月後における、GCRC重心の変化を指し示す。プラセボ群では、3カ月後までに、左上四分円に方向付けられた、この期間にわたる、GCRC重心の変化についてのベクトルにより、進行性の代謝的機能不全が明らかであった(Cペプチドの減少および血糖の増大)。これに対し、テプリズマブ群におけるGCRC重心の変化についてのベクトルは、右下四分円に向かう、ほぼ反対の方向性を示した(Cペプチドの増大および血糖の減少)。テプリズマブの効果の大きさは、プラセボベクトルと、テプリズマブベクトルとの間の、153°(最大180°のうちの)の方向差において明らかであった。
【0165】
AUC RatioおよびIndex60の、ベースライン~3カ月後における変化は、ベクトルの方向性の大きな差違と符合した。いずれの変化についても、プラセボと、テプリズマブとの間で有意差が見られた(ベースラインにおけるパラメータ、年齢、およびBMIについての補正後において、p<0.01である;表2)。さらに、テプリズマブ群では、改善の証拠が見られた:AUC Ratioは、増大し(p<0.01)、Index60は、減少した(p<0.05)(対応のある解析では、多重共線形性のために、補正を実施できなかった)。
【0166】
【0167】
図1C~1Dではまた、プラセボ群のGCRCの、無作為化から、3カ月後における、目覚ましい構造変化も注目される。特に、1型糖尿病への進行中の変化に典型的な、30~60分後の間における、上向きの傾きの増大が明らかである(12)。これに対し、テプリズマブ群の傾きは、ほぼ同じである。
【0168】
6カ月後における、個々のベクトルについてのパターンは、3カ月後におけるパターンと同様であった。
図1E~1Fに示される通り、個々のベクトルの方向性が、プラセボ群において、左向きであり、かつ、上向きであったことは、代謝的増悪を示唆するのに対し、テプリズマブ群では、右向き、かつ、下向きに動くことは、代謝的改善を示唆する。したがって、プラセボ群の高百分率が、ベクトルを、左上四分円に方向付けた(プラセボの45.8%対テプリズマブの11.4%)のに対し、テプリズマブ群の高百分率は、ベクトルを、右下四分円に方向付けた(プラセボの8.3%対テプリズマブの34.1%)。差違はまた、OGTT平均値による、GCRCの重心動きについてのベクトルにおいても明らかであった(
図1G~1H)。無作為化から、6カ月後における、プラセボベクトルと、テプリズマブベクトルとの方向差は、138°であった。4つの四分円全ての間で、群間のベクトル頻度の差違は、有意であった(全体のp=0.004)(表1)。
【0169】
AUC RatioおよびIndex60の変化の群間差もまた有意であったが、それほど大きくなかった(補正後において、それぞれ、p=0.005およびp=0.021である;表2)。テプリズマブ群内では、ベースライン~6カ月後におけるAUC Ratioの増大もまた明らかであった(p<0.01)が、Index60は、有意に減少しなかった。
【0170】
図1G~1Hでは、無作為化の6カ月後までに、GCRCの形状が、診断に特徴的なGCRCの形状に酷似する形状を帯びるように、実質的により病理学的となったことが明らかである(12)。具体的に述べると、30~90分後におけるプラセボGCRCは、60~90分後における傾きが、それほど下向きでなくなったために、ほぼ直線状となった。テプリズマブのGCRC形状の変化の程度は、はるかに小さかった。
【0171】
方向四分円内におけるベクトル角を使用する、処置効果についての定量的評価
上記の解析は、14日間にわたる処置後3カ月以内に、かつ、少なくとも6カ月後まで、テプリズマブ試験における、プラセボ群と、テプリズマブ群との間のGCRCベクトルの明らかな差違を示した。これらの差違は、群間における、Index60およびAUC Ratioの差違により確証された。しかし、これらの複合血糖/Cペプチド尺度は、GCRCの変化を指し示す、ベクトルの方向性に基づかなかった。したがって、本発明者らは、プラセボ群と、処置群とのベクトルの差違をより直接的に指し示す、定量的評価項目を開発するように努めた。2つのこのような評価項目:WQE(Within Quadrant Endpoint)、およびODE(Ordinal Directional Endpoint)を開発した(調査研究のデザインおよび方法を参照されたい)。いずれの評価項目も、Diabetes Prevention Trial-Type 1における、解析に利用可能なOGTTの間の最短の間隔である、6カ月間隔のGCRC重心位置の変化から導出された。
【0172】
ベースラインから3カ月後の、GCRCの動きの、プラセボ群と、処置群との間における、視覚的差違は、ODEおよびWQEにより、統計学的に確認された(
図2Aおよび2B)。ODE値は、テプリズマブ群について、有意に低値であった(補正後において、p<0.05である)。補正前のテプリズマブ群では、WQE値もまた、有意に低値であった(p<0.05)が、補正後には、差違に向かう傾向だけを示した(p=0.072)。
【0173】
6カ月後における、プラセボ群と、テプリズマブ群との間における、WQEおよびODEの差違は、3カ月後より、目覚ましく大きかった:WQEは、テプリズマブ群について、ODE(p<0.01)と同様に、有意に低値であった(p<0.01)。評価項目に従い、プラセボ群と、テプリズマブ群との間の差違についてまとめる表2は、Index60およびAUC Ratioが、3カ月後に、群間でより大きく異なったのに対し、WQEおよびODEは、6カ月後に、より大きく異なったことを示す。
【0174】
結論
テプリズマブ試験は、単剤処置コースが、1型糖尿病の発症を遅延させうることを示した(2)。しかし、この試験および標準的な時間対診断の評価項目を利用する他の防止試験は、長期にわたった。テプリズマブはまた、1型糖尿病を遅延させることにおいても極めて効果的であったが、その効果のタイミングおよび代謝状態に対するその影響についての情報を欠いていた。こうして、本発明者らは、この情報を得るために、既存の代謝マーカーおよび新たな代謝マーカーを、評価項目として使用した。このような早期のリードアウトであれば、防止処置の、β細胞機能に対する効果を理解する一助となるだけでなく、おそらくまた、防止試験の短縮ももたらしうるであろう。
【0175】
診断前の経口ブドウ糖、または診断後の混合食に応答するCペプチドAUCの測定が、インスリン応答性について評価するのに使用されることが多いが;CペプチドAUCが、β細胞機能の変化を同定するために、必ずしも最高感度の尺度であるわけではない。複数の研究は、1型糖尿病におけるCペプチドの喪失が最もよく提示され、理解されるのは、血糖変化の文脈においてであることを示唆している(5~11)。本発明者らは、本研究において、血糖に応答するインスリン分泌動態をよりよく理解するように、定性的情報と、定量的情報とを融合させた、新たな手法を使用した。この手法を使用して、所見は、テプリズマブが、高危険性集団において、重度のβ細胞減殺を抑止し、おそらく、処置の3カ月後までに、機能を改善することについての、強力な証拠をもたらした。さらに、効果は、処置後、少なくとも6カ月間にわたり持続する。診断前の代謝的悪化の進行期であってもなお、テプリズマブの効果が、高度な影響を及ぼすのに十分な程度に急速であることを指し示すので、これらの所見は、重要な含意を有する。
【0176】
GCRCおよびそれらの重心は、ベクトルおよびそれらの角と併せて、解析において、大きな役割を果たした。2次元格子上における、GCRC変化から明らかである通り、これらの要素の使用は、プラセボ群の低下する代謝状態と、テプリズマブ群の明らかな改善との、視覚的対比を結果としてもたらした。これらの要素はまた、プラセボ群と、テプリズマブ群との間における変化の定量的比較において使用された、新たな評価項目であるWQEおよびODEを開発するための基礎としても使用された。AUC RatioおよびIndex60と併せて、これらの評価項目は、テプリズマブが、ベースラインにおける14日間処置の直後の高危険性個体において、急速な代謝の低下を抑止したことについての、視覚的印象を確認した。表3は、GCRCの動きおよび形状に基づく方法が、テプリズマブ効果のタイミング、大きさ、および潜在的な臨床的重要性についての、本発明者らの理解を、どのようにして増強したのかについてまとめる。
【0177】
【0178】
これらの解析からの所見は、スカラーに加えて、ベクトルを、処置効果の解析のための代謝評価項目として利用することの利点を強調する。防止手段についての既往の解析が、大きさについての情報をもたらすにとどまる、スカラーに依存するのに対し、ベクトルは、大きさに加えて、方向についての情報ももたらす。2次元格子上における、GCRCの動きについてのベクトルは、スカラーによる評価項目単独からは確認されなかった情報を、明らかに追加した。
【0179】
本発明者らは、既に、DPT-1 and TrialNet oral insulin trialsの、1型糖尿病の危険性が大きな個体の間の事後解析において、GCRCの変化についてのベクトルを、β細胞機能を保存するための経口インスリン効果の証拠として利用した(14)。興味深いことに、本テプリズマブ解析におけるベクトルは、プラセボ群と、処置群との間で、経口インスリン解析におけるより、はるかに大きく隔たっていた。テプリズマブ試験における、プラセボ群と、テプリズマブ群との間のベクトル方向の差違が、左上方向四分円(プラセボ)から、右下方向四分円(テプリズマブ)への差違に及んだのに対し、プラセボベクトルと、経口インスリンベクトルとの差違は、大半が、右上方向四分円に限定された。テプリズマブ試験におけるベクトルの隔たりの増大は、テプリズマブと、経口インスリンとの間の、治療機構の差違に基づいた可能性もあり、かつ/または効果の大きさの差違に基づいた可能性もある。ベクトルが見過ごされ、スカラーだけに依拠するとすれば、防止処置効果についての解析は、不完全になると考えられる。
【0180】
テプリズマブ試験における評価項目は、高危険性について選択されたので、評価項目であるWQEおよびODEによる処置効果の検出は、疾患の他の病期における試験へは一般化されない可能性があるだろう。また、変化についてのGCRC重心およびそれらのベクトルに関する、他の評価項目が、WQEおよびODEより優れた評価項目であることが見出されることも、十分に可能である。しかしながら、解析における、これらの評価項目の性能が、GCRCに由来する視覚的印象を検証することは、代謝変化について検討するのに、ベクトルの定性的使用と、定量的使用との組合せが、防止処置の効果について評価するための、貴重な手法でありうることを示唆する。
【0181】
本研究がまた、Index60の変化を、T1D防止研究の解析における代謝効果を裏付けるための評価項目としての利用する、最初の報告でもあることは、注目に値する。総じて、これらの結果および既往の結果(14)は、血糖の変化と、Cペプチドの変化とを組み合わせる、Index60、AUC ratio、ならびにWQEおよびODEを含む、複数の代謝評価項目が、1型糖尿病防止研究における処置効果についてのリードアウトをもたらしうることを示唆する。経口インスリン試験と、テプリズマブ試験との間で検出された、処置群ごとの微細なばらつきは、研究集団または治療介入の差違を反映しうる。Index60およびAUC ratioの変化が、ベースライン~3カ月後において、プラセボ群と、テプリズマブ群との間で、WQEおよびODEより大きく異なったのに対し、ベースライン~6カ月後では、逆のことが明らかとなった。WQEおよびODEのいずれの開発も、6カ月後のデータに基づいたので、これらが、ベースライン~6カ月後において、より良好な性能を示したことは、驚くべきことではない。テプリズマブ研究についての解析は、Index60およびAUC ratioが、早期効果を検出するためには、おそらくより高感度でありうることを示唆したが、これは、他の試験へは一般化されない可能性がある。防止試験のための代謝評価項目の選出は、標的集団、目的、介入、および試験デザインなど、それらの関与性および性能に影響を与えうる因子に依存するであろう。WQEおよびODEの、他の尺度に対する利点は、これらが、GCRCに由来する、的確な、視覚的印象を補完することである(表3に概括される)。
【0182】
0~30分後における代謝尺度の変化の大きさは、他の時間間隔の各々における大きさよりはるかに大きいので、GCRCには、これを組み入れない。したがって、その組込みは、30~120分後における視覚化を最小化するであろう。同様に、定量的視角から、0~30分間隔は、重心およびベクトルの計算に過度の重みをかけ、これは、解析をさらに複雑化させるであろう。GCRCに、0~30分後におけるCペプチド/血糖尺度を組み入れないが、本発明者らは、解析において、ベースラインのCペプチドAUC値および血糖AUC値について補正した。いよいよ、それらの重心およびベクトルと共に、GCRCの視覚化を補完するように、定量的尺度を開発したので、今後において重要な方向は、0~30分後における変化の、GCRCの形態および位置の変化に対する影響を研究することになろう。
【0183】
短期の暫定的代謝評価項目の、防止試験に対する適用可能性は、さらなる研究を必要とするであろう。主要代謝評価項目は、通例、インスリン分泌のさらなる喪失を遅延させるための処置効能について評価するように、1年間にわたる追跡が規定される、初発1型糖尿病試験で使用されて成功を収めた。診断前防止試験における処置を正当化するのに、これらの初発試験における代謝転帰についての陽性所見が使用された(18~21)。本発明者らの所見は、診断前の短期防止試験からの情報がまた、特定の処置のために、より大規模な診断前防止試験が認可されるのかどうかを決定するためにも使用されることを示唆する。
【0184】
短期代謝評価項目は、診断前防止処置を査定するための、他のいくつかの有用性を有する可能性が高い。短期代謝評価項目は、あらかじめ指定された効果に達しなかった場合の、試験における中止規則のためにも使用されるであろう。代謝評価項目を使用するための、1つの新規の手法は、これを、診断評価項目と組み合わせて使用することであろう。代謝評価項目は、ある特定の試験のための、主要評価項目として用いられることもなお想定される。本研究において明らかとなった通り、これらの評価項目はまた、処置効果のタイミングなど、試験に由来する、重要な薬理学的情報も提示しうるであろう。
【0185】
テプリズマブについての既往の経時的研究(3)は、テプリズマブの、CペプチドAUCに対する平均処置効果について、6カ月間にわたり検討した。この研究は、テプリズマブ効果の具体的タイミングについて評価するのに、GCRC法および複合血糖/Cペプチド評価項目を使用せず、高危険性個体におけるテプリズマブの使用により、β細胞機能性の重度の喪失の阻止の先に進むことの重要性も示さなかった。既に言及した通り、経口インスリン試験についての解析は、(14)GCRCベクトルを利用したが、はるかに小さな程度においてであった。
【0186】
本研究は、ある程度の限界を有した。プラセボ群の個体3例は、6カ月後の時点で、糖尿病を、既に発症していたので、6カ月後解析から除外された。これは、サンプルサイズを縮小しただけではなく、プラセボ群における、代謝の低下がそれほど重度ではない見かけをもたらした可能性が高い。このようなバイアスは、6カ月後におけるテプリズマブの効果を増強せずに、弱めるであろう。全てのテプリズマブ試験参加者は、代謝異常と共に、複数の膵島自己抗体について陽性であることが要求されたので、今後における解析は、本発明者らの所見が、単一の膵島自己抗体について試験陽性である個体など、ベースライン疾患がそれほど重度ではない危険性集団に適用可能であるのかどうかを決定することが必要とされるであろう。
【0187】
右下/左上四分円内のGCRCベクトルが、代謝状態の改善または増悪を反映すると考えられるのに対し、右上/左下四分円内のベクトルは、インスリン分泌動態またはインスリン感受性の変化と符合する、より中等度の変化を反映しうるであろう。しかし、これらの変化を真に規定するためには、グルコース強化アルギニンクランプ法など、ベータ細胞機能についてのゴールドスタンダードの尺度が要求されるであろう。定量的処置群比較(表2)を、BMIおよび年齢について補正したが、この集団内におけるベータ細胞機能不全のために、本発明者らは、インスリン抵抗性についての、OGTTベースのモデル化尺度について補正することを選ばなかった(22)。
【0188】
DPT-1では、WQEおよびODEのいずれも、糖尿病の進行と有意に関連したが;代謝評価項目による処置効果の検出が、純粋に、1型糖尿病を予測する代謝評価項目の能力の関数であるわけではない。例えば、個体は、処置に対するCペプチド応答を改善してもなお、糖尿病を発症するまで進みうる一方、逆に、別の個体は、処置に対するCペプチド分泌の改善を呈していないが、追跡時に、1型糖尿病を発症しない場合もあろう。したがって、今後における極めて重要な方向は、処置効果を検出する評価項目の能力対糖尿病を予測する能力の間の関係についての解析である。
【0189】
WQE/ODE評価項目の開発は、ある程度の錯雑性を伴ったが、研究へのそれらの適用は、主に、角の計算のための標準式に基づくであろう。したがって、本発明者らは、本稿において、この新規の方法の開発について記載するのに、説明を組み入れたが、実際には、これらの測定の実施は、Index60など、他の許容された指標と同様に、式の利用を伴うだけであろう(17)。
【0190】
結論として述べると、2次元格子上における、GCRCおよびそれらの重心の変化に基づく、血糖/Cペプチド変化についての解析は、1型糖尿病について高危険性である集団において、β細胞機能の急速な減殺を抑止し、おそらく、なお、機能を改善するのに十分に早期の、テプリズマブ処置の効果についての視覚的証拠をもたらした。これは、複合血糖/Cペプチド評価項目、およびGCRCの変化についてのベクトルから導出された新規の評価項目により、統計学的に確証された。これらの所見は、GCRC格子上の位置および形状の変化が、対応する方向性についての定量的尺度と共に、1型糖尿病防止試験についての解析に組み込まれるべきことを示唆する。さらに、これらの所見は、証拠の増殖に、血糖およびCペプチドの両方を組み合わせる評価項目が、防止試験における処置効果についての、本発明者らの理解の基礎であることを追加する。今後における方向は、防止処置についての評価を、小規模試験および大規模試験のいずれにおいても容易とするように、これらの評価項目の適用の精緻化を伴うであろう。
【0191】
当業者には、本開示の範囲および精神から逸脱しない限りにおいて、記載された本開示の方法および組成物の改変および変動が明らかであろう。本開示について、具体的実施形態との関連で記載されたが、特許請求される本開示は、このような具体的実施形態に不当に限定されるべきではないことを理解されたい。実際に、本開示を実施する、記載された方式の多様な改変は、本開示が、以下の特許請求の範囲により表される、本開示の範囲内に存在する分野の当業者により、意図され、理解される。
【0192】
参照による組込み
本明細書で言及される、全ての特許および刊行物は、各独立の特許および刊行物が、参照により組み込まれることが、具体的に、かつ、個別に指し示された場合と同じ程度に、参照により本明細書に組み込まれる。
【0193】
参考文献
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