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特表2024-535637抗体及びその薬物コンジュゲ-ト並びに用途
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-30
(54)【発明の名称】抗体及びその薬物コンジュゲ-ト並びに用途
(51)【国際特許分類】
   C07K 16/18 20060101AFI20240920BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20240920BHJP
   A61K 47/68 20170101ALI20240920BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20240920BHJP
   A61K 31/4745 20060101ALI20240920BHJP
   A61K 47/65 20170101ALI20240920BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240920BHJP
   A61P 35/04 20060101ALI20240920BHJP
   A61K 49/16 20060101ALI20240920BHJP
   G01N 33/53 20060101ALI20240920BHJP
   G01N 33/531 20060101ALI20240920BHJP
   C12N 15/13 20060101ALN20240920BHJP
   C07D 491/22 20060101ALN20240920BHJP
【FI】
C07K16/18 ZNA
A61K39/395 C
A61K39/395 L
A61K47/68
A61K45/00
A61K31/4745
A61K47/65
A61P35/00
A61P35/04
A61K49/16
G01N33/53 D
G01N33/531 A
C12N15/13
C07D491/22
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024542231
(86)(22)【出願日】2022-09-27
(85)【翻訳文提出日】2024-04-04
(86)【国際出願番号】 CN2022121776
(87)【国際公開番号】W WO2023046202
(87)【国際公開日】2023-03-30
(31)【優先権主張番号】202111139621.4
(32)【優先日】2021-09-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】202210915323.8
(32)【優先日】2022-08-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】319007376
【氏名又は名称】エボポイント、バイオサイエンシズ、カンパニー、リミテッド
【氏名又は名称原語表記】EVOPOINT BIOSCIENCES CO., LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】フー,ヨンハン
(72)【発明者】
【氏名】シュウ,リンフェン
(72)【発明者】
【氏名】ウー,ツェンウェイ
(72)【発明者】
【氏名】ルアン,カ
(72)【発明者】
【氏名】ワン,ウェンキ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C085
4C086
4H045
【Fターム(参考)】
4C076AA95
4C076CC27
4C076CC41
4C076CC42
4C076EE41
4C076EE59
4C076FF34
4C084AA17
4C084NA13
4C084NA14
4C084NA15
4C084ZB26
4C085AA26
4C085DD62
4C085EE01
4C085HH11
4C085KA03
4C085KA27
4C085LL18
4C086AA01
4C086AA02
4C086CB22
4C086NA13
4C086NA14
4C086NA15
4C086ZB26
4H045AA11
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA11
4H045BA12
4H045BA13
4H045BA72
4H045DA76
4H045EA20
4H045FA74
(57)【要約】
抗体及び抗体-薬物コンジュゲ-トであって、Claudin18.2(CLDN18.2)を標的とする抗体及び抗体-薬物コンジュゲ-ト(ADC)、並びに上記抗体及びADC分子を含む組成物及びその治療的使用に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の式(I)を有する抗体-薬物コンジュゲ-ト(ADC)又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物であって、
Ab-[L-D]q (I)
そのうち、
Abは、抗Claudin18.2抗体を表し、
Lは、リンカ-を表し、
Dは、トポイソメラ-ゼI阻害剤などの細胞傷害性又は細胞阻害薬物を表し、且つ
q=1~20、例えば、q=1~10、1~8、2~8、4~8、又は6~8であり、
そのうち、前記Abが、配列番号1又は3の重鎖可変領域(VH)配列の3つのCDR及び配列番号2の軽鎖可変領域(VL)配列の3つのCDRを含み、好ましくは、そのうち、前記CDRがKabat若しくはIMGT又はその組合せに従って定義される、
抗体-薬物コンジュゲ-ト又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物。
【請求項2】
前記Abは、3つの重鎖相補性決定領域(HCDR)及び3つの軽鎖相補性決定領域(LCDR)を含み、
そのうち、
(i)IMGTに従って定義すると、HCDR1は配列番号6のアミノ酸配列を含むか又はそれからなり、HCDR2は配列番号7のアミノ酸配列を含むか又はそれからなり、HCDR3は配列番号8のアミノ酸配列を含むか又はそれからなり、LCDR1は配列番号9のアミノ酸配列を含むか又はそれからなり、LCDR2は配列番号10のアミノ酸配列を含むか又はそれからなり、且つLCDR3は配列番号11のアミノ酸配列を含むか又はそれからなり、若しくは
(ii)Kabatに従って定義すると、HCDR1は配列番号12のアミノ酸配列を含むか又はそれからなり、HCDR2は配列番号13のアミノ酸配列を含むか又はそれからなり、HCDR3は配列番号14のアミノ酸配列を含むか又はそれからなり、LCDR1は配列番号15のアミノ酸配列を含むか又はそれからなり、LCDR2は配列番号16のアミノ酸配列を含むか又はそれからなり、且つLCDR3は配列番号17のアミノ酸配列を含むか又はそれからなる、
請求項1に記載の抗体-薬物コンジュゲ-ト又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物。
【請求項3】
前記Abは、
配列番号1又は3の重鎖可変領域配列、若しくはそれと少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%の配列同一性を有するアミノ酸配列、或いは
配列番号2の軽鎖可変領域配列、若しくはそれと少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%の配列同一性を有するアミノ酸配列、
を含み、
好ましくは、前記AbはIgG1抗体である、
請求項1~2の何れか一項に記載の抗体-薬物コンジュゲ-ト又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物。
【請求項4】
Dはカンプトテシン系薬物、好ましくは、FL118又はその誘導体を表し、例えば、以下の構造を含むカンプトテシン系薬物であり、
【化1】
そのうち、Raは、
水素、
C3~C8シクロアルキル基、
フェニル基、
ハロゲン、ヒドロキシ基、任意選択的にNH2、NH(C1-C4アルキル)及びN(C1-C4アルキル)2で置換されたC1~C4アルコキシ基、C3~C8シクロアルキル基、ヘテロシクロアルキル基、フェニル基、NR1R2からなる群より選ばれる置換基で任意選択的に置換されたC1~C8アルキル基、
から選ばれ、
そのうち、R1及びR2は、互いに独立的に、
水素、
ヒドロキシ基、アミノ基、1個又は2個のC1~C4アルキル基で置換されたアミノ基、1個又は2個のC1~C4ヒドロキシアルキル基で置換されたアミノ基、(C1-C4ヒドロキシアルキル)及び(C1-C4アルキル)で置換されたアミノ基からなる群より選ばれる置換基で任意選択的に置換されたC1~C8アルキル基、
1個又は2個のC3~C10シクロアルキル基、C3~C10ヘテロシクロアルキル基、フェニル基又はヘテロアリ-ル基で置換されたC1~C4アルキル基、
C3~C10シクロアルキル基、
C3~C10ヘテロシクロアルキル基、
C2~C6ヘテロアルキル基、
ヘテロアリ-ル基、
ハロゲンで任意選択的に置換されたフェニル基、
ヒドロキシ基又はアミノ基で任意選択的に置換されたC1~C8アルキル-C(=O)-、
から選ばれ、
或いは、R1及びR2はそれぞれに結合する窒素原子と組合せて0個~3個の置換基を有する5-員、6-員又は7-員ヘテロ環を形成し、前記置換基はハロゲン、C1~C4アルキル基、OH、C1~C4アルコキシ基、NH2、NH(C1-C4アルキル)及びN(C1-C4アルキル)2から選ばれ、
そのうち、シクロアルキル基、ヘテロシクロアルキル基、フェニル基、ヘテロアリ-ル基は、出現するたびにそれぞれ独立的に、OH、C1~C4アルキル基、C1~C4アルコキシ基、NH2、NH(C1-C4アルキル)及びN(C1-C4アルキル)2からなる群より選ばれる0個~3個の置換基で任意選択的に置換され、
好ましくは、Raは、-C1-C4アルキル-OH、-C1-C4アルキル-O-C1-C4アルキル-NH2、又は-C1-C4アルキル-NH2であり、
そのうち、好ましくは、前記薬物Dユニットは、それに存在するヒドロキシ基又はアミノ基を介して、リンカ-Lユニットに結合される、
請求項1~3の何れか一項に記載の抗体-薬物コンジュゲ-ト又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物。
【請求項5】
式(I)のL-Dユニットは以下の構造:
【化2】
、を含み、
好ましくは、式(I)のL-Dユニットは以下の構造を含む、
【化3】
請求項1~3の何れか一項に記載の抗体-薬物コンジュゲ-ト又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物。
【請求項6】
Lはペプチド含有のリンカ-であり、且つ以下の式(II)の構造を含み、
-Z-Y-M-、
そのうち、
Zは、Abと結合するリンカ-基であり、
Yは、2個~5個のアミノ酸のペプチド、好ましくはジペプチド、トリペプチド又はテトラペプチドであり、
Mは存在しないか、又は薬物Dと結合するためのスペ-サ-基である、
請求項1~5の何れか一項に記載の抗体-薬物コンジュゲ-ト又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物。
【請求項7】
YはN末端からC末端へ、以下の式のアミノ酸配列を有するペプチドであり、
Xaa1-Xaa2-Xaa3-Xaa4-Xaa5
そのうち、Xaa1は存在しないか、又はバリン、グリシン、アラニン及びグルタミン酸から選ばれるアミノ酸であり、
Xaa2はフェニルアラニン、ロイシン及びバリンから選ばれるアミノ酸であり、好ましくはバリンであり、
Xaa3は非置換又は置換されたリジンであり、
Xaa4はロイシン、グリシン及びアラニンから選ばれるアミノ酸であり、
Xaa5は存在しないか、又はグリシン及びアラニンから選ばれるアミノ酸であり、
そのうち、前記アミノ酸配列のN末端はZに結合し、且つC末端はMに結合する(Mが存在する場合)か、又は直接薬物Dに結合し、
好ましくは、Xaa3は、ε-アミノ基がC1~C3アルキル基で一置換又は二置換されたリジンであり、
より好ましくは、Yは、Phe-Lys-Gly、Leu-lys-Gly、Gly-Val-Lys-Gly、Val-Lys-Gly-Gly、Val-Lys-Gly、Val-Lys-Ala、Val-Lys-Leuからなる群より選ばれるペプチドであり、そのうち、Lys残基は非置換であるか、若しくはC1~C3アルキル基で一置換又は二置換されたリジンである、
請求項6に記載の抗体-薬物コンジュゲ-ト又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物。
【請求項8】
Yは、
【化4】
であり、
そのうち、R3及びR4は、それぞれ独立的にメチル基、エチル基及びプロピル基から選ばれ、
好ましくは、R3及びR4は同じであり、より好ましくは、R3及びR4は互いに独立的にプロピル基であり、
そのうち、左側の波線はZに結合する位置を表し、右側の波線はMに結合する位置を表す、
請求項6~7の何れか一項に記載の抗体-薬物コンジュゲ-ト又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物。
【請求項9】
Zは以下の構造を有し、
-Z1-Z2-Z3-Z4-、
そのうち、Z1はAbにおける硫黄原子であり、
Z2は、5員~10員ヘテロシクリル基であり、好ましくはN、S及びOから選ばれる1個又は2個のヘテロ原子を含み、
Z3は結合、-C(=O)-、-C1-C10アルキレン-C(=O)-、-C3-C10アルキニレン-C(=O)-、-C3-C10アルケニレン-C(=O)-、-C1-C10ヘテロアルキレン-C(=O)-、-C3-C8シクロアルキレン-C(=O)-、-O-C1-C8アルキレン-C(=O)-、-アリ-レン-C(=O)-、-C1-C10アルキレン-アリ-レン-C(=O)-、-アリ-レン-C1-C10アルキレン-C(=O)-、-C1-C10アルキレン-C3-C8シクロアルキレン-C(=O)-、-C3-C8シクロアルキレン-C1-C10アルキレン-C(=O)-、-C3-C8ヘテロシクリレン-C(=O)-、-C1-C10アルキレン-C3-C8ヘテロシクリレン-C(=O)-、-C3-C8ヘテロシクリレン-C1-C10アルキレン-C(=O)-から選ばれ、
Z4は結合、又は以下の式で表されるPEGユニットであり、
【化5】
そのうち、R5はC1-4アルキレン基、-NH-、-NH-C1-4アルキレン-ヘテロアリ-ル-から選ばれ、そのうち、ヘテロアリ-ル基は5員又は6員の窒素含有ヘテロアリ-ル基、好ましくはトリアゾリル基であり、R6は-C(=O)-、C1-4アルキレン基、C1-4アルキレン-C(=O)-、-NH-C(=O)-(CH2OCH2)-C(=O)-、C1-4アルキレン-NH-C(=O)-(CH2OCH2)-C(=O)-、そのうち、mは2~12の整数、例えば、m=2、4、6又は8であり、
好ましくは、Zは以下の構造を有し、
【化6】
、そのうち、Rbはアルキニレン-C(=O)-又はアルケニレン-C-(=O)-であり、
好ましくは、Rbは、
【化7】
であり、
そのうち、左側の波線は抗体(Ab)に結合する位置を表し、右側の波線はYに結合する位置を表し、
より好ましくは、Zは以下の構造を有する、
【化8】
請求項6~8の何れか一項に記載の抗体-薬物コンジュゲ-ト又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物。
【請求項10】
Mは存在しないか、又はアミノ-C1-C3アルキレン基、例えば、-NH-CH2-、又はアミノ-フェニル-C1-C3アルキレン-O-C(=O)-であり、好ましくは、Mは、
【化9】
であり、
そのうち、左側の波線はYへの結合を表し、右側の波線は薬物Dユニットへの結合を表す、
請求項6~9の何れか一項に記載の抗体-薬物コンジュゲ-ト又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物。
【請求項11】
Lは以下の構造を含むリンカ-であり、
【化10】
そのうち、R3及びR4は、それぞれ独立的にメチル基、エチル基、プロピル基から選ばれる、
請求項6~10の何れか一項に記載の抗体-薬物コンジュゲ-ト又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物。
【請求項12】
R3及びR4は何れもメチル基であり、又はR3及びR4は何れもエチル基であり、若しくはR3及びR4は何れもプロピル基である、
請求項11に記載の抗体-薬物コンジュゲ-ト又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物。
【請求項13】
前記式IのL-Dユニットは、Abの軽鎖及び/又は重鎖のシステインのメルカプト基とチオエ-テルを形成することにより、抗体に結合する、
請求項1に記載の抗体-薬物コンジュゲ-ト又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物。
【請求項14】
前記ADCは、
【化11】
から選ばれ、
そのうち、qは1~8の平均DAR値であり、好ましくは、qは約2、約4、約6、約7、又は約8である、
請求項1に記載の抗体-薬物コンジュゲ-ト又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物。
【請求項15】
請求項1~14の何れか一項に記載の抗体-薬物コンジュゲ-ト又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物、及び任意選択的な薬用補助材料を含む、医薬組成物。
【請求項16】
CLAUDIN18.2に結合する抗体又はその抗原結合断片であって、
(i)配列番号1又は3に示される重鎖可変領域のHCDR1、2及び3配列、並びに配列番号2に示される軽鎖可変領域のLCDR1、2及び3配列、若しくは
(ii)配列番号21に示される重鎖可変領域のHCDR1、2及び3配列、並びに配列番号22に示される軽鎖可変領域のLCDR1、2及び3配列、若しくは
(iii)配列番号23に示される重鎖可変領域のHCDR1、2及び3配列、並びに配列番号24に示される軽鎖可変領域のLCDR1、2及び3配列、若しくは
(iv)配列番号38又は40に示される重鎖可変領域のHCDR1、2及び3配列、並びに配列番号39に示される軽鎖可変領域のLCDR1、2及び3配列、若しくは
(v)配列番号44に示される重鎖可変領域のHCDR1、2及び3配列、並びに配列番号45に示される軽鎖可変領域のLCDR1、2及び3配列、若しくは
(vi)配列番号46に示される重鎖可変領域のHCDR1、2及び3配列、並びに配列番号47に示される軽鎖可変領域のLCDR1、2及び3配列、若しくは
(vii)配列番号48に示される重鎖可変領域のHCDR1、2及び3配列、並びに配列番号49に示される軽鎖可変領域のLCDR1、2及び3配列、若しくは
(viii)配列番号50に示される重鎖可変領域のHCDR1、2及び3配列、並びに配列番号51に示される軽鎖可変領域のLCDR1、2及び3配列、若しくは
(ix)配列番号52に示される重鎖可変領域のHCDR1、2及び3配列、並びに配列番号53に示される軽鎖可変領域のLCDR1、2及び3配列、
を含み、
好ましくは、そのうち、前記CDRは、Kabat若しくはIMGT又はそれらの組合せに従って定義される、
抗体又はその抗原結合断片。
【請求項17】
前記抗体又はその抗原結合断片は、重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含み、そのうち、
(i)重鎖可変領域は、配列番号1又は3に示されるアミノ酸配列若しくはそれと少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、及び軽鎖可変領域は、配列番号2に示されるアミノ酸配列若しくはそれと少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、或いは
(ii)重鎖可変領域は、配列番号21に示されるアミノ酸配列若しくはそれと少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、及び軽鎖可変領域は、配列番号22に示されるアミノ酸配列若しくはそれと少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、或いは
(iii)重鎖可変領域は、配列番号23に示されるアミノ酸配列若しくはそれと少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、及び軽鎖可変領域は、配列番号24に示されるアミノ酸配列若しくはそれと少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、或いは
(iv)重鎖可変領域は、配列番号38又は40に示されるアミノ酸配列若しくはそれと少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、及び軽鎖可変領域は、配列番号39に示されるアミノ酸配列若しくはそれと少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、或いは
(v)重鎖可変領域は、配列番号44に示されるアミノ酸配列若しくはそれと少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、及び軽鎖可変領域は、配列番号45に示されるアミノ酸配列若しくはそれと少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、或いは
(vi)重鎖可変領域は、配列番号46に示されるアミノ酸配列若しくはそれと少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、及び軽鎖可変領域は、配列番号47に示されるアミノ酸配列若しくはそれと少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、或いは
(vii)重鎖可変領域は、配列番号48に示されるアミノ酸配列若しくはそれと少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、及び軽鎖可変領域は、配列番号49に示されるアミノ酸配列若しくはそれと少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、或いは
(viii)重鎖可変領域は、配列番号50に示されるアミノ酸配列若しくはそれと少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、及び軽鎖可変領域は、配列番号51に示されるアミノ酸配列若しくはそれと少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、或いは
(ix)重鎖可変領域は、配列番号52に示されるアミノ酸配列若しくはそれと少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、及び軽鎖可変領域は、配列番号53に示されるアミノ酸配列若しくはそれと少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、
好ましくは、
そのうち、前記抗体又はその抗原結合断片は、
(i)配列番号1に示されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、及び配列番号2に示されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、又は
(ii)配列番号3に示されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、及び配列番号2に示されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、又は
(iii)配列番号21に示されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、及び配列番号22に示されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、
から選ばれる重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含み、
若しくは、
そのうち、前記抗体又はその抗原結合断片は、
(iv)配列番号38に示されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、及び配列番号40に示されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、又は
(v)配列番号39に示されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、及び配列番号40に示されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、又は
(vi)配列番号23に示されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、及び配列番号24に示されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、
から選ばれる重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含む、
請求項16に記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項18】
前記抗体は
IgG1、IgG2、IgG3又はIgG4抗体であり、好ましくはヒトIgG1重鎖定常領域及びヒトKappa軽鎖定常領域を有し、若しくは
前記抗原結合断片は、Fab、Fab'、Fab'-SH、Fv、一本鎖抗体、scFv、scFab、ジスルフィド結合scFv、ジスルフィド結合scFab又は(Fab')2断片からなる群より選ばれる抗体断片である、
請求項16~17の何れか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項19】
前記抗体はマウス抗体、又はキメラ抗体、若しくはヒト化抗体、好ましくはヒト化抗体である、
請求項16~18の何れか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項20】
請求項16~19の何れか一項に記載の抗CLAUDIN18.2抗体又はその抗原結合断片をコ-ドする、
単離された核酸。
【請求項21】
請求項20に記載の核酸を含み、好ましくは発現ベクタ-である、
ベクタ-。
【請求項22】
請求項20に記載の核酸又は請求項21に記載のベクタ-を含み、好ましくは、哺乳動物細胞である、
宿主細胞。
【請求項23】
治療剤又は診断剤と複合する、前記請求項16~19の何れか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片を含む、
免疫複合体。
【請求項24】
前記請求項16~19の何れか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片の用途であって、前記用途は、インビボ又はインビトロでの、
(1)CLAUDIN18.2を表面発現する腫瘍細胞と標的結合すること、並びに/若しくは
(2)CLAUDIN18.2を表面発現する腫瘍細胞に対するADCC活性及び/又はCDC活性を誘発すること、並びに
(3)CLAUDIN18.2を表面発現する腫瘍細胞を阻害及び/又は殺傷すること、
のための使用から選ばれ、
或いは、前記何れか一項で使用される薬物の調製のための使用である、
用途。
【請求項25】
請求項16~19の何れか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片、若しくは請求項23に記載の免疫複合体、及び任意選択的な薬用補助材料を含む、
医薬組成物。
【請求項26】
対象においてCLAUDIN18.2陽性腫瘍を予防又は治療する方法であって、前記方法は、有効量の前記請求項1~14の何れか一項に記載の抗体-薬物コンジュゲ-ト又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物、或いは請求項16~19の何れか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片を、前記対象に投与することを含み、好ましくは、前記腫瘍は消化器系腫瘍又はその転移性腫瘍、例えば、胃癌、膵臓癌、食道癌、結腸癌、胆嚢癌、肝臓癌、特に胃癌、例えば、HER2陰性胃癌である、
方法。
【請求項27】
CLAUDIN18.2陽性腫瘍は、進行性又は転移性胃癌、若しくは胃食道接合部癌(EGJA)である、
請求項26に記載の方法。
【請求項28】
試料中のCLAUDIN18.2を検出する方法であって、前記方法は、
(a)試料を、前記請求項16~19の何れか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片と接触させるステップと、
(b)前記抗体又はその抗原結合断片とCLAUDIN18.2との間の複合体の形成を検出するステップと、を含み、任意選択的に、抗体は検出可能に標識される、
方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗体及び抗体薬物コンジュゲ-トに関し、更に具体的には、Claudin18.2(CLDN18.2)を標的とする抗体及び抗体-薬物コンジュゲ-ト(ADC)、並びに上記抗体又はADC分子を含む組成物及びその治療的使用に関する。
【背景技術】
【0002】
胃癌は世界的に癌による死亡の3番目の要因であり、転移性胃癌及び胃食道接合部癌(EGJA)患者の全体の5年生存率は更に20%未満である。数多くの関連研究があるにもかかわらず、患者数が膨大であるため、胃癌治療に対するニ-ズは依然として満たされていない。特に、有効な標的治療レジメンを欠っているHER2陰性患者では、治療手段が乏しく、患者の生存状況は楽観できない。
【0003】
Claudin18.2は、細胞間の密着結合を媒介する、密着結合タンパク質のClaudinファミリ-のメンバ-である。Claudin18.2は胃癌や膵臓癌で高発現し、正常組織では胃粘膜細胞でのみ発現し、他の正常組織では発現していないため、ADC(抗体-薬物コンジュゲ-ト)薬物開発のための理想的な標的とすることができる。
【0004】
Claudin18.2は、2つの細胞外ル-プと1つの細胞内ル-プとを含む4回膜貫通タンパク質に属し、その配列は、同じファミリ-タンパク質Claudin18.1に非常に類似し、第1の細胞外ル-プにのみ8個のアミノ酸の違いがある。Claudin18.1は肺で特異的に発現するため、Claudin18.2のみを認識し、Claudin18.1を認識しないADC薬物を開発することは、比較的高い困難性及び挑戦性を有する。
【0005】
2016年のASCO会議で公開されたデ-タによると、Claudin18.2を標的とする、アステラスのヒトマウスキメラ抗体IMAB362プラス化学療法レジメンは、局所進行性又は転移性胃癌患者の治療において、目覚ましい効果を達成し、患者の無増悪生存期間及び全生存期間が、ほぼ半分に延長された。しかし、現時点では、Claudin18.2を標的とするモノクロ-ナル抗体又はADC薬物は、まだ承認されていない。従って、差別化された、更に優れた標的化性を有し、且つ優れたインビボ腫瘍殺傷効果を示す抗Claudin18.2抗体及びADC薬物の開発は、胃癌患者に、更に広く、更に優れた投与の選択肢を提供することができる。
【発明の概要】
【0006】
第1の態様において、本発明は、以下の式(I)を有する抗体-薬物コンジュゲ-ト(ADC)又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物を提供し、
Ab-[L-D]q (I)
そのうち、
Abは、抗Claudin18.2抗体を表し、
Lは、リンカ-を表し、
Dは、トポイソメラ-ゼI阻害剤などの細胞傷害性又は細胞阻害薬物を表し、且つ
q=1~20、例えば、q=1~8、2~8、4~8、又は6~8であり、
そのうち、上記Abが、配列番号1又は3の重鎖可変領域(VH)配列の3つのCDR及び配列番号2の軽鎖可変領域(VL)配列の3つのCDRを含み、好ましくは、そのうち、上記CDRがKabat若しくはIMGT又はその組合せに従って定義される。
【0007】
第2の態様において、本発明は、本発明のADC又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物を含む組成物を提供する。
【0008】
第3の態様において、本発明は、Claudin18.2陽性腫瘍の治療における、本発明のADC又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物、及びその組成物の用途を提供する。
【0009】
第4の態様において、本発明は、抗Claudin18.2抗体、及びその医薬組成物並びに用途を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1A】FACS技術によって、蛍光標識された抗体を使用して、実施例I-1の異なる細胞株におけるClaudin18.2又はClaudin18.1の発現の陽性率を検出することを示す。対照は、アイソタイプ対照抗体である。そのうち、PE蛍光標識された抗ヒトClaudin18.2抗体を使用して、HEK293T-Claudin18.2(ヒト)安定化細胞株を検出する。
図1B】APC蛍光標識された抗ヒトClaudin18.1抗体を使用して、HEK293T-Claudin18.1(ヒト)安定化細胞株を検出する。
図1C】APC蛍光標識された抗ヒトClaudin18.2抗体を使用して、L929-Claudin18.2(ヒト)安定化細胞株を検出する。
図1D】APC蛍光標識された抗ヒトClaudin18.2抗体を使用して、CHO-Claudin18.2(ヒト)安定細胞株を検出する。
図1E】PE蛍光標識された抗サルClaudin18.2抗体を使用して、HEK293T-Claudin18.2(カニクイザル)安定化細胞株を検出する。
図1F】APC蛍光標識された抗ラットClaudin18.2抗体を使用して、HEK293T-Claudin18.2(ラット)安定化細胞株を検出する。
図1G】APC蛍光標識された抗マウスClaudin18.2抗体を使用して、HEK293T-Claudin18.2(マウス)安定化細胞株を検出する。
図1H】APC蛍光標識された抗ヒトClaudin18.2抗体を使用して、NUGC4-Claudin18.2(ヒト)安定化細胞株を検出する。
図1I】APC蛍光標識された抗ヒトClaudin18.2抗体を使用して、NUGC4腫瘍細胞株を検出する。
図2A】細胞ELISA測定における、抗ヒトClaudin18.2ヒト化抗体及び参照抗体IMAB362の、NUGC4-Claudin18.2(ヒト)(図2A)及びNUGC4(図2B)に対する、細胞親和性の検出を示す。
図2B図2Aの続きである。
図3A】フロ-サイトメトリ-を使用して、抗ヒトClaudin18.2ヒト化抗体及び参照抗体IMAB362の、HEK293T-Claudin18.2(ヒト)(図3A)、NUGC4-Claudin18.2(ヒト)(図3B)及びNUGC4(図3C)に対する、細胞親和性の検出を示す。
図3B図3Aの続きである。
図3C図3Bの続きである。
図4A】フロ-サイトメトリ-を使用して、抗ヒトClaudin18.2ヒト化抗体及び参照抗体IMAB362の、HEK293T-Claudin18.2(カニクイザル)(図4A)、HEK293T-Claudin18.2(ラット)(図4B)、及びHEK293T-Claudin18.2(マウス)(図4C)に対する細胞親和性の検出を示す。
図4B図4Aの続きである。
図4C図4Bの続きである。
図5】抗ヒトClaudin18.2ヒト化抗体の、HEK293T-Claudin18.2(ヒト)細胞に対する、ADCC殺傷活性測定の結果を示す。
図6】抗ヒトClaudin18.2ヒト化抗体の、HEK293T-Claudin18.2(ヒト)細胞に対する、CDC殺傷活性測定の結果を示す。
図7】抗Claudin18.2ヒト化抗体のラットにおけるインビボ薬物動態学的検出を示す。
図8A】抗Claudin18.2ヒト化抗体ADCの、毒素コンジュゲ-ト前後の、L929-Claudin18.2細胞(図8A)及びNUGC4細胞(図8B)への結合を示す。
図8B図8Aの続きである。
図9A】インビトロ実験における、抗Claudin18.2ヒト化抗体ADC薬物の、HEK293T-Claudin18.2細胞(図9A及び図9B)、HEK293T-Claudin18.1細胞(図9C及び図9D)及びNUGC4-Claudin18.2細胞(図9E)に対する、殺傷効果を示す。
図9B】9Aの続きである。
図9C】9Bの続きである。
図9D】9Cの続きである。
図9E】9Dの続きである。
図10】抗Claudin18.2ヒト化抗体ADC薬物の、NUGC-4 CDXモデルにおける腫瘍阻害薬効を示す。
図11】抗Claudin18.2ヒト化抗体ADC薬物の、マウス体重に対する影響を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
定義
特に定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術的及び科学的用語は、何れも当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。本発明の目的のために、以下の用語が下記に定義される。
【0012】
本明細書において商品名が使用される場合、文脈に別段の指示がない限り、当該商品名は、商品名、製品の製品配合、後発医薬品、及び活性薬物成分を含む。
【0013】
「約」という用語は、数字数値と合わせて使用される場合、指定された数字数値より5%小さい下限、及び指定された数字数値より5%大きい上限を有する範囲内の数字数値を包含することを意味する。
【0014】
「及び/又は」という用語は、選択肢のうちの何れか1つ若しくは選択肢のうちの何れか2つ又は複数の組合せを意味するものと理解される。
【0015】
本明細書で使用される「包含」又は「含む」という用語は、記載された要素、整数、又はステップを含むことを意味するが、任意の他の要素、整数、又はステップを除外することを意味するものではない。本明細書において、「包含」又は「含む」という用語が使用される場合、別段の指示がない限り、記載された要素、整数、又はステップからなる状況も包含される。例えば、特定の具体的な配列を「包含」する抗体可変領域に言及する場合、当該特定の具体的な配列からなる抗体可変領域も包含することも意図される。
【0016】
本明細書において、「クロディン18」又は「Claudin18」若しくは「CLDN18」という用語は、互換的に使用することができ、密着結合タンパク質のClaudinファミリ-のCLDN18メンバ-を意味する。CLDN18は、4回膜貫通タンパク質であり、N末端とC末端が何れも細胞質内に位置し、細胞外ル-プ1と細胞外ル-プ2を有し、N末端に近い第1の細胞外ル-プ(即ち、細胞外ル-プ1)は平均で約53個のアミノ酸からなり、第2の細胞外ル-プ(即ち、細胞外ル-プ2)は約30個のアミノ酸からなる。CLDN18は、細胞外ル-プ1において8個のアミノ酸の差がある2つのスプライスバリアント、CLDN18.1及びCLDN18.2を含み、正常組織におけるCLDN1の発現は肺に限定され、CLDN2の発現は胃粘膜に限定される。
【0017】
本明細書において、「CLDN18.1」という用語は、好ましくは、NCBI_057453.1下のアミノ酸配列を有するヒトCLDN18.1などのヒトCLDN18.1に関する。当該用語は、カニクイザル、マウス及びラットなどの他の種由来のClaudin18.1も包含するが、本明細書において、特に指定のない限り、当該用語はヒトCLDN18.1を指す。
【0018】
本明細書において、「CLDN18.2」という用語は、好ましくは、NCBI_001002026.1下のアミノ酸配列を有するヒトCLDN18.2などのヒトCLDN18.2に関する。当該用語は、他の種由来のClaudin18.2、例えば、カニクイザルClaudin18.2(例えば、XP_015300615.1下のアミノ酸配列)、マウスClaudin18.2(例えば、NP_001181850.1下のアミノ酸配列)、ラットClaudin18.2(例えば、NP_001014118.1下のアミノ酸配列)も包含する。本明細書において、特に指定のない限り、当該用語はヒトCLDN18.2を指す。
【0019】
本明細書において、「CLDN18」、「CLDN18.1」及び「CLDN18.2」という用語は、翻訳後修飾された変異体及び立体構造変異体、並びに突然変異体、特に天然に存在する変異体、対立遺伝子変異体、種ホモログを包含する。
【0020】
本明細書において、「CLDN18.2陽性」細胞という用語は、癌細胞、修飾された癌細胞又は修飾された非腫瘍細胞などの、CLDN18.2細胞表面発現について陽性である細胞を指す。細胞表面におけるCLDN18.2の発現レベルは、細胞表面抗原の発現レベルを決定するための当該技術分野で公知の任意の従来の方法、例えば、FACS検出法又は免疫蛍光染色法によって決定することができ、及び任意選択的で、所定の参照値と比較して、CLDN18.2細胞表面発現について陽性である細胞を決定することができる。好ましくは、陽性細胞におけるCLDN18.2の発現レベルの測定値は、所定の参照値よりも少なくとも2倍高い。所定の参照値は、当業者によって従来の方法で決定することができる。一実施形態において、所定の参照値は、同じ測定方法で、胃粘膜以外の正常細胞で測定されたCLDN18.2発現レベルの値であってもよい。更に別の実施形態において、所定の参照値は、本願の実施例I-1に記載のFACS法を使用して、アイソタイプ対照抗体と比較して特異的CLDN18.2抗体の細胞上に生成された蛍光染色の強度を比較することによって決定することができ、例えば、所定の参照値は、当該アイソタイプ対照抗体の平均蛍光染色強度の少なくとも10倍を超えて設定することができる。
【0021】
いくつかの実施形態において、好ましくは、CLDN18.2陽性細胞は、表面上に十分に高いレベルのCLDN18.2を発現し、それによって、免疫蛍光染色又はFACSなどの検出方法において、CLDN18.2特異的抗体によって結合され、そして所定の参照値より高い検出シグナルを生成し、及び/又は胃粘膜以外の非癌性正常細胞と顕著に異なるシグナル(例えば、少なくとも2倍高く、若しくは好ましくは、少なくとも10倍又は100倍高く、又は更に高い)を生成することができる。
【0022】
本明細書において、「抗体」という用語は、抗原を特異的に認識し、結合する軽鎖又は重鎖免疫グロブリン可変領域を少なくとも含むポリペプチドを指す。当該用語は、所望の抗原結合活性を示す限り、モノクロ-ナル抗体、ポリクロ-ナル抗体、一本鎖抗体又は多重鎖抗体、単一特異性又は多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)、キメラ抗体又はヒト化抗体、全長抗体、及び抗体断片を含むが、これらに限定されない様々な抗体構造を包含する。
【0023】
本明細書において、「全抗体」(本明細書において、「完全長抗体」、「完全抗体」、及び「インタクト抗体」と互換的に使用してもよい)とは、少なくとも2本の重鎖(H)と2本の軽鎖(L)を含む免疫グロブリン分子を指す。各重鎖は、重鎖可変領域(本明細書ではVHと略される)及び重鎖定常領域からなる。各軽鎖は、軽鎖可変領域(本明細書ではVLと略される)及び軽鎖定常領域からなる。可変領域は、抗体のその抗原への結合に関与する抗体の重鎖又は軽鎖のドメインである。定常領域は、抗原への抗体の結合に直接関与しないが、複数種のエフェクタ-機能を示す。抗体の軽鎖は、その定常領域のアミノ酸配列に基づいて、(kappa(κ)及びlambda(λ)と呼ばれる)2つのタイプのうちの1つに分類することができる。抗体の重鎖は、その定常領域のアミノ酸配列に基づいて、主に5つの異なるタイプ、即ち、IgA、IgD、IgE、IgG、及びIgMに分類することができ、且つ、これらのタイプのいくつかは、更にサブクラス、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、及びIgG4、IgA1、及びIgA2に分類することができる。
【0024】
本明細書において、抗体の「抗体断片」及び「抗原結合断片」という用語は、互換的に使用してもよく、インタクト抗体が結合する抗原に結合するためのインタクト抗体の部分を含む、インタクト抗体ではない分子を指す。当業者に理解されるように、抗原結合の目的を実現するために、抗体断片は、一般的に、「相補性決定領域」又は「CDR」からのアミノ酸残基を含む。抗体断片は、組換えDNA技術、又は酵素若しくは化学的に全抗体を切断することによって調製することができる。抗体断片の例は、Fab、scFab、ジスルフィド結合scFab、Fab'、F(ab')2、Fab'-SH、Fv、scFv、ジスルフィド結合scFv、ダイアボディ(diabody)、トリアボディ(triabody)、テトラボディ(tetrabody)、ミニボディ(minibody)を含むが、これらに限定されない。本発明によるいくつかの実施形態において、抗体断片は、軽鎖と重鎖の間の鎖間ジスルフィド結合を形成するためのシステイン残基部分、例えばIgG1抗体のFab領域及び/又はヒンジ領域のシステイン残基を含み、スルフヒドリルカップリング化学に使用できるアミノ酸残基部位を提供する。本発明による更なるいくつかの実施形態において、抗体断片は、スルフヒドリルカップリング化学に使用できるアミノ酸残基部位を提供するために、Fc領域に導入されたシステイン残基を含む。
【0025】
本明細書において、「免疫グロブリン」という用語は、天然に存在する抗体の構造を有するタンパク質を指す。例えば、IgGクラスの免疫グロブリンは、ジスルフィド結合した2本の軽鎖及び2本の重鎖からなる約150,000ダルトンのヘテロ四量体タンパク質である。N末端からC末端まで、各免疫グロブリン重鎖は、重鎖可変ドメインとも呼ばれる重鎖可変領域(VH)を1つ、その後に3つの重鎖定常ドメイン(CH1、CH2、及びCH3)を有する。N末端からC末端まで、各免疫グロブリン軽鎖は、軽鎖可変ドメインとも呼ばれる軽鎖可変領域(VL)を1つ、その後に1つの軽鎖定常ドメイン(CL)を有する。そのため、本明細書において、1つの抗体がIgG抗体であるという言及は、当該抗体がIgGクラスの免疫グロブリン構造を有するヘテロ四量体タンパク質であることを意味する。IgG抗体において、通常、重鎖のVH-CH1は、軽鎖のVL-CLと対合して、抗原に特異的に結合するFab断片を形成する。従って、1つのIgG抗体は基本的に、免疫グロブリンヒンジ領域の助けを借りて結合された2つのFab分子と、2つの二量体したFc領域から構成されている。IgG免疫グロブリンは、重鎖定常領域の配列に基づいて、γ1(IgG1)、γ2(IgG2)、γ3(IgG3)、及びγ4(IgG4)などのサブクラスに分類することができる。IgG免疫グロブリンの軽鎖はまた、その定常ドメインのアミノ酸配列に基づいて、κ及びλと呼ばれる2つのタイプのうちの1つに分類することができる。いくつかの実施形態において、本発明による抗体は、IgG1、IgG2、IgG3、又はIgG4抗体などのIgG抗体である。別のいくつかの実施形態において、本発明による抗体は、IgG1κ又はIgG1λ抗体などのIgGκ又はIgGλ抗体である。
【0026】
本明細書において、「相補性決定領域」又は「CDR領域」又は「CDR」又は「超可変領域」という用語は、互換的に使用してもよく、配列上で高度に可変であり、且つ構造的に明確なル-プ(「超可変ル-プ」)を形成し、及び/又は抗原接触残基(「抗原接触点」)を含有する、抗体可変ドメインのうちの領域を指す。CDRは、抗原エピト-プへの結合を主に担う。本明細書において、抗体の重鎖及び軽鎖のCDRは、N-末端から順に番号付けされており、CDR1、CDR2、及びCDR3と一般に呼ばれる。抗体重鎖可変ドメイン内に位置するCDRは、HCDR1、HCDR2、及びHCDR3とも呼ばれ、抗体軽鎖可変ドメイン内に位置するCDRは、LCDR1、LCDR2、及びLCDR3と呼ばれる。所定の軽鎖可変領域又は重鎖可変領域のアミノ酸配列において、そのCDR配列は、本技術分野で公知の多種類の方法を用いて決定することができる。例えば、http://www.abysis.org/abysis/に、Kabat、AbM、Chothia、Contact、IMGT定義に基づくCDR配列を含む、所定の軽鎖可変領域又は重鎖可変領域におけるCDRの注釈は、得ることができる。また、CDRは、参照CDR配列と同じKabatナンバリング位置を有することに基づいて決定することもできる。特に明記しない限り、本発明において、抗体可変領域内の残基位置に言及する(重鎖可変領域残基及び軽鎖可変領域残基を含む)場合、Kabatナンバリングシステムによる(Kabat et al.、Sequences of Proteins of Immunological Interest、5th Ed. Public Health Service、National Institutes of Health、Bethesda、Md.(1991))ナンバリング位置を指す。
【0027】
本明細書において、「可変領域」又は「可変ドメイン」は、抗体の抗原への結合に関与する、抗体の重鎖又は軽鎖のドメインである。重鎖可変領域(VH)及び軽鎖可変領域(VL)は、比較的保存的な領域(即ち、フレ-ムワ-ク領域(FR))をその間に挿入される、高可変領域(HVR、相補性決定領域(CDR)とも呼ばれる)に更に分類することができる。各VH及びVLは、3つのCDR及び4つのFRからなり、アミノ末端からカルボキシル末端に向かって、FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4の順に配置されている。いくつかの態様において、2つの可変領域の1つ又は両方(即ち、VH及び/又はVL)における1個又は複数の残基を修飾してもよく、例えば、1個又は複数のCDR領域及び/又は1個又は複数のフレ-ムワ-ク領域に対して残基改変を行い、特に、保存的残基置換は、改変前の抗体分子の少なくとも1つの生物学的特性(例えば、抗原結合能力)を依然として基本的に維持する抗体の変異体を得るために、修飾することができる。更なるいくつかの態様において、抗体可変領域は、CDR移植によって修飾することができる。CDR配列は抗体-抗原相互作用の大部分を担っているため、既知の抗体の特性を模倣した組換え抗体の変異体を構築することができる。当該抗体の変異体において、既知の抗体由来のCDR配列が、異なる特性を有する異なる抗体のフレ-ムワ-ク領域上に移植される。突然変異及び/修飾後の抗体又はそれを含むADCコンジュゲ-トの特性、例えば、標的抗原結合特性又は他の望ましい機能特性、例えば、ADCのエンドサイト-シス、薬物動態学、及びインビボ腫瘍殺傷活性は、インビトロ又はインビボ測定試験において評価することができる。
【0028】
「キメラ抗体」という用語は、可変領域配列が1つの種に由来し、定常領域配列が別の種に由来する抗体、例えば、そのうちの可変領域配列がマウス抗体に由来し、定常領域配列がヒト抗体に由来する抗体を指す。
【0029】
本明細書において、「ヒト化抗体」という用語は、他の哺乳動物種、例えばマウス種族に由来するCDR配列をヒトフレ-ムワ-ク配列に結合させた抗体を指す。付加的なフレ-ムワ-ク領域修飾は、ヒトフレ-ムワ-ク配列内で行うことができ、及び/又は付加的なアミノ酸修飾は、例えば、抗体の親和性成熟のために、CDR配列内で行うことができる。本明細書において、いくつかの実施形態において、本発明の抗体はヒト化抗体であり、特定のヒト種族配列に「由来する」フレ-ムワ-ク領域配列を有する。ここで、「由来する」とは、上記抗体フレ-ムワ-ク領域のアミノ酸配列が、上記ヒト種族免疫グロブリン遺伝子によりコ-ドされる相応するフレ-ムワ-ク領域アミノ酸配列と少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%、その上より好ましくは少なくとも96%、97%、98%又は99%の同一性を有し、且つ上記抗原結合活性、例えば、25C7A5-HZ1若しくは-HZ2、又は2D3A11-HZ1若しくは-HZ2と同等(例えば、±10%)のCLDN18結合親和性を保持することを指す。
【0030】
本明細書において、「単離された」抗体という用語は、その天然環境における成分から分離された抗体である。いくつかの実施形態において、抗体は95%又は99%より大きい純度まで精製され、上記純度は、例えば、電気泳動(例えばSDS-PAGE、等電点電気泳動(IEF)、キャピラリ-電気泳動)又はクロマトグラフィ-(例えば、イオン交換又は逆相HPLC)によって決定することができる。
【0031】
「エピト-プ」という用語は、抗体が結合する抗原領域を指す。エピト-プは、連続したアミノ酸から形成されてもよく、又はタンパク質の三次フォ-ルディングによって並置された非連続アミノ酸から形成されてもよい。本発明において、好ましくは、本発明による抗体は、ヒトClaudin18.2の天然エピト-プに結合し、より好ましくは、細胞表面に発現するヒトClaudin18.2の天然エピト-プに結合する。従って、好ましい実施形態において、本発明の抗体のヒトClaudin18.2の天然エピト-プへの結合は、細胞に基づく試験を用いて検出される。
【0032】
本明細書において、「親和性」又は「結合親和性」という用語は、結合対におけるメンバ-間の相互作用を反映する固有の結合親和性を指す。親和性は、本技術分野で既知の一般的な方法によって測定することができる。親和性を測定するための1つの具体的な方法は、本明細書の実施例に記載されている細胞ELISA測定法であり、もう1つの具体的な方法は、本明細書の実施例に記載されているFACS測定法である。一実施形態において、細胞に基づく測定において、例えば実施例Iの記載に応じて測定した場合、抗体が参照抗体IMAB362と同等(即ち、±10%)又は更に小さいEC50値、及び/又は同等(即ち、±10%)又は更に高い最大結合シグナル値を有する場合、抗体はClaudin18.2に対して高い親和性を有すると考えられる。
【0033】
「特異的結合」という用語は、抗体が非標的抗原と比較して標的抗原に選択的又は優先的に結合することを表す。本明細書において、抗原結合測定試験において、例えば、実施例に記載されるようなFACS測定法又は細胞ELISA法で測定した場合、抗体が細胞表面に発現したヒトClaudin18.2に結合する(特に高親和性で結合する)が、細胞表面に発現したヒトClaudin18.1と結合しないか、又は基本的に結合しない場合、当該抗体が「ヒトClaudin18.2に特異的に結合する」抗体であると考えられる。Claudin18.2に対する抗体の結合特異性を決定するために、細胞表面に発現されたヒトClaudin18.2又はヒトClaudin18.1に対する抗体の結合は、細胞ELISA又はFACSにおいて測定することができる。
【0034】
本明細書において、抗体は、細胞に基づく測定において、ヒトClaudin18.1に対して顕著な親和性を有さず、且つヒトClaudin18.1に顕著に結合しない場合、特に背景と顕著に区別される検査可能なシグナルを生じない場合、ヒトClaudin18.1に結合しない、又は基本的に結合しない(本明細書において、これはヒトClaudin18.1に対する「非特異的結合を有しない」とも称される)と称される。好ましくは、本発明において、Claudin18.1発現細胞に対する本発明による抗体の非特異的結合は、Claudin18.1発現陽性率が95%より大きい又は98%より大きい組換え細胞株(例えば、組換えHEK293T安定細胞株)を用いて、例えば、実施例Iに記載されるようなFACS測定法によって測定される。当業者は、具体的に選ばれた測定方法に応じて、適切な陰性及び/又は陽性対照を選択することができる。例えば、抗体が細胞に非特異的に結合することによるバックグラウンド染色を除去するために、アイソタイプ対照を使用することができる。
【0035】
しかし、当業者に理解されるように、ヒトClaudin18.2に特異的に結合し、且つヒトClaudin18.1に非特異的に結合しない抗体は、他の種由来のClaudin18.2タンパク質と交差反応性を有することができる。本明細書において、「交差反応」という用語は、異なる種由来のClaudin18.2に結合する抗体の能力を指す。例えば、いくつかの実施形態において、ヒトClaudin18.2に特異的な本発明による抗体は、他の種由来のClaudin18.2(例えば、カニクイザル、マウス、及び/又はラットClaudin18.2)にも結合することができる。交差反応性を測定する方法は、実施例に記載される方法及び、例えばフロ-サイトメトリ-技術又は細胞ELISA技術を使用することによる、本技術分野で既知の標準的な測定法を含む。抗体の種間交差反応性は、いくつかの場合において有利である。例えば、標的抗体が、臨床前実験動物、例えば、マウス、ラット、又は霊長類動物に対して種間交差反応性を有する場合、ヒトの治療又は診断適用前の、標的抗体及びそのADCコンジュゲ-トの臨床前の安全性及び有効性の評価が促進される。
【0036】
本明細書において、「アイソタイプ」という用語は、抗体の重鎖定常領域によって決定される抗体のタイプを指す。例えば、本発明による抗体は、IgA(例えば、IgA1又はIgA2)、IgG1、IgG2(例えば、IgG2a又はIgG2b)、IgG3、IgG4、IgE、IgM及びIgD抗体であってもよく、且つ上記免疫グロブリンタイプの重鎖定常領域を有する。例えば、本発明の抗体は、ヒトIgG1定常領域を有するIgG1抗体であってもよい。また、本発明は、天然配列定常領域の抗体の使用だけでなく、変異体配列定常領域を含む抗体も考慮する。
【0037】
本明細書において、「Fc領域」という用語は、定常領域の少なくとも一部を含有する免疫グロブリン重鎖のC-末端領域を定義するために使用される。当該用語は、天然配列Fc-領域及び変異体Fc-領域を含む。
【0038】
本明細書において、「天然配列Fc領域」という用語は、天然に存在する各種の免疫グロブリンFc領域配列を包含し、例えば、各種のIgサブタイプ及びそのアイソフォ-ムのFc領域配列(Gestur Vidarssonなど、IgG subclasses and allotypes:from structure to effector functions、20 October 2014、doi:10.3389/fimmu.2014.00520.)である。いくつかの実施形態において、ヒトIgG重鎖Fc領域は、Cys226又はPro230から重鎖カルボキシ末端まで伸長するアミノ酸配列を有する。しかし、Fc領域のC末端リジン(Lys447)は存在してもよく、又は存在しなくてもよい。更なるいくつかの実施形態において、ヒトIgG重鎖Fc領域は、N末端に、例えばEUナンバリングによるE216からT225までの配列又はD221からT225までの配列などの、天然免疫グロブリンのヒンジ配列又は部分ヒンジ配列を有する。
【0039】
本明細書において、「変異体配列Fc領域」という用語は、天然配列Fc領域ポリペプチドに対して、修飾されたFc領域ポリペプチドを包含することを指す。上記修飾は、アミノ酸残基の付加、欠失、又は置換であってもよい。置換は、天然に存在するアミノ酸及び非天然に存在するアミノ酸を含むことができる。修飾の目的は、Fc領域のその受容体に対する結合及びそれによって誘発されるエフェクタ-機能を改変することを意図している。
【0040】
本明細書において、「エフェクタ-機能」という用語は、免疫グロブリンのアイソタイプに伴って変動する、免疫グロブリンFc領域に起因する生物学的活性を指す。免疫グロブリンエフェクタ-機能の例は、C1q結合及び補体依存性細胞傷害性(CDC)、Fc受容体結合効果、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害性(ADCC)、抗体依存性細胞貪食効果(ADCP)、サイトカイン分泌、抗原提示細胞による免疫複合体を媒介した抗原の取り込み、細胞表面受容体(例えば、B細胞受容体)のダウンレギュレ-ション、及びB細胞活性化を含む。抗体分子の所期の用途に応じて、野生型Fc領域を有する抗体分子に対して、ADCC活性又はCDC活性の低下又は除去などの標的抗体のエフェクタ-機能を改変することができる。
【0041】
本明細書において、「ADCC」という用語は、抗体依存性細胞を媒介した細胞傷害性を指す。ADCCは、ヒトにおいて、主にナチュラルキラ-細胞(NK細胞)によって媒介される。ADCCにおいて、抗体は、標的細胞の表面に表示された抗原に結合し、NK細胞の表面のFcγRIIIAは、抗体のFc領域を認識し、それにより、NK細胞が活性化され、パ-フォリン及びグラニュライシンを放出し、標的細胞の溶解及びアポト-シスをもたらす。抗体のADCC活性は、実施例Iに記載されるフルオレセインレポ-タ-システムを用いて評価することができる。いくつかの場合において、抗体のADCCエフェクタ-活性が期待されない場合、抗体のFc領域を修飾することにより、抗体のADCC活性を除去することができる。
【0042】
本明細書において、「CDC」という用語は、補体依存性細胞傷害性を指す。CDCにおいて、抗体のFc領域が補体分子C1qに結合し、続いて膜攻撃複合体が形成され、標的細胞のクリアランスをもたらす。IgMは補体活性化に最も効果的なアイソタイプである。IgG1及びIgG3の両方は、古典的補体活性化経路を通してCDCを誘導するのにも非常に有効である。抗体のCDC活性は、実施例Iに記載されるようなモルモット血清殺傷実験を用いて測定することができる。いくつかの場合において、抗体のCDCエフェクタ-活性が期待されない場合、抗体のFc領域を修飾することにより、抗体のCDC活性を除去することができる。
【0043】
本明細書において、「受容体媒介エンドサイト-シス」という用語は、リガンドが細胞表面の相応する受容体と結合することによって誘発される、リガンド/受容体複合体が内在化して且つ細胞質ゾルに送達されるか、又は適切な細胞内区画に移されるプロセスを指す。エンドサイト-シス率は、例えば、実施例Iに記載される方法によって測定し、抗体が有する受容体媒介エンドサイト-シス活性を特徴付けることができる。実施例に示すように、本発明の抗体は、細胞表面に発現されるClaudin18.2に結合した後、Claudin18.2受容体によって媒介されるエンドサイト-シスを誘発することができ、且つ当該エンドサイト-シス特性を有する本発明の抗体は、薬物(例えば、小分子毒性薬物分子)とカップリングしてADCを形成した後、抗腫瘍薬物を癌細胞に運ぶ手段として効果的に使用することができる。
【0044】
本明細書において、「配列同一性」とは、比較ウィンドウにおいて、ヌクレオチドごと又はアミノ酸ごとに基づく、配列が同一である程度を指す。「配列同一性パ-セント」は、2つの最適にアラインメントされた配列を比較ウィンドウで比較し、2つの配列中に同じ核酸塩基(例えば、A、T、C、G、I)又は同じアミノ酸残基(例えば、Ala、Pro、Ser、Thr、Gly、Val、Leu、Ile、Phe、Tyr、Trp、Lys、Arg、His、Asp、Glu、Asn、Gln、Cys、及びMet)が存在する位置の数を決定して、一致する位置の数を得、一致する位置の数を比較ウィンドウ中の全位置の数(即ち、ウィンドウのサイズ)で除算し、且つ結果に100を乗算して、配列同一性パ-セントを生成するという方法によって計算することができる。配列同一性パ-セントを決定するための最適なアラインメントは、例えば、BLAST、BLAST-2、ALIGN又はMegalign(DNASTAR)ソフトウェアなどの公的に入手可能なコンピュ-タソフトウェアを使用する、当技術分野で既知の多種類の方法で実現することができる。当業者は、比較される全長配列の範囲内又は標的配列の領域内で最大のアラインメントを実現するために必要な任意のアルゴリズムを含む、アラインメント配列のための適切なパラメ-タを決定することができる。
【0045】
本発明において、抗体配列について言えば、アミノ酸配列同一性パ-セントは、候補抗体配列を所定の抗体配列と最適にアラインメントした後、好ましい実施形態において、Kabatの番号付け規則に従って最適にアラインメントした後、決定される。本明細書において、比較ウィンドウ(即ち、比較待ちの標的抗体領域)を指定しない場合、所定の抗体配列の全長にわたってアライメントするのに適用される。いくつかの実施形態において、抗体について言えば、配列同一性は、重鎖可変領域全体及び/又は軽鎖可変領域全体に分布してもよく、又は配列パ-セントの同一性がフレ-ムワ-ク領域のみに限定されてもよく、対応するCDR領域の配列は100%同一を保持する。
【0046】
本明細書において、「参照抗体IMAB362」とは、特許CN101312989Bに開示される175D10モノクロ-ナル抗体からの重鎖及び軽鎖可変領域アミノ酸配列を用いて構築された抗Claudin18.2抗体を指す。参照抗体IMAB362との比較に関する文脈において、上記参照抗体IMAB362は、可変領域の外側の比較待ちの抗体の部分と同じ抗体構造を有し、例えば、両方が何れも重鎖及び軽鎖定常領域構造を有する場合、同じ重鎖及び軽鎖定常領域配列を有する。
【0047】
本願において、「ハロゲン」という用語は、通常、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素を指し、例えば、フッ素、塩素であってもよい。
【0048】
本明細書で使用される「アルキル基」という用語は、炭素原子及び水素原子からなる直鎖又は分岐鎖の飽和炭化水素基を指す。具体的には、アルキル基は、1個~10個の炭素原子、例えば1個~8個、1個~6個、1個~5個、1個~4個、1個~3個、又は1個~2個の炭素原子を有する。例えば、本明細書において使用される場合、「C1~C6アルキル基」という用語は、1個~6個の炭素原子を有する直鎖又は分岐鎖の飽和炭化水素基を指し、その実例は例えば、メチル基、エチル基、プロピル基(n-プロピル基及びイソプロピル基を含む)、ブチル基(n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基又はt-ブチル基を含む)、ペンチル基(n-ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基を含む)、ヘキシル基(n-ヘキシル基、2-メチルペンチル、3-メチルペンチル、3,3-ジメチルブチル、2,2-ジメチルブチル、1,1-ジメチルブチル、1,2-ジメチルブチル、1,3-ジメチルブチル、2,3-ジメチルブチル、2-エチルブチルを含む)などが挙げられる。
【0049】
本明細書で使用される「アルケニル基」という用語は、少なくとも1つの二重結合を含む、炭素原子及び水素原子からなる直鎖又は分岐鎖の不飽和炭化水素基を指す。具体的に、アルケニル基は、2個~8個、例えば、2個~6個、2個~5個、2個~4個、又は2個~3個の炭素原子を有する。例えば、本明細書で使用されるように、「C2~C6アルケニル基」という用語は、2個~6個の炭素原子を有する直鎖又は分岐鎖のアルケニル基、例えば、ビニル基、プロペニル基、アリル基、1-ブテニル、2-ブテニル、1,3-ブタジエニル、1-ペンテニル、2-ペンテニル、3-ペンテニル、1,3-ペンタジエン、1,4-ペンタジエン、1-ヘキセニル、2-ヘキセニル、3-ヘキセニル、1,4-ヘキサジエニルなどを指す。
【0050】
本明細書で使用される「アルキニル基」という用語は、少なくとも1つの三重結合を含む、炭素原子及び水素原子からなる直鎖又は分岐鎖の不飽和炭化水素基を指す。具体的に、アルキニル基は、2個~8個、例えば、2個~6個、2個~5個、2個~4個、又は2個~3個の炭素原子を有する。例えば、本明細書で使用される「C2~C6アルキニル基」という用語は、2個~6個の炭素原子を有する直鎖又は分岐鎖のアルキニル基、例えば、エチニル基、プロピニル基、プロパルギル基、1-ブチニル、2-ブチニル、1-ペンチニル、2-ペンチニル、3-ペンチニル、4-メチル-1-ペンチニル、1-ヘキシニル、2-ヘキシニル、3-ヘキシニル、5-メチル-2-ヘキシニルなどを指す。
【0051】
本明細書で使用される「アルキリデン基」という用語、直鎖又は分岐鎖の飽和アルカンの相同又は相異の2個の炭素原子から2個の水素原子を除去して得られる2価の基を指す。具体的には、アルキリデン基は、1個~10個の炭素原子、例えば、1個~6個、1個~5個、1個~4個、1個~3個、又は1個~2個の炭素原子を有する。例えば、本明細書で使用される「C1~C6アルキリデン基」という用語は、1個~6個の炭素原子を有する直鎖又は分枝鎖のアルキリデン基を指し、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基などを含むが、これらに限定されない。
【0052】
本明細書で使用される「アルケニレン基」という用語は、少なくとも1つの二重結合を含む直鎖又は分枝鎖の不飽和オレフィン基の相同又は相異の2個の炭素原子から2個の水素原子を除去して得られる2価の基を指す。具体的に、アルケニレン基は、2個~8個、例えば、2個~6個、2個~5個、2個~4個又は2個~3個の炭素原子を有する。例えば、本明細書で使用される「C2~C6アルケニレン基」という用語は、2個~6個の炭素原子を有する直鎖又は分岐鎖のアルケニレン基、例えば、ビニリデン基、プロペニレン基、アリレン基、ブテニレン基、ペンテニル基、及びヘキセニレンなどを指す。
【0053】
本明細書で使用される「アルキニレン基」という用語は、少なくとも1つの三重結合を含む直鎖又は分枝鎖の不飽和アルキンの相同又は2つの相異の炭素原子から2つの水素原子を除去して得られる2価の基を指す。具体的には、アルキニレン基が、2個~8個、例えば、2個~6個、2個~5個、2個~4個、又は2個~3個の炭素原子を有する。例えば、本明細書で使用される場合、「C2~C6アルキニレン基」という用語は、2個~6個の炭素原子を有する直鎖又は分岐鎖のアルキニレン基、例えば、エチニレン基、プロピニレン基、プロパルギレン基、ブチニレン基、ペンチニレン基、及びヘキシニレン基を指す。
【0054】
本明細書で使用される「シクロアルキル基」という用語は、飽和又は不飽和であってもよく、例えば、1つ又は複数の二重結合を含む、特定の環原子数を有する単環式、縮合多環式、架橋多環式又はスピロ環式非芳香族一価炭化水素環構造を指す。シクロアルキル基は、3個又は複数の、例えば、3個~18個、3個~10個、又は3個~8個の炭素原子を環中に含んでもよく、例えば、C3-10シクロアルキル基、C3-8シクロアルキル基、C3-6シクロアルキル基、C5-6シクロアルキル基である。シクロアルキル基の実例は、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基を含むが、これらに限定されない。
【0055】
本明細書で使用される「複素環」又は「ヘテロシクリル基」という用語は、N、O又はSから独立的に選ばれる1個~4個のヘテロ原子環メンバ-を有する、5員~20員(例えば、5員~14員、5員~8員、5員~6員)の芳香族又は非芳香族の単環式、二環式又は多環式環系を指す。複素環中の1個又は複数のN、C又はS原子は、酸化されてもよい。好ましくは、複素環は、単環式又は縮合二環式である5員~10員環系である。代表実例は、ピロリジン、アゼチジン、ピペリジン、モルホリン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、ベンゾフラン、ベンゾチオフェン、インド-ル、ベンゾピラゾ-ル、ピロ-ル、チオフェン(チオフェン)、フラン、チアゾ-ル、イミダゾ-ル、ピラゾ-ル、ピリミジン、ピリジン、ピラジン、ピリダジン、イソチアゾ-ル、及びイソオキサゾ-ルを含むが、これらに限定されない。当該用語は、本明細書で定義されるヘテロアリ-ル基を含むことが理解されるべきである。
【0056】
「アリ-ル基」という用語は、環部分に6個~20個、例えば6個~12個の炭素原子を有する単環式又は多環式芳香族炭化水素基を指す。好ましくは、アリ-ル基は(C6~C10)アリ-ル基である。非限定的な例は、フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、又はテトラヒドロナフチル基が含まれ、これらのそれぞれは、1個~4個の置換基で任意選択的に置換されてもよく、上記置換基は例えば、アルキル基、トリフルオロメチル基、シクロアルキル基、ハロゲン、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アシル基、アルキル-C(O)-O-、アリ-ル-O-、ヘテロアリ-ル-O-、アミノ基、チオ-ル基、アルキル-S-、アリ-ル-S-、ニトロ基、シアノ基、カルボキシル基、アルキル-O-C(O)-、カルバモイル基、アルキル-S(O)-、スルホニル基、スルホニルセミ基、ヘテロシクリル基などである。
【0057】
「ヘテロアリ-ル基」という用語は、N、O又はSから選ばれる1個~4個のヘテロ原子を含有する5員~20員(例えば、5員~14員、5員~8員、5員~6員)の芳香族単環式又は多環式環系を指し、これは、置換されても置換されなくてもよい。好ましくは、ヘテロアリ-ル基は、単環式又は縮合二環式である5員~10員環系である。代表的なヘテロアリ-ル基は、2-又は3-チエニル基、2-又は3-フリル基、2-又は3-ピロリル基、2-、4-又は5-イミダゾリル基、3-、4-又は5-ピラゾリル基、2-、4-又は5-チアゾリル基、3-、4-又は5-イソチアゾリル基、2-、4-又は5-オキサゾリル基、3-、4-又は5-イソオキサゾリル基、3-又は5-1,2,4-トリアゾリル基、4-又は5-1,2,3-トリアゾリル基、テトラゾリル基、2-、3-又は4-ピリジル基、3-又は4-ピリダジニル基、3-、4-又は5-ピラジニル基、2-ピラジニル基、2-、4-又は5-ピリミジニル基を含む。
【0058】
「ヘテロアルキル基」という用語は、完全飽和であるか、又は1個~3個の不飽和度を有し、示された数の炭素原子、及びO、N、Si及びSから選ばれる1個~10個、好ましくは1個~3個のヘテロ原子からなり、そのうちの窒素及び硫黄原子は任意選択的に酸化されてもよく、且つ窒素ヘテロ原子は任意選択的に四級アンモニウム化されてもよい、安定な直鎖又は分岐鎖炭化水素を指す。ヘテロ原子O、N、Si及びSは、ヘテロアルキル基の任意の内部位置に位置してもよく、又はヘテロアルキル基が分子の残りの部分に結合している位置に位置してもよい。ヘテロアルキル基の代表実例は、-CH2-CH2-O-CH3、-CH2-CH2-NH-CH3、-CH2-CH2-N(CH3)-CH3、-CH2-S-CH2-CH3、-CH2-CH2-S(O)-CH3、-NH-CH2-CH2-NH-C(O)-CH2-CH3、-CH2-CH2-S(O)2-CH3、-CH=CH-O-CH3、-Si(CH3)3、-CH2-CH=N-O-CH3及び-CH=CH-N(CH3)-CH3を含む。多くとも2個のヘテロ原子は、例えば、-CH2-NH-OCH3及び-CH2-O-Si(CH3)3のように、連続していてもよい。通常、C1~C4ヘテロアルキル基又はヘテロアルキレン基は、1個~4個の炭素原子及び1個又は2個のヘテロ原子を有し、C1~C3ヘテロアルキル基又はヘテロアルキレン基は、1個~3個の炭素原子及び1個又は2個のヘテロ原子を有する。いくつかの態様において、ヘテロアルキル基及びヘテロアルキレン基は飽和である。
【0059】
本明細書において各基を定義する際に使用される「置換された」という用語は、別段の指示がない限り、相応する基が、例えば、限定されないが、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、アリ-ル基、ヘテロアリ-ル基、ヘテロシクリル基、ハロゲン、シアノ基、ニトロ基、アジド基、カルボキシ基、ヒドロキシ基、メルカプト基、アミノ基、モノ又はジアルキルアミノ基、モノ又はジシクロアルキルアミノ基、モノ又はジアリ-ルアミノ基、モノ又はジヘテロシクリルアミノ基、モノ又はジヘテロアリ-ルアミノ基、アルキル基-又はシクロアルキル基-又はヘテロシクリル基-又はヘテロアリ-ル基-又はアリ-ル基-オキシ基、アルキル基-又はシクロアルキル基-又はヘテロシクリル基-又はヘテロアリ-ル基-又はアリ-ル基-スルフェニル基、アルキル基-又はシクロアルキル基-又はヘテロシクリル基-又はヘテロアリ-ル基-又はアリ-ル基-アシル基、アルキル基-又はシクロアルキル基-又はヘテロシクリル基-又はヘテロアリ-ル基-又はアリ-ル基-アシルアミノ基、アルキル基-又はシクロアルキル基-又はヘテロシクリル基-又はヘテロアリ-ル基-又はアリ-ル基-アシルオキシ基、アルキル基-又はシクロアルキル基-又はヘテロシクリル基-又はヘテロアリ-ル基-又はアリ-ル基-スルホニル基、アルキル基-又はシクロアルキル基-又はヘテロシクリル基-又はヘテロアリ-ル基-又はアリ-ル基-スルホニルオキシ基、アルキル基-又はシクロアルキル基-又はヘテロシクリル基-又はヘテロアリ-ル基-又はアリ-ル基-スルホニルセミ基、又は上記任意選択的に置換されたカルバモイル基、及びそれらのそれぞれの基は、残りの任意の置換基によって更に置換されてもよい基を指し、そのうち、各基は、本明細書において定義されたとおりである。置換基の例は、これらに限定されないが、ハロゲン、OH、SH、CN、NH2、NHCH3、N(CH32、NO2、N3、C(O)CH3、COOH、C(O)-アミノ基、OCOCH3、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、t-ブチル基、シクロプロピル基、メトキシ基、エトキシ基、ペントキシ基、オキソ基、トリフルオロメチル基、ジフルオロメチル基、スルホニルアミノ基、メチルスルホニルアミノ基、SO、SO2、フェニル基、ピペリジニル基、ピペラジニル基及びピリミジニル基から独立的に選ばれる1つ又は複数の基を含む。
【0060】
本明細書で使用される「置換」又は「置換される」という用語は、指定された原子上の1個又は複数(例えば、1個、2個、3個又は4個)の水素が指定された基で置き換えられることを指し、この場合、指定された原子の通常の原子価結合を超えず、且つ安定な化合物を形成し、置換基及び変数の組合せは、そのような組合せが安定な化合物を形成する場合にのみ許容されることを条件とする。
【0061】
本明細書において、「リンカ-」という用語は、薬物-抗体コンジュゲ-トにおいて、薬物と抗体を結合する二官能性部分を指す。本発明のリンカ-は、複数の組成(例えば、いくつかの実施形態において、抗体とのカップリングのためのリンカ-基、分解性ペプチドユニット、及び任意選択的なスペ-サ-基)を有してもよい。
【0062】
本明細書において、「PEGユニット」という用語は、多分散性、単分散性、又は離散性であってもよい(即ち、離散数のビニル-オキシサブユニットを有する)、重複するビニルオキシサブユニット(PEG又はPEGサブユニット)を含む有機部分を指す。多分散PEGは、サイズ及び分子量が不均一な混合物である一方で、単分散PEGは、通常、不均一な混合物から精製され、従って単一の鎖長及び分子量を有する。好ましいPEGユニットは、離散のPEGを含み、これは重合プロセスではなく、段階的な方法により合成された化合物である。離散のPEGは、限定及び指定された鎖長を有する単一分子を提供する。
【0063】
「薬学的に許容される塩」という用語は、本発明のADCコンジュゲ-トの生物学的効果及び性能を維持することができ、且つ当該塩は生物学的又はその他の点で望ましくないものではない塩を表す。本発明のADCコンジュゲ-トは、酸付加塩及び塩基付加塩を含む、それらの薬学的に許容される塩の形態で存在してもよい。本発明において、薬学的に許容される無毒性の酸付加塩は、本発明におけるADCコンジュゲ-トと、有機又は無機酸によって形成される塩を表し、有機又は無機酸は、塩酸、硫酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、リン酸、硝酸、過塩素酸、酢酸、シュウ酸、マレイン酸、フマル酸、酒石酸、ベンゼンスルホン酸、メタンスルホン酸、サリチル酸、コハク酸、クエン酸、乳酸、プロピオン酸、安息香酸、p-トルエンスルホン酸、リンゴ酸などを含むが、これらに限定されない。薬学的に許容される無毒性の塩基付加塩は、本発明におけるADCコンジュゲ-トと、有機又は無機塩基によって形成される塩を表し、リチウム、ナトリウム又はカリウム塩などのアルカリ金属塩、カルシウム又はマグネシウム塩などのアルカリ土類金属塩、N基を含む有機塩基と形成されたアンモニウム塩などの有機塩基塩を含むが、これらに限定されない。
【0064】
「溶媒和物」という用語は、1つ又は複数の溶媒分子と、本発明におけるADCコンジュゲ-トによって形成される会合物を表す。溶媒和物を形成する溶媒は、水、メタノ-ル、エタノ-ル、イソプロパノ-ル、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、N,N-ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシドなどを含むが、これらに限定されない。
文脈による矛盾がない限り、本明細書において、「薬学的に許容される」及び「薬用」は、互換的に使用してもよい。
【0065】
「薬物:抗体比」又は「DAR」という用語は、ADCコンジュゲ-トにおける、本明細書に記載のAb部分にカップリングされた薬物部分(D)のAb部分に対する比率を指す。本明細書に記載のいくつかの実施形態において、DARは、式Iにおけるqにより決定することができ、例えば、DARは、1~20、例えば、2~18、4~16、5~12、6~10、2~8、3~8、2~6、4~6、6~10、例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14又は15であってもよい。DARはまた、製品中の分子集団の平均DAR、即ち、検出方法によって(例えば、質量分析法、ELISA測定、電気泳動、及び/又はHPLCなどの従来の方法によって)測定された製品中の本明細書に記載のAb部分にカップリングされた小分子薬物部分(D)のAb部分に対する全体的な比率として算出することもでき、このDARは、本明細書において平均DARと呼ばれる。いくつかの実施形態において、本発明のコンジュゲ-トの平均DAR値は1~20であり、例えば2~18、4~16、5~12、6~10、2~8、3~8、2~6、4~6、6~10、例えば、1.0~8.0、2.0~6.0、例えば1、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、3、3.1、3.2、3.3、3.4、3.5、3.6、3.7、3.8、3.9、4、4.1、4.2、4.3、4.4、4.5、4.6、4.7、4.8、4.9、5.0、5.1、5.2、5.3、5.4、5.5、5.6、5.7、5.8、5.9、6.0、6.1、6.2、6.3、6.4、6.5、6.6、6.7、6.8、6.9、7.0、7.1、7.2、7.3、7.4、7.5、7.6、7.7、7.8.0、7.9、8、8.1、8.2、8.3、8.4、8.5、8.6、8.7、8.8、8.9、9.0、9.1、9.2、9.3、9.4、9.5、9.6、9.7、9.8、9.9又は10.0であり、これらの値のうち2つを端点の範囲とする。
【0066】
本明細書に記載の「薬物」という用語は、化学療法剤、サイトカイン、血管新生阻害剤、細胞傷害性剤、他の抗体、小分子薬物、又は免疫調節剤(例えば、免疫抑制剤)を含む、癌などの腫瘍の予防又は治療に有効な任意の物質を包含する。
【0067】
「細胞傷害性剤」という用語は、細胞機能を阻害又は防止する、及び/又は細胞死若しくは破壊を引き起こす物質を指すために本発明で使用される。細胞傷害性剤の実例は、カンプトテシン類薬物、アウリスタチン、オ-レオマイシン、メイタンシノイドアルカロイド、リシン、リシンA鎖、コンブレスタチン(combrestatin)、デュオカルマイシン、アプリシアトキシン、ドキソルビシン、ダウノマイシン、タクゾ-ル、シスプラチン、cc1065、エチジウムブロマイド、マイトマイシン、エトポシド、テノポシド(tenoposide)、ビンクリスチン、ビンブラスチン、コルヒチン、ジヒドロキシアントラセンジオン、アクチノマイシン、ジフテリア毒素、シュ-ドモナス外毒素(PE)A、PE40、アブリン、アブリンA鎖、モデッシンA鎖、α-サルシン(sarcin)、ゲロニン、ミトゲリン(mitogellin)、レストリクトシン(retstrictocin)、フェノマイシン、エノマイシン、クリシン(curicin)、クロ-チン、カリケアミシン、サボンソウ(Sapaonariaofficinalis)阻害剤、及びグルココルチコイド、並びにその他の化学療法剤、及びAt211、I131、I125、Y90、Re186、Re188、Sm153、Bi212又は213、P32などの放射性同位体、及びLu177を含むLuの放射性同位体を含むが、これらに限定されない。
【0068】
「小分子薬物」という用語は、生物学的プロセスを調節することができる低分子量有機化合物を指す。「小分子」は、分子量が10 kDより小さく、通常は2 kDより小さく、及び好ましくは1 kDより小さい分子と定義される。小分子は、無機分子、有機分子、無機成分を含む有機分子、放射性原子を含む分子、合成分子、ペプチド模倣体、及び抗体模倣体を含むが、これらに限定されない。治療剤として、小分子は、大分子に比べて細胞透過性が高く、分解に対してより感受性でなく、免疫応答を引き起こしにくい。
【0069】
「医薬組成物」という用語は、その中に含まれる活性成分の生物学的活性が有効であることを許可する形態で存在し、且つ上記組成物が投与される対象に対する受け入れられない毒性を有する更なる成分を含まない組成物を指す。
【0070】
「薬用補助材料」という用語は、活性物質と共に投与される希釈剤、アジュバント(例えば、フロイントアジュバント(完全及び不完全))、賦形剤、ベクタ-又は安定剤などを指す。
【0071】
「医薬組合せ」又は「組合せ製品」という用語は、非固定的な組合せ製品又は固定的な組合せ製品を指し、キット、医薬組成物を含むが、これらに限定されない。「非固定的な組合せ」という用語は、活性成分(例えば、(i)本発明のADC分子又は本発明の抗体、及び(ii)他の治療剤)が、別個の実体で同時に、特定の時間制限なしに、又は相同又は相異の時間間隔で患者に逐次投与されることを意味し、そのうち、そのような投与により、患者の体内において予防的又は治療的に有効なレベルの2種又は複数種の活性剤を提供する。いくつかの実施形態において、医薬組合せで使用される本発明のADC分子又は本発明の抗体及び他の治療剤は、それらが単独で使用されるレベルを超えないレベルで投与される。「固定的な組合せ」という用語は、2種又は複数種の活性剤が単一の実体の形態で患者に同時に投与されることを意味する。好ましくは、2種又は複数種の活性剤の用量及び/又は時間間隔は、各部分の併用が、疾患又は病状を治療する場合、成分の何れかを単独で使用する場合よりも大きな効果を生み出すように選ばれる。各成分は、それぞれ単独の製剤形態を呈してもよく、その製剤形態は同一であっても異なってもよい。
【0072】
「組合せ療法」という用語は、本明細書に記載の疾患を治療するための2種又は複数種の治療剤又は治療方法(例えば、放射線療法又は手術)の投与を指す。そのような投与は、例えば、固定割合の活性成分を有する単一カプセル中で、基本的に同時の方法によりこれらの治療剤を共同投与することを含む。或いは、このような投与は、複数の又は別個の容器(例えば、錠剤、カプセル剤、粉末及び液体)中での各活性成分の共同投与を含む。粉末及び/又は液体は、投与前に所望の用量に再構成又は希釈することができる。また、このような投与は、各タイプの治療剤を、ほぼ同じ時間に、又は異なる時間に順次使用することも含む。何れの場合も、治療レジメンは、本明細書に記載される疾患又は病状の治療における医薬組合せの有益な効果を提供する。
【0073】
本明細書において、「個体」又は「対象」という用語は、互換的に使用してもよく、哺乳動物を指す。哺乳動物は、家畜動物(例えば、ウシ、ヒツジ、ネコ、イヌ、及びウマ)、霊長類(例えば、ヒト及びサルなどの非ヒト霊長類)、ウサギ、及びげっ歯類(例えば、マウス及びラット)を含むが、これらに限定されない。特に、対象はヒトである。
【0074】
「腫瘍」及び「癌」という用語は、本明細書では互換的に使用され、哺乳動物において、通常、調節不能な細胞増殖を特徴とする生理的障害を指す。ある実施形態において、本発明の抗体による治療に適した癌は、胃癌、膵臓癌、又は胃食道接合部癌を含み、これらの癌の転移性形態を含む。当該用語は、悪性であろうと良性であろうと、全ての腫瘍性(neoplastic)細胞成長及び増殖、並びに全ての前癌状態(pre-cancerous)及び癌性の細胞と組織も包含する。
【0075】
「抗腫瘍効果」という用語は、例えば、腫瘍体積の縮小、腫瘍細胞数の減少、腫瘍細胞増殖の減少、又は腫瘍細胞生存率の減少を含むが、これらに限定されない、多種類の手段によって示され得る生物学的効果を指す。
【0076】
本明細書で使用される場合、「治療」は、既存の症状、病状、病態、又は疾患の進行若しくは重症度を、遅延、中断、遮断、軽減、停止、低減、又は逆転させることを指す。
【0077】
本明細書で使用される場合、「予防」は、疾患若しくは病状、又は特定の疾患若しくは病状の症状の発生若しくは進行に対する阻害を含む。いくつかの実施形態において、癌の家族歴を有する対象は、予防的レジメンの候補である。通常、癌の背景において、「予防」という用語は、癌の病状又は症状の発症前、特に癌のリスクがある対象における発症前の薬物投与を指す。
【0078】
本明細書で使用される場合、「有効量」という用語は、本発明の抗体薬物コンジュゲ-ト又はその組成物若しくは組合せのそのような量又は用量を指し、これは、単回又は複数回の用量で患者に投与した後、治療又は予防を必要とする患者において所望の効果をもたらす。
【0079】
本明細書で使用される場合、「治療有効量」という用語は、所望の治療結果を効果的実現するための、所望の用量で且つ所望の期間を持続するための量を指す。治療有効量はまた、本発明の抗体薬物コンジュゲ-ト又はその組成物又は組合せの何れの毒性又は有害作用が治療上有益な作用よりも少ないような量である。「治療有効量」は、好ましくは、未治療の個体に対して、測定可能なパラメ-タ(例えば、腫瘍体積)の少なくとも約30%、その上、より好ましくは少なくとも約40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、ひいては100%の阻害を達成する。
【0080】
本明細書で使用される場合、「予防有効量」という用語は、所望の予防結果を効果的に実現するための、所望の用量で且つ所望の期間を持続するための量を指す。通常、予防的用量は、疾患の比較的早い段階の前又は疾患の比較的早い段階に対象において使用されるため、予防有効量は治療有効量よりも少ない。
【0081】
本発明において、「CLDN18.2陽性」腫瘍という用語は、腫瘍器官又は組織における少なくとも一部の癌細胞がCLDN18.2細胞表面発現について陽性であることを指す。いくつかの実施形態において、CLDN18.2陽性癌細胞の割合は、癌組織又は癌細胞集団の少なくとも10%又は20%、好ましくは少なくとも30%、40%、50%、60%、70%、75%又は80%である。更なるいくつかの実施形態において、腫瘍組織又は器官における癌細胞の少なくとも40%、又は少なくとも50%、好ましくは60%、70%、80%、又は90%が、CLDN18.2の表面発現について陽性である。いくつかの実施形態において、本発明の方法によって治療される癌対象は、健康な対象の相応する組織及び器官と比較して、疾患組織又は器官において、増加されたCLDN18.2細胞表面発現のレベルを有し、例えば、少なくとも10%、特に少なくとも20%、少なくとも50%、少なくとも100%、少なくとも200%又はそれ以上の増加を有する。一実施形態において、CLDN18.2陽性腫瘍は、胃癌、食道癌、膵臓癌、肺癌(例えば、非小細胞肺癌(NSCLC))、卵巣癌、結腸癌、肝臓癌、頭頸部癌及び胆嚢癌、並びにそれらの転移、特に胃癌の転移から選ばれる。一実施形態において、癌は腺癌、特に進行性腺癌である。特に好ましい癌疾患は、胃、食道、膵管、胆管、肺、及び卵巣の腺癌である。いくつかの実施形態において、本発明に従って治療される癌はHER陰性である。更に別の実施形態において、CLDN18.2陽性腫瘍は、消化器系癌又はその癌転移である。一実施形態において、癌は、胃癌、食道癌(特に、下部食道癌)、食道-胃接合部の癌、及び胃食道癌から選ばれる。好ましい実施形態において、癌は、例えば、CLAUDIN18.2陽性且つHER2陰性胃癌である。別の好ましい実施形態において、癌は、転移性、難治性、又は再発性進行性胃食道癌などの胃食道癌であり、更に別の実施形態において、癌は、転移性胃癌又は胃食道接合部癌(EGJA)である。
【0082】
本発明の各態様について、下記のセクションで更に詳細に説明する。
【0083】
本発明のADC部分
I.抗体-薬物コンジュゲ-ト
一態様において、本発明は、以下の式(I)を有する抗体-薬物コンジュゲ-ト(ADC)又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物を提供し、
Ab-[L-D]q (I)
そのうち、
Abは、抗Claudin18.2抗体を表し、
Lは、リンカ-を表し、
Dは、トポイソメラ-ゼI阻害剤などの細胞傷害性又は細胞阻害薬物を表し、且つ
qは、1~20の整数又は小数を表し、例えば、q=1~10、1~8、2~8、4~8、又は6~8である。
【0084】
以下、本発明のADCコンジュゲ-トの組成及びそれからなる本発明のADCコンジュゲ-トについて、それぞれ詳細に説明する。当業者は、文脈から明確に反対のことが示されない限り、これらの組成の任意の技術的特徴の任意の組合せが、何れも本発明の考慮の範囲内であることを理解することができる。且つ、当業者は、文脈から明確に反対のことが示されない限り、本発明のADCコンジュゲ-トは、特徴の任意のそのような組合せを含み得ることを理解することができる。
【0085】
抗体Abユニット
本発明者は、鋭意研究により、優れた特性を有するヒト化抗Claudin18.2モノクロ-ナル抗体を開発及び提供する。実施例に示すように、本発明の抗体は、ヒトClaudin18.2を表面に発現する細胞(特に、低表面発現量の細胞)に対して高い結合親和性及び高い特異性を示すだけでなく、Claudin18.2抗原によって媒介されるエンドサイト-シス活性、安定性及び/又は薬物動態学特性などの有利な特性も有するため、分子組成として細胞傷害性薬物とカップリングして抗体-薬物コンジュゲ-トを形成するのに適している。実施例に示すように、本発明の抗体から形成されたADCコンジュゲ-トは、強力なインビボ腫瘍殺傷効果を示し、且つ同時に良好な薬物耐性を有する。
【0086】
従って、いくつかの態様において、本発明は、Claudin18.2に特異的に結合する本発明の抗体を、本発明の式Iのコンジュゲ-トのAbユニットとして含む、抗体-薬物コンジュゲ-ト(ADC)を提供する。
【0087】
いくつかの実施形態において、本発明の式(I)におけるAbは、配列番号1又は3の重鎖可変領域(VH)配列の3つのCDR及び配列番号2の軽鎖可変領域(VL)配列の3つのCDRを含み、且つ好ましくは、そのうち、上記CDRはKabat若しくはIMGT又はそれらの組合せに従って定義される。
【0088】
いくつかの実施形態において、本発明の式(I)におけるAbは、3つの重鎖の相補性決定領域(HCDR)及び3つの軽鎖の相補性決定領域(LCDR)を含み、そのうち、
(i)IMGTに従って定義すると、HCDR1は配列番号6のアミノ酸配列を含むか又はそれからなり、HCDR2は配列番号7のアミノ酸配列を含むか又はそれからなり、HCDR3は配列番号8のアミノ酸配列を含むか又はそれからなり、LCDR1は配列番号9のアミノ酸配列を含むか又はそれからなり、LCDR2は配列番号10のアミノ酸配列を含むか又はそれからなり、且つLCDR3は配列番号11のアミノ酸配列を含むか又はそれからなり、若しくは
(ii)Kabatに従って定義すると、HCDR1は配列番号12のアミノ酸配列を含むか又はそれからなり、HCDR2は配列番号13のアミノ酸配列を含むか又はそれからなり、HCDR3は配列番号14のアミノ酸配列を含むか又はそれからなり、LCDR1は配列番号15のアミノ酸配列を含むか又はそれからなり、LCDR2は配列番号16のアミノ酸配列を含むか又はそれからなり、且つLCDR3は配列番号17のアミノ酸配列を含むか又はそれからなる。
【0089】
一実施形態において、本発明の式(I)におけるAbは、本発明の例示的抗体25C7A5-HZ1及び-HZ2の何れか1つの重鎖及び軽鎖可変領域配列又はその変異体、例えば、上記例示的抗体の1つと同じCDR配列を有し、同じ又は異なるフレ-ムワ-ク領域配列を有する抗体を含む。
【0090】
一実施形態において、本発明の式(I)におけるAbは、重鎖可変領域を含み、そのうち、上記重鎖可変領域は、
-配列番号1に示されるアミノ酸配列、若しくはそれと少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%の配列同一性を有するアミノ酸配列、或いは
-配列番号3に示されるアミノ酸配列、若しくはそれと少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0091】
一実施形態において、本発明の式(I)におけるAbは、軽鎖可変領域を含み、そのうち、軽鎖可変領域は、
-配列番号2に示されるアミノ酸配列、若しくはそれと少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0092】
いくつかの好ましい実施形態において、本発明の式(I)におけるAbは、重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含み、そのうち、上記重鎖可変領域は、配列番号1又は3に記載されるアミノ酸配列、若しくはそれと少なくとも95%、96%、97%、98%、又は99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、且つそのうち、上記軽鎖可変領域は、配列番号2に示されるアミノ酸配列、若しくはそれと少なくとも95%、96%、97%、98%、又は99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。好ましくは、上記抗体配列はヒト化である。より好ましくは、上記抗体の重鎖可変領域は、ヒト生殖細胞系列に由来するフレ-ムワ-ク領域配列を有し、且つ好ましくは重鎖可変領域においてKabatナンバリングによるH6位でアミノ酸Q又はEを有し、好ましくはアミノ酸Qを有する。
【0093】
更なるいくつかの好ましい実施形態において、本発明の式(I)におけるAbは、配列番号1の重鎖可変領域及び配列番号2の軽鎖可変領域を含む。
【0094】
更なるいくつかの好ましい実施形態において、本発明の式(I)におけるAbは、配列番号3の重鎖可変領域及び配列番号2の軽鎖可変領域を含む。
【0095】
いくつかの実施形態において、本発明の式(I)におけるAbは、好ましくは、抗体の重鎖定常領域及び/又は軽鎖定常領域を更に含む。好ましくは、上記重鎖定常領域は、ヒト免疫グロブリンに由来する重鎖定常領域である。好ましくは、上記軽鎖定常領域は、ヒト免疫グロブリンに由来する軽鎖定常領域である。いくつかの態様において、Abに含まれる重鎖定常領域は、任意のアイソタイプ又はサブタイプ、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、又はIgG4アイソタイプの重鎖定常領域であってもよく、且つ好ましくはIgG1、IgG2、又はIgG4重鎖定常領域、特にヒトIgG1重鎖定常領域であってもよい。更なるいくつかの態様において、Abに含まれる軽鎖定常領域は、κ軽鎖定常領域又はλ軽鎖定常領域であってもよく、特にヒトκ軽鎖定常領域であってもよい。
【0096】
いくつかの実施形態において、本発明の式(I)におけるAbは、ヒトIgG1重鎖定常領域を含む。好ましくは、上記重鎖定常領域は、配列番号4のアミノ酸配列、又は配列番号4のアミノ酸配列に対して少なくとも1個、2個、又は3個の、但し20個、10個、又は5個以下のアミノ酸改変を含むアミノ酸配列、若しくは配列番号4のアミノ酸配列と少なくとも95%~99%の同一性を有する配列を含む。
【0097】
いくつかの実施形態において、本発明の式(I)におけるAbは、ヒトκ軽鎖定常領域を含む。好ましくは、上記軽鎖定常領域は、配列番号5のアミノ酸配列、若しくは配列番号5のアミノ酸配列に対して少なくとも1個、2個又は3個の、但し20個、10個又は5個以下のアミノ酸改変を含むアミノ酸配列、或いは配列番号5のアミノ酸配列と少なくとも95%~99%の同一性を有する配列を含む。
【0098】
いくつかの実施形態において、本発明の式(I)におけるAbは、重鎖定常領域及び軽鎖定常領域を含む全長抗体である。いくつかの実施形態において、本発明の式(I)におけるAbは、2本の軽鎖及び2本の重鎖から形成される四量体構造を有する。更なるいくつかの実施形態において、本発明の式(I)におけるAbは、IgG抗体、特にIgG1抗体である。更なる実施形態において、本発明の式(I)におけるAbはヒト化抗体である。
【0099】
いくつかの好ましい実施形態において、本発明の式(I)におけるAbは、重鎖及び軽鎖を含み、そのうち、上記重鎖は配列番号18又は19に示されるアミノ酸配列、若しくはそれと少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか、又はそれからなる。別のいくつかの好ましい実施形態において、本発明の式(I)におけるAbは、重鎖及び軽鎖を含み、そのうち、上記軽鎖は、配列番号20に示されるアミノ酸配列、若しくはそれと少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0100】
いくつかのより好ましい実施形態において、本発明の式(I)におけるAbは、
(a)配列番号18のアミノ酸配列を含む重鎖、及び配列番号20のアミノ酸配列を含む軽鎖、並びに
(b)配列番号19のアミノ酸配列を含む重鎖、及び配列番号20のアミノ酸配列を含む軽鎖、から選ばれる重鎖及び軽鎖を含む。
【0101】
本発明はまた、上記抗体の何れかの変異体を考慮する。本発明の抗体の変異体は、好ましくは、改変前の抗体の生物学的活性(例えば、抗原結合能力)の少なくとも60%、70%、80%、90%又は100%を保持する。より好ましくは、上記改変は、抗体の変異体が抗原に対する結合の喪失をもたらさないが、任意選択的に向上した抗原親和性及び異なるエフェクタ-機能などの特性を付与する。抗体の重鎖可変領域又は軽鎖可変領域、若しくは各CDR領域は、単独で又は組合せて改変されてもよいことが理解できる。また、抗体のFc領域を改変することもできる。Fc領域の改変は、単独で、若しくは上記フレ-ムワ-ク及び/又はCDR領域に対する改変と組合せて行われてもよい。例えば、抗体の1種又は複数種の機能、例えば、血清半減期、補体固定、Fc受容体結合、及び/又は抗原依存性細胞傷害性を改変するために、Fc領域を改変してもよい。また、本発明の抗体に対して、化学修飾(例えば、PEGと結合)又はそのグリコシル化パタ-ンの改変を行ってもよい。
【0102】
ADCコンジュゲ-トを形成するために、本発明による抗体は、その天然の結合部位の一部を使用して毒素-リンカ-とカップリングしてもよい。このような天然の結合部位には、システインのメルカプト基及びリジンのアミノ基を有する。通常、抗体の重鎖と軽鎖の間のジスルフィド架橋を使用することにより、比較的明確な薬物-抗体比(DAR)を実現することができる。従って、一実施形態において、抗体の鎖間ジスルフィド結合を還員した後、メルカプト化学によって、本発明の抗体に毒素をカップリングし、式(I)のADCコンジュゲ-トを形成する。また、より標的を絞ったコンジュゲ-トを実現するため、抗体に人工結合部位を導入ことも考慮できる。
【0103】
薬物Dユニット
抗体-薬物コンジュゲ-トの薬物Dユニットは、本明細書において、ADC薬物のペイロ-ド(payload)とも称される。本発明のADCに使用できる薬物Dは、特に限定されず、細胞に対する毒性又は阻害性を有する任意の薬物又はそのプロドラッグであってもよい。当業者は、ADCのペイロ-ドとして、ADCの所望の薬物作用機構及び細胞殺傷効果に基づいて、適切な薬物分子を選択することができる。
【0104】
いくつかの実施形態において、薬物Dは細胞傷害性薬剤である。当技術分野において、ペイロ-ドとしての使用に適した、異なるメカニズムの複数種の細胞傷害性薬剤が報告され、
(1)微小管阻害剤/破壊剤:例えば、限定されないが、auristatin類(例えば、MMAE又はMMAF)、メイタンシン誘導体(例えば、DM2、DM4)、チュ-ブリシン(Tubulysins)、クリプトフィシン(Cryptomycins)、抗有糸分裂EG5阻害剤(例えば、紡錘体キネシンKSP阻害剤)、
(2)DNA損傷剤:例えば、限定されないが、ピロロベンゾジアゼピン類(Pyrrolobenzodiazepines)(例えば、ピロロ[2,1-c][1,4]ベンゾジアゼピン(PBD))、デュオカルマイシン、Indolinobenzodiazepine、Duocarmycins、Calicheamicin類、
(3)トポイソメラ-ゼ阻害剤:例えば、限定されないが、カンプトテシン類(例えば、エキサテカン及びその誘導体Dxd)、
(4)その他:アポト-シス誘導剤(Bcl-xL阻害剤)、thailanstatin及びその類似体、アマトキシン、ニコチナミドホスホリボシルトランスフェラ-ゼ(NAMPT)阻害剤、カナマイシンを含むが、これらに限定されない。
【0105】
本発明の式(I)における薬物Dは、上記から選ばれる任意の化合物であってもよい。いくつかの実施形態において、薬物Dは、メイタンシン誘導体、カリキアミシン誘導体、アウリスタチン誘導体から選ばれる抗腫瘍増殖阻害剤である。一実施形態において、薬物Dは、ビンカアルカロイド類、ビンクリスチン、パクリタキセル、及びドセタキセルなどのチュ-ブリン阻害剤/安定性破壊剤である。一実施形態において、薬物Dは、メトトレキサ-ト、5-フルオロウラシル、シタラビン、ゲムシタビン、メルカプトプリン、ペントスタチン、フルダラビン、クラドリビンなどのDNA合成の阻害剤である。一実施形態において、薬物Dは、トポイソメラ-ゼI阻害剤(例えば、カンプトテシン類)及びトポイソメラ-ゼII阻害剤(例えば、アクチノマイシンD、ドキソルビシン、ミトキサントロン)などのDNAトポイソメラ-ゼ阻害剤である。
【0106】
いくつかの好ましい実施形態において、本発明によるADCの薬物Dはトポイソメラ-ゼI阻害剤である。トポイソメラ-ゼI阻害剤の典型的な例はカンプトテシン類薬物、例えば、カンプトテシン(CPT)、ヒドロキシカンプトテシン、9-アミノカンプトテシン、exatecan、topotecan、belotecan、irinotecan、SN-38、及びFL118、並びにそれらの誘導体であるが、これらに限定されない。例えば、Vesela Kostova et al.、The Chemistry Behind ADCs、Pharmaceuticals 2021、14、442.https://doi.org/10.3390/ph14050442、及びWO2019/195665、上記文献は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0107】
本発明のいくつかの実施形態において、本発明のADCの薬物Dは、以下から選ばれるカンプトテシン類薬物である。
【0108】
-カンプトテシン及びその誘導体、例えば、
【化1】
、そのうち、RAは、例えば、水素、任意選択的に置換されたアルキル基から選ばれ、そのうち、置換基は、ヒドロキシ基、アミノ基を含むが、これらに限定されず、そのうち、アミノ基部分又はヒドロキシ基部分は、置換又は非置換であってもよく、例えば、アルキル基、アルキルアシル基、又はアルキルスルホニル基で置換されてもよく、一実施形態において、上記薬物Dは
【化2】
である。
-10,11-methylenedioxy CPT(MDCPT又はFL118とも略される)、及びその誘導体、例えば、
【化3】
、そのうち、RBは、例えば、水素、シクロアルキル基、フェニル基、任意選択的に置換されたアルキル基から選ばれ、そのうち、置換基は、ハロゲン、ヒドロキシ基、任意選択的に置換されたアルコキシ基、シクロアルキル基、ヘテロシクロアルキル基、フェニル基、アミノ基を含むが、これらに限定されず、そのうち、アミノ基の部分は、任意に置換されてもよく、一実施形態において、上記薬物Dは
【化4】
である。
-10-hydroxy CPT(HCPTとも略される)及びその誘導体、例えば、
【化5】
そのうち、RCは、例えば、任意選択的に置換されたアルキル基及びシクロアルキル基から選ばれ、R'Cは、例えば、H、アルカノイル基又は任意選択的に置換されたヘテロシクロアルキルアシル基から選ばれ、一実施形態において、上記薬物Dは、7-エチル-10-ヒドロキシCPT(SN-38)又はそのプロドラッグであるイリノテカン(irinotecan、CPT-11)であるか、又は上記薬物Dは、トポテカン
【化6】
である。
【0109】
-Exatecan及びその誘導体、例えば、
【化7】
、そのうち、RDは、例えば、H、任意選択的に置換されたアルキル基、任意選択的に置換されたアルキル-C(=O)-から選ばれ、上記置換基は、例えば、-OH又は置換若しくは非置換のアミノ基であり、一実施形態において、上記薬物Dは、
【化8】
であり、別の実施形態において、上記薬物Dは、
【化9】
である。
【0110】
F118((20S)-10,11-methylenedioxyカンプトテシン)は、化合物ライブラリ-のハイスル-プットスクリ-ニングを通じて得られた。FL118は、他のカンプトテシン誘導体と比較して、多くの異なる癌タイプにおいて、はるかに高いインビボ及びインビトロ抗癌活性を有することが証明された。トポイソメラ-ゼIの阻害に加えて、FL118は、抗アポト-シスタンパク質、例えば、survivin、XIAP、cIAP2及びMcl-1の遺伝子プロモ-タ-活性及び内因性発現を選択的に阻害することができる。Xiang Ling et al.、A Novel Small Molecule FL118 That Selectively Inhibits Survivin、Mcl-1、XIAP and cIAP2 in a p53-Independent Manner、Shows Superior Antitumor Activity、PLoS ONE 7(9):e45571.doi:10.1371/journal.pone.0045571を参照されたい。FL118の単独使用は、その極めて乏しい水溶性及び毒性副作用により著しく妨げられるが、実施例に示すように、当該化合物を本発明の抗体及びリンカ-と組合せて形成されたコンジュゲ-トは、当該化合物の腫瘍殺傷効果を有効に発揮するだけでなく、且つ当該化合物の欠点を克服し、形成されたコンジュゲ-トの凝集度が小さく、且つ良好な動物耐性を有する。
【0111】
従って、本発明のいくつかの好ましい実施形態において、本発明のADCの薬物Dは、FL118誘導体、特に7位で置換されたFL118である。
【0112】
いくつかの実施形態において、本発明の式(I)における薬物Dは、以下の式D構造を含むカンプトテシン類薬物であり、
【化10】
、そのうち、
Rx、Ryは、それぞれ独立して、H、ハロゲン、-OH、C1~C6アルキル基から選ばれるか、又はRx及びRyは、それぞれに結合する炭素原子と組合せて、N、S及びOから選ばれる1個又は2個の5員~6員複素環を形成し、
RaはH、ハロゲン、-OH、任意選択的に置換されたC1~C8アルキル基又はC3~C8アルキニル基又はC3~C8アルケニル基、任意選択的に置換されたC1~C8アルコキシ基、任意選択的に置換されたC3~C8シクロアルキル基、任意選択的に置換されたフェニル基、任意選択的に置換されたヘテロシクロアルキル基、任意選択的に置換されたヘテロアリ-ル基から選ばれ、
好ましくは、そのうち、Raは、
水素、
C3~C8シクロアルキル基、
フェニル基、
ハロゲン、ヒドロキシ基、任意選択的にNH2、NH(C1~C4アルキル)及びN(C1~C4アルキル)2で置換されたC1~C4アルコキシ基、C3~C8シクロアルキル基、ヘテロシクロアルキル基、フェニル基、及びNR1R2からなる群より選ばれる置換基で任意選択的に置換されたC1~C8アルキル基、又はC3~C8アルキニル基、又はC3~C8アルケニル基から選ばれ、
そのうち、R1及びR2は、互いに独立的に、
水素、
ヒドロキシ基、アミノ基、1個又は2個のC1~C4アルキル基で置換されたアミノ基、1個又は2個のC1~C4ヒドロキシアルキル基で置換されたアミノ基、(C1-C4ヒドロキシアルキル)及び(C1-C4アルキル)で置換されたアミノ基からなる群より選ばれる置換基で任意選択的に置換されたC1~C8アルキル基、
1個又は2個のC3~C10シクロアルキル基、C3~C10ヘテロシクロアルキル基、フェニル基又はヘテロアリ-ル基で置換されたC1~C4アルキル基、
C3~C10シクロアルキル基、
C3~C10ヘテロシクロアルキル基、
C2~C6ヘテロアルキル基、
ヘテロアリ-ル基、
ハロゲンで任意選択的に置換されたフェニル基、
ヒドロキシ基又はアミノ基で任意選択的に置換されたC1~C8アルキル-C(=O)-、
から選ばれ、
或いは、R1及びR2はそれぞれに結合する窒素原子と組合せて0個~3個の置換基を有する5-員、6-員又は7-員ヘテロ環を形成し、上記置換基はハロゲン、C1~C4アルキル基、OH、C1~C4アルコキシ基、NH2、NH(C1-C4アルキル)及びN(C1-C4アルキル)2から選ばれ、
そのうち、シクロアルキル基、ヘテロシクロアルキル基、フェニル基、ヘテロアリ-ル基は、出現するたびにそれぞれ独立的に、OH、C1~C4アルキル基、C1~C4アルコキシ基、NH2、NH(C1~C4アルキル)及びN(C1~C4アルキル)2からなる群より選ばれる0個~3個の置換基で任意選択的に置換される。
【0113】
いくつかの好ましい実施形態において、Rx及びRyはそれぞれ独立して、Hである。別のいくつかの好ましい実施形態において、RxはFであり、且つRyはメチル基である。更なるいくつかの好ましい実施形態において、Rx及びRyはそれぞれに結合する炭素原子と組合せて、2個のOを含む5員複素環を形成する。
【0114】
いくつかの実施形態において、本発明の式(I)における薬物Dは、以下の式Da又は式Db構造を含むカンプトテシン類薬物であり、
【化11】
、特に式(Da)のカンプトテシン類薬物であり、
そのうち、Raは、
水素、
C3~C8シクロアルキル基、
フェニル基、
ハロゲン、ヒドロキシ基、任意選択的にNH2、NH(C1~C4アルキル)及びN(C1~C4アルキル)2で置換されたC1~C4アルコキシ基、C3~C8シクロアルキル基、ヘテロシクロアルキル基、フェニル基、及びNR1R2からなる群より選ばれる置換基で任意選択的に置換されたC1~C8アルキル基、C3~C8アルキニル基、又はC3~C8アルケニル基から選ばれ、
そのうち、R1及びR2は、互いに独立的に、
水素、
ヒドロキシ基、アミノ基、1個又は2個のC1~C4アルキル基で置換されたアミノ基、1個又は2個のC1~C4ヒドロキシアルキル基で置換されたアミノ基、(C1-C4ヒドロキシアルキル)及び(C1-C4アルキル)で置換されたアミノ基からなる群より選ばれる置換基で任意選択的に置換されたC1~C8アルキル基、
1個又は2個のC3~C10シクロアルキル基、C3~C10ヘテロシクロアルキル基、フェニル基又はヘテロアリ-ル基で置換されたC1~C4アルキル基、
C3~C10シクロアルキル基、
C3~C10ヘテロシクロアルキル基、
C2~C6ヘテロアルキル基、
ヘテロアリ-ル基、
ハロゲンで任意選択的に置換されたフェニル基、
ヒドロキシ基又はアミノ基で任意選択的に置換されたC1~C8アルキル-C(=O)-、
から選ばれ、
或いは、R1及びR2はそれぞれに結合する窒素原子と組合せて0個~3個の置換基を有する5-員、6-員又は7-員ヘテロ環を形成し、上記置換基はハロゲン、C1~C4アルキル基、OH、C1~C4アルコキシ基、NH2、NH(C1-C4アルキル)及びN(C1-C4アルキル)2から選ばれ、
そのうち、シクロアルキル基、ヘテロシクロアルキル基、フェニル基、ヘテロアリ-ル基は、出現するたびにそれぞれ独立的に、OH、C1~C4アルキル基、C1~C4アルコキシ基、NH2、NH(C1~C4アルキル)及びN(C1~C4アルキル)2からなる群より選ばれる0個~3個の置換基で任意選択的に置換される。
【0115】
いくつかの実施形態において、Raは水素である。
【0116】
いくつかの実施形態において、RaはC3~C8シクロアルキル基(例えば、シクロプロピル基、シクロヘプチル基、シクロペンチル基)である。
【0117】
いくつかの実施形態において、Raはフェニル基である。別のいくつかの実施形態において、RaはNH2、又はNH(C1~C4アルキル)で置換されたフェニル基である。
【0118】
いくつかの実施形態において、RaはC1~C6アルキル基、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、2-メチルプロピル基、ブチル基、イソブチル基、2,2-ジメチル-プロピル基、2,2-ジメチル-ブチル基、n-ヘキシル基、ノルマルアミル基、3-エチル-ペンチル基である。
【0119】
いくつかの実施形態において、RaはC1~C4アルキル基であり、それはヒドロキシ基又はC1~C4アルコキシ基で任意選択的に置換され、そのうち、アルコキシ基は更に-NH2、-NH(C1~C4アルキル)及び-N(C1~C4アルキル)2により任意選択的に置換される。
【0120】
いくつかの実施形態において、RaはC2~C4アルケニル基又はC2~C4アルキニル基であり、それはヒドロキシ基又はアミノ基で任意選択的に置換される。
【0121】
いくつかの実施形態において、RaはN、S及びOから選ばれる1個又は2個の5員~6員ヘテロシクロアルキル基で置換されたC1~C4アルキル基であり、そのうち、ヘテロシクロアルキル基部分が更にC1~C4アルキル基で任意選択的に置換され、好ましくは、上記ヘテロシクロアルキル基がピペラジニル基又はモルホリニル基である。
【0122】
いくつかの実施形態において、Raは-NR1R2で置換されたC1~C4アルキル基であり、特に-メチレン-NR1R2であり、そのうち、R1及びR2は、互いに独立的に、
水素、
-C1~C4アルキル基、
-OH、-NH2、-NH(C1~C4アルキル)、-N(C1~C4アルキル)2、-フェニル基、-フェニレン-NH2、-フェニレン-C1~C4アルコキシ基、-ジフェニル基、-C3~C10シクロアルキル基、-C3~C10シクロアルキレン-C1~C4アルキル基、ヘテロシクロアルキル基はN、S及びOから選ばれる1個又は2個のヘテロ原子を有し、好ましくは、上記ヘテロシクロアルキル基はピペリジニル基である-C3~C10ヘテロシクロアルキル基
からなる群より選ばれる置換基で置換された-C1~C4アルキル基、
フェニル基、ハロゲンで置換されたフェニル基、
C3~C10シクロアルキル基、
-C(=O)-C1~C4アルキル-OH、-C(=O)-C1~C4アルキル-NH2から選ばれる。
【0123】
いくつかの実施形態において、Raは-NR1R2で置換されたC1~C4アルキル基であり、特に、-メチレン-NR1R2であり、そのうち、R1及びR2はそれぞれに結合する窒素原子と組合せて5-、6-又は7-員ヘテロシクロアルキル基環を形成する。いくつかの態様において、R1及びR2はそれぞれに結合する窒素原子と組合せて6-員環を形成する。いくつかの態様において、6-員環は、モルホリニル基又はピペラジニル基である。
【0124】
いくつかの好ましい実施形態において、Raは、-C1~C4アルキリデン-OH、-C1~C4アルキリデン-O-C1~C4アルキリデン-NH2、-C1~C4アルキリデン-NH2、-C1~C4アルキリデン-NH(C1~C4ヒドロキシアルキル)、-C1~C4アルキリデン-N(C1~C4ヒドロキシアルキル)2、-C1~C4アルキリデン-N(C1~C4アミノアルキル)(C1~C4ヒドロキシアルキル)、-C1~C4アルキリデン-NH(C1~C4アミノアルキル)、-C1~C4アルキリデン-NH-C(=O)-C1~C4アルキリデン-OH、-C1~C4アルキリデン-NH-C(=O)-C1~C4アルキリデン-NH2、-C1~C4アルキリデン-N(C1~C4アルキル)(C(=O)-C1~C4アルキリデン-OH)、-C1~C4アルキリデン-N(C1~C4アルキル)(C(=O)-C1~C4アルキリデン-NH2)から選ばれる。
【0125】
更なるいくつかの好ましい実施形態において、Raは-C1~C4アルキリデン-NH-C(=O)-C1~C4アルキリデン-OH、-C1~C4アルキリデン-NH-C(=O)-C1~C4アルキリデン-NH2である。
【0126】
更なるいくつかの好ましい実施形態において、Raは-C2~C4アルケニレン-NH2又は-C2~C4アルケニレン-OH、例えば、-CH=CH-CH2-NH2又は-CH=CH-CH2-OHである。
【0127】
更なるいくつかの好ましい実施形態において、Raは-C1~C4アルキリデン-OH、-C1~C4アルキリデン-O-C1~C4アルキリデン-NH2、又は-C1~C4アルキリデン-NH2である。
【0128】
いくつかのより好ましい実施形態において、Raは-C1~C4アルキリデン-OHである。いくつかの態様において、Raはヒドロキシメチル基である。いくつかの態様において、Raはヒドロキシエチル基である。いくつかの態様において、Raはヒドロキシプロピル基である。
【0129】
別のいくつかのより好ましい実施形態において、Raは-C1~C4アルキリデン-NH2である。いくつかの態様において、Raはアミノメチル基である。いくつかの態様において、Raはアミノエチル基である。いくつかの態様において、Raはアミノプロピル基である。
【0130】
好ましくは、薬物Dは、その遊離ヒドロキシ基又はアミノ基を介してリンカ-Lに結合して、抗体にコンジュゲ-トする。より好ましくは、式D又は式Da若しくはDbの薬物DはRaのヒドロキシ基又はアミノ基を介して、リンカ-Lに結合して、抗体にコンジュゲ-トする。好ましくは、リンカ-に結合した後のRaは、以下から選ばれる構造を有し、
【化12】
、そのうち、nは1~4の整数であり、好ましくは、n=2又は3であり、そのうち、R'はH又はC1~C4アルキル基であり、好ましくは、Hであり、そのうち、左側の波線はリンカ-Lに結合した位置を表し、右側のアスタリスクはカンプトテシン親核に結合した位置を表し、
より好ましくは、リンカ-に結合した後のRaは以下から選ばれる構造を有し、
【化13】
最も好ましくは、リンカ-に結合した後のRaは以下から選ばれる構造を有し、
【化14】
、そのうち、左側の波線はリンカ-Lに結合する位置を表し、右側のアスタリスクはカンプトテシン親核に結合した位置を表す。
いくつかの好ましい実施形態において、本発明の式(I)におけるL-Dユニットは、以下の構造を含む:
【化15】
より好ましくは、式(I)におけるL-Dユニットは、以下の構造を含む:
【化16】
【0131】
リンカ-Lユニット
本発明に適したリンカ-Lは、本発明の抗体を薬物にカップリングさせることができる任意のリンカ-であってもよい。適切には、リンカ-を加えることにより、循環器系における本発明のADCの十分な安定性が保証されると同時に、標的部位(例えば、腫瘍細胞又は腫瘍環境)において、毒性薬物の活性形態の迅速且つ効果的な放出を提供することができる。
【0132】
いくつかの実施形態において、本発明の式(I)のリンカ-は、非分解性リンカ-である。非分解性リンカ-の例は、N-スクシンイミド-4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1-カルボキシレ-ト(SMCC)を含むが、これらに制限されない。通常、そのようなリンカ-を含むADCは、細胞内で内在化されなければならず、ADCの抗体部分は、細胞内リソソ-ムプロテア-ゼによって分解され、薬物活性分子を放出する。
【0133】
更なるいくつかの実施形態において、本発明の式(I)のリンカ-は、分解性リンカ-である。そのようなリンカ-を含むADCの薬物放出は、リンカ-中の切断部位の性質によって誘発される。従って、そのようなリンカ-の切断部位は、標的治療部位(例えば、腫瘍細胞リソソ-ム及び/又は腫瘍環境)の特性に応じて設計されてもよい。ほとんどの場合、分解性リンカ-は、コンジュゲ-ト部分、分解性部分、及び任意選択的なスペ-サ-基部分から構成されてもよい。コンジュゲ-ト部分は、リンカ--薬物への抗体の結合を担っており、所望の抗体カップリング化学に応じて選ばれてもよい。分解性部分は、酵素に基づく放出メカニズム下で、酵素によって認識されるペプチド又はペプチド類似体、例えば、タンパク質分解酵素によって分解され得るVal-Ala、Val-Cit、Phe-Lys、Gly-Phe-Leu-Gly、Ala-Leu-Ala-Leu、Gly-Gly-Phe-Gly、シクロブチル-Ala、シクロブチル-Citなどのオリゴペプチド又はオリゴペプチド類似体を含む。いくつかの場合において、ADCの特性、例えば、血液循環におけるADCの安定性及び/又は標的部位におけるADCの薬効は、リンカ-中の酵素切断部位に隣接するペプチド残基の位置に修飾を導入することによって改善することができる。いくつかの場合において、必要に応じて、リンカ-の分解性部分と薬物Dの間にスペ-サ-基を導入することにより、コンジュゲ-トの残りの部分からの薬物活性分子の放出(特に、無痕放出)を促進することができ、例えば、酸性媒体中で自発的に除去できるパラアミノ安息香酸(PABA)又はアミノメチル(-NHCH2-)スペ-サ-である。また、薬物の疎水性が高い場合、いくつかの場合において、ADCの特性を改善するために、例えば沈殿や凝集を減少するためにPEGユニットの添加が考慮されてもよい(但し、必須ではない)。本発明に適したリンカ-は、WO2022/170971(当該文献は参照により本明細書に組み込まれる)に開示されているリンカ-を含むが、これらに限定されない。
【0134】
いくつかの実施形態において、本発明の式(I)におけるリンカ-Lは、以下の式(II)の構造を有し、
-Z-Y-M- (II)、
そのうち、
Zは、Abと結合するリンカ-基であり、
Yは、2個~5個のアミノ酸のペプチド、好ましくはジペプチド、トリペプチド又はテトラペプチドであり、
Mは存在しないか、又は薬物Dと結合するためのスペ-サ-基である。
【0135】
Zリンカ-基
通常、抗体システインのチオ基はジスルフィド結合の形態で存在する。抗体のジスルフィド結合を開けば、遊離スルフヒドリル基をカップリング部位として提供することができる。抗体のスルフヒドリル基にカップリングしてADCを形成する1つの方法は、抗体上の遊離スルフヒドリル基を複素環(例えば、マレイミド類)リンカ-とMichael付加反応させることである。別の方法は、脱離基で置換されたヘテロ芳香環を含むリンカ-を、抗体分子中の遊離スルフヒドリル基と求核置換反応させて、抗体-薬物コンジュゲ-トを得ることである。2つの方法は何れも本発明のADCコンジュゲ-トに適する。従って、本発明によるリンカ-は、いくつかの態様において、複素環類(例えば、マレイミド類)又はヘテロアリ-ル環類(例えば、ピリミジニ類)のZリンカ-を含んでもよく、且つ、いくつかの場合において、好ましくは、血液循環中でより高い安定性を有するコンジュゲ-トを提供するために、ヘテロ芳香環類(例えば、ピリミジニ類)リンカ-を含む。
【0136】
いくつかの実施形態において、式(II)中のZは、以下の構造を有し、
-Z1-Z2-Z3-Z4-、
そのうち、Z1はAbにおける硫黄原子であり、
Z2は、5員~10員ヘテロシクリル基であり、好ましくはN、S及びOから選ばれる1個又は2個のヘテロ原子を含み、
Z3は結合、-C(=O)-、-C1~C10アルキリデン-C(=O)-、-C3~C10アルキニレン-C(=O)-、-C3~C10アルケニレン-C(=O)-、-C1~C10ヘテロアルキレン-C(=O)-、-C3~C8シクロアルキレン-C(=O)-、-O-C1~C8アルキリデン-C(=O)-、-アリ-レン-C(=O)-、-C1~C10アルキリデン-アリ-レン-C(=O)-、-アリ-レン-C1~C10アルキリデン-C(=O)-、-C1~C10アルキリデン-C3~C8シクロアルキレン-C(=O)-、-C3~C8シクロアルキレン-C1~C10アルキリデン-C(=O)-、-C3~C8ヘテロシクリレン-C(=O)-、-C1~C10アルキリデン-C3-C8ヘテロシクリレン-C(=O)-、-C3~C8ヘテロシクリレン-C1~C10アルキリデン-C(=O)-から選ばれ、
Z4は結合、又は以下の式で表されるPEGユニットであり、
【化17】
、そのうち、R5はC1-4アルキリデン基、-NH-、-NH-C1-4アルキリデン-ヘテロアリ-ル-から選ばれ、そのうち、ヘテロアリ-ル基は5員又は6員の窒素含有ヘテロアリ-ル基、好ましくはトリアゾリル基であり、R6は-C(=O)-、-C1-4アルキリデン基、-C1-4アルキリデン-C(=O)-、-NH-C(=O)-(CH2OCH2)-C(=O)-、-C1-4アルキリデン-NH-C(=O)-(CH2OCH2)-C(=O)-であり、そのうち、mは2~12の整数、例えば、m=2、4、6又は8である。
【0137】
一実施形態において、Z2は5員~10員ヘテロアリ-ル基である。一実施形態において、Z2は1つ又は複数の水素、ハロゲン、ニトロ基、C1-6アルキル基及びハロC1-6アルキル基で置換されたピリミジン、チアゾ-ル、ベンゾチアゾ-ル、オキサゾ-ル、キナゾリン及びピロロ[2,3d]ピリミジンから独立的に選ばれる群より選ばれる。いくつかの実施形態において、Z2は以下から選ばれるヘテロアリ-ル基であり、
【化18】
、そのうち、Z2はヘテロ原子に隣接する炭素原子によってZ1に結合する。好ましい実施形態において、Z2はピリミジニレン基であり、好ましくは
【化19】
であり、より好ましくは
【化20】
であり、そのうち、左側の波線はZ1に結合する位置を表し、右側の波線はZ3に結合する位置を表す。
【0138】
いくつかの実施形態において、Z2はマレイミド基であり、
【化21】
、そのうち、左側の波線はZ1に結合する位置を表し、右側の波線はZ3に結合する位置を表す。
【0139】
いくつかの実施形態において、Z3は-C3~C8ヘテロシクリレン-C(=O)-、-C1~C10アルキリデン-C3~C8ヘテロシクリレン-C(=O)-、-C3~C8ヘテロシクリレン-C1~C10アルキリデン-C(=O)-であり、好ましくは、そのうち、上記ヘテロシクリレン基における複素環とは、トリアゾ-ル、ピラゾ-ル、チアゾ-ル、オキサゾ-ル、イソオキサゾ-ル、又はピリダジンなどの複素芳香環基である。
【0140】
いくつかの実施形態において、Z3は-C3~C8ヘテロアリ-レニル-C1~C10アルキリデン-C(=O)-であり、特に、
【化22】
そのうち、n'は1~6、好ましくは、Z3
【化23】
より好ましくは
【化24】
であり、
そのうち、左側の波線はZ2に結合する位置を表し、右側の波線はZ4に結合する位置を表し、且つそのうち好ましくは、Z2はピリミジニレン基である。
いくつかの実施形態において、Z3はアリ-レン-又はヘテロアリ-レニル-C(=O)-であり、特に、
【化25】
、そのうち、Z3は-C-(=O)-によってZ4に結合して、且つそのうち好ましくは、Z2はピリミジニレン基である。
【0141】
別のいくつかの実施形態において、Z3は-(C≡C)-C1-5アルキリデン-C(=O)-、-(CH=CH)-C1-5アルキリデン-C(=O)-、-C1-6アルキリデン-C(=O)-、又は-C3-8シクロアルキレン-C(=O)-であり、そのうち、Z3は-C-(=O)-によってZ4に結合する。
【0142】
いくつかの好ましい実施形態において、Z2はピリミジニレン基であり、Z3は-C(=O)-である。
【0143】
いくつかの好ましい実施形態において、Z2はピリミジニレン基であり、Z3は-(C≡C)-C1-5アルキリデン-C(=O)-又は-(CH=CH)-C1-5アルキリデン-C(=O)-、特に、-(C≡C)-C1-5アルキリデン-C(=O)-である。
【0144】
いくつかの好ましい実施形態において、Z2はマレイミド基であり、Z3は-C1-6アルキリデン-C(=O)-、又は-C3-8シクロアルキレン-C(=O)-である。
【0145】
いくつかの実施形態において、Z4は結合であり、Z3は式(II)におけるYに直接に結合する。
【0146】
いくつかの実施形態において、Z4は2個~12個のPEGを含むユニットである。いくつかの実施形態において、Z4
【化26】
であり、そのうち、m=1~8、例えば、2、3、4、5、6、7又は8である。
【0147】
いくつかの実施形態において、Z4は、
【化27】
から選ばれ、そのうち、左側の波線はZ3に結合する位置を表し、右側の波線は式IIにおけるYに結合する位置を表す。
【0148】
いくつかの実施形態において、式(I)における本発明のZは、以下の構造
【化28】
を有し、そのうち、x1=1~8、例えば、x1=3である。
【0149】
いくつかの実施形態において、式(I)における本発明のZは、以下の構造
【化29】
を有し、そのうち、x2=1~6である。
【0150】
いくつかの好ましい実施形態において、本発明の式(I)におけるZは以下の構造を有する:
【化30】
、そのうち、SはAbにおける硫黄原子であり、且つ、Rbは非置換又は置換された-C3-10アルキニル-C(=O)-又は-C3-10アルケニル-C(=O)-であり、
好ましくは、Rb
【化31】
であり、
そのうち、左側の波線はピリミジニル基に結合する位置を表し、右側の波線はYに結合する位置を表し、
より好ましくは、Zは以下の構造を有する:
【化32】
【0151】
いくつかの実施形態において、式(I)における本発明のZは、以下の構造
【化33】
を有し、そのうち、REは水素、C1-6アルキル基、C1-6アミノアルキル基、C1-6ハロアルキル基、C1-6ヒドロキシアルキル基であり、そのうち、y=0~4、例えば、0、2、又は5であり、そのうち、アルキル基、アミノ基及びヒドロキシ基部分は任意選択的に置換され、いくつかの実施形態において、REは任意選択的に置換されたアミノアルキル基であり、例えば、-C1-4アルキリデン-NH2、-C1-4アルキリデンNHRF及び-C1-4アルキリデンN(RF2により置換され、そのうち、各RFはC1-6アルキル基及びC1-6ハロアルキル基から独立的に選ばれ、又は2つのRF基がそれらが結合する窒素と組合せてアゼチジニル基、ピロリジニル基又はピペリジニル基を形成する。
【0152】
いくつかの実施形態において、式(I)における本発明のZは、以下の構造
【化34】
を有する。
【0153】
Yペプチド含有ユニット
ADCの非標的毒性を制限又は最小化にし、同時に標的腫瘍部位での毒素分子の放出を保証する目的のため、いくつかの態様において、腫瘍細胞を高い選択性で標的としながら、腫瘍細胞又は環境中のタンパク質分解酵素(特に、血液と比較して、腫瘍細胞及び/又は腫瘍環境において顕著により高い活性を有する酵素)によって分解され得るように抗体-薬物コンジュゲ-トを設計することが有利である。この目的のために、そのようなタンパク質分解酵素によって認識及び切断され得るオリゴペプチド又はオリゴペプチド類似体を、そのようなADCコンジュゲ-トのリンカ-中に含めることができる。
【0154】
一実施形態において、従って、本発明のリンカ-の一部であるYユニットは、ペプチド含有分解性部分、例えば、2つ又は複数の(例えば、2個~12個、例えば、2個、3個、4個、5個、又は6個)の連続又は非連続アミノ酸を含有する分解性ペプチドリンカ-である。ペプチド含有ユニットの各アミノ酸は、天然アミノ酸又は非天然アミノ酸、例えば、アラニン、アルギニン、アスパラギン酸、アスパラギン、ヒスチジン、グリシン、グルタミン酸、グルタミン、フェニルアラニン、リジン、置換されたリジン、ロイシン、セリン、チロシン、トレオニン、イソロイシン、プロリン、トリプトファン、バリン、システイン、メチオニン、セレノシステイン、オルニチン、β-アラニン、シトルリン、及びそれらの誘導体からなる群より互いに独立的に選ばれることができる。いくつかの実施形態において、各アミノ酸は、アラニン、アルギニン、アスパラギン酸、アスパラギン、ヒスチジン、グリシン、グルタミン酸、グルタミン、フェニルアラニン、リジン、ロイシン、セリン、チロシン、トレオニン、イソロイシン、プロリン、トリプトファン、バリン、システイン、メチオニン、及びそれらの誘導体から独立的に選ばれる。いくつかの実施形態において、各アミノ酸は、アラニン、アルギニン、アスパラギン酸、アスパラギン、ヒスチジン、グリシン、グルタミン酸、グルタミン、フェニルアラニン、リジン、ロイシン、セリン、チロシン、トレオニン、イソロイシン、プロリン、トリプトファン、及びバリン、N-メチルグリシン、β-アラニン、並びにそれらの誘導体から独立的に選ばれる。いくつかの態様において、ADCが腫瘍細胞に内在化した後、Yユニット中のアミド結合は、腫瘍細胞のリソソ-ム中の酵素によって認識され、そして分解され、薬物部分Dを放出する。別の態様において、Yユニット中のアミド結合は、腫瘍環境中の酵素によって認識され、そして分解され、薬物部分Dを放出することができる。腫瘍分布に偏った抗体-薬物コンジュゲ-トを設計することにより、このようなY-ペプチド含有ユニットを有するリンカ-は、腫瘍細胞及び環境における毒素分子の放出を促進する。
【0155】
いくつかの実施形態において、Yは、Val-Cit、Phe-Lys、Val-Ala、Val-Lys-Gly、Ala-Ala-Ala、Val-Ala、Gly-Phe-Leu-Gly、Ala-Leu-Ala-Leu、Gly-Gly-Phe-Gly、シクロブチル-Ala、シクロブチル-Citからなる群より選ばれるユニットを含む。いくつかの実施形態において、Yは、Val、Cit、Phe、Lys、D-Val、Leu、Gly、Ala、Asn、Cit-Val、Val-Ala、Lys-Val、Val-Lys(Ac)、Phe-Lys、Phe-Lys(Ac)、D-Val-Leu-Lys、Gly-Gly-Arg、Ala-Ala-Asnからなる群より選ばれるユニットを含む。
【0156】
いくつかの好ましい実施形態において、Yは置換されたリジンを含むジペプチド、トリペプチド、テトラペプチド又はペンタペプチドである。一実施形態において、上記置換されたリジンは以下のとおりであり、
【化35】
そのうち、R3及びR4は互いに独立的に、H、C1-6アルキル基、-CO-NH2、-CONH(C1-6アルキル)、及び-CONH(C1-6アルキル)2から選ばれ、そのうち、上記アルキル基はハロゲン、C1-6アルコキシ基、C1-6ハロアルキル基、C3-6シクロアルキル基、6員~10員アリ-ル基及び5員~14員ヘテロアリ-ル基から選ばれる基で任意選択的に置換される。
いくつかの好ましい実施形態において、Yは、N末端からC末端まで、以下の式のアミノ酸配列を有するペプチドであり、
Xaa1-Xaa2-Xaa3-Xaa4-Xaa5
そのうち、Xaa1は存在しないか、又はバリン、グリシン、アラニン及びグルタミン酸から選ばれるアミノ酸であり、
Xaa2はフェニルアラニン、ロイシン、アラニン及びバリンから選ばれるアミノ酸であり、好ましくは、バリンであり、
Xaa3は非置換又は置換されたリジンであり、
Xaa4はロイシン、グリシン及びアラニンから選ばれるアミノ酸であり、
Xaa5は存在しないか、又はグリシン及びアラニンから選ばれるアミノ酸であり、
そのうち、上記アミノ酸配列は、N末端がリンカ-のZユニットに結合し、且つC末端がMユニットに結合するか、又は薬物Dに直接に結合し、
好ましくは、Xaa3はε-アミノ基がC1~C3アルキル基で一置換又は二置換されたリジンであり、
より好ましくは、Yは、Phe-Lys-Gly、Leu-lys-Gly、Gly-Val-Lys-Gly、Val-Lys-Gly-Gly、Val-Lys-Gly、Val-Lys-Ala、Val-Lys-Leuからなる群より選ばれるペプチドであり、そのうち、Lys残基は非置換であるか、若しくはC1~C3アルキル基で一置換又は二置換されたリジンである。
【0157】
Mスペ-サ-基
いくつかの実施形態において、本発明のADCコンジュゲ-トは、放出可能なペプチド含有ユニット(Y)と薬物(D)の間にスペ-サ-基(M)を有する。スペ-サ-基は、ペプチド含有ユニット(Y)の薬物Dへの結合を促進する官能基であってもよく、又はコンジュゲ-トの残りからの薬物Dの放出を更に促進する付加的な構造成分(例えば、自己分解性基、例えば、p-アミノベンズアルデヒド(PAB)成分)を提供することができる。
【0158】
いくつかの実施形態において、Yと薬物Dユニットとの間を結合するMスペ-サ-基は、
【化36】
から選ばれてもよく、且つ好ましくは
【化37】
であり、
そのうち、左側の波線はYへの結合を表し、右側の波線は薬物Dユニットへの結合を表す。
【0159】
別のいくつかの実施形態において、Mは共有結合であり、式IにおけるYと薬物Dの間は、アミド結合によって直接結合される。
【0160】
好ましい実施形態において、リンカ-LにおけるY-Mユニットは、以下の構造を含む:
【化38】
且つ好ましくは、上記Y-Mユニットは、以下のZユニット、
【化39】
と結合する。
【0161】
例示的なリンカ-L
いくつかの好ましい実施形態において、本発明の式(I)におけるLは、以下の構造を含むリンカ-である:
【化40】
そのうち、R3及びR4は、それぞれ独立的にメチル基、エチル基、プロピル基から選ばれる。いくつかのより好ましい実施形態において、R3及びR4は何れもメチル基であり、又はR3及びR4は何れもエチル基であり、又はR3及びR4は何れもプロピル基である。
いくつかの実施形態において、本発明の式IのL-Dユニットは、Abの軽鎖及び/又は重鎖の遊離システインのスルフヒドリル基とのチオエ-テル結合の形成によって抗体に結合する。
【0162】
例示的なADCコンジュゲ-ト
いくつかの実施形態において、本発明は、以下の構造を有するADCコンジュゲ-ト又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物を提供し、
【化41】
【0163】
そのうち、qは、1~20の平均DAR値、例えば、約2、4、6及び8の平均DAR値を表す。
【0164】
いくつかの実施形態において、本発明によるADCは、以下の利点の少なくとも1つ又は複数を有し、
-ADCの血液循環における分布に対して、腫瘍環境へのADCの分布及び濃縮を顕著に促進し、
-血漿中のペイロ-ドの早期放出を効果的に制限し、比較的高い血液循環安定性を有し、
-腫瘍環境において、毒性薬物の活性形態の効果的な放出を提供することができ、
-動物に高効率のインビボ腫瘍殺傷効果を付与し、及び
-動物に対する良好な耐性。
【0165】
更なるいくつかの実施形態において、本発明によるADCは、更に以下の利点の少なくとも1つ又は複数を有してもよく、
-毒素-リンカ-の添加は、凝集を誘導せず、且つ、高い薬物負荷を実現することができ、DARは、最大で8に達することができ、及び
-許容されるPK特性。
【0166】
II.抗体-薬物コンジュゲ-トの調製
抗体-薬物コンジュゲ-トの生成は、当業者に公知の任意の技術によって完成することができる。いくつかの態様において、薬物-リンカ-の抗体とのカップリングは、抗体のアミノ酸残基との反応によって完成される。いくつかの実施形態において、脱離基を有するヘテロアリ-ルリンカ-Lを適用し、薬物Dを抗体のシステイン残基にカップリングして、本発明の式Iのコンジュゲ-トを調製する。いくつかの実施形態において、抗体を還元剤、例えばトリス(2-ヒドロキシエチル)ホスフィン(TCEP)で処理する条件を制御することによって、抗体の鎖間ジスルフィド結合を破壊し、且つ遊離スルフヒドリル基をヘテロアリ-ルリンカ--薬物とのカップリングに使用するために露出させることができる。IgG1タイプ抗体では、最大で4つの結合したジスルフィド結合を還元することができ、それにより、カップリングのために最大で8個の反応性スルフヒドリル基を生成する。この方法によって調製されるコンジュゲ-トは、抗体分子当たり0個、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個又は8個の薬物を含むことができる。
【0167】
調製されたコンジュゲ-トが、異なる薬物コンジュゲ-ト部位及び/又は数を有するコンジュゲ-ト組成物である場合、コンジュゲ-トの薬物負荷は、抗体当たりの薬物分子の平均数である平均DARによって表される。産生された抗体-薬物コンジュゲ-ト組成物の調製における抗体当たりの薬物の平均数は、質量分析、ELISA測定、及びHPLCなどの従来の手段によって特徴付けることができる。別のいくつかの実施形態において、qで表される抗体-薬物コンジュゲ-トの定量的分布も決定することができる。qが特定の値である均質な抗体-薬物コンジュゲ-トの、他の薬物負荷量を有する抗体-薬物コンジュゲ-トからの分離、精製、及び特徴付けは、逆相HPLC又は電気泳動などの手段によって実現することができる。
【0168】
従って、本発明の一態様において、qは、単一の抗体(Ab)にカップリングしている薬物-リンカ-(L-D)部分の数を表し、且つ、好ましくは、1~16、1~12、1~10、又は1~8の整数である。この場合、単独のADCコンジュゲ-トは、ADC化合物と呼ばれることもできる。本明細書の何れかの実施形態において、本発明によるADC化合物には、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個又は16個の薬物リンカ-部分が単独の抗体にカップリングすることができる。
【0169】
本発明の別の態様において、qは、調製されたコンジュゲ-ト組成物の平均DARを表す。この場合、qは、1~約16、1~約12、1~約10、又は1~約8、2~約16、2~約12、2~約10、又は2~約8の範囲内の整数又は小数であってもよい。いくつかの態様において、qは、約6の平均DARを表す。いくつかの態様において、qは、約8の平均DARを表す。
【0170】
III.医薬組成物
いくつかの実施形態において、本発明は、本明細書に記載されるADCの何れか、若しくはその薬学的に許容されるその塩又は溶媒和物を含む組成物を提供し、好ましくは、組成物は医薬組成物又は医薬製剤である。一実施形態において、上記組成物は、更に薬用補助材料を含む。一実施形態において、組成物、例えば、医薬組成物であり、本発明のADC若しくはその薬学的に許容される塩又は溶媒和物、及び1種又は複数種の他の治療剤との組合せを含む。
【0171】
本発明は、本発明のADC若しくはその薬学的に許容される塩又は溶媒和物の組合せ(医薬組成物を含む)を更に含む。これらの組成物は、緩衝剤を含む当分野で公知の薬用ベクタ-、薬用賦形剤などの適切な薬用補助材料を更に含んでもよい。
【0172】
本明細書で使用されるように、「薬用ベクタ-」は、生理学的に適合性のある任意の及び全ての溶媒、分散媒体、等張化剤、及び吸収遅延剤などを含む。
【0173】
薬用補助材料の使用及びその用途について、「Handbook of Pharmaceutical Excipients」、第8版、R.C.Rowe、P.J.Seskey及びS.C.Owen、Pharmaceutical Press、London、Chicagoも参照されたい。
【0174】
本発明の組成物は、複数種の形態であってもよい。これらの形態は、例えば、液態溶液剤(例えば、注射用溶液剤及び注入可能な溶液剤)、粉末剤又は懸濁剤、リポソ-ム剤及び座剤などの液体、半固体及び固体剤形を含む。好ましい形態は、所期の投与様式及び治療用途によって決められる。
【0175】
本明細書に記載されるADCを含む薬物は、好ましくは、凍結乾燥製剤又は水溶液の形態で、所望の純度を有する本発明のADC、若しくはその薬学的に許容される塩又は溶媒和物を、1つ又は複数の任意の薬用補助材料と混合することによって調製することができる。
【0176】
本発明の医薬組成物又は製剤は、治療される特定の適応症に必要とされる、好ましくは互いに悪影響を及ぼさない相補的活性を有する1種以上の活性成分を更に含むことができる。例えば、理想的には、化学療法剤、血管新生阻害剤、サイトカイン、細胞傷害性剤、他の抗体、小分子薬物、又は免疫調節剤(例えば、免疫チェックポイント阻害剤又はアゴニスト)などを含む、他の治療剤も更に提供する。上記活性成分は、目的の用途に有効な量で、適切に組合せて存在する。
持続放出製剤を調製することができる。持続放出製剤の適切な実例には、抗体含有の固体疎水性ポリマ-の半透性マトリックスが含まれ、上記マトリックスは、フィルム又はマイクロカプセルなどの形態の成形物品である。
【0177】
IV.医薬組合せ及びキット
いくつかの実施形態において、本発明は、本発明のADC又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物、及び1種又は複数種の他の治療剤(例えば、化学療法剤、血管新生阻害剤、サイトカイン、細胞傷害性剤、他の抗体、小分子薬物又は免疫調節剤(例えば、免疫チェックポイント阻害剤又はアゴニスト)などを含む治療剤)、を含む、医薬組合せ又は医薬組合せ製品を更に提供する。
【0178】
本発明の別の目的は、本発明の医薬組合せを含むパ-ツキットを提供することであり、好ましくは、上記キットは薬物投与ユニットの形態である。これにより、投与レジメン又は薬物投与間隔により投与ユニットを提供することができる。
【0179】
一実施形態において、本発明のパ-ツキットは、同じパッケ-ジ内に、
-本発明のADC又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物を含む医薬組成物を含有する第1の容器と、
-他の治療剤を含む医薬組成物を含有する第2の容器と、を含む。
【0180】
V.用途及び方法
本発明は一態様において、有効量の本発明のADC又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物、医薬組成物、医薬組合せ或いはキットを、対象に投与することを含む、対象において腫瘍(例えば、癌)を予防又は治療する方法を提供する。
【0181】
CLDN18.2は、複数の由来の癌組織細胞表面に選択的に発現するため、癌免疫療法の開発に適する適切な標的である。CLDN18.2は、膵臓癌、食道癌、胃癌などの消化器系癌に高度に選択的に発現することが既に見出されている。従って、一態様において、本発明は、本発明の抗体薬物コンジュゲ-トを予防及び/又は治療有効量で投与することを含む、対象においてCLAUDIN18.2陽性腫瘍を予防及び/又は治療することにおける、本発明の抗体の用途を提供する。いくつかの実施形態において、本発明の抗体薬物コンジュゲ-トは、唯一の活性剤としてもよく、若しくは他の療法又は治療剤と組合せて投与されてもよい。上記他の療法及び治療剤は、例えば、腫瘍細胞表面の抗原を標的とし、これらの分子への結合及び/又は遮断により腫瘍を消滅する薬物と、対象の免疫系を活性化し、それが自発的に腫瘍を消滅するのを促進する薬物と、を含む。
【0182】
いくつかの実施形態において、本発明により治療される腫瘍は、初期、中期又は進行性、若しくは転移性の癌であってもよい。いくつかの実施形態において、本発明により治療される腫瘍は、以前に治療を受けたが、免疫回避が起こった腫瘍である。
【0183】
本発明の方法において、本発明の抗体-薬物コンジュゲ-トの投与は、1)診断された病理的状況若しくは疾患の症状を治癒、緩和、軽減し、及び/又は、当該診断された病理的状況若しくは疾患の進行を停止させる治療的手段、或いは2)病理的状況若しくは疾患の進行を予防及び/又は緩和する予防的若しくは防止的手段、を含んでもよい。いくつかの実施形態において、本発明の方法において、個体は、上記治療的手段又は予防的手段から利益を得ることになり、且つ上記処理を受けていない個体と比較して、疾患、病症、病状、及び/又は症状の発生、再発、若しくは進行における軽減又は改善を示す。いくつかの実施形態において、本発明の方法による治療を受ける前に、上記対象は他の治療、例えば化学療法及び/又は放射線療法、若しくは他の免疫療法を受けているか、或いは受けたことがある。
【0184】
一具体的な実施形態において、本発明の抗体-薬物コンジュゲ-トは、CLDN18.2陽性腫瘍細胞を殺傷し、及び/又はCLDN18.2陽性腫瘍細胞の増殖を阻害することができる。
【0185】
本発明の抗体薬物コンジュゲ-トは、非経口投与、腫瘍内投与及び鼻腔内投与を含む、任意の適切な方法により投与されてもよい。非経口注入には、筋肉内、静脈内、動脈内、腹腔内又は皮下投与が含まれる。一定の程度で投与の短期性又は長期性に応じて、任意の適切な経路により、例えば、静脈内又は皮下注射などの注射により投与することができる。本明細書は、各種の投与スケジュ-ルを含み、単回投与又は複数の時点での複数回投与、ボ-ラス投与及びパルス注入を含むが、これらに限定されない。
【0186】
疾患を予防又は治療するために、本発明の抗体薬物コンジュゲ-トの適切な用量(単独で若しくは1種又は複数種の他の治療剤と組合せて使用される場合)は、治療待ち疾患のタイプ、抗体薬物コンジュゲ-トの具体的なタイプ、疾患の重症度及びプロセス、治療の目的、以前の治療、患者の臨床病歴及び上記抗体薬物コンジュゲ-トに対する応答、並びに担当医の判断力に依存する。本発明の抗体薬物コンジュゲ-トは、1回の治療又は一連の治療により患者に適切に投与されてもよい。
【0187】
いくつかの実施形態において、本発明はまた、上記治療及び予防方法のための薬物の調製における、本発明の抗体薬物コンジュゲ-トの用途を提供する。
【0188】
本発明の抗体部分
本発明はまた、複数種の優れた特性を有するヒト化抗Claudin18.2モノクロ-ナル抗体、それをコ-ドする核酸、上記核酸を含むベクタ-及び宿主細胞、並びに上記抗体を含む免疫複合体、多重特異性抗体、医薬組成物及び用途を提供する。本発明の抗体は、ヒトClaudin18.2を表面発現する細胞(特に、表面発現量が低い細胞)に対して高い結合親和性及び高い特異性を示すだけではなく、ADCC及び/又はCDC活性、Claudin18.2抗原により媒介されるエンドサイト-シス活性、安定性及び/又は薬物動態特性などの有利な特性も有するため、単独で又は他の抗癌薬と組合せて癌治療に使用するのに適しており、分子組成として癌組織を標的とする新規抗癌分子を形成するのにも適しており、例えば、細胞傷害性薬物と複合して抗体-薬物コンジュゲ-トを形成する。
【0189】
I.本発明の抗体
本発明は、Claudin18.2、好ましくはヒトClaudin18.2タンパク質(例えば、NM_001002026のヒトClaudin18.2配列)と特異的に結合する抗体又はその抗原結合断片、特にヒト化抗体又はその抗原結合断片を提供する。一実施形態において、本発明による抗Claudin18.2抗体又はその抗原結合断片は、
(i)配列番号1又は3に示される重鎖可変領域のHCDR1、2及び3配列、並びに配列番号2に示される軽鎖可変領域のLCDR1、2及び3配列、若しくは
(ii)配列番号21に示される重鎖可変領域のHCDR1、2及び3配列、並びに配列番号22に示される軽鎖可変領域のLCDR1、2及び3配列、若しくは
(iii)配列番号23に示される重鎖可変領域のHCDR1、2及び3配列、並びに配列番号24に示される軽鎖可変領域のLCDR1、2及び3配列、若しくは
(iv)配列番号38又は40に示される重鎖可変領域のHCDR1、2及び3配列、並びに配列番号39に示される軽鎖可変領域のLCDR1、2及び3配列、若しくは
(v)配列番号44に示される重鎖可変領域のHCDR1、2及び3配列、並びに配列番号45に示される軽鎖可変領域のLCDR1、2及び3配列、若しくは
(vi)配列番号46に示される重鎖可変領域のHCDR1、2及び3配列、並びに配列番号47に示される軽鎖可変領域のLCDR1、2及び3配列、若しくは
(vii)配列番号48に示される重鎖可変領域のHCDR1、2及び3配列、並びに配列番号49に示される軽鎖可変領域のLCDR1、2及び3配列、若しくは
(viii)配列番号50に示される重鎖可変領域のHCDR1、2及び3配列、並びに配列番号51に示される軽鎖可変領域のLCDR1、2及び3配列、若しくは
(ix)配列番号52に示される重鎖可変領域のHCDR1、2及び3配列、並びに配列番号53に示される軽鎖可変領域のLCDR1、2及び3配列、を含む。好ましくは、上記CDRは、Kabat若しくはIMGT又はその組合せに従って定義される。
【0190】
いくつかの実施形態において、好ましくは、本発明は、重鎖可変領域の3つの相補性決定領域HCDR、及び軽鎖可変領域の3つの相補性決定領域LCDRを含む、Claudin18.2と結合する抗体又はその抗原結合断片を提供し、そのうち、
(i)Kabatにより定義すると、HCDR1は配列番号12のアミノ酸配列を含むか又はそれからなり、HCDR2は配列番号13又は25のアミノ酸配列を含むか又はそれからなり、HCDR3は配列番号14のアミノ酸配列を含むか又はそれからなり、LCDR1は配列番号15のアミノ酸配列を含むか又はそれからなり、LCDR2は配列番号16のアミノ酸配列を含むか又はそれからなり、且つLCDR3は配列番号17のアミノ酸配列を含むか又はそれからなり、若しくは
(ii)IMGTにより定義すると、HCDR1は配列番号6のアミノ酸配列を含むか又はそれからなり、HCDR2は配列番号7のアミノ酸配列を含むか又はそれからなり、HCDR3は配列番号8のアミノ酸配列を含むか又はそれからなり、LCDR1は配列番号9のアミノ酸配列を含むか又はそれからなり、LCDR2は配列番号10のアミノ酸配列を含むか又はそれからなり、且つLCDR3は配列番号11のアミノ酸配列を含むか又はそれからなり、若しくは
(iii)Kabatにより定義すると、HCDR1は配列番号26のアミノ酸配列を含むか又はそれからなり、HCDR2は配列番号27又は37のアミノ酸配列を含むか又はそれからなり、HCDR3は配列番号28のアミノ酸配列を含むか又はそれからなり、LCDR1は配列番号32のアミノ酸配列を含むか又はそれからなり、LCDR2は配列番号33のアミノ酸配列を含むか又はそれからなり、且つLCDR3は配列番号34のアミノ酸配列を含むか又はそれからなり、若しくは
(iv)Kabatにより定義すると、HCDR1は配列番号29のアミノ酸配列を含むか又はそれからなり、HCDR2は配列番号30のアミノ酸配列を含むか又はそれからなり、HCDR3は配列番号31のアミノ酸配列を含むか又はそれからなり、LCDR1は配列番号35のアミノ酸配列を含むか又はそれからなり、LCDR2は配列番号36のアミノ酸配列を含むか又はそれからなり、且つLCDR3は配列番号34のアミノ酸配列を含むか又はそれからなる。
【0191】
本発明はまた、上記(i)~(iv)のCDR配列の組合せの1つの変異体を含む抗体を考慮する。好ましくは、上記変異体は、6つのCDR領域で少なくとも1個の、且つ5個、4個、3個、2個又は1個以下のアミノ酸改変(好ましくは、アミノ酸置換、好ましくは、保存的置換)を含み、且つ好ましくは重鎖CDR3は不変のままである。
【0192】
更なるいくつかの実施形態において、本発明は、以下から選ばれる重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含む、抗Claudin18.2抗体又はその抗原結合断片を提供する。
(i)配列番号1又は3に示される重鎖可変領域若しくはそれと少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有するアミノ酸配列、及び配列番号2に示される軽鎖可変領域若しくはそれと少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有するアミノ酸配列、或いは
(ii)配列番号21に示される重鎖可変領域若しくはそれと少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有するアミノ酸配列、及び配列番号22に示される軽鎖可変領域若しくはそれと少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有するアミノ酸配列、或いは
(iii)配列番号23に示される重鎖可変領域若しくはそれと少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有するアミノ酸配列、及び配列番号24に示される軽鎖可変領域若しくはそれと少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有するアミノ酸配列、或いは
(iv)配列番号38又は40に示される重鎖可変領域若しくはそれと少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有するアミノ酸配列、及び配列番号39に示される軽鎖可変領域若しくはそれと少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有するアミノ酸配列、或いは
(v)配列番号44に示される重鎖可変領域若しくはそれと少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有するアミノ酸配列、及び配列番号45に示される軽鎖可変領域若しくはそれと少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有するアミノ酸配列、或いは
(vi)配列番号46に示される重鎖可変領域若しくはそれと少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有するアミノ酸配列、及び配列番号47に示される軽鎖可変領域若しくはそれと少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有するアミノ酸配列、或いは
(vii)配列番号48に示される重鎖可変領域若しくはそれと少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有するアミノ酸配列、及び配列番号49に示される軽鎖可変領域若しくはそれと少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有するアミノ酸配列、或いは
(viii)配列番号50に示される重鎖可変領域若しくはそれと少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有するアミノ酸配列、及び配列番号51に示される軽鎖可変領域若しくはそれと少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有するアミノ酸配列、或いは
(ix)配列番号52に示される重鎖可変領域若しくはそれと少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有するアミノ酸配列、及び配列番号53に示される軽鎖可変領域若しくはそれと少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有するアミノ酸配列。
【0193】
一実施形態において、好ましくは、本発明の抗Claudin18.2抗体又はその抗原結合断片は、本発明の例示的な抗体25C7A5及びそのヒト化抗体(HZ1とHZ2)並びに2D3A11及びそのヒト化抗体(HZ1とHZ2)の何れか1つの重鎖及び軽鎖可変領域配列又はその変異体、例えば、上記例示的な抗体の1つと同じCDR配列を有し、且つ相同又は相異のフレ-ムワ-ク領域配列を有する抗体を含む。
【0194】
いくつかの好ましい実施形態において、上記抗Claudin18.2抗体又はその抗原結合断片は、重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含み、そのうち、上記重鎖可変領域は、配列番号21に示されるアミノ酸配列若しくはそれと少なくとも95%、96%、97%、98%又は99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、且つそのうち、上記軽鎖可変領域は、配列番号22に示されるアミノ酸配列、若しくはそれと少なくとも95%、96%、97%、98%又は99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。好ましくは、上記抗体又は抗原結合断片は、配列番号21の重鎖可変領域及び配列番号22の軽鎖可変領域を含む。
【0195】
更なるいくつかの好ましい実施形態において、上記抗Claudin18.2抗体又はその抗原結合断片は、重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含み、そのうち、上記重鎖可変領域は、配列番号1又は3に示されるアミノ酸配列若しくはそれと少なくとも95%、96%、97%、98%又は99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、且つそのうち、上記軽鎖可変領域は、配列番号2に示されるアミノ酸配列若しくはそれと少なくとも95%、96%、97%、98%又は99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。好ましくは、上記抗体はヒト化抗体である。より好ましくは、上記抗体の重鎖可変領域は、ヒト生殖細胞系列に由来するフレ-ムワ-ク領域配列を有し、且つ好ましくは重鎖可変領域においてKabatナンバリングによるH6位でアミノ酸Q又はEを有し、好ましくはアミノ酸Qを有する。
【0196】
更なるいくつかの好ましい実施形態において、上記抗体又は抗原結合断片は、配列番号1の重鎖可変領域及び配列番号2の軽鎖可変領域を含む。
【0197】
更なるいくつかの好ましい実施形態において、上記抗体又は抗原結合断片は、配列番号3の重鎖可変領域及び配列番号2の軽鎖可変領域を含む。
【0198】
いくつかの好ましい実施形態において、上記抗Claudin18.2抗体又はその抗原結合断片は、重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含み、そのうち、上記重鎖可変領域は、配列番号23に示されるアミノ酸配列若しくはそれと少なくとも95%、96%、97%、98%又は99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、且つそのうち、上記軽鎖可変領域は、配列番号24に示されるアミノ酸配列、若しくはそれと少なくとも95%、96%、97%、98%又は99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。好ましくは、上記抗体又は抗原結合断片は、配列番号23の重鎖可変領域及び配列番号24の軽鎖可変領域を含む。
【0199】
更なるいくつかの好ましい実施形態において、上記抗Claudin18.2抗体又はその抗原結合断片は、重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含み、そのうち、上記重鎖可変領域は、配列番号38又は40に示されるアミノ酸配列若しくはそれと少なくとも95%、96%、97%、98%又は99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、且つそのうち、上記軽鎖可変領域は、配列番号39に示されるアミノ酸配列若しくはそれと少なくとも95%、96%、97%、98%又は99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。好ましくは、上記抗体はヒト化抗体である。より好ましくは、上記抗体の重鎖可変領域は、ヒト生殖細胞系列に由来するフレ-ムワ-ク領域配列を有し、且つ好ましくは重鎖可変領域においてKabatナンバリングによるH6位でアミノ酸Q又はEを有し、好ましくはアミノ酸Qを有する。
【0200】
更なるいくつかの好ましい実施形態において、上記抗体又は抗原結合断片は、配列番号38の重鎖可変領域及び配列番号39の軽鎖可変領域を含む。
【0201】
更なるいくつかの好ましい実施形態において、上記抗体又は抗原結合断片は、配列番号40の重鎖可変領域及び配列番号39の軽鎖可変領域を含む。
【0202】
いくつかの実施形態において、本発明の抗体は、重鎖定常領域及び/又は軽鎖定常領域を含んでもよい。好ましくは、上記重鎖定常領域は、ヒト免疫グロブリンに由来する重鎖定常領域である。好ましくは、上記軽鎖定常領域は、ヒト免疫グロブリンに由来する軽鎖定常領域である。
【0203】
本発明の抗体に含まれる重鎖定常領域は、任意のアイソタイプ又はサブタイプ、例えば、IgG1、IgG2、IgG3又はIgG4アイソタイプの重鎖定常領域であってもよい。いくつかの実施形態において、従って、本発明は、IgG1、IgG2、IgG3又はIgG4重鎖定常領域、好ましくはIgG1重鎖定常領域、特にヒトIgG1重鎖定常領域を含む、抗Claudin18.2抗体を提供する。
【0204】
本発明の抗体に含まれる軽鎖定常領域は、κ軽鎖定常領域又はλ軽鎖定常領域であってよい。いくつかの実施形態において、従って、本発明は、κ軽鎖定常領域又はλ軽鎖定常領域を含む抗Claudin18.2抗体を提供し、好ましくは、本発明の抗体はヒトκ軽鎖定常領域を含む。
【0205】
いくつかの実施形態において、本発明による抗体はIgG1抗体、更に特に、IgG1κ又はIgG1λアイソタイプである。より好ましくは、本発明による抗体はヒトIgG1κ抗体である。
【0206】
いくつかの実施形態において、本発明の抗Claudin18.2抗体は、ヒトIgG1重鎖定常領域を含む。好ましくは、上記重鎖定常領域は、配列番号4のアミノ酸配列、若しくは配列番号4のアミノ酸配列に対して少なくとも1個、2個又は3個の、但し20個、10個又は5個以下のアミノ酸改変を含むアミノ酸配列、或いは配列番号4のアミノ酸配列と少なくとも95%~99%の同一性を有する配列を含む。
【0207】
いくつかの実施形態において、本発明の抗Claudin18.2抗体は、ヒトκ軽鎖定常領域を含む。好ましくは、上記軽鎖定常領域は、配列番号5のアミノ酸配列、若しくは配列番号5のアミノ酸配列に対して少なくとも1個、2個又は3個の、但し20個、10個又は5個以下のアミノ酸改変を含むアミノ酸配列、或いは配列番号5のアミノ酸配列と少なくとも95%~99%の同一性を有する配列を含む。
【0208】
いくつかの好ましい実施形態において、本発明の抗体は、
(a)配列番号18のアミノ酸配列を含む重鎖配列、及び配列番号20のアミノ酸配列を含む軽鎖配列、
(b)配列番号19のアミノ酸配列を含む重鎖配列、及び配列番号20のアミノ酸配列を含む軽鎖配列、
(c)配列番号41のアミノ酸配列を含む重鎖配列、及び配列番号43のアミノ酸配列を含む軽鎖配列、
(d)配列番号42のアミノ酸配列を含む重鎖配列、及び配列番号43のアミノ酸配列を含む軽鎖配列、から選ばれる重鎖配列及び軽鎖配列を含む。本発明はまた、上記(a)~(d)の何れか1つの抗体を含む変異体を提供し、そのうち、上記変異体は重鎖配列及び/又は軽鎖配列でアミノ酸改変を有する。好ましくは、上記変異体は、重鎖配列又は軽鎖配列又はその両方で、対応する抗体と比較して、少なくとも1個、2個又は3個の、但し20個、10個又は5個以下のアミノ酸改変、若しくは少なくとも80%、85%、90%、92%、95%、97%、98%、99%又はそれ以上の同一性を有するアミノ酸配列を含む。好ましくは、アミノ酸改変はCDR領域で起こらず、より好ましくは、可変領域で起こらない。
【0209】
本発明はまた、本明細書に記載の任意の抗体の変異体、特に本発明の例示的な抗体25C7A5及びそのヒト化抗体(HZ1とHZ2)並びに2D3A11及びそのヒト化抗体(HZ1とHZ2)の何れか1つの変異体を提供する。本発明の抗体の変異体は、好ましくは、改変前の抗体の生物学的活性(例えば、抗原結合能力)の少なくとも60%、70%、80%、90%又は100%を保持する。より好ましくは、上記改変は、抗体の変異体が抗原に対する結合の喪失をもたらさないが、任意選択的に向上した抗原親和性及び異なるエフェクタ-機能などの特性を付与する。抗体の重鎖可変領域又は軽鎖可変領域、若しくは各CDR領域は、単独で又は組合せて改変されてもよいことが理解できる。また、抗体のFc領域を改変することもできる。Fc領域の改変は、単独で、若しくは上記フレ-ムワ-ク及び/又はCDR領域に対する改変と組合せて行われてもよい。例えば、抗体の1種又は複数種の機能、例えば、血清半減期、補体固定、Fc受容体結合、及び/又は抗原依存性細胞傷害性を改変するために、Fc領域を改変してもよい。また、本発明の抗体に対して、化学修飾(例えば、PEGと結合)又はそのグリコシル化パタ-ンの改変を行ってもよい。
【0210】
いくつかの実施形態において、本発明の抗体は、好ましくは単一特異性抗体である。しかし、いくつかの実施形態において、本発明の抗体はまた、多重特異性抗体であってもよく、Claudin18.2に対する第1の結合特異性及び別の抗原に対する結合特異性、例えば腫瘍細胞表面で発現する別の抗原に対する第2及び/又は第3の結合特異性を含む。
【0211】
いくつかの実施形態において、本発明の抗Claudin18.2抗体又はその抗原結合断片は、以下1つ又は複数の特性を有し、
(i)細胞表面に発現されるヒトClaudin18.2と高い親和性で結合するが、ヒトClaudin18.1とは結合しないか又は基本的に結合せず、
(ii)カニクイザル、マウス又はラットClaudin18.2との交差反応性を有し、
(iii)表面にClaudin18.2を発現する細胞、特に胃癌細胞などの腫瘍細胞を殺傷し、
(iv)ADCC活性を有し、
(v)CDC活性を有し、
(vi)Claudin18.2受容体により媒介されるエンドサイト-シス活性を有する。
【0212】
いくつかの実施形態において、本発明の抗体はClaudin18.2に対して高い結合親和性及び高い結合特異性を有する。本明細書において、好ましくは、FACS又は細胞ELSA測定(例えば、実施例I-7に記載の測定)により、本発明の抗体のClaudin18.2及び/又はClaudin18.1に対する結合親和性及び結合特異性を決定する。一実施形態において、細胞に基づく測定では、本発明の抗体のClaudin18.1に対する結合親和性は、上記抗体のClaudin18.2に対する結合親和性よりも、少なくとも10倍、100倍、103倍、104倍、105倍又は106倍低い。一実施形態において、好ましくは、本発明の抗体は、Claudin18.1発現細胞に結合しないか又は基本的に結合しない。
【0213】
一実施形態において、細胞に基づく測定では、例えば、ヒトClaudin18.2発現陽性率が95%又は98%より大きい組換え細胞株を用いて行われた細胞ELISA測定において、本発明の抗体は、ヒトClaudin18.2に対する高い結合親和性を示し、300 ng/mLより小さく、特に約100 ng/mLより小さく、例えば約1 ng/mL~50 ng/mL、且つ好ましくは約20 ng/mLより小さいEC50値を有する。好ましくは、上記測定は、実施例I-7に記載の細胞ELISA測定方法に従って行われる。好ましくは、ヒトClaudin18.2を安定的に発現する組換えHEK-293T細胞株を使用して測定を行う。
【0214】
更なる実施形態において、細胞に基づく測定では、参照抗体IMAB362と比較して、本発明の抗体はヒトClaudin18.2に対して相当の又はより強い結合親和性を有する。いくつかの実施形態において、参照抗体IMAB362と比較して、ヒトClaudin18.2表面発現における陽性率が高い細胞(例えば、陽性率が95%より大きい)の細胞では、本発明の抗体は相当の細胞結合親和性を示し、別のいくつかの実施形態において、ヒトClaudin18.2表面発現における陽性率が低い(例えば、陽性率が50%より小さく、例えば約2%~30%である)細胞では、本発明の抗体はより強い細胞結合親和性を示す。上記測定において、ヒトClaudin18.2を組換え発現する哺乳動物細胞株、例えば、HEK29又はL929若しくはNUGC4細胞を使用してもよく、また、ヒトClaudin18.2を内因性発現する腫瘍細胞株、例えばNUGC4細胞を使用してもよい。好ましくは、細胞ELISA測定方法を使用して、実施例I-7に記載の通りに行うか、又はFACS測定方法を使用して、実施例I-8に記載の通りに行う。好ましくは、参照抗体IMAB362と比較して、細胞表面におけるClaudin18.2の平均発現レベルが低い細胞、例えば、ヒトClaudin18.2を内因性発現するNUGC4細胞に対して、本発明の抗体はより強い細胞結合活性を示す。
【0215】
一実施形態において、細胞に基づく測定では、本発明の抗体はClaudin18.1に対する非特異的結合を示す。Claudin18.1発現細胞に対する抗体のこの結合特性は、FACS測定において、任意選択的に陰性及び/又は陽性対照と比較して測定されてもよい。好ましくは、上記測定方法において、抗体の陽性細胞染色パ-セント及び/又は細胞の蛍光染色強度値を決定する。一実施形態において、ヒトClaudin18.1発現陽性率が95%又は98%より大きい組換え細胞株を用いて、本発明の抗体の陽性細胞率は、3%未満(好ましくは2%未満、より好ましくは1%未満、更に好ましくは0.7%未満)であり、且つ好ましくは、本発明の抗体により生成された中位及び/又は平均蛍光シグナル強度は、アイソタイプ対照抗体により生成された中位/平均シグナルと相当する(例えば、±20%、又は好ましくは±10%)。好ましくは、上記測定は、実施例I-10に記載のFACS測定方法に従って行われる。好ましくは、ヒトClaudin18.1を安定的に発現する組換えHEK-293T細胞株を使用して測定を行う。
【0216】
一実施形態において、本発明の抗体はADCC活性を有する。本発明の抗体のADCC活性を実施例I-11に記載の通りに測定することができる。好ましくは、上記測定において、本発明の抗体は、約100 ng/mLより小さく、例えば80 ng/mL~50 ng/mL、又はより好ましくは約50 ng/mLより小さいEC50値を示す。
【0217】
更なるいくつかの実施形態において、本発明の抗体はCDC活性を有する。本発明の抗体のCDC活性を実施例I-12に記載の通りに測定することができる。好ましくは、上記測定において、本発明の抗体は、約5 μg/mLより小さく、例えば約1 μg/mL~4 μg/mLのCDC活性を示す。
【0218】
更なるいくつかの実施形態において、本発明の抗体は、細胞膜表面の受容体Claudin18.2と結合した後にエンドサイト-シス活性を有する。本発明の抗体のエンドサイト-シス活性を実施例I-13に記載の通りに測定することができる。好ましくは、上記エンドサイト-シス活性評価測定試験において、本発明の抗体のエンドサイト-シス率は、例えば、37℃、4時間でのエンドサイト-シス率が少なくとも10%、例えば10%~25%であり、好ましくは少なくとも20%である。
【0219】
更なる実施形態において、本発明の抗Claudin18.2抗体又はその抗原結合断片は、(vii)良好な安定性、及び(viii)有利な薬物動態特性のうちの1つ又は複数の特性を更に有する。
【0220】
一実施形態において、本発明の抗体の安定性を実施例I-14に記載の方法に従って測定することができる。好ましくは、加速安定性測定において、37℃で3日間~14日間放置した後、抗体のSEC-HPLC純度は95%以上、好ましくは97%以上であり、及び/又は、非還元CE-SDS純度は90%以上、好ましくは93%以上であり、及び/又は、還元CE-SDS純度は90%以上、好ましくは95%以上である。より好ましくは、繰り返し凍結融解測定において、-80℃で4回又は8回繰り返して凍結融解した後、抗体のSEC-HPLC純度は95%以上、好ましくは97%以上である。
【0221】
別の実施形態において、実施例I-15に記載の方法に従って本発明の抗体の薬物動態特性を測定することができる。
【0222】
II.ポリヌクレオチド、ベクタ-及び宿主
更なる態様において、本発明は、上記任意の抗Claudin18.2抗体又はその断片をコ-ドする核酸を提供する。上記核酸を含むベクタ-、及び上記核酸又は上記ベクタ-を含む宿主細胞を更に提供する。
【0223】
一実施形態において、本発明は、クロ-ニングベクタ-及び発現ベクタ-を含む、本発明の核酸を含む1つ又は複数のベクタ-を提供する。一実施形態において、ベクタ-は、真核細胞発現ベクタ-などの発現ベクタ-である。本発明に使用可能なベクタ-は、ウイルス、プラスミド、コスミド、λファ-ジ又は酵母人工染色体(YAC)を含むが、これらに限定されない。
【0224】
一実施形態において、本発明は、本発明のベクタ-を含む宿主細胞を提供する。コ-ドされた抗体をクロ-ニング又は発現するためのベクタ-の適切な宿主細胞は、原核又は真核細胞を含む。例えば、特にグリコシル化及びFcエフェクタ-機能が必要とされない場合、抗体は細菌において生成されてもよい。大腸菌などの細菌で発現した後、可溶性画分中の細菌細胞ペ-ストから抗体を単離し、更に精製することができる。更なる実施形態において、宿主細胞は真核細胞である。別の実施形態において、宿主細胞は、酵母細胞、哺乳動物細胞、若しくは抗体又はその抗原結合断片の調製に適した他の細胞から選ばれる。有用な哺乳動物宿主細胞株の実例には、SV40で形質転換されたサル腎CV1株(COS-7)、ヒト胎児腎株(293HEK又は293細胞)、DHFR-CHO細胞を含むチャイニ-ズハムスタ-卵巣(CHO)細胞、及びY0、NS0とSp2/0などの骨髄腫細胞株が含まれる。
【0225】
III.抗体の調製
更なる態様において、本発明は、本発明の抗Claudin18.2抗体を調製する方法を提供する。一実施形態において、本発明の方法は、抗体の発現に適した条件下で、本発明の抗体をコ-ドする核酸を含む宿主細胞を培養することと、任意選択的に上記宿主細胞(又は宿主細胞培地)から上記抗体を回収することと、を含む。抗Claudin18.2抗体の組換え生成のために、単離された、又は人工合成された、又は組換え合成された、抗体(例えば、前文に記載の抗体)をコ-ドする核酸を、宿主細胞において更にクロ-ニング及び/又は発現するために、1つ又は複数のベクタ-に挿入することができる。このような核酸を、従来のプロセスで容易に単離及びシ-クエンシングすることができ、例えば、抗体の重鎖及び軽鎖をコ-ドする遺伝子と特異的に結合できるオリゴヌクレオチドプロ-ブを使用することにより、ハイブリド-マ細胞から単離する。
【0226】
IV.免疫複合体
更なる態様において、本発明は、本発明の抗体を異種分子と複合することにより生成される免疫複合体を提供する。一実施形態において、本発明の抗体(又はその抗原結合断片)は、免疫複合体において、治療剤又は診断剤若しくは検出可能な薬剤と複合する。いくつかの実施形態において、本発明の抗体は、全長抗体又は抗体断片の形態で異種分子と複合することができる。複合体において、リンカ-により複合体の異なる実体を共有結合することができる。適切なリンカ-には、化学的リンカ-又はペプチドリンカ-が含まれる。有利なことに、リンカ-は、標的部位へ送達した後のポリペプチドの放出を容易にする「切断可能なリンカ-」である。例えば、酸不安定性リンカ-、ペプチダ-ゼ感受性リンカ-、光不安定性リンカ-、ジメチルリンカ-又はジスルフィド含有のリンカ-を使用することができる。
【0227】
治療剤と複合する実施形態において、複合体に適した治療剤は、細胞毒素(例えば、細胞増殖阻害剤又は細胞殺傷剤)、薬物又は放射性同位体を含むが、これらに限定されない。診断剤又は検出可能な薬剤と複合する実施形態において、このような複合体は、疾患又は病症の発症、形成、進行及び/又は重症度をモニタリング又は予測するための臨床検査方法の一部(例えば、特定の療法の効力を決定する)として使用されてもよい。このような診断及び検出は、抗体を検出可能な薬剤にカップリングさせることにより実現でき、上記検出可能な薬剤は、ホ-スラディッシュペルオキシダ-ゼなどの複数種の酵素、ストレプトアビジン/ビオチン及びアビジン/ビオチンなどの補欠分子族、蛍光物質、発光物質、放射性物質、並びに各種の陽電子放出撮影法において使用するための陽電子放出金属及び非放射性常磁性金属イオンを含むが、これらに限定されない。
【0228】
V.医薬組成物及び医薬製剤
本発明は、抗Claudin18.2抗体又はその免疫複合体を含む組成物(医薬組成物又は医薬製剤を含む)、及び抗Claudin18.2抗体又はその免疫複合体をコ-ドするポリヌクレオチドを含む組成物を更に含む。これらの組成物は、緩衝剤を含む当分野で公知の薬用ベクタ-、薬用賦形剤などの適切な薬用補助材料を更に任意選択的に含んでもよい。賦形剤の使用及びその用途については、「Handbook of Pharmaceutical Excipients」、第5版、R.C.Rowe、P.J.Seskey及びS.C.Owen、Pharmaceutical Press、London、Chicagoを参照されたい。いくつかの実施形態において、所望の純度を有する本発明の抗Claudin18.2抗体又は免疫複合体を、1種又は複数種の任意選択的な薬用補助材料(Remington's Pharmaceutical Sciences、第16版、Osol、A.編集(1980))と混合することにより、本発明を含む医薬製剤を調製することができる。
【0229】
本発明の医薬組成物及び医薬製剤において、本発明の抗体は唯一の活性剤であってもよく、又は他の治療剤と組合せてもよい。本発明の抗体と組合せることができる治療剤は、治療待ち疾患及び/又は病症に対して有益な治療効果を有する治療剤を含むが、これらに限定されない。例えば、上記活性成分は、治療される特定の適応症に必要なものであってもよく、好ましくは、互いに悪影響を及ぼしない相補的活性を有する活性成分である。例えば、抗癌活性を提供することができる他の薬物成分である。本発明の抗体は、医薬組成物及び医薬製剤において、目的用途に有効な量で活性成分と適切に組合せて存在する。
【0230】
VI.組合せ製品
更なる態様において、本発明は、本発明の抗体又はその抗原結合断片、多重特異性抗体又は免疫複合体、及び1種又は複数種の他の治療剤(例えば、化学療法剤、他の抗体、細胞傷害性剤、抗腫瘍薬など)を含む、組合せ製品を更に提供する。組合せ製品を構成する本発明の抗体及び他の治療剤などの成分は、異なる製剤にそれぞれ調製されてもよく、且つ好ましくは、異なる容器に収容される。組合せ製品の各成分の投与方法及び投与順序は、治療待ち疾患及び個体の状況などの要因に応じて、当業者により決定することができる。本発明の組合せ製品は、本発明の治療方法に使用することができる。いくつかの実施形態において、本発明は組合せ製品を提供し、そのうち、上記他の治療剤は、例えば、免疫応答を有効に刺激することにより対象の免疫応答を更に増強、刺激、又はアップレギュレ-トする治療剤、例えば、抗体である。いくつかの実施形態において、上記組合せ製品は、Claudin18.2陽性腫瘍の予防又は治療のために使用される。
【0231】
VII.方法及び用途
一態様において、本発明は、本発明のClaudin18.2抗体又はその抗原結合断片を使用する方法及び用途を提供し、例えば、インビボ及びインビトロで、
(1)CLAUDIN18.2を表面発現する腫瘍細胞と標的結合すること、並びに/若しくは
(2)CLAUDIN18.2を表面発現する腫瘍細胞に対するADCC活性及び/又はCDC活性を誘発すること、並びに
(3)CLAUDIN18.2を表面発現する腫瘍細胞を阻害及び/又は殺傷すること、のために使用される。
【0232】
いくつかの実施形態において、本発明の方法及び用途は、対象個体における疾患の治療に関する。別のいくつかの実施形態において、本発明の方法及び用途は、例えば、対象に由来する試料においてClaudin18.2の存在を検出することに関する。更なるいくつかの実施形態において、本発明はまた、上記用途のための製品(例えば、医薬組成物、又は医薬製品、又は組合せ製品、又は検出製品)の調製における、本発明の抗Claudin18.2抗体又はその抗原結合断片の用途を提供する。
【0233】
治療方法及び用途
一態様において、本発明は、本発明の抗体を予防及び/又は治療有効量で投与することを含む、対象においてCLAUDIN18.2陽性腫瘍を予防及び/又は治療することにおける、本発明の抗体の用途を提供する。
【0234】
本発明の方法において、本発明の抗体の投与は、1)診断された病理的状況若しくは疾患の症状を治癒、緩和、軽減し、及び/又は、当該診断された病理的状況若しくは疾患の進行を停止させる治療的手段、或いは2)病理的状況若しくは疾患の進行を予防及び/又は緩和する予防的若しくは防止的手段、を含んでもよい。従って、本発明の方法において、対象は、既に疾患に罹患した個体、疾患に罹患しやすい個体、又は疾患の予防を意図する個体であってもよい。上記個体は、上記治療的手段又は予防的手段から利益を得ることになり、且つ上記処理を受けていない個体と比較して、疾患、病症、病状、及び/又は症状の発生、再発、若しくは進行における軽減又は改善を示す。いくつかの実施形態において、本発明は疾患又は病症の治療に関し、別のいくつかの実施形態において、本発明は疾患又は病症の予防に関する。
【0235】
いくつかの実施形態において、本発明の方法に使用するための本発明の抗体は、免疫エフェクタ-機能を引き起こすFc領域を含み、且つCLDN18.2を表面発現する細胞(例えば、癌細胞)と結合した後に、ADCC及び/又はCDC活性などの免疫効果を誘導する。従って、本発明の治療方法の一実施形態において、本発明の抗体又はその融合物、複合体若しくは組成物は、CDCにより媒介される細胞の溶解、又はADCCにより媒介される細胞の溶解、若しくはその両方を誘導することにより、癌細胞の殺傷を媒介する。
【0236】
本発明の抗体(及びそれを含む医薬組成物又は免疫複合体、並びに任意の他の治療剤)は、非経口投与、腫瘍内投与及び鼻腔内投与を含む、任意の適切な方法により投与されてもよい。非経口注入には、筋肉内、静脈内、動脈内、腹腔内又は皮下投与が含まれる。一定の程度で投与の短期性又は長期性に応じて、任意の適切な経路により、例えば、静脈内又は皮下注射などの注射により投与することができる。本明細書は、各種の投与スケジュ-ルを含み、単回投与又は複数の時点での複数回投与、ボ-ラス投与及びパルス注入を含むが、これらに限定されない。
【0237】
検出における使用
本発明はまた、試料中のClaudin18.2を検出する方法及び試薬キットを提供し、そのうち、上記方法は、(a)上記試料を本発明の抗体又はその抗原結合断片若しくは免疫複合体と接触させることと、(b)上記抗体又はその抗原結合断片若しくは免疫複合体とClaudin18.2タンパク質との間の複合体の形成を検出することと、を含む。いくつかの実施形態において、試料は、癌患者、例えば胃癌、膵臓癌、食道癌患者などの消化器系癌患者に由来する。上記検出は、インビトロ又はインビボであってもよい。
【0238】
「検出」という用語は、本明細書で使用される場合、定量的又は定性的な検出を含み、例示的な検出方法は、免疫組織化学、免疫細胞化学、フロ-サイトメトリ-(例えば、FACS)、抗体分子と複合した磁気ビ-ズ、ELISA測定法、PCR-技術(例えば、RT-PCR)に関することができる。いくつかの実施形態において、生体試料は血液、血清又は生体由来の他の液体試料である。いくつかの実施形態において、生体試料は細胞又は組織を含む。いくつかの実施形態において、生体試料は過剰増殖性又は癌性病巣に由来する。いくつかの実施形態において、検出待ちのClaudin18.2はヒトClaudin18.2である。
【0239】
一実施形態において、抗Claudin18.2抗体は、抗Claudin18.2抗体による治療に適した対象を選択するために使用される。更なる実施形態において、本発明の抗体を使用して癌又は腫瘍を診断することができ、例えば、対象における本明細書に記載の疾患(例えば、過剰増殖性又は癌性疾患)の治療又は進行、その診断及び/又は病期を評価する(例えば、モニタリングする)ことができる。
【0240】
いくつかの実施形態において、標識された抗Claudin18.2抗体を提供する。標識は、直接検出された標識又は部分(例えば、蛍光標識、発色団標識、高電子密度標識、化学発光標識と放射性標識)、及び酵素反応又は分子相互作用などにより間接的に検出された部分、例えば、酵素又はリガンドを含むが、これらに限定されない。
【0241】
本発明のこれら及び他の態様並びに実施形態は、図面(図面の簡単な説明はその直後に続く)及び以下の発明の詳細な説明に記載され、且つ以下の実施例に例示される。上記及び本出願全体に記載した任意又は全ての特徴は、本発明の各種の実施形態において組合せることができる。以下の実施例は本発明を更に説明するが、実施例は例示的な説明を目的としたものであり、何ら制限的なものと解釈されるべきではないことを理解されたい。
【0242】
実施例
実施例I 抗Claudin18.2の調製及び特徴付け
実施例1 Claudin18.2及びClaudin18.1発現細胞株の構築及び同定
ヒトClaudin18.2のアミノ酸配列は、NCBIのタンパク質デ-タベ-ス中のNP_001002026.1を参照した。ヒトClaudin18.1のアミノ酸配列は、NCBIのタンパク質デ-タベ-ス中のNP_057453.1を参照した。カニクイザルClaudin18.2のアミノ酸配列は、NCBIのタンパク質デ-タベ-ス中のXP_015300615.1を参照した。マウスClaudin18.2のアミノ酸配列は、NCBIのタンパク質デ-タベ-ス中のNP_001181850.1を参照した。ラットClaudin18.2のアミノ酸配列は、NCBIのタンパク質デ-タベ-ス中のNP_001014118.1を参照した。以上のアミノ酸配列は、ジェンスクリプト社によりコドン最適化され、レンチウイルスベクタ-pLVX又はpCDNA3.4ベクタ-において合成された。
【0243】
ウイルスをレンチウイルスパッケ-ジングシステムにより調製し、ウイルスを得た後、それぞれHEK293T、L929、CHO細胞に感染させ、ピュ-ロマイシンによりスクリ-ニングし、CHO-Claudin18.2(ヒト)、HEK293T-Claudin18.1(ヒト)、HEK293T-Claudin18.2(ヒト)、L929-Claudin18.2(ヒト)、HEK293T-Claudin18.2(カニクイザル)、HEK293T-Claudin18.2(ラット)、HEK293T-Claudin18.2(マウス)安定細胞株を得た。
【0244】
UGC4は、Claudin18.2を内因性発現する胃癌腫瘍細胞株であり、後の実験のためにNUGC4(Nanjing Cobioerから購入、CBP60493)を選んで用いたと共に、ヒトClaudin18.2を組換えにより過剰発現するNUGC4-Claudin18.2(ヒト)安定細胞株(Kyinno Biotechnology(Beijing)、KC-1471)を、後の実験のために購入した。
【0245】
フロ-サイトメトリ-(FACS)によりClaudin18.2の陽性率を検出して決定した。実験のステップは以下の通りであった:接着培養した細胞を消化し、細胞を遠心分離して収集し、予冷したPBSで3回洗浄し、1%BSAで(PBS中で)細胞を再懸濁させ、96ウェルV底プレ-トに1ウェルあたり3×105個の細胞を加え、体積が50 μLであり、1%BSAで(PBS中で)IMAB362抗体(配列が特許CN101312989Bに由来し、抗体175D10の重鎖可変領域アミノ酸配列番号135及び軽鎖可変領域アミノ酸配列番号142は、General Biology(Anhui)により合成した後、293E細胞により発現・精製して得られる)を40 μg/mLまで希釈し、抗体の最終濃度が20 μg/mLになるように50 μL/ウェルを取って細胞に加え、均一に混合し、4℃で1時間インキュベ-トし、細胞を遠心分離して収集し、予冷したPBSで3回洗浄し、50 μLの1%BSAで(PBS中で)細胞を再懸濁させ、1ウェルあたり1 μLの抗ヒト蛍光二次抗体(APC:Biolegend-410712又はPE:BioLegend-410708)を加え、均一に混合し、4℃で0.5時間インキュベ-トし、細胞を遠心分離して収集し、予冷したPBSで3回洗浄し、200 μLのPBSで細胞を再懸濁させ、機器で検出(フロ-サイトメ-タ-型番:ソニ--LE-SA3800GA又はBeckman-Cytoflex)し、APC蛍光シグナル値及び陽性染色の細胞パ-セント(陽性率%)を得た。
【0246】
免疫後のマウス血清を用いて同じ方法によりClaudin18.1細胞の陽性率を決定した。
フロ-サイトメトリ-検出陽性率の結果は図1A~1Iに示されており、全ての上記安定細胞株は、何れも陽性率が比較的高かった(>95%)が、NUGC4細胞のClaudin18.2発現陽性率は23.8%であった。
【0247】
実施例2 抗ヒトClaudin18.2マウスモノクロ-ナル抗体の調製
Balb/C、KM及びCD01の3つの品種の、週齢5週~6週の野生型マウス24匹を選んで用いて、pCDNA3.4-Claudin18.2プラスミド、CHO-Claudin18.2(ヒト)細胞、L929-Claudin18.2(ヒト)細胞で免疫し、3回~4回免疫した後、フロ-サイトメトリ-により血清力価を検出した。実験のステップは以下の通りであった:接着培養したHEK293T-Claudin18.1(ヒト)、HEK293T-Claudin18.2(ヒト)細胞を消化し、遠心分離して収集し、次いで、予冷したPBSで3回洗浄し、PBS(1%BSA含有)で細胞を再懸濁させ、96ウェルV底プレ-トに1ウェルあたり3×105個の細胞をプレ-ティングし、勾配希釈した血清を加えて4℃で1時間インキュベ-トし、予冷したPBSで3回洗浄した後、1ウェルあたり1 μLの抗マウス蛍光二次抗体を加え、4℃で0.5時間インキュベ-トし、予冷したPBSで3回洗浄した後に再懸濁させ、フロ-サイトメ-タ-により検出した。HEK293T-Claudin18.2(ヒト)との親和性が高く、且つHEK293T-Claudin18.1(ヒト)との親和性が低いマウスを融合の候補として選択し、候補マウスの番号はそれぞれ61、64、79、89、91であった。
【0248】
マウス脾臓、リンパ節を取って細胞懸濁液を調製し、SP2/0マウス骨髄腫細胞と1:1の割合で混合し、細胞電気融合緩衝液で再懸濁させ、BTX-ECM2001細胞電気融合装置を使用して電気融合反応を行った。電気融合反応後、完全融合培地(RPMI1640+20%FBS+1×HAT)で再懸濁させ、1ウェルあたり20000個~25000個の細胞で96ウェル細胞培養プレ-トに分け、37℃で5%CO2で培養した。培養した後、L929-Claudin18.2(ヒト)を使用した細胞ELISA法により、ヒトClaudin18.2との親和性が高いハイブリド-マ親クロ-ンをスクリ-ニングし、そしてフロ-サイトメトリ-(FACS)により、その中Claudin18.1と結合可能な親クロ-ン排除し、サブクロ-ニングに用いた。2ラウンドの融合スクリ-ニングにより、合計52個の親クロ-ンを選び出してサブクロ-ニングした。各親クロ-ンから75個の細胞を取り、1枚の96ウェル細胞培養プレ-トに分け、スクリ-ニング培地(RPMI1640+20%FBS+1×HT)でサブクロ-ンを培養し、サブクロ-ンの上清を取り、細胞ELISA及びフロ-サイトメトリ-により、親和性が比較的高く且つClaudin18.1と結合しないモノクロ-ンをスクリ-ニングし、拡大培養した。無血清培地でハイブリド-マ細胞を培養し、収集したモノクロ-ンの上清を抗体精製媒体ProA(GE、Mabselect XL)充填剤により精製し、マウス抗体を得た。
【0249】
実施例3 抗ヒトClaudin18.2マウス抗体の評価
細胞ELISAにより抗ヒトClaudin18.2マウスモノクロ-ナル抗体の親和性を評価した。実験のステップは以下の通りであった:実験前日にHEK293T-Claudin18.2(ヒト)細胞を、1ウェルあたり5×104個の細胞で96ウェルプレ-トにプレ-ティングし、実験当日に上清を除去し、各ウェルを300 μLのPBSで1回洗浄し、1ウェルあたり100 μLの4%パラホルムアルデヒドを加え、室温で20分間固定し、パラホルムアルデヒドを除去し、各ウェルを300 μLのPBSで2回洗浄し、1ウェルあたり100 μLの2%BSAを(PBS中で)加え、37℃で2時間ブロッキングし、ブロッキング溶液を除去し、勾配希釈した抗体(2%BSAで(PBS中で)抗体を希釈し、10 μg/mL開始、3倍勾配希釈、合計11濃度点)を100 μL/ウェルでプレ-トに加え、37℃で2時間インキュベ-トし、上清を除去し、各ウェルを300 μLのPBSTで3回洗浄し、1ウェルあたり100 μLの2%BSA中の抗マウスIgG HRP二次抗体(Jackson、商品番号:115-035-003)を加え、37℃で1時間インキュベ-トし、二次抗体を除去し、各ウェルを300 μLのPBSTで5回洗浄し、次いで、1ウェルあたり100 μLのTMB基質(Huzhou InnoReagents)を加え、5分間~20分間発色させ、1ウェルあたり50 μLの2N HClを加えて反応を停止させ、マイクロプレ-トリ-ダ-(メ-カ-:MD、型番:SpectraMax)でOD450 nm値を読み取り、値をGraphPad Prismに代入してグラフを作成し、EC50値を計算した。
【0250】
フロ-サイトメトリ-(FACS)により抗ヒトClaudin18.2マウスモノクロ-ナル抗体の特異性を評価した。実験のステップは以下の通りであった:接着培養したHEK293T-Claudin18.1(ヒト)細胞を消化し、細胞を遠心分離して収集し、予冷したPBSで3回洗浄し、1%BSAで(PBS中で)細胞を再懸濁させ、96ウェルV底プレ-トに1ウェルあたり3×105個の細胞を加え、体積が50 μLであり、1%BSAで(PBS中で)検出待ちの抗体を100 μg/mLまで希釈し、抗体の最終濃度が50 μg/mLになるように50 μL/ウェルを取って細胞に加え、均一に混合し、4℃で1時間インキュベ-トし、細胞を遠心分離して収集し、予冷したPBSで3回洗浄し、50 μLの1%BSAで(in PBS)細胞を再懸濁させ、1ウェルあたり1 μLの蛍光二次抗体(BioLegend、商品番号:405308)を加え、均一に混合し、4℃で0.5時間インキュベ-トし、細胞を遠心分離して収集し、予冷したPBSで3回洗浄し、200 μLのPBSで細胞を再懸濁させ、機器で検出(フロ-サイトメ-タ-型番:ソニ--LE-SA3800GA)し、APC蛍光シグナル値を得、そしてアイソタイプ対照抗体を陰性対照抗体としてのゲ-ティングにより、陽性染色の細胞パ-セント(陽性率%)を得た。
【0251】
実験の結果は表1に示されており、HEK293T-Claudin18.2との親和性が比較的高く且つHEK293T-Claudin18.1と非特異的結合を有しないクロ-ンを選択してシ-クエンシングし、クロ-ン番号は1A6G10、2D3A11、25C7A5、40G11H2、8H11A10、23F2F2、32F7A6であった。
【表1】
【0252】
実施例4 抗ヒトClaudin18.2マウスモノクロ-ナル抗体のシ-クエンシング
上記候補ハイブリド-マ細胞を約1×105個収集し、Trizol(Invitrogen、15596026)によりRNAを抽出し、次いで、PrimeScript RT reagent(TAKARA、RR047A)試薬キットを使用してPolyAにより逆転写してcDNAを得、それぞれ重鎖、軽鎖の上流に上流プライマ-を設計し、重鎖CH1領域、軽鎖CL領域に下流プライマ-を設計した。PCR(金牌MIX、Tsingke Biotech、TSE101)により産物を増幅し、アガロ-スゲル抽出キットにより断片を回収し、Beijing Tsingke Biotech Co.,Ltd.に試料を送ってシ-クエンシングし、IMGTウェブサイトにより解析し、マウス抗体配列を得た。候補マウス抗体配列は表2に示されている。
【表2】
【0253】
得られた配列により特許解析及び検索を行い、25C7A5及び2D3A11はユニ-クな配列を有する候補抗体であることを確認し、次いで、それらにヒト化設計を行った。
【0254】
実施例5 抗ヒトClaudin18.2マウス抗体のヒト化
CDR graftingの方法を用いて、まずは従来のBLAST方法により、原始のマウス配列との相同性が最も高いヒトgermline配列を見出してテンプレ-トとし、マウス抗体のCDRをヒトテンプレ-トに移植してキメラを構築し、マウス抗体においてその原始の配座を保持できるFRアミノ酸を構造により解析し、キメラにおける相応するアミノ酸をマウスアミノ酸に復帰突然変異させることにより元の親和性を維持させ、構築されたヒト化抗体に対して計算及び免疫原性解析を行い、高免疫原性断片を見出し、低免疫原性断片と置換した。ヒト化抗体25C7A5-HZ1及び25C7A5-HZ2並びに2D3A11-HZ1及び2D3A11-HZ2を得、それらのヒト化配列は表3に示されている。
【表3】
【0255】
実施例6 抗ヒトClaudin18.2ヒト化抗体の調製
ヒト化抗体25C7A5-HZ1(重鎖可変領域配列番号1及び軽鎖可変領域配列番号2)、25C7A5-HZ2(重鎖可変領域配列番号3及び軽鎖可変領域配列番号2)、並びに参照抗体IMAB362の可変領域アミノ酸配列(配列は特許CN101312989Bにおける抗体175D10の重鎖可変領域アミノ酸配列番号135及び軽鎖可変領域アミノ酸配列番号142に由来する)を、コドン最適化した後に遺伝子合成(General Biology(Anhui))を行い、PTT5ベクタ-に構築した。プラスミドを合成した後、直接細菌を振盪して抽出し、PEImax(Polysciences、24765-1)によりHEK293E細胞をトランスフェクションし、約7日間発現させ、遠心分離して上清を収集した。上清をMabSelectSureプロテインAアフィニティ-充填剤(GE)により精製した。発現した参照抗体はヒト化抗体と同じヒトIgG1重鎖定常領域(配列番号4)及びヒトKappa軽鎖定常領域(配列番号5)を有する。精製した抗体を全てPBS緩衝液に限外濾過し、濃度を測定し、-20℃で保存した。
【0256】
実施例7 抗ヒトClaudin18.2ヒト化抗体の細胞ELISA親和性検出
細胞ELISA法により抗ヒトClaudin18.2ヒト化モノクロ-ナル抗体の親和性を測定した。細胞ELISA実験のステップは実施例I-3に記載の通りであり、細胞についてはトランスフェクションによりヒトClaudin18.2を安定的に発現するL929-Claudin18.2(ヒト)、HEK293T-Claudin18.2細胞(ヒト)、NUGC4-Claudin18.2(ヒト)細胞、及びヒトClaudin18.2を内因性発現するNUGC4細胞を選んで用いた。
【0257】
1)L929-Claudin18.2及びHEK293T-Claudin18.2の2種の細胞に対して、実験の結果は表4に示されており、2D3A11-HZ1、2D3A11-HZ2、25C7A5-HZ1及び25C7A5-HZ2は、両方とも高い親和性を有する。
【表4】
【0258】
2)NUGC4-Claudin18.2細胞に対して、実験の結果は表5及び図2Aに示されている。25C7A5-HZ1とNUGC4-Claudin18.2との結合EC50値は107.6 ng/mLであり、IMAB362のEC50値は109.1 ng/mLであり、25C7A5-HZ1とNUGC4-Claudin18.2との結合最大シグナル値は1.284であり、IMAB362の最大シグナル値の0.591より明らかに高いことから、25C7A5-HZ1とNUGC4-Claudin18.2との親和性がIMAB362より優れていることが示された。
【0259】
3)NUGC4細胞に対して、実験の結果は表5及び図2Bに示されている。2D3A11-HZ1、25C7A5-HZ1、25C7A5-HZ2はNUGC4とより高い親和性を有し、そしてIMAB362とNUGC4細胞との親和性がより弱い(最大シグナル値に達していない)ことから、2D3A11-HZ1、25C7A5-HZ1、25C7A5-HZ2とNUGC4との親和性がIMAB362より優れていることが示された。
【表5】
【0260】
実施例8 抗ヒトClaudin18.2ヒト化抗体の細胞FACS親和性検出
フロ-サイトメトリ-により抗ヒトClaudin18.2ヒト化抗体の親和性を検出した。実験のステップは以下の通りであった:接着培養したHEK293T-Claudin18.2(ヒト)、NUGC4-Claudin18.2(ヒト)、NUGC4細胞を消化し、細胞を遠心分離して収集し、予冷したPBSで3回洗浄し、1%BSAで(PBS中で)細胞を再懸濁させ、96ウェルV底プレ-トに1ウェルあたり3×105個の細胞を加え、体積が50 μLであり、1%BSAで(PBS中で)検出待ちの抗体を希釈し、100 μg/mLで開始し、10濃度点で3倍勾配希釈し、勾配希釈した検出待ちの抗体を取って50 μL/ウェルで細胞に加え、均一に混合し、4℃で1時間インキュベ-トし、細胞を遠心分離して収集し、予冷したPBSで3回洗浄し、50 μLの1%BSAで(PBS中で)細胞を再懸濁させ、1ウェルあたり1 μLの蛍光二次抗体(Biolegend-410712)を加え、均一に混合し、4℃で0.5時間インキュベ-トし、細胞を遠心分離して収集し、予冷したPBSで3回洗浄し、200 μLのPBSで細胞を再懸濁させ、機器で検出した。
【0261】
実験の結果は図3A図3C及び表6に示されている。HEK293T-Claudin18.2細胞(図3A)に対して、2D3A11-HZ1、25C7A5-HZ1、25C7A5-HZ2はそれと何れも比較的高い親和性を有し、NUGC4-Claudin18.2細胞(図3B)に対して、25C7A5-HZ1の親和性EC50値は3192 ng/mLであり、IMAB362は6668 ng/mLであり、且つ25C7A5-HZ1の最大シグナル値はIMAB362より明らかに高いことから、25C7A5-HZ1の親和性がIMAB362より優れていることが示され、NUGC4細胞(図3C)に対して、25C7A5-HZ1はNUGC4と明らかな結合を有するが、IMAB362とNUGC4との結合が非常に弱いことから、25C7A5-HZ1の親和性がIMAB362より優れていることも示された。
【表6】
【0262】
実施例9 抗ヒトClaudin18.2ヒト化モノクロ-ナル抗体の種属親和性評価
フロ-サイトメトリ-(FACS)により抗ヒトClaudin18.2ヒト化モノクロ-ナル抗体と異なる種属のClaudin18.2との親和性を測定した。実験のステップは以下の通りであった:HEK293T-Claudin18.2(カニクイザル)細胞、HEK293T-Claudin18.2(マウス)細胞及びHEK293T-Claudin18.2(ラット)細胞を消化し、遠心分離して収集し、予冷したPBSで3回洗浄し、1%BSAで(PBS中で)細胞を再懸濁させ、96ウェルV底プレ-トに1ウェルあたり3×105個の細胞をプレ-ティングし、勾配希釈した抗体を加えて4℃で1 hインキュベ-トし、予冷したPBSで3回洗浄した後、1ウェルあたり1 μLの蛍光二次抗体(APC:Biolegend-410712)を加え、4℃で0.5 hインキュベ-トし、予冷したPBSで3回洗浄した後に細胞を再懸濁させ、フロ-サイトメ-タ-により検出した。
【0263】
実験の結果は図4A図4C及び表7に示されており、2D3A11-HZ1、25C7A5-HZ1、25C7A5-HZ2及びIMAB362は何れもカニクイザルClaudin18.2と高い親和性を有し(図4A)、25C7A5-HZ1及びIMAB362もラットClaudin18.2(図4B)、マウスClaudin18.2(図4C)と比較的良好な種属結合を有する。
【表7】
実施例10 抗ヒトClaudin18.2ヒト化モノクロ-ナル抗体の特異性評価
フロ-サイトメトリ-(FACS)により抗ヒトClaudin18.2ヒト化モノクロ-ナル抗体の特異性を測定した。実験のステップは以下の通りであった:HEK293T-Claudin18.1(ヒト)細胞を消化し、遠心分離して収集し、予冷したPBSで3回洗浄し、1%BSAで(PBS中で)細胞を再懸濁させ、96ウェルV底プレ-トに1ウェルあたり3×105個の細胞をプレ-ティングし、最終濃度50 μg/mLの検出待ちの抗体を加えて4℃で1 hインキュベ-トし、予冷したPBSで3回洗浄した後、1ウェルあたり1 μLの蛍光二次抗体(APC:Biolegend-410712又はPE:BioLegend-410708)を加え、4℃で0.5 hインキュベ-トし、予冷したPBSで3回洗浄した後に細胞を再懸濁させ、フロ-サイトメ-タ-により検出した。参照として、抗ヒトClaudin18.1陽性対照抗体、陽性対照抗体-1及び陽性対照抗体-2が実験に含まれた。陽性対照抗体については実施例I-3のHEK293T-Claudin18.1(ヒト)細胞と明らかな結合を有する抗体を選んで用いて、抗体のクロ-ン番号はそれぞれ13A6D2(陽性対照抗体-1)及び15C12A2(陽性対照抗体-2)であった。
【0264】
実験の結果は表8に示されており、2D3A11-HZ1、2D3A11-HZ2、25C7A5-HZ1及び25C7A5-HZ2は、何れもヒトClaudin18.1を非特異的に認識しない。
【表8-1】
【0265】
実施例11 抗ヒトClaudin18.2ヒト化モノクロ-ナル抗体の抗体依存性細胞媒介の細胞傷害作用(ADCC)活性評価
フルオレセインレポ-タ-システムにより抗ヒトClaudin18.2ヒト化モノクロ-ナル抗体のADCC活性を検出した。Rhinogen(登録商標)Bio-Glory One-Step Firefly Luciferase Assay試薬キット(Suzhou Ruian Biotechnology、RA-GL04)を用いて、メ-カ-取扱説明書に従って行った。実験のステップは以下の通りであった:HEK293T-Claudin18.2(ヒト)細胞を消化し、遠心分離して収集し、DMEM+1%FBSで細胞を再懸濁させた後、1ウェルあたり50000個の細胞をプレ-ティングし、Jurkat-NFAT-CD16a細胞を遠心分離して収集し、1640+1%FBSで細胞を再懸濁させた後、1ウェルあたり100000個の細胞をプレ-ティングし、勾配希釈した検出待ちの抗体を加え、37℃で5 hインキュベ-トし、1ウェルあたり50 μLのBio-Glory One-Stepルシフェラ-ゼ基質を加え、マイクロプレ-トリ-ダ-(MD、SpectraMax i3x)により値を読み取った。
【0266】
実験の結果は図5に示されており、2D3A11-HZ1、25C7A5-HZ1及び25C7A5-HZ2は何れも比較的強いADCC活性を有し、そのEC50はそれぞれ47.91 ng/mL、46.49 ng/mL及び48.75 ng/mLであった。
【0267】
実施例12 抗ヒトClaudin18.2ヒト化モノクロ-ナル抗体の補体依存性細胞傷害(CDC)活性評価
モルモット血清殺傷実験により抗ヒトClaudin18.2ヒト化モノクロ-ナル抗体のCDC活性を検出した。実験のステップは以下の通りであった:HEK293T-Claudin18.2(ヒト)細胞を消化し、遠心分離して収集し、1ウェルあたり50000個の細胞をプレ-ティングして一晩置き、上清を廃棄し、1ウェルあたり100 μLのDMEM+20%モルモット血清(Beijing Bersee、BM361Y)により勾配希釈した検出待ちの抗体を加え、37℃で5 hインキュベ-トし、1ウェルあたり20 μLのCCK8試薬(Suzhou Ruian Biotechnology、QDY-003-D)を加え、1時間~4時間反応させ、マイクロプレ-トリ-ダ-は450 nmで読み取った。
【0268】
実験の結果は図6に示されており、2D3A11-HZ1、25C7A5-HZ1及び25C7A5-HZ2は何れも比較的強いCDC活性を有し、それらのEC50はそれぞれ1904 ng/mL、3137 ng/mL及び3283 ng/mLであった。
【0269】
実施例13 抗ヒトClaudin18.2ヒト化モノクロ-ナル抗体のエンドサイト-シス活性評価
フロ-サイトメトリ-(FACS)により抗ヒトClaudin18.2ヒト化モノクロ-ナル抗体のエンドサイト-シス活性を検出した。実験のステップは以下の通りであった:HEK293T-Claudin18.2細胞を消化し、遠心分離して収集し、濃度10 ug/mLの検出待ちの抗体で4℃で1時間インキュベ-トし、PBSで3回洗浄し、DMEM+10%FBSで細胞を再懸濁させ、4分けしてそれぞれ37℃で0、1、2、4時間インキュベ-トし、PBSで3回洗浄した後に1 μLの蛍光二次抗体(Biolegend、410712)を加え、4℃で0.5 hインキュベ-トし、PBSで3回洗浄した後に細胞を再懸濁させ、機器で検出した。エンドサイト-シス率(%)=[1-(当該時点で検出した試料の平均蛍光値-当該時点での陰性対照試料の平均蛍光値)/(0時間で検出した試料の平均蛍光値-0時間での陰性対照試料の平均蛍光値)×100という式によりエンドサイト-シス率を計算した。陰性抗体はアイソタイプ対照抗体であった。
【0270】
実験の結果から、25C7A5-HZ1及び25C7A5-HZ2は何れもエンドサイト-シス活性を有し、4時間でのエンドサイト-シス率は両方とも12%以上であることが示された。
【0271】
実施例14 抗ヒトClaudin18.2ヒト化抗体の加速安定性検出
検出待ちの抗体をPBS(pH=7.4)に限外濾過して置換し、濃度は4.7 mg/mLであり、濾過して滅菌し、それぞれ37℃で0、3、7、14日間放置し、又は-80℃で4回、8回繰り返して凍結融解し、次いで、試料のSEC-HPLC純度及びCE-SDS純度を検出することにより、抗ヒトClaudin18.2ヒト化モノクロ-ナル抗体の加速安定性を検出した。37℃で0日間放置したものを対照として、加速安定性試験における抗体の安定性変化を調べた。
【0272】
SEC-HPLC検出の方法は以下の通りであった:
機器:Waters Alliance e2695 HPLC、
カラム:Thermo MabPac SEC-1、5 μm、7.8×300 mm、
移動相:61 mmol/L Na2HPO4、39 mmol/L NaH2PO4、200 mmol/L NaCl、5%IPA、
機器パラメ-タ:試料室温度:8℃、カラム温度:30℃、流速:0.5 mL/min、注入量:20 μg、検出波長:280 nm、イソクラティック溶出:30 min。
【0273】
CE-SDS検出の方法は以下の通りであった:超純水で試料を4 mg/mLまで希釈した。25μLを取って遠心管に入れ、75 μLのプレミックス液(SDS Sample buffer+ヨ-ドアセトアミド)を加え、均一に混合し、10000 gで1分間遠心分離した。70℃で5分間処理した。取り出した後、室温で冷却し、10000 gで1分間遠心分離し、均一に混合した後、バイアル瓶に移した。
【0274】
SCIEXのPA800 plusキャピラリ-電気泳動装置を用いて、採用解析を行い、機器パラメ-タを以下の通りに設定した:
キャピラリ-:30.2 cm×50 μm(ベアチュ-ブ)、有効長さ:20 cm
キャピラリ-カラム温度:25℃、試料パン温度:15℃
検出波長設定:220 nm、収集周波数:4 Hz。
【0275】
実験の結果から、本発明の25C7A5ヒト化抗体は、加速及び繰り返し凍結融解において良好な安定性を有し、SEC純度が何れも95%以上、CE-SDS非還元純度が90%以上、CE-SDS還元純度が95%以上であることが示された。
【0276】
実施例15 抗ヒトClaudin18.2ヒト化抗体のラットにおけるインビボ薬物動態検出
以下の方法により抗ヒトClaudin18.2ヒト化抗体のインビボ代謝状況を調べた。検出待ちの試料、ヒト化抗体及びIMAB362抗体を、各群3匹の雄ラット(Chengdu Dossy)に10 mg/kgの投与量で尾静脈内注射投与し、投与後30 min、1 h、2 h、6 h、24 h、48 h、96 h、168 hの血清試料を収集した。L929-Claudin18.2細胞ELISA(方法は実施例3に記載の通り)により血中薬物濃度を検出した。結果から、本発明の25C7A5のヒト化抗体は参照抗体IMAB362と相当なラットにおけるインビボ半減期を有することが示された。
【0277】
実施例II 抗体-コンジュゲ-ト薬物の調製及び特徴付け
実施例1 抗体コンジュゲ-ト薬物(ADC)の調製
実施例1.1:「薬物-リンカ-化合物」の合成に使用される中間体の合成
【0278】
実施例1.1.1:(S)-7-エチル-7-ヒドロキシ-14-(3-ヒドロキシプロピル)-10,13-ジヒドロ-11H-[1,3]ジオキソロ[4,5-g]ピラノ[3',4':6,7]インドリジノ[1,2-b]キノリン-8,11(7H)-ジオン(A1)の合成
【化42】
【0279】
ステップ1:(S)-7-エチル-7-ヒドロキシ-14-(3-クロロプロピル)-10,13-ジヒドロ-11H-[1,3]ジオキソロ[4,5-g]ピラノ[3',4':6,7]インドリジノ[1,2-b]キノリン-8,11(7H)-ジオン(A1B)の合成
氷浴条件下で、化合物(S)-7-エチル-7-ヒドロキシ-10,13-ジヒドロ-11H-[1,3]ジオキソロ[4,5-g]ピラノ[3',4':6,7]インドリジノ[1,2-b]キノリン-8,11(7H)-ジオン(A1A、Cas No.:151636-76-9、500 mg)の75%硫酸溶液(5 mL)に、硫酸鉄(II)七水和物(570 mgの硫酸鉄(II)七水和物を1 mLの水に溶解)及び4,4-ジメトキシクロロブタン(3.89 g)を加え、反応液を3分間撹拌した後、過酸化水素水(29%、2.5 mL)を滴下した。反応液を0℃で5分間撹拌した後、室温まで昇温し、そして3時間撹拌して反応させた。反応液に水(50 mL)を加えて希釈し、酢酸エチル(80 mL×2)で抽出し、有機相を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、濃縮して粗生成物を得た。粗生成物をC18カラム(アセトニトリル/0.05%ギ酸水溶液:5%~60%)で更に精製し、目的化合物A1Bを得た(黄色固体、400 mg、収率:67%)。
LCMS (ESI) [M+H]+:468.9;
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 7.65 (s, 1H), 7.51 (s, 1H), 7.24 (s, 1H), 6.50 (s, 1H), 6.30 (s, 2H), 5.42 (s, 2H), 5.26 (s, 2H), 3.81 (d, J = 5.9 Hz, 2H), 3.22 (s, 2H), 1.98 (d, J = 6.7 Hz, 4H), 0.88 (t, J = 7.2 Hz, 3H)。
【0280】
ステップ2:(S)-7-エチル-7-ヒドロキシ-14-(3-ヒドロキシプロピル)-10,13-ジヒドロ-11H-[1,3]ジオキソロ[4,5-g]ピラノ[3',4':6,7]インドリジノ[1,2-b]キノリン-8,11(7H)-ジオン(A1)の合成
化合物(S)-7-エチル-7-ヒドロキシ-14-(3-クロロプロピル)-10,13-ジヒドロ-11H-[1,3]ジオキソロ[4,5-g]ピラノ[3',4':6,7]インドリジノ[1,2-b]キノリン-8,11(7H)-ジオン(100 mg、0.213 mmol)を10%硫酸(5 mL)溶液に溶解し、反応を110℃で48時間反応させた。反応液に飽和炭酸水素ナトリウム(30 mL)溶液を加え、ジクロロメタン(10 mL×5)で抽出し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、吸引濾過し、減圧濃縮して粗生成物を得た。分取高速液体クロマトグラフィ-により精製(アセトニトリル/0.05%ギ酸含有の水)し、(S)-7-エチル-7-ヒドロキシ-14-(3-ヒドロキシプロピル)-10,13-ジヒドロ-11H-[1,3]ジオキソロ[4,5-g]ピラノ[3',4':6,7]インドリジノ[1,2-b]キノリン-8,11(7H)-ジオン(A1、1.78 mg)を得た。
LCMS (ESI) [M+H]+:451.0;
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 7.63 (s, 1H), 7.50 (s, 1H), 7.24 (s, 1H), 6.48 (s, 1H), 6.28 (s, 2H), 5.47 - 5.37 (m, 2H), 5.32 - 5.19 (m, 2H), 3.51 - 3.46 (m, 2H), 3.17 - 3.13 (m, 2H), 1.92 - 1.76 (m, 4H), 0.90 - 0.84 (m, 3H)。
【0281】
実施例1.1.2:(S)-2-アミノ-N-((3-(7-エチル-7-ヒドロキシ-8,11-ジオキソ-7,8,11,13-テトラヒドロ-10H-[1,3]ジオキソロ[4,5-g]ピラノ[3',4':6,7]インドリジノ[1,2-b]キノリン-14-イル)プロポキシ)メチル)アセトアミド(B1)の合成
【化43】
【0282】
ステップ1:化合物(B1A)(Cas No.:1599440-06-8、368 mg)、化合物(A1)(440 mg)及びp-トルエンスルホン酸ピリジニウム(PPTS)(25 mg)をジクロロメタン(20 mL)において20時間還流し、次いで、炭酸水素ナトリウム水溶液及び塩酸水溶液でそれぞれ洗浄し、有機溶媒を減圧除去し、粗生成物を得た。粗生成物をカラムクロマトグラフィ-(ジクロロメタン:メタノ-ル=10/1)により単離して精製し、目的化合物B1B(240 mg)を得た。
LCMS (ESI) [M+H]+:759.5。
【0283】
ステップ2:B1B(240 mg)をDMF(5 mL)に溶解し、ピペリジン(1 mL)を加え、化合物を20分間撹拌し、溶液を減圧して低沸点成分を除去し、残留物を直接次のステップの合成に用いた。少量の粗生成物を逆相クロマトグラフィ-(アセトニトリル/0.05%FAの水溶液:5%~50%)により精製した後、目的化合物B1を得た。
ESI-MS (m/z): 537.4 [M+H]+
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 9.13 (t, 1H), 8.04 (br, 2H), 7.58(s, 1H), 7.51(s, 1H), 7.25(s, 1H), 6.29(s, 2H), 5.43(S, 2H), 5.21(s, 2H), 4.65(d, 2H), 3.63(m, 2H), 3.53(m, 2H), 3.11(m, 2H), 1.87(m, 4H), 0.88(t, 3H)。
【0284】
実施例1.1.3:N6,N6-ジメチル-N2-((6-(2-(メチルスルホニル)ピリミジン-5-イル)ヘキサ-5-イノイル)-L-バリン)-L-リジン(C1)
【化44】
【0285】
6-(2-(メチルスルホニル)ピリミジン-5-イル)ヘキサ-5-イン酸(268 mg、Cas No.2356229-58-6)、化合物C1A(328 mg)、トリエチルアミン(322 mg)をN,N-ジメチルホルムアミド(5 mL)に溶解した。次いで、1-ヒドロキシベンゾトリアゾ-ル(HOBT、162 mg)及び1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド塩酸塩(EDCI、229 mg)を更に加え、反応液を室温で16時間撹拌した。反応液を直接C18カラム逆相(アセトニトリルと0.05%ギ酸水溶液系)により精製し、目的化合物N6,N6-ジメチル-N2-((6-(2-(メチルスルホニル)ピリミジン-5-イル)ヘキサ-5-イノイル)-L-バリン)-L-リジン(C1、白色固体、327 mg)を得た。
LCMS (ESI) [M+H]+:524.4。
1H NMR (400 MHz, ) δ 9.13 (s, 2H), 7.95 (t, J = 8.8 Hz, 2H), 4.21 (dd, J = 8.8, 6.9 Hz, 1H), 4.08 - 4.03 (m, 1H), 3.41 (s, 3H), 2.55 (t, J = 7.0 Hz, 2H), 2.42 - 2.32 (m, 4H), 2.27 (s, 6H), 1.98 (dd, J = 13.6, 6.8 Hz, 1H), 1.86 - 1.77 (m, 2H), 1.74 - 1.55 (m, 2H), 1.47 - 1.37 (m, 2H), 1.31 - 1.23 (m, 2H), 0.85 (dd, J = 12.8, 6.8 Hz, 6H)。
【0286】
実施例1.1.4:N6,N6-ジエチル-N2-((6-(2-(メチルスルホニル)ピリミジン-5-イル)ヘキサ-5-イノイル)-L-バリン)-L-リジン(C2)
【化45】
【0287】
ステップ1:
化合物C2A(5.0 g、12.05 mmol、Cas No.:1872-06-8)をジクロロメタン(100 mL)に溶解し、反応液にアセトアルデヒド(3.2 g、72.3 mmol)を加え、室温で10分間撹拌して反応させ、反応液にナトリウムトリアセトキシボロヒドリド(12.8 g、60.25 mmol)を更に加え、反応を室温で1時間撹拌して反応させた。LCMSにより完全に反応したことが示された。反応液に塩化アンモニウム飽和水溶液を加えて1時間撹拌し、回転乾燥させ、濾過した後、濾液をC18カラム逆相により単離して精製(アセトニトリル対0.05%ギ酸水溶液:5%~55%)し、目的化合物C2B(4.57 g、収率82.0%)を白色固体として得た。
LCMS (ESI) [M+H]+ = 436.4;
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 7.70 (d, J = 7.0 Hz, 1H), 7.41 (d, J = 9.0 Hz, 1H), 7.38 - 7.26 (m, 5H), 5.08 - 4.99 (m, 2H), 4.00 (dd, J = 12.6, 6.5 Hz, 1H), 3.86 (dd, J = 8.6, 6.8 Hz, 1H), 2.74 (dd, J = 14.0, 6.9 Hz, 4H), 2.64 - 2.54 (m, 2H), 2.05 - 1.94 (m, 1H), 1.72 - 1.52 (m, 2H), 1.52 - 1.38 (m, 2H), 1.38 - 1.18 (m, 2H), 1.04 (t, J = 7.1 Hz, 6H), 0.87 - 0.81 (m, 6H)。
【0288】
ステップ2:
室温で、化合物C2B(1.6 g、3.68 mmol)をメタノ-ル(80 mL)に溶解し、次いで、反応液にPd/C(0.16 g)を加え、水素ガス下で室温で12時間撹拌して反応させた。LCMSにより反応が完了したことが示された。反応液を濾過し、濾液を減圧濃縮して目的化合物C2C(900 mg、収率82%)をオフホワイトの固体として得た。
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 8.04 (br s, 1H), 4.02 - 3.99 (m, 1H), 3.10 (d, J = 4.5 Hz, 1H), 2.65 (q, J = 7.1 Hz, 4H), 2.55 - 2.51 (m, 2H), 2.06 - 1.93 (m, 1H), 1.73 - 1.54 (m, 2H), 1.47 - 1.38 (m, 2H), 1.30 - 1.21 (m, 2H), 1.01 (t, J = 7.1 Hz, 6H), 0.89 (d, J = 6.9 Hz, 3H), 0.79 (d, J = 6.8 Hz, 3H)。
【0289】
ステップ3:
化合物6-(2-(メチルスルホニル)ピリミジン-5-イル)ヘキサ-5-イン酸(268 mg、1 mmol)をDMF(8 mL)に溶解し、HATU(380 mg、1 mmol)及びトリエチルアミン(322 mg、2.5 mmol)を順に加え、室温で20分間撹拌した後、化合物C2C(301 mg、1 mmol)を加え、室温で30分間撹拌し続けた。LCMSにより反応の完了を検出した後、反応液を直接C18カラム逆相(アセトニトリルと0.05%ギ酸水溶液系)により精製し、目的化合物C2(280 mg、収率51%)を白色固体として得た。
LCMS (ESI) [M+H]+ = 552.3;
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 9.13 (s, 2H), 7.95 (d, J = 8.9 Hz, 1H), 7.86 (d, J = 7.2 Hz, 1H), 4.18 (dd, J = 8.8, 6.8 Hz, 1H), 4.02 (dd, J = 12.8, 7.2 Hz, 1H), 3.41 (s, 3H), 2.74 - 2.69 (m, 4H), 2.62 - 2.52 (m, 4H), 2.44 - 2.29 (m, 2H), 2.04 - 1.94 (m, 1H), 1.86 - 1.77 (m, 2H), 1.72 - 1.54 (m, 2H), 1.51 - 1.39 (m, 2H), 1.33 - 1.23 (m, 2H), 1.02 (t, J = 7.2 Hz, 6H), 0.87 - 0.82 (m, 6H)。
【0290】
実施例1.1.5:N6,N6-ジ-n-プロピル-N2-((6-(2-(メチルスルホニル)ピリミジン-5-イル)ヘキサ-5-イノイル)-L-バリン)-L-リジン(C3)
【化46】
【0291】
ステップ1:
化合物C2A(5.0 g、12 mmol)をジクロロメタン(100 mL)に溶解し、反応液にn-プロパナ-ル(4.2 g、72.3 mmol)を加え、室温で10分間撹拌して反応させ、反応液にナトリウムトリアセトキシボロヒドリド(12.8 g、60.25 mmol)を更に加え、反応を室温で1時間撹拌して反応させた。LCMSにより完全に反応したことが示された。反応液に塩化アンモニウム飽和水溶液を加えて1時間撹拌し、回転乾燥させ、濾過した後、濾液をC18カラム逆相により単離して精製(アセトニトリル対0.05%ギ酸水溶液:5%~55%)し、目的化合物C3A(4.57 g、収率82.0%)を白色固体として得た。
LCMS (ESI) [M+H]+ = 464.0;
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 7.81 (d, J = 7.3 Hz, 1H), 7.38 - 7.28 (m, 5H), 5.04 (d, J = 1.7 Hz, 2H), 4.12 - 4.02 (m, 1H), 3.94 - 3.82 (m, 1H), 2.65 - 2.52 (m, 6H), 2.06 - 1.94 (m, 1H), 1.76 - 1.64 (m, 1H), 1.64 - 1.53 (m, 1H), 1.52 - 1.40 (m, 6H), 1.34 - 1.18 (m, 2H), 0.92 - 0.80 (m, 12H)。
【0292】
ステップ2:
室温で、化合物C3A(2.0 g、4.32 mmol)をメタノ-ル(80 mL)に溶解し、次いで、反応液にPd/C(0.16 g)を加え、水素ガス下で室温で12時間撹拌して反応させた。LCMSにより反応が完了したことが示された。反応液を濾過し、濾液を減圧濃縮し、目的化合物C3B(1.2 g、収率85.5%)を白色固体として得た。
【0293】
ステップ3:
化合物6-(2-(メチルスルホニル)ピリミジン-5-イル)ヘキサ-5-イン酸(100 mg、0.373 mmol)をN,N-ジメチルホルムアミド(1 mL)に溶解し、次いで、HATU(142 mg、0.373 mmol)及びN,N-ジイソプロピルエチルアミン(120 mg、0.93 mmol)を加え、当該系を30分間撹拌し、次いで、化合物C3B(122 mg、0.371 mmol)を加え、反応液を室温で1時間撹拌した。LCMSにより反応の完了を検出した後、反応液を直接C18カラム逆相(アセトニトリルと0.05%ギ酸水溶液系)により精製し、目的化合物N6,N6-ジ-n-プロピル-N2-((6-(2-(メチルスルホニル)ピリミジン-5-イル)ヘキサ-5-イノイル)-L-バリン)-L-リジン(C3、50 mg、収率28%)を淡黄色固体として得た。
LCMS (ESI) [M+H]+ = 580.0;
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 8.24 (s, 2H), 7.98 - 7.93 (m, 2H), 4.24 - 4.16 (m, 1H), 4.10 (d, J = 5.2 Hz, 1H), 3.41 (s, 3H), 2.79 - 2.64 (m, 6H), 2.55 (t, J = 7.1 Hz, 2H), 2.45 - 2.26 (m, 2H), 2.06 - 1.91 (m, 1H), 1.89 - 1.78 (m, 2H), 1.76 - 1.66 (m, 1H), 1.64 - 1.57 (m, 1H), 1.57 - 1.42 (m, 6H), 1.37 - 1.24 (m, 2H), 0.93 - 0.78 (m, 12H)。
【0294】
実施例1.2 薬物-リンカ-化合物の合成
実施例1.2.1:N-((11S,14S)-11-(4-(ジ-n-プロピルアミノ)ブチル)-1-((S)-7-エチル-7-ヒドロキシ-8,11-ジオキソ-7,8,11,13-テトラヒドロ-10H-[1,3]ジオキソロ[4,5-g]ピラノ[3',4':6,7]インドリジノ[1,2-b]キノリン-14-イル)-15-メチル-7,10,13-トリオキソ-4-オキサ-6,9,12-トリアザヘキサデカン-14-イル)-6-(2-(メチルスルホニル)ピリミジン-5-イル)ヘキサ-5-インアミド(DL-01)
【化47】
【0295】
化合物C3(43 mg、0.074 mmol)、化合物B1(40 mg、0.075 mmol)をN,N-ジメチルホルムアミド(1 mL)に溶解し、次いで、HBTU(28 mg、0.075 mmol)及びN,N-ジイソプロピルエチルアミン(24 mg、0.187 mmol)を順に加え、反応液を室温で1時間撹拌した。LCMSにより反応の完了を検出した後、反応液を直接分取クロマトグラフィ-(0.01%トリフルオロ酢酸水溶液、アセトニトリル)により精製し、目的化合物(DL-01、8.5 mg、収率10%)を黄色固体として得た。
LCMS (ESI) [M+H]+ = 1098.6;
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 9.10 (s, 2H), 9.03 (s, 1H), 8.64 (t, J = 6.4 Hz, 1H), 8.19 (t, J = 5.9 Hz, 1H), 8.08 (d, J = 7.4 Hz, 1H), 7.92 (d, J = 8.5 Hz, 1H), 7.59 (s, 1H), 7.51 (s, 1H), 7.24 (s, 1H), 6.49 (s, 1H), 6.29 (s, 2H), 5.42 (s, 2H), 5.24 (s, 2H), 4.66 - 4.52 (m, 2H), 4.31 - 4.21 (m, 1H), 4.19 - 4.10 (m, 1H), 3.74 (d, J = 5.5 Hz, 2H), 3.49 - 3.48 (m, 2H), 3.40 (s, 3H), 3.15 - 3.06 (m, 2H), 3.02 - 2.95 (m, 6H), 2.59 - 2.52 (m, 3H), 2.41 - 2.29 (m, 2H), 2.05 - 1.90 (m, 2H), 1.91 - 1.77 (m, 6H), 1.63 - 1.57 (m, 6H), 1.31 - 1.29 (m, 2H), 0.92 - 0.80 (m, 15H)。
【0296】
実施例1.2.2:N-((11S,14S)-11-(4-(ジエチルアミノ)ブチル)-1-((S)-7-エチル-7-ヒドロキシ-8,11-ジオキソ-7,8,11,13-テトラヒドロ-10H-[1,3]ジオキソロ[4,5-g]ピラノ[3',4':6,7]インドリジノ[1,2-b]キノリン-14-イル)-15-メチル-7,10,13-トリオキソ-4-オキサ-6,9,12-トリアザヘキサデカン-14-イル)-6-(2-(メチルスルホニル)ピリミジン-5-イル)ヘキサ-5-インアミド(DL-02)
【化48】
【0297】
化合物C2(40 mg、0.075 mmol)、化合物B1(41 mg、0.075 mmol)をDMF(1 mL)に溶解し、次いで、HOBt(15.2 mg、0.113 mmol)及び1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド塩酸塩(21.5 mg、0.113 mmol)を加え、次いで、トリエチルアミン(23 mg、0.225 mmol)を加え、加えた後の反応液を室温で16時間撹拌した。LCMSにより反応の完了を検出した後、反応液を濃縮して粗生成物を得た。粗生成物を分取クロマトグラフィ-(0.01%TFA水溶液、アセトニトリル)により精製し、目的化合物(DL-02、16 mg、収率20%)を黄色固体として得た。
LCMS (ESI) [M+H]+ = 1070.6;
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 9.13 - 9.08 (m, 2H), 9.01 (s, 1H), 8.64 (t, J = 6.5 Hz, 1H), 8.20 (t, J = 5.7 Hz, 1H), 8.09 (d, J = 7.4 Hz, 1H), 7.92 (d, J = 8.4 Hz, 1H), 7.59 (s, 1H), 7.51 (s, 1H), 7.24 (s, 1H), 6.50 (s, 1H), 6.29 (s, 2H), 5.43 (s, 2H), 5.24 (s, 2H), 4.65 - 4.53 (m, 2H), 4.26 (d, J = 6.5 Hz, 1H), 4.20 - 4.10 (m, 1H), 3.74 (d, J = 5.5 Hz, 2H), 3.50 (t, J = 5.8 Hz, 2H), 3.41 (s, 3H), 3.14 - 3.07 (m, 6H), 2.98 (s, 2H), 2.55 (d, J = 7.3 Hz, 2H), 2.41 - 2.29 (m, 2H), 2.03 - 1.89 (m, 2H), 1.89 - 1.77 (m, 7H), 1.61 - 1.56 (m, 2H), 1.32 (s, 2H), 1.16 (t, J = 7.2 Hz, 6H), 0.91 - 0.78 (m, 9H)。
【0298】
実施例1.2.3:N-((11S,14S)-11-(4-(ジメチルアミノ)ブチル)-1-((S)-7-エチル-7-ヒドロキシ-8,11-ジオキソ-7,8,11,13-テトラヒドロ-10H-[1,3]ジオキソロ[4,5-g]ピラノ[3',4':6,7]インドリジノ[1,2-b]キノリン-14-イル)-15-メチル-7,10,13-トリオキソ-4-オキサ-6,9,12-トリアザヘキサデカン-14-イル)-6-(2-(メチルスルホニル)ピリミジン-5-イル)ヘキサ-5-インアミド(DL-03)
【化49】
【0299】
化合物B1(100 mg、0.186 mmol)及び化合物N6,N6-ジメチル-N2-((6-(2-(メチルスルホニル)ピリミジン-5-イル)ヘキサ-5-イノイル)-L-バリン)-L-リジン(C1、100 mg、0.191 mmol)をDMF(2 mL)に溶解した。次いで、1-ヒドロキシベンゾトリアゾ-ル(38 mg、0.280 mmol)及び1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド塩酸塩(53 mg、0.280 mmol)を加え、そして、トリエチルアミン(56 mg、0.559 mmol)を更に加え、加えた後の反応液を室温で16時間撹拌した。LCMSにより反応の完了を検出した後、反応液を分取クロマトグラフィ-(0.01%TFA水溶液、アセトニトリル)により精製し、目的化合物(DL-03、20 mg、収率10%)を黄色固体として得た。
LCMS (ESI) [M+H]+ = 1042.5;
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 9.28 (s, 1H, TFA), 9.10 (s, 2H), 8.64 (br s, 1H), 8.19 (br s, 1H), 8.09 (d, J = 6.4 Hz, 1H), 7.92 (d, J = 7.8 Hz, 1H), 7.59 (s, 1H), 7.51 (s, 1H), 7.24 (s, 1H), 6.50 (s, 1H), 6.29 (s, 2H), 5.43 (s, 2H), 5.24 (s, 2H), 4.67 - 4.52 (m, 2H), 4.30 - 4.10 (m, 2H), 3.74 (br s, 2H), 3.50 (br s, 2H), 3.41 (s, 3H), 3.17 - 3.07 (m, 2H), 3.04 - 2.91 (m, 2H), 2.75 (s, 6H), 2.46 - 2.24 (m, 3H), 2.04 - 1.66 (m, 9H), 1.63 - 1.46 (m, 3H), 1.32 - 1.29 (m, 2H), 0.87 - 0.82 (m, 9H)。
【0300】
実施例1.3 抗CLDN18.2抗体-薬物コンジュゲ-トの調製
【化50】
Abは抗体である。
【0301】
1.3.1 CLDN18.2-ADC(DAR8)試料の調製
30 mgの抗CLDN18.2抗体を希釈液(20 mM PB、pH7.5)で希釈し、最終濃度5 mMのエデト酸ナトリウム溶液を加え、均一に混合し、抗体6.0倍当量のTCEP溶液を加え、均一に混合し、室温で60分間放置し、上記溶液系に、ジメチルスルホキシドに溶解した抗体12倍当量のDL-01を加え、均一に混合し、室温で1時間静置し、カップリング後の試料を得、反応完了後、30 KDaの限外濾過管を使用して試料をpH5.5の10 mMヒスチジン緩衝液に置換し、そして低分子物質を除去し、最後に試料を濃縮することにより、抗CLDN18.2抗体-ADC組成物を含有する溶液CLDN18.2-ADC(DAR8)を得た。実施例3.4の質量分析法により測定し、DAR値は8.0であった。
【0302】
1.3.2 CLDN18.2-ADC(DAR2)試料の調製
30 mgの抗CLDN18.2抗体を希釈液(20 mM PB、pH7.5)で希釈し、最終濃度5 mMのエデト酸ナトリウム溶液を加え、均一に混合し、抗体6.0倍当量のTCEP溶液を加え、均一に混合し、室温で60分間放置し、上記溶液系に、ジメチルスルホキシドに溶解した抗体2.5倍当量のDL-01を加え、均一に混合し、室温で1時間静置し、カップリング後の試料を得、反応完了後、30 KDaの限外濾過管を使用して試料をpH5.5の10 mMヒスチジン緩衝液に置換し、そして低分子物質を除去し、最後に試料を濃縮することにより、抗CLDN18.2抗体-ADC組成物を含有する溶液CLDN18.2-ADC(DAR2)を得た。質量分析法により測定し、DAR値は1.7であった。
【0303】
1.3.3 CLDN18.2-ADC(DAR4)試料の調製
30 mgの抗CLDN18.2抗体を希釈液(20 mM PB、pH7.5)で希釈し、最終濃度5 mMのエデト酸ナトリウム溶液を加え、均一に混合し、抗体6.0倍当量のTCEP溶液を加え、均一に混合し、室温で60分間放置し、上記溶液系に、ジメチルスルホキシドに溶解した抗体4.5倍当量のDL-01を加え、均一に混合し、室温で1時間静置し、カップリング後の試料を得、反応完了後、30 KDaの限外濾過管を使用して試料をpH5.5の10 mMヒスチジン緩衝液に置換し、そして低分子物質を除去し、最後に試料を濃縮することにより、抗CLDN18.2抗体-ADC組成物を含有する溶液CLDN18.2-ADC(DAR4)を得た。質量分析法により測定し、DAR値は4.0であった。
【0304】
1.3.4 CLDN18.2-ADC(DAR6)試料の調製
30 mgの抗CLDN18.2抗体を希釈液(20 mM PB、pH7.5)で希釈し、最終濃度5 mMのエデト酸ナトリウム溶液を加え、均一に混合し、抗体6.0倍当量のTCEP溶液を加え、均一に混合し、室温で60分間放置し、上記溶液系に、ジメチルスルホキシドに溶解した抗体7.0倍当量のDL-01を加え、均一に混合し、室温で1時間静置し、カップリング後の試料を得、反応完了後、30 KDaの限外濾過管を使用して試料をpH5.5の10 mMヒスチジン緩衝液に置換し、そして低分子物質を除去し、最後に試料を濃縮することにより、抗CLDN18.2抗体-ADC組成物を含有する溶液CLDN18.2-ADC-07(DAR6)を得た。質量分析法により測定し、DAR値は5.6であった。
【0305】
実施例1.4 質量分析法によるカップリング後の試料のDAR値測定
以下の条件でCLDN18.2-ADC-07(DAR8)にLC-MS分子量及びDAR値の解析を行い、
クロマトグラフィ-条件:
カラム:ACQUITY UPLC BEH200 SEC 1.7 μm、4.6×150 mm
移動相A:0.1%FA/H2O、移動相B:0.1%FA/ACN
カラム温度:30℃
試料室温度:8℃
流速:0.3 mL/min
注入量:1 μL
【表8-2】
試料の処理:それぞれ50 μgの試料を取り、2 μLの1 M DTTを加え、超純水を50 μLまで加えて約1.0 mg/mL濃度まで希釈し、均一に混合し、室温で30 min還元した。
LC/MS型番:AB SCIEX X500 Q-TOF
質量分析条件:Gas1:45、Gas2:45、CUR:30、TEM:450、ISVF:5000、DP:120、CE:12、質量数範囲:600~4000
【0306】
結果は下記表9に示されている。
【表9】
【0307】
表9において、mAbはカップリングしていないモノクロ-ナル抗体を表し、LCは抗体軽鎖を表し、HCは抗体重鎖を表し、DAR1は軽鎖又は重鎖を含み、1つの毒素分子とカップリングしたコンジュゲ-トを表し、DAR2は、軽鎖又は重鎖を含み、2つの毒素分子とカップリングしたコンジュゲ-トを表し、DAR3は、軽鎖又は重鎖を含み、3つの毒素分子とカップリングしたコンジュゲ-トを表し、そのうち、モノクロ-ナル抗体の理論分子量はG0F糖型で計算される。下記mAb、LC、HC、DAR1、DAR2、DAR3の説明は以上の通りである。
【0308】
検出の結果から、CLDN18.2-ADC(DAR8)における抗体の軽鎖は0個~1個の毒素分子とカップリングしており(LC、DAR1の割合がそれぞれ0%、100%)、重鎖は0個~3個の毒素分子とカップリングしている(mAb、DAR1、DAR2、DAR3の割合がそれぞれ0%、0%、0%、100%)ことが示され、これにより、CLDN18.2-ADC(DAR8)の薬物抗体結合比(DAR値)は8.0と算出された。
これと類似し、質量分析法により他のカップリング後の試料の薬物抗体結合比(DAR値)を測定することができる。
【0309】
実施例2 抗Claudin18.2抗体ADCコンジュゲ-ト及び評価
実施例2.1 抗Claudin18.2抗体ADCコンジュゲ-ト
実施例1に記載のADCの調製方法に従い、25C7A5-HZ1、25C7A5-HZ2及びアイソタイプ対照IgG抗体を使用してADCを構築した。
1)抗体前処理:0.1 MのEDTA母液を抗体体積の1%に応じて加え、次いで、1 Mのリン酸水素二ナトリウム母液で試料のpHを7.7±0.2に調整した。
2)TCEP母液の調製:一定の質量のTCEP-HCLを秤量し、80%のTCEP溶媒を加え、次いで、0.5 Mの水酸化ナトリウムでpHを7.7±0.2に調整し、最後にTCEP溶媒でTCEP濃度を20 mMに定容した。
3)還元:前処理した抗体を1:4.4(抗体:TCEPモル比)でTCEP母液に加え、均一に混合し、室温で0.5 h反応させた。
4)カップリング:還元後の抗体に1:12(抗体:毒素モル比)で毒素リンカ-を加え、均一に混合し、室温で≧2 h反応させた。
5)限外濾過:限外濾過管で反応液を限外濾過緩衝液(10 mM Hcl-His、pH5.5)に置換(濃縮後に毎回4倍体積以上の緩衝液を加えて3回以上置換)し、次いで、少量のbufferで限外濾過膜をすすいで試料を回収した。
【0310】
カップリング後の試料の濃度、純度、DARを検出した。結果は表10に示されており、抗体とADCとのカップリング後に明らかな凝集は見られず、SEC-HPLCにより測定した純度は98%より高かった。
【表10】
【0311】
実施例2.2 抗Claudin18.2ヒト化抗体及びADCの親和性検出
実施例2.2に記載のものと類似する方法に従い、毒素コンジュゲ-ト前後における抗体の細胞結合親和性を検出した。L929-claudin18.2(ヒト)又はNUGC4細胞をパンクレアチンで消化し、遠心分離して収集し、予冷したPBSで3回洗浄し、細胞を再懸濁させ、1ウェルあたり5×104個の細胞を96ウェルプレ-トにプレ-ティングして一晩置き、4%パラホルムアルデヒドで細胞を固定し、2%BSAで(PBS中で)37℃で2時間ブロッキングし、勾配希釈したADC薬物又は抗体を加え、37℃で2時間インキュベ-トし、HRPで標識した抗ヒト二次抗体(Jackson、109-035-088)を加え、37℃で1時間インキュベ-トし、TMB基質を加えて発色させ、2 M Hclで停止させた後、マイクロプレ-トリ-ダ-で450 nM吸光値を読み取った。
【0312】
実験の結果を図8A及び8Bに示されており、25C7A5-HZ1、25C7A5-HZ2は、カップリング前後の細胞との親和性に明らかな変化はなかった。
【0313】
実施例2.3 ADCのインビトロ殺傷活性検出
HEK293T-claudin18.2(ヒト)、HEK293T-claudin18.1(ヒト)細胞及びNUGC4-Claudin18.2細胞をパンクレアチンで消化して収集し、DEME+2%FBSで細胞を再懸濁させ、1ウェルあたり10000個の細胞をプレ-ティングし、DEME+2%FBSで検出待ちの抗体ADC薬物を勾配希釈してプレ-トに加え、37℃で72時間インキュベ-トし、インキュベ-ト完了後、CCK8試薬を20 uL/ウェルで加え、2時間~4時間反応させ、マイクロプレ-トリ-ダ-450 nmで値を読み取り、そしてGraphpad Prismに導入してカ-ブフィッティングを行った。
【0314】
実験の結果は図9A図9Eに示されており、25C7A5-HZ1、25C7A5-HZ2がカップリングした後に形成されたADCは、HEK293T-claudin18.2細胞及びNUGC-4-Claudin18.2細胞を何れも効果的に殺傷することができると共に、25C7A5-HZ1、25C7A5-HZ2はカップリングした後、HEK293T-claudin18.1細胞を実質的に殺傷しないことから、カップリング後のADCはclaudin18.1を非特異的に認識せず、且つ安定性が比較的良好であることが示された。
【0315】
実施例2.4 ADCのインビボ薬効
抗Claudin18.2ヒト化ADC薬物のインビボ薬効を検証するために、ヒト胃癌細胞NUGC-4(Nanjing Cobioer)皮下異種移植雌性Balb/c Nudeマウスモデルにおける被検薬物の抗腫瘍効果を評価した。
【0316】
5週齢~6週齢の雌性Balb/c Nudeマウス(Charles River)を購入した。対数増殖期まで増殖したNUGC4細胞をEDTAで消化し、そしてPBSで再懸濁させ、各マウスに5×106の細胞を皮下接種した。腫瘍が100 m3~200 m3のサイズまで増殖した後、週に1回、毎回10 mg/kgでADC薬物を静脈内投与し、具体的な投与レジメンは下記表7に示されている。本実験の主な観察指標は、1)相対腫瘍増殖率T/C(%)、即ちある時点における、治療群と対照群との相対腫瘍体積又は腫瘍重量のパ-セント値である。計算式は、T/C(%)=TRTV/CRTV×100%(TRTV:治療群平均RTV、CRTV:対照群平均RTV、RTV=Vt/V0、V0は群分けする時の当該動物の腫瘍体積、Vtは治療後の当該動物の腫瘍体積)又はT/C%=TTW/CTW×100%(TTW:治療群実験完了時の平均腫瘍重量、CTW:対照群実験完了時の平均腫瘍重量)である。2)相対腫瘍阻害率TGI(%)、計算式は、TGI(%)=(1-T/C)×100%(T及びCはそれぞれ、ある特定の時点における、治療群及び対照群の相対腫瘍体積(RTV)又は腫瘍重量(TW))である。3)試験終点の腫瘍体積サイズ写真、腫瘍重量である。4)ADC薬物のマウス体重に対する影響である。
【表11】
【0317】
実験の結果は図10及び図11に示されており、25C7A5-hz1-B81はNUGC-4 CDXモデルにおいて顕著な薬効を有し(図10)、且つマウス全体は耐性が良好であり、有害反応はなかった(図11)ことが示された。
【0318】
配列表:
【表12】
図1A
図1B
図1C
図1D
図1E
図1F
図1G
図1H
図1I
図2A
図2B
図3A
図3B
図3C
図4A
図4B
図4C
図5
図6
図7
図8A
図8B
図9A
図9B
図9C
図9D
図9E
図10
図11
【配列表】
2024535637000001.xml
【国際調査報告】