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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-30
(54)【発明の名称】抗AMHRII抗体
(51)【国際特許分類】
   C07K 16/28 20060101AFI20240920BHJP
   C12N 15/13 20060101ALI20240920BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20240920BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20240920BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20240920BHJP
   C12P 21/08 20060101ALI20240920BHJP
   C07K 16/46 20060101ALI20240920BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20240920BHJP
   C12Q 1/02 20060101ALI20240920BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20240920BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240920BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20240920BHJP
   A61P 15/00 20060101ALI20240920BHJP
   A61P 1/00 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
C07K16/28 ZNA
C12N15/13
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12P21/08
C07K16/46
C12N5/10
C12Q1/02
A61K39/395 D
A61K39/395 N
A61P35/00
A61P35/02
A61P15/00
A61P1/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024545058
(86)(22)【出願日】2022-10-08
(85)【翻訳文提出日】2024-05-30
(86)【国際出願番号】 CN2022123781
(87)【国際公開番号】W WO2023056927
(87)【国際公開日】2023-04-13
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2021/122601
(32)【優先日】2021-10-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524134546
【氏名又は名称】ラノバ メディシンズ デベロップメント カンパニー, リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】リー, ルンシェン
(72)【発明者】
【氏名】ファン, ウェンタオ
(72)【発明者】
【氏名】リー, イーファン
【テーマコード(参考)】
4B063
4B064
4B065
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4B063QA05
4B063QQ08
4B063QR48
4B063QR77
4B063QS33
4B064AG27
4B064CA02
4B064CA05
4B064CA08
4B064CA10
4B064CA19
4B064CC24
4B064DA01
4B064DA13
4B065AA01X
4B065AA01Y
4B065AA57X
4B065AA57Y
4B065AA72X
4B065AA72Y
4B065AA83X
4B065AA83Y
4B065AA90X
4B065AA90Y
4B065AB01
4B065AB02
4B065AC14
4B065BA01
4B065BA21
4B065CA44
4B065CA46
4C085AA13
4C085AA14
4C085BB11
4C085DD88
4C085EE01
4H045AA10
4H045AA20
4H045AA30
4H045CA40
4H045DA76
4H045EA20
4H045EA50
4H045FA74
(57)【要約】
抗AMHRII抗体および抗原結合性フラグメント、ならびにそれらの二重特異性対応物または多重特異性対応物が、提供される。疾患(例えば、がん)を処置するためにそれらの抗体を使用する方法および疾患(例えば、がん)を診断するためにそれらの抗体を使用する方法もまた、提供される。その結合は、このAMHRIIタンパク質を発現する標的にされた細胞によるエンドサイトーシスを効果的に誘導し得る。また、これらの抗体は強力な細胞傷害活性を示し、このことは、これらの抗体を、その標的細胞を殺傷するのに適切にする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒトAMHRII(抗ミュラー管ホルモンレセプター2型)タンパク質に対する結合特異性を有する抗体またはその抗原結合性フラグメントであって、VH CDR1、VH CDR2、およびVH CDR3を含む重鎖可変領域(VH)、ならびにVL CDR1、VL CDR2およびVL CDR3を含む軽鎖可変領域(VL)を含み、ここで、
(a)前記VH CDR1が配列番号70のアミノ酸配列を含み;
前記VH CDR2が配列番号71のアミノ酸配列を含み;
前記VH CDR3が配列番号72のアミノ酸配列を含み;
前記VL CDR1が配列番号73のアミノ酸配列を含み;
前記VL CDR2が配列番号74のアミノ酸配列を含み;
前記VL CDR3が配列番号18のアミノ酸配列を含む、または
(b)前記VH CDR1が配列番号25のアミノ酸配列を含み;
前記VH CDR2が配列番号75のアミノ酸配列を含み;
前記VH CDR3が配列番号27のアミノ酸配列を含み;
前記VL CDR1が配列番号76のアミノ酸配列を含み;
前記VL CDR2が配列番号29のアミノ酸配列を含み;
前記VL CDR3が配列番号30のアミノ酸配列を含む、
抗体またはその抗原結合性フラグメント。
【請求項2】
(a)前記VH CDR1が配列番号13または20のアミノ酸配列を含み;
前記VH CDR2が配列番号14、19、21または33のアミノ酸配列を含み;
前記VH CDR3が配列番号15または22のアミノ酸配列を含み;
前記VL CDR1が配列番号16または23のアミノ酸配列を含み;
前記VL CDR2が配列番号17または24のアミノ酸配列を含み;
前記VL CDR3が配列番号18のアミノ酸配列を含む、または
(b)前記VH CDR1が配列番号25のアミノ酸配列を含み;
前記VH CDR2が配列番号26、31、34、35または36のアミノ酸配列を含み;
前記VH CDR3が配列番号27のアミノ酸配列を含み;
前記VL CDR1が配列番号28、32、37、38または39のアミノ酸配列を含み;
前記VL CDR2が配列番号29のアミノ酸配列を含み;
前記VL CDR3が配列番号30のアミノ酸配列を含む、
請求項1に記載の抗体またはその抗原結合性フラグメント。
【請求項3】
前記VH CDR1が配列番号13のアミノ酸配列を含み、前記VH CDR2が配列番号14のアミノ酸配列を含み、前記VH CDR3が配列番号15のアミノ酸配列を含み、前記VL CDR1が配列番号16のアミノ酸配列を含み、前記VL CDR2が配列番号17のアミノ酸配列を含み、前記VL CDR3が配列番号18のアミノ酸配列を含む;
前記VH CDR1が配列番号20のアミノ酸配列を含み、前記VH CDR2が配列番号21または33のアミノ酸配列を含み、前記VH CDR3が配列番号22のアミノ酸配列を含み、前記VL CDR1が配列番号23のアミノ酸配列を含み、前記VL CDR2が配列番号24のアミノ酸配列を含み、前記VL CDR3が配列番号18のアミノ酸配列を含む;
前記VH CDR1が配列番号25のアミノ酸配列を含み、前記VH CDR2が配列番号26、34、35または36のアミノ酸配列を含み、前記VH CDR3が配列番号27のアミノ酸配列を含み、前記VL CDR1が配列番号28、37、38または39のアミノ酸配列を含み、前記VL CDR2が配列番号29のアミノ酸配列を含み、前記VL CDR3が配列番号30のアミノ酸配列を含む;
前記VH CDR1が配列番号13のアミノ酸配列を含み、前記VH CDR2が配列番号19のアミノ酸配列を含み、前記VH CDR3が配列番号15のアミノ酸配列を含み、前記VL CDR1が配列番号16のアミノ酸配列を含み、前記VL CDR2が配列番号17のアミノ酸配列を含み、前記VL CDR3が配列番号18のアミノ酸配列を含む;
前記VH CDR1が配列番号13のアミノ酸配列を含み、前記VH CDR2が配列番号19のアミノ酸配列を含み、前記VH CDR3が配列番号15のアミノ酸配列を含み、前記VL CDR1が配列番号23のアミノ酸配列を含み、前記VL CDR2が配列番号17のアミノ酸配列を含み、前記VL CDR3が配列番号18のアミノ酸配列を含む;または
前記VH CDR1が配列番号25のアミノ酸配列を含み、前記VH CDR2が配列番号31のアミノ酸配列を含み、前記VH CDR3が配列番号27のアミノ酸配列を含み、前記VL CDR1が配列番号32のアミノ酸配列を含み、前記VL CDR2が配列番号29のアミノ酸配列を含み、前記VL CDR3が配列番号30のアミノ酸配列を含む、
請求項2に記載の抗体またはその抗原結合性フラグメント。
【請求項4】
前記VH CDR1が配列番号13のアミノ酸配列を含み、前記VH CDR2が配列番号14のアミノ酸配列を含み、前記VH CDR3が配列番号15のアミノ酸配列を含み、前記VL CDR1が配列番号16のアミノ酸配列を含み、前記VL CDR2が配列番号17のアミノ酸配列を含み、前記VL CDR3が配列番号18のアミノ酸配列を含む、請求項3に記載の抗体またはフラグメント。
【請求項5】
前記VHが、配列番号1および40~43からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み、前記VLが、配列番号2および44~47からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、請求項4に記載の抗体またはフラグメント。
【請求項6】
前記VHが配列番号40のアミノ酸配列を含み、前記VLが配列番号44のアミノ酸配列を含む、請求項4に記載の抗体またはフラグメント。
【請求項7】
前記VH CDR1が配列番号20のアミノ酸配列を含み、前記VH CDR2が配列番号21のアミノ酸配列を含みまたは33、前記VH CDR3が配列番号22のアミノ酸配列を含み、前記VL CDR1が配列番号23のアミノ酸配列を含み、前記VL CDR2が配列番号24のアミノ酸配列を含み、前記VL CDR3が配列番号18のアミノ酸配列を含む、請求項3に記載の抗体またはフラグメント。
【請求項8】
前記VH CDR1が配列番号20のアミノ酸配列を含み、前記VH CDR2が配列番号33のアミノ酸配列を含み、前記VH CDR3が配列番号22のアミノ酸配列を含み、前記VL CDR1が配列番号23のアミノ酸配列を含み、前記VL CDR2が配列番号24のアミノ酸配列を含み、前記VL CDR3が配列番号18のアミノ酸配列を含む、請求項7に記載の抗体またはフラグメント。
【請求項9】
前記VHが、配列番号5および48~51からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み、前記VLが、配列番号6および52~55からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、請求項7に記載の抗体またはフラグメント。
【請求項10】
前記VHが配列番号48のアミノ酸配列を含み、前記VLが配列番号52のアミノ酸配列を含む、請求項7に記載の抗体またはフラグメント。
【請求項11】
前記VH CDR1が配列番号25のアミノ酸配列を含み、前記VH CDR2が配列番号26、34、35または36のアミノ酸配列を含み、前記VH CDR3が配列番号27のアミノ酸配列を含み、前記VL CDR1が配列番号28、37、38または39のアミノ酸配列を含み、前記VL CDR2が配列番号29のアミノ酸配列を含み、前記VL CDR3が配列番号30のアミノ酸配列を含む、請求項3に記載の抗体またはフラグメント。
【請求項12】
前記VH CDR1が配列番号25のアミノ酸配列を含み、前記VH CDR2が配列番号36のアミノ酸配列を含み、前記VH CDR3が配列番号27のアミノ酸配列を含み、前記VL CDR1が配列番号38のアミノ酸配列を含み、前記VL CDR2が配列番号29のアミノ酸配列を含み、前記VL CDR3が配列番号30のアミノ酸配列を含む、請求項11に記載の抗体またはフラグメント。
【請求項13】
前記VHが、配列番号9、56~59および64~66からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み、前記VLが、配列番号10、60~63および67~69からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、請求項11に記載の抗体またはフラグメント。
【請求項14】
前記VHが配列番号66のアミノ酸配列を含み、前記VLが配列番号68のアミノ酸配列を含む、請求項11に記載の抗体またはフラグメント。
【請求項15】
前記VH CDR1が配列番号13のアミノ酸配列を含み、前記VH CDR2が配列番号19のアミノ酸配列を含み、前記VH CDR3が配列番号15のアミノ酸配列を含み、前記VL CDR1が配列番号16のアミノ酸配列を含み、前記VL CDR2が配列番号17のアミノ酸配列を含み、前記VL CDR3が配列番号18のアミノ酸配列を含む、請求項3に記載の抗体またはフラグメント。
【請求項16】
前記VHが配列番号3のアミノ酸配列を含み、前記VLが配列番号4のアミノ酸配列を含む、請求項15に記載の抗体またはフラグメント。
【請求項17】
前記VH CDR1が配列番号13のアミノ酸配列を含み、前記VH CDR2が配列番号19のアミノ酸配列を含み、前記VH CDR3が配列番号15のアミノ酸配列を含み、前記VL CDR1が配列番号23のアミノ酸配列を含み、前記VL CDR2が配列番号17のアミノ酸配列を含み、前記VL CDR3が配列番号18のアミノ酸配列を含む、請求項3に記載の抗体またはフラグメント。
【請求項18】
前記VHが配列番号7のアミノ酸配列を含み、前記VLが配列番号8のアミノ酸配列を含む、請求項17に記載の抗体またはフラグメント。
【請求項19】
前記VH CDR1が配列番号25のアミノ酸配列を含み、前記VH CDR2が配列番号31のアミノ酸配列を含み、前記VH CDR3が配列番号27のアミノ酸配列を含み、前記VL CDR1が配列番号32のアミノ酸配列を含み、前記VL CDR2が配列番号29のアミノ酸配列を含み、前記VL CDR3が配列番号30のアミノ酸配列を含む、請求項3に記載の抗体またはフラグメント。
【請求項20】
前記VHが配列番号11のアミノ酸配列を含み、前記VLが配列番号12のアミノ酸配列を含む、請求項19に記載の抗体またはフラグメント。
【請求項21】
請求項1~20のいずれか一項に記載の抗体またはフラグメントと、AMHRIIではない標的抗原に対する結合特異性を有する第2の抗体または抗原結合性フラグメントとを含む、二重特異性抗体。
【請求項22】
請求項1~21のいずれか一項に記載の抗体またはフラグメントをコードする、1種または複数種のポリヌクレオチド。
【請求項23】
請求項22に記載のポリヌクレオチドを含む、細胞。
【請求項24】
請求項1~21のいずれか一項に記載の抗体またはフラグメントと、薬学的に受容可能なキャリアとを含む、組成物。
【請求項25】
がんの処置を必要とする患者においてがんを処置する方法であって、
前記患者に有効量の請求項1~21のいずれか一項に記載の抗体またはフラグメントを投与する工程
を含む、方法。
【請求項26】
前記がんが前記AMHRIIタンパク質の発現により特徴付けられる、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記がんが固形腫瘍からなる群より選択される、請求項25または26に記載の方法。一部の実施形態において、該がんは、膀胱がん、肝がん、結腸がん、直腸がん、子宮内膜がん、白血病、リンパ腫、膵がん、小細胞肺がん、非小細胞肺がん、乳がん、尿道がん、頭頸部がん、消化器がん、胃がん、食道がん、卵巣がん、腎がん、黒色腫、前立腺がんおよび甲状腺がんからなる群より選択される。
【請求項28】
前記がんが卵巣がんまたは大腸がんである、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
AMHRIIタンパク質を発現する細胞を殺傷するための方法であって、
該細胞と、請求項1~21のいずれか一項に記載の抗体またはフラグメントとを接触させる工程
を含む、方法。
【請求項30】
前記接触させる工程がインビボ、エクスビボ、またはインビトロで行われる、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記細胞がヒト患者中の細胞である、請求項29または30に記載の方法。
【請求項32】
前記ヒト患者ががんを有する、請求項31に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
(背景)
AMHRII(抗ミュラー管ホルモンレセプター2型、またはAMHR2)は、抗ミュラー管ホルモン(AMH)のレセプターであり、この抗ミュラー管ホルモン(AMH)は、テストステロンに加えて、男性の性分化において重要な役割を果たす。AMHおよびテストステロンは、異なる細胞によって精巣で産生され、異なる効果を有する。テストステロンは男性生殖器の発達を促進し、一方、コードされたレセプターへのAMHの結合はミュラー管から子宮およびファロピウス管への発達を防止する。この遺伝子における変異は、ミュラー管遺残症候群II型に関連する。
【0002】
AMHRIIは、トランスフォーミング増殖因子β(TGF)スーパーファミリーのII型レセプターに相同なセリン/スレオニンキナーゼレセプターである。AMH/AMHRIIシグナル伝達はまた、成人女性における卵母細胞発達の調節、ならびに卵巣予備能および受胎能の制御において、重要な役割を果たす。
【0003】
AMHRIIはヒト上皮性卵巣癌(EOC)の大多数において過剰発現されることが、観察されている。EOCは、最も蔓延している致死型の卵巣がんであり、すべての卵巣がんのうちの約85%を示す。したがって、治療抗体でAMHRIIを標的とすることが、がん(例えば、婦人科がんおよび大腸がん(colorectal cancer))を処置することにおいて有用であり得る。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
(要旨)
AMHRIIタンパク質の発現または過剰発現により特徴付けられる疾患(例えば、がん)を処置するために有用な抗ヒトAMHRII抗体およびフラグメントが、提供される。
【0005】
本開示の一実施形態にしたがって、VH CDR1、VH CDR2、およびVH CDR3を含む重鎖可変領域(VH)、ならびにVL CDR1、VL CDR2およびVL CDR3を含む軽鎖可変領域(VL)を含む抗体またはその抗原結合性フラグメントが提供され、VH CDR1は配列番号70のアミノ酸配列を含み;VH CDR2は配列番号71のアミノ酸配列を含み;VH CDR3は配列番号72のアミノ酸配列を含み;VL CDR1は配列番号73のアミノ酸配列を含み;VL CDR2は配列番号74のアミノ酸配列を含み;VL CDR3は配列番号18のアミノ酸配列含む。
【0006】
一部の実施形態では、VH CDR1は配列番号13または20のアミノ酸配列を含み;VH CDR2は配列番号14、19、21または33のアミノ酸配列を含み;VH CDR3は配列番号15または22のアミノ酸配列を含み;VL CDR1は配列番号16または23のアミノ酸配列を含み;VL CDR2は配列番号17または24のアミノ酸配列を含み;VL CDR3は配列番号18のアミノ酸配列含む。
【0007】
別の実施形態では、VH CDR1、VH CDR2、およびVH CDR3、ならびにVL CDR1、VL CDR2およびVL CDR3を含む軽鎖可変領域(VL)を含む抗体またはその抗原結合性フラグメントも提供され、VH CDR1は配列番号25のアミノ酸配列を含み;VH CDR2は配列番号75のアミノ酸配列を含み;VH CDR3は配列番号27のアミノ酸配列を含み;VL CDR1は配列番号76のアミノ酸配列を含み;VL CDR2は配列番号29のアミノ酸配列を含み;VL CDR3は配列番号30のアミノ酸配列含む。
【0008】
一部の実施形態では、VH CDR1は配列番号25のアミノ酸配列を含み;VH CDR2は配列番号26、31、34、35または36のアミノ酸配列を含み;VH CDR3は配列番号27のアミノ酸配列を含み;VL CDR1は配列番号28、32、37、38または39のアミノ酸配列を含み;VL CDR2は配列番号29のアミノ酸配列を含み;VL CDR3は配列番号30のアミノ酸配列含む。
【0009】
一部の実施形態では、VH CDR1は配列番号13のアミノ酸配列を含み、VH CDR2は配列番号14のアミノ酸配列を含み、VH CDR3は配列番号15のアミノ酸配列を含み、VL CDR1は配列番号16のアミノ酸配列を含み、VL CDR2は配列番号17のアミノ酸配列を含み、VL CDR3は配列番号18のアミノ酸配列含む。一部の実施形態では、VHは、配列番号1および40~43からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み、VLは、配列番号2および44~47からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するVLを有する。一部の実施形態では、VHは配列番号40のアミノ酸配列を含み、VLは配列番号44のアミノ酸配列含む。
【0010】
一部の実施形態では、VH CDR1は配列番号20のアミノ酸配列を含み、VH CDR2は配列番号21または33のアミノ酸配列を含み、VH CDR3は配列番号22のアミノ酸配列を含み、VL CDR1は配列番号23のアミノ酸配列を含み、VL CDR2は配列番号24のアミノ酸配列を含み、VL CDR3は配列番号18のアミノ酸配列含む。一部の実施形態では、VH CDR1は配列番号20のアミノ酸配列を含み、VH CDR2は配列番号33のアミノ酸配列を含み、VH CDR3は配列番号22のアミノ酸配列を含み、VL CDR1は配列番号23のアミノ酸配列を含み、VL CDR2は配列番号24のアミノ酸配列を含み、VL CDR3は配列番号18のアミノ酸配列含む。一部の実施形態では、VHは、配列番号5および48~51からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み、VLは、配列番号6および52~55からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するVLを有する。一部の実施形態では、VHは配列番号48のアミノ酸配列を含み、VLは配列番号52のアミノ酸配列含む。
【0011】
一部の実施形態では、VH CDR1は配列番号25のアミノ酸配列を含み、VH CDR2は配列番号26、34、35または36のアミノ酸配列を含み、VH CDR3は配列番号27のアミノ酸配列を含み、VL CDR1は配列番号28、37、38または39のアミノ酸配列を含み、VL CDR2は配列番号29のアミノ酸配列を含み、VL CDR3は配列番号30のアミノ酸配列含む。一部の実施形態では、VH CDR1は配列番号25のアミノ酸配列を含み、VH CDR2は配列番号36のアミノ酸配列を含み、VH CDR3は配列番号27のアミノ酸配列を含み、VL CDR1は配列番号38のアミノ酸配列を含み、VL CDR2は配列番号29のアミノ酸配列を含み、VL CDR3は配列番号30のアミノ酸配列含む。一部の実施形態では、VHは、配列番号9、56~59および64~66からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み、VLは、配列番号10、60~63および67~69からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するVLを有する。一部の実施形態では、VHは配列番号66のアミノ酸配列を含み、VLは配列番号68のアミノ酸配列含む。
【0012】
一部の実施形態では、VH CDR1は配列番号13のアミノ酸配列を含み、VH CDR2は配列番号19のアミノ酸配列を含み、VH CDR3は配列番号15のアミノ酸配列を含み、VL CDR1は配列番号16のアミノ酸配列を含み、VL CDR2は配列番号17のアミノ酸配列を含み、VL CDR3は配列番号18のアミノ酸配列含む。
【0013】
一部の実施形態では、VH CDR1は配列番号13のアミノ酸配列を含み、VH CDR2は配列番号19のアミノ酸配列を含み、VH CDR3は配列番号15のアミノ酸配列を含み、VL CDR1は配列番号23のアミノ酸配列を含み、VL CDR2は配列番号17のアミノ酸配列を含み、VL CDR3は配列番号18のアミノ酸配列含む。
【0014】
一部の実施形態では、VH CDR1は配列番号25のアミノ酸配列を含み、VH CDR2は配列番号31のアミノ酸配列を含み、VH CDR3は配列番号27のアミノ酸配列を含み、VL CDR1は配列番号32のアミノ酸配列を含み、VL CDR2は配列番号29のアミノ酸配列を含み、VL CDR3は配列番号30のアミノ酸配列含む。
【0015】
処置方法および使用もまた、提供される。一実施形態において、それを必要とする患者においてがんを処置する方法が提供され、この方法は、その患者に有効量の本開示の抗体またはポリペプチドを投与する工程を含む。一部の実施形態において、そのがんは固形腫瘍である。一部の実施形態において、そのがんは、膀胱がん、肝がん、結腸がん、直腸がん、子宮内膜がん、白血病、リンパ腫、膵がん、小細胞肺がん、非小細胞肺がん、乳がん、尿道がん、頭頸部がん、消化器がん、胃がん、食道がん、卵巣がん、腎がん、黒色腫、前立腺がんおよび甲状腺がん、特に、卵巣がんおよび結腸直腸がんからなる群より選択される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1A図1Aは、CHO-K1細胞上で発現されたヒトAMHR2に対する各抗体の結合親和性を示す。
【0017】
図1B図1Bは、Rko細胞上で発現されたヒトAMHR2に対する各抗体の結合親和性を示す。
【0018】
図2図2は、AMHR2を発現するCHO-K1細胞に対する各抗体のADCCを示す。
【0019】
図3図3は、AMHR2を発現するCHO-K1細胞による各抗体のエンドサイトーシスを示す。
【0020】
図4図4は、AMHR2を発現するRko細胞に対する各抗体の細胞傷害活性を示す。
【0021】
図5-1】図5A図5Hは、CHO-K1細胞上で発現されたヒトAMHR2に対する各ヒト化抗体の結合親和性を示す。
図5-2】図5A図5Hは、CHO-K1細胞上で発現されたヒトAMHR2に対する各ヒト化抗体の結合親和性を示す。
図5-3】図5A図5Hは、CHO-K1細胞上で発現されたヒトAMHR2に対する各ヒト化抗体の結合親和性を示す。
図5-4】図5A図5Hは、CHO-K1細胞上で発現されたヒトAMHR2に対する各ヒト化抗体の結合親和性を示す。
【0022】
図6図6は、AMHR2に対するいくつかのヒト化抗体のFACS結合を示す。
【0023】
図7図7A図7Bは、CHO-K1細胞およびRko細胞上で発現されたヒトAMHR2に対する選択されたヒト化抗体の結合親和性を示す。
【0024】
図8図8A図Bは、ヒトAMHR2を発現するCHO-K1細胞およびヒトAMHR2を発現するRko細胞に対する選択されたヒト化抗体のADCC有効性を示す。
【0025】
図9図9A図9Bは、ヒトAMHR2を発現するCHO-K1細胞およびヒトAMHR2を発現するRko細胞上での選択されたヒト化抗体のエンドサイトーシス誘導活性を示す。
【0026】
図10図10A図10Cは、カニクイザル(cyno)AMHRIIタンパク質、ラットAMHRIIタンパク質、およびマウスAMHRIIタンパク質に対する選択されたヒト化抗体の交差反応性を示す。
【0027】
図11図11A図11Bは、選択されたヒト化抗体による、AMHR2を発現するCHO-K1細胞およびAMHR2を発現するRko細胞の殺傷活性を示す。
【発明を実施するための形態】
【0028】
(詳細な説明)
(定義)
本明細書において使用される場合、「抗体」または「抗原結合性ポリペプチド」とは、抗原を特異的に認識して結合する、ポリペプチドまたはポリペプチド複合体を指す。抗体は、抗体全体および任意の抗原結合性フラグメントであっても、それらの単鎖であってもよい。したがって用語「抗体」は、その抗原に対する結合という生物学的活性を有する、免疫グロブリン分子の少なくとも一部を含む、任意のタンパク質含有分子またはペプチド含有分子を含む。それらの例としては、重鎖もしくは軽鎖の相補性決定領域(CDR)またはそれらのリガンド結合部分、重鎖もしくは軽鎖の可変領域、重鎖もしくは軽鎖の定常領域、フレームワーク(FR)領域、またはそれらの任意の部分、あるいは結合タンパク質の少なくとも一部が挙げられるが、これらに限定されない。
【0029】
用語「抗体フラグメント」または「抗原結合性フラグメント」とは、本明細書において使用される場合、F(ab’)、F(ab)、Fab’、Fab、Fv、scFvなどの、抗体の部分である。構造に関係なく、抗体フラグメントは、そのインタクト抗体により認識されるのと同じ抗原に結合する。用語「抗体フラグメント」は、アプタマー、スピーゲルマー(spiegelmer)、およびダイアボディ(diabody)を含む。用語「抗体フラグメント」はまた、特定の抗原へ結合して複合体を形成することによって抗体のように作用する、任意の合成タンパク質または遺伝子操作されたタンパク質を含む。
【0030】
「単鎖可変フラグメント」または「scFv」とは、免疫グロブリンの重鎖可変領域(V)と軽鎖可変領域(V)との融合タンパク質を指す。一部の態様において、それらの領域は、10アミノ酸~約25アミノ酸の短いリンカーペプチドで連結されている。そのリンカーは、可撓性のためにグリシンが豊富であり得、溶解度のためにセリンまたはスレオニンが豊富で有り得、VのN末端をVのC末端に連結にするかまたはその逆であるかのいずれかであり得る。このタンパク質は、定常領域の除去およびリンカーの導入にも関わらず、元の免疫グロブリンの特異性を保持する。ScFv分子は、当該分野で公知であり、例えば、米国特許第5,892,019号に記載されている。
【0031】
抗体という用語は、生化学的に区別され得る種々の広範な種類のポリペプチドを含む。重鎖がガンマ、ミュー、アルファ、デルタ、またはイプシロン(γ、μ、α、δ、ε)として分類され、その中にいくつかのサブクラス(例えば、γl~γ4)があることを、当業者は理解する。抗体の「クラス」をそれぞれIgG、IgM、IgA、IgG、またはIgEとして決定するのは、この鎖の性質である。免疫グロブリンのサブクラス(アイソタイプ)(例えば、IgG、IgG、IgG、IgG、IgGなど)は、十分に特徴付けられており、機能的特殊化を付与することが知られている。これらのクラスおよびアイソタイプの各々の改変バージョンは、本開示の範囲を考慮すれば当業者には容易に識別可能であり、したがって、本開示の範囲内にある。免疫グロブリンのすべてのクラスが明らかに本開示の範囲内にあり、以下の議論は、一般的にIgGクラスの免疫グロブリン分子に関する。IgGに関して、標準的な免疫グロブリン分子は、分子量およそ23,000ダルトンの2つの同一な軽鎖ポリペプチドと、分子量53,000~70,000の2つの同一な重鎖ポリペプチドとを含む。これらの4つの鎖は、典型的には、ジスルフィド結合によって「Y」字構成で連結されており、これらの軽鎖は、この「Y」字の入り口から始まって可変領域を通って続くこれらの重鎖を挟んでいる。
【0032】
本開示の抗体、抗原結合性ポリペプチド、それらの改変体、または誘導体としては、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、多重特異性抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、霊長類化抗体、もしくはキメラ抗体、単鎖抗体、エピトープ結合性フラグメント、例えば、Fab、Fab’およびF(ab’)、Fd、Fv、単鎖Fv(scFv)、単鎖抗体、ジスルフィド結合Fv(sdFv)、VKドメインまたはVHのいずれかを含むフラグメント、Fab発現ライブラリーにより生成されるフラグメント、ならびに抗イディオタイプ(抗Id)抗体(例えば、本明細書において開示されているLIGHT抗体に対する抗Id抗体が挙げられる)が挙げられるが、これらに限定されない。本開示の免疫グロブリン分子または抗体分子は、任意の型(例えば、IgG、IgE、IgM、IgD、IgA、およびIgY)、クラス(例えば、IgGl、IgG2、IgG3、IgG4、IgAlおよびIgA2)またはサブクラスの免疫グロブリン分子であり得る。
【0033】
「特異的に結合する」または「に対する特異性を有する」によって、抗体がその抗原結合ドメインによってエピトープに結合すること、およびその結合はその抗原結合ドメインとそのエピトープとの間のいくらかの相補性を伴うことが、一般的に意味される。この定義にしたがって、抗体は、抗体がその抗原結合ドメインによってエピトープに、その抗体がランダムかつ無関連なエピトープに結合するよりも容易に結合する場合に、そのエピトープに「特異的に結合する」と言われる。用語「特異性」は、特定の抗体が特定のエピトープに結合する相対的親和性を定量化するために、本明細書において使用される。例えば、抗体「A」は、所定のエピトープに対して抗体「B」よりも高い特異性を有すると考えられ得、または抗体「A」は、関連するエピトープ「D」に対してその抗体「A」が有するよりも高い特異性でエピトープ「C」に結合すると言われ得る。
【0034】
本明細書において使用される場合、用語「処置する」または「処置」とは、治療的処置および予防的手段または防止的手段の両方を指し、その目的は、望ましくない生理学的変化または障害(例えば、がんの進行)を予防するまたは減速(減少)させることである。有益な臨床結果または望ましい臨床結果としては、検出可能であろうと検出不能であろうと、症状の軽減、疾患の程度の減少、疾患の安定化された(すなわち、悪化しない)状態、疾患進行の遅延もしくは減速、疾患状態の好転(amelioration)もしくは緩和、および寛解(部分的であろうと完全であろうと)が挙げられるが、これらに限定されない。「処置」はまた、処置を受けない場合に予測される生存と比較して、生存を延長させることも意味し得る。処置を必要とする者とは、その状態または障害を既に有する者、ならびにその状態または障害を有する傾向がある者、またはその状態または障害が予防されるべき者を含む。
【0035】
「対象」または「個体」または「動物」または「患者」または「哺乳動物」によって、診断、予後判定、または治療が望まれる、任意の対象(特に哺乳動物対象)が意味される。哺乳動物対象としては、ヒト、家畜動物、農場の動物、および動物園の動物、スポーツ用動物、または愛玩動物(例えば、イヌ、ネコ、モルモット、ウサギ、ラット、マウス、ウマ、ウシ、雌ウシなど)が挙げられる。
【0036】
本明細書において使用される場合、「処置を必要とする患者に」または「処置を必要とする対象」などの句は、例えば、検出、診断手順、および/または処置のために使用される本開示の抗体もしくは組成物の投与から利益を受ける対象(例えば、哺乳動物対象)を含む。
【0037】
(抗AMHRII抗体)
本開示は、ヒトAMHRIIタンパク質を結合可能な抗体および抗原結合性フラグメントを提供し、その結合は、このAMHRIIタンパク質を発現する標的にされた細胞によるエンドサイトーシスを効果的に誘導し得る。また、これらの抗体は強力な細胞傷害活性を示し、このことは、これらの抗体を、その標的細胞を殺傷するのに適切にする。そのような標的細胞としては、AMHRIIタンパク質を過剰発現するがん細胞(例えば、上皮性卵巣癌(EOC)細胞)が挙げられる。
【0038】
より詳細には、本明細書において調製された6種のマウス抗体(キメラ形態である)のすべてが、CHO細胞およびRyo細胞上で発現されたAMHRIIに対して、陽性対照である参照抗体(Ref.Ab)と比較してかなり高い結合親和性を示した(図1A図1B)。同様に、そのような強い結合に起因して、これらの抗体はまた、その参照物よりも顕著に高いADCC、エンドサイトーシスおよび細胞傷害活性を示した(図2図4)。
【0039】
さらに、これらの優れた特性は、ヒト化および翻訳後修飾(PTM)によるリスク低減プロセスを通じて保持された。94C4C3および108F3D1E9のヒト化バージョンのすべて、ならびに31D9B3のヒト化バージョンのほとんどは、その高い結合親和性おおびエンドサイトーシス活性を保持した(例えば、図5A図5H、および図9A図9Bを参照のこと)。
【0040】
したがって、本開示の一実施形態にしたがって、表1において提供されている抗体または抗原結合性フラグメント、ならびにそれらの誘導体およびヒト化物(例えば、これらの抗体のCDR領域(例えば、表1Aを参照のこと)を含む抗体または抗原結合性フラグメント、ならびにこれらのCDR領域の改変体(例えば、PTMによりリスク低減した改変体)を含む抗体または抗原結合性フラグメント)から選択される、抗体または抗原結合性フラグメントが、提供される。
【0041】
表1中の抗体のうちの4種(94C4C3、103C5G10F9、108F3D1E9、および114A2B5はそれらの間で高い配列相同性を有することが、観察される。それらのCDR配列はまた、高い配列同一性を共有する。したがって、これらのCDR配列は、良好な結合親和性を保持しながら互換可能であることが、企図される。
【0042】
したがって、本開示の一実施形態は、VH CDR1、VH CDR2、およびVH CDR3を含む重鎖可変領域(VH)、ならびにVL CDR1、VL CDR2およびVL CDR3を含む軽鎖可変領域(VL)を含む抗体またはその抗原結合性フラグメントを提供し、ここで、:
VH CDR1は配列番号13または20のアミノ酸配列を含み;
VH CDR2は配列番号14、19、21または33のアミノ酸配列を含み;
VH CDR3は配列番号15または22のアミノ酸配列を含み;
VL CDR1は配列番号16または23のアミノ酸配列を含み;
VL CDR2は配列番号17または24のアミノ酸配列を含み;
VL CDR3は配列番号18のアミノ酸配列を含む。
【0043】
配列は、表Aに例示されるものなどの縮重されたものでも示され得る。したがって、本開示の一実施形態は、VH CDR1、VH CDR2、およびVH CDR3を含む重鎖可変領域(VH)、ならびにVL CDR1、VL CDR2およびVL CDR3を含む軽鎖可変領域(VL)を含む抗体またはその抗原結合性フラグメントを提供し、ここで、:
VH CDR1は配列番号70のアミノ酸配列を含み;
VH CDR2は配列番号71のアミノ酸配列を含み;
VH CDR3は配列番号72のアミノ酸配列を含み;
VL CDR1は配列番号73のアミノ酸配列を含み;
VL CDR2は配列番号74のアミノ酸配列を含み;
VL CDR3は配列番号18のアミノ酸配列を含む。
【表A】
【0044】
同様に、抗体31D9B3および35D4G3は、またVHおよびVL配列の間の高い配列同一性ならびにそれらのCDR領域を共有する。したがって、本開示の一実施形態は、VH CDR1、VH CDR2、およびVH CDR3を含む重鎖可変領域(VH)、ならびにVL CDR1、VL CDR2およびVL CDR3を含む軽鎖可変領域(VL)を含む抗体またはその抗原結合性フラグメントを提供し、ここで、:
VH CDR1は配列番号25のアミノ酸配列を含み;
VH CDR2は配列番号26、31、34、35または36のアミノ酸配列を含み;
VH CDR3は配列番号27のアミノ酸配列を含み;
VL CDR1は配列番号28、32、37、38または39のアミノ酸配列を含み;
VL CDR2は配列番号29のアミノ酸配列を含み;
VL CDR3は配列番号30のアミノ酸配列を含む。
【0045】
配列は、表Bに例示されるものなどの縮重されたものでも示され得る。したがって、本開示の一実施形態は、VH CDR1、VH CDR2、およびVH CDR3を含む重鎖可変領域(VH)、ならびにVL CDR1、VL CDR2およびVL CDR3を含む軽鎖可変領域(VL)を含む抗体またはその抗原結合性フラグメントを提供し、ここで、:
VH CDR1は配列番号25のアミノ酸配列を含み;
VH CDR2は配列番号75のアミノ酸配列を含み;
VH CDR3は配列番号27のアミノ酸配列を含み;
VL CDR1は配列番号76のアミノ酸配列を含み;
VL CDR2は配列番号29のアミノ酸配列を含み;
VL CDR3は配列番号30のアミノ酸配列を含む。
【表B】
【0046】
一実施形態では、本開示は、94C4C3のCDRを含む抗体またはその抗原結合性フラグメントを提供し、これは、配列番号1の配列を有する重鎖可変領域(VH)および配列番号2の配列を有する軽鎖可変領域(VL)を有する。
【0047】
一部の実施形態では、VH CDR1は配列番号13のアミノ酸配列を含み、VH CDR2は配列番号14のアミノ酸配列を含み、VH CDR3は配列番号15のアミノ酸配列を含み、VL CDR1は配列番号16のアミノ酸配列を含み、VL CDR2は配列番号17のアミノ酸配列を含み、VL CDR3は配列番号18のアミノ酸配列含む。
【0048】
これらのCDRを有する抗体およびフラグメントの例として、配列番号1および40~43(あるいはそれぞれのCDR配列を維持したままそれらのいずれかに対して少なくとも80%、85%、90%、95%、98%または99%の配列同一性を有するアミノ酸配列)からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するVH、ならびに配列番号2および44~47(あるいはそれぞれのCDR配列を維持したままそれらのいずれかに対して少なくとも80%、85%、90%、95%、98%または99%の配列同一性を有するアミノ酸配列)からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するVLを有するものが挙げられる。これらのCDRを有する抗体およびフラグメントの例として、配列番号40~43からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するVH、ならびに配列番号44~47からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するVLを有するものが挙げられる。特定の実施形態では、VHは配列番号40のアミノ酸配列を含み、VLは配列番号44のアミノ酸配列含む。
【0049】
一実施形態では、本開示は、108F3D1E9のCDRを含む抗体またはその抗原結合性フラグメントを提供し、これは、配列番号5の配列を有する重鎖可変領域(VH)および配列番号6の配列を有する軽鎖可変領域(VL)を有する。
【0050】
一部の実施形態では、VH CDR1は配列番号20のアミノ酸配列を含み、VH CDR2は配列番号21のアミノ酸配列を含み、VH CDR3は配列番号22のアミノ酸配列を含み、VL CDR1は配列番号23のアミノ酸配列を含み、VL CDR2は配列番号24のアミノ酸配列を含み、VL CDR3は配列番号18のアミノ酸配列含む。
【0051】
一部の実施形態では、VH CDR1は配列番号20のアミノ酸配列を含み、VH CDR2はPTMリスク低減されており、配列番号33のアミノ酸配列を含む、VH CDR3は配列番号22のアミノ酸配列を含み、VL CDR1は配列番号23のアミノ酸配列を含み、VL CDR2は配列番号24のアミノ酸配列を含み、VL CDR3は配列番号18のアミノ酸配列含む。
【0052】
これらのCDRを有する抗体およびフラグメントの例として、配列番号5および48~51(あるいはそれぞれのCDR配列を維持したままそれらのいずれかに対して少なくとも80%、85%、90%、95%、98%または99%の配列同一性を有するアミノ酸配列)からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するVH、ならびに配列番号6および52~55(あるいはそれぞれのCDR配列を維持したままそれらのいずれかに対して少なくとも80%、85%、90%、95%、98%または99%の配列同一性を有するアミノ酸配列)からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するVLを有するものが挙げられる。これらのCDRを有するヒト化およびPTMリスク低減抗体およびフラグメントの例として、配列番号48~51からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するVH、ならびに配列番号52~55からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するVLを有するものが挙げられる。一部の実施形態では、VHは配列番号48のアミノ酸配列を含み、VLは配列番号52のアミノ酸配列含む。
【0053】
一実施形態では、本開示は、31D9B3のCDRを含む抗体またはその抗原結合性フラグメントを提供し、これは、配列番号9の配列を有する重鎖可変領域(VH)および配列番号10の配列を有する軽鎖可変領域(VL)を有する。
【0054】
一部の実施形態では、VH CDR1は配列番号25のアミノ酸配列を含み、VH CDR2は配列番号26のアミノ酸配列を含み、VH CDR3は配列番号27のアミノ酸配列を含み、VL CDR1は配列番号28のアミノ酸配列を含み、VL CDR2は配列番号29のアミノ酸配列を含み、VL CDR3は配列番号30のアミノ酸配列含む。
【0055】
一部の実施形態では、VH CDR1は配列番号25のアミノ酸配列を含み、VH CDR2は配列番号26のアミノ酸配列、または配列番号34、35または36のPTMリスク低減バージョンを含む、VH CDR3は配列番号27のアミノ酸配列を含み、VL CDR1は配列番号28のアミノ酸配列、または配列番号37、38または39のPTMリスク低減バージョンを含む、VL CDR2は配列番号29のアミノ酸配列を含み、VL CDR3は配列番号30のアミノ酸配列含む。
【0056】
一部の実施形態では、VH CDR1は配列番号25のアミノ酸配列を含み、VH CDR2は配列番号34、35または36のアミノ酸配列を含み、VH CDR3は配列番号27のアミノ酸配列を含み、VL CDR1は配列番号37、38または39のアミノ酸配列を含み、VL CDR2は配列番号29のアミノ酸配列を含み、VL CDR3は配列番号30のアミノ酸配列含む。
【0057】
一部の実施形態では、VH CDR1は配列番号25のアミノ酸配列を含み、VH CDR2は配列番号36のアミノ酸配列を含み、VH CDR3は配列番号27のアミノ酸配列を含み、VL CDR1は配列番号38のアミノ酸配列を含み、VL CDR2は配列番号29のアミノ酸配列を含み、VL CDR3は配列番号30のアミノ酸配列含む。
【0058】
これらのCDRを有する抗体およびフラグメントの例として、配列番号9、56~59および64~66(あるいはそれぞれのCDR配列を維持したままそれらのいずれかに対して少なくとも80%、85%、90%、95%、98%または99%の配列同一性を有するアミノ酸配列)からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するVH、ならびに配列番号10、60~63および67~69(あるいはそれぞれのCDR配列を維持したままそれらのいずれかに対して少なくとも80%、85%、90%、95%、98%または99%の配列同一性を有するアミノ酸配列)からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するVLを有するものが挙げられる。これらのCDRを有する抗体およびフラグメントの例として、配列番号56~59および64~66からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するVH、ならびに配列番号60~63および67~69からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するVLを有するものが挙げられる。これらのCDRを有するヒト化およびPTMリスク低減抗体およびフラグメントの例として、配列番号64~66からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するVH、ならびに配列番号67~69からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するVLを有するものが挙げられる。一部の実施形態では、VHは配列番号66のアミノ酸配列を含み、VLは配列番号68のアミノ酸配列含む。
【0059】
一実施形態では、本開示は、103C5G10F9のCDRを含む抗体またはその抗原結合性フラグメントを提供し、これは、を有する。配列番号3の配列を有する重鎖可変領域(VH)および配列番号4の配列を有する軽鎖可変領域(VL).
【0060】
一部の実施形態では、VH CDR1は配列番号13のアミノ酸配列を含み、VH CDR2は配列番号19のアミノ酸配列を含み、VH CDR3は配列番号15のアミノ酸配列を含み、VL CDR1は配列番号16のアミノ酸配列を含み、VL CDR2は配列番号17のアミノ酸配列を含み、VL CDR3は配列番号18のアミノ酸配列含む。
【0061】
一実施形態では、本開示は、114A2B5のCDRを含む抗体またはその抗原結合性フラグメントを提供し、これは、配列番号7の配列を有する重鎖可変領域(VH)および配列番号8の配列を有する軽鎖可変領域(VL)を有する。
【0062】
一部の実施形態では、VH CDR1は配列番号13のアミノ酸配列を含み、VH CDR2は配列番号19のアミノ酸配列を含み、VH CDR3は配列番号15のアミノ酸配列を含み、VL CDR1は配列番号23のアミノ酸配列を含み、VL CDR2は配列番号17のアミノ酸配列を含み、VL CDR3は配列番号18のアミノ酸配列含む。
【0063】
一実施形態では、本開示は、35D4G3のCDRを含む抗体またはその抗原結合性フラグメントを提供し、これは、配列番号11の配列を有する重鎖可変領域(VH)および配列番号12の配列を有する軽鎖可変領域(VL)を有する。
【0064】
一部の実施形態では、VH CDR1は配列番号25のアミノ酸配列を含み、VH CDR2は配列番号31のアミノ酸配列を含み、VH CDR3は配列番号27のアミノ酸配列を含み、VL CDR1は配列番号32のアミノ酸配列を含み、VL CDR2は配列番号29のアミノ酸配列を含み、VL CDR3は配列番号30のアミノ酸配列含む。
【0065】
本明細書において開示されている抗体は、その由来元である天然に存在する結合性ポリペプチドとはアミノ酸配列が異なるように改変され得ることもまた、当業者により理解される。例えば、指定のタンパク質に由来するポリペプチド配列またはアミノ酸配列は、同様であり得、例えば、その出発配列に対して特定の同一性パーセントを有し得、例えば、それはその出発配列に対して60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%、または99%同一であり得る。一部の実施形態において、その改変された抗体またはフラグメントは、指定のCDR配列を保持する。
【0066】
特定の実施形態において、その抗体は、抗体に通常は付随しない、アミノ酸配列または1つもしくは複数の部分を含む。例示的な改変が、以下により詳細に記載される。例えば、本開示の抗体は、可撓性リンカー配列を含み得、または機能的部分(例えば、PEG、薬物、毒素、もしくは標識)を付加するように改変され得る。
【0067】
(二重特異性抗体および多重特異性抗体、ならびにキメラ抗原レセプター(CAR))
提示されたとおり、本明細書に開示されている抗AMHRII抗体またはフラグメントは、二重特異性抗体および多重特異性抗体、ならびにキメラ抗原レセプター(CAR)を調製するために有用であり得る。
【0068】
したがって、一実施形態において、本開示の抗AMHRII抗体またはその抗原結合性フラグメントと、AMHRIIではない標的抗原に対する結合特異性を有する第2の抗体または抗原結合性フラグメントとを含む、二重特異性抗体が提供される。一部の実施形態において、第3または第4の特異性が、さらに含まれる。
【0069】
そのAMHRIIではない標的抗原は、一部の実施形態においては、腫瘍抗原である。多くの腫瘍抗原が当該分野で公知であり、新規な腫瘍抗原がスクリーニングによって容易に同定され得る。腫瘍抗原の非限定的な例としては、ABL、ALK、B4GALNT1、BAFF、BCL2、BRAF、BTK、CD19、CD20、CD30、CD38、CD52、CD73、クローディン(Claudin)18.2、CTLA-4、EGFR、FOLR1、FLT3、HDAC、HER2、IDH2、IL-1β、IL-6、IL-6R、JAK1/2、JAK3、KIT、LAG-3、MEK、ネクチン(Nectin)4、ROR1、mTOR、PARP、PD-1、PDGFR、PDGFRα、PD-L1、PI3Kδ、PIGF、PTCH、RAF、RANKL、スムーズンド(Smoothened)、VEGF、VEGFR、およびVEGFR2が挙げられる。他の例は、Her2、EpCAM、CD33、CD47、CD133、CEA、gpA33、ムチン(Mucin)、TAG-72、CIX、PSMA、GD2、GD3、GM2、インテグリン(Integrin)、αVβ3、α5β1、ERBB2、ERBB3、MET、IGF1R、EPHA3、TRAILR1、TRAILR2、RANKL、FAPおよびテネイシン(Tenascin)である。
【0070】
本開示の抗体またはフラグメントを含むキメラ抗原レセプター(CAR)もまた、提供される。そのCARにおいて、その抗体またはフラグメントは抗原認識ドメインとして役立ち得る。さらに、一部の実施形態において、そのCARはまた、細胞外ヒンジ領域、膜貫通ドメイン、および細胞内T細胞シグナル伝達ドメインを含む。
【0071】
そのヒンジ(スペーサーとも呼ばれる)は、その抗原認識領域と細胞の外膜との間に存在する、小さい構造ドメインである。適切なヒンジは、scFvレセプターのヘッド部の可撓性を増強して、そのCARとその標的抗原との間の空間的制約を減少する。例示的なヒンジ配列は、免疫分子(例えば、IgG、CD8、およびCD28)に由来する膜近位領域をベースとする。
【0072】
その膜貫通ドメインは、細胞膜をまたぐ疎水性αヘリックスからなる構造成分である。それはCARを形質膜に固定して、その細胞外ヒンジドメインおよび抗原認識ドメインと細胞内シグナル伝達領域とに架橋する。代表的には、内部ドメインの膜近位成分に由来する膜貫通ドメイン(例えば、CD28膜貫通ドメイン)が、使用され得る。
【0073】
その細胞内T細胞シグナル伝達ドメインは、細胞内部のレセプターの内部ドメイン中に存在する。抗原が外部抗原認識ドメインに結合された後に、CARレセプター群が一緒になってクラスター形成し、活性化シグナルを伝達する。その後、そのレセプターの内部細胞質末端が、そのT細胞の内部のシグナル伝達を永続させる。このプロセスを模倣するために、CD3-ζの細胞質ドメインが、主要なCAR内部ドメイン成分として一般的に使用される。
【0074】
T細胞はまた、活性化後に持続するためにCD3シグナル伝達に加えて共刺激分子を必要とする。一部の実施形態において、CARレセプターの内部ドメインはまた、共刺激タンパク質(例えば、CD28、CD27、CD134(OX40)、およびCD137(4-1BB))に由来する1つまたは複数のキメラドメインを含む。
【0075】
(本抗体をコードするポリヌクレオチドおよびその抗体を調製する方法)
本開示はまた、本開示の抗体、その改変体または誘導体をコードする、単離されたポリヌクレオチドもしくは核酸分子を提供する。本開示のポリヌクレオチドは、同じポリヌクレオチド分子上または別々のポリヌクレオチド分子上に、本抗原結合性ポリペプチド、その改変体または誘導体の、重鎖可変領域全体および軽鎖可変領域全体をコードし得る。さらに、本開示のポリヌクレオチドは、同じポリヌクレオチド分子上または別々のポリヌクレオチド分子上に、本抗原結合性ポリペプチド、その改変体または誘導体の、重鎖可変領域の部分および軽鎖可変領域の部分をコードし得る。
【0076】
抗体を作製する方法は、当該分野で周知であり、本明細書において記載されている。特定の実施形態において、本開示の抗原結合性ポリペプチドの可変領域および定常領域の両方は、完全にヒトのものである。完全ヒト抗体は、当該分野において記載されている技術を使用し、本明細書において記載されているとおりに、作製され得る。例えば、特定の抗原に対する完全ヒト抗体は、抗原性チャレンジに応答してそのような抗体を産生するように改変されたがその内在性遺伝子座は無効化されたトランスジェニック動物にその抗原を投与することによって、調製され得る。そのような抗体を作製するために使用され得る例示的な技術は、米国特許第6,150,584号;同第6,458,592号;同第6,420,140号において記載されており、これらの米国特許は、それらの全体が参照により援用される。
【0077】
(がんの処置)
本明細書において記載されるとおり、本開示の抗体、二重特異性抗体、ポリペプチド、改変体または誘導体は、特定の処置方法および診断方法において使用され得る。
【0078】
本開示はさらに、本明細書において記載されている障害または状態のうちの1つもしくは複数を処置するための抗体ベースの治療法に関し、これは、本開示の抗体を患者(例えば、動物、哺乳動物、およびヒト)に投与する工程を含む。本開示の治療化合物としては、本開示の抗体(本明細書において記載されているその改変体および誘導体を含む)ならびに本開示の抗体(本明細書において記載されているその改変体および誘導体を含む)をコードする核酸またはポリヌクレオチドが挙げられるが、これらに限定されない。
【0079】
一部の実施形態において、それを必要とする患者においてがんを処置するための方法が提供される。その方法は、一実施形態においては、その患者に有効量の本開示の抗体を投与する工程を含む。一部の実施形態において、その患者中のがん細胞(例えば、間質細胞)のうちの少なくとも1つは、AMHRIIを過剰発現する。
【0080】
AMHRIIを発現する細胞を殺傷するための方法もまた、提供される。一実施形態において、その方法は、その細胞と、本開示の抗体または抗原結合性フラグメントとを接触させる工程を含む。その接触させる工程は、インビボ、エクスビボ、またはインビトロで行われ得る。そのような細胞は、がん細胞、またはAMHRIIを発現するように操作されていること以外は天然の細胞であり得る。
【0081】
細胞療法(例えば、キメラ抗原レセプター(CAR)T細胞療法またはキメラ抗原レセプター(CAR)NK細胞療法)もまた、本開示において提供される。本開示の抗体もしくはCARと接触して配置された(または代替的には、本開示の抗体もしくはCARを発現するように操作された)、適切な細胞が使用され得る。そのような接触または操作をされると、その後、その細胞は、処置を必要とするがん患者に導入され得る。そのがん患者は、本明細書において開示されている型のいずれかのがんを有し得る。その細胞(例えば、T細胞またはNK細胞)は、例えば、腫瘍浸潤Tリンパ球、CD4+T細胞、CD8+T細胞、またはそれらの組合せであり得るが、これらに限定されない。
【0082】
一部の実施形態において、その細胞は、そのがん患者自身から単離された。一部の実施形態において、その細胞は、ドナーによって、または細胞バンクから、提供された。その細胞がそのがん患者から単離される場合、望ましくない免疫反応は最小化され得る。
【0083】
本開示の抗体またはその改変体もしくは誘導体を用いて処置、予防、診断および/あるいは予後判定され得る、細胞生存の増加に関連するさらなる疾患または状態としては、白血病(急性白血病(例えば、急性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病(骨髄芽球性白血病、前骨髄球性白血病、骨髄単球性白血病、単球性白血病、および赤白血病が挙げられる))ならびに慢性白血病(例えば、慢性骨髄性(顆粒球性)白血病および慢性リンパ性白血病)が挙げられる)、真性多血症、リンパ腫(例えば、ホジキン病および非ホジキン病)、多発性骨髄腫、ワルデンシュトレームマクログロブリン血症、重鎖病、ならびに固形腫瘍(肉腫および癌腫、例えば、線維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、軟骨肉腫、骨肉腫、脊索腫、血管肉腫、内皮肉腫(endotheliosarcoma)、リンパ管肉腫、リンパ管内皮肉腫(lymphangioendotheliosarcoma)、滑膜腫、中皮腫、ユーイング腫瘍、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、結腸癌、膵がん、乳がん、甲状腺がん、子宮内膜がん、黒色腫、前立腺がん、卵巣がん、前立腺がん、扁平上皮癌、基底細胞癌、腺癌、汗腺癌、皮脂腺癌、乳頭状癌、乳頭状腺癌、嚢胞腺癌、髄様癌、気管支原性癌、腎細胞癌、肝細胞癌、胆管癌、絨毛癌、セミノーマ、胎生期癌、ウィルムス腫瘍、子宮頸がん、精巣腫瘍、肺癌、小細胞肺癌、膀胱癌、上皮癌、神経膠腫、星状細胞腫、髄芽腫、頭蓋咽頭腫、上衣腫、松果体腫、血管芽腫、聴神経腫、乏突起神経膠腫、髄膜腫(menangioma)、黒色腫、神経芽細胞腫および網膜芽細胞腫が挙げられるが、それらに限定されない)などの、悪性疾患および関連障害の進行ならびに転移が挙げられるが、それらに限定されない。
【0084】
(診断方法)
AMHRIIの過剰発現が特定の腫瘍サンプルにおいて観察され、AMHRIIを過剰発現する細胞を有する患者は、本開示の抗AMHRII抗体での処置に反応する可能性がある。したがって、本開示の抗体はまた、診断目的または予後判定目的のために使用され得る。
【0085】
細胞を好ましくは含むサンプルが患者から取得され得、その患者は、がん患者または診断を望む患者であり得る。その細胞は、その患者に由来する腫瘍組織もしくは腫瘍ブロック、血液サンプル、尿サンプル、または任意のサンプルの細胞であり得る。そのサンプルの必要に応じた事前処理を行って、そのサンプルは、本開示の抗体とともに、そのサンプル中に存在する可能性があるAMHRIIタンパク質とその抗体が相互作用するのを可能にする条件下でインキュベートされ得る。ELISAなどの方法が使用されて、抗AMHRII抗体を利用して、そのサンプルにおけるAMHRIIタンパク質の存在が検出され得る。
【0086】
そのサンプルにおけるAMHRIIタンパク質の存在が(必要に応じて量または濃度とともに)、がんの診断のために、その患者がその抗体での処置のために適切であることの指標として、またはその患者ががん処置に反応した(もしくはしなかった)ことの指標として、使用され得る。予後判定方法のために、その検出は、がん処置を開始してその処置の進行を示すために、特定の段階で、1回、2回、またはそれよりも多く行われ得る。
【0087】
(組成物)
本開示はまた、医薬組成物を提供する。そのような組成物は、有効量の抗体と、受容可能なキャリアとを含む。一部の実施形態において、その組成物は、第2の抗がん薬(例えば、免疫チェックポイント阻害薬)をさらに含む。
【0088】
特定の実施形態において、用語「薬学的に受容可能」とは、動物(より詳細にはヒト)における使用について、連邦政府もしくは州政府の規制機関によって承認されているか、または米国薬局方もしくは他の一般的に認識されている薬局方において列挙されていることを意味する。さらに、「薬学的に受容可能なキャリア」は、一般的には、非毒性で、固体もしくは半固体もしくは液体の、任意の型の充填剤、希釈剤、封入材料または製剤化助剤(formulation auxiliary)である。
【0089】
用語「キャリア」とは、治療剤がともに投与される、希釈剤、佐剤、賦形剤、またはビヒクルを指す。そのような薬学的キャリアは、滅菌した液体、例えば、水および油(石油起源、動物起源、植物起源または合成起源の油、例えば、落花生油、大豆油、鉱油、ゴマ油などが挙げられる)であり得る。その医薬組成物が静脈内投与される場合は、水が好ましいキャリアである。食塩溶液ならびに水性デキストロースおよびグリセロール溶液もまた、特に注射可能な溶液のための液体キャリアとして、使用され得る。適切な薬学的賦形剤としては、デンプン、グルコース、ラクトース、スクロース、ゼラチン、麦芽、イネ、フラワー、チョーク、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、モノステアリン酸グリセロール、タルク、塩化ナトリウム、乾燥脱脂粉乳、グリセロール、プロピレン、グリコール、水、エタノールなどが挙げられる。その組成物は、望まれる場合には、微量の湿潤剤もしくは乳化剤、またはpH緩衝化剤(例えば、酢酸塩、クエン酸塩もしくはリン酸塩)もまた含み得る。抗菌薬(例えば、ベンジルアルコールまたはメチルパラベン);抗酸化剤(例えば、アスコルビン酸または亜硫酸水素ナトリウム);キレート剤(例えば、エチレンジアミン四酢酸);および張度調整剤(例えば、塩化ナトリウムまたはデキストロース)もまた、想定される。これらの組成物は、液剤、懸濁剤、乳剤、錠剤、丸剤、カプセル剤、散剤、徐放製剤などの形態を採り得る。その組成物は、伝統的な結合剤およびキャリア(例えば、トリグリセリド)を用いて、坐剤として製剤化され得る。経口製剤は、標準的なキャリア(例えば、医薬品グレードのマンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、セルロース、炭酸マグネシウムなど)を含み得る。適切な薬学的キャリアの例は、E.W.Martin、Remington’s Pharmaceutical Sciences(参照により本明細書に援用される)に記載されている。そのような組成物は、治療有効量の本抗原結合性ポリペプチド(好ましくは精製形態である)を、患者への適切な投与のための形態を提供するために適切な量のキャリアとともに含む。その製剤は、投与様式に適しているべきである。その非経口調製物は、ガラス製もしくはプラスティック製の、アンプル、使い捨てシリンジまたは複数回用量バイアルに封入され得る。
【0090】
ある実施形態において、その組成物は、ヒトへの静脈内投与のために適合された医薬組成物として、慣用的な手順にしたがって製剤化される。代表的には、静脈内投与のための組成物は、滅菌した等張性水性緩衝液中の溶液である。必要な場合には、その組成物はまた、可溶化剤および注射部位の痛みを緩和するための局所麻酔薬(例えば、リグノカイン)を含み得る。一般的には、それらの成分は、単位剤形で別々にかまたは一緒に混合した状態のいずれかで、例えば、活性物質の量を示す密封した容器(例えば、アンプルまたは小袋(sachette))中で凍結乾燥粉末または水を含まない濃縮物として、供給される。その組成物が注入により投与されるべき場合、その組成物は、滅菌した医薬品グレードの水または食塩水を含む輸液ボトルで分配され得る。その組成物が注射によって投与される場合、滅菌した注射用水または食塩水のアンプルが、それらの成分が投与前に混合され得るように提供され得る。
【実施例
【0091】
(実施例)
(実施例1:ヒトAMHRIIに対するマウス抗体の生成)
ヒトAMHRIIタンパク質を使用して種々のマウス系統を免疫し、ハイブリドーマをその結果生成した。AMHRII陽性結合体を選択し、サブクローニングした。その後、インビトロ結合および機能的スクリーニングを実行し、最も高い結合親和性と最も強い機能的効力とを有するリード抗体を同定した。
【0092】
それらのリードマウス抗体のVH/VL配列を以下の表1に提示する。
【表1】
【0093】
それらのCDR配列を以下の表1Aに要約する。
【表1A】
【0094】
抗体94C4C3、103C5G10F9、108F3D1E9および114A2B5が類似するCDRを共有するように見える一方で、31D9B3および35D4G3もまた相同なCDRを有する。
【0095】
(実施例2.AMHRIIを過剰発現させた細胞上でのキメラ抗体の結合)
本実施例は、細胞上に発現させたヒトAMHRIIタンパク質に対する結合における、ヒトキメラ形態の選択した抗体の結合親和性を試験した。
【0096】
AMHR2を過剰発現したCHO-K1細胞をフラスコから収集した。100μlの1×10細胞/mlの細胞を、300nMから開始して0.002nMまでの3倍系列希釈物中で、一次キメラ抗体(または陽性参照抗体(Ref.Ab))とともに氷上にて30分間インキュベートした。200μlのFACS緩衝液で2回洗浄した後、細胞を二次抗体とともに氷上にて30分間インキュベートした。細胞を200μlのFACS緩衝液で2回洗浄し、FACSにより分析した。
【0097】
図1Aおよび表2に示すとおり、それらの結果は、これらのキメラ抗体がヒトAMHR2に参照抗体(Ref.Ab)よりも低いEC50(高い親和性)で結合し得ることを示した。
【表2】
【0098】
同様に、これらの抗体の結合を、AMHR2を過剰発現したRko細胞を用いて試験した。100μlの1×10細胞/mlの細胞を、300nMから開始して0.002nMまでの3倍系列希釈物中で、それらの抗体とともに氷上にて30分間インキュベートした。200μlのFACS緩衝液で2回洗浄した後、細胞を二次抗体とともに氷上にて30分間インキュベートした。細胞を200μlのFACS緩衝液で2回洗浄し、FACSにより分析した。
【0099】
図1Bおよび表3に示すとおり、それらの結果は、これらのキメラ抗体がヒトAMHR2に参照抗体(Ref.Ab)よりも低いEC50(高い親和性)で結合し得ることを示した。
【表3】
【0100】
(実施例3.AMHRIIを過剰発現させた細胞上でのキメラ抗体のADCC)
本実施例は、上記キメラ抗体の抗体依存性細胞傷害(ADCC)を試験した。
【0101】
ここで使用するADCC Reporter Bioassayは、ADCC MOA経路活性化(エフェクター細胞におけるNFAT(活性化T細胞核内因子(nuclear factor of activated T-cells))経路を通じた遺伝子転写の活性化)中の早期段階で代替的読取り値を使用する。さらに、このADCC Reporter Bioassayは、FcγRIIIaレセプターのV158(高親和性)改変体とホタルルシフェラーゼの発現を駆動するNFAT応答エレメントとを安定に発現する、操作したJurkat細胞を、エフェクター細胞として使用する。ADCC MOAにおける抗体の生物学的活性を、NFAT経路活性化の結果として生成されるルシフェラーゼを通じて定量化する;そのエフェクター細胞におけるルシフェラーゼ活性を発光読取り値で定量化する。
【0102】
AMHR2キメラモノクローナル抗体の系列希釈物を、37℃にて6時間の誘導のために、操作したJurkatエフェクター細胞(ADCC Bioassay Effector Cells)とともに、ADCC Bioassay Target Cell(AMHR2を発現する)とともにインキュベートした。Bio-GloTM Reagentを使用して、ルシフェラーゼ活性を定量化した。
【0103】
それらの結果を図2および表4に示し、これらは、これらのキメラ抗体が参照抗体(Ref.Ab)よりも強いADCC活性を有することを示す。
【表4】
【0104】
(実施例4.AMHRIIを過剰発現させた細胞によるキメラ抗体のインターナリゼーション)
本実施例は、AMHRIIを過剰発現する細胞によるエンドサイトーシスをキメラ抗体が誘導する能力を試験した。
【0105】
ここで使用する方法は新規な親水性で明るいpHセンサー色素(pHAb色素)を使用し、このpHセンサー色素(pHAb色素)は、中性pHでは蛍光性ではないが、インターナリゼーションに伴い酸性pHで高蛍光性になる。それを使用して、エンドサイトーシスのプロセスを検出し得る。標的細胞としてCHO-K1細胞がヒトAMHR2を過剰発現し、pHAb色素で標識した検出抗体を添加して、AMHR2キメラモノクローナル抗体のエンドサイトーシスをインビトロで評価した。
【0106】
AMHR2キメラモノクローナル抗体の系列希釈物を37℃にて24時間インキュベートした。ルシフェラーゼ活性を検出した。それらの結果を図3および表5に示し、これらは、これらのキメラ抗体が参照抗体(Ref.Ab)と比較して強いエンドサイトーシス誘導活性を有することを示す。
【表5】
【0107】
(実施例5.キメラ抗体の細胞傷害活性)
本実施例は、選択した3種のキメラ抗体94C4C3、108F3D1E9、およびxi31D9B3の細胞傷害活性を試験した。
【0108】
AMHR2を安定に発現するRko細胞を96ウェルプレートに3000細胞/ウェルにて播種した。一晩のインキュベーション後に、各々の希釈したサンプルを添加した。5日間のインキュベーション後に、細胞生存度をCellTiter-Glo試薬によって測定した。そのルシフェラーゼ活性をEnvisonによって検出した。
【0109】
結果を図4および表6に示し、これらは、これらのキメラ抗体が参照抗体(Ref.Ab)と比較して強いエンドサイトーシス誘導活性を有することを示す。
【表6】
【0110】
(実施例6.抗体のヒト化)
本実施例は、マウス抗体94C4C3、108F3D1E9および31D9B3からヒト化抗体を調製した。
【0111】
それらのマウス抗体の可変領域遺伝子を使用して、ヒト化モノクローナル抗体(mAb)を作製した。モノクローナル抗体(mAb)のVHおよびVLのアミノ酸配列を、利用可能なヒトIg遺伝子配列データベースに対して比較して、全体的に最良にマッチ(match)するヒト生殖系列Ig遺伝子配列を見出した。その後、それらのマウス抗体のCDRを、それらのマッチ(match)したヒト配列中にグラフトした。それらのcDNAを合成し、それを使用してヒト化抗体を生成した。その後、それらのマウス抗体に由来する特定の復帰変異を、それらのヒト化抗体に導入し戻した。特定のアミノ酸を変異させて、翻訳後修飾の可能性を減少させた。
【0112】
それらのヒト化抗体のアミノ酸配列を以下に提示する。
(ヒト化配列)
A. 94C4C3
【表7A】
【表7B】
【表7C】
【表7D】
【表7E】
B. 108F3D1E9
【表8A】
【表8B】
【表8C】
【表8D】
【表8E】
C. 31D9B3
【表9A】
【表9B】
【表9C】
【表9D】
【表9E】
D. 31D9B3(PTMリスク低減)
【表10A】
【表10B】
【表10C】
【表10D】
【表10E】
【0113】
(実施例7.ヒト化抗体の結合活性)
本実施例は、細胞上で発現させたヒトAMHRIIタンパク質に対する結合におけるヒト化抗体の結合親和性を試験した。
【0114】
AMHR2を過剰発現したCHO-K1細胞をフラスコから収集した。100μlの1×10細胞/mlの細胞を、300nMから開始して0.001nMまでの3倍系列希釈物中で、ヒト化抗体とともに氷上にて30分間インキュベートした。200μlのFACS緩衝液で2回洗浄した後、細胞を二次抗体とともに氷上にて30分間インキュベートした。細胞を200μlのFACS緩衝液で2回洗浄し、FACSにより分析した。
【0115】
この研究の結果を図5A図5Hおよび表11A~表11Hに示す。それらのヒト化抗体のほとんどは、AMHRIIに対する高い結合親和性を示した。
【表11A】
【表11B】
【表11C】
【表11D】
【表11E】
【表11F】
【表11G】
【表11H】
【0116】
(実施例8.ヒト化抗体のFACS結合活性)
本実施例は、いくつかのヒト化抗体/PTMによりリスク低減した抗体の結合親和性をFACSでさらに試験した。
【0117】
AMHR2を過剰発現するRko細胞をフラスコから収集した。100μlの1×10細胞/mlの細胞を、300nMから開始して0.001nMまでの3倍系列希釈物中で、一次PTM抗体とともに氷上にて30分間インキュベートした。200μlのFACS緩衝液で2回洗浄した後、細胞を二次抗体とともに氷上にて30分間インキュベートした。細胞を200μlのFACS緩衝液で2回洗浄し、FACSにより分析した。
【0118】
この研究の結果を図6および表12に示す。これらの結果は、これらのPTM抗体がヒトAMHR2に強力に結合し得ることを示す。
【表12】
【0119】
(実施例9.選択したヒト化抗体のさらなる試験)
本実施例は、ヒト化抗体94C4C3 H1L1、108F3D1E9 H1L1、および31D9B3 VH1.3-VL2.2の活性をさらに試験した。
【0120】
第1の実験は、CHO-K1細胞およびRko細胞上に発現させたAMHRIIに対するこれらの抗体の結合親和性を調べた。
【0121】
AMHR2を安定に発現したCHO-K1細胞およびAMHR2を安定に発現したRko細胞を、フラスコから収集した。100μlの1×10細胞/mlの細胞を、300nMから開始して0.002nMまでの3倍系列希釈物中で、一次ヒト化抗体とともに氷上にて30分間インキュベートした。200μlのFACS緩衝液で2回洗浄した後、細胞を二次抗体とともに氷上にて30分間インキュベートした。細胞を200μlのFACS緩衝液で2回洗浄し、FACSにより分析した。この研究の結果(図7A図7B)は、これらのヒト化抗体がヒトAMHR2に高い親和性で結合し得ることを示した。
【0122】
第2の実験は、これらのヒト化抗体のADCCを調べた。
【0123】
ADCC Reporter Bioassay(実施例3を参照のこと)をこの目的のために使用した。AMHR2ヒト化モノクローナル抗体の系列希釈物を、37℃にて6時間の誘導のために、操作したJurkatエフェクター細胞(ADCC Bioassay Effector Cell)とともに、ADCC Bioassay Target Cell(AMHR2を発現する)とともにインキュベートした。Bio-GloTM Reagentを使用して、ルシフェラーゼ活性を定量化した。それらの結果(図8A図8B)は、これらのヒト化抗体が参照抗体(Ref.Ab)と比較して強いADCC活性を有することを示す。
【0124】
第3の実験は、これらのヒト化抗体によりエンドサイトーシスを誘導する能力を試験した。
【0125】
その方法は、実施例4に記載したとおり、新規な親水性で明るいpHセンサー色素(pHAb色素)を使用する。AMHR2ヒト化モノクローナル抗体の系列希釈物を37℃にて24時間インキュベートした。ルシフェラーゼ活性を検出した。それらの結果(図9A図9B)は、これらのヒト化抗体が参照抗体(Ref.Ab)と比較して強いエンドサイトーシス活性を有することを示す。
【0126】
第4の実験は、それらのヒト化抗体がカニクイザル(cyno)AMHRIIタンパク質、ラットAMHRIIタンパク質、およびマウスAMHRIIタンパク質に対して交差反応し得るか否かを調べた。
【0127】
カニクイザル(cyno)AMHR2、ラットAMHR2およびマウスAMHR2に対するこれらの抗体の交差反応性を評価するために、カニクイザル(cyno)AMHR2を過剰発現するCHO-K1細胞、ラットAMHR2を過剰発現するCHO-K1細胞およびマウスAMHR2を過剰発現するCHO-K1細胞をそれぞれ、フラスコから収集した。100μlの1×10細胞/mlの細胞を、300nMから開始して0.018nMまでの4倍系列希釈物中で、一次抗体とともに氷上にて30分間インキュベートした。200μlのFACS緩衝液で2回洗浄した後、細胞を二次抗体とともに氷上にて30分間インキュベートした。細胞を200μlのFACS緩衝液で2回洗浄し、FACSにより分析した。この研究の結果(図10A図10C、表13に要約した)は、これらのヒト化抗体がカニクイザル(cyno)AMHR2、ラットAMHR2およびマウスAMHR2に結合し得ることをフローサイトメトリーによって示した。
【表13】
【0128】
第5の実験は、ヒト化抗体の細胞傷害活性を調べた。実施例5においてと同様に、AMHR2安定に発現するCHO-K1細胞およびAMHR2を安定に発現するRko細胞を96ウェルプレートに3000細胞/ウェルにて播種した。一晩のインキュベーション後に、各々の希釈したサンプルを添加した。5日間のインキュベーション後に、細胞生存度をCellTiter-Glo試薬によって測定した。そのルシフェラーゼ活性をEnvisonによって検出した。それらの結果(図11A図11B)は、これらのキメラ抗体が非常に強い細胞傷害活性を有することを示す。
* * *
【0129】
本開示は、本開示の個別の態様の個々の例示として意図される記載された具体的な実施形態によって範囲が限定されるべきではなく、機能的に同等であるあらゆる組成物または方法が本開示の範囲内にある。種々の改変および変形が、本開示の趣旨からも範囲からも逸脱することなく、本開示の方法および組成物において実施され得ることが、当業者にとって明らかである。したがって、本開示は、本開示の改変および変形が添付の特許請求の範囲およびその均等物の範囲内にあるという条件で、それらの本開示の改変および変形を含むことが、意図される。
【0130】
本明細書において言及されたすべての公開物および特許出願は、あたかも個々の公開物または特許出願が参照によって援用されると具体的で個別に示された場合と同じ程度に、本明細書において参照によって援用される。
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5-1】
図5-2】
図5-3】
図5-4】
図6
図7
図8
図9
図10
図11
【配列表】
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【国際調査報告】