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特表2024-535645感染症感染拡大者基金の損害賠償金を計算するために疫学データを収集及び記憶するコンピュータで実行される方法
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  • 特表-感染症感染拡大者基金の損害賠償金を計算するために疫学データを収集及び記憶するコンピュータで実行される方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-30
(54)【発明の名称】感染症感染拡大者基金の損害賠償金を計算するために疫学データを収集及び記憶するコンピュータで実行される方法
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/22 20240101AFI20240920BHJP
   G06Q 40/08 20120101ALI20240920BHJP
【FI】
G06Q50/22
G06Q40/08
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024545062
(86)(22)【出願日】2022-07-19
(85)【翻訳文提出日】2024-06-04
(86)【国際出願番号】 EP2022070155
(87)【国際公開番号】W WO2023061632
(87)【国際公開日】2023-04-20
(31)【優先権主張番号】63/254,246
(32)【優先日】2021-10-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】17/661,793
(32)【優先日】2022-05-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524135897
【氏名又は名称】ジャパリゼ フェルナンデス, レヴァン ロベルト
(74)【代理人】
【識別番号】110001748
【氏名又は名称】弁理士法人まこと国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジャパリゼ フェルナンデス, レヴァン ロベルト
【テーマコード(参考)】
5L040
5L099
【Fターム(参考)】
5L040BB61
5L099AA13
(57)【要約】
隔離免除保険証券(IEIP)に関連する感染拡大者の過失による疾病損害賠償金を計算するためのコンピュータで実行される方法である。保険会社は、予想される疾病損害と、感染者と隔離しなかった感染拡大者の共有過失の評価に基づいて、疫学データをコンピュータで収集及び記憶し、感染拡大者の過失で被った感染者の疾病損害の一部を負担するために感染拡大者基金との間で行われる支払いを計算する方法に承諾する。ある場所で重大な発症前の伝染を伴う感染症の流行が発生するたびに、感染拡大を抑えるために無症状の個人に強制隔離が課される、そのような個人に対して強制隔離を回避するためにIEIPが提供されてもよい。コンピュータで実行される方法は、時間の経過とともに更新することができる。感染者の過失による疾病損害の一部は各保険会社が負担する。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
隔離免除保険証券(IEIP)に関連する感染拡大者の過失による疾病損害賠償金を計算するためのコンピュータで実行される方法であって、
a)所定期間に感染したあらゆるリスクグループの個人の疾病損害請求を収集し記憶するステップ、
b)前記所定期間における前記あらゆるリスクグループ及び地域住民の隔離レベル、感染力がある及び感受性を持つ個人の数、相対的な感染力及び感受性等の疫学データを収集及び記憶するステップ、
c)前記あらゆるリスクグループの感染拡大者の過失で、所定期間の感染により前記あらゆるリスクグループが被った疾病損害を計算するステップ、及び
d)各保険会社が前記各保険会社の感染拡大者基金に対して支払わなければならない、又は感染拡大者基金から受け取らなければならない前記疾病損害賠償金を計算するステップ、を含む、コンピュータで実行される方法。
【請求項2】
前記疾病損害賠償金を計算するために他の計算式及び/又は手順が承諾される、請求項1に記載のコンピュータで実行される方法。
【請求項3】
疾病損害賠償金の計算のために他の疫学データが収集及び記憶される、請求項1に記載のコンピュータで実行される方法。
【請求項4】
前記疾病損害賠償金を計算するために、1日とは異なる他の期間が承諾される、請求項1に記載のコンピュータで実行される方法。
【請求項5】
前記各保険会社は、承諾された計算方法と独自の疫学モデル及び保険数理モデルを使用して、将来の疾病損害賠償金の絶対値を推定した上で独自のIEIP保険料を決定する、請求項1に記載のコンピュータで実行される方法。
【請求項6】
前記疾病損害賠償金は、他のIEIP保有者に対してのみ支払われる、請求項1に記載のコンピュータで実行される方法。
【請求項7】
政府が免除を認めた主要職員及びIEIPを支払うことができない一部の個人は、異なるRGに所属すると想定され、感染拡大者の過失による疾病損害賠償金は政府によって負担される、請求項1に記載のコンピュータで実行される方法。
【請求項8】
前記疾病損害は、前記感染者の保険会社とは別の事業体によって報告される、請求項1に記載のコンピュータで実行される方法。
【請求項9】
病院又は介護施設への立ち入り、又は防護服のような適切な安全対策を講じることなくそれを行うことはIEIPの対象外である、請求項1に記載のコンピュータで実行される方法。
【請求項10】
すでに感染した個人、ワクチン接種済みの個人、抗体又はT細胞反応等の他の免疫反応を有する個人、又は他の免疫事象を有する個人が元のリスクグループから除外される、請求項1に記載のコンピュータ実行される方法。
【請求項11】
疾病損害の発生又は請求の時期には、感染/診断後の時間及び/又は請求額の制限がある、請求項1に記載のコンピュータで実行される方法。
【請求項12】
前記疾病損害請求が表にまとめられる、請求項1に記載のコンピュータで実行される方法。
【請求項13】
単一の保険会社だけがIEIPを提供する、請求項1に記載のコンピュータで実行される方法。
【請求項14】
疾病損害額が推定よりも高くなる/安くなる場合に、保険料の一部が感染拡大者に請求される/払い戻される、請求項1に記載のコンピュータで実行される方法。
【請求項15】
レストランやコンサートホール等の中型事業体は、顧客に代わってIEIPを購入することができる、請求項1に記載のコンピュータで実行される方法。
【請求項16】
免除及び/又は前記疾病損害賠償金が他の種類の保険に関連付けられているか、又はいかなる保険にも関連付けられていない、請求項1に記載のコンピュータで実行される方法。
【請求項17】
前記疾病損害請求は、偶然ウイルスに感染している間に他の原因で病気になった個人に対して修正される、請求項1に記載のコンピュータで実行される方法。
【請求項18】
事前の免疫又は季節性の経時的な変化により、ある場所における前記相対的な感染力及び感受性がかなり低い可能性がある、請求項1に記載のコンピュータで実行される方法。
【請求項19】
競合する変異体を含む疫学モデルを使用して前記疾病損害賠償金を計算する、請求項1に記載のコンピュータで実行される方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は保険に関し、具体的には、感染力がある伝染病の感染者と感染拡大者が過失を共有する場合の支払いを計算するシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)は同時に、空気感染で感染力が高く、健康体を崩壊させるほど重篤な病気(新型コロナウイルス感染症(covid19))を引き起こし、感染間隔が短く無症状(発症前の状態、少し症状がある状態、又は軽度の症状がある状態)であることがあるので(3)(4)(8)、古典的な検査/追跡/隔離戦略は役に立たない(つまり、感染者が症状を報告しない)、又は単独で適用できない(つまり、公共のナイトクラブでの感染を想像してください)、又は個人の感染力を特定するのが非現実的であるため(毎日のPCR検査等)、ウイルスは追跡されずに拡散される。
【0003】
この課題に直面して、政府は非医薬品介入(NPIs)として知られる強制的な隔離(仕事、集会、動線の制限等)を課した。(2)で検証されたように、ヨーロッパの5か所ではNPIsの開始から約20日後に1日当たりの新型コロナウイルス感染症による死亡者数の曲線がピークに達しており、NPIsはウイルスの感染拡大を食い止めるのに十分な厳しさであった。
【0004】
ストックホルムのように、より集中的で自発的なアプローチ(例えば高齢者のみに適用する等)を使うことで、SARS-CoV-2の感染拡大を一時停止させることもできたかもしれないが(2)、それでもいくつかの(強制的な)NPIsがそこでも実施されていた。
【0005】
仕事、集会、動線に対する州の強制的な制限は、個人の権利を侵害したかもしれないし、また、莫大な経済的損失を引き起こしたかもしれない(10)。特にSARS-CoV-2の流行の場合、この種の対応によって引き起こされた経済的損失は、質調整生存年(QALY)における病害よりも少なくとも1桁大きかった。2021年7月時点で米国の死者数は631,915人、中央値は76.5歳+2の併存疾患(6)、2020年の米国のGDP減少率は3.5%(10)(つまり、死亡者1人当たり150万USドル)だった。
【0006】
何が悪かったのか?SARS-CoV-2の流行には複雑なリスク評価が必要だったが、政府にはそれを行うための最良の備えが無かった(保険会社には備えがあった)。この流行(及び将来の同様の流行)に対する解決策は、隔離免除保険証券(IEIP)かもしれない。
【0007】
流行中にNPIsが課される時は常に、完全な隔離を免除してもらうことを希望する個人は、自分自身及びウイルスの拡散による第三者への疾病損害額(死亡又は後遺症による寿命損失及び入院費用を含む)を負担する保険に加入しなければならない。なぜ感染拡大者は、決して目にすることのない第三者の新型コロナウイルス感染症関連の損害額を負担するために発行保険料(issue premium)を支払う必要があるのか?それは病気を引き起こす可能性のあるウイルスを拡散させることで被害を引き起こすからである。
【0008】
流行中に仕事に出かける個人は、第三者(及び自分自身)に損害を与えるかもしれないとはいえ、第三者への損害を負担する費用(又は自分自身の入院費用)が、隔離にかかる個人の認知的な費用よりも安ければ、その個人はとにかく外出しようとするかもしれない。損害を与える可能性があるのに外出し、リスクを背負うのは一見思いやりに欠けるように思えるかもしれないが、それはまさに車を運転したり飛行機に乗ったりするたびに起こることである。あなたの行動によって被害を受けることを望まない高齢者の完全な隔離には、あなたの車がその高齢者のリビングルームに落ちてしまったり、飛行機が落下して屋根が破壊されたりするのを避けるために、コンクリートの掩蔽壕の中で暮らすことを含めるべきである。
【0009】
もちろん、強制隔離を課している地方自治体は、保険で隔離を回避することを合法化する必要があるが、政府はすでに「主要職員」に隔離を回避することを大規模に許可しているため、これは決して目新しい行動ではない。
【0010】
流行初期の集中治療室(ICU)の不足は、不適切な医療行為による疾病損害額を大幅に増大させるかもしれない。しかし、許可されれば、ICUの入院費用の値上げがICUの急速な拡大を促進し、そのリスクは排除される。おそらく保険には、例えば、症状がある場合の外出や、適切な安全対策無しに老人ホームや新型コロナウイルス感染症に対応していない病院に立ち入る等の除外が含まれる可能性が高い。
【0011】
提案された保険は、個人が自己の個人的損害を負担する発行保険料の一部を知ることにより、個人が曝される個人的リスクを評価するのにも役立つ(例えば、様々な隔離区分等)。ある時点で、ある基準値以下で隔離したい感染リスクが高い個人にとっては個人的損害請求の免除が選択肢となるだろう。
【0012】
感染者は完全に隔離されておらず感染した状態であることから感染拡大者でもあるので、保険を持たない個人は新型コロナウイルス感染症による疾病損害額を請求できないことになる。いずれにせよ、政府は無保険の隔離免除を一部認め、差額を補填することになるだろう。
【0013】
感染症による疾病損害は事故の結果として考慮され、過失は感染者と感染拡大者で共有される。感染者は完全に隔離されていれば感染しなかっただろうから、感染者にも何らかの落ち度はあるし、感染拡大者には明確な症状がない、及び/又は自分の感染力に気付いていないため、感染拡大者が全ての過失を担うことはできない。
【0014】
無記名の壊れたタイヤのゴムバンドが原因で発生した事故の損害賠償を支払う高速道路保険のように、流行期に被害をもたらす感染拡大者は特定できないが、同じ保険会社が負傷者と匿名の有罪者の両方を補償する高速道路とは異なり、感染者と感染拡大者の保険会社は異なっていてもよい。
【0015】
政府が単独で出資する保険会社がIEIPを全ての個人に提供すれば、やむを得ないNPIsを実施することよりも良いものになるだろうが、疾病損害額が過小評価されれば納税者は感染拡大者を支援することになり、もし過大評価されれば感染拡大者は他に選択肢がないため不当に罰せられることになる。
【0016】
リスクと保険料の価格が不確実性と市場シェアとを天秤にかける個人の賭け金であるため、IEIPを提供する保険会社間で競合させることが望ましい。
【0017】
いくつかの最先端の保険の提案は、現在の健康保険を超えようとしたが、古典的なアプローチから問題に対処することで、政府の制限によって企業や個人が被った損害を補償することを提案した(15)。従って、この従来のアプローチでは、政府の制限によって企業や個人が被った損害を補償することを提案しておらず、個人や企業が関連する疾病損害額を補償することによりこれらの制限が免除される保険について推論もしていないし、それを実行するシステムやコンピュータで実行される方法についても描写されていない。
【0018】
ここで提案されている隔離免除保険証券とそれに関連する感染拡大者基金は、劇的な変化をもたらす新しい考えである。なぜなら、これまでに保険業界は、NPIsを選択的に回避する伝染病の感染拡大者の権利と、損害に対する補償を受ける感染者の権利とのバランスを取る保険システムを提案したことがなかったからである。
【発明の概要】
【0019】
本発明は、保険会社に、感染拡大者の過失による疾病損害賠償金を計算するシステム及び方法を提供する。本明細書で使用される疾病損害とは、例えば、新型コロナウイルスに感染後に発症した肺線維症による身体的制限等、死亡又は後遺症による寿命の損失、生活の質又は収入能力の低下、障害/身体的制限、及び入院費用等、病気によって引き起こされるあらゆる損害を意味する。本明細書で使用される疾病損害賠償金とは、疾病損害を補償するために支払われる任意の金額を意味し、例えば、高レベルで隔離されているワクチン接種済みの高齢男性の疾病損害に関して感染拡大者基金が所定の週に保険会社に支払う金額を意味する。
【0020】
図1は、参加者と相互関係をまとめたものである。被保険者は、疾病損害リスク(例えば、年齢、併存疾患等)、隔離レベル、感染することに対する感受性、感染した場合の感染力等に応じてリスクグループ(RG)に分類されてもよい。本明細書で使用するリスクグループとは、例えば、高レベルで隔離されているワクチン接種済みの高齢男性等、疾病損害リスク(例えば、年齢、性別、血液型、併存疾患)、隔離レベル、感染することに対する感受性、感染した場合の感染力、ワクチン接種状況、以前の感染症(回復したかどうか)等のいくつかの特性に応じて分けられ、同様のリスクを共有する個人の集団を意味する。同じRGに属する個人向けのIEIPに対して支払われる保険料(つまり、保険の購入価格)は、保険会社ごとに異なっていてもよい。
【0021】
感染者が被ったすべての損害は、感染した期間(例えば、日、週、又は月)に割り当てられ、その日付の疫学データが収集され、将来の計算に備えて記憶されてもよい。本明細書で使用されるこのような疫学データに関しては、読者にさらなる説明を提供することを目的として、例えば、特定の週の全く隔離されていないワクチン未接種の60歳未満の健康な個人の症例数など、症例、疾患及び入院記録、死亡証明書、感染させる又は感染することに対する同じRG内又は他のRGとの隔離レベルの比較、各RGの感染力がある個人及び感受性を持つ個人の数、相対的な感染力と感受性等、流行に関連するあらゆるデータを指す。
【0022】
すなわち、本明細書で使用される期間とは、日、週、月、年、つまり、あらゆる種類の時間測定の規模を指す。感染拡大者による損害の過失を計算する効果として、例えば労働災害保険の場合と同じ方法で、疾病損害請求が各RGごとに表にまとめられてもよい。本明細書で使用される疾病損害請求とは、例えば、新型コロナウイルス感染後に発症した肺線維症による身体的制限を埋め合わせるために、保険契約者が補償対象の損失の補償として保険に請求する金額を意味する。そうは言うものの、保険会社が感染者に支払う疾病損害請求金は、集計されたものと異なっていてもよい。
【0023】
RGの感染者が、ある期間に発生した感染症による疾病損害を請求する場合 (ほとんどの場合、請求はその感染期間後に行われる)、感染拡大者基金は、その請求のうち、その期間に隔離されていない全てのRGの過失による割合を計算する。そして、感染拡大者の過失による損害賠償金は、保険会社から感染拡大者基金に流れ、その後保険会社に戻り、最後に感染者に支払われる。保険会社から感染者への賠償金には、感染者の過失による損害の一部も含まれる。
【0024】
ある期間の感染症による将来の損害賠償請求は不確実であり、保険会社間で承諾された感染拡大者基金の賠償金計算方法は、IEIP保有者の各RGに対応する割合のみを示しており、保険会社は(おそらく政府の介入もあり)経過する前の所定期間に対する計算方法に同意する可能性が最も高い。各保険会社は、その計算を独自の保険数理手法に組み込んで、その期間の将来の賠償金額を推定し、自社の被保険者に請求するIEIP発行保険料を計算する。
【0025】
承諾された方法により全ての過失が感染拡大者にある場合、全ての支払いは感染拡大者基金によって行われる。全ての過失が感染者に割り当てられる場合(感染拡大者基金の支払い=0)、IEIPは古典的な疾病保険に戻り、本発明の対象外となる。
【0026】
ワクチン接種を受けるか感染症から回復すると、個人は以前のRGから除外され、新しいRGに組み込まれてもよい。なぜなら、感染することに対する感受性及び/又は感染力が低いため、共有過失が小さくなり、これらのワクチン接種者及び/又は回復したRGに対しての発行保険料がワクチン未接種者と比較すると低くなるからである。
【0027】
無症状の感染者の大部分が存在するため(5)、ワクチン未接種のナイーブ(回復しておらず、以前の感染症もなくワクチン接種も受けていない)人は定期的に抗体検査を受け、陽性の場合は回復の証拠として抗体検査を提供することで、IEIP発行保険料が安くなるかもしれない。
【0028】
NPIsは滑稽なものになる可能性があり、例えばバーやコンサートホールはワクチン未接種の個人を受け入れないようにニューヨーク市政府から義務付けられている(13)。IEIPは、これらのNPIsを回避したい個人に提供されるか、その制限を回避したいレストランが個人に代わって購入することができる。
【0029】
最近オーストリアで新型コロナウイルス感染症に対して提案されたもの(17)や、1905年にマサチューセッツ州で天然痘に対して合憲判決が下されたもの(18)のように、ワクチン未接種の個人に対する罰金は、個人が隔離免除のためにお金を払うことができる(つまり、罰金を支払ったワクチン未接種者は公共の場に行ってもよい)ため、正しい方向への一歩であるが、感染拡大者によって引き起こされる疾病損害が罰金の価値よりも高いか低いことが判明する可能性があるため、それらは必然的に不公平であり、したがって政府は最終的に感染拡大者に補助金を出したり罰則を課したりすることになる得る。
【0030】
オミクロンの症候性感染を防ぐための陰性ワクチン有効性(VE)(表2ではPF:D2:14+の場合、VE=-18%)(16)を参照すると、奇妙なことに、新しい変異体の出現により、ワクチン接種済みの個人の感受性及び/又は感染力が高まる可能性がある。その場合、ワクチン接種済みの個人(例えば、2回目の接種から141日後)の発行保険料は、ワクチン未接種の個人よりも高くなる。
【0031】
強制隔離を回避するためにIEIPが利用可能になった結果の1つは、IEIPを購入することで強制隔離を回避できるため、強制隔離を課すことによる政府への損害賠償請求がIEIP保険料の上限としてもよい。
【0032】
さらに、保険会社は、保険料を正確に計算するために、例えば感染症の致死率、続発性、ワクチンの有効性、マスクの有効性等をできるだけ早く決定しようとする等、公平な研究に資金を注ぎ込むインセンティブを持っていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1図1は、感染症感染拡大者基金の損害賠償金を計算するために疫学データを収集及び記憶するシステム及びコンピュータで実行される方法を示す。感染拡大者基金は感染拡大者の共有過失による支払い金額を計算し、その支払い金額は(隔離されていない被保険者から以前に保険料を徴収していた)保険会社から、感染した被保険者から損害賠償請求を受けた保険会社に流れる。
図2図2は、感染症の基本疫学SEIRモデル、つまり個人が4つの区画(感受性、曝露、感染、回復)のいずれかに属する古典的SEIR疫学モデルを示す。
図3図3は、2階層SEIRモデル、つまり(1)で公開された拡張2階層SEIRモデルを示しており、これにより、60歳未満の感染リスクが高い人と健康な人の2つのグループの階層別隔離のモデル化が可能になる。
図4図4は、マドリッド地域からの実際の流行データを使用した、異なる隔離レベルの3つのシナリオを示しており、60歳未満の健康な人及び感染リスクが高いIEIP保有者に対して感染拡大者基金によって支払われた累積疾病損害賠償金の推定値も含まれる。
図5図5は、隔離免除保険証券(IEIP)に関連する感染拡大者の過失による疾病損害賠償金を計算するためのコンピュータで実行される方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本開示は、隔離免除保険証券(IEIP)に関連する感染拡大者の過失による疾病損害賠償金を計算するためのコンピュータで実行される方法に関する。本発明の目的上、疾病損害賠償金とは、各保険会社が前記各保険会社の感染拡大者基金に対して行わなければならない、又は感染拡大者基金から受け取らなければならない経済上の支払い金を指す。
【0035】
本発明のコンピュータで実行される方法によって使用される計算の種類を説明する目的で、例示的な支払い計算方法がさらに提供される。本明細書で使用される感染拡大者の過失とは、感染症(つまり不幸な災難)に関して、感染者ではなく感染拡大者に割り当てられる過失の割合を意味し、例えば、感染症で高いレベルで隔離されている高齢者の中で、全く隔離されていない60歳未満の健康な人に割り当てられる過失の割合を意味する。さらに、本明細書で使用される隔離免除保険証券(IEIP)とは、宣言、保険契約、定義、除外、条件及び承認を含む契約又は保険の条件を詳細に記載した文書を意味し、例えば、政府がホームレスに提供するIEIP等、政府又はその他の事業体による一方的な契約も含まれる。
【0036】
すなわち、本発明の方法は、情報の記憶、及びそのような情報の動的かつ複雑な方法での処理を必要とするため、当業者であれば、コンピュータによる実行が不可欠であることを十分に理解するであろう。当業者に理解されるように、本発明のコンピュータで実行される方法を実行するのに適したコンピュータは、少なくともデータを受信し、記憶し、処理するために必要な物理的な機器を含む。当業者に理解されるように、物理的な機器は、ユーザインターフェースデバイス、情報収集デバイス、情報プロセッサ又は中央処理装置(CPU)、記憶デバイス、コンピュータ読み取り可能な[記憶]媒体、表示デバイス等が含まれていてもよい。したがって、本明細書に開示される方法を実施するために、コンピュータが提供される。
【0037】
したがって、本発明の目的のためには、コンピュータによって実行される一連の計算及びアルゴリズムを使用する必要があるため、データを受信し、記憶し、処理するためのコンピュータを準備することが必要であるp)。すなわち、本明細書で使用されるコンピュータとは、可変プログラムで与えられた指示に従って、通常はバイナリ形式でデータを記憶及び処理する電子的デバイスを意味する。
【0038】
コンピュータで実行される方法は、以下の工程を含む。
【0039】
a)所定期間に感染したあらゆるリスクグループの個人の疾病損害請求を収集し、記憶する。
【0040】
b)前記所定期間における前記あらゆるリスクグループ及び地域住民の隔離レベル、感染力がある及び感受性を持つ個人の数、相対的な感染力及び感受性等の疫学データを収集及び記憶する。
【0041】
c)前記あらゆるリスクグループの感染拡大者の過失による、前記所定期間の感染により前記あらゆるリスクグループが被った疾病損害を計算する。
【0042】
d)各保険会社が前記各保険会社の感染拡大者基金に対して支払わなければならない、又は感染拡大者基金から受け取らなければならない疾病損害賠償金を計算する。
【0043】
提案された方法に関して上記の定義にさらに文脈を与えるために、以下に概念の説明をするが、これは単に明確にするだけのものであり、上記のステップa)からd)にてまだ特定されていない新規事項を構成するものではない。
【0044】
コンピュータで実行される方法は、所定期間に感染したあらゆるリスクグループの個人の疾病損害請求の収集と記憶を開始する。これは、疾病損害請求を過去の期間に発生した感染症に関連付けることができる方法であるため、重要であり、例えば、3月の最初の3週間の挿管による入院費用は、2月の第3週に発生した感染症の結果であるかもしれない。
【0045】
次に、コンピュータで実行される方法は、所定期間における前記あらゆるリスクグループ及び地域住民の隔離レベル、感染力がある及び感受性を持つ個人の数、相対的な感染力と感受性等の疫学データの収集及び記憶を実行する。これは、当該期間における疾病損害賠償金を計算できる方法であるため重要であり、例えば、2月の第3週の感染拡大者の隔離レベルは、3月の最初の3週間よりも低かったかもしれないため、これらの疾病損害請求に関する感染拡大者の過失割合はより高くなる。
【0046】
具体的には、隔離レベルとは、一連の制限(非医薬品介入とも呼ばれる)及び/又は、例えば、50人を超える集会の禁止や、ワクチン未接種者のパブへの立ち入り禁止等、他の個人との交流(つまり、同じ空気を吸う等)を少なくする通常の行動によって感染の可能性を低下させることから生じる数値を指す。感染力がある及び感受性を持つ個人の数とは、感染力がある個人の推定数と、病原体にさらされたときに感染症にかかりやすい個人の数を指す。例えば、感染力がある個人は報告された症例よりも遥かに多いことが知られており、感受性を持つ個人は以前に感染が確認されていない個人よりも少ないことが知られている。相対的な感染力と感受性とは、異なる個人間の感染力と感受性の相対的な程度を指す。例えば、若者は高齢者に比べて無症状の感染症を発症する割合が高いため、感染力が相対的に低く、子供は高齢者に比べて感受性が低いことが知られている。本明細書で使用される地域住民とは、計算が実行される限定された地域を意味し、例えば、パリの地域住民には、パリ市の75、92、93、94県、及びパリ大都市圏95、78、91、及び77県が含まれる場合があります。
【0047】
次に、コンピュータで実行される方法は、前記あらゆるリスクグループの感染拡大者の過失で、前記所定期間の感染により前記あらゆるリスクグループが被った疾病損害を計算する。保険会社が、各RGによって支払われなければならない損害の割合、及び各RGに支払わなければならない損害の割合を計算する方法に同意しているかもしれないので、これは実際の支払い金額を計算する方法であるため重要であるが、実際に支払われる金額においては、実際の疾病損害を知ることを要求される。
【0048】
最後に、コンピュータで実行される方法は、各保険会社が前記各保険会社の感染拡大者基金に対して支払わなければならない、又は感染拡大者基金から受け取らなければならない疾病損害賠償金の計算を実行する。これは、感染者が補償され、感染拡大者を補償する保険会社が疾病損害を請求される方法であるため、重要である。特に、各保険会社が前記各保険会社の感染拡大者基金に対して支払わなければならない、又は感染拡大者基金から受け取らなければならない、計算された疾病損害賠償金は、任意のグループj及びi(j=iを含む)のペア、RGiの感染拡大者の過失で期間d+Eoの感染によってRGjが被った疾病損害の額について表す式{10}の結果を使用して取得できる。式{10}は、合理的な一連の仮定、収集されたデータ、及び特定のSEIR疫学モデルから推論されるが、保険会社間で計算を承諾するために他の任意の一連の仮定及び/又は疫学モデルを使用することができる。例えば、GoogleやAppleの「暴露通知」のような、携帯アプリとの近接性を使用したISOij(接触行列のij要素)の推定(7)、及び共有相互関係における過失割合を計算するために{8}を使用する代わりに、相互関係が発生する各場所に各RGがいる権利を区別する(例えば、小学校で高齢者から隔離されていない子供たちは、レストランでの場合と同じ過失割合を持たないかもしれない)など、より高度なアプローチが挙げられる。
【0049】
本明細書では、ユーザが、各保険会社が前記各保険会社の感染拡大者基金に対して支払わなければならない、又は感染拡大者基金から受け取らなければならない疾病損害賠償金を計算できるようにする特定の一連の式が示されているが、本明細書に開示されているコンピュータで実行される方法は、疾病損害賠償金を計算する他の公式及び/又は工程と一致させることもできる。本明細書の前記他の公式とは、感染拡大者基金によって支払われる疾病損害賠償金を計算するために保険会社(又は政府又はその他の事業体)間で承諾された{10}とは異なる公式を意味し、例えば、単に全ての疾病損害を地域住民の個人の総数で割ったもの等である。
【0050】
所定期間における前記あらゆるリスクグループ及び地域住民の隔離レベル、感染力がある及び感受性を持つ個人の数、相対的な感染力と感受性等の一連の特定の疫学データが収集及び記憶されているが、本明細書に開示されるコンピュータで実行される方法は、疾病損害賠償金の計算のための他の疫学データを収集及び記憶してもよい。本明細書で使用される前記他の疫学データとは、感染拡大者基金によって支払われる疾病損害賠償金の計算に適した上記以外の任意のデータ、例えば、(5)で公表されたような抗体保有率の研究で得られた血清学的データを意味する。
【0051】
1日という期間は本発明の目的にとって都合のよい期間であるが、疾病損害賠償金を計算するために1日とは異なる別の期間を認めてもよい。本発明の目的に適した期間は、疫学で使用される好ましい期間である週であってもよいが、日、月、年等であってもよい。
【0052】
上記に加えて、前記コンピュータで実行される方法のより具体的な変形例が存在するかもしれない。これらは本質的な部分は変わらないにしても、環境条件と、関係する様々な関係者、つまり個人と保険会社、対応する事業体、政府等のニーズの両方の状況を把握しながら、適用される環境条件に応じて方法をカスタマイズするのに役立つ興味深い可能性を提供する。
【0053】
例えば、一態様では、コンピュータで実行される方法は、前記各保険会社が、承諾された計算方法と独自の疫学モデル及び保険数理モデルを使用して、将来の疾病損害賠償金の絶対値を推定することで、独自のIEIP保険料を決定することを考慮してもよい。ここで使用される承諾された計算とは、保険会社(又は政府又はその他の事業体)が、おそらく感染症や疾病損害が発生する前に、疾病損害賠償金を計算するために使用することに同意したあらゆる方法を意味する。ここで使用される保険会社のための独自の疫学モデル及び保険数理モデルとは、承諾された計算方法、被保険者、被保険者及び他の被保険者の疾病損害、そして流行の進展を考慮して、保険会社が将来授受する実際の支払い額を見積もるために保険会社が使用する任意のモデルを意味する。ここで使用される独自のIEIP保険料とは、被保険者がIEIPのためにその保険契約者に請求すべき金額を意味する。
【0054】
別の態様では、コンピュータで実行される方法は、疾病損害賠償金が他のIEIP保有者に対してのみ支払われることを考慮してもよい。ここで、他のIEIP保有者とは、IEIPを購入した個人を意味する。
【0055】
別の態様では、コンピュータで実行される方法は、政府が免除を認めた主要職員とIEIPを支払うことができない一部の個人が異なるRGに属していると想定され、感染拡大者の過失による彼らの疾病損害賠償金が政府によって負担されることを考慮してもよい。
【0056】
別の態様では、コンピュータで実行される方法は、疾病損害が損害を受けた個人の保険会社以外の別の事業体によって報告されることを考慮してもよい。ここで疾病損害を報告する別の事業体とは、例えば、政府が運営する医療システム等、保険会社とは異なる任意の他の事業体を意味する。
【0057】
別の態様では、コンピュータで実行される方法は、病院又は介護施設への立ち入り、又は防護服等の適切な安全対策を講じることなくそれを行うことはIEIPの対象外であることを考慮してもよい。対象疾患に関連する適切な安全対策とは、例えば、最近のPCR検査が陰性であった場合に介護施設に立ち入ること等である。
【0058】
別の態様では、コンピュータで実行される方法は、すでに感染した個人、ワクチン接種済みの個人、抗体又はT細胞反応等の他の免疫反応を有する個人、又は他の免疫事象を有する個人が元のリスクグループから除外されることを検討してもよい。
【0059】
他の態様では、コンピュータで実行される方法は、疾病損害の発生又は請求の時期には、感染/診断後の時間及び/又は請求額の制限があることを考慮してもよい。一例として、感染/診断後の時間の制限は、数か月又は数年の範囲でもよい。そして、ここで使用される請求額の制限とは、疾病損害請求の上限、例えば120,000イギリスポンド(イギリスで起こったワクチン損害賠償金の場合と同様)を意味する。
【0060】
別の態様では、コンピュータで実行される方法は、疾病損害請求を表にまとめることを考慮してもよい。ここで使用される表とは、請求できる金額が様々な疾病損害に対して事前に設定されていることを意味する。
【0061】
他の態様では、コンピュータで実行される方法は、一部の個人がIEIPを購入及び/又は損害賠償を請求したりせずに済むことを考慮してもよい。つまり、IEIPの購入及び/又は損害賠償請求を免れる理由としては、政府が適切と判断するあらゆる理由である。例えば、個人と連絡が取れない、IEIPを購入する手段がない、RGに対して引き起こされる、又はRGによって引き起こされた感染拡大者としての過失及び/又は疾病損害が非常に低いため、IEIPの価格がごく少額であるか、回収するのが非経済的である等の理由である。
【0062】
別の態様では、コンピュータで実行される方法は、単一の保険会社だけがIEIPを提供することを考慮してもよい。
【0063】
他の態様では、コンピュータで実行される方法は、疾病損害額が推定よりも高くなる/安くなる場合に、保険料の一部が感染拡大者に請求される/払い戻されることを考慮してもよく、例えば、推定疾病損害が過大評価され、IEIPの購入価格が最終的に高くなり過ぎる場合に、超過額の一部が保険会社に払い戻される可能性があること等を意味する。
【0064】
別の態様では、コンピュータで実行される方法は、保険会社によって感染者に支払われる疾病損害請求金が表に記載された保険金を超えるかもしれないことを考慮することができる。
【0065】
別の態様では、コンピュータで実行される方法は、保険会社によって感染者に支払われる疾病損害請求金が表に記載されたものと異なることを考慮してもよい。
【0066】
他の態様では、コンピュータで実行される方法は、レストランやコンサートホールを含む中型事業体が顧客に代わってIEIPを購入することができることを考慮してもよい。ここで使用される中間事業体とは、隔離を免除される個人に代わってIEIPを購入できる任意の事業体を意味し、例えば、あるロックコンサートで、その夜に参加する個人のためにIEIPを購入すること等である。
【0067】
別の態様では、コンピュータで実行される方法は、これらの免除及び/又は疾病損害賠償金が他の種類の保険に関連付けられているか、又はいかなる保険にも関連付けられていないことを考慮してもよい。
【0068】
別の態様では、コンピュータで実行される方法は、感染者が症状を示しているか(例えばエボラ出血熱患者)、又は感染力があることをすでに知っている(例えば腸チフス患者)ことを考慮してもよい。
【0069】
別の態様では、コンピュータで実行される方法は、疾病損害賠償請求には疾病関連の損害以外も含まれるかもしれないことを考慮してもよい。
【0070】
別の態様では、コンピュータで実行される方法は、偶然ウイルスに「感染」している間に他の原因で病気になった個人について、疾病損害賠償請求が修正されるかもしれないことを考慮してもよい。
【0071】
別の態様では、コンピュータで実行される方法は、事前の免疫又は季節性の経時的な変化により、ある場所における前記相対的な感染力及び感受性がかなり低いかもしれないことを考慮してもよい。
【0072】
さらに、別の態様では、コンピュータで実行される方法は、競合する変異体を含む疫学モデルを使用して疾病損害賠償金を計算することを考慮してもよい。
【0073】
支払い金の計算方法例
【0074】
N階層SEIR(感受性→暴露→感染→回復)疫学モデルに基づく共有過失の計算を図2に示す。
【0075】
SEIRモデルでは、個人は4つの区画のいずれかに属し、d+Eo日(1日単位の期間)に感染した新規個人は次の通りである。
【0076】
【数1】
【0077】
式中:
Eo:平均暴露間隔(日)
S:感受性を持つ個人の残存数
Pop:人口(その場所にいる個人の数)
Ro:再現数(NPIsなしの0時点における感染力ごとの曝露数)
Do: 平均感染間隔(日)
ISO:個人間の平均隔離接触数
I:感染力がある個人の数
【0078】
目的は、異なるリスクグループに異なる隔離レベルを許可することであるため、SEIRモデルを拡張する必要がある。図3に示すように、(1)の2階層モデルを使用して例示的な公式演繹を行い、N階層に一般化される。
【0079】
期間d+Eoに新たに感染した感染リスクが高い個人は次の通りである。
【0080】
【数2】
【0081】
式中:
Sv:感染リスクが高い階層の感受性を持つ個人の残存数
Uv:感染リスクが高い個人の平均相対感受性
ISOvv:感染リスクが高い個人間の平均隔離接触
Fv:感染リスクが高い個人の平均相対感染力
Iv:感染リスクが高い階層の感染力がある個人の数
ISOvh:感染リスクが高い個人と60歳未満の健康な個人との平均共有隔離接触
Fh:60歳未満の健康な個人の平均相対感染力
Ih:60歳未満の健康な階層の感染力がある個人の数
【0082】
期間d+Eoの感染リスクが高い感染者は、将来の期間において、感染に関連する不確実な疾病損害(つまり、死亡又は後遺症)に苦しむことになる。
Dv[d+Eo]
【0083】
そして、60歳未満の健康な個人との相互関係に対応する疾病損害の割合は、
【0084】
【数3】
【0085】
{3}は、感染した感染リスクが高い個人が60歳未満の健康な感染拡大者と過失を共有した場合に被った損害の割合にすぎないことに注意する(これには、感染した感染リスクが高い人と感染リスクが高い感染拡大者の共有過失は含まれない)。下記式はこれらの割合の合計(Vは感染リスクが高い感染者、Hは60歳未満の健康な感染拡大者)である。
【0086】
【数4】
【0087】
全ての過失が感受性を持つ個人(H=0)に割り当てられる場合、及び全ての過失が感染力がある人(V=0)に割り当てられている場合、より一般的なアプローチは、{2}の2項が、ウイルス関連(Ro/Do)、共有相互関係関連(ISOvh)、感受性関連(Sv/popUv)、感染力関連(IhFh)の過失を示していると仮定することである。その割合V及びHは下記式も満たさなければならない。
【0088】
【数5】
【0089】
したがって、
【0090】
【数6】
【0091】
特にISOvhが満たされると仮定される場合、
【0092】
【数7】
【0093】
それから、
【0094】
【数8】
【0095】
(3)及び(8)の組み合わせると、60歳未満の健康な感染拡大者の過失で期間d+Eoの感染症により感染リスクが高い人が被った疾病損害の額は下記の通りである。
【0096】
【数9】
【0097】
一般に、N個のグループが存在する場合、グループjとiの任意のペア(j=iを含む)について、RGiの感染拡大者の過失である期間d+Eoの感染によってRGjが被った疾病損害の額は次の通りである。
【0098】
【数10】
【0099】
RGjの感染者に対して全てのN個のRGが支払った感染拡大者の過失による損害賠償額は、次の通りである。
【0100】
【数11】
【0101】
全てのN個のRGの感染者に対してRGiが支払った感染拡大者の過失による損害賠償額は、次の通りである。
【0102】
【数12】
【0103】
各保険会社は、各RGの被保険者数(すなわち、各RGで感受性を持つ個人)及び感染者数に比例した金額を受け取り、支払う。
【0104】
RGiの各感染拡大者による損害賠償額は、次の通りである。
【0105】
【数13】
【0106】
式中、Si:RGiの感受性を持つ個人の残存数
【0107】
実際のSARS-COV-2の流行の模範結果
【0108】
マドリッド共同体で実行された式{9}を用いた方法を使用した計算結果(14)の例を図4に示す。
【0109】
個人を60歳未満の健康な個人と、感染リスクが高い個人(つまり、60歳以上の個人及び60歳未満の併存疾患がある個人)の2つのRGにグループに分類する。図4.aは、2020年3月から6月までの第1波にマドリッドで報告された1日当たりの死亡者数と年齢血清学的比を当てはめるのに必要な、各RGの推定隔離数(すなわち、60歳未満の健康な個人で0.748、感染リスクが高い人で0.588)を示す。図4.bは、マドリッドで隔離措置が適用されていた場合の1日当たりの推定死亡者数は、第1波のストックホルムようになったと推察される(つまり、60歳未満の健康な個人で0.300人、感染リスクが高い個人で0.941人)。図4.cは、マドリッドで隔離が適用されていた場合の1日当たりの推定死亡者数は、感染リスクが高い個人では0.941人、60歳未満の健康な個人(つまり隔離なし)では0.00人である。
【0110】
疾病損害は、感染リスクが高い死亡者一人当たり50,000米ドル、60歳未満の健康な死亡者一人当たり250,000米ドルと推定される。損害は18日前に発生した感染症に割り当てらる。
【0111】
図4.dは、「実際のデータを適合させた」シナリオの下で、感染拡大者基金によってIEIP保有者一人当たりに支払われた累積支払額を示す(例えば、2021年4月25日までの60歳未満の健康な個人一人当たりは53.78ドル、感染リスクが高い個人一人当たりは75.54ドル)。各RGに属する感受性を持つ個人の数は、感染症による初期の割合から減少している(例えば、2021年4月25日時点では、60歳未満の健康な個人は初期の62%、感染リスクが高い個人は56%)。
【0112】
60歳未満の健康な個人が全く隔離しなかった場合(図4.f)、集団免疫に達するまで感受性を持ち続けている(つまり感染していない)個人に、感染拡大者基金は最終的に280ドル(二百八十米ドル)を支払うことになる。
【0113】
そして、「ストックホルムのような」集中的な保護戦略が達成された場合(図4.d)、2020年3月から2021年2月までの支払いは230ドルとなる。感受性を持っている状態(つまり、ワクチン未接種で、接種を受けていない状態)でマドリッドの強制隔離を回避するには、月額わずか19ドルである。
【0114】
3つのシナリオ全てにおいて、どの時点においても、感染拡大者基金によって支払われる疾病損害の割合が70%(破線)を超えていることに注目してください。
【0115】
追加の考慮事項
【0116】
図4の結果は、共有隔離ISOvhがISOhvに等しく、式{7}が成り立つと仮定して、年齢血清学比(例えば、マドリッドでは0.79、ストックホルムでは1.71)に適合するモデル(1)を使用して推定された隔離レベルIhh及びIvvを使用している。
【0117】
より一般的なアプローチには、GoogleやAppleの「暴露通知」のような、携帯アプリとの近接性を使用したISOij(接触行列のij要素)の推定(7)、及び共有相互関係における過失割合を計算するために{8}を使用する代わりに、相互関係が発生する各場所に各RGがいる権利を区別する(例えば、小学校で高齢者から隔離されていない子供たちは、レストランでの場合と同じ過失割合を持たないかもしれない)。
【0118】
パラメータU及びFは世界中で推定され、ローカルな計算に使用されてもよく、季節性の又は新しい変異体により経時的に変化する可能性がある。例えば、若者は無症状である割合が高い傾向にあるため感染力Fが低い可能性があり(5)、無症状の状態を維持する人はまれにしかうつさない(8)、子供は感受性が低く(5)、(VEは時間の経過とともに弱まるかもしれないが)ワクチン接種済みの人はワクチン未接種の人より感受性が低い可能性がある(11)、感染から回復した人の感受性はワクチン接種済みの人よりもさらに低くなる(12)。
【0119】
各RGの感染Iは、血清学的データ(5)を使用して推定でき、各RG のパラメータUを使用して下方修正できる。又は、症候性PCR+を使用して、各RGで検出されない症例の割合を上方修正して推定する。
【0120】
(2)に示すように、他のシナリオがSEIRモデルに含まれていてもよい。ワクチン接種、季節性のRo、Eo、Doの変動、競合する新たな変異株の出現、又は検査でウイルスの陽性反応が出た場合の他の原因による死亡者の発生等である。
【0121】
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図1
図2
図3
図4
図5
【国際調査報告】