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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-30
(54)【発明の名称】インプラント撮像システム
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/30 20060101AFI20240920BHJP
【FI】
A61F2/30
【審査請求】有
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2024546516
(86)(22)【出願日】2022-02-24
(85)【翻訳文提出日】2024-06-11
(86)【国際出願番号】 IN2022050160
(87)【国際公開番号】W WO2023067612
(87)【国際公開日】2023-04-27
(31)【優先権主張番号】202121047197
(32)【優先日】2021-10-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524146398
【氏名又は名称】メリル・ヘルスケア・ピーブイティー・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】プラモド・クマール・ミノチャ
(72)【発明者】
【氏名】デヴェシュクマール・マヘンドララール・コトワラ
(72)【発明者】
【氏名】アルピト・プラディプクマール・ダヴェー
【テーマコード(参考)】
4C097
【Fターム(参考)】
4C097AA03
4C097BB01
4C097BB06
4C097DD01
4C097DD06
4C097DD09
(57)【要約】
インプラント撮像システム(200)が開示されている。インプラント撮像システム(200)は、ポリマー製の関節インプラント上に設けられ得る。インプラント撮像システム(200)は、少なくとも1つの骨接触表面‘B’を含む1つまたは複数の金属板(212)を含む。金属板(212)は関節インプラント上に配設される。さらに、骨接触表面‘B’の金属板(212)は骨伝導材料の1つまたは複数のコーティングでコーティングされている。骨伝導材料の存在は関節インプラントのオステオインテグレーション率を高める。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの骨接触表面(B)を含み、関節インプラント上に配設される1つまたは複数の金属板(212)と、
前記金属板(212)の骨接触表面(B)上に塗布されてオステオインテグレーション率を高める骨伝導材料の1つまたは複数のコーティングと、を含み、
前記関節インプラントがポリマー材料製である、インプラント撮像システム(200)。
【請求項2】
前記金属板(212)が、チタン製、タンタル製、金製、白金製、ハフニウム製、CoCrMo合金製、またはそれらの組合せ(合金)のうちの1つである、請求項1に記載のインプラント撮像システム(200)。
【請求項3】
前記金属板(212)が1mmから3mmまでの範囲の厚さを有する、請求項1に記載のインプラント撮像システム(200)。
【請求項4】
前記関節インプラントが、膝関節インプラント(100)、股関節インプラント(300)、肩関節インプラント、または脊椎インプラントのうちの1つである、請求項1に記載のインプラント撮像システム(200)。
【請求項5】
前記膝関節インプラント(100)が、内側部分(111)を有する大腿骨コンポーネント(110)を含む、請求項4に記載のインプラント撮像システム(200)。
【請求項6】
前記大腿骨コンポーネント(110)の内側部分(111)が複数のスロット(111a)を含む、請求項5に記載のインプラント撮像システム(200)。
【請求項7】
前記金属板(212)が前記膝関節インプラント(100)の内側部分(111)の複数のスロット(111a)内に配設される、請求項6に記載のインプラント撮像システム(200)。
【請求項8】
前記金属板(212)が、前記スロット(111a)の形状を補完する形状を有する、請求項7に記載のインプラント撮像システム(200)。
【請求項9】
前記膝関節インプラント(100)が複数の放射線不透過マーカを含む、請求項5に記載のインプラント撮像システム(200)。
【請求項10】
前記金属板(212)が前記股関節インプラント(300)の寛骨臼コンポーネント(301)の上面に配設される、請求項4に記載のインプラント撮像システム(200)。
【請求項11】
前記骨伝導材料がヒドロキシアパタイト(HA)を含む、請求項1に記載のインプラント撮像システム(200)。
【請求項12】
前記ヒドロキシアパタイト(HA)のコーティングが110μmから190μmまでの範囲の厚さを有する、請求項11に記載のインプラント撮像システム(200)。
【請求項13】
前記関節インプラントがポリエーテルエーテルケトン(PEEK)製である、請求項1に記載のインプラント撮像システム(200)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はインプラント撮像システムに関する。より具体的には、本発明は関節インプラント用のインプラント撮像システムに関する。
【背景技術】
【0002】
人体内には様々な種類の関節があり、例えば2~3例を挙げると膝関節、股関節、肘関節、肩関節である。基本的に、関節は2つ以上の骨の端部が接触するところに形成されている。日々の活動を行うには、健全な関節が重要である。
【0003】
いくつかの状態が関節の痛みおよび障害を引き起こす可能性がある。例えば、関節の痛みおよび障害は、関節軟骨(骨を保護しかつ関節内で骨が容易に動くことを可能にする滑らかな物質)の損傷に起因する可能性がある。通常、関節の全構成要素は調和して働く。しかし、病気または怪我がこの調和を邪魔し、結果的に、痛み、筋力低下、および機能低下をもたらす可能性がある。例えば、膝関節の場合には、慢性的な関節の痛みおよび/または障害の最も一般的な原因は関節炎である。
【0004】
投薬、理学療法、および行動修正のような手術をしない治療が痛みや障害を緩和しない場合、医師は人工関節置換術を勧める可能性がある。
【0005】
人工関節置換術において使用されるインプラントは、損傷した、病変した、または機能障害を起こした自然構造を置換するように設計された特有のシステムを含み得る。従来、インプラントは、コバルトクロム(CoCrMo)合金と超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)との組合せを使用する。例えば、膝関節インプラントでは、大腿顆および脛骨トレー(脛骨プラットホーム)はCoCrMo合金製で、回転可能なまたは滑動可能な脛骨パッドは超高分子量ポリエチレン製である。
【0006】
しかし、CoCrMo合金のような従来の金属材料は大腿顆または脛骨トレーとして使用されているが、いくつかの臨床的欠点を有している。さらに、関節置換インプラントが高度の荷重および磨耗に晒されて、結果的に研磨粒子の放出をもたらす動きを誘発する。インプラントのポリエチレン座面と金属構成要素との間の接触応力が磨耗を引き起こす可能性があり、金属イオン放出の原因となる。磨耗屑および金属イオンは、関節置換インプラントに関連する炎症、早すぎる緩み、および金属毒性の主因である。さらに、CoCrMo合金は、人体内でアレルギー反応を引き起こし得る少量のニッケルを含有する。
【0007】
さらに、従来のインプラントは、コンピュータ断層撮影(CT)および磁気共鳴画像(MRI)の技術のような既知の診断デバイスと互換性がなく、そのため、医師が埋込み後の骨成長および治癒を追跡することができない。
【0008】
これらの欠点に因り、高い化学的安定性、高強度、および高い生体適合性を備えた、新世代のポリマー材料のポリエーテルエーテルケトン(PEEK)が整形外科的エンドファイト(orthopedic endophyte)に広く使用されている。
【0009】
しかし、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)材料は、X線において不可視(不十分な放射線不透過性)である。ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)基材がチタンコーティングまたはヒドロキシアパタイト層を設けられている場合でも、インプラントは、X線画像において、大部分不可視のままである。従来、低い放射線不透過性の問題を解決するために、関節インプラントでは金属インレーが使用されてきた。金属インレーを備えた1つのそのようなインプラントは特許文献1において開示されている。しかし、そのような金属インレーは、低い放射線不透過性の問題に効率の良い方法で完全には対処しない。前記特許の金属インレーは限られた可視性を有し、正確な配置および術後経過観察のために、インプラントの構造全体を示すことができない。
【0010】
さらに埋込み目的のために、インプラントの界面化学およびトポグラフィによって左右される細胞接着特性を有することが非常に重要である。しかし、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)材料は、その高い化学的安定性に因り、低いオステオインテグレーションを有する。したがって、その低い生物活性は低い骨インプラント相互作用の原因となる可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】ES2815658T3
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
したがって、関節インプラントの既存の問題を克服し得る撮像システムの必要が生じている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明はインプラント撮像システムに関する。インプラント撮像システムは、ポリマー製の関節インプラント上に設けられ得る。インプラント撮像システム200は、少なくとも1つの骨接触表面‘B’を含む1つまたは複数の金属板を含む。金属板は関節インプラント上に配設される。さらに、骨接触表面‘B’の金属板は骨伝導材料の1つまたは複数のコーティングでコーティングされている。骨伝導材料の存在は関節インプラントのオステオインテグレーション率を高める。
【0014】
上述のかつ他の特徴および本発明の利点は、添付の図を参照して進む次の詳細な説明から、いっそう明らかになるであろう。
【0015】
上記の要約および次の例示的実施形態の詳細な説明は、割り当てられた図面と併せて読むと、よりよく理解される。本開示を図解する目的で、本開示の例示的構造物が図面に示されている。しかし、本開示は、本明細書において開示されている特定の方法および手段に限定されない。さらに、当業者は、図面が縮尺通りでないことを理解するであろう。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施形態によるインプラント撮像システム200の図である。
図1a】本発明の実施形態によるインプラント100の図である。
図2a】本発明の実施形態による大腿骨コンポーネント110の図である。
図2b】本発明の実施形態による大腿骨コンポーネント110の図である。
図3a】本発明の実施形態による大腿骨コンポーネント210の図である。
図3b】本発明の実施形態による大腿骨コンポーネント210の図である。
図4a】本発明の実施形態による大腿骨コンポーネント220の図である。
図4b】本発明の実施形態による大腿骨コンポーネント220の図である。
図4c】本発明の実施形態による大腿骨コンポーネント220の図である。
図4d】本発明の実施形態による大腿骨コンポーネント220の図である。
図4e】本発明の実施形態による大腿骨コンポーネント220の図である。
図4f】本発明の実施形態による大腿骨コンポーネント220の図である。
図5a】本発明の実施形態による大腿骨コンポーネント230の図である。
図5b】本発明の実施形態による大腿骨コンポーネント230の図である。
図5c】本発明の実施形態による大腿骨コンポーネント230の図である。
図5d】本発明の実施形態による大腿骨コンポーネント230の図である。
図5e】本発明の実施形態による大腿骨コンポーネント230の図である。
図5f】本発明の実施形態による大腿骨コンポーネント230の図である。
図6a】本発明の実施形態による第1のマーカ171の図である。
図6b】本発明の実施形態による第2のマーカ173の図である。
図7】本発明の実施形態による股関節インプラント300の図である。
図8a】本発明の実施形態による従来のインプラントのX線画像の図である。
図8b】本発明の実施形態による大腿骨コンポーネント230のX線画像の図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明を詳細に説明する前に、本特許文書を通じて使用されているある語または句の定義を定める:「含む」や「備える」という用語ならびに派生語は無制限に包含を意味し、「または」という用語は包括的であり、および/またはを意味する。ある語句の定義が本特許文書を通じて定められており、当業者は、そのような定義が、殆どではないにしても多くの例において、そのような定義された語句の以前の使用および将来的な使用に適用されることを理解するであろう。
【0018】
可能な限り、同一の参照番号は、図面を通じて、同一のまたは同様の部品を指すのに使用される。さらに、同種の2つ以上の要素が存在し得る場合、本明細書において説明されている様々な要素への言及が集合的にまたは個々に行われる。しかし、そのような言及は本質的に例示的に過ぎない。添付の特許請求の範囲に明示的に示されていない限り、単数での要素への任意の言及が、本開示の範囲をそのような要素の厳密な数または種類に限定することなく、複数に対しても関連すると見なされてよく、かつ逆の場合も同様であることが留意され得る。
【0019】
本開示の特定の実施形態を、添付の図面を参照して、本明細書において以下に説明しているが、当然のことながら、開示されている実施形態は本開示の単なる例であり、様々な形態で具現化される可能性がある。不要な詳細で本開示を曖昧にするのを回避するために、周知の機能または構造物を詳細に説明していない。したがって、本明細書において開示されている特定の構造および機能の詳細が限定的と見なされるべきでなく、単に、本開示を様々に使用する当業者に、事実上任意の適切に詳述された構造を教示するための、特許請求の範囲の基礎、代表的な基礎と見なされるべきである。
【0020】
本開示によれば、インプラント撮像システムが開示されている。本発明のインプラント撮像システムは、放射線機器により可視性が強化されており、かつ/またはオステオインテグレーションを促進させる。
【0021】
ある実施形態では、本発明のインプラント撮像システムは、骨接触表面を有する1つまたは複数の金属板を含む。ある実施形態では、金属板の骨接触表面は骨伝導材料でコーティングされている。金属板はインプラントの放射線不透過性を向上させて、手術中のより良好な可視化をもたらし、したがって、放射線機器による正確な埋込みおよびより良好な術後経過観察を可能にする。金属構成要素は放射線不透過技術においてより高い可視性をもたらし、したがって、インプラントは複雑な形状の骨構造で容易に使用され得る。
【0022】
金属板上の骨伝導材料のコーティングはより良好なオステオインテグレーションに役立ち、インプラントの長期間の安定性をもたらす。さらに、金属構成要素上のコーティングは、体内で、骨に対する強い接着を促進し、炎症を最小限にし、早過ぎる緩み、金属毒性、およびアレルギー反応を防止する。
【0023】
ここで、図面を具体的に参照すると、図1はインプラント撮像システム200を示す。インプラント撮像システム200は、限定されないが、骨接触表面‘B’を有する1つまたは複数の金属板212および金属板212の骨接触表面‘B’上の1つまたは複数のコーティング層などの、1つまたは複数の構成要素を含み得る。
【0024】
インプラント撮像システム200は関節インプラント(例えば、図1Aに示されている膝関節インプラント100)上の所定の位置に設けられ得る。所定の位置は、放射線検査下で可視化されるために自然骨構造と接触したままでありかつ/または最大限の骨内部成長が必要とされる、関節インプラントの部分であり得る。関節インプラントはポリマー材料製であり得る。インプラント撮像システム200の金属板212は、手術中の関節インプラントの正確な配置および術後経過観察のために、適切な可視性に役立つ。
【0025】
金属板212は金属材料製であり得て、チタン、タンタル、金、白金、ハフニウム、CoCrMo合金、またはそれらの組合せ(合金)製であり得るが、これらに限定されない。ある実施形態では、金属板212はCoCrMo合金製である。
【0026】
インプラント撮像システム200は関節インプラント上に設けられ得る。関節インプラントには、所定の位置の、脊椎インプラント、肩関節インプラント、股関節インプラント300(図7に図示)または膝関節インプラント100(図1Aに図示)が含まれ得る。所定の位置は、放射線検査下で可視化されるために自然骨構造と接触したままでありかつ/または最大限の骨内部成長が必要とされる、関節インプラントの部分であり得る。インプラント撮像システム200の金属板212は関節インプラント上に配設され得る。インプラント撮像システム200の金属板212は、手術中の関節インプラントの正確な配置および術後経過観察のための、適切な可視性に役立つ。金属板212は、無制限にスナップ式、圧入、接着剤等によって、関節インプラントに取り付けられ得る。ある実施形態では、金属板212はスナップ式機構によって配設される。
【0027】
金属板212は、1mmから3mmまで、好ましくは1.5mmから2mmまでの範囲の所定の厚さを含み得る。ある実施形態では、金属板212の厚さは1.5mmである。様々な実施形態では、金属板212は、図3図5に示されている関節インプラントの形状および寸法に応じて、単数の構造物および/または複数の構造物であり得る。
【0028】
金属板212の骨接触表面‘B’は、関節インプラントの埋込み時、自然骨と接触したままである面と定義され得る。表面‘B’は骨伝導材料の1つまたは複数のコーティングでコーティングされ得る。骨伝導材料は、無制限に硫酸カルシウム、生体活性ガラスセラミックス、ヒドロキシアパタイト、リン酸三カルシウム、またはそれらの組合せを含み得る。ある実施形態では、表面‘B’はヒドロキシアパタイト(HA)でコーティングされている。
【0029】
HAコーティングは、それが、オッセオインテグレーション率に影響を及ぼす可能性があるいかなる欠点も生じさせないように、最適厚さを有し得る。厚さは110μmから190μmまでの範囲にある可能性がある。ある実施形態では、HAコーティングの厚さは140μmである。
【0030】
表面‘B’上のHAコーティングはより良好なオステオインテグレーションに役立ち、インプラント100に長期間の安定性をもたらす。金属構成要素上に設けられているHAコーティングは、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)表面と比較して、強い接着を促進させる。したがって、本発明のHAコーティング表面‘B’は、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)骨接触表面を備えた従来のインプラントよりも安定的である。股関節インプラント上でのヒドロキシアパタイト(HA)のコーティング工程を開示している係属中のインド特許出願第IN202121028444号を参照する。
【0031】
ある例示的実施形態では、インプラント撮像システム200は、図1aに示されている膝関節インプラント100の場合において説明されている。膝関節インプラント100は、大腿骨コンポーネント110、ライナコンポーネント130、および脛骨コンポーネント150を含むがそれらに限定されない1つまたは複数のコンポーネントを含み得る。膝関節インプラント100のこれらのコンポーネントは機能単位として共に動作して、自然膝関節の機能に取って代わり、それを実現するように設計されている。
【0032】
大腿骨コンポーネント110は膝関節1の大腿骨頭3に取り付けられてもよく、上関節面(図示せず)を形成する。ライナコンポーネント130は、大腿骨頭3と共に下関節面(図示せず)を形成し得る。脛骨コンポーネント150は脛骨ステム151と脛骨ベースプレート153とを含み得る。ライナコンポーネント130は、圧入機構、医療用接着材等を含むがそれらに限定されない任意の技術により、脛骨ベースプレート153に結合され得る。脛骨ステム151は脛骨の髄空内へ挿入されてもよく、脛骨ベースプレート153は脛骨ステム151に接触し/それを保持する。
【0033】
膝関節インプラント100はポリマー材料および/または金属材料製であり得る。ポリマー材料は、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエチレン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、またはそれらの組合せを含み得るが、それらに限定されない。金属材料は、CoCrMo、セラミック、またはそれらの組合せを含み得るが、それらに限定されない。膝関節インプラント100の前述のコンポーネントは全て、異なる材料および/または同様の材料製であり得る。
【0034】
ある実施形態では、大腿骨コンポーネント110、ライナコンポーネント130はポリエーテルエーテルケトン(PEEK)製であり、脛骨コンポーネント150はCoCrMo合金製である。
【0035】
別の実施形態では、膝関節インプラント100は無金属インプラントであり、コンポーネントは全てポリエーテルエーテルケトン(PEEK)製である。
【0036】
さらに別の実施形態では、膝関節インプラント100は、全ポリエチレンのライナコンポーネント130および脛骨コンポーネント150と結合される、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)の大腿骨コンポーネント110を含み、それによりインプラントは無金属になる。
【0037】
ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)は金属材料と比較してより柔軟であり、したがって、応力遮蔽および/または骨吸収に起因する膝関節インプラント100の緩みを防止し得るので、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)が膝関節インプラント100を製造するために選択され得る。PEEKは、アレルギー反応、および関節コンポーネントに起因する磨耗屑をさらに防止する。ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)基材は、機械的靱性、熱劣化および化学分解に対する耐性、ならびに良好な生体適合性のような優れた特性を示す。
【0038】
図2a~図2bは、膝関節インプラント100の大腿骨コンポーネント110の分解図を示す。大腿骨コンポーネント110は内側部分111と外側部分113とを含み得る。内側部分111は大腿骨頭(骨)3(図1aに図示)に取り付けられ得る。大腿骨コンポーネント110の外側部分113はライナコンポーネント130(図1aに図示)に接触し得る。
【0039】
大腿骨コンポーネント110はポリエーテルエーテルケトン(PEEK)で射出成形され得る。最初に、大腿骨コンポーネント110が製造される場合、それは両側(内側部分111および外側部分113)に滑らかな表面を含む。大腿骨コンポーネント110の内側部分111および外側部分113は表面改質工程を受ける可能性がある。表面改質工程は内側部分111および外側部分113に粗さをもたらす。表面改質工程は、無制限にグリットブラスト、サンドブラスト、マイクロブラスト、エアブラスト等によって、実施され得る。表面改質工程は粗い表面を設け、それにより、より良好なオッセオインテグレーション(骨内部成長)およびインプラント安定性の向上を支援することによって、付着特性を高めるのに役立つ。
【0040】
内側部分111は、5μmから100μmまでの範囲内で変化し得る所定の表面粗さを有し得る。内側部分111の表面粗さは、内側部分111の少なくとも50%、または少なくとも70%、または少なくとも80%に亘って、延在し得る。ある実施形態では、内側部分111の表面粗さは7μmであり、内側部分111の約80%を覆っている。
【0041】
膝関節インプラント100の大腿骨コンポーネント110はインプラント撮像システム200を設けられ得る。インプラント撮像システム200は、放射線不透過技術におけるより高い可視性をもたらすことができ、したがって、大腿骨コンポーネント110は複雑な形状の骨構造で容易に使用され得る。インプラント撮像システムは、大腿骨コンポーネント110に、強度、放射線不透過性、およびより良好なオステオインテグレーションをもたらす。
【0042】
インプラント撮像システム200は、膝関節インプラント100の大腿骨コンポーネント110の内側部分111上に設けられ得る。内側部分111は、最大限の骨内部成長が必要とされる自然骨と前記部分が接触したままであるため、選択される。しかし、本発明は、インプラント撮像システム200が内面上に存在する場合で説明されているが、インプラント撮像システム200は、同様に、関節インプラントの任意の他の表面上に配設され得る。
【0043】
大腿骨コンポーネント110の内側部分111は、インプラント撮像システム200を収容するために、複数のスロット111aを含み得る。インプラント撮像システム200の金属板212は膝関節インプラント100の内側部分111のスロット111a内に配設され得る。複数のスロット111aは、インプラント撮像システム200が大腿骨コンポーネント110の内側部分111上に配設されることにより、変化し得る。
【0044】
インプラント撮像システム200は、無制限に矩形板、正方形板等の任意の形状であり得る。インプラント撮像システム200の金属板212は、スロット111aの形状を補完する形状を含む。インプラント撮像システム200の金属板212は、無制限にスナップ式、圧入、接着剤等によって、内側部分111のスロット111a内に配設され得る。ある実施形態では、インプラント撮像システム200の金属板212はスナップ式機構によって配設される。
【0045】
様々な実施形態において、インプラント撮像システム200の金属板212は、大腿骨コンポーネント110の寸法、形状に応じて、単数の構造物および/または複数の構造物であり得る。図3に示されている第1の例示的実施形態では、内側部分211を有する大腿骨コンポーネント210が示されている。内側部分211は2つのスロット211aを含む。2つのスロット211aはインプラント撮像システム200を備えて配設され得る。前記実施形態では、インプラント撮像システム200は、2つのスロット211aに対応する2つの金属板212を含む。本実施形態は、最大限の放射線不透過性を必要とされる、自然関節の複雑な形状を有する患者体内で使用され得る。
【0046】
第2の例示的実施形態では、図4に示されているように、大腿骨コンポーネント220が、複数のスロット221aを有する内側部分221を含む。内側部分221は、インプラント撮像システム200の複数の金属板212、例えば4つの金属構成要素223、を使用して覆われる可能性がある。金属板212は内側部分221のそれぞれの角部に配設され得る。金属板212は、図4に示されている複数のスロット221aの形状および寸法の通りに切断され得る。金属構成要素223は、大腿骨コンポーネント210の内側部分221の50%から80%までの範囲の領域を覆うことができる。
【0047】
第3の例示的実施形態では、内側部分231を備えた大腿骨コンポーネント230が図5に示されているように設けられる。大腿骨コンポーネント230の内側部分231は、互いから特定の距離の所に、複数のスロット231aを含む。複数の金属板212は、複数のスロット231a内に配置され得る。複数の金属構成要素233は、複数のスロット231aの通りに成形され、特定の寸法に作られ得る。ある例示的実施形態では、内側部分231は22個のスロットと22個の対応する金属板212とを含む。複数の金属板212は、大腿骨コンポーネント230の内側部分231の50%から80%までの範囲の領域を覆う可能性がある。本実施形態は、自然膝関節の比較的単純な形状を備えた患者体内で使用され得る。
【0048】
さらに、別の例示的実施形態では、インプラント撮像システム200は、図7に示されている股関節インプラント300の場合において開示されている。股関節インプラント300は寛骨臼コンポーネント301と、プラスチックライナ303と、大腿骨頭305と、大腿骨ステム307とを含み得る。股関節インプラント300の場合、インプラント撮像システム200の金属板212は寛骨臼コンポーネント301の上面に配設される。金属板212は、埋込み中の正確な配置および術後経過観察のために、股関節インプラント300に適切な可視性をもたらし得る。
【0049】
さらに、膝関節インプラント100は複数の放射線不透過マーカを設けられ得る。マーカは膝関節インプラント100上の所定の位置に設けられ得る。ある実施形態では、マーカが膝関節インプラント100の大腿骨コンポーネント110の外縁に沿って設けられる。
【0050】
膝関節インプラント100は、図6a~図6bに示されている第1のマーカ171と第2のマーカ173とを含むがそれらに限定されない、1つまたは複数の異なる種類のマーカを含み得る。放射線不透過マーカは、円筒形、六角形、円形、四角形、円錐形、半球、楕円形等を含むがそれらに限定されない形状を有し得る。ある実施形態では、第1のマーカ171はリベットの形をしており、第2のマーカ173は六角形の形をしている。放射線不透過マーカは、白金、金、タングステン、イリジウム、チタン、タンタル、ハフニウム、またはそれらの組合せを含む金属族製であり得る。上述の金属の全ては必要な生体適合特性を有し、それらが放射線不透過性金属として使用されるのに適しているように、十分に大きい原子量を有する。
【0051】
大腿骨コンポーネント110は、複数のスロット(図示せず)と、図2に示されている穴部117とを含み得る。穴部117は、第1のマーカ171を収容する寸法に作られ得る。穴部117は第2のマーカ173を収容する寸法に作られ得る。スロットは、ライナコンポーネント130により近接している、大腿骨コンポーネント110の外周に配設され得る。
【0052】
以下、本発明を次の実施例を用いて説明する。
【0053】
実施例1(先行技術):大腿骨コンポーネントを備えたインプラントを、射出成形工程によって、従来のポリエーテルエーテルケトン(PEEK)で作製した。大腿骨コンポーネントをX線下で観察した。得られたX線画像を図8aに示す。画像から、大腿骨コンポーネントはX線画像において識別し難かったことが分かった。したがって、術後評価において、インプラントのコンポーネントの厳密な位置を追跡することは困難であった。
【0054】
実施例2(本発明):大腿骨コンポーネントの製造のための材料および方法は実施例1に述べられているものと同様である。さらに、インプラント撮像システムを、膝関節インプラントの大腿骨コンポーネントの内側部分上に配設した。インプラント撮像システムは、プラズマ溶射技術によりHA材料でコーティングされた複数の金属板を含んでいた。前記インプラント撮像システムを、スナップ式機構によって、第1の骨接触構成要素の内側部分に取り付けた。
【0055】
インプラントをX線下の可視性に関してテストした。結果は、先行技術と比較して、より良好な画像を示した。インプラントの大腿骨コンポーネントのX線画像を図8bに示す。さらに、HAコーティング金属板は、インプラントのより良好なオッセオインテグレーション、したがって安定性の向上に役立った。
【0056】
本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によってのみ限定される。より一般的に、本明細書において説明されている全てのパラメータ、寸法、材料、および構造は、例示的であることが意図されていること、ならびに、実際のパラメータ、寸法、材料、および/または構造は、本発明の教示が使用される単数または複数の特定の用途によって決まることを、当業者は容易に理解するものである。
【符号の説明】
【0057】
3、305 大腿骨頭
100 インプラント、膝関節インプラント
110、210、220、230 大腿骨コンポーネント
111、211、221、231 (大腿骨コンポーネントの)内側部分
111a、211a、221a、231a (内側部分の)スロット
113 (大腿骨コンポーネントの)外側部分
117 (大腿骨コンポーネントの)穴部
130 ライナコンポーネント
150 脛骨コンポーネント
151 脛骨ステム
153 脛骨ベースプレート
171 第1のマーカ
173 第2のマーカ
200 インプラント撮像システム
212 金属板
223、233 金属構成要素
300 股関節インプラント
301 寛骨臼コンポーネント
303 プラスチックライナ
307 大腿骨ステム
B 骨接触表面
図1
図1a
図2a
図2b
図3a
図3b
図4a
図4b
図4c
図4d
図4e
図4f
図5a
図5b
図5c
図5d
図5e
図5f
図6a
図6b
図7
図8a
図8b
【国際調査報告】