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特表2024-535660溶媒和ナノクラスターを製造する方法及び生成器
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-02
(54)【発明の名称】溶媒和ナノクラスターを製造する方法及び生成器
(51)【国際特許分類】
   B01J 19/00 20060101AFI20240925BHJP
   B01J 19/32 20060101ALI20240925BHJP
   B01J 19/10 20060101ALI20240925BHJP
   B01J 19/12 20060101ALI20240925BHJP
【FI】
B01J19/00 N
B01J19/32
B01J19/10
B01J19/12
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023579449
(86)(22)【出願日】2023-04-17
(85)【翻訳文提出日】2024-02-21
(86)【国際出願番号】 EP2023059933
(87)【国際公開番号】W WO2023202990
(87)【国際公開日】2023-10-26
(31)【優先権主張番号】2205666.7
(32)【優先日】2022-04-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(31)【優先権主張番号】2302376.5
(32)【優先日】2023-02-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523481344
【氏名又は名称】イングリッシュ エヌ
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 七重
(74)【代理人】
【識別番号】100136249
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 貴光
(72)【発明者】
【氏名】イングリッシュ エヌ
【テーマコード(参考)】
4G075
【Fターム(参考)】
4G075AA27
4G075AA61
4G075AA65
4G075BB03
4G075BB05
4G075BB10
4G075CA03
4G075CA23
4G075CA24
4G075CA42
4G075CA57
4G075EB01
4G075EC11
4G075EE32
4G075EE34
4G075FB02
4G075FB04
4G075FB12
4G075FC15
4G075FC20
(57)【要約】
本発明は、ゲスト物質の溶媒和ナノクラスターを製造するためのシステム(300)、方法及び生成器(301)に関する。方法は、その中に分布した複数の表面(304)を含む容器(302)を準備すること、その中で溶媒和ナノクラスターが生成される溶媒(103)を、溶媒が表面に接触するように容器に導入すること、及び流体ゲスト物質を溶媒内に分布させることを含み、複数の表面は、不規則充填物若しくは構造化充填物又は両方を含み、充填物は、(i)永久磁性材料、又は(ii)準永久電荷若しくは双極子分極を有する誘電材料から作製されているか、又はそれらでコーティングされている。
【選択図】図11
【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶媒和ナノクラスターを製造する方法であって、方法が、以下のステップ:
- その中に分布した複数の表面を含む容器を準備するステップ、
- その中に前記溶媒和ナノクラスターが生成される溶媒を、前記溶媒が前記複数の表面に接触するように前記容器に導入するステップ、
- 流体形態のゲスト物質を提供するステップ、及び
- 前記ゲスト物質を前記溶媒中に分布させるステップ
を含み、前記複数の表面が、不規則充填物若しくは構造化充填物又は両方を含み、前記充填物が、(i)永久磁性材料、又は(ii)準永久電荷若しくは双極子分極を有する誘電若しくは帯電/分極材料のいずれかから作製されているか又はいずれかでコーティングされている、方法。
【請求項2】
前記複数の表面が、約0.1T~約0.5Tの磁気強度を提供するために、永久磁性材料から作製された、又はそれらでコーティングされた充填物を含み、好ましくは前記永久磁性材料がフェライト系ステンレス鋼又はネオジムである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記複数の表面が、約105V/m~約107V/mの範囲のクーロン場強度を提供するために、準永久電荷又は双極子分極を有する誘電又は帯電/分極材料から作製された、又はそれらでコーティングされた充填物を含み、好ましくは前記誘電材料が、樹脂、フルオロポリマー、ワックス、又は内部表面電荷若しくは分極のメモリーを永久的に保持する他の材料から作製されている、請求項1又は請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記充填物が、疎溶媒性及び/又は親溶媒性特性を有する領域を提供するためにそれぞれ疎溶媒性及び/又は親溶媒性材料でコーティングされている、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記複数の表面が、永久磁性材料から作製されかつ準永久電荷又は双極子分極を有する誘電又は帯電/分極材料でコーティングされた充填物を含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
複数の前記充填物が、約15mm~約150mmのオーダーのサイズを有する充填物を含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
流体形態の1種より多くのゲスト物質を提供し、分布させることを含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
少なくとも1種のゲスト物質がガスを含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
少なくとも1種のゲスト物質が、液体、好ましくは水性液体、特に好ましくは脱イオン水を含む、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記溶媒内に分布される前記ゲスト物質が複数の液体を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
前記複数の表面が、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル又はポリテトラフルオロエチレンなどの電気絶縁性コーティングでコーティングされた表面を含む、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記複数の表面が、並列構成で配列された構造化充填物を含み、好ましくは前記充填物がメッシュ構成であり、好ましくは各メッシュ要素が、前記ゲスト物質の送達手段の一部を受容するためのアパーチャを含み、特に好ましくは前記ゲスト物質の前記送達手段が、前記メッシュ要素の前記アパーチャを通って延びるための細長い管状部材を含み、前記ゲスト物質の前記送達手段が、前記容器内の前記ゲスト物質の分布を容易にするための複数の出口アパーチャを含んでもよい、請求項1~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記方法が、前記容器の内容物を冷却するステップをさらに含み、好ましくは、冷却剤が前記容器内又は前記容器の周囲、例えば外部ジャケット内を循環する、請求項1~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記方法が、前記容器の内容物を撹拌することをさらに含み、好ましくは前記容器の内容物が、撹拌機、ロッカーによる、又は相間物質移動充填物上の流体-液体接触によって撹拌される、請求項1~13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記容器に音響-超音波若しくは電磁信号を印加することによって、又は前記ナノクラスターを含む前記溶媒に界面活性剤などの化学剤を添加することによって、前記溶媒から前記ナノクラスターを放出するステップをさらに含む、請求項1~14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
請求項1~15のいずれか1項に記載の方法を使用してナノクラスターを製造するための生成器であって、前記生成器が、
その中に分布した複数の表面を含む容器、
溶媒和ナノクラスターが生成される溶媒を、前記溶媒が前記表面に接触するように前記容器に導入するための溶媒入口、及び
流体形態のゲスト物質を前記容器に導入して前記溶媒内に分布させるための流体ゲスト媒体注入口
を含み、前記複数の表面が、不規則充填物若しくは構造化充填物又は両方を含み、前記充填物が、(i)永久磁性材料、又は(ii)準永久電荷又は双極子分極を有する誘電材料のいずれかで作製されているか又はいずれかでコーティングされている、生成器。
【請求項17】
撹拌機などの流体-溶媒乱流生成器をさらに含む、請求項16に記載の生成器。
【請求項18】
パドルホイール、電池、ダイナモなどの、前記容器内に位置する内部電源をさらに含み、好ましくは前記生成器を制御するように構成された制御回路をさらに含む、請求項16又は請求項17に記載の生成器。
【請求項19】
植物の成長を改善するための方法であって、前記方法が、請求項1~15のいずれか1項に記載の方法を使用して生成される空気及びCO2ナノクラスターを含む水を使用して植物に散水することを含み、溶媒が水であり、流体ゲスト媒体が空気及び二酸化炭素を含む、方法。
【請求項20】
溶媒中の排ガス及び空気からCO2及び汚染物質を捕捉するための方法であって、前記方法が、請求項1~15のいずれか1項に記載の方法を使用してナノクラスターを生成することを含み、複数の表面が、準永久電荷又は双極子分極を有する誘電材料でコーティングされた永久磁性材料から作製され、疎溶媒性コーティングでさらにコーティングされた充填物を含む、方法。
【請求項21】
石油、ディーゼル及び油-バイオ系燃料中のガス及び水を捕捉するための方法であって、前記方法が、請求項1~15のいずれか1項に記載の方法を使用してナノクラスターを生成することを含み、溶媒が、石油、ディーゼル及び油-バイオ系燃料の中から選択され、複数の表面が、準永久電荷又は双極子分極を有する誘電材料でコーティングされた永久磁性材料から作製されかつ親溶媒性及び親水性コーティングでさらにコーティングされた充填物を含む、方法。
【請求項22】
液体中で溶媒和ナノスケール特徴を生成するためのシステムであって、前記ナノスケール特徴がガス、液体又は微結晶形態であり、熱力学的溶解度を超える量で存在し、前記システムが、請求項16~18のいずれか1項に記載の生成器及び1つ又は複数のセンサーを含み、好ましくは前記センサーが、容器の内容物に関連する温度を感知するための温度センサー、前記生成器に関連する圧力を感知するための圧力センサー、及び1つ又は複数のpHセンサーの中から選択される、システム。
【請求項23】
前記センサーでモニタリングされたパラメータを所定の間隔で記録するためのデータ取得システムをさらに含む、請求項22に記載のシステム。
【請求項24】
生成されたナノクラスターを貯蔵するための貯蔵ベッセルをさらに含む、請求項22又は請求項23に記載のシステム。
【請求項25】
前記生成器、並びにガス媒体を供給するためのガス供給源、液体媒体を供給するための液体供給源、真空ポンプ、及び恒温槽などの前記容器の内容物を冷却するための冷却手段のうちの1つ又は複数と通信する制御回路をさらに含む、請求項22~24のいずれか1項に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナノクラスターの生成、特に液体中で溶媒和ナノスケール特徴を生成するためのシステム、方法及び生成器に関し、ナノスケール特徴は、溶媒分子によって構造化されたゲスト部分を含み、ガス、液体、非晶質又は微結晶の形態であり、ゲストの熱力学的溶解度を超える量で存在する。
【背景技術】
【0002】
液体では、その中の流体ゲスト分子の溶解度は、化学ポテンシャル及びフガシティ平衡によって熱力学的に制限される。これは、ゲストが対応する圧力及び温度におけるその流体状態で、ガスであろうと液体であろうと同様に適用される。例えば、ゲストが純粋なガス又は多成分ガス混合物である場合、その特定のゲストの熱力学的溶解度は、しばしば液相内のヘンリーの法則として表され、すなわち、液体中の溶存ガスの量は、液体上のその分圧に正比例する。バルク流体のゲストが、純粋な成分として、又は液体混合物の一部として液体形態である場合、この「液体のゲスト」の化学ポテンシャル形式論を説明するために、活量係数アプローチがしばしば使用される。
液体中のこのようなゲスト分子の溶媒和ナノクラスターを使用することにより、従来の熱力学的溶解を超えて、時にははるかに超えて、厳密には準安定な(しかししばしば非常に長命な)意味でのゲスト分子の有効含有量を増加させることができる。
溶媒和ナノクラスターとは、母液内のゲスト分子のナノスケールの集合体を意味し、ゲスト分子はこの液体の分子の中に混在している、すなわち、溶媒とゲスト分子が隣り合って配列され得るか、又はゲスト分子が溶媒によって何らかの方法で構造化される。ナノクラスターの形成前に、それ自身のバルク相にあるゲストは、ガス、液体又は超臨界流体であってもよい。球状のナノ気泡又はナノ液滴とは対照的に、ナノクラスターの形状は不規則であり得る。典型的な寸法は、少なくとも1つの次元で約2nm~約100nmである。
【0003】
ナノクラスターは、様々な形態、例えば、ゲスト分子と溶媒分子の両方を含む水和若しくは溶媒和ナノスケール微結晶、又はゲストを供給するバルク流体相(単一成分又は多成分のいずれか)から様々な割合でゲストを含むガス状及び/又は液体特性を持つナノスケール寸法のドメインであって、ナノスケール流体相ドメインを包囲し、相互貫入するナノ構造化溶媒和層も特徴とするドメインの形態をとることができる。
これまで、ゲストの熱力学的溶解度レベルを超えた、ナノスケールでの液体中のさらなるゲスト収容を調製するための様々な方法が公知である。しかし、そのような方法は、通常、電気分解又は異物(例えば、イオン)を液体に導入し、エネルギーの非効率と同様に、汚染の問題をもたらす。WO2014/148397は、水の電気分解を応用して水素及び酸素への水の分裂をもたらし、ここで製造されたガスは、その熱力学的溶解レベルを超えてナノスケールで水に溶解するガスを形成し、すなわち、個々の分子がその水性環境によって水和される。しかし、水の電気分解を使用する技術では、水と電極の直接的な液体-電気接触、又は放電が必要である。
流体力学的キャビテーションを使用する公知の方法は、ナノスケールで有意義なレベルのガスを生成する効率が低く、ゲストの溶解度の増強が低減する傾向がある。WO2017/156410は、溶媒中でナノスケールのガスを生成するための方法及び装置であって、ガスが多孔質側壁を強制的に通過するような圧力で装置内に投入され、ガス透過性膜の外表面にナノスケールのガスを形成する方法及び装置を開示している。この技術は流体力学的キャビテーションに基づくものであり、これは本質的に、局所的な圧力の低下及びそれに続く上昇の結果として流動液体中で生じる気泡の生成及び爆縮を伴う気化のプロセスである。
【0004】
機械的方法を含む、熱力学的溶解度を超える溶媒和ナノクラスターを生成するための先行技術の努力は、エネルギー要件及び必要とされる物理的装置の点で非常にコストがかかることが見出されている。例えば、EP2986975は、円錐形のナノポアにおけるナノ流体ドメイン及びナノ粒子の動力学を制御するための方法及びシステムについて概説している。これは高レベルの力学的エネルギーを必要とし、実際には孔の閉塞による問題を経験する場合がある。
さらに、多くの公知の方法は、添加剤の添加を必要とし、これは液体を汚染すると同時に、ゲストの溶解度を比較的低くするが、ゲスト部分の含有量を可能な限り高めることが目的であることを考慮すると、望ましい効果ではない。
したがって、エネルギー効率の低下などの従来技術の欠点に対処するか、又は少なくとも好適な代替手段を提供する、ナノスケールの微結晶又は流体であり得る溶媒和ナノクラスターを生成するための方法、システム、及び装置が必要とされている。
【発明の概要】
【0005】
本発明は、ゲストの熱力学的溶解度を超えるナノスケールでの液体中のゲスト収容を増強するためのエネルギー効率の高いシステム、生成器及び方法に関する。
本発明は、特許請求の範囲に定義されている通りである。
一態様において、本発明は、溶媒和ナノクラスターを製造する方法であって、方法が、以下のステップ:
- その中に分布した複数の表面を含む容積を準備するステップ、
- その中に溶媒和ナノクラスターが生成される溶媒を、溶媒が表面に接触するように容積に導入するステップ、及び
- 流体ゲスト媒体を溶媒中に分布させるステップ
を含み、表面が、溶媒中に局所的な密度の起伏及び揺れを生じさせる1つ又は複数の空間力分布を発するように、磁気、帯電、誘電、分極、双極子、疎溶媒性及び親溶媒性特性の1つ又は複数を有する、方法に関する。
容積はベッセルであってもよく、容積、ベッセル及び容器という用語は、本明細書で互換的に使用される。
【0006】
本発明による方法によって製造されるナノクラスターは、溶媒中のナノスケール特徴であり、ガス、液体、非晶質又は微結晶の形態である。これらのナノスケール特徴は、溶媒の分子の中に混在するゲスト分子を含み、すなわち、溶媒及びゲスト分子が隣り合って配列され得るか、或いはゲスト分子が溶媒によって何らかの方法で構造化される。
本発明による方法は、溶媒/ゲスト混合物の密度シフトを誘導することによって溶媒中のゲストを電歪的に捕捉することを含み、このような密度シフトは、表面から発散する様々な特性の内部空間力場分布から生じる。換言すると、外部から生成された場は必要ない。しかし、これは限定的とみなされず、容積の外部の電場若しくは磁場又は両方の配置を内部空間力場分布と組み合わせて使用することができる。
重要なことに、複数の表面は、溶媒-ゲスト媒体混合物と直接電気的に接触しない。これにより回路の形成が回避され、根底に電気伝導があった場合に、エネルギー的に非効率的な電気分解が防止される。
【0007】
方法は、以下のステップ:
- その中に分布した複数の表面を含む容器を準備するステップ、
- その中に溶媒和ナノクラスターが生成される溶媒を、溶媒が複数の表面に接触するように容器に導入するステップ、
- 流体形態の1種又は複数のゲスト物質を提供するステップ、及び
- ゲスト物質又はゲスト物質のそれぞれを溶媒中に分布させるステップ
を含んでもよく、複数の表面は、不規則充填物若しくは構造化充填物又は両方を含み、充填物は、(i)約0.1T~約0.5Tの磁気特性を提供する永久磁性材料、又は(ii)複数の表面が1つ又は複数の空間力分布を発し、溶媒及びゲスト分子の原子に対してピコニュートンからナノニュートンの範囲、好ましくは約5pN~10nNの強度の力を生じさせ、溶媒中の局所的な密度の起伏、揺れ及び変動を誘導するように、約105V/m~約107V/mの範囲の内部クーロン場の典型的な強度を有する、準永久電荷又は双極子分極を有する誘電又は帯電/分極材料のいずれかから作製されているか又はいずれかでコーティングされている。
【0008】
好ましい実施形態では、充填物は、疎溶媒性若しくは親溶媒性特性、又は親溶媒性特性を有する領域及び疎溶媒性特性を有する他の領域、すなわち交互の疎溶媒性特性及び親溶媒性特性を有するように処理される。これらの実施形態では、表面濡れ接触角は、好ましくは約130~165°の間であり、表面被覆率は、好ましくは15~20%の範囲であり、約0.6mm~約1mmの「疎溶媒性スポット」厚さと併せて、1.5~4mmの特性寸法が特に好ましい。
本発明による方法を使用してナノクラスターを生成するには、無視できるほど小さなエネルギーレベルが必要とされる。さらなる利点として、公知の装置に比べて電気的な安全性が改善されるということが挙げられる。
本発明の方法は、エネルギー効率が高く、従来の熱力学的溶解を超える溶媒中のゲスト収容をもたらす。
溶媒は、本明細書で母液と称される場合もある。
【0009】
本発明による方法は、溶媒-ゲスト媒体混合物に対する空間力分布の直接作用により、溶媒中のナノスケール形態の流体ゲスト媒体からのゲスト捕捉のレベルを最適化する。
溶媒中に本発明による方法によって生成されたナノクラスターが存在すると、溶媒に有益な性質、例えば抗菌性又は化学反応性が付与される。さらに、溶媒和ナノクラスターは、溶媒から他の溶媒和分子、不純物及び薬剤を吸着することができる。
理論によって束縛されることなく、球状のナノ気泡又はナノ液滴とは対照的に、よりカオス的でフラストレーションのある不規則なナノクラスターが本発明による方法によって生成される主な理由は、表面から発せられる空間力分布により、特に表面から発せられる空間力分布の組合せにより、分子再配列の速度が向上するためである。空間力分布は溶媒の原子に作用し、溶媒中に局所的な密度の起伏及び揺れを生じさせる。具体的には、本明細書に記載される充填物の本質により、渦電流などによる効率的なマクロスケールからメソスケールの溶媒とゲストの混合が生じ、ひいてはこの運動量移動がマイクロスケールに至るまで「カスケード」する。充填物は、効率的な「マイクロスケール混合」のプラットフォームとして作用し、分子再配列の速度を促進し、充填物表面の近傍で、速度及び振幅の点で密度の揺れを向上させるのを助ける。したがって、表面は、流体状態のゲスト種を媒体からナノスケールの形態で、すなわち従来の液体状態のゲストの溶解を超えた過飽和ナノクラスターに迅速に取り込むことを促進する。
【0010】
表面が磁気特性を有する、すなわち、充填物が永久磁性材料から作製されているか、又は永久磁性材料でコーティングされている実施形態では、磁気特性は、溶媒中に非定常空間磁力分布をもたらす。ナノクラスターを生成する機構的効果の観点から、非定常空間磁力分布の磁気特性は、溶媒及びゲストに作用する空間力分布が、ローレンツ力を介して分子間の力、すなわち母液中の溶媒分子間の分子間力を弱める役割を果たすという点で重要であるとみなされる。実際には、これにより、分子環境近傍の配位殻の実質的により迅速な再配列が促進され、これにより溶媒中の水素結合、静電接触及び配位数の迅速な再配列が可能になり、磁気的に解放された溶媒/ゲストの再配列がより迅速に生じ、溶媒/ゲストの構成が最も自由エネルギーの低い形態へとフラストレーションされたとしても、エントロピーを減少させるナノクラスター形態への溶媒及びゲスト分子のより高速な拡散が促進される。
【0011】
さらに、分布された流体ゲスト相それ自体は、まさにその本質上、周囲の母液のものよりも圧縮性が高い。磁場は分子間相互作用を弱める役割を果たすが、流体ゲスト相それ自体の実質的により大きな圧縮性により、実際にはここで溶媒の場合と正反対の、ローレンツ力に応じた高密度化応答が誘導される(密度のわずかな減少であり、これは、電歪を介して液体中の密度を増加させるクーロン場との組合せで、静磁気と電気の「二重効果」基準で、本発明の研究においてより大きな振幅の密度波を設定するように協同し、「緊密に連携して働く」)。いずれにせよ、磁場によるはるかに圧縮性の高い流体相の高密度化は、溶媒のものとは対照的に、強い密度の起伏及び変動をもたらし、それによりナノクラスターを効率的に生成するのに必要な、高速でカオス的な基準で流体相を母溶媒に引き込む。
表面が帯電、双極子、誘電又は分極特性を有する、すなわち、充填物が準永久電荷又は双極子分極を有する誘電又は帯電/分極材料から作製されている又はそれらでコーティングされている実施形態では、定常状態及び時間一定の空間力分布が母液の本体全体に与えられ、ここで主に、空間力分布は本質的にクーロン的であり、すなわち固有の静電場又は電場が表面から発散する。このクーロン力がどのようにナノクラスター生成を促進するかに関して、溶媒及び流体ゲスト媒体(マクロ、メソ、又はマイクロスケールの気泡又は液滴を含む)中の双極子及び四極子相互作用とクーロン力によって電歪が生じ、すなわち液体が高密度化し、結果として生じる一時的な負圧領域は、局所的な密度リップルにおける分布されたゲスト流体相の付随する吸引によって速やかに消滅し、すなわち、溶媒の体積内の機械的平衡の再確立とともに、ナノクラスターの突発的かつカオス的な作成が生じると考えられる。特に容器本体に分布した相間ゲスト-溶媒物質移動充填物によって向上される溶媒の対流的及び/又は受動的な流動により、クーロン力の影響を受ける溶媒の領域において、通過する液体及びそれと混合された流体による局所的な密度変動の絶え間ない確立及び再確立が生じ(絶え間ないゲストと溶媒の「揺れ動き」の中で)、これは表面に存在する場合、磁力によってさらに促進され、密度変動の振幅が大きくなり、ナノクラスターの作成がより容易になる。
【0012】
表面が疎溶媒性、親溶媒性、又は交互の疎溶媒性及び親溶媒性特性を有する実施形態では、親溶媒性の場合にゲストを溶媒に引き付ける力がもたらされ、一方、疎溶媒性の場合にゲストを溶媒から反発させる力が生じる。交互の特性の場合、特定の領域がゲスト分子の反発と引き付けの両方を行うため、特定の溶媒和環境へのゲスト分子の特定の構造化が可能になる。
交互の疎溶媒性及び親溶媒性特性とは、表面が親溶媒性及び疎溶媒性領域のパッチワーク配列を備えていることを意味する。配列は、分布が均一又は準不規則であってもよく、点状パターンを含んでもよい。しかし、交互の特性は限定的とみなされず、表面は、ゲスト流体媒体に依存して、代替的に全疎溶媒性又は全親溶媒性であってもよい。
交互のパッチワーク表面がゲストと溶媒の秩序化を誘導し、ナノクラスターの形成をもたらし得る方法の一例は、水中で生成されたクラスレート水和物から構成されるナノクラスターの場合である。例えば、メタンなどの疎溶媒性ゲストは、ゲスト流体相から表面上の疎溶媒点に選択的に引き付けられ得る。次いで、ゲスト分子のすぐ周辺の水が構造化され、水和物ケージが容易に形成される。
【0013】
全疎溶媒性又は全親溶媒性表面は、ナノクラスターを装った溶媒の混在及び構造化効果を伴うにもかかわらず、好ましくはそこに引き付けられた疎溶媒性又は親溶媒性流体相ゲストのより多くの部分、すなわちモル分率を有する流体相ナノクラスターを作製するために使用される。
いくつかの実施形態では、表面はすべて同じ特性のものである。代替的に、複数の表面は、異なる表面タイプ、すなわち磁気、帯電、誘電、分極、双極子、疎溶媒性及び親溶媒性特性のうちの1つを有する表面、並びに磁気、帯電、誘電、分極、双極子、疎溶媒性及び親溶媒性特性のうちのもう1つを有する表面、例えば、磁気特性を有する表面及び誘電特性を有する表面を含んでもよい。
【0014】
代替的に又は追加的に、表面はそれぞれ独立して、磁気、帯電、誘電、分極、双極子、並びに交互の疎溶媒性及び親溶媒性特性のいずれか2つ以上の組合せを有してもよく、これらの特性は、異なる量及び方法で組み合わされてもよい。
好ましい実施形態では、複数の表面は、磁気特性と帯電又は分極特性との組合せを有する。これにより、充填物によって誘導される乱流及びメソ/マイクロスケール混合により、溶媒中の任意の点を通過する混合対流が生じる。ゲスト及び溶媒の密度に対する磁場の相反する効果により、溶媒とゲストは、より「剛性の高い」流体-ゲスト、及びより剛性の低い溶媒という密度の揺れ動きの中でより一層激しく互いに「衝突」し、充填物表面の分極、電荷、誘電、疎溶媒性/親溶媒性特性に由来する静的なクーロン又は静電場の背景にある電歪を考慮して、ナノクラスターの衝撃的な誕生を引き起こす。
【0015】
磁気特性と帯電又は分極特性との組合せにより、溶媒中の分子再配列及び溶媒へのゲスト種の捕捉の全体的なレベルが向上する。特に、流体力学的に効率的な物質移動充填物によってもたらされるゲスト-溶媒混合によって向上された場合、溶媒中のこれらの再配列は、比較的大きな振幅の密度の起伏及び変動を生じさせる。これにより、溶媒へのゲストの捕捉の全体的な向上、及び密度の起伏の増加の結果と合わせた場合、それによってナノクラスター生成を増強する理想的な環境が生み出される。表面の磁場強度は0.1T~2Tの範囲であってもよいが、表面から2cm以内の0.1~0.5Tの領域は、発散する静電場強度が充填物の表面から2cm以内で1~1,000kV/mの間であれば、ナノクラスター生成に効果的である。この実施形態では、充填物自体が磁性でない場合、すなわち、フェライト系ステンレス鋼又はネオジムなどの磁性材料から作製されていない場合、それらは磁性材料でコーティングされ、堆積された磁性表面層の幅は、好ましくは約0.2mm~約0.8mmであり、一方で表面電荷密度及び/又は分極密度は、好ましくはそれぞれ約5mC/m2~約0.2C/m2、及び約0.1(Cm)/m2~約200(Cm)/m2の範囲である。
好ましい実施形態では、複数の表面は、磁気、誘電及び交互又は単独の疎溶媒性/親溶媒性特性の組合せを有する。
【0016】
磁気、誘電及び交互/単独の疎溶媒性/親溶媒性特性の組合せは、溶媒中及び溶媒/ゲスト界面で、例えばバルク、又はこれらに限定されないが液滴及び気泡などのゲストのより大きなマイクロ/メソスケールの特徴の形態での密度の変動を促進する。誘電性の表面特性は、デバイス内部の電源が使用される場合、実質的な分極応答を促進する。したがって、これは内部供給源、換言すると容積の本体へと発散する固有の静電場又は電場によってクーロン特性の空間分布の重要性を同時に増強する選択肢をもたらす。典型的な場の強度は、誘電率が2~5、誘電スクリーン厚さ0.1~0.5mmの場合、表面から2cm以内で1~1,000kV/mである。さらに、サイズが1~3mmの範囲であり、表面被覆率が10~15%のドメインで、表面上で表面に分布した疎溶媒性/親溶媒性特徴を組み合わせることにより、流体ゲスト媒体からの種選択的捕捉を操作して、溶媒による密度変動に引き込まれる疎溶媒性又は親溶媒性成分のいずれかをより多く促進し、疎溶媒性又は親溶媒性成分をより顕著に特徴とするナノクラスターを作製することができる。疎溶媒性及び親溶媒性の固有レベルは、表面濡れ現象によって測定され、それぞれ接触角が120~160°及び35~65°の領域になり、表面堆積厚さが0.2~0.5mmになる。ここでは誘電材料との組合せが重要であるが、これは、これによりクーロン成分を時間依存性シーケンス、例えばパルス状などで適用するか、又は適用しないというさらなる制御が可能になるためである。効果的なパルスレジームは、50~200MHzの半正弦波DC(例えば、半波整流器などによる)からなる。
【0017】
好ましい実施形態では、複数の表面は、帯電、分極及び親溶媒性特性の組合せを有し、表面濡れ接触角は35~65°であり、1~3mmのサイズ範囲で表面被覆率が10~15%である。表面電荷密度は5mC/m2~0.2C/m2であり、表面分極密度は0.1(Cm)/m2~200(Cm)/m2である。この実施形態は、親溶媒性種の捕捉、及びゲスト分子としての親溶媒性種に基づくナノクラスターの生成に好ましい。親溶媒性の本質を包含することが好ましく、これは、帯電及び分極材料が、特にこの定性的な物理化学的本質、すなわち親溶媒性特性を持つゲスト成分に対して効果的なクーロン作用を付与し、それによりナノクラスター生成に必要な密度の起伏及び変動を強化するためである。部分的な親溶媒性表面被覆によってもたらされるより容易な表面濡れは、充填物の表面にわたって不均一な方法で密度変動を強化し、通過する溶媒分子を不均一な「パケット」として表面に容易に引き込み、これがさらにより迅速なナノスコピック溶媒-ゲスト混合を可能にするよう機能する。このようにして、親溶媒性相互作用は、磁場の溶媒の動力学に対する「高速化」効果を模倣し、表面の固有静電場と協力してナノクラスター形成を誘導する。
【0018】
好ましい実施形態では、複数の表面は、磁気特性と疎溶媒性特性の組合せを有する。
この実施形態は、溶媒への疎溶媒性成分の種選択的組み込みのために好ましい。ここで、帯電、分極又は誘電特性の存在はあまり有益ではないが、表面の磁気特性は、並行した(メソ気泡/液滴分散)ゲスト流体相の高密度化及び母溶媒の脱高密度化の上述のプロセスとともに、溶媒中及び溶媒とゲスト分子の界面でより大きな密度の変動及び起伏をより迅速に促進する。この実施形態では、固有クーロン場を促進するバルク又は表面材料特徴がない場合、表面の1cm以内の磁場強度は、好ましくは約0.5T~約2Tである。磁性材料表面堆積アプローチが使用されている実施形態では(バルク材料にフェライト系ステンレス鋼などの磁性材料を使用するのとは対照的に)、厚さは、好ましくは約0.8mm~約1.5mmの範囲である。疎溶媒性特徴は、ひいては疎溶媒性分子間の相互作用のレベルを定性的に大きくし、密度変動及び分子レベルの溶媒の再配列において溶媒との接触を向上させる。約130~165°の表面濡れ接触角、及び15~20%の表面被覆率と1.5~4mmの特性寸法が、約0.6mm~約1mmの「疎溶媒性スポット」厚さと併せて好ましい。理論によって束縛されることなく、このような表面は、疎溶媒性分子の存在度がはるかに高いナノクラスターを形成し、このアプローチは、分散した流体相から疎溶媒性ゲスト部位を優先的に抽出するために有益に使用することができる。
【0019】
表面は、好ましくは容積内で近接して位置し、例えば、例えば350~5,500m2/m3の充填密度で容積内に密に充填される。
いくつかの実施形態では、表面は一定の分布又はパターンで存在してもよい。
いくつかの実施形態では、表面は、媒体-液体相間混合を促進するように、蒸気/液体接触のための表面積を増加させる不規則充填物を含む。これにより、分散されたゲスト流体相のマクロスケール(>0.1mm)とメソスケール(0.01~.1mm)の両方の気泡及び液滴の形成とともに、ミクロンスケール、例えば1~10ミクロンのスケールのゲスト-溶媒混合の運動量移動を促進することができる。
【0020】
さらに又は代替的に、表面は、金属、プラスチック又は磁器などの材料から構成されるロッド又はディスク、例えば、ハニカム形状のディスク又は穿孔エンボス金属、プラスチック若しくは金網の波形シートなどの構造化充填物を含んでもよい。この実施形態では、特徴的な起伏のある周期的な寸法は、好ましくは約0.5mm~約3mmのオーダーであり、さらなるマクロからメソスコピックの相間(ゲスト/溶媒)混合を向上させる。
好ましい実施形態では、表面は、ワイヤ又はストリップの形態であり、表面は、所与の分極メモリーを有する交互の「サンドイッチ状」の組の交互のストランドに配列される。この交互アラインメントは、空間における分極の交互配置による溶媒中の誘導された密度起伏の効果、したがって少数の流体相、すなわち流体ゲスト物質の電歪捕捉を最大化し、効率的なナノクラスター形成を誘導する。この実施形態では、ストランドは、好ましくは約0.1mm~約2mm離れている。分極メモリーは、好ましくは約20(Cm)/m3~約1,400(Cm)/m3のオーダーである。或いは、ワイヤ又はストリップは、分極が誘導されるように内部電源に接続されてもよく、例えば、約10~約500ミクロン離間した交互の織り込まれた分極素子、及び約6V~約48VのDC給電電圧、例えば50~100MHzパルスDC給電電圧を特徴とするプリント回路基板に取り付けられてもよい。
【0021】
別の好ましい実施形態では、表面は交錯したストランドの形態であり、ここで反対の極性又は特性、例えば、分極、電荷、磁気、誘電、疎溶媒性/親溶媒性特性を持つ2つ以上のストランドが互いに絡み合い、編組のような平坦な固体構造を形成する。ここで、最適な表面電荷密度は約10mC/m2~約0.3C/m2であり、表面分極密度の有利な範囲は約0.15(Cm)/m2~約150(Cm)/m2である。交錯したストランドの実施形態は、溶媒中にマイクロスコピックな密度起伏を誘導し、ナノクラスターの形成を促す。ストランド間の分離は、最適には約0.5~約3mmである。有利には、磁場強度は、各ストランドの1cm以内で約0.1T~約1.5Tであり、一方で疎溶媒性/親溶媒性領域の接触角は、好ましくは約120~160°及び35~65°であり、約0.2mm~約0.5mmの好ましい表面堆積厚さ及び約15~20%の典型的な表面被覆率を特徴とする。これらの実施形態では、ストランドは、好適な外装材を用いて、水車、電池などの容積内部の電源に接続され、マルチストランドの編組配列に反対の極性を誘導してもよい。
【0022】
特に好ましい実施形態では、ストランドは、そのような完全な幾何学的秩序を必要としないが、むしろテニスラケットの格子のような「十字」型のメッシュに組み立てられてもよい。ストランド間の典型的な間隔は、有利には約2mm~約6mmの範囲である。ストランドは、流動の配列に対して平行又は垂直に配列されてもよいし、重力に基づく若しくは対流に基づくゲスト流体媒体の下降流、又は浮力に基づくゲスト流体媒体の上昇流に対してを含め、斜めに配向されてもよく、ゲストはまた、マクロスコピックな液滴又は気泡の集団として存在してもよい。
【0023】
別の好ましい実施形態では、分極又は極性があるストランドは、単一の電極として1つの極性又は分極設定を有することもでき、電極は、溶媒中の電気分解を避けるために、デバイス内部の電流が印加される場合は外装されていなくてもよい。いくつかの実施形態では、電気導体は、例えばプリント回路基板上のレイアウトを使用して、異なる極性が「極性」サンドイッチ層で交互になる、交互の「ワイヤ」又はストリップのそれぞれに割り当てられた所与の極性の電流を有してもよい。これにより、分子を異なるアラインメントに再配列させ、電歪捕捉を向上させることにより、溶媒中の誘導密度シフトの空間的変化を向上させるという本質的に同じ最終的な効果が得られる。特に、表面分極による溶媒分子の双極子、四極子及び高次多極子の誘導回転運動は、電歪による溶媒の高密度化を向上させ、ゲスト分子の拡散運動が溶媒分子の配位殻から抜け出し、それによってより秩序化されたナノ気泡又は液滴を形成するのに十分な時間がないことを考慮すると、溶媒と(分散)流体相の界面における、そのように誘導された実質的な一時的負圧領域がナノクラスターの形成を誘導する。
例えば、パドルホイール、電池、ダイナモなどの内部電源が使用されるいくつかの実施形態では、制御回路により、内部電源をオン及びオフに切り替えて電圧を変化させることができ、例えば、20~250MHzのパルス周波数を有する半正弦波整流器では、6~48Vの二乗平均平方根(r.m.s.)電圧がより好ましいが、最大310Vまで可能である。この電圧変調は、生成されるナノクラスターのレベルに応じてもよく、ナノクラスターの生成が使用される用途に対するナノクラスターの下流の影響に基づいてもよい。
【0024】
複数の表面は、好ましくは、これらに限定されないがラシヒリング、ポールリング、サドルリング、テラーロゼットリング、レッシングリング、及びトライパックの中から選択される1種又は複数の不規則充填物を含み、特に好ましくは、表面はラシヒリングを含む。ラシヒリングとは、通常、幅とほぼ同じ長さのチューブの小片を意味し、好ましくは穴、溝、畝又は他のテクスチャ要素がなく滑らかである。ポールリングは、追加された内部支持構造及び外部表面加工を含む。リング壁内のテクスチャは、充填物の容量及び効率を大幅に増加させる内部滴下点を可能にする。サドルリング、例えばBerlサドル又はIntalox(登録商標)サドルは、長さが直径を上回るという点でラシヒリング及びポールリングとは異なる。レッシングリングは、表面積を増加させ効率を向上させるように、内部の仕切りを有する。テラーリングは、リング状の「ドーナツ」構造を有する。トライパックは、内部のリブを有する球形のものである。
【0025】
先述のように、また理論によって束縛されることなく、上記のもののような不規則充填物がナノクラスター生成に効果的である理由は、メソスケールの相間(溶媒/ゲスト)混合の効率、並びにそこから発散する様々な空間場特性を持つ表面の領域での空間的及び時間的密度変動の振幅を増強するマイクロ及びナノスコピックの長さスケールへの運動量移動にある。この時間的な加速及び振幅の増加は、ゲスト/溶媒拡散運動相の「隔離」を克服し、ナノクラスターにおけるゲストと溶媒の間の親密な分子レベルの欠落をもたらす。
ラシヒリングの場合、350~5,500m2/m3の範囲の充填物密度が好ましい。
いくつかの実施形態では、複数の表面は、容積内のクーロン力の空間分布を分布させるための手段に接続されてもよく、例えば、表面のそれぞれは、単一又は二重(陽極/陰極)極性ワイヤを介して、容積内の電源、例えばパドルホイール、電池、ダイナモなどに接続されてもよい。これらの内部電源は、好ましくは6~310V、より詳細には12~48Vの典型的な電圧で、20~250MHz、より詳細には50~200MHzの純粋なDC又は(正弦波)整流ベースのいずれかでDCを発する。これにより、表面の本体から発散する、充填物の表面から1~2cm以内の2~1,500kV/m帯域の強度を有するクーロン力の空間線、又は電場/静電場が生じる。
【0026】
クーロン力の空間分布を分布させるために、複数の表面を容積内部の手段に接続することにより、充填物の表面の近傍におけるメソからマイクロスケールのゲスト-溶媒相間物質移動と密接に時間的に同調して、溶媒の電歪(及びそれに伴う溶媒-ゲスト界面の一時的な真空)が効率的に誘導される。これは、充填物によって誘導されるマイクロスケールの渦電流(1~10ミクロンにわたって作用する)が、典型的にマイクロ秒未満(典型的に0.05~0.5マイクロ秒)の緩和時間を有するためである。このようにして、ナノからマイクロスケール(約20~3,500nmにわたる)のマイクロ渦によって向上されたゲストと溶媒の相間物質移動は、時間的スケールと空間的スケールの両方で、空間と時間の両方における一種のクーロン流体力学的な「共鳴」において、静電場変化の固有の長さ及び時間スケールと重なり合う。これは、時間(時間的に変化するDC電圧)及び空間(物質移動充填物から生じるマイクロスケールの渦電流による)にわたるサイクルで溶媒の高密度化につながる電歪のカオス的な「吸引」作用に利益をもたらす。このように、分子スケールでの母溶媒へのゲストの侵入は「カオス的」であり、液体への「緊急」ゲスト侵入により、こうして誘導された一時的なゲスト-溶媒界面真空を克服し、局所的な力学的平衡を再確立する(すなわち、約20~3,500nmにわたってナノ~マイクロスケールで再確立された、全空間にわたる圧力の瞬間的平衡)。したがって、溶媒へのゲストの侵入速度は、数万から数十万のゲスト分子が溶媒の周りの「配位殻」から「隔離」する(そうでなければ、ナノ液滴又は気泡がより優雅に誕生する)ために、数十ナノメートルにわたる拡散時間スケールよりもはるかに速くなるよう加速される。このようにして、本発明者らは、ナノクラスターの発生の例外的に迅速な、拡散/再配列を無視した「衝撃的な」状況をこれによって効率的に実現する。当然ながら、時間的に変化するDC電圧の非存在下であっても、すなわち、代わりに時間的に変化しないDC電圧及び/或いは物質固有のクーロン/静電空間場又は力の分布によっても、物質移動充填物(不規則又は構造化に関わらず)の使用に由来するマイクロ秒及びマイクロメートルの相間ゲスト-溶媒物質移動プロセスが依然として存在し、時間的に変化しないクーロン力場/分布が、通過するマイクロ渦電流が新たに連続的にそこで(すなわち、これらの表面の静電場領域の各地点で)継続的に遭遇するにつれて、母溶媒中への電歪的な「真空を克服する」ゲスト捕捉を誘導し、結果的なナノクラスターの生成速度を生じる(時間的に変化する静的なDCクーロン力分布の場合のように)。
【0027】
構造化充填物の代替的な好ましい実施形態では、DC電源接続の場合、不規則充填物と比べて必要な接続がはるかに少なくなる。二重極性を使用する実施形態では、導電性表面は、好ましくは溶媒の電気分解を抑制するために被覆される。ワイヤは、内部電源、すなわち、パドルホイール、電池、ダイナモなどの、容積内に位置する電源から来る。
いくつかの実施形態では、表面は一連の同心要素を含む。
いくつかの実施形態では、複数の表面はメッシュ構成で配列され、好ましくは、表面は約0.2mm~約5mmにわたる典型的な不均一性の寸法を有するメッシュ要素を含み、特に好ましくは、複数の表面が並列構成で配列される。
好ましい実施形態では、表面はメッシュ要素を含み、各メッシュ要素は、好ましくは約0.2mm~約3mmの寸法を有する、容積内へのゲスト媒体及び溶媒の送達手段の一部を受容するためのアパーチャを独立して含み、好ましくは、送達手段は、メッシュ要素のアパーチャを通して挿入するための細長い管状部材を含み、管状部材は、ベース部材上に作動可能に取り付けられてもよい。
【0028】
一実施形態では、送達手段は、容積内の媒体の分布を容易にするために複数のアパーチャを含み、好ましくは、アパーチャは、媒体をその中に収容するが、容積からの溶媒の侵入を防止するように寸法付けられ、例えば直径が約0.5mm~1.5mmの範囲である。
いくつかの実施形態では、複数の表面はすべて同じ充填物構造のものである。或いは、表面は、異なる充填物タイプ、例えば、構造化及び不規則、又は異なる形状、例えば、ラシヒリング及びIntaloxサドル、若しくは両方を含む。
表面は、炭素、セラミック、ガラス、ステンレス鋼などの金属、又はプラスチックなどのポリマー、又はそれらの組合せから作製されてもよい。好ましくは、表面はポリマー材料、例えばポリテトラフルオロエチレンなどのフルオロポリマーを含む。
充填物は、好ましくは数ミリメートル~数センチメートルのオーダーであり、特に好ましくは、充填物は約15mm~約150mm、特に約25mm~約75mmのサイズのオーダーである。
【0029】
表面は、溶媒及びゲスト分子の原子に、ピコニュートンからナノニュートンの範囲、好ましくは約5pN~約10nNの範囲の強度の空間力分布を発し、溶媒中に局所的な密度の起伏及び揺れを生じさせる能力を本質的に有する材料、例えば永久磁性材料から作製されてもよい。このような材料としては、例えばステンレス鋼の磁性グレード、例えばフェライト系ステンレス鋼、炭素鋼、普通鋼、磁性鉄、コバルト、ニッケル、ネオジムなどが挙げられる。
【0030】
一般的に、凝縮相系(例えば、非晶質か結晶質かを問わず、液体、固体)では、主な分子間力の大きさはナノニュートンのオーダーであり、これにより系はその相状態で安定化し、系の自由エネルギーは、大域的ではないにしても、少なくとも局所的に最小になる傾向があり、つまり、系は少なくとも準安定である。クーロン力、磁気など、分布された表面によって液体-ゲスト系内の溶媒及びゲスト分子の構成原子に作用するピコから低ナノニュートン力、すなわち約5pN~10nNの存在は、これらの力が通常、分子間力から自然に生じる、凝縮系に天然に存在する力の数パーセントまでの範囲であることを意味する。このような範囲は、主に非平衡の場内(in-field)統計力学の「線形応答領域」において、自由エネルギーランドスケープ(例えば、ナノクラスターが長命で存在する場合、その局所極小値の相対的な高さを変更する)、ハミルトニアン(例えば、溶媒中の分子間結合の強度)、及び系の動力学的性質(例えば、分子の移動度)を変化させるのに必要な力の「スイートスポット」にある。そのような方法で、この範囲の力は、ゲスト種を捕捉するために、ゲスト-溶媒界面近傍の必要な密度の揺れの広がり、大きさ及び速度、並びにこれらの分子再配列が起こる速度に影響を与えるように大きさ及び本質が適合されてもよく、これらすべてがナノクラスターの組成、集団及び基本構造に影響を与える。特に、液体及び流体状態のゲストに対する磁気ローレンツ力の相反する高密度化効果、並びに様々な特性の力の局所空間分布との(サブ)マイクロ秒及びマイクロメートルの流体力学的接触は、本明細書に記載されるように有利に操作され、分子再配列及び拡散時間スケールを克服し(すなわち、ゲストから溶媒への物質移動速度がはるかに速くなるという点で「回避する」又は「覆し」)、ナノ気泡又は液滴と比較して秩序化されていないナノクラスターを作成する。
【0031】
代替的に又は追加的に、表面は、空間力分布を発する及び/又は空間力分布の特性を操作する能力を提供する又は向上させるために処理されてもよく、例えば、クーロン特性の空間分布を内蔵したコーティングでコーティングされてもよい。好適なコーティングは、ロジンなどの樹脂、ポリテトラフルオロエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレートなどのフルオロポリマー、カルナウバワックス若しくは蜜蝋などのワックス、又はドープされたシリコン層のようなp-n接合材料などの内部表面電荷若しくは分極のメモリーを永久的に保持する他の材料を含んでもよく、コーティングは、特定の方向における永久分極又は過剰電荷を有するように適合される。ナノクラスター形成に有利な典型的な固有クーロン場強度は、表面から1~3cm以内で約1kV/m~約5,000kV/mのオーダーである。
さらに又は代替的に、複数の表面は、一般に約0.2mm~約0.8mmの範囲の厚さの電気絶縁特性を有するコーティングでコーティングされた充填物を含む。好適な電気絶縁性コーティングは、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル及びポリテトラフルオロエチレンなどのポリマーを含んでもよい。
【0032】
本明細書に記載のコーティングは、定義された特性が何であれ、それぞれ独立して、例えば静電スプレー堆積(ESP)を使用して構造化又は不規則充填物などの下地表面上にスプレー堆積され、表面電荷及び/又は分極を保護してもよく、これらの重要な表面電荷及び/又は分極の量は、有利にはそれぞれ約5mC/m2~約0.2C/m2及び約0.1(Cm)/m2~約200(Cm)/m2の範囲である。
コーティング材料のマグネトロンスパッタリング及び静電スプレー堆積は、帯電及び分極特性を有する表面が必要な場合に使用されてもよい。いずれも顕著なクーロン特性を有する、これらの誘電及び帯電又は分極層の典型的な幅は、約0.1mm~約0.3mmの厚さである。
スプレースパッタリング及び塗装を使用して、表面を疎溶媒性コーティング、親溶媒性コーティング、又は両方でコーティングすることができ、例えば、表面は、5~15%のオーダーの表面充填物密度(すなわち、被覆率)を有するように、スプレーガンを使用してコーティングされる。これらの層の典型的な厚さは、0.1~0.3mmの厚さのオーダーである。この場合も、表面電荷及び/又は分極は、それぞれ有利には約5mC/m2~約0.2C/m2及び約0.1(Cm)/m2~約200(Cm)/m2の範囲である。
【0033】
表面コーティングの誘電性及び交互の疎溶媒性/親溶媒性特性も適合及び操作することができる。例えば、好適な形状のロッド、充填物、及び他の相間物質移動幾何形状の形態の磁性表面の組合せに誘電コーティングを施し、分極及び電荷/溶媒相互作用分布をもたらし、ゲスト-液体(相間)混合を促進することができる。好適な誘電コーティングとしては、例えばセラミック又はガラス、又はポリエチレン、ポリプロピレン及びポリテトラフルオロエチレンの中から選択される1種若しくは複数のポリマーが挙げられ、これらはいずれも誘電率が低く、すなわち比誘電率が約3~3.5未満であり、すなわち、約4であるシリカの比誘電率未満である。好ましい誘電層の厚さは、約0.2mm~約0.6mmの範囲である。
【0034】
低誘電率材料は、表面への電気的接続の場合に、溶媒との直接的な電気的接触を含む前記表面を保護するために有益であることが多い。さらに、1種又は複数の低誘電率材料は、そこから発散する他の空間力分布、例えば帯電及び/又は磁気特性を有する下地表面の上に表面コーティングとして使用することができる。理論によって束縛されることなく、これらの低誘電性表面は、力のクーロン線の強度を最小限にしか低下させないと考えられ、これは、溶媒中への空間力分布の強度の減衰が少なく、ナノクラスターの生成の低下が少ないという利点がある。これにより、103~107V/mのオーダーのクーロン場強度がごくわずかにしか減衰せず、液体/ゲスト媒体相混合物中にさらに突出することができる。他のことがすべて同等であれば、これによって電歪作用の効果が拡大し、より迅速で効果的なナノクラスターの生成が可能になる。表面コーティングとして作用するために、低誘電率材料は、ESP、通常のスプレー堆積などの様々な方法によって充填物及び表面に堆積させることができ、ガラス及びセラミックの場合、プラズマ、イオンビーム及びレーザービーム処理を表面堆積に使用することができる。
【0035】
表面が、それ自体既に誘電特性、永久分極又は過剰電荷を有する材料から作製されている実施形態では、そのタイプのコーティングを有する必要性は少ない。上述したように、特に好ましい誘電率は3~3.5であり、一方で表面電荷及び/又は分極は、それぞれ有利には約5mC/m2~約0.2C/m2及び約0.1(Cm)/m2~約200(Cm)/m2の範囲にあり、効率的なナノクラスター生成をもたらす。
表面は、溶媒中の水素結合及び分子間強度/力を弱める磁気特性の空間分布を発する能力を本質的に有する材料から作製されるのが最も好ましく、それにより溶媒の密度がやや低くなり、少なくとも局所的に粘性も低くなり、密度変動の可能性と振幅の両方が大きくなる。これにより流動流体力学、さらには本質的に流体力学的に休止した液体(すなわち、より受動的な背景対流を除き、本質的に静止している)の「柔軟性」が緩和され、その中で、また流体の状況でナノクラスターが生成される。
表面が磁性材料から作製されていない場合、磁性材料、例えば鉄粉を、例えば磁性材料を組み込んだマグネトロンスパッタリング又は静電スプレー堆積によって別の下地材料の上にコーティングすることができる。この実施形態では、好ましいコーティングは、約0.3mm~約0.7mmの厚さであり、約8質量%~約12質量%の範囲の磁性材料(例えば、鉄粉)組成を有する。
【0036】
永久内部磁気及び帯電、例えば、クーロン空間力分布の相互作用により、溶媒の脱高密度化及び再高密度化の向上が達成される:磁力分布は母液の密度を低くする(ローレンツ力によって分子間の力、例えば水素結合を弱める)が、本来より圧縮性の高いゲスト-媒体相を高密度化する傾向があり、一方でクーロン力分布は密度を高くする(電歪、又はエントロピーを減少させる双極子アラインメント、及び隣接分子の電子雲の重なりを介して)。逆説的に言えば、これらの正反対の「密度再秩序化」効果は、空間に局所的な密度の起伏及び揺れを生じる傾向があり、これらの結果として生じる空間的及び時間的な密度の変動は、マクロスコピック液滴、クラスター及び気泡を不安定化させる能力を向上させる。簡単に説明すると、マクロスコピッククラスター及び気泡をナノクラスターのサブ集団に分割させるために、外周部での「カニバリゼーション」に対してそれらをより「柔軟」にする。
【0037】
永久磁気及び/又は帯電、例えばクーロン特性が存在する実施形態では、これらは内部生成電流及び/又は電磁石特徴によって向上されてもよい。例えば、パドルホイールをダイナモ装置(すなわち、回転する永久磁石のファラデーの誘導)として使用し、クーロン特性の内部空間分布を生成するだけでなく、内部で空間クーロン分布を生成するために、所与の極性の電流を提供することができる。これは、明示的又は受動的な溶媒流の場合であり、「マイクロパドル」(マイクロダイナモ)を、ゲスト媒体のマクロ気泡又は液滴の上昇する集団の上に配置することができる。このようにして、単一の、場合によっては外装されていない電極、或いは一方又は両方が外装された陽極と陰極を使用することができ、104~106V/mの範囲の好ましい強度を有するクーロン特性の内部空間分布を伴う。
いくつかの実施形態では、単一又は複数の電池、好ましくは再充電可能な電池が、溶媒和ナノクラスターの生成を補助するクーロン特性の内部空間分布を提供するために使用され得る。ここで、電池又は各電池は、独立して、好ましくは流体-溶媒乱流を生成する又は向上させるための手段、又は複数の表面の上流に位置し、構造化又は不規則充填物などの下流の表面への独立したワイヤ接続を有する。この実施形態では、ワイヤは、好ましくは撚りワイヤであり、容積の外部の電源に接続されてもよく、ここで電気回路を接続することなく、かつ溶媒の電気分解を開始することなく、単一の外装されていない電極が含まれてもよい。電池又はその複数は、約6V~約48Vの総電圧を有することができ、有利にはパルス幅変調器とともに利用することもできる。
【0038】
いくつかの実施形態では、所望のスポット被覆率レベル(典型的には約5%~約15%の範囲であり、およそ1~3mmのスポット寸法を特徴とする)のために、様々な堆積方法によって疎溶媒性及び/又は親溶媒性領域を表面に適合させることができる。溶媒に応じて、堆積に適した材料としては、ペプチド、マイカ、ハロゲン化物、石英、トロナ、シリカ及びチタニア、並びにアクリル、エポキシ、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリテトラフルオロエチレン、ポリジメチルシロキサン、ポリアクリル酸又は酢酸ビニル、ポリエステル及びポリウレタン、並びに酸化マンガンポリスチレン(MnO2/PS)ナノコンポジット、及び酸化亜鉛ポリスチレン(ZnO/PS)ナノコンポジットが挙げられる。好適な表面コーティング/堆積方法としては、特にプラズマコーティング、化学エッチング、溶液浸漬プロセス及びスプレーコーティングが挙げられる。好ましい疎溶媒性/親溶媒性領域の厚さは、約0.2mm~約0.4mmの範囲である。
溶媒としての水とともに使用する場合、表面は、バルク流体ゲスト媒体からの異なるレベルの種特異的捕捉を促進するために、異なるレベルの疎水性及び親水性特性を有することができる。換言すると、表面の疎水性及び親水性特性は、ゲストの疎水性及び親水性特性と一致してもよい。例えば、超疎水性表面は、水中のメタンを優先的に捕捉する。超疎水性とは、その上で水滴の接触角が150°を超えることを意味する。クラスレート水和物ナノクラスターでは、交互の親水性表面と疎水性表面が効果的であり得る。
いくつかの実施形態では、分極表面は、ポリマー溶融物、例えば溶融ポリテトラフルオロエチレンを用いたエレクトロスピニングによって作成することができる。効率的なナノクラスター生成のための表面分極密度の好ましいレベルは、一般に約0.1(Cm)/m2~約200(Cm)/m2の範囲である。
【0039】
複数の表面について特に好ましい実施形態は、以下を含む:
(i)電気配向/帯電ポリテトラフルオロエチレンによって被覆されたフェライト系ステンレス鋼を含む構造化充填物と、構造化充填物の間に不規則に分布し、同様にコーティングされた磁性Intaloxサドル;好ましくはここで、充填密度は約80m2/m3~約450m2/m3の範囲であり、及び/又は構造化充填物は、例えば40~60°の波形角度、及び0.06~0.15mmの充填物厚さ、及び200~300m2/m3の表面積を有する波形構造化充填物を含み、さらに又は代替的に、ポリテトラフルオロエチレンコーティングは、約0.2mm~約0.3mmの範囲の厚さである;
(ii)一連の磁気スタティックミキサーによって混合される磁気ラシヒリング及びBerlサドルであり、スタティックミキサーは、流動の状況におけるゲスト-溶媒混合の乱流及び有効性を向上させるために、パドルホイール、電池、ダイナモなどの内部電源に接続され、それにより相間物質移動速度論の有効性を大幅に増強し、好ましくはここで、表面は約700m2/m3~約1,500m2/m3の範囲の密度で充填され、好ましくは内部電源からの12~48Vを伴う;及び
(iii)疎水性ゲストを選択的に捕捉する場合、好ましくは150°を超える濡れ接触角を有し、内部電源(好ましくは12~48V)に接続された、超疎水性塗料で被覆されたフェライト系鋼の構造化充填物と、超疎水性塗料(例えば、約0.2mm~約0.4mmの範囲の厚さ)のスポット表面被覆率(例えば、15~20%)を有する電気配向/帯電ポリテトラフルオロエチレン(例えば、50~150Cm/m2)を含む、Berlサドルなどの不規則充填物(約100m2/m3~約220m2/m3の範囲の好ましい充填物密度を有する)の組合せ。
【0040】
いくつかの実施形態では、ナノクラスターの生成に必要な溶媒中の密度の起伏を機械的に促進するために、1つ若しくは複数の光起電力パネル又はプリント回路基板を容積内に設けてもよい。
単一若しくは各光起電力パネル又はプリント回路基板は、溶媒が下地光起電力材料又は基板材料、例えばシリコンと直接接触するのを防ぐために、ラミネート加工若しくは防水加工、又は両方が施されてもよく、好ましくはここで、光起電力パネルは、ポリエチレン裏面上に接着されたアクリルシート、並びに間に挟まれた光起電力材料の両側に陽極及び陰極メッシュ接続部をさらに含む。
この実施形態では、空間クーロン分布は、表面-ラミネーションコーティングの疎溶媒性又は親溶媒性の本質の操作と相まって、PVパネルプリント回路基板表面近傍でのゲストの選択的捕捉のために組み合わせようとする表面特徴の種類に応じて、クーロン及び疎溶媒性/親溶媒性の程度を制御することを可能にする。例えば、コーティングの厚さを0.3mmから1mmに増加させることにより、さらなる疎溶媒性特性が支援され、つまり結果として得られるナノクラスターへの疎溶媒性種の取り込みが向上する。さらに、好ましくは寸法が約1mm~約4mmのオーダーの複数の永久磁石も、そこに磁気特性を付与するために約5~10%の好ましい被覆率でパネルに固定することができる。これは、より粘性の高い溶媒中、すなわち粘度が通常5~10cPより大きい場合、又は特に疎溶媒性ゲストの場合、すなわち濡れ接触角が約160°を超える場合のナノクラスター生成に特に好ましい。
【0041】
光起電力パネルは、入射光を吸収するか、又は「逆」モードで動作させることができ、及び/又はプリント回路基板は、典型的には約6V~約24Vの範囲で、低光条件下で容積内部のDC電源によって供給され、約50MHZ~約200MHzの範囲でDC信号整流が可能である。
いくつかの実施形態では、容積は、少なくとも2つの入口及び出口を有し、溶媒は、第1の入口を介して容積に導入され、流体媒体は、流体媒体が容積内で溶媒と混合するように、1つ又は複数のさらなる入口を介して容積に導入される。
容積は、溶媒との使用に適合する材料から作製される。容積は、好ましくはポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート(PET)、高密度PET又はポリプロピレンなどのプラスチックから作製される。しかし、これは限定的とみなされるべきではなく、他の材料が使用されてもよい。
【0042】
いくつかの実施形態では、溶媒を導入する前に、真空手段を使用して容積を排気する。
【0043】
いくつかの実施形態では、ゲスト分子のより大きなクラスター、例えばミクロンサイズのクラスターは、媒体-溶媒混合が向上されるように、溶媒和ナノクラスターを形成する際の中間段階で、流動乱流混合エンハンサー、例えば、1つ又は複数のジェットノズル、ベンチュリースクリュー、空気/ガス(真空タイプ)バルブ、スタティックミキサー、スパージャなどを使用して生成されてもよい。これらの実施形態では、溶媒はマクロスコピックな気泡又は液滴、例えばミクロンサイズの気泡を含み、そこから、例えばエントロピー的フラストレーションにより、バルクゲスト流体からよりも迅速にナノクラスターを生成することができる。
溶媒は、好ましくは水、バイオエタノールなどのアルコール、80~110オクタンの石油、ディーゼル及びバイオディーゼルなどの発熱燃料、並びにアミン、好ましくはモノエタノールアミン、2-(ブチルアミノ)エタノール、2-(イソプロピルアミノ)エタノール、及び2-(エチルアミノ)エタノールなどのアミンの中から選択される。このようなアミンは、CO2ナノクラスターの作成に有利なCO2溶解度特性を有する。溶媒が水である実施形態では、水は脱イオン水、海水、廃水若しくは都市用水のいずれか、又はそれらの混合物であってもよい。
【0044】
溶媒が水である好ましい実施形態では、ナノクラスターを含む水を取り込む生物種の成長促進が生じる可能性がある。水に溶解された他の種、さらに浮遊固体並びにナノ及びマイクロ微粒子は、ナノクラスターの表面近傍に吸着する場合がある。
本発明による方法では、ゲストの溶解度が過剰なナノクラスターは、水和物/溶媒和物準微結晶、及び流体又は非晶質固体の特性を有する流体ゲスト含有ナノクラスターとして溶媒に収容されてもよく、これらは、溶媒分子とゲストの混在及び複合体形成、又はゲスト分子を秩序化する溶媒分子から構成される。
理論によって束縛されることなく、これは、ナノ気泡及び液滴と比較してより迅速かつカオス的なナノクラスターの形成現象(及び速度論)に起因すると仮定される。磁気特性が存在する場合、磁気特性は分子間結合を弱め、これにより分子近傍環境の「配位殻」の実質的により迅速な再配列を促進する。しかし、液体及び流体ゲスト(分散)相の密度に対する、それぞれ減少及び増加を伴う磁気空間力分布の相反する効果は、密度起伏を増幅させ、より迅速な(圧力の再確立によって駆動される)密度調整、すなわち、ナノ気泡又は液滴の形成をもたらすのに必要な拡散時間スケールを超える、母溶媒へのゲストの非常に迅速な侵入をもたらすよう機能する。
【0045】
「分子的に混合された」ナノクラスターを得るためには、溶媒及びゲスト分子の原子に作用する約1~10ナノニュートンに近似する磁気特性、磁気ローレンツ力が必要であり、典型的には約0.2~0.5Tである(これは、溶媒分子の構成原子に作用する分子間力の約1%のオーダーに近似する力に相当する)。これは、拡散混合が、隔離されたゲストの完全な球体(ナノ気泡として又はナノ液滴としてを問わず)にナノスケールでより多くのゲストを秩序化するエントロピー的衝動を克服するのに十分な速さであることを保証するためである。
本発明による方法を使用して疎溶媒性ゲストから溶媒和ナノクラスターを生成する場合、例えば、溶媒が水であり、ゲスト流体媒体がメタンである場合、疎溶媒性コーティングを有する分布された充填物が存在すると、ナノ気泡又は液滴が形成し得る可能性が大幅に減少するが、これは水とメタンの分子近接によってクラスレート水和物ケージが安定し、それによりナノクラスターがさらに安定になるためである。
【0046】
本発明による方法を使用して生成されたナノクラスターは、完全な結晶状態を形成することができない、実質的に「フラストレーションのある」エントロピーが制限された溶媒和複合体であるにもかかわらず、特性的にガス-水和物微結晶であってもよく、その局所的な「配位殻」において近距離秩序化された特性を有する本質的に半非晶質の「準」ガス-水和物微結晶であり、すなわち、これらのナノクラスター中及びその近傍の溶媒和物分子には、依然として構造化された液体特性が残存していてもよい。もう一つの例は、初期の溶液結晶化であり、これにより準結晶化したナノスケール溶媒和物の溶媒和ナノクラスターが、迅速な密度/圧力の再調整による拡散の抑制から生じる運動フラストレーションのさらに別の例として動力学的に阻止され、これらの結果として得られるナノクラスターは、何らかの液体又は非晶質様特性を保持する。溶媒和されたゲスト含有ナノクラスターがより完全に流体相ナノドメインである場合、ナノスケールでのあるレベルの相互混和性、密度変動、及び毛細管現象を伴う溶媒とゲストの複合体形成及び混在/相互浸透が依然として存在する。したがって、ナノスケールでの液体中のゲスト種の過剰収容の非平衡の本質が強調され、溶媒中のゲスト分子によるゲスト分子のナノ構造化は、重要かつ普遍的な特徴である。こうした意味で、ナノクラスターは、過剰溶解度のゲスト収容という普遍的な非平衡ナノスケール現象であり、ナノ気泡及び/又はナノ液滴は、普遍的なクラスのナノクラスターのより秩序化されたサブセットに過ぎない。
【0047】
流体ゲスト媒体はガス媒体であってもよく、好ましくは、ガス媒体は2種以上のガスの混合物を含み、特に好ましくは、ガス媒体は以下のリストの中から2種以上のガスを含む:窒素、酸素、二酸化炭素、オゾン、一酸化炭素、硫化水素、水素、プロパン、空気、テトラヒドロフラン、排ガス、未加工バイオガス及びメタン。
好ましくは、少なくとも1種のガスの量は、他の1種又は複数のガスの量よりも多く、例えば、2種のガスの比が4:1であるようなものである。媒体が空気である特に好ましい実施形態では、窒素と酸素の比は約4:1であり、酸素に比べて窒素が有利である。
或いは、流体ゲスト媒体は液体媒体であってもよく、好ましくは、液体媒体は2種以上の液体成分の混合物である。好ましくは、液体成分の少なくとも1種は、他の成分よりも多量に存在する。
【0048】
一部の実施形態では、流体ゲスト媒体は、多相流体混合物を含んでもよい。
方法は、バッチモード又は流動条件下でナノクラスターを生成することによって実施されてもよい。「流動条件下」とは、複数の表面を含む容積を通して溶媒及び媒体を流動させることを意味する。この好ましい実施形態では、溶媒は、ポンピングなどの「強制的な」対流運動量移動の下で能動的に流動するか、或いは受動的な対流、すなわち水の本体に存在する通常の対流によって流動する。
好ましくは、溶媒及び媒体は、10~200リットルの内部容積を有するベッセルで0.5~100l/分の典型的な流速で容積を通って流動する。この実施形態では、表面は、溶媒がその中を流動するように容積内に取り付けられた管状又は開口チャネルフローオーバー表面を含んでもよく、好ましくはラシヒリング又はIntaloxサドルなどの充填物を含むさらなる表面が、マクロ及びナノスコピックレベルでの流体-溶媒相間物質移動及び乱流混合を向上させるために、溶媒中に浸漬されるように容積内に存在する。或いは、表面は、溶媒が表面上を流動するように容積内に取り付けられてもよく、ここで溶媒は、上方のゲスト流体相及び下方の活性表面と接触する。「活性表面」とは、磁気、帯電、誘電、分極、疎溶媒性、親溶媒性及び双極子特性のうちの1つ又は複数を有する表面を意味し、好ましくは、表面は、通常の相に適切な(例えば、液体、ガスなど)分子間力の3~4パーセント以下の範囲で、溶媒及びゲスト分子の原子に対してピコニュートンからナノニュートンの範囲の強度の1つ又は複数の空間力分布を発し、溶媒中に顕著な局所的な密度の起伏及び揺れを生じさせ、その中の効果的かつ加速的なゲスト捕捉に影響をもたらす。
【0049】
いくつかの実施形態では、高強度のクーロン空間分布、すなわち容積内の強い固有電場を生成するために、摩擦電気効果を利用することができる。いくつかの実施形態では、内部エネルギー源が容積内に位置する。例えば、その上に取り付けられた角度付きパドル特徴を備えるコンベア型ストリップが容積内に配置され、それにより溶媒が容積に導入されると、溶媒の流動(水平、垂直、又は斜めのいずれであっても)が、自転車のチェーンのように回路の周りを移動するようにストリップを誘導する(すなわち、運動量の捕捉及び移動)。車軸に取り付けられた車輪の異なる材料が摩擦電気効果を誘導し、それにより静電場強度が約106V/m~107V/mのオーダーであるクーロン力分布により、非常に迅速な電歪が起こる。この「運動量から摩擦電気」の移動は、上向きに上昇するゲストマクロ気泡/液滴集団により、垂直面でより小さなスケールで行われる場合もある。理論によって束縛されることなく、このようにして生成された、すなわち約106V/m~107V/mのオーダーのクーロン特性の内部空間分布の非常に高い強度は、マクロ又はメソスケールの気泡/液滴からナノクラスターへのゲストの向上した迅速な電歪捕捉につながる。
【0050】
いくつかの実施形態では、溶媒は、容積内に位置する複数の表面を通って流動してもよく、好ましくは、表面は2つの平行なコンデンサプレートの間に位置するチャネルであり、コンデンサプレートは、流体流動の平面の上下に取り付けられ、外部電源又は内部電源に接続される。これらの実施形態では、チャネルは、クーロン特性の空間分布の強度の最小の低減を可能にするように、例えば、ポリテトラフルオロエチレンなどの誘電率2.5~3.5の低誘電材料から作製されることが好ましい。これにより、電歪を効率的に作用させると同時に、電極をそこに埋め込む必要なく流路のバンクを「後付け」することができる。任意にかつ有利には、本明細書で上述された充填物をチャネルの内部に配置し、充填物の最大直径がチャネルの最小断面寸法の半分以下になるように好適に寸法付けることで、85~90%を超える有効空隙率を得ることができる。
【0051】
いくつかの実施形態では、溶媒は、容積内に固定的に取り付けられた複数の表面に沿って流動してもよく、好ましくは、表面は編成ワイヤ、波形又はガーゼタイプなどの細長い構造化充填物要素、例えば、溶媒がナノクラスターを生成するために上方の流体相及び下方の要素と接触するように、溶媒が沿って流動するための下向きカスケード要素である。さらなる非常に好適かつ効果的な要素としては、ロッド、コイル、メッシュ及び中空チューブが挙げられる。細長い要素は、85%以上の容積の平均空隙率を達成するように、任意の角度、例えば水平、垂直又は斜めに取り付けることができる。
いくつかの実施形態では、容積の内容物は、撹拌機、ロッカーによる、又は相間物質移動充填物上の流体-液体接触によって、好ましくは機械的撹拌機を使用して撹拌され得る。理論によって束縛されることなく、機械的撹拌は溶媒を乱流にして溶媒-媒体接触を改善し、それによってより高いナノクラスター形成収率をもたらすと考えられる。好適な機械的撹拌機には、ラシュトンタービンなどの半径流インペラー及び軸流インペラー、並びに渦運動及びパドルが含まれる。
【0052】
ガスポンプ、タービン、コンプレッサーなどは、流体ゲスト媒体を容積に導入するため、又は例えば、流体ゲスト媒体と溶媒の機械的に媒介されたマクロスケール混合のためのさらなる流体-溶媒乱流を生じさせるため、又はその両方のために使用することができる。
方法は、好ましくは、溶媒が熱力学的に安定な温度及び圧力、例えば約0℃~約40℃、好ましくは約5℃~約20℃、特に好ましくは10℃~20℃の温度、及び溶媒に応じて1~80bar、好ましくは1~5bar、例えば3barの圧力で実施される。これらの範囲は例示に過ぎず、本発明の範囲を限定するとはみなされず、より高い圧力及び温度が使用され得ることが理解される。ガス-水和物ナノ微結晶を生成する具体的な場合、すなわち溶媒が水である場合、水の温度は0℃超、有利には10℃未満、好ましくは1℃~5℃の範囲である。
【0053】
いくつかの実施形態では、ナノクラスターを含む溶媒は、溶媒内にナノクラスターを貯蔵しやすくするために所定の程度まで冷却され、好ましくは、ナノクラスターを含む溶媒は凍結される。溶媒は、例えば、容積の周囲の冷却ジャケット又は通路によって、容積の周囲に冷却剤を循環させることによって冷却することができる。特に好ましい実施形態では、冷却剤は水とエチレングリコールの混合物と同様である。しかし、これは限定的とみなされず、本発明の範囲内で他の冷却剤が使用されてもよい。冷却剤は、好ましくは約263K~約290Kの温度範囲、さらに溶媒和物/水和物ナノクラスター形成の場合には、より最適には約274K~約280Kの範囲で循環される。
【0054】
好ましい実施形態では、ナノクラスターは、貯蔵しやすくするために凍結される。例えば、より長期間の貯蔵(数ヶ月単位)、又はナノクラスターを含む溶媒の輸送のために、ナノクラスターを含む溶媒は、容積から取り出した直後に(クエンチ)凍結され、その後、後に使用するために解凍されてもよい。
それらの吸着物と並行した、溶媒和ナノクラスターからのゲスト種の容易な制御されたオンデマンド抽出は、音響-超音波パルス若しくは電磁信号のいずれかを印加するか、又は液体容積の表面張力を急激に変化させる働きをする特定の化学剤(例えば、界面活性剤)を添加することによって達成されてもよい。このプロセスは、ナノクラスターを含む容積の内容物に対して行われる。
好ましい実施形態では、溶媒からのナノクラスターからゲストを放出させるために、界面活性剤などの化学剤を溶媒に添加してもよい。好ましい化学剤としては、亜硫酸ナトリウム、ナトリウム(メタ)ビスルファイト、塩化カルシウム、炭酸水素ナトリウム、アスコルビン酸、エリソルビン酸塩、カルボヒドラジド、ジエチルヒドロキシルアミン、ハイドロキノン、水酸化カリウム及び水酸化カルシウムが挙げられる。
【0055】
別の好ましい実施形態では、溶媒からのナノクラスターからゲストを放出させるために、音響-超音波パルス又は電磁信号が溶媒に印加される。音響-超音波パルスは、好ましくは約5kHz~約300kHzの範囲の周波数で、5N~約50Nの範囲の力で印加される。
信号又は添加化学物質が、超音波エネルギーの振幅、又はゲストを溶解させた化学量論的に等価な限界を超える化学物質の過飽和度に応じて、例えば5分~3又は4時間の範囲で好適な所定期間にわたって適用された後、ナノクラスターは、容積が主に溶媒を含むように、溶媒から完全に抽出される。この抽出法は、十分に容易かつ制御可能であるだけでなく、数ヶ月の時間スケールに及ぶ、ナノクラスターの準安定性よりもはるかに前の期間にわたる抽出も可能にする。さらに、ゲスト種のナノクラスターを抽出するためのこれらの技術は、エネルギー効率的である。
【0056】
したがって、別のさらなる態様において、本発明は、液体から溶媒和ナノクラスターを放出する方法であって、方法が、本明細書で上述されたように溶媒和ナノクラスターを生成し、その後、界面活性剤などの化学剤又は信号のいずれかを液体溶媒及びナノクラスターに適用することによってナノクラスターを制御可能に放出することを含み、信号が、音響超音波信号、電磁信号、又は両方を含み、信号又は各信号が、独立して約1,000Hz~約300,000Hzの範囲の周波数を有する、方法に関する。
本発明によるゲストのナノスケールでの溶媒和及び溶解は、廃水、農業、油/ガス及びガス貯蔵産業を含む多くの産業で明確に応用されるとともに、産業炭素排出を削減する上で重要な用途を有することが提起された。大気圧から数百barまでの範囲の任意の圧力で、ナノスケール形態で流体ゲスト媒体から種を捕捉する能力は、重要な特性である。
【0057】
別の態様において、本発明は、本明細書で上述された方法を使用してナノクラスターを製造するための生成器であって、生成器が、その中に分布した複数の表面を含む容積、溶媒和ナノクラスターが生成される溶媒を、溶媒が表面に接触するように容積に導入するための溶媒入口、及び流体ゲスト媒体を容積に導入し、溶媒内に分布させるための流体ゲスト媒体入口を含み、表面が、磁気、帯電、誘電、分極、双極子、並びに交互の疎溶媒性及び親溶媒性特性の1つ又は複数を有し、それにより表面が、溶媒及びゲスト分子の原子に対し、液体及び流体相溶媒中のこれらの原子並びにゲストに対してそれぞれ通常作用する分子間力の3~4%以下まで、ピコニュートンからナノニュートンの範囲の強度の1つ又は複数の空間力分布を発し、上記で概説したように、溶媒中に局所的な密度の起伏及び揺れを生じさせる、生成器を提供する。
【0058】
容積、表面、溶媒及び流体ゲスト媒体は、本明細書で上述された通りである。
特に好ましい実施形態では、複数の表面は、並列構成で配列された表面を含み、好ましくは、表面はメッシュ構成であり、好ましくは、各メッシュ要素は、流体媒体の送達手段の一部を受容するためのアパーチャを含み、特に好ましくは、流体媒体の送達手段は、メッシュ要素のアパーチャを通って延びるための細長い管状部材を含み、流体媒体の送達手段は、容積内の媒体の分布を容易にするための複数の出口アパーチャを含んでもよい。
好ましくは、生成器は、溶媒内に分布させるために流体ゲスト媒体を容積に供給するための供給源をさらに含む。或いは、周囲空気が、生成器に提供される流体ゲスト媒体であってもよい。
【0059】
いくつかの実施形態では、供給源は、ガス媒体を供給するためのガス供給源を含む。
いくつかの実施形態では、供給源は、液体媒体を供給するための液体供給源を含む。
表面が永久磁気及び/又は帯電、例えばクーロン特性を有する実施形態では、生成器は、好ましくは内部生成電流及び/又はダイナモ装置としてのパドルホイールなどの電磁石特徴をさらに含む。このようにして生成されたDC電圧は、約6~48Vのオーダーであってもよく、信号整流特性を含んでもよい。好ましい実施形態では、マイクロダイナモは、生成器の使用時に、ゲスト媒体の上昇するマクロ気泡集団の上に位置するように配置されてもよい。この実施形態では、単一の、場合によっては外装されていない電極、又は代替的に、一方若しくは両方が外装された陽極及び陰極が使用され、典型的に104~106V/mのオーダーの場強度を有するクーロン特性の内部空間分布をそこから発散してもよい。
【0060】
いくつかの実施形態では、生成器は、流体-溶媒乱流を生成するための手段、例えば、1つ又は複数のジェットノズル、ベンチュリースクリュー、空気/ガス(真空タイプ)バルブ、スタティックミキサー、スパージャなどを含んでもよい。
いくつかの実施形態では、生成器は、溶媒和ナノクラスターの生成を補助するクーロン特性(103~106V/mのオーダーの典型的な強度を特徴とする)の内部空間分布を提供するために、単一又は複数の電池、好ましくは再充電可能な電池を含んでもよい。電池又は各電池は、独立して、好ましくは流体-溶媒乱流を生成若しくは向上させるための手段、又は複数の表面の上流に位置し、構造化又は不規則充填物などの下流の表面への独立したワイヤ接続を有する。この実施形態では、ワイヤは、好ましくは撚りワイヤであり、容積の外部の電源に接続されてもよく、ここで電気回路を接続することなく、かつ溶媒の電気分解を開始することなく、単一の外装されていない電極が含まれてもよい。
いくつかの実施形態では、生成器は、溶媒及び流体ゲストの導入前に容積を排気するための真空手段を含む。これにより、結果として生じるヘッドスペース流体の濃度及び任意に圧力の正確なモニタリングが可能になる。
【0061】
いくつかの実施形態では、容積の内容物を撹拌するために撹拌手段が提供され、好ましくは、撹拌手段は機械的撹拌機を含む。理論によって束縛されることなく、機械的撹拌は、溶媒を乱流にして溶媒-媒体接触を改善し、それによってより高いナノクラスター形成収率をもたらすと考えられる。好適な機械的撹拌機には、ラシュトンタービンなどの半径流インペラー、及び軸流インペラー、並びに渦運動及びパドルが含まれる。
ガスポンプ、タービン、コンプレッサーなどは、流体ゲスト媒体を容積に導入するため、又は例えば、流体ゲスト媒体と溶媒の機械的に媒介されたマクロスケール混合のためにさらなる流体-溶媒乱流を生じさせるため、又は両方のために使用することができる。
【0062】
容積の内容物は、好ましくは撹拌機、ロッカーによる、又は相間物質移動充填物上の流体-液体接触によって撹拌される。
好ましい実施形態では、生成器は、容積の内容物を冷却するための冷却手段をさらに含み、好ましくは、容積は、外部冷却ジャケット、又は冷却剤がその中を通って循環され得る通路を備える。
いくつかの実施形態では、温度制御された環境でナノクラスターを貯蔵するための着脱可能な貯蔵容積が生成器に接続されてもよい。
いくつかの実施形態では、生成器は制御回路によって制御される。制御回路は、前述の手段によって内部電源が使用される場合、オン及びオフに切り替え、電圧(及びその電位整流)を変化させることを可能にする。これは、生成されるナノクラスターのレベルに応じてもよく、生成器が使用される用途に対するナノクラスターの下流の影響に基づいてもよい。
【0063】
本発明による方法及び生成器は、溶媒中で排ガス又はCO2リッチガスから、さらには空気からCO2及び汚染物質を捕捉するために使用することができる。ナノクラスターの形態でのこの種選択的捕捉のために、複数の表面は、下地磁石(約0.2~0.5Tの範囲の強度を有する)の上に、クーロン力によってコーティングされた表面(典型的に約0.3~0.6mmの範囲の厚さであり、表面電荷及び/又は分極密度は、それぞれ約100mC/m2~0.1C/m2及び約10(Cm)/m2~50(Cm)/m2である)と組み合わされた疎溶媒性表面(1~2mmの「スポット」で15%のオーダーの表面被覆率を有する)を含む。
本発明による方法及び生成器は、石油、ディーゼル及び油バイオ系燃料中のガス及び水の捕捉に使用することができる。ナノクラスターの形態でのこの種選択的捕捉のために、複数の表面は、磁性及びクーロン特性を有し、燃料中のガス及び水及び水性種を異なる形で引き付けるために、強い親溶媒性及び親水性コーティングでコーティングされ、すなわち25~40゜の表面濡れ接触角を特徴とする。これにより、燃料中のナノクラスター形態でのこの捕捉量が最大化される。
【0064】
さらなる態様において、本発明は、液体中で溶媒和ナノスケール特徴を生成するためのシステムであって、ナノスケール特徴が、ガス、液体非晶質-固体又は微結晶形態のゲスト部分であり、熱力学的溶解度を超える量で存在し、システムが、本明細書に上述された生成器、並びに例えば、容積の内容物に関連する温度を感知するための温度センサー、生成器に関連する圧力を感知するための圧力センサー、及びpHセンサーなどの1つ又は複数のセンサーを含む、システムを提供する。
システムは、好ましくは前記センサーでモニタリングされた温度及び/又はpH及び/又は圧力を所定の間隔で記録するためのデータ取得システムをさらに含む。
システムは、好ましくは生成されたナノクラスターを貯蔵するための貯蔵ベッセルをさらに含む。
いくつかの実施形態では、システムは、生成器、並びに流体媒体供給源、真空ポンプ、温度センサー、圧力センサー又はpHセンサーなどのセンサー、データ取得システム、恒温槽などの冷却手段及び貯蔵ベッセルのうちの1つ又は複数と通信する制御回路を含む。
次に、本発明の特定の好ましい実施形態について、添付の図面を参照してほんの例示として説明する。
【図面の簡単な説明】
【0065】
図1】溶媒和ナノクラスターを製造する本発明による方法の実施に使用される好ましいシステムを詳述するプロセス図である。
図2a-2e】代替的な好ましい表面の一部、及びそこから発散する異なる空間力分布を示す図である。
図3】本発明による好ましい生成器内の複数の表面の好ましい配列の概略図である。
図4a】ゲスト-液体混合接触を促進するための好ましい送達機構の透視図である。
図4b図4aの送達機構と組み合わせて使用するためのメッシュの積層アセンブリの平面図である。
図4c図4bの好ましいメッシュの透視図である。
図4d図4bのメッシュの好ましい積層アセンブリ、及び図4aの送達機構の透視図である。
図5】光散乱実験後に作成されたグラフであり、様々な磁気強度における、本発明による方法によって製造されたナノクラスターのザウター平均径の典型的な分布を示す。
図6】様々な磁気強度におけるナノクラスターのザウター平均径及び時間と、ナノクラスターの安定性の向上との間の関係を示すグラフである。
図7】ナノクラスターの近傍における水の構造化の程度を示すグラフである。
図8a】25℃及び大気圧(STP)での、空気のナノクラスターを含む水の密度を経時的に示すグラフであり、純粋な脱イオン水(0.99824g/cm3)と比較して上方へのシフトが明らかである。
図8b】25℃及び大気圧(STP)での、CO2のナノクラスターを含む水の密度を経時的に示すグラフであり、純粋な脱イオン水(0.99824g/cm3)と比較して上方へのシフトが明らかである。
図9】溶媒和ナノクラスターを製造する本発明による方法の実施に使用される代替的な好ましいシステムを詳述するプロセス図である;
図10】本発明による代替的な好ましい生成器の概略図である。
図11】本発明による別の代替的な好ましい生成器の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0066】
驚くべきことに、溶媒及び媒体と接触する表面に固有の空間力分布を利用して溶媒中の流体ゲスト媒体の分子再配列の速度を向上させることにより、球状のナノ気泡/ナノ液滴とは対照的に、カオス的でフラストレーションのある不規則なナノクラスターが生成され得ることが見出された。すなわち、本発明による方法では、ナノクラスターは、外部場を適用する必要なく、内部空間力分布、すなわち内部場を溶媒及びゲスト媒体に直接作用させることによって生成され、表面充填物の本質は、これらの内部力場分布の特性と協同してこのプロセスを向上させる。空間力分布は、溶媒及びゲスト分子の原子に作用し、充填物との流体力学的相互作用から既に生じている揺れに加え、局所的な密度の起伏及び揺れを、時間的及び空間的に溶媒中に生じさせる。こうして表面は、流体状態のゲスト種をナノスケール形態で、すなわち従来の液体状態のゲストの溶解を超えた過飽和ナノクラスター中で媒体から取り込むことを促進する。
【0067】
本発明の様々な実施形態を、図面を参照して詳細に説明するが、ここで、同様の参照数字は、いくつかの図を通して同様の部品及びアセンブリを表す。
本発明は、ここで説明される例に制限されると解釈されるべきではなく、むしろ本発明は、本明細書に提供されるあらゆる応用、及び当業者の技術範囲内のあらゆる等価な変形を含むと解釈されることが理解される。
図面、特に図1を参照すると、一般に本明細書で参照数字100で参照される、ナノクラスターを生成するための本発明による好ましいシステムが示される。システム100は、その中に密に充填された複数の表面(図1には図示せず)及び液体103を収容する、約1000cm3の容積を規定する中空内部領域を有するベッセル102を備えた生成器101を含む。ベッセル102はプラスチック製であってもよい。液体103は、脱イオン水、海水、廃水、食塩水又は別の水溶液であってもよく、入口(図示せず)を介してベッセル102に導入される。
【0068】
生成器101は、液体103内に分布するためにベッセル102に供給される、ガス、液体又は超臨界流体の形態の流体ゲスト媒体の供給源115をさらに含む。供給源115は、ゲスト流体又はゲスト流体の組合せを容積102に提供するために選択的に制御され得る単一又は複数のガス又は液体供給源を含んでもよい。入口導管118は、供給源115から容積102への媒体の経路指定を容易にする。背圧バルブ117は、容積102からの液体103の損失なしに、供給源115から容積102への媒体の制御された導入を容易にする。流量計119は、容積102への媒体の流動を測定するために設けられる。入口導管118が開いたままであり、供給源115が存在しない又は切断されている場合、液体103の本体でナノクラスターを製造するための周囲圧力操作も行われることを考慮すると、周囲空気は、生成器101に提供される既定の流体ゲスト媒体である。
図1に示される好ましい実施形態では、液体103を導入する前に容積102を排気するための真空ポンプ111が設けられる。
【0069】
システム100の使用において、単一又は多成分種の流体供給源115から容積102への流体媒体の導入は、一連のボールバルブ120を介して制御される。供給源115の制御は、必要性が生じた場合に一連のボールバルブ120を変更して、ガス又はガスの組合せを真空ポンプ111又はダンプ設備121のいずれかに経路指定することを含む。背圧シリンダー122は、背圧バルブ117が閉じた場合に流体流動を収容する。
システム100は、液体と媒体の両方について連続流動モードで、又はどちらか一方についてフェドバッチモードで運転されてもよい。
生成器101は、容積102を密封するための密封手段(図示せず)をさらに含む。密封手段は、閉鎖キャップ、及び生成器101の側壁と動作可能に係合するための密封ガスケットを含んでもよい。密封ガスケットは、好ましくはポリテトラフルオロエチレン製であるが、これは限定的とみなされず、本発明の範囲内で他の材料が密封ガスケットとして使用されることが企図される。
図1に示す好ましい実施形態では、恒温槽105が、容積102内の内容物を冷却するための容積102の周囲の冷却ジャケット又は通路(図示せず)を介して、容積102の入口管107を介して生成器101の少なくとも一部を通して冷却剤を循環させるために設けられる。その後、冷却剤は、容積102の出口管108を経由して恒温槽105に戻される。冷却剤は、水とエチレングリコールの混合物であってもよい。冷却剤は、好ましくは約263K~約293Kの範囲、また溶媒和物/水和物ナノクラスター形成の場合は、より最適には約273K~約283Kの範囲の温度で供給される。
【0070】
容積102の内容物を撹拌するために、機械的撹拌機(図示せず)が設けられてもよい。
図1に示す好ましい実施形態では、容積102の内容物に関連する温度を感知するために温度センサー113が設けられ、生成器101に関連する圧力を感知するために圧力センサー114が設けられ、温度センサー113及び圧力センサー114でモニタリングされた温度及び圧力を所定の間隔で記録するためにデータ取得システム112が設けられる。図1は、任意選択の温度及び圧力センサーを示しているが、データ取得システム112によって記録され得る他のパラメータをモニタリングするために、追加又は代替のセンサー、例えばpHセンサーが使用され得ることが当業者に理解される。
生成器101は、供給源115、真空ポンプ111、温度センサー113、圧力センサー114、データ取得システム112、及び恒温槽105と通信する制御回路116を介して制御される。
【0071】
図2a~2eはそれぞれ、好ましい表面104a、104b、104c、104dの一部にゲスト媒体(図示せず)が存在する液体本体103の界面、及びその表面から発散する異なる空間力分布を概略的に示す。表面104のそれぞれは、本質的に有機又は無機であってもよく、様々な形状、例えば、図2bに示す好ましい実施形態の場合には、フェライトラシヒリング104bであってもよい。
図2a~2dのそれぞれにおいて、z軸は、その中で溶媒和ナノスケール集合体の形成を促進する試みにおいて、ゲスト媒体(図示せず)が存在する液体103の本体との界面に平行な方向を表し、x軸は、表面104a、104b、104c、104dにそれぞれ垂直である。
図2aは、内部表面電荷又は分極のメモリーを永久的に保持する材料、例えばポリテトラフルオロエチレン又は他のワックス型材料でコーティングされた構造化又は不規則充填物、例えばポールリングなどの表面104aの一部を示す。このコーティングは、静電スプレー堆積(ESP)を使用して下地表面にスプレー堆積されてもよい。或いは、ワックス型材料又は溶融ポリテトラフルオロエチレンを静電場中に曝露し、固化させることによってコーティングを作製してもよい。このような交互の表面電荷又は分極のコーティングが複数存在してもよい。
【0072】
図2aでは、表面104aの電荷のネットワークがクーロン力の空間分布を生じさせ、ナノスケール形態でのゲスト種の液体103への取り込みを異なる程度まで促進する役割を果たす(多成分ゲスト媒体の場合)。
同様に、図2bの表面104bに磁性が存在することで、磁力の空間分布が可能になり、これは液体103の再構築を誘導し、追加のゲスト分子を含む準安定溶媒和ナノクラスターの形成を促進するのに必要な溶媒分子の回転及び並進再配列を促進するために、分子間結合を改良する役割を果たす。表面104bの磁気特性は、様々なフェライト系ステンレス鋼若しくは炭素鋼、又は鉄、コバルト、ニッケル、ネオジムを使用して得ることができる。表面、例えばIntaloxサドルなどの充填物は、これから作製されてもよく、或いはフェライト系物質が、例えば磁性物質(例えば、鉄)粉を組み込んだマグネトロンスパッタリング又は静電スプレー堆積により、セラミック又は非フェライト系金属などの別の下地材料の上にコーティングされてもよい。
【0073】
図2cに示す好ましい実施形態では、クーロン力線及び磁力線の大きさを調節するために、誘電コーティング又は塗料が表面104cに適用される。好適なコーティング材料としては、セラミック又はガラス又はポリテトラフルオロエチレン、典型的にはポリエチレン、ポリプロピレン及びポリテトラフルオロエチレンが挙げられ、これらはすべて誘電率が低く、すなわち比誘電率が約3~3.5未満である。
図2dに示す好ましい実施形態では、疎溶媒性及び親溶媒性領域125の交互のパッチワーク配列が、表面104d、例えばペプチドの上に配置及び吸着され、表面の物理化学的な「アーキテクチャ」は、表面工学の当業者によってさらに最適化され、それにより有利には、純粋又は多成分ゲスト媒体からのナノスケール形態での液体103中のゲストの捕捉の程度を最大化することができる。疎溶媒性及び親溶媒性領域は、特にプラズマコーティング、化学エッチング、溶液浸漬プロセス及びスプレーコーティングを含む様々な堆積方法によって表面上に適合させることができる。
【0074】
図2eに示す好ましい実施形態では、双極子表面104eは、部分的にアラインメントされた双極子126を有する配向及び分極特性を特徴とする。この分極効果は、液体103による媒体のさらなるナノスケール捕捉を容易にし、分極材料及び表面工学の当業者は、多成分ゲスト媒体からの特定の種の優先的な標的化された示差的捕捉のために、表面に最適な配向-分極コーティングを選択することができる。分極表面は、ポリマー溶融物を用いてエレクトロスピニングによって作成することができる。
【0075】
重要なことに、本開示の有利な態様は、図2a~2eのいずれの表面も、液体-媒体混合物と直接電気的に接触していないことであり、したがって電気伝導が根底にある場合、エネルギー的に非効率な電気分解が防止される。図2a~2eに概説される表面特性の「媒体を引き寄せる」性質の普遍的な特徴は、液体/溶媒分子の局所的な密度及び分子間結合の配列の操作にあり、これによりナノスケール形態でのその中の(示差的な種の)吸収が促進される。
したがって、本開示は、公知の「流体からナノスケールへの」吸収方法とは概念が全く異なる。さらに、このようにして形成されたナノクラスターのクーロン特性は、例えば、低光条件での作物収率を改善するための送達剤(例えば、医薬、植物/魚/樹木の栄養素、植物エピジェネティック剤、及びハイテク農業における遺伝子編集化学物質)として使用するための、ナノクラスターへの溶媒和剤及び不純物の容易な吸着を可能にする。また、ゲスト種の原子部分の反応性バージョンがナノ相形成によって作製されてもよく、これは一般に液体の抗菌性及び化学反応性を改善する役割を果たす。
【0076】
図3は、一連の表面135、144の一般的な実施形態128を、生成器101及び容積102内の液体の本体103におけるそれらの配列の観点から示す。これは、バッチ式、フェドバッチ式、又は連続流動式のいずれかで動作することができる。図3には、選択された表面材料から構成される一連のロッド144が水平に取り付けられるように示されている。しかし、これは限定的とはみなされるべきではなく、ロッドは追加的又は代替的に、斜め又は垂直に取り付けられてもよい。1つ又は複数の磁石127は、ロッド144とともに、ゲスト媒体から「ナノ溶解」状態への最大限の相間物質移動をもたらすための大きな接触面積を提供する。不規則又は半秩序化された相間移動充填物135の分布は、このゲストの物質移動を補助する。好適な形状のロッド144、充填物135、及び任意に他の相間物質移動形状(図示せず)に関する磁性材料の組合せには、ゲスト-液体(相間)混合を促進する分極及び電荷/溶媒相互作用分布をもたらすために、誘電コーティングが施されてもよい。好適な誘電コーティングとしては、例えばセラミック若しくはガラス、又はポリエチレン、ポリプロピレン及びポリテトラフルオロエチレンの中から選択される1種若しくは複数のポリマーが挙げられ、これらはいずれも誘電率が低く、すなわち比誘電率は約3~3.5未満であり、これは約4であるシリカの比誘電率未満である。
【0077】
図4a~4dは、表面の代替的な効率的な配列を示し、一連の表面は、複数の永久磁石123、並びに平行な放射状構成で配列され、複数のメッシュ要素129に接続された分極及び帯電材料の複数の表面124を含む。各メッシュ要素129は、それ自体、例えば図2a~2eに関連して上述されたいくつかの態様で有利にコーティングされ、特性付けられてもよい。
図4aは、送達機構131を示し、又は流体媒体及び/若しくは液体媒体を容積102へ及び/若しくは容積102内に分布させることを容易にする。送達機構131は、細長い管状部材132、及び複数の出口アパーチャ134を含む。図4cに示されるように、各メッシュ要素129は、送達機構131の一部を受容するためのアパーチャ130を含む。
【0078】
図4dから見ることができるように、送達機構131の細長い管状部材132は、メッシュ要素129のアパーチャ130を通って延びるような寸法である。図4a及び4dに示される例示的な実施形態では、細長い管状部材132は、ベース部材133上に動作可能に取り付けられる。ベース部材133はまた、出口アパーチャ134を含んでもよい。細長い管状部材132及びベース部材133は、それぞれ独立して、好適な絶縁材料のいずれか、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル及びポリテトラフルオロエチレンなどのポリマーから作製されてもよい。図2a~2eに関連して言及された表面コーティング戦略も、細長い管状部材132及びベース部材133のいずれか又は両方をコーティングするために使用することができる。
【0079】
出口アパーチャ134は、ゲスト媒体が収容されるが、液体103が細長い管状部材132又はベース部材133のいずれかによって画定される内部容積に入ることが防止されるような寸法である。有利には、管状部材132の内部は、強力な、すなわち0.2T~10Tの永久磁石(図示せず)で満たされ、ナノクラスター作成のさらなる推進力を付与することができる。
図4aに示す好ましい実施形態では、充填物135は、容積内で送達機構131の近傍に、例えば細長い管状部材132に隣接して配置され、「ナノ溶解」クラスター状態へのゲスト種のまたさらなる液体-媒体相間物質移動を向上させる。
【0080】
ベース部材133上のアパーチャ134は、供給源115から容積102に導入された媒体がメッシュ要素129の材料ワイヤによって容積102の底部付近に捕獲されないように、好ましくはメッシュ要素129に対して位置決めされる。図4bは、メッシュ要素129に対するアパーチャ134の配列を示す。図4a及び4bに示す好ましい実施形態では、アパーチャ134は、管状部材132から離れてベース部材133上で放射状に延びる。充填物135を有する一連の表面131、129、123、124のこの実施形態は、表面の空間力分布及び影響に対する液体/ゲスト媒体の曝露レベルの両方を、このようなメッシュ配列及び充填物の構造化された容積内配列を有さない実施形態と比較して約15倍増加させ、したがって本発明者は、この実施形態が産業用途のためにさらに拡張可能であると主張する。
溶媒とゲスト媒体が生成器101の内部で十分に混合されると、相間物質移動の戦略に関連して図3及び4の説明で概説したように、ナノクラスター形成が急速に進む。
【実施例
【0081】
(実施例1)
溶媒和ナノクラスターの生成
溶媒和ナノクラスターは、本発明による好ましい方法を使用して以下のように生成した。
プロセスを開始する前に、容積102を洗浄し、清掃し、汚染を避けるために空気ストリームを使用して完全に乾燥させた。その後、容積102を、1MPaの圧力で窒素を注入することによって漏洩について検査した。この漏洩試験は、ナノクラスター形成中の圧力読み取りの精度を保証するためのものであった。
様々な磁場強度を、ポリテトラフルオロエチレンでコーティングされたフェライトラシヒリングとともに、ほぼ均一な強度分布のために約0.1~2Tの範囲で、図4a及び4dに従って容積102の内部に配列した。
100cm3の脱イオン水103を容積102に装填し、その後ベッセル入口(図示せず)を閉鎖キャップ及び密封ガスケットを使用して密封した。この体積の水103は、良好なレベルの再現可能な性能をもたらすことが見出された。
生成器101に、酸素、空気、テトラヒドロフラン及びメタンから選択された供給源115からの100barのガスを装填し、ナノクラスター形成中の圧力を記録し、所望の圧力に達するまで、供給源115から選択されたガスを注入することによって容積102に関連する圧力を増加させた。例示的な実験では、最大約312barのガスを容積102に装填した。
【0082】
容積102内の密度分布及び溶媒の分子間相互作用の改良により、図2a~2eに示されるように、磁力及びフェライトラシヒリング、並びにそれらに関連した突出した空間力分布を使用したナノクラスターの生成が容易になる。容積102内で起こる電気分解を防ぐために、表面(磁石及びフェライトラシヒリング)も水103も直接電気的に接触しない。
【0083】
水103は、より良好な水-ガス接触のために水を乱流にし、より高いナノクラスター形成収率に導くために、機械的撹拌の存在下で約2時間のガス-水接触後に飽和させた。本明細書に記載される値は単なる例として提供され、代替値が使用されてもよいことが理解される。
容積102の温度は、冷却剤として水とエチレングリコールの混合物を恒温槽105に循環させることによって制御した。恒温槽105の温度は、275~298Kの範囲で調整可能であった。精度が0.1Kである白金抵抗温度計(Pt-100)113を基準白金抵抗温度計に対して校正し、容積102の温度を測定するために使用した。容積102に関連する圧力は、不確実性が±0.010MPaである変換器114によってモニタリングした。
以下の表1は、異なる時間間隔で温度及び圧力を記録したデータ取得プログラム112から得られた、大気圧~約312barまでのガスの圧力範囲のデータを示す。この表は、実施例1の方法から達成可能なナノクラスター形態の準安定なゲスト収容レベルが、これまで公知のものよりも著しく高いことを示す。
【0084】
【表1】
純水を例として使用すると、メタンの場合、ガス溶解度のレベルは、メタンに関するヘンリーの法則レベルより25倍高く(流体ナノドメインとして)、THFの場合、水和物微結晶の形態で、より低温で約15倍であることが見出された。酸素の場合、そのガス溶解度のレベルは、高圧及び周囲圧力の純粋なO2と空気の両方を使用して、本開示の方法で2倍以上高い。
溶媒和水和ナノクラスターのサイズ分布を確認するために光散乱実験を行い、典型的な例を磁気強度の関数として図5に示し、より強い磁気作用下でより小さなナノクラスターの集団がより多く形成される。このことから、ナノクラスターの形成、特にその相対的なサイズ及び集団を調節するための制御剤として、磁気強度を使用する可能性が許容される。
【0085】
水和物ナノクラスターの形成後、水溶液を周囲条件(圧力、温度)で貯蔵し、ナノクラスターの安定性を試験した。結果は、図6に示されるように、より強い磁気形成条件下で、クラスターのより緩やかな凝集に対してより高い安定性を示す。さらに、それらのより構造化された本質を示す水分子のO-Hブルーシフトの変化は、CO2水和物準微結晶の流体相ドメインの場合、経時的に幾分減少することが見出され、これは、これらのドメイン及びナノ構造化された水が、ナノ相がゆっくりと徐々に放出され、純水の基準状態にゆっくりと戻り始めたためである。
同様の方法で、空気とCO2の両方の流体状態のナノクラスターについて経時的に水の密度を試験し、図8a及び8bはいずれも、純水に対する空気(図8a)/CO2図8b)のナノクラスターを含む水の密度の向上を示しており、これは水のナノ構造化を示す。ここでも、ナノクラスターを有さない基準状態へと戻る経時的な散逸が存在するが、これは非常に緩慢であり、数週間から数ヶ月にわたるナノ相の強い準安定性を示している。
【0086】
本開示の方法は、多成分ゲスト流体(単相又は多相のいずれか)からナノスケール形態への種選択的捕捉に対処する。その範囲の限界であると理解されるべきではないが、この一つの可能性のある実現形態は、メタンと二酸化炭素の混合物である。リットル当たりのミリグラム単位の二酸化炭素のヘンリーの法則の係数の溶解度は、メタンのヘンリーの法則の係数の溶解度より30倍高い。このような混合物に上記実施例1の方法を適用すると、水中での二酸化炭素の収容は、ヘンリーの法則の溶解度レベルと比較して11倍増加し、したがってメタンよりも有意に多い二酸化炭素部分が水中に拡散し、残留する流体相メタンを97~97.5%の範囲のレベルまで浄化する。これは例えば、それぞれ農業におけるメタン発生の制御及び低エネルギー炭素捕捉のためのバイオガス及び排ガス産業、又は嫌気性消化装置からのバイオガスの処理(例えば廃水処理産業における)に重要な応用がある。
【0087】
さらなる例示的な実現形態は、酸素(20%)と窒素(80%)の混合物に近似する空気に関連し、ここで酸素は、流体ナノドメイン形態で水中で選択的に濃縮され、その中の組成は約3分の2であり、窒素が相対的に犠牲になり、流体ナノドメインの組成は約3分の1である。これらの結果は、ヘンリーの法則の限界を超えてナノクラスター状態から真の酸素のモル数を引き出すために重亜硫酸ナトリウムを使用して得た。
多成分流体相ゲスト媒体からの種選択的取り込み、すなわち、ゲストの通常の熱力学的溶解度限界を超えたナノクラスター状態でのさらなるゲスト収容レベルは、ヘンリーの法則の非平衡形態の修正形態yi *=Ki *i *(ここで*は、成分iのナノスケールゲスト収容(エントロピー又は速度論的に制限された準溶媒和物微結晶として、又は流体相ドメイン中を問わず、溶媒和ナノクラスター形態)を指し、Ki *は、新規の向上したナノ溶解パラメータであり(ヘンリーの法則を超える)、y及びxは、それぞれ流体相及びナノ相のモル分率を指す)によって説明されてもよい。厳密には、Ki *は時間依存性であるが、実際には多くの工業プロセスの滞留時間に比べてはるかにゆっくり、例えば、数週間/数ヶ月かけて変化する。
【0088】
上記の実施例1に記載された方法によって形成された灌漑水中の空気ナノクラスターを使用すると、植物の成長が大幅に向上し、窒素(約3分の1)を犠牲にして酸素がこのナノスケール形態に示差的に優先的に取り込まれ(約3分の2)、空気からのCO2の取り込みも向上する(大気中の約415ppmから1,500ppm(空気平衡等価)のオーダーまで向上する)。したがって、ナノスケールのガス状ドメインの表面に効率的に吸着するため、必要とされる栄養素及び肥料は少なくて済み、これは、実質的な割合(典型的には半分まで、場合によってはそれ以上の割合)の肥料を添加する必要がないことを意味する。ジャガイモ、クレソン、レタス及びバジルを用いた結果では、ml当たり107のオーダーの光散乱クラスター集団で、通常の半分のレベルの肥料を含む土壌で最大40%の余分な成長が生じることが見出された。水スプレーエアロゾル霧中のCO2ナノクラスターレベルが向上した場合も同様であった(約30~40%の成長向上)。光レベルを最大4分の3下げても、ナノクラスターによって向上した成長アプローチへの影響は、単に従来の水を使用した場合の同じ光レベル低下による影響よりも実質的に少なかった。
記録されたナノクラスターでのCO2レベルの向上は、排ガスと空気の両方からこのガス及び他の汚染物質を捕捉する上で重要である。また、水の代わりに溶媒燃料を使用する上記実施例1に記載された方法は、ナノクラスターとして石油系燃料中の空気及び水のレベルを大幅に向上させたことが観察され、これは他のガスにも容易に適用することができる。
【0089】
図9を参照すると、ナノクラスターを生成するための別のシステム200が示され、これも本発明の一般的な教示に従っている。システム200は、システム100と実質的に類似しており、同様の要素は同様の参照数字で示されている。システム200とシステム100との主な相違点は、液体との流体混合レベルの増強がナノクラスターの生成効率の増加に非常に有益であることを考慮して、システム200が、流体媒体を濃縮するための、すなわちナノクラスター形成前にメソスケールの液滴又は気泡を製造するためのガススパージャ205を含むことである。
ナノクラスターの貯蔵には、貯蔵ベッセル210を使用することができる。システム200では、貯蔵ベッセル210は3~4℃であり、それによりナノクラスターの逆キャビテーション及びマイクロサイズへの凝集(及び気相への脱出)を非常に大幅に遅らせる。しかし、より長期間の貯蔵(数ヶ月単位)、又はナノクラスターを含む液体の輸送のために、ナノクラスターを含む水を容積102から取り出した直後に(クエンチ)凍結してもよい。これをその後、後に使用するために解凍する。
【0090】
特に、ナノクラスターを含む液体を、液体が依然として容積102中に存在する間に高圧で凍結させることで、ナノクラスター内の事実上のゲスト収容のはるかに高いレベルの時間保存が可能になる。例えば、氷中でO2のレベルの上昇(数千mg/l)を達成することが可能であり、これを冷凍庫で周囲圧力で数日から数週間貯蔵することができる。ガスが氷から染み出すが、ゆっくりである。凍結したナノクラスターは、輸送中の中間加圧貯蔵のためにプロセス産業で一般的/日常的に利用可能であるような、例えば、プラスチック又はアルミニウム製の安価で汎用的な約25barの圧力ベッセルバケットに貯蔵することができ、このベッセルで、通常の工業用/消費者用冷凍庫内で、ガスレベルを大幅に上昇させた状態で長期貯蔵及び輸送のために非常に経済的な方法で保管することができ、その後、例えば水本体を素早くガス化又は曝気するために解凍した場合、別の場所で使用することができる。
貯蔵容積210を約10~100kHz、10~50Nの音響超音波インパルスに曝露することにより、準溶媒和物微結晶又は水和/溶媒和したナノスケールのガス若しくは液体ゲスト分子/部分を含むナノクラスターは、そうでない場合に生じる数週間又は数ヶ月の準安定性ではなく、本質的に数時間以内に液体から離脱することが確認される。これは、ナノドメイン/溶媒界面における表面張力波との共鳴超音波周波数が、ナノから従来の溶解状態への相間「漏洩」を増加させるためである。同様のゲスト放出現象は、選択された界面活性剤でも観察された。
【0091】
ナノクラスターを生成するための、本明細書で一般に参照数字300で参照される、本発明による代替的な好ましいシステムを図11に示す。システム300は、パイプカラム302を備えた生成器301を含む。図11に示す好ましい実施形態では、パイプカラム302はPVC製であり、長さ約1m、内径5.5cmである。非磁性オーステナイト系ステンレス鋼(316Lグレード)16mmポールリング304が、1リットル当たり135個の密度でカラム302に充填されている。
液体103は、入口導管341を介してパイプカラム302の入口306に導入されてもよい。入口306の上流に位置するMazzeiベンチュリー空気注入器(0.75’’、「0584」モデル)350を介して、流体ゲスト媒体を供給源315からパイプカラム302に供給することができる。複数のNeodynium-52棒磁石327が、ベンチュリー350の上流の導管の周囲に放射状に配置される。
システム300の使用では、流体ゲスト媒体及び液体103は、ポールリング304に曝露される。方法は、バッチモード又は流動条件下でナノクラスターを生成することによって実施されてもよく、すなわち、ここで液体103及びその中に分布された媒体は、パイプカラム302に含まれるのではなく、パイプカラム302を通って流動し、出口360から出る。いずれの実施形態においても、磁石327及びポールリング304から生じる液体103中の空間力分布は、従来のゲスト種溶媒和を超える溶媒和ナノクラスターの生成を促進する。
【0092】
ナノクラスターを含む液体は、出口360を介してパイプカラム302から除去されてもよい。
(実施例2a)
水和空気/プロパンナノクラスターは、本発明による好ましい方法を使用して以下のように生成した。
プロセスを開始する前に、パイプカラム302を洗浄し、清掃し、汚染を避けるために空気ストリームを使用して完全に乾燥させた。その後、1MPaの圧力で窒素を注入することにより、パイプカラム302の漏洩を調べた。この漏洩試験は、ナノクラスター形成中の圧力読み取りの精度を保証するためのものであった。
430グレードのステンレス鋼16mm磁性ポールリング304を、1リットル当たり135個の密度でカラム302に充填した。ポールリングはフェライト系であり、磁化率は普通炭素鋼より約10%低い。
空気のナノクラスターを生成するために、供給源340からの水103を30~40l/分の流量でパイプカラム302に導入し、パイプカラム302を通して流動させ、約3.5~5l/分の周囲空気、すなわち標準的な温度及び圧力でベンチュリー350の完全な引きを可能にした。
空気取り込み実験(溶媒和空気ナノクラスターへの)の温度は、8℃から14℃まで変化した。
【0093】
プロパンのナノクラスター生成のために、5.5bar gに設定した排出調節器を備えたプロパンボンベ315を、さらなるゲスト媒体供給源として加えた。
プロパン取り込み実験の温度は4℃であり、溶媒和プロパンリッチナノクラスターを含むこの水約70リットルを100リットルのタンクに入れ、これを密封し、プロパンボンベによってまず5bar gで加圧し、その後定容(等容)条件下で4℃で維持した。
(実施例2b)
水和空気/プロパンナノクラスターを実施例2aと同様に生成したが、316及び430グレードのステンレス鋼16mm磁性ポールリング304を使用し、ここでポールリングは、力の磁気空間分布とともに、母液及びゲスト媒体にそこから発散する内部空間クーロン分布を有するように、約100ミクロンの厚さまで静電スプレー堆積を使用してポリテトラフルオロエチレン(PTFE)でスプレーコーティングされた。
【0094】
また、非磁性コーティング及び非コーティングポールリングを用いた実験を行い、様々な充填床二相流構成の2×2要因計画を導いた。
結果
溶媒和酸素リッチナノクラスターを形成することを目的とした大気取り込みの場合、ナノクラスター生成のレベルがどの程度になるかに関して、コーティング及び非コーティングポールリング(磁性及び非磁性)の2×2のケースを評価することが所望された。ナノクラスターの集団は、上記実施例2bによるコーティングされた磁性ポールリングの場合に最大であることが観察された。標準的な酸素滴定分析によるナノクラスター形態での酸素の質量(従来の溶存酸素を超える)について、以下の表2を参照されたい。
【0095】
【表2】
要因計画の統計効果モデルを使用すると、両方の変数が統計的に重要であり、コーティング効果が特に重要であることを確認することができるが、磁性の影響も重要であり、重要な磁性とコーティングの相互作用も含まれる。
(実施例3)
磁性及びコーティングポールリングの優位性を確立した後、システム300をクラスレート-水和物ナノクラスター実験に使用した。プロパン水和物ナノクラスターに関して、ナノクラスター生成器から出た直後に反応滴定分析を利用して、個々の分子として溶解したプロパンのレベル(ヘンリーの法則)、及びナノクラスター形態で流体として溶解したプロパンのレベル(ただし、まだ水和物としては溶解していない)を定量し、それぞれ5bar gで、ヘンリーの法則のレベルの約95%及び3.5倍であった。その後、3時間の定容条件後の下流タンクでは、圧力が安定し、プロパン水和物ナノクラスターが形成された。この場合、圧力が落ち着き、ガスヘッドスペース相から追加のプロパンが吸収され、流体相プロパンナノクラスターからプロパン水和物ナノクラスター(すなわち、微結晶形態)への変換が起こり、分子(ヘンリー)、溶媒和流体ナノクラスター及び水和物微結晶におけるプロパンの質量は、5bar gでそれぞれヘンリーの法則レベルの約97%、1.35倍及び14.3倍であった。結晶性水和物ナノクラスターの占有率は、最大理論レベルの約90%であった。
【0096】
ナノクラスターを生成するための、本明細書で一般に参照数字400で参照される、本発明による代替的な好ましいシステムを図10に示す。システム400は、システム300と実質的に類似しており、同様の要素は同様の参照数字によって示される。システム400とシステム300との主な相違点は、システム400が、不規則充填物404a並びに垂直方向に取り付けられたロッド404b、メッシュ404c及び水平方向に取り付けられたロッド404dの形態の構造化充填物が充填されたベッセル402を含むことである。すべての表面404a、404b、404c及び404dは、磁気、帯電、誘電、分極、疎溶媒性、親溶媒性及び双極子特性のうちの1つ又は複数を有し、それによりシステム400の使用において、表面は、溶媒及びゲスト分子の原子に対してピコニュートンからナノニュートンの範囲(約5pN~10nN)の強度を有する1つ又は複数の空間力分布を発し、容積402内に位置する溶媒中に局所的な密度起伏及び揺れを生じさせる。
表面404b、404c及び404dは、それぞれ独立して電源に接続されてもよい。追加の流体ゲスト媒体供給源415及び導管418を、流体ゲスト媒体供給源315及び導管318の代わりに、又はこれに加えて設けることができる。
【0097】
ベンチュリー350は、マイクロ、メソ、マクロスケールの液滴及び気泡のための代替的な混合器/濃縮機、すなわちジェットスクリュー、アトマイザーなどによって置き換えられてもよい。
本発明の態様は、ほんの例示として記載されており、添付の特許請求の範囲に定義されるその範囲から逸脱することなく、それに対する追加及び/又は変更がなされ得ることが理解されるべきである。
図1
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図3
図4A
図4B
図4C
図4D
図5
図6
図7
図8A
図8B
図9
図10
図11
【手続補正書】
【提出日】2024-03-14
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶媒和ナノクラスターを製造する方法であって、方法が、以下のステップ:
- その中に分布した複数の表面を含む容器を準備するステップ、
- その中に前記溶媒和ナノクラスターが生成される溶媒を、前記溶媒が前記複数の表面に接触するように前記容器に導入するステップ、
- 流体形態のゲスト物質を提供するステップ、及び
- 前記ゲスト物質を前記溶媒中に分布させるステップ
を含み、
前記複数の表面が、不規則充填物若しくは構造化充填物又は両方を含み、
前記充填物が、(i)永久磁性材料、又は(ii)準永久電荷若しくは双極子分極を有する誘電若しくは帯電/分極材料のいずれかから作製されているか又はいずれかでコーティングされており、
前記溶媒和ナノクラスターが、前記溶媒中の前記ゲスト物質の分子のナノスケールの集合体であり、前記ゲスト分子が、前記溶媒の分子の中に混在している、方法。
【請求項2】
前記複数の表面が、約0.1T~約0.5Tの磁気強度を提供するために、永久磁性材料から作製された、又はそれらでコーティングされた充填物を含み、好ましくは前記永久磁性材料がフェライト系ステンレス鋼又はネオジムである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記複数の表面が、約105V/m~約107V/mの範囲のクーロン場強度を提供するために、準永久電荷又は双極子分極を有する誘電又は帯電/分極材料から作製された、又はそれらでコーティングされた充填物を含み、好ましくは前記誘電材料が、樹脂、フルオロポリマー、ワックス、又は内部表面電荷若しくは分極のメモリーを永久的に保持する他の材料から作製されている、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記充填物が、疎溶媒性及び/又は親溶媒性特性を有する領域を提供するためにそれぞれ疎溶媒性及び/又は親溶媒性材料でコーティングされている、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記複数の表面が、永久磁性材料から作製されかつ準永久電荷又は双極子分極を有する誘電又は帯電/分極材料でコーティングされた充填物を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
複数の前記充填物が、約15mm~約150mmのオーダーのサイズを有する充填物を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
流体形態の1種より多くのゲスト物質を提供し、分布させることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
少なくとも1種のゲスト物質がガスを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
少なくとも1種のゲスト物質が、液体、好ましくは水性液体、特に好ましくは脱イオン水を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記溶媒内に分布される前記ゲスト物質が複数の液体を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
前記複数の表面が、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル又はポリテトラフルオロエチレンなどの電気絶縁性コーティングでコーティングされた表面を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記複数の表面が、並列構成で配列された構造化充填物を含み、好ましくは前記充填物がメッシュ構成であり、好ましくは各メッシュ要素が、前記ゲスト物質の送達手段の一部を受容するためのアパーチャを含み、特に好ましくは前記ゲスト物質の前記送達手段が、前記メッシュ要素の前記アパーチャを通って延びるための細長い管状部材を含み、前記ゲスト物質の前記送達手段が、前記容器内の前記ゲスト物質の分布を容易にするための複数の出口アパーチャを含んでもよい、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記方法が、前記容器の内容物を冷却するステップをさらに含み、好ましくは、冷却剤が前記容器内又は前記容器の周囲、例えば外部ジャケット内を循環する、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記方法が、前記容器の内容物を撹拌することをさらに含み、好ましくは前記容器の内容物が、撹拌機、ロッカーによる、又は相間物質移動充填物上の流体-液体接触によって撹拌される、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記容器に音響-超音波若しくは電磁信号を印加することによって、又は前記ナノクラスターを含む前記溶媒に界面活性剤などの化学剤を添加することによって、前記溶媒から前記ナノクラスターを放出するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
請求項1~15のいずれか1項に記載の方法を使用してナノクラスターを製造するための生成器であって、前記生成器が、
その中に分布した複数の表面を含む容器、
溶媒和ナノクラスターが生成される溶媒を、前記溶媒が前記表面に接触するように前記容器に導入するための溶媒入口、及び
流体形態のゲスト物質を前記容器に導入して前記溶媒内に分布させるための流体ゲスト媒体注入口
を含み、前記複数の表面が、不規則充填物若しくは構造化充填物又は両方を含み、前記充填物が、(i)永久磁性材料、又は(ii)準永久電荷又は双極子分極を有する誘電材料のいずれかで作製されているか又はいずれかでコーティングされている、生成器。
【請求項17】
撹拌機などの流体-溶媒乱流生成器をさらに含む、請求項16に記載の生成器。
【請求項18】
パドルホイール、電池、ダイナモなどの、前記容器内に位置する内部電源をさらに含み、好ましくは前記生成器を制御するように構成された制御回路をさらに含む、請求項16に記載の生成器。
【請求項19】
植物の成長を改善するための方法であって、前記方法が、請求項1~15のいずれか1項に記載の方法を使用して生成される空気及びCO2ナノクラスターを含む水を使用して植物に散水することを含み、溶媒が水であり、流体ゲスト媒体が空気及び二酸化炭素を含む、方法。
【請求項20】
溶媒中の排ガス及び空気からCO2及び汚染物質を捕捉するための方法であって、前記方法が、請求項1~15のいずれか1項に記載の方法を使用してナノクラスターを生成することを含み、複数の表面が、準永久電荷又は双極子分極を有する誘電材料でコーティングされた永久磁性材料から作製され、疎溶媒性コーティングでさらにコーティングされた充填物を含む、方法。
【請求項21】
石油、ディーゼル及び油-バイオ系燃料中のガス及び水を捕捉するための方法であって、前記方法が、請求項1~15のいずれか1項に記載の方法を使用してナノクラスターを生成することを含み、溶媒が、石油、ディーゼル及び油-バイオ系燃料の中から選択され、複数の表面が、準永久電荷又は双極子分極を有する誘電材料でコーティングされた永久磁性材料から作製されかつ親溶媒性及び親水性コーティングでさらにコーティングされた充填物を含む、方法。
【請求項22】
液体中で溶媒和ナノスケール特徴を生成するためのシステムであって、前記ナノスケール特徴がガス、液体又は微結晶形態であり、熱力学的溶解度を超える量で存在し、前記システムが、請求項16に記載の生成器及び1つ又は複数のセンサーを含み、好ましくは前記センサーが、容器の内容物に関連する温度を感知するための温度センサー、前記生成器に関連する圧力を感知するための圧力センサー、及び1つ又は複数のpHセンサーの中から選択される、システム。
【請求項23】
前記センサーでモニタリングされたパラメータを所定の間隔で記録するためのデータ取得システムをさらに含む、請求項22に記載のシステム。
【請求項24】
生成されたナノクラスターを貯蔵するための貯蔵ベッセルをさらに含む、請求項22に記載のシステム。
【請求項25】
前記生成器、並びにガス媒体を供給するためのガス供給源、液体媒体を供給するための液体供給源、真空ポンプ、及び恒温槽などの前記容器の内容物を冷却するための冷却手段のうちの1つ又は複数と通信する制御回路をさらに含む、請求項22に記載のシステム。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0097
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0097】
ベンチュリー350は、マイクロ、メソ、マクロスケールの液滴及び気泡のための代替的な混合器/濃縮機、すなわちジェットスクリュー、アトマイザーなどによって置き換えられてもよい。
本発明の態様は、ほんの例示として記載されており、添付の特許請求の範囲に定義されるその範囲から逸脱することなく、それに対する追加及び/又は変更がなされ得ることが理解されるべきである。

本発明のまた別の態様は、以下のとおりであってもよい。
〔1〕溶媒和ナノクラスターを製造する方法であって、方法が、以下のステップ:
- その中に分布した複数の表面を含む容器を準備するステップ、
- その中に前記溶媒和ナノクラスターが生成される溶媒を、前記溶媒が前記複数の表面に接触するように前記容器に導入するステップ、
- 流体形態のゲスト物質を提供するステップ、及び
- 前記ゲスト物質を前記溶媒中に分布させるステップ
を含み、前記複数の表面が、不規則充填物若しくは構造化充填物又は両方を含み、前記充填物が、(i)永久磁性材料、又は(ii)準永久電荷若しくは双極子分極を有する誘電若しくは帯電/分極材料のいずれかから作製されているか又はいずれかでコーティングされている、方法。
〔2〕前記複数の表面が、約0.1T~約0.5Tの磁気強度を提供するために、永久磁性材料から作製された、又はそれらでコーティングされた充填物を含み、好ましくは前記永久磁性材料がフェライト系ステンレス鋼又はネオジムである、前記〔1〕に記載の方法。
〔3〕前記複数の表面が、約10 5 V/m~約10 7 V/mの範囲のクーロン場強度を提供するために、準永久電荷又は双極子分極を有する誘電又は帯電/分極材料から作製された、又はそれらでコーティングされた充填物を含み、好ましくは前記誘電材料が、樹脂、フルオロポリマー、ワックス、又は内部表面電荷若しくは分極のメモリーを永久的に保持する他の材料から作製されている、前記〔1〕又は前記〔2〕に記載の方法。
〔4〕前記充填物が、疎溶媒性及び/又は親溶媒性特性を有する領域を提供するためにそれぞれ疎溶媒性及び/又は親溶媒性材料でコーティングされている、前記〔1〕~〔3〕のいずれか1項に記載の方法。
〔5〕前記複数の表面が、永久磁性材料から作製されかつ準永久電荷又は双極子分極を有する誘電又は帯電/分極材料でコーティングされた充填物を含む、前記〔1〕~〔4〕のいずれか1項に記載の方法。
〔6〕複数の前記充填物が、約15mm~約150mmのオーダーのサイズを有する充填物を含む、前記〔1〕~〔5〕のいずれか1項に記載の方法。
〔7〕流体形態の1種より多くのゲスト物質を提供し、分布させることを含む、前記〔1〕~〔6〕のいずれか1項に記載の方法。
〔8〕少なくとも1種のゲスト物質がガスを含む、前記〔1〕~〔7〕のいずれか1項に記載の方法。
〔9〕少なくとも1種のゲスト物質が、液体、好ましくは水性液体、特に好ましくは脱イオン水を含む、前記〔1〕~〔8〕のいずれか1項に記載の方法。
〔10〕前記溶媒内に分布される前記ゲスト物質が複数の液体を含む、前記〔7〕に記載の方法。
〔11〕前記複数の表面が、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル又はポリテトラフルオロエチレンなどの電気絶縁性コーティングでコーティングされた表面を含む、前記〔1〕~〔10〕のいずれか1項に記載の方法。
〔12〕前記複数の表面が、並列構成で配列された構造化充填物を含み、好ましくは前記充填物がメッシュ構成であり、好ましくは各メッシュ要素が、前記ゲスト物質の送達手段の一部を受容するためのアパーチャを含み、特に好ましくは前記ゲスト物質の前記送達手段が、前記メッシュ要素の前記アパーチャを通って延びるための細長い管状部材を含み、前記ゲスト物質の前記送達手段が、前記容器内の前記ゲスト物質の分布を容易にするための複数の出口アパーチャを含んでもよい、前記〔1〕~〔11〕のいずれか1項に記載の方法。
〔13〕前記方法が、前記容器の内容物を冷却するステップをさらに含み、好ましくは、冷却剤が前記容器内又は前記容器の周囲、例えば外部ジャケット内を循環する、前記〔1〕~〔12〕のいずれか1項に記載の方法。
〔14〕前記方法が、前記容器の内容物を撹拌することをさらに含み、好ましくは前記容器の内容物が、撹拌機、ロッカーによる、又は相間物質移動充填物上の流体-液体接触によって撹拌される、前記〔1〕~〔13〕のいずれか1項に記載の方法。
〔15〕前記容器に音響-超音波若しくは電磁信号を印加することによって、又は前記ナノクラスターを含む前記溶媒に界面活性剤などの化学剤を添加することによって、前記溶媒から前記ナノクラスターを放出するステップをさらに含む、前記〔1〕~〔14〕のいずれか1項に記載の方法。
〔16〕前記〔1〕~〔15〕のいずれか1項に記載の方法を使用してナノクラスターを製造するための生成器であって、前記生成器が、
その中に分布した複数の表面を含む容器、
溶媒和ナノクラスターが生成される溶媒を、前記溶媒が前記表面に接触するように前記容器に導入するための溶媒入口、及び
流体形態のゲスト物質を前記容器に導入して前記溶媒内に分布させるための流体ゲスト媒体注入口
を含み、前記複数の表面が、不規則充填物若しくは構造化充填物又は両方を含み、前記充填物が、(i)永久磁性材料、又は(ii)準永久電荷又は双極子分極を有する誘電材料のいずれかで作製されているか又はいずれかでコーティングされている、生成器。
〔17〕撹拌機などの流体-溶媒乱流生成器をさらに含む、前記〔16〕に記載の生成器。
〔18〕パドルホイール、電池、ダイナモなどの、前記容器内に位置する内部電源をさらに含み、好ましくは前記生成器を制御するように構成された制御回路をさらに含む、前記〔16〕又は前記〔17〕に記載の生成器。
〔19〕植物の成長を改善するための方法であって、前記方法が、前記〔1〕~〔15〕のいずれか1項に記載の方法を使用して生成される空気及びCO 2 ナノクラスターを含む水を使用して植物に散水することを含み、溶媒が水であり、流体ゲスト媒体が空気及び二酸化炭素を含む、方法。
〔20〕溶媒中の排ガス及び空気からCO 2 及び汚染物質を捕捉するための方法であって、前記方法が、前記〔1〕~〔15〕のいずれか1項に記載の方法を使用してナノクラスターを生成することを含み、複数の表面が、準永久電荷又は双極子分極を有する誘電材料でコーティングされた永久磁性材料から作製され、疎溶媒性コーティングでさらにコーティングされた充填物を含む、方法。
〔21〕石油、ディーゼル及び油-バイオ系燃料中のガス及び水を捕捉するための方法であって、前記方法が、前記〔1〕~〔15〕のいずれか1項に記載の方法を使用してナノクラスターを生成することを含み、溶媒が、石油、ディーゼル及び油-バイオ系燃料の中から選択され、複数の表面が、準永久電荷又は双極子分極を有する誘電材料でコーティングされた永久磁性材料から作製されかつ親溶媒性及び親水性コーティングでさらにコーティングされた充填物を含む、方法。
〔22〕液体中で溶媒和ナノスケール特徴を生成するためのシステムであって、前記ナノスケール特徴がガス、液体又は微結晶形態であり、熱力学的溶解度を超える量で存在し、前記システムが、前記〔16〕~〔18〕のいずれか1項に記載の生成器及び1つ又は複数のセンサーを含み、好ましくは前記センサーが、容器の内容物に関連する温度を感知するための温度センサー、前記生成器に関連する圧力を感知するための圧力センサー、及び1つ又は複数のpHセンサーの中から選択される、システム。
〔23〕前記センサーでモニタリングされたパラメータを所定の間隔で記録するためのデータ取得システムをさらに含む、前記〔22〕に記載のシステム。
〔24〕生成されたナノクラスターを貯蔵するための貯蔵ベッセルをさらに含む、前記〔22〕又は前記〔23〕に記載のシステム。
〔25〕前記生成器、並びにガス媒体を供給するためのガス供給源、液体媒体を供給するための液体供給源、真空ポンプ、及び恒温槽などの前記容器の内容物を冷却するための冷却手段のうちの1つ又は複数と通信する制御回路をさらに含む、前記〔22〕~〔24〕のいずれか1項に記載のシステム。
【国際調査報告】