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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-02
(54)【発明の名称】先進高強度鋼の機械的接合
(51)【国際特許分類】
   B21D 39/03 20060101AFI20240925BHJP
   B21J 15/00 20060101ALI20240925BHJP
   B23K 11/11 20060101ALI20240925BHJP
   B23K 26/22 20060101ALI20240925BHJP
【FI】
B21D39/03 B
B21J15/00 V
B23K11/11 540
B23K26/22
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2024506515
(86)(22)【出願日】2022-08-03
(85)【翻訳文提出日】2024-03-21
(86)【国際出願番号】 US2022039244
(87)【国際公開番号】W WO2023014767
(87)【国際公開日】2023-02-09
(31)【優先権主張番号】63/228,726
(32)【優先日】2021-08-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】17/878,993
(32)【優先日】2022-08-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519286865
【氏名又は名称】ユーティカ エンタープライジズ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100121441
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 竜平
(74)【代理人】
【識別番号】100154704
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 真大
(74)【代理人】
【識別番号】100206151
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 惇志
(74)【代理人】
【識別番号】100218187
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 治子
(74)【代理人】
【識別番号】100227673
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 光起
(74)【代理人】
【識別番号】100231038
【弁理士】
【氏名又は名称】正村 智彦
(72)【発明者】
【氏名】サヴォイ マーク エー
(72)【発明者】
【氏名】モーガン フィリップ ジェイ アイ
【テーマコード(参考)】
4E165
4E168
【Fターム(参考)】
4E165AA02
4E165AA03
4E165AB02
4E165AB23
4E165BA01
4E165BB02
4E165BB12
4E168BA02
4E168BA16
4E168BA85
4E168BA88
(57)【要約】
鋼材を機械的に接合する方法であり、先進高強度鋼(AHSS)の少なくとも一部分を含む複数のシートメタル部分のスタックに可変クランプ力を適用する。スタックを最適な機械的接合温度まで加熱し、スタックの強度と材料特性を維持しながら、先進高強度鋼との機械的接合を形成する。本発明の方法を実施するツール及びシステム、並びに本発明の方法により形成された接合アセンブリを提供する。
【選択図】図2

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼材を機械的に接合する方法であって、
少なくとも先進高強度鋼(AHSS)の一部分を含む複数のシートメタル部分のスタックに可変クランプ力を加えるステップと、
前記スタックを最適な機械的接合温度まで加熱して、前記スタックの強度と材料特性を維持し、かつ前記AHSSとの機械的接合を形成するステップとを含む方法。
【請求項2】
前記スタックをその溶融温度未満の温度まで加熱するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記スタックの接合領域の熱影響部(HAZ)部分を加熱するステップをさらに含む請求項2に記載の方法。
【請求項4】
加熱中に前記スタックのHAZ部分の温度を制御及び監視するステップをさらに含む請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記スタックをレーザアセンブリで加熱するステップをさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記スタックを一対の電極で加熱するステップをさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記一対の電極を用いて前記可変クランプ力を加えるステップをさらに含む請求項6に記載の方法。
【請求項8】
アクチュエータを作動させて前記機械的接合を形成するステップをさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記アクチュエータを作動させて、前記可変クランプ力を加え、同じ作動により前記機械的接合を形成するステップをさらに含む請求項8記載の方法。
【請求項10】
請求項1に記載の方法により形成された機械的接合部。
【請求項11】
鋼材を機械的に接合する方法であって、
少なくとも先進高強度鋼(AHSS)の一部分を含む複数のシートメタル部分のスタックをクランプするステップと、
前記スタックを溶融温度未満の温度まで加熱して、前記スタックを機械的に結合するステップとを含む方法。
【請求項12】
前記スタックの接合領域の熱影響部(HAZ)部分を加熱するステップをさらに含む請求項11に記載の方法。
【請求項13】
加熱中に前記スタックの前記HAZ部分の温度を制御及び監視するステップをさらに含む請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記スタックをレーザアセンブリで加熱するステップをさらに含む請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記スタックを一対の電極で加熱するステップをさらに含む請求項11に記載の方法。
【請求項16】
前記一対の電極で可変クランプ力を加えるステップをさらに含む請求項15に記載の方法。
【請求項17】
アクチュエータを作動させて前記機械的接合を形成するステップをさらに含む請求項11に記載の方法。
【請求項18】
前記アクチュエータを作動させ、前記可変クランプ力を加え、同じ作動により前記機械的接合を形成するステップをさらに含む請求項17に記載の方法。
【請求項19】
少なくとも先進高強度鋼の一部分を含む複数のシートメタル部分のスタックをクランプする一対のクランプ面と、
前記一対のクランプ面を備え、前記スタックに電流を流して前記スタックを加熱し、機械的接合を形成して前記スタックを結合する一対の電極と、を備えるツールアセンブリ。
【請求項20】
オートメーションに取り付けられるように適合されたエンドエフェクタである請求項19に記載のツールアセンブリ。
【請求項21】
機械的接合を形成する機械的接合動作を行うアクチュエータをさらに含む請求項19に記載のツールアセンブリ。
【請求項22】
前記アクチュエータが、前記一対のクランプ面を作動させて、前記複数のシートメタル部分のスタックをクランプする請求項21に記載のツールアセンブリ。
【請求項23】
少なくとも先進高強度鋼の一部分を含む複数のシートメタル部分のスタックをクランプするツールアセンブリと、
前記スタックを所定の温度に加熱して、前記スタックに最適な延性を与えて機械的接合を形成する電極配列と、
前記ツールアセンブリと電気的に通信し、前記スタックの熱影響ゾーンの接合温度を監視する制御装置と、を備えるシステム。
【請求項24】
前記ツールアセンブリが、前記スタックを最適な温度に加熱して機械的接合を形成するレーザアセンブリをさらに含む、請求項23に記載のシステム。
【請求項25】
保護コーティングを備える先進高強度鋼の少なくとも一部分と、
前記保護コーティングを有する先進高強度鋼の少なくとも一部分と機械的に接合された金属部品であって、前記保護コーティングが、前記機械的接合内の前記少なくとも一部分と前記金属部品との間にある金属部品と、を備えるアセンブリ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
・関連出願の相互参照
本出願は、2021年8月3日に出願された米国仮出願第63/228,726号の利益を主張する、2022年8月2日に出願された米国特許出願第17/878,993号の優先権を主張するものであり、参照することにより、これらの開示内容の全体が本明細書に取り込まれる。
【0002】
本明細書の様々な実施形態は先進高強度鋼(AHSS)の機械的接合に関する。
【背景技術】
【0003】
2017年11月14日にUtica Enterprises, Inc.に発行されたSavoyらの米国特許9,815,109 B2には、先進高強度鋼を機械的に接合する装置と方法が開示されている。
【発明の概要】
【0004】
一実施形態によれば、一つの方法は、複数のシートメタル部分のスタックに可変クランプ力を加える。スタックは最適な機械的接合温度に加熱され、その強度及び材料特性を維持しながら、先進高強度鋼との機械的接合を形成する。
【0005】
別の一実施形態によれば、一つの方法は、先進高強度鋼の少なくとも一部分を含む複数のシートメタル部分のスタックをクランプする。スタックは、溶融温度未満の温度に加熱され、互いに機械的に接合される。スタックの熱影響部(HAZ)部分として知られる接合領域の温度は、加熱中に制御及び監視される。
【0006】
別の一実施形態によれば、ツールアセンブリは、先進高強度鋼の少なくとも一部分を含む複数のシートメタル部分のスタックをクランプするための一対のクランプ面を備える。一対の電極は、スタックに圧力及び電流を流してスタックを加熱し、機械的接合を形成してスタックを互いに結合するための一対のクランプ面を備える。
【0007】
別の一実施形態によれば、先進高度鋼の少なくとも一部分を含む複数のシートメタル部分のスタックをクランプするツールアセンブリを備えたシステムが提供される。スタックを所定の温度に加熱し、スタックに最適な延性を与えて機械的接合を形成する電極配置が提供される。制御装置は、ツールアセンブリと電気的に通信しており、スタックの熱影響部の接合温度をモニタリングしている。
【0008】
さらなる位置実施形態によれば、ツールアセンブリは、スタックを最適な温度に加熱して機械的接合を形成するレーザアセンブリを備える。
【0009】
別の一実施形態によれば、アセンブリは、保護コーティングが施された先進高強度鋼の少なくとも一部分を備える。金属部品は、先進高強度鋼の少なくとも一部分と機械的に接合される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、一実施形態における、先進高強度鋼を機械的に接合するシステムの概略図である。
図2図2は、他の一実施形態における、先進高強度鋼を機械的に接合するシステムの概略図である。
図3図3は、別の一実施形態における、C型フレームとレーザ加熱を採用することができる、先進高強度鋼を機械的に接合するツールアセンブリの側面図である。
図4図4は、別の一実施形態における、先進高強度鋼を機械的に接合するツールアセンブリの側面図である。
図5図5は、別の実施形態における、先進高強度鋼を機械的に接合する加熱動作中のツールアセンブリの部分断面図である。
図6図6は、図5のツールアセンブリからの熱により影響を受けるゾーンの拡大概略図である。
図7図7は、一実施形態による接合作業の抵抗加熱サイクルのグラフである。
図8図8は、先進高強度鋼を含む様々なグレードの鋼板の、典型的な引張強さと延性を示す一般的なグラフ(バナナチャートとも知られている)である。
図9図9は、別の一実施形態における、先進高強度鋼を機械的に接合するツールアセンブリの分解斜視図である。
図10図10は、図9のツールアセンブリの一部の上面図である。
図11図11は、図10の断面線11-11に沿ってとられたツールアセンブリの断面図である。
図12図12は、図9のツールアセンブリの分解側面図である。
図13図13は、図9のツールアセンブリのロック機構の上面図であり、ロック解除状態で図示されている。
図14図14は、図13のロック機構の一部を拡大して示す平面図である。
図15図15は、図13のロック機構の上面図であり、ロック状態で示されている。
図16図16は、図15のロック機構の一部を拡大して示す平面図である。
図17図17は、図13のロック機構の分解斜視図であり、ロック解除状態で示されている。
図18図18は、図13のロック機構の分解斜視図であり、ロック状態で図示されている。
図19図19は、一実施形態における加熱動作のグラフである。
図20図20は、別の一実施形態における加熱動作のグラフである。
図21図21は、他の一実施形態における加熱動作のグラフである。
図22図22は、別の一実施形態におけるツールアセンブリの斜視図である。
図23図23は、格納位置にある図22のツールアセンブリの部分断面図である。
図24図24は、加熱位置にある図22のツールアセンブリの部分断面図である。
図25図25は、接合位置にある図22のツールアセンブリの部分断面図である。
図26図26は、機械的接合のために先進高強度鋼である第1のシート部分と金属である第2のシート部分とをクリンチングする準備段階にある装置の一部を示す図である。
図27図27は、パンチを最初に下方移動させて、複数のシート部分を互いにクリンチングさせた後の、接合の中間段階を示す図である。
図28図28は、パンチの下方移動によって複数のシート部分の相互の機械的結合が完了した状態を示し、別のサイクルのためにパンチを上方移動させる前の状態を示す。
図29図29は、図28と同様の図であり、クリンチ・リベットダイと、リベットラム(rivet ram)によって移動されるクリンチ・リベットにより機械的接合された後の複数のシート部分を示す図である。
図30図30は、図29と同様の図であり、フルパンチリベットダイと、リベットラムによって移動されるフルパンチリベットにより機械的接合された後の複数のシート部分を示す図である。
図31図31は、図29及び30と同様の図であり、リベットラムによって移動され、かつセルフピアシングリベットダイによってバックアップされたセルフピアシングリベットによって互いに機械的接合された後の複数のシート部分を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
必要に応じて、本発明の詳細な実施形態が本明細書に開示されているが、開示された実施形態は、様々な代替形態で具体化され得る本発明の単なる例示であることを理解されたい。図は必ずしも縮尺通りではなく、一部の特徴は、特定の構成要素の詳細を示すために誇張又は最小化されている場合がある。したがって、本明細書に開示された特定の構造的及び機能的な詳細は、限定的なものとして解釈されるものではなく、単に、本発明を様々に採用することを当業者に教示するための代表的な基礎として解釈されるものである。
【0012】
制御装置の用語は、様々なコンポーネント及びシステム用の1つ又は複数の制御装置又は制御モジュールとして提供されてよい。制御装置及び制御システムは、任意の数の制御装置を含むことができ、単一の制御装置に統合されていてもよいし、さまざまなモジュールを備えていてもよい。複数の制御装置の一部又は全部は、コントローラ・エリア・ネットワーク(CAN)又は他のシステムによって接続されてもよい。本明細書に開示される任意の制御装置、回路、又は他の電気デバイスは、本明細書に開示される動作を実行するために互いに協働する任意の数のマイクロプロセッサ、集積回路、メモリデバイス(例えば、FLASH、ランダムアクセスメモリ(RAM)、リードオンリーメモリ(ROM)、電気的にプログラム可能なリードオンリーメモリ(EPROM)、電気的に消去可能なプログラマブルリードオンリーメモリ(EEPROM)、又はそれらの他の適切な変形)、及びソフトウェアを含み得ることが認識される。さらに、本明細書に開示される電気デバイスのいずれか1つ以上は、本明細書に開示されるような任意の数の機能を実行するようにプログラムされた非一時的なコンピュータ可読媒体に具現化されるコンピュータプログラムを実行するように構成され得る。
【0013】
最近の鋼材の進歩により、引張強さが700メガパスカル(MPa)から2,000メガパスカルを超える先進高張力鋼(AHSS)グレードが提供されている。AHSSの継続的な進歩には、延性とエネルギー吸収能力を向上させた高強度鋼が含まれる。図8に示すように、AHSSは従来の鋼材よりも強度が高く硬いため、自動車用途では、従来の鋼材と比較して、乗員の安全性の向上と燃費の改善を実現する高強度で軽量な鋼板材料が可能になります。しかしながら、引張強さが980メガパスカル以上になると、この種の薄板鋼材の硬度と延性は、車両組立部品のような従来の鋼材スタックを機械的接合するために従来から利用されてきた接合方法、システム、及びツールアセンブリを用いて機械的接合を形成することが困難になる。
【0014】
AHSSは、例えばボディ・イン・ホワイト(BIW)コンポーネント、衝突エネルギー吸収、クラッシュプロテクション、乗員エリアコンポーネント等、車体製造での使用に特に有用である。AHSSは、より薄いゲージを使用しながら高強度を提供し、その結果、卓越した強度と製造性を持ちながら、車両のエネルギー効率を高める軽量構造を実現する。しかし、このような硬い先進高強度鋼は、機械的接合が可能なほどの延性がない。例えば、一部のAHSSを抵抗スポット溶接すると、望ましくない抵抗スポット溶接継手が発生する可能性があり、特にMnB+HF鋼のようなホットスタンプ・プレス硬化鋼では、継手不良が発生する可能性がある。
【0015】
図1は、一実施形態における、AHSSを機械的接合するためのシステム100を示す。図示された実施形態では、システム100は、レーザアシスト熱接合システム100である。接合システム100は、インテグレータ制御盤又はコントローラ104と電気的に通信する、例えば産業用ロボット102等のフレキシブルオートメーションを含む。コントローラ104は、メインライン制御盤106と電気的に通信していてもよい。
【0016】
接合システム100は、産業用ロボット102による機械的関節のためのエンドエフェクタ108を含む。描かれているエンドエフェクタ108は、クラス1レーザセーフエンドのアームツールアセンブリ108であり、材料のスタック(少なくとも1つのAHSSシートメタル部分を含む)をレーザで加熱し、かつクリンチング又はリベッティングすることによりAHSSを機械的接合する、一般的なクリンチ接合システムとともに示されている。エンドエフェクタ108は、別のエンドエフェクタ110と交換可能であってもよい。エンドエフェクタ110は、クラス1レーザセーフエンドのアームツールアセンブリ110であり、これはレーザで加熱して材料のスタックをリベット接合することによってAHSSを機械的に接合する一般的なリベット接合システム110として示されている。エンドエフェクタ108、110の各々は、エンドエフェクタ108、110の電気アクチュエータ及びポジショナを制御するための電力及び通信ライン112、114により制御装置104に接続されている。エンドエフェクタ108、110bの態様は、2017年11月14日にUtica Enterprises, Inc.に発行されたSavoyらの米国特許番号US 9,815,109 B2の教示を採用することができ、当該文献は参照することによりその全体が本明細書に組み込まれる。レーザ加熱システム100と共に使用するために、他の機械的接合プロセスが企図されてよい。
【0017】
接合システム100は、クローズドループチラーを備えた統合レーザシステム116を含む。レーザシステム116は、電源ライン118及び通信ライン120によって制御盤104に接続されている。レーザシステム116は、レーザビームファイバ供給ケーブル122と冷却回路124を、各ツール108、110に供給する。制御装置104は、ロボット102、エンドエフェクタ108、110及びレーザシステム116と通信し、ロボットがエンドエフェクタ108、110をシートメタル部(portion)のスタックに提示するようにしている。レーザシステム116は、レーザセーフエンドエフェクタ108、110でスタックを加熱する。その後、エンドエフェクタ108、110がスタックを機械的に接合し、機械的インターロックを形成する。接合システム100は、Savoyらの米国特許番号US 9,815,109 B2の教示を採用してよい。あるいは、産業用ロボット102を利用することなく、ペデスタル固定具170が制御パネル104及び統合レーザシステム116と通信して、加熱及び機械的接合動作を実行するようにしてもよい。
【0018】
図2は、別の実施形態によるAHSSを機械的に接合するシステム130を示す。図示された実施形態では、システム130は抵抗熱接合システム130である。この接合システム130は、統合制御及び配電用パネル、又は制御装置134と電気的に通信する、産業用ロボット132を含む。制御装置134は、前記実施形態と同様に、メインライン制御盤106と電気的に通信していてもよい。
【0019】
接合システム130は、産業用ロボット132による機械的関節動作のためのエンドエフェクタ136を含む。描かれているエンドエフェクタ136は、アームツールアセンブリ136の熱接合エンドであり、少なくとも1つのAHSSシートメタル部を含む材料スタックを、電極アセンブリを用いて加熱して機械的に接合する、一般的なクリンチ接合システムで示されている。エンドエフェクタ136はまた、アームツールアセンブリ136のリベット接合エンドであってもよい。エンドエフェクタ136は、他のエンドエフェクタと交換可能であってもよい。エンドエフェクタ136は、電力及び通信ライン138、140を介して、エンドエフェクタ136の電気アクチュエータ及びポジショナを制御する制御装置134に接続されており、制御装置134は、通信ライン128を介してタイマー142と通信している。
【0020】
接合システム130は、エンドエフェクタ136上の電極アセンブリと電気的に通信するタイマー142を含む。制御装置134は、ロボット132、エンドエフェクタ136、及びタイマー142と通信し、ロボット132がエンドエフェクタ136をシートメタル部のスタックに提示するようにする。タイマー142は、スタック内の熱影響部(HAZ)の温度を監視しながら、エンドエフェクタ136において、HAZ接合領域に電流を向けてスタックを加熱する。それから、エンドエフェクタ136がスタックを機械的に接合する。接合システム130は、Savoyらの米国特許番号US 9,815,109 B2の教示を採用してもよい。あるいは、産業用ロボット132を利用することなく、ペデスタル固定具170が、制御装置134及びタイマー142と通信して、加熱及び機械的接合動作を実行するようにしてもよい。
【0021】
図3は、エンドエフェクタ108、110又は136をより詳細に示す。一実施形態によれば、エンドエフェクタ136は、ツールアセンブリ136の、ロボティクスレーザアシストクリンチ及びリベット接合エンドである。エンドエフェクタ136は、産業用ロボット132のアームの末端の取付けプレートに取付けられる取付けブラケット144を含む。ブラケット144はフレーム146に接続されており、これはエンドエフェクタ136の機能部品を支持するための溶接品であってもよい。フレーム146はC字形状に形成されてもよく、これはしばしばCフレームと呼ばれ、設計上、機械的接合動作中に発生するあらゆる力を含む。エンドエフェクタ136は、例えばクリンチングやリベッティング等の接合動作を行うためのアクチュエータ148を含む。図示している実施形態では、アクチュエータ148はサーボドライバモータ148である。例えば空気圧、油圧等の他のアクチュエータが適用されてもよい。サーボアクチュエータ148は、スタックに届きかつアクセスできるように、ブラケット144から間隔をあけてフレーム146上に配置されている。
【0022】
レーザコリメータ150は、フレーム146に設けられており、コヒーレントレーザビーム152を生成するための焦点光学系とコリメート光学系を備えている。レーザシステム116は、スタックのHAZを照射するレーザビーム152を生成するのに利用される。レーザビーム152は、Cフレーム146を通して正確に照射され、Cフレーム146内に安全に閉じ込められる。フレーム146は、レーザビーム152に対して安全な経路を提供するために、凹部を有してもよい。フレーム146には、高速パイロメータと固定されたレーザビームベンダー154が設けられており、これらはフレーム146を通してレーザビーム152を安全に導く。調整可能なレーザビームベンダー156が、ベンダー154から間隔をあけてフレーム146に設けられており、加熱されて機械的接合を形成しているスタックのHAZ内でレーザビーム152を正確に方向転換させる。
【0023】
エンドエフェクタ136は、フレーム146上に支持され、材料のスタックを処理するために露出している機械的接合ツール158を含む。ツール158は、スタックに接触し、レーザビーム152をスタック上で完全に封止し、その状況にて最適化された熱影響部(HAZ)を生成するために利用される。ツール158は、アクチュエータ148の出力端から離間して対向し、アクチュエータ148と協働して接合動作を協働で提供する。冷却装置が、アクチュエータ148及び/又はツール158の出力端に設けられて、エンドエフェクタ136又はツールを動作中の過剰な熱から隔離するようにしてもよい。エンドエフェクタ136は、産業用ロボット132と共に動作するレーザ一体型接合アセンブリを提供し、ここでレーザビーム152は、クラスIレーザ安全として分類されるように収容され、例えばセーフティブース又はセーフティメリメータ等の追加のレーザ安全装置を必要としない。
【0024】
次に図4を参照すると、ペデスタル固定具170は、ロボット制御により又はオペレータの手動により処理される部品/アセンブリを受ける独立型の固定具である。ペデスタル固定具170は、例えば床等の支持面、又はプレス等の他の装置に支持される大きさである。また、図示されているように、工具174を有するアクチュエータ172等のような工具の1つを支持するように構成されてもよい。ツール174は、材料のスタックをレーザで加熱し、次いでリベット接合することで、AHSSを機械的に接合するリベット接合ツールシステムである。ペデスタル固定具170は、AHSSの機械的接合のための他の工具108、136の1つと組み合わせて利用されてよい。ペデスタル固定具170は、下にある支持面に対して、又はプレス等の他のオートメーションに対して、ある向きでツール174を支持する。ペデスタル固定具170は、制御盤176と電気的に通信しており、この制御盤176は、前述した実施形態の制御盤104、106、134の1つと通信することができる。あるいは、制御装置176は、制御盤104、106、134のうちの1つに統合されたモジュールであってもよい。
【0025】
図5はAHSSを接合するためのツールアセンブリ20を示しており、これは前述の実施形態の固定具158及び出力ツールアセンブリ162として、エンドエフェクタ108、110、136、170に設けられてよい。ツールアセンブリ20は一対のサブアセンブリ22、24を含み、これらは順に、第1のサブアセンブリ22及び第2のサブアセンブリ24と称される。ツールアセンブリ20は、プレス若しくは固定具、又はロボット等の自動化装置に設けられてもよく、ワークピースを接合するために、一対のツールサブアセンブリ22、24をワークピースに提示してもよい。
【0026】
第1の工具サブアセンブリ22は、電極28とクランプ面30とを備えたハウジングを含む。同様に、第2の工具サブアセンブリ24は、電極34とクランプ面36とを備えるハウジングを含む。電極28、34は、最適化されたHAZを形成するように、それぞれのハウジングに対して、内側に中央より(oriented centrally inboard)に配置されている。
【0027】
機械的に接合されるシートメタル材料のスタックが提供される。シートメタルのスタックは、機械的インターロックによって接合される少なくとも2つの金属層を含む。
図示された実施形態では、スタックは、互いに接触してプレスされる、鋼材である2つのシート38、40を含む。スタックには、様々な機械的インターロックのために、様々な量及び種類の材料成分又はシートが設けられてもよい。スタック38、40は、オートメーションによって接触してプレスされてもよい。スタックの2枚のシート38、40はそれぞれAHSSで形成されてもよい。別の実施形態によれば、スタックの一方のシート38、40がAHSSから形成され、他方のシート38、40は、他の同種材料又は異種材料から形成されてよい。
【0028】
スタックの2枚のメタルシート38、40は、ツールアセンブリ20による接合動作のために接触して提供される。2枚のシートが図示されているが、さらなるメタルシートを追加して加熱し、HAZ42において機械的接合を形成してもよい。電極28、34のクランプ面30、36の間でスタック38、40に正しい抵抗を与えるように、制御された力が電極28、34に加えられる。電極28、34は、加熱動作中にシート38、40に接触する唯一の導電性材料である。制御された電流44が、電極28、34を通って金属シート38、40を通り、抵抗によって熱を発生させ、HAZ42内でシート38、40を機械的に接合し、電極電流経路におけるクランプ面30、36のHAZ42内に位置する接合部を形成する。HAZ42は、スタックへの接合作業を行うために熱処理の影響を受けるスタックの複数の層にわたる領域である。そして機械的接合はHAZ42内に形成される。
【0029】
電極28、34のクランプ面30、36は、アクチュエータ148によって共にクランプされる。アクチュエータ148とコントローラ104は、加熱サイクル中にクランプ力を調整又は維持する制御を行う。例えば80キロニュートンの駆動能力を有するサーボドライバ148は、適用可能な全てのクランプ要件及び機械的接合の要件を処理しながら効率的なロボット関節動作を行えるように十分に軽量である。制御可能なアクチュエータ148を使用することにより、クランプ力は、例えばツールの後退を補助するためのストリッパースプリング等の典型的な機械的接合ツールのような、バネ戻しにより制限されない。様々な機械的接合スタックは、異なるクランプ力及び接合力の要件を有しており、アクチュエータ148は、制御装置64、104によって制御され、処理される関連する材料のスタックに対して正しいクランプ力及び接合力を提供する。
【0030】
第2の工具サブアセンブリ24は、ハウジング内にレーザビーム46を含んでもよい。レーザビーム46は、材料シート38、40を加熱するためにも利用することができる。レーザビーム46の追加は、電極28、34と組み合わせて使用される場合にシート38、40の加熱効率を増加させ、それにより、結果的に、熱接合動作の工程時間を短縮するか、又は代替的に加熱してサイクルタイムを改善することができる。レーザビーム46は、Savoyらの米国特許番号US 9,815,109 B2の教示を採用してもよい。レーザビーム46は、第1シート40を照射して第1及び第2シート38、40を加熱する。第2のシート38は、付随的なシート(incident)でもよく、レーザサブアセンブリ136によってアクセス可能なトップシート38であってもよい。第1のシート40が、トップシート38であってもよいし、いずれかのシート38、40であってもよい。
【0031】
ツールアセンブリ20は、加熱領域に応じて、スタックにおいて正しい接合温度を提供するために、HAZ42の温度を監視する少なくとも1つのセンサ48を含む。センサ48は、第1のツールサブアセンブリ22又は第2のツールサブアセンブリ24に設けられてよい。別の実施形態によれば、各ツールサブアセンブリ22、24にセンサ48が設けられ、第1のシート40及び第2のシート38におけるHAZ42の温度を監視するようにしてもよい。センサ48は例えば赤外線パイロメータ等であってもよい。
【0032】
図6にはシート38、40が概略的に図示されている。各シート38、40は鋼の一次層50、52を含む。シート38、40はそれぞれ、その露出表面が、保護コーティング層54、56、58、60により被覆されている。コーティング層54、56、58、60は、スチール層50、52を錆やその他の汚染から保護する。コーティング層54、56、58、60は、22MnB5鋼、亜鉛合金等上のアルミニウムシリコン層(約90%のアルミニウムと約10%のシリコンを有するAl-Si)から形成されてよい。AHSSコーティングは、熱間成形工程又は他の保護コーティング工程の間、電気亜鉛メッキコーティング工程、亜鉛メッキコーティング工程、溶融浸漬等により作成することができる。
【0033】
再び図5を参照すると、ツールアセンブリ20は、制御装置64を備えた金属接合・加熱システム62に設けられている。コントローラ64は、センサ48と電気的に通信して、温度測定値を受信してHAZ42の温度を監視する。制御装置64はまた、タイマー142と通信し、電極28、34を通る電流を調節し、HAZ42の温度を制御する。
【0034】
コーティング層54、56、58、60は、接合部において鋼材38、40を汚染する可能性があり、これにより液体金属脆化(LME)が生じ、接合部に亀裂が生じ、その結果、接合部が破損する可能性がある。コーティング層54、56、58、60は、鋼の融点よりも低い融点を有してもよい。接合部への被覆層54、56、58、60の汚染(コンタミ)を避ける1つの方法は、HAZ42を特定の接合用途に最適な温度に加熱することである。一実施形態によれば、HAZ42における被覆層54、56、58、60の保護のために、HAZ42は被覆層54、56、58、60の溶融温度に近い温度まで加熱される。例えば、被覆層54、56、58、60は亜鉛から形成され、亜鉛の溶融温度未満、例えば420℃未満の温度まで加熱されてもよい。被覆層54、56、58、60はスタック38、40上に維持され、接合作業完了後のスタック38、40の腐食を回避する。中間コーティング56、58は、LMEを避けるために接合部内に保持されてよい。加熱及び接合作業は、コーティング54、56、58、60の保護を維持するために、十分に速いサイクルタイムで実行される。
【0035】
HAZ42は、クリンチング、セルフピアシングリベット、又はSavoyらの米国特許番号US9,815,109B2に開示された他の締結動作等の熱接合動作を行うために、鋼の溶融温度未満の温度に加熱される。あるいは、2020年12月15日に出願されたSavoyらの米国特許出願17/121,980号に開示され、その全体が参照により本明細書に組み込まれるフロースクリューが接合部に取り付けられてもよい。別の実施形態によれば、金属シート38又は40の一方は、2018年9月6日に公開されたSavoyらのUS2018/0250734号公報(Utica Enterprises,Inc.参照することによりその全体が本明細書に組み込まれる)に開示されるように、クリンチナットに取り付けられてもよい。
【0036】
クランプ力、電流のアンペア数、電流の動作時間、及びレーザの動作時間の変数はすべて、実行される特定の接合作業に対して最適化されたプロセスウィンドウに到達するように、一緒に又は別々に調節してもよい。センサ48はHAZ温度を監視し、その温度が材料組成又は微細構造に過度の損傷を与えないようにする。最適な機械的接合温度は、鋼材38、40の溶融温度未満である。例えば、加熱作業中にレーザ又は電流をオン・オフすることにより、温度を制御したり、あるいはスタック38、40内の1枚以上のシートの最適なHAZを形成してよい。
【0037】
図7は、一実施形態による抵抗加熱シーケンスの概略図の一例である。図7では、力と電流が経時的にグラフ化されている。ゾーンIにおける最初のスクイズ時間(squeeze time)では、電極28、34がスタック38、40上にクランプされ、レーザビーム46と電極28、34を通る電流が開始される。最初のスクイズ時間は、この段階を完了するために、1秒の6サイクル、又はそれ以上かかってもよい。レーザビーム46及び/又は電極は、スタックの厚さ及びAHSS鋼の材種に応じて、およそ、30-75サイクルで、スタック38、40を温度まで加熱する。
【0038】
加熱サイクル中、要求されるクランプ力は制御される。一実施形態によれば、電極電流は増加、パルス化又は減少させてよい。この例では、レーザビーム46と電極28、34は、可変持続時間(variable duration)の間電力が供給され、その後停止される。センサ48が示す温度が特定の最適HAZ温度より低い温度まで降下した場合、電極28、34はパルスを印加されてもよい。そして、センサ48の測定値がHAZ42の接合温度に達するまで、電極28、34の電流は維持又はパルス化される。制御装置及びタイマー・インターフェースによって制御される接合温度を維持し、接合動作のための電流レベル及び温度を制御するのに、電流パルスの量が使用されてもよい。クランプと加熱のサイクルタイムは30-75サイクルと見積もられ、これは0.5-1.25秒である。
【0039】
別の一実施形態によると、ゾーンIIの間、電流を増加させ、それから維持するようしてもよい。制御された加熱動作は、HAZ42内の材料に最適な接合温度を維持する。温度は、電流レベルと加熱動作の時間を変化させるように、制御装置とタイマーによって制御される。
【0040】
ゾーンIIIの接合動作は、プロセスウィンドウの温度範囲内で行われる。しかしながら、急速な加熱とそれに伴う冷却により、接合動作中に温度が変化することがある。そのため、最適な接合温度範囲内でスタック温度が低下しながら接合動作が行われるように計算される。
【0041】
ゾーンIIIの第3の時間範囲では、急冷シーケンスが発生する。機械的接合は、機械的接合動作を仕上げるのに要求される特定の材料の組み合わせごとに決定される最適接合温度で形成される。加熱のみの動作は、約60サイクル又は約1秒であってもよい。
【0042】
図7のゾーンIIの加熱サイクルは、比較的短時間で急激な温度上昇を示す。このような高温でかつこのような短い間隔で、HAZ42内のスタック38、40の溶融温度を回避しながら、金属の加熱を制御するのは困難である。加熱ゾーンIIの電流又はレーザを変化させることで、エネルギーを増加又は減少させて加熱を安定させ、特定のスタックに最適な機械的接合の範囲内で適切な温度を維持することができる。エネルギーを変化させることで、HAZ42内のスチールスタックの臨界温度(例えば溶融温度等)を超えることなく、熱の均一な分布を形成できる。加熱ゾーンIIの温度を監視することで、スタック内の鋼材の溶融温度を超えることなく最適温度に達するように、温度を制御及び維持することができる。溶鋼層38、40を避けることにより、鋼層38、40の強度及び微細構造は、図8のグラフのAHSSの一般的な強度内に留まる。
【0043】
ツールアセンブリ20のコストを低減するために、レーザビーム46が省略されてもよい。この場合、接合動作は、電極28、34への制御電流のみによって行われる。
【0044】
図8は、自動車の製造において特に望ましい、様々なグレードの鋼板の引張強さと延性を示すグラフである。このグラフは、産業界における鋼の発展を示しており、しばしばバナナチャートと呼ばれる。延性は伸び率として示されている。例えばインタースティシャルフリー(IF)鋼、軟鋼、インタースティシャルフリー高強度(IFHS)鋼、ベークハーデナブル(BH)鋼、炭素-マンガン(CMn)鋼、高強度低合金(HSLA)鋼、フェライト-ベイナイト(FB)鋼等の、従来の鋼は、引張強さが1,000MPa未満で、延性は60%から10%未満である。
【0045】
AHSSの開発により、従来の鋼よりも大幅に高い、様々な引張強度範囲が実現した。ねじれ誘起塑性(TWIP)鋼は、少なくとも1,400メガパスカルまでの引張強度の範囲で、AHSSグレードの50%から70%の高い延性を有すると言われている。
【0046】
マルテンサイト/ホットスタンプ(MART)鋼の延性は、10%未満と低く、引張強さは2,000メガパスカルを超える。マンガン-ホウ素熱間成形 (MnB+HF)鋼も、延性は10%未満と低く、引張強さは1,800メガパスカルを超えることもある。マルテンサイト/ホットスタンプ鋼とマンガン-ホウ素熱間成形鋼では、極端な引張強度が得られているが、延性が低いため、材料の延性を向上させることなく、これらの材料を一般的/典型的に機械的に接合することはできない。
【0047】
二相鋼(DP)及び複相鋼(CP)は、最大30%の延性と最大1,400メガパスカルまでの引張強度を提供する。変態誘起塑性(TRIP)鋼は、延性が40%未満で、最大引張強さが1,300メガパスカル未満である。
【0048】
自動車の製造に使用されるAHSSの延性を最適化するため、鉄鋼業界では、従来鋼の延性に近づきつつある、より高い/強化された延性を持つ第三世代のAHSSが開発されている。第三世代のAHSSは、1700メガパスカル以上の引張強度を持つ。鉄鋼業界は、延性を40%以上に高め、引張強度を2,000メガパスカル以上にすることで、衝突エネルギー性能の向上と軽量化を実現する第三世代AHSS鋼種を開発している。第三世代鋼はまた、金属プレス工程で熱間成形することなく、従来のプレス加工が可能な材料を提供するために開発中である。
【0049】
電極加熱を備えたツールアセンブリ20の柔軟性により、スタックのHAZ42を通した高速で、効率的な、均一な加熱が可能になる。レーザビーム46は、加熱エネルギーを1つの表面に集中させるため、スタックの全層を通して均一に熱を伝導するのにさらに時間がかかる。鋼板の反射面やコーティングもまた、追加の保護層により、レーザビーム及び電極による加熱に対して抵抗となる場合がある。また鋼板の反射面やコーティングは、その反射特性及び組成により、レーザビーム及び電極による加熱を阻害する場合もある。HAZ42の温度を監視することにより、システム100、110、170は、HAZ42を効果的かつ最適に加熱し、その一方でスタック38、40内の鋼を溶融させることがなく、HAZ42のスタック内の材料等級の微細構造の一般的特性を維持することができる。
【0050】
HAZ42でスタックの一般的特性を維持することで、機械的接合部の強度が最大化される。接合部内の強度が均一であるため、スタックと同じ一般的特性を持つ接合部が得られる。AHSSの全ての特定等級、及びスタック内の各特定材料の組み合わせについて、接合サイクルタイムを最小限に抑えながら、鋼の臨界温度を超えることなく機械的接合部の完全性を提供するために、図8に示すようなクランプ力、電流、及び時間スケジュールを図表化することができる。
【0051】
図9図12は、別の実施形態によるツールサブアセンブリ200を示す。ツールサブアセンブリ200は、前述の実施形態の1つのエンドエフェクタ108、110、136、170に利用することができる。ツールサブアセンブリ200は、電極アセンブリ198の1つのサブアセンブリである。電極アセンブリ198はまた、第2のツールサブアセンブリを含む。第1の工具サブアセンブリ200及び第2の工具サブアセンブリは、その間にスタックをクランプし、スタックを通して電流を流してHAZ42を加熱する。工具サブアセンブリ200はアクチュエータ148に接続されている。工具サブアセンブリ200は、クランプサブアセンブリ200の構成部品を保持するための第1ボディ202及び第2ボディ204を含む。
【0052】
第1ボディ202は、絶縁ブッシュ206を受けるレセプタクル208を含む。工具サブアセンブリ200は電極210を含む。電極210は、第2ボディ204のレセプタクル208内に受容される外径を有するボディ212を含む。電極ボディ212は、絶縁ブッシュ206によって第1ボディ202から絶縁されている。電極210は、第2ボディ204の開口216(図11)から延びる縮径部214を含む。電極210の遠位端には、クランプ面218が設けられている。絶縁ワッシャ220が、第1ボディ202と、電極ボディ212の軸方向端部との間のレセプタクル208内に設けられている。電極ボディ212の他方の軸方向端部には、別の絶縁ワッシャ222が設けられている。
【0053】
スタッド224は、絶縁ブッシュ206のスロット226を通して電極210に接続されている。スタッド224には、別の絶縁ブッシュ228(図9)が設けられている。ラグ230は、電極210に電流を流すように、ファスナ232によりスタッド224に接続されている。
【0054】
インターロックリング234は、絶縁ワッシャ222の上に軸方向に積層され、複数のピン236により絶縁ワッシャに連結されている。ストップリング238は、インターロックリング234の上に軸方向に積層されている。スプリング240は、インターロックリング234の上に軸方向に積層され、第2ボディ204の空洞244内に延びている。ナット242は第2ボディ204に設けられ、第2ボディ204を第1ボディ202に固定する。パンチホルダ246が第2ボディ204の遠位端を覆っている。パンチ248は、パンチホルダ246を貫通し、電極210を貫通するように延びている。
【0055】
第1及び第2ボディ202、204は、絶縁ブッシュ206、電極210、絶縁ワッシャ220、222、インターロックリング234、ストップリング238、スプリング240及びパンチ248をまとめて保持する。インターロックリング234とストップリング238は協働して、クランプ動作中にスプリング240をバイパスさせ、クランプ力と電流からスプリング240を隔離させる。電極210による加熱が完了すると、リング234、238は移動し、ドライバ148がパンチ248を駆動してスプリング240を圧縮し、クリンチング等の接合動作を行うことを可能にする。その後、スプリング240はパンチ248を戻す。
【0056】
次に図9-12を参照すると、シフトレバー250がストップリング238から半径方向外側に延びている。カプラ249はシフトレバー250に接続されている。カプラ249はアクチュエータ251によって移動される。アクチュエータ251は、リニアアクチュエータであってもよい。シフトレバー250がストップリング238まわりに回転する際に、カプラ249はアクチュエータ251と協働して移動の間(during translation)に旋回する。カプラ249はまた、シフトレバー250と協働して、カプラ249がシフトされるにつれシフトレバー250に沿って移動する。
【0057】
アクチュエータ251によるカプラ249とシフトレバー250の作動及び移動により、ストップリング238は、ロック解除位置(図13、14、17)とロック位置(図15、16、18)の間を回転移動する。ここで図13-18を参照すると、インターロックリング234は、放射状に配列された複数の外向きラグ254を含む。ストップリング238は、これに対応して配列された半径方向内向きの複数のスロット256を含む。各スロット256は、複数のラグ254の1つに対してクリアランスを提供する。図13図14及び図17のロック解除状態では、ストップリング238のスロット256はラグ254と揃っており、それによってストップリング238に対するインターロックリング234の軸方向の移動が許容される。インターロックリング234の軸方向の移動は、ドライバ148がパンチ248を駆動してスプリング240を圧縮することを可能にする。同様に、インターロックリング234の軸方向の移動は、スプリング240の伸長を許容し、それによりパンチ248の後退を補助する。
【0058】
ストップリング238がインターロックリング234と位相がずれて回転するようにシフトされると、クランプサブアセンブリ200のパンチ248がロックされる。図15図16及び図18に示すロック状態では、ストップリング238のスロット256はインターロックリング234のラグ254と揃っていない。この位置では、ストップリング238はラグ254をブロックし、その結果インターロックリング234の直線移動が妨げられる。
【0059】
加熱動作の間、アクチュエータ又は駆動装置148は、電極加熱のためにクランプ面30、36での十分な接触を確保するようにクランプ動作力を与える。加熱が中止されると、アクチュエータ148はクランプ力を解放し、ストップリング238のロック解除を可能とする。次にストップリング238がロック解除位置に移動される。次にドライバ148がパンチ248を作動させ、機械的接合作業を行う。それから、ストップリング238は、次のクランプ動作及び加熱動作のためにロック位置にシフトされる。
【0060】
図19は、前述の実施形態の電極を用いた、AHSSシートとアルミニウムシートの経時的な熱の加熱動作のグラフを示す。シート40の要求される機械的接合温度(約720℃)に、87ミリ秒で到達する一方、この場合の上側のアルミニウムシート38は300℃を超えない。
【0061】
図20は、前述の実施形態の電極を用いたプレス硬化鋼(press hardened steel)に対する加熱動作のグラフである。780℃を超える温度に約0.5秒で到達し、1.25秒間保持される。この加熱動作では、合計約2秒の接合サイクルタイムが得られる。
【0062】
図21は、機械的接合の導入ための溶融亜鉛メッキされた第三世代AHSSの加熱動作のグラフである。スタックは平均380℃の範囲に加熱され、温度は2秒以上その範囲内に維持され、4秒以上380℃以上に維持される。
【0063】
図22-25は、別の一実施形態による代わりのツールアセンブリ260を示す。ツールアセンブリ260はベース262を含み、これは、オートメーション装置による関節運動及び動作のための、基板262、ベースプレート262又はアダプタプレート262であってよい。例えば、プレート262は、アクチュエータ148に取り付けられ、かつアクチュエータ148によって駆動されてもよく、アクチュエータ148は、産業用ロボット102、132によって関節運動されてもよい。
【0064】
ベースプレート262は、複数のガイドシャフト266と複数のダンパー268とを備える引込みアセンブリ264を支持している。ガイドシャフト266は、ベースプレート262に対して軸方向に移動可能である。ダンパー268は、ガススプリング等の流体ダンパー268であってもよい。駆動プレート270は引き込みアセンブリ264に接続されている。電極272は、駆動プレート270に取り付けられ、引き込みアセンブリ264から間隔をあけて配置されるように駆動プレート270から離されている。パンチ274は、図23-25に示され、ベースプレート262に接続され、電極272の中央ボア276を通って延びている。パンチ274は、電極272を通して機械的接合作業を行うための、クリンチパンチ、リベットラム等であってもよい。
【0065】
ツールアセンブリ260の動作中、アクチュエータ148は、電極272がスタックに係合するようにベースプレート262を駆動する。ベースプレート262が図23及び図24からさらに駆動されるにつれて、クランプ力が加えられ、それによって、引込みアセンブリ264に負荷がかかり圧縮される。図25に示されるベースプレート262のさらなる駆動は、引き込みアセンブリ264をさらに圧縮し、それによりパンチ274を駆動させ、電極272を通して、締結具又はスタックに係合させる。
【0066】
ツールアセンブリ260は、クランプし、次いで機械的接合を成形するための、中断されない(連続した)作動を可能にする。ツールアセンブリ260は、ドライバ148を、電極272を加熱しながらクランプし、そしてクランプと成形の間に後退させることなく同じ直線運動でパンチ274を駆動することを可能にする。連続的な駆動動作は、ドライバ148の動作又は出力を中断することなく両方の機能を実行することにより、サイクルタイムを短縮し、工具のライフサイクルを向上させる。
【0067】
図26及び図27の進行に示されるように、各実施形態のクリンチパンチ300及びクリンチダイ302は、互いに協働して、鋼片306及び308の第1及び第2のシート部分を互いに接合するための、図28に示されるようなクリンチ接合部304を提供する。
【0068】
図29を参照すると、リベットラム314の作動下にあるクリンチリベットダイ310とクリンチリベット312は、AHSS片318と金属片320のクリンチリベット接合316を提供する。
【0069】
図30を参照すると、フルパンチリベットダイ322とフルパンチリベット324は、フルパンチリベット接合部326を提供するフルパンチリベット動作を提供する。この実施形態では、打ち抜き片は、リベットラム328によるリベット324の駆動によってダイ322の下方に落下する。
【0070】
図31を参照すると、リベットラムによって駆動され、シート部分338、340間にセルフピアシングリベット接合部336を提供した後のセルフピアシングリベット332が図示されている。シート部分338、340は、成形プロセス中に、ダイ(図示せず)によって支持されてよい。
【0071】
以上、様々な実施形態を説明したが、これらの実施形態が本発明の全ての可能な形態を説明することを意図するものではない。本明細書で使用される言葉は、限定ではなく説明の言葉であり、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく様々な変更がなされ得ることが理解される。さらに、様々な実施形態の特徴を組み合わせて、本発明のさらなる実施形態を形成することもできる。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31
【手続補正書】
【提出日】2023-06-01
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼材を機械的に接合する方法であって、
少なくとも先進高強度鋼(AHSS)の一部分を含む複数のシートメタル部分のスタックにクランプ力を加えるステップと、
前記スタックを最適な機械的接合温度まで加熱して、前記スタックの強度と材料特性を維持し、かつ前記AHSSとの機械的接合を形成するステップと、
前記スタックを一対の電極で加熱するステップと、
前記一対の電極で前記クランプ力を加えるステップとを含み、
前記機械的接合が、前記クランプ力が圧縮を加えた前記スタック内に形成された接続部を含み、
前記クランプ力の一又は複数の変数が、前記機械的接合を形成するのに最適化され、当該変数が、クランプ力、電流のアンペア数及び電流の動作時間を含む方法。
【請求項2】
前記スタックをその溶融温度未満の温度まで加熱するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記スタックの接合領域の一部分を加熱するステップをさらに含む請求項2に記載の方法。
【請求項4】
加熱中に前記スタックの前記接合領域の加熱された部分の温度を制御及び監視するステップをさらに含む請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記スタックをレーザアセンブリで加熱するステップをさらに含み、
前記クランプ力の変数が前記レーザの動作時間をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
アクチュエータを作動させて前記機械的接合を形成するステップをさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記アクチュエータを作動させて、前記クランプ力を加え、同じ作動により前記機械的接合を形成するステップをさらに含む請求項6記載の方法。
【請求項8】
前記アクチュエータを作動させて、クリンチ、クリンチナット、リベット又はフロースクリューにより、前記機械的接合を形成するステップをさらに含む請求項6に記載の方法。
【請求項9】
請求項1に記載の方法により形成された機械的接合部。
【請求項10】
鋼材を機械的に接合する方法であって、
少なくとも先進高強度鋼(AHSS)の一部分を含む複数のシートメタル部分のスタックをクランプするステップと、
前記スタックを溶融温度未満の温度まで加熱して、前記スタックを機械的に結合するステップと、
前記スタックを一対の電極で加熱するステップと、
前記一対の電極で前記クランプ力を加えるステップとを含み、
機械的に接合するステップが、前記クランプ力が圧縮を加えた前記スタック内に機械的接合を接続部として形成するステップを含み、
前記クランプ力の一又は複数の変数が、前記機械的接合を形成するのに最適化され、当該変数が、クランプ力、電流のアンペア数、電流の動作時間及びレーザの動作時間を含んでいる方法。
【請求項11】
前記スタックの接合領域の一部分を加熱するステップをさらに含む請求項10に記載の方法。
【請求項12】
加熱中に前記スタックの前記接合領域の加熱部分の温度を制御及び監視するステップをさらに含む請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記スタックをレーザアセンブリで加熱するステップをさらに含む請求項10に記載の方法。
【請求項14】
アクチュエータを作動させて前記機械的接合を形成するステップをさらに含む請求項10に記載の方法。
【請求項15】
前記アクチュエータを作動させ、前記クランプ力を加え、同じ作動により前記機械的接合を形成するステップをさらに含む請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記アクチュエータを作動させて、クリンチ、クリンチナット、リベット又はフロースクリューにより、前記機械的接合を形成するステップをさらに含む請求項14に記載の方法。
【請求項17】
請求項10に記載の方法により形成された機械的接合。
【国際調査報告】