(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-02
(54)【発明の名称】トンネル掘削機及びトンネル掘削機を用いてトンネルを掘進するための方法
(51)【国際特許分類】
E21D 9/093 20060101AFI20240925BHJP
【FI】
E21D9/093 G
E21D9/093 C
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2024508448
(86)(22)【出願日】2022-09-22
(85)【翻訳文提出日】2024-02-09
(86)【国際出願番号】 EP2022076333
(87)【国際公開番号】W WO2023057217
(87)【国際公開日】2023-04-13
(31)【優先権主張番号】102021126200.3
(32)【優先日】2021-10-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516300597
【氏名又は名称】ヘーレンクネヒト アクツィエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】HERRENKNECHT AKTIENGESELLSCHAFT
(74)【代理人】
【識別番号】100080816
【氏名又は名称】加藤 朝道
(74)【代理人】
【識別番号】100098648
【氏名又は名称】内田 潔人
(72)【発明者】
【氏名】ヴェールマイヤー、ゲルハルト
(72)【発明者】
【氏名】ナタンソン、エミール
(72)【発明者】
【氏名】トレンドル、ヨハネス
【テーマコード(参考)】
2D054
【Fターム(参考)】
2D054AA01
2D054AA02
2D054AC01
2D054BA02
2D054GA02
2D054GA04
2D054GA24
2D054GA64
(57)【要約】
【課題】比較的簡単で且つ稼働確実性のある操作により傑出するトンネル掘削機及びトンネル掘削機を用いてトンネルを掘進するための方法を提示する。
【解決手段】トンネル掘削機(103)において、切削ホイール(106)に作用する掘進プレス手段(109)を、トンネル掘削機(103)に関連する座標系(154、157)内で目標全圧力重心(151)の座標値を直接的に入力することを介して制御する構成が設けられている。それにより機械オペレータには、比較的に簡単なトンネル掘削機(103)の制御が提供される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
切削ホイール(106)と、所定数の掘進プレス手段(109)と、掘進プレス手段制御ユニット(115)と、視覚化手段(148)とを備えたトンネル掘削機であって、
前記掘進プレス手段(109)を用い、前記切削ホイール(106)は、掘進方向において移動可能であり、前記掘進プレス手段制御ユニット(115)を用い、前記掘進プレス手段(109)又は前記掘進プレス手段(109)のグループは、駆動制御可能であり、前記視覚化手段(148)は、前記掘進プレス手段(109)又は前記掘進プレス手段(109)のグループの圧力作用から得られる現在全圧力重心(166)を視覚化するように構成されており、
入力手段(130)が設けられており、前記入力手段(130)は、目標全掘進力(F
ges)を予設定するために構成されていること、
前記視覚化手段(148)は、目標全圧力重心(151)と前記現在全圧力重心(166)を表示するように構成されていること、
前記掘進プレス手段制御ユニット(115)と接続された操作ユニット(118)が設けられており、前記操作ユニット(118)は、前記現在全圧力重心(166)を前記目標全圧力重心(151)に少なくとも近づけることのために、前記トンネル掘削機(103)に関連する座標系(154、157)内で座標値(CoT
x、CoT
y)を変更することにより、前記現在全圧力重心(166)に作用するための手段(133、136、139、142、145、148)を有すること、及び、
前記掘進プレス手段制御ユニット(115)は、前記座標値(CoT
x、CoT
y)の変化を前記掘進プレス手段(109)又は前記掘進プレス手段(109)のグループの駆動制御における圧力値変化に変換して調整するように構成されていること、
を特徴とする、トンネル掘削機。
【請求項2】
前記目標全圧力重心(151)に作用するための手段は、前記座標値(CoT
x、CoT
y)を直接的に入力するため及び/又は前記座標値(CoT
x、CoT
y)を高くするないし低くするための操作要素(136、139、142、145)を有すること、
を特徴とする、請求項1に記載のトンネル掘削機。
【請求項3】
前記目標全圧力重心(151)の前記座標値(CoT
x、CoT
y)を高くするないし低くするために、所定のスクリーンが、接触感応式のタッチフィールド(136、139、142、145)を有する接触感応式の領域(133)を有すること、
を特徴とする、請求項2に記載のトンネル掘削機。
【請求項4】
前記目標全圧力重心(151)の前記座標値(CoT
x、CoT
y)を高くするないし低くするために、感圧式のタッチフィールド(136、139、142、145)を有する領域(133)が設けられていること、
を特徴とする、請求項2に記載のトンネル掘削機。
【請求項5】
前記目標全圧力重心(151)の前記座標値(CoT
x、CoT
y)を高くするないし低くするために、回転又は摺動により電気機械式で作用する要素が設けられていること、
を特徴とする、請求項2に記載のトンネル掘削機。
【請求項6】
接触感応式の領域(148)を有するスクリーンが設けられており、前記接触感応式の領域(148)内では、視覚化された前記目標全圧力重心(151)が、指又はオブジェクトによる接触と、指又はオブジェクトの動きとで、開始ポジションから終了ポジションに動くことができ、前記開始ポジションに対する前記終了ポジションの前記座標値(CoT
x、CoT
y)における偏位が、前記掘進プレス手段(109)又は前記掘進プレス手段(109)のグループにより加えられる押付力を適合するための前記掘進プレス手段制御ユニット(115)の入力値を構成すること、
を特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載のトンネル掘削機。
【請求項7】
前記座標系は、前記掘進プレス手段(109)又は前記掘進プレス手段(109)のグループが配設されている前記トンネル掘削機(103)のシールド要素(146)の長手方向中心軸線上にゼロ点(163)を有する2軸線の直交座標系(154、157)であること、
を特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載のトンネル掘削機。
【請求項8】
前記視覚化手段(148)は、前記目標全圧力重心(151)のために許される値領域(169)を表示するように構成されていること、及び前記掘進プレス手段制御ユニット(115)は、その許された値領域(169)内に位置する前記目標全圧力重心(151)のための値だけを処理するように構成されていること、
を特徴とする、請求項1~7のいずれか一項に記載のトンネル掘削機。
【請求項9】
前記入力手段として、掘進速度調整回路が設けられており、前記掘進速度調整回路は、第1の入力として提供可能な目標掘進速度を介し、及び第2の入力として提供可能な現在掘進速度を介し、前記目標掘進速度を維持して前記目標全掘進力(F
ges)を予設定するように構成されていること、
を特徴とする、請求項1~8のいずれか一項に記載のトンネル掘削機。
【請求項10】
トンネル掘削機(103)を用いてトンネルを掘進するための方法であって、
以下のステップを含むこと、即ち、
- 請求項1~9のいずれか一項に記載のトンネル掘削機(103)を提供するステップ、
- 所定の目標軌道を定めるステップ、
- 掘進プレス手段(109)又は掘進プレス手段(109)のグループの最初の掘進力を定めるステップ、及び、
- 前記トンネル掘削機(103)に関連する座標系(154、157)の座標値(CoT
x、CoT
y)における目標全圧力重心(151)の変更を介し、掘進中に繰り返して掘進力を設定するステップ、
を含むこと、
を特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の上位概念の構成を有するトンネル掘削機に関する。
【0002】
更に本発明は、トンネル掘削機を用いてトンネルを掘進するための方法に関する。
【背景技術】
【0003】
この種の装置及びこの種の方法は、下記特許文献1(DE 10 2018 102 330 A1)から公知である。既知のトンネル掘削機は、切削ホイールと、切削ホイールを掘進方向に移動可能とする所定数の掘進プレス手段とを有する。更に掘進プレス手段を駆動制御可能とする掘進プレス手段制御ユニットが設けられており、この際、掘進プレス手段制御ユニットに対し、掘進プレス手段の圧力作用から得られる全圧力重心を可視化するための手段が設けられている。このトンネル掘削機を用いてトンネルを掘進する場合には、全圧力重心の位置が、特に引き続き行われる掘進中に掘進プレス手段における対応の負荷変化を伴ってセグメント(タビング)を取り付ける際に視覚的に表示される。
【0004】
下記特許文献2(CN 111 810 171 A)、下記特許文献3(CN 111 810 172 A)、下記特許文献4(JP 2013-007226 A)から、トンネル掘削機及びトンネルを掘進するための方法が公知であり、これらでは、掘進プレス手段により加えられる圧力作用が、掘進プレス手段におけるグループ形成に基づいて行われる。この際、下記特許文献3では、加えられる合力(総合力)の視覚化が提供されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】独国特許出願公開第102018102330号
【特許文献2】中国特許出願公開第111810171号
【特許文献3】中国特許出願公開第111810172号
【特許文献4】特開2013-007226号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
通常、実際には、トンネル掘削機において、個々の掘進プレス手段又は掘進プレス手段のグループにより加えるべき掘進力の設定は、掘進プレス手段に接続された駆動制御モジュールに作用するポテンショメータを介して行われる。
【0007】
本発明の基礎を成す課題は、比較的簡単で且つ稼働確実性のある操作により傑出する、冒頭に記載した形式のトンネル掘削機及び冒頭に記載した形式のトンネル掘削機を用いてトンネルを掘進するための方法を提示することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題は、冒頭に記載した形式のトンネル掘削機において、本発明に従い、請求項1の特徴部の構成を有するトンネル掘削機により解決される。
【0009】
前記課題は、トンネルを掘進するための装置において、本発明に従い、請求項8の特徴を有する装置により解決される。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、発明を実施するための形態について説明する。
【0011】
当該トンネル掘削機では、及び本発明による方法では、目標全掘進力の予設定のもと、実際全圧力重心の実際の位置に対し、トンネル掘削機に関連する座標系内で視覚化された、所望の目標全圧力重心の表示部の、座標値により決定された位置の作用が及ぼされ、及びこの際、好ましくは接触感応式のスクリーンを介して行われることにより、トンネル掘削機は、この1つの中心的な稼働パラメータを介して比較的簡単に制御される。
【0012】
本発明の目的に適う更なる構成は、従属請求項の対象である。
【0013】
本発明の目的に適う更なる構成と利点は、図面の各図に関する実施例の以下の説明、並びに補足の説明から明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】操作ユニットを備えた、切削ホイールを有するトンネル掘削機の一実施例を概要図として示す図である。
【
図2】
図1のトンネル掘削機の実施例を側面図として示す図であり、この実施例は、掘進プレス手段により水平方向(X方向)において分布して加えられ、切削ホイールの全直径にわたり一定である、直進進行に関する例示の力推移線を有する。
【
図3】
図1のトンネル掘削機の実施例を側面図として示す図であり、この実施例は、掘進プレス手段により水平方向(X方向)において分布して加えられ、切削ホイールの全直径にわたり一定に変化する、カーブ進行に関する例示の力推移線を有する。
【
図4】
図1のトンネル掘削機の実施例を側面図として示す図であり、この実施例は、掘進プレス手段により水平方向(X方向)において分布して加えられ、切削ホイールの直径の一部分にわたり連続的に変化する、カーブ進行に関する例示の力推移線を有する。
【
図5】
図1のトンネル掘削機の実施例を側面図として示す図であり、この実施例は、掘進プレス手段により垂直方向(Y方向)において分布して加えられ、切削ホイールの全直径にわたり一定に変化し、垂直方向において変化する反力を補償するための、水平進行に関する例示の力推移線を有する。
【
図6】
図1のトンネル掘削機の実施例を側面図として示す図であり、この実施例は、掘進プレス手段により垂直方向(Y方向)において分布して加えられ、切削ホイールの全直径にわたり一定である、下方への潜行進行に関する例示の力推移線を有する。
【
図7】
図1~
図3に基づいて説明された本発明によるトンネル掘削機の実施例を用いた、トンネルを掘進するためのトンネル掘削機の稼働における処理手順の一実施例をフローチャートとして示す図である。
【実施例】
【0015】
図1は、本発明によるトンネル掘削機103の一実施例を概要図として示し、トンネル掘削機103は、掘削方向において前側に置かれた切削ホイール106を備えている。またトンネル掘削機103は、掘削方向において切削ホイール106の背面側に所定数の掘進プレス手段109を有し、これらの掘進プレス手段109を用い、切削ホイール106は、掘進方向において移動可能であり、この際、特に掘進力をもって、掘削稼働時に掘削方向において切削ホイール106の前方に位置する切羽(掘削面)112に対して押し付け可能である。
【0016】
掘進プレス手段109は、個々に又はグループにまとめられて掘進プレス手段制御ユニット115と統一的に接続されており、掘進プレス手段制御ユニット115を用い、掘進プレス手段109は、圧力作用(推力作用)を達成するために駆動制御可能である。
【0017】
また掘進プレス手段制御ユニット115は、操作ユニット118と接続状態にあり、操作ユニット118を介し、掘進プレス手段制御ユニット115に対し、掘進プレス手段109を駆動制御するために必要な制御値が、後続段落で詳細に説明される座標値を、圧力値に対応する制御値に換算(変換)した後に提供可能である。
【0018】
操作ユニット118は、一方では、第1の入力領域121を備えた接触感応式のスクリーン(表示画面)を有し、第1の入力領域121を介し、入力手段としての入力フィールド130において、機械オペレータにより直接的に予設定値として、掘進プレス手段109又は掘進プレス手段109のグループにより切削ホイール106に対して全体的に加えるべき目標全掘進力Fgesのための値が入力可能である。
【0019】
目標全掘進力Fgesの直接的な入力に対する変形形態では、第1の入力領域121において、例えば、接触感応式の領域、又は電気機械式の押しボタン、或いはポテンショメータやスライド調整器のような、回転ないし摺動により電気機械式で作用する要素が設けられている。
【0020】
他の非図示の一実施形態では、目標全掘進力Fgesを予設定するための入力手段として掘進速度調整回路が設けられており、掘進速度調整回路には、第1の入力において、機械オペレータにより、所望の目標掘進速度が提供可能であり、第2の入力において、トンネル掘削機103の目下の現在掘進速度が提供可能である。掘進速度調整回路の出力は、後続段落で詳細に説明される、所望の目標掘進速度を維持するための更なる処理に対し、予設定値として目標全掘進力Fgesを提供する。
【0021】
更に操作ユニット118は、第2の入力領域133を備え、第2の入力領域133は、操作要素として、所定数の、そしてこの際、目的に適い4つの、タッチフィールド136、139、142、145を有するように構成されており、これらの操作要素は、ここで説明する実施例では、水平方向上ないし垂直方向上の対ごとの配置により、トンネル掘削機103に関連する座標系において、そしてこの際、特には実質的にシリンダ状に構成され且つ掘進プレス手段109が配設されて固定的に取り付けられているトンネル掘削機103のシールド要素146の長手方向中心軸線に関連する座標系において、全ての掘進プレス手段109の圧力作用から得られる所望の目標全圧力重心(「推力の中心」(Center of Thrust)、略して「CoT」とも呼ばれる)の座標値を低くするないし高くするために用いられる。
【0022】
一実施形態において、タッチフィールド136、139、142、145は、接触感応式のスクリーン(ディスプレイ)の領域ごとの構成部分として接触感応式で構成されている。
【0023】
他の一実施形態において、タッチフィールド136、139、142、145は、電気機械式の押しボタンとして感圧式で構成されている。
【0024】
更に他の一実施形態において、目標全圧力重心に作用するための手段は、ポテンショメータやスライド調整器のような、回転ないし摺動により電気機械式で作用する要素を有する。
【0025】
更にこの実施例において、操作ユニット118のスクリーンは、視覚化手段として、更に2次元の接触感応式の領域148を有し、接触感応式の領域148上には、座標系原点としてのゼロ点163で直角に交差する、水平方向のためのX軸線154と、垂直方向のためのY軸線157とにより固定された、トンネル掘削機103に関連する座標系において、とるべき目標全圧力重心151のシンボル的な視覚化部分が表示されている。
【0026】
図1に黒丸で表示された視覚化部分は、目標全圧力重心151に関するものであり、X軸線154とY軸線157により構成された座標系内の目標全圧力重心151の座標値は、例えば入力フィールド130を介して入力可能な、加えるべき目標全掘進力F
gesのための値とともに、掘進プレス手段109を駆動制御するための掘進プレス手段制御ユニット115のための入力値を構成する。
【0027】
目的に適う更なる一構成では、接触感応式の領域148上で、現在全圧力重心166も、白丸で表示された他の視覚化部分として表示されており、この視覚化部分は、掘進プレス手段109から掘進プレス手段制御ユニット115により操作ユニット118にフィードバックされた、現在全圧力重心166の目下の実際の位置を表している。
図1による描写では、現在全圧力重心166は、例えば、まだ完了していない、後続段落で詳細に説明される調整処理に基づき、まだ著しく目標全圧力重心151から外れており、前記調整処理中には、
図1による描写では現在全圧力重心166から目標全圧力重心151に向かって延びる調整方向矢印167の方向に更に動くことになる。
【0028】
現在全圧力重心166の位置を変更するには、タッチフィールド136、139、142、145に加え、目標全圧力重心151の視覚化部分の接触と移動により、目標全圧力重心151が、接触感応性の領域148内で、二次元で、例えば操作オペレータの指で又は対話形式のペンを用い、割り当てられた圧力値変化を伴う、掘進プレス手段制御ユニット115に提供される制御値の対応的な変更のもと、移動されるが、但しこのことは、
図1による図面において破線で示された純粋に例示の許容の値領域169内に位置する、新しい現在全圧力重心166をとるためのトンネル掘削機103の稼働条件を、基本的に許す場合に限られる。
【0029】
図2は、
図1のトンネル掘削機103の実施例を側面図として示し、この実施例は、掘進プレス手段109により水平方向においてX軸線154に沿って分布して加えられ、切削ホイール106の全直径にわたり一定である、直進進行に関する例示の力推移線(力経過線)200を有する。
図2による図では、トンネル掘削機103に関連する座標系内にあり且つ
図2ではそのマイナスの値範囲が図示されているZ軸線203が、シールド要素146の長手方向中心軸線の方向を示し、シールド要素146に対し、この実施例では、またそれ以外でも同様に目的に適い、前記座標系が基準とされている。
【0030】
更に
図2には、掘進プレス手段109の全体により加えるべき、入力フィールド130を介して入力可能な目標全掘進力F
gesのための合力ベクトル矢印206と、破線のライン209により平均力F
mのための値とが図示されている。
【0031】
図2に図示された実施例では、水平方向に位置する直線に沿った、カーブのない掘進という意味における、水平方向に関する直進進行のために、各掘進プレス手段109又は掘進プレス手段109の各グループは、平均力F
mに対応し且つ部分力ベクトル矢印212により図示された同じ部分掘進力F
iを加え、それにより破線のライン209上に位置する力推移線200は、切削ホイール106の直径にわたり一定であり、目標全掘進力F
gesは、正確にZ軸線203上に位置するとともにX軸線154のゼロ点163を通る。それによりX方向(X軸線上)におけるZ軸線203からの目標全掘進力F
gesのオフセット、従ってX方向におけるZ軸線203からの目標全圧力重心151の座標値としてのX離間位置CoT
xは、ゼロと同じである。
【0032】
図3は、
図1のトンネル掘削機103の実施例を
図2に対応する側面図として示し、この実施例は、掘進プレス手段109により水平方向においてX軸線154に沿って分布して加えられ、切削ホイール106の全直径にわたり一定に変化する、カーブ進行に関する例示の力推移線300を有する。
【0033】
図3では、掘進プレス手段109の全体により加えるべき、入力フィールド130を介して入力可能な目標全掘進力F
gesのための合力ベクトル矢印306と、破線の第1のライン309により、加えるべき平均力F
mのための値と、破線の第2のライン312により、最小で加えるべき最小力F
minのための値と、破線の第3のライン315により、最大で加えるべき最大力F
maxのための値とが図示されている。
【0034】
更に
図3では、部分力ベクトル矢印318により、例として、1つの掘進プレス手段109又は1つのグループの掘進プレス手段109、ここでは水平方向において側方で比較的縁部側に配設された1つの掘進プレス手段109により加えるべき部分掘進力F
iが図示され、平均力ベクトル矢印321により、掘進プレス手段109の全体により加えるべき平均力F
mが図示されている。差力ベクトル矢印324を用い、部分掘進力F
iと平均力F
mからX方向における差としての差力ΔF
x,iが図示されている。最後に二重(双方向)矢印327を用い、X方向におけるZ軸線203からの目標全掘進力F
gesのオフセット、従って、座標値として、X方向におけるZ軸線203からの目標全圧力重心151のX離間位置CoT
xが図示されており、X離間位置CoT
xは、領域148(
図1)内に描写される座標系内のそれぞれの全圧力重心151、166の視覚化部分のために取り込まれる。
【0035】
カーブ進行を達成するために、最小力Fminと最大力Fmaxの間のX方向における力推移線300は、切削ホイール106の全直径にわたり連続的に変化する力を有し、差力ΔFx,iの値が、掘進プレス手段109又は掘進プレス手段109のグループにより最小力Fminから始まり、Z軸線203に至るまで先ずはマイナスでそのあとはプラスとなって最大力Fmaxに至るまで漸次的に増加することにより構成されている。
【0036】
図4は、
図1のトンネル掘削機103の実施例を
図2及び
図3に対応する側面図として示し、この実施例は、掘進プレス手段109により水平方向においてX軸線154に沿って分布して加えられ、切削ホイール106の直径の一部分にわたり連続的に変化する、カーブ進行に関する例示の力推移線400を有し、この際、説明の繰り返しを避けるために、
図3及び
図4で使われる同じ参照符号は、互いに対応する要素を示すものとする。
【0037】
図4から、掘進プレス手段109又は掘進プレス手段109のグループにより加えられる部分掘進力F
iが、それぞれ所定の縁部領域にわたり、同じであり且つ最小力F
minないし最大力F
maxに対応しており、それに対し、これらの縁部領域の間では中央領域にわたり部分掘進力F
iは連続的に変化し、このことは、同様に、X方向(X軸線上)におけるZ軸線203からの全圧力重心のX離間位置CoT
xをもたらし、従って水平方向におけるカーブ進行をもたらすことが見てとれる。
【0038】
図5は、
図1のトンネル掘削機103の実施例を
図2~
図4による側面図に対して90度回転された側面図として示し、この実施例は、掘進プレス手段109により垂直方向においてY軸線157に沿って分布して加えられ、切削ホイール106の全直径にわたり一定(一様)に変化し、土圧、水圧、摩擦などのような、対応して逆方向で垂直方向において変化する反力を補償するための、水平進行に関する例示の力推移線500を有する。
【0039】
図5では、掘進プレス手段109の全体により加えるべき、入力フィールド130を介して入力可能な目標全掘進力F
gesのための合力ベクトル矢印506と、破線の第1のライン509により、平均力F
mのための値と、破線の第2のライン512により、最小で加えられる最小力F
minのための値と、破線の第3のライン515により、最大で加えるべき最大力F
maxのための値とが図示されている。
【0040】
更に
図5では、部分力ベクトル矢印518により、例として、1つの掘進プレス手段109又は1つのグループの掘進プレス手段109、ここでは垂直方向においてトンネル底部の比較的近くに配設された1つの掘進プレス手段109により加えられる部分掘進力F
iが図示され、平均力ベクトル矢印521により、掘進プレス手段109の全体により加えられる平均力F
mが図示されている。差力ベクトル矢印524を用い、部分掘進力F
iと平均力F
mからY方向における差としての差力ΔF
y,iが図示されている。最後に二重矢印527を用い、Y方向におけるZ軸線203からの目標全掘進力F
gesのオフセット、従って、座標値として、Y方向におけるZ軸線203からの目標全圧力重心151のY離間位置CoT
yが図示されており、Y離間位置CoT
yは、領域148(
図1)内に描写される座標系内のそれぞれの全圧力重心151、166の視覚化部分のために取り入れられる。
【0041】
図5に図示された力推移線500では、掘進プレス手段109により、通常は一様に深さとともに増加する切羽112の反力が、垂直方向における逸脱(偏位)を伴わない水平方向におけるトンネル掘進の意味での水平進行を実行するために、補償される。
【0042】
図6は、
図1のトンネル掘削機103の実施例を
図5に対応する側面図として示し、この実施例は、掘進プレス手段109により垂直方向においてY軸線157に沿って分布して加えられ、切削ホイール106の全直径にわたり一定である、トンネルの掘進時の下方へ向っての潜行進行を実行するための例示の力推移線600を有し、この際、説明の繰り返しを避けるために、
図5及び
図6で使われる同じ参照符号は、互いに対応する要素を示すものとする。
【0043】
図6から、平均力F
mに対応する部分掘進力F
iを有し、従ってY方向におけるZ軸線203からの全圧力重心151のY離間位置CoT
yの消失を伴う、垂直方向においてY軸線157に沿って一定であるこの力推移線600では、目標全掘進力F
gesがZ軸線203上に位置し、座標系のゼロ点163においてY軸線157と交差することが見てとれる。それにより切羽112における反力は、上側の、天井部に近い領域では補償過剰となり、トンネル底部の領域では補償不足となり、それによりトンネル掘進の軌道(トラジェクトリ)は、下方に傾き、トンネル掘削機103は、水平進行に比べて下方へ向っての潜行進行を行う。
【0044】
図7は、フローチャートとして、本発明によるトンネル掘削機103を用いてトンネルを掘進するための方法における基本的な処理手順を示している。
【0045】
先ず評価ステップ703では、トンネル掘削機103のその他の稼働パラメータを考慮してトンネル掘削機103の現在のポジションが評価される。
【0046】
評価ステップ703に続く設定ステップ706では、最初に、目標全圧力重心151(「推力の中心(Center of Thrust)」、略して「CoT」とも呼ばれる)の選択、ないし掘進中に必要に応じ、目標全圧力重心151の変更が行われ、この選択ないし変更は、座標系内の目標全圧力重心151の座標が、タッチフィールド136、139、142、145によるか、又は接触感応式の領域148内のその視覚化部分を動かすことにより設定されることで行われる。
【0047】
この際、
図1に基づいて説明された実施形態に対応し、目標全掘進力F
gesは、入力手段としての入力フィールド130を介して直接的に予設定される。
【0048】
入力手段として掘進速度調整回路を用いる非図示の他の実施形態では、掘進速度調整回路が、所望の掘進速度を維持するための目標全掘進力Fgesを予設定する。
【0049】
設定ステップ706に続く、掘進プレス手段制御ユニット115を用いて実行される第1の計算ステップ709では、前述の値CoTx、CoTy、Fgesの予指定を用い、トンネル掘削機103の水平方向ないし垂直方向の制御のために加えるべき力Fiの力成分の計算がそれらの可変の成分ΔFx,i及びΔFy,iに関して行われる。
【0050】
第1の計算ステップ709に続く第2の計算ステップ712では、同様に掘進プレス手段制御ユニット115を用い、各i番目の掘進プレス手段109又は各i番目のグループの掘進プレス手段109により加えるべき、所望のそれぞれの力成分ΔFx,i、ΔFy,iを生成するための力Fiの計算が、加えるべき目標全掘進力Fgesを考慮して行われる。
【0051】
第2の計算ステップ712に続く換算ステップ715では、力Fiを実際に加えるために、掘進プレス手段109により加えるべき力Fiの、それぞれの掘進プレス手段109を付勢すべき液圧的な圧力への換算が行われる。
【0052】
換算ステップ715に続く調整ステップ718では、現在全圧力重心166を目標全圧力重心151に近づけて最終的に両者を実質的に一致させるために、掘進プレス手段109を実際に付勢する液圧的な圧力の調整が行われる。
【0053】
調整ステップ718に続く稼働ステップ721では、トンネル掘削機103が、次の評価ステップ703が実行されるまで、最後に利用された稼働データに対応し、予め定められた、ある程度の範囲で自由に選択可能な時間単位の間、稼働される。
【符号の説明】
【0054】
103 トンネル掘削機
106 切削ホイール
109 掘進プレス手段
112 切羽(掘削面)
115 掘進プレス手段制御ユニット
118 操作ユニット
121 第1の入力領域
130 入力フィールド
133 第2の入力領域
136 タッチフィールド
139 タッチフィールド
142 タッチフィールド
145 タッチフィールド
146 シールド要素
148 接触感応式の領域
151 目標全圧力重心
154 X軸線(水平方向)
157 Y軸線(垂直方向)
163 ゼロ点(座標系原点)
166 現在全圧力重心
167 調整方向矢印
169 許容の値領域
200 力推移線
203 Z軸線
206 合力ベクトル矢印
209 破線のライン(平均力Fmのための値)
212 部分力ベクトル矢印(部分掘進力Fi)
300 力推移線
306 合力ベクトル矢印
309 破線の第1のライン(平均力Fmのための値)
312 破線の第2のライン(最小力Fminのための値)
315 破線の第3のライン(最小力Fmaxのための値)
318 部分力ベクトル矢印(部分掘進力Fi)
321 平均力ベクトル矢印(平均力Fm)
324 差力ベクトル矢印(差力ΔFx,i)
327 二重矢印(X離間位置CoTx)
400 力推移線
500 力推移線
506 合力ベクトル矢印
509 破線の第1のライン(平均力Fmのための値)
512 破線の第2のライン(最小力Fminのための値)
515 破線の第3のライン(最小力Fmaxのための値)
518 部分力ベクトル矢印(部分掘進力Fi)
521 平均力ベクトル矢印(平均力Fm)
524 差力ベクトル矢印(差力ΔFy,i)
527 二重矢印(Y離間位置CoTy)
600 力推移線
703 評価ステップ
706 設定ステップ
709 第1の計算ステップ
712 第2の計算ステップ
715 換算ステップ
718 調整ステップ
721 稼働ステップ
Fges 目標全掘進力
【手続補正書】
【提出日】2023-06-28
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
切削ホイール(106)と、所定数の掘進プレス手段(109)と、掘進プレス手段制御ユニット(115)と、視覚化手段(148)とを備えたトンネル掘削機であって、
前記掘進プレス手段(109)を用い、前記切削ホイール(106)は、掘進方向において移動可能であり、前記掘進プレス手段制御ユニット(115)を用い、前記掘進プレス手段(109)又は前記掘進プレス手段(109)のグループは、駆動制御可能であり、前記視覚化手段(148)は、前記掘進プレス手段(109)又は前記掘進プレス手段(109)のグループの圧力作用から得られる現在全圧力重心(166)を視覚化するように構成されており、
入力手段(130)が設けられており、前記入力手段(130)は、目標全掘進力(F
ges)を予設定するために構成されていること、
前記視覚化手段(148)は、目標全圧力重心(151)と前記現在全圧力重心(166)を表示するように構成されていること、
前記掘進プレス手段制御ユニット(115)と接続された操作ユニット(118)が設けられており、前記操作ユニット(118)は、前記現在全圧力重心(166)を前記目標全圧力重心(151)に少なくとも近づけることのために、前記トンネル掘削機(103)に関連する座標系(154、157)内で
前記目標全圧力重心(151)の座標値(CoT
x、CoT
y)を変更することにより、前記現在全圧力重心(166)に作用するための手段(133、136、139、142、145、148)を有すること、及び、
前記掘進プレス手段制御ユニット(115)は、
前記目標全圧力重心(151)の前記座標値(CoT
x、CoT
y)の変化を前記掘進プレス手段(109)又は前記掘進プレス手段(109)のグループの駆動制御における圧力値変化に変換して調整するように構成されていること、
を特徴とする、トンネル掘削機。
【請求項2】
前記目標全圧力重心(151)に作用するための手段は、前記座標値(CoT
x、CoT
y)を直接的に入力するため及び/又は前記座標値(CoT
x、CoT
y)を高くするないし低くするための操作要素(136、139、142、145)を有すること、
を特徴とする、請求項1に記載のトンネル掘削機。
【請求項3】
前記目標全圧力重心(151)の前記座標値(CoT
x、CoT
y)を高くするないし低くするために、所定のスクリーンが、接触感応式のタッチフィールド(136、139、142、145)を有する接触感応式の領域(133)を有すること、
を特徴とする、請求項2に記載のトンネル掘削機。
【請求項4】
前記目標全圧力重心(151)の前記座標値(CoT
x、CoT
y)を高くするないし低くするために、感圧式のタッチフィールド(136、139、142、145)を有する領域(133)が設けられていること、
を特徴とする、請求項2に記載のトンネル掘削機。
【請求項5】
前記目標全圧力重心(151)の前記座標値(CoT
x、CoT
y)を高くするないし低くするために、回転又は摺動により電気機械式で作用する要素が設けられていること、
を特徴とする、請求項2に記載のトンネル掘削機。
【請求項6】
接触感応式の領域(148)を有するスクリーンが設けられており、前記接触感応式の領域(148)内では、視覚化された前記目標全圧力重心(151)が、指又はオブジェクトによる接触と、指又はオブジェクトの動きとで、開始ポジションから終了ポジションに動くことができ、前記開始ポジションに対する前記終了ポジションの前記座標値(CoT
x、CoT
y)における偏位が、前記掘進プレス手段(109)又は前記掘進プレス手段(109)のグループにより加えられる押付力を適合するための前記掘進プレス手段制御ユニット(115)の入力値を構成すること、
を特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載のトンネル掘削機。
【請求項7】
前記座標系は、前記掘進プレス手段(109)又は前記掘進プレス手段(109)のグループが配設されている前記トンネル掘削機(103)のシールド要素(146)の長手方向中心軸線上にゼロ点(163)を有する2軸線の直交座標系(154、157)であること、
を特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載のトンネル掘削機。
【請求項8】
前記視覚化手段(148)は、前記目標全圧力重心(151)のために許される値領域(169)を表示するように構成されていること、及び前記掘進プレス手段制御ユニット(115)は、その許された値領域(169)内に位置する前記目標全圧力重心(151)のための値だけを処理するように構成されていること、
を特徴とする、請求項1~7のいずれか一項に記載のトンネル掘削機。
【請求項9】
前記入力手段として、掘進速度調整回路が設けられており、前記掘進速度調整回路は、第1の入力として提供可能な目標掘進速度を介し、及び第2の入力として提供可能な現在掘進速度を介し、前記目標掘進速度を維持して前記目標全掘進力(F
ges)を予設定するように構成されていること、
を特徴とする、請求項1~8のいずれか一項に記載のトンネル掘削機。
【請求項10】
トンネル掘削機(103)を用いてトンネルを掘進するための方法であって、
以下のステップを含むこと、即ち、
- 請求項1~9のいずれか一項に記載のトンネル掘削機(103)を提供するステップ、
- 所定の目標軌道を定めるステップ、
- 掘進プレス手段(109)又は掘進プレス手段(109)のグループの最初の掘進力を定めるステップ、及び、
- 前記トンネル掘削機(103)に関連する座標系(154、157)の
目標全圧力重心(151)の座標値(CoT
x、CoT
y)における目標全圧力重心(151)の変更を介し、掘進中に繰り返して掘進力を設定するステップ、
を含むこと、
を特徴とする方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0005
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0005】
【特許文献1】独国特許出願公開第102018102330号
【特許文献2】中国特許出願公開第111810171号
【特許文献3】中国特許出願公開第111810172号
【特許文献4】特開2013-007226号
【特許文献5】ドイツ特許出願公開第112014004026号(PCT出願のドイツ語翻訳文)
【国際調査報告】