(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-02
(54)【発明の名称】E3ユビキチンリガーゼ(UBE3A)のタンパク質標的
(51)【国際特許分類】
G01N 33/68 20060101AFI20240925BHJP
G01N 33/53 20060101ALI20240925BHJP
G01N 33/50 20060101ALI20240925BHJP
G01N 33/15 20060101ALI20240925BHJP
C07K 14/47 20060101ALI20240925BHJP
C12Q 1/02 20060101ALI20240925BHJP
C12N 15/113 20100101ALN20240925BHJP
【FI】
G01N33/68 ZNA
G01N33/53 D
G01N33/50 Z
G01N33/15 Z
C07K14/47
C12Q1/02
C12N15/113 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024509024
(86)(22)【出願日】2022-08-15
(85)【翻訳文提出日】2024-02-15
(86)【国際出願番号】 EP2022072744
(87)【国際公開番号】W WO2023020980
(87)【国際公開日】2023-02-23
(32)【優先日】2021-08-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】591003013
【氏名又は名称】エフ. ホフマン-ラ ロシュ アーゲー
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN-LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】ヤーガジア,ラヴィ
(72)【発明者】
【氏名】クレマー,トーマス
(72)【発明者】
【氏名】マイヤー,ソニヤ
(72)【発明者】
【氏名】パンディア,ニクヒル・ヤナーク
(72)【発明者】
【氏名】ティアノヴァ,シュテフカ・グリゴローヴァ
【テーマコード(参考)】
2G045
4B063
4H045
【Fターム(参考)】
2G045AA40
2G045BB20
2G045CA25
2G045CA26
2G045CB01
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4B063QA18
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4H045AA10
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4H045DA89
4H045EA50
(57)【要約】
本発明は、UBE3Aタンパク質標的、及びube3a発現を調節する化合物に対する標的関与のバイオマーカーとしてのその使用に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
組織試料中のUBE3Aタンパク質の発現調節を測定するための方法であって、
a)UBE3A調節因子で処理された、動物又は細胞培養物の組織試料を提供するステップと、
b)TKT、DZANK1、ACYP1、UBLCP1、YARS、WARS、SOD2及びPSME3からなる群から選択される少なくとも1つのタンパク質の、ステップa)の前記試料中のタンパク質発現レベルを測定するステップと、
c)ステップb)で測定された前記少なくとも1つのタンパク質の前記タンパク質発現レベルを、対照中の前記少なくとも1つのタンパク質のタンパク質発現レベルと比較するステップと
を含み、前記対照中の前記少なくとも1つのタンパク質の前記タンパク質発現レベルと比較した、ステップb)で測定された前記少なくとも1つのタンパク質の調節されたタンパク質発現レベルが、UBE3Aタンパク質の発現調節を示している、方法。
【請求項2】
組織試料中のUBE3Aタンパク質の発現誘導を測定するための請求項1に記載の方法であって、
d)UBE3A誘導因子で処理された、動物又は細胞培養物の組織試料を提供するステップと、
e)TKT、DZANK1、ACYP1、UBLCP1、YARS、WARS、SOD2及びPSME3からなる群から選択される少なくとも1つのタンパク質の、ステップa)の前記試料中のタンパク質発現レベルを測定するステップと、
f)ステップb)で測定された前記少なくとも1つのタンパク質の前記タンパク質発現レベルを、対照中の前記少なくとも1つのタンパク質のタンパク質発現レベルと比較するステップと
を含み、前記対照中の前記少なくとも1つのタンパク質の前記タンパク質発現レベルと比較した、ステップb)で測定された前記少なくとも1つのタンパク質の減少したタンパク質発現レベルが、UBE3Aタンパク質の発現誘導を示している、方法。
【請求項3】
UBE3A調節因子のUBE3A標的への関与を判定するための方法であって、
a)UBE3A調節因子で処理された、動物又は細胞培養物の組織試料を提供するステップと、
b)TKT、DZANK1、ACYP1、UBLCP1、YARS、WARS、SOD2及びPSME3からなる群から選択される少なくとも1つのタンパク質の、ステップa)の前記試料中のタンパク質発現レベルを測定するステップと、
c)ステップb)で測定された前記少なくとも1つのタンパク質の前記タンパク質発現レベルを、対照中の前記少なくとも1つのタンパク質のタンパク質発現レベルと比較するステップと
を含み、前記対照中の前記少なくとも1つのタンパク質の前記タンパク質発現レベルと比較した、ステップb)で測定された前記少なくとも1つのタンパク質の調節されたタンパク質発現レベルが、前記UBE3A調節因子のUBE3A標的への関与を示している、方法。
【請求項4】
前記組織試料が、血液試料、血漿試料、又はCSF試料である、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記タンパク質発現レベルが、ウェスタンブロッティング、質量分析(MS)、液体クロマトグラフィー質量分析(LC-MS)又はイムノアッセイを使用して測定される、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記UBE3A調節因子が、アンチセンスオリゴヌクレオチド、特にLNAアンチセンスオリゴヌクレオチドである、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記UBE3A調節因子が、自閉症スペクトラム障害、アンジェルマン症候群、又は15qdup症候群の処置のためのUBE3Aタンパク質発現レベル誘導因子である、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
ステップb)における前記タンパク質が、TKT、DZANK1、UBLCP1及びPSME3からなる群から選択され、これらのタンパク質の発現レベルが、前記UBE3Aの発現レベルと逆相関する、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
ステップb)における前記タンパク質が、ACYP1、YARS、WARS及びSOD2からなる群から選択され、これらのタンパク質の発現レベルが、UBE3Aタンパク質発現レベルの前記発現レベルと直接相関する、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
UBE3Aタンパク質発現調節因子を同定するためのスクリーニング方法であって、
a)試験化合物で処理された、動物又は細胞培養物の組織試料を提供するステップと、
b)TKT、DZANK1、ACYP1、UBLCP1、YARS、WARS、SOD2及びPSME3からなる群から選択される少なくとも1つのタンパク質の、ステップa)の前記試料中のタンパク質発現レベルを測定するステップと、
c)ステップb)で測定された前記少なくとも1つのタンパク質の前記タンパク質発現レベルを、対照中の前記少なくとも1つのタンパク質のタンパク質発現レベルと比較するステップと
を含み、前記対照中の前記少なくとも1つのタンパク質の前記タンパク質発現レベルと比較した、ステップb)で測定された前記少なくとも1つのタンパク質の調節されたタンパク質発現レベルが、UBE3Aタンパク質発現調節因子を示している、スクリーニング方法。
【請求項11】
UBE3Aタンパク質発現レベル調節のためのバイオマーカーとしての、TKT、DZANK1、ACYP1、UBLCP1、YARS、WARS、SOD2及びPSME3からなる群から選択されるタンパク質の使用。
【請求項12】
前記UBE3Aの調節が、UBE3Aタンパク質発現レベル誘導因子によるものである、請求項11に記載の使用。
【請求項13】
前記UBE3Aバイオマーカータンパク質のタンパク質発現レベルが、前記UBE3Aタンパク質発現レベルと逆相関する、請求項11又は12に記載の使用。
【請求項14】
前記UBE3Aバイオマーカータンパク質のタンパク質発現レベルが、前記UBE3Aタンパク質発現レベルと直接相関する、請求項11又は12に記載の使用。
【請求項15】
UBE3Aタンパク質発現レベル調節因子のUBE3A標的への関与を判定するための、請求項11~14のいずれか一項に記載の使用。
【請求項16】
前記UBE3Aタンパク質発現レベル調節因子が、アンチセンスオリゴヌクレオチド、特にLNAアンチセンスオリゴヌクレオチドである、請求項11~15のいずれか一項に記載の使用。
【請求項17】
前記UBE3Aタンパク質発現レベル調節因子が、自閉症スペクトラム障害、アンジェルマン症候群、又は15qdup症候群の処置のためのUBE3Aタンパク質発現レベル誘導因子である、請求項11~16のいずれか一項に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ユビキチン-タンパク質リガーゼE3A(UBE3A)のタンパク質レベルが増加又は減少すると、タンパク質発現レベルが調節される新規バイオマーカー、及び薬物開発におけるその使用を提供する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
アンジェルマン症候群は、重度の知的及び発達障害、睡眠障害、てんかん発作、ぎくしゃくした動き、EEG異常、頻繁な笑い又は笑顔、及び深刻な言語障害を特徴とする。アンジェルマン症候群は、UBE3A遺伝子、ひいては母性遺伝染色体15q11.2上のタンパク質の欠失又は不活性化によって引き起こされる神経遺伝学的障害である。一方、Dup15q症候群は、染色体15q11-13.1の重複に起因する臨床的に同定可能な症候群である。Dup15q症候群では、UBE3Aの過剰発現がある。アンジェルマン症候群(AS)では、E3ユビキチンリガーゼUBE3Aのニューロン喪失が、過剰な重度の神経障害をもたらす。
【0003】
UBE3Aのニューロン喪失はASを引き起こすが、下流の分子及び細胞機能障害の知識は不足している。関連するUBE3A基質の同定は、健康及び疾患におけるUbe3a機能の役割のより良い理解をもたらし、UBE3A機能をモニターするための薬物及びバイオマーカーの両方の発見を支援する。
【発明の概要】
【0004】
本発明は、ユビキチン-タンパク質リガーゼE3A(UBE3A)のタンパク質レベルが増加又は減少し、さらに一部がUBE3Aとタンパク質複合体を形成している場合に、タンパク質発現が調節される新規バイオマーカーに関する。これらには、タンパク質TKT、DZANK1、ACYP1、UBLCP1、YARS、WARS、SOD2及びPSME3が含まれる。本発明はさらに、アンジェルマン症候群、15qdup症候群、及び他の自閉症スペクトラム障害を含む、UBE3Aを標的とする疾患のための医薬処置のための、これらのタンパク質に基づくUBE3A活性の検出のための医薬バイオマーカー及び方法に関する。
【発明を実施するための形態】
【0005】
発明の詳細な説明
第1の態様では、本発明は、組織試料中のUBE3Aタンパク質の発現調節を測定するための方法であって、
a)UBE3A調節因子で処理された、動物又は細胞培養物の組織試料を提供するステップと、
b)TKT、DZANK1、ACYP1、UBLCP1、YARS、WARS、SOD2及びPSME3からなる群から選択される少なくとも1つのタンパク質の、ステップa)の試料中のタンパク質発現レベルを測定するステップと、
c)ステップb)で測定された少なくとも1つのタンパク質のタンパク質発現レベルを、対照試料中の少なくとも1つのタンパク質のタンパク質発現レベルと比較するステップと
を含み、対照試料中の少なくとも1つのタンパク質のタンパク質発現レベルと比較した、ステップb)で測定された少なくとも1つのタンパク質の調節されたタンパク質発現レベルが、UBE3Aタンパク質の発現調節を示している、方法を提供する。
【0006】
第2の態様では、本発明は、組織試料中のUBE3Aタンパク質の発現誘導を測定するための方法であって、
a)UBE3A誘導因子で処理された、動物又は細胞培養物の組織試料を提供するステップと、
b)TKT、DZANK1、ACYP1、UBLCP1、YARS、WARS、SOD2及びPSME3からなる群から選択される少なくとも1つのタンパク質の、ステップa)の試料中のタンパク質発現レベルを測定するステップと、
c)ステップb)で測定された少なくとも1つのタンパク質のタンパク質発現レベルを、対照中の少なくとも1つのタンパク質のタンパク質発現レベルと比較するステップと
を含み、対照中の少なくとも1つのタンパク質のタンパク質発現レベルと比較した、ステップb)で測定された少なくとも1つのタンパク質の減少したタンパク質発現レベルが、UBE3Aタンパク質の発現誘導を示している、方法に関する。
【0007】
さらなる態様では、本発明は、UBE3A調節因子のUBE3A標的への関与を判定するための方法であって、
a)UBE3A調節因子で処理された、動物又は細胞培養物の組織試料を提供するステップと、
b)TKT、DZANK1、ACYP1、UBLCP1、YARS、WARS、SOD2及びPSME3からなる群から選択される少なくとも1つのタンパク質の、ステップa)の試料中のタンパク質発現レベルを測定するステップと、
c)ステップb)で測定された少なくとも1つのタンパク質のタンパク質発現レベルを、対照中の少なくとも1つのタンパク質のタンパク質発現レベルと比較するステップと
を含み、対照中の少なくとも1つのタンパク質のタンパク質発現レベルと比較した、ステップb)で測定された少なくとも1つのタンパク質の調節されたタンパク質発現レベルが、UBE3A調節因子のUBE3A標的への関与を示している、方法に関する。
【0008】
さらなるの態様では、本発明は、UBE3Aタンパク質発現調節因子を同定するためのスクリーニング方法であって、
a)試験化合物で処理された、動物又は細胞培養物の組織試料を提供するステップと、
b)TKT、DZANK1、ACYP1、UBLCP1、YARS、WARS、SOD2及びPSME3からなる群から選択される少なくとも1つのタンパク質の、ステップa)の試料中のタンパク質発現レベルを測定するステップと、
c)ステップb)で測定された少なくとも1つのタンパク質のタンパク質発現レベルを、対照中の少なくとも1つのタンパク質のタンパク質発現レベルと比較するステップと
を含み、対照中の少なくとも1つのタンパク質のタンパク質発現レベルと比較した、ステップb)で測定された少なくとも1つのタンパク質の調節されたタンパク質発現レベルが、UBE3Aタンパク質発現調節因子を示している、方法に関する。
【0009】
特定の実施形態では、組織試料は、血液試料、血漿試料、又はCSF試料である。
【0010】
特定の実施形態では、タンパク質発現レベルは、ウェスタンブロッティング、質量分析(MS)、液体クロマトグラフィー質量分析(LC-MS)又はイムノアッセイを使用して測定される。
【0011】
特定の実施形態では、UBE3A調節因子は、アンチセンスオリゴヌクレオチド、特にLNAアンチセンスオリゴヌクレオチドである。
【0012】
特定の実施形態では、UBE3A調節因子は、自閉症スペクトラム障害、アンジェルマン症候群、又は15qdup症候群の処置のためのUBE3Aタンパク質発現レベル誘導因子である。
【0013】
特定の実施形態では、ステップb)におけるタンパク質は、TKT、DZANK1、UBLCP1及びPSME3からなる群から選択され、これらのタンパク質の発現レベルは、UBE3Aの発現レベルと逆相関する。
【0014】
特定の実施形態では、ステップb)におけるタンパク質は、ACYP1、YARS、WARS及びSOD2からなる群から選択され、これらのタンパク質の発現レベルは、UBE3Aタンパク質発現レベルの前記発現レベルと直接相関する。
【0015】
さらなる態様では、本発明は、UBE3Aタンパク質発現レベル調節のためのバイオマーカーとしての、TKT、DZANK1、ACYP1、UBLCP1、YARS、WARS、SOD2及びPSME3からなる群から選択されるタンパク質の使用に関する。
【0016】
本発明の使用の特定の実施形態では、UBE3Aの調節は、UBE3Aタンパク質発現レベル誘導因子によるものである。
【0017】
本発明の使用の特定の実施形態では、バイオマーカータンパク質は、TKT、DZANK1、UBLCP1及びPSME3からなる群から選択され、これらのバイオマーカータンパク質のタンパク質発現レベルは、UBE3Aタンパク質発現レベルと逆相関する。
【0018】
本発明の使用の特定の実施形態では、バイオマーカータンパク質は、ACYP1、YARS、WARS及びSOD2からなる群から選択され、これらのバイオマーカータンパク質のタンパク質発現レベルは、UBE3Aタンパク質発現レベルと直接相関する。
【0019】
本発明の使用の特定の実施形態では、本発明は、UBE3Aタンパク質発現レベル調節因子のUBE3A標的への関与を判定するための方法を提供する。
【0020】
本発明の使用の特定の実施形態では、UBE3Aタンパク質発現レベル調節因子は、アンチセンスオリゴヌクレオチド、特にLNAアンチセンスオリゴヌクレオチドである。
【0021】
本発明の使用の特定の実施形態では、UBE3Aタンパク質発現レベル調節因子は、自閉症スペクトラム障害、アンジェルマン症候群、又は15qdup症候群の処置のためのUBE3Aタンパク質発現レベル誘導因子である。
【0022】
定義
「タンパク質」という用語は、本明細書で使用される場合、別段示されない限り、霊長類(例えば、ヒト)及び齧歯類(例えば、マウス及びラット)などの哺乳動物を含む任意の脊椎動物源由来の任意の天然タンパク質を指す。この用語は、「全長」、未処理のタンパク質、及び細胞中での処理から生じるタンパク質の任意の形態、並びに天然タンパク質に由来するペプチドを包含する。この用語はまた、天然に存在するバリアント、例えば、スプライスバリアント又はアレルバリアントを包含する。表2に示すアミノ酸配列は、本発明のバイオマーカータンパク質の例示的なアミノ酸配列である。
【0023】
本発明では、UBE3Aタンパク質発現レベル調節因子とは、UBE3Aのタンパク質発現レベルを低下又は増強することができる分子を指す。UBE3Aのタンパク質発現レベルを低下させることができる調節因子をUBE3A阻害剤と称し、UBE3Aのタンパク質発現レベルを増強することができる調節因子をUBE3Aエンハンサーと称する。UBE3A調節因子は、mRNA干渉RNA分子であり得る。別の実施形態では、UBE3A調節因子は、二本鎖RNA(dsRNA)、例えば、短鎖干渉RNA(siRNA)又は短鎖ヘアピンRNA(shRNA)である。二本鎖RNAは、mRNA、snRNA、マイクロRNA、及びtRNAを含むが、これらに限定されない、任意の種類のRNAであり得る。RNA干渉(RNAi)は、特定のRNA及び/又はタンパク質の産生を特異的に阻害するために特に有用である。本発明に適したdsRNA分子の設計及び作出は、特にWO99/32619、WO99/53050、WO99/49029、及びWO01/34815を参照して、当業者の技術の範囲内である。好ましくは、siRNA分子は、標的mRNAと同一の約19~23個の連続したヌクレオチドを有するヌクレオチド配列を含む。「shRNA」という用語は、同じRNA分子上の相補的配列と約50ヌクレオチド未満が対合し、その配列及び相補的配列が少なくとも約4~15ヌクレオチドの不対合領域(2つの塩基相補的領域によって生成されるステム構造上で一本鎖ループを形成)によって分離されているsiRNA分子を指す。十分に確立されたsiRNA設計基準がある(例えば、Elbashireら、2001を参照されたい)。
【0024】
UBE3A調節因子は、標的核酸、特に標的核酸上の連続する配列にハイブリダイズすることによって、標的遺伝子の発現を調節することができるアンチセンスオリゴヌクレオチドであり得る。アンチセンスオリゴヌクレオチドは、本質的に二本鎖ではなく、したがってsiRNA又はshRNAではない。好ましくは、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、一本鎖である。一本鎖オリゴヌクレオチドは、オリゴヌクレオチドの全長にわたって内部(intra)又は相互(inter)の自己相補性の程度が50%未満である限り、ヘアピン又は分子間デュプレックス構造(同じオリゴヌクレオチドの2分子間のデュプレックス)を形成できることが理解される。UBE3A調節因子は、機能的UBE3Aタンパク質の発現をそれを必要とする患者において確立する遺伝子療法であり得る。
【0025】
「対照試料」という用語は、UBE3A調節因子で処理されていない試料を指す。例えば、対照試料は、UBE3A調節因子で処理されていない細胞培養物の試料であるか、又は細胞培養物が、UBE3A調節因子でない化合物で処理されている(陰性対照)。
【0026】
UBE3Aマーカータンパク質TKT、DZANK1、UBLCP1及びPSME3の発現レベルは、UBE3Aタンパク質の発現レベルと逆相関する、すなわち、低レベルのUBE3Aタンパク質レベルは、これらのマーカータンパク質の高発現レベルと相関し、UBE3Aタンパク質レベルの増加は、これらのマーカータンパク質発現レベルの減少と相関する。
【0027】
UBE3Aマーカータンパク質ACYP1、YARS、WARS及びSOD2の発現レベルは、UBE3Aタンパク質の発現レベルと直接相関する、すなわち、低レベルのUBE3Aタンパク質発現は、これらのマーカータンパク質の低発現レベルと相関し、UBE3Aタンパク質レベルの増加は、これらのマーカータンパク質発現レベルの増加と相関する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】ASマウスは、出生時にプロテオーム変化を示し、これは、青年期及び成人期に悪化する。
図1A:実験設計の概略図。対照マウス及びASマウスをP1、P21及びP56で屠殺した。対照動物及びAS動物のプール皮質組織を使用して、データ非依存性取得(DIA)質量分析のための試料特異的スペクトルライブラリを生成した。個々の試料をDIAモードで実行し、試料特異的ライブラリを使用してデータを分析した。タンパク質発現データを統計学的及び経路濃縮分析に供した。
図1B:P1対照タンパク質レベルのパーセンテージとしてプロットした、P1、P21及びP56での対照マウス及びASマウスの皮質のUBE3A生タンパク質強度プロット(平均±S.E.M.n=5~6)。
図1C:年齢(T1;P1、P21、及びP56)並びに遺伝子型(T3;対照及びAS)に従って分解した対照マウス及びASマウス皮質の全プロテオームに対して行った部分最小二乗判別分析(PLS-DA)。
図1D:ASマウス対対照マウスにおけるGO:細胞成分遺伝子セットを使用した1Dアノテーション機能を使用した正規化濃縮スコアを示す経路濃縮プロット。
図1E:ASマウス対対照マウスにおける有意に変化した(p値<0.05)タンパク質の時点あたりの平均Zスコアヒートマップ。クラスタは、UPGMA法に基づくユークリッド距離を用いて定義される。
【
図2】アミノ-アシルtRNAシンセターゼ、プロテアソーム及びシナプスにおける経路変化は、発生的に調節されている。
図2A:アミノ-アシルtRNAシンセターゼ多酵素複合体及びアミノ-アシルtRNAシンセターゼについての時点あたりの平均Zスコア化ヒートマップ。クラスタは、UPGMA法に基づくユークリッド距離を用いて定義される。
図2B:AS対対照における上方制御されたセット(Aimp1,Mars)及び下方制御されたセット(Yars、Wars)を示すアミノ-アシルtRNAシンセターゼ経路からの選択されたタンパク質の経時的発現。値はZスコア化値を表す。エラーバー:s.e.m.
図2C:プロテアソーム複合体についての、それらのサブユニット分類に基づく、時点あたりの平均Zスコア化ヒートマップ。クラスタは、UPGMA法に基づくユークリッド距離を用いて定義される。
図2D:AS対対照における20Sコアプロテアソームサブユニット(Psma5、Psmb1、Psmb2)、19Sプロテアソーム調節サブユニット(Psmc3、Psmc4及びPsmd11)並びにプロテアソーム相互作用タンパク質(Ublcp1、Uchl5及びUsp14)からのタンパク質の上方制御されたセットを示す選択されたタンパク質経路の経時的発現。値はZスコア化値を表す。エラーバー:s.e.m.
図2E:時点P56で有意に変化した(p値<0.05)シナプスという用語に属するタンパク質についての時点あたりの平均Zスコア化ヒートマップ。クラスタは、UPGMA法に基づくユークリッド距離を用いて定義される。クラスタリングは、ASにおいて上方制御されるタンパク質(赤色クラスタ)とASにおいて下方制御されるタンパク質(青色クラスタ)との間の分割を示す。
図2F:ASで上方制御(F)されるか又はASで下方制御(G)されるタンパク質のサンバースト可視化。これらの遺伝子は、SynGO CC(SynGO)に対してアノテーションされている。サンバーストプロットの色は、バックグラウンドとしての測定可能なプロテオーム全体(7126タンパク質)に対するUP(赤色)又はDOWN(青色)セットの濃縮Q値スコアを表す。中心シナプス項から最も遠いエッジに属するタンパク質が標識される。
【
図3】成体ASラットは、異なる脳領域にわたってASマウスで観察されるプロテオーム変化を再現する。
図3A:実験設計の概略図。対照ラット及びASラットをP84で屠殺した。対照動物及びAS動物の小脳(CB)、皮質(CX)及び海馬(HC)のプール組織を使用して、DDA(データ依存性取得)モードで試料特異的スペクトルライブラリを生成した。個々の試料を、データ非依存性取得(DIA)質量分析法を用いてさらに分析した。
図3B:CB対照タンパク質レベルのパーセンテージとしてプロットした、対照ラット及びASラットの小脳(CB)、皮質(CX)、及び海馬(HC)のUBE3A生タンパク質強度プロット(平均±S.E.M.)。
図3C:脳領域(T1及びT2;小脳、皮質、海馬)及び遺伝子型(T3;対照及びAS)に従って分離し3D空間に投影した対照ラット及びASラットの全プロテオームに対して行った部分最小二乗判別分析(PLS-DA)。
図3D:ASラットにおいて各脳領域で変化した統計的に有意な(調整p値<0.05)タンパク質のベン図。
図3E:小脳において統計学的有意性を通過するタンパク質のヒートマップ。タンパク質は2つのカテゴリーに分類される。小脳の対照と比較してASでは上方又は下方制御されている。
図3F、
図3G及び
図3H:脳領域ごとのp値対Log2倍数変化のボルケーノプロット。各ペアワイズ比較で統計的に有意なタンパク質を強調する(青:CB、緑:HC、黄:皮質)。3つ全ての脳領域で有意なタンパク質は黒い星印で示されている。
図1Eからの目的のタンパク質のサブセットを標識する。
図3I、
図3J及び
図3K:
図2Fでフィルタリングした、アミノアシルt-RNAシンターゼ経路におけるタンパク質(G)、プロテアソームサブユニット(H)及びシナプスタンパク質(I)についての、マウス皮質とラット皮質との間のLog2倍数変化相関プロット。相関係数は、ピアソンの方法を使用して計算される。
【
図4】若年及び青年ASマウスの両方におけるUBE3aの回復は、タンパク質及び経路の変化を救済する
図4A:実験設計の概略図。対照マウス(WT;CreERT2+)、ASマウス(Ube3aStop/+;CreERT2-)、及びUbe3a回復マウス(Ube3aStop/+;CreERT2+)にタモキシフェンをP21又はP56で注射し、P84で屠殺した。対照マウスとASマウスの両方の皮質組織をプールして、DDA(データ依存性取得)モードで試料特異的スペクトルライブラリを作成した。個々の試料をデータ非依存性取得(DIA)モードでさらに分析した。
図4B:P21対照タンパク質レベルのパーセンテージとしてプロットした、対照マウス、ASマウス、及びUBE3A回復マウスのP21及びP56注射群の皮質におけるUBE3A生タンパク質強度プロット(平均±S.E.M.)。
図4C:UBE3A回復の時点(T1;P21及びP56)及び遺伝子型(T2;対照、AS、及び回復)に従って分離した対照マウス及びASマウスの皮質の全プロテオームに対して行った部分最小二乗判別分析(PLS-DA)。
図4D:ASマウス対対照マウス(青色)、P21でのUbe3a回復ASマウス対対照(赤色)及びP56でのUBE3A回復ASマウス対対照(青色)におけるGO:細胞成分遺伝子セットを使用した1Dアノテーション機能を使用した正規化濃縮スコアを示す経路濃縮プロット。選択された経路は、
図1Dで観察されるように視覚化される。
図4E:ANOVAを使用した4つの条件のいずれかの間の有意に変化したヒットのヒートマップ(調整p値<0.05)。色は、各タンパク質の平均Zスコア化タンパク質強度を表す。
図4F:毛細管ウェスタンブロッティングによる、対照マウス(N=3)、ASマウス(N=4)、及びP21でのUBE3A回復マウス(N=4)の独立した試料セットにおけるUBE3A標的の直交検証。統計分析は、一元配置ANOVA、続いてテューキーの事後検定を使用して行った。(*p<0.05、**p<0.01、****p<0.0001)。
【
図5】トランスケトラーゼは、齧歯類及びヒトAS疾患モデルにおいて調節解除されたUBE3Aの直接核標的である。
図5A:hiPSC由来ニューロンの対照、対照+UBE3A KD ASO及びAS株におけるUbe3a標的のキャピラリーウエスタンブロット分析。全ての試料についてN=3。統計試験は、一元配置ANOVA、続いてテューキーの事後検定を使用して行った。(*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001 ****p<0.0001)。
図5B:対照、対照+UBE3A KD ASO及びAS株のhiPSC由来ニューロンにおけるトランスケトラーゼ(TKT)及び神経マーカーMAP2の免疫細胞化学的画像。核をDAPIで対比染色した。スケールバー:25μm。
図5C:ニューロン(MAP2陽性)及び非ニューロン細胞(MAP2陰性)における核TKTシグナルの定量化。2つの独立した実験(ニューロン分化及びASO処理において異なるウェルから得られた8つの画像からの個々のデータ点をプロットした。クラスカル・ウォリス検定、続いてDunnの事後検定を用いて統計分析を行った。
図5D:成体対照ラット及びASラットの一次感覚皮質におけるトランスケトラーゼ(TKT)及びニューロンマーカーNEUNの免疫組織化学的画像。核をDAPIで対比染色した。スケールバー:25μm。
図5E:ニューロン(NEUN陽性)及び非ニューロン細胞(NEUN陰性)における核TKTシグナルの定量化。動物あたり3つの画像からの個々のデータ点をプロットした(対照:N=3、AS:N=2匹の動物)。クラスカル・ウォリス検定、続いてDunnの事後検定を用いて統計分析を行った。
図5F:TKT及びRING1Bについての細菌ユビキチン化アッセイ。
図5G:核を欠くマウス(Iso3 KO)又は細胞質ゾルUBE3Aを欠くマウス(iso2 KO)におけるTKTのキャピラリーウエスタンブロット分析。(*p<0.05、****p<0.0001)
【実施例】
【0029】
ASマウスは、出生時にプロテオーム変化を示し、出生後の発達を通して悪化する
データ非依存性取得(DIA)質量分析に基づくプロテオミクスは、古典的なデータ依存性取得(DDA)と比較して再現性、カバレッジ深度、及びダイナミックレンジが大きいため、標識不含定量的プロテオミクスに最適な方法として浮上した[17、18]。本発明者らは、DIAを選択して、対照マウス及びASマウスからの生後の日P1、P21及びP56におけるマウス皮質発達の過程にわたるプロテオーム変化を定量化した。全ての時点からの対照皮質及びAS皮質のプール試料を生成し、分画し、DDAモードで測定し、8,270のタンパク質(77,439の固有ペプチド)を含む試料特異的スペクトルライブラリを得た。次に、個々の試料をDIAモードで測定し、試料特異的ライブラリを使用してDIAデータを分析して、全ての試料にわたって7,187個のタンパク質を定量した。次いで、タンパク質レベルデータを各時点で示差的タンパク質発現プロファイリング分析に供し、経路濃縮分析を実施した(
図1A)。各条件における観察されたタンパク質の生物学的変動係数の中央値(%Cov)は、DIAに関する文献の報告と一致して11~15%であった[17]。
【0030】
UBE3Aタンパク質は、全ての時点で対照マウスと比較してASにおいて有意に減少した(対照レベルの20%未満、調整p値<0.05)。UBE3A発現レベルは、対照及びASの両方においてP1からP56に減少し、これは、ニューロンにおける親UBE3A対立遺伝子の完全なサイレンシングが出生後発達中に起こる[19、20]という観察結果と一致していた(
図1B)。全てのタンパク質の部分最小二乗判別分析(PLS-DA)は、年齢(T1)及び遺伝子型(T3)の両方によって試料を分離し、P21及びP56はP1と有意に異なっていた。T3に沿った分離は、ASマウスがそれらのプロテオミクスプロファイルに関して対照マウスから徐々に逸れることを明らかにし、成体脳において最大の差があった(P56)(
図1C)。
【0031】
GO:細胞成分(GO:CC)を使用した全てのタンパク質の経路濃縮分析は、全ての出生後段階でアミノアシル-tRNAシンセターゼ及びプロテアソーム複合体の上方制御を明らかにしたが、シナプスの成熟と一致して、シナプス前後の経路はP56で有意に変化した(
図1D)。次に、本発明者らは、各発達段階で差次的に調節されるタンパク質を同定して、それらの違いを経時的に観察することを目的とした。28個のタンパク質(
図1E)が、任意の時点において、対照マウスとASマウスとの間で有意に(q値<0.05)調節された。これらのタンパク質の階層的クラスタリングにより、UBE3A発現に関してタンパク質が共調節及び逆調節される遺伝子型及び発達段階依存的効果が明らかになった。代謝酵素TKT(トランスケトラーゼ)のようないくつかのタンパク質はP21及びP56でのみ変化したが、MIOS(GATOR2複合体の成分)、微小管タンパク質KIF3C、卵巣腫瘍ドメイン(OTU)含有脱ユビキチン化システインプロテアーゼOTUB2のようないくつかの他のタンパク質は、全ての時点で調節不全を示す(
図1E、
図S2)。
【0032】
興味深いことに、アミノアシル-tRNAシンセターゼ経路に属するタンパク質の存在量(QARS、DUS3L、YARS)は、異なる時点でASにおいて増加及び減少の両方であったが、プロテアソームサブユニットUBLCP1、UCHL5、PSME3は全ての時点で増加し、これらの経路のさらなる調査が必要であった。
【0033】
ASマウスにおけるアミノ-アシルtRNAシンセターゼ、プロテアソーム及びシナプスにおける発生的に調節された経路変化
次に、本発明者らは、変化した経路内の個々のタンパク質の軌跡を調べた。アミノアシル-tRNAシンセターゼ(ARS)は、アミノ酸のそれらの同族tRNAへのライゲーションに関与する進化的に保存された酵素であり、遊離で、又はARS多酵素複合体(MSC)の一部としてのいずれかで存在する[21]。本発明者らは、脳成熟にわたって全てのARS及びMSCタンパク質の発現を調べ(
図2A)、これにより、クラスI ARSタンパク質、具体的にはMSCに属するMARS、QARS、RARS、AIMP1及びAIMP2が、ASにおいて増加することが明らかになった。逆に、芳香族アミノ酸負荷に関与するARSタンパク質、すなわちトリプトファニル-tRNAシンセターゼWARS及びチロシル-tRNAシンセターゼYARSはASにおいて減少した(
図2A)。興味深いことに、遺伝子型に関係なく、出生後の脳発達中にこれらのタンパク質の強い減少があり、ASにおいてP21及びP56で疾患の変化が劇的に逸れている(
図2B)。
【0034】
プロテアソームの全ての成分に対応するタンパク質は、出生時から成体期まで持続的に変化していた。11S及び19S調節粒子のサブユニットを含むプロテアソーム機構の個々のタンパク質、20Sコアサブユニット、及びプロテアソーム相互作用タンパク質に続いて、疾患特異的分子軌跡が明らかになった[22](
図2C)。本発明者らは、いくつかのプロテアソーム相互作用タンパク質(UCHL5、UBLCP1、USP14)並びに11S及び19S調節サブユニットに属するタンパク質(PSMD11、PSMC3、PSMD1、PSME3)の存在量の一貫した増加を観察し、一方で、20Sコアプロテアソームサブユニットの変化は同様の傾向に従ったが比較的軽微であった(
図2C、D)。したがって、UBE3Aは、発生を通してプロテアソームサブユニット及びアクセサリータンパク質の全体的な増加をもたらし、11S及び19S調節サブユニット並びにプロテアソーム関連タンパク質のサブセットで最も顕著な変化が見られる。
【0035】
次に、本発明者らは、ASマウスにおいてP56で選択的に変化したが(AS対対照、q値<0.05)、P1又はP21では変化しなかったシナプスタンパク質を調べ、これらの基準を満たす63個のタンパク質を見出した(
図2E)。これらのタンパク質のヒートマップ可視化及び階層的クラスタリングは、双方向AS遺伝子型効果を明らかにし、タンパク質のセットは、AS対対照において上方制御(赤色クラスタ、40タンパク質)及び下方制御(青色クラスタ、23タンパク質)される。これらの2セットのタンパク質が特定のシナプスサブ区画で濃縮されているかどうかを決定するために、高品質で手動でアノテーションされたシナプスGOデータベースであるSynapseGOを使用して経路濃縮分析を行った[23]。40個のタンパク質の上方制御されたセットについてのSynGO CC濃縮分析は、それらがシナプス前及びシナプス後の両方の部位に分布していることを示した。シナプス小胞及びシナプス前活性領域に属するタンパク質(STX1A、SYP、VAMP2)、並びにシナプス後密度の不可欠な成分であるタンパク質(GRIA3、ATP2B2、LRRC2)は、有意に濃縮された(FDR調整p値<0.05)(
図2F、上部;データ表S3)。SynGO分析により、ASで減少したタンパク質もシナプス前とシナプス後の両方の区画に属することが明らかになった。具体的には、シナプス小胞タンパク質(STXBP5、SLC6A2、ATP6V0C)及びシナプス後密度タンパク質(GRK2、KPNA1、PAK1、PTPRF)は、ASにおいてP56で減少した。
【0036】
したがって、ASマウスにおけるタンパク質変化は動的であり;ARS及びプロテアソームサブユニットは誕生から変化しているが、シナプスタンパク質の多くの変化は脳成熟の最終段階にわたって発達する。
【0037】
成体ASラットは、異なる脳領域にわたってASマウスで観察されるプロテオーム変化を再現する。
本発明者らは次に、新たに入手可能なASラットモデルを利用することによって、観察された変化がASラットモデルにおいて種及び脳領域にわたって保存されるかどうかを調査した[24]。本発明者らは、成体(P84)対照及びASラット(
図3A)において3つのラット脳領域(CB:小脳、HC:海馬、CX:皮質)のDIAベースのLC-MS分析を行った。ハイブリッドスペクトルライブラリを、DirectDIA測定と組み合わせた全ての試料からの3つ全ての脳領域の分画プール試料に対するDDA実行から生成して、8,928個のタンパク質(116,603個の固有ペプチド)のライブラリを生成し、全ての試料にわたって7,525個のタンパク質を定量することを可能にした。変動係数は、試料タイプあたり約10%であった。UBE3A発現は、ASラットの全ての3つの脳領域で確実に減少した(
図3B)。マウスと同様[25、26]。対照ラットの小脳におけるUBE3Aレベルは海馬及び皮質と比較して低かったが、ASラット小脳における残留UBE3Aレベルはより高かった(小脳において対照レベルの27%対海馬及び皮質において対照レベルの10%未満;
図3B)。その後のPLS-DA分析は、遺伝子型(T3)と脳領域(T2、T1)との間の堅固な分離を明らかにした(
図3C)。小脳のプロテオミクスプロファイルは皮質及び海馬とは異なっており、これらは互いにより多くの類似性を共有しており、異なる発生起源及び細胞構造を反映している可能性が高い。
【0038】
ASラットの脳において有意に変化したタンパク質を調べると、34個のタンパク質が3つ全ての脳領域にわたって変化し、海馬及び皮質における変化に大きな重複があることが明らかになった(
図3D)。小脳における有意なヒットを階層的クラスタリングによって可視化し、上方制御されたタンパク質(青色クラスタ)及び下方制御されたタンパク質(緑色クラスタ)のセットを明らかにした(
図3E)。小脳において変化したタンパク質のいくつかは、皮質及び海馬において方向性の傾向を示したが、統計的カットオフを満たさなかった。興味深いことに、いくつかのタンパク質(GSTO1、DAB2IP、ASNS、AGAP1を含む)が、これらの基質の小脳ニューロン特異的調節を示唆するASにおいて小脳において特異的に変化していた。プロテアソームサブユニットに属するタンパク質(UBLCP1、UCHL5、PSME3を含む)並びにARSタンパク質YARS及びWARSは、3つ全ての脳領域において変化した(
図3F、G、H、黒い星)。
【0039】
次に、本発明者らは、AS P56マウス及びラットの皮質(
図3I~K)において、並びにラットの脳領域にわたって、3つの主要経路に対応する変化したタンパク質間の相関を調べた。本発明者らは、各経路を、対照と比較して、P56でASマウス皮質において上方制御されるタンパク質(赤色)又は下方制御されるタンパク質(青色)のセットに細分した。ARS経路についての倍数変化の相関プロットは、ラットとマウスとの間の有意な相関を明らかにし(R=0.66、p=4.29E-004)、マウス及びラットの両方においてASで、YARS、WARS及びGARSは下方制御され、MARS、VARS、AIMP1及びAIMP2は上方制御された(
図3I)。
【0040】
プロテアソーム複合体タンパク質は、ラット及びマウスの皮質間(
図3J)(R=0.49、P=2.12E-004)及び脳領域全体で強い相関を示した。ユビキチン様ドメイン含有CTDホスファターゼ1;UBLCP1、ユビキチンカルボキシル末端ヒドロラーゼアイソザイムL5;UCHL5及びプロテアソーム活性化因子複合体サブユニット3;PSME3は、3つ全ての脳領域にわたって成体ラットにおいて一貫して上方制御された(
図3J)。プロテアソーム集合シャペロン3;PSME3及び26Sプロテアソーム非ATPアーゼ調節サブユニット10;PSMD10は、ASマウス並びにASラット脳領域において、対照と比較してASにおいて一貫して下方制御された。アミノアシルtRNAシンセターゼ経路の場合と同様に、皮質及び海馬は互いにより類似性を示し、小脳はわずかに逸れた。
【0041】
シナプスタンパク質変化の分析は、種間及びラット脳領域にわたる類似性及び相違性の両方を示した(
図3K)。ASラット皮質はマウス皮質(R=0.53、P=4.86E-006)及びラット海馬(R=0.56、P=1.59E-006)の両方に類似していたが、AS小脳では逸れていた(R=0.21、P=8.60E-002)。興味深いことに、シナプスタンパク質GAD2、ACHE、PLCXD3及びGRK2は、全ての脳領域及び種全体でASにおいて下方制御されたが、PSD、DLG4、PLCB1及びVPS11はASにおいて上方制御された。MAP1A、PCLO、PTPRF、STX1Aなどの他のものは、脳領域又は種特異的な違いを示した。
【0042】
若年及び成体ASマウスにおけるUBE3A発現の回復は、変化したプロテオーム状態を様々な程度までレスキューする
本発明者らは次に、潜在的なUBE3A標的、及び経路におけるこれらの変化が、臨床的に関連する治療時点の間に、すなわち若年マウス及び成体マウスにおいて、UBE3A回復によってレスキューされ得るかどうかを調査した。UBE3A発現を回復させることによって変化した分子プロテオームをレスキューできるかどうかに対処するために、本発明者らは、タモキシフェン誘導性UBE3A対立遺伝子を有するASマウスモデルを利用した[4]。対照(WT;CreERT2+)、AS(Ube3aStop/p+)。UBE3A回復マウス(Ube3aStop/p+;CreERT2+)に、若年及び成体の発達段階に対応するP21又はP56のいずれかでタモキシフェンを注射し、P84で屠殺して、2つの時点でのレスキューを比較した(
図4A)。皮質組織を使用して、対照群とAS群の両方から作成されたプールされたライブラリで分析して、DIAモードで全ての試料にわたって5325個のタンパク質を定量した。
【0043】
P21及びP56でのUBE3Aの回復は、LC/MSによって測定した場合、それぞれ、対照動物の皮質UBE3Aタンパク質レベルの20%未満~81%及び71%をレスキューすることができた(
図4B)。PLS-DAは、回復の時点(T1)及び遺伝子型(T2)の両方によって試料を分離し、対照はASマウスとは有意に異なっていた(
図4C)。全体的なプロテオミクスプロファイル分析により、P21回復群は対照に戻り、P56回復はASプロテオームを部分的にレスキューしたことが明らかになった。これらの結果は、タンパク質恒常性のAS関連変化が、若年の脳におけるUBE3A回復によってほぼ完全にレスキューされ得、成人ではより少ない程度でしかレスキューされ得ないことを示唆している。
【0044】
次に、本発明者らは、異なる群間のUBE3A下流標的の軌跡をマッピングするために、示差的に変化したタンパク質の発現及び経路分析を行った。対照とASを比較した、又はP21若しくはP56での回復とASを比較した、GO:細胞成分(GO:CC)分析を使用した全てのタンパク質に対する経路濃縮分析により、P56ではなくP21でのアミノアシル-tRNAシンセターゼのレスキュー、及び両方の時点でのプロテアソーム複合体及びシナプスタンパク質遺伝子セットの両方のレスキューが明らかになった(
図4D)。
【0045】
4つの試料セットのいずれかの間で有意に変化した上位27個の個々のタンパク質のヒートマップは、タンパク質の大部分が早期及び後期の両方のレスキューである程度戻り得ることを明らかにする。(調整p値<0.05;
図4E)。UBE3A発現に関する共調節(マゼンタ)又は逆調節(緑色)の程度に従って階層的クラスタリングを行った。ARSに属する上位ヒット(YARS及びWARSなど)及びプロテアソームサブユニット又はプロテアソームアクセサリータンパク質(例えば、UBLCP1、UCHL5、PSME3)を含むタンパク質の大部分は、P21対P56で増強されたレスキューを示す;一方、FDPS、C2CD4C、FXYD6、TSNAX及びSTX7を含むいくつかのシナプスタンパク質の発現はP56で正規化され、UBE3Aに対するそれらの応答が変動し得ることを示している。
【0046】
トランスケトラーゼは、齧歯類及びヒトにおけるUBE3Aの核標的である
上位に同定されたUBE3A標的のサブセットを直交法で確認するために、対照、AS及びP21回復マウスの皮質試料の独立したコホートの生化学的分析をキャピラリーウェスタンブロッティングを使用して行った(
図4F)。TKT、UCHL5、ACYP1、YARS、DZANK及びSOD2を含む試験したヒットのいくつかについて、ASマウスと比較して対照において、及びASマウスと比較してP21回復においてタンパク質レベルの有意な変化が検出された。これらの結果は、独立した実験及びタンパク質定量方法にわたって同定された標的の堅牢性を確認する。さらに、対照マウス及びASマウスの皮質組織における上位に同定されたヒットの転写レベルは有意に異ならず、発現レベルの変化が翻訳レベル又は翻訳後であることを示した。
【0047】
次に、本発明者らは、AS患者及び対照血液から生成された人工多能性幹細胞(iPSC)に由来するニューロンにおいて、齧歯類における上位のUBE3A依存的ヒットが変化しているかどうかを調査した[27](Pandya et al.,2021)。6週間の分化後、この選択されたタンパク質セットの発現をキャピラリーウェスタンブロッティングで分析した。試験した全てのタンパク質は、プロテアソーム(UCHL5、PSMD2、USP14、UBLCP1、PSME3)及びARS経路(YARS、WARS)に関連する全てのタンパク質を含め、対照と比較してASニューロンにおいて有意な上方制御を示した。さらに、UBE3A発現を低下させるためのUBE3A標的化ASOによる対照ニューロンの処置(UBE3A KD)は、ほとんどの場合においてより小さい倍数変化ではあったがAS患者ニューロンにおいて見られる変化を模倣した(
図5A)。一貫して、AS患者のニューロン、並びにASマウス及びラットの脳にわたって、TKTは最大の倍数変化を明らかにした(
図5A)。したがって、本発明者らは、TKTのUBE3A依存的調節の機構に対処しようと努めた。
【0048】
ペントースリン酸経路における他の酵素とは異なり、TKTは、特定の癌細胞及び正常組織において実質的な核局在化を有し、核局在化シグナルを含有することが以前に報告されている[28、29]。同様に、TKTは、ほとんどがヒト及びラットのニューロンにおいて核に出現した(
図5B、D)。ヒトニューロンでは、DAPI及びMAP2との共標識により、TKT発現が非ニューロン細胞と比較してニューロンの核でより高く(MAP2+対MAP2-細胞)、ASニューロン及びUBE3A依存的に増加することが明らかになった(
図5B、C)。ニューロンiPSC由来AS及びUBE3A KD培養物の両方におけるTKT核強度は、TKT発現の有意な上方制御を明らかにした(対照と比較したMAP2陽性核、+59%;
図5B、C)。ラット皮質では、ニューロン(NeuN陽性)細胞と非ニューロン細胞の両方で発現が低かった。患者ニューロンと一致して、核TKTシグナルはAS条件で有意に上方制御された(+95%;
図5D、E)。ラットの脳では、非ニューロン細胞のわずかな増加があり、これはUBE3A遺伝子投与量の減少によるものであり得る(
図5E)。
【0049】
TKTがUBE3Aの直接標的であるかどうかを評価するために、本発明者らは、大腸菌で行われる以前に記載された細胞ユビキチン化アッセイ[14、30]を使用した。この目的のために、大腸菌細胞を、ウサギユビキチン様修飾因子活性化酵素1(UBA1)、E2ユビキチンコンジュゲート酵素UBCH5、E3リガーゼUBE3A(又は触媒的に不活性なバリアント)、ユビキチン、及びTKT又はRING1Bをコードするプラスミドで形質転換した。RING1Bは、UBE3Aの十分に確立された標的であり、このアッセイでは陽性対照として働く[14、31]。活性なUBE3A及びユビキチン化カスケードの全ての成分の存在は、RING1B及びTKTの両方について、より遅い移動バンドの形成をもたらす(
図5F)。これらのより遅い移動バンドは、ユビキチンが存在しない場合又は触媒的に不活性なUBE3AC817Sの存在下では見られない。これらの結果は、UBE3AがTKTを直接ユビキチン化できることを強く示唆している。
【0050】
UBE3Aは、細胞局在が互いに異なるいくつかのアイソフォームで発現されることが示されている。ヒトでは、N末端で変化する3つの機能的アイソフォーム[32、33]が存在するが、マウスでは、より短い、主に核アイソフォーム(mUBE3A-Iso3)、及びより長い細胞質ゾルアイソフォーム(mUBE3a-Iso2)の2つのみが存在する。さらに、核UBE3Aアイソフォームの喪失は、マウスにおいてAS表現型を誘導するのに十分であることが示されている[13]。ニューロン核におけるTKTのUBE3A依存的上方制御を考慮して、本発明者らは、その調節がUBE3Aアイソフォーム特異的であるかどうかを調べた。mUBE3A-Iso3及びmUBE3a-Iso2ノックアウトマウス並びにそれらのそれぞれの対照の皮質組織からの溶解物をキャピラリーウェスタンブロッティングで分析した。mUBE3A-Iso3はUBE3Aタンパク質の大部分を占めるので、このアイソフォームのノックアウトは総UBE3Aレベルを60%超低下させた(
図5G)。野生型対照と比較して、TKTとUCHL5(核に局在する既知のUBE3A標的)の両方のレベルがmUBE3A-Iso3ノックアウトマウスの組織で上方制御されたが(それぞれ+12.8%及び+28.4%)、細胞質アイソフォームmUBE3a-Iso2のノックアウトは発現レベルに有意に影響しなかった(
図5G)。これは、TKTタンパク質レベルが核アイソフォームmUBE3A-Iso3によって制御されることを示唆している。
【0051】
考察
この研究では、本発明者らは、齧歯類プロテオームのUBE3A駆動の時間的及び空間的変化を包括的にマッピングした。AS患者由来ニューロンの以前のプロテオーム分析と合わせて、本発明者らは、種全体の疾患変化を強調する。本発明者らは、ASプロテオームが出生後の発達の過程にわたって悪化すること、及び、より早い時点ではレスキューがより効果的であるが、若年及び若い成人の出生後段階でのUBE3A回復によって戻り得ることを実証する。さらに、本発明者らは、ASのラット及びヒトモデルでも観察されたマウスのUBE3A喪失によって影響を受ける3つの主要な細胞経路:プロテアソーム、ARS、及びいくつかのシナプス経路を同定した。これらの結果は、基本的な包括的細胞プロセスの調節がUBE3Aによって制御され、UBE3Aの変化が異なる発達軌跡を示すことを意味する。
【0052】
全ての種及び全ての発達段階にわたってASプロテオームにおいて観察された最も顕著な変化は、プロテアソームサブユニット及びプロテアソームアクセサリータンパク質の上方制御であった。UBE3Aが26Sプロテアソームと直接相互作用し、プロテアソームサブユニットの代謝回転を調節することができることが以前に報告されている[13、16、34、35]。本発明者らのデータは、タンパク質存在量の変化が19S及び11S調節サブユニット並びにプロテアソームアクセサリータンパク質に20Sコアよりも大きな程度で影響を及ぼしたことを示す。非ニューロン状況では、ポリユビキチン化受容体PSMD4、デユビキチナーゼUCHL5、及び調節サブユニットPSMC3を含むいくつかの上位ヒットは、UBE3Aによって直接ユビキチン化される可能性があり、次いで、その基質の結合及びプロセスを含むプロテアソーム機能に悪影響を及ぼす可能性がある[36]。したがって、UBE3Aの喪失がインビボで同様の方法でプロテアソーム機能に影響を及ぼし、ASプロテオームに対する累積的な影響をもたらすことが考えられる。さらに、アクセサリータンパク質の存在量及び機能の変化は、ニューロンにおける特定の疾患関連基質の認識を妨げることによって疾患表現型に直接寄与し得る。将来の研究は、広範なプロテオーム疾患の変化に対するUbe3aプロテアソーム機能障害並びに核と細胞質のUbe3aの寄与がどの程度変化するかに対処すべきである。
【0053】
プロテアソーム経路と同様に、本発明者らは、全ての発達時点にわたってARSの変化を観察した。ARSは、アミノ酸をそれらの同族tRNA分子にコンジュゲートしてタンパク質翻訳の重要な初期ステップを提供することによって正しい翻訳を確実にする核コード酵素のファミリーである[21]。プロテアソームと同様に、ARSはタンパク質恒常性、この場合は翻訳において中心的な役割を果たすが、プロテアソームのサブユニットとは対照的に、UBE3A依存性機構との関連はあまり明らかではない。ヒトタンパク質-タンパク質相互作用データベースを使用した包括的ネットワーク分析により、AIMP1、AIMP2、MARS及びQARSを含むいくつかのARSがUBE3Aインタラクトームの一部として同定されたが、それらのいずれも直接基質として作用することは報告されていない[37]。これは、ARS経路における個々のタンパク質が普遍的に上方制御されないという本発明者らの知見と一致している。タンパク質存在量QARS及びAIMP1タンパク質は上昇したが、YARS及びWARSはASマウスにおいて減少し、これは、直接的及び間接的効果の両方を伴うより複雑なUBE3A依存性調節機構を示唆している。真核生物の進化の過程で、多細胞生物は、翻訳を超える機能を果たすさらなるARSタンパク質ドメインを有する[38]。未知の病因を有する患者における全エクソーム及び全ゲノム配列決定は、ARS遺伝子、例えばクラスI ARSタンパク質YARS及びWARSにおける機能喪失突然変異を、神経系機能不全、発達遅延及びてんかんに結び付けた[39、40]。触媒ドメイン中の突然変異は、ARSによるアミノアシル化率又はtRNA認識の精度を低下させ、タンパク質合成を妨害し得、それによって関連障害の多くに寄与し得る。さらに、チロシン及びトリプトファンは、正常なシナプス機能に不可欠なセロトニン及びドーパミンの重要な構成要素であり、AS行動表現型への神経伝達物質不均衡の寄与がAS患者及びASのマウスモデルで報告されている[41]。触媒機能を妨害しない疾患原因ARS突然変異の存在は、非標準的ARS機能も病理学的表現型に寄与し得ることを示す。ASにおける個々のARSタンパク質の存在量の変化は、MSC組成及び翻訳非依存的な役割、例えば、ミトコンドリア恒常性、核rRNA合成及びサイトカイン刺激に影響を及ぼすことが考えられる[42]。翻訳機構又は他のARS関連機能がASにおいて妨害されるかどうか、及びこれが疾患表現型にどのように寄与するかを決定するために、将来の研究が必要とされるであろう。
【0054】
プロテアソーム及びtRNAシンターゼ経路とは対照的に、シナプスヒットは、神経系の完全な成熟と一致する後期発達段階でほとんど変化した。ニューロン機能に関与する多くのUBE3A下流標的は以前に特徴付けられているが、これらの標的の大部分については、それらが直接的な基質であるかどうかを決定する必要がある。本発明者らのデータセットでは、広範囲のシナプスタンパク質の存在量が増加又は減少し、分子レベルでのシナプスの調節不全が確認された。本発明者らの分析により、ヒットは、シナプス小胞、シナプス前活性領域、及びシナプス後密度の不可欠な成分を含む、シナプス前区画とシナプス後区画の両方に局在し、単一のシナプス区画における変化ではなく、全体的なシナプス摂動を示すことが明らかになった。個々の各成分の存在量の変化が神経機能にどのように影響を及ぼすか、及びUBE3aを介して直接、又は結果としてより初期の発達段階で現れるプロテアソーム又はARSなどの経路を介してクロストークの程度がどの程度であるかは、依然として決定されていない。
【0055】
最近、母体UBE3A遺伝子の欠失を有し、ASマウスで以前に観察された行動表現型の多くを再現するASの新規ラットモデルが生成された[24]。本発明者らの研究は、ASラット脳組織の最初のプロテオーム研究を表し、本発明者らは、ARSファミリーYARS及びWARSのメンバー、プロテアソームサブユニット並びにUBLCP1及びUCHL5などのアクセサリータンパク質、並びに本発明者らの全てのASデータセットにわたって一貫した上方制御を示した代謝酵素TKTを含む、ASマウスにおいて同定された上位ヒットを確認した。ラットAS皮質におけるプロテアソーム、ARS及びシナプス経路の変化は、P56 ASマウスと強く相関し、UBE3A依存性経路の変化が保存されていることを示し、ASにおける広範な基礎疾患機構を指し示している。
【0056】
ラットの個々の脳領域分析により、皮質、海馬、及び小脳(AS患者において機能障害を示し、長年にわたって研究の主な焦点であった場所)の間の共通性及び領域差が特定された[43]。認知及び学習障害、運動失調、及び運動協調不全などの潜在的な領域特異的機能障害の根底にある分子機構を調べることは、特に興味深い。興味深いことに、ASマウスとラットとの間の保存されたタンパク質及び経路もまた、異なる脳領域にわたって変化することが確認された。興味深いことに、小脳ASプロテオームは皮質及び海馬から逸れており、これは、齧歯類モデル及びAS患者に見られる運動機能障害及び運動失調に影響を及ぼし得る。小脳ニューロン細胞構造は非常に独特であり、ニューロン、小脳細胞の大部分はUBE3Aをほとんど発現せず、したがって、可能性のあるUBE3Aタンパク質の変化はプルキンエ細胞又はゴルジ細胞に由来し得る[26]。AS小脳特異的タンパク質のいくつかは、排他的に発現されるか、又は他の脳領域と比較して小脳において有意な濃縮を示す。DPYSL5は、発生中の脳で発現される酵素であり、アクチンとの相互作用を介して神経突起伸長を調節する[44]。成体小脳では、それはマウスのプルキニエ細胞の樹状突起発達及びシナプス可塑性を調節する[45]。抗CRMP5抗体は、亜急性小脳性運動失調を有する患者の血清で検出されることが多く[46]、プロテオミクスプロファイリングは、皮質形成異常及びてんかんを有する患者における有意に増加した発現を明らかにした[47]。BRAFキナーゼ機能獲得突然変異は、発達遅延、知的障害、及び発作を含む、ASに類似する様々な神経学的表現型を呈する噴気顔面皮膚症候群(CFC)に関連する。iPSC由来ニューロンでは、BRAF機能獲得は、未熟なニューロン分化及び始原体プールの枯渇をもたらし、これらの培養物で生成されたニューロンは、より高い固有の興奮性を示した[48]。最後に、アスパラギンシンセターゼASNSの機能喪失は小頭症と関連しており、これは始原体の増殖低下によって引き起こされる可能性が最も高い[49]。ASNSは、4つのアミノ酸L-アスパラギン酸、L-アスパラギン、L-グルタミン酸、及びL-グルタミンを代謝的に接続し、したがって、脳におけるこれらのアミノ酸のバランスの調節不全は、小頭症及び脳機能不全に寄与し得る。
【0057】
AS患者ではUBE3A遺伝子座のより大きな欠失が観察されるが、UBE3A発現の喪失のみでASを誘導するのに十分であることが示されている。したがって、UBE3A発現の復元は、現在臨床試験中の有望な治療戦略である。誘導性母体UBE3A対立遺伝子を有する条件的ASマウスモデルでは、UBE3A回復後に特定の行動表現型の年齢依存的レスキューが実証された[4,50]。さらに、しかしながら、成体ASマウスにおけるUBE3A ATS ASOの単一の脳室内注射は、ほとんどの行動表現型をレスキューすることができなかった[7]。新産仔マウスへのASO注射は、多くの行動表現型をレスキューした(Milazzo in press)。齧歯類の行動は、UBE3Aの回復が初期の時点でより効果的であることを示唆しているが、これは必ずしも分子/プロテオームの変化に当てはまるとは限らない。発達の初期段階におけるUbe3aニューロン喪失は、成熟ニューロンにおける直接的又は間接的なタンパク質調節から切り分けることが困難な発達上の変化を引き起こし得る。したがって、本発明者らは、UBE3Aを青年期(P21)及び成人期(P56)に回復させることによって、マウスのASプロテオームがどの程度まで戻り得るかを調べた。驚くべきことに、いずれの段階でのUBE3A発現の復元もプロテオーム恒常性を有意な程度まで復元させたが、P21レスキューはより効率的であった。大部分において、プロテアソーム及びシナプス経路の変化は両方の時点で戻り、これは、ほとんどの電気生理学的パラメータが成体UBE3Aの回復時にも復元され得るという観察結果と一致している[51]。これらの結果は、タンパク質の疾患軌跡及び関連する経路がUBE3A依存性であり、出生後に復元され得ることを強調している。興味深いことに、いくつかのタンパク質は、成体レスキューにおいてのみ調節され、完全に成熟したニューロンにおける役割を示唆している。P56特異的シナプスヒットには、シナプス可塑性に重要なシグナル伝達タンパク質であるTSNAX[52]、及びSVのシナプス前リサイクルプールを維持するのに役割を果たし得るシナプス小胞(SV)の成分であるSTX7[53]が含まれた。これらの結果は、成人期初期におけるUBE3A発現の復元がASプロテオームを有意に戻し、潜在的にプロテアソーム及びシナプス機能をレスキューし、ASにおける疾患修飾治療の進歩をさらに促進することができることを実証している。
【0058】
以前の研究では、患者由来のiPSCニューロン培養物のプロテオーム分析及びASOを使用したUBE3A回復後に、GAGドメイン含有タンパク質PEG10を含む一連のヒト特異的UBE3A標的が明らかになった[27]。さらに、PPID、DST、及びUCHL5を含む、患者ニューロンにおいて同定されたいくつかの上位ヒットもASモデルにおいて変化した。いくつかのさらなるプロテアソーム及びARSタンパク質がASニューロンにあり、UBE3Aのノックダウンによって表現型模写された。注目すべきことに、齧歯類モデルにわたって最大の変化を示し、直接的なUBE3A標的として検証されたタンパク質であるTKTもまた、ヒトASニューロンにおいて最も変化した。TKTは、NADPH及びヌクレオチド合成のための構成要素を生成する代謝経路であるペントースリン酸経路(PPP)の律速酵素である。さらに、TKTは、それを解糖と接続するPPPの非酸化的分岐の一部であり、その可逆的性質のために、PPPを通る流動を制御することができる。TKT機能は補酵素チアミンに依存し、チアミンの欠乏並びにTKT遺伝子の稀な突然変異は、一連の神経学的機能不全の根底にあるが、TKT機能喪失がこれらの表現型をもたらす正確な機構は十分に理解されていない[54、55]。興味深いことに、PPPが細胞質ゾルで起こるにもかかわらず、ヒトニューロン及びラット脳組織の両方におけるTKT局在化は、主に核であることが見出された[56]。UBE3Aの核又は細胞質アイソフォームのいずれかの欠失を有するマウスモデルを使用して(参照)、本発明者らは、TKTが核UBE3Aによって直接調節されることを実証した。核UBE3AによるTKTの厳密な調節及びAS条件での上方制御は、1)UBE3Aによる調節がその代謝機能及びPPPに直接関連しているのか、又は2)核内のTKTの未知の非標準的機能が存在するのか、及び3)TKTの過剰が疾患表現型に寄与するかどうかの疑問を提起する。非標準的調節機能は、プロテインキナーゼ及び転写調節因子として作用することができる解糖酵素を含む多くの代謝酵素について記載されており[57]、また、核TKTがTKT酵素活性とは機能的に無関係にEGFRと相互作用するという報告がある[28]。TKTがAS病態生理の役割を有するかどうかを解明するために、将来の研究が必要である。
【0059】
AS患者由来ニューロンの以前のプロテオミクス分析[27]と共に、本発明者らの研究は、バイオマーカー及びトランスレーショナル研究を支援するためのプロテオミクスリソースを提供する。TKT及び他のタンパク質が疾患のニューロンから分泌されるかどうかを決定し、それを下流のUBE3Aバイオマーカーとして検証するために、AS脳死後試料からの変化したヒトプロテオームを決定し、患者CSF試料を分析するための将来の努力が必要とされる。
【0060】
要約すると、本発明者らは、3つの異なるAS齧歯類モデル:1)異なる発達段階にわたるマウス皮質、2)ラット皮質及び他の疾患関連脳領域、及び3)UBE3Aレスキュー後のマウスにわたる143回の実行からのプロテオミクスデータセットを提供し;UBE3A依存性タンパク質及び経路変化の包括的プロテオミクスアトラスを提供する。
【0061】
材料及び方法
動物
マウスをバリア施設内の個別に換気したケージ(IVC;Techniplastからの1145 Tケージ)に収容した。全ての動物を、12時間の明暗サイクルで22±2℃に保ち、マウス固形飼料(Special Dietary Serviceからの801727CRM(P))及び水を自由に与えた。全ての動物実験は、欧州委員会指令(European Commission Council Directive)2010/63/EU(CCD承認AVD101002016791)に従って実施した。
【0062】
データ非依存性取得(DIA)質量分析
ラット及びマウス組織の総タンパク質プロファイリングを、BiognosysのHyper Reaction Monitoring(HRM(商標))標識なし発見プロテオミクスワークフローを使用してBiognosys AG(Schlieren,Switzerland)で行った。全ての溶媒は、Sigma-Aldrich製のHPLCグレードであり、他に明記されていない全ての化学物質は、Sigma-Aldrichから得た。
【0063】
試料の調製
Biognosysの変性緩衝液を用いて組織試料を変性させ、37℃で60分間、Biognosysの還元及びアルキル化溶液を用いて還元及びアルキル化した。その後、ペプチドへの消化を、トリプシン(w/w比1 50 Promega)を使用して37℃で一晩行った。PreOmics試料調製キットを使用してサンプルを調製し、乾燥ペプチドとして凍結した。ペプチドを、BiognosysのiRTキット較正ペプチドを添加したLC溶媒A(1%アセトニトリル、0.1%ギ酸(FA))に再懸濁した。ペプチド濃度を、UV/VIS分光計(SPECTROstar Nano,BMG Labtech)を使用して決定した。
【0064】
HPRP分画
皮質試料(P1、P21、P56):遺伝子型に従ってペプチドをプールした(2つのプール:WT及びAS)。水酸化アンモニウムを両方のプールにpH値>10まで添加した。分画は、Acquity UPLC CSH C18 1.7μm、2.1x150mmカラム(Waters)でDionex UltiMate 3000RSポンプ(Thermo Scientific)を使用して行った。勾配は20分で1%から40%の溶媒Bであり、溶媒はA:水中20mMギ酸アンモニウム、B:アセトニトリルであった。画分を30秒ごとに採取し、マウス皮質試料については6つの画分プールに、ラット脳試料については8つの画分プールに順次プールした。マウス皮質試料については、溶出液を乾燥させ、15μlの溶媒A中で分離し、BiognosysのHRMキット較正ペプチドを添加し、ラット試料を12μLの溶媒A中で分離し、BiognosysのiRTキット較正ペプチドを添加した。
【0065】
マウス皮質試料(Ube3a回復):ペプチドの2つのプールを生成した(WT;CreERT+及びUbe3aStop/p+;CreERT-、各6サンプル)。2つのプールを0.2Mギ酸アンモニウム(pH10)で4倍希釈し、C18 MicroSpinカラム(The Nest Group)に適用した。次いで、ペプチドを、0.05Mギ酸アンモニウムを含有し、pH10で増加するアセトニトリル濃度(5%、10%、15%、20%、25%、及び50%)の緩衝液で溶出した。溶出液を乾燥させ、15μlの溶媒A中で分離し、BiognosysのHRMキット較正ペプチドを添加した。画分5%及び50%をプールした。全てのペプチド濃度を、UV/VIS分光計を使用して決定した。
【0066】
スペクトルライブラリ生成のためのショットガンLC MS/MS
マウス脳組織のLC MS/MS測定のために、標準的なナノエレクトロスプレー源を備えたThermo Scientific Q Exactive(商標)HF質量分析計に接続されたThermo Scientific(商標)Easy nLC 1200ナノ液体クロマトグラフィーシステム上の社内充填C18カラム(Dr.Maisch ReproSil Pur 1.9μm粒径、120Å孔径75μm内径、50cm長さ、New Objective)に、画分あたり2μgのペプチド(又はUbe3a回復を伴う画分5+50%の皮質試料については4μg)を注入した。LC溶媒は、A:0.1% FAを含む1%アセトニトリル水溶液;B:0.1% FAを含むアセトニトリル中15%水であった。LC勾配は、60分間で1~55%の溶媒B、続いて10秒間で55~90%のB、10分間90%のB、0.1分間で90%~1%のB、及び5分間1%のBであった。改変されたTOP15方法を使用した[58]
【0067】
さらに、Brudererら[59]によるMCP刊行物からのマウス体性感覚皮質1バレルフィールド及びマウス小脳ライブラリを分析に使用した。
【0068】
ラット脳試料のDDA LC MS/MS測定のために、Nanospray Flex(商標)イオン源を備えたThermo Scientific Orbitrap Fusion Tribrid質量分析計に接続したThermo Scientific EASY-nLC(商標)1200ナノ液体クロマトグラフィーシステム上の社内充填逆相カラム(Waters製の1.7μmの荷電表面ハイブリッドC18粒子を充填した、New Objective製の内径75μm、長さ60cm及び先端10μmのPicoFritエミッタ)に、画分あたり1μgのペプチドを注入した。LC溶媒は、A:0.1% FAを含む1%アセトニトリル水溶液;B:0.1% FAを含むアセトニトリル中20%水であった。非線形LC勾配は、95分間で1~59%の溶媒B、続いて10秒間で59~90%のB、8分間90%のB、10秒間で90%~1%のB、及び60℃で250nl/分の流速で5分間1%のBであった。Hebertらによる修正最高速度法(3 sサイクル時間)を使用した[60]。
【0069】
ショットガンLC MS/MSデータのデータベース検索
発達の時間経過皮質試料(P1、P21、P56)については、質量分析データをBiognosysの検索エンジンSpectroMine(商標)を使用して分析し、Ube3a回復を伴う皮質試料については、Biognosysの検索エンジンPulsar(バージョン1.0.19846)を使用した。ペプチド及びタンパク質レベルでの偽発見率を1%に設定した。マウスUniProt fastaデータベース(ハツカネズミ(Mus musculus)、2019-07-01)を検索エンジンに使用し、2回の切断ミス及び可変修飾を可能にした(N末アセチル化、メチオニン酸化)。
【0070】
ラット脳組織試料については、Biognosysの検索エンジンSpectroMine(商標)(バージョン1.0.190808)を使用して質量分析データを分析し、ペプチド及びタンパク質レベルの偽発見率を1%に設定した。ラットUniProt/Trembl.Fastaデータベース(ドブネズミ(Rattus norvegicus)、2019-07-01)を検索エンジンに使用し、2回の切断ミス及び可変修飾を可能にした(N末アセチル化、メチオニン酸化)。
【0071】
HRM ID+質量分析取得
LC MS/MS HRM測定のために、標準的なナノエレクトロスプレー源を備えたThermo Scientific Q Exactive HF質量分析計に接続されたThermo Scientific Easy nLC 1200ナノ液体クロマトグラフィーシステム上の社内充填C18カラム(Dr.Maisch ReproSil Pur、1.9μm粒径、120Å孔径;75μm内径、50cm長さ、New Objective)に、試料あたり2μgのペプチドを注入した。LC溶媒は、A:0.1% FAを含む1%アセトニトリル水溶液;B:0.1% FAを含むアセトニトリル中15%水であった。非線形LC勾配は、120分間で1~55%の溶媒B、続いて10秒間で55~90%のB、及び10分間90%のBであった。1回の全範囲サーベイスキャン及び22個のDIA窓を用いたDIA法を使用し、勾配長は135分であった。
【0072】
HRMデータ分析
HRM質量分析データは、Spectronaut Pulsarソフトウェア(Biognosys、バージョン12及び13.8.190930)を使用して分析した。ペプチド及びタンパク質レベルの偽発見率を1%に設定し、データを行ベースの抽出を使用してフィルタリングした。このプロジェクトで生成されたアッセイライブラリ(タンパク質在庫)をMCPからのもの(Bruderer et al.,2017)と組み合わせて分析に使用した。Spectronautで分析されたHRM測定値は、局所回帰正規化を使用して正規化された[61]。
【0073】
HRMデータ分析
マウス発達時間経過
統計学及びバイオインフォマティクス分析を、R統計環境[62]及びPerseusソフトウェア[63]で行った。
【0074】
元のスケールで20未満のタンパク質強度は、ノイズ閾値を下回ると考えられ、欠損としてマークされた。データをlog2変換し、全ての試料にわたって50%の有効値を含むようにフィルタリングした。DIAデータが完全であるため、3つのタンパク質のみが除外され、さらなる分析のために合計7,184個のタンパク質群が保持された。
【0075】
Discriminer R Package[64]をデフォルト設定で使用して部分最小二乗判別分析(PLS-DA)を実施し、完全に測定した7,029個のタンパク質群に基づいた。
【0076】
示差的に発現したタンパク質を同定するために、本発明者らは、順列ベースの偽発見率制御を可能にするsamr Rパッケージ[65]を使用し、関連するq値を報告した[66]。100の順列を有する2クラス独立検定を使用して、各時点におけるAS及びWT遺伝子型を別々に比較した。タンパク質は、5%のq値閾値を満たす場合、統計的に有意に差次的に発現されると分類された。
【0077】
経路分析は、1Dアノテーション機能を使用してPerseusソフトウェアで行った。各タンパク質の遺伝子オントロジー(GO)アノテーションをUniProtからダウンロードした[67]。複数の濃縮試験を行ったので、Benjamini-Hochberg法を用いて多重仮説検定を補正した。完全性のために、3つ全ての比較について経路濃縮スコアをプロットし、有意に調節されたものを明示的にマークする。
【0078】
ラット脳領域
上記と同様の分析戦略をラットデータセットに適用した。簡潔には、20未満のタンパク質発現値をNAに変換した。データをlog2変換し、フィルタリングして、全試料の少なくとも50%において値が測定されたタンパク質群を保持し、7,524個のタンパク質群を得た。DiscriMiner Rパッケージ[64]を使用して、全ての試料(7,346個)にわたる測定でタンパク質を使用してPLS-DA分析を行った。示差的に発現されたタンパク質を、各脳領域にわたって別々にKOラット試料とWTラット試料との間で同定した。2クラス独立検定について同じ関数を使用し、0.05のq値は、タンパク質を統計的に有意に差次的に発現されるとマークすると考えられた。
【0079】
マウスUbe3aの回復
20未満のタンパク質発現値を検出限界未満とみなし、NAに変換し、データをlog2変換した。5,325個のタンパク質群は、全試料の少なくとも50%において測定値を含み、その後の統計分析に使用した。DiscriMiner Rパッケージ[64]を使用して、全ての試料(5,314個)にわたって測定されたタンパク質に対してPLS-DA分析を行った。
【0080】
パッケージからの「マルチクラス」に設定された応答タイプを有するsamr関数を使用して、WT、KO、p21でのレスキュー及びp56でのレスキューの4つの条件にわたって差次的に発現されたタンパク質群を同定した。どのペアワイズ比較が有意であるかを判定するために、R統計パッケージ[62]からのテューキーのHonestly Significant Difference検定を使用し、アルファレベルを5%に設定した。
【0081】
上方又は下方制御された経路を同定するために、Perseusソフトウェアの1Dアノテーション試験を使用した。各ペアワイズ比較KO対WT、Rescue p21対KO、及びRescue p56対KOについて、タンパク質を最初に、GOアノテーション及びUniprotデータベースからダウンロードしたキーワードにマッピングした。続いて、濃縮スコアを計算し、Benjamini-Hochberg手順を用いた多重仮説検定補正を適用して、統計学的有意差を同定した。完全性のために、3つ全ての比較について経路濃縮スコアを常にプロットし、有意に調節されたものを明示的にマークした。
【0082】
キャピラリーウエスタンブロット
マウス脳及びhiPSC溶解物における推定上のUbe3a標的のタンパク質発現を、自動キャピラリーウェスタンブロッティング(Sally Sue、Protein Simple)によって分析した。全ての実験ステップは、製造業者の指示に従って実施した。簡潔には、タンパク質の抽出及び定量の後、0.25mg/mlの最終試料濃度をキャピラリーカートリッジ(12~230kDaのPeggy Sue又はSally Sue Separation Module、#SM-S001)に充填した。化学発光タンパク質検出を、抗ウサギ及び抗マウス検出モジュール(#DM-001及び#DM-002)を使用して行った。相対タンパク質発現の分析は、Compass for SWソフトウェア(バージョン4.1.0、タンパク質単純)を用いて行い、ANOVA、続いてテューキーの事後検定を用いてGraphPad Prismソフトウェア(バージョン8)を用いてにより統計分析した。
【0083】
hIPSC培養
NPC及びニューロンの細胞培養を、Costa et al.and Pandya et al[27、68]に記載されているように行った。
IPSC染色及び画像化
【0084】
対照及びAS欠失ニューロンをBGAA培地中で培養した。培地を処理の1日前に交換した。hiPSC由来ニューロンを、ニューロン分化中に6週間、PBS中の1μM ASOで処理した。処理後、細胞を直ちに固定し、前述のように[27]、TKT(Sigma-Aldrich、HPA029480;1:200)、UBE3a(Sigma-Aldrich、SAB1404508;1:200)及びMap2(Abcam、ab5392;1:500)及びDAPIについて染色した。
【0085】
撮像及び撮像データ分析
Leica TCS SP5共焦点顕微鏡で画像を取得した。Zスタック投影は、FIJI(ImageJ)の「スライスの合計」コマンドを使用して実行された。核UBE3A及びTKT発現の自動定量化を、マスクとしてDAPI染色を使用し、各細胞における蛍光の積分密度を測定することによって行った。ニューロン細胞と非ニューロン細胞とを区別するために、各独立した実験におけるHuC/D染色の手動閾値処理を行った。2つの独立した分化からの複製物をデータ分析のために組み合わせた。Kruskal-Wallis検定、続いてDunnの事後検定を使用して、GraphPad Prismソフトウエア(バージョン8)を用いて統計分析を行った。
ASO処置
【表1】
【0086】
免疫組織化学
脳組織を4% PFAで固定し、凍結切片化のために調製した。ラット脳組織におけるTkt(Sigma-Aldrich、HPA029480;1:200)、Ube3a(Sigma-Aldrich、SAB1404508;1:400)及びNeuN(Sigma-Aldrich、MAB377;1/500)についての免疫組織化学染色を以前に記載されたように行った[13]。簡潔には、切片を、0.5% Triton X-100及び5%正常ウマ血清を含有するPBSにより室温で1時間ブロッキング処理した。一次抗体標識を、0.5% Triton X-100及び1%正常ウマ血清を含有するPBS中、室温で一晩行った。一次抗体標識後、切片をPBSで洗浄し、0.5% Triton X-100、1%正常ウマ血清を含有するPBS緩衝液中の対応するAlexaコンジュゲート二次抗体及びDAPIと室温で2時間インキュベートした。
【0087】
撮像及びデータ分析
Leica TCS SP8共焦点顕微鏡で画像を取得した。Zスタック投影は、FIJI(ImageJ)の「スライスの合計」コマンドを使用して実行された。核UBE3A及びTKT発現の自動定量化を、マスクとしてDAPI染色を使用し、各細胞における蛍光の積分密度を測定することによって行った。NeuN染色の手動閾値処理を行い、ニューロン細胞と非ニューロン細胞を区別するために動物全体で一貫して維持した。Kruskal-Wallis検定、続いてDunnの事後検定を使用して、GraphPad Prismソフトウエア(バージョン8)を用いて統計分析を行った。
【0088】
本発明のバイオマーカータンパク質(ヒトタンパク質を列挙)。
【表2】
【0089】
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【配列表】
【国際調査報告】