(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-02
(54)【発明の名称】治療用化合物及びインビトロの哺乳動物の皮膚を含む方法
(51)【国際特許分類】
G01N 33/50 20060101AFI20240925BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20240925BHJP
A61K 38/17 20060101ALI20240925BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20240925BHJP
A61K 38/02 20060101ALI20240925BHJP
A61K 35/76 20150101ALI20240925BHJP
A61K 35/17 20150101ALI20240925BHJP
A61K 31/7088 20060101ALI20240925BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20240925BHJP
【FI】
G01N33/50 Q
A61K45/00
A61K38/17 100
A61K39/395 A
A61K39/395 H
A61K38/02
A61K35/76
A61K35/17
A61K31/7088
A61K48/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024509059
(86)(22)【出願日】2022-08-19
(85)【翻訳文提出日】2024-04-12
(86)【国際出願番号】 US2022075191
(87)【国際公開番号】W WO2023023633
(87)【国際公開日】2023-02-23
(32)【優先日】2021-08-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2022-08-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】500049716
【氏名又は名称】アムジエン・インコーポレーテツド
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジュベール,マリサ
(72)【発明者】
【氏名】ジョー,ネイサン・エイチ
(72)【発明者】
【氏名】トクダ,ジョシュア・エム
(72)【発明者】
【氏名】ファーバス,ジョン
(72)【発明者】
【氏名】シエ,ジアンソン
(72)【発明者】
【氏名】シェン,ドン
【テーマコード(参考)】
2G045
4C084
4C085
4C086
4C087
【Fターム(参考)】
2G045CB09
2G045DA80
2G045FB06
4C084AA01
4C084AA13
4C084AA17
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4C084DA39
4C084MA66
4C084NA10
4C085AA11
4C085BB31
4C085CC22
4C085GG04
4C086AA01
4C086AA10
4C086EA16
4C086MA01
4C086MA66
4C086NA10
4C087AA01
4C087AA10
4C087BB37
4C087BC83
4C087CA12
4C087MA66
4C087NA10
(57)【要約】
真皮層及び表皮層を含むインビトロの生きた哺乳動物の皮膚試料を用意するステップ、治療用化合物製品を真皮層と表皮層との間の界面に投与するステップ、及び皮膚試料を分析するステップを含む、治療用化合物製品の皮下投与を調査する方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
真皮層と表皮層との間の界面を規定する、真皮層及び表皮層を含むインビトロの生きた哺乳動物の皮膚を用意するステップ、
投与条件下で治療用化合物製品を前記界面に投与するステップ、
前記界面における前記治療用化合物製品の生理化学的特性及び/又は臨床的特性を検出するステップ、及び
前記治療用化合物の前記検出された生理化学的特性及び/又は臨床的特性に基づいて、さらなる開発のために前記投与条件を選択又は却下するステップ
を含む、皮下投与用の治療用化合物製品の投与条件を選択する方法。
【請求項2】
前記投与条件が、前記治療用化合物の配合、濃度、体積、粘度、分子特性、投与経路及び/又は投与器具若しくは投与器具を使用する方法(頻度、流速、パラメーター)の少なくとも1つを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記投与条件が、配合の添加剤、緩衝剤、界面活性剤又は安定化剤を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記生理化学的特性及び/又は臨床的特性が、バイオアベイラビリティ、薬物動態学的性質、凝集、沈殿、分布、拡散速度、滞留及び/又は吸収を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記治療用化合物製品が、前記投与するステップの後に、前記生理化学的特性及び/又は臨床的特性を獲得した、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
2つ以上の異なる投与条件で前記方法を反復するステップをさらに含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
真皮層と表皮層との間の界面を規定する、真皮層及び表皮層を含むインビトロの生きた哺乳動物の皮膚を用意するステップ、
分子特性を含む治療用化合物製品を前記界面に投与するステップ、及び
前記界面における前記治療用化合物の生理化学的特性及び/又は臨床的特性を検出するステップ
を含む、皮下投与後の治療用化合物の生理化学的特性及び/又は臨床的特性に、前記治療用化合物の分子特性が及ぼす影響を判定する方法。
【請求項8】
前記生理化学的特性及び/又は臨床的特性が、バイオアベイラビリティ、薬物動態学的性質、凝集、沈殿、分布、拡散速度及び/又は吸収を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
真皮層と表皮層との間の界面を規定する、真皮層及び表皮層を含むインビトロの生きた哺乳動物の皮膚を用意するステップ、
特性を含む治療用化合物を前記界面に投与するステップであって、前記治療用化合物が、分子特性の第1の状態を含むステップ、及び
皮下腔における前記治療用化合物の前記分子特性の第2の状態を検出するステップ
を含む、皮下投与後の治療用化合物の分子特性における変化を検出する方法。
【請求項10】
前記分子特性の前記第1の状態及び前記第2の状態が、前記治療用化合物に関する濃度、量、分布、又は前記界面における分布のいずれかを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記分子特性の前記第1の状態が、第1の値を有し、前記分子特性の第2の状態が、前記第1の状態と同じ又は異なる第2の値を有する、請求項9又は10に記載の方法。
【請求項12】
前記分子特性が、酸性種、塩基性種、高分子量種、目視不可の粒子数、低分子量、中分子量、グリコシル化(非グリコシル化重鎖又は高マンノースなど)、非重鎖及び軽鎖、脱アミド化、脱アミノ化、環化、酸化、異性化、断片化/クリッピング、N末端バリアント及びC末端バリアント、還元種及び部分種、折り畳み構造、表面疎水性、化学修飾、共有結合、C末端アミノ酸モチーフPARG又はC末端アミノ酸モチーフPAR-アミドの少なくとも1つを含む、請求項8~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
投与するステップが、
カニューレを含む針を前記真皮層の表面に押しつけ、それにより、前記針を前記インビトロの生きた哺乳動物の皮膚の前記界面に挿入すること、及び
前記針を介して前記皮下腔に、前記治療用化合物製品を配置すること
を含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記針が、前記真皮の表面に鋭角に押しつけられる、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記針が、前記カニューレと流体連通する開口部を含み、投与するステップが、前記開口部を前記真皮層へ向けることを含む、請求項13又は14に記載の方法。
【請求項16】
前記検出するステップが、前記真皮層を通す光学画像化を含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
投与するステップが、前記治療用化合物製品の、前記真皮層を通す及び/又は皮下組織層の中への、浸漬、拡散又は経皮投与を含む、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記インビトロの哺乳動物の皮膚が、前記界面内に皮下腔を規定する皮下組織をさらに含む、請求項1~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記インビトロの哺乳動物の皮膚を用意するステップが、前記インビトロの哺乳動物の皮膚を近位の基体と遠位の基体との間に固定化することを含む、請求項1~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記近位の基体及び前記遠位の基体が、それぞれ、カバーガラスなどのガラスを含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記インビトロの哺乳動物の皮膚を用意するステップが、前記治療用化合物製品の拡散に適応するようにサイズ調整された孔を含む多孔性基体に配置された前記皮膚モデルの前記真皮層を用意することを含み、前記投与するステップが、前記多孔性基体を、前記治療用化合物製品を含む溶液と流体連通させることを含む、請求項1~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記投与するステップ後に前記溶液中の目視不可のレベルの粒子の存在を検出するステップをさらに含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記インビトロの哺乳動物の皮膚が、インビトロのヒト皮膚である、請求項1~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記インビトロの哺乳動物の皮膚が、カニクイザルなどの非ヒト霊長類のインビトロの皮膚である、請求項1~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記インビトロの哺乳動物の皮膚が、非ヒト哺乳動物のものである、請求項1~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
インビトロのヒト皮膚を使用して前記方法を反復するステップ、及び
前記インビトロのヒト皮膚に投与された前記治療用化合物の生理化学的特性及び/又は臨床的特性を、前記非ヒト哺乳動物のものである前記インビトロの哺乳動物の皮膚に投与された前記治療用化合物の生理化学的特性及び/又は臨床的特性と比較するステップ
をさらに含む、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記検出するステップが、画像化及び/又は分析試験を含む、請求項1~26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記分析試験が、質量分析法、クロマトグラフィー、電気泳動法、分光法、光遮蔽法、粒子法(ナノ粒子/可視/ミクロンサイズの共振式質量又はブラウン運動など)、分析用遠心分離、画像法若しくは画像特性評価法、免疫測定法、SE-HPLC、rCE-SDS、CEX-HPLC、HIAC、nrCE-SDS、質量分析顕微鏡法、及び/又はマススペクトロスコピーを含む、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記画像化が、CTスキャン又は磁気共鳴画像法を含む、請求項27又は28に記載の方法。
【請求項30】
前記治療用化合物を、フルオロフォア、蛍光色素、放射標識又は量子ドットなどの検出可能な部分で標識するステップをさらに含む、請求項1~29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記治療用化合物が、抗体、抗原結合性抗体断片、抗体タンパク質生成物、二重特異性T細胞エンゲージャー(BiTE(登録商標))分子、二重特異性抗体、三重特異性抗体、Fc融合タンパク質、組換えタンパク質、組換えウイルス、組換えT細胞、合成ペプチド、組換えタンパク質の活性断片、核酸又はウイルスを含む、請求項1~30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
前記治療用化合物が、治療用タンパク質を含む、又は治療用タンパク質からなる、請求項1~31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
前記投与するステップの前に、前記治療用化合物に分析試験を実行するステップをさらに含む、請求項1~32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
前記検出するステップが、バックグラウンド信号を取得すること、及び前記バックグラウンド信号を差し引くことを含む、請求項1~33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
前記検出するステップが、光学画像化を含む、請求項1~34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
前記光学画像化が、多光子レーザー走査顕微鏡法から構成される、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記光学画像化が、第二高調波発生(SHG)画像化を含む、請求項35又は36に記載の方法。
【請求項38】
前記治療用化合物を投与するステップが、前記針を介して前記治療用化合物製品を前記皮下腔に配置することを含み、前記針が、前記画像化の間、前記皮下腔に配置されたままである、請求項35又は36に記載の方法。
【請求項39】
前記インビトロの生きた哺乳動物の皮膚が、培地中で用意され、前記培地が、前記用意するステップの前に濾過されている、請求項1~38のいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
前記培地が、50KDa以下、例えば、50KDa、40KDa、30KDa又は25KDaの分子量カットオフを有する遠心分離フィルターで濾過されている、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記分子特性が、SEC-HPLC及びHIACによって検出される、請求項9~40のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書における実施形態は、治療用化合物の分析、特性評価、開発及び/又は選択のためにインビトロの哺乳動物の皮膚を使用する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
皮下(SubQ)注入は、治療用タンパク質などの治療用化合物を含む医薬組成物用に広く使用される投与経路である。しかしながら、凝集及び難溶性は、治療用化合物の医薬組成物の製造及び送達の大きな障害となる可能性がある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
一部の実施形態によれば、皮下投与用の治療用化合物製品の投与条件を選択する方法が記載される。この方法は、真皮層と表皮層との間の界面を規定する、真皮層及び表皮層を含むインビトロの生きた哺乳動物の皮膚を用意するステップを含み得る。この方法は、投与条件下で治療用化合物製品をその界面に投与するステップを含み得る。この方法は、その界面における治療用化合物製品の生理化学的特性及び/又は臨床的特性を検出するステップを含み得る。この方法は、治療用化合物の検出された生理化学的特性及び/又は臨床的特性に基づいて、さらなる開発のためにその投与条件を選択又は却下するステップを含み得る。
【0004】
本明細書に記載される皮下投与用の治療用化合物製品の投与条件を選択する方法のいずれかについて、投与条件は、前記治療用化合物の配合、濃度、体積、粘度、分子特性、投与経路及び/又は投与器具若しくは投与器具を使用する方法(頻度、流速、パラメーター)の少なくとも1つを含む。
【0005】
本明細書に記載される皮下投与用の治療用化合物製品の投与条件を選択する方法のいずれかについて、投与条件は、配合の添加剤、緩衝剤、界面活性剤又は安定化剤を含み得る。
【0006】
本明細書に記載される皮下投与用の治療用化合物製品の投与条件を選択する方法のいずれかについて、生理化学的特性及び/又は臨床的特性は、バイオアベイラビリティ、薬物動態学的性質、凝集、沈殿、分布、拡散速度、滞留及び/又は吸収を含み得る。
【0007】
本明細書に記載される皮下投与用の治療用化合物製品の投与条件を選択する方法のいずれかについて、治療用化合物製品は、前記投与するステップの後に、生理化学的特性及び/又は臨床的特性を獲得した場合がある。
【0008】
本明細書に記載される皮下投与用の治療用化合物製品の投与条件を選択する方法のいずれかについて、その方法は、2つ以上の異なる投与条件でその方法を反復するステップをさらに含み得る。
【0009】
一部の実施形態によれば、皮下投与後の治療用化合物の生理化学的特性及び/又は臨床的特性に、その治療用化合物の分子特性が及ぼす影響を判定する方法が記載される。この方法は、真皮層と表皮層との間の界面を規定する、真皮層及び表皮層を含むインビトロの生きた哺乳動物の皮膚を用意するステップを含み得る。この方法は、分子特性を含む治療用化合物製品をその界面に投与するステップを含み得る。この方法は、その界面における治療用化合物の生理化学的特性及び/又は臨床的特性を検出するステップを含み得る。例として、生理化学的特性及び/又は臨床的特性は、バイオアベイラビリティ、薬物動態学的性質、凝集、沈殿、分布、拡散速度及び/又は吸収を含み得る。
【0010】
一部の実施形態によれば、皮下投与後の治療用化合物の分子特性における変化を検出する方法が記載される。この方法は、真皮層と表皮層との間の界面を規定する、真皮層及び表皮層を含むインビトロの生きた哺乳動物の皮膚を用意するステップを含み得る。この方法は、特性を含む治療用化合物をその界面に投与するステップを含み得、その治療用化合物は、分子特性の第1の状態を含む。この方法は、皮下腔における治療用化合物の分子特性の第2の状態を検出するステップを含み得る。第2の状態は、第1の状態と異なる場合がある。本明細書に記載される皮下投与後の治療用化合物の分子特性における変化を検出する方法のいずれかについて、分子特性の第1の状態及び第2の状態は、治療用化合物に関する濃度、量、分布、又は界面における分布のいずれかを含み得る。本明細書に記載される皮下投与後の治療用化合物の分子特性における変化を検出する方法のいずれかについて、分子特性の第1の状態は、第1の値を有し、分子特性の第2の状態は、第1の状態と同じか又は異なる第2の値を有する。本明細書に記載される皮下投与後の治療用化合物の分子特性における変化を検出する方法のいずれかについて、
【0011】
本明細書に記載される方法のいずれかについて、分子特性は、酸性種、塩基性種、高分子量種、目視不可の粒子数、低分子量、中分子量、グリコシル化(非グリコシル化重鎖又は高マンノースなど)、非重鎖及び軽鎖、脱アミド化、脱アミノ化、環化、酸化、異性化、断片化/クリッピング、N末端バリアント及びC末端バリアント、還元種及び部分種、折り畳み構造、表面疎水性、化学修飾、共有結合、C末端アミノ酸モチーフPARG又はC末端アミノ酸モチーフPAR-アミドの少なくとも1つを含み得る。
【0012】
本明細書に記載される方法のいずれかについて、投与するステップは、カニューレを含む針を真皮層の表面に押しつけ、このようにしてその針をインビトロの生きた哺乳動物の皮膚の界面に挿入することを含み得る。投与するステップは、その針を介して皮下腔に、治療用化合物製品を配置することをさらに含み得る。一部の方法において、針は、真皮の表面に鋭角に押しつけられる。一部の方法において、針は、カニューレと流体連通する開口部を含み、投与するステップは、その開口部を真皮層へ向けることを含む。検出するステップは、真皮層を通す光学画像化を含み得る。
【0013】
本明細書に記載される方法のいずれかについて、投与するステップは、治療用化合物製品の、真皮層を通す及び/又は皮下組織層の中への、浸漬、拡散又は経皮投与を含み得る。
【0014】
本明細書に記載される方法のいずれかについて、インビトロの哺乳動物の皮膚は、界面内に皮下腔を規定する皮下組織をさらに含み得る。
【0015】
本明細書に記載される方法のいずれかについて、インビトロの哺乳動物の皮膚を用意するステップは、インビトロの哺乳動物の皮膚を近位の基体と遠位の基体との間に固定化することを含み得る。一部の方法において、近位の基体及び遠位の基体は、それぞれ、カバーガラスなどのガラスを含む。
【0016】
本明細書に記載される方法のいずれかについて、インビトロの哺乳動物の皮膚を用意するステップは、治療用化合物製品の拡散に適応するようにサイズ調整された孔を含む多孔性基体に配置された皮膚モデルの真皮層を用意することを含み得る。投与するステップは、その多孔性基体を、治療用化合物製品を含む溶液と流体連通させることを含み得る。この方法は、前記投与するステップ後に溶液中の目視不可のレベルの粒子の存在を検出するステップをさらに含み得る。
【0017】
本明細書に記載される方法のいずれかについて、インビトロの哺乳動物の皮膚は、インビトロのヒト皮膚であり得る。本明細書に記載される方法のいずれかについて、インビトロの哺乳動物の皮膚は、カニクイザルなどの非ヒト霊長類のインビトロの皮膚であり得る。本明細書に記載される方法のいずれかについて、インビトロの哺乳動物の皮膚は、非ヒト哺乳動物のものであり得る。インビトロの哺乳動物の皮膚が非ヒト哺乳動物のものである一部の方法について、その方法は、インビトロのヒト皮膚を使用してその方法を反復するステップ、及びインビトロのヒト皮膚に投与された治療用化合物の生理化学的特性及び/又は臨床的特性を、非ヒト哺乳動物のものであるインビトロの哺乳動物の皮膚に投与された治療用化合物の生理化学的特性及び/又は臨床的特性と比較するステップをさらに含み得る。
【0018】
本明細書に記載される方法のいずれかについて、検出するステップは、画像化及び/又は分析試験を含み得る。分析試験は、質量分析法、クロマトグラフィー、電気泳動法、分光法、光遮蔽法、粒子法(ナノ粒子/可視/ミクロンサイズの共振式質量又はブラウン運動など)、分析用遠心分離、画像法若しくは画像特性評価法、免疫測定法、SE-HPLC、rCE-SDS、CEX-HPLC、HIAC、nrCE-SDS、質量分析顕微鏡法、及び/又はマススペクトロスコピーを含み得る。画像化は、CTスキャン又は磁気共鳴画像法を含み得る。本明細書に記載される方法のいずれかについて、検出するステップは、光学画像化を含み得る。本明細書に記載される方法のいずれかについて、検出するステップは、バックグラウンド信号を取得すること、及びそのバックグラウンド信号を差し引くことを含み得る。
【0019】
本明細書に記載される方法のいずれかについて、その方法は、治療用化合物を、フルオロフォア、蛍光色素、放射標識又は量子ドットなどの検出可能な部分で標識するステップをさらに含み得る。
【0020】
本明細書に記載される方法のいずれかについて、治療用化合物は、抗体、抗原結合性抗体断片、抗体タンパク質生成物、二重特異性T細胞エンゲージャー(Bi-specific T cell engager:BiTE(登録商標))分子、二重特異性抗体、三重特異性抗体、Fc融合タンパク質、組換えタンパク質、組換えウイルス、組換えT細胞、合成ペプチド、組換えタンパク質の活性断片、核酸又はウイルスを含み得る。本明細書に記載される方法のいずれかについて、治療用化合物は、治療用タンパク質を含み得るか、又は治療用タンパク質からなり得る。
【0021】
本明細書に記載される方法のいずれかについて、その方法は、治療用化合物を界面に投与するステップの前に、治療用化合物に分析試験を実行するステップをさらに含み得る。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1A】一部の実施形態の、インビトロの哺乳動物の皮膚環境における治療用化合物の挙動を解明するための注入及び蛍光ベースの手法を説明する一連の模式図である。
図1Aは、治療用化合物の蛍光標識を示し、これは本明細書に記載される一部の方法に適している。当然のことながら、本明細書に記載される一部の方法は、非標識の治療用化合物に対しても実行されてもよい。
図1Bは、
図1Aに示されたものに加えて画像化するための選択肢を図示している。
【
図1B】一部の実施形態の、インビトロの哺乳動物の皮膚環境における治療用化合物の挙動を解明するための注入及び蛍光ベースの手法を説明する一連の模式図である。
図1Aは、治療用化合物の蛍光標識を示し、これは本明細書に記載される一部の方法に適している。当然のことながら、本明細書に記載される一部の方法は、非標識の治療用化合物に対しても実行されてもよい。
図1Bは、
図1Aに示されたものに加えて画像化するための選択肢を図示している。
【
図1C】一部の実施形態の方法を説明するフローチャートである。
【
図1D】一部の実施形態の方法を説明するフローチャートである。
【
図1E】一部の実施形態の方法を説明するフローチャートである。
【
図2A-2D】一部の実施形態に従ってインビトロの哺乳動物の皮膚に注入された様々なpH感受性の凝集傾向を有するmAbの一連の画像のオーバーレイである。矢先は、mAbの凝集体を示す。
【
図3A】一部の実施形態によるインビトロの哺乳動物の皮膚の曝露後の特性変化を解明するための、曝露及び分析戦略を説明する一連の模式図である。
【
図3B】一部の実施形態によるインビトロの哺乳動物の皮膚の曝露後の特性変化を解明するための、曝露及び分析戦略を説明する一連の模式図である。
【
図4A】一部の実施形態のインビトロの哺乳動物の皮膚に曝露されたmAb3の2つの製剤について、高分子量(HMW)種及び目視不可の粒子(SbVP)レベルの比較を示す一連のグラフである。
【
図4B】一部の実施形態のインビトロの哺乳動物の皮膚に曝露されたmAb3の2つの製剤について、高分子量(HMW)種及び目視不可の粒子(SbVP)レベルの比較を示す一連のグラフである。
【
図4C】一部の実施形態のインビトロの哺乳動物の皮膚に曝露されたmAb3の2つの製剤について、高分子量(HMW)種及び目視不可の粒子(SbVP)レベルの比較を示す一連のグラフである。
【
図4D】一部の実施形態のインビトロの哺乳動物の皮膚に曝露されたmAb3の2つの製剤について、高分子量(HMW)種及び目視不可の粒子(SbVP)レベルの比較を示す一連のグラフである。
【
図5A】様々な製剤での幾つかの治療用タンパク質について、高分子量(HMW)種及び目視不可の粒子(SbVP)レベルの比較を示す一連のグラフである。
【
図5B】様々な製剤での幾つかの治療用タンパク質について、高分子量(HMW)種及び目視不可の粒子(SbVP)レベルの比較を示す一連のグラフである。
【
図5C】様々な製剤での幾つかの治療用タンパク質について、高分子量(HMW)種及び目視不可の粒子(SbVP)レベルの比較を示す一連のグラフである。
【
図6】一部の実施形態に従ってインビトロの哺乳動物の皮膚に注入された治療用タンパク質溶液の一連の画像である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
治療用化合物及びそれを含む医薬組成物を分析、選択及び特性評価する方法が、本明細書に記載される。本願以前は、SubQ腔内の治療用化合物の医薬組成物の相互作用の評価は、ヒト皮膚の生物学的複雑性を適切に捉える堅実な実験系の欠如により、制限されていた。したがって、本願以前は、SubQ環境における凝集及び溶解性などの治療用化合物の特性を評価する正確な方法が必要であった。SubQ腔内で皮膚環境が治療用化合物(及びそれを含む医薬組成物)に及ぼす影響をモデル化するために、ヒト皮膚などのインビトロの哺乳動物の皮膚を使用する方法が、本明細書に記載される。本方法は、治療用化合物製品の投与条件(1つ又は複数の製剤特性、又はデバイス若しくは投与経路など)を選択するため、皮下投与後の治療用化合物の生理化学的及び/若しくは臨床的特性に、その治療用化合物の分子特性(HMW種など)が及ぼす影響を判定するため、並びに/又は皮下投与後の治療用化合物の分子特性における変化を検出するために使用することができる。本方法は、真皮層と表皮層との間の界面を規定する、真皮層及び表皮層を含むインビトロの生きた哺乳動物の皮膚を用意するステップを含むことができる。本方法は、治療用化合物製品をその界面に投与するステップを含むことができる。本方法は、治療用化合物製品が投与された後に、その界面における治療用化合物製品の生理化学的特性及び/又は臨床的特性を検出するステップを含むことができる。治療用化合物製品は、投与された後に生理化学的特性及び/又は臨床的特性を獲得する場合がある。生理化学的特性及び/又は臨床的特性の例としては、バイオアベイラビリティ、薬物動態学的性質、凝集、化学修飾、沈殿、分布、拡散速度、滞留及び/又は吸収が挙げられる。有利なことには、本明細書に記載される方法は、皮下環境が治療用化合物及び治療用化合物を含む医薬組成物に及ぼす影響を、忠実に且つ一貫して、堅実に判定することができる。例えば、本明細書に記載される方法は、インビトロ緩衝液単独よりも高い忠実性で、生きている動物モデルよりも高い一貫性及び再現性で、皮下環境をモデル化することができることが企図される。
【0024】
タンパク質の凝集及び難溶性は、薬物の製造及び送達の大きな障害となり得る。治療的有効用量は、生理的条件とは著しく異なる高タンパク質濃度を必要とすることが多く、これは広範に開発された製剤によって実現される。このような製剤は、一般に、酸性pH(約5.0)並びに患者に送達されることになる生物学的溶液に必要な溶解性、安定性及び粘度のプロファイルを維持するように最適化された安定化添加剤を含む。皮膚に注入すると、その局所環境内の様々な因子が、生物学的製剤の体内の分布の仕方に影響を及ぼし得る。注入後に薬物デポーが形成されると、生物学的製剤よりも高速で注入部位から拡散して行く緩衝成分及び安定化添加剤の消失により、生物学的製剤の溶解性及び安定性における初期変化が促進され得る。皮膚環境の塩、タンパク質、細胞、及び細胞外構成要素と接触すると、凝集を誘導する新規な相互作用をもたらす場合があり、薬物のバルク溶液の挙動に影響を及ぼし得る。インビトロの皮膚モデルは、皮膚内の薬物分布に関する問題を予測するための有用な手法を提供し、安定性、臨床薬物動態及びバイオアベイラビリティに影響し得る条件をスクリーニングする機会を付与する。
【0025】
インビトロ試験は、医薬組成物の性能を最適化し、製品品質及び有効性に影響し得る潜在的な問題を特定するための効率的で対費用効果の高い手段を提供することによって、治療用化合物の開発においてますます大きな役割を果たしている。生物学的製剤の優れた投与経路として皮下注入が確立され、皮膚環境内の薬物相互作用を特定し、より深く理解する必要性が高まっている。[1]組織工学を使用すると、ヒト皮膚の形態的及び機能的特徴の多くを再現するインビトロの哺乳動物の皮膚の製造が可能になる。[2]インビトロの哺乳動物の皮膚は、オープンソースプロトコルを使用して製造することができるか[2]、又は販売業者から購入することができる。[3][4]実験室で成長させた皮膚モデルは、一般に、ヒト皮膚の3つの異なる層(表皮[5]、真皮[6]及び皮下組織[7])の各々について分離したモデル、又は表皮及び真皮を含む(しかし皮下組織が欠如した)モデル[8]を含む。さらに、3つの層の全てを含有するモデルの開発が記述されている[9]。美容術及びスキンケアの業界において、外層に重点を置いたインビトロの皮膚モデルが毒性試験及び製剤試験に使用されているが[10][11]、これらのモデルは、一般に、注入可能な治療用化合物に皮膚環境が及ぼす影響を試験するためには使用されていない。
【0026】
本明細書に記載される方法は、ヒト皮膚などのインビトロの哺乳動物の皮膚を使用して、皮膚環境が治療用化合物及び治療用化合物を含む医薬組成物の物理化学的性質に及ぼす影響についての見識を提供する。本明細書に記載される一部の方法は、蛍光画像法などの画像化を使用して、皮膚に注入した際の凝集傾向及び拡散性など、治療用化合物の生理化学的特性及び/又は臨床的特性を特性評価することを含む。このようなインビトロ手法により、薬物吸収に影響し得る皮膚様環境内の潜在的な凝集の問題及び生体内分布の課題の検出が可能になる。本明細書に記載される一部の方法は、分析的測定(例えば、クロマトグラフィーベースのアッセイ、粒子計数法及び/又は質量分析法)を使用して、皮下投与後の分子特性における変化、及び/又はインビトロの哺乳動物の皮膚への皮下投与後の治療用化合物の生理化学的特性及び/又は臨床的特性に、分子特性が及ぼす影響を特性評価することを含む。これらの適用においてインビトロの哺乳動物の皮膚を使用して、例えば、治療用化合物及び治療用化合物を含む医薬組成物を最適化すること、製剤をスクリーニングすること、及び皮下投与された生物学的薬物の注入戦略を改善することができる。
【0027】
インビトロの哺乳動物の皮膚
インビトロの哺乳動物の皮膚は、本明細書に記載される方法において使用され得る。本明細書で使用する場合、「インビトロの哺乳動物の皮膚」は、真皮層と表皮層との間の界面を規定する、真皮層及び表皮層を含む生きた哺乳動物の皮膚を指す。それは、インビトロ環境中で用意することができ、例えばマルチウェルプレート中に配置され得る。インビトロの哺乳動物の皮膚は、ガラス又はポリマーのカバースリップなどの基体、又は多孔性基体に配置され得る。或いは、インビトロの哺乳動物の皮膚は、基体を使用せずに培地中に懸濁されてもよい。一部の方法において、インビトロの哺乳動物の皮膚は、表皮[5]、真皮[6]及び皮下組織[7]の3層を含む。これらの3層は、一緒のものとして用意されてもよく、別個の層として用意されてもよい。一部の方法において、インビトロの哺乳動物の皮膚は、表皮及び真皮を含むが、皮下組織を含まない。[8]
【0028】
本明細書に記載される方法のいずれかについて、インビトロの哺乳動物の皮膚は、界面内に皮下腔を規定する皮下組織をさらに含み得る。皮下腔は、少なくとも一部を皮下組織によってさらに規定される界面の部分を指すと理解される。このため、一部の実施形態の方法において、インビトロの哺乳動物の皮膚の界面は、皮下腔をさらに含み、界面は皮下腔を規定し得る。真皮層及び表皮層を含むインビトロの哺乳動物の皮膚は、皮下組織が存在しない場合でさえ、皮下環境に関する有用なモデル化を提供し得ることも企図される。
【0029】
例として、インビトロの哺乳動物の皮膚モデルは、ヒト、非ヒト霊長類(カニクイザルなど)又は非ヒト哺乳動物(マウス、ラット、ウサギ、イヌ、ヤギ、ヒツジ又はブタなど)の皮膚であり得る。一部の方法において、インビトロの哺乳動物の皮膚は、ヒトの、又はカニクイザルなどの非ヒト霊長類の皮膚であり得る。治療用化合物の開発において、治療用化合物は、例えば毒性試験及び/又は有効性試験において、動物モデル(例えばカニクイザルなどの非ヒト霊長類)で試験され得る。したがって、本明細書に記載されるインビトロの哺乳動物の皮膚は、動物モデル試験の前の治療用化合物及び治療用化合物を含む医薬組成物の選択及び開発において、例えばインビトロ凝集、動物モデルと同じ種のインビトロの哺乳動物の皮膚を使用する薬物動態学的試験及び/又は毒性試験において、有用となり得ることが企図される。
【0030】
本明細書に記載される方法のいずれかについて、インビトロの哺乳動物の皮膚モデルは、非ヒト哺乳動物の皮膚であり得る。その方法は、インビトロのヒト皮膚を使用してさらに反復され得る。その方法は、インビトロのヒト皮膚に投与された治療用化合物の生理化学的特性及び/又は臨床的特性を、非ヒト哺乳動物のインビトロの哺乳動物の皮膚に投与された治療用化合物の生理化学的特性及び/又は臨床的特性と比較するステップを含み得る。即ち、その方法により、非ヒト哺乳動物のインビトロの哺乳動物の皮膚における治療用化合物の挙動を、インビトロのヒト皮膚における治療用化合物の挙動と比較して、さらなる実験のために非ヒト哺乳動物の適性を確認し得る。
【0031】
本明細書に記載される方法のいずれかについて、インビトロの哺乳動物の皮膚は、インビトロのヒト皮膚を含み得るか、又はそれからなり得る。本明細書に記載される方法のいずれかについて、インビトロの哺乳動物の皮膚は、カニクイザルなどの非ヒト霊長類のインビトロの皮膚を含み得るか、又はそれからなり得る。
【0032】
治療用化合物
本明細書で使用する場合、「治療用化合物」及びこのルート用語の変形は、本開示に鑑みて当業者に理解されるであろうその通常の慣習的な意味を有する。それは、医薬品有効成分、例えば、合成低分子、遺伝子治療剤、治療用タンパク質、アンチセンスRNA若しくはsiRNAなどの核酸、ウイルス、又は細胞若しくはその部分を含む治療用組成物を指す。
【0033】
本明細書で使用する場合、「治療用タンパク質」及びこのルート用語の変形は、本開示に鑑みて当業者に理解されるであろうその通常の慣習的な意味を有する。それは、ポリペプチド高分子、例えば、タンパク質、ペプチド、又はそれらの部分を含む治療用組成物を指す。治療用タンパク質は、ヒト対象における医学的使用のためのタンパク質、例えば、医学的使用のための候補、又はFDA若しくはEMAなどの政府当局によって医学的使用に承認されたタンパク質であり得る。当然のことながら、治療用タンパク質は、治療用化合物の一種である。したがって、本明細書において治療用化合物に言及されている場合は常に、本明細書に記載されるものなどの治療用タンパク質が企図される。
【0034】
本明細書に記載される方法において、治療用化合物は、治療用タンパク質を含み得るか、又は治療用タンパク質からなり得る。本明細書に記載される方法において、治療用化合物は、抗体、抗原結合性抗体断片、抗体タンパク質生成物、二重特異性T細胞エンゲージャー(BiTE(登録商標))分子(半減期延長部分を含むBiTE(登録商標)分子など)、二重特異性抗体、三重特異性抗体、Fc融合タンパク質、組換えタンパク質、組換えウイルスのタンパク質、合成ペプチド、組換えタンパク質の活性断片、核酸(アンチセンスRNA又はsiRNAなど)及びウイルスからなる群から選択され得る。
【0035】
「抗体」は、本開示に鑑みて当業者に理解されるその慣習的な通常の意味を有する。これは、標的抗原に特異的結合する任意のアイソタイプの免疫グロブリンを指し、例えば、キメラ抗体、ヒト化抗体、及び完全ヒト抗体を含む。例として、抗体は、モノクローナル抗体であり得る。ヒト抗体は、IgG(IgG1、IgG2、IgG3及びIgG4の各サブタイプを含む)、IgA(IgA1及びIgA2の各サブタイプを含む)、IgM及びIgEを含む、任意のアイソタイプのものとすることができる。ヒトIgG抗体は、一般に、2本の完全長重鎖及び2本の完全長軽鎖を含むことになる。抗体は、単一の供給源のみに由来してもよく、又は「キメラ」であってもよく、即ち、その抗体の異なる部分が、同じ又は異なる種からの2種以上の異なる抗体に由来してもよい。当然のことながら、抗体が供給源から得られると、その抗体は、例えば安定性及びフォールディングを増強するためにさらなる操作を施され得る。したがって、当然のことながら、「ヒト」抗体は、ある供給源から取得することができ、例えばFc領域中にさらなる操作を施すことができる。操作された抗体は、依然として一種のヒト抗体と呼ばれ得る。同様に、特に明記しない限り、ヒト抗体のバリアント、例えば親和性成熟したものなども、「ヒト抗体」であると理解されよう。一部の実施形態では、抗体は、ヒト抗体、ヒト化抗体又はキメラモノクローナル抗体を含むか、それらから実質的になるか、又はそれらからなる。
【0036】
抗体(又は抗体タンパク質生成物)の「重鎖」は、可変領域(「VH」)並びに3つの定常領域、即ちCH1、CH2及びCH3を含む。例示的な重鎖定常領域としては、ヒトIgG1、IgG2、IgG3及びIgG4の定常領域が挙げられる。抗体(又は抗体タンパク質生成物)の「軽鎖」は、可変領域(「VL」)及び定常領域(「CL」)を含む。ヒト軽鎖は、カッパ鎖及びラムダ鎖を含む。本明細書に記載される抗原結合タンパク質に適する例示的な軽鎖定常領域としては、ヒトラムダ定常領域及びヒトカッパ定常領域が挙げられる。
【0037】
種々の態様において、治療用タンパク質は、抗体タンパク質生成物である。本明細書で使用する場合、「抗体タンパク質生成物」という用語は、様々な例において、抗体の構造に基づくが自然界には見られない幾つかの抗体代替物のいずれか1つを指す。一部の態様において、抗体タンパク質生成物は、少なくとも約12~150kDaの範囲内の分子量を有する。ある特定の態様において、抗体タンパク質生成物は、高次の価数でない場合、単量体(n=1)から二量体(n=2)まで、三量体(n=3)まで、四量体(n=4)までの価数(n)範囲を有する。一部の態様において、抗体タンパク質生成物は、完全な抗体構造に基づくもの及び/又は完全な抗原結合能を保持する抗体断片、例えば、scFv、Fab及びVHH/VH(以下で説明する)を模倣するものである。完全抗原結合部位を保持する最小の抗原結合抗体断片は、完全に可変(V)領域からなるFv断片である。可溶性で可動性のアミノ酸ペプチドリンカーを使用して、分子を安定化させるためにV領域をscFv(単鎖断片可変)断片に連結するか、又は定常(C)ドメインをV領域に付加してFab断片[抗原結合性の断片]を生成する。scFv断片及びFab断片は両方とも、宿主細胞、例えば原核生物宿主細胞の中で容易に産生させることができる。他の抗体タンパク質生成物としては、ジスルフィド結合安定化scFv(ds-scFv)、単鎖Fab(scFab)、並びにオリゴマー化ドメインに連結されたscFvからなる異なる形式を含む、ダイアボディ、トリアボディ及びテトラボディ又はミニボディ(ミニAb)のような二量体抗体及び多量体抗体形式が挙げられる。最小の断片は、ラクダ科の重鎖Ab及び単一ドメインAb(sdAb)のVHH/VHである。新規の抗体形式を作製するために最も頻繁に使用される構築ブロックは、約15個のアミノ酸残基のペプチドリンカーにより連結された重鎖及び軽鎖由来のVドメイン(VHドメイン及びVLドメイン)を含む、単鎖可変(V)ドメイン抗体断片(scFv)である。ペプチボディ又はペプチド-Fc融合体は、さらに別の抗体タンパク質生成物である。ペプチボディの構造は、Fcドメインにグラフト化された生物活性ペプチドからなる。ペプチボディは、当技術分野で十分に説明されている。例えば、Shimamoto et al.,mAbs 4(5):586-591(2012)を参照されたい。
【0038】
本明細書に記載される方法に適した治療用タンパク質として、ポリペプチドを挙げることができ、例えば、下記のうちの1つ又は複数に結合するものを挙げることができる。これらとして、CDタンパク質、例えば、CD3、CD4、CD8、CD19、CD20、CD22、CD30及びCD34、例えば、受容体結合を妨害するものを挙げることができる。HER受容体ファミリータンパク質、例えば、HER2、HER3、HER4及びEGF受容体。細胞接着分子、例えば、LFA-1、MoI、pl50、95、VLA-4、ICAM-I、VCAM及びアルファv/ベータ3インテグリン。増殖因子、例えば、血管内皮増殖因子(「VEGF」)、成長ホルモン、甲状腺刺激ホルモン、卵胞刺激ホルモン、黄体形成ホルモン、成長ホルモン放出因子、副甲状腺ホルモン、ミュラー管阻害物質、ヒトマクロファージ炎症タンパク質(MIP-1アルファ)、エリスロポエチン(EPO)、神経増殖因子、例えばNGF-ベータ、血小板由来増殖因子(PDGF)、線維芽細胞増殖因子、例えば、aFGF及びbFGF、上皮増殖因子(EGF)、トランスフォーミング増殖因子(TGF)、例えば、特に、TGF-α及びTGF-β、例えば、TGF-β1、TGF-β2、TGF-β3、TGF-β4又はTGF-β5、インスリン様増殖因子-I及び-II(IGF-I及びIGF-II)、des(l-3)-IGF-I(脳IGF-I)並びに骨誘導因子。インスリン及びインスリン関連タンパク質、例えば、インスリン、インスリンA鎖、インスリンB鎖、プロインスリン及びインスリン様増殖因子結合タンパク質。凝固及び凝固関連タンパク質、例えば、特に、第VIII因子、組織因子、フォン・ヴィレブランド因子、プロテインC、アルファ-1-アンチトリプシン、プラスミノーゲン活性化因子、例えば、ウロキナーゼ及び組織プラスミノーゲン活性化因子(「t-PA」)、ボンバジン(bombazine)、トロンビン及びトロンボポエチン、(vii)アルブミン、IgE、及び血液型抗原を含むがこれらに限定されない他の血液タンパク質及び血清タンパク質。コロニー刺激因子及びその受容体、例えば、特に以下のM-CSF、GM-CSF及びG-CSF並びにこれらの受容体、例えばCSF-1受容体(c-fms)。受容体及び受容体関連タンパク質、例えば、flk2/flt3受容体、肥満(OB)受容体、LDL受容体、成長ホルモン受容体、トロンボポエチン受容体(「TPO-R」、「c-mpl」)、グルカゴン受容体、インターロイキン受容体、インターフェロン受容体、T細胞受容体、幹細胞因子受容体、例えばc-Kit及び他の受容体。受容体リガンド、例えばOX40受容体のリガンドであるOX40L。神経栄養因子、例えば、骨由来神経栄養因子(BDNF)及びニューロトロフィン-3、-4、-5又は-6(NT-3、NT-4、NT-5又はNT-6)。リラキシンA鎖、リラキシンB鎖及びプロリラキシン、インターフェロン及びインターフェロン受容体、例えば、インターフェロン-α、-β及び-γ並びにこれらの受容体。インターロイキン及びインターロイキン受容体、IL-1からIL-33及びIL-1受容体からIL-33受容体(例えば、特にIL-8受容体)。ウイルス抗原、例えば、AIDSエンベロープウイルス抗原。リポタンパク質、カルシトニン、グルカゴン、心房性ナトリウム利尿因子、肺界面活性物質、腫瘍壊死因子アルファ及びベータ、エンケファリナーゼ、RANTES(活性化において調節され、通常T細胞が発現及び分泌する(regulated on activation normally T-cell expressed and secreted))、マウスゴナドトロピン関連ペプチド、DNAse、インヒビン及びアクチビン。インテグリン、プロテインA又はD、リウマチ因子、免疫毒素、骨形成タンパク質(BMP)、スーパーオキシドジスムターゼ、表面膜タンパク質、崩壊促進因子(DAF)、HIVエンベロープ、輸送タンパク質、ホーミング受容体、アドレシン、調節タンパク質、イムノアドヘシン、抗体。ミオスタチン、TALLタンパク質、例えば、TALL-I、アミロイドタンパク質、例えば、以下に限定されないが、アミロイドベータタンパク質、胸腺間質性リンパ球新生因子(「TSLP」)、RANKリガンド(「RANKL」又は「OPGL」)、c-kit、TNF受容体、例えば、TNF受容体1型、TRAIL-R2、アンジオポエチン、及び前述のいずれかの生物活性断片又は類似体若しくはバリアント。
【0039】
本明細書に記載される方法に適した治療用タンパク質の例としては、アバゴボマブ、アブシキシマブ、アクトクスマブ、アダリムマブ、アフェリモマブ、アフツズマブ、アラシズマブ、アラシズマブペゴル、ald518、アレムツズマブ、アリロクマブ、アルツモマブ、アマツキシマブ、アナツモマブマフェナトクス、アンルキンズマブ、アポリズマブ、アルシツモマブ、アセリズマブ、アルチヌマブ、アトリズマブ、アトロリムマブ、トシリズマブ、バピネウズマブ、バシリキシマブ、バビツキシマブ、ベクツモマブ、ベリムマブ、ベマリツズマブ、ベンラリズマブ、ベルチリムマブ、ベシレソマブ、ベバシズマブ、ベズロトクスマブ、ビシロマブ、ビバツズマブ、ビバツズマブメルタンシン、ブリナツモマブ、ブロソズマブ、ブレンツキシマブベドチン、ブリアキヌマブ、ブロダルマブ、カナキヌマブ、カンツズマブメルタンシン、カプラシズマブ、カプロマブペンデチド、カルルマブ、カツマキソマブ、cc49、セデリズマブ、セルトリズマブペゴル、セツキシマブ、シタツズマブボガトクス、シクスツムマブ、クラザキズマブ、クレノリキシマブ、クリバツズマブテトラキセタン、コナツムマブ、クレネズマブ、cr6261、ダセツズマブ、ダクリズマブ、ダロツズマブ、ダラツムマブ、デムシズマブ、デノスマブ、デツモマブ、ドルリモマブアリトクス、ドロジツマブ、ドゥリゴツマブ、デュピルマブ、エクロメキシマブ、エクリズマブ、エドバコマブ、エドレコロマブ、エファリズマブ、エフングマブ、エロツズマブ、エルシリモマブ、エナバツズマブ、エンリモマブペゴル、エノキズマブ、エノチクマブ、エンシツキシマブ、エピツモマブシツキセタン、エプラツズマブ、エレヌマブ、エルリズマブ、エルツマキソマブ、エタラシズマブ、エトロリズマブ、エボロクマブ、エキシビビルマブ、ファノレソマブ、ファラリモマブ、ファルレツズマブ、ファシヌマブ、fbta05、フェルビズマブ、フェザキヌマブ、フィクラツズマブ、フィギツムマブ、フランボツマブ、フォントリズマブ、フォラルマブ、フォラビルマブ、フレソリムマブ、フルラヌマブ、フツキシマブ、ガリキシマブ、ガニツマブ、ガンテネルマブ、ガビリモマブ、ゲムツズマブオゾガマイシン、ゲボキズマブ、ギレンツキシマブ、グレムバツムマブベドチン、ゴリムマブ、ゴミリキシマブ、gs6624、イバリズマブ、イブリツモマブチウキセタン、イクルクマブ、イゴボマブ、イムシロマブ、イムガツズマブ、インクラクマブ、インダツキシマブラブタンシン、インフリキシマブ、インテツムマブ、イノリモマブ、イノツズマブオゾガマイシン、イピリムマブ、イラツムマブ、イトリズマブ、イキセキズマブ、ケリキシマブ、ラベツズマブ、レブリキズマブ、レマレソマブ、レルデリムマブ、レキサツムマブ、リビビルマブ、リゲリズマブ、リンツズマブ、リリルマブ、ロルボツズマブメルタンシン、ルカツムマブ、ルミリキシマブ、マパツムマブ、マスリモマブ、マブリリムマブ、マツズマブ、メポリズマブ、メテリムマブ、ミラツズマブ、ミンレツモマブ、ミツモマブ、モガムリズマブ、モロリムマブ、モタビズマブ、モキセツモマブパスドトクス、ムロモナブ-cd3、ナコロマブタフェナトクス、ナミルマブ、ナプツモマブエスタフェナトクス、ナルナツマブ、ナタリズマブ、ネバクマブ、ネシツムマブ、ネレリモマブ、ネスバクマブ、ニモツズマブ、ニボルマブ、ノフェツモマブメルペンタン、オカラツズマブ、オクレリズマブ、オデュリモマブ、オファツムマブ、オララツマブ、オロキズマブ、オマリズマブ、オナルツズマブ、オポルツズマブモナトクス、オレゴボマブ、オルチクマブ、オテリキシズマブ、オキセルマブ、オザネズマブ、オゾラリズマブ、パギバキシマブ、パリビズマブ、パニツムマブ、パノバクマブ、パルサツズマブ、パスコリズマブ、パテクリズマブ、パトリツマブ、ペムツモマブ、ペラキズマブ、ペルツズマブ、ペキセリズマブ、ピジリズマブ、ピンツモマブ、プラクルマブ、ポネズマブ、プリリキシマブ、プリツムマブ、PRO140、キリズマブ、ラコツモマブ、ラドレツマブ、ラフィビルマブ、ラムシルマブ、ラニビズマブ、ラキシバクマブ、レガビルマブ、レスリズマブ、リロツムマブ、リツキシマブ、ロバツムマブ、ロレデュマブ、ロモソズマブ、ロンタリズマブ、ロベリズマブ、ルプリズマブ、サマリズマブ、サリルマブ、サツモマブペンデチド、セクキヌマブ、セビルマブ、シブロツズマブ、シファリムマブ、シルツキシマブ、シムツズマブ、シプリズマブ、シルクマブ、ソラネズマブ、ソリトマブ、ソネプシズマブ、ソンツズマブ、スタムルマブ、スレソマブ、スビズマブ、タバルマブ、タカツズマブテトラキセタン、タドシズマブ、タリズマブ、タネズマブ、タプリツモマブパプトクス、テフィバズマブ、テリモマブアリトクス、テナツモマブ、テフィバズマブ、テネリキシマブ、テプリズマブ、テプロツムマブ、テゼペルマブ、TGN1412、トレメリムマブ、チシリムマブ、チルドラキズマブ、チガツズマブ、TNX-650、トシリズマブ、トラリズマブ、トシツモマブ、トラロキヌマブ、トラスツズマブ、TRBS07、トレガリズマブ、ツコツズマブセルモロイキン、ツビルマブ、ウブリツキシマブ、ウレルマブ、ウルトキサズマブ、ウステキヌマブ、バパリキシマブ、バテリズマブ、ベドリズマブ、ベルツズマブ、ベパリモマブ、ベセンクマブ、ビジリズマブ、ボロシキシマブ、ボルセツズマブマフォドチン、ボツムマブ、ザルツムマブ、ザノリムマブ、ザツキシマブ、ジラリムマブ又はゾリモマブアリトクスなどの抗体が挙げられる。
【0040】
一部の実施形態では、治療用タンパク質は、BiTE(登録商標)分子である。BiTE(登録商標)分子は、がん細胞に対してT細胞の細胞傷害活性を指示する操作された二重特異性抗原結合コンストラクトである。これは、約55キロダルトンの単一ペプチド鎖上に、相異なる抗体の2つの単鎖可変断片(scFv)又は4種の異なる遺伝子由来のアミノ酸配列が融合したものを含有する。scFvの一方は、CD3受容体を介してT細胞に結合し、他方は、腫瘍特異的分子を介して腫瘍細胞に結合する。ブリナツモマブ(BLINCYTO(登録商標))は、CD19に特異的なBiTE(登録商標)分子の一例である。修飾されているBiTE(登録商標)分子、例えば半減期を延長するように修飾されているもの(例えば、Fcポリペプチド又はアルブミンなどの半減期延長部分を含めることによって)も、開示されている方法において使用することができる。種々の態様において、ポリペプチドは、抗原結合タンパク質、例えばBiTE(登録商標)分子である。一部の実施形態では、抗体タンパク質生成物は、BiTE(登録商標)分子を含む。
【0041】
治療用化合物の追加の例としては、カルフィルゾミブ、シナカルセトHCl、エテルカルセチド、イバブラジン、ソトラシブ、イマチニブメシル酸塩、ボルテゾミブ、ビカルタミド、ゲフィチニブ、ベネトクラクス及びドコルビシンなどの合成低分子、並びにオルパシランなどのsiRNAが挙げられる。
【0042】
当然のことながら、治療用化合物は、通常、製剤とも呼ばれ得る医薬組成物で患者に投与される。したがって、本明細書における方法を使用して、皮膚環境が、治療用化合物それ自体に及ぼす影響のみならず、治療用化合物を含む医薬組成物に及ぼす影響も試験することができる。したがって、「治療用化合物」が本明細書に記載される場合は常に、当然のことながら、本明細書に記載される方法は、治療用化合物を含む相当する医薬組成物にも実行され得る。例えば、適切な製剤の開発及び選択のために、本明細書に記載される方法を使用して、治療用化合物製剤の異なる成分、量及び条件(例えば、pH、粘度、容量オスモル濃度及び重量オスモル濃度など)に皮膚環境が及ぼす影響を調査することができる。
【0043】
一部の実施形態の方法において、治療用化合物は、「製剤」とも呼ばれ得る医薬組成物の中にある。医薬組成物は、薬学的に許容される製剤であり得る。医薬組成物は、治療用化合物を、薬学的に許容される希釈剤、担体、可溶化剤、乳化剤、防腐剤及び/又は補助剤と一緒に含み得る。
【0044】
本明細書に記載される治療用化合物に許容される医薬組成物材料は、好ましくは、使用される投与量及び濃度で受け手に無毒性である。ある特定の実施形態では、医薬組成物は、例えば、組成物のpH、重量オスモル濃度、粘度、透明度、色、等張性、匂い、無菌性、安定性、溶解又は放出の速度、吸着又は浸透を、変更、維持又は保存するための製剤材料を含有してもよい。そのような実施形態では、適切な製剤材料としては、以下に限定されないが、アミノ酸(グリシン、グルタミン、アスパラギン、アルギニン又はリシンなど);抗微生物剤;抗酸化剤(アスコルビン酸、亜硫酸ナトリウム又は亜硫酸水素ナトリウムなど);緩衝液(ホウ酸緩衝液、重炭酸緩衝液、トリス-HCl、クエン酸緩衝液、リン酸緩衝液又は他の有機酸緩衝液など);増量剤(マンニトール又はグリシンなど);キレート剤(エチレンジアミン四酢酸(EDTA)など);錯化剤(カフェイン、ポリビニルピロリドン、ベータ-シクロデキストリン又はヒドロキシプロピル-ベータ-シクロデキストリンなど);充填剤;単糖類;二糖類;及び他の炭水化物(グルコース、スクロース、マンノース又はデキストリンなど);タンパク質(血清アルブミン、ゼラチン又は免疫グロブリンなど);着色剤、香味剤及び希釈剤;乳化剤;親水性ポリマー(ポリビニルピロリドンなど);低分子量ポリペプチド;塩形成対イオン(ナトリウムなど);防腐剤(塩化ベンザルコニウム、安息香酸、サリチル酸、チメロサール、フェネチルアルコール、メチルパラベン、プロピルパラベン、クロルヘキシジン、ソルビン酸又は過酸化水素など);溶媒(グリセリン、プロピレングリコール又はポリエチレングリコールなど);糖アルコール(マンニトール又はソルビトールなど);懸濁化剤;界面活性剤又は湿潤剤(Pluronic、PEG、ソルビタンエステル、ポリソルベート20、ポリソルベートなどのポリソルベート類、トリトン、トロメタミン、レシチン、コレステロール、チロキサポールなど);安定性促進剤(スクロース又はソルビトールなど);等張化促進剤(アルカリ金属ハロゲン化物、好ましくは塩化ナトリウム又は塩化カリウム、マンニトール、ソルビトールなど);送達ビヒクル;希釈剤;添加剤及び/又は医薬補助剤が挙げられる。例えば、REMINGTON’S PHARMACEUTICAL SCIENCES,18th Edition,(A.R.Gennaro,ed.),1990,Mack Publishing Companyを参照されたい。
【0045】
医薬組成物に適したビヒクル又は担体は、注射用水、生理的食塩水又は人工脳脊髄液とすることができ、場合により、非経口投与用組成物において一般的な他の材料が補充される。中性緩衝生理食塩水、又は血清アルブミンと混合された生理食塩水は、さらなる例示的なビヒクルである。特定の実施形態では、医薬組成物は、pH約7.0~8.5のトリス緩衝液、又はpH約4.0~5.5の酢酸緩衝液を含み、ソルビトール又は適切なその代替物をさらに含み得る。
【0046】
医薬組成物成分は、投与部位に許容できる濃度で存在することが好ましい。ある特定の実施形態では、緩衝液が使用されて、組成物を生理的pHに、又はそれよりわずかに低いpHに、典型的には約4~約8のpH範囲内に維持する。このpH範囲内には、約4.1、約4.2、約4.3、約4.4、約4.5、約4.6、約4.7、約4.8、約4.9、約5.0、5.1、約5.2、約5.3、約5.4、約5.5、約5.6、約5.7、約5.8、約5.9、約6.0、約6.1、約6.2、約6.3、約6.4、約6.5、約6.6、約6.7、約6.8、約6.9、約7.0、約7.1、約7.2、約7.3、約7.4、約7.5、約7.6、約7.7、約7.8、約7.9及び約8.0が含まれ、列挙された値の任意の2つの間の範囲、例えばpH4.2~8、pH4.2~7、pH4.2~6、pH4.2~5、pH4.8~8、pH4.8~7、pH4.8~6、pH4.8~5、pH5~8、pH5~7、pH5~6、pH5.1~8、pH5.1~7、pH5.1~6、pH5.5~8、pH5.5~7、pH5.5~6、pH6~7又はpH6~8が含まれる。
【0047】
なお、一部の治療用化合物は、直接、又は自動注入器(身体装着型注入器(on-body injector)など)を介して、対象自身によって自己投与されてもよく、一部は、医療提供者などの別の個体によって対象に投与されてもよい。このため、主題の治療用化合物又はそれを含む医薬組成物は、対象による自身への自己投与(直接の、又は自動注入器などの器具を介する)に、及び/又は医療提供者などの他の個体による対象への投与に適切であり得る。本明細書に記載される一部の方法について、治療用化合物を含む医薬組成物は、プレフィルドシリンジ、自動注入器又はIVバッグと流体連通する針を含むIVバッグシステムなどの投与器具に入れて提供され得る。
【0048】
分子特性
当然のことながら、治療用タンパク質などの治療用化合物の「分子特性」は、治療用タンパク質の1つ又は複数の化学的特性又は構造的特性を指し、それらは変化し得る。分子特性の例としては、酸性種、塩基性種、高分子量種、目視不可の粒子数、低分子量、中分子量、グリコシル化(非グリコシル化重鎖又は高マンノースなど)、非重鎖及び軽鎖、脱アミド化、脱アミノ化、環化、酸化、異性化、断片化/クリッピング、N末端バリアント及びC末端バリアント、還元種及び部分種、折り畳み構造、表面疎水性、化学修飾、共有結合、C末端アミノ酸モチーフPARG及び/又はC末端アミノ酸モチーフPAR-アミドが挙げられる。なお、例として、治療用タンパク質及び低分子は、凝集することが観察されており、核酸は、多くの集結体(multiplex)で観察されており、これは、簡潔には一種の「凝集体」と考えられ得る。
【0049】
投与条件を選択する方法
一部の実施形態では、皮下投与用の治療用化合物製品の投与条件を選択する方法が記載される。本明細書で使用する場合、「投与条件」は、治療用化合物(例えば、医薬組成物の一部として)が投与されるとき、変化し得る少なくとも1つのパラメーターを指す。投与条件の例としては、前記治療用化合物の製剤成分、濃度、体積、pH、温度、粘度、容量オスモル濃度、分子特性、投与経路及び/又は投与器具若しくは投与器具を使用する方法(例えば頻度、流速、パラメーター)の1つ又は複数が挙げられる。例えば、投与条件には、製剤の添加剤、緩衝剤、界面活性剤及び/若しくは安定化剤を含めることができ、それらは、これらの物質の独自性及び/若しくは濃度により変化する場合があり、並びに/又は投与条件にはpHを含めることもできる。当然のことながら、該当する場合、投与条件は、定性的に(例えば投与経路)又は定量的に(例えば、数値又は範囲として)特定され得る。説明するために、一部の実施形態の、インビトロの哺乳動物の皮膚環境中で治療用化合物の挙動を解明する方法の例が、
図1A~Bに図示されている。
【0050】
一部の実施形態と関連して皮下投与用の治療用化合物製品の投与条件を選択する例示的な方法が、
図1Cに図示されている。この方法は、間(即ち真皮層と表皮層との間)の界面を規定する、真皮層及び表皮層を含むインビトロの生きた哺乳動物の皮膚を用意するステップを含み得る110。この方法は、投与条件下で治療用化合物製品をその界面に投与するステップをさらに含み得る120。この方法は、その界面における治療用化合物製品の生理化学的特性及び/又は臨床的特性を検出するステップをさらに含み得る130。例えば、検出するステップは、光学的であり得、及び/又は治療用化合物の分析試験を含み得る。この方法は、治療用化合物の検出された生理化学的特性及び/又は臨床的特性に基づいて、さらなる開発のためにその投与条件を選択又は却下するステップをさらに含み得る140。例えば、HMW種の発生率がより低い投与条件の方が、HMW種の発生率がより高い投与条件よりも選択され得る。「さらなる開発」とは、本明細書で使用する場合、治療用化合物の追加の特性評価、操作及び/又は試験、例えば、タンパク質操作、製剤の選択及び/若しくは開発、動物モデル試験、臨床試験、製造工程の開発並びに/又は当局への提出を指す。当然のことながら、状況に応じて適切に、述べられた方法の部分のうち1つ又は複数が、反復されてもよく、省略されてもよく、又は異なる順序で実行されてもよい。
【0051】
当然のことながら、投与条件を選択する方法により、治療用化合物の1つ又は複数の生理化学的特性及び/又は臨床的特性を検出することができ、それには生理化学的特性及び/又は臨床的特性における変化が含まれる。例えば、生理化学的特性及び/又は臨床的特性は、バイオアベイラビリティ、薬物動態学的性質、凝集、沈殿、分布、拡散速度、滞留及び/又は吸収を含み得る。例として、その方法により、絶対量、相対量、それらにおける変化、又は該当する場合、及び状況において理に適う場合、治療用化合物の1つ又は複数の生理化学的特性及び/又は臨床的特性の変化の程度を検出することができる。治療用化合物製品は、投与された後に生理化学的特性及び/又は臨床的特性を獲得する場合がある。
【0052】
皮下投与用の治療用化合物製品の投与条件を選択する一部の方法において、その方法は、2つ以上の異なる投与条件、例えば、少なくとも2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、又は10の異なる投与条件で反復される。任意選択により、その方法は、繰り返し実行されて、投与条件が最適化され得る(例えば、投与条件の範囲を漸次狭めながら繰り返し試験する)。
【0053】
治療用化合物の分子特性が生理化学的特性及び/又は臨床的特性に及ぼす影響を判定する方法
一部の実施形態では、皮下投与後の治療用化合物の生理化学的特性及び/又は臨床的特性に、その治療用化合物の分子特性が及ぼす影響を判定する方法が記載される。
【0054】
一部の実施形態に関連して、皮下投与後の治療用化合物の生理化学的特性及び/又は臨床的特性に、その治療用化合物の分子特性が及ぼす影響を判定する例示的な方法が、
図1Dに説明されている。この方法は、間(即ち真皮層と表皮層との間)の界面を規定する、真皮層及び表皮層を含むインビトロの生きた哺乳動物の皮膚を用意するステップを含み得る110。この方法は、分子特性を含む治療用化合物製品をその界面に投与するステップをさらに含み得る122。投与される治療用化合物は、例えば、高温への曝露、凍結融解サイクルの反復、極度のpH、強制酸化(例えば、H
2O
2などの酸化剤による)、生理的pH及び/又はUV光により、ストレスを負荷され得ることが企図される。そのようなストレスは、治療用化合物に分子特性を存在させる場合があるか、又はストレス無負荷の対照と比較して、分子特性の相対存在量を増加させる場合がある。したがって、この方法の一部の例では、治療用化合物は、投与前にストレスを負荷され得る。この方法は、その界面における治療用化合物の生理化学的特性及び/又は臨床的特性を検出するステップを含み得る130。例えば、検出するステップは、光学的であり得、及び/又は治療用化合物の分析試験を含み得る。治療用化合物の生理化学的特性及び/又は臨床的特性に、その治療用化合物の分子特性が及ぼす影響を判定する一部の方法において、生理化学的特性及び/又は臨床的特性は、バイオアベイラビリティ、薬物動態学的性質、凝集、沈殿、分布、拡散速度及び/又は吸収を含む。当然のことながら、状況に応じて適切に、述べられた方法の部分のうち1つ又は複数が、反復されてもよく、省略されてもよく、又は異なる順序で実行されてもよい。
【0055】
分子特性における変化を判定する方法
一部の実施形態では、皮下投与後の治療用化合物の分子特性における変化を検出する方法が記載される。
【0056】
一部の実施形態に関連して、皮下投与後の治療用化合物の分子特性における変化を検出する例示的な方法が、
図1Eに説明されている。この方法は、間(即ち真皮層と表皮層との間)の界面を規定する、真皮層及び表皮層を含むインビトロの生きた哺乳動物の皮膚を用意するステップを含み得る110。この方法は、特性を含む治療用化合物をその界面に投与するステップを含み得、その治療用化合物は、分子特性の第1の状態を含む124。ブロック134に移り、この方法は、界面における治療用化合物の分子特性の第2の状態を検出するステップをさらに含み得る134。当然のことながら、状況に応じて適切に、述べられた方法の部分のうち1つ又は複数が、反復されてもよく、省略されてもよく、又は異なる順序で実行されてもよい。「第1の状態」及び「第2の状態」は、測定され得る分子特性の2つの状態を指す。例えば、分子特性の第1の状態及び第2の状態は、治療用化合物に関する濃度、量、分布、又は界面における分布のいずれかを含む。例えば、第1の状態は、界面への投与前(又は界面への投与直後)の高分子量(HMW)種の相対量の第1の測定値を指すことができ、第2の状態は、界面への投与後の高分子量(HMW)種の相対量の第2の測定値を指すことができる。
【0057】
第1の状態の値(定量的及び/又は定性的)は、第2の状態の値と異なる場合があり、又は両値は同じである場合もある。本明細書に記載される一部の方法において、分子特性の第1の状態は、第1の値を有し、分子特性の第2の状態は、第1の状態と同じか又は異なる第2の値を有する。例として、第1の状態と第2の状態とが異ならない(又は統計的に有意に、異ならない)場合、皮下投与後に分子特性における変化はないと判定され得る。この方法の一部の例では、分子特性の第1の状態は、皮下腔への投与前、又は投与直後の分子特性の状態を指す。分子特性の第2の状態は、皮下腔における分子特性の状態を指す。第2の状態は、ある時間の間分子特性が界面内に存在した後の、例えば、数秒、数分、又は数時間のインキュベーション後の分子特性の状態を指す場合がある。その時間は、この方法を実行する前に特定され得る。一部の実施形態の方法において、第2の状態は、特定された時間の間、例えば、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、30、45若しくは60分、又は少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、18、24、36、48、60、72、84、96又は120時間、界面内でインキュベートされた後の治療用化合物の状態である。例えば、特定された時間は、1分以下、2分以下、3分以下、4分以下、5分以下、6分以下、7分以下、8分以下、9分以下、10分以下、15分以下、30分以下、45分以下若しくは60分以下、又は1時間以下、2時間以下、3時間以下、4時間以下、5時間以下、6時間以下、7時間以下、8時間以下、9時間以下、10時間以下、11時間以下、12時間以下、18時間以下、24時間以下、36時間以下、48時間以下、60時間以下、72時間以下、84時間以下、96時間以下、120時間以下、144時間以下、168時間以下、192時間以下、216時間以下若しくは240時間以下であり得る。例えば、特定された時間は、1~48時間、1~96時間、1~120時間、12~48時間、12~96時間、12~120時間、24~48時間、24~96時間又は24~120時間であり得る。インキュベーションは、特定の温度で、例えば、20℃、25℃、33℃(これは典型的なヒト皮膚温度である)又は37℃で行われ得る。一部の実施形態の方法において、第2の状態は、第1の状態とは異なる温度での治療用化合物の状態である。例えば、第1の状態は、20℃、25℃、33℃及び37℃から選択される温度であり得、第2の状態は、第1の状態とは異なる温度となるように、20℃、25℃、33℃及び37℃から選択される異なる温度であり得る。例として、検出するステップは、光学的であり得、又は本明細書に記載される治療用化合物の分析試験を含み得る。
【0058】
皮膚環境への曝露は、バルク溶液の挙動に対する影響に加えて、薬物の品質及び有効性に影響を及ぼす重大な製品品質特性における変化をもたらし得ると考えられる。注入部位が成分に接触すると、薬効、免疫原性、溶解性及び安定性に影響する変更(例えばオリゴマー形成、酸化還元反応、立体構造変化)を促進する新たな相互作用をもたらし得る。したがって、本方法は、インビトロの哺乳動物の皮膚環境への持続的な曝露後の、分子特性の変化の可能性を評価及び予測するステップを含み得る。この手法は単純であるため、本明細書に記載される方法が、有利な製品品質特性を維持するために製剤を最適化し、戦略を探求するためのプラットフォームとして使用されることが可能になる。
【0059】
一部の実施形態の分子特性における変化を検出する方法において、分子特性は、酸性種、塩基性種、高分子量種、目視不可の粒子数、低分子量、中分子量、グリコシル化(非グリコシル化重鎖又は高マンノースなど)、非重鎖及び軽鎖、脱アミド化、脱アミノ化、環化、酸化、異性化、断片化/クリッピング、N末端バリアント及びC末端バリアント、還元種及び部分種、折り畳み構造、表面疎水性、化学修飾、共有結合、C末端アミノ酸モチーフPARG又はC末端アミノ酸モチーフPAR-アミドの少なくとも1つを含む。
【0060】
皮膚環境内でのインキュベーション後に分子特性がどのように変化し得るかを調査するため、治療用化合物を、真皮又は皮下組織のいずれかを含有するインビトロの哺乳動物の皮膚モデルに曝露させ得る。一部の実施形態の方法において、曝露は、
図3Aに図示されているように「基本曝露」又は「注入曝露」によって行われる。基本曝露は、単純であるという利点があるが、バルク溶液中に存在する大半の形態から少数のバリアントを識別するのがより困難であり得る。注入曝露は、皮下注入により似せてそれをシミュレートするが、拡散問題が存在する場合、難題をもたらし得る。両戦略において、経時で上清が回収され、1つ又は複数の分析手法(例えば、SE-HPLC、rCE-SDS、CEX-HPLC、HIAC、nrCE-SDS、質量分析法、質量分析顕微鏡法及び/又はマススペクトロスコピー)を使用して評価がされ得る。考慮すべき重要なことは、皮膚モデルと分析的測定との両方に対する培地の適合性である。使用される培地は、実験期間中皮膚モデルを維持すること、及び目的の測定に干渉しないことも、同時に実現しなければならない。例えば、培地中に高分子量(HMW)種及び目視不可の粒子(SbVP)が存在すると、サイズ排除クロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー(SEC-HPLC)及び高確度(HIAC)測定にバックグラウンド干渉を引き起こし得る。したがって、本明細書に記載される一部の方法において、培地は、50KDa以下(例えば、40KDa以下、30KDa以下又は25KDa以下)のカットオフを有する遠心分離フィルターを使用して予め濾過され得る。例えば、SE-HPLCを使用して、存在する高分子量(HMW)種を定量化するために、培地は(例えば、50kDaカットオフ遠心分離フィルターを使用して)予め濾過されて、
図3Bに示されるSE-HPLCクロマトグラムに示されているような定量化に干渉する材料の存在を低減し得る。皮膚モデル用に販売業者により供給される培地の代替として、カスタム培地を使用して、皮下注入中の皮膚環境に関する生理的条件により似せてそれを模倣してもよい(例えば、ヒアルロン酸の添加、水疱/皮下液の使用)。これらのカスタム培地は、長時間にわたって(>2日)皮膚モデルを維持するようには最適化ができないが、皮下注入後直ちに起こる(≦1日時間尺度)相互作用に関連性がより高い見識を提供し得る。これらのカスタム培地は、分析的測定への干渉を低減もし得る(干渉は従来の市販の培地と比較して低減され得る)。例えば、無血清培地を使用すると、血清タンパク質が分析的測定に干渉するのを最小限にすることができるか、又は回避することができる。
【0061】
方法のさらなる態様
本明細書に記載される方法のいずれかについて、当然のことながら、その方法は、本明細書に記載されるさらなる態様の1つ又は複数をさらに含み得るか、又はそれらをさらに特徴とし得る。
【0062】
本明細書に記載される方法のいずれかについて、インビトロの哺乳動物の皮膚を用意するステップは、インビトロの哺乳動物の皮膚を近位の基体と遠位の基体との間に固定化することを含み得る。例えば、近位の基体及び遠位の基体は、それぞれ、カバーガラスなどのガラスを含む。
【0063】
本明細書に記載される方法のいずれかについて、インビトロの哺乳動物の皮膚を用意するステップは、治療用化合物製品の拡散に適応するようにサイズ調整された孔を含む多孔性基体上にインビトロの哺乳動物の皮膚の真皮層を用意することを含み得る。したがって、治療用化合物製品を投与するステップは、その多孔性基体を、治療用化合物製品を含む溶液と流体連通させることを含むことができる。多孔性基体の例としては、ポリカーボネート及びポリエステルフィルター膜が挙げられる。多孔性基体により、タンパク質の治療用生成物が、モデル化されたインビトロの哺乳動物の皮膚の皮下腔中に拡散することが可能になり、注入による投与を不要にすることが企図される。このため、一部の実施形態では、インビトロの哺乳動物の皮膚の真皮層は、多孔性基体に配置することができ、治療用化合物製品は、多孔性基体を、治療用化合物製品を含む溶液と単純に接触させることによって投与することができ、このようにして、治療用化合物を、真皮層と表皮層との間の界面に投与することが可能になる。例えば、インビトロの哺乳動物の皮膚及び多孔性基体は、溶液の中に浸漬され得る。一部の態様において、本方法は、インビトロの哺乳動物の皮膚を多孔性基体に配置することをさらに含む。
【0064】
本明細書に記載される方法のいずれかについて、投与するステップは、カニューレを含む針を真皮層の表面に押しつけ、このようにしてその針をインビトロの生きた哺乳動物の皮膚の界面に挿入することを含み得る。この方法は、その針を介して界面に、治療用化合物を配置することをさらに含み得る。例えば、特定の体積の治療用化合物(例えば医薬組成物の一部として)が、インビトロの哺乳動物の皮膚に投与され得る。一部の実施形態の方法において、針は、真皮の表面に鋭角に、例えば約45度以下の角度で押しつけられる。インビトロの哺乳動物の皮膚の場合、針を鋭角に押しつけることにより、皮膚の損傷又は裂傷を防止又は最小限にすることができることを理解されたい。一部の実施形態の方法において、例えば、皮膚が比較的厚い場合、本方法は、針を真皮の表面に対して垂直角に又は略垂直角に押しつけるステップを含み得る。本明細書に記載される一部の方法において、針は、カニューレと流体連通する開口部を含み、投与するステップは、その開口部を真皮層へ向けることを含む。一部の実施形態の方法において、針は界面に配置されたままであり、治療用化合物は、治療用化合物の十分な体積が界面に投与されるまで投与される。治療用化合物の十分な体積は、任意の適切な方法によって、例えば、注入部位で針から押し出された材料のボーラスを測定することによって決定され得る。例えば、針は、本明細書に記載される治療用化合物製品を(例えば光学画像化により)検出するために、皮膚モデル中に配置されたままとしてもよく、そのため、一部の実施形態では、注入部位は、注入期間の間ずっと、位置確認され、モニターされ得る。
【0065】
本明細書に記載される方法のいずれかについて、インビトロの哺乳動物の皮膚は、真皮及び/又は皮下組織を含有し得る。そのようなインビトロの哺乳動物の皮膚の場合、治療用化合物は、真皮及び/又は皮下組織を含有するインビトロの哺乳動物の皮膚に、例えば注入によって投与され得る(これらの層は、典型的には、皮下注入後、治療剤に曝露される、
図1Aを参照)。この注入の再現性は、針の穿刺、侵入深度及び注入量の微調整を実現する注入器具によってさらに増強され得る。そのような器具により、注入は、異なる寸法のインビトロの哺乳動物の皮膚に適応するように特定の位置を様々な角度で狙うことが可能になり得る。
【0066】
本明細書に記載される方法のいずれかについて、投与するステップは、治療用化合物製品の、真皮層を通す及び/又は皮下組織層の中への、浸漬、拡散及び/又は経皮投与を含み得る。
【0067】
本明細書に記載される方法のいずれかについて、検出するステップは、真皮層を通す光学画像化を含み得る。本明細書に記載される方法のいずれかについて、検出するステップは、画像化及び/又は分析試験を含み得る。
【0068】
本明細書に記載される方法のいずれかについて、その方法は、前記投与するステップ後に溶液中の目視不可のレベルの粒子の存在を検出するステップをさらに含み得る。
【0069】
当然のことながら、本明細書に記載される方法のいずれかは、治療用化合物(又は医薬組成物などの、治療用化合物を含む組成物若しくは治療用化合物を含むインビトロの哺乳動物の皮膚)の分析試験を含み得る。例として、分析試験は、質量分析法、クロマトグラフィー、電気泳動法、分光法、光遮蔽法、粒子法(ナノ粒子/可視/ミクロンサイズの共振式質量又はブラウン運動など)、分析用遠心分離、画像法若しくは画像特性評価法、免疫測定法、SE-HPLC、rCE-SDS、CEX-HPLC、HIAC、nrCE-SDS、質量分析顕微鏡法及び/又はマススペクトロスコピーの1つ又は複数を含み得る。質量分析顕微鏡法などの技術により、インビトロの哺乳動物の皮膚中の化学種の分布を調査し得る。一部の方法において、分析試験は、治療用化合物の投与前及び/又は治療用化合物の投与後に実行され得る。例えば、本明細書に記載される方法のいずれかの「検出するステップ」は、分析試験を含み得る。本明細書に記載される方法のいずれかについて、その方法は、投与するステップの前に、治療用化合物に対して分析試験を実行して、例えば、インビトロの哺乳動物の皮膚の界面への投与前に1つ又は複数の分子特性のベースラインの状態を確認するステップをさらに含み得る。本明細書に記載される方法のいずれかについて、分析試験は、経時にわたって実行され得る。例えば、治療用化合物を含む試料は、治療用化合物の界面への投与後、定期的に回収することができ、その試料は、本明細書に記載される1つ又は複数の分析技術で分析され得る。このため、皮膚環境への投与後の1つ又は複数の分子特性の変化(又は変化の欠如)が判定され得る。
【0070】
治療用化合物の投与後の検出のために、複数の手法を適用することができる。本明細書に記載される方法の場合、検出により、皮膚内の治療用化合物の分布及び組織中に拡散するその能力を特性評価し得る(
図1A)。インビトロの哺乳動物の皮膚内の沈殿及び蓄積の可能性を解明するため、標識された治療用化合物を注入されたインビトロの哺乳動物の皮膚は、蛍光画像法(例えば多光子顕微鏡法又は共焦点顕微鏡法)を使用して可視化することができる。共局在を観察するため、皮膚モデルの構造及び細胞も蛍光標識することができる。本明細書に記載される方法は、治療用化合物を界面に配置することを含むため、本明細書に記載される画像化技術は、真皮層を通して画像化することができる。例えば、従来の共焦点顕微鏡法において使用されるレーザーは、インビトロの哺乳動物の皮膚を損傷させるおそれがあり、一部の蛍光色素により放出されるシグナルは、可視化される分子/物質のバックグラウンド蛍光とオーバーラップする場合がある。したがって、本明細書に記載される一部の方法において、検出するステップは、多光子レーザー走査顕微鏡法(本明細書において「多光子顕微鏡法」とも呼ばれる)を使用して画像化することを含む。いずれの特定の理論にも制限されるものではないが、多光子顕微鏡法は、自家蛍光からの励起エネルギーと蛍光色素からの励起エネルギーとの間に間隙を作り出すことができ、したがって色素とバックグラウンド蛍光とのオーバーラップを最小限にする。さらに、多光子顕微鏡法は、組織がそれほどエネルギーを受けないように様々な方向から光子をパルス放出することによって、インビトロの哺乳動物の皮膚組織への損傷を最小限にすることができる。多光子顕微鏡法により、厚い生組織標本の非侵襲的な深部の画像化(約1mmまで)が高解像度で可能になる。多光子顕微鏡法での画像のタイリングも、より広い視野の観察を可能にする。このような画像により、皮膚という環境中の治療製剤のバルクの挙動に直接的、定性的な見識が得られる。したがって、一部の実施形態の方法において、治療用化合物は標識される。例えば、一部の実施形態では、治療用化合物は、いずれのバックグラウンド蛍光(例えば、天然に自家蛍光するコラーゲンからのもの)ともオーバーラップしないシグナルを放出する蛍光色素で標識される。例示的な蛍光色素としては、pH非感受性色素、例えばALEXA(商標)Fluor488が挙げられる。他の実施形態では、検出するステップは、第二高調波発生(SHG)画像化(「周波数倍増」としても知られる)の使用を含み、これは、多光子レーザー線などの強い入射レーザー供給源によって誘導される非線形光学画像診断法である。SHGにおいて、入射レーザーの2つの光子は組織中で混合され、エネルギーレベル及び周波数レベルが2倍の単一光子に変換される。SHG画像化は、細胞外マトリックス(ECM)成分及び線維性コラーゲンなどの高分子構造を可視化するために、当技術分野において使用される(例えば、Xie et al.,Current Protocols in Cytometry,6.33.1-6.33.11,July 2012を参照)。特定の理論に縛られるものではないが、SHGは、画像化に最適な焦点面を特定することができ得る。例として、約850nm、例えば約830~870nm又は約840~860nmの多光子レーザー波長は、SHG画像化のための第二高調波の衝突を発生させるのに適切であり得る。
【0071】
本明細書に記載される方法の一部の例では、投与後、蛍光標識された治療用化合物からのシグナルに種々の定量的分析を適用して、注入後の生物学的製剤の分布及び拡散性を特性評価することができる。例えば、(1)注入された生物学的製剤の分布は、蛍光シグナルの強度プロファイルから測定することができ、(2)光退色後蛍光回復法(FRAP)が適用されて、注入された生物学的製剤の溶液の拡散係数を測定することができ、及び/又は(3)培地中の蛍光シグナルの測定は、注入部位から出る生物学的製剤の拡散動態に見識を付与し得る。これらの手法の例示的な概略図が
図1A(下部パネル「C」)に示されている。
【0072】
本明細書に記載される方法の一部の例について、検出するステップは、CTスキャン又は磁気共鳴画像法を含む。本明細書に記載される一部の方法について、検出するステップは、光学画像化を含む。光学画像化は、真皮層を通すものであり得る。したがって、本明細書に記載される方法のいずれかにおいて、治療用化合物は、標識され得る。当然のことながら、適切な検出を実現するために、投与された治療用化合物の画分のみが標識され得る。標識すると、治療用化合物及び治療用化合物の生理化学的特性及び/又は臨床的特性の検出が容易になり得る。このため、本明細書に記載される方法のいずれかは、治療用化合物を、フルオロフォア、蛍光色素、放射標識又は量子ドットなどの検出可能な部分で標識するステップをさらに含み得る。治療用化合物は、例えば、アミン反応性架橋剤を使用して(例えば、NHSエステル又はSDPエステルが結合したフルオロフォアを介して)標識され得る。
【0073】
治療用化合物の検出を増強するため、バックグラウンド信号(例えば、治療用化合物の投与前に得られたインビトロの哺乳動物の皮膚からのシグナル)は減算され得る。一部の実施形態の方法において、検出するステップは、バックグラウンド信号を取得すること、及びバックグラウンド信号を減算することを含む。
【0074】
さらなる実施形態
皮膚環境が治療用化合物に及ぼす影響を調査するためにインビトロの哺乳動物の皮膚を使用する利用法が本明細書に記載される。一部の利用法において、治療用化合物(又は治療用化合物を含む医薬組成物)は、皮下注入後の局所条件をシミュレートするため、皮膚のより深い層(真皮又は皮下組織)のモデルに最初に曝露される。一部の利用法には、皮膚環境への注入後の生物学的製剤の凝集及び分布を調査することが含まれる。一部の利用法では、薬物製品が皮膚環境内に維持されているときに起こる物理化学的修飾及び他の分子特性の変化をより深く調査する。まとめると、これらの手法は、皮下注入に関連する薬物-皮膚相互作用について見識を得る機会を提供する。これらのインビトロ手法の単純性により、治療用化合物、製剤及び注入戦略を最適化して、皮下注入される薬物製品の品質、有効性及び製造可能性を改善するために使用することができるスクリーニング戦略の実施が可能になる。例えば、これらの方法は、半減期延長部分を含むBiTE(登録商標)分子などの抗体タンパク質生成物の皮下製剤を開発し、選択するために使用され得る。
【0075】
皮膚環境が治療用化合物(又はその治療用化合物を含む医薬組成物)に及ぼす影響を評価するためのインビトロの哺乳動物の皮膚の使用は、2つの一般的ステップ、即ち(1)薬物曝露、(2)シグナル読み出しを含み得る。これらの2つのステップの詳細は、特定の利用法に向くように調整され得る。
【0076】
例えば、本明細書に記載される方法の利用法は、凝集及び拡散などのバルク溶液の挙動の評価を含むことができる。標識された治療用化合物(蛍光標識されたものなど)が、皮膚モデルに注入される。検出(例えば蛍光画像法などの画像化)が適用されて、インビトロの哺乳動物の皮膚内での治療用化合物の分布及び凝集の挙動が直接観察される。インビトロの哺乳動物の皮膚の外の培地内のタンパク質濃度がモニターされて、注入部位からの生物学的製剤の拡散が特性評価され得る。これらの手法をスクリーニング戦略に適用して、凝集を最小限にし、薬物のバイオアベイラビリティに最適な分布を実現することができる。
【0077】
例えば、利用法は、特性の変化(例えば、高分子量(HMW)、目視不可の粒子及び/又は化学変化)の評価を含むことができる。インビトロの哺乳動物の皮膚が使用されて、皮膚曝露後に起こる治療用化合物の分子特性における変化が判定され得る。分析手法(例えば、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC-HPLC)、キャピラリー電気泳動法、陽イオン/陰イオン交換、マススペクトロスコピー、HIAC粒子計数)が適用されて、経時での分子特性における変化が定量化される。治療用化合物及び製剤は、スクリーニングされ、有利な特性レベル及び条件を維持するように最適化され得る。
【実施例】
【0078】
実施例1:バルク溶液の挙動(例えば凝集及び拡散)
インビトロの哺乳動物の皮膚をどのように使用して、皮膚という環境内でのタンパク質凝集を解明することができるかを示すため、様々なpH感受性の凝集傾向を有する幾つかの蛍光標識されたモノクローナル抗体(mAb)溶液を皮膚モデルに注入し、多光子顕微鏡法を使用して画像化した。陽性対照として、mAb3の予め凝集した溶液(撹拌ストレスを適用することにより調製した)を皮膚モデルに注入した(
図2A)。予め凝集したmAb3は、注入部位(注入による組織外傷を示す画像の黒い領域により同定することができる)の近辺に集中する明るい点として可視化された。これらの領域の外に拡散した蛍光は観察されず、このことは、凝集は可逆的ではなく、mAbが組織の至る所に拡散する能力を制限したことを示した。皮膚モデル内に凝集を観察することができるかどうかを判定するため、mAb1(中性pHで強力に凝集することが知られているmAb)を皮膚モデルに注入した(
図2B)。主に注入部位の近辺に集中した明るい点が観察され、注入後、mAb1は皮膚モデル内で凝集したことが確認された。拡散した蛍光が観察され、一部のmAb1は凝集しないままであり、皮膚モデルの至る所に拡散することができたことを示した。軽度のpH感受性を有するmAbであるmAb2も、皮膚モデルに注入した(
図2C)。散漫散乱が存在し、明るい点がより少ないことは、このmAbは、注入すると、少ししか凝集しないことを示す。最後に、pH感受性のないmAbであるmAb3を皮膚モデルに注入した場合、凝集の徴候は観察されなかった(
図2D)。
図2A~Dにまとめられた結果は、皮膚モデルをどのように使用して、皮膚環境内に注入すると凝集する傾向について生物学的製剤溶液をスクリーニングすることができるかを示す。継続する開発により、
図1A(下部パネル「C」)に示された定量的分析の適用が可能になる。
【0079】
実施例2:分子特性の変化
皮膚モデルをどのように使用して、皮膚曝露による特性の変化を評価し得るかを示すために、同じ治療用タンパク質(mAb3)の2つの製剤について、高分子量(HMW)種及び目視不可の粒子(SbVP)のレベルを比較する実験を行った。高い濃度の方の製剤(100mg/mL、「HC」)のmAb3の濃度は、低い濃度の方の製剤(50mg/mL、「LC」)中に存在する濃度の2倍とした。さらに、2つの製剤は、緩衝液組成が異なっていた(HC製剤及びLC製剤について、それぞれ乳酸緩衝液及び酢酸緩衝液)。培地を使用して両製剤を同じ最終濃度(5.0mg/mL)まで希釈し、
図4Aに図示されているように「基本曝露」を使用して皮膚モデルに曝露した。希釈のために使用した培地を、50kDaカットオフ遠心分離フィルターを使用して濾過し、主要ピーク及びHMWピーク種の定量化に干渉するサイズのタンパク質を除去した(
図3B)。濾過した培地は、基準の抗体についても、半減期延長部分を含むBiTE(登録商標)分子についてもSEC-HPLCにバックグラウンド干渉は示さなかった。したがって、培地を濾過すると、本明細書に記載される皮膚モデルにより、曝露中のHMW及びSbVPの変化を特性評価することが可能になることが観察された。HIAC分析の場合も、濾過した培地は管理可能なバックグラウンドを示した。
【0080】
曝露された生物学的製剤溶液の小アリコートを0.1~24時間の範囲の時間にわたって回収し、サイズ排除HPLCを使用して分析した。検出した%HMW種は、
図4Bに示された表中で比較されている。これらの製品ロットについて、LC製剤原薬(DS)のHMWの初期レベルは、HC製剤(0.23%)と比較してわずかに高かった(0.39%)が、希釈すると、HMWのレベルは同程度になった(それぞれ0.26及び0.23)。両製剤について、HMWのレベルは24時間にわたってわずかに増加したが、その増加の仕方は似通っており、LC製剤及びHC製剤について、それぞれ0.30%及び0.31%の最終レベルに到達した。LC製剤及びHC製剤間のHMWの形成率に差がないこと(
図4B及び4C)は、HC製剤が、LC製剤と比較してHMWの形成のリスクの増大をもたらさないことを示す。この一致は、各適合値についての95%信頼区間のオーバーラップによって強調される(
図4Cにおける破線及び点線)。HMWのレベルは濃度に感受性がありそうであり、それは、薬物製品が注入部位領域から循環に入って希釈されるにつれ、減少することに留意されたい。この効果の例は、LC製剤において見られ、そのレベルは、DSにおける0.39%から10倍希釈後に0.26%に下降する(50~5mg/mL、
図4B、表2)。ここで適用される曝露戦略を使用して、注入部位内に維持される生物学的製剤の特性の変化を明らかにすることができ、又は適切な薬物分布が阻害された場合に起こり得ることのシナリオを表すことができる。2つの製剤間の類似性を示すこれらの結果は、同じ用量で投与される場合、濃度がより低いLC製剤と比較して濃度がより高いHC製剤にHMW種のさらなるリスクはないことを示唆する。
【0081】
目視不可の粒子(2~150μm SbVP)のレベルは、
図4Aに図示されているように基本曝露後にモニターした。培地を24時間にわたって回収し、目視不可の粒子を、HIAC液体粒子カウンターを使用して定量化した。HC製剤及びLC製剤の両方について、3時間、6時間及び24時間の各時点で検出した粒子の数は、
図4Dにおいて記号で示されている。両製剤について類似の増加が検出された。注目すべきことに、生物学的製剤を含まない製剤緩衝液のみに曝露した皮膚モデルについて24時間後に検出された粒子の数(四角い記号及び灰色の破線)は、生物学的製剤に曝露した皮膚モデルについて24時間後に到達した粒子の数と類似していた。これは、これらの粒子の大半が皮膚モデル及び/又は培地に由来し、生物学的製剤とは無関係であることを示唆する。粒子のサイズ分布が各データ点の下に示され、両製剤に曝露された皮膚モデルについて類似している。これらの結果の一致は、皮膚環境がこれらの2つの製剤に及ぼす影響は概ね同程度であり、mAb3の2つの製剤間に目視不可の粒子の形成のさらなるリスクは見られなかったことを示唆する。
【0082】
実施例3:追加の治療用タンパク質におけるインビトロ凝集及び分子特性の変化
皮膚環境への接触が原因で凝集及びHMW種の形成の程度に影響し得る治療用タンパク質溶液の様々な要因を調査するための、インビトロの哺乳動物の皮膚モデルの使用を実際に示すために、標的、治療用タンパク質の様式、緩衝液組成、pH及び初期特性レベルが異なる種々の治療用タンパク質に、皮膚モデルを曝露した。4つの異なる治療用タンパク質を調査した:(1)半減期延長部分を有する抗体タンパク質生成物(治療用タンパク質1、TP1)、(2~3)各々が2つの異なる標的に特異性を有する、2つの抗体タンパク質生成物分子(それぞれ、治療用タンパク質2及び治療用タンパク質3、即ちTP2及びTP3)及び(4)中性pHで強力に凝集することが知られているmAb(mAb1)。治療用タンパク質1の場合、2つの異なる製剤、即ち、高濃度(HC)製剤(20mg/mL)及び低濃度(LC)製剤(1mg/mL)を使用し、それぞれ緩衝液組成は異なっていたが、pH4.2で製剤化した。さらに、治療用タンパク質1のHC製剤については、タンパク質溶液を2つの異なる手法で調製した。即ち、ストレス無負荷のもの、及び5×凍結/解凍(F/T)サイクルでストレスを負荷したものとし、後者は、HMW種のレベルを上昇させることが知られていた。他のタンパク質(治療用タンパク質2、治療用タンパク質3、mAb1)は、異なるタンパク質濃度(それぞれ、0.8、2.5及び20mg/mL)、緩衝液組成、pH(それぞれ、7.0、6.0、5.2)で製剤化し、追加のストレスを一切負荷せずに調製した。これらのタンパク質溶液を培地に添加することにより、タンパク質溶液をその初期製剤化濃度から10×又は2×の最終希釈倍数にして、インビトロの哺乳動物の皮膚モデルをこれらのタンパク質溶液に基本曝露した。
【0083】
インビトロの哺乳動物の皮膚モデルを24時間インキュベートし、小アリコートを24時間にわたって培地から回収して、HMW種及びSbVPのレベルをモニターした。2×希釈及び10×希釈で曝露された場合の、これらのタンパク質溶液について検出された%HMW種は、それぞれ
図5A及び
図5Bに示されている。2×希釈及び10×希釈の両方において、5×F/Tストレスを負荷して調製されたHC製剤の治療用タンパク質1は、同じ製剤のストレス無負荷の試料と比較して、初期に%HMWのレベルが高かったが、約6時間後に類似のレベルで横ばい状態になった。2×希釈では、治療用タンパク質1のHC製剤の%HMWのレベルは、治療用タンパク質1のLC製剤(2%)と比較して、それより高いレベル(8%)で横ばいになった。しかしながら、10×希釈では、治療用タンパク質1のHC製剤は、治療用タンパク質1のLC製剤(2%)と類似のレベルで横ばいになった。これは、治療用タンパク質1について形成された%HMWの最終レベルが濃度依存的であることを示唆する。2×希釈において、治療用タンパク質2及び治療用タンパク質3の両方について%HMWは増加し、治療用タンパク質2の方が低い濃度である(0.8対2.5mg/mL)にもかかわらず、わずかに高い率で増加した。これは、場合により、タンパク質及び製剤緩衝液の物理化学的性質の方が、タンパク質濃度よりも、HMW種の形成に大きく影響を及ぼし得ることを示唆する。中性pHで凝集することが知られているmAb1について検出された%HMWは、初期に減少し、2×希釈では4%で横ばいになり、10×希釈では2%で横ばいになった。注目すべきことに、%HMWは、ほとんどのタンパク質について、皮膚モデル及び培地に曝露されると概して増加し、その例外は、両方の希釈におけるmAb1及び10×希釈におけるHC治療用タンパク質1(5×F/T)であった。このことは、皮膚環境内で形成される%HMWのレベルは、多量体形成の性質及び皮膚環境内の濃度の両方に依存する場合があることを示唆する。
【0084】
治療用タンパク質溶液を皮膚モデルとともに24時間インキュベートした後、培地中に存在する目視不可の粒子(2~150μm SbVP)のレベルを、HIAC液体粒子カウンターを使用して定量化した。粒子濃度は
図5Cに示されている。治療用タンパク質1の、5×F/Tの及びストレス無負荷の、20mg/mL(HC)製剤に2×希釈で曝露した皮膚モデルの場合、1.5時間までにおよそ1,000,000粒子/mLが検出され、より大きいサイズの粒子の割合が24時間にわたって増加した。1mg/mL(LC)治療用タンパク質1の場合、同じ2×希釈で検出された粒子の数は、100分の1の低さであった(およそ10,000粒子/mL)。しかしながら、皮膚モデルを20mg/mL(HC)治療用タンパク質1製剤に10×希釈で曝露すると、治療用タンパク質1のHC製剤及びLC製剤の両方に、類似した数の粒子(およそ10,000粒子/mL)が測定された。理論に制限されるものではないが、このことは、治療用タンパク質1について、粒子の形成は、濃度依存性が強いことを示唆する。HC治療用タンパク質1の製剤緩衝液に曝露した皮膚モデル由来の培地には、およそ10,000粒子/mLが存在し、これが製剤緩衝液に曝露されたときの皮膚モデル/培地系から形成されるSbVPのベースラインレベルであり得ることを示す。したがって、理論に制限されるものではないが、20mg/mL(HC)治療用タンパク質1の場合、皮膚環境内で、10×希釈が、注入部位での局所相互作用によるSbVPの形成を減少させるのに十分であり得る。中性pHで強力に凝集することが知られていたmAb1に曝露された皮膚モデルの場合、2×希釈及び10×希釈の両方において、およそ1,000,000粒子が検出されたため、凝集は高水準に残っていた。治療用タンパク質2製剤及び治療用タンパク質3製剤に2×希釈で曝露された皮膚モデルの場合、培地中に検出されたSbVPのレベルは、それぞれ、およそ3000粒子/mL及び50000粒子/mLであり、24時間にわたってかなり安定したままであった。全体的に見て、これらの結果は、皮膚環境内でSbVPを形成する傾向は、相異なる治療用化合物製剤では様々であり得、凝集の性質に応じて濃度依存的であり得ることを示唆する。この実験は、インビトロの哺乳動物の皮膚モデルがどのように使用されて、注入部位での凝集のリスクを低減するための製剤条件及び送達戦略をスクリーニングし得るかを実際に示すものである。
【0085】
インビトロの哺乳動物の皮膚モデルに注入された治療用タンパク質のインビトロ凝集を解明するために、
図1A~1Bに示されているように、タンパク質を蛍光標識し、インビトロの哺乳動物の皮膚モデルに注入し、多光子顕微鏡法を使用して画像化した。この装置において、注入針を皮膚モデルに挿入し、実験継続時間中、埋め込んだままとした。これにより、注入プロセスの間ずっと、注入部位を位置確認し、モニターすることが可能であった。シリンジポンプを使用して注入量を制御し、蛍光標識されたタンパク質が皮膚モデル中に注入されていたため、多光子顕微鏡法により、皮膚モデル内のコラーゲン構造及び蛍光標識されたタンパク質の両方の画像化が可能であった。10μLの種々の蛍光標識されたタンパク質が注入された後の注入部位の画像が、
図6に示されている。ストレス無負荷の治療用タンパク質1の20mg/mL(HC)製剤、治療用タンパク質1の1mg/mL(LC)製剤、又は治療用タンパク質2の0.8mg/mL製剤については、注入部位の近辺に凝集の徴候は観察されなかったが、中性pHで強力に凝集することが予測された20mg/mL mAb1については、かなりのレベルの凝集(明るい点)が観察された。この実験は、インビトロの哺乳動物の皮膚モデルを蛍光画像法戦略とともにどのように使用して、インビトロの哺乳動物の皮膚モデル内のインビトロ凝集を検出することができるかを実際に示すものである。
【0086】
本明細書に記載される実施例は、とりわけ、本明細書に記載される方法によりインビトロの哺乳動物の皮膚をどのように使用して、皮下注入された生物学的製剤の物理化学的性質に皮膚環境が及ぼす影響を調査し得るかを説明するものである。本方法の単純性は、皮膚を通して送達される薬物製品をより深く理解し、最適化するためのスクリーニング戦略を容易にし得る。(1)皮下組織層(よりSubQ曝露に関連し得る)に基づく皮膚モデルの使用、(2)注入安定性を改善するための装置の開発、(3)薬物分布及び特性の変化のより定量的な分析の適用を含む、本明細書に記載される方法の追加の使用が企図される。最後に、より大きい形式の皮膚モデルの使用は、治療的に適切な体積での生物学的製剤溶液の注入をシミュレートするのに有用であり得、それは、注入戦略(例えばヒアルロニダーゼの添加)及び注入デバイスの試験及び最適化を可能にするであろう。
【0087】
参考文献
以下の文献は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
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【0088】
本明細書に引用される刊行物、特許出願及び特許を含む全ての参考文献は、それぞれの参考文献が、あたかも個々に及び具体的に参照により組み込まれるように示され、且つ本明細書においてその全体が記載されたかのような場合と同程度に、参照により本明細書に組み込まれる。
【0089】
本開示の説明に関連して(特に以下の特許請求の範囲に関連して)、「1つの(a)」及び「1つの(an)」及び「その(the)」という用語、並びに類似の指示対象の使用は、別途本明細書で指示されない限り又は文脈と明らかに矛盾しない限り、単数及び複数の両方を包含すると解釈されなければならない。「含む(comprising)」、「有する(having)」、「含む(including)」及び「含有する(containing)」という用語は、特記しない限り、オープンエンドの用語(即ち「含むが、限定されない」を意味する)と解釈されなければならない。
【0090】
「患者」及び「対象」という用語は、本明細書では互換的に使用される。一般に、これらの用語は、ヒトを指すものと理解される。一部の実施形態の方法において、患者又は対象は、ヒトである。
【0091】
本明細書における値の範囲の記載は、本明細書で別段指示されない限り、その範囲内にある別個の各値及び各端点を個々に言及する簡略法としての役割を果たすことを単に意図しており、別個の各値及び各端点は、本明細書中にあたかも個々に記載されているかのように本明細書に組み込まれる。
【0092】
本明細書に記載される方法は全て、本明細書で別段指示されない限り、又は文脈と明らかに矛盾しない限り、任意の適切な順序で実行され得る。本明細書で提供されるあらゆる例又は例示的な言語(例えば「など」)の使用は、本開示を単により明らかにすることを意図するものであり、別途特許請求されない限り、本開示の範囲に限定を課すものではない。本明細書中のいかなる言語も、任意の特許請求されていない要素を、本開示を実施するのに必要不可欠なものとして示すものと解釈されてはならない。
【0093】
本開示を実施するのに本発明者らに既知の最良の形態を含む、本開示の好ましい実施形態が本明細書に記載される。それらの好ましい実施形態の変形形態は、上記の説明を読めば当業者にとって明らかになり得る。本発明者らは、そのような変形形態を当業者らが適宜使用することを期待するものであり、本発明者らは、本明細書に具体的に記載されている以外の別の方法で本開示が実施されることを意図する。したがって、本開示は、適用される法律によって許可されるような、本明細書に添付される特許請求の範囲に列挙された主題の全ての変形形態及び均等物を含む。さらに、本明細書に記載される要素の任意の組み合わせは、本明細書で別段指示されない限り、又は文脈と明らかに矛盾しない限り、その全ての可能な変更形態で本開示に包含される。
【国際調査報告】