IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ バイオグラフ 55,インク.の特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-02
(54)【発明の名称】免疫抑制性B細胞を標的化する抗体
(51)【国際特許分類】
   C07K 16/46 20060101AFI20240925BHJP
   C07K 16/28 20060101ALI20240925BHJP
   C12N 15/13 20060101ALI20240925BHJP
   C12P 21/08 20060101ALI20240925BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240925BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20240925BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20240925BHJP
【FI】
C07K16/46 ZNA
C07K16/28
C12N15/13
C12P21/08
A61P35/00
A61P35/02
A61K39/395 T
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024511968
(86)(22)【出願日】2022-08-24
(85)【翻訳文提出日】2024-04-17
(86)【国際出願番号】 US2022041400
(87)【国際公開番号】W WO2023028162
(87)【国際公開日】2023-03-02
(31)【優先権主張番号】63/237,065
(32)【優先日】2021-08-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】522340657
【氏名又は名称】バイオグラフ 55,インク.
(74)【代理人】
【識別番号】110003797
【氏名又は名称】弁理士法人清原国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】プレスタ,レオナルド
(72)【発明者】
【氏名】トゥーメ,ポール
(72)【発明者】
【氏名】ロンバーグ,ニルス
(72)【発明者】
【氏名】ドゥラマド,オマル
【テーマコード(参考)】
4B064
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4B064AG27
4B064CA19
4B064CC24
4B064DA05
4C085AA14
4C085BB31
4C085CC22
4C085DD61
4C085EE01
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA41
4H045CA40
4H045DA76
4H045EA28
4H045FA74
(57)【要約】
本明細書には、(i)CD38に結合するCD38抗原結合成分と、(ii)CD19に結合するCD19抗原結合成分と、(iii)野生型Fc領域と比較して1つまたは複数の突然変異を含むバリアントFc領域とを含む複合体結合分子であって、バリアントFc領域が、野生型Fc領域と比較して減少したエフェクタ機能を示す、複合体結合分子が記載される。また、癌を処置する方法に当該複合体結合分子を使用する方法も記載される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)CD38に結合するCD38抗原結合成分と、(ii)CD19に結合するCD19抗原結合成分と、(iii)野生型Fc領域と比較して1つまたは複数の突然変異を含むバリアントFc領域とを含む複合体結合分子であって、前記バリアントFc領域が、前記野生型Fc領域と比較して改変されたエフェクタ機能を示す、複合体結合分子。
【請求項2】
前記改変されたエフェクタ機能が、抗体依存性細胞介在性細胞傷害(ADCC)の減少、補体依存性細胞傷害(CDC)の減少、C1qに対する親和性の減少、およびそれらのあらゆる組合せからなるリストから選択される、請求項1に記載の複合体結合分子。
【請求項3】
前記バリアントFc領域が、IgG1 Fc領域を含み、前記1つまたは複数の突然変異が、EUナンバリングよる(a)297A、297Q、297G、もしくは297D、(b)279F、279K、もしくは279L、(c)228P、(d)235A、235E、235G、235Q、235R、もしくは235S、(e)237A、237E、237K、237N、もしくは237R、(f)234A、234V、もしくは234F、(g)233P、(h)328A、(i)327Qもしくは327T、(j)329A、329G、329Y、もしくは329R、(k)331S、(l)236Fもしくは236R、(m)238A、238E、238G、238H、238I、238V、238W、もしくは238Y、(n)248A、(o)254D、254E、254G、254H、254I、254N、254P、254Q、254T、もしくは254V、(p)255N、(q)256H、256K、256R、もしくは256V、(r)264S、(s)265H、265K、265S、265Y、もしくは265A、(t)267G、267H、267I、もしくは267K、(u)268K、(v)269Nもしくは269Q、(w)270A、270G、270M、もしくは270N、(x)271T、(y)272N、(z)292E、292F、292G、もしくは292I、(aa)293S、(bb)301W、(cc)304E、(dd)311E、311G、もしくは311S、(ee)316F、(ff)328V、(gg)330R、(hh)339Eもしくは339L、(ii)343Iもしくは343V、(jj)373A、373G、もしくは373S、(kk)376E、376W、もしくは376Y、(ll)380D、(mm)382Dもしくは382P、(nn)385P、(oo)424H、424M、もしくは424V、(pp)434I、(qq)438G、(rr)439E、439H、もしくは439Q、(ss)440A、440D、440E、440F、440M、440T、もしくは440V、(tt)K322A、(uu)L235E、(vv)L234AおよびL235A、(ww)L234A、L235A、およびG237A、(xx)L234A、L235A、およびP329G、(yy)L234F、L235E、およびP331S、(zz)L234A、L235E、およびG237A、(aaa)L234A、L235E、G237A、およびP331S、(bbb)L234A、L235A、G237A、P238S、H268A、A330S、およびP331S、(ccc)L234A、L235A、およびP329A、(ddd)G236RおよびL328R、(eee)G237A、(fff)F241A、(ggg)V264A、(hhh)D265A、(iii)D265AおよびN297A、(jjj)D265AおよびN297G、(kkk)D270A、(lll)A330L、(mmm)P331AもしくはP331S、または(nnn)E233P、(ooo)L234A、L235E、G237A、A330S、およびP331S、あるいは(ppp)(a)~(uu)のあらゆる組合せを含む、請求項1~2のいずれか一項に記載の複合体結合分子。
【請求項4】
前記バリアントFc領域が表1から選択される、請求項1~2のいずれか一項に記載の複合体結合分子。
【請求項5】
野生型Fc領域と比較して前記1つまたは複数の突然変異が、EUナンバリングによるL234A、L235E、G237A、A330S、またはP331Sのうち1つまたは複数を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の複合体結合分子。
【請求項6】
野生型Fc領域と比較して前記1つまたは複数の突然変異が、EUナンバリングによるL234A、L235E、G237A、A330S、およびP331Sを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の複合体結合分子。
【請求項7】
野生型Fc領域と比較して前記1つまたは複数の突然変異が、EUナンバリングによるK322Aを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の複合体結合分子。
【請求項8】
野生型Fc領域と比較して前記1つまたは複数の突然変異が、EUナンバリングによるS329DおよびI332Eを含むか、またはそれらからなる、請求項1~4のいずれか一項に記載の複合体結合分子。
【請求項9】
野生型Fc領域と比較して前記1つまたは複数の突然変異が、EUナンバリングによるL234A、L235E、G237A、A330S、およびP331Sを含むか、またはそれらからなる、請求項1~4のいずれか一項に記載の複合体結合分子。
【請求項10】
野生型Fc領域と比較して前記1つまたは複数の突然変異が、EUナンバリングによるL234A、L235A、およびP329Gを含むか、またはそれらからなる、請求項1~4のいずれか一項に記載の複合体結合分子。
【請求項11】
野生型Fc領域と比較して前記1つまたは複数の突然変異が、
N297A/Q/G、L235A/G237A/E318A、L234A/L235A、G236R/L328R、S298G/T299A、L234F/L235E/P331S、H268Q/V309L/A330S/P331S、L234A/L235A/P329G、V234A/G237A/P238S/H268A/V309L/A330S/P331S、およびL234F/L235E/D265Aからなる群から選択される、請求項1~4のいずれか一項に記載の複合体結合分子。
【請求項12】
前記CD38抗原結合成分が、
a)配列番号71~75のうちいずれか1つに明記されるアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域1(HCDR1)、
b)配列番号81~85または151~155のうちいずれか1つに明記されるアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域2(HCDR2)、
c)配列番号91~95のうちいずれか1つに明記されるアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域3(HCDR3)、
d)配列番号101~105のうちいずれか1つに明記されるアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域1(LCDR1)、
e)配列番号111~115のうちいずれか1つに明記されるアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域2(LCDR2)、および
f)配列番号121~125のうちいずれか1つに明記されるアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域3(LCDR3)を含み、
前記CD19抗原結合成分が、
g)配列番号11~15のうちいずれか1つに明記されるアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域1(HCDR1)、
h)配列番号21~25のうちいずれか1つに明記されるアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域2(HCDR2)、
i)配列番号31~35のうちいずれか1つに明記されるアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域3(HCDR3)、
j)配列番号101~105のうちいずれか1つに明記されるアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域1(LCDR1)、
k)配列番号111~115のうちいずれか1つに明記されるアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域2(LCDR2)、および
l)配列番号121~125のうちいずれか1つに明記されるアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域3(LCDR3)を含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の複合体結合分子。
【請求項13】
前記CD38抗原結合成分が、配列番号151~155に明記されるアミノ酸配列を含むHCDR2アミノ酸配列を含む、請求項12に記載の複合体結合分子。
【請求項14】
前記CD38抗原結合成分が、配列番号154に明記されるアミノ酸配列を含むHCDR2アミノ酸配列を含む、請求項12に記載の複合体結合分子。
【請求項15】
前記CD38抗原結合成分が、配列番号81~85に明記されるアミノ酸配列のうちいずれか1つを含むHCDR2アミノ酸配列を含む、請求項1~14のいずれか一項に記載の複合体結合分子。
【請求項16】
前記CD38抗原結合成分が、配列番号3または5に対して少なくとも約90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む抗CD38免疫グロブリン重鎖可変領域を含み、抗CD38免疫グロブリン軽鎖可変領域が、配列番号4に対して少なくとも約90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項1~15のいずれか一項に記載の複合体結合分子。
【請求項17】
前記抗CD38免疫グロブリン重鎖可変領域が、配列番号3または5と同一のアミノ酸配列を含み、前記抗CD38免疫グロブリン軽鎖可変領域が、配列番号4と同一のアミノ酸配列を含む、請求項16に記載の複合体結合分子。
【請求項18】
前記CD19抗原結合成分が、配列番号1、6、または7に対して少なくとも約90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む抗CD19免疫グロブリン重鎖可変領域を含み、抗CD19免疫グロブリン軽鎖可変領域が、配列番号2に対して少なくとも約90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項1~17のいずれか一項に記載の複合体結合分子。
【請求項19】
前記抗CD19免疫グロブリン重鎖可変領域が、配列番号1、6、または7と同一のアミノ酸配列を含み、前記抗CD19免疫グロブリン軽鎖可変領域が、配列番号2と同一のアミノ酸配列を含む、請求項18に記載の複合体結合分子。
【請求項20】
抗CD38免疫グロブリン重鎖可変領域が、免疫グロブリン重鎖定常領域をさらに含み、抗CD38免疫グロブリン重鎖定常領域が、前記抗CD38免疫グロブリン重鎖定常領域のホモ二量体化を支持しないが、非抗CD38免疫グロブリン重鎖定常領域との前記抗CD38免疫グロブリン重鎖定常領域のヘテロ二量体化を促進させる、1つまたは複数のアミノ酸置換を含む、請求項1~19のいずれか一項に記載の複合体結合分子。
【請求項21】
前記抗CD38免疫グロブリン重鎖定常領域が、前記抗CD38免疫グロブリン重鎖定常領域および前記非抗CD38免疫グロブリン重鎖定常領域のヘテロ二量体化が抗CD38免疫グロブリン重鎖のホモ二量体化と比較して支持されるように、T366W置換(EUナンバリング)またはT366S/L368A/Y407V置換(EUナンバリング)を含む、請求項20に記載の複合体結合分子。
【請求項22】
抗CD19免疫グロブリン重鎖可変領域が、免疫グロブリン重鎖定常領域をさらに含み、抗CD19免疫グロブリン重鎖定常領域が、前記抗CD19免疫グロブリン重鎖定常領域のホモ二量体化を支持しないが、非抗CD19免疫グロブリン重鎖定常領域との第2の重鎖定常領域のヘテロ二量体化を促進させる、1つまたは複数のアミノ酸置換を含む、請求項1~21のいずれか一項に記載の複合体結合分子。
【請求項23】
前記抗CD19免疫グロブリン重鎖定常領域が、前記抗CD19免疫グロブリン重鎖定常領域および前記非抗CD19免疫グロブリン重鎖定常領域のヘテロ二量体化が抗CD19免疫グロブリン重鎖のホモ二量体化と比較して支持されるように、T366W置換(EUナンバリング)またはT366S/L368A/Y407V置換(EUナンバリング)を含む、請求項22に記載の複合体結合分子。
【請求項24】
抗CD38免疫グロブリン軽鎖可変領域が、免疫グロブリン軽鎖定常領域をさらに含む、請求項1~23のいずれか一項に記載の複合体結合分子。
【請求項25】
前記CD19抗原結合成分が、配列番号301または304に明記される重鎖免疫グロブリン配列および配列番号213に明記される軽鎖免疫グロブリン配列を含み、CD38結合成分が、配列番号302、303、305~310に明記される重鎖免疫グロブリン配列および配列番号213に明記される軽鎖免疫グロブリン配列を含む、請求項1~24のいずれか一項に記載の複合体結合分子。
【請求項26】
抗CD19免疫グロブリン重鎖可変領域が、KabatナンバリングによるA84SまたはA108L置換を含む、請求項1~25のいずれか一項に記載の複合体結合分子。
【請求項27】
抗CD38免疫グロブリン軽鎖可変領域が、KabatナンバリングによるW32H置換を含む、請求項1~25のいずれか一項に記載の複合体結合分子。
【請求項28】
単一の二特異性結合分子が、前記CD38抗原結合成分および前記CD19抗原結合成分から形成される、請求項1~27のいずれか一項に記載の複合体結合分子。
【請求項29】
共通軽鎖二特異性抗体である、請求項1~28のいずれか一項に記載の複合体結合分子。
【請求項30】
請求項1~29のいずれか一項に記載の複合体結合分子を含む組成物であって、薬学的に許容可能な希釈剤、担体、または賦形剤をさらに含む組成物。
【請求項31】
請求項1~30のいずれか一項に記載の複合体結合分子をコードするポリヌクレオチド配列を含む、核酸または複数の核酸。
【請求項32】
(i)CD38に結合するCD38抗原結合成分と、(ii)CD19に結合するCD19抗原結合成分と、(iii)野生型Fc領域と比較して1つまたは複数の突然変異を含むバリアントFc領域とを含む複合体結合分子であって、前記バリアントFc領域が、前記野生型Fc領域と比較して減少したエフェクタ機能を示し、前記CD38抗原結合成分が、
a)配列番号71~75のうちいずれか1つに明記されるアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域1(HCDR1)、
b)配列番号81~85または151~155のうちいずれか1つに明記されるアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域2(HCDR2)、
c)配列番号91~95のうちいずれか1つに明記されるアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域3(HCDR3)、
d)配列番号101~105のうちいずれか1つに明記されるアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域1(LCDR1)、
e)配列番号111~115のうちいずれか1つに明記されるアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域2(LCDR2)、および
f)配列番号121~125のうちいずれか1つに明記されるアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域3(LCDR3)を含み、
前記CD19抗原結合成分が、
g)配列番号11~15のうちいずれか1つに明記されるアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域1(HCDR1)、
h)配列番号21~25のうちいずれか1つに明記されるアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域2(HCDR2)、
i)配列番号31~35のうちいずれか1つに明記されるアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域3(HCDR3)、
j)配列番号101~105のうちいずれか1つに明記されるアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域1(LCDR1)、
k)配列番号111~115のうちいずれか1つに明記されるアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域2(LCDR2)、および
l)配列番号121~125のうちいずれか1つに明記されるアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域3(LCDR3)を含む、複合体結合分子。
【請求項33】
(i)CD38に結合するCD38抗原結合成分と、(ii)CD19に結合するCD19抗原結合成分と、(iii)表1から選択される1つまたは複数の突然変異を含むバリアントFc領域とを含む複合体結合分子であって、前記CD38抗原結合成分が、
a)配列番号71~75のうちいずれか1つに明記されるアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域1(HCDR1)、
b)配列番号81~85または151~155のうちいずれか1つに明記されるアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域2(HCDR2)、
c)配列番号91~95のうちいずれか1つに明記されるアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域3(HCDR3)、
d)配列番号101~105のうちいずれか1つに明記されるアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域1(LCDR1)、
e)配列番号111~115のうちいずれか1つに明記されるアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域2(LCDR2)、および
f)配列番号121~125のうちいずれか1つに明記されるアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域3(LCDR3)を含み、
前記CD19抗原結合成分が、
g)配列番号11~15のうちいずれか1つに明記されるアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域1(HCDR1)、
h)配列番号21~25のうちいずれか1つに明記されるアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域2(HCDR2)、
i)配列番号31~35のうちいずれか1つに明記されるアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域3(HCDR3)、
j)配列番号101~105のうちいずれか1つに明記されるアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域1(LCDR1)、
k)配列番号111~115のうちいずれか1つに明記されるアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域2(LCDR2)、および
l)配列番号121~125のうちいずれか1つに明記されるアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域3(LCDR3)を含む、複合体結合分子。
【請求項34】
(i)CD38に結合するCD38抗原結合成分と、(ii)CD19に結合するCD19抗原結合成分と、(iii)L234A、L235E、G237A、A330S、および/またはP331S突然変異(EUナンバリング)を含むバリアントFc領域とを含む複合体結合分子であって、前記CD38抗原結合成分が、
a)配列番号71~75のうちいずれか1つに明記されるアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域1(HCDR1)、
b)配列番号81~85または151~155のうちいずれか1つに明記されるアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域2(HCDR2)、
c)配列番号91~95のうちいずれか1つに明記されるアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域3(HCDR3)、
d)配列番号101~105のうちいずれか1つに明記されるアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域1(LCDR1)、
e)配列番号111~115のうちいずれか1つに明記されるアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域2(LCDR2)、および
f)配列番号121~125のうちいずれか1つに明記されるアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域3(LCDR3)を含み、
前記CD19抗原結合成分が、
g)配列番号11~15のうちいずれか1つに明記されるアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域1(HCDR1)、
h)配列番号21~25のうちいずれか1つに明記されるアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域2(HCDR2)、
i)配列番号31~35のうちいずれか1つに明記されるアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域3(HCDR3)、
j)配列番号101~105のうちいずれか1つに明記されるアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域1(LCDR1)、
k)配列番号111~115のうちいずれか1つに明記されるアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域2(LCDR2)、および
l)配列番号121~125のうちいずれか1つに明記されるアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域3(LCDR3)を含む、複合体結合分子。
【請求項35】
(i)CD38に結合するCD38抗原結合成分と、(ii)CD19に結合するCD19抗原結合成分と、(iii)S329DおよびI332E突然変異(EUナンバリング)を含むバリアントFc領域とを含む複合体結合分子であって、前記CD38抗原結合成分が、
a)配列番号71~75のうちいずれか1つに明記されるアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域1(HCDR1)、
b)配列番号81~85または151~155のうちいずれか1つに明記されるアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域2(HCDR2)、
c)配列番号91~95のうちいずれか1つに明記されるアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域3(HCDR3)、
d)配列番号101~105のうちいずれか1つに明記されるアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域1(LCDR1)、
e)配列番号111~115のうちいずれか1つに明記されるアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域2(LCDR2)、および
f)配列番号121~125のうちいずれか1つに明記されるアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域3(LCDR3)を含み、
前記CD19抗原結合成分が、
g)配列番号11~15のうちいずれか1つに明記されるアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域1(HCDR1)、
h)配列番号21~25のうちいずれか1つに明記されるアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域2(HCDR2)、
i)配列番号31~35のうちいずれか1つに明記されるアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域3(HCDR3)、
j)配列番号101~105のうちいずれか1つに明記されるアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域1(LCDR1)、
k)配列番号111~115のうちいずれか1つに明記されるアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域2(LCDR2)、および
l)配列番号121~125のうちいずれか1つに明記されるアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域3(LCDR3)を含む、複合体結合分子。
【請求項36】
前記バリアントFc領域が、非バリアントFc領域を含む抗体と比較して、ADCCを少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%以上減少させる、請求項1~35のいずれか一項に記載の複合体結合分子。
【請求項37】
前記バリアントFc領域が、非バリアントFc領域を含む抗体と比較して、CDCを少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%以上減少させる、請求項1~35のいずれか一項に記載の複合体結合分子。
【請求項38】
癌または腫瘍に罹患した個体を処置する方法であって、前記癌または腫瘍に罹患した前記個体に請求項1~37のいずれか一項に記載の複合体結合分子を投与することによって、前記癌または腫瘍を処置する工程を含む方法。
【請求項39】
前記癌または腫瘍が血液癌である、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
血液癌がB細胞悪性腫瘍である、請求項38に記載の方法。
【請求項41】
B細胞悪性腫瘍がB細胞急性リンパ球性白血病である、請求項38に記載の方法。
【請求項42】
前記B細胞悪性腫瘍が、慢性リンパ球性白血病、小リンパ球性リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、または非ホジキンリンパ腫(びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、濾胞性リンパ腫)である、請求項40に記載の方法。
【請求項43】
前記血液癌が血漿悪性腫瘍である、請求項40に記載の方法。
【請求項44】
前記血漿悪性腫瘍が多発性骨髄腫である、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
血液癌がCD19およびCD38を発現する、請求項38~44のいずれか一項に記載の方法。
【請求項46】
前記癌または腫瘍が固形組織癌である、請求項38に記載の方法。
【請求項47】
前記固形組織癌が、乳癌、前立腺癌、膵臓癌、肺癌、腎臓癌、胃癌、食道癌、皮膚癌、大腸癌、または頭頸部癌を含む、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
前記乳癌がトリプルネガティブ乳癌であり、前記肺癌が非小細胞肺癌であり、前記頭頸部癌が頭頸部扁平上皮癌であり、前記腎臓癌が腎細胞癌であり、脳腫瘍が多形性膠芽腫であり、または前記皮膚癌が黒色腫である、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
腫瘍または癌に罹患した個体の腫瘍中にあるか、それに隣接するか、またはその周囲にある腫瘍浸潤性B細胞を低減させる方法であって、前記腫瘍または癌に罹患した前記個体に請求項1~37のいずれか一項に記載の複合体結合分子を投与することによって、前記腫瘍中の腫瘍浸潤性B細胞を低減させる工程を含む、方法。
【請求項50】
腫瘍または癌に罹患した個体の腫瘍中にあるか、それに隣接するか、またはその周囲にある免疫抑制性B細胞を低減させる方法であって、前記腫瘍または癌に罹患した前記個体に請求項1~37のいずれか一項に記載の複合体結合分子を投与することによって、前記腫瘍中の免疫抑制性B細胞を低減させる工程を含む、方法。
【請求項51】
腫瘍または癌に罹患した個体の腫瘍中にあるか、それに隣接するか、またはその周囲にある免疫抑制性B細胞の機能を阻害する方法であって、前記腫瘍または癌に罹患した前記個体に請求項1~37のいずれか一項に記載の複合体結合分子を投与することによって、前記腫瘍中の免疫抑制性B細胞による免疫抑制を低減する工程を含む、方法。
【請求項52】
腫瘍中にあるか、それに隣接するか、またはその周囲にある免疫抑制性B細胞の機能を阻害する方法であって、前記免疫抑制性B細胞を請求項1~37のいずれか一項に記載の複合体結合分子に接触させることによって、前記腫瘍中の前記免疫抑制性B細胞による免疫抑制を低減させる工程を含む、方法。
【請求項53】
前記免疫抑制性B細胞の機能が、IL-10、IL-35、TGF-β、またはそれらの組合せの放出を含む、請求項50~52のいずれか一項に記載の方法。
【請求項54】
前記腫瘍浸潤性B細胞または免疫抑制性B細胞が、CD19陽性B細胞、CD38陽性B細胞、CD19、CD38二重陽性B細胞、またはそれらの組合せを含む、請求項49~53のいずれか一項に記載の方法。
【請求項55】
請求項1~37のいずれか一項に記載の複合体結合分子を作製する方法であって、前記複合体結合分子の細胞培養培地への発現、集合、および分泌を可能にするのに十分な条件下で前記細胞培養培地において細胞をインキュベートする工程を含む方法。
【請求項56】
前記細胞培養培地から前記複合体結合分子を単離および精製する工程を含む、請求項55に記載の方法。
【請求項57】
癌または腫瘍を処置する方法における、請求項1~37のいずれか一項に記載の複合体結合分子の使用。
【請求項58】
前記癌または腫瘍が血液癌である、請求項57に記載の使用。
【請求項59】
前記血液癌がB細胞悪性腫瘍である、請求項58に記載の使用。
【請求項60】
前記B細胞悪性腫瘍がB細胞急性リンパ球性白血病である、請求項59に記載の使用。
【請求項61】
前記B細胞悪性腫瘍が、慢性リンパ球性白血病、小リンパ球性リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、または非ホジキンリンパ腫(びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、濾胞性リンパ腫)である、請求項60に記載の使用。
【請求項62】
前記血液癌が形質細胞悪性腫瘍である、請求項58に記載の使用。
【請求項63】
前記形質細胞悪性腫瘍が多発性骨髄腫である、請求項62に記載の使用。
【請求項64】
前記血液癌がCD19およびCD38を発現する、請求項58~63のいずれか一項に記載の使用。
【請求項65】
前記癌または腫瘍が固形組織癌である、請求項57に記載の使用。
【請求項66】
前記固形組織癌が、乳癌、前立腺癌、膵臓癌、肺癌、腎臓癌、胃癌、食道癌、皮膚癌、大腸癌、または頭頸部癌を含む、請求項65に記載の使用。
【請求項67】
前記乳癌がトリプルネガティブ乳癌であり、前記肺癌が非小細胞肺癌であり、前記頭頸部癌が頭頸部扁平上皮癌であり、前記腎臓癌が腎細胞癌であり、脳腫瘍が多形性膠芽腫であり、または前記皮膚癌が黒色腫である、請求項66に記載の使用。
【請求項68】
腫瘍または癌に罹患した個体の腫瘍中にあるか、それに隣接するか、またはその周囲にある腫瘍浸潤性B細胞を低減させる方法における、請求項1~37のいずれか一項に記載の複合体結合分子の使用。
【請求項69】
腫瘍または癌に罹患した個体の腫瘍中にあるか、それに隣接するか、またはその周囲にある免疫抑制性B細胞を低減させる方法における、請求項1~37のいずれか一項に記載の複合体結合分子の使用であって、前記方法が、前記腫瘍または癌に罹患した前記個体に投与する工程を含む、使用。
【請求項70】
腫瘍または癌に罹患した個体の腫瘍中にあるか、それに隣接するか、またはその周囲にある免疫抑制性B細胞の機能を阻害する方法における、請求項1~37のいずれか一項に記載の複合体結合分子の使用。
【請求項71】
免疫抑制性B細胞の機能が、IL-10、IL-35、TGF-β、またはそれらの組合せの放出を含む、請求項68~70のいずれか一項に記載の使用。
【請求項72】
前記腫瘍浸潤性B細胞または免疫抑制性B細胞が、CD19陽性B細胞、CD38陽性B細胞、CD19、CD38二重陽性B細胞、またはそれらの組合せを含む、請求項68~70のいずれか一項に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
相互参照
本出願は、2021年8月25日出願の米国仮特許出願第63/237,065号に基づく利益を主張し、当該仮特許出願は、あらゆる目的のためにその全体を参照することによって本明細書に援用される。
【背景技術】
【0002】
抗体治療薬は様々な疾患を処置するために首尾よく使用されてきたが、それらの適用は、癌などの複雑な疾患に対する臨床的有効性に関して制限される可能性がある。標的結合親和性および価数を変更するために抗体ベースの治療薬を操作することで、有効性向上の達成および処置アウトカムの改善に向けた候補となる経路が得られる。このため、二特異性または多価抗体が、複雑な疾患の多因子的な性質に結び付けられた課題を解決するための候補となるアプローチを提供する。2つの異なる抗原分子、または同じ抗原の異なるエピトープを結合することにより、二特異性抗体はより大きな機能性をもたらし、多数の疾患の処置のための標的化剤としての多様な用途を与える。
【発明の概要】
【0003】
癌生物学と免疫系との動的な関係性は、臨床アウトカムと関連付けられる要因である。免疫応答は、癌の発症中、腫瘍微環境の調節において意義深い役割を果たす。このため、T細胞およびB細胞などの免疫細胞は、癌の進行または転移のモジュレータおよびエフェクタとして作用する。顕著なことに、免疫抑制細胞は抗腫瘍免疫応答において重要な役割を果たし、このときに免疫抑制は、一般的に腫瘍の成長および浸潤と関連付けられ、負のアウトカムと相関する。B細胞は免疫応答を正に調節することが公知であるが、免疫抑制性B細胞の集団は、抗腫瘍免疫応答を抑制して腫瘍成長を促すように機能する。
【0004】
本明細書には、二特異性または多価の標的化分子を有する免疫抑制性B細胞集団を標的化する、特定の結合分子が提供される。免疫抑制性B細胞集団の標的化は、(例えば、上皮癌細胞集団の選択的な枯渇とは対照的に)処置アウトカムを改善するために抗腫瘍免疫応答を有効に調節する、癌に対する治療介入用の経路を提示する。本明細書で提供される結合分子は、B細胞系列表面マーカ(例えば、CD19、CD138、IgA、および/またはCD20)ならびに免疫抑制性B細胞の表面マーカ(例えば、IgD、CD1、CD5、CD21、CD24、CD38、HM13、SLAMF7、AQP3、および/または潜在性TGF-β(例えば、TGF-β LAP))に結合する、二特異性抗体を含むことができる。特定の具体的な実施形態では、二特異性抗体は、CD19およびCD38に結合するので、特異的な免疫抑制性B細胞集団に対する選択性を有する。
【0005】
特定の例では、二特異性または多価の標的化分子は、免疫抑制性B細胞集団を標的化する(例えば、それにより免疫抑制を低減する)ことで、腫瘍細胞の直接標的化と比較して腫瘍クリアランスを促進させるか、または腫瘍成長を阻害する。このような事例では、腫瘍細胞を直接標的化しない場合、標的細胞における抗体誘導型の細胞死または細胞毒性は望ましくなく、さらに、(例えば、腫瘍細胞ではない)標的細胞における抗体誘導型の細胞死または細胞毒性は、望まれない副作用(例えば、リンパ球減少症)に繋がるおそれがある。
【0006】
本明細書には、(i)CD38に結合するCD38抗原結合成分と、(ii)CD19に結合するCD19抗原結合成分と、(iii)野生型Fc領域と比較して1つまたは複数の突然変異を含むバリアントFc領域とを含む複合体結合分子であって、バリアントFc領域が、野生型Fc領域と比較して改変されたエフェクタ機能を示す、複合体結合分子が提供される。一部の実施形態では、改変されたエフェクタ機能は、抗体依存性細胞介在性細胞傷害(ADCC)の減少、補体依存性細胞傷害(CDC)の減少、C1qに対する親和性の減少、およびそれらのあらゆる組合せからなるリストから選択される。一部の実施形態では、改変されたエフェクタ機能は、抗体依存性細胞介在性細胞傷害(ADCC)の増加、補体依存性細胞傷害(CDC)の減少、C1qに対する親和性の減少、およびそれらのあらゆる組合せからなるリストから選択される。
【0007】
一部の実施形態では、バリアントFc領域はIgG1 Fc領域を含み、1つまたは複数の突然変異は、EUナンバリングよる、(a)297A、297Q、297G、もしくは297D、(b)279F、279K、もしくは279L、(c)228P、(d)235A、235E、235G、235Q、235R、もしくは235S、(e)237A、237E、237K、237N、もしくは237R、(f)234A、234V、もしくは234F、(g)233P、(h)328A、(i)327Qもしくは327T、(j)329A、329G、329Y、もしくは329R、(k)331S、(l)236Fもしくは236R、(m)238A、238E、238G、238H、238I、238V、238W、もしくは238Y、(n)248A、(o)254D、254E、254G、254H、254I、254N、254P、254Q、254T、もしくは254V、(p)255N、(q)256H、256K、256R、もしくは256V、(r)264S、(s)265H、265K、265S、265Y、もしくは265A、(t)267G、267H、267I、もしくは267K、(u)268K、(v)269Nもしくは269Q、(w)270A、270G、270M、または270N、(x)271T、(y)272N、(z)292E、292F、292G、もしくは292I、(aa)293S、(bb)301W、(cc)304E、(dd)311E、311G、もしくは311S、(ee)316F、(ff)328V、(gg)330R、(hh)339Eもしくは339L、(ii)343Iもしくは343V、(jj)373A、373G、もしくは373S、(kk)376E、376W、もしくは376Y、(ll)380D、(mm)382Dもしくは382P、(nn)385P、(oo)424H、424M、もしくは424V、(pp)434I、(qq)438G、(rr)439E、439H、もしくは439Q、(ss)440A、440D、440E、440F、440M、440T、もしくは440V、(tt)K322A、(uu)L235E、(vv)L234AおよびL235A、(ww)L234A、L235A、およびG237A、(xx)L234A、L235A、およびP329G、(yy)L234F、L235E、およびP331S、(zz)L234A、L235E、およびG237A、(aaa)L234A、L235E、G237A、およびP331S、(bbb)L234A、L235A、G237A、P238S、H268A、A330S、およびP331S、(ccc)L234A、L235A、およびP329A、(ddd)G236RおよびL328R、(eee)G237A、(fff)F241A、(ggg)V264A、(hhh)D265A、(iii)D265AおよびN297A、(jjj)D265AおよびN297G、(kkk)D270A、(lll)A330L、(mmm)P331AもしくはP331S、または(nnn)E233P、(ooo)L234A、L235E、G237A、A330S、およびP331S、あるいは(ppp)(a)~(uu)のあらゆる組合せを含む。
【0008】
一部の実施形態では、野生型Fc領域と比して1つまたは複数の突然変異は、EUナンバリングによるL234A、L235A、およびP329Gを含むか、またはそれらからなる。一部の実施形態では、野生型Fc領域と比して1つまたは複数の突然変異は、EUナンバリングによるL234A、L235A、G237A、A330S、およびP331Sを含むか、またはそれらからなる。一部の実施形態では、野生型Fc領域と比して1つまたは複数の突然変異は、N297A/Q/G、L235A/G237A/E318A、L234A/L235A、G236R/L328R、S298G/T299A、L234F/L235E/P331S、H268Q/V309L/A330S/P331S、L234A/L235A/P329G、V234A/G237A/P238S/H268A/V309L/A330S/P331S、およびL234F/L235E/D265Aからなる群から選択される。
【0009】
一部の実施形態では、バリアントFc領域は、表1から選択される。一部の実施形態では、野生型Fc領域と比して1つまたは複数の突然変異は、EUナンバリングによる、L234A、L235E、G237A、A330S、および/またはP331Sを含む。一部の実施形態では、野生型Fc領域と比して1つまたは複数の突然変異は、EUナンバリングによる、L234A、L235E、G237A、A330S、およびP331Sを含む。一部の実施形態では、野生型Fc領域と比して1つまたは複数の突然変異は、EUナンバリングによるK322Aを含む。一部の実施形態では、野生型Fc領域と比して1つまたは複数の突然変異は、EUナンバリングによるK322Aからなる。一部の実施形態では、野生型Fc領域と比して1つまたは複数の突然変異は、EUナンバリングによるS329DおよびI332Eからなる。
【0010】
一部の実施形態では、CD38抗原結合成分は、
a)配列番号71~75のうちいずれか1つに明記されるアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域1(HCDR1)、
b)配列番号81~85または151~155のうちいずれか1つに明記されるアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域2(HCDR2)、
c)配列番号91~95のうちいずれか1つに明記されるアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域3(HCDR3)、
d)配列番号101~105のうちいずれか1つに明記されるアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域1(LCDR1)、
e)配列番号111~115のうちいずれか1つに明記されるアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域2(LCDR2)、および
f)配列番号121~125のうちいずれか1つに明記されるアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域3(LCDR3)を含み、
CD19抗原結合成分は、
g)配列番号11~15のうちいずれか1つに明記されるアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域1(HCDR1)、
h)配列番号21~25のうちいずれか1つに明記されるアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域2(HCDR2)、
i)配列番号31~35のうちいずれか1つに明記されるアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域3(HCDR3)、
j)配列番号101~105のうちいずれか1つに明記されるアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域1(LCDR1)、
k)配列番号111~115のうちいずれか1つに明記されるアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域2(LCDR2)、および
l)配列番号121~125のうちいずれか1つに明記されるアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域3(LCDR3)を含む。
【0011】
一部の実施形態では、CD38抗原結合成分は、配列番号151~155に明記されるアミノ酸配列を含むHCDR2アミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、CD38抗原結合成分は、配列番号154に明記されるアミノ酸配列を含むHCDR2アミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、CD38抗原結合成分は、配列番号81~85に明記されるアミノ酸配列のうちいずれか1つを含むHCDR2アミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、抗CD38免疫グロブリン重鎖可変領域は、配列番号3または5に対して少なくとも約90%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、抗CD38免疫グロブリン軽鎖可変領域は、配列番号4に対して少なくとも約90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、抗CD38免疫グロブリン重鎖可変領域は、配列番号3または5と同一のアミノ酸配列を含み、抗CD38免疫グロブリン軽鎖可変領域は、配列番号4と同一のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、抗CD19免疫グロブリン重鎖可変領域は、配列番号1、6、または7に対して少なくとも約90%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、抗CD19免疫グロブリン軽鎖可変領域は、配列番号2に対して少なくとも約90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、抗CD19免疫グロブリン重鎖可変領域は、配列番号1、6、または7と同一のアミノ酸配列を含み、抗CD19免疫グロブリン軽鎖可変領域は、配列番号2と同一のアミノ酸配列を含む。
【0012】
一部の実施形態では、抗CD38免疫グロブリン重鎖可変領域は、免疫グロブリン重鎖定常領域をさらに含み、抗CD38免疫グロブリン重鎖定常領域は、抗CD38免疫グロブリン重鎖定常領域のホモ二量体化を支持しないが非抗CD38免疫グロブリン重鎖定常領域との抗CD38免疫グロブリン重鎖定常領域のヘテロ二量体化を促進させる、1つまたは複数のアミノ酸置換を含む。一部の実施形態では、抗CD38免疫グロブリン重鎖定常領域は、抗CD38免疫グロブリン重鎖定常領域および非抗CD38免疫グロブリン重鎖定常領域のヘテロ二量体化が抗CD38免疫グロブリン重鎖のホモ二量体化と比較して支持されるように、T366W置換(EUナンバリング)またはT366S/L368A/Y407V置換(EUナンバリング)を含む。一部の実施形態では、抗CD19免疫グロブリン重鎖可変領域は、免疫グロブリン重鎖定常領域をさらに含み、抗CD19免疫グロブリン重鎖定常領域は、抗CD19免疫グロブリン重鎖定常領域のホモ二量体化を支持しないが非抗CD19免疫グロブリン重鎖定常領域との第2の重鎖定常領域のヘテロ二量体化を促進させる、1つまたは複数のアミノ酸置換を含む。一部の実施形態では、抗CD19免疫グロブリン重鎖定常領域は、抗CD19免疫グロブリン重鎖定常領域および非抗CD19免疫グロブリン重鎖定常領域のヘテロ二量体化が抗CD19免疫グロブリン重鎖のホモ二量体化と比較して支持されるように、T366W置換(EUナンバリング)またはT366S/L368A/Y407V置換(EUナンバリング)を含む。
【0013】
一部の実施形態では、抗CD38免疫グロブリン軽鎖可変領域は、免疫グロブリン軽鎖定常領域をさらに含む。一部の実施形態では、CD19抗原結合成分は、配列番号301または304に明記される重鎖免疫グロブリン配列および配列番号213に明記される軽鎖免疫グロブリン配列を含み、CD38結合成分は、配列番号302、303、305~310に明記される重鎖免疫グロブリン配列および配列番号213に明記される軽鎖免疫グロブリン配列を含む。一部の実施形態では、抗CD19免疫グロブリン重鎖可変領域は、KabatナンバリングによるA84SまたはA108L置換を含む。一部の実施形態では、抗CD38免疫グロブリン軽鎖可変領域は、KabatナンバリングによるW32H置換を含む。
【0014】
一部の実施形態では、単一の二特異性結合分子が、CD38抗原結合成分およびCD19抗原結合成分から形成される。一部の実施形態では、複合体結合分子は、共通軽鎖二特異性抗体である。一部の実施形態では、二特異性結合分子は、薬学的に許容可能な希釈剤、担体、または賦形剤を含む組成物の一部である。
【0015】
また本明細書には、(i)CD38に結合するCD38抗原結合成分と、(ii)CD19に結合するCD19抗原結合成分と、(iii)野生型Fc領域と比較して1つまたは複数の突然変異を含むバリアントFc領域とを含む複合体結合分子であって、バリアントFc領域が、野生型Fc領域と比較して改変されたエフェクタ機能を示し、CD38抗原結合成分が、
a)配列番号71~75のうちいずれか1つに明記されるアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域1(HCDR1)、
b)配列番号81~85または151~155のうちいずれか1つに明記されるアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域2(HCDR2)、
c)配列番号91~95のうちいずれか1つに明記されるアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域3(HCDR3)、
d)配列番号101~105のうちいずれか1つに明記されるアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域1(LCDR1)、
e)配列番号111~115のうちいずれか1つに明記されるアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域2(LCDR2)、および
f)配列番号121~125のうちいずれか1つに明記されるアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域3(LCDR3)を含み、
CD19抗原結合成分が、
g)配列番号11~15のうちいずれか1つに明記されるアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域1(HCDR1)、
h)配列番号21~25のうちいずれか1つに明記されるアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域2(HCDR2)、
i)配列番号31~35のうちいずれか1つに明記されるアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域3(HCDR3)、
j)配列番号101~105のうちいずれか1つに明記されるアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域1(LCDR1)、
k)配列番号111~115のうちいずれか1つに明記されるアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域2(LCDR2)、および
l)配列番号121~125のうちいずれか1つに明記されるアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域3(LCDR3)を含む、複合体結合分子が提供される。
【0016】
さらに本明細書には、(i)CD38に結合するCD38抗原結合成分と、(ii)CD19に結合するCD19抗原結合成分と、(iii)表1から選択される1つまたは複数の突然変異を含むバリアントFc領域とを含む複合体結合分子であって、CD38抗原結合成分が、
a)配列番号71~75のうちいずれか1つに明記されるアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域1(HCDR1)、
b)配列番号81~85または151~155のうちいずれか1つに明記されるアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域2(HCDR2)、
c)配列番号91~95のうちいずれか1つに明記されるアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域3(HCDR3)、
d)配列番号101~105のうちいずれか1つに明記されるアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域1(LCDR1)、
e)配列番号111~115のうちいずれか1つに明記されるアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域2(LCDR2)、および
f)配列番号121~125のうちいずれか1つに明記されるアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域3(LCDR3)を含み、
CD19抗原結合成分が、
g)配列番号11~15のうちいずれか1つに明記されるアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域1(HCDR1)、
h)配列番号21~25のうちいずれか1つに明記されるアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域2(HCDR2)、
i)配列番号31~35のうちいずれか1つに明記されるアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域3(HCDR3)、
j)配列番号101~105のうちいずれか1つに明記されるアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域1(LCDR1)、
k)配列番号111~115のうちいずれか1つに明記されるアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域2(LCDR2)、および
l)配列番号121~125のうちいずれか1つに明記されるアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域3(LCDR3)を含む、複合体結合分子が提供される。
【0017】
(i)CD38に結合するCD38抗原結合成分と、(ii)CD19に結合するCD19抗原結合成分と、(iii)L234A、L235E、G237A、A330S、および/またはP331S突然変異(EUナンバリング)を含むバリアントFc領域とを含む複合体結合分子であって、CD38抗原結合成分が、
a)配列番号71~75のうちいずれか1つに明記されるアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域1(HCDR1)、
b)配列番号81~85または151~155のうちいずれか1つに明記されるアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域2(HCDR2)、
c)配列番号91~95のうちいずれか1つに明記されるアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域3(HCDR3)、
d)配列番号101~105のうちいずれか1つに明記されるアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域1(LCDR1)、
e)配列番号111~115のうちいずれか1つに明記されるアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域2(LCDR2)、および
f)配列番号121~125のうちいずれか1つに明記されるアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域3(LCDR3)を含み、
CD19抗原結合成分が、
g)配列番号11~15のうちいずれか1つに明記されるアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域1(HCDR1)、
h)配列番号21~25のうちいずれか1つに明記されるアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域2(HCDR2)、
i)配列番号31~35のうちいずれか1つに明記されるアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域3(HCDR3)、
j)配列番号101~105のうちいずれか1つに明記されるアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域1(LCDR1)、
k)配列番号111~115のうちいずれか1つに明記されるアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域2(LCDR2)、および
l)配列番号121~125のうちいずれか1つに明記されるアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域3(LCDR3)を含む、複合体結合分子が提供される。
【0018】
また、(i)CD38に結合するCD38抗原結合成分と、(ii)CD19に結合するCD19抗原結合成分と、(iii)322A突然変異(EUナンバリング)を含むバリアントFc領域とを含む複合体結合分子であって、CD38抗原結合成分が、
a)配列番号71~75のうちいずれか1つに明記されるアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域1(HCDR1)、
b)配列番号81~85または151~155のうちいずれか1つに明記されるアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域2(HCDR2)、
c)配列番号91~95のうちいずれか1つに明記されるアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域3(HCDR3)、
d)配列番号101~105のうちいずれか1つに明記されるアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域1(LCDR1)、
e)配列番号111~115のうちいずれか1つに明記されるアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域2(LCDR2)、および
f)配列番号121~125のうちいずれか1つに明記されるアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域3(LCDR3)を含み、
CD19抗原結合成分が、
g)配列番号11~15のうちいずれか1つに明記されるアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域1(HCDR1)、
h)配列番号21~25のうちいずれか1つに明記されるアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域2(HCDR2)、
i)配列番号31~35のうちいずれか1つに明記されるアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域3(HCDR3)、
j)配列番号101~105のうちいずれか1つに明記されるアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域1(LCDR1)、
k)配列番号111~115のうちいずれか1つに明記されるアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域2(LCDR2)、および
l)配列番号121~125のうちいずれか1つに明記されるアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域3(LCDR3)を含む、複合体結合分子が提供される。
一部の実施形態では、バリアントFc領域は、非バリアントFc領域を含む抗体と比較して、ADCCを少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%以上減少させる。
【0019】
一部の実施形態では、バリアントFc領域は、非バリアントFc領域を含む抗体と比較して、CDCを少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%以上減少させる。
【0020】
癌または腫瘍に罹患した個体を処置する方法であって、癌または腫瘍に罹患した個体に本明細書に記載の複合体結合分子を投与することによって、癌または腫瘍を処置する工程を含む方法が提供される。
【0021】
一部の実施形態では、癌または腫瘍は、血液癌である。一部の実施形態では、血液癌はB細胞悪性腫瘍である。一部の実施形態では、B細胞悪性腫瘍は、B細胞急性リンパ球性白血病である。一部の実施形態では、B細胞悪性腫瘍は、慢性リンパ球性白血病、小リンパ球性リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、または非ホジキンリンパ腫(びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、濾胞性リンパ腫)である。一部の実施形態では、血液癌は、血漿悪性腫瘍である。一部の実施形態では、血漿悪性腫瘍は、多発性骨髄腫である。一部の実施形態では、血液癌は、CD19およびCD38を発現する。
【0022】
一部の実施形態では、癌または腫瘍は、固形組織癌である。一部の実施形態では、固形組織癌は、乳癌、前立腺癌、膵臓癌、肺癌、腎臓癌、胃癌、食道癌、皮膚癌、大腸癌、または頭頸部癌を含む。一部の実施形態では、乳癌はトリプルネガティブ乳癌であり、肺癌は非小細胞肺癌であり、頭頸部癌は頭頸部扁平上皮癌であり、腎臓癌は腎細胞癌であり、脳腫瘍は多形性膠芽腫であり、または皮膚癌は黒色腫である。
【0023】
また、腫瘍または癌に罹患した個体の腫瘍中にあるか、それに隣接するか、またはその周囲にある腫瘍浸潤性B細胞を低減させる方法であって、腫瘍または癌に罹患した個体に本明細書に記載の複合体結合分子を投与することによって、腫瘍中の腫瘍浸潤性B細胞を低減させる工程を含む、方法が提供される。
【0024】
腫瘍または癌に罹患した個体の腫瘍中にあるか、それに隣接するか、またはその周囲にある免疫抑制性B細胞を低減させる方法であって、腫瘍または癌に罹患した個体に本明細書に記載の複合体結合分子を投与することによって、腫瘍中の免疫抑制性B細胞を低減させる工程を含む、方法が提供される。
【0025】
さらに、腫瘍または癌に罹患した個体の腫瘍中にあるか、それに隣接するか、またはその周囲にある免疫抑制性B細胞の機能を阻害する方法であって、腫瘍または癌に罹患した個体に本明細書に記載の複合体結合分子を投与することによって、腫瘍中の免疫抑制性B細胞による免疫抑制を低減させる工程を含む、方法が提供される。また、腫瘍中にあるか、それに隣接するか、またはその周囲にある免疫抑制性B細胞の機能を阻害する方法であって、免疫抑制性B細胞を本明細書に記載の複合体結合分子に接触させることによって、腫瘍中の免疫抑制性B細胞による免疫抑制を低減させる工程を含む、方法が提供される。
【0026】
一部の実施形態では、免疫抑制性B細胞の機能は、IL-10、IL-35、TGF-β、またはこれらの組合せの放出を含む。一部の実施形態では、腫瘍浸潤性B細胞または免疫抑制性B細胞は、CD19陽性B細胞、CD38+陽性B細胞、CD19・CD38二重陽性B細胞、またはそれらの組合せを含む。
【0027】
また、本明細書に記載の複合体結合分子を作製する方法であって、複合体結合分子の細胞培養培地への発現、集合、および分泌を可能にするのに十分な条件下で細胞培養培地において細胞をインキュベートする工程を含む方法が提供される。一部の実施形態では、本方法は、細胞培養培地から分子を単離かつ精製する工程を含む。
【0028】
参照による援用
本明細書中で言及されるすべての刊行物、特許、および特許出願は、個々の刊行物、特許、または特許出願がそれぞれ参照により援用されることを具体的かつ個々に示された場合と同じ程度まで参照により本明細書に援用される。
【図面の簡単な説明】
【0029】
本発明の新規の特色は、添付の請求項で具体的に明記される。本発明の特色および利点は、本発明の原理が利用される例示的な実施形態を明記する以下の詳細な説明、および添付の図面を参照することによって、より良く理解されるであろう。
【0030】
図1】共通軽鎖二特異性IgGの構造を図示する。
図2】Fab-Fc:scFv-Fc二特異性IgGの構造を図示する。
図3】Fab-Fc-Fab:Fc二特異性IgGの構造を図示する。
図4】Fab-Fc-scFv:Fab-Fc-scFv二特異性IgGの構造を図示する。
図5】Fab-Fc-scFv:Fc二特異性IgGの構造を図示する。
図6】Fab-Fc-Fab:Fab-Fc二特異性IgGの構造を図示する。
図7】scFv-Fab-Fc:scFv-Fab-Fc二特異性IgGの構造を図示する。
図8】Fab-Fab-Fc:Fab-Fab-Fc二特異性IgGの構造を図示する。
図9】Fab-Fc-Fab:Fab-Fc-Fab二特異性IgGの構造を図示する。
図10】Fab-Fc-scFv:Fab-Fc二特異性IgGの構造を図示する。
図11】scFv-Fab-Fc:Fc二特異性IgGの構造を図示する。
図12A】Daudi細胞に対する抗体の結合データを示す図である。
図12B】Daudi細胞に対する抗体の結合データを示す図である。
図13A】REH細胞に対する抗体の結合データを示す図である。
図13B】REH細胞に対する抗体の結合データを示す図である。
図14A】CD19をトランスフェクトされたHEK293細胞に対する抗体の結合データを示す図である。
図14B】CD19をトランスフェクトされたHEK293細胞に対する抗体の結合データを示す図である。
図15A】CD38をトランスフェクトされたHEK293細胞に対する抗体の結合データを示す図である。
図15B】CD38をトランスフェクトされたHEK293細胞に対する抗体の結合データを示す図である。
図16A】非トランスフェクトCHO細胞に対する抗体の結合データを示す図である。
図16B】非トランスフェクトCHO細胞に対する抗体の結合データを示す図である。
図17A】抗体被験物質に関する、Daudi細胞に対する直接的なアポトーシのデータを示す図である。
図17B】抗体被験物質に関する、Daudi細胞に対する直接的なアポトーシのデータを示す図である。
図18A】抗体被験物質に関する、Daudi細胞に対する架橋誘導性アポトーシスのデータを示す図である。
図18B】抗体被験物質に関する、Daudi細胞に対する架橋誘導性アポトーシスのデータを示す図である。
図19A】抗体被験物質にわたるドナー3名のADCCデータを示す図である。
図19B】抗体被験物質にわたるドナー3名のADCCデータを示す図である。
図19C】抗体被験物質にわたるドナー3名のADCCデータを示す図である。
図20A】抗体被験物質にわたるドナー3名のADCCデータを示す図である。
図20B】抗体被験物質にわたるドナー3名のADCCデータを示す図である。
図20C】抗体被験物質にわたるドナー3名のADCCデータを示す図である。
図21A】被験物質にわたるCDCプロファイルを示す図である。
図21B】被験物質にわたるCDCプロファイルを示す図である。
図22】抗体被験物質にわたるADCPデータを示す図である。
図23】抗体被験物質にわたるRBC結合データを示す図である。
図24A】抗体被験物質についての赤血球凝集プロファイルを示す図である。
図24B】抗体被験物質についての赤血球凝集プロファイルを示す図である。
図25】抗体被験物質にわたる溶血データを示す図である。
図26A】バリアントを有するものを含め抗体被験物質にわたるドナー3名のADCCデータを示す図である。
図26B】バリアントを有するものを含め抗体被験物質にわたるドナー3名のADCCデータを示す図である。
図26C】バリアントを有するものを含め抗体被験物質にわたるドナー3名のADCCデータを示す図である。
図26D】バリアントを有するものを含め抗体被験物質にわたるドナー3名のADCCデータを示す図である。
図26E】バリアントを有するものを含め抗体被験物質にわたるドナー3名のADCCデータを示す図である。
図26F】バリアントを有するものを含め抗体被験物質にわたるドナー3名のADCCデータを示す図である。
図26G】バリアントを有するものを含め抗体被験物質にわたるドナー3名のADCCデータを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
抗腫瘍免疫応答を抑制する免疫抑制性B細胞集団は、一般的に、1より多くの細胞表面バイオマーカの存在により定義することができる。そのため、免疫抑制性B細胞を有効かつ特異的に標的化する治療薬は、腫瘍中で、それに隣接して、もしくはその周囲において、または腫瘍環境内で免疫抑制を防止するため、および/または免疫抑制を除去するために使用することができる。本明細書には、免疫抑制性B細胞を標的化する複合体結合性分子が提供される。さらに、第1の標的に結合するように構成された第1の結合成分および第2の標的に結合するように構成された第2の結合成分を含む複合体結合分子であって、第1の標的がB細胞系列表面マーカを含み、第2の標的が抑制性B細胞表面マーカを含む、複合体結合分子が提供される。本明細書には、抗腫瘍応答の負の調節または免疫抑制と関連付けられるB細胞集団に特異的に結合する多価抗体が開示される。免疫抑制性B細胞は、細胞表面バイオマーカCD19およびCD38を含み得るか、またはそれらにより定義され得る。本明細書で提供される二特異性抗体は、CD19およびCD38の両方を標的化して免疫抑制性B細胞の機能を阻害することができる。特定の事例では、免疫抑制性B細胞の機能は、IL10、IL35、TGF-β、もしくはこれらの組合せの放出を含む。CD19およびCD38を標的化する多価または二特異性の抗体はまた、免疫抑制性B細胞および/または免疫機能障害と関連付けられた腫瘍形成性状態および/または癌を処置するために使用することもできる。
【0032】
「免疫抑制(immunosuppression)」、「免疫抑制(immunodepression)」、または「負の免疫調節」という用語は、本明細書で使用される場合、免疫系機能の低減または抑制を指し、すなわち、免疫抑制は、一般的に免疫系機能が低減されているかまたは存在しない状態を表す。特定の事例では、免疫抑制は一般的に、腫瘍に対する、または腫瘍微環境内、その周囲、もしくはそれに隣接する免疫系機能が低減されているか、または存在しない状態を表す。全体的な免疫応答が抑制され得るか、局所的もしくは特異的な領域内の免疫応答が低減され得るか、または免疫学的に活性なリンパ球の特定の集団が選択的に影響を受け得る。抗原特異的な免疫抑制は、抗原特異的な細胞の特定の集団の欠失もしくは抑制の結果、または抗原特異的な抑制細胞による免疫応答の調節向上の結果であり得る。免疫抑制性B細胞への言及は、免疫応答に対する負の調節を奏するB細胞またはB細胞集団を指し、CD38など、このような集団と関連付けられる特異的な表面マーカにより同定することができる。特定の事例では、免疫抑制は、IL-10、IL-35、TGF-β、もしくはこれらの組合せの存在または放出により同定することができる。特定の事例では、免疫抑制は、IL-10、IL-35、TGF-β、またはそれらの組合せの存在、またはそれらのB細胞による放出により同定することができる。
【0033】
本明細書で使用される場合、「癌」という用語は、未調節の細胞成長により典型的に特徴付けられる、哺乳動物における生理学的状態を指すか、またはそれを記載することができる。癌には、血液腫瘍および/または固形腫瘍も挙げられ得るが、これらに限定されない。癌は、膀胱、血液、骨、脳、乳房、子宮頸部、胸部、結腸、子宮内膜、食道、眼、頭部、腎臓、肝臓、肺、リンパ節、口、頸部、卵巣、膵臓、前立腺、直腸、皮膚、胃、精巣、咽頭、および子宮が挙げられるがこれらに限定されない、血液、骨、器官、皮膚組織、および血管系の疾患を指すことができる。具体的な癌としては、白血病(急性リンパ球性白血病(ALL)、急性骨髄性白血病(AML)、慢性リンパ球性白血病(CLL)、慢性骨髄性白血病(CML)、ヘアリー細胞白血病、成熟B細胞腫瘍(小リンパ球性リンパ腫、B細胞前リンパ球性白血病、リンパ形質細胞性リンパ腫(ワルデンシュトレーム巨細胞腫(Waldenstrom’s giant ball)、蛋白血症、もしくは低悪性度リンパ腫)、脾臓辺縁領域リンパ腫、形質細胞骨髄腫、形質細胞白血病、形質細胞腫、インプラント周囲免疫グロブリン沈着、重鎖病、節外性辺縁帯B細胞リンパ腫、MALTリンパ腫)、節性辺縁帯B細胞リンパ腫(NMZL)、胃腸腫瘍(例えば、消化管間質腫瘍(GIST))、濾胞性リンパ腫、マントル細胞リンパ腫/白血病、びまん性B細胞リンパ腫、縦隔(胸腺)大細胞型B細胞リンパ腫、血管内大細胞型B細胞リンパ腫、原発性滲出性リンパ腫、およびバーキットのリンパ腫(バーキットリンパ腫)、成熟T細胞およびナチュラルキラー細胞(NK)腫瘍(前リンパ球性白血病、T細胞大リンパ球性白血病(T-cell large lymphocytic leukemia)、浸潤性NK細胞白血病、成人T細胞白血病/リンパ腫、節外性NK/T細胞リンパ腫、腸管症型T細胞リンパ腫、肝脾T細胞リンパ腫、芽球性NK細胞リンパ腫、菌状息肉症(セザリー症候群)、原発性皮膚変性性大細胞リンパ腫(primary Skin degenerative large cell lymphoma)、リンパ腫様丘疹症、血管免疫芽球性T細胞リンパ腫、非特定型末梢T細胞リンパ腫および変性性大細胞リンパ腫(degenerative large cell lymphoma)、ホジキンリンパ腫(結節硬化型、混合細胞型、リンパ球リッチ型、リンパ球枯渇または非低減型、結節性リンパ球型)、骨髄腫(多発性骨髄腫、不活性型骨髄腫(inert myeloma)、くすぶり型骨髄腫))、慢性骨髄増殖性疾患、脊髄形成異常症/骨髄増殖性疾患、骨髄異形成症候群、免疫不全と関連付けられるリンパ増殖性障害、組織球性および樹状細胞性腫瘍、白血球増加症、軟骨肉腫、ユーイング肉腫、線維肉腫、悪性巨細胞腫瘍、骨髄腫骨疾患、骨肉腫、乳癌(ホルモン依存性、非ホルモン依存性)、婦人科癌(小児子宮頸部、子宮内膜、卵管、妊娠性栄養膜疾患、卵巣、腹膜、子宮、膣、および外陰部)、基底細胞癌(BCC)、扁平細胞癌(SCC)、悪性黒色腫、隆起性(protuberous)皮膚線維肉腫、メルケル細胞癌、カポジ肉腫、星細胞腫、有毛細胞性星細胞腫、胚性毛成長神経上皮新形成(embryonic hair growth neuroepithelial neoplasia)、乏突起膠腫、上衣腫、多形膠芽腫、混合神経膠腫、乏突起膠細胞・星細胞腫(oligodendrocyte astrocytoma)、髄芽腫、網膜芽腫、神経芽腫、胚性組織腫瘍、奇形腫、悪性中皮腫(腹膜中皮腫、心膜中皮腫、胸膜中皮腫)、胃-腸-膵臓または胃腸膵臓神経内分泌腫瘍(GEP-NET)、カルチノイド腫瘍、膵臓内分泌腫瘍(PET))、大腸腺癌、大腸癌(knot Rectal cancer)、浸潤性神経内分泌腫瘍、平滑筋肉腫、粘液性腺癌、印環細胞腺癌、肝細胞癌、肝胆道肝臓癌(hepatobiliary liver cancer)、肝臓芽細胞腫、血管腫、肝臓腺腫、限局性結節性過形成(結節性再生性過形成、過誤腫)、非小細胞肺癌(NSCLC)(扁平細胞肺癌、腺癌、大細胞肺癌)、小細胞肺癌、甲状腺癌、前立腺癌(ホルモン難治性、非アンドロゲン依存性(non-androgen dependent Sex)、アンドロゲン依存性、ホルモン非感受性)、腎細胞癌および軟組織肉腫(線維肉腫、悪性繊維性組織球腫、皮膚線維肉腫、脂肪肉腫、横紋筋肉腫、平滑筋肉腫、血管肉腫、滑膜肉腫、悪性末梢神経鞘腫瘍/神経線維肉腫、骨外性骨肉腫)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0034】
「CD19」または「分化クラスタ19」(B4、T細胞表面抗原Leu-12、およびCVID3としても公知)という用語は、ヒトにおいて遺伝子CD19によりコードされるB細胞系列表面バイオマーカまたは膜貫通タンパク質を指す。CD19は、Bリンパ球上でB細胞抗原受容体複合体(BCR)のための補助受容体として機能して、下流のシグナル伝達経路の活性化のため、および抗原に対するB細胞応答を誘導するための閾値を減少させることができる。構造的に、CD19アミノ酸配列は、少なくとも50、100、150、200、250、300、350、400、450、500個のアミノ酸の配列長にわたり、またはポリペプチドの全長にわたり、例えばGenBankアクセッション番号NM_001178098.2→NP_001171569.1またはNM_001770.6→NP_001761.3のアミノ酸配列に対して少なくとも約90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有する。構造的に、CD19核酸配列は、少なくとも300、500、750、1000、1250、1500個の核酸の配列長にわたり、またはポリヌクレオチドの全長にわたり、例えばGenBankアクセッション番号NG_007275.1またはNCBI Gene ID930のアミノ酸配列に対して少なくとも約90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有する。配列アライメントは、当該技術分野で公知のあらゆるアライメントアルゴリズム、例えば、デフォルト設定に設定されたBLASTやALIGNを使用して行うことができる。
【0035】
「CD38」または「分化クラスタ38」(ADPRC1としても公知)という用語は、ヒトにおいて遺伝子CD38によりコードされるB細胞表面バイオマーカまたは膜貫通タンパク質を指す。CD38は、細胞の活性化および増殖に繋がるB細胞シグナル伝達において機能することができる。構造的に、CD38アミノ酸配列は、少なくとも50、100、150、200、250個のアミノ酸の配列長にわたり、またはポリペプチドの全長にわたり、例えばGenBankアクセッション番号NM_001775.4→NP_001766.2のアミノ酸配列に対して少なくとも約90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有する。構造的に、CD19核酸配列は、少なくとも300、500、750個の核酸の配列長にわたり、またはポリヌクレオチドの全長にわたり、例えばGenBankアクセッション番号NC_000004.12またはNCBI Gene ID 952の核酸配列に対して少なくとも約90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有する。配列アライメントは、当該技術分野で公知のあらゆるアライメントアルゴリズム、例えば、デフォルト設定に設定されたBLASTやALIGNを使用して行うことができる。
【0036】
本明細書中の「抗体」という用語は最も広い意味で使用され、多価または二特異性の抗体およびモノクローナル抗体、例えばインタクトな抗体およびその機能的な(抗原結合)抗体フラグメント、例えばフラグメント抗原結合(Fab)フラグメント、F(ab’)2フラグメント、Fab’フラグメント、Fvフラグメント、組換えIgG(rIgG)フラグメント、一本鎖抗体フラグメント、例えば一本鎖可変フラグメント(sFvまたはscFv)、および単一ドメイン抗体(例えば、sdAb、sdFv、ナノボディ)フラグメントを含む。本用語は、イントラボディ、ペプチボディ、キメラ抗体、完全ヒト抗体、ヒト化抗体、およびヘテロコンジュゲート抗体などの遺伝子操作および/またはその他の方法で修飾された形態の免疫グロブリン、多特異性抗体、例えば、二特異性抗体、ダイアボディ、トリアボディ、およびテトラボディ、タンデムジ-scFv、タンデムトリ-scFvを包含する。別段の定めのない限り、「抗体」という用語は、その機能的抗体フラグメントを包含すると理解されたい。本用語はまた、IgG、ならびにそのサブクラスであるIgM、IgE、IgA、およびIgDを含めいずれかのクラスまたはサブクラスの抗体を含む、インタクト抗体または全長抗体を包含する。抗体はヒトIgG1定常領域を含むことができる。抗体はヒトIgG4定常領域を含むことができる。
【0037】
提供される抗体の中には、多特異性または多価抗体(例えば、二特異性抗体および多反応性抗体)ならびにその抗体フラグメントがある。抗体としては、抗体コンジュゲート、およびキメラ分子など抗体を含む分子が挙げられる。このため、抗体としては、全長およびネイティブな抗体のほか、その結合特異性を保持するそのフラグメントおよび部分、例えばそのあらゆる特異的結合性部分、例えば任意数の免疫グロブリンクラスおよび/またはアイソタイプ(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgM、IgA、IgD、IgE、およびIgM)を有するもの、ならびに、Fab、F(ab’)、Fv、およびscFv(一本鎖または関連する実体)を含むがこれらに限定されない、生物学的に関連する(抗原結合)フラグメントまたはその特異的結合性部分が挙げられるが、これらに限定されない。モノクローナル抗体は、一般に、実質的に均質な抗体の組成物内にあるものであり、このため、モノクローナル抗体組成物内に含まれるあらゆる個々の抗体は、微量で存在する場合のある起こり得る天然に存在する突然変異を除いて同一である。モノクローナル抗体はヒトIgG1定常領域またはヒトIgG4定常領域を含むことができる。
【0038】
「超可変領域」または「HVR」と同義である「相補性決定領域」および「CDR」という用語は、当該技術分野において公知であり、抗原特異性および/または結合親和性を付与する、抗体可変領域内のアミノ酸の連続しない配列を指す。一般に、各重鎖可変領域中に3つのCDR(CDR-H1、CDR-H2、CDR-H3)、および各軽鎖可変領域中に3つのCDR(CDR-L1、CDR-L2、CDR-L3)がある。「フレームワーク領域」および「FR」は、当該技術分野において、重鎖および軽鎖の可変領域の非CDR部分を指すと知られている。一般に、各全長重鎖可変領域中に4つのFR(FR-H1、FR-H2、FR-H3、およびFR-H4)、ならびに各全長軽鎖可変領域中に4つのFR(FR-L1、FR-L2、FR-L3、およびFR-L4)がある。所与のCDRまたはFRの精密なアミノ酸配列境界は、Kabatら(1991)による「Sequences of Proteins of Immunological Interest」第5版 Public Health Service、National Institutes of Health、Bethesda、MD(「Kabat」ナンバリングスキーム)、Al-Lazikaniら(1997)によるJMB 273、927~948頁(「Chothia」ナンバリングスキーム);MacCallumらによるJ.Mol.Biol.262:732~745頁(1996)、「Antibody-antigen interactions:Contact analysis and binding site topography」、J.Mol.Biol.262、732~745頁」(「Contact」ナンバリングスキーム);Lefranc MPらによる「IMGT unique numbering for immunoglobulin and T cell receptor variable domains and Ig superfamily V-like domains」、Dev Comp Immunol,2003 Jan;27(1):55~77頁(「IMGT」ナンバリングスキーム);Honegger AおよびPluckthun Aによる「Yet another numbering scheme for immunoglobulin variable domains:an automatic modeling and analysis tool」、J Mol Biol、2001 Jun 8;309(3):657~70頁(「Aho」ナンバリングスキーム);ならびにWhitelegg NRおよびRees ARによる「WAM:an improved algorithm for modelling antibodies on the WEB」、Protein Eng.2000 Dec;13(12):819~24頁(「AbM」ナンバリングスキーム)に記載されるものを含む、多数の周知のスキームのうちいずれかを使用して容易に決定することができる。特定の実施形態では、本明細書に記載される抗体のCDRは、Kabat、Chothia、IMGT、Aho、AbM、またはそれらの組合せから選択される方法によって定義することができる。
【0039】
所与のCDRまたはFRの境界は、同定のために使用されるスキームに応じて変動し得る。例えば、Kabatスキームは構造アライメントに基づくが、Chothiaスキームは構造情報に基づく。KabatスキームおよびChothiaスキームの両方のナンバリングは、最も共通する抗体領域配列の長さに基づき、挿入文字、例えば、「30a」により挿入が適用され、一部の抗体に欠失が現れる。2つのスキームは、特定の挿入および欠失(「インデル」)を異なる位置に置き、結果として差次的なナンバリングをもたらす。Contactスキームは複合体結晶構造の分析に基づき、多くの点でChothiaナンバリングスキームに類似している。
【0040】
「可変領域」または「可変ドメイン」という用語は、抗原への抗体の結合に関与する抗体重鎖または軽鎖のドメインを指す。ネイティブな抗体の重鎖および軽鎖の可変ドメイン(それぞれVおよびV)は全体的に類似した構造を有し、各ドメインは、4つの保存されたフレームワーク領域(FR)および3つのCDRを含む(例えば、KindtらによるKuby Immunology、第6版、W.H.Freeman and Co.、91頁(2007)を参照)。単一のVまたはVドメインは、抗原結合特異性を付与するのに十分であり得る。さらに、特定の抗原に結合する抗体は、抗原に結合する抗体からのVまたはVドメインを使用してそれぞれ相補的なVLまたはVHドメインのライブラリをスクリーニングするために単離され得る(例えば、PortolanoらによるJ.Immunol.150:880~887頁(1993);ClarksonらによるNature 352:624~628頁(1991)を参照)。
【0041】
提供される抗体の中には、抗体フラグメントがある。「抗体フラグメント」は、インタクトな抗体が結合する抗原に結合するインタクトな抗体の一部を含む、インタクトな抗体以外の分子を指すことができる。抗体フラグメントの例としては、Fv、Fab、Fab’、Fab’-SH、F(ab’)、ダイアボディ、直鎖状抗体、一本鎖抗体分子(例えばscFvまたはsFv)、および抗体フラグメントから形成される多特異性抗体が挙げられるが、これらに限定されない。特定の実施形態では、抗体は、scFvなど、可変重鎖領域および/または可変軽鎖領域を含む一本鎖抗体フラグメントである。抗体フラグメントは、インタクトな抗体のタンパク質消化分解のほか、組換え宿主細胞による産生を含むがこれらに限定されない、様々な技法により作製することができる。一部の実施形態では、抗体は、組換えにより産生されたフラグメント、例えば天然に存在しない構成を含むフラグメント、例えば、合成リンカー、例えばポリペプチドリンカーにより接合された2つ以上の抗体領域もしくは鎖を有するもの、および/または天然に存在するインタクトな抗体の酵素消化によっては産生されないものである。
【0042】
本明細書中、分子、ペプチド、ポリペプチド、抗体、または抗体フラグメントは、文法上の等価物を含む「二特異性」または「二重特異性」として言及され得る。二特異性分子は、少なくとも2つの構造的に別個の標的に特異的に結合する能力を有する。特異的結合は、別個の非同一のアミノ酸配列が挙げられるがそれに限定されない、分子レベルで構造的に別個である2つの別個の結合部分、または、高い親和性(例えば、約1×10-6未満のKD)で2つの構造的に別個の標的に特異的に結合することができる単一の結合部分の結果であり得る。「多特異性」として言及される分子、ペプチド、ポリペプチド、抗体、または抗体フラグメントは、少なくとも3つの構造的に別個の標的に特異的に結合する能力を有する分子を指す。文法上の等価物を含む「二特異性抗体」は、標的に特異的に結合可能である抗体の少なくとも1つのフラグメント、例えば、可変領域、重鎖もしくは軽鎖、または抗体分子からの1つもしくは複数の相補性決定領域を保存する、二特異性分子を指す。文法上の等価物を含む「多特異性抗体」は、標的と特異的に結合可能である抗体の少なくとも1つのフラグメント、例えば、可変領域、重鎖もしくは軽鎖、または抗体分子からの相補性決定領域を保存する、多特異性分子を指す。
【0043】
本明細書中、「リンカー」はまた、「リンカー配列」、「スペーサ」、「テザリング配列」、またはそれらの文法上の等価物として言及される。本明細書で言及される「リンカー」は、それら自体が標的結合性、触媒活性を有するか、または天然に発現されて別々のポリペプチドとして集合させられる、2つの別個の分子を接続する。例えば、2つの別個の結合部分または重鎖/軽鎖がペアとなる。分子を共有結合により連結させるために多数の戦略が使用され得る。これらとしては、タンパク質またはタンパク質ドメインのN末端とC末端とのポリペプチド連結、ジスルフィド結合を介する連結、および化学架橋試薬を介する連結が挙げられるが、これらに限定されない。本実施形態の一態様では、リンカーは、組換え技法またはペプチド合成により生成されるペプチド結合である。リンカーペプチドは、アミノ酸残基であるGly、Ser、Ala、またはThrを主に含み得る。リンカーペプチドは、2つの分子が互いに対して相対的に正確なコンホメーションを呈し、その結果、所望の活性を保持するよう、2つの分子を連結するのに十分な長さを有する必要がある。一実施形態では、リンカーは、約1~50のアミノ酸長または約1~30のアミノ酸長である。一実施形態では、1~20のアミノ酸長のリンカーが使用されてもよい。有用なリンカーとして、グリシン-セリンポリマー、例えば(GS)n、(GSGGS)n(配列番号224)、(GGGGS)n(配列番号225)、および(GGGS)n(配列番号226)(nは少なくとも1の整数である)、グリシン-アラニンポリマー、アラニン-セリンポリマー、および他の柔軟性リンカーが挙げられる。抗体フラグメントまたは一本鎖可変フラグメントを連結するための例示的なリンカーは、AAEPKSS(配列番号227)、AAEPKSSDKTHTCPPCP(配列番号228)、GGGG(配列番号229)、またはGGGGDKTHTCPPCP(配列番号230)を含むことができる。代替的に、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロピレングリコール、ポリオキシアルキレン、またはポリエチレングリコールとポリプロピレングリコールとのコポリマーが挙げられるがこれらに限定されない、様々な非タンパク質性ポリマーが、リンカーとして使用され得る。
【0044】
本開示の「フラグメントベース(Fragment-based)」の二特異性抗体、または「一本鎖可変フラグメント」もしくは「scFv」を含む二特異性抗体は、2つの結合部分、および2つの結合部分を接続するリンカーを含む、一本鎖抗体またはそのフラグメントを指し得る。リンカーは、ポリペプチドリンカー、またはいずれかの標的化部分の結合を阻害しないような好適で柔軟性の他のリンカーであってもよい。フラグメントベースの二特異性抗体フォーマットとしては、タンデムVHH抗体、タンデムscFv、scFv-Fab、F(ab)、二重親和性再標的化抗体(DART)が挙げられる。そのようなフラグメントベースの抗体は、所与の標的に対して特異性を有する追加の結合部分、例えば、A:B、A:B、もしくはA:Bを含むように、あるいは、薬物動態を向上させるか、またはADCC、ADCP、もしくはCDCを促進するためのFc領域のフラグメントを用いてさらに操作することができる。
【0045】
「結合部分」は、列記された標的、抗原、またはエピトープに対する特異的結合を媒介する分子、ペプチド、ポリペプチド、抗体、または抗体フラグメントの部分を指す。例として、抗体の結合部分は、重鎖/軽鎖可変領域ペア、または1つもしくは複数の相補性決定領域(CDR)を含んでもよい。
【0046】
本明細書で言及される「標的」は、分子、ペプチド、ポリペプチド、抗体、または抗体フラグメントの結合部分と関与する、分子の部分を指す。標的は、アミノ酸配列および/または炭水化物、脂質、もしくは他の化学的実体を含むことができる。「抗原」は、抗体もしくは抗体フラグメント、B細胞受容体、またはT細胞受容体などの適応免疫分子により結合可能である部分を含む標的である。
【0047】
二特異性または多特異性分子の「価数」は、列記される分子、ペプチド、ポリペプチド、抗体、または抗体フラグメントが結合することのできる標的の数を指す。例えば、一価である分子は特異的な標的の1つの分子に結合することができ、二価分子は2つの分子に結合することができ、四価分子は4つの標的に結合することができる。例えば、二特異性で二価の分子は、2つの標的、および2つの構造上異なる標的に結合することのできる分子である。例えば、二特異性で二価の分子は、標的Aおよび標的Bを含む溶液と接触させられると、A、B、またはA:Bに結合し得る。
【0048】
「ヒト化」抗体は、すべてまたは実質的にすべてのCDRアミノ酸残基が非ヒトCDRに由来し、すべてまたは実質的にすべてのFRアミノ酸残基がヒトFRに由来する抗体である。ヒト化抗体は、ヒト抗体に由来する抗体定常領域の少なくとも一部を任意選択で含むことができる。非ヒト抗体の「ヒト化型」は、典型的にはヒトに対する免疫原性を低減させながら親非ヒト抗体の特異性および親和性を保持するために、ヒト化を受けた非ヒト抗体のバリアントを指す。一部の実施形態では、ヒト化抗体中の一部のFR残基は、例えば、抗体の特異性または親和性を回復または向上させるために、非ヒト抗体(例えば、CDR残基の由来となる抗体)からの対応する残基で置換される。
【0049】
提供される抗体の中には、ヒト抗体がある。「ヒト抗体」は、ヒトもしくはヒト細胞、またはヒト抗体ライブラリを含むヒト抗体レパートリもしくは他のヒト抗体コーディング配列を利用する非ヒト供給源により産生される抗体のアミノ酸配列に対応するアミノ酸配列を有する抗体である。この用語は、すべてまたは実質的にすべてのCDRが非ヒトであるものなどの非ヒト抗原結合領域を含む非ヒト抗体のヒト化型を除外する。ヒト抗体は、抗原チャレンジに応答してインタクトなヒト抗体またはヒト可変領域を有するインタクトな抗体を産生するように修飾されたトランスジェニック動物に免疫原を投与することによって調製されてもよい。かかる動物は、典型的には、内因性免疫グロブリン座位を置き換えるか、または染色体外に存在するか、もしくは動物の染色体に無作為に組み込まれる、ヒト免疫グロブリン座位の全体またはその一部を含有している。このようなトランスジェニック動物において、内因性免疫グロブリン座位は全体的に不活性化されている。ヒト抗体はまた、ファージディスプレイおよび無細胞ライブラリを含み、ヒトレパートリに由来する抗体コーディング配列を含有する、ヒト抗体ライブラリに由来してもよい。
【0050】
「ADCC」または「抗体依存性細胞媒介性細胞傷害性」は、本明細書で使用される場合、FcγRを発現する非特異的な細胞傷害性細胞が標的細胞上の結合した抗体を認識し、続いて標的細胞の溶解を生じさせる細胞媒介性反応を指す。ADCCは、FcγRIIIaに対する結合と相関することができ、FcγRIIIaに対する結合の増加はADCC活性における増加に繋がる。「ADCP」または抗体依存性細胞媒介性ファゴサイトーシスは、本明細書で使用される場合、FcγRを発現する非特異的な細胞傷害性細胞が標的細胞上の結合した抗体を認識し、続いて標的細胞のファゴサイトーシスを生じさせる細胞媒介性反応を指し得る。
【0051】
「ポリペプチド」および「タンパク質」という用語は交換可能に使用され、アミノ酸残基のポリマーを指し、かつ最小の長さに限定されない。提供される抗体および抗体鎖ならびに他のペプチド、例えば、リンカーおよび結合ペプチドを含む、ポリペプチドは、天然および/または非天然アミノ酸残基を含むアミノ酸残基を含むことができる。この用語はまた、ポリペプチドの発現後修飾、例えば、グリコシル化、シアリル化、アセチル化、およびリン酸化などを含む。一部の態様では、ポリペプチドは、タンパク質が所望の活性を維持する限り、ネイティブまたは天然配列に対して修飾を含有することができる。これらの修飾は、部位特異的突然変異誘発を介するなど故意的なものとすることができるか、または、タンパク質を産生する宿主の突然変異もしくはPCR増幅に起因するエラーを介するなど偶発的なものとすることができる。
【0052】
参照ポリペプチド配列に対する配列同一性パーセント(%)は、配列をアライメントし、必要な場合にはギャップを導入して最大配列同一性パーセントを達成した後の、配列同一性の部分としていかなる保存的置換も考慮しない、参照ポリペプチド配列中のアミノ酸残基と同一である、候補配列中のアミノ酸残基のパーセンテージである。アミノ酸配列同一性パーセントを判定する目的のアライメントは、例えば、公開されているBLAST、BLAST-2、ALIGN、またはMegalign(DNASTAR)ソフトウェアなどのコンピュータソフトウェアを使用して、公知の様々な方法で達成することができる。比較されている配列の全長にかけて最大のアライメントを達成するのに必要とされるアルゴリズムを含む、配列をアライメントするのに適切なパラメータが判定可能である。しかし、本明細書中の目的のために、アミノ酸配列同一性%の値は、配列比較コンピュータプログラムALIGN-2を使用して生成される。ALIGN-2配列比較コンピュータプログラムは、Genentech,Inc.により作成され、ソースコードは、米国著作権局、Washington D.C.、20559にユーザドキュメンテーションと共に提出されており、米国著作権登録番号TXU510087の下で登録されている。ALIGN-2プログラムはGenentech,Inc.、South San Francisco、Calif.から公開されており、またはソースコードからコンパイルされ得る。ALIGN-2プログラムは、デジタルUNIX(登録商標)V4.0Dを含む、UNIX(登録商標)オペレーティングシステム上での使用のためにコンパイルする必要がある。すべての配列比較パラメータがALIGN-2プログラムにより設定され、変更されない。ALIGN-2がアミノ酸配列比較に採用される状況では、所与のアミノ酸配列Bに対する所与のアミノ酸配列Aのアミノ酸配列同一性%(代替的に、所与のアミノ酸配列Bに対するある特定のアミノ酸配列同一性%を有するか、または含んでいる所与のアミノ酸配列Aとしても表現することができる)は、100×分数X/Yのように算出され、式中、Xは、配列アライメントプログラムALIGN-2によってAおよびBのそのプログラムのアライメントにおいて完全一致(identical matches)として採点されたアミノ酸残基の数であり、Yは、Bにおけるアミノ酸残基の総数である。アミノ酸配列Aの長さがアミノ酸配列Bの長さに等しくない場合、Bに対するAのアミノ酸配列同一性%は、Aに対するBのアミノ酸配列同一性%に等しくないことが認識されるであろう。別段の定めのない限り、本明細書で使用されるすべてのアミノ酸配列同一性%値は、直前の段落に記載されるようにALIGN-2コンピュータプログラムを使用して得られる。
【0053】
本明細書で提供される抗体のアミノ酸配列バリアントを想定かつ想起することができる。バリアントは、典型的には、1つもしくは複数の置換、欠失、付加、および/または挿入において、本明細書に具体的に開示されるポリペプチドとは相違する。かかるバリアントは天然に存在するものであり得るか、または、例えば、本発明の上記ポリペプチド配列のうち1つもしくは複数を修飾し、本明細書に記載されるようにかつ/もしくは多数の公知の技術のいずれかを使用してポリペプチドの1つもしくは複数の生物学的活性を評価することによって、合成的に生成することができる。例えば、抗体の結合親和性および/または他の生物学的特性を改善することが望ましい場合があり、抗体のアミノ酸配列バリアントは、抗体をコードするヌクレオチド配列に適切な修飾を導入することにより、またはペプチド合成により調製することができる。このような修飾は、例えば、抗体のアミノ酸配列内の残基の欠失、挿入、および/または置換を含む。最終構築物が所望の特徴、例えば抗原結合性を有することを前提として、欠失、挿入、および置換のあらゆる組合せを行って最終構築物に到達することができる。1つまたは複数のアミノ酸置換を有する抗体バリアントを提供することができる。置換による突然変異誘発のための関心対象の部位として、CDRおよびFRが挙げられる。アミノ酸置換を関心対象の抗体に導入し、生成物を所望の活性、例えば、抗原結合性の保持/改善、免疫原性の減少、またはADCCもしくはCDCの改善についてスクリーニングすることができる。
【0054】
本開示はまた、1つまたは複数の異種分子にコンジュゲートされた抗体を指す「イムノコンジュゲート」、「抗体コンジュゲート」、または「抗体-薬物コンジュゲート」を提供する。例えばイムノコンジュゲートは、化学療法剤もしくは薬物、成長阻害剤、タンパク質ドメイン、毒素(例えば、タンパク質毒素、細菌、真菌、植物、もしくは動物起源の酵素的に活性な毒素、もしくはそれらのフラグメント)、または放射活性同位体にコンジュゲートされた抗体など、1つまたは複数の細胞傷害剤を含むことができる。一部の実施形態では、イムノコンジュゲートは、本明細書に開示される複合体結合分子、またはそのフラグメント(例えば、scFv)を含むことができる。
【0055】
本明細書に記載の抗体は、核酸によりコードすることができる。核酸は、2つ以上のヌクレオチド塩基を含むポリヌクレオチドの一種である。特定の実施形態では、核酸は、ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを細胞に移入するために使用され得るベクターの成分である。本明細書で使用される場合、「ベクター」という用語は、それに連結された別の核酸を輸送することが可能な核酸分子を指す。ベクターの一種は、ゲノム組込み型ベクター、または「組込み型ベクター」であり、これは宿主細胞の染色体DNAに組み込むことができる。ベクターの別の種類は、「エピソーム」ベクター、例えば、染色体外複製が可能な核酸である。操作可能に連結された遺伝子の発現を指示することが可能なベクターは、本明細書で「発現ベクター」と称される。好適なベクターは、プラスミド、細菌人工染色体、酵母人工染色体、ウイルスベクターなどを含む。発現ベクター中、転写の制御に使用するためのプロモータ、エンハンサ、ポリアデニル化シグナルなどの調節エレメントは、哺乳動物、微小生物、ウイルス、または昆虫遺伝子に由来し得る。通常は複製起点により付与される、宿主中で複製する能力、および形質転換体の認識を促すための選択遺伝子が、追加で組み込まれてもよい。レンチウイルス、レトロウイルス、アデノウイルス、およびアデノ随伴ウイルスなどのウイルスに由来するベクターが採用されてもよい。プラスミドベクターは、染色体位置への組込みのために線状化され得る。ベクターは、ゲノム中の定められた位置または制限されたセットの部位への部位特異的組込み(例えば、AttP-AttB組換え)を指示する配列を含むことができる。付加的に、ベクターは、転位可能なエレメントに由来する配列を含むことができる。
【0056】
本明細書で使用される場合、参照配列と比較してアミノ酸配列または核酸配列を記載するために本明細書で使用される場合の「相同的」、「相同性」、または「相同性パーセント」という用語は、KarlinおよびAltschul(Proc.Natl.Acad.Sci.USA87:2264~2268頁、1990;Proc.Natl.Acad.Sci.USA90:5873~5877頁、1993において改訂)により記載される式を使用して決定することができる。かかる式は、Altschulら(J.Mol.Biol.215:403~410頁、1990)のbasic local alignment search tool(BLAST)プログラムに組み込まれている。配列の相同性パーセントは、本出願の出願日時点のBLASTの最新版を使用して決定することができる。
【0057】
本明細書に記載の抗体をコードする核酸は、好適な細胞を感染、トランスフェクト、形質転換、またはその他の方法で核酸に対してトランスジェニックとすることで、商業的または治療的使用のための抗体の製造を可能にするために使用することができる。大規模の細胞培養から抗体を産生するための標準的な細胞株および方法は、当該技術分野で公知である。例えば、Liらによる「Cell culture processes for monoclonal antibody production.」、Mabs.2010 Sep-Oct;2(5):466~477頁を参照されたい。特定の実施形態では、細胞は真核細胞である。特定の実施形態では、真核細胞は哺乳動物細胞である。特定の実施形態では、哺乳動物細胞は、抗体を産生するのに有用な細胞株であり、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)細胞、NS0マウス骨髄腫細胞、またはPER.C6(登録商標)細胞である。特定の実施形態では、抗体をコードする核酸は、抗体を産生するのに有用な細胞のゲノム座位に組み込まれる。特定の実施形態では、本明細書には、抗体を作製する方法であって、抗体をコードする核酸を含む細胞を、当該抗体の産生および分泌を可能とするのに十分なin vitroの条件下で培養する工程を含む、方法が記載される。
【0058】
本明細書で使用される場合、「個体」、「患者」、または「対象」という用語は、記載された組成物および方法がその処置に有用である少なくとも1つの疾患を有すると診断されたか、それに罹患している疑いがあるか、またはそれを発症するリスクがある個体を指す。特定の実施形態では、個体は哺乳動物である。特定の実施形態では、哺乳動物は、マウス、ラット、ウサギ、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、ヒツジ、ブタ、ヤギ、ラマ、アルパカ、またはヤクである。特定の実施形態では、個体はヒトである。
【0059】
本明細書で使用される場合、特有の数を修飾するのに使用される「約」という用語は、その数のプラスまたはマイナス10%の数を指す。範囲を修飾する「約」という用語は、その最小値のマイナス10%からその最大値のプラス10%まで及ぶ範囲を指す。
【0060】
本明細書で使用される場合、「処置(treatment)」または「処置すること(treating)」という用語は、レシピエントにおいて有益なまたは所望の結果を得るために使用される医薬的または他の介入レジメンに関して使用される。有益なまたは所望の結果として、治療利益および/または予防利益が挙げられるがこれらに限定されない。治療利益は、症状の、または処置されている根底にある障害の根絶または軽快を指し得る。また、治療利益は、対象が根底にある障害に依然として罹患している場合があるにもかかわらず、対象に改善が観察されるような、根底にある障害と関連付けられる生理学的な症状のうち1つもしくは複数の根絶または軽快とともに達成することができる。予防効果は、疾患もしくは疾病の出現の遅延、予防、もしくは排除、疾患もしくは疾病の症状の発症の遅延もしくは排除、疾患もしくは疾病の進行の緩慢化、停止、もしくは逆転、またはこれらのあらゆる組合せを含む。予防利益のために、特定の疾患を発症するリスクがある対象、または疾患の生理学的な症状のうち1つもしくは複数を報告する対象は、この疾患の診断が行われていなかったとしても、処置を受ける場合がある。当業者であれば、処置の候補となる個体の所与の集団のすべてが処置に応答するか、または等しく応答するわけではないことを認識するであろう。このような個体は処置されたとみなされる。
【0061】
本明細書で使用されるセクションの見出しは、文書編成上の目的のために過ぎず、記載される主題を限定するものと解釈されるべきではない。
【0062】
二特異性分子
本明細書には、第1の標的に結合するように構成された第1の結合成分および第2の標的に結合するように構成された第2の結合成分を含む、二特異性結合分子、多価結合分子、または複合体結合分子であって、第1の標的がB細胞系列表面マーカを含み、第2の標的が抑制性B細胞表面マーカを含む、二特異性結合分子、多価結合分子、または複合体結合分子が提供される。免疫抑制性B細胞またはB細胞集団は、B細胞系列表面バイオマーカおよび抑制性B細胞表面バイオマーカを含むことができる。B細胞系列表面マーカは、CD19、CD138、IgA、またはCD45を含むことができる。免疫抑制性B細胞表面マーカは、IgD、CD1、CD5、CD21、CD24、CD38、HM13、SLAMF7、AQP3、または潜在型TGF-β(例えば、TGF-βLAP)を含むことができる。一部の実施形態では、B細胞系列表面マーカはCD19を含む。特定の実施形態では、B細胞系列表面マーカはCD19からなる。一部の実施形態では、抑制性B細胞表面マーカはCD38を含む。特定の実施形態では、抑制性B細胞表面マーカはCD38からなる。特定の実施形態では、複合体結合分子はCD38およびCD19に結合する。
【0063】
二特異性結合分子、多価結合分子、または複合体結合分子は、少なくとも2つの構造的に別個の標的に特異的に結合する能力を有する。特異的結合は、別個の非同一のアミノ酸配列が挙げられるがそれに限定されない、分子レベルで構造的に別個である2つの別個の結合部分、または、2つの構造的に別個の標的に特異的に結合することができる単一の結合部分の結果であり得る。「多特異性」、「多価」、または「二特異性」として言及される分子、ペプチド、ポリペプチド、抗体、または抗体フラグメントは、少なくとも2つの構造的に別個の標的に特異的に結合する能力を有する分子を指し得る。一部の実施形態では、複合体結合分子の第1または第2の結合成分は、ポリペプチドを含む。特定の実施形態では、第1または第2の結合成分は、ポリペプチドからなる。一部の実施形態では、複合体結合分子の第1および第2の結合成分は、ポリペプチドを含む。特定の実施形態では、第1および第2の結合成分は、ポリペプチドからなる。特定の実施形態では、第1または第2の結合成分のポリペプチドは、少なくとも100個のアミノ酸残基の長さのアミノ酸配列を含む。特定の実施形態では、第1および第2の結合成分のポリペプチドは、少なくとも100個のアミノ酸残基の長さのアミノ酸配列を含む。
【0064】
二特異性分子は、標的に特異的に結合可能である抗体の少なくとも1つのフラグメント、例えば、可変領域、重鎖もしくは軽鎖、または抗体分子からの1つもしくは複数の相補性決定領域を保存する、二特異性抗体であり得る。一部の実施形態では、本明細書に記載の複合体結合分子は、二特異性抗体および/またはその二重抗原結合フラグメントである。二特異性抗体は、2つの構造的に別個の標的または抗原に結合する能力を有する。一部の実施形態では、二特異性抗体は、第1の標的に結合するように構成された第1の結合成分および第2の標的に結合するように構成された第2の結合成分を含み、第1の標的はB細胞系列表面マーカ(例えばCD19、CD138、IgA、またはCD45)を含み、第2の標的は抑制性B細胞表面マーカ(例えばIgD、CD1、CD5、CD21、CD24、CD38、HM13、SLAMF7、AQP3、または潜在型TGF-β(例えば、TGF-βLAP))を含む。一部の実施形態では、B細胞系列表面マーカはCD19を含む。特定の実施形態では、B細胞系列表面マーカはCD19からなる。一部の実施形態では、抑制性B細胞表面マーカはCD38を含む。特定の実施形態では、抑制性B細胞表面マーカはCD38からなる。
【0065】
免疫抑制性B細胞または免疫抑制性B細胞集団は、細胞表面バイオマーカCD19およびCD38を含むことができる。さらに本明細書には、CD19およびCD38を標的化する二特異性抗体が開示される。一部の実施形態では、CD19結合成分は、配列番号1を含む可変重鎖(VH)を含む。特定の実施形態では、CD19結合成分は、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、または配列番号15のうちいずれか1つを含むVH CDR1領域を含む。特定の実施形態では、CD19結合成分は、配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24、または配列番号25のうちいずれか1つを含むVH CDR2領域を含む。特定の実施形態では、CD19結合成分は、配列番号31、配列番号32、配列番号33、配列番号34、または配列番号35のうちいずれか1つを含むVH CDR3領域を含む。
【0066】
一部の実施形態では、CD19結合成分は、配列番号2を含む可変軽鎖(VL)を含む。特定の実施形態では、CD19結合成分は、配列番号41、配列番号42、配列番号43、配列番号45、または配列番号45のうちいずれか1つを含むVL CDR1領域を含む。特定の実施形態では、CD19結合成分は、配列番号51、配列番号52、配列番号53、配列番号54、または配列番号55のうちいずれか1つを含むVL CDR2領域を含む。特定の実施形態では、CD19結合成分は、配列番号61、配列番号62、配列番号63、配列番号64、または配列番号65のうちいずれか1つを含むVL CDR3領域を含む。
【0067】
一部の実施形態では、二特異性抗体は第1の結合成分を含み、第1の結合成分は、配列番号11~15のうちいずれか1つに明記されるHCDR1アミノ酸配列、配列番号21~25のうちいずれか1つに明記されるHCDR2アミノ酸配列、配列番号31~35のうちいずれか1つに明記されるHCDR3アミノ酸配列、配列番号41~45のうちいずれか1つに明記されるLCDR1アミノ酸配列、配列番号51~55のうちいずれか1つに明記されるLCDR2アミノ酸配列、および/または配列番号61~65のうちいずれか1つに明記されるLCDR3アミノ酸配列を含む。
【0068】
一部の実施形態では、二特異性抗体はCD19結合成分を含み、CD19結合成分は、配列番号11に明記されるHCDR1アミノ酸配列、配列番号21に明記されるHCDR2アミノ酸配列、配列番号31に明記されるHCDR3アミノ酸配列、配列番号41に明記されるLCDR1アミノ酸配列、配列番号51に明記されるLCDR2アミノ酸配列、および/または配列番号61に明記されるLCDR3アミノ酸配列を含む。
【0069】
一部の実施形態では、二特異性抗体はCD19結合成分を含み、第1のCD19結合成分は、配列番号12に明記されるHCDR1アミノ酸配列、配列番号22に明記されるHCDR2アミノ酸配列、配列番号32に明記されるHCDR3アミノ酸配列、配列番号42に明記されるLCDR1アミノ酸配列、配列番号52に明記されるLCDR2アミノ酸配列、および/または配列番号62に明記されるLCDR3アミノ酸配列を含む。
【0070】
一部の実施形態では、二特異性抗体はCD19結合成分を含み、CD19結合成分は、配列番号15に明記されるHCDR1アミノ酸配列、配列番号25に明記されるHCDR2アミノ酸配列、配列番号35に明記されるHCDR3アミノ酸配列、配列番号45に明記されるLCDR1アミノ酸配列、配列番号55に明記されるLCDR2アミノ酸配列、および/または配列番号65に明記されるLCDR3アミノ酸配列を含む。
【0071】
一部の実施形態では、CD19結合は、イネビリズマブ、タファシタマブ、タプリツモマブ、オベキセリマブ、ブリナツモマブ、コルツキシマブ、デニンツズマブ、もしくはロンカスツキシマブ、MOR208、MEDI-551、XmAb 5871、MDX-1342、またはAFM11に対応するか、またはそれらに由来する可変重鎖および軽鎖またはCDRを含む。
【0072】
一部の実施形態では、CD38結合成分は、配列番号3を含む可変重鎖(VH)を含む。特定の実施形態では、CD19結合成分は、配列番号71、配列番号72、配列番号73、配列番号74、または配列番号75のうちいずれか1つを含むVH CDR1領域を含む。特定の実施形態では、CD19結合成分は、配列番号81、配列番号82、配列番号83、配列番号84、または配列番号85のうちいずれか1つを含むVH CDR2領域を含む。特定の実施形態では、CD19結合成分は、配列番号91、配列番号92、配列番号93、配列番号94、または配列番号95のうちいずれか1つを含むVH CDR3領域を含む。
【0073】
一部の実施形態では、CD38結合成分は、配列番号4を含む可変軽鎖(VL)を含む。特定の実施形態では、CD19結合成分は、配列番号101、配列番号102、配列番号103、配列番号105、または配列番号105のうちいずれか1つを含むVL CDR1領域を含む。特定の実施形態では、CD19結合成分は、配列番号111、配列番号112、配列番号113、配列番号114、または配列番号115のうちいずれか1つを含むVL CDR2領域を含む。特定の実施形態では、CD19結合成分は、配列番号121、配列番号122、配列番号123、配列番号124、または配列番号125のうちいずれか1つを含むVL CDR3領域を含む。
【0074】
一部の実施形態では、二特異性抗体はCD38結合成分を含み、CD38結合成分は、配列番号71に明記されるHCDR1アミノ酸配列、配列番号81に明記されるHCDR2アミノ酸配列、配列番号91に明記されるHCDR3アミノ酸配列、配列番号101に明記されるLCDR1アミノ酸配列、配列番号111に明記されるLCDR2アミノ酸配列、および/または配列番号121に明記されるLCDR3アミノ酸配列を含む。
【0075】
一部の実施形態では、二特異性抗体はCD38結合成分を含み、CD38結合成分は、配列番号72に明記されるHCDR1アミノ酸配列、配列番号82に明記されるHCDR2アミノ酸配列、配列番号92に明記されるHCDR3アミノ酸配列、配列番号102に明記されるLCDR1アミノ酸配列、配列番号112に明記されるLCDR2アミノ酸配列、および/または配列番号122に明記されるLCDR3アミノ酸配列を含む。
【0076】
一部の実施形態では、二特異性抗体はCD38結合成分を含み、CD38結合成分は、配列番号75に明記されるHCDR1アミノ酸配列、配列番号85に明記されるHCDR2アミノ酸配列、配列番号95に明記されるHCDR3アミノ酸配列、配列番号105に明記されるLCDR1アミノ酸配列、配列番号115に明記されるLCDR2アミノ酸配列、および/または配列番号125に明記されるLCDR3アミノ酸配列を含む。
【0077】
一部の実施形態(例えば、先述の実施形態のうちいずれか)では、CD38結合成分のCDR-H2はアミノ酸残基P(X1)LG(X2)A(配列番号150)を含み、X1およびX2はアミノ酸置換を許容しながらCD38への結合を維持する。特定の実施形態では、X1およびX2は、CDRH2アミノ酸配列の疎水性を低減させるアミノ酸から選択される。特定の実施形態では、疎水性を低減させるアミノ酸は、H、Q、T、N、S、G、A、R、K、D、またはEを含む。特定の実施形態では、X1はHであり、X2はTである。
【0078】
一部の実施形態では、二特異性抗体はCD38結合成分およびCD19結合成分を含み、CD38結合成分はVHアミノ酸配列およびVLアミノ酸配列を含み、VHアミノ酸配列は、配列番号3に対して少なくとも約90%、95%、97%、98%、または99%同一のアミノ酸配列を含み、VLは、配列番号4に対して少なくとも約90%、95%、97%、98%、または99%同一のアミノ酸配列を含み、CD19結合成分はVHアミノ酸配列およびVLアミノ酸配列を含み、VHアミノ酸配列は、配列番号1に対して少なくとも約90%、95%、97%、98%、または99%同一のアミノ酸配列を含み、VLは、配列番号2に対して少なくとも約90%、95%、97%、98%、または99%同一のアミノ酸配列を含む。
【0079】
一部の実施形態では、二特異性抗体はCD38結合成分およびCD19結合成分を含み、CD38結合成分はVHアミノ酸配列およびVLアミノ酸配列を含み、VHアミノ酸配列は、配列番号3と同一のアミノ酸配列を含み、VLは、配列番号4と同一のアミノ酸配列を含み、CD19結合成分はVHアミノ酸配列およびVLアミノ酸配列を含み、VHアミノ酸配列は、配列番号1と同一のアミノ酸配列を含み、VLは、配列番号2と同一のアミノ酸配列を含む。
【0080】
一部の実施形態では、二特異性抗体はCD38結合成分およびCD19結合成分を含み、CD38結合成分はVHアミノ酸配列およびVLアミノ酸配列を含み、VHアミノ酸配列は、配列番号3、215、または218~223に対して少なくとも約90%、95%、97%、98%、または99%同一のアミノ酸配列を含み、VLは、配列番号4または223に対して少なくとも約90%、95%、97%、98%、または99%同一のアミノ酸配列を含み、CD19結合成分はVHアミノ酸配列およびVLアミノ酸配列を含み、VHアミノ酸配列は、配列番号1、201、または216~217に対して少なくとも約90%、95%、97%、98%、または99%同一のアミノ酸配列を含み、VLは、配列番号2に対して少なくとも約90%、95%、97%、98%、または99%同一のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、CD19結合成分は、A84およびA108において置換を含むVHアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、置換はA84SおよびA108Lを含む。
【0081】
一部の実施形態では、二特異性抗体はCD38結合成分およびCD19結合成分を含み、CD38結合成分はVHアミノ酸配列およびVLアミノ酸配列を含み、VHアミノ酸配列は、配列番号3、215、または218~223と同一のアミノ酸配列を含み、VLは、配列番号4または223と同一のアミノ酸配列を含み、CD19結合成分はVHアミノ酸配列およびVLアミノ酸配列を含み、VHアミノ酸配列は、配列番号1、201、216~217と同一のアミノ酸配列を含み、VLは、配列番号2と同一のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、CD19結合成分は、A84およびA108において置換を含むVHアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、置換はA84SおよびA108Lを含む。
【0082】
一部の実施形態では、二特異性抗体はCD38結合成分およびCD19結合成分を含み、CD38結合成分は、配列番号71に明記されるHCDR1アミノ酸配列、配列番号81に明記されるHCDR2アミノ酸配列、配列番号91に明記されるHCDR3アミノ酸配列、配列番号101に明記されるLCDR1アミノ酸配列、配列番号111に明記されるLCDR2アミノ酸配列、および/または配列番号121に明記されるLCDR3アミノ酸配列を含み、CD19結合成分は、配列番号11に明記されるHCDR1アミノ酸配列、配列番号21に明記されるHCDR2アミノ酸配列、配列番号31に明記されるHCDR3アミノ酸配列、配列番号41に明記されるLCDR1アミノ酸配列、配列番号51に明記されるLCDR2アミノ酸配列、および/または配列番号61に明記されるLCDR3アミノ酸配列を含む。
【0083】
一部の実施形態では、二特異性抗体はCD38結合成分およびCD19結合成分を含み、CD38結合成分は、配列番号72に明記されるHCDR1アミノ酸配列、配列番号82に明記されるHCDR2アミノ酸配列、配列番号92に明記されるHCDR3アミノ酸配列、配列番号102に明記されるLCDR1アミノ酸配列、配列番号112に明記されるLCDR2アミノ酸配列、および/または配列番号122に明記されるLCDR3アミノ酸配列を含み、CD19結合成分は、配列番号12に明記されるHCDR1アミノ酸配列、配列番号22に明記されるHCDR2アミノ酸配列、配列番号32に明記されるHCDR3アミノ酸配列、配列番号42に明記されるLCDR1アミノ酸配列、配列番号52に明記されるLCDR2アミノ酸配列、および/または配列番号62に明記されるLCDR3アミノ酸配列を含む。
【0084】
一部の実施形態では、二特異性抗体はCD38結合成分およびCD19結合成分を含み、CD38結合成分は、配列番号75に明記されるHCDR1アミノ酸配列、配列番号85に明記されるHCDR2アミノ酸配列、配列番号95に明記されるHCDR3アミノ酸配列、配列番号105に明記されるLCDR1アミノ酸配列、配列番号115に明記されるLCDR2アミノ酸配列、および/または配列番号125に明記されるLCDR3アミノ酸配列を含み、CD19結合成分は、配列番号15に明記されるHCDR1アミノ酸配列、配列番号25に明記されるHCDR2アミノ酸配列、配列番号35に明記されるHCDR3アミノ酸配列、配列番号45に明記されるLCDR1アミノ酸配列、配列番号55に明記されるLCDR2アミノ酸配列、および/または配列番号65に明記されるLCDR3アミノ酸配列を含む。
【0085】
一部の実施形態では、CD38結合成分は、ダラツムマブまたはイサツキシマブに対応するか、またはそれら由来する可変重鎖および軽鎖またはCDRを含む。
【0086】
置換、挿入、または欠失が1つまたは複数のCDR内で生じる場合があり、このときに置換、挿入、または欠失は、抗原に対する抗体の結合を実質的に低減させない。例えば、結合親和性を実質的に低減させない保存的置換がCDR中で行われてもよい。かかる改変は、CDR「ホットスポット」の外側であってもよい。バリアントVHおよびVL配列の一部の実施形態では、各CDRは改変されていない。アミノ酸配列の挿入および欠失として、1残基から100以上の残基を含有するポリペプチドまでの長さの範囲にあるアミノおよび/またはカルボキシル末端融合のほか、単一または複数のアミノ酸残基の配列内挿入および欠失が挙げられる。末端挿入の例として、N末端メチオニル残基を有する抗体が挙げられる。抗体分子の他の挿入バリアントとして、酵素(例えば、ADEPT用)または抗体の血清半減期を増加させるポリペプチドに対する、抗体のNまたはC末端の融合が挙げられる。抗体分子の配列内挿入バリアントの例として、軽鎖中の3つのアミノ酸の挿入が挙げられる。末端欠失の例として、軽鎖の末端における7つ以下のアミノ酸の欠失を有する抗体が挙げられる。
【0087】
改変(例えば、置換)は、例えば、抗体の親和性を改善するために、CDR中で行われてもよい。かかる改変は、体細胞の成熟の間に高い突然変異率を有するコドンをコードするCDRにおいて行われてもよく(例えば、Chowdhury、Methods Mol.Biol.207:179~196頁(2008)を参照)、得られたバリアントは結合親和性について試験することができる。親和性成熟(例えば、エラープローンPCR、鎖シャッフリング、CDRの無作為化、またはオリゴヌクレオチド特異的突然変異誘発を使用する)は、抗体の親和性を改善するために使用することができる(例えば、HoogenboomらによるMethods in Molecular Biology 178:1~37頁(2001)を参照)。抗原結合に関与するCDR残基は、例えば、アラニンスキャニング突然変異誘発またはモデリングを使用して、特異的に同定されてもよい(例えば、CunninghamおよびWells Science、244:1081~1085頁(1989)を参照)。CDR-H3およびCDR-L3は特に標的化されることが多い。代替的または付加的に、抗体と抗原との間の接触点を同定するために抗原-抗体複合体の結晶構造がある。このような接触残基および隣接する残基は、置換の候補として標的化または排除されてもよい。バリアントは、所望の特性を含有するかどうかを判定するためにスクリーニングされてもよい。
【0088】
抗体は、それらのグリコシル化を増加または減少させるように改変され得る(例えば、1つまたは複数のグリコシル化部位が作出または除去されるようにアミノ酸配列を改変することによる)。抗体のFc領域に取り付けられた炭水化物が、改変され得る。哺乳動物細胞からのネイティブな抗体は、典型的には、Fc領域のCH2ドメインのAsn297にN連結によって取り付けられた分枝状の二分岐オリゴ糖を含む(例えば、WrightらによるTIBTECH 15:26~32頁(1997)を参照)。オリゴ糖は、種々の炭水化物、例えば、二分岐オリゴ糖構造の基部においてGlcNAcに取り付けられたマンノース、N-アセチルグルコサミン(GlcNAc)、ガラクトース、シアル酸、フコースとすることができる。抗体中のオリゴ糖の修飾は、例えば、特定の改善された特性を有する抗体バリアントを作出するために行うことができる。抗体グリコシル化バリアントは、改善されたADCCおよび/またはCDC機能を有することができる。一部の実施形態では、Fc領域に(直接的または間接的に)取り付けられたフコースを欠いた炭水化物構造を有する抗体バリアントが提供される。例えば、かかる抗体中のフコースの量は、1%~80%、1%~65%、5%~65%、または20%~40%であり得る。フコースの量は、Asn297に取り付けられたすべての糖鎖構造の合計に対する、Asn297における糖鎖内のフコースの平均量を算出することによって判定される(例えば、国際公開第08/077546号を参照)。Asn297は、Fc領域中の約297位(Fc領域残基のEUナンバリング;例えば、EdelmanらによるProc Natl Acad Sci USA.1969 May;63(1):78~85頁を参照)に位置するアスパラギン残基を指す。しかし、Asn297はまた、抗体中の軽微な配列の変動に起因して、297位の約±3アミノ酸だけ上流または下流、すなわち、294~300位の間に位置してもよい。このようなフコシル化バリアントは、改善されたADCC機能を有することができる(例えば、OkazakiらによるJ.Mol.Biol.336:1239~1249頁(2004)、およびYamane-OhnukiらによるBiotech.Bioeng.87:614頁(2004)を参照)。細胞株、例えばノックアウト細胞株、およびそれらの使用方法は、脱フコシル化抗体、例えば、タンパク質フコシル化を欠損したLec13 CHO細胞およびα-1,6-フコシルトランスフェラーゼ遺伝子(FUT8)ノックアウトCHO細胞を産生するために使用することができる(例えば、RipkaらによるArch.Biochem.Biophys.249:533~545頁(1986);Yamane-OhnukiらによるBiotech.Bioeng.87:614頁(2004);Kanda,Y.らによるBiotechnol.Bioeng.、94(4):680~688頁(2006)を参照)。他の抗体グリコシル化バリアントも含まれる(例えば、米国特許第6,602,684号明細書を参照)。
【0089】
一部の実施形態では、本明細書で提供される複合体結合分子は、抗体の標的に対して約10μM、1μM、100nM、50nM、40nM、30nM、20nM、10nM、5nM、2nM、1nM、0.5nM、0.1nM、0.05nM、0.01nM、または0.001nM以下(例えば、10-8M以下、例えば、10-8M~10-13M、例えば、10-9M~10-13M)の解離定数(K)を有する。抗体の標的は、CD19標的、CD38標的、またはCD19およびCD38の両方を含む標的とすることができる。Kは、あらゆる好適なアッセイにより測定することができる。特定の実施形態では、KDは、表面プラズモン共鳴アッセイを使用して測定され得る(例えば、BIACORE(登録商標)-2000またはBIACORE(登録商標)-3000またはOctetを使用)。
【0090】
抗体は、延長した半減期、および新生児Fc受容体(FcRn)に対する改善された結合を有することができる(例えば、米国特許出願第2005/0014934号明細書を参照)。かかる抗体は、FcRnに対するFc領域の結合を改善する1つまたは複数の置換を有するFc領域を含むことができ、Fc領域残基、すなわちEUナンバリングシステムによる238、256、265、272、286、303、305、307、311、312、317、340、356、360、362、376、378、380、382、413、424、または434のうち1つまたは複数において置換を有するものを含むことができる(例えば、米国特許第7,371,826号明細書を参照)。Fc領域バリアントの他の例も企図される(例えば、Duncan&WinterによるNature322:738~40頁(1988)、米国特許第5,648,260号明細書、および国際公開第94/29351号を参照)。
【0091】
一部の実施形態では、抗体の1つまたは複数の残基がシステイン残基で置換されているシステイン操作型抗体、例えば、「thioMAb」を作出することが望ましい場合がある。一部の実施形態では、置換される残基は、抗体のアクセス可能な部位に存在する。反応性チオール基は、イムノコンジュゲートを作出するために、薬物部分またはリンカー薬物部分などの他の部分へのコンジュゲーションのための部位に配置することができる。一部の実施形態では、次の残基:軽鎖のV205(Kabatナンバリング)、重鎖のA118(EUナンバリング)、および重鎖Fc領域のS400(EUナンバリング)のうちいずれか1つまたは複数が、システインで置換されてもよい。
【0092】
一部の実施形態では、本明細書で提供される抗体は、公知および利用可能な追加の非タンパク質性部分を含有するようにさらに修飾されてもよい。抗体の誘導体化に好適な部分として、水溶性ポリマーが挙げられるがこれに限定されない。水溶性ポリマーの非限定的な例として、ポリエチレングリコール(PEG)、エチレングリコール/プロピレングリコールのコポリマー、カルボキシメチルセルロース、デキストラン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリ-1,3-ジオキソラン、ポリ-1,3,6-トリオキサン、エチレン/マレイン酸無水物コポリマー、ポリアミノ酸(ホモポリマーまたはランダムコポリマーのいずれか)、およびデキストランまたはポリ(nビニルピロリドン)ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールホモポリマー、ポリプロピレンオキシド/エチレンオキシドコポリマー、ポリオキシエチル化ポリオール(例えば、グリセロール)、ポリビニルアルコール、ならびにそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。ポリエチレングリコールプロピオンアルデヒドは、水中でのその安定性に起因して製造上の利点を有し得る。ポリマーはあらゆる分子量であってもよく、分枝状または非分枝状であってもよい。抗体に取り付けられるポリマーの数は変動してもよく、2つ以上のポリマーが取り付けられる場合、それらは同じまたは異なる分子とすることができる。
【0093】
複合体結合分子または二特異性抗体は、これらの分子と関連付けられる結合部分に基づいて異なる可能性があり、展開可能であるとともに本明細書中で想定される、いくつかの異なるフォーマットも存在する。複合体結合分子または二特異性抗体は、抗体フラグメント、実質的にインタクトな抗体、またはこれらの組合せを含むことができる。一部の実施形態では、第1または第2の結合成分は、免疫グロブリン重鎖および軽鎖ペア、scFv、F(ab)、F(ab’)、単一ドメイン抗体、免疫グロブリン新抗原受容体からの可変領域フラグメント(VNAR)、または重鎖抗体に由来する可変領域(VHH)を含む。特定の実施形態では、第1および第2の結合成分は、免疫グロブリン重鎖および軽鎖ペア、scFv、F(ab)、F(ab’)、単一ドメイン抗体、免疫グロブリン新抗原受容体からの可変領域フラグメント(VNAR)、または重鎖抗体に由来する可変領域(VHH)を含む。一部の実施形態では、第1または第2の結合成分は、免疫グロブリン重鎖および軽鎖ペアを含む。特定の実施形態では、第1および第2の結合成分は、免疫グロブリン重鎖および軽鎖ペアを含む。一部の実施形態では、第1または第2の結合成分はscFvを含む。特定の実施形態では、第1および第2の結合成分はscFvを含む。
【0094】
本開示による二特異性抗体は、インタクトな抗体分子または略完全にインタクトな抗体分子を含み、非対称的または対称的であってもよい。
【0095】
非対称的な二特異性抗体は、概して、標的Aに特異的な抗体からの重鎖/軽鎖(HC/LC)ペアおよび標的Bに特異的な抗体からのHC/LCペアを含み、ヘテロ二機能性抗体を作出する。これらなどのヘテロ二機能性抗体は、産生時の分子の非生産的な形成という問題に直面する。HC/LC-A:HC/LC-Bが望ましいが、すべての可能な組合せから通常は熱力学的または統計的に好ましくない。この問題を回避するために複数のスキームが導入されている。一部の事例では、Aに対する特異性を有する抗体からのHC/LCペアおよびBに対する特異性を有する抗体からのHC/LCペアは、HC/LC-A:HC/LC-Bを有する抗体の形成の確率を増加させるためにFC領域に対する突然変異をさらに含む。これは、HC-AとHC-Bとの間のヘテロ二量体の形成を促進する構造的特色の操作、例えばHC-AのFC領域に対する「ノブ」、およびHC-Bに対する「ホール」、またはその逆により達成することができる。HC-A:HC-Bヘテロ二量体を促進するための別のスキームは、HC-BとHC-Aとの静電相互作用を助長する電荷ペアを含むようにHC-AおよびHC-BのFC部分中のアミノ酸残基を操作することである。鎖会合の問題に対処するための別のスキームは、HC/LCペアのうち1つの可変領域を一本鎖結合分子(例えば、VHHまたはscFv)と置き換えることである。その結果、分子の半分は古典的なHC/LCペアを含み、他方は、一本鎖結合分子に融合またはその他の方法により接続されたHC定常領域を含む。適切なHC/LCペア形成を促進するためにさらなる修飾を行うことができ、これには、AまたはBのいずれかのHCおよびLCに対する突然変異を操作して適切なHC/LCペアの形成を助長すること、HC/LCペアの対応する定常領域の交換を活用するCrossMab技術が含まれる。対称的な二特異性抗体は、ヘテロ二機能性分子の形成に依拠しないことによって鎖会合の問題を回避する。このような例として、とりわけ、異なる特異性のスタックされた可変領域を含む二重可変ドメイン分子、古典的な抗体分子の重鎖のc末端に融合した異なる特異性のscFvを含むIgG-scFv分子、IgのFc領域により接続された2つのscFvを含む(scFV)-FC(Fcは二量体化して、二特異性の四価分子を作出する)、DART-Fc、およびtwo-in-oneが挙げられる。
【0096】
複合体結合分子または二特異性抗体の構造は、複合体結合分子または二特異性抗体の機能性または結合特性を改変するように想起および設計することができる(例えば、「Bispecific antibodies:a mechanistic review of the pipeline.」、Nat Rev Drug Discovery.2019 Aug;18(8):585~608頁を参照)(例えば、「The making of bispecific antibodies」、MAbs.2017 Feb-Mar;9(2):182~212頁を参照)。例えば、二特異性抗体は、次のフォーマット:共通軽鎖二特異性IgG、Fab-Fc:scFv-Fc二特異性IgG、Fab-Fc-Fab:Fc二特異性IgG、Fab-Fc-scFv:Fab-Fc-scFv二特異性IgG、Fab-Fc-scFv:Fc二特異性IgG、Fab-Fc-Fab:Fab-Fc二特異性IgG、scFv-Fab-Fc:scFv-Fab-Fc二特異性IgG、Fab-Fab-Fc:Fab-Fab-Fc二特異性IgG、Fab-Fc-Fab:Fab-Fc-Fab二特異性IgG、およびFab-Fc-scFv:Fab-Fc二特異性IgGのうち1つから選択することができる。
【0097】
共通軽鎖二特異性IgG
共通軽鎖二特異性IgG構造を有する二特異性抗体を、本発明で使用することができる。図1は、共通軽鎖二特異性IgG構造を有する二特異性抗体を図示する。この構造は、第1および第2のIgG重鎖を含む。各重鎖は、VH、CH1、CH2、およびCH3ドメインを含む。第1の重鎖は、VH 102、CH1 104、CH2 106、およびCH3 108を含む。第2の重鎖は、VH 112、CH1 114、CH2 116、およびCH3 118を含む。共通軽鎖二特異性IgG構造はまた、VLドメイン120およびCLドメイン122を含む軽鎖を含む。概して、第1の重鎖は、第1の特異性を有する抗体の重鎖に由来する配列を含み、第2の重鎖は、第2の特異性を有する抗体からの重鎖を含む。第1および第2の重鎖とペアを形成する軽鎖は同一であり、いずれかの特異性、または別々の特異性を有する抗体の軽鎖に由来することができる。重鎖は、共有結合(例えばジスルフィド結合130)を介して軽鎖分子に共有結合的に連結され得る。重鎖は、1つまたは複数の共有結合(例えばジスルフィド結合134および/または136)を介して別の重鎖に連結され得る。共通軽鎖二特異性IgG構造は、第1および第2の重鎖の連結を促進しかつ/または第1の重鎖の別の第1の重鎖へのもしくは第2の重鎖の別の第2の重鎖への連結を防止するCH3ドメイン内の突然変異をさらに含む、第1および第2の重鎖分子を含むことができる。突然変異は、2つの第1の重鎖分子または2つの第2の重鎖分子の連結を物理的(例えば立体的妨害、「ノブ」・イントゥ・「ホール」)または生化学的(例えば静電相互作用)に防止することができる。例示的なノブ・イントゥ・ホールの突然変異は、1つの重鎖中のT366W(EUナンバリング)、および別の重鎖中のT366S/L368A/Y407V(EUナンバリング)を含むことができる。第1および第2の重鎖分子の連結を促す例示的な変異は、例えば、国際公開第2009089004号、米国特許第8,642,745号明細書、米国特許出願公開第20140322756号明細書、および「The making of bispecific antibodies」、MAbs.2017 Feb-Mar;9(2):182~212頁に開示されている。共通軽鎖二特異性IgG構造はまた、それに連結された炭水化物分子140、またはその追加の修飾を含むことができる。
【0098】
共通軽鎖二特異性IgG構造を有する二特異性抗体は、B細胞系列表面マーカ(例えばCD19、CD138、IgA、またはCD45)、および抑制性B細胞表面マーカ(例えばIgD、CD1、CD5、CD21、CD24、CD38、HM13、SLAMF7、AQP3、または潜在型TGF-β(例えば、TGF-β LAP))を標的化することができる。一部の実施形態では、第1の重鎖は、B細胞系列表面マーカに結合するように構成され、第2の重鎖は、抑制性B細胞表面マーカに結合するように構成される。一部の実施形態では、B細胞系列表面マーカはCD19を含む。特定の実施形態では、B細胞系列表面マーカはCD19からなる。一部の実施形態では、抑制性B細胞表面マーカはCD38を含む。特定の実施形態では、抑制性B細胞表面マーカはCD38からなる。
【0099】
一部の実施形態では、第1の重鎖は、CD19結合成分を含むVH配列を含み、第2の重鎖は、CD38結合成分を含むVH配列を含む。特定の実施形態では、重鎖CD19結合成分は、配列番号201、配列番号1、配列番号201のA84およびA108のうち1つもしくは両方において突然変異を含むバリアントを含み、重鎖CD38結合成分は、配列番号202、215、218~221を含む。特定の実施形態では、バリアントは突然変異A84SおよびA108Lを含む。一部の実施形態では、二特異性抗体は共通軽鎖を含む。特定の実施形態では、共通軽鎖配列はCD19結合成分(例えば配列番号2)を含む。特定の実施形態では、共通軽鎖配列はCD38結合成分(例えば配列番号4または配列番号222)を含む。
【0100】
本明細書に記載されるBS1は、CD19に結合するように構成されたCD19結合成分およびCD38に結合するように構成されたCD38結合成分を有する共通軽鎖フォーマットを含み、CD19結合成分は抗体またはその抗原結合フラグメントを含み、CD38結合成分は抗体またはその抗原結合フラグメントを含み、CD38抗体または抗原結合フラグメントは、抗CD38免疫グロブリン軽鎖可変領域とペアを形成した抗CD38免疫グロブリン重鎖可変領域を含み、CD19抗体または抗原結合フラグメントは、抗CD38免疫グロブリン軽鎖可変領域とペアを形成した抗CD19免疫グロブリン重鎖可変領域を含み、CD38抗体または抗原結合成分は、a)配列番号71~75のうちいずれか1つに明記されるアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域1(HCDR1)、b)配列番号81~85もしくは150~155のうちいずれか1つに明記されるアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域2(HCDR2)、c)配列番号91~95のうちいずれか1つに明記されるアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域3(HCDR3)、d)配列番号101~105のうちいずれか1つに明記されるアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域1(LCDR1)、e)配列番号111~115のうちいずれか1つに明記されるアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域2(LCDR2)、および/またはf)配列番号121~125のうちいずれか1つに明記されるアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域3(LCDR3)を含み、CD19抗原結合成分は、g)配列番号11~15のうちいずれか1つに明記されるアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域1(HCDR1)、h)配列番号21~25のうちいずれか1つに明記されるアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域2(HCDR2)、i)配列番号31~35のうちいずれか1つに明記されるアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域3(HCDR3)、j)配列番号101~105のうちいずれか1つに明記されるアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域1(LCDR1)、k)配列番号111~115のうちいずれか1つに明記されるアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域2(LCDR2)、および/またはl)配列番号121~125のうちいずれか1つに明記されるアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域3(LCDR3)を含む。一部の実施形態では、CD38抗原結合成分は、配列P-X1-L-G-X2-A(配列番号156)を含むHCDR2アミノ酸配列を含み、X1およびX2は、それぞれH、Q、T、N、S、G、A、R、K、D、またはEからなる群から選択される。特定の実施形態では、X1はHであり、X2はTである。一部の実施形態では、CD19重鎖配列はA84Sおよび/またはA108L置換を含む。一部の実施形態では、CD38軽鎖はW32H置換を含む。
【0101】
Fab-Fc:scFv-Fc二特異性IgG
Fab-Fc:scFv-Fc二特異性IgG構造を有する二特異性抗体を、本発明で使用することができる。図2は、Fab-Fc:scFv-Fc二特異性IgG構造を有する二特異性抗体を図示する。この構造は、第1の重鎖分子、および一本鎖可変フラグメントを含む修飾された第2のIgG重鎖分子を含む。第1の重鎖は、それぞれN末端からC末端までにVH 202、CH1 204、CH2 206、およびCH3 208を含む。修飾された第2の重鎖は、それぞれN末端からC末端までに一本鎖可変フラグメント(scFv)210、CH2 216、およびCH3 218を含む。一本鎖可変フラグメント(scFv)は、可変軽鎖ドメインに対応する第1のドメイン212またはそのフラグメント、可変重鎖に対応する第2のドメイン214またはそのフラグメント、およびリンカーポリペプチド215を含むことができる。Fab-Fc:scFv-Fc二特異性IgG構造はまた、VLドメイン220およびCLドメイン222を含む軽鎖を含む。第1の重鎖は、共有結合(例えばジスルフィド結合230)を介して軽鎖分子に共有結合的に連結され得る。第1の重鎖は、1つまたは複数の共有結合(例えばジスルフィド結合234および/または236)を介して、修飾された第2の重鎖に連結され得る。Fab-Fc:scFv-Fc二特異性IgG構造は、第1および第2の重鎖の連結を促進しかつ/または第1の重鎖の別の第1の重鎖へのもしくは第2の重鎖の別の第2の重鎖への連結を防止するCH3ドメイン内の突然変異をさらに含む、第1および修飾された第2の重鎖分子を含むことができる。突然変異は、2つの第1の重鎖分子または2つの第2の重鎖分子の連結を物理的(例えば立体的妨害)または生化学的(例えば静電相互作用)に防止することができる。第1および第2の重鎖分子の連結を促す例示的な突然変異は、例えば、米国特許出願公開第20140322756号明細書、および「The making of bispecific antibodies」、MAbs.2017 Feb-Mar;9(2):182~212頁に開示されている。Fab-Fc:scFv-Fc二特異性IgG構造はまた、それに連結された炭水化物分子240、またはその追加の修飾を含むことができる。
【0102】
Fab-Fc:scFv-Fc二特異性IgG構造を有する二特異性抗体は、B細胞系列表面マーカ(例えばCD19、CD138、IgA、またはCD45、例えばCD19、CD38、IgA、またはCD45)、および抑制性B細胞表面マーカ(例えばIgD、CD1、CD5、CD21、CD24、CD38、HM13、SLAMF7、AQP3、または潜在型TGF-β(例えば、TGF-βLAP))を標的化することができる。一部の実施形態では、B細胞系列表面マーカはCD19を含む。特定の実施形態では、B細胞系列表面マーカはCD19からなる。一部の実施形態では、抑制性B細胞表面マーカはCD38を含む。特定の実施形態では、抑制性B細胞表面マーカはCD38からなる。
【0103】
Fab-Fc:scFv-Fc二特異性IgG構造は、第1の抗原結合部位がCD19を標的化し、かつ第2の抗原結合部位がCD38を標的化するように操作され得る。一部の実施形態では、第1の重鎖は、CD19結合成分を含むVH配列を含み、第2の重鎖は、CD38結合成分を含む一本鎖可変フラグメント(scFv)配列を含む。特定の実施形態では、CD38一本鎖可変フラグメントを含む重鎖は、配列番号205または配列番号206を含む。特定の実施形態では、VL配列はCD19結合成分を含む。特定の実施形態では、CD38結合成分を含む一本鎖可変フラグメント(scFv)配列は、抗体重鎖および軽鎖可変配列に対応するCD38結合成分、またはそのCD38結合フラグメントを含む。一部の実施形態では、第1の重鎖は、CD38結合成分を含むVH配列を含み、第2の重鎖は、CD19結合成分を含む一本鎖可変フラグメント(scFv)配列を含む。特定の実施形態では、CD19一本鎖可変フラグメントを含む重鎖は、配列番号203、配列番号204、または配列番号217を含む。特定の実施形態では、CD19結合成分を含む一本鎖可変フラグメント(scFv)配列は、抗体重鎖および軽鎖可変配列に対応するCD19結合成分、またはそのCD19結合フラグメントを含む。
【0104】
Fab-Fc:scFv-Fc二特異性IgG構造は、第1の抗原結合部位がCD38を標的化し、かつ第2の抗原結合部位がCD19を標的化するように操作され得る。一部の実施形態では、第1の重鎖は、CD38結合成分を含むVH配列を含み、第2の重鎖は、CD19結合成分を含む一本鎖可変フラグメント(scFv)配列を含む。特定の実施形態では、VL配列はCD38結合成分を含む。特定の実施形態では、CD19結合成分を含む一本鎖可変フラグメント(scFv)配列は、抗体重鎖および軽鎖可変配列に対応するCD19結合成分、またはそのCD19結合フラグメントを含む。
【0105】
本明細書に記載されるBS2は、CD19に結合するように構成されたCD19結合成分およびCD38に結合するように構成されたCD38結合成分を含み、CD19結合成分は抗体またはその抗原結合フラグメントを含み、CD38結合成分は抗体またはその抗原結合フラグメントを含み、CD38抗原結合成分は、抗CD38免疫グロブリン軽鎖可変領域とペアを形成した抗CD38免疫グロブリン重鎖可変領域を含むCD38に結合するFabを含み、CD19抗原結合成分は、抗CD38免疫グロブリン軽鎖可変領域とペアを形成した抗CD19免疫グロブリン重鎖可変領域を含むCD19に結合するscFvを含み、CD38結合成分は、配列番号71~75のうちいずれか1つに明記されるHCDR1アミノ酸配列、配列番号81~85、または150~155のうちいずれか1つに明記されるHCDR2アミノ酸配列、配列番号91~95のうちいずれか1つに明記されるHCDR3アミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖を含み、免疫グロブリン軽鎖は、配列番号101~105のうちいずれか1つに明記されるLCDR1アミノ酸配列、配列番号111~115のうちいずれか1つに明記されるLCDR2アミノ酸配列、および/または配列番号121~125のうちいずれか1つに明記されるLCDR3アミノ酸配列を含み、CD19結合成分は、配列番号11~15のうちいずれか1つに明記されるHCDR1アミノ酸配列、配列番号21~25のうちいずれか1つに明記されるHCDR2アミノ酸配列、配列番号31~35のうちいずれか1つに明記されるHCDR3アミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖を含み、免疫グロブリン軽鎖は、配列番号41~45のうちいずれか1つに明記されるLCDR1アミノ酸配列、配列番号51~55のうちいずれか1つに明記されるLCDR2アミノ酸配列、および/または配列番号61~65のうちいずれか1つに明記されるLCDR3アミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、CD38抗原結合成分は、配列P-X1-L-G-X2-A(配列番号156)を含むHCDR2アミノ酸配列を含み、X1およびX2は、H、Q、T、N、S、G、A、R、K、D、またはEからなる群から選択される。特定の実施形態では、X1はHであり、X2はTである。一部の実施形態では、CD19重鎖配列はA84Sおよび/またはA108L置換を含む。一部の実施形態では、CD38軽鎖はW32H置換を含む。
【0106】
Fab-Fc-Fab:Fc二特異性IgG
Fab-Fc-Fab:Fc二特異性IgG構造を有する操作された二特異性抗体を、本発明で使用することができる。図3は、Fab-Fc-Fab:Fc二特異性IgG構造を有する二特異性抗体を図示する。この構造は、第1の重鎖分子および修飾されたIgG重鎖分子を含む。第1の重鎖は、それぞれN末端からC末端までVHドメイン302、CH1ドメイン304、CH2ドメイン306、CH3ドメイン308、リンカー310、第2のVHドメイン312、および第2のCH1ドメイン314を含む。修飾された重鎖は、それぞれN末端からC末端までCH2ドメイン316、およびCH3ドメイン318を含む。Fab-Fc-Fab:Fc二特異性IgG構造はまた、VLドメイン320およびCLドメイン322を含む第1の軽鎖を含む。Fab-Fc-Fab:Fc二特異性IgG構造はまた、VLドメイン324およびCLドメイン326を含む第2の軽鎖を含む。重鎖は、共有結合(例えばジスルフィド結合330)を介して軽鎖分子に共有結合的に連結され得る。第1の重鎖はまた、共有結合(例えばジスルフィド結合332)を介して第1、第2の鎖分子に共有結合的に連結され得る。重鎖および軽鎖は、第1の重鎖のVHドメインおよびCH1ドメインが第1の軽鎖のVLドメインおよびCLドメインとペアを形成するように連結され得る。第1の重鎖および第2の軽鎖は、第1の重鎖の第2のVHドメインおよび第2のCH1ドメインが第2の軽鎖のVLドメインおよびCLドメインとペアを形成するように連結され得る。第1の重鎖は、1つまたは複数の共有結合(例えばジスルフィド結合334および/または336)を介して、修飾された第2の重鎖に連結され得る。Fab-Fc-Fab:Fc二特異性IgG構造は、第1および第2の重鎖の連結を促進しかつ/または第1の重鎖の別の第1の重鎖へのもしくは第2の重鎖の別の第2の重鎖への連結を防止するCH3ドメイン内の突然変異をさらに含む、第1および修飾された第2の重鎖分子を含むことができる。突然変異は、2つの第1の重鎖分子または2つの第2の重鎖分子の連結を物理的(例えば立体的妨害)または生化学的(例えば静電相互作用)に防止することができる。第1および第2の重鎖分子の連結を促す例示的な突然変異は、例えば、米国特許出願公開第20140322756号明細書、および「The making of bispecific antibodies」、MAbs.2017 Feb-Mar;9(2):182~212頁に開示されている。Fab-Fc-Fab:Fc二特異性IgG構造はまた、それに連結された炭水化物分子340、またはその追加の修飾を含むことができる。
【0107】
Fab-Fc-Fab:Fc二特異性IgG構造を有する二特異性抗体は、B細胞系列表面マーカ(例えばCD19、CD138、IgA、またはCD45、例えばCD19、CD38、IgA、またはCD45)、および抑制性B細胞表面マーカ(例えばIgD、CD1、CD5、CD21、CD24、CD38、HM13、SLAMF7、AQP3、または潜在型TGF-β(例えば、TGF-βLAP))を標的化することができる。一部の実施形態では、B細胞系列表面マーカはCD19を含む。特定の実施形態では、B細胞系列表面マーカはCD19からなる。一部の実施形態では、抑制性B細胞表面マーカはCD38を含む。特定の実施形態では、抑制性B細胞表面マーカはCD38からなる。
【0108】
Fab-Fc-Fab:Fc二特異性IgG構造は、第1の抗原結合部位がCD19を標的化し、かつ第2の抗原結合部位がCD38を標的化するように操作され得る。一部の実施形態では、第1の重鎖VHドメイン(例えば302)およびVLドメイン(例えば320)はCD19結合成分を含み、第2のVHドメイン(例えば312)およびVLドメイン(例えば324)はCD38結合成分を含む。一部の実施形態では、Fab-Fc-Fab重鎖は配列番号207を含み、Fc重鎖は配列番号208を含む。
【0109】
Fab-Fc-Fab:Fc二特異性IgG構造はまた、第1の抗原結合部位がCD38を標的化し、かつ第2の抗原結合部位がCD19を標的化するように操作され得る。一部の実施形態では、第1の重鎖VHドメイン(例えば302)およびVLドメイン(例えば320)はCD38結合成分を含み、第2のVHドメイン(例えば312)およびVLドメイン(例えば324)はCD19結合成分を含む。
【0110】
Fab-Fc-scFv:Fab-Fc-scFv二特異性IgG
Fab-Fc-scFv:Fab-Fc-scFv二特異性IgG構造を有する操作された二特異性抗体を、本発明で使用することができる。図4は、Fab-Fc-scFv:Fab-Fc-scFv二特異性IgG構造を有する二特異性抗体を図示する。この構造は2つの第1の重鎖分子を含む。第1の重鎖は、それぞれN末端からC末端までVHドメイン402、CH1ドメイン404、CH2ドメイン406、CH3ドメイン408、リンカー410、および一本鎖可変フラグメント(scFv)412を含む。一本鎖可変フラグメント(scFv)は、可変軽鎖ドメインに対応する第1のドメイン414またはそのフラグメント、可変重鎖に対応する第2のドメイン416またはそのフラグメント、および第2のリンカーポリペプチド415を含むことができる。Fab-Fc-scFv:Fab-Fc-scFv二特異性IgG構造はまた、VLドメイン420およびCLドメイン422を含む第1の軽鎖を含む。重鎖は、共有結合(例えばジスルフィド結合430)を介して軽鎖分子に共有結合的に連結され得る。重鎖は、1つまたは複数の共有結合(例えばジスルフィド結合434および/または436)を介して別の重鎖に連結され得る。Fab-Fc-scFv:Fab-Fc-scFv二特異性IgG構造はまた、それに連結された炭水化物分子440またはその追加の修飾を含むことができる。
【0111】
Fab-Fc-scFv:Fab-Fc-scFv二特異性IgG構造を有する二特異性抗体は、B細胞系列表面マーカ(例えばCD19、CD138、IgA、またはCD45、例えばCD19、CD38、IgA、またはCD45)、および抑制性B細胞表面マーカ(例えばIgD、CD1、CD5、CD21、CD24、CD38、HM13、SLAMF7、AQP3、または潜在型TGF-β(例えば、TGF-βLAP))を標的化することができる。一部の実施形態では、B細胞系列表面マーカはCD19を含む。特定の実施形態では、B細胞系列表面マーカはCD19からなる。一部の実施形態では、抑制性B細胞表面マーカはCD38を含む。特定の実施形態では、抑制性B細胞表面マーカはCD38からなる。
【0112】
Fab-Fc-scFv:Fab-Fc-scFv二特異性IgG構造は、第1の抗原結合部位がCD19を標的化し、かつ第2の抗原結合部位がCD38を標的化するように操作され得る。一部の実施形態では、第1の重鎖VHドメイン(例えば402)およびVLドメイン(例えば420)はCD19結合成分を含み、一本鎖可変フラグメント(scFv)(例えば412)配列はCD38結合成分を含む。特定の実施形態では、CD38結合成分を含む一本鎖可変フラグメント(scFv)配列は、抗体重鎖および軽鎖可変配列に対応するCD38結合成分、またはそのCD38結合フラグメントを含む。
【0113】
Fab-Fc-scFv:Fab-Fc-scFv二特異性IgG構造はまた、第1の抗原結合部位がCD38を標的化し、かつ第2の抗原結合部位がCD19を標的化するように操作され得る。一部の実施形態では、第1の重鎖VHドメイン(例えば402)およびVLドメイン(例えば420)はCD38結合成分を含み、一本鎖可変フラグメント(scFv)(例えば412)配列はCD19結合成分を含む。特定の実施形態では、CD19結合成分を含む一本鎖可変フラグメント(scFv)配列は、抗体重鎖および軽鎖可変配列に対応するCD19結合成分、またはそのCD19結合フラグメントを含む。一部の実施形態では、Fab-Fc-scFv重鎖は、配列番号209を含む。
【0114】
Fab-Fc-scFv:Fc二特異性IgG
Fab-Fc-scFv:Fc二特異性IgG構造を有する操作された二特異性抗体を、本発明で使用することができる。図5は、Fab-Fc-scFv:Fc二特異性IgG構造を有する二特異性抗体を図示する。この構造は、第1の重鎖分子および第2のIgG重鎖分子を含む。第1の重鎖は、それぞれN末端からC末端までVHドメイン502、CH1ドメイン504、CH2ドメイン506、CH3ドメイン508、リンカー510、および一本鎖可変フラグメント(scFv)512を含む。一本鎖可変フラグメント(scFv)は、可変軽鎖ドメインに対応する第1のドメイン514またはそのフラグメント、可変重鎖に対応する第2のドメイン516またはそのフラグメント、および第2のリンカーポリペプチド515を含むことができる。Fab-Fc-scFv:Fc二特異性IgG構造はまた、VLドメイン520およびCLドメイン522を含む第1の軽鎖を含む。Fab-Fc-scFv:Fc二特異性IgG構造はまた、VLドメイン524およびCLドメイン526を含む第2の軽鎖を含む。重鎖は、共有結合(例えばジスルフィド結合530)を介して軽鎖分子に共有結合的に連結され得る。重鎖は、1つまたは複数の共有結合(例えばジスルフィド結合534および/または536)を介して別の重鎖に連結され得る。Fab-Fc-scFv:Fc二特異性IgG構造は、第1および第2の重鎖の連結を促進しかつ/または第1の重鎖の別の第1の重鎖へのもしくは第2の重鎖の別の第2の重鎖への連結を防止するCH3ドメイン内の突然変異をさらに含む、第1および修飾された第2の重鎖分子を含むことができる。突然変異は、2つの重鎖分子または2つの第2の重鎖分子の連結を物理的(例えば立体的妨害)または生化学的(例えば静電相互作用)に防止することができる。第1および第2の重鎖分子の連結を促す例示的な突然変異は、例えば、米国特許出願公開第20140322756号明細書、および「The making of bispecific antibodies」、MAbs.2017 Feb-Mar;9(2):182~212頁に開示されている。Fab-Fc-scFv:Fc二特異性IgG構造はまた、それに連結された炭水化物分子540、またはその追加の修飾を含むことができる。
【0115】
Fab-Fc-scFv:Fc二特異性IgG構造を有する二特異性抗体は、B細胞系列表面マーカ(例えばCD19、CD138、IgA、またはCD45、例えばCD19、CD38、IgA、またはCD45)、および抑制性B細胞表面マーカ(例えばIgD、CD1、CD5、CD21、CD24、CD38、HM13、SLAMF7、AQP3、または潜在型TGF-β(例えば、TGF-βLAP))を標的化することができる。一部の実施形態では、B細胞系列表面マーカはCD19を含む。特定の実施形態では、B細胞系列表面マーカはCD19からなる。一部の実施形態では、抑制性B細胞表面マーカはCD38を含む。特定の実施形態では、抑制性B細胞表面マーカはCD38からなる。
【0116】
Fab-Fc-scFv:Fc二特異性IgG構造は、第1の抗原結合部位がCD19を標的化し、かつ第2の抗原結合部位がCD38を標的化するように操作され得る。一部の実施形態では、第1の重鎖VHドメイン(例えば502)およびVLドメイン(例えば520)はCD19結合成分を含み、一本鎖可変フラグメント(scFv)(例えば512)配列はCD38結合成分を含む。特定の実施形態では、CD38結合成分を含む一本鎖可変フラグメント(scFv)配列は、抗体重鎖および軽鎖可変配列に対応するCD38結合成分、またはそのCD38結合フラグメントを含む。
【0117】
Fab-Fc-scFv:Fc二特異性IgG構造はまた、第1の抗原結合部位がCD38を標的化し、かつ第2の抗原結合部位がCD19を標的化するように操作され得る。一部の実施形態では、第1の重鎖VHドメイン(例えば502)およびVLドメイン(例えば520)はCD38結合成分を含み、一本鎖可変フラグメント(scFv)(例えば512)配列はCD19結合成分を含む。特定の実施形態では、CD19結合成分を含む一本鎖可変フラグメント(scFv)配列は、抗体重鎖および軽鎖可変配列に対応するCD19結合成分、またはそのCD19結合フラグメントを含む。
【0118】
Fab-Fc-Fab:Fab-Fc二特異性IgG
Fab-Fc-Fab:Fab-Fc二特異性IgG構造を有する操作された二特異性抗体を、本発明で使用することができる。図6は、Fab-Fc-Fab:Fab-Fc二特異性IgG構造を有する二特異性抗体を図示する。この構造は、第1の重鎖分子および第2のIgG重鎖分子を含む。第1の重鎖は、それぞれN末端からC末端までVHドメイン602、CH1ドメイン604、CH2ドメイン606、CH3ドメイン608、リンカー610、第2のVHドメイン612、および第2のCH1ドメイン614を含む。第2の重鎖は、第1の重鎖のものと同様に、それぞれN末端からC末端までVHドメイン652、CH1ドメイン654、CH2ドメイン656、およびCH3ドメイン658を含む。Fab-Fc-Fab:Fab-Fc二特異性IgG構造はまた、VLドメイン620およびCLドメイン622を含む第1の軽鎖を含む。Fab-Fc-Fab:Fab-Fc二特異性IgG構造はまた、VLドメイン624およびCLドメイン626を含む第2の軽鎖を含む。重鎖は、共有結合(例えばジスルフィド結合630)を介して軽鎖分子に共有結合的に連結され得る。第1の重鎖および第1の軽鎖は、第1の重鎖のVHドメインおよびCH1ドメインが第1の軽鎖のVLドメインおよびCLドメインとペアを形成するように連結され得る。第1の重鎖および第2の軽鎖は、第1の重鎖の第2のVHドメインおよび第2のCH1ドメインが第2の軽鎖のVLドメインおよびCLドメインとペアを形成するように連結され得る。重鎖は、1つまたは複数の共有結合(例えばジスルフィド結合634および/または636)を介して別の重鎖に連結され得る。Fab-Fc-Fab:Fab-Fc二特異性IgG構造は、第1および第2の重鎖の連結を促進しかつ/または第1の重鎖の別の第1の重鎖へのもしくは第2の重鎖の別の第2の重鎖への連結を防止するCH3ドメイン内の突然変異をさらに含む、第1および第2の重鎖分子を含むことができる。突然変異は、2つの第1の重鎖分子または2つの第2の重鎖分子の連結を物理的(例えば立体的妨害)または生化学的(例えば静電相互作用)に防止することができる。第1および第2の重鎖分子の連結を促す例示的な突然変異は、例えば、米国特許出願公開第20140322756号明細書、および「The making of bispecific antibodies」、MAbs.2017 Feb-Mar;9(2):182~212頁に開示されている。Fab-Fc-Fab:Fab-Fc二特異性IgG構造はまた、それに連結された炭水化物分子またはその追加の修飾を含むことができる。
【0119】
Fab-Fc-Fab:Fab-Fc二特異性IgG構造を有する二特異性抗体は、B細胞系列表面マーカ(例えばCD19、CD138、IgA、またはCD45)、および抑制性B細胞表面マーカ(例えばIgD、CD1、CD5、CD21、CD24、CD38、HM13、SLAMF7、AQP3、または潜在型TGF-β(例えば、TGF-β LAP))を標的化することができる。一部の実施形態では、B細胞系列表面マーカはCD19を含む。特定の実施形態では、B細胞系列表面マーカはCD19からなる。一部の実施形態では、抑制性B細胞表面マーカはCD38を含む。特定の実施形態では、抑制性B細胞表面マーカはCD38からなる。
【0120】
Fab-Fc-Fab:Fab-Fc二特異性IgG構造は、第1の抗原結合部位がCD19を標的化し、かつ第2の抗原結合部位がCD38を標的化するように操作され得る。一部の実施形態では、第1の重鎖VHドメイン(例えば602)およびVLドメイン(例えば620)はCD19結合成分を含み、第2のVHドメイン(例えば612)およびVLドメイン(例えば624)はCD38結合成分を含む。
【0121】
Fab-Fc-Fab:Fab-Fc二特異性IgG構造はまた、第1の抗原結合部位がCD38を標的化し、かつ第2の抗原結合部位がCD19を標的化するように操作され得る。一部の実施形態では、第1の重鎖VHドメイン(例えば602)およびVLドメイン(例えば620)はCD38結合成分を含み、第2のVHドメイン(例えば612)およびVLドメイン(例えば624)はCD19結合成分を含む。
【0122】
scFv-Fab-Fc:scFv-Fab-Fc二特異性IgG
scFv-Fab-Fc:scFv-Fab-Fc二特異性IgG構造を有する操作された二特異性抗体を、本発明で使用することができる。図7は、scFv-Fab-Fc:scFv-Fab-Fc二特異性IgG構造を有する二特異性抗体を図示する。この構造は2つの第1の重鎖分子を含む。第1の重鎖は、それぞれN末端からC末端まで一本鎖可変フラグメント(scFv)712、リンカー710、VHドメイン702、CH1ドメイン704、CH2ドメイン706、およびCH3ドメイン708を含む。一本鎖可変フラグメント(scFv)は、可変軽鎖ドメインに対応する第1のドメイン714またはそのフラグメント、可変重鎖に対応する第2のドメイン716またはそのフラグメント、および第2のリンカーポリペプチド715を含むことができる。ScFv-Fab-Fc:scFv-Fab-Fc二特異性IgG構造はまた、VLドメイン720およびCLドメイン722を含む第1の軽鎖を含む。重鎖は、共有結合(例えばジスルフィド結合730)を介して軽鎖分子に共有結合的に連結され得る。重鎖は、1つまたは複数の共有結合(例えばジスルフィド結合734および/または736)を介して別の重鎖に連結され得る。ScFv-Fab-Fc:scFv-Fab-Fc二特異性IgG構造はまた、それに連結された炭水化物分子740、またはその追加の修飾を含むことができる。
【0123】
scFv-Fab-Fc:scFv-Fab-Fc二特異性IgG構造を有する二特異性抗体は、B細胞系列表面マーカ(例えばCD19、CD138、IgA、またはCD45)、および抑制性B細胞表面マーカ(例えばIgD、CD1、CD5、CD21、CD24、CD38、HM13、SLAMF7、AQP3、または潜在型TGF-β(例えば、TGF-β LAP))を標的化することができる。一部の実施形態では、B細胞系列表面マーカはCD19を含む。特定の実施形態では、B細胞系列表面マーカはCD19からなる。一部の実施形態では、抑制性B細胞表面マーカはCD38を含む。特定の実施形態では、抑制性B細胞表面マーカはCD38からなる。
【0124】
scFv-Fab-Fc:scFv-Fab-Fc二特異性IgG構造は、第1の抗原結合部位がCD19を標的化し、かつ第2の抗原結合部位がCD38を標的化するように操作され得る。一部の実施形態では、第1の重鎖VHドメイン(例えば702)およびVLドメイン(例えば720)はCD19結合成分を含み、一本鎖可変フラグメント(scFv)(例えば712)配列はCD38結合成分を含む。特定の実施形態では、CD38結合成分を含む一本鎖可変フラグメント(scFv)配列は、抗体重鎖および軽鎖可変配列に対応するCD38結合成分、またはそのCD38結合フラグメントを含む。
【0125】
scFv-Fab-Fc:scFv-Fab-Fc二特異性IgG構造はまた、第1の抗原結合部位がCD38を標的化し、かつ第2の抗原結合部位がCD19を標的化するように操作され得る。一部の実施形態では、第1の重鎖VHドメイン(例えば702)およびVLドメイン(例えば720)はCD38結合成分を含み、一本鎖可変フラグメント(scFv)(例えば712)配列はCD19結合成分を含む。特定の実施形態では、CD19結合成分を含む一本鎖可変フラグメント(scFv)配列は、抗体重鎖および軽鎖可変配列に対応するCD19結合成分、またはそのCD19結合フラグメントを含む。
【0126】
Fab-Fab-Fc:Fab-Fab-Fc二特異性IgG
Fab-Fab-Fc:Fab-Fab-Fc二特異性IgG構造を有する操作された二特異性抗体を、本発明で使用することができる。図8は、Fab-Fab-Fc:Fab-Fab-Fc二特異性IgG構造を有する二特異性抗体を図示する。この構造は2つの重鎖分子を含む。重鎖は、それぞれN末端からC末端まで追加のVHドメイン812、および追加のCH1ドメイン814、リンカー810、VHドメイン802、CH1ドメイン804、CH2ドメイン806、ならびにCH3ドメイン808を含む。Fab-Fab-Fc:Fab-Fab-Fc二特異性IgG構造はまた、VLドメイン820およびCLドメイン822を含む第1の軽鎖を含む。Fab-Fab-Fc:Fab-Fab-Fc二特異性IgG構造はまた、VLドメイン824およびCLドメイン826を含む第2の軽鎖を含む。重鎖分子は、共有結合(例えばジスルフィド結合830)を介して軽鎖分子に共有結合的に連結され得る。重鎖および第1の軽鎖は、重鎖のVHドメインおよびCH1ドメインが第1の軽鎖のVLドメインおよびCLドメインとペアを形成するように連結され得る。重鎖および第2の軽鎖は、重鎖の追加のVHドメインおよび追加のCH1ドメインが第2の軽鎖のVLドメインおよびCLドメインとペアを形成するように連結され得る。重鎖は、1つまたは複数の共有結合(例えばジスルフィド結合834および/または836)を介して、修飾された第2の重鎖に連結され得る。Fab-Fab-Fc:Fab-Fab-Fc二特異性IgG構造はまた、それに連結された炭水化物分子840、またはその追加の修飾を含むことができる。
【0127】
Fab-Fab-Fc:Fab-Fab-Fc二特異性IgG構造を有する二特異性抗体は、B細胞系列表面マーカ(例えばCD19、CD138、IgA、またはCD45)、および抑制性B細胞表面マーカ(例えばIgD、CD1、CD5、CD21、CD24、CD38、HM13、SLAMF7、AQP3、または潜在型TGF-β(例えば、TGF-β LAP))を標的化することができる。一部の実施形態では、B細胞系列表面マーカはCD19を含む。特定の実施形態では、B細胞系列表面マーカはCD19からなる。一部の実施形態では、抑制性B細胞表面マーカはCD38を含む。特定の実施形態では、抑制性B細胞表面マーカはCD38からなる。
【0128】
Fab-Fab-Fc:Fab-Fab-Fc二特異性IgG構造は、第1の抗原結合部位がCD19を標的化し、かつ第2の抗原結合部位がCD38を標的化するように操作され得る。一部の実施形態では、第1のVHドメイン(例えば802)およびVLドメイン(例えば820)はCD19結合成分を含み、第2のVHドメイン(例えば812)およびVLドメイン(例えば824)はCD38結合成分を含む。
【0129】
Fab-Fab-Fc:Fab-Fab-Fc二特異性IgG構造はまた、第1の抗原結合部位がCD38を標的化し、かつ第2の抗原結合部位がCD19を標的化するように操作され得る。一部の実施形態では、VHドメイン(例えば802)およびVLドメイン(例えば820)はCD38結合成分を含み、第2のVHドメイン(例えば812)およびVLドメイン(例えば824)はCD19結合成分を含む。
【0130】
Fab-Fc-Fab:Fab-Fc-Fab二特異性IgG
Fab-Fc-Fab:Fab-Fc-Fab二特異性IgG構造を有する操作された二特異性抗体を、本発明で使用することができる。図9は、Fab-Fc-Fab:Fab-Fc-Fab二特異性IgG構造を有する二特異性抗体を図示する。この構造は、2つの重鎖分子および2つの軽鎖分子を含む。重鎖は、それぞれN末端からC末端までVHドメイン902、CH1ドメイン904、CH2ドメイン906、CH3ドメイン908、リンカー910、第2のVHドメイン912、および第2のCH1ドメイン914を含む。Fab-Fc-Fab:Fab-Fc-Fab二特異性IgG構造はまた、VLドメイン920およびCLドメイン922を含む第1の軽鎖を含む。Fab-Fc-Fab:Fab-Fc-Fab二特異性IgG構造はまた、VLドメイン924およびCLドメイン926を含む第2の軽鎖を含む。重鎖は、共有結合(例えばジスルフィド結合930)を介して軽鎖分子に共有結合的に連結され得る。重鎖および第1の軽鎖は、重鎖のVHドメインおよびCH1ドメインが第1の軽鎖のVLドメインおよびCLドメインとペアを形成するように連結され得る。重鎖および第2の軽鎖は、重鎖の第2のVHドメインおよび第2のCH1ドメインが第2の軽鎖のVLドメインおよびCLドメインとペアを形成するように連結され得る。重鎖はまた、共有結合(例えばジスルフィド結合930および936)を介して別の重鎖分子に共有結合的に連結され得る。Fab-Fc-Fab二特異性IgG構造はまた、それに連結された炭水化物分子940、またはその追加の修飾を含むことができる。
【0131】
Fab-Fc-Fab:Fab-Fc-Fab二特異性IgG構造を有する二特異性抗体は、B細胞系列表面マーカ(例えばCD19、CD138、IgA、またはCD45)、および抑制性B細胞表面マーカ(例えばIgD、CD1、CD5、CD21、CD24、CD38、HM13、SLAMF7、AQP3、または潜在型TGF-β(例えば、TGF-β LAP))を標的化することができる。一部の実施形態では、B細胞系列表面マーカはCD19を含む。特定の実施形態では、B細胞系列表面マーカはCD19からなる。一部の実施形態では、抑制性B細胞表面マーカはCD38を含む。特定の実施形態では、抑制性B細胞表面マーカはCD38からなる。
【0132】
Fab-Fc-Fab:Fab-Fc-Fab二特異性IgG構造は、第1の抗原結合部位がCD19を標的化し、かつ第2の抗原結合部位がCD38を標的化するように操作され得る。一部の実施形態では、第1のVHドメイン(例えば902)およびVLドメイン(例えば920)はCD19結合成分を含み、第2のVHドメイン(例えば912)およびVLドメイン(例えば924)はCD38結合成分を含む。
【0133】
Fab-Fc-Fab:Fab-Fc-Fab二特異性IgG構造はまた、第1の抗原結合部位がCD38を標的化し、かつ第2の抗原結合部位がCD19を標的化するように操作され得る。一部の実施形態では、VHドメイン(例えば902)およびVLドメイン(例えば920)はCD38結合成分を含み、第2のVHドメイン(例えば912)およびVLドメイン(例えば924)はCD19結合成分を含む。
【0134】
Fab-Fc-scFv:Fab-Fc二特異性IgG
Fab-Fc-scFv:Fab-Fc二特異性IgG構造を有する操作された二特異性抗体を、本発明で使用することができる。図10は、Fab-Fc-scFv:Fab-Fc二特異性IgG構造を有する二特異性抗体を実証する。この構造は、第1の重鎖分子および第2のIgG重鎖分子を含む。第1の重鎖は、それぞれN末端からC末端までVHドメイン1002、CH1ドメイン1004、CH2ドメイン1006、CH3ドメイン1008、リンカー1010、および一本鎖可変フラグメント(scFv)1012を含む。一本鎖可変フラグメント(scFv)は、可変軽鎖ドメインに対応する第1のドメイン1014またはそのフラグメント、可変重鎖に対応する第2のドメイン1016またはそのフラグメント、および第2のリンカーポリペプチド1015を含むことができる。第2の重鎖は、第1の重鎖のものと同様に、それぞれN末端からC末端までVHドメイン1002、CH1ドメイン1004、CH2ドメイン1004、およびCH3ドメイン1008を含む。Fab-Fc-scFv:Fab-Fc二特異性IgG構造はまた、VLドメイン1020およびCLドメイン1022を含む第1の軽鎖を含む。重鎖は、共有結合(例えばジスルフィド結合1030)を介して軽鎖分子に共有結合的に連結され得る。重鎖は、1つまたは複数の共有結合(例えばジスルフィド結合1034および/または1036)を介して別の重鎖に連結され得る。Fab-Fc-scFv:Fab-Fc二特異性IgG構造は、第1および第2の重鎖の連結を促進しかつ/または第1の重鎖の別の第1の重鎖へのもしくは第2の重鎖の別の第2の重鎖への連結を防止するCH3ドメイン内の突然変異をさらに含む、第1および第2の重鎖分子を含むことができる。突然変異は、2つの第1の重鎖分子または2つの第2の重鎖分子の連結を物理的(例えば立体的妨害)または生化学的(例えば静電相互作用)に防止することができる。第1および第2の重鎖分子の連結を促す例示的な突然変異は、例えば、米国特許出願公開第20140322756号明細書、および「The making of bispecific antibodies」、MAbs.2017 Feb-Mar;9(2):182~212頁に開示されている。Fab-Fc-scFv:Fab-Fc二特異性IgG構造はまた、それに連結された炭水化物分子1040またはその追加の修飾を含むことができる。
【0135】
Fab-Fc-scFv:Fab-Fc二特異性IgG構造を有する二特異性抗体は、B細胞系列表面マーカ(例えばCD19、CD138、IgA、またはCD45)、および抑制性B細胞表面マーカ(例えばIgD、CD1、CD5、CD21、CD24、CD38、HM13、SLAMF7、AQP3、または潜在型TGF-β(例えば、TGF-β LAP))を標的化することができる。一部の実施形態では、B細胞系列表面マーカはCD19を含む。特定の実施形態では、B細胞系列表面マーカはCD19からなる。一部の実施形態では、抑制性B細胞表面マーカはCD38を含む。特定の実施形態では、抑制性B細胞表面マーカはCD38からなる。
【0136】
Fab-Fc-scFv:Fab-Fc二特異性IgG構造は、第1の抗原結合部位がCD19を標的化し、かつ第2の抗原結合部位がCD38を標的化するように操作され得る。一部の実施形態では、第1の重鎖VHドメイン(例えば1002)およびVLドメイン(例えば1020)はCD19結合成分を含み、一本鎖可変フラグメント(scFv)(例えば1012)配列はCD38結合成分を含む。特定の実施形態では、CD38結合成分を含む一本鎖可変フラグメント(scFv)配列は、抗体重鎖および軽鎖可変配列に対応するCD38結合成分、またはそのCD38結合フラグメントを含む。
【0137】
Fab-Fc-scFv:Fab-Fc二特異性IgG構造はまた、第1の抗原結合部位がCD38を標的化し、かつ第2の抗原結合部位がCD19を標的化するように操作され得る。一部の実施形態では、第1の重鎖VHドメイン(例えば1002)およびVLドメイン(例えば1020)はCD38結合成分を含み、一本鎖可変フラグメント(scFv)(例えば1012)配列はCD19結合成分を含む。特定の実施形態では、CD19結合成分を含む一本鎖可変フラグメント(scFv)配列は、抗体重鎖および軽鎖可変配列に対応するCD19結合成分、またはそのCD19結合フラグメントを含む。
【0138】
scFv-Fab-Fc:Fc二特異性IgG
scFv-Fab-Fc:Fc二特異性IgG構造を有する操作された二特異性抗体を、本発明で使用することができる。図11は、scFv-Fab-Fc:Fc二特異性IgG構造を有する二特異性抗体を実証する。この構造は、scFv、VH、およびFc領域を含む第1の重鎖分子、ならびにFcを含む第2の重鎖分子を含む。scFv-Fab-Fc:Fc二特異性IgG構造は、第1および第2の重鎖の連結を促進しかつ/または第1の重鎖の別の第1の重鎖へのもしくは第2の重鎖の別の第2の重鎖への連結を防止するCH3ドメイン内の突然変異をさらに含む、第1および第2の重鎖分子を含むことができる。突然変異は、第1の重鎖分子の第2の重鎖分子への会合を物理的(例えばノブ・イン・ホール構造)または生化学的(例えば静電相互作用)に促進することができる。ScFv-Fab-Fc:Fc二特異性IgG構造は、第1の抗原結合部位を作出する第1の重鎖分子と会合した軽鎖分子を含む。第2の抗原結合部位は、第1の重鎖のN末端に連結されたscFvフラグメントにより提供される。第1および第2の重鎖分子の連結を促す例示的な突然変異は、例えば、米国特許出願公開第20140322756号明細書、および「The making of bispecific antibodies」、MAbs.2017 Feb-Mar;9(2):182~212頁に開示されている。scFv-Fab-Fc:Fc二特異性IgG構造はまた、それに連結された炭水化物分子1140、またはその追加の修飾を含むことができる。
【0139】
scFv-Fab-Fc:Fc二特異性IgG構造を有する二特異性抗体は、B細胞系列表面マーカ(例えばCD19、CD138、IgA、またはCD45)、および抑制性B細胞表面マーカ(例えばIgD、CD1、CD5、CD21、CD24、CD38、HM13、SLAMF7、AQP3、または潜在型TGF-β(例えば、TGF-β LAP))を標的化することができる。一部の実施形態では、B細胞系列表面マーカはCD19を含む。特定の実施形態では、B細胞系列表面マーカはCD19からなる。一部の実施形態では、抑制性B細胞表面マーカはCD38を含む。特定の実施形態では、抑制性B細胞表面マーカはCD38からなる。
【0140】
scFv-Fab-Fc:Fc二特異性IgG構造は、第1の抗原結合部位がCD19を標的化し、かつ第2の抗原結合部位がCD38を標的化するように操作され得る。一部の実施形態では、第1の重鎖VHドメインおよびVLドメインはCD19結合成分を含み、一本鎖可変フラグメント(scFv)配列はCD38結合成分を含む。特定の実施形態では、一本鎖可変フラグメント(scFv)配列は、抗体重鎖および軽鎖可変配列に対応するCD38結合成分、またはそのCD38結合フラグメントを含む。
【0141】
scFv-Fab-Fc:Fc二特異性IgG構造はまた、第1の抗原結合部位がCD38を標的化し、かつ第2の抗原結合部位がCD19を標的化するように操作され得る。一部の実施形態では、重鎖VHドメインおよびVLドメインはCD38結合成分を含み、一本鎖可変フラグメント(scFv)配列はCD19結合成分を含む。特定の実施形態では、CD19結合成分を含む一本鎖可変フラグメント(scFv)配列は、抗体重鎖および軽鎖可変配列に対応するCD19結合成分、またはそのCD19結合フラグメントを含む。
【0142】
特定の実施形態では、第1の重鎖分子は、配列番号212に明記されるアミノ酸配列に対して少なくとも約90%、95%、97%、98%、または99%同一のアミノ酸配列を含む。特定の実施形態では、第1の重鎖分子は、配列番号212に明記されるアミノ酸配列と同一のアミノ酸配列を含む。
【0143】
特定の実施形態では、第1の軽鎖分子は、配列番号213に明記されるアミノ酸配列に対して少なくとも約90%、95%、97%、98%、または99%同一のアミノ酸配列を含む。特定の実施形態では、第1の軽鎖分子は、配列番号213に明記されるアミノ酸配列と同一のアミノ酸配列を含む。
【0144】
特定の実施形態では、第2の重鎖分子は、配列番号214に明記されるアミノ酸配列に対して少なくとも約90%、95%、97%、98%、または99%同一のアミノ酸配列を含む。特定の実施形態では、第1の重鎖分子は、配列番号214に明記されるアミノ酸配列と同一のアミノ酸配列を含む。
【0145】
Fcバリアント
一部の実施形態では、1つまたは複数のアミノ酸修飾が、ヒトまたはヒト化抗体のフラグメント結晶化可能(Fc)領域に導入され、それによってFc領域バリアントを生成する。Fc領域は、ヒンジ領域、CH2ドメイン、CH3ドメイン、またはそれらのあらゆる組合せを含む免疫グロブリン重鎖のC末端領域を含んでもよい。本明細書で使用される場合、Fc領域は、ネイティブ配列Fc領域およびバリアントFc領域を含む。Fc領域バリアントは、1つまたは複数のアミノ酸位置にアミノ酸修飾(例えば、置換、付加、または欠失)を含むヒトFc領域配列(例えば、ヒトIgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4)を含んでもよい。
【0146】
一部の実施形態では、バリアントFc領域は、Fc領域に少なくとも1つのアミノ酸修飾を含む。アミノ酸修飾を組み合わせることも有用である。例えば、バリアントFc領域はその中に、例えば本明細書で同定される特定のFc領域位置の、例えば2、3、4、5つの置換を含んでもよい。
【0147】
一部の実施形態では、本明細書に記載の抗体は、ヒトIgGと比較して改変されたエフェクタ機能を有する。一部の実施形態では、改変されたエフェクタ機能は、減少したエフェクタ機能である。一部の実施形態では、改変されたエフェクタ機能は、上昇したエフェクタ機能である。エフェクタ機能は、一般に、抗体Fc領域とFc受容体またはリガンドとの相互作用から生じる生物学的事象を指す。非限定的なエフェクタ機能としては、C1q結合、補体依存性細胞傷害(CDC)、Fc受容体結合、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)、抗体依存性細胞食作用(ADCP)、サイトカイン分泌、抗原提示細胞による免疫複合体媒介性抗原取込み、細胞表面受容体(例えば、B細胞受容体)のダウンレギュレーション、およびB細胞活性化が挙げられる。場合により、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)は、Fc受容体を発現する非特異的細胞傷害性細胞(例えば、ナチュラルキラー細胞、好中球、マクロファージ)が標的細胞上で結合した抗体を認識し、続いて標的細胞の溶解を生じさせる細胞媒介反応を指す。場合により、補体依存性細胞傷害(CDC)は、補体の存在下での標的細胞の溶解を指し、補体作用経路は、標的と結合した抗体に対するC1qの結合によって開始される。
【0148】
特定の場合、本明細書に記載の抗体のエフェクタ機能を低下させることが有益である。一部の事例では、Fc領域における修飾は、(a)抗体依存性細胞媒介性細胞傷害性(ADCC)が減少し、(b)補体媒介細胞傷害(CDC)が減少し、かつ/または(c)C1qに対する親和性が減少したFcバリアントを生成する。一部の実施形態では、Fc領域は、234、235、236、238、239、240、241、243、244、245、247、248、249、252、254、255、256、258、262、263、264、265、267、268、269、270、272、276、278、280、283、285、286、289、290、292、293、294、295、296、298、299、301、303、305、307、309、312、313、315、320、322、324、325、326、327、329、330、331、332、333、334、335、337、338、340、360、373、376、378、382、388、389、398、414、416、419、430、433、434、435、436、437、438、または439位(EUナンバリング)において1つまたは複数のアミノ酸を修飾することによって、抗体依存性細胞傷害(ADCC)を減少させる、抗体依存性細胞媒介性食作用(ADCP)を減少させる、補体媒介性細胞傷害(CDC)を減少させる、および/またはC1qに対する親和性を減少させるように修飾される。一部の実施形態では、バリアントFc領域は、表1から選択される。一部の実施形態では、バリアントFc領域は、表1の突然変異のうち1つまたは複数を含む。
【0149】
【表1-1】
【0150】
【表1-2】
【0151】
関心対象の分子のADCC活性を精査するin vitroアッセイの非限定的な例は、米国特許第5,500,362号明細書、および同第5,821,337号明細書に記載されている。代替的に、非放射アッセイ法を採用してもよい(例えば、ACTI(商標)およびCytoTox96(登録商標)の非放射性細胞毒性アッセイ)。かかるアッセイに有用なエフェクタ細胞は、末梢血単核細胞(PBMC)、単球、マクロファージ、およびナチュラルキラー(NK)細胞を含む。
【0152】
一部の実施形態では、バリアントFc領域は、非バリアントFc領域を含む抗体、すなわち、ADCCを減少させる置換がある点を除き同じ配列同一性を有する抗体(ヒトIgG1など)と比較して、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%以上減少したADCCを示す。一部の実施形態では、バリアントFc領域は、非バリアントFc領域を含む抗体、すなわち、CDCを減少させる置換がある点を除き同じ配列同一性を有する抗体(ヒトIgG1など)と比較して、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%以上減少したCDCを示す。
【0153】
特定の実施形態では、バリアントFc領域は、約10%~約100%減少したADCCを示す。特定の実施形態では、バリアントFc領域は、約10%~約20%、約10%~約30%、約10%~約40%、約10%~約50%、約10%~約60%、約10%~約70%、約10%~約80%、約10%~約90%、約10%~約100%、約20%~約30%、約20%~約40%、約20%~約50%、約20%~約60%、約20%~約70%、約20%~約80%、約20%~約90%、約20%~約100%、約30%~約40%、約30%~約50%、約30%~約60%、約30%~約70%、約30%~約80%、約30%~約90%、約30%~約100%、約40%~約50%、約40%~約60%、約40%~約70%、約40%~約80%、約40%~約90%、約40%~約100%、約50%~約60%、約50%~約70%、約50%~約80%、約50%~約90%、約50%~約100%、約60%~約70%、約60%~約80%、約60%~約90%、約60%~約100%、約70%~約80%、約70%~約90%、約70%~約100%、約80%~約90%、約80%~約100%、または約90%~約100%減少したADCCを示す。特定の実施形態では、バリアントFc領域は、約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、または約100%減少したADCCを示す。特定の実施形態では、バリアントFc領域は、最低約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、または約90%減少したADCCを示す。
【0154】
特定の実施形態では、バリアントFc領域は、約10%~約100%減少したCDCを示す。特定の実施形態では、バリアントFc領域は、約10%~約20%、約10%~約30%、約10%~約40%、約10%~約50%、約10%~約60%、約10%~約70%、約10%~約80%、約10%~約90%、約10%~約100%、約20%~約30%、約20%~約40%、約20%~約50%、約20%~約60%、約20%~約70%、約20%~約80%、約20%~約90%、約20%~約100%、約30%~約40%、約30%~約50%、約30%~約60%、約30%~約70%、約30%~約80%、約30%~約90%、約30%~約100%、約40%~約50%、約40%~約60%、約40%~約70%、約40%~約80%、約40%~約90%、約40%~約100%、約50%~約60%、約50%~約70%、約50%~約80%、約50%~約90%、約50%~約100%、約60%~約70%、約60%~約80%、約60%~約90%、約60%~約100%、約70%~約80%、約70%~約90%、約70%~約100%、約80%~約90%、約80%~約100%、または約90%~約100%減少したCDCを示す。特定の実施形態では、バリアントFc領域は、約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、または約100%減少したCDCを示す。特定の実施形態では、バリアントFc領域は、最低約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、または約90%減少したCDCを示す。
【0155】
一部の実施形態では、バリアントFc領域は、野生型ヒトIgG1と比較して減少したエフェクタ機能を示す。特定の事例においてADCCおよび/またはCDCを減少させる、IgG1におけるFc突然変異の非限定的な例として、IgG1における231、232、234、235、236、237、238、239、264、265、267、269、270、297、299、318、320、322、325、327、328、329、330、および331位のうち1つまたは複数での置換が挙げられ、この場合、定常領域のナンバリングシステムは、Kabatにより示されるEUインデックスのナンバリングシステムである。
【0156】
一部の実施形態では、バリアントFc領域は、EUナンバリングシステムによるN297A置換を含むIgG1 Fc領域を含む。一部の実施形態では、バリアントFc領域は、EUナンバリングシステムによるN297Q置換を含むIgG1 Fc領域を含む。一部の実施形態では、バリアントFc領域は、EUナンバリングシステムによるN297D置換を含むIgG1 Fc領域を含む。一部の実施形態では、バリアントFc領域は、EUナンバリングシステムによるD265A置換を含むIgG1 Fc領域を含む。一部の実施形態では、バリアントFc領域は、EUナンバリングシステムによるS228P置換を含むIgG1 Fc領域を含む。一部の実施形態では、バリアントFc領域は、EUナンバリングシステムによるL235A置換を含むIgG1 Fc領域を含む。一部の実施形態では、バリアントFc領域は、EUナンバリングシステムによるL237A置換を含むIgG1 Fc領域を含む。一部の実施形態では、バリアントFc領域は、EUナンバリングシステムによるL234A置換を含むIgG1 Fc領域を含む。一部の実施形態では、バリアントFc領域は、EUナンバリングシステムによるE233P置換を含むIgG1 Fc領域を含む。一部の実施形態では、バリアントFc領域は、EUナンバリングシステムによるL234V置換を含むIgG1 Fc領域を含む。一部の実施形態では、バリアントFc領域は、KabatナンバリングシステムによるC236欠失を含むIgG1 Fc領域を含む。一部の実施形態では、バリアントFc領域は、EUナンバリングシステムによるP238A置換を含むIgG1 Fc領域を含む。一部の実施形態では、バリアントFc領域は、EUナンバリングシステムによるA327Q置換を含むIgG1 Fc領域を含む。一部の実施形態では、バリアントFc領域は、EUナンバリングシステムによるP329A置換を含むIgG1 Fc領域を含む。一部の実施形態では、バリアントFc領域は、EUナンバリングシステムによるP329G置換を含むIgG1 Fc領域を含む。一部の実施形態では、バリアントFc領域は、EUナンバリングシステムによるL235E置換を含むIgG1 Fc領域を含む。一部の実施形態では、バリアントFc領域は、EUナンバリングシステムによるP331S置換を含むIgG1 Fc領域を含む。一部の実施形態では、バリアントFc領域は、EUナンバリングシステムによるL234F置換を含むIgG1 Fc領域を含む。一部の実施形態では、バリアントFc領域は、EUナンバリングシステムによる235G置換を含むIgG1 Fc領域を含む。一部の実施形態では、バリアントFc領域は、EUナンバリングシステムによる235Q置換を含むIgG1 Fc領域を含む。一部の実施形態では、バリアントFc領域は、EUナンバリングシステムによる235R置換を含むIgG1 Fc領域を含む。一部の実施形態では、バリアントFc領域は、EUナンバリングシステムによる235S置換を含むIgG1 Fc領域を含む。一部の実施形態では、バリアントFc領域は、EUナンバリングシステムによる236F置換を含むIgG1 Fc領域を含む。一部の実施形態では、バリアントFc領域は、EUナンバリングシステムによる236R置換を含むIgG1 Fc領域を含む。一部の実施形態では、バリアントFc領域は、EUナンバリングシステムによる237E置換を含むIgG1 Fc領域を含む。一部の実施形態では、バリアントFc領域は、EUナンバリングシステムによる237K置換を含むIgG1 Fc領域を含む。一部の実施形態では、バリアントFc領域は、EUナンバリングシステムによる237N置換を含むIgG1 Fc領域を含む。一部の実施形態では、バリアントFc領域は、EUナンバリングシステムによる237R置換を含むIgG1 Fc領域を含む。一部の実施形態では、バリアントFc領域は、EUナンバリングシステムによる238A置換を含むIgG1 Fc領域を含む。一部の実施形態では、バリアントFc領域は、EUナンバリングシステムによる238E置換を含むIgG1 Fc領域を含む。一部の実施形態では、バリアントFc領域は、EUナンバリングシステムによる238G置換を含むIgG1 Fc領域を含む。一部の実施形態では、バリアントFc領域は、EUナンバリングシステムによる238H置換を含むIgG1 Fc領域を含む。一部の実施形態では、バリアントFc領域は、EUナンバリングシステムによる238I置換を含むIgG1 Fc領域を含む。一部の実施形態では、バリアントFc領域は、EUナンバリングシステムによる238V置換を含むIgG1 Fc領域を含む。一部の実施形態では、バリアントFc領域は、EUナンバリングシステムによる238W置換を含むIgG1 Fc領域を含む。一部の実施形態では、バリアントFc領域は、EUナンバリングシステムによる238Y置換を含むIgG1 Fc領域を含む。一部の実施形態では、バリアントFc領域は、EUナンバリングシステムによる248A置換を含むIgG1 Fc領域を含む。一部の実施形態では、バリアントFc領域は、EUナンバリングシステムによる254D置換を含むIgG1 Fc領域を含む。一部の実施形態では、バリアントFc領域は、EUナンバリングシステムによる254E置換を含むIgG1 Fc領域を含む。一部の実施形態では、バリアントFc領域は、EUナンバリングシステムによる254G置換を含むIgG1 Fc領域を含む。一部の実施形態では、バリアントFc領域は、EUナンバリングシステムによる254H置換を含むIgG1 Fc領域を含む。一部の実施形態では、バリアントFc領域は、EUナンバリングシステムによる254I置換を含むIgG1 Fc領域を含む。一部の実施形態では、バリアントFc領域は、EUナンバリングシステムによる254N置換を含むIgG1 Fc領域を含む。一部の実施形態では、バリアントFc領域は、EUナンバリングシステムによる254P置換を含むIgG1 Fc領域を含む。一部の実施形態では、バリアントFc領域は、EUナンバリングシステムによる254Q置換を含むIgG1 Fc領域を含む。一部の実施形態では、バリアントFc領域は、EUナンバリングシステムによる254T置換を含むIgG1 Fc領域を含む。一部の実施形態では、バリアントFc領域は、EUナンバリングシステムによる254V置換を含むIgG1 Fc領域を含む。一部の実施形態では、バリアントFc領域は、EUナンバリングシステムによる255N置換を含むIgG1 Fc領域を含む。一部の実施形態では、バリアントFc領域は、EUナンバリングシステムによる256H置換を含むIgG1 Fc領域を含む。一部の実施形態では、バリアントFc領域は、EUナンバリングシステムによる256K置換を含むIgG1 Fc領域を含む。一部の実施形態では、バリアントFc領域は、EUナンバリングシステムによる256R置換を含むIgG1 Fc領域を含む。一部の実施形態では、バリアントFc領域は、EUナンバリングシステムによる256V置換を含むIgG1 Fc領域を含む。一部の実施形態では、バリアントFc領域は、EUナンバリングシステムによる264S置換を含むIgG1 Fc領域を含む。一部の実施形態では、バリアントFc領域は、EUナンバリングシステムによる265H置換を含むIgG1 Fc領域を含む。一部の実施形態では、バリアントFc領域は、EUナンバリングシステムによる265K置換を含むIgG1 Fc領域を含む。一部の実施形態では、バリアントFc領域は、EUナンバリングシステムによる265S置換を含むIgG1 Fc領域を含む。一部の実施形態では、バリアントFc領域は、EUナンバリングシステムによる265Y置換を含むIgG1 Fc領域を含む。一部の実施形態では、バリアントFc領域は、EUナンバリングシステムによる267G置換を含むIgG1 Fc領域を含む。一部の実施形態では、バリアントFc領域は、EUナンバリングシステムによる267H置換を含むIgG1 Fc領域を含む。一部の実施形態では、バリアントFc領域は、EUナンバリングシステムによる267I置換を含むIgG1 Fc領域を含む。一部の実施形態では、バリアントFc領域は、EUナンバリングシステムによる267K置換を含むIgG1 Fc領域を含む。一部の実施形態では、バリアントFc領域は、EUナンバリングシステムによる268K置換を含むIgG1 Fc領域を含む。一部の実施形態では、バリアントFc領域は、EUナンバリングシステムによる269N置換を含むIgG1 Fc領域を含む。一部の実施形態では、バリアントFc領域は、EUナンバリングシステムによる269Q置換を含むIgG1 Fc領域を含む。一部の実施形態では、バリアントFc領域は、EUナンバリングシステムによる270A置換を含むIgG1 Fc領域を含む。一部の実施形態では、バリアントFc領域は、EUナンバリングシステムによる270G置換を含むIgG1 Fc領域を含む。一部の実施形態では、バリアントFc領域は、EUナンバリングシステムによる270M置換を含むIgG1 Fc領域を含む。一部の実施形態では、バリアントFc領域は、EUナンバリングシステムによる270N置換を含むIgG1 Fc領域を含む。一部の実施形態では、バリアントFc領域は、EUナンバリングシステムによる271T置換を含むIgG1 Fc領域を含む。一部の実施形態では、バリアントFc領域は、EUナンバリングシステムによる272N置換を含むIgG1 Fc領域を含む。一部の実施形態では、バリアントFc領域は、EUナンバリングシステムによる279F置換を含むIgG1 Fc領域を含む。一部の実施形態では、バリアントFc領域は、EUナンバリングシステムによる279K置換を含むIgG1 Fc領域を含む。一部の実施形態では、バリアントFc領域は、EUナンバリングシステムによる279L置換を含むIgG1 Fc領域を含む。一部の実施形態では、バリアントFc領域は、EUナンバリングシステムによる292E置換を含むIgG1 Fc領域を含む。一部の実施形態では、バリアントFc領域は、EUナンバリングシステムによる292F置換を含むIgG1 Fc領域を含む。一部の実施形態では、バリアントFc領域は、EUナンバリングシステムによる292G置換を含むIgG1 Fc領域を含む。一部の実施形態では、バリアントFc領域は、EUナンバリングシステムによる292I置換を含むIgG1 Fc領域を含む。一部の実施形態では、バリアントFc領域は、EUナンバリングシステムによる293S置換を含むIgG1 Fc領域を含む。一部の実施形態では、バリアントFc領域は、EUナンバリングシステムによる301W置換を含むIgG1 Fc領域を含む。一部の実施形態では、バリアントFc領域は、EUナンバリングシステムによる304E置換を含むIgG1 Fc領域を含む。一部の実施形態では、バリアントFc領域は、EUナンバリングシステムによる311E置換を含むIgG1 Fc領域を含む。一部の実施形態では、バリアントFc領域は、EUナンバリングシステムによる311G置換を含むIgG1 Fc領域を含む。一部の実施形態では、バリアントFc領域は、EUナンバリングシステムによる311S置換を含むIgG1 Fc領域を含む。一部の実施形態では、バリアントFc領域は、EUナンバリングシステムによる316F置換を含むIgG1 Fc領域を含む。一部の実施形態では、バリアントFc領域は、EUナンバリングシステムによる327T置換を含むIgG1 Fc領域を含む。一部の実施形態では、バリアントFc領域は、EUナンバリングシステムによる328V置換を含むIgG1 Fc領域を含む。一部の実施形態では、バリアントFc領域は、EUナンバリングシステムによる329Y置換を含むIgG1 Fc領域を含む。一部の実施形態では、バリアントFc領域は、EUナンバリングシステムによる330R置換を含むIgG1 Fc領域
を含む。一部の実施形態では、バリアントFc領域は、EUナンバリングシステムによる339E置換を含むIgG1 Fc領域を含む。一部の実施形態では、バリアントFc領域は、EUナンバリングシステムによる339L置換を含むIgG1 Fc領域を含む。一部の実施形態では、バリアントFc領域は、EUナンバリングシステムによる343I置換を含むIgG1 Fc領域を含む。一部の実施形態では、バリアントFc領域は、EUナンバリングシステムによる343V置換を含むIgG1 Fc領域を含む。一部の実施形態では、バリアントFc領域は、EUナンバリングシステムによる373A置換を含むIgG1 Fc領域を含む。一部の実施形態では、バリアントFc領域は、EUナンバリングシステムによる373G置換を含むIgG1 Fc領域を含む。一部の実施形態では、バリアントFc領域は、EUナンバリングシステムによる373S置換を含むIgG1 Fc領域を含む。一部の実施形態では、バリアントFc領域は、EUナンバリングシステムによる376E置換を含むIgG1 Fc領域を含む。一部の実施形態では、バリアントFc領域は、EUナンバリングシステムによる376W置換を含むIgG1 Fc領域を含む。一部の実施形態では、バリアントFc領域は、EUナンバリングシステムによる376Y置換を含むIgG1 Fc領域を含む。一部の実施形態では、バリアントFc領域は、EUナンバリングシステムによる380D置換を含むIgG1 Fc領域を含む。一部の実施形態では、バリアントFc領域は、EUナンバリングシステムによる382D置換を含むIgG1 Fc領域を含む。一部の実施形態では、バリアントFc領域は、EUナンバリングシステムによる382P置換を含むIgG1 Fc領域を含む。一部の実施形態では、バリアントFc領域は、EUナンバリングシステムによる385P置換を含むIgG1 Fc領域を含む。一部の実施形態では、バリアントFc領域は、EUナンバリングシステムによる424H置換を含むIgG1 Fc領域を含む。一部の実施形態では、バリアントFc領域は、EUナンバリングシステムによる424M置換を含むIgG1 Fc領域を含む。一部の実施形態では、バリアントFc領域は、EUナンバリングシステムによる424V置換を含むIgG1 Fc領域を含む。一部の実施形態では、バリアントFc領域は、EUナンバリングシステムによる434I置換を含むIgG1 Fc領域を含む。一部の実施形態では、バリアントFc領域は、EUナンバリングシステムによる438G置換を含むIgG1 Fc領域を含む。一部の実施形態では、バリアントFc領域は、EUナンバリングシステムによる439E置換を含むIgG1 Fc領域を含む。一部の実施形態では、バリアントFc領域は、EUナンバリングシステムによる439H置換を含むIgG1 Fc領域を含む。一部の実施形態では、バリアントFc領域は、EUナンバリングシステムによる439Q置換を含むIgG1 Fc領域を含む。一部の実施形態では、バリアントFc領域は、EUナンバリングシステムによる440A置換を含むIgG1 Fc領域を含む。一部の実施形態では、バリアントFc領域は、EUナンバリングシステムによる440D置換を含むIgG1 Fc領域を含む。一部の実施形態では、バリアントFc領域は、EUナンバリングシステムによる440E置換を含むIgG1 Fc領域を含む。一部の実施形態では、バリアントFc領域は、EUナンバリングシステムによる440F置換を含むIgG1 Fc領域を含む。一部の実施形態では、バリアントFc領域は、EUナンバリングシステムによる440M置換を含むIgG1 Fc領域を含む。一部の実施形態では、バリアントFc領域は、EUナンバリングシステムによる440T Fc領域置換を含むIgG1 Fc領域を含む。一部の実施形態では、バリアントFc領域は、EUナンバリングシステムによる440V置換を含むIgG1 Fc領域を含む。
【0157】
一部の実施形態では、バリアントFc領域は、EUナンバリングによるIgG1 Fc領域L234A、L235E、G237A、A330S、および/またはP331Sを含む。一部の実施形態では、バリアントFc領域は、EUナンバリングシステムによるE233Pを含むIgG1 Fc領域を含む。一部の実施形態では、バリアントFc領域は、S228PおよびL235Eを含むIgG4 Fc領域を含む。一部の実施形態では、バリアントFc領域は、EUナンバリングシステムによるL235Eを含むIgG1 Fc領域を含む。一部の実施形態では、バリアントFc領域は、EUナンバリングシステムによるL234AおよびL235Aを含むIgG1 Fc領域を含む。一部の実施形態では、バリアントFc領域は、EUナンバリングシステムによるL234A、L235A、およびG237Aを含むIgG1 Fc領域を含む。一部の実施形態では、バリアントFc領域は、EUナンバリングシステムによるL234A、L235A、およびP329Gを含むIgG1 Fc領域を含む。一部の実施形態では、バリアントFc領域は、EUナンバリングシステムによるL234F、L235E、およびP331Sを含むIgG1 Fc領域を含む。一部の実施形態では、バリアントFc領域は、EUナンバリングシステムによるL234A、L235E、およびG237Aを含むIgG1 Fc領域を含む。一部の実施形態では、バリアントFc領域は、EUナンバリングシステムによるL234A、L235E、G237A、およびP331Sを含むIgG1 Fc領域を含む。一部の実施形態では、バリアントFc領域は、EUナンバリングシステムによるL234A、L235A、G237A、P238S、H268A、A330S、およびP331S(IgG1)を含むIgG1 Fc領域を含む。一部の実施形態では、バリアントFc領域は、EUナンバリングシステムによるL234A、L235A、およびP329Aを含むIgG1 Fc領域を含む。一部の実施形態では、バリアントFc領域は、EUナンバリングシステムによるG236RおよびL328Rを含むIgG1 Fc領域を含む。一部の実施形態では、バリアントFc領域は、EUナンバリングシステムによるG237Aを含むIgG1 Fc領域を含む。一部の実施形態では、バリアントFc領域は、EUナンバリングシステムによるF241Aを含むIgG1 Fc領域を含む。一部の実施形態では、バリアントFc領域は、EUナンバリングシステムによるV264Aを含むIgG1 Fc領域を含む。一部の実施形態では、バリアントFc領域は、EUナンバリングシステムによるD265Aを含むIgG1 Fc領域を含む。一部の実施形態では、バリアントFc領域は、EUナンバリングシステムによるD265AおよびN297Aを含むIgG1 Fc領域を含む。一部の実施形態では、バリアントFc領域は、EUナンバリングシステムによるD265AおよびN297Gを含むIgG1 Fc領域を含む。一部の実施形態では、バリアントFc領域は、EUナンバリングシステムによるD270Aを含むIgG1 Fc領域を含む。一部の実施形態では、バリアントFc領域は、EUナンバリングシステムによるN297Aを含むIgG1 Fc領域を含む。一部の実施形態では、バリアントFc領域は、EUナンバリングシステムによるN297Gを含むIgG1 Fc領域を含む。一部の実施形態では、バリアントFc領域は、EUナンバリングシステムによるN297Dを含むIgG1 Fc領域を含む。一部の実施形態では、バリアントFc領域は、EUナンバリングシステムによるN297Qを含むIgG1 Fc領域を含む。一部の実施形態では、バリアントFc領域は、EUナンバリングシステムによるP329Aを含むIgG1 Fc領域を含む。一部の実施形態では、バリアントFc領域は、EUナンバリングシステムによるP329Gを含むIgG1 Fc領域を含む。一部の実施形態では、バリアントFc領域は、EUナンバリングシステムによるP329Rを含むIgG1 Fc領域を含む。一部の実施形態では、バリアントFc領域は、EUナンバリングシステムによるA330Lを含むIgG1 Fc領域を含む。一部の実施形態では、バリアントFc領域は、EUナンバリングシステムによるP331Aを含むIgG1 Fc領域を含む。一部の実施形態では、バリアントFc領域は、EUナンバリングシステムによるP331Sを含むIgG1 Fc領域を含む。一部の実施形態では、バリアントFc領域はIgG2 Fc領域を含む。一部の実施形態では、バリアントFc領域はIgG4 Fc領域を含む。一部の実施形態では、バリアントFc領域は、EUナンバリングシステムによるS228Pを含むIgG4 Fc領域を含む。一部の実施形態では、バリアントFc領域は、EUナンバリングシステムによるS228P、F234A、およびL235Aを含むIgG4 Fc領域を含む。一部の実施形態では、バリアントFc領域は、IgG2~IgG4交差サブクラス(IgG2/G4)Fc領域を含む。一部の実施形態では、バリアントFc領域は、IgG2~IgG3交差サブクラスFc領域を含む。一部の実施形態では、バリアントFc領域は、EUナンバリングシステムによるH268Q、V309L、A330S、およびP331Sを含むIgG2 Fc領域を含む。一部の実施形態では、バリアントFc領域は、EUナンバリングシステムによるV234A、G237A、P238S、H268A、V309L、A330S、およびP331Sを含むIgG2 Fc領域を含む。一部の実施形態では、抗体は、高マンノースグリコシル化を含むFc領域を含む。
【0158】
一部の実施形態では、野生型Fc領域と比して1つまたは複数の突然変異は、EUナンバリングによるL234A、L235A、およびP329Gを含むか、またはそれらからなる。一部の実施形態では、野生型Fc領域と比して1つまたは複数の突然変異は、EUナンバリングによるL234A、L235A、G237A、A330S、およびP331Sを含むか、またはそれらからなる。一部の実施形態では、野生型Fc領域と比して1つまたは複数の突然変異は、N297A/Q/G、L235A/G237A/E318A、L234A/L235A、G236R/L328R、S298G/T299A、L234F/L235E/P331S、H268Q/V309L/A330S/P331S、L234A/L235A/P329G、V234A/G237A/P238S/H268A/V309L/A330S/P331S、およびL234F/L235E/D265Aからなる群から選択される。
【0159】
一部の実施形態では、バリアントFc領域は、EUナンバリングシステムによるS228P置換を含むIgG4 Fc領域を含む。一部の実施形態では、バリアントFc領域は、EUナンバリングシステムによるA330S置換を含むIgG4 Fc領域を含む。一部の実施形態では、バリアントFc領域は、EUナンバリングシステムによるP331S置換を含むIgG4 Fc領域を含む。
【0160】
一部の実施形態では、バリアントFc領域は、EUナンバリングシステムによるA330S置換を含むIgG2 Fc領域を含む。一部の実施形態では、バリアントFc領域は、EUナンバリングシステムによるP331S置換を含むIgG2 Fc領域を含む。一部の実施形態では、バリアントFc領域は、EUナンバリングシステムによる234A置換を含むIgG2 Fc領域を含む。一部の実施形態では、バリアントFc領域は、EUナンバリングシステムによる237A置換を含むIgG2 Fc領域を含む。
【0161】
一部の実施形態では、バリアントFc領域はIgG1 Fc領域を含み、1つまたは複数の突然変異は、EUナンバリングよる、(a)297A、297Q、297G、もしくは297D、(b)279F、279K、もしくは279L、(c)228P、(d)235A、235E、235G、235Q、235R、もしくは235S、(e)237A、237E、237K、237N、もしくは237R、(f)234A、234V、もしくは234F、(g)233P、(h)328A、(i)327Qもしくは327T、(j)329A、329G、329Y、もしくは329R、(k)331S、(l)236Fもしくは236R、(m)238A、238E、238G、238H、238I、238V、238W、もしくは238Y、(n)248A、(o)254D、254E、254G、254H、254I、254N、254P、254Q、254T、もしくは254V、(p)255N、(q)256H、256K、256R、もしくは256V、(r)264S、(s)265H、265K、265S、265Y、もしくは265A、(t)267G、267H、267I、もしくは267K、(u)268K、(v)269Nもしくは269Q、(w)270A、270G、270M、または270N、(x)271T、(y)272N、(z)292E、292F、292G、もしくは292I、(aa)293S、(bb)301W、(cc)304E、(dd)311E、311G、もしくは311S、(ee)316F、(ff)328V、(gg)330R、(hh)339Eもしくは339L、(ii)343Iもしくは343V、(jj)373A、373G、もしくは373S、(kk)376E、376W、もしくは376Y、(ll)380D、(mm)382Dもしくは382P、(nn)385P、(oo)424H、424M、もしくは424V、(pp)434I、(qq)438G、(rr)439E、439H、もしくは439Q、(ss)440A、440D、440E、440F、440M、440T、もしくは440V、(tt)K322A、(uu)L235E、(vv)L234AおよびL235A、(ww)L234A、L235A、およびG237A、(xx)L234A、L235A、およびP329G、(yy)L234F、L235E、およびP331S、(zz)L234A、L235E、およびG237A、(aaa)L234A、L235E、G237A、およびP331S、(bbb)L234A、L235A、G237A、P238S、H268A、A330S、およびP331S、(ccc)L234A、L235A、およびP329A、(ddd)G236RおよびL328R、(eee)G237A、(fff)F241A、(ggg)V264A、(hhh)D265A、(iii)D265AおよびN297A、(jjj)D265AおよびN297G、(kkk)D270A、(lll)A330L、(mmm)P331AもしくはP331S、または(nnn)E233P、(ooo)L234A、L235E、G237A、A330S、およびP331S、あるいは(ppp)(a)~(uu)のあらゆる組合せを含む。
【0162】
一部の実施形態では、バリアントFc領域は、配列番号311に明記されるアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、複合体結合分子において、CD19抗原結合成分は、配列番号301または304に明記される重鎖免疫グロブリン配列を含み、CD38結合成分は、配列番号302、303、305~310に明記される重鎖免疫グロブリン配列を含む。
【0163】
フレームワーク領域
重鎖および軽鎖のフレームワーク領域内で行われる生殖系列配列に対する突然変異または復帰突然変異は、本明細書に記載されるCD19およびCD38結合分子の薬物動態的および薬力学的特性を改善するのに都合の良い可能性がある。特定の事例では、重鎖および/または軽鎖内で行われる生殖系列配列に対する突然変異または復帰突然変異は、CD19およびCD38結合分子(例えば本明細書に記載の二特異性抗体)の安定性を改善する。特定の事例では、重鎖および/または軽鎖内で行われる生殖系列配列に対する突然変異または復帰突然変異は、CD19およびCD38結合分子(例えば本明細書に記載の二特異性抗体)の免疫原性を低減させる。したがって、一部の実施形態では、重鎖および/または軽鎖のフレームワーク領域は、生殖系列配列に戻る1、2、3、4、5、8、または10個の突然変異または復帰突然変異を含む。一部の実施形態では、重鎖および/または軽鎖のフレームワーク領域は、生殖系列配列に戻る1個の突然変異または復帰突然変異から、生殖系列配列に戻る10個の突然変異または復帰突然変異までを含む。一部の実施形態では、重鎖および/または軽鎖のフレームワーク領域は、生殖系列配列に戻る最低1個の突然変異または復帰突然変異を含む。一部の実施形態では、重鎖および/または軽鎖のフレームワーク領域は、生殖系列配列に戻る最大10個の突然変異または復帰突然変異を含む。一部の実施形態では、重鎖および/または軽鎖のフレームワーク領域は、生殖系列配列に戻る1個の突然変異もしくは復帰突然変異から生殖系列配列に戻る2個の突然変異もしくは復帰突然変異まで、生殖系列配列に戻る1個の突然変異もしくは復帰突然変異から生殖系列配列に戻る3個の突然変異もしくは復帰突然変異まで、生殖系列配列に戻る1個の突然変異もしくは復帰突然変異から生殖系列配列に戻る4個の突然変異もしくは復帰突然変異まで、生殖系列配列に戻る1個の突然変異もしくは復帰突然変異から生殖系列配列に戻る5個の突然変異もしくは復帰突然変異まで、生殖系列配列に戻る1個の突然変異もしくは復帰突然変異から生殖系列配列に戻る8個の突然変異もしくは復帰突然変異まで、生殖系列配列に戻る1個の突然変異もしくは復帰突然変異から生殖系列配列に戻る10個の突然変異もしくは復帰突然変異まで、生殖系列配列に戻る2個の突然変異もしくは復帰突然変異から生殖系列配列に戻る3個の突然変異もしくは復帰突然変異まで、生殖系列配列に戻る2個の突然変異もしくは復帰突然変異から生殖系列配列に戻る4個の突然変異もしくは復帰突然変異まで、生殖系列配列に戻る2個の突然変異もしくは復帰突然変異から生殖系列配列に戻る5個の突然変異もしくは復帰突然変異まで、生殖系列配列に戻る2個の突然変異もしくは復帰突然変異から生殖系列配列に戻る8個の突然変異もしくは復帰突然変異まで、生殖系列配列に戻る2個の突然変異もしくは復帰突然変異から生殖系列配列に戻る10個の突然変異もしくは復帰突然変異まで、生殖系列配列に戻る3個の突然変異もしくは復帰突然変異から生殖系列配列に戻る4個の突然変異もしくは復帰突然変異まで、生殖系列配列に戻る3個の突然変異もしくは復帰突然変異から生殖系列配列に戻る5個の突然変異もしくは復帰突然変異まで、生殖系列配列に戻る3個の突然変異もしくは復帰突然変異から生殖系列配列に戻る8個の突然変異もしくは復帰突然変異まで、生殖系列配列に戻る3個の突然変異もしくは復帰突然変異から生殖系列配列に戻る10個の突然変異もしくは復帰突然変異まで、生殖系列配列に戻る4個の突然変異もしくは復帰突然変異から生殖系列配列に戻る5個の突然変異もしくは復帰突然変異まで、生殖系列配列に戻る4個の突然変異もしくは復帰突然変異から生殖系列配列に戻る8個の突然変異もしくは復帰突然変異まで、生殖系列配列に戻る4個の突然変異もしくは復帰突然変異から生殖系列配列に戻る10個の突然変異もしくは復帰突然変異まで、生殖系列配列に戻る5個の突然変異もしくは復帰突然変異から生殖系列配列に戻る8個の突然変異もしくは復帰突然変異まで、生殖系列配列に戻る5個の突然変異もしくは復帰突然変異から生殖系列配列に戻る10個の突然変異もしくは復帰突然変異まで、または生殖系列配列に戻る8個の突然変異もしくは復帰突然変異から生殖系列配列に戻る10個の突然変異もしくは復帰突然変異までを含む。一部の実施形態では、重鎖および/または軽鎖のフレームワーク領域は、生殖系列配列に戻る1個の突然変異もしくは復帰突然変異、生殖系列配列に戻る2個の突然変異もしくは復帰突然変異、生殖系列配列に戻る3個の突然変異もしくは復帰突然変異、生殖系列配列に戻る4個の突然変異もしくは復帰突然変異、生殖系列配列に戻る5個の突然変異もしくは復帰突然変異、生殖系列配列に戻る8個の突然変異もしくは復帰突然変異、または生殖系列配列に戻る10個の突然変異もしくは復帰突然変異を含む。一部の実施形態では、CD38結合部分は、配列番号5に明記される重鎖フレームワーク領域を含む。一部の実施形態では、CD結合部分は、配列番号6または7に明記される重鎖フレームワーク領域を含む。
【0164】
薬学的に許容可能な賦形剤、担体、および希釈剤
本開示の複合体結合分子を含む組成物は、1つまたは複数の薬学的に許容可能な賦形剤、担体、および希釈剤を含む医薬組成物中に含まれる。特定の実施形態では、本開示の抗体は、滅菌および/または等張溶液中に懸濁されて投与される。特定の実施形態では、溶液は約0.9%のNaClを含む。特定の実施形態では、溶液は約5.0%のデキストロースを含む。特定の実施形態では、溶液は、緩衝剤、例えば、アセテート、シトラート、ヒスチジン、スクシネート、ホスフェート、ビカーボネート、およびヒドロキシメチルアミノメタン(Tris)、界面活性剤、例えば、ポリソルベート80(Tween80)、ポリソルベート20(Tween20)、およびポロキサマー188、ポリオール/二糖/多糖、例えば、グルコース、デキストロース、マンノース、マンニトール、ソルビトール、スクロース、トレハロース、およびデキストラン40、アミノ酸、例えば、グリシンもしくはアルギニン、抗酸化剤、例えば、アスコルビン酸、メチオニン、またはキレート剤、例えば、EDTAもしくはEGTAのうち、1つまたは複数をさらに含む。
【0165】
抗体の投与のための皮下製剤は、緩衝剤、例えば、アセテート、シトラート、ヒスチジン、スクシネート、ホスフェート、ビカーボネート、およびヒドロキシメチルアミノメタン(Tris)、界面活性剤、例えば、ポリソルベート80(Tween80)、ポリソルベート20(Tween20)、およびポロキサマー188、ポリオール/二糖/多糖、例えば、グルコース、デキストロース、マンノース、マンニトール、ソルビトール、スクロース、トレハロース、およびデキストラン40、アミノ酸、例えば、グリシンもしくはアルギニン、抗酸化剤、例えば、アスコルビン酸、メチオニン、またはキレート剤、例えば、EDTAもしくはEGTAのうち、1つまたは複数を含むことができる。付加的に、例えば約2,000U/ml~約12,000U/mlの濃度のヒアルロニダーゼなど、注射部位における疼痛を緩和する化合物または分子を含めることができる。
【0166】
特定の実施形態では、本開示の複合体結合分子は、凍結乾燥されて輸送/貯蔵され、投与前に再構成される。特定の実施形態では、凍結乾燥された抗体製剤は、マンニトール、ソルビトール、スクロース、トレハロース、デキストラン40、またはそれらの組合せなどの増量剤を含む。凍結乾燥製剤は、ガラスまたは他の好適な非反応性材料で構成されるバイアル中に含有することができる。抗体は、製剤化される場合、再構成されるか否かによらず、特定のpH、一般に7.0未満のpHに緩衝化され得る。特定の実施形態では、pHは、4.5~6.5、4.5~6.0、4.5~5.5、4.5~5.0、または5.0~6.0の間とすることができる。
【0167】
また本明細書には、好適な容器にある本明細書に記載の複合体結合分子のうち1つまたは複数と、使用のための指示書、希釈剤、賦形剤、担体、および投与用のデバイスから選択される1つまたは複数の追加の成分とを含む、キットも記載される。
【0168】
特定の実施形態では、本明細書には、癌処置を調製する方法であって、1つまたは複数の薬学的に許容可能な賦形剤、担体、または希釈剤と本開示の複合体結合分子とを混合する工程を含む、方法が記載される。特定の実施形態では、本明細書には、貯蔵または輸送のために癌処置を調製する方法であって、1つまたは複数の本開示の抗体を凍結乾燥する工程を含む、方法が記載される。
【0169】
産生と製造
本明細書に記載の複合体結合分子(例えば二特異性抗体)をコードする核酸は、好適な細胞を感染、トランスフェクト、形質転換、またはその他の方法で核酸に対してトランスジェニックとすることで、商業的または治療的使用のための複合体結合分子の産生を可能にするために使用することができる。大規模の細胞培養から抗体を産生するための標準的な細胞株および方法は、当該技術分野で公知である。例えば、Liらによる「Cell culture processes for monoclonal antibody production.」、Mabs.2010 Sep-Oct;2(5):466~477頁を参照されたい。
【0170】
特定の実施形態では、核酸配列は、本明細書に開示される複合体結合分子または二特異性抗体をコードする。特定の実施形態では、複合体結合分子をコードするポリヌクレオチド配列は、真核性調節配列に操作可能に連結される。一部の実施形態では、細胞は核酸配列を含む。
【0171】
一部の実施形態では、細胞は、本明細書に開示される複合体結合分子をコードする核酸を含む。特定の実施形態では、細胞は原核細胞を含む。特定の実施形態では、原核細胞は大腸菌細胞である。特定の実施形態では、細胞は真核細胞を含む。特定の実施形態では、真核細胞は、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、NS0マウス骨髄腫細胞、またはヒトPER.C6細胞である。
【0172】
特定の実施形態では、本明細書には、複合体結合分子を作製する方法であって、複合体結合分子をコードする核酸を含む細胞を、複合体結合分子の産生および分泌を可能とするのに十分なin vitro条件下で培養する工程を含む方法が記載される。
【0173】
特定の実施形態では、本明細書には、(a)ゲノム位置において組み込まれた本明細書に記載の抗体をコードする核酸を含む哺乳動物細胞株と、(b)凍結保護剤とを含むマスターセルバンクが記載される。特定の実施形態では、凍結保護剤はグリセロールを含む。特定の実施形態では、マスターセルバンクは、(a)ゲノム位置において組み込まれた複合体結合分子をコードする核酸を含むCHO細胞株と、(b)凍結保護剤とを含む。特定の実施形態では、凍結保護剤はグリセロールを含む。特定の実施形態では、マスターセルバンクは、液体窒素による凍結に耐えることができる好適なバイアルまたは容器中に包含される。
【0174】
また本明細書には、本明細書に記載の複合体結合分子を作製する方法が記載される。かかる方法は、複合体結合分子をコードする核酸を含む細胞または細胞株を細胞培養培地中、複合体結合分子の発現および分泌を可能とするのに十分な条件下でインキュベートする工程と、さらに細胞培養培地から複合体結合分子を採取する工程とを含む。採取は、生細胞、細胞デブリ、非複合体結合分子タンパク質またはポリペプチド、望ましくない塩、緩衝剤、および培地成分を除去するための1つまたは複数の精製工程をさらに含むことができる。特定の実施形態では、追加の精製工程は、遠心分離、超遠心分離、プロテインA、プロテインG、プロテインA/G、もしくはプロテインL精製、および/またはイオン交換クロマトグラフィーを含む。
【0175】
使用方法
免疫調節細胞による免疫応答の抑制は、腫瘍の成長、遊走、および転移を促すことができる。免疫抑制または負の免疫調節は、免疫応答の全体的または部分的な低減をもたらすプロセスまたは経路を含むことができる。免疫抑制は、全身性のもの、または対象もしくは患者の身体の特有の部位(例えば腫瘍微環境)、組織、もしくは領域に局在化されたものとすることができる。B細胞は主に、病原体の中和を促す抗体の産生を介する正の免疫モジュレータとして公知であるが、特定のB細胞集団は、免疫応答を抑制または負に調節するように機能することができる。そのようなB細胞集団は、1つより多くの細胞表面バイオマーカの発現により定義することができる。免疫抑制性B細胞またはB細胞集団は、B細胞系列表面バイオマーカおよび抑制性B細胞表面バイオマーカを含むことができる。B細胞系列表面マーカは、CD19、CD138、IgA、またはCD45を含むことができる。B細胞表面マーカは、IgD、CD1、CD5、CD21、CD24、CD38、HM13、SLAMF7、AQP3、または潜在型TGF-β(例えば、TGF-βLAP)を含むことができる。免疫抑制性B細胞または免疫抑制性B細胞集団は、サイトカインなどの抗炎症性メディエータの分泌を通じて、T細胞を含む細胞サブタイプの多様なセットを抑制することにより免疫応答を抑制するように機能することができる。免疫抑制性B細胞はまた、リンパ様構造を負に調節、および/またはT細胞の制御性T細胞への変換を促すことによって、免疫応答の減弱において機能することができる。このため、本明細書には、免疫抑制性B細胞集団を標的化して応答を有効に調節するための方法が開示される。
【0176】
免疫抑制性B細胞またはB細胞集団の標的化は、腫瘍または腫瘍形成性細胞に対する免疫活性化または免疫応答の正の調節をもたらすことができる。本明細書には、癌または腫瘍に罹患した個体を処置する方法であって、癌または腫瘍に罹患した個体に本明細書に開示される複合体結合分子を投与する工程を含む方法が提供される。また本明細書には、腫瘍または癌に罹患した個体の腫瘍中にあるか、それに隣接するか、またはその周囲にある免疫抑制性B細胞を低減させる方法であって、腫瘍または癌に罹患した個体に本明細書に開示される複合体結合分子を投与することによって、腫瘍中にあるか、それに隣接するか、またはその周囲にある免疫抑制性B細胞を低減させる工程を含む、方法が提供される。さらに、対象中の免疫抑制性B細胞を複合体結合分子と接触させる方法であって、複合体結合分子を対象に投与する工程を含む方法が開示される。特定の実施形態では、対象は腫瘍または癌を有する。
【0177】
腫瘍もしくは癌の種類、サブタイプ、または形態は、処置の戦略および方法における重要な因子であり得る。一部の実施形態では、癌または腫瘍は、血液癌である。一部の実施形態では、癌または腫瘍は、固形組織癌である。一部の実施形態では、癌は、乳癌、前立腺癌、膵臓癌、肺癌、腎臓癌、胃癌、食道癌、皮膚癌、大腸癌、または頭頸部癌を含む。
【0178】
免疫抑制性B細胞は抗腫瘍免疫応答を抑制することができる。一部の実施形態では、腫瘍または癌は、B細胞系列表面バイオマーカおよび抑制性B細胞表面バイオマーカを含むB細胞を含む。B細胞系列表面マーカは、CD19、CD138、IgA、またはCD45を含むことができる。B細胞表面マーカは、IgD、CD1、CD5、CD21、CD24、CD38、HM13、SLAMF7、AQP3、またはTGFBを含むことができる。一部の実施形態では、B細胞表面マーカはCD19(例えばCD19+)およびCD38(例えばCD38+)を含む。一部の実施形態では、腫瘍浸潤性B細胞または免疫抑制性B細胞は、CD19+、CD38+のB細胞を含む。
【0179】
特定の実施形態では、本明細書には癌または腫瘍の処置に有用な二特異性抗体が開示される。処置は、処置されている状態の改善または軽快を試みる方法を指す。癌に関して、処置としては、腫瘍体積の低減、腫瘍体積の成長の低減、無増悪生存期間の増加、または全体的な平均余命の増加が挙げられるが、これらに限定されない。特定の実施形態では、処置は、処置されている癌の寛解に影響する。特定の実施形態では、処置は、以前に処置された癌もしくは腫瘍の再発または進行を防止することが意図される予防用量または維持用量としての使用を包含する。すべての個体が施された処置に対して等しくまたは確実に応答するわけではないことが当業者により理解されるが、それにもかかわらずこれらの個体は処置されると考慮される。
【0180】
特定の実施形態では、癌または腫瘍は、固形の癌または腫瘍である。特定の実施形態では、癌または腫瘍は、血液の癌または腫瘍である。特定の実施形態では、癌または腫瘍は、乳房、心臓、肺、小腸、結腸、脾臓、腎臓、膀胱、頭部、頸部、卵巣、前立腺、脳、膵臓、皮膚、骨、骨髄、血液、胸腺、子宮、精巣、および肝臓の腫瘍を含む。特定の実施形態では、本発明の抗体により処置できる腫瘍は、腺腫、腺癌、血管肉腫、星細胞腫、上皮癌、胚芽腫、神経膠芽腫、神経膠腫、血管腫内皮腫、血管腫、血腫、肝芽細胞腫、白血病、リンパ腫、髄芽細胞腫、黒色腫、神経芽細胞腫、骨肉腫、網膜芽細胞腫、横紋筋肉腫、肉腫、および/または奇形腫を含む。特定の実施形態では、腫瘍/癌は、末端黒子型黒色腫、光線性角化症、腺癌、腺様嚢胞癌、腺腫、腺肉腫、腺扁平上皮癌、星細胞腫瘍、バルトリン腺癌、 基底細胞癌、気管支腺癌、毛細血管カルチノイド(capillary carcinoid)、癌腫、癌肉腫、胆管癌、軟骨肉腫、嚢胞腺腫、内胚葉洞腫瘍、子宮内膜過形成、子宮内膜間質肉腫、類内膜腺癌、上衣肉腫(ependymal sarcoma)、ユーイング肉腫(Swing’s sarcoma)、限局性結節性過形成、ガストリノーマ(gastronoma)、生殖系列腫瘍、膠芽腫、グルカゴノーマ、血管芽腫、血管内皮腫、血管腫、肝臓腺腫、肝臓腺腫症、肝細胞癌、インスリナイト(insulinite)、上皮内異常増殖、上皮内扁平細胞異常増殖、浸潤性扁平細胞癌、大細胞癌、脂肪肉腫、肺癌、リンパ芽球性白血病、リンパ球性白血病、平滑筋肉腫、黒色腫、悪性黒色腫、悪性中皮腫、神経鞘腫瘍、髄芽腫、髄上皮腫、中皮腫、粘膜上皮癌、骨髄性白血病、神経芽腫、神経上皮腺癌、結節性黒色腫、骨肉腫、卵巣癌、乳頭状漿液性腺癌、下垂体腫瘍、形質細胞腫、偽肉腫、前立腺癌、肺芽細胞腫、腎細胞癌、網膜芽腫、横紋筋肉腫、肉腫、漿液性癌腫、扁平細胞癌、小細胞癌、軟組織癌、ソマトスタチン分泌腫瘍、扁平癌、扁平細胞癌、未分化癌、ぶどう膜黒色腫、疣状癌、膣/外陰部癌、VIPオーマ(VIPpoma)、およびウィルムス腫瘍の群から選択される。特定の実施形態では、本発明の1つまたは複数の抗体で処置される腫瘍/癌は、脳腫瘍、頭頸部癌、大腸癌、急性骨髄性白血病、プレB細胞急性リンパ芽球性白血病、膀胱癌、星細胞種、好ましくはグレードII、III、もしくはIVの星細胞種、膠芽腫、多形膠芽腫、小細胞癌、および非小細胞癌、好ましくは、非小細胞肺癌、肺腺癌、転移性黒色腫、アンドロゲン非依存性転移性腺癌、アンドロゲン依存性転移性腺癌、前立腺癌、および乳癌、好ましくは乳腺管癌、および/または乳癌を含む。特定の実施形態では、本開示の抗体で処置される癌は、膠芽腫を含む。特定の実施形態では、本開示の1つまたは複数の抗体で処置される癌は、膵臓癌を含む。特定の実施形態では、本開示の1つまたは複数の抗体で処置される癌は、卵巣癌を含む。特定の実施形態では、本開示の1つまたは複数の抗体で処置される癌は、肺癌を含む。特定の実施形態では、本開示の1つまたは複数の抗体で処置される癌は、前立腺癌を含む。特定の実施形態では、本開示の1つまたは複数の抗体で処置される癌は、結腸癌を含む。特定の実施形態では、処置される癌は、膠芽腫、膵臓癌、卵巣癌、結腸癌、前立腺癌、または肺癌を含む。特定の実施形態では、癌は、他の処置に対して難治性である。特定の実施形態では、処置される癌は、再発性である。特定の実施形態では、癌は、再発性/難治性の膠芽腫、膵臓癌、卵巣癌、結腸癌、前立腺癌、または肺癌を含む。
【0181】
特定の実施形態では、本明細書中の複合体結合分子で処置される癌および/または腫瘍は、成熟B細胞新生物:慢性リンパ球性白血病、小リンパ球性リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、非ホジキンリンパ腫(びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、濾胞性リンパ腫)、粘膜関連リンパ組織(MALT)リンパ腫、縦隔(胸腺)大細胞型B細胞リンパ腫、リンパ形質細胞性リンパ腫およびワルデンシュトレームマクログロブリン血症、結節辺縁帯B細胞リンパ腫、脾辺縁帯リンパ腫、節外性辺縁帯B細胞リンパ腫、血管内大細胞型B細胞リンパ腫、原発性滲出性リンパ腫、バーキットリンパ腫、または原発性中枢神経系リンパ腫である。
【0182】
特定の実施形態では、本明細書中の複合体結合分子で処置される癌および/または腫瘍は、T細胞非ホジキンリンパ腫、T細胞ALL、菌状息肉症、未分化大細胞リンパ腫、末梢T細胞リンパ腫、Tリンパ球性白血病(T-ALL)、急性骨髄芽球性白血病、急性単球性白血病などのT細胞新生物である。
【0183】
特定の実施形態では、抗体は、例えば、皮下、腹腔内、静脈内、筋肉内、腫瘍内、または脳内など、抗体を含有する医薬組成物の投与に好適なあらゆる経路によって、その抗体を必要とする対象に投与することができる。特定の実施形態では、抗体は静脈内投与される。特定の実施形態では、抗体は皮下投与される。特定の実施形態では、抗体は腫瘍内投与される。特定の実施形態では、抗体は、好適な投与スケジュール、例えば、毎週、週2回、毎月、月2回、2週間に1回、3週間に1回、または月1回などで投与される。特定の実施形態では、抗体は、3週間に1回投与される。抗体は、あらゆる治療有効量で投与することができる。特定の実施形態では、治療上許容可能な量は、約0.1mg/kg~約50mg/kgの間である。特定の実施形態では、治療上許容可能な量は、約1mg/kg~約40mg/kgの間である。特定の実施形態では、治療上許容可能な量は、約5mg/kg~約30mg/kgの間である。治療有効量には、処置される疾患または苦痛と関連付けられる1つまたは複数の症状を軽快させるのに十分な量が挙げられる。
【実施例
【0184】
以下の実施例は、実例的な目的のためにのみ含まれ、本発明の範囲を限定することは意図されない。
【0185】
実施例1:Octet結合データ
バイオレイヤー干渉法を使用して、親抗体および二特異性抗体の結合親和性を判定した。Octet Red96上、25℃で、0.1%のBSA、1XPBS、0.02%のTween-20、0.05%のNaN3からなるアッセイ緩衝液を使用して、結合実験を行った。抗体を抗hIgG Fc Captureバイオセンサに300秒間かけてロードした。リガンドをロードしたセンサを、会合(CD19では200秒、CD38では150秒)、続いて解離(CD19では600秒、CD38では400秒)のために抗原の段階希釈液(300nMで開始:CD19では2倍段階希釈液、CD38では3倍段階希釈液)に浸漬した。一価(1:1)結合モデルを使用して速度定数を算出した。
【0186】
親被験物質は以下を含んでいた:
【0187】
851A=抗CD19 3C10
【0188】
851B=抗CD19 3C10重鎖&抗CD38 003軽鎖
【0189】
851C=抗CD38 003重鎖&抗CD19 3C10軽鎖
【0190】
851D=抗CD38 003
【0191】
851E=抗CD19 3C10(scFv-Fc)2
【0192】
851F=抗CD38 003(scFv-Fc)2
【0193】
抗CD19 3C10 VHおよびVLを有する2つの親抗体(851A/851E)は、同様のKDでCD19に結合した。抗CD38 VLでの抗CD19 3C10 VLの置換(851B)は、CD19に対する結合の、約5倍の低減をもたらした。予想されたように、抗CD38 003 VHおよびVLを有する親抗体(851D/851F)は、CD19に結合しなかった。
【0194】
表2は、結合データを示す。抗CD38 003 VHおよびVLを有する2つの親抗体(pasrental antibodies)(851D/851F)は、同様のKDでCD38に結合した。抗CD19 VLでの抗CD38 003 VLの置換(851C)は、CD38に対する結合の、大幅な低減をもたらした。予想されたように、抗CD19 VHおよびVLを有する親抗体(851A/851E)はCD38に結合せず、851BもCD38に結合しなかった。このデータは、抗CD38 003 VLのみが抗CD19 3C10 VHに対する共通軽鎖として機能できることを示している。
【0195】
【表2】
【0196】
二特異性抗体(フォーマット)被験物質は以下を含んでいた:
【0197】
BS1=1:1:2の比の003HC:3C10HC:003LC(共通軽鎖)
【0198】
BS1b=2:1:2の比の003HC:3C10HC:003LC(共通軽鎖)
【0199】
BS2=1:1:1の比の003Knob:3C10scFvHole:003LC(Fab-Fc:scFv-Fc二特異性IgG1)
【0200】
BS2b=4:1:4の比の003Knob:3C10scFvHole:003LC(Fab-Fc:scFv-Fc二特異性IgG1)
【0201】
BS3=1:1:1の比の3C10scFv-003Fab-FcKnob:FcHole:003LC)(scFv-Fab-Fc:Fc二特異性IgG1)
【0202】
BS4=1:1:1の比の003Fab-FcKnob-3C10scFv:FcHole(Fab-Fc-scFv:Fc二特異性IgG1)
【0203】
BS4b=4:1:4の比の003Fab-FcKnob-3C10scFv:FcHole(Fab-Fc-scFv:Fc二特異性IgG1)
【0204】
CM1=1:1:2の比の3C10Hole:VZVKnob:003LC抗CD19対照抗体
【0205】
CM1b=1:3:3の比の3C10Hole:VZVKnob:003LC
【0206】
CM2=1:1:2の比の003Knob:VZVHole:003LC抗CD38対照抗体
【0207】
CM2b=3:1:3の比の003Knob:VZVHole:003LC
【0208】
表3は、単一抗原のフォーマットにおける二特異性被験物質に関する結合データを示す。二特異性抗体BS1/BS2/BS4は、親抗体の4倍以内のKDで両標的抗原に結合した(灰色の陰影で示す)。BS3はCD19にのみ結合し、CD38には結合せず、抗CD38 Fab結合部位が抗CD19 scFv N末端融合物により遮断されたか、または抗CD38には結合に遊離VH N末端が必要とされることのいずれかが示唆される。1アームの対照抗体(CM1、CM2)は、それらの意図した標的抗原にのみ結合した。
【0209】
【表3】
【0210】
2抗原フォーマットでは、抗体を抗hIgG Fc Captureバイオセンサに300秒間かけてロードした。リガンドをロードしたセンサを、500nMの第1の抗原で500秒間、続いて300nMの第2の抗原で240秒間飽和させた。一価(1:1)結合モデルを使用して速度定数を算出した。表5は、二特異性抗体BS1/BS2/BS4が、親抗体(851B、851D、および851E)の2倍以内のka(1/Ms)で両標的抗原に同時に結合できたことを示す。1抗原フォーマットの場合と同様に、BS3はCD19にのみ結合し、CD38に結合しなかった。
【0211】
【表4-1】
【0212】
【表4-2】
【0213】
CD19および/またはCD38に対する結合能についてバリアントをさらに試験した。結合実験をOctet Red上、25℃で行った。抗体を抗hIgG Fc Capture(AHC)バイオセンサに300秒間かけてロードした。リガンドをロードしたセンサを、会合のためにCD19で240秒間およびCD38で150秒間、続いて解離のためにCD19で600秒間およびCD38で130秒間、抗原(CD19およびCD38)の2倍段階希釈液(300nMで開始)に浸漬した。一価(1:1)結合モデルを使用して速度定数を算出した。表5は、抗CD38 CDRH2バリアントの結合を示す。表6は、CD38軽鎖W32Hバリアントの結合を示す。表8は、CD19重鎖フレームワーク突然変異体A84S A108Lの結合を示す。
【0214】
【表5】
【0215】
【表6】
【0216】
【表7】
【0217】
実施例2:細胞結合試験
細胞結合試験のプロトコル:5つの細胞株(HEK293-CD19、HEK293-CD38、HEK293-CD19/CD38、Daudi、およびREH)を、無処置の対照に加えて、133nM、続いて3倍系列希釈(計7点)の被験物質により、三通りにインキュベートした。HEK293細胞株を一過的にトランスフェクトした。
【0218】
Daudi、Raji、およびREH細胞株上でのCD19およびCD38の細胞表面発現を評価する試験を行った。PEにコンジュゲートされた市販で入手可能な抗体を用いて細胞を三通りに染色し、洗浄し、フローサイトメトリーによって取得した。細胞表面上での分子発現を定量化するべく、Bangs Laboratories製のQuantum Simply Cellular anti-mouse IgG kit(カタログ#815-A)を使用して、分子数/細胞値に対してMFIを補間するための標準曲線を生成した(表8)。
【0219】
【表8】
【0220】
図12Aは、親抗体(851A、851B、851D)ならびに2つの対照二特異性抗体(それぞれ、CD19またはCD38に対する1つのアーム、および水痘帯状疱疹ウイルスに対する他のアームを有する)のDaudi細胞に対する結合を示している。Daudi細胞は表面上に約100万コピーのCD38を有するがCD19を約200,000コピーしか有していないことを考慮すると、図12Aは、抗CD38 851Dおよび38K-VZVHの結合は効率的であるが、抗CD19 851A、851B、19H-VZVKの結合は中等度に過ぎないことを示している。2つのCD38結合Fabを有する851Dは、CD38に対して1つの結合Fabしか有していない38K-VZVHよりも約5倍良好に結合することに留意されたい。
【0221】
図12Bは、二特異性抗体BS1、BS2、およびBS4のDaudi細胞に対する結合を示している。CD38およびCD19の両方に結合する二特異性抗体のアビディティは、CD38にのみ結合する38K-VZVHに対するそれらの結合を比較することによって明らかとなる。
【0222】
図13Aは、親抗体(851A、851B、851D)ならびに2つの対照二特異性抗体(それぞれ、CD19またはCD38に対する1つのアーム、および水痘帯状疱疹ウイルスに対する他のアームを有する)のREH細胞に対する結合を示している。REH細胞は表面上に約300,000コピーのCD38有するがCD19を約50,000コピーしか有していないことを考慮すると、図13Aは、抗CD38 851Dおよび38K-VZVHの結合は効率的であるが、抗CD19 851A、851B、19H-VZVKの結合は中等度に過ぎないことを示している。MFIの規模は、REH細胞上でのCD38およびCD19の両方の発現レベルが低いので、Daudi細胞と比較して大幅に少ない(図2A図2B)。2つのCD38結合Fabを有する851Dは、CD38に対して1つの結合Fabしか有していない38K-VZVHよりも約5倍良好に結合することに留意されたい。
【0223】
図13Bは、二特異性抗体BS1、BS2、およびBS4の、REH細胞に対する結合を示す。CD38およびCD19の両方に結合する二特異性抗体のアビディティは、CD38にのみ結合する38K-VZVHに対するそれらの結合を比較することによって明らかとなる。
【0224】
図14Aは、親抗体(851A、851B、851D)および2つの対照二特異性抗体(38K-VZVH、19H-VZVK)の、CD19をトランスフェクトされたHEK293細胞に対する結合を示す。予想されたように、2つの抗CD38抗体はこれらの細胞に結合しない。2つのCD19結合Fabを有する851Aおよび851Bは、CD19に対する1つの結合Fabしか有していない19H-VZVKよりも有意に良好に結合することに留意されたい。
【0225】
図14Bは、二特異性抗体BS1、BS2、およびBS4の、CD19をトランスフェクトされたHEK293細胞に対する結合を示す。BS2およびBS$はBS1よりもわずかに良好に結合する。BS1は抗CD38軽鎖を有するので、BS2およびBS4はBS1よりも約10倍良好にCD19に結合する(Octetデータの表を参照)。
【0226】
図15Aは、親抗体(851A、851B、851D)および2つの対照二特異性抗体(38K-VZVH、19H-VZVK)の、CD38をトランスフェクトされたHEK293細胞に対する結合を示す。予想されたように、3つの抗CD19抗体はこれらの細胞に結合しない。2つのCD38結合Fabを有する851Dは、CD38に対して1つの結合Fabしか有していない38K-VZVHよりも良好に結合することに留意されたい。
【0227】
図15Bは、二特異性抗体BS1、BS2、およびBS4の、CD38をトランスフェクトされたHEK293細胞に対する結合を示す。
【0228】
細胞結合試験のプロトコル-非特異的バックグラウンド結合:CHO-SおよびExpi293T細胞株に対する、3つの親モノクローナル抗体(抗CD19クローン851Aおよび851B、ならびに抗CD38クローン851D)、ヒトIgG1アイソタイプ対照、ならびにダラツムマブの結合を評価する試験を行った。2つの細胞株を死細胞標識試薬(viability dye)で染色し、次いで無処置の対照のほか、無処置、無二次対照に加えて、1,250nMの最高濃度、続いて5倍系列希釈(計4点)の被験物質で三通りにインキュベートした。
【0229】
図16Aは、親抗体(851A、851B、851D)の、非トランスフェクトCHO-S細胞に対する結合を示す。250nMで開始して3つの親抗体すべてにおいて非特異的結合を認め、抗CD38 851Dでより顕著であった。
【0230】
図16Bは、親抗体(851A、851B、851D)の、非トランスフェクトExpi293T細胞に対する結合を示す。250nMで開始して3つの親抗体すべてにおいて非特異的結合を認め、抗CD38 851Dでより顕著であった。
【0231】
実施例3:直接的および架橋によるアポトーシス
直接的なアポトーシスの評価のために、細胞を被験物質で処理し、37℃/5%CO2で48時間インキュベートした。架橋誘導性アポトーシスの評価のために、細胞を氷上で30分間被験物質によりインキュベートした後、5μg/mLのウサギ抗ヒトFcガンマ特異的F(ab’)を添加した。次いで、細胞を37℃/5%CO2で48時間インキュベートした。インキュベーション後、細胞を洗浄し、Annexin Vで染色し、次いで死細胞標識試薬(ヨウ化プロピジウム;PI)を含有するAnnexin V緩衝液に再懸濁した後に、フローサイトメトリー取得を行った。早期アポトーシス細胞をAnnexin V+/PI-単一細胞として定義し、後期アポトーシス/壊死細胞をAnnexin V+/PI+単一細胞として定義した。Annexin V+/PI-およびAnnexin V+/PI-の和を、アポトーシス/壊死細胞の合計として定義した。Annexin V+/PI-細胞またはAnnexin V+/PI+のパーセンテージをプロットし、様々なアポトーシス条件を比較した。
【0232】
直接的なアポトーシスの評価のために、未処置対照に加えて、被験物質を33nMの最終最高濃度、続いて7点の5倍系列希釈でそれぞれ三通りに試験した。架橋誘導性アポトーシスのために、ダラツムマブおよびIgG1アイソタイプ対照に加えて、個々の被験物質(BS1、BS2、BS4、851A、851B、および851D)ならびに被験物質の組合せ(851Aと851D、851Bと851D、38K-VZVHと19H-VZVK)を、未処置対照に加えて、33nMの最終最高濃度、続いて7点の5倍系列希釈でそれぞれ三通りに試験した。Annexin V染色の陽性対照として、細胞を5mMのスタウロスポリンで処理した。
【0233】
図17Aは、親抗体(851A、851B、851D)、2つの対照二特異性抗体(38K-VZVH、19H-VZVK)、ダラツムマブおよびIgG1アイソタイプ対照に関する、Daudi細胞での直接的なアポトーシスを示す。ダラツムマブは最高レベルのアポトーシスを呈した。両方の抗CD19親(851A、851B)は、ダラツムマブと比較して低レベルのアポトーシスを呈した。2つの二特異性対照および抗CD38親抗体851Dは、認識可能である直接的なアポトーシスを示さなかった。
【0234】
図17Bは、二特異性抗体BS1、BS2、BS4、ダラツムマブ、およびIgG1アイソタイプ対照に関する、Daudi細胞での直接的なアポトーシスを示す。BS1およびBS2のフォーマットは、ダラツムマブと比較して大幅に高いレベルの直接的なアポトーシスを示した。二特異性フォーマットBS4は、親抗CD19 851A/851B抗体と同等のレベルの直接的なアポトーシスを示し(図17Aと比較)、これは、BS4フォーマットがアポトーシスを開始するためにCD19およびCD38を近接させることができないことに起因し得る。
【0235】
図18Aは、親抗体(851A、851B、851D)、親抗体の2つの組合せ(851A+851D、851B+851D)、ダラツムマブ、およびIgG1アイソタイプ対照に関する、Daudi細胞での架橋誘導性アポトーシスを示す。架橋は、ダラツムマブ駆動性アポトーシスのレベルを上昇させた。架橋は、直接的なアポトーシスを示さなかった抗CD38 851Dにおいてアポトーシスのレベルを大幅に上昇させた。抗CD19親抗体851Aおよび851Bを架橋した場合のアポトーシスのレベルの上昇は、おそらくDaudi細胞でのCD19がCD38と比較して低いことにより、CD38抗体では少なかった(表9を参照)。抗CD19 851Aまたは851Bと抗CD38 851Dとの組合せの架橋では、851D単独と比較してアポトーシスのレベルは上昇しなかった。
【0236】
図18Bは、二特異性抗体BS1、BS2、BS4、(38K-VZVH+19H-VZVK)、ダラツムマブ、およびIgG1アイソタイプ対照に関する、Daudi細胞での架橋誘導性アポトーシスを示す。架橋された場合、BS1およびBS2のフォーマットは、ダラツムマブと同等のレベルのアポトーシスを示した。顕著なことに、二特異性フォーマットBS4は、BS1、BS2、およびダラツムマブと同等のレベルの架橋誘導性アポトーシスを示し、架橋のない場合、BS4はアポトーシスを示さなかった(図6Bを参照)。2つの対照抗体、38K-VZVHと19H-VZVKとの組合せは、有意なアポトーシスを呈したが二特異性フォーマットのいずれよりも低く、単一の抗体中に抗CD19および抗CD38結合部位を含めることは、独立した抗体に含めるよりも有利であることが認められる。
【0237】
実施例4:細胞傷害性
Daudi標的細胞を被験物質の用量応答で処理し、37℃/5%CO2で15分間インキュベートした。0nMの対照に加えて、被験物質を133nMの最終最高濃度、続いて7点の5倍系列希釈で試験した。ダラツムマブおよびIgG1アイソタイプ対照を、陽性および陰性対照として使用した。
【0238】
予備処理した標的細胞をn=3のドナーからのヒトPBMCと共培養した(E:T 25:1)。PBMCは、100U/mLのIL-2で一晩「プライミング」してあった。PBMCをViaFluor 405(VF405)で標識した。試料を37℃/5%CO2で4時間インキュベートした後、細胞傷害性についてのフローサイトメトリー分析を行った。細胞傷害性分析のために、細胞をヨウ化プロピジウム(P.I.)で染色し、ハイスループットのフローサイトメトリーにより分析した。VF405-集団内のP.I.+細胞のパーセンテージを、標的細胞の細胞傷害性の指標として分析した。
【0239】
図19A図19B、および図19Cは、ドナー3名についての抗体依存性細胞傷害性(ADCC)を示す。ドナー3名すべてにおいて、結果は類似していた。3つの二特異性フォーマットBS1、BS2、BS4、およびダラツムマブは、同様のレベルのADCCを呈した。おそらく標的Daudi細胞でのCD19のレベルが低いことにより、抗CD19二特異性対照19H-VZVKはADCCを誘導せず、IgG1対照抗体と同等であった(表9を参照)。対照的に、おそらくDaudi細胞でのCD38のレベルがCD19と比較してはるかにより高いことにより、抗CD38二特異性対照38K-VZVHは、二特異物(bispecifics)およびダラツムマブと同等のADCCを呈した。
【0240】
図20A図20B、および図20Cは、ドナー3名についてのADCCを示す。ドナー3名すべてにおいて、結果は類似していた。3つの二特異性フォーマットBS1、BS2、BS4は、同様のレベルのADCCを呈した。BS1、BS2、BS4の脱フコシル化バージョンは、フコシル化バージョンと比較して約10倍のADCCの増加を示した。
【0241】
補体依存性細胞傷害性(CDC)アッセイも行った。標的細胞を、次の被験物質:BS1、BS2、38K-VZVH、19H-VZVH、38K-VZVH/19H-VZVHの組合せのほか、対照となるダラザレックス、抗CD20、WT IgG1タファシタマブ(Tafasitimab)、およびヒトIgG1アイソタイプ対照の用量応答により処理した。無処理対照に加えて、すべてを133nMの最高濃度、続いて計7点の5倍系列希釈で試験した。37℃、5%CO2で15分間のインキュベーション後、25%の最終濃度で処理された細胞に補体を添加した。次いで細胞を37℃、5%CO2でさらに2時間、補体でインキュベートした。補体でのインキュベーション後、細胞を洗浄し、5μg/mLの死細胞標識試薬、ヨウ化プロピジウム(P.I.)とともに再懸濁し、ハイスループットのフローサイトメトリーにより取得した。
【0242】
図21Aおよび図21Bは、補体依存性細胞傷害性(CDC)アッセイの結果を示す。陽性技術的対照である抗CD20は、堅牢な用量依存性のCDC活性を誘導した。38K-VZVHおよび19H-VZVH(単独または組合せのいずれか)、抗CD19タファシタマブ(wt IgG1)、ならびにヒトIgG1アイソタイプ対照は、いかなるCDC活性も誘導しなかった。ダラザレックス、BS1、およびBS2はすべてCDC活性を示した(但し、文献から予想されるように、抗CD20と同じ規模ではなかった)。ダラザレックスの最大細胞傷害性は、BS1およびBS2の両方のものよりも高かった。
【0243】
被験物質の用量応答で処理され、37℃、5%CO2で15分間インキュベートされたpHrodo Green AM(pHG)標識Raji細胞により、抗体依存性細胞ファゴサイトーシス(ADCP)をさらにアッセイした。pHGはpH感受性色素であり、中性pHでは弱い蛍光性に過ぎないが、マクロファージの成熟ファゴソームにおいては低pHで高度に蛍光性である。抗CD20抗体およびIgG1アイソタイプ対照を用いたpHG標識Raji標的細胞を陽性対照および陰性対照として使用し、133nMの最高濃度、7点の5倍系列希釈、および0nMの対照を用いた。予備処理された標的細胞をn=3のドナーからのヒトマクロファージ(単球からin vitroで分化)と共培養した(E:T 1:2)。マクロファージをCell Trace Violet(CTV)で標識した。試料を37℃、5%CO2で4時間インキュベートした後、ファゴサイトーシスについてのフローサイトメトリー分析を行った。pHGhi/CTV+細胞のパーセンテージを標的細胞ファゴサイトーシスの指標として分析した。パーセンテージをXYチャート上、被験物質濃度の対数に対してプロットし、EC50を算出した4パラメータ非線形回帰曲線に対してデータをフィッティングした。
【0244】
図22は、標的としてRaji細胞およびドナーマクロファージを使用した抗体依存性細胞ファゴサイトーシス(ADCP)アッセイの結果を示す。陽性対照である抗CD20は、4時間後にドナー3名すべてにおいて用量依存性ファゴサイトーシスを実証した(5~10%の間の最大ファゴサイトーシス)。陰性対照であるIgG1アイソタイプ対照は、4時間後にドナー3名すべてにおいて用量依存性ファゴサイトーシスを実証しなかった。ダラザレックスは、4時間後にドナー3名すべてにおいて用量依存性ファゴサイトーシスを実証した(4~10%の間の最大ファゴサイトーシス)。BS-1、BS-2、脱フコシル化BS-1、および脱フコシル化BS-2は、わずかな用量依存性ファゴサイトーシスを示し、脱フコシル化フォーマットはADCPの増加をもたらした。
【0245】
実施例5:RBCとの相互作用
n=3のカニクイザルおよびn=3のヒトドナーからの赤血球細胞に対する被験物質の結合を評価するべく、フローサイトメトリーベースの赤血球細胞(RBC)結合試験を行った。全血を1X PBSで洗浄し、次いでPBSで20倍に希釈した後に、被験物質で処理した。0nMの対照に加えて、二特異物(BS1、BS2)、親モノクローナル(851A、851D)、および対照(抗CD38ダラザレックス、組換え抗CD19タファシタマブ、IgG1アイソタイプ対照、Alexa Fluor 647にコンジュゲートされた抗CD47)を、133nMの最高最終濃度、続いて計7点の5倍系列希釈で三通りに試験した。単一アーム対照(38K-VZVH、19H-VZVK)を組合せで、ともに133nMの最高濃度および同じ用量応答により試験した。
【0246】
一次抗体による氷上で30分間のインキュベーション後、細胞を洗浄し、5ug/mLの二次抗体(Alexa Fluor 647で標識されたヤギ抗ヒトFcγ F(ab’)2)で染色して、赤血球細胞上の被験物質の結合を検出した。抗CD47-A647染色細胞では二次抗体は使用しなかった。二次抗体による氷上でのさらに30分間のインキュベーション後、染色された細胞を洗浄し、希釈し、ハイスループットのフローサイトメトリーにより取得した。単一細胞集団のAlexaFluor 647幾何平均蛍光強度(MFI)を算出した。AF647のMFIをXYチャート上にプロットし、濃度の対数に対してMFIをグラフ化し、EC50を算出した非線形回帰曲線にデータをフィッティングした。
【0247】
図23は、AF647コンジュゲート抗CD47がヒトドナー3名すべての赤血球細胞による用量応答結合曲線を示したことを示す。ダラザレックスも同様に、ドナー3名すべてでの結合において用量依存性の増加を示したが、最大MFIは抗CD47よりも低い桁数であった。抗CD38 851Dはダラザレックスに次いで高い最大MFIを示し、続いてBS1、BS2、38K-VZVH&19H-VZVKの組合せ、および抗CD19タファシタマブの順であった。最後に、抗CD19 851AおよびIgG1アイソタイプは、最高濃度においてのみMFIのわずかな増加を示すに過ぎなかった。
【0248】
計3匹の健常(n=3)カニクイザル(Cyno)ドナーおよび3名の健常(n=3)ヒトドナーからの赤血球細胞に対し、in vitro赤血球凝集アッセイを行った。全血を試験当日に獲得し、凝固を検査した。次いで血液をPBSで洗浄し、1:50に希釈して、「全血基質」を得た。全血基質を96ウェル丸底プレートに播種し、0nMの対照に加えて、133nMの最高最終濃度、続いて6点の5倍系列希釈のPBS中、被験物質(BS1、BS2、38K-VZVH+19H-VZVK、851A、および851D)、対照(野生型IgG1を有するタファシタマブ)、ダラザレックス、およびヒトIgG1アイソタイプ対照)、または陽性技術的対照(IGM-55.5)を用いて三通りに処理した。37℃、5%CO2で1時間のインキュベーション後、プレートを撮影して赤血球凝集のレベルを確認した。参照として写真を使用して、各ウェルを0~5の特有の赤血球凝集スケールで採点した。各スコアの特異的徴候は、個々のドナーに対してある程度相対的である。
【0249】
図24Aは、ヒトドナー3に対する赤血球凝集アッセイの結果を示す。陽性対照である抗CD47は、0.04~1.1nMの間で開始して、ヒトドナー3名すべてにおいて赤血球凝集を誘導した。BS1、BS2、38K-VZVH+19H-VZVK、ダラザレックス、タファシタマブ、およびヒトIgG1アイソタイプ対照はすべて、ドナー3名すべてにおいていずれの濃度でも赤血球凝集の誘導を示さなかった。モノクローナル抗体851A(抗CD19)および851D(抗CD38)はともに、それぞれ0.2または1.1nMで開始して、ドナー3名すべてにおいて赤血球凝集を誘導し、応答は技術的対照(抗CD47)と規模が類似していた。親モノクローナル抗体とは対照的に、BS1およびBS2は、いずれの濃度でも赤血球凝集の誘導を何も示さなかった。
【0250】
図24Bは、カニクイザルドナー3に対する赤血球凝集アッセイの結果を示す。陽性対照であるIGM-55.5(抗little i抗原IgM抗体)は、0.04または0.2nMで開始して、カニクイザルドナー3匹すべてにおいて赤血球凝集を誘導した。BS1、BS2、38K-VZVH+19H-VZVK、ダラザレックス、タファシタマブ、およびヒトIgG1アイソタイプ対照はすべて、ドナー3名すべてにおいていずれの濃度でも赤血球凝集の誘導を示さなかった。モノクローナル抗体851A(抗CD19)および851D(抗CD38)はともに、それぞれ1.1nMで開始して、ドナー3匹すべてにおいて赤血球凝集を誘導した。親モノクローナル抗体とは対照的に、BS1およびBS2は、いずれの濃度でも赤血球凝集の誘導を全く示さなかった。
【0251】
3匹(n=3)の健常カニクイザル(cyno)および3名(n=3)の健常ヒトドナーからの赤血球細胞に対する、in vitro溶血アッセイも行った。全血を試験当日に獲得し、凝固を検査した。血液をPBSで洗浄し、1:10に希釈して、「全血基質」を得た。全血基質をPBS中の被験物質および対照で処理した。0nMの対照に加えて、二特異物(BS1、BS2)、親モノクローナル(851A、851D)、および対照(抗CD38ダラザレックス、組換え抗CD19タファシタマブ、IgG1アイソタイプ対照)を、133nMの最高最終濃度、続いて計7点の5倍系列希釈で三通りに試験した。単一アーム対照(38K-VZVH、19H-VZVK)を組合せで、ともに133nMの最高濃度および同じ用量応答により試験した。サポニンを0.1%の最高濃度、計7点の3倍系列希釈で試験した。37℃、5%CO2で1時間のインキュベーション後、プレートを遠心分離し、上清を収集した。プレートリーダによって540nmでの光学密度(OD)について上清を分析した。陽性対照であるサポニンは、すべての種およびドナーにおいて、0.001%で開始して0.10%まで、用量依存的な溶血を誘導した。どの被験物質も、いずれの試験対象濃度でも溶血を誘導しなかった。
【0252】
図25は、被験物質がすべて、いずれの試験対象濃度でも溶血を誘導しなかったことを示す。陽性対照であるサポニンは、すべての種およびドナーにおいて、0.001%で開始して0.10%まで、用量依存的な溶血を誘導した。
【0253】
実施例6:FCRバリアントはCD38およびCD19結合二重特異性抗体においてADCCを低下させる
健常なヒト末梢血単核細胞(PBMC)から単離したB細胞を、被験物質の用量応答により処理し、15分間インキュベートした。RajiおよびDaudi標的細胞も同様に、リツキサン、ダラザレックス、またはIgG1アイソタイプ対照の用量応答により処理し、37℃、5%CO2で15分間インキュベートした。0nM対照に加えて、N=5の被験物質およびn=3の対照(リツキサン、ダラザレックス、およびヒトIgG1アイソタイプ)を、133nMの最高最終濃度、続いて7点の5倍系列希釈で試験した。
【0254】
予備処理した標的細胞をn=3のドナーからのヒトPBMCと共培養した(E:T 25:1)。PBMCを100U/mLのIL-2で一晩プライミングした。PBMCをViaFluor 405で標識した。試料を37℃、5%CO2で4時間インキュベートした。被験物質には、BS1、脱フコシル化BS1、Fcバリアント(「死Fc」、例えば、配列番号301および302)を有するBS1、ならびに対照リツキサン、ダラザレックス、およびヒトIgG1アイソタイプを含めた。BS1は既に良好な低いADCCプロファイルを示していたので、それぞれの場合にバリアントFc(死Fc)がさらに低下および/または減少したという点で興味深いものであった。
【0255】
細胞傷害性分析のために、細胞をヨウ化プロピジウム(P.I.)で染色し、ハイスループットのフローサイトメトリーにより分析した。VF405-集団内のP.I.+細胞のパーセンテージを、標的細胞の細胞傷害性の指標として分析した。図26Aは、ドナー3からのPBMCを使用したRajiおよびDaudi対照標的細胞上でのADCCのレベルを示す。図26Bは、ドナー1からのPBMCを使用したドナー1からの標的B細胞上でのADCCのレベルを示す。図26Cは、ドナー1からのPBMCを使用したドナー3からの標的B細胞上でのADCCのレベルを示す。図26Dは、ドナー2からのPBMCを使用したドナー1からの標的B細胞上でのADCCのレベルを示す。図26Eは、ドナー2からのPBMCを使用したドナー3からの標的B細胞上でのADCCのレベルを示す。図26Fは、ドナー3からのPBMCを使用したドナー1からの標的B細胞上でのADCCのレベルを示す。図26Gは、ドナー3からのPBMCを使用したドナー3からの標的B細胞上でのADCCのレベルを示す。BS1は良好なADCCプロファイル(例えば、低ADCC)を実証したので、BS1のADCCがバリアントFc(例えば、突然変異S239DおよびI332Eを含む「死」Fc)を使用してさらに減少され得ることは予想外であった。このようなさらなる減少は、免疫学的有害事象の可能性をさらに低下させることによって、治療的処置において有利となり得る。このことは特に、望ましくない細胞非腫瘍細胞(すなわち、CD19×CD38抑制性B細胞)が特異的に標的化され得る可能な作用機序において当てはまる。
【0256】
本発明の好ましい実施形態を本明細書に示し、記載してきたが、このような実施形態は例示のためにのみ提供されていることは当業者に明白であろう。多数の変形、変更、および置換が、本発明から逸脱することなく当業者に想起されるであろう。本明細書に記載される本発明の実施形態に対する種々の代替案が本発明の実施において採用され得ることを理解されたい。以下の特許請求の範囲は本発明の範囲を定義すること、かつ、これら特許請求の範囲内にある方法および構造、ならびにそれらの等価物は特許請求の範囲によりカバーされることが意図される。
【0257】
【表9-1】
【0258】
【表9-2】
【0259】
【表9-3】
【0260】
【表9-4】
【0261】
【表9-5】
【0262】
【表9-6】
【0263】
【表9-7】
【0264】
【表9-8】
【0265】
【表9-9】
【0266】
【表9-10】
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12A
図12B
図13A
図13B
図14A
図14B
図15A
図15B
図16A
図16B
図17A
図17B
図18A
図18B
図19A
図19B
図19C
図20A
図20B
図20C
図21A
図21B
図22
図23
図24A
図24B
図25
図26A
図26B
図26C
図26D
図26E
図26F
図26G
【配列表】
2024535705000001.xml
【国際調査報告】