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特表2024-535709日焼け止め組成物並びに紫外線及び可視光からの保護の方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-02
(54)【発明の名称】日焼け止め組成物並びに紫外線及び可視光からの保護の方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/19 20060101AFI20240925BHJP
   A61Q 17/04 20060101ALI20240925BHJP
   A61K 8/27 20060101ALI20240925BHJP
   A61K 8/29 20060101ALI20240925BHJP
   A61K 8/67 20060101ALI20240925BHJP
   B82Y 20/00 20110101ALI20240925BHJP
   B82Y 5/00 20110101ALI20240925BHJP
【FI】
A61K8/19
A61Q17/04
A61K8/27
A61K8/29
A61K8/67
B82Y20/00
B82Y5/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024512083
(86)(22)【出願日】2022-08-25
(85)【翻訳文提出日】2024-04-10
(86)【国際出願番号】 US2022041591
(87)【国際公開番号】W WO2023038807
(87)【国際公開日】2023-03-16
(31)【優先権主張番号】63/260,980
(32)【優先日】2021-09-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524066797
【氏名又は名称】ドック マーティンズ オブ マウイ
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136168
【弁理士】
【氏名又は名称】川上 美紀
(74)【代理人】
【識別番号】100196117
【弁理士】
【氏名又は名称】河合 利恵
(72)【発明者】
【氏名】クリストファー リャン スタール
(72)【発明者】
【氏名】カーティス アラン コール
(72)【発明者】
【氏名】ジョージ マイケル マーティン
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AB172
4C083AB211
4C083AB212
4C083AB231
4C083AB232
4C083AB241
4C083AB242
4C083AB332
4C083AB432
4C083AC012
4C083AC172
4C083AC312
4C083AC342
4C083AC392
4C083AC402
4C083AC422
4C083AC472
4C083AD092
4C083AD152
4C083AD162
4C083AD172
4C083AD492
4C083AD641
4C083AD642
4C083AD661
4C083AD662
4C083BB46
4C083CC04
4C083CC19
4C083DD23
4C083EE07
4C083EE17
(57)【要約】
被検者において可視光及び紫外線放射線によって引き起こされる日光皮膚炎を軽減又は予防する方法がここに提供される。方法は、無機UVフィルタ剤、酸化防止剤及び少なくとも1つの無機顔料を含む日焼け止め組成物を被検者に局所的に塗布するステップを備え、少なくとも1つの無機顔料及び酸化防止剤が、可視光によって引き起こされる日光皮膚炎を軽減又は予防するのに有効な量で存在する。日焼け止め組成物及び少なくとも1つの無機UVフィルタ剤を含む日焼け止め組成物のSPFを増加させる方法も、ここに提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検者において可視光及び紫外線(UV)放射線によって引き起こされる日光皮膚炎を軽減又は予防する方法であって、
前記被検者に日焼け止め組成物を局所的に塗布するステップを備え、該日焼け止め組成物は、
(a)前記日焼け止め組成物の総重量を基準として重量で約10%~約50%を範囲とする総量で該日焼け止め組成物中に存在する酸化亜鉛及び二酸化チタンを含む無機UVフィルタ剤と、
(b)前記日焼け止め組成物の総重量に対して重量で約0.1%~約5%を範囲とする総量で該日焼け止め組成物中に存在するビタミンE又はその誘導体及びビタミンC又はその誘導体を含む酸化防止剤と、
(c)前記日焼け止め組成物の総重量に対して重量で約0.1%~約10%を範囲とする総量で該日焼け止め組成物中に存在する酸化鉄を含む少なくとも1つの無機顔料と、を含み、
前記少なくとも1つの無機顔料及び前記酸化防止剤が、可視光によって引き起こされる日光皮膚炎を軽減又は予防するのに有効な量で存在する、方法。
【請求項2】
前記酸化鉄は、黒酸化鉄、褐色酸化鉄、赤色酸化鉄、黄色酸化鉄及びこれらの混合物からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記酸化亜鉛は、約10nm~約100nmを範囲とする平均粒子サイズを有する、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記二酸化チタンは、約5nm~約20nmを範囲とする平均粒子サイズを有する、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記酸化亜鉛、前記二酸化チタン及び前記酸化鉄のうちの少なくとも1つが、被覆物をさらに含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記被覆物は、トリエトキシカプリリルシランである、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記ビタミンE又はその誘導体は、トコフェロール及び酢酸トコフェロールからなる群から選択される、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記ビタミンC又はその誘導体は、アスコルビン酸及びアスコルビン酸テトラヘキシルデシルからなる群から選択される、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記少なくとも1つの無機顔料は、顔料酸化亜鉛及び顔料二酸化チタンからなる群から選択された少なくとも1つの無機顔料をさらに含む、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記顔料二酸化チタンは、約1μm~約20μmを範囲とする平均粒子サイズを有する、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
酸化亜鉛及び二酸化チタンを含む無機UVフィルタ剤を含む日焼け止め組成物の日焼け防止係数(SPF)を増加させる方法であって、
(a)前記日焼け止め組成物の総重量に対して重量で約0.1%~約5%を範囲とする総量で該日焼け止め組成物中に存在するビタミンE又はその誘導体及びビタミンC又はその誘導体を含む酸化防止剤と、(b)前記日焼け止め組成物の総重量に対して重量で約0.1%~約10%を範囲とする総量で該日焼け止め組成物中に存在する酸化鉄を含む少なくとも1つの無機顔料と、を前記日焼け止め組成物に添加するステップ
を備え、
前記無機顔料及び酸化防止剤が、屋外太陽光曝露下で試験される場合に前記日焼け止め組成物の前記SPFを増加させるのに有効な量で存在する、方法。
【請求項12】
前記SPFは、少なくとも約3のSPFだけ増加している、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記日焼け止め組成物は、有機UVフィルタ剤を含まない、請求項11又は12に記載の方法。
【請求項14】
前記少なくとも1つの無機顔料は、顔料二酸化チタン及び顔料酸化亜鉛からなる群から選択された少なくとも1つの無機顔料をさらに含む、請求項11から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記酸化亜鉛は、約10nm~約100nmを範囲とする平均粒子サイズを有する、請求項11から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記二酸化チタンは、約5nm~約20nmを範囲とする平均粒子サイズを有する、請求項11から15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記ビタミンE又はその誘導体は、トコフェロール及び酢酸トコフェロールからなる群から選択される、請求項11から16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記ビタミンC又はその誘導体は、アスコルビン酸及びアスコルビン酸テトラヘキシルデシルからなる群から選択される、請求項11から17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記顔料二酸化チタンは、約1μm~約20μmを範囲とする平均粒子サイズを有する、請求項14に記載の方法。
【請求項20】
日焼け止め組成物であって、
(a)前記日焼け止め組成物の総重量を基準として重量で約10%~約50%を範囲とする総量で該日焼け止め組成物中に存在する酸化亜鉛及び二酸化チタンからなる無機UVフィルタ剤と、
(b)前記日焼け止め組成物の総重量に対して重量で約0.1%~約5%を範囲とする総量で該日焼け止め組成物中に存在するビタミンE又はその誘導体及びビタミンC又はその誘導体からなる酸化防止剤と、
(c)前記日焼け止め組成物の総重量に対して重量で約0.1%~約10%を範囲とする総量で該日焼け止め組成物中に存在する酸化鉄からなる少なくとも1つの無機顔料と、
を含み、
前記無機顔料及び酸化防止剤が、可視光によって引き起こされる日光皮膚炎を軽減又は予防するのに有効な量で存在する、日焼け止め組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は2021年9月8日出願の米国仮特許出願第63/260980号の利益を主張し、その開示がその全体において参照によりここに取り込まれる。
【0002】
紫外線(UV)フィルタ剤と、少なくとも1つの無機顔料と、ビタミンE、ビタミンC又はそれぞれ酢酸トコフェロール及びアスコルビン酸テトラヘキサデシルなどのビタミンE及びビタミンCの誘導体を含む酸化防止剤と、の組合せを含む局所的な日焼け防止のための組成物がここに開示される。ここに開示される組成物は、可視光誘発性紅斑及び紫外放射線誘発性紅斑の双方に対する保護に使用され得る。
【背景技術】
【0003】
電磁スペクトルは、電磁放射線の周波数の範囲及びそれに対応する波長を備えるスペクトルであり、最小波長の電波から最大波長のガンマ電離放射線波までにわたる。スペクトルは、最低周波から、次の帯域:電波、マイクロ波、赤外線、可視光、紫外線、X線及びガンマ線に大別される。最初に、約400nm~約700nmを範囲とする対応の波長を有する可視光のみが、その存在を知られた。一方、1801年に、約10nm~約400nmを範囲とする対応の波長を有する電磁スペクトルのUV部分が光化学的及び光生物学的に活性であることが、Johann Ritterによって発見された。UV光の最も一般的な光源は太陽であり、それは一般に「日光皮膚炎」又は「紅斑」といわれるものの原因となるUV光から生じる放射線である。電磁スペクトル自体のUV帯域は、3帯域:UVA(約320~400nm)、UVB(約280~320nm)及びUVC(約100~280nm)のサブスペクトルを含む。
【0004】
日光皮膚炎は、太陽への長時間の曝露からもたらされる皮膚の発赤である。日光皮膚炎の重症度は、曝露長、曝露強度及び個人の皮膚タイプを含む複数の要因に基づいて、軽症から重症を範囲とし得るものであり、色白の皮膚にはより大きなリスクがある。日光皮膚炎は、皮膚癌に対する良く知られた危険要因である。
【0005】
最近まで、可視光波長(すなわち、400nm以上)から日光皮膚炎への有意な寄与はなく、日光皮膚炎は、専らUV波長範囲(すなわち、10~400nm)の光によってのみ引き起こされるものと考えられていた。日光皮膚炎として一般に知られるUV誘発性紅斑は、UVB放射線に対する曝露によって、表皮及び真皮内の特定の発色団(主にDNA)及び他のタンパク質に対する直接の吸収損傷によって誘発され、UVB及びUVA放射線によって引き起こされる光酸化プロセスによる間接的損傷によっても誘発されるものと考えられていた。UVA誘発性光酸化損傷について、吸収された放射線エネルギーが酸素を三重項又は一重項の励起エネルギー準位に上昇させ、その放射線エネルギーが周囲の他の細胞構造体と相互作用してそれを損傷できるようになり、最終的に、吸収された放射線エネルギーが充分な量で存在する場合に皮膚の紅斑をもたらす。
【0006】
作用スペクトルが、各特定波長において紅斑をもたらすのに必要な正確な照射量を表現するために導出され、約250~400nmの波長範囲を包含するものとして報告されている。紅斑に関する全ての公表された作用スペクトルは、400nm以上の波長は何ら結果をもたらすものではなく紅斑反応に対する寄与はないと言わんばかりに、まさに400nmで止まっている。例えば、非特許文献1参照。
【0007】
最近では、特に、陸地での比較的少量(例えば、5%)の紫外光と比較して大量(例えば、50%)の可視光を太陽が生成している屋外における太陽への曝露を考慮した場合、上記仮定が正しくないということ並びに電磁スペクトルの可視光部分及び特に約400~500nmの紫及び/又は青色光領域が紅斑の誘発に対する影響を有し得ること及び有することが発見された。例えば、Zastrow及びその仲間は、フリーラジカル(励起酸素分子)が紫外光スペクトル及び可視光全体のスペクトルにわたる波長によって皮膚組織において生成され得ることを実証した。作用スペクトルを陸地の太陽光スペクトルと組み合わせると、日光によって生成されたフリーラジカルの50%が太陽のスペクトルの可視部分によってもたらされ、残りの50%は紫外部分からもたらされるものと推定された。非特許文献2参照。
【0008】
それでもなお、旧来的な日焼け止め製品の有効成分は、通常はUV光線(主にUVA及びUVB)をフィルタリングすることしか目的としておらず、可視光の影響に関するものではない。日焼け止め製品における通常のUV吸収剤は、有機性(例えば、アボベンゾン、オキシベンゾン、メトキシ桂皮酸オクチルなど)又は無機性(例えば、二酸化チタン、酸化亜鉛など)であり得る。多くの消費者は彼らの皮膚上で日焼け止めが見えることを望まないため、これらの製品の製造業者は見えない焼け止め製品を製造することに熱心に取り組んできた。酸化亜鉛及び二酸化チタンは1987年頃から日焼け止め製品に広く使用されているが、それらは通常、ナノサイズ粒子などの微小な粒子サイズを用いる日焼け止め製品に含まれる。ナノサイズ粒子は、酸化亜鉛及び二酸化チタンの見える外観を最小化して、日焼け止め製品を塗布後の皮膚上で仮想的に見えないものとしつつも、依然として太陽からのUV放射線の有害な影響を吸収するように機能する。非特許文献3参照。
【0009】
ナノ粒子サイズの酸化亜鉛及び二酸化チタンは、それらのバンドギャップエネルギーに応じて、約370~380nm以下のUV放射線の半導電性吸収剤としては作用するため、それでもUVフィルタとして機能することになる。それでもなお、ナノ粒子サイズの酸化亜鉛及び二酸化チタンは、それらのミクロン/ナノ粒子サイズのために、概してそれらの波長以上の放射線を散乱及び反射することはない。したがって、これらの無機ベースの日焼け止めも電磁スペクトルの可視光部分での放射線に対してほとんど又は全く保護を与えることはなく、UVAスペクトル(例えば、375~400nm)の上端の波長に対するわずかな保護しか与えないことになる。
【0010】
したがって、日光におけるUV放射線及び太陽のスペクトルの可視光部分の双方に対する保護を提供する日焼け止め組成物の必要性がある。理想的には、その日焼け止め組成物は、外観において消費者が受け入れられるものであるべきであり、かつ、紅斑に対して、従来のUVのみの保護の日焼け止め製品よりも強い保護を皮膚に与えるべきである。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】Schmalwieser,A.他、A library of action spectra for erythema and pigmentation,Photochem.Photobiol.Sci.2012;11(2):252-268
【非特許文献2】Zastrow,L.他、The missing link,light(280~1600nm)induced free radical formation in human skin,Skin Pharmacol.Physiol.2009;22:31-34
【非特許文献3】Cole C.他、Metal oxide sunscreens protect skin by absorption,not by reflection or scattering,Photomed.Photoimmunol.Photodermatol.2016 32:1,5-10
【発明の概要】
【0012】
可視光及び紫外線(UV)放射線の双方によって引き起こされる日光皮膚炎を軽減又は予防する日焼け止め組成物及び日焼け止め組成物を使用する方法、並びに日焼け止め組成物の日焼け防止指数(SPF)を増加させる方法がここに開示される。
【0013】
ある実施形態では、日焼け止め組成物がここに開示され、その日焼け止め組成物は(a)日焼け止め組成物の総重量を基準として重量で約10%~約50%を範囲とする総量で日焼け止め組成物中に存在する酸化亜鉛及び二酸化チタンを含み又はそれらからなる無機UVフィルタ剤と、(b)日焼け止め組成物の総重量に対して重量で約0.1%~約5%を範囲とする総量で日焼け止め組成物中に存在するビタミンE又はその誘導体及びビタミンC又はその誘導体を含み又はそれらからなる酸化防止剤と、(c)日焼け止め組成物の総重量に対して重量で約0.1%~約10%を範囲とする総量で日焼け止め組成物中に存在する酸化鉄を含み又はそれらからなる少なくとも1つの無機顔料と、を含み、少なくとも1つの無機顔料及び酸化防止剤が、可視光によって引き起こされる日光皮膚炎を軽減又は予防するのに有効な量で存在する。
【0014】
可視光及びUV放射線によって引き起こされる被検者における日光皮膚炎を軽減又は予防する方法もここに開示され、その方法は(a)酸化亜鉛及び二酸化チタンを含む無機UVフィルタ剤と、(b)ビタミンE又はその誘導体及びビタミンC又はその誘導体を含む酸化防止剤と、(c)酸化鉄を含む少なくとも1つの無機顔料と、を含む日焼け止め組成物を被検者に局所的に塗布するステップを備え、少なくとも1つの無機顔料及び酸化防止剤が、可視光によって引き起こされる日光皮膚炎を軽減又は予防するのに有効な量で存在する。
【0015】
また、少なくとも1つの無機UVフィルタ剤を含む日焼け止め組成物のSPFを増加させる方法がここに開示され、その方法は(a)ビタミンE又はその誘導体及びビタミンC又はその誘導体を含む酸化防止剤と、(b)酸化鉄を含む少なくとも1つの無機顔料と、を日焼け止め組成物に添加するステップを備え、少なくとも1つの無機顔料及び酸化防止剤が、例えば、日焼け止め組成物が屋外太陽光曝露条件下で試験される場合に日焼け止め組成物のSPFを少なくとも約3のSPFだけ増加させるのに有効な量など、日焼け止め組成物のSPFを増加させるのに有効な量で存在する。
【0016】
ある実施形態によると、無機UVフィルタ剤は、日焼け止め組成物の総重量を基準として重量で約10%~約50%を範囲とする総量で日焼け止め組成物中に存在する。ある実施形態では、酸化防止剤は日焼け止め組成物の総重量に対して重量で約0.1%~約5%を範囲とする総量で日焼け止め組成物中に存在し、ある実施形態では、少なくとも1つの無機顔料は日焼け止め組成物の総重量に対して重量で約0.1%~約10%を範囲とする総量で日焼け止め組成物中に存在する。
【0017】
本開示の種々の実施形態において、酸化鉄は、黒酸化鉄、褐色酸化鉄、赤色酸化鉄、黄色酸化鉄及びこれらの混合物からなる群から選択される。
【0018】
ある実施形態では、酸化亜鉛は約10nm~約100nmを範囲とする平均粒子サイズを有し、ある実施形態では、二酸化チタンは約5nm~約20nmを範囲とする平均粒子サイズを有する。本開示の種々の態様において、酸化亜鉛、二酸化チタン及び少なくとも1つの無機顔料(例えば、酸化鉄)のうちの少なくとも1つが、例えば、トリエトキシカプリリルシランなどの被覆物をさらに含む。
【0019】
本開示のある態様では、ビタミンE又はその誘導体は、トコフェロール及び酢酸トコフェロールからなる群から選択され、ある態様では、ビタミンC又はその誘導体は、アスコルビン酸及びアスコルビン酸テトラヘキシルデシルからなる群から選択される。
【0020】
ある実施形態では、ここに開示される日焼け止め組成物は皮膚軟化剤、有機UVフィルタ剤、皮膚調整剤、防腐剤及びシリカからなる群から選択される少なくとも1つの追加の原料をさらに含み、ある実施形態では、ここに開示される日焼け止め組成物は有機UVフィルタ剤を含まない。
【0021】
ある実施形態では、少なくとも1つの無機顔料は、顔料酸化亜鉛及び顔料二酸化チタンからなる群から選択された少なくとも1つの無機顔料をさらに含む。例えば、ある実施形態では、顔料酸化亜鉛は約100nm超~約1000nmを範囲とする平均粒子サイズを有していてもよく、ある実施形態では、顔料二酸化チタンは約1μm~約20μmを範囲とする平均粒子サイズを有していてもよい。
【0022】
上記の概略説明及び以下の詳細な説明の双方とも例示的及び例示目的のみのものであり、特許請求される本教示の限定ではないことが理解されるべきである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本教示の実施形態をここで詳細に参照する。以下の説明では、本教示が実施される例示的実施形態を参照する。したがって、以下の説明は例示にすぎない。
【0024】
太陽光線の可視部分及びUV部分の双方に対して皮膚に保護を与える日焼け止め組成物、並びにその日焼け止め組成物を用いて太陽光線の可視部分及びUV部分の双方からもたらされる日光皮膚炎を軽減又は予防する方法、及び日焼け止め組成物のSPFを増加させる方法が、ここに開示される。ここに開示される日焼け止め組成物は、太陽の可視光線を主に青色領域において吸収する顔料、及び太陽の可視放射線によって誘発されるフリーラジカルをクエンチさせて紅斑を軽減又は予防する酸化防止剤を含む。
【0025】
ある実施形態では、二酸化チタン及び酸化亜鉛のUVフィルタ剤とともに酸化鉄などの少なくとも1つの無機顔料並びにビタミンE(トコフェロール又はその誘導体、例えば、酢酸トコフェロール)及びビタミンC(アスコルビン酸又はその誘導体、例えば、アスコルビン酸テトラヘキシルデシル)などの酸化防止剤の組合せを含む日焼け止め組成物が、ここに開示される。ここに開示される日焼け止め組成物は、例えば、少なくとも60のSPF(例えば、International Organization for Standardization(ISO)24444:2019によって規定されるプロトコルを用いて決定されるもの)を有する従来の日焼け止めなど、従来の日焼け止め製品と比較して、日光によって引き起こされる紅斑に対して優れた保護を与える。酸化鉄などの少なくとも1つの無機顔料は、外見上許容可能でありかつユーザの皮膚色に合うように、濃度及び色の度合いによって適合可能な態様で、酸化防止剤のビタミンE及びビタミンCとともに可視光保護を与える。
【0026】
ここに開示される日焼け止め組成物は、ユーザの快適な物理的感覚及び感触の特徴を与えるように配合され得る。ある実施形態では、ここに開示される日焼け止め組成物は、例えば、滑らかで乾燥した感覚を塗布後の製品に与えるように少なくとも1つのシリコーン系皮膚軟化剤をさらに含み得る。ある実施形態では、日焼け止め組成物は、シリカをさらに含み得る。
【0027】
定義
全体を通じて使用されるように、範囲は、範囲内の各値及び全値を記載するためにまとめて使用される。範囲内のいずれの値も、範囲の終端として選択され得る。さらに、ここに引用される全ての文献は、その全体において参照によりここに取り込まれる。本開示の定義と引用文献の定義とが矛盾する場合には、本開示が優先される。以下の用語及びその同義語は、文脈がそれ以外を明示しない限り以下の意味を有するものとする。
【0028】
用語「~の少なくとも1つ/一方」は、列挙された項目の1つ以上が選択され得ることを意味するものとして用いられる。例えば、項目の列挙がA及びBである場合、A及びBの少なくとも1つ/一方は、Aのみ、Bのみ、又はA及びBを示す。
【0029】
用語「約」は、当技術分野で許容される正常なばらつきの範囲を包含するとして理解され、例えば、記載された値の10%、1%、0.1%又は0.01%以内を含み得る。特に断りがない限り、ここに提供される全ての数値は、用語「約」によって修飾されているものとして理解される。
【0030】
ここで使用されるように、用語「紅斑」は、用語「日光皮膚炎(サンバーン)」と互換可能に使用され、可視光及びUV放射線の双方を含む電磁スペクトルによる波への過度の曝露によって引き起こされる皮膚の表面的な発赤を示す。ここに使用されるように、紅斑及び日光皮膚炎は、皮膚の色素沈着の増加(例えば、黒化(タンニング))とは区別される。
【0031】
ここで使用されるように、用語「紫外線放射線」又は「UV放射線」は、約290nm~約400nmの範囲での電磁放射線を示す。UV放射線のスペクトル内で、UVB放射線は約290nm~約320nmの範囲内の電磁放射線であり、一方でUVAは約320nm~約400nmの範囲内の電磁放射線である。
【0032】
ここで使用されるように、用語「可視光」は、約400nm~約700nmの範囲の電磁放射線を示す。可視光スペクトル内で、紫色光領域は約380~450nmにわたり、青色光領域は約450~495nmにわたり、緑色光領域は約495~570nmにわたり、黄色光領域は約570~590nmにわたり、橙色光領域は約590~625nmにわたり、赤色光領域は約625~700nmにわたる。
【0033】
ここで使用されるように、用語「日焼け防止指数」及び「SPF」は、日焼け止め組成物がそこに塗布されていない皮膚に紅斑を生成するのに必要な太陽光エネルギーの量に対して、日焼け止め組成物の塗布後の皮膚に紅斑又は日光皮膚炎を生成するのにどれほどの太陽光エネルギーが必要であるのかの測定値を示す。太陽光エネルギーの量は、太陽光エネルギーの曝露長(時間)及び強度の双方に影響され得る。太陽光強度は、時刻、地理的位置(より高い緯度が太陽光強度を増加させ得る)及び気象(例えば、雲量)に関係し得る。
【0034】
ここに使用されるように、用語「有効量」とは、適切な量及び頻度で塗布又は投与された場合に、日光皮膚炎によってもたらされる損傷を予防、軽減又は緩和するのに充分な日焼け止め組成物の量をいう。
【0035】
追加の定義は、詳細な説明の全体を通じて説明される。
【0036】
日焼け止め組成物
ユーザの皮膚に局所的に塗布された場合に、可視光及びUV放射線によって引き起こされる日光皮膚炎などの損傷を軽減又は予防するのに有用な日焼け止め組成物が、ここに開示される。
【0037】
ある実施形態では日焼け止め組成物が開示され、その日焼け止め組成物は(1)酸化亜鉛及び二酸化チタンを含み又はそれらからなる無機UVフィルタ剤と、(2)ビタミンE又はその誘導体及びビタミンC又はその誘導体を含み又はそれらからなる酸化防止剤と、(3)酸化鉄を含み又はそれからなる少なくとも1つの無機顔料と、を含み、少なくとも1つの無機顔料及び酸化防止剤が、可視光によって引き起こされる日光皮膚炎を軽減又は予防するのに有効な量で存在する。
【0038】
UVフィルタ剤
ある実施形態では、日焼け止め組成物は、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化セリウム、酸化ジルコニウム及びこれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1つの無機UVフィルタ剤を含む。無機UVフィルタ剤は、例えば、それぞれ概ね320~400nm及び280~320nmのUVA及びUVB放射線を含むUV帯域の電磁スペクトルからのUV放射線をフィルタリング又は吸収するように作用し得る。
【0039】
本開示の種々の実施形態において、日焼け止め組成物は、無機UVフィルタ剤として酸化亜鉛を含む。酸化亜鉛は、例えば、約10nm~約25μm、約10nm~約10μm又は約15nm~約5μmなど、約10nm~約400μmを範囲とする平均粒子サイズを有するミクロン又はナノサイズの固体粒子として存在し得る。ここで使用されるように、「ナノサイズ」又は「ナノ粒子」は、約1nm~約1000nm又は約1nm~約100nmなど、約1000nm以下の粒子サイズを示し、一方で「ミクロン」又は「ミクロンサイズ」は約1μm(すなわち、約1000nm)~約1000μmを範囲とする粒子サイズを示す。酸化亜鉛がUVフィルタ剤として存在する実施形態では、酸化亜鉛は、約10nm~約1000nm、約30nm~約200nm、約40nm~約100nm、約60nm~約80nm、約10nm~約50nm若しくは約25nm~約40nm又は約80nmなど、約5nm~約1000nmを範囲とする平均粒子サイズを有するナノ粒子を含み得る。ただし、以下に記載するように、酸化亜鉛は、顔料サイズの少なくとも1つの無機顔料としてここに開示される日焼け止め組成物中に存在してもよく、酸化亜鉛は、約200nm~約500nmなど、約100nm~約1000nm又は約10μm~約100μm、約2μm~約25μm、約5μm~約20μm若しくは約10μm~約15μmなど、約1μm~約400μmを範囲とする平均粒子サイズを有するナノ粒子サイズよりも大きくてもよいことを示す。ある実施形態では、酸化亜鉛は、(例えば、UVフィルタ保護のための)ナノ粒子及び(例えば、可視光散乱保護のための)より大きなミクロンサイズの粒子の混合物を含む。
【0040】
酸化亜鉛は、単独で又は日焼け止めの他の成分とともに、ユーザに局所的に塗布された場合に日光皮膚炎の影響を予防又は軽減するように、UV光線をフィルタリングするのに有効な任意の量で日焼け止め組成物中に存在し得る。実施形態では、酸化亜鉛は、日焼け止め組成物の総重量を基準として重量で約5%~約20%又は約10%~約15%、例えば、約10%、約11%、約12%、約13%又は約15%など、約1%~約25%を範囲とする量で日焼け止め組成物中に存在し得る。
【0041】
ある実施形態では、ここに開示される日焼け止め組成物は、酸化亜鉛に加えて又はそれに代えて、二酸化チタンを無機UVフィルタ剤として含み得る。酸化亜鉛について上述したように、二酸化チタンは、例えば、約10nm~約25μm、約10nm~約10μm又は約15nm~約5μmなど、約10nm~約100μmを範囲とする平均粒子サイズを有するミクロン又はナノサイズの固体粒子として存在し得る。二酸化チタンがUVフィルタ剤として存在する、ある実施形態では、二酸化チタンは、約5nm~約500nm、約10nm~約50nm若しくは約15nm~約40nm又は約15nmなど、約5nm~約1000nmを範囲とする平均粒子サイズを有するナノ粒子を含み得る。二酸化チタンナノ粒子はまた、例えば、約200nm~約500nm又は約250nm~約400nmなど、約100nm~約1000nmを範囲とする平均凝集粒子サイズなどの、より大きな平均粒子サイズを有する凝集物を形成し得る。ある実施形態では、二酸化チタンは、約5μm~約20μm又は約10μm~約15μmなど、約1μm~約25μmを範囲とする平均粒子サイズを有するナノ粒子サイズよりも大きくてもよい。ある実施形態では、二酸化チタンは、(例えば、UVフィルタ保護のための)ナノ粒子及び(例えば、可視光散乱保護のための)より大きなミクロンサイズの粒子の混合物を含む。
【0042】
二酸化チタンは、単独で又は日焼け止めの他の成分とともに、ユーザに局所的に塗布された場合に日光皮膚炎の影響を予防又は軽減するように、UV光線をフィルタリングするのに有効な任意の量で日焼け止め組成物中に存在し得る。実施形態では、二酸化チタンは、日焼け止め組成物の総重量を基準として重量で約5%~約20%又は約5%~約15%、例えば、約5%、約6%、約7%、約8%、約9%、約10%、約11%、約12%、約13%、約14%又は約15%など、約1%~約25%を範囲とする量で日焼け止め組成物中に存在し得る。
【0043】
全体として、酸化亜鉛及び二酸化チタンの双方を含む無機UVフィルタ剤は、日焼け止め組成物の総重量を基準として、重量で約5%~約50%、約10%~約45%又は約15%~約20%、例えば、約15%、約16%、約17%、約18%、約19%、約20%、約21%、約22%、約23%、約24%又は約25%など、約2%~約50%を範囲とする量で日焼け止め組成物中に存在し得る。
【0044】
ある実施形態では、少なくとも1つの無機UVフィルタ剤は、表面処理用無機UVフィルタ剤であり得る。少なくとも1つの無機UVフィルタ剤を表面処理することは、薬剤の光学反応性を低減若しくは防止し、及び/又は日焼け止め組成物中の他の原料との混合を補助し得る。表面処理済み無機UVフィルタ剤は、UVフィルタ剤が化学的、電気的及び/又は機械的手段を含む任意の手段によって表面処理されていることを示す。ある実施形態では、少なくとも1つの無機UVフィルタ剤を表面処理することで、UVフィルタ剤及び日焼け止め組成物の耐水特性が高まり得る。ある実施形態では、日焼け止め組成物中に存在するUVフィルタ剤の全てが、表面処理される。
【0045】
無機UVフィルタ剤は、当技術分野で公知の任意の表面処理方法又は薬剤によって表面処理され得る。ある実施形態では、少なくとも1つの無機UVフィルタ剤は、被覆された粒子を含み得る。被覆物は、例えば、アルキルシロキサン(例えば、トリエトキシカプリリルシラン)、有機チタネート、ハロゲン化リン酸エステル(例えば、ペルフルオロアルキルホスホン酸エステル)、ハロゲン化有機シラン、変性アミノ酸(例えば、ステアロイルグルタミン酸二ナトリウム)、シリコーン、又は脂肪酸の金属塩などの疎水性材料を含み得る。
【0046】
表面処理済み被覆UVフィルタ剤の例示的実施形態は、例えば、トリエトキシカプリリルシラン酸化亜鉛(例えば、Z-Cote(登録商標)HP1)などの被覆酸化亜鉛及び/又はトリエトキシカプリリルシラン二酸化チタン(例えば、Kobo products、Inc.のCM3K40T4、及びUV Cut TiO-41)などの被覆二酸化チタンを含み得る。
【0047】
無機顔料
種々の実施形態において、ここに開示される日焼け止め組成物は、少なくとも1つの無機顔料をさらに含み得る。理論に拘泥されるわけではないが、無機顔料は、UVAスペクトルの上端範囲(例えば、約375nm~約400nm)のUVA放射線と重なり得る、可視光スペクトルの青色光領域(例えば、約450nm~約495nm)及び可視光スペクトルの紫色光領域(例えば、約380nm~約450nm)における可視光などの太陽の可視光線を吸収するように作用するものと考えられる。例示的無機顔料は、二酸化チタン;酸化亜鉛;黒酸化鉄、褐色酸化鉄、赤色酸化鉄及び黄色酸化鉄を含む酸化鉄;マンガンバイオレット; ウルトラマリンブルー; 酸化クロム、クロム水和物; フェリックブルー;及びこれらの混合物を含み得る。ある実施形態では、少なくとも1つの無機顔料は、赤色酸化鉄、黄色酸化鉄及び黒酸化鉄の混合物など、酸化鉄の混合物を含む。
【0048】
一実施形態では、少なくとも1つの無機顔料は酸化鉄並びに酸化亜鉛及び二酸化チタンの少なくとも一方を含み、一実施形態では、少なくとも1つの無機顔料は酸化鉄及び二酸化チタンを含む。二酸化チタン及び酸化亜鉛などの無機UVフィルタ剤の旧来的なナノサイズの粒子は約280nm~約320nmの範囲での放射線に対してUVB保護を与えるように作用し得るが、これらの薬剤は、約375nm~約400nmを含む約315nm~約400nmなどのUVA放射線を構成する、より高い放射線波長での紅斑に対する充分な保護を与えることはできないことが多い。一方、ここに開示するように、酸化鉄、二酸化チタン及び/又は酸化亜鉛などの少なくとも1つの無機顔料の添加は、例えば、約375nm~約400nmの範囲のUVA放射線及び約400nm~約750nmの範囲の可視光からの保護など、UVA放射線及び/又は可視光に対する紅斑からの保護の強化を与え得る。
【0049】
少なくとも1つの無機顔料が二酸化チタン及び/又は酸化亜鉛を含む実施形態では、二酸化チタン及び/又は酸化亜鉛は、UVフィルタ剤を含む二酸化チタン及び/又は酸化亜鉛よりも大きな粒子サイズを有し得る。二酸化チタン及び/又は酸化亜鉛の、より小さなナノサイズの粒子は、広域スペクトルのUVフィルタ及び吸収特性を与えることが知られているが、可視光を散乱及び反射する能力が低く、日焼け止め組成物の形態で皮膚に塗布された場合に、当該ナノサイズの粒子はより透明となってしまう。例えば、Yin,H.他、A comparative study of the physical and chemical properties of nano-sized ZnO particles from multiple batches of three commercial products,J.Nanopart.Res.2015;17:1-19参照。
【0050】
したがって、ここに開示される日焼け止め組成物が酸化亜鉛のナノ粒子及び/又は二酸化チタンのナノ粒子のUVフィルタ剤を含む、ある実施形態では、日焼け止め組成物は、顔料サイズの酸化亜鉛及び顔料サイズの二酸化チタンからなる群から選択された少なくとも1つの無機顔料をさらに含み得る。「顔料(の)」又は「顔料サイズ」によって、二酸化チタン及び/又は酸化亜鉛の平均粒子サイズが上記ナノサイズの粒子よりも大きくかつ日焼け止め組成物の顔料としての用途のために外見上許容可能なサイズのものであることが示される。ある実施形態では、酸化亜鉛の顔料サイズの粒子は、約200nm~約10μm、約200nm~約500nm又は約5μm~約15μmなど、少なくとも約100nm~約25μmを範囲とする平均粒子サイズを有し得る。ある実施形態では、二酸化チタンの顔料サイズの粒子は、約200nm~約10μm、約200nm~約500nm、約5μm~約15μm又は約8μm~約10μmなど、少なくとも約100nm~約25μmを範囲とする平均粒子サイズを有し得る。
【0051】
少なくとも1つの無機顔料は、単独で又は日焼け止め組成物の他の成分とともに、可視光スペクトルの青色及び/又は紫色領域の可視光などの可視光を吸収するのに有効な任意の量で日焼け止め組成物中に存在し得る。ある実施形態では、少なくとも1つの無機顔料は、日焼け止め組成物の総重量を基準として、重量で約1%~約5%又は約1%~約4.5%など、約0.01%~約10%を範囲とする量で日焼け止め組成物中に存在する。
【0052】
ある実施形態では、少なくとも1つの無機顔料は、表面処理済み無機顔料であり得る。少なくとも1つの無機顔料を表面処理することは、顔料の光学反応性を低減若しくは防止し及び/又は日焼け止め組成物中の他の原料との混合を補助し得る。表面処理済み無機顔料は、無機顔料が化学的、電気的及び/又は機械的手段を含む任意の手段によって表面処理されていることを示す。ある実施形態では、少なくとも1つの無機顔料を表面処理することで、無機顔料及び日焼け止め組成物の耐水特性を高め得る。ある実施形態では、日焼け止め組成物中に存在する無機顔料の全てが、表面処理される。
【0053】
無機顔料は、当技術分野で公知の任意の表面処理方法又は薬剤によって表面処理され得る。ある実施形態では、少なくとも1つの無機顔料は、被覆された粒子を含み得る。被覆物は、例えば、アルキルシロキサン(例えば、トリエトキシカプリリルシラン)、有機チタネート、ハロゲン化リン酸エステル(例えば、ペルフルオロアルキルホスホン酸エステル)、ハロゲン化有機シラン、変性アミノ酸(例えば、ステアロイルグルタミン酸二ナトリウム)、シリコーン、又は脂肪酸の金属塩などの疎水性材料を含み得る。
【0054】
無機顔料の例示的実施形態は、トリエトキシカプリリルシラン酸化鉄を含む被覆酸化鉄(例えば、Unipure(登録商標))並びに被覆及び非被覆二酸化チタン(例えば、Unipure(登録商標)White LC 987及びUnipure(登録商標)White LC 987 AS-EM、トリエトキシカプリリルシラン二酸化チタン)などの表面処理済み被覆無機顔料を含み得る。
【0055】
酸化防止剤
ここに開示されるある実施形態では、日焼け止め組成物は、少なくとも1つの酸化防止剤をさらに含む。理論に拘泥するわけではないが、少なくとも1つの酸化防止剤は、太陽の可視光放射線によって誘発されるフリーラジカルをクエンチさせ、それにより、フリーラジカルをクエンチするのに有効な量でユーザに局所的に塗布された場合に日光皮膚炎を効果的に予防又は軽減するものと考えられている。ある実施形態では、少なくとも1つの酸化防止剤は、ビタミンA、ビタミンC、ビタミンE、セレニウム、カロテノイド(例えば、ベータカロチン)、チオール並びにこれらの誘導体及び混合物から選択され得る。ある実施形態では、少なくとも1つの酸化防止剤は、ビタミンE(例えば、トコフェロール)又は酢酸トコフェロールなど、その誘導体である。ある実施形態では、少なくとも1つの酸化防止剤は、ビタミンC(例えば、アスコルビン酸)又はアスコルビン酸テトラヘキシルデシルなど、その誘導体である。本開示のある態様では、少なくとも1つの酸化防止剤は、ビタミンE又はその誘導体及びビタミンC又はその誘導体の双方を含む。
【0056】
少なくとも1つの酸化防止剤は、単独で又は日焼け止め組成物の他の成分とともに、電磁スペクトルの可視光領域(例えば、約400~750nm)によって引き起こされる日光皮膚炎を予防又は軽減するのに有効な任意の量で、ここに開示される日焼け止め組成物中に存在し得る。ある実施形態では、ビタミンC又はアスコルビン酸テトラヘキシルデシルなど、その誘導体は、日焼け止め組成物の総重量に対して、重量で約0.1%~約3%、約0.2%~約2%又は約0.2%~約1%など、約0.01%~約5%を範囲とする量で日焼け止め組成物中に存在する。ある実施形態では、ビタミンE又は酢酸トコフェロールなど、その誘導体は、日焼け止め組成物の総重量に対して、重量で約0.1%~約3%、約0.2%~約2%又は約0.2%~約1%など、約0.01%~約5%を範囲とする量で日焼け止め組成物中に存在する。ある実施形態では、少なくとも1つの酸化防止剤は、ビタミンC又はその誘導体及びビタミンE又はその誘導体の組合せであり、日焼け止め組成物の総重量に対して、重量で約0.2%~約5%、約0.5%~約4%又は約0.4%~約2%など、約0.1%~約10%を範囲とする量で日焼け止め組成物中に存在する。
【0057】
追加の原料
本開示の日焼け止め組成物は、局所用日焼け止め製品での用途のために外見上許容可能であることが当技術分野で公知の他の任意の追加の原料を含み得る。例えば、ある実施形態では、ここに開示される日焼け止め組成物は、皮膚軟化剤/オイル、乳化剤、SPFブースター、有機顔料、有機UVフィルタ剤、皮膚調整剤、皮膜形成剤、充填剤、防腐剤、香料、シリカ、塩化ナトリウム、クエン酸、中和剤又はpH調整剤(例えば、トリエタノールアミン及び水酸化ナトリウム)、エッセンシャルオイル、及び水などの外見上許容可能な担体のうちの少なくとも1つをさらに含み得る。
【0058】
ある実施形態では、日焼け止め組成物は少なくとも1つの有機UVフィルタ剤をさらに含み、ある実施形態では、日焼け止め組成物は、日焼け止め組成物中のUVフィルタ剤のみが無機UVフィルタ剤となるように有機UVフィルタ剤を含まない。当技術分野で公知の任意の有機UVフィルタ剤がここに開示する実施形態の範囲内とみなされ得るが、旧来的な有機UVフィルタ剤は芳香族低分子である。例えば、ここに開示される少なくとも1つの有機UVフィルタ剤は、ベンゾフェノン類(ベンゾフェノン-3、ベンゾフェノン-5及びベンゾフェノン-8など)、3-ベンジリデンカンファー、ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン、ブチルメトキシジベンゾイルメタン、カンファーベンザルコニウムメトサルフェート、ジエチルアミノヒドロキシベンゾイルヘキシルベンゾエート、ジエチルヘキシルブタミドトリアゾン、ドロメトリゾールトリシロキサン、エトキシエチルメトキシシンナメート、エチルヘキシルジメチルアミノベンゾエート、エチルヘキシルメトキシシンナメート、エチルヘキシルサリシレート、エチルヘキシルトリアゾン、ホモサレート、p-メトキシ桂皮酸イソアミル、アントラニル酸メチル、4-メチルベンジリデンカンファー、メチレンビス-ベンゾトリアゾリルテトラメチルブチルフェノール、オクトクリレン、パラアミノ安息香酸(PABA)、ポリアクリルアミドメチルベンジリデンカンファー、ポリシリコーン-15、サリチル酸トリエタノールアミン及びテレフタリデンジカンファースルホン酸から選択され得る。
【0059】
ある実施形態では、日焼け止め組成物は、少なくとも1つの、例えば、ブチレングリコール又はグリセリンなどの保湿剤をさらに含む。
【0060】
ある実施形態では、少なくとも1つの皮膚軟化剤を含み得る。適切な皮膚軟化剤は、例えば、鉱物油、石油、トリグリセリド(例えば、カプリル酸/カプリン酸トリグリセリド)などの植物(vegetable/plant)油、ワックス(例えば、蜜蝋)、パルミチン酸イソプロピル、ミリスチン酸イソプロピル、アジピン酸ジイソプロピル、アジピン酸ジブチル、サリチル酸ブチロクチル、C12-C15安息香酸アルキル、シリコーン油(例えば、ジメチコン及びステアリルジメチコン)、動物油、炭化水素油及び脂肪酸を含む当技術分野で公知の任意の皮膚軟化剤から選択され得る。例示として、少なくとも1つの皮膚軟化剤は、イソドデカン及びイソヘキサデカン、エステル油、エーテル油(例えば、ジカプリリルエーテル)並びに人工トリグリセリド(例えば、カプリルカプリリルグリセリド、トリミリスチン酸グリセリル、トリパルミチン酸グリセリル、トリリノレン酸グリセリル、トリラウリン酸グリセリル、トリカプリン酸グリセリル、トリカプリル酸グリセリル、トリ(カプリン酸/カプリル酸)グリセリル、トリ(カプリン酸/カプリル酸/リノレン酸)グリセリル及びこれらの混合物)などのアルカン油から選択され得る。
【0061】
例示的エステル油は、例えば、パルミチン酸エチル;パルミチン酸エチルヘキシル;パルミチン酸イソプロピル;炭酸ジカプリリル;ミリスチン酸イソプロピル及びミリスチン酸エチルなどのミリスチン酸アルキル;ステアリン酸イソセチル;イソノナン酸2-エチルヘキシル;イソノナン酸イソノニル;ネオペンタン酸イソデシル;ネオペンタン酸イソステアリル;セバシン酸ジエチル;ラウロイルサルコシン酸イソプロピル;セバシン酸ジイソプロピル;セバシン酸ビス(2-エチルヘキシル);アジピン酸ジイソプロピル;アジピン酸ジ-n-プロピル;アジピン酸ジオクチル;アジピン酸ビス(2-エチルヘキシル);アジピン酸ジイソステアリル;マレイン酸ビス(2-エチルヘキシル);クエン酸トリイソプロピル;クエン酸トリイソセチル;クエン酸トリイソステアリル;トリ乳酸グリセリル;トリオクタン酸グリセリル;クエン酸トリオクチルドデシル;クエン酸トリオレイル;ジヘプタン酸ネオペンチルグリコール;ジイソノナン酸ジエチレングリコール;アジピン酸ジイソプロピル;アジピン酸ジオクチル;ヘキサン酸2-エチルヘキシル;ラウリン酸エチル;オクタン酸セチル;オクタン酸オクチルドデシル;プロピオン酸ミリスチル;2-エチルヘキサン酸2-エチルヘキシル;オクタン酸2-エチルヘキシル;カプリル酸/カプリン酸2-エチルヘキシル;パルミチン酸メチル;イソノナン酸イソノニル;ラウリン酸イソヘキシル;ラウリン酸ヘキシル;イソステアリン酸イソプロピル;オレイン酸イソデシル;トリ(2-エチルヘキサン酸)グリセリル;テトラ(2-エチルヘキサン酸)ペンタエリスリチル;コハク酸2-エチルヘキシル;C10-30コレステロール/ラノステロールエステル;並びにこれらの混合物を含み得る。
【0062】
ある実施形態では、日焼け止め組成物は、少なくとも1つのSPFブースターをさらに含み得る。SPFブースターは、UV放射線を屈折させることにより、UVフィルタ剤などの他の化合物のUV吸収能力を(両化合物がともに存在する場合に)増加させるように作用する化合物である。SPFブースターは、UV放射線が日焼け止め組成物を通過するにつれてUV放射線の経路長を増加させ得る。少なくとも1つのSPFブースターは、例えば、シリンギリデンマロン酸ジエチルヘキシル;ホウケイ酸カルシウムアルミニウム、ホウケイ酸ナトリウム及びホウケイ酸カルシウム/ナトリウムなどのガラス微小球;並びにスチレン及び(メタ)アクリル酸のコポリマーを含む当技術分野で公知の任意のSPFブースターから選択され得る。
【0063】
ある実施形態では、日焼け止め組成物は、少なくとも1つの防腐剤をさらに含み得る。適切な防腐剤は、これらに限定されないが、クロロフェネシン、ソルビン酸、エチレンジニトリロ四酢酸二ナトリウム、エチルヘキシルグリセリン、フェノキシエタノール、メチルパラベン、エチルパラベン、プロピルパラベン、フィチン酸、イミダゾリジニル尿素、デヒドロ酢酸ナトリウム、ベンジルアルコール、安息香酸ナトリウム、メチルクロロイソチアゾリノン、メチルイソチアゾリノン及びこれらの混合物を含み得る。
【0064】
ある実施形態では、日焼け止め組成物は、少なくとも1つの皮膚調整剤をさらに含んでいてもよく、それはある実施形態では皮膜形成剤及び/又は乳化剤としても機能し得る。適切な皮膚調整剤は、これらに限定されないが、エトキシ化グリセリン及びプロポキシ化グリセリンなどのグリセリン;プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキシレングリコール、ペンチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、カプリリルグリコール、ソルビトール、ヒドロキシプロピルソルビトール、エリスリトール、トレイトール、ペンタエリスリトール、キシリトール、グルシトール及びマンニトールなどの糖アルコール;ヘキサントリオール(例えば、1,2,6-ヘキサントリオール);ステアリン酸グリセリル;ジメチコン;シクロメチコン;フェニルトリメチコン;フェニルジメチコン;セチルジメチコン;ステアリルジメチコン;カプリリルメチコン;アモジメチコン;C30-45アルキルジメチコン及びメチコン;セテアリルメチコン;ジメチコンコポリオール;シクロペンタシロキサン(Bentone Gel(登録商標)など);ジメチコンクロスポリマー;ジメチコン/ビニルジメチコンクロスポリマー;C30-45アルキルセテアリルジメチコンクロスポリマー;セテアリルジメチコンクロスポリマー;ジメチコン/フェニルビニルジメチコンクロスポリマー;ビニルジメチコン/ラウリルジメチコンクロスポリマー;トリフルオロプロピルジメチコン/トリフルオロプロピルジビニルジメチコンクロスポリマー;トリメチルシロキシケイ酸;トリシロキサン;ジヘプタン酸ネオペンチルグリコール;ジエチルヘキサン酸ネオペンチルグリコール;ジカプリル酸/ジカプリン酸ネオペンチルグリコール;ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル;ジカプリン酸ネオペンチルグリコール;ジイソステアリン酸ネオペンチルグリコール;サリチル酸ブチルオクチル;ステアリン酸エチルヘキシル;2,6-ナフタリン酸ジエチルヘキシル;ペトロラタム、蜜蝋、シアバター、シアバターオイル、ココアバター、ホホババター、アロエバター、オリーブバター、ココナッツオイル、ホホバオイル、オリーブオイル、ヒマワリ種子オイル、並びにこれらの混合物を含み得る。
【0065】
ある実施形態では、日焼け止め組成物は、少なくとも1つの皮膜形成剤をさらに含み得る。適切な皮膜形成剤は、これらに限定されないが、ポリウレタン、アクリレート/ジメチコンクロスポリマー、ワックス、シリコーンアクリレート及びこれらの混合物を含み得る。
【0066】
ここに開示される日焼け止め組成物は、組成物の原料を当技術分野で許容可能な任意の態様で混合及びブレンドするなど、当技術分野で公知の任意の手段によって調製され得る。ある実施形態では、日焼け止め組成物は、原料を市販の局所用担体と組み合わせることによって調製されてもよく、それは、例えば、皮膜形成剤、界面活性剤、乳化剤、増粘剤、皮膚軟化剤、防腐剤、pH調整剤、着色料及び香料など、そこに溶解又は分散された他の原料を含み得る。
【0067】
日焼け止め組成物を使用する方法
日光皮膚炎を軽減又は予防する方法も、ここに開示される。ここに開示される方法は、ここに開示されるような有効量の日焼け止め組成物を、例えば、頭髪、皮膚、爪又は唇など、ユーザの身体の表面に局所的に塗布するステップを備え得る。ここで使用されるように、有効量は、UV放射線及び可視光の双方に対する曝露から日光皮膚炎を軽減又は予防する任意の量であり得る。ある実施形態では、有効量は、例えば、約1mg/cm~約3mg/cmなど、約0.5mg/cm~約5mg/cmを範囲とし、又は約2mg/cmであり得る。ある実施形態では、ここに開示される方法は、塗布後に日焼け止め組成物を乾燥させることをさらに備える。ある実施形態では、日焼け止めは、約10分、約15分、約20分又は約25分など、約5分~約30分を範囲とする期間にわたって乾燥させられることになる。
【0068】
日焼け止め組成物を局所的に塗布することによって、日焼け止め組成物が、例えば、皮膚、頭髪、爪及び/又は唇を含むユーザの任意の表面に塗布され得ることを意味することが理解される。日焼け止め組成物は、スプレー塗布、手又はスプレーボトル、ワイプ、ローラーなどのような塗布器を用いて拭く、付ける、拡げる又は擦り込むことを含む当技術分野で公知の任意の態様で局所的に塗布され得る。
【0069】
日焼け止め組成物のSPFを増加させる方法もここに開示され、その方法は、少なくとも1つの無機顔料及び少なくとも1つの酸化防止剤を日焼け止め組成物に添加するステップを備える。SPF、すなわち、日焼け防止係数は、当技術分野で公知の任意の手段によってここに記載するように測定され得る。一実施形態では、SPFは、[日焼け止め保護されていない皮膚に紅斑を生成するのに必要なUV放射線量]に対する[日焼け止め保護されている皮膚に紅斑を生成するのに必要なUV放射線量]の比の観点で屋内研究室においてSPFを測定するInternational Organization for Standardization(ISO)24444:2019に記載されるプロトコルによって測定され得る。ISO24444:2019に記載される標準はSPFをUV放射線の観点で(すなわち、400nm以下で)定義するため、可視光の影響を含む実生活の太陽光曝露の影響を考慮しておらず、実際に排除している。実際に、研究室ベースのSPF試験は、通常は、290nm以下及び400nm以上の放射線を排除するようにフィルタを付加しつつ290~400nmの領域のスペクトルのみにおいてUV放射線を放射し、380~400nmの含有量を大幅に減少させる太陽光シミュレータを使用する。したがって、皮膚に対する長波長のUVA及び可視光の影響は、多くの市販の日焼け止め製品に使用される屋内研究室ベースのSPF測定を含む多くのSPF測定において考慮されていない。
【0070】
ここに開示される方法の種々の態様において、SPFは、実際の屋外太陽光曝露に基づいて測定され、[日焼け止め保護されていない皮膚に紅斑を生成するのに必要な太陽光曝露の量]に対する[日焼け止め保護されている皮膚に紅斑を生成するのに必要な太陽光曝露の最少量]の比の観点で定義され得る。したがって、ここで使用されるSPFは、UV放射線及び可視光の双方を含む実際の屋外太陽光曝露による影響の全てを考慮し、実際の使用条件下での製品の性能を表す。
【0071】
本開示の種々の態様において、ここに開示される日焼け止めのSPFは、屋外太陽光曝露条件下で試験した場合に、有効量の少なくとも1つの酸化防止剤及び/又は有効量の少なくとも1つの無機顔料を含有しない日焼け止め組成物と比較して、少なくとも約4、少なくとも約5又は少なくとも約6など、少なくとも約3のSPFだけ増加し得る。ある態様では、ここに開示される日焼け止めのSPFは、屋外太陽光曝露条件下で試験した場合に、約3~約5又は約3~約4など、約2~約10を範囲とするSPFだけ増加し得る。この増加レベルは、屋内太陽光シミュレータ試験方法で生成されるSPFの主張に対して小さいように思われ得るが、実際には、SPF60~100を主張する日焼け止めに対する最大観測SPF値が8~10の範囲である屋外条件で試験される製品を比較した場合には、その影響は比例的により高いものとなる。したがって、この屋外使用条件における8~10の最大観測結果以上の2~6のSPF単位の増加は、現実の保護において有意な上昇を表す。
【0072】
本開示の広い範囲を記載する数値範囲及びパラメータは概数であるが、具体例に記載する数値は可能な限り正確に報告される。ただし、いずれの数値も、それらのそれぞれの試験測定値において求められた標準偏差から必然的にもたらされる特定の誤差を内在的に含む。さらに、ここに開示される全ての範囲は、そこに包摂される任意の及び全ての小範囲を包含するものと理解されるべきである。
【0073】
本教示を1以上の実施例に関して説明してきたが、後続の特許請求の範囲の主旨及び範囲から逸脱することなく説明に係る例に対して変更及び/又は変形がなされ得る。さらに、本教示の特定の特徴を複数の実施例のうちの1つのみに関して開示したが、そのような特徴は、任意の所与又は特定の機能について望まれかつ有利となり得るように他の実施例の他の1以上の特徴に組み合わされてもよい。さらに、用語「含む/含んでいる(including)」、「含む(includes)」、「有している(having)」、「有する(has)」、「有する(with)」又はそれらの変化形は、詳細な説明及び特許請求の範囲で使用される限りにおいて、これらの用語は用語「備える/含む(comprising)」と同様の態様で包含的なものである。また、ここでの記載及び特許請求の範囲において、用語「約」は、列挙される値が、その変更が説明に係る実施形態の処理又は構造の不適合をもたらさない限り、幾らか変更され得ることを示す。最後に、「例示的」は、その記載が理想的であるということを示唆するのではなく、一例として使用されることを示す。
【0074】
上記開示の及び他の特徴及び機能の変形例又はその代替例が他の多数の異なるシステム又はアプリケーションとなるように組み合わせられ得ることが分かるはずである。種々の現在予期又は予想されない代替例、変更例、変形例又はそこでの改良は、当業者によって後に行われ得るものであり、それらも以降の特許請求の範囲によって包含されるものである。
【実施例1】
【0075】
日焼け止め組成物を、以下の表1に示すように配合した。
【0076】
表1-GM1、GM2及びGM3についての日焼け止め配合物
【表1】
【0077】
表1は、ペルー、アレキパでの11月下旬の現地時間午前10時から午後12時30分(南中は午前11時)における臨床試験のために調合された本開示に係る日焼け止めのための配合物(GM1)及び2つの比較配合物(GM2及びGM3)を提供する。GM2「偽薬」配合物は、10%のミクロン二酸化チタン及び11%のミクロン酸化亜鉛を有するが酸化防止剤のビタミンE若しくはビタミンC又は無機顔料酸化鉄を有さない従来の日焼け止め製品についての原料を含有する。GM3も従来の日焼け止めであり、各々1重量%の量で酸化防止剤を配合物にさらに含むが酸化鉄を含有しない。GM1の配合物は、酸化防止剤及び酸化鉄(黄色、黒色及び赤色酸化鉄)の両方を、皮膚色に一致する比率で添加するものである。二酸化チタン及び酸化亜鉛のパーセンテージは酸化鉄及び酸化防止剤の添加物の添加のために配合では非常にわずかなものであるが、各バッチにおける二酸化チタン及び酸化亜鉛の実際の量は、皮膚軟化剤の濃度を調整した後では、同じであった。
【0078】
3つの配合物及びISO参照基準SPF63配合物(可視光保護を含まず、酸化鉄も酸化防止剤も含まない)を、ペルー、アレキパの高度約7500フィートにおいて南中付近の至点付近で屋外自然日光曝露におけるSPF値について11人の被検者に対して試験した。日焼けUV強度は、この期間中では1時間あたり7.5~8日焼け線量の範囲であった(すなわち、日光皮膚炎となるのに概ね7.5~8分の曝露が必要であった)。これは、北米又は欧州での日焼けに対する15~20分の通常の曝露時間と比較して高い強度のUV環境である。より高い高度と組み合わされた高い太陽角度(天頂角87°)によって、可視光含有量に対して最大のUV含有量となった。
【0079】
上記3個の日焼け止め配合物を、認定されたSPF試験プロトコルによって指定された2mg/cmの密度で試験被検者の背中の矩形領域に塗布した。製品を少なくとも15分間にわたって覆って乾燥させた。試験領域をアルミニウム箔テープによって囲み、日焼けUV線量計によって測定されるように可変量のUV曝露で日光に曝露させた。所定の被曝量に達すると、関連する試験部位をアルミニウム箔テープで覆い、その部位に対する曝露を停止した。曝露を、日焼け止めなしの領域にも行い、日光皮膚炎の原因となる放射線の非保護最小線量を測定した。曝露の全ての終了時に、被検者の被曝背中領域を覆い、被検者には、日陰に入り、彼らの背中が当日の残りの時間にわたって完全に覆われた状態とするように指示した。
【0080】
以下のモニタリング(曝露後の約16~24時間)を行い、被検者の曝露部位を調べ、日光皮膚炎反応の原因となる曝露の最低線量であるいわゆる最小紅斑量(MED)を、日焼け止め保護部位及び非保護部位の双方について判定した。線量の比(日焼け止め保護線量/非保護線量)を(従来の研究室のSPF試験で行われるように)試験製品のSPF値として計算した。その後、保護値を、4個の試験製品GM1、GM2、GM3及びSPF63参照製品の各々について比較した。日焼け止め配合物試験の各々について計算されたSPFを以下の表2に示す。
【0081】
表2-GM1~GM3及びSPF63参照についての自然日光SPF値
【表2】
【0082】
これらのデータは、酸化防止剤の添加を含む配合物(GM3)が、酸化防止剤を有さない配合物(GM2)と比較してSPFの追加の保護を与え(すなわち、8.8対8.1)、p<0.08のp値を有することを実証した。酸化鉄を酸化防止剤とともに配合物に添加すること(GM1)によって、SPF値が11.9に増加し、GM2の8.1(p<0.001)と比較して有意な差が得られた。可視光保護のないSPF63・ISO参照基準は、臨床SPF試験研究室において試験されるような63の予想SPFではなく8.5のSPFしか示さなかった。これらの2つの結果の相違は、臨床SPF試験で使用される太陽光シミュレータは可視光を含まず-それが(設計によって)試験時の皮膚への潜在的な熱的負荷を軽減するためにシミュレータのスペクトル出力から除外されていることに起因し得る。したがって、臨床SPF試験で得られるSPF63と最適なUV含有量での自然の日光の下で測定される8.5の値との相違は、主に試験光源における可視光の存在に起因するものである。本発明の日焼け止めGM1は、屋外において可視光を含む現実の太陽光スペクトルを有する現実の日光の下で試験される場合、SPF63参照基準日の焼け止め(p<0.003)よりも驚くほどはるかに優れている。これは、GM1が、酸化鉄及び酸化防止剤によってスペクトルの可視部分に欠落している保護を与えることに起因している。
【0083】
日光の紅斑損傷の10%のみが可視光によって引き起こされる場合、これはSPF63の日焼け止めの保護(1.6%透過)を8.6(11.6%透過)に減少させるのに充分となり、現実の日光試験におけるこの日焼け止めの不具合を説明するものである。当技術分野において、自然の日光で試験した場合の高SPF製品の不具合についての同様の知見が報告されている。例えば、Lott,D.,Testing SPF 15-100,Indoor v.Outdoor,Cosmet.& Toil.2013;128(9):638-647及びHughes,S.N.G.他、Assessment of Natural Sunlight Protection Provided by 10 High SPF Broad Spectrum Sunscreens and Sun Protective Fabrics,Curr.Probl.Dermatol.2021;55(in press)参照。
【実施例2】
【0084】
UV保護のためのビタミンC誘導体のアスコルビン酸テトラヘキシルデシル、酸化鉄、二酸化チタン及び酸化亜鉛と組み合わせて、酢酸トコフェロールの代わりにトコフェロールを含む追加の日焼け止め配合物を調整した。配合を以下の表3に示す。
【0085】
表3-着色日焼け止め保湿液
【表3】
【0086】
配合物は、日光皮膚炎に対する優れた保護並びに皮膚への塗布後の好ましい色及び感触を与えるベージュ色のローションとなった。ローションを評価して、FDA Final Rule Docket No.FDA-1978-N-0018,表題「Labeling and Effectiveness testing;Sunscreen Drug Products for Over-the-Counter Human Use」に記載されるプロトコルに従ってin vitro UVA広域スペクトル試験によってその臨界波長を測定した。臨界波長を、LS1000-6S-009 Labsphere Ultraviolet Transmittance Analyzer(Spectrometer);Solar Light PMA 2101 Erythema Weighted Detector;及びHD6 PMMA platesを用いて測定した。
【0087】
3個のプレートの5回の読取りを実行した。3個の試験サンプルの臨界波長は、374.20、373.20及び373.00(平均373.47nm)であった。平均UVA/UV比は0.64であり、平均UVA/UVB比は0.49であった。結果を以下の表4に示す。
【0088】
表4-配合物の3個のサンプルの臨界波長試験
【表4】
【国際調査報告】