(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-02
(54)【発明の名称】アフリカ豚熱ウイルス由来抗原タンパク質を含むアフリカ豚熱の予防用ワクチン
(51)【国際特許分類】
A61K 39/12 20060101AFI20240925BHJP
C12N 15/82 20060101ALI20240925BHJP
C12N 15/13 20060101ALI20240925BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20240925BHJP
A61K 39/39 20060101ALI20240925BHJP
A61K 39/295 20060101ALI20240925BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240925BHJP
A23K 50/30 20160101ALI20240925BHJP
A23K 20/147 20160101ALI20240925BHJP
A61P 31/20 20060101ALI20240925BHJP
C07K 14/01 20060101ALN20240925BHJP
C12N 15/34 20060101ALN20240925BHJP
【FI】
A61K39/12
C12N15/82
C12N15/13
C12N5/10
A61K39/39
A61K39/295
A61P43/00 121
A23K50/30
A23K20/147
A61P31/20
C07K14/01 ZNA
C12N15/34
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024513193
(86)(22)【出願日】2022-08-12
(85)【翻訳文提出日】2024-04-12
(86)【国際出願番号】 KR2022012142
(87)【国際公開番号】W WO2023027402
(87)【国際公開日】2023-03-02
(31)【優先権主張番号】10-2021-0114014
(32)【優先日】2021-08-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2022-0097525
(32)【優先日】2022-08-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】519142114
【氏名又は名称】バイオアプリケーションズ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】BIOAPPLICATIONS INC.
(74)【代理人】
【識別番号】110001612
【氏名又は名称】弁理士法人きさらぎ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】カン、ヒャンジュ
(72)【発明者】
【氏名】チョイ、ボ-ファ
(72)【発明者】
【氏名】ソン、ウン-ジュ
【テーマコード(参考)】
2B005
2B150
4B065
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
2B005EA01
2B150AA03
2B150AB10
2B150DC23
4B065AA88X
4B065AB01
4B065BA02
4B065CA24
4B065CA45
4C085AA03
4C085AA04
4C085BA51
4C085BB11
4C085CC01
4C085CC21
4C085DD62
4C085EE03
4C085EE06
4C085FF16
4C085GG08
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045CA01
4H045DA86
4H045EA31
4H045FA74
(57)【要約】
本発明は、アフリカ豚熱ウイルス抗原タンパク質Lectin、CD2v、p72、p54、p30、p15、p35、E199L、および/またはF317Lの塩基配列を含む組換えベクター、前記組換えベクターにより形質転換された形質転換体、および前記形質転換体から分離したアフリカ豚熱ウイルスのLectin、CD2v、p72、p54、p30、p15、p35、E199L、および/またはF317L抗原タンパク質を有効成分として含むアフリカ豚熱の予防用ワクチン組成物などに関する。
【選択図】
図11
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アフリカ豚熱ウイルス(African swine fever virus,ASFV)抗原タンパク質の組み合わせを有効成分として含むアフリカ豚熱の予防用ワクチン組成物であって、前記ASFV抗原タンパク質の組み合わせは、Lectin、CD2v、p72、p54、およびp30タンパク質から成る群から選ばれる1つ以上の組み合わせであり、ただし、前記ASFV抗原タンパク質の組み合わせが前記Lectinタンパク質および前記CD2vタンパク質を含む場合、前記ASFV抗原タンパク質の組み合わせは、3つ以上の抗原タンパク質からなることを特徴とするワクチン組成物。
【請求項2】
前記ワクチン組成物は、下記から成る群から選ばれる1つ以上の特徴を満たすことを特徴とする請求項1に記載のワクチン組成物:
(a)前記Lectinタンパク質は、配列番号1のアミノ酸配列を含む;
(b)前記CD2vタンパク質は、配列番号3のアミノ酸配列を含む;
(c)前記p72タンパク質は、配列番号5のアミノ酸配列を含む;
(d)前記p54タンパク質は、配列番号7のアミノ酸配列を含む;および
(e)前記p30タンパク質は、配列番号9のアミノ酸配列を含む。
【請求項3】
前記ASFV抗原タンパク質は、組換えベクターを用いて生産されたものであり、前記組換えベクターは、下記から成る群から選ばれる1つ以上のASFVタンパク質コードポリヌクレオチドを含むことを特徴とする請求項1に記載のワクチン組成物:
(a)配列番号2で表される塩基配列を含む、Lectinコードポリヌクレオチド;
(b)配列番号4で表される塩基配列を含む、CD2vコードポリヌクレオチド;
(c)配列番号6で表される塩基配列を含む、p72コードポリヌクレオチド;
(d)配列番号8で表される塩基配列を含む、p54コードポリヌクレオチド;および
(e)配列番号10で表される塩基配列を含む、p30コードポリヌクレオチド。
【請求項4】
前記組換えベクターは、下記から成る群から選ばれる1つ以上をさらに含むことを特徴とする請求項3に記載のワクチン組成物:
(a)配列番号19のNBまたは配列番号21のBiPをコードするポリヌクレオチド;
(b)配列番号27のpFc2断片をコードするポリヌクレオチド;
(c)配列番号29のHDELペプチドをコードするポリヌクレオチド;および
(d)配列番号23のMドメインまたは配列番号25のポリヒスチジンタグ(polyhistidine tag)をコードするポリヌクレオチド。
【請求項5】
前記ASFV抗原タンパク質は、前記組換えベクターで形質転換された植物体で生産されたことを特徴とする請求項3に記載のワクチン組成物。
【請求項6】
前記ワクチン組成物は、アジュバント(adjuvant)をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載のワクチン組成物。
【請求項7】
前記アジュバントは、ミネラルオイル(mineral oil)またはエマルシゲン(Emulsigen)系であることを特徴とする請求項6に記載のワクチン組成物。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項に記載ワクチン組成物を含む、アフリカ豚熱の予防用ワクチンキット。
【請求項9】
ヒトを除いた動物に請求項1に記載のワクチン組成物を投与する段階を含む、アフリカ豚熱の予防方法。
【請求項10】
ASFV(African swine fever virus,ASFV)抗原タンパク質の組み合わせを有効成分として含むアフリカ豚熱の予防用飼料組成物であって、前記ASFV抗原タンパク質の組み合わせは、Lectin、CD2v、p72、p54、およびp30タンパク質から成る群から選ばれる1つ以上の組み合わせであり、ただし、前記ASFV抗原タンパク質の組み合わせがLectinタンパク質およびCD2vタンパク質を含む場合、前記ASFV抗原タンパク質の組み合わせは、3つ以上の抗原タンパク質からなることを特徴とする飼料組成物。
【請求項11】
配列番号5のアミノ酸配列を含むp72タンパク質をコードするポリヌクレオチド;配列番号7のアミノ酸配列を含むp54タンパク質をコードするポリヌクレオチド;配列番号11のアミノ酸配列を含むp15タンパク質をコードするポリヌクレオチド;配列番号13のアミノ酸配列を含むp35タンパク質をコードするポリヌクレオチド;配列番号15のアミノ酸配列を含むE199Lタンパク質をコードするポリヌクレオチド;または配列番号17のアミノ酸配列を含むF317Lタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含み、植物体で発現することを特徴とするアフリカ豚熱ウイルスの抗原タンパク質発現用組換えベクター。
【請求項12】
前記組換えベクターは、下記から成る群から選ばれる1つ以上の特徴を満たすことを特徴とする請求項11に記載の組換えベクター:
(a)前記p72タンパク質をコードするポリヌクレオチドは、配列番号6で表される塩基配列を含む;
(b)前記p54タンパク質をコードするポリヌクレオチドは、配列番号8で表される塩基配列を含む;
(c)前記p15タンパク質をコードするポリヌクレオチドは、配列番号12で表される塩基配列を含む;
(d)前記p35タンパク質をコードするポリヌクレオチドは、配列番号14で表される塩基配列を含む;
(e)前記E199Lタンパク質をコードするポリヌクレオチドは、配列番号16で表される塩基配列を含む;および
f)前記F317Lタンパク質をコードするポリヌクレオチドは、配列番号18で表される塩基配列を含む。
【請求項13】
前記組換えベクターは、配列番号19のNB(new chaperone binding protein)をコードするポリヌクレオチドまたは配列番号21のBiP(chaperone binding protein)をコードするポリヌクレオチドをさらに含むことを特徴とする請求項11に記載の組換えベクター。
【請求項14】
前記NBまたはBiPをコードするポリヌクレオチドは、前記p72タンパク質、p54タンパク質、p15タンパク質、p35タンパク質、E199Lタンパク質、またはF317Lタンパク質をコードするポリヌクレオチドの5’末端方向に位置することを特徴とする請求項13に記載の組換えベクター。
【請求項15】
前記組換えベクターは、配列番号27のpFc2(porcine Fc)断片をコードするポリヌクレオチドをさらに含むことを特徴とする請求項11に記載の組換えベクター。
【請求項16】
前記pFc2断片をコードするポリヌクレオチドは、前記p72タンパク質、p54タンパク質、p15タンパク質、p35タンパク質、E199Lタンパク質、またはF317Lタンパク質をコードするポリヌクレオチドの3’末端方向に位置することを特徴とする請求項15に記載の組換えベクター。
【請求項17】
前記組換えベクターは、配列番号29のHDEL(His-Asp-Glu-Leu)ペプチドをコードするポリヌクレオチドをさらに含むことを特徴とする請求項11に記載の組換えベクター。
【請求項18】
前記HDELペプチドをコードするポリヌクレオチドは、前記p72タンパク質、p54タンパク質、p15タンパク質、p35タンパク質、E199Lタンパク質、またはF317Lタンパク質をコードするポリヌクレオチドの3’末端方向に位置することを特徴とする請求項17に記載の組換えベクター。
【請求項19】
前記組換えベクターは、配列番号19のNBまたは配列番号21のBiPをコードするポリヌクレオチド;配列番号27のpFc2断片をコードするポリヌクレオチド;および配列番号29のHDELペプチドをコードするポリヌクレオチドをさらに含むことを特徴とする請求項11に記載の組換えベクター。
【請求項20】
前記組換えベクターは、NBまたはBiPをコードするポリヌクレオチド;
p72タンパク質、p54タンパク質、p15タンパク質、p35タンパク質、E199Lタンパク質、またはF317Lタンパク質をコードするポリヌクレオチド;
pFc2断片をコードするポリヌクレオチド;および
HDELペプチドをコードするポリヌクレオチドが順次に連結されたことを特徴とする請求項19に記載の組換えベクター。
【請求項21】
請求項11から20のいずれか一項に記載の組換えベクターで形質転換された形質転換体。
【請求項22】
前記形質転換体は、植物体であることを特徴とする請求項21に記載の形質転換体。
【請求項23】
アフリカ豚熱の予防のための請求項1に記載のワクチン組成物の用途。
【請求項24】
アフリカ豚熱の予防用ワクチンの製造のための請求項1に記載のワクチン組成物の用途。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アフリカ豚熱ウイルス(African swine fever virus)由来抗原タンパク質を有効成分として含むアフリカ豚熱の予防用ワクチンなどに関する。
【0002】
本発明は、2021年8月27日に出願された韓国特許出願第10-2021-0114014号および2022年8月4日に出願された韓国特許出願第10-2022-0097525号に基づく優先権を主張し、当該出願の明細書および図面に開示された全ての内容は本出願に援用される。
【背景技術】
【0003】
アフリカ豚熱(African swine fever,ASF)は、アスファウイルス科(Asfarviridae)に属するアフリカ豚熱ウイルス(African swine fever virus,ASFV)感染による豚伝染病であり、1921年にケニアで最初報告があった後、主にサハラ以南地域で発生報告があり、2007年以来黒海沿岸のジョージア、アルメニア、アゼルバイジャンなどアフリカ以外の地域でその発生範囲が増え始めた。特に中国は、全世界豚飼育量の約半分を占めるが、2018年に初めて発症したASFにより公式的には約700万匹、実際の推定では、約2億匹を殺処分して莫大な財産被害を被った 。その後、ASF発症を統制してきたが、今年初め、中国北部地域で再びASF発症事例が報告された。ベトナムも、今年ASFが再発し、今年5月まで2021年にのみ約36000匹、2019年からは600万匹以上の豚を屠殺したが、引き続いて新しい発症事例が全国で報告されている。また、発症事例がなかったマレーシアも、今年2月末に初めてASFウイルスが検出された。
【0004】
韓国は、2019年坡州の豚飼育農家でASF発症が最初に報告され、その後、継続して京畿道および江原道一帯で感染事例が報告された。2020年9月頃を基準に野生イノシシでアフリカ豚熱を確認した市・郡は、京畿道では坡州市、延川郡、浦川市であり、江原道では鉄原郡、華川郡、春川市、楊口郡、仁済郡、高城郡など9ヶ所に達する。このうち江原道の華川市が285件と最も多く、京畿道の延川郡が282件、京畿道の坡州市が98件であった。これによって、ASF拡散を防ぐために広域フェンスを設置し、積極的なイノシシ捕獲および防疫を施行し、その結果、2020年10月に江原道の華川養豚農場における感染事例以後しばらくASFV感染が報告されなかったが、最近(2021年8月)江原道の豚農場でASF発症事例がまた報告された。
【0005】
アフリカ豚熱は、豚に感染した場合、死亡率が100%に達し、この病気に対するワクチンが開発されておらず、発生直ちに処分しなければならないリスクの高い伝染病であり、これを予防することは非常に重要な課題として残っている。
【0006】
なお、分子生物学と遺伝工学技術のまぶしい発達は、植物分野にも適用され、植物体から有用な生理活性物質を生産する努力が着実に続いている。植物から有用物質を生産することは、生産コストを顕著に減少させることができ、従来の一般的な方法(動物細胞または微生物からタンパク質を合成して分離精製する方法)で発生しうる様々な汚染源(ウイルス、がん遺伝子、腸毒素など)を大幅に減少させることができると共に、商品化段階でも動物細胞や微生物とは異なって、種子としてシードストック(seed stock)管理が可能であるという点から有利なメリットを有している。
【0007】
これより、本発明者らは、アフリカ豚熱の予防用抗原を開発するために鋭意努力した結果、アフリカ豚熱ウイルス抗原タンパク質を植物体で高効率で発現させることができるシステムを開発し、前記抗原タンパク質のうち特定タンパク質の組み合わせが、その他のASFV抗原タンパク質の組み合わせに比べて、アフリカ豚熱をより効果的に予防することができることを確認し、本発明を完成するに至った。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
アフリカ豚熱ウイルスは、感染細胞の細胞質で複製される巨大二重らせんDNAウイルスである。このウイルスは、豚に死亡率の高い出血熱を引き起こしながらも、病気の兆候なしに媒介体の役割をするような自然宿主豚、イボイノシシ、カワイノシシ、ヒメダニ科に属するヒメダニ属(Ornithodoros)を持続的に感染させる。このウイルスは、豚に致命的な出血熱を発生させるので、感染前に予防することが非常に重要な伝染病である。
【0009】
本発明は、前述のようなアフリカ豚熱の予防の必要性および従来技術の問題点を解決するためになされたものであって、植物体を用いて効率的な生産が可能であるだけでなく、高い免疫原性(immunogenicity)を示す組換えアフリカ豚熱ウイルス由来組換え抗原タンパク質、これを含むワクチン組成物などを提供することをその目的とする。
【0010】
しかしながら、本発明が達成しようとする技術的課題は、以上で言及した課題に制限されず、言及されていない他の課題は、下記の記載から本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者が明確に理解できる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、アフリカ豚熱ウイルス(African swine fever virus,ASFV)抗原タンパク質の組み合わせを有効成分として含む、アフリカ豚熱の予防用ワクチン組成物であって、前記ASFV抗原タンパク質の組み合わせは、Lectin、CD2v、p72、p54,およびp30タンパク質から成る群から選ばれる1つ以上の組み合わせであり、
ただし、前記ASFV抗原タンパク質の組み合わせがLectinタンパク質およびCD2vタンパク質を含む場合、前記ASFV抗原タンパク質の組み合わせは、3つ以上の抗原タンパク質からなることを特徴とするワクチン組成物を提供する。
【0012】
本発明のさらに他の具現例において、前記ワクチン組成物は、下記から成る群から選ばれる1つ以上の特徴を満たすことができるが、これらに限らない:
(a)前記Lecinタンパク質は、配列番号1のアミノ酸配列を含む;
(b)前記CD2vタンパク質は、配列番号3のアミノ酸配列を含む;
(c)前記p72タンパク質は、配列番号5のアミノ酸配列を含む;
(d)前記p54タンパク質は、配列番号7のアミノ酸配列を含む;および
(e)前記p30タンパク質は、配列番号9のアミノ酸配列を含む。
【0013】
本発明のさらに他の具現例において、前記ASFV抗原タンパク質は、組換えベクターを用いて生産されたものであり、前記組換えベクターは、下記から成る群から選ばれる1つ以上のASFVタンパク質コードポリヌクレオチドを含むこともできるが、これらに限らない:
(a)配列番号2で表される塩基配列を含む、Lectinコードポリヌクレオチド;
(b)配列番号4で表される塩基配列を含む、CD2vコードポリヌクレオチド;
(c)配列番号6で表される塩基配列を含む、p72コードポリヌクレオチド;
(d)配列番号8で表される塩基配列を含む、p54コードポリヌクレオチド;および
(e)配列番号10で表される塩基配列を含む、p30コードポリヌクレオチド。
【0014】
本発明のさらに他の具現例において、前記組換えベクターは、下記から成る群から選ばれる1つ以上をさらに含むこともできるが、これらに限らない:
(a)配列番号19のNBまたは配列番号21のBiPをコードするポリヌクレオチド;
(b)配列番号27のpFc2断片をコードするポリヌクレオチド;
(c)配列番号29のHDELペプチドをコードするポリヌクレオチド;および
(d)配列番号23のMドメインまたは配列番号25のポリヒスチジンタグ(polyhistidine tag)をコードするポリヌクレオチド。
【0015】
本発明のさらに他の具現例において、前記ASFV抗原タンパク質は、前記組換えベクターで形質転換された植物体で生産されたものであってもよいが、これらに限らない。
【0016】
本発明のさらに他の具現例において、前記ワクチン組成物は、アジュバント(adjuvant)をさらに含むこともできるが、これらに限らない。
【0017】
本発明のさらに他の具現例において、前記アジュバントは、ミネラルオイル(mineral oil)またはエマルシゲン(Emulsigen)系であってもよいが、これらに限らない。
【0018】
また、本発明は、本発明によるワクチン組成物を含むアフリカ豚熱の予防用ワクチンキットを提供する。
【0019】
また、本発明は、ヒトを除いた動物に本発明による組成物(あるいはLectin、CD2v、p72、p54、およびp30タンパク質から成る群から選ばれる1つ以上のタンパク質の組み合わせ)を投与する段階を含む、アフリカ豚熱の予防、改善、および/または治療方法を提供する。
【0020】
また、本発明は、前記組成物のアフリカ豚熱の予防、改善、および/または治療用途を提供する。
【0021】
また、本発明は、前記組成物のアフリカ豚熱の予防用ワクチンの製造のための用途を提供する。
【0022】
また、本発明は、ASFV(African swine fever virus,ASFV)抗原タンパク質の組み合わせを有効成分として含むアフリカ豚熱の予防用飼料組成物であって、前記ASFV抗原タンパク質の組み合わせは、Lectin、CD2v、p72、p54、およびp30タンパク質から成る群から選ばれる1つ以上の組み合わせであり、
ただし、前記ASFV抗原タンパク質の組み合わせがLectinタンパク質およびCD2vタンパク質を含む場合、前記ASFV抗原タンパク質の組み合わせは、3つ以上の抗原タンパク質からなることを特徴とする飼料組成物を提供する。
【0023】
また、本発明は、配列番号5のアミノ酸配列を含むp72タンパク質をコードするポリヌクレオチド;配列番号7のアミノ酸配列を含むp54タンパク質をコードするポリヌクレオチド;配列番号11のアミノ酸配列を含むp15タンパク質をコードするポリヌクレオチド;配列番号13のアミノ酸配列を含むp35タンパク質をコードするポリヌクレオチド;配列番号15のアミノ酸配列を含むE199Lタンパク質をコードするポリヌクレオチド;または配列番号17のアミノ酸配列を含むF317Lタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含み、
植物体で発現することを特徴とするアフリカ豚熱ウイルスの抗原タンパク質発現用組換えベクターを提供する。
【0024】
本発明の一具現例において、前記組換えベクターは、下記から成る群から選ばれる1つ以上の特徴を満たすことができるが、これらに限らない:
(a)前記p72タンパク質をコードするポリヌクレオチドは、配列番号6で表される塩基配列を含む;
(b)前記p54タンパク質をコードするポリヌクレオチドは、配列番号8で表される塩基配列を含む;
(c)前記p15タンパク質をコードするポリヌクレオチドは、配列番号12で表される塩基配列を含む;
(d)前記p35タンパク質をコードするポリヌクレオチドは、配列番号14で表される塩基配列を含む;
(e)前記E199Lタンパク質をコードするポリヌクレオチドは、配列番号16で表される塩基配列を含む;および
(f)前記F317Lタンパク質をコードするポリヌクレオチドは、配列番号18で表される塩基配列を含む。
【0025】
本発明の他の具現例において、配列番号19のNB(new chaperone binding protein)をコードするポリヌクレオチドまたは配列番号21のBiP(chaperone binding protein)をコードするポリヌクレオチドをさらに含むことができるが、これらに限らない。
【0026】
本発明のさらに他の具現例において、前記NBまたはBiPをコードするポリヌクレオチドは、前記p72タンパク質、p54タンパク質、p15タンパク質、p35タンパク質、E199Lタンパク質、またはF317Lタンパク質をコードするポリヌクレオチドの5’末端方向に位置していてもよいが、これらに限らない。
【0027】
本発明のさらに他の具現例において、前記組換えベクターは、配列番号27のpFc2(porcine Fc)断片をコードするポリヌクレオチドをさらに含んでもよいが、これらに限らない。
【0028】
本発明のさらに他の具現例において、前記pFc2断片をコードするポリヌクレオチドは、前記p72タンパク質、p54タンパク質、p15タンパク質、p35タンパク質、E199Lタンパク質、またはF317Lタンパク質をコードするポリヌクレオチドの3’末端方向に位置していてもよいが、これらに限らない。
【0029】
本発明のさらに他の具現例において、前記組換えベクターは、配列番号29のHDEL(His-Asp-Glu-Leu)ペプチドをコードするポリヌクレオチドをさらに含んでもよいが、これらに限らない。
【0030】
本発明のさらに他の具現例において、前記HDELペプチドをコードするポリヌクレオチドは、前記p72タンパク質、p54タンパク質、p15タンパク質、p35タンパク質、E199Lタンパク質、またはF317Lタンパク質をコードするポリヌクレオチドの3’末端方向に位置していてもよいが、これらに限らない。
【0031】
本発明のさらに他の具現例において、前記組換えベクターは、配列番号19のNBまたは配列番号21のBiPをコードするポリヌクレオチド;配列番号27のpFc2断片をコードするポリヌクレオチド;および配列番号29のHDELペプチドをコードするポリヌクレオチドをさらに含んでもよいが、これらに限らない。
【0032】
本発明のさらに他の具現例において、前記組換えベクターは、NBまたはBiPをコードするポリヌクレオチド;p72タンパク質、p54タンパク質、p15タンパク質、p35タンパク質、E199Lタンパク質、またはF317Lタンパク質をコードするポリヌクレオチド;pFc2断片をコードするポリヌクレオチド;およびHDELペプチドをコードするポリヌクレオチドが順次に連結されたものであってもよいが、これらに限らない。
【0033】
また、本発明は、本発明による組換えベクターで形質転換された形質転換体を提供する。
【0034】
本発明の一具現例において、前記形質転換体は、植物体であってもよいが、これらに限らない。
【0035】
また、本発明は、下記段階を含む組換えアフリカ豚熱ウイルス抗原タンパク質の製造方法を提供する:
(S1)本発明による組換えベクターを植物体に形質転換させる段階;および
(S2)前記植物体または培養液から組換え抗原タンパク質を分離および精製する段階。
【0036】
本発明の一具現例において、前記NBコードポリヌクレオチドは、配列番号20で表される塩基配列を含むこともでき;前記BiPコードポリヌクレオチドは、配列番号22で表される塩基配列を含むこともでき;前記pFc2コードポリヌクレオチドは、配列番号28で表される塩基配列を含むこともでき;HDELコードポリヌクレオチドは、配列番号30で表される塩基配列を含むこともできるが、これらに限らない。
【発明の効果】
【0037】
アフリカ豚熱を含むウイルス性病気の予防に用いるためのタンパク質、特に抗原は、タンパク質のフォールディング(folding)、グリコシル化(glycosylation)などの問題に起因してバクテリアを用いず、主に動物細胞を用いて生産されている。しかしながら、動物細胞を用いたワクチン生産方法は、大量生産のための設備拡充に大きな費用がかかるため、製造が容易でなく、抗原の価格が高価な場合がほとんどである。また、動物細胞を用いて製造された抗原は、保存が容易でないだけでなく、動物に感染可能なウイルスに汚染される可能性が高いという欠点を有している。しかしながら、本発明は、植物を用いてこのような欠点を補完した。すなわち、植物細胞は、動物細胞とは異なって、動物に感染可能なウイルスに汚染される可能性が非常に低く、耕作面積を確保すると、いつでも大量生産が可能であるだけでなく、植物体を通じて長期保存が可能であるため、安定して安価な抗原の生産が可能である。
【0038】
本発明の組換えアフリカ豚熱ウイルス抗原タンパク質は、植物体においても効果的に発現するだけでなく、高い水溶解性(Water solubility)を有しており、分離および精製が容易であり、また、体内で抗原として作用して高い免疫原性を示すので、新規のアフリカ豚熱ウイルスワクチン組成物として使用することができる。特に、本発明者らは、本発明の5種の抗原タンパク質(Lectin、CD2v、p54、p72、およびp30)を含むワクチン組成物が、その他の抗原タンパク質(p15、p35、E199L、F317Lなど)をさらに含むワクチン組成物に比べて、アフリカ豚熱の予防効果にさらに優れたことをチャレンジ接種実験を通じて確認したところ、本発明による組換えベクターおよびワクチン組成物は、畜産業界などにおいて広く活用されることが期待される。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【
図1】は、本発明の植物体におけるASFVのLectin、CD2v、p72、p54、p30、p15、p35、E199L、およびF317L抗原タンパク質の発現のための遺伝子の配列を示す切断地図である。
【
図2】は、ASFVのLecin抗原タンパク質を分離および精製し、電気泳動後にクマシーブルー染色法で確認した結果を示す図である。
【
図3】は、ASFVのCD2v抗原タンパク質を分離および精製し、電気泳動後にクマシーブルー染色法で確認した結果を示す図である。
【
図4a】は、ASFVのp72抗原タンパク質の発現を確認するためにウェスタンブロットを行うことで得られたバンド写真である(DT,Debris Total(テブリス除去前の総サンプル);T,Total extract(テブリス除去後の総サンプル);P,pellet分画;FT,Flow through分画、以下同一)。
【
図4b】は、ASFVのp72抗原タンパク質を分離および精製した後、濃縮前後のタンパク質溶液を電気泳動後にクマシーブルー染色法で確認した結果を示す図である(左:濃縮前のp72タンパク質検出結果;右:濃縮後のp72タンパク質検出結果)。
【
図5a】は、ASFVのp54抗原タンパク質の発現を確認するためにウェスタンブロットを行うことで得られたバンド写真である。
【
図5b】は、ASFVのp54抗原タンパク質を分離および精製した後、濃縮前後のタンパク質溶液を電気泳動後にクマシーブルー染色法で確認した結果を示す図である(左:濃縮前のp54タンパク質検出結果;右:濃縮後のp54タンパク質検出結果)。
【
図6】は、ASFVのp30抗原タンパク質を分離および精製し、電気泳動後にクマシーブルー染色法で確認した結果を示す図である。
【
図7a】は、ASFVのp15抗原タンパク質の発現を確認するためにウェスタンブロットを行うことで得られたバンド写真である。
【
図7b】は、ASFVのp15抗原タンパク質を分離および精製し、電気泳動後にクマシーブルー染色法で確認した結果を示す図である。
【
図8】は、ASFVのp35抗原タンパク質を分離および精製し、電気泳動後にクマシーブルー染色法で確認した結果を示す図である。
【
図9a】は、ASFVのE199L抗原タンパク質の発現を確認するためにウェスタンブロットを行うことで得られたバンド写真である。
【
図9b】は、ASFVのE199L抗原タンパク質を分離および精製した後、濃縮前後のタンパク質溶液を電気泳動後にクマシーブルー染色法で確認した結果を示す図である(左:濃縮前のE199Lタンパク質検出結果;右:濃縮後のE199Lタンパク質検出結果)。
【
図10a】は、100gまたは1kgのニコチアナ・ベンサミアナ葉から抽出したASFVのF317L抗原タンパク質の発現を確認するためにウェスタンブロットを行うことで得られたバンド写真である(上方:100gの葉から抽出したF317Lタンパク質検出結果;下方:1kgの葉から抽出したF317Lタンパク質検出結果)。
【
図10b】は、100gまたは1kgのニコチアナ・ベンサミアナ葉から抽出したASFVのF317Lタンパク質を分離および精製し、電気泳動後にクマシーブルー染色法で確認した結果を示す図である(左:100gの葉から抽出したF317Lタンパク質検出結果;右:1kgの葉から抽出したF317Lタンパク質検出結果)。
【
図11】は、豚に本発明による5種の抗原ワクチン(Lectin、CD2v、p54、p72、およびp30の組み合わせ)、9種の抗原ワクチン(Lectin、CD2v、p54、p72、p30、p15、p35、E199L、およびF317Lの組み合わせ)、またはPBSを処理した後、チャレンジ接種実験を進めて、経時的な豚の体温および生存率を確認した結果である。
【
図12】は、豚に本発明による5種の抗原ワクチン、9種の抗原ワクチン、またはPBSを処理した後、チャレンジ接種実験を進めて、経時的な豚の血中ウイルス(Viremia)レベルを測定した結果である。
【
図13】は、本発明の一具現例によるLectin組換えタンパク質発現のための遺伝子配列(上方)およびアミノ酸配列(下方)を示す図である。
【
図14】は、本発明の一具現例によるCD2v組換えタンパク質発現のための遺伝子配列(上方)およびアミノ酸配列(下方)を示す図である。
【
図15】は、本発明の一具現例によるp72組換えタンパク質発現のための遺伝子配列(上方)およびアミノ酸配列(下方)を示す図である。
【
図16】は、本発明の一具現例によるp54組換えタンパク質発現のための遺伝子配列(上方)およびアミノ酸配列(下方)を示す図である。
【
図17】は、本発明の一具現例によるp30組換えタンパク質発現のための遺伝子配列(上方)およびアミノ酸配列(下方)を示す図である。
【
図18】は、本発明の一具現例によるp15組換えタンパク質発現のための遺伝子配列(上方)およびアミノ酸配列(下方)を示す図である。
【
図19】は、本発明の一具現例によるp35組換えタンパク質発現のための遺伝子配列(上方)およびアミノ酸配列(下方)を示す図である。
【
図20】は、本発明の一具現例によるE199L組換えタンパク質発現のための遺伝子配列(上方)およびアミノ酸配列(下方)を示す図である。
【
図21】は、本発明の一具現例によるF317L組換えタンパク質発現のための遺伝子配列(上方)およびアミノ酸配列(下方)を示す図である。
【
図22】は、豚に本発明による5種の抗原ワクチン(Lectin、CD2v、p54、p72、およびp30の組み合わせ;「Vax grp1」)、9種の抗原ワクチン(Lectin、CD2v、p54、p72、p30、p15、p35、E199L、およびF317Lの組み合わせ;「Vax grp2」)、またはPBSを投与した後(「PBS」)、0、7、14、21、28、および35日目に抗p30抗体のレベルを測定した結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0040】
他の方式で定義されない限り、本明細書において使用されたすべての技術的および科学的用語は、本発明の属する技術分野における熟練した専門家によって通常理解されるものと同じ意味を有する。一般的に、本明細書において使用された命名法は、本技術分野において良く知られており、通常使用されるものである。
【0041】
本発明者らは、アフリカ豚熱ウイルス(African swine fever virus,ASFV)の5種の抗原タンパク質Lectin、CD2v、p72、p54、p30、p15、p35、E199L、およびF317Lの遺伝子を用いて植物体で高い免疫原性を有する前記各ASFV抗原タンパク質を効率的に生産し、分離することができることを確認した。したがって、本発明のアフリカ豚熱ウイルス抗原タンパク質は、安定的かつ効率的な大量生産が可能であるため、安価であり、安定したアフリカ豚熱ウイルスワクチンを提供することができる。また、本発明者らは、Lectin、CD2v、p72、p54、およびp30を含む5種の抗原タンパク質を含むワクチン組成物は、豚に投与したとき、優れたアフリカ豚熱の予防効果を発揮し、p15、p35、E199L、およびF317Lなどその他のASFV抗原タンパク質をさらに含むワクチン組成物と比較して、効果がさらに顕著であることを確認した。すなわち、本発明は、従来技術に比べてさらに顕著なアフリカ豚熱の予防効果を達成できる最適な抗原タンパク質の組み合わせ(Lectin、CD2v、p72、p54、およびp30)を発掘したことに意義がある。
【0042】
これより、本発明は、アフリカ豚熱ウイルス(African swine fever virus,ASFV)タンパク質コードポリヌクレオチドの組み合わせを含むASFV抗原タンパク質発現用組換えベクターを提供することを目的とし、前記ASFVタンパク質コードポリヌクレオチドの組み合わせは、下記から成る群から選ばれる1つ以上の組み合わせであることを特徴とする:
配列番号1のアミノ酸配列を含むLectinタンパク質をコードするポリヌクレオチド;
配列番号3のアミノ酸配列を含むCD2vタンパク質をコードするポリヌクレオチド;
配列番号5のアミノ酸配列を含むp72タンパク質をコードするポリヌクレオチド;
配列番号7のアミノ酸配列を含むp54タンパク質をコードするポリヌクレオチド;
配列番号9のアミノ酸配列を含むp30タンパク質をコードするポリヌクレオチド;
配列番号11のアミノ酸配列を含むp15タンパク質をコードするポリヌクレオチド;
配列番号13のアミノ酸配列を含むp35タンパク質をコードするポリヌクレオチド;
配列番号15のアミノ酸配列を含むE199Lタンパク質をコードするポリヌクレオチド;および
配列番号17のアミノ酸配列を含むF317Lタンパク質をコードするポリヌクレオチド。
【0043】
より好ましくは、本発明は、アフリカ豚熱ウイルス(African swine fever virus,ASFV)タンパク質コードポリヌクレオチドの組み合わせを含むASFV抗原タンパク質発現用組換えベクターを提供することを目的とし、前記ASFVタンパク質コードポリヌクレオチドの組み合わせは、下記から成る群から選ばれる1つ以上の組み合わせであることを特徴とする:
配列番号1のアミノ酸配列を含むLectinタンパク質をコードするポリヌクレオチド;
配列番号3のアミノ酸配列を含むCD2vタンパク質をコードするポリヌクレオチド;
配列番号5のアミノ酸配列を含むp72タンパク質をコードするポリヌクレオチド;
配列番号7のアミノ酸配列を含むp54タンパク質をコードするポリヌクレオチド;および
配列番号9のアミノ酸配列を含むp30タンパク質をコードするポリヌクレオチド。
【0044】
前記組換えベクター内で前記各ポリヌクレオチドが配列された順序に制限がない。
【0045】
本発明において、「アフリカ豚熱ウイルス(African swine fever virus)」は、アスファウイルス科(Asfarviridae)、アスファウイルス属(Asfivirus)に属する約200nmのDNAウイルスであり、アフリカ豚熱(African swine fever,ASF)の原因因子である。ASFVは、自然宿主豚、イボイノシシ、カワイノシシ、ヒメダニ科に属するOrnithodoros属を持続的に感染させるが、感染時に致命的な出血熱を発生させる。
【0046】
好ましくは、本発明による組換えベクターは、前記5種のASFVタンパク質(Lectin、CD2v、p72、p54、およびp30)コードポリヌクレオチドを含み、その他のASFVタンパク質コードポリヌクレオチドを含まないことを特徴とする。より好ましくは、前記本発明による組換えベクターは、ASFVの抗原タンパク質であるp15、p35、E199L、またはF317Lをコードするポリヌクレオチドを含まないことを特徴とする。
【0047】
前記Lectin抗原タンパク質は、配列番号1のアミノ酸配列を含むか、または配列番号2の塩基配列を含むポリヌクレオチドによってコードされ、最も好ましくは、配列番号1のアミノ酸配列からなるか、または配列番号2の塩基配列からなるポリヌクレオチドによってコードされ得るが、これらに限定されない。好ましくは、本発明によるLectinタンパク質は、膜貫通領域を含むものであってもよく、または膜貫通領域が除去されたLectinタンパク質であってもよい。
【0048】
具体的には、前記Lectinタンパク質をコードするポリヌクレオチドは、配列番号2で表される塩基配列からなってもよいが、これらに限定されず、前記塩基配列の変異体が本発明の範囲内に含まれる。本発明の配列番号2で表される塩基配列の核酸分子は、これを構成する核酸分子の作用性等価物、例えば、核酸分子の一部の塩基配列が欠失(deletion)、置換(substitution)または挿入(insertion)により修飾されたが、核酸分子と機能的に同じ作用を行うことができる変異体(variants)を含む概念である。具体的には、前記Lectinタンパク質をコードするポリヌクレオチドは、配列番号2で表される塩基配列とそれぞれ70%以上、より好ましくは、80%以上、より好ましくは、90%以上、最も好ましくは、95%以上の配列相同性を有する塩基配列を含んでもよい。例えば、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、100%の配列相同性を有するポリヌクレオチドを含む。ポリヌクレオチドに対する「配列相同性の%」は、2つの最適に配列された配列と比較領域を比較することによって確認され、比較領域におけるポリヌクレオチド配列の一部は、2つの配列の最適配列に対する参考配列(追加または削除を含まない)に比べて追加または削除(すなわち、ギャップ)を含んでもよい。
【0049】
また、前記CD2v抗原タンパク質は、配列番号3のアミノ酸配列を含むか、または配列番号4の塩基配列を含むポリヌクレオチドによってコードされ、最も好ましくは、配列番号3のアミノ酸配列からなるか、または配列番号4の塩基配列からなるポリヌクレオチドによってコードされ得るが、これらに限定されない。すなわち、前記CD2vタンパク質をコードするポリヌクレオチドは、配列番号4で表される塩基配列とそれぞれ70%以上、より好ましくは、80%以上、より好ましくは、90%以上、最も好ましくは、95%以上の配列相同性を有する塩基配列を含んでもよい。好ましくは、本発明によるCD2vは、CD2vタンパク質の膜貫通領域(transmembrane domain,TMD)を含むか、または膜貫通領域が除去されたCD2vタンパク質であってもよく、好ましくは、CD2vタンパク質の膜貫通領域からのN末端部位であってもよい。
【0050】
また、前記p72抗原タンパク質は、配列番号5のアミノ酸配列を含むか、または配列番号6の塩基配列を含むポリヌクレオチドによってコードされ、最も好ましくは、配列番号5のアミノ酸配列からなるか、または配列番号6の塩基配列からなるポリヌクレオチドによってコードされ得るが、これらに限定されない。すなわち、前記p72タンパク質をコードするポリヌクレオチドは、配列番号6で表される塩基配列とそれぞれ70%以上、より好ましくは、80%以上、より好ましくは、90%以上、最も好ましくは、95%以上の配列相同性を有する塩基配列を含んでもよい。
【0051】
また、前記p54抗原タンパク質は、配列番号7のアミノ酸配列を含むか、または配列番号8の塩基配列を含むポリヌクレオチドによってコードされ、最も好ましくは、配列番号7のアミノ酸配列からなるか、または配列番号8の塩基配列からなるポリヌクレオチドによってコードされ得るが、これらに限定されない。すなわち、前記p54タンパク質をコードするポリヌクレオチドは、配列番号8で表される塩基配列とそれぞれ70%以上、より好ましくは、80%以上、より好ましくは、90%以上、最も好ましくは、95%以上の配列相同性を有する塩基配列を含んでもよい。好ましくは、本発明によるp54タンパク質は、膜貫通領域が除去されたp54タンパク質(p54dTM)であってもよい。より好ましくは、本発明によるp54タンパク質は、膜貫通領域を含むこともできる。または、前記p54タンパク質は、膜貫通領域が除去され、これの代わりにリンカー配列が挿入されたものであってもよい。前記リンカー配列は、Gly-Gly-Gly-Gly-Serであってもよい。
【0052】
また、前記p30抗原タンパク質は、配列番号9のアミノ酸配列を含むか、または配列番号10の塩基配列を含むポリヌクレオチドによってコードされ、最も好ましくは、配列番号9のアミノ酸配列からなるか、または配列番号10の塩基配列からなるポリヌクレオチドによってコードされ得るが、これらに限定されない。すなわち、前記p30タンパク質をコードするポリヌクレオチドは、配列番号10で表される塩基配列とそれぞれ70%以上、より好ましくは、80%以上、より好ましくは、90%以上、最も好ましくは、95%以上の配列相同性を有する塩基配列を含んでもよい。
【0053】
また、前記p15、p35、E199L、およびF317L抗原タンパク質は、順に、配列番号11、配列番号13、配列番号15、または配列番号17のアミノ酸配列をそれぞれ含むか、または配列番号12、配列番号14、配列番号16、または配列番号18の塩基配列を含むポリヌクレオチドによってそれぞれコードされ、最も好ましくは、順に、配列番号11、配列番号13、配列番号15、または配列番号17のアミノ酸配列それぞれからなるか、または配列番号12、配列番号14、配列番号16、または配列番号18の塩基配列からなるポリヌクレオチドによってそれぞれコードされ得るが、これらに限定されない。すなわち、前記p15、p35、E199L、またはF317L抗原タンパク質をコードするポリヌクレオチドは、順に、配列番号12、配列番号14、配列番号16、または配列番号18で表される塩基配列とそれぞれ70%以上、より好ましくは、80%以上、より好ましくは、90%以上、最も好ましくは、95%以上の配列相同性を有する塩基配列をそれぞれ含んでもよい。
【0054】
また、前記E199Lは、膜貫通領域を含むものであるか、または膜貫通領域が除外されたものであってもよい。
【0055】
本明細書において、特定の配列番号で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチド(あるいはペプチド)とは、これを構成するポリペプチド分子の作用性等価物、例えば、ポリペプチド分子の一部のアミノ酸配列が欠失(deletion)、置換(substitution)または挿入(insertion)により修飾されたが、ポリペプチド分子と機能的に同じ作用を行うことができる変異体(variants)を含む概念である。具体的には、前記特定の配列番号で表されるポリペプチドは、当該配列番号で表されるアミノ酸配列とそれぞれ70%以上、より好ましくは、80%以上、より好ましくは、90%以上、最も好ましくは、95%以上の配列相同性を有するアミノ酸配列を含んでもよい。例えば、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、100%の配列相同性を有するアミノ酸配列を含む。アミノ酸配列に対する「配列相同性の%」は、2つの最適に配列された配列と比較領域を比較することによって確認され、比較領域におけるアミノ酸配列の一部は、2つの配列の最適配列に対する参考配列(追加または削除を含まない)に比べて追加または削除(すなわち、ギャップ)を含んでもよい。
【0056】
前記Lectin、CD2v、p54、p72、p30、p15、p35、E199L、およびF317L抗原タンパク質は、アフリカ豚熱ウイルスの抗原タンパク質であり、宿主の免疫反応機構を調節することができる。
【0057】
本明細書において使用された用語「ポリヌクレオチド」は、デオキシリボ核酸(DNA)およびリボ核酸(RNA)を含む、一般的にリン酸ジエステル結合によって互いに結合した2以上の連結されたヌクレオチドまたはヌクレオチド誘導体を含むオリゴマーまたはポリマーを示す。ポリヌクレオチドは、また、例えば、ヌクレオチド類似体、またはリン酸ジエステル結合以外の「骨格」結合、例えば、リン酸トリエステル結合、ホスホルアミダート結合、ホスホロチオエート結合、チオエステル結合またはペプチド結合(ペプチド核酸)を含むDNAおよびRNA誘導体を含む。ポリヌクレオチドは、一本鎖および/または二本鎖ポリヌクレオチド、例えば、デオキシリボ核酸(DNA)およびリボ核酸(RNA)だけでなく、RNAまたはDNAのいずれか1つの類似体を含む。
【0058】
本明細書において使用された用語「抗原(antigen)」とは、体内で免疫反応を起こすすべての物質を総称し、好ましくは、ウイルス、化合物質、細菌、花粉、がん細胞などまたはこれらの一部のペプチドまたはタンパク質であってもよいが、体内で免疫反応を起こすことができる物質であれば、これらに限定されない。
【0059】
本発明の一具体例において、前記組換えベクターは、NB(new chaperone binding protein)またはBiP(chaperone binding protein)シグナルペプチドをコードするポリヌクレオチド、豚のpFc2断片(porcine Fc fragments)をコードするポリヌクレオチド、HDEL(His-Asp-Glu-Leu)ペプチドをコードするポリヌクレオチド、Mドメインをコードするポリヌクレオチド、および/またはポリヒスチジンタグ(polyhistidine tag)をコードするポリヌクレオチドなどをさらに含んでもよい。
【0060】
本発明の他の具体例において、前記組換えベクターは、下記特徴のうち1つ以上を満たすことができる:
(a)前記NBまたはBiPをコードするポリヌクレオチドは、前記ASFV抗原タンパク質をコードするポリヌクレオチドの5’末端方向に位置する;
(b)前記pFc2断片をコードするポリヌクレオチドは、前記ASFV抗原タンパク質をコードするポリヌクレオチドの3’末端方向に位置する;
(c)前記HDELペプチドをコードするポリヌクレオチドは、前記ASFV抗原タンパク質をコードするポリヌクレオチドの3’末端方向に位置する;または
(d)前記Mドメインまたはポリヒスチジンタグをコードするポリヌクレオチドは、前記ASFV抗原タンパク質をコードするポリヌクレオチドの5’末端または3’末端方向に位置する。
【0061】
好ましくは、前記組換えベクターは、前記NBまたはBiPをコードするポリヌクレオチド;前記pFc2断片をコードするポリヌクレオチド;および前記HDELペプチドをコードするポリヌクレオチドを全部含んでもよいし、ここで、各遺伝子の連結順序に制限がないが、好ましくは、前記組換えベクターは、NBまたはBiPをコードするポリヌクレオチド;Lectin、CD2v、p72、p54、および/またはp30タンパク質をコードするポリヌクレオチド;pFc2断片をコードするポリヌクレオチド;およびHDELペプチドをコードするポリヌクレオチドが順次に連結されていてもよい。
【0062】
あるいは、前記組換えベクターは、前記NBまたはBiPをコードするポリヌクレオチド;前記pFc2断片をコードするポリヌクレオチド;および前記HDELペプチドをコードするポリヌクレオチドを全部含んでもよいし、ここで、各遺伝子の連結順序に制限がないが、好ましくは、前記組換えベクターは、NBまたはBiPをコードするポリヌクレオチド;Lectin、CD2v、p72、p54、p30、p15、p35、E199L、および/またはF317Lタンパク質をコードするポリヌクレオチド;pFc2断片をコードするポリヌクレオチド;およびHDELペプチドをコードするポリヌクレオチドが順次に連結されていてもよい。
【0063】
最も好ましくは、前記組換えベクターは、前記NBまたはBiPをコードするポリヌクレオチド;前記pFc2断片をコードするポリヌクレオチド;前記HDELペプチドをコードするポリヌクレオチド;およびMドメインまたはポリヒスチジンタグをコードするポリヌクレオチドを全部含んでもよいし、ここで、各遺伝子の連結順序に制限がないが、好ましくは、前記組換えベクターは、NBまたはBiPをコードするポリヌクレオチド;Mドメインまたはポリヒスチジンタグ;Lectin、CD2v、p72、p54、および/またはp30タンパク質をコードするポリヌクレオチド;pFc2断片をコードするポリヌクレオチド;およびHDELペプチドをコードするポリヌクレオチドが順次に連結されたり、またはNBまたはBiPをコードするポリヌクレオチド;Lectin、CD2v、p72、p54、および/またはp30タンパク質をコードするポリヌクレオチド;Mドメインまたはポリヒスチジンタグ;pFc2断片をコードするポリヌクレオチド;およびHDELペプチドをコードするポリヌクレオチドが順次に連結されていてもよい。
【0064】
あるいは、前記組換えベクターは、前記NBまたはBiPをコードするポリヌクレオチド;前記pFc2断片をコードするポリヌクレオチド;前記HDELペプチドをコードするポリヌクレオチド;およびMドメインまたはポリヒスチジンタグをコードするポリヌクレオチドを全部含んでもよいし、ここで、各遺伝子の連結順序に制限がないが、好ましくは、前記組換えベクターは、NBまたはBiPをコードするポリヌクレオチド;Mドメインまたはポリヒスチジンタグ;Lectin、CD2v、p72、p54、p30、p15、p35、E199L、および/またはF317Lタンパク質をタンパク質をコードするポリヌクレオチド;pFc2断片をコードするポリヌクレオチド;およびHDELペプチドをコードするポリヌクレオチドが順次に連結されたり、またはNBまたはBiPをコードするポリヌクレオチド;Lectin、CD2v、p72、p54、p30、p15タンパク質、p35タンパク質、E199Lタンパク質、および/またはF317Lタンパク質をコードするポリヌクレオチド;Mドメインまたはポリヒスチジンタグ;pFc2断片をコードするポリヌクレオチド;およびHDELペプチドをコードするポリヌクレオチドが順次に連結されていてもよい。
【0065】
本発明のさらに他の具体例において、前記ポリヒスチジンタグをコードするポリヌクレオチドは、ASFV抗原タンパク質遺伝子のうちLectinをコードするポリヌクレオチドの5’末端方向および/またはp30をコードするポリヌクレオチドの3’末端方向にのみ位置することを特徴とし、前記Mドメインは、ASFV抗原タンパク質遺伝子のうちCD2vをコードするポリヌクレオチドの5’末端方向にのみ位置することを特徴とする。さらに他の具体例では、前記pFc2断片をコードするポリヌクレオチドは、p30をコードするポリヌクレオチドの3’末端方向に位置しないことを特徴とする。
【0066】
前記のような順序によって連結された場合、すなわち、組換えベクターが
図1の切断地図に示された発現カセット(expression cassette)を含む場合、本発明による組換えベクターは、配列番号32、配列番号34、配列番号36、配列番号38、配列番号40、配列番号47、配列番号48、配列番号49、または配列番号50で表される塩基配列を含み、最も好ましくは、配列番号32、配列番号34、配列番号36、配列番号38、配列番号40、配列番号47、配列番号48、配列番号49、または配列番号50で表される塩基配列からなるか、または配列番号32、配列番号34、配列番号36、配列番号38、配列番号40、配列番号47、配列番号48、配列番号49、または配列番号50で表される塩基配列とそれぞれ80%以上、より好ましくは、90%以上、より好ましくは、95%以上の配列相同性を有する塩基配列を含んでもよい。前記配列番号32、配列番号34、配列番号36、配列番号38、配列番号40、配列番号47、配列番号48、配列番号49、および配列番号50で表される塩基配列は、それぞれ互いに独立したプラスミドベクターに含まれ得、配列番号32、配列番号34、配列番号36、配列番号38、配列番号40、配列番号47、配列番号48、配列番号49、および配列番号50から成る群から選ばれる1種以上の組み合わせが単一のプラスミドベクター内に含まれ得る。
【0067】
本明細書において、「組換えベクター(recombinant vector)」とは、ベクター内に挿入された異種の核酸によってコードされるペプチドまたはタンパク質を発現できるベクターを指し、好ましくは、目的抗原(本発明では、ASFV抗原であるLectin、CD2v、p54、p72、p30、p15、p35、E199L、および/またはF317L)を発現することができるように製造されたベクターを意味する。前記「ベクター」は、試験管内、生体外または生体内で宿主細胞に塩基の導入および/または転移のための任意の媒介物を言い、他のDNA断片が結合し、結合した断片の複製をもたらす複製単位(replicon)であってもよく、「複製単位」とは、生体内でDNA複製の自己ユニットとして機能する、すなわち、自らの調節によって複製可能な、任意の遺伝単位(例えば、プラスミド、ファージ、コスミド、染色体、ウイルスなど)を言う。好ましくは、本発明による組換えベクターは、植物体で発現することを特徴とする。
【0068】
本発明の組換えベクターは、好ましくは、RNA重合酵素が結合する転写開始因子であるプロモーター(promoter)、転写を調節するための任意のオペレーター配列、適切なmRNAリボソーム結合部位をコードする配列と転写および翻訳の終結を調節する配列、ターミネーターなどを含んでもよいし、より好ましくは、ポリヒスチジンタグ(最小5個以上のヒスチジン残基で構成されたアミノ酸モチーフ)、小胞体シグナルペプチド(endoplasmic reticulum signal peptide、小胞体標的化配列と同じ意味)遺伝子、小胞体保留シグナルペプチド(endoplasmic reticulum retention signal peptide)、クローニングサイト(cloning site)などをさらに含んでもよいし、より好ましくは、タグであるFc断片以外に追加タグ用遺伝子、形質転換体を選別するための抗生剤耐性遺伝子などの選別用マーカー遺伝子などをさらに含んでもよい。
【0069】
前記タグ用遺伝子としては、代表的にAviタグ、Calmodulinタグ、polyglutamateタグ、Eタグ、FLAGタグ、HAタグ、Hisタグ(ポリヒスチジンタグ)、Mycタグ、Sタグ、SBPタグ、IgG-Fcタグ、CTBタグ、Softag 1タグ、Softag 3タグ、Strepタグ、TCタグ、V5タグ、VSVタグ、Xpressタグなどが含まれ得る。
【0070】
本明細書において、「Fc断片(Fc fragment)」とは、免疫グロブリンがパパイン(papain)により消化されたとき、重鎖(heavy chain;H chain)部分のみがS-S結合で連結され、抗原結合部位を有しない部分をFc断片と言い、本発明のFc断片は、好ましくは、豚のFc断片であり、より好ましくは、配列番号28で表される豚のFc断片(pFc2)であるが、これらに限定されない。また、本発明のFc断片は、配列番号28で表される塩基配列の変異体が本発明の範囲に含まれる。具体的には、前記遺伝子は、配列番号28の塩基配列と90%以上、より好ましくは、95%以上、最も好ましくは、98%以上の配列相同性を有する塩基配列を含んでもよい。
【0071】
前記「クローニングサイト」とは、ベクター内で各遺伝子を連結/区分することを目的で挿入されたものを総称する。好ましくは、前記クローニングサイトは、配列番号2、4、6、8、および10内で「tctaga」で表される配列、「ggatcc」で表される配列、「cccggg」で表される配列、または「gagctc」で表される配列であってもよいが、これらに限らない。
【0072】
前記「小胞体シグナルペプチド(ER signal peptide)」は、タンパク質のN末端に位置するシグナルペプチドであり、新しく合成されたタンパク質が小胞体(endoplasmic reticulum、ER)の内部に入るように誘導する役割をする。本発明による小胞体シグナルペプチドは、当業者において知られた植物小胞体シグナルペプチドであれば、その種類およびアミノ酸配列が制限されないが、好ましくは、NB(New chaperone binding protein)およびBiP(chaperone binding protein)から選択することができる。
【0073】
前記「NB(New chaperone binding protein)遺伝子」は、好ましくは、配列番号20の塩基配列を含む遺伝子であり、最も好ましくは、配列番号20で表される遺伝子であるが、配列番号20の塩基配列と80%以上、より好ましくは、90%以上、より好ましくは、95%以上の配列相同性を有する塩基配列を含んでもよい。また、前記「Bip(chaperone binding protein)遺伝子」は、好ましくは、配列番号22の塩基配列を含む遺伝子であり、最も好ましくは、配列番号22で表される遺伝子であるが、配列番号22の塩基配列と80%以上、より好ましくは、90%以上、より好ましくは、95%以上の配列相同性を有する塩基配列を含んでもよい。前記NBまたはBiP遺伝子は、上述したように、発現組換えタンパク質を小胞体に移動させるために使用されるものであり、組換えタンパク質が発現するとき、配列の一部が切られ、一部のアミノ酸のみが残ることもあり、または配列の全部が切られ、シグナルペプチド配列部位が存在しないことがある。
【0074】
前記「小胞体保留シグナルペプチド(ER retention signal peptide)」は、タンパク質のC末端に位置するシグナルペプチドであり、小胞体の内部に存在するタンパク質が分泌経路を介してゴルジ体(Golgi apparatus)に抜け出た場合、前記タンパク質がさらに小胞体に戻るように(retention)する役割をする。本発明による小胞体保留シグナルペプチドは、当業者に知られた植物保留小胞体シグナルペプチドであれば、その種類およびアミノ酸配列が限定されないが、好ましくは、KDEL(Lys-Asp-Glu-Leu)配列およびHDEL配列から選択することができる。
【0075】
最も好ましくは、前記ER保留シグナルペプチドのアミノ酸配列は、HDEL(His-Asp-Glu-Leu、配列番号29で表されるアミノ酸)であってもよく、配列番号30で表される塩基配列でコード化されるものであってもよい。また、本発明の小胞体シグナルペプチドは、配列番号30の変異体が本発明の範囲に含まれる。具体的には、前記遺伝子は、配列番号30の塩基配列と90%以上、より好ましくは、95%以上、最も好ましくは、98%以上の配列相同性を有する塩基配列を含んでもよい。前記小胞体シグナルペプチドの結合位置は、植物細胞内で発現または合成を目的とするタンパク質のC末端に追加(または連結)されることを特徴とする。
【0076】
前記小胞体シグナルペプチドおよび小胞体保留シグナルペプチドに関する情報は、US20130295065、WO2009158716などの文献を参考にすることができる。
【0077】
前記選別用マーカー遺伝子には、一例として、グリホサート(glyphosate)またはホスフィノスリシン(phosphinothricin)のような除草剤抵抗性遺伝子、カナマイシン(kanamycin)、G418、ブレオマイシン(Bleomycin)、ハイグロマイシン(hygromycin)、クロラムフェニコール(chloramphenicol)のような抗生剤耐性遺伝子、aadA遺伝子などが含まれ得、前記プロモーターには、一例として、pEMUプロモーター、MASプロモーター、ヒストンプロモーター、Clpプロモーター、カリフラワーモザイクウイルス(cauliflower mosaic virus)由来35Sプロモーター、カリフラワーモザイクウイルス(cauliflower mosaic virus)由来19S RNAプロモーター、植物のアクチンタンパク質プロモーター、ユビキチンタンパク質プロモーター、CMV(Cytomegalovirus)プロモーター、SV40(Simian virus 40)プロモーター、RSV(Respiratory syncytial virus)プロモーター、EF-1α(Elongation factor-1 alpha)プロモーター、pEMUプロモーター、MASプロモーター、ヒストンプロモーター、Clpプロモーター、MacT(CaMV 35S+MAS;Macプロモーターの3’末端ヌクレオチドがTで置換される)プロモーターなどが含まれ得、前記ターミネーターは、一例として、ノパリンシンターゼ(NOS)、稲アミラーゼRAmy1 Aターミネーター、パセオリンターミネーター、アグロバクテリウムアグロバクテリウムツメファシエンスのオクトパイン(Octopine)遺伝子のターミネーター、大腸菌のrrnB1/B2ターミネーター、シロイヌナズナのHSP18.2ターミネーター、シロイヌナズナのRD29Bターミネーターなどが含まれ得るが、前記列挙したものは、例示に過ぎず、これらに限定されない。
【0078】
本発明の他の様態において、本発明は、前記の組換えベクターで形質転換された、形質転換体を提供する。
【0079】
本発明の一具体例において、前記形質転換体は、好ましくは、大腸菌、バシラス、サルモネラ、酵母などのような微生物、昆虫細胞、ヒトを含む動物細胞、マウス、ラット、イヌ、サル、ブタ、ウマ、ウシなどのような動物、アグロバクテリウムツメファシエンス、植物などであってもよく、より好ましくは、稲、小麦、麦、とうもろこし、豆、ジャガイモ、小豆、エンバク、およびモロコシを含む食糧作物類;シロイヌナズナ、ハクサイ、ダイコン、唐辛子、イチゴ、トマト、スイカ、キュウリ、キャベツ、マクワウリ、カボチャ、ネギ、タマネギ、およびニンジンを含む野菜作物類;高麗人参、タバコ、木花、ゴマ、サトウキビ、テンサイ、エゴマ、ピーナッツ、およびアブラナを含む特用作物類;およびリンゴの木、梨の木、ナツメ、桃、ブドウ、ミカン、柿、スモモ、アンズ、およびバナナを含む果樹類;およびバラ、カーネーション、菊、ユリ、およびチューリップを含む草花類などであってもよいが、本発明のベクターで形質転換され得る生命体であれば、これらに限定されない。最も好ましくは、前記形質転換体は、ニコチアナ属(Nicotiana)植物であってもよい。
【0080】
本明細書において、「形質転換(transformation)」とは、注入されたDNAにより生物の遺伝的な性質が変わることを総称し、「形質転換体(transgenic organism)」とは、分子遺伝学的方法で外部の遺伝子を注入して製造された生命体であり、好ましくは、本発明の組み換え発現ベクターにより形質転換された生命体であり、前記生命体は、微生物、真核細胞、昆虫、動物、植物など生命がある生物であれば、制限がなく、好ましくは、大腸菌、サルモネラ、バシラス、酵母、動物細胞、マウス、ラット、イヌ、サル、ブタ、ウマ、ウシ、アクロバクテリウムツメファシエンス、植物などであってもよいが、これらに限定されない。
【0081】
本明細書において、「植物」は、本発明の抗原を含むタンパク質を大量生産できる植物であれば、制限なく使用できるが、より具体的には、タバコ、シロイヌナズナ、とうもろこし、稲、大豆、カノーラ、アルファルファ、ヒマワリ、アルファルファ、モロコシ、小麦、木花、ピーナッツ、トマト、ジャガイモ、レタスおよび唐辛子から成る群から選ばれるものであってもよく、好ましくは、タバコであってもよい。本発明におけるタバコは、タバコ属(Nicotiana genus)植物であり、タンパク質を過発現できるものであれば、特に種類が制限されず、形質転換方法とタンパク質大量生産の目的に合うように適切な品種を選択して本発明を実施することができる。例えば、Nicotiana benthamiana L.またはNicotiana tabacum cv.xanthiなどの品種を用いることができる。
【0082】
前記形質転換体は、形質転換(transformation)、形質感染(transfection)、アグロバクテリウム(Agrobacterium)媒介形質転換方法、パーティクルガン衝撃法(particle gun bombardment)、超音波処理法(sonication)、電気衝撃法(electroporation)およびPEG(Polyethylen glycol)媒介形質転換方法などの方法で製造できるが、本発明のベクターを注入できる方法であれば制限がない。
【0083】
本発明のさらに他の様態において、本発明は、本発明による組換えベクターを用いて生産された、アフリカ豚熱ウイルスに対する抗体誘導用組換えタンパク質を提供する。すなわち、本発明は、本発明による組換えベクターを用いて生産された、Lectin、CD2v、p54、p72、p30、p15、p35、E199L、およびF317L組換え抗原タンパク質を提供する。前記抗原タンパク質は、それぞれ別個の組換えベクター(すなわち、それぞれ別個の核酸分子)から生産されたものであってもよく、2以上の組換えタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含む組換えベクター(すなわち、単一核酸分子)から生産されたものであってもよい。特に、すなわち、本発明は、本発明による組換えベクターを用いて生産された、Lectin、CD2v、p54、p72、およびp30組換え抗原タンパク質を提供することを主な目的とする。
【0084】
本発明の一具現例において、前記Lectin、CD2v、p54、p72、p30、p15、p35、E199L、およびF317L組換え抗原タンパク質は、水溶性であってもよい。より具体的には、植物体で発現したLectin、CD2v、p54、p72、p30、p15、p35、E199L、およびF317L組換え抗原タンパク質は、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%が水溶性分画に溶解しているものであってもよい。
【0085】
また、本発明の他の具体例において、前記Lectin、CD2v、p54、p72、p30、p15、p35、E199L、およびF317L組換え抗原タンパク質は、85%以上の純度で分離、精製されることができる。より具体的には、本発明による組換えベクターを用いて植物体で発現したLectin、CD2v、p54、p72、p30、p15、p35、E199L、およびF317L組換え抗原タンパク質は、通常の分離、精製方法を用いた場合、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%純度のLectin、CD2v、p54、p72、p30、p15、p35、E199L、およびF317L組換え抗原タンパク質を得ることができる。
【0086】
本発明のさらに他の様態において、本発明は、アフリカ豚熱ウイルス抗原タンパク質の組み合わせを有効成分として含むアフリカ豚熱の予防用ワクチン組成物であって、前記ASFV抗原タンパク質の組み合わせは、Lectin、CD2v、p72、p54、p30、p15、p35、E199L、および/またはF317Lタンパク質から成る群から選ばれる1つ以上の組み合わせであることを特徴とするワクチン組成物を提供する。好ましくは、前記ASFV抗原タンパク質の組み合わせは、Lectin、CD2v、p72、p54、およびp30から成る群から選ばれる1つ以上の組み合わせであってもよい。最も好ましくは、前記ASFV抗原タンパク質の組み合わせは、Lectin、CD2v、p72、p54、およびp30からなるものである。また、本発明は、アフリカ豚熱ウイルス抗原タンパク質の組み合わせを有効成分として含むアフリカ豚熱の予防または治療用薬学的組成物であって、前記ASFV抗原タンパク質の組み合わせは、Lectin、CD2v、p72、p54、p30、p15、p35、E199L、および/またはF317Lタンパク質から成る群から選ばれる1つ以上の組み合わせであることを特徴とする薬学的組成物を提供する。好ましくは、前記薬学的組成物は、アフリカ豚熱の予防用薬学的組成物である。
【0087】
以下、本発明のワクチン組成物に関する説明は、本発明の薬学的組成物に対しても同一に適用され、反対に、本発明の薬学的組成物に関する説明は、本発明のワクチン組成物に対しても同一に適用される。
【0088】
好ましくは、前記ASFV抗原タンパク質の組み合わせがLectinタンパク質およびCD2vタンパク質を含む場合、前記ASFV抗原タンパク質の組み合わせは、3つ以上の抗原タンパク質からなってもよい。すなわち、Lectinタンパク質およびCD2vタンパク質を含む組成物は、前記Lectinタンパク質および前記CD2vタンパク質の他に、その他のASFV抗原タンパク質(例えば、p72、p54、および/またはp30)をさらに含んでもよい。
【0089】
好ましくは、本発明によるワクチン組成物に含まれた前記ASFV抗原タンパク質は、本発明による組換えベクターを用いて生産されたことを特徴とする。好ましくは、前記ASFV抗原タンパク質は、本発明による組換えベクターを用いて植物体で生産されたことを特徴とする。
【0090】
また、本発明によるワクチン組成物は、Lectin、CD2v、p72、p54、またはp30組換えタンパク質以外のASFV抗原タンパク質をさらに含まないことを特徴とする。好ましくは、前記Lectin、CD2v、p72、p54、またはp30組換えタンパク質以外のASFV抗原タンパク質は、p15、p35、E199L、およびF317Lから成る群から選ばれる1つ以上であってもよい。すなわち、最も好ましい様態において、本発明によるワクチン組成物は、Lectin、CD2v、p54、p72、およびp30組換え抗原タンパク質5種を含むワクチン組成物であり、さらなる抗原(p15、p35、E199L、F317Lなど)をさらに含むワクチンに比べて、ASFV抗原に対する抗体生成誘導効果、ASFV感染阻害効果、およびアフリカ豚熱の予防効果などがさらに高いことを特徴とする。例えば、前記ワクチン組成物は、p15、p35、E199L、F317Lなどをさらに含むワクチンに比べて、さらに迅速にASFV抗原に対する抗体生成を誘導することができる。
【0091】
また、本発明は、本発明によるワクチン組成物または薬学的組成物をこれを必要とする個体に投与する段階を含む、アフリカ豚熱の予防または治療方法を提供する。好ましくは、本発明によるアフリカ豚熱の予防または治療方法は、Lectin、CD2v、p72、p54、またはp30組換えタンパク質以外のASFV抗原タンパク質(例えば、p15、p35、E199L、および/またはF317L)を前記個体に投与しないことを特徴とする。
【0092】
本発明の一具体例において、前記ワクチン組成物は、アジュバント(adjuvant)をさらに含んでもよい。好ましくは、前記アジュバントは、ミネラルオイル(mineral oil)またはエマルシゲン(Emulsigen)系であってもよく、より好ましくは、Drakeol 5オイル系アジュバントであってもよく、最も好ましくは、SEA1であってもよいが、これらに限らない。
【0093】
本明細書において使用された用語「アジュバント(Adjuvant)」とは、ワクチンまたは薬学的に活性を有する成分に添加され、免疫反応を増加させたり影響を与える物質または組成物をいう。代表的に、免疫原(immunogen)用キャリアまたは補助物質および/または他の薬学的に活性を有する物質または組成物を通常意味する。典型的に、用語「アジュバント」は、広い概念で解釈されるべきであり、前記アジュバントに統合されたり前記アジュバントとともに投与された抗原の免疫原性(immunogenicity)を向上させることができる広い範囲の物質または策略(stratagerm)を意味する。また、アジュバントは、これらに限定されず、免疫増強剤(immune potentiator)、抗原伝達系またはこれらの組み合わせに分けられる。適切なアジュバントの例として、アルミニウムヒドロキシド、フロイド完全または不完全アジュバント、DEAEデキストラン、レバミゾール、PCGおよびpoly I:Cまたはpoly A:Uを含んでもよい。本発明の一実施例では、Drakeol 5オイルベースのSEA1アジュバントを使用した。
【0094】
本明細書において、「ワクチン(vaccine)」とは、生体に免疫反応を起こす抗原を含有する生物学的な製剤であり、感染症の予防のためにヒトや動物に注射したり経口投与することによって、生体に免疫を生じさせる免疫原をいう。前記動物は、ヒトまたは非ヒト動物であり、前記非ヒト動物は、ブタ、ウシ、ウマ、イヌ、ヤギ、ヒツジなどを指すが、これらに限定されない。
【0095】
本明細書において、「溶解性(solubility)」とは、目的タンパク質またはペプチドが人体に投与するのに適した溶媒に溶解することができる程度を意味する。具体的には、特定の温度で与えられた溶媒に対して溶質が飽和した程度を示す。溶解性は、溶質の飽和濃度を決定することによって測定することができ、例えば、溶媒に溶質を過量で添加し、これを撹拌し、ろ過した後、濃度をUV分光器またはHPLCなどを用いて測定することができるが、これらに限定されるものではなく、高い溶解性は、組換えタンパク質の分離精製に有利であり、組換えタンパク質の凝集が抑制され、組換えタンパク質の生理活性または薬理的な活性を維持するのに利点を有する。
【0096】
本発明のワクチン組成物または薬学的組成物内の前記抗原タンパク質の含有量は、疾患の症状、症状の進行程度、患者の状態などによって適切に調節可能であり、例えば、組成物の全重量を基準にして0.0001■99.9重量%、または0.001■50重量%であってもよいが、これらに限定されるものではない。前記含有量比は、溶媒を除去した乾燥量を基準とする値である。
【0097】
本発明によるワクチン組成物または薬学的組成物は、薬学的組成物の製造に通常使用する適切な担体、賦形剤、および希釈剤をさらに含んでもよい。前記賦形剤は、例えば、希釈剤、結合剤、崩解剤、滑沢剤、吸着剤、保湿剤、フィルムコート物質、および制御放出添加剤から成る群から選択された1つ以上であってもよい。
【0098】
本発明によるワクチン組成物または薬学的組成物は、それぞれ、通常の方法によって散剤、顆粒剤、徐放性顆粒剤、腸溶性顆粒剤、液剤、点眼剤、エリキシル剤、乳剤、懸濁液剤、酒精剤、トローチ剤、芳香水剤、リモナーデ剤、錠剤、徐放性錠剤、腸溶性錠剤、舌下錠、硬質カプセル剤、軟質カプセル剤、徐放性カプセル剤、腸溶性カプセル剤、丸剤、チンキ剤、軟エキス剤、乾燥エキス剤、流動エキス剤、注射剤、カプセル剤、灌流液、硬膏剤、ローション剤、パスタ剤、噴霧剤、吸入剤、パッチ剤、滅菌注射溶液、またはエアロゾルなどの外用剤などの形態に剤形化して使用することができ、前記外用剤は、クリーム、ジェル、パッチ、噴霧剤、軟膏剤、硬膏剤、ローション剤、リニメント剤、パスタ剤またはカタプラズマ剤などの剤形を有していてもよい。
【0099】
本発明によるワクチン組成物または薬学的組成物に含まれ得る担体、賦形剤および希釈剤としては、ラクトース、デキストロース、スクロース、オリゴ糖、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、エリスリトール、マルチトール、デンプン、アカシアガム、アルギネート、ゼラチン、リン酸カルシウム、カルシウムシリケート、セルロース、メチルセルロース、微晶質セルロース、ポリビニルピロリドン、水、メチルヒドロキシベンゾアート、プロピルヒドロキシベンゾアート、タルク、マグネシウムステアレートおよび鉱物油が挙げられる。
【0100】
製剤化する場合には、通常使用する充填剤、増量剤、結合剤、湿潤剤、崩解剤、界面活性剤などの希釈剤または賦形剤を使用して調製される。
【0101】
本発明による錠剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤、丸剤、トローチ剤の添加剤としてコーンスターチ、ジャガイモデンプン、小麦デンプン、乳糖、白糖、ブドウ糖、果糖、D-マンニトール、沈降炭酸カルシウム、合成ケイ酸アルミニウム、リン酸一水素カルシウム、硫酸カルシウム、塩化ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、精製ラノリン、微結晶セルロース、デキストリン、アルギン酸ナトリウム、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カオリン、ヨウ素、コロイド状シリカゲル、ヒドロキシプロピルスターチ、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、HPMC1928、HPMC2208、HPMC2906、HPMC2910、プロピレングリコール、カゼイン、乳酸カルシウム、プリモジェルなど賦形剤;ゼラチン、アラビアガム、エタノール、寒天粉、酢酸フタル酸セルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム、ブドウ糖、精製水、カゼインナトリウム、グリセリン、ステアリン酸、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、微結晶セルロース、デキストリン、ヒドロキシセルロース、ヒドロキシプロピルスターチ、ヒドロキシメチルセルロース、精製セラック、デンプン糊、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドンなどの結合剤が使用でき、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、コーンスターチ、寒天粉、メチルセルロース、ベントナイト、ヒドロキシプロピルスターチ、カルボキシメチルセルロースナトリウム、アルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロースカルシウム、クエン酸カルシウム、ラウリル硫酸ナトリウム、無水ケイ酸、L-ヒドロキシプロピルセルロース、デキストラン、イオン交換樹脂、酢酸ポリビニル、ホルムアルデヒド処理カゼインおよびゼラチン、アルギン酸、アミロース、グアーガム(Guar gum)、重曹、ポリビニルピロリドン、リン酸カルシウム、ゲル化デンプン、アラビアガム、アミロベクチン、ペクチン、ポリリン酸ナトリウム、エチルセルロース、白糖、ケイ酸マグネシウムアルミニウム、D-ソルビトール液、軽質無水ケイ酸など崩解剤;ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、水素化植物油(Hydrogenated vegetable oil)、タルク、石松子、カオリン、ワセリン、ステアリン酸ナトリウム、カカオ脂、サリチル酸ナトリウム、サリチル酸マグネシウム、ポリエチレングリコール(PEG)4000、PEG6000、流動パラフィン、水素添加大豆油(Lubri wax)、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸亜鉛、ラウリル硫酸ナトリウム、酸化マグネシウム、マクロゴール(Macrogol)、合成ケイ酸アルミニウム、無水ケイ酸、高級脂肪酸、高級アルコール、シリコーン油、パラフィン油、ポリエチレングリコール脂肪酸エーテル、デンプン、塩化ナトリウム、酢酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム、DL-ロイシン、軽質無水ケイ酸などの滑沢剤が使用できる。
【0102】
本発明による液剤の添加剤としては、水、希塩酸、希硫酸、クエン酸ナトリウム、モノステアリン酸スクロース類、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル類(ツインエステル)、ポリオキシエチレンモノアルキルエテール類、ラノリンエーテル類、ラノリンエステル類、酢酸、塩酸、アンモニア水、炭酸アンモニウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、プロラミン、ポリビニルピロリドン、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウムなどが使用できる。
【0103】
本発明によるシロップ剤には、白糖の溶液、他の糖類あるいは甘味剤などが使用でき、必要に応じて芳香剤、着色剤、保存剤、安定剤、懸濁化剤、乳化剤、粘稠剤などが使用できる。
【0104】
本発明による乳剤には、精製水が使用でき、必要に応じて乳化剤、保存剤、安定剤、芳香剤などが使用できる。
【0105】
本発明による懸濁剤には、アカシア、トラガカンタ、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、微結晶セルロース、アルギン酸ナトリウム、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、HPMC1828、HPMC2906、HPMC2910などの懸濁化剤が使用でき、必要に応じて界面活性剤、保存剤、安定剤、着色剤、芳香剤が使用できる。
【0106】
本発明による注射剤には、注射用蒸留水、0.9%塩化ナトリウム注射液、リンゲル注射液、デキストロース注射液、デキストロース+塩化ナトリウム注射液、ピイジー(PEG)、乳酸リンゲル注射液、エタノール、プロピレングリコール、非揮発性油-ゴマ油、綿実油、落花生油、ダイズ油、とうもろこし油、オレイン酸エチル、ミリスチン酸イソプロピル、安息香酸ベンゼンのような溶剤;安息香酸ナトリウム、サリチル酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、ヨウ素、ウレタン、モノエチルアセトアミド、ブタゾリジン、プロピレングリコール、ツイン類、ニコチン酸アミド、ヘキサミン、ジメチルアセトアミドのような溶解補助剤;弱酸およびその塩(酢酸と酢酸ナトリウム)、弱塩基およびその塩(アンモニアおよび酢酸アンモニウム)、有機化合物、タンパク質、アルブミン、ペプトン、ガム類のような緩衝剤;塩化ナトリウムのような等張剤;重亜硫酸ナトリウム(NaHSO3)二酸化炭素ガス、メタ重亜硫酸ナトリウム(Na2S2O5)、亜硫酸ナトリウム(Na2SO3)、窒素ガス(N2)、エチレンジアミンテトラ酢酸のような安定剤;ソジウムビサルファイト0.1%、ソジウムホルムアルデヒドスルホキシレート、チオウレア、エチレンジアミンテトラ酢酸ジナトリウム、アセトンソジウムビサルファイトのような硫酸化剤;ベンジルアルコール、クロロブタノール、塩酸プロカイン、ブドウ糖、グルコン酸カルシウムのような無痛化剤;CMCナトリウム、アルギン酸ナトリウム、ツイン80、モノステアリン酸アルミニウムのような懸濁化剤を含んでもよい。
【0107】
本発明による坐剤には、カカオ脂、ラノリン、ウィテプソル、ポリエチレングリコール、グリセロゼラチン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ステアリン酸とオレイン酸の混合物、スバナル(Subanal)、綿実油、落花生油、ヤシ油、カカオバター+コレステロール、レシチン、ラネットワックス、モノステアリン酸グリセロール、ツインまたはスパン、イムハウゼン(Imhausen)、モノレン(モノステアリン酸プロピレングリコール)、グリセリン、アデプスソリダス(Adeps solidus)、ブチラムテゴ-G(Buytyrum Tego-G)、セベスファーマ16(Cebes Pharma 16)、ヘキサライドベース95、コトマー(Cotomar)、ヒドロコテSP、S-70-XXA、S-70-XX75(S-70-XX95)、ヒドロコテ(Hydrokote)25、ヒドロコテ711、イドロポスタル(Idropostal)、マッサエストラリウム(Massa estrarium、A、AS、B、C、D、E、I、T)、マッサ-MF、マスポール、マスポール-15、ネオスポスタル-N、パラマウント-B、スポシロ(OSI、OSIX、A、B、C、D、H、L)、坐剤基剤IVタイプ(AB、B、A、BC、BBG、E、BGF、C、D、299)、スポスタル(N、Es)、ウェコビー(W、R、S、M、Fs)、テゲスタートリグリセライド基剤(TG-95、MA、57)のような基剤が使用できる。
【0108】
経口投与のための固形製剤には、錠剤、丸剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤などが含まれ、このような固形製剤は、前記抽出物に少なくとも1つ以上の賦形剤、例えば、デンプン、カルシウムカーボネート(calcium carbonate)、スクロース(sucrose)またはラクトース(lactose)、ゼラチンなどを混ぜて調製される。また、単純な賦形剤以外に、マグネシウムステアレート、タルクのような潤滑剤も使用される。
【0109】
経口投与のための液状製剤としては、懸濁剤、内用液剤、乳剤、シロップ剤などが該当するが、頻用される単純希釈剤である水、リキッドパラフィン以外に様々な賦形剤、例えば湿潤剤、甘味剤、芳香剤、保存剤などが含まれ得る。非経口投与のための製剤には、滅菌水溶液、非水性溶剤、懸濁剤、乳剤、凍結乾燥製剤、坐剤が含まれる。非水性溶剤、懸濁剤としては、プロピレングリコール(propylene glycol)、ポリエチレングリコール、オリーブオイルのような植物油、エチルオレートのような注射可能なエステルなどが使用できる。
【0110】
本発明によるワクチン組成物または薬学的組成物は、薬学的に有効な量で投与する。本発明において、「薬学的に有効な量」は、医学的治療に適用可能な合理的なベネフィット/リスクの割合で疾患を治療するのに十分な量を意味し、有効用量レベルは、患者疾患の種類、重症度、薬物の活性、薬物感受性、投与時間、投与経路および排出比率、治療期間、同時使用される薬物を含む要素およびその他医学分野によく知られた要素によって決定できる。
【0111】
本発明によるワクチン組成物または薬学的組成物は、個別治療剤として投与したり他の治療剤と併用して投与でき、従来の治療剤とは、順次にまたは同時に投与でき、単一または多重投与できる。上記した要素を全部考慮して副作用なしで最小限の量で最大効果を得ることができる量を投与することが重要であり、これは、本発明の属する技術分野における通常の技術者によって容易に決定できる。
【0112】
本発明のワクチン組成物または薬学的組成物は、個体に多様な経路で投与できる。投与のすべての方式は、予想され得るが、例えば、経口服用、皮下注射、腹腔投与、静脈注射、筋肉注射、脊髄の周囲空間(硬膜内)注射、舌下投与、頬粘膜投与、直腸内挿入、膣内挿入、眼球投与、耳投与、鼻腔投与、吸入、口または鼻を通した噴霧、皮膚投与、経皮投与などにより投与できる。好ましくは、本発明による組成物は、筋肉内投与されることができる。
【0113】
本発明のワクチン組成物または薬学的組成物は、治療する疾患、投与経路、患者の年齢、性別、体重および疾患の重症度などの様々な関連因子とともに、活性成分である薬物の種類によって決定される。具体的には、本発明による組成物の有効量は、患者の年齢、性別、体重により変わることができ、一般的には、体重1kg当たり0.001~150mg、好ましくは、0.01~100mgを毎日または隔日投与したり1日に1~3回に分けて投与することができる。しかしながら、投与経路、疾患の重症度、性別、体重、年齢などによって増減することができるので、前記投与量がいかなる方法でも本発明の範囲を限定するものではない。
【0114】
本発明において「個体」とは、疾患の治療を必要とする対象を意味し、より具体的には、ヒトまたは非ヒトである霊長類、マウス(mouse)、ラット(rat)、イヌ、ネコ、ウマ、およびウシなどの哺乳類を意味する。例えば、本明細書において、「個体(individual)」とは、本発明の組換えアフリカ豚熱抗原タンパク質が投与され得る対象を言い、その対象に制限がない。
【0115】
本発明において「投与」とは、任意の適切な方法で個体に所定の本発明の組成物を提供することを意味する。
【0116】
本発明において「予防」とは、目的とする疾患の発症を抑制したり遅延させるすべての行為を意味し、「治療」とは、本発明による薬学的組成物の投与により目的とする疾患とそれによる代謝異常症状が好転したり有益に変更されるすべての行為を意味し、「改善」とは、本発明による組成物の投与により目的とする疾患に関連したパラメーター、例えば症状の程度を減少させるすべての行為を意味する。例えば、本明細書において、「予防(prevention)」とは、本発明による組換えアフリカ豚熱抗原タンパク質の投与によってアフリカ豚熱を抑制させたり発症を遅延させるすべての行為を意味する。また、本明細書において、「治療(treatment)」とは、本発明による組換えアフリカ豚熱抗原タンパク質の投与によってアフリカ豚熱の症状が好転したり有益に変更されるすべての行為を意味する。
【0117】
さらに記述すると、本発明のワクチン組成物は、それぞれ通常の方法によって散剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、懸濁液、エマルジョン、シロップ、エアロゾルなどの経口型剤形および滅菌注射溶液の形態で剤形化して使用することができる。製剤化する場合には、通常使用する充填剤、増量剤、結合剤、湿潤剤、崩解剤、界面活性剤などの希釈剤または賦形剤を使用して調製することができる。経口投与のための固形製剤には、錠剤、丸剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤などが含まれ、このような固形製剤は、前記レシチン類似乳化剤に少なくとも1つ以上の賦形剤、例えば、デンプン、カルシウムカーボネート(calcium carbonate)、スクロース(sucrose)またはラクトース(lactose)、ゼラチンなどを混ぜて調製することができる。また、単純な賦形剤以外に、マグネシウムステアレート、タルクのような潤滑剤も使用することができる。経口投与のための液状製剤としては、懸濁剤、内用液剤、乳剤、シロップ剤などを使用することができ、頻繁に使用される単純希釈剤である水、リキッドパラフィン以外に、様々な賦形剤、例えば、湿潤剤、甘味剤、芳香剤、保存剤などが含まれ得る。非経口投与のための製剤には、滅菌水溶液、非水溶性製剤、懸濁剤、乳剤、凍結乾燥剤制が含まれる。非水溶性製剤、懸濁剤としては、プロピレングリコール(propylene glycol)、ポリエチレングリコール、オリーブオイルのような植物油、エチルオレートのような注射可能なエステルなどが使用できる。
【0118】
本発明によるワクチン組成物の投与経路は、これらに限定されるものではないが、口腔、静脈内、筋肉内、動脈内、骨髄内、硬膜内、心臓内、経皮、皮下、腹腔内、鼻腔内、腸管、局所、舌下または直腸が含まれる。経口または非経口投与が好ましい。本願において使用された用語「非経口」は、皮下、皮内、静脈内、筋肉内、関節内、滑液嚢内、胸骨内、硬膜内、病巣内および頭蓋骨内注射または注入技術を含む。本発明のワクチン組成物は、また、直腸投与のための坐剤の形態で投与することができる。
【0119】
本発明によるワクチン組成物または薬学的組成物の投与量は、個体の年齢、体重、性別、身体状態などを考慮して選択される。特別な副作用なしに個体に免疫保護反応を誘導するのに必要な量は、免疫原として使用された組換えタンパク質および賦形剤の任意存在によって多様である。
【0120】
好ましくは、本発明によるワクチン組成物2ml当たりLectin、CD2v、p54、p72、p15、p35、E199L、および/またはF317Lは、それぞれ10μg~1mg、10~900μg、10μg~800μg、10μg~700μg、10μg~600μg、10μg~500μg、10μg~400μg、10μg~300μg、10μg~200μg、50μg~150μg、70μg~130μg、80μg~120μg、または90μg~110μgが含まれていてもよく、p30は、1μg~100μg、1μg~90μg、1μg~80μg、1μg~70μg、1μg~60μg、1μg~50μg、10μg~50μg、15μg~45μg、20μg~40μg、または25μg~35μgが含まれていてもよいが、これらに限らない。
【0121】
本発明のさらに他の様態において、本発明は、本発明によるワクチン組成物を含む、アフリカ豚熱の予防用ワクチンキットを提供する。前記キットには、本発明のワクチン組成物の他にも、ワクチン投与などのために当業界において一般的に使用されるツール、試薬などが制限なく含まれ得る。また、前記キットには、本発明によるワクチン組成物、組換えベクターなどに関する特徴や情報が記載された説明書が含まれていてもよく、本発明によるワクチン組成物の製造方法が記載された指示書が含まれていてもよい。
【0122】
本発明のさらに他の様態において、本発明は、下記段階を含む組換えASFV抗原タンパク質の製造方法を提供する:
(S1)本発明による組換えベクターを植物体に形質転換させる段階;および
(S2)前記植物体または培養液から組換え抗原タンパク質を分離および精製する段階。
【0123】
本発明のさらに他の様態において、本発明は、下記段階を含むアフリカ豚熱の予防用ワクチン組成物またはワクチンキットの製造方法を提供する:
(S1)本発明による組換えベクターを植物体に形質転換させる段階;
(S2)前記植物体または培養液から組換え抗原タンパク質を分離および精製する段階;および
(S3)前記分離および精製された組換え抗原タンパク質を用いてワクチン組成物またはワクチンキットを製造する段階。
【0124】
前記(S1)段階の「型質転換」に関する具体的な説明は前述した通りである。前記(S1)段階の形質転換方法は、具体的な種類が限定されるものではないが、好ましくは、アグロバクテリウム(Agrobacterium)媒介形質転換方法を用いて行われ得る。具体的には、前記(S1)段階は、本発明による組換えベクターをアグロバクテリア菌株に形質転換させる段階と;前記形質転換されたアグロバクテリア菌株を培養する段階と;前記培養された菌株を植物体に投与(注入あるいは接種)する段階と;を含んでもよい。好ましくは、前記植物体は、タバコであってもよい。
【0125】
前記(S2)段階の組換え抗原タンパク質を分離および精製する段階は、当業界において一般的に知られているタンパク質分離および精製方法を制限なく適用して行われ得る。好ましくは、前記タンパク質の分離は、形質転換された植物体にタンパク質抽出溶液を添加して行われ得る。また、前記タンパク質の精製は、クロマトグラフィーを行って行われ得る。好ましくは、前記クロマトグラフィーは、親和性クロマトグラフィーであってもよく、この際に使用されるリガンドは、タンパク質A、Ni-IDAなどであってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0126】
本発明のさらに他の様態において、本発明は、アフリカ豚熱ウイルス抗原タンパク質の組み合わせを有効成分として含むアフリカ豚熱の予防用飼料組成物を提供し、前記ASFV抗原タンパク質の組み合わせは、Lectin、CD2v、p72、p54、およびp30タンパク質から成る群から選ばれる1つ以上の組み合わせを含むことを特徴とする。好ましくは、前記ASFV抗原タンパク質の組み合わせがLectinタンパク質およびCD2vタンパク質を含む場合、前記ASFV抗原タンパク質の組み合わせは、3つ以上の抗原タンパク質からなることを特徴とする。
【0127】
好ましくは、本発明による飼料組成物に含まれた前記ASFV抗原タンパク質は、本発明による組換えベクターを用いて生産されたことを特徴とする。好ましくは、前記ASFV抗原タンパク質は、本発明による組換えベクターを用いて植物体で生産されたことを特徴とする。
【0128】
また、好ましくは、本発明による飼料組成物は、Lectin、CD2v、p54、p72、およびp30組換え抗原タンパク質を全部有効成分として含むことを特徴とし、最も好ましくは、前記飼料組成物は、Lectin、CD2v、p72、p54、またはp30組換えタンパク質以外のASFV抗原タンパク質(p15、p35、E199L、およびF317L)をさらに含まないことを特徴とする。
【0129】
前記飼料組成物において「飼料」の具体的な例としては、豚肉、牛肉、鶏肉などの副産物を含んでとうもろこし、米、一般わら、野草、牧草、エンシレージ、乾草、山野草などがあるが、これらに限定されるものではなく、家畜の飼育に使用される飼料であれば、制限がない。このような飼料に本発明によるLectin、CD2v、p54、p72、およびp30組換え抗原タンパク質を添加して配合する方法としては、機械的混合、吸着、吸蔵などの方法があるが、これらに限定されるものではない。
【0130】
以下、本発明の理解を助けるために好ましい実施例を提示する。しかしながら、下記の実施例は、本発明をより容易に理解するために提供されるものに過ぎず、下記実施例によって本発明の内容が限定されるものではない。
【0131】
[実施例]
実施例1.アフリカ豚熱ウイルスの抗原を発現する組換えベクターの製造
図1の切断地図に示されたように、植物体でアフリカ豚熱ウイルス抗原タンパク質Lectin、CD2v、p72、p54、p30、p15、p35、E199L、またはF317Lを発現させることができるように組換え植物発現ベクターを製作した。より詳しくは、アフリカ豚熱ウイルスのLectin、CD2v、p72、p54、p30、p15、p35、E199L、およびF317Lタンパク質に対する遺伝子情報を確保し、植物体における発現に最適化された配列でそれぞれLectinタンパク質コード遺伝子(配列番号2)、CD2vタンパク質コード遺伝子(配列番号4)、p72タンパク質コード遺伝子(配列番号6)、p54タンパク質コード遺伝子(配列番号8)、p30タンパク質コード遺伝子(配列番号10)、p15タンパク質コード遺伝子(配列番号12)、p35タンパク質コード遺伝子(配列番号14)、E199Lタンパク質コード遺伝子(配列番号16)、およびF317Lタンパク質コード遺伝子(配列番号18)を合成した。
【0132】
各組換えベクターの具体的な構成は、次の通りである:
Lectin抗原タンパク質発現のための組換えベクター
pCAMBIA1300ベクターにCaMV 35Sプロモーター(promoter)遺伝子とHSPターミネータ(terminator)を挿入し、それらの間にNB(new chaperone binding protein)シグナルペプチド(signal peptide)をコードするポリヌクレオチド(配列番号20)、ポリヒスチジンタグ(polyhistidine tag)をコードするポリヌクレオチド(配列番号26)、アフリカ豚熱ウイルスのLectin抗原組換えタンパク質をコードするポリヌクレオチド(配列番号2)、pFc2(porcine Fc)断片をコードするポリヌクレオチド(配列番号28)、およびHDEL(His-Asp-Glu-Leu)ペプチドをコードするポリヌクレオチド(配列番号30)を順に連結し、アフリカ豚熱ウイルスのLectin抗原タンパク質の植物発現ベクターを製作した。
【0133】
CD2v抗原タンパク質発現のための組換えベクター
pCAMBIA1300ベクターにCaMV 35Sプロモーター遺伝子とHSPターミネータを挿入し、それらの間にNBシグナルペプチドをコードするポリヌクレオチド(配列番号20)、Mドメインをコードするポリヌクレオチド(配列番号24)、アフリカ豚熱ウイルスのCD2v抗原組換えタンパク質をコードするポリヌクレオチド(配列番号4)、pFc2断片をコードするポリヌクレオチド(配列番号28)、およびHDELペプチドをコードするポリヌクレオチド(配列番号30)を順に連結し、アフリカ豚熱ウイルスのCD2v抗原タンパク質の植物発現ベクターを製作した。
【0134】
p72抗原タンパク質発現のための組換えベクター
pCAMBIA1300ベクターの選別マーカーであるハイグロマイシン抵抗性遺伝子をhuman calreticulin 1遺伝子で置換し、Macプロモーターの3’末端ヌクレオチドがTで置換されたMacTプロモーター遺伝子およびシロイヌナズナRD29Bターミネータを挿入し、それらの間にBiP(chaperone binding protein)シグナルペプチドをコードするポリヌクレオチド(配列番号22)、アフリカ豚熱ウイルスのp72抗原組換えタンパク質をコードするポリヌクレオチド(配列番号6)、pFc2断片をコードするポリヌクレオチド(配列番号28)、およびHDELペプチドをコードするポリヌクレオチド(配列番号30)を順に連結し、アフリカ豚熱ウイルスのp72抗原タンパク質の植物発現ベクターを製作した。
【0135】
p54抗原タンパク質発現のための組換えベクター
pCAMBIA1300ベクターにCaMV 35Sプロモーター遺伝子とHSPターミネータを挿入し、それらの間にNBシグナルペプチドをコードするポリヌクレオチド(配列番号20)、アフリカ豚熱ウイルスのp54抗原組換えタンパク質をコードするポリヌクレオチド(配列番号8)、pFc2断片をコードするポリヌクレオチド(配列番号28)、およびHDELペプチドをコードするポリヌクレオチド(配列番号30)を順に連結し、アフリカ豚熱ウイルスのp54抗原タンパク質の植物発現ベクターを製作した。
【0136】
p30抗原タンパク質発現のための組換えベクター
pCAMBIA1300ベクターにCaMV 35Sプロモーター遺伝子とHSPターミネータを挿入し、それらの間にNBシグナルペプチドをコードするポリヌクレオチド(配列番号20)、アフリカ豚熱ウイルスのp30抗原組換えタンパク質をコードするポリヌクレオチド(配列番号10)、ポリヒスチジンタグをコードするポリヌクレオチド(配列番号26)、およびHDELペプチドをコードするポリヌクレオチド(配列番号30)を順に連結し、アフリカ豚熱ウイルスのp30抗原タンパク質の植物発現ベクターを製作した。
【0137】
p15抗原タンパク質発現のための組換えベクター
pCAMBIA1300ベクターにCaMV 35Sプロモーター遺伝子とHSPターミネータを挿入し、それらの間にNBシグナルペプチドをコードするポリヌクレオチド(配列番号20)、アフリカ豚熱ウイルスのp15抗原組換えタンパク質をコードするポリヌクレオチド(配列番号12)、pFc2断片をコードするポリヌクレオチド(配列番号28)、およびHDELペプチドをコードするポリヌクレオチド(配列番号30)を順に連結し、アフリカ豚熱ウイルスのp15抗原タンパク質の植物発現ベクターを製作した。
【0138】
P35抗原タンパク質発現のための組換えベクター
pCAMBIA1300ベクターにCaMV 35Sプロモーター遺伝子とHSPターミネータを挿入し、それらの間にNBシグナルペプチドをコードするポリヌクレオチド(配列番号20)、アフリカ豚熱ウイルスのp35抗原組換えタンパク質をコードするポリヌクレオチド(配列番号14)、pFc2断片をコードするポリヌクレオチド(配列番号28)、およびHDELペプチドをコードするポリヌクレオチド(配列番号30)を順に連結し、アフリカ豚熱ウイルスのp35抗原タンパク質の植物発現ベクターを製作した。
【0139】
E199L抗原タンパク質発現のための組換えベクター
pCAMBIA1300ベクターの選別マーカーであるハイグロマイシン抵抗性遺伝子をturnip crinkle virus-coat protein(TCV-CP)遺伝子で置換し、Macプロモーターの3’末端ヌクレオチドがTで置換されたMacTプロモーター遺伝子およびシロイヌナズナRD29Bターミネータを挿入し、それらの間にNBシグナルペプチドをコードするポリヌクレオチド(配列番号20)、アフリカ豚熱ウイルスのE199L抗原組換えタンパク質をコードするポリヌクレオチド(配列番号16)、pFc2断片をコードするポリヌクレオチド(配列番号28)、およびHDELペプチドをコードするポリヌクレオチド(配列番号30)を順に連結し、アフリカ豚熱ウイルスのE199L抗原タンパク質の植物発現ベクターを製作した。
【0140】
F317L抗原タンパク質発現のための組換えベクター
pCAMBIA1300ベクターの選別マーカーであるハイグロマイシン抵抗性遺伝子をturnip crinkle virus-coat protein(TCV-CP)遺伝子で置換し、Macプロモーターの3’末端ヌクレオチドがTで置換されたMacTプロモーター遺伝子およびシロイヌナズナRD29Bターミネータを挿入し、それらの間にNBシグナルペプチドをコードするポリヌクレオチド(配列番号20)、アフリカ豚熱ウイルスのF317L抗原組換えタンパク質をコードするポリヌクレオチド(配列番号18)、pFc2断片をコードするポリヌクレオチド(配列番号28)、およびHDELペプチドをコードするポリヌクレオチド(配列番号30)を順に連結し、アフリカ豚熱ウイルスのF317L抗原タンパク質の植物発現ベクターを製作した。
【0141】
実施例2.組換えASFウイルス抗原タンパク質の発現の確認
2-1.植物発現ベクターの一過性発現(transient expression)
前記実施例1で準備したアフリカ豚熱抗原タンパク質(Lectin、CD2v、p72、p54、p30、p15、p35、E199L、およびF317L)の植物発現組換えベクターそれぞれをアグロバクテリアLBA4404菌株に電気衝撃法(electrophoration)を用いて形質転換させた。形質転換されたアグロバクテリアを5mLのYEP液体培地(酵母抽出物10g、ペプトン10g、NaCl5g、カナマイシン50mg/L、リファンピシン25mg/L)で28℃の条件で16時間振とう培養した後、1次培養液1mLを50mLの新しいYEP培地に接種し、28℃の条件で6時間振とう培養した。このように培養されたアグロバクテリアは、遠心分離(7,000rpm、4℃、5分)して収集した後、600nmの波長で吸光度(O.D)の値が1.0となるようにインフィルトレーション(Infiltration)バッファー[10mM MES(pH5.7)、10mM MgCl2、200μMアセトシリンゴン]に懸濁させた。アグロバクテリア懸濁液は、注射針を除去した注射器を用いてニコチアナ・ベンサミアナ(Nicotiana benthamiana)葉の裏面に注入する方法でアグロインフィルトレーション(Agro-infiltration)を行った。
【0142】
2-2.ASFウイルスの抗原タンパク質の分離および精製
前記実施例2-1で準備したニコチアナ・ベンサミアナ葉から組換えタンパク質を分離および精製するために、各組換えタンパク質を発現するニコチアナ・ベンサミアナ葉にタンパク質抽出溶液を添加し、ブレンダーで組織を破砕した後、13,000rpmで4℃で30分間遠心分離し、タンパク質抽出液を回収した。前記抽出液からそれぞれのASFウイルス抗原タンパク質を分離精製するために、タンパク質A-セファロースレジン(protein A-sepharose resin)が充填されたカラムで親和性クロマトグラフィーを実施した。前記カラムにタンパク質Aレジンを充填した後、洗浄液で平衡化させた。回収したタンパク質抽出液をカラムに適用し、平衡化させた後、洗浄液を流してレジンを洗浄し、溶出溶液でそれぞれの組換えタンパク質を溶出させた。組換え抗原タンパク質が含まれた溶出溶液は、中和溶液を加えて適切なpHで中和した後、30kDaカットオフのフィルターを用いてバッファー交換および濃縮を行った。分離精製された組換え抗原タンパク質は、電気泳動(SDS-PAGE)後、クマシー染色法(Coomassie staining)を用いて濃度を確認した。
【0143】
p30タンパク質の場合、次の過程を通じて分離、精製した:p30を発現するニコチアナ・ベンサミアナ葉にタンパク質抽出溶液を添加し、ブレンダーで組織を破砕した後、13,000rpmで4℃で30分間遠心分離し、タンパク質抽出液を回収した。前記抽出液からp30を分離精製するために、Ni-IDAレジンが充填されたカラムで親和性クロマトグラフィーを実施した。まず、前記カラムにNi-IDAレジンを充填した後、洗浄液で平衡化させた。回収したタンパク質抽出液をカラムに適用し、平衡化させた後、洗浄液を流してレジンを洗浄し、溶出溶液でp30タンパク質を溶出させた。p30タンパク質が含まれた溶出溶液は、10kDaカットオフのフィルターを用いてバッファー交換および濃縮を行った。分離精製されたp30タンパク質は、電気泳動(SDS-PAGE)後、クマシー染色法を用いて濃度を確認した。
【0144】
その結果、
図2~
図10bに示されたように、本発明のアフリカ豚熱ウイルス抗原タンパク質は、いずれも、本来のタンパク質と比較して、大きな変異や修飾なく良好に精製されたことを確認した。このような結果は、タンパク質を植物で発現させる場合、糖構造が変異し、生産効率が低下する問題点が発見されていないことを検証したものであり、本発明によるアフリカ豚熱ウイルス組換え抗原タンパク質が植物で良好に生産されることを確認したものである。
【0145】
組換え抗原タンパク質別分離、精製条件および結果は、次の通りである:
【0146】
Lectin抗原タンパク質(分子量:40651.82;図2)
(1)タンパク質抽出条件:ニコチアナ・ベンサミアナ葉1kg、タンパク質抽出液2L
(2)タンパク質分離精製:約80mLのタンパク質Aレジンが充填されたカラムで30分間バインディング(binding)後、20分間レジンダウン(resin down)
-抽出液(extraction buffer)/洗浄液:50mM Tris-Cl(pH7.2)、100mM NaCl、100mM Sodium sulfite(-W)、0.5%Triton X-100(-W2)、1.5%PVPP(-W)
-溶出液(elution buffer):50mM Sodium citrate(pH3.0)、100mM NaCl
-中和バッファー:1M Tris(pH7.5で中和)
-最終バッファー:50mM Sodium citrate、約150mM Tris-Cl、100mM NaCl、pH7.5
(3)最終タンパク質濃度(Nanodrop基準):1.02μg/μL
(4)最終収率(Nanodrop基準):54mg/kg
【0147】
CD2v抗原タンパク質(分子量:55214.70;図3)
(1)タンパク質抽出条件:ニコチアナ・ベンサミアナ葉1kg、タンパク質抽出液2L
(2)タンパク質分離精製:約100mLのタンパク質Aレジンが充填されたカラムで60分間バインディング後、20分間レジンダウン(resin down)
-抽出液/洗浄液:100mM Tris-Cl(pH7.5)、154mM NaCl、0.5%Triton X-100(-W2)、100mM Sodium sulfite(-W)、1.5%PVPP(-W)
-溶出液:50mM Sodium citrate(pH3.0)、154mM NaCl
-中和バッファー:1M Tris(pH7.5で中和)
-最終バッファー:50mM Sodium citrate、154mM NaCl、pH7.5となるまで1M Tris-HClを添加する。
(3)最終タンパク質濃度(Nanodrop基準):1.2μg/μL
(4)最終収率(Nanodrop基準):68.67mg/kg
【0148】
p72抗原タンパク質(分子量:100405.77(ただし、7個のglycosylation siteによって14kDa増加);図4aおよび図4b)
(1)タンパク質抽出条件:ニコチアナ・ベンサミアナ葉1kg、タンパク質抽出液2L
(2)タンパク質分離精製:約100mLのタンパク質Aレジンが充填されたカラムで60分間バインディング後、20分間レジンダウン(resin down)
-抽出液/洗浄液:100mM Tris-Cl(pH7.5)、154mM NaCl、0.5%Triton X-100(-W2)、100mM Sodium sulfite(-W)、1.5%PVPP(-W)
-溶出液:50mM Sodium citrate(pH3.0)、154mM NaCl
-中和バッファー:1.5 M Tris(pH7.5で中和)
-最終バッファー:50mM Sodium citrate、154mM NaCl、pH7.5になるまで1M Tris-HClを添加する。
(3)最終タンパク質濃度(Nanodrop基準):0.57μg/μL
(4)最終収率(Nanodrop基準):7.06mg/kg
【0149】
p54抗原タンパク質(分子量:43956.09(ただし、1個のglycosylation siteによって2kDa増加);図5aおよび図5b)
(1)タンパク質抽出条件:ニコチアナ・ベンサミアナ葉0.1kg、タンパク質抽出液0.2L
(2)タンパク質分離精製:約10mLのタンパク質Aレジンが充填されたカラムで70分間バインディング後、20分間レジンダウン(resin down)
-抽出液:100mM Tris-Cl(pH7.4)、154mM NaCl、0.5%Triton X-100(-W2)、100mM Sodium sulfite、1.5%PVPP、0.5x PI
-洗浄液:100mM Tris-Cl(pH7.4)、154mM NaCl、0.5%Triton X-100(-W2)
-溶出液:50mM Sodium citrate(pH3.0)、154mM NaCl
-最終バッファー:1N NaOH(pH7.4となるまで1M Tris-HClを添加する)
(3)最終タンパク質濃度(Nanodrop基準):1mg/ml
(4)最終収率(Nanodrop基準):71mg/kg
【0150】
p30抗原タンパク質(分子量:22993.95;図6)
(1)タンパク質抽出条件:ニコチアナ・ベンサミアナ葉1kg、タンパク質抽出液2L
(2)タンパク質分離精製:約100mLのタンパク質Aレジンが充填されたカラムで60分間バインディング後、20分間レジンダウン(resin down)
-抽出液:50mM Tris-Cl(pH8.0)、300mM NaCl、10mM Imidazole、0.5%Triton X-100、50mM Glycine、100mM Na
2SO
3、10mM Ascorbic Acid、1.5%PVPP
-洗浄液:50mM Tris-Cl(pH7.4)、300mM NaCl、10mM Imidazole(W1、2)、100mM Imidazole(W3)、0.5%Triton X-100(W1)
-溶出液:50mM Tris-Cl(pH7.4)、300mM NaCl、250mM Imidazole
-最終バッファー:50mM Tris-Cl pH7.4、300mM NaCl、50mM KCl
(3)最終タンパク質濃度(Nanodrop基準):0.3μg/μL(volume:93ml)
(4)最終収率(Nanodrop基準):27.9mg/kg
【0151】
p15抗原タンパク質(分子量:44114.34;図7aおよび図7b)
(1)タンパク質抽出条件:ニコチアナ・ベンサミアナ葉1.5kg、タンパク質抽出液1L
(2)タンパク質分離精製:約100mLのタンパク質Aレジンが充填されたカラムで60分間バインディング後、20分間レジンダウン(resin down)
-抽出液/洗浄液:50mM Tris-Cl(pH7.2)、100mM NaCl、0.5% Triton X-100(-W2)、100mM Sodium sulfite(-W)、1.5%PVPP(-W)、1mM PMSF
-溶出液:50mM Sodium citrate(pH3.0)、100mM NaCl
-中和バッファー:0.5M NaOH(pH7.5で中和)
-最終バッファー:50mM Sodium citrate、100mM NaCl、pH7.5となるまで1M Tris-HClを添加する。
(3)最終タンパク質濃度(Nanodrop基準):0.5mg/ml
(4)最終収率(Nanodrop基準):98.6mg/kg
【0152】
p35抗原タンパク質(分子量:61323.42;図8)
(1)タンパク質抽出条件:ニコチアナ・ベンサミアナ葉0.5kg、タンパク質抽出液1L
(2)タンパク質分離精製:約100mLのタンパク質Aレジンが充填されたカラムで60分間バインディング後、20分間レジンダウン(resin down)
-抽出液/洗浄液:50mM Tris-Cl(pH7.2)、100mM NaCl、0.5%Triton X-100(-W2)、100mM Sodium sulfite(-W)、15g PVPP(-W)
-溶出液:50mM Sodium citrate(pH3.0)、100mM NaCl
-中和バッファー:1 M Tris(pH7.5で中和)
-最終バッファー:50mM Sodium citrate、100mM NaCl、pH7.5となるまで1M Tris-HClを添加する。
(3)最終タンパク質濃度(Nanodrop基準):0.53μg/μL(volume:約110mL)
(4)最終収率(Nanodrop基準):116.6mg/kg
【0153】
E199L抗原タンパク質(分子量:46485.20(ただし、2個のglycosylation siteによって4kDa増加);図9aおよび図9b)
(1)タンパク質抽出条件:ニコチアナ・ベンサミアナ葉1kg、タンパク質抽出液2L
(2)タンパク質分離精製:約100mLのタンパク質Aレジンが充填されたカラムで60分間バインディング後、20分間レジンダウン(resin down)
-抽出液:100mM Tris-Cl(pH7.2)、154mM NaCl、0.5%Triton X-100、100mM Sodium sulfite、1.5%PVPP、1mM PMSF(DMSO)
-洗浄液:100mM Tris-Cl(pH7.2)、154mM NaCl、0.5%Triton X-100(-W2)
-溶出液:50mM Sodium citrate(pH3.0)、154mM NaCl
-中和バッファー:0.2N NaOH(pH7.5で中和)
(3)最終タンパク質濃度(Nanodrop基準):1mg/ml
(4)最終収率(Nanodrop基準):70.3mg/kg
【0154】
F317L抗原タンパク質(分子量:62777.73(ただし、3個のglycosylation siteによって6kDa増加);図10aおよび図10b)
(1)タンパク質抽出条件:ニコチアナ・ベンサミアナ葉100gおよびタンパク質抽出液200mL;またはニコチアナ・ベンサミアナ葉1kgおよびタンパク質抽出液2L
(2)タンパク質分離精製:約10mLのタンパク質Aレジンが充填されたカラムで60分間バインディング後、20分間レジンダウン(resin down)
-抽出液:100mM Tris-Cl(pH7.5)、154mM NaCl、0.5%Triton X-100、100mM Sodium sulfite、1.5%PVPP、1mM PMSF(DMSO)
-洗浄液:100mM Tris-Cl(pH7.5)、154mM NaCl、0.5%Triton X-100(-W2)
-溶出液:50mM Sodium citrate(pH3.0)、154mM NaCl
-中和バッファー:0.2N NaOH(pH7.5で中和)
(3)最終タンパク質濃度(Nanodrop基準):1mg/ml
(4)最終収率(Nanodrop基準):14mg/kg
【0155】
実施例3.5種の抗原または9種の抗原ワクチンによるASFウイルス防護効果の確認
前記実施例2で分離および精製されたASFウイルス抗原タンパク質の投与によるASFウイルス感染予防効果および前記ワクチンの安定性を確認するために、下記表1に記載したように、合計18匹の豚を6匹ずつ3グループに分けて防護能試験を行った。具体的には、動物モデルを5種の抗原ワクチン(Lectin、CD2v、p54、p72、およびp30の組み合わせ)処理グループ(G1)、および9種の抗原ワクチン(Lectin、CD2v、p54、p72、p30、p15、p35、E199L、およびF317Lの組み合わせ)処理グループ(G2)、PBS処理対照群グループ(G3)に分けた。p30を除いたASFV抗原タンパク質は、ワクチンにそれぞれ100μgずつ含まれ、p30は、30μgが含まれるようにし、1回接種当たり豚1匹に2mLのワクチンを投与した。
【0156】
【0157】
防護能試験スケジュールは、表2に示した。組換えタンパク質抗原カクテルをSEA1アジュバント(adjuvant)と混合してワクチンを製造し、3週間の間隔で2回筋肉注射を施行し、2次注射後に2週間が経過したとき、各グループ別の2匹にアフリカ豚熱ウイルス(野生型ASFウイルス)を筋肉注射を通じてチャレンジ接種した。グループ別の残りの4匹は、アフリカ豚熱ウイルスを筋肉接種済みの豚と同じ飼育室で管理し、チャレンジ接種済みの豚から放出されるウイルスと接触させて、水平感染(horizonal infection)を誘導した(Sentinel)。チャレンジ接種後、毎日症状を観察し、感染症状(41.1℃以上の高温)が現れた豚は、試験終了時点前に早期安楽死させ、血清を採取した。具体的には、頚静脈(jugular vein)または前大静脈(anterior vena cava)から3~5mLの血清を収得し(18~20G、1 1/2ニードルを使用)、肺、肝、脾臓、腎臓、リンパ節、および膵臓などの感染した組織を分離した。
【0158】
【0159】
チャレンジ接種による豚の体温変化および生存率の結果を
図11に示した。アフリカ豚熱ウイルスを直接チャレンジ接種した各群別の2匹は、いずれも、チャレンジ接種1週間となる時点の前後に死亡した。しかしながら、5種の抗原ワクチンを投与したグループ(G1)の非チャレンジ接種豚は、いずれも、40.5℃未満の体温を示し、2週間全部生存した。一方、9種の抗原ワクチンを投与したグループ(G2)の非チャレンジ接種豚3匹は、高熱に起因して全部11日ぶりに死亡し、対照群(G3)の非チャレンジ接種豚3匹のうち1匹は、症状がなく生存したが、1匹は、高熱に起因して13日目に 死亡し、残りの1匹は、11日目から高熱があったが、実験期間に設定した2週間は生存した。
【0160】
このような結果は、本発明による5種の抗原ワクチン(Lectin、CD2v、p54、p72、およびp30の組み合わせ)が、優れた豚熱ウイルス予防効果があることを示し、特に従来ASFウイルスワクチン抗原として使用されてきたp15、p35、E199L、およびF317L抗原タンパク質をさらに組み合わせることは(すなわち、9種の抗原ワクチン)、かえってワクチンの機能を阻害し、アフリカ豚熱の予防効果を低下させることを示唆する。
【0161】
実施例4.5種の抗原または9種の抗原ワクチン投与後、チャレンジ接種による血中ウイルス(Viremia)レベルの確認
引き続いて、実施例3のチャレンジ接種試験を行った豚の血中ウイルス(Viremia;「ウイルス血症」とも呼ばれる)レベルを測定し、本発明によるワクチンのアフリカ豚熱ウイルス予防効果を確認した。
【0162】
具体的には、血中ウイルスレベルを測定するために、チャレンジ接種後0、3、7、10、および14日が経過した時点に各豚から血清を抽出し、ASFウイルス特異的プライマーおよびプローブを用いてリアルタイムポリメラーゼ連鎖反応(real time-polymerase chain reaction)を行った後、試料別Ct値を比較した。実験に使用したASFウイルス特異的プライマー配列は、下記の通りである:
【0163】
【0164】
その結果、
図12に示されたように、5種の抗原ワクチンを投与した豚(G1)のうちASFウイルスを接触接種(contact challenged)した豚は、接種後7日が経過するまで血中ASFウイルスレベルが非常に低いため、検出されず(UD)、接種後10日となったとき、一部の豚でウイルスが検出されたが、非常に低いレベルであり、14日目には検出されなかった。一方、9種の抗原ワクチンを投与した豚(G2)のうちASFウイルスを接触接種した豚は、接種後7日が経過したときからASFウイルスが検出され、10日が経過したときには、血中ウイルスレベルが増加し、同じ時点の対照群グループに比べて、血中ウイルスレベルがさらに高くなったことが示されたところ、ワクチンを全く投与しないものに比べて、ウイルス予防効果がかえってさらに低下することを確認することができた。また、上述したように、9種の抗原ワクチンを投与した豚は、チャレンジ接種後11日が経過したとき、熱症状が悪化し、事前に安楽死させた。
【0165】
前記結果は、本発明による5種の抗原ワクチン(Lectin、CD2v、p54、p72、およびp30の組み合わせ)が、ASFウイルスの感染および増殖を抑制し、優れた豚熱の予防効果を達成することができることを証明するものであり、特に従来ASFウイルスワクチン抗原に使用されてきたp15、p35、E199L、およびF317L抗原タンパク質をさらに組み合わせることは(すなわち、9種の抗原ワクチン)、かえってワクチンの効果を阻害し、ウイルスの感染および体内増殖を全く予防できないことを示す。
【0166】
実施例5.5種の抗原または9種の抗原ワクチン投与後、抗ASFV抗体のレベルの確認
次に、血清内抗ASFV抗体のレベルを確認するために、ワクチン抗原がコートされたプレートを用いてワクチン接種後に経時的な抗p30抗体の生成程度をすべての個体でモニタリングした(ワクチン接種後0、7、14、21、28、および35日目に実施する)。5種の抗原ワクチンを投与されたグループは、ワクチン接種後21日目から抗p30抗体のレベルが検出され、ワクチン接種後28日および35日目には、ワクチンが投与されたすべての個体において高いレベルの抗p30抗体が検出され、9種の抗原ワクチンを投与されたグループより平均的に高い抗体反応が確認された(
図22)。
【0167】
前記結果は、本願発明による5種および9種の抗原ワクチンがいずれも豚熱ウイルス抗原に対する抗体生成を誘導することができるが、特に5種の抗原ワクチンは、9種の抗原ワクチンに比べて、さらに高いレベルの抗体生成をさらに迅速に誘導できることを示す。
【0168】
以上説明したように、本発明者らは、植物体で発現させるためのアフリカ豚熱ウイルス特異タンパク質を発現するベクターを製作し、前記組換えタンパク質が組み合わせられたASFウイルスワクチンを豚に投与したとき、副作用なくASFウイルスに対する抗体の生成を安定的に誘導されることを確認した。特に、5種の抗原(Lectin、CD2v、p54、p72、およびp30)が組み合わせられた5種のワクチンを投与された豚は、ウイルスに露出した後にも、体重が安定的に増加し、ASFVウイルス血症(viremia)や発熱が観察されず、100%の生存率を示したところ、前記5種の抗原ワクチンが、ASFウイルスの感染および体内増殖を効果的に抑制し、アフリカ豚熱を抑制することができることを確認した。特に、前記5種の抗原ワクチンの抗体生成誘導効果は、9種の抗原ワクチン(Lectin、CD2v、p54、p72、p30、p15、p35、E199L、およびF317L)に比べて優れていることが確認されたところ、これは、抗原タンパク質Lectin、CD2v、p54、p72、およびp30の組み合わせが、従来のワクチンに比べて、優れたアフリカ豚熱の予防効果を達成することができることを意味する。したがって、本発明による5種の抗原ワクチンは、新規のアフリカ豚熱ウイルスワクチン組成物において多様に活用できることが期待される。
【0169】
上述した本発明の説明は例示のためのもので、本発明が属する技術分野において通常の知識を有した者は、本発明の技術的思想や必須的な特徴を変更しなくても他の具体的な形態に容易に変形が可能であることが理解できる。したがって、以上で記述した実施例は、全ての面で例示的なものであり、限定的ではないものと理解すべきである。
【産業上の利用可能性】
【0170】
本発明の組換えアフリカ豚熱ウイルス抗原タンパク質は、植物体でも効果的に発現するだけでなく、高い水溶解性(Water solubility)を有していて、分離および精製が容易であり、また、体内で抗原として作用して、高い免疫原性を示すので、新規のアフリカ豚熱ウイルスワクチン組成物として使用できる。特に、本発明者らは、本発明の抗原タンパク質5種(Lectin、CD2v、p54、p72、およびp30)を含むワクチン組成物が、その他の抗原タンパク質(p15、p35、E199L、F317Lなど)をさらに含むワクチン組成物に比べて、アフリカ豚熱の予防効果にさらに優れていることをチャレンジ接種実験を通じて確認したところ、本発明による組換えベクターおよびワクチン組成物は、畜産業界などにおいて広く活用されることが期待される。
【配列表】
【国際調査報告】