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特表2024-535722コンパニオン・アニマルにおけるがんのスクリーニング
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-02
(54)【発明の名称】コンパニオン・アニマルにおけるがんのスクリーニング
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/48 20060101AFI20240925BHJP
   G01N 33/493 20060101ALI20240925BHJP
   G01N 33/50 20060101ALI20240925BHJP
【FI】
G01N33/48 N
G01N33/493 Z
G01N33/50 R
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024513305
(86)(22)【出願日】2022-08-24
(85)【翻訳文提出日】2024-04-02
(86)【国際出願番号】 US2022041330
(87)【国際公開番号】W WO2023028114
(87)【国際公開日】2023-03-02
(31)【優先権主張番号】63/236,379
(32)【優先日】2021-08-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.iPhone
2.JAVA
3.MATLAB
(71)【出願人】
【識別番号】524070071
【氏名又は名称】オンコテクト インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】ONCOTECT, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100119530
【弁理士】
【氏名又は名称】冨田 和幸
(72)【発明者】
【氏名】チャン ナムゴン
【テーマコード(参考)】
2G045
【Fターム(参考)】
2G045AA16
2G045AA26
2G045AA29
2G045AA30
2G045CB03
2G045CB17
2G045DB07
2G045GC15
2G045JA01
(57)【要約】
カエノラブディティス・エレガンス(Caenorhabditis elegans)(C.エレガンス(C. elegans))の、行動応答、走化性応答、及び/又はニューロン応答、を使用して、コンパニオン・アニマル及びヒトにおける、がんを、スクリーニングするための、及び/又は検出するための、例えば、初期-ステージのがんを、スクリーニングするための、及び/又は検出するための、経済的な且つ非-侵襲的な方法が提供される。C.エレガンスを使用して、コンパニオン・アニマル及びヒトにおける、がんを、例えば、初期-ステージのがんを、試験するための、及び/若しくはスクリーニングするための、及び/又は検出するための、システム及びキット、も提供される。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象におけるがんをスクリーニングする方法であって、
前記方法は、前記対象から得られた生物学的サンプルに対する、線虫又は複数の線虫の、行動応答、走化性応答、及び/又はニューロン応答、を検出するステップを含み、
ここで、前記サンプルに対するポジティブな応答は、前記対象が、がんを有することを、又はがんを有するリスクにあることを、示す、方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、前記線虫又は複数の線虫が、野生型線虫、変異体型線虫、又は遺伝子導入型線虫、である、方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の方法において、前記線虫又は複数の線虫が、カエノラブディティス・エレガンス(Caenorhabditis elegans)(C.エレガンス(C. elegans))である、方法。
【請求項4】
請求項3に記載の方法において、前記C.エレガンス(C. elegans)が、野生型C.エレガンス(C. elegans)、組換え型C.エレガンス(C. elegans)、又は遺伝子導入型C.エレガンス(C. elegans)、である、方法。
【請求項5】
請求項1から4の何れか一項に記載の方法において、ポジティブな走化性応答は、前記生物学的サンプルの方に向かう走化性を含む、方法。
【請求項6】
請求項1から5の何れか一項に記載の方法において、前記生物学的サンプルが、尿である、方法。
【請求項7】
請求項1から6の何れか一項に記載の方法において、前記がんが、血管腫、リンパ腫、骨肉腫、形質細胞腫瘍、並びにマスト細胞腫瘍、移行細胞がん腫(carcinoma)及び/又はメラノーマ、からなる群より選択される、方法。
【請求項8】
対象におけるがんの発症進展に対する治療の効果を決定するための方法であって、
前記方法は、前記対象から得られた生物学的サンプルに対する、線虫又は複数の線虫の、行動応答、走化性応答、及び/又はニューロン応答、を検出するステップを含み、
ここで、前記サンプルに対するポジティブな応答は、前記治療が前記がんを検出不能にしていないことを示す、方法。
【請求項9】
請求項8に記載の方法において、ポジティブな走化性応答は、前記生物学的サンプルの方に向かう走化性を含む、方法。
【請求項10】
請求項1から9の何れか一項に記載の方法において、前記対象が、コンパニオン・アニマル(companion animal)である、方法。
【請求項11】
対象におけるがんを、スクリーニングする及び/又は検出する、方法であって、
前記方法は、(a) 対象から得られた生物学的サンプル、及び(b) 同じ又は異なる供給源由来の少なくとも1つのサンプル、に対する、線虫又は複数の線虫の、行動応答、走化性応答、及び/又はニューロン応答、を検出するステップを含み、
ここで、前記行動応答、前記走化性応答、及び/又は前記ニューロン応答、を検出するために、マイクロ流体アプローチを用い、
前記サンプルに対する所定の応答は、前記対象が、がんを有することを、又はがんを有するリスクにあることを、示す、方法。
【請求項12】
請求項11に記載の方法において、前記線虫が、野生型線虫、変異体型線虫、又は遺伝子導入型線虫、である、方法。
【請求項13】
請求項11又は12に記載の方法において、前記線虫又は複数の線虫が、C.エレガンス(C. elegans)である、方法。
【請求項14】
請求項11から13の何れか一項に記載の方法において、ポジティブな走化性応答は、前記生物学的サンプルの方に向かう走化性を含む、方法。
【請求項15】
請求項10から13の何れか一項に記載の方法において、前記生物学的サンプルが、尿である、方法。
【請求項16】
請求項11から15の何れか一項に記載の方法において、前記生物学的サンプルに対する、線虫の、行動応答、走化性応答、及び/又はニューロン応答、を検出する前に、前記生物学的サンプルを希釈する、方法。
【請求項17】
(i) 対象における、がんの存在及び/若しくはがんの存在のリスク、を決定するため;又は(ii) 対象におけるがんの発症進展に対する治療の効果を決定するためのキットであって、
ここで、前記キットが、
(a) 前記対象由来の生物学的サンプルを含むために受容可能なもの;並びに、
(b) 前記生物学的サンプルに関する指針、及び前記生物学的サンプルに対する、線虫の、行動応答、走化性応答、及び/又はニューロン応答、を決定するための試験から結果を得るためのステップに関する指針、を提供する指示、
を含む、キット。
【請求項18】
請求項17に記載のキットにおいて、前記対象が、コンパニオン・アニマル(companion animal)又はヒト対象、である、キット。
【請求項19】
(i) 対象における、がんの存在及び/若しくはがんの存在のリスク、を決定するため;又は(ii) 対象におけるがんの発症進展に対する治療の効果を決定するための、コンピュータ・システム上、又はコンピュータ・システム上で動作するコンピュータ可読媒体上、で実行される、コンピュータ-実装された方法であって:
前記方法は、
a) 生物学的サンプルに対する、線虫又は複数の線虫の、行動応答、走化性応答、及び/又はニューロン応答、をモニタリングするステップ;並びに、
b) 前記行動応答、前記走化性応答、及び/又は前記ニューロン応答、がポジティブな応答の閾値を超えているかどうかを決定するステップ、
を含み、
ここで、前記走化性応答、又は前記ニューロン応答、がポジティブな応答の閾値を超えている場合、前記対象における、がんの存在及び/又はがんの存在のリスク、を決定する、コンピュータ-実装された方法。
【請求項20】
請求項19に記載のコンピュータ-実装された方法において、前記行動応答、前記走化性応答、又は前記ニューロン応答、がポジティブな応答の閾値を超えているかどうかを決定するステップは、前記行動応答、前記走化性応答、又は前記ニューロン応答、がポジティブな応答の閾値を超えているかどうかを決定するための、人工知能及び/又は機械学習、によって、線虫又は複数の線虫の、前記行動応答、前記走化性応答、又は前記ニューロン応答、を評価すること、を含む、コンピュータ-実装された方法。
【請求項21】
請求項19又は20に記載のコンピュータ-実装された方法において、前記対象において、がんが存在するかどうか、及び/若しくはがんのリスクが存在するかどうか、を決定することが、前記生物学的サンプルに関する、尿検査及びGC/MS分析、を更に含む、コンピュータ-実装された方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
この出願は、2021年8月24日に出願された米国仮出願第63/236,379号に対して優先権を主張し、その内容は、その全体が記載されているかのように、本出願に取り込まれる。
【0002】
[分野]
本開示の主題は、広く、ヒト及び非-ヒト動物(例えば、コンパニオン・アニマル(companion animal)等)におけるがんを、スクリーニングすること及び/又は検出すること、並びに、がんの進行をモニタリングすることの、がんの治療の効果を決定することの、及びがんを治療するのに有用な治療薬剤を同定することの、方法、並びにそのためのキット、に関する。
【背景技術】
【0003】
[背景]
米国には2億以上のコンパニオン・アニマル(companion animal)がいる、そして、それらの中で、がんは最も一般的な死因の1つである。4匹のうち1匹のイヌが、がんを発症し、10歳を超える全イヌのほぼ半数が、がんを発症する。コンパニオン・アニマル(companion animal)におけるがんは治療が困難である。なぜならば、初期-ステージのがんでは、症状(symptom)がほとんど認められないからである。症状(symptom)が明らかになるまでに、前記がんは、通常、治療できなくなるまで進行する。がんを、初期に発見すること及び治療することは、一般に、よりポジティブな医療アウトカムにつながる。しかしながら、生検、超音波検査、及びMRIスクリーニング、の選択肢は、しばしば費用がかかり、侵襲的であり、コンパニオン・アニマル(companion animal)における初期-ステージのがんを検出することに対する障壁を提示する。がんを、それが進行する前に、ルーチンにスクリーニングするための、新規の経済的な且つ非-侵襲的な方法を開発することが急務である。
【0004】
カエノラブディティス・エレガンス(Caenorhabditis elegans) (C.エレガンス(C. elegans))の鋭敏な嗅覚を用いて、ヒトがんをスクリーニングすることに、研究者が成功したという、いくつかの有望な研究があるが、これらの研究からの成果は、まだ臨床的な成功に転換されておらず、近年、注目すべき商業的発展はなされていない。更に、コンパニオン・アニマル(companion animal)のような非-ヒト対象におけるがんをスクリーニングするために、C.エレガンス(C. elegans)の嗅覚を使用することの有効性を調べる研究は、比較的ほとんど行われていない。
【0005】
がんはイヌの主要な死因であるが、がんをスクリーニングするための効果的な方法の数は、不足したままである。現在、PetDx OncoK9試験等の試験が、市場で利用可能である。これらの検査は、イヌに存在する広範囲がんを検出することができる。しかしながら、これらは、血液サンプルの取得を必要とする非-侵襲的な試験であり、獣医クリニックでのみ実施することができる。更に、1試験当たり約$700の費用であり、これらの試験は、しばしば高価であって、多くのイヌ飼い主が、がんの存在をルーチンにスクリーニングするために使用することができない。Cadet BRAF試験は非-侵襲的な試験ではあるが、この試験は、膀胱がん及び前立腺がんの検出に限定される。これらのスクリーニング及び診断試験とは別に、イヌのようなコンパニオン・アニマル(companion animal)におけるがんは、獣医クリニックで行われる超音波及びMRIのような医学的処置によって、最もしばしば、検出される。これらの処置は、一般に非-侵襲的であり、がんのタイプ及び位置を診断することを可能にする。しかしながら、これらの処置は、高価であり、そのため、がんの徴候がすでに明らかである場合にのみ実施されることが多い。イヌのようなコンパニオン・アニマル(companion animal)におけるがんを初期に検出すれば、成功する可能性がより高い治療選択肢につなげることができる。従って、獣医学分野では、コンパニオン・アニマル(companion animal)に見られる多くの様々なタイプのありふれたがんに対する、低-コストの、非-侵襲的なスクリーニング試験が必要とされている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
[概要]
本発明のコンセプトは、がんをスクリーニングするための及び/又は検出するための、非-侵襲的な、方法、キット、システム、及び/又は試験、を提供する。いくつかの態様によれば、本発明は、対象における初期-ステージのがんを、スクリーニングするための及び/又は検出するための、方法、キット、システム、及び/又は試験、を提供し、ここで、対象としては、ヒト、及び非-ヒト動物(例えば、コンパニオン・アニマル(companion animal)等、例えば、イヌ)、が挙げられる。また、本発明のコンセプトは、がんの発症進展をモニタリングする方法を、並びにがんを治療するための治療薬剤の試験を、提供する。本発明のコンセプトに関する、非-侵襲的な、方法及び/又は試験は、Namgong et al. (2022) Front. Vet. Sci. 9, 932474(本出願に参照により取り込まれる)に記載されている、方法の及び/又は試験の態様を含む。
【0007】
従って、本発明のコンセプトのいくつかの態様では、対象におけるがんを、スクリーニングする及び/又は検出する、方法が提供され、該方法は、コンパニオン・アニマル(companion animal)から得られた生物学的サンプルに対する、線虫の、行動応答、走化性応答、及び/又はニューロン応答、を検出するステップ、を含み、ここで、前記サンプルに対するポジティブな応答は、前記対象が、がんを有することを、又はがんを有するリスクにあることを、示す。本発明のコンセプトのいくつかの態様では、前記対象は、イヌのようなコンパニオン・アニマル(companion animal)であってもよい。本発明のコンセプトのいくつかの態様では、前記線虫は、C.エレガンス(C. elegans)であってもよい。
【0008】
本発明のコンセプトの他の態様によれば、対象におけるがんに対する治療の効果を、スクリーニングする及び/又は決定する、方法が提供され、該方法は、対象から得られた生物学的サンプルに対する、線虫又は複数の線虫の、行動応答、走化性応答、及び/又はニューロン応答、を検出するステップを含み、ここで、前記サンプルに対するポジティブな応答は、前記治療が前記がんを検出不能にしていないことを示す。
【0009】
本発明のコンセプトの更なる態様によれば、対象におけるがんを、スクリーニングする及び/又は検出する、方法が提供され、該方法は、(a) 対象から得られた生物学的サンプル、及び(b) 同じ又は異なる供給源由来の少なくとも1つのサンプル、に対する、線虫又は複数の線虫の、行動応答、走化性応答、及び/又はニューロン応答、を検出するステップを含み、ここで、前記走化性応答を検出するために、マイクロ流体アプローチを用い、前記サンプルに対する所定の応答は、前記対象が、がんを有することを、又はがんを有するリスクにあることを、示す。
【0010】
本発明のコンセプトの更なる態様によれば、対象における、がんの存在及び/若しくはがんの存在のリスク、を決定するための;又は対象におけるがんの発症進展に対する治療の効果を決定するための、キットが提供され、ここで、該キットは、前記対象由来の生物学的サンプルを含むために受容可能なもの;並びに、前記生物学的サンプルに関する指針、及び前記生物学的サンプルに対する、線虫の、行動応答、走化性応答、及び/又はニューロン応答、を決定するための試験から結果を得るためのステップに関する指針、を提供する指示、を含む。
【0011】
本発明のコンセプトの更なる態様によれば、(i) 対象における、がんの存在及び/若しくはがんの存在のリスク、を決定するため;又は(ii) 対象におけるがんの発症進展に対する治療の効果を決定するための、コンピュータ・システム上、又はコンピュータ・システム上で動作するコンピュータ可読媒体上、で実行される、コンピュータ-実装された方法が提供され、該方法は、生物学的サンプルに対する、線虫又は複数の線虫の、行動応答、走化性応答、又はニューロン応答、をモニタリングするステップ;並びに、前記行動応答、前記走化性応答、又は前記ニューロン応答、がポジティブな応答の閾値を超えているかどうかを決定するステップを含み、ここで、前記走化性応答、又は前記ニューロン応答、がポジティブな応答の閾値を超えている場合、前記対象における、がんの存在を決定する。いくつかの態様では、前記行動応答、前記走化性応答、及び/又は前記ニューロン応答、がポジティブな応答の閾値を超えているかどうかを決定するステップは、人工知能及び/又は機械学習、を使用する解析によって、線虫又は複数の線虫の、前記行動応答、前記走化性応答、又は前記ニューロン応答、を評価すること、を含む。
【0012】
[図面の簡単な説明]
このように、本開示の主題を大まかに説明してきたが、ここで、必ずしも一定の縮尺で描かれていない添付の図面について言及する:
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、イヌがん獣患に由来する尿の方に向かうC.エレガンス(C. elegans)の走化性を示す。ここでは、2つの異なった走化性アッセイ・プレートのイメージを示し、1つはがんが無い尿サンプル(左側)であり、1つはがん細胞有りの尿サンプル(右側)である。
図2図2は、Namgong et al. (2022) Front. Vet. Sci. 9, 932474、からの、オン-プレートの動物がん検出(on-plate Cancer Detection (A.C.D.))試験の概要を示す。
図3図3は、前記A.C.D.試験を実施した、8件のがんサンプル及び14件の非-がんサンプルについてプロットした、平均CIを示す(パネルA)。がんサンプルの平均CIが0.099±0.038であるのに対し、非-がんサンプルの平均CIは-0.006±0.032である(p=0.0002)。赤線は、中程度から高いがんリスクの分類閾値を示す。**P<0.01 *** p<0.001(パネルB)。がんリスクのレベルを、以下の範囲に設定した:低いリスク(< ~0.038)、及び中程度から高いリスク(> ~0.038)。
図4図4は、本発明のコンセプトの診断試験によって提供される、例示的ながんリスク評価尺度を提供する。
図5図5は、尿の臭気物質刺激に対するAWC応答を検出するための、オン-チップ試験のプラットフォームに関する、縮小した設計を示す。線虫を、単一チャネルから、ロードする及びアンロードする。一方で、それぞれのサンプルを、別々のチャンバーの中に供給する。個々の線虫のニューロン応答を、イメージング・チャンバー内で記録する。刺激出口上には多孔性バリアがあり、アッセイ中に線虫がチャンバーから出て行くことを防ぐ。
図6図6は、本発明のコンセプトの例示的なシステムによって、含まれる構成要素、及び実施される解析、を図示するフローチャートを示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[詳細な説明]
本開示の主題を、添付の実施図面を参照しながら、本開示の主題の全ての実施形態というわけではないが、以下に、より完全に説明する。実際、前述の説明及び関連する図面において提示される教示の利益を有する本開示の主題に関連する当業者は、本出願に記載される本開示の主題の、多くの改変及び他の実施形態を、思い付くであろう。従って、本開示の主題は、開示された具体的な実施形態に限定されるべきではなく、また、そうした改変及び他の実施形態が、添付の特許請求の範囲の範囲内に含まれることが意図されることを、理解されたい。
【0015】
長年にわたる特許法の慣習に従い、用語「a」、「an」、及び「the」は、特許請求の範囲を含む本出願において使用される場合、「1つ以上(one or more)」を指す。従って、例えば、「対象(a subject)」への言及は、文脈が明らかに反対(例えば、複数の対象(a plurality of subjects))でない限り、複数の対象(a plurality of subjects)等を含む。例として、「要素(an element)」は、少なくとも1つの要素を意味し、2つ以上の要素を含むことがある。用語「及び/又は(and/or)」は、関連するリスト項目の1つ以上の、任意の及び全ての組み合わせを含み、「/」と略すことがある。本出願における値の範囲を記載することは単に、その範囲内に入るそれぞれの別々の値を、個々に参照する簡潔な方法としての役割を果たすことを意図している。本出願に別段の指示がない限り、各個々の値は、あたかも本出願に個々に記載されているかのように、本明細書に取り込まれる。本出願に記載の全ての方法は、本出願に別段の指示がない限り、又は文脈によって明らかに矛盾しない限り、任意の好適な順序で行うことができる。本出願において、ある特定の実施形態に関して提供される、任意の及び全ての、例の又は例示的な言語(例えば、「など(such as)」)の使用は、単に本出願をより明瞭にすることを意図しており、別段に特許請求される本出願の範囲を限定するものではない。「のうちの少なくとも1つ(at least one of)」等の表現は、要素のリストに先行する場合、要素のリスト全体を改変し、リストの個々の要素を改変しない。
【0016】
本明細書及び本特許請求の範囲を通して、用語「含む(comprise)」、「含む(comprises)」、及び「含む(comprising)」は、文脈が別段を求める場合を除き、非-排他的な意味で使用される。同様に、用語「含む(include)」及びその文法的バリアントは、非-限定的であること、又は「オープンな(open)」用語であることが意図され、従って、リストとして項目を記載することは、リスト化された項目に、置換され得る又は追加され得る、他の同様の項目を排除するものではない(例えば、用語「含む(including)」は「含むが、限定されない(including but not limited to)」と解釈されるべきであり、用語「有する(having)」は「少なくとも有する(having at least)」と解釈されるべきであり、用語「含む(includes)」は「含むが、限定されない(includes but is not limited to)」と解釈されるべきである、等)。
【0017】
用語「含む(comprise)」は、本出願で使用される場合、表現「から本質的になる(consist essentially of)」、及び/又は「からなる(consist of)」も、包含し、また、いくつかの実施形態では、具体的に指す。従って、表現「含む(comprise)」はまた、実施形態(具体的にリスト化された要素を「含む」ことが特許請求された実施形態が、更なる要素を含まない実施形態、並びに、具体的にリスト化された要素を「含む」ことが特許請求された実施形態が、更なる要素を、包含することがある、及び/若しくは包含する、実施形態、又は、特許請求される実施形態の、基本的な、及び新規な、特徴に、実質的に影響を及ぼさない更なる要素を、包含することがある、及び/若しくは包含する、実施形態)を指すこともある。例えば、特許請求されることは、例えば、具体的にリスト化された要素を「含む(comprising)」、方法、キット、システム等は、例えば、「からなる(consisting of)」方法、キット、システム等(即ち、ここで、特許請求されることは、いかなる更なる要素も包含しない)、及び、例えば、「から本質的になる(consisting essentially of)」方法、キット、システム等(即ち、ここで、特許請求されることは、特許請求されることの、基本的な、及び新規な、特徴に、実質的に影響を及ぼさない更なる要素を含むことがある)、も包含する。同様に、他のオープンな用語(含む(include)、含む(including)、有する(have)、有する(having)、等)は、限定されるものではないが、具体的にリスト化された要素を、指すことがある、及び包含することがある(含む(comprise)、含む(comprising)、等)、いかなる更なる要素も含まないで、具体的にリスト化された要素のみを包含する(からなる(consists of)、からなる(consisting of)、等)、並びに、特許請求されるとして記載された、基本的な、及び新規な、特徴に、実質的に影響を及ぼさない更なる要素と共に、具体的にリスト化された要素を包含する(から本質的になる(consists essentially of,))、から本質的になる(consisting essentially of,)、等)、ということが理解されよう。
【0018】
略語「例えば(e.g.)」は、ラテン語のexempli gratiaに由来し、非-限定的な例を示すために本出願では使用される。従って、略語「例えば(e.g.)」は、用語「例えば(for example)」と同義である。本明細書中の言語は、本出願の実施に不可欠な任意の特許請求されていない要素を示すものと解釈されるべきではない。
【0019】
用語「約(about)」は、値に言及する場合、特定の量からの、いくつかの実施形態では±100%、いくつかの実施形態では±50%、いくつかの実施形態では±20%、いくつかの実施形態では±15%、いくつかの実施形態では±10%、いくつかの実施形態では±5%、±4%、±3%、又は±2%、いくつかの実施形態では±1%、いくつかの実施形態では±0.5%、及びいくつかの実施形態では±0.1%、の変動を包含することを意味することがある。そのような変動は、開示された方法を実施するために適切である、又は開示された組成物を使用するために適切である。
【0020】
更に、用語「約(about)」は、1つ以上の数又は数値範囲に関連して使用される場合、範囲内の全ての数を含む全てのそのような数を指すと理解されるべきであり、記載された数値の上及び下の境界を拡張することによってその範囲を改変する。端点による数値範囲の記載は、その範囲内に包含される全ての数(例えば、全部の整数、その分率を含む)(例えば、1から5との記載は、1、2、3、4、及び5、並びにその分率、例えば、1.5、2.25、3.75、4.1などを含む)、並びにその範囲内の任意の範囲を含む。
【0021】
疾患/障害(例えば、がん等)を「スクリーニングする(screening)」又は「スクリーニングする(screening for)」という用語は、本出願で使用される場合、例えば、異常/疾患/障害(例えば、がん等)について、症状(symptom)を伴うか又は伴わないかのいずれかで、患者/対象のルーチンな試験を含むことがある。前記スクリーニングによって、前記対象における異常/疾患/障害(例えば、がん等)の存在の、潜在性/可能性、が示される場合、更なる試験が前記患者/対象について含まれてもよい。用語「診断的な(diagnostic)」、「診断する(diagnosing)」、又は「診断する(diagnosis for)」としては、本出願で使用する場合、対象/患者が有することがある症状(symptom)を検査するための試験、又は前記対象における異常/疾患/障害の存在を、スクリーニングするステップ、及び/若しくは、検出するステップ、を通して検出され得る異常/疾患/障害の潜在的存在を検査するための試験、が含まれる。
【0022】
本発明のコンセプトは、線虫、即ちカエノラブディティス・エレガンス(Caenorhabditis elegans)(又はC.エレガンス(C. elegans))の使用に部分的に依存する。原始生物として、C.エレガンス(C. elegans)は、より複雑な動物における神経発生を検討するためにしばしば使用される。そのゲノムは、その単純さのために、最初に配列決定された。本来、C.エレガンス(C. elegans)は土壌中に生息する。目も耳もないので、C.エレガンス(C. elegans)は、その環境をナビゲートし、食物を検出するために、匂いに頼る。
【0023】
本発明のコンセプトのいくつかの実施形態では、対象(例えば、コンパニオン・アニマル(companion animal)等)におけるがんを、スクリーニングする及び/又は検出する、方法を提供する。前記方法は、対象(例えば、コンパニオン・アニマル(companion animal)等)から得られた生物学的サンプルに対する、1匹の線虫の、行動応答、走化性応答、及び/若しくはニューロン応答、又は、2匹以上の線虫の、行動応答、走化性応答、及び/若しくはニューロン応答(例えば、複数の線虫に対する応答)、を含み、ここで、前記サンプルに対するポジティブな応答は、前記対象が、がんを有することを、又はがんを有するリスクにあることを、示す。本発明のコンセプトのいくつかの実施形態では、がんを、スクリーニングする及び/又は検出する、方法は、対象を治療する方法に含まれ、ここで、前記対象は、本出願に記載される、がんを、スクリーニングする及び/又は検出する、方法によって、がんを有すると決定される場合、又はがんを有するリスクにあると決定される場合、がんについて治療を受ける。いくつかの実施形態では、がんを、スクリーニングすること及び/又は検出すること、としては、前記がんを、初期に検出すること、及び/又は初期に診断すること(ダウンステージング(downstaging))、例えば、転移前にがんを検出すること、症状(symptom)発症時に又はその直後にがんを検出すること、浸潤前のがんを検出すること、及び/又は前記対象における、異常な/前がん性の、細胞を検出すること、が挙げられる。
【0024】
本出願で使用される場合、サンプルに対する、例えば、線虫又は複数の線虫の、「ポジティブな応答」又は「ポジティブな走化性応答」は、前記線虫が、サンプル「に興味がある」及び/又は「に近づく」場合、対象が、がんを有することを、又はがんを有するリスクにあることを、示す、と理解することができる。一方で、サンプルに対する、例えば、線虫又は複数の線虫の、「ネガティブな応答」又は「ネガティブな走化性応答」は、前記線虫が、サンプル「に興味がない」及び/又は「から遠ざかる/に近づかない」場合、対象が、がんを有さないことを、又はがんを有するリスクにないことを、示す、と理解することができる。従って、走化性応答をインディケーターとして使用する場合、ポジティブな応答は、線虫及び/又は複数の線虫による、前記サンプルの方に向かう走化性、及び/又は、前記サンプルに対する走化性の閾値レベルを超える走化性応答、を含むことがあり、また、ネガティブな応答は、線虫及び/又は複数の線虫による、前記サンプルから遠ざかる走化性、前記サンプルの方に向かう走化性を欠くこと、及び/又は前記サンプルに対する応答の閾値レベルを超えない走化性応答、を含むことがある。同様に、ニューロン活動/ニューロン応答がインディケーターとして使用される実施形態では、ニューロン応答/活動の閾値レベルを超えるニューロン活動/応答の存在は、線虫及び/又は複数の線虫による、ポジティブな応答であると理解することができる一方、ニューロン活働の欠如又は活動の閾値レベルを下回るニューロン活働の存在は、線虫及び/又は複数の線虫による、ネガティブな応答であると理解することができる。
【0025】
2匹以上の線虫(例えば、複数の線虫)が、走化性応答を又はニューロン応答を決定する際に使用される実施形態では、使用される線虫の数は特に限定されない。使用される線虫の数は、例えば、約2、3、4、5、6、7、8、9、約10、約15、約20、約25、若しくは約30匹の線虫、若しくは約2から30匹の線虫、であることがあり、又は更に約30匹を超える線虫、例えば、約40匹の線虫、約50匹の線虫、約60匹の線虫、約70匹の線虫、約80匹の線虫、約90匹の線虫、若しくは約100匹の線虫が、走化性応答を又はニューロン応答を決定する際に使用されることがある。前記サンプルに対する、走化性を及び/又はニューロン応答を決定する際における、2匹以上の線虫の使用、並びに/又はほぼ同じ大きさの及び/若しくはほぼ同じ齢の2匹以上の線虫の使用は、本発明のコンセプトの方法によって決定される、偽ポジティブな及び/又は偽ネガティブな、反応の数を/結果の数を、減少させるのに有用であることがある。いくつかの実施形態では、データ取得は、Namgong et al. (2022) Front. Vet. Sci. 9, 932474に記載されているような条件に従って、試験を破棄すること(discarding)を含むことがある。
【0026】
本出願で使用される場合、本発明のコンセプトの対象は、ヒト及び非-ヒト動物を含む。ヒトは、限定されるものではないが、女性、男性及びトランスジェンダーの個人を含む、任意の性別又は性別のアイデンティティ、であることがある。ヒト対象は、任意の齢(例えば、12ヶ月未満から100歳を超える等、例えば、新生児、乳児、幼児、青年、10代、成人、及び老人等)であることがある。更に、ヒト対象は、任意の人種又は民族(例えば、限定されるものではないが、白人、アフリカ系アメリカ人、アフリカ人、アジア人、ヒスパニック人、南アジア人等)、並びに複合的な/混合的なバックグラウンド、であることがある。
【0027】
非-ヒト動物としては、例えば、哺乳動物、例えば、イヌ、ネコ、ウシ、ヤギ、ウマ、ヒツジ、ブタ、げっ歯類(例えば、ラット及びマウス)、ウサギ、及び霊長類(例えば、非-ヒト霊長類等)等、が挙げられる。いくつかの実施形態では、非-ヒト動物としては、トリが挙げられる。非-ヒト動物はまた、獣医学、治療、又は医薬品開発の目的のための、家畜化された動物、コンパニオン・アニマル(companion animal)、及び/又は野生動物、であることもある。「家畜化された動物(Domesticated animal)」は、本出願で使用される場合、任意の環境又は民族的文化の中で、家畜化して慣習的に維持される任意の種、例えば、限定されるものではないが、ウシ、水牛、ラクダ、ヒツジ、ヤギ、ウマ、家禽、ブタ及びラマ、を指す。いくつかの実施形態では、前記動物は、コンパニオン・アニマル(companion animal)である。「コンパニオン・アニマル(companion animal)」は、本出願で使用する場合、ペットとして、又は援助及び/若しくは娯楽のために、並びに典型的には食料生産のためにではなく、ヒトによって飼育される動物種を指す。コンパニオン・アニマル(Companion animal)としては、限定されるものではないが、動物(例えば、イヌ、ネコ、ウマ、ヤギ、ウサギ、ブタ、フェレット、モルモット、ハムスター、スナネズミ又はトリ等)が挙げられる。本発明のコンセプトの実施形態としては、対象/動物において、いくつかの実施形態では、コンパニオン・アニマル(Companion animal)において、がんをスクリーニングするための、及び/又はがんを検出するための、いくつかの実施形態では、初期がんを検出するための、方法、システム、及び/又はキット、が挙げられる、並びに、本発明のコンセプトの、方法、システム、及び/又はキット、を使用して、がんを有するとして決定された、対象/動物の治療、が挙げられる。
【0028】
いくつかの実施形態によれば、前記対象はまた、治療を必要とする症状(例えば、がん)、又はその症状に関連する1種以上の合併症、を以前に診断されている対象、又は、に罹患しているとして、若しくは、を有するとして、同定されている対象、並びに、任意選択的に、前記症状のための、又は前記症状に関連した1種以上の合併症のための、治療を既に受けたことがある対象、であることもある。或いは、前記対象はまた、症状又は前記症状に関連した1種以上の合併症、を有するとして、以前に診断されたことがない対象であることもある。例えば、前記対象は、症状若しくは前記症状に関連した1種以上の合併症、の1種以上のリスク因子を示す対象、又はリスク因子を示さない対象、であることがある。特定の症状の治療を「必要とする対象」は、その症状を有することが疑われる対象、その症状を有するとして診断された対象、その特定の症状について、治療を受けている又は既に治療されている、対象、及びその特定の症状について治療されていない場合、その特定の症状を考えられる、又はその特定の症状を発症進展するリスクにある、対象、であることがある。
【0029】
用語「サンプル」又は「生物学的サンプル」は、本出願で使用する場合、本発明のコンセプトの方法で使用するための、対象又は複数の対象に由来する、サンプルを意味することがある。例示的な生物学的サンプルとしては、限定されるものではないが、組織、器官、細胞及び身体の流体、が挙げられる。いくつかの実施形態では、前記サンプルは、身体の流体、例えば、尿、血液(全血又はその任意の由来物、血清、血漿、凝固血液、乾燥血液、等)、粘液、唾液、涙等、である。用語「サンプル」はまた、未治療の又は治療前の(若しくは処理前の)生物学的サンプルも含む。いくつかの実施形態では、サンプルは、前記対象由来の1つ以上の細胞を含むことがある。
【0030】
いくつかの実施形態では、前記治療前の又は処理前のサンプルは、サンプル/生物学的サンプルに対する、線虫の走化性応答を決定する前に、希釈剤/希釈液、例えば、水、バッファー、食塩水、例えば、通常の食塩水及び/若しくは生理食塩水、又は、臭気-中性コントロール・バッファー、例えば、CTXバッファー(5 mM KH2PO4/K2HPO4pH 6, 1 mM CaCl2 及び 1 mM MgSO4)、等に、前記サンプルを希釈することを含むことがある。希釈係数は特に限定されず、前記線虫の走化性応答を決定する前に希釈するためのサンプルについて、約 2:1から1:10,000,000,000, 例えば, 約 2:1, 約 1:1, 約 1:1.5, 約 1:2, 約 1:3, 約 1:4, 約 1:5, 約 1:6, 約 1:7, 約 1:8, 約 1:9, 約 1:10, 約 1:15, 約 1:20, 約 1:25, 約 1:30, 約 1:40, 約 1:50, 約 1:75, 約 1:100, 約 1:200, 約 1:500, 約 1:1,000, 約 1:5,000, 約 1:10,000, 約 1:100,000 (105), 約 1:1,000,000 (106), 約 1:10,000,000 (107), 約 1:100,000,000 (108), 約 1:1,000,000,000 (109), 又は、約 1:10,000,000,000 (1010)、の範囲であることがある。いくつかの実施形態では、希釈の比率の範囲は、約1:1から1:109、約1:1から1:108、約1:1から1:107、約1:1から1:106、約1:1から1:105、約1:1から1:104、約1:1から1:103、又は約1:1から1:102 であることがある。いくつかの実施形態では、希釈係数の範囲は、限定することなく、上に列挙したより具体的な希釈の任意の組合せの間であることがある。
【0031】
本発明のコンセプトの、方法、システム、キット、及び/又は試験、に使用される線虫は、野生型線虫、変異体型線虫、組換え型線虫、及び/又は遺伝子導入型線虫、であることがある。いくつかの実施形態では、前記線虫は、カエノラブディティス・エレガンス(Caenorhabditis elegans)(C.エレガンス(C. elegans))である。いくつかの実施形態では、本発明のコンセプトの、方法、システム、キット、及び/又は試験、に使用される線虫は、例えば、Porta-de-la-Riva et al. J. Vis. Exp. (2012) 64, e4019(本出願に参照により取り込まれる)に記載されているように、サイズ及び/又は発生のステージ、に基づいて同期していることがある。いくつかの実施形態では、本発明のコンセプトにおいて使用される、線虫又は複数の線虫の、発生ステージは、例えば、若齢成虫の、非-妊娠の(非-卵産の)C.エレガンス(C. elegans)である。当業者のある者は、若齢成虫の、非-妊娠のC.エレガンス(C. elegans)の典型的なサイズは、長さが約1から1.2 mmであり、典型的には透明であり、及び/又は顕微鏡で観察できる、ことを理解するであろう。本発明のコンセプトによる方法において使用される線虫(例えば、C.エレガンス(C. elegans))は、鋭敏な嗅覚を有する-イヌよりも、少なくとも1.5倍、より多いタイプの嗅覚レセプターを有する。いくつかの実施形態では、使用される線虫は、変異体型C.エレガンス(C. elegans)、組換え型C.エレガンス(C. elegans)、及び/又は遺伝子導入型C.エレガンス(C. elegans)、例えば、米国特許出願公開第2017/0016906号(本出願に参照により取り込まれる)に記載されるような遺伝子導入型C.エレガンス(C. elegans)、である。
【0032】
線虫(例えば、C.エレガンス(C. elegans))は、例えば、それが誘引される臭気物質/化学物質を検出すると、化学的臭気物質に合わせて、走化性として知られるプロセスによって、その臭気物質の方に向かって移動することが、当業者のある者によって理解されるであろう。この鋭敏な嗅覚によって、C.エレガンス(C. elegans)は、動物の尿中の、別個の揮発性有機化合物(volatile organic compound (VOC))、又は揮発性有機代謝物(volatile organic metabolite (VOM))、のプロファイルを検出することが可能になる。「ボラティローム(volatilome)」とは、生体の細胞から出される物の中に存在するVOC/VOMのコレクションである。また、がん細胞は、非-がん患者の臭気と区別可能な臭気を生成するVOCを放出する、ということも、当業者のある者によって理解されるのであろう。従って、C.エレガンス(C. elegans)の鋭敏な嗅覚を利用することにより、がん細胞に特徴的なVOCの検出を、ひいては対象におけるがんの存在の検出を、がんを有さない対象に由来する生物学的サンプルに対するC.エレガンス(C. elegans)の行動/走化性応答、及び/又はニューロン応答を対照とした、がんを有する/がん細胞が存在する、対象に由来する生物学的サンプルに対する線虫の行動応答(例えば、走化性応答)、及び/又はニューロン応答、の間の差に基づいて、行うことができる。
【0033】
本発明のコンセプトの、方法、システム、キット、及び/又は試験、によって検出されるがん細胞の特徴である、VOC/VOM又はVOCs/VOMsは、特に限定されない。そして、検出されたVOC/VOM又はVOCs/VOMsは、がん細胞の特徴として決定されたVOC/VOM又はVOCs/VOMsであることがある、並びに、いくつかの実施形態では、例えば、限定されるものではないが、例えば、Opitz and Herbarth. (2018) J. Otolaryngol. - Head Neck Surg. 47, 1-13(本出願に参照により取り込まれる)に記載された等、線虫又は複数の線虫が、ポジティブな、行動応答、走化性応答、及び/又はニューロン応答、を示すVOC/VOM又はVOCs/VOMsであることがある、ということは当業者によって理解されるであろう。例示的なVOCs/VOMsとしては、限定されるものではないが、例えば、ジアセチル、プロピル酢酸塩、ブチル酢酸塩、ヘキシル酢酸塩、イソアミル・アルコール、イソプロパノール・ピラジン、2-メチルピラジン、2,4,5-トリメチル・チアゾール、2,3-ペンタジオン、1,2,4-トリメチルベンゼン、1,4-キシレン、1-メチル-4-プロパン-2-イルベンゼン、及び2-エチルヘキサン-1-オール等、が挙げられる。
【0034】
本発明のコンセプトの方法で使用される線虫は、雄性の線虫又は雌性の線虫のいずれかを含むことがある。しかしながら、いくつかの実施形態では、前記線虫は、自己増殖することができる雌雄同体であることがある。本発明のコンセプトの方法で使用される線虫は、例えば、ペトリ皿で容易に繁殖することがあり、大腸菌を食べることがある。親線虫をペトリ皿の中に移すと、幼虫が生まれ、典型的には約4日で成虫に成長することができるが、このとき、線虫の数は、約50から100倍増加する。線虫を繁殖させることには、特別な操作を必要とせず、雌雄同体線虫を用いる場合には、交配は不要である。線虫(例えば、C.エレガンス(C. elegans))を繁殖させるための基本的な要件は最小限であり、20℃のインキュベーター及び実体顕微鏡が挙げられ、従って、本発明のコンセプトの方法に必要な線虫を、わずかなコストで、短時間で、確立することができる。
【0035】
本発明のコンセプトの方法において使用することがある例示的な野生型線虫は、C.エレガンス(C. elegans)Bristol N2 であることがある、これは、いくつかの実施形態では、このC.エレガンス(C. elegans)株の雌雄同体を含む。それにもかかわらず、C.エレガンス(C. elegans)の変異体株を、本発明のコンセプトの方法において使用することがある(例えば、ミネソタ大学のカエノラブディティス遺伝子センター(Caenorhabditis Genetic Center (CGC)) (<cgc.umn.edu>)を通して入手可能であることがある、及び/又は、例えば、限定されない任意の他の研究室から、厚意として入手可能であることがある、任意の適当な変異体)。
【0036】
本発明のコンセプトのいくつかの実施形態では、上述した野生型線虫及び変異体型線虫に加えて、遺伝子導入型線虫(即ち、外来遺伝子が導入された線虫)も、本発明のコンセプトの方法において使用することがある。例示的な遺伝子導入型線虫としては、限定されるものではないが、例えば:インディケーター遺伝子/レポーター遺伝子を嗅覚ニューロンのうちの1つ、例えば、AWC及び/又はAWAニューロン、に導入した線虫;がんを、嗅覚すること/感知すること、に関連するレセプターに関連する遺伝子の、発現又は機能、が阻害されている線虫;がんに特徴的なVOCを、嗅覚すること/感知すること、に関連するレセプターに関連する遺伝子が過剰発現している線虫;並びに、前記線虫の、行動応答、例えば、走化性応答、及び/又は化学的/ニューロン応答、の解析を促進する蛍光レポーター・タンパク質を発現している線虫、が挙げられる。
【0037】
線虫又は複数の線虫(例えば、C.エレガンス(C. elegans)の野生型、変異体型、及び/又は遺伝子導入型株等)の行動の解析、例えば、化学感覚、例えば、走化性、化学忌避(chemoaversion)行動等、の解析を、例えば、WormBook <www.wormbook.org/chapters/www_behavior/behavior.htm>に記載の通りに行うことがある(本出願に参照により取り込まれる)。線虫又は複数の線虫の、ニューロン応答の解析を、例えば、線虫又は複数の線虫の、ニューロンにおける、カルシウム濃度及び/又はカルシウム応答、の変化を、測定するステップ/モニタリングするステップ、によって行うことがある。
【0038】
いくつかの実施形態では、本発明のコンセプトの、方法、システム、及び/又はキット、を用いた、がんを、スクリーニングするステップ及び/又は検出するステップは、遺伝子導入型線虫の使用を含むことがあり、ここで、ニューロン中のカルシウム濃度を、測定すること/モニタリングすること、ができるインディケーター遺伝子が、前記線虫の嗅覚ニューロン、例えば、AWC及び/又はAWA、の中で発現し、使用され、また、カルシウム濃度の変化(ニューロン応答)を、インディケーターとして、測定すること/モニタリングすること、により、がんの存在を検出することがあり、例えば、Chronis et al. (2007) Nat. Methods 4, 727-731、及びLarsch et al. (2013) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 110, E4266-E4273、に記載されており(本出願に参照により取り込まれる)、また、いくつかの実施形態では、遺伝子導入型線虫を使用し、例えば、米国特許出願公開第2017/0016906に記載されている。
【0039】
本発明のコンセプトのいくつかの実施形態によれば、本出願に記載される本発明のコンセプトの、方法、システム、キット、及び/又は試験、において使用される、線虫又は複数の線虫が、示すポジティブな応答は、生物学的サンプルの方に向かう、線虫又は複数の線虫の走化性を含む、走化性応答である。
【0040】
本発明のコンセプトの、方法、システム、キット、及び/又は試験、によって、対象(例えば、コンパニオン・アニマル(companion animal)等)において、スクリーニングされた及び/又は検出された、がんには、全てのがん及び腫瘍(例えば、限定されるものではないが、乳がん、肝臓がん、腎臓がん(kidney cancer)、膵臓がん、甲状腺がん、肺がん、食道がん(esophageal cancer)、頭頸部がん、結腸がん、直腸がん、結腸直腸がん、胃がん(gastric cancer)、腸がん、消化管がん、子宮頸がん、子宮がん(uterine cancer)、卵巣がん、膀胱がん、前立腺がん、皮膚がん、脳がん、及びそれらの何れかの任意の転移がん、を含む。いくつかの実施形態では、前記がんは、コンパニオン・アニマル(companion animal)における、血管腫、リンパ腫、骨肉腫、形質細胞腫瘍、及びマスト細胞腫瘍、移行細胞がん腫(carcinoma)、扁平上皮がん腫(squamous cell carcinoma)、 線維肉腫、乳房(乳房)がん腫(carcinoma)、及び/又はメラノーマ、即ち、コンパニオン・アニマル(companion animal)(例えば、限定されるものではないが、イヌ及び/又はネコ等)を苦しめる一般的ながん、である。
【0041】
本発明のコンセプトの実施形態は、対象(例えば、コンパニオン・アニマル(companion animal)等)におけるがんの発症進展に対する治療の効果を決定するための方法を更に提供する。前記方法は、コンパニオン・アニマル(companion animal)から得られた生物学的サンプルに対する、線虫の走化性応答を検出するステップを含み、ここで、前記サンプルに対するポジティブな応答は、前記治療が前記がんを検出不能にしていないことを示す。より具体的には、この方法によって、動物介護者が、がんを有する動物に処方されている治療が、前記がんを治療する効果を有しているかどうかを評価すること、が可能になる。同様に、前記方法を用いて、特定の化合物が、動物におけるがんの治療に有用かどうかを決定することができる。
【0042】
本発明のコンセプトの実施形態はまた、動物におけるがんの存在を決定するための、並びに動物におけるがんの発症進展に対する治療の効果を決定するための、並びに特定の化合物が、動物におけるがんの治療に有用かどうかを決定するための、キットも提供する。
【0043】
本発明のコンセプトの実施形態は、偽ポジティブな及び/又は偽ネガティブなケースの発生を更に減少させる。特に、走化性応答のためのアッセイを、少なくとも4回、反復した際における、走化性応答又は走化性インデックス、を決定して、平均走化性インデックスを決定することによって、がん検出の正確さ、及びがん発症進展に対するがん治療の効果を決定すること、並びに/又は前記対象のためのがん薬剤を発見すること、が改善されることがある。
【0044】
いくつかの実施形態では、Studentのt検定を用いて、走化性が有意であったかどうかを決定する。C.エレガンス(C. elegans)の平均走化性を用いて、がんの尿サンプル(又は非-がんのコントロール・サンプル)の方に向かうポジティブな走化性-プラス記号の方に向かう、又はマイナス記号の方に向かうネガティブな走化性、があるかどうかを決定することがある。平均差異を比較して、それがポジティブであったか(非-がんを非-がんサンプルと比較する)、又はネガティブであったか(非-がんをポジティブ・サンプルと比較する)を決定する。最後に、ポジティブ・パターン試験を実施して、ポジティブな走化性パターンのパーセントを測定する。平均走化性インデックスを決定するための走化性応答のアッセイを、少なくとも4回、反復することに基づいて、その結果を合わせて、対象のがんリスクを、及び/又は薬剤を用いた治療の有効性を、評価する。次いで、ポジティブな応答の閾値を、例えば、行動応答、走化性応答、及び/又はニューロン応答が、超える場合、前記対象は、がんを有するかどうかの評価を、又はがんを有するリスクにあるかどうかの評価を、行うことがある。
【0045】
ポジティブな応答の閾値は、特に限定されず、アッセイに用いられる、行動応答、走化性応答、及び/又はニューロン応答、に基づいて決定されることがある。例えば、線虫又は複数の線虫の、走化性応答を測定する場合、平均走化性インデックス(chemotaxis index (CI))の閾値は、約0.02から0.05の範囲であることがある。いくつかの実施形態では、前記閾値は約0.038から0.04であることがある。いくつかの実施形態では、ニューロン応答を測定する場合、前記カルシウム応答が正規化された蛍光強度の閾値を超える場合(例えば、線虫のAWC及び/又はAWAニューロンのカルシウム応答等を使用する場合)、前記対象は、がんを有する、又はがんを有するリスクにある、と決定されることがある。いくつかの実施形態では、正規化された蛍光強度の閾値は、例えば、ベースライン蛍光活性の約1.5から4倍である。いくつかの実施形態では、正規化された蛍光強度の閾値は、ベースライン蛍光活性の約2から3倍である。
【0046】
本発明のコンセプトの実施形態はまた、人工知能(artificial intelligence (AI))及び/又は機械学習(machine learning (ML))の使用も含み、本発明のコンセプトの、方法、システム、及び/又はキット、において使用される、線虫又複数の線虫での、応答に関連したデータを、蓄積し、及び解析し、並びに応答の有意性に関連したデータを解析し、対象が、がんを有するかどうかを、若しくはがんを有する可能性があるかどうかを、又はがんを有するリスクにあるかどうかを、診断する/決定する、及び対象に対する治療のコースを、処方する/決定する。
【0047】
AI及び/又はMLは、経験を通して、及びデータの使用/蓄積によって、自動的に改善されるコンピュータ・アルゴリズムの、研究に及び使用に、関するということを、当業者のある者は、理解するであろう。AI及びMLアルゴリズムは、予測又は決定を行うために、サンプル・データ(「訓練データ」として知られる)に基づいてモデルを構築することを、そうすることを明示的にプログラムされること無しで、できる。人工知能及び機械学習アルゴリズムを、幅広い様々な用途において、例えば、医療において等、例えば、医学的な診断及び治療、例えば、本明細書に記載されるような決定及び治療の方法等、において、並びに幅広い範囲の用途において、例えば、電子メール・フィルタリング、音声認識、及びコンピュータ・ビジョン等、又は任意の用途、において、使用することがあり、ここで、必要とされるタスクを実行するための様式化したアルゴリズムを開発することは、困難であることがあり、又は実現不可能であることがある。AI及びMLは、タスクを実行することを、そうすることを明示的にプログラムされること無しで、それらがいかにして行うかを発見するするコンピュータ、を含むことがある(例えば、コンピュータは、ある特定のタスクをどのように実行するかをサンプル・データ(「訓練データ」として知られる)から学習する)。
【0048】
また、機械学習システム又はモデルは、一般に、ある特定のタイプのパターンを認識するように訓練された、アルゴリズム(又はアルゴリズムの組合せ)を含むことがあることを、当業者は理解するであろう。例えば、機械学習アプローチは、一般に、利用可能なシグナルの性質に応じて、3つのカテゴリに分けることができる:教師あり学習、教師なし学習、及び強化学習。教師あり学習は、「教師」によって与えられる、例示入力及びそれらの所望の出力を、コンピュータ・デバイスに提示することを含むことがあり、その目標は、入力を出力にマッピングする一般的な規則を学習することである。教師なし学習では、学習アルゴリズムに標識は付与されず、それ自体をその入力内の構造を見つけるために残す。教師なし学習は、それ自体の中に目標があることがある(データ内の隠れたパターンを発見すること)、又は目標の方に向かう手段であることがある(特徴学習)。強化学習は、一般に、ある特定の目標(例えば、乗り物を運転すること、又は相手と対戦するゲームをすること)を実行しなければならないダイナミックな環境で対話をするコンピューティング・デバイスを含むことがある。強化学習は、その問題空間をナビゲートするとき、そのプログラムは、報酬に類似するフィードバックが提供され、強化学習は、報酬を最大化しようとする。それにもかかわらず、本開示の範囲内で、他の機械学習アプローチが可能であることが理解されるであろう。
【0049】
従って、本発明のコンセプトの実施形態は、本発明のコンセプトの、方法、システム及び/又はキット、を使用して決定される、線虫又は複数の線虫の、行動応答、例えば、走化性応答、化学忌避(chemoaversion)応答、及び/若しくは臭気への走性(odortaxis)応答、並びに/又はニューロン活動、の解析を含むことがあり、そして、これらの反応の何れかが本出願に記載されるポジティブな応答のための閾値を超えるかどうかを決定するステップを、対象ががんを有するかどうか、又は対象ががんを発症進展するリスクにあるかどうか、の診断/決定に到達するための、AIの及び/又はMLの助け、を使用して/と共に、実施することがある。同様に、本発明のコンセプトの範囲から逸脱することなく、対象/患者におけるがんをスクリーニングする際に、対象/患者ががんを有するかどうかの診断/決定の際に、及び/又は対象ががんを発症進展するリスクにあるかどうかを評価する際に、使用される更なる解析を、本発明のコンセプトの実施形態と併せて、実施することがあり、例えば、尿検査、例えば、尿検査ストリップを用いたサンプルの化学的評価、サンプルの化学的特性の測定(例えば、pH、ブドウ糖濃度、タンパク質レベル等)、サンプルの顕微鏡検査、及び/又はサンプルのGC/MS分析、並びに対象/患者から得られ得る追加情報の使用、例えば、年齢、性別、医療履歴等を、AIの及び/又はMLの助け、を使用して/と共に、対象/患者ががんを有するかどうかの、リスク評価/決定に到達するために、利用することがある。これらの実施形態はまた、当業者のある者が理解するように、方法、システム、及び/又は、キット、例えば、本出願に記載される、決定する及び/又は治療する、方法を実施することを容易にする、コンピュータ・プログラム製品及び/又はコンピュータ-実装された方法等、を含むこともある。
【0050】
任意の好適な、コンピュータ及び/又はコンピュータ・システム、例えば、パーソナル・コンピュータ、サーバ・コンピュータ、一連のサーバ・コンピュータ、ミニ・コンピュータ、メインフレーム・コンピュータ、1つ以上のネットワーク・アタッチト・ストレージ(Network Attached Storage (NAS))システム、1つ以上のストレージ・エリア・ネットワーク(Storage Area Network (SAN))システム、1つ以上のプラットフォーム・アズ・ア・サービス(Platform as a Service (PaaS))システム、1つ以上のインフラストラクチャー・アズ・ア・サービス(Infrastructure as a Service (IaaS))システム、1つ以上のソフトウェア・アズ・ア・サービス(Software as a Service (SaaS))システム、クラウド-ベースの計算システム、及びクラウド-ベースのストレージ・プラットフォーム、又はそれらに含まれる、及び/若しくはそれらの上で動作する、コンピュータ可読媒体、を使用して、本発明のコンセプトの、コンピュータ・プログラム製品を実行することがあり、及び/又はコンピュータ-実装された方法を実行することがある。コンピュータ-使用可能な媒体又はコンピュータ-可読媒体は、例えば、限定されるものではないが、電子、磁気、光学、電磁気、赤外、若しくは半導体のシステム、装置、デバイス、又は伝播媒体、であることがある。コンピュータ-可読媒体の更なる例としては、限定されるものではないが、以下が挙げられる:1つ以上の接続を有する電気的接続、ポータブル・コンピュータ・ディスケット(portable computer diskette)、ハード・ディスク、ランダム・アクセス・メモリ(RAM)、リード-オンリー・メモリ(ROM)、消去可能プログラマブル・リード-オンリー・メモリ(EPROM若しくはフラッシュ・メモリ)、光ファイバー、ポータブル・コンパクト・ディスク・リード-オンリー・メモリ(CD-ROM)、光ストレージ・デバイス、伝送媒体、例えばインターネット若しくはイントラネットをサポートする伝送媒体、又は磁気ストレージ・デバイス。コンピュータ-使用可能な媒体又はコンピュータ-可読媒体はまた、プログラムが印刷される、紙又は他の適切な媒体、であることもある。前記プログラムは、例えば、前記紙又は他の適切な媒体、を光学的にスキャニングすることを介して、電子的に捕捉され、次いで、適切な方法で、コンパイルされ、インタープリトされ(interpreted)、又は他の方法で処理され、次いで、必要に応じて、コンピュータ・メモリに保存される、ことがある。この書類の文脈では、コンピュータ-使用可能な媒体又はコンピュータ-可読媒体は、命令実行のシステム、装置、又はデバイス、によって、又は、と一緒に、使用するためのプログラムを、含む、格納する、通信する、伝播する、又は移送する、ことができる任意の媒体であることがある。コンピュータ-使用可能な媒体は、ベースバンドとして又は担体波(carrier wave)の一部として、コンピュータ-使用可能なプログラム・コードが具現化された伝搬データ信号を含むことがある。コンピュータ-使用可能なプログラム・コードを、任意の適切な媒体、例えば、限定されるものではないが、インターネット、有線、光ファイバー・ケーブル、RF等、を使用して送信することがある。
【0051】
本開示のオペレーションを実行するためのコンピュータ・プログラム・コードを、オブジェクト-指向プログラミング言語、例えば、限定されるものではないが、Java, Smalltalk, C++等、で記述することがある。しかしながら、本開示のオペレーションを実行するためのコンピュータ・プログラム・コードは、従来の手続き型プログラミング言語、例えば、「C」プログラミング言語又は類似のプログラミング言語等、で記述することもできる。前記プログラム・コードは、完全にユーザのコンピュータ上で、部分的にユーザのコンピュータ上で、スタンド-アロン・ソフトウェア・パッケージとして、部分的にユーザのコンピュータ上で、且つ部分的にリモート・コンピュータ上で、又は完全にリモート・コンピュータ若しくはサーバ上で、実行することができる。後者のシナリオでは、リモート・コンピュータは、ローカル・エリア・ネットワーク(LAN)/ワイド・エリア・ネットワーク(WAN)/インターネットを介して、ユーザのコンピュータに接続することがある。
【0052】
本発明のコンセプトの実施形態はまた、ヒト及び非-ヒト動物を含む対象における初期がん検出のためのプレート-ベースのアッセイ・アプローチと比較して、マイクロ流体アプローチも提供する。そのマイクロ流体方法によって、実験的な制御及びスループットを増加させることによって、高度に定量的な、行動の、走化性の、臭気への走性(odortaxis)の、及び/又はニューロン活動の、表現型アッセイが可能になる。多くの場合、マイクロ流体方法は、各アッセイを実行するのに1匹のC.エレガンス(C. elegans)を必要とするのみで、調製からデータ解析まで各アッセイを実行するのに30分もかからず、ハイ-スループットなプロセスである。走化性及び/又はニューロン活動を決定する例示的なマイクロ流体方法は、例えば、Chronis et al. (2007) Nat. Methods 4, 727-731, 及び Larsch et al. (2013) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 110, E4266-E4273、に記載されている。
【0053】
対象が、がんを有するかどうか、又はがんが発症進展するリスクにあるかどうか、を診断/決定するための、本発明のコンセプトの、方法、システム、キット、及び/又は試験はまた、以下を含むことがある:機械的な及び/又は視覚的なフィルトレーション(filtration)を使用する、サイズによる、線虫の齢-同期化;サンプルの、例えば、ユーザによって入力された尿サンプルの、自動化した、逐次的な解析;ユーザが容易に操作することを促進する、関連するグラフィック・ユーザ・インターフェース(GUI)を含む操作ソフトウェア;自動化した、サンプルの、調製/前処理、例えば、コントロール・バッファー/希釈液による、自動化した、サンプル/尿、の希釈;カルシウム/ニューロン応答の測定と同時に行われる、サンプルの方に向かう線虫の走化性解析を促進する、方法、システム、及び/又はキット;線虫又は複数の線虫の、自動化した、同定及び追跡;行動、例えば、走化性/移動/化学忌避(chemoaversion)、を追跡するための、及び/又は、個々の線虫(worms)/線虫(nematodes)の、カルシウム応答を測定して、経時的な応答の決定を促進するための、AI-ベースのアルゴリズム;並びに、取得した全てのデータ、例えば、限定されるものではないが、サンプルの尿検査、及び/又はサンプルのGC/MS分析、及び/又は対象の医療履歴、に基づいた、がんリスクのAI-ベースの分類。ここで、該AI-ベースの分類は、対象/患者が、がんを有するかどうか、及び/又はがんを発症進展するリスクにあるかどうか、に関する分類を、支援することがある及び/又は補足することがあり、更に、本出願に記載される本発明のコンセプトの、行動、走化性、及び/又はニューロン応答、の評価において、AI-ベースの分類を使用して、対象/患者に対して、がんを総合的に評価することがある。前記分類を、支援するために及び/又は補足するために、使用される、尿検査及び/又はGC/MS分析、の方法は、特に限定されず、当業者のある者によって理解される、尿検査のための及び/又はGC/MS分析のための、任意のプロトコルであることがある。
【0054】
本発明のコンセプトの更なる、態様及び利点を、以下の実験のセクション(これは、本発明のコンセプトを、限定することなく説明する)に開示する。
【実施例
【0055】
1.初期がんのスクリーニング/検出-方法と結果
コンパニオン・アニマル(companion animal)のための、新規な、がんを、スクリーニングする/検出する、システムを開発し、種々の特性について試験した。約85%の感度及び約90%の特異性で、実施することが見出された。これらの方法及び結果は、Namgong et al. (2022) Front. Vet. Sci. 9, 932474, 並びにこれに付随して含まれるSupplementary Material、(<www.frontiersin.org/articles/10.3389/fvets.2022.932474/full#supplementary material>)(これらの開示は、本出願に参照により取り込まれる)、に記載されている内容の一部を補う。
【0056】
イヌの尿サンプル
非-がん患者由来の全てのサンプルを、並びにがん患者由来の最初のセットのサンプルを、Triangle Veterinary Hospital (Durham, NC), Lake Pine Animal Hospital (Apex, NC), Care First Animal Hospital (Raleigh, NC) New Light Animal Hospital (Wake Forest, NC), Bull City Veterinary Hospital (Durham, NC), Knightdale Animal Hospital (Knightdale, NC)、から入手した。40件のがんサンプル(リンパ腫、マスト細胞腫瘍、メラノーマ、及び血管肉腫の患者から、10件ずつ)の第2セットを、Ohio State University Center for Clinical and Translational Science、から入手した。入手後、尿サンプルは、直ちに、アッセイを実施するまで、-20℃で保存した。各検体を、100 μLの部分に分注して、アッセイを実施する度での、凍結及び解凍、の繰り返しを最小限に抑えた。
【0057】
C.エレガンス(C. elegans)の維持
カエノラブディティス・エレガンス(Caenorhabditis elegans)株N2及び大腸菌株HB101を、Caenorhabditis Genetics Center (ミネソタ大学)より入手した。C.エレガンス(C. elegans)は、標準的なブリーチング・プロトコルによって、齢を同期させ、HB101バクテリア・ローン(bacterial lawns)を播種した線虫増殖培地(nematode growth media (NGM))上、20℃で、培養した。NGMプレートは、予め注がれているものを、LabExpress(Ann Arbor、MI)から購入した。
【0058】
走化性アッセイ
アッセイを、20℃で3日間増殖させた、十分に餌が与えられた、齢-同期済みの、N2線虫の集団、を用いて実施し、LabExpress (Ann Arbor, MI)から購入した、予め注がれているCTXプレート(2% 寒天、pH 6の5 mM KPO4バッファー、1 mM CaCl2、1 mM MgSO4)上で実施する。尿サンプルを解凍し、CTXバッファー(pH 6の5 mM KPO4バッファー、1 mM CaCl2、1 mM MgSO4)に対する尿の比率が1:2に、希釈した。尿サンプルを遠心分離し、次いで、1 Mアジ化ナトリウムに対して2:1の比率で希釈した尿に混合した。次いで、その尿混合物を、各走化性プレート上の「プラス」マークにスポットした。コントロール・バッファー混合物を、1 Mアジ化ナトリウムに対する2:1の比率のCTXバッファーを用いて調製し、各走化性プレート上の「マイナス」マークにスポットした。NGMプレートから、M9バッファーを用いて、コニカル・チューブに、若齢成虫を洗浄し、沈降させた。次いで、微量のバクテリア食物源を除去するために、線虫をCTXバッファーで3回洗浄した。約75から100匹の線虫を各プレートの中心に置き、これを23℃のインキュベーターの中に置いた。1時間後、各プレートを取り出し、バックライト上に置き、iPhone Xデジタル・カメラを用いて、各プレートのイメージを取得した。
【0059】
図1を参照して、C.エレガンス(C. elegans)を、プレートの中心に置くことによって、走化性を測定した。がんの尿サンプルを、前記プレートの片側に置いた(プラス記号でマークした)。C.エレガンス(C. elegans)を置いたが、がんの尿サンプルは置かなかった、コントロール・プレートを作製した。プラス記号の方に向かう運動を測定し、ポジティブな走化性とみなした。即ち、C.エレガンス(C. elegans)は、がんを有するコンパニオン・アニマル(companion animal)由来の尿サンプルの方に向かって、自身の方向を取り、移動することが確認された。図1は、2つの異なる走化性アッセイ・プレートのイメージを示し、1つはがんの尿サンプルが無く、もう1つは、プラス記号上にがん尿サンプルを有する。コントロール・サンプルでは、線虫は、前記プレートに渡って均一に分散し、プラス記号の方に向かって、集合しない。対照的に、ポジティブな走化性インデックスがあるがんサンプルでは、線虫はプラス記号の尿サンプルの方に向かって移動した。
【0060】
データ取得
Fiji ImageJソフトウェアを使用して、各象限内の線虫を手動で計数することによって、データを収集した。以下の3つの条件のうちの1つが満たされる場合、反復は破棄される:(1) 4つの象限全てについての合計が55未満の場合;(2) 最も高い総数の象限が、残りの3つの象限の合計を超える場合;(3) 最も高い総数の象限の向かい側の象限に、任意の他の象限の半分以下の動物数しかいない場合。そして、CIを、以下の式を用いて計算し、ここで、Qnは、n番目の象限における線虫の数である:
【数1】
平均CIを、破棄されていない各アッセイの反復から計算する。
【0061】
統計解析
がんリスク群間の差異を、不等分散を有するデータ・セットについての、Welch t-検定を用いて評価した。がんリスク評価のための閾値を導出し、データ解析の精度を最適化した。以下の式に基づいて95%信頼区間を特定した。
【数2】
ここで、Cは信頼区間、t95はt-スコア、sはサンプルの標準偏差、nはサンプルのサイズ、である。
【0062】
がんと非-がんの尿サンプルを識別するための、N.C.S.試験の開発
がん患者から取得した尿サンプルに対して、C.エレガンス(C. elegans)が僅かに嗜好性を示し、反対に、非-がん患者由来の尿に対して、僅かな忌避応答を示す、以前に得られた走化性データに基づいて、本N.C.S.試験を開発した。第1のアプローチは、ヒトがんの検出に以前に使用された手順が、イヌの尿に適用できるかどうかを決定することであった。走化性を実施している間、個々の反復外れ値によって、計算された平均CIに大きな振れが生じうることが分かった。この理由のため、本アッセイにおいて、他の反復から強く逸脱した反復を破棄した。本アッセイ内の最も近い他の反復から0.25を超える差を示した場合、CIを破棄し、平均走化性値での極端なデータ点由来の歪みを減少させた。4つの象限境界内に、線虫が55匹未満しかいないプレートも破棄した、なぜなら、線虫がより少ないプレートは、より広い範囲のCI値を生じる傾向があり、平均において、より大きな歪みをもたらすからである。異常な分布を有する反復も破棄した。1つの象限内の線虫の総数が、他の3つの象限を合わせた総数を超えた場合、又は最も高い総数の象限の向かい側の線虫の数が、任意の他の象限の総数の50%未満である場合、プレートを、外れ値の結果をもたらすものとして定義した。これらの配置は、特定の化学的刺激というよりもむしろ特定の象限、の方に向かう又はから離れる、移動を示し、平均CIを計算するための信頼できるデータを提供しなかった。
【0063】
これらの最適化により、本N.C.S.試験を開発して、イヌのがん獣患由来の尿サンプルを正確に同定した(図2)。以前の走化性アッセイは、平均CIを決定するために、3から6回の反復のいずれかを使用した。イヌの尿アッセイでは、アッセイ内の個々の反復における応答及び大きさにおいて、ばらつきがしばしば見られた。我々は、1回の尿検査について、少なくとも5回の破棄されていない反復を、全てがポジティブ又はネガティブである場合には4回の反復を、取得する必要があることを見出した。破棄されなかったCI反復から、平均CIを計算し、次いで、これを用いてリスクのレベルを評価した。
【0064】
N.C.S.試験のがんリスクのレベルの決定
一連の、がんの及び非-がんの、尿サンプルについて試験を行い、イヌ尿サンプルの方に向かうポジティブな走化性によって、がんが検出され得るかどうかを決定した。計8件のがんサンプル及び14件の非-がんサンプルに関するアッセイを最初に実施した。C.エレガンス(C. elegans)は、がん性尿サンプルに、非-がんサンプルよりもはるかに強く誘引されることが見出された(図3、パネルA)。これらの結果から、がんリスク上昇の閾値は、CI ~0.038に設定され、試験をした非-がんサンプルのStudent t-分布から決定された上限99.5パーセンタイルによって特定された。この値以下(CI≦~0.038)の平均CI値は、「低いリスク」に分類され、それは非-がんサンプルの約85%であるが、一方で、この値を超える結果は、「中程度から高い」(CI>~0.038)がんリスクと指定された。このアッセイの性能を、精度(正確に分類される総サンプルの割合)、感度(正確に分類されるポジティブなサンプルの割合)、及び特異性(正確に同定されるネガティブなサンプルの割合)、を計算することによって評価した。このアッセイに対して、がん検出について88%の感度が達成され、非-がんサンプルを正確に分類することについて93%の特異性が達成された(図3、パネルB)。がん及び非がんサンプルについても反復して実施したところ、アッセイ・リスク分類の再現可能な結果が示された。
【0065】
4種のありふれたイヌがんの検出率の評価
がんの存在を検出する点でのN.C.S.試験の精度を更に確認するために、人が家で飼うイヌにおいて、よく診断される4種類のタイプのがん(即ち、リンパ腫、マスト細胞腫瘍、メラノーマ、及び血管肉腫)について、各10件の追加的なサンプルに対して、アッセイを行った。更に、がんが確認されたとの診断が無い、更に16匹のイヌ由来のサンプルに対して、アッセイを行った。全てのサンプルで、非-がんサンプルよりも高い平均CIとなることが、見出された。これら40件の追加的ながんサンプルと16件の追加的な非がんサンプルから得られたデータを、予備データ・セットと組み合わせることにより、本N.C.S.試験では、確認されたがん患者の各々におけるがんに関する少なくとも中程度のリスクを同定する感度は、少なくとも中程度のがんリスクとして同定された非-がんサンプルの10%と比較して、85%となることを、我々は見出した(表1)。全般的には、がんサンプルと非-がんサンプルの、測定されたCI値の全てを組み合わせることにより、我々は、87%の精度を達成した。これらの結果はまた、それぞれのタイプのがんと非-がんサンプルの平均CIの間で、統計的に有意な差異も示した。
【表1】
【0066】
これらの結果に基づいて、C.エレガンス(C. elegans)走化性により、イヌのがんリスクを、分類することができる/スクリーニングすることができる、ことが実証された。低いリスクから高いリスクまでの、例示的ながんリスク評価スケールを、本がんリスク評価によっては更なる診断試験を推奨することを含めて、図4に概説する。CI≦~0.038以下の平均CI値は、「低いリスク」に分類され、平均CI値>~0.038は、がんの「中程度から高いリスク」に分類された。サンプルが平均CI値>~0.1を示すイヌ獣患は、がんの「高いリスク」に更に分類することがある。
【0067】
2.初期がん検出-例示的な6-ステップの試験
この実施例では、初期スクリーニング試験を、6つのステップで実行することがある:
【0068】
ステップ1.尿サンプルは、がん細胞(がんが存在する場合)から放出される揮発性有機化合物(VOC)を含有する。
【0069】
ステップ2.前記尿サンプルは、C.エレガンス(C. elegans)の嗅覚レセプターを、誘引するために又は忌避するために、希釈される。
【0070】
ステップ3.がん-ポジティブな尿サンプルの方に向かうC.エレガンス(C. elegans)の走化性を調べることによって、がん-ポジティブな尿サンプルを嗜好して識別するC.エレガンス(C. elegans)の能力を、測定する。
【0071】
ステップ4.がん-ポジティブな尿サンプルの方に向かうC.エレガンス(C. elegans)の運動に基づいて、走化性インデックス(Chemotaxis index (CI))を計算する。
【0072】
ステップ5.検査室では、複数の統計解析を実行して、がんリスクを同定する。前記統計解析は、CIの解析を含むことがある、並びに、追加的なサンプル解析及び/又は追加的な対象/患者データを含むことがある、そして、人工知能(AI)及び/又は機械学習(ML)を介して、対象におけるがんリスクに関するクリニカル・レポートを作成する。
【0073】
ステップ6.対象/コンパニオン・アニマル(companion animal)について、がんリスクが同定されたかどうかを示す、クリニカル・レポートが作成され、獣医師に送られる。
【0074】
3.初期がん検出-マイクロ流体アプローチ
例示的なマイクロ流体アプローチは、固定化を最小限にしてC.エレガンス(C. elegans)をマイクロ流体チップ内に配置することを含み、その結果、その線虫の頭部は、自由に、動くことができる、及び動かすことができる。前記線虫は、種々の化学物質による2つの別々の刺激ストリームの間で、選択をすることができる。この場合、バッファー溶液及び尿サンプルを用いることがある。このマイクロ流体方法は主に、いくつかの形態の行動データを収集するために設計されている。これらとしては、前記線虫の頭部が前記チップの左側又は右側にある時間の割合、及び前記チップにおける平均頭部角度(クランプした線虫の体の長手方向の軸に対して測定される)、が挙げられる。行動のビデオ・レコーディングを、カスタム・ルーチンを使用してMATLABで解析して、各々のイメージでの頭部角度を計算することがある。行動の解析は、対象/コンパニオン・アニマル(companion animal)について、がんリスクに関するレポートを作成するために、AI及び/又はMLを介した解析を含むことがある。
【0075】
4.イヌにおけるがんを、スクリーニングする/検出する、ためのオン-チップA.C.D.試験
プラットフォーム:
オン-プレートの動物がん検出(Animal Cancer Detection (A.C.D.))試験を、イヌにおけるがんをスクリーニングする非-侵襲的方法として開発した(Namgong et al. (2022) Front. Vet. Sci. 9, 932474、を参照)、並びにこの試験に基づく例示的なリスク評価スケールを、図3、パネルB及び図4に概説する。オン-プレートA.C.D.。前記試験は、線虫カエノラブディティス・エレガンス(Caenorhabditis elegans)を用いて、あるありふれたタイプのイヌがんを有する動物の尿中で、異なる揮発性有機化合物(VOC)代謝物が存在することを検出する。がんの存在に関連するVOCは、研究され、表にされてきているが、広範な代謝産物プロファイルを直接的に測定することは困難であることがある。C.エレガンス(C. elegans)は、繁殖や飼育が安価であり、高感度の神経システム及び嗅覚システムを有する線虫である。ヒトの尿サンプルについて実施された以前の研究と併せて、C.エレガンス(C. elegans)は、健常な動物から得られた尿サンプルと比較して、がん性のイヌの尿サンプルに、より有意に誘引されることが示されている。この予測可能な行動は、コンパニオン・アニマル(companion animal)におけるがんリスクのスクリーニングに適用することができる。本オン-プレートA.C.D.試験を、いくつかの寒天-ベースの走化性プレートで行う。オン-プレートA.C.D.試験は、がんサンプルと非-がんサンプルとを区別することに有効である一方、(例えば、イヌにおける)がんをスクリーニングするオン-チップA.C.D.試験は、以下に記載されるように、試験毎に生成される物理的な廃棄物を低減しながら、より迅速且つ正確に解析を実施する。これを行うために、イヌの尿サンプル中のがん性VOCの含有を、ハイ-スループットに解析するための、最初のオン-チップ・アッセイを開発する。
【0076】
マイクロ流体オン-チップ・プラットフォームは、AWCニューロン(これは、がんの存在を示すVOCを検出することに主に関与するニューロンである)のカルシウム・イメージングを通して動作する(図5)。オン-チップ・プラットフォームを使用する典型的な試験では、線虫を、単一チャネルからイメージング・チャンバーの中に、ロードする及びアンロードする。一方で、解析対象のサンプルのそれぞれを、別々の個々のイメージング・チャンバーの中に供給する。サンプルに対する個々の線虫のニューロン応答を、前記イメージング・チャンバー内で記録する。刺激出口上の多孔性バリアは、アッセイ中に線虫がチャンバーから出て行くことを防ぐ。3つのイメージング・チャンバーが、例示的なオン-チップ試験プラットフォームとして、図5に示されているが、本試験プラットフォームのイメージング・チャンバーの数は、3つよりも多くても、又は3つよりも少なくてもよく、例えば、本試験プラットフォームは1つのチャンバー、2つのチャンバー、を有することがある、又は4つのチャンバー、5つのチャンバー、6つのチャンバー、7つのチャンバー、8つのチャンバー、9つのチャンバー、10つのチャンバー、若しくは更に10を超えるチャンバー、を有することがある。オン-プレート走化性試験は、完了するのに最大1時間を必要とする一方で、インディケーターGCaMP3によって誘導されるAWCの蛍光カルシウムのグラジエント(gradient)は、数分以内に測定することができる。更に、カルシウム・イメージングは、ヒト尿サンプルから、乳がんを検出するための、より効果的な方法であることが示されてきている。マイクロ流体ラボ-オン-チップ技術(Microfluidic lab-on-a-chip technology)は、様々なモデル生物(例えば、C.エレガンス(C. elegans)等)における実験上の可能性を増進させるために使用されてきている。ポリジメチルシロキサン(PDMS)は、非-毒性であり、透明であり、気体透過性があるので、C.エレガンス(C. elegans)を扱うように設計されたデバイスの構築に使用される例示的な材料である。C.エレガンス(C. elegans)研究に向けたマイクロ流体の応用としては、オン-チップ固定化及び高-解像度イメージング、が挙げられる。マイクロ流体システムによって、カルシウム・トランジェント (calcium transient)を示す、蛍光標識されたC.エレガンス(C. elegans)の株を、効果的に固定化することが、及びニューロン・イメージングをすることが、可能になる。本プラットホームによって、尿中代謝産物を迅速に分析することが可能になる。そのデバイスを、指定された時間枠内でアッセイ可能なサンプルの個数を最大化するように設計する。また、前記デバイスは、動作の成功率を増加させ、動作障害のモードを最小限に抑えるように、最適化もされる。このデバイスは、ニューロン応答を測定することによって、オン-プレートで得られ、いくつかのタイプのイヌがんに対応するVOCに対してポジティブな応答を示す、結果を再現する。このオン-チップA.C.D.試験は、非-侵襲的な方法で、迅速ながんスクリーニングを正確に実施し、実施に要する時間がより短く、オン-プレートA.C.D.試験よりも生じる物理的な廃棄物がより少ない。
【0077】
開発
C.エレガンス(C. elegans)を取り扱うためのプラットフォームを開発することは、いくつかの理由から困難であってきた。前記プラットホームは、デバイスから、線虫を、素早く、ロードするように、及びアンロードするように、製造される必要がある。PDMS及びC.エレガンス(C. elegans)組織の両方は、可撓性且つ変形可能であり、これによって、線虫の取り扱いが困難になることがある。更に、C.エレガンス(C. elegans)は、動いて、小さな隙間を通してすり抜けることができる。このために、線虫を、捕捉すること又は固定化すること、が困難になることがある。この理由のため、プラットフォーム寸法及び入口流速を、チャネルを通って線虫が円滑に移動することと、前記デバイス内の線虫を効果的にコントロールすることとのバランスを取るように、最適化する。更に、前記プラットフォームは、複数のアッセイの過程を通して、再利用可能である必要がある。これは、アッセイを実施するのに必要な、時間及び費用を、削減するためのプラットフォームにとって不可欠である。これを行うために、迅速且つ効果的な、洗浄工程が実施され、そこでは、全ての線虫及び以前のサンプルのあらゆる痕跡は、前記デバイスから一掃されなければならない。本発明のプラットホームは、残骸が蓄積することを防止し、デバイス内に詰まるようになる微粒子を除去するように、設計されている。更に、前記プラットフォームは、それぞれの尿サンプルが、前記プラットフォームに効率的に移送され得ること、及びチップ及び入口チューブが、十分に洗浄されて、以前のサンプルに由来する、あらゆる臭気/コンタミネーション(contamination)が除去されること、を確実にしなければならない。前記デバイスの開発には、運用上の不具合の最もありふれたモードを決定すること、及び前記プラットホームの連続的な運用を確実にするために、そのデザインの中にフェイル-セーフ(fail-safe)を組み込むこと、が含まれる。最後に、前記プラットフォームは、定量的なカルシウム・イメージング・データの正確且つ効率的な取得を確実にする。GCaMPシグナリングのイメージを繰り返し取得するようにカスタマイズされた蛍光倒立顕微鏡を使用して、AWCニューロンの蛍光カルシウム・イメージを取得する。そのカスタマイズされた設定を、最適化して、的確な解像度及び強度でイメージを取得する。更に、カルシウム・グラジエント(gradient)の強度を定量化するための自動化イメージ解析アルゴリズムが提供される。これは、MATLABイメージ・プロセシング・ツールボックスを使用する、フィルタリング及び二値化技術によって、達成される。イメージ・グラウンド・トゥルース(image ground truth)のセットを、手動で作成し、アルゴリズムの精度を測定する。
【0078】
最適化
開発と効率的な操作の後、健常な動物由来の及びがん患者由来の、一連の尿サンプルでの試験を検証することにより、高いレベルの性能が示される。本目的は、オン-プレート実験から得られるものに、匹敵するか又はそれよりも優れた、感度及び特異性を、達成することである。オン-プレートアッセイは、それらの環境に対して感度が非常に高いことが分かっている。アッセイをオン-チップで実施することにより、刺激に対する化学感覚応答に影響を及ぼし得る、更なる環境因子が導入される。特に、他の環境ストレッサーに対する応答で以前に観察されているように、動物をチップにロードするプロセスが、臭気応答に影響するであろういかなるストレスも引き起こさないということを、担保する必要がある。溶媒バッファー中の尿の濃度も最適化される。コントロール・バッファーに対する尿サンプルの比率を1:2にすると、オン-プレートA.C.D.試験において、がんと非-がんサンプルとの間で、最も強い応答差が生じることが見出された。取得された尿の体積について、各サンプルは、必要に応じて、実験を繰り返すのに十分な尿であることが、担保される。各アッセイは、実行するのに約500から750 μL以下の尿を必要とする。プレート-ベースの方法は、典型的には、それぞれのアッセイについて、少なくとも50から100匹のC.エレガンス(C. elegans)を必要とし、典型的には、任意の結論を引き出すのに2時間を要する。イヌの尿サンプル中のがん性VOC含有に関するハイ-スループット解析のためのオン-チップ・アッセイを、高い精度結果で有意なデータを得るために必要とされる最少数のC.エレガンス(C. elegans)を用いて、運用する。
【0079】
5.オン-チップA.C.D.試験のプロトコル
オン-チップA.C.D. プラットフォームを運用するための典型的なプロトコル:
以下は、患者由来の尿サンプルにおいて、がんのハイ-スループット・マイクロ流体スクリーニングのための例示的なシステムによって実行される、例示的な試験プロトコルの概要である。本解析は、行動応答の定量、走化性応答の定量、及び/又はニューロン応答の定量に加えて、尿検査及び尿サンプルのGC/MS分析、並びに追加的な患者データ、を含めて、がんリスク評価を、前記患者ががんを有する確率/尤度の決定を、及び/又は前記患者ががんに罹患する可能性があるかどうかの決定を、することができる。
【0080】
1. 大腸菌バクテリアのHB101株のローン(lawn)を撒いた線虫増殖培地(Nematode Growth Media (NGM))寒天プレート上で、C.エレガンス(C. elegans)を、胚が孵化した後成体まで約3日間、増殖させる。
【0081】
2. 各々のサンプル・チューブの中に500 μLの尿をロードする。各々のチューブをサンプル・カートリッジの中に置き、ロードした順番をメモしておく。
【0082】
3. 評価するサンプルの数及び評価するサンプルの名称を、ロードした順番で、本プラットフォーム用の操作GUIで、指定する。
【0083】
4. M9線虫ハンドリング・バッファー(handling buffer)を用いて、プレートからの線虫を洗浄し、マイクロチューブの中に入れる。臭気-中性のコントロール・バッファー(CTX)を使用して、3回、洗浄する。
【0084】
5. 試験をする尿サンプルあたり約30匹の線虫を、線虫注射チューブの中にロードする。
【0085】
6. 本プラットフォーム用GUIで、プレ-アッセイ・フラッシュ・サイクル(pre-assay flush cycle)を初期化する。ペリスタ・ポンプ(peristaltic pump)を使用して、マイクロ流体イメージング・チップを臭気-中性コントロール・バッファーでフラッシュして、全ての臭気物質をチャンバーから確実に一掃する。
【0086】
7. 本プラットフォーム用GUIを使用して、線虫のロードを初期化する。線虫を注入チューブからフィルトレーション・チャンバー(filtration chamber)の中に圧送する。
【0087】
8. チャンバー内のフィルトレーション機構を使用して、線虫集団から、卵及び幼虫を濾す。
【0088】
9. フィルトレーション・チャンバーから長さ解析チャンバーの中に、それぞれの線虫の供給を開始する。各個々の動物の、長さ及び幅を、評価して、どれが、若齢成虫の、非-妊娠(非-卵産)の線虫、を示す長さ及び幅よりも小さいかを決定する。それぞれの解析チャンバーの中に約20匹の線虫を供給する。
【0089】
10. コントロール・バッファー中の線虫のベースライン蛍光AWCニューロン・カルシウム活動のイメージを取得する。
【0090】
11. 本プラットフォーム用GUIで尿アッセイを開始する。
【0091】
12. 約200 μLの尿サンプルを、各々のチャンバーに、1:2の比率で、コントロール・バッファーと混合して、連続的に圧送する。各々を加える前後約30秒、断続的なニューロン活動のイメージを取得する。
【0092】
13. 同時に、約100 μLの尿サンプルを、尿検査ストリップの各々の四角に滴下する。各々の尿検査ストリップを、前記ストリップのパラメータを定量化するカラー解析機に送る。
【0093】
14. 残りの尿を、GC/MS分析のために、GC/MSチャンバーに送る。
【0094】
15. 尿検査データを取得したら、ペリスタ・ポンプ(peristaltic pump)を起動し、各バルブを順番に開け、コントロール・バッファーが各チャンバーに順番に流入することを可能にする。断続的なニューロン活動イメージを、コントロール・バッファーがチャンバーの中に流入する、約30秒前に、及び約3分後に、取得する。
【0095】
16. 取得した全てのイメージを、タイムスタンプとともに、各々のサンプルに対応するフォルダーに、順番に保存する。
【0096】
17. 線虫の出口でバルブを開ける。コントロール・バッファーを、全てのチャンバーに流し、全ての線虫を排出する。流れを、更にもう少し継続して、全ての臭気物質が洗い流されることを確実にする。
【0097】
18. AI-ベースのイメージ-解析ソフトウエアを用いて、カルシウム活動の強度を各時点で定量する。前記ソフトウェアは、ユーザによる干渉を必要とせずに、各蛍光ニューロンの位置を自動的に同定し、各線虫の動きを経時的に追跡する。前記ニューロンの平均強度を各時点で評価し、プロットしてその応答の大きさを決定する。
【0098】
19. 評価した全てのサンプルの、平均カルシウム活動データ及び尿検査データを、まとめる。
【0099】
20. 前記対象の年齢、性別、及び医療履歴とともに、C.エレガンス(C. elegans)のAWCニューロンのカルシウム応答、尿検査データ、及びGC/MSデータ、を組合せて使用し、AIアルゴリズムを用いて、その患者ががんを有する可能性を評価する。
【0100】
本システムを示す、並びに上記記載のオン-チップA.C.D.プロトコール(対象/患者-由来のサンプルに関する、線虫(C.エレガンス(C. elegans))の、行動応答解析、走化性応答解析、及び/又はニューロン応答解析、及びGC/MS分析、を含む)を実施するための構成要素を含む、フローチャートを、図6に図示する。
【0101】
前述の主題を、明確に理解することを目的に、例示及び実施例によって、ある程度詳しく、説明してきたが、添付の特許請求の範囲の範囲内で、ある一定の変更及び改変を実施することができることを、当業者は理解するであろう。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【国際調査報告】