(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-02
(54)【発明の名称】生物活性ポリマーフィラメントを製造する方法、生物活性ポリマーフィラメント及びそれを使用する印刷方法
(51)【国際特許分類】
B29C 48/05 20190101AFI20240925BHJP
A61L 31/04 20060101ALI20240925BHJP
B29C 64/118 20170101ALI20240925BHJP
B29C 64/393 20170101ALI20240925BHJP
B29C 64/314 20170101ALI20240925BHJP
B33Y 70/00 20200101ALI20240925BHJP
B33Y 10/00 20150101ALI20240925BHJP
B33Y 40/10 20200101ALI20240925BHJP
B33Y 50/02 20150101ALI20240925BHJP
C08G 61/00 20060101ALI20240925BHJP
【FI】
B29C48/05
A61L31/04
A61L31/04 120
B29C64/118
B29C64/393
B29C64/314
B33Y70/00
B33Y10/00
B33Y40/10
B33Y50/02
C08G61/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024513394
(86)(22)【出願日】2022-08-30
(85)【翻訳文提出日】2024-04-24
(86)【国際出願番号】 SG2022050620
(87)【国際公開番号】W WO2023033730
(87)【国際公開日】2023-03-09
(31)【優先権主張番号】10202109525R
(32)【優先日】2021-08-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SG
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】503231882
【氏名又は名称】エージェンシー フォー サイエンス,テクノロジー アンド リサーチ
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】アッバス,ムハンマド アサイラフ ビン
(72)【発明者】
【氏名】テオ,ペイリ
【テーマコード(参考)】
4C081
4F207
4F213
4J032
【Fターム(参考)】
4C081AC01
4C081AC16
4C081BA12
4C081BC01
4C081CA031
4C081CA081
4C081CA171
4C081CA211
4C081CA231
4C081CB011
4C081CC01
4C081CD011
4C081CD081
4C081CD111
4C081CD121
4C081CE02
4C081DA01
4C081DC12
4C081EA03
4C081EA12
4F207AA11
4F207AA13
4F207AA20
4F207AA24
4F207AA29
4F207AA31
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4F207KW50
4F213AA11
4F213AA13
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4F213AA29
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4F213WB01
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4F213WL27
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4F213WL85
4J032BA12
4J032BB04
4J032BC02
4J032CA36
4J032CA68
4J032CB04
4J032CG09
(57)【要約】
生物活性ポリマーフィラメントを製造する方法であって、ベースポリマー粉末及び生物活性コポリマーを提供すること、ベースポリマー粉末を生物活性コポリマーと混合して、混合物を得ること、及び生物活性ポリマーの所定の融解/軟化温度及び所定の分解開始温度に基づく押出成形温度プロファイルにおいて、混合物から生物活性ポリマーフィラメントを押出成形すること、及び押出成形された生物活性ポリマーフィラメントに対して押出成形後の熱分析を実施して、フィラメントにおける生物活性コポリマーの分解開始を評価することを含む方法が提供される。前記方法から得られる生物活性ポリマーフィラメント及びフィラメント溶解製法(FFF)又は熱溶解積層法(FDM)ベースの三次元印刷方法も提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生物活性ポリマーフィラメントを製造する方法であって、
ベースポリマー粉末及び生物活性コポリマーを提供すること、
前記ベースポリマー粉末を前記生物活性コポリマーと混合して、混合物を得ること、及び
前記生物活性ポリマーの所定の融解/軟化温度及び所定の分解開始温度に基づく押出成形温度プロファイルにおいて、前記混合物から生物活性ポリマーフィラメントを押出成形すること、及び
前記押出成形された生物活性ポリマーフィラメントに対して押出成形後の熱分析を実施して、前記フィラメントにおける前記生物活性ポリマーの分解開始を評価すること
を含む方法。
【請求項2】
前記生物活性コポリマーは、無細胞である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記生物活性コポリマーは、開環メタセシス重合(ROMP)によって得られる、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記生物活性コポリマーは、一般式(I)によって表される1つ又は複数の繰り返し単位及び一般式(II)によって表される1つ又は複数の繰り返し単位:
【化1】
(式中、
R
1は、任意選択的に置換されたアルキルであり、
R
2は、単結合、任意選択的に置換されたアルキル、任意選択的に置換されたアルケニル、任意選択的に置換されたアルキニル、任意選択的に置換されたアルコキシアルキル、任意選択的に置換されたアルキルカルボニル又は任意選択的に置換されたアルキルカルボニルアルキルから選択され、
R
3は、H、任意選択的に置換されたアルキル、任意選択的に置換されたアルケニル又は任意選択的に置換されたアルキニルから選択され、
Lは、ヘテロアルキレンであり、
Xは、タンパク質、ペプチド、炭水化物、コラーゲン、ヒアルロン酸、治療/薬物分子及びその誘導体からなる群から選択される生物活性部位を含み、
Y
1は、合成ポリマー又はその一部を含み、及び
Z
1及びZ
2は、それぞれ独立して、CR
aR
b、O、NR
c、SiR
aR
b、PR
a又はSから選択され、R
a、R
b及びR
cは、それぞれ独立して、H、任意選択的に置換されたアルキル、任意選択的に置換されたアルケニル及び任意選択的に置換されたアルキニルからなる群から選択される)
を含むポリ(ノルボルネン)主鎖を有する生物活性合成コポリマーである、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
Y
1は、一般式(III):
【化2】
(式中、
Aは、単結合、オキシ、カルボニル、オキシカルボニル、カルボキシル、任意選択的に置換されたアルコキシ、任意選択的に置換されたアルコキシアルキル、任意選択的に置換されたアルキルカルボニル、任意選択的に置換されたアルキルカルボニルアルキル、任意選択的に置換されたカルボキシアルキル、任意選択的に置換されたオキシカルボニルアルキル、任意選択的に置換されたアルキルカルボキシルアルキル、任意選択的に置換されたアルコキシカルボニルアルキル、N又はNR
cから選択され、R
cは、独立して、H、任意選択的に置換されたアルキル、任意選択的に置換されたアルケニル又は任意選択的に置換されたアルキニルから選択され、
Bは、1,2,3-トリアゾール又はスクシンイミドから選択される環として任意選択的に存在し、
R
5は、単結合、任意選択的に置換されたアルキル、任意選択的に置換されたアルケニル、任意選択的に置換されたアルキニル、任意選択的に置換されたアルコキシアルキル、任意選択的に置換されたアルキルカルボニル又は任意選択的に置換されたアルキルカルボニルアルキルから選択され、
Y
2は、ポリプロピレン(PP)、ポリエステル、ポリ(乳酸)(PLA)、乳酸・グリコール酸共重合体(PLGA)、ポリ(カプロラクトン)(PCL)、ポリスチレン(PS)、ポリアクリレート、ポリ(メタ)アクリレート、ポリアミド(PA)、ポリウレタン(PU)及びその一部からなる群から選択され、及び
Tは、水素、ハロゲン、ヒドロキシル、アミノ、アシル、チオール、任意選択的に置換されたアルキル、任意選択的に置換されたアルケニル、任意選択的に置換されたアルキニル、任意選択的に置換されたアルコキシ、任意選択的に置換されたアルコキシアルキル、任意選択的に置換されたアルキルカルボニル、任意選択的に置換されたアルキルカルボニルアルキル、任意選択的に置換されたカルボキシアルキル、任意選択的に置換されたオキシカルボニルアルキル、任意選択的に置換されたアルキルカルボキシルアルキル又は任意選択的に置換されたアルコキシカルボニルアルキルからなる群から選択される末端基である)
によって表される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
Y
1は、以下の一般式(IIIa)、(IIIb)、(IIIc)、(IIId)、(IIIe)、(IIIf)又は(IIIg):
【化3】
【化4】
(式中、
R
yは、アルキル、アリール又はビアリールから選択され、
R
zは、アルキルであり、
Aは、O又はNR
cであり、R
cは、独立して、H、任意選択的に置換されたアルキル、任意選択的に置換されたアルケニル又は任意選択的に置換されたアルキニルから選択され、
Tは、水素及びメチルからなる群から選択される末端基であり、
n≧1であり、及び
m≧1である)
から選択される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記ベースポリマー粉末は、ベースポリマーペレットの低温粉砕から得られる、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記ベースポリマー粉末は、1mm以下の平均粒径を有する、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記押出成形後の熱分析は、熱重量分析(TGA)及び示差走査熱量測定(DSC)の適用を含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記押出成形は、1つ又は複数の回転スクリューを有する押出機を使用して実施される、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記押出成形された生物活性ポリマーフィラメントは、1.5mm~4.0mmの範囲に入るフィラメント直径を有する、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記ベースポリマー及び/又は生物活性コポリマーに対して押出成形前の熱分析を実施して、前記生物活性ポリマーの前記融解温度及び前記分解開始温度を決定することをさらに含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記ベースポリマー及び生物活性コポリマーは、混合前に真空乾燥されている、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
ベースポリマーと生物活性コポリマーとの前記混合物は、60.0重量%~99.9重量%の前記ベースポリマー及び0.1重量%~40.0重量%の前記生物活性コポリマーを含む、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記ベースポリマーは、ポリプロピレン(PP)、ポリエステル、ポリ(乳酸)(PLA)、乳酸・グリコール酸共重合体(PLGA)、ポリ(カプロラクトン)(PCL)、ポリスチレン(PS)、ポリアクリレート、ポリ(メタ)アクリレート、ポリアミド(PA)、ポリウレタン(PU)及びその組み合わせからなる群から選択される、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
請求項1~15のいずれか一項に記載の方法から得られる生物活性ポリマーフィラメント。
【請求項17】
フィラメント溶解製法(FFF)又は熱溶解積層法(FDM)ベースの三次元印刷方法であって、
請求項16に記載の生物活性ポリマーフィラメントをFFF又はFDMベースの三次元印刷装置に供給すること、
生物活性ポリマーフィラメントに熱を加えて、前記生物活性ポリマーの溶融形態を得ること、及び
プリントベッド上に前記溶融生物活性ポリマーを積層して、印刷された三次元部品又は構造体を形成すること
を含む、フィラメント溶解製法(FFF)又は熱溶解積層法(FDM)ベースの三次元印刷方法。
【請求項18】
前記印刷された三次元部品又は構造体の印刷後分析の1つ又は複数を実施することをさらに含み、前記印刷後分析は、
i.前記印刷された三次元部品又は構造体の、その機械的性質を評価するための機械的分析、
ii.前記印刷された三次元部品又は構造体の、生細胞との生体適合性を評価するための生体適合性分析、
iii.前記印刷された三次元部品又は構造体中の前記生物活性ポリマーの分解開始を評価するための、前記印刷された三次元部品又は構造体に対する熱分析、及び
iv.前記印刷された三次元部品又は構造体中の生物活性コポリマーの存在を評価するための、前記印刷された三次元部品又は構造体の分光分析
からなる群から選択される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
熱を加える前記工程は、前記生物活性ポリマーの所定の融解/軟化温度及び所定の分解開始温度に基づく温度におけるものである、請求項17又は18に記載の方法。
【請求項20】
前記FFF又はFDMベースの三次元印刷装置は、1.5mm~4.0mmの範囲に入るフィラメント直径を有するフィラメント原料のために構成される、請求項17~19のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本開示は、生物活性ポリマーフィラメントを製造する方法に広く関する。本開示は、生物活性ポリマーフィラメント及び前記生物活性ポリマーフィラメントを使用する印刷方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
背景
医学における三次元(3D)印刷技術の採用は、回復期間を早める、特に各患者向けに合わせて作られる生物医学的デバイスの、市場に向けての短期での製造を可能にする可能性を有する。3D印刷技術は、コンピュータ断層撮影(CT)及び磁気共鳴画像法(MRI)によって取得されたスキャンを使用して実際の印刷モデルを研究することにより、医師及び患者が医学症例をよりよく理解することも可能にする。
【0003】
バイオプリンティングとして知られる押出成形ベースの3D印刷方法により、低い作業温度で液状又は粉末状のバイオインクを使用して部品が作成される。バイオインクは、通常、細胞外マトリックス(ECM)成分などの生細胞及び/又は生化学的分子をカプセル化するヒドロゲルからなる。これは、細胞増殖を促進し、組織の増殖及び臓器の発達を支援する。それにも関わらず、バイオインクで製造された印刷部品は、他の製造法を用いて熱可塑性ポリマーで製造された部品と比較して機械的な利点が少ない。共有結合によって製造される化学的に架橋されたヒドロゲルは、バラス効果として知られる材料の膨張に起因して大きい体積変化を受けるため、バイオインクは、容積に関して不定でもある。高いポリマー濃度のヒドロゲルは、必要とされる高い形状一致を提供すると考えられるが、これは、栄養素及び老廃物の輸送を制限し、網状構造の再構築及び構築物の組み込みを妨げ、それにより生物学的に無能力となる。さらに、化学的、物理的及び/又は酵素的メカニズムを調整することによって適切な特性を得ることは、物理的及び生物学的適格性の両方で複雑なバランスが必要とされるため、依然としてヒドロゲルに関して課題である。
【0004】
立体リソグラフィー(SLA)、粉末焼結積層造形(SLS)及びマルチジェットフュージョン方式(MJF)などの他の3D印刷技術は、医学的用途に良好に変換するには極めて大きい欠点を有する。例えば、SLAでは、フォトポリマー樹脂(液体)のみが受け入れられ、それは、一般に、紫外光による硬化を必要とする熱硬化ポリマーであり、開発されている医学的に承認された生物活性ポリマーと化学的に著しく異なる。さらに、SLA法によって製造される部品は、これらの部品が患者の体内に挿入されたとき、残留光開始剤及び/又は未硬化樹脂が存在する場合に細胞毒性リスクをもたらす。
【0005】
SLSに関して、SLSは、さらに粉末材料も使用される費用がかかる印刷技術である。この方法によって印刷された部品は、遊離した物質の存在を示す粉末状表面仕上げを生じる。その上、これにより、遊離した物質のいずれかが直接血流内に入った場合、その結果として炎症が起こり得、患者に合併症を引き起こし得る健康リスクが生じ得る。
【0006】
最後に、MJFは、結合剤技術に基づき、これは、粉末材料及び粉末材料を互いに凝集させる結合剤も使用する。機械的強度の大部分が粉末材料の代わりに結合剤から得られるため、MJFによって印刷された部品は、機械的に激しく損なわれる。印刷部品の高多孔度の存在は、その機械的性質をさらに損なう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記に鑑みて、上記の問題に対処するか又は少なくとも改善することが必要とされている。特に、上記の問題に対処するか又は少なくとも改善する、望ましい生体適合性、生物活性及び機械的性質を有する構造を得るために、3D印刷方法での使用に適した生物活性材料/原料を提供することが必要とされている。かかる生物活性材料/原料を製造する方法も必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
概要
一態様では、生物活性ポリマーフィラメントを製造する方法であって、
ベースポリマー粉末及び生物活性コポリマーを提供すること、
ベースポリマー粉末を生物活性コポリマーと混合して、混合物を得ること、及び
生物活性ポリマーの所定の融解/軟化温度及び所定の分解開始温度に基づく押出成形温度プロファイルにおいて、混合物から生物活性ポリマーフィラメントを押出成形すること、及び
押出成形された生物活性ポリマーフィラメントに対して押出成形後の熱分析を実施して、フィラメントにおける生物活性ポリマーの分解開始を評価すること
を含む方法が提供される。
【0009】
一実施形態では、生物活性コポリマーは、無細胞である。
【0010】
一実施形態では、生物活性コポリマーは、開環メタセシス重合(ROMP)によって得られる。
【0011】
一実施形態では、生物活性コポリマーは、一般式(I)によって表される1つ又は複数の繰り返し単位及び一般式(II)によって表される1つ又は複数の繰り返し単位:
【化1】
(式中、
R
1は、任意選択的に置換されたアルキルであり、
R
2は、単結合、任意選択的に置換されたアルキル、任意選択的に置換されたアルケニル、任意選択的に置換されたアルキニル、任意選択的に置換されたアルコキシアルキル、任意選択的に置換されたアルキルカルボニル又は任意選択的に置換されたアルキルカルボニルアルキルから選択され、
R
3は、H、任意選択的に置換されたアルキル、任意選択的に置換されたアルケニル又は任意選択的に置換されたアルキニルから選択され、
Lは、ヘテロアルキレンであり、
Xは、タンパク質、ペプチド、炭水化物、コラーゲン、ヒアルロン酸、治療/薬物分子及びその誘導体からなる群から選択される生物活性部位を含み、
Y
1は、合成ポリマー又はその一部を含み、及び
Z
1及びZ
2は、それぞれ独立して、CR
aR
b、O、NR
c、SiR
aR
b、PR
a又はSから選択され、R
a、R
b及びR
cは、それぞれ独立して、H、任意選択的に置換されたアルキル、任意選択的に置換されたアルケニル及び任意選択的に置換されたアルキニルからなる群から選択される)
を含むポリ(ノルボルネン)主鎖を有する生物活性合成コポリマーである。
【0012】
一実施形態では、Y
1は、一般式(III):
【化2】
(式中、
Aは、独立して、単結合、オキシ、カルボニル、オキシカルボニル、カルボキシル、任意選択的に置換されたアルコキシ、任意選択的に置換されたアルコキシアルキル、任意選択的に置換されたアルキルカルボニル、任意選択的に置換されたアルキルカルボニルアルキル、任意選択的に置換されたカルボキシアルキル、任意選択的に置換されたオキシカルボニルアルキル、任意選択的に置換されたアルキルカルボキシルアルキル、任意選択的に置換されたアルコキシカルボニルアルキル、N又はNR
cから選択され、R
cは、独立して、H、任意選択的に置換されたアルキル、任意選択的に置換されたアルケニル又は任意選択的に置換されたアルキニルから選択され、
Bは、1,2,3-トリアゾール又はスクシンイミドから選択される環として任意選択的に存在し、
R
5は、単結合、任意選択的に置換されたアルキル、任意選択的に置換されたアルケニル、任意選択的に置換されたアルキニル、任意選択的に置換されたアルコキシアルキル、任意選択的に置換されたアルキルカルボニル又は任意選択的に置換されたアルキルカルボニルアルキルから選択され、
Y
2は、ポリプロピレン(PP)、ポリエステル、ポリ(乳酸)(PLA)、乳酸・グリコール酸共重合体(PLGA)、ポリ(カプロラクトン)(PCL)、ポリスチレン(PS)、ポリアクリレート、ポリ(メタ)アクリレート、ポリアミド(PA)、ポリウレタン(PU)及びその一部からなる群から選択され、及び
Tは、水素、ハロゲン、ヒドロキシル、アミノ、アシル、チオール、任意選択的に置換されたアルキル、任意選択的に置換されたアルケニル、任意選択的に置換されたアルキニル、任意選択的に置換されたアルコキシ、任意選択的に置換されたアルコキシアルキル、任意選択的に置換されたアルキルカルボニル、任意選択的に置換されたアルキルカルボニルアルキル、任意選択的に置換されたカルボキシアルキル、任意選択的に置換されたオキシカルボニルアルキル、任意選択的に置換されたアルキルカルボキシルアルキル又は任意選択的に置換されたアルコキシカルボニルアルキルからなる群から選択される末端基である)
によって表される。
【0013】
一実施形態では、Y
1は、以下の一般式(IIIa)、(IIIb)、(IIIc)、(IIId)、(IIIe)、(IIIf)又は(IIIg):
【化3】
(式中、
R
yは、アルキル、アリール又はビアリールから選択され、
R
zは、アルキルであり、
Aは、O又はNR
cであり、R
cは、独立して、H、任意選択的に置換されたアルキル、任意選択的に置換されたアルケニル又は任意選択的に置換されたアルキニルから選択され、
Tは、水素及びメチルからなる群から選択される末端基であり、
n≧1であり、及び
m≧1である)
から選択される。
【0014】
一実施形態では、ベースポリマー粉末は、ベースポリマーペレットの低温粉砕から得られる。
【0015】
一実施形態では、ベースポリマー粉末は、1mm以下の平均粒径を有する。
【0016】
一実施形態では、押出成形後の熱分析は、熱重量分析(TGA)及び示差走査熱量測定(DSC)の適用を含む。
【0017】
一実施形態では、押出成形は、1つ又は複数の回転スクリューを有する押出機を使用して実施される。
【0018】
一実施形態では、押出成形された生物活性ポリマーフィラメントは、1.5mm~4.0mmの範囲に入るフィラメント直径を有する。
【0019】
一実施形態では、方法は、ベースポリマー及び/又は生物活性コポリマーに対して押出成形前の熱分析を実施して、生物活性ポリマーの融解温度及び分解開始温度を決定することをさらに含む。
【0020】
一実施形態では、ベースポリマー及び生物活性コポリマーは、混合前に真空乾燥されている。
【0021】
一実施形態では、ベースポリマーと生物活性コポリマーとの混合物は、60.0重量%~99.9重量%のベースポリマー及び0.1重量%~40.0重量%の生物活性コポリマーを含む。
【0022】
一実施形態では、ベースポリマーは、ポリプロピレン(PP)、ポリエステル、ポリ(乳酸)(PLA)、乳酸・グリコール酸共重合体(PLGA)、ポリ(カプロラクトン)(PCL)、ポリスチレン(PS)、ポリアクリレート、ポリ(メタ)アクリレート、ポリアミド(PA)、ポリウレタン(PU)及びその組み合わせからなる群から選択される。
【0023】
一態様では、本明細書に開示の方法から得られる生物活性ポリマーフィラメントが提供される。
【0024】
一態様では、フィラメント溶解製法(FFF)又は熱溶解積層法(FDM)ベースの三次元印刷方法であって、
本明細書に開示の生物活性ポリマーフィラメントをFFF又はFDMベースの三次元印刷装置に供給すること、
生物活性ポリマーフィラメントに熱を加えて、生物活性ポリマーの溶融形態を得ること、及び
プリントベッド上に溶融生物活性ポリマーを積層して、印刷された三次元部品又は構造体を形成すること
を含む方法が提供される。
【0025】
一実施形態では、方法は、印刷された三次元部品又は構造体の印刷後分析の1つ又は複数を実施することをさらに含み、印刷後分析は、
i.印刷された三次元部品又は構造体の、その機械的性質を評価するための機械的分析、
ii.印刷された三次元部品又は構造体の、生細胞との生体適合性を評価するための生体適合性分析、
iii.印刷された三次元部品又は構造体中の生物活性ポリマーの分解開始を評価するための、印刷された三次元部品又は構造体に対する熱分析、及び
iv.印刷された三次元部品又は構造体中の生物活性コポリマーの存在を評価するための、印刷された三次元部品又は構造体の分光分析
からなる群から選択される。
【0026】
一実施形態では、熱を加える工程は、生物活性ポリマーの所定の融解/軟化温度及び所定の分解開始温度に基づく温度におけるものである。
【0027】
一実施形態では、FFF又はFDMベースの三次元印刷装置は、1.5mm~4.0mmの範囲に入るフィラメント直径を有するフィラメント原料のために構成される。
【0028】
定義
本明細書で使用される「生物活性」等の用語は、生細胞若しくは組織に対する又は生細胞若しくは組織からの作用若しくは相互作用又は反応、好ましくは望ましい若しくはポジティブな反応を有する能力を意味する。これらの作用としては、限定されないが、組織の取り込み、代謝又は生理学的反応が挙げられる。生物活性は、実験室条件においてインビボ(動物若しくはヒトの研究)又はエクスビボ/インビトロ(例えば、細胞若しくは組織培養)での方法論から評価することができる。本明細書に開示の生物活性コポリマー又は生物活性ポリマーフィラメントの種々の実施形態では、生物学的効果は、一般に、細胞増殖の改善など、ポジティブであり、望ましいものである。
【0029】
本明細書で使用される「生体適合性」という用語は、毒性反応、免疫反応、損傷等の有害な生理学的応答を実質的に又は有意に誘発することなく、生体系又は生体系の一部と適合性である特性を広く意味する。かかる生体系又はその一部としては、血液、細胞、組織、臓器等が挙げられる。
【0030】
本明細書で使用される「ポリマー」という用語は、繰り返し単位を含む化学的化合物を意味し、重合プロセスによって製造される。ポリマーを含む単位は、通常、モノマー及び/又はマクロモノマーから誘導される。ポリマーは、通常、多くの構成単位の繰り返しを含む。
【0031】
本明細書で使用される「モノマー」又は「マクロモノマー」という用語は、かかる単位の1つ又は複数に共有結合してポリマーを形成し得る化学的単位を意味する。
【0032】
「結合」という用語は、化合物又は分子における原子間の連結を意味する。結合は、単結合、二重結合又は三重結合であり得る。
【0033】
以下の多くの置換基の定義では、「基は、末端基又は架橋基であり得る」と述べられる。これは、この用語の使用が、その基が末端基/部位である状況及びその基が分子の他の2つの部分間のリンカーである状況を包含することを意図することを意図される。一例として、1個の炭素原子を有する「アルキル」という用語を用いた場合、末端基として存在する場合、1個の炭素原子を有する「アルキル」という用語は、-CH3を意味し得、架橋基として存在する場合、1個の炭素原子を有する「アルキル」という用語は、-CH2-等を意味し得ることが理解されるであろう。
【0034】
基又は基の一部としての「アルキル」という用語は、1~20個の炭素原子、1~10個の炭素原子、1~6個の炭素原子又は1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19若しくは20個の炭素原子を有する直鎖又は分枝鎖脂肪族炭化水素を意味する。適切な直鎖及び分枝鎖アルキル置換基の例としては、メチル、エチル、n-プロピル、2-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、s-ブチル、t-ブチル、ヘキシル、アミル、1,2-ジメチルプロピル、1,1-ジメチルプロピル、ペンチル、イソペンチル、ヘキシル、4-メチルペンチル、1-メチルペンチル、2-メチルペンチル、3-メチルペンチル、2,2-ジメチルブチル、3,3-ジメチルブチル、1,2-ジメチルブチル、1,3-ジメチルブチル、1,2,2-トリメチルプロピル、1,1,2-トリメチルプロピル、2-エチルペンチル、3-エチルペンチル、ヘプチル、1-メチルヘキシル、2,2-ジメチルペンチル、3,3-ジメチルペンチル、4,4-ジメチルペンチル、1,2-ジメチルペンチル、1,3-ジメチルペンチル、1,4-ジメチルペンチル、1,2,3-トリメチルブチル、1,1,2-トリメチルブチル、1,1,3-トリメチルブチル、5-メチルヘプチル、1-メチルヘプチル、オクチル、ノニル、デシル等が挙げられる。その基は、末端基又は架橋基であり得る。
【0035】
基又は基の一部としての「アルケニル」という用語は、少なくとも1個の炭素間二重結合を含有し、及び鎖に2~20個の炭素原子、2~10個の炭素原子、2~6個の炭素原子又は2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19若しくは20個の炭素原子を有する、直鎖又は分枝鎖であり得る脂肪族炭化水素基を意味する。その基は、複数の二重結合を含有し得、及び各二重結合に関する配置は、独立して、E又はZである。例示的なアルケニル基としては、限定されないが、エテニル、ビニル、アリル、1-メチルビニル、1-プロペニル、2-プロペニル、2-メチル-1-プロペニル、2-メチル-1-プロペニル、1-ブテニル、2-ブテニル、3-ブテニル、1,3-ブタジエニル、1-ペンテニル、2-ペンテニル、3-ペンテニル、4-ペンテニル、1,3-ペンタジエニル、2,4-ペンタジエニル、1,4-ペンタジエニル、3-メチル-2-ブテニル、1-ヘキセニル、2-ヘキセニル、3-ヘキセニル、1,3-ヘキサジエニル、1,4-ヘキサジエニル、2-メチルペンテニル、1-ヘプテニル、2-ヘプテニル、3-ヘプテニル、1-オクテニル、2-オクテニル、3-オクテニル、1-ノネニル、2-ノネニル、3-ノネニル、1-デセニル、2-デセニル、3-デセニル等が挙げられる。その基は、末端基又は架橋基であり得る。
【0036】
基又は基の一部としての「アルキニル」という用語は、少なくとも1個の炭素間三重結合を含有し、及び鎖に2~20個の炭素原子、2~10個の炭素原子、2~6個の炭素原子又は2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19若しくは20個の炭素原子を有する、直鎖又は分枝鎖であり得る脂肪族炭化水素基を意味する。その基は、複数の三重結合を含有し得る。例示的なアルキニル基としては、限定されないが、アセチレニル、プロピニル、1-ブチニル、2-ブチニル、3-ブチニル、1-ペンチニル、2-ペンチニル、3-メチル-1-ブチニル、4-ペンチニル、1-ヘキシニル、2-ヘキシニル、5-ヘキシニル、1-へプチニル、2-へプチニル、6-へプチニル、1-オクチニル、2-オクチニル、7-オクチニル、1-ノニニル、2-ノニニル、8-ノニニル、1-デシニル、2-デシニル、9-デシニル等が挙げられる。その基は、末端基又は架橋基であり得る。
【0037】
本明細書で使用される「アルキレン」という用語は、二価である脂肪族炭化水素基(例えば、本明細書で定義されるアルキル、アルケニル又はアルキニル)を広く意味することが意図される。アルキレン基は、直鎖、分枝鎖、飽和、不飽和、環状、非環式、置換及び/又は未置換基であり得る。アルキレンの例としては、メチレン(すなわち-CH2-又は1個の炭素原子を有する「アルキレン」)、エチレン(すなわち-CH2CH2-又は2個の炭素原子を有する「アルキレン」)、プロピレン(すなわち3個の炭素原子を有する「アルキレン」)等が挙げられる。
【0038】
本明細書で使用される「ヘテロアルキレン」という用語は、1つ又は複数の-CH2-が、O、NR、Si、P又はS(ここで、Rは、本明細書で定義される水素又はアルキルである)から選択されるヘテロ原子で置換されたアルキレンを意味する。「ヘテロアルキレン」という用語は、直鎖状、分枝鎖又は環状であり得、最大で500個の炭素原子を含有する。
【0039】
本明細書で使用される、基又は基の一部としての「アリール」という用語は、(i)1個の環に5~12個又は5、6、7、8、9、10、11若しくは12個の炭素原子を好ましくは有する、任意選択的に置換された単環式又は縮合多環式芳香族炭素環(すべて炭素である環原子を有する環構造)、(ii)フェニル及び-C5~7-シクロアルキル又は-C5~7-シクロアルケニル基が互いに縮合されて、テトラヒドロナフチル、インデニル又はインダニルなどの環状構造が形成される、任意選択的に置換された部分飽和二環式芳香族炭素環式部位を意味する。その基は、末端基又は架橋基であり得る。アリール基の例としては、フェニル、ナフチル等のC6~C18アリール基が挙げられる。本明細書で使用される「ビアリール」という用語は、本明細書で定義される二環式「アリール」を意味する。
【0040】
本明細書で使用される「アルコキシ」という用語は、直鎖又は分枝鎖アルキルオキシ基を意味する。例としては、メトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、イソプロポキシ、tert-ブトキシ等が挙げられる。
【0041】
本明細書で使用される「アルコキシアルキル」という用語は、-R-O-R’(ここで、R及びR’は、本明細書で定義されるアルキルである)を含有する基を広く意味することが意図される。その基は、末端基又は架橋基であり得る。
【0042】
本明細書で使用される「アルキルカルボニル」という用語は、-R-C(=O)-(ここで、Rは、本明細書で定義されるアルキルである)を含有する基を広く意味することが意図される。その基は、末端基又は架橋基であり得る。
【0043】
本明細書で使用される「アルキルカルボニルアルキル」という用語は、-R-C(=O)-R’(ここで、R及びR’は、本明細書で定義されるアルキルである)を含有する基を広く意味することが意図される。その基は、末端基又は架橋基であり得る。
【0044】
本明細書で使用される「カルボキシルアルキル」という用語は、-C(=O)-O-R(ここで、Rは、本明細書で定義されるアルキルである)を含有する基を広く意味することが意図される。その基は、末端基又は架橋基であり得る。
【0045】
本明細書で使用される「オキシカルボニルアルキル」という用語は、-O-C(=O)-R(ここで、Rは、本明細書で定義されるアルキルである)を含有する基を広く意味することが意図される。その基は、末端基又は架橋基であり得る。
【0046】
本明細書で使用される「アルキルカルボキシルアルキル」という用語は、-R-C(=O)-O-R’(ここで、R及びR’は、本明細書で定義されるアルキルである)を含有する基を広く意味することが意図される。その基は、末端基又は架橋基であり得る。
【0047】
本明細書で使用される「アルコキシカルボニルアルキル」という用語は、-R-O-C(=O)-R’(ここで、R及びR’は、本明細書で定義されるアルキルである)を含有する基を広く意味することが意図される。その基は、末端基又は架橋基であり得る。
【0048】
本明細書で使用される「オキシ」という用語は、-O-を含有する基を広く意味することが意図される。
【0049】
本明細書で使用される「カルボニル」という用語は、-C(=O)を含有する基を広く意味することが意図される。
【0050】
本明細書で使用される「オキシカルボニル」という用語は、-O-C(=O)-を含有する基を広く意味することが意図される。
【0051】
本明細書で使用される「カルボキシル」という用語は、-C(=O)-O-R(ここで、Rは、水素又は有機基である)を含有する基を広く意味することが意図される。
【0052】
「ハロゲン」という用語は、塩素、フッ素、臭素又はヨウ素を表す。「ハロ」という用語は、クロロ、フルオロ、ブロモ又はヨードを表す。
【0053】
「アミン基」等の用語は、-NR2(ここで、Rは、独立して、水素又は有機基である)を含有する基を広く意味することが意図される。その基は、末端基又は架橋基であり得る。
【0054】
「アミド基」等の用語は、-C(=O)NR2(ここで、Rは、独立して、水素又は有機基である)を含有する基を広く意味することが意図される。その基は、末端基又は架橋基であり得る。
【0055】
本明細書で使用される「複素環式」という用語は、2つ以上の異なる種類の原子が連結して、少なくとも1つの環が形成される構造を広く意味する。例えば、複素環式環は、炭素原子と、酸素(O)、窒素(N)又は(NR)及び硫黄(S)(ここで、Rは、独立して、水素又は有機基である)から選択される、少なくとも別つの原子(すなわちヘテロ原子)とによって形成され得る。その用語としては、限定されないが、飽和及び不飽和5員環並びに飽和及び不飽和6員環も挙げられる。複素環式構造を有する基の例としては、限定されないが、フラン、チオフェン、1H-ピロール、2H-ピロール、1-ピロリン、2-ピロリン、3-ピロリン、1-ピラゾリン、2-ピラゾリン、3-ピラゾリン、2-イミダゾリン、3-イミダゾリン、4-イミダゾリン、ピラゾール、イミダゾール、オキサゾール、イソオキサゾール、チアゾール、イソチアゾール、1,2,3-トリアゾール、1,2,4-トリアゾール、1,2,3-オキサジアゾール、二置換1,2,4-オキサジアゾール、1,2,5-オキサジアゾール、1,3,4-オキサジアゾール、1,2,3-チアジアゾール、1,2,4-チアジアゾール、1,2,5-チアジアゾール、1,3,4-チアジアゾール、テトラヒドロフラン、テトラヒドロチオフェン、ピロリジン、1,3-ジオキソラン、1,2-オキサチオラン、1,3-オキサチオラン、ピラゾリジン、イミダゾリジン、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、1,2-オキサジン、1,3-オキサジン、1,4-オキサジン、チアジン、1,2,3-トリアジン、1,2,4-トリアジン、1,3,5-トリアジン、2H-ピラン、4H-ピラン、2-ピロン、4-ピロン、1,4-ジオキシン、2H-チオピラン、4H-チオピラン、テトラヒドロピラン、チアン、ピペリジン、1,4-ジオキサン、1,2-ジチアン、1,3-ジチアン、1,4-ジチアン、1,3,5-トリチアン、ピペラジン、モルホリン、チオモルホリン等が挙げられる。
【0056】
本明細書で使用される「ポリ(アルキレングリコール)」という用語は、繰り返し単位においてエーテル基(すなわち-O-R-、ここで、Rは、本明細書で定義されるアルキレンである)を含有するポリマーを広く意味すると意図される。種々の実施形態では、ポリ(アルキレングリコール)という用語は、「ポリグリコール」、「ポリエーテル」又はポリ(アルキレンオキシド)という用語と区別なく使用され得る。ポリ(アルキレングリコール)の例としては、ポリ(エチレングリコール)(PEG)(又はポリエチレンオキシド)、ポリ(プロピレングリコール)(PPG)(又はポリプロピレンオキシド)、ポリ(ブチレングリコール)(又はポリブチレンオキシド)等が挙げられる。
【0057】
化学構造又は部位を説明するために使用される場合、「置換された」という用語は、その水素原子の1つ又は複数が化学部位又は官能基、例えばアルコール、アルコキシ、アルカノイルオキシ、アルコキシカルボニル、アルケニル、アルキル(例えば、メチル、エチル、プロピル、t-ブチル)、アルキニル、アルキルカルボニルオキシ(-OC(O)アルキル)、アミド(-C(O)NH-アルキル-又は-アルキルNHC(O)アルキル)、アミン(アルキルアミノ、アリールアミノ、アリールアルキルアミノなど)、アリール、アリールオキシ、アゾ、カルバモイル(-NHC(O)O-アルキル-又は-OC(O)NH-アルキル)、カルバミル(例えば、CONH2並びにCONH-アルキル、CONH-アリール及びCONH-アリールアルキル)、カルボキシル、カルボン酸、シアノ、エステル、エーテル(例えば、メトキシ、エトキシ)、ハロ、ハロアルキル(例えば、-CCl3、-CF3、-C(CF3)3)、ヘテロアルキル、イソシアネート、イソチオシアネート、ニトリル、ニトロ、ホスホジエステル、スルフィド、スルホンアミド(例えば、SO2NH2)、スルホン、スルホニル(アルキルスルホニル、アリールスルホニル及びアリールアルキルスルホニルを含む)、スルホキシド、チオール(例えば、スルフヒドリル、チオエーテル)又は尿素(-NHCONH-アルキル-)で置換された化学構造又は部位を意味する。
【0058】
本明細書で使用される「ミクロ」という用語は、約1ミクロン~約1000ミクロンの寸法を広く包含すると解釈される。
【0059】
本明細書で使用される「ナノ」という用語は、約1000nm未満、約500nm未満、約100nm未満又は約50nm未満の寸法を広く包含すると解釈される。
【0060】
本明細書で使用される「結合された」又は「連結された」という用語は、別段の指定がない限り、直接連結されること又は1つ若しくは複数の中間手段を介して連結されることのいずれも含むことが意図される。
【0061】
本明細書で使用される「~と関連する」という用語は、2つの要素に言及する場合、2つの要素間の広い関連性を意味する。関連性としては、限定されないが、物理的、化学的又は生物学的関連性が挙げられる。例えば、要素Aが要素Bと関連する場合、要素A及びBは、互いに直接的若しくは間接的に結合され得るか、又は要素Aは、要素Bを含有し得、逆の場合も同様である。
【0062】
本明細書で使用される「隣接」という用語は、2つの要素に言及する場合、1つの要素が別の要素の近傍にあることを意味し、限定されないが、その要素が互いに接触するか、又はその間に配置される1つ若しくは複数のさらなる要素によって分離されている要素をさらに含み得る。
【0063】
「及び/又は」、例えば「X及び/又はY」という用語は、「X及びY」又は「X又はY」のいずれかを意味すると理解され、両方の意味又はいずれかの意味に対する明確な支持を提供すると解釈すべきである。
【0064】
さらに、本明細書における説明において、使用される場合には常に、「実質的に」という単語は、限定されないが、「全体的に」又は「完全に」等を包含すると理解される。さらに、「含むこと」、「含む」などの用語は、使用される場合には常に、明示されていない他の成分に加えて、かかる用語の後に記載の要素/成分をそれらが広く包含する点から、非限定的な説明的文言であることが意図される。例えば、「含むこと」が使用される場合、「1つ」の特徴の言及は、その特徴の「少なくとも1つ」の言及であることも意図される。「からなること」、「からなる」等の用語は、適切な文脈において、「含むこと」、「含む」等の用語のサブセットとして見なされ得る。したがって、「含むこと」、「含む」等の用語を用いた本明細書に開示の実施形態では、これらの実施形態は、「からなること」、「からなる」等の用語を用いた対応する実施形態の教示を提供することが理解されるであろう。さらに、使用する場合には常に、「約」、「およそ」等の用語は、通常、適正な変動、例えば開示の値の+/-5%の変動、又は開示の値の4%の変動、又は開示の値の3%の変動、開示の値の2%の変動又は開示の値の1%の変動を意味する。
【0065】
さらに、本明細書における記載では、特定の値がある範囲で開示され得る。ある範囲の終点を示す値は、好ましい範囲を例示することが意図される。ある範囲が記載される場合には常に、その範囲は、すべての可能性のある部分的範囲及びその範囲内の個々の数値を包含及び教示することが意図される。すなわち、ある範囲の終点は、柔軟性のない限定として解釈すべきではない。例えば、1%~5%の範囲の記載は、1%~2%、1%~3%、1%~4%、2%~3%等の部分的範囲並びに1%、2%、3%、4%及び5%などのその範囲内の値を個々に具体的に開示することが意図される。その範囲内の個々の値は、整数、分数及び小数も含むと理解される。さらに、ある範囲が記載される場合には常に、その範囲は、示される終点数値から、追加の小数点以下2桁までの値又は有効数字の値(適切な場合)を包含及び教示することも意図される。例えば、1%~5%の範囲の記載は、1.00%~5.00%の範囲、さらに1.0%~5.0%の範囲及びその範囲にわたるすべてのその中間値(1.01%、1.02%...4.98%、4.99%、5.00%及び1.1%、1.2%...4.8%、4.9%、5.0%等)を具体的に開示することが意図される。上記の具体的な開示の意図は、ある範囲の深さ/広さに該当する。
【0066】
さらに、一部の実施形態を説明する場合、本開示は、工程の特定の順序として方法及び/又はプロセスを開始する場合がある。しかしながら、特に必要とされない限り、その方法又はプロセスは、開示の工程の特定の順序に限定すべきではないことが理解されるであろう。工程の他の順序が可能であり得る。本明細書に開示される工程の特定の順序は、過度な限定として解釈すべきではない。特に必要とされない限り、本明細書に開示の方法及び/又はプロセスは、記述された順序で工程が行われると限定されるべきではない。工程の順序は、変更され得、依然として本開示の範囲内にある。
【0067】
さらに、本開示は、本明細書に記述される特徴/特性の1つ又は複数を有する実施形態を提供するが、これらの特徴/特性の1つ又は複数は、他の代替実施形態で否認されてもよく、本開示は、かかる否認への支持及びこれらの関連する代替実施形態を提供することが理解されるであろう。
【0068】
実施形態の説明
生物活性ポリマーフィラメントを製造する方法、前記生物活性ポリマーフィラメント及び三次元印刷のために生物活性ポリマーフィラメントを使用する方法の例示的な非限定的実施形態が以下に開示される。
【0069】
生物活性ポリマーフィラメントを製造する方法
種々の実施形態では、生物活性ポリマーフィラメントを製造する方法であって、ベースポリマー粉末及び生物活性コポリマーを提供すること、ベースポリマー粉末を生物活性コポリマーと混合/ブレンドして、配合物/混合物を得ること、及び生物活性ポリマーの所定の融解/軟化温度及び所定の分解開始温度に基づく押出成形温度プロファイルにおいて、配合物/混合物から生物活性ポリマーフィラメントを押出成形することを含む方法が提供される。種々の実施形態では、押出成形温度プロファイルは、ベースポリマー又は生物活性ポリマーの所定の融解/軟化温度のいずれか高い方に基づく。例えば、ベースポリマーの融解温度が生物活性ポリマーの融解温度よりも高い場合、押出成形温度プロファイルは、ベースポリマーの所定の融解/軟化温度に基づき、逆の場合も同様である。
【0070】
種々の実施形態では、生物活性コポリマーは、粉末形態で存在する。したがって、生物活性コポリマーを粉末状に変換する追加の/さらなる工程が必要とされない/必要ではない場合があることが理解されるであろう。
【0071】
種々の実施形態では、生物活性ポリマーフィラメントは、フィラメント溶解製法(FFF)又は熱溶解積層法(FDM)ベースの3D印刷の原料としての使用に適している。FFFは、ポリマーフィラメント原料を一般に用いる押出成形ベースの3D印刷技術である。それは、いくつかの層に関して機械によって設定される積層パスに従い、部品が完全に三次元空間に印刷されるまで溶融ポリマーを二次元面で積層する。FFF技術では、通常、熱可塑性ポリマーで製造されたフィラメントが使用され、熱伝達特性及びレオロジーは、優れた品質の印刷部品に必要な重要な性質である。機械的性質に影響し得る印刷パラメーターに関して、優れた制御が可能になるため、FFFは、他の3D印刷技術よりも好ましい。しかしながら、FFF技術で用いられる温度が高いため、タンパク質を変性し、多糖類又はオリゴペプチドを分解し、細胞を殺すであろうことから、生細胞又は温度の影響を受けやすい他の生体分子をそのフィラメントに組み込むことができない。有利なことに、本明細書に開示の生物活性ポリマーフィラメントの種々の実施形態では、望ましい機械的特性及び生物学的特性を提供し、その特性から、FFF 3D印刷技術を用いた医療関連構造体の印刷における使用に適している。
【0072】
種々の実施形態では、生物活性ポリマーフィラメント及び/又は生物活性コポリマーは、無細胞であるか又は細胞を実質的に欠いている。有利なことに、種々の実施形態では、これらの生物学的部位は、フィラメント原料を形成するための押出成形プロセス中に細胞死を非常に受けやすいため、生物活性ポリマーフィラメント及び/又は生物活性コポリマーは、生物活性を付与するために、幹細胞又は成長因子などの高温の影響を受けやすい生物学的部位に依存しない。さらに有利なことに、生物活性ポリマーフィラメント及び/又は生物活性コポリマーの実施形態は、依然として宿主細胞を刺激して増殖させることもでき、組織成長が促進される。
【0073】
種々の実施形態では、生物活性コポリマーは、生物活性コポリマーに/生物活性コポリマー上に、結合/架橋(例えば、化学的結合/架橋)される生物学的分子又は生体分子を含む。種々の実施形態では、生物活性ポリマーフィラメント及び/又は生物活性コポリマーは、遊離(又は未結合/非結合/未架橋)オリゴペプチド又はオリゴ糖などの遊離(又は未結合/非結合/未架橋)生体分子を実質的に含まないことが理解されるであろう。
【0074】
種々の実施形態では、この方法は、押出成形された生物活性ポリマーフィラメントに対して押出成形後の熱分析を実施して、フィラメントにおける生物活性ポリマー/コポリマーの分解開始を評価することをさらに含む。押出成形は、ポリマーを分解し得る高熱及び高せん断を伴い、次に熱的挙動の変化を引き起こし得る熱機械的プロセスであることが理解されるであろう。熱的挙動の変化は、続いて、材料の機械的性質及びメルトフロー挙動に直接影響する分子量の変化に関連し得る。例えば、バイオ添加剤/生物活性コポリマーにおける合成ポリマー側鎖は、種々の実施形態において、ベースポリマーに対して低い分子量であり得、これにより押出成形プロセスのために分解を受けやすくなり得る。したがって、フィラメント押出成形プロセス後のバイオ添加剤/生物活性コポリマーが分解しないことを確実にするための、押出成形された生物活性ポリマーフィラメントに対する押出成形後の熱分析の実施により、3D印刷前にフィラメントの品質が有利に確保される。
【0075】
種々の実施形態では、生物活性コポリマーは、開環メタセシス重合(ROMP)によって得られる。例えば、生物活性コポリマーは、ROMP法によって製造される生体分子のコポリマー及び合成ポリマーである。合成ポリマーは、使用されるベースポリマーに類似していても又はしていなくてもよい。コラーゲン、ペプチド(例えば、オリゴペプチド)、糖分子(例えば、オリゴ糖)及びヒアルロン酸などの生体分子が一部の実施形態で好ましい。生物活性コポリマーのさらなる例を以下に提供する。
【0076】
種々の実施形態では、「生物活性コポリマー」という用語は、「バイオ添加剤」という用語と区別なく使用され、ROMP法によって製造される生体分子のコポリマー及び合成ポリマーを包含することが意図される。
【0077】
種々の実施形態では、ベースポリマー粉末は、ベースポリマーペレットのサイズを低減するための物理的プロセスから得られる。かかる物理的プロセスは、粉末状ベースポリマーを得るための微粉砕、粉砕、低温粉砕/凍結粉砕又はその組み合わせを含み得る。したがって、種々の実施形態では、方法は、ベースポリマー粉末を得るための微粉砕、粉砕、低温粉砕/凍結粉砕又はその組み合わせの1つ又は複数を実施することをさらに含み得る。一例では、ベースポリマー粉末は、ベースポリマーペレットの低温粉砕/凍結粉砕から得られる。凍結粉砕/低温粉砕は、アルゴン、ヘリウム、水素、窒素及び酸素からなる群から選択される低温液体の存在下で実施され得る。有利なことに、本明細書に開示の方法の実施形態において、凍結粉砕/低温粉砕/摩砕を使用することにより、脆化プロセスが促進され、及び/又はポリマーの分解が防止される。使用されるクライオジェン/低温液体(例えば、液体窒素)は、温度を著しく下げることができ(<-196℃)、次にポリマー/材料の脆化を誘発し得、続いて粉砕プロセスが容易となることが理解されるであろう。使用されるクライオジェン/低温液体は、高エネルギー粉砕プロセス中に生じるポリマー/材料の熱分解を防ぎ得ることも理解されるであろう。
【0078】
種々の実施形態では、ベースポリマー粉末は、約1mm以下、約0.50mm~約1mm、約0.55mm~約0.95mm、約0.50mm~約0.90mm、約0.50mm~約0.85mm、約0.50mm~約0.80mm、約0.60mm~約1mm、約0.65mm~約1mm又は約0.70mm~約0.95mmの平均粒径を有する。種々の実施形態では、ベースポリマー粉末は、約0.10mm~約1.00mm、約0.11mm~約0.99mm、約0.12mm~約0.98mm、約0.13mm~約0.97mm、約0.14mm~約0.96mm、約0.15mm~約0.95mm、約0.20mm~約0.90mm、約0.25mm~約0.85mm、約0.30mm~約0.80mm、約0.35mm~約0.75mm、約0.40mm~約0.70mm、約0.45mm~約0.65mm、約0.50mm~約0.60mm、約0.51mm~約0.59mm、約0.52mm~約0.58mm、約0.53mm~約0.57mm、約0.54mm~約0.56mm又は約0.55mmの平均粒径を有する。
【0079】
種々の実施形態では、ベースポリマー及び/又は生物活性コポリマーは、混合前に乾燥されている(例えば、真空乾燥)。したがって、種々の実施形態では、方法は、ベースポリマー及び/又は生物活性コポリマーを、それらを混合する前に乾燥(例えば、真空乾燥)させることをさらに含む。例えば、凍結粉砕/低温粉砕がベースポリマーペレットで行われ、ベースポリマー粉末が得られた後、生物活性コポリマーと混合する前にベースポリマー粉末を乾燥させる(例えば、真空乾燥させる)。有利なことに、真空乾燥は、不活性雰囲気を提供し、それにより水分が著しく低減され得、より有効に乾燥させることが可能となる。さらに、空気流が真空乾燥中に存在しないため、粉末状の材料は、吹き飛ばされず、そうでなければ材料の損失が生じると考えられる。乾燥工程は、周囲温度若しくは室温又は約35℃~約100℃、約40℃~約95℃、約45℃~約90℃、約40℃~約85℃若しくは約45℃~約80℃の温度で実施され得る。乾燥工程は、約4時間、約5時間、約6時間、約7時間、約8時間、約9時間、約10時間、約11時間、約12時間、約4時間~約12時間、約24時間、約36時間又は約48時間の期間にわたって実施され得る。種々の実施形態では、乾燥工程は、約-50mmHg~約-10mmHg、約-40mmHg~約-20mmHg又は約-40mmHgの乾燥圧力での真空乾燥を含む。
【0080】
種々の実施形態では、この方法は、生物活性コポリマー及び/又はベースポリマーに対して押出成形前の熱分析を実施して、生物活性ポリマー/コポリマー及び/又はベースポリマーの融解温度及び分解開始温度を決定することをさらに含む。
【0081】
この方法は、そのサイズを低減する(例えば、低温粉砕/凍結粉砕)前にベースポリマーペレットに対して熱分析を実施して粉末形態を得ること、及び任意選択的に粉末形態を得た(例えば、低温粉砕/凍結粉砕)後、ベースポリマーペレットに対して熱分析を実施してすることをさらに含み得る。有利なことに、熱分析は、サイズ低減(例えば、低温粉砕/凍結粉砕)前及び/又はサイズ低減後、及び/又はフィラメント押出成形前にベースポリマーの熱的性質を決定するのに有用であり得、その結果、ベンチマークが得られ、続いて得られたフィラメント原料又は印刷構造体の期待される物理的及び/又は熱的性質(例えば、ベースポリマーの元の機械的性質に基づく)からの減損があるか否かに関わらずに評価がなされ得る。熱分析は、ベースポリマー(例えば、ペレット状又は粉末状)の融解温度(存在する場合)及び/又は分解温度についての有用な情報も提供し、その結果、例えば決定されたベースポリマーの融解温度及び分解開始温度に基づいて、特定のベースポリマーのために押出成形温度プロファイルがカスタマイズされ得る。例えば、押出成形温度プロファイルは、押出成形温度がベースポリマーの融解/軟化温度と分解温度との間にあるようにカスタマイズされ得る。一部の実施形態では、ベースポリマーの融解/軟化温度及び分解温度の決定は、既に以前に完了しているか、又はかかる情報が既に既知の/確立されたポリマーに容易に利用可能であることも理解されるであろう。したがって、かかる実施形態では、かかる能動的な決定段階を有することは、本開示の方法にとって任意選択的であり得る。
【0082】
同様に、方法は、ベースポリマーと混合する前及び/又はフィラメント押出成形前に生物活性コポリマーに対して熱分析を実施することをさらに含み得る。有利なことに、熱分析は、ベースポリマーと混合する前及び/又はフィラメント押出成形前に、生物活性コポリマーの熱的性質を決定するのに有用であり得、その結果、ベンチマークが得られ、続いて得られたフィラメント原料又は印刷構造体の期待される物理的及び/又は熱的性質(例えば、押出成形前の生物活性コポリマーの特性に基づく)において減損があるか否かに関わらずに評価がなされ得る。熱分析は、生物活性ポリマー/コポリマーの融解温度及び/又は分解温度についての有用な情報も提供し得、その結果、例えば決定されたベースポリマーの融解温度及び分解開始温度に基づいて、特定の生物活性コポリマーのために押出成形温度プロファイルがカスタマイズされ得る。例えば、押出成形温度プロファイルは、押出成形温度が生物活性ポリマー/コポリマーの融解/軟化温度と分解温度との間にあるようにカスタマイズされ得る。種々の実施形態では、かかる能動的な決定段階が本明細書に開示の方法に存在する。有利なことに、本明細書に開示の方法においてかかる能動的な決定段階を採用/利用することにより、フィラメント押出成形中の生物活性ポリマー/コポリマーの分解が防止され、フィラメントにおける生物活性コポリマー/バイオ添加剤の生物活性が保存される。ポリマーに/上に連結/結合された生体分子は、熱処理中に失われ/溶融され/分解され得るため、したがってかかる状況が起こり得る温度を決定することが重要であり得る。一部の実施形態では、ベースポリマーの融解/軟化温度及び分解温度の決定は、既に以前に完了しているか、又はかかる情報が既にかかるポリマーに容易に利用可能であることも理解されるであろう。したがって、かかる実施形態では、かかる能動的な決定段階を有することは、本開示の方法にとって任意選択的であり得る。
【0083】
種々の実施形態では、押出成形温度プロファイルは、ベースポリマーと生物活性ポリマーとの両方の所定の融解/軟化温度及び所定の開始分解温度に基づく。したがって、生物活性コポリマーの融解/軟化温度と分解開始温度との間にあり、及びさらにベースポリマー(例えば、ベースポリマー粉末)の融解/軟化温度と分解開始温度との間にあるように押出成形温度プロファイルがカスタマイズされ得る。
【0084】
種々の実施形態では、本明細書に開示の熱分析は、熱重量分析(TGA)及び示差走査熱量測定(DSC)の1つ又は複数を含む。種々の実施形態では、熱分析は、TGA及びDSCの適用を含む。TGA及びDSCの適用は、非同時又は同時であり得る。例えば、TGA及びDSCを含む熱分析は、非同時に(例えば、TGA-DSC)又は同時に(例えば、STA)実施され得る。種々の実施形態では、熱分析は、TGA及びDSCの同時適用による同時熱分析(STA)を含む。例えば、押出成形後の熱分析は、STAを含み得る。
【0085】
種々の実施形態では、押出成形は、一軸以上の回転スクリューを有する押出機を使用して実施される。押出機は、一軸以上又は二軸以上の回転スクリューを有し得る。例えば、押出機は、一軸スクリュー押出機であり得る。有利なことに、一軸スクリュー押出機とは対照的に、二軸以上の回転スクリューを備える押出機は、ベースポリマー及び生物活性コポリマーの優れた及び均一な混合/ブレンドを達成し得る。一例では、押出機は、二軸スクリュー押出機(TSE)である。別の例では、押出機は、多軸押出機である。二軸及び/又は多軸押出機は、互いに噛み合うか又は互いに噛み合わない同時回転又は逆回転であり得る。各スクリューは、供給、混合又は吐出を支持するための多軸スクリューで製造され得る。種々の実施形態では、溶融ブレンド材料を混練して均一性を達成するため、各スクリューに沿った混合エレメントは、固有の利点を提供する。例えば、種々の実施形態では、これらの要素は、各スクリューに沿って異なる3つのセグメントで形成し、十分な混合プロセスが与えられる。
【0086】
種々の実施形態では、押出機は、圧力をかけ、及び一定のアウトプットを確実にするためのメルトポンプを含む。押出機のノズルサイズ及び押出機のメルトポンプは、約1.5mm~約4.0mm、約1.6mm~約3.9mm、約1.7mm~約3.5mm、約1.71mm~約3.4mm、約1.72mm~約3.3mm、約1.73mm~約3.2mm、約1.74mm~約3.1mm、約1.75mm~約3.0mm、約1.76mm~約2.95mm、約1.77mm~約2.90mm、約1.78mm~約2.88mm、約1.79mm~約2.86mm又は約1.80mm~約2.85mmの範囲に入るフィラメント直径を可能にする直径を有し得る。押出機又は押出機のメルトポンプは、約1mm~約4mm、約1mm、約1.5mm、約2mm、約2.5mm、約3mm、約3.5mm又は約4mmの範囲に入るノズル直径を有し得る。押出機又は押出機のメルトポンプは、約1.00mm~約4.00mm、約1.05mm~約3.95mm、約1.10mm~約3.90mm、約1.15mm~約3.85mm、約1.20mm~約3.80mm、約1.25mm~約3.75mm、約1.30mm~約3.70mm、約1.35mm~約3.65mm、約1.40mm~約3.60mm、約1.45mm~約3.55mm、約1.50mm~約3.50mm、約1.55mm~約3.45mm、約1.60mm~約3.40mm、約1.65mm~約3.35mm、約1.70mm~約3.30mm、約1.75mm~約3.25mm、約1.80mm~約3.20mm、約1.85mm~約3.15mm、約1.90mm~約3.10mm、約1.95mm~約3.05mm、約2.00mm~約3.00mm、約2.05mm~約2.95mm、約2.10mm~約2.90mm、約2.15mm~約2.85mm、約2.20mm~約2.80mm、約2.25mm~約2.75mm、約2.30mm~約2.70mm、約2.35mm~約2.65mm、約2.40mm~約2.60mm、約2.45mm~約2.55mm又は約2.50mmの範囲に入るノズル直径を有し得る。
【0087】
種々の実施形態では、押出成形された生物活性ポリマーフィラメントは、約1.5mm~約4.0mm、約1.6mm~約3.9mm、約1.7mm~約3.5mm、約1.71mm~約3.4mm、約1.72mm~約3.3mm、約1.73mm~約3.2mm、約1.74mm~約3.1mm、約1.75mm~約3.0mm、約1.76mm~約2.95mm、約1.77mm~約2.90mm、約1.78mm~約2.88mm、約1.79mm~約2.86mm又は約1.80mm~約2.85mmの範囲に入るフィラメント直径を有する。
【0088】
押出機は、水浴及び/又は引き取りユニットをさらに含み得る。
【0089】
種々の実施形態では、ベースポリマー及び生物活性コポリマーの配合物/混合物は、約60.0重量%~約99.9重量%、約61.0重量%~約99.8重量%、約62.0重量%~約99.7重量%、約63.0重量%~約99.6重量%、約64.0重量%~約99.5重量%、約65.0重量%~約99.0重量%、約66.0重量%~約98.5重量%、約67.0重量%~約98.0重量%、約68.0重量%~約97.0重量%、約69.0重量%~約96.0重量%、約70.0重量%~約95.0重量%、約71.0重量%~約94.0重量%、約72.0重量%~約93.0重量%、約73.0重量%~約92.0重量%、約74.0重量%~約91.0重量%、約75.0重量%~約90.0重量%、約76.0重量%~約89.0重量%、約77.0重量%~約88.0重量%、約78.0重量%~約87.0重量%、約79.0重量%~約86.0重量%、約80.0重量%~約85.0重量%、約81.0重量%~約84.0重量%又は約82.0重量%~約83.0重量%のベースポリマーを含む。
【0090】
種々の実施形態では、ベースポリマー及び生物活性コポリマーの配合物/混合物は、約0.1重量%~約40.0重量%、約0.1重量%~約39.0重量%、約0.2重量%~約38.0重量%、約0.3重量%~約37.0重量%、約0.4重量%~約36.0重量%、約0.5重量%~約35.0重量%、約1.0重量%~約34.0重量%、約1.5重量%~約33.0重量%、約2.0重量%~約32.0重量%、約3.0重量%~約31.0重量%、約4.0重量%~約30.0重量%、約5.0重量%~約29.0重量%、約6.0重量%~約28.0重量%、約7.0重量%~約27.0重量%、約8.0重量%~約26.0重量%、約9.0重量%~約25.0重量%、約10.0重量%~約24.0重量%、約11.0重量%~約23.0重量%、約12.0重量%~約22.0重量%、約13.0重量%~約21.0重量%、約14.0重量%~約20.0重量%、約15.0重量%~約19.0重量%、約16.0重量%~約18.0重量%又は約17.0重量%の生物活性コポリマーを含む。
【0091】
種々の実施形態では、ベースポリマーは、合成ポリマーである。種々の実施形態では、ベースポリマーは、熱可塑性ポリマーである。ベースポリマーは、医療グレードのポリマーであり得る。ベースポリマーは、ポリプロピレン(PP)、ポリエステル、ポリ(乳酸)(PLA)、乳酸・グリコール酸共重合体(PLGA)、ポリ(カプロラクトン)(PCL)、ポリスチレン(PS)、ポリアクリレート、ポリ(メタ)アクリレート、ポリアミド(PA)、ポリウレタン(PU)及びその組み合わせからなる群から選択され得る。
【0092】
生物活性コポリマー
種々の実施形態では、生物活性コポリマーは、一般式(I)によって表される1つ又は複数の繰り返し単位及び一般式(II)によって表される1つ又は複数の繰り返し単位:
【化4】
(式中、
R
1は、任意選択的に置換されたアルキルであり、
R
2は、単結合、任意選択的に置換されたアルキル、任意選択的に置換されたアルケニル、任意選択的に置換されたアルキニル、任意選択的に置換されたアルコキシアルキル、任意選択的に置換されたアルキルカルボニル又は任意選択的に置換されたアルキルカルボニルアルキルから選択され、
R
3は、H、任意選択的に置換されたアルキル、任意選択的に置換されたアルケニル又は任意選択的に置換されたアルキニルから選択され、
Lは、ヘテロアルキレンであり、
Xは、タンパク質、ペプチド、オリゴペプチド、炭水化物、オリゴ糖、糖、コラーゲン、ヒアルロン酸、治療/薬物分子及びその誘導体からなる群から選択される生物活性部位を含み、
Y
1は、合成ポリマー又はその一部を含み、及び
Z
1及びZ
2は、それぞれ独立して、CR
aR
b、O、NR
c、SiR
aR
b、PR
a又はSから選択され、R
a、R
b及びR
cは、それぞれ独立して、H、任意選択的に置換されたアルキル、任意選択的に置換されたアルケニル及び任意選択的に置換されたアルキニルからなる群から選択される)
を含む/から本質的になる/からなるポリ(ノルボルネン)主鎖を有する生物活性合成コポリマーである。
【0093】
種々の実施形態では、一般式(I)によって表される繰り返し単位及び/又は部位Xは、生物活性、生体適合性及び/又は生分解性を有する。種々の実施形態では、一般式(II)によって表される繰り返し単位及び/又は部位Y1は、優れた機械的強度/硬度を有する。種々の実施形態では、一般式(II)によって表される繰り返し単位及び/又は部位Y1は、一般式(I)によって表される繰り返し単位及び/又は部位Xよりも高い機械的強度を有する。有利なことに、生物活性合成コポリマー中の一般式(I)及び(II)によって表される繰り返し単位が存在することにより、コポリマーに生物活性及び機械的強度が付与され、機械的に強い生物活性コポリマーとなる。種々の実施形態では、コポリマーは、生体適合性及び/又は生分解性でもあり得る。したがって、種々の実施形態では、コポリマーは、生体材料として分類することができる。有利なことに、合成及び生物活性側鎖が存在するため、生物活性合成コポリマーは、ペプチド、タンパク質、炭水化物又はグリコサミノグリカンなどの従来の生体分子よりも高い熱安定性も有し得る。さらに有利なことに、生物活性合成コポリマーの熱安定性により、コポリマーの実施形態は、200℃を超える溶融押出成形などの高温での加工又は過酷な材料加工に適するようになり、そのコポリマーは、生物医学的デバイスなどの用途での使用に理想的/魅力的となる。種々の実施形態では、合成ポリマーは、実質的若しくは完全に非生物活性であるか、又は少なくとも生物活性部位より低い生物活性である。
【0094】
種々の実施形態では、Lは、ポリ(ノルボルネン)主鎖へ生物活性部位Xを連結するポリマーリンカーである。有利なことに、Lは、生物活性部位Xのサイズ及びY1に存在する合成ポリマーのサイズに基づいて調整可能及び/又はカスタマイズ可能であるように設計される。ポリマーリンカーLの分子量及び/又は長さは、コポリマーが使用される用途に応じて、生物活性部位X及びY1に対して選択される合成ポリマーの分子量及び/又は長さに適するようにカスタマイズされ得る。例えば、皮膚の足場では、短い合成ポリマー(例えば、PCL又はPLA)側鎖が迅速な分解に好ましく、骨足場では、長い合成ポリマー(例えば、PCL又はPLA)側鎖が体内でのより緩やかな分解に対して選択される。理論によって束縛されないが、骨組織は、皮膚組織よりゆっくりと成長すると予想され、したがって、骨足場は、骨組織が再生するために、より長い時間にわたって体内でインタクトなままである必要があり、早すぎると分解できないと考えられる。例えば、熱安定性及び/又は機械的強度特性が必要な包帯又は特に非分解性不織布繊維での適用に関して、一般的な溶媒中でその溶解性が乏しいため、合成ポリマーには、低分子量が好ましい。種々の実施形態では、例えば合成ポリマーの不溶性が高い場合、低分子量を有する合成ポリマーは、約5,000以下の分子量を有する合成ポリマー、例えばポリアミド(PA)を含む。他の実施形態では、例えば、合成ポリマーの不溶性が低い場合、約10,000以下の分子量を有する合成ポリマーが使用され得る/許容可能であり得る。
【0095】
種々の実施形態では、ポリマーリンカーLの分子量及び/又は長さは、一般式(I)によって表される繰り返し単位の全体的な分子サイズが、一般式(II)によって表される繰り返し単位の分子サイズと類似/同等であるように選択される。例えば、4,000の分子量を有するPCLがY1に対する合成ポリマーの選択肢として選択され、約400~約500の分子量を有するペプチドが生物活性部位Xの選択肢として選択される場合、Lは、約3,400の分子量を含むように設計され得る。種々の実施形態では、Lの長さは、一般式(II)の分子量と一般式(I)の分子量とが釣り合うように調節されると理解されるであろう。
【0096】
種々の実施形態では、一般式(I)の分子量は、一般式(II)の分子量と同等である/実質的に類似する。種々の実施形態では、一般式(I)の分子量は、一般式(II)の分子量と、一般式(II)の分子量の30%を超えて差がなく、その逆も同様である。例えば、一般式(I)の分子量は、一般式(II)の分子量よりも最大で約30%高いか又は最大で30%低くてもよく、その逆も同様である。一般式(I)の分子量は、一般式(II)の分子量と、一般式(II)の分子量の約30%を超えて、約25%を超えて、約20%を超えて、約15%を超えて又は約10%を超えて、約5%を超えて、約4%を超えて、約3%を超えて、約2%を超えて又は約1%を超えて差がなく、その逆も同様である。種々の実施形態では、一般式(I)の分子量は、一般式(II)の分子量と、一般式(II)の分子量の約20%を超えて差がなく、その逆も同様である。例えば、一般式(I)の分子量は、一般式(II)の分子量よりも最大で約20%高いか又は最大で20%低くてもよく、その逆も同様である。有利なことに、繰り返し単位を保持する生物活性部位は、繰り返し単位を保持する合成ポリマーと類似の分子サイズ/量/長さを有するため、生物活性部位Xの長さは、延長され、それにより、Xは、「目に見える」ようになり、すなわち合成ポリマーの海(sea)/マトリックスに埋められず、所望の生物活性のため、細胞への結合に利用可能となるか又はその標的生理学的部位にアクセス可能となる。
【0097】
種々の実施形態では、一般式(I)の分子量は、約15,000、約14,000、約13,000又は少なくとも約12,000である。種々の実施形態では、一般式(I)の分子量は、約100~約15,000、約200~約14,000、約300~約13,000、約400~約12,000、約500~約11,000、約1,000~約10,000、約1,500~約9,500、約2,000~約9,000、約2,500~約8,500、約3,000~約8,000、約3,500~約7,500、約4,000~約7,000、約4,500~約6,500、約5,000~約6,000又は約5,500である。種々の実施形態では、Xが、10個を超えるアミノ酸を含有する長いペプチドを含み、Lの分子量が約6,000である場合、一般式(I)の分子量は、約7,000を超える。
【0098】
種々の実施形態では、一般式(II)の分子量は、約100~約15,000、約200~約14,000、約300~約13,000、約400~約12,000、約500~約11,000、約1,000~約10,000、約1,500~約9,500、約2,000~約9,000、約2,500~約8,500、約3,000~約8,000、約3,500~約7,500、約4,000~約7,000、約4,500~約6,500、約5,000~約6,000又は約5,500である。
【0099】
種々の実施形態では、一般式(I)及び一般式(II)の総分子量は、共重合を容易にするために、約300,000、約300,000以下、約200,000以下、約100,000以下、約90,000以下、約80,000以下、約70,000以下、約60,000以下、約50,000以下、約45,000以下、約40,000以下、約35,000以下、約30,000以下、約25,000以下、約20,000以下又は約15,000以下に維持される。
【0100】
種々の実施形態では、Lは、親水性である。Lが調節可能であるため、一般式(I)によって表される繰り返し単位の親水性及び生物活性合成コポリマーの全体的な親水性は、必要に応じて調節され得る。有利なことに、Lが存在することにより、一般式(I)によって表される繰り返し単位の親水性及び生物活性合成コポリマーの全体的な親水性も高められる。さらに有利なことに、Lが存在することにより、生物活性合成コポリマーの親水性が増加し、したがって疎水性である合成ポリマー鎖が軟化され、処理後にコポリマーの硬さが少なくなる。個々の生物活性部位が一般に親水性であるのに対して、合成ポリマーは、一般に、疎水性であるため、生物活性部位及び合成ポリマーは、通常、互いに不相溶性であることが当業者によって理解されるであろう。有利なことに、一般式(I)によって表される繰り返し単位におけるLは、Lの末端で結合される生物活性部位Xの鎖長を延長するためにも使用される。
【0101】
種々の実施形態では、Lは、非晶質である。有利なことに、Lが存在することにより、生物活性合成コポリマーの非晶質性が増加し、及び/又は生物活性合成コポリマーの結晶性が減少し、ポリスチレンベースの材料などの軟らかい又は硬さが少ないプラスチックを作るのに有用なコポリマーとなる。
【0102】
種々の実施形態では、Lは、少なくとも20個の炭素原子、少なくとも30個の炭素原子、少なくとも40個の炭素原子、少なくとも50個の炭素原子、少なくとも60個の炭素原子、少なくとも70個の炭素原子、少なくとも80個の炭素原子、少なくとも90個の炭素原子、少なくとも100個の炭素原子、少なくとも150個の炭素原子、少なくとも200個の炭素原子、少なくとも250個の炭素原子又は少なくとも300個の炭素原子を有するヘテロアルキレンである。種々の実施形態では、Lは、C20~C300ヘテロアルキレン又は20~300個の炭素原子を有するヘテロアルキレンである。
【0103】
種々の実施形態では、Lは、約500及び約7,000の数平均分子量を有する。Lは、約600、約700、約800、約900、約1,000、約1,500、約2,000、約2,500、約3,000、約3,500、約4,000、約4,500、約5,000、約5,500、約6,000、約6,500又は約7,000の数平均分子量を有し得る。種々の実施形態において、Xが小さい生物活性部位を含む場合、Lの分子量は、約7,000に調整され得、その結果、一般式(I)及び一般式(II)の総分子量は、約10,000以下に維持される。種々の実施形態では、Lの数平均分子量は、約1,000~約6,000である。
【0104】
種々の実施形態では、Lにおけるヘテロ原子は、Oである。種々の実施形態では、Lは、ポリアルキレングリコールである。種々の実施形態では、Lは、ポリ(C2~C4アルキレングリコール)である。Lは、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロピレングリコール(PPG)、ポリテトラメチレングリコール(PTMG)、ポリブチレングリコール(PBG)等からなる群から選択され得る。有利なことに、PEGなどのポリアルキレングリコールの使用により、マクロモノマー及び得られるコポリマーの親水性を増加することができる。種々の実施形態では、PEGなどのポリアルキレングリコールは、末端基の代わりに、全体的なポリマーにおいてスペーサー、リンカー又は連結基として使用される。
【0105】
種々の実施形態では、Lは、少なくとも約10個の繰り返し単位、少なくとも約15個の繰り返し単位、少なくとも約20個の繰り返し単位、少なくとも約21個の繰り返し単位、少なくとも約22個の繰り返し単位、少なくとも約23個の繰り返し単位、少なくとも約24個の繰り返し単位、少なくとも約25個の繰り返し単位、少なくとも約30個の繰り返し単位、少なくとも約40個の繰り返し単位、少なくとも約50個の繰り返し単位、少なくとも約60個の繰り返し単位、少なくとも約70個の繰り返し単位、少なくとも約80個の繰り返し単位、少なくとも約90個の繰り返し単位、少なくとも約100個の繰り返し単位、少なくとも約150個の繰り返し単位、少なくとも約200個の繰り返し単位又は少なくとも約250個の繰り返し単位を有するポリアルキレングリコールである。種々の実施形態では、Lは、約10個のモノマー/繰り返し単位~約250個のモノマー/繰り返し単位を含む。短いPEG鎖を用いた従来のポリマーと異なり、本明細書に開示の生物活性合成コポリマーの実施形態では、Lにおいて少なくとも21個の繰り返し単位の長いポリアルキレングリコール鎖が組み込まれる。
【0106】
種々の実施形態では、Lは、PEG500、PEG600、PEG700、PEG800、PEG900、PEG1000、PEG1100、PEG1200、PEG1300、PEG1400、PEG1500、PEG2000、PEG2500、PEG3000、PEG3500、PEG4000、PEG4500、PEG5000、PEG5500、PEG6000、PEG6600及びその混合物からなる群から選択される。
【0107】
種々の実施形態では、Xは、以下の配置:-R1-L-NR3-C(=O)-Xにおいて、カルボン酸官能基によってポリ(ノルボルネンジカルボキシイミド)主鎖に結合される。有利なことに、カルボン酸官能基を介してXを連結することにより、Xにおけるアミン末端基は、その生物活性を送達するために開放され、したがってXのバイオアベイラビリティが確保される。アミン基が生物活性を付与するため、ポリマー結合のために生物活性部位においてアミン基が使い尽くされることは、望ましくないことが理解されるであろう。
【0108】
種々の実施形態では、Xは、ペプチド/アミド結合、すなわち-NR3-C(=O)-を介してポリ(ノルボルネンジカルボキシイミド)主鎖に結合される。有利なことに、本明細書に開示の生物活性合成コポリマーは、エステル結合を含有する従来のポリマーよりもかなり強く、及び/又は安定である。理論によって束縛されることなく、エステル結合は、より加水分解しやすいため、アミド結合は、エステル結合よりも強く、生物活性部位を血流に放出し得、生物活性部位の早まった代謝を引き起こすと考えられる。
【0109】
種々の実施形態では、アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシアルキル、アルキルカルボニル及びアルキルカルボニルアルキルにおけるH原子の1つ又は複数は、ヒドロキシ、ヒドロキシアルキル、ハロゲン、ハロアルキル、シアノ、シアノアルキル及びニトロによって任意選択的に置換される。
【0110】
種々の実施形態では、R1は、C1~C20アルキルから選択される。C1~C20アルキル置換基は、メチル、エチル、n-プロピル、2-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、s-ブチル、t-ブチル、ヘキシル、アミル、1,2-ジメチルプロピル、1,1-ジメチルプロピル、ペンチル、イソペンチル、ヘキシル、4-メチルペンチル、1-メチルペンチル、2-メチルペンチル、3-メチルペンチル、2,2-ジメチルブチル、3,3-ジメチルブチル、1,2-ジメチルブチル、1,3-ジメチルブチル、1,2,2-トリメチルプロピル、1,1,2-トリメチルプロピル、2-エチルペンチル、3-エチルペンチル、ヘプチル、1-メチルヘキシル、2,2-ジメチルペンチル、3,3-ジメチルペンチル、4,4-ジメチルペンチル、1,2-ジメチルペンチル、1,3-ジメチルペンチル、1,4-ジメチルペンチル、1,2,3-トリメチルブチル、1,1,2-トリメチルブチル、1,1,3-トリメチルブチル、5-メチルヘプチル、1-メチルヘプチル、オクチル、ノニル、デシル等から選択される直鎖又は分枝鎖置換基であり得る。R1は、直鎖又は分枝鎖C1~C4アルキル置換基であり得る。種々の実施形態では、R1の長さは、Lにおける繰り返し単位の長さと同じである。例えば、Lがポリ(ブチレングリコール)である場合、R1は、ブチルである。別の例では、Lがポリ(エチレングリコール)である場合、R1は、エチルである。種々の実施形態では、R1は、Lと釣り合うように慎重に設計されることが理解されるであろう。
【0111】
種々の実施形態では、R3は、H、C1~C20アルキル、C2~C20アルケニル又はC2~C20アルキニルから選択される。
【0112】
種々の実施形態では、Z1及びZ2は、それぞれ独立して、CH2、O、NH、SiRaRb、PRa又はSから選択され、Ra、Rb及びRcは、それぞれ独立して、H、任意選択的に置換されたアルキル、任意選択的に置換されたアルケニル及び任意選択的に置換されたアルキニルからなる群から選択される。ポリ(ノルボルネン)主鎖は、ポリ(ノルボルネン‐イミド)、ポリ(ノルボルネン-ジカルボキシイミド)からなる群から選択され得、ポリ(ノルボルネン)主鎖は、ポリ(5-ノルボルネン-2,3-ジカルボキシイミド)、ポリ(7-オキサノルボルネン)、ポリ(オキサノルボルネン‐イミド)、ポリ(オキサノルボルネン-ジカルボキシイミド)等である。種々の実施形態では、Z1及びZ2は、それぞれ独立して、CRaRb、O、NRc、SiRaRb、PRa又はSから選択され、Ra、Rb及びRcは、それぞれ独立して、H、C1~C20アルキル、C1~C20アルケニル及びC1~C20アルキニルからなる群から選択される。種々の実施形態では、Z1は、CH2である。種々の実施形態では、Z2は、CH2である。
【0113】
種々の実施形態では、Xは、タンパク質、ペプチド、炭水化物、治療/薬物分子及びその誘導体から選択される生物活性部位を含む。種々の実施形態では、タンパク質、ペプチド、炭水化物又はその治療/薬物分子誘導体としては、1個のカルボン酸末端基を含有するように任意選択的に修飾されるか又は修飾されているタンパク質、ペプチド、炭水化物又は治療/薬物分子が挙げられる。一部の実施形態では、生物活性部位は、カルボン酸末端基を1個のみ含有する。
【0114】
一部の実施形態では、生物活性部位は、モノカルボン酸を含む。有利なことに、一部の実施形態では、モノカルボン酸末端基を有する生物活性部位を用いることにより、2つ以上のカルボン酸を用いた場合と比較して、望ましくない架橋の可能性が低減され得る/避けられ得る。したがって、一部の実施形態では、生物活性部位Xは、例えば、ジカルボン酸又はトリカルボンに関して、2つ以上のカルボン酸末端基を実質的に欠く。
【0115】
種々の実施形態では、Xは、タンパク質又はペプチドを含む。Xは、ペプチド配列、ラミニン由来ペプチド、インテグリン結合ペプチド、細胞膜透過性ペプチド、コラーゲン模倣物又はコラーゲン断片であり得る。種々の実施形態では、Xは、いずれかの配列において2~50個のアミノ酸残基、2~40個のアミノ酸残基又は2~20個のアミノ酸残基を含む。種々の実施形態では、Xは、いずれかの配列において、50個のアミノ酸残基、40個のアミノ酸残基、30個のアミノ酸残基、25個のアミノ酸残基、20個のアミノ酸残基、15個のアミノ酸残基、10個のアミノ酸残基、9個のアミノ酸残基、8個のアミノ酸残基、7個のアミノ酸残基、6個のアミノ酸残基、5個のアミノ酸残基、4個のアミノ酸残基又は3個のアミノ酸残基を含む。アミノ酸残基は、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、メチオニン、プロリン、フェニルアラニン、トリプトファン、アスパラギン、グルタミン、グリシン、セリン、トレオニン、セリン、アスパラギン、グルタミン、チロシン、システイン、リジン、アルギニン、ヒスチジン、アスパラギン酸及びグルタミン酸からなる群から選択され得る。種々の実施形態では、Xは、天然アミノ酸3~20個を含むペプチド配列である。Xは、アルギニン-グリシン-アスパラギン酸(RGD)、SRGDS及びRGDS、ラミニン由来ペプチドA5G81(AGQWHRVSVRWGC)、オステオポンチン由来ペプチドSVVYGLR及び(IRIK)2又は(IKKI)3から選択される細胞膜透過性/抗菌ペプチドからなる群から選択されるインテグリン結合性ペプチドであり得る。種々の実施形態では、Xは、いずれかの配列又は順列におけるグリシン(G)、プロリン(P)及びヒドロキシプロリン(Hyp)の3~20単位を含むコラーゲン配列である。Xは、(PHypG)n型配列、(PGHyp)n型配列、(HypGP)n型配列、(HypPG)n型配列、(GHypP)n型配列、(GPHyp)n型配列を有するコラーゲン断片又はコラーゲン模倣物DGEAである。
【0116】
種々の実施形態では、Xは、炭水化物又は糖を含む。種々の実施形態では、Xは、単糖、二糖、オリゴ糖又は多糖を含む。種々の実施形態では、Xは、2~50個のサッカリド単位、2~40個のサッカリド単位、2~20個のサッカリド単位又は10~14個のサッカリド単位を含む。種々の実施形態では、Xは、50個のサッカリド単位、40個のサッカリド単位、30個のサッカリド単位、25個のサッカリド単位、20個のサッカリド単位、15個のサッカリド単位、14個のサッカリド単位、13個のサッカリド単位、12個のサッカリド単位、11個のサッカリド単位、10個のサッカリド単位、9個のサッカリド単位、8個のサッカリド単位、7個のサッカリド単位、6個のサッカリド単位、5個のサッカリド単位、4個のサッカリド単位、又は3個のサッカリド単位、又は2個のサッカリド単位を含む。Xは、ヘパリン硫酸(HS)又はグリコサミノグリカン(GAG)であり得る。種々の実施形態では、Xは、DP8、DP10、DP12、DP14及びDP16からなる群から選択されるヘパリン硫酸/オリゴ糖である。種々の実施形態では、Xは、グリコサミノグリカン(GAG)の最も単純な形態であるヒアルロン酸である。
【0117】
種々の実施形態では、Xは、そのヒドロキシ基を介して一般式(I)の残りの部分に化学的に結合される。例えば、Xが炭水化物/サッカリドである場合、酸化及び/又は還元的アミノ化反応は、一般式(I)にXを連結する、炭水化物のヒドロキシ上で実施され得る。サッカリド上の-CH2OHは、-C(=O)Hに酸化され得、続いてL上の-NH2末端を用いた還元的アミノ化を受けて、ペプチド結合が形成される。
【0118】
種々の実施形態では、Xは、カルボン酸末端基1個を含有したか又は含有するように修飾されている炭水化物/サッカリドを含む。酸化などの1つ又は複数の化学反応による修飾が炭水化物/サッカリドで実施されて、カルボン酸基が形成され得る。種々の実施形態では、修飾は、炭水化物/サッカリドに本来存在するヒドロキシ基で実施される。種々の実施形態では、炭水化物/サッカリド上の-CH2OHは、-C(=O)OHに完全に酸化され、続いて、それは、L上の-NH2末端と反応して、ペプチド結合が形成され、その結合により、一般式(I):X-C(=O)-NH-L-の残りの部分に炭水化物/サッカリドが連結される。しかしながら、炭水化物/サッカリドへの修飾は、カルボン酸が炭水化物/サッカリドに天然に存在する場合、必要とされない/必須ではないことが理解されるであろう。
【0119】
種々の実施形態では、Xは、治療/薬物分子を含む。種々の実施形態では、Xは、抗生剤、抗微生物剤、抗菌剤、抗凝固薬又は抗炎症剤である。Xは、ペニシリン、アモキシシリン、アンホテリシン、シプロフロキサシン(CIF)、アトルバスタチン、アスピリン又はストレプトマイシン、リボスタマイシン又はゲンタマイシンから選択されるアミノグリコシドをベースとする分子であり得る。Xは、カルボン酸基を含有するいずれかの治療又は薬物分子であり得ることが理解されるであろう。
【0120】
種々の実施形態では、Xは、-COOH、-CH2OH、-CH2NH2及び=CHNH2からなる群から選択されるその化学的部位の1つを介して一般式(I)の残りの部分に化学的に結合される。例えば、薬物分子上の-CH2NH2又は=CHNH2は、L上の-NH2末端と反応する前に小さいジカルボン酸に結合し得、ペプチド結合が形成され、その結合により、一般式(I):X-C(=O)-NH-L-の残り部分に薬物分子が連結される。
【0121】
種々の実施形態では、Xは、1個のカルボン酸末端基を含有したか又は含有するように修飾されている治療/薬物分子を含む。酸化などの1つ又は複数の化学反応による修飾が治療/薬物分子で実施されて、カルボン酸基が形成され得る。種々の実施形態では、修飾は、治療/薬物分子に本来存在するヒドロキシ基で実施される。例えば、種々の実施形態では、Xがリボスタマイシン又はゲンタマイシンである場合、薬物分子上の-CH2OHは、-C(=O)OHに完全に酸化され、続いて、それは、L上の-NH2末端と反応して、ペプチド結合が形成され、その結合により、一般式(I):X-C(=O)-NH-L-の残りの部分に薬物分子が連結される。しかしながら、治療/薬物分子への修飾は、カルボン酸が治療/薬物分子に天然に存在する場合、必要とされない/必須ではないことが理解されるであろう。
【0122】
種々の実施形態では、生物活性部位は、1個のカルボン酸末端基を含有するように修飾されるか又は修飾されている。例えば、カルボン酸末端基が炭水化物又は治療/薬物分子に存在しない場合、炭水化物又は治療/薬物分子は、炭水化物又は治療/薬物分子末端の一方にカルボン酸を付加するために修飾され得る。その修飾は、炭水化物中のヒドロキシ基をカルボン酸に転化する酸化反応を含み得る。
【0123】
種々の実施形態では、一般式(I)によって表される繰り返し単位は、コポリマーに対して約1モル%~約100モル%、約2モル%~約99モル%、約3モル%~約98モル%、約4モル%~約97モル%、約5モル%~約96モル%、約10モル%~約95モル%、約15モル%~約90モル%、約20モル%~約85モル%、約25モル%~約80モル%、約30モル%~約75モル%、約35モル%~約70モル%、約40モル%~約65モル%、約45モル%~約60モル%又は約50モル%~約55モル%の量である。種々の実施形態では、一般式(I)によって表される繰り返し単位は、コポリマーに対して約1モル%~約10モル%の量である。種々の実施形態では、生物活性部位は、生物活性合成コポリマーに対して約2モル%、約3モル%、約4モル%、約5モル%、約6モル%、約7モル%、約8モル%、約9モル%又は約10モル%である。
【0124】
種々の実施形態では、R2は、C1~C20アルキル、C2~C20アルケニル、C2~C20アルキニル、C1~C20アルコキシアルキル、C2~C20アルキルカルボニル又はC3~C20アルキルカルボニルアルキルから選択される。C1~C20アルキル置換基は、メチル、エチル、n-プロピル、2-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、s-ブチル、t-ブチル、ヘキシル、アミル、1,2-ジメチルプロピル、1,1-ジメチルプロピル、ペンチル、イソペンチル、ヘキシル、4-メチルペンチル、1-メチルペンチル、2-メチルペンチル、3-メチルペンチル、2,2-ジメチルブチル、3,3-ジメチルブチル、1,2-ジメチルブチル、1,3-ジメチルブチル、1,2,2-トリメチルプロピル、1,1,2-トリメチルプロピル、2-エチルペンチル、3-エチルペンチル、ヘプチル、1-メチルヘキシル、2,2-ジメチルペンチル、3,3-ジメチルペンチル、4,4-ジメチルペンチル、1,2-ジメチルペンチル、1,3-ジメチルペンチル、1,4-ジメチルペンチル、1,2,3-トリメチルブチル、1,1,2-トリメチルブチル、1,1,3-トリメチルブチル、5-メチルヘプチル、1-メチルヘプチル、オクチル、ノニル、デシル等から選択される直鎖又は分枝鎖置換基であり得る。
【0125】
種々の実施形態では、Y
1は、一般式(III):
【化5】
(式中、
Aは、単結合、オキシ、カルボニル、オキシカルボニル、カルボキシル、任意選択的に置換されたアルコキシ、任意選択的に置換されたアルコキシアルキル、任意選択的に置換されたアルキルカルボニル、任意選択的に置換されたアルキルカルボニルアルキル、任意選択的に置換されたカルボキシアルキル、任意選択的に置換されたオキシカルボニルアルキル、任意選択的に置換されたアルキルカルボキシルアルキル、任意選択的に置換されたアルコキシカルボニルアルキル、N又はNR
cから選択され、R
cは、独立して、H、任意選択的に置換されたアルキル、任意選択的に置換されたアルケニル又は任意選択的に置換されたアルキニルから選択され、
Bは、1,2,3-トリアゾール又はスクシンイミドから選択される環として任意選択的に存在し、
R
5は、単結合、任意選択的に置換されたアルキル、任意選択的に置換されたアルケニル、任意選択的に置換されたアルキニル、任意選択的に置換されたアルコキシアルキル、任意選択的に置換されたアルキルカルボニル又は任意選択的に置換されたアルキルカルボニルアルキルから選択され、
Y
2は、ポリプロピレン(PP)、ポリエステル、ポリ(乳酸)(PLA)、乳酸・グリコール酸共重合体(PLGA)、ポリ(カプロラクトン)(PCL)、ポリスチレン(PS)、ポリアクリレート、ポリ(メタ)アクリレート、ポリアミド(PA)、ポリウレタン(PU)及びその一部からなる群から選択され、及び
Tは、水素、ハロゲン、ヒドロキシル、アミノ、アシル、チオール、任意選択的に置換されたアルキル、任意選択的に置換されたアルケニル、任意選択的に置換されたアルキニル、任意選択的に置換されたアルコキシ、任意選択的に置換されたアルコキシアルキル、任意選択的に置換されたアルキルカルボニル、任意選択的に置換されたアルキルカルボニルアルキル、任意選択的に置換されたカルボキシアルキル、任意選択的に置換されたオキシカルボニルアルキル、任意選択的に置換されたアルキルカルボキシルアルキル又は任意選択的に置換されたアルコキシカルボニルアルキルからなる群から選択される末端基である)
によって表される。
【0126】
種々の実施形態では、Y2は、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n-プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n-ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、tert-ブチルアクリレート、ヘキシルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、ベンジルアクリレート及びフェニルアクリレートからなる群から選択される、1種又は複数のモノマーを含むポリアクリレートである。Y2は、ポリ(メチルアクリレート)、ポリ(エチルアクリレート)、ポリ(ブチルアクリレート)又はポリ(2-エチルヘキシルアクリレート)であり得る。種々の実施形態では、Y2は、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n-プロピルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、n-ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、tert-ブチルメタクリレート、ヘキシルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、2-エチルヘキシルメタクリレート、ベンジルメタクリレート及びフェニルメタクリレートからなる群から選択される1種又は複数のモノマーを含むポリ(メタ)アクリレートである。Y2は、ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)、ポリ(エチルメタクリレート)及びポリ(ブチルメタクリレート)又はポリ(2-エチルヘキシルアクリレート)であり得る。
【0127】
種々の実施形態では、Y
2は、ポリウレタンである。かかる実施形態では、一般式(II)によって表される1つ又は複数の繰り返し単位は、以下の構造:
【化6】
(式中、
R
2は、アルキルであり、
Aは、O又はNR
cであり、R
cは、独立して、H、任意選択的に置換されたアルキル、任意選択的に置換されたアルケニル又は任意選択的に置換されたアルキニルから選択され、
R
yは、アルキル、アリール又はビアリールから選択され、及び
R
zは、アルキルである)
を有する。
【0128】
種々の実施形態では、Aは、単結合、オキシ、カルボニルオキシカルボニルアルキル、N又はNRcから選択され、Rcは、独立して、H、任意選択的に置換されたアルキル、任意選択的に置換されたアルケニル又は任意選択的に置換されたアルキニルから選択される。Aは、単結合、O、C(=O)及びO-C(=O)-Rであり得、Rは、任意選択的に置換されたアルキル、任意選択的に置換されたアルケニル又は任意選択的に置換されたアルキニルである。種々の実施形態では、Rは、メチル、エチル、n-プロピル、2-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、s-ブチル、t-ブチル、ヘキシル、アミル、1,2-ジメチルプロピル、1,1-ジメチルプロピル、ペンチル、イソペンチル、ヘキシル、4-メチルペンチル、1-メチルペンチル、2-メチルペンチル、3-メチルペンチル、2,2-ジメチルブチル、3,3-ジメチルブチル、1,2-ジメチルブチル、1,3-ジメチルブチル、1,2,2-トリメチルプロピル、1,1,2-トリメチルプロピル、2-エチルペンチル、3-エチルペンチル、ヘプチル、1-メチルヘキシル、2,2-ジメチルペンチル、3,3-ジメチルペンチル、4,4-ジメチルペンチル、1,2-ジメチルペンチル、1,3-ジメチルペンチル、1,4-ジメチルペンチル、1,2,3-トリメチルブチル、1,1,2-トリメチルブチル、1,1,3-トリメチルブチル、5-メチルヘプチル、1-メチルヘプチル、オクチル、ノニル、デシル等から選択される直鎖又は分枝鎖アルキル置換基である。種々の実施形態では、Aは、単結合、O、C(=O)又はO-C(=O)-C1~C6アルキルから選択される。
【0129】
種々の実施形態では、Bは、存在しない。種々の実施形態では、Bは、1,2,3-トリアゾール又はスクシンイミドから選択される環として存在する。有利なことに、1,2,3-トリアゾールが、使用されるケミストリーのために本システムとの連結に適している。例えば、アジド-アルキンのクリックケミストリーによって1,2,3-トリアゾールが形成され、それによりノルボルネンジカルボキシイミドが合成ポリマーY2に連結される。有利なことに、スクシンイミドは、使用されるケミストリーのために本システムとの連結に適している。
【0130】
種々の実施形態では、R5は、単結合、任意選択的に置換されたアルキル、任意選択的に置換されたアルケニル又は任意選択的に置換されたアルキニルから選択される。R5は、単結合又はエテニル、ビニル、アリル、1-メチルビニル、1-プロペニル、2-プロペニル、2-メチル-1-プロペニル、2-メチル-1-プロペニル、1-ブテニル、2-ブテニル、3-ブテニル、1,3-ブタジエニル、1-ペンテニル、2-ペンテニル、3-ペンテニル、4-ペンテニル、1,3-ペンタジエニル、2,4-ペンタジエニル、1,4-ペンタジエニル、3-メチル-2-ブテニル、1-ヘキセニル、2-ヘキセニル、3-ヘキセニル、1,3-ヘキサジエニル、1,4-ヘキサジエニル、2-メチルペンテニル、1-ヘプテニル、2-ヘプテンチル、3-ヘプテニル、1-オクテニル、2-オクテニル、3-オクテニル、1-ノネニル、2-ノネニル、3-ノネニル、1-デセニル、2-デセニル、3-デセニル等から選択される直鎖又は分枝鎖アルケニル置換基である。種々の実施形態では、R5は、単結合又はC2~C6アルケニルから選択される。
【0131】
種々の実施形態では、Y2は、以下の特性:生体吸収性、不活性、長い貯蔵寿命、機械的強度、耐衝撃性、熱安定性、弾性、弾性回復、平滑性、生分解性、軽量及び低毒性又は非毒性の1つ又は複数を含む。
【0132】
種々の実施形態では、Y2は、ポリエチレングリコールなどのポリアルキレングリコールを実質的に欠いている。
【0133】
種々の実施形態では、Tは、水素、ハロゲン、ヒドロキシル、任意選択的に置換されたアルキル、任意選択的に置換されたアルケニル、任意選択的に置換されたアルキニル、任意選択的に置換されたアルキルカルボキシルアルキル及び任意選択的に置換されたアルコキシカルボニルアルキルからなる群から選択される末端基である。Tは、H、OH、Cl、F、Br、Iから選択されるハロゲン、C1~C6アルキル、C1~C6アルキル-C(=O)-O-C1~C6アルキル又はC1~C6アルキル-O-C(=O)-C1~C6アルキルであり得る
【0134】
種々の実施形態では、Y
1は、以下の一般式(IIIa)、(IIIb)、(IIIc)、(IIId)、(IIIe)、(IIIf)又は(IIIg):
【化7】
(式中、
R
yは、アルキル、アリール又はビアリールから選択され、
R
zは、アルキルであり、
Aは、O又はNR
cであり、R
cは、独立して、H、任意選択的に置換されたアルキル、任意選択的に置換されたアルケニル又は任意選択的に置換されたアルキニルから選択され、
Tは、水素及びメチルからなる群から選択される末端基であり、
n≧1であり、及び
m≧1である)
から選択される。
【0135】
種々の実施形態では、一般式(II)の総分子量は、約15,000以下又は約10,000以下に維持される。一般式(I)及び(II)の総分子量が高すぎる場合、共重合が非効率的になり得ることが理解されるであろう。種々の実施形態では、生物活性合成コポリマーが、速い生分解を必要とする用途に使用される場合、一般式(II)の分子量は、n及び/又はmの値を調節することによって低く維持される。
【0136】
種々の実施形態では、生物活性合成コポリマー中の一般式(I)によって表される繰り返し単位の数と、一般式(II)によって表される繰り返し単位の数との比は、約1:1~約1:100、約1:2~約1:99、約1:3~約1:98、約1:4~約1:97、約1:5~約1:96、約1:6~約1:95、約1:7~約1:90、約1:8~約1:85、約1:9~約1:80、約1:10~約1:75、約1:15~約1:70、約1:20~約1:65、約1:25~約1:60、約1:30~約1:55、約1:35~約1:50又は約1:40~約1:45である。種々の実施形態では、生物活性合成コポリマー中の一般式(I)によって表される繰り返し単位の数と、一般式(II)によって表される繰り返し単位の数との比は、約1:10、約1:15、約1:20、約1:25、約1:30、約1:35、約1:40、約1:45又は約1:50である。
【0137】
種々の実施形態では、コポリマーにおける一般式(I)によって表される繰り返し単位の数は、約10~約1,000である。種々の実施形態では、コポリマーにおける一般式(II)によって表される繰り返し単位の数は、約10~約1,000である。種々の実施形態では、骨足場の構成に関して、PLA側鎖は、約50~約60個のラクチド単位を含む。
【0138】
種々の実施形態では、生物活性合成コポリマーは、約1,000~約300,000、2,000~約250,000、約3,000~約200,000、約4,000~約150,000、約5,000~約100,000、約10,000~約90,000、約20,000~約80,000、約30,000~約70,000、約40,000~約60,000又は約50,000の数平均分子量(Mn)を有する。
【0139】
種々の実施形態では、生物活性合成コポリマーは、約1.0~約10.0の多分散性指数(PDI)を有する。種々の実施形態では、生物活性合成コポリマーのPDIは、約1.0、約1.5、約2.0、約2.5、約3.0、約3.5、約4.0、約4.5、約5.0、約5.5、約6.0、約6.5、約7.0、約7.5、約8.0、約8.5、約9.0、約9.5又は約10.0である。種々の実施形態では、生物活性合成コポリマーは、約1.0~約3.0、約1.05~約2.95、約1.1~約2.9、約1.2~約2.8、約1.4~約2.6、約1.6~約2.4、約1.8~約2.2又は約2.0の多分散性指数(PDI)を有する。種々の実施形態では、生物活性合成コポリマーのPDIは、1.50以下である。
【0140】
種々の実施形態では、一般式(I)によって表される1つ又は複数の繰り返し単位及び一般式(II)によって表される1つ又は複数の繰り返し単位は、少なくとも共有結合性相互作用を介してポリ(ノルボルネン)主鎖に連結するように設計される。種々の実施形態では、一般式(I)によって表される各繰り返し単位は、ポリ(ノルボルネン)主鎖に共有結合され、及び/又は一般式(II)によって表される各繰り返し単位は、ポリ(ノルボルネン)主鎖に共有結合される。有利なことに、生物活性部位(一般式(I)における)が生物活性合成ポリマーに共有結合されるため、生物活性が局在化される。種々の実施形態では、生体分子などの生物活性部位は、ポリマーから浸出せず、したがって循環系に入り、及び/又は身体システムの意図しない部分に達する生体分子によって生じる望ましくない/不要な副作用が防止される。したがって、生物活性合成コポリマーの実施形態は、治療効果が得られる前に早まって代謝し得る、薬物として投与される従来の生体分子が直面する問題を克服する。種々の実施形態では、薬物分子などの生物活性部位は、廃棄が不適切に管理される場合において環境中に漏れ得る媒体中に浸出しない。
【0141】
ファンデルワールス相互作用などの他の相互作用もコポリマー内に存在し得ることが理解されるであろう。
【0142】
種々の実施形態では、生物活性合成コポリマーは、ブラシ、ボトルブラシ、ブロック、くし形又はグラフトコポリマー構造を含む。種々の実施形態では、繰り返し単位は、ポリマー内でランダムに分布/配置され得る。
【0143】
種々の実施形態では、一般式(I)によって表される1つ又は複数の繰り返し単位は、生物活性部位Xの2種以上の異なるタイプを含む。種々の実施形態では、一般式(I)によって表される1つ又は複数の繰り返し単位は、生物活性部位Xの2、3、4、5、6、7又は8つの異なるタイプを含む。例えば、生物活性合成コポリマー内において、Xとしてペプチドを含む一般式(I)によって表される繰り返し単位及びXとして炭水化物を含む一般式(I)によって表される繰り返し単位が存在し得る。有利なことに、種々の実施形態では、生物活性合成コポリマーは、2種以上の異なるタイプの生物活性を付与する。
【0144】
種々の実施形態では、一般式(II)によって表される1つ又は複数の繰り返し単位は、2つ以上の異なるタイプの合成ポリマーY2を含む。種々の実施形態では、一般式(II)によって表される1つ又は複数の繰り返し単位は、2、3、4、5、6、7又は8つの異なるタイプの合成ポリマーY2を含む。
【0145】
種々の実施形態では、生物活性合成コポリマーは、ランダムポリマー又はブロックコポリマーである。一部の実施形態では、ブロックポリマーは、ジブロック又はトリブロックポリマーである。例えば、そのコポリマーは、2又は3つの異なるポリマーブロックで構成される。一部の実施形態では、マルチブロックコポリマーは、3つを超えるポリマーブロックを含む。ブロックは、ポリマー内でランダムに分布/配置され得る。
【0146】
有利なことに、本明細書に開示の生物活性合成コポリマーは、高度にカスタマイズ可能である。生物活性合成コポリマーが意図される用途に応じて、所望の生物活性を有するX及び所望の物理的属性を有するY2が選択されて、一般式(I)及び(II)によって表される所望の繰り返し単位を有する生物活性合成コポリマーが最終的に得られる。
【0147】
種々の実施形態では、生物活性合成コポリマーは、さらなる使用のためにベースポリマーとブレンドされる。種々の実施形態では、ベースポリマーは、一般式(II)において使用される合成ポリマーY2と類似の又は同じタイプのポリマーである。種々の実施形態では、医療グレードのポリマーがベース材料に使用され、低分子量合成ポリマーが生物活性合成コポリマーの合成側鎖において使用される。有利なことに、生物活性合成ポリマーの実施形態は、相分離することなく、コポリマーの合成ポリマー側アームと類似の合成ポリマーのベース材料中に生体分子をブレンドすることを可能にする。
【0148】
種々の実施形態では、生物活性コポリマーは、医療グレードのポリマーである。種々の実施形態では、生物活性コポリマーは、熱可塑性ポリマーでもある。
【0149】
参照によりその全体が完全に組み込まれるPCT出願番号PCT/SG2020/050621号に開示のコポリマーなど、ROMPによって得られる他の生物活性コポリマーも適切であり得ることが理解されるであろう。
【0150】
フィラメント溶解製法(FFF)又は熱溶解積層法(FDM)ベースの三次元印刷方法
種々の実施形態では、本明細書に開示されるフィラメント製造から得られる生物活性ポリマーフィラメントも提供される。有利なことに、生物活性ポリマーフィラメントは、フィラメント溶解製法(FFF)又は熱溶解積層法(FDM)の製造方法で使用するように設計された原料であって、適切な機械的性質と共に、生物活性を向上させる熱安定性生体分子からなる原料である。生物活性ポリマーフィラメントは、本明細書に開示のベースポリマー及び生物活性コポリマーを含み得る/から本質的になり得る/からなり得る。種々の実施形態では、生物活性ポリマーフィラメントは、潤滑剤などの他の添加剤を実質的に含有しないか又は欠いている。
【0151】
種々の実施形態では、生物活性ポリマーフィラメントは、医学的に認可されていない成分を実質的に含有しないか又は欠いている。種々の実施形態では、生物活性ポリマーフィラメントは、モノフィラメントである。
【0152】
したがって、本明細書に開示の生物活性ポリマーフィラメントを原料として使用する、フィラメント溶解製法(FFF)又は熱溶解積層法(FDM)ベースの三次元印刷方法も提供される。種々の実施形態では、この方法は、本明細書に開示の生物活性ポリマーフィラメントをFFF又はFDMベースの三次元印刷装置に供給すること(例えば、装置のプリントヘッドに供給される)、生物活性ポリマーフィラメントに熱を加えて、生物活性ポリマーの溶融/融解形態を得ること、及びプリントベッド上に溶融/融解生物活性ポリマーを積層して、印刷された三次元部品又は構造体を形成することを含む。有利なことに、FFF又はFDM3D印刷/プリンターは、低コスト、市場に投入するまでの時間の短縮及び部品のカスタマイズ化などの、医学技術に著しく有益である大きい利点を有する。
【0153】
この方法は、印刷された三次元部品又は構造体の印刷後分析の1つ又は複数を実施することをさらに含み得、印刷後分析は、
i.例えば、印刷された三次元部品又は構造体の、その機械的性質を評価するための機械的分析、
ii.例えば、印刷された三次元部品又は構造体の、生細胞とのその生体適合性を評価するための生体適合性分析、
iii.例えば、印刷された三次元部品又は構造体中の生物活性ポリマーの分解開始を評価するための、印刷された三次元部品又は構造体に対する熱分析、及び
iv.印刷された三次元部品又は構造体中の生物活性コポリマーの存在を評価するための、印刷された三次元部品又は構造体の分光分析
からなる群から選択される。例えば、核磁気共鳴(NMR)分光法は、フィラメント及び/又は印刷された三次元部品若しくは構造体に対して実施され得る。
【0154】
印刷構造体の特性及びその具体的な使用に適しているかどうかを決定するために、ASTM規格又は他の均等な規格下で機械的分析が実施され得る。ASTM規格と均等な他の試験法も使用され得ることが理解されるであろう。さらに、材料がそれと相互作用するように設計される様々なヒト細胞系を用いて、生体適合性試験が行われ得る。熱分析は、熱重量分析(TGA)及び示差走査熱量測定(DSC)の1つ又は複数を含み得る。種々の実施形態では、熱分析は、TGA及びDSCの同時適用による同時熱分析(STA)を含む。
【0155】
種々の実施形態では、熱を加える工程は、生物活性ポリマーの所定の融解/軟化温度及び所定の分解開始温度に基づく温度におけるものである。例えば、印刷は、フィラメントの生物学的/生物活性/医薬品有効成分部分が劣化/分解/崩壊/解重合/破壊する温度を超えない温度(例えば、プリントヘッドの温度)で実施され得る。種々の実施形態では、印刷は、理活性ポリマーフィラメントの融解/軟化温度と生物活性ポリマーの分解開始温度との間の温度で実施される。種々の実施形態では、印刷温度は、3D印刷に使用される生物活性ポリマーフィラメントに依存する。印刷は、生物活性ポリマーフィラメントの融解/軟化点を約15℃~約40℃超え、及び生物活性ポリマーの分解ポイントを最大で5℃下回る温度で実施され得る。一部の実施形態では、印刷は、生物活性ポリマーフィラメントの融解/軟化点を約15℃~約40℃、約16℃~約39℃、約17℃~約38℃、約18℃~約37℃、約19℃~約36℃、約20℃~約35℃、約21℃~約34℃、約22℃~約33℃、約23℃~約32℃、約24℃~約31℃、約25℃~約30℃、約26℃~約29℃又は約27℃~約28℃超える温度で実施される。一部の実施形態では、印刷は、生物活性ポリマーの分解ポイント/温度を約5℃以下、約4.5℃以下、約4℃以下、約3.5℃以下、約3℃以下、約2.5℃以下、約2℃以下、約1.5℃以下、約1℃以下、約0.5℃以下、約0.4℃以下、約0.3℃以下、約0.2℃以下又は約0.1℃以下だけ下回る温度で実施される。
【0156】
印刷は、熱可塑性材料が固体状態に凝固又は変換する温度以上の温度を有するベースプレートの存在下で実施され得る。種々の実施形態では、ベースプレート温度は、3D印刷に使用される生物活性ポリマーフィラメントに依存する。ベースプレートの温度は、室温(例えば、加熱なし)から、生物活性ポリマーフィラメントの融解/軟化温度を最大で約15℃超える温度までの範囲であり得る。一部の実施形態では、印刷は、約20℃~約30℃、約21℃~約29℃、約22℃~約28℃、約23℃~約27℃、約24℃~約26℃又は約25℃の範囲である温度を有するベースプレートの存在下で実施される。一部の実施形態では、印刷は、生物活性ポリマーフィラメントの融解/軟化点/温度を約15℃以下、約14℃以下、約13℃以下、約12℃以下、約11℃以下、約10℃以下、約9℃以下、約8℃以下、約7℃以下、約6℃以下、約5℃以下、約4℃以下、約3℃以下、約2℃以下又は約1℃以下超える温度を有するベースプレートの存在下で実施される。
【0157】
種々の実施形態では、印刷は、約1.0mm/秒~約70.0mm/秒、約2.0mm/秒~約69.0mm/秒、約3.0mm/秒~約68.0mm/秒、約4.0mm/秒~約67.0mm/秒、約5.0mm/秒~約66.0mm/秒、約6.0mm/秒~約65.0mm/秒、約7.0mm/秒~約64.0mm/秒、約8.0mm/秒~約63.0mm/秒、約9.0mm/秒~約62.0mm/秒、約10.0mm/秒~約61.0mm/秒、約15.0mm/秒~約60.0mm/秒、約20.0mm/秒~約55.0mm/秒、約25.0mm/秒~約50.0mm/秒、約30.0mm/秒~約45.0mm/秒又は約35.0mm/秒~約40.0mm/秒の印刷速度で実施される。
【0158】
種々の実施形態では、FFF又はFDMベースの三次元印刷装置は、約1.5mm~約4.0mm、約1.6mm~約3.9mm、約1.7mm~約3.5mm、約1.71mm~約3.4mm、約1.72mm~約3.3mm、約1.73mm~約3.2mm、約1.74mm~約3.1mm、約1.75mm~約3.0mm、約1.76mm~約2.95mm、約1.77mm~約2.90mm、約1.78mm~約2.88mm、約1.79mm~約2.86mm又は約1.80mm~約2.85mmの範囲内のフィラメント直径を有するフィラメント原料のために構成される。
【0159】
有利なことに、種々の実施形態では、印刷方法及び生物活性ポリマーフィラメント原料は、市販のFFF若しくはFDMベースの三次元プリンター又は押出機によって使用することができる。
【0160】
種々の実施形態では、生物活性ポリマーは、約0.10mm~約1.00mm、約0.11mm~約0.99mm、約0.12mm~約0.98mm、約0.13mm~約0.97mm、約0.14mm~約0.96mm、約0.15mm~約0.95mm、約0.20mm~約0.90mm、約0.25mm~約0.85mm、約0.30mm~約0.80mm、約0.35mm~約0.75mm、約0.40mm~約0.70mm、約0.45mm~約0.65mm、約0.50mm~約0.60mm、約0.51mm~約0.59mm、約0.52mm~約0.58mm、約0.53mm~約0.57mm、約0.54mm~約0.56mm又は約0.55mmの直径を有する印刷ノズルで印刷される。
【0161】
種々の実施形態では、FFF又はFDMベースの三次元印刷は、所望の設計を有する構造体が得られるように設計モデルに従う。したがって、この方法は、印刷工程前に、デジタルソフトウェアを使用して3Dジオメトリ/構造をデジタル処理でモデリング/設計することをさらに含み得る。
【0162】
種々の実施形態では、印刷された3D構造体は、経口投与に適していない。一部の実施形態では、印刷3D構造体は、生分解性及び/又は生体適合性である。種々の実施形態では、印刷3D構造体は、構造上の支持を提供し、及び/又はその上の細胞成長を構造的及び機械的に支援することができる。
【図面の簡単な説明】
【0163】
図の簡単な説明
【
図1】本明細書に開示の種々の実施形態によるPA6-GPHPの同時熱分析(STA)結果を示す。図では、熱重量分析(TGA)グラフは、実線(左側のy軸参照)によって表され、示差走査熱量測定(DSC)は、破線(右側のy軸参照)によって表される。PA6は、ポリアミド-6を意味し、GPHPは、(GPHyp)
3を意味する。
【
図2】本明細書に開示の種々の実施形態によるPA6-PHPGの同時熱分析(STA)結果を示す。図では、熱重量分析(TGA)グラフは、実線(左側のy軸参照)によって表され、示差走査熱量測定(DSC)は、破線(右側のy軸参照)によって表される。PA6は、ポリアミド-6を意味し、PHPGは、(PHypG)
3を意味する。
【
図3】本明細書に開示の種々の実施形態による、PA12-コラーゲンフィラメントに関して撮られた写真を示す。生物活性ポリマー:PA6-コラーゲン;添加剤含有率:10%;及びフィラメント直径:2.85±0.1mm。
【
図4】本明細書に開示の種々の実施形態による3D印刷シート及びそのフィラメントのPA12-PHPG試料の熱重量分析(TGA)結果を示す。図では、PA12-PHPG 3DPシートは、グラフ[2];破線によって表され、そのフィラメントは、グラフ[1];実線によって表される。PA12は、ポリアミド-12を意味し、PHPGは、(PHypG)
3を意味する。
【
図5】本明細書に開示の種々の実施形態による3D印刷シート及びそのフィラメントのPA12-GPHP試料の熱重量分析(TGA)結果を示す。図では、PA12-GPHP 3DPシートは、グラフ[2];破線によって表され、そのフィラメントは、グラフ[1];実線によって表される。PA12は、ポリアミド-12を意味し、GPHPは、(GPHyp)
3を意味する。
【
図6】本明細書に開示の種々の実施形態による、PA12ベースの試験片、すなわちPA12-PHPG及びPA12-GPHPのヤング率(左側の軸)及び降伏強さ(右側の軸)を示すグラフである。
【
図7】本明細書に開示の種々の実施形態による、シート試料、すなわち(1)未処理試料;(2)純粋なPA12シート;(3)PA12+10%PA6-GPHyp;及び(4)PA12+10%PA6-PHypGの生体適合性試験結果(すなわち細胞生存率%)を示すグラフである。未処理試料は、コントロールとしての役割を果たす。
【
図8】本明細書に開示の種々の実施形態によるPCL-GPHPの同時熱分析(STA)結果を示す。図では、熱重量分析(TGA)グラフは、実線(左側のy軸参照)によって表され、示差走査熱量測定(DSC)は、破線(右側のy軸参照)によって表される。PCLは、ポリ(カプロラクトン)を意味し、GPHPは、(GPHyp)
3を意味する。
【
図9】本明細書に開示の種々の実施形態によるPCL-RGDの同時熱分析(STA)結果を示す。図では、熱重量分析(TGA)グラフは、実線(左側のy軸参照)によって表され、示差走査熱量測定(DSC)は、破線(右側のy軸参照)によって表される。PCLは、ポリ(カプロラクトン)を意味し、RGDは、アルギニン-グリシン-アスパラギン酸を意味する。
【
図10】本明細書に開示の種々の実施形態による3D印刷シート及びそのフィラメントのPCL-GPHP試料の熱重量分析(TGA)結果を示す。図では、PCL-GPHP 3DPシートは、グラフ[2];破線によって表され、そのフィラメントは、グラフ[1];実線によって表される。PCLは、ポリ(カプロラクトン)を意味し、GPHPは、(GPHyp)
3を意味する。
【
図11】本明細書に開示の種々の実施形態によるPLA-GPHPの同時熱分析(STA)結果を示す。図では、熱重量分析(TGA)グラフは、実線(左側のy軸参照)によって表され、示差走査熱量測定(DSC)は、破線(右側のy軸参照)によって表される。PLAは、ポリ(乳酸)を意味し、GPHPは、(GPHyp)
3を意味する。
【
図12】本明細書に開示の種々の実施形態によるPLA-RGDの同時熱分析(STA)結果を示す。図では、熱重量分析(TGA)グラフは、実線(左側のy軸参照)によって表され、示差走査熱量測定(DSC)は、破線(右側のy軸参照)によって表される。PLAは、ポリ(乳酸)を意味し、RGDは、アルギニン-グリシン-アスパラギン酸を意味する。
【
図13】本明細書に開示の種々の実施形態によるPLA-HAの同時熱分析(STA)結果を示す。図では、熱重量分析(TGA)グラフは、実線(左側のy軸参照)によって表され、示差走査熱量測定(DSC)は、破線(右側のy軸参照)によって表される。PLAはポリ(乳酸)を意味し、HAは、ヒアルロン酸を意味する。
【
図14】本明細書に開示の種々の実施形態による3D印刷シート及びそのフィラメントのPLA-GPHP試料の熱重量分析(TGA)結果を示す。図では、PLA-GPHP 3DPシートは、グラフ[2];破線によって表され、そのフィラメントは、グラフ[1];実線によって表される。PLAは、ポリ(乳酸)を意味し、GPHPは、(GPHyp)
3を意味する。
【
図15】本明細書に開示の種々の実施形態によるPLGA-GPHPの同時熱分析(STA)結果を示す。図では、熱重量分析(TGA)グラフは、実線(左側のy軸参照)によって表され、示差走査熱量測定(DSC)は、破線(右側のy軸参照)によって表される。PLGAは、乳酸・グリコール酸共重合体を意味し、GPHPは、(GPHyp)
3を意味する。
【
図16】本明細書に開示の種々の実施形態によるPLGA-RGDの同時熱分析(STA)結果を示す。図では、熱重量分析(TGA)グラフは、実線(左側のy軸参照)によって表され、示差走査熱量測定(DSC)は、破線(右側のy軸参照)によって表される。PLGAは、乳酸・グリコール酸共重合体を意味し、RGDは、アルギニン-グリシン-アスパラギン酸を意味する。
【
図17】本明細書に開示の種々の実施形態によるPLGA-HAの同時熱分析(STA)結果を示す。図では、熱重量分析(TGA)グラフは、実線(左側のy軸参照)によって表され、示差走査熱量測定(DSC)は、破線(右側のy軸参照)によって表される。PLGAは、乳酸・グリコール酸共重合体を意味し、HAは、ヒアルロン酸を意味する。
【
図18】本明細書に開示の種々の実施形態による3D印刷シート及びそのフィラメントのPLGA-HA試料の熱重量分析(TGA)結果を示す。図では、PLGA-HA 3DPシートは、グラフ[2];破線によって表され、そのフィラメントは、グラフ[1];実線によって表される。PLGAは、乳酸・グリコール酸共重合体を意味し、HAは、ヒアルロン酸を意味する。
【
図19】本明細書に開示の種々の実施形態による、シート試料、すなわち(1)未処理試料;(2)純粋なPLGAシート;(3)PLGA-RGD;(4)PLGA-HA;(5)未処理試料;(6)純粋なPLAシート;(7)PLA-RGD;(8)PLA-HA;及び(9)PLA-GPHPの生体適合性試験結果(すなわち細胞生存率%)を示すグラフである。未処理試料は、コントロールとしての役割を果たす。
【
図20A】本明細書に開示の種々の実施形態に従い、PAベースの材料を用いて生体埋込マウス皮膚組織の比較を示す。CD3
+細胞の免疫組織化学(IHC)染色から得られた画像を示し、細胞核(暗色のスポット)及びCD3(丸で囲んで表示)は、差次的に標識化された。病理学的評価により、ネガティブコントロールに対して2+が報告される。示す画像は、少なくとも4匹のC57BL/6マウス/群で表される。スケールバー=50μm。
【
図20B】本明細書に開示の種々の実施形態に従い、PAベースの材料を用いて生体埋込マウス皮膚組織の比較を示す。CD3
+細胞の免疫組織化学(IHC)染色から得られた画像を示し、細胞核(暗色のスポット)及びCD3(丸で囲んで表示)は、差次的に標識化された。病理学的評価により、PA12に対して3+が報告される。示す画像は、少なくとも4匹のC57BL/6マウス/群で表される。スケールバー=50μm。
【
図20C】本明細書に開示の種々の実施形態に従い、PAベースの材料を用いて生体埋込マウス皮膚組織の比較を示す。CD3
+細胞の免疫組織化学(IHC)染色から得られた画像を示し、細胞核(暗色のスポット)及びCD3(丸で囲んで表示)は、差次的に標識化された。病理学的評価により、PA12-(PA6-GPHP)に対して3+が報告される。示す画像は、少なくとも4匹のC57BL/6マウス/群で表される。スケールバー=50μm。
【
図21A】本明細書に開示の種々の実施形態に従い、PAベースの材料を用いて生体埋込マウス皮膚組織の比較を示す。ヘマトキシリン及びエオシン(H&E)染色から得られた画像を示し、核成分(ヘマトキシリン)及び細胞質成分(エオシン)は、差次的に染色された。病理学的評価により、ネガティブコントロールに対して2+が報告される。示す画像は、少なくとも4匹のC57BL/6マウス/群で表される。スケールバー=50μm。
【
図21B】本明細書に開示の種々の実施形態に従い、PAベースの材料を用いて生体埋込マウス皮膚組織の比較を示す。ヘマトキシリン及びエオシン(H&E)染色から得られた画像を示し、核成分(ヘマトキシリン)及び細胞質成分(エオシン)は、差次的に染色された。病理学的評価により、PA12に対して3+が報告される。示す画像は、少なくとも4匹のC57BL/6マウス/群で表される。スケールバー=50μm。
【
図21C】本明細書に開示の種々の実施形態に従い、PAベースの材料を用いて生体埋込マウス皮膚組織の比較を示す。ヘマトキシリン及びエオシン(H&E)染色から得られた画像を示し、核成分(ヘマトキシリン)及び細胞質成分(エオシン)は、差次的に染色された。病理学的評価により、PA12-(PA6-GPHP)に対して3+が報告される。生物活性ナイロンフィラメントPA12-(PA6-GPHP)は、ベースポリマーとしてのPA12及び生物活性コポリマーとしてのPA6-GPHPからなる。示す画像は、少なくとも4匹のC57BL/6マウス/群で表される。スケールバー=50μm。
【
図22A】本明細書に開示の種々の実施形態に従い、PCLベースの材料を用いて生体埋込マウス皮膚組織の比較を示す。CD3
+細胞の免疫組織化学(IHC)染色から得られた画像を示し、細胞核(暗色のスポット)及びCD3(丸で囲んで表示)は、差次的に標識化された。ネガティブコントロールマウス及び生体埋込マウスからの皮膚組織は、同等のレベルの免疫応答を誘発した。病理学的評価により、ネガティブコントロールに対して1+が報告される。示す画像は、少なくとも4匹のC57BL/6マウス/群で表される。スケールバー=50μm。
【
図22B】本明細書に開示の種々の実施形態に従い、PCLベースの材料を用いて生体埋込マウス皮膚組織の比較を示す。CD3
+細胞の免疫組織化学(IHC)染色から得られた画像を示し、細胞核(暗色のスポット)及びCD3(丸で囲んで表示)は、差次的に標識化された。ネガティブコントロールマウス及び生体埋込マウスからの皮膚組織は、同等のレベルの免疫応答を誘発した。病理学的評価により、PCLに対して1+が報告される。示す画像は、少なくとも4匹のC57BL/6マウス/群で表される。スケールバー=50μm。
【
図22C】本明細書に開示の種々の実施形態に従い、PCLベースの材料を用いて生体埋込マウス皮膚組織の比較を示す。CD3
+細胞の免疫組織化学(IHC)染色から得られた画像を示し、細胞核(暗色のスポット)及びCD3(丸で囲んで表示)は、差次的に標識化された。ネガティブコントロールマウス及び生体埋込マウスからの皮膚組織は、同等のレベルの免疫応答を誘発した。病理学的評価により、PCL-RGDに対して1+が報告される。示す画像は、少なくとも4匹のC57BL/6マウス/群で表される。スケールバー=50μm。
【
図22D】本明細書に開示の種々の実施形態に従い、PCLベースの材料を用いて生体埋込マウス皮膚組織の比較を示す。CD3
+細胞の免疫組織化学(IHC)染色から得られた画像を示し、細胞核(暗色のスポット)及びCD3(丸で囲んで表示)は、差次的に標識化された。ネガティブコントロールマウス及び生体埋込マウスからの皮膚組織は、同等のレベルの免疫応答を誘発した。病理学的評価により、PCL-GPHPに対して1+が報告される。示す画像は、少なくとも4匹のC57BL/6マウス/群で表される。スケールバー=50μm。
【
図23A】本明細書に開示の種々の実施形態に従い、PCLベースの材料を用いて生体埋込マウス皮膚組織の比較を示す。ヘマトキシリン及びエオシン(H&E)染色から得られた画像を示し、核成分(ヘマトキシリン)及び細胞質成分(エオシン)は、差次的に染色された。ネガティブコントロールマウス及び生体埋込マウスからの皮膚組織は、同等のレベルの免疫応答を誘発した。病理学的評価により、ネガティブコントロールに対して1+が報告される。示す画像は、少なくとも4匹のC57BL/6マウス/群で表される。スケールバー=50μm。
【
図23B】本明細書に開示の種々の実施形態に従い、PCLベースの材料を用いて生体埋込マウス皮膚組織の比較を示す。ヘマトキシリン及びエオシン(H&E)染色から得られた画像を示し、核成分(ヘマトキシリン)及び細胞質成分(エオシン)は、差次的に染色された。ネガティブコントロールマウス及び生体埋込マウスからの皮膚組織は、同等のレベルの免疫応答を誘発した。病理学的評価により、PCLに対して1+が報告される。示す画像は、少なくとも4匹のC57BL/6マウス/群で表される。スケールバー=50μm。
【
図23C】本明細書に開示の種々の実施形態に従い、PCLベースの材料を用いて生体埋込マウス皮膚組織の比較を示す。ヘマトキシリン及びエオシン(H&E)染色から得られた画像を示し、核成分(ヘマトキシリン)及び細胞質成分(エオシン)は、差次的に染色された。ネガティブコントロールマウス及び生体埋込マウスからの皮膚組織は、同等のレベルの免疫応答を誘発した。病理学的評価により、PCL-RGDに対して1+が報告される。示す画像は、少なくとも4匹のC57BL/6マウス/群で表される。スケールバー=50μm。
【
図23D】本明細書に開示の種々の実施形態に従い、PCLベースの材料を用いて生体埋込マウス皮膚組織の比較を示す。ヘマトキシリン及びエオシン(H&E)染色から得られた画像を示し、核成分(ヘマトキシリン)及び細胞質成分(エオシン)は、差次的に染色された。ネガティブコントロールマウス及び生体埋込マウスからの皮膚組織は、同等のレベルの免疫応答を誘発した。病理学的評価により、PCL-GPHPに対して1+が報告される。示す画像は、少なくとも4匹のC57BL/6マウス/群で表される。スケールバー=50μm。
【
図24A】本明細書に開示の種々の実施形態に従い、PLAベースの材料を用いて生体埋込マウス皮膚組織を示す。CD3
+細胞の免疫組織化学(IHC)染色から得られた画像を示し、細胞核(暗色のスポット)及びCD3(丸で囲んで表示)は、差次的に標識化された。病理学的評価により、ネガティブコントロールに対して1+が報告される。示す画像は、少なくとも4匹のC57BL/6マウス/群で表される。スケールバー=50μm。
【
図24B】本明細書に開示の種々の実施形態に従い、PLAベースの材料を用いて生体埋込マウス皮膚組織を示す。CD3
+細胞の免疫組織化学(IHC)染色から得られた画像を示し、細胞核(暗色のスポット)及びCD3(丸で囲んで表示)は、差次的に標識化された。病理学的評価により、PLAに対して1+が報告される。示す画像は、少なくとも4匹のC57BL/6マウス/群で表される。スケールバー=50μm。
【
図24C】本明細書に開示の種々の実施形態に従い、PLAベースの材料を用いて生体埋込マウス皮膚組織を示す。CD3
+細胞の免疫組織化学(IHC)染色から得られた画像を示し、細胞核(暗色のスポット)及びCD3(丸で囲んで表示)は、差次的に標識化された。病理学的評価により、PLA-HAに対して1+が報告される。示す画像は、少なくとも4匹のC57BL/6マウス/群で表される。スケールバー=50μm。
【
図24D】本明細書に開示の種々の実施形態に従い、PLAベースの材料を用いて生体埋込マウス皮膚組織を示す。CD3
+細胞の免疫組織化学(IHC)染色から得られた画像を示し、細胞核(暗色のスポット)及びCD3(丸で囲んで表示)は、差次的に標識化された。病理学的評価により、PLA-RGDに対して0+が報告される。示す画像は、少なくとも4匹のC57BL/6マウス/群で表される。スケールバー=50μm。
【
図24E】本明細書に開示の種々の実施形態に従い、PLAベースの材料を用いて生体埋込マウス皮膚組織を示す。CD3
+細胞の免疫組織化学(IHC)染色から得られた画像を示し、細胞核(暗色のスポット)及びCD3(丸で囲んで表示)は、差次的に標識化された。病理学的評価により、PLA-GPHPに対して1+が報告される。示す画像は、少なくとも4匹のC57BL/6マウス/群で表される。スケールバー=50μm。
【
図25A】本明細書に開示の種々の実施形態に従い、PLAベースの材料を用いて生体埋込マウス皮膚組織を示す。ヘマトキシリン及びエオシン(H&E)染色から得られた画像を示し、核成分(ヘマトキシリン)及び細胞質成分(エオシン)は、差次的に染色された。病理学的評価により、ネガティブコントロールに対して1+が報告される。示す画像は、少なくとも4匹のC57BL/6マウス/群で表される。スケールバー=50μm。
【
図25B】本明細書に開示の種々の実施形態に従い、PLAベースの材料を用いて生体埋込マウス皮膚組織を示す。ヘマトキシリン及びエオシン(H&E)染色から得られた画像を示し、核成分(ヘマトキシリン)及び細胞質成分(エオシン)は、差次的に染色された。病理学的評価により、PLAに対して1+が報告される。示す画像は、少なくとも4匹のC57BL/6マウス/群で表される。スケールバー=50μm。
【
図25C】本明細書に開示の種々の実施形態に従い、PLAベースの材料を用いて生体埋込マウス皮膚組織を示す。ヘマトキシリン及びエオシン(H&E)染色から得られた画像を示し、核成分(ヘマトキシリン)及び細胞質成分(エオシン)は、差次的に染色された。病理学的評価により、PLA-HAに対して1+が報告される。示す画像は、少なくとも4匹のC57BL/6マウス/群で表される。スケールバー=50μm。
【
図25D】本明細書に開示の種々の実施形態に従い、PLAベースの材料を用いて生体埋込マウス皮膚組織を示す。ヘマトキシリン及びエオシン(H&E)染色から得られた画像を示し、核成分(ヘマトキシリン)及び細胞質成分(エオシン)は、差次的に染色された。病理学的評価により、PLA-RGDに対して0+が報告される。示す画像は、少なくとも4匹のC57BL/6マウス/群で表される。スケールバー=50μm。
【
図25E】本明細書に開示の種々の実施形態に従い、PLAベースの材料を用いて生体埋込マウス皮膚組織を示す。ヘマトキシリン及びエオシン(H&E)染色から得られた画像を示し、核成分(ヘマトキシリン)及び細胞質成分(エオシン)は、差次的に染色された。病理学的評価により、PLA-GPHPに対して1+が報告される。示す画像は、少なくとも4匹のC57BL/6マウス/群で表される。スケールバー=50μm。
【
図26A】本明細書に開示の種々の実施形態に従い、PLGAベースの材料を用いて生体埋込マウス皮膚組織を示す。CD3
+細胞の免疫組織化学(IHC)染色から得られた画像を示し、細胞核(暗色のスポット)及びCD3(丸で囲んで表示)は、差次的に標識化された。病理学的評価により、ネガティブコントロールに対して2+が報告される。示す画像は、少なくとも4匹のC57BL/6マウス/群で表される。スケールバー=50μm。
【
図26B】本明細書に開示の種々の実施形態に従い、PLGAベースの材料を用いて生体埋込マウス皮膚組織を示す。CD3
+細胞の免疫組織化学(IHC)染色から得られた画像を示し、細胞核(暗色のスポット)及びCD3(丸で囲んで表示)は、差次的に標識化された。病理学的評価により、PLGAに対して2+が報告される。示す画像は、少なくとも4匹のC57BL/6マウス/群で表される。スケールバー=50μm。
【
図26C】本明細書に開示の種々の実施形態に従い、PLGAベースの材料を用いて生体埋込マウス皮膚組織を示す。CD3
+細胞の免疫組織化学(IHC)染色から得られた画像を示し、細胞核(暗色のスポット)及びCD3(丸で囲んで表示)は、差次的に標識化された。病理学的評価により、PLGA-RGD10%に対して2+が報告される。示す画像は、少なくとも4匹のC57BL/6マウス/群で表される。スケールバー=50μm。
【
図26D】本明細書に開示の種々の実施形態に従い、PLGAベースの材料を用いて生体埋込マウス皮膚組織を示す。CD3
+細胞の免疫組織化学(IHC)染色から得られた画像を示し、細胞核(暗色のスポット)及びCD3(丸で囲んで表示)は、差次的に標識化された。病理学的評価により、PLGA-RGD20%に対して1+が報告される。示す画像は、少なくとも4匹のC57BL/6マウス/群で表される。スケールバー=50μm。
【
図27A】本明細書に開示の種々の実施形態に従い、PLGAベースの材料を用いて生体埋込マウス皮膚組織を示す。ヘマトキシリン及びエオシン(H&E)染色から得られた画像を示し、核成分(ヘマトキシリン)及び細胞質成分(エオシン)は、差次的に染色された。病理学的評価により、ネガティブコントロールに対して2+が報告される。示す画像は、少なくとも4匹のC57BL/6マウス/群で表される。スケールバー=50μm。
【
図27B】本明細書に開示の種々の実施形態に従い、PLGAベースの材料を用いて生体埋込マウス皮膚組織を示す。ヘマトキシリン及びエオシン(H&E)染色から得られた画像を示し、核成分(ヘマトキシリン)及び細胞質成分(エオシン)は、差次的に染色された。病理学的評価により、PLGAに対して2+が報告される。示す画像は、少なくとも4匹のC57BL/6マウス/群で表される。スケールバー=50μm。
【
図27C】本明細書に開示の種々の実施形態に従い、PLGAベースの材料を用いて生体埋込マウス皮膚組織を示す。ヘマトキシリン及びエオシン(H&E)染色から得られた画像を示し、核成分(ヘマトキシリン)及び細胞質成分(エオシン)は、差次的に染色された。病理学的評価により、PLGA-RGD10%に対して2+が報告される。示す画像は、少なくとも4匹のC57BL/6マウス/群で表される。スケールバー=50μm。
【
図27D】本明細書に開示の種々の実施形態に従い、PLGAベースの材料を用いて生体埋込マウス皮膚組織を示す。ヘマトキシリン及びエオシン(H&E)染色から得られた画像を示し、核成分(ヘマトキシリン)及び細胞質成分(エオシン)は、差次的に染色された。病理学的評価により、PLGA-RGD20%に対して1+が報告される。示す画像は、少なくとも4匹のC57BL/6マウス/群で表される。スケールバー=50μm。
【
図28】埋め込み部位周囲の皮膚組織のヘマトキシリン及びエオシン(H&E)染色を示す。PLGAは、繰り返し洗浄し、組織から材料を引き離そうと試みたにも関わらず、インタクトであることが確認された。皮膚組織は、分解PLGAによって後に残された空隙を埋めることも確認された(丸で囲んだ領域)。
【
図29】3日後、BMP-2と共に又はBMP-2なしでプレインキュベートされたPCLクーポンで培養されたC2C12細胞のアルカリホスファターゼ(ALP)活性を示す。データは、未処理対する平均ALP活性(n=2)として表される。
【
図30】3日後、BMP-2と共に又はBMP-2なしでプレインキュベートされたPLAクーポンで培養されたC2C12細胞のアルカリホスファターゼ(ALP)活性を示す。データは、未処理対する平均ALP活性(n=2)として表される。
【発明を実施するための形態】
【0164】
実施例
本開示の実施例の実施形態は、以下の実施例から、適用可能である場合には図面と併せて当業者によりよく理解され、容易に明らかとなるであろう。本発明の範囲から逸脱することなく、構造的、生物学的及び/又は化学的変化に関する他の修正形態がなされ得ることを認識されたい。いくつかが1つ又は複数の実施形態と組み合わされて、新規な実施例の実施形態が形成され得るため、実施例の実施形態は、必ずしも相互に排他的ではない。実施例の実施形態は、本開示の範囲を限定すると解釈されるべきではない。
【0165】
フィラメント溶解製法(FFF)又は熱溶解積層法(FDM)により、フィラメント原料を用いて生物学的及び機械的性質を有する医療器具の端から端までの精密な製造が可能となる。適切なポリマーで製造されるフィラメントの形成は、FFF又はFDM印刷技術の利用にとって最も重要である。以下の実施例は、φ2.85mmフィラメント直径設定を用いたFFFベース又はFDMベースの3Dプリンターに関して、生物活性ポリマーで製造されるフィラメントを形成する技術的プロセスを示す。材料の熱分解を避けるために、加熱セクションにおける滞留時間を減らすと同時に、ベースポリマーとバイオ添加剤との良好な混合を可能にするために、二軸スクリュー押出機(TSE)が生物活性ポリマーフィラメントを製造するために実施例で用いられた。熱分析、機械的試験及び生体適合性試験が実施され、その機械的及び生物学的適格性に関して材料の特性が決定された。
【0166】
以下の実施例は、医療器具製造にFFFタイプ又はFDMタイプの3Dプリンターと共に使用することができるフィラメント原料への生物活性ポリマー配合物(ベースポリマー及びバイオ添加剤を含む)の変換を記述する。すなわち、生体分子(例えば、オリゴペプチド、コラーゲン及び/又は糖類、オリゴ糖、ヒアルロン酸)のコポリマー及び合成ポリマーを含む生物活性ポリマーで製造されるフィラメント原料が作られる。プリントヘッドに供給されるフィラメント原料は、生物活性ポリマーで製造される。ベースポリマーマトリックス全体にわたって均一に分布されるバイオ添加剤を用いて、生物活性ポリマーフィラメントを製造する方法も記述される。
【実施例】
【0167】
実施例1:ベースポリマー及びバイオ添加剤
フィラメント溶解製法(FFF)又は熱溶解積層法(FDM)は、その技術上の利点のために好ましい製造方法である。有利なことに、フィラメント押出成形プロセスは、開発された生物活性ポリマーの使用を可能にするかなりの材料の混合を提供する。ベースポリマー及びバイオ添加剤は、所望の用途の生物学的及び物理的条件に応じて選択され得る。「バイオ添加剤」という用語は、開環メタセシス重合(ROMP)によって製造される合成ポリマー及び生体分子のコポリマーを意味する。それは、いずれの生細胞も含有しないが、宿主細胞を刺激して増殖することができ、組織成長が促進される無細胞材料である。以下のスキーム1は、使用され得る異なるベースポリマー及びバイオ添加剤の例を示す。
【0168】
ベースポリマーは、本明細書に開示の生物活性ポリマーを製造するために、バイオ添加剤組成物と共に使用される種々の熱可塑性ポリマー又はフリーラジカルポリマーであり得る。ポリマーの例は、ポリアミド、乳酸・グリコール酸共重合体、ポリカプロラクトン、ポリ(乳酸)、ポリアクリレート、ポリスチレン及びポリウレタンである。バイオ添加剤は、開環メタセシス重合(ROMP)法によって製造される生体分子のコポリマー及び合成ポリマーである。本明細書における合成ポリマーは、開示のベースポリマーと類似のポリマーであっても又はそうでなくてもよい。生体分子の例は、コラーゲン、オリゴペプチド、オリゴ糖、糖質及びヒアルロン酸である。種々の実施形態では、本明細書に開示の方法は、FFF又はFDM製造方法に原料として必要とされるモノフィラメントに、1種類のベースポリマーを有する少なくとも1種類のバイオ添加剤組成物を組込むことを含む。
【表1】
【0169】
実施例2:実験的なプロセスワークフロー
スキーム2は、完全なプロセスワークフローを示す。材料調製は、バイオ添加剤の合成、ベースポリマーの低温粉砕、材料の真空乾燥及びバイオ添加剤とベースポリマーとのブレンドを含む。
【表2】
【0170】
生物活性ポリマーフィラメント押出成形は、粉末状態へのベースポリマーペレットの低温粉砕、ベースポリマー及びバイオ添加剤の真空乾燥、単一配合物へのベースポリマー及びバイオ添加剤のブレンド、モノフィラメントへの配合物のフィラメント押出成形で構成される。
【0171】
ベースポリマーペレットは、低温で粉砕されて粉末状態となり、SPEX 6770 Freezer/Miller又はSPEX 6875 Freezer/Millerを使用した粒径は、1mmである。各ベースポリマー(例えば、ポリアミド-12(PA12)、ポリ(乳酸)(PLA)、乳酸・グリコール酸共重合体(PLGA)、ポリ(カプロラクトン)(PCL))を、表1に示す異なる低温粉砕パラメーターにかけた。真空乾燥パラメーターを表2に示す。続いて、ThinkyMixer ARE-250又はSPEX 8000D Mixer/Millを使用して、ベースポリマー及びバイオ添加剤を少なくとも10~12分間混合し、この混合物は、「配合物」と呼ばれる。
【0172】
押出機、ノズルφ3mmを有するメルトポンプ、水浴及び引き取りユニットを備えるThermo Scientific Process 11二軸スクリュー押出機(TSE)を使用して、フィラメント押出成形を行った。フィラメント押出成形パラメーターを表3に示し、フィラメント押出成形の結果を表4に示す。FFFプリンターは、φ2.85mmフィラメントのために構成されることから、フィラメント直径は、2.5~3.1mmの範囲である必要がある。φ1.75mmフィラメント設定を有するFFFプリンターに適したフィラメントを製造することもできる。
【0173】
以下の実施例では、熱重量分析(TGA)及び示差走査熱量測定(DSC)を含む同時熱分析(STA)は、バイオ添加剤、生物活性ポリマーフィラメント及び3D印刷シートの熱的性質を得るために異なるポイントで行われた。これらの結果から、フィラメント押出成形に必要な必須のデータが提供され、2つの高温プロセス、すなわちフィラメント押出成形及び3D印刷を受けた後の材料の分解開始の並列的な比較が可能となる。
【0174】
米国材料試験協会(ASTM)規格に準拠して機械的試験を行い、試験される材料の関連する機械的性質を決定した。
【0175】
材料がそれと相互作用するように設計された様々なヒト細胞系との生体適合性試験のために試料が送られた。
【0176】
【0177】
【0178】
【0179】
実施例3:ポリアミド(PA)ベースの生物活性ポリマーフィラメント
3.1.生物活性ポリマーフィラメント(例えば、ポリアミド(PA)及びコラーゲンから製造される)
この実施例では、合成に使用されるコラーゲン様ペプチドは、PHPGと略記される(Pro-Hyp-Gly)3及びGPHPと略記される(Gly-Pro-Hyp)3であった。合成されたバイオ添加剤は、化学的に類似しており、PA6-PHPG及びPA6-GPHPと呼ばれる、ポリアミド-6及びポリ(エチレングリコール)-コラーゲン側鎖を有するポリ(ノルボルネン)ジカルボキシイミドブラシ形ポリマーを含んだ。フィラメント押出成形によって生成される生物活性ポリマーは、PA12-PHPG及びPA12-GPHPと呼ばれる。スキーム3は、PA6-[GPHyp]3ブラシ形コポリマーのバイオ添加剤の例の化学構造を示す。
【0180】
3.2.同時熱分析(STA)
STAは、フィラメント押出成形前に各バイオ添加剤成分について行った。
図1及び
図2から、DSCグラフは、PA12の融解温度(180℃)よりも高い213.2℃及び211.5℃でそれぞれPA6-GPHP及びPA6-PHPGの融解を特徴とした。理論によって束縛されることなく、これは、主に、PA12よりも高い融解温度を有することが知られているPA6の存在が原因であったと考えられる。PA6-GPHP及びPA6-PHPGのTGAグラフでは、95%重量パーセンテージでそれぞれ336.5℃及び313.9℃の分解開始温度が強調される。これらの結果から、従うべき作業温度範囲が確立される。これは、PA12-コラーゲンのフィラメント押出成形時の優れたブレンドプロセスのための、二軸スクリュー押出機(TSE)で使用される適切な温度プロファイルの決定を促進する。
【表6】
【0181】
3.3.フィラメント押出成形及びPA12-コラーゲンフィラメント
表3に示すパラメーターを用いて、フィラメント押出成形を行った。熱可塑性ポリマーは、融解温度を15℃~40℃超える温度で加熱した場合、良好な溶融粘度を示し、フィラメント押出成形に対して良好な材料フローが可能となることが確認された。溶融押出物が、水浴、測定ユニット及び巻取りプロセスが行われる引き取りユニット内で操作される時間を長くすることが可能であるため、220℃のメルトポンプ温度が特に使用される。上記に加えて、スクリュー回転数、メルトポンプ及び巻取り速度などの速度ベースのパラメーターを調節することにより、所望のフィラメント直径を達成することができる。冷却された溶融押出物は、したがって、「フィラメント」と呼ばれる。
【0182】
図3は、半透明の濃いオレンジ色であるように見える得られたPA12-コラーゲンフィラメントの写真を示す。
【0183】
3.4.熱重量分析(TGA)
図4は、3D印刷シート(破線)及びそのフィラメント(実線)のPA12-PHPG試料を特徴とする、互いに重ねられた2つのグラフを示し、
図5は、3D印刷シート及びフィラメントのPA12-GPHP試料を特徴とする、互いに重ねられた2つのグラフを示す。PA12-PHPGフィラメント及び3D印刷試料は、類似の熱分解プロファイルを有し、それにより0.09~0.8%のみの範囲の様々な重量パーセンテージでの分解温度の差を有することが確認された。同様に、PA12-GPHPは、フィラメント及び3D印刷試料の類似の熱分解プロファイルを示し、それにより0.4~1.5%の範囲の様々な重量パーセンテージでの分解温度の差を示した。この知見は、試験された生物活性コポリマーの熱安定性を実証し、生体分子がフィラメント押出成形及び3D印刷後に失われないことを示す。
【0184】
3.5.機械的性質
機械的試験を行い、ASTM D638(プラスチックの引張り特性の標準試験法)に準拠して材料の引張り特性を決定した。試験片をV形試験片の規格に必要な大きさにした。試験からの結果は、
図6に棒グラフでまとめられ、示される。
【0185】
PA12-PHPG及びPA12-GPHPのヤング率及び降伏強さは、純粋なPA12と比較して減少することを確認し得、それは、バイオ添加剤の添加によってその減少が生じたことを意味する。生体分子は、引張り試験の結果を損なう、著しい機械的利点のない非晶質であり、これは、生物活性ポリマー中のペグ化ペプチドが原因であった。
【0186】
ヤング率の結果から、PA12は、平均1.68GPaを有し、PA12-GPHP及びPA12-PHPGは、平均1.44GPa及び1.14GPaを有し、換言すればそれぞれ14.3%及び32.1%の減少となる。
【0187】
降伏強さの結果から、PA12は、平均16.53MPaを有し、PA12-GPHP及びPA12-PHPGは、平均12.79MPa及び12.16MPaを有し、換言すればそれぞれ22.6%及び26.4%の降伏強さの減少となる。
【0188】
試験片の一部の層が他のものよりも早く破損し、これが試験された材料のすべてで確認されたため、試験片が全体として容易に破損しないことが確認された。しかしながら、PA12試験片は、PA12-PHPGと比較してこの現象が少なく、これは、主にFFF製造方法の性質によるものであった。さらに、PA12-PHPG試験片の2つも試験中に時期尚早な層間剥離を示し、それは、機械的性質をある程度損ない得る。これは、押出不足として知られる印刷問題が原因であり、それによりごくわずかな材料のみが押出成形され、充填ラインと不整合層の高さとのギャップが生じた。
【0189】
3.6.生体適合性試験
細胞生存率試験アッセイを用いて、3D印刷シート試料でヒト線維芽細胞Hs27との生体適合性試験を実施した。この結果から、試験された生物活性材料それぞれは、
図7に示すように未処理及び初使用PA12群と比較して生体適合性であったことが示されている。
【0190】
実施例4:ポリカプロラクトン(PCL)ベースの生物活性ポリマーフィラメント
この実施例では、熱重量分析(TGA)及び示差走査熱量(DSC)分析からなる同時熱分析(STA)は、押出成形及び3D印刷(3DP)プロセス後、PCLベースのバイオ添加剤及び生物活性PCLで実施された。
図8及び
図9から、バイオ添加剤、PCL-GPHP及びPCL-RGDが59~60℃で融解し、分解開始が重量パーセンテージ95%でそれぞれ257.9℃及び282℃で起こったことが導き出され得る。これらの結果は、押出成形及び3DPプロセスのプロセス最適化を可能にし、それにより、処理温度は、良好な融解フローを確実にする90~240℃であるべきである。フィラメント押出成形プロセスに使用されるパラメーターを上記の表3に示す。さらに、
図10は、フィラメント押出成形及び3DPプロセス後の生物活性PCL、PCL-GPHPのサーモグラフを示す。様々な重量パーセンテージでの分解は、類似しており、0.2~0.5%の範囲の差であることが分かる。これは、バイオ添加剤の熱安定性を示し、2つの高い熱プロセス後に生体分子の損失がなかった。
【0191】
実施例5:ポリ(乳酸)(PLA)ベースの生物活性ポリマーフィラメント
この実施例では、熱重量分析(TGA)及び示差走査熱量(DSC)分析からなる同時熱分析(STA)は、PLAベースのバイオ添加剤で実施された。
【0192】
図11、
図12及び
図13それぞれは、PLAベースのバイオ添加剤、すなわちPLA-GPHP、PLA-RGD及びPLA-HAのSTAグラフを示し、それによりバイオ添加剤の非晶質構造に対応する特定の融点が同定されなかった。バイオ添加剤の分解開始は、95%重量パーセンテージにおいて224~254℃で起こった。PLA-HAは、ペプチド及びコラーゲンと比較してヒアルロン酸の鎖長が長いために、熱分解に耐える最高温度に到達した。しかしながら、ベースポリマーとして使用される純粋な半結晶性PLAは、190℃の融点を示し、その結果、処理温度範囲が狭くなり、すなわちPLA-GPHP及びPLA-RGDについて190~220℃、PLA-HAについて190~250℃となった。表3は、フィラメント押出成形プロセスに使用されるパラメーターを示す。
図14から、PLA-GPHPフィラメント及び3D印刷試料のTGAサーモグラフは、異なる重量パーセンテージで類似の分解ポイントを示し、その差は、2.7%~3.5%であった。これは、バイオ添加剤の熱安定性を示し、それにより高温で押出成形及び3DPプロセスを受けた後に生体分子の損失がなかった。
【0193】
実施例6:乳酸・グリコール酸共重合体(PLGA)ベースの生物活性ポリマーフィラメント
この実施例では、熱重量分析(TGA)及び示差走査熱量(DSC)分析からなる同時熱分析(STA)は、PLGAベースのバイオ添加剤で実施された。
【0194】
図15、
図16及び
図17に示すように、PLGAバイオ添加剤の融点及びPLGAバイオ添加剤の分解開始がSTAによって確立された。PLGA-GPHP、PLGA-RGD及びPLGA-HAの融点は、明確に同定されず、これは、バイオ添加剤の結晶構造の非晶質特性を強調した。これは、ベースポリマーとして使用される純粋なPLGAとも類似している。それにも関わらず、これらのバイオ添加剤の分解開始は、243~281℃の範囲であるのに対して、純粋なPLGAは、309℃で分解する。表3は、フィラメント押出成形プロセスに使用されるパラメーターを示す。さらに、
図18は、PLGA-HAフィラメント及び3DP試料の異なる重量パーセンテージでの分解ポイントを比較するTGAサーモグラフを示す。2つの試料間の分解ポイントの差は、わずか5~10%の範囲であった。
【0195】
実施例7:PLGAベース及びPLAベースの材料の生体適合性試験
軟骨細胞(CHON-001)細胞系を用いた細胞生存率アッセイ法により、3DP試料で材料生体適合性を試験した。
図19は、72時間のインキュベーション期間後の細胞生存率を示す。PLGAベースの材料に関して、PLGA-HAは、他のPLGA材料と比較して最良の性能を有することを確認し得る。代わりに、PLAベースの材料は、低い細胞生存率を示した。PLA-GPHPは、細胞生存率75%の推定値でPLAと同様に機能したのに対して、PLA-RGD及びPLA-HAは、劣る性能を示した。
【0196】
実施例8:インビボでの生体適合性分析
3D印刷クーポンのインビボでの生体適合性分析がマウスモデルを用いて実施された。8週齢のメスのC57BL/6野生型マウスをInVivos Pte Ltdから購入し、材料群にランダムに割り当てた。すべての群は、少なくとも4匹のマウスを有した。研究群からのマウス皮膚組織の免疫組織化学染色は、PA12ベース(
図20A、
図20B、
図20C及び
図21A、
図21B、
図21C)、PCLベース(
図22A、
図22B、
図22C、
図22D及び
図23A、
図23B、
図23C、
図23D)、PLAベース(
図24A、
図24B、
図24C、
図24D、
図24E及び
図25A、
図25B、
図25C、
図25D、
図25E)及びPLGAベース(
図26A、
図26B、
図26C、
図26D及び
図27A、
図27B、
図27C、
図27D)の材料を使用して実施された。簡潔には、それぞれのマウスにケタミン/キシラジンで麻酔し、上部背面に小さい切開を加えた。次いで、皮膚下の皮下スペースにクーポンを挿入した。埋め込みから4週後、すべてのマウスを屠殺した。インプラント周囲のマウス皮膚を採取し、ホルマリンに固定し、組織学的研究のためにパラフィンに包埋した。ヘマトキシリン及びエオシン(H&E)染色並びにCD3(クローンSP162)の免疫組織化学染色をこれらの皮膚で実施した。適切なコントロールが含まれ、Zeiss Axio Scan Z1スライドスキャナーを使用して画像を取り込んだ。Institute of Molecular Cell Biology, A
*STARの熟練した組織病理学者Joe Yeong博士によって分析が行われた。すべての動物の取り扱い手順が動物実験委員会によって承認され、実験動物研究のための国家諮問委員会ガイドライン(IACUC#201550)に従った。
【0197】
PA12試料は、純粋なPA12試料及びPA12-GPHyp試料の両方に関して模擬物(埋め込みなし)に対して炎症反応の増加を示した。PA12-GPHyPは、PA12ベースポリマー中でブレンドされた、[GPHyp)
3]ペプチドを有するPA-6ブラシ形コポリマーである生物活性PA12に対応する。PCL試料は、純粋なPCLと生物活性PCL(RGD又は[(GPHyp)
3]ペプチドを有するPCLブラシ形コポリマー)の両方に関して、模擬物と比較して埋め込み後の炎症反応の増加を示さなかった。生物活性PLA及び生物活性PLGAの両方でインビボでの炎症反応の減少が観察された点から、PLA及びPLGA試料に対して興味深い所見が確認された。純粋なPLA、PLA-HA(MW3,000~5,000のヒアルロン酸を有するPLAブラシ形コポリマー)及びPLA-GPHypは、インビボで炎症反応のわずかな減少を示した。しかしながら、PLA-RGDは、模擬物に対してインビボでごくわずかな炎症反応を示した。インビボで炎症反応を低減することができるPLA-RGDブラシ形コポリマーの能力を示したため、これは、興味深いことであり、それは、固定デバイス及び生分解性縫合糸などの3DPインプラントに有用な材料となる。同様に、ベースPLGAにおける20%生物活性PLGA(PLGA-RGDブラシ形コポリマー)もインビボで炎症反応を低減することが確認された。PLGAは、繰り返し洗浄し、組織から材料を引き離そうと試みたにも関わらず、インタクトであることが確認された。皮膚組織は、分解されたPLGAによって後に残された空隙を埋めることも確認された(
図28)。これにより、生物活性PLGAは、3DP皮膚足場などの用途の優れた材料となる。
【0198】
以上のように、この結果は、有利なことに、生物活性の保持も示す。
【0199】
実施例9:アルカリホスファターゼ(ALP)活性
3日後、BMP-2と共に又はBMP-2なしでプレインキュベートされた、PCLクーポン上で培養されたC2C12細胞のアルカリホスファターゼ(ALP)活性を測定し、
図29に示す。
【0200】
3日後、BMP-2と共に又はBMP-2なしでプレインキュベートされた、PLAクーポン上で培養されたC2C12細胞のアルカリホスファターゼ(ALP)活性を測定し、
図30に示す。
【0201】
3DP PCL及びPLAシートの両方において、C2C12マウス筋芽細胞を使用してアルカリホスファターゼ(ALP)アッセイ試験を実施した。使用されたベースポリマーは、それぞれeSun 800C及びResomer L210Sであった。使用された生物活性コポリマーは、PCL-RGD、PCL-GPHP、PLA-RGD及びPLA-GPHPであり、RGDは、アルギニン-グリシン-アスパラギン酸を意味し、GPHPは、(GPHyp)3ペプチドを意味する。PCLについてBMP-2の非存在下において、PCL-GPHP材料は、「未処理」群、純粋なPCL及びPCL-RGD材料と比較して高いALP活性を有することが確認された。これにより、PCL-GPHPは、コポリマー中の(GPHyp)3ペプチドの包含に起因し得る骨誘導特性を有し得ることが強く示唆される。しかしながら、材料がBMP-2とプレインキュベートされた場合、純粋なPCLが、ALP活性においてPCL-GPHPと比べてごくわずかな利点と共に最良の性能を示すのと同じ傾向を確認することはできなかった。BMP-2を含まないPLAに関して、PLA-GPHP試料は、純粋なPLA試料及び「未処置」群と比べてALP活性のわずかな増加を有することを確認し得る。PLA試料がBMP-2とプレインキュベートされた場合、ALP活性は、「未処理」群と比較して有意に増加し、PLA-GPHP試料は、最良の結果を示す。この知見から、PLA-GPHPは、そのコポリマーにおける(GPHyp)3ペプチドによって誘導される骨誘導特性も有し得ることが示唆される。GPHypは、線維性コラーゲン、例えばコラーゲンIα2、骨における主なタンパク質に存在する一般的なモチーフであり、GPHypは、骨の形成を高めることが知られている。したがって、GPHyp保有バイオ添加剤を含有する3DPシートからのALP活性を確認する能力は、かかる材料が3DP骨移植片などの整形外科用インプラントに利用可能となる場合、生物活性ポリマーフィラメントを使用する可能性を表す。
【0202】
実施例10:生物活性ポリマーフィラメントの技術的特徴
有利なことに、本明細書に開示の生物活性ポリマーフィラメントの種々の実施形態は、FFF又はFDM 3D印刷技術を用いた、印刷医療関係構造体における原料としての使用に適するようにする、熱安定性、機械的/物理的適格性/特性及び生物学的適格性/特性を有する。スキーム4は、本明細書に開示の種々の実施形態に従って製造される生物活性ポリマーフィラメントの重要な技術的特徴の一部を示す。
【表7】
【0203】
広く記述される本開示の趣旨又は範囲から逸脱することなく、本明細書に開示の実施形態に対する他の変更形態及び/又は修正形態がなされ得ることが当業者によって理解されるであろう。例えば、本明細書の記述において、異なる例示的な実施形態全体にわたる例示的な異なる実施形態の特徴は、混合、合体、交換、組み込み、採用、修飾又は包含などされ得る。したがって、本発明の実施形態は、すべての点で説明的であると見なされ、限定するものと見なすべきではない。
【国際調査報告】