(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-02
(54)【発明の名称】異種非構造タンパク質を有する改変アルファウイルス
(51)【国際特許分類】
C12N 15/40 20060101AFI20240925BHJP
C12N 15/86 20060101ALI20240925BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20240925BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20240925BHJP
C12N 7/01 20060101ALI20240925BHJP
A01K 67/0275 20240101ALI20240925BHJP
C07K 14/00 20060101ALI20240925BHJP
C12P 21/00 20060101ALI20240925BHJP
A61K 35/76 20150101ALI20240925BHJP
A61K 35/12 20150101ALI20240925BHJP
A61K 39/00 20060101ALI20240925BHJP
A61P 37/04 20060101ALI20240925BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240925BHJP
A61P 31/00 20060101ALI20240925BHJP
A61K 38/00 20060101ALI20240925BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20240925BHJP
A61K 51/00 20060101ALI20240925BHJP
A61P 37/02 20060101ALI20240925BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240925BHJP
【FI】
C12N15/40 ZNA
C12N15/86 Z
C12N15/63 Z
C12N5/10
C12N7/01
A01K67/0275
C07K14/00
C12P21/00 C
A61K35/76
A61K35/12
A61K39/00 H
A61P37/04
A61P35/00
A61P31/00
A61K38/00
A61K45/00
A61K51/00 100
A61P37/02
A61P43/00 111
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024513722
(86)(22)【出願日】2022-09-01
(85)【翻訳文提出日】2024-04-25
(86)【国際出願番号】 US2022075853
(87)【国際公開番号】W WO2023034927
(87)【国際公開日】2023-03-09
(32)【優先日】2021-09-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523031024
【氏名又は名称】リプリケイト バイオサイエンス,インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100138210
【氏名又は名称】池田 達則
(74)【代理人】
【識別番号】100225598
【氏名又は名称】桐島 拓也
(72)【発明者】
【氏名】ナサニエル スティーブン ワン
(72)【発明者】
【氏名】シゲキ ジョーセフ ミヤケ-ストーナー
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
4C084
4C085
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4B064AG01
4B064CA19
4B064CC24
4B064DA01
4B065AA90X
4B065AA90Y
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4B065AB01
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4B065BA02
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4B065CA44
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4C084BA03
4C084DC50
4C084MA24
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4C084MA66
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4C085AA03
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4C087ZC19
4C087ZC41
4H045AA20
4H045EA20
4H045FA74
(57)【要約】
本開示は、改変されたウイルスゲノム又はレプリコン(例えば、自己複製RNA)を含む核酸分子、それを含有する医薬組成物、及び、所望の生成物を細胞培養物中又は生体内で生成するためのそのような核酸分子及び組成物の使用を含む、分子ウイルス学分野に関する。また、必要とする対象において免疫応答を誘導するための方法、並びに、種々の健康状態を予防及び/又は治療するための方法が提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルファウイルス種の改変されたゲノム又はRNAレプリコンをコードする核酸構築物であって、前記改変されたアルファウイルスゲノム又はRNAレプリコンの少なくとも1つの非構造タンパク質(nsP)又はその一部が、前記改変されたアルファウイルスゲノム又はRNAレプリコンの残部に対して異種性である、核酸構築物。
【請求項2】
前記少なくとも1つの異種nsP又はその一部が、nsP1、nsP2、nsP3、nsP4、もしくはそのいずれかの一部、又は上記のいずれかの組み合わせである、請求項1に記載の核酸構築物。
【請求項3】
前記少なくとも1つの異種nsP又はその一部が、同じアルファウイルス種の別の株由来である、請求項1又は請求項2のいずれか一項に記載の核酸構築物。
【請求項4】
前記少なくとも1つの異種nsP又はその一部が、別のアルファウイルス種由来である、請求項1又は請求項2のいずれか一項に記載の核酸構築物。
【請求項5】
前記改変されたアルファウイルスゲノム又はRNAレプリコンが、1又は複数のウイルス構造タンパク質をコードする核酸配列の少なくとも一部を欠失している、請求項1~4のいずれか一項に記載の核酸構築物。
【請求項6】
前記改変されたウイルスゲノム又はRNAレプリコンが、1又は複数のウイルス構造タンパク質をコードする核酸配列のかなりの部分を欠失している、請求項1~5のいずれか一項に記載の核酸構築物。
【請求項7】
前記改変されたウイルスゲノム又はRNAレプリコンがウイルス構造タンパク質をコードする核酸配列を含まない、請求項1~6のいずれか一項に記載の核酸構築物。
【請求項8】
1又は複数の発現カセットをさらに含み、前記発現カセットのそれぞれが異種核酸配列に機能的に連結しているプロモーターを含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の核酸構築物。
【請求項9】
前記発現カセットのうちの少なくとも1つが異種核酸配列に機能的に連結したサブゲノム(sg)プロモーターを含む、請求項8に記載の核酸構築物。
【請求項10】
前記sgプロモーターが26Sサブゲノムプロモーターである、請求項9に記載の核酸構築物。
【請求項11】
1又は複数の非翻訳領域(UTR)をさらに含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の核酸構築物。
【請求項12】
前記UTRのうちの少なくとも1つが異種UTRである、請求項11に記載の核酸構築物。
【請求項13】
発現カセットの少なくとも1つが目的遺伝子(GOI)のコード配列を含む、請求項8~12のいずれか一項に記載の核酸構築物。
【請求項14】
前記GOIが、治療用ポリペプチド、予防用ポリペプチド、診断用ポリペプチド、栄養補助用ポリペプチド、工業用酵素、及びレポーターポリペプチドからなる群から選択されるポリペプチドをコードする、請求項13に記載の核酸構築物。
【請求項15】
前記GOIが、抗体、抗原、免疫調節剤、酵素、シグナル伝達タンパク質、及びサイトカインからなる群から選択されるポリペプチドをコードする、請求項13~14のいずれか一項に記載の核酸構築物。
【請求項16】
前記GOIのコード配列が、参照コード配列の発現レベルよりも高いレベルで発現されるように最適化されている、請求項13~15のいずれか一項に記載の核酸構築物。
【請求項17】
前記GOIのコード配列が、RNA安定性が増強されるように最適化されている、請求項13~16のいずれか一項に記載の核酸構築物。
【請求項18】
前記アルファウイルス種が、アウラウイルス(Aura virus)(AURAV)、ババンキウイルス(Babanki virus)(BABV)、バーマフォレストウイルス(Barmah Forest virus)(BFV)、ベバルウイルス(Bebaru virus)(BEBV)、バギークリークウイルス(Buggy Creek virus)、カイングアウイルス(Caaingua virus)、カバソウウイルス(Cabassou virus)、チクングニアウイルス(Chikungunya virus)(CHIKV)、東部ウマ脳炎ウイルス(Eastern equine encephalitis virus)(EEEV)、エイラットウイルス(Eilat virus)、エバーグレーズウイルス(Everglades virus)(EVEV)、フォートモーガンウイルス(Fort Morgan virus)(FMV)、ゲタウイルス(Getah virus)(GETV)、ハイランズJウイルス(Highlands J virus)(HJV)、キジラガッチウイルス(Kyzylagach virus)(KYZV)、マダリアガウイルス(Madariaga virus)(MADV)、マヤロウイルス(Mayaro virus)(MAYV)、ミデルブルグウイルス(Middelburg virus)(MIDV)、モサオ・ダス・ペドラスウイルス(Mosso das Pedras virus)、ムカンボウイルス(Mucambo virus)(MUCV)、ヌドゥムウイルス(Ndumu virus)(NDUV)、オニョンニョンウイルス(O’nyong’nyong virus)(ONNV)、ピクスナウイルス(Pixuna virus)(PIXV)、リオネグロウイルス(Rio Negro virus)(RNV)、ロスリバーウイルス(Ross River virus)(RRV)、サケ膵臓病ウイルス(Salmon pancreas disease virus)(SPDV)、セムリキ森林ウイルス(Semliki Forest virus)(SFV)、シンドビスウイルス(Sindbis virus)(SINV)、睡眠病ウイルス(Sleeping disease virus)(SDV)、ミナミゾウアザラシウイルス(Southern elephant seal virus)(SESV)、タイフォレストウイルス(Tai Forest virus)(TFV)、トナテウイルス(Tonate virus)、トロカラウイルス(Trocara virus)、ウナウイルス(Una virus)(UNAV)、ベネズエラウマ脳炎ウイルス(Venezuelan equine encephalitis virus)(VEEV)、西部ウマ脳炎ウイルス(Western equine encephalitis virus)(WEEV)、及びワタロアウイルス(Whataroa virus)(WHAV)からなる群から選択される、請求項1~17のいずれか一項に記載の核酸構築物。
【請求項19】
前記改変されたゲノム又はRNAレプリコンがシンドビスウイルス(Sindbis virus)(SINV)のものである、請求項1~18のいずれか一項に記載の核酸構築物。
【請求項20】
前記改変されたゲノム又はRNAレプリコンがSINVのガードウッド(Girdwood)株のものである、請求項19に記載の核酸構築物。
【請求項21】
前記改変されたゲノム又はRNAレプリコンの少なくとも1つの異種nsP又はその一部がSINVのAR86株由来である、請求項20に記載の核酸構築物。
【請求項22】
前記少なくとも1つの異種nsP又はその一部が、nsP1、nsP3、nsP4、もしくはそのいずれかの一部、又は上記のいずれかの組み合わせである、請求項20~21のいずれか一項に記載の核酸構築物。
【請求項23】
前記改変されたゲノム又はRNAレプリコンがSINVのAR86株のものである、請求項19に記載の核酸構築物。
【請求項24】
前記改変されたSINV-AR86ゲノム又はRNAレプリコンの少なくとも1つの異種nsP又はその一部がSINVのガードウッド株由来である、請求項23に記載の核酸構築物。
【請求項25】
前記改変されたSINV-AR86ゲノム又はRNAレプリコンの少なくとも1つの異種nsP又はその一部がSINVのガードウッド株のnsP2由来である、請求項23~24のいずれか一項に記載の核酸構築物。
【請求項26】
ベクターに組み込まれている、請求項1~25のいずれか一項に記載の核酸構築物。
【請求項27】
前記ベクターが自己複製RNA(srRNA)ベクターである、請求項26に記載の核酸構築物。
【請求項28】
配列番号1~4からなる群から選択される核酸配列に対して、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%の配列同一性を有する核酸配列を含む、請求項1~27のいずれか一項に記載の核酸構築物。
【請求項29】
請求項1~28のいずれか一項に記載の核酸構築物を含む、組換え細胞。
【請求項30】
真核細胞である、請求項29に記載の組換え細胞。
【請求項31】
動物細胞である、請求項30に記載の組換え細胞。
【請求項32】
前記動物細胞が脊椎動物細胞又は無脊椎動物細胞である、請求項31に記載の組換え細胞。
【請求項33】
前記動物細胞が昆虫細胞である、請求項31に記載の組換え細胞。
【請求項34】
前記昆虫細胞が蚊細胞である、請求項33に記載の組換え細胞。
【請求項35】
哺乳類細胞である、請求項32に記載の組換え細胞。
【請求項36】
SV40で形質転換したサル腎臓CV1細胞(COS-7)、ヒト胎児由来腎臓細胞(例えば、HEK293又はHEK293細胞)、ベビーハムスター腎臓細胞(BHK)、マウスセルトリ細胞(例えば、TM4細胞)、サル腎臓細胞(CV1)、ヒト子宮頸癌細胞(HeLa)、イヌ腎臓細胞(MDCK)、バッファローラット肝臓細胞(BRL3A)、ヒト肺細胞(W138)、ヒト肝臓細胞(Hep G2)、マウス乳腺腫瘍(MMT060562)、TRI細胞、FS4細胞、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO細胞)、アフリカミドリザル腎臓細胞(ベロ細胞)、ヒトA549細胞、ヒト子宮頸部細胞、ヒトCHME5細胞、ヒトPER.C6細胞、NS0マウス骨髄腫細胞、ヒト喉頭類表皮細胞、ヒト線維芽細胞、ヒトHUH-7細胞、ヒトMRC-5細胞、ヒト筋細胞、ヒト内皮細胞、ヒトアストロサイト、ヒトマクロファージ細胞、ヒトRAW264.7細胞、マウス3T3細胞、マウスL929細胞、マウス結合組織細胞、マウス筋細胞、及びウサギ腎臓細胞からなる群から選択される、請求項32に記載の組換え細胞。
【請求項37】
請求項29~36のいずれか一項に記載の少なくとも1つの組換え細胞、及び培地を含む、細胞培養物。
【請求項38】
アルファウイルスゲノム又はRNAレプリコンを機能化/操作するための方法であって、
(a)非機能性のアルファウイルスゲノム又はRNAレプリコンを準備すること;
(b)前記非機能性アルファウイルスゲノム又はRNAレプリコンの非構造タンパク質(nsP)又はその一部を、異なるアルファウイルス株由来の対応するnsP又はその一部の異種コード配列と置き換えることで、改変されたアルファウイルスゲノム又はRNAレプリコンを作製すること;
(c)前記改変されたアルファウイルスゲノム又はRNAレプリコンの機能性を評価すること;
(d)前記改変されたアルファウイルスゲノム又はRNAレプリコンがRNA複製及び/又は発現可能である場合に、前記改変されたアルファウイルスゲノム又はRNAレプリコンを機能的であると見なすこと、
を含む、方法。
【請求項39】
前記異種nsP又はその一部が同じアルファウイルス種の別株由来である、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記異種nsP又はその一部が別のアルファウイルス種由来である、請求項38に記載の方法。
【請求項41】
前記異種nsP又はその一部がnsP1、nsP2、nsP3、nsP4、又はそのいずれかの一部である、請求項38~40のいずれか一項に記載の方法。
【請求項42】
前記アルファウイルスゲノム又はRNAレプリコンが非機能性であることが、宿主細胞内での自己複製が不充分であることによって判定される、請求項38~41のいずれか一項に記載の方法。
【請求項43】
前記改変されたアルファウイルスゲノム又はRNAレプリコンの機能性の評価が、RNA複製の検出、ウイルスタンパク質発現の検出、細胞変性効果(CPE)の検出、及び異種導入遺伝子発現の検出からなる群から選択されるアッセイを含む、請求項38~42のいずれか一項に記載の方法。
【請求項44】
請求項1~28のいずれか一項に記載の核酸構築物を含む、トランスジェニック動物。
【請求項45】
脊椎動物又は無脊椎動物である、請求項44に記載のトランスジェニック動物。
【請求項46】
昆虫である、請求項45に記載のトランスジェニック動物。
【請求項47】
哺乳動物である、請求項45に記載のトランスジェニック動物。
【請求項48】
前記哺乳動物がヒト以外の哺乳動物である、請求項46に記載のトランスジェニック動物。
【請求項49】
(i)請求項44~48のいずれか一項に記載のトランスジェニック動物を飼育すること、又は、(ii)請求項1~28のいずれか一項に記載の核酸構築物を含む組換え細胞の培養を、前記組換え細胞がGOIによってコードされるポリペプチドを産生する条件下で行うことを含む、目的ポリペプチドを生成する方法。
【請求項50】
対象において目的ポリペプチドを生成する方法であって、請求項1~28のいずれか一項に記載の核酸構築物を前記対象に投与することを含む、方法。
【請求項51】
前記対象が脊椎動物又は無脊椎動物である、請求項49~50のいずれか一項に記載の方法。
【請求項52】
前記動物が昆虫である、請求項49~51に記載の方法。
【請求項53】
前記対象が哺乳類対象である、請求項49~51のいずれか一項に記載の方法。
【請求項54】
前記哺乳類対象がヒト対象である、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
請求項49~54のいずれか一項に記載の方法によって生成される、組換えポリペプチド。
【請求項56】
薬剤的に許容できる賦形剤、並びに:
(a)請求項1~28のいずれか一項に記載の核酸構築物;
(b)請求項29~36のいずれか一項に記載の組換え細胞;及び/又は
(c)請求項55に記載の組換えポリペプチド、
を含む、医薬組成物。
【請求項57】
請求項1~28のいずれか一項に記載の核酸構築物、及び薬剤的に許容できる賦形剤を含む、請求項56に記載の医薬組成物。
【請求項58】
請求項29~36のいずれか一項に記載の組換え細胞、及び薬剤的に許容できる賦形剤を含む、請求項56に記載の医薬組成物。
【請求項59】
請求項55に記載の組換えポリペプチド、及び薬剤的に許容できる賦形剤を含む、請求項56に記載の医薬組成物。
【請求項60】
リポソーム製剤、脂質ナノ粒子(LNP)製剤、又はポリマーナノ粒子製剤にされた、請求項56~59のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項61】
免疫原性組成物である、請求項56~60のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項62】
前記免疫原性組成物がワクチンとして製剤化された、請求項61に記載の医薬組成物。
【請求項63】
対象に対して実質的に非免疫原性である、請求項56~60のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項64】
アジュバントとして製剤化された、請求項56~63のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項65】
鼻腔内投与用、経皮投与用、腹腔内投与用、筋内投与用、リンパ節内投与用、腫瘍内投与用、関節内投与用、静脈内投与用、皮下投与用、腟内投与用、及び経口投与用のうちの1又は複数のために製剤化された、請求項56~64のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項66】
必要とする対象において薬力学的効果を誘導するための方法であって、
(a)請求項1~28のいずれか一項に記載の核酸構築物;
(b)請求項29~36のいずれか一項に記載の組換え細胞;
(c)請求項55に記載の組換えポリペプチド;及び/又は
(d)請求項56~65のいずれか一項に記載の医薬組成物、
を含む組成物を前記対象に投与することを含む、方法。
【請求項67】
前記薬力学的効果が前記対象における免疫応答を誘発することを含む、請求項66に記載の方法。
【請求項68】
必要とする対象における健康状態を予防及び/又は治療するための方法であって、
(a)請求項1~28のいずれか一項に記載の核酸構築物;
(b)請求項29~36のいずれか一項に記載の組換え細胞;
(c)請求項55に記載の組換えポリペプチド;及び/又は
(d)請求項56~64のいずれか一項に記載の医薬組成物、
を含む組成物を前記対象に予防目的又は治療目的で投与すること、を含む、方法。
【請求項69】
前記状態が増殖性疾患又は微生物感染症である、請求項66~67のいずれか一項に記載の方法。
【請求項70】
前記対象が、増殖性疾患もしくは微生物感染症に伴う状態を有する、又はそれを有する疑いがある、請求項66~69のいずれか一項に記載の方法。
【請求項71】
投与された前記組成物が前記対象におけるインターフェロン産生の増加をもたらす、請求項66~70のいずれか一項に記載の方法。
【請求項72】
前記組成物が、単独療法(単剤療法)として個々に、又は、第1の治療法として少なくとも1つの追加の治療法と組み合わせて、前記対象に投与される、請求項66~71のいずれか一項に記載の方法。
【請求項73】
前記少なくとも1つの追加の治療法が、化学療法、放射線療法、免疫療法、ホルモン療法、毒素療法、標的療法、及び外科手術からなる群から選択される、請求項72に記載の方法。
【請求項74】
薬力学的効果を誘導する、免疫応答を誘発する、健康状態もしくは微生物感染症を予防する、及び/又は、健康状態もしくは微生物感染症を治療するための、キットであって、
(a)請求項1~28のいずれか一項に記載の核酸構築物;
(b)請求項29~36のいずれか一項に記載の組換え細胞;
(c)請求項55に記載の組換えポリペプチド;及び/又は
(d)請求項56~65のいずれか一項に記載の医薬組成物、
を含む、キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年9月2日に出願された米国仮特許出願第63/240,297号に基づく優先権の利益を主張するものである。上記出願の開示は、図面を含んで、その全体が参照によって本明細書に明示的に援用される。
【0002】
本開示は、分子ウイルス学及び免疫学の分野に関し、特に、改変されたウイルスゲノム及びレプリコン(例えば、自己複製RNA)をコードする核酸分子、それを含有する医薬組成物、並びに、所望の生成物を細胞培養物中又は生体内で生成するためのそのような核酸分子及び組成物の使用に関する。また、必要とする対象において薬力学的効果を誘導する、例えば、必要とする対象における免疫応答を誘発するための方法、並びに、様々な健康状態を予防及び/又は治療するための方法が、提供される。
【0003】
配列表の組み込み
添付の配列表中の材料は、参照によって本願に援用されるものとする。058462_504001WO_SequenceListing.XMLという名称の添付の配列表XMLファイルは、2022年8月28日に作成されたものであり、95KBである。
【背景技術】
【0004】
近年、いくつかの異なる動物ウイルス群に対して、相同組換えによる、又はゲノムの直接操作による、遺伝子操作が行われた。DNAウイルス及びRNAウイルスの両方に逆遺伝学システムが利用可能になったことで、組換えウイルスを、例えば、ワクチン、発現ベクター、抗腫瘍薬、遺伝子治療ベクター、及び薬物送達媒体として使用する新たな展望が生まれた。
【0005】
例えば、培養された組換え細胞で異種タンパク質を発現するために、多くのウイルスベース発現ベクターが開発された。例えば、改変ウイルスベクターの、宿主細胞における遺伝子発現への応用が、拡大を続けている。これに関する最近の進展には、マルチサブユニットタンパク質複合体の生産、及び異種タンパク質生産を改善するためのタンパク質修飾酵素の共発現のための手法及びシステムのさらなる開発が含まれる。ウイルス発現ベクター技術に関する他の最近の進歩には、多くの高度なゲノム工学を応用した遺伝子発現の調節、ウイルスベクターの調製、インビボ遺伝子治療応用、ワクチン送達ベクターの作製などがある。
【0006】
したがって、RNAレプリコンをベースとした発現プラットフォームにおいて目的の産物を発現するための、より効率的な方法及びシステムが、尚も必要とされている。
【発明の概要】
【0007】
本開示は、全体として、増殖性疾患及び微生物感染症などの種々の健康状態の予防及び管理で使用するための、組換え核酸構築物及びそれを含む医薬組成物などの、免疫療法薬の開発に関する。特に、以下でより詳細に説明されるように、本開示のいくつかの実施形態は、とりわけ、少なくとも1つの異種の1つの非構造タンパク質(nsP)又はその一部のコード配列を含む組換えアルファウイルスをコードする核酸構築物を提供する。また、本明細書で開示される核酸構築物を含む組換え細胞、本明細書で開示される核酸構築物を含むトランスジェニック動物、本明細書で開示される核酸構築物を生成するための方法、目的の組換えポリペプチドをエキソビボ又はインビボで生成するための方法、及びそれによって生成された組換えポリペプチド、並びに、上記核酸構築物を含有する医薬組成物、上記組換え細胞を含有する医薬組成物、及び上記組換えポリペプチドを含有する医薬組成物が提供される。また、本開示の核酸構築物、本開示の組換え細胞、本開示の組換えポリペプチド、及び/又は本開示の医薬組成物を投与することを含む、免疫応答を誘導するための方法、並びに、必要とする対象における健康状態を予防及び/又は治療するための方法も、本明細書で提供される。
【0008】
本開示の1つの態様において、アルファウイルス種の改変されたゲノム又はRNAレプリコン(例えば、自己複製RNA)を含み、上記改変されたアルファウイルスゲノム又はRNAレプリコンの少なくとも1つの非構造タンパク質(nsP)又はその一部が、上記改変されたアルファウイルスゲノム又はRNAレプリコンの残部に対して異種性である、核酸構築物が、本明細書で提供される。
【0009】
本開示の核酸構築物の非限定的な実施形態は、以下の特徴のうちの1又は複数を含むことがある。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの異種nsP又はその一部は、nsP1、nsP2、nsP3、nsP4、もしくはそのいずれかの一部、又は上記のいずれかの組み合わせである。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの異種nsP又はその一部は、同じアルファウイルス種の別株由来である。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの異種nsP又はその一部は、別のアルファウイルス種由来である。
【0010】
いくつかの実施形態では、改変されたアルファウイルスゲノム又はRNAレプリコン(例えば、自己複製RNA)は、1又は複数のウイルス構造タンパク質をコードする核酸配列の少なくとも一部を含んでいない。いくつかの実施形態では、改変されたウイルスゲノム又はRNAレプリコンは、1又は複数のウイルス構造タンパク質をコードする核酸配列のかなりの部分を含んでいない。いくつかの実施形態では、改変されたウイルスゲノム又はRNAレプリコンは、ウイルス構造タンパク質をコードする核酸配列を含んでいない。
【0011】
いくつかの実施形態では、本開示の改変されたアルファウイルスゲノム又はRNAレプリコン(例えば、自己複製RNA)は、それぞれが異種核酸配列に機能的に連結したプロモーターを含む、1又は複数の発現カセットをさらに含む。いくつかの実施形態では、これらの発現カセットの少なくとも1つは、異種核酸配列に機能的に連結したサブゲノム(sg)プロモーターを含む。いくつかの実施形態では、このsgプロモーターは26Sサブゲノムプロモーターである。いくつかの実施形態では、本開示の改変されたアルファウイルスゲノム又はRNAレプリコンは、1又は複数の非翻訳領域(UTR)をさらに含む。いくつかの実施形態では、これらのUTRの少なくとも1つは異種UTRである。
【0012】
いくつかの実施形態では、発現カセットの少なくとも1つは、目的遺伝子(GOI)のコード配列を含む。いくつかの実施形態では、上記GOIは、治療用ポリペプチド、予防用ポリペプチド、診断用ポリペプチド、栄養補助用ポリペプチド、工業用酵素、及びレポーターポリペプチドからなる群から選択されるポリペプチドをコードする。いくつかの実施形態では、上記GOIは、抗体、抗原、免疫調節剤、酵素、シグナル伝達タンパク質、及びサイトカインからなる群から選択されるポリペプチドをコードする。いくつかの実施形態では、上記GOIのコード配列は、参照コード配列の発現レベルよりも高いレベルで発現されるように最適化されている。いくつかの実施形態では、上記GOIのコード配列は、RNA安定性が増強されるように最適化されている。
【0013】
いくつかの実施形態では、本開示の改変されたアルファウイルスゲノム又はRNAレプリコン(例えば、自己複製RNA)は、アウラウイルス(Aura virus)(AURAV)、ババンキウイルス(Babanki virus)(BABV)、バーマフォレストウイルス(Barmah Forest virus)(BFV)、ベバルウイルス(Bebaru virus)(BEBV)、バギークリークウイルス(Buggy Creek virus)、カイングアウイルス(Caaingua virus)、カバソウウイルス(Cabassou virus)、チクングニアウイルス(Chikungunya virus)(CHIKV)、東部ウマ脳炎ウイルス(Eastern equine encephalitis virus)(EEEV)、エイラットウイルス(Eilat virus)、エバーグレーズウイルス(Everglades virus)(EVEV)、フォートモーガンウイルス(Fort Morgan virus)(FMV)、ゲタウイルス(Getah virus)(GETV)、ハイランズJウイルス(Highlands J virus)(HJV)、キジラガッチウイルス(Kyzylagach virus)(KYZV)、マダリアガウイルス(Madariaga virus)(MADV)、マヤロウイルス(Mayaro virus)(MAYV)、ミデルブルグウイルス(Middelburg virus)(MIDV)、モサオ・ダス・ペドラスウイルス(Mosso das Pedras virus)、ムカンボウイルス(Mucambo virus)(MUCV)、ヌドゥムウイルス(Ndumu virus)(NDUV)、オニョンニョンウイルス(O’nyong’nyong virus)(ONNV)、ピクスナウイルス(Pixuna virus)(PIXV)、リオネグロウイルス(Rio Negro virus)(RNV)、ロスリバーウイルス(Ross River virus)(RRV)、サケ膵臓病ウイルス(Salmon pancreas disease virus)(SPDV)、セムリキ森林ウイルス(Semliki Forest virus)(SFV)、シンドビスウイルス(Sindbis virus)(SINV)、睡眠病ウイルス(Sleeping disease virus)(SDV)、ミナミゾウアザラシウイルス(Southern elephant seal virus)(SESV)、タイフォレストウイルス(Tai Forest virus)(TFV)、トナテウイルス(Tonate virus)、トロカラウイルス(Trocara virus)、ウナウイルス(Una virus)(UNAV)、ベネズエラウマ脳炎ウイルス(Venezuelan equine encephalitis virus)(VEEV)、西部ウマ脳炎ウイルス(Western equine encephalitis virus)(WEEV)、及びワタロアウイルス(Whataroa virus)(WHAV)からなる群から選択されるアルファウイルス種のものである。
【0014】
いくつかの実施形態では、本開示の改変されたアルファウイルスゲノム又はRNAレプリコン(例えば、自己複製RNA)は、シンドビスウイルス(Sindbis virus)(SINV)のものである。いくつかの実施形態では、本開示の改変されたアルファウイルスゲノム又はRNAレプリコンは、SINVのガードウッド(Girdwood)株のものである。
【0015】
いくつかの実施形態では、改変されたゲノム又はRNAレプリコン(例えば、自己複製RNA)の少なくとも1つの異種nsP又はその一部は、SINVのAR86株由来である。いくつかの実施形態では、改変されたゲノム又はRNAレプリコンの少なくとも1つの異種nsP又はその一部は、SINVのガードウッド株由来である。
【0016】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの異種nsP又はその一部は、nsP1、nsP3、nsP4、もしくはそのいずれかの一部、又は上記のいずれかの組み合わせである。いくつかの実施形態では、改変されたゲノム又はRNAレプリコン(例えば、自己複製RNA)は、SINVのAR86株のものである。いくつかの実施形態では、改変されたSINV-AR86ゲノム又はRNAレプリコンの少なくとも1つの異種nsP又はその一部は、SINVのガードウッド株由来である。いくつかの実施形態では、改変されたSINV-AR86ゲノム又はRNAレプリコンの少なくとも1つの異種nsP又はその一部は、SINVのガードウッド株のnsP2由来である。
【0017】
いくつかの実施形態では、本開示の核酸構築物は、ベクターに組み込まれている。いくつかの実施形態では、このベクターは自己複製RNA(srRNA)ベクターである。
【0018】
本開示のいくつかの実施形態では、核酸構築物は、配列番号1~4からなる群から選択される核酸配列に対して、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%の配列同一性を有する核酸配列を含む。
【0019】
1つの態様において、本明細書で開示されているような核酸構築物を含む組換え細胞が、本明細書で提供される。いくつかの実施形態では、上記組換え細胞は真核細胞である。いくつかの実施形態では、上記組換え細胞は動物細胞である。いくつかの実施形態では、上記動物細胞は脊椎動物細胞又は無脊椎動物細胞である。いくつかの実施形態では、上記動物細胞は昆虫細胞である。いくつかの実施形態では、上記昆虫細胞は蚊細胞である。いくつかの実施形態では、上記組換え細胞は哺乳類細胞である。いくつかの実施形態では、上記組換え細胞は、SV40で形質転換したサル腎臓CV1細胞(COS-7)、ヒト胎児由来腎臓細胞(例えば、HEK293又はHEK293細胞)、ベビーハムスター腎臓細胞(BHK)、マウスセルトリ細胞(例えば、TM4細胞)、サル腎臓細胞(CV1)、ヒト子宮頸癌細胞(HeLa)、イヌ腎臓細胞(MDCK)、バッファローラット肝臓細胞(BRL3A)、ヒト肺細胞(W138)、ヒト肝臓細胞(Hep G2)、マウス乳腺腫瘍(MMT060562)、TRI細胞、FS4細胞、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO細胞)、アフリカミドリザル腎臓細胞(ベロ細胞)、ヒトA549細胞、ヒト子宮頸部細胞、ヒトCHME5細胞、ヒトPER.C6細胞、NS0マウス骨髄腫細胞、ヒト喉頭類表皮細胞、ヒト線維芽細胞、ヒトHUH-7細胞、ヒトMRC-5細胞、ヒト筋細胞、ヒト内皮細胞、ヒトアストロサイト、ヒトマクロファージ細胞、ヒトRAW264.7細胞、マウス3T3細胞、マウスL929細胞、マウス結合組織細胞、マウス筋細胞、及びウサギ腎臓細胞からなる群から選択される。また、関連する態様において、本明細書で開示されるような少なくとも1つの組換え細胞と、培地とを含む細胞培養物も、提供される。
【0020】
別の態様において、本明細書に記載されているような核酸構築物を含むトランスジェニック動物が、本明細書で提供される。いくつかの実施形態では、上記動物は脊椎動物又は無脊椎動物である。いくつかの実施形態では、上記動物は昆虫である。いくつかの実施形態では、上記動物は哺乳動物である。いくつかの実施形態では、上記哺乳動物はヒト以外の哺乳動物である。別の態様において、目的ポリペプチドを生成するための方法であって、(i)本明細書で開示されるようなトランスジェニック動物の飼育;又は、(ii)本明細書で開示されるような核酸構築物を含む組換え細胞の培養を、上記のトランスジェニック動物又は組換え細胞がGOIによってコードされるポリペプチドを産生する条件下で行うことを含む、方法が、本明細書で提供される。
【0021】
別の態様において、対象において目的ポリペプチドを生成するための方法であって、本明細書で開示されるような核酸構築物を上記対象に投与することを含む、方法が、本明細書で提供される。いくつかの実施形態では、上記対象は脊椎動物又は無脊椎動物である。いくつかの実施形態では、上記対象は昆虫である。いくつかの実施形態では、上記昆虫は蚊である。いくつかの実施形態では、上記対象は哺乳類対象である。いくつかの実施形態では、上記哺乳類対象はヒト対象である。さらに別の態様においては、本開示の方法によって生成された組換えポリペプチドが、本明細書で提供される。
【0022】
さらに別の態様において、薬剤的に許容できる賦形剤と、a)本開示の核酸構築物;b)本開示の組換え細胞;及び/又はc)本開示の組換えポリペプチドと、を含む医薬組成物が、本明細書で提供される。
【0023】
本開示の医薬組成物の非限定的且つ例示的な実施形態は、以下の特徴のうちの1又は複数を含む可能性がある。いくつかの実施形態では、本明細書で開示されるような核酸構築物と、薬剤的に許容できる賦形剤と、を含む組成物が、本明細書で提供される。いくつかの実施形態では、本明細書で開示されるような組換え細胞と、薬剤的に許容できる賦形剤と、を含む組成物が、本明細書で提供される。いくつかの実施形態では、上記組成物は、本明細書で開示されるような組換えポリペプチドと、薬剤的に許容できる賦形剤と、を含む。いくつかの実施形態では、リポソーム製剤、脂質ナノ粒子(LNP)製剤、又はポリマーナノ粒子製剤にされた組成物が、本明細書で提供される。いくつかの実施形態では、上記組成物は免疫原性組成物である。いくつかの実施形態では、上記免疫原性組成物はワクチンとして製剤化される。いくつかの実施形態では、上記免疫原性組成物は対象に対して実質的に非免疫原性である。いくつかの実施形態では、上記医薬組成物はアジュバントとして製剤化される。いくつかの実施形態では、上記医薬組成物は、鼻腔内投与用、リンパ節内投与用、経皮投与用、腹腔内投与用、筋内投与用、腫瘍内投与用、関節内投与用、静脈内投与用、皮下投与用、腟内投与用、眼内投与用、経口投与用、及び直腸内投与用のうちの1又は複数のために製剤化される。
【0024】
別の態様では、アルファウイルスゲノム又はRNAレプリコン(例えば、自己複製RNA)を機能化/操作するための方法であって、(a)非機能性のアルファウイルスゲノム又はRNAレプリコンを準備すること;(b)前記非機能性アルファウイルスゲノム又はRNAレプリコンの非構造タンパク質(nsP)又はその一部を、異なるアルファウイルス株由来の対応するnsP又はその一部の異種コード配列と置き換えることで、改変されたアルファウイルスゲノム又はRNAレプリコンを作製すること;(c)前記改変されたアルファウイルスゲノム又はRNAレプリコンの機能性を評価すること;並びに、(d)前記改変されたアルファウイルスゲノム又はRNAレプリコンがRNA複製及び/又は発現可能である場合に、前記改変されたアルファウイルスゲノム又はRNAレプリコンを機能的であると見なすこと、を含む、方法が、本明細書で提供される。
【0025】
本開示のアルファウイルスゲノム又はRNAレプリコン(例えば、自己複製RNA)を機能化/操作するための方法の非限定的且つ例示的な実施形態は、以下の特徴のうちの1又は複数を含む可能性がある。いくつかの実施形態では、異種nsP又はその一部は、同じアルファウイルス種の別株由来である。いくつかの実施形態では、異種nsP又はその一部は、別のアルファウイルス種由来である。いくつかの実施形態では、異種nsP又はその一部は、nsP1、nsP2、nsP3、nsP4、又はそのいずれかの一部である。いくつかの実施形態では、アルファウイルスゲノム又はRNAレプリコンが非機能性であることは、宿主細胞内での自己複製が不充分であることによって判定される。いくつかの実施形態では、改変されたアルファウイルスゲノム又はRNAレプリコンの機能性の評価は、RNA複製の検出、ウイルスタンパク質発現の検出、細胞変性効果(CPE)の検出、及び異種導入遺伝子発現の検出からなる群から選択されるアッセイを含む。
【0026】
別の態様において、対象において薬力学的効果を誘導するための方法、特に、必要とする対象における免疫応答を誘発するための方法であって、a)本開示の核酸構築物;b)本開示の組換え細胞;c)本開示の組換えポリペプチド;及び/又はd)本開示の医薬組成物を含む組成物を上記対象に投与すること、を含む方法が、本明細書で提供される。
【0027】
さらに別の態様において、必要とする対象における健康状態を予防及び/又は治療するための方法であって、a)本開示の核酸構築物;b)本開示の組換え細胞;c)本開示の組換えポリペプチド;及び/又はd)本開示のいずれか1つの医薬組成物を含む組成物を上記対象に予防目的又は治療目的で投与すること、を含む方法が、本明細書で提供される。
【0028】
本開示の方法の非限定的且つ例示的な実施形態は、以下の特徴のうちの1又は複数を含む可能性がある。いくつかの実施形態では、上記状態は増殖性疾患又は微生物感染症である。いくつかの実施形態では、上記対象は、増殖性疾患もしくは微生物感染症に伴う状態を有する、又はそれを有する疑いがある。いくつかの実施形態では、投与された上記組成物は上記対象におけるインターフェロン産生の増加をもたらす。いくつかの実施形態では、上記組成物は、単独療法(単剤療法)として個々に、又は、第1の治療法として少なくとも1つの追加の治療法と組み合わせて、上記対象に投与される。いくつかの実施形態では、上記少なくとも1つの追加の治療法は、化学療法、放射線療法、免疫療法、ホルモン療法、毒素療法、標的療法、及び外科手術からなる群から選択される。
【0029】
さらに別の態様において、a)本開示の核酸構築物;b)本開示の組換え細胞;c)本開示の組換えポリペプチド;及び/又はd)本開示の医薬組成物を含む、薬力学的効果を誘導する、免疫応答を誘発する、健康状態もしくは微生物感染症を予防する、及び/又は、健康状態もしくは微生物感染症を治療するための、キットが、本明細書で提供される。
【0030】
本明細書に記載の態様及び実施形態のそれぞれは、実施形態又は態様の文脈から明示的又は明白に排除されていない限り、一緒に使用することが可能である。
【0031】
上記の概要は例示のみを目的としており、なんら限定的であることを意図していない。本明細書に記載の例示的な実施形態及び特徴に加えて、図面及び発明を実施するための形態及び特許請求の範囲からも、本開示のさらなる態様、実施形態、目的、及び特徴は充分に明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】
図1は、本開示のいくつかの実施形態に従ったアルファウイルスゲノム設計の4つの非限定例の模式図である。非構造タンパク質であるnsP1、nsP2、nsP3、及びnsP4が示されている。これらのアルファウイルス設計はそれぞれ、(i)26Sサブゲノムプロモーターの制御下に置かれた異種の目的遺伝子(GOI);並びに、(ii)SINVのAR86株由来のネイティブな5’UTR配列及び3’UTR配列を含有する。AR86-ガードウッドハイブリッド1において、構造タンパク質のnsP1、nsP3、及びnsP4はSINVのAR86株由来であり、nsP2はSINVのガードウッド株由来である。AR86-ガードウッドハイブリッド2において、nsP4はAR86株由来であり、nsP1、nsP2、及びnsP3はガードウッド株由来である。AR86-ガードウッドハイブリッド3において、nsP3はAR86株由来であり、nsP1、nsP2、及びnsP4はガードウッド株由来である。AR86-ガードウッドハイブリッド4において、nsP1はAR86株由来であり、及びnsP2、nsP3、一方、nsP4はガードウッド由来である。
【
図2A】
図2Aは、ベースとなる、目的遺伝子(GOI)のコード配列を含んでいない、
図1に記載されたシンドビスAR86-ガードウッドハイブリッド1ベクターの模式構造である。
【
図2B】
図2Bは、26Sサブゲノムプロモーターの制御下に置かれた、例示的なGOI、例えば、インフルエンザAウイルスH5N1の赤血球凝集素前駆物質(HA)(H5N1 HA)、のコード配列を含む、
図1に記載されたシンドビスAR86-ガードウッドハイブリッド1ベクターの模式構造である。
【
図3A】
図3Aは、ベースとなる、GOIのコード配列を含んでいない、
図1に記載されたシンドビスAR86-ガードウッドハイブリッド2ベクターの模式構造である。
【
図3B】
図3Bは、26Sサブゲノムプロモーターの制御下に置かれた、例示的なGOI、例えば、H5N1 HA、のコード配列を含む、
図1に記載されたシンドビスAR86-ガードウッドハイブリッド2ベクターの模式構造である。
【
図4A】
図4Aは、ベースとなる、GOIのコード配列を含んでいない、
図1に記載されたシンドビスAR86-ガードウッドハイブリッド3ベクターの模式構造である。
【
図4B】
図4Bは、26Sサブゲノムプロモーターの制御下に置かれた、例示的なGOI、例えば、H5N1 HA、のコード配列を含む、
図1に記載されたシンドビスAR86-ガードウッドハイブリッド3ベクターの模式構造である。
【
図5A】
図5Aは、ベースとなる、GOIのコード配列を含んでいない、
図1に記載されたシンドビスAR86-ガードウッドハイブリッド4ベクターの模式構造である。
【
図5B】
図5Bは、26Sサブゲノムプロモーターの制御下に置かれた、例示的なGOI、例えば、H5N1 HA、のコード配列を含む、
図1に記載されたシンドビスAR86-ガードウッドハイブリッド4ベクターの模式構造である。
【
図2】
図6は、不完全なnsP配列を、異種アルファウイルスゲノム又はRNAレプリコン由来の対応する機能的なnsPと置き換えることで、非機能的なアルファウイルスゲノム又はRNAレプリコン(例えば、自己複製RNA)を機能化できることを実証するために行われた実験の結果をグラフでまとめたものである。
図6は、本開示のいくつかの実施形態に従った例示的なアルファウイルスゲノム設計物を用いて形質転換されたBHK-21細胞の、等高線プロットを示している。これらの実験では、蛍光フローサイトメトリーでdsRNA+細胞の頻度を定量化するために、これらのアルファウイルスゲノム設計物をBHK-21細胞にエレクトロポレーションによってそれぞれ導入し、形質転換の20時間後、細胞を固定及び透過処理し、PE結合型抗二本鎖RNA(dsRNA)マウスモノクローナル抗体(J2、Scicons)を用いて染色した。これらのアルファウイルスゲノム設計物の、RNA複製を行って、dsRNAの生成をもたらす能力が示されている。
【
図3】
図7は、異種非構造タンパク質遺伝子を含むsrRNAベクターからGOIの発現を検出できることを実証するために行われた実験の結果をグラフでまとめたものである。
図7は、本開示のいくつかの実施形態に従ったsrRNAベクター設計物で形質転換された細胞における、トリインフルエンザA H5N1のHAポリペプチドの相対発現の定量化を示す棒グラフである。これらの実験では、蛍光フローサイトメトリーでH5N1+細胞の平均蛍光強度(MFI)を定量化するために、これらのアルファウイルスsrRNA設計物をBHK-21細胞にエレクトロポレーションによってそれぞれ導入し、形質転換の20時間後、細胞を固定及び透過処理し、APC結合型抗H5N1マウスモノクローナル抗体(2B7、アブカム社;APC:アロフィコシアニン)を用いて染色した。
【
図8A】
図8A~
図8Bは、本開示のいくつかの実施形態にしたがって設計された異種非構造タンパク質遺伝子を含有する改変srRNAベクターを用いることで、2種の例示的な生物活性タンパク質:(i)インターロイキン-1受容体アンタゴニストタンパク質(IL-1RA)、及び(ii)インターロイキン-12(IL-12)を発現することができることを実証する実験の結果を模式的にまとめたものである。
図8A~
図8Bは、これらのsrRNAで形質転換されたBHK-21細胞から分泌されたタンパク質の生理活性の定量化を示す棒グラフである。
図8A~
図8Bに示されているsrRNAは、それぞれ2つのタンパク質IL-1RA及びIL-12を2つの異なる構成でコードしている、SINV AR86-ガードウッドハイブリッド1srRNA(RBI307、RBI308)である。また、以下の通りの4つのVEEVベースsrRNAコントロールもこれらの実験に含めた:IL-1RA及びIL-12の両方を2つの構成でコードしているVEEV srRNA(RBI299、RBI300)、並びに、コントロール導入遺伝子を含むVEEV srRNA(RBI296、RBI298)。また、それぞれ2つのタンパク質IL-1RA及びIL-12を2つの異なる構成でコードしている、2つのSINVガードウッドベースsrRNAコントロール(RBI309、RBI310)も、これらの実験に含めた。
図8Aは、srRNAによる形質転換の24時間後及び48時間後の細胞培地における、生物活性IL-1RAの定量化を示している。
【
図8B】
図8A~
図8Bは、本開示のいくつかの実施形態にしたがって設計された異種非構造タンパク質遺伝子を含有する改変srRNAベクターを用いることで、2種の例示的な生物活性タンパク質:(i)インターロイキン-1受容体アンタゴニストタンパク質(IL-1RA)、及び(ii)インターロイキン-12(IL-12)を発現することができることを実証する実験の結果を模式的にまとめたものである。
図8A~
図8Bは、これらのsrRNAで形質転換されたBHK-21細胞から分泌されたタンパク質の生理活性の定量化を示す棒グラフである。
図8A~
図8Bに示されているsrRNAは、それぞれ2つのタンパク質IL-1RA及びIL-12を2つの異なる構成でコードしている、SINV AR86-ガードウッドハイブリッド1srRNA(RBI307、RBI308)である。また、以下の通りの4つのVEEVベースsrRNAコントロールもこれらの実験に含めた:IL-1RA及びIL-12の両方を2つの構成でコードしているVEEV srRNA(RBI299、RBI300)、並びに、コントロール導入遺伝子を含むVEEV srRNA(RBI296、RBI298)。また、それぞれ2つのタンパク質IL-1RA及びIL-12を2つの異なる構成でコードしている、2つのSINVガードウッドベースsrRNAコントロール(RBI309、RBI310)も、これらの実験に含めた。
図8Bは、srRNAによる形質転換の24時間後及び48時間後の細胞培地における、生物活性IL-12の定量化を示している。
【
図9A】
図9A~
図9Bは、例示的なウイルス抗原をコードするsrRNAパネルの、インビボにおける免疫原性を示す棒グラフであり、この例示的なウイルス抗原は狂犬病ウイルスのエンベロープ糖タンパク質G(RABV-G)である。このパネルには、ベネズエラウマ脳炎ウイルス(Venezuelan equine encephalitis virus)(VEE.TC83)、チクングニアウイルス(Chikungunya virus)S27株(CHIK.S27)及びDRDE-06株(CHIK.DRDE)、シンドビスウイルス(Sindbis virus)ガードウッド株(SIN.GW)及びAR86-ガードウッドハイブリッド1株(SIN.AR86)、並びに東部ウマ脳炎ウイルス(Eastern equine encephalitis virus)(EEE.FL93)由来のsrRNAが含まれた。
図9Aは、2回の免疫化後のELISpotによって評価された、抗原特異的な脾臓T細胞応答の定量化を示している。
【
図9B】
図9A~
図9Bは、例示的なウイルス抗原をコードするsrRNAパネルの、インビボにおける免疫原性を示す棒グラフであり、この例示的なウイルス抗原は狂犬病ウイルスのエンベロープ糖タンパク質G(RABV-G)である。このパネルには、ベネズエラウマ脳炎ウイルス(Venezuelan equine encephalitis virus)(VEE.TC83)、チクングニアウイルス(Chikungunya virus)S27株(CHIK.S27)及びDRDE-06株(CHIK.DRDE)、シンドビスウイルス(Sindbis virus)ガードウッド株(SIN.GW)及びAR86-ガードウッドハイブリッド1株(SIN.AR86)、並びに東部ウマ脳炎ウイルス(Eastern equine encephalitis virus)(EEE.FL93)由来のsrRNAが含まれた。
図9Bは、2回の免疫化後の血清から得られた抗狂犬病中和抗体の力価を示している。
【
図10A】
図10A~
図10Cは、ワクチンとして使用するための、例えば、対象における免疫応答を誘発するための、例示的な腫瘍関連抗原をコードするsrRNAパネルの、インビボにおける免疫原性を示す棒グラフである。このパネルには、シンドビスAR86-ガードウッドハイブリッド1(SIN.AR86)由来のsrRNA、並びに、5種の他のアルファウイルス(ベネズエラウマ脳炎ウイルス(VEE.TC83)、チクングニアウイルスのS27株(CHIK.S27)及びDRDE-06株(CHIK.DRDE)、シンドビスウイルスのガードウッド株(SIN.GW)、並びに東部ウマ脳炎ウイルス(EEE.FL93))由来のsrRNAが含まれた。それぞれのsrRNAは、3つのポリペプチドをコードする配列(エストロゲン受容体1(ESR1)、ヒト上皮増殖因子2(HER2)、及びヒト上皮増殖因子2(HER3)の配列)を含む。
図10A~
図10Cは、2回の免疫化を受けたマウスにおけるELISpot分析を用いて測定された、これらの3つの抗原に対する脾臓T細胞応答を示しており、それぞれの被験抗原間の統計比較を含む。
【
図10B】
図10A~
図10Cは、ワクチンとして使用するための、例えば、対象における免疫応答を誘発するための、例示的な腫瘍関連抗原をコードするsrRNAパネルの、インビボにおける免疫原性を示す棒グラフである。このパネルには、シンドビスAR86-ガードウッドハイブリッド1(SIN.AR86)由来のsrRNA、並びに、5種の他のアルファウイルス(ベネズエラウマ脳炎ウイルス(VEE.TC83)、チクングニアウイルスのS27株(CHIK.S27)及びDRDE-06株(CHIK.DRDE)、シンドビスウイルスのガードウッド株(SIN.GW)、並びに東部ウマ脳炎ウイルス(EEE.FL93))由来のsrRNAが含まれた。それぞれのsrRNAは、3つのポリペプチドをコードする配列(エストロゲン受容体1(ESR1)、ヒト上皮増殖因子2(HER2)、及びヒト上皮増殖因子2(HER3)の配列)を含む。
図10A~
図10Cは、2回の免疫化を受けたマウスにおけるELISpot分析を用いて測定された、これらの3つの抗原に対する脾臓T細胞応答を示しており、それぞれの被験抗原間の統計比較を含む。
【
図10C】
図10A~
図10Cは、ワクチンとして使用するための、例えば、対象における免疫応答を誘発するための、例示的な腫瘍関連抗原をコードするsrRNAパネルの、インビボにおける免疫原性を示す棒グラフである。このパネルには、シンドビスAR86-ガードウッドハイブリッド1(SIN.AR86)由来のsrRNA、並びに、5種の他のアルファウイルス(ベネズエラウマ脳炎ウイルス(VEE.TC83)、チクングニアウイルスのS27株(CHIK.S27)及びDRDE-06株(CHIK.DRDE)、シンドビスウイルスのガードウッド株(SIN.GW)、並びに東部ウマ脳炎ウイルス(EEE.FL93))由来のsrRNAが含まれた。それぞれのsrRNAは、3つのポリペプチドをコードする配列(エストロゲン受容体1(ESR1)、ヒト上皮増殖因子2(HER2)、及びヒト上皮増殖因子2(HER3)の配列)を含む。
図10A~
図10Cは、2回の免疫化を受けたマウスにおけるELISpot分析を用いて測定された、これらの3つの抗原に対する脾臓T細胞応答を示しており、それぞれの被験抗原間の統計比較を含む。
【発明を実施するための形態】
【0033】
特に、組換え細胞において、例えばワクチン及び治療用ポリペプチドなどの組換えポリペプチドを発現するのに適した、優れた発現ポテンシャルを有するウイルス発現系が、本明細書で提供される。例えば、本開示のいくつかの実施形態は、アルファウイルス種の改変されたゲノム又はレプリコンRNA(例えば、自己複製RNA)を含有する、例えば発現コンストラクト及び発現ベクターなどの、核酸構築物であって、上記改変されたアルファウイルスゲノム又はRNAレプリコンの少なくとも1つの非構造タンパク質(nsP)又はその一部が、上記改変されたアルファウイルスゲノム又はRNAレプリコンの残部に対して異種性である、核酸構築物に関する。また、本開示のいくつかの実施形態では、目的遺伝子(GOI)によってコードされた目的ポリペプチドをコードする発現カセットを1又は複数含む、ウイルスベースの発現ベクターが提供される。さらに、本明細書で開示される核酸構築物のうちの1又は複数を含むように遺伝子操作された組換え細胞が提供される。そのような組換え細胞から生じた生体材料及び組換え生成物も、本出願の範囲内である。また、必要とする対象において薬力学的効果を誘導する 有用な、例えば、必要とする対象における免疫応答を誘発するための、組成物及び方法、並びに、様々な健康状態を予防及び/又は治療するための方法も、提供される。
【0034】
RNAウイルス(例えば、アルファウイルス)ベースの自己増幅性のRNA(例えば、自己複製RNA又はレプリコン)は、頑健性のある発現系として用いることができる。例えば、SINVなどのアルファウイルスをウイルス発現ベクターとして使用する利点は、組換え宿主細胞において大量の組換えタンパク質の合成を指示できる点にあるという報告がなされている。利点の中でも特に、治療用単鎖抗体などのポリペプチドは、インビボで高レベルで発現されたならば、最も効果的となり得る。加えて、培養液中(エキソビボ)の細胞から精製された組換え抗体を生成する上で、レプリコンRNAからの高タンパク質発現は、抗体産物の全収率を増加させ得る。さらに、発現されているタンパク質がワクチン抗原であるならば、高レベル発現は、最も頑健性のある免疫応答をインビボで誘導し得る。
【0035】
アルファウイルスは、宿主細胞内での自身の複製に影響を与えるために、自身のUTR、構造領域、及び非構造領域に含まれるモチーフを利用する。これらの領域は宿主細胞の自然免疫を回避するための機構も含んでいる。しかし、アルファウイルス種の間では、例えば、免疫回避の機構、組織トロピズム、異種指向性の宿主(xenotropic host)、並びに疾患の症状及び重症度などにおいて、著しい違いがあることが報告されている。
【0036】
アルファウイルスの非構造領域と構造領域における宿主細胞減弱因子の有無の違いを考慮すると、合成ベクターにおいて目的遺伝子発現の発現を可能にするために構造遺伝子を欠失させると、個々のベクターに対する影響にばらつきがでることとなる。非構造領域に異なる宿主減弱因子を有する合成レプリコン(例えば、自己複製RNA)は、発現された目的遺伝子に対する免疫応答の誘導に優劣差がある。非病原性であるシンドビスガードウッド株がSTAT1を阻害できないことは、この株を、コードされたタンパク質に対する頑健性のある免疫応答を形成することなく、組換えタンパク質を発現するのに有利なベクターとしている。これらの個々のベクターがもたらす利点は、現在まで全くの未解明であり、予測もされていなかった。
【0037】
以下でより詳細に説明されるように、初期の知見によれば、公開されているアルファウイルスのゲノムデータでは、構造タンパク質をコードする核酸配列を目的遺伝子(GOI)と直接置換することで、自己複製RNA及び導入遺伝子発現レプリコンを得ることが可能なヌクレオチド配列は必ずしも得られない。特に、公開されているアルファウイルスゲノムの多くは、非機能的であること、例えば、複製すること及び/又は導入遺伝子を発現することができないこと、が判明した。以下の実施例でより詳細に説明されるように、特に、欠陥のあるアルファウイルスゲノム又はRNAレプリコンの非構造タンパク質(nsP)配列を異なるアルファウイルス株由来の対応するnsP配列と置換することで、機能的である改変されたアルファウイルスゲノム又はRNAレプリコンを生成することによって、欠陥のある(例えば、非機能的な)アルファウイルスゲノム又はRNAレプリコン(例えば、自己複製RNA)を機能化するために有用な新規手順が、本明細書で提供される。
【0038】
十分に理解されていないことであるが、完全長ウイルスと合成レプリコン(例えば、自己複製RNA)は、同じ複製能を有していない。特に、公開されている供給源から得られる完全長ウイルスとレプリコンの多くは、機能に欠陥がある。現在、欠陥のあるアルファウイルスゲノム又はRNAレプリコンを機能化する(例えば、機能的にする)ための改変アプローチは、株間で分岐した病原性に関連した1又は複数の重要な点変異、例えば、機能的株(例えば、ガードウッド)と非機能的株(例えば、AR86)との間で多様性を示す変異、を戻すことである。しかし、この戦略は失敗することが多く、あるいは、解決策が自由裁量に辿り着き、このことは、株間にかなり多くの性質不明の、したがって予測不能な配列分岐があることを示している。したがって、(単に点変異を戻したり、あるいは任意の領域を選択してキメラを作製するのではなく)機能的なアルファウイルス株を識別するための、より迅速で効率的な方法が必要とされている。
【0039】
上記のように、ウイルス複製中、nsPポリタンパク質複合体のnsPサブユニット(例えば、nsP1、nsP2、nsP3、nsP4)のそれぞれは、別々に処理されて個々のタンパク質になる。これらのタンパク質はその後集合してnsPポリタンパク質複合体を形成し、これがゲノム及びサブゲノムの転写機能を実行する。特定の理論に束縛されるものではないが、仮説によれば、それぞれのnsPは、それ自体が、レプリコン(例えば、自己複製RNA)の機能全体に寄与しているという点で、それなりに生物学的に独立しており、別個のモジュールユニットとして扱われるべきである。以下でより詳細に説明されるように、本開示のいくつかの実施形態は、非機能的アルファウイルスゲノム又はRNAレプリコンを機能化する方法であって、nsPサブユニットのそれぞれを、別個のモジュールユニットとして扱い、別のウイルス(例えば、別の種又は同一種の別の株)由来の対応するモジュールユニットによって置換(交換)することで、新規の特徴を有するキメラウイルスを得ることができる、方法に関する。本開示の方法は、以下の最小セットにおいてnsPを交換する効果の、新たなコンビナトリアル手法による見方を可能にする:(1)インビトロで機能しないレプリコン;及び(2)インビトロで機能しないレプリコン。このアプローチでは、多数の新規構築物を作製する必要なく、任意の所与の株においてどのnsPが問題起こしているかについての情報が、迅速に得られる。したがって、本明細書に記載の新規手順は、現在知られているいずれの方法と比較しても顕著に改善された、迅速な、技術的に実行可能な方法である。
【0040】
以下でより詳細に説明されるように、本開示のいくつかの実施形態は、1又は複数の異種目的遺伝子(GOI)を発現するように操作された異種非構造タンパク質遺伝子を含む自己複製RNA(srRNA)ベクターに関する。例えば、1又は複数の異種非構造タンパク質遺伝子を含むsrRNAベクター内の構造ポリタンパク質遺伝子を、1又は複数のGOIと置換することが可能であることが分かった。1つの例では、異種非構造タンパク質遺伝子を含むシンドビスsrRNAベクター(SINV AR86-ガードウッドハイブリッド1)が、構造ポリタンパク質遺伝子を合成ヒトIL-1RA遺伝子又はIL-12遺伝子カセットと置換するように操作されて、トランスフェクトBHK-21細胞においてRNA複製及び導入遺伝子発現が可能な自己複製ベクターが生成された(例えば、
図8参照)。加えて、以下でより詳細に説明されるように、本明細書に記載されているようないくつかのSINV AR86-ガードウッドハイブリッド1ベースのsrRNA構築物を、目的の抗原性分子の発現に採用し、インビボにおいて測定可能な薬力学的効果を有するワクチンとして製剤化することができた(例えば、
図9及び
図10参照)。さらに、
図7A~
図7Bに記載の実験データは、コード配列が1つのオープンリーディングフレーム内で(例えば、多シストロン性ORFで)互いに機能的に連結しており、インビボにおける薬力学的効果によって測定される生理活性を有する、複数のタンパク質の発現において、SINV AR86-ガードウッドハイブリッド1ベースのsrRNAベクターが有用であり得ることを示している(例えば、
図10参照)。まとめると、これらの研究は、治療用途及びワクチン用途における、異種非構造タンパク質遺伝子を有するsrRNAベクター及びSINV AR86-ガードウッドハイブリッド1ベースのsrRNAベクターの使用の、さらなる実証を行うものである。
【0041】
定義
別段の定義がない限り、本明細書で使用される全ての述語、記号、及び他の科学用語又は専門用語は、本願が属する技術分野の当業者によって一般的に理解される意味を有することが意図される。場合により、一般に理解される意味を有する用語を、明確さのため、及び/又は、参照のし易さのために、本明細書において定義しているが、そのような定義を本明細書に包含することは、必ずしも、当該技術分野において一般に理解されることと大きな違いがあることを表していると解釈されるべきではない。本明細書において説明又は参照される手法及び手順の多くは、当業者によって、従来の方法論を用いて、充分に理解され、一般的に採用されるものである。
【0042】
単数形の「a」、「an」、及び「the」は、文脈上明らかにそうでない場合を除いて、複数形を包含する。例えば、「細胞」という用語は、1つの細胞、又はその混合物を含む複数の細胞を包含する。「A及び/又はB」とは、以下の選択肢の全てを含むように本明細書では使用される:「A」、「B」、「A又はB」、並びに「A及びB」。
【0043】
本明細書に記載されている本開示の態様及び実施形態は、態様及び実施形態「を含む」、「からなる」、及び「から本質的になる」ことを包含すると理解される。本明細書で使用される場合、「を含む」は、「を包含する」、「を含有する」、又は「を特徴とする」と同義であり、包括的又はオープンエンドであり、追加の、未記載の要素又は方法工程を排除しない。本明細書で使用される場合、「からなる」は、クレームされた組成物又は方法において規定されていない、いかなる要素も、工程も、成分も排除する。本明細書で使用される場合、「から本質的になる」は、クレームされた組成物又は方法の基本的かつ新規な特徴に重大な影響を与えない材料又は工程を排除しない。本明細書において、特に組成物の成分の記載において、又は方法の工程の記載において、「含む」という用語のいかなる記載も、記載された成分又は工程から本質的になる、又はそれからなる、組成物及び方法を包含すると理解される。
【0044】
「投与」という用語、及びその任意の文法的変形語は、本明細書で使用される場合、限定はされないが、鼻腔内投与、経皮投与、静脈内投与、動脈内投与、筋肉内投与、リンパ節内(intranodal)投与、腹腔内投与、皮下投与、筋肉内投与、経口投与、腟内投与、及び局所投与、又はこれらの組み合わせを含む、投与経路による生物活性を有する組成物又は製剤の送達を指す。上記用語は、医療従事者による投与及び自己投与を包含するが、これらに限定はされない。
【0045】
「細胞」、「細胞培養」、及び「細胞株」という用語は、特定の主題の細胞、細胞培養、又は細胞株を指すだけでなく、培養における移植又は継代の回数に関係なく、そのような細胞、細胞培養、又は細胞株の子孫又は潜在的子孫も指す。全ての子孫が親細胞と全く同一であるわけではないことは、理解されるべきである。これは、変異(例えば、故意又は不注意による変異)又は環境の影響(例えば、メチル化又は他のエピジェネティック修飾)により、後代には、ある特定の変化が生じる可能性があるためであり、このため、子孫は、実際には、親細胞と同一でない可能性があるが、子孫が元の細胞、細胞培養物、又は細胞株のものと同じ機能性を保持する限りは本明細書で使用されるこの用語の範囲内に包含される。
【0046】
本開示の組成物、例えば、核酸構築物、組換え細胞、組換えポリペプチド、及び/又は医薬組成物の「有効量」、「治療有効量」、又は「薬剤的有効量」という語は、通常、当該組成物がない場合と比較して、当該組成物が記載された目的を達成する(例えば、投与される目的である効果を達成する、免疫応答を刺激する、疾患を予防もしくは治療する、又は、疾患、障害、感染症、もしくは健康状態の1もしくは複数の症状を低減する)ために充分な量を指す。「有効量」の一例は、疾患の1又は複数の症状の治療、予防、又は低減に寄与するのに充分な量であり、これは「治療有効量」と称されることもある。症状の「低減」とは、当該症状の重症度もしくは頻度の減少、又は、当該症状の消失を意味する。「治療有効量」を含む、組成物の正確な量は、治療の目的に依存し、公知の手法を用いて当業者によって確認可能である(例えば、Lieberman, Pharmaceutical Dosage Forms (vols. 1-3, 1992); Lloyd, The Art, Science and Technology of Pharmaceutical Compounding (1999); Pickar, Dosage Calculations (1999);及びRemington: The Science and Practice of Pharmacy, 20th Edition, 2003, Gennaro, Ed., Lippincott, Williams & Wilkinsを参照されたい)。
【0047】
「核酸構築物」という用語は、異種供給源由来の1又は複数の単離核酸配列を含む、組換え核酸分子を指す。例えば、本開示の核酸構築物は、由来が異なる2以上の核酸配列が集合して1つの核酸分子となった、キメラ核酸分子であり得る。すなわち、代表的な核酸構築物としては、(1)天然では互いに隣接して存在しない制御配列及びコード配列を含む核酸配列(例えば、ヌクレオチド配列の少なくとも1つが、その他のヌクレオチド配列のうちの少なくとも1つに対して異種である)、又は、(2)天然では隣接していない機能的なRNA分子もしくはタンパク質の一部をコードする配列、又は、(3)天然では隣接していないプロモーターの一部、を含有するあらゆる構築物が挙げられる。代表的な核酸構築物は、1又は複数の核酸配列が機能的に連結された核酸分子を含む、ゲノムインテグレーション又は自律増殖が可能な、プラスミド、コスミド、ウイルス、自己複製ポリヌクレオチド分子、ファージなどの、任意の供給源由来の、あらゆる組換え核酸分子、直鎖状又は環状の、一本鎖又は二本鎖のDNA又はRNA核酸分子を含み得る。本開示の構築物は、構築物に含有された目的の核酸配列の発現を指示するために必要なエレメントを含み得る。このようなエレメントは、(目的の核酸配列の転写を指示するために)目的の核酸配列に機能的に連結しているプロモーターなどの調節エレメントを含み得るが、所望により、ポリアデニル化配列も含む。
【0048】
本開示のいくつかの実施形態では、核酸構築物は、ベクター内に組み込まれることがある。「ベクター」という用語は、別の核酸分子を導入又は輸送可能な核酸分子又は配列を指して、本明細書では使用される。すなわち、「ベクター」という用語は、DNAベースのベクター及びRNAベースのベクターの両方を包含する。「ベクター」という用語は、クローニングベクター及び発現ベクター、並びにウイルスベクター及び組込みベクターを包含する。「発現ベクター」は、調節領域を含み、それにより、インビトロ、エキソビボ、及び/又はインビボでDNA配列及び断片を発現可能であるベクターである。いくつかの実施形態では、ベクターは、細胞における自律増殖を指示する配列を含む場合があり、例えば、プラスミド(DNAベースのベクター)又は自己複製RNAベクターなどである。いくつかの実施形態では、ベクターは、宿主細胞DNA内への組み込みを可能にするのに充分な配列を含む場合がある。いくつかの実施形態では、ベクターは、インビトロ及び/又はインビボでRNAに転写可能なDNA配列を含む場合がある。有用なベクターとしては、例えば、プラスミド(例えば、DNAプラスミド又はRNAプラスミド)、トランスポゾン、コスミド、バクテリア人工染色体、及びウイルスベクターが挙げられる。いくつかの実施形態では、本開示のベクターは、一本鎖ベクター(例えば、ssDNA又はssRNA)であることがある。いくつかの実施形態では、本開示のベクターは、二本鎖ベクター(例えば、dsDNA又はdsRNA)であることがある。いくつかの実施形態では、ベクターは遺伝子送達ベクターである。いくつかの実施形態では、ベクターは、遺伝子を細胞に導入するための遺伝子送達媒体として使用される。
【0049】
上記構築物の成分に加えて、上記ベクターは、例えば、1もしくは複数の選択マーカー、原核生物の開始点及び真核生物の開始点などの1もしくは複数の複製開始点、少なくとも1つの多重クローニング部位、並びに/又は上記構築物の細胞のゲノム内への安定な組込みを促進するエレメントを含むことがある。2つ以上の構築物が、1つのベクターなどの、1つの核酸分子内に組み込まれることがあり、あるいは、2つ以上の別々のベクターなどの、2つ以上の別々の核酸分子内に含有されることがある。「発現コンストラクト」は、通常、目的ヌクレオチド配列に機能的に連結した制御配列を少なくとも含む。このように、例えば、発現されることとなるヌクレオチド配列と作動可能に連結したプロモーターが、細胞内発現用の発現コンストラクトに含まれて、提供される。本開示の実施に際し、構築物及び細胞を作製及び使用するための組成物及び方法は、当業者に公知である。
【0050】
本開示の組成物、例えば、核酸構築物、組換え細胞、組換えポリペプチド、及び/又は医薬組成物の「有効量」、「治療有効量」、又は「薬剤的有効量」という語は、通常、当該組成物がない場合と比較して、当該組成物が記載された目的を達成する(例えば、投与される目的である効果を達成する、免疫応答を刺激する、疾患を予防もしくは治療する、又は、疾患、障害、感染症、もしくは健康状態の1もしくは複数の症状を低減する)ために充分な量を指す。「有効量」の一例は、疾患の1又は複数の症状の治療、予防、又は低減に寄与するのに充分な量であり、これは「治療有効量」と称されることもある。症状の「低減」とは、当該症状の重症度もしくは頻度の減少、又は、当該症状の消失を意味する。「治療有効量」を含む、組成物の正確な量は、治療の目的に依存し、公知の手法を用いて当業者によって確認可能である(例えば、Lieberman, Pharmaceutical Dosage Forms (vols. 1-3, 1992); Lloyd, The Art, Science and Technology of Pharmaceutical Compounding (1999); Pickar, Dosage Calculations (1999);及びRemington: The Science and Practice of Pharmacy, 20th Edition, 2003, Gennaro, Ed., Lippincott, Williams & Wilkinsを参照されたい)。
【0051】
「機能的に連結された」という用語は、本明細書で使用される場合、2つ以上のエレメント間の、例えば、ポリペプチド配列間又はポリヌクレオチド配列間の、それらが意図された様式で動作することを可能にする、物理的又は機能的な連結を表す。例えば、「機能的に連結された」という用語は、本明細書に記載の核酸分子又は核酸分子内のコード配列及びプロモーター配列の文脈で使用されている場合、上記コード配列及びプロモーター配列が、インフレームであり、且つ、空間的・距離的に適切に離れていることで、転写因子又はRNAポリメラーゼによる結合のそれぞれが転写に対して影響を与えることが可能であることを意味する。機能的に連結されたエレメントは、隣接し合っていることも、非隣接(例えば、リンカーを介して互いに連結している)であることもあることは理解されよう。ポリペプチド構築物の文脈において、「機能的に連結された」とは、アミノ酸配列間(例えば、異なるセグメント間、部分間、領域間、又はドメイン間)の物理的な連結(例えば、直接的又は間接的な連結)により、当該構築物の記載された活性がもたらされることを指す。本明細書で開示されるポリペプチド又は核酸分子の機能的に連結されたセグメント、部分、領域、及びドメインは、隣接し合っていることも、非隣接(例えば、リンカーを介して互いに連結している)であることもある。
【0052】
「パーセント同一性」という用語は、本明細書で2つ以上の核酸又はタンパク質と関連して使用される場合、2つ以上の配列又は部分配列が、下記の初期パラメーターを使用するBLASTもしくはBLAST2.0配列比較アルゴリズムを用いて測定された場合に、又は、手動のアラインメント及び目視検査によって測定された場合に、同一であること、又は、指定の割合の、同一であるヌクレオチド又はアミノ酸を有すること(比較ウィンドウ又は指定領域に渡って最大一致となるように比較及び整列された場合に、指定の領域に渡って、例えば、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、又はそれ以上の配列同一性)を指す。例えば、ncbi.nlm.nih.gov/BLASTのNCBIウェブサイトを参照されたい。このような配列は「実質的に同一」であると言われる。この定義は、配列の相補配列のことも指し、あるいはそれに適用され得る。この定義には、欠失及び/又は付加を有する配列、並びに置換を有する配列も含まれる。配列同一性は、公開された手法と、GCSプログラムパッケージ(Devereux et al, Nucleic Acids Res. 12:387, 1984)、BLASTP、BLASTN、FASTA(Atschul et al., J Mol Biol 215:403, 1990)などの広く利用可能なコンピュータプログラムを用いて、算出することができる。配列同一性は、その初期パラメーターを使用する、ウィスコンシン大学バイオテクノロジーセンター(1710 ユニバーシティ・アヴェニュー、マディソン、ウィスコンシン州 53705)のジェネティクス・コンピュータ・グループ(Genetics Computer Group)の配列解析ソフトウェアパッケージなどの配列解析ソフトウェアを用いて、測定することができる。
【0053】
「一部」という用語は、本明細書で使用される場合、小部分を指すことがある。アミノ酸配列又はタンパク質などの特定の構造に関して、その「一部」という用語は、当該構造の連続的又は非連続的な小部分を指すことがある。例えば、アミノ酸配列の一部は、当該アミノ酸配列の、少なくとも1%、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、及び少なくとも90%のアミノ酸を含む。さらに、又はあるい、この一部が非連続的な小部分である場合、この非連続的な小部分は、この構造の2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、又はそれ以上の一部から構成され、それぞれの一部はこの構造の連続的な要素である。例えば、アミノ酸配列の非連続的な小部分は、このアミノ酸配列の2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、又はそれ以上、例えば4個以下の一部から構成され、それぞれの一部は、このアミノ酸配列の、少なくとも2個、3個、4個、5個の連続的なアミノ酸、少なくとも10個の連続的なアミノ酸、少なくとも20個の連続的なアミノ酸、少なくとも30個の連続的なアミノ酸を含み得る。
【0054】
「薬剤的に許容できる賦形剤」という用語は、本明細書で使用される場合、目的化合物を対象に投与するための、薬剤的に許容できる担体、添加剤、又は希釈剤を供する、あらゆる好適な物質を指す。したがって、「薬剤的に許容できる賦形剤」は、薬剤的に許容できる希釈剤と称される物質、薬剤的に許容できる添加剤と称される物質、及び薬剤的に許容できる担体と称される物質を包含し得る。本明細書で使用される場合、「薬剤的に許容できる担体」という用語は、医薬品投与に適合する、生理食塩水、溶媒、分散媒、コーティング、抗細菌剤及び抗真菌剤、等張化剤及び吸収遅延剤などを包含するが、これらに限定はされない。補充的な活性化合物(例えば、抗生物質及び追加の治療薬)が、組成物に組み込まれることもある。
【0055】
「組換え」という用語は、細胞、核酸、タンパク質、又はベクターを指して使用されている場合、その細胞、核酸、タンパク質、又はベクターが、例えば、実験室的方法によって改変されている、又は実験室的方法の結果であるなど、人の介在を通じて変化させられていること、又は生成されていることを指す。すなわち、例えば、組換えタンパク質及び組換え核酸は、実験室的方法によって生成されたタンパク質及び核酸を包含する。組換えタンパク質は、当該タンパク質のネイティブ型(非組換え型又は野生型)内には存在しないアミノ酸残基を含むことがあり、あるいは、改変された、例えば標識された、アミノ酸残基を含むことがある。この用語は、ペプチド、タンパク質、又は核酸配列に対するあらゆる改変を含み得る。このような改変には以下が含まれる場合がある:1又は複数のアミノ酸、デオキシリボヌクレオチド、又はリボヌクレオチドのあらゆる化学修飾を含む、ペプチド、タンパク質、又は核酸配列のあらゆる化学修飾;ペプチド又はタンパク質の1又は複数のアミノ酸の付加、欠失、及び/又は置換;融合タンパク質、例えば抗体フラグメントを含む融合タンパク質、の作製;並びに、核酸配列内の1又は複数の核酸の付加、欠失、及び/又は置換。「組換え」という用語は、細胞を指して使用されている場合、天然細胞を包含することは意図されていないが、当該細胞が操作/改変されていなければ当該細胞には存在しないであろうポリペプチド又は核酸を、含むか発現するように操作/改変された、細胞は包含する。
【0056】
本明細書で使用される場合、「レプリコンRNA」又は「RNAレプリコン」という用語は、許容細胞内で、それ自体の増幅、すなわち自己複製を指示するために必要とされる遺伝情報の全てを含有するRNAを指す。したがって、レプリコンRNAは、「自己増幅RNA」(saRNA)又は「自己複製RNA」(srRNA)と称される場合もある。それ自体の複製を指示するために、RNA分子は、1)ポリメラーゼ、レプリカーゼ、又は、ウイルス性もしくは宿主細胞由来のタンパク質、核酸もしくはリボ核タンパク質と相互作用することで、RNA増幅プロセスを触媒し得る他のタンパク質をコードし;且つ、2)サブゲノムレプリコンにコードされたRNAの複製及び転写に必要とされるシス作動性RNA配列を含有する。これらの配列は、複製プロセス中に、その自己にコードされたタンパク質、又は非自己にコードされた細胞由来のタンパク質、核酸、もしくはリボ核タンパク質、又はこれらの成分のいずれか同士の複合体に、結合される場合がある。本開示の目的のために、アルファウイルスレプリコンRNA分子(例えば、srRNA又はsaRNA分子)は、通常、以下の順の要素を含む:複製のためにシスで必要とされる5’ウイルスRNA配列、生物学的に活性なアルファウイルス非構造タンパク質(例えば、nsP1、nsP2、nsP3、及びnsP4)をコードする配列、サブゲノムRNA(sgRNA)のプロモーター、複製のためにシスで必要とされる3’ウイルス配列、及びポリアデニル化域(polyadenylate tract)(ポリ(A))。さらに、レプリコンRNA(例えば、srRNA又はsaRNA分子)という用語は、通常、プラス極性、又は「メッセージ」センスの分子を指し、レプリコンRNAは、いかなる既知の天然アルファウイルスの長さとも異なる長さを有し得る。本開示のいくつかの実施形態では、レプリコンRNAは、構造ウイルスタンパク質の少なくとも1つの配列を含まず;且つ/又は、構造遺伝子をコードする配列が異種配列と置換されることがある。レプリコンRNAが組換えアルファウイルス粒子にパッケージングされることとなる場合、レプリコンRNAは、粒子形成をもたらすアルファウイルス構造タンパク質との相互作用を開始する働きをする1又は複数の配列、いわゆるパッケージングシグナル、を含むことがある。
【0057】
本明細書で使用される場合、「対象」又は「個体」には、ヒト(例えば、ヒト個体)などの動物、及び非ヒト動物が含まれる。いくつかの実施形態では、「対象」又は「個体」は、医師の治療を受けている患者である。すなわち、対象は、目的の健康状態(例えば、がん又は感染症)及び/又は上記健康状態の1もしくは複数の症状を有する、それを有するリスクがある、又はそれを有する疑いがある、ヒト患者又は個体であることがある。対象はまた、診断時以降に、目的の健康状態及び/又は疾患のリスクがあると診断された個体であることもある。「非ヒト動物」という用語には、全ての脊椎動物、例えば、哺乳類、例えば、げっ歯類、例えば、マウス、非ヒト霊長類、及び、他の哺乳類、例えば、ヒツジ、イヌ、雌ウシ、ニワトリなど、並びに、非哺乳類、例えば、両生類、爬虫類など、が含まれる。
【0058】
値の範囲が提供される場合、本明細書で開示される全ての範囲は、あらゆる全ての可能な部分範囲及びその部分範囲の組み合わせを包含することが、当業者には理解される。列挙されたいずれの範囲も、当該範囲が、少なくとも2分の1、少なくとも3分の1、少なくとも4分の1、少なくとも5分の1、少なくとも10分の1などに分解されることを、充分に説明し、可能にするものとして、容易に認識できる。非限定例として、本明細書において論じられた各範囲は、下部3分の1、中央3分の1、及び上部3分の1などに容易に分解できる。また、当業者に理解されるように、「最大で」、「少なくとも」、「超」、「未満」などの用語は全て、記載された数字を含み、続いて前述の通りに部分範囲に分解可能な範囲を指す。さらに、当業者には理解されるように、ある範囲は、個々の構成要素をそれぞれ含む。すなわち、例えば、1~3個の物品を有する群は、1個の物品、2個の物品、又は3個の物品を有する群を指す。同様に、1~5個の物品を有する群は、1個の物品、2個の物品、3個の物品、4個の物品、又は5個の物品を有する群を指すなどである。
【0059】
本明細書では、数値の前に「約」という用語が付けられて、ある特定の範囲が示されているが、この用語は、本明細書で使用される場合、およそという通常の意味を有する。「約」という用語は、その用語が先行する正確な数字だけでなく、その用語が先行する数字に近い数字又は近似した数字を、文言上裏付けるために使用される。ある数字が具体的に記載された数字に近いか近似しているかどうかを判断する際、近いか近似している記載されていない数字とは、その数字が提示された文脈において、具体的に記載された数字と実質的に同等である数字とすることができる。近似の程度が文脈から明らかでない場合、「約」は、提供された値の±10%以内であること、又は提供された値を含む全ての場合において最も近い有効数字に丸められたことを意味する。いくつかの実施形態では、「約」という用語は、指定の値の、±10%まで、±5%まで、又は±1%まで、を示す。
【0060】
見出し、例えば(a)、(b)、(i)などは、単に、明細書及び特許請求の範囲を読み易くするために提示されたものである。明細書又は特許請求の範囲における見出しの使用は、工程又は要素が、アルファベット順もしくは数字順、又は提示された順序で実行されることを要求するものではない。
【0061】
明確さのために別々の実施形態と関連させて説明されている、本開示のある特定の特徴が、1つの実施形態において組み合わせて提供されることもあることは理解されたい。逆に、簡潔さのために1つの実施形態に関連させて説明されている、本開示の種々の特徴が、別々に、又は任意の好適な部分組合せにおいて、提供されることもある。本開示に係る実施形態の全ての組み合わせは、本開示に具体的に包含され、各々全ての組み合わせが個別にかつ明示的に開示されているかのように、本明細書で開示される。加えて、様々な実施形態及びその要素の全ての部分組合せもまた、本開示に具体的に包含され、そのような部分組合せの各々全てが本明細書で個別にかつ明示的に開示されているかのように、本明細書で開示される。
【0062】
アルファウイルス
アルファウイルスは、一本鎖のプラス鎖RNAゲノムを有する、小型のエンベロープRNAウイルスである。アルファウイルス属としては、特に、シンドビスウイルス(Sindbis virus)(SINV)、セムリキ森林ウイルス(Semliki Forest virus)(SFV)、ロスリバーウイルス(Ross River virus)(RRV)、ベネズエラウマ脳炎ウイルス(Venezuelan equine encephalitis virus)(VEEV)、及び東部ウマ脳炎ウイルス(Eastern equine encephalitis virus)(EEEV)が挙げられ、これらは全て近縁種であり、哺乳類、げっ歯類、魚類、鳥類、並びにヒト及びウマなどのより大型の哺乳類といった様々な脊椎動物、並びに、昆虫などの無脊椎動物に感染することができる。特に、シンドビスウイルス及びセムリキ森林ウイルスは広く研究されており、これらのウイルスの生活環、複製様式などはよく特徴付けがなされている。非限定的且つ例示的なアルファウイルス種としては、アウラウイルス(Aura virus)(AURAV)、ババンキウイルス(Babanki virus)(BABV)、バーマフォレストウイルス(Barmah Forest virus)(BFV)、ベバルウイルス(Bebaru virus)(BEBV)、バギークリークウイルス(Buggy Creek virus)、カイングアウイルス(Caaingua virus)、カバソウウイルス(Cabassou virus)、チクングニアウイルス(Chikungunya virus)(CHIKV)、東部ウマ脳炎ウイルス(Eastern equine encephalitis virus)(EEEV)、エイラットウイルス(Eilat virus)、エバーグレーズウイルス(Everglades virus)(EVEV)、フォートモーガンウイルス(Fort Morgan virus)(FMV)、ゲタウイルス(Getah virus)(GETV)、ハイランズJウイルス(Highlands J virus)(HJV)、キジラガッチウイルス(Kyzylagach virus)(KYZV)、マダリアガウイルス(Madariaga virus)(MADV)、マヤロウイルス(Mayaro virus)(MAYV)、ミデルブルグウイルス(Middelburg virus)(MIDV)、モサオ・ダス・ペドラスウイルス(Mosso das Pedras virus)、ムカンボウイルス(Mucambo virus)(MUCV)、ヌドゥムウイルス(Ndumu virus)(NDUV)、オニョンニョンウイルス(O’nyong’nyong virus)(ONNV)、ピクスナウイルス(Pixuna virus)(PIXV)、リオネグロウイルス(Rio Negro virus)(RNV)、ロスリバーウイルス(Ross River virus)(RRV)、サケ膵臓病ウイルス(Salmon pancreas disease virus)(SPDV)、セムリキ森林ウイルス(Semliki Forest virus)(SFV)、シンドビスウイルス(Sindbis virus)(SINV)、睡眠病ウイルス(Sleeping disease virus)(SDV)、ミナミゾウアザラシウイルス(Southern elephant seal virus)(SESV)、タイフォレストウイルス(Tai Forest virus)(TFV)、トナテウイルス(Tonate virus)、トロカラウイルス(Trocara virus)、ウナウイルス(Una virus)(UNAV)、 ベネズエラウマ脳炎ウイルス(Venezuelan equine encephalitis virus)(VEEV)、西部ウマ脳炎ウイルス(Western equine encephalitis virus)(WEEV)、及びワタロアウイルス(Whataroa virus)(WHAV)が挙げられる。
【0063】
アルファウイルスゲノムは、およそ12kb長であり、以下の2つのオープンリーディングフレーム(ORF)からなる:非構造タンパク質(nsP)をコードする7kbのフレーム及び構造ポリタンパク質をコードする4kbのフレーム。非構造ポリタンパク質(nsP)は切断されることで、宿主細胞の細胞質内でのウイルスmRNAの転写及び翻訳に必要な4つの異なるタンパク質(nsP1、nsP2、nsP3、及びnsP4)になる。
【0064】
nsP1タンパク質は、新たに合成されたウイルスのゲノムRNA及びサブゲノムRNAのメチル化及びキャッピングを指示する、グアニン-7-メチルトランスフェラーゼ(MTase)活性及びグアニリルトランスフェラーゼ(GTase)活性の両方を有するmRNAキャッピング酵素である。nsP1のN末端ドメイン内のMTaseモチーフは、S-アデノシルメチオニン(AdoMet)からGTP分子のN7位(m7Gppp)へのメチル基の移行を触媒する。次いで、GTaseがそのm7Gpppと結合することで、触媒ヒスチジンと共有結合を形成し(m7Gp-GTase)、PPiを放出する。次いで、GTaseはm7Gp分子を5’-二リン酸RNAに移すことで、m7GpppNp-RNAを生成する。得られたキャップ構造は、ウイルスmRNAの翻訳に必須であり、このmRNAが細胞の5’エキソヌクレアーゼによって分解されることを防ぐ。このN末端ドメインに続くのは、nsP1タンパク質が細胞膜に結合することを可能にする特徴である。αヘリックス両親媒性ループ部位及びパルミトイル化部位が存在することで、おそらくはnsP1と膜の陰イオン性リン脂質との相互作用を介して、nsP1タンパク質及びnsP1含有複製複合体が原形質膜上に係留することが可能となる。
【0065】
nsP2タンパク質は多数の酵素活性と機能的役割を有する。N末端領域は、スーパーファミリー1(SF1)ヘリカーゼの7つのシグネチャーモチーフを有するヘリカーゼドメインを含有する。このヘリカーゼドメインは、ウイルスRNAのキャッピング反応の最初を担う、RNAトリホスファターゼとして機能する。このヘリカーゼドメインはまた、ヌクレオチドトリホスファターゼ(NTPase)としても機能し、RNAヘリカーゼ活性の燃料となる。nsP2のC末端領域は、パパイン様システインプロテアーゼを含み、ウイルス非構造ポリタンパク質のプロセシングに関与している。上記プロテアーゼは、上記ポリタンパク質内の保存されたモチーフを認識する。このタンパク質分解機能は高度に制御されており、nsP2の他のドメインによって調節される。このアルファウイルスnsP2タンパク質は、感染宿主細胞における転写及び翻訳の遮断、並びに、ウイルス性因子による翻訳機構の制御に寄与するインターフェロン(IFN)介在性抗ウイルス反応の阻害に関与する病原性因子としても記述されている。
【0066】
複製複合体においてのアルファウイルスnsP3タンパク質の明確な役割は、これよりも明らかになっていない。nsP3タンパク質には3つのドメインが認識されている:ホスファターゼ活性と核酸結合能を有するN末端の大ドメイン、アルファウイルスユニークドメイン(AUD)、及びC末端の超可変ドメイン。SFV nsP3のこのドメインの欠失はウイルス病原性の低下をもたらすことが分かっており、ウイルスRNA転写制御におけるその重要性が示唆されている。
【0067】
nsP4ポリメラーゼは、アルファウイルスにおいて最も高度に保存されたタンパク質であり、最も分岐したものでも、他のアルファウイルスnsP4と比較した場合にアミノ酸配列が50%超同一である。nsP4は、コアとなるRNA依存性RNAポリメラーゼ(RdRp)ドメインをC末端に含んでおり、これが単独で、ウイルス複製複合体のRNA合成特性を担っていることが判明している。このRdRpは、マイナス鎖RNAを介したゲノムRNAの複製及び26SサブゲノムRNAの転写に関与している。N末端ドメインはアルファウイルス特有であり、部分的に構造が乱れていることがある。
【0068】
アルファウイルスゲノムの5’側の3分の2は、ウイルスRNAの転写及び複製に必要ないくつもの非構造タンパク質(nSP)をコードしている。これらのタンパク質がRNAから直接翻訳されると、細胞タンパク質と一緒になって、ウイルスゲノム複製及びサブゲノムRNAの転写に必須のRNA依存性RNAポリメラーゼを形成する。4つの非構造タンパク質(nsP1、nsP2、nsP3、nsP4)は、1つのポリタンパク質として生成され、ウイルスの複製機構を構成する。このポリタンパク質のプロセシングは高度に制御された様式で起こり、P2/3接合部位の切断が、ゲノム複製中のRNA鋳型の使用に影響を及ぼす。この部位は、狭い割れ目の底部に位置しており、容易にアクセスできない。一旦切断されると、nsP3は、nsP2を取り囲む環構造を生成する。これらの2つのタンパク質は広大な境界面を有する。非細胞変性ウイルス又は温度感受性表現型を生み出すnsP2における変異は、P2/P3境界領域に密集している。nsP2非細胞変性変異の位置の反対側のP3変異は、P2/3の効率的な切断を妨げる。これはひいては、RNA感染性に影響を及ぼし、ウイルスRNA生成レベルを変えることがある。
【0069】
上記ゲノムの3’側の3分の1は、ウイルス粒子を形成するために必要とされる全ての構造タンパク質(コアとなるヌクレオカプシドタンパク質C、並びにヘテロ二量体として会合するエンベロープタンパク質のP62及びE1)の翻訳を行うための鋳型として働くサブゲノムRNAを含む。これらのウイルス膜アンカー型表面糖タンパク質は、受容体認識及び膜融合を介した標的細胞内への侵入に関与する。このサブゲノムRNAは、nsP4タンパク質をコードするRNA配列の3’末端に存在するp26Sサブゲノムプロモーターから転写される。タンパク質分解によりP62がE2及びE3へと成熟することで、ウイルス表面に変化が生じる。E1とE2、そして時にE3とが一緒になって、糖タンパク質「スパイク」はE1/E2二量体又はE1/E2/E3三量体を形成しており、E2は中心から各頂点に伸び、E1は頂点間の空間を充填し、E3は、存在する場合、スパイクの遠位端に位置する。ウイルスがエンドソームの酸性度に曝されると、E1がE2から解離してE1ホモ三量体を形成し、これが、細胞膜とウイルス膜を一緒にする融合段階に必要となる。アルファウイルス糖タンパク質E1はクラスIIウイルス融合タンパク質であり、インフルエンザウイルス及びHIVに存在するクラスI融合タンパク質とは構造が異なっている。E2糖タンパク質は、その細胞質ドメインを介してヌクレオカプシドと相互作用する機能を果たし、一方、その外部ドメインは細胞受容体との結合に関与する。大部分のアルファウイルスは周辺タンパク質であるE3を失っているが、セムリキウイルスでは、E3はウイルス表面と結合して残っている。
【0070】
アルファウイルス複製は宿主細胞内の膜表面上で起こることが報告されている。感染サイクルの第1のステップで、ゲノムRNAの5’末端が、RNAポリメラーゼ活性を有するポリタンパク質(nsP1~4)へと翻訳され、これがゲノムRNAに相補的なマイナス鎖を生成する。第2のステップで、このマイナス鎖が2つのRNAの生産を行うための鋳型として使用され、この2つのRNAとはそれぞれ、(1)翻訳によって他のnsPを生産し、このウイルスのゲノムとして働く、二次ウイルスのゲノムに相当する、プラス鎖(positive)ゲノムRNA;及び、(2)感染性粒子を形成するウイルスの構造タンパク質をコードするサブゲノムRNAである。プラス鎖ゲノムRNA/サブゲノムRNAの比は、ポリタンパク質がタンパク質分解による自己切断でnsP1、nsP2、nsP3、及びnsP4になることで制御される。実際には、ウイルスの遺伝子発現は2段階で起こる。第1段階では、プラス鎖ゲノムとマイナス鎖の主要な合成がある。第2段階では、サブゲノムRNAの合成が実質的に独占で行われ、そのため大量の構造タンパク質の生産が起こる。
【0071】
本開示の組成物
以下でより詳細に説明されるように、本開示の1つの態様は、アルファウイルス種の改変されたウイルスゲノム又はレプリコンRNA(例えば、自己複製RNA)をコードする核酸構築物 核酸配列、上記核酸構築物を含む組換え細胞、上記核酸構築物を含むトランスジェニック動物、及び本開示の方法によって生成された組換えポリペプチドに関する。
【0072】
本開示のいくつかの実施形態は、改変されたアルファウイルスゲノム又はレプリコンRNA(例えば、自己複製RNA)であって、上記改変されたアルファウイルスゲノム又はRNAレプリコンの少なくとも1つの構造タンパク質(nsP)又はその一部が、上記改変されたアルファウイルスゲノム又はRNAレプリコンの残部に対して異種性であり、上記少なくとも1つの異種nsP又はその一部がnsP1、nsP2、nsP3、nsP4、もしくはそのいずれかの一部、又は上記のいずれかの組み合わせである、改変されたアルファウイルスゲノム又はレプリコンRNA(例えば、自己複製RNA)を提供する。いくつかの実施形態では、nsP1又はその一部が、上記改変されたアルファウイルスゲノム又はRNAレプリコンの残部に対して異種性である。いくつかの実施形態では、nsP2又はその一部が、上記改変されたアルファウイルスゲノム又はRNAレプリコンの残部に対して異種性である。いくつかの実施形態では、nsP3又はその一部が、上記改変されたアルファウイルスゲノム又はRNAレプリコンの残部に対して異種性である。いくつかの実施形態では、nsP4又はその一部が、上記改変されたアルファウイルスゲノム又はRNAレプリコンの残部に対して異種性である。いくつかの実施形態では、2つのnsPタンパク質が、上記改変されたアルファウイルスゲノム又はRNAレプリコンの残部に対して異種性である。いくつかの実施形態では、3つのnsPタンパク質が、上記改変されたアルファウイルスゲノム又はRNAレプリコンの残部に対して異種性である。いくつかの実施形態では、nsP1、nsP2、及びnsP3、又はそれらの一部が、上記改変されたアルファウイルスゲノム又はRNAレプリコンの残部に対して異種性である。いくつかの実施形態では、nsP1、nsP2、及びnsP4、又はそれらの一部が、上記改変されたアルファウイルスゲノム又はRNAレプリコンの残部に対して異種性である。いくつかの実施形態では、nsP2、nsP3、及びnsP4、又はそれらの一部が、上記改変されたアルファウイルスゲノム又はRNAレプリコンの残部に対して異種性である。
【0073】
A.核酸構築物
以下でより詳細に説明されるように、本開示の1つの態様は、シンドビスウイルス(SINV)などのアルファウイルスの改変されたゲノム又はレプリコンRNA(例えば、自己複製RNA)をコードする核酸配列を含み、上記改変されたアルファウイルスゲノム又はRNAレプリコンの少なくとも1つの非構造タンパク質(nsP)又はその一部が、上記改変されたアルファウイルスゲノム又はRNAレプリコンの残部に対して異種性である、新規の核酸構築物に関する。例えば、少なくとも1つの異種nsP又はその一部は、nsP1、nsP2、nsP3、nsP4、もしくはそのいずれかの一部、又は上記のいずれかの組み合わせである。上記のように、非構造ポリペプチドをコードする核酸配列の一部は、当業者による当該配列の手動評価により、又は、BLAST(例えば、“Basic Local Alignment Search Tool”; Altschul SF et al., J. Mol. Biol. 215:403-410, 1993を参照されたい)などのアルゴリズムを用いた、コンピュータで自動化された配列比較及び同定により、当該ポリペプチドの推定上の同定を得るために充分な、非構造ポリペプチドをコードする核酸配列を含み得ると、当業者には理解される。したがって、ヌクレオチド配列の一部は、当該配列を含む核酸断片の特異的な同定及び/又は単離を得るのに充分な配列を含む。例えば、核酸配列の一部は、完全長の核酸配列の少なくとも約20%、例えば、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、約95%を含み得る。
【0074】
本開示の組成物及び方法に好適な、非限定的且つ例示的なアルファウイルス種としては、アウラウイルス(Aura virus)(AURAV)、ババンキウイルス(Babanki virus)(BABV)、バーマフォレストウイルス(Barmah Forest virus)(BFV)、ベバルウイルス(Bebaru virus)(BEBV)、バギークリークウイルス(Buggy Creek virus)、カイングアウイルス(Caaingua virus)、カバソウウイルス(Cabassou virus)、チクングニアウイルス(Chikungunya virus)(CHIKV)、東部ウマ脳炎ウイルス(Eastern equine encephalitis virus)(EEEV)、エイラットウイルス(Eilat virus)、エバーグレーズウイルス(Everglades virus)(EVEV)、フォートモーガンウイルス(Fort Morgan virus)(FMV)、ゲタウイルス(Getah virus)(GETV)、ハイランズJウイルス(Highlands J virus)(HJV)、キジラガッチウイルス(Kyzylagach virus)(KYZV)、マダリアガウイルス(Madariaga virus)(MADV)、マヤロウイルス(Mayaro virus)(MAYV)、ミデルブルグウイルス(Middelburg virus)(MIDV)、モサオ・ダス・ペドラスウイルス(Mosso das Pedras virus)、ムカンボウイルス(Mucambo virus)(MUCV)、ヌドゥムウイルス(Ndumu virus)(NDUV)、オニョンニョンウイルス(O’nyong’nyong virus)(ONNV)、ピクスナウイルス(Pixuna virus)(PIXV)、リオネグロウイルス(Rio Negro virus)(RNV)、ロスリバーウイルス(Ross River virus)(RRV)、サケ膵臓病ウイルス(Salmon pancreas disease virus)(SPDV)、セムリキ森林ウイルス(Semliki Forest virus)(SFV)、シンドビスウイルス(Sindbis virus)(SINV)、睡眠病ウイルス(Sleeping disease virus)(SDV)、ミナミゾウアザラシウイルス(Southern elephant seal virus)(SESV)、タイフォレストウイルス(Tai Forest virus)(TFV)、トナテウイルス(Tonate virus)、トロカラウイルス(Trocara virus)、ウナウイルス(Una virus)(UNAV)、 ベネズエラウマ脳炎ウイルス(Venezuelan equine encephalitis virus)(VEEV)、西部ウマ脳炎ウイルス(Western equine encephalitis virus)(WEEV)、及びワタロアウイルス(Whataroa virus)(WHAV)が挙げられる。病原性アルファウイルス株及び非病原性アルファウイルス株の両方が好適である。いくつかの実施形態では、アルファウイルスは、ベネズエラウマ脳炎ウイルス(VEEV)である。いくつかの実施形態では、アルファウイルスは、東部ウマ脳炎ウイルス(EEEV)である。いくつかの実施形態では、アルファウイルスは、西部ウマ脳炎ウイルス(WEEV)である。
【0075】
いくつかの実施形態では、アルファウイルスは、チクングニアウイルス(CHIKV)である。本開示の組成物及び方法に好適なCHIKV株の非限定例としては、CHIKV S27、CHIKV LR2006-OPY-1、CHIKV YO123223、CHIKV DRDE、CHIKV 37997、CHIKV 99653、CHIKV Ag41855、及びナーグプル(インド)653496株が挙げられる。病原性CHIKV株及び非病原性CHIKV株の両方が好適である。本開示の組成物及び方法に好適なCHIKV株のさらなる例としては、Afreen et al. Microbiol. Immunol. 2014, 58:688-696, Lanciotti and Lambert ASTMH 2016, 94(4):800-803 and Langsjoen et al. mBio. 2018, 9(2):e02449-17に記載されているものが挙げられるが、これらに限定はされない。いくつかの実施形態では、改変されたCHIKVゲノム又はレプリコンRNA(例えば、自己複製RNA)は、CHIKV S27株由来である。いくつかの実施形態では、改変されたCHIKVゲノム又はレプリコンRNAは、CHIKV DRDE株由来である。いくつかの実施形態では、改変されたCHIKVゲノム又はレプリコンRNAは、CHIKV DRDE-06株由来である。いくつかの実施形態では、改変されたCHIKVゲノム又はレプリコンRNAは、CHIKV DRDE-07株由来である。
【0076】
いくつかの実施形態では、アルファウイルスは、東部ウマ脳炎ウイルス(EEEV)である。本開示の組成物及び方法に好適なEEEV株の非限定例としては、EEEV 792138、783372、BeAn5122、BeAr300851、BeAr436087、C-49、FL91-4679、FL93-939、GML903836、MP-9、PE6、及びV105-00210が挙げられる。病原性EEEV株及び非病原性EEEV株の両方が好適である。さらなる好適なEEEV株としては、Virus Pathogen Resourceウェブサイト(ViPR;www.viprbrc.org/brc/vipr_genome_search.spg?method=SubmitForm&blockId=868&decorator=togaで公開されている)に記載されているものが挙げられるが、これらに限定はされない。いくつかの実施形態では、改変されたEEEVゲノム又はレプリコンRNA(例えば、自己複製RNA)は、EEEV FL93-939株由来である。
【0077】
いくつかの実施形態では、アルファウイルスは、シンドビスウイルス(SINV)である。いくつかの実施形態では、改変されたゲノム又はRNAレプリコン(例えば、自己複製RNA)は、SINV株のものである。本開示の組成物及び方法に好適なSINV株の非限定例としては、SINVのAR339株、AR86株、及びガードウッド株が挙げられる。本開示の組成物及び方法に好適なSINV株の例としては、Sammels et al. J. Gen. Virol. 1999, 80(3):739-748, Lundstrom and Pfeffer Vector Borne Zoonotic Dis. 2010, 10(9):889-907, Sigei et al. Arch. of Virol. 2018, 163:2465-2469 and Ling et al. J. Virol. 2019, 93:e00620-19に記載されているものが挙げられるが、これらに限定はされない。さらなる好適なSINV株としては、Virus Pathogen Resourceウェブサイト(ViPR;www.viprbrc.org/brc/vipr_genome_search.spg?method=SubmitForm&blockId=868&decorator=togaで公開されている)に記載されているものが挙げられるが、これらに限定はされない。病原性SINV株及び非病原性SINV株の両方が好適である。いくつかの実施形態では、改変されたゲノム又はRNAレプリコンは、SINVのガードウッド株のものである。いくつかの実施形態では、改変されたゲノム又はRNAレプリコンは、SINVのAR86株のものである。いくつかの実施形態では、改変されたSINVゲノム又はレプリコンRNAは、SINVのガードウッド株由来である。いくつかの実施形態では、改変されたSINVゲノム又はレプリコンRNAは、SINV AR86株由来である。いくつかの実施形態では、改変されたゲノム又はRNAレプリコンの少なくとも1つの異種nsP又はその一部は、SINVのAR86株由来である。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの異種nsP又はその一部は、nsP1、nsP3、nsP4、もしくはそのいずれかの一部、又は上記のいずれかの組み合わせである。いくつかの実施形態では、改変されたゲノム又はRNAレプリコンは、SINVのAR86株のものである。
【0078】
いくつかの実施形態では、アルファウイルスは、西部ウマ脳炎ウイルス(WEEV)である。本開示の組成物及び方法に好適なWEEV株の非限定例としては、WEEV カリフォルニア、マクミラン、IMP181、インペリアル、インペリアル181、IMPR441、71V-1658、AG80-646、BFS932、COA592、EP-6、E1416、BFS1703、BFS2005、BSF3060、BSF09997、CHLV53、KERN5547、85452NM、モンタナ-64、S8-122、及びTBT-235が挙げられる。本開示の組成物及び方法に好適なWEEV株のさらなる例としては、5614、93A27、93A30、93A38、93A79、B628(Cl 15)、CBA87、CNTR34、CO921356、フレミング、レイク43、PV012357A、PV02808A、PV72102、R02PV001807A、R02PV002957B、R02PV003422B、R05PV003422B、R0PV003814A、及びR0PV00384Aが挙げられる。病原性WEEV株及び非病原性WEEV株の両方が好適である。さらなる好適なWEEV株としては、Bergren NA et al., J. Virol. 88(16): 9260-9267, Aug 2014、及び、Virus Pathogen Resourceウェブサイト(ViPR;https://www.viprbrc.org/brc/vipr_genome_search.spg?method=SubmitForm&blockId=57240&decorator=togaで公開されている)に記載されているものが挙げられるが、これらに限定はされない。いくつかの実施形態では、改変されたWEEVゲノム又はsrRNAは、WEEVのインペリアル株由来である。いくつかの実施形態では、改変されたWEEVゲノム又はsrRNAは、WEEVのマクミラン株由来である。
【0079】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの異種nsP又はその一部は、同じアルファウイルス種の別株由来である。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの異種nsP又はその一部は、別のアルファウイルス種由来である。例えば、いくつかの実施形態では、改変されたSINV-AR86ゲノム又はRNAレプリコン(例えば、自己複製RNA)の少なくとも1つの異種nsP又はその一部は、SINVのガードウッド株由来である。いくつかの実施形態では、改変されたSINV-AR86ゲノム又はRNAレプリコンの少なくとも1つの異種nsP又はその一部は、SINVのガードウッド株のnsP2由来である。いくつかの実施形態では、構造タンパク質のnsP1、nsP3、及びnsP4はSINVのAR86株由来であり、nsP2はSINVのガードウッド株由来である。いくつかの実施形態では、nsP4はAR86株由来であり、nsP1、nsP2、及びnsP3はガードウッド株由来である。いくつかの実施形態では、nsP3はAR86株由来であり、nsP1、nsP2、及びnsP4はガードウッド株由来である。いくつかの実施形態では、nsP1はAR86株由来であり、及びnsP2、nsP3、一方、nsP4はガードウッド株由来である(例えば、
図1及び
図6を参照)。
【0080】
いくつかの実施形態では、1又は複数のウイルス構造タンパク質をコードする核酸配列のかなりの部分が除去されている。いくつかの実施形態では、改変されたウイルスゲノム又はレプリコンRNA(例えば、自己複製RNA)は、ウイルス構造タンパク質をコードする配列全体を含まず、例えば、改変されたウイルスゲノム又はレプリコンRNAは、未改変のウイルスゲノム又はレプリコンRNAの構造タンパク質をコードする核酸配列を含まない。いくつかの実施形態では、改変されたアルファウイルスゲノム又はRNAレプリコンは、1又は複数のウイルス構造タンパク質をコードする核酸配列の少なくとも一部を含んでいない。いくつかの実施形態では、改変されたウイルスゲノム又はRNAレプリコンは、1又は複数のウイルス構造タンパク質をコードする核酸配列のかなりの部分を含んでいない。いくつかの実施形態では、改変されたウイルスゲノム又はRNAレプリコンは、ウイルス構造タンパク質をコードする核酸配列を含んでいない。ウイルス構造ポリペプチドをコードする核酸配列のかなりの部分は、当業者による当該配列の手動評価により、又は、BLAST(例えば、“Basic Local Alignment Search Tool”; Altschul SF et al., J. Mol. Biol. 215:403-410, 1993を参照されたい)などのアルゴリズムを用いた、コンピュータで自動化された配列比較及び同定により、当該ポリペプチドの推定上の同定を得るために充分な、ウイルス構造ポリペプチドをコードする核酸配列を含み得ると、当業者には理解される。したがって、ヌクレオチド配列のかなりの部分は、当該配列を含む核酸断片の特異的な同定及び/又は単離を得るのに充分な配列を含む。例えば、核酸配列のかなりの部分は、完全長の核酸配列の少なくとも約20%、例えば、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、約95%を含み得る。上記のように、本開示は、1又は複数のウイルス構造タンパク質をコードする核酸配列を部分的又は完全に含んでいない、核酸分子及び核酸構築物を提供する。
【0081】
いくつかの実施形態では、本開示の核酸構築物は、改変されたアルファウイルスゲノム又はレプリコンRNA(例えば、自己複製RNA)をコードする核酸配列を含み、この改変されたアルファウイルスゲノム又はレプリコンRNAの1又は複数の構造タンパク質をコードする核酸配列のかなりの部分が除去されており、例えば、この改変されたアルファウイルスゲノム又はレプリコンRNAは、アルファウイルス構造タンパク質であるCP、E1、E2、E3、及び6Kのうちの1又は複数のコード配列の少なくとも一部を含んでいない。
【0082】
本開示の核酸構築物の非限定的且つ例示的な実施形態は、以下の特徴のうちの1又は複数を含むことがある。いくつかの実施形態では、未改変のウイルスゲノム又はレプリコンRNA(例えば、自己複製RNA)のウイルス構造タンパク質CP、E1、E2、E3、及び6Kのうちの1又は複数をコードする核酸配列の少なくとも一部が除去されている。いくつかの実施形態では、CPをコードする配列の一部又は全体が除去されている。いくつかの実施形態では、E1をコードする配列の一部又は全体が除去されている。いくつかの実施形態では、E2をコードする配列の一部又は全体が除去されている。いくつかの実施形態では、E3をコードする配列の一部又は全体が除去されている。いくつかの実施形態では、6Kをコードする配列の一部又は全体が除去されている。いくつかの実施形態では、CP、E1、E2、E3、及び6Kの組み合わせをコードする配列の一部又は全体が除去されている。いくつかの実施形態では、ウイルス構造タンパク質をコードする配列全体が除去されており、例えば、改変されたウイルスゲノム又はレプリコンRNAは未改変のウイルスゲノム又はレプリコンRNAの構造タンパク質をコードする核酸配列を含んでいない。
【0083】
非限定的且つ例示的な、本開示の核酸構築物は、配列番号1~4からなる群から選択される核酸配列のいずれか1つに対して、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%の配列同一性を有する核酸配列を含むことがある。いくつかの実施形態では、本開示の核酸構築物は、配列番号1からなる群から選択される核酸配列のいずれか1つに対して、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%の配列同一性を有する核酸配列を含むことがある。いくつかの実施形態では、本開示の核酸構築物は、配列番号2からなる群から選択される核酸配列のいずれか1つに対して、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%の配列同一性を有する核酸配列を含むことがある。いくつかの実施形態では、本開示の核酸構築物は、配列番号3からなる群から選択される核酸配列のいずれか1つに対して、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%の配列同一性を有する核酸配列を含むことがある。いくつかの実施形態では、本開示の核酸構築物は、配列番号4からなる群から選択される核酸配列のいずれか1つに対して、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%の配列同一性を有する核酸配列を含むことがある。
【0084】
本開示の核酸構築物(例えば、ベクター構築物又はsrRNA構築物)は、通常、少なくとも約2kbの長さを有する。例えば、核酸構築物(例えば、ベクター又はsrRNA)は、少なくとも約2kb、少なくとも約3kb、少なくとも約4kb、少なくとも約5kb、少なくとも約6kb、少なくとも約7kb、少なくとも約8kb、少なくとも約9kb、少なくとも約10kb、少なくとも約11kb、少なくとも約12kbの、又は12kbよりも長い、長さを有することがある。いくつかの実施形態では、核酸構築物(例えば、ベクター又はsrRNA)は、約4kb~約20kb、約4kb~約18kb、約5kb~約16kb、約6kb~約14kb、約7kb~約12kb、約8kb~約16kb、約9kb~約14kb、約10kb~約18kb、約11kb~約16kb、約5kb~約18kb、約6kb~約20kb、約5kb~約10kb、約5kb~約8kb、約5kb~約7kb、約5kb~約6kb、約6kb~約12kb、約6kb~約11kb、約6kb~約10kb、約6kb~約9kb、約6kb~約8kb、約6kb~約7kb、約7kb~約11kb、約7kb~約10kb、約7kb~約9kb、約7kb~約8kb、約8kb~約11kb、約8kb~約10kb、約8kb~約9kb、約9kb~約11kb、約9kb~約10kb、又は約10kb~約11kbの長さを有することがある。いくつかの実施形態では、核酸構築物(例えば、ベクター又はsrRNA)は、約6kb~約14kbの長さを有することがある。いくつかの実施形態では、核酸構築物(例えば、ベクター又はsrRNA)は、約6kb~約16kbの長さを有することがある。
【0085】
いくつかの実施形態では、本開示の核酸構築物は、1又は複数の発現カセットをさらに含む。原則として、本明細書で開示される核酸構築物は、通常、いかなる数の発現カセットも含むことができる。いくつかの実施形態では、本明細書で開示される核酸構築物は、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、又は少なくとも6つの発現カセットを含むことがある。当業者には理解されることであるが、「発現カセット」という用語は、コード配列と、インビボ及び/又はエキソビボにおいて細胞内で当該コード配列が適切に転写及び/又は翻訳されることを指示するのに充分な制御情報と、を含有する遺伝物質の構築物を指す。この発現カセットは、所望の宿主細胞を標的化するためにベクターに、及び/又は対象に、挿入されることがある。したがって、いくつかの実施形態では、発現カセットという用語は、「発現コンストラクト」という用語と同義的に用いられることがある。いくつかの実施形態では、「発現カセット」という用語は、例えばプロモーター及び/又は終結シグナルなどの調節エレメントに機能的に連結したタンパク質又は機能性RNAをコードする遺伝子と、所望により、当該遺伝子の転写又は翻訳に影響を及ぼす他の核酸配列のいずれか又はその組み合わせと、を含む核酸構築物を指す。
【0086】
いくつかの実施形態では、発現カセットの少なくとも1つが、異種核酸配列に機能的に連結したプロモーターを含むことがある。したがって、本明細書で提供されるような核酸構築物は、例えば、異種核酸配列に機能的に連結した調節エレメント(例えば、プロモーター)を含んでいる場合、その異種核酸配列の発現に影響を及ぼす可能性がある発現ベクターなどとして使用されることがある。いくつかの実施形態では、これらの発現カセットの少なくとも1つは、異種核酸配列に機能的に連結したサブゲノム(sg)プロモーターを含む。いくつかの実施形態では、このsgプロモーターは26Sサブゲノムプロモーターである。いくつかの実施形態では、本開示の核酸分子は、1又は複数の非翻訳領域(UTR)をさらに含む。いくつかの実施形態では、これらのUTRの少なくとも1つは異種UTRである。いくつかの実施形態では、改変されたアルファウイルスゲノム又はRNAレプリコン(例えば、自己複製RNA)の5’UTR配列は、異種5’UTR配列であり、例えば、異種供給源由来、例えば、同じアルファウイルス種の異なる株由来又は異なるアルファウイルス種由来であり、例えば、チクングニアウイルス由来のUTR配列である。いくつかの実施形態では、改変されたアルファウイルスゲノム又はRNAレプリコンの3’UTR配列は、異種3’UTR配列である。いくつかの実施形態では、改変されたアルファウイルスゲノム又はRNAレプリコンの5’UTR配列及び3’UTR配列の両方が、異種UTR配列である。いくつかの実施形態では、これらの異種5’UTR配列及び/又は異種3’UTR配列は、チクングニアウイルス由来であることがある。いくつかの実施形態では、これらの異種5’UTR配列及び/又は異種3’UTR配列は、チクングニアS27株由来であることがある。いくつかの実施形態では、これらの異種5’UTR配列及び/又は異種3’UTR配列は、チクングニアDRDE株由来であることがある。
【0087】
いくつかの実施形態では、発現カセットの少なくとも1つは、目的遺伝子(GOI)のコード配列を含む。いくつかの実施形態では、GOIのコード配列は、安定性、効力、及び発現(例えば、翻訳効率)などを増加させ、ひいては、バイオ治療薬の生成、送達、及び投与の影響を最大化し得る、所望の特性が得られるように再設計及び/又は最適化される。例えば、いくつかの実施形態では、GOIのコード配列は、参照コード配列の発現レベルよりも高い、例えば、参照コード配列よりも20%高い、30%高い、40%高い、50%高い、60%高い、70%高い、80%高い、90%高い、又は95%高い、レベルでの発現が得られるように最適化される。いくつかの実施形態では、この参照コード配列は、野生型の最適化されていない配列である。ヌクレオチド配列の配列最適化に関して、遺伝暗号の縮重は、遺伝子のタンパク質コード配列の少なくとも1つの塩基を、当該遺伝子から生成されるポリペプチドのアミノ酸配列を変化させることなく、異なる塩基と置換する可能性を生み出す。故に、本開示の核酸構築物は、本明細書で開示されるあらゆるポリヌクレオチド配列から、遺伝暗号の縮重に従った置換によって変化した、いかなる塩基配列も、有する可能性がある。コドン使用頻度を説明している参考文献は、公的に容易に入手可能である。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチド配列のバリアントが、様々な理由で、例えば、特定の宿主用に発現を最適化するために、生成されることがある(例えば、アルファウイルスmRNAにおけるコドン使用頻度を、ヒト、非ヒト霊長類、ハムスター、マウス、又はサルなどの他の生物に好まれるものに変えるなど)。したがって、いくつかの実施形態では、GOIのコード配列は、発現に関する最適化がなされたコドンの使用を通じて、標的宿主細胞において、例えばコドン最適化がなされていないコード配列などの参照コード配列の発現レベルよりも高いレベルでの発現が得られるように、最適化される。いくつかの実施形態では、コドン最適化されたGOI配列は、コドン最適化されていない参照コード配列と比較して、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、又は少なくとも100%の発現レベルの増加をもたらす。いくつかの実施形態では、コドン最適化されたGOI配列は、コドン最適化されていない参照コード配列と比較して、少なくとも2倍、少なくとも3倍、少なくとも4倍、又は少なくとも5倍の発現レベルの増加をもたらす。
【0088】
いくつかの実施形態では、GOIのコード配列は、RNAの安定性及び/又は発現が増強されるように最適化される。RNAの安定性は、通常、RNAの「半減期」に関連する。「半減期」は、分子の活性、量、又は数の半分を除去するために必要とされる期間に関連する。本開示との関連では、RNAの半減期は、当該RNAの安定性を表すものである。RNAの半減期は、当該RNAの「発現の持続時間」に影響する場合がある。RNA安定性の評価に有用な方法論及び手法がいくつか知られており、GOIコドン使用頻度が異なるレプリコン(例えば、自己複製RNA)の貯蔵、並びに、レプリコンの効力(例えば、トランスフェクション後の細胞におけるdsRNAを検査)及び遺伝子発現に対するその影響の、様々なインシリコ方法論及び/又は経験的ストレス試験が挙げられる。これに関するさらなる情報は、例えば、Wayment-Steele, H. et al. (2021). Cold Spring Harbor Laboratory (doi.org/10.1101/2020.08.22.262931)で見出すことができる。RNA安定性の増強で使用するための原理、戦略、及び方法に関するさらなる情報は、例えば、Leppek K. et al., Combinatorial optimization of mRNA structure, stability, and translation for RNA-based therapeutics. bioRxiv. (Preprint). Mar 30, 2021. doi: 10.1101/2021.03.29.437587で見出すことができる。
【0089】
GOIによってコードされるポリペプチドは、通常、あらゆるポリペプチドである可能性があり、例えば、治療用ポリペプチド、予防用ポリペプチド、診断用ポリペプチド、栄養補助用ポリペプチド、工業用酵素、及びレポーターポリペプチドである可能性がある。いくつかの実施形態では、GOIは、抗体、抗原、免疫調節剤、酵素、シグナル伝達タンパク質、及びサイトカインからなる群から選択されるポリペプチドをコードする。いくつかの実施形態では、GOIは、抗体、抗原、免疫調節剤、酵素、シグナル伝達タンパク質、又はサイトカインであり得るポリペプチドをコードする。いくつかの実施形態では、GOIは、微生物タンパク質、ウイルスタンパク質、細菌タンパク質、真菌タンパク質、哺乳類タンパク質、及び任意のこれらの組み合わせをコードすることができる。GOIの非限定例としては、G-CSF、GM-CSF、IL-1、IL-10、IL-10様、IL-11、IL-12、IL-13、IL-14、IL-15、IL-16、IL-17、IL-18、IL-18BP、IL-1様、IL-1RA、IL-1α、IL-1β、IL-2、IL-20、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-6様、IL-7、IL-9、IL-21、IL-22、IL-33、IL-37、IL-38、LIF、及びOSMなどのインターロイキン及び相互作用タンパク質が挙げられる。さらなる好適なGOIとして、インターフェロン(例えば、IFN-α、IFN-β、IFN-γ)、TNF(例えば、CD154、LT-β、TNF-α、TNF-β、4-1BBL、APRIL、CD70、CD153、CD178、GITRL、LIGHT、OX40L、TALL-1、TRAIL、TWEAK、及びTRANCE)、TGF-β(例えば、TGF-β1、TGF-β2、及びTGF-β3)、ヘマトポイエチン(例えば、Epo、Tpo、Flt-3L、SCF、M-CSF、MSP)、ケモカイン及びその受容体(例えば、XCL1、XCL2、CCL1、CCL2、CCL3、CCL4、CCL5、CCL7、CCL8、CCL11、CCL13、CCL14、CCL15、CCL16、CCL17、CCL18、CCL19、CCL20、CCL21、CCL22、CCL23、CCL24、CCL25、CCL26、CCL27、CXCL1、CXCL2、CXCL3、CXCL4、CXCL5、CXCL6、CXCL7、CXCL8、CXCL9、CXCL10、CXCL11、CXCL12、CXCL13、CXCL14、及びCX3CL1)、免疫抑制性遺伝子産物及び関連転写因子(例えば、PECAM1、FCGR3A、FOS、NFKB1、JUN、HIF1A、PD-L1、mTOR、STAT5B、及びSTAT4)が挙げられるが、これらに限定はされない。
【0090】
本開示の組成物及び方法に好適なさらなるGOIとしては、免疫賦活性遺伝子産物(例えば、CD27/CD70、CD40、CD40L、B7.1、BTLA、MAVS、OX40、OX40L、RIG-I、及びSTING)、ABCB1、ABCC1、ABCG2、AKT1、ALK、BAFF、BCR-ABL、BRAF、CCND1、cMET、EGFR、ERBB2、ERBB3、ERK2、ESR1、GRB2、KRAS、MDR1、MRP1、NTRK1、PDC4、P-gp、PI3K、PTEN、RET、ROS1、RSK1、RSK2、SHIP、及びSTK11などの遺伝子の薬剤耐性変異体/バリアントが挙げられるが、これらに限定はされない。また、本開示の組成物及び方法に好適なものとしては、ウイルスタンパク質、特にスパイクタンパク質、ファイバータンパク質、構造タンパク質、及び付着タンパク質をコードする配列も含まれる。
【0091】
いくつかの実施形態では、GOIは、抗体又は抗体バリアント(例えば、単鎖Fv抗体、二重特異性抗体、ラクダ科抗体、Fab抗体、及び重鎖抗体)をコードし得る。いくつかの実施形態では、上記抗体は、がんと関連付けられた、もしくはがんによりアップレギュレートされた表面分子、又は、感染性疾患と関連付けられた表面分子を標的とする。いくつかの実施形態では、上記抗体は、免疫賦活機能を有する、又は免疫抑制機能を有する表面分子を標的とする。
【0092】
いくつかの実施形態では、GOIは、例えば、アガルシダーゼベータ、アガルシダーゼアルファ、イミグルセラーゼ、タリグルセラーゼアルファ、ベラグルセラーゼアルファ、アルグルセラーゼ、セベリパーゼアルファ(sebelipase alpha)、ラロニダーゼ、イデュルスルファーゼ、エロスルファーゼアルファ(elosulfase alpha)、ガルスルファーゼ、アルグルコシダーゼアルファ(alglucosidase alfa)、及びCTFRなどの、その欠乏や変異が疾患や健康状態と関連している酵素をコードしていることがある。
【0093】
いくつかの実施形態では、GOIは、抗原分子、バイオ治療薬分子、又はこれらのうちいずれかの組み合わせから選択されるポリペプチドをコードしていることがある。いくつかの実施形態では、GOIは、腫瘍関連抗原、腫瘍特異的抗原、ネオアンチゲン、及びこれらのうちのいずれかの組み合わせから選択されるポリペプチドをコードしていることがある。いくつかの実施形態では、GOIは、エストロゲン受容体、細胞内シグナル伝達物質酵素、及びヒト上皮増殖 受容体から選択されるポリペプチドをコードしていることがある。いくつかの実施形態では、GOIは、免疫調節薬、血管新生調節薬、細胞外マトリックス調節薬、代謝調節薬、神経調節薬、及びこれらのうちのいずれかの組み合わせから選択されるバイオ治療用ポリペプチドをコードしていることがある。いくつかの実施形態では、GOIは、ケモカイン、インターフェロン、インターロイキン、リンホカイン、及び腫瘍壊死因子から選択されるサイトカインをコードしていることがある。いくつかの実施形態では、GOIは、IL-1α、IL-1β、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-8、IL-9、IL-10、IL-11、IL-12、IL-15、IL-15、IL-17、IL-23、IL-27、IL-35、IFNγ、及びこれらのうちのいずれかのサブユニットから選択されるインターロイキンをコードしていることがある。いくつかの実施形態では、GOIは、IL-12A、IL-12B、IL-1RA、及びこれらのうちのいずれかの組み合わせから選択されるバイオ治療用ポリペプチドをコートしていることがある。
【0094】
いくつかの実施形態では、本開示の核酸構築物は、ベクター内に組み込まれている場合がある。いくつかの実施形態では、本開示のベクターは、一本鎖ベクター、例えば、ssDNAベクター又はssRNAベクターである場合がある。いくつかの実施形態では、本開示のベクターは、二本鎖ベクター、例えば、dsDNAベクター又はdsRNAベクターであることがある。いくつかの実施形態では、本開示のベクターは、プラスミドであることがある。以下でより詳細に説明されるように、本開示のベクターは、組換えDNA技術、例えば、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)増幅、ローリングサークル増幅(RCA)、分子クローニングなど、又は化学合成を用いて生成されることがある。したがって、いくつかの実施形態では、本開示のベクターは、完全合成ベクター、例えば、完全合成ssDNAベクターであることがある。いくつかの実施形態では、本開示のベクターは、完全合成dsDNAベクターであることがある。いくつかの実施形態では、本開示のベクターは、PCR反応の産物であることがある。いくつかの実施形態では、本開示のベクターは、RCA反応の産物であることがある。いくつかの実施形態では、ベクターは、遺伝子送達ベクターであることがある。いくつかの実施形態では、ベクターは、遺伝子を細胞内に移入するための遺伝子送達媒体として使用されることがある。
【0095】
いくつかの実施形態では、GOIによってコードされるポリペプチドは、組換えポリペプチドである。いくつかの実施形態では、GOIは、トリインフルエンザA H5N1の抗原性HAポリペプチドをコードする。いくつかの実施形態では、GOIは、ESR1、HER2、及びHER3などのオンコロジーに関連したタンパク質、又はその一部をコードする。いくつかの実施形態では、GOIは、IL-1RA又はIL-12などのサイトカインをコードする。
【0096】
いくつかの実施形態では、本開示の核酸構築物は、配列番号1~4からなる群から選択される核酸配列に対して、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%の配列同一性を有する、アルファウイルス種の改変されたゲノム又はRNAレプリコン(例えば、自己複製RNA)をコードする核酸配列を含む。いくつかの実施形態では、本開示の核酸構築物は、配列番号1の核酸配列に対して、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%の配列同一性を有する、アルファウイルス種の改変されたゲノム又はRNAレプリコンをコードする核酸配列を含む。いくつかの実施形態では、本開示の核酸構築物は、配列番号2の核酸配列に対して、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%の配列同一性を有する、アルファウイルス種の改変されたゲノム又はRNAレプリコンをコードする核酸配列を含む。いくつかの実施形態では、本開示の核酸構築物は、配列番号3の核酸配列に対して、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%の配列同一性を有する、アルファウイルス種の改変されたゲノム又はRNAレプリコンをコードする核酸配列を含む。いくつかの実施形態では、本開示の核酸構築物は、配列番号4の核酸配列に対して、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%の配列同一性を有する、アルファウイルス種の改変されたゲノム又はRNAレプリコンをコードする核酸配列を含む。
表1:配列表中の配列の簡潔な説明
【表1】
【0097】
目的のアルファウイルス種の改変されたゲノム又はRNAレプリコン(例えば、自己複製RNA)の配列に対して高度な配列同一性(例えば、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%)を有する核酸配列は、アルファウイルス種ゲノム内で特定された配列から、縮重プライマー又は遺伝子特異的プライマーを用いるゲノム配列解析、ハイブリダイゼーション、及び/又はPCRによって、本明細書において特定された配列(例えば、配列番号1~4)又は当該技術分野において公知であるような任意の他のものを使用することによって、識別及び/又は単離することができる。
【0098】
これらの新規核酸構築物を構築し特徴付けするのに用いた分子的な技術及び方法は、本出願の本明細書の実施例でより詳細に説明される。
【0099】
いくつかの実施形態では、上記核酸分子は組換え核酸分子である。上記のように、組換えという用語核酸分子は、ヒトの操作から得られた、又は間接的にであれヒトの操作の結果として生じた、あらゆる核酸分子(例えば、DNA、RNA)を意味する。非限定例として、cDNAは組換えDNA分子であり、インビトロポリメラーゼ反応によって生成された、又はリンカーが取り付けられた、又はクローニングベクターもしくは発現ベクターなどのベクターに組み込まれた、あらゆる核酸分子も同様である。非限定例として、組換え核酸分子は、1)例えば、化学的もしくは酵素的な手法を用いて(例えば、化学的な核酸合成の使用によって、もしくは、核酸分子の複製、重合、エキソヌクレアーゼによる消化、ヌクレオチド鎖切断による消化、ライゲーション、逆転写、転写、塩基修飾(例えば、メチル化を含む)、もしくは組換え(相同組換え及び部位特異的組換えを含む)のための酵素の使用によって、インビトロにおいて合成もしくは改変されたものであり;2)天然では結合していない、結合したヌクレオチド配列を含むものであり;3)天然ヌクレオチド配列と比較して1もしくは複数のヌクレオチドを欠くように分子クローニング手法を用いて操作されたものであり;且つ/又は、4)天然ヌクレオチド配列と比較して1又は複数の配列変化又は配列再編成を有するように分子クローニング手法を用いて操作されたものである。
【0100】
いくつかの実施形態では、本明細書で開示される核酸分子は、組換えDNA技術(例えば、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)増幅、クローニングなど)又は化学合成を用いて生成される。本明細書で開示されるような核酸分子には、天然の核酸分子及びそのホモログが含まれ、天然の対立遺伝子多型、並びに、改変によって本明細書に記載されているような生物活性を発揮する際に所望の特性が得られるように、1又は複数のヌクレオチド残基が挿入、欠失、及び/又は置換された、改変核酸分子が挙げられるが、これらに限定はされない。
【0101】
天然核酸配列のバリアントを含んで、核酸分子は、当業者に公知の多くの方法を用いて生成することができる(例えば、Sambrook et al., In: Molecular Cloning, A Laboratory Manual, 2nd Edition, Cold Spring Harbor Press, Cold Spring Harbor, N.Y. (1989)を参照されたい)。核酸分子の配列は、古典的な変異誘発法及び組換えDNA法を含むがこれらに限定はされない様々な手法を用いて、由来元である天然配列から改変することができ、例えば、部位特異的変異誘発、核酸分子の化学処理による変異誘導、核酸断片の制限酵素切断、核酸断片のライゲーション、核酸配列の選択された領域のPCR増幅及び/又は変異誘発、組換えクローニング、並びに、オリゴヌクレオチド混合物の化学合成と混合物群のライゲーションとによる、核酸分子の混合物の「構築」を含む化学合成、並びに、これらの組み合わせなどであるが、これらに限定はされない。核酸分子ホモログは、当該核酸分子によってコードされるタンパク質もしくはレプリコン(例えば、srRNA)の機能のスクリーニングによって、及び/又は、野生型遺伝子もしくはその断片とのハイブリダイゼーションによって、又は、標的もしくは野生型核酸分子もしくは配列に対して相同性を有するプライマーを用いるPCRによって、改変核酸分子の混合物から選別することができる。
【0102】
B.組換え細胞
以下でより詳細に説明されるように、本開示の1つの態様は、本明細書に記載されているような核酸構築物を含む(例えば、発現する)ように操作された組換え細胞に関する。いくつかの実施形態では、本開示の核酸構築物(例えば、ベクター又はsrRNA)を宿主細胞に導入することで、上記核酸構築物及び/又はsrRNA構築物を含有する組換え細胞を作製することがある。例えば、本開示の核酸構築物を宿主細胞に導入することで、上記核酸構築物を含有する組換え細胞を作製することがある。したがって、本明細書に記載されているようなアルファウイルス種の改変されたゲノム又はRNAレプリコン(例えば、自己複製RNA)をコードする核酸構築物を含有する原核細胞又は真核細胞も、本開示の特徴である。関連の態様において、本明細書で開示されるいくつかの実施形態は、動物細胞などの宿主細胞に、本明細書で提供されるような核酸構築物を導入し、次いで、形質転換細胞をセレクション又はスクリーニングすることを含む、細胞を形質転換する方法に関する。本開示の核酸構築物の細胞への導入は、例えば、ウイルス感染、トランスフェクション、接合伝達、原形質融合、リポフェクション、エレクトロポレーション、ヌクレオフェクション、リン酸カルシウム沈殿、ポリエチレンイミン(PEI)を介したトランスフェクション、DEAE-デキストランを介したトランスフェクション、リポソームを介したトランスフェクション、パーティクルガン技術、ダイレクトマイクロインジェクション、ナノ粒子を介した核酸送達などの、当業者に公知の方法によって、達成することができる。
【0103】
1つの態様では、本開示のいくつかの実施形態は、本明細書に記載の核酸構築物を含む、組換え細胞、例えば、組換え真核細胞、例えば、昆虫細胞又は動物細胞に関する。この核酸構築物は、宿主ゲノム内に安定に組み込まれていることがあり、又は、エピソームとして複製している、すなわち、安定発現もしくは一過性発現を行うためのミニサークル発現ベクターとして組換え宿主細胞内に存在することがある。したがって、本開示のいくつかの実施形態では、核酸構築物は、エピソームユニットとして、組換え宿主細胞内で維持及び複製される。いくつかの実施形態では、核酸構築物は、組換え細胞のゲノムに安定に組み込まれる。安定な組み込みは、古典的なランダムなゲノム組換え法を用いて、又は、ガイドRNA誘導型CRISPR/Cas9もしくはTALENゲノム編集を使用するなどの、より正確なゲノム編集法によって、達成することができる。いくつかの実施形態では、核酸構築物は、安定発現又は一過性発現を行うためのミニサークル発現ベクターとして組換え宿主細胞内に存在する。
【0104】
宿主細胞は、未形質転換細胞であることもあれば、少なくとも1つの核酸分子をトランスフェクト済みの細胞であることもある。したがって、いくつかの実施形態では、宿主細胞は、少なくとも1つの核酸分子で遺伝子改変(例えば、形質導入又は形質転換又はトランスフェクション)されることがある。
【0105】
本明細書に記載されているような目的タンパク質のクローニング又は発現に好適な宿主細胞としては、本明細書に記載の原核細胞又は真核細胞が挙げられる。したがって、いくつかの実施形態では、組換え細胞は、大腸菌などの原核細胞、又は、昆虫細胞(例えば、蚊細胞もしくはSf21細胞)、もしくは哺乳類細胞(例えば、COS細胞、NIH 3T3細胞、もしくはHeLa細胞)などの真核細胞である。いくつかの実施形態では、上記細胞はインビボの細胞、例えば生体内の組換え細胞、例えば遺伝子導入対象の細胞である。いくつかの実施形態では、上記対象は脊椎動物又は無脊椎動物である。いくつかの実施形態では、上記対象は昆虫である。いくつかの実施形態では、上記対象は哺乳類対象である。いくつかの実施形態では、上記哺乳類対象はヒト対象である。いくつかの実施形態では、上記細胞はエキソビボの細胞であり、例えば、処理又は手順にかけるために生体又は生物から個々の細胞として、又は器官もしくは組織の一部として抽出されたものであり、その後、上記生体又は生物に戻される。いくつかの実施形態では、上記細胞はインビトロの細胞であり、例えば、貯蔵所から得られる。いくつかの実施形態では、上記組換え細胞は真核細胞である。いくつかの実施形態では、上記組換え細胞は動物細胞である。いくつかの実施形態では、上記動物細胞は脊椎動物細胞又は無脊椎動物細胞である。いくつかの実施形態では、上記組換え細胞は哺乳類細胞である。
【0106】
グリコシル化タンパク質の発現において、好適な宿主細胞は、多細胞生物(無脊椎動物及び脊椎動物)に由来するものであり得る。無脊椎動物細胞の例としては、昆虫細胞が挙げられる。脊椎動物細胞が宿主として使用されることもある。これに関して、懸濁液中で増殖するように適合された哺乳類細胞株が有用であり得る。いくつかの実施形態では、上記組換え細胞は動物細胞である。いくつかの実施形態では、上記動物細胞は脊椎動物細胞又は無脊椎動物細胞である。いくつかの実施形態では、上記組換え細胞は哺乳類細胞である。いくつかの実施形態では、上記動物細胞はヒト細胞である。いくつかの実施形態では、上記動物細胞は非ヒト動物細胞である。いくつかの実施形態では、上記細胞は非ヒト霊長類細胞である。有用な哺乳類宿主細胞株のさらなる例としては、SV40で形質転換したサル腎臓CV1細胞(COS-7)、ヒト胎児由来腎臓細胞(例えば、HEK293又はHEK293細胞)、ベビーハムスター腎臓細胞(BHK)、マウスセルトリ細胞(例えば、TM4細胞)、ヒト子宮頸癌細胞(HeLa)、イヌ腎臓細胞(MDCK)、バッファローラット肝臓細胞(BRL 3A)、ヒト肺細胞(W138)、ヒト肝臓細胞(Hep G2)、マウス乳腺腫瘍(MMT060562)、TRI細胞、FS4細胞、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO細胞)、アフリカミドリザル腎臓細胞(ベロ細胞)、ヒトA549細胞、ヒト子宮頸部細胞、ヒトCHME5細胞、ヒトPER.C6細胞、NS0マウス骨髄腫細胞、ヒト喉頭類表皮細胞、ヒト線維芽細胞、ヒトHUH-7細胞、ヒトMRC-5細胞、ヒト筋細胞、ヒト内皮細胞、ヒトアストロサイト、ヒトマクロファージ細胞、ヒトRAW264.7細胞、マウス3T3細胞、マウスL929細胞、マウス結合組織細胞、マウス筋細胞、及びウサギ腎臓細胞を含む。
【0107】
いくつかの実施形態では、組換え細胞は、アフリカミドリザル腎臓細胞(ベロ細胞)、ベビーハムスター腎臓(BHK)細胞、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO細胞)、ヒトA549細胞、ヒト子宮頸部細胞、ヒトCHME5細胞、ヒト喉頭類表皮細胞、ヒト線維芽細胞、ヒトHEK-293細胞、ヒトHeLa細胞、ヒトHepG2細胞、ヒトHUH-7細胞、ヒトMRC-5細胞、ヒト筋細胞、マウス3T3細胞、マウス結合組織細胞、マウス筋細胞、及びウサギ腎臓細胞からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、上記組換え細胞はBHK細胞である。いくつかの実施形態では、上記BHK細胞はBHK-21細胞である。いくつかの実施形態では、上記組換え細胞はベロ細胞である。
【0108】
いくつかの実施形態では、上記組換え細胞は、昆虫細胞、例えば昆虫細胞株の細胞である。いくつかの実施形態では、上記組換え細胞はSf21細胞である。さらなる好適な昆虫細胞株としては、昆虫の双翅目、鱗翅目、及び半翅目から樹立された細胞株が挙げられるが、これらに限定はされず、様々な組織供給源から得ることができる。いくつかの実施形態では、上記組換え細胞は、鱗翅目昆虫細胞株の細胞である。過去数十年間で、鱗翅目昆虫細胞株の利用可能性は約50株/10年の速度で増加してきた。利用可能な鱗翅目昆虫細胞株に関するさらなる情報は、例えば、参照によって本明細書に援用される、Lynn D.E., Available lepidopteran insect cell lines. Methods Mol Biol. 2007;388:117-38に見出すことができる。いくつかの実施形態では、上記組換え細胞は、蚊細胞、例えば、ハマダラカ属(Anopheles)(An.)、イエカ属(Culex)(Cx.)、及びヤブカ属(Aedes)(ヒトスジシマカ)(Ae.)に含まれる蚊種の細胞である。本明細書に記載の組成物及び方法に好適な例示的な蚊細胞株としては、以下の蚊種から得られた細胞株が挙げられる:ネッタイシマカ(Aedes aegypti)、ヒトスジシマカ(Aedes albopictus)、アエデス・シュードスキュテラリス(Aedes pseudoscutellaris)、アエデス・トリセリアタス(Aedes triseriatus)、アエデス・ベクサンス(Aedes vexans)、ガンビアハマダラカ(Anopheles gambiae)、ステフェンスハマダラカ(Anopheles stephensi)、アノフェレス・アルビマヌス(Anopheles albimanus)、クレクス・クインクエファスキアツス(Culex quinquefasciatus)、クレクス・タイレリ(Culex theileri)、コガタアカイエカ(Culex tritaeniorhynchus)、カラツイエカ(Culex bitaeniorhynchus)、及びトキソリンキテス・アンボイネンシス(Toxorhynchites amboinensis)。好適な蚊細胞株としては、CCL-125、Aag-2、RML-12、C6/26、C6/36、C7-10、AP-61、A.t.GRIP-1、A.t.GRIP-2、UM-AVE1、Mos.55、Sua1B、4a-3B、Mos.43、MSQ43、及びLSB-AA695BBが挙げられるが、これらに限定はされない。いくつかの実施形態では、上記蚊細胞は、C6/26細胞株の細胞である。
【0109】
C.細胞培養
別の態様において、少なくとも1つの本明細書で開示されるような組換え細胞と、培地と、を含む細胞培養が、本明細書で提供される。通常、上記培地は、本明細書に記載の細胞を培養するために好適ないかなる培地であってもよい。種々様々な上述の宿主細胞及び種を形質転換する手法が、当該技術分野において公知であり、技術文献及び科学文献に記載されている。したがって、本明細書で開示されるような組換え細胞を少なくとも1つ含む細胞培養も、本願の範囲内である。細胞培養物を作製及び維持するのに適した方法及び系は当該技術分野において公知である。
【0110】
D.トランスジェニック動物
また、別の態様において、本明細書に記載されているような核酸構築物(例えば、ベクター又はsrRNA分子)を含むトランスジェニック動物が提供される。いくつかの実施形態では、上記トランスジェニック動物は脊椎動物又は無脊椎動物である。いくつかの実施形態では、上記トランスジェニック動物は哺乳動物である。いくつかの実施形態では、上記トランスジェニック哺乳動物は非ヒト哺乳動物である。通常、本開示のトランスジェニック動物は、当該技術分野において公知のいかなる非ヒト動物であってもよい。いくつかの実施形態では、本開示の非ヒト動物は非ヒト霊長類である。本開示の組成物及び方法に好適な他の動物種としては、(i)遺伝子組換えに好適であり、且つ、(ii)免疫グロブリン遺伝子セグメントを再編成し、抗体応答を生じさせることが可能なものが挙げられる。そのような種の例としては、マウス、ラット、ハムスター、ウサギ、ニワトリ、ヤギ、ブタ、ヒツジ、及び雌ウシが挙げられるが、これらに限定はされない。本開示の組成物及び方法に好適な非ヒト動物のさらなる例として、実験動物(例えば、マウス、ラット、ハムスター、スナネズミ、モルモットなど)、家畜(例えば、ウマ、ウシ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、アヒル、ガチョウ、ニワトリなど)、非ヒト霊長類(例えば、類人猿、チンパンジー、オランウータン、サルなど)、魚、両生類(例えば、カエル、サンショウウオなど)、爬虫類(例えば、ヘビ、トカゲなど)、及び他の動物(例えば、キツネ、イタチ、ウサギ、ミンク、ビーバー、オコジョ、カワウソ、クロテン、アザラシ、コヨーテ、チンチラ、シカ、ジャコウネズミ、ポッサムなど)が含まれることがあるが、これらに限定はされない。
【0111】
いくつかの実施形態では、上記トランスジェニック動物は昆虫である。いくつかの実施形態では、上記昆虫は蚊である。いくつかの実施形態では、本開示のトランスジェニック動物は、キメラトランスジェニック動物である。いくつかの実施形態では、本開示のトランスジェニック動物は、1又は複数(例えば、1以上、2以上、3以上、4以上など)の本開示の核酸構築物を含有する生殖細胞及び体細胞を含む、トランスジェニック動物である。いくつかの実施形態では、上記1又は複数の核酸構築物は、上記トランスジェニック動物のゲノムに安定に組み込まれる。いくつかの実施形態では、本開示のトランスジェニック動物のゲノムは、1又は複数の本開示の核酸構築物のコピーを、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、又はそれ以上のうちのいずれか含むことがある。
【0112】
トランスジェニック非ヒト動物を作製するためのアプローチ及び方法は、当該技術分野において公知である。例示的な方法としては、前核マイクロインジェクション、DNAマイクロインジェクション、レンチウイルスベクターを介した初期胚へのDNA移入、精子を介した遺伝子組換え、アデノウイルスを介した動物精子へのDNA導入(例えば、ブタ)、レトロウイルスベクター(例えば、鳥類)、体細胞核移植(例えば、ヤギ)が挙げられる。トランスジェニック家畜動物の作製における技術の現状は、Niemann, H. et al. (2005) Rev. Sci. Tech. 24:285-298で概説されている。いくつかの実施形態では、本開示のトランスジェニック非ヒト宿主動物は、外来性核酸を非ヒト動物のゲノムに導入するための当該技術分野において公知の標準方法を用いて作製される。いくつかの実施形態では、本開示のトランスジェニック動物は、古典的なランダムゲノム組換え法を用いて、又は、ガイドRNA誘導型CRISPR/Casゲノム編集、もしくはNgAgo(ナトロノバクテリウム・グレゴリー(Natronobacterium gregoryi)のアルゴノート)を用いたDNA先導型エンドヌクレアーゼゲノム編集、もしくはTALENゲノム編集(転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ)などのより正確な手法を用いて、作製されることがある。いくつかの実施形態では、本開示のトランスジェニック動物は、トランスジェニックマイクロインジェクション技術を用いて作製されることがあり、相同組換え技術の使用を必要としないことから、相同組換えを用いるアプローチよりも作製と選別がより簡単であると考えられる。いくつかの実施形態では、上記トランスジェニック動物は、本明細書に記載されているような目的タンパク質を産生する。
【0113】
E.医薬組成物
本開示の核酸構築物、組換え細胞、組換えポリペプチドは、医薬組成物を含む組成物中に組み込まれることがある。このような組成物は、通常、本明細書に記載及び提供された核酸構築物、組換え細胞、組換えポリペプチドのうちの1又は複数と、薬剤的に許容できる賦形剤、例えば担体と、を含む。いくつかの実施形態では、本開示の組成物は、免疫疾患又は微生物感染症などの健康状態の予防用、治療用、又は管理用に製剤化される。例えば、本開示の組成物は、薬剤的に許容できる賦形剤又はその混合物を含む、予防用組成物、治療用組成物、又は医薬組成物として製剤化されることがある。いくつかの実施形態では、本開示の組成物は、ワクチンとしての用途のために製剤化される。いくつかの実施形態では、本出願の組成物は、アジュバントとしての用途のために製剤化される。
【0114】
したがって、1つの態様において、薬剤的に許容できる賦形剤と、a)本開示の核酸構築物(例えば、ベクター又はsrRNA分子);b)本開示の組換え細胞;及び/又はc)本開示の組換えポリペプチドと、を含む医薬組成物が、本明細書で提供される。本開示の医薬組成物の非限定的且つ例示的な実施形態は、以下の特徴のうちの1又は複数を含む可能性がある。いくつかの実施形態では、本明細書で開示されるような核酸構築物(例えば、ベクター又はsrRNA分子)と、薬剤的に許容できる賦形剤と、を含む組成物が、本明細書で提供される。いくつかの実施形態では、本明細書で開示されるような組換え細胞と、薬剤的に許容できる賦形剤と、を含む組成物が、本明細書で提供される。いくつかの実施形態では、上記組成物は、本明細書で開示されるような組換えポリペプチドと、薬剤的に許容できる賦形剤と、を含む。
【0115】
いくつかの実施形態では、本開示の核酸構築物(例えば、ベクター又はsrRNA分子)は、ネイキッド形態で使用されることがあり、あるいは、送達ビヒクルと製剤化されることがある。本開示の組成物及び方法に好適な例示的な送達ビヒクルは、リポソーム(例えば、中性リポソーム又はアニオン性リポソーム)、ミクロスフェア、免疫刺激複合体(ISCOMS)、脂質ナノ粒子(LNP)、固体脂質ナノ粒子(SLN)、ポリプレックス、ポリマーナノ粒子、ウイルスレプリコン粒子(VRP)を包含するが、これらに限定はされず、あるいは、送達を促進することができ、及び/又は免疫応答を増強することができる生物活性リガンドとコンジュゲートされる。これらの化合物は、当業者が容易に利用可能であり;例えば、Liposomes: A Practical Approach, RCP New Ed, IRL press (1990)を参照されたい。リポソームなど以外のアジュバントも使用され、当該技術分野において公知である。アジュバントは、抗原(例えば、核酸構築物、ベクター、srRNA分子)を、局所的な沈殿物中に隔離することで、急速な分散から保護する場合があり、あるいは、マクロファージ走化性因子などの免疫系成分を分泌するように宿主を刺激する物質を含有する場合がある。例えば下記のものからの適切な選択は、当業者であれば行うことができる。
【0116】
いくつかの実施形態では、本開示の組成物は、以下のうちの1又は複数を含むことがある:生理的緩衝液、リポソーム、脂質ナノ粒子(LNP)、固体脂質ナノ粒子(SLN)、ポリプレックス、ポリマーナノ粒子、ウイルスレプリコン粒子(VRP)、ミクロスフェア、免疫刺激複合体(ISCOM)、生物活性リガンドのコンジュゲート、又はそのいずれかの組み合わせ。いくつかの実施形態では、本開示の組成物は、リポソーム製剤とされる。いくつかの実施形態では、本開示の組成物は、脂質ナノ粒子(LNP)製剤とされる。LNPは、通常、ウイルス粒子よりも免疫原性が低い。多くのヒトがウイルス粒子に対しては既存の免疫を持つが、LNPに対しては既存の免疫がない。加えて、LNPに対する適応免疫応答は起こりにくく、このことがLNPの反復投与を可能にする。
【0117】
本明細書に記載の組成物及び方法に好適な脂質は、カチオン性脂質、イオン化可能カチオン性脂質、アニオン性脂質、又は中性脂質であり得る。
【0118】
いくつかの実施形態では、本開示のLNPは、1又は複数のイオン化可能脂質を含むことがある。本明細書で使用される場合、「イオン化可能脂質」という用語は、pHが脂質のイオン性基のpKaよりも低くなると、カチオン性となる、又はイオン性になる(プロトン化する)が、pH値が高くなるほどに中性になっていく脂質を指す。pKaを下回るpH値では、この脂質は、負に帯電している核酸(例えば、オリゴヌクレオチド)と結び付くことが可能となる。本明細書で使用される場合、「イオン化可能脂質」という用語は、生理的pHからpHが下がると正電荷を呈する脂質、及び生理的pHなどの選択的pHで正味の正電荷を帯びるいくつもの脂質種のうちのいずれかを包含する。DOTMAなどの永続的にカチオン性である脂質は、臨床用途には有毒過ぎることが分かっている。イオン化可能脂質は、他の実施形態における脂質製剤中に存在していることがあり、好ましくは、いくつかの実施形態では約30~約70mol%の範囲内で、他の実施形態では約30mol%で、他の実施形態では約40mol%で、他の実施形態では約45mol%で、他の実施形態では約47.5mol%で、さらに他の実施形態では約50mol%で、さらに他の実施形態では約60mol%で、存在している(「mol%」は、特定の成分の総モルに対する割合を意味する)。本段落における「約」という用語は、±5mol%の範囲を示す。DODMA、すなわち1,2-ジオレイルオキシ-3-ジメチルアミノプロパンはイオン化可能脂質であり、DLin-MC3-DMA又は0-(Z,Z,Z,Z-ヘプタトリアコンタ-6,9,26,29-テトラエン-19-イル)-4-(N,N-ジメチルアミノ)(「MC3」)も同様である。
【0119】
本開示の組成物及び方法に好適である例示的なイオン化可能脂質としては、国際公開第2020252589号及び同第2021000041号、米国特許第8,450,298号及び同第10,844,028号、並びにLove K.T. et al., Proc Natl Acad Sci USA, Feb. 2, 2010 107 (5) 1864-1869に記載されているものが挙げられ、これらは全て全体が参照によって本明細書に援用される。したがって、いくつかの実施形態では、本開示のLNPは、C16-96、C14-110、及びC12-200などの、Love K.T. et al.(2010、上記)に記載されている1又は複数の脂質化合物を含む。いくつかの実施形態では、LNPは、ALC-0315、C12-200、LN16、MC3、MD1、SM-102、及びそのいずれかの組み合わせからなる群から選択されるイオン化可能カチオン性脂質を含む。いくつかの実施形態では、本開示のLNPは、C12-200脂質を含む。C12-200脂質の構造は、当該技術分野において公知であり、例えば、その全体が参照によって本明細書に援用される、米国特許第8,450,298号及び同第10,844,028号に記載されている。いくつかの実施形態では、このC12-200は、コレステロール、C14-PEG2000、及びDOPEと組み合わせられる。いくつかの実施形態では、このC12-200は、DSPC及びDMG-PEG2000と組み合わせられる。
【0120】
いくつかの実施形態では、本開示のLNPは、1又は複数のカチオン性脂質を含む。いくつかの異なるイオン化可能カチオン性脂質が、LNPで使用するために開発された。好適なカチオン性脂質としては、限定はされないが、98N12-5、C12-200、C14-PEG2000、DLin-KC2-DMA(KC2)、DLin-MC3-DMA(MC3)、XTC、MD1、及び7C1が挙げられる。LNPの1種では、GalNAc部分が、LNPの外側に結合して、アシアロ糖タンパク質受容体を介した肝臓内への取り込みのためのリガンドとして作用する。これらのカチオン性脂質のいずれかを、本開示のsrRNA構築物及び核酸構築物を送達するためのLNP製剤化に使用することができる。
【0121】
いくつかの実施形態では、本開示のLNPは1又は複数の中性脂質を含む。本開示の組成物及び方法に好適である非限定的な中性脂質としては、DPSC、DPPC、POPC、DOPE、及びSMが挙げられる。いくつかの実施形態では、本開示のLNPは、国際公開第2020252589号及び同第2021000041号に記載されている、1又は複数のイオン化可能脂質化合物を含む。
【0122】
当該技術分野において公知である、他のいくつもの脂質又は脂質の組み合わせが、LNPを生成するために使用することができる。LNPを生成するための使用に好適な脂質の非限定例としては、DOTMA、DOSPA、DOTAP、DMRIE、DC-コレステロール、DOTAP-コレステロール、GAP-DMORIE-DPyPE、及びGL67A-DOPE-DMPE-ポリエチレングリコール(PEG)が挙げられる。カチオン性脂質のさらなる非限定例としては、98N12-5、C12-200、C14-PEG2000、DLin-KC2-DMA(KC2)、DLin-MC3-DMA(MC3)、XTC、MD1、7C1、及びそのいずれかの組み合わせが挙げられる。中性脂質のさらなる非限定例としては、DPSC、DPPC、POPC、DOPE、及びSMが挙げられる。PEG修飾脂質の非限定例としては、PEG-DMG、PEG-CerC14、及びPEG-CerC20が挙げられる。
【0123】
いくつかの実施形態では、LNP送達系中の核酸に対する脂質の質量比は、約100:1~約3:1、約70:1~10:1、又は16:1~4:1である。いくつかの実施形態では、LNP送達系中の核酸に対する脂質の質量比は、約16:1~4:1である。いくつかの実施形態では、LNP送達系中の核酸に対する脂質の質量比は、約20:1である。いくつかの実施形態では、LNP送達系中の核酸に対する脂質の質量比は、約8:1である。いくつかの実施形態では、脂質ナノ粒子は、約1000nm未満、約500nm未満、約250nm未満、約200nm未満、約150nm未満、約100nm未満、約75nm未満、約50nm未満、又は約25nm未満の平均直径を有する。いくつかの実施形態では、LNPは、約70nm~100nmの範囲の平均直径を有する。いくつかの実施形態では、LNPは、約88nm~約92nm、82nm~約86nm、又は約80nm~約95nmの範囲の平均直径を有する。
【0124】
いくつかの実施形態では、本開示の組成物は、ポリマーナノ粒子製剤とされる。いくつかの実施形態では、上記組成物は、免疫原性組成物であり、例えば、対象における免疫応答を刺激することができる組成物である。いくつかの実施形態では、上記免疫原性組成物はワクチンとして製剤化される。いくつかの実施形態では、上記医薬組成物はアジュバントとして製剤化される。
【0125】
いくつかの実施形態では、上記免疫原性組成物は、対象に対して実質的に非免疫原性であり、例えば、対象における免疫応答を最低限にしか刺激しない組成物である。いくつかの実施形態では、上記非免疫原性又は最低限に免疫原性の組成物は、バイオ治療薬として製剤化される。いくつかの実施形態では、上記医薬組成物は、鼻腔内投与用、経皮投与用、腹腔内投与用、筋内投与用、リンパ節内投与用、腫瘍内投与用、関節内投与用、静脈内投与用、皮下投与用、腟内投与用、眼内投与用、直腸内投与、及び経口投与のうちの1又は複数のために製剤化される。
【0126】
注射剤用途に好適な医薬組成物としては、無菌注射液又は無菌分散液を即時調製するための、無菌水性溶液又は無菌水性分散液、及び無菌散剤が挙げられる。静脈内投与の場合、好適な担体には、生理食塩水、静菌水、クレモフォールEL(商標)(BASF社、パーシッパニー、ニュージャージー州)、又はリン酸緩衝生理食塩水(PBS)が含まれる。これらの場合において、上記組成物は、無菌であるべきであり、且つ、容易な通針性を呈する程度に流動性であるべきである。上記組成物は、製造及び保管の条件下で安定とすることができ、細菌及び真菌などの微生物の混入行為から保護することができる。上記担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、及び液体ポリエチレングリコールなど)、及びこれらの適切な混合物、を含有する溶媒又は分散媒であり得る。適切な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティングの使用によって、分散液の場合に必要な粒径の維持によって、及び、界面活性剤、例えばドデシル硫酸ナトリウムの使用によって、維持することができる。微生物の作用の防止は、様々な抗細菌剤及び抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、チメロサールなど、によって、達成することができる。多くの場合で、上記組成物中に等張剤、例えば、糖、マンニトール、ソルビトールなどの多価アルコール、及び/又は塩化ナトリウム、を含むことが通常となる。注射用組成物の持続的吸収は、吸収を遅延する薬剤、例えばステアリン酸アルミニウム及びゼラチン、を組成物に含めることによって達成することができる。
【0127】
無菌注射液は、必要量の活性化合物を、適切な溶媒中に、必要に応じて上記成分の1種又は組み合わせと一緒に、混合した後、濾過滅菌を行うことで、調製できる。通常、分散液は、活性化合物を、基礎となる分散媒及び上記に挙げたものの中から必要な他の成分を含有する無菌ビヒクル中に混合することによって、調製される。
【0128】
いくつかの実施形態では、本開示の医薬組成物は、エアゾール、スプレー、ミスト、液体、又は粉末などの、吸入用製剤にされる。吸入による投与は、吸入デバイス、例えば、マイクロスプレー、加圧式定量吸入器、又はネブライザー、の使用を通じて、対象(例えば、患者)によって吸入される、乾燥粉末又はエアゾール製剤の形態での投与である場合がある。
【0129】
いくつかの実施形態では、上記組成物は、鼻腔内投与用、経皮投与用、筋内投与用、リンパ節内投与用、腫瘍内投与用、関節内投与用、静脈内投与用、腹腔内投与用、経口投与用、腟内投与用、眼内投与用、直腸内投与用、又は頭蓋内投与用のうちの1又は複数のために製剤化される。いくつかの実施形態では、投与された上記組成物は上記対象におけるインターフェロン産生の増加をもたらす。
【0130】
本開示の方法
以下でより詳細に説明されるように、本開示の1つの態様は、特に、nsPコード配列の少なくとも一部の置換することによってアルファウイルスを機能化する方法、目的遺伝子(GOI)によってコードされる目的ポリペプチドを生成する方法、必要とする対象における免疫応答を誘発する方法、並びに、必要とする対象における健康状態を予防及び/又は治療する方法に関する。
【0131】
アルファウイルスを機能化する方法
上記で概要を述べたように、本開示のある態様は、アルファウイルスゲノム又はRNAレプリコン(例えば、自己複製RNA)を機能化/操作するための方法に関する。上記方法は、(a)非機能性のアルファウイルスゲノム又はRNAレプリコンを準備すること;(b)上記非機能性アルファウイルスゲノム又はRNAレプリコンの非構造タンパク質(nsP)又はその一部を、異なるアルファウイルス株由来の対応するnsP又はその一部の異種コード配列と置き換えることで、改変されたアルファウイルスゲノム又はRNAレプリコンを作製すること;(c)上記改変されたアルファウイルスゲノム又はRNAレプリコンの機能性を評価すること;(d)上記改変されたアルファウイルスゲノム又はRNAレプリコンがRNA複製及び/又は発現可能である場合に、上記改変されたアルファウイルスゲノム又はRNAレプリコンを機能的であると見なすこと、を含む。
【0132】
いくつかの実施形態では、異種nsP又はその一部は、同じアルファウイルス種の別株由来である。いくつかの実施形態では、異種nsP又はその一部は、別のアルファウイルス種由来である。いくつかの実施形態では、異種nsP又はその一部は、nsP1、nsP2、nsP3、nsP4、又はそのいずれかの一部である。いくつかの実施形態では、アルファウイルスゲノム又はRNAレプリコン(例えば、自己複製RNA)が非機能性であることは、宿主細胞内での自己複製が不充分であることによって判定される。通常、本開示の改変されたアルファウイルスゲノム又はRNAレプリコンの機能性は、RNA複製の検出、ウイルスタンパク質発現の検出、細胞変性効果(CPE)の検出、及び異種導入遺伝子発現の検出などの、当該技術分野において公知の1又は複数のアッセイ及び方法論を使用することによって、評価することができる。特に、非機能的なアルファウイルスは、例えば、限定はされないが、BHK、VERO、又はHEK293などの、細胞培養物内又は初代細胞株内で自己複製が不可であるものとして、特定することができる。上記のように、アルファウイルスの非機能性は、寄託されたアルファウイルス配列(例えば、公開データベースから検索された配列)が、合成によって再現された場合に、自己複製するには不充分であることが判明した場合に、決定することができる。
【0133】
目的ポリペプチドを生成する方法
ある態様において、目的ポリペプチドを生成するための方法であって、本明細書で開示されるような核酸構築物を含む組換え細胞の培養を、上記組換え細胞がGOIによってコードされるポリペプチドを産生する条件下で行うことを含む、方法が、本明細書で提供される。別の態様において、対象において目的ポリペプチドを生成するための方法であって、本明細書で開示されるような核酸構築物を上記対象に投与することを含む、方法が、本明細書で提供される。いくつかの実施形態では、上記対象は脊椎動物又は無脊椎動物である。いくつかの実施形態では、上記対象は哺乳類対象である。いくつかの実施形態では、上記哺乳類対象はヒト対象である。したがって、本明細書で開示される方法によって生成された組換えポリペプチドも、本開示の範囲内である。
【0134】
組換えポリペプチドを生成するための本開示の方法の非限定的且つ例示的な実施形態は、以下の特徴のうちの1又は複数を含む可能性がある。いくつかの実施形態では、本開示の組換えポリペプチドを生成するための方法は、生成されたポリペプチドを単離及び/又は精製することをさらに含む。いくつかの実施形態では、本開示のポリペプチドを生成するための方法は、半減期を延長するために、生成されたポリペプチドを構造的に改変することをさらに含む。いくつかの実施形態では、生成されたポリペプチドのN末端は、半減期を延長するために、化学的又は酵素的にさらに改変されることがある。いくつかの実施形態では、生成されたポリペプチドのC末端は、半減期を延長するために、化学的及び/又は酵素的に改変される。本明細書に記載の方法に好適な化学的改変及び酵素的改変の非限定例としては、ペグ化、XTEN化、PAS化(登録商標)、ELP化、及びHAP化が挙げられる。これらの改変に好適な手法、システム、及び試薬は、当該技術分野において公知である。したがって、いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法によって生成されるポリペプチドは、半減期を延長するために、PEG化、XTEN化、PAS化、ELP化、及び/又はHAP化されることがある。いくつかの実施形態では、生成されたポリペプチドは、半減期を延長するために、別のタンパク質又はペプチド(例えば、血清アルブミン、抗体のFcドメイン、トランスフェリン、GLK、又はCTPペプチド)にコンジュゲートされる。
【0135】
ある実施形態において、目的ポリペプチドを生成する方法は、(i)本開示のトランスジェニック動物を飼育すること、又は(ii)本開示の核酸構築物を含む組換え細胞の培養を、上記組換え細胞がGOIによってコードされるポリペプチドを産生する条件下で行うことを含む。
【0136】
ある実施形態において、対象において目的ポリペプチドを生成する方法は、本開示の核酸構築物を上記対象に投与することを含む。いくつかの実施形態では、上記対象は脊椎動物又は無脊椎動物である。いくつかの実施形態では、上記動物は昆虫である。いくつかの実施形態では、上記対象は哺乳類対象である。いくつかの実施形態では、上記哺乳類対象はヒト対象である。
【0137】
薬力学的効果を誘導する方法、免疫応答を誘発する方法、健康状態を予防する方法、又は健康状態を治療する方法
本明細書に記載の治療用組成物、例えば、核酸構築物(例えば、ベクター又はsrRNA分子)、組換え細胞、組換えポリペプチド、及び/又は医薬組成物、のいずれか1つの投与は、増殖性疾患(例えば、がん)、感染性疾患(例えば、急性感染症、慢性感染症、又はウイルス感染症)、希少疾患、及び/又は自己免疫疾患、及び/又は炎症性疾患などの、関係のある健康状態の治療で使用されることがある。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されているような核酸構築物(例えば、ベクター又はsrRNA分子)、組換え細胞、組換えポリペプチド、及び/又は医薬組成物は、1もしくは複数の関連のある健康状態もしくは疾患を有する、それを有する疑いがある、又はそれを発症するリスクが高い可能性がある、個体を治療する方法で使用するための治療薬に、組み込まれることがある。例示的な健康状態又は疾患としては、がん、免疫疾患、遺伝子治療、遺伝子置換、心血管疾患、加齢性病態、急性感染症、及び慢性感染症を挙げることができるが、これらに限定はされない。いくつかの実施形態では、上記個体は、医師の治療を受けている患者である。
【0138】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されているような核酸構築物(例えば、ベクター又はsrRNA分子)、組換え細胞、組換えポリペプチド、及び/又は医薬組成物は、対象において薬力学的効果を誘導するのに有用であり得る。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されているような核酸構築物(例えば、ベクター又はsrRNA分子)、組換え細胞、組換えポリペプチド、及び/又は医薬組成物は、必要とする対象における免疫応答を調節する、例えば、誘発又は抑制するのに有用であり得る。したがって、1つの態様では、必要とする対象における免疫応答を誘発するための方法であって、a)本開示の核酸構築物(例えば、ベクター又はsrRNA分子);b)本開示の組換え細胞;c)本開示の組換えポリペプチド;及び/又はd)本開示の医薬組成物、を含む組成物を、上記対象に投与することを含む方法が、本明細書で提供される。
【0139】
本明細書に記載の組成物の薬力学的効果を与える能力の分析は、インビボ及び/又はエキソビボで実行され得る。分析され得る薬力学的効果の例としては以下が挙げられる:免疫原性効果(例えば、インビボにおいて免疫応答を誘発する)、バイオマーカー反応、治療効果、予防効果、所望の効果、望ましくない効果、有害作用、及び疾病モデルにおける効果。いくつかの実施形態では、薬力学的効果の評価は、インビボにおける免疫応答の誘導を評価することを含む。いくつかの実施形態では、薬力学的効果の評価は、免疫応答を増強し、血管新生及び転移を抑制することができる、サイトカイン経路の誘導を評価することを含む。
【0140】
別の態様において、必要とする対象における健康状態を予防及び/又は治療するための方法であって、a)本開示の核酸構築物(例えば、ベクター又はsrRNA分子);b)本開示の組換え細胞;c)本開示の組換えポリペプチド;及び/又はd)本開示のいずれか1つの医薬組成物、を含む組成物を上記対象に予防目的又は治療目的で投与すること、を含む方法が、本明細書で提供される。
【0141】
いくつかの実施形態では、上記健康状態は増殖性疾患又は微生物感染症である。いくつかの実施形態では、上記対象は、増殖性疾患もしくは微生物感染症に伴う状態を有する、又はそれを有する疑いがある。
【0142】
いくつかの実施形態では、本開示の組成物は、その意図される投与経路と適合するように製剤化される。例えば、本開示の核酸構築物、組換え細胞、組換えポリペプチド、及び/又は医薬組成物は、経口的に、又は吸入によって与えられることがあるが、非経口経路を通じて投与されることの方が多い。非経口投与経路の例としては、例えば、静脈内投与、リンパ節内(intranodal)投与、皮内投与、皮下投与、経皮(局所)投与、経粘膜的投与、腟内投与、及び直腸内投与が挙げられる。非経口適用に使用される溶液又は懸濁液は以下の成分を含むことがある:注射用蒸留水、食塩水、不揮発性油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール又は他の合成溶媒などの無菌の希釈剤;ベンジルアルコール又はメチルパラベンなどの抗菌剤;アスコルビン酸又は亜硫酸水素ナトリウムなどの抗酸化剤;エチレンジアミン四酢酸(EDTA)などのキレート化剤;酢酸塩、クエン酸塩、又はリン酸塩などの緩衝剤、並びに塩化ナトリウム又はブドウ糖などの張度調整剤。pHは、リン酸一ナトリウム及び/もしくはリン酸二ナトリウム、塩酸、又は水酸化ナトリウムなどの酸又は塩基で調整(例えば、約pH7.2~7.8、例えば、pH7.5に)され得る。非経口用調製物は、ガラス製又はプラスチック製の、アンプル、使い捨て注射器、又は反復投与用バイアル内に封入され得る。
【0143】
本開示の、このような主題の核酸構築物、組換え細胞、組換えポリペプチド、及び/又は医薬組成物の用量、毒性、及び治療効果は、例えば、LD50(集団の50%に対し致死的な用量)及びED50(集団の50%に治療効果のある用量)を求めるための、細胞培養液又は実験動物における標準的な薬学的手法で、求められ得る。毒性効果と治療効果との間の用量比が治療指数であり、LD50/ED50の比として表すことができる。高い治療指数を示す化合物が通常は好適である。有毒な副作用を示す化合物を使用することはできるが、未感染細胞に傷害を与える可能性を最小化し、それによって副作用を低減するために、そのような化合物を患部組織の部位に標的化する送達系を設計することに留意すべきである。
【0144】
例えば、細胞培養アッセイ及び動物試験から得られたデータは、ヒトでの使用のための用量範囲を策定する際に使用され得る。このような化合物の用量は、通常、ED50を含む血中濃度の範囲内にあり、毒性がほとんどない。用量は、採用された剤形及び使用される投与経路に応じて、この範囲内で変わることがある。本開示の方法で使用されるいずれの化合物においても、最初に、細胞培養アッセイから治療効果のある用量が見積もられ得る。細胞培養で求められるような、IC50(例えば、症状の最大半量阻害を達成する試験化合物の濃度)を含む循環血漿中濃度範囲を達成するように、用量が動物モデルで策定され得る。このような情報を用いることで、ヒトで有用な用量をより正確に求めることができる。血漿中レベルは、例えば高速液体クロマトグラフィーによって測定され得る。
【0145】
本明細書に記載の治療用組成物、例えば、核酸構築物、組換え細胞、組換えポリペプチド、及び/又は医薬組成物は、1回又は複数回/日~1回又は複数回/週投与されることがあり;1日おきに1回を含む。疾患の重症度、以前の治療、対象の全体的な健康及び/又は年齢、並びに存在する他の疾患を含むがこれらに限定はされない、ある特定の因子が、対象を効果的に治療するために必要な用量及びタイミングに影響を与える可能性があることは、当業者には理解される。さらに、本開示の主題の多価ポリペプチド及び多価抗体の治療有効量による対象の治療は、1回の治療を含むことがあり、あるいは、一連の治療を含むことがある。いくつかの実施形態では、上記組成物は、8時間毎に5日間投与され、その後に2~14日間(例えば9日間)の休薬期間が続き、その後に追加の8時間毎に5日間の投与が続く。核酸構築物及び組換えポリペプチドに関しては、本開示の核酸構築物又は組換えポリペプチドの治療有効量(例えば、有効薬量)は、選択された核酸構築物又は組換えポリペプチドに依存する。例えば、患者の体重1kg当たりおよそ0.001~0.1mgの範囲内の1回投与量が、投与されることがある。いくつかの実施形態では、約0.005mg/kg、約0.01mg/kg、約0.05mg/kgが投与されることがある。いくつかの実施形態では、患者の体重1kg当たりおよそ0.03μg~300μgの範囲内の1回投与量が、投与されることがある。いくつかの実施形態では、患者の体重1kg当たりおよそ0.3mg~3mgの範囲内の1回投与量が、投与されることがある。
【0146】
上述したように、治療有効量は、健康状態(例えば疾患又は感染症)を有する対象、それを有する疑いがある対象、又はそのリスクがある対象などの、対象に投与された場合に特定の効果を促進するのに充分な、治療用組成物の量を含む。いくつかの実施形態では、有効量は、疾患もしくは感染症の症状の発症を予防もしくは遅延するため、疾患もしくは感染症の症状の経過を変えるため(例えば、限定はされないが、疾患もしくは感染症の症状の進行を遅くするため)、又は、疾患もしくは感染症の症状を回復に向かわせるために充分な量を含む。いかなる所与の症例においても、適切な「有効量」は、当業者が通例の実験法を用いて決定することができると理解されたい。
【0147】
疾患又は感染症の治療のための本開示の治療用組成物を含む治療の効力は、熟練した臨床医が求めることができる。しかし、疾患又は感染症の徴候又は症状の少なくともいずれか1つ又は全てが改善又は寛解されたならば、治療は有効な治療と見なされる。効力は、入院又は医療行為の必要によって評価されるような、個体が悪化しないこと(例えば、疾患又は感染症の進行が止まるか、少なくとも遅くなること)によっても、測ることができる。これらの指標を測定する方法は、当業者に公知であり、及び/又は本明細書に記載されている。治療は、対象又は動物(いくつかの非限定例はヒト、又は哺乳動物を含む)における疾患又は感染症のあらゆる治療を含み、(1)上記疾患もしくは感染症を阻害すること、例えば、症状の進行を止めること、もしくは遅くすること;又は、(2)上記疾患もしくは感染症を軽減すること、例えば、症状の後退を引き起こすこと;及び、(3)症状の発症を抑制すること、もしくは症状の発症の可能性を低減すること、を含む。
【0148】
いくつかの実施形態では、本開示の核酸構築物(例えば、ベクター又はsrRNA分子)、組換え細胞、組換えポリペプチド、及び/又は医薬組成物は、薬剤的に許容できる担体を含む組成物中で、且つ、免疫応答を刺激するのに有効な量で、対象に投与されることがある。通常、対象は、最初の一連の注射(又は、下記の他の経路のうちの1つを介した投与)を通じて免疫化され、その後、最初の一連の投与によって得られた保護を増大するためのブースターが与えられ得る。最初の一連の注射とその後のブースターは、対象における免疫応答を、例えば、当該組成物を投与されていない対象におけるインターフェロン産生と比較して、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、又は少なくとも100%刺激するために必要な用量で、且つ、そのような期間に亘って、投与される。いくつかの実施形態では、投与された上記組成物は上記対象におけるインターフェロン産生の増加をもたらす。本開示の方法のいくつかの実施形態では、上記対象は哺乳動物である。いくつかの実施形態では、上記哺乳動物はヒトである。
【0149】
上記のように、注射剤用途に好適な薬剤的に許容できる担体には、無菌水溶液(水溶性の場合)又は無菌分散液、及び無菌注射液又は無菌分散液を即時調製するための無菌散剤が含まれる。これらの場合では、上記組成物は、無菌でなければならず、且つ、容易な通針性を呈する程度に流動性でなければならない。組成物はさらに、製造及び保管の条件下で安定でなければならず、細菌及び真菌などの微生物の混入行為から保護されなければならない。上記担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、及び液体ポリエチレングリコールなど)、その適切な混合物、及び植物油を含有する溶媒又は分散媒であり得る。適切な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティング材の使用によって、分散液の場合で必要な粒径の維持によって、及び、界面活性剤の使用によって、維持され得る。微生物の作用の防止は、様々な抗細菌剤及び抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、チメロサールなど、によって達成され得る。
【0150】
無菌注射液は、必要量の核酸構築物(例えば、ベクター又はsrRNA分子)、組換え細胞、及び/又は組換えポリペプチドを、適切な溶媒中に、必要に応じて上記成分の1種又は組み合わせと一緒に、混合した後、濾過滅菌を行うことで、調製され得る。
【0151】
核酸構築物(例えば、ベクター又はsrRNA分子)、組換え細胞、組換えポリペプチド、及び/又は医薬組成物は、適切に保護されている場合、上記のように、例えば不活性な希釈剤又は同化可能な食用担体と共に、経口投与され得る。核酸構築物(例えば、ベクター又はsrRNA分子)、組換え細胞、組換えポリペプチド、及び/又は医薬組成物、並びに他の成分はまた、ハードシェルゼラチンカプセル又はソフトシェルゼラチンカプセル内に封入、錠剤に圧縮、又は個体の食事に直接混合され得る。治療目的の経口投与の場合、活性化合物は、賦形剤と混合されて、経口摂取可能な錠剤、バッカル錠剤、トローチ剤、カプセル剤、エリキシル剤、懸濁剤、シロップ剤、カシェ剤などの形態で使用され得る。
【0152】
いくつかの実施形態では、本開示の核酸構築物(例えば、ベクター又はsrRNA分子)及び組換えポリペプチドは、脂質ナノ粒子(LNP)によって、細胞又は対象に送達され得る。LNPは、通常、ウイルス粒子よりも免疫原性が低い。多くのヒトがウイルス粒子に対しては既存の免疫を持つが、LNPに対しては既存の免疫がない。加えて、LNPに対する適応免疫応答は起こりにくく、このことがLNPの反復投与を可能にする。
【0153】
上述したように、いくつかの異なるイオン化可能カチオン性脂質が、LNPで使用するために開発された。これらとしては、特に、C12-200、MC3、LN16、及びMD1が挙げられる。例えば、LNPの1種では、GalNAc部分が、LNPの外側に結合して、アシアロ糖タンパク質受容体を介した肝臓内への取り込みのためのリガンドとして作用する。これらのカチオン性脂質のいずれかが、本開示の核酸構築物及び組換えポリペプチドを肝臓に送達するためのLNP製剤化に使用され得る。
【0154】
いくつかの実施形態では、LNPは、1000nm未満、500nm未満、250nm未満、200nm未満、150nm未満、100nm未満、75nm未満、50nm未満、又は25nm未満の直径を有するあらゆる粒子を指す。あるいは、ナノ粒子は、サイズが、1~1000nm、1~500nm、1~250nm、25~200nm、25~100nm、35~75nm、又は25~60nmの範囲をとり得る。
【0155】
LNPは、カチオン性脂質、アニオン性脂質、又は中性脂質から調製され得る。融合性リン脂質であるDOPEや膜成分であるコレステロールなどの中性脂質は、トランスフェクション活性及びナノ粒子安定性を増強するための「ヘルパー脂質」としてLNPに含まれ得る。カチオン性脂質の制限としては、安定性が乏しいこととクリアランスが急速であることにより効力が低いこと、また、炎症反応又は抗炎症反応の生成が挙げられる。LNPはまた、疎水性脂質、親水性脂質、又は疎水性脂質及び親水性脂質の両方を有し得る。
【0156】
上記のように、LNPで使用するために開発された、いくつもの脂質又は脂質の組み合わせが、本開示のLNPを生成するために使用され得る。LNPの生成で使用するのに好適な脂質の非限定例としては、DOTMA、DOSPA、DOTAP、DMRIE、DC-コレステロール、DOTAP-コレステロール、GAP-DMORIE-DPyPE、及びGL67A-DOPE-DMPE-ポリエチレングリコール(PEG)が挙げられる。LNPの生成で使用するのに好適なカチオン性脂質の非限定例としては、98N12-5、C12-200、DLin-KC2-DMA(KC2)、DLin-MC3-DMA(MC3)、XTC、MD1、及び7C1が挙げられる。LNPの生成で使用するのに好適な中性脂質の非限定例としては、DPSC、DPPC、POPC、DOPE、及びSMが挙げられる。LNPの生成で使用するのに好適なPEG修飾脂質の非限定例としては、PEG-DMG、PEG-CerC14、及びPEG-CeraC20が挙げられる。
【0157】
いくつかの実施形態では、これらの脂質を、任意の数字のモル比で組み合わせることで、LNPを生成することがある。いくつかの実施形態では、LNP送達系中の核酸に対する脂質の質量比は、約100:1~約3:1、約70:1~10:1、又は16:1~4:1である。いくつかの実施形態では、LNP送達系中の核酸に対する脂質の質量比は、約16:1~4:1である。いくつかの実施形態では、LNP送達系中の核酸に対する脂質の質量比は、約20:1である。いくつかの実施形態では、LNP送達系中の核酸に対する脂質の質量比は、約8:1である。さらに、ポリヌクレオチドを脂質と幅広いモル比で組み合わせることで、LNPを生成することがある。
【0158】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の治療用組成物、例えば、核酸構築物(例えば、ベクター又はsrRNA分子)、組換え細胞、組換えポリペプチド、及び/又は医薬組成物は、1もしくは複数の関連のある健康状態もしくは疾患を有する、それを有する疑いがある、又はそれを発症するリスクが高い可能性がある、対象を予防又は治療する方法で使用するための治療用組成物に、組み込まれる。例示的な健康状態又は疾患としては、がん、免疫疾患、自己免疫疾患、炎症性疾患、遺伝子治療、遺伝子置換、心血管疾患、加齢性病態、希少疾患、急性感染症、及び慢性感染症を挙げることができるが、これらに限定はされない。
【0159】
いくつかの実施形態では、核酸構築物(例えば、ベクター又はsrRNA分子)、組換え細胞、組換えポリペプチド、及び/又は医薬組成物は、免疫疾患、自己免疫疾患、又は炎症性疾患、例えば、糸球体腎炎、炎症性腸疾患、腎炎、腹膜炎、乾癬性関節炎、変形性関節症、スチル病、家族性地中海熱(familiar mediterranean fever)、全身性強皮症及び硬化症、炎症性腸疾患(IBD)、クローン病、潰瘍性大腸炎、急性肺損傷、髄膜炎、脳炎、ブドウ膜炎、多発性骨髄腫、糸球体腎炎、腎炎、喘息、アテローム性動脈硬化、白血球接着不全、多発性硬化症、レイノー病、シェーグレン症候群、若年発症糖尿病、ライター症候群、ベーチェット病、免疫複合体性腎炎、IgA腎症、IgM多発ニューロパチー、免疫介在性血小板減少症、溶血性貧血、重症筋無力症、ループス腎炎、エリテマトーデス、リウマチ様関節炎(RA)、強直性脊椎炎、天疱瘡、グレーブス病、橋本甲状腺炎、小血管炎、オーメン症候群(Omen's syndrome)、慢性腎不全、自己免疫性甲状腺疾患、急性伝染性単核症、HIV、ヘルペスウイルス関連疾患、ヒトウイルス感染症、コロナウイルス、他の腸内ウイルス、ヘルペスウイルス、インフルエンザウイルス、パラインフルエンザウイルス、呼吸器合胞体ウイルス、又はアデノウイルスの感染症、細菌性肺炎、創傷、敗血症、脳卒中/脳浮腫、虚血-再灌流障害、並びにC型肝炎など、の治療及び/又は予防で有用であり得る。
【0160】
本開示の方法に好適な炎症性 の非限定例としては、喘息、炎症性腸疾患(IBD)、慢性大腸炎、脾腫大、及びリウマチ様関節炎などの炎症性疾患が挙げられる。
【0161】
本開示の方法に好適な自己免疫疾患の例としては、リウマチ様関節炎、変形性関節症、スチル病、家族性地中海熱(familiar mediterranean fever)、全身性硬化症、多発性硬化症、強直性脊椎炎、橋本甲状腺炎、全身性エリテマトーデス、シェーグレン症候群、糖尿病性網膜症、糖尿病性脈管障害、糖尿病性神経痛、膵島炎、乾癬、円形脱毛症、温式及び冷式自己免疫性溶血性貧血(AIHA)、悪性貧血、急性炎症性疾患、自己免疫性副腎炎、慢性炎症性脱髄性多発ニューロパチー(CIDP)、ランバート・イートン症候群、硬化性苔癬、ライム病、グレーブス病、ベーチェット病、メニエール病、反応性関節炎(ライター症候群)、チャーグ‐ストラウス症候群、コーガン症候群、クレスト症候群、尋常性天疱瘡及び落葉状天疱瘡、水疱性類天疱瘡、リウマチ性多発筋痛、多発性筋炎、原発性胆汁性肝硬変、膵炎、腹膜炎、乾癬性関節炎、リウマチ熱、サルコイドーシス、シェールゲンセン症候群(Sjorgensen syndrome)、強皮症、セリアック病、スティッフマン症候群、高安動脈炎、一過性グルテン不耐症、自己免疫性ブドウ膜炎、白斑、多発性軟骨炎、疱疹状皮膚炎(DH)又はデューリング病、線維筋痛症、グッドパスチャー症候群、ギラン・バレー症候群、橋本甲状腺炎、自己免疫性肝炎、炎症性腸疾患(IBD)、クローン病、潰瘍性大腸炎、重症筋無力症、免疫複合体病、糸球体腎炎、結節性多発動脈炎、抗リン脂質抗体症候群、多腺性自己免疫症候群、特発性肺線維症、特発性血小板減少性紫斑病(ITP)、蕁麻疹、自己免疫性不妊症、若年性関節リウマチ、サルコイドーシス、並びに自己免疫性心筋症が挙げられるが、これらに限定はされない。
【0162】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の治療用組成物、例えば、核酸構築物(例えば、ベクター又はsrRNA分子)、組換え細胞、組換えポリペプチド、及び/又は医薬組成物は、微生物感染症(例えば、細菌感染症、ミクロ菌感染症、又はウイルス感染症)を有する、それを有する疑いがある、又はそれを発症するリスクが高い可能性がある、対象を予防又は治療する方法で使用するための治療用組成物に、組み込まれる。本開示の方法に好適な感染症の非限定例としては、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、B型肝炎ウイルス(HBV)、B型肝炎ウイルス(HCV)、サイトメガロウイルス(CMV)、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)、ヒトパピローマウイルス(HPV)、エプスタイン・バーウイルス(EBV)、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV2)、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス(SARS-CoV)、中東呼吸器症候群(MERS)、インフルエンザウイルス、及びエボラウイルスなどのウイルスによる感染症が挙げられる。本開示の方法に好適なさらなる感染症としては、リーシュマニア属、リケッチア属、クラミジア属、コクシエラ属、プラスモジウム属、ブルセラ属、マイコバクテリア属、リステリア属、トキソプラズマ属、及びトリパノソーマ属などの細胞内寄生虫による感染症が挙げられる。いくつかの実施形態では、上記微生物感染症は細菌感染症である。いくつかの実施形態では、上記微生物感染症は真菌感染症である。いくつかの実施形態では、上記微生物感染症はウイルス感染症である。
【0163】
いくつかの実施形態では、上記健康状態は、希少難病医薬法(www.fda.gov/patients/rare-diseases-fda)によって定義されるような、希少疾患、例えば、合衆国内での発症が200,000人未満である疾患もしくは状態、並びに/又は、炎症性障害及び/もしくは自己免疫性障害である。いくつかの実施形態では、上記対象は、炎症性障害及び/もしくは自己免疫障害、並びに/もしくは希少疾患(例えば、家族性地中海熱もしくは成人発症スチル病が挙げられるが、これらに限定はされない)と関連した状態を有する、又はそれを有する疑いがある。
【0164】
さらなる治療法
いくつかの実施形態では、本開示の組成物は、単独療法(単剤療法)として個々に、又は、第1の治療法として少なくとも1つの追加の治療法(例えば、第2の治療法)と組み合わせて、対象に投与される。いくつかの実施形態では、上記第2の治療法は、化学療法、放射線療法、免疫療法、ホルモン療法、毒素療法、標的療法、及び外科手術からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、上記第2の治療法は、化学療法、放射線療法、免疫療法、ホルモン療法、毒素療法、又は外科手術からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、上記第1の治療法及び第2の治療法は、同時に施行される。いくつかの実施形態では、上記第1の治療法は、上記第2の治療法と同時に施行される。いくつかの実施形態では、上記第1の治療法及び第2の治療法は、順次に施行される。いくつかの実施形態では、上記第1の治療法は、上記第2の治療法の前に施行される。いくつかの実施形態では、上記第1の治療法は、上記第2の治療法の後に施行される。いくつかの実施形態では、上記第1の治療法は、上記第2の治療法の前及び/又は後に施行される。いくつかの実施形態では、上記第1の治療法及び第2の治療法は、順番に施行される。いくつかの実施形態では、上記第1の治療法及び第2の治療法は、単一製剤で一緒に施行される。
【0165】
キット
また、本明細書に記載の方法を実施するための様々なキットも、本明細書で提供される。特に、本開示のいくつかの実施形態は、対象における免疫応答を誘発するためのキットを提供する。いくつかの他の実施形態は、必要とする対象における健康状態の予防のためのキットに関する。いくつかの他の実施形態は、必要とする対象における健康状態を治療する方法のためのキットに関する。例えば、いくつかの実施形態では、本明細書で提供及び記載されたような核酸構築物(例えば、ベクター又はsrRNA分子)、組換え細胞、組換えポリペプチド、及び/又は医薬組成物のうちの1又は複数、並びにそれを作製及び使用するための書面での説明書を含むキットが、本明細書で提供される。
【0166】
いくつかの実施形態では、本開示のキットは、提供された核酸構築物(例えば、ベクター又はsrRNA分子)、組換え細胞、組換えポリペプチド、及び/又は医薬組成物のうちのいずれか1つを対象に投与するのに有用な、1又は複数の手段をさらに含む。例えば、いくつかの実施形態では、本開示のキットは、提供された核酸構築物(例えば、ベクター又はsrRNA分子)、組換え細胞、組換えポリペプチド、及び/又は医薬組成物のうちのいずれか1つを対象に投与するために使用される、1又は複数のシリンジ(プレフィルドシリンジを含む)及び/又はカテーテル(プレフィルドシリンジを含む)をさらに含む。いくつかの実施形態では、キットは、所望の目的のための、例えば、必要とする対象における状態を診断、予防、又は治療するための、他のキット成分と同時又は順次に投与され得る1又は複数の追加の治療薬を有することがある。
【0167】
前述のキットのいずれかが、1又は複数の追加の試薬をさらに含むことがあり、そのような追加の試薬は以下から選択され得る:希釈用緩衝液、再調製用溶液、洗浄用緩衝液、コントロール試薬、コントロール発現ベクター、ネガティブコントロール、ポジティブコントロール、提供された本開示の核酸構築物(例えば、ベクター又はsrRNA分子)、組換え細胞、組換えポリペプチド、及び/又は医薬組成物のインビトロ生成に好適な試薬。
【0168】
いくつかの実施形態では、キットの成分は、別々の容器内にあることがある。いくつかの他の実施形態では、キットの成分は、単一の容器内で組み合わされていることがある。したがって、本開示のいくつかの実施形態では、キットは、本明細書に提供及び記載されているような核酸構築物(例えば、ベクター又はsrRNA分子)、組換え細胞、組換えポリペプチド、及び/又は医薬組成物のうちの1又は複数を、ある容器内(例えば、無菌のガラス製又はプラスチック製のバイアル内)に含み、さらなる治療薬を別の容器内(例えば、無菌のガラス製又はプラスチック製のバイアル内)に含む。
【0169】
別の実施形態では、キットは、医薬組成物中で、所望により単一の共通容器内で、一緒に製剤化された、1又は複数の追加の治療薬と組み合わされた、1又は複数の本開示の核酸構築物(例えば、ベクター又はsrRNA分子)、組換え細胞、及び/又は組換えポリペプチドを含む、本明細書に記載の組成物の組み合わせを含む。
【0170】
キットが対象に非経口投与するための医薬組成物を含む場合、キットは、そのような投与を実行するためのデバイス(例えば、注射デバイス又はカテーテル)を含み得る。例えば、キットは、本開示の核酸構築物(例えば、ベクター又はsrRNA分子)、組換え細胞、及び/又は組換えポリペプチドを1又は複数含有する、1又は複数の皮下用注射針又は前述のような他の注射デバイスを含み得る。
【0171】
いくつかの実施形態では、キットは、キットの構成要素を用いて本明細書で開示される方法を実施するための説明書をさらに含み得る。例えば、キットは、キット内の医薬組成物及び剤形に関する情報を含む添付文書を含み得る。通常、そのような情報は、患者及び医師が、同封された医薬組成物及び剤形を効果的且つ安全に使用する際の助けとなる。例えば、本開示の組み合わせに関する以下の情報が、挿入文書に補足される場合がある:薬物動態学、薬力学、臨床研究、有効性パラメーター、効能及び用法、禁忌、警告、注意事項、有害反応、過量、適切な用法・用量、剤形、適切な貯蔵条件、引用文献、製造業者/販売業者情報、並びに知的財産情報。
【0172】
上記方法を実施するための指示は、通常、好適な記録媒体上に記録される。例えば、指示は、紙又はプラスチックなどの基材上に印刷されることがある。指示は、キット内に添付文書としてや、キット又はその構成要素(例えば、包装又は副包装に関連する)の容器のラベル中などに存在することがある。指示は、適切なコンピュータ可読記憶媒体上、例えばCD-ROM、ディスケット、フラッシュドライブ上などに存在する、電子記憶データファイルとして存在することがある。場合によっては、実際の指示がキット内に存在せず、遠隔の供給源から(例えば、インターネットを介して)指示を入手するための手段が提供されることがある。この実施形態の一例は、指示を閲覧することができる、及び/又は、指示をダウンロードすることができる、ウェブアドレスを含むキットである。指示と同様、この、指示を入手するための手段が、適切な基材上に記載されることがある。
【0173】
本開示に記載された全ての刊行物及び特許出願は、あたかも個々の刊行物又は特許出願が参照により援用されると明確且つ個別に示されたかのように、参照により本明細書に援用される。
【0174】
本明細書で引用されたいかなる参考文献も、先行技術を構成するものであることを認めるものではない。参考文献の考察は、その著者が主張することを述べたものであり、出願人は、引用された文献の正確性及び妥当性に異議を唱える権利を有する。科学雑誌の記事、特許文献、教科書を含むいくつもの情報源が本明細書で参照されているが、この参照が、これらの文献のいずれかが当該技術分野における共通一般知識の一部を形成していることを認めるものではないことは、明確に理解されるであろう。
【0175】
本明細書に与えられた一般的な方法の議論は、例示のみを目的とすることが意図されている。他の代替方法及び代替物は、本開示を検討すれば当業者には明らかであり、本出願の精神及び範囲内に含まれるものとする。
【0176】
さらなる実施形態が以下の実施例でさらに詳細に開示されるが、これらは例示として提供されており、本開示又は請求項の範囲を何ら限定する意図はない。
【実施例1】
【0177】
本発明の実施では、特に記載がない限り、当業者に周知である、分子生物学、微生物学、細胞生物学、生化学、核酸化学、及び免疫学の従来技術が採用されるものとする。このような手法は、以下のような文献で充分に説明されている:Sambrook, J., & Russell, D. W. (2012). Molecular Cloning: A Laboratory Manual (4th ed.). Cold Spring Harbor, NY: Cold Spring Harbor Laboratory及びSambrook, J., & Russel, D. W. (2001). Molecular Cloning: A Laboratory Manual (3rd ed.). Cold Spring Harbor, NY: Cold Spring Harbor Laboratory(まとめて、本明細書では「Sambrook」と称する); Ausubel, F. M. (1987). Current Protocols in Molecular Biology. New York, NY: Wiley (2014までの補足を含む); Bollag, D. M. et al. (1996). Protein Methods. New York, NY: Wiley-Liss; Huang, L. et al. (2005). Nonviral Vectors for Gene Therapy. San Diego: Academic Press; Kaplitt, M. G. et al. (1995). Viral Vectors: Gene Therapy and Neuroscience Applications. San Diego, CA: Academic Press; Lefkovits, I. (1997). The Immunology Methods Manual: The Comprehensive Sourcebook of Techniques. San Diego, CA: Academic Press; Doyle, A. et al. (1998). Cell and Tissue Culture: Laboratory Procedures in Biotechnology. New York, NY: Wiley; Mullis, K. B., Ferre, F. & Gibbs, R. (1994). PCR: The Polymerase Chain Reaction. Boston: Birkhauser Publisher; Greenfield, E. A. (2014). Antibodies: A Laboratory Manual (2nd ed.). New York, NY: Cold Spring Harbor Laboratory Press; Beaucage, S. L. et al. (2000). Current Protocols in Nucleic Acid Chemistry. New York, NY: Wiley, (including supplements through 2014);及びMakrides, S. C. (2003). Gene Transfer and Expression in Mammalian Cells. Amsterdam, NL: Elsevier Sciences B.V.(これらの開示は参照によって本明細書に援用される)。
【0178】
さらなる実施形態が以下の実施例でさらに詳細に開示されるが、これらは例示として提供されており、本開示又は請求項の範囲を何ら限定する意図はない。
【0179】
実施例1
基本ベクターSINV AR86-ガードウッドの設計及び構築
本実施例は、後に目的遺伝子(例えば、インフルエンザ由来の赤血球凝集素(HA)遺伝子)の発現に使用された、いくつかの基本アルファウイルスベクター(例えば、異種遺伝子を含まない)を構築するために行われた、実験の結果を記述している。
【0180】
図2Aに記載されたシンドビスAR86-ガードウッドハイブリッド1ベクターを、以下の通りに構築した。基本SINV AR86-ガードウッドハイブリッド1ベクターは、SINV構造遺伝子のコード配列の代わりにユニークな制限酵素切断部位(SpeI、5’-A’CTAG,T-3’)を有するAR-86参照配列(Genbank U38305)からの4つの約4kb部分(ツイスト・バイオサイエンス社)として新規合成した(ここで、5’Aは、構造ポリタンパク質遺伝子のヌクレオチド93に続くP2A配列の次のヌクレオチドであり、3’Tは構造ポリタンパク質の終止コドンTGAの場所と一致する)。バクテリオファージT7 RNAポリメラーゼプロモーター(5’-TAATACGACTCACTATAG-3’;配列番号12)をSINVゲノム配列の上流に含め、下流には、ポリA配列、続いて、ユニークな制限酵素部位(SapI、5’-GCTCTTC(N)
1’(N)
3,-3’)、続いて、T7転写終結配列(5’-AACCCCTCTCTAAACGGAGGGGTTTTTTT-3’;配列番号13)、続いて、ユニークな制限酵素切断部位(NotI、5’-GC’GGCC,GC-3’)を含めた。これらの部分は、5ピースのGibson Assembly(登録商標)反応(例えば、直線化されたpYL骨格と、4つの合成断片)で結合された。得られたベクターでは、AR86 nsP2遺伝子が、ガードウッドnsP2遺伝子(Genbank MF459683)と置き換えられており、最終的なSINV AR86-ガードウッドハイブリッド1ベースベクター(配列番号1)が得られた。
【0181】
図3Aに記載されたシンドビスAR86-ガードウッドハイブリッド2ベクターを、以下の通りに構築した。基本SINVガードウッドベクターは、SINV構造遺伝子のコード配列の代わりにユニークな制限酵素切断部位(SpeI、5’-A’CTAG,T-3’)を有するガードウッド株参照配列(Genbank MF459683)からの4つの約4kb部分(ツイスト・バイオサイエンス社、サーモフィッシャー社GeneArt)として新規合成した(ここで、5’Aは、構造ポリタンパク質遺伝子のヌクレオチド93に続くP2A配列の次のヌクレオチドであり、3’Tは構造ポリタンパク質の終止コドンTGAの場所と一致する)。バクテリオファージT7 RNAポリメラーゼプロモーター(5’-TAATACGACTCACTATAG-3’;配列番号12)をSINVゲノム配列の上流に含め、下流には、ポリA配列、続いて、ユニークな制限酵素部位(SapI、5’-GCTCTTC(N)1’(N)3,-3’)、続いて、T7転写終結配列(5’-AACCCCTCTCTAAACGGAGGGGTTTTTTT-3’;配列番号13)、続いて、ユニークな制限酵素切断部位(NotI、5’-GC’GGCC,GC-3’)を含めた。これらの部分は、5ピースのGibson Assembly(登録商標)反応(例えば、直線化されたpYL骨格と、4つの合成断片)で結合された。得られたベクターでは、ガードウッドnsP4遺伝子が、AR86 nsP4遺伝子と置き換えられており、最終的なSINV AR86-ガードウッドハイブリッド2ベースベクター(配列番号2)が得られた。
【0182】
図4Aに記載されたシンドビスAR86-ガードウッドハイブリッド3ベクターを、以下の通りに構築した。シンドビスAR86-ガードウッドハイブリッド2基本ベクターと同様に、代わりにガードウッドnsP3遺伝子をAR86 nsP3遺伝子と置換することで、シンドビスAR86-ガードウッドハイブリッド3基本ベクターを構築した(配列番号3)。
【0183】
図5Aに記載されたシンドビスAR86-ガードウッドハイブリッド4ベクターを、以下の通りに構築した。シンドビスAR86-ガードウッドハイブリッド2基本ベクターと同様に、代わりにガードウッドnsP1遺伝子をAR86 nsP1遺伝子と置換することで、シンドビスAR86-ガードウッドハイブリッド4基本ベクターを構築した(配列番号4)。
【0184】
実施例2
目的遺伝子の発現のための改変アルファウイルスベクターの構築
図2B、
図3B、
図4B、及び
図5Bのアルファウイルスベクターは、SpeIエンドヌクレアーゼ消化による、それぞれ
図2A、
図3A、
図4A、及び
図5Aの空の基本ベクターの直線化によって構築した。インフルエンザ由来の赤血球凝集素(HA)遺伝子(Genbank#AY651334)に、コンピュータで、ヒト発現用にコドンのリファクタリングを行い、合成(IDT)した。PCR産物上の基本ベクターに30bpのフランキング相同性末端を付加する以下のプライマーを使用して、この合成産物を増幅した。
【0185】
フォワードプライマー:
【0186】
(5’-GCTGGAGACGTGGAGGAGAACCCTGGACCTATGGAGAAAATAGTGCTTCTTTTTG-3’;配列番号10)。
【0187】
リバースプライマー:
【0188】
(5’-GCTGGTCGGGTCATTGGGGCGTAGCGGTCAAATGCAAATTCTGCATTGTAACG-3’;配列番号11)。
【0189】
消化産物(すなわち、直線化ベクター)及びPCR産物を二断片Gibson Assembly(登録商標)反応で結合し、26Sサブゲノムプロモーターの制御下に置かれたH5N1 HAコード配列をそれぞれ含有する最終ベクターを得た(AR86-ガードウッドハイブリッド1~4については、それぞれ配列番号5~8)。
【0190】
実施例3
欠陥のあるアルファウイルスゲノム及びRNAレプリコンの機能性を改善する
本実施例は、欠陥のあるnsP配列を機能的アルファウイルス由来の対応するnsP配列と置換することによって、欠陥のある(非機能的な)RNAレプリコン(例えば、自己複製RNA)を、機能化する(例えば、機能するようにする)ことが可能であることを明らかにするために行なわれた実験の結果を記述している。
【0191】
インビトロ転写:酵素消化によって直線化されたプラスミド鋳型DNAを使用するインビトロ転写により、自己複製RNA(srRNA)を作製した。これらの実施例では、DNAは、T7ターミネーターの下流を切断するNotIで直線化するか、又は、ポリ(A)の終わりで切断するSapIで切断した。バクテリオファージT7ポリメラーゼを使用してインビトロ転写を行い、5’ARCAキャップ(HiScribe(商標) T7 ARCA mRNA Kit、NEB社)を用いるか、又は、キャッピングを行わない転写(HiScribe(商標)T7 High Yield RNA Synthesis Kit、NEB社)後に5’キャップ1(Vaccinia Capping System, mRNA Cap 2´-O-Methyltransferase、NEB社)を付加した。フェノール/クロロホルム抽出、LiCl沈殿、又はカラム精製(Monarch(登録商標) RNA Cleanup Kit、NEB社)を使用して、srRNAを精製した。srRNA濃度を260nmにおける吸光度によって測定した(Nanodrop、サーモフィッシャー・サイエンティフィック社)。
【0192】
複製:srRNAで、BHK-21細胞又はベロ細胞の、エレクトロポレーションによる形質転換を行った(例えば、4D-Nucleofector(商標)、ロンザ社)。形質転換の17~20時間後に、細胞を固定・透過処理(eBioscience(商標)Foxp3 / Transcription Factor Staining Buffer Set、インビトロジェン社)し、PE結合型抗二本鎖RNA(dsRNA)マウスモノクローナル抗体(J2、Scicons)を使用して染色して、dsRNA+細胞の頻度及び個々の細胞におけるdsRNAの平均蛍光強度(MFI)を蛍光フローサイトメトリーで定量化した。
【0193】
非機能的なRNAレプリコン(例えば、自己複製RNA)は、srRNAをトランスフェクトされた細胞を染色後にシグナルを示さず(Xで印を付けた、RNAレプリコン(例えば、自己複製RNA)を参照)、トランスフェクトされた機能的なRNAレプリコン(例えば、自己複製RNA)は、RNA複製を示すものであり、26S RNA転写とその後の導入遺伝子発現に必要な、検出可能なdsRNAを生産する(シンボル「
【数1】
」で印を付けたRNAレプリコンを参照)(
図6)。いかなる理論にも束縛されるものではないが、本明細書に記載されているような、機能的な、自己複製するsrRNAは、薬物動態学的効果を誘導するための実用的なベクターとして見なす使用することができると考えられる。
【0194】
実施例4
インビトロにおける改変アルファウイルスベクターの評価
上記の実施例1及び実施例2に記述された改変アルファウイルスベクター構築物の発現レベルを評価し、その挙動(例えば、複製及びタンパク質発現)における差異を調べるために行われた、インビトロ実験の結果を記述している。
【0195】
これらの実験では、
図2B、
図3B、
図4B、及び
図5Bに示された改変アルファウイルス設計の機能性を、以下のアッセイを用いて評価した。これらの実験では、インフルエンザAウイルスH5N1の赤血球凝集素前駆物質(HA)(H5N1 HA)をコードする改変アルファウイルスsrRNAベクター(異種であるAR86のnsP1、又はnsP2、又はnsP3、又はnsP4を有するSINVガードウッド)も、以下のアッセイを利用して評価した。
【0196】
インビトロ転写:酵素消化によって直線化されたプラスミド鋳型DNAを使用するインビトロ転写により、自己複製RNA(srRNA を作製した。これらの実施例では、DNAは、T7ターミネーターの下流を切断するNotIで直線化するか、又は、ポリ(A)の終わりで切断するSapIで切断した。バクテリオファージT7ポリメラーゼを使用してインビトロ転写を行い、5’ARCAキャップ(HiScribe(商標) T7 ARCA mRNA Kit、NEB社)を用いるか、又は、キャッピングを行わない転写(HiScribe(商標)T7 High Yield RNA Synthesis Kit、NEB社)後に5’キャップ1(Vaccinia Capping System, mRNA Cap 2´-O-Methyltransferase、NEB社)を付加した。フェノール/クロロホルム抽出、LiCl沈殿、又はカラム精製(Monarch(登録商標) RNA Cleanup Kit、NEB社)を使用して、srRNAを精製した。RNA濃度を260nmにおける吸光度によって測定した(Nanodrop、サーモフィッシャー・サイエンティフィック社)。
【0197】
複製:srRNAで、BHK-21細胞又はベロ細胞の、エレクトロポレーションによる形質転換を行った(例えば、4D-Nucleofector(商標)、ロンザ社)。形質転換の17~20時間後に、細胞を固定・透過処理(eBioscience(商標)Foxp3 / Transcription Factor Staining Buffer Set、インビトロジェン社)し、PE結合型抗dsRNAマウスモノクローナル抗体(J2、Scicons)を使用して染色して、dsRNA+細胞の頻度及び個々の細胞におけるdsRNAの平均蛍光強度(MFI)を蛍光フローサイトメトリーで定量化した。
【0198】
タンパク質発現
RNAで、BHK-21細胞又はベロ細胞の、エレクトロポレーションによる形質転換を行った(例えば、4D-Nucleofector(商標)、ロンザ社)。形質転換の17~20時間後に、細胞を固定・透過処理(eBioscience(商標)Foxp3 / Transcription Factor Staining Buffer Set、インビトロジェン社)し、APC結合型抗HAマウスモノクローナル抗体(2B7、アブカム社;APC:アロフィコシアニン)を使用して染色して、HAタンパク質+細胞の頻度及び個々の細胞におけるHAタンパク質の平均蛍光強度(MFI)を蛍光フローサイトメトリーで定量化した(
図7)。
【0199】
さらなる実験
BHK-21細胞又はベロ細胞を漸増曲線(titrated curve)の組換えIFNで前処理してから、RNAのエレクトロポレーションを行い、各ベクターの複製及びタンパク質発現に対する影響を、上記アッセイを用いて測定する。
【0200】
非機能的なsrRNAベクターは、GOI発現を検出するためのsrRNAトランスフェクト細胞染色後にシグナルを示さず、機能的なsrRNAベクターは検出可能なGOI発現を生じる。この実験では、APC結合型抗HAマウスモノクローナル抗体を使用して陽性に染色された細胞の平均蛍光強度(MFI)によってGOI発現を定量化する。
図7は、RNA複製を示した(
図6)基本srRNAベクターは、GOI挿入後も発現を示したことを示している。これらの機能的な、GOIを発現するsrRNAは、薬物動態的効果を誘導する(例えば、宿主における免疫応答を誘発する)ための実用的なベクターとして使用することができる。
【0201】
実施例5
インビボにおける改変アルファウイルスベクターの評価
本実施例は、上記の実施例1及び実施例2における改変アルファウイルスベクター構築物(例えば、未製剤化ベクター及びLNP製剤化ベクターの両方)によるワクチン接種後の、免疫応答における差異を評価するために行われた、インビボ実験の結果を記述している。
【0202】
これらの実験では、
図2B、
図3B、
図4B、及び
図5Bに示された改変アルファウイルス設計の機能性を、以下のアッセイを用いて評価している。
【0203】
マウス及び注射
雌のC57BL/6又はBALB/cマウスを、チャールス・リバー・ラボラトリーズ社又はジャクソン・ラボラトリーズ社から購入する。投与当日、0.1~10μgの物質を、両方の四頭筋に分割して筋肉内注射する。ベクターは、生理食塩水中で未製剤化の状態で、又はLNP製剤の状態で、投与する。動物を、体重及び他の一般的な観察事項について、試験期間を通じてモニターする。免疫原性試験では、0日目及び21日目に動物に投与を行う。35日目に脾臓を摘出し、0日目、14日目、及び35日目に血清を単離した。タンパク質発現試験では、0日目に動物に投与し、1日目、3日目、及び7日目に生物発光を評価する。ルシフェラーゼ活性のインビボイメージングを、表示の時点において、IVISシステムを使用して行う。
【0204】
LNP製剤
レプリコンRNA(例えば、自己複製RNA)を、マイクロ流体ミキサーを用いて脂質ナノ粒子製剤にして、粒径の分析、動的光散乱を用いた多分散性の分析、及び封入効率の分析を行う。LNP粒子を配合する際に用いられた脂質のモル比は、30%のC12-200、46.5%のコレステロール、2.5%のPEG-2K、及び16%のDOPEである。
【0205】
ELISpot
インフルエンザ特異的なT細胞応答の規模を測定するため、Mouse IFNγ ELISpot PLUS Kit(HRP)(マブテック社(MabTech))を使用して、製造業者の取扱説明書に従って、IFNγ ELISpot分析を行う。簡潔には、脾細胞を単離し、HAに対するCD4+もしくはCD8+T細胞エピトープのいずれかを提示するペプチド、ポジティブコントロールとしてのPMA/イオノマイシン、又は偽刺激としてのDMSOを含有する培地で5×106細胞/mLの濃度に再懸濁する。
【0206】
細胞内サイトカイン染色
ELISpotで概要を述べた方法に従って脾臓を摘出し、1×106個の細胞を、200μL/ウェルの総体積で細胞含有培地に加える。各ウェルには、HAに対するCD4+もしくはCD8+T細胞エピトープのいずれかを提示するペプチド、ポジティブコントロールとしてのPMA/イオノマイシン、又は偽刺激としてのDMSOを含有させる。1時間後、GolgiPlug(商標)タンパク質輸送阻害剤(BDバイオサイエンス社)を各ウェルに添加する。細胞をさらに5時間インキュベートする。インキュベーション後、標準方法を用いて、細胞表面のCD8+(53-6.7)、CD4+(GK1.5)、B220(B238128)、Gr-1(RB6-8C5)、CD16/32(M93)を染色する。表面染色後、細胞を固定し、標準方法に従って、IFNγ(RPA-T8)、IL-2(JES6-5H4)、及びTNF(MP6-XT22)の細胞内タンパク質染色を行う。その後、細胞をフローサイトメーター分析にかけ、得られたFCSファイルをFlowJoソフトウェアバージョン10.4.1を用いて解析した。
【0207】
抗体
総HA特異的IgGを測定するための抗体応答を、アルファ・ダイアグノスティック・インターナショナル社(Alpha Diagnostic International)製のELISAキットを使用して、製造業者の取扱説明書に従って、測定する。
【0208】
実施例6
異種非構造タンパク質遺伝子を含む改変srRNAベクターのインビトロ評価
本実施例は、異種非構造タンパク質を含む合成自己複製RNA(srRNA)の発現レベルを評価するため、及び、その挙動(例えば、複製及びタンパク質発現)における差異を調べるために行われた、インビトロ実験の結果を記述している。
【0209】
これらの実験では、無関係な導入遺伝子を含むコントロールのVEEV srRNA(RBI296、RBI298)、2種類の構成でIL-1RA及びIL-12の両方をコードするVEEV srRNA(RBI299、RBI300)、2種類の構成でIL-1RA及びIL-12の両方をコードするSINV AR86-ガードウッドハイブリッド1 srRNA(RBI307、RBI308)、並びに、2種類の構成でIL-1RA及びIL-12の両方をコードするSINVガードウッドsrRNA(RBI309、RBI310)を含む、SINVのガードウッド株由来及びAR86株由来の合成srRNAを設計し、その後評価した。
【0210】
インビトロ転写:SapIで直線化されたプラスミド鋳型からの、バクテリオファージT7ポリメラーゼを用いた、キャッピングを行わない転写(uncapped transcription)による、インビトロ転写(HiScribe(商標) T7 High Yield RNA Synthesis Kit、NEB社)の後、5’キャップ1の付加(Vaccinia Capping System, mRNA Cap 2´-O-Methyltransferase、NEB社)を行うことにより、srRNAを調製した。次に、srRNAをLiCl沈殿で精製した。srRNA濃度を260nmにおける吸光度によって測定した(Nanodrop、サーモフィッシャー・サイエンティフィック社)。
【0211】
タンパク質発現:srRNAで、BHK-21細胞の、エレクトロポレーションによる形質転換を行った(4D-Nucleofector(商標)、ロンザ社)。形質転換後24時間及び48時間の時点で、細胞から培養上清を回収した。HEK-Blue(商標)IL-1R細胞(インビボジェン社(InvivoGen))を、一連の濃度の組換えIL-1RA(ペプロテック社(Peprotech))又は培養上清と共にプレインキュベートすることによる生理活性アッセイで、IL-1RAの分泌を評価した。組換えIL-1B(インビボジェン社)を細胞に添加し、一晩インキュベート後、QUANTI-Blue(商標)(インビボジェン社)を使用してSEAPレポーターを定量化した(
図8A)。
【0212】
一連の濃度の組換えIL-12(ペプロテック社)又は培養上清を、DMEM中のIL-12 Bioassay細胞(プロメガ社)上で一晩インキュベートした後、Bio-Glo(商標)ルシフェラーゼ(プロメガ社)を使用してルシフェラーゼレポーターを定量化することによる生理活性アッセイで、IL-12の分泌を評価した(
図8B)。
【0213】
実施例8
異種非構造タンパク質遺伝子を含む改変srRNAベクターのインビボ評価
本実施例は、未製剤化ベクター及びLNP製剤化ベクターの両方としての、異種非構造タンパク質を含む自己複製RNA(srRNA)によるワクチン接種後の、免疫応答における差異を評価するために行われた、インビボ実験の結果を記述している。
【0214】
これらの実験では、SINVガードウッド-AR86ハイブリッド1由来の合成srRNA構築物を設計し、その後評価した。
【0215】
マウス及び注射
雌のC57BL/6又はBALB/cマウスを、チャールス・リバー・ラボラトリーズ社又はジャクソン・ラボラトリーズ社から購入した。投与当日、0.1~10μgの物質を、両方の四頭筋に分割して筋肉内注射した。ベクターは、生理食塩水中で未製剤化の状態で、又はLNP製剤の状態で、投与した。動物を、体重及び他の一般的な観察事項について、試験期間を通じてモニターした。免疫原性試験では、0日目及び21日目に動物に投与を行った。14日目及び/又は35日目に脾臓を摘出し、14日目及び/又は35日目に血清を単離した。
【0216】
LNP製剤
いくつかの試験において、srRNAを、マイクロ流体ミキサーを用いて脂質ナノ粒子(LNP)製剤にして、粒径の分析、動的光散乱を用いた多分散性の分析、及び封入効率の分析を行った。LNPは、イオン化可能脂質、コレステロール、PEG-2K、及びDOPEから構成されるものである。
【0217】
ELISpot
抗原特異的なT細胞応答の規模を測定するため、Mouse IFNγ ELISpot PLUS Kit(HRP)(マブテック社(MabTech))を使用して、製造業者の取扱説明書に従って、IFNγ ELISpot分析を行った。簡潔には、脾細胞を単離し、狂犬病ウイルス糖タンパク質G、ESR1、HER2、もしくはHER3に対応するペプチドプールのいずれかを提示するペプチド、ポジティブコントロールとしてのPMA/イオノマイシン、又は偽刺激としてのDMSOを含有する培地で2~5×106細胞/mLの濃度に再懸濁した。
【0218】
抗体
迅速蛍光フォーカス抑制試験を用いて、狂犬病ウイルスに対する中和抗体応答を測定する。簡潔には、血清希釈物を基準量の生狂犬病ウイルスと混合し、インキュベートする。中和性抗狂犬病抗体が存在する場合、これらの抗体は上記ウイルスを中和する。次に、培養細胞を添加し、血清/ウイルス/細胞を一緒にインキュベートする。被覆されていない(すなわち、抗体によって中和されていない)狂犬病ウイルスは細胞に感染し、これは顕微鏡法で可視化することができる。スライド上で確認されたウイルス感染細胞のパーセントから、エンドポイント力価の算出を行う。
【0219】
ウイルス抗原、狂犬病ウイルス糖タンパク質GをコードするsrRNAのインビボにおける免疫原性の評価を、2回の免疫化後にELISpotによる抗原特異的脾臓T細胞応答(
図9A)及び血清から得られた抗狂犬病中和抗体の力価(
図9B)を評価することで、行った。生理食塩水コントロールと比較して、srRNAで免疫化された群は全て、頑健性のあるT細胞応答を示したが(
図9A)、srRNAワクチン間で反応差が確認された。同様に、srRNAで免疫化された群は全て、感染防御レベルの(protective)中和抗体価を示し、srRNAワクチン間でいくらかのばらつきがあった(
図9B)。感染性疾患抗原に加えて、がん抗原に対するsrRNAベースのワクチンの免疫原性を評価した(
図10)。それぞれのsrRNAワクチンは、ESR1、HER2、及びHER3由来の配列を共コードしていた。2回の免疫化を受けたマウスにおいて、ELISpot分析を使用して、これらの3つの抗原に対する脾臓T細胞応答を測定した。3つ全ての標的に対し、頑健性のあるT細胞応答が観察されたが、反応のパターンはsrRNAベクター間で異なっていた(
図10)。
【0220】
本開示の特定の代替案を開示してきたが、添付の特許請求の範囲の真の精神及び範囲内で、様々な変更及び組み合わせが可能であり、想定されることを理解されたい。したがって、本明細書で提示された要旨及び開示に厳密に限定する意図はない。
【配列表】
【国際調査報告】