(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-02
(54)【発明の名称】AMPK活性化剤として有用なチアジアゾロン誘導体
(51)【国際特許分類】
C07D 285/08 20060101AFI20240925BHJP
A61K 31/433 20060101ALI20240925BHJP
C07D 417/12 20060101ALI20240925BHJP
A61P 9/00 20060101ALI20240925BHJP
A61P 9/04 20060101ALI20240925BHJP
A61P 13/12 20060101ALI20240925BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20240925BHJP
A61P 1/16 20060101ALI20240925BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20240925BHJP
A61P 25/36 20060101ALI20240925BHJP
A61P 3/04 20060101ALI20240925BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240925BHJP
A61P 37/02 20060101ALI20240925BHJP
A61P 19/10 20060101ALI20240925BHJP
A61P 1/00 20060101ALI20240925BHJP
C07K 5/068 20060101ALI20240925BHJP
C12N 9/12 20060101ALN20240925BHJP
C12N 9/99 20060101ALN20240925BHJP
【FI】
C07D285/08 CSP
A61K31/433
C07D417/12
A61P9/00
A61P9/04
A61P13/12
A61P3/10
A61P1/16
A61P29/00
A61P25/36
A61P3/04
A61P35/00
A61P37/02
A61P19/10
A61P1/00
C07K5/068
C12N9/12
C12N9/99
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024514006
(86)(22)【出願日】2022-09-01
(85)【翻訳文提出日】2024-04-25
(86)【国際出願番号】 GB2022052234
(87)【国際公開番号】W WO2023031609
(87)【国際公開日】2023-03-09
(32)【優先日】2021-09-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522156427
【氏名又は名称】ベタゲノン アーベー
【氏名又は名称原語表記】BETAGENON AB
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】エドランド,トーマス
(72)【発明者】
【氏名】ウェストマン,ヤコブ
【テーマコード(参考)】
4C086
4H045
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086CB27
4C086GA07
4C086GA10
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZA08
4C086ZA36
4C086ZA66
4C086ZA70
4C086ZA75
4C086ZA81
4C086ZA97
4C086ZB07
4C086ZB11
4C086ZB26
4C086ZC35
4C086ZC39
4C086ZC41
4H045AA10
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA11
4H045BA51
4H045EA20
4H045EA27
4H045EA28
4H045FA20
4H045FA50
(57)【要約】
本発明は、式Iの化合物またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物に関し、R1、R2、R3およびR4は、本明細書において定義されるとおりであり、これらの化合物は、AMPKの活性化によって改善される障害または健康状態の処置において、特にプロドラッグとして有用である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Iの化合物またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物:
【化1】
R
1およびR
2は独立して、水素、タンパク質構成アミノ酸の側鎖、ならびに、-OH、-NH
2および-C(O)NH
2からなる群から選択される1つ以上の置換基によって任意に置換されたC
1-6アルキルからなる群から選択され;
R
3およびR
4は、独立して、水素、フェニル基によって任意に置換されたC
1-4アルキル、およびA
1からなる群から選択される;または
R
1(もしくはR
2)およびR
3(もしくはR
4)は、それらが結合する炭素原子および窒素原子とともに、4員~6員のヘテロシクロアルキル基を形成し;
A
1は、
【化2】
または
【化3】
を表し、
A
2は、水素、フェニル基で任意に置換されたC
1-4アルキル、
【化4】
または
【化5】
を表し、
各A
3は、独立して、水素、または、フェニル基で任意に置換されたC
1-4アルキルを表し;そして
R
5aおよびR
5bは、独立して、水素、タンパク質構成アミノ酸の側鎖、ならびに-OH、-NH
2および-C(O)NH
2からなる群から選択される1つ以上の置換基によって任意に置換されたC
1-6アルキルからなる群から選択される。
【請求項2】
R
2が水素であり、さらに、R
1が水素、もしくは、Glu、Arg、His、Lys、Ser、Thr、Asn、Gln、Cys、Sec、Ala、Ile、Leu、Met、Phe、Trp、Tyr、AspおよびValからなる群から選択されるタンパク質構成アミノ酸の側鎖であるか;または、
R
2が水素であり、さらに、R
1およびR
3が、それらが結合する炭素原子および窒素原子とともにピロリジン環を形成する、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
R
2が水素であり、さらに、R
1が水素、もしくは、Arg、His、LysおよびTrpからなる群から選択されるタンパク質構成アミノ酸の側鎖であるか、または、
R
2が水素であり、さらに、R
1およびR
3が、それらが結合する炭素原子および窒素原子とともにピロリジン環を形成する、請求項1または請求項2に記載の化合物。
【請求項4】
R
2が水素であり、さらに、R
1がアスパラギン酸の側鎖である、請求項1~3のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項5】
R
3およびR
4が、独立して、水素、1つ以上のフェニル基によって任意に置換されたC
1-3アルキル、
【化6】
および
【化7】
からなる群から選択され、さらに、
R
5aが水素またはタンパク質構成アミノ酸の側鎖である、請求項1~4のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項6】
R
3およびR
4が、独立して、水素、1つ以上のフェニル基によって任意に置換されたC
1-3アルキル、
【化8】
および
【化9】
からなる群から選択される、または、
R
1およびR
3が、それらが結合する炭素原子および窒素原子とともにピロリジン環を形成し、さらに、R
4が、水素、1つ以上のフェニル基で任意に置換されたC
1-3アルキル、
【化10】
および
【化11】
からなる群から選択され、そして、
R
5aが、Phe、Val、Lys、AspおよびArgからなる群から選択されるタンパク質構成アミノ酸の側鎖である、請求項1~5のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項7】
R
3およびR
4が、独立して、水素および1つ以上のフェニル基によって任意に置換されたC
1-3アルキルからなる群から選択される、請求項1~6のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項8】
R
3およびR
4が、独立して、水素およびメチルからなる群から選択される、請求項1~7のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項9】
R
2が水素であり、R
1が水素、もしくは、Glu、Arg、His、Lys、Ser、Thr、Asn、Gln、Cys、Sec、Ala、Ile、Leu、Met、Phe、Trp、Tyr、AspおよびValからなる群から選択されるタンパク質構成アミノ酸の側鎖であり、R
3およびR
4が、独立して、水素、1つ以上のフェニル基によって任意に置換されたC
1-3アルキル、
【化12】
および
【化13】
からなる群から選択され、または、
R
2が水素であり、R
1およびR
3が、それらが結合する炭素原子および窒素原子とともにピロリジン環を形成し、さらに、R
4が、水素、1つ以上のフェニル基で任意に置換されたC
1-3アルキル、
【化14】
および
【化15】
からなる群から選択され、そして、
R
5aが、水素、もしくは、Glu、Arg、His、Lys、Ser、Thr、Asn、Gln、Cys、Sec、Ala、Ile、Leu、Met、Phe、Trp、Tyr、AspおよびValからなる群から選択されるタンパク質構成アミノ酸の側鎖である、請求項1に記載の化合物。
【請求項10】
上記化合物が、
ジメチルアミノ酢酸5-[(Z)-4-クロロ-ベンゾイルイミノ]-2-(4-クロロ-ベンジル)-3-オキソ-[1,2,4]チアジアゾリジン-4-イルメチルエステル;
ジメチルアミノ酢酸5-[(Z)-4-クロロ-ベンゾイルイミノ]-2-(4-クロロ-ベンジル)-3-オキソ-[1,2,4]チアジアゾリジン-4-イルメチルエステルのクエン酸塩;
2-({[5-(4-クロロベンズアミド)-2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾリジン-4-イル]メトキシ}カルボニル)ピロリジン-1-イウム トリフルオロアセテート;
6-{[5-(4-クロロベンズアミド)-2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾリジン-4-イル]メトキシ}-6-オキソヘキサン-1,5-ビス(アミニウム)ジ-トリフルオロアセテート;
(6-アザニウミル-1-{[5-(4-クロロベンズアミド)-2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾリジン-4-イル]メトキシ}-1-オキソヘキサン-2-イル)ジメチルアザニウム ジ-トリフルオロアセテート;
(2-{[5-(4-クロロベンズアミド)-2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾリジン-4-イル]メトキシ}-2-オキソエチル)(メチル)アザニウム トリフルオロアセテート;
2-{[5-(4-クロロベンズアミド)-2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾリジン-4-イル]メトキシ}-2-オキソエタン-1-アミニウム トリフルオロアセテート;
2-({[5-(4-クロロベンズアミド)-2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾリジン-4-イル]メトキシ}カルボニル)-1-メチルピロリジン-1-イウム トリフルオロアセテート;
1-{[5-(4-クロロベンズアミド)-2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾリジン-4-イル]メトキシ}-1-オキソプロパン-2-アミニウム トリフルオロアセテート;
1-{[5-(4-クロロベンズアミド)-2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾリジン-4-イル]メトキシ}-3-メチル-1-オキソペンタン-2-アミニウム トリフルオロアセテート;
[5-(4-クロロベンズアミド)-2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾリジン-4-イル]メチル 2-(ジメチルアミノ)-3-フェニルプロパノエート;
1-{[5-(4-クロロベンズアミド)-2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾリジン-4-イル]メトキシ}-1-オキソ-3-フェニルプロパン-2-アミニウム トリフルオロアセテート;
1-{[5-(4-クロロベンズアミド)-2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾリジン-4-イル]メトキシ}-4-メチル-1-オキソペンタン-2-アミニウム トリフルオロアセテート;
1-{[5-(4-クロロベンズアミド)-2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾリジン-4-イル]メトキシ}-3-ヒドロキシ-1-オキソプロパン-2-アミニウム トリフルオロアセテート;
3-カルボキシ-1-{[5-(4-クロロベンズアミド)-2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾリジン-4-イル]メトキシ}-1-オキソプロパン-2-アミニウム トリフルオロアセテート;
[5-(4-クロロベンズアミド)-2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾリジン-4-イル]メチル 2-[(2S)-2-アザニウミル-3-フェニルプロパンアミド]アセテート クロリド;
[5-(4-クロロベンズアミド)-2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾリジン-4-イル]メチル (2S)-2-[(2S)-2-アザニウミル-3-メチルブタンアミド]-3-メチルブタノエート クロリド;
[5-(4-クロロベンズアミド)-2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾリジン-4-イル]メチル (2R)-2-[(2R)-2-アザニウミル-3-メチルブタンアミド]-3-メチルブタノエート クロリド;
[5-(4-クロロベンズアミド)-2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾリジン-4-イル]メチル 2-[(2S)-2,6-ジアザニウミルヘキサンアミド]アセテート ジクロリド;
(1S)-2-カルボキシ-1-[(2-{[5-(4-クロロベンズアミド)-2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾリジン-4-イル]メトキシ}-2-オキソエチル)カルバモイル]エタン-1-アミニウム クロリド;および
[アザニウミル({[(4S)-4-アザニウミル-4-[(2-{[5-(4-クロロベンズアミド)-2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾリジン-4-イル]メトキシ}-2-オキソエチル)カルバモイル]ブチル]アミノ})メチリデン]アザニウム トリクロリド
からなる群から選択される、請求項1~9のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか1項に定義される化合物またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物、および、薬学的に許容される賦形剤を含む、医薬製剤。
【請求項12】
医薬において使用するための、請求項1~10のいずれか1項に定義される式Iの化合物またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物、あるいは、請求項11に定義される医薬製剤。
【請求項13】
AMPKの活性化によって改善される障害または健康状態の処置において使用するための、請求項1~10のいずれか1項に定義される式Iの化合物またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物、あるいは、請求項11に定義される医薬製剤。
【請求項14】
AMPKの活性化によって改善される障害または健康状態の処置のための医薬の製造における、請求項1~10のいずれか1項に定義される式Iの化合物またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物、あるいは、請求項11に定義される医薬製剤の使用。
【請求項15】
請求項1~10のいずれか1項に定義される式Iの化合物またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物、あるいは、請求項11に定義される医薬製剤を、必要とする対象に投与する工程を含む、AMPKの活性化によって改善される障害または健康状態を処置する方法。
【請求項16】
AMPKの活性化により改善される障害または健康状態が、心血管疾患(心不全等)、糖尿病性腎疾患、2型糖尿病、インスリン抵抗性、非アルコール性脂肪肝疾患、非アルコール性脂肪肝炎、疼痛、オピオイド中毒、肥満、がん、炎症(慢性炎症性疾患を含む)、自己免疫疾患、骨粗鬆症、腸疾患、および、肥満または心血管疾患に伴う高インスリン血症からなる群から選択される、請求項13に記載の使用のための化合物、請求項14に記載の使用または請求項15に記載の方法。
【請求項17】
(i)式IIIの化合物と、
【化16】
式IVの化合物との反応、
【化17】
または、
(ii)式Vの化合物と、
【化18】
式IVの化合物との反応を含み、
【化19】
R
1およびR
2が、請求項1~10のいずれか1項に定義されているとおりであり;そして、
R
3およびR
4が、請求項1~10のいずれか1項に定義されたとおりであるか、または、独立して保護基を表す、請求項1~10のいずれか1項に定義される化合物を調製するための方法。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[発明の分野]
本発明は、新規化合物、および医薬における当該化合物の使用に関する。特に、本発明は、AMP活性化プロテインキナーゼの活性化によって改善される障害または健康状態の処置に有用な化合物に関する。
【0002】
[発明の背景]
AMP活性化タンパク質キナーゼ(AMPK)は3つのタンパク質サブユニットからなるプロテインキナーゼ酵素であり、ホルモン、サイトカイン、運動、および細胞エネルギー状態を減少させるストレス(例えば、グルコース欠乏)によって活性化される。AMPKの活性化はアデノシン5’-三リン酸(ATP)を生成するプロセス(例えば、脂肪酸酸化)を増加させ、ATPを消費するが生存には急速に必要ではない脂肪酸、グリセロ脂質、およびタンパク質合成等の他のものを抑制する。逆に、細胞が持続的な過剰のグルコースを提示されると、AMPK活性が減少し、脂肪酸、グリセロ脂質およびタンパク質合成が増強される。したがって、AMPKは、細胞エネルギー恒常性において重要な役割を果たすタンパク質キナーゼ酵素である。したがって、AMPKの活性化はグルコース低下効果と共役し、コレステロール合成、脂質生成、トリグリセリド合成の阻害、および高インスリン血症の低減を含む、いくつかの他の生物学的効果を誘発する。
【0003】
上記を考慮すると、AMPKは、メタボリックシンドローム、特に2型糖尿病の処置のための好ましい標的である。AMPKはまた、多くの種々の疾患にとって重要である多くの経路に関与する(例えば、AMPKはまた、CNS障害、線維症、骨粗鬆症、心不全、および性機能障害において重要である多くの経路に関与する)。
【0004】
AMPKはまた、がんにおいて重要な多くの経路に関与する。いくつかの腫瘍抑制因子がAMPK経路の一部である。AMPKは哺乳類TOR(mTOR)およびEF2経路の負の調節因子として作用し、これらは、細胞成長および増殖の重要な調節因子である。したがって、制御異常(deregulation)は、がん(および糖尿病)等の疾患に関連し得る。したがって、AMPK活性化剤は、抗癌剤として有用であり得る。
【0005】
AMPK活性化剤(例えば、メトホルミンおよび4-クロロ-N-[2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾール-5-イル]ベンズアミド(すなわち、以下の式IIの化合物))は、疼痛の処置に有効であることが示されている。Dasおよび共同研究者らは、腰椎椎間板穿刺後、AMPK活性化剤によるマウスにおける傷害後処置が機械的過敏症を低減することを報告している(Das V, et al. Reg Anesth Pain Med 2019;0:1-5. doi:10.1136/rapm-2019-100839)。同様に、Dasおよび共同研究者らは、AMPK活性化剤による早期治療がマウスにおける術後疼痛モデルにおいて機械的過敏症を低減することも報告している(Das V, et al. Reg Anesth Pain Med 2019;0:1-6. doi:10.1136/rapm-2019-100651)。これらの薬物はまた、後根神経節におけるAMPK経路を正常化する。したがって、AMPK活性化剤は、疼痛、特に術後疼痛の処置に使用することができる。
【0006】
肝臓脂肪症はAMPKによって調節され得ることも示されている(Zhao et al. J. Biol. Chem. 2020 295: 12279-12289)。AMPKの活性化は肝臓における脂肪酸酸化(β酸化)を促進しながら、デノボ(de novo)脂質生成を阻害する。AMPK活性化はまた、脂肪組織からの遊離脂肪酸放出を減少させ、肝臓脂肪症を予防する。肝臓におけるAMPKの薬理学的活性化は、非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)の複数の態様に対する有益な効果を促進することが報告された。例えば、AMPKの活性化は、マウスおよびサルの両方の動物モデルにおいて非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)を改善することが見出された。したがって、AMPK活性化剤は、NAFLDおよびNASHの治療に有用であり得る。
【0007】
AMPK活性化剤の例は4-クロロ-N-[2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾール-5-イル]ベンズアミド(すなわち、式IIの化合物)であり、これはWO2011/004162に初めて開示された。
【化1】
【0008】
AMPKアゴニスト(すなわち、AMPK活性化剤)として、式IIの化合物は、AMPKの活性化によって改善される障害または健康状態の処置に有用である。当該化合物は、心血管疾患(心不全等)、糖尿病性腎疾患、2型糖尿病、インスリン抵抗性、非アルコール性脂肪肝疾患、非アルコール性脂肪性肝炎、疼痛、オピオイド依存症、肥満、がん、炎症(慢性炎症性疾患を含む)、自己免疫疾患、骨粗鬆症および腸疾患の処置に有用であり得る。
【0009】
多くのAMPK活性化剤が知られているが、AMPKの活性化によって改善される障害または健康状態の処置のための新規化合物の開発に対する必要性が依然として存在する。本発明者らは、このたび、インビボ(in vivo)で代謝されて既知のAMPK活性化剤を形成し、AMPK活性化剤のバイオアベイラビリティが驚くほど向上する新規化合物を見出した。当該化合物は、AMPKを活性化することも見出した。
【0010】
本明細書中の明らかに以前に公開された文書のリストまたは考察は、必ずしも、その文書が従来技術の一部であるか、または共通の一般知識であることを認めるものと解釈されるべきではない。
【0011】
[発明の詳細な説明]
本発明の第1の態様において、式Iの化合物またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物が提供される:
【化2】
R
1およびR
2は独立して、水素、タンパク質構成アミノ酸の側鎖、ならびに、-OH、-NH
2および-C(O)NH
2からなる群から選択される1つ以上の置換基によって任意に置換されたC
1-6アルキルからなる群から選択され;
R
3およびR
4は、独立して、水素、フェニル基によって任意に置換されたC
1-4アルキル、およびA
1からなる群から選択される;または
R
1(もしくはR
2)およびR
3(もしくはR
4)は、それらが結合する炭素原子および窒素原子とともに、4員~6員のヘテロシクロアルキル基を形成し;
A
1は、
【化3】
または
【化4】
を表し、
A
2は、水素、フェニル基で任意に置換されたC
1-4アルキル、
【化5】
または
【化6】
を表し、
各A
3は、独立して、水素、または、フェニル基で任意に置換されたC
1-4アルキルを表し;そして
R
5aおよびR
5bは、独立して、水素、タンパク質構成アミノ酸の側鎖、ならびに-OH、-NH
2および-C(O)NH
2からなる群から選択される1つ以上の置換基によって任意に置換されたC
1-6アルキルからなる群から選択される。
【0012】
これらの化合物は、その薬学的に許容される塩および溶媒和物を含めて、本明細書では「本発明の化合物」と称することがある。
【0013】
本発明の第1の態様の好ましい実施形態において、A
2は水素、
【化7】
または
【化8】
を表し、
各A
3は、水素を表す。
【0014】
本発明の化合物は、インビボで代謝されて、AMPK活性化剤として知られている4-クロロ-N-[2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾール-5-イル]ベンズアミド(本明細書では式IIの化合物と称する)を形成することが見出されている。この点で、本発明の化合物は、4-クロロ-N-[2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾール-5-イル]ベンズアミドのプロドラッグであると考えられ得る。
【0015】
潜在的な有用性がある薬学的に許容される塩としては、BergeらによるJ. Pharmaceutical Sciences, 66: 1-19 (1977)で議論されているものが挙げられる。式Iの化合物の薬学的に許容される塩は、当業者に周知の技術に従って調製してもよい。
【0016】
薬学的に許容される付加塩の例としては、クエン酸、酒石酸、酢酸(トリフルオロ酢酸等の酢酸のハロゲン化形態を含む)、リンゴ酸、乳酸、フマル酸、安息香酸、グリコール酸、グルコン酸、コハク酸、およびアリールスルホン酸等の有機酸由来の付加塩;ならびに塩酸、臭化水素酸、リン酸、メタリン酸、硝酸、および硫酸等の鉱酸由来の付加塩が挙げられる。特定の実施形態において、薬学的に許容される塩は、式Iの化合物のクエン酸塩またはトリフルオロ酢酸塩である。
【0017】
別段の規定がない限り、本明細書で定義されるアルキル基は、直鎖であるか、または十分な数(すなわち、必要に応じて、最低2つまたは3つ)の炭素原子が存在するときには、分枝鎖であるか、および/または環状であってもよい(したがって、シクロアルキル基を形成する)。十分な数(すなわち、最低4つ)の炭素原子が存在するとき、当該基はまた、一部が環状であってもよい(したがって、部分シクロアルキル基を形成する)。例えば、列挙してもよいシクロアルキル基には、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチルおよびシクロヘキシルが含まれる。同様に、列挙してもよい部分環状アルキル基(これはまた、「部分シクロアルキル」基とも称してもよい)には、シクロプロピルメチルが含まれる。
【0018】
列挙してもよいヘテロシクロアルキル基には、環系中の原子の少なくとも1つ(例えば、1~4つ)が炭素以外の原子(すなわち、ヘテロ原子、例えば硫黄、酸素または特に窒素)であり、環系中の原子の総数が4~6である非芳香族単環式ヘテロシクロアルキル基が含まれる。本明細書で言及するヘテロシクロアルキル基の炭素原子は、1つ以上の=O置換基によって置換されていてもよい。
【0019】
疑義を避けるために、式Iの化合物中の2つ以上の置換基の同一性が同じであっても、それぞれの置換基の実際の同一性は何ら相互に依存しない。
【0020】
本明細書において基が任意に置換されていると言及される場合、当該任意の置換基が存在しなくてもよい(すなわち、当該任意の置換基の言及が除去されてもよい)ことが特に意図され、その場合、任意に置換された基は、特定の実施形態において、非置換であると言及されてもよい。
【0021】
式Iの化合物の薬学的に許容される塩は、当業者に周知の技術に従って調製してもよい。例えば、式Iの化合物を適切な有機酸または鉱酸と反応させてもよい。ある塩を別の塩に変換するために、塩スイッチング技術を使用してもよい。
【0022】
本明細書に開示された化合物は、水およびエタノール等の薬学的に許容される溶媒による溶媒和形態だけでなく、非溶媒和形態でも存在してもよく、本発明は、本発明の化合物の溶媒和形態および非溶媒和形態の両方を包含することが意図される。
【0023】
用語「溶媒和物」は、溶質および溶媒によって形成される、化学量論が変化する複合体を指す。本発明の目的のための当該溶媒は、溶質の生物学的活性を妨げなくてもよい。好適な溶媒の例としては、水、メタノール、エタノール、および酢酸が挙げられるが、これらに限定されない。水が溶媒分子である溶媒和物は、典型的には水和物と称される。水和物には、化学量論量の水を含む組成物、および可変量の水を含む組成物が含まれる。
【0024】
式Iの化合物は二重結合を含むので、各個々の二重結合についてE(entgegen)およびZ(zusammen)幾何異性体として存在してもよい。当該異性体およびその混合物はすべて本発明の範囲に含まれる。
【0025】
式Iの化合物は、位置異性体として存在してもよく、互変異性を示してもよい。すべての互変異性体およびそれらの混合物は本発明の範囲に含まれる。
【0026】
本発明はまた、本明細書に記載されるものと同一であるが、1つ以上の原子が、自然界に通常見出される原子質量または質量数(または自然界に最も豊富に見出される原子質量または質量数)とは異なる原子質量または質量数を有する原子で置換されているという事実のために、式Iの同位体標識化合物を包含する。本明細書で規定される任意の特定の原子または元素のすべての同位体は、本発明の範囲内であることが企図される。したがって、式Iの化合物には、重水素化化合物、すなわち、1つ以上の水素原子が水素同位体重水素によって置換された式Iの化合物も含まれる。
【0027】
当業者は、本発明の主題である本発明の化合物には安定な化合物が含まれることを理解するであろう。すなわち、本発明の化合物には、例えば反応混合物から有用な純度まで単離するのに十分な堅牢性を有する化合物が含まれる。
【0028】
本明細書全体を通して、構造は化学名で示される場合と示されない場合がある。命名法に疑義が生じる場合は、構造を優先する。化合物が互変異性体(例えば、別の共鳴形態)として存在し得る場合、示される構造は、可能性がある互変異性体の1つを表し、実際に観察される互変異性体は、溶媒、温度またはpH等の環境要因によって異なる場合がある。すべての互変異性体(および共鳴)形態ならびにそれらの混合物は本発明の範囲に含まれる。
【0029】
別段の指示がない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって理解される一般的な意味を有する。
【0030】
疑義を避けるために、当業者は、本発明の特定の態様(本発明の第1の態様、等)への本明細書での言及は、そのすべての実施形態および特定の特徴への言及を含み、これらの実施形態および特定の特徴は、本発明のさらなる実施形態および特徴を形成するために組み合わせて用いてもよいことを理解するであろう。
【0031】
アミノ酸は、アミノ官能基(-NH2)およびカルボキシル官能基(-CO2H)を含む有機化合物であり、(ほとんどの場合)側鎖を有する。α-アミノ酸は、アミノ官能基およびカルボキシル官能基が同じ炭素原子(すなわち、α-炭素原子)に結合しているアミノ酸である。列挙してもよいα-アミノ酸の中で特に挙げられるのは、タンパク質構成アミノ酸である。タンパク質構成アミノ酸は、翻訳中にタンパク質に生合成的に組み込まれるアミノ酸である。タンパク質構成アミノ酸は、グリシン(Gly)、アラニン(Ala)、アルギニン(Arg)、アスパラギン(Asn)、アスパラギン酸(Asp)、システイン(Cys)、グルタミン酸(Glu)、グルタミン(Gln)、ヒスチジン(His)、イソロイシン(Ile)、ロイシン(Leu)、リシン(Lys)、メチオニン(Met)、フェニルアラニン(Phe)、プロリン(Pro)、ピロリシン(Pyl)、セレノシステイン(Sec)、セリン(Ser)、スレオニン(Thr)、トリプトファン(Trp)、チロシン(Tyr)、およびバリン(Val)である。
【0032】
したがって、用語「タンパク質構成アミノ酸の側鎖」は、タンパク質構成アミノ酸のα-炭素原子に結合している水素以外の基を指す。本発明の文脈において、1つ以上のタンパク質構成アミノ酸の側鎖は、式Iの化合物のR1、R2、R5aまたはR5b位のいずれに位置していてもよい。疑義を避けるために、本発明の化合物は、これらの位置に複数の異なる側鎖を含んでもよく、すなわち、化合物IIのプロドラッグは、チアジアゾール環に連結した2つまたは3つの異なるアミノ酸を有する鎖を含んでもよい。タンパク質構成アミノ酸側鎖の特定の例としては、イミダゾリル基またはインドリル基で置換されたメチル(ヒスチジンおよびトリプトファンに対する)、グアニジノ基で置換されたプロピル(アルギニンに対する)およびアミノ基で置換されたブチル(リジンに対する)が挙げられる。
【0033】
列挙してもよい特定の本発明の化合物は、R1およびR2が同一である化合物である。例えば、R1およびR2は両方とも水素であってもよい。
【0034】
列挙してもよい本発明の他の化合物は、R1およびR2が異なる化合物である。例えば、R1がタンパク質構成アミノ酸の側鎖であり、R2が水素であってもよい。
【0035】
したがって、本発明の第1の態様の化合物は、1つ以上の非対称炭素原子を含んでいてもよく、したがって光学異性および/またはジアステレオ異性を示してもよい。特に、R1およびR2が異なる(例えば、R1がメチルであり、R2が水素である)、式Iの化合物は、当業者によって理解されるように、R1およびR2で置換された炭素がL-配置またはD-配置である化合物であってもよい。化合物がR5aおよび/またはR5b基を含む場合、それらのR5aおよびR5b基が結合しているキラル中心もまた、独立して、L-配置またはD-配置のいずれかであってもよい。
【0036】
特定の実施形態において、R
1およびR
2が異なる場合、R
1およびR
2で置換された炭素はL-配置である。あるいは、R
1およびR
2が異なる場合、R
1およびR
2で置換された炭素は、D-配置であってもよい。例えば、式Iの化合物は、式I-Aの化合物または式I-Bの化合物であってもよい。
【化9】
R
1、R
2、R
3およびR
4は、本明細書に記載されているとおりである(すなわち、すべての実施形態および特定の特徴、ならびにそれらの組み合わせを含む、本発明の第1の態様に記載されているとおりである)。本発明の化合物の特定の例は、R
1およびR
2が両方とも水素であるか、または、R
1およびR
2で置換された炭素がL-配置である化合物であり、例えば、R
1およびR
2の一方が水素であるとき、他方はタンパク質構成アミノ酸の側鎖である。
【0037】
同様に、R
3またはR
4がA
1を表す場合、A
1は
【化10】
を表してもよく、そして、A
2は水素、フェニル基で任意に置換されたC
1-4アルキル、
【化11】
を表してもよく、A
3、R
5aおよびR
5bは、本明細書に記載されているとおりである(すなわち、すべての実施形態および特定の特徴、ならびにそれらの組み合わせを含む、本発明の第1の態様に記載されているとおりである)。本発明の化合物の特定の例は、A
1がタンパク質構成アミノ酸または2つの連結したタンパク質構成アミノ酸を表す化合物である。
【0038】
列挙してもよい本発明の化合物の好ましい例として、A
2が水素、
【化12】
または
【化13】
を表し;各A
3が水素を表し;そして、R
5bが本明細書に記載のとおりである、化合物が挙げられる。
【0039】
好ましくは、R1は、水素、タンパク質構成アミノ酸の側鎖、ならびに-OH、-NH2および-C(O)NH2からなる群から選択される1つ以上の置換基によって任意に置換されたC1-6アルキルからなる群から選択されるか、または、R1およびR3は連結して(プロリンで見出される)ピロリジン環を形成し;そしてR2は水素である。
【0040】
特定の実施形態において、R2は水素であり、R1は水素、または、Glu、特にArg、His、Lys、Ser、Thr、Asn、Gln、Cys、Sec、Ala、Ile、Leu、Met、Phe、Trp、Tyr、AspおよびValからなる群から選択されるタンパク質構成アミノ酸の側鎖である;あるいは、R2は水素であり、R1およびR3は、それらが結合する炭素原子および窒素原子とともにピロリジン環を形成する。
【0041】
特定の実施形態において、R2は水素であり、そしてR1は、水素、またはArg、His、LysおよびTrpからなる群から選択されるアミノ酸(例えば、Arg、HisおよびLys)の側鎖である;あるいは、R2は水素であり、R1およびR3は、それらが結合する炭素原子および窒素原子とともにピロリジン環を形成する。
【0042】
さらなる実施形態において、R2は水素であり、そしてR1は、水素、またはLys、Ala、Ile、Phe、Leu、SerおよびAspからなる群から選択されるアミノ酸の側鎖である;あるいは、R2は水素であり、R1およびR3は、それらが結合する炭素原子および窒素原子とともにピロリジン環を形成する。
【0043】
好ましくは、R2は水素である。
【0044】
本発明の特定の実施形態には、式Iの化合物が含まれ、式中、R1は、水素、またはArg、His、LysおよびTrpからなる群から選択されるアミノ酸(例えば、Arg、HisおよびLys)の側鎖である;あるいは、R1およびR3は、それらが結合する炭素原子および窒素原子とともにピロリジン環を形成し;そして、R2は水素である。
【0045】
他の実施形態において、R
3およびR
4は独立して、水素、1つ以上のフェニル基(例えば、メチル基またはベンジル基)によって任意に置換されたC
1-3アルキル、
【化14】
および
【化15】
からなる群から選択され;そしてR
5aは、水素またはタンパク質構成アミノ酸の側鎖である。好ましい実施形態において、R
3およびR
4は独立して、水素および1つ以上のフェニル基によって任意に置換されたC
1-3アルキルからなる群から選択される(例えば、R
3およびR
4は独立して、水素、メチルまたはベンジルである)。好ましくは、R
3およびR
4は独立して、水素およびメチルからなる群から選択される(例えば、R
3およびR
4は、両方ともメチルである)。
【0046】
他の好ましい実施形態では、R
3およびR
4は独立して、水素、1つ以上のフェニル基(例えば、メチル基またはベンジル基)によって任意に置換されたC
1-3アルキル、
【化16】
および
【化17】
からなる群から選択され;または、R
1およびR
3は、それらが結合する炭素原子および窒素原子とともにピロリジン環を形成し、R
4は、水素、1つ以上のフェニル基で任意に置換されたC
1-3アルキル、
【化18】
および
【化19】
からなる群から選択され;そして、R
5aはタンパク質構成アミノ酸(例えばPhe、Val、Lys、AspまたはArg)の側鎖である。
【0047】
列挙してもよい本発明の好ましい化合物には、R1が、水素、または、Glu、特にArg、His、Lys、Ser、Thr、Asn、Gln、Cys、Sec、Ala、Ile、Leu、Met、Phe、Trp、Tyr、AspおよびValからなる群から選択されるタンパク質構成アミノ酸(例えば、Lys、Ala、Ile、Phe、Leu、SerおよびAsp;またはArg、His、LysおよびTrp)の側鎖であり;R2が水素を表し;R3およびR4が独立して、水素、および1つ以上のフェニル基(例えばメチル)によって任意に置換されたC1-3アルキルからなる群から選択され;または、R1およびR3が、それらが結合する炭素原子および窒素原子とともにピロリジン環を形成する、化合物が含まれる。
【0048】
列挙してもよい本発明の他の好ましい化合物には、R
2が水素を表し;R
1が、水素、またはGlu、Arg、His、Lys、Ser、Thr、Asn、Gln、Cys、Sec、Ala、Ile、Leu、Met、Phe、Trp、Tyr、AspおよびVal(例えば、Lys、Ala、Ile、Phe、Leu、SerおよびAsp)からなる群から選択されるタンパク質構成アミノ酸の側鎖であり;R
3およびR
4が独立して、水素、1つ以上のフェニル基(例えば、メチル基またはベンジル基)で任意に置換されたC
1-3アルキル、
【化20】
および
【化21】
からなる群から選択され;あるいは、R
1およびR
3が、それらが結合する炭素原子および窒素原子とともにピロリジン環を形成し、R
4が、水素、1つ以上のフェニル基(例えば、メチル基またはベンジル基)によって任意に置換されたC
1-3アルキル、
【化22】
および
【化23】
からなる群から選択され;R
5aが、水素、またはGlu、Arg、His、Lys、Ser、Thr、Asn、Gln、Cys、Sec、Ala、Ile、Leu、Met、Phe、Trp、Tyr、AspおよびVal(例えば、Phe、Val、Lys、AspおよびArg)からなる群から選択されるタンパク質構成アミノ酸の側鎖であり;そしてA
2およびA
3が独立して本明細書で定義されるとおりである、化合物が含まれる。
【0049】
本発明の実施形態において、A
2は
【化24】
を表し、R
5bは好ましくは、水素またはGlu、Arg、His、Lys、Ser、Thr、Asn、Gln、Cys、Sec、Ala、Ile、Leu、Met、Phe、Trp、Tyr、AspおよびVal(例えばPhe、Val、Lys、AspおよびArg)からなる群から選択されるタンパク質構成アミノ酸の側鎖であり;そして、各A
3は独立して、水素およびC
1-3アルキル(例えばメチル)からなる群から選択される。
【0050】
上述のとおり、本発明の化合物は、インビボで代謝されて4-クロロ-N-[2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾール-5-イル]ベンズアミド(本明細書では式IIの化合物と称する)を形成することが見出されている。それにもかかわらず、本発明の化合物が式IIの化合物に変換される正確なメカニズムは、本発明の化合物によって異なる場合がある。理論に束縛されることを望むものではないが、本発明の化合物は2つのステップで式IIの化合物に分解されると考えられる。最初にエステルが(化学的または酵素的に)加水分解され、N-ヒドロキシメチル中間体(本明細書の他の箇所で式IIIの化合物と称する)が形成され、次いでその中間体が式IIの化合物に変換される。
【0051】
本出願人は、いくつかの化合物は酸性条件下(例えば、ヒトの胃に存在すると予想される条件下)でより迅速に加水分解されるのに対し、他の化合物はよりアルカリ性条件下(例えば、小腸内の条件に類似した条件下)でより迅速に加水分解されることを見出した。
【0052】
酸性条件下よりもアルカリ性条件下(例えば、小腸内の条件に類似した条件下)でより迅速に加水分解される本発明の化合物は、臨床的にさらなる利点を提供する場合がある点で有利であり、例えば、胃で十分な変換を達成できない(例えば、必要な速度または必要な程度で変換を達成できない)患者に有用である場合がある。当該患者は、例えば、エステラーゼ酵素の機能不全に苦しんでいる場合がある。さらに、加水分解の結果として形成される中間体(すなわち、式IIIの化合物)は、式IIの化合物と比較して、腸内でより容易に取り込まれる場合があり、したがって、腸内での式IIIの化合物の形成は、患者にとって最適な全身曝露を達成するために有利である場合がある。
【0053】
R1/R2に親油性(アルキル)基を含む本発明の化合物は、pH7.4で比較的高い安定性を有することが見出された。R1/R2基がHまたは-NH2含有アミノ酸側鎖(例えば、グリシンベースまたはリシンベース)のときは、このpHでの安定性が低い。R1/R2基のうちの1つが電子吸引性アミノ酸側鎖(例えばアスパラギン酸ベース、アルギニンベースまたはグルタミン酸ベースの側鎖)であるときは、このpHでの安定性が非常に低い。
【0054】
この点で列挙してもよい特定の化合物は、式Aの化合物またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物である:
【化25】
(i)R
1は水素を表し、R
2はアスパラギン酸の側鎖、アルギニンの側鎖もしくはグルタミン酸の側鎖を表し、R
3は水素もしくはメチルであり、R
4は水素もしくはメチルであるか;または
(ii)R
1、R
2およびR
3は水素を表し、R
4はA
1を表し、A
1は
【化26】
を表し、A
2は水素もしくはメチルであり、A
3は水素もしくはメチルであり、R
5aは、アスパラギン酸の側鎖、アルギニンの側鎖もしくはグルタミン酸の側鎖を表す。
【0055】
この点で列挙してもよいさらなる化合物は、式Bの化合物またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物である:
【化27】
(i)R
1は水素を表し、R
2はアスパラギン酸の側鎖またはアルギニンの側鎖を表し、R
3は水素もしくはメチルであり、R
4は水素もしくはメチルであるか;または
(ii)R
1、R
2およびR
3は水素を表し、R
4はA
1を表し、A
1は
【化28】
を表し、A
2は水素もしくはメチルであり、A
3は水素もしくはメチルであり、R
5aは、アスパラギン酸の側鎖もしくはアルギニンの側鎖を表す。
【0056】
この点で列挙してもよい、さらなる特定の化合物は、式Cの化合物またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物である:
【化29】
(i)R
1、R
3およびR
4は水素を表し、R
2はアスパラギン酸の側鎖、アルギニンの側鎖もしくはグルタミン酸の側鎖を表すか;または
(ii)R
1、R
2およびR
3は水素を表し、R
4はA
1を表し、A
1は
【化30】
を表し、R
5aは、アスパラギン酸の側鎖、アルギニンの側鎖もしくはグルタミン酸の側鎖を表す。
【0057】
別の実施形態において、本発明の化合物は、R2が水素であり、さらに、R1がアスパラギン酸の側鎖であり、任意で、R3およびR4が独立して水素またはメチルである、式Iの化合物である。
【0058】
この点で、列挙してもよいさらなる化合物は、以下の化合物およびその薬学的に許容される塩または溶媒和物である。
【化31】
【0059】
さらなる実施形態において、本発明はまた、以下を条件として、本明細書で定義される式Iの化合物(本明細書に規定される好ましい実施形態のいずれかに従って定義される式Iの化合物を含む)に関する:
(i)化合物は式Aの化合物ではない;または
(ii)化合物は式Bの化合物でない;または
(iii)化合物は式Cの化合物ではない;または
(iv)化合物は、以下からなる群から選択されない:
【化32】
または
(v)化合物は、R
2が水素であり、R
1がアスパラギン酸の側鎖である(任意で、R
3およびR
4が独立して水素またはメチルである)式Iの化合物ではない;または
(vi)化合物は
【化33】
ではない。
【0060】
本発明の特に好ましい化合物は以下の化合物またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物である。
【化34】
【化35】
【化36】
【0061】
本発明の化合物は、インビボで分解されて上記化合物を形成することが見出されているので、4-クロロ-N-[2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾール-5-イル]ベンズアミドのプロドラッグであると考えられ得る。4-クロロ-N-[2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾール-5-イル]ベンズアミドは、式IIの化合物として表され得る。
【化37】
【0062】
用語「プロドラッグ」は、経口または非経口投与後、インビボで代謝され、実験的に検出可能な量で、所定の時間内(例えば、6~24時間の投与間隔内(すなわち、1日1~4回))に薬学的に活性がある化合物が得られる化合物を指す。疑義を避けるために、用語「非経口」投与は、経口投与以外のすべての投与形態を含む。プロドラッグに関する一般的な情報は、例えばBundegaard, H. "Design of Prodrugs" p. l-92, Elsevier, New York-Oxford (1985)に記載されている。
【0063】
本発明の化合物の投与により、驚くべきことに、4-クロロ-N-[2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾール-5-イル]ベンズアミドのバイオアベイラビリティおよび全身曝露が、4-クロロ-N-[2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾール-5-イル]ベンズアミドの投与後に観察されたバイオアベイラビリティおよび全身曝露と比較して有意に増加することが見出された。
【0064】
薬物のバイオアベイラビリティとは、投与された用量がその薬物の形態で全身循環に到達する量のことである。十分なバイオアベイラビリティは、作用部位で治療上有効である濃度を達成するために重要である。バイオアベイラビリティの向上(すなわち、増加)は、対象に化合物(またはその医薬製剤)を投与した後に、対象の血中Cmaxまたは曲線下面積(AUC)を測定することによって証明してもよい。本発明の化合物および製剤は、本明細書に記載の療法を必要とする対象における当該療法に有用である。列挙してもよい対象には、哺乳動物等の動物が含まれる。列挙してもよい特定の哺乳動物には、例えば、霊長類(例えば、ヒト、オスまたはメス)、ウシ、ウマ、イヌおよびネコが含まれる。好ましくは、対象はヒトである。
【0065】
用語「Cmax」および「AUC」は本文脈において、(例えば、ヒト対象への)投与後の4-クロロ-N-[2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾール-5-イル]ベンズアミドの最高血漿中濃度、および、本発明の化合物(またはその製剤)の投与後のその物質の濃度/時間曲線の積分をそれぞれ指すことが、当業者にはよく理解されるであろう。
【0066】
本発明の化合物の投与により、実施例のデータから明らかなように、インビボにおいて4-クロロ-N-[2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾール-5-イル]ベンズアミドのバイオアベイラビリティが特に向上することが見出された。これらのデータは、4-クロロ-N-[2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾール-5-イル]ベンズアミドの投与後に観察される血漿曝露と比較して、本発明の化合物を哺乳動物対象に投与した場合に4-クロロ-N-[2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾール-5-イル]ベンズアミドの血漿曝露が増加することを示している。
【0067】
したがって、本発明の化合物の投与は、4-クロロ-N-[2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾール-5-イル]ベンズアミドの投与と比較して、4-クロロ-N-[2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾール-5-イル]ベンズアミドのバイオアベイラビリティを増加させることが可能である。この文脈において、「バイオアベイラビリティを増加させる」という表現は、本発明の化合物の投与が、4-クロロ-N-[2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾール-5-イル]ベンズアミドの投与と比較して、インビボで4-クロロ-N-[2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾール-5-イル]ベンズアミドのより大きな全身的に利用可能な画分をもたらすことを意味する。4-クロロ-N-[2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾール-5-イル]ベンズアミドの全身的に利用可能な部分(fraction)の増加は、少なくとも約10%、(少なくとも)約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、約100%(すなわち、2倍)、約200%(すなわち、3倍)、約300%(すなわち、4倍)、約400%(すなわち、5倍)、約500%(すなわち、6倍)、約600%(すなわち、7倍)、約700%(すなわち、8倍)、約800%(すなわち、9倍)または約900%(すなわち、10倍)であってもよい。
【0068】
本発明の化合物によって提供されるバイオアベイラビリティの向上は、当技術分野で公知の好適な方法を使用して証明してもよい。例えば、バイオアベイラビリティの向上は、本発明の化合物が投与された対象の薬物動態データ(例えば、AUCデータ)と、4-クロロ-N-[2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾール-5-イル]ベンズアミドを投与された対象の対応するデータとを比較することによって証明してもよい。
【0069】
実施例で示されているように、本発明の化合物は酸性条件下(例えば、pH1.2)で安定性が向上している。したがって、本発明の化合物は、胃の通過が必要な患者への経口投与のための医薬製剤の調製に適している。
【0070】
本発明の化合物はまた、実施例のデータによって証明されるように、AMPKを活性化するのに驚くべく有効であることが見出されている。AMPK活性化剤(すなわち、AMPKアゴニスト)として、本発明の化合物は、AMPKの活性化によって改善される障害または健康状態の処置において有用である場合がある。したがって、当該化合物は、本明細書に記載される特定の疾患の処置に有用である場合がある。
【0071】
本発明の化合物は、4-クロロ-N-[2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾール-5-イル]ベンズアミドから調製してもよい。4-クロロ-N-[2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾール-5-イル]ベンズアミドは、当業者に周知の技術に従って順に調製してもよい。例えば、4-クロロ-N-[2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾール-5-イル]ベンズアミドは、国際特許出願WO2011/004162に記載されている技術に従って製造してもよく、その内容はすべて参照により本明細書に組み込まれる。
【0072】
本明細書に記載される本発明の化合物は、以下に提供される実施例に記載される技術等の、当業者に周知の技術に従って調製してもよい。
【0073】
適切な試薬および反応条件を使用して、入手可能な出発物質から、文献で公知の方法を類推することによってまたは従来の合成手順によって、標準的な技術に従って、式Iの化合物を取得してもよい。この点に関して、当業者は特に、"Comprehensive Organic Synthesis" by B. M. Trost and I. Fleming, Pergamon Press, 1991を参照してもよい。
【0074】
例えば、本明細書において定義される本発明の化合物の調製のための方法が提供され、
(i)式IIIの化合物と、
【化38】
式IVの化合物との反応
【化39】
または
(ii)式Vの化合物と、
【化40】
式IVの化合物との反応を含み、
【化41】
R
1およびR
2は、本明細書で定義したとおりであり、R
3およびR
4は、本明細書で定義したとおりであるか、または独立して、好適な保護基(例えばBoc)を表し、好適な塩基(例えば、4-ジメチルアミノピリジン)、好適なアミドカップリング剤(例えば、N,N’-ジシクロヘキシルカルボジイミド)および好適な溶媒(例えば、テトラヒドロフラン)の存在下、当業者に公知の手順に従って行われる。
【0075】
疑義を避けるために、本発明の化合物を調製するための本明細書中に記載される方法は、式IIIの化合物と、3つ(例えば2つ)までの式IVの化合物との連続的な反応を含む方法を包含する。例えば、以下の工程を含む:
(i)本明細書に記載される方法に従って、式IIIの化合物と式IVの化合物とを反応させる工程;
(ii)任意で、1つ以上の脱保護工程を実施する工程;
(iii)本明細書に記載される方法に従って、工程(i)または工程(ii)の生成物と式IVの化合物とを反応させる工程;
(iv)任意で、1つ以上の脱保護工程を行う工程;
(v)任意で、本明細書に記載される方法に従って、工程(iii)または工程(iv)の生成物と式IVの化合物とを反応させる工程;および
(vi)任意に、1つ以上の脱保護工程を実施する工程。
【0076】
上記実施形態において、式IVの化合物は、工程(i)、(iii)および(v)のそれぞれにおいて、同一であっても異なっていてもよい。
【0077】
当業者には、上記および以下に記載する方法において、中間体化合物の官能基を保護基で保護する必要がある場合があることが理解されよう。例えば、特定の実施形態において、式IVの化合物において、R3およびR4の一方は水素を表し、他方は好適な保護基(例えばBoc)を表す場合がある。官能基の保護および脱保護は、上記の反応の前または後に行われてもよい。
【0078】
保護基は、当業者に周知であり、以下に記載するような技術に従って除去してもよい。例えば、本明細書に記載される保護された化合物/中間体は、標準的な脱保護技術を使用して、保護されていない化合物に化学的に変換されてもよい。保護基の使用は、“Protective Groups in Organic Synthesis”, 3rd edition, T.W. Greene & P.G.M. Wutz, Wiley-Interscience (1999)に完全に記載されている。
【0079】
したがって、式Iの化合物を形成するために採用してもよい具体的な変換工程には、脱保護工程、例えば、酸の存在下での反応によるN-Boc保護基の脱保護を含み、または、シリルエーテルとして保護されたヒドロキシ基(例えば、tert-ブチル-ジメチルシリル保護基)は、酸またはフッ化物イオン源との反応、例えば、試薬テトラブチルアンモニウムフルオリド(TBAF)の使用によって脱保護してもよい。
【0080】
式IIIの化合物は、適切な試薬および反応条件を使用して、入手可能な出発物質から、標準的な技術に従って、従来の合成手順によって取得してもよい。例えば、式IIIの化合物(実施例では化合物2と称する)は、当業者に公知の手順に従って、好適な塩基(例えば、トリエチルアミン)および好適な溶媒(例えば、N,N-ジメチルホルムアミド)の存在下、式IIの化合物とホルムアルデヒドとを反応させることにより調製してもよい。
【0081】
同様に、式IIの化合物(すなわち、4-クロロ-N-[2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾール-5-イル]ベンズアミド;実施例では化合物1と称する)は、当業者に周知の技術、例えば国際特許出願番号WO2011/004162に記載されている技術に従って調製してもよい。
【0082】
当業者は、式Vの化合物が、適切な試薬および反応条件を使用して、入手可能な出発物質から、本明細書に例示する合成手順によって取得してもよいことを認識するであろう。
【0083】
本発明の化合物は、それらの反応混合物から単離してもよく、そして必要に応じて、当業者に公知の従来技術を使用して精製してもよい。したがって、本明細書に記載される、本発明の化合物の調製のための方法は、最終工程として、本発明の化合物の単離および任意に精製を含んでいてもよい。
【0084】
[医薬製剤]
本明細書で示されるように、本発明の化合物は、種々の医学的障害または健康状態を処置するための治療剤として有用である。典型的には、本発明の化合物は、医薬製剤の形態で、それを必要とする対象に投与される。
【0085】
本発明の第2の態様によれば、式Iの化合物(またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物)を含む医薬製剤が提供される。当該製剤は、本明細書において本発明の製剤と称される。本発明の第1の態様に関して本明細書に記載されたすべての実施形態およびその特定の特徴は、本発明の第2の態様に関して本明細書に開示される。
【0086】
本発明の第2の態様の医薬製剤は、標準的および/または認められた医薬実務に従って調製してもよい。
【0087】
本発明の第2の態様の実施形態において、本発明の化合物(またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物)は、製剤中に存在する唯一の医薬有効成分である。本発明の第2の態様のさらなる実施形態において、本発明の化合物(またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物)は、1つ以上の他の医薬有効成分とともに製剤中に存在するか、または1つ以上の他の医薬有効成分との併用療法の一部として投与されてもよい。
【0088】
本発明の第2の態様の製剤は、一般に、本発明の化合物(またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物)および1つ以上の薬学的に許容される賦形剤を含む混合物として提供される。1つ以上の薬学的に許容される賦形剤は、標準的な医薬実務に従って、意図される投与経路に適切に考慮して選択してもよい。当該薬学的に許容される賦形剤は好ましくは活性化合物に対して化学的に不活性であり、好ましくは、使用条件下で有害な副作用または毒性を有さない。好適な医薬製剤は例えば、Remington The Science and Practice of Pharmacy, 19th ed., Mack Printing Company, Easton, Pennsylvania (1995)において見出してもよい。薬物送達の方法の簡単な概説は例えば、Langer, Science 249, 1527 (1990)において見出してもよい。
【0089】
例えば、本発明の製剤は、滑沢剤、結合剤、充填剤、界面活性剤、希釈剤、付着防止剤、コーティング、香味剤、着色剤、流動促進剤、防腐剤、甘味剤、崩壊剤、吸着剤、緩衝剤、抗酸化剤、キレート剤、溶解促進剤、溶解遅延剤および/または湿潤剤を含んでいてもよい。
【0090】
列挙してもよい特定の薬学的に許容される賦形剤には、微結晶セルロース、ラクトース一水和物、クロスポビドン、ステアリン酸マグネシウム、コロイド状二酸化ケイ素、無水ラクトース、リン酸二カルシウム、マンニトール、アルファ化デンプン、ヒドロキシプロピルセルロース、ポビドン、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、クロスカルメロースナトリウム、デンプングリコール酸ナトリウム、フマル酸ステアリルナトリウム、タルク、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリソルベート80、ラウリル硫酸ナトリウム、ポロキサマー188、ポロキサマー407、プロピレングリコール、二酸化チタン、ヒプロメロースフタレート、ヒプロメロースアセテートサクシネート、メタクリル酸、メタクリル酸メチルコポリマー、Opadry(登録商標)I、Opadry(登録商標)IIが含まれる。
【0091】
経口投与のための本発明の化合物の医薬製剤の調製において、本発明の化合物は、一緒にまたは別々に、上記の医薬賦形剤の1つ以上と混合してもよい。
【0092】
本発明の化合物と1つ以上の薬学的に許容される賦形剤との混合物は、ペレットまたは顆粒に加工するか、または錠剤に圧縮してもよい。したがって、本発明の医薬製剤は、経口投与のための錠剤、ミニ錠剤、ブロック、ペレット、粒子、顆粒または粉末の形態で提供される製剤を含む。本発明の化合物と1つ以上の薬学的に許容される賦形剤との混合物はまた、皮下または筋肉内投与に適した形態、例えば、注射液または投与前に好適な流体中で再構成するのに適した凍結乾燥粉末等の形態で提供されてもよい。
【0093】
当業者は、本明細書に記載される製剤が全身で作用する場合があり、したがって、当業者に公知の好適な技術を使用して投与してもよいことを理解するであろう。本明細書に記載される製剤は、通常、好適な薬学的に許容される剤形で経口、皮下または筋肉内に投与される。本発明の第2の態様の医薬製剤は、特に本発明の化合物について観察されている酸性条件下での安定性の向上の観点から、好ましくは経口医薬製剤である。
【0094】
本発明の製剤は、カプセルの形態で経口投与用に調製してもよい。例えば、軟ゼラチンカプセル等のカプセルは、本発明の化合物(またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物)単独を、任意で好適なビヒクル、例えば、植物油、脂肪等と共に含有するように調製してもよい。同様に、硬ゼラチンカプセルは、本発明の化合物(またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物)を単独で、または二糖(例えば、ラクトースもしくはサッカロース)、アルコール糖(例えば、ソルビトールもしくはマンニトール)、植物デンプン(例えば、ジャガイモデンプンもしくはコーンスターチ)、多糖類(例えば、アミロペクチンもしくはセルロース誘導体)もしくはゲル化剤(例えば、ゼラチン)等の固体粉末成分と組み合わせて含有してもよい。
【0095】
本発明の特定の医薬製剤は、例えば経口投与のためのカプセル剤または錠剤の形態で提供される製剤として列挙してもよい製剤を含む。
【0096】
列挙してもよい医薬製剤には、本発明の化合物(またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物)が、製剤の少なくとも1重量%(または少なくとも10重量%、少なくとも30重量%または少なくとも50重量%)および最大99重量%である総量で存在する製剤が含まれる。本発明の化合物(またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物)の、医薬製剤の成分の全体(すなわち、本発明の化合物およびすべての医薬賦形剤、例えばアジュバント、希釈剤および担体)に対する重量比は、少なくとも1:99(または少なくとも10:90、少なくとも30:70または少なくとも50:50)であり、最大99:1である。
【0097】
本明細書で使用する「治療上有効な量」、「有効量」および「投与量」とは、治療効果および/または有益な効果であり得る所望の臨床効果をもたらすのに十分な本発明の化合物(またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物)の量を指す。有効量または投与量は、対象(例えばヒト)の年齢または一般的な健康状態、処置される健康状態の重症度、投与される特定の薬剤、処置期間、任意の同時処置の性質、使用される薬学的に許容される賦形剤、ならびに当業者の知識および専門知識の範囲内の同様の因子によって変化する。適切には、個々の場合における「治療上有効な量」、「有効量」または「投与量」は、当業者によって、関連するテキストおよび文献を参照することによって、ならびに/または日常的な実験を使用することによって決定され得る。当業者は、対象に何らかの利益が提供される限り、治療効果が完全または治癒的である必要はないことを理解するであろう。
【0098】
当業者は、本発明の化合物およびその製剤が、様々な用量で(例えば、本明細書に記載される1つ以上の調製物によって)投与されてもよく、好適な用量は当業者によって容易に決定されることを理解するであろう。必要とする対象に投与される本発明の化合物(またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物)の総投与量は、約1ミリグラム/日(mg/日)~約3000mg/日、約2mg/日~約2000mg/日、または約5mg/日~約1000mg/日(例えば、約10mg/日~約500mg/日)の範囲であってもよい。当該投与量は、例えば、本発明の第2の態様の製剤の経口投与量であってもよい。本発明の化合物(またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物)を筋肉内または皮下に投与するとき、当業者は、投与量を適宜調節すべきであることを認識するであろう。
【0099】
経口投与するとき、上記製剤による処置は、本発明の化合物を約1mg~約3000mg、例えば約2mg~約2000mg、または約5mg~約1000mg(例えば約10mg~約500mg)の本発明の化合物を含む単位用量製剤の投与を含んでいてもよい。有利には、処置は、1日1回の用量を使用した本発明の化合物(例えば、上記製剤を含む1つ以上のカプセルの形態で)の投与を含んでいてもよい。あるいは、本発明の化合物の1日の総投与量を、1日2回、3回または4回に分けて投与してもよい(例えば、本明細書に記載の用量を参照して1日2回、例えば、100mg、250mg、500mgまたは1000mgの用量を1日2回投与する)。専門医は、投与量が対象によって異なることを認識するであろう。
【0100】
特定の実施形態において、対象に投与される本発明の化合物の1日用量は、約1mg~約3000mg、好ましくは約1mg~約1000mgの範囲である。
【0101】
本明細書で使用される用語「約」は、化合物の量、用量、時間、温度等の測定可能な値を指す場合、特定の量の20%、10%、5%、1%、0.5%、またはさらには0.1%の変動を指す。各場合において、当該用語は、「±10%」等の表記に(または関連する値に基づいて計算された特定の量の分散を示すことによって)置き換えてもよいことが企図される。また、各場合において、当該用語を削除してもよいことも企図される。
【0102】
疑義を避けるために、本発明の文脈において、対象、特にヒト対象、に投与される用量は、合理的な時間枠にわたって対象において治療応答を果たすのに十分であるべきである。当業者は、正確な用量および組成物ならびに最も適切な送達レジメンの選択がとりわけ、製剤の薬理学的特性、処置される健康状態の性質および重症度、ならびにレシピエントの身体的状態および精神的鋭敏性、ならびに特定の化合物の効力、処置される対象の年齢、状態、体重、性別および応答、ならびに疾患の段階/重症度によっても影響されることを認識するであろう。
【0103】
いずれにしても、医師または他の当業者は、個々の対象に最も好適な実際の投与量を日常的に決定することができるであろう。上記の投与量は、平均的な場合の例示である;もちろん、より高いまたはより低い投与量範囲が妥当である個々の場合が存在し得、そして当該場合も本発明の範囲内である。
【0104】
[医療用途]
本明細書で示されるように、本発明の化合物は医薬として有用である。本発明の化合物は、薬理学的活性を有し、および/または経口投与もしくは非経口投与後に体内で代謝されて薬理学的活性を有する化合物を形成するので有用である。
【0105】
したがって、本発明の第3の態様によれば、医薬に使用するための、本明細書において既に定義された本発明の化合物(すなわち、本発明の第1の態様において定義された化合物)、または本発明の第2の態様に関して定義した医薬製剤が提供される。疑義を避けるために、本発明の第1の態様において定義された化合物への言及は、式Iの化合物(そのすべての実施形態を含む)ならびにその薬学的に許容される塩および溶媒和物への言及を含む。
【0106】
本発明の化合物(すなわち、本発明の第1の態様で定義される化合物)、およびそれを含む製剤は、AMP活性化プロテインキナーゼ(AMPK)の活性化によって改善される障害または健康状態の処置に特に有用である場合がある。したがって、本発明の第4の態様において、AMPKの活性化によって改善される障害または健康状態の処置における使用のための、本発明の化合物、または当該化合物を含む製剤が提供される。
【0107】
同様に、AMPKの活性化により改善される障害または健康状態の処置のための医薬の製造における、本発明の化合物、または当該化合物を含む製剤の使用が提供される。本発明のさらなる代替的な第4の態様において、本発明の化合物(または当該化合物を含む製剤)を、それを必要とする対象(例えばヒト)に投与することを含む、AMPKの活性化によって改善される障害または健康状態を処置する方法が提供される。
【0108】
「AMPKを活性化する」とは、AMPK-α(AMPK-アルファ)サブユニットのThr-172部分のリン酸化の定常状態レベルが式Iの化合物またはその活性代謝物(例えば、4-クロロ-N-[2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾール-5-イル]ベンズアミド)の非存在下でのリン酸化の定常状態レベルと比較して増加することを意味する。あるいはまたは加えて、アセチル-CoAカルボキシラーゼ(ACC)などのAMPKの下流の任意の他のタンパク質のより高い定常状態レベルのリン酸化が存在することを意味する。
【0109】
用語「AMPKの活性化によって改善される障害または健康状態」が、心血管疾患(例えば、心不全)、糖尿病性腎疾患、糖尿病(例えば、2型糖尿病)、インスリン抵抗性、非アルコール性脂肪肝疾患、非アルコール性脂肪性肝炎、疼痛、オピオイド依存症、肥満、がん、炎症(慢性炎症性疾患を含む)、自己免疫疾患、骨粗鬆症、腸疾患、および肥満または心血管疾患に伴う高インスリン血症を含むことを当業者には理解されるであろう。AMPKの活性化によって改善し得る他の疾患または健康状態には、高インスリン血症および関連する状態、線維症が役割を果たす健康状態/障害、性機能障害および神経変性疾患が含まれる。
【0110】
用語「がん」は、細胞の制御されない分裂、および浸潤、増殖を通じた隣接組織への直接的な成長によるか、または転移による遠隔部位への移植性転移によるかのいずれかによって、他の組織に浸潤するこれらの細胞の能力によって特徴づけられる障害の種類における1つ以上の疾患を含むことが当業者には理解されるであろう。「増殖」は、癌細胞の数および/またはサイズの増加を含む。「転移」は、対象の体内の原発腫瘍部位から対象の体内の1つ以上の他の領域への癌細胞の移動または遊走(例えば、浸潤)を意味する(細胞は、次いで、続発性腫瘍を形成することができる)。
【0111】
したがって、本発明の化合物は、すべての腫瘍(非固形および好ましくは固形腫瘍、例えば、癌腫、腺腫、腺癌、臓器とは無関係に、血液がん)を含む、任意の種類のがんの処置の使用に適し得る。例えば、がん細胞は、乳房、胆管、脳、結腸、胃、生殖器、甲状腺、造血系、肺および気道、皮膚、胆嚢、肝臓、鼻咽頭、神経細胞、腎臓、前立腺、リンパ腺および胃腸管のがん細胞からなる群から選択されてもよい。好ましくは、がんは結腸がん(結腸直腸腺腫を含む)、乳がん(例えば閉経後乳がん)、子宮内膜がん、造血系のがん(例えば白血病、リンパ腫など)、甲状腺がん、腎臓がん、食道腺がん、卵巣がん、前立腺がん、膵がん、胆嚢がん、肝臓がんおよび子宮頸がんからなる群から選択される。より好ましくは、がんは結腸、前立腺、および特に乳がんからなる群から選択される。がんが非固形腫瘍であるとき、好ましくは、がんは白血病(例えば、急性骨髄性白血病(AML)、慢性骨髄性白血病(CML)、急性リンパ性白血病(ALL)、または慢性リンパ性白血病(CLL))などの造血腫瘍である。好ましくは、がん細胞は乳がん細胞である。
【0112】
用語「糖尿病」(すなわち、真性糖尿病)は、1型(インスリン依存性)糖尿病および2型(インスリン非依存性)糖尿病の両方を指すことが当業者には理解され、その両方がグルコースホメオスタシスの機能不全を伴う。本発明の化合物およびその製剤は、1型糖尿病および/または2型糖尿病の処置における使用に特に好適であり得る。本発明の化合物は、2型糖尿病の処置に特に適している。
【0113】
糖尿病の処置に有用であるだけでなく、本発明の化合物は糖尿病性腎疾患(すなわち、糖尿病性腎症)の処置にも好適である。「糖尿病性腎疾患」は糖尿病によって引き起こされる腎障害を指し、1型糖尿病および2型糖尿病の重篤な合併症である。糖尿病性腎疾患は血液から老廃物を除去して尿として排泄する腎臓の能力に影響を及ぼし、腎不全を引きこし得る。
【0114】
本発明の化合物はまた、2型糖尿病の非存在下での慢性腎疾患を含む慢性腎疾患を処置するのに好適である。「慢性腎疾患」は、経時的な腎機能の漸進的喪失を特徴とする健康状態である。慢性腎疾患は、通常、高血圧、糖尿病、高コレステロール、腎臓感染症、糸球体腎炎、多発性嚢胞腎疾患、尿の流れにおける尿路閉塞の閉塞、および長期薬物使用など、腎臓に影響を及ぼす1つ以上の他の疾患または健康状態の結果として生じる。
【0115】
用語「高インスリン血症または関連状態」は、高インスリン血症、2型糖尿病、グルコース不耐性、インスリン抵抗性、メタボリックシンドローム、脂質異常症、小児期の高インスリン血症、高コレステロール血症、高血圧、肥満、脂肪肝状態、糖尿病性腎症、糖尿病性神経障害、糖尿病性網膜症、心血管疾患、アテローム性動脈硬化症、脳卒中などの脳血管状態、全身性エリテマトーデス、アルツハイマー病などの神経変性疾患、および多嚢胞性卵巣症候群を含むことが当業者によって理解される。他の疾患状態には、慢性腎不全などの進行性腎疾患が含まれる。
【0116】
特に、本発明の化合物およびその製剤は、高インスリン血症に関連する肥満および/または高インスリン血症に関連する心血管疾患の処置における使用に好適であり得る。
【0117】
本発明の化合物およびその製剤はまた、心血管疾患(例えば、心不全)の処置における使用に好適であり得、当該心血管疾患は、高インスリン血症と関連しない。同様に、本発明の化合物およびその製剤は、高インスリン血症と関連しない肥満の処置における使用にも好適であり得る。疑義を避けるために、AMPK活性化が有益であり得る肥満および/または心血管疾患(心不全など)の処置は、本発明の範囲内に含まれる。
【0118】
線維症が役割を果たす健康状態/障害には、瘢痕治癒、ケロイド、強皮症、肺線維症(特発性肺線維症を含む)、腎原性全身性線維症、および心血管線維症(心内膜筋線維症を含む)、全身性硬化症、肝硬変、眼黄斑変性症、網膜および硝子体網膜症、クローン病/炎症性腸疾患、手術瘢痕組織形成、放射線および化学療法薬誘発性線維症、ならびに心血管線維症が含まれる(これらに限定されない)。
【0119】
本発明の化合物はまた、性機能不全の処置(例えば、勃起不全の処置)に有用であり得る。本発明の化合物は、炎症の処置にも有用であり得る。
【0120】
列挙してもよい神経変性疾患には、アルツハイマー病、パーキンソン病およびハンチントン病、筋萎縮性側索硬化症、脊髄および眼球筋萎縮症(SBMA)などのポリグルタミン障害、歯状核および淡蒼球ルイ体萎縮症(DRPLA)、ならびにいくつかの脊髄小脳失調症(SCA)が含まれる。
【0121】
本発明の化合物は、非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)の処置に有用であり得る。
【0122】
非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)は、肝臓におけるトリグリセリド(脂肪症)の形態での過剰な脂肪蓄積(組織学的に肝細胞の5%超の蓄積と称される)によって定義される。これは、先進国において最も一般的な肝障害であり(例えば、米国成人の約30%に影響を及ぼす)、ほとんどの患者は無症候性である。処置せずに放置すると、状態は次第に悪化し、最終的に肝硬変に至る可能性がある。NAFLDは肥満患者において特に一般的であり、約80%がこの疾患を有すると考えられる。
【0123】
患者のアルコール摂取が主な原因因子であると考えられない場合にNAFLDと診断される可能性がある。脂肪肝疾患を「アルコールに関連しない」と診断するための典型的な閾値は、女性対象では20g未満、男性対象では30g未満の1日摂取量である。
【0124】
NAFLDに関連する特定の疾患または健康状態には、糖尿病、高血圧、肥満、脂質異常症、脂質異常タンパク質血症、グリコーゲン貯蔵疾患、ウェバー-クリスチャン病、妊娠の急性脂肪肝、およびリポジストロフィーなどの代謝状態が含まれる。脂肪肝疾患に関連する他の非アルコール関連因子には、栄養不良、完全非経口栄養、重度の体重減少、再摂食症候群、空腸油膜バイパス、胃バイパス、多嚢胞性卵巣症候群および憩室症が含まれる。
【0125】
非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)はNAFLDの最も攻撃的な形態であり、過剰な脂肪蓄積(脂肪症)が肝臓の炎症を伴う状態である。進行した場合、NASHは、肝臓における瘢痕組織の開発(線維症)、および最終的には肝硬変をもたらし得る。上記のように、本発明の化合物は、NAFLDおよび炎症の処置に有用であることが見出されている。したがって、本発明の化合物は、NASHの処置にも有用である。したがって、さらなる実施形態において、当該処置は非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)の処置である。
【0126】
AMPK活性化剤化合物(例えば、4-クロロ-N-[2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾール-5-イル]ベンズアミド(すなわち、式IIの化合物))は、疼痛を処置することができることが示されており(Das V, et al. Reg Anesth Pain Med 2019;0:1-5. doi:10.1136/rapm-2019-100839、および、Das V, et al. Reg Anesth Pain Med 2019;0:1-6. doi:10.1136/rapm-2019-100651)、当該化合物は鎮痛剤とみなされ得る。したがって、本発明の化合物は、AMPKを活性化することができるか、またはインビボで代謝されて公知のAMPK活性化化合物を形成するので、本発明の化合物は疼痛の処置に有用であり得るということになる。特に、本発明の化合物は、重度の疼痛、慢性疼痛を有する患者の処置に有用であり得るか、または手術後の疼痛の管理に有用であり得る。
【0127】
オピオイド鎮痛薬などのオピオイドベースの治療は、重度の慢性癌性疼痛、急性疼痛(例えば、手術からの回復および突発性疼痛)を処置するために使用され、それらの使用は、慢性の非悪性疼痛の管理において増加している。しかしながら、疼痛を処置するためのオピオイドベースの療法の使用の増加はオピオイド依存(例えば、オピオイド中毒)の増加をもたらした。AMPK活性化剤として、本発明の化合物は当業者に知られているように、オピオイドベースの治療の代わりに疼痛を処置するために使用され得る。したがって、本発明の化合物は、オピオイド中毒を処置するのに有用であり得る。
【0128】
当業者に知られている特定の自己免疫疾患には、クローン病/炎症性腸疾患、全身性エリテマトーデスおよび1型糖尿病が含まれる。
【0129】
言及すべき特定の腸疾患には、クローン病/炎症性腸疾患および胃腸管のがんが含まれる。
【0130】
当業者は特定の健康状態の「処置」(または同様に、その健康状態の「処置」)への言及が、医学の分野においてそれらの通常の意味をとることを理解するであろう。特に、この用語は、そのような症状を有するか、またはそのような症状に罹りやすい対象を主治する医師によって判断される、健康状態に関連する1つ以上の臨床症状の発生の重症度および/または頻度の低減を達成することを指してもよい。
【0131】
当業者は、上記処置または予防がそれを必要とする対象において実施されることを理解するであろう。上記処置または予防のための対象の必要性は、当業者によって、日常的な技術を用いて評価されてもよい。本発明の文脈において、本発明の化合物を「必要とする対象」は、AMPKの活性化によって改善される障害または健康状態に罹患している対象を含む。本明細書中で使用される場合、用語「疾患」および「障害」(ならびに同様に、用語「健康状態」、「病気」、「医学的問題」など)は、互換的に使用されてもよい。
【0132】
理論に拘束されることを望むものではないが、本発明の化合物の投与は、全身循環における4-クロロ-N-[2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾール-5-イル]ベンズアミドのバイオアベイラビリティを向上させるものと考えられる。本発明の化合物を含む製剤の投与は、4-クロロ-N-[2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾール-5-イル]ベンズアミドを含有する製剤の投与と比較して、一定の状況下で4-クロロ-N-[2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾール-5-イル]ベンズアミドの血漿中濃度が約10倍増加することが示されている。
【0133】
本発明の化合物(およびその製剤)は、上記の徴候で使用するためであろうとそうでない場合であろうと、先行技術において公知の他の治療法よりも、より有効であり、より毒性が低く、より作用時間が長く、より強力であり、より副作用が少なく、より吸収されやすく、および/またはより良好な薬物動態プロファイル(例えば、より高い経口バイオアベイラビリティおよび/またはより低いクリアランス)を有し、および/または他の有用な薬理学的、物理的、または化学的特性を有するという利点を有し得る。特に、本発明の化合物は、インビボにおいてより有効であり、および/または有利な特性を示すという利点を有し得る。
【0134】
[図]
以下の図面は、本発明の概念の様々な態様を説明するために提供されるものであり、本明細書で指定されない限り、本発明の範囲を限定することを意図するものではない。
【0135】
図1は、化合物3が用量依存的にAMPKのリン酸化を増加させることを示すウェスタンブロット画像である。
【0136】
図2は、化合物1および化合物3を使用した、経口薬物動態試験の比較結果である。
【0137】
図3は、化合物5、6、7、9、10、13、14、16および17を使用した、経口薬物動態試験の比較結果である。
【0138】
[実施例]
本発明を以下の非限定的な実施例でより詳細に説明する。
【0139】
以下に記載する反応スキームは、本発明の化合物の調製において採用される手順の一般的な説明を提供することを意図している。本明細書で提供される実施例は、本発明の化合物ならびに当該化合物および中間体の調製を説明するために提供されるが、限定するものではない。
【0140】
本発明の化合物を合成するために使用されるすべての出発物質、ビルディングブロック、試薬、酸、塩基、脱水剤、溶媒および触媒は、市販されているか、または文献、例えば、Houben-Weyl "Science of Synthesis" volumes 1-48, Georg Thieme Verlagおよびその後のバージョンに記載されている手順によって日常的に調製し得る。
【0141】
反応は、有機合成技術の当業者に公知の方法で、好適な溶媒もしくは希釈剤またはそれらの混合物の存在下で実施してもよい。反応はまた、必要に応じて、酸または塩基の存在下、冷却または加熱しながら、例えば約-30℃~約150℃の温度範囲で実施してもよい。いくつかの実施形態において、反応は、約0℃~約100℃の温度範囲、より詳細には室温~約80℃の温度範囲で、開放または閉鎖反応容器中および/または不活性ガス、例えば窒素の雰囲気中で実施される。
【0142】
[略語]
本明細書で使用する略語は、当業者に公知であろう。特に、本明細書では以下の略語を使用してもよい。
AUC:濃度-時間曲線下面積
aq:水性
b.w:体重
Cmax:ピーク血漿中濃度
d:二重項
DCC:N,N’-ジシクロヘキシルカルボジイミド
DCM:ジクロロメタン
DMAP:4-ジメチルアミノピリジン
DMSO:ジメチルスルホキシド
eq:当量
ESI:エレクトロスプレーイオン化
Et3N:トリエチルアミン
EtOH:エタノール
g:グラム
h:時間
HPLC:高速液体クロマトグラフィー
LC:液体クロマトグラフィー
LCMS:液体クロマトグラフィー-質量分析
LC-MS/MS:液体クロマトグラフィー-(タンデム)質量分析
LLOQ:定量下限
m:多重項
MeOH:メタノール
MeOD:メタノール-d4
Min:分
mL:ミリリットル
MRT:平均滞留時間
ND:未検出
NMR:核磁気共鳴
RT:室温
s:一重項
T1/2:半減期
TBDMS-Cl:tert-ブチルジメチルシリルクロリド
Tmax:血漿中濃度がピークに達するまでの時間
THF:テトラヒドロフラン
【0143】
【0144】
以下の実施例を参照して本発明をさらに説明するが、これらは本発明の範囲を限定することを意図するものではない。
【0145】
[実施例1]ジメチルアミノ酢酸5-[(Z)-4-クロロ-ベンゾイルイミノ]-2-(4-クロロ-ベンジル)-3-オキソ-[1,2,4]チアジアゾリジン-4-イルメチルエステル(化合物3)の調製
【化42】
【0146】
化合物1:4-クロロ-N-[2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾール-5-イル]ベンズアミド
化合物1は、WO2011/004162に記載されている手順に従って調製した。
【0147】
化合物2:4-クロロ-N-{2-[(4-クロロフェニル)メチル]-4-(ヒドロキシメチル)-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾリジン-5-イリデン}ベンズアミド
THF(2.0L)中の化合物1(100g、0.26mol)の撹拌している溶液に、Et3N(150mL、1.05mol)を加え、次いで37%ホルムアルデヒド(85mL、1.05mol)を加えた。反応混合物をRTにて12~14時間撹拌した。
【0148】
次に、反応混合物を濃縮してTHFを除去した。得られた原料をトルエン(2×100mL)で処理し、35~40℃で減圧下乾燥させ、化合物2を白色固体として得た(103g、収率95.5%)。
【0149】
化合物3:ジメチルアミノ酢酸5-[(Z)-4-クロロ-ベンゾイルイミノ]-2-(4-クロロ-ベンジル)-3-オキソ-[1,2,4]チアジアゾリジン-4-イルメチルエステル
THF(2.0L)中のN,N-ジメチルグリシン(50.3g、0.48mol)の撹拌している溶液に、DMAP(8.93g、0.07mol)およびDCC(100.6g、0.48mol)を加えた。10分後、化合物2(200g、0.49mol)を30分かけて4回に分けて反応混合物に加えた。反応混合物を40~50℃で16~18時間撹拌した。反応混合物を20~30℃に冷却し、Celite(登録商標)でろ過し、THF(200mL)で洗浄し、ろ液を濃縮してTHFを除去した。MeOH(300mL)を使用して得られた原料を30分間RTでスラリー化し、ろ過し、MeOH(50mL)で洗浄した。回収した固体を35~40℃で減圧下乾燥させ、化合物3を白色固体として得た(102g、収率42%)。
1H NMR (400 MHz, DMSO) δ (ppm): 2.20 (s, 6H), 3.21 (s, 2H), 4.84 (s, 2H), 6.03 (s, 2H), 7.40 (dd, 4H), 7.63 (d, 2H), 8.15 (d, 2H)
LCMS: 495.2 [M+H]
HPLC:8.57分において、純度96.3%
【0150】
[実施例2]ジメチルアミノ酢酸5-[(Z)-4-クロロ-ベンゾイルイミノ]-2-(4-クロロ-ベンジル)-3-オキソ-[1,2,4]チアジアゾリジン-4-イルメチルエステルのクエン酸塩(化合物4)の調製
【化43】
【0151】
アセトン(30.0v)中のジメチルアミノ酢酸5-[(Z)-4-クロロ-ベンゾイルイミノ]-2-(4-クロロ-ベンジル)-3-オキソ-[1,2,4]チアジアゾリジン-4-イルメチルエステル(化合物3;550mg、1.1mmol)の撹拌している溶液に、クエン酸(0.9eq.)を加えた。反応はRTにて2.3時間撹拌した。次に、沈殿した化合物をろ過して回収し、乾燥させて化合物4(450mg)を得た。
1H NMR (400 MHz, DMSO) δ (ppm): 2.20 (s, 6H), 3.21 (s, 2H), 4.84 (s, 2H), 6.03 (s, 2H), 7.40 (dd, 4H), 7.63 (d, 2H), 8.15 (d, 2H)
LCMS: 495.2 [M+H]
HPLC:9.95分において純度98.3%
【0152】
[実施例3]2-({[5-(4-クロロベンズアミド)-2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾリジン-4-イル]メトキシ}カルボニル)ピロリジン-1-イウム トリフルオロアセテート(化合物5)の調製
【化44】
【0153】
(工程1)1-[(tert-ブトキシ)カルボニル]ピロリジン-2-カルボン酸(化合物A2)
DCM(10mL)中のL-プロリン(A1)(1.0g、8.68mmol)の懸濁液に、トリエチルアミン(1.34mL、9.55mmol)を0℃で加え、次いでジ-tert-ブチルジカーボネート(2.18mL、9.55mmol)を加え、得られた反応混合物をRTにて16時間撹拌した。反応混合物を5%クエン酸溶液でpH3まで慎重に酸性化した。生成物を酢酸エチルで抽出し、抽出液を乾燥させ、真空中で蒸発させて、化合物A2を白色固体として得た(1.55g、収率83%)。
【0154】
(工程2)1-tert-ブチル 2-[5-(4-クロロベンズアミド)-2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾリジン-4-イル]メチルピロリジン-1,2-ジカルボンキシレート(化合物A3)
THF(11mL、20V)中の化合物A2(0.55g、2.56mmol)の撹拌している溶液に、DMAP(0.06g、0.49mmol)、次いでDCC(0.52g、2.56mmol)を0~5℃で加え、20分間撹拌した。反応混合物に化合物2(0.7g、1.7mmol)を0~5℃で加え、反応混合物を周囲温度(25~30℃)で16時間撹拌した。反応混合物をろ過し、ろ液を濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製して、化合物A3を白色固体として得た(0.5g、収率50%)。
【0155】
(工程3)2-({[5-(4-クロロベンズアミド)-2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾリジン-4-イル]メトキシ}カルボニル)ピロリジン-1-イウム トリフルオロアセテート(化合物5)
ジクロロメタン(5mL)中の化合物A3(0.5g、0.82mmol)の撹拌している溶液に、0~5℃でトリフルオロ酢酸(1mL、2.0vol)を加えた。反応混合物を周囲温度(25~30℃)で16h撹拌した。反応混合物を濃縮してジクロロメタンを除去した。得られた残渣をメタノール/エーテルで再沈殿させ、真空下でろ過して、化合物5を白色固体として得た(0.2g、収率39%)。
1H NMR (400 MHz, DMSO) δ (ppm): 1.90 (m, 2H), 1,98 (m, 1H), 2.22 (m, 1H), 3,18 (m, 2H), 4.48 (m, 1H), 4.84 (s, 2H), 6.13 (s, 2H), 7.42 (dd, 4H), 7.63 (d, 2H), 8.16 (d, 2H)
LCMS: 507.3 [M+H]
HPLC:10.07分において、純度95.3%
【0156】
本実施例の工程1では、L-プロリン、すなわち天然に存在するアミノ酸のL-エナンチオマーを使用した。以降のすべての実施例では、天然に存在するそれぞれのアミノ酸のL-エナンチオマー(またはそのアルキル化誘導体および/または保護誘導体)を使用した。
【0157】
[実施例4]6-{[5-(4-クロロベンズアミド)-2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾリジン-4-イル]メトキシ}-6-オキソヘキサン-1,5-ビス(アミニウム)ジ-トリフルオロアセテート(化合物6)の調製
【化45】
【0158】
(工程1)[5-(4-クロロベンズアミド)-2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾリジン-4-イル]メチル 2,6-ビス({[(tert-ブトキシ)カルボニル]アミノ})ヘキサノエート(化合物B2)
THF(17mL、20V)中の2,6-ビス({[(tert-ブトキシ)カルボニル]アミノ})ヘキサン酸(化合物B1;0.84g、2.43mmol)の撹拌している溶液に、DMAP(0.074g、0.60mmol)、次いでDCC(0.50g、2.43mmol)を0~5℃で加え、20分間撹拌した。反応混合物に化合物2(0.5g、1.21mmol)を0~5℃で加え、反応混合物を周囲温度(25~30℃)で16時間撹拌した。反応混合物をろ過し、ろ液を濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製して、化合物B2を白色固体として得た(0.5g、収率55%)。
【0159】
(工程2)6-{[5-(4-クロロベンズアミド)-2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾリジン-4-イル]メトキシ}-6-オキソヘキサン-1,5-ビス(アミニウム)ジ-トリフルオロアセテート(6)
ジクロロメタン(5mL)中の化合物B2(0.5g、0.67mmol)の撹拌している溶液に、0~5℃でトリフルオロ酢酸(1mL、2.0vol)を加えた。反応混合物を周囲温度(25~30℃)で16時間撹拌した。反応混合物を濃縮してジクロロメタンを除去した。得られた残渣をアセトン/ヘキサンで再沈殿させ、真空下でろ過して、化合物6を白色固体として得た(0.28g、収率63%)。
1H NMR (400 MHz, DMSO) δ (ppm): 1.40 (m, 4H), 1,75 (m, 2H), 2.62 (m, 2H), 4,05 (m, 1H), 4.85 (s, 2H), 6.13 (s, 2H), 7.42 (dd, 4H), 7.63 (d, 2H), 8.16 (d, 2H)
LCMS: 538.3 [M+H]
HPLC:8.28分において、純度95.0%
【0160】
[実施例5](6-アザニウミル(azaniumyl)-1-{[5-(4-クロロベンズアミド)-2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾリジン-4-イル]メトキシ}-1-オキソヘキサン-2-イル)ジメチルアザニウム ジ-トリフルオロアセテート(化合物7)の調製
【化46】
【0161】
(工程1)6-{[(tert-ブトキシ)カルボニル]アミノ}-2-(ジメチルアミノ)ヘキサン酸(化合物C2)
メタノール(20mL)中のBoc-Lys-OH(C1)(2.0g、8.1mmol)の溶液に、37%ホルムアルデヒド(2.6mL、32.4mmol)、次いでPd/C(0.2g、10%w/w)を加え、得られた混合物をparr装置(5kg、H2圧)で16時間、水素添加した。反応終了後、反応混合物をCelite(登録商標)でろ過し、減圧下で濃縮した。残渣をエーテルで粉末にし、化合物C2を白色固体として得た(1.5g、収率67%)。
【0162】
(工程2)[5-(4-クロロベンズアミド)-2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾリジン-4-イル]メチル 6-{[(tert-ブトキシ)カルボニル]アミノ}-2-(ジメチルアミノ)ヘキサノエート(化合物C3)
THF(14mL、20V)中の化合物C2(0.66g、2.43mmol)の撹拌している溶液に、DMAP(0.035g、0.29mmol)、次いでDCC(0.50g、2.43mmol)を0~5℃で加え、20分間撹拌した。反応混合物に化合物2(0.4g、0.97mmol)を0~5℃で加え、反応混合物を周囲温度(25~30℃)で16時間撹拌した。反応混合物をろ過し、ろ液を濃縮し、逆相カラムクロマトグラフィー(8:2 アセトニトリルおよび水)で精製して、化合物C3を白色固体として得た(0.18g、収率64.9%)。
【0163】
(工程3)(6-アザニウミル-1-{[5-(4-クロロベンズアミド)-2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾリジン-4-イル]メトキシ}-1-オキソヘキサン-2-イル)ジメチルアザニウム ジ-トリフルオロアセテート(化合物7)
ジクロロメタン(3.6mL)中の化合物C3(0.18g、0.027mmol)の撹拌している溶液に、0~5℃でトリフルオロ酢酸(0.36mL、2.0vol)を加えた。反応混合物を周囲温度(25~30℃)で3時間撹拌した。反応混合物を濃縮してジクロロメタンを除去した。得られた残渣をアセトン/ヘキサンで再沈殿させ、真空下でろ過して、化合物7をオフホワイトの固体として得た(0.15g、収率81%)。
1H NMR (400 MHz, D2O) δ (ppm): 1.24 (m, 2H), 1,39 (m, 2H), 1.80 (m, 2H), 2.73 (s, 6H), 4.77 (s, 2H), 6.16 (m, 2H), 7.35 (dd, 4H), 7.58 (d, 2H), 8.12 (d, 2H)
LCMS: 566.4 [M+H]
HPLC:8.09分において、純度97.5%
【0164】
[実施例6](2-{[5-(4-クロロベンズアミド)-2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾリジン-4-イル]メトキシ}-2-オキソエチル)(メチル)アザニウム トリフルオロアセテート(化合物8)の調製
【化47】
【0165】
(工程1)[5-(4-クロロベンズアミド)-2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾリジン-4-イル]メチル 2-{[(tert-ブトキシ)カルボニル](メチル)アミノ}アセテート(D2)
THF(12mL、20V)中のN-Bocサルコシン(化合物D1;0.57g、3.04mmol)の撹拌している溶液に、DMAP(0.044g、0.36mmol)、次いでDCC(0.62g、3.04mmol)を0~5℃で加え、20分間撹拌した。反応混合物に化合物2(0.5g、1.21mmol)を0~5℃で加え、反応混合物を周囲温度(25~30℃)で16時間撹拌した。反応混合物をろ過し、ろ液を濃縮し、逆相カラムクロマトグラフィーで精製して、化合物D2を白色固体として得た(0.22g、収率31%)。
【0166】
(工程2)(2-{[5-(4-クロロベンズアミド)-2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾリジン-4-イル]メトキシ}-2-オキソエチル)(メチル)アザニウム トリフルオロアセテート(化合物8)
ジクロロメタン(4.0mL)中の化合物D2(0.2g、0.34mmol)の撹拌している溶液に、0~5℃でトリフルオロ酢酸(0.4mL、2.0vol)を加えた。反応混合物を周囲温度(25~30℃)で16時間撹拌した。反応混合物を濃縮してジクロロメタンを除去した。得られた残渣をジエチルエーテルで粉末にし、化合物8を白色固体として得た(0.17g、収率84%)。
1H NMR (400 MHz, DMSO) δ (ppm): 2.57 (s, 3H), 4.09 (s, 2H), 4.85 (s, 2H), 6.13 (m, 2H), 7.42 (dd, 4H), 7.64 (d, 2H), 8.17 (d, 2H)
LCMS: 481.3 [M+H]
HPLC:8.91分において、純度98.6%
【0167】
[実施例7]2-{[5-(4-クロロベンズアミド)-2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾリジン-4-イル]メトキシ}-2-オキソエタン-1-アミニウム トリフルオロアセテート(化合物9)の調製
【化48】
【0168】
(工程1)[5-(4-クロロベンズアミド)-2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾリジン-4-イル]メチル 2-{[(tert-ブトキシ)カルボニル]アミノ}アセテート(化合物E2)
THF(11mL、20V)中のN-Bocグリシン(化合物E1;0.53g、3.04mmol)の撹拌している溶液に、DMAP(0.044g、0.36mmol)、次いでDCC(0.62g、3.04mmol)を0~5℃で加え、20分間撹拌した。反応混合物に、化合物2(0.5g、1.21mmol)を0~5℃で加え、反応混合物を周囲温度(25~30℃)で16時間撹拌した。反応混合物をろ過し、ろ液を濃縮し、逆相カラムクロマトグラフィーで精製して、化合物E2を白色固体として得た(0.32g、収率46%)。
【0169】
(工程2)2-{[5-(4-クロロベンズアミド)-2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾリジン-4-イル]メトキシ}-2-オキソエタン-1-アミニウム トリフルオロアセテート(化合物9)
ジクロロメタン(3.0mL)中の化合物E2(0.3g、0.52mmol)の撹拌している溶液に、0~5℃でトリフルオロ酢酸(0.6mL、2.0vol)を加えた。反応混合物を周囲温度(25~30℃)で2時間撹拌した。反応混合物を濃縮してジクロロメタンを除去した。得られた残渣をジエチルエーテルで粉末にし、化合物9を白色固体として得た(0.23g、収率76%)。
1H NMR (400 MHz, DMSO) δ (ppm): 3.91 (s, 2H), 4.85 (s, 2H), 6.13 (m, 2H), 7.42 (dd, 4H), 7.64 (d, 2H), 8.17 (d, 2H)
LCMS: 467.2 [M+H]
HPLC:8.55分において、純度98.2%
【0170】
[実施例8]2-({[5-(4-クロロベンズアミド)-2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾリジン-4-イル]メトキシ}カルボニル)-1-メチルピロリジン(化合物10)の調製
【化49】
【0171】
(工程1)1-メチルピロリジン-2-カルボン酸(化合物F1)
メタノール(20mL)中のL-プロリン(化合物A1;2.0g、17.37mmol)の溶液に、37%ホルムアルデヒド(1.54mL、19.1mmol)、次いでPd/C(0.5g、25%w/w)を加え、得られた混合物をParr装置(1kg H2圧力)で16時間水素添加した。反応終了後、反応混合物をCelite(登録商標)でろ過し、減圧下で濃縮した。残渣をエーテルで粉末にし、化合物F1を白色固体として得た(1.9g、収率84%)。
【0172】
(工程2)2-({[5-(4-クロロベンズアミド)-2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾリジン-4-イル]メトキシ}カルボニル)-1-メチルピロリジン-1-イウム トリフルオロアセテート(化合物10)
THF(10mL、20V)中の化合物F1(0.39g、3.0mmol)の撹拌している溶液に、DMAP(0.074g、0.60mmol)、次いでDCC(0.62g、3.04mmol)を0~5℃で加え、20分間撹拌した。反応混合物に化合物2(0.5g、0.1.21mmol)を0~5℃で加え、反応混合物を周囲温度(25~30℃)で16時間撹拌した。反応混合物をろ過し、ろ液を濃縮し、逆相カラムクロマトグラフィーで精製し、次いでアセトン/ジエチルエーテルを使用して再沈殿し、化合物10を白色固体として得た(0.25g、収率39%)。
1H NMR (400 MHz, DMSO) δ (ppm): 1.83 (br, 1H), 2,03 (m, 2h), 2.40 (br, 1H), 2,87 (br, 1H), 3,13 (br, 1H), 3.57 (br, 1H), 4.85 (s, 2H), 6.13 (m, 2H), 7.41 (dd, 4H), 7.64 (d, 2H), 8.15(d, 2H)
LCMS: 521.3 [M+H]
HPLC:9.16分において、純度96.9%
【0173】
[実施例9]1-{[5-(4-クロロベンズアミド)-2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾリジン-4-イル]メトキシ}-1-オキソプロパン-2-アミニウム トリフルオロアセテート(化合物11)の調製
【化50】
【0174】
(工程1)[5-(4-クロロベンズアミド)-2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾリジン-4-イル]メチル 2-{[(tert-ブトキシ)カルボニル]アミノ}プロパノエート(化合物G2)
THF(10mL、20V)中のN-Bocアラニン(化合物G1)(0.57g、3.04mmol)の撹拌している溶液に、DMAP(0.044g、0.36mmol)、次いでDCC(0.62g、3.04mmol)を0~5℃で加え、20分間撹拌した。反応混合物に化合物2(0.5g、1.21mmol)を0~5℃で加え、反応混合物を周囲温度(25~30℃)で16時間撹拌した。反応混合物をろ過し、ろ液を濃縮し、逆相カラムクロマトグラフィーで精製して、化合物G2を白色固体として得た(0.31g、収率43%)。
【0175】
(工程2)1-{[5-(4-クロロベンズアミド)-2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾリジン-4-イル]メトキシ}-1-オキソプロパン-2-アミニウム トリフルオロアセテート(化合物11)
ジクロロメタン(3.0mL)中の化合物G2(0.3g、0.51mmol)の撹拌している溶液に、0~5℃でトリフルオロ酢酸(0.9mL、3.0vol)を加えた。反応混合物を周囲温度(25~30℃)で2時間撹拌した。反応混合物を濃縮してジクロロメタンを除去した。得られた残渣をジエチルエーテルで粉末にし、化合物11を白色固体として得た(0.14g、収率45%)。
1H NMR (400 MHz, DMSO) δ (ppm): 1.33 (d, 3H), 4.19 (t, 1h), 4.85 (s, 2H), 6.12 (m, 2H), 7.41 (dd, 4H), 7.64 (m, 1H), 8.15(d, 2H)
LCMS: 481.3 [M+H]
HPLC:9.14分において、純度95.7%
【0176】
[実施例10]1-{[5-(4-クロロベンズアミド)-2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾリジン-4-イル]メトキシ}-3-メチル-1-オキソペンタン-2-アミニウム トリフルオロアセテート(化合物12)の調製
【化51】
【0177】
(工程1)[5-(4-クロロベンズアミド)-2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾリジン-4-イル]メチル 2-{[(tert-ブトキシ)カルボニル]アミノ}-3-メチルペンタノエート(化合物H2)
THF(10mL、20V)中のN-Bocイソロイシン(化合物H1;0.56g、3.04mmol)の撹拌している溶液に、DMAP(0.044g、0.36mmol)、次いでDCC(0.62g、3.04mmol)を0~5℃で加え、20分間撹拌した。反応混合物に化合物2(0.5g、1.21mmol)を0~5℃で加え、反応混合物を周囲温度(25~30℃)で16時間撹拌した。反応混合物をろ過し、ろ液を濃縮し、逆相カラムクロマトグラフィーで精製して、化合物H2を白色固体として得た(0.4g、収率52%)。
【0178】
(工程2)1-{[5-(4-クロロベンズアミド)-2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾリジン-4-イル]メトキシ}-3-メチル-1-オキソペンタン-2-アミニウム トリフルオロアセテート(化合物12)
ジクロロメタン(3.0mL)中の化合物H2(0.4g、0.64mmol)の撹拌している溶液に、0~5℃でトリフルオロ酢酸(1.2mL、3.0vol)を加えた。反応混合物を周囲温度(25~30℃)で2時間撹拌した。反応混合物を濃縮してジクロロメタンを除去した。得られた残渣をジエチルエーテルで粉末にし、化合物12を白色固体として得た(0.22g、収率53%)。
1H NMR (400 MHz, DMSO) δ (ppm): 0.67 (t, 3H), 0.84 (d, 2H), 1.15 (m, 1H), 1.33 (m, 1H), 1.81 (br, 1H), 4.10 (s, 1h), 4.86 (s, 2H), 6.03 (d, 1H), 6.20 (d, 1H), 7.45 (dd, 4H), 7.64 (d, 1H), 8.17(d, 2H)
LCMS: 523.3 [M+H]
HPLC:10.38分において、純度98.0%
【0179】
[実施例11][5-(4-クロロベンズアミド)-2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾリジン-4-イル]メチル 2-(ジメチルアミノ)-3-フェニルプロパノエート(化合物13)の調製
【化52】
【0180】
(工程1)2-(ジメチルアミノ)-3-フェニルプロパン酸(化合物I2)
メタノール(20mL)中のPhe-Ala-OH(化合物I1;1.0g、6.05mmol)の溶液に、37%ホルムアルデヒド(1.96mL、24.21mmol)を加え、次いでPd/C(0.1g、10%w/w)を加え、得られた混合物をparr装置(5kg H2圧力)で16時間水素添加した。反応終了後、反応混合物をCelite(登録商標)でろ過し、減圧下で濃縮した。残渣をエーテルで粉末にし、化合物I2を白色固体として得た(1.0g、収率86%)。
【0181】
(工程2)[5-(4-クロロベンズアミド)-2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾリジン-4-イル]メチル 2-(ジメチルアミノ)-3-フェニルプロパノエート(化合物13)
THF(10mL、20V)中の化合物I2(0.47g、2.43mmol)の撹拌している溶液に、DMAP(0.044g、0.36mmol)、次いでDCC(0.62g、3.04mmol)を0~5℃で加え、20分間撹拌した。反応混合物に化合物2(0.5g、1.21mmol)を0~5℃で加え、反応混合物を周囲温度(25~30℃)で16時間撹拌した。反応混合物をろ過し、ろ液を濃縮し、逆相カラムクロマトグラフィーで精製して、化合物13を白色固体として得た(0.22g、収率30%)。
1H NMR (400 MHz, DMSO) δ (ppm): 2.49 (s, 6H), 2.92 (m, 2h), 3.51 (t, 1H), 4.89 (s, 2h), 5.97 (m, 2H), 7.07 (m, 5H), 7.40 (d, 2H), 7.45 (d, 2H), 7.64 (d, 2H), 8.15 (d, 2H)
LCMS: 586.0 [M+H]
HPLC:11.54分において、純度97.5%
【0182】
[実施例12]1-{[5-(4-クロロベンズアミド)-2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾリジン-4-イル]メトキシ}-1-オキソ-3-フェニルプロパン-2-アミニウム トリフルオロアセテート(化合物14)の調製
【化53】
【0183】
(工程1)2-{[(tert-ブトキシ)カルボニル]アミノ}-3-フェニルプロパン酸(化合物J1)
DCM(10mL)中のPhe-Ala-OH(化合物I1;1.0g、6.05mmol)の溶液に、トリエチルアミン(1.70mL、12.17mmol)を0℃で加え、次いでジ-tert-ブチル ピロカーボネート(2.18mL、9.08mmol)を加え、得られた反応混合物を室温で16時間撹拌した。反応混合物を5%クエン酸溶液でpH4まで慎重に酸性化した。生成物をDCMで抽出し、抽出液を乾燥させ、真空中で蒸発させ、逆相カラムクロマトグラフィーで精製して、化合物J1を無色ワックスとして得た(1.3g、収率81%)。
【0184】
(工程2)[5-(4-クロロベンズアミド)-2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾリジン-4-イル]メチル 2-{[(tert-ブトキシ)カルボニル]アミノ}-3-フェニルプロパノエート(化合物J2)
THF(10mL、20V)中の化合物J1(0.64g、2.4mmol)の撹拌している溶液に、DMAP(0.044g、0.36mmol)、次いでDCC(0.62g、3.04mmol)を0~5℃で加え、20分間撹拌した。反応混合物に化合物2(0.5g、1.21mmol)を0~5℃で加え、反応混合物を周囲温度(25~30℃)で16時間撹拌した。反応混合物をろ過し、ろ液を濃縮し、逆相カラムクロマトグラフィーで精製して、化合物J2を白色固体として得た(0.3g、収率37%)。
【0185】
(工程3)1-{[5-(4-クロロベンズアミド)-2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾリジン-4-イル]メトキシ}-1-オキソ-3-フェニルプロパン-2-アミニウム トリフルオロアセテート(化合物14)
ジクロロメタン(3.0mL)中の化合物J2(0.3g、0.45mmol)の撹拌している溶液に、0~5℃でトリフルオロ酢酸(0.9mL、3.0vol)を加えた。反応混合物を周囲温度(25~30℃)で2時間撹拌した。反応混合物を濃縮してジクロロメタンを除去した。得られた残渣をジエチルエーテルで粉末にし、化合物14を白色固体として得た(0.2g、収率66%)。
1H NMR (400 MHz, DMSO) δ (ppm): 2.98 (m, 1H), 3.14 (m, 1H), 4.44 (m, 1H), 4.85 (s, 2h), 5.877 (s, 1H), 6.20 (d, 1H), 7.07 (m, 5H), 7.41 (d, 2H), 7.47 (d, 2H), 7.64 (d, 2H), 8.16 (d, 2H)
LCMS: 558.0 [M+H]
HPLC:10.47分において、純度98.6%
【0186】
[実施例13]1-{[5-(4-クロロベンズアミド)-2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾリジン-4-イル]メトキシ}-4-メチル-1-オキソペンタン-2-アミニウム トリフルオロアセテート(化合物15)の調製
【化54】
【0187】
(工程1)[5-(4-クロロベンズアミド)-2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾリジン-4-イル]メチル 2-{[(tert-ブトキシ)カルボニル]アミノ}-4-メチルペンタノエート(化合物K2)
THF(10mL、20V)中の2-{[(tert-ブトキシ)カルボニル]アミノ}-4-メチルペンタン酸(化合物K1;0.56g、2.43mmol)の撹拌している溶液に、DMAP(0.044g、0.36mmol)、次いでDCC(0.62g、3.04mmol)を0~5℃で加え、20分間撹拌した。反応混合物に化合物2(0.5g、1.21mmol)を0~5℃で加え、反応混合物を周囲温度(25~30℃)で16時間撹拌した。反応混合物をろ過し、ろ液を濃縮し、逆相カラムクロマトグラフィーで精製して、化合物K2を白色固体として得た(0.4g、収率75%)。
【0188】
(工程2)1-{[5-(4-クロロベンズアミド)-2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾリジン-4-イル]メトキシ}-4-メチル-1-オキソペンタン-2-アミニウム トリフルオロアセテート(化合物15)
ジクロロメタン(3.0mL)中の化合物K2(0.35g、0.56mmol)の撹拌している溶液に、0~5℃でトリフルオロ酢酸(1.05mL、3.0vol)を加えた。反応混合物を周囲温度(25~30℃)で2時間撹拌した。反応混合物を濃縮してジクロロメタンを除去した。得られた残渣をジエチルエーテルで粉末にし、化合物15を白色固体として得た(0.27g、収率93%)。
1H NMR (400 MHz, DMSO) δ (ppm): 2.98 (m, 1H), 3.14 (m, 1H), 4.44 (m, 1H), 4.85 (s, 2h), 5.877 (s, 1H), 6.20 (d, 1H), 7.07 (m, 5H), 7.41 (d, 2H), 7.47 (d, 2H), 7.64 (d, 2H), 8.16 (d, 2H)
LCMS: 523.4 [M+H]
HPLC:10.56分において、純度98.0%
【0189】
[実施例14]1-{[5-(4-クロロベンズアミド)-2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾリジン-4-イル]メトキシ}-3-ヒドロキシ-1-オキソプロパン-2-アミニウム トリフルオロアセテート(化合物16)の調製
【化55】
【0190】
(工程1)2-{[(tert-ブトキシ)カルボニル]アミノ}-3-[(tert-ブチルジメチルシリル)オキシ]プロパン酸(化合物L2)
DCM(10mL)中のBoc-Ser-OH(化合物L1;1.0g、4.87mmol)の溶液に、0℃でイミダゾール(0.53mg、7.79mmol)を加え、次いでTBDMS-Cl(1.10g、7.30mmol)を加え、得られた反応混合物を室温で16時間撹拌した。生成物をDCMで抽出し、抽出物を乾燥させ、真空中で蒸発させ、逆相カラムクロマトグラフィーで精製して、化合物L2を無色ワックスとして得た(0.7g、収率46%)。
【0191】
(工程2)[5-(4-クロロベンズアミド)-2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾリジン-4-イル]メチル 2-{[(tert-ブトキシ)カルボニル]アミノ}-3-[(tert-ブチルジメチルシリル)オキシ]プロパノエート(化合物L3)
THF(10mL、20V)中の化合物L2(0.77g、2.43mmol)の撹拌している溶液に、DMAP(0.044g、0.36mmol)、次いでDCC(0.62g、3.04mmol)を0~5℃で加え、20分間撹拌した。反応混合物に化合物2(0.5g、1.21mmol)を0~5℃で加え、反応混合物を周囲温度(25~30℃)で16時間撹拌した。反応混合物をろ過し、ろ液を濃縮し、逆相カラムクロマトグラフィーで精製して、化合物L3を白色固体として得た(0.4g、収率46%)。
【0192】
(工程3)1-{[5-(4-クロロベンズアミド)-2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾリジン-4-イル]メトキシ}-3-ヒドロキシ-1-オキソプロパン-2-アミニウム トリフルオロアセテート(化合物16)
ジクロロメタン(4.0mL)中の化合物L3(0.4g、0.56mmol)の撹拌している溶液に、0~5℃でトリフルオロ酢酸(1.2mL、3.0vol)を加えた。反応混合物を周囲温度(25~30℃)で2時間撹拌した。反応混合物を濃縮してジクロロメタンを除去した。得られた残渣を逆相カラムクロマトグラフィーで精製し、化合物16を白色固体として得た(0.1g、収率29%)。
1H NMR (400 MHz, DMSO) δ (ppm): 3.80 (m, 2H), 4.27 (m, 1H), 4.85 (s, 2h), 5.60 (t, 1H), 6.12 (q, 2H), 7.07 (m, 5H), 7.44 (dd, 4H), 7.63 (d, 2H), 8.18 (d, 2H)
LCMS: 497.3 [M+H]
HPLC:8.52分において、純度91.6%
【0193】
[実施例15]3-カルボキシ-1-{[5-(4-クロロベンズアミド)-2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾリジン-4-イル]メトキシ}-1-オキソプロパン-2-アミニウム トリフルオロアセテート(化合物17)の調製
【化56】
【0194】
(工程1)4-(tert-ブトキシ)-2-{[(tert-ブトキシ)カルボニル]アミノ}-4-オキソブタン酸(化合物M2)
ジオキサン:水(7:3、20mL)中のL-アスパラギン酸4-tert-ブチルエステル(化合物M1;2.0g、10.5mmol)の溶液に、NaOH(0.84g、21.1mmol)、次いでジ-tert-ブチル ピロカーボネート(3.64mL、15.85mmol)を加え、得られた反応混合物を室温で16時間撹拌した。反応混合物を1.5N HCl酸溶液でpH3まで慎重に酸性化した。生成物を酢酸エチルで抽出し、抽出物を真空中で乾燥および蒸発させて、化合物M2を白色固体として得た(2.5g、収率81%)。
【0195】
(工程2)tert-ブチル 1-[5-(4-クロロベンズアミド)-2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾリジン-4-イル]メチル 2-{[(tert-ブトキシ)カルボニル]アミノ}ブタンジオエート(化合物M3)
THF(18mL、20V)中の化合物M2(0.88g、3.04mmol)の撹拌している溶液に、DMAP(0.044g、0.36mmol)、次いでDCC(0.62g、3.04mmol)を0~5℃で加え、20分間撹拌した。反応混合物に化合物2(0.5g、1.21mmol)を0~5℃で加え、反応混合物を周囲温度(25~30℃)で16時間撹拌した。反応混合物をろ過し、ろ液を濃縮し、逆相カラムクロマトグラフィーで精製して、化合物M3を白色固体として得た(0.45g、収率54%)。
【0196】
(工程3)3-カルボキシ-1-{[5-(4-クロロベンズアミド)-2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾリジン-4-イル]メトキシ}-1-オキソプロパン-2-アミニウム トリフルオロアセテート(化合物17)
ジクロロメタン(4.5mL)中の化合物M3(0.45g、0.66mmol)の撹拌している溶液に、0~5℃でトリフルオロ酢酸(0.9mL、2.0vol)を加えた。反応混合物を周囲温度(25~30℃)で6時間撹拌した。反応混合物を濃縮してジクロロメタンを除去した。得られた残渣を逆相カラムクロマトグラフィーで精製し、化合物17を白色固体として得た(0.12g、収率28%)。
1H NMR (400 MHz, DMSO) δ (ppm): 2.85 (m, 2H), 4.41 (m, 1H), 4.84 (s, 2h), 6.12 (dd, 2H), 6.12 (q, 2H), 7.45 (dd, 4H), 7.63 (d, 2H), 8.18 (d, 2H)
LCMS: 525.3 [M+H]
HPLC:8.29分において、純度94.2%
【0197】
[実施例16][5-(4-クロロベンズアミド)-2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾリジン-4-イル]メチル 2-[(2S)-2-アザニウミル-3-フェニルプロパンアミド]アセテート クロリド(化合物18)の調製
【化57】
【0198】
(工程2)2-[(2S)-2-{[(tert-ブトキシ)カルボニル]アミノ}-3-フェニルプロパンアミド]酢酸メチル(N2)の調製
DCM(52mL、20V)中の(2S)-2-{[(tert-ブトキシ)カルボニル]アミノ}-3-フェニルプロパン酸(上記のように合成したJ1;2.6g、9.8mmol)の撹拌している溶液に、0~5℃でDCC(2.42g、11.76mmol)、DMAP(119mg、0.98mmol)およびトリエチルアミン(2.71mL、19.6mmol)を加え、20分間撹拌した。上記の反応混合物に2-アミノ酢酸メチル塩酸塩(化合物N1)(1.6g、12.74mmol)を0~5℃で加え、反応混合物を周囲温度(25~30℃)で16時間撹拌した。反応生成物をろ過して副生成物(尿素)を除去し、ろ液を濃縮し、シリカゲル(60~120メッシュ)カラムクロマトグラフィーで精製して、化合物N2をオフホワイトの固体として得た(2.73g、収率83%)。
【0199】
(工程3)2-[(2S)-2-{[(tert-ブトキシ)カルボニル]アミノ}-3-フェニルプロパンアミド]酢酸(化合物N3)の調製
メタノール(30mL、10V)中の化合物N2(3.0g、8.91mmol)の撹拌している溶液に、0~5℃で2M NaOH溶液(12mL、4V)を加え、反応混合物を周囲温度(25~30℃)で16時間撹拌した。反応生成物を濃縮して揮発物を除去し、水(50mL)で希釈し、MTBE(100mL)で洗浄した。水層を1.5N HCl溶液でpH4~5に慎重に酸性化し、酢酸エチル(200mL×2)で抽出した。有機層を合わせ、Na2SO4上で乾燥させ、減圧下で濃縮した。得られた残渣をヘキサン(50mL×2)で洗浄し、化合物N3を白色固体として得た(1.6g、収率56%)。
【0200】
(工程4)[5-(4-クロロベンズアミド)-2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾリジン-4-イル]メチル 2-[(2S)-2-{[(tert-ブトキシ)カルボニル]アミノ}-3-フェニルプロパンアミド]アセテート(化合物N4)の調製
THF(32mL、20V)中の化合物N3(1.6g、4.96mmol)の撹拌している溶液に、DCC(1.53g、7.45mmol)、次いでDMAP(0.3g、2.48mmol)を0~5℃で加え、20分間撹拌した。得られた反応混合物に4-クロロ-N-{2-[(4-クロロフェニル)メチル]-4-(ヒドロキシメチル)-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾリジン-5-イリデン}ベンズアミド 6(1.42g、3.47mmol)を0~5℃で加え、周囲温度(25~30℃)で16時間撹拌した。反応生成物をろ過し、ろ液を濃縮し、逆相カラムクロマトグラフィーで精製して、化合物N4を白色固体として得た(354mg、収率10%)。
【0201】
(工程5)[5-(4-クロロベンズアミド)-2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾリジン-4-イル]メチル 2-[(2S)-2-アザニウミル-3-フェニルプロパンアミド]アセテート クロリド(化合物18)の調製
THF(1.0mL、5vol)中の化合物N4(0.2g、0.279mmol)の撹拌している溶液に、ジエチルエーテル中(4.0mL、20vol)の塩酸を0~5℃で加え、反応混合物を同じ温度で20分間撹拌した。反応物を濃縮して揮発物を除去し、得られた残渣をジエチルエーテルで粉末にして、化合物18を白色固体として得た(150mg、収率83%)。
1H NMR (300 MHz, DMSO) δ (ppm): 2.94 (m, 1H), 3.15 (m, 1H), 4.05 (m, 3h), 4.84 (s, 2H), 6.07 (s, 2H), 7.27 (m, 5H), 7.42 (q, 4H), 7.62 (d, 2H), 8.17 (m, 2H), 8,23 (br, 2h, NH), ), 9.14 (t, 1H, NH)
LCMS: 614.31 [M+H]
HPLC:11.82分において、純度97.35%
【0202】
[実施例17][5-(4-クロロベンズアミド)-2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾリジン-4-イル]メチル (2S)-2-[(2S)-2-アザニウミル-3-メチルブタンアミド]-3-メチルブタノエート クロリド(化合物19)の調製
【化58】
【0203】
(工程1)[5-(4-クロロベンズアミド)-2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾリジン-4-イル]メチル (2S)-2-{[(tert-ブトキシ)カルボニル]アミノ}-3-メチルブタノエート(化合物O2)の調製
THF(60mL、20V)中の(2S)-2-{[(tert-ブトキシ)カルボニル]アミノ}-3-メチルブタノン酸(O1;3.0g、13.8mmol)の撹拌している溶液に、DMAP(0.84g、6.91mmol)、次いでDCC(4.27g、20.73mmol)を0~5℃で加え、20分間撹拌した。上記の反応混合物に化合物2(2.83g、6.91mmol)を0~5℃で加え、得られた反応混合物を周囲温度(25~30℃)で16時間撹拌した。反応生成物をジクロロメタン(200mL)で希釈し、水(2×100mL)で洗浄し、減圧下で濃縮して化合物O2を白色固体として得た(6.0g、77%)。
【0204】
注:粗化合物O2は精製することなく次の工程に進めた。
【0205】
(工程2)(2S)-1-{[5-(4-クロロベンズアミド)-2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾリジン-4-イル]メトキシ}-3-メチル-1-オキソブタン-2-アミニウム トリフルオロアセテート(化合物O3)の調製
ジクロロメタン(25mL)中の[5-(4-クロロベンズアミド)-2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾリジン-4-イル]メチル (2S)-2-{[(tert-ブトキシ)カルボニル]アミノ}-3-メチルブタノエート(化合物O2;6.0g、9.85mmol)の撹拌している溶液に、0~5℃でトリフルオロ酢酸(24mL、4.0vol)を加え、周囲温度(25~30℃)で4時間撹拌した。反応混合物を濃縮して揮発物を除去し、得られた残渣をエーテルで粉末にし、真空下でろ過して、化合物O3を白色固体として得た(1.5g、収率24%)。
【0206】
(工程3)[5-(4-クロロベンズアミド)-2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾリジン-4-イル]メチル (2S)-2-(2-{[(tert-ブトキシ)カルボニル]アミノ}-3-メチルブタンアミド)-3-メチルブタノエート(化合物O4)の調製
THF(30mL、20V)中の(2S)-2-{[(tert-ブトキシ)カルボニル]アミノ}-3-メチルブタン酸(化合物O1;1.30g、6.02mmol)の撹拌している溶液に、DMAP(0.088g、0.72mmol)、次いでDCC(1.39g、6.75mmol)を0~5℃で加え、20分間撹拌した。上記の反応混合物に(2S)-1-{[5-(4-クロロベンズアミド)-2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾリジン-4-イル]メトキシ}-3-メチル-1-オキソブタン-2-アミニウム トリフルオロアセテート(化合物O3;1.5g、2.41mmol)を0~5℃で加え、周囲温度(25~30℃)で16時間撹拌した。反応混合物をろ過し、ろ液を濃縮し、逆相カラムクロマトグラフィーで精製して、化合物O4を白色固体として得た(0.65g、収率37%)。
【0207】
(工程4)[5-(4-クロロベンズアミド)-2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾリジン-4-イル]メチル (2S)-2-[(2S)-2-アザニウミル-3-メチルブタンアミド]-3-メチルブタノエート トリフルオロアセテート(化合物O5)の調製
ジクロロメタン(25mL)中の[5-(4-クロロベンズアミド)-2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾリジン-4-イル]メチル (2S)-2-(2-{[(tert-ブトキシ)カルボニル]アミノ}-3-メチルブタンアミド)-3-メチルブタノエート(化合物O4;0.66g、0.93mmol)の撹拌している溶液に、0~5℃でトリフルオロ酢酸(1.98mL、3.0vol)を加え、反応混合物を周囲温度(25~30℃)で4時間撹拌した。反応混合物を濃縮して揮発物を除去し、得られた残渣をエーテルで粉末にし、真空下でろ過して、化合物O5を白色固体として得た(0.45g、収率67%)。
【0208】
(工程5)[5-(4-クロロベンズアミド)-2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾリジン-4-イル]メチル (2S)-2-[(2S)-2-アザニウミル-3-メチルブタンアミド]-3-メチルブタノエート クロリド(化合物19)の調製
THF(2.25mL、5.0vol)中の[5-(4-クロロベンズアミド)-2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾリジン-4-イル]メチル (2S)-2-[(2S)-2-アザニウミル-3-メチルブタンアミド]-3-メチルブタノエート トリフルオロアセテート(化合物O5;0.45g、0.62mmol)の撹拌している溶液に、ジエチルエーテル(9.0mL、20vol)中のHClを0~5℃で加え、反応混合物を同じ温度で20分間撹拌した。反応物を濃縮して揮発物を除去し、得られた残渣をジエチルエーテルで粉末にして化合物19を白色固体として得た(240mg、収率60%)。
1H NMR (300 MHz, DMSO) δ (ppm): 0.8-0.9 (bm, 12H, -CH3), 2,07 (m, 2H), 3.7 (dd, 1H), 4.26 (m, 1H), 4.84 (s, 2h), 5.97 (dd, 1H), 6.11 (q, 1H), 7.43 (dd, 4H), 7.63 (d, 2H), 8.15 (m, 2K), 8.19 (m, 3H, NH3+), 8.6 (m, 1H, NH)
LCMS: 608.53 [M+H]
HPLC:11.125分において純度79.5%および11.97分において純度17.3%(回転異性体)
【0209】
[実施例18][5-(4-クロロベンズアミド)-2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾリジン-4-イル]メチル (2R)-2-[(2R)-2-アザニウミル-3-メチルブタンアミド]-3-メチルブタノエート クロリド(化合物20)の調製
【化59】
【0210】
使用した方法は、実施例17の化合物19の調製について記載した方法に類似しており、(2R)-2-{[(tert-ブトキシ)カルボニル]アミノ}-3-メチルブタン酸から出発して、化合物20を白色固体として得た(300mg、収率88%)。
1H NMR (300 MHz, DMSO) δ (ppm): 0.8-0.9 (bm, 12H, -CH3), 2,07 (m, 2H), 3.69 (dd, 1H), 4.26 (m, 1H), 4.84 (s, 2h), 5.97 (dd, 1H), 6.11 (q, 1H), 7.43 (dd, 4H), 7.63 (d, 2H), 8.15 (m, 2K), 8.19 (m, 3H, NH3+), 8.6 (m, 1H, NH)
LCMS: 608.53 [M+H]
HPLC:13.43分において純度75.93%および14.5分において純度22.45%(回転異性体)
【0211】
[実施例19][5-(4-クロロベンズアミド)-2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾリジン-4-イル]メチル 2-[(2S)-2,6-ジアザニウミルヘキサンアミド]アセテート ジクロリド(化合物21)の調製
【化60】
【0212】
(工程1)2-[(2S)-2,6-ビス({[(tert-ブトキシ)カルボニル]アミノ})ヘキサンアミド]酢酸メチル(化合物P2)の調製
DCM(52mL、20V)中の(2S)-2,6-ビス({[(tert-ブトキシ)カルボニル]アミノ})ヘキサン酸(化合物B1;2.6g、7.51mmol)の撹拌している溶液に、0~5℃でDCC(3.86g、18.78mmol)、DMAP(275mg、2.25mmol)およびトリエチルアミン(2.07mL、15.02mmol)を加え、20分間撹拌した。上記の反応混合物に2-アミノ酢酸メチル塩酸塩P1(939mg、7.51mmol)を0~5℃で加え、さらに周囲温度(25~30℃)で16時間撹拌した。反応生成物をろ過して副生成物(尿素)を除去し、ろ液を減圧下濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、化合物P2を無色液体として得た(1.81g、収率58%)。
【0213】
(工程2)2-[(2S)-2,6-ビス({[(tert-ブトキシ)カルボニル]アミノ})ヘキサンアミド]酢酸(化合物P3)の調製
メタノール(30mL、10V)中の2-[(2S)-2,6-ビス({[(tert-ブトキシ)カルボニル]アミノ})ヘキサンアミド]酢酸メチル(化合物P2;3.0g、7.19mmol)の撹拌している溶液に、0~5℃で2M NaOH溶液(12mL、4V)を加えた。得られた反応混合物を周囲温度(25~30℃)で16時間撹拌した。反応生成物を濃縮してメタノールを除去し、水(50mL)で希釈し、MTBE(50mL×2)で洗浄した。水層を1.5N HCl水溶液でpH4~5に慎重に酸性化し、酢酸エチル(100mL×2)で抽出した。有機層を合わせ、Na2SO4上で乾燥させ、減圧下で濃縮した。残渣をヘキサンで洗浄し、化合物P3を無色液体として得た(2.75g、収率95%)。
【0214】
(工程3)[5-(4-クロロベンズアミド)-2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾリジン-4-イル]メチル 2-[(2S)-2,6-ビス({[(tert-ブトキシ)カルボニル]アミノ})ヘキサンアミド]アセテート(化合物P4)の調製
THF(35mL、20V)中の(2-[(2S)-2,6-ビス({[(tert-ブトキシ)カルボニル]アミノ})ヘキサンアミド]酢酸(化合物P3;1.75g、4.34mmol)の撹拌している溶液に、DMAP(0.26g、2.17mmol)、次いでEDC.HCl(1.24g、6.51mmol)を0~5℃で加え、20分間撹拌した。上記の反応物に化合物2(0.89g、2.17mmol)を0~5℃で加え、周囲温度(25~30℃)で16時間撹拌した。反応生成物をジクロロメタン(200mL)で希釈し、水(2×100mL)で洗浄し、減圧下で濃縮した。溶媒を蒸発させて得られた残渣を逆相カラムクロマトグラフィーで精製し、化合物P4を白色固体として得た(0.3g、収率12%)。
【0215】
(工程4)[5-(4-クロロベンズアミド)-2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾリジン-4-イル]メチル 2-[(2S)-2,6-ジアザニウミルヘキサンアミド]アセテート ジ-トリフルオロアセテート(化合物P5)の調製
ジクロロメタン(4.5mL、15V)中の[5-(4-クロロベンズアミド)-2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾリジン-4-イル]メチル 2-[(2S)-2,6-ビス({[(tert-ブトキシ)カルボニル]アミノ})ヘキサンアミド]アセテート(化合物P4;0.3g、0.37mmol)の撹拌している溶液に、0~5℃でトリフルオロ酢酸(1.2mL、4vol)を加え、周囲温度(25~30℃)で4時間撹拌した。反応混合物を濃縮して揮発物を除去し、得られた残渣をエーテルで洗浄し、ろ過し、真空下で乾燥させて、化合物P5を白色固体として得た(0.25g、収率96%)。
【0216】
(工程5)[5-(4-クロロベンズアミド)-2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾリジン-4-イル]メチル 2-[(2S)-2,6-ジアザニウミルヘキサンアミド]アセテート ジクロリド(化合物21)の調製
THF(0.5mL、5.0vol)中の[5-(4-クロロベンズアミド)-2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾリジン-4-イル]メチル 2-[(2S)-2,6-ジアザニウミルヘキサンアミド]アセテート ジ-トリフルオロアセテート(化合物P5;0.11g、0.15mmol)の撹拌している溶液に、ジエチルエーテル(2.2mL、20vol)中のHClを0~5℃で加え、反応混合物を同じ温度で20分間撹拌した。反応物を濃縮して揮発物を除去し、得られた残渣をジエチルエーテルで粉末にして、化合物21を白色固体として得た(90mg、収率90%)。
1H NMR (300 MHz, DMSO) δ (ppm): 1,44 (br, 2H), 1.60 (br, 2H), 1,75 (br, 2H), 2.78 (br, 2H), 3.87 (br, 1H), 4.04 (m, 2h), 4.86 (s, 2H), 6.05 (s, 2H), 7.45 (m, 4H), 7.65 (d, 2H), 8.00 (br, 3H, NH3+), 8.18 (d, 2H). 8.35 (br, 3H, NH3+), 9.14 (br, 1H, NH)
LCMS: 595.49 [M+H]
HPLC:8.68分において、純度94.09%
【0217】
[実施例20](1S)-2-カルボキシ-1-[(2-{[5-(4-クロロベンズアミド)-2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾリジン-4-イル]メトキシ}-2-オキソエチル)カルバモイル]エタン-1-アミニウム クロリド(化合物22)の調製
【化61】
【0218】
(工程1)2-{[(tert-ブトキシ)カルボニル]アミノ}酢酸ベンジル(化合物Q2)の調製
DCM(40mL、20V)中の2-{[(tert-ブトキシ)カルボニル]アミノ}酢酸(化合物E1;2.0g、11.42mmol)の撹拌している溶液に、0~5℃でDMAP(130mg、1.14mmol)、次いでEDC.HCl(2.65g、17.12mmol)を加え、得られた混合物を5分間撹拌した。上記の反応混合物にフェニルメタノール(Q1;1.35g、12.55mmol)を0~5℃で加え、周囲温度(25~30℃)で16時間撹拌した。
【0219】
反応生成物をジクロロメタン(200mL)で希釈し、水(2×100mL)で洗浄し、減圧下で濃縮した。溶媒を蒸発させて得られた残渣をシリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィーで精製し、化合物Q2を白色固体として得た(2g、収率66%)。
【0220】
(工程2)2-アミノ酢酸ベンジル(化合物Q3)の調製
ジクロロメタン(30mL、15V)中の2-{[(tert-ブトキシ)カルボニル]アミノ}酢酸ベンジル(化合物Q2;2g、7.54mmol)の撹拌している溶液に、0~5℃でトリフルオロ酢酸(4mL、2V)を加えた。反応混合物を周囲温度(25~30℃)で3時間撹拌した。反応物を濃縮して揮発物を除去し、得られた残渣をジエチルエーテルで粉末にして、化合物Q3を白色固体として得た(1.8g、収率85%)。
【0221】
(工程3)(3S)-3-{[2-(ベンジルオキシ)-2-オキソエチル]カルバモイル}-3-{[(tert-ブトキシ)カルボニル]アミノ}プロパン酸tert-ブチル(化合物Q5)の調製
DCM(20mL、20V)中の(2S)-4-(tert-ブトキシ)-2-{[(tert-ブトキシ)カルボニル]アミノ}-4-オキソブタン酸(化合物Q4;4.37g、15.1mmol)の撹拌している溶液に、0~5℃でDMAP(140mg、1.21mmol)、次いでEDC.HCl(3.23g、16.95mmol)を加え、5分間撹拌した。上記の反応混合物に、2-アミノ酢酸ベンジル(化合物Q3;1.0g、6.05mmol)およびDIPEA(2.96mL、18.16mmol)を0~5℃で加え、反応混合物を周囲温度(25~30℃)で16時間撹拌した。反応生成物をジクロロメタン(400mL)で希釈し、水(2×200mL)で洗浄し、減圧下で濃縮した。溶媒を蒸発させて得られた残渣をシリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィーで精製し、化合物Q5を淡黄色ワックスとして得た(1g、収率64%)。
【0222】
(工程4)2-[(2S)-4-(tert-ブトキシ)-2-{[(tert-ブトキシ)カルボニル]アミノ}-4-オキソブタンアミド]酢酸(化合物Q6)の調製
酢酸エチル(30mL、30V)中の(3S)-3-{[2-(ベンジルオキシ)-2-オキソエチル]カルバモイル}-3-{[(tert-ブトキシ)カルボニル]アミノ}プロパン酸tert-ブチル(化合物Q5;1.0g、2.29mmol)の溶液に、Pd/C(0.1g、10%w/w)を加え、得られた塊をparr装置(5kg H2圧力)で3時間、水素添加した。反応生成物をceliteパッドでろ過し、減圧下で濃縮した。得られた残渣をジエチルエーテルで粉末にし、化合物Q6を白色固体として得た(0.67g、収率84%)。
【0223】
(工程5)(3S)-3-{[(tert-ブトキシ)カルボニル]アミノ}-3-[(2-{[5-(4-クロロベンズアミド)-2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾリジン-4-イル]メトキシ}-2-オキソエチル)カルバモイル]プロパン酸tert-ブチル(化合物Q7)の調製
THF(7mL、20V)中の2-[(2S)-4-(tert-ブトキシ)-2-{[(tert-ブトキシ)カルボニル]アミノ}-4-オキソブタンアミド]酢酸(化合物Q6;0.64g、1.87mmol)の溶液に、DMAP(0.052g、0.42mmol)、次いでDCC(0.43g、2.13mmol)を0~5℃で加え、20分間撹拌した。上記の反応混合物に化合物2(0.35g、0.85mmol)を0~5℃で加え、反応混合物を周囲温度(25~30℃)で16時間撹拌した。反応混合物をろ過し、ろ液を濃縮し、逆相カラムクロマトグラフィーで精製して、化合物Q7を白色固体として得た(0.5g、収率79%)。
【0224】
(工程6)(1S)-2-カルボキシ-1-[(2-{[5-(4-クロロベンズアミド)-2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾリジン-4-イル]メトキシ}-2-オキソエチル)カルバモイル]エタン-1-アミニウム トリフルオロアセテート(化合物Q8)の調製
ジクロロメタン(7.5mL)中の(3S)-3-{[(tert-ブトキシ)カルボニル]アミノ}-3-[(2-{[5-(4-クロロベンズアミド)-2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾリジン-4-イル]メトキシ}-2-オキソエチル)カルバモイル]プロパン酸tert-ブチル(化合物Q7;0.5g、0.67mmol)の撹拌している溶液に、0~5℃でトリフルオロ酢酸(2mL、4.0vol)を加え、周囲温度(25~30℃)で4時間撹拌した。反応生成物を濃縮して揮発物を除去し、得られた残渣をジエチルエーテルで粉末にして、化合物Q8を白色固体として得た(0.25g、収率53%)。
【0225】
(工程7)(1S)-2-カルボキシ-1-[(2-{[5-(4-クロロベンズアミド)-2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾリジン-4-イル]メトキシ}-2-オキソエチル)カルバモイル]エタン-1-アミニウム クロリド(化合物22)の調製
THF(1.25mL、5.0vol)中の(1S)-2-カルボキシ-1-[(2-{[5-(4-クロロベンズアミド)-2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾリジン-4-イル]メトキシ}-2-オキソエチル)カルバモイル]エタン-1-アミニウム トリフルオロアセテート(化合物Q8;0.25g、0.35mmol)の撹拌している溶液に、ジエチルエーテル(5.0mL、20vol)中のHClを0~5℃で加え、反応混合物を同じ温度で20分間撹拌した。反応物を濃縮して揮発物を除去し、得られた残渣をジエチルエーテルで粉末にして化合物22を白色固体として得た(200mg、収率90%)。
1H NMR (400 MHz, DMSO) δ (ppm): 2.85 (m, 2H), 4.07 (m, 3H), 4.83 (s, 2h), 6.04 (s, 2H), 7.44 (m, 4H), 7.65 (d, 2H), 7.63 (d, 2H), 8.14 (d, 2H), 8.25 (br, 3H, NH3+), 9.01 (s, 1H), 12-14 (br, 1H, -COOH)
LCMS: 582.3 M+H]
HPLC:11.43分において、純度95.26%
【0226】
[実施例21][アザニウミル({[(4S)-4-アザニウミル-4-[(2-{[5-(4-クロロベンズアミド)-2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾリジン-4-イル]メトキシ}-2-オキソエチル)カルバモイル]ブチル]アミノ})メチリデン]アザニウム トリクロリド(化合物23)の調製
【化62】
【0227】
(工程1)(2S)-2-{[(tert-ブトキシ)カルボニル]アミノ}-5-{[(1E)-{[(tert-ブトキシ)カルボニル]アミノ}({[(tert-ブトキシ)カルボニル]イミノ})メチル]アミノ}ペンタン酸(化合物R2)の調製
t-ブタノール(158mL、18V)および水(158mL、18V)中の(2S)-2-アミノ-5-カルバムイミドアミドペンタン酸(化合物R1;8.8g、50.51mmol)の溶液に、NaOH(7.07g、176.80mmol)およびBoc2O(46.42mL、202.06mmol)を0℃で加えた。反応物を周囲温度(25~30℃)で48時間撹拌した。反応生成物から揮発物を蒸発させ、飽和クエン酸溶液でpH3~4に慎重に酸性化した。生成物を酢酸エチルで抽出し、抽出物をNa2SO4上で乾燥し、ろ過し、真空中で蒸発させ、逆相カラムクロマトグラフィーで精製して、化合物R2を白色固体として得た(3.7g、収率15%)。
【0228】
(工程2)2-[(2S)-2-{[(tert-ブトキシ)カルボニル]アミノ}-5-{[(1E)-{[(tert-ブトキシ)カルボニル]アミノ}({[(tert-ブトキシ)カルボニル]イミノ})メチル]アミノ}ペンタンアミド]酢酸ベンジル(化合物R3)の調製
THF(8mL、20V)中の(2S)-2-{[(tert-ブトキシ)カルボニル]アミノ}-5-{[(1E)-{[(tert-ブトキシ)カルボニル]アミノ}({[(tert-ブトキシ)カルボニル]イミノ})メチル]アミノ}ペンタン酸(化合物R2;1.33g、2.15mmol)の撹拌している溶液に、0~5℃でDMAP(0.052g、0.43mmol)、次いでEDC.HCl(0.54g、2.86mmol)を加え、20分間撹拌した。上記の反応混合物に、TEA(0.6mL、4.30mmol)中のアミノ酢酸ベンジル(化合物Q3;0.4g、1.43mmol)を0~5℃で加え、反応混合物を周囲温度(25~30℃)で16時間撹拌した。反応生成物を水(100mL)で希釈し、生成物をジクロロメタン(200mL)で抽出し、抽出物を乾燥させ、真空中で蒸発させた。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、化合物R3を白色固体として得た(0.6g、収率67%)。
【0229】
(工程3)2-[(2S)-2-{[(tert-ブトキシ)カルボニル]アミノ}-5-{[(1E)-{[(tert-ブトキシ)カルボニル]アミノ}({[(tert-ブトキシ)カルボニル]イミノ})メチル]アミノ}ペンタンアミド]酢酸(化合物R4)の調製
酢酸エチル(6mL、10V)中の2-[(2S)-2-{[(tert-ブトキシ)カルボニル]アミノ}-5-{[(1E)-{[(tert-ブトキシ)カルボニル]アミノ}({[(tert-ブトキシ)カルボニル]イミノ})メチル]アミノ}ペンタンアミド]酢酸ベンジル(化合物R3;0.6g、0.96mmol)の溶液に、Pd/C(0.06g、10%w/w)を加え、parr装置(5kg H2圧力)で3時間、水素添加した。反応生成物をcelite床でろ過し、ろ液を減圧下で濃縮した。残渣をエーテルで洗浄し、化合物R4をオフホワイトの固体として得た(0.43g、収率84%)。
【0230】
(工程4)[5-(4-クロロベンズアミド)-2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾリジン-4-イル]メチル 2-[(2S)-2-{[(tert-ブトキシ)カルボニル]アミノ}-5-{[(1E)-{[(tert-ブトキシ)カルボニル]アミノ}({[(tert-ブトキシ)カルボニル]イミノ})メチル]アミノ}ペンタンアミド]アセテート(化合物R5)の調製
THF(3.2mL、20V)中の2-[(2S)-2-{[(tert-ブトキシ)カルボニル]アミノ}-5-{[(1E)-{[(tert-ブトキシ)カルボニル]アミノ}({[(tert-ブトキシ)カルボニル]イミノ})メチル]アミノ}ペンタンアミド]酢酸(化合物R4;0.41g、0.77mmol)の撹拌している溶液に、DMAP(0.014g、0.11mmol)、次いでDCC(0.18g、0.89mmol)を0~5℃で加え、20分間撹拌した。上記の反応混合物に化合物2(0.16g、0.38mmol)を0~5℃で加え、さらに周囲温度(25~30℃)で16時間撹拌した。反応混合物をろ過し、ろ液を濃縮し、逆相カラムクロマトグラフィーで精製して、化合物R5を白色固体として得た(0.25g、収率69%)。
【0231】
(工程5)[アザニウミル({[(4S)-4-アザニウミル-4-[(2-{[5-(4-クロロベンズアミド)-2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾリジン-4-イル]メトキシ}-2-オキソエチル)カルバモイル]ブチル]アミノ})メチリデン]アザニウム トリクロリド(化合物23)の調製
THF(1.0mL、5.0vol)中の[5-(4-クロロベンズアミド)-2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾリジン-4-イル]メチル 2-[(2S)-2-{[(tert-ブトキシ)カルボニル]アミノ}-5-{[(1E)-{[(tert-ブトキシ)カルボニル]アミノ}({[(tert-ブトキシ)カルボニル]イミノ})メチル]アミノ}ペンタンアミド]アセテート(化合物R5;0.2g、0.21mmol)の撹拌している溶液に、ジエチルエーテル(4.0mL、20vol)中のHClを0~5℃で加え、反応混合物を同じ温度で4時間撹拌した。反応物を濃縮して揮発物を除去し、得られた残渣をジエチルエーテルで粉末にして、化合物23を白色固体として得た(90mg、収率60%)。
1H NMR (400 MHz, DMSO) δ (ppm):1.45 (br, 3H), 1.78 (br, 4H), 3.14 (m, 2H), 3.88 (m, 1H), 4.05 (m, 2H), 4.84 (s, 2H), 6.04 (s, 2H), 7.45 (q, 5H), 7.65 (dd, 2H), 7.83 (t, 1H), 8.18 (d, 2H), 8.35 (br, 4H), 9.20 (t, 1H)
LCMS: 623.3 [M+H]
HPLC:8.52分において、純度92.07%
【0232】
[実施例22]化合物の安定性
HCl緩衝液(pH:1.20)中の化合物1および化合物4(すなわち、化合物3のクエン酸塩)の5μM溶液を、5mM DMSO原液によって調製した。当該溶液を、サーモミキサーを使用して400rpmで振とうしながら、37℃で120分間インキュベートした。
【0233】
0分、15分、30分、60分、および120分間隔で、十分な量の化合物溶液のアリコートを取り、希釈し、酸性溶液中での化合物1および3の安定性を測定するために分析した。
【0234】
(結果)
安定性実験の結果を以下の表3に示す。
【0235】
その結果、化合物3は酸性溶液(すなわち、pH=1.2)において化合物1よりも高い安定性を有することがわかった。
【0236】
【0237】
[実施例23]AMPKの活性化
(INS-1Eインスリノーマ細胞の培養および化合物処理)
INS-1E細胞は、Steneberg et al., JCI Insight. 2018;3(12):e99114. https://doi.org/10.1172/jci.insight.99114に記載されるように培養し、処理のためにプレーティングするときに10%ウシ胎児血清の代わりに5%ウシ胎児血清を使用した。
【0238】
化合物3をDMSOに10mMで溶解し、-20℃で凍結させた。
【0239】
Steneberg et al., JCI Insight. 2018;3(12):e99114. https://doi.org/10.1172/jci.insight.99114に記載される方法に従って、化合物3の用量を増加させながら4時間、INS-1E細胞を無血清培地中で処理した。
【0240】
[ウェスタンブロット分析]
INS-1E細胞のウェスタンブロット分析は、Steneberg et. al., JCI Insight. 2018;3(12):e99114. https://doi.org/10.1172/jci.insight.99114に記載されるように実施した。細胞溶解物を30ゲージの針に通し、約8回、+4℃で10分間、14000rpmで遠心した。AMPKα、およびリン酸化-T172 AMPKαの定量値は、β-アクチンの定量値に対して正規化した。
【0241】
(結果)
ウェスタンブロット分析の結果を以下の表4に表し、
図1にグラフで示した。
【0242】
その結果、培養INS-1E細胞において、化合物3がリン酸化-T172 AMPKを用量依存的に増加させることが示された。したがって、化合物3はAMPKのアゴニストである。
【0243】
【0244】
[実施例24]Sprague Dawleyラットにおける化合物1および3の単回経口投与薬物動態試験
(化合物1の製剤)
リン酸緩衝液(pH7.5)中の2%w/vメチルセルロース溶液10.0mLを、1gの2mmガラスビーズとともに100mLコニカルフラスコに加えた。溶液をマグネチックスターラーで激しく撹拌した。100mgの化合物1をゆっくりと溶液に加え、当該溶液を約1時間激しく撹拌した。製剤のpHを測定したところ7.49であった。各製剤は動物に投与する前に新たに調製した。製剤中の化合物1の最終濃度は10mg/mLであった。製剤は5mL/kg体重で投与した。
【0245】
(化合物3の製剤)
リン酸緩衝液(pH7.5)中の2%w/vメチルセルロース溶液6mLを、1gの2mmガラスビーズとともに25mLのコニカルフラスコに加えた。溶液をマグネチックスターラーで激しく撹拌した。78mgの化合物3をゆっくりと溶液に加え、溶液を約1時間激しく撹拌した。製剤のpHを測定したところ7.41であった。各製剤は動物に投与する前に新たに調製した。製剤中の化合物3の最終濃度は13mg/mLであり、これは化合物1の10mg/mLに相当する。製剤は5mL/kg体重で投与した。
【0246】
(用量の選択および選択の正当性)
等モル用量の比較のために、化合物1および化合物3についてそれぞれ、50mg/kgおよび65mg/kgb.w.の用量を選択した。
【0247】
(投与)
8~10週齢の健康な成体Sprague Dawley雄ラットを、最低3日間の順化後に実験に使用した。摂食状態の動物に、化合物1または化合物3の製剤を、それぞれ50mg/kgまたは65mg/kg体重の用量で胃管栄養法によって経口投与した。
【0248】
(採血)
穏やかなイソフルラン麻酔下で、キャピラリーチューブを使用した眼窩後穿刺法により、投与後72時間の間に、抗凝固剤(K2EDTA:2mg/mL血液)を含む予め標識されたチューブに血液検体を採取し、詳細を表6に示す。複数の時点で血液を採取する場合は、右目と左目を交互に使用した。採取した血液検体を6000rpm、4℃で10分間遠心分離し、血漿サンプルを分離して分析まで-80℃で保存した。
【0249】
(結果)
ラットにおける単回経口投与薬物動態試験の結果を以下の表5および表6に示し、
図2にグラフで示した。表5において、C
max、T
max、AUC
last、AUC
inf、AUC
extrap、T
1/2およびMRT
lastの値は、化合物1および化合物3の両方の投与後に検出された4-クロロ-N-[2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾール-5-イル]ベンズアミド(化合物1)に関するものである。
【0250】
その結果、化合物3を投与したとき、4-クロロ-N-[2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾール-5-イル]ベンズアミドの全身曝露量は、化合物1と比較して、驚くべきことに10倍増加した(化合物1投与後のCmaxは1mLあたり19.60μgの化合物1であったのに対し、化合物3を投与したときは1mLあたり207.00μgの化合物1であった)。したがって、4-クロロ-N-[2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾール-5-イル]ベンズアミドの全身曝露は、本発明の化合物の形態でその化合物を投与することにより増加する。
【0251】
【0252】
【0253】
[実施例25]Sprague Dawleyラットにおける化合物5、6、7、9、10、13、14、16の単回経口投与薬物動態試験
(化合物の製剤)
製剤は実施例19に記載した方法に従って調製した。
【0254】
(投与量の選択および選択の正当性)
等モル用量の比較のために、化合物1の50mg/kgに相当する用量が選択された。
【0255】
(投与および採血)
投与および採血は実施例19に記載したように実施した。
【0256】
(結果)
ラットにおける単回経口投与薬物動態試験の結果を表7および以下に示し、
図3にグラフで示した。表7において、C
max、T
max、AUC
last、AUC
inf、AUC
extrapおよびT
1/2の値は、化合物投与後に検出された4-クロロ-N-[2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾール-5-イル]ベンズアミド(化合物1)の値である。
【0257】
その結果、化合物5、6、7、9、10、13、14、16および17の投与により、71~137μg/mLの範囲の4-クロロ-N-[2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾール-5-イル]ベンズアミドの平均血漿中最大濃度(Cmax)が得られることが示された。
【0258】
【0259】
【0260】
[実施例26]化合物17の安定性
化合物17の安定性はpH1.20、7.40、および9.20の緩衝液で評価した。pH1.20の試験はHCl緩衝液を使用して行った。pH7.40の培地にはリン酸緩衝液を使用し、pH9.20の培地にはアルカリ性ホウ酸緩衝液を使用した。
【0261】
(HCl緩衝液)
塩化カリウム(1.491g)を100mLの超純水type-1に溶解し、0.2M KCl溶液を得た。約50mLの0.2M KClをビーカーに取り、0.2M HCl溶液を用いてpHを1.20に調整した。超純水type-1を使用して最終容量を200mLにし、室温(22±3℃)で保存した。
【0262】
(リン酸緩衝液)
リン酸一塩基性カリウム(2.722g)を100mLの超純水type-1に溶解し、0.2M溶液を得た。約50mLの0.2M溶液をビーカーに取り、0.2M NaOH溶液を用いてpHを7.40に調整した。超純水type-1を使用して最終容量を200mLにし、室温(22±3℃)で保存した。
【0263】
(アルカリホウ酸緩衝液)
ホウ酸(1.237g)および塩化カリウム(1.491g)を100mLの超純水type-1に溶解し、0.2M溶液を得た。約50mLの0.2M溶液をビーカーに取り、0.2M NaOH溶液を使用してpHを9.20に調整した。超純水type-1を使用して最終容量を200mLにし、室温(22±3℃)で保存した。
【0264】
各緩衝液中の化合物17の5μM溶液は、5mM DMSO原液を使用して調製した。当該溶液を、サーモミキサーを用いて400rpmで振とうさせながら、22±3℃で120分間インキュベートした。
【0265】
0分、15分、30分、60分、および120分間隔で、十分な量の化合物溶液のアリコートを取り、希釈して分析し、各溶液中の化合物17の安定性および化合物1の存在量を測定した。存在する化合物1の量は、化合物17から化合物1への完全変換を仮定して予想される量と比較した。
【0266】
(結果)
安定性実験の結果を以下の表9に示す。
【0267】
【0268】
その結果、化合物17は低pH環境(pH=1.2)では最大の安定性を有するが、pH7.40以上では急速に分解することがわかった。
【0269】
[実施例27]追加の安定性結果
化合物3、6、9、20および23の安定性を、化合物17について上述したのと同じ方法で試験した。15分および30分の時点で残存した各化合物の量を表10に示す。
【0270】
【0271】
化合物17および23はpH7.40で急速に分解し、pH1.2では比較的安定であることが分かった。これらのデータから、アミノ酸の側鎖が親油性(例えばアルキル、化合物20参照)のとき、pH7.4での安定性はむしろ高いことが示唆される。側鎖がHまたは-NH2を含む側鎖(グリシンまたはリジンベース)のとき、安定性が低かった。アスパラギン酸を使用したとき(化合物17)、pHが高くなると安定性が非常に低くなった。当該化合物は胃内では無傷のままであろうが、腸内では加水分解される可能性がある。
【図面の簡単な説明】
【0272】
【
図1】化合物3が用量依存的にAMPKのリン酸化を増加させることを示すウェスタンブロット画像である。
【
図2】化合物1および化合物3を使用した、経口薬物動態試験の比較結果である。
【
図3】化合物5、6、7、9、10、13、14、16および17を使用した、経口薬物動態試験の比較結果である。
【国際調査報告】