(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-02
(54)【発明の名称】X線回折によって推定される炭素のドメインサイズによって特徴付けられる炭素および任意でケイ素を含むバッテリーアノード組成物
(51)【国際特許分類】
H01M 4/38 20060101AFI20240925BHJP
H01M 4/36 20060101ALI20240925BHJP
H01M 4/587 20100101ALI20240925BHJP
H01M 10/052 20100101ALI20240925BHJP
H01G 11/24 20130101ALI20240925BHJP
【FI】
H01M4/38 Z
H01M4/36 A
H01M4/587
H01M10/052
H01G11/24
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2024514113
(86)(22)【出願日】2022-09-07
(85)【翻訳文提出日】2024-04-24
(86)【国際出願番号】 US2022076062
(87)【国際公開番号】W WO2023039439
(87)【国際公開日】2023-03-16
(32)【優先日】2021-09-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513198814
【氏名又は名称】シラ ナノテクノロジーズ インク
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136168
【氏名又は名称】川上 美紀
(74)【代理人】
【識別番号】100196117
【氏名又は名称】河合 利恵
(72)【発明者】
【氏名】グレブ ユーシン
(72)【発明者】
【氏名】マシュー クラーク
(72)【発明者】
【氏名】アダム カイドシ
(72)【発明者】
【氏名】ティモシー ミラコヴィッチ
(72)【発明者】
【氏名】サウジャン シブラム
(72)【発明者】
【氏名】ヴァレンティン ルレヴィッチ
【テーマコード(参考)】
5E078
5H029
5H050
【Fターム(参考)】
5E078BA12
5H029AJ03
5H029AJ14
5H029AK01
5H029AK03
5H029AK05
5H029AL03
5H029AL04
5H029AL06
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5H029AL11
5H029AL18
5H029AM02
5H029AM03
5H029AM04
5H029AM07
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5H029HJ00
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5H029HJ07
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5H029HJ19
5H050AA07
5H050AA08
5H050AA19
5H050BA17
5H050CA01
5H050CA08
5H050CA09
5H050CA11
5H050CB03
5H050CB05
5H050CB07
5H050CB08
5H050CB11
5H050FA13
5H050FA15
5H050HA01
5H050HA03
5H050HA05
5H050HA07
5H050HA08
5H050HA13
5H050HA14
5H050HA19
5H050HA20
(57)【要約】
一態様において、リチウムイオンバッテリアノード組成物は、炭素(C)を含む多孔質複合粒子およびケイ素(Si)を含む活物質を含み、この炭素は、約10Å(1nm)から約60Å(6nm)に及ぶ多孔質複合粒子のシンクロトロンX線回折測定から得られる原子対相関関数G(r)から推定される通りのドメインサイズ(r)によって特徴付けられる。他の態様では、Liイオンバッテリにおける使用のためのアノード組成物の作製における使用のための炭素材料は、約10Å(1nm)から約60Å(6nm)に及ぶ炭素材料のシンクロトロンX線回折測定から得られた原子対相関関数G(r)から推定される通りのドメインサイズ(r)によって特徴付けられる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素(C)を含む多孔質複合粒子と、ケイ素(Si)を含む活物質と、を含み、
前記炭素が、約10Å(1nm)から約60Å(6nm)の範囲の前記多孔質複合粒子のシンクロトロンX線回折測定から得られる原子対相関関数G(r)から推定されるドメインサイズ(r)によって特徴付けられる、リチウムイオンバッテリアノード組成物。
【請求項2】
前記炭素が、下記:(1)約15Åから約19Åの範囲のドメインサイズ、(2)約19Åから約22Åの範囲のドメインサイズ、(3)約24Åから約28Åの範囲のドメインサイズ、および(4)約28Åから55Åの範囲のドメインサイズの1つまたは複数によって特徴付けられ、
前記ドメインサイズが、原子対相関関数G(r)から推定されたものである、
請求項1に記載のリチウムイオンバッテリアノード組成物。
【請求項3】
前記炭素が多孔質炭素を含む、請求項1に記載のリチウムイオンバッテリアノード組成物。
【請求項4】
G(r=r
1)が、前記炭素の第一配位圏の実空間位置での原子対相関関数の値であり、
G(r=r
2)が、前記炭素の第二配位圏の実空間位置での原子対相関関数の値であり、
比G(r=r
1)/G(r=r
2)が、約0.700から約0.590の範囲である、
請求項1に記載のリチウムイオンバッテリアノード組成物。
【請求項5】
W(r=r
1)が、前記炭素の第一配位圏の実空間位置での原子対相関関数の半値全幅の値であり、
W(r=r
2)が、前記炭素の第二配位圏の実空間位置での原子対相関関数の半値全幅の値であり、
比W(r=r
1)/W(r=r
2)が、約0.700から約0.850の範囲である、
請求項1に記載のリチウムイオンバッテリアノード組成物。
【請求項6】
G(r=r
1)が、前記炭素の第一配位圏の実空間位置での原子対相関関数の値であり、
G(r=r
3)が、前記炭素の第三配位圏の実空間位置での原子対相関関数の値であり、
比G(r=r
1)/G(r=r
3)が、約1.100から約1.300の範囲である、
請求項1に記載のリチウムイオンバッテリアノード組成物。
【請求項7】
W(r=r
1)が、前記炭素の第一配位圏の実空間位置での原子対相関関数の半値全幅の値であり、
W(r=r
3)が、前記炭素の第三配位圏の実空間位置での原子対相関関数の半値全幅の値であり、
比W(r=r
1)/W(r=r
3)が、約0.600から約0.850の範囲である、
請求項1に記載のリチウムイオンバッテリアノード組成物。
【請求項8】
前記アノード組成物を含むアノードが、約2mAh/cm
2から約16mAh/cm
2の範囲の面積容量負荷を示す、請求項1に記載のリチウムイオンバッテリアノード組成物。
【請求項9】
前記アノードの面積容量負荷の約10%から約100%が、前記多孔質複合粒子としてそれぞれ構成された複合粒子によって提供される、請求項8に記載のリチウムイオンバッテリアノード組成物。
【請求項10】
前記複合粒子が、平均して約5:1から1:5の範囲のケイ素(Si)対炭素(C)との重量比を示す、請求項8に記載のリチウムイオンバッテリアノード組成物。
【請求項11】
前記多孔質複合粒子が、約1nmから約40nmの範囲の、原子対相関関数G(r)から推定される平均散乱ドメインサイズ(r)によって特徴付けられる、請求項1に記載のリチウムイオンバッテリアノード組成物。
【請求項12】
前記多孔質複合粒子が、約1nmから約10nmの範囲の平均散乱ドメインサイズ(r)によって特徴付けられる、請求項11に記載のリチウムイオンバッテリアノード組成物。
【請求項13】
前記多孔質複合粒子が、平均して、約1重量%未満の水素(H)、約5重量%未満の窒素(N)、および約2重量%未満の酸素(O)を含む、請求項1に記載のリチウムイオンバッテリアノード組成物。
【請求項14】
前記多孔質複合粒子が、平均して、1050℃の窒素ガス(N
2)中で2時間にわたり加熱されたときに、前記多孔質複合粒子を含む粉末についての測定で約1.5重量%から約25重量%の窒素(N)の取込みを示す、請求項1に記載のリチウムイオンバッテリアノード組成物。
【請求項15】
前記多孔質複合粒子が、850℃の窒素ガス(N
2)中で2時間にわたり加熱されたときに、前記多孔質複合粒子を含む粉末についての測定で約0.5重量%から約10重量%の窒素(N)の平均取込みを示す、請求項1に記載のリチウムイオンバッテリアノード組成物。
【請求項16】
前記多孔質複合粒子が、X線回折(XRD)またはフーリエ変換赤外分光法(FTIR)によって検出されたとき、約750℃から約950℃の温度範囲にある窒素ガス(N
2)中またはアルゴンガス(Ar)中で2時間またはそれよりも長く加熱されたときに約1重量%から約100重量%の炭化ケイ素(SiC)を形成する、請求項1に記載のリチウムイオンバッテリアノード組成物。
【請求項17】
前記多孔質複合粒子が、前記多孔質複合粒子を含む粉末について窒素吸着等温線を使用して測定されたとき、約1m
2/gから約40m
2/gの範囲の平均Brunauer-Emmett-Teller(BET)比表面積を示す、請求項1に記載のリチウムイオンバッテリアノード組成物。
【請求項18】
前記多孔質複合粒子が、前記多孔質複合粒子を含む粉末について窒素またはアルゴンピクノメトリーを使用して測定されたとき、約0.9g/cm
3から約2.2g/cm
3の範囲の平均密度を示す、請求項1に記載のリチウムイオンバッテリアノード組成物。
【請求項19】
前記多孔質複合粒子が、前記多孔質複合粒子を含む粉末に関して走査型電子顕微鏡(SEM)画像分析または粒子散乱技法を使用して測定されたとき、約0.2ミクロンから約20ミクロンの範囲にある体積平均粒度を示す、請求項1に記載のリチウムイオンバッテリアノード組成物。
【請求項20】
前記多孔質複合粒子のラマンスペクトルが炭素DピークおよびGピークを示し、前記DピークとGピークとの平均強度の比(I
D/I
G)が約0.7から約2.7の範囲である、請求項1に記載のリチウムイオンバッテリアノード組成物。
【請求項21】
請求項1に記載のリチウムイオンバッテリアノード組成物を含むアノードと、
前記アノードから電気的に分離されたカソードと、
前記アノードおよび前記カソードをイオン的に連結する電解質と
を含む、Liイオンバッテリ。
【請求項22】
バッテリ容量が約0.2Ahから約400Ahの範囲である、請求項21に記載のLiイオンバッテリ。
【請求項23】
R(r=r
Si-C)が、前記多孔質複合粒子におけるSi-C対の第一配位圏の実空間位置での動径分布関数R(r)の値であり、
R(r=r
C-C)が、前記多孔質複合粒子におけるC-C対の第一配位圏の実空間位置での動径分布関数R(r)の値であり、
前記動径分布関数R(r)および原子対相関関数が、
R(r)=G(r)r+4πr
2ρ
0によって関係付けられ、ρ
0は散乱体の数密度に関する定数であり、比R(r=r
Si-C)/R(r=r
C-C)は0.050から約1.000の範囲にある、請求項21に記載のLiイオンバッテリ。
【請求項24】
Liイオンバッテリにおける使用のためのアノード組成物の作製における使用のための炭素材料であって、前記炭素材料は、約10Å(1nm)から約60Å(6nm)の範囲の前記炭素材料のシンクロトロンX線回折測定から得られる原子対相関関数G(r)から推定されるドメインサイズ(r)によって特徴付けられる、炭素材料。
【請求項25】
前記ドメインサイズ(r)が、下記:(1)約15Åから約19Åの範囲の及ぶ第1のドメインサイズ、(2)約19Åから約22Åの範囲の第2のドメインサイズ、(3)約24Åから約28Åの範囲の第3のドメインサイズ、および(4)約40Åから55Åの間範囲の第4のドメインサイズ、の1つに該当する、請求項24に記載の炭素材料。
【請求項26】
前記炭素材料が多孔質炭素を含む、請求項24に記載の炭素材料。
【請求項27】
G(r=r
1)が、前記炭素材料の第一配位圏の実空間位置での原子対相関関数の値であり、
G(r=r
2)が、前記炭素材料の第二配位圏の実空間位置での原子対相関関数の値であり、
比G(r=r
1)/G(r=r
2)が、約0.700から約0.590の範囲である、請求項24に記載の炭素材料。
【請求項28】
W(r=r
1)が、前記炭素材料の第一配位圏の実空間位置での原子対相関関数の半値全幅の値であり、
W(r=r
2)が、前記炭素材料の第二配位圏の実空間位置での原子対相関関数の半値全幅の値であり、
比W(r=r
1)/W(r=r
2)が、約0.700から約0.850の範囲である、請求項24に記載の炭素材料。
【請求項29】
G(r=r
1)が、前記炭素材料の第一配位圏の実空間位置での原子対相関関数の値であり、
G(r=r
3)が、前記炭素材料の第三配位圏の実空間位置での原子対相関関数の値であり、
比G(r=r
1)/G(r=r
3)が、約1.100から約1.300の範囲である、請求項24に記載の炭素材料。
【請求項30】
W(r=r
1)が、前記炭素材料の第一配位圏の実空間位置での原子対相関関数の半値全幅の値であり、
W(r=r
3)が、前記炭素材料の第三配位圏の実空間位置での原子対相関関数の半値全幅の値であり、
比W(r=r
1)/W(r=r
3)が、約0.600から約0.850の範囲である、請求項24に記載の炭素材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本特許出願は、この譲受人に譲受されかつ参照によりその全体が本明細書に明示的に組み込まれている、2021年9月7日に出願された「BATTERY ELECTRODE COMPOSITION COMPRISING CARBON AND SILICON WITH SPECIFIC PROPERTIES FOR SUPERIOR PERFORMANCE」という名称の米国仮出願特許第63/241,407号の利益を主張する。
【背景技術】
【0002】
(分野)
本開示の態様は、一般にエネルギー貯蔵デバイスに関し、より詳細にはバッテリ技術、スーパーキャパシタ技術、および同様のものに関する。
【0003】
(背景)
部分的には、先進的な再充電可能バッテリは、再充電可能バッテリの比較的高いエネルギー密度、比較的高い比エネルギー、比較的高い比電力、比較的速い充電、軽量、ならびに長い寿命およびサイクル寿命の潜在性により、広範な電子デバイス、電気自動車、グリッドストレージ、およびその他の重要な用途に望ましい。
【0004】
しかしながら、電気化学エネルギー貯蔵技術が益々商業的に普及しつつあるにも関わらず、バッテリのさらなる開発が、特に低またはゼロエミッション、ハイブリッド電気または完全電気自動車、消費者向け電気製品、エネルギー効率的な貨物船および機関車、航空宇宙の用途、およびパワーグリッドにおける潜在的な用途において必要とされている。特に、再充電可能な金属および金属イオンバッテリなど(例えば、再充電可能なLiおよびLiイオンバッテリ、再充電可能なNaおよびNaイオンバッテリ、再充電可能なMgおよびMgイオンバッテリ、再充電可能なKおよびKイオンバッテリ、再充電可能なCaおよびCaイオンバッテリなど)の様々な再充電可能バッテリに関してさらなる改善が望まれる。下記のエネルギー貯蔵デバイスは、追加の改善から同様に有益と考えられる:いくつか挙げると、再充電可能なハロゲンイオンバッテリ(例えばFイオンおよびClイオンバッテリなど)、再充電可能な混合イオンバッテリ、再充電可能な水性バッテリ(例えば、pH中性または酸性または苛性電解質を持つ再充電可能なバッテリ)、電気化学キャパシタ(例えば、スーパーキャパシタまたは二重層キャパシタ)、ハイブリッドデバイス、再充電可能なポリマー電解質バッテリおよびスーパーキャパシタ、再充電可能なポリマーゲル電解質バッテリおよびスーパーキャパシタ、再充電可能な固体セラミックまたは固体ガラス電解質バッテリ、再充電可能な複合電解質バッテリがある。
【0005】
広範な活性(電荷貯蔵)材料、広範なポリマーバインダー、広範な導電性添加剤、および様々な混合レシピが、バッテリ電極の構築に利用され得る。一部の設計では、活物質は複合粒子の形で利用され得る。しかしながら、改善された電極性能(低く安定した抵抗、高いサイクル動作安定性、高レート能、許容可能エネルギー、良好な体積容量など)に関し、最適な複合配合物が特定される必要がある。さらに、バインダー、添加剤、および混合プロトコールの選択は、特定のタイプ、特定の物理的および化学的性質、ならびに活性粒子の特定のサイズに合わせて発見される必要がある。多くの場合、複合粒子のアーキテクチャおよび組成ならびに電極の組成の選択は簡単ではなく、直感に反する可能性がある。
【0006】
再充電可能なバッテリの多くの種々のタイプで、電荷貯蔵材料は、導電性炭素を含み得る(ナノ)複合粉末として生成され得る。そのような粒子の下位集合として、導電性炭素は、(ナノ)複合粒子の表面だけでなくそのバルク内にも分布され得る。原則として、そのようなクラスの電荷貯蔵(ナノ)複合粒子は、規模拡大縮小可能な(場合によっては、持続可能な)製造を約束し、良好な電荷貯蔵性能特性を実現し得る。残念ながら、複合((ナノ)複合)粒子のそのような適用例において炭素のどのタイプおよびどの性質が有利と考えられるかは、大半が不透明なままである。加えて、高容量、高速充電、高速放電、および長いサイクル安定性を含む良好な性能特性をもたらし得る、電極に向けたそのような(ナノ)複合粒子の有効な処理をどのように実現するのか、さらに不透明である。類似の(ナノ)複合体から構成されたバッテリ電極の性能は、電極容量負荷が中程度になったときに(バッテリの場合)(2~4mAh/cm2)特に不十分になる可能性があり、高くなったとき(例えば、4~16mAh/cm2)もなおさらそうである。しかしながら、より高い容量負荷は、バッテリセルエネルギー密度の増大およびセル製造コストの削減に有利である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、改善されたバッテリ、構成要素、電極材料、およびその他の関係する材料、および製造プロセスが、引き続き求められている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以下、本明細書に開示される1つまたは複数の態様に関して簡略化された概要を提示する。したがって下記の概要は、全ての企図される態様に関する広範な概要とみなされるべきではなく、また以下の概要は、全ての企図される概要に関する中心となるもしくは極めて重要な要素を特定するとまたは任意の特定の態様に関連する範囲を正確に描くとみなされるべきでもない。したがって下記の概要は、以下に提示される詳細な説明に先駆けて、単純化された形で、本明細書に開示されるメカニズムに関する1つまたは複数の態様に関するある特定の概念を提示する単なる目的を有する。
【0009】
一態様において、リチウムイオンバッテリアノード組成物は、炭素(C)を含む多孔質複合粒子およびケイ素(Si)を含む活物質を含み、この炭素は、約10Å(1nm)から約60Å(6nm)に及ぶ多孔質複合粒子のシンクロトロンX線回折測定から得られる原子対相関関数G(r)から推定される通りのドメインサイズ(r)によって特徴付けられる。
【0010】
一部の態様では、炭素は、下記:(1)約15Åから約19Åの間に及ぶドメインサイズ、(2)約19Åから約22Åの間に及ぶドメインサイズ、(3)約24Åから約28Åの間に及ぶドメインサイズ、および(4)約28Åから55Åの間に及ぶドメインサイズ:の1つまたは複数によって特徴付けられ、これらのドメインサイズは、原子対相関関数G(r)から推定される通りである。
【0011】
一部の態様では、炭素は多孔質炭素を含む。
【0012】
一部の態様では、G(r=r1)は、炭素の第一配位圏の実空間位置での原子対相関関数の値であり、G(r=r2)は、炭素の第二配位圏の実空間位置での原子対相関関数の値であり、比G(r=r1)/G(r=r2)は、約0.700から約0.590の範囲にある。
【0013】
一部の態様では、W(r=r1)は、炭素の第一配位圏の実空間位置での原子対相関関数の半値全幅の値であり、W(r=r2)は、炭素の第二配位圏の実空間位置での原子対相関関数の半値全幅の値であり;比W(r=r1)/W(r=r2)は、約0.700から約0.850の範囲にある。
【0014】
一部の態様では、G(r=r1)は、炭素の第一配位圏の実空間位置での原子対相関関数の値であり、G(r=r3)は、炭素の第三配位圏の実空間位置での原子対相関関数の値であり、比G(r=r1)/G(r=r3)は、約1.100から約1.300の範囲にある。
【0015】
一部の態様では、W(r=r1)は、炭素の第一配位圏の実空間位置での原子対相関関数の半値全幅の値であり、W(r=r3)は、炭素の第三配位圏の実空間位置での原子対相関関数の半値全幅の値であり、比W(r=r1)/W(r=r3)は、約0.600から約0.850の範囲にある。
【0016】
一部の態様では、アノード組成物を含むアノードは、約2mAh/cm2から約16mAh/cm2に及ぶ面積容量負荷を示す。
【0017】
一部の態様では、アノードの面積容量負荷の約10%から約100%は、多孔質複合粒子としてそれぞれ構成された複合粒子によって提供される。
【0018】
一部の態様では、複合粒子は、平均して約5:1から1:5の範囲にあるケイ素(Si)対炭素(C)の重量比を示す。
【0019】
一部の態様では、多孔質複合粒子は、約1nmから約40nmに及ぶ、原子対相関関数G(r)から推定される通りの平均散乱ドメインサイズ(r)によって特徴付けられる。
【0020】
一部の態様では、多孔質複合粒子は、約1nmから約10nmに及ぶ平均散乱ドメインサイズ(r)によって特徴付けられる。
【0021】
一部の態様では、多孔質複合粒子は、平均して、約1重量%未満の水素(H)、約5重量%未満の窒素(N)、および約2重量%未満の酸素(O)を含む。
【0022】
一部の態様では、多孔質複合粒子は、多孔質複合粒子を含む粉末について測定されたとき、平均して、1050℃の窒素ガス(N2)中で2時間にわたり加熱されたときに約1.5重量%から約25重量%の窒素(N)の取込みを示す。
【0023】
一部の態様では、多孔質複合粒子は、多孔質複合粒子を含む粉末について測定されたとき、850℃の窒素ガス(N2)中で2時間にわたり加熱されたときに約0.5重量%から約10重量%の窒素(N)の平均取込みを示す。
【0024】
一部の態様では、多孔質複合粒子は、X線回折(XRD)またはフーリエ変換赤外分光法(FTIR)によって検出されたとき、約750℃から約950℃の温度範囲にある窒素ガス(N2)中またはアルゴンガス(Ar)中で2時間またはそれよりも長く加熱されたときに約1重量%から約100重量%の炭化ケイ素(SiC)を形成する。
【0025】
一部の態様では、多孔質複合粒子は、多孔質複合粒子を含む粉末について窒素吸着等温線を使用して測定されたとき、約1から約40m2/gの範囲にある平均Brunauer-Emmett-Teller(BET)比表面積を示す。
【0026】
一部の態様では、多孔質複合粒子は、多孔質複合粒子を含む粉末について窒素またはアルゴンピクノメトリーを使用して測定されたとき、約0.9g/cm3から約2.2g/cm3の範囲にある平均密度を示す。
【0027】
一部の態様では、多孔質複合粒子は、多孔質複合粒子を含む粉末について走査型電子顕微鏡(SEM)画像分析または粒子散乱技法を使用して測定されたとき、約0.2ミクロンから約20ミクロンの範囲にある体積平均粒度を示す。
【0028】
一部の態様では、多孔質複合粒子のラマンスペクトルは、炭素DピークおよびGピークを示し、DピークとGピークとの平均強度の比(ID/IG)は約0.7から約2.7に及ぶ。
【0029】
一態様において、Liイオンバッテリは、リチウムイオンバッテリアノード組成物を含むアノードと、このアノードから電気的に分離されたカソードと、アノードおよびカソードをイオン的に連結する電解質とを含む。
【0030】
一部の態様では、バッテリ容量は、約0.2Ahから約400Ahに及ぶ。
【0031】
一部の態様では、R(r=rSi-C)は、多孔質複合粒子におけるSi-C対の第一配位圏の実空間位置での動径分布関数R(r)の値であり、R(r=rC-C)は、多孔質複合粒子におけるC-C対の第一配位圏の実空間位置での動径分布関数R(r)の値であり、動径分布関数R(r)および原子対相関関数は、R(r)=G(r)r+4πr2ρ0によって関係付けられ、ρ0は散乱体の数密度に関する定数であり、比R(r=rSi-C)/R(r=rC-C)は0.050から約1.000の範囲にある。
【0032】
一態様では、Liイオンバッテリにおける使用のためのアノード組成物の作製における使用のための炭素材料であって、この炭素材料は、約10Å(1nm)から約60Å(6nm)に及ぶ炭素材料のシンクロトロンX線回折測定から得られる原子対相関関数G(r)から推定される通りのドメインサイズ(r)によって特徴付けられる。
【0033】
一部の態様では、ドメインサイズ(r)は、下記:(1)約15Åから約19Åの間に及ぶ第1のドメインサイズ、(2)約19Åから約22Åの間に及ぶ第2のドメインサイズ、(3)約24Åから約28Åの間に及ぶ第3のドメインサイズ、および(4)約40Åから55Åの間に及ぶ第4のドメインサイズ、の1つに該当する。
【0034】
一部の態様では、炭素材料は多孔質炭素を含む。
【0035】
一部の態様では、G(r=r1)は、炭素材料の第一配位圏の実空間位置での原子対相関関数の値であり、G(r=r2)は、炭素材料の第二配位圏の実空間位置での原子対相関関数の値であり、比G(r=r1)/G(r=r2)は、約0.700から約0.590の範囲にある。
【0036】
一部の態様では、W(r=r1)は、炭素材料の第一配位圏の実空間位置での原子対相関関数の半値全幅の値であり、W(r=r2)は、炭素材料の第二配位圏の実空間位置での原子対相関関数の半値全幅の値であり、比W(r=r1)/W(r=r2)は、約0.700から約0.850の範囲にある。
【0037】
一部の態様では、G(r=r1)は、炭素材料の第一配位圏の実空間位置での原子対相関関数の値であり、G(r=r3)は、炭素材料の第三配位圏の実空間位置での原子対相関関数の値であり、比G(r=r1)/G(r=r3)は、約1.100から約1.300の範囲にある。
【0038】
一部の態様では、W(r=r1)は、炭素材料の第一配位圏の実空間位置での原子対相関関数の半値全幅の値であり、W(r=r3)は、炭素材料の第三配位圏の実空間位置での原子対相関関数の半値全幅の値であり、比W(r=r1)/W(r=r3)は、約0.600から約0.850の範囲にある。
【0039】
本明細書に開示される態様に関連あるその他の目的および利点は、添付図面および詳細な説明に基づいて当業者に明らかにされよう。
【0040】
添付図面は、本開示の実施形態の記述を助けるために提示され、実施形態を例示するためだけに提供され、それを限定するものではない。他に文脈により言及されまたは示唆されない限り、図面中の種々のハッチング、シェーディング、および/または塗潰しパターンは、種々の構成成分、要素、形体などの間の対照を描くことを単に意味し、用いられる特定のパターンに関して本開示の外で定義され得る特定の材料、色、またはその他の性質の使用を伝えるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【
図1】本明細書に記述される構成成分、材料、およびその他の技法、またはこれらの組合せが様々な実施形態により適用され得る、実施例(例えば、Liイオン)のバッテリを示す図である。
【
図2A】いくつかの炭素系アノード複合試料に関するラマンD/G炭素ピーク強度比の平方根の関数としての、Si結晶子サイズのグラフプロットである。
【
図2B】いくつかの炭素系アノード複合試料を作製する際の合成ステップの1つにおける、温度の関数としてのSi結晶子サイズのグラフプロットである。
【
図3A】いくつかの真空アニール温度でアニールされた、2種の適切な多孔質炭素材料のX線回折パターンである。
【
図3B】いくつかの真空アニール温度でアニールされた、別の適切な多孔質炭素材料のX線回折パターンである。
【
図3C】グラファイトの場合を超える(002)炭素間隔を示す、適切な多孔質炭素の別の実施例を示す図である。
【
図4】炭素含有複合粉末に関する、アニール温度の関数としての窒素の取込み(質量の変化)のグラフプロットである。
【
図5】種々の温度のN
2中でアニールされた、CおよびSiを含有する適切な複合粉末のX線回折パターンである。
【
図6A】いくつかの適切な炭素材料に関する原子対相関関数G(r)のグラフプロットを示す図である。
【
図6B】いくつかの適切な炭素材料に関する原子対相関関数G(r)のグラフプロットを示す図である。
【
図7】いくつかの適切な炭素材料に関する原子対相関関数G(r)のグラフプロットを示す図である。
【
図8】種々の合成および処理条件下で形成された、1種の適切な炭素材料とSiおよびCを含む2種の複合材料に関する、原子対相関関数G(r)のグラフプロットを示す図である。
【
図9A】例示的な炭素材料に関する、第一および第二炭素-炭素配位圏のピーク振幅(原子対相関関数の値)の比を、表にした図である。
【
図9B】例示的な炭素材料に関する、第一および第二炭素-炭素配位圏での原子対相関関数の半値全幅(FWHM)の値の比を示す図である。
【
図9C】例示的な炭素材料に関する、第一および第三炭素-炭素配位圏のピーク振幅(原子対相関関数の値)の比を表にした図である。
【
図9D】例示的な炭素材料に関する、第一および第三炭素-炭素配位圏での原子対相関関数のFWHMの値の比を示す図である。
【
図10】炭素およびケイ素活物質を含む複合材料に関する、原子対相関関数G(r)のグラフプロットを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
本発明の態様は、本発明の特定の実施形態を対象とする以下の記述および関連する図面で開示される。「本発明の実施形態」という用語は、本発明の全ての実施形態が、操作の論じられる形体、利点、プロセス、または形態を含むことを必要とせず、代替の実施形態は、本発明の範囲から逸脱することなく考案され得る。さらに、本発明の周知の要素は、その他のより関連ある詳細があいまいならないように、詳細に記述されなくてもよくまたは省略されてもよい。さらに「少なくとも部分的に」という用語は、「部分的に、実質的に、または完全に」と解釈されるものとする。
【0043】
本発明の任意の実施形態に関して本明細書に記述される任意の数値範囲は、関連ある数値範囲の上界および下界を定義するだけでなく、それによって上界および下界が特徴付けられる精度のレベルと矛盾のない単位または増分におけるその範囲内の個別の値それぞれの黙示的開示でもある。例えば、7nmから20nmの数値距離範囲(即ち、1つの単位または増分における精度のレベル)は、1つの単位または増分における介在する数値8から19までが明示的に開示されるかのように、ひと組の[7、8、9、10、...、19、20]を包含する(単位 nm)。別の実施例では、約-120℃から約-60℃の温度範囲は、増分範囲にある-120℃から-60℃間の介在する数値(単位 ℃)が明示的に開示されたかのように、約-120℃から約-119℃、約-119℃から約-118℃、...、約-61℃から約-60℃のひと組の温度範囲を包含する(単位 ℃)。さらに別の実施例では、30.92%から47.44%(即ち、100分の1の単位または増分における精度のレベル)の数値パーセンテージの範囲が、100分の1の単位または増分で30.92から47.44の間に介在する数値が明示的に開示されたかのように、ひと組の[30.92、30.93、30.94、...、47.43、47.44]を包含する(単位 %)。したがって、任意の開示される数値範囲によって包含される、介在する数値のいずれかは、それらの介在する数値が明示的に開示されたかのように解釈されるものとし、任意のそのような介在する数値は、それによってそれ自体の、より広い範囲内に含まれる下位範囲の上界および/または下界を構成してもよい。各下位範囲(例えば、上界および/または下界として、より広い範囲からの少なくとも1つの介在数値を含む各範囲)は、それによって、より広い範囲の説明開示により暗黙的に開示されるとして解釈されるものとする。
【0044】
以下の記述は、Li金属およびLiイオンバッテリの文脈において、ある特定の実施例を記述し得るが(簡略化のためおよび便宜上、およびLi技術の現在の一般性により)、様々な態様がその他の再充電可能な一次バッテリ(例えば、Na金属およびNaイオン、Mg金属およびMgイオン、K金属およびKイオン、Ca金属およびCaイオン、ならびにその他の金属および金属イオンバッテリ、OH-イオンを持つアルカリバッテリ、混合イオンバッテリなど)ならびに電気化学キャパシタまたはハイブリッドデバイス(例えば、1つの電極がバッテリ様であり別の電極が電気化学キャパシタ様である)に適用可能になり得ることが理解されよう。
【0045】
以下の記述は、活性粒子内に含有されている活性イオンの文脈において、ある特定の実施例を記述し得るが、様々な態様が、セル組立てまたは充放電の一部の段階で、電解質中に在る活性イオンに適用可能になり得ることが理解されよう。
【0046】
さらに以下の記述は、Li含有(例えば、リチウム化)状態にある活物質配合物のある特定の実施例についても記述され得るが、様々な態様が、Liなし(例えば、非リチウム化)電極に適用可能になり得ることが理解されよう。
【0047】
さらに、以下の記述は、いわゆる変換型活物質(複数可)(いわゆる合金型活物質、真の変換型活物質、化学変換型活物質、金属活物質などを含む)に属する活性電極材料のある特定の実施例も記述し得るが、様々な態様が、いわゆるインターカレーション型活物質(複数可)、いわゆる擬似容量性活物質、ならびに混合型活物質(または活物質の成分)であって、複数のメカニズムにより電荷を貯蔵し得るもの(例えば、多くのその他の組合せの中で、セル動作中に、インターカレーションおよび変換型電気化学反応の両方を示す活物質)に適用可能になり得ることが理解されよう。
【0048】
さらに、以下の記述は、結晶質(またはナノ結晶質)材料の形をとる活性(可逆的にイオン貯蔵する)材料((ナノ)複合体の成分(複数可)として)のある特定の実施例も記述し得るが、様々な態様が、高度に秩序付けられたまたは非晶質の活物質に適用可能であることが理解されよう。
【0049】
さらに、以下の記述は、炭素をベースにしない(例えば、約10原子%未満のsp2結合炭素を含み;ある設計では-約1原子%未満のsp2結合炭素;一部の設計では-約0から約1原子%の炭素原子を含む)活性(可逆的にイオン貯蔵する)材料のある特定の実施例も記述し得るが、炭素材料(90~100原子%のsp2結合炭素を含む材料を含む)は、バッテリ動作のある特定の電位範囲でイオンを可逆的に貯蔵し得ることも理解されよう(しかし一般には、イオン貯蔵に関して、実質的に、より小さい体積および重量容量を示す)。したがって、本開示の様々な実施形態で活物質について論じるとき、炭素含有複合体中の活物質は、「炭素よりも、実質的に、より活性な」材料(例えば、動作可能な電気化学的電位範囲の炭素よりも、「活(性)」物質の原子あたり少なくとも2倍多くのイオンを貯蔵する)と特徴付けられてもよい。
【0050】
さらに、以下の記述は、炭素材料の特定の供給源(前駆体)のある特定の実施例も記述し得るが、様々な態様が、とりわけ有機および無機前駆体の両方から生成されたもの、細孔の一部の形成のために鋳型を利用する(例えば、犠牲的に)もの、有機廃棄生成物を利用するものも含め、その他のタイプの炭素材料供給源に適用可能であり得ることが理解されよう。
【0051】
さらに、以下の記述は、不規則なまたは球状のまたは回転楕円形の3次元(3D)形状を有する(ナノ)複合粒子または多孔質炭素粒子のある特定の実施例も記述し得るが、例えば細長い2次元(2D、例えば(ナノ)複合小板または多孔質炭素シートなど)または1次元(1D、例えば(ナノ)複合ナノ繊維および繊維または多孔質炭素ナノ繊維および繊維など)形状を含む、様々な形状を有する粒子に適用可能であることが理解されよう。
【0052】
さらに、以下の記述は、(ナノ)複合電極に基づく電気化学セル(バッテリまたは電気化学キャパシタ)の構成要素としての液体有機電解質の、ある特定の実施例も記述し得るが、様々な態様が、水性電解質、イオン性塩電解質、溶融塩電解質、固体セラミック電解質、固体ガラス電解質、固体ポリマー電解質(1個のイオン(例えば、カチオン)が可動であるがカウンターイオン(例えば、アニオン)がポリマー主鎖に化学的に結合される単一イオン導電固体ポリマー電解質を含む)、ゲル電解質、複合体(例えば、ガラス-セラミックまたはガラス-ポリマーまたはセラミック-ポリマーまたは液体-セラミックまたは液体-ポリマーまたは液体-セラミック-ポリマーまたは液体-ガラス-ポリマーまたは液体-ガラス-セラミック-ポリマー)電解質、およびその他のものに適用可能であり得ることが、理解されよう。一部の設計では、複数の電解質を単一セル構造で使用することができる(例えば、電極または活物質の表面に浸潤した/コーティングする1種の電解質、および電極(複数可)の残りの細孔に相互浸透しまたはセパレータ膜の少なくとも一部を含む別の電解質;または別の例示的な実施例として、アノードに接触する1種の電解質およびカソードに接触する別の電解質)。
【0053】
一部の実施例および設計では、固体(デバイス動作温度で)電解質は、電極内の細孔の少なくとも一部に溶融浸潤してもよい(例えば、電解質が液体になる高温で)。一部の実施例および設計では、固体(デバイス動作温度で)電解質は、溶媒に溶解し、電極の細孔の少なくとも一部に浸潤し、その後、溶媒蒸発(乾燥)してもよい。一部の実施例および設計では、固体(デバイス動作温度で)電解質は、そのような電解質が液体である中間段階で、電極の細孔の少なくとも一部に浸潤してもよく、その後、液体から固体に変換されてもよい。一部の実施例および設計では、ポリマー電解質は、電解質内の細孔または液体状態の活物質の少なくとも一部に浸潤し、浸潤後に重合されてもよい(例えば、加熱中、または適切な温度範囲での十分な貯蔵もしくはUV処理後など)。一部の設計では、そのような重合は、セル使用(適用)前に生じ得る。一部の設計では、そのような重合は、セル組立ての後(例えば、またはその最終段階として)に生じ得る。一部の設計では、そのような重合は、セル封止の後(例えば、その最終段階として)に生じ得る。一部の段階では、重合後の残りの細孔(存在する場合)は、完全に組み立てられたデバイス(Liイオンバッテリセルなど)の別の電解質により充填されてもよい。
【0054】
バッテリ(Liイオンバッテリなど)動作中、インターカレーション型活物質は、そのようなインターカレーション化合物の結晶質また無秩序のまたは完全に非晶質の構造に存在する格子間位置(ナノスケーツまたはサブナノスケールの空隙)への/からのLiイオンの挿入(インターカレーション)および抽出(脱インターカレーション)によって作動する。このインターカレーション/脱インターカレーションプロセスは、非Li原子(イオン)(例えば、遷移金属イオンなど)の酸化状態の変化を伴う。化学結合は、典型的には、そのようなプロセス中に破壊または再形成されない。Liイオンは、活物質に/から拡散する。
【0055】
バッテリ(Liイオンバッテリなど)作動中、変換材料は、1つの結晶構造から別のもの(したがって、「変換」型という名称)に変化(変換)する。(例えば、Liイオン)バッテリ作動中、Liイオンは、リチウム合金を形成する合金型材料(したがって、「合金」型という名称)に挿入される。時々、「合金」型電極材料(一般に、金属および半金属)は、「変換」型電極材料の下位クラスとみなされる。金属イオン(例えば、LiイオンまたはNaイオンなど)バッテリに適切な「合金」型活性電極材料の公知の例には、限定するものではないが、とりわけケイ素(Si)、スズ(Sn)、アンチモン(Sb)、ゲルマニウム(Ge)、それらの様々な合金、および組合せが含まれてもよい。
【0056】
「合金」型電極材料は、その他のタイプ(複数可)の変換材料(例えば、酸化物、水素化物、窒化物など)を少量(例えば、約0.1%~50重量%)の添加剤として、ならびに合金材料の機械的もしくは電気化学的安定性を高めるのを助け得るまたは脱リチウム化状態でのそれらの導電率を高め得る(これらはインターカレーション型材料であってもよい)、それほど活性ではない材料(著しく低い、例えば合金材料重量容量の約0.01%~30%を示し得る)を含んでもよい。Liイオンと合金または変換材料との間の電気化学反応プロセスは、当初の化学結合の一部の破壊および新しい化学結合の形成を伴う可能性がある。一部の設計に関する理想的な場合には、プロセスはいくらか可逆的であり、活物質(またはLi)の損失は、バッテリ作動中にごく僅かしか(または全く)生じない(例えば、好ましくはバッテリの寿命中に約30%以下)。
【0057】
以下の記述は、金属イオンバッテリの文脈においてある特定の実施例について記述し得るが、本開示の様々な態様から有益となり得るその他の変換型電極は、例えばアルカリバッテリ、金属水素化物バッテリ、鉛酸バッテリなどの広範な水性バッテリで使用される様々な化学的性質を含む。これらには、限定するものではないが、いくつか挙げると様々な金属(例えば、鉄、亜鉛、カドミウム、鉛、インジウムなど)、金属酸化物、金属水酸化物、金属オキシ水酸化物、および金属水素化物が含まれる。
【0058】
図1は、本明細書に記述される構成成分、材料、方法、およびその他の技法、またはこれらの組合せが様々な実施形態により適用され得る、実施例の金属または金属イオン(例えば、LiまたはLiイオン)バッテリを示す。例示の目的で円筒状バッテリがここでは示されるが、角柱またはパウチ(ラミネート型)バッテリを含むその他のタイプの配置構成が、望みに応じて使用されてもよい。実施例のバッテリ100は、アノード102、カソード103、アノード102とカソード103との間に介在するセパレータ104、セパレータ104に含浸された(典型的にはアノード102およびカソード103の両方に含浸する)電解質(図示せず)、バッテリケース105、およびバッテリケース105を封止する封止部材106を含む。固体電解質(複数可)の場合の一部の設計では、固体電解質膜がセパレータ104として働き得る。
【0059】
液体および固体電解質は共に、本明細書の設計で使用されてもよい。このタイプのLiまたはNa系バッテリ用の従来の電解質は、一般に、有機溶媒の混合物(炭酸塩の混合物など)中の、単一のLiまたはNa塩(Liイオンバッテリ用のLiPF6、およびNaイオンバッテリ用のNaPF6またはNaClO4塩など)から構成される。本開示の1つまたは複数の実施形態の文脈で適切であり得るその他の一般的な有機溶媒には、ニトリル、エステル、スルホン、スルホキシド、リン系溶媒、ケイ素系溶媒、エーテル、およびその他のものが含まれる。一部の設計では、そのような溶媒のいくつかは、修飾されてもよい(例えば、スルホン化されまたはフッ素化されてもよい)。電解質は、イオン性液体(一部の設計では、中性イオン性液体;その他の設計では、酸性または塩基性イオン性液体)を含んでもよい。一部の設計では、適切な電解質は、様々な塩(例えば、再充電可能なLiおよびLiイオンバッテリ用の、いくつかのLi塩の混合物またはLiおよび非Li塩の混合物)の混合物を含んでもよい。ある特定の従来のLiイオンバッテリ電解質で使用される、最も一般的な塩は、例えばLiPF6であるが、本開示の1つまたは複数の実施形態の文脈で適切であり得るそれほど一般的ではない塩には、テトラフルオロホウ酸リチウム(LiBF4)、過塩素酸リチウム(LiClO4)、ビス(オキサラト)ホウ酸リチウム(LiB(C2O4)2)、ジフルオロ(オキサラト)ホウ酸リチウム(LiBF2(C2O4))、様々なリチウムイミド(SO2FN-(Li+)SO2F、CF3SO2N-(Li+)SO2CF3、CF3CF2SO2N-(Li+)SO2CF3、CF3CF2SO2N-(Li+)SO2CF2CF3、CF3SO2N-(Li+)SO2CF2OCF3、CF3OCF2SO2N-(Li+)SO2CF2OCF3、C6F5SO2N-(Li+)SO2CF3、C6F5SO2N-(Li+)SO2C6F5、またはCF3SO2N-(Li+)SO2PhCF3、およびその他)、およびその他が含まれる。Mgイオン、Kイオン、Caイオン、およびAlイオンバッテリ用の電解質は、これらのバッテリが開発の初期段階にあるので、より珍しい。これらの珍しい電解質は、種々の塩および溶媒を含み得る(ある場合には、イオン性液体は、ある特定の適用例に向けて有機溶媒と置き換えられる)。一部の設計では、複数のLi塩が、電解質中で有利に使用され得る。一部の設計では、Liイオンバッテリ用の電解質は、非Li塩(複数可)を有利に含んでもよい。
【0060】
水性Liイオン(または水性Naイオン、Kイオン、Caイオンなど)バッテリの場合、適切な電解質は、無機Li(またはNa、K、Caなど)塩(複数可)(例えばLi2SO4、LiNO3、LiCl、LiBr、Li3PO4、H2LiO4P、C2F3LiO2、C2F3LiO3S、Na2O3Se、Na2SO4、Na2O7Si3、Na3O9P3、C2F3NaO2など)の溶液(例えば、水性溶液または混合型水性有機溶液)を含んでもよい。一部の設計では、これらの電解質は、いくつか例を挙げると、有機Li(またはNa、K、Caなど)塩の溶液、例えば(簡略化のため、Liに関して列挙する)カルボン酸の金属塩(例えば、HCOOLi、CH3COOLi、CH3CH2COOLi、CH3(CH2)2COOLi、CH3(CH2)3COOLi、CH3(CH2)4COOLi、CH3(CH2)5COOLi、CH3(CH2)6COOLi、CH3(CH2)7COOLi、CH3(CH2)8COOLi、CH3(CH2)9COOLi、CH3(CH2)10COOLi、CH3(CH2)11COOLi、CH3(CH2)12COOLi、CH3(CH2)13COOLi、CH3(CH2)14COOLi、CH3(CH2)15COOLi、CH3(CH2)16COOLi、CH3(CH2)17COOLi、CH3(CH2)18COOLi、およびその他であって式CH3(CH2)xCOOLiを有するものであり、式中、xは最大50に及ぶ);スルホン酸の金属塩(例えば、RS(=O)2-OHであり、式中、Rは有機基の金属塩であり、例えばCH3SO3Li、CH3CH2SO3Li、C6H5SO3Li、CH3C6H4SO3Li、CF3SO3Li、[CH2CH(C6H4)SO3Li]n、およびその他)およびその他の有機金属反応剤(さまざまな有機リチウム試薬など)の溶液を含んでもよい。そのような溶液は、無機および有機塩の混合物、様々なその他の塩の混合物(例えば、Li塩および非リチウム金属の塩および半金属の混合物)を含んでいてもよく、ある場合には、水酸化物(複数可)(例えば、LiOH、NaOH、KOH、Ca(OH)2など)であり、ある場合には、酸(有機酸を含む)を含んでもよい。一部の設計では、そのような水性電解質は、中性または酸性または塩基性イオン液体(電解質の全重量に対して約0.00001重量%から約40重量%)を含んでもよい。一部の設計では、そのような「水性」(または水含有)電解質は、水に加えて、有機溶媒を含んでもよい(電解質の全重量に対して約0.00001重量%から約40重量%)。適切な有機溶媒の例示的な例は、炭酸塩(例えば、炭酸プロピレン、炭酸エチレン、炭酸ジエチル、炭酸ジメチル、炭酸エチルメチル、炭酸フルオロエチレン、炭酸ビニレン、およびその他)、様々なニトリル(例えば、アセトニトリルなど)、様々なエステル、様々なスルホン(例えば、プロパンスルホンなど)、様々なスルトン、様々なスルホキシド、様々なリン系溶媒、様々なケイ素系溶媒、様々なエーテル、およびその他を含んでもよい。
【0061】
一部の水性バッテリ(とりわけ、ニッケル金属水素化物バッテリを含むアルカリバッテリなど)におけるいくつかの電解質は、アルカリ溶液(例えば、KOHおよびLiOH溶液の混合物)を含んでもよい。水性バッテリ(鉛酸バッテリなど)における一部の電解質は、酸性水性溶液(例えば、H2SO4水性溶液またはHCl水性溶液)を含んでもよい。水性バッテリにおける一部の電解質は、添加剤として有機溶媒を含んでもよい。水性バッテリにおける一部の電解質は、2種またはそれよりも多くの有機溶媒(複数可)またはイオン性液体(複数可)または界面活性剤(複数可)を、添加剤(複数可)または電解質の実質的な成分として含んでもよい。
【0062】
LiまたはLiイオンバッテリで利用された従来の電極は、(i)活物質、導電性添加剤、バインダー溶液、および場合によっては界面活性剤またはその他の機能性添加剤を含むスラリーの形成;(ii)金属箔上へのスラリーの流延(例えば、LiまたはLiイオンバッテリで使用されるほとんどのアノードではCu箔、およびLiまたはLiイオンバッテリで使用されるほとんどのカソードならびにチタン酸リチウムなどのLiイオンバッテリで使用される高電位アノードではAl箔);(iii)溶媒が完全に蒸発するまでの、流延されたスラリーの乾燥;および(iv)必要に応じて、電極の稠密化(例えば、加圧式カレンダ掛けによる)によって生成され得る。電極製作にそのような溶媒に基づくプロセスを使用する代わりに、一部の設計では、静電コーティングを含むがこれに限定されない乾式電極処理(溶媒を使用しない)を使用することが有利と考えられる。
【0063】
本開示の一部の態様は、炭素含有複合電極材料の形成を取り扱う。広範な適切な活物質はそのような複合電極材料に利用される可能性があり、その例示的な実施例を以下に記述する。
【0064】
LiおよびLiイオンバッテリで利用される従来のカソード材料は、インターカレーション型のものであってもよく、それによって金属イオンは、バッテリの充放電中にそのような材料の格子間位置にインターカレートされ占有する。そのようなカソード材料は、充放電中にバッテリ電極で使用されるとき、典型的には非常に小さい体積変化(例えば、約0.1~8体積%)を経験する。そのようなカソード材料は、典型的には高密度(例えば、約3.8~6g/cm3)も示し、スラリーに混合することが比較的容易である。ポリフッ化ビニリデンまたはポリ二フッ化ビニリデン(PVDF)は、これらの電極で使用される最も一般的なバインダーの1種である。カーボンブラックは、これらの電極で使用される最も一般的な導電性添加剤である。しかしながらそのようなカソードは、比較的小さい重量および体積可逆容量を示す(例えば、それぞれ約200~220mAh/g未満および約1000mAh/cm3未満)。
【0065】
LiまたはLiイオンセルに関して本開示の文脈で利用され得る、適切なインターカレーション型活性カソード材料の例示的な例には、限定するものではないが:リチウムニッケルコバルトアルミニウム酸化物(NCA-例えば、LiNi0.8Co0.15Al0.05O2、またはLiNixCoyAlzO2であって、式中、典型的にはx+y+z≦1であり、これはさらに、高められた性能または低減したCo含量に向けてCoおよびAl以外の金属を含み得る)、リチウムニッケルコバルトマンガンアルミニウム酸化物(NCMA)、酸化リチウムニッケル(LNO-例えば、LiNiO2またはその他のものであって、高められた安定性のためにNi以外の金属を含み得る)、様々な酸化リチウムマンガン(LMO-例えば、とりわけLiMnO2またはLMO、またはLi2MnO3、またはLiMn2O4)、様々なリチウムニッケルマンガンコバルト酸化物(NCM-例えば、LiNi0.33Co0.33Mn0.33O2、またはLiNi0.8Co0.1Mn0.1O2または、より一般的には、LiNixCoyMnzO2であって、式中、典型的にはx+y+z≦1であるもの、またはNCM、またはNMC)、様々なリチウムニッケルマンガン酸化物(LiNi0.5Mn0.5O2、LiNi0.25Mn0.75O2またはLiNixMnyO2であって、式中、典型的にはx+y≦1であるもの;LiNi0.5Mn0.15O4またはLiNixMnyO4であって、式中、典型的にはx+y≦2であるもの、またはより広範に、NMOであり、高められた安定性のためにNiおよびMn以外の金属を含み得るものおよび層状化したまたはスピネルまたはその他の適切な結晶構造を有し得るもの)、酸化リチウムコバルト(LCO-例えば、LiCoO2またはLiCo2O4の形をとり、高められた性能または削減されたコストのためにCo以外の金属を含み得るもの)、リチウムコバルトアルミニウム酸化物(LCAO)、リン酸リチウムマンガン(LMP)、亜硫酸リチウムチタン(LiTiS2)、またはリン酸リチウム鉄(LiFePO4、LFP)、リン酸リチウムマンガン(LiMnPO4)、リチウムマンガン鉄リン酸塩(LMFP)、リン酸リチウムコバルト(LiCoPO4)、リン酸リチウムニッケル(LiNiPO4)、リチウムバナジウムフルオロリン酸塩(LiVFPO4)、リチウム鉄フルオロ硫酸塩(LiFeSO4F)、様々なLi過剰材料(例えば、リチウム過剰(岩塩含む)遷移金属酸化物およびオキシフッ化物、例えばLi1.211Mo0.467Cr0.3O2、Li1.3Mn0.4Nb0.3O2、Li1.2Mn0.4Ti0.4O2、Li1.2Ni0.333Ti0.333Mo0.133O2、および多くのその他のもの)、様々な高容量Liイオン系材料であって、酸素でフッ素またはヨウ素が部分置換されたもの(例えば、多くのその他の中から、岩塩Li2Mn2/3Nb1/3O2F、Li2Mn1/2Ti1/2O2F、Li1.5Na0.5MnO2.85I0.12)、および多くのその他のタイプのLi含有無秩序岩塩(カチオン無秩序岩塩を含む)、層状化、タボライト、オリビン、またはスピネル型活物質またはそれらの混合物であって、少なくとも酸素またはフッ素または硫黄と、少なくとも1種の遷移金属、およびその他のリチウム遷移金属(以下、「TM」という。例えばMn、Ni、Co、Nb、Ti、Ta、Fe、V、Moなど)酸化物またはリン酸塩または硫酸塩(または混合された)カソード材料を含み、リチウム(Li)のインターカレーションおよびTM酸化状態の変化に依拠するものが含まれる。一部の設計では、そのような材料は、ドープされてもよくまたは重度にドープされてもよい。Li系インターカレーション型活物質に加え、インターカレーション型活物質のその他の例は、とりわけ(例えば、類似の)Naイオンインターカレーション化合物、Kイオンインターカレーション化合物、Caイオンインターカレーション化合物に基づいてもよい。Li含有(またはNa含有、K含有、Ca含有など)インターカレーション化合物に加え、そのようなまたは類似の材料のLiなし(またはNaなし、Kなし、Caなしなど)の種類(複数可)が利用されてもよい(例えば、酸化もしくはオキシフッ化チタン、酸化もしくはオキシフッ化ニオブ、酸化もしくはオキシフッ化コバルト、酸化もしくはオキシフッ化ニッケル、酸化もしくはオキシフッ化ニッケルアルミニウム、酸化もしくはオキシフッ化ニッケルコバルトマンガン、酸化もしくはオキシフッ化ニッケルコバルトアルミニウム、酸化もしくはオキシフッ化鉄、リン酸鉄、多くのその他のもの、およびそれらの様々な混合物など)。
【0066】
そのような活性インターカレーション材料のいくつかは、組成またはコア-シェル粒子形態で勾配を経験し得る。そのような材料のいくつかは、部分的にフッ素化してもよくまたはいくつかの意味のある割合のフッ素(例えば、約0.001~10原子%)を、それらの組成物に含み得る。一部の設計では、高電圧リチウム遷移金属酸化物(またはリン酸塩もしくは硫酸塩もしくは混合物もしくはその他)カソードで、TMおよび酸素(O)が共有結合され、TMおよびOは共に、充放電中に電気化学的還元酸化(レドックス)反応に酸化する(限定するものではないが、少なくとも約0.25原子%のMn、Fe、Ni、Co、Nb、Mg、Cr、Mo、Zr、W、Ta、Ti、Hf、Y、Sc、La、Sb、Sn、Si、またはGeを含み得るような酸化物またはリン酸塩または硫酸塩または混合型カソードを含む)。Sc、Y、および様々なランタニドは、「内部遷移金属」としばしばみなされ得ることに留意されたい。
【0067】
インターカレーション型活物質に加えまたは代わりに、本開示の一部の設計は、いわゆる擬似容量性(または混合型擬似容量性インターカレーション型)活物質を含んでもよい。擬似容量性(または混合型擬似容量性インターカレーション型)活物質の適切な例には、限定するものではないが、Ru、Fe、Mn、Cu、Ti、Bi、V、Ni、Nb、Ce、Zr、Ta、Co、Sn、Sb、Si、In、Zn、Mo、Pb、La、Y、およびそれらの様々な混合物および誘導体の、様々な(混合型金属を含む)酸化物、水酸化物、オキシ水酸化物、窒化物、オキシ窒化物、硝酸塩、リン酸塩、(オキシ)リン酸塩、硫化物、硫酸塩 水酸化物、およびその他の無機塩が含まれる。そのような化合物は、Li、Na、Ca、Cs、Mg、およびKを含んでもよい。一部の設計では、そのような化合物は、2、3、4種、またはより多くの金属を含んでもよい。一部の設計では、そのような化合物は、少なくとも1種の遷移金属を含んでもよい。
【0068】
Liイオンバッテリで利用される従来のアノード材料は、インターカレーション型のものでもあり、それによって金属イオンは、バッテリの充放電中にそのような材料の格子間位置にインターカレーションされ占有する。そのようなアノードは、電極に使用されるとき、小さいまたは非常に小さい体積変化を経験する(例えば、約0.05~10体積%)。しかしながら、そのようなアノードは、比較的小さい重量および体積可逆容量を示す(典型的には、チタン酸リチウム(LTO)の場合に約200mAh/g未満、典型的には、バナジン酸リチウム、グラファイトまたは硬質炭素系アノードの場合に約370~400mAh/g未満の再充電可能比容量、および集電子箔の体積とはみなされない電極レベルで、約600mAh/cm3未満の再充電可能な体積容量である)。
【0069】
変換型活性カソード材料は、インターカレーション型材料よりも著しく高い比容量を提供し得る。これらの適切な例には、限定するものではないが金属フッ化物、金属塩化物、金属硫化物、金属セレン化物、それらの様々な混合物、複合体、およびその他のものが含まれる。例えばフッ化物系カソードは、それらの非常に高い容量に起因して、ある場合には約300mAh/gを超える(電極レベルで約1200mAh/cm3よりも大きい)容量に起因して、並外れた技術的潜在性を提供し得る。例えば、Liがない状態では、FeF3は理論的比容量712mAh/gを提供し;FeF2は理論的比容量571mAh/gを提供し;MnF3は理論的比容量719mAh/gを提供し;CuF2は理論的比容量528mAh/gを提供し;NiF2は理論的比容量554mAh/gを提供し;PbF2は理論的比容量219mAh/gを提供し;BiF3は理論的比容量302mAh/gを提供し;BiF5は理論的比容量441mAh/gを提供し;SnF2は理論的比容量342mAh/gを提供し;SnF4は理論的比容量551mAh/gを提供し;SbF3は理論的比容量450mAh/gを提供し;SbF5は理論的比容量618mAh/gを提供し;CdF2は理論的比容量356mAh/gを提供し;ZnF2は理論的比容量519mAh/gを提供し;AlF3も高い理論的比容量を提供するが、低いリチウム化電位である。AgFおよびAgF2も高い理論的比容量を提供し、非常に高いリチウム化電位をさらに示す。フッ化物の混合物(例えば、合金の形をとる)は、典型的には、混合物の法則に従い近似的に計算された理論的容量を提供し得る。混合型金属フッ化物の使用は、時々、有利になり得る(例えば、より高い速度、より低い抵抗、より高い実際の容量、またはより長い安定性を提供し得る)。金属と混合された金属フッ化物の使用は、時々、有利になり得る(例えば、より高い速度、より低い抵抗、より高い実際の容量、またはより長い安定性を提供し得る)。完全にリチウム化した状態では、金属フッ化物は、金属およびLiFクラスタ(またはナノ粒子)の混合物を含む複合体に変換する。変換型金属フッ化物カソードの全体的に可逆的な反応の例は、CuF2系カソードに関して2Li+CuF2⇔2LiF+Cu、またはFeF3系カソードに関して3Li+FeF3⇔3LiF+Feを含んでもよい。金属フッ化物系カソードは、Liなしのまたは部分的にリチウム化されたまたは完全にリチウム化された状態で調製され得ることが理解されよう。フッ化物に加え、変換型活性電極材料のその他の例示的な例には、限定するものではないが、とりわけ、様々な金属オキシ-フッ化物、スルホ-フッ化物、クロロ-フッ化物、オキシ-クロロ-フッ化物、オキシ-スルホ-フッ化物、フルオロ-リン酸塩、スルホ-リン酸塩、スルホ-フルオロ-リン酸塩、金属(例えば、Fe、Cu、Ni、Co、Bi、Cr、その他の金属、それらの様々な混合物および合金、部分的に酸化された金属および金属合金など)の混合物および塩(金属フッ化物(LiFまたはNaFを含む)、金属塩化物(LiClまたはNaFを含む)、金属オキシ-フッ化物、金属酸化物、金属スルホ-フッ化物、金属フルオロ-リン酸塩、金属硫化物、金属オキシ-スルホ-フッ化物、それらの様々な組合せなど)、およびハロゲンまたは硫黄または酸素またはリンまたはこれらの元素の組合せを含むその他の塩が含まれる。一部の設計では、金属フッ化物中のFは、別のハロゲン(例えば、ClまたはBrまたはIなど)またはそれらの混合物で完全にまたは部分的に置き換えられて、対応する金属塩化物または金属フッ化物-塩化物およびその他の金属ハロゲン化物の組成物を形成してもよい。一部の設計では、金属ハロゲン化物は、電解質に少なくとも部分的に溶解されてもよい。一部の設計では、活物質の少なくとも一部分は、液体形態で(例えば、電解質に)保存されてもよい。
【0070】
将来性ある変化型カソード(または場合によっては、アノード)材料のさらに別の例は、硫黄(S)(Liがない状態で)または硫化リチウム(Li2S、完全にリチウム化された状態)である。一部の設計では、セレン(Se)は、Sと一緒に使用されてもよく、またはそれ自体で、そのようなカソード活物質の形成のために使用されてもよい。
【0071】
一部の設計では、変換型活性カソード材料は、金属酸化物または混合型金属酸化物を有利に含んでもよい。一部の設計では、そのような(ナノ)複合体は、金属硫化物または混合型金属硫化物を有利に含んでもよい。一部の実施例では、混合型金属酸化物または混合型金属硫化物は、リチウムを含んでもよい。一部の実施例では、混合型金属酸化物は、チタンまたはバナジウムまたはマンガンまたは鉄金属を含んでもよい。一部の実施例では、リチウムを含む金属酸化物または金属硫化物は、層状化構造を示してもよい。一部の実施例では、金属酸化物または混合型金属酸化物または金属硫化物または混合型金属硫化物は、有利に、イオン的かつ電気的に導電性であってもよい(例えば、約10-7から約10+4S/cmの範囲にある)。一部の実施例では、様々なその他のインターカレーション型活物質は、金属酸化物または金属硫化物の代わりにまたは加えて、利用されてもよい。一部の設計では、そのようなインターカレーション型活物質は、SまたはLi2Sの場合に近い電位範囲で(例えば、約1.5~3.8V対Li/Li+の範囲内)、電荷貯蔵(例えば、Liの挿入/抽出容量)を示す。
【0072】
一部の設計では、いわゆるLi-空気カソード(例えば、それらのリチウム化状態がLi2O2、Li2O、LiOHの形にある活物質を持つカソード)、またはNa、K、Ca、Al、Fe、Mn、Zn、およびその他の金属(Liの代わりに)をベースにした類似の金属-空気カソードの使用は、それらの非常に高い容量に起因して、同様に有益となり得る。一部の設計では、そのようなカソード活物質は、電気化学セル内の酸素または酸素含有種と、理想的に可逆的に反応すべきであり、完全な脱リチウム化(金属除去)により完全に消失し得る。これらは変換型カソードに属するともみなされる。
【0073】
変換型アノードは:nLi+MaXb⇔aM+bLinX(式中、Mは金属または半金属(金属間)であってもよく、Xはアニオン(例えば、アノードの場合はOであるが、N、S、P、Fなどであってもよい)または水素(H)である)によって発生する反応を通して、グラファイト炭素よりも非常に高い比容量を提供し得る。そのような変換型活性アノード材料の適切な例には、限定するものではないが様々な酸化物、窒化物、硫化物、リン化物、フッ化物、水素化物などが含まれる。一部の設計では、これらはとりわけ、完全にまたは部分的に酸化された非炭素IV族元素(例えば、Si、Ge、Sn、またはPbの酸化物または窒化物または硫化物またはリン化物)、あるいは完全にまたは部分的にAl、Ga、In、Sb、Bi、Fe、Ti、Mn、Cu、Ni、Co、V、およびZnの(例えば、酸化物または窒化物または硫化物またはリン化物)を含んでもよい。
【0074】
合金型活物質は、時々、変換型活性アノード材料の下位クラスとみなされる。Liイオンバッテリで使用される合金型材料は、インターカレーション型アノードと比較して、より高い重量および体積容量も提供する。合金型活性アノード材料は、上述の変換型アノード材料と比較して(様々な酸化物、窒化物、硫化物、リン化物、または水素化物など)、より低い不可逆的な第1のサイクル損失も提供し得る。例えば、地球に豊富なケイ素(Si)は、インターカレーション型グラファイト(または炭素質の軟質炭素、硬質炭素、またはグラファイト様)アノードと比較して、約10倍高い重量容量および約3倍高い体積容量を提供する。一部の設計では、「Si系」活物質は、Si、あるいは窒素(N)、リン(P)、ホウ素(B)、またはその他の元素がドープされたまたは重度にドープされた、または様々なその他の金属と合金化された、Siを含んでもよい。前述のように、Si系活物質に加えて、その他のSiを含む活物質、例えば酸化ケイ素(SiOx)または酸窒化ケイ素(SiOxNy)または窒化ケイ素(SiNy)または水素化物、またはその他のSi元素を含む活物質(LiまたはMgにより部分的に還元されたものを含む)、およびSiを含む金属合金が、利用されてもよい(例えば、一部のSiを含む活物質は、Si系セラミックまたは金属合金におけるようにそれらの組成中にSi原子を含むが、この文脈ではSi系とはみなされず、Si系活物質は一般に、ドープされた、重度にドープされた、または非ドープのSiを包含する)。これらのSiを含む活物質は、Si系活物質に対して、より低い容量を提供するが、低減された体積変化を提供し、典型的にはサイクル安定性を改善するが、一般には、より高い第1のサイクル損失またはより速い分解またはその両方を犠牲にする。Si系または(非Si系)Siを含む活性アノード材料に加え、合金型(または、より広範には、変換型)活物質を含むそのような高容量(例えば、ナノ複合体)アノードのその他の例には、限定するものではないが、ゲルマニウム(Ge)、アンチモン(Sb)、アルミニウム(Al)、マグネシウム(Mg)、亜鉛(Zn)、ガリウム(Ga)、ヒ素(As)、リン(P)、銀(Ag)、カドミウム(Cd)、インジウム(In)、スズ(Sn)、鉛(Sb)、ビスマス(Bi)、それらの様々な混合物および合金(とりわけ、それ自体またはSiまたはその他の「不活性」金属、例えば鉄(Fe)または銅(Cu)との)、およびその他のものをベースにしたまたは含むものが含まれる。同様に、そのような材料は、ドープされてもよくまたは重度にドープされてもよく、酸化物、オキシ窒化物、窒化物、水素化物、またはその他の金属もしくは半金属を含む化合物の形をとってもよい。
【0075】
合金型活性アノード材料は、時々、変換型活性アノード材料の下位クラスとみなされる。Liイオンバッテリで使用される合金型活性アノード材料は、インターカレーション型アノードと比較して、より高い重量および体積容量も提供する。合金型活性アノード材料は、上述の変換型アノード材料(例えば、様々な酸化物、窒化物、硫化物、リン化物、または水素化物など)と比較して、より低い不可逆的な第1のサイクル損失も提供し得る。例えば地球に豊富なケイ素(Si)は、インターカレーション型グラファイト(または炭素質の軟質炭素、硬質炭素、またはグラファイト様)アノードと比較して、約10倍高い重量容量および約3倍高い体積容量を提供する。一部の設計では、上述のように、「Si系」活物質は、Siまたは窒素(N)、リン(P)、ホウ素(B)、もしくはその他の元素がドープされたもしくは重度にドープされたSiを含んでいてもよく、または様々なその他の金属と合金化されていてもよい。Si系材料に加えて、その他のSiを含む活物質、例えば酸化ケイ素(SiOx)またはオキシ窒化ケイ素(SiOxNy)または窒化ケイ素(SiNy)または水素化物またはSiを含む合金またはその他のSi元素を含む活物質(LiまたはMgにより部分的に還元されたものを含む)が利用されてもよい。これらのSiを含む活物質は、Si系活物質に対して、より低い容量を提供するが、低減した体積変化を提供し、典型的にはサイクル安定性を改善するが、一般に、より高い第1のサイクル損失またはより速い分解またはその両方を犠牲にする。Si系または(非Si系)のSiを含む活性アノード材料に加え、合金型(または、より広範には、変換型)活物質を含む、そのような高容量(例えば、ナノ複合体)アノードのその他の例には、限定するものではないがゲルマニウム(Ge)、アンチモン(Sb)、アルミニウム(Al)、マグネシウム(Mg)、亜鉛(Zn)、ガリウム(Ga)、ヒ素(As)、リン(P)、銀(Ag)、カドミウム(Cd)、インジウム(In)、スズ(Sn)、鉛(Sb)、ビスマス(Bi)、それらの様々な混合物および合金(とりわけ、それ自体またはSiまたはその他の「不活性な」金属、例えば鉄(Fe)または銅(Cu))、およびその他のものをベースにするまたは含むものが、含まれる。同様に、そのような材料は、ドープされてもよくまたは重度にドープされてもよく、酸化物、オキシ窒化物、窒化物、水素化物、またはその他の金属もしくは半金属を含む化合物の形をとってもよい。
【0076】
一部の設計では、純粋なLi金属は、本開示の一部の態様で活性アノード材料として使用されてもよい(例えば、アノードにおいて多孔質炭素材料の組合せで使用される)。一部の設計では、そのようなアノードは、炭素およびリチウム金属に加えてその他の材料(複数可)を有利に含んでもよい(例えば、合金化されたまたは変換型アノード材料、ポリマーなど)。一部の設計では、そのような複合体は、適切なメカニズムにより、バインダーを使用して電極に流延され形成された粒子の形をとってもよい。一部の設計では、そのようなLi金属-C複合体アノードは、Li含有カソード活物質からの金属イオン(例えば、Liイオン)を使用して、第1の充電中(セル構築後)に少なくとも部分的に形成してもよい。例えば、Li金属は、第1の充電中に適切な炭素の細孔内をめっきしてもよい(電着してもよい)。一部の設計では、そのような細孔の少なくとも一部分(例えば、細孔の約10~100%)は電解質から遊離したままであり、セル動作中にLi金属堆積を利用可能であることが、有利と考えられる。一部の設計では、適切な多孔質炭素内の細孔は、電極製作の前または後に、多孔質炭素の周りにシェルを形成することによって(および/または細孔に栓をする材料を組み込むことによって)閉じられてもよい。一部の設計では、固体電解質(例えば、ポリマーまたは無機またはポリマー-向き複合体)は、副反応を低減させ、第1のサイクル容量損失を低減させ、Liデンドライト形成を低減させ、および/またはセルの安全性を改善するために、有利に利用され得る。
【0077】
広範な合金型、金属、変換型活性アノードおよびカソード材料ならびにインターカレーション型および擬似容量型活性アノードおよびカソード材料は、本開示の文脈で首尾良く利用され得る。一部の設計では、そのような材料は、炭素含有複合体の形成に利用され得る。一部の設計では(例えば、セルへの電極組立ての前に、活物質が複合粒子にまたは電極に負荷されるとき)、約400Kで約10-10torrよりも低い(好ましくは、約400Kで10-13torrよりも低い)部分蒸気圧を有するような活物質を用いることが、有利となり得る。例えば、一部の設計では、電極は、セルの組立て前に約400Kで乾燥する必要がある可能性があり、活物質のかなりの蒸発は、汚染を誘発し安全上の危険を創出するだけでなく、電極の均一性および得られるセル性能をひどく低減させる可能性がある。一部の設計では、電極は、放電状態にある間、電極組成物(例えば、複合粒子を含む)から組み立ててもよい。
【0078】
一部の設計では、本開示の文脈において、以下のポリマーバインダーが、インターカレーション型または変換型または混合型アノード材料を含む電極で、首尾よく使用され得る:ポリフッ化ビニリデン、またはポリ二フッ化ビニリデン(PVDF)、カルボキシメチルセルロース(CMC)の様々な塩、例えばNa-CMCおよびその他のもの、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、キサンタンガム、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリアクリル酸(PAA)およびその様々な誘導体であって、PAAの様々な塩を含むもの(例えば、Na-PAA、Li-PAA、NH4-PAA、およびその他のもの)、アルギン酸およびその様々な誘導体であって、アルギン酸の様々な塩を含むもの(例えば、アルギン酸Na、アルギン酸Li、アルギン酸Ca、アルギン酸Alなど)、キトサン、ブチルアクリレート、アラビアガム、グアールガム、カラギナン、ゼラチン、ポリビニルアルコール(PVA)、およびそれらの様々な混合物およびコポリマー。カーボンブラックは、アノードで使用される最も一般的な導電性添加剤であるが、単層、二層、および多層カーボンナノチューブ、膨張グラファイト(多層グラフェンの薄片)、および金属ナノワイヤが、一部の設計で使用されてもよい。
【0079】
多くの適用例および電極設計で、インターカレーション型または変換型または混合型カソード材料を持つあるいはインターカレーション型または変換型(合金型、例えばSiまたはSnなどを含む)または混合型アノード材料を持つバッテリは、十分に速い充放電速度を示し得る(例えば、約10~60分以内で、最大容量の約80%に充電)。一部の適用例では(例えば、さらに速いレート性能(例えば、「レギュラー」面積容量負荷で約1~600秒以内にまたは「高」面積容量負荷で1~6000秒間で、最大容量の約80%に充電)では、またはより良好なサイクル安定性またはより良好なカレンダ寿命または低および高温でのより良好な性能または電解質との低減された反応性またはより高い容量の利用、またはその他の性能利得では)、バッテリ(例えば、とりわけLiイオンまたはNaイオンバッテリ)の電極に使用されるそのような活物質を含む複合体を生成することが有利となり得る。
【0080】
一部の設計では、そのような活物質を含む複合体(例えば、複合粒子の形をとる)は、炭素の高い導電率、Liおよびその他ノイオンの許容移動度、良好な機械的性質、ならびに良好な化学的および電気化学的抵抗に起因して、炭素を含むことがさらに有利となり得る。
【0081】
一部の設計では、活性(イオン貯蔵)材料(限定するものではないがインターカレーション型材料、変換型材料であって合金型材料を含むもの、擬似容量材料、混合型活物質など)および(不活性)炭素の両方を含むような複合体(例えば、複合粒子の形をとる)は、意味のある重量割合の(非炭素)活物質を有することが有利となり得る。一部の設計では、そのような活物質(例えば、例示的な例を提供するため、CおよびSiを含むアノード複合体の場合にはSi系またはSiを含む活物質(複数可))の割合は、電極またはバッテリ組立て段階で生成されたままのまたは使用されたままの状態で好ましくは約20重量%から約98重量%の範囲であってもよい(一部の設計では、約20重量%から約40重量%;その他の設計では、約40重量%から約60重量%;さらに他の設計では、約60重量%から約80重量%;さらに他の設計では、約80重量%から約98重量%)。一部の設計では、活物質と炭素との重量比は、好ましくは約1:4から約50:1の範囲であってもよい(一部の設計では、約1:1から約20:1)。活物質の低過ぎる割合は、望ましくない低体積容量をもたらし得るが、活物質の高過ぎる割合は、低減した速度および安定性をもたらし得る。
【0082】
一部の設計では、純粋なインターカレーション型活物質または純粋な変化型活物質の代わりにまたは加えて、インターカレーションおよび変換型電気化学反応の両方を経験する混合型材料が利用され得ることに留意されたい。一部の設計では、電極中のインターカレーション型活物質は、電極を形成するため一緒に結合された(例えば、バインダーおよび任意の導電性添加剤と)個々の粒子の形をとってもよく、またはインターカレーション型活物質を含む複合粒子の形をとってもよく、この粒子は同様に一緒に結合されて電極を形成し得るものである。同様に、一部の設計では、電極内の変換型活物質は、電極を形成するため一緒に結合される(例えば、バインダーおよび任意の導電性添加剤と)個々の粒子の形をとってもよく、または変換型活物質を含む複合粒子の形をとってもよく、この粒子は同様に一緒に結合されて電極を形成し得るものである。一部の設計では、電極は、意図的に、複数の材料または材料型(例えば、インターカレーション型活物質および変換型活物質の両方を含む)からなる。一部の設計では、インターカレーション型活物質を含む粒子および変換型活物質を含む粒子は、十分に異なるサイズおよび/またはBET比表面積を示し得る。変換型およびインターカレーション型活物質に加え、材料の一部は擬似容量型のものであってもよく、または少なくとも、その他のエネルギー貯蔵電気化学反応メカニズムに加えて擬似容量反応を経験し得る。
【0083】
一部の設計では、電極内の活物質分布は、そのような炭素含有複合体(例えば、一部の設計ではLiイオンバッテリ用のアノードの場合にはSiを含むアノード材料複合体)を100%含んでもよく、あるいは、複合体および「レギュラー」活物質(例えば、Liイオンバッテリ用のアノードの場合には、グラファイトまたは軟質炭素または硬質炭素またはそれらの様々な混合物)の混合物を含んでもよい。一部の設計では、「レギュラー」活物質は、インターカレーション型活物質であってもよい。一部の設計では、そのような「混合型」電極における複合粒子の適切な質量割合は、そのような材料の性質ならびに適用例の要件および需要にも応じて、所与の電極中(即ち、バインダー、導電性およびその他の添加剤の重量ならびに集電子の重量抜きで)の全ての活物質粒子の約1から約99重量%(一部の設計では、約1重量%から約5重量%;その他の設計では、約5重量%から約10重量%;さらに他の設計では、約10重量%から約20重量%;さらに他の設計では、約20重量%から約30重量%;さらに他の設計では、約30重量%から約40重量%;さらに他の設計では、約40重量%から約50重量%;さらに他の設計では、約50重量%から約60重量%;さらに他の設計では、約60重量%から約70重量%;さらに他の設計では、約70重量%から約80重量%;さらに他の設計では、約80重量%から約90重量%;さらに他の設計では、約90重量%から約99重量%)の範囲でもよい。一部の設計では、約1重量%よりも小さい割合は、実質的な相違を生むのに小さ過ぎると考えられる。同様に、一方で、一部の設計では、約99重量%のよりも大きい割合は、電極混合の複雑さおよびコストの望ましくない増大をもたらす可能性があり、電極特性の何らかの実質的な犠牲なしに、複合体(複数可)の約100重量%で、より良好に置き換えられ得る。しかしながら、任意の割合(約0から約100重量%)は、一部の適用例では適切となり得る。
【0084】
一部の設計では、複合体材料(例えば、複合粒子の形をとる)を含むそのような炭素のいくらかを含む電極の性能特性およびサイクル安定性は、超高速充電(約1~600秒以内)または長いカレンダ掛け寿命または長いサイクル寿命または低い第1のサイクル損失またはその他の性質を必要とする適用例で、特に電極面積容量負荷が約1~2mAh/cm2を超える場合、さらになお電極面積容量が約4~5mAh/cm2を超える場合、さらになお電極面積容量が約6~8mAh/cm2を超える場合(例えば、6~18mAh/cm2またはさらにそれ以上)、特に満足のいかないものになり得る。しかしながら、より高い負荷は、エネルギー貯蔵デバイスのコストを削減し、それらのエネルギー密度および比エネルギーを増大させるのに有利である。本開示の1つまたは複数の実施形態は、約2mAh/cm2から約5mAh/cm2の範囲にある電極面積負荷、さらになお約5mAh/cm2から約8mAh/cm2の範囲にある負荷、さらになお約8mAh/cm2から約16の範囲にある負荷、またはさらに約18mAh/cm2の負荷(例えば、一部の設計では、電極組成物の面積容量負荷は約2mAh/cm2から約18mAh/cm2の範囲であってもよい)に関して満足のいく性能を容易にする、炭素を含む複合体電極の合成プロセス、組成物、および様々な物理的および化学的性質を対象とする。
【0085】
一部の設計では、それらの電極の少なくとも1つに(例えば、アノードにまたはカソードにまたは両方に)、いくらかの炭素含有複合体材料(例えば、炭素および活物質(複数可)の両方を含む複合粒子の形をとる)を持つLiイオンセルの分解は、多層(例えば、積層されたまたは巻かれた)の中程度のサイズのセル(例えば、0.2Ahから約10Ahの範囲にあるセル容量を持つセル)では、さらになお大きいセル(例えば、約10Ahから約40Ahの範囲にあるセル容量を持つセル)では、さらになお超大型セル(例えば、約40Ahから約400Ahの範囲にある容量を持つセル)または巨大セル(例えば、約400Ahから約4,000Ahまたはそれ以上の範囲にある容量を持つセル)では、特に望ましくなく速くなる可能性がある。しかしながら、多層媒体または大型サイズのセルは、一部の電子デバイスに魅力的である可能性があり、多層の大型、超大型、または巨大セルは、一部の電子輸送またはグリッド貯蔵適用例で使用するのに特に魅力的であり得る。本開示の1つまたは複数の態様は、炭素含有複合体材料のそのような制限の一部または全てを軽減しまたは克服するために、およびそのようなLiイオンセルの性能を実質的に高めるために、適切なミクロ構造、化学的、物理的、およびその他の性質を持つ、特定のタイプの炭素の利用を容易にする。
【0086】
一部の設計では(例えば、より速い充電速度で、または改善された安定性でなど)、(非炭素)活物質を持つ、そのような炭素を含む複合体(例えば、炭素を含む複合粒子)は、細孔を含むことが有利となり得る(例えば、表面細孔、電解質などの外部材料にアクセスできない閉鎖内部細孔、電解質などの外部材料にアクセス可能な開放内部細孔、相互接続開放内部細孔など)。一部の設計では、複合体における「合計」細孔体積(存在する場合には、閉鎖内部細孔を含む)は、サイクル動作中の(非炭素)活物質の体積変化、複合体成分のイオン伝導度、動作条件での電解質との副反応の程度、およびその他の要因に応じて、約0.01cm3/gから約2.0cm3/g(一部の設計では、約2体積%から約75体積%)に及ぶことが、有利となり得る。一部の設計では、(例えば、活物質の体積変化が小さいとき、および副反応が中程度であるとき、複合体中の全細孔の少なくともいくらかの部分(例えば、約0.1~100体積%)は、電極組成物がエネルギー貯蔵デバイスセルの部分を構成するときに電解質にアクセス可能になることが有利となり得る(例えば、この文脈で100体積%の場合、本質的に閉鎖内部細孔はない)。一部の設計では、細孔の少なくともいくらかの部分(例えば、約1~100体積%)は、隣接する細孔に相互接続されかつ複合粒子の内部(または中心)からアクセス可能であることが、有利となり得る。一部の設計では、細孔の少なくともいくらかの部分(例えば、約1~100体積%)は、約0.3nmから約600nmの範囲にある特性寸法(例えば、直径または幅)を示すことが有利となり得る。一部の設計では、全細孔(電極組成物がエネルギー貯蔵デバイスセルの部分を構成するとき、電解質にアクセス可能なものおよびアクセスできないものの両方を含む)の少なくとも一部の割合(例えば、約0.1~30体積%)は、約10nmから約100nmの範囲にある特性寸法を示すことが、有利となり得る(例えば、電極の体積容量を最大限にすると共に高速性能を実現するため)。一部の設計では、全細孔(電極組成物がエネルギー貯蔵デバイスセルの部分を構成するとき、電解質にアクセス可能なものおよびアクセスできないものの両方を含む)の少なくとも一部の割合(例えば、約30~100体積%)は、約0.3nmから約10nmの範囲にある特性寸法を示すことが、有利となり得る(例えば、電極の体積容量を最大限にするためまたは安定性を改善するため)。一部の設計では、全細孔の(複合体中)少なくとも一部の割合(例えば、約10~100体積%;一部の設計では、約30~100体積%-約30~40体積%または約40~50体積%または約50~60体積%または約60~70体積%または約70~80体積%または約80~90体積%または約90~100体積%)は、約0.3nmから約6nmの範囲にある特性寸法を示すことが、有利となり得る(例えば、電極の体積容量を最大限にするためまたは安定性を改善するため)。一部の設計では(例えば、活物質が、サイクル動作中に小さい(例えば、約0.1~10体積%)または中程度(例えば、約10~120体積%)の体積変化を示すとき、ならびに電極の体積容量および体積エネルギー貯蔵特性を最大限にすることが望まれるとき)、そのような複合体における全細孔の体積分率は、小さく(例えば、約0.001~5体積%)または中程度(例えば、約5~20体積%)であることが、有利となり得る。一部の設計では(例えば、電力またはエネルギー密度またはサイクル安定性などのエネルギー貯蔵特性を最大限にするため、またはこれらもしくはその他の特徴の間の妥協点を実現するため)、複合体電極材料(粒子)のいわゆるBrunauer-Emmett-Teller(BET)比表面積(SSA)または密度汎関数理論(DFT)SSA(例えば、N2またはArまたはCO2またはH2収着技法を使用して測定され、およびBETまたはDFT法を使用して測定される)は、約0.25m2/gから約1000m2/gに及ぶことが有利となり得る(その他の要因の中で、使用される(非炭素)活物質および電解質のタイプに応じておよびバッテリセルの所望の特性に応じて、一部の設計では、約0.25m2/gから約2m2/g;他の設計では、約2m2/gから約10m2/g;他の設計では、約10m2/gから約40m2/g;他の設計では、約40m2/gから約100m2/g;他の設計では、約100m2/gから約400m2/g;他の設計では、約400m2/gから約1000m2/g)。より大きいSSAは、より速い充放電速度性能を可能にし得るが、一部の望ましくない副反応(例えば、電解質と)のより高い割合(率)ももたらし得る。そのような望ましくない(例えば、自己放電または脱気または堆積物の形成または電解質の不可逆的消費または電極もしくはセルの膨潤、より速い分解などをもたらす)反応の速度は、他の要因の中でも、動作電極電位、動作温度、および電解質組成物に依存し得る。許容可能な速度は、特定の適用例に依存する。しかしながら、多くの電解質系では、およびほとんどのセル設計および適用例では、一般に、BET SSAは、約0.25m2/gから約1000m2/gに及ぶことが好ましいと考えられる。一部の設計では、BET SSAは、約1m2/gから約100m2/gに及ぶことが好ましいと考えられる。一部の設計では、BET SSAは、約1m2/gから約40m2/gに及ぶことが好ましいと考えられる。
【0087】
一部の設計では(特に、より高いBET SSE複合体では)、活性(例えば、インターカレーション型または変換型または混合型)材料は、保護表面(シェル)層によって保護される(電解質との望ましくない相互作用)ことが有利と考えられる。一部の設計では、保護表面層の適切な厚さは、約0.3nmから約60nmの範囲でもよい(例えば、一部の設計では、約0.3nmから約3nm;一部の設計では、約3nmから約6nm;一部の設計では、約6nmから約10nm;一部の設計では、約10から約20nm;一部の設計では、約20nmから約40nm;さらに、一部の設計では、約40nmから約60nm)。より小さい厚さは、一部の適用例でそれほど有効ではないと考えられ、一方、より大きい厚さは、一部の適用例で、低減した体積および重量エネルギー密度の低減した性能をもたらし得る。一部の設計では、保護表面層は、少なくともバッテリ組立てまたは動作の何回かにわたり、通常なら電解質に曝露され得る活物質(複数可)/粒子(複数可)の少なくとも一部分(例えば、外側面積の約1~100%)を、直接コーティングし得る。シェルが外側表面積を部分的に覆う(例えば保護材料が、通常なら開放細孔になり得るが保護表面層により閉鎖されているように、細孔を含む粒子表面領域を大部分覆うように選択的に付着される)、一部の設計では、保護表面層は、代わりに、細孔プラグ材料(シェルではなく)と特徴付けられてもよい。一部の実施例では、保護表面層は炭素を含んでもよい。一部の実施例では、保護表面層は、酸化物、フッ化物、オキシフッ化物、硫化物、窒化物、オキシ窒化物、窒化フッ化物、リン酸塩、フルオロホスフェート(ホスフェートフッ化物)、または金属もしくは半金属の原子を含む別の材料を含んでもよい。一部の設計では、保護表面層材料は、以下の元素:遷移、アルカリ、またはアルカリ土類金属(とりわけ、鉄(Fe)、マンガン(Mn)、銅(Cu)、イットリウム(Y)、ジルコニウム(Zr)、ニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)、クロム(Cr)、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、マグネシウム(Mg)、カリウム(K)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、セシウム(Cs)、バリウム(Ba)など)、ランタンまたはランタノイド(La、Ce、Gd、Nd、Euなど)、ベリリウム(Be)、アルミニウム(Al)、ケイ素(Si)、ガリウム(Ga)、ゲルマニウム(Ge)、リン(P)、ヒ素(As)、スズ(Sn)、ビスマス(Bi),鉛(Pb)、インジウム(In)、カドミウム(Cd)、亜鉛(Zn)、フッ素(F)、ヨウ素(I)、酸素(O)、窒素(N)、硫黄(S)、セレン(Se)、テルル(Te)、水素(H)、および炭素(C)の1種または複数を含んでもよい。
【0088】
一部の設計では(例えば、電極の均一性およびバッテリの安定性を最大限にするため)、そのような炭素を含む複合体電極粒子は、走査型電子顕微鏡(SEM)またはレーザ粒度分析器、あるいはいくつかの特徴的技法および数値分析/モデリングの組合せを使用して測定されるように、約5ナノメートル(nm)から約150ミクロン(一部の設計では、約200nmから約30ミクロン)の範囲にある体積平均特性寸法(例えば、直径)を示すことが有利となり得る。小さ過ぎる粒度は、一部の適用例で高い充填密度の実現に困難をもたらし得る。同時に、より小さい粒子の高い体積分率は、一部の設計で、電極の速度性能を遅くしかつより速いセル劣化をもたらし得る(特に、バッテリがより速い速度でまたはより低い温度で動作している場合)、小さい粒子間孔径ももたらし得る。一方、大き過ぎる平均粒度は、電極容量負荷の局所変動をもたらす可能性があり、一部の設計において、より速いセル劣化をもたらし得る(特に、バッテリが、より低い温度でまたはより速い速度で動作している場合)。複合体粒度、複合体中の細孔の相互接続性、ならびに複合体材料中のイオンおよび電子輸送は、粒子レベルの速度性能に影響を及ぼし得る。一部の設計では、大き過ぎる平均粒度は、不十分な(または所与の適用例への良好さが不十分な)充放電速度性能ももたらし得る。様々な電極および電解質特性、バッテリセル動作条件(例えば、電流、レート、温度、充電電圧、電極動作電位など)、複合粒子の多孔度および形状、およびその他のパラメータは、最適な複合体粒度に影響を及ぼし得るが、一部の設計では、そのような複合体電極粒子は、約200nmから約30ミクロン(一部の設計では-約0.2ミクロンから約1ミクロン;他の設計では、約1から約2ミクロン;さらに他の設計では、約2ミクロンから約5ミクロン;さらに他の設計では、約5ミクロンから約10ミクロン;さらに他の設計では、約10ミクロンから約30ミクロン)の範囲にある体積平均特性寸法を示すことが有利である。適切な電極レベル多孔度(例えば、ほとんど-電解質により満たされた電極中の空間の体積分率)は、バインダーの体積分率、導電性およびその他の添加剤の体積分率、および活性(複合体)粒子(およびそれらの開放多孔度)の体積分率、電解質の伝導度、電極の厚さ、バッテリ動作、およびその他の性質により影響を受ける可能性がある。そのような多孔度は、活物質または活物質を含む複合体がサイクル動作中に実質的な体積変化を示す場合、サイクル動作中に変化してもよい。しかしながら、約1体積%から約75体積%に及ぶ、そのような電極多孔度の値(例えば、一部の設計では-いわゆるバッテリ「形成」および品質管理段階後の0~10サイクル後;一部の設計では-電極の組立て/カレンダ掛けの後およびセル内への電解質浸潤の前)は、一部の適用例に許容されまたは有利である(一部の設計では-約1体積%から約10体積%;他の設計では約10体積%から約20体積%;さらに他の設計では約20体積%から約30体積%;さらに他の設計では約30体積%から約40体積%;さらに他の設計では約40体積%から約50体積%;さらに他の設計では約50体積%から約60体積%;さらに他の設計では約60体積%から約75体積%)。より小さい体積分率は、一部の適用例では、遅い充放電速度およびより速いセル劣化をもたらし得る。より大きい割合は、一部の適用例では、望ましくない状態で体積エネルギー密度、速度性能を低減させる可能性があり、バッテリコストを増大させる可能性がある。一部の設計では、適切な電解質で占有される(充填される)電極の体積分率は、有利に約1体積%から約755体積%に及ぶ可能性がある。一部の設計では、適切な電解質で占有される(充填される)電極の適切な体積分率は、さらに、より狭い範囲、約5体積%から約60体積%にあってもよい(またはさらに、より狭い範囲、例えば約10体積%から約40体積%)。
【0089】
一部の設計では、炭素を含む複合体電極粒子内の(非炭素)活物質の大部分(例えば、約70~100体積%)が、より小さい粒子の形をとってもよい(例えば、連続または不連続コーティングの形または炭素もしくはその他の(不活性なまたはそれほど活性ではない)材料で満たされた多孔質ユニボディの形ではなく)。一部の設計では、活物質粒子(炭素を含む複合体電極粒子内)の体積平均サイズは、有利には、約0.5nmから約200nmの範囲であってもよい(一部の設計では、約0.5nmから約5nm;他の設計では、約5nmから約10nm;さらに他の設計では、約10nmから約20nm;さらに他の設計では、約20nmから約40nm;さらに他の設計では、約40nmから約60nm;さらに他の設計では、約60nmから約100nm;さらに他の設計では、約100nmから約200nm)。サイズが大き過ぎると、一部の設計において十分に速い電気化学反応が得られない可能性があり、一方、サイズが小さ過ぎる、望ましくない副反応またはそのような複合体での活物質粒子の質量負荷が小さ過ぎたりする可能性があり、したがって一部の設計では、これらの複合粒子で構築されたエネルギー貯蔵デバイスのエネルギー特性が制限される。一部の設計では、活物質粒子(調製された炭素を含む複合体電極粒子)の結晶質粒の体積平均サイズは、回折または散乱技法(例えば、X線回折、XRD)または透過型電子顕微鏡法(TEM)またはその他の適切な技法を使用して分析されるように、有利には約0.5nmから約200nmに及ぶ可能性がある(一部の設計では、約0.5nmから約5nm;他の設計では、約5nmから約10nm;さらに他の設計では、約10nmから約20nm;さらに他の設計では、約20nmから約40nm;さらに他の設計では、約40nmから約60nm;さらに他の設計では、約60nmから約100nm;さらに他の設計では、約100nmから約200nm)。
【0090】
1つの例示的な実施例では:(i)(ii)ケイ素ナノ粒子を浸潤させかつ(iii)保護シェル化材料に包封された、多孔質炭素を含む、個々の粒子を持つLiイオンバッテリ用の多孔質複合体アノード粉末であって、そのような材料が閉鎖細孔を含んでいる粉末を、調製した。多孔質複合体アノード粉末のXRD測定は、3から158度2シータの0.5から10度/分の間の走査速度で、CuK-アルファ放射線源を利用するRigaku SmartLab回折計を使用して実行した。粉末XRDデータを、1.5406ÅのX線波長を使用する、Bragg-Brentanoジオメトリで収集した。様々な入射および検出器光学を使用し、特に2~15mmの間のビームマスクおよび0.5から5°の間のSollarスリットを使用した。2Dケイ素検出器を、全ての測定で使用した。Si(111)BraggピークのScherrer分析によれば、そのような多孔質複合体アノード粉末試料は、約2nmから約100nm(一部の複合粒子設計では、約2nmから約20nm;他の設計では、約20から約40nm;さらに他の設計では、約40から約60nm;さらに他の設計では、約60から約100nm)の範囲にある平均Si結晶子サイズを実証した。
【0091】
図2Aは、Siが多孔質炭素マトリックス材料内に埋め込まれている、一部の適切な複合粒子設計を示し、Si(111)BraggピークのScherrer分析を使用して決定された平均Si結晶子サイズは、約5nmから約16nmの範囲にある。
図2Aでは、種々のカラープロットは、生成された適切なSiおよびC含有複合体の種々の実験シリーズに対応する。
【0092】
図2Bは、多孔質炭素マトリックス材料内にSiが埋め込まれている、一部のその他の適切な複合粒子設計であって、Si(111)BraggピークのScherrer分析を使用して決定された平均Si結晶子サイズが、約3.5nmから約8.5nmの範囲にあった設計を示す。
【0093】
その他の適切な粒子設計およびさらに他の処理条件は、より大きい(一部の設計では、最大60~100nm)またはより小さい(約2nmまで下がる)平均Si粒度のいずれかをもたらし得る。一部の適切な粒子設計および処理条件では、複合粒子内のSiの少なくとも一部分が非晶質であってもよい。
【0094】
一部の設計では、そのような炭素含有組成物(例えば、活性(非炭素)材料も含んでいる複合粒子)中の炭素は、大部分(例えば、約90~100%)のsp2-結合炭素原子を含むことが有利となり得る(例えば、高い導電率を得るためにまたはその他の性能の利益のために)。一部の設計では、炭素は、十分に導電性である(例えば、その導電率は約1S/mから約106S/mの範囲にある)ことが有利となり得る(例えば、より速い速度性能に関し)。
【0095】
一部の設計では、活物質粒子(複合体炭素含有電極粒子の)は、好ましくは適切な炭素粒子の細孔の内側に位置付けられ(例えば、細孔によって閉じ込められ)てもよい。一部の設計では、複合粒子中の活物質の約50重量%から約100重量%が、炭素粒子内に画定された細孔内に閉じ込められてもよい。
【0096】
一部の設計では、複合体炭素含有および活物質含有電極粒子は、多孔質炭素を含んでもよい。一部のプロセス設計では、多孔質炭素粒子には、そのような炭素含有および活物質含有電極粒子(例えば、Si系活物質および/またはSiを含む活物質を持つ、Si含有複合体アノード粒子)を形成するための処理(または合成)段階の少なくとも1つで、活物質(または活物質粒子)を浸潤させてもよい。一部の設計では、そのような多孔質炭素は、特にLiイオンバッテリおよびその他の関連ある適用例で複合粒子を機能させる、特定の性質を示してもよい。
【0097】
一部の設計では、多孔質炭素(例えば、複合体形成に使用され、または最終的には複合体形成の過程で生成される)は、約400m2/gから約5,000m2/gの範囲にある(複合体の形成前)、平均のいわゆるBET比表面積(SSA)(CO2、N2、H2、またはArガス収着により測定される)を示すことが、有利となり得る。一部の設計では、多孔質炭素粒子は、気体収着(例えば、CO2、N2、H2、Arなど)またはその他の適切な測定によって決定されるように、約35体積%から約93体積%の範囲にある開放多孔度、および約0.3cm3/gから約6cm3/gの範囲にある全開放細孔体積(例えば、ボイド空間)を示すことが、有利となり得る。一部の設計では、適切なBET SSAは、バッテリでの活物質の化学および性質、セル製作手順、多孔質炭素内への活物質の浸潤に関わる処理、セル製作手順、およびその他の要因に応じて、約400m2/gから約1,000m2/gの範囲でもよく;さらに他の設計では、適切なBET SSAは、約1000m2/gから約2,000m2/gの範囲でもよく;さらに他の設計では、適切なBET SSAは、約2,000m2/gから約3,000m2/gの範囲でもよく;さらに他の設計では、適切なBET SSAは、約3,000m2/gから約4,000m2/gの範囲でもよく;さらに他の設計では、適切なBET SSAは、約4,000m2/gから約5,000m2/gの範囲でもよい。5,000m2/gよりも大きいBET SSAは、複合体の取扱いおよび生成を難しくする可能性があり、一部の設計では劣った性能をもたらす可能性もあり、ある場合には、生成し取り扱うのに高価過ぎる(バッテリ適用例に関し)可能性がある。400m2/gよりも小さいBET SSAは、望ましくないが速度性能および/または体積容量(またはキャパシタンス)または複合体のその他の重要な性質を、一部の電気化学エネルギー貯蔵適用例で制限する可能性がある。一部の設計では、適切な炭素細孔体積は、バッテリにおける活物質の化学および性質、セル製作手順、多孔質炭素内への活物質の浸潤に関わる処理、セル製作手順、およびその他の要因に応じて、約0.3cm3/gから約1cm3/gの範囲でもよく;他の設計では、適切な細孔体積は、約1cm3/gから約2cm3/gの範囲でもよく;さらに他の設計では、適切な細孔体積は、約2cm3/gから約3cm3/gの範囲でもよく;さらに他の設計では、適切な細孔体積は、約3cm3/gから約4cm3/gの範囲でもよく;さらに他の設計では、適切な細孔体積は、約4cm3/gから約5cm3/gの範囲でもよく;さらに他の設計では、適切な細孔体積は、約5cm3/gから約6cm3/gの範囲でもよい。一部の設計では、約6cm3/gよりも大きい細孔体積は、複合体を取り扱いかつ生成するのを難しくする可能性があり、一部の設計で劣った性能をもたらす可能性もあり、ある場合には、生成し取り扱うのが高価過ぎる(バッテリの適用例に関して)可能性がある。0.4cm3/gよりも小さい細孔体積は、望ましくないが速度性能および/または体積容量(またはキャパシタンス)あるいは一部の電気化学エネルギー貯蔵適用例での組成物のその他の重要な性質を制限する可能性がある。
【0098】
一部の設計では、多孔質炭素(適切な電極複合体の形成に使用され;例えば、活物質の浸潤に、または例えば活物質前駆体と複合体を作製し、その後、活物質前駆体を活物質に変換するなど)は、ほぼ球形の(またはほぼ楕円形の)細孔を含むことが有利となり得る。一部の設計では、そのようなほぼ球形の(またはほぼ楕円形の)細孔は、約2nmから約100nm(一部の設計では、約2nmから約20nm;他の設計では、約20nmから約100nm)の範囲にある平均孔径を示すことが有利となり得る。一部の設計では、そのようなほぼ球形の(またはほぼ楕円形の)細孔は、ミクロ細孔(大半が2nm以下の細孔を含む)炭素材料によって互いに分離されることが、有利となり得る。球形(またはほぼ球形)細孔は、より良好な機械的性質(例えば、スリット形状の細孔と比較して)を示し、体積変化を示す活物質(例えば、SiまたはSnなど)で満たされた場合、機械的完全性をより良好に維持し得る。そのような(例えば、比較的大きい)球形細孔を、互いにおよび複合粒子の表面から分離することは、それらを密封して電解質との望ましくない相互作用を防止するのに役立ち得る。個々の球形細孔を分離する材料における、概ね2nm以下の細孔は、一部の設計では、概ねスリット形状を示し得る。一部の設計では、球形細孔を分離する、概ねミクロ細孔の炭素「壁」の平均厚さは、約1nmから約100nmの範囲であってもよい(例えば、一部の設計では、約1nmから約10nm;他の設計では、約10nmから約20nm;他の設計では、約20nmから約50nm;さらに他の設計では、約50nmから約100nm)。一部の設計では、そのようなミクロ細孔炭素「壁」の平均細孔体積は、例えば気体(例えば、N2またはCO2またはH2またはArなど)収着技法によって決定されるように、約0.05cc/gから約1.20cc/g(一部の設計では、約0.05cc/gから約0.25cc/g;他の設計では、約0.25cc/gから約0.5cc/g;他の設計では、約0.5cc/gから約0.75cc/g;さらに他の設計では、約0.75cc/gから約1.20cc/g)の範囲であってもよい。小さ過ぎる細孔体積は、望ましくないが全炭素細孔体積またはそのような粒子に活物質(例えば、Si)を浸潤させる能力を低減させる可能性があり、または速度性能もしくは複合体の安定性を低減させる可能性があり;一方、大き過ぎる細孔体積は、望ましくないが(例えば、Siを含む)複合体の機械的性質を低減させまたはサイクル安定性を低減させ得る。
【0099】
一部の設計では、多孔質炭素(適切な電極複合体の形成で使用される;例えば、活物質による浸潤で、または例えば活物質前駆体で複合体を作製し、およびその後に活物質前駆体を活物質に変換するのに使用されるなど)は、化学組成、エネルギー分散型分光法(EDS)、熱重量分析(TGA)、燃焼分析器、X線光電子分光法(XPS)、またはその他の適切なメカニズムにより決定されるように、複合体を形成する前に、約90重量%よりも高い組成物の純度(例えば、10重量%未満の非炭素種)を示すことが有利となり得る。一部の設計では、約96重量%よりも高い純度が、一部の設計ではさらに有利である。一部の設計では、バッテリセルを使用する前に、約98~99重量%よりも高い炭素純度がさらに有利となり得る。一部の設計では、炭素中のいわゆる「灰」含量は、そのような炭素をバッテリ電極で使用する前に(一部の設計では、活物質を浸潤させる前に)、好ましくは約10重量%未満(例えば、好ましくは約4重量%未満、より好ましくは約2重量%未満、さらにより好ましくは約1重量%未満、最も好ましくは約0.25重量%よりも下)であるべきである。一部の設計では、様々な不純物(例えば、K、S、Ca、Na、Zn、P、Oなど)の、より高い含量は、副反応を誘発する可能性があり、サイクル安定性を著しく低減させる可能性があり(特に、高温で)、早期故障を誘発させる可能性があり、重量および体積エネルギー貯蔵特性を低減させる可能性があり、電力密度を低下させる可能性があり、望ましくないがさらに大きいセル間またはバッチ間のばらつきをもたらす可能性があり、電気化学セル(例えば、Liイオンバッテリ)の性能特性を低減させる、おそらくは何らかの種類のその他の望ましくない結果を、誘発させる可能性がある。一部の設計では、高純度多孔質炭素を得るために、化学的(例えば、酸における処理)および熱的(例えば、約800℃から約2000℃の温度での熱処理ならびに不純物の蒸発)精製段階の組合せを使用すること、または低含量灰炭素前駆体を使用することが有利となり得る。
【0100】
一部の設計では、多孔質炭素は、約10重量%未満(例えば、好ましくは約2重量%未満、より好ましくは約1重量%未満;さらにより好ましくは約0.5重量%未満)の水素原子(例えば、その構造内にまたは官能基の部分として存在する)を含むことが重要と考えられる。一部の設計では、より高い水素含量(例えば、約2~10重量%よりも高い)は、望ましくない気体の形成およびセルの膨潤、低減した容量利用率、低減したサイクル安定性、より高い第1のサイクル損失、および/または性能特性のその他の望ましくない低減をもたらし得る。一部の設計では、複合体炭素含有電極粒子(例えば、アノード材料の場合には、Si系活物質および/またはSiを含む活物質を含む、Si含有粒子)は、約10重量%未満(例えば、好ましくは約2重量%未満、より好ましくは約1重量%未満;さらにより好ましくは約0.5重量%未満)の水素原子を含むことが重要と考えられる。水素含量は、水素分析器、滴定、核反応分析(NRA)、Devanathan-Stachurski法、燃焼炭素水素窒素(CHN)分析、機器気体分析(IGA)、走査型Kelvinプローブフォース顕微鏡法(SKPFM)、およびその他の適切な特徴付けメカニズムを使用することにより、決定されてもよい。
【0101】
意外にも、炭素含有電極複合体の形成のために使用される(または形成において使用される)炭素(例えば、多孔質炭素)の熱特性は、Liイオンバッテリおよび関連ある適用例でのその性能の重要な指標であることが見出された。一部の設計では、炭素含有複合体の形成のために使用される(または形成において使用される)炭素(例えば、多孔質炭素)は、好ましくは、真空中またはArガスなどの不活性環境での、数時間(例えば、約1時間から約6時間)にわたるアニールにより、それよりも高い温度ではXRDがグラファイト化(グラファイトピークの形成)を形成する特定の範囲の結晶化発生温度を、示してもよい。一部の設計では、結晶化発生温度は、好ましくは約1400℃から約2400℃まで様々であってもよい(一部の設計では、約1400℃から約1600℃;他の設計では、約1600℃から約1800℃;さらに他の設計では、約1800℃から約2000℃;さらに他の設計では、約2000℃から約2200℃;さらに他の設計では、約2200℃から約2400℃)。一部の設計では、炭素XRD d(002)ピークは、上昇する熱アニール温度の関数として、約4.4~4.2Åから約3.4Åにシフトし得る。約1400℃よりも低いまたは約2400℃よりも高い多孔質炭素の結晶化発生温度は、望ましくないがLiイオンバッテリおよび関連する適用例で炭素含有複合粒子の劣った性能をもたらす可能性がある。
【0102】
一部の設計では、炭素含有電極複合体の形成のために使用される(または形成で使用される)炭素(例えば、多孔質炭素)のミクロ構造は、Liイオンバッテリおよび関連ある適用例でのその性能の重要な指標であることが見出された。一部の設計では、炭素の(002)間隔が、複合体およびその環境の様々なその他のパラメータならびにLiイオンバッテリにおける電気化学的動作電位に応じて、好ましくは約4.40Åから約3.45Å(一部の設計では、約4.40Åから約4.00Å;他の設計では、約4.00Åから約3.80Å;さらに他の設計では、約3.80Åから約3.60Å;さらに他の設計では、約3.60Åから約3.45Å)に及ぶべきことが見出された。
【0103】
図3Aは、1800℃でのアニールによる鋭いd(002)XRDピークの形成によって示されるように、真空での約1時間のアニールによる、1600℃から1800℃の間の結晶化発生温度を示す、2つの適切な多孔質炭素試料の実施例を示す。
図3Bは、2200℃のアニールでの鋭いd(002)XRDピークの形成によって示されるように、真空での約1時間のアニールによる約2100℃から約2200℃の間の結晶化発生温度を示す、適切な多孔質炭素の別の実施例を示す。
図3Cは、約3.34Åであるグラファイトの場合を超える(002)炭素間隔を示す、適切な多孔質炭素の別の実施例を示す。
【0104】
炭素含有組成物の、ある特定の物理的および化学的性質は、セルにおけるそれらの性能と十分に相関することが見出された。そのような性質は、活物質の組成およびセルの構成および動作パラメータ(例えば、とりわけ電解質、アノードおよびカソードでのそのような組成物の量、面積容量負荷、セル動作温度、充電速度、電圧範囲)に特異的であってもよい。その結果、例示的な例として、Si系活物質(例えば、ほぼ純粋なSi)を持つ炭素含有複合体のある特定の性質は、アノードでのそれらの優れた性能を容易にするものが開示される(例えば、グラファイト状炭素材料と一緒のアノードの成分として、または炭素系導電性添加剤中の非常に小さいLi貯蔵とは別の、アノード中のLi貯蔵材料のみのいずれかとして)。
【0105】
一部の設計では、活性(イオン貯蔵)材料(例えば、Si系活物質などを含む)と炭素との両方を含むそのような複合体(例えば、複合粒子の形をとる)は、比較的小さい割合の水素を有することが有利となり得る。一部の設計では、水素の割合は、複合粒子の全重量の、好ましくは約0.00重量%から約1.00重量%の範囲であってもよい(一部の設計では、約0.05重量%よりも下;一部の設計では、約0.05重量%から約0.35重量%;さらに他の設計では、約0.35重量%から約1.00重量%)。高過ぎる水素の割合は、望ましくないが過剰な第1のサイクル損失およびより速い劣化を引き起こし得る。Hの非常に低い割合は、炭素含有複合体のその他の所望の構造的、化学的、物理的、およびその他の性質が提供されるものを、得るのを困難にする可能性がある。
【0106】
一部の設計では、活性(イオン貯蔵)材料(例えば、Si系活物質を含む)および炭素の両方を含むそのような複合体(例えば、複合粒子の形をとる)は、比較的小さい割合の窒素を有することが有利となり得る。一部の設計では、窒素(N)元素の割合は、複合粒子の全重量の、好ましくは約0.00重量%から約5.00重量%の範囲であってもよい(一部の設計では、約0.5重量%よりも下;他の設計では、約0.5重量%から約1重量%;さらに他の設計では、約1重量%から約2.50重量%;さらに他の設計では、約2.5重量%から約5.0重量%)。Nの高過ぎる割合は、望ましくないが過剰な第1のサイクル損失およびより速い劣化を引き起こし得る。非常に低いNの割合は、炭素含有複合体のその他の所望の構造的、化学的、物理的、およびその他の性質を得るのを困難にする可能性がある。
【0107】
一部の設計では、活性(イオン貯蔵)材料(例えば、Si系活物質などを含む)および炭素の両方を含むそのような複合体(例えば、複合粒子の形をとる)は、比較的小さい割合の酸素を有することが有利となり得る。一部の設計では、酸素(O)の割合は、複合粒子の全重量の、好ましくは約0.00重量%から約5.00重量%の範囲であってもよい(一部の設計では、約0.01重量%よりも下;他の設計では、約0.01重量%から約0.25重量%;さらに他の設計では、約0.25重量%から約2重量%;さらに他の設計では、約2重量%から約5.0重量%)。Oの高過ぎる割合は、望ましくないが過剰なサイクル損失およびより速い劣化を引き起こす可能性がある。Oの非常に低い割合は、提供される炭素含有複合体のその他の所望の構造的、化学的、物理的、およびその他の性質を得るのを困難にする可能性がある。
【0108】
比較的不活性の窒素ガス(N2)中にSi(またはSi系)活物質を持つ(例えば、多孔質)炭素形複合体のアニール中の窒素(N)取込みの値は、Liイオンバッテリ中の炭素含有電極複合体の性能に十分相関することが、予期せず見出された。例えば一部の設計では、1050℃で2時間にわたる窒素ガス(N2)中での、適切な炭素系およびSiを含む複合体(例えば、Si系活物質および/またはSiを含む活物質を持つ複合粒子)のアニール中に、複合体は、活物質(例えば、Si系活物質および/またはSiを含む活物質など)粒度、割合、セル設計、およびその他の要因に応じて、複合体の全重量の約1.5重量%から約25重量%の窒素範囲にある窒素の取込み(炭素構造内への取込み)を示し得ることが、好ましいと考えられる(一部の設計では、約1.5重量%から約2.5重量%;他の設計では、約2.5重量%から約7.5重量%;さらに他の設計では、約7.5から約15重量%;さらに他の設計では、約15重量%から約25重量%)。少な過ぎるまたは多過ぎるいずれかの窒素の取込みは、望ましくないセル性能(例えば、より低いサイクル寿命;より低い性能;より低い第1のサイクル効率など)を引き起こし得る。他の実施例では、適切な炭素系およびSiを含む複合体は、複合粒子を含む粉末に関して測定されるように、窒素ガス(N2)中、1050℃で2時間にわたり加熱したとき、平均して約1.5重量%から約25重量%の窒素(N)の取込みを示す。例えば粉末は、炭素系およびSiを含む複合粒子のほとんど(例えば、全てまたは実質的に全てまたは大部分など)含んでもよい(例えば、そのような測定に寄与する粒子の大きい統計的数値)。
【0109】
別の実施例では、一部の設計において、850℃の窒素ガス(N2)中で2時間にわたる、適切な炭素系およびSiを含む複合体(例えば、Si系活物質および/またはSiを含む活物質を持つ複合粒子)のアニール中に、複合粒子は、複合体中の活物質(例えば、Si系活物質および/またはSiを含む活物質など)粒状粒子のサイズ、複合体中の活物質の重量%、セル設計、およびその他の要因に応じて、複合体の全重量の約0.5重量%から約10重量%の窒素範囲にある窒素の取込み(炭素構造への組込み)を示し得ることが(一部の設計では、約0.5重量%から約2.5重量%;他の設計では、約2.5重量%から約7.5重量%;さらに他の設計では、約7.5から約10重量%)、好ましいと考えられる。少な過ぎるまたは多過ぎるいずれかの窒素の取込みは、望ましくないセル性能(例えば、より低いサイクル寿命;より低い速度性能;より低い第1のサイクル効率など)を引き起こし得る。N2中でそのようなアニールを実行することは、Liイオンバッテリアノードでの優れた性能のため、そのようなSiおよびC含有複合体の形成のための処理および合成経路を調整するのを可能にし得る。
【0110】
図4は、N
2ガス中で2時間、例示的な適切な炭素含有複合粉末(Si系活物質を含む)をアニールすることによる、窒素(N)の取込みの例示的な実施例を示す。より高いアニール温度は、より大きいN
2の取込みをもたらす。測定誤差は、約1.5重量%未満になると推定される。
【0111】
比較的不活性の窒素ガス(N2)またはアルゴンガス(Ar)中での、例えば高温で2時間にわたる、Si系および/またはSiを含む活物質を持つ(例えば、多孔質)炭素系複合体のアニールは、典型的には炭化ケイ素(SiC)結晶の形成をもたらし、これはX線回折(XRD)によりまたはフーリエ変換赤外分光法(FTIR)によりまたはその他の適切な技法で検出することができる。一部の実現例では、多孔質複合粒子は、XRDまたはFTIRまたはその他の適切な技法により検出されるように、窒素ガス(N2)中でまたはアルゴンガス(Ar)中で、約750℃から約950℃の温度範囲で2時間にわたりまたはそれよりも長く加熱したとき、約1重量%から約100重量%の炭化ケイ素(SiC)を形成する。SiCの合計重量は、適切な較正標準を使用することによって、特定され得る。一部の設計では、測定精度を高めるため、試料中に残るSiまたはCを酸化することが有利となり得る。SiCが形成される最低温度は、Liイオンバッテリにおける炭素含有電極複合体の性能に相関することが、予期せず見出された。例えば一部の設計では、N2ガス中で2時間の適切な炭素系およびSiを含む複合体のアニール中、XRDによりSiCを検出する(例えば、バックグラウンドを差し引いた後の、約28度でのSi(111)XRDピークの少なくとも10%の強度で、約35度の2シータでSiC(111)XRDピークを有する)のに必要な最低温度は、好ましくは約750℃から約950℃の範囲であってもよいことが(一部の設計では、約750℃から約875℃;他の設計では、約875℃から約950℃)、好ましいと考えられる。SiC形成温度が高過ぎるまたは低過ぎると、通常、Liイオンバッテリアノードの性能が低下する。
【0112】
図5は、種々の温度のN
2中でアニールされた、適切な炭素系のSiを含む複合体のXRDパターンの例示的な実施例を示し、かつ約850℃でのSiC形成を示す。
【0113】
750℃の比較的低い温度のN2ガス中で2時間の、適切な炭素系のケイ素含有アノード複合体(例えば、粉末の形をとる)のアニールによる比容量(単位mAh/gで測定される)の低減(単位%)は、Liイオンバッテリでのそれらの性能(例えば、サイクル安定性、カレンダ寿命、速度性能など)に相関することが、予期せず見出された。例えば一部の設計では、N2中での2時間のアニール中の容量低減は、約2%から約25%(一部の設計では、約2から約12%;他の設計では、約12から約25%)に及ぶことが好ましいと考えられる。そのような条件でのアニール後の比容量の、低過ぎるまたは高過ぎる低減は、Liイオンバッテリアノードでの低下した性能特性を引き起こし得る。したがって、適切な炭素含有およびケイ素含有複合体アノード粒子の形成に関する、合成および処理条件は、適正な容量低減が得られるように調整され得る。
【0114】
一部の設計では、多孔質炭素含有複合体(例えば、とりわけSi系またはSiを含む活物質の部分として、Siを含む)の優れた性能は、粒子の直径(断面)を横断して可変多孔度を示すことが、好ましいと考えられる。一部の設計では(例えば、Si系および/またはSiを含む活物質など、活物質がサイクル動作中に実質的な体積変化を示すとき)、粒子の中心部分は、表面にさらに近い粒子の部分と比較して、より大きい細孔体積(例えば、活物質の分率または活物質および炭素を組み合わせた分率に対して、細孔の大きい体積分率)を含むことが好ましいと考えられる。
【0115】
一部の設計では、多孔質炭素含有複合体(例えば、とりわけ活物質としてSiを含む)の優れた性能は、アルゴン(Ar)ピクノメトリまたは一部の設計では窒素(N2)ピクノメトリを使用して測定されたとき、閉鎖細孔およびある特定の範囲の真の密度を含むことが好ましいと考えられる。一部の設計では、炭素を含む複合体(粒子)中の活物質が、Si系またはSiを含む活物質であるとき(例えば、SiまたはSi合金またはSi系酸化物または窒化物またはオキシ窒化物またはそれらの様々な組合せ(好ましくは、BET SSAが約1m2/gから約40m2/gの範囲にあるとき))、そのような複合体の真(Arピクノメトリで測定されたまたはN2ピクノメトリで測定された)の密度は、約0.9g/cm3から約2.2g/cm3に及ぶことが好ましく、最適な値は、他のパラメータの中でも、Si系またはSiを含む活物質の割合およびタイプ、その他の元素(例えば、金属)の存在に、依存すると考えられる。一部の設計では、そのような密度は、好ましくは約0.9g/cm3から約1.4g/cm3;他の設計では約1.4g/cm3から約1.8g/cm3;さらに他の設計では約1.8g/cm3から約2.2g/cm3)の範囲でもよい。低過ぎるまたは高過ぎる密度は、劣った性能(例えば、望ましくない高速劣化、低速性能、高損失など)をしばしば引き起こし得る。
【0116】
一部の設計では、Si系またはSiを含む活物質(例えば、SiまたはSi系活物質(他の適切な活性アノード材料の中で))を含む多孔質炭素含有アノード複合体は、そのような複合粒子の断面に関してエネルギー分散型分光法(EDS)により測定されるように、活物質(例えば、Si)およびCの比較的均一な分布を示すことが好ましい(Liイオンバッテリアノードでの優れた性能のため)と考えられる。特に、20~100nmの表面層とは別に、一部の設計では、複合粒子の断面に関するEDSマッピング(例えば、約2~50nmの横方向分解能による)は、平均Si:C比(複合粒子中の全元素状Siおよび全元素状Cの)(例えば、一部の設計では、5:1から1:5の範囲にあってもよい)から約50%未満の偏差を示すことが好ましいと考えられる。
【0117】
一部のセル設計では、多孔質炭素含有アノード複合体(例えば、他の適切な活性アノード材料の中で、SiまたはSi系またはSiを含む活物質を含む、複合体)は、アノードの形成において、インターカレーション型アノード材料(例えば、合成/人工または天然グラファイト、軟質炭素、カード炭素、およびそれらの様々な組合せ)と組み合わせて使用されることが好ましいと考えられる。一部の設計では、多孔質炭素含有アノードにより提供される面積容量の適切な割合は、約10%から約100%の範囲であってもよい。例えば一部の設計では、言ってみれば3.5mAh/cm2の面積容量を持つLiイオンバッテリアノードでは、多孔質炭素含有アノード複合体は、約0.35mAh/cm2から約3.5mAh/cm2の面積容量を提供し得る。一部の設計では、多孔質炭素含有アノード複合体は、他の要件の中でも、サイクル動作中の炭素含有アノード複合体の体積変化、セルの設計(例えば、積層された対巻かれた)、セル動作条件(例えば、温度、充電速度、放電速度、パルス電流要件など)、面積容量負荷、サイクル寿命およびカレンダ寿命に関する要件、充電速度に関する要件、電解質または電解質添加剤の選択の制限、使用される銅箔のタイプ;全面積負荷に応じて、約10%から約25%の面積容量を;他の設計では、約25%から約50%の面積容量を;さらに他の設計では、約50%から約75%の面積容量を;さらに他の設計では、約75%から約100%の面積容量を提供し得る。
【0118】
一部の設計では、SiまたはSi系活物質を含む多孔質炭素含有アノード複合体は、ある特定のミクロ構造、構造的、熱的(またはより一般には、物理的)および化学的性質、ならびにその成分(例えばSi系またはSiを含む活物質または炭素)のある特定のミクロ構造的、構造的、熱的(またはより一般には、物理的)および化学的性質を示すことが、好ましいと考えられる(Liイオンバッテリアノードにおける優れた性能に関して)。
【0119】
予期せずに、炭素含有電極複合体の形成に関して使用される(または形成において使用される)炭素(例えば、多孔質炭素)のミクロ構造的形体は、Liイオンバッテリおよび関連ある適用例でのその性能の重要な指標であることが見出された。したがって炭素の適切な処理は、一部の設計で優れた性能に向けてある特定のミクロ構造形体を得るために、好ましくは実行されるべきである。原子対相関関数分析は、特に洞察力あるものであることが見出された。
【0120】
原子対相関関数(APDF)または原子PDF分析は、「全散乱分析」とも呼ばれるXRD技法である。本明細書で、本発明者らは時々、APDFをPFDと呼ぶ。最も一般的には、XRD実験は、とりわけ相の特定、組成物、純度、格子パラメータ、原子転位、歪み、結晶子サイズ、結合長、および角度を実行するために、結晶質材料内の周期構造からX線のBragg回折内に保持される結晶学的情報に焦点を当てる。しかしながら多くの設計製作された材料は、完全結晶の場合から逸れる、それらの構造の多くの態様を示し;例えば非常に少ないまたはさらに非ロングレンジ構造コヒーレンスを示す。
【0121】
X線構造特徴付けに対する全散乱手法は、Bragg(結晶質材料に関するコヒーレント散乱)および拡散散乱(インコヒーデント散乱)の両方を考慮する。回折実験における散乱の全合計を分析するとき、追加の補正は、いくつか挙げると、典型的にはCompton散乱、空気散乱、および蛍光から得られるバックグラウンドを説明するのに使用される。この正規化関数をI(Q)と称し:
【数1】
としてさらに定義することができる。
【0122】
Compton散乱をこの関数から差し引くには、試料の化学組成の知識が必要である。散乱ベクトルI(Q)の関数としてのX線散乱の強度は、典型的にはさらに正規化されて試料のX線吸光度を補正し、関数S(Q)をもたらし、ここでS(Q)は:
【数2】
と定義され、式中、S(Q)は、試料中の原子当たりの入射束によって正規化された試料からの回折であり、全散乱構造関数と称される。方程式2において、<b>は、試料中の原子の平均散乱因子である。Qは、散乱波ベクトルと入射波ベクトルとの間の差である散乱ベクトルである。散乱ベクトルQの大きさは、4π sinθ/λによって与えられ、式中、2θは入射光と散乱X線との間の角度であり、λはX線波長である。
【0123】
X線回折は、単位がÅ
-1のデータをもたらす逆格子空間測定であり、一方、原子対相関関数は、単位がÅの実空間関数である。
【数3】
【0124】
二体分布関数G(r)は、全散乱構造関数S(Q)のフーリエ変換である。その位置がフーリエ変換パラメータオとは独立している二体分布関数G(r)のピークは、実空間での原子-原子対を表し、それらの間の実空間距離の単位はÅである。これらのピークの存在は、統計的に有意な原子集団があることを示し、これらの実空間原子-原子分離距離を示している。全散乱実験は、材料内の最小構造コヒーレンスを必要とし、したがって非晶質、ナノ結晶質、または低秩序材料であって炭素(例えば、多孔質炭素)を含むものの分析に関する優れた技法である。詳細な構造情報は、モデルをベースにした手法が利用されないときに、APDFから得られてもよい。G(r)の直接分析によってプローブされ得る一部の構造特性は:散乱ドメインサイズ、配位数、原子密度、ならびに様々な原子-原子対全体にわたるピーク分析および定量的比較からの広く様々な情報である。散乱ドメインサイズは、構造的コヒーレンスがもはや存在しない半径方向距離を観察することによって決定されてもよい。配位数は、そのピークの強度が原子-原子対の量の直接的尺度であるので、G(r)におけるピークの積分を通して入手可能である。炭素質材料の文脈において、このことは例えば、これらに関する配位数がそれぞれ3および4であるので、sp2:sp3炭素比の決定をもたらし得る。原子密度、材料中の捕捉多孔度により影響を受けないという点に関して巨視的測定技法とは真に異なる値は、G(r)の慎重な分析を通して見出され得る。原子密度の決定は、材料における第1の原子-原子相互作用の場合より下の半径方向距離でG(r)=0であるという事実に依拠する。これらの低い半径方向距離で、G(r)=-4πρ0r2の勾配は、G(r)の線形当てはめにより原子数密度を直接決定するのを可能にする。最後に、情報のリッチ集合は、G(r)内のピークの分析によって得られてもよい。構造分析に関する顕著なピークメトリックスの例には:ピーク位置、半値全幅、ピーク高さ、ならびに様々な原子-原子対全体にわたる幅と高さの比が含まれる。
【0125】
データの分析では、二体分布関数G(r)を動径分布関数、R(r)に変換するのが一般的であることにも留意されたい。二体分布関数、G(r)と動径分布関数、R(r)との間の関係は。下記の通りである(ρ0は、オブジェクトにおける散乱体の数密度である):
R(r)=G(r)r+4πr2ρ0 (式4)
【0126】
R(r)への数学的変換の後、そこから面積、幅、高さ、および位置が利用可能であるガウス関数を使用して、問題となっているピークを適合することは単純明快である。
【0127】
一部の例示的な実施例では、シンクロトロンXRDデータを、(i)炭素(多孔質炭素)およびSi活物質の両方を含む、適切な複合体アノード粉末に関して、および(ii)適切な複合体電極粉末の形成に利用される適切な多孔質材料に関して収集した。そのようなXRD実験は、Argonne National LaboratoryのAdvanced Photon Sourceで、ビームライン11-IDで実行した。0.21150ÅのX線波長を使用した。収集されたデータは、さらなる分析のためGSASIIソフトウェアを使用して適合し積分された2Dプレート画像であった。データを、1から5分の収集時間で、1000mmおよび180mmの検出器距離で収集した。
【0128】
フーリエ変換を、以下の変換条件で、xPDFsuiteを使用して実行した。回折データをQにプロットし、このQは、X線波長/エネルギーから独立して回折データについて論じる散乱の瞬間を記述するベクトルであり(Q=4π・sin(シータ)/λ)、式中、λはX線波長である。Qmax(機器)は、オングストロームの逆数として意味のある入力強度に関する最大Qカットオフ(特定の機器に関して)である(いくつかのデータファイルは、末尾のゼロまたは信頼性のない強度を検出器範囲の上界で含有してもよく、したがってQmax(機器)は、信頼性あるデータに関して閾値を定めることに留意されたい)。このパラメータは、S(Q)データの多項式フィット補正の上界としても使用される。Qmax(機器)は、フーリエ変換で使用されるQmaxとは独立して定義される。Qminは、オングストロームの逆数でF(Q)曲線のフーリエ変換に関する下方Q限界である。Qmaxは、オングストロームの逆数でF(Q)曲線のフーリエ変換に関する上方Q限界である。rポリは、F(Q)補正多項式における最大周波数に関するr限界である。二体分布関数(PDF)は、より短いrで信頼性がない可能性があり、しかしながら非常に小さいrポリは、多項式補正ができず、ノイズのあるPDFを与える可能性がある。より大きい値は、より高い程度の多項式でより近い当てはめを生成すると考えられるが、大き過ぎるとき、それらはデータにおける有用なシグナルを平滑化し得る。デフォルトは、0.9に設定した。rステップは、オングストロームで計算されたPDFに関するr格子の間隔である(G(r)における点の数)。
【0129】
xPDFソフトウェアを使用して収集されたデータに関して実行されたフーリエ変換は、下記の条件および仮定に適合する:(i)変換前に、収集データを、空のポリイミド(KAPTON)毛管試料ホルダから差し引くことによって補正して、試料ホルダおよび空気散乱効果から寄与を除外した;(ii)適切な高純度多孔質炭素材料は、炭素のみ含むと見なした(分析に使用される以下の値:Qmax(機器)=29.0;Qmin=0.99984;Qmax=23.4697;Qmaxは、F(Q)における偽のアーチファクトが切り捨てられるように、およびF(Q)が0で終わるように選択され;rステップ=0.01;rポリ=0.8898);(iii)高純度炭素および高純度Si活物質の両方を含む適切な複合体アノード粉末は、誘導結合プラズマ質量分光法(ICP-MS)、誘導結合プラズマ光放出分光法(ICP-OES)、重量バーンアウトデータ、合成中の質量利得記録、およびその他の方法などのその他の技法の組合せにより慎重に決定された原子比で炭素およびケイ素のみ含むとみなされ(分析に使用される下記の値:Qmax(機器)=28.998;Qmin=0.71731;Qmax=23.0;Qmaxは、F(Q)における偽のアーチファクトが切り捨てられるようにかつF(Q)が0で終わるように選択され;rステップ=0.01;rポリ=0.9);(iv)方程式4でのG(r)からR(r)への変換に関するρ0決定は、r=0とr=0.75Åとの間のG(r)の勾配の非線形最小二乗(nls)適合を通して実現し;いくつかの調節は、低い半径方向距離で構築された任意の集中誤差を説明するために行って、R(r)がR(r)=0よりも下に落ちないようにした。ドメインサイズ(干渉的に散乱する構造ドメインのサイズ、ビーム経路内の材料全体を平均する)を、PDFデータから計算した。ドメインサイズ(r)は、約±0.01よりも下に下がる関数G(r)によって定義されるように、それよりも上では実質的な干渉の損失を観察する寸法(r)を、推定した。結晶質ナノ粒子の場合、干渉長さはナノ粒子サイズに等しいが、欠陥を持つまたは直径依存型構造緩和を持つナノ粒子の場合、干渉長さはナノ粒子サイズに等しくないことに、留意されたい。したがって、散乱干渉長さは、より大きくなり得る平均ナノ粒子サイズに堅牢な下界を置く(「少なくともこのサイズで」)。これは特に、典型的にはScherrer分析を使用して分析することができないBragg散乱(例えば、非晶質または高度にゆがんだ)を示さない材料に有用である。
【0130】
炭素含有電極複合体(例えば、複合粒子)の形成のために使用される(または形成で使用される)適切な炭素(例えば、多孔質炭素)の平均ドメインサイズは、好ましくは(セル内の良好な性能のため)、約10Åから約60Åの範囲でもよく、最も好ましいドメインサイズは、複合体組成物およびミクロ構造(例えば、活物質のタイプおよび量(例えば、Si対LTO対LiF/Fe対NaCl対FeF3など)、活物質粒子のサイズ、活物質の体積膨張、副動態中に残される細孔体積、孔径など)、ならびに特定のセル設計およびセル動作条件(例えば、サイクル動作中の電気化学電位、活性イオンのタイプ(例えば、Li+対Na+)、動作温度など)に依存する。一部の設計では、炭素におけるそのような適切なドメインサイズは、好ましくは約10Åから約15Å;他の設計では、約15Åから約25Å;さらに他の設計では約25Åから約30Å;さらに他の設計では、約30Åから約40Å;さらに他の設計では、約40Åから約50Å;さらに他の設計では、約50Åから約60Åの範囲でもよい。そのようなシンクロトロンXRD測定およびPDF分析は、炭素材料(例えば、適正な合成/処理条件を選択するため)または炭素含有複合体(例えば、Si系またはSi含有活物質を持つ)のいずれかに関して実行されてもよい(例えば、複合体中の適切な炭素の存在または保持を検出するため)。
【0131】
図6A~6Bは、(601)約15Åから約19Åの間(干渉の損失は、G(r)=±0.01よりも下に落ちる関数として定義される);(602)約19Åから約22Å;(603)約24Åから約28Åの間;(604)40Åから55Åの散乱ドメインサイズを持つ適切な炭素のPDF分析の例示的な実施例を示す。そのようなシンクロトロンXRD測定およびPDF分析は、炭素材料(例えば、適正な合成/処理条件を選択するため)または炭素含有複合体(例えば、とりわけSi系またはSi含有活物質)のいずれかに関して実行されてもよい(例えば、複合体中の適切な炭素の存在または保持を検出するため)。
【0132】
図7は、散乱ドメインサイズが約17.5Å、約21Å、約26Å、および約45Åである適切な炭素のPDF分析の、例示的な実施例を示す。
【0133】
一部の設計では、適切な炭素含有および適切な活物質含有電極複合体(例えば、複合粒子)の平均散乱ドメインサイズは、好ましくは(セルにおける良好な性能に関し)約1nmから約40nmに及び、その最も好ましいドメインサイズは、複合体の組成およびミクロ構造(例えば、活物質のタイプおよび量(例えば、Si系対Si含有対LTO対LiF/Fe対NaCl対FeF3など)、活物質粒子のサイズ、活物質の体積膨張、複合体に残されている細孔体積、孔径など)および特定のセル設計およびセル動作条件(例えば、サイクル動作中の電気化学電位、活性イオンのタイプ(例えば、Li+対Na+)、動作温度など)に依存する。一部の設計では、そのような適切なドメインサイズは、約1nm(10Å)から約5nm(50Å);他の設計では、約5nmから約10nm;さらに他の設計では、約10nmから約20nm;さらに他の設計では、約20nmから約40nmの範囲であってもよい。
【0134】
適切な炭素含有電極複合体(例えば、複合体カソードまたはアノード粒子)中の活物質(例えば、Liイオンバッテリ用のアノードの場合、Si系および/またはSiを含む活物質)の平均散乱ドメインサイズは、好ましくは(セルにおける良好な性能に関し)約1nmから約40nmの範囲であってもよく、その最も好ましいドメインサイズは、複合体の組成およびミクロ構造、特定のセル設計、およびセル動作条件に依存する。一部の設計では、そのような適切なドメインサイズは、約1nm(10Å)から約5nm(50Å);他の設計では、約5nmから約10nm;さらに他の設計では約10nmから約20nm;さらに他の設計では約20nmから約40nmの範囲であってもよい。
【0135】
図8は、(i)炭素含有電極複合体の形成で使用される適切な炭素(この実施例では、適切な多孔質炭素)および(ii)Si系活物質を含む2つの炭素含有アノード複合体の、PDF分析の例示的な実施例を示す。1つの例示的な実施例では、複合体ドメインサイズは、約2.5nm程度である(Siドメインサイズにより制限される)。別の例示的な実施例では、ドメインサイズは約3.5nm程度である(Siドメインサイズによって制限される;第1の実施例に対して増大するSi散乱ドメインサイズは、合成/処理条件からのずれに起因した)。その他の適切な処理条件は、Si散乱ドメインサイズをさらに増大させ得る(例えば、ある場合には5nmまで、または他の場合には10nmまで、またはさらに他の場合には20nmまで、またはさらに他の場合には40nmまで)。
【0136】
完全結晶質グラファイトの場合、炭素の3つの第一配位圏に関する実空間中心最大値は、1.42、2.45、および2.85Åである。第一配位圏は、中心参照原子に対して最短実空間距離を持つ原子によって画定された圏と定義される。中心参照原子からさらに遠い距離にある実空間位置にある原子は、中心原子からのそれらの距離によって画定される、第2、第3、第nまでの配位圏に包含されることになる。しかしながら、これらの結合長またはピーク中心最大値は、炭素の構造が実質的に歪んだ場合(例えば、一部の多孔質または構造化または部分的に歪んだ炭素のように)またはSp2:Sp3炭素の比が著しく変化した場合、実質的にシフトする可能性がある。完全結晶質グラファイトでは、第一および第二配位圏での実空間ピークの高さの比は、0.5に等しくなるべきである。しかしながら、歪んだ炭素(例えば、空乏または非六角環)は、より高い比を示し得る。炭素含有電極複合体(例えば、複合粒子の形をとる)の形成に関して使用される(または形成において使用される)適切な炭素(例えば、多孔質炭素)の一部の設計では、3つの第一配位圏内でのシンクロトロンPDFピーク高さおよびそれらの半値全幅(FWHM)は、好ましくは(セルにおける良好な性能に関し)ある特定の値の範囲内になり得る。一部の設計では、適切な炭素(例えば、適切な炭素含有電極複合体の成分として)における第一および第二配位圏に関する実空間ピークの高さの比は、好ましくは約0.700から約0.590の範囲であってもよい(複合粒子の化学、ミクロ構造、および電極動作条件に応じて、一部の設計では、約0.700から約0.650;他の設計では、約0.650から約0.620;さらに他の実施例では、約0.620から約0.590)。そのようなシンクロトロンXRD測定およびPDF分析は、炭素材料(例えば、適切な合成/処理条件を選択するため)または炭素含有複合体(例えば、とりわけSi系および/またはSiを含む活物質を持つ)のいずれかで実行されてもよい(例えば、複合体中の適切な炭素の存在または保持を検出するため)。
【0137】
完全秩序結晶質グラファイトでは、第一および第二配位圏に関するFWHM値の比は1であるべきである。有意な歪みの程度を持つ一部の人造グラファイト試料では、そのような値は、約0.850から約0.950の範囲にあるように、さらに小さくなり得る。しかしながら一部の設計では、適切な炭素において、FWHM値の比は、好ましくはさらに小さくてもよい(複合体中の炭素性能に利益のある、結合長および歪みにおけるある特定のばらつきの程度に関係し、空乏、非員環などの様々な歪みに潜在的に関係し得る)。一部の設計では、適切な炭素における第一および第二配位圏に関するFWHM値の比は、他の要因の中でも、複合体電極粒子活物質および組成および電極動作条件に応じて、好ましくは約0.700から約0.850の範囲でもよい(一部の設計では、約0.700から約0.760;他の設計では、約0.760から約0.810;さらに他の設計では、約0.810から約0.830;さらに他の設計では、約0.830から約0.850)。そのようなシンクロトロンXRD測定およびPDF分析は、炭素材料(例えば、適正な合成/処理条件を選択するため)または炭素含有複合体(例えば、とりわけSi系および/またはSiを含む活物質)(例えば、複合体中の適切な炭素の存在または保持を検出するため)のいずれかに関して実行されてもよい。
【0138】
完全結晶質グラファイトの場合、第一および第三配位圏に関する実空間ピークの高さの比は、1であるべきである。しかしながら一部の設計では、適切な炭素において、第一および第三配位圏に関する実空間ピークの高さの比は、好ましくはさらに大きくてもよい(複合体中の炭素性能に利益のある、ある特定の無秩序に関係してもよく、空乏、非員環などの様々な歪みに潜在的に関係してもよい)。一部の設計では、適切な炭素における第一および第三配位圏に関する実空間ピークの高さの比は、他の要因の中でも、複合体電極粒子活物質および組成および電極動作条件に応じて、好ましくは約1.100から約1.300に及ぶべきである(一部の設計では、約1.100から約1.150;他の設計では、約1.150から約1.180;さらに他の設計では、約1.180から約1.240;さらに他の設計では、約1.240から約1.300)。そのようなシンクロトロンXRD測定およびPDF分析は、炭素材料(例えば、適正な合成/処理条件を選択するため)または炭素含有複合体(例えば、とりわけSi系および/またはSiを含む活物質)(例えば、複合体中の適切な炭素の存在または保持を検出するため)のいずれかに関して実行されてもよい。
【0139】
完全に秩序のある結晶質グラファイトの場合、第一および第三配位圏に関するFWHM値の比は、1であるべきである。しかしながら適切な炭素において、FWHM値の比は、好ましくはさらに小さくてもよい(複合体中の炭素性能に利益のある、結合長および無秩序におけるある特定のばらつきの程度に関係し、空乏、非員環などの様々な歪みに潜在的に関係してもよい)。一部の設計では、適切な炭素における第一および第三配位圏に関するFWHM値の比は、他の要因の中でも、複合体電極粒子活物質および組成および電極動作条件に応じて、好ましくは約0.600から約0.850の範囲でもよい(一部の設計では、約0.0600から約0.700;一部の設計では、約0.700から約0.760;他の設計では、約0.760から約0.810;さらに他の設計では、約0.810から約0l830;さらに他の設計では、約0.830から約0.850)。そのようなシンクロトロンXRD測定およびPDF分析は、炭素材料(例えば、適正な合成/処理条件を選択するため)または炭素含有複合体(例えば、とりわけSi系および/またはSiを含む活物質を持つ)(例えば、複合体中の適切な炭素の存在または保持を検出するため)のいずれかに関して実行されてもよい。
【0140】
図9Aは、適切な高性能炭素含有電極複合体(例えば、Si系および/またはSiを含む活物質)の形成で使用され得る、適切な炭素(例えば、この実施例では多孔質炭素)の構造的性質の例示的な実施例を示す。そのような例示的な実施例では、適切な炭素における第一および第二配位圏に関する実空間ピークの高さの比は:0.660、0.625、0.596、および0.595である。より低い値の比は、適切な炭素の実施例において、より高い秩序度を示す。
図9Aの上部の挿入図は、5員環、6員環、および7員環を示す。6員環の場合に第二および第三配位圏を概略的に表示する矢印線が、示されている。第二および第3の配位圏(ならびに、第一配位圏およびより高次の配位圏)は、5員環および7員環の場合に変化し得ることが理解されよう。
【0141】
図9Bは、適切な高性能炭素含有電極複合体(例えば、Si系および/またはSiを含む活物質を持つ)の形成で使用され得る、適切な(例えば、この実施例では多孔質炭素)に関する構造的性質の例示的な実施例を示す。そのような例示的な実施例では、適切な炭素における第一および第二配位圏に関するFWHM値の比は、0.773、0.771、0.795、0.814、および0.830である。
【0142】
図9Cは、適切な高性能炭素含有電極複合体(例えば、Si系および/またはSiを含む活物質を持つ)の形成で使用され得る、適切な炭素(例えば、この実施例では多孔質炭素)に関する構造的性質の例示的な実施例を示す。そのような例示的な実施例では、適切な炭素における第一および第三配位圏に関する実空間ピークの高さの比は、1.237、1.210、1.194、および1.230である。
【0143】
図9Dは、適切な高性能炭素含有電極複合体(例えば、Si系および/またはSiを含む活物質を持つ)の形成で使用され得る、適切な炭素(例えば、この実施例では多孔質炭素)に関する構造的性質の例示的な実施例を示す。そのような例示的な実施例では、適切な炭素における第一および第二配位圏に関するFWHM値の比は、0.657、0.625、0.650、0.695、0.839である。
【0144】
意外にも、Cと活物質(例えば、Si-C結合など、Liイオンバッテリに関するSi系アノードの場合はSi)との間の結合の場合を持つ、動径分布関数、R(r)における第一配位圏でのC-C結合の相対強度の、ある特定の値は、炭素含有および活物質含有複合体の性能に相関し得る。したがって、そのような炭素含有複合体の形成に関する処理条件は、最適化され得る。結晶質SiCでは、第1の原子-原子(Si-C)対は、r=1.9Å程度に位置付けられる。結晶質グラファイト(および無秩序の場合であっても、多くのグラファイト炭素)では、第1の炭素原子-原子(C-C)対はr=1.42Å程度に位置付けられ、第2のC-C結合はr=2.47Å程度で見出される。結晶質Siでは、第1の原子-原子(Si-Si)対結合はr=2.37Å程度に位置付けられ、これはグラファイト炭素の第2のC-C結合に近い。炭素(C)およびSiの両方を含む複合体では、R(r)で対応するピークの強度は、性能の最適化に使用され得る。しかしながら、第1のSi-Si結合距離は、第2のC-C結合距離に重なり合う。SiおよびCの両方を含む複合体の一部の設計では、第1のS-C対結合の強度と、R(r)における第1のC-C対結合の強度との比は、好ましくは約0.050から約1.000に及ぶべきである(一部の設計では、約0.050から約0.350;他の設計では、約0.350から約0.700;さらに他の設計では、約0.700から約1.000)。大き過ぎる強度比(例えば、一部の実施例では、実質的に1.000よりも上、例えば1.25または1.95)は、典型的にはセルに著しく劣った性能を引き起こし得る(例えば、より低い容量、安定性、速度性能など)。一般に、より低い強度比の値(低減したSi-C結合形成)は、しばしば好ましいと考えられる;しかしながら小さ過ぎる強度比(例えば、約0.050よりも実質的に低い)は、性能のいくつかの態様(例えば、第1のサイクル効率、安定性など)も低減させ得る。ケイ素の第一配位圏(約r=2.37Åで)およびグラファイト炭素の第二配位圏(約r=2.47Åで)は互いに巻き込まれるが、SiおよびCの両方を含む複合体におけるこの複雑なピークの実空間ピーク最大値の位置は、合成/処理条件の調整中に、性能の最適化のために使用されてもよい。例えば、一部の設計では、この複雑なピークの最大値の位置は、約2.375Åから約2.425Åに及ぶことが好ましいと考えられる(一部の設計では、約2.375Åから約2.395Å;他の設計では、約2.395Åから約2.405Å;さらに他の設計では、約2.405Åから約2.425Å)。複雑な(第1のSi-Siおよび第2のC-C)の強度と、第1のC-Cピークの強度との比は、好ましくは、活物質としてSiを持つ炭素系複合体の最適な性能のためにある特定の範囲内にあるべきである。一部の設計では、そのような強度の比は、約1.500から約6.500に及ぶことが好ましいと考えられる(一部の設計では、約1.500から約3.000;他の設計では、約3.000から約4.500;さらに他の設計では、約4.500から約6.500)。
【0145】
図10は、活物質としてSiを含む例示的な適切な炭素含有複合体の、G(r)の実施例を示す。これらの特定の実施例では、第1のSi-C対結合の強度とR(r)における第1のC-C対結合の強度との比は、それぞれ約0.642および0.522である(この実施例では、0.522は、僅かに優れた性能を提供する)。これらの特定の実施例では、(第1のSi-Siおよび第2のC-C-)の複雑なピークの最大値の位置は、それぞれ約r=2.391Åおよび約r=2.385Åである(この実施例で、r=2.385Åは僅かに優れた性能を提供する)。これらの特定の実施例では、複雑な(第1のSi-Siおよび第2のC-C)の強度と、第1のC-Cピークの強度との比は、それぞれ約3.333および3.363である(この実施例で、3.363のピーク強度比は僅かに優れた性能を提供する)。
【0146】
一部の設計では、炭素含有複合体(例えば、複合粒子)は、ラマン分光法研究で検出される、ある特定のスペクトルシグネチャを示すことが有利と考えられる(様々な性能特性に関し)。特に、一部の設計では、複合粒子の大部分(例えば、約50~100重量%)のラマンスペクトルにおける炭素Dバンドおよび炭素Gバンドの強度の比(ID/IG)(例えば、約532nmのレーザ波長を使用して測定され;例えば約1000から約2000cm-1のスペクトル波数範囲で、この範囲での線形バックグラウンドの差し引き後に2つのガウスピークを当てはめることによって、分析される)は、約0.7のID/IGから約2.7のID/IGに及ぶことが有利と考えられる(一部の設計では、約0.9から約2.1)。これらの範囲は、DおよびGのピーク(ガウスモデルを使用しておよび最も高いGピークおよび最も高いDピークの強度/高さを使用して、2つのGピークおよび2つのDピークによりスペクトルを当てはめることによって得られる)の絶対強度の比を使用し、積分強度の比(DおよびGピークのそれぞれの下の面積)は使用しないことに、留意されたい。しかしながら一部の設計では、DピークとGピークとの積分強度(対応するピークのしたの面積)(ガウスモデルを使用して2つのGピークおよび2つのDピークによりスペクトルを当てはめ、両方のガウスモデルGピーク下の面積の合計(IG合計面積)を計算し、両方のガウスモデルDピーク下の面積の合計(ID合計面積)を計算し、これら2つの合計の比:ID合計面積/IG合計面積)を計算することによって得られる)の比は、約0.7から約2.7(または一部の設計では、4)に及ぶことが有利と考えられる。
【0147】
一部の設計では、炭素含有複合粒子の大部分のラマンスペクトルにおける炭素Gバンドの半値全幅(FWHM)は(例えば、約532nmのレーザ波長を使用して測定され;例えば、この範囲で線形バックグラウンドの差し引き後に2つのガウスピークを当はめることにより、約1000から約2000cm-1に及ぶスペクトル波数範囲で分析される)、約10cm-1から約150cm-1(一部の設計では、約50cm-1から約100cm-1)に及ぶことが有利と考えられる。
【0148】
一部の設計では、適切な炭素含有複合体を形成するための炭素の供給源には、いくつか例示的な例を挙げると、これらに限定されるものではないが:(i)様々な炭素含有気体(例えば、とりわけ、様々な炭化水素(例えば、C5H12、C5H10、C5H8、C6H6など)蒸気;炭化水素気体(例えば、CH4、C2H2、C2H4、C2H6、C3H6、C3H8、C3H4、C4H10、C4H8、C4H6など、またはこれらの組合せ)、(ii)様々な炭素含有液体(例えば、単糖、二糖、および多糖、例えばとりわけグルコース、フルクトース、ガラクトース、リボース、デオキシリボース、スクロース、ラクトース、マルトース、デンプン、アルギン酸塩、アミロース、アミロペクチン、グリコーゲン、リグニンの溶液)、原油、コールタールピッチ、石油ピッチ、バイオピッチおよびそれらの様々な溶液、植物由来の油、プロパン、ブタン、エタン、様々なオレフィン、および多くのその他の液体炭化水素)、および(iii)様々な炭素含有固体(例えば、様々なナッツの殻(例えば、とりわけヤシの殻、アプリコットの殻、アーモンドの殻)、様々な壁孔(例えば、とりわけオリーブの壁孔、サクランボの核、アプリコットの核、モモの核、アボカドの核)、様々な木材および廃材製品(例えば、おが屑)、竹、芝/藁および(乾燥)葉(例えば、とりわけバナナの繊維、籾殻、トウモロコシの穂軸、昆布)、石炭および様々な糖および糖を含む天然化合物であって、単糖、二糖、および多糖(とりわけグルコース、フルクトース、ガラクトース、リボース、デオキシリボース、スクロース、ラクトース、マルトース、デンプン、アラビアガム、リグニン、セルロース、キチン、アルギン酸塩、アミロース、アミロペクチン、グリコーゲン)を含むもの、様々なヒト廃棄物、様々な食品加工廃棄物および食品廃棄物、古紙製品、様々なポリマー(例えば、多くのその他の公知の炭素ポリマー前駆体の中でも、天然糖タンパク質およびそれらの混合物、フェノールおよびフルフラール樹脂であってポリ(フルフリルアルコール)を含むもの、レーヨン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン、ポリウレタン、ポリラクチド、ポリグリコリド、ポリアミド、ポリアラミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリアクリロニトリル、ポリ(p-フェニレンビニレン)、様々なポリオキシメチレン、様々なビニルポリマー))、およびそれらの様々な組合せ、様々な金属(例えば、Mg、Al、Si、Zn、Sn、Sb、またはTiなど)、または様々な有機酸(例えば、乳酸、酢酸、ギ酸、クエン酸、シュウ酸、尿酸、リンゴ酸、酒石酸、カルボン酸など)のアンモニウム(NH3)塩、または様々な有機酸(例えば、乳酸、酢酸、ギ酸、クエン酸、シュウ酸、尿酸、リンゴ酸、酒石酸、カルボン酸など)、およびこれらの組合せが含まれてもよい。一部の設計では、そのような炭素前駆体または炭素を含む前駆体のいくつかの(例えば熱)分解によって(炭化によって)生成された無機残留物(例えば、酸化物またはその他)は、(例えば弱酸)または塩基によって溶解されてもよく、または一部の設計では、公知の手段によって(例えば、酸化ケイ素残留物のマグネシオ熱還元およびその後の酸化マグネシウムに溶解によって、またはその他の適切な手段によって)活物質(例えば、Si)に変換されてもよい。
【0149】
一部の設計では、炭素を含む複合粒子は、最初に多孔質炭素を生成し、次いで細孔にインターカレーション型または変換型(合金型を含む)活物質を浸潤させることによって、生成されてもよい。一部の設計では、そのような浸潤プロセスは、気相堆積技法(とりわけCVD、原子層堆積(ALD)など)または溶液浸潤技法(とりわけ、ゾルゲルまたは熱水合成または層ごとの堆積または電着または無電解堆積または電気泳動堆積または塩浸潤、およびその後の、制御された環境での溶媒蒸発および分解または変換を含む)、または溶融浸潤(例えば、前駆体または前駆体の成分を溶融物から浸潤させる)、またはそのような技法の複数の様々な組合せ(複数可)(例えば、溶液または気相または溶融物からの、前駆体(例えば、無機または金属-有機または有機金属など)塩の浸潤、およびその後の、制御された気状環境でのアニールまたは熱処理-還元(例えば、とりわけH2または水素含有気体、例えば炭化水素気体または蒸気中で)または酸化(例えば、とりわけOまたはFまたはClまたはS含有気体)または中和(例えば、N2またはArまたはHe気体または真空))を使用することによって実行されてもよく、この気状環境は、フッ素または水素または酸素または硫黄またはリンまたはリチウムまたはナトリウムまたはカリウムまたはカルシウム原子などを含む分子を含んでもよい。したがって一部の設計では、前駆体は、最初に浸潤され、次いで適切なインターカレーション型または擬似容量型活物質に、例えば適切な気状(または蒸気性)環境下での熱処理によって変換されてもよい。
【0150】
一部の設計では、既に述べたように、追加の殻化(または細孔プラグ)材料層は、活物質、炭素、または複合粒子全体を、少なくとも部分的に閉鎖(または被覆)してもよい。複合体形成中のそのようなプロセスの最大熱処理(例えば、制御された環境で)温度は、複合体の性質およびインターカレーション型活物質の組成(例えば、その熱安定性、移動性、炭素と接触したときの反応性など)に応じて様々であってもよいが、一部の設計では、約100℃から約1,100℃(時々、約300から約800℃)の範囲であってもよい。一部の設計では、種々の温度(例えば、約50℃から約1,100℃)または圧力(例えば、約0.0001Torrから20,000Torr;一部の設計では-大気圧近く)で、および/または種々の持続時間(例えば、約0.0001秒から約240時間)にわたる、種々の気状環境(例えば、最初はOまたはF含有中で、次いでArまたはN2中で)での複数の熱処理が、材料合成を調整するように実現されてもよい(例えば、炭素細孔内に主に在る所望の活性粒度を持つ、ならびに所望の相および活物質粒子の化学量論量を持つなどの複合体の形成のため)。
【0151】
一部の設計では、炭素含有複合体の合成は、炭素粉末(例えば、膨張炭素、グラフェン、活性炭、カーボンブラック、樹状炭素、カーボンナノチューブなど)を有機炭素前駆体(例えば、多くのその他の公知の炭素前駆体の中でも、デンプン、様々な糖、セルロースおよびセルロース由来生成物、アルギン酸塩およびアルギン酸塩由来生成物、ピッチ(例えば、中間相、植物由来ピッチ、コールタールピッチなど)、およびその様々な成分、石炭、コールタール、リグニン、アラビアガム、様々なその他の多糖、天然糖タンパク質およびそれらの混合物、フェノールおよびフルフラール樹脂であってポリ(フルフリルアルコール)を含むもの、アイオン、ポリエチレン、ポリアクリロニトリル、ポリ(p-フェニレンビニレン)、様々なビニルポリマー)および活物質(ナノ)粒子(例えば、例示的な例として、Si系複合体の形成の場合には、ケイ素または酸化ケイ素または窒化物)または活物質前駆体(例えば、酸化物およびその他の塩;塩溶液を含む)(乾燥状態または溶液/懸濁液のいずれかにある)と混合し、そのような混合物を炭化して炭素含有複合体を得ることを含んでもよい。一部の設計では、そのような混合物は、まさに有機炭素前駆体(例えば、ポリマー)および活物質(または活物質前駆体)(炭素粒子なし)を含んでもよい。実施例では、炭化(熱分解)または後続の(例えば、噴霧または粒子形成)熱処理の温度は、活物質の組成に応じて様々であってもよく、約300℃から約1200℃(一部の設計では、約450℃から約1000℃)の範囲であってもよい。一部の設計では、より高い温度は、活物質、または活物質と、炭化物およびその他の望ましくない組成物を形成する炭素との望ましくない反応をもたらし得る。一部の設計では、より低い温度は、生成される複合体の速度性能および要領を制限し得る。
【0152】
一部の設計では、複合体合成における段階の少なくとも1つとして、噴霧乾燥技法または噴霧熱分解技法を利用することが有利と考えられる。一部の設計では、複合体合成における段階の少なくとも1つの間に、熱水(またはソルボサーマル)処理を利用することが有利と考えられる(例えば、炭素を燃焼/過剰酸化することのない、比較的低い温度で前駆体の酸化または結晶化を誘発させるためなど)。一部の設計では、制御された環境で熱処理と組み合わせて熱水処理を利用することが有利と考えられる(例えば、低温(例えば、室温程度から約350~400℃)での酸素含有またはフッ素含有などの反応性環境、またはより高い温度で不活性(例えば、特定の化学および炭素と接触したときのその活物質の安定性に応じて約400℃から約600~1200℃)、またはその両方)。
【0153】
一部の設計では、このように生成された炭素/活物質複合粒子は、所望の粒度分布を生成するように少なくとも部分的にミリングされてもよい。
【0154】
一部の設計では、このように生成された炭素/活物質複合粒子は、さらに(少なくとも部分的に)、機能的殻化(または細孔プラグ)層に包封されてもよい(例えば、導電率を高めるため、またはイオン伝導度を高めるため、または電解質による濡れ性を高めるため、または電解質と活物質との間の望ましくない相互作用を防止するため、またはその他の有利な目的のため)。一部の設計では、殻化材料層は、活物質または炭素層(例えば、活物質の場合とは異なる濡れ性または異なる核化時間を炭素表面に有することによって)のいずれかを優先的に被覆してもよい。一部の設計では、機能的殻化層の体積分率は、複合粒子の体積の約0.001体積%から約20体積%の範囲であってもよい。一部の設計では、機能的殻化材料層は、そのイオン貯蔵能に関して、「活性」材料としても作用し得る(例えば、単位質量当たりの容量、mAh/g、または単位体積当たりの容量、mAh/ccの単位で表されるとき、活物質の場合の約0.1%から約75%の範囲にある容量を示す)。一部の設計では、そのような殻化材料層は、気相堆積技法(とりわけ、CVD、ALDなど)、電気化学堆積、電着、無電解堆積、電気泳動堆積、層ごとの堆積、または様々なその他の溶液系堆積技法、または溶液および気相堆積の両方の組合せを使用することによって堆積されてもよい。一部の設計では、殻化材料堆積後、複合体は、複合体の性質を高めるため、適切な気状環境(例えば、とりわけN2またはArまたはHeなどの不活性ガス、)または真空で、熱処理(例えば、約100から約1000℃の温度で)されてもよい。一部の設計では、殻化材料層の平均厚さは、そのような層の粒度、イオンおよび電気伝導度、および/またはその他の性質に応じて、様々であってもよい。一部の設計では、殻化材料層の適切な厚さ(例えば、平均厚さ)は、約0.2nmから約200nmの範囲であってもよいが、より大きい厚さも一部の適用例では許容可能である(しかしおそらくは、電極の体積容量の低下または電極多孔度の低下を犠牲にする)。一部の設計では、殻化材料層は、炭素(C)を含んでもよい(例えば、一部の設計では、グラファイトまたはグラファイト状炭素または乱層炭素またはほとんど非晶質の炭素におけるように、ほとんど導電性のsp2-結合炭素)。一部の設計では、様々な炭素原子を含む溶媒または様々な炭化水素(例えば、C5H12、C5H10、C5H8、C6H6など)蒸気は、炭素堆積用の前駆体として使用されてもよい。一部の設計では、炭化水素気体(例えば、CH4、C2H2、C2H4、C2H6、C3H6、C3H8、C3H4、C4H10、C4H8、C4H6など)またはそれらの組合せは、炭素堆積のための前駆体として有利に使用されてもよい。一部の設計では、粘弾性ポリマー(ピッチなどのバイオ由来のものを含む)は、炭素層形成のための前駆体として使用されてもよい。一部の設計では、ピッチは、石油、コールタール、植物(木材を含む)から誘導されてもよい。一部の設計では、殻化材料層は、さらに2種の材料の複合体であってもよい。一部の設計では、殻化材料は、薄片形状の粒子を含んでもよい。一部の設計では、殻化材料は、下記の元素:遷移、アルカリ、またはアルカリ土類金属(例えば、とりわけ鉄(Fe)、マンガン(Mn)、銅(Cu)、イットリウム(Y)、ジルコニウム(Zr)、ニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)、クロム(Cr)、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、マグネシウム(Mg)、カリウム(K)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、セシウム(Cs)、バリウム(Ba))、ランタンまたはランタノイド(La、Ce、Gd、Nd、Euなど)、ベリリウム(Be)、アルミニウム(Al)、ケイ素(Si)、ガリウム(Ga)、ゲルマニウム(Ge)、リン(P)、ヒ素(As)、スズ(Sn)、ビスマス(Bi)、鉛(Pb)、インジウム(In)、カドミウム(Cd)、亜鉛(Zn)、フッ素(F)、ヨウ素(I)、酸素(O)、窒素(N)、硫黄(S)、セレン(Se)、テルル(Te)、水素(H)、および炭素(C)の1種または複数を含んでもよい。一部の設計では、殻化材料層はポリマーを含んでもよい。一部の設計では、殻化材料層で使用されるポリマーは、高い導電率および/またはイオン伝導度を示し得る(例えば、約10-7から約10+4S/cmの範囲にある)。そのような設計では、殻化材料層のポリマー層は、少なくとも部分的に炭化されていてもよい。一部の設計では、殻化材料層は、ガラスまたはセラミック層を含んでもよい。一部の設計では、ガラスまたはセラミック層は、高い導電率および/またはイオン伝導度を示し得る(例えば、約10-7から約10+4S/cmの範囲にある)。一部の設計では、殻化材料層は金属または金属合金を含んでもよい。
【0155】
一部の設計では、適切な多孔質炭素の形成は、適切な有機前駆体の炭化(例えば、熱アニールによるまたは熱水処理によるまたは他の手段による)およびその後の化学または物理的活性化および/または無機残留物の溶解もしくは変換を含んでもよい。一部の設計では、いわゆる炭化水素の形成(炭化水素前駆体の熱水処理によって生成された炭素)は、高い炭素変換効率、材料中の酸素の均一な分布、およびその他の好ましい特徴に起因して、その他の炭化技法に対して有利となり得る。ハイドロチャー前駆体の適切な例には、限定するものではないが様々なナッツの殻(例えば、とりわけヤシの殻、アプリコットの殻、アーモンドの殻)、様々な壁孔(例えば、とりわけオリーブの壁孔、サクランボの核、アプリコットの核、モモの核、アボカドの核)、様々な木材および廃材製品(例えば、おが屑)、竹、芝/藁および(乾燥)葉(例えば、とりわけバナナの繊維、籾殻、トウモロコシの穂軸、昆布)、様々なヒト廃棄物、様々な食品加工廃棄物、および食品廃棄物、古紙製品、石炭およびコールタールピッチ、石油ピッチ、原油、様々な糖であって単糖、二糖、および多糖を含むもの(他の適切な前駆体の中でもグルコース、フルクトース、ガラクトース、リボース、デオキシリボース、スクロース、ラクトース、マルトース、デンプン、リグニン、セルロース、アミロース、アミロペクチン、グリコーゲン)が含まれる。一部の設計では、ハイドロチャーは、(例えば第1の)活性化前に、不活性環境(例えば、真空中、またはN2もしくはArもしくはHeガス中など)でアニールされてもよい。適切な温度は、活性化後の前駆体および所望の多孔度に応じて約500℃から約2000℃の範囲であってもよい。一部の設計では、約500℃よりも低い温度での熱処理は、活性化にほとんど影響を及ぼさず、(所望の)量の不純物(例えば、流出物(複数可)として)を除去しないと考えられる。一部の設計では、約2000℃よりも高い温度での熱処理は、高純度材料を得るのに非常に有効であるが、高いBET SSAを実現できなくし、活性化後に(時々、望ましい)小さい細孔を保持するのを妨げる可能性がある。
【0156】
一部の設計では、追加の細孔を誘発させかつ炭化によって生成された炭素の細孔体積および表面積を増大させるため、いわゆる物理的活性化技法(とりわけCO2またはH2Oまたは両方の流れにおける活性化など)を使用するのが有利と考えられる。適切な活性化温度は、炭素のタイプおよび前処理の履歴に応じて様々になり得る。しかしながら、例として、適切な温度は約700℃から約1300℃の範囲にあってもよい(一部の設計では-約800から約1150℃)。例として、約1300℃よりも高い温度は、活性化プロセスで、所望の均一性に制御するのを非常に難しくする可能性があり、炭素内の望ましくない孔径分布をさらに誘発させ得る。別の実施例では、約700℃よりも低い温度は、活性化プロセスを非常に低速にする可能性があり、生成された活性炭において所望の孔径および表面積特性を実現できない。
【0157】
一部の設計では、適切な多孔質炭素の形成(例えば、より大きい細孔体積を得るとき)は、炭化および活性化の前に、犠牲的鋳型材料の使用を含み得る。
【0158】
一部の設計では、いわゆるハイドロチャー(例えば殻、木材廃棄物などの様々な生体材料を含む、炭化水素前駆体の熱水処理によって生成された炭素)の形成は、活性化前に有利となり得る。
【0159】
一部の設計では、炭素前駆体は、活性化前に、不活性環境(例えば、真空中、N2またはArまたはHeガス中など)でアニールされてもよい。一部の設計では、適切な温度は、前駆体および活性化後の所望の多孔度に応じて、約500℃から約2800℃の範囲でもよい(一部の設計では、約500℃から約800℃;他の設計では、約800℃から約1200℃;さらに他の設計では、約1200℃から約1600℃;さらに他の設計では、約1600℃から約2000℃;さらに他の設計では、約2000℃から約2800℃)。一部の設計では、約500℃よりも低い温度での熱処理は、活性化にほとんど影響を及ぼさない可能性があり、(時々望まれる)量の不純物(例えば、流出物(複数可))として除去されない可能性がある。一部の設計では、約2800℃よりも高い温度での熱処理は、高純度材料を得るのに非常に有効であるが、高いBET SSAを実現しかつ(時々望まれる)活性化後に小さい細孔を形成するのを妨げる可能性がある。
【0160】
一部の設計では、化学的活性化は、物理的活性化の代わりにまたは加えて、使用されてもよい。適切な化学的活性化剤の例には、限定するものではないがKOH、NaOH、ZnCl2、H3PO4、K2CO3、またはH2SO4が含まれる。一部の設計では、炭化段階は、化学的活性化と同時に進行する。次いで他の設計では、前駆体の炭化後、得られた炭素を化学的活性化剤と混合し、熱処理して活性化し、次いで精製してもよい。
【0161】
一部の設計では(例えば、速度性能またはバッテリ安定性を最大限にするために)、多孔質炭素は、活性化後に不活性環境(例えば、真空中またはN2もしくはArもしくはHeガス中など)でアニールされてもよい。アニールプロセスは、追加の精製を提供してもよく、炭素の導電率を高めてもよく、炭素の機械的性質を高めてもよく、核化部位の数を低減してもよく(活物質の堆積のため)、および低減した自己放電およびその他の性能の利益をセル(例えば、バッテリ速度、バッテリ安定性など)にもたらしてもよい。一部の設計では、適切な温度は、前駆体および活性化後の所望の多孔度に応じて、約800℃から約2800℃の範囲でもよい(一部の設計では、約800℃から約1200℃;さらに他の設計では、約1200℃から約1400℃;さらに他の設計では、約1400℃から約1800℃;さらに他の設計では、約1800℃から約2800℃)。一部の設計では、約800℃よりも低い温度での熱処理は、多孔質構造内への活物質の浸潤または炭素との活物質の結合、または炭素の伝導度または純度に、ほとんど影響を及ぼさないと考えられる。一部の設計では、約2800℃よりも高い温度での熱処理は、高いBET SSAの実現を妨げる可能性があり、活性化後に過剰な細孔クローザーを誘発させる可能性がある。
【0162】
一部の設計では、多孔質炭素は、炭素含有電極複合体で使用される最も望ましい特徴を得るために、一度ならず(例えば、2回または3回またはそれよりも多い回数)、アニールされ活性化されてもよい。一部の設計では、種々の熱処理(アニール)温度は、種々の活性化手順の前に意図的に使用されてもよい。
【0163】
一部の設計では、変換型(合金型または金属型を含む)活物質またはインターカレーション型もしくは擬似容量型活物質を含む電極は、ある特定の方法で調製されることまたはある特定の導電性もしくはその他の添加剤を含むことが有利となり得る。
【0164】
一部の設計では、ナノ粒子(例えば、より大きい凝集体へと連結された炭素粒子を含むものを含む、カーボンブラック)または一次元(1D)導電性添加剤(例えば、単層カーボンナノチューブ、二層カーボンナノチューブ、多層カーボンナノチューブ、炭素(ナノ)繊維、適合性ある金属ナノ繊維、ナノチューブおよびナノワイヤなど(例えば、銅、ニッケル、チタン、鉄ナノワイヤ/ナノ繊維、アルミニウムナノワイヤ/ナノ繊維、ニッケルナノワイヤ/ナノ繊維など))、またはこれらの組合せを、炭素含有複合体電極材料を含む電極で使用することが有利となり得る。
【0165】
一部の設計では、いくつかのメカニズムによって、導電性添加剤を(ナノ)複合体電極粒子に取着することが有利となり得る。一実施例では、導電性添加剤(例えば、カーボンナノチューブまたはグラフェンまたは金属ナノ粒子または金属ナノワイヤ)は、電極粒子の表面に直接在ってもよい(例えば、CVDによってまたは溶液化学経路によって)。別の実施例では、導電性粒子(様々な形状およびサイズの)は、各(またはほとんどの)粒子(複数可)の表面を帯電させることによっておよび導電性添加剤粒子とは反対の電荷を電極粒子上で使用することによって、電極粒子の表面に強力に取着されてもよい。さらに別の実施例では、導電性粒子は、有機(例えば、ポリマー)バインダーを使用して、および導電性添加剤(複数可)と電極粒子(複数可)との間に導電性炭素中間層(例えば、導電性グルーとして有効に作用する)を形成するバインダーを炭化することにより、電極粒子の表面に取着されてもよい。さらに別の実施例では、導電性添加剤粒子および活性電極粒子の混合物上に炭素層をCVD堆積してもよく、それによって、電極粒子と導電性添加剤との間の接触点で炭素を優先的に堆積する。実施例では、CVD炭素層は導電性グルーと同様に作用して、導電性添加剤(複数可)を電極粒子(複数可)に強力に取着してもよい。
【0166】
一部の設計では、非活性成分の質量と複合体電極粒子の外部表面積との比として与えられた、スラリー成分の最適な重量%は、約1から約5,000m2活性/g非活性の範囲の値を示し得る(例えば、約5から約200m2活性/g非活性)。一部の設計では、特定の電極組成物に関するスラリー成分の最適な重量%は、活性粒子のサイズ、導電性添加剤のタイプ、導電性添加剤の表面化学、活性粒子の表面化学、粒子の密度、サイクル動作中の体積変化、バインダー(複数可)のタイプおよび分子量、電極の厚さ、電極の密度、および/またはその他のパラメータに依存し得る。
【0167】
一部の適用例では、それらの接触面積および接触強度を高めるために、かつさらに均一な混合を実現するために、導電性添加剤および(複合体)電極粒子の表面に、反対の電荷を誘発させることが有利となり得る。例えば、正電荷は複合粒子の表面に導入されてもよく、負電荷は導電性添加剤の表面に導入されてもよい。別の実施例では、負電荷は複合粒子の表面に導入されてもよく、正電荷は導電性添加剤の表面に導入されてもよい。一部の適用例では、電極乾燥中または後で、導電性添加剤と電極粒子との間で化学反応を誘発することが有利となり得る。
【0168】
一部の設計では、ほとんどの最適な性能のため、複数の型の導電性添加剤(例えば、種々の寸法、アスペクト比、または形態を有する)を使用することが有利となり得る。一部の設計では、1つのタイプ導電性添加剤を電極粒子の表面に化学的に結合することがさらに有利となり得る。この場合、例として、電極粒子/導電性添加剤の界面の安定性を維持するための膨潤の欠如に関する要件は、実質的に削減されてもよく、またはさらに完全に回避されてもよい。一実施例では、短(例えば、約0.01~10ミクロン)炭素ナノ繊維、カーボンナノチューブ、またはグラフェン/グラファイトリボンは、電極粒子の表面から成長されてもよい(例えば、触媒支援型気相成長法、CVD、またはその他のメカニズムを使用することによって)。別の実施例では、1つの電荷および電極粒子が反対の電荷を持つ導電性炭素添加剤粒子の混合物(例えば、カーボンブラック、カーボンナノチューブなど)は、小さい犠牲バインダー含量とさらに混合され、次いで炭化されてもよい。一部の設計では、炭化バインダーは、堅固にかつ永続的に炭素添加剤の一部を電極粒子の表面に取着してもよい。実施例では、そのような電極粒子/炭素添加剤複合体は、サイクル動作中に中程度の体積変化を経験するさらに安定した電極を形成(または成型)するため(例えば、本開示の1つまたは複数の実施形態の文脈において適用可能であるように)、様々な適切なバインダーおよび追加の導電性添加剤を持つスラリーで使用されてもよい。
【0169】
一部の適用例では、種々の表面電荷または種々の表面化学を持つ2種またはそれよりも多くの導電性添加剤を使用することが有利となり得る。特に、一部の設計では、1つのタイプの添加剤が電極粒子に対してさらに高い親和性を示すとき、そのような添加剤は、電極粒子の周りに均一なコーティングを形成するように選択され得る。一部の設計では、そのような添加剤は、電極組立てまたはスラリー調製のある段階で、電極粒子と化学結合を形成するように選択されてもよい。例として第2の添加剤は、第1の添加剤よりも著しく高い割合でバインダーに組み込まれてもよく、したがって安定な電極をもたらす堅牢で均一なバインダー/添加剤(ナノ)複合体を形成するのに最適化され得る。
【0170】
一部の適用例では、2種またはそれよりも多くの添加剤は、種々の機能を実現するように選択されてもよい。一実施例では、1つのタイプの添加剤(例えば、より大きい寸法またはより高い伝導度を持つ、例えば炭素ナノ繊維、その他の導電性ナノ繊維、長(例えば、その長さが約10ミクロンよりも長い)カーボンナノチューブ、グラファイト、またはグラフェン薄片であって直線寸法が約5~10ミクロンを超えるもの、その他の導電性薄片、金属ナノワイヤなど)は、より高い導電率を全体として電極内に提供するように選択されてもよく、一方、第2のタイプの導電性添加剤(例えば、カーボンブラックおよびその他の導電性ナノ粒子、より短い(例えば、平均長さが約0.25~10ミクロン)カーボンナノチューブまたは導電性ナノワイヤまたは(例えば、細断された)導電性ナノ繊維、より小さいグラフェンまたはグラファイト薄片、より短いグラファイトリボンなど)は、個々の電極粒子のそれぞれが多数の隣接する電極粒子および第1のタイプの添加剤に有効に電気的に接続され、それによって、電極材料の高容量利用をもたらす効率的導電性網状構造を形成するのを確実にするように選択されてもよい。別の実施例では、1つのタイプの添加剤は、多数の機能を行うように選択されてもよい(例えば、電極の導電率および機械的安定性の両方を高めるため、または電極の導電率を高めかつさらに速いイオン経路を提供するため(例えば、多孔質である場合または電極細孔の閉鎖を防止する場合))。一部の設計では、1つのタイプの導電性添加剤は、スラリー混合中、第2のタイプのより良好な分散を支援してもよい。特に、一部の設計では、下記のタイプの電導性添加剤の2種の混合物を同じスラリー中で使用することが有利となり得る:いくつか例を挙げれば、(i)様々なタイプの単層カーボンナノチューブ(SWCNT)(表面コーティングあり、またはなし);(ii)様々なタイプの二層(DWCNT)、三層(TWCNT)およびその他のタイプの多層カーボンナノチューブ(MWCNT)(表面コーティングあり、またはなし);(iii)様々なタイプのカーボンブラック(不活性環境で、1000℃よりも上でアニールされたものを含む);(iv)様々なタイプの炭素繊維(不活性環境で、1000℃よりも上でアニーヅされたものを含む);(v)様々なタイプの炭素ナノ繊維;(vi)様々なタイプの金属ナノワイヤ(保護または機能性表面コーティング層なし、またはあり)(例えば、Siを含むアノードなど、Liイオンバッテリの低電位アノードに関してCu、Fe、Ti、またはNiナノワイヤ;Liイオンバッテリのカソードまたは高電圧アノードに関してAlナノワイヤ、または様々な水性バッテリに関するその他のナノワイヤなど(例えば、NiまたはTiナノワイヤ));(vii)様々なタイプの炭素コーティングされたまたは金属(例えば、Cu、Fe、Ni、Ti、またはAlなど)コーティングされたセラミックナノワイヤまたは繊維(例えば、Al2O3ナノワイヤまたは繊維);(viii)様々なタイプの炭素オニオン;(ix)様々なタイプのグラファイトリボン(金属コーティングされたグラファイトリボンを含む);(x)様々なタイプの金属(例えば、Cu、Fe、Ni、Ti、またはAlなど)ナノ粒子(保護または機能性表面層によるコーティングあり、またはなし);および(xi)様々なタイプの金属(例えば、Cu、Fe、Ni、Ti、またはAlなど)(ナノ)薄片(保護または機能性表面層によるコーティングあり、またはなし)である。一部の設計では、そのような添加剤の各タイプの表面化学は、セルにおける最適な性能のため個々に最適化することができる。
【0171】
一部の適用例では、電極内の全ての導電性添加剤粒子の全体的な体積分率を、約5体積%未満(さらにより好ましくは、約2体積%よりも下)に制限することが有利となり得る。一部の設計では、質量による、電極内の全ての導電性添加剤粒子の割合は、炭素材料のみが導電性添加剤として使用される場合、好ましくは約7重量%未満(例えば、さらにより好ましくは約3重量%よりも下)であってもよく、電導性添加剤の一部が適切な金属を含む場合、約10重量%未満(例えば、さらにより好ましくは約5重量%よりも下)であってもよい。実施例では、より高い体積分率の導電性添加剤は、イオン輸送および電極の体積容量を低減させる可能性があり、望ましくない副反応の範囲を増大させる可能性がある。さらなる実施例では、導電性添加剤の、より高い重量(質量)分率は、電極の比容量を低減させ得る。
【0172】
上記の詳細な記述では、種々の特徴は、実施例において一緒にグループ分けされることがわかる。この開示手法は、例示的な項目が、各項目において明示的に述べられたよりもさらに特徴を有する意図であると理解されるべきでない。むしろ本開示の様々な態様は、開示される個々の例示的な項目の全ての特徴よりも少なく含んでもよい。したがって以下の項目は、これにより本記述に組み込まれるとみなされるべきであり、各項目自体は個別の実施例として成り立つことができる。各従属項目は、その項目内で、他の項目の1つとの特定の組合せを指すことができるが、その従属項目の態様(複数可)は特定の組合せに限定されない。その他の例示的な項目は、従属項目の態様(複数可)と任意のその他の従属項目または独立項目の対象との組合せ、または任意の特徴とその他の従属および独立項目との組合せを含むこともできることが理解されよう。本明細書に開示される様々な態様は、特定の組合せが意図されないことを明示的に表さない限りまたは容易に推測できない限り(例えば、絶縁体でありかつ導電体であるとして要素を定義するなどの矛盾した態様)、これらの組合せを明示的に含む。さらに、項目の態様は、その項目が独立項目に直接従属しない場合であっても、任意のその他の独立項目に含めることができることも意図される。
【0173】
実現例を、以下の番号を付けた項目で記述する:
【0174】
項目1.炭素(C)を含む多孔質複合粒子およびケイ素(Si)を含む活物質を含み、炭素が、約10Å(1nm)から約60Å(6nm)に及ぶ多孔質複合粒子のシンクロトロンX線回折測定から得られる原子対相関関数G(r)から推定される通りのドメインサイズ(r)によって特徴付けられる、リチウムイオンバッテリアノード組成物。
【0175】
項目2.炭素が、下記:(1)約15Åから約19Åの間に及ぶドメインサイズ、(2)約19Åから約22Åの間に及ぶドメインサイズ、(3)約24Åから約28Åの間に及ぶドメインサイズ、および(4)約28Åから55Åの間に及ぶドメインサイズの1つまたは複数によって特徴付けられ、ドメインサイズが、原子対相関関数G(r)から推定される通りである、項目1のリチウムイオンバッテリアノード組成物。
【0176】
項目3.炭素が多孔質炭素を含む、項目1から2のいずれかのリチウムイオンバッテリアノード組成物。
【0177】
項目4.G(r=r1)が、炭素の第一配位圏の実空間位置での原子対相関関数の値であり、G(r=r2)が、炭素の第二配位圏の実空間位置での原子対相関関数の値であり、比G(r=r1)/G(r=r2)が、約0.700から約0.590の範囲にある、項目1から3のいずれかのリチウムイオンバッテリアノード組成物。
【0178】
項目5.W(r=r1)が、炭素の第一配位圏の実空間位置での原子対相関関数の半値全幅の値であり、W(r=r2)が、炭素の第二配位圏の実空間位置での原子対相関関数の半値全幅の値であり、比W(r=r1)/W(r=r2)が、約0.700から約0.850の範囲にある、項目1から4のいずれかのリチウムイオンバッテリアノード組成物。
【0179】
項目6.G(r=r1)が、炭素の第一配位圏の実空間位置での原子対相関関数の値であり、G(r=r3)が、炭素の第三配位圏の実空間位置での原子対相関関数の値であり、比G(r=r1)/G(r=r3)が、約1.100から約1.300の範囲にある、項目1から5のいずれかのリチウムイオンバッテリアノード組成物。
【0180】
項目7.W(r=r1)が、炭素の第一配位圏の実空間位置での原子対相関関数の半値全幅の値であり、W(r=r3)が、炭素の第三配位圏の実空間位置での原子対相関関数の半値全幅の値であり、比W(r=r1)/W(r=r3)が、約0.600から約0.850の範囲にある、項目1から6のいずれかのリチウムイオンバッテリアノード組成物。
【0181】
項目8.アノード組成物を含むアノードが、約2mAh/cm2から約16mAh/cm2に及ぶ面積容量負荷を示す、項目1から7のいずれかのリチウムイオンバッテリアノード組成物。
【0182】
項目9.アノードの面積容量負荷の約10%から約100%が、多孔質複合粒子としてそれぞれ構成された複合粒子によって提供される、項目8のリチウムイオンバッテリアノード組成物。
【0183】
項目10.複合粒子が、平均して約5:1から1:5の範囲にあるケイ素(Si)と炭素(C)との重量比を示す、項目8から9のいずれかのリチウムイオンバッテリアノード組成物。
【0184】
項目11.多孔質複合粒子が、約1nmから約40nmに及ぶ、原子対相関関数G(r)から推定される通りの平均散乱ドメインサイズ(r)によって特徴付けられる、項目1から10のいずれかのリチウムイオンバッテリアノード組成物。
【0185】
項目12.多孔質複合粒子が、約1nmから約10nmに及ぶ平均散乱ドメインサイズ(r)によって特徴付けられる、項目11のリチウムイオンバッテリアノード組成物。
【0186】
項目13.多孔質複合粒子が、平均して、約1重量%未満の水素(H)、約5重量%未満の窒素(N)、および約2重量%未満の酸素(O)を含む、項目1から12のいずれかのリチウムイオンバッテリアノード組成物。
【0187】
項目14.多孔質複合粒子が、多孔質複合粒子を含む粉末に関して測定されたとき、平均して、1050℃の窒素ガス(N2)中で2時間にわたり加熱されたときに約1.5重量%から約25重量%の窒素(N)の取込みを示す、項目1から13のいずれかのリチウムイオンバッテリアノード組成物。
【0188】
項目15.多孔質複合粒子が、多孔質複合粒子を含む粉末に関して測定されたとき、850℃の窒素ガス(N2)中で2時間にわたり加熱されたときに約0.5重量%から約10重量%の窒素(N)の平均取込みを示す、項目1から14のいずれかのリチウムイオンバッテリアノード組成物。
【0189】
項目16.多孔質複合粒子が、X線回折(XRD)またはフーリエ変換赤外分光法(FTIR)によって検出されたとき、約750℃から約950℃の温度範囲にある窒素ガス(N2)中またはアルゴンガス(Ar)中で2時間またはそれよりも長く加熱されたときに約1重量%から約100重量%の炭化ケイ素(SiC)を形成する、項目1から15のいずれかのリチウムイオンバッテリアノード組成物。
【0190】
項目17.多孔質複合粒子が、多孔質複合粒子を含む粉末に関して窒素吸着等温線を使用して測定されたとき、約1から約40m2/gの範囲にある平均Brunauer-Emmett-Teller(BET)比表面積を示す、項目1から16のいずれかのリチウムイオンバッテリアノード組成物。
【0191】
項目18.多孔質複合粒子が、多孔質複合粒子を含む粉末に関して窒素またはアルゴンピクノメトリーを使用して測定されたとき、約0.9g/cm3から約2.2g/cm3の範囲にある平均密度を示す、項目1から17のいずれかのリチウムイオンバッテリアノード組成物。
【0192】
項目19.多孔質複合粒子が、多孔質複合粒子を含む粉末に関して走査型電子顕微鏡(SEM)画像分析または粒子散乱技法を使用して測定されたとき、約0.2ミクロンから約20ミクロンの範囲にある体積平均粒度を示す、項目1から18のいずれかのリチウムイオンバッテリアノード組成物。
【0193】
項目20.多孔質複合粒子のラマンスペクトルが炭素DおよびGピークを示し、DピークとGピークとの平均強度の比(ID/IG)が約0.7から約2.7に及ぶ、項目1から19のいずれかのリチウムイオンバッテリアノード組成物。
【0194】
項目21.項目1から20のいずれかのリチウムイオンバッテリアノード組成物を含むアノードと、アノードから電気的に分離されたカソードと、アノードおよびカソードをイオン的に連結する電解質とを含む、Liイオンバッテリ。
【0195】
項目22.バッテリ容量が約0.2Ahから約400Ahに及ぶ、項目21のLiイオンバッテリ。
【0196】
項目23.R(r=rSi-C)が、多孔質複合粒子におけるSi-C対の第一配位圏の実空間位置での動径分布関数R(r)の値であり、R(r=rC-C)が、多孔質複合粒子におけるC-C対の第一配位圏の実空間位置での動径分布関数R(r)の値であり、動径分布関数R(r)および原子対相関関数が、R(r)=R(r)=G(r)r+4πr2ρ0によって関係付けられ、ρ0は散乱体の数密度に関する定数であり、比R(r=rSi-C)/R(r=rC-C)は0.050から約1.000の範囲にある、項目21から22のいずれかのLiイオンバッテリ。
【0197】
項目24.Liイオンバッテリにおける使用のためのアノード組成物の作製における使用のための炭素材料であって、炭素材料は、約10Å(1nm)から約60Å(6nm)に及ぶ炭素材料のシンクロトロンX線回折測定から得られる原子対相関関数G(r)から推定される通りのドメインサイズ(r)によって特徴付けられる、炭素材料。
【0198】
項目25.ドメインサイズ(r)が、下記:(1)約15Åから約19Åの間に及ぶ第1のドメインサイズ、(2)約19Åから約22Åの間に及ぶ第2のドメインサイズ、(3)約24Åから約28Åの間に及ぶ第3のドメインサイズ、および(4)約40Åから55Åの間に及ぶ第4のドメインサイズ、の1つに該当する、項目24の炭素材料。
【0199】
項目26.炭素材料が多孔質炭素を含む、項目24から25のいずれかの炭素材料。
【0200】
項目27.G(r=r1)が、炭素材料の第一配位圏の実空間位置での原子対相関関数の値であり、G(r=r2)が、炭素材料の第二配位圏の実空間位置での原子対相関関数の値であり、比G(r=r1)/G(r=r2)が、約0.700から約0.590の範囲にある、項目24から26のいずれかの炭素材料。
【0201】
項目28.W(r=r1)が、炭素材料の第一配位圏の実空間位置での原子対相関関数の半値全幅の値であり、W(r=r2)が、炭素材料の第二配位圏の実空間位置での原子対相関関数の半値全幅の値であり、比W(r=r1)/W(r=r2)が、約0.700から約0.850の範囲にある、項目24から27のいずれかの炭素材料。
【0202】
項目29.G(r=r1)が、炭素材料の第一配位圏の実空間位置での原子対相関関数の値であり、G(r=r3)が、炭素材料の第三配位圏の実空間位置での原子対相関関数の値であり、比G(r=r1)/G(r=r3)が、約1.100から約1.300の範囲にある、項目24から28のいずれかの炭素材料。
【0203】
項目30.W(r=r1)が、炭素材料の第一配位圏の実空間位置での原子対相関関数の半値全幅の値であり、W(r=r3)が、炭素材料の第三配位圏の実空間位置での原子対相関関数の半値全幅の値であり、比W(r=r1)/W(r=r3)が、約0.600から約0.850の範囲にある、項目24から29のいずれかの炭素材料。
【0204】
本記述は、当業者が本発明の実施形態を作製しまたは使用するのを、可能にするのに提供される。しかしながら本発明は、これらの実施形態の様々な修正例が当業者に容易に明らかになるので、本明細書に開示される特定の配合物、プロセス段階、および材料に限定されないことが理解されよう。即ち、本明細書で定義される一般的原理は、本発明の趣旨または範囲から逸脱することなく、その他の実施形態に適用され得る。
【手続補正書】
【提出日】2024-05-02
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素(C)を含む多孔質複合粒子と、ケイ素(Si)
ナノ粒子を含み、
前記炭素から分離された活物質と、を含み、
前記活物質は、多孔質炭素マトリックス材料中に埋め込まれ、
前記炭素が、約10Å(1nm)から約60Å(6nm)の範囲の前記多孔質複合粒子のシンクロトロンX線回折測定から得られる原子対相関関数G(r)から推定されるドメインサイズ(r)によって特徴付けら
れ、
前記活物質は、前記多孔質複合粒子の約20重量%から約98重量%の範囲であり、
前記Siナノ粒子の体積平均粒度が約0.5nmから約200nmの範囲であり、
前記多孔質複合粒子が、前記多孔質複合粒子を含む粉末について測定されたとき、平均して、
1050℃の窒素ガス(N
2
)中で2時間にわたり加熱されたときに約1.5重量%から約25重量%の窒素(N)の取込みを、または
850℃の窒素ガス(N
2
)中で2時間にわたり加熱されたときに約0.5重量%から約10重量%の窒素(N)の取込みを
示す、リチウムイオンバッテリアノード組成物。
【請求項2】
前記炭素が、下記:(1)約15Åから約19Åの範囲のドメインサイズ、(2)約19Åから約22Åの範囲のドメインサイズ、(3)約24Åから約28Åの範囲のドメインサイズ、および(4)約28Åから55Åの範囲のドメインサイズの1つまたは複数によって特徴付けられ、
前記ドメインサイズが、原子対相関関数G(r)から推定されたものである、
請求項1に記載のリチウムイオンバッテリアノード組成物。
【請求項3】
請求項1に記載のリチウムイオンバッテリアノード組成物
を含む、粉末。
【請求項4】
G(r=r
1)が、前記炭素の第一配位圏の実空間位置での原子対相関関数の値であり、
G(r=r
2)が、前記炭素の第二配位圏の実空間位置での原子対相関関数の値であり、
比G(r=r
1)/G(r=r
2)が、約0.700から約0.590の範囲である、
請求項1に記載のリチウムイオンバッテリアノード組成物。
【請求項5】
W(r=r
1)が、前記炭素の第一配位圏の実空間位置での原子対相関関数の半値全幅の値であり、
W(r=r
2)が、前記炭素の第二配位圏の実空間位置での原子対相関関数の半値全幅の値であり、
比W(r=r
1)/W(r=r
2)が、約0.700から約0.850の範囲である、
請求項1に記載のリチウムイオンバッテリアノード組成物。
【請求項6】
G(r=r
1)が、前記炭素の第一配位圏の実空間位置での原子対相関関数の値であり、
G(r=r
3)が、前記炭素の第三配位圏の実空間位置での原子対相関関数の値であり、
比G(r=r
1)/G(r=r
3)が、約1.100から約1.300の範囲である、
請求項1に記載のリチウムイオンバッテリアノード組成物。
【請求項7】
W(r=r
1)が、前記炭素の第一配位圏の実空間位置での原子対相関関数の半値全幅の値であり、
W(r=r
3)が、前記炭素の第三配位圏の実空間位置での原子対相関関数の半値全幅の値であり、
比W(r=r
1)/W(r=r
3)が、約0.600から約0.850の範囲である、
請求項1に記載のリチウムイオンバッテリアノード組成物。
【請求項8】
前記アノード組成物を含むアノードが、約2mAh/cm
2から約16mAh/cm
2の範囲の面積容量負荷を示す、請求項1に記載のリチウムイオンバッテリアノード組成物。
【請求項9】
前記アノードの面積容量負荷の約10%から約100%が、前記多孔質複合粒子としてそれぞれ構成された複合粒子によって提供される、請求項8に記載のリチウムイオンバッテリアノード組成物。
【請求項10】
前記複合粒子が、平均して約5:1から1:5の範囲のケイ素(Si)対炭素(C)との重量比を示す、請求項
9に記載のリチウムイオンバッテリアノード組成物。
【請求項11】
前記多孔質複合粒子が、約1nmから約40nmの範囲の、原子対相関関数G(r)から推定される平均散乱ドメインサイズ(r)によって特徴付けられる、請求項1に記載のリチウムイオンバッテリアノード組成物。
【請求項12】
前記多孔質複合粒子が、約1nmから約10nmの範囲の平均散乱ドメインサイズ(r)によって特徴付けられる、請求項11に記載のリチウムイオンバッテリアノード組成物。
【請求項13】
前記多孔質複合粒子が、平均して、約1重量%未満の水素(H)、約5重量%未満の窒素(N)、および約2重量%未満の酸素(O)を含む、請求項1に記載のリチウムイオンバッテリアノード組成物。
【請求項14】
前記多孔質複合粒子が
、1050℃の窒素ガス(N
2)中で2時間にわたり加熱されたときに、前記多孔質複合粒子を含む粉末についての測定で約1.5重量%から約25重量%の窒素(N)の
平均取込みを示す、請求項1に記載のリチウムイオンバッテリアノード組成物。
【請求項15】
前記多孔質複合粒子が、850℃の窒素ガス(N
2)中で2時間にわたり加熱されたときに、前記多孔質複合粒子を含む粉末についての測定で約0.5重量%から約10重量%の窒素(N)の平均取込みを示す、請求項1に記載のリチウムイオンバッテリアノード組成物。
【請求項16】
前記多孔質複合粒子が、X線回折(XRD)またはフーリエ変換赤外分光法(FTIR)によって検出されたとき、約750℃から約950℃の温度範囲にある窒素ガス(N
2)中またはアルゴンガス(Ar)中で2時間またはそれよりも長く加熱されたときに約1重量%から約100重量%の炭化ケイ素(SiC)を形成する、請求項1に記載のリチウムイオンバッテリアノード組成物。
【請求項17】
前記多孔質複合粒子が、前記多孔質複合粒子を含む粉末について窒素吸着等温線を使用して測定されたとき、約1m
2/gから約40m
2/gの範囲の平均Brunauer-Emmett-Teller(BET)比表面積を示す、請求項1に記載のリチウムイオンバッテリアノード組成物。
【請求項18】
前記多孔質複合粒子が、前記多孔質複合粒子を含む粉末について窒素またはアルゴンピクノメトリーを使用して測定されたとき、約0.9g/cm
3から約2.2g/cm
3の範囲の平均密度を示す、請求項1に記載のリチウムイオンバッテリアノード組成物。
【請求項19】
前記多孔質複合粒子が、前記多孔質複合粒子を含む粉末に関して走査型電子顕微鏡(SEM)画像分析または粒子散乱技法を使用して測定されたとき、約0.2ミクロンから約20ミクロンの範囲にある体積平均粒度を示す、請求項1に記載のリチウムイオンバッテリアノード組成物。
【請求項20】
前記多孔質複合粒子のラマンスペクトルが炭素DピークおよびGピークを示し、前記DピークとGピークとの平均強度の比(I
D/I
G)が約0.7から約2.7の範囲である、請求項1に記載のリチウムイオンバッテリアノード組成物。
【請求項21】
請求項1に記載のリチウムイオンバッテリアノード組成物を含むアノードと、
前記アノードから電気的に分離されたカソードと、
前記アノードおよび前記カソードをイオン的に連結する電解質と
を含む、Liイオンバッテリ。
【請求項22】
バッテリ容量が約0.2Ahから約400Ahの範囲である、請求項21に記載のLiイオンバッテリ。
【請求項23】
R(r=r
Si-C)が、前記多孔質複合粒子におけるSi-C対の第一配位圏の実空間位置での動径分布関数R(r)の値であり、
R(r=r
C-C)が、前記多孔質複合粒子におけるC-C対の第一配位圏の実空間位置での動径分布関数R(r)の値であり、
前記動径分布関数R(r)および原子対相関関数が、
R(r)=G(r)r+4πr
2ρ
0によって関係付けられ、ρ
0は散乱体の数密度に関する定数であり、比R(r=r
Si-C)/R(r=r
C-C)は0.050から約1.000の範囲にある、請求項21に記載のLiイオンバッテリ。
【国際調査報告】