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特表2024-535752時間アンビギュイティを解決するための方法、関連するシステム、関連する送信機及び関連する受信機
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-02
(54)【発明の名称】時間アンビギュイティを解決するための方法、関連するシステム、関連する送信機及び関連する受信機
(51)【国際特許分類】
   G01S 19/24 20100101AFI20240925BHJP
   G01S 19/39 20100101ALI20240925BHJP
【FI】
G01S19/24
G01S19/39
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2024514560
(86)(22)【出願日】2022-09-06
(85)【翻訳文提出日】2024-05-02
(86)【国際出願番号】 EP2022074757
(87)【国際公開番号】W WO2023031483
(87)【国際公開日】2023-03-09
(31)【優先権主張番号】21194966.4
(32)【優先日】2021-09-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】510304715
【氏名又は名称】ザ ヨーロピアン ユニオン、リプレゼンテッド バイ ザ ヨーロピアン コミッション
【氏名又は名称原語表記】The European Union,represented by the European Commission
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】弁理士法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】スアル,フランシス
(72)【発明者】
【氏名】フロック,ジャン-ジャック
(72)【発明者】
【氏名】シュミット,ティル
(72)【発明者】
【氏名】ダ ブロイ,ジャコモ
【テーマコード(参考)】
5J062
【Fターム(参考)】
5J062AA09
5J062AA13
5J062CC07
5J062CC11
5J062EE05
5J062FF01
(57)【要約】
本発明の実施形態は、第1の時間スケールを有する複数の送信機のうちの無線送信機と、第2の時間スケールを有する複数の無線受信機のうちの無線受信機との間の時間アンビギュイティを解決するための方法及び関連する装置に関し、無線送信機は無線受信機に結合され、無線送信機は無線受信機に無線信号を送信し、方法は、無線送信機によって、時間アンビギュイティ間隔ごとにシンボルのセットを含むオーバーレイシーケンスを生成するステップであって、シンボルのセットは所定の長さを有し、オーバーレイシーケンスは、時間アンビギュイティ間隔のシンボルのセット内におけるシンボルのサブセットの単回発生の条件を満たし、時間アンビギュイティ間隔のそれぞれが暗示的な時間マーカを含む、生成するステップと、無線送信機によって、無線受信機に無線信号を送信するステップであって、無線信号は、無線信号の搬送波上に変調されたオーバーレイシーケンスを含む、送信するステップと、無線受信機によって無線信号を受信するステップと、無線受信機(RX1)によって無線信号のスナップショットをキャプチャするステップであって、スナップショットは、オーバーレイシーケンスのN個のシンボルを含むシンボルのサブセットを含む、キャプチャするステップと、無線受信機によってスナップショットを処理して、時間アンビギュイティ間隔のシンボルのセット内のスナップショットに含まれるシンボルのサブセットの位置に基づいて無線信号の暗示的な時間マーカの相対位置を特定するステップと、第1の時間スケールと第2の時間スケールとの間の時間アンビギュイティを、第1の時間スケールで表現された、スナップショットの処理に基づく暗示的な時間マーカと、第2の時間スケールに基づいて生成されたオーバーレイシーケンス内の暗示的な時間マーカとの間の遅延を評価することによって解決するステップであって、オーバーレイシーケンスは、M進ド・ブラウンシーケンスに基づくM進シーケンスからなる、解決するステップと、を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線航法衛星システムにおいて、第1の時間スケールを有する前記無線航法衛星システムの複数の送信機のうちの無線送信機(TX1)と、第2の時間スケールを有する前記無線航法衛星システムの複数の無線受信機のうちの無線受信機(RX1)との間の時間アンビギュイティを解決するための方法であって、前記無線送信機(TX1)は前記無線受信機(RX1)に結合され、前記無線送信機は前記無線受信機(RX1)に無線信号を送信する、方法において、前記方法は、
前記無線送信機(TX1)によって、時間アンビギュイティ間隔ごとにシンボルのセットを含むオーバーレイシーケンスを生成するステップであって、前記シンボルのセットは所定の長さLを有し、前記オーバーレイシーケンスは、前記時間アンビギュイティ間隔の前記シンボルのセット内におけるシンボルのサブセットの単回発生の条件を満たし、前記時間アンビギュイティ間隔のそれぞれが暗示的な時間マーカを含む、生成するステップと、
前記無線送信機(TX1)によって、前記無線受信機(RX1)に前記無線信号を送信するステップであって、前記無線信号は、前記無線信号の搬送波上に変調された前記オーバーレイシーケンスを含む、送信するステップと、
前記無線受信機(RX1)によって前記無線信号を受信するステップと、
前記無線受信機(RX1)によって前記無線信号のスナップショットをキャプチャするステップであって、前記スナップショットは、前記オーバーレイシーケンスのN個のシンボルを含むシンボルのサブセットを含む、キャプチャするステップと、
前記無線受信機(RX1)によって前記スナップショットを処理して、前記時間アンビギュイティ間隔の前記シンボルのセット内の前記スナップショットに含まれる前記シンボルのサブセットの位置に基づいて前記無線信号の前記暗示的な時間マーカの相対位置を特定するステップと、
前記第1の時間スケールと前記第2の時間スケールとの間の前記時間アンビギュイティを、前記第1の時間スケールで表現された、前記スナップショットの前記処理に基づく前記暗示的な時間マーカと、前記第2の時間スケールに基づいて生成された前記オーバーレイシーケンス内の前記暗示的な時間マーカとの間の遅延を評価することによって解決するステップであって、前記オーバーレイシーケンスは、M進ド・ブラウンシーケンスに基づくM進シーケンスからなる、解決するステップと、
を含むことを特徴とする、方法。
【請求項2】
無線送信機(TX1)であって、無線航法衛星システムにおける、第1の時間スケールを有する前記無線航法衛星システムの前記無線送信機(TX1)と第2の時間スケールを有する前記無線航法衛星システムの無線受信機(RX1)との間の時間アンビギュイティを解決するように構成され、前記無線送信機(TX1)は、無線信号を前記無線受信機(RX1)に送信するように構成されている、無線送信機(TX1)において、前記無線送信機(TX1)は、
時間アンビギュイティ間隔ごとにシンボルのセットを含むオーバーレイシーケンスを生成するように構成されたシーケンス生成手段(11)であって、前記シンボルのセットは所定の長さLを有し、前記オーバーレイシーケンスは、前記時間アンビギュイティ間隔の前記シンボルのセット内におけるシンボルのサブセットの単回発生の条件を満たし、前記時間アンビギュイティ間隔のそれぞれが暗示的な時間マーカを含む、シーケンス生成手段(11)と、
無線信号を前記無線受信機(RX1)に送信するように構成された送信手段(12)であって、前記無線信号は、前記無線信号の搬送波上に変調された前記オーバーレイシーケンスを含み、前記オーバーレイシーケンスは、時間アンビギュイティ間隔ごとにシンボルのセットを含み、前記シンボルのセットは所定の長さLを有し、前記時間アンビギュイティ間隔のそれぞれが暗示的な時間マーカを含み、前記オーバーレイシーケンスは、M進ド・ブラウンシーケンスに基づくM進シーケンスからなる、送信手段(12)と、
を備えることを特徴とする、無線送信機(TX1)。
【請求項3】
前記シーケンス生成手段(11)は、互いに異なる複数のオーバーレイシーケンスを生成するように更に構成されている、請求項2に記載の無線送信機(TX1)。
【請求項4】
無線受信機(RX1)であって、無線航法衛星システムにおける、第1の時間スケールを有する前記無線航法衛星システムの無線送信機(TX1)と第2の時間スケールを有する前記無線航法衛星システムの前記無線受信機との間の時間アンビギュイティを解決するように構成され、前記無線送信機(TX1)は、前記無線受信機(RX1)に無線信号を送信するように構成され、前記無線信号は、前記無線信号の搬送波上に変調されたシンボルのサブセットの単回発生の条件を満たすオーバーレイシーケンスを含み、前記オーバーレイシーケンスは、時間アンビギュイティ間隔ごとにシンボルのセットを含み、前記時間アンビギュイティ間隔のそれぞれが暗示的な時間マーカを含み、前記無線受信機(RX1)は、
前記無線信号を受信するように構成された受信手段(21)と、
前記無線信号のスナップショットを取得するように構成されたスナップショットキャプチャ手段(22)であって、前記スナップショットは、前記オーバーレイシーケンスのシンボルのサブセットを含む、スナップショットキャプチャ手段と、
を更に備える、無線受信機(RX1)において、前記無線受信機(RX1)は、
前記スナップショットに含まれる前記オーバーレイシーケンスのN個のシンボルを含む前記シンボルのサブセットの位置に基づいて、前記無線信号の前記暗示的な時間マーカの相対位置を特定するように構成された処理手段(23)を更に備え、
前記処理手段(23)は、前記第1の時間スケールと前記第2の時間スケールとの間の前記時間アンビギュイティを、前記第1の時間スケールで表現された、前記スナップショットの処理に基づく前記暗示的な時間マーカと、前記第2の時間スケールに基づいて生成された前記オーバーレイシーケンス内の前記暗示的な時間マーカとの間の遅延を評価することによって解決するように更に構成されている、
ことを特徴とする、無線受信機(RX1)。
【請求項5】
前記スナップショットに含まれる前記シンボルのサブセットは、前記オーバーレイシーケンスのシンボルの追加のサブセットで拡張され、前記追加のサブセットは、NExt個のシンボルの長さを有し、前記拡張されたシンボルのサブセットは、P=N+NExt個のシンボルを含み、
前記処理手段(23)は、前記スナップショットに含まれる前記拡張されたシンボルのサブセットと、P=N+NExt個のシンボルの長さを有する前記オーバーレイシーケンスの各サブシーケンスとの間のハミング距離を計算するように更に構成されており、
前記処理手段(23)は、前記スナップショットに含まれる前記拡張されたシンボルのサブセットと、P=N+NExt個のシンボルを含む前記オーバーレイシーケンスの各サブシーケンスとの間で計算された全てのハミング距離にわたる最小値が非0であるか、又は0であり、複数回発生する場合、前記拡張されたシンボルのサブセットにおけるエラーを検出するように更に構成されており、
前記処理手段(23)は、前記スナップショットに含まれる前記拡張されたシンボルのサブセットと、P=N+NExt個のシンボルを含む前記オーバーレイシーケンスの各サブシーケンスとの間で計算された全てのハミング距離にわたる前記最小値が0であり、単回発生する場合、前記スナップショットに含まれる前記拡張されたシンボルのサブセットに基づいて前記無線信号の前記暗示的な時間マーカの相対位置を特定するように更に構成されている、
ことを特徴とする、請求項4に記載の無線受信機(RX1)。
【請求項6】
前記処理手段(23)は、前記スナップショットに含まれる前記拡張されたシンボルのサブセットとP=N+NExt個のシンボルを含む前記オーバーレイシーケンスの各サブシーケンスとの間で計算された全てのハミング距離にわたる前記最小値が、前記選択されたオーバーレイシーケンスに応じて、更なる所定の最小値
を超えない場合、最小ハミング距離をもたらすP=N+NExt個のシンボルを含む前記オーバーレイシーケンスの前記サブシーケンスを選択し、P=N+NExt個のシンボルを含む前記オーバーレイシーケンスの前記サブシーケンスと前記スナップショットに含まれる前記拡張されたシンボルのサブセットとの間で異なる最大
個のシンボルを補正することによって、エラーを補正するように更に構成されている、
ことを特徴とする、請求項5に記載の無線受信機(RX1)。
【請求項7】
前記受信手段(21)は、第1の無線送信機から第1の無線信号を、及び第2の無線送信機から少なくとも第2の無線信号を受信するように更に構成されており、前記第1の無線信号及び少なくとも前記第2の無線信号はオーバーレイシーケンスを含み、前記第1のオーバーレイシーケンスと前記少なくとも前記第2のオーバーレイシーケンスとは異なり、
前記受信手段は、前記第1の無線信号の前記オーバーレイシーケンスと少なくとも前記第2の無線信号の前記オーバーレイシーケンスとを結合させて集約されたオーバーレイシーケンスとするように更に構成されており、
前記スナップショットキャプチャ手段(22)は、前記第1の無線信号と少なくとも前記第2の無線信号との前記集約されたオーバーレイシーケンスのスナップショットを取得するように構成され、前記スナップショットは、前記集約されたオーバーレイシーケンスのシンボルのサブセットを含む、
ことを特徴とする、無線受信機(RX1)において、
前記無線受信機(RX1)は、N個のシンボルを含む前記スナップショットに含まれる前記集約されたオーバーレイシーケンスの前記シンボルのサブセットの位置に基づいて、前記無線信号の前記暗示的な時間マーカの相対位置を特定するように構成された処理手段(23)を更に備え、
前記処理手段(23)は、前記第1の時間スケールと前記第2の時間スケールとの間の前記時間アンビギュイティを、前記第1の時間スケールで表現された、前記スナップショットの前記処理に基づく前記暗示的な時間マーカと、前記第2の時間スケールに基づいて生成された前記集約されたオーバーレイシーケンス内の前記暗示的な時間マーカとの間の前記遅延を評価することによって解決するように更に構成されている、
ことを特徴とする、請求項4、5又は6のいずれか一項に記載の無線受信機(RX1)。
【請求項8】
前記シーケンス生成手段(11)は、
切り詰められた遷移シーケンスを、L個のシンボルの長さを有する元のド・ブラウンシーケンスからなる元のシーケンスに基づいて、最初に「0」を含むN個のシンボルを前記元のシーケンスから除去し、続いて「1」を含む単一のシンボルを前記元のシーケンスから除去することによって、切り詰められたシーケンスをもたらし、任意選択で、前記切り詰められたシーケンスから追加のK個のシンボルを除去して、長さL-N-1-Kの切り詰められた遷移シーケンスをもたらすことによって生成し、
前記切り詰められた遷移シーケンスの位相遷移を示す第1の統合シーケンス及び、反転された切り詰められた遷移シーケンスの位相を示す第2の統合シーケンスであって、前記第1の統合シーケンスは前記第2の統合シーケンスの逆位相にある、第1の統合シーケンス及び第2の統合シーケンスを生成し、
前記第1の統合シーケンスと前記第2の統合シーケンスとを連結することによって、連結された統合シーケンスを生成する、
ように更に構成され、
前記連結された統合シーケンスは、前記無線信号の搬送波上に変調されるように構成されている、
ことを特徴とする、請求項2又は3に記載の無線送信機(TX)。
【請求項9】
前記スナップショットキャプチャ手段(22)は、無線信号のスナップショットをキャプチャするように構成され、前記スナップショットは、請求項8に記載の無線送信機(Tx)によって生成された連結された統合シーケンスからなる前記オーバーレイシーケンスのシンボルのサブセットを含み、前記スナップショットは、N+1個のシンボルを含み、
前記処理手段(23)は、
前記スナップショットに含まれる前記オーバーレイシーケンスの前記シンボルのサブセットからのN個の遷移を求め、
前記スナップショットに含まれる前記シンボルのサブセットからの前記N個の遷移に基づいて、前記無線信号の前記暗示的な時間マーカに対する前記スナップショットに含まれる前記シンボルのサブセットの位置を特定する、
ように更に構成されている、
ことを特徴とする、請求項4、5又は6のいずれか一項に記載の無線受信機(RX1)。
【請求項10】
前記処理手段(23)は、リポジトリ(25)のエントリ内の前記スナップショットに含まれる前記シンボルのサブセットを検索することによって、前記時間アンビギュイティ間隔の前記シンボルのセット内の前記スナップショットに含まれる前記シンボルのサブセットの位置に基づいて前記無線信号の前記暗示的な時間マーカの前記相対位置を特定するように更に構成され、前記リポジトリ(25)は、エントリごとに、前記スナップショットの複数のシンボルと、前記無線信号の前記時間アンビギュイティ間隔内の前記時間マーカに対する前記スナップショットの前記複数のシンボルの相対位置とを含むことを特徴とする、請求項4~7又は9のいずれか一項に記載の無線受信機(RX1)。
【請求項11】
前記無線受信機(RX1)は、前記取り出されたシンボルに基づいて、前記送信機(TX1)によって送信された前記無線信号上に変調された前記オーバーレイシーケンスの前記スナップショットに対応するスナップショットシーケンスを生成するように構成されたスナップショットシーケンス生成手段(24)を更に備え、
前記処理手段(23)は、前記スナップショットシーケンスを前記スナップショットシーケンスに対応するオーバーレイシーケンスと部分自己相関させることによって、前記無線信号内の前記時間マーカの前記相対位置を特定するように構成されている、
ことを特徴とする、請求項4~7又は9のいずれか一項に記載の無線受信機(RX1)。
【請求項12】
前記無線受信機(RX1)は、前記スナップショット信号から導出されたサンプルに基づいて、前記送信機(TX1)によって送信された前記無線信号上に変調された前記オーバーレイシーケンスの前記スナップショットに対応するスナップショットシーケンスを生成するように構成されたスナップショットシーケンス生成手段(24)を更に備え、
前記処理手段(23)は、前記スナップショットシーケンスを前記スナップショットシーケンスに対応するオーバーレイシーケンスと部分自己相関させることによって、前記無線信号内の前記時間マーカの前記相対位置を特定するように構成されている、
ことを特徴とする、請求項4、7及び9のいずれか一項に記載の無線受信機(RX1)。
【請求項13】
前記無線受信機(RX1)は、前記無線信号の位相を取り出すために位相ロックループを実装していることを特徴とする、請求項4~7、9~12のいずれか一項に記載の無線受信機(RX1)。
【請求項14】
前記無線受信機(RX1)は、前記無線信号の位相変化を取り出すために周波数ロックループを実装していることを特徴とする、請求項4~7、9~12のいずれか一項に記載の無線受信機(RX1)。
【請求項15】
無線航法衛星システムにおける、第1の時間スケールを有する前記無線航法衛星システムの複数の無線送信機のうちの無線送信機(TX1)と、第2の時間スケールを有する前記無線航法衛星システムの複数の無線受信機のうちの無線受信機(RX1)との間の時間アンビギュイティを解決するための無線航法システムであって、前記送信機は、前記複数の無線受信機のうちの前記少なくとも1つの無線受信機(RX1)に結合され、前記無線送信機(TX1)は、前記無線受信機(RX1)に無線信号を送信するように構成されている、無線航法システムにおいて、
前記システムは、請求項2又は3又は8に記載の無線送信機(TX1)を備え、
前記システムは、請求項4~14のいずれか一項に記載の無線受信機(RX1)を更に備える、
ことを特徴とする、無線航法システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、無線航法システムにおける時間アンビギュイティを解決するための方法、関連するシステム、送信機、及び関連する受信機に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、複数の無線送信機と、少なくとも1つの無線受信機とを備える全地球航法衛星システム(Global Navigation Satellite System、GNSS)無線航法システムなどの無線航法システムでは、少なくとも1つの受信機が、複数の送信機の各々によって送信された無線航法信号を受信するように適合されており、そのような受信信号は、位置特定及び同期の目的で使用することができる。
【0003】
近年、新たな傾向の収束から生じる、新たなタイプの位置特定サービス(測位サービスとも呼ばれる)及びタイミングサービスの出現が見られている。第1に、特に新たな第5世代(5G)通信規格を使用して10倍から1000倍のデータスループットを提供する地上ネットワークの急速な発展は、スマートフォンなどのモバイルデバイスを、ユーザとコミュニティ又はエコシステムとの間の主要なインターフェースとして位置付けている。この見通しの変化により、旧来の位置航法デバイス(Position Navigation Device、PND)、又は通信機能のない「GPSスウォッチ」が大衆市場セグメントで果たす役割の重要性は低下する。「スマートフォン・セントリック」となるために、通信機能付きのデバイスには、通信機能付きのキー、家庭用デバイスなど、日常生活を容易にすることができるあらゆる種類の「要素(Things)」が含まれ得る。これらの「要素」は、必ずしもユーザの日常生活に直接干渉するものではないが、「ミクロ要素」(例えば、「mote」又は「smart dust」などのセンサ)又は「マクロ要素」(例えば、ドローン)も、各自のサービスにおける新たな透明層の一部として包含され得ることに留意されたい。第2に、これらの通信機能付きの要素が大幅に増加した場合、何の対策も講じなければ、これらのエンドデバイスの全てに給電するのに必要な全体的な電力が著しく増大する可能性があるという点で、大方の予測が一致している。この観点は、地球温暖化や化石資源等の原材料の再生不可能性が無視できない時代においては特に重要である。
【0004】
したがって、大部分が絶対的な基準でのそれらの大まかな位置及び時間も必要とする、数十億ではないにしても数百万のこれらの通信機能付きの「要素」から、測位サービスのみならずタイミングサービスの新たなカテゴリも出現することになる。メートル単位又は更にはデシメートル単位の精度は、他のGNSS信号及び拡張サービスを用いてすでに達成することができるので、この新しいタイプの用途にとって重要な性能尺度は、正確な又は高精度の測位及びタイミング性能ではなく、むしろ時間及び位置の両方を、好ましくはこの情報にアクセスするのに必要な最小限の電力で迅速に提供することであることも示されている。
【0005】
例えば全地球航法衛星システムのような無線航法システムは、この進化に直面しても、GNSSが絶対的な時間及び位置基準を提供することができるので、依然として役割を果たすことができる。
しかしながら、例えば全地球航法衛星システム(GNSS)システムなどのそのような既存のシステムの現在の無線航法信号は、無線受信機とも呼ばれるユーザデバイスの、GNSS時間スケールなどの第1の時間スケールと、例えばユーザデバイスなどの無線受信機が接続されている地上ネットワークの時間スケール、又はそのような無線受信機の受信機クロックによって生成されたローカル時間スケールなどの第2の時間スケールとの間の高速かつ高感度の同期をサポートするように設計及び最適化されていない。実際に、受信機のローカル時間スケールは、受信機に実装されている局部発振器のタイプによっては、受信機クロックのドリフトのために第1の時間スケールから急速に逸脱する場合があることが示されている。
【0006】
以下では、背景技術の一部として、無線受信機、例えばユーザデバイスの位置及び時間を推定するためにユーザデバイスに通常実装される方法を公式化したいくつかの数学的記述を開示する。この説明は特に、熟練していない者が、受信したGNSS信号及びGNSS信号に埋め込まれた航法メッセージの内容から擬似距離を導出するために使用される従来技術の方法、支援型GNSS(A-GNSS)の一部として通信ネットワークに接続されている無線受信機の位置及び時間を推定するために使用される従来技術の方法、又は信号の短い部分に基づいて位置及び時間を推定するために使用される「スナップショット」測位とも呼ばれる従来技術の方法を理解する助けとなろう。これらの方法の説明において導入されたいくつかの数学的要素はまた、本出願で後述する本発明の説明をサポートするために使用される。
これらの背景技術の方法の説明は、以下の刊行物を参照する:
[参考文献1]:非特許文献1
[参考文献2]:非特許文献2
[参考文献3]:非特許文献3
[参考文献4]:非特許文献4
[参考文献5]:非特許文献5
【0007】
以下に、受信信号及び変調された航法メッセージの受信に基づいて擬似距離を計算するために使用される従来技術の方法、並びに対応する擬似距離に基づいてGNSS無線受信機の位置を計算するために使用される従来技術の方法を示す。GNSS無線受信機は、少なくとも4つのGNSS信号を処理してその位置及び時刻を取り出す必要がある。ここで、受信機は、追跡中に航法メッセージを復調することができるものとする。可解な位置方程式が3つの座標(x、y、z)及びユーザ受信機時間オフセットΔbを考慮することを保証するために、少なくとも4つの衛星が必要であることに留意されたい。擬似距離ρiは、以下の式に示すように、衛星Satiとユーザデバイスとの間の「物理」距離riと、ユーザ受信機とGNSS時間スケールとの間のクロックアライメント誤差を説明するオフセットΔbとの2つの本質的な寄与を含み、c0は光速を示す。
擬似距離ρiはまた、GNSS時間スケールで表される衛星側での送信時刻と、受信機時間スケールで表されるユーザデバイス側での受信時刻との間の差として定義される。
【0008】
擬似距離を導出するために、既存の無線衛星航法信号は、信号がいつ衛星を離れたかを送信時刻(Time of Transmission、ToT)で示すいわゆる時間マーカを備える。そのような時間マーカは、様々な形態をとることができる。例えば、GPS信号の場合、時間マーカは、テレメトリワード(TLM)と、送信時刻(ToT)を含むハンドオーバワールド(HOW)とを含む。TLMワードは、航法メッセージ内で数秒離れた位置でレガシー信号に符号化され、これにより、ユーザデバイスなどの無線受信機は、これらのTLMワードを取り出すために、より長い時間にわたってそのような信号を処理することを強いられ、これは、ユーザデバイスなどのそのような無線受信機の電力消費を低減するために最適ではない。TLMは、GNSS時間スケールに同期させて送信されるものとする。対応する同期送信が、図3の左部に示されている。衛星クロックオフセットΔbSatのために、ToTの完全な同期は衛星間で達成されないが、ユーザデバイスは、航法メッセージに提供された衛星クロック補正モデルに基づいて、この追加の寄与分の擬似距離を補正することができることに留意されたい。
【0009】
一方の側に「共通受信時間」を有し、他方の側に([参考文献1]、[参考文献3]、[参考文献4]参照)「共通送信時間」を有する擬似距離を計算するために、少なくとも2つの主な手法が存在する。両方は同等であり、説明のために「共通受信時間」を選択する。GNSS時間スケールで表される場合にはtGNSS rx,iで示され、又は受信機時間スケールで表される場合にはtRec rx,iで示される同じエポックで、全ての擬似距離が計算される。受信時に、対応するTLMワードは、衛星とユーザデバイスとの間の距離が様々に異なるために同じエポックで受信されず、この結果、様々に異なる伝搬時間がもたらされる。これは、図3の右部に示されている。擬似距離ρiを計算するために、受信機は、TLMワードの受信を待ってそれを復調し、信号がいつ送信されたかをエポックtGNSS ToT,iで知る「だけでよい」。エポックtGNSS rx,iにおける拡散符号の小数部分と、tRec rx,i(受信機時間スケールで表される)とTLMの「読み取り」との間の全拡散符号周期(例えば、GPSC/Aの場合は1ms、GalileoE1-B/E1-Cの場合は4ms)の累積数とを合計することによって、受信機は、衛星とユーザデバイスとの間の相対的な受信時間オフセットδiにアクセスすることができる。衛星iでの送信時間は、次式で与えられる。
絶対擬似距離を構築するためには、計測された時間tRec rx,iを生成する必要がある。これは、送信時間tGNSS tx,iと、衛星とユーザとの間の距離の推定値ρest iとの和として計算される。一般的な送信時間方法及び受信時間方法の両方について、通常は、4つのうちで最初にTLMを受信及び復調する第1のチャネルを、他の全ての(例えば3つの)擬似距離の構築の基準として考える。
【0010】
最初のエポック(k=1)(すなわち、初期化時)の場合、通常は、ρest 1[1]=ρ1の大まかな値を設定する。ρ1は、衛星とユーザとの間の最小移動時間:GPSの場合は約65ms~約85ms、Galileoの場合は約77ms~約96msに設定される。
以下のエポック(k>1)の場合、ρest 1[k]は、復調された航法メッセージから提供された情報と推定されたユーザ位置(xest,est,zest):ρest 1[k]=rest 1[k-1]とに基づく衛星からユーザまでの距離であるrest i[k-1]の最新の推定に基づく。
最後に、GNSS時間スケールと受信機時間スケールとの両方における受信時刻を、受信機クロックオフセットΔbに基づいて表すことができる。以下の説明では、説明を容易にするために、エポックインデックス[k]を省略する。
次に、以下のように式(式2)、(式4)、及び(式6)を再使用することによって、4つ全ての衛星について絶対擬似距離を構築することが可能である。
擬似距離ρiがN(N≧4)個の見通し線に対して利用可能になると、絶対位置解xest,est,estは、以下のように擬似距離方程式の線形化から得られる:
式中、
-ei:ユーザデバイス位置と衛星iの位置とを結ぶ正規化ベクトルを表す。
-δX=[δxest,δyest,δzest]は、xest=x0+δxest、yest=y0+δyest及びzest=z0+δzestなどの3つの推定座標の微分のベクトルであり、[x0,y0,z0]は線形化に使用される基準位置であり、これは位置フィルタの初期化時の大まかな位置推定値、又は反復解における推定位置の最新の状態のいずれかであり得る。基準位置は、相対位置解[δxest,δyest,δzest]に基づいて絶対位置解[xest,yest,zest]を表現することを可能にする。
-δΔbも同様にクロックバイアス推定値の残差を表す。
-εiは、擬似距離に対する付加的な測定ノイズを表す。
各反復でのδ ext=[δ,δΔb]=[δxest,δyest,δzest,δΔb]の相対位置の解は、([参考文献2]からの)次の式で与えられる。
式中、
-δρは、(式8)によるN個の残差擬似距離のベクトルである。
は、形式[-e i1]のN個の行から構成される、いわゆる計画行列である。
【0011】
以下に、支援型GNSSコンテキストにおける擬似距離を計算するために使用される従来技術の方法を示す。多くの無線受信機は、受信機の時間スケールなどの第2の時間スケールを基準とした、重要な事前情報及びユーザの位置と時間との両方に関する情報を提供する地上通信ネットワークに接続されている。この特徴は、第1の時間スケール、例えばGNSS時間スケールを基準とした正確な位置及び時間の最終ユーザ又は関連アプリケーションへの提供を加速する機会を表す。支援型GNSS(A-GNSS)と呼ばれるそのようなシナリオは、受信機がGNSS信号で変調された航法データにアクセスすることができないという事実によってスタンドアロン型GNSSとは異なる。それは擬似距離を導出するためにGNSS信号を追跡するだけである。これは、ユーザデバイスが、航法メッセージ内で通常変調されている衛星クロック及びエフェメリスデータ(Clock and Ephemeris Data、CED)にも、航法信号の送信時間をマークするTLM及びHOWにもアクセスできないことを意味する。
この情報の欠如を緩和するために、通信ネットワークは、クロック及びエフェメリスデータなどの情報の一部を提供するが、TLM及びHOWなどの全ての必要な情報を提供することはできない。(例えば、セルラセルの寸法及び位置を使用して)その大まかな位置、又は信号取得、追跡もしくは擬似距離計算を容易にすることができる任意の他の種類のデータなどの他の種類の情報も通信機能付きのデバイスに提供可能であることが更に示されている。支援型GNSSは通常、そのような情報が通信機能付きのデバイスに伝達される場合を意図する。
【0012】
衛星位置及びクロックオフセットの両方は、ネットワークに接続している可能性のある受信機の時間スケールで表される送信時刻tNtx ToT,iで計算されることに留意されたい。しかしながら、これは、GNSS時間スケールとは数ミリ秒異なる可能性があり、その場合、「精密な時間支援」が考慮される。それは、数百ミリ秒から最大で数秒異なる可能性もあり、その場合、「大まかな時間」支援が考慮される。以下では、受信機とGNSS時間スケールとの間の時間オフセット、すなわち同期誤差をΔTと呼び、ΔT=2×ΔTmaxと表すこともできる。大まかな時間スケールでのΔTの典型的な値は±2秒であり、この場合、ΔTmax=2秒である。
【0013】
擬似距離計算に対するA-GNSSの第1の意味を推定することができる:
-第1に、ユーザデバイスがTLM及びHOWを復調しないので、擬似距離構築に必要なこの情報(式7)を参照)を入手することが不可能であり、別の手段によって何らかの形で伝達される必要がある。
-第2に、時間マーカが存在しないので、時間オフセットδiを推定するために、TLMと受信時刻tRec rx,iとの間の、小数部分で完了する完全な符号周期を計数することが不可能である。結果として、異なる受信信号間の相対的な時間オフセットδiを計算することができない。
-最後に、ネットワークによって提供されるクロック及びエフェメリスデータのモデルを用いて計算された衛星の位置及びクロックオフセットは、オフセットΔTのために、ΔT値が大きい場合には数百メートル、又は更には数キロメートル異なる可能性がある。一例として、GPS軌道の800m/sの最大距離変化率(Galileo軌道についてはそれぞれ900m/s)を想定すると、1.6km(それぞれ1.8km)となる([参考文献2]参照)。擬似距離誤差の大きさを表すことができる数学的形式は、このセクションで後述する。送信時刻での衛星位置のそのような誤差は、確実にその位置に伝播し、緩和措置が講じられない場合、同じ程度の大きさのユーザデバイス位置誤差をもたらす。
【0014】
[参考文献2]では、A-GNSSの特定の場合に擬似距離、特に擬似距離残差がどのように計算されるかが示されている。TLM情報がない場合、擬似距離残差は以下の式によって与えられる。
式中、
-ρmeas iは、[参考文献2]:「受信機はC/A符号-位相オフセットのみを測定しており、まだデータビット端を検出していないか、又はHOWを復号していないので、測定された擬似距離はサブミリ秒値(すなわち、0からほぼ300kmの間)になる。」に従って、A-GNSSの場合に一次符号の小数部分に減少する測定された擬似距離を表す。
-ρpred iは、予測された擬似距離を表す。これは以下のように構成される:
式中、
-XUD(tGNSS,est ToT,i)は、推定送信時刻tGNSS,est ToT,iにおいて(ネットワークによってユーザデバイスに提供される可能性がある)ユーザが利用可能なユーザデバイスの大まかな位置を表し、
-ΔbSat(tGNSS,est ToT,i)は、推定送信時刻tGNSS,est ToT,iにおいて再計算され、ネットワークによってユーザデバイスに提供される衛星クロックバイアスオフセットを表す。
-ΔbPredは、受信機クロックバイアスの大まかな推定を表す。
-Xsati(tGNSS,est ToT,i)は、推定送信時刻tGNSS,est ToT,iにおける(ネットワークがユーザデバイスに提供する)衛星iの位置を表す。tGNSSest ToTiは、GNSS時間スケールとの受信機の時間同期誤差ΔTの結果として、実際の送信時刻tGNSS ToTiとは異なり得ることが既に示されている。
この誤差ΔTは、衛星位置に数キロメートルの誤差をもたらす可能性があり、これは以下で実証される。[参考文献2]では、同期誤差ΔTが、ΔT=0の場合の理想的な場合と比較すると、残差擬似距離(式10)の更なる誤差をもたらすことが示されている。この更なる擬似距離誤差は、以下の式で表されるように、半径方向速度又は擬似距離変化率νiに比例する。
図4の右部は、擬似距離に対するこの更なる寄与が全ての見通し線で同一ではないことを示している。全ての擬似距離に共通である受信機クロックバイアスとは対照的に、この非共通寄与は、第2のレベルの同期誤差に対して、数百キロメートルに達する可能性がある位置誤差をもたらす。
【0015】
この状況に対処するために、ユーザ位置及びクロックオフセットの他に、拡張状態ベクトルに別の変数ΔTを導入すること:δ ext=[δ ,δΔb]=[δxest,δyest,δzest,δΔb,ΔT]が提案されている。その目的は、ネットワーク時間又は別のローカル時間スケールに同期している可能性のある受信機時刻と、GNSS時間スケールとの間の同期を推定することである。[参考文献2]及び[参考文献5]など、この拡張状態ベクトルを解くための異なるアルゴリズムが存在する。これらのアルゴリズムは、5つの未知数を拡張状態ベクトルδ extの一部として推定するために、第5の擬似距離を導入して、決定された連立方程式を生成することを提案する。第5の見通し線から導出されたこの第5の擬似距離を、(4つの擬似距離のみを示す図3と比較して)図4にも示す。
【0016】
以下に、「スナップショット測位」とも呼ばれる、航法信号のスナップショットに基づく従来技術の測位方法を示す。スナップショット測位は、最初にA-GNSSコンテキストで導入される。A-GNSS測位は、衛星航法信号を連続的に追跡する受信機に適用されるだけではない。A-GNSS用途の別の重要なサブカテゴリには、いわゆるスナップショット測位が含まれる。この場合、受信機は、その持続時間が数ミリ秒から数秒(例えば1秒又は2秒)を含み得る、「信号スナップショット」とも呼ばれる受信信号の一部のみを「パンクチャリング」する。この種の測位用途には、「スナップショット測位」、「インスタント測位」、又は「シングルショット測位」などのいくつかの呼称が存在する。スナップショット信号の持続時間が短いことは、衛星クロック及びエフェメリスデータ(CED)もTLMワードも取り出して復調することができないことを意味する。A-GNSSについては、対応するCED情報は、地上通信ネットワーク又は任意の他の通信チャネルによって提供され得る。
【0017】
過去に衛星航法信号から取り出されたCED情報(例えば数分前又は数時間前)が依然として有効又は適用可能である場合、それらをスナップショットから導出された擬似距離に適用することも可能であることに留意されたい。この場合には、スナップショット測位はもはや支援型ではなく、スタンドアロン型となる。
【0018】
したがって、A-GNSS及びスタンドアロン型スナップショット測位の両方の場合、主な問題は、信号スナップショットの一部ではないTLMワードからの時間同期情報の欠如に関連する。この問題を解決するために、主にA-GNSS/A-GPSに特化した文献で遭遇する「ミリ秒整数値アンビギュイティ」などの解決策が開示されている。「ミリ秒整数値アンビギュイティ」は、測定された擬似距離ρmeas iが従来のスタンドアロン型測位におけるような絶対擬似距離ではなく、符号周期(GPS C/Aの場合は、1符号周期は1msである)の一部のみであり、符号周期の整数値は測定された擬似距離の一部ではないという事実に関連する。絶対基準がないことにより、連立方程式の複数の解、すなわち準最適解が得られ、その中で1つのみが正しい最適解である。搬送波測位の場合に遭遇する整数値アンビギュイティの問題に近い、対応するミリ秒アンビギュイティを解決するために、異なる複数の解決策が存在する。例えば、[参考文献5]では、「ラムダ法」の他の用途が開示されている。最後に、「ミリ秒整数値アンビギュイティ」法及び前述した第5の未知数に基づく方法も、擬似距離アンビギュイティの解決を保証するために、1つを超える(少なくとも5つの)異なる視線の利用に基づくという意味でいくつかの共通点を共有することに留意されたい。
【0019】
結論として、A-GNSS測位及びスナップショット測位では、従来のスタンドアロン型測位と比較して性能が劣る以下の主な要因を挙げることができる。
-同期誤差ΔTの影響は、数百メートル又は数キロメートルの衛星位置誤差をもたらす可能性がある。このことは、この付加的な性能不良を「除去する」ために、ユーザ位置及びクロックオフセットの他に、推定されるべき新たな変数、すなわち第5の未知数ΔTを導入する動機となる。
-第5の変数の導入は、特に衛星が見えにくい都市環境において、可用性及び精度の性能に影響を及ぼし得る第5の擬似距離、すなわち見通し線を要求する。「ミリ秒アンビギュイティ」(第5の未知数を利用する方法に密接に関連する)は、正しい絶対最適値を解決するために、追加の緩和技術を必要とする。
【0020】
したがって、このような無線航法システムの典型的な用途は、A-GNSSコンテキストにおけるように、推定された衛星-ユーザデバイス擬似距離に適用される衛星クロック及び軌道補正モデルが地上通信ネットワークを介して無線受信機に提供される全地球航法衛星システムのケースである。先に説明したように、無線信号の処理と前述のネットワーク情報との間のシームレスな相乗効果に関して挙げられている主な問題の1つは、対応するモデルが、第1の時間スケール、すなわちGNSS時間スケールで表される実際の時間エポック「tgnss」とは数秒異なり得る第2の時間スケール、すなわち受信機時間スケール(地上ネットワーク時間スケールと同期している可能性がある)で表される時間エポック「tRx」で適用可能であることである。この場合、対応するずれは、誤って補正された擬似距離で導出された、有害ではないにしても大きな影響を測位解に及ぼし得ることが以前に示されている。したがって、受信機衛星範囲観測に整合する方法で、かつ、受信機の電力消費が可能な限り低くなければならない用途をサポートするために最短の信号スナップショット持続時間で、通信ネットワーク(例えば、CED)によって提供される情報に基づいて擬似距離を計算する目的で、第1の時間スケール、すなわちGNSS時間スケールと第2の時間スケール、すなわちユーザデバイス時間スケールとの間の時間同期を解決することが強く求められている。更に、この特性は、高感度用途をサポートするために長いシンボル持続時間にわたって達成されなければならない。
【0021】
したがって、そのような航法システム及び関連する無線受信機の問題は、第2の時間スケールの影響を受けるスナップショット測位を適用する無線受信機が、GNSS時間スケールなどの第1の時間スケールに対して大きな同期誤差を示すことである。
現在の無線信号、例えばGNSS信号の別の欠点は、無線信号の最短部分とのこの同期を達成して、やはり無線受信機の電力消費を低減する目的で、動作回数を低減する能力を有する一方で、感度を失わないように長いシンボル時間を維持することができない点である。
【0022】
非特許文献6は、元来ノイズ及び干渉の影響を打ち消すために考案されたスペクトル拡散技術が、今日最も一般的な広く普及している通信技術の1つである高度なモバイル、マルチユーザ、及び衛星ベースの解決策の開発を可能にしただけではなく、航空機の場合によっては変化する高い速度、及び最悪の状況では機上での周波数オフセット推定能力の喪失の結果として大きなドップラーシフト及び相対変化率が生じるシナリオにおいて、革新的なバイナリ拡散シーケンスであるド・ブラウンシーケンスを使用することによって得られる直接シーケンス拡散スペクトル信号の予備的な性能分析を更に提供することを更に開示している。これらの結果は、バイナリ・ド・ブラウンシーケンスの使用が、補償されていないドップラー効果による大きな歪みが存在する場合でも、受信機での信号回復を改善することができることを示している。特許文献1は、シンボルのシーケンスを有する変調信号に基づいて送信機と受信機との間の距離の推定値を表す擬似距離情報を提供するための擬似距離測定器を開示しており、一次符号シーケンスは、二次符号シーケンスに従って変調され、一次符号シーケンスは、少なくとも2つのシンボルを有する受信信号の一部を少なくとも2つの参照シーケンスと段階的に相関させるように構成され、第1の参照シーケンスは、同じ位相を有する少なくとも2つの後続のシンボルを表し、第2の参照シーケンスは、異なる位相を有する少なくとも2つの後続のシンボルを表し、相関の結果に応じて、二次符号シーケンスの一部を段階的に取得する。擬似距離測定器は、二次符号シーケンスの意味のある部分の取得に基づいて擬似距離情報を提供するように構成されている。
【0023】
非特許文献7は、IoTデバイスのニーズにも適合するように設計された準パイロット(Quasi-Pilot、QP)信号と呼ばれる、Galileo Evolution活動の枠内で挙げられる可能な概念を開示しており、QP信号の設計の主要な推進要因は、取得の複雑さの軽減であり、必要に応じて困難な環境で十分な感度を達成するための長いコヒーレント積分を可能にする能力と相まって、迅速かつ堅牢な時間アンビギュイティの解決を可能にする。更に、QP信号設計は、ユーザが高精度機能も活用するために既存のレガシー信号へのハンドオーバを可能にする必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0024】
【特許文献1】米国特許出願公開第2016/161614号明細書
【非特許文献】
【0025】
【非特許文献1】「Using GNSS Raw Measurements On Android Devices(White Paper)」、Raw Measurements Task Force、欧州GSA
【非特許文献2】「A-GPS:Assisted GPS,GNSS,and SBAS、Frank Van Diggelen、GNSS Technology And Application Series、Artech House
【非特許文献3】「Code Tracking Pseudoranges.How can pseudorange measurements be generated from code tracking?」、M.Rao、G.Falo、InsideGNSS、2012年1月/2月
【非特許文献4】「Estimation of Satellite-User Ranges Through GNSS Code Phase Measurements」、Marco Pini
【非特許文献5】「GPS Position Can Be Computed without the Navigation Data」、N.Sirola、ION GPS 2002、24-27、2002年9月、ポートランド
【非特許文献6】PELLICCIONI GIOVANNI他:「DE BRUIJN SEQUENCES AS SPREADING CODES IN EXTREME DOPPLER CONDITIONS:ANALYSIS AND RESULTS」
【非特許文献7】WALLNER STEFAN他:「NOVEL CONCEPTS ON GNSS SIGNAL DESIGN SERVING EMERGING GNSS USER CATEGORIES:QUASI-PILOT SIGNAL」
【発明の概要】
【0026】
本発明の実施形態の目的は、上記の既知のタイプであるが、既知の解決策の上記の欠点又は不利益が軽減又は克服される無線航法システム、関連システム、そのような無線航法システムの無線送信機及び無線受信機における時間アンビギュイティ解決装置のための方法を提供することである。特に、第2の時間スケールの影響を受けている場合に第1の時間スケールに対する同期誤差を克服する、スナップショット測位を適用したそのような方法、システム、及び関連する無線受信機を提供することが目的である。
【0027】
この目的は、最初に、無線送信機によって、時間アンビギュイティ間隔ごとにシンボルのセットを含むオーバーレイシーケンスを生成することであって、シンボルのセットは所定の長さを有し、オーバーレイシーケンスは、時間アンビギュイティ間隔のシンボルのセット内におけるシンボルのサブセットの単回発生の条件を満たし、時間アンビギュイティ間隔のそれぞれが暗示的な時間マーカを含む、生成することと、続いて、無線送信機によって、無線受信機に無線信号を送信することであって、無線信号は、無線信号の搬送波上に変調されたオーバーレイシーケンスを含む、送信することと、無線受信機によって無線信号を受信することと、無線受信機によって無線信号のスナップショットをキャプチャすることであって、スナップショットは、オーバーレイシーケンスのシンボルのセットのうちのN個のシンボルのサブセットを含む、キャプチャすることと、続いて、かつ無線信号の時間アンビギュイティ間隔内に、無線受信機によってスナップショットを処理して、オーバーレイシーケンスのN個のシンボルの値を取り出し、時間アンビギュイティ間隔のシンボルのセット内のスナップショットに含まれるシンボルのサブセットの位置に基づいて、第1の時間スケールで表される無線信号の暗示的な時間マーカの相対位置を特定することと、続いて、受信機によって、第1の時間スケールと第2の時間スケールとの間の時間アンビギュイティを、スナップショットの処理から取得された暗示的な時間マーカと、第2の時間スケールに基づいて生成されたオーバーレイシーケンス内の暗示的な時間マーカとの間の遅延を評価することによって求めることであって、オーバーレイシーケンスは、M進ド・ブラウンシーケンスに基づくM進シーケンスからなる、求めることと、によって達成される。本開示の方法の一般的なプロセスを図5に示す。
【0028】
M進シーケンスに基づくオーバーレイシーケンスは、オーバーレイシーケンスが、無線信号の搬送波上に変調されたド・ブラウンシーケンス、又は切り詰められたド・ブラウンシーケンス、又は統合ド・ブラウンシーケンス、あるいは2つ以上のド・ブラウンシーケンス及び/又は切り詰められたシーケンス及び/又は統合ド・ブラウンシーケンスの組み合わせのいずれかを含むことができることを意味する。
【0029】
オーバーレイシーケンスがV個のド・ブラウンシーケンス及び/又は切り詰められたシーケンス及び/又は統合ド・ブラウンシーケンスの組み合わせを含む場合は、シンボルの所定の数Lは、V個の構成的なシーケンスの組み合わせによって得られる集約されたオーバーレイシーケンスのシンボルの単位で表されるシンボル周期性に対応する。V個の構成的なシーケンスがバイナリシンボルを含む場合、組み合わせごとに得られる集約されたオーバーレイシーケンスは、M=2×VであるM進シンボルを含む。更に、集約されたオーバーレイシーケンスのシンボルのサブセットの、スナップショットに含まれるシンボルの数Nは、それが単回発生特性SO(L,N)を満たし、比L/Nの最大化も保証するような数である。パラメータL及びNのこれらの定義は、単位時間で表されるシンボル持続時間Tsが、集約されたオーバーレイシーケンスを形成するために組み合わされるV個の異なる構成的なシーケンスについて同一である場合に当てはまる。対応するシンボル持続時間が、集約されたオーバーレイシーケンスを形成するために組み合わされるV個の異なる構成的なシーケンスの間で異なる場合は、集約されたオーバーレイシーケンスのシンボル持続時間をV個の構成的なシーケンスのシンボル持続時間の最大公約数として定義する際に、集約されたオーバーレイシーケンスの周期性の定義を拡張することができる。集約されたオーバーレイシーケンスの周期性Lは、その持続時間Tsが定義されたばかりのシンボルで表されるものとする。シンボル持続時間が異なる構成的なシーケンス間で異なる場合に適用可能な集約されたオーバーレイシーケンスLのこの拡張された定義により、スナップショット持続時間は、ここでも、一方ではSO(L,N)特性を満たし、他方では比L/Nの最大化を保証する、集約されたオーバーレイシーケンスのN個のシンボルを含む。
【0030】
加えて、信号スナップショットの最短持続時間に基づく高速時刻提供又は同期が信号スナップショット処理のためのユーザデバイスの電力消費をより低くすると更に認められることから、M進ド・ブラウンシーケンスに基づくオーバーレイシーケンスの適用は、オーバーレイシーケンス内のサブセットの更に有利な単回発生特性を保証する。したがって、追加の設計上の制約は、オーバーレイシーケンスとL/Nに比例するスナップショット持続時間との比が可能な限り大きくなければならないことである。この特性は、所与の時間アンビギュイティ間隔に対して最も効率的なスナップショット長を保証する。この更なる目的を達成するために、無線信号上に変調されたオーバーレイシーケンスは、ド・ブラウンオーバーレイシーケンスに基づく。
【0031】
以下では、一次符号の取得は既に達成されており、本発明の実施形態は取得方式の種類とは無関係であると考えられる。更に、本発明の処理ステップは、取得ステップから取得された符号遅延及びドップラーオフセットが、それらの更なる処理ステップの性能を低下させないのに十分な精度で既知であるものとする。
【0032】
無線受信機は、いかなる種類の無線受信機によって具現化されてもよく、位相ロックループ(Phase Locked Loop、PLL)を実装することによってN個のシンボルのバイナリ値を取り出す受信機に限定されず、相対位相変化を利用することによって(すなわち、周波数ロックループ(Frequency Locked Loop)-FLLを実装することによって)値を取り出すこともできる。PLL技術及びFLL技術の両方の正確な詳細実装、並びにM進シンボルの対応するオーバーレイシーケンスを取り出すために使用される任意の他のタイプの復調技術は、当業者に既知であるものとする。
【0033】
N個のオーバーレイシンボルの値を取り出すのに必要なN個のシンボルを含む信号スナップショットの必要な持続時間は、N個のシンボルの正確な持続時間、すなわちシンボル持続時間のN倍を、信号スナップショットの各側に位置する1つのタイムガードを含むスナップショット持続時間全体のうちのごく一部だけ超える。これらのタイムガードの合計持続時間は、正確なシンボル取り出しプロセス、及び信号対雑音電力スペクトル密度比(C/N0)などの他の構成パラメータに依存し、この追加のスナップショット部分の持続時間は、通常、N個のシンボルの正確な持続時間よりもはるかに短い。したがって、以下では、信号スナップショット持続時間は、N個のシンボルの持続時間に対して不正に特定されるが、信号スナップショット持続時間は、N個のシンボルの持続時間と両方のタイムガードの追加の持続時間との合計として解釈されるものとする。対応するスナップショット及びタイムガード持続時間の具体的な大きさの順序を提供するいくつかの数値例を、本発明を実施するための形態を示す項で後述する。
【0034】
このようにして、スナップショット位置に対する時間アンビギュイティ間隔における暗示的な時間マーカの正しい位置を、無線信号のスナップショットに含まれる単一の情報に基づいて特定することができ、スナップショットはオーバーレイシーケンスのN個のシンボルのサブセットを含む。無線信号から導出された情報、すなわちN個のシンボルのサブセットに基づいて、時間アンビギュイティ間隔に対するスナップショットの位置を特定することができる。時間アンビギュイティ間隔内のスナップショットの位置に基づいて、暗示的な時間マーカの位置を推定することができ、この情報は、第1の時間スケールと第2の時間スケールとの同期に使用され得る。
【0035】
暗示的な時間マーカの位置は、受信信号の相対時間フレームにおいても既知であることに更に留意されたい。オーバーレイシーケンスは時間アンビギュイティ間隔ごとにL個のシンボルのセットを含み、時間アンビギュイティ間隔のそれぞれが暗示的な時間マーカを含む。時間アンビギュイティ間隔内の暗示的な時間マーカの位置は(規則に従って)知られており、例えばシーケンスの最初のシンボルとすることができる。
【0036】
したがって、この受信信号の短いスナップショットに含まれる情報に基づく暗示的な時間マーカの導出は、ユーザデバイスの第2の時間スケールを第1の時間スケール、すなわち無線送信機の絶対的なGNSS時間スケールに同期させるための時間変換を実行することを可能にする。
【0037】
オーバーレイシーケンスのシンボルのセットは所定数Lのシンボルからなり、信号のスナップショットは複数のシンボルNからなり、NはLよりも小さい。Lはまた、オーバーレイシーケンスシンボルの単位で表されるオーバーレイシーケンスの周期性として理解することもできる。
【0038】
暗示的な時間マーカ情報の導出及び処理は、A-GNSS/A-GPSの文脈において前述した「第5の未知数」又は「ミリ秒整数値アンビギュイティ」技術などの既存の解決策の代替案を表す。この代替案は、「第5の未知数」と比較すると、必要な情報が各信号の本来の部分であるため、1つの見通し線を「犠牲にする」ことを回避することができ、したがって可用性が向上する。
そのような時間マーカは、信号の送信時刻を示し、様々な種類のシステムで様々に具現化されてもよい。全地球測位システム(GPS)では、(明示的な)時間マーカは、送信時間を明示的に符号化するTLMワードを含むが、本開示の解決策の実施形態では、時間マーカワードは、規則に従ってオーバーレイシーケンス(第1のシンボル)の先頭に対応するため、暗示的である。しかしながら、暗示的な時間マーカの位置の規則は、この規則が送信側と受信側の両方によって知られている限り、シーケンス内の別の場所、例えば最後のシンボルで定義することができることに留意されたい。
【0039】
更に、(レガシー)全地球航法衛星システムの場合は、TLMワードは、最近の土曜日の午前零時(土曜日の24:00は毎週のTLMの基準時間である)からの週内の完全な日時:3日、7時間、36分、40秒...+週番号を提供するGNSSの絶対時間基準(「時間スケール」)であるが、本開示の解決策の実施形態では、シンボルのサブセットの処理は、暗示的な時間マーカによって表されるシーケンスの開始に対する相対位置について行われる。したがって、オーバーレイシーケンス持続時間に等しい持続時間を有する時間アンビギュイティ間隔内の相対時間のみが提供される。それにもかかわらず、いくつかの実施形態は、単一のド・ブラウンシーケンスに基づくオーバーレイシーケンスを想定する際にパラメータN及びLを適切に選択することによって、又はいくつかのド・ブラウンシーケンスの組み合わせに基づくオーバーレイシーケンスを想定することによって、時間アンビギュイティ間隔の持続時間を分又は更には時間をはるかに超える値まで拡張することを開示する。
【0040】
前述の開示では、第1の時間スケールは、GNSS受信機を搭載したデバイスに信号を送信する全地球航法衛星システム内で共有され、デバイスの第2の時間スケールに同期されることが想定されている。しかしながら、第1の時間スケールが宇宙ベースの通信ネットワークによって、又は地上通信ネットワークもしくは基地局もしくはビーコンを介して信号を送信するシステムによって共有されるか、あるいは第1の時間スケールが、例えば車両間(V2V)、車車間及び路車間(V2X)、又はデバイス間(D2D)などの「マシンツーマシン」通信リンクにおいて、別の通信機能付きのデバイスによって共有される代替用途も挙げることができる。後者の場合は、第2の「スレーブ」デバイスは、本開示の方法によって第1の「マスタ」デバイスに同期する。
【0041】
そのような無線航法システムは、第1の時間スケールを有する複数の送信機を備えることができ、これは、複数の送信機のうちのそのような送信機がこれら複数の送信機にわたってグローバルである時間スケールを扱うことを意味する。理解を容易にするために、送信機はグローバルな時間スケールに完全に同期しているか、又はクロック補正モデルなどのモデルが、複数の送信機の時間スケールをグローバルな時間スケールに対して十分な精度で推定することを可能にすると考えられる。GNSSの場合は、衛星クロック補正モデルは、衛星の各ローカル時間スケールをグローバルな時間スケール、すなわちGNSS時間スケールにアライメントすることを可能にする。したがって、この第1のグローバルな時間スケールは、第2の時間スケールが適用される他のシステムと通信する無線受信機によって扱われる第2の時間スケールとは全く異なる。
【0042】
信号スナップショットの最短持続時間に基づく高速時刻提供又は同期は、ユーザデバイスの信号スナップショット処理に必要とされる消費電力を低減することが更に認識される。したがって、追加の設計上の制約は、オーバーレイシーケンスとL/Nに比例するスナップショット持続時間との比が可能な限り大きくなければならないことである。この特性は、所与の時間アンビギュイティ間隔に対して最も効率的なスナップショット長を保証する。この更なる目的を達成するために、無線信号上に変調されたオーバーレイシーケンスは、ド・ブラウンオーバーレイシーケンスに基づく。
【0043】
[参考文献6]:「Generalizing the classic Greeding and Nicklace Constructions for De Bruijn and Universal Cycles」、Joe Sawada、Aaron Williams、及びDennis Wong。
[参考文献7]:「A problem in arrangements"」、M.H.Martin、Bulletin of the American Mathematical Society、40:859-864、1934。
【0044】
目的は、スナップショット内に十分な情報を提供することであり、これにより、スナップショットを時間アンビギュイティ間隔内の暗示的な時間マーカに対して測位することが可能になる。この目的のために、「ド・ブラウン」シーケンスと呼ばれる特定のタイプのオーバーレイシーケンスが適用される。そのような「ド・ブラウン」シーケンスは、(境界上を含む)長さLのオーバーレイシーケンス内の長さNの任意のサブシーケンスの単回発生を保証する。「ド・ブラウン」シーケンスによって満たされるこの特性は、L個のシンボル内のN個のシンボルの単回発生又はSO(N,L)特性と呼ばれる。そのような「ド・ブラウン」シーケンスは、バイナリシンボルを含み得るが、本質的には含まない。あるいは、ド・ブラウンシーケンスを具現化するために他のM進シーケンスが適用されてもよい。例えば、シンボル0、1、2、及び3を含む四進アルファベットを考える場合、「003」及び「213」は、長さ3の四進シーケンスの2つの例を表す。ド・ブラウンM進シーケンスの定義は、[参考文献6]、「T(n;k)を長さnのk進文字シーケンスのセットとする。例えば、T(2;3)={11;12;13;21;22;23;31;32;33}である。T(n;k)のド・ブラウンシーケンスは、シーケンスを円形に見た場合にT(n;k)の各文字シーケンスを部分文字シーケンスとして正確に1回含む長さknのシーケンスである。」を参照されたい。長さMNのド・ブラウンシーケンスをB(M,N)で表すと、異なるド・ブラウンシーケンスB(M,N)の数はM^(M^(N-1)-N)に等しい。ド・ブラウンシーケンスの特定のケースはバイナリシンボルを含み、そのようなケースでは、「ド・ブラウン」シーケンスは、バイナリ「ド・ブラウン」シーケンスと呼ばれる。バイナリ「ド・ブラウン」シーケンスは、L=2^Nであり、SO(N,L)特性を満たす「ド・ブラウン」バイナリシーケンスの数が2^(2^(N-1)-N)に等しいようなシーケンスである([参考文献6]参照)。
【0045】
更に、「ド・ブラウン」シーケンスは、シーケンスのk(k<N)個の最後のシンボルを最初の[N-k]個のシンボルと連結することによって構築される長さNのサブシーケンスであっても、完全な「ド・ブラウン」シーケンス内で単回発生することを保証する巡回特性も満たす。「ド・ブラウン」シーケンスの1つの重要な特性は、大きい(L/N)=(2^N/N)比であり、これはスナップショット測位のための優れた利点を表す。実際、これは、小さな数N個のシンボル(すなわち、短いスナップショット持続時間)に対して、オーバーレイシーケンス長(すなわち、時間アンビギュイティ間隔)が大きくなり得ることを意味する。長さLの値が異なるド・ブラウンシーケンスのいくつかの例を、説明のために図7の表に示す。
【0046】
様々な方法が、ド・ブラウンシーケンスを生成することを可能にする。本発明の目的は、そのような「ド・ブラウン」シーケンスを生成する方法を説明する全ての参考文献を詳細に吟味することではなく、むしろそのような「ド・ブラウン」シーケンスを利用し、特にM^(M^(N-1)-N)個の既存のM進 B(M,N)「ド・ブラウン」シーケンスのうちの候補「ド・ブラウン」シーケンスの大きなプールを生成することであり、その中から、時間アンビギュイティ解決に有利な特定の特性を提供する特定の「ド・ブラウン」シーケンスが選択される。一例として、[参考文献6]を引用すると、「Martinは、T(n;k)のド・ブラウンシーケンスが単純なグリーディアルゴリズムによって構築され得ることを1934年に[参考文献7]で示した。アルゴリズムは、シーケンスkn-1(式中、累乗は反復を表す)から始まり、次に以下の規則を繰り返し適用する:得られた線形シーケンスにおける長さnの部分文字シーケンスが異なるように、最も小さいシンボルを{1;2;....;k}に追加する。」
【0047】
「ド・ブラウン」シーケンスによって満たされるSO(N,L)特性の結果として、GNSS信号又は任意の種類の地上波信号などの無線信号の間隔内のこの固有のシンボルシーケンスの位置を一義的に特定することができ、この固有のシーケンスの位置に基づいて、スナップショットに含まれるN個のシンボルの固有のシーケンスの位置と暗示的な時間マーカの位置との間の(相対的な)距離を正確に測定することができる。更に、「ド・ブラウン」によって達成されるSO(N,L)特性は、スナップショット持続時間と時間アンビギュイティ間隔との間の最適化された比を提供し、したがって、ユーザデバイスの電力消費の点で最も効率的である。
【0048】
本発明の別の関連する実施形態は、無線送信機のシーケンス生成手段が、互いに異なる複数のオーバーレイシーケンスを生成するように更に構成され、これらのオーバーレイシーケンスは、同じ搬送波信号上に多重化された異なる一次符号又はチップストリーム上にそれぞれ変調され得る。
【0049】
この更なる実施形態の利点は、複数のオーバーレイシーケンスの受信機側における結合処理によって時間アンビギュイティ間隔を拡張可能にすることである。
複数のオーバーレイシーケンスが少なくとも第1の切り詰められていないM進ド・ブラウンオーバーレイシーケンス及び少なくとも1つの第2の切り詰められたM進ド・ブラウンオーバーレイシーケンスからなる特別な場合には、オーバーレイシーケンス長の違いにより、対応するスナップショットが、切り詰められていないシーケンスの長さと後続の切り詰められたシーケンスの長さとを合計することによって得られる長さを有する「暗示的な」集約されたオーバーレイシーケンス内で複数回発生しないことが保証される。この集約されたオーバーレイシーケンスの長さは、拡張されたアンビギュイティ期間に対応する。
複数のオーバーレイシーケンスの各々は、その専用信号成分に対する単一のオーバーレイシーケンスの変調と同じ手法に従って、専用信号成分上に変調することができる。
本発明の更に別の実施形態では、スナップショットに含まれるシンボルのサブセットは、オーバーレイシーケンスの追加の(隣接する、又は隣接しない)シンボルのサブセットで拡張され、追加のサブセットはNExt個のシンボルを含み、拡張されたシンボルのサブセットはP=N+NExt個のシンボルを含む。
【0050】
言い換えれば、スナップショットに含まれるシンボルのサブセットは、時間アンビギュイティ間隔のシンボルのセットのうちのN個のシンボルを含むシンボルのサブセットと、更に、N個のシンボルの第1のサブセットに隣接し得るか、又はN個のシンボルからなるシンボルのサブセットからQ個のシンボルだけ離間し得るNExt個のシンボルを含むシンボルの第2のサブセットとを含む拡張されたシンボルのサブセットであり、処理手段(23)が、スナップショットに含まれる拡張されたシンボルのサブセットと、オーバーレイシーケンス内のP=N+NExt個のシンボル(スナップショットに含まれる拡張されたシンボルのサブセットと同じ長さである)を含むオーバーレイシーケンスのL個の考えられる各サブシーケンスとの間のハミング距離を計算し、スナップショットに含まれる拡張されたシンボルのサブセットとP=N+NExt個のシンボルを含むオーバーレイシーケンス内の各サブシーケンスとの間で計算された全てのL個のハミング距離にわたる最小値が非0であるか、又は0であり、複数回発生する場合、拡張されたシンボルのサブセットにおけるエラーを更に検出するように構成されており、
【0051】
最後に、処理手段(23)は、スナップショットに含まれる拡張されたシンボルのサブセットと、P=N+NExt個のシンボルを含むオーバーレイシーケンスの各サブセットとの間で計算された全てのハミング距離にわたる最小値が0であり、単回発生する場合、スナップショットに含まれる拡張されたシンボルのサブセットに基づいて無線信号の暗示的な時間マーカの相対位置を特定するように更に構成されている。
時間アンビギュイティを解決することを可能にする拡張されたシンボルのサブセットの位置は、P=N+NExt個のシンボルを含むオーバーレイシーケンスのサブシーケンスの位置に対応し、この結果、拡張されたシンボルのサブセットとのハミング距離が0となる。
更に、スナップショットに含まれる拡張されたシンボルのサブセットとP=N+NExt個のシンボルを含むオーバーレイシーケンスの各サブシーケンスとの間で計算された全てのL個のハミング距離にわたる最小値が0であり、単回発生する場合は、スナップショットに含まれる拡張されたサブセットのシンボルがNerr,maxよりも少ない(又はこれに等しい)復調エラーを100%の信頼性レベルで含まないことを保証し得ることが示されている。
【0052】
更に、所定の最小値Nerr,maxは、最大Nerr,max個のエラーのエラー検出をサポートするオーバーレイ・ド・ブラウンシーケンスの選択のための反復プロセスから推定され、これにより、オーバーレイ・ド・ブラウンシーケンス内の任意の拡張されたP個のシンボルのサブセットが、P個のシンボル内にランダムに位置する、Nerr≦Nerr,maxである最大Nerr個のエラーによって汚染されていても、オーバーレイ・ド・ブラウンシーケンス内で単回発生せず、エラーがないことが保証される。
【0053】
本発明の更に別の実施形態では、処理手段(23)が、スナップショットに含まれる拡張されたシンボルのサブセットとP=N+NExt個のシンボルを含むオーバーレイシーケンスの各サブシーケンスとの間で計算された全てのハミング距離にわたる最小値が、選択されたオーバーレイシーケンスに応じて、第2の所定の最小値
を超えない場合は、エラーを補正するように更に構成され、そのような場合には、受信機は、最小ハミング距離をもたらすP=N+NExt個のシンボルを含むオーバーレイシーケンスのサブシーケンスを選択し、P=N+NExt個のシンボルを含むオーバーレイシーケンスのサブシーケンスとスナップショットに含まれる拡張されたシンボルのサブセットとの間で異なる最大
個のシンボルを補正する。この実施形態では、
は値xのすぐ下の整数部分を指す。
【0054】
本発明の更に別の実施形態では、無線受信機RX1の受信手段が、第1の無線送信機からの第1の無線信号と、第2の無線送信機からの少なくとも第2の無線信号とを受信するように更に構成され、第1の無線信号は、L個のシンボルの長さを有するオーバーレイシーケンスを含み、少なくとも第2の無線信号は、L1個のシンボルの長さを有し、第1のオーバーレイシーケンスと少なくとも第2のオーバーレイシーケンスとは異なり、受信手段は、続いて、第1の無線信号のオーバーレイシーケンスと少なくとも第2の無線信号のオーバーレイシーケンスとを組み合わせて集約されたオーバーレイシーケンスとする。スナップショットキャプチャ手段は、第1の無線信号と少なくとも第2の無線信号との集約されたオーバーレイシーケンスのスナップショットをキャプチャし、スナップショットは、集約されたオーバーレイシーケンスのシンボルのサブセットを含む。
【0055】
続いて、処理手段は、N個のシンボルを含むスナップショットに含まれる集約されたオーバーレイシーケンスのシンボルのサブセットの位置に基づいて無線信号の暗示的な時間マーカの相対位置を特定することができ、処理手段は、その後、第1の時間スケールで表された暗示的な時間マーカと第2の時間スケールに基づいて生成された集約されたオーバーレイシーケンス内のスナップショットの処理及び暗示的な時間マーカに基づいて遅延を評価することによって、第1の時間スケールと第2の時間スケールとの間の時間アンビギュイティを更に解決することができる。
【0056】
この更なる実施形態の利点は、複数のオーバーレイシーケンスの受信機側における結合処理によって時間アンビギュイティ間隔を拡張可能にすることである。
異なる長さを有するオーバーレイシーケンスが第1の無線送信機及び第2の無線送信機によって送信される場合は、対応するスナップショットは、切り詰められていないシーケンスの長さと後続の切り詰められたシーケンスの長さとを合計することによって得られた長さを有する「暗示的な」集約されたオーバーレイシーケンス内で複数回発生しないことが保証される。この集約されたオーバーレイシーケンスの長さは、拡張されたアンビギュイティ期間に対応する。
【0057】
本発明の別の関連する実施形態では、無線送信機(Tx)のシーケンス生成手段は、切り詰められた遷移シーケンスを、L個のシンボルの長さを有する元のド・ブラウンシーケンスからなる元のシーケンスに基づいて、最初に「0」を含むN個のシンボルを元のシーケンスから除去し、続いて「1」を含む単一のシンボルを元のシーケンスから除去することによって、切り詰められたシーケンスをもたらし、任意選択で、この切り詰められたシーケンスから追加のK個のシンボルを除去して、長さL-N-1-Kの切り詰められた遷移シーケンスをもたらすことによって生成し、切り詰められた遷移シーケンスの位相遷移を示す第1の統合シーケンス及び、反転された切り詰められた遷移シーケンスの位相を示す第2の統合シーケンスであって、第1の統合シーケンスは第2の統合シーケンスの逆位相にある、第1の統合シーケンス及び第2の統合シーケンスを生成し、次いで、第1の統合シーケンスと第2の統合シーケンスとを連結することによって、連結された統合シーケンスを生成するように更に構成され、連結された統合シーケンスは、無線信号の搬送波上に変調されるように構成されている。
【0058】
本発明の更に別の関連する実施形態では、スナップショットキャプチャ手段)は、無線信号のスナップショットを取得するように構成され、スナップショットは、請求項8に記載の無線送信機(Tx)によって生成された連結された統合シーケンスからなるオーバーレイシーケンスのシンボルのサブセットを含み、スナップショットは、N+1個のシンボルを含み、処理手段は、スナップショットに含まれるオーバーレイシーケンスのシンボルのサブセットからのN個の遷移を特定し、続いて、リポジトリ(25)のエントリ内のスナップショットに含まれるシンボルのサブセットからのN個の遷移に基づいて、無線信号の暗示的な時間マーカに対するスナップショットに含まれるシンボルのサブセットの位置を特定するように更に構成され、リポジトリ(25)は、エントリごとに、スナップショットの複数のシンボル及び無線信号の時間アンビギュイティ間隔内の時間マーカに対するスナップショットの複数の相対位置を含む。
【0059】
更なる関連する実施形態が、時間アンビギュイティを解決するための無線受信機であって、無線受信機の処理手段(23)は、リポジトリのエントリ内のスナップショットに含まれるシンボルのサブセットを検索することによって、無線信号内の第1の時間スケールで表される暗示的な時間マーカの相対位置を特定するように更に構成され、リポジトリは、エントリごとに、スナップショットの複数のシンボルと、無線信号の時間アンビギュイティ間隔内の暗示的な時間マーカに対するスナップショットの複数のシンボルの相対位置とを含む、無線受信機に関する。
【0060】
リポジトリは、シーケンスのN個のシンボルのサブセットを、L個のシンボルの完全なシーケンス内のその相対位置、したがって暗示的な時間マーカに関連付けるルックアップテーブルとして機能することができ、N個のシンボルはリポジトリに入力され、相対位置は結果として出力される。
【0061】
言い換えれば、このN個のシンボル値のサブセットは、PLL、又はFLL、あるいはシンボル値を推定することを目的とする任意の他のタイプの復調技術のいずれかを用いてスナップショットコンテンツから取り出されたオーバーレイシーケンスのN個のシンボルのサブセットに基づいて、スナップショットに応じたN個のシンボルのサブセットを見つけることができるリポジトリ内のエントリを取得するために使用され、リポジトリはまた、時間アンビギュイティ間隔内のスナップショットに含まれるこれらのN個のシンボルの相対位置、又は同等に、オーバーレイシーケンス内の位置が規則に従って知られている暗示的な時間マーカに対するスナップショットに含まれるN個のシンボルの相対位置に関する情報を含む。
【0062】
そのようなリポジトリは、N個のシンボルのL個のサブセットを含むことができ、L個のシンボルの完全なシーケンス内のN個のシンボルのスナップショットの位置を特定することを可能にし、したがってL×N個のルックアップテーブルをもたらす。
別の関連する実施形態は、時間アンビギュイティを解決するための無線受信機に関し、この無線受信機は、送信機によって送信された無線信号に対応するL個のシンボルのセットのN個のシンボルのサブセットを含む無線信号からスナップショットシーケンスを更に生成し、スナップショット受信機は、更に処理手段によって、時間アンビギュイティ間隔内のスナップショットシーケンスに含まれるN個のシンボルの相対位置を特定することを可能にするL個のシンボルの全体セット内のN個のシンボルのサブセットの位置を推定するために、スナップショットシーケンスとL個のシンボルの全体セットとの間の部分自己相関を適用することによって、無線信号内の第1の時間スケールで表された暗示的な時間マーカの相対位置を特定するように構成されている。ここで、部分自己相関関数という用語が使用されるのは、図8に示すように、N個のシンボルのサブセットのみがL個のシンボルのオーバーレイシーケンス全体と乗算及び加算され、残りの部分は0で、すなわち0パディングを適用することによって完了するからである。スナップショットシーケンスと自己相関の最大値に対応するオーバーレイシーケンスとの間のオフセットは、時間アンビギュイティ間隔のオーバーレイシーケンスのL個のシンボルのセット内のスナップショットシーケンスに含まれるN個のシンボルのサブセットの位置を特定すること、又は同等に、オーバーレイシーケンス内のその位置が規則に従って知られている暗示的な時間マーカに対するスナップショットに含まれるN個のシンボルの相対位置を特定することを可能にする。
【0063】
スナップショットシーケンスを生成するために2つの方法が開示され得る。
一般的なソフト復号技術の一部として分類することができる第1の方法は、信号スナップショットから導出され、取得プロセスから推定されたドップラーオフセット及び符号遅延の両方をワイプオフした後に、すなわち、信号スナップショット内に含まれるN個のシンボルの値を取り出すことを目的とした中間ステップを経ずに取得されたサンプルを組み込んだスナップショットシーケンスを生成する。より正確には、この第1の方法は、N個のバイナリシンボルのサブセットと付加的な受信ノイズとを含む信号スナップショットから導出されたサンプルを信号サンプルに連結し、符号遅延及び搬送波ドップラーのワイプオフの後、0パディングを用いて取得された「0サンプル」の別のサブセットと連結して、スナップショットシーケンスを、オーバーレイシーケンスLにシンボル持続時間当たりのサンプル数を乗算したものに等しい長さで完了させることからなる。次いで、このスナップショットシーケンスは、スナップショットシーケンスに対応するオーバーレイシーケンスに基づき、その長さがオーバーレイシーケンス長Lにシンボル持続時間当たりのサンプル数を乗じたものに等しい拡散オーバーレイシーケンスと相互に関連付けられる。拡散という用語は、拡散オーバーレイシーケンスの各シンボルが1シンボル持続時間内のサンプル数と同じ回数だけ繰り返されることから使用される。サンプルのタイプ及びシンボルごとのサンプル数は構成可能であり、RFサンプル又は相関後のサンプルに直接対応することができ、この第1の相関演算は、信号取得プロセス中に一次符号で実行される。したがって、サンプルのタイプは受信機の実装に依存するが、無線受信機は、全ての場合にドップラーオフセット及び符号遅延を除去することを必要とする。したがって、スナップショットシーケンスと拡散オーバーレイシーケンスの両方は同じ長さを有し、したがって自己相関演算で処理することができる。
【0064】
第2の方法は、PLL、又はFLL、あるいはシンボル値を推定することを目的とする任意の他のタイプの復調技術を使用することによって信号スナップショットから取り出されたN個のバイナリシンボルのサブセットと、長さLのスナップショットシーケンスを完了するために0パディングで取得されたL-N個の「0」の別のサブセットとを連結することからなる。スナップショットシーケンス生成におけるシンボル値取り出しのこの中間ステップにより、この第2の方法は、一般的なハード復号技術に分類することができる。次に、長さLのこのスナップショットシーケンスは、スナップショットシーケンスに対応する長さLのオーバーレイシーケンスと相互に関連付けられる。
【0065】
オーバーレイシーケンス内のL個のシンボルの数が大きくなりすぎる場合、リポジトリ(すなわち、ルックアップテーブル)ではなく、この部分自己相関法を適用することは、過剰な記憶領域メモリを使用して過大なルックアップテーブル(リポジトリ)の適用を回避し、そのようなリポジトリによって維持されるルックアップテーブルが過大である場合にアクセス時間が長くなりすぎることを回避するために有利である。
例えば、N=7及びL=2^7=128の場合、メモリ要求は、第2のオプションを想定すると、128×7個のルックアップテーブルを保存するのではなく、0に設定された128-7=121個のシンボルで完了したN=7のシンボルのスナップショットを含む単一のスナップショットシーケンスを生成するので、より小さい。
【0066】
しかしながら、第1の時間スケールが宇宙ベースの通信ネットワークによって、又は地上通信ネットワークもしくは基地局もしくはビーコンを介して信号を送信するシステムによって共有されるか、あるいは第1の時間スケールが、例えば車両間(V2V)、車車間及び路車間(V2X)、又はデバイス間(D2D)などの「マシンツーマシン」通信リンクにおいて、別の通信機能付きのデバイスによって共有される代替用途も挙げることができる。後者の場合には、第2の「スレーブ」デバイスは、本開示の方法によって第1の「マスタ」デバイスに同期する。
【0067】
無線受信機は、任意の種類の無線受信機によって具現化されてもよい。シンボル値を取り出すために位相ロックループ(PLL)を実装する受信機に限定されず、相対位相変化を利用することによって(すなわち、周波数ロックループ-FLLを実装することによって)、又はM進シンボル値を推定することを目的とした任意の他のタイプの復調技術を実装することによってシンボル値を取り出すこともできる。
本発明の更に別の代替実施形態では、無線受信機(RX1)は、無線信号の位相を取り出すために位相ロックループを実装している。
本発明の更に別の代替実施形態では、無線受信機(RX1)は、無線信号の位相変化を取り出すために周波数ロックループを実装している。
本発明を、以下の説明及び添付の図面によって更に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0068】
図1】複数の無線送信機と、無線送信機及び無線受信機とを備える無線航法システムにおける時間アンビギュイティを解決するためのシステムを示す。
図2】本発明の実施形態による無線送信機TX1及び無線受信機RX1の機能要素を示す。
図3】GNSS受信機位置を計算するために「共通受信」に基づいて4つの衛星に対応する擬似距離を参照する方法を示す。
図4】擬似距離推定及び最終位置精度に対する同期誤差の影響を例示及び説明し、また、同期誤差を解決するための第5の見通し線の利用に基づく緩和技術を提示する。
図5】規則に従ってオーバーレイシーケンスの先頭に位置する暗示的な時間マーカに対する送信されたオーバーレイシーケンスの信号スナップショットの位置をルックアップテーブル(又はリポジトリ)に基づいて取り出すための概念を示す。
図6】一次符号上に変調されたオーバーレイシーケンスを含む信号構造を示す。
図7】オーバーレイバイナリシーケンスとしての「ド・ブラウン」シーケンスの例を含む表を示す。
図8】時間アンビギュイティを解決するための、信号スナップショットから取り出されたN=5のシンボルの0パディングされたサブセットとオーバーレイシーケンスとの間の部分自己相関に基づく、いわゆるハード復号方法を示す。
図9】時間アンビギュイティを解決するための、0パディングされた信号スナップショットシーケンスとオーバーレイシーケンスとの間の部分自己相関に基づく、いわゆるソフト復号方法を示す。
図10】GNSSのうちの1つとしての第1の時間スケールと、ネットワークに同期している可能性がある受信機のうちの1つとしての第2の時間スケールとの間の同期を解決するためのスナップショット測位のための暗示的な時間マーカに基づく方法を示す。
図11】GNSSの1つとしての第1の時間スケールと、ネットワークに同期している可能性がある受信機の1つとしての第2の時間スケールとの間の同期を、時間アンビギュイティ間隔が第1の時間スケールと第2の時間スケールとの間の同期よりも短い場合に解決するためのスナップショット測位のための暗示的な時間マーカに基づく方法の欠点を示す。
図12】ド・ブラウンシーケンス長L及びスナップショット内のオーバーレイシンボル数Nの異なる値について、スナップショットの関数としての時間アンビギュイティ間隔とオーバーレイシンボル持続時間との間の関係を表す表を示す。
図13】時間アンビギュイティ間隔を改善するために、同じソース、例えば衛星によって送信された複数の「ド・ブラウン」シーケンスの概念適用を示す。ここでは、2つの「ド・ブラウン」シーケンスが示され、第2の「ド・ブラウン」シーケンスは単一のシンボルの切り詰めごとに第1のシーケンスから取得される。
図14】異なる長さを有し、同じ衛星からの2つの異なる構成要素によって送信される2つの構成的なオーバーレイシーケンスを処理する際に達成される時間アンビギュイティ間隔を示し、構成的な第2のオーバーレイシーケンスは、第1のオーバーレイシーケンスに対して、スナップショットに含まれるシンボルの数の関数としてK個のシンボルが切り詰められている。
図15】信号スナップショットから取り出され、復調エラーによって破損したP=8個のシンボルのシーケンス(ここではNerr=8個の破損したシンボル)がオーバーレイシーケンス内の別の位置に発生する場合を示す。
図16】信号スナップショットから取り出され、復調エラーによって破損したP=8個のシンボルのシーケンス(ここではNerr=8個の破損したシンボル)がオーバーレイシーケンス内の他のいかなる位置にも発生しない場合を示す。
図17】信号スナップショットから取り出され、1個の復調エラーによって破損したP=10個のシンボルの拡張されたサブセットがオーバーレイシーケンス内の他のいかなる位置にも発生せず、長さP=10のこの破損したサブセットと元のオーバーレイシーケンスの任意のサブセットシーケンスとの間のハミング距離を評価することによって補正することができる場合を示す。
図18】オーバーレイシーケンスが切り詰められていない場合(長さL=128)、又はこのオーバーレイシーケンスの8個のシンボルが切り詰められている場合(長さL=120)に、オーバーレイシーケンスの最初のN=7のシンボルを含むスナップショットをオーバーレイシーケンス内のN=7のシンボルの任意のサブセットシーケンスと相関させることによって取得された値を示す。
図19】異なる衛星によって送信された異なるオーバーレイシーケンスとの時間同期を提供するために、オーバーレイシンボルの最小持続時間を推定することを可能にする衛星対ユーザデバイスの幾何学的形状を表す。
図20】FLLを実装している受信機で処理される信号上で変調されるオーバーレイシーケンスを、切り詰められた遷移シーケンスに基づいて特定して、信号搬送波上で変調された統合ド・ブラウンシーケンスをもたらすために使用される方法及びステップを記述するフローチャートを示す。
【発明を実施するための形態】
【0069】
本発明は、特定の実施形態に関して、特定の図面を参照して説明されるが、本発明はそれらに限定されず、特許請求の範囲によってのみ限定される。説明される図面は概略的なものにすぎず、限定的なものではない。図面では、いくつかの要素のサイズは誇張されており、例示を目的として縮尺通りに描かれていない場合がある。寸法及び相対寸法は、本発明の実際の実施への縮小に必ずしも対応しない。
【0070】
更に、明細書及び特許請求の範囲における第1、第2、第3などの用語は、同様の要素を区別するために使用され、必ずしも連続的又は時系列的な順序を説明するためのものではない。これらの用語は、適切な状況下で交換可能であり、本発明の実施形態は、本明細書に記載又は例示されている以外の順序で動作することができる。
【0071】
更に、明細書及び特許請求の範囲における上部、底部、上方、下方などの用語は、説明を目的として使用されており、必ずしも相対的な位置を説明するためのものではない。そのように使用される用語は、適切な状況下で交換可能であり、本明細書に記載される本発明の実施形態は、本明細書に記載又は図示されている以外の向きで動作することができる。
【0072】
特許請求の範囲で使用される「含む(comprising)」という用語は、その後に列挙される手段に限定されると解釈されるべきではなく、他の要素又はステップを排除するものではない。これは、言及された記載された特徴、整数、ステップ又は構成要素の存在を指定するものとして解釈される必要があるが、1つ以上の他の特徴、整数、ステップ又は構成要素、あるいはそれらのグループの存在又は追加を排除するものではない。したがって、「手段A及びBを備える装置」という表現の範囲は、構成要素A及びBのみからなる装置に限定されるべきではない。これは、本発明に関して、装置の関連する構成要素のみがA及びBであることを意味する。
【0073】
以下の段落では、図1の図面を参照して、本発明の一実施形態による、無線航法システムにおける無線送信機と無線受信機との間の時間アンビギュイティを解決するためのシステムの実装形態について説明する。更なる段落では、言及された要素間の全ての接続が定義される。
続いて、図2に示すような複数の無線送信機TX1...TXxの無線送信機、及び本発明の一実施形態による無線受信機の全ての関連する機能手段について説明し、続いてこれらの機能手段の全ての相互接続について説明する。
後続の段落では、本発明の一実施形態による、無線航法システムにおける無線送信機と無線受信機との間の時間アンビギュイティを解決するためのシステムの実際の実装形態について説明する。
無線航法システムが複数の無線送信機(TX1...TXx)を備え、各無線送信機は、とりわけナビゲーション及び同期の目的で、無線信号によって無線航法システムの少なくとも1つの無線受信機RX1に向けて無線信号を送信するように構成されている。
そのような無線送信機は、無線航法信号を送信する衛星であるGNSS送信機、又は衛星通信ネットワークの衛星部分、又は擬似衛星、あるいは例えば、基地局(Base Transceiver Station、BTS)、無線通信ネットワークの場合は固定もしくは移動無線送信機、又はV2VもしくはV2X通信ネットワークで実装されたデバイスなどの、地上通信ネットワークで実装された送信機器であってもよい。
そのような無線受信機は、位相ロックループ(PLL)を実装することによってバイナリ値を取り出す受信機に限定されず、相対位相変化を利用することによって(すなわち、周波数ロックループ-FLLを実装することによって)、又はM進シンボル値を推定することを目的とする任意の他のタイプの復調技術を実装することによってバイナリ値を取り出すこともできる任意の種類の無線受信機によって具現化されるGNSS受信機であってもよい。
【0074】
そのような無線受信機は、ナビゲーション装置又はスマートフォンのようなパーソナルモバイルデバイスなどのユーザデバイスに組み込まれているGNSS受信機であってもよく、メモリと、ディスプレイ及びキーボードのようなインターフェース手段とが結合されたプロセッサを備える装置である。
そのようなモバイルコンピューティングデバイスは、多数の異なる種類のアプリケーションをインストールするように構成され、そのような各アプリケーションの実行は、ナビゲーションなどの異なる種類のタスクを実行することを意図する。
本発明の実施形態による無線航法システムは、全地球航法衛星システムGNSSなどの衛星無線航法システム、又は擬似衛星などの単一の測位ビーコン、又は測位ビーコンのネットワークであってもよく、あるいはユーザ端末に同期を要求する無線通信ネットワークなどの地上システムであってもよい。
【0075】
本発明によるそのようなシステムの代替の実施形態は、第1の時間スケールが、地上通信ネットワーク、又は基地局もしくはビーコンを介して信号を送信するシステムによって共有されるか、あるいは第1の時間スケールが、例えば車両間(V2V)、車車間及び路車間(V2X)、又はデバイス間(D2D)などの「マシンツーマシン」通信リンクにおいて、別の通信機能付きのデバイスによって共有される用途であってもよい。後者の場合は、第2の「スレーブ」デバイスは、本開示の方法によって第1の「マスタ」デバイスに同期する。
【0076】
無線航法システムの第1の必須要素は、複数の無線送信機TX1...TXxの無線送信機TX1であり、この無線送信機は、ナビゲーション及び同期の目的のために、とりわけ無線ネットワークを介して無線信号を無線受信機に送信するように構成されている。この無線送信機TX1は、無線ネットワークRNを介して無線信号を無線受信機に送信するように構成された送信手段12を備えることができる。送信された無線信号は、無線信号の搬送波上に変調されたド・ブラウンシーケンス、又は切り詰められたド・ブラウンシーケンス、又は統合ド・ブラウンシーケンス、あるいは2つ以上のド・ブラウンシーケンス及び/又は切り詰められたシーケンス及び/又は統合ド・ブラウンシーケンスの組み合わせのいずれかなどのオーバーレイシーケンスを含む。
【0077】
そのような搬送波信号は、例えば、GPS C/A信号についてはバイナリ位相シフトキーイング(Binary Phase Shift Keying、BPSK)、又はGalileo E1-B/-Cについてはバイナリオフセット搬送波(Binary Offset Carrier、BOC)で一次符号を変調するために波形を適用することができる。
図6は、本開示のオーバーレイシーケンスを含む典型的なGNSS信号構造を示す。図の上部には、32個のオーバーレイシンボルを含むバイナリオーバーレイシーケンスの例が示されている。ここでは、対応するシンボルを表すために論理レベル[0,1]が用いられる。次に、このオーバーレイシーケンスは、以下に示すように、論理レベルに対応する信号レベル[1,-1]で表すことができる。次いで、このオーバーレイシーケンスの各シンボルは、チップを含む一次符号で変調又は拡散される。Galileo信号構造の場合は、二次符号がオーバーレイシーケンスの役割を果たすことに留意されたい。最後に、オーバーレイシンボル持続時間Ts及びチップ持続時間Tcも示されている。
図6には、各チップに変調される波形のタイプは示されていない。これは、例えば、GPS C/A信号についてはバイナリ位相シフトキーイング(BPSK)、又はGalileo E1-B/-Cについてはバイナリオフセット搬送波(BOC)であってもよい。同期化のためのオーバーレイシーケンスの使用は、波形変調のタイプに依存しない。
【0078】
図10は、本開示の発明の理解に有用となる要素を紹介する。図10には、同期誤差ΔTの値の一例が示されている。この場合、GNSS衛星は、暗示的な時間マーカ(Implicit Time Marker)、ITMを含む信号を送信すると考えられる。暗示的な時間マーカは、航法メッセージ内の送信時刻を符号化しないという点で、明示的な時間マーカとは異なる。しかしながら、暗示的な時間マーカ及び明示的な時間マーカは両方とも、送信時刻に関する情報を提供することを目的とする。GPS航法メッセージ内に符号化されたテレメトリワード(TOW及びHOW)は、暗示的な時間マーカの一例である。暗示的な時間マーカは、むしろオーバーレイシーケンス、すなわち、メッセージの送信に関する間接的な時間情報を提供する、一次符号上に変調され得る反復バイナリシーケンスを利用する。これらのオーバーレイシーケンスは周期的であり、ITMはまた、GNSS衛星によって送信される信号全体内の異なる位置で繰り返される。それにもかかわらず、各オーバーレイシーケンス内のITMの位置は、規則に従って一義的に定義することができる。第2の時間スケールとも呼ばれるその受信機時間スケールで受信機によって生成されるオーバーレイシーケンス内のITMのローカル位置が、同期誤差ΔTに応じて特定可能であり、第1の時間スケールとも呼ばれるGNSS時間スケール(例えば、GPS用のGPST及びGalileo用のGST)に参照されるスパン±ΔTmaxに属する。各受信機(異なるネットワークに同期している可能性がある)は、異なるローカルITM位置を生成することに留意されたい。1つのローカル位置のみが太く黒い枠で強調表示され、受信機がGNSS時間スケールに完全に同期した場合に得られる正しい位置を表す。
ユーザデバイスは、太破線枠で区切られた信号スナップショットを受信して処理する。信号スナップショットの処理から、オーバーレイシーケンス内のスナップショットに含まれるシンボルのサブセットの位置に基づいて、第1の時間スケールで表される無線信号のITMの相対位置を特定することが可能である。
また、受信機は既に信号を取得しており、追跡モードにあるため、オーバーレイシンボル期間が一次符号期間の整数倍に制限されると仮定して、一次符号期間粒度で受信信号に同期されることにも留意されたい。したがって、ITMの任意の位置は、シンボル持続時間の粒度で受信機時間スケールで表される。信号スナップショットから導出されたITMの位置に対する受信機時間スケールで表されるITM位置の相対位置の差は、同期誤差ΔTを特定及び解決することを可能にする。ITMを含むGNSS信号の送信に基づくこの代替手法では、A-GNSSについて開示されている前述の手法のように、第5の擬似距離を導出することができる1つの見通し線を「犠牲にする」ことを回避することができる。これにより、測位サービスの可用性を向上させることができる。GNSS信号は連続的に送信されるので、暗示的な時間マーカは繰り返され、周期的に送信される。したがって、図10の上部に示されているように、時間アンビギュイティが依然として持続する。繰り返されるITM間の距離は、時間アンビギュイティ間隔(Time Ambiguity Interval、TAI)として定義される。ここで、目的は、同期誤差の最大スパン2×ΔTmaxを超えて、TAI値を可能な限り増加させることである。GPS C/A信号の場合、TAIはミリ秒(拡散符号シーケンスのみを想定する場合は1ミリ秒、シンボルエッジを想定する場合は20ミリ秒)で表される。TAIは秒で表されるものとし、一義的な時間同期のために2×ΔTmaxスパンを実際に超えるものとする。一義的な時間同期を保証する設計制約を理解するために、図11は、時間アンビギュイティ間隔が同期誤差スパンよりも短い場合の状況を表す。同じスナップショット位置の場合、受信信号から導出された「相対的な」ITMは、「絶対的な」ITMとは別の位置に配置され、同期の誤差につながる。これは、時間アンビギュイティ間隔が同期誤差スパンよりも大きくなる必要があることが必須である理由を示している。
【0079】
このオーバーレイシーケンスは時間アンビギュイティ間隔ごとにL個のシンボルのセットを含み、時間アンビギュイティ間隔のそれぞれが暗示的な時間マーカを含む。送信手段は、GNSS送信機であってもよいし、通信ネットワークにおける擬似衛星もしくは衛星などの測位ビーコン送信機、又はV2V/V2Xアーキテクチャにおいてネットワークに接続された車両であってもよいし、第1の時間スケールを有する無線通信ネットワークの場合には固定もしくは移動無線送信機であってもよい。
そのようなオーバーレイシーケンスは、バイナリシンボルを含み得るが、本質的には含まない。あるいは、他の非バイナリシーケンス、すなわち任意の種類のM進シンボルがオーバーレイシーケンスを実施するために用いられてもよい。
更に、オーバーレイシーケンスは、実シンボルを含み得るが、本質的には含まない。あるいは、オーバーレイシーケンスを具現化するために他の複素シンボルが用いられてもよい。
無線送信機TX1は、意図する適切な無線航法信号を生成するように構成された信号処理手段11を更に備え、この信号は、時間アンビギュイティ間隔の複数のL個のシンボル内のN個のシンボルのサブセットの単回発生の条件を満たすオーバーレイシーケンスを含む。
そのような信号処理手段11は、特に送信対象の信号を処理するためのマイクロプロセッサを備えてもよく、処理手段は、コンピュータ命令、最終結果及び中間結果を含む信号処理の結果、並びに更なる情報などの電子情報を記憶するための、マイクロプロセッサに結合されたメモリデバイスを更に備えてもよい。
信号処理手段11は、無線信号の搬送波上に変調されたド・ブラウンシーケンス、又は切り詰められたド・ブラウンシーケンス、又は統合ド・ブラウンシーケンス、あるいは2つ以上のド・ブラウンシーケンス及び/又は切り詰められたシーケンス及び/又は統合ド・ブラウンシーケンスの組み合わせからなるオーバーレイシーケンスを生成するように構成されてもよい。
無線送信機TX1は、信号処理手段11によって生成された無線航法信号を送信するように構成された送信手段12を更に備える。
なお、無線送信機TX1...TXxは、無線送信機TX1と同様の機能構成を有している。
無線受信機RX1は、複数の無線送信機のうちの無線送信機によって送信され、無線受信機RX1で受信された無線信号に基づいて、第1の時間スケールを有する無線送信機と第2の時間スケールを有する無線受信機RX1との間の時間アンビギュイティを解決するように構成されている。
【0080】
無線受信機RX1は、まず、無線送信機TX1によって送信されたGNSS無線信号である無線信号を受信するように構成された信号受信手段21を備える。無線受信機RX1は、GNSS受信機が組み込まれ、その第2の時間スケールに同期している任意の種類のデバイスであってもよく、第2の時間スケールは、ローカルクロック又はデバイスが接続されている通信ネットワークのクロックに基づいてもよい。
無線受信機RX1は、位相ロックループ(PLL)を実装することによってバイナリ値を取り出す受信機に限定されず、相対位相変化を利用することによって(すなわち、周波数ロックループ-FLLを実装することによって)、又はM進シンボル値を推定することを目的とする任意の他のタイプの復調技術を実装することによってバイナリ値を取り出すこともできる任意の種類の無線受信機によって具現化されてもよい。
無線受信機RX1は、無線送信機TX1から受信された無線信号のスナップショットを取得するように構成されたスナップショットキャプチャ手段22と、時間アンビギュイティ間隔のオーバーレイシーケンスのL個のシンボルのセット内のスナップショットに含まれるN個のシンボルのサブセットの位置に基づいて、無線信号内の第1の時間スケールで表された暗示的な時間マーカの相対位置を特定するように構成された信号処理手段23とを更に備える。
【0081】
無線受信機RX1の処理手段23は、リポジトリのエントリ内のスナップショットのシンボルのサブセットを検索することによって、無線信号内の暗示的な時間マーカの相対位置を特定するように更に構成され、リポジトリは、エントリごとに、スナップショットの取り出されたN個のシンボルのうちの複数のシンボルと、無線信号の時間アンビギュイティ間隔内の暗示的な時間マーカに対するスナップショットのN個のシンボルのうちの複数のシンボルの相対位置とを含む。
無線受信機は、追加的又は代替的に、無線送信機によって送信された無線信号に対応するスナップショットシーケンスを生成するように構成されたスナップショットシーケンス生成手段24を備えることができる。第1のオプションでは、スナップショットシーケンスは、無線信号のノイズを含むスナップショット信号から生成することができ、取得プロセスから推定されたドップラーオフセット及び符号遅延の両方がワイプオフされ、最終的に0サンプルで完了する。あるいは、第2のオプションでは、スナップショットシーケンスは、無線信号のスナップショットに含まれるN個の取り出されたシンボルで生成することができ、0で完了する。更に、無線受信機RX1の処理手段23は、第1のオプションに従って信号スナップショットが生成される場合は、スナップショットシーケンスを、その長さがオーバーレイシーケンスにシンボル持続時間ごとのサンプルの数を乗じたものに等しい、スナップショットシーケンスに対応する拡散オーバーレイシーケンスと部分自己相関させることによって、又は第2のオプションに従って信号スナップショットが生成される場合は、スナップショットシーケンスを、スナップショットシーケンスに対応する長さLのオーバーレイシーケンスと部分自己相関させることによって、無線信号内の第1の時間スケールで表された暗示的な時間マーカの相対位置を特定するように構成されている。
スナップショットキャプチャ手段22、処理手段23、スナップショットシーケンス生成手段24、及びリポジトリ25は、受信した無線信号の処理の命令、結果、及び中間結果を記憶するための結合された電子メモリを有するマイクロプロセッサなどのハードウェア、ソフトウェア、又はそれらの任意の組み合わせを更に備えることができる。これは、全ての機能を実行するためのメモリが結合されたローカルプロセッサであってもよく、又は言及された各機能専用であってもよい。
無線送信機TX1のシーケンス生成手段11は、出力端子で送信手段12の入力端子と結合され、送信手段12は、無線送信機TX1の出力端子O1でもある出力端子を有する。
無線受信機RX1は、受信手段21の入力端子でもある入力端子I1を有し、受信手段21は、出力端子でスナップショットキャプチャ手段22の入力端子と結合され、スナップショットキャプチャ手段22は、出力端子で処理手段23の入力端子と結合されている。スナップショットシーケンス生成手段24は、出力端子で処理手段23の入力端子と結合されている。
【0082】
本発明の一実施形態を説明するために、第1の時間スケールを有する無線送信機TX1と第2の時間スケールを有する無線受信機RX1との間の時間アンビギュイティを解決するように構成された少なくとも1つの無線送信機TX1が、まず、信号生成手段11によって、時間アンビギュイティ間隔全体の複数のL個のシンボルのうちのN個のシンボルのサブセットの単回発生の条件を満たすオーバーレイシーケンスを生成すると仮定する。このオーバーレイシーケンスは、時間アンビギュイティ間隔ごとにL個のシンボルのセットを含むこと及び、時間アンビギュイティ間隔のそれぞれが暗示的な時間マーカを含むことを特徴とする。このようなオーバーレイシーケンスの長さは、所定の長さLである。次いで、時間アンビギュイティの解決は、例えば時間アンビギュイティが解決された測距信号に基づいてデバイスの位置及び時刻を推定するためにデバイスの内部で使用されるか、又は例えばタイミング受信機デバイスのタイミングを表示して出力O2をもたらすためにデバイスの外部で使用され得る。
続いて、そのような無線信号は、生成されたオーバーレイシーケンスを無線信号の搬送波上に変調することによって生成され、生成された無線信号は、続いて送信手段12によって結合無線ネットワークRNを介して少なくとも1つの無線受信機RX1に向けてブロードキャストされ、このブロードキャストされた無線信号は、続いて無線信号の搬送波上に変調された生成されたオーバーレイシーケンスを含む。
あるいは、オーバーレイシーケンスは、無線信号の搬送波上に変調されたチップを含む一次符号上に変調されてもよい。
オーバーレイシーケンスは時間アンビギュイティ間隔ごとにシンボルのセットを含み、時間アンビギュイティ間隔のそれぞれが暗示的な時間マーカを含む。時間アンビギュイティ間隔内の暗示的な時間マーカの位置は(規則に従って)知られており、例えばシーケンスの最初のシンボルとすることができる。
続いて、無線受信機RX1は、受信手段21によって、無線信号の搬送波上に変調された生成されたオーバーレイシーケンスを含む送信された無線信号を受信する。このオーバーレイシーケンスは、時間アンビギュイティ間隔ごとにL個のシンボルのセットを含むこと及び、時間アンビギュイティ間隔のそれぞれが暗示的な時間マーカを含むことを特徴とする。そのようなオーバーレイシーケンスの長さは、所定の長さLである。スナップショットキャプチャ手段22は、受信した無線信号から取り出されたオーバーレイシーケンスのスナップショットを取得する。無線信号の受信時に、受信信号スナップショットは、受信した無線信号から、搬送波信号上に変調されたオーバーレイシーケンス内のN個のシンボルのサブセットを取り出すために復調される。受信した無線信号に含まれるオーバーレイシーケンスのスナップショットは、図5に示すようにオーバーレイシーケンスに含まれるL個のシンボルの量よりも小さい所定量のN個のシンボルを含む。
更に、処理手段23は、時間アンビギュイティ間隔のシンボルのセット内のスナップショットに含まれるシンボルのサブセットの位置に基づいて、無線信号の第1の時間スケールで表される暗示的な時間マーカの相対位置を特定する。スナップショットは、L個のシンボルを含むオーバーレイシーケンスからN個、例えばN=5のシンボルをキャプチャし、ここでLは、例えば32個のシンボルである。オーバーレイシーケンスの特徴は、N個のシンボルのサブセットに基づく長さLのシーケンス内に、長さNの任意のサブシーケンスが単回発生することを保証する特性(巡回特性を含む)であるため、対応するオーバーレイシーケンスの時間アンビギュイティ間隔のL個のシンボルのこのセット内のこの言及されたサブセットの位置は、この特性によって特定することができる。
この位置を特定するオプションとして、処理手段23は、リポジトリ25のエントリ内のスナップショットの例えばN=5のシンボルのサブセットを検索することによって、無線信号内の暗示的な時間マーカの相対位置を特定する。このリポジトリ25は、テーブル又はデータベースのエントリごとに、スナップショットに含まれる複数のN個の後続のシンボルを、無線信号の時間アンビギュイティ間隔における暗示的な時間マーカに対するスナップショットのシンボルの相対位置と共に含むテーブル又はデータベースを含むことができる。
【0083】
スナップショット(図5参照)に含まれるような取り出されたシンボルの組み合わせ「01001」に基づいて、時間アンビギュイティ間隔のシンボルのセット内のスナップショットに含まれるシンボルのサブセットの位置に基づいて、無線信号の第1の時間スケールで表された暗示的な時間マーカの相対位置を取り出すことが可能であり、したがって、時間アンビギュイティを解決することが可能である。
リポジトリ25のテーブル又はデータベースは、テーブル又はデータベースのエントリごとに、スナップショットに含まれる複数のN個の後続のシンボルを、時間アンビギュイティ間隔内のスナップショットに含まれるこれらのシンボルの相対位置に関する情報と共に含むことができる。
【0084】
別の関連する代替実施形態では、無線受信機RX1は、無線送信機TX1によって送信された無線信号に対応するスナップショットシーケンスをスナップショットシーケンス生成手段24によって生成し、第1のオプションでは、無線受信機RX1は、スナップショット信号から導出され、取得プロセスから推定されたドップラーオフセット及び符号遅延の両方をワイプオフした後に、「0」サンプルで完了することによって無線信号のノイズを含むサンプルからスナップショットシーケンスを生成し、又は第2のオプションでは、無線受信機RX1は、無線信号のスナップショットに含まれるN個のシンボルの取り出されたシンボルのサブセットと、0パディングで取得されたL-N個の「0」の別のサブセットとを連結して長さLのスナップショットシーケンスを完了することによってスナップショットシーケンスを生成する。
【0085】
続いて、無線受信機RX1の処理手段23は、図8に示すように、取り出されたシンボルに基づくスナップショットシーケンス生成のための第2のオプションを考える場合、又は、図9に示すように、スナップショット信号から導出されたサンプルに基づくスナップショットシーケンス生成のための第1のオプションを考える場合、時間アンビギュイティ解決を可能にするL個のシンボルの全セット内のスナップショットに含まれるN個のシンボルのサブセットの位置を推定するために、生成されたスナップショットシーケンスを、スナップショットシーケンスに含まれるサンプルの数に対応するサンプルの数を含む完全なオーバーレイシーケンスと(部分)自己相関させることによって、無線信号内の時間マーカの相対位置を特定する。
オーバーレイシーケンス内のシンボルの数が多すぎる場合(例えば、N=7、L=2^N=128シンボルの場合)、この部分自己相関を適用することが有利であり、次いで、0に設定された128-7=121個のシンボルで完了した、128個のシンボルのオーバーレイシンボルストリーム内のN=7の取り出されたシンボルの部分自己相関を使用することによって、暗示的な時間マーカ(オーバーレイシーケンスの開始)に対するN個のシンボルのスナップショットの相対位置を特定することが好ましい。この解決策は、過剰な記憶空間メモリを使用して過大なルックアップテーブル(リポジトリ)を回避し、そのようなリポジトリによって維持されるテーブルが過大である場合にルックアップ時間が長くなりすぎることを回避するためにNが大きい場合に導入される。
部分自己相関プロセスのためのスナップショットシーケンスを生成するための第1の手法は、例えばPLL又はFLL実装を用いて、N個の取り出されたシンボルのサブシーケンスをL-N「0」で完了する、すなわち0パディングすることからなる。取得ステップから取得された符号遅延及び搬送波ドップラーオフセットが、取り出し復調ステップを適用する前に最初にスナップショット信号からワイプオフされる場合、スナップショットからのシンボルの取り出しの性能が大幅に改善されることが示されている。この第1のオプションでは、シンボルごとに1つの0が適用される。L個のシンボルのこのスナップショットシーケンスは、L個のシンボルの完全なオーバーレイシーケンスに関連付けられる。次いで、最大の部分自己相関をもたらすサブシーケンスの位置を使用して、オーバーレイシーケンスの先頭にスナップショットサブシーケンスを配置する。この第1の手法の原理は、N=5の特別な場合の図8に示されている。また、境界で得られた部分自己相関値も示されている(k=1,2,3,4の場合)。
【0086】
スナップショットシーケンスを生成するための第2の手法は、前処理されたサンプルをスナップショット信号から直接取得すること、すなわちシンボルの取り出し復調なしで取得すること及び、対応するサンプルを再び0でパディングすることで完了することからなる。前処理ステップは、取得ステップから推定されたドップラーをワイプオフすること(すなわち、「デローテーション」によって)からなる。更に、信号スナップショット用に想定されるべきサンプルのタイプの異なるオプションが開示され得る。第1のオプションは、生の「I/Qサンプル」を想定し、ドップラーを適用してデローテーションすると、サンプルレートに等しい有効なサンプリング周波数で測定されるため、大量のサンプルを含むスナップショットシーケンスになり、低消費電力デバイスの処理をサポートしにくい。別の選択肢は、相関(取得段階で行われる相関)後のサンプルを想定し、またドップラーでデローテーションさせ、その場合、有効サンプリング周波数が一次符号レートに低減されるため、サンプル数がはるかに少なくなる。この第2のオプションでは、シンボルごとにパディングされる0の数は、有効なサンプリング周波数を想定する必要があることに留意されたい。この第2の手法は、オーバーレイシーケンスが無線信号に変調された一次符号に変調される場合に特に適している。この第2の手法の原理を図9に示す。
部分自己相関の対応するピークを特定するために、GNSS信号取得に使用されるものと同様の実施態様が開示され得る。1つの可能な実装形態は、自己生成スナップショット及びパディングされたシーケンスとオーバーレイシーケンスとの間のシリアル相関の使用に依存する。ここでは、各シンボル位置が連続してテストされる。別の可能な実装形態は、FFTの使用に依存し、そのような方法ではオーバーレイシーケンスの周期性特性を利用する。上記で説明したように、N個のシンボルのスナップショットサブシーケンスは、長さLに達するようにスナップショットシーケンスを生成するために最初に0パディングされる。次に、部分自己相関ACFpの以下の式が適用される。
式中:
-FFT及びIFFTは、それぞれ高速フーリエ変換及び逆高速フーリエ変換を表す。
-Conjは、共役演算を表す。
-SeqOverlayは、長さLのバイナリオーバーレイシーケンスを表す。
-SeqN,0は、0パディングされたスナップショットシーケンスを表す。
【0087】
関連する実施形態は、無線信号上に変調されたオーバーレイシーケンスがド・ブラウンオーバーレイシーケンスからなる方法に関する。ド・ブラウンシーケンス又は「ド・ブラウン」オーバーレイシーケンスからなるそのようなオーバーレイシーケンスは、(境界上を含む)長さLのオーバーレイシーケンス内の長さNの任意のサブシーケンスの単回発生を保証する。「ド・ブラウン」シーケンスによって満たされるこの特性は、L個のシンボル内のN個のシンボルの単回発生又はSO(N,L)特性と呼ばれる。「ド・ブラウン」シーケンスによって満たされるSO(N,L)特性の結果として、GNSS信号などの無線信号、あるいは通信ネットワーク内の衛星によって送信される信号、あるいは擬似衛星によって送信される無線信号などの任意の種類の地上無線信号、あるいは基地局(BTS)、無線通信ネットワークの場合の固定もしくは移動無線送信機、又はV2VもしくはV2X通信ネットワークに実装されたデバイスによって送信される無線信号などの地上通信ネットワークの送信機器によって送信される無線信号の時間アンビギュイティ間隔内のこの固有のシンボルシーケンスの位置を一義的に特定することができ、この固有のシーケンスの位置に基づいて、スナップショットに含まれる固有のシンボルシーケンスと暗示的な時間マーカの位置との間の(相対的な)距離を正確に特定することができる。
【0088】
更に、オーバーレイシーケンスは、無線信号の搬送波上に変調されたド・ブラウンシーケンス、又は切り詰められたド・ブラウンシーケンス、又は統合ド・ブラウンシーケンス、あるいは2つ以上のド・ブラウンシーケンス及び/又は切り詰められたシーケンス及び/又は統合ド・ブラウンシーケンスの組み合わせであり得る。
そのような「ド・ブラウン」オーバーレイシーケンスは、バイナリシンボルを含み得るが、本質的には含まない。あるいは、ド・ブラウンシーケンスを具現化するために、他の非バイナリシーケンス、すなわちM進シーケンスが適用されてもよい。
更に、オーバーレイシーケンスは、実シンボルを含み得るが、本質的には含まない。あるいは、オーバーレイシーケンスを具現化するために他の複素シンボルが用いられてもよい。
更に、「ド・ブラウン」シーケンスは、シーケンスのk(k<N)個の最後のシンボルを最初の[N-k]個のシンボルと連結することによって構築される長さNのサブシーケンスであっても、完全な「ド・ブラウン」シーケンス内で単回発生することを保証する巡回特性も満たす。「ド・ブラウン」シーケンスの1つの重要な特性は、大きい(L/N)=(2N/N)比であり、これはスナップショット測位のための優れた利点を表す。実際、これは、小さな数N個のシンボル(すなわち、短いスナップショット持続時間)に対して、オーバーレイシーケンス長(すなわち、時間アンビギュイティ間隔)が大きくなり得ることを意味する。
【0089】
図7の表に、異なる長さLのド・ブラウンシーケンスのいくつかの例を説明のために示す。
したがって、本発明の有利な実施形態では、少なくとも1つの無線受信機RX1は、第1の時間スケールを有する無線送信機TX1と第2の時間スケールを有する無線受信機RX1との間の時間アンビギュイティを解決するように構成され、無線送信機RX1は、まず、信号処理手段11によって、時間アンビギュイティ間隔全体の複数のシンボル内のシンボルのサブセットの単回発生の条件を満たす「ド・ブラウン」シーケンスに基づいてオーバーレイシーケンスを生成する。このオーバーレイシーケンスは、「ド・ブラウン」シーケンスに基づき、時間アンビギュイティ間隔ごとにL個のシンボルのセットを含むこと及び、時間アンビギュイティ間隔のそれぞれが暗示的な時間マーカを含むことを特徴とする。このようなオーバーレイシーケンスの長さは、所定の長さLである。
【0090】
以下に、「ド・ブラウン」シーケンスの設計、寸法設定、及び選択のための方法を説明するが、「ド・ブラウン」シーケンスの適用によって得られる潜在的な性能を強調することも開示する。N及びLの異なる値(L=2^N)、オーバーレイシンボル持続時間(Ts)、及びスナップショット持続時間(TSnp=N×Ts)のいくつかの構成例も開示し、図12に例示する。対応する作用点を図12の表に示す。そのような作用点は、500msよりも短い信号スナップショット持続時間を有するように主な制約によって選択されており、低消費電力デバイスの処理をサポートしやすい。
【0091】
図12の表は、時間アンビギュイティ間隔(TAI)が、384msのスナップショット持続時間を有する受信機の典型的な同期誤差(±2s)よりも大きいことを保証することが可能であることを示している。
図12の表に示すスナップショット持続時間(TSnp)は、N個のオーバーレイシンボルの前後の持続時間TGrdの2つの信号処理タイムガードを想定していないことに留意することが重要である。これらのタイムガードは、対応するド・ブラウンサブシーケンスの極性(PLL処理の場合)又は極性の変化(FLL処理の場合)を推定するために実際に必要である。TGrdは、受信した信号対雑音電力スペクトル密度比(C/N0)に本質的に依存し、典型的なGNSS用途及び復号化技術(PLL又はFLLベース)の場合に30~40dB-Hzで変化する。TGrdの典型的な大きさの規模は、数ミリ秒から10ミリ秒又は20ミリ秒まで変化する。
上述の例示的な構成から、主な要件と設計パラメータとの間の以下の関係を推定することができる。
なお、上述の式において、係数2での除算は、TAIを「片側」で表すためである(例えば±0、16秒)。TAIが「スパン」(例えば、0、32秒)として表される場合、この係数2での除算は消滅する。
【0092】
結果として、時間アンビギュイティ間隔(TAI)、シンボル持続時間(Ts)、及び処理タイムガード持続時間(TGrd)が要件として指定されている場合、以下に従って、ド・ブラウンシーケンスの長さL、したがってスナップショット内のド・ブラウンシンボルの数を容易に推定することが可能である。
上述の式では、TAIに直接関連するド・ブラウンシーケンス長は、ここではスパン(例えば、0、32秒)として表され、片側(例えば±0、16秒)として表されないことに留意されたい。数学演算子
は、天井関数(x以上の最小整数)を指定する。一例として、TAI=0、31s、及びT=40msの場合、Loptim=2^(
=8)及びNoptim=3である。タイムガードが持続時間TGrd=4msを有すると仮定すると、スナップショット時間は128msになる。
【0093】
別の設計シナリオは、時間アンビギュイティ間隔(TAI)、シンボル持続時間(Ts)、及び処理タイムガード持続時間(TGrd)が与えられ、ド・ブラウンシーケンス長L、及びスナップショット内のシンボルの数Nを推定するために必要であることを想定する。その場合、(式14)及び(式15)を再び使用して、2つの未知数Ts及びNについての連立方程式系が得られる:
この系は、未知数Nについての単一の方程式に縮小することができる:
スナップショット当たりのシンボル数の解Noptimが存在する場合、最適シンボル持続時間Ts,optimは、(式14)から容易に推定することができる。
「ド・ブラウン」シーケンスを適用するための主な原理を説明したところで、いくつかの「ド・ブラウン」シーケンスの組み合わせに基づいて、より高い性能を提供する追加の用途を提示することを開示する。
【0094】
本発明の別の代替的かつ有利な実施形態では、同じ衛星によって送信される各GNSS信号は、各々が異なる構成的な「ド・ブラウン」シーケンスで変調された2つ(又はそれ以上)の信号成分を含み、同じ衛星によって送信される2つ(又はそれ以上)の構成的な「ド・ブラウン」シーケンスになる。対応する構成的な「ド・ブラウン」シーケンスは、組み合わされると、集約されたオーバーレイシーケンスを形成する。以下において、Vは、衛星によって送信される構成的な「ド・ブラウン」シーケンスの数を表す。
【0095】
以下では、2つの信号成分(V=2)がそれぞれ構成的な「ド・ブラウン」シーケンスで変調され、同じ衛星によって送信される2つの構成的な「ド・ブラウン」シーケンスになる特殊なケースを説明のために想定する。1つの可能な実装形態は、直交位相又は同相であり得る2つの異なる一次符号ストリーム、したがって2つの異なる信号成分でこれらのシーケンスを変調することにある。
この実施形態のサブケースでは、第1の構成的なシーケンスは、元の「ド・ブラウン」シーケンスとも呼ばれる長さL1の切り詰められていない「ド・ブラウン」シーケンスであり、第2の構成的なシーケンスは、長さL2=L1-1の切り詰められた「ド・ブラウン」シーケンスであると考えられる。後者は、長さL1の元の「ド・ブラウン」シーケンスから1ビット、例えば最後の1ビットを除去することによって得られる。図13に示す本開示の例では、L1=32シンボルであり、L2=32-1=31シンボルである。この例では、両方のシーケンスは同じ持続時間(Ts=Ts1=Ts2)のシンボルを有する。両方のシーケンスを図13aの上部に示す。図13bにおいて、GNSS信号は、長期間にわたって表され、2つのオーバレイシーケンスストリームを示し、1つ目は、長さ32シンボルの第1の構成的なオーバーレイシーケンスを連結することによって得られ、2つ目は、長さ31シンボルの第2の構成的なオーバーレイシーケンスを連結することによって得られる。この例では、対応するシンボルのエッジが同期して送信されることも考えられる。受信時に、切り詰められていない構成的な「ド・ブラウン」シーケンス及び切り詰められた構成的な「ド・ブラウン」シーケンスを、「並置」ごとに、いわゆる集約されたオーバーレイシーケンスに組み合わせることができ、これは(同相信号成分及び直交位相信号成分に変調されたシンボルを想定して)複素シンボルを含むシーケンスとして見ることができ、又は代替的に、その四進シンボルが同じ持続時間Tsを有し、以下のように、切り詰められていない構成的な「ド・ブラウン」シーケンス及び切り詰められた構成的「ド・ブラウン」シーケンスの組み合わされたバイナリシンボルに関連付けることができる四進シーケンスとして見ることができ、四進シンボル「0」は「00」を表し、「1」は「01」を表し、「2」は「11」を表し、「3」は「10」を表す。この表記法では、対「a b」の第1のバイナリシンボル「a」は、第1の(切り詰められていない)構成的なド・ブラウンシーケンスから規則に従って生じ、第2のバイナリシンボル「b」は、第2の(切り詰められた)構成的なド・ブラウンシーケンスから規則に従って生じる。図13bに示す本開示の例においても、持続時間N×Tsを有し、各シーケンスのN=5のバイナリシンボルを含み、したがって集約されたオーバーレイシーケンスの5個の四進シンボルを含む信号のスナップショットがユーザデバイスによって処理されることが想定される。構成的なオーバーレイシーケンスの長さの違いにより、長さL=L1×L2=992シンボルの集約されたオーバーレイシーケンス内で対応するスナップショットが複数回発生しないことが保証される。この集約されたオーバーレイシーケンス長は、集約されたオーバーレイシーケンスの四進シンボルの単位で表される周期性に対応する。集約されたオーバーレイシーケンスの期間は、秒で表した場合、L×Tsに等しい。この期間は、拡張されたTAIに対応する。一例として、オーバーレイシンボルシンボル持続時間がTs1=Ts2=44msである場合、TAIは992×44ms=43.648sとなる。更に、この集約されたオーバーレイシーケンスの暗示的な時間マーカの位置は、ここでも、第1のシーケンスの第1のシンボルと第2のシーケンスの第1のシンボルとが一致して同相である集約されたオーバーレイシーケンス内の位置に、規則に従って定義することができる。この暗示的な時間マーカは、ここでも、第2の時間スケールにおけるスナップショットの相対位置を推定するのに役立つ。集約されたオーバーレイシーケンススナップショットに含まれるシンボルのサブセットの位置に基づく無線信号の暗示的な時間マーカの相対位置の特定は、単一のド・ブラウンベースのシーケンスを送信及び処理する場合のように、リポジトリ内の検索に基づくか、又は部分自己相関関数を計算することに基づいてもよい。
【0096】
本開示の例示的な構成に基づいて、以下の設計シナリオが開示され得る。第1に、拡張されたTAIは、第1の信号成分で変調された長さL1の元の構成的なド・ブラウンシーケンスの一部としてのN個のシンボルと、K個のシンボルを切り詰め、第2の信号成分で変調することによって元の構成的なド・ブラウンシーケンスから得られた、長さL2=L1-Kの第2の構成的なド・ブラウンシーケンスの一部としてのN個のシンボルとの組み合わせのスナップショット内での単回発生によって得られると考える。更に、両方のシーケンスに対して同じシンボル持続時間Tsが適用されると考える。これらの設計上の想定事項に基づいて、(拡張された)TAIは以下の式のセットを満たす:
単一のド・ブラウンシーケンスに基づく、式(式14)及び(式15)で表される設計とは対照的に、他の2つの自由度が導入される。最初の式は、元のド・ブラウンシーケンスからの切り詰められたシンボルの数Kに対応し、1から(L11)の間で変化する第2の式は、K個の切り詰められたシンボルが隣接するという制約を想定して、元の「ド・ブラウン」内の切り詰められたシンボルの位置に対応することで、一度切り詰められた元の「ド・ブラウン」の特性を維持する。単一のド・ブラウン設計のケースで説明したものと同様の数学的導出に従って、L1(Nをもたらす)、K及び切り詰められたシンボル位置のいくつかの解を見つけることができる。1つの最適解(L1,optim、Koptim、並びに最適な切り詰められたシンボル位置)は、スナップショット持続時間を短縮するために最小のNを支持するものである。
【0097】
図14に示す表は、40msのシンボル持続時間Tsを想定する場合に拡張されたTAIを計算する。行は切り詰められたシンボルの数Kを示し、列は元のド・ブラウンシーケンス長L1(L1=2^NとしてNから導出される)を示す。各セルは、式(式21)に基づくTAIを示す。この例では、切り詰められたK個のシンボルの位置は、元の「ド・ブラウン」シーケンスの最後に位置する。
この例では、最小必要TAIを5.12秒と仮定すると、図14の表は、(L1=16、K=8)又は(L1=32、K=28)を用いて、2つの構成がこのTAIを満たすことができることを示している。この場合、最初の構成(L1,optim=16、Koptim=8)は、4×40ms=160msに等しいNに応じて(タイムガードなしで)、最小のスナップショット持続時間を保証するように選択される。
【0098】
最適な構成の設計にシンボル持続時間Tsが提供されない場合、(タイムガードも想定して)最小のスナップショット持続時間の制約でTAIを満たすパラメータL1,optim(したがってNoptim)、Koptim、切り詰められたシンボル位置及びTs,optimを決定するためにパラメータ解析が実行されるべきである。その場合、図14に示す表と同様の異なる表が、シンボル持続時間Tsの異なる候補値に対して生成される。この場合、最小のスナップショット持続時間をもたらす(L1、K、Ts及び切り詰められたシンボル位置)の組み合わせは、最適解(L1,optim、Koptim、Ts,optim)について保持される。
図13a及び図13bに記載の原理は、第2のオーバーレイ及びより短いシーケンスを形成するために1つのシンボルで切り詰められる、長さL1=32シンボルの元のド・ブラウンシーケンスを使用した。この原理は、元のド・ブラウンシーケンスの長さL1の他の値、例えばL1=64,128、...に拡張することができる。更に、原理は、実施形態の以下のサブケースで一般化することができる。
-同じ長さを有する2つの異なる元のド・ブラウンシーケンスをそれぞれ用いて構築された2つの構成的な「ド・ブラウン」シーケンスの組み合わせ。この場合、第1のシーケンスは切り詰めを伴わない第1の元のド・ブラウンシーケンスに基づき、第2のシーケンスはK個のシンボルの切り詰めを伴う別の元のド・ブラウンシーケンスに基づく。
-2つの「ド・ブラウン」シーケンスの組み合わせは、それぞれ異なる長さの元のシーケンスで構築された。例えば、第1のシーケンスは長さL1=32の元の「ド・ブラウン」シーケンスで構築され、第2のシーケンスは長さ24=16の元の「ド・ブラウン」シーケンスからK個のシンボルを切り詰め、長さL2=16-Kとすることによって生成されると考えることができる。
-第2のシーケンスが第1のシーケンスからの切り詰めによって得られる場合、切り詰められるシンボルの数Kは、1と(L1-1)との間で変化し得る。それにもかかわらず、拡張されたTAIを効果的に保証するために、考えられる切り詰め後の両方のシーケンスの長さが互いの倍数ではないことを保証するために注意が払われなければならない。例えば、長さL1=L2=32シンボルの2つの元のシーケンスを想定すると、16シンボルが長さL2=32の第2の元のシーケンスから切り詰められる場合、長さL1=32の第1の元の構成的なシーケンスと長さL2=32~16=16シンボルの第2の切り詰められたシーケンスとの組み合わせによって得られる集約されたオーバーレイシーケンスは、第1の元の構成的なシーケンスと同じTAIを有するL=32シンボルの周期性を示す。構成的なシーケンスの長さが互いに同一であるか又は互いの倍数である場合は、同じ衛星によって送信される組み合わされた構成的なシーケンスの処理をカバーする実施形態の別のサブケースで後に想定され、他の有利な性能を提供することが開示されることに留意されたい。
-GNSS送信機は、2つのシーケンスを送信する代わりに、3つ以上のオーバーレイシーケンスを送信することができる。Vは、送信された構成的なオーバーレイシーケンスの数を表し、「ド・ブラウン」ベースである。このようにすることにより、集約されたオーバーレイシーケンスの長さ(L=L1×L2×Lv...×LV)として、TAIを更に拡張することが可能である。
-2つ以上のオーバーレイシーケンス(合計V)のシンボル持続時間は、「ド・ブラウン」ベースのシーケンスとして異なり得る:Ts1(≠又は=)Ts2(≠又は=)Tsv...(≠又は=)TsV。この特定の場合において、集約されたオーバーレイシーケンスのシンボル持続時間は、元のオーバーレイシーケンス及び構成的なオーバーレイシーケンスの異なるシンボル持続時間の最大公約数(largest common divisor、lcd)に等しい:Ts=lcd(Ts1,s2,sv,・・・,TsV)。更に、集約されたオーバーレイシーケンスを取得するために以下のステップが適用される。第1に、各構成的なシーケンスの各シンボルのRv倍を繰り返すことによって、いわゆる補間された構成的なシーケンスが得られ、ここで、Rvは、構成的なシーケンスTsvのシンボル持続時間と集約されたオーバーレイ配列のシンボル持続時間との比を表し、Ts:Rv=Tsv/Tsである。第2に、各補間された構成的なシーケンスは、図13bに示された場合と同様の方法でそれ自体と連結され、連結された補間された構成的なシーケンスのストリームを生成する。第3に、集約されたオーバーレイシーケンスは、連結された補間された構成的なシーケンスのストリームを組み合わせることによって得られる。バイナリの構成的なシーケンスの場合を想定すると、集約されたオーバーレイシーケンスのシンボルはM進シンボルであり、M=2×Vである。集約されたオーバーレイシーケンスの長さLは、集約されたオーバーレイシーケンスのM進シンボルで表される周期性を表す。最後に、スナップショット持続時間は、一方ではSO(L,N)特性を満たし、他方では比L/Nの最大化を保証する、N個のM進シンボルを含むサブセットを含むものとする。異なるシンボル持続時間を有する2つの構成的なシーケンスを想定する例に基づいて、補間された構成的なシーケンスを得るための手順の説明を以下に開示する。第1の元の「ド・ブラウン」シーケンスは、シンボル持続時間T1=20msのL1=4シンボル(N=2の場合)を含み、[1,1,0,0]に等しく、第2の元の「ド・ブラウン」シーケンスは、シンボル持続時間T2=15msのL2=4-1=3シンボル(すなわち、N=2であり、K=1シンボルが切り詰められる)を含み、[0,1,1]に等しい。この例では、集約されたオーバーレイシーケンスのシンボル持続時間は5msに等しく、5=lgcd(15,20)である。更に、対応する第1の構成的なシーケンスの4つのシンボルの各々を20/5=4回繰り返すことによって、シーケンス[1111,1111,0000,0000]となる第1の補間された構成的なシーケンスが得られる。同様に、対応する第2の構成的なシーケンスの3つのシンボルの各々を15/5=3回繰り返すことによって、シーケンス[000,111,111]となる第2の補間された構成的なシーケンスが得られる。次いで、図13aに示すように、前述の両方の補間された構成的なシーケンスが連結されて、連結された補間された構成的なシーケンスのストリームを形成し、連結された補間された構成的なシーケンスのストリームを組み合わせることによって、集約されたオーバーレイシーケンスが得られる。
【0099】
対応する実施形態の別のサブケースでは、同じ衛星によって、同じ長さL及びシンボル持続時間Tsを有する2つ以上の構成的なド・ブラウンシーケンスを送信することが開示される。ここでも、Vは、送信された構成的なオーバーレイシーケンスの数を表し、「ド・ブラウン」ベースである。この方式の利点は、時間アンビギュイティ間隔の改善ではなく、信号スナップショットに含まれるシンボルの取り出し性能の改善により、時間アンビギュイティ解決のレイテンシを改善する点である。次いで、構成的なド・ブラウンシーケンスの各々が、異なる信号成分上に変調される。説明のための例として、長さL1=L2=L=2^Nかつ同じシンボル持続時間Ts1=Ts2=Tsを有する2つの構成的なド・ブラウンシーケンスを想定する。更に、これらの構成的なド・ブラウンシーケンスは、第1の構成的なド・ブラウンシーケンスの少数の遷移(連続した記号[01]及び[10]は遷移を構成し、連続した記号[00]及び[11]は遷移を構成しない)を含む区間が、第2の構成的なド・ブラウンシーケンスのより多くの遷移を含む区間に対応するように選択される。この選択及び設計規則を適用することによって、N×Tsの所与のスナップショット持続時間に対して、かつ2N個のシンボル(第1のド・ブラウンシーケンスからのN個のシンボル及び第2のDeド・ブラウンシーケンスからのN個のシンボル)を含む場合、スナップショット持続時間当たりの遷移の平均数はより大きくなり、これは、前述のより良好な性能のソフト復号化技術又はハード復号化技術を適用することによって、対応する2N個のシンボルを取り出すことを可能にする。直接の結果として、同じ集約された電力を有する単一のド・ブラウンシーケンスの送信の場合と比較した場合、対応する2N個のシンボルの取り出し性能が改善され、すなわち、単一のド・ブラウンシーケンスで変調された信号成分に割り当てられた送信電力は、両方のド・ブラウンシーケンスで変調された両方の信号成分に割り当てられた集約された電力に等しい。加えて、2つの構成的なオーバーレイシーケンスを含む組み合わされた信号に適用され、単一のオーバーレイシーケンスを含む信号に適用される持続時間の半分の持続時間を有するスナップショットについて、同じ数のシンボルが得られる(N)。したがって、エラーのない復調を可能にするより高い信号対雑音比では、レイテンシは係数2で縮小される。この代替スキームでは、両方の構成的なシーケンスが同じ長さL及びシンボル持続時間Tsを有するので、暗示的な時間マーカの位置は、ここでも、第2の構成的なシーケンスの第1のシンボルの位置と同一である第1の構成的なシーケンスの第1のシンボルの位置に、規則に従って定義することができる。この暗示的な時間マーカは、ここでも、第1の時間スケールと第2の時間スケールとの間の同期誤差を見つけるために使用される。2つのバイナリのド・ブラウンシーケンスが変調される場合は、単一の四進ド・ブラウンシーケンスが単一の信号成分に変調される場合と同様とすることができることに留意されたい。したがって、構成的なシーケンスが異なる長さを有するケースで前述した集約されたオーバーレイシーケンスを想定したモデリング及び定式化は、構成的なシーケンスが同じ長さを有する場合にはこのケースでも使用することができる。集約されたオーバーレイシーケンスは、ここでも、両方の構成的なオーバーレイ「ド・ブラウン」ベースのシーケンスの組み合わせごとに得られる。本開示の方法は、2つより多い構成的なド・ブラウンシーケンス(最大V個の構成シーケンス)に拡張することができ、又は両方の構成的なド・ブラウンシーケンスのシンボル持続時間が異なる(TS1≠TS2)が、それぞれのシーケンス長に反比例し(L1/L2=Ts2/Ts1)、秒単位で表現すると同じシーケンス期間となるL1×T1=L2×T2場合に拡張することができる。
【0100】
更なる実施形態では、オーバーレイシンボルの取り出しプロセス(すなわち、復調)におけるエラーを検出及び訂正する能力などの新しい特徴を導入するために、候補ド・ブラウンシーケンスの大規模なアンサンブル(バイナリシーケンスの場合は2^(2^(N-1)-N)に等しい)を利用する。ド・ブラウンシーケンスを使用する目的はL/N比を最小化することであるが、バイナリのド・ブラウンシーケンスの特別な場合には、2^Nに等しい長さLのオーバーレイシーケンス全体内のサブセットの一部として最小数を超えるN個のシンボルを含むより長いスナップショットを利用することによって、代替の処理手法を想定することができる。具体的には、N個のオーバーレイシンボルを処理する代わりに、無線受信機は、同期のロバスト性を高めるために、より長いスナップショットに含まれるP=N+NExt個のオーバーレイシンボルを処理する。NExt個の追加のシンボルでスナップショット持続時間を拡張することで、第1に、時間同期をサポートする遷移の数が確率的に増加し、P個のシンボル値の取り出しのための同期性能を改善することが可能になる。加えて、復調性能を改善するために、例えば信号が低(C/N0)で受信されたことによる復調されたシンボルの誤りを、NExt個の追加のシンボルを利用して検出することもできる。以下の例を、エラーの検出をもたらす特性を利用する原理を説明するために開示する。P=N+NExt個のオーバーレイシンボルを含む拡張されたサブセットを想定し、それらのP個のシンボルのうちのNerr個が破損し、Nerr≧1であると想定すると、P=N+NExt個のオーバーレイシンボルを含む新たに得られた破損したサブセットは、構造ごとに、P=N+NExt個のオーバーレイシンボルの破損していないサブセットの同じ位置に発生することはできない(すなわち、復調エラーがない)。しかしながら、この拡張されたサブセットは、他の位置のオーバーレイシンボルの破損していないストリームに発生する可能性が依然としてある。ここでは、異なるケースを区別する必要がある:
-第1のケースは、P個のオーバーレイシンボルの対応する破損したサブセットは、オーバーレイシンボルの破損していないストリーム内では全く発生しないと想定する。このケースでは、設計ごとに、破損していないサブセットがSO(N,L)、したがってSO(P,L)特性に従って単回発生するため、受信機は同期のためにこのスナップショットに依存しない。
-第2のケースは、P個のオーバーレイシンボルを含む対応する破損したサブセットが、オーバーレイシンボルの破損していないストリーム内で複数回発生すると想定する。設計ごとに、SO(N,L)、したがってSO(P,L)特性に従って、N個以上(すなわち、P)のシンボルの任意のサブセットが単回発生するため、受信機はまた、同期を提供するために対応するスナップショットを信頼しない。
-最後のケースは、P個のオーバーレイシンボルを含む対応する破損したサブセットが単回発生することを考慮する。受信機はシーケンスが破損しているにもかかわらずシーケンスを破損していないと解釈する可能性があるため、この状況はアンビギュイティをもたらす。
【0101】
特定のオーバーレイ(すなわち、ド・ブラウン)シーケンスが、取り出されたN個のシンボルのサブセットにおける例えば8個のエラーの検出をサポートすることができない、又はサポートすることができる状況を説明するために、2つの例を以下に開示する。
図15は、オーバーレイシーケンスが8つの誤ったシンボル及び取り出されたシンボルの検出を助けることができない状況を示している。最初に、L=16シンボル(N=4の場合)を含むオーバーレイシーケンスが想定される:[1000011001011110]。次に、長さP=8シンボルのより長いスナップショットが受信され、処理される。更に、極端な復調条件、すなわち低い、又は非常に低い(C/N0)条件下では、Nerr=8個のシンボル全てが誤って復調されていると想定する。この状況では、復調されたサブセットは完全な反転する(PLLベースの復調がシンボル極性の取り出しを可能にすると仮定する)。図15は、取り出されたシンボル[11010000]の対応する誤ったサブセットが、オーバーレイシーケンス全体内の別の位置(以下のオーバーレイシーケンスと連結されている)で見出され得ることを示している。この例は、誤ったサブセットの1つの単回発生が、オーバーレイシーケンスの先頭のシンボルに規則に従って設定された暗示的な時間マーカに対する実際のサブセット位置及び真のサブセット位置(8番目のシンボル)と比較して、暗示的な時間マーカに対する誤った位置(14番目のシンボル)をもたらすことから、時間の取り出しにおけるアンビギュイティをもたらす可能性があることを示している。したがって、この特定のオーバーレイシーケンス[1000011001011110]は、8個のエラーを検出しにくい。
図16は、所与の拡張サブセットにおける8個のエラーの検出をサポートすることができる特定のオーバーレイ(すなわち、ド・ブラウン)シーケンスの別の例を示しており、無線受信機における処理論理を図示している。この例では、オーバーレイシーケンスは[0001001101011110]に等しく、ここでもN=4に対応するL=16個のシンボルを含む。更に、長さP=8の拡張されたサブセットが想定され、NExt=4は、オーバーレイシーケンスの先頭から4番目のシンボル位置[00110101]から取り出される。ここでも、Nerr=8個の誤ったシンボルが8個のシンボルの取り出されたサブセット[11001010]内にあると仮定すると、この8個のシンボルの誤ったサブセットは、(連結された)オーバーレイシーケンス内の他の場所では見出され得ないことを示すことができる。したがって、受信機は、時間アンビギュイティを解決するために、誤ったシンボルの対応するサブセットを受け入れないように対処している。
【0102】
前述の3つのケースの区別は、ド・ブラウンシーケンスが復調エラーを検出するために必要な条件は、任意の位置で最大Nerr,max個の誤ったシンボルによって破損しており、P個のシンボルを含み、Nerr,maxは1とPとの間で変化する任意の拡張されたサブセットが、オーバーレイシンボルの破損していないストリーム内で発生しないか、又は発生する場合には複数回発生することであることの理解を可能にする。両方の条件が満たされる場合、それは、対応するド・ブラウンシーケンスの拡張したサブセットが、最大Nerr,max個の誤ったシンボルによって破損している場合、ストリーム内に発生しないか、又は複数回発生することを意味し、これにより、P個のシンボルを含むより長いスナップショットで取得された同期を拒否することを決定することが可能になる。したがって、無線受信機は、復調した拡張されたサブセットを破棄する。次いで、GNSS航法システムの場合のように、異なる衛星によって送信された異なる信号を受信機が同時に受信することができると想定することによって、受信機は、同じ信号スナップショットに含まれる別の衛星によって送信されたP個のシンボルを含むより長いスナップショットの抽出を試みることができる。あるいは、受信機は、NにN* Ext>NExtであるN* Ext個の追加のシンボルを含めることによって、P*>PであるP*個のシンボルを含む信号スナップショット持続時間を更に拡張することができる。あるいは、受信機は、同じ衛星で時間アンビギュイティを解決しようと試みるために、同じ衛星によって送信されたP個のオーバーレイシンボルを含む別のより長いスナップショットを取得することができる。したがって、無線受信機は、最大Nerr,max個の検出能力によって、最小N個のシンボルの代わりにP個のシンボルを復調することができる。ド・ブラウンシーケンスのサブセットの特性と組み合わされたそのような処理論理は、シーケンス内の最大Nerr,max個の復調エラーの時間同期に対するエラー検出能力を提供する。
【0103】
err,max個の検出をサポートするために、ド・ブラウンオーバーレイシーケンスの反復選択プロセスが実行される。第1のステップでは、設計パラメータが定義される。これは、オーバーレイシーケンスLに対応し、したがって、N個のシンボルを含む最小(すなわち、拡張されていない)スナップショット持続時間に対応する。N個のシンボルに隣接する追加のシンボルの数NExtはまた、より長い信号スナップショットに含まれるP=N+NExt個のシンボルを含む拡張されたサブセットを定義するように設定される。最大Next=L-Nは、オーバーレイシーケンスと同じ長さを有する拡張されたサブセットを有する極端な場合と想定される。最後に、P個のシンボルを含む拡張されたサブセットに適用される検出可能なエラーの最大数Nerr,max,testは、値Lに初期化される(スナップショットがオーバーレイシーケンスの長さLと同じ長さPを有し、P個のシンボル全てが誤っている極端な場合)。第2のステップでは、2^(2^(N-1)-N個の候補ド・ブラウンオーバーレイシーケンスを含むプールからの候補バイナリ・ド・ブラウンオーバーレイシーケンスが正常に試験される。各候補ド・ブラウンオーバーレイシーケンスについて、P個のシンボルを含む拡張されたサブセットが選択される(周期性特性も想定する)。したがって、P個のシンボルを含むL個のそのような拡張されたサブセットを、完全なド・ブラウンオーバーレイシーケンスから選択することができる。最大Nerr,max,test個のエラー(1、又は2、又は...、Nerr,max,test個のエラー)が、対応する拡張されたサブセット内で適用され、エラーの適用は、最初のバイナリのド・ブラウンオーバーレイシーケンスの0(それぞれ1)のシンボルを、これらの最大Nerr,max,test個の特定の位置で選択された1(それぞれ0)のシンボルと置き換えて、P個のシンボルを含む誤った拡張されたサブセットをもたらすことからなる。P個の考えられる位置のうち、これらの最大Nerr,max,test個の全ての考えられる位置の組み合わせが順次考慮される。次に、対応する誤った拡張されたサブセットを最初のド・ブラウンオーバーレイシーケンスで一度だけ見出し得ることが示されている場合、候補ド・ブラウンシーケンスは拒否され、そうでなければ、対応する誤った拡張されたサブセットを見出すことができないか、又は見出すことができるが複数回である場合、別の誤った拡張されたサブセットが生成されて、この候補ド・ブラウンオーバーレイシーケンスのプロセスを続行する。このプロセスは、ド・ブラウンオーバーレイシーケンス内の選択された拡張されたサブセットのそれぞれについて、及びド・ブラウンオーバーレイシーケンス内のP個のシンボルを含むL個の考えられる拡張されたサブセット全てについて、P個の考えられる位置のうちの最大Nerr,max,test個の位置全てで繰り返される。この選択プロセスの後に、ド・ブラウンオーバーレイシーケンス内のP個のシンボルを含み、P個のシンボル内の任意の位置で取得された最大Nerr,max,test個のエラーで汚染された任意の拡張されたサブセットが、元のド・ブラウンオーバーレイシーケンス内で単回発生しないことが示される場合、対応するド・ブラウンオーバーレイシーケンスは、最大Nerr,max,test個のエラーの検出をサポートするように選択され、この場合、Nerr,maxはNerr,max,testに等しい。それ以外の場合は、Nerr,max,testは1減分される。このプロセスは、候補ド・ブラウンオーバーレイシーケンスについて、上述の条件を満たすNerr,max,test値が見出されるまで続行され、この場合、Nerr,maxはNerr,max,testに等しい。Nerr,max,testが0に減少する場合(すなわち、拡張されたオーバーレイシーケンスに1つのエラーしか適用されない場合であっても、条件が満たされなかった場合)、プールからの別のド・ブラウンオーバーレイシーケンスが候補として選択される。このプロセスは、長さLの全ての候補ド・ブラウンオーバーレイシーケンスのうちの少なくとも1つの候補ド・ブラウンオーバーレイシーケンスによる条件の正常な完了まで継続する。
【0104】
[参考文献8]:Robinson,Derek J.S.(2003)「An Introduction to Abstract Algebra」、Walter de Gruyter、255~257ページ
エラー検出能力に加えて、特定のド・ブラウンシーケンスをオーバーレイシーケンスとして選択することは、無線受信機が特定の量のエラーを訂正することも可能にするものとする。P個のシンボルの拡張されたサブセットは、特定のセット内の符号語と考えることができる。そのようなセットは、オーバーレイシーケンス内の全ての異なるL個の位置から始まるP個のシンボルの全ての考えられるサブシーケンスで構成される。この仮定により、符号化理論の概念を復調されたシーケンスに適用することが可能である。符号化理論は、無線受信機が復調された符号語における最大Nerr,max個のエラーのセットを検出することができる場合、任意の2つの符号語間の最小ハミング距離は(Nerr,max+1)に等しく、次いで最大
個のエラーを補正することができると規定している[参考文献8]。無線受信機は、エラーを有する処理済みシーケンスに最小距離復号手法を適用することができる。具体的には、無線受信機は、オーバーレイシーケンス全体内のP個のシンボルのL個の考えられるサブシーケンス全てを精査する。次に、このセットの中から、復調されたP個のシンボルの拡張されたサブセットに対して最小のハミング距離を有するP個のシンボルのサブシーケンスを見つける。定義によれば、長さが等しい2つの符号語間のハミング距離は、対応するシンボルが異なる位置の数に等しい。エラー数が
を超えない場合、無線受信機は、復調エラーに関係なく、P個のシンボルの正しいサブシーケンスを選択し、誤ったシンボルを修正し、同期を達成することができる。L個の考えられるシンボルのうちのP個のシンボルの1つのサブシーケンスについてハミング距離が0であるように見える場合、それはエラーがないことを意味し、拡張されたサブセットの位置は、P個のシンボルの拡張されたサブセットとのハミング距離が0であるP個のシンボルのサブシーケンスの位置に対応する。拡張されたサブセット位置に基づいて、スナップショット持続時間がN個のシンボルを含む場合に説明された手順と同じ手順に従って、時間アンビギュイティを解決することが可能である。
【0105】
図17a及び図17bは、P個のシンボルの拡張されたサブセット内の誤って取り出されたシンボルを検出及び訂正するための原理を示す。図17aでは、オーバーレイシーケンス[0000100111101011]が想定されている。この特定のド・ブラウンシーケンスは、P=10個のシンボルの任意の拡張サブセットについて、最大Nerr,max=3個の誤って取り出されたシンボルを検出することができることが示されている。言い換えれば、オーバーレイシーケンス内の任意の位置で取得されたP=10個のシンボルを含み、1、2又は3個の復調エラーで汚染されたスナップショットは、対応する誤ったシンボルの拡張されたサブセットがオーバーレイシーケンス内のいかなる位置にも発生しないので、検出される。このオーバーレイシーケンスに基づいて、オーバーレイシーケンス内の2番目の位置から測定された特定のスナップショットを想定し、このスナップショットは、Nerr=1個の誤ったシンボル:[0101001111]を含む。誤ったシンボルは、このスナップショット内の第2の位置に配置されている(「エラーフリー」スナップショットは[0001001111]である)。次に、図17bは、誤ったサブセットと、オーバーレイシーケンス内で考えられる16個のシンボルのうちの10個のシンボルの任意のサブシーケンスとの間で計算されたハミング距離を提供する表を示す。本開示の例では、ハミング距離は1と10との間で変化する。オーバーレイシーケンス内の拡張されたサブセットの正しい位置は、10個のシンボルを含む拡張されたサブセットを用いて計算された最小のハミング距離、すなわち1を示す、エラーフリーのオーバーレイ(すなわち、ド・ブラウン)シーケンス内のサブシーケンスのインデックスに対応する。このインデックスは2に等しく、これは図17bから効果的に確認される。したがって、対応する拡張されたサブセットを補正し、時間アンビギュイティを解決するための暗示的な時間マーカに対する(補正された)サブセットの相対距離を取り出すことが可能である。本開示のド・ブラウンシーケンスの検出可能なエラーの最大数はNerr,max=3に等しく、したがって最大
個のシンボルを補正できるため、この例が当てはまることが明らかである。
【0106】
エラー検出及び訂正ド・ブラウン処理は、N個のシンボルの代わりにP個のシンボルを含むより長い信号スナップショット持続時間を必要とすることによって、同期を取り出す際のレイテンシに不利益を与えるが、この新しい特徴は同期の信頼性を高める。このような復調エラーの検出及び補正をサポートするために、長さLを有する既存のド・ブラウンシーケンスの大規模プールから選択されたド・ブラウンシーケンスは、定義に従ってSO(N,L)特性を依然として満たし、したがって、復調エラーの検出及び補正なしで、TAI解決をサポートするためにN個のシンボル「のみ」を含む最小信号スナップショットを依然として想定することが可能であることが示されなければならない。エラー検出及び訂正をサポートするためのより長いスナップショット長の使用は、その特定の用途に応じた無線受信機の実装上の選択である。予想される復調エラーを考慮すると、ド・ブラウンシーケンスのそのようなエラー検出処理は、無線受信機と送信されたオーバーレイシーケンスとの同期の信頼性に関する尺度を提供するように寸法決めすることができる。
長さP=N+NExtの拡張されたサブセットの利用に基づく本開示の実施形態は、N個のシンボルを含む第1の(サブセット)部分とNExt個のシンボルを含む第2の(サブセット)部分とが隣接している場合に限定されず、両方の(サブセット)部分が離間しているか、又はQ個のシンボルによって間隔を空けられている場合にも当てはまり得ることに留意されたい。2つの(サブセット)部分に分割された拡張されたサブセットを想定する場合、エラー検出及び訂正を保証するド・ブラウンシーケンスの選択のための同様の方法に従うことができ、その場合、「部分間間隔」Qを有する追加の最適化パラメータがこの最適な選択のために想定される。しかしながら、離間したスナップショットを有することは、エラー検出及び訂正のステップの後に、時間アンビギュイティ解決におけるレイテンシに不利益を与えることになり、また、拡張されたサブセットの両方の(サブセット)部分にわたる完全な期間をカバーする更により拡張されたスナップショットに対応するより長い持続時間の間、無線受信機を強制的にアクティブにすることにも留意されたい。
元のド・ブラウンシーケンスから導出された切り詰められたド・ブラウンシーケンスを無線信号の搬送波上に変調することによって、暗示的な時間マーカに対する信号スナップショットの誤って推定された位置に起因する時間アンビギュイティ解決におけるエラー率を低減するための更なる実施形態を以下に開示する。この原理を説明するために、図18aの上部は、長さL=27=128シンボルの元のド・ブラウンシーケンスのN=7の第1のシンボルで形成された第1のサブセット(121個の「0」でパディングされたサブセット)を含むスナップショットシーケンスと、元のド・ブラウンシーケンス内のN=7のシンボルの任意の第2のサブセット(第2のサブセットも0パディングされている)との間で取得された部分自己相関値を表す。この第2のサブセットの第1のシンボルは、元のド・ブラウンシーケンスのインデックス1で開始し、インデックス128で終了し、128個の考えられる第2のサブセット、したがって部分自己相関値をもたらす。ノイズフリー部分自己相関と呼ぶことができる128個の考えられる部分自己相関値の全体は、-7と7との間で変化する。スナップショットシーケンスがインデックス1及び0で始まる7個のシンボルを含む第2のサブセットと関連付けられると、値7となる。図18aの下部は、対応するノイズフリー部分自己相関値の分布を表す。この分布は、正及び負のノイズフリー部分自己相関値に対して対称であることが観察され得る。更に、部分自己相関値の対応する分布は、ド・ブラウン生成の固有の特性として、所与の長さLの元のド・ブラウンシーケンスについて同じであることが示されている。オフセットの関数としてのノイズフリー部分自己相関値の発生は、元のド・ブラウンシーケンスごとに異なるが、それらの分布は同じである。2番目に大きいノイズフリー部分自己相関ピーク値5は、128個の部分相関値にわたって約5%であることが更に観察され得る。2番目に大きいノイズフリー部分自己相関値は、第1のサイドピークノイズフリー部分自己相関値と呼ばれる。
【0107】
ここで、前述のソフト復号方法を使用して、暗示的な時間マーカに対するスナップショットの位置を取り出すこと、すなわち、ドップラーオフセットの除去及びノイズへの埋め込み後のスナップショット信号が、元のオーバーレイ ド・ブラウンシーケンス全体と相関される前に最初に0パディングされることを想定する。受信信号を大きなノイズレベルに埋め込む、すなわち、信号処理を低い(C/N0)で実行すると、ノイズフリー部分自己相関が5である信号スナップショットで取得されたノイズの多い部分自己相関が、ノイズフリー自己相関が7である信号スナップショットで取得されたノイズの多い自己相関を超えることが起こり得る。この場合、暗示的な時間マーカ信号に対するスナップショットの実際の位置に関する誤解を招く情報のために、時間アンビギュイティの解決が不正確となる。そのような状況を回避するために、1つの解決策として、大きいノイズフリー部分自己相関値(本開示の例では5及び-5)の数が減少するように、U個のシンボルを除去することによって元のオーバーレイシーケンスを切り詰める。一例が図18bの上部に示されており、U=8個のシンボルの切り詰めを適用した後、120個のシンボルを含む切り詰められたド・ブラウンシーケンスの場合に得られた120個の異なるノイズフリー部分自己相関値を示している。この例では、切り詰めは、元のド・ブラウンシーケンスの最後の8個のシンボルを除去することによって得られる。その場合、+5の値(すなわち、第1のサイドピークノイズフリー部分自己相関値)を有するノイズフリー部分自己相関の発生は、切り詰めなしで5%から4%に減少することが図18bの下部に示されている。そのような切り詰められたド・ブラウンシーケンスをオーバーレイシーケンスとして使用することにより、ノイズの存在下でスナップショット信号の誤解を招く位置又はアンビギュイティ位置の数を減らすことができる。ド・ブラウンシーケンスを更に切り詰めることによって、サイドピーク値の数を減らすことが可能であり、これにより、時間解決性能のノイズロバスト性を改善できることが示されている。この方法の欠点は、オーバーレイシーケンスの有効長が短くなり、時間アンビギュイティ間隔に影響を及ぼすことである。本開示の例では、元のド・ブラウンシーケンスの最後のU=8個のシンボルが切り詰められて、オーバーレイシーケンスとして使用される切り詰められたド・ブラウンシーケンスが導出されている。しかしながら、元のド・ブラウンシーケンス内の任意の場所でU個の連続したシンボルを切り詰めて、切り詰められたド・ブラウンシーケンスを生成することが可能である。更に、Uは、0(すなわち、切り詰めなし)と(L-N)(N個のシンボルを含むスナップショットの意味のある最大切り詰め値)との間で変化し得る。
【0108】
本発明の更なる代替的かつ有利な実施形態では、図19に示されるように、全地球航法衛星システムの衛星などの異なる送信機によって異なるシーケンスが送信される。異なる「ド・ブラウン」シーケンスの組み合わせ処理にも基づくこの代替方式は、レイテンシなどの時間アンビギュイティ解決性能を改善するために提案され、前述の実施形態と同様の要素を使用する。この前述の実施形態では、(場合によっては異なる長さを有し、異なる信号成分で変調された)同じオーバーレイシーケンスが、GNSSの異なる衛星のそれぞれによって送信された。コンステレーションのクラスタリングから得られた異なる衛星又は衛星のグループに対して異なるシーケンスを送信することによって得ることができる利点を想定することを以下に開示する。
【0109】
図19aは、ユーザデバイスに対する2つの極限衛星位置を表す。1つ目は、衛星が水平線(仰角0°)にある場合に該当し、2つ目は、衛星が正確にユーザデバイスの天頂(仰角90°)にある場合に該当する。同じ図には、地球の半径Rearth(=6378.137km)及び衛星の半長軸(Semi-Major Axis、SMA)Dも示されている。水平衛星までの距離は、dhor=(D2-R2 earth)^(1/2)で表されることが示され得る。26559.70kmのSMAを有するGPSコンステレーションの場合、dhor=25782.49km、すなわち85.9msである。29601.3kmのSMAを有するGALILEOコンステレーションの場合、dhor=28905.99km、すなわち96.3msである。同様に、天頂衛星までの距離は、dZen=(D-Rearth)によって表されることが示され得る。26559.70kmのSMAを有するGPSコンステレーションの場合、dZen=20181.56km、すなわち67.2msである。29601.3kmのSMAを有するGALILEOコンステレーションの場合、dZen=23223.16km、すなわち77.4msである。この図19aから、2つの衛星によって送信されたオーバーレイシーケンスエッジ間の差は、約20ms(GPSは85.9ms-67.2ms、Galileoは96.3ms-77.4ms)である。
【0110】
図19bでは、コンステレーションが2つの衛星グループに分割される場合が想定されている。実線で記号化された長さL1=32シンボルのシーケンスを送信する衛星(図13a及び図13bの規則をここでも使用する)、並びに破線で記号化された長さL2=31シンボルのシーケンスを送信する衛星(図13a及び図13bの規則をここでも使用する)。衛星の割り当ては、第1及び第2のグループの衛星によって送信されたオーバーレイシーケンスの比較的均一な受信を保証するために行われる。そのような再分割は、例えば、コンステレーションの各軌道面内に、各グループに属する衛星を1つおきに交互に配置することによって達成することができる。ここで、理解を容易にするために、図19a及び図19bの例示で使用されるシーケンスの特性を再度適用する。次に、共通オーバーレイシンボル持続時間を両方のシーケンスに適用し、伝搬時間の最大差20msよりも大きいと仮定する。次いで、伝搬の差を説明するために、N(例ではN=5)のスナップショットに加えてオーバーレイシーケンスの追加部分を想定すると、第1のシーケンスからのN個のシンボル及び第2のシーケンスからのN個のシンボルを測定することが可能である。次いで、同じ原理を前述の方式で示されたものに適用して、拡張されたTAIを導出することが可能である。伝搬の最大差に対するシンボル持続時間に関する追加の条件が当てはまると仮定すると、異なるド・ブラウンシーケンスが異なる衛星によって送信される場合には、パラメータ(L、スナップショット時間、...)の設計のための数学的導出を、この代替的な実施形態でも適用することができる。主な違いは、オーバーレイシーケンスのエッジが、異なる衛星位置から送信されるために、同期して受信されないという点である。
【0111】
対応する代替的な方式は、異なるオーバーレイシーケンスが同じ衛星によって送信される場合に適用される前述の方式で示した変形と同様に、異なるシーケンス長、切り詰められたシンボルの数、又はシンボル持続時間を考慮することによって、ここでも拡張することができる。また、コンステレーションを、それぞれ異なるシーケンス長が割り当てられた3つ以上のサブグループに分割することができる。方式の更なる拡張も開示され得る。この新しい方式では、2つのオーバーレイシーケンスがコンステレーションによって送信される。一方は、コンステレーション衛星の第1の半数によって送信され、数十ミリ秒(50ms≦TS1≦100ms)程度の短いオーバーレイシンボル持続時間TS1を使用し、他方は、コンステレーション衛星の第2の半数によって送信され、数百ミリ秒(100ms≦TS2≦1000ms)程度のより長いシンボル持続時間TS2を使用する。これらの通信機能付きのデバイスでは、本発明の一般的な用途で既に説明したように、同期誤差の推定を確実にするために短いスナップショットが必要であるだけである。通信機能のないデバイスの場合、時間アンビギュイティ解決を拡張し、両方のタイプのオーバーレイシーケンスを処理及び結合することによって絶対時間を提供するために、より長い持続時間(例えば1~2秒)のスナップショットが必要になる。
【0112】
前述の実施形態の更なるデクリネーションは、同じ長さの異なるオーバーレイシーケンスが異なる衛星によって送信される場合を想定する。この方式の利点は、時間アンビギュイティ間隔の改善ではなく、信号スナップショットに含まれるシンボルの取り出し性能の改善により、時間アンビギュイティ解決のレイテンシを改善する点である。同じ衛星が同じ長さの2つ以上のオーバーレイシーケンスを送信する前述の方式で示されたものと同じ原理がここでも適用可能である。それにもかかわらず、任意の2つの衛星間の伝搬時間の最大差に基づくシンボル持続時間に関する追加の制約がここで考慮される必要がある。
信号の相対位相遷移にアクセスすることはできるが絶対位相にアクセスすることができないタイプの受信機の場合に、ド・ブラウンなどのオーバーレイシーケンスの復調を容易にするための更なる代替的な方式を以下に開示する。上記の説明では、「ド・ブラウン」シーケンスは、GNSS信号の位相で変調される。これについてより詳細に説明する。
【0113】
受信機がL個のシンボル内の任意のサブシーケンスNを一義的に決定するためには、その信号の絶対位相を知る必要がある。受信機がこの180°位相のアンビギュイティを解決する(すなわち、0又は1として解釈されるものの間の差を決定する)ことができない場合、全てのサブシーケンスNは、N*と呼ばれるその反転された典型として解釈されてもよい。任意の「ド・ブラウン」シーケンスでは、長さLの反転されたサブシーケンスN*も存在するが、サブシーケンスNのうちの1つとオーバーレイシーケンス内の異なる位置に存在する。位相変調されたGNSS信号から単一シンボルのバイナリ状態を一義的に復調するためには、受信機は位相を分解しなければならない(すなわち、位相ロックループ(PLL)で信号を追跡しなければならない)。しかしながら、PLL処理は、スナップショット及び低消費電力デバイスと互換性がないいくつかの実装上の制約(閉ループ処理など)、及び性能上の不利益(シンボルの取り出しのための取得と追跡との間のプルイン遷移による追加の遅延など)を課す。
【0114】
代替的なGNSS信号処理、追跡、周波数ロックループ(FLL)などの技術は、前述の低電力/スナップショット受信機端末をサポートしやすいことが確認されている。実際、FLLは、より単純な実装を有し、より低感度の追跡を提供し、プルイン中にPLLほど大きな遅延を示さないことが知られている。その主な理由は、典型的なGNSS信号処理フローでは、FLL処理は、残りの位相アンビギュイティを解決するビット同期及びPLLループクロージャを保証するために、残留周波数を解決するだけの取得ステップの直後に開始され、その後、搬送波追跡及び一義的なデータ復調のためのPLL追跡が続くためである。更に、FLLはPLLよりも厳しい環境(例えば、より高いノイズレベル及び干渉レベル)でも動作可能である。主な欠点として、FLLは、相対的な位相変化を特定する(すなわち、信号位相が-1から+1及び+1から1の2つのバイナリシンボルの間で変化したことを検出する)のを助けることしかできない。
【0115】
要約すると、PLL信号追跡モードはFLLよりもロバスト性が低く、初期ループクロージャの前にプルイン位相を必要とし、これは数十~数百ミリ秒程度の典型的な遅延を生成する可能性があり、その結果、スナップショット受信機処理に適用できない可能性がある。
したがって、「ド・ブラウン」シーケンスをオーバーレイシンボル上で活用して、「PLL追跡受信機」のためのGNSSシステム時間を取り出す能力をサポートすることだけでなく、「スナップショット」又はFLLベースの受信機動作のためのGNSSシステム時間を取り出す能力をサポートする位相遷移も対象となる。ここで、相対的な位相変化は、一意性を有するシーケンスによって符号化される。以下では、用語「遷移シーケンス」は、位相遷移(すなわち、遷移[1]又は遷移なし[0])において変調されたド・ブラウンシーケンスを指す。「統合シーケンス」という用語は、バイナリ積分の演算後に、「遷移シーケンス」につながるオーバーレイシンボルシーケンスを指す。当業者は、「遷移シーケンス」の1つの位相遷移を符号化するために、「統合シーケンス」の2つのオーバーレイシンボルが必要であることを理解するであろう。統合シーケンスの2つの連続した同一のバイナリシンボル[0,0]又は[1,1]は、「遷移シーケンス」の[0]バイナリ状態をもたらし(すなわち、遷移なし)、「統合シーケンス」の2つの連続した異なるバイナリシンボル[0,1]又は[0,1]は、「遷移シーケンス」の[1]バイナリ状態をもたらす(すなわち、2つの連続したオーバーレイシンボルの変化が位相遷移に等しい)。[0](又は[1])を符号化するための[0,0]と[1,1](又は[0,1]と[1,0]との間)との間の冗長性は、上述したようにオーバーレイシンボル(すなわち、180度の位相アンビギュイティ)間の逆位相関係に由来する。「統合シーケンス」は、その後、GNSS信号上に位相変調されるオーバーレイシーケンスとして機能する。結果として、ド・ブラウン「遷移シーケンス」の「統合シーケンス」は、SO(N,L)によるシーケンスの変調を可能にするために、それ自体がSO(N+1,L)特性を継承しなければならない。更に、2つの「統合シーケンス」が逆位相関係で存在し、両方が独立して同じド・ブラウン「遷移シーケンス」を生成することができることに留意されたい。
【0116】
ド・ブラウン「遷移シーケンス」を受信する場合は、N個の位相状態(すなわち、遷移又は遷移なし)を復調するためにN´=N+1個のシンボルの増加した観測期間が必要である。しかしながら、N個の位相状態を復号するためにN+1個のシンボル観測期間を使用する場合であっても、遷移が発生せず(同じバイナリ状態を有するN+1個の連続したオーバーレイシンボル)、結果として位相変化が発生しない(N個の0)ケースも存在する。しかしながら、この特定のケースでは、基準点が同期誤差を解決することが阻止され(「ビット同期」に利用可能な遷移がない)、この状況を回避するために設計緩和策を見出す必要がある。第1の最も簡単な緩和策は、観測期間をN+2シンボルに増加させることであるが、これは必要な最小観測期間(N+2)及びTAI利得(L/N比)に不利益をもたらす。この不利益は、より短いシーケンスにとって特に明白かつ重要である。代替的な緩和策は、元のド・ブラウンシーケンスから「N個の0(又は全て0)」の特別なサブシーケンスを除去して、「切り詰められた遷移シーケンス」をもたらすことからなる。SO特性を維持するために、図20で導入されたメカニズムを適用し、ド・ブラウン「元のシーケンス」に基づいて「切り詰められた遷移シーケンス」を生成する必要がある。
【0117】
[参考文献9]:「Combinatorial generation」、Ruskey Frank,University of Victoria,Victoria,BC,Canada.2003年10月1日
図20は、「元のシーケンス」に基づいてSO(N+1,L)特性を満たす「統合シーケンス」を生成するために使用される方法を記載する。ここで、四角い枠はシーケンスに対応し、ダイヤモンド形の枠はプロセスに対応する。
シーケンスの最初/最後に全て0/1の状態を有する「元のシーケンス」(図20(a))は、[参考文献9]に記載されているアルゴリズムを用いて生成することができる。このアルゴリズムは、以下の特徴を保証することができる:
1)N個の0(全て0)は、一方の側ではN個の1(全て1)によって囲まれ、他方の側では接合部1から始まりN-2個の0が続くシーケンスである。
2)N-1個の0及びN-1個の1を有するサブシーケンスは存在しない
[参考文献9]のアルゴリズムは、当然ながら、全て0の状態での「ド・ブラウン」グラフ初期化に基づいてこれらの特徴を継承する。しかしながら、[参考文献6]で紹介されているように、同じシーケンスは、一般に、各N(L=2^N)について2^(2^(N-1)-N)個の既存の「ド・ブラウン」シーケンスのうちの1つとして見出すことができる。
これらの特徴は、SO特性を有する切り詰められたシーケンスが生成され得ることを確実にする(図20(b)):N個全てのゼロを除去した後、長さ(2^N)-Nの切り詰められたシーケンスが存在する。この切り詰められたシーケンスでは、N個全てが1のサブシーケンスの接合部は、特徴(a)に従って必然的に別のサブシーケンスの接合部になる。切り詰められたシーケンスでは、これは、N+1個の1が互いの後に続くので、その段階でSO特性の唯一の違反をもたらす。このケースは、既にパージされたN個のゼロのシーケンスの左側又は右側に位置する単一の1をこのサブシーケンスからパージすることによって補正することができ、元のサブシーケンスのSO特性は特徴(b)によって保証されるように有効なままである。切り詰められたシーケンスを導出するために元のシーケンスからN+1個のシンボルを切り詰めるこの第1のステップの後に、切り詰められた遷移シーケンスを導出するためにこの切り詰められたシーケンスからK個の更なるシンボルを切り詰める第2のステップを適用することが可能である。K個のシンボルのこの第2の切り詰めステップは任意選択であることに留意されたい。長さL´=L-N-1-K及びSO(N,L´)特性を有する「切り詰められた遷移シーケンス」が得られる。したがって、FLLベースの受信機は、Nプラス1個のシンボルを観測することによって、L´個のシンボルの間隔内の時間アンビギュイティを解決することができる。
【0118】
[参考文献9]に従って、上記で概説した特徴を有する「元のシーケンス」は、常に2^(N-1)個の1を有する。本発明の切り詰め手順を適用することにより、また切り詰められたシンボルの追加の数Kによって、「切り詰められた遷移シーケンス」の残りの遷移回数を常に奇数とすることができる。次いで、対応する個々の「切り詰められた遷移シーケンス」が連結されて統合され、その結果、連続する個々の「統合シーケンス」がGNSS信号に位相変調される。奇数回の遷移は、オーバーレイ「統合シーケンス」を1つおきに逆位相化させる(図20(c))。したがって、L´個のシンボルを有する1つおきの個々の「統合シーケンス」は、先行するシーケンスに対して180度位相シフトされ、2×L´個のシンボルからなる固有の連結された「オーバーレイシンボルシーケンス」を形成する。これにより、2×L´個のオーバーレイシンボルを使用して、巡回的かつ無限に長いL´個のシンボルの「切り詰められた遷移シーケンス」を符号化することができる(図20(d))。「統合シーケンス」の2つの表現(すなわち、正及び負の位相化)の各々はSO(N+1,L´)特性を有し、正の「統合シーケンス」のN+1個のシンボルの全てのサブシーケンスは、負の「統合シーケンス」のN+1個のシンボルの対応するサブシーケンスで反転値を反映し、結果として生じる連結された「オーバーレイシンボルシーケンス」(L´個の正の「統合シーケンス」シンボル及びL´個の負の「統合シーケンス」シンボルによって形成される)は一意であり、特性SO(N+1,2×L´)を満たす。したがって、位相アンビギュイティ(すなわち、PLLを用いて)を解決することができる受信機は、2xL´長の「オーバーレイシンボルシーケンス」(図20(e))内の任意のN+1個のシンボルサブシーケンスを特定することによって、FLL演算に対してTAIを2倍にすることができる。
【0119】
元のド・ブラウンシーケンスに基づいて切り詰められた遷移シーケンスを導出するために使用される上述の手順は、[参考文献9]に示されたアルゴリズムに従って生成された元のド・ブラウンシーケンスの特定のカテゴリに基づいており、特性(a)及び(b)を満たす。より具体的には、それらは、N個の「0」の後に続くか、又はN個の「1」が続くサブセットを示す。しかしながら、N個の「0」及びN個の「1」のサブセットが隣接していない他の元のド・ブラウンシーケンスに同様の手順を適用することが可能である。その場合、手順は、長さL-N-1の切り捨てられたシーケンスを取得するために、元のシーケンスからN個の「0」のサブセットをパージし、N個の「0」のこのサブセットの片側に単一の「1」をパージすることからなる。更に、任意選択で、K個の追加のシンボルを切り詰めて切り詰められた遷移シーケンスを生成することが可能である。
ソフトウェア方法として本明細書で説明されるステップのいくつかは、例えば、様々な方法ステップを実行するためにプロセッサと協働する回路として、ハードウェア内に実装されてもよいと考えられる。本発明の一部は、コンピュータ命令が、コンピュータによって処理されると、本発明の方法及び/又は技法が実施されるか、そうでなければ提供されるようにコンピュータの動作を適合させるコンピュータプログラム製品として実装されてもよい。本発明の方法を実施するための命令は、固定された、又は取り外し可能な媒体に格納され、放送又は他の信号伝達媒体内のデータストリームを介して送信され、及び/あるいは命令に従って動作するコンピューティングデバイス内のワーキングメモリ内に格納され得る。
【0120】
本発明の教示を組み込んだ様々な実施形態を本明細書で詳細に示し説明したが、当業者は、これらの教示を依然として組み込んだ多くの他の様々な実施形態を容易に考案することができる。
最後に、本発明の実施形態が機能ブロックに関して上述されていることに留意されたい。上記で与えられたこれらのブロックの機能的説明から、電子デバイスを設計する当業者にとって、これらのブロックの実施形態を周知の電子部品を用いて製造することができる方法は明らかであろう。したがって、機能ブロックの内容の詳細なアーキテクチャは示されていない。
本発明の原理は、特定の装置に関連して上述されているが、この説明は、添付の特許請求の範囲に定義されるように、本発明の範囲に対する限定としてではなく、例としてのみ行われていることが明確に理解されるべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13a-13b】
図14
図15
図16
図17a-17b】
図18a-18b】
図19a-19b】
図20
【手続補正書】
【提出日】2023-09-28
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線航法衛星システムにおいて、第1の時間スケールを有する前記無線航法衛星システムの複数の送信機のうちの無線送信機(TX1)と、第2の時間スケールを有する前記無線航法衛星システムの複数の無線受信機のうちの無線受信機(RX1)との間の時間アンビギュイティを解決するための方法であって、前記無線送信機(TX1)は前記無線受信機(RX1)に結合され、前記無線送信機は前記無線受信機(RX1)に無線信号を送信する、方法において、前記方法は、
前記無線送信機(TX1)によって、時間アンビギュイティ間隔ごとにシンボルのセットを含むオーバーレイシーケンスを生成するステップであって、前記シンボルのセットは所定の長さLを有し、前記オーバーレイシーケンスは、前記時間アンビギュイティ間隔の前記シンボルのセット内におけるシンボルのサブセットの単回発生の条件を満たし、前記時間アンビギュイティ間隔のそれぞれが暗示的な時間マーカを含む、生成するステップと、
前記無線送信機(TX1)によって、前記無線受信機(RX1)に前記無線信号を送信するステップであって、前記無線信号は、前記無線信号の搬送波上に変調された一次符号で変調された前記オーバーレイシーケンスを含む、送信するステップと、
前記無線受信機(RX1)によって前記無線信号を受信するステップと、
前記無線受信機(RX1)によって前記無線信号のスナップショットをキャプチャするステップであって、前記スナップショットは、前記オーバーレイシーケンスのN個のシンボルを含むシンボルのサブセットを含み、比L/Nを可能な限り大きくする、キャプチャするステップと、
前記無線受信機(RX1)によって前記スナップショットを処理して、前記時間アンビギュイティ間隔の前記シンボルのセット内の前記スナップショットに含まれる前記シンボルのサブセットの位置に基づいて前記無線信号の前記暗示的な時間マーカの相対位置を特定するステップと、
前記第1の時間スケールと前記第2の時間スケールとの間の前記時間アンビギュイティを、前記第1の時間スケールで表現された、前記スナップショットの前記処理に基づく前記暗示的な時間マーカと、前記第2の時間スケールに基づいて生成された前記オーバーレイシーケンス内の前記暗示的な時間マーカとの間の遅延を評価することによって解決するステップであって、前記オーバーレイシーケンスは、M進ド・ブラウンシーケンスに基づくM進シーケンスからなる、解決するステップと、
を含むことを特徴とする、方法。
【請求項2】
無線送信機(TX1)であって、無線航法衛星システムにおける、第1の時間スケールを有する前記無線航法衛星システムの前記無線送信機(TX1)と第2の時間スケールを有する前記無線航法衛星システムの無線受信機(RX1)との間の時間アンビギュイティを解決するように構成され、前記無線送信機(TX1)は、無線信号を前記無線受信機(RX1)に送信するように構成されている、無線送信機(TX1)において、前記無線送信機(TX1)は、
時間アンビギュイティ間隔ごとにシンボルのセットを含むオーバーレイシーケンスを生成するように構成されたシーケンス生成手段(11)であって、前記シンボルのセットは所定の長さLを有し、前記オーバーレイシーケンスは、前記時間アンビギュイティ間隔の前記シンボルのセット内におけるシンボルのサブセットの単回発生の条件を満たし、前記時間アンビギュイティ間隔のそれぞれが暗示的な時間マーカを含む、シーケンス生成手段(11)と、
無線信号を前記無線受信機(RX1)に送信するように構成された送信手段(12)であって、前記無線信号は、前記無線信号の搬送波上に変調された一次符号で変調された前記オーバーレイシーケンスを含み、前記オーバーレイシーケンスは、時間アンビギュイティ間隔ごとにシンボルのセットを含み、前記シンボルのセットは所定の長さLを有し、前記時間アンビギュイティ間隔のそれぞれが暗示的な時間マーカを含み、前記オーバーレイシーケンスは、M進ド・ブラウンシーケンスに基づくM進シーケンスからなる、送信手段(12)と、
を備えることを特徴とする、無線送信機(TX1)。
【請求項3】
前記シーケンス生成手段(11)は、互いに異なる複数のオーバーレイシーケンスを生成するように更に構成されている、請求項2に記載の無線送信機(TX1)。
【請求項4】
無線受信機(RX1)であって、無線航法衛星システムにおける、第1の時間スケールを有する前記無線航法衛星システムの無線送信機(TX1)と第2の時間スケールを有する前記無線航法衛星システムの前記無線受信機との間の時間アンビギュイティを解決するように構成され、前記無線送信機(TX1)は、前記無線受信機(RX1)に無線信号を送信するように構成され、前記無線信号は、前記無線信号の搬送波上に変調された一次符号で変調され、所定の長さ(L)を有するシンボルのサブセットの単回発生の条件を満たすオーバーレイシーケンスを含み、前記オーバーレイシーケンスは、時間アンビギュイティ間隔ごとにシンボルのセットを含み、前記時間アンビギュイティ間隔のそれぞれが暗示的な時間マーカを含み、前記無線受信機(RX1)は、
前記無線信号を受信するように構成された受信手段(21)と、
前記無線信号のスナップショットを取得するように構成されたスナップショットキャプチャ手段(22)であって、前記スナップショットは、前記オーバーレイシーケンスのシンボルのサブセットを含む、スナップショットキャプチャ手段と、
を更に備える、無線受信機(RX1)において、前記無線受信機(RX1)は、
前記スナップショットに含まれる前記オーバーレイシーケンスのN個のシンボルを含む前記シンボルのサブセットの位置に基づいて、前記無線信号の前記暗示的な時間マーカの相対位置を特定し、比L/Nを可能な限り大きくするように構成された処理手段(23)を更に備え、
前記処理手段(23)は、前記第1の時間スケールと前記第2の時間スケールとの間の前記時間アンビギュイティを、前記第1の時間スケールで表現された、前記スナップショットの処理に基づく前記暗示的な時間マーカと、前記第2の時間スケールに基づいて生成された前記オーバーレイシーケンス内の前記暗示的な時間マーカとの間の遅延を評価することによって解決するように更に構成されている、
ことを特徴とする、無線受信機(RX1)。
【請求項5】
前記スナップショットに含まれる前記シンボルのサブセットは、前記オーバーレイシーケンスのシンボルの追加のサブセットで拡張され、前記追加のサブセットは、NExt個のシンボルの長さを有し、前記拡張されたシンボルのサブセットは、P=N+NExt個のシンボルを含み、
前記処理手段(23)は、前記スナップショットに含まれる前記拡張されたシンボルのサブセットと、P=N+NExt個のシンボルの長さを有する前記オーバーレイシーケンスの各サブシーケンスとの間のハミング距離を計算するように更に構成されており、
前記処理手段(23)は、前記スナップショットに含まれる前記拡張されたシンボルのサブセットと、P=N+NExt個のシンボルを含む前記オーバーレイシーケンスの各サブシーケンスとの間で計算された全てのハミング距離にわたる最小値が非0であるか、又は0であり、複数回発生する場合、前記拡張されたシンボルのサブセットにおけるエラーを検出するように更に構成されており、
前記処理手段(23)は、前記スナップショットに含まれる前記拡張されたシンボルのサブセットと、P=N+NExt個のシンボルを含む前記オーバーレイシーケンスの各サブシーケンスとの間で計算された全てのハミング距離にわたる前記最小値が0であり、単回発生する場合、前記スナップショットに含まれる前記拡張されたシンボルのサブセットに基づいて前記無線信号の前記暗示的な時間マーカの相対位置を特定するように更に構成されている、
ことを特徴とする、請求項4に記載の無線受信機(RX1)。
【請求項6】
前記処理手段(23)は、前記スナップショットに含まれる前記拡張されたシンボルのサブセットとP=N+NExt個のシンボルを含む前記オーバーレイシーケンスの各サブシーケンスとの間で計算された全てのハミング距離にわたる前記最小値が、前記選択されたオーバーレイシーケンスに応じて、更なる所定の最小値
を超えない場合、最小ハミング距離をもたらすP=N+NExt個のシンボルを含む前記オーバーレイシーケンスの前記サブシーケンスを選択し、P=N+NExt個のシンボルを含む前記オーバーレイシーケンスの前記サブシーケンスと前記スナップショットに含まれる前記拡張されたシンボルのサブセットとの間で異なる最大
個のシンボルを補正することによって、エラーを補正するように更に構成されている、
ことを特徴とする、請求項5に記載の無線受信機(RX1)。
【請求項7】
前記受信手段(21)は、第1の無線送信機から第1の無線信号を、及び第2の無線送信機から少なくとも第2の無線信号を受信するように更に構成されており、前記第1の無線信号及び少なくとも前記第2の無線信号はオーバーレイシーケンスを含み、前記第1のオーバーレイシーケンスと前記少なくとも前記第2のオーバーレイシーケンスとは異なり、
前記受信手段は、前記第1の無線信号の前記オーバーレイシーケンスと少なくとも前記第2の無線信号の前記オーバーレイシーケンスとを結合させて集約されたオーバーレイシーケンスとするように更に構成されており、
前記スナップショットキャプチャ手段(22)は、前記第1の無線信号と少なくとも前記第2の無線信号との前記集約されたオーバーレイシーケンスのスナップショットを取得するように構成され、前記スナップショットは、前記集約されたオーバーレイシーケンスのシンボルのサブセットを含む、
ことを特徴とする、無線受信機(RX1)において、
前記無線受信機(RX1)は、N個のシンボルを含む前記スナップショットに含まれる前記集約されたオーバーレイシーケンスの前記シンボルのサブセットの位置に基づいて、前記無線信号の前記暗示的な時間マーカの相対位置を特定するように構成された処理手段(23)を更に備え、
前記処理手段(23)は、前記第1の時間スケールと前記第2の時間スケールとの間の前記時間アンビギュイティを、前記第1の時間スケールで表現された、前記スナップショットの前記処理に基づく前記暗示的な時間マーカと、前記第2の時間スケールに基づいて生成された前記集約されたオーバーレイシーケンス内の前記暗示的な時間マーカとの間の前記遅延を評価することによって解決するように更に構成されている、
ことを特徴とする、請求項4、5又は6のいずれか一項に記載の無線受信機(RX1)。
【請求項8】
前記シーケンス生成手段(11)は、
切り詰められた遷移シーケンスを、L個のシンボルの長さを有する元のド・ブラウンシーケンスからなる元のシーケンスに基づいて、最初に「0」を含むN個のシンボルを前記元のシーケンスから除去し、続いて「1」を含む単一のシンボルを前記元のシーケンスから除去することによって、切り詰められたシーケンスをもたらし、任意選択で、前記切り詰められたシーケンスから追加のK個のシンボルを除去して、長さL-N-1-Kの切り詰められた遷移シーケンスをもたらすことによって生成し、
前記切り詰められた遷移シーケンスの位相遷移を示す第1の統合シーケンス及び、反転された切り詰められた遷移シーケンスの位相を示す第2の統合シーケンスであって、前記第1の統合シーケンスは前記第2の統合シーケンスの逆位相にある、第1の統合シーケンス及び第2の統合シーケンスを生成し、
前記第1の統合シーケンスと前記第2の統合シーケンスとを連結することによって、連結された統合シーケンスを生成する、
ように更に構成され、
前記連結された統合シーケンスは、前記無線信号の搬送波上に変調された一次符号で変調されるように構成されている、
ことを特徴とする、請求項2又は3に記載の無線送信機(TX)。
【請求項9】
前記スナップショットキャプチャ手段(22)は、無線信号のスナップショットをキャプチャするように構成され、前記スナップショットは、請求項8に記載の無線送信機(Tx)によって生成された連結された統合シーケンスからなる前記オーバーレイシーケンスのシンボルのサブセットを含み、前記スナップショットは、N+1個のシンボルを含み、
前記処理手段(23)は、
前記スナップショットに含まれる前記オーバーレイシーケンスの前記シンボルのサブセットからのN個の遷移を求め、
前記スナップショットに含まれる前記シンボルのサブセットからの前記N個の遷移に基づいて、前記無線信号の前記暗示的な時間マーカに対する前記スナップショットに含まれる前記シンボルのサブセットの位置を特定する、
ように更に構成されている、
ことを特徴とする、請求項4、5又は6のいずれか一項に記載の無線受信機(RX1)。
【請求項10】
前記処理手段(23)は、リポジトリ(25)のエントリ内の前記スナップショットに含まれる前記シンボルのサブセットを検索することによって、前記時間アンビギュイティ間隔の前記シンボルのセット内の前記スナップショットに含まれる前記シンボルのサブセットの位置に基づいて前記無線信号の前記暗示的な時間マーカの前記相対位置を特定するように更に構成され、前記リポジトリ(25)は、エントリごとに、前記スナップショットの複数のシンボルと、前記無線信号の前記時間アンビギュイティ間隔内の前記時間マーカに対する前記スナップショットの前記複数のシンボルの相対位置とを含むことを特徴とする、請求項4~7又は9のいずれか一項に記載の無線受信機(RX1)。
【請求項11】
前記無線受信機(RX1)は、前記取り出されたシンボルに基づいて、前記送信機(TX1)によって送信された前記無線信号上に変調された前記オーバーレイシーケンスの前記スナップショットに対応するスナップショットシーケンスを生成するように構成されたスナップショットシーケンス生成手段(24)を更に備え、
前記処理手段(23)は、前記スナップショットシーケンスを前記スナップショットシーケンスに対応するオーバーレイシーケンスと部分自己相関させることによって、前記無線信号内の前記時間マーカの前記相対位置を特定するように構成されている、
ことを特徴とする、請求項4~7又は9のいずれか一項に記載の無線受信機(RX1)。
【請求項12】
前記無線受信機(RX1)は、前記スナップショット信号から導出されたサンプルに基づいて、前記送信機(TX1)によって送信された前記無線信号上に変調された前記オーバーレイシーケンスの前記スナップショットに対応するスナップショットシーケンスを生成するように構成されたスナップショットシーケンス生成手段(24)を更に備え、
前記処理手段(23)は、前記スナップショットシーケンスを前記スナップショットシーケンスに対応するオーバーレイシーケンスと部分自己相関させることによって、前記無線信号内の前記時間マーカの前記相対位置を特定するように構成されている、
ことを特徴とする、請求項4、7及び9のいずれか一項に記載の無線受信機(RX1)。
【請求項13】
前記無線受信機(RX1)は、前記無線信号の位相を取り出すために位相ロックループを実装していることを特徴とする、請求項4~7、9~12のいずれか一項に記載の無線受信機(RX1)。
【請求項14】
前記無線受信機(RX1)は、前記無線信号の位相変化を取り出すために周波数ロックループを実装していることを特徴とする、請求項4~7、9~12のいずれか一項に記載の無線受信機(RX1)。
【請求項15】
無線航法衛星システムにおける、第1の時間スケールを有する前記無線航法衛星システムの複数の無線送信機のうちの無線送信機(TX1)と、第2の時間スケールを有する前記無線航法衛星システムの複数の無線受信機のうちの無線受信機(RX1)との間の時間アンビギュイティを解決するための無線航法システムであって、前記送信機は、前記複数の無線受信機のうちの前記少なくとも1つの無線受信機(RX1)に結合され、前記無線送信機(TX1)は、前記無線受信機(RX1)に無線信号を送信するように構成されている、無線航法システムにおいて、
前記システムは、請求項2又は3又は8に記載の無線送信機(TX1)を備え、
前記システムは、請求項4~14のいずれか一項に記載の無線受信機(RX1)を更に備える、
ことを特徴とする、無線航法システム。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0044
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0044】
目的は、スナップショット内に十分な情報を提供することであり、これにより、スナップショットを時間アンビギュイティ間隔内の暗示的な時間マーカに対して測位することが可能になる。この目的のために、「ド・ブラウン」シーケンスと呼ばれる特定のタイプのオーバーレイシーケンスが適用される。そのような「ド・ブラウン」シーケンスは、(境界上を含む)長さLのオーバーレイシーケンス内の長さNの任意のサブシーケンスの単回発生を保証する。「ド・ブラウン」シーケンスによって満たされるこの特性は、L個のシンボル内のN個のシンボルの単回発生又はSO(N,L)特性と呼ばれる。そのような「ド・ブラウン」シーケンスは、バイナリシンボルを含み得るが、本質的には含まない。あるいは、ド・ブラウンシーケンスを具現化するために他のM進シーケンスが適用されてもよい。例えば、シンボル0、1、2、及び3を含む四進アルファベットを考える場合、「003」及び「213」は、長さ3の四進シーケンスの2つの例を表す。ド・ブラウンM進シーケンスの定義は、[参考文献6]、「T(n;k)を長さnのk進文字シーケンスのセットとする。例えば、T(2;3)={11;12;13;21;22;23;31;32;33}である。T(n;k)のド・ブラウンシーケンスは、シーケンスを円形に見た場合にT(n;k)の各文字シーケンスを部分文字シーケンスとして正確に1回含む長さkのシーケンスである。」を参照されたい。長さ のド・ブラウンシーケンスをB(,N)で表すと、異なるド・ブラウンシーケンスB(,N)の数は^(^(N-1)-N)に等しい。ド・ブラウンシーケンスの特定のケースはバイナリシンボルを含み、そのようなケースでは、「ド・ブラウン」シーケンスは、バイナリ「ド・ブラウン」シーケンスと呼ばれる。バイナリ「ド・ブラウン」シーケンスは、L=2^Nであり、SO(N,L)特性を満たす「ド・ブラウン」バイナリシーケンスの数が2^(2^(N-1)-N)に等しいようなシーケンスである([参考文献6]参照)。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0046
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0046】
様々な方法が、ド・ブラウンシーケンスを生成することを可能にする。本発明の目的は、そのような「ド・ブラウン」シーケンスを生成する方法を説明する全ての参考文献を詳細に吟味することではなく、むしろそのような「ド・ブラウン」シーケンスを利用し、特に^(^(N-1)-N)個の既存の進 B(,N)「ド・ブラウン」シーケンスのうちの候補「ド・ブラウン」シーケンスの大きなプールを生成することであり、その中から、時間アンビギュイティ解決に有利な特定の特性を提供する特定の「ド・ブラウン」シーケンスが選択される。一例として、[参考文献6]を引用すると、「Martinは、T(n;k)のド・ブラウンシーケンスが単純なグリーディアルゴリズムによって構築され得ることを1934年に[参考文献7]で示した。アルゴリズムは、シーケンスkn-1(式中、累乗は反復を表す)から始まり、次に以下の規則を繰り返し適用する:得られた線形シーケンスにおける長さnの部分文字シーケンスが異なるように、最も小さいシンボルを{1;2;....;k}に追加する。」
【国際調査報告】