(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-02
(54)【発明の名称】硬靭なシリコーンゴム発泡体断熱材
(51)【国際特許分類】
H01M 50/293 20210101AFI20240925BHJP
C08J 9/02 20060101ALI20240925BHJP
B32B 5/18 20060101ALI20240925BHJP
H01M 10/658 20140101ALI20240925BHJP
H01M 10/625 20140101ALI20240925BHJP
H01M 50/204 20210101ALI20240925BHJP
【FI】
H01M50/293
C08J9/02 CFH
B32B5/18
H01M10/658
H01M10/625
H01M50/204 401H
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024514605
(86)(22)【出願日】2022-09-08
(85)【翻訳文提出日】2024-03-06
(86)【国際出願番号】 IB2022058435
(87)【国際公開番号】W WO2023037271
(87)【国際公開日】2023-03-16
(32)【優先日】2021-09-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505005049
【氏名又は名称】スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100130339
【氏名又は名称】藤井 憲
(74)【代理人】
【識別番号】100135909
【氏名又は名称】野村 和歌子
(74)【代理人】
【識別番号】100133042
【氏名又は名称】佃 誠玄
(74)【代理人】
【識別番号】100171701
【氏名又は名称】浅村 敬一
(72)【発明者】
【氏名】ビーバー,ピエール ラインハルト
(72)【発明者】
【氏名】コニエッツニー,ローマン
(72)【発明者】
【氏名】ガイデ,トム
(72)【発明者】
【氏名】ケンプ,ミヒャエル
(72)【発明者】
【氏名】リンジー,クレイグ ダブリュ.
(72)【発明者】
【氏名】アペルドルン,トーマス
(72)【発明者】
【氏名】プルーゲ,シモン
(72)【発明者】
【氏名】カリッシュ,ジェフリー ピー.
(72)【発明者】
【氏名】ボーゲル-マーティン,マーガレット エム.
(72)【発明者】
【氏名】水野 一彦
(72)【発明者】
【氏名】ディッペル,ベルント
【テーマコード(参考)】
4F074
4F100
5H031
5H040
【Fターム(参考)】
4F074AA90
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5H031CC01
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5H040CC30
5H040LL04
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5H040LL10
5H040NN01
(57)【要約】
電池アセンブリの電池セルに断熱及び保護を提供する断熱/熱保護バリア。バリアは、硬化されたシリコーンゴム発泡体層を含み、シリコーンゴム発泡体層は、シリコーンゴム発泡体層内に配置された複数の硬靭化粒子などの硬靭化材料を、硬靭化粒子を含まない同じシリコーンゴム発泡体層と比較して、発泡体層を所望の圧縮値に圧縮するためにより大きな圧縮力が必要となるように、シリコーンゴム発泡体層に追加の硬靭さを付与するのに十分な量で含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電池パック又はモジュールの隣接する電池セル間に配置されるように作動的に適合された断熱/熱保護バリアであって、前記断熱/熱保護バリアが、少なくとも1つの主面を有する硬化シリコーンゴム非シンタクチック発泡体層と、少なくとも1つの任意の固体フィルムとを含み、前記固体フィルムが、前記シリコーンゴム発泡体層の前記少なくとも1つの主面を覆うように配置され、前記シリコーンゴム発泡体層が、前記シリコーンゴム発泡体層内に配置された複数の硬靭化粒子を、前記硬靭化粒子を含まない同じシリコーンゴム発泡体層と比較して、前記発泡体層を所望の圧縮値に圧縮するためにより大きな圧縮力が必要となるように、前記シリコーンゴム発泡体層に追加の硬靭さを付与するのに十分な量で含む、断熱/熱保護バリア。
【請求項2】
前記シリコーンゴム発泡体層が、
少なくとも1つのオルガノポリシロキサン化合物Aと、
1分子当たり少なくとも2個又は3個の水素原子を含む少なくとも1つのオルガノハイドロジェンポリシロキサン化合物Bと、
少なくとも1つのヒドロキシル含有化合物Cと、
有効量の硬化触媒Dと、を含む、シリコーンゴム発泡体の硬化性かつ発泡性の前駆体から形成されている、請求項1に記載の断熱/熱保護バリア。
【請求項3】
前記複数の硬靭化粒子が、前記シリコーンゴム発泡体層全体に均一に配置されている、請求項1又は2に記載の断熱/熱保護バリア。
【請求項4】
前記複数の硬靭化粒子が、少なくとも100kPaの圧縮力を受けたときに前記シリコーンゴム発泡体層に約50%以下の圧縮値を示させるのに十分な量である、請求項1~3のいずれか一項に記載の断熱/熱保護バリア。
【請求項5】
前記複数の硬靭化粒子が、少なくとも100kPaの圧縮力を受けたときに前記シリコーンゴム発泡体層に約30%以下の圧縮値を示させるのに十分な量である、請求項1~4のいずれか一項に記載の断熱/熱保護バリア。
【請求項6】
前記硬靭化粒子の量が、約10重量%~約60重量%以下の範囲、又は約5体積%~約30体積%以下の範囲である、請求項1~5のいずれか一項に記載の断熱/熱保護バリア。
【請求項7】
前記硬靭化粒子の量が、約40重量%、又は約20体積%である、請求項1~6のいずれか一項に記載の断熱/熱保護バリア。
【請求項8】
前記硬靭化粒子が、三水酸化アルミニウム(ATH)粒子、水酸化マグネシウム(MDH)粒子、炭酸カルシウム粒子、酸化チタン粒子、酸化ケイ素粒子及び鉱物繊維から選択される材料粒子のいずれか1つ又は組合せである、請求項1~7のいずれか一項に記載の断熱/熱保護バリア。
【請求項9】
前記硬靭化粒子が、約0.5μm以上約10μm以下の範囲のサイズを有する、請求項1~8のいずれか一項に記載の断熱/熱保護バリア。
【請求項10】
前記硬靭化粒子が、約2μmのサイズを有する、請求項1~9のいずれか一項に記載の断熱/熱保護バリア。
【請求項11】
前記硬靭化粒子が、約200μm以上約1000μm以下の範囲の長さを有する非金属無機繊維(例えば、鉱物繊維)を含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の断熱/熱保護バリア。
【請求項12】
前記硬靭化粒子の量が、1200kPaを超える圧縮力を受けたときに前記シリコーンゴム発泡体層に約60%以下の圧縮値を示させるのに十分である、請求項1~11のいずれか一項に記載の断熱/熱保護バリア。
【請求項13】
前記シリコーンゴム発泡体層が、少なくとも200kPaの圧縮力を受けたときに、約50%以下の圧縮値を示す、請求項1~12のいずれか一項に記載の断熱/熱保護バリア。
【請求項14】
前記シリコーンゴム発泡体層が、1200kPaを超える圧縮力を受けたときに、約50%以下の圧縮値を示す、請求項1~13のいずれか一項に記載の断熱/熱保護バリア。
【請求項15】
前記シリコーンゴム発泡体層が、200kPaを超える圧縮力を受けたときに、約30%以下の圧縮値を示す、請求項1~14のいずれか一項に記載の断熱/熱保護バリア。
【請求項16】
前記シリコーンゴム発泡体層が、400kPaを超える圧縮力を受けたときに、約30%以下の圧縮値を示す、請求項1~15のいずれか一項に記載の断熱/熱保護バリア。
【請求項17】
前記シリコーンゴム発泡体層が、約200kPa~約1000kPa以下の範囲の圧縮力を受けたときに、約30%から最大で約50%までの範囲の圧縮値を示す、請求項1~16のいずれか一項に記載の断熱/熱保護バリア。
【請求項18】
前記シリコーンゴム発泡体層が、約300kPa~約800kPa以下の範囲の圧縮力を受けたときに、約30%から最大で約50%までの範囲の圧縮値を示す、請求項1~17のいずれか一項に記載の断熱/熱保護バリア。
【請求項19】
前記硬靭化粒子が、個々に又は一緒に、シリコーン発泡体前駆体粘度上昇剤又は増粘剤、発泡体マトリックス補強、比較的低コストであること、吸熱性、難燃剤、前記発泡体マトリックスへの構造的補強から選択される特性のいずれか1つ又は組合せを示す、請求項1~18のいずれか一項に記載の断熱/熱保護バリア。
【請求項20】
電池アセンブリの隣接する電池セルの間に請求項1~19のいずれか一項に記載の断熱/熱保護バリアを使用する、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して、シリコーンゴム発泡体の分野に関し、より具体的には、改善された保護特性を示すようにより硬靭にされた断熱性シリコーンゴム発泡体(例えば、シート形態の)の分野に関する。本開示はまた、そのようなシリコーンゴム発泡体を製造する方法、及び産業用途のためのそれらの使用、特に(例えば、電動ビークル自動車産業における)電池熱管理用途のためのそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の電化は、現在、自動車産業における最も大きな動向のうちの1つである。電動ビークルでは、電気エネルギー源は、電池アセンブリ(例えば、モジュール、パックなど)の形態の電池セルによって供給される。そのようなアセンブリでは、電池セルは、典型的には、互いに隣接して配置され、ギャップによって分離される。電動ビークル電池は、電池式電動ビークル(BEV)及びハイブリッド電動ビークル(HEV)の推進システムに給電するために使用されている。これらの電池は、典型的にはリチウムイオン電池であり、高いアンペア時容量で設計されている。電動ビークル電池の開発の動向は、電池内のエネルギー密度(kWh/kg)を高くし、より長い距離の網羅を可能にし、電池の充電時間を短縮可能にするように進んでいる。
【0003】
電動ビークル電池のエネルギー密度が高いこと、及び電池の充電又は放電中の高いエネルギー流により、電池セルの分解ないしは別の方法で損傷した電池セルによって発生する熱が隣接するセルに非常に急速に伝播するホットスポット及び熱暴走事象の発生リスクがある。そのようなホットスポット及び熱暴走事象はまた、影響を受けた電池セルの膨張を引き起こす可能性があり、それは、影響を受けた電池セルと隣接する電池セルとの間の距離を減少させる。この連鎖反応は、電動ビークル全体にわたって爆発又は燃え広がりをもたらし得る。
【0004】
その文脈において、熱管理解決策の使用が、電池アセンブリの温度上昇を軽減する一法として急速に現れてきた。1つの部分的な解決策は、米国特許出願公開第2007/0259258(A1)号(Buck)に開示されており、それによると、熱吸収材料の使用によって、電池パックアセンブリの電池セルによって発生した熱を吸収し、アセンブリのケースから外に伝熱し、それによって、各電池パック及び電池アセンブリ全体の内部のより低い温度を維持する。別の部分的な解決策は、米国特許出願公開第2019393574(A1)号(Goebら)に記載されており、それによると、熱伝導性充填剤材料を含む熱伝導性ギャップ充填剤組成物の使用により、電池アセンブリを冷却することが開示されている。
【発明の概要】
【0005】
そのような熱暴走事象を遅延又は防止し、それによって近くの構造(例えば、残りの電池セル、車両構造、建築構造など)及び人員を保護するために、電池アセンブリ内(例えば、隣接する電池セル間のギャップ内)で使用するための断熱/熱保護バリアが開発されている。本発明のバリアは、電池ホットスポット及び熱暴走事象を引き起こす電池セルの分解ないしは別の方法で損傷した電池セルに関連する非常に高い温度に耐えることができる。隣接する電池セル間で使用される場合、本発明のバリアは、圧縮に対するその抵抗のために、熱暴走事象を有意に減速させ、更には停止させることができ、それによって、影響を受けた電池セルと隣接する電池セルとの間の所望の保護距離又はギャップを維持するのに役立つ。隣接する電池セル間の所望の保護距離又はギャップ(すなわち、ギャップサイズ)は、隣接する電池セル間の熱伝達を十分に抑制して、所望の期間(例えば、近くの人員が害を免れるのに十分な時間、近くの構造が損傷を受けるのを回避するのに十分な時間など)にわたって熱暴走事象を減速させるか、又は熱暴走事象を防止するバリア材料の厚さを維持するギャップサイズである。熱暴走事象は、電池セルを収容する電池アセンブリ内に損傷が含まれている場合、及び/又は電池アセンブリ内の残りの電池セルの少なくとも一部、大部分(50%超)、若しくは全てが使用可能なままである場合、防止されたと見なされる。残りの電池セルは、本発明のバリアがなければ熱暴走事象を引き起こした可能性がある、初期起源又は開始電池セルではない電池セルである。好ましくは、残りの電池セルのいずれも交換を必要としない。好ましくは、初期起源電池セルのみが、交換を必要とする程度まで損傷される。
【0006】
一態様によれば、本開示は、電池アセンブリの隣接する電池セル間に配置されて断熱及び保護を提供するように作動的に適合された(すなわち、構成され、寸法決めされ、及び/又は設計された)断熱/熱保護バリアであって、硬化シリコーンゴム発泡体層を含むバリアに関する。シリコーンゴム発泡体層は、シリコーンゴム発泡体層内に、好ましくはシリコーンゴム発泡体層全体にわたって均一に配置された複数の硬靭化粒子を含み、硬靭化粒子を含まない同じシリコーンゴム発泡体層と比較して、発泡体層を所望の圧縮値に圧縮するためにより大きな圧縮力が必要となるように、シリコーンゴム発泡体層に追加の硬靭さを付与するのに十分な量である。
【0007】
これらの発泡体の圧縮挙動は、熱暴走事象を遅延させるか、又は更に防止するという点で重要な特性である。単一の電池セルが分解ないしは別の方法で損傷した場合、それは熱くなり膨張する可能性がある。これにより、断熱/熱保護バリア、特にシリコーンゴム発泡体層が有意に圧縮され、損傷したセルとその隣接セルとの間のギャップが減少する可能性がある。隣接するセルの温度は、動作条件下でギャップのサイズ(すなわち、隣接するセル間の距離)を実質的に維持することに強く依存することが分かっている。このような熱暴走事象の間、ギャップの所望のサイズは、有意に維持され得るか、又は少なくとも、発泡体の硬靭さが増加するにつれて、ギャップサイズの減少が有意に最小化され得ることが発見されている。したがって、より硬靭な発泡体の開発は、熱暴走事象を遅延させるか、更には防止するのに役立つ。
【0008】
一実施形態では、シリコーンゴム発泡体層は、少なくとも1つのオルガノポリシロキサン化合物A、1分子当たり少なくとも2個又は3個の水素原子を含む少なくとも1つのオルガノ水素ポリシロキサン化合物B、少なくとも1つのヒドロキシル含有化合物C、有効量の硬化触媒D(例えば、白金系硬化触媒)、及び100kPaを超える圧縮力を受けたときにシリコーンゴム発泡体層が約50%以下の圧縮値を示すのに十分な量でシリコーンゴム発泡体層内に配置された複数の硬靭化粒子を含む、シリコーンゴム発泡体の硬化性かつ発泡性の前駆体から形成される。
【0009】
一態様によれば、本開示は、シリコーンゴム発泡体層であって、
基材を提供することと、第1の固体フィルムを提供し、それを基材上に適用することと、上流側及び下流側を備え、基材からオフセットされて基材の表面に対して垂直方向にギャップを形成するコーティングツールを提供することと、コーティングツールに対して第1の固体フィルムを下流方向に移動することと、シリコーンゴム発泡体の硬化性かつ発泡性の前駆体をコーティングツールの上流側に提供し、シリコーンゴム発泡体の前駆体を第1の固体フィルムを備えた基材上に層としてギャップを通してコーティングすることと、第2の固体フィルムを提供し、第1の固体フィルム及び第2の固体フィルムがシリコーンゴム発泡体の前駆体の層の形成と同時に適用されるように、第2の固体フィルムをコーティングツールの上流側に沿って適用することと、シリコーンゴム発泡体の前駆体を発泡させること又は発泡を可能にすることと、シリコーンゴム発泡体の前駆体の層を硬化させて又は硬化を可能にして、シリコーンゴム発泡体層を形成することと、
任意選択的に、シリコーンゴム発泡体の前駆体の層を熱処理に掛けることと、任意選択的に、シリコーンゴム発泡体層から第1の固体フィルム及び/又は第2の固体フィルムを除去することと、を含むプロセスによって得られる、シリコーンゴム発泡体層に関する。
【0010】
別の態様によれば、本開示は、シリコーンゴム発泡体層の製造するためのプロセスであって、
基材を提供することと、
第1の固体フィルムを提供し、それを基材上に適用することと、
上流側及び下流側を備え、基材からオフセットされて基材の表面に対して垂直方向にギャップを形成するコーティングツールを提供することと、
コーティングツールに対して第1の固体フィルムを下流方向に移動することと、
シリコーンゴム発泡体の硬化性かつ発泡性の前駆体をコーティングツールの上流側に提供し、シリコーンゴム発泡体の前駆体を第1の固体フィルムを備えた基材上に層としてギャップを通してコーティングすることと、
第2の固体フィルムを提供し、第1の固体フィルム及び第2の固体フィルムがシリコーンゴム発泡体の前駆体の層の形成と同時に適用されるように、第2の固体フィルムをコーティングツールの上流側に沿って適用することと、
シリコーンゴム発泡体の前駆体を発泡させること又は発泡を可能にすることと、
シリコーンゴム発泡体の前駆体の層を硬化させて又は硬化を可能にして、シリコーンゴム発泡体層を形成することと、
任意選択的に、シリコーンゴム発泡体の前駆体の層を熱処理に掛けることと、
任意選択的に、シリコーンゴム発泡体層から第1の固体フィルム及び/又は第2の固体フィルムを除去することと、を含む、シリコーンゴム発泡体層の製造のためのプロセスに関する。
【0011】
なお別の態様では、本開示は、上記のようなシリコーンゴム発泡体層の、産業用途、特に自動車産業用の熱管理用途のための使用に関する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本開示の1つの例示的な態様による、シリコーンゴム発泡体層を製造するための1つの例示的なコーティング装置及び方法の概略図である。
【
図2】本開示において有用な1つの例示的なコーティングツールの概略断面図である。
【
図3】本開示の一態様による、例示的なシリコーンゴム発泡体層の断面の走査型電子顕微鏡画像である。
【
図4】本開示の一態様による例示的な電池モジュールのアセンブリを示す図である。
【
図5】高温側/低温側試験で使用される例示的な機器を示す図である。
【
図6】温度によるHCSTにおけるギャップの変動を示すプロットである。
【
図8】実施例14AのHCSTの結果を示すプロットである。
【
図9】実施例25のHCSTの結果を示すプロットである。
【
図10】実施例21のHCSTの結果を示すプロットである。
【
図11】HCST後の実施例21の2つの層の写真を示す図である(左:高温側、右:低温側)。
【発明を実施するための形態】
【0013】
一態様によれば、本開示は、硬化シリコーンゴム発泡体(好ましくは非シンタクチックシリコーンゴム発泡体)層を含み、電池アセンブリ内に断熱及び保護を提供するように配置されるように作動可能に適合された(すなわち、構成され、寸法決めされ、及び/又は設計された)断熱/熱保護バリアに関する。より具体的には、断熱/熱保護バリアは、電池アセンブリ内の隣接する電池セル間に配置され、それによって、電池アセンブリ内の隣接する電池セルに断熱及び保護を提供するように作動可能に適合される。シリコーンゴム発泡体層は、シリコーンゴム発泡体層内に、好ましくはシリコーンゴム発泡体層全体にわたって均一に配置された複数の硬靭化粒子などの硬靭化材料を含み、硬靭化粒子を含まない同じシリコーンゴム発泡体層と比較して、発泡体層を所望の圧縮値に圧縮するためにより大きな圧縮力が必要となるように、シリコーンゴム発泡体層に追加の硬靭さを付与するのに十分な量である。
【0014】
より具体的な態様によれば、本開示は、シリコーンゴム発泡体(好ましくは、非シンタクチックシリコーンゴム発泡体)層に関し、シリコーンゴム発泡体層は、少なくとも1つのオルガノポリシロキサン化合物A、1分子当たり少なくとも2個又は3個の水素原子を含む少なくとも1つのオルガノハイドロジェンポリシロキサン化合物B、少なくとも1つのヒドロキシル含有化合物C、有効量の硬化触媒D(例えば、白金系硬化触媒)、及びシリコーンゴム発泡体層に所望の圧縮特性を示させるのに十分な量でシリコーンゴム発泡体層内に配置された複数の硬靭化粒子を含む、シリコーンゴム発泡体の硬化性かつ発泡性の前駆体から形成される。
【0015】
例示的な硬靭化充填剤材料としては、以下の材料から作製される硬化粒子が挙げられる:三水酸化アルミニウム(ATH)、水酸化マグネシウム(MDH)、炭酸カルシウム、鉱物及び他のセラミック繊維、二酸化チタン(例えば、パイロジェニック二酸化チタン)及びそれらの任意の組合せ又は混合物。これらの硬靭化粒子は、表面処理されていてもよく、低い水吸収を有する。好ましくは、硬靭化粒子は、シリコーン発泡体前駆体粘度上昇剤であること、比較的低コストであること、吸熱性であること、及び難燃剤(例えば、三水酸化アルミニウム(ATH)、水酸化マグネシウム(MDH)、及び炭酸カルシウムなどの粒子)であることのいずれか1つ又は組合せなどの他の望ましい特性を示す。他の望ましい粒子特性としては、シリコーンゴムがセラミック化プロセスを受けた後(すなわち、シリコーンが高温に曝露され、シリカ系セラミックに変換された後)を含む、発泡体マトリックスの構造的補強が挙げられる。
【0016】
例示的なバリアの実施形態
1.電池パック又はモジュールの(例えば、円筒形電池セル又は角型若しくはパウチ型電池セルの片側で使用するための)隣接する電池セルの間に配置されるように作動可能に適合された断熱/熱保護バリア。断熱/熱保護バリアは、少なくとも1つの主面又は互いに反対側にある主面を有する硬化シリコーンゴム発泡体(好ましくは非シンタクチックシリコーンゴム発泡体)層と、少なくとも1つの任意の固体フィルムとを含み、固体フィルムは、シリコーンゴム発泡体層の少なくとも1つの主面又は互いに反対側にある主面の両方を覆うように配置され(例えば、発泡体層は、折り畳まれた固体フィルムの2つの部分の間、又は第1の固体フィルムと第2の固体フィルムとの間に挟むことができる)、シリコーンゴム発泡体層は、シリコーンゴム発泡体層内に配置された複数の硬靭化粒子を、硬靭化粒子を含まない同じシリコーンゴム発泡体層と比較して、発泡体層を所望の圧縮値に圧縮するためにより大きな圧縮力が必要となるように、シリコーンゴム発泡体層に追加の硬靭さを付与するのに十分な量で含む。
2.シリコーンゴム発泡体層が、
少なくとも1つのオルガノポリシロキサン化合物Aと、
1分子当たり少なくとも2個又は3個の水素原子を含む少なくとも1つのオルガノハイドロジェンポリシロキサン化合物Bと、
少なくとも1つのヒドロキシル含有化合物Cと、
有効量の硬化触媒D(例えば、白金系硬化触媒)と、を含む、シリコーンゴム発泡体の硬化性かつ発泡性の前駆体から形成されている、実施形態1に記載の断熱/熱保護バリア。
3.複数の硬靭化粒子が、当該シリコーンゴム発泡体層全体に均一に配置されている、実施形態1又は2に記載の断熱/熱保護バリア。
4.複数の硬靭化粒子が、少なくとも100kPa、150kPa、200kPa、250kPa、300kPa、350kPa、400kPa、450kPa、又は500kPaの圧縮力を受けたときにシリコーンゴム発泡体層に約30%、35%、40%、45%、又は50%以下の圧縮値を示させるのに十分な量である、実施形態1~3のいずれか1つに記載の断熱/熱保護バリア。
5.複数の硬靭化粒子が、100kPaを超える圧縮力を受けたときにシリコーンゴム発泡体層に50%以下の圧縮値を示させるのに十分な量である、実施形態1~4のいずれか1つに記載の断熱/熱保護バリア。
6.硬靭化粒子の量が、約10重量%から約60重量%以下の範囲、又は約5体積%から約30体積%以下の範囲である、実施形態1~5のいずれか1つに記載の断熱/熱保護バリア。
7.硬靭化粒子の量が、約40重量%、又は約20体積%である、実施形態1~6のいずれか1つに記載の断熱/熱保護バリア。
8.硬靭化粒子が、以下の材料粒子:三水酸化アルミニウム(ATH)粒子、水酸化マグネシウム(MDH)粒子、炭酸カルシウム粒子、酸化チタン粒子、及び鉱物繊維のいずれか1つ又は組合せである、実施形態1~7のいずれか1つに記載の断熱/熱保護バリア。
9.硬靭化粒子が、約0.5μm以上、約3、5、又は10μm以下の範囲のサイズ(すなわち、長軸寸法)を有する、実施形態1~8のいずれか1つに記載の断熱/熱保護バリア。
10.硬靭化粒子が、約2.0μmのサイズ(すなわち、長軸寸法)を有する、実施形態1~9のいずれか1つに記載の断熱/熱保護バリア。
11.硬靭化粒子が、約200μm以上約1000μm以下の範囲、又は少なくとも約250μm以上約750μm以下の範囲の長さを有する非金属無機繊維(例えば、鉱物繊維)を含む、実施形態1~10のいずれか1つに記載の断熱/熱保護バリア。例えば、繊維長が約500μmであることが望ましい場合がある。繊維はまた、少なくとも約3.0μm以上約6.0μm以下の範囲の直径を有する。例えば、繊維直径が約4.5μmであることが望ましい場合がある。
12.硬靭化粒子の量が、100、200、300、400、500、600、700、800、900、1000、1100、1200kPaを超える圧縮力を受けたときに、シリコーンゴム発泡体層に約25、30、35、40、45、50、55、又は60%以下の圧縮値を示させるのに十分である、実施形態1~11のいずれか1つに記載の断熱/熱保護バリア。
13.シリコーンゴム発泡体層が、少なくとも200kPaの圧縮力を受けたときに、約50%以下の圧縮値を示す、実施形態1~12のいずれか1つに記載の断熱/熱保護バリア。
14.シリコーンゴム発泡体層が、1200kPaを超える圧縮力を受けたときに、約50%以下の圧縮値を示す、実施形態1~13のいずれか1つに記載の断熱/熱保護バリア。
15.シリコーンゴム発泡体層が、200kPaを超える圧縮力を受けたときに、約30%以下の圧縮値を示す、実施形態1~14のいずれか1つに記載の断熱/熱保護バリア。
16.シリコーンゴム発泡体層が、400kPaを超える圧縮力を受けたときに、約30%以下の圧縮値を示す、実施形態1~15のいずれか1つに記載の断熱/熱保護バリア。
17.シリコーンゴム発泡体層が、約200kPa~約1000kPa以下の範囲の圧縮力を受けたときに、約30%から最大で約50%までの範囲の圧縮値を示す、実施形態1~16のいずれか1つに記載の断熱/熱保護バリア。
18.シリコーンゴム発泡体層が、約300kPa~約800kPa以下の範囲の圧縮力を受けたときに、約30%から最大で約50%までの範囲の圧縮値を示す、実施形態1~17のいずれか1つに記載の断熱/熱保護バリア。
19.硬靭化粒子が、個々に又は一緒に、シリコーン発泡体前駆体粘度上昇剤又は増粘剤、発泡体マトリックス補強、比較的低コストであること、吸熱性、及び難燃剤から選択される特性のいずれか1つ又は組合せを示す、実施形態1~18のいずれか1つに記載の断熱/熱保護バリア。三水酸化アルミニウム(ATH)、水酸化マグネシウム(MDH)、及び炭酸カルシウムなどの材料から製造された粒子は、これらの特性のほとんど又は全てを示す。比較的短いセラミック強化粒子(例えば、鉱物粒子など)から作製された粒子は、シリコーンゴムがセラミック化プロセスを受けた後(すなわち、シリコーンが高温に曝露され、シリカ系セラミックに変換された後)を含めて、発泡体マトリックスの構造的補強を提供することができる。二酸化チタン(例えば、パイロジェニック二酸化チタン)から作製された粒子は、シリコーン発泡体前駆体の増粘又は粘度の上昇に寄与することができる。硬靭化粒子は、シリコーン発泡体前駆体A剤、B剤、A剤とB剤の両方に、A剤及びB剤が混合された後、又は前駆体成分の全てが組み合わされた後に添加され得る。
20.電池アセンブリの隣接する電池セルの間に、実施形態1~19のいずれか1つに記載の断熱/熱保護バリアを使用する方法。
【0017】
別の態様によれば、本開示は、シリコーンゴム(非シンタクチック)発泡体層を得るためのプロセスであって、本プロセスが、
基材を提供する工程と、
第1の固体フィルムを提供し、それを基材上に適用することと、
上流側及び下流側を備え、基材からオフセットされて基材の表面に対して(実質的に)垂直方向にギャップを形成するコーティングツールを提供する工程と、
コーティングツールに対して第1の固体フィルムを下流方向に移動する工程と、
シリコーンゴム発泡体の硬化性かつ発泡性の前駆体をコーティングツールの上流側に提供し、シリコーンゴム発泡体の前駆体を第1の固体フィルムを備えた基材上に層としてギャップを通してコーティングすることと、
第2の固体フィルムを提供し、第1の固体フィルム及び第2の固体フィルムがシリコーンゴム発泡体の前駆体の(隣接する)層の形成と(実質的に)同時に適用されるように、第2の固体フィルムをコーティングツールの上流側に沿って(少なくとも部分的に)適用する工程と、
シリコーンゴム発泡体の前駆体を発泡させること又は発泡を可能にする工程と、
シリコーンゴム発泡体の前駆体の層を硬化させて又は硬化を可能にして、シリコーンゴム発泡体層を形成する工程と、
任意選択的に、シリコーンゴム発泡体の前駆体の層を熱処理に掛ける工程と、
任意選択的に、シリコーンゴム発泡体層から第1の固体フィルム及び/又は第2の固体フィルムを除去する工程と、を含む、シリコーンゴム(非シンタクチック)発泡体層を得るためのプロセスに関する。
【0018】
本開示の文脈において、驚くべきことに、上記のような方法によって得られるシリコーンゴム発泡体層は、最大600℃までの温度及び熱への長期曝露においてであっても優れた断熱特性、優れた耐熱性及び安定性、優れた断熱/熱保護バリア性能(例えば、多数の電池セルモジュール用途の文脈における熱暴走バリア性能)、優れた圧縮性、並びに低密度特性をもたらすことが見出された。記載されるシリコーンゴム発泡体層は、以下の有利な利点のうちの1つ以上を更に特徴とする:a)電池アセンブリとして使用するときにおける個々の電池セルに対する優れたクッション性能、b)容易に利用可能な出発材料及び最小化された製造工程に基づいて、容易で費用効果の高い製造方法、c)配合の簡易性及び汎用性、d)高温又は化学線などの任意の大きなエネルギー入力を必要とせずに効率的に硬化可能であること、e)人体に有害な影響を及ぼす材料又は製品の不使用による発泡体層の安全な取り扱い性、f)様々な形態、大きさ及び形状への優れた加工性並びに変換特性、g)比較的薄い厚さで製造可能であること、h)特に熱管理用途のためのすぐ使用できる発泡体層、並びにi)接着促進加工工程又は組成物を必要とせずに、金属又はポリマー表面などの様々な基材に接着可能であること。
【0019】
1つの有利な態様では、本明細書に記載のシリコーンゴム発泡体層は、最大600℃の温度への長期曝露後であっても、優れた耐炎特性、並びに表面亀裂及び表面脆性に対する優れた耐性を更に備える。
【0020】
理論に束縛されることを望むものではないが、これらの優れた特性及び性能属性は、特に以下の技術的特徴の組合せによるものであると考えられる:a)シリコーンゴム発泡体の硬化性かつ発泡性の前駆体の使用、b)コーティングツールの使用、及びc)第2の固体フィルムを提供し、第1の固体フィルム及び第2の固体フィルムがシリコーンゴム発泡体の前駆体の層の形成と同時に適用されるように、特に発泡及び硬化工程が(実質的に)開始される前に適用されるように、第2の固体フィルムをコーティングツールの上流側に沿って適用することからなる特定の加工工程。
【0021】
理論に束縛されることを望むものではないが、この技術的特徴の組合せ、特に、第1の固体フィルム及び第2の固体フィルムがシリコーンゴム発泡体の前駆体の層の形成と同時に適用される工程は直接、有利な多孔質構造及び発泡体形態を備えたシリコーン発泡層をもたらし、これが上記で詳述した有益な特徴及び性能属性をもたらすと考えられる。より具体的には、この技術的特徴の組合せにより、発泡プロセスを比較的制御された方法で行うことが可能になり、それにより、気体キャビティ(又は発泡体セル)が発泡体層の厚さ方向(すなわち、発泡体層によって形成された平面に対して垂直な方向)に膨張することが可能になり、それにより、生じた気体キャビティは、層の厚さ方向に長い(oblong)形状を有し、生じる発泡体層に均一に分布していると考えられる。
【0022】
したがって、本開示のシリコーンゴム発泡体層は、様々な産業用途、特に熱管理用途における使用に好適である。本開示のシリコーンゴム発泡体層は、自動車産業における熱管理用途、特に断熱/熱保護バリアとして(例えば、電動ビークル電池モジュールにおける隣接する電池セル間の熱暴走バリアとして)特に好適である。本明細書に記載されるシリコーンゴム発泡体層は、隣接する電池セル間のスペーサとして使用するのに好適な、又は電池モジュールなどの充電式電気エネルギー貯蔵システム内のスペーサとして使用するのに好適な、並びにそのような貯蔵システム(例えば、隣接する電池モジュール)間で使用するのに好適な熱暴走バリア特性を有する。有利には更に、本開示のシリコーンゴム発泡体層は、電池モジュール、特に電動ビークル電池モジュール及びアセンブリの製造に使用され得る。有益な態様では、本明細書に記載されるシリコーンゴム発泡体層は、特にその優れた寸法安定性及び取り扱い特性により、手動又は自動化された取り扱い及び用途、特に高速ロボット機器に好適である。記載されるシリコーンゴム発泡体層はまた、著しい可燃性及び熱安定性特性により、最も困難な防火規制基準を満たすことができる。
【0023】
本開示の文脈において、「隣接する」という用語は、互いにすぐ隣りである、すなわち互いに当接する2つの構造体(例えば、電池セル、電池モジュール、重ね合わされたフィルム又は層など)を示すことを意味する。上部及び底部の層又はフィルムという用語はそれぞれ、本明細書では、シリコーンゴム発泡体層を形成する方法においてそのような層又はフィルムを担持する基材の表面に対する層又はフィルムの位置を示すために使用される。基材が移動する方向は、本明細書では下流方向と呼ばれる。上流及び下流という相対的な用語は、基材の延びに沿った位置を表す。
【0024】
シリコーンゴム発泡体層を製造する例示的な方法及び製造方法における使用に好適なコーティング装置の概略図を、
図1に示す。コーティング装置1は、基材2と、コーティングナイフの形態のコーティングツール7と、第1の固体フィルム5のための巻き出しロール11及び巻き取りロール12と、第2の固体フィルム6のための巻き出しロール9及び巻き取りロール10と、を備える。第1の固体フィルム5を備えた基材2がコーティングツール7に対して移動する下流方向8は、対応する参照番号を伴う矢印で表される。
【0025】
本開示の典型的な態様において、シリコーンゴム発泡体の硬化性かつ発泡性の前駆体3は、コーティングツールの7の上流側に提供され、それによりシリコーンゴムの発泡体の前駆体3を、第1の固体フィルム5を備えた基材2の上に層としてギャップを通してコーティングする。
図1において、シリコーンゴム発泡体の硬化性かつ発泡性の前駆体3は、コーティングツール7の上流側にあるいわゆる「ローリングビード」を形成するものとして表される。第2の固体フィルム6は、コーティングツール7の上流側に沿って(少なくとも部分的に)適用され、それによって、第1の固体フィルム5及び第2の固体フィルム6は、シリコーンゴム発泡体の前駆体3の層の形成と同時に適用される。その後、シリコーンゴム発泡体の前駆体3の層は、シリコーンゴム発泡体層4に発泡及び硬化させることができ、これは、典型的には、その底面上に第1の固体フィルム5、その上面上に第2の固体フィルム6を備える。任意選択的に、シリコーンゴム発泡体の前駆体3の層は、典型的にはオーブン(図示せず)内で熱処理に掛けられ得る。典型的な態様において、シリコーンゴム発泡体の前駆体3の層の発泡により、シリコーンゴム発泡体層4を生じ、これは、シリコーンゴム発泡体の前駆体3の初期層よりも高い厚さを有する。加工後、第1の固体フィルム5、及び/又は第2の固体フィルム6は、シリコーンゴム発泡体層4から除去され得る。
【0026】
本明細書で使用するための基材は、特に限定されない。本明細書で使用するのに好適な基材は、本開示を踏まえて、当業者によって容易に特定され得る。
【0027】
本開示の典型的な態様において、本明細書で使用するための基材は、製造目的に使用され、シリコーンゴム発泡体層が分離され、発泡及び硬化後に除去される、一時的な支持体である。基材には、基材から(第1の固体フィルムを通して)シリコーンゴム発泡体層のきれいな除去を可能にするように適合された表面処理を任意に施すことができる。有利には、本明細書で使用するための、一時的な支持体を提供するための基材は、エンドレスベルトの形態で提供され得る。あるいは、本明細書で使用するための基材は、動かない(静的な)一時的な支持体であり得る。
【0028】
本開示の特定の一態様において、発泡及び硬化後に得られたシリコーンゴム発泡体層は、基材から分離され、例えば、ロールに巻き上げることができる。
【0029】
本開示の有利な一態様によると、本明細書で使用するための基材は、ポリマー、金属、セラミック、複合体、及びそれらの任意の組合せ又は混合物からなる群から選択される材料を含む。
【0030】
本開示のシリコーンゴム発泡体層は、上流側及び下流側を備えたコーティングツールを使用する方法によって得られる。コーティングツールは、基材からオフセットされて、基材の表面に対して垂直方向にギャップを形成する。
【0031】
本明細書で使用するためのコーティングツールは、特に限定されない。当該技術分野において公知の任意のコーティングツールを、本開示の文脈において使用することができる。本明細書で使用するのに好適なコーティングツールは、本開示を踏まえて、当業者によって容易に特定され得る。
【0032】
本開示において有用なコーティングツールは各々、上流側(又は上流面)及び下流側(又は下流面)を有する。典型的な態様において、本明細書で使用するためのコーティングツールは、シリコーンゴム発泡体の前駆体を受容する基材の表面に面する底部分を更に備える。ギャップは、コーティングツールの底部分と基材の露出表面との間の最小距離として測定される。ギャップは、横方向(すなわち、下流方向に対して垂直な方向)で本質的に均一であり得る、又は横方向にそれぞれ連続的若しくは不連続的に変化し得る。コーティングツールと基材の表面との間のギャップは、典型的には、例えば、下流方向の基材の速度、コーティングツールのタイプ、コーティングツールが基材の垂直方向に対して配向される角度、及び基材の種類を含む他のパラメータと併せて、それぞれのコーティングの厚さを制御するように調整される。
【0033】
本開示の1つの有利な態様において、基材からコーティングツールによって形成されるギャップ(コーティングツールギャップ)は、10~3000マイクロメートル、50~2500マイクロメートル、50~2000マイクロメートル、50~1500マイクロメートル、100~1500マイクロメートル、100~1000マイクロメートル、200~1000マイクロメートル、200~800マイクロメートル、又は更には200~600マイクロメートルの範囲である。
【0034】
本明細書で使用するためのコーティングツールは、基材の表面に対して実質的に垂直に配置することができる、又は基材表面とコーティングツールの下流側(又は下流面)との間の角度が50°~130°、若しくは更には80°~100°の範囲となるように傾けることができる。本開示において有用なコーティングツールは、典型的には固体であり、剛性であっても可撓性であってもよい。本明細書で使用するためのコーティングツールは、シリコーンゴム発泡体層の目的の用途及び予想される特性に応じて、様々な形状、形態及びサイズをとることができる。
【0035】
有利な態様において、本明細書で使用するためのコーティングツールは、ポリマー、金属、複合体、ガラス、及びそれらの任意の組合せ又は混合物からなる群から選択される材料を含む。より有利には、本明細書で使用するためのコーティングツールは、金属、特にアルミニウム、ステンレス鋼、及びそれらの任意の組合せからなる群から選択される材料を含む。本明細書で使用するための可撓性コーティングツールは、典型的には比較的薄く、特に、0.1mm~0.75mmの範囲の下流方向の厚さを有する。本明細書で使用するための剛性コーティングツールは、通常、少なくとも1mm、又は更には少なくとも3mmの厚さである。
【0036】
本開示の典型的な態様によれば、本明細書で使用するためのコーティングツールは、コーティングナイフ、コーティングブレード、コーティングロール、コーティングロールブレード、及びそれらの任意の組合せからなる群から選択される。
【0037】
有利な態様において、本明細書で使用するためのコーティングツールは、コーティングナイフの群から選択される。コーティングナイフの形態のコーティングツールの使用は、より再現可能なコーティングプロセス及びより良質なコーティングを提供し、これは、有利な特性を備えたシリコーンゴム発泡体層に変換されることが実際に見出された。
【0038】
別の有利な態様によれば、長手方向のコーティングツールの底部分(特に、コーティングナイフ)の断面プロファイルは、前駆体層が形成されるように設計され、過剰な前駆体は取り除かれる。典型的には、コーティングツールが基材に面する横方向に延びる縁部で示す底部分の断面プロファイルは、本質的に平面状、湾曲状、凹状又は凸状である。
【0039】
コーティングナイフの形態の例示的なコーティングツールは、
図2の断面図で概略的に表されており、コーティングツール7は、上流側13及び下流側14を備えている。
【0040】
本明細書で使用するためのシリコーンゴム発泡体の前駆体は、硬化性かつ発泡性である限り、特に限定されない。当該技術分野で公知のシリコーンゴム発泡体のいかなる硬化性かつ発泡性の前駆体も、本開示の文脈で正式に使用され得る。本明細書で使用するためのシリコーンゴム発泡体の好適な硬化性かつ発泡性の前駆体は、本開示を踏まえて当業者によって容易に特定され得る。
【0041】
有利な態様によれば、本明細書で使用するためのシリコーンゴム発泡体の前駆体は、in-situ発泡性組成物であり、これは、前駆体の発泡が、任意の追加の化合物、特に外部化合物を必要とせずに起こることを意味する。
【0042】
別の有利な態様によれば、本明細書で使用するためのシリコーンゴム発泡体の前駆体の発泡は、ガス状化合物、特に水素ガスを用いて実施される。
【0043】
より有利な態様では、本明細書で使用するためのシリコーンゴム発泡体の前駆体の発泡は、ガス発生又はガス注入のいずれかによって実施される。
【0044】
好ましい態様によれば、本明細書で使用するためのシリコーンゴム発泡体の前駆体の発泡は、ガス発生、特にin-situガス発生によって実施される。
【0045】
代替的であまり有利ではない態様において、本明細書で使用するためのシリコーンゴム発泡体の前駆体は、任意選択的な発泡剤を更に含む。
【0046】
有益な態様によれば、本明細書で使用するためのシリコーンゴム発泡体の前駆体は、2剤型組成物である。典型的には、シリコーンゴム発泡体の前駆体は、付加硬化型2剤型シリコーン組成物、縮合硬化型2剤型シリコーン組成物、及びそれらの任意の組合せ又は混合物からなる群から選択され得る。
【0047】
本開示の別の有益な態様において、本明細書で使用するためのシリコーンゴム発泡体の前駆体は、オルガノポリシロキサン組成物を含む。
【0048】
好ましい態様において、本明細書で使用するためのシリコーンゴム発泡体の前駆体は、付加硬化型2剤型シリコーン組成物、特に付加硬化型2剤型オルガノポリシロキサン組成物を含む。
【0049】
シリコーンゴム発泡体の前駆体として本明細書で使用するための好適な付加硬化型2剤型オルガノポリシロキサン組成物は、当業者によって容易に特定され得る。本明細書で使用するための例示的な付加硬化型2剤型オルガノポリシロキサン組成物は、例えば、米国特許第4,593,049号(Baumanら)に記載されている。
【0050】
本開示の特に有利な態様によれば、本明細書で使用するためのシリコーンゴム発泡体の前駆体は、
a)少なくとも1つのオルガノポリシロキサン化合物Aと、
b)1分子当たり少なくとも2個、特に少なくとも3個の水素原子を含む少なくとも1つのオルガノハイドロジェンポリシロキサン化合物Bと、
c)少なくとも1つのヒドロキシル含有化合物Cと、
d)有効量の硬化触媒D、特に白金系硬化触媒と、
e)任意選択的に、発泡剤と、を含む。
【0051】
例示的な態様では、本明細書で使用するための少なくとも1つのオルガノポリシロキサン化合物Aは、以下の式を有する:
【化1】
[式中、
R及びR”は独立して、C
1~C
30の炭化水素基からなる群から選択され、特にRは、メチル、エチル、プロピル、トリフルオロプロピルからなる群から選択されるアルキル基及びフェニルであり、任意選択的にRはメチル基であり、
R’は、C
1~C
20のアルケニル基であり、特にR’は、ビニル、アリル、ヘキセニル、デセニル、及びテトラデセニルからなる群から選択され、より具体的にはR’は、ビニル基であり、
R”は、特にメチル、エチル、プロピル、トリフルオロプロピルなどのアルキル基、フェニルであり、特にR”はメチル基であり、
nは、5~1000の範囲、特に5~100の値を有する整数である]。
【0052】
別の例示的な態様において、本明細書で使用するための少なくとも1つのヒドロキシル含有化合物Cは、アルコール、ポリオール、特に1分子当たり3個~12個の炭素原子を有し平均少なくとも2つのヒドロキシル基を有するポリオール、シラノール、シラノール含有オルガノポリシロキサン、シラノール含有シラン、水、及びそれらの任意の組合せ又は混合物からなる群から選択される。
【0053】
更に別の例示的な態様において、本明細書で使用するための少なくとも1つのヒドロキシル含有化合物Cは、シラノール含有オルガノポリシロキサンからなる群から選択される。
【0054】
本開示の有利な態様によれば、本開示のシリコーンゴム発泡体層は、シリコーンゴム発泡体の硬化性かつ発泡性の前駆体をコーティングツールの上流側に提供する工程が実施された直後に、第2の固体フィルムを提供し、第1の固体フィルム及び第2の固体フィルムがシリコーンゴム発泡体の前駆体の(隣接する)層の形成と(実質的に)同時に適用されるように、第2の固体フィルムをコーティングツールの上流側に沿って適用する工程が行われる方法によって得られる。
【0055】
本開示の別の有利な態様によれば、シリコーンゴム発泡体の前駆体を発泡させる又は発泡を可能にする工程と、シリコーンゴム発泡体の前駆体の層を硬化させて又は硬化させることを可能にして、シリコーンゴム発泡体層を形成する工程とが、(実質的に)同時に実施される。
【0056】
第1及び第2の固体フィルムとして本明細書で使用するための固体フィルムは、特に限定されない。当該技術分野において公知の任意の固体フィルムを、本開示の文脈において正式に使用することができる。本明細書で使用するのに好適な固体フィルムは、本開示を踏まえて、当業者によって容易に特定され得る。
【0057】
1つの有利な態様によれば、本開示で使用するための第1の固体フィルム及び/又は第2の固体フィルムは、不透過性フィルム、特に不透過性の可撓性フィルムである。本明細書で使用される場合、「不透過性」という用語は、液体及びガス状化合物、特にガス状化合物に対する不透過性を指すことを意図する。
【0058】
本開示の別の有利な態様によれば、本明細書で使用するための第1の固体フィルム及び/又は第2の固体フィルムは、ポリマーフィルム、金属フィルム、複合フィルム、及びそれらの任意の組合せからなる群から選択される。
【0059】
本開示のより有利な態様では、本明細書で使用するための第1の固体フィルム及び/又は第2の固体フィルムは、ポリマーフィルム、特に熱可塑性ポリマーからなる群から選択されるポリマー材料を含むポリマーフィルムからなる群から選択される。
【0060】
本開示の更により有利な態様において、本明細書で使用するための第1の固体フィルム及び/又は第2の固体フィルムは、ポリマーフィルムであり、ポリマー材料は、ポリエステル、ポリエーテル、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリベンゾイミダゾール、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン、ポリオキシメチレン、ポリエーテルイミド、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、及びそれらの任意の混合物又は組合せからなる群から選択される。
【0061】
本開示の更に有利な態様において、本明細書で使用するための第1の固体フィルム及び/又は第2の固体フィルムは、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリエーテルイミド、及びそれらの任意の混合物又は組合せからなる群から選択されるポリマー材料を含むポリマーフィルムである。
【0062】
特に有利な態様において、本開示で使用するための第1の固体フィルム及び/又は第2の固体フィルムは、ポリエステル、特にポリエチレンテレフタレートからなる群から選択されるポリマー材料を含むポリマーフィルムである。
【0063】
本開示の有利な態様によれば、本開示のシリコーンゴム発泡体層は、第1の固体フィルムがシリコーンゴム発泡体の前駆体の層の底面に適用され、第2の固体フィルムが、シリコーンゴム発泡体の前駆体の層の上部(露出)面に適用される、方法によって得られる。
【0064】
本開示の典型的な態様において、第1の固体フィルム及び/又は第2の固体フィルムは、隣接するシリコーンゴム発泡体層に直接接触する。
【0065】
本開示の別の有利な態様において、シリコーンゴム発泡体層の第1の主(上部)面及び第2の(反対側の)主(底部)面、並びに/又は第1の固体フィルム並びに/又は第2の固体フィルムは、任意の接着促進組成物又は処理を(実質的に)含まず、特にプライミング組成物、接着剤組成物、及び物理表面処理を含まない。
【0066】
本開示の更に別の有利な態様において、シリコーンゴム発泡体層の第1の主(上部)面又は第2の(反対側の)主(底部)面と第1の固体フィルム及び/又は第2の固体フィルムとの間には、いかなる種類の中間層も含まれない。
【0067】
本開示の典型的な態様において、第1及び第2の固体フィルムは、シリコーンゴム発泡体層の対応する表面にぴったり合うように滑らかに接触し、それにより固体フィルムとシリコーンゴム発泡体層の対応する表面との間に空気が含まれることを実質的に回避する(又は少なくとも実質的に低減する)。
【0068】
1つの有利な態様によれば、本開示のシリコーンゴム発泡体層は、気体キャビティ、特に気体水素キャビティ、空気気体キャビティ、及びそれらの任意の混合物を含む。
【0069】
1つの有利な態様によれば、本開示のシリコーンゴム発泡体層は、層の厚さ方向に(すなわち、発泡体層によって形成された平面に対して垂直な方向に)(実質的に)長い形状を有する気体キャビティを含む。
【0070】
より有利な態様によれば、シリコーンゴム発泡体層中に存在し得る気体キャビティは、層の厚さ方向に細長い楕円形状を有する。層の厚さ方向に細長い楕円形状を有する例示的な気体キャビティは
図3に示されており、これは、本開示による例示的なシリコーンゴム発泡体層の断面の走査型電子顕微鏡画像である。
【0071】
有利には更に、本明細書で使用するための気体キャビティは、いかなるセラミック又はポリマーシェル(周囲のシリコーンポリマーマトリックス以外)にも囲まれていない。
【0072】
1つの特定の態様において、本明細書で使用するための気体キャビティは、150マイクロメートル以下、120マイクロメートル以下、100マイクロメートル以下、80マイクロメートル以下、60マイクロメートル以下、50マイクロメートル以下、40マイクロメートル以下、30マイクロメートル以下、又は更には20マイクロメートル超(SEM顕微鏡写真から計算した場合)の(最大寸法の)平均サイズを有する。
【0073】
別の特定の態様において、本明細書で使用するための気体キャビティは、5マイクロメートル~3000マイクロメートル、5マイクロメートル~2000マイクロメートル、10マイクロメートル~1500マイクロメートル、20マイクロメートル~1500マイクロメートル、20マイクロメートル~1000マイクロメートル、20マイクロメートル~800マイクロメートル、20マイクロメートル~600マイクロメートル、20マイクロメートル~500マイクロメートル、又は更には20マイクロメートル~400マイクロメートル(SEM顕微鏡写真から計算した場合)の(最大寸法の)平均サイズを有する。
【0074】
典型的な態様によれば、本開示のシリコーンゴム発泡体層は、中空微小球、グラスバブルズ、膨張性マイクロスフェア、特に炭化水素充填膨張性マイクロスフェア、中空無機粒子、膨張無機粒子、及びそれらの任意の組合せ又は混合物からなる群から選択される中空キャビティを(実質的に)含まない。
【0075】
本開示のシリコーンゴム発泡体層は、目的の用途に応じて、追加の(任意選択的な)成分又は添加剤を含み得る。
【0076】
本開示の特定の態様において、シリコーンゴム発泡体層は、難燃剤、軟化剤、硬化剤、充填剤材料、粘着付与剤、核形成剤、着色剤、顔料、保存剤、レオロジー調整剤、UV安定剤、チキソトロープ剤、表面添加剤、フロー添加剤、ナノ粒子、酸化防止剤、補強剤、強靭化剤(toughening agents)、シリカ粒子、炭酸カルシウム、ガラス又は合成繊維、断熱粒子、導電性粒子、電気絶縁粒子、並びにそれらの任意の組合せ又は混合物からなる群から特に選択される添加剤を更に含み得る。例示的な充填剤添加剤としては、三水酸化アルミニウム(ATH)、水酸化マグネシウム(MDH)、ハンタイト-ハイドロマグネサイト、タルク、粘土、ホウ素系難燃剤、モリブデン化合物、スズ化合物、アンチモン化合物、膨張性黒鉛、石膏、炭酸カルシウム、及びこれらの任意の組合せ又は混合物が挙げられる。本開示の特定の態様において、これらの充填剤は、表面処理されてよく、低い吸水率を有し得る。
【0077】
有益な一態様では、シリコーンゴム発泡体層は、不燃性(又は非燃焼性)充填剤材料を更に含む。より有益な態様において、本明細書で使用するための不燃性充填剤材料は、無機繊維の群から、特に鉱物繊維、ミネラルウール、ケイ酸塩繊維、セラミック繊維、ガラス繊維、炭素繊維、グラファイト繊維、アスベスト繊維、アラミド繊維、及び任意の組合せ又は混合物からなる群から選択される。
【0078】
より有利な態様によれば、本明細書で使用するための不燃性充填剤材料は、鉱物繊維、ケイ酸塩繊維、セラミック繊維、アスベスト繊維、アラミド繊維、及び任意の組合せ又は混合物からなる群から選択される。
【0079】
特に有益な態様によれば、本明細書で使用するための不燃性充填剤材料は、鉱物繊維からなる群から選択される。本開示の文脈において、驚くべきことに、鉱物繊維を更に含むシリコーンゴム発泡体が、最大600℃までの温度への長期曝露後であっても、優れた耐熱性及び熱安定性特性並びに表面亀裂及び表面脆性に対する耐性の改善をもたらすことが発見された。理論に束縛されることを望むものではないが、これらの有益な特徴は、特に、得られたマトリックスを高密度化及び機械的に安定化させることに関与する、周囲のシリコーンポリマーマトリックスと鉱物繊維(特にケイ酸塩繊維)との優れた適合性によると考えられる。
【0080】
特定の態様では、本明細書で使用するための不燃性充填剤材料は、シリコーンゴム発泡体の前駆体組成物の全重量に基づいて、0.5重量%~40重量%、1重量%~30重量%、1重量%~20重量%、1重量%~10重量%、1重量%~8重量%、2重量%~8重量%、2重量%~6重量%、又は更には3重量%~6重量%の範囲の量でシリコーンゴム発泡体に含まれる。
【0081】
別の典型的な態様において、本開示のシリコーンゴム発泡体層は、(実質的に)熱伝導性充填剤を含まない。
【0082】
本開示の1つの有利な態様によれば、シリコーンゴム発泡体層は、実験項に記載の方法に従って測定した場合、500kg/m3以下、450kg/m3以下、400kg/m3以下、380kg/m3以下、350kg/m3以下、320kg/m3以下、300kg/m3以下、280kg/m3以下、250kg/m3以下、220kg/m3以下、又は更には200kg/m3以下の密度を有する。
【0083】
本開示の別の有利な態様によれば、シリコーンゴム発泡体層は、実験項に記載の方法に従って測定した場合、200kg/m3~500kg/m3、200kg/m3~450kg/m3、200kg/m3~400kg/m3、200kg/m3~380kg/m3、200kg/m3~350kg/m3、200kg/m3~320kg/m3、200kg/m3~300kg/m3、200kg/m3~280kg/m3、又は更には200kg/m3~250kg/m3の範囲の密度を有する。
【0084】
本開示の更に別の有利な態様によれば、シリコーンゴム発泡体層は、10超、15超、20超、25超、又は更には30超の硬度(ショア00)を有する。
【0085】
本開示の更に別の有利な態様によれば、シリコーンゴム発泡体層は、10~80、10~70、20~70、25~60、25~55、30~55、30~50、30~45、又は更には30~40の範囲の硬度(ショア00)を有する。
【0086】
シリコーンゴム発泡体層は、実験セクションに記載される試験方法に従って測定されるとき、250kPa以下、200kPa以下、150kPa以下、又は更には100kPa以下の圧縮力で60%の圧縮値を有し得る。
【0087】
本開示の更に別の有利な態様によれば、シリコーンゴム発泡体層は、実験項に記載の試験方法に従って測定した場合、20秒超、40秒超、60秒超、80秒超、100秒超、120秒超、140秒超、150秒超、160秒超、170秒超、又は更には180秒超の、150℃までの伝熱時間を有する。
【0088】
本開示の更に別の有利な態様によれば、シリコーンゴム発泡体層は、実験項に記載の試験方法に従って測定した場合、20秒~600秒、40秒~600秒、60秒~500秒、100秒~500秒、120秒~400秒、140秒~300秒、160秒~200秒、又は更には160秒~180秒の範囲の、150℃までの伝熱時間を有する。
【0089】
本開示の更に別の有利な態様によれば、シリコーンゴム発泡体層は、実験項に記載の試験方法に従って測定した場合、1W/m・K以下、0.8W/m・K以下、0.6W/m・K以下、0.5W/m・K以下、0.4W/m・K以下、0.3W/m・K以下、0.2W/m・K以下、又は更には0.1W/m・K以下の熱伝導率を有する。
【0090】
本開示の更に別の有利な態様によれば、シリコーンゴム発泡体層は、実験項に記載の試験方法に従って測定した場合、0.005W/m・K~1W/m・K、0.01W/m・K~1W/m・K、0.02W/m・K~1W/m・K、又は更には0.02W/m・K~0.8W/m・Kの範囲の熱伝導率を有する。
【0091】
本開示の更に別の有利な態様によれば、シリコーンゴム発泡体層は、500℃以下、450℃以下、400℃以下、350℃以下、300℃以下、又は更には250℃以下の温度で、セラミック化プロセスを(実質的に)受ける。
【0092】
本開示の更に別の有利な態様によれば、シリコーンゴム発泡体層は、200℃~450℃、200℃~400℃、200℃~350℃、250℃~350℃、又は更には250℃~300℃の範囲の温度で、セラミック化プロセスを(実質的に)受ける。
【0093】
本開示の文脈において、驚くべきことに、セラミック化プロセスを、特に比較的低い温度で受ける機能を有するシリコーンゴム発泡体層は、優れた耐熱性及び熱安定性特性をもたらすことが発見された。
【0094】
本開示の更に別の有利な態様によれば、シリコーンゴム発泡体層は、UL-94標準可燃性試験方法に従って測定した場合、V-0分類を有する。
【0095】
1つの有利な態様において、本開示のシリコーンゴム発泡体層は、6000マイクロメートル以下、5000マイクロメートル以下、4000マイクロメートル以下、3000マイクロメートル以下、2500マイクロメートル以下、2000マイクロメートル以下、又は更には1500マイクロメートル以下の厚さを有する。
【0096】
別の有利な態様において、本開示のシリコーンゴム発泡体層は、100マイクロメートル~6000マイクロメートル、200マイクロメートル~5000マイクロメートル、300マイクロメートル~5000マイクロメートル、300マイクロメートル~4500マイクロメートル、300マイクロメートル~4000マイクロメートル、500マイクロメートル~4000マイクロメートル、500マイクロメートル~3000マイクロメートル、500マイクロメートル~2500マイクロメートル、500マイクロメートル~2000マイクロメートル、500マイクロメートル~1500マイクロメートル、800マイクロメートル~1500マイクロメートル、又は更には1000マイクロメートル~1500マイクロメートルの範囲の厚さを有する。
【0097】
本開示の1つの特定の態様によれば、シリコーンゴム発泡体層は、第1の固体フィルム及び/又は第2の固体フィルムを備え得る。代替の実行において、シリコーンゴム発泡体層は、第1の固体フィルム及び/又は第2の固体フィルムのいずれも備えていなくてもよい。
【0098】
当業者には明らかであるように、本開示のシリコーンゴム発泡体層は、目的の用途に応じて様々な形態、形状、及び大きさをとり得る。同様に、本開示のシリコーンゴム発泡体層は、当該分野における慣習的な実施であるままに、後処理又は変換され得る。
【0099】
1つの例示的な態様によれば、本開示のシリコーンゴム発泡体層は、コアの周りで巻き取りされる、特に水平巻き取りされるロールの形態をとり得る。巻き取られたロールでのシリコーンゴム発泡体層は、第1の固体フィルム及び/又は第2の固体フィルムを備えていても、備えていなくてもよい。
【0100】
1つの例示的な態様によれば、本開示のシリコーンゴム発泡体層は、様々な形態、形状、及び大きさのより小さな断片にカットされ得る。
【0101】
別の態様によれば、本開示は、シリコーンゴム発泡体層の製造プロセスであって、本プロセスが、
基材を提供する工程と、
第1の固体フィルムを提供し、それを基材上に適用する工程と、
上流側及び下流側を備え、基材からオフセットされて基材の表面に対して垂直方向にギャップを形成するコーティングツールを提供する工程と、
コーティングツールに対して第1の固体フィルムを下流方向に移動する工程と、
シリコーンゴム発泡体の硬化性かつ発泡性の前駆体をコーティングツールの上流側に提供し、シリコーンゴム発泡体の前駆体を第1の固体フィルムを備えた基材上に層としてギャップを通してコーティングする工程と、
第2の固体フィルムを提供し、第1の固体フィルム及び第2の固体フィルムがシリコーンゴム発泡体の前駆体の層の形成と同時に適用されるように、第2の固体フィルムをコーティングツールの上流側に沿って適用する工程と、
シリコーンゴム発泡体の前駆体を発泡させる工程又は発泡を可能にする工程と、
シリコーンゴム発泡体の前駆体を硬化させて又は硬化を可能にして、シリコーンゴム発泡体層を形成する工程と、
任意選択的に、シリコーンゴム発泡体の前駆体の層を熱処理に掛ける工程と、
任意選択的に、シリコーンゴム発泡体層から第1の固体フィルム及び/又は第2の固体フィルムを除去する工程と、を含む、シリコーンゴム発泡体層の製造プロセスに関する。
【0102】
特に基材、第1及び第2の固体フィルム、コーティングツール、ギャップ、シリコーンゴム発泡体の硬化性かつ発泡性の前駆体、任意選択的な成分、並びにシリコーンゴム発泡体層の文脈において上記で説明された様々な加工工程に関連する全ての特定の好ましい態様は、シリコーンゴム発泡体層を製造するための方法に完全に適用可能である。
【0103】
本開示のプロセスの有利な態様によれば、第1の固体フィルムは、シリコーンゴム発泡体の前駆体の層の底面に適用され、第2の固体フィルムは、シリコーンゴム発泡体の前駆体の層の上部(露出)表面に適用される。
【0104】
本開示の方法の別の有利な態様によれば、シリコーンゴム発泡体の硬化性かつ発泡性の前駆体をコーティングツールの上流側に提供する工程が実施された直後に、第2の固体フィルムを提供し、第1の固体フィルム及び第2の固体フィルムがシリコーンゴム発泡体の前駆体の(隣接する)層の形成と(実質的に)同時に適用されるように、第2の固体フィルムをコーティングツールの上流側に沿って適用する工程が行われる。
【0105】
本開示のプロセスの更に別の有利な態様によれば、シリコーンゴム発泡体の前駆体を発泡させる工程又は発泡を可能にする工程と、シリコーンゴム発泡体の前駆体の層を硬化させて又は硬化を可能にして、シリコーンゴム発泡体層を形成する工程とが、(実質的に)同時に実施される。
【0106】
本開示の更に別の有利な態様によれば、方法は、シリコーンゴム発泡体の硬化性かつ発泡性の前駆体が、コーティングツールの上流側に、特に連続分注デバイスから連続的に提供される、連続法である。
【0107】
本開示の更に別の有利な態様によれば、方法は、シリコーンゴム発泡体の硬化性かつ発泡性の前駆体が、コーティングツールの上流側に、特に不連続分注デバイスから不連続的に提供される、不連続法である。
【0108】
方法の更に別の有益な態様において、コーティングツールに対して第1の固体フィルムを備えた基材を下流方向に移動する工程は、0.1m/分~50m/分、0.1m/分~40m/分、0.1m/分~30m/分、0.1m/分~20m/分、0.1m/分~10m/分、0.1m/分~8m/分、0.1m/分~6m/分、0.1m/分~5m/分、0.2m/分~5m/分、0.2m/分~4m/分、0.3m/分~3m/分、0.3m/分~2m/分、0.4m/分~2m/分、0.4m/分~1m/分、又は更には0.5m/分~1m/分の範囲の速度(ウェブ速度)で実施される。
【0109】
方法の更に別の有益な態様において、シリコーンゴム発泡体の硬化性かつ発泡性の前駆体をコーティングツールの上流側に提供する工程は、0.5kg/時~100kg/時、0.5kg/時~80kg/時、0.5kg/時~60kg/時、0.5kg/時~50kg/時、0.5kg/時~40kg/時、0.5kg/時~30kg/時、0.5kg/時~25kg/時、0.5kg/時~20kg/時、0.5kg/時~15kg/時、1kg/時~15kg/時、1.5kg/時~15kg/時、1.5kg/時~10kg/時、2kg/時~10kg/時、2kg/時~8kg/時、又は更には2kg/時~6kg/時の範囲のスループットで実施される。
【0110】
方法の更に別の有益な態様において、シリコーンゴム発泡体の硬化性かつ発泡性の前駆体をコーティングツールの上流側に提供する工程は、10g/m2~5000g/m2、50g/m2~5000g/m2、50g/m2~4000g/m2、50g/m2~3000g/m2、100g/m2~3000g/m2、100g/m2~2500g/m2、150g/m2~2500g/m2、150g/m2~2000g/m2、150g/m2~1500g/m2、150g/m2~1000g/m2、又は更には200g/m2~1000g/m2の範囲のコーティング重量で実施される。
【0111】
方法の更に別の有益な態様において、シリコーンゴム発泡体の前駆体を発泡させる又は発泡を可能にする工程は、100℃以下、90℃以下、80℃以下、70℃以下、60℃以下、50℃以下、40℃以下、又は更には30℃以下の温度で実施される。
【0112】
有利には更に、シリコーンゴム発泡体の前駆体を発泡させる又は発泡を可能にする工程は、15℃~40℃、又は更には20℃~30℃の範囲の温度で実施される。
【0113】
有利には更に、シリコーンゴム発泡体の前駆体を発泡させる又は発泡を可能にする工程は、ガス状化合物、特に水素を用いて実施される。
【0114】
方法の別の有利な態様によれば、シリコーンゴム発泡体の前駆体を発泡させる又は発泡を可能にする工程は、ガス発生又はガス注入のいずれか、特にガス発生によって実施される。
【0115】
方法の更に別の有利な態様によれば、シリコーンゴム発泡体の前駆体の層を硬化させる又は硬化を可能にする工程は、60℃以下、50℃以下、40℃以下、又は更には30℃以下の温度で実施される。
【0116】
有利には更に、シリコーンゴム発泡体の前駆体の層を硬化させる又は硬化を可能にする工程は、15℃~40℃、又は更には20℃~30℃の範囲の温度で実施される。
【0117】
有利には更に、シリコーンゴム発泡体の前駆体の層を硬化させる又は硬化を可能にする工程は、40℃~100℃、50℃~100℃、60℃~100℃、60℃~90℃、又は更には70℃~90℃の範囲の温度で実施される。
【0118】
更に別の有利な態様において、シリコーンゴム発泡体の硬化性前駆体は、72時間以下、48時間以下、又は更には24時間以下の硬化時間後に、23℃で、90%超、95%超、98%超、又は更には99%超の硬化百分率で硬化可能である。
【0119】
更に別の有利な態様において、シリコーンゴム発泡体の硬化性前駆体は、180分以下、210分以下、180分以下、150分以下、120分以下、100分以下、90分以下、80分以下、70分以下、60分以下、50分以下、40分以下、又は更には30分以下の硬化時間後に、23℃で、90%超、95%超、98%超、又は更には99%超の硬化百分率で硬化可能である。
【0120】
本開示の方法の更に別の有利な態様において、シリコーンゴム発泡体の前駆体は、シリコーンゴム発泡体層の文脈において上記で述べた通りである。
【0121】
方法の別の有益な態様によれば、シリコーンゴム発泡体の前駆体は、2剤型組成物、特に付加硬化型2剤型シリコーン組成物、より具体的には付加硬化型2剤型オルガノポリシロキサン組成物であり、シリコーンゴム発泡体の前駆体は、動的混合プロセスに従って2剤型シリコーン組成物の2つの剤を混合することによって得られる。
【0122】
方法の別の有益な態様によれば、2剤型シリコーン組成物の2つの剤を混合する工程は、動的混合デバイスで実施される。有利には更に、2剤型シリコーン組成物の2つの剤を混合する工程は、シリコーンゴム発泡体の硬化性かつ発泡性の前駆体をコーティングツールの上流側に提供する工程の直前に実施される。
【0123】
本開示の方法の更に別の有利な態様において、第1の固体フィルム及び第2の固体フィルムは、シリコーンゴム発泡体層の文脈において上記で述べた通りである。
【0124】
有利な態様によれば、本開示の方法は、任意の接着促進組成物又は接着剤組成物をシリコーンゴム発泡体層の第1の主面及び第2の(反対側の)主面並びに/又は第1の固体フィルム並びに/又は第2の固体フィルムに適用することからなる任意の工程を(実質的に)含まない。
【0125】
別の有利な態様によれば、本開示の方法は、シリコーンゴム発泡体層の第1の主面及び第2の(反対側の)主面並びに/又は第1の固体フィルム並びに/又は第2の固体フィルムを(物理的に)処理してそれらの接着特性を高めることからなる任意の工程を(実質的に)含まない。
【0126】
別の態様によれば、本開示は、上記のようなシリコーンゴム発泡体層を含む断熱/熱保護バリア物品を対象とする。
【0127】
更に別の態様によれば、本開示は、再充電可能な電気エネルギー貯蔵システム、特に、上述の断熱/熱保護バリア物品を備えるバッテリーモジュールに関する。
【0128】
更に別の態様において、本開示は、ギャップによって互いに分離された複数の電池セルと、電池セル間のギャップに配置された上記のようなシリコーンゴム発泡体層と、を備える電池モジュールに関する。
【0129】
図4は、本開示の一態様による例示的な組み立てられた電池モジュール15を示しており、これは、ギャップによって互いに分離された複数の電池セル16と、電池セル16間のギャップに配置された複数のシリコーンゴム発泡体層17と、を備える。電池モジュールには更に、熱伝導性ギャップ充填剤18が配置されているベースプレート19が設けられている。
【0130】
本明細書で使用するための好適な電池モジュール、電池サブユニット、及びその製造方法は、例えば、欧州特許第3352290(A1)号(Goebら)、特に
図1~
図3及び段落[0016]~[0035]に記載されており、その内容は、参照により本明細書に完全に組み込まれる。
【0131】
更に別の態様によれば、本開示は、バッテリーモジュールの製造方法であって、
a)ギャップによって互いに分離された複数の電池セルを提供する工程と、
b)電池セル間のギャップに上記のシリコーンゴム発泡体層を配置する工程と、を含む、方法を対象とする。
【0132】
更に別の態様によれば、本開示は、上記のシリコーンゴム発泡体層の、産業用途のための、特に熱管理用途のための、より詳細には自動車産業における使用に関する。
【0133】
更に別の態様によれば、本開示は、上記のシリコーンゴム発泡体層の、熱バリア、特に断熱/熱保護バリアとしての使用に関する。
【0134】
更に別の態様において、本開示は、上記のシリコーンゴム発泡体層の、充電式電気エネルギー貯蔵システムにおける、特に電池モジュールにおける、断熱/熱保護バリア、特に熱暴走バリアとしての使用に関する。
【0135】
更に別の態様において、本開示は、上記のシリコーンゴム発泡体層の、再充電式電気エネルギー貯蔵システム、特に電池モジュール内に存在する複数の電池セル間の断熱/熱保護バリアスペーサ、特に熱暴走バリアスペーサとしての使用に関する。
【実施例】
【0136】
以下の実施例により本開示を更に説明する。これらの実施例は、単に説明する目的のためのものに過ぎず、添付の特許請求の範囲を限定することを意図するものではない。
【0137】
試験方法
1)熱安定性試験(600℃)
この試験を600℃のマッフル炉で実施した。試験片を試料シートから切り取り、磁器るつぼに入れた。次いで、磁器るつぼを600℃で3分間炉内に置き、次いで取り出し、放冷後顕微鏡検査によって分析した。600℃で3分後の試料の重量損失(%)を計算した。
【0138】
2)断熱試験
この試験を、Zwick製の引張/圧縮試験機を使用して圧縮モードで実施した。
【0139】
圧縮試験機は、2つのプレート(寸法:65×80×20mmのW×L×H、Inconel(登録商標)スチール製、外面が断熱されている):温度を記録するための、熱電対を備えた低温(23℃)底プレート、及び600℃の一定温度で加熱される上部プレートを備える。試験の開始時に、熱シールドを2つのプレートの間に配置した。試料を低温底プレート上に置き、熱シールドを取り外した。上部プレートを2つのプレート間で1000マイクロメートルのギャップに移動させた。低温プレート冷板の温度上昇を経時的に記録する。具体的には、低温プレートが150℃に達する時間を秒で記録した。
【0140】
3)熱伝導率測定
硬化組成物の熱伝導率を、ASTM E1461/DIN EN821(2013)に従ってNetzsch Hyperflash LFA467(Netzsch,Selb,Germany)でフラッシュ分析法を使用して測定する。厚さ1mmの試料を、2つのPET剥離ライナーの間に硬化性組成物をナイフコーターでコーティングし、室温で硬化させることによって調製する。次いで、試料を、ナイフカッターを用いて10mm×10mmの正方形に注意深くカットして、試料ホルダーに適合させる。測定前に、試料の両側を、グラファイトの薄層(GRAPHIT33、Kontakt Chemie)でコーティングする。測定では、光のパルス(キセノンフラッシュランプ、230V、20~30マイクロ秒の持続時間)を底部側に照射した後、試料の上部側の温度を、InSb IR検出器によって測定する。次いで、Cowan法を使用することによって、サーモグラムのフィッティングから拡散率を計算する。3つの測定を23℃で各試料について行う。各配合物について、3つの試料を調製し、測定する。熱伝導率を、各試料の熱拡散率、密度、及び比熱容量から計算する。標準試料(Polyceram)と組み合わせてNetzsch-LFA Hyper Flashを使用して、ジュール毎グラム毎ケルビンで、熱容量(Cp)を計算する。密度(d)は、試料の重量及び幾何学的寸法に基づいてグラム毎立方センチメートルで決定する。これらのパラメータを使用して、熱伝導率(L)は、L=a・d・Cpに従って、ワット毎メートル・ケルビンで計算した。
【0141】
4)可燃性試験
試験を、UL94規格、すなわち、装置及び器具部品用プラスチック材料の可燃性の安全性試験に関する規格を使用して実施した。UL94規格は、米国のUnderwriters Laboratoriesによって発表されたプラスチックの可燃性規格である。この規格は、試験片が発火した際に材料が炎を消火するか又は広げる傾向があるかどうかを決定する。UL-94規格は、IEC 60707、60695-11-10及び60695-11-20並びにISO 9772及び9773と整合している。75mm×150mmのシートである試料サイズを、2cm、50Wのチリルバーナー(tirrel burner)火炎点火源に曝露する。試験試料を、試験火炎が試料の底部に当たる状態で、火炎の上に垂直に配置した。各試料について、消火までの時間を測定し、V等級をつけた。以下の表1に示すように、V等級は、試料がクランプ上部まで燃焼しないか、又は綿指標を発火させる溶融材料を落下させない状態での、消化するまでの時間の尺度である。
【0142】
【0143】
5)圧縮試験
圧縮試験を、Zwick製の引張試験機を使用して圧縮モードで実施した。実施例に使用される試料は、50.8mmの直径及び>1000マイクロメートルの厚さを有していた。試験は室温(典型的には23℃)で実施した。圧縮試験機の上部プレートを、2MPaの最大力が達成されるまで1mm/分の速度で移動させた。圧縮値に達するのに必要な圧縮力を記録する(kPaで)か、又は所与の圧縮力から得られる圧縮値を記録した。圧縮力を試料の変形に対してプロットする。
【0144】
6)コーティング重量
シリコーンゴム発泡体層のコーティング重量を、サークルカッターを使用して試料層から切り取った100cm2の試料を秤量することによって測定した。次いで、コーティング重量をg/m2に換算した。
【0145】
7)厚さ
シリコーンゴム発泡体層の厚さを、厚さゲージを使用して測定した。
【0146】
8)密度
シリコーンゴム発泡体層の密度(kg/m3単位)を、発泡体層のコーティング重量(kg/m2単位)をそれらの厚さ(m単位)で除算することによって計算した。
【0147】
9)SEM顕微鏡写真
シリコーンゴム発泡体画像は、株式会社日立ハイテクから入手可能な卓上顕微鏡TM3030で記録されたSEM顕微鏡写真から得た。
【0148】
10)高温側/低温側試験(HCST)
この試験を、Zwick製の引張/圧縮試験機を使用して圧縮モードで実施した。圧縮試験機は、2つのプレート:温度を記録するための熱電対(554)を備えた冷たい(RT)底部プレート(552)及び600℃の一定温度を有する加熱された上部プレート(555)を備えている。上部プレート(555)は、エレメント(557)で加熱されている。試験の開始時において、熱シールド(558)が2つのプレートの間にある。試料を底部低温プレート上に置き、次いで熱シールドを除去し、上部プレートを2つのプレート間の所望のギャップ(ここでは1.0mm)又は所望の圧縮力まで移動させ、低温側の温度を記録し始める。
図5を参照されたい。実施例に応じて、圧縮力は0.1MPa、0.5MPa又は1.0MPaであった。圧縮力はシリンダ(562)を介して加えられ、底部プレート(552)はシリンダ(560)によって支持されている。
【0149】
原材料:
実施例では、以下の原材料を使用した。
【0150】
DOWSIL 3-8209及びDOWSIL 3-8235は、Dow Chemical Company(Midland,MI,United States)から入手したDOWSILの商品名で市販されている2剤型室温硬化性シリコーンゴム発泡体配合物である。使用したDowsil 3-8209は、1.07kg/cm3のA剤密度、1.01kg/cm3のB剤密度、15000mPa.sのA剤粘度、及び15000mPa.sのB剤粘度を有する。
【0151】
BLUESIL 3242は、ELKEM(Olso,Norway)から入手したBLUESILの商品名で市販されている2成分発泡体である。
【0152】
Hostaphan RN 50/50は、Mitsubishi Polyester Film(Greer,SC.United States)から入手したニートなPET固体フィルムである。
【0153】
CoatForce CF30はケイ酸塩繊維であり、CoatForce 50は鉱物繊維であり、両方ともRockwool B.V.,The Netherlands)から入手している。
【0154】
Martinal OL-104LEOは、商品名Martinal OL-104LEOで入手可能なMartinswerk GmBH(Bergheim,Germany)から入手した、微細な三水酸化アルミニウム(ATH)である。
【0155】
IMERSEAL 74Sは、WhitChem(Staffordshire,United Kingdom)から入手した商品名IMERSEALで入手可能な表面処理された炭酸カルシウムである。
【0156】
Magnifin H-5は、1.8μmのd50を有する微細な水酸化マグネシウム(MDH)であり、Martinswerk Huber Mineralsから購入した。
【0157】
Magnifin H-5Aは、ビニル表面修飾及び1.8μmのd50を有する微細な水酸化マグネシウム(MDH)であり、Martinswerk Huber Mineralsから購入された。
【0158】
Aeroxide PF2は、Evonikから入手した2%の二酸化鉄を有するパイロジェニック二酸化チタンである。
【0159】
AFI PU Foamは、Aerofoam Industries(Lake Elsinore,CA,United States)から入手した、難燃性ポリマー発泡体として市販されている、約2000マイクロメートルの厚さを有するポリウレタン発泡体シートである。
[実施例]
【0160】
充填剤を含有する例示的なシリコーンゴム発泡体層の全般的な手製調製方法(実施例1~5):
例示的な手製シリコーンゴム発泡体層を、以下の手順に従って調製した。
【0161】
重量部で特定された鉱物繊維(表1を参照)を、2500RPMの速度で30秒間、2回、高速ミキサーを使用して、シリコーン発泡体の各A剤及びB剤に添加した。
【0162】
表7に特定された重量部の量の材料を、Adchem GmbH製の200mLの2剤型カートリッジシステム(200mLのFシステムカートリッジ)に、1:1の容積混合比で添加した。2剤型シリコーン系を、4バールの空気圧で分注ガンを使用して、スタティックミキサー(MFH10-18T)により混合した。50gの混合シリコーンをジャー内に放出した後、混合物を、木製スパチュラを使用して10秒間手で更に均質化した。次いで、
図1に表されるように、この混合物を、固体フィルムHostaphanの2つの層の間に350マイクロメートルのギャップ厚さでナイフコーターによりコーティングした。得られたシートは膨張し始め、シートを80℃の強制空気オーブンに10分間置くことによって反応が完了した。厚さ、コーティング重量、密度、熱伝導率、及び圧縮試験を実施し、その結果も、表1に含まれる。
【0163】
【0164】
充填剤を含有する例示的なシリコーンゴム発泡体層の全般的な手製調製方法(実施例6~8):
別の鉱物繊維が含まれたことを除いて、実施例1~5に記載されているのと同じ手順に従った(2剤型組成物を200mLのカートリッジに添加する前にATHと予め混合した)。また、得られたシートは膨張し始め、シートを40℃の強制空気オーブンに10分間置くことによって反応が完了した。次いで、
図1に示すように、混合物を、350マイクロメートル(実施例6)、400マイクロメートル(実施例7)、及び800マイクロメートル(実施例8)のギャップ厚さで、Hostaphan R 50/50固体フィルムの2つの層の間にナイフコーターを用いてコーティングした。厚さ、コーティング重量、密度、熱伝導率、及び圧縮試験を実施した。結果は、重量部でのA剤及びB剤の量とともに表2に含まれる。
【0165】
【0166】
例示的なシリコーンゴム発泡体層(実施例1~8)並びに比較例CE1及びCE2の全般的な手製調製方法:
A剤及びB剤を、対応する充填剤及び硬靭化パッケージと一緒に秤量し、手で混合した。その後、それらをSpeedmixerにおいて、2500rpmで30秒間、2回混合した。
【0167】
シリコーン発泡体シートを以下の手順に従って調製した:各実施例のシリコーン前駆体A剤及びB剤を、1:1の体積混合比でAdchemからの200mLの2剤型カートリッジシステム(200mLのF Systemカートリッジ)に充填した。プロセス1では、材料を室温に維持したが、プロセス2の材料は混合前に7℃に冷却した。2剤型シリコーン系を、6バールの空気圧で分注ガンを使用して、スタティックミキサー(MFH10-18T)により混合する。65gの混合シリコーンをジャー内に放出した後、混合物を、木製スパチュラを使用して10秒間、手で更に均質化する。次いで、この混合物を、規定のギャップを有する2つのPETライナーの間でナイフコーターを用いてコーティングする。得られたシートは室温で既に膨張し始め、反応は60℃の強制空気対流オーブン内で10分間で完了する。プロセス1では、得られたシートを直ちにオーブンに入れたが、プロセス2では、材料を室温で10分間保持した。
【0168】
【0169】
高温側/低温側試験性能
高温側/低温側試験(HCST)において、発泡体は、一方の側(高温側)で600℃に加熱され、圧力が加えられ、これが発泡体を圧縮する。温度は発泡体の反対側で測定される。所与の圧力での発泡体の圧縮により、高温側と低温側との間のギャップが減少する。本発明の発泡体の隔離性能に対するギャップサイズの影響を調査するために、異なる厚さ及び圧縮挙動を有する発泡体を調製した(実施例9~15)。
【0170】
HCST実験.表3は、これらの実験に使用された発泡体をまとめる。HCSTの初期ギャップサイズ、HCSTにおける印加圧力、HCSTにおいて10分後に得られた低温側の温度、HCSTにおいて10分後に得られたギャップサイズ及び圧縮値(THCST=600℃)を表1にまとめる。更に、圧縮試験方法から得られた室温での同じ圧力における圧縮値が与えられている。
【0171】
ギャップの大きさ及び低温側の温度を、表3からの試料を用いてHCSTにおいて10分後に調査した。
図6は、10分間のHCST後のギャップサイズからの10分間のHCST後の低温側の温度の依存性を示す。これらの値の間の相関は、調査されたシステム及び実験設計空間について線形であり、これは、隔離性能が、HCSTにおけるギャップ保持の増加とともに増加することを意味する。より高いギャップ保持は、発泡体の硬靭さを増加させることによって達成することができる。
【0172】
【0173】
【0174】
発泡体の硬靭さ性能
どのように発泡体の硬靭さを増加させるかを理解するために、発泡体中の異なる充填剤の影響を評価した。表3に、試験した発泡体をまとめる。
図7は、発泡体の圧縮試験結果を示す。
【0175】
実施例15~17は、増加したATH(9.8体積%から13.7体積%へ)及びCaCO3(9.9体積%から13.8体積%へ)濃度の影響を示す。発泡体の硬靭さは、充填剤濃度の増加とともに増加する。また、発泡体の密度(0.36g/mL~0.5g/mL)及びコーティング重量(980~1167g/m2)は増加するが、発泡体の厚さは、所与のギャップサイズで充填剤負荷が増加するにつれて減少する。
【0176】
実施例16、18及び14の比較は、一定の充填剤レベル(重量部)で増加した繊維濃度(0.7体積%から2.8体積%へ)の影響を示す。発泡体の硬靭さは、繊維濃度の増加とともに増加する。実施例14Aからの発泡体の2つの層を用いて圧縮試験も行った。この構造の硬靭さは、単一層構造と比較してわずかに低い。
【0177】
実施例19は、非常に高い充填剤(14.8体積%のATH及び15体積%のCaCO3)並びに繊維濃度(2.3体積%)を有する発泡体に相当する。得られた発泡体は極めて硬靭であり、0.75g/mLの非常に高い密度を有する。特に、A剤の粘度は非常に高く、おそらくプロセス3による加工性の上限に近い。
【0178】
実施例20は、6830μmのより厚い厚さを有する発泡体に相当する。通常、発泡体の硬靭さは、厚さが増すにつれて減少する。この実施例ではより厚い発泡体が製造されるが、発泡体の硬靭さは依然として高い。
【0179】
【0180】
圧縮曲線
図8は、実施例14A(2層)のHCSTの結果を示す。10分後の温度は156℃であり、これはこれまでに試験された他の発泡体と比較して非常に有望な結果である。
【0181】
例示的なシリコーンゴム発泡体層並びに比較例CE1及びCE2の全般的な手製調製方法:
A剤及びB剤を、対応する充填剤及び硬靭化パッケージと一緒に秤量し、手で混合した。その後、それらをSpeedmixerにおいて、2500rpmで30秒間、2回混合した。
【0182】
シリコーン発泡体シートを以下の手順に従って調製した:各実施例のシリコーン前駆体A剤及びB剤を、1:1の体積混合比でAdchemからの200mLの2剤型カートリッジシステム(200mLのF Systemカートリッジ)に充填した。2剤型シリコーン系を、6バールの空気圧で分注ガンを使用して、スタティックミキサー(MFH10-18T)により混合する。70gの混合シリコーンをジャー内に放出した後、混合物を、木製スパチュラを使用して10秒間手で更に均質化する。次いで、この混合物を、規定のギャップを有する2つのPETライナーの間でナイフコーターを用いてコーティングする(ここでは650μm)。得られたシートは室温で既に膨張し始め、反応は60℃の強制空気対流オーブン内で10分間で完了する。
【0183】
比較例
本明細書に記載されるようにコーティングされた市販のシリコーンフォーム配合物Dowsil 3-8235及びDowsil 3-8209(比較例1及び比較例2)。Dowsil 3-8235パートA及びBは非常に高い粘度(それぞれ77000及び91000mPa.s)を有するが、Dowsil 3-8209は非常に低い粘度(それぞれ15000及び15000mPa.s)を有する。比較例1は、表1に見られるように非常に均質な軟質発泡体をもたらしたが、比較例2は、巨視的気泡ドメインを有する不均質な発泡体シートをもたらした。比較例1及び2は両方とも非常に軟質であり、40、50及び60%の変形での低い圧縮力に見ることができる。それらは高温でセラミック化プロセスを受けるが、それらは電池セル間で発生するような外部応力下で高度に圧縮される。この高い圧縮性は、1MPa応力下の600℃でのHCSTに見られるように、一定の圧力下での絶縁特性に影響を及ぼす。比較例1の場合、発泡体が1MPa下で圧縮されるとき、60秒後に既に150℃に達する(表1)。
【0184】
ATH及びCaCO3を充填したシリコーン発泡体
シリコーン発泡体の圧縮挙動を調整するために、硬靭化パッケージを低粘度発泡体前駆体Dowsil 8209に添加した。硬靭化充填剤の添加は、発泡体性能に以下の影響を与えた。
・発泡体前駆体部分の粘度を増加させることによる、より良好で均一な発泡体の質
・より良好な難燃性
・硬化した発泡体シートにおける内部ストレスの低減(不在):例えば、非常に良好な寸法安定性
・>250℃の温度でのシリコーン発泡体のより良好なセラミック化(すなわち、シリコーンのシリカ系セラミックへの変換)
・圧縮特性の調整
・亀裂の防止、セラミック化発泡体の機械的一体性
・価格の低減
【0185】
アルミニウム三水和物(ATH)、炭酸カルシウム及び任意選択でセラミック繊維を組み込む場合、低粘度発泡体前駆体Dowsil 3-8209の粘度を有利に増加させて、非常に均質な発泡体シートを得ることができた(実施例25~実施例27)。実施例26及び27(予言的な実施例)では、シリコーン発泡体の耐熱性を高めるために、少量のナノTiO2を更に組み込んだ。これらの充填剤を組み込むことは、それらの圧縮特性を有利に増加させる:発泡体はより硬くなり、より良好な外部圧縮応力に耐えることを可能にした:0.5MPaの荷重下で、低温側は385秒後にのみ150℃に達し、これは、比較例1などの非常に軟質の発泡体を超える有意な改善である(表6)。
【0186】
【0187】
【0188】
図9は、0.5MPa圧力下、600℃で高温側の実施例25の層のHCSTである。
【0189】
水酸化マグネシウム及びCaCO3を充填したシリコーン発泡体
別の非常に好ましい難燃剤及び煙抑制剤は、マグネシウム二水和物(MDH)である。ATHに対する1:1の交換(実施例21対実施例25)では、MDH充填前駆体は、同じ充填剤添加量でより硬靭な発泡体構造をもたらす。また、密度はより高い(0.42対0.32 kg/cm3)。MDH及びCaCO3の充填剤量を更に増加させると、より硬靭な発泡体構造が得られる。非常に柔らかい発泡体(比較例1及び2)と比較してより硬靭な発泡体の利点は、それらが所与の圧縮応力で電池セル間により高いギャップを維持していることである。このより高いギャップは、1MPaの圧縮力下で実施例21及び22の2層のHCSTにおいて見られ得るように、より良好な断熱特性をもたらす。実施例21の場合、387秒後にのみ150℃に到達し、実施例22の場合、531秒後に到達する。実施例24は、興味深いことに、表面改質MDHが非常に高密度の発泡体 (0.57kg/cm3)をもたらすことを示している。
【0190】
図10は、1MPa圧縮下での実施例21の2層のHCSTの結果を示す。
図11は、600℃のホットプレートと接触させて17分後の実施例21の2つの層の写真を示す(左:高温側、右:低温側)。
【0191】
図11から、高温側はセラミック化プロセスを受け始めたが、低温側は依然としてシリコーンゴム発泡体であることが分かる。
【0192】
熱重量分析
比較例2(ニートシリコーン発泡体)、MDH及びCaCO3で充填された実施例21、並びにATH及びCaCO3で充填された実施例25について、N2中の熱重量分析(TGA)によってもセラミック化プロセスを分析した。
【0193】
図12に示されるN
2におけるTGA分析から、MDH充填発泡体は、ATH充填発泡体よりも遅く重量損失を開始する。約725℃の温度で観察される重量損失は、炭酸カルシウムの熱酸化に関連する。
【0194】
超微細MDH又はATH及びCaCO3のシリコーン発泡体前駆体への添加は、以下のいずれか、より多く、又は全てを可能にすることができる。
・微細な気泡分布及び均一な厚さを有する最適な発泡体シートの質を得るために発泡体前駆体の流動性を制御すること
・充填剤充填量を調整することによって発泡体シートの圧縮挙動を調整すること
・発泡体シートの高い寸法安定度を有する非常に硬靭なシリコーン発泡体シートを(内部ストレスなしに)作製することができること
・電池アセンブリ(例えば、電動ビークル又はEV電池アセンブリ)内のクッション材料として使用されるとき、熱伝播を効果的に遅延又は防止すること
・非常に高い温度(>300℃)で例外的な断熱特性を有するシリコーン発泡体シートを製造すること
・安価な充填剤を配合することによって高価なシリコーン材料の価格を効果的に下げること
・(補強を提供するために)短い長さを有するセラミック繊維が添加される場合、高温でのセラミック化プロセス中の耐亀裂性が大幅に改善されること。約250~750μm(例えば、約500μm)の長さを有する繊維が望ましい場合がある。
【0195】
追加の開示
【0196】
【0197】
試験方法:
圧縮試験
圧縮試験を、引張試験機(ZWICKROELL(Ulm,Germany)から入手)を使用して圧縮モードで実施した。試料は、33mmの直径及び>1000マイクロメートルの厚さを有していた。試験は室温(典型的には23℃)で実施した。圧縮試験機の上部プレートを、2MPaの最大力が達成されるまで1mm/分の速度で移動させた。30%、40%、50%、及び/又は60%の圧縮値に達するのに必要な圧縮力(kPa単位)を記録した。
【0198】
高温側/低温側試験(HCST)
10kN引張試験機(ZWICKROELL(Ulm,Germany)から入手)で、上部金属プラテン(90×70mmの直径を有する)を600℃に加熱し、23℃に設定した熱電対を埋め込んだ下部金属プラテン上に試料を置いた。熱シールドを用いて試料を覆い、試料が周囲温度に留まることを確実にした。次いで、熱シールドを取り外し、圧力を1MPaに保持しながら上部プラテンを下げた。低温側で150℃に達するのに要した時間、試験前後のギャップ厚さ、及び低温側の温度(℃)を記録した。
【0199】
粘度試験(流動曲線)
粘度試験は、応力制御レオメーター(Anton Paar,Austria,MCR 302)を使用して行った。試料を室温(典型的には23℃)で、直径25mmの平行板形状を用いて1mmのギャップで測定した。30秒間の0.5s-1の一定のせん断速度及び300秒の回復時間での試料の事前調整後、せん断速度ランプを0.1s-1から100s-1まで実施したところ、データポイント当たりの測定時間は15秒から0.5秒まで対数的に減少した。0.1s-1、1s-1及び10s-1での剪断速度依存粘度値を例示的に報告した。
【0200】
実施例28~34
表7は、発泡体及び充填剤組成物(重量部)の概要を提供し、並びに組み立てに使用されるプロセス、並びに試料の厚さ、コーティング重量、及び密度を特定する。これらの試料に圧縮試験を施し、その結果を表7に示す。
【0201】
【0202】
【国際調査報告】