(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-02
(54)【発明の名称】定量吸入器及び溶液組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 9/12 20060101AFI20240925BHJP
A61K 31/573 20060101ALI20240925BHJP
A61K 31/46 20060101ALI20240925BHJP
A61P 11/06 20060101ALI20240925BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20240925BHJP
A61P 5/44 20060101ALI20240925BHJP
A61K 47/06 20060101ALI20240925BHJP
A61K 47/10 20170101ALI20240925BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240925BHJP
A61M 15/00 20060101ALI20240925BHJP
A61M 11/00 20060101ALI20240925BHJP
【FI】
A61K9/12
A61K31/573
A61K31/46
A61P11/06
A61P11/00
A61P5/44
A61K47/06
A61K47/10
A61P43/00 121
A61M15/00 Z
A61M11/00 D
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024515084
(86)(22)【出願日】2022-09-08
(85)【翻訳文提出日】2024-04-09
(86)【国際出願番号】 US2022042956
(87)【国際公開番号】W WO2023039101
(87)【国際公開日】2023-03-16
(32)【優先日】2021-09-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2022-03-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2022-04-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520448463
【氏名又は名称】キンデーバ ドラッグ デリバリー リミティド パートナーシップ
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100146466
【氏名又は名称】高橋 正俊
(74)【代理人】
【識別番号】100202418
【氏名又は名称】河原 肇
(72)【発明者】
【氏名】フィリップ コックス
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンダー スローイー
(72)【発明者】
【氏名】ベンジャミン マイアット
(72)【発明者】
【氏名】サラ リグルスワース
(72)【発明者】
【氏名】ジェイムズ リスター
(72)【発明者】
【氏名】ローレン ハリソン
(72)【発明者】
【氏名】チャド ハラルドソン
(72)【発明者】
【氏名】ジョセフ ミラー
(72)【発明者】
【氏名】ジェイムズ ドレイク
(72)【発明者】
【氏名】スティーブン スタイン
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA24
4C076BB27
4C076CC04
4C076CC15
4C076DD35
4C076DD37
4C086AA01
4C086AA02
4C086CB22
4C086DA10
4C086MA02
4C086MA03
4C086MA04
4C086MA05
4C086MA13
4C086MA55
4C086NA05
4C086ZA59
4C086ZB11
4C086ZC75
(57)【要約】
計量バルブ、キャニスタ、及びアクチュエータノズルを有するアクチュエータを含む定量吸引器であって、キャニスタは製剤を含み、製剤は70重量%超のHFO-1234ze(E)を有する製剤、及び製剤中に溶解して溶液を形成する少なくとも1種の医薬品有効成分を含み、医薬品有効成分は好ましくはベクロメタゾン、ホルモテロール又はチオトロピウムから選択される、定量吸引器。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
計量バルブと;
キャニスタと;
アクチュエータノズルを含むアクチュエータと;
を含む定量吸入器であって、前記キャニスタは製剤を含み、前記製剤は70重量%超の推進剤HFO-1234ze(E)、及び前記製剤中に溶解して溶液を形成する少なくとも1種の医薬品有効成分を含む、定量吸入器。
【請求項2】
前記医薬品有効成分が、β刺激薬(短時間又は長時間作用のβ刺激薬)、コルチコステロイド、抗コリン剤、TYK阻害剤、及びそれらの組み合わせから選択される、請求項1に記載の吸入器。
【請求項3】
前記コルチコステロイドがベクロメタゾン及びシクレソニドから選択される、請求項2に記載の吸入器。
【請求項4】
前記抗コリン剤がイプラトロピウム、チオトロピウム、アクリジニウム、ウメクリジニウム及びグリコピロニウムから選択される、請求項2に記載の吸入器。
【請求項5】
前記β刺激薬(短時間又は長時間作用のβ刺激薬)が、ホルモテロール、インダカテロール、オロダテロール、ビランテロール、及びアベジテロールから選択される、請求項2に記載の吸入器。
【請求項6】
前記製剤が溶液中に少なくとも2種の医薬品有効成分を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の吸入器。
【請求項7】
溶液中の1種の医薬品有効成分は短時間又は長時間作用のβ刺激薬であり、1種の医薬品有効成分はコルチコステロイドである、請求項6に記載の吸入器。
【請求項8】
溶液中の前記製剤が抗コリン剤を更に含む、請求項7に記載の吸入器。
【請求項9】
計量バルブと;
キャニスタと;
アクチュエータノズルを含むアクチュエータと;
を含む定量吸入器であって、前記キャニスタは製剤を含み、前記製剤はHFO-1234ze(E)を含む推進剤、及びベクロメタゾン又はその医薬的に許容される塩若しくはエステルを含む医薬品有効成分を含み、前記ベクロメタゾン又はその医薬的に許容される塩若しくはエステルは、前記製剤中に溶解して溶液を形成する、定量吸入器。
【請求項10】
計量バルブと;
キャニスタと;
アクチュエータノズルを含むアクチュエータと;
を含む定量吸入器であって、前記キャニスタは製剤を含み、前記製剤はHFO-1234ze(E)を含む推進剤、及びホルモテロール又はその医薬的に許容される塩若しくはエステルを含む医薬品有効成分を含み、前記ホルモテロール又はその医薬的に許容される塩若しくはエステルは、前記製剤中に溶解して溶液を形成する、定量吸入器。
【請求項11】
計量バルブと;
キャニスタと;
アクチュエータノズルを含むアクチュエータと;
を含む定量吸入器であって、前記キャニスタは製剤を含み、前記製剤はHFO-1234ze(E)を含む推進剤、並びにホルモテロール又はその医薬的に許容される塩若しくはエステル及びベクロメタゾン又はその医薬的に許容される塩若しくはエステルを含む活性医薬成分を含み、前記ホルモテロール又はその医薬的に許容される塩若しくはエステル及び前記ベクロメタゾン又はその医薬的に許容される塩若しくはエステルは、前記製剤中に溶解して溶液を形成する、定量吸入器。
【請求項12】
計量バルブと;
キャニスタと;
アクチュエータノズルを含むアクチュエータと;
を含む定量吸入器であって、前記キャニスタは製剤を含み、前記製剤はHFO-1234ze(E)を含む推進剤、及びチオトロピウム又はその医薬的に許容される塩若しくはエステルを含む医薬品有効成分を含み、前記チオトロピウム又はその医薬的に許容される塩若しくはエステルは、前記製剤中に溶解して溶液を形成する、定量吸入器。
【請求項13】
HFO-1234ze(E)が唯一の推進剤である、請求項1~12のいずれか一項に記載の吸入器。
【請求項14】
前記製剤がエタノールを更に含む、請求項1~13のいずれか一項に記載の吸入器。
【請求項15】
前記製剤の総重量に対するエタノールの量が5%から20%である、請求項14に記載の吸入器。
【請求項16】
前記製剤が有機酸、無機酸又はそれらの組み合わせを更に含む、請求項1~15のいずれか一項に記載の吸入器。
【請求項17】
前記製剤が、全製剤の重量に対して0.04%から0.4%の酸を含む、請求項16に記載の吸入器。
【請求項18】
前記計量バルブが、25マイクロリットルから200マイクロリットルのサイズを有する計量チャンバを含む、請求項1~17のいずれか一項に記載の吸入器。
【請求項19】
被覆された内部構成要素を含まない、請求項1~18のいずれか一項に記載の吸入器。
【請求項20】
前記アクチュエータノズルが、0.12mmから0.3mmの出口オリフィスの有効径を含む、請求項1~19のいずれか一項に記載の吸入器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、その全体が参照として本明細書に組み込まれる、2021年9月8日に出願された米国特許仮出願第63/241,677号、2022年3月1日に出願された米国特許仮出願63/315,337号、及び2022年4月6日に出願された米国特許仮出63/328,120号に対する優先権を主張する。
【0002】
呼吸器疾患及び他の疾患の治療のためのエアロゾル化された薬剤の気道への送達には、例として、加圧噴霧式定量吸入器(pMDI)、ドライパウダー式吸入器(DPI)、又はネブライザー型を使用することができる。喘息又は慢性閉塞性肺疾患(COPD)を罹患している多くの患者にとってpMDIは馴染みがある。pMDI装置は、計量バルブで密閉されている、薬剤製剤を包含するアルミニウム製のキャニスタを含むことがある。一般に、典型的な現行の薬剤製剤は、液化したハイドロフルオロアルカン(HFA)推進剤中に存在する1種又は複数種の薬効のある化合物を含む。
【0003】
歴史的に、ほとんどのpMDI中の推進剤はクロロフルオロカーボン(CFCs)であった。しかしながら、1990年代の環境的関心は、pMDI中で最も一般的に使用される推進剤として、CFCsからハイドロフルオロアルカン(HFAs)への置き換えを導いた。HFAはオゾン破壊を引き起こさないが、高い所定の地球温暖化係数(GWP)を有する。GWPは、ある物質の排出による将来の放射効果を、同量の二酸化炭素(CO2)の排出による将来の放射効果と比較する測定である。pMDI中に最も一般的に使用される2つのHFA推進剤は、HFA-134a(CF3CH2F)及びHFA-227(CF3CHFCHF3)であり、それぞれ1300から1430及び3220から3350の100年間の所定のGWP値を有する。
【0004】
年来、様々な他の推進剤が提案されてきた。それらの中で、ハイドロフルオロオレフィン(HFOs)及び二酸化炭素(CO2)はpMDIのための推進剤の見込みがあるとして言及されてきたが、推進剤としていずれかを用いたpMDI製品で開発又は商業化に成功したものはない。
【発明の概要】
【0005】
HFO-1234ze(E)には他のpMDI推進剤とは異なる点があるにも拘わらず、実用的なpMDIをHFO-1234ze(E)を使用して作製できることが今般見出された。このようなpMDIの有利な点の1つは、HFO-1234ze(E)の所定のGWPが1未満なことである。
【0006】
一実施形態において、計量バルブと;キャニスタと;アクチュエータノズルを含むアクチュエータとを含むpMDI(本明細書ではMDI又は定量吸入器とも呼ばれる)が提供され、キャニスタは製剤(すなわち組成物)を含み、製剤は70重量%超の推進剤HFO-1234ze、及び製剤中に溶解して溶液を形成する少なくとも1種の医薬品有効成分(API)を含む。特定の実施形態において、製剤は更にエタノールを含む。特定の実施形態において、APIはβ刺激薬(短時間又は長時間作用のβ刺激薬)、コルチコステロイド、抗コリン剤、チロシンキナーゼ(TYK)阻害剤、及びそれらの組み合わせから選択される。
【0007】
一実施形態において、計量バルブと;キャニスタと;アクチュエータノズルを含むアクチュエータとを含む定量吸入器が提供され、キャニスタは製剤を含み、製剤はHFO-1234ze(E)を含む推進剤、及びベクロメタゾン又は医薬的に許容されるその塩若しくはエステル(例えば、ジプロピオン酸ベクロメタゾン)を含む医薬品有効成分を含み、ベクロメタゾン又は医薬的に許容されるその塩若しくはエステルは、製剤中に溶解して溶液を形成する。
【0008】
一実施形態において、計量バルブと;キャニスタと;アクチュエータノズルを含むアクチュエータとを含む定量吸入器が提供され、キャニスタは製剤を含み、製剤はHFO-1234ze(E)を含む推進剤、及びホルモテロール又は医薬的に許容されるその塩若しくはエステル(例えば、ホルモテロールフマル酸塩)を含む医薬品有効成分を含み、ホルモテロール又は医薬的に許容されるその塩若しくはエステルは、製剤中に溶解して溶液を形成する。
【0009】
一実施形態において、計量バルブと;キャニスタと;アクチュエータノズルを含むアクチュエータとを含む定量吸入器が提供され、キャニスタは製剤を含み、製剤はHFO-1234ze(E)を含む推進剤、並びにホルモテロール又は医薬的に許容されるその塩若しくはエステル、及びベクロメタゾン又は医薬的に許容されるその塩若しくはエステルを含む医薬品有効成分を含み、ホルモテロール又は医薬的に許容されるその塩若しくはエステル、及びベクロメタゾン又は医薬的に許容されるその塩若しくはエステルは、製剤中に溶解して溶液を形成する。
【0010】
一実施形態において、計量バルブと;キャニスタと;アクチュエータノズルを含むアクチュエータとを含む定量吸入器が提供され、キャニスタは製剤を含み、製剤はHFO-1234ze(E)を含む推進剤、及びチオトロピウム又は医薬的に許容されるその塩若しくはエステルを含む医薬品有効成分を含み、チオトロピウム又は医薬的に許容されるその塩若しくはエステルは、製剤中に溶解して溶液を形成する。
【0011】
本明細書にて、「製剤中に溶解した」又は「組成物中に溶解した」は、記載された成分(例えば、APIs)が推進剤中に溶解している、又は推進剤及び共溶媒のような他の成分中に溶解して溶液を形成することを意味する。
【0012】
本明細書にて、「含む」という用語及びその変形は、本明細書及び特許請求の範囲にこれらの用語が現れる場合、限定的な意味を有しない。このような用語は、所定のステップ若しくは要素、又はステップ若しくは要素のグループの包含を示唆するが、いずれかの他のステップ若しくは要素、又はステップ若しくは要素のグループを除外することを示唆しないと理解される。「からなる」という語句は、含むことを意味し、「からなる」という語句の後に続くものに限定されることを意味する。したがって、「からなる」という語句は、列挙された要素が必要又は必須であり、他の要素が存在してはならないことを示す。「から本質的になる」という語句は、その語句の後に列挙されたいずれかの要素を含むことを意味し、列挙された要素について本開示にて明示された活性若しくは作用を妨害しない又は寄与しない他の要素に限定されることを意味する。したがって、「から本質的になる」という語句は、列挙された要素が必要又は必須であるが、他の要素は任意であり、列挙された要素の活性又は作用に実質的に影響を及ぼすか否かに応じて、存在してもよく、存在してはならないことを示す。本明細書においてオープンエンドの文言(例えば、含む及びその派生形)で記載されているいずれかの要素又は要素の組み合わせは、クローズドエンドの文言(例えば、からなる及びその派生形)並びに部分的にクローズドエンドの文言(例えば、から本質的になる及びその派生形)で付加的に記載されているとみなされる。
【0013】
語「好ましい」及び「好ましくは」は、特定の状況下で、ある特定の利益をもたらす本開示の実施形態を指す。しかしながら、他の実施形態もまた、同じ又は他の状況下において好ましくてもよい。更に、1つ又は複数の好ましい実施形態の記載は、他の実施形態が有用でないことを示唆するものではなく、他の実施形態を本開示の範囲から排除することは意図されていない。
【0014】
本開示全体にわたり、「a」、「an」、及び「the」のような単数形は、便益のために使用されることが多い。単数形は、明示的に単数形のみが指定されている、又は文脈により明確に示されている場合を除き、複数形を含むことを意味する。
【0015】
「又は」という用語は、本明細書で使用される場合、特に内容が明確に規定しない限り、「及び/又は」を含む通常の意味で一般に使用される。
【0016】
「及び/又は」という用語は、列挙された要素の1つ若しくは全て、又は列挙された要素のいずれか2つ以上の組み合わせを意味する。
【0017】
「周囲条件」という語句は、本明細書で使用される場合、室温(約20℃から25℃)及び相対湿度30から60%の環境を指す。
【0018】
また本明細書にて、全ての数値は、「約」という用語により修飾され、特定の実施形態では、好ましくは、「正確に」という用語により修飾されるものとする。「約」という用語は、測定量に関連して本明細書で使用される場合、測定を行い、測定の目的及び使用する測定装置の精度に見合った注意レベルを働かせる当業者によって予想される測定量の変動を指す。本明細書にて、「まで」の数(例えば、50まで)は、その数(例えば、50)を含む。本明細書にて、「少なくとも」の数(例えば、少なくとも50)は、その数(例えば、50)を含む。本明細書にて、「以下」の数(例えば、50以下)は、その数(例えば、50)を含む。
【0019】
数値範囲、例えば「xからy」又は「xからyまで」は、x及びyの端点の値を含む。また本明細書にて、端点による数値範囲の記載は、端点だけでなく、その範囲に包摂される全ての数を含む(例えば、1から5は、1、1.5、2、2.75、3、3.80、4、5などを含む)。
【0020】
本出願で使用される幾つかの用語は、本明細書で定義される特別な意味を有する。他の全ての用語は、当業者には公知であり、発明時の当業者が与えたであろう意味をもたらす。
【0021】
本明細書にて、「一般的な」、「一般的に使用される」、「慣用的な」、「典型的な」、「典型的に」及びそのように称される要素は、本開示の組成物、吸入器及びpMDIのような物品、並びに方法の文脈において、一般的であると理解されるべきである。この術語は、これらの特徴が先行技術に存在すること、ましてや一般的であることを意味するために使用されない。特に指定されない限り、本出願の背景技術の部分のみが先行技術に関する。
【0022】
本明細書全体にわたり、「一実施形態」、「ある実施形態」、「特定の実施形態」、又は「幾つかの実施形態」等への言及は、実施形態に関連して記載される特定の特徴、構成、組成物、又は特性を、本開示の少なくとも1つの実施形態が含むことを意味する。したがって、本明細書全体にわたり様々な箇所でこのような語句が現れることは、必ずしも本開示の同じ実施形態を指すものではない。更に、特定の特徴、構成、組成物、又は特性は、1つ又は複数の実施形態においていずれかの適当な方法で組み合わせてもよい。
【0023】
本開示は、実施形態に関して及び特定の図面を参照して記載されるが、本発明はそれに限定されない。記載される図面は概略的なものに過ぎず、非限定的である。図面において、幾つかの要素のサイズは誇張されることがあり、実例となる目的のために縮尺通りに描かれていない。
【0024】
本開示の上記の概要は、開示された各実施形態又は本開示の全ての実施を記載することを意図するものではない。以下の説明は、より詳細な実例となる実施形態を例示する。本開示の全体にわたり数箇所で、実施例のリストを通じて指針が提供され、これらの実施例は様々な組み合わせで使用してもよい。各例において、記載されたリストは、代表的なグループとしてのみ役割を果たし、排他的又は網羅的なリストとして解釈されるべきではない。したがって、本開示の範囲は、本明細書に記載された特定の実例となる構造に限定されるべきではなく、むしろ少なくとも特許請求の範囲の文言によって記載された構造、及びそれらの構造の等価物に及ぶ。代替案として本明細書に積極的に記載されているいずれかの要素は、所望によりいずれかの組み合わせで、特許請求の範囲に明示的に含めても、特許請求の範囲から除外してもよい。本明細書では、様々な理論や可能な機構について議論してきたけれども、このような議論は、いかなる場合も請求可能な主題を限定する役割を果たすべきものではない。
【図面の簡単な説明】
【0025】
本開示は、実施形態の実施及び特定の図面を参照して記載されるが、本発明はそれに限定されない。記載された図面は概略的なものに過ぎず、非限定的である。図面において、幾つかの要素のサイズは誇張されることがあり、実例となる目的のために縮尺通りに描かれていない。
【
図1】
図1は本開示によるバルブを包含するキャニスタを含む吸入器の断面側面図である。
【
図3】
図3は吸入器用の計量バルブの断面側面図である。
【発明の詳細な説明】
【0026】
本開示の製剤は溶液(すなわち、溶液製剤又は溶液組成物)である。すなわち、製剤は、製剤中に溶解された(すなわち、推進剤中に、並びにしばしば共溶媒及び/又は他の構成要素中に可溶化された)1種又は複数種のAPIを含み、溶液を形成する。本明細書では「溶液」は、肉眼で見える微粒子材料を有しない均質な溶液である。
【0027】
溶液製剤及び懸濁製剤は基本的に異なるpMDI製剤アプローチである。それらの製剤アプローチのいずれかを使用して製品開発に取りかかる場合、異なる要因を考慮する必要がある。それに伴い、懸濁製剤への同じ知識及び理解を溶液製剤に適用することは不可能である。溶液において、推進剤及び任意の共溶媒中でのAPIの溶解度が重要な考慮すべき事柄である。ポリエチレングリコール又は水のような追加の賦形剤の使用を介して、溶解度を向上させるための様々な戦略を使用することができる。典型的に、溶液は懸濁液よりも小さなエアロゾルの粒度分布を与え、一般に懸濁液よりも効率的であるが、可溶化可能なAPIの量により総体的な用量が制限され得る。pMDI溶液中での共溶媒の使用は、液滴の蒸発速度に影響を及ぼし、また、肺で形成されて生じる固体状態の粒子に変化をきたすことがあり、懸濁液から堆積されるAPIと比較してAPIの薬理学的摂取に影響を及ぼすことがある。また、幾つかのAPIは、溶液製剤において化学分解のリスクが高く、化学的安定性を最大化するために安定化酸の使用やコンテナ閉鎖システムの特定の選択のような、特定の製剤戦略を必要とすることが多い。これらの問題は溶液に特有であり、懸濁液に特有の教示は必ずしもこれらを克服するものではない。
【0028】
本明細書に記載される製剤の様々な実施形態はいずれかの適当な吸入器に利用できる。例えば、
図1は、定量計量バルブ10(その休止位置で示す)を装着したエアロゾルキャニスタ1を含む、定量吸入器100の一実施形態を示す。計量バルブ10は、一般にバルブ組み立て品の一部として提供されるキャップ又はフェルール11(典型的に、アルミニウム又はアルミニウム合金から作製される)を介して、キャニスタ1に取り付けられる、すなわち、圧着される。キャニスタ及びフェルールの間に、1つ又は複数のシールがあってもよい。
図1及び
図2に示す実施形態では、キャニスタ1及びフェルール11の間に、例えばOリングシール及びガスケットシールを含む2つのシールがある。
【0029】
図1に示すように、キャニスタ/バルブディスペンサーは、典型的には、マウスピースのような適切な患者ポート6を含むアクチュエータ5を備える。鼻腔への投与のために、患者ポートは一般に鼻を通して送達するのに適切な形態(例えば、より小さい直径の管、しばしば上方に傾斜する)で提供される。アクチュエータは一般にプラスチック材料、例えばポリプロピレン又はポリエチレンから作製される。
図1から分かるように、キャニスタ1の内壁2及びキャニスタ内に位置する計量バルブ10の部分の外壁101は、エアロゾル製剤4を包含する製剤チャンバ3を画定する。
【0030】
図1及び
図2に示すバルブ10は、内側バルブ本体13により部分的に画定された計量チャンバ12を含み、その中をバルブステム14が通る。圧縮ばね15により外側に付勢されるバルブステム14は、内側タンクシール16及び外側ダイヤフラムシール17とスライド密封係合する。また、バルブ10はボトル空けの形態で第2のバルブ本体20を含む。内側バルブ本体13(「一次」バルブ本体とも呼ばれる)は、計量チャンバ12の一部を画定する。第2のバルブ本体20(「二次」バルブ本体とも呼ばれる)は、ボトル空けとして役割を果たすほかに、部分的にプレ計量領域又はチャンバを画定する。
【0031】
図2を参照すると、エアロゾル製剤4は、製剤チャンバ3から、二次バルブ本体20のフランジ23及び一次バルブ本体13の間の環状空間21を通って、二次バルブ本体20及び一次バルブ本体13の間に設けられたプレ計量チャンバ22へ通過することができる。バルブステム14を、
図1及び
図2に示す休止位置からキャニスタ1に対して内側に押し込むことによりバルブ10を作動(発射)させ、製剤が計量チャンバ12からバルブステムの側孔19を通り、ステム出口24を通ってアクチュエータノズル7に至り、次に患者に至る。バルブステム14が解放されると、製剤はバルブ10内、特に環状空間21を通ってプレ計量チャンバ22に入り、そこからプレ計量チャンバからバルブステムの溝18を通ってタンクシール16を通り、計量チャンバ12に入る。
【0032】
図3は、
図1及び
図2に示す実施形態とは異なる、休止位置にある定量エアロゾル計量バルブ102の別の実施形態を示す。バルブ102は、バネ115により外側に付勢されているステム114が通る計量タンク113によって部分的に画定された計量チャンバ112を有する。ステム114は2つの部品から作製され、バルブ102に組み込む前に一緒に押込嵌めされている。ステム114はその周りに配置された内側シール116及び外側シール117を有し、計量タンク113との密封接触を形成する。フェルール111に圧着されたバルブ本体120は、前述の構成要素をバルブ内に保持する。使用時、製剤はオリフィス121及びオリフィス118を介して計量チャンバに入る。用量が分注される場合、製剤が計量チャンバ112から外部へ向かう経路はオリフィス119を介する。
【0033】
本開示による組成物(すなわち、製剤)の主要な推進剤は、トランス-1,1,1,3-テトラフルオロプロペン、トランス-1,3,3,3-テトラフルオロプロペン、又はトランス-1,3,3,3-テトラフルオロプロパ-1-エンとしても知られるHFO-1234ze(E)である。HFO-1234zeのトランス異性体及びシス異性体の化学構造は非常に異なっている。その結果、これら異性体は非常に異なる物理的及び熱力学的特性を有する。周囲条件において、シス(Z)異性体に対してトランス(E)異性体の沸点は著しく低く、蒸気圧は高いため、トランス異性体は効率的なpMDIの霧化を達成するための熱力学的にはるかに適した推進剤になる。
【0034】
幾つかの実施形態において、組成物中の重量比によるHFO-1234ze(E)の量は70%超、少なくとも80%、80%超、少なくとも85%、85%超、少なくとも90%、又は90%超である。幾つかの実施形態において、重量比によるHFO-1234ze(E)の量は、80%から99%、80%から98%、80%から95%、又は85%から90%である。幾つかの実施形態において、HFO-1234ze(E)は本質的に、組成物中で唯一の推進剤である。すなわち、放出用量及び放出粒度分布のような医薬製品の性能パラメーターは、HFO-1234ze(E)が組成物中で唯一の推進剤である場合と著しく異ならない。幾つかの実施形態において、組成物中の全推進剤の重量比によるHFO-1234ze(E)の量は、95%超、98%超、99%超、99.5%超、及び99.8%超である。
【0035】
推進剤HFO-1234ze(E)は代替の低GWP推進剤HFA-152aとは非常に異なる。これら2つの推進剤は、異なる沸点、蒸気圧、水溶性、液体密度、表面張力などのような物理的、化学的、熱力学的特性を有する。これらの特性の違いにより、pMDI製品の性能を著しく妥協又は変化させることなく、一方の推進剤から別の推進剤へ置き換えることは困難である。例えば、推進剤の沸点及び蒸気圧の熱力学的な違いは、pMDIのエアロゾル化効率に著しく影響することがあり、一次及び二次の霧化機構にて違いを生じさせることがある。推進剤間の双極子モーメント及び極性の違いは、製剤中の薬物及び賦形剤の溶解性に影響を与えることがある。推進剤間の吸湿性の違いは水分の取り込みに影響することがあり、特に水分の取り込みによる物理的安定性又は水分が関与する化学的分解の可能性があれば、溶液製剤にとって問題となることがある。異なる推進剤と薬物及び賦形剤の化学的相互作用もまた著しく異なり得て、これは意図された貯蔵寿命にわたる製品の長期化学的安定性に影響を及ぼすことがある。2つの推進剤は、バルブのプラスチック及びエラストマー成分と化学的及び物理的に相互作用し、抽出物及び溶出物の種類及び量に違いが生じることがあり、機械的バルブ機能にも影響を与えることがある。推進剤の熱力学的特性は、異なる蒸発速度による液滴の粒径に違いを生じさせ、噴霧力、温度、及び噴霧時間のような噴霧特性の違いをきたすこともある。歴史的に、CFC推進剤からHFA推進剤への移行は、適切なpMDI製品の性能を達成するために、再構築する新しいアプローチを開発し、有能なハードウェアを開発するための著しい努力を必要としてきた。すなわち、単純にある推進剤を別の推進剤に直に取り換えることは不可能であった。pMDI中の推進剤HFA-152aからHFO-1234ze(E)への変更は、上記の多くの要因により同様に難題である。
【0036】
幾つかの実施形態において、HFA-134a、HFA-227(1,1,1,2,3,3,3-ヘプタフルオロプロパン)、又はHFA-152aを含むハイドロフルオロアルカンのような他の推進剤が、微量成分として含まれてもよい。微量成分として含まれてもよい更に他の推進剤は、HFO-1234yf(2,3,3,3-テトラフルオロプロペン)及びHFO-1234ze(Z)(すなわち、シス-HFO-1234ze)を含む他のハイドロフルオロオレフィンを含む。したがって、幾つかの実施形態において、本明細書で議論されるHFA-152a及びHFO-1234ze(E)の間の違いは、少量のHFA-152aを使用することにより有利に利用されることができる。そのような二次推進剤の重量比による量は、全組成物(すなわち、製剤全体)の、0.1%から20%、0.1%から5%、又は0.1%から0.5%を含むことができる。
【0037】
組成物の総量は、あらかじめ決められた回数の薬効のある用量が送達された後に、キャニスタ内の推進剤の少なくとも一部が液体として存在するように選択されることが望ましい。用量のあらかじめ決められた回数は、5から200回、30から200回、60から200回、60から120回、60回、120回、200回、又は用量の他の任意の回数であってよい。キャニスタ内の組成物の総量は、1.0グラム(g)から30.0g、2.0gから20.0g、又は5.0から10.0gであってよい。組成物の総量は、典型的には、用量のあらかじめ決められた回数と計量バルブの計量体積の積よりも大きくなるように選択される。幾つかの実施形態において、組成物の総量は、用量のあらかじめ決められた回数と計量バルブの計量体積の積の1.1倍より大きい、1.2倍より大きい、1.3倍より大きい、1.4倍より大きい、又は1.5倍より大きい。これにより、典型的には、吸入器の寿命を通じて各用量の量は比較的一定のままに保たれる。
【0038】
APIは、薬物、ワクチン、DNAフラグメント、ホルモン、他の治療剤、又はいずれかの2つ以上のAPIの組み合わせでもよい。特定の実施形態において、製剤は溶液中で少なくとも2つ(特定の実施形態において2つ又は3つ、特定の実施形態において2つ)のAPIsを含んでもよい。
【0039】
APIは、溶液として製剤化するために適当ないずれかの形態で提供されてもよい。特定の実施形態において、APIは、粉末又は微粒化粉末のような固体として、又は原液のような液体として提供されてもよい。溶液の調製に適合するいずれかの適当な形態のAPIを、本開示の製剤のために使用してもよい。
【0040】
例示的なAPIは、呼吸器疾患の治療のためのもの、例えば、短時間作用型又は長時間作用型のβ刺激薬のような気管支拡張剤、抗炎症剤(例えば、コルチコステロイド)、抗アレルギー剤、抗喘息剤、抗ヒスタミン剤、TYK阻害剤、又は抗コリン剤を含むことができる。例示的なAPIは、テルブタリン、イプラトロピウム、オキシトロピウム、チオトロピウム、ベクロメタゾン、フルニソリド、シクレソニド、クロモグリク酸ナトリウム、ネドクロミルナトリウム、ケトチフェン、アゼラスチン、エルゴタミン、シクロスポリン、アクリジニウム、ウメクリジニウム、グリコピロニウム(すなわち、グリコピロレート)、サルメテロール、ホルモテロール、プロカテロール、インダカテロール、カルモテロール、ミルベテロール、オロダテロール、ビランテロール、アベジテロール、オマリズマブ、ジロイトン、インスリン、ペンタミジン、カルシトニン、リュープロリド、α1-アンチトリプシン、インターフェロン、トリアムシノロン、ニンテダニブ、列挙された薬物の医薬的に許容されるその塩若しくはエステル、又は列挙されたいずれかの薬物、それらの医薬的に許容される塩若しくはそれらの医薬的に許容されるエステルの混合物を含むことができる。ベクロメタゾンの場合、例示的なエステルはプロピオネートである。
【0041】
全ての実施形態において、API(複数可)は製剤中(すなわち、溶液として)に溶解される。2つ以上のAPIの組み合せが使用される場合、全てのAPIは溶液中にある。
【0042】
一実施形態において、製剤は、唯一のAPIとしてベクロメタゾン又は医薬的に許容されるその塩若しくはエステル、より詳細にはジプロピオン酸ベクロメタゾンを含む。
【0043】
一実施形態において、製剤は、唯一のAPIとしてホルモテロール又は医薬的に許容されるその塩若しくはエステル、より詳細にはホルモテロールフマル酸塩を含む。
【0044】
一実施形態において、製剤は、唯一のAPIとしてチオトロピウム又は医薬的に許容されるその塩若しくはエステル、より詳細にはチオトロピウム臭化物を含む。
【0045】
一実施形態において、製剤は、ベクロメタゾン及びホルモテロール又は医薬的に許容されるそれらの塩若しくはエステル、より詳細にはジプロピオン酸ベクロメタゾン及びホルモテロールフマル酸塩を含み、より詳細には両方の有効成分が製剤中に溶解される。
【0046】
APIの量は、作動毎に必要な用量及びpMDI計量バルブのサイズ、すなわち計量チャンバのサイズによって決定されてもよく、5マイクロリットル(μL又はmcl)から200マイクロリットル、25マイクロリットルから200マイクロリットル、25マイクロリットルから150マイクロリットル、25マイクロリットルから100マイクロリットル、50マイクロリットルから100マイクロリットル、25マイクロリットルから65マイクロリットル、50マイクロリットルから65マイクロリットル、又は50マイクロリットルから63マイクロリットルでもよい。各APIの濃度は、典型的には0.0008重量%から3.4重量%、又は0.01重量%から1.0重量%、時には0.05重量%から0.5重量%であり、そのようなものとして、薬剤は組成物全体の比較的小さな割合を構成する。
【0047】
特定の実施形態において、本開示の典型的な製剤は、少なくとも作動毎に0.001ミリグラム(mg/作動)、又は少なくとも0.001mg/作動の量のAPIを含む。 特定の実施形態において、本開示の典型的な製剤は、0.5mg/作動未満の量のAPIを含む。
【0048】
実施形態において、本開示の典型的な製剤は、少なくとも1μg/作動、少なくとも10μg/作動、少なくとも50μg/作動、少なくとも100μg/作動、少なくとも150μg/作動、少なくとも200μg/作動、少なくとも300μg/作動、又は少なくとも400μg/作動の量のAPIを含む。実施形態において、本開示の典型的な製剤は、500μg/作動未満、多くとも400μg/作動、多くとも300μg/作動又は多くとも200μg/作動の量のAPIを含む。幾つかの好ましい実施形態において、本開示の製剤は、80μg/作動から120μg/作動の量のAPIを含む。
【0049】
幾つかの実施形態において、推進剤及びAPIの後に追加の成分(例えば、賦形剤)を製剤に添加することができる。これらの成分は、API若しくは他の成分の溶解を助成すること、及び/又はAPI若しくは他の成分の化学的安定化を助成することを含むが、これらに限定されない様々な用途及び機能を有してもよい。
【0050】
幾つかの実施形態において、共溶媒が含まれる。特に有用な共溶媒の1つはエタノールである。幾つかの実施形態において、エタノールは、溶液製剤、すなわちAPIが製剤中に溶解している場合に、共溶媒として使用される。ある態様において、エタノールはAPIの溶解を助成する一方、APIはエタノールのない製剤に溶解しなくともよい。溶液製剤中に使用する場合、エタノールは製剤全体の重量%基準で少なくとも0.5%、少なくとも1%、少なくとも2%、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%の量であってもよい。溶液製剤中に使用する場合、エタノールは製剤全体の重量パーセント基準で、20%まで又は15%までの量であってもよい。
【0051】
特定の実施形態において、溶液製剤中に使用する場合、エタノールは製剤全体の重量パーセント基準で0.5%から20%、1%から20%、2%から15%、5%から15%、10%から15%、又は15%から20%の量であってもよい。幾つかの実施形態において、エタノール含有量は、製剤全体の重量%基準で17%超、又は少なくも17.5%である。
【0052】
幾つかの実施形態において、製剤中の水素イオン濃度の調節を介して、製剤中のAPIの溶解及び/又は安定化を促進するために酸を使用することができる。しかしながら、酸のない製剤は幾つかの目的では有利なこともあり、特に指定しない限り、酸は必要ではない。
【0053】
酸を含む実施形態において、酸は、有機酸、無機酸、又はそれらの組み合わせであってよい。特定の実施形態において、酸は無機酸である。例示的な無機酸は、塩酸、硝酸、リン酸、硫酸、及びその組み合わせを含む。特定の実施形態において、酸は有機酸である。例示的な有機酸は、クエン酸、アスコルビン酸、酢酸、マレイン酸、フマル酸、コハク酸、ギ酸、プロピオン酸、シュウ酸、乳酸、グリコール酸、及びそれらの組み合わせを含む。使用する場合、酸の量は製剤全体の重量%基準で0.001%から1.0%、0.002%から0.5%、0.004%から0.4%、又は0.04%から0.4%である。
【0054】
幾つかの実施形態において、ポリエチレングリコール(例えば、PEG300若しくはPEG1000)又は水のような追加の賦形剤は、溶解性を高めるために使用されてもよい。典型的には、多くとも1重量%(製剤の総重量に基づく)の水又はポリエチレングリコールは、本開示の製剤中に賦形剤として使用されてもよい。典型的には、少なくとも0.01重量%(製剤の総重量に基づく)の水又はポリエチレングリコールは、本開示の製剤中に賦形剤として使用されてもよい。
【0055】
特定の実施形態において、本開示の組成物は、好ましくは、典型的な保存条件下(例えば、室温)で少なくとも18か月、多くの場合18か月から36か月、粒子が見えないような物理的安定性を見せる。特定の実施形態において、本開示の組成物は、好ましくは、典型的な保存条件下(例えば、室温)で少なくとも18か月間、多くの場合18か月から36か月、分解生成物が形成されないような化学的安定性を示す。
【0056】
図1に戻り、使用時、患者はキャニスタ1を下方に押すことにより吸入器100を作動させる。これにより、キャニスタ1がアクチュエータ5の本体内に移動し、バルブステム14がアクチュエータステムソケット8にぶつかり、結果的に、キャニスタ計量バルブ10が開き、解放された計量された用量の組成物がアクチュエータノズル7を通過し、マウスピース6から患者の口へ排出される。呼吸作動のような他の作動様式も使用することができ、キャニスタを押し下げる力が、患者による吸入のような引き金となる事象に応答して、装置によって、例えばバネ又はモーター駆動スクリューによって、提供されることを除いて、記載されたように動作しうることが理解されるべきである。
【0057】
本開示の薬剤組成物と共に使用してもよい装置は、米国特許第6,032,836号明細書(Hiscocksら)、同第9,010,329号明細書(Hansen)、及び英国特許第2544128号明細書(Friel)に記載されるものを含む。
【0058】
定量吸入器は、用量数を数えるための用量カウンタを含むことができる。適当な用量カウンタは、本技術分野において公知であり、例えば、米国特許第8,740,014号(Purkinsら)明細書;同第8,479,732号明細書(Stuartら);及び同第8,814,035号明細書(Stuart)、並びに米国特許出願公開第2012/0234317号(Stuart)で記載されており、これらは全て、用量カウンタの開示の全体が参照により本明細書に組み込まれる
【0059】
1つの例示的な用量カウンタは、米国特許第8,740,014号(Purkinsら、その用量カウンタの開示の全体が参照により明細書に組み込まれる)に詳細が記載されており、吸入器内の作動要素及び用量カウンタの間の交互移動と連動して交互移動をするように構築及び配置される固定ラチェット要素及びトリガ要素を有する。交互移動は、往行程(吸入器に対して外向き)、及び復行程を含むことがある。復行程は、トリガ要素を往行程の前の位置に戻す。カウンタ要素もまた、この種類の用量カウンタに含まれる。カウンタ要素は、用量が分注される度に、あらかじめ決められたカウント動作を行うように構築及び配置されている。カウンタ要素は、固定ラチェット及びトリガ要素の方に付勢されており、トリガ要素の交互移動の方向に実質的に直交する方向の動きを数えることができる。
【0060】
上述の用量カウンタにおけるカウンタ要素は、トリガ部材と相互作用する第1領域を含む。第1領域は、トリガ部材の往行程の間にトリガ部材に係合される、少なくとも1つの傾斜面を含む。往行程の間のこの係合により、カウンタ要素はカウンタ動作を行う。カウンタ要素はまた、ラチェット部材と相互作用する第2領域を含む。第2の領域は、カウンタ要素のさらなるカウント動作の実行を引き起こす、トリガ要素の復行程の間にラチェット要素と係合される、少なくとも1つの傾斜面を含み、それによってカウント動作が終了する。カウンタ要素は、普通、カウンタリングの形状であり、トリガ要素の往行程で部分的に及びトリガ要素の復行程で部分的に前進する。トリガの往行程が、バルブの発射(及び定量吸入器の場合には、内容物の計量)を引き起こすバルブステムの押下と連動することができ、復行程はバルブステムの休止位置への戻りと連動することができるため、用量カウンタは正確な用量を数えることができる。
【0061】
米国特許第8,479,732号明細書(Stuartら、その用量カウンタの開示の全体が参照により本明細書に組み込まれる)に詳細が記載される、別の適当な用量カウンタは、特に定量吸入器と共に使用するのに適合されている。この用量カウンタは、第1表示体支持面を有する、第1カウント表示器を含む。第1カウント表示器は、第1軸線周りに回転可能である。用量カウンタはまた、第2表示体支持面を有する、第2カウント表示器を含む。第2カウント表示器は、第2軸線周りに回転可能である。第1及び第2軸線は、それらが鈍角を成すように配置される。上記の鈍角は、任意の鈍角であってよいが、有利には、125度から145度である。鈍角により、第1及び第2の表示体支持面は、薬剤投与量カウントの少なくとも一部分を集合的に表すために、共通視認領域において整列することができる。第1及び第2表示体支持面の1つ又は両方は、視認領域を通して一緒に見た場合、数字が服用数を提供するように、数字で示すことができる。例えば、2つの表示体支持面を一緒に読んだ場合、服用数を表す000から999の間の数字が提供されるように、第1及び第2表示体支持面の一方が「100」及び「10」の位を有し、他方が「1」の位を有してもよい。
【0062】
さらに別の好適な用量カウンタは、米国特許出願公開第2012/0234317号明細書(Stuart、その用量カウンタの開示の全体が参照により本明細書に組み込まれる)に詳細が記載される。このような用量カウンタは、用量が分注される度に、あらかじめ決められたカウント動作を行うカウンタ要素を含む。カウント動作は、垂直、又は本質的には垂直とすることができる。カウント表示要素もまた含まれる。用量が分注される度にあらかじめ決められたカウント表示動作を行うカウント表示要素は、カウンタ要素と相互作用する第1領域を含む。
【0063】
カウンタ要素は、カウント表示要素と相互作用する領域を有する。特に、カウント要素は、カウント表示要素と相互作用する第1領域を含む。第1領域は、前述のカウント表示要素の第1領域の少なくとも1つの表面に係合する、少なくとも1つの表面を含む。カウンタ要素の第1領域、及びカウント表示要素の第1表面は、カウンタ表示部材が、カウンタ要素のカウント動作と連動するカウント表示動作を完了するように配置され、カウンタ要素の動作中にその動作により誘発されて、カウント誘発要素が回転運動又は本質的な回転運動を行うように配置される。実際には、カウンタ要素又はカウンタ表示要素の第1領域は、例えば、1つ又は複数のチャンネルを含むことができる。他の要素の第1領域は、前記1つ又は複数のチャンネルと係合するように適合された、1つ又は複数の突起を含むことできる。
【0064】
さらに別の用量カウンタが、米国特許第8,814,035号明細書(Stuart、その用量カウンタの開示の全体が参照により本明細書に組み込まれる)で記載されている。このような用量カウンタは、第1軸線に沿って操作する相互アクチュエータを伴う吸入器での使用に、特に適合される。用量カウンタは、第2軸線の周りを回転可能な表示要素を含む。表示要素は、1つ又は複数の用量が分注された場合、あらかじめ決められた1つ又は複数のカウント表示動作を行うように適合される。第2軸線は、第1軸線に対して鈍角に位置する。用量カウンタはまた、ウォーム軸線の周りを回転可能なウォームを含む。ウォームは、表示要素を駆動させるために適合される。ウォームは、例えば、表示要素の領域と相互作用し巻き込む領域を備えることによってこのことを行ってもよい。ウォーム軸線及び第2軸線は、交差せず、かつ、垂直に配列されない。ウォーム軸線はまた、ほとんどの場合、第1軸線と同軸の列に配置されない。しかしながら、第1及び第2軸線は交差してもよい。
【0065】
キャニスタ、バルブ、ガスケット、シール、又はOリングの1つ又は複数のような、本明細書で記載した定量吸入器のような吸入器の様々な内部構成要素の少なくとも1つは、1つ又は複数のコーティングで被覆されてもよい。これらのコーティングの幾つかは、低い表面エネルギーを提供する。このようなコーティングは、全ての吸入器の正常な操作に常に必要ではないため、常に必要ではない。したがって、幾つかの定量吸入器は、被覆された内部構成要素を含まない。
【0066】
使用可能な幾つかのコーティングは、米国特許第8,414,956号明細書(Jinksら)、米国特許第8,815,325号明細書(Davidら)、及び米国特許出願公開第2012/0097159号明細書(Iyerら)に記載され、これらは全て、吸入器及び吸入器構成要素のためのコーティングの開示の全体が参照により本明細書に組み込まれる。フッ素化エチレンプロピレン樹脂、又はFEPのような他のコーティングもまた、適切である。FEPはキャニスタのコーティングでの使用に特に適切である。
【0067】
第1の許容されるコーティングは、以下の方法により提供することができる:
a)定量吸入器のような吸入器の1つ又は複数の構成要素を提供すること、
b)有機連結基により分離される2つ又はそれより多くの反応性シラン基を有するシランを含むプライマー組成物を提供すること、
c)少なくとも部分的にフッ素化された化合物を含むコーティング組成物を提供すること、
d)構成要素の表面の少なくとも一部分にプライマー組成物を適用すること、
e)プライマー組成物の適用後に、構成要素の表面の前記部分にコーティング組成物を適用すること。
【0068】
少なくとも部分的にフッ素化された化合物は、通常、1つ又は複数の反応性官能基を含み、少なくとも1つの反応性官能基は、通常、反応性シラン基、例えば加水分解性シラン基又はヒドロキシシラン基である。このような反応性シラン基は、部分的にフッ素化された化合物とプライマーの1つ又は複数の反応性シラン基との反応を可能にする。このような反応はしばしば縮合反応である。
【0069】
使用可能な例示的なシランの1つは、以下の式を有し
X3-m(R1)mSi-Q-Si(R2)kX3-k
ここで、R1及びR2は独立して選択された1価の基であり、Xは加水分解性基又はヒドロキシ基であり、m及びkは独立して0、1又は2であり、Qは2価の有機連結基である。
【0070】
このようなシランの有用な例は、1,2-ビス(トリアルコキシシリル)エタン、1,6-ビス(トリアルコキシシリル)ヘキサン、1,8-ビス(トリアルコキシシリル)オクタン、1,4-ビス(トリアルコキシシリルエチル)ベンゼン、ビス(トリアルコキシシリル)イタコネート、及び4,4’-ビス(トリアルコキシシリル)-1、l’-ジフェニルの1つ又は2つ若しくはそれより多くの混合物を含み、いずれかのトリアルコキシ基は、独立して、トリメトキシ又はトリエトキシであってもよい。
【0071】
コーティング溶媒は、通常、アルコール又はハイドロフルオロエーテルを含む。
【0072】
コーティング溶媒がアルコールの場合、好ましいアルコールは、C1からC4アルコールであり、特に、エタノール、n-プロパノール若しくはイソプロパノールから選択されるアルコール、又はそれらのアルコールの2つ若しくはそれより多くの混合物である。
【0073】
コーティング溶媒がハイドロフルオロエーテルの場合、コーティング溶媒がC4からC10ハイドロフルオロエーテルを含むことが好ましい。一般にハイドロフルオロエーテルは次の式であり、
CgF2g+1OChH2h+1
ここで、gは2、3、4、5又は6であり、hは1、2、3又は4である。適切なハイドロフルオロエーテルの例は、メチルヘプタフルオロプロピルエーテル、エチルヘプタフルオロプロピルエーテル、メチルノナフルオロブチルエーテル、エチルノナフルオロブチルエーテル及びそれらの混合物からなる群から選択されるものを含む。
【0074】
ポリフルオロポリエーテルシランは、次の式であってもよく、
RfQ1v[Q2
w-[C(R4)2-Si(X)3-x(R5)x]y]z
ここで:
Rfは、ポリフルオロポリエーテル部位であり;
Q1は、3価の連結基であり;
各Q2は、独立して選択される2価又は3価の有機連結基であり;
各R4は、独立して水素又はC1-4アルキル基であり;
各Xは、独立して加水分解性基又は水酸基であり;
R5はC1-8のアルキル又はフェニル基であり;
v及びwは、独立して0又は1であり、xは0、1又は2であり;yは1又は2であり、zは2、3、又は4である。
【0075】
ポリフルオロポリエーテル部位Rfは、-(CnF2nO)-、-(CF(Z)O-)-、-(CF(Z)CnF2nO)-、-(CnF2nCF(Z)O)-、-(CF2CF(Z)O)-、及びそれらの組み合わせからなる群から選択されるペルフルオロ繰り返し単位を含んでもよく;ここで、nは1から6までの整数であり、Zは、ペルフルオロアルキル基、酸素含有ペルフルオロアルキル基、ペルフルオロアルコキシ基、又は酸素置換ペルフルオロアルコキシ基であり、これらはそれぞれ、直鎖状、分岐状、又は環状であってよく、酸素含有又は酸素置換の場合、1つから5つの炭素原子、及び最大4つまでの酸素原子を有し、ここでZを含む繰り返し単位の場合、連続する炭素原子の数は、最大6つである。特に、nは1から4までの整数であってよく、より詳細には、1から3までの整数であってよい。Zを含む繰り返し単位の場合、連続する炭素原子の数は、最大4つであってよく、より詳細には、最大3つであってよい。通常、nは1又は2であり、Zは-CF3基であり、さらにここでzは2であり、Rfは、-CF2O(CF2O)m(C2F4O)pCF2-、-CF(CF3)O(CF(CF3)CF2O)pCF(CF3)-、-CF2O(C2F4O)pCF2-、-(CF2)3O(C4F8O)p(CF2)3-、-CF(CF3)-(OCF2CF(CF3))pO-CtF2t-O(CF(CF3)CF2O)pCF(CF3)-からなる群から選択され、ここでtは2、3又は4であり、ここでmは1から50であり、pは3から40である
【0076】
架橋剤を含んでもよい。例示的な架橋剤は、テトラメトキシシラン;テトラエトキシシラン;テトラプロポキシシラン;テトラブトキシシラン;メチルトリエトキシシラン;ジメチルジエトキシシラン;オクタデシルトリエトキシシラン;3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン;3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン;3-アミノプロピルトリメトキシシラン;3-アミノプロピルトリエトキシシラン;ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)アミン;3-アミノプロピルトリ(メトキシエトキシエトキシ)シラン;N-(2-アミノエチル)3-アミノプロピルトリメトキシシラン;ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)エチレンジアミン;3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン;3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン;3-トリメトキシシリルプロピルメタクリレート;3-トリエトキシシリルプロピルメタクリレート;ビス(トリメトキシシリル)イタコネート;アリルトリエトキシシラン;アリルトリメトキシシラン;3-(N-アリルアミノ)プロピルトリメトキシシラン;ビニルトリメトキシシラン;ビニルトリエトキシシラン;及びそれらの混合物が含まれる。
【0077】
被覆される構成要素に、コーティングの前に洗浄のような前処理を行ってもよい。洗浄は、ハイドロフルオロエーテルのような、例えば、HFE-72DE、又は約70%w/w(すなわち、重量パーセント)のトランスジクロロエチレン;30%w/wのメチル及びエチルノナフルオロブチル及びノナフルオロイソブチルエーテルの混合物の共沸混合物の溶媒により行うことができる。
【0078】
上述した第1の許容されるコーティングは、バルブステム、ボトル空け、スプリング、及びタンクの1つ又は複数を含むバルブ構成要素をコーティングするために特に有用である。このコーティングシステムは、本明細書に記載されるあらゆる種類の吸入器及びあらゆる製剤と共に使用することができる。
【0079】
幾つかの実施形態において、アクチュエータノズルは、キャニスタ内に送達される製剤の細粒分(FPF)及び/又は呼吸用の用量を最適化するためにそのサイズが決定される。幾つかの実施形態において、アクチュエータノズルの断面形状は、本質的には円形又は円形であり、あらかじめ決められた直径を有する。アクチュエータノズルの断面形状が非円形、例えば楕円形である幾つかの実施形態において、有効径は、開口部にまたがる距離の平均(例えば、楕円の長軸と短軸の平均)を取ることにより決定してもよい。
【0080】
幾つかの実施形態において、アクチュエータノズル出口オリフィス(有効径)は、0.08mm以上、0.10mm以上、0.12mm以上、0.15mm以上、0.175mm以上、0.225mm以上、0.3mm以上、又は0.4mm以上であってもよい。幾つかの実施形態において、アクチュエータノズル出口オリフィス(有効径)は、0.5mm以下、0.4mm以下、0.3mm以下、0.225mm以下、0.175mm以下、又は0.15mm以下であってもよい。幾つかの実施形態において、アクチュエータノズル出口オリフィス(有効径)は、0.12mmから0.5mm、0.12mmから0.4mm、0.12mmから0.3mm、0.12mmから0.225mm、0.12mmから0.175mm、又は0.12mmから0.15mmであってもよい。幾つかの実施形態において、アクチュエータノズル出口オリフィス(有効径)は、0.15mmから0.5mm、0.15mmから0.4mm、0.15mmから0.3mm、0.15mmから0.225mm、又は0.15mmから0.175mであってもよい。幾つかの実施形態において、アクチュエータノズル出口オリフィス(有効径)は、0.175mmから0.5mm、0.175mmから0.4mm、0.175mmから0.3mm、又は0.175mmから0.225mmであってもよい。幾つかの実施形態において、アクチュエータノズル出口オリフィス(有効径)は、0.12mmから0.5mm、0.14mmから0.4mm、又は0.18mmから0.3mmであってもよい。幾つかの実施形態において、アクチュエータノズル出口オリフィス(有効径)は、0.12mmから0.3mm、又は0.18mmから0.22mmであってもよい。幾つかの実施形態において、アクチュエータノズル出口オリフィス(有効径)は、0.12mmから0.25mmであってもよい。
【0081】
所与のアクチュエータノズル出口オリフィスがいずれかの製剤の送達のために適当であるとは限らず、所与の製剤に適当なアクチュエータノズル出口オリフィスの選択にはかなりの労力を伴うことが、当業者には理解されるはずである。
【0082】
幾つかの実施形態において、MDIは圧送注入により製造される。圧送注入では、1種又は複数種の賦形剤(例えば、共溶媒)と組み合わせた液体又は粉末の薬剤を、注入前に、推進剤の蒸気圧に耐えることができ、計量バルブを装着した適当なエアロゾル容器(すなわち、キャニスタ)に入れる。次に、推進剤は液体としてバルブを通って容器に押し込まれる。圧送注入の代替プロセスにおいて、粒子状薬物はプロセス槽内で推進剤及び1種又は複数種の賦形剤(例えば、共溶媒)と組み合わされ、得られた薬物溶液は適当なMDI容器に装着された計量バルブを通して移送される。
【0083】
幾つかの実施形態において、MDIはコールド注入により製造される。コールド注入では、液体又は粉末の薬剤は、沸点未満に冷却された1種又は複数種の賦形剤(例えば、共溶媒)及び推進剤と組み合わされ、任意で1種又は複数種の賦形剤がMDI容器に添加される。その上、フィリング後の容器に計量バルブが装着されている。
【0084】
圧送注入及びコールド注入プロセスの両方で、混合、超音波処理、及び均質化のような追加のステップを任意で採用してもよい。
【本発明の実施形態】
【0085】
[実施形態1]
実施形態1は、計量バルブと;キャニスタと;アクチュエータノズルを含むアクチュエータとを含む定量吸入器であって、キャニスタは、製剤を含み、前記製剤は、70重量%超の推進剤HFO-1234ze(E)、及び前記製剤中に溶解して溶液を形成する少なくとも1種の医薬品有効成分を含む、定量吸入器である。
[実施形態2]
実施形態2は、前記医薬品有効成分が、β刺激薬(短時間又は長時間作用のβ刺激薬)、コルチコステロイド、抗コリン剤、TYK阻害剤、及びそれらの組み合わせから選択される、実施形態1に記載の吸入器である。
[実施形態3]
実施形態3は、前記医薬品有効成分がコルチコステロイドを含む、実施形態1に記載の吸入器である。
[実施形態4]
実施形態4は、前記コルチコステロイドがベクロメタゾン及びシクレソニドから選択される、実施形態2又は3に記載の吸入器である。
[実施形態5]
実施形態5は、前記医薬品有効成分が抗コリン剤を含む、実施形態1に記載の吸入器である。
[実施形態6]
実施形態6は、前記抗コリン剤が、イプラトロピウム、チオトロピウム、アクリジニウム、ウメクリジニウム、及びグリコピロニウム(すなわち、グリコピロレート)から選択される、実施形態2又は5に記載の吸入器である。
[実施形態7]
実施形態7は、前記医薬品有効成分がβ刺激薬(短時間又は長時間作用のβ刺激薬)を含む、実施形態1に記載の吸入器である。
[実施形態8]
実施形態8は、前記β刺激薬(短時間又は長時間作用のβ刺激薬)が、ホルモテロール、インダカテロール、オロダテロール、ビランテロール、及びアベジテロールから選択される、実施形態2又は7に記載の吸入器である。
[実施形態9]
実施形態9は、前記医薬品有効成分がTYK阻害剤(例えば、ニンテダニブ)を含む、実施形態1に記載の吸入器である。
[実施形態10]
実施形態10は、前記製剤が、溶液中に少なくとも2種(幾つかの実施形態において、2種又は3種、幾つかの実施形態において、2種)の医薬有効剤を含む、前述のいずれかの実施形態に記載の吸入器である。
[実施形態11]
実施形態11は、1種の医薬品有効成分がβ刺激薬(短時間又は長時間作用)であり、1種の医薬品有効成分がコルチコステロイドである、実施形態10に記載の吸入器である。
[実施形態12]
実施形態12は、前記製剤が、溶液中で抗コリン剤を更に含む、実施形態11に記載の吸入器である。
[実施形態13]
実施形態13は、計量バルブと;キャニスタと;アクチュエータノズルを含むアクチュエータとを含む定量吸入器であって、前記キャニスタは、製剤を含み、前記製剤は、HFO-1234ze(E)を含む推進剤、及びベクロメタゾン又はその医薬的に許容される塩若しくはエステルを含む医薬品有効成分を含み、前記ベクロメタゾン又はその医薬的許容される塩若しくはエステルは、前記製剤中に溶解して溶液を形成する、定量吸入器である。
[実施形態14]
実施形態14は、前記ベクロメタゾン又はその医薬的に許容される塩若しくはエステが唯一の医薬品有効成分である、実施形態13の吸入器である。
[実施形態15]
実施形態15は、前記ベクロメタゾン又はその医薬的に許容される塩若しくはエステルが、ジプロピオン酸ベクロメタゾンである、実施形態13又は14に記載の吸入器である。
[実施形態16]
実施形態16は、計量バルブと;キャニスタと;アクチュエータノズルを含むアクチュエータとを含む定量吸入器であって、前記キャニスタは、製剤を含み、前記製剤は、HFO-1234ze(E)を含む推進剤、及びシクレソニド又はその医薬的に許容される塩若しくはエステルを含む医薬品有効成分を含み、前記シクレソニド又はその医薬的に許容される塩若しくはエステルは、前記製剤中に溶解して溶液を形成する、定量吸入器である。
[実施形態17]
実施形態17は、計量バルブと;キャニスタと;アクチュエータノズルを含むアクチュエータとを含む定量吸入器であって、前記キャニスタは、製剤を含み、前記製剤は、HFO-1234ze(E)を含む推進剤、及びホルモテロール又はその医薬的に許容される塩若しくはエステルを含む医薬品有効成分を含み、前記ホルモテロール又はその医薬的に許容される塩若しくはエステルは、前記製剤中に溶解して溶液を形成する、定量吸入器である。
[実施形態18]
実施形態18は、前記ホルモテロール又はその医薬的に許容される塩若しくはエステルが、唯一の医薬品有効成分である実施形態17に記載の吸入器である。
[実施形態19]
実施形態19は、前記ホルモテロール又はその医薬的に許容される塩若しくはエステルが、ホルモテロールフマル酸塩である、実施形態17又は18に記載の吸入器である。
[実施形態20]
実施形態20は、計量バルブと;キャニスタと;アクチュエータノズルを含むアクチュエータとを含む定量吸入器であって、前記キャニスタは、製剤を含み、前記製剤は、HFO-1234ze(E)を含む推進剤、並びにホルモテロール又はその医薬的に許容される塩若しくはエステル及びベクロメタゾン又はその医薬的に許容される塩若しくはエステルを含む活性医薬成分を含み、前記ホルモテロール又はその医薬的に許容される塩若しくはエステル及び前記ベクロメタゾン又はその医薬的に許容される塩若しくはエステルは、前記製剤中に溶解して溶液を形成する、定量吸入器である。
[実施形態21]
実施形態21は、前記ホルモテロール又はその医薬的に許容される塩若しくはエステルがホルモテロールフマル酸塩であり、前記ベクロメタゾン又はその薬学的に許容される塩若しくはエステルがジプロピオン酸ベクロメタゾンである、実施形態20の吸入器である。
[実施形態22]
実施形態22は、計量バルブと;キャニスタと;アクチュエータノズルを含むアクチュエータとを含む定量吸入器であって、前記キャニスタは、製剤を含み、前記製剤は、HFO-1234ze(E)を含む推進剤、及びチオトロピウム又はその医薬的に許容される塩若しくはエステルを含む医薬品有効成分を含み、前記チオトロピウム又はその医薬的に許容される塩若しくはエステルは、前記製剤中に溶解して溶液を形成する、定量吸入器である。
[実施形態23]
実施形態23は、前記チオトロピウム又はその医薬的に許容される塩若しくはエステルが、唯一の医薬品有効成分である実施形態22に記載の吸入器である。
[実施形態24]
実施形態24は、前記チオトロピウム又はその医薬的に許容される塩若しくはエステルが、チオトロピウム臭化物である、実施形態22又は23に記載の吸入器である。
[実施形態25]
実施形態25は、HFO-1234ze(E)が、唯一の推進剤である、前述のいずれかの実施形態に記載の吸入器である。
[実施形態26]
実施形態26は、推進剤が、HFO-1234ze(E)及び他のハイドロフルオロオレフィン又はハイドロフルオロアルカンを含む、実施形態1から24のいずれかに記載の吸入器である。
[実施形態27]
実施形態27は、前記製剤が、製剤全体の0.1重量%から20重量%の量で前記他のハイドロフルオロオレフィン又はハイドロフルオロアルカンを含む、実施形態26に記載の吸入器である。
[実施形態28]
実施形態28は、前記製剤が、製剤全体の0.1重量%から5重量%の量で前記他のハイドロフルオロオレフィン又はハイドロフルオロアルカンを含む、実施形態27に記載の吸入器である。
[実施形態29]
実施形態29は、前記製剤が、製剤全体の0.1重量%から0.5重量%の量で前記他のハイドロフルオロオレフィン又はハイドロフルオロアルカンを含む、実施形態28に記載の吸入器である。
[実施形態30]
実施形態30は、ポリエチレングリコール(例えば、PEG300若しくはPEG1000)又は水を更に含む、前述のいずれかの実施形態に記載の吸入器である。
[実施形態31]
実施形態31は、前記製剤が、0.01重量%から1重量%(前記製剤の総重量に基づく)の量のポリエチレングリコール又は水を含む、実施形態30に記載の吸入器である。
[実施形態32]
実施形態32は、前記製剤が、組成物全体の0.0008重量%から6.8重量%(又は0.01重量%から1.0重量%、若しくは0.05重量%から0.5重量%)の濃度のAPIを含む、前述のいずれかの実施形態に記載の吸入器である。
[実施形態33]
実施形態33は、前記製剤がエタノールを更に含む、前述のいずれかの実施形態に記載の吸入器である。
[実施形態34]
実施形態34は、全製剤の重量に対する前記エタノールの量が0.2%から20%である、実施形態33に記載の吸入器である。
[実施形態35]
実施形態35は、全製剤の重量に対する前記エタノールの量が0.5%から20%である、実施形態34に記載の吸入器である。
[実施形態36]
実施形態36は、全製剤の重量に対する前記エタノールの量が2%から20%である、実施形態35に記載の吸入器である。
[実施形態37]
実施形態37は、全製剤の重量に対する前記エタノールの量が2%から10%である、実施形態36に記載の吸入器である。
[実施形態38]
実施形態38は、全製剤の重量に対する前記エタノールの量が15%から20%である、実施形態36に記載の吸入器である。
[実施形態39]
実施形態39は、前記製剤が有機酸、無機酸、又はそれらの組み合わせを更に含む、前述のいずれかの実施形態に記載の吸入器である。
[実施形態40]
実施形態40は、前記酸が無機酸である、実施形態39に記載の吸入器である。
[実施形態41]
実施形態41は、前記無機酸が、塩酸、硝酸、リン酸、硫酸、及びそれらの組み合わせから選択される、実施形態40に記載の吸入器である。
[実施形態42]
実施形態42は、前記酸が塩酸である、実施形態41に記載の吸入器である。
[実施形態43]
実施形態43は、前記酸が有機酸である、実施形態39に記載の吸入器である。
[実施形態44]
実施形態44は、前記有機酸が、クエン酸、アスコルビン酸、マレイン酸、酢酸、コハク酸、ギ酸、及びそれらの組み合わせから選択される、実施形態43に記載の吸入器である。
[実施形態45]
実施形態45は、前記酸がクエン酸である、実施形態44に記載の吸入器である。
[実施形態46]
実施形態46は、全製剤の重量に対する前記酸の量が0.001%から1.0%である、実施形態39から45のいずれかに記載の吸入器である。
[実施形態47]
実施形態47は、全製剤の重量に対する前記酸の量が0.004%から0.4%である、実施形態46に記載の吸入器である。
[実施形態48]
実施形態48は、全製剤の重量に対する前記酸の量が0.04%から0.4%である、実施形態47に記載の吸入器である。
[実施形態49]
実施形態49は、前記計量バルブが、25マイクロリットルから200マイクロリットルのサイズを有する計量チャンバを含む、前述のいずれかの実施形態に記載の吸入器である。
[実施形態50]
実施形態50は、前記計量バルブの前記計量チャンバが、25マイクロリットルから100マイクロリットル(又は50マイクロリットルから100マイクロリットル、50マイクロリットルから65マイクロリットル、若しくは50マイクロリットルから63マイクロリットル)のサイズを有する、実施形態49に記載の吸入器である。
[実施形態51]
実施形態51は、前記製剤が、前記製剤の総重量に基づいて、70重量%超の推進剤HFO-1234ze(E)を含む、実施形態13から50のいずれかに記載の吸入器である。
[実施形態52]
実施形態52は、前記製剤が、前記製剤の総重量に基づいて、少なくとも80重量%、80重量%超、少なくとも85重量%、85重量%超、少なくとも90重量%、又は90重量%超の推進剤HFO-1234ze(E)を含む、前述のいずれかの実施形態に記載の吸入器である。
[実施形態53]。
実施形態53は、前記製剤中の全推進剤の重量に対するHFO-1234ze(E)の量が95%超である、前述のいずれかの実施形態に記載の吸入器である。
[実施形態54]
実施形態54は、前記製剤中の全推進剤の重量に対するHFO-1234ze(E)の量が99%以上である、実施形態53に記載の吸入器である。
[実施形態55]
実施形態55は、前記アクチュエータ出口オリフィスの直径が0.12mmから0.5mmである、前述のいずれかの実施形態に記載の吸入器である。
[実施形態56]
実施形態56は、前記アクチュエータ出口オリフィスの直径が0.15mmから0.3mmである、実施形態56に記載の吸入器である。
[実施形態57]
実施形態57は、前記アクチュエータ出口オリフィスの直径が0.175mmから0.225mmである、実施形態56吸入器である。
[実施形態58]
実施形態58は、前記キャニスタ内の製剤量が1mLから30mLである、前述のいずれかの実施形態に記載の吸入器である。
[実施形態59]
実施形態59は、前記キャニスタは、30から200までのあらかじめ決められた用量数を備える、前述のいずれかの実施形態に記載の吸入器である。
[実施形態60]
実施形態60は、被覆された内部構成要素を含まない、前述のいずれかの実施形態に記載の吸入器である。
[実施形態61]
実施形態61は、前記アクチュエータノズルが0.12mmから0.3mmの出口オリフィスの有効径を含む、前述のいずれかの実施形態に記載の吸入器である。
【実施例】
【0086】
比較実施例1:HFA-134a及びHFO-1234ze(E)へのチオトロピウム臭化物の溶解度。
【0087】
この実施例において、チオトロピウム臭化物(TB)の飽和溶液を、飽和溶解度を確実に達成するための過剰な薬物の添加により、2つの異なる推進剤中で調製した。TB及び推進剤HFO-1234ze(E)(1,3,3,3-テトラフルオロプロペン)を含む第1の飽和溶液を調製した。TB及び推進剤HFA-134a(1,1,1,2-テトラフルオロエタン)を含む第2の飽和溶液を調製した。両方の飽和溶液組成物に、添加されたチオトロピウム臭化物一水和物(TBM)の濃度は0.3750mg/mLであった。飽和溶液には他の添加された成分は含まれていなかった。両方の場合において、この濃度でTBMを添加した後、過剰の非溶解薬物が存在した。
【0088】
20重量%のエタノール及び0.4重量%のクエン酸を添加した各推進剤を使用して、飽和溶液の第2セットを調製した。各飽和溶液のTB溶解度は、過剰な非溶解薬物の濾過後の含有量分析により測定した。TBはHFO-1234ze(E)及びHFA-134aのいずれにも実用的に溶解しないことが観察された。この例のデータを表1に示す。
【0089】
【0090】
この実施例から、TBは、TB及び推進剤のみを含む組成物に実用的に溶解しないことがわかった。またTBは、各推進剤に20%エタノール及び0.4%クエン酸を加えた組成物に部分的に溶解することがわかった。
【0091】
実施例2:HFO-1234ze(E)、エタノール及び異なる酸を含む組成物におけるチオトロピウム臭化物の溶解度及び物理的安定性。
【0092】
この実施例において、異なる量のエタノール及び異なる酸を含むHFO-1234ze(E)中のTBの溶液を試験した。
【0093】
HFO-1234ze(E)中に10重量%、12.5重量%、15重量%、17.5重量%、20重量%又は22.5重量%のエタノールを有する0.1204mg/mLのTBMの溶液を調製した。各溶液に酸を加え、TB、所与の重量パーセントのエタノール、及び酸の間の相互作用を試験した。合計6種の酸は、異なる範囲にわたるエタノール及び酸の濃度レベルにわたり溶液中で試験された。試験された酸は、クエン酸、酢酸、塩酸(HCl)、コハク酸、アスコルビン酸、及び硫酸を含んでいた。各溶液中のTBの溶解度及び物理的安定性は、室温で最長21日間視認検査した。
【0094】
0.004%~0.4%の全ての有機酸、及び0.004%~0.04%の全ての無機酸は、クエン酸を除き、TBを溶液から析出させることが観察された。クエン酸濃度が0.04重量%から0.4重量%のクエン酸、及び試験された各6種の重量%のエタノールを有する0.1250mg/mLのTB溶液を調製し、7日間視認解析した。17.5%未満のエタノール及び各濃度の酸を含む組成物において、TBが溶液から析出することが観察された。
【0095】
この実施例から、少なくとも17.5重量%のエタノール及び0.04重量%超のクエン酸を有するHFO-1234ze(E)中のTBの製剤は、視認で安定であり、調製後7日間まで溶液のままであることがわかった。
【0096】
実施例3:HFO-1234ze(E)、エタノール及びクエン酸を含む組成物中のチオトロピウム臭化物の化学的安定性。
【0097】
TB、エタノール、クエン酸、及び推進剤HFO-1234ze(E)を含む3つの溶液を調製した。3つの溶液全てについて、エタノールの濃度は20重量%であり、TBMの濃度は0.1250mg/mLであった。第1の溶液は0.04重量%のクエン酸を含んでいた。第2の溶液は0.22重量%のクエン酸を含んでいた。第3の溶液は0.4重量%のクエン酸を含んでいた。各溶液をFEP被覆されたキャニスタに圧送注入し、50μLのBESPAKバルブを装着した。注入されたキャニスタは40℃、相対湿度75%で2週間保管し、熟成の模擬実験をした。合計3回複製した各溶液を調製し、注入し、保管した。
【0098】
初期の調製後及び2週間の保管後、各注入されたキャニスタをTB含有量及び不純物/分解物の存在について分析した。各溶液は、表2に示すように、最初に測定されたTB含有量に対して、2週間の保管後のTB含有量がわずかに減少していることのみが観察された。各溶液はまた、表3に示すように、低レベルの総不純物及び既知のチオトロピウム分解物(総不純物/分解物が0.2重量%未満)を有することが観察された。
【0099】
【0100】
【0101】
この実施例から、HFO-1234ze(E)、20%エタノール及び0.04%から0.4%のクエン酸中のTBの組成物は、40℃、相対湿度75%で2週間の保管にわたり比較的化学的に安定であることがわかった。
【0102】
実施例4:HFO-1234ze(E)、エタノール及びクエン酸の組成物中のチオトロピウム臭化物の送達のためのアクチュエータ出口オリフィスのサイズの比較。
【0103】
HFO-1234ze(E)中に0.125mg/mLのTBM、0.22重量%のクエン酸、及び20重量%のエタノールを含む溶液組成物を調製した。この溶液を50μLのBESPAKバルブを装着したFEP被覆キャニスタに圧送注入した。全部で3つのユニットを調製した。1つのユニットは0.3mmの出口オリフィスを有するKINDEVA DRUG DELIVERY(KDD)アクチュエータを用いて試験され、1つのユニットは0.22mmの出口オリフィスを有するKDDアクチュエータを用いて試験され、1つのユニットは0.18mmの出口オリフィスを有するKDDアクチュエータを用いて試験された。
【0104】
試験された各ユニットについて、作動毎に5μm未満の微粒子質量(FPM)、質量空気力学径の中央値(MMAD)、送達用量(ex-act)、及び幾何標準偏差(GSD)が測定された。これらの測定値を表4に示す。
【0105】
【0106】
この例から、徐々に小さいアクチュエータ出口オリフィスを使用して製剤を送達すると、FPMが増加することが観察された。HFO-1234ze(E)中に20重量%のエタノール及び0.04重量%から0.4重量%のクエン酸を有するTBRの溶液の予想される適切なFPMを送達するには、0.18mmから0.22mmのアクチュエータ出口オリフィスが好ましいことがわかった。
【0107】
実施例5:HFO-1234ze(E)中にエタノールを有するジプロピオン酸ベクロメタゾンの溶液。
【0108】
ジプロピオン酸ベクロメタゾン(BDP)及びエタノールの2つの異なる溶液をHFO-1234ze(E)中に調製した。第1の溶液は1mg/mLの濃度のBDPを含んでいた。第2の溶液は2mg/mLの濃度のBDPを含んでいた。両方の溶液は8.0重量%の濃度のエタノールを含んでいた。各溶液中のBDPの量(1mg/mL及び2mg/mL)は、50μLバルブからそれぞれ50μg/作動及び100μg/作動の名目用量が提供されるように選択された。溶液は、無被覆アルミニウムキャニスタ及びFEP被覆アルミニウムキャニスタにコールド注入された。
【0109】
1mg/mL溶液の場合、0.3mmのアクチュエータ出口オリフィス径を有するアクチュエータを用いた送達用量は42.3μg/作動であった。微粒子質量は27μg/作動であった。
【0110】
2mg/mL溶液の場合、0.3mmのアクチュエータ出口オリフィス径を有するアクチュエータを用いた送達用量は80.3μg/作動であった。微粒子質量は54μg/作動であった。
【0111】
この実施例から、HFO-1234ze(E)中に1mg/mL及び2mg/mLのBDP並びに8%のエタノールの溶液は、測定された送達用量及び微粒子用量が所望の適切な用量と一貫することがわかった。
【0112】
実施例6:HFO-1234ze(E)中のホルモテロールフマル酸塩の溶液。
【0113】
ホルモテロールフマル酸塩(FF)、HCl及びエタノールの溶液をHFO-1234ze(E)中で調製した。1モル(M)HClの濃度は0.024重量%であった。エタノールの濃度は12.0重量%であった。FFの量(0.114mg/mL)は、50μLバルブから6μg/作動の名目用量が提供されるように選択された。製剤は、目視観察を可能にするためにポリエチレンテレフタラート(PET)バイアルに圧送注入又はコールド注入した。全ての成分は溶解性があり、周囲条件で保管した場合、初期及び5週間までの観察中の両方において物理的に安定であることが目視観察された。FFの製剤は典型的には保管中に冷蔵されるため、この常温保管期間は促進された熟成の模擬試験であった。
【0114】
この実施例から、0.114mg/mLのFFは、12.0%のエタノール、並びに0.024%のHCl及びHFO-1234ze(E)の溶液に溶解し、コールド注入又は圧送注入した場合、周囲条件で5週間まで物理的に安定であることがわかった。
【0115】
実施例7:HFO-1234ze(E)中にジプロピオン酸ベクロメタゾン及びホルモテロールフマル酸塩を含む溶液。
【0116】
この例では、BDP及びFFを含む溶液を調製し、試験した。溶液の溶解性及び物理的安定性は、5週間以上の目視評価により決定した。医薬製品の性能測定基準は、ユニット寿命を通した送達用量の均一性及びアクチュエータ出口オリフィス径が細粒分に及ぼす影響を論証するために分析した。
【0117】
BDP、FF、塩酸及びエタノールの溶液をHFO-1234ze(E)中で調製した。1M塩酸の濃度は0.024重量%であった。エタノールの濃度は12重量%であった。BDP(2mg/mL)の量は50μLバルブから100μg/作動の名目用量が提供されるように選択した。FFの量(0.114mg/mL)は、50μLバルブから6μg/作動の名目用量が提供されるように選択された。
【0118】
目視評価用の製剤は、PETバイアルに圧送注入又はコールド注入した。全ての成分は溶解性であり、得られた溶液は初期及び観察中の両方において周囲条件下で5週間まで物理的に安定であった。
【0119】
医薬製品の性能試験用の製剤をFEP被覆アルミキャニスタにコールド注入した。各キャニスタは50μLのBESPAKバルブが装着された。送達用量の均一性の試験には、0.3mm出口オリフィス径のKDDアクチュエータが使用された。細粒分(FPF)試験には、表3に記載された範囲の出口オリフィス径を有するKDDアクチュエータが使用された。
【0120】
調製されたユニットの含有量分析は、BDP及びFFの両方で目標の±10%以内であった。送達用量の均一性試験(アクチュエータ出口)では、ユニット寿命の開始時、中間時、及び終了時に傾向は示さなかった。OPC EMMACEの解剖学的咽頭モデルと組み合わせた高速スクリーニングインパクター(FSI)を使用して、アクチュエータ出口オリフィス径の範囲にわたるFPFを測定した。BDP及びFFのFPF結果を以下の表5に示す。
【0121】
【0122】
この実施例から、2mg/mLのBDP、0.114mg/mLのFF、12%エタノール、0.024%のHCl及びHFO-1234ze(E)の溶液中の全ての成分は溶解し、得られた溶液は、PETバイアルにコールド注入又は圧送注入した場合、初期及び観察中の両方において周囲条件下で5週間まで物理的に安定であることがわかった。
【0123】
この溶液はまた、ユニット寿命を通じて、送達用量の一貫した均一性を示すこともわかった。また、BDP及びFFの両方について広範囲の細粒分、したがって微粒子用量を達成するために、溶液のエアロゾルの粒径は、異なる出口オリフィス径を有するアクチュエータを使用して操作することができることがわかった。
【0124】
実施例8:HFO-1234ze(E)中のジプロピオン酸ベクロメタゾン及びホルモテロールフマル酸塩の溶液の安定性。
【0125】
HFO-1234ze(E)中でBDP、FF、HCl及びエタノールの低強度及び高強度溶液を調製した。エタノール濃度は両方の溶液で12.0重量%であった。
【0126】
低強度溶液。BDPの量は2mg/mL、FFの量は0.114mg/mLであった。1MのHClの濃度は0.024重量%であった。
【0127】
高強度溶液。BDPの量は3.1746mg/mL、FFの量は0.0903mg/mLであった。1MのHClの濃度は0.019重量%であった。
【0128】
両方の溶液について組成物の残部はHFO-1234ze(E)であった。
【0129】
使用したキャニスタは、低強度溶液には50μLのBESPAKバルブ、高強度溶液には63μLのBESPAKバルブ、並びに用量カウンタを有する0.3mm出口オリフィス径及び0.65mm噴射長のKDDアクチュエータが装着された、10mLのプレーンアルミニウムキャニスタであった。120回の作動を提供するためのキャニスタの注入重量は、低強度溶液で10.2g(±0.2g)及び高強度溶液で12.1g(±0.2g)であった。
【0130】
BDP、FF、HCl及びエタノールの濃縮液をガラス瓶に入れ、目視で透明な溶液が得られるまで超音波処理を行い調製した。次に、濃縮液を開放された個々のキャニスタに必要量添加した。BESPAKバルブを注入したキャニスタに取り付け、圧着した(真空パージなし)。次に、全体の目標ユニット注入重量を達成するために、HFO-1234ze(E)推進剤を、バルブを通して圧送注入した。
【0131】
両方の溶液のユニットは、6週間又は13週間で試験用に、25℃/相対湿度60%の安定キャビネットにバルブダウンして置いた。揃いのプラセボユニットも同じ方法で製造し、安定キャビネットに置いた。
【0132】
両方の溶液中でBDP及びFFの平均送達用量、平均微粒子質量及び平均総不純物量の結果を表6に示す。
【0133】
【0134】
この実施例から、HFO-1234ze(E)中のBDP/FF溶液製品の両方の強度は、これらの一貫した医薬製品性能(所望の適切な用量と一貫する送達用量及び微粒子質量/用量の測定値)によって証明されるように物理的に安定であり、13週間の促進熟成期間にわたって低レベルの不純物プロファイルによって証明されるように化学的に安定であることがわかった。
【0135】
また、HFO1234ze(E)中のBDP/FF溶液製品の両方の強度は結果として、所望のpMDIの適切な用量と一貫する送達用量及び微粒子質量/用量が測定された。
【0136】
上記に記載され、図に示された実施形態は、例として表したに過ぎず、本開示の概念及び原理に対して限定を意図するものではない。そのため、本開示の精神及び範囲から逸脱することなく、要素並びにそれらの構成及び配置の様々な変更が可能であることが、当業者により理解されるであろう。本明細書において引用される全ての参考文献及び刊行物は、参照によりその全体が本開示に明示的に組み込まれる。本開示の様々な特徴及び態様は、以下の特許請求の範囲に記載されている。
【手続補正書】
【提出日】2024-05-08
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0136
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0136】
上記に記載され、図に示された実施形態は、例として表したに過ぎず、本開示の概念及び原理に対して限定を意図するものではない。そのため、本開示の精神及び範囲から逸脱することなく、要素並びにそれらの構成及び配置の様々な変更が可能であることが、当業者により理解されるであろう。本明細書において引用される全ての参考文献及び刊行物は、参照によりその全体が本開示に明示的に組み込まれる。本開示の様々な特徴及び態様は、以下の特許請求の範囲に記載されている。以下の項目[態様1]~[態様20]に本発明の実施形態の例を列記する。
[態様1]
計量バルブと;
キャニスタと;
アクチュエータノズルを含むアクチュエータと;
を含む定量吸入器であって、前記キャニスタは製剤を含み、前記製剤は70重量%超の推進剤HFO-1234ze(E)、及び前記製剤中に溶解して溶液を形成する少なくとも1種の医薬品有効成分を含む、定量吸入器。
[態様2]
前記医薬品有効成分が、β刺激薬(短時間又は長時間作用のβ刺激薬)、コルチコステロイド、抗コリン剤、TYK阻害剤、及びそれらの組み合わせから選択される、態様1に記載の吸入器。
[態様3]
前記コルチコステロイドがベクロメタゾン及びシクレソニドから選択される、態様2に記載の吸入器。
[態様4]
前記抗コリン剤がイプラトロピウム、チオトロピウム、アクリジニウム、ウメクリジニウム及びグリコピロニウムから選択される、態様2に記載の吸入器。
[態様5]
前記β刺激薬(短時間又は長時間作用のβ刺激薬)が、ホルモテロール、インダカテロール、オロダテロール、ビランテロール、及びアベジテロールから選択される、態様2に記載の吸入器。
[態様6]
前記製剤が溶液中に少なくとも2種の医薬品有効成分を含む、態様1~5のいずれか一態様に記載の吸入器。
[態様7]
溶液中の1種の医薬品有効成分は短時間又は長時間作用のβ刺激薬であり、1種の医薬品有効成分はコルチコステロイドである、態様6に記載の吸入器。
[態様8]
溶液中の前記製剤が抗コリン剤を更に含む、態様7に記載の吸入器。
[態様9]
計量バルブと;
キャニスタと;
アクチュエータノズルを含むアクチュエータと;
を含む定量吸入器であって、前記キャニスタは製剤を含み、前記製剤はHFO-1234ze(E)を含む推進剤、及びベクロメタゾン又はその医薬的に許容される塩若しくはエステルを含む医薬品有効成分を含み、前記ベクロメタゾン又はその医薬的に許容される塩若しくはエステルは、前記製剤中に溶解して溶液を形成する、定量吸入器。
[態様10]
計量バルブと;
キャニスタと;
アクチュエータノズルを含むアクチュエータと;
を含む定量吸入器であって、前記キャニスタは製剤を含み、前記製剤はHFO-1234ze(E)を含む推進剤、及びホルモテロール又はその医薬的に許容される塩若しくはエステルを含む医薬品有効成分を含み、前記ホルモテロール又はその医薬的に許容される塩若しくはエステルは、前記製剤中に溶解して溶液を形成する、定量吸入器。
[態様11]
計量バルブと;
キャニスタと;
アクチュエータノズルを含むアクチュエータと;
を含む定量吸入器であって、前記キャニスタは製剤を含み、前記製剤はHFO-1234ze(E)を含む推進剤、並びにホルモテロール又はその医薬的に許容される塩若しくはエステル及びベクロメタゾン又はその医薬的に許容される塩若しくはエステルを含む活性医薬成分を含み、前記ホルモテロール又はその医薬的に許容される塩若しくはエステル及び前記ベクロメタゾン又はその医薬的に許容される塩若しくはエステルは、前記製剤中に溶解して溶液を形成する、定量吸入器。
[態様12]
計量バルブと;
キャニスタと;
アクチュエータノズルを含むアクチュエータと;
を含む定量吸入器であって、前記キャニスタは製剤を含み、前記製剤はHFO-1234ze(E)を含む推進剤、及びチオトロピウム又はその医薬的に許容される塩若しくはエステルを含む医薬品有効成分を含み、前記チオトロピウム又はその医薬的に許容される塩若しくはエステルは、前記製剤中に溶解して溶液を形成する、定量吸入器。
[態様13]
HFO-1234ze(E)が唯一の推進剤である、態様1~12のいずれか一態様に記載の吸入器。
[態様14]
前記製剤がエタノールを更に含む、態様1~13のいずれか一態様に記載の吸入器。
[態様15]
前記製剤の総重量に対するエタノールの量が5%から20%である、態様14に記載の吸入器。
[態様16]
前記製剤が有機酸、無機酸又はそれらの組み合わせを更に含む、態様1~15のいずれか一態様に記載の吸入器。
[態様17]
前記製剤が、全製剤の重量に対して0.04%から0.4%の酸を含む、態様16に記載の吸入器。
[態様18]
前記計量バルブが、25マイクロリットルから200マイクロリットルのサイズを有する計量チャンバを含む、態様1~17のいずれか一態様に記載の吸入器。
[態様19]
被覆された内部構成要素を含まない、態様1~18のいずれか一態様に記載の吸入器。
[態様20]
前記アクチュエータノズルが、0.12mmから0.3mmの出口オリフィスの有効径を含む、態様1~19のいずれか一態様に記載の吸入器。
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
計量バルブと;
キャニスタと;
アクチュエータノズルを含むアクチュエータと;
を含む定量吸入器であって、前記キャニスタは製剤を含み、前記製剤は70重量%超の推進剤HFO-1234ze(E)、及び前記製剤中に溶解して溶液を形成する少なくとも1種の医薬品有効成分を含む、定量吸入器。
【請求項2】
前記医薬品有効成分が、β刺激
薬、コルチコステロイド、抗コリン剤、TYK阻害剤、及びそれらの組み合わせから選択される、請求項1に記載の吸入器。
【請求項3】
計量バルブと;
キャニスタと;
アクチュエータノズルを含むアクチュエータと;
を含む定量吸入器であって、前記キャニスタは製剤を含み、前記製剤はHFO-1234ze(E)を含む推進剤、及び
医薬品有効成分を含み、前記医薬品有効成分は、
ベクロメタゾン又はその医薬的に許容される塩若しくはエステルを含
み、前記ベクロメタゾン又はその医薬的に許容される塩若しくはエステルは、前記製剤中に溶解して溶液を形成
し;あるいは
ホルモテロール又はその医薬的に許容される塩若しくはエステルを含み、前記ホルモテロール又はその医薬的に許容される塩若しくはエステルは、前記製剤中に溶解して溶液を形成し;あるいは
ホルモテロール又はその医薬的に許容される塩若しくはエステル及びベクロメタゾン又はその医薬的に許容される塩若しくはエステルを含み、前記ホルモテロール又はその医薬的に許容される塩若しくはエステル及び前記ベクロメタゾン又はその医薬的に許容される塩若しくはエステルは、前記製剤中に溶解して溶液を形成し;あるいは
チオトロピウム又はその医薬的に許容される塩若しくはエステルを含む医薬品有効成分を含み、前記チオトロピウム又はその医薬的に許容される塩若しくはエステルは、前記製剤中に溶解して溶液を形成する、
定量吸入器。
【請求項4】
HFO-1234ze(E)が唯一の推進剤である、請求項1
又は2に記載の吸入器。
【請求項5】
前記製剤がエタノールを更に含み、前記製剤の総重量に対するエタノールの量が5%から20%であり
;並びに/又は
前記製剤が有機酸、無機酸若しくはそれらの組み合わせを更に含み、前記製剤が全製剤の重量に対して0.04%から0.4%の酸を含む、請求項1
又は2に記載の吸入器。
【国際調査報告】