(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-02
(54)【発明の名称】空になった水分離器を自動で認識する燃料電池システム
(51)【国際特許分類】
H01M 8/04 20160101AFI20240925BHJP
H01M 8/04746 20160101ALI20240925BHJP
H01M 8/043 20160101ALI20240925BHJP
H01M 8/04537 20160101ALI20240925BHJP
H01M 8/10 20160101ALN20240925BHJP
【FI】
H01M8/04 J
H01M8/04746
H01M8/043
H01M8/04537
H01M8/10 101
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024515093
(86)(22)【出願日】2022-09-07
(85)【翻訳文提出日】2024-03-07
(86)【国際出願番号】 EP2022074801
(87)【国際公開番号】W WO2023041388
(87)【国際公開日】2023-03-23
(31)【優先権主張番号】102021210194.1
(32)【優先日】2021-09-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100177839
【氏名又は名称】大場 玲児
(74)【代理人】
【識別番号】100172340
【氏名又は名称】高橋 始
(74)【代理人】
【識別番号】100182626
【氏名又は名称】八島 剛
(72)【発明者】
【氏名】ファルケナウ,トビアス
(72)【発明者】
【氏名】ボッシュ,ティモ
【テーマコード(参考)】
5H126
5H127
【Fターム(参考)】
5H126BB06
5H127AA06
5H127AB04
5H127AB29
5H127AC15
5H127BA02
5H127BA28
5H127BA33
5H127BA56
5H127BA58
5H127BA59
5H127BB02
5H127BB12
5H127BB37
5H127DB71
5H127DC56
(57)【要約】
【課題】燃料電池システムであって、アノードとカソードとを有する少なくとも1つの燃料電池と、水素供給ラインと、水素供給ラインに連結されるジェットポンプと、アノードオフガスラインと、水分離器と、排出弁と、アノードオフガスラインとジェットポンプとに連結されるガス圧送ユニットと、制御ユニットと、を備え、水分離器は、アノードオフガスラインに連結されており、水をアノードオフガスから分離し、集合させるべく、形成されており、排出弁は、水分離器に連結されており、分離された水を水分離器から排出すべく、形成されており、ガス圧送ユニットは、アノードオフガスをジェットポンプを介して水素供給ラインへ再循環させるべく、形成されている、燃料電池システムを提案する。
【解決手段】制御ユニットは、ガス圧送ユニットに連結されており、かつ制御ユニットは、排出弁の開弁時、少なくとも一時的にガス圧送ユニットの動力消費量を把握し、動力消費量が所定の分量降下したとき、制御信号を生成し、制御信号出力部に提供すべく、形成されており、このとき、制御信号は、空になった水分離器を表す、ようにした。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池システム(2)であって、
アノード(6)とカソードとを有する少なくとも1つの燃料電池(4)と、
水素供給ライン(12)と、
前記水素供給ライン(12)に連結されるジェットポンプ(14)と、
アノードオフガスライン(18)と、
水分離器(20)と、
排出弁(22)と、
前記アノードオフガスライン(18)と前記ジェットポンプ(14)とに連結されるガス圧送ユニット(26)と、
制御ユニット(28)と、
を備え、
前記水分離器(20)は、前記アノードオフガスライン(18)に連結されており、水をアノードオフガスから分離し、集合させるべく、形成されており、
前記排出弁(22)は、前記水分離器(20)に連結されており、分離された水を前記水分離器(20)から排出すべく、形成されており、
前記ガス圧送ユニット(26)は、アノードオフガスを前記ジェットポンプ(14)を介して前記水素供給ライン(12)へ再循環させるべく、形成されている、
燃料電池システム(2)において、
前記制御ユニット(28)は、前記ガス圧送ユニット(26)に連結されており、かつ
前記制御ユニット(28)は、排出弁(22)の開弁時、少なくとも一時的に前記ガス圧送ユニット(26)の動力消費量(44)を把握し、前記動力消費量(44)が所定の分量降下したとき、制御信号(30)を生成し、制御信号出力部(32)に提供すべく、形成されており、このとき、前記制御信号(30)は、空になった水分離器(20)を表す、
ことを特徴とする燃料電池システム(2)。
【請求項2】
前記所定の分量は、前記動力消費量(44)の少なくとも10%、好ましくは、少なくとも25%であることを特徴とする、請求項1に記載の燃料電池システム(2)。
【請求項3】
前記制御ユニット(28)は、前記排出弁(22)を開弁および/または閉弁のために動作制御し、前記排出弁(22)の前記開弁のための前記動作制御後、前記動力消費量(44)の把握を実施すべく、形成されていることを特徴とする、請求項1または2に記載の燃料電池システム(2)。
【請求項4】
前記制御ユニット(28)は、前記排出弁(22)を前記制御信号(30)の伝達により閉弁すべく、形成されていることを特徴とする、請求項3に記載の燃料電池システム(2)。
【請求項5】
水素源(36)が、水素弁(38)により前記水素供給ライン(12)に連結されており、前記水素弁(38)は、前記アノード(6)内における水素の目標圧力の達成および/または維持のために動作制御されていることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の燃料電池システム(2)。
【請求項6】
前記水素弁(38)は、前記ジェットポンプ(14)の上流に配置されていることを特徴とする、請求項5に記載の燃料電池システム(2)。
【請求項7】
前記水分離器(20)は、前記ガス圧送ユニット(26)の上流に配置されていることを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の燃料電池システム(2)。
【請求項8】
燃料電池システム(2)を運転する方法であって、
水素を少なくとも1つの燃料電池(4)のアノード(6)に水素供給ライン(12)を介して供給(46)し、
アノードオフガスをアノードオフガスライン(18)から、前記水素供給ライン(12)に連結されるジェットポンプ(14)と、前記アノードオフガスライン(18)と前記ジェットポンプ(14)とに連結されるガス圧送ユニット(26)と、を介して前記水素供給ライン(12)内に再循環(48)させ、
水を前記アノードオフガスから、前記アノードオフガスライン(18)に連結される水分離器(20)により分離(50)し、集合(52)させ、
水を前記水分離器(20)から少なくとも一時的に排出(54)させる、
方法において、
前記ガス圧送ユニット(26)の動力消費量(44)を、排出弁(20)の開弁時、前記ガス圧送ユニット(26)に連結される制御ユニット(28)により把握(56)し、
前記動力消費量(44)が所定の分量降下したとき、制御信号を生成(58)し、制御信号出力部(32)に提供(60)し、このとき、前記制御信号(30)は、空になった水分離器(20)を表す、
ことを特徴とする、燃料電池システム(2)を運転する方法。
【請求項9】
前記所定の分量は、前記動力消費量(44)の少なくとも25%であることを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記制御信号(30)を前記制御ユニット(28)により伝達(64)することで、前記排出弁(22)を閉弁(62)することを特徴とする、請求項8または9に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池は、水素および酸素の形態の反応ガスを、触媒を介して結合させて、排熱および水の放出の下、電力を発生させるために利用する。純粋な酸素の代わりに、特に車両での使用時、空気が使用されてもよい。反応ガスは、燃料電池に連続的に供給することができ、水素は、燃料電池のアノード側に、そして酸素は、カソード側に供給される。構造形式によっては、アノードとカソードとが、膜により互いに隔離されていることがある。発生される電圧を高め、かつ燃料電池の運転を最適化すべく、複数の燃料電池が、共通の供給通路および導出通路を有する積層体の形態で組み合わされてもよい。
【0003】
燃料電池プロセスにおいて、アノード側に供給される水素が少なくとも部分的に消費され、このとき、カソード側に水が生じ、水は、アノードにも拡散通過する。液状の水と、アノードオフガスのガス状の部分とを切り分けるために、通常、水分離器が使用され、水分離器は、分離機能の他に、分離した水を貯蔵することも多い。水分離器の貯蔵部が満杯のとき、排出弁の開弁により、貯蔵した水の導出が実施される。排出弁は、ドレイン弁としても知られている。
【0004】
拡散プロセスにより、窒素がアノード内に到達することがある。窒素の別の源は、完全に純粋なものとして供給されるわけではない水素によることもある。アノード内における窒素の存在は、セル電圧、ひいては燃料電池積層体により提供されるスタック電圧を下げてしまうことがあり、このことは、効率損失に至らしめる。このことを回避すべく、アノード室における窒素含有量を下げるため、運転中、繰り返しガスがアノード室から導き出される。ガスをアノード室から導き出すことは、掃気弁により行われる。掃気弁は、パージ弁としても知られている。
【0005】
燃料電池への水素の供給は、従来技術によれば、水素調量弁により実施され、水素調量弁は、比例弁として構成されていてもよい。1つの可能な閉ループ制御ストラテジは、このような弁を用いて、アノード経路内のガス圧を、規定の位置に設けられた圧力センサにより測定して、システム運転点に応じ、規定の目標圧力に近付けるように設定することである。電気化学的な変換に基づく水素の消費によって、またはその他の損失、例えば排出弁の長すぎる開弁による、もしくは掃気弁の開弁による損失によって、常に新鮮な水素が、所望の目標圧力で補給される。水を導き出すことは既に、排出弁の開弁による水分離器内の水柱の減少に至らしめ、所望の目標圧力を維持するには、水素調量弁を通した高められた新鮮ガス流入を必要とする。
【0006】
従来技術によれば、劣化しているが、今なお利用可能な水素を含んでいるアノードオフガスを、水素入口へ再循環させる。このことは、ジェットポンプと、能動型のガス圧送ユニットとの組み合わせにより達成されることが多い。ジェットポンプは、この場合、供給される新鮮な水素の圧力を、ガスをいわゆるアノード経路内で再循環させるために利用する。能動型のガス圧送ユニットは、この再循環プロセスを補助する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
燃料電池システムの運転を、排出弁または掃気弁の開弁によって顕著な出力損失が生じないように改良することが所望されている。本発明の課題は、それゆえ、排出過程時に液状の水がもはや排出弁を通過しなくなってすぐの、以前にあった水柱が最小値に減じられている水分離器の状態が、高信頼性に認識可能である装置または方法を提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題は、独立請求項1の特徴を備える燃料電池システムにより解決される。有利な実施形態および発展形は、従属請求項および以下の説明に看取可能である。
【0009】
燃料電池システムであって、アノードとカソードとを有する少なくとも1つの燃料電池と、水素供給ラインと、水素供給ラインに連結されるジェットポンプと、アノードオフガスラインと、水分離器と、排出弁と、アノードオフガスラインとジェットポンプとに連結されるガス圧送ユニットと、制御ユニットと、を備え、水分離器は、アノードオフガスラインに連結されており、水をアノードオフガスから分離し、集合させるべく、形成されており、排出弁は、水分離器に連結されており、分離された水を水分離器から排出すべく、形成されており、ガス圧送ユニットは、アノードオフガスをジェットポンプを介して水素供給ラインへ再循環させるべく、形成されている、燃料電池システムを提案する。制御ユニットは、ガス圧送ユニットに連結されており、かつ制御ユニットは、排出弁の開弁時、少なくとも一時的にガス圧送ユニットの動力消費量を把握し、動力消費量が所定の分量降下したとき、制御信号を生成し、制御信号出力部に提供すべく、形成されており、このとき、制御信号は、空になった水分離器を表す、ようにした。
【0010】
燃料電池システムは、好ましくは、複数の燃料電池を備え、これらの燃料電池は、組み合わされて1つの燃料電池積層体を形成している。自動車または商用車で使用する場合は、アノードが膜によりカソードから仕切られている高分子電解質膜(PEM)燃料電池を使用することが特に有利である。代替的には、別の形態の燃料電池が実現されていてもよく、とりわけ固体酸化物燃料電池および直接メタノール燃料電池を有していてもよいことは自明である。
【0011】
前に挙げたアノード側に配置されるコンポーネントの他に、カソード側に配置されるコンポーネントも必要ではあるが、本発明の対象にとっては、特に重要でない。例えば燃料電池は、カソード側で空気供給ユニットに連結されていることができ、空気供給ユニットは、1つまたは複数の圧縮機を有していることができ、圧縮機は、燃料電池システムの上流において、加圧された空気をカソード経路内に導入する。1つまたは複数の圧縮機は、電気モータにより運転されてもよく、電気モータには、電圧が供給され、電圧は、燃料電池システム自体により、かつ/または外部の電圧源、例えばバックアップバッテリにより提供される。これに対して付加的に、タービンが設けられていてもよく、タービンは、燃料電池の下流においてカソード経路内に配置されており、1つまたは複数の圧縮機を補助する。
【0012】
水素供給ラインは、燃料電池システムに水素を供給し、したがって水素源に接続されていることができる。水素源の下流には、ジェットポンプが設けられており、ジェットポンプは、アノードオフガスを水素供給ライン内に混ぜ込む。まだ一部未消費の水素を含んでいる可能性のあるアノードオフガスは、これにより、アノード経路内に戻し案内され、失われることなく燃料電池内で活用される。
【0013】
ジェットポンプは、水素を混合チャンバ内に、新鮮な水素と、再循環されたアノードオフガスとからなる混合物を発生させるために送給する駆動ノズルを有していることがある。ジェットポンプの種類は、本発明にとって重要ではない。これについては、例示的に独国特許出願公開第102016210020号明細書を参照されたい。そこには、ジェットポンプについて述べられている。ジェットポンプを補助すべく、ガス圧送ユニットが設けられており、ガス圧送ユニットは、再循環送風機としても知られていることがある。ガス圧送ユニットは、掃気過程中、またはジェットポンプが提供する出力が不十分であることが見込まれるとき、稼働されることがある。
【0014】
前に言及したように、アノードオフガスラインは、アノードオフガスを燃料電池システムから運び去る。そこに水分離器が設けられており、水分離器は、水をアノードオフガスから除去する。本発明により、水分離器が実質的に完全に空になった、あるいは水分離器内に形成された水柱が最小値に減じられている、水分離器の状態が検出され得る。このことは、ガス圧送ユニットの動力消費量が把握され、検査されることにより達成される。
【0015】
消費動力は、規定されたシステム運転点に関して、ガスがアノード経路を後にするか否かに依存している。例えば排出弁が開弁され、ガスがアノードオフガスラインから排出弁を通して外部に達するとき、ジェットポンプの機能は補助される。したがって、ジェットポンプの補助用に設けられたガス圧送ユニットは、この運転状態のためには、比較的低い機械的な出力を出せばよく、したがって、その動力消費量も急激に減少する。燃料電池システムが、定常の運転にあり、かつ水分離器が、排出弁の開弁により水を流出させて空にされるときは、アノード内における目標圧力を維持するために、水体積の分だけ拡大されたアノードガス体積を所望の目標圧力にもたらすのに、僅かな対抗制御のみが必要である。ある特定の時間後、すべての水が水分離器から出され、かつ排出弁がまだ閉弁されていないとき、ガスは、アノードオフガスラインから水分離器と排出弁とを通して外部に到達し得る。結果、アノード内における目標圧力を維持するには、より強い水素供給が実施されなければならない。したがってジェットポンプは、ガス状のユニットによっては費やされない、より高い出力をもたらす。
【0016】
動力消費量を把握することで、所定の分量の動力消費量の降下が精緻に検出され得る。これが検出されると、このことは、水分離器が完全に空になっていることの徴候である。生じる動力差は、排出弁の開度が大きければ大きいほど、したがって、排出弁からの、開始するガス流が強ければ強いほど、顕著である。制御信号の提供により、この認識は、例えば、水分離器を空にした後、排出弁を再び閉弁するために利用され得る。付加的に、これは、水分離器内に存在する水量を特定する複雑なモデルを連続的に較正するために使用され得る。
【0017】
詳細には、ガス圧送ユニットの動力消費量は、排出弁が再び閉弁された後、開弁前よりは幾分低いことがある。この原因としては、ガスを導き出したことで、アノード内においてガス濃度が変化したことが挙げられ得る。動力消費量の減少は、導き出された水およびガスの量と、排出過程の開始時の濃度および温度とに応じて特定されていてもよい。
【0018】
上記所定の分量は、動力消費量の少なくとも10%、好ましくは、少なくとも25%であってもよい。前述のように、動力消費量が低下するこの分量は、排出弁の、貫流される横断面の大きさに依存していることがある。加えてこの分量は、排出弁の動作制御にも依存していることがある。自動車における燃料電池システムの使用の大部分で、約25%という分量が、簡単に、高信頼性にかつ測定ノイズを排して検出可能な、現実的な大きさであり得る。
【0019】
さらに制御ユニットは、排出弁を開弁および/または閉弁のために動作制御し、排出弁の開弁のための動作制御後、動力消費量の把握を実施すべく、形成されていてもよい。制御ユニットが、排出弁を開弁のために動作制御するとき、制御ユニットは、いつ排出弁が開弁されるかについての知識を直接的に有していることができ、したがって、動力消費量の把握をこの時点であるいはその直前でスタートさせることが可能である。同様に、排出弁を制御ユニットにより閉弁させることも有意義である。それというのも、制御ユニットは、水分離器の所望の空になった状態の前述の把握により、直接的にこの状態についての知識を有し、この状態を、したがって直接的にも、排出弁の閉弁のために転用し得るからである。
【0020】
制御ユニットは、排出弁を制御信号の伝達により閉弁すべく、形成されていてもよい。水分離器の空になった状態の検出は、それゆえ、直接的に水分離器の排出の終了のために転用される。
【0021】
さらに水素源が、水素弁により水素供給ラインに連結されていてもよく、水素弁は、アノード内における水素の目標圧力の達成および/または維持のために動作制御されている。入口圧力は、それゆえ、水素弁の相応の動作制御により閉ループ制御され得る。これに加えて考え得るのは、水素供給ライン内を流動する水素ガスの圧力および場合によっては温度を把握し、水素弁の動作制御時に考慮することである。相応のセンサは、特にジェットポンプの下流に設けられていてもよい。
【0022】
水素弁は、ジェットポンプの上流に配置されていてもよい。水素弁が、ジェットポンプに連結されている混合チャンバの上流に配置されていると、特に好ましい。水素弁は、それゆえ、圧力の閉ループ制御のための独立した装置である。
【0023】
さらに水分離器は、ガス圧送ユニットの上流に配置されていてもよい。ガス圧送ユニットは、水分離器の下流に配置されており、ガス圧送ユニットには、十分に水から解放されたアノードオフガスのみが供給される。
【0024】
さらに本発明は、燃料電池システムを運転する方法であって、水素を少なくとも1つの燃料電池のアノードに水素供給ラインを介して供給し、アノードオフガスをアノードオフガスラインから、水素供給ラインに連結されるジェットポンプと、アノードオフガスラインとジェットポンプとに連結されるガス圧送ユニットと、を介して水素供給ライン内に再循環させ、水をアノードオフガスから、アノードオフガスラインに連結される水分離器により分離し、集合させ、水を水分離器から少なくとも一時的に排出させる、方法に関する。本発明によれば、ガス圧送ユニットの動力消費量を、排出弁の開弁時、ガス圧送ユニットに連結される制御ユニットにより把握し、動力消費量が所定の分量降下したとき、制御信号を生成し、制御信号出力部に提供し、このとき、制御信号は、空になった水分離器を表す、ようにした。
【0025】
上記所定の分量は、この場合、前述のように、動力消費量の少なくとも25%であってもよい。
【0026】
最後に、本方法は、制御信号を制御ユニットにより伝達することで、排出弁を閉弁することを含んでいてもよい。
【0027】
本発明を改良するさらなる態様について、以下に本発明の好ましい実施例の説明とともに図面を基に詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図2】充填レベル、排出弁の開弁状態およびガス圧送ユニットの動力消費量を示すグラフである。
【
図3】燃料電池システムを運転する方法をブロックに基づいて示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
図1は、燃料電池システム2の一部を示しており、燃料電池システム2は、燃料電池4を備え、燃料電池4は、アノード6と、カソード8と、アノード6とカソード8との間に位置する膜10と、を有している。アノード6は、水素供給ライン12に接続されており、水素供給ライン12を介して、アノード6には、水素が供給される。ジェットポンプ14が、水素供給ライン12に連結されており、ジェットポンプ14の上流には、例示的に混合チャンバ16が接続されている。
【0030】
アノード6は、さらにアノードオフガスライン18に接続されており、アノードオフガスライン18には、水分離器20が連結されている。水分離器20は、水をアノードオフガスから取り出し、集合させることができる。排出弁22が、水分離器20に連結されており、これにより、水分離器20内に集合させられた水を排出し、出口24に供給することができる。ガス圧送ユニット26が、アノードオフガスライン18とジェットポンプ14とに連結されており、アノードオフガスの再循環時、ジェットポンプ14を補助する。
【0031】
制御ユニット28が、ガス圧送ユニット26に連結されており、排出弁22の開弁時、少なくとも一時的にガス圧送ユニット26の動力消費量を把握し、動力消費量が所定の分量降下したとき、制御信号30を生成し、制御信号出力部32に提供すべく、形成されており、このとき、制御信号は、空になった水分離器20を表す。この動力消費量の降下は、例えば少なくとも25%であってもよい。このように顕著な動力の降下を認識したとき、水分離器20内には、集合させられた水が導出されていて、ガスが水分離器20から排出弁を通して流動を開始しているという状態が存在している。この状態は、精緻に認識され、特に排出弁22を閉弁するために利用され得る。このために制御信号30は、排出弁22に伝達されてもよい。この場合に想定されるのは、ガス圧送ユニット26が、その動力消費量が容易に把握可能な、電気的に運転されるガス圧送ユニット26であることである。
【0032】
さらに、例示的に掃気弁34が設けられており、掃気弁34は、アノード6を掃気すべく、設けられており、これにより、窒素を除去することができる。掃気弁34は、同じく出口24に接続されている。
【0033】
水素供給ライン12に新鮮な水素を供給すべく、水素源36がジェットポンプ14の上流に設けられており、水素源36は、水素弁38を介して水素供給ライン12に混合チャンバ16を介して連結されている。水素弁38は、この場合、アノード6内における水素の目標圧力の達成および/または維持のために動作制御されている。
【0034】
図2は、水分離器20の充填レベル40、排出弁22の開弁状態42およびガス圧送ユニット26の動力消費量44を上下に並べて時間的な推移で示してあるグラフを例示的に示している。開始時、水分離器20の充填レベル40は、例示的に100%である。排出弁22は、開弁されており、開弁状態は、ここでは「1」である。充填レベル40は、したがって連続的に減少する。ガス圧送ユニット26の動力消費量44は、ここでは「HI」である。このことは、高動力消費量に相当する。約0%の充填レベル40の到達後、動力消費量44は、突然、低レベル「LO」に下降する。充填レベル40は、排出弁22がまだ開弁されている間、引き続き0%にとどまる。この状態は、制御ユニット28により認識され、排出弁22の閉弁のために利用され得る。このことが実施されると、排出弁22の開弁状態42は、「0」に変化し、その後、充填レベル40は、連続的に上昇を開始し、動力消費量44は、以前のレベル「HI」に復帰する。「HI」から「LO」への降下は、ここでは例示的に約50%であり得る。
【0035】
図3は、燃料電池システム2を運転する前述の方法の概略図をさらに示しており、水素をアノード6に水素供給ライン12を介して供給46し、アノードオフガスをアノードオフガスライン18から、水素供給ライン12に連結されるジェットポンプ14と、アノードオフガスライン18とジェットポンプ14とに連結されるガス圧送ユニット26と、を介して水素供給ライン12内に再循環48させ、水をアノードオフガスから、アノードオフガスライン18に連結される水分離器20により分離50し、集合52させ、水を水分離器20から少なくとも一時的に排出54させるステップを含んでいる。本発明により、本方法は、さらに、ガス圧送ユニット26の動力消費量44を、排出弁22の開弁時、ガス圧送ユニット26に連結される制御ユニット28により把握56し、動力消費量44が所定の分量降下したとき、制御信号30を生成58し、制御信号出力部32に提供60することを含み、このとき、制御信号30は、空になった水分離器20を表す。さらに本方法は、例示的に、制御信号30を制御ユニット28により伝達64することで、排出弁22を閉弁62することを含んでいる。
【符号の説明】
【0036】
2 燃料電池システム
4 燃料電池
6 アノード
8 カソード
10 膜
12 水素供給ライン
14 ジェットポンプ
16 混合チャンバ
18 アノードオフガスライン
20 水分離器
22 排出弁
24 出口
26 ガス圧送ユニット
28 制御ユニット
30 制御信号
32 制御信号出力部
34 掃気弁
36 水素源
38 水素弁
40 水分離器の充填レベル
42 排出弁の開弁状態
44 ガス圧送ユニットの動力消費量
46 アノードへの水素の供給
48 アノードオフガスラインから水素供給ライン内へのアノードオフガスの再循環
50 アノードオフガスからの水の分離
52 水の集合
54 水分離器からの水の少なくとも一時的な排出
56 ガス圧送ユニットの動力消費量の把握
58 制御信号の生成
60 制御信号出力部への制御信号の提供
62 排出弁の閉弁
64 制御信号の伝達
【手続補正書】
【提出日】2024-03-07
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池システム(2)であって、
アノード(6)とカソードとを有する少なくとも1つの燃料電池(4)と、
水素供給ライン(12)と、
前記水素供給ライン(12)に連結されるジェットポンプ(14)と、
アノードオフガスライン(18)と、
水分離器(20)と、
排出弁(22)と、
前記アノードオフガスライン(18)と前記ジェットポンプ(14)とに連結されるガス圧送ユニット(26)と、
制御ユニット(28)と、
を備え、
前記水分離器(20)は、前記アノードオフガスライン(18)に連結されており、水をアノードオフガスから分離し、集合させるべく、形成されており、
前記排出弁(22)は、前記水分離器(20)に連結されており、分離された水を前記水分離器(20)から排出すべく、形成されており、
前記ガス圧送ユニット(26)は、アノードオフガスを前記ジェットポンプ(14)を介して前記水素供給ライン(12)へ再循環させるべく、形成されている、
燃料電池システム(2)において、
前記制御ユニット(28)は、前記ガス圧送ユニット(26)に連結されており、かつ
前記制御ユニット(28)は、排出弁(22)の開弁時、少なくとも一時的に前記ガス圧送ユニット(26)の動力消費量(44)を把握し、前記動力消費量(44)が所定の分量降下したとき、制御信号(30)を生成し、制御信号出力部(32)に提供すべく、形成されており、このとき、前記制御信号(30)は、空になった水分離器(20)を表す、
ことを特徴とする燃料電池システム(2)。
【請求項2】
前記所定の分量は、前記動力消費量(44)の少なくとも10%、好ましくは、少なくとも25%であることを特徴とする、請求項1に記載の燃料電池システム(2)。
【請求項3】
前記制御ユニット(28)は、前記排出弁(22)を開弁および/または閉弁のために動作制御し、前記排出弁(22)の前記開弁のための前記動作制御後、前記動力消費量(44)の把握を実施すべく、形成されていることを特徴とする、請求項1または2に記載の燃料電池システム(2)。
【請求項4】
前記制御ユニット(28)は、前記排出弁(22)を前記制御信号(30)の伝達により閉弁すべく、形成されていることを特徴とする、請求項3に記載の燃料電池システム(2)。
【請求項5】
水素源(36)が、水素弁(38)により前記水素供給ライン(12)に連結されており、前記水素弁(38)は、前記アノード(6)内における水素の目標圧力の達成および/または維持のために動作制御されていることを特徴とする、請求項1
または2に記載の燃料電池システム(2)。
【請求項6】
前記水素弁(38)は、前記ジェットポンプ(14)の上流に配置されていることを特徴とする、請求項5に記載の燃料電池システム(2)。
【請求項7】
前記水分離器(20)は、前記ガス圧送ユニット(26)の上流に配置されていることを特徴とする、請求項1
または2に記載の燃料電池システム(2)。
【請求項8】
燃料電池システム(2)を運転する方法であって、
水素を少なくとも1つの燃料電池(4)のアノード(6)に水素供給ライン(12)を介して供給(46)し、
アノードオフガスをアノードオフガスライン(18)から、前記水素供給ライン(12)に連結されるジェットポンプ(14)と、前記アノードオフガスライン(18)と前記ジェットポンプ(14)とに連結されるガス圧送ユニット(26)と、を介して前記水素供給ライン(12)内に再循環(48)させ、
水を前記アノードオフガスから、前記アノードオフガスライン(18)に連結される水分離器(20)により分離(50)し、集合(52)させ、
水を前記水分離器(20)から少なくとも一時的に排出(54)させる、
方法において、
前記ガス圧送ユニット(26)の動力消費量(44)を、排出弁(
22)の開弁時、前記ガス圧送ユニット(26)に連結される制御ユニット(28)により把握(56)し、
前記動力消費量(44)が所定の分量降下したとき、制御信号を生成(58)し、制御信号出力部(32)に提供(60)し、このとき、前記制御信号(30)は、空になった水分離器(20)を表す、
ことを特徴とする、燃料電池システム(2)を運転する方法。
【請求項9】
前記所定の分量は、前記動力消費量(44)の少なくとも25%であることを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記制御信号(30)を前記制御ユニット(28)により伝達(64)することで、前記排出弁(22)を閉弁(62)することを特徴とする、請求項8または9に記載の方法。
【国際調査報告】