(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-02
(54)【発明の名称】転位活性を有するポリペプチド
(51)【国際特許分類】
C12N 9/12 20060101AFI20240925BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20240925BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20240925BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20240925BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20240925BHJP
C12N 15/54 20060101ALI20240925BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20240925BHJP
C12N 15/90 20060101ALI20240925BHJP
A61K 38/43 20060101ALI20240925BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20240925BHJP
A61K 35/12 20150101ALI20240925BHJP
A61K 35/17 20150101ALI20240925BHJP
A61P 37/04 20060101ALI20240925BHJP
A61P 7/06 20060101ALI20240925BHJP
A61P 1/16 20060101ALI20240925BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20240925BHJP
A61P 27/02 20060101ALI20240925BHJP
A61P 21/00 20060101ALI20240925BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20240925BHJP
【FI】
C12N9/12
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12N15/54
C12N15/63 Z
C12N15/90 Z
A61K38/43
A61K48/00
A61K35/12
A61K35/17
A61P37/04
A61P7/06
A61P1/16
A61P25/00
A61P27/02
A61P21/00
A61P17/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024515313
(86)(22)【出願日】2022-09-08
(85)【翻訳文提出日】2024-04-25
(86)【国際出願番号】 EP2022075007
(87)【国際公開番号】W WO2023036877
(87)【国際公開日】2023-03-16
(32)【優先日】2021-09-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】504439274
【氏名又は名称】マックス-デルブリュック-ツェントルム フューア モレキュラーレ メディツィン イン デア ヘルムホルツ-ゲマインシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100122301
【氏名又は名称】冨田 憲史
(74)【代理人】
【識別番号】100170520
【氏名又は名称】笹倉 真奈美
(74)【代理人】
【識別番号】100221545
【氏名又は名称】白江 雄介
(72)【発明者】
【氏名】イヴィチュ,ゾルターン
(72)【発明者】
【氏名】ケッセルリンク,リーザ
(72)【発明者】
【氏名】ミスケイ,チャバ
【テーマコード(参考)】
4B065
4C084
4C087
【Fターム(参考)】
4B065AA01X
4B065AA57X
4B065AA72X
4B065AA90X
4B065AB01
4B065BA02
4B065CA43
4B065CA44
4C084AA02
4C084AA13
4C084BA02
4C084DC25
4C084NA13
4C084ZA02
4C084ZA33
4C084ZA55
4C084ZA75
4C084ZA89
4C084ZA94
4C084ZB09
4C087AA01
4C087AA02
4C087BB65
4C087CA12
4C087NA13
4C087ZA02
4C087ZA33
4C087ZA55
4C087ZA75
4C087ZA89
4C087ZA94
4C087ZB09
(57)【要約】
本発明は、転位活性を有するポリペプチド、特に転位活性を有する操作されたポリペプチド、そのようなポリペプチドをコードする核酸、該核酸を含むベクター、該核酸を含む細胞、該ポリペプチドを使用して外来性核酸をゲノムに統合する方法、医薬および/またはいくつかの遺伝子療法において使用するための該ポリペプチド;および該ポリペプチド、核酸、ベクターまたは細胞を含む医薬組成物に関する。特に、本発明は、ゲノムへの組み込みの特異性を獲得するよう操作されている該ポリペプチドに関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号1のsleeping beauty(SB)トランスポザーゼのアミノ酸248位、247位および/または187位に対応するアミノ酸位置が異なるアミノ酸で置換されている、Tc1/マリナースーパーファミリーのトランスポザーゼを含むまたはそれからなる転位活性を有するポリペプチドであって、ここで、トランスポザーゼがゲノムへの組み込みの特異性を獲得している、ポリペプチド。
【請求項2】
特異性の獲得が、ポリペプチドでの転位によるエクソンへの組み込み事象の数が配列番号1のSBを使用したとき観察されるエクソンへの組み込み事象の数と比較した少なくとも25%の減少を意味する、請求項1のポリペプチド。
【請求項3】
トランスポザーゼがsleeping beautyトランスポザーゼまたは配列番号1と少なくとも70%配列同一性を有するそのバリアントである、請求項1または2のポリペプチド。
【請求項4】
SBトランスポザーゼのアミノ酸248位に対応するアミノ酸位置に置換を含み、
ここで、好ましくは該置換がK248R、K248S、K248V、K248IおよびK248Cからなる群から選択される、
請求項1~3の何れかのポリペプチド。
【請求項5】
SBトランスポザーゼのアミノ酸247位に対応するアミノ酸位置の置換を含み、
ここで、好ましくは該置換がP247R、P247C、P247AおよびP247Sからなる群から選択される、
請求項1~4の何れかのポリペプチド。
【請求項6】
SBトランスポザーゼのアミノ酸187位に対応するアミノ酸位置の置換を含み、
ここで、好ましくは該置換がH187A、H187N、H187C、H187Q、H187G、H187I、H187L、H187M、H187S、H187V、H187W、H187K、H187R、H187E、H187P、H187TおよびH187Sからなる群から選択される、
請求項1~5の何れかのポリペプチド。
【請求項7】
次の置換の1以上を含む、請求項1~6の何れかのポリペプチド:
(i)H187V、H187P、H187R、H187E、H187TまたはH187S、H187A、H187N、H187C、H187Q、H187G、H187I、H187L、H187M、H187S、H187W、H187K、好ましくはH187P、H187VまたはH187T、より好ましくはH187V;および/または
(ii)P247R、P247S、P247CまたはP247A、好ましくはP247RまたはP247S;および/または
(iii)K248R、K248S、K248V、K248IまたはK248C;好ましくはK248R;
またはそのバリアントの対応する位置での置換。
【請求項8】
次の二次構造要素α1ヘリックス-α2ヘリックス-β1シート-β2シート-β3シート-β4シート-β5シート-α3ヘリックス-β6シート-η1-α4ヘリックス-η2-α5ヘリックス-α6ヘリックス-α7ヘリックス-α8ヘリックスを含む、請求項1~7の何れかのポリペプチド。
【請求項9】
置換がポリペプチドの転位活性を増強させる、請求項1~8の何れかのポリペプチド。
【請求項10】
配列番号20、21または22を含む、請求項1~9の何れかのポリペプチド。
【請求項11】
次の二次構造要素を有する天然に存在するトランスポザーゼのバリアントを含むまたはそれからなる転位活性を有するポリペプチド:
α1ヘリックス-α2ヘリックス-β1シート-β2シート-β3シート-β4シート-β5シート-α3ヘリックス-β6シート-η1-α4ヘリックス-η2-α5ヘリックス-α6ヘリックス-α7ヘリックス-α8ヘリックス
(ここで、
(i)β3シートとβ4シートを接続するループにおける天然に存在するHがV、A、N、C、Q、G、I、L、M、F、P、R、S、T、W、K、EまたはY、好ましくはV、PまたはTで置換されているかまたは
β3シートとβ4シートを接続するループの天然に存在するFがV、A、N、C、Q、G、I、L、M、P、R、S、T、W、K、H、EまたはY、好ましくはV、PまたはTで置換されているかまたは
β3シートとβ4シートを接続するループの天然に存在するYがV、A、N、C、Q、G、I、L、M、F、P、R、S、T、W、H、EまたはK、好ましくはV、PまたはTで置換されているかまたは
β3シートとβ4シートを接続するループの天然に存在するLがV、A、N、C、Q、G、I、M、F、P、R、S、T、W、H、Y、EまたはK、好ましくはV、PまたはTで置換されているかまたは
β3シートとβ4シートを接続するループの天然に存在するSがV、A、N、C、Q、G、I、L、M、F、P、R、T、W、H、Y、EまたはK、好ましくはV、PまたはTで置換されている;
および/または
(ii)β6シートとα4ヘリックスを接続するβ6シートにおける少なくとも1個の天然に存在するQ、P、SまたはTがR、S、CまたはA、好ましくはRまたはSで置換されている;
および/または
(iii)β6シートとα4ヘリックスを接続するβ6シートにおける少なくとも1個の天然に存在するK、I、S、T、V、PまたはCがR、I、CまたはV、好ましくはRで置換されている;)
であって、ここで、天然に存在するトランスポザーゼのバリアントが置換(i)、(ii)または(iii)の少なくとも1個を含む、ポリペプチド。
【請求項12】
天然に存在するトランスポザーゼがSleeping Beauty(配列番号1)、Tdr1(配列番号2)、ZB(配列番号3)、FP(配列番号4)、Passport(配列番号5)、TCB2(配列番号6)、S(配列番号7)、Quetzal(配列番号8)、Paris(配列番号9)、Tc1(配列番号10)、Minos(配列番号11)、Uhu(配列番号12)、Bari(配列番号13)、Tc3(配列番号14)、Impala(配列番号15)、Himar(配列番号16)またはMos1(配列番号17)からなる群から選択される、好ましくはトランスポザーゼがSB(配列番号1)である、請求項11のポリペプチド。
【請求項13】
(i)第一アミノ酸ストレッチ:
X
1X
2X
3X
12X
4X
5GX
6(配列番号18)
(ここで、
X
1がT、F、PまたはRであり、
X
2がI、T、N、R、K、QまたはVであり、
X
3がK、N、L、RまたはQ、好ましくはKであり、
X
4がG、N、P、AまたはQ、好ましくはGであり、
X
5がG、K、Aまたは非存在であり、好ましくはX
5がGであり、
X
6がSまたは非存在であり、そして
X
12が野生型タンパク質におけるF、H、Y、LまたはSであり、そして
X
12が天然に存在するトランスポザーゼにおけるX
12であり、非置換であるかまたはA、N、C、Q、G、I、L、M、P、R、S、T、V、W、K、EまたはY、好ましくはV、PまたはTで置換されているとき;
X
12が天然に存在するトランスポザーゼにおけるX
12であり、非置換であるかまたはA、N、C、Q、G、I、L、M、F、P、R、S、T、V、W、K、EまたはY、好ましくはV、PまたはTで置換されているとき;
X
12が天然に存在するトランスポザーゼにおけるX
12であり、非置換であるかまたはA、N、C、Q、G、I、L、M、F、P、R、S、T、V、W、EまたはK、好ましくはV、PまたはTで置換されているとき;
X
12が天然に存在するトランスポザーゼにおけるX
12であり、非置換であるかまたはA、N、C、Q、G、I、F、M、P、R、S、T、V、W、K、EまたはY、好ましくはV、PまたはTで置換されているとき;
X
12が天然に存在するトランスポザーゼにおけるX
12であり、非置換であるかまたはA、N、C、Q、G、I、L、F、M、P、R、T、V、W、K、EまたはY、好ましくはV、PまたはTで置換されているとき);
および/または
(ii)第二アミノ酸ストレッチ:
X
7X
8DX
9X
10X
13X
11X
14H(配列番号19)
(ここで、
X
7がQ、L、M、HまたはYであり、そして
X
8がM、QまたはHであり、
X
9がN、HまたはGであり、
X
10がAまたはDであり、
X
11がV、TまたはKまたは非存在であり、好ましくは非存在であり、そして
X
13が天然に存在するトランスポザーゼにおけるQ、P、SまたはTであり、非置換であるかまたはR、S、CまたはA、好ましくはRまたはSで置換されており、
および/または
X
14が天然に存在するトランスポザーゼにおけるK、I、S、T、V、PまたはCであり、非置換であるかまたはR、A、PまたはQ、I、CまたはV、好ましくはRで置換されており、
ここで、X
12、X
13およびX
14の少なくとも1個が置換されている)
を含む、請求項11または12のポリペプチド。
【請求項14】
X
1がTであり、
X
2がVまたはI、好ましくはVであり、
X
3がKまたはQ、好ましくはKであり、
X
4がGであり、
X
5がGであり、
X
6がSであり、そして
X
12が野生型タンパク質におけるF、H、Y、LまたはSであり、そして
X
12が天然に存在するトランスポザーゼにおけるX
12であり、非置換であるかまたはA、N、C、Q、G、I、L、M、P、R、S、T、V、W、K、EまたはY、好ましくはV、PまたはTで置換されているとき;
X
12が天然に存在するトランスポザーゼにおけるX
12であり、非置換であるかまたはA、N、C、Q、G、I、L、M、F、P、R、S、T、V、W、K、EまたはY、好ましくはV、PまたはTで置換されているとき;
X
12が天然に存在するトランスポザーゼにおけるX
12であり、非置換であるかまたはA、N、C、Q、G、I、L、M、F、P、R、S、T、V、W、EまたはK、好ましくはV、PまたはTで置換されているとき;
X
12が天然に存在するトランスポザーゼにおけるX
12であり、非置換であるかまたはA、N、C、Q、G、I、F、M、P、R、S、T、V、W、K、EまたはY、好ましくはV、PまたはTで置換されているとき;
X
12が天然に存在するトランスポザーゼにおけるX
12であり、非置換であるかまたはA、N、C、Q、G、I、L、F、M、P、R、T、V、W、K、EまたはY、好ましくはV、PまたはTで置換されているとき;
および/または
X
7がQであり、
X
8がM、QまたはHであり、
X
9がN、HまたはGであり、
X
10がAまたはDであり、
X
11が非存在であり、T、VまたはK
X
13が天然に存在するトランスポザーゼにおけるPであり、非置換であるかまたはR、S、CまたはA、好ましくはRまたはSで置換されておりおよび/または
X
14が天然に存在するトランスポザーゼにおけるKであり、非置換であるかまたはR、I、CまたはV、A、PまたはQ、好ましくはRで置換されており、そして
ここで、X
12、X
13およびX
14の少なくとも1個が置換されている、
請求項13のポリペプチド。
【請求項15】
配列番号1または転位活性を有し、配列番号1と少なくとも70%配列同一性を有するそのバリアントを含み、ここで、配列番号1またはそのバリアントが次の置換の1以上を含む:
(i)H187A、H187N、H187C、H187Q、H187G、H187I、H187L、H187M、H187F、H187S、H187V、H187W、H187K、H187Y、H187R、H187E、H187PまたはH187T、好ましくはH187P、H187VまたはH187T、より好ましくはH187V;および/または
(ii)P247R、P247C、P247AまたはP247S、好ましくはP247RまたはP247Sおよび/または
(iii)K248R、K248A、K248S、K248V、K248IまたはK248C;好ましくはK248R;
またはそのバリアントの対応する位置での置換、
請求項1~14の何れかのポリペプチド。
【請求項16】
さらに次の置換または置換群の少なくとも1個:
(1)K14R、K13D、K13A、K30R、K33A、T83A、I100L、R115H、R143L、R147E、A205K/H207V/K208R/D210E、H207V/K208R/D210E、R214D/K215A/E216V/N217Q;M243Q、E267D、T314Nおよび/またはG317E;
(2)K14R//R214D/K215A/E216V/N217Q;
(3)K33A/R115H/R214D/K215A/E216V/N217Q/M243H;
(4)K14R/K30R/A205K/H207V/K208R/D210E/R214D/K215A/E216V/N217Q/M243H;
(5)K13D/K33A/T83N/H207V/K208R/D210E/M243Q;
(6)K13A/K33A/R214D/K215A/E216V/N217Q;
(7)K33A/T83N/R214D/K215NE216V/N217Q//G317E;
(8)K14R/T83A/M243Q;
(9)K14R/T83A/I100L/M243Q;
(10)K14R/T83A/R143L/M243Q;
(11)K14R/T83A/R147E/M243Q;
(12)K14R/T83A/M243Q/E267D;
(13)K14R/T83A/M243Q/T314N;
(14)K14R/K30R/I110L/A205K/H207V/K208R/D210E/R214D/K215A/E216V/N217Q/M243H;
(15)K14R/K30R/R143L/A205K/H207V/K208R/D210E/R214D/K215A/E216V/N217Q//M243H;
(16)K14R/K30R/R147E/A205K/H207V/K208R/D210E/R214D/K215A/E216V/N217Q/M243H;
(17)K14R/K30R/A205K/H207V/K208R/D210E/R214D/K215A/E216V/N217Q//M243H/E267D;
(18)K14R/K30R/A205K/H207V/K208R/D210E/R214D/K215A/E216V/N217Q/M243H/T314N;
(19)K14R/K30R/A205K/H207V/K208R/D210E/R214D/K215A/E216V/N217Q//M243H/G317E;
(20)K14R/K33A/R115H/R214D/K215A/E216V/N217Q/M243H;
(21)K14R/K30R/R147E/A205K/H207V/K208R/D210E/R214D/K215A/E216V/N217Q//M243H/T314N;
(22)K14R/K30R/R143U/A205K/H207V/K208R/D210E/R214D/K215A/E216V/N217Q//M243H/E267D;
(23)K14R/K30R/R143L/A205K/H207V/K208R/D210E/R214D/K215A/E216V/N217Q//M243H/T314N;
(24)K14R/K30R/R143L/A205K/H207V/K208R/D210E/R214D/K215A/E216V/N217Q//M243H/G317E;
(25)K14R/K33A/R115H/R143L/R214D/K215A/E216V/N217Q/M243H;
(26)K14R/K33A/R115H/R147E//R214D/K215A/E216V/N217Q/M243H;
(27)K14R/K33A/R115H/R214D/K215A/E216V/N217Q//M243H/E267D;
(28)K14R/K33A/R115H/R214D/K215A/E216V/N217Q//M243H/T314N;
(29)K14R/K33A/R115H/R214D/K215A/E216V/N217Q//M243H/G317E;
(30)K14R/T83A/M243Q/G317E;または
(31)K13A/K33A/T83N/R214D/K215A/E216V/N217Q;
またはそのバリアントの対応する位置での該置換または置換群の少なくとも1個を含む、
請求項1~15の何れかのポリペプチド。
【請求項17】
請求項1~16の何れかのポリペプチドをコードする核酸配列を含み、所望により核酸配列が少なくとも1個の転写制御単位と操作可能に連結されるものである、核酸。
【請求項18】
請求項17の核酸分子を含む、ベクター。
【請求項19】
請求項17~18の核酸または請求項18のベクターを含む、細胞。
【請求項20】
外来性核酸を細胞のゲノムに統合するインビトロ方法であって:
a)単離細胞を提供し;
b)細胞に請求項1~16の何れかのポリペプチドを提供し;そして
c)細胞に外来性核酸を含む核酸またはそれを含むベクターを提供する
工程を含む、方法。
【請求項21】
(a)ポリペプチドが請求項17の核酸または請求項18のベクターを細胞に導入することにより細胞に提供される;および/または
(b)外来性核酸が核酸に含まれるまたは外来性核酸を含む核酸またはそれを含むベクターが細胞に個別に提供される、
請求項20のインビトロ方法。
【請求項22】
対象の細胞のゲノムに外来性核酸を統合するインビボ方法であって、請求項1~16の何れかのポリペプチド、請求項17の核酸または請求項18のベクターおよび外来性核酸を含む核酸または該外来性核酸を含むベクターを対象に投与する過程を含む、方法。
【請求項23】
医薬として使用するための、請求項1~16の何れかのポリペプチド、請求項17の核酸、請求項18のベクターまたは請求項19の細胞。
【請求項24】
自己または異種T細胞療法、血中の任意の細胞型をターゲティングする遺伝子療法、造血幹細胞療法、肝臓遺伝子療法、中枢神経系の遺伝子療法、眼遺伝子療法、筋肉遺伝子療法、皮膚遺伝子療法を含むが、これに限定されない遺伝子療法に使用するための、請求項1~16の何れかのポリペプチド、請求項17の核酸、請求項18のベクターまたは請求項19の細胞。
【請求項25】
請求項1~16の何れかのポリペプチド、請求項17の核酸、請求項18のベクターまたは請求項19の細胞および薬学的に許容される担体または媒体を含む、医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、転位活性を有するポリペプチド、特に転位活性を有する操作されたポリペプチド、そのようなポリペプチドをコードする核酸、該核酸を含むベクター、該核酸を含む細胞、該ポリペプチドを使用して外来性核酸をゲノムに統合する方法、医薬および/またはいくつかの遺伝子療法において使用するための該ポリペプチド;および該ポリペプチド、核酸、ベクターまたは細胞を含む医薬組成物に関する。特に、本発明は、ゲノムへの組み込みの特異性を獲得するよう操作されている該ポリペプチドに関する。
【背景技術】
【0002】
トランスポザーゼ活性を有するポリペプチドは治療ゲノム操作のための汎用ツールである。トランスポゾンまたは転位因子は、上流および下流に末端反復配列を有する(短)核酸配列である。活性トランスポゾンは、核酸の切除および標的DNA配列への挿入を促進する酵素をコードする。
【0003】
Sleeping Beauty(SB、Tc1/マリナースーパーファミリートランスポゾン)トランスポゾンは、治療ゲノム操作で使用される既知ツールの一つである。この例示的ツールは、過去に研究されており、特に、種々のサイズのトランスポゾンの細胞の核酸への効率的な挿入またはDNAの細胞のゲノムへの挿入を増強させ、そうして、既知トランスポゾンよりも効率的な転写/翻訳を可能とする超活性を示すバリアントが開発された。
【0004】
SBは、魚ゲノムから単離された転位不活性因子の配列に基づき再構築された合成トランスポゾンである。SBは、今日まで最も徹底的に研究されている脊椎動物トランスポゾンであり、トランスジェニック細胞株産生、誘導型多能性幹細胞(iPSC)再プログラミング、癌生物学領域における表現型駆動挿入変異スクリーニング、実験動物における生殖系列遺伝子導入ならびにエクスビボおよびインビボ両方での体細胞遺伝子療法を含む、遺伝子操作応用の全領域を指示する。ゲノム規模で、SBトランスポゾンは、培養哺乳動物細胞株において遺伝子および上流制御配列への組み込みにわずかにバイアスがあるランダムに近い組み込みプロファイルを示す。局所規模で、SBは、優先的にTAジヌクレオチド(例えばMos1)に挿入され、柔軟性、A親和性およびtDNAの主溝における水素結合位置の対称パターンを含む、DNAの物理的性質に基づくさらなる標的部位優先性を示す。しかしながら、ゲノムへのランダム組み込みは、ヒト適用において、ある種の遺伝毒性リスクがある。故に、組み込みが保証され、ゲノムへの挿入が発癌性形質転換に関連するリスクをもたらさないまたは少なくとも該リスクが低減されているトランスポゾン系への要請がある。
【0005】
本発明者らは、とりわけゲノム、特にパリンドロームAT反復標的配列への組み込みの特異性の獲得を示す特異的トランスポザーゼバリアントを予想外に発見した。本発明者らは、発見したバリアントによる非ヌクレオソームDNAに富む標的部位のDNA柔軟性の増強を示した。バリアントはさらにヒトゲノムにおける遺伝子のエクソンならびに転写制御領域を脱標的化することが判明し、故に、遺伝子療法適用におけるバリアントの安全性および実用性が拡大される。
【発明の概要】
【0006】
第一の態様(態様1a)において、本発明は、次の:
α1ヘリックス-α2ヘリックス-β1シート-β2シート-β3シート-β4シート-β5シート-α3ヘリックス-β6シート-η1-α4ヘリックス-η2-α5ヘリックス-α6ヘリックス-α7ヘリックス-α8ヘリックス
(ここで、
(i)β3シートとβ4シートを接続するループにおける天然に存在するHはV、A、N、C、Q、G、I、L、M、F、P、R、S、T、W、K、EまたはY、好ましくはV、PまたはTで置換されているかまたは
β3シートとβ4シートを接続するループの天然に存在するFはV、A、N、C、Q、G、I、L、M、P、R、S、T、W、K、H、EまたはY、好ましくはV、PまたはTで置換されているかまたは
β3シートとβ4シートを接続するループの天然に存在するYはV、A、N、C、Q、G、I、L、M、F、P、R、S、T、W、H、EまたはK、好ましくはV、PまたはTで置換されているかまたは
β3シートとβ4シートを接続するループの天然に存在するLはV、A、N、C、Q、G、I、M、F、P、R、S、T、W、H、Y、EまたはK、好ましくはV、PまたはTで置換されているかまたは
β3シートとβ4シートを接続するループの天然に存在するSはV、A、N、C、Q、G、I、L、M、F、P、R、T、W、H、Y、EまたはK、好ましくはV、PまたはTで置換されている;
および/または
(ii)β6シートとα4ヘリックスを接続するβ6シートにおける少なくとも1個の天然に存在するQ、P、SまたはTはR、S、CまたはA、好ましくはRまたはSで置換されている;
および/または
(iii)β6シートとα4ヘリックスを接続するβ6シートにおける少なくとも1個の天然に存在するK、I、S、T、V、PまたはCはR、I、CまたはV、好ましくはRで置換されている)
二次構造要素を含む天然に存在するトランスポザーゼのバリアントを含むトランスポザーゼ活性を有するポリペプチドであって、ここで、天然に存在するトランスポザーゼのバリアントは置換(i)、(ii)または(iii)の少なくとも1個を含むものを提供する。
【0007】
あるいは、本発明は、態様1bにおいて、Tc1/マリナースーパーファミリーのトランスポザーゼを含むまたはそれからなる転位活性を有するポリペプチドであって、配列番号1のsleeping beauty(SB)トランスポザーゼのアミノ酸248位、247位および/または187位に対応するアミノ酸位置が異なるアミノ酸で置換されており、該トランスポザーゼがゲノムへの組み込みの特異性を獲得しているポリペプチドを提供する。
【0008】
特異性の獲得は、ポリペプチドでの転位によるエクソンへの組み込み事象の数が、配列番号1のSBを使用して観察されるエクソンへの組み込み事象の数と比較して、少なくとも25%低減することを意味する。
【0009】
所望により、トランスポザーゼはsleeping beautyトランスポザーゼまたは配列番号1と少なくとも70%配列同一性を有するそのバリアントである。
【0010】
ここに開示するポリペプチドは、ある実施態様において、SBトランスポザーゼのアミノ酸248位に対応するアミノ酸位置の置換を含み得て、ここで、好ましくは、該置換はK248R、K248S、K248V、K248IおよびK248Cからなる群から選択される。
【0011】
ある実施態様において、ポリペプチドは、所望によりSBトランスポザーゼのアミノ酸247位に対応するアミノ酸位置の置換を含み、ここで、好ましくは、該置換はP247R、P247C、P247AおよびP247Sからなる群から選択される。
【0012】
ポリペプチドは、ある実施態様において、SBトランスポザーゼのアミノ酸187位に対応するアミノ酸位置の置換を含み得て、ここで、好ましくは、該置換はH187A、H187N、H187C、H187Q、H187G、H187I、H187L、H187M、H187S、H187V、H187W、H187K、H187R、H187E、H187PおよびH187Tからなる群から選択される。
【0013】
ある実施態様において、ポリペプチドは次の置換:
(i)H187V、H187P、H187R、H187E、H187T、H187S、H187A、H187N、H187C、H187Q、H187G、H187I、H187L、H187M、H187W、H187K、好ましくはH187P、H187VまたはH187T、より好ましくはH187V;および/または
(ii)P247R、P247S、P247CまたはP247A;好ましくはP247RまたはP247S;および/または
(iii)K248R、K248S、K248V、K248IまたはK248C;好ましくはK248R;
またはそのバリアントの対応する位置での置換
の1以上を含み得る。
【0014】
あるいは、本発明は、態様1cにおいて、配列番号1を含むポリペプチドまたは転位活性および配列番号1と少なくとも70%配列同一性を有するそのバリアントであって、ここで、配列番号1またはそのバリアントが次の置換:
(i)H187A、H187N、H187C、H187Q、H187G、H187I、H187L、H187M、H187F、H187S、H187V、H187W、H187K、H187Y、H187R、H187E、H187PまたはH187T、好ましくはH187P、H187VまたはH187T、より好ましくはH187V;および/または
(ii)P247R、P247C、P247AまたはP247S、好ましくはP247RまたはP247Sおよび/または
(iii)K248R、K248A、K248S、K248V、K248IまたはK248C;好ましくはK248R;
またはそのバリアントの対応する位置での置換
の1以上を含むものを提供する。
【0015】
該ポリペプチドは、上記二次構造要素を有し得る。態様1aのポリペプチドであり得る。好ましくは、SB100Xと比較して、ゲノムへの組み込みの特異性の獲得を示す。
【0016】
第二の態様において、本発明は、第一の態様のポリペプチドをコードする核酸配列を含む核酸に関する。
【0017】
第三の態様において、本発明は、第二の態様の核酸分子を含むベクターに関する。
【0018】
第四の態様において、本発明は、第二の態様の核酸または第三の態様のベクターを含む細胞に関する。
【0019】
第五の態様において、本発明は、外来性核酸を細胞のゲノムに統合するインビトロ方法であって:
a)単離細胞を提供し;
b)細胞に第一の態様のポリペプチドを提供し;そして
c)細胞に外来性核酸を含む核酸またはそれを含むベクターを提供する
工程を含む、方法に関する。
【0020】
第六の態様において、本発明は、対象の細胞のゲノムに外来性核酸を統合するインビボ方法であって、本発明の上記態様の何れかのポリペプチド、核酸またはベクターおよび外来性核酸を含む核酸または該核酸を含むベクターを対象に投与する過程を含む、方法に関する。
【0021】
他の態様において、本発明は、医薬、特に、遺伝子療法において使用するための、記載するポリペプチド、核酸、ベクターまたは細胞に関する。
【0022】
さらなる態様において、本発明は、記載するポリペプチド、核酸、ベクターまたは細胞および薬学的に許容される担体、アジュバントまたは媒体を含む、医薬組成物に関する。
【0023】
図の一覧
下記において、本明細書に含まれる図の内容を説明する。この状況において、上記および/または下記の本発明の詳細な記載もまた参照されたい。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】Tc1/マリナースーパーファミリートランスポザーゼの例示的トランスポザーゼのアミノ酸配列アラインメント。SBのアミノ酸187位、247位および248位に対応する全アミノ酸を四角で囲んで強調する。故に、
図1は、当業者が他の整列した全トランスポザーゼ内のアミノ酸187位、247位および248位にそれぞれ対応し、SBについて例示されているのと同じ方法で、異なるアミノ酸で置換され得るアミノ酸位置を決定することを可能とする。
図1は、選択したTc1/マリナースーパーファミリートランスポザーゼのトランスポザーゼのアラインメントのみを記載している。このスーパーファミリーさらなるトランスポザーゼをこのアラインメントに加えて、これらトランスポザーゼにおけるSBのアミノ酸187位、247位および248位に対応するアミノ酸の同定を可能とし得る。示すトランスポザーゼは、トランスポザーゼ活性を有することが知られるトランスポザーゼ群に属する。SBのアミノ酸配列(配列番号1)を、このアラインメントにおける引用アミノ酸配列として使用した。
【0025】
【
図2】Sleeping Beautyトランスポザーゼと密接に関連するトランスポザーゼのアミノ酸配列のアラインメント。SBのアミノ酸187位、247位および248位に対応する全アミノ酸を四角で囲んで強調する。故に、
図1は当業者が他の整列した全トランスポザーゼ内のアミノ酸187位、247位および248位にそれぞれ対応し、SBについて例示されているのと同じ方法で、異なるアミノ酸で置換され得るアミノ酸位置を決定することを可能とする。
図2はTc1/マリナートランスポザーゼスーパーファミリーの一部選択した転位活性メンバーのアラインメントのみを記載している。さらなるトランスポザーゼを、このアラインメントに加えて、これらトランスポザーゼのSBのアミノ酸187位、247位および248位に対応するアミノ酸の同定を可能とし得る。配列アラインメントの上部に、対応するアミノ酸ストレッチに属する二次構造α1ヘリックス-α2ヘリックス-β1シート-β2シート-β3シート-β4シート-β5シート-α3ヘリックス-β6シート-η1-α4ヘリックス-η2-α5ヘリックス-α6ヘリックス-α7ヘリックス-α8ヘリックスを示す。これにより、さらに、β6シートとα4ヘリックスを接続するまたはβ3シートとβ4シートを接続するη1における特異的アミノ酸に対応する他の整列した全トランスポザーゼ内のアミノ酸位置を当業者が決定できる。同様にして、このスーパーファミリーのさらなるトランスポザーゼをこのアラインメントに加えて、β6シートとα4ヘリックスを接続するまたはβ3シートとβ4シートを接続するη1における該位置に対応するアミノ酸の同定を可能とし得る。SBのアミノ酸配列(配列番号1)を、このアラインメントにおける参照アミノ酸配列として使用した。
【0026】
【
図3】Sleeping Beautyトランスポザーゼ変異体の転位活性。H187(A)、P247(B)およびK248(C)の相対的転位活性。トランスポザーゼ変異体を発現するプラスミドを、HeL細胞にトランスポゾンドナープラスミド(pT2B/puro)と一過性に同時導入した。細胞をピューロマイシン耐性について選択し、メチレンブルーで染色して、生存可能細胞コロニーを同定した。コロニー数を、転位効率を100%と設定したSB100X陽性対照に対して正規化した。不活性SBトランスポザーゼ(D3)を陰性対照として包含させた。データを平均±SD、n=3 生物学的反復として示す。転位活性の差異は、示す変異体についてスチューデントのt検定で決定して、有意である。
【0027】
【
図4】トランスポザーゼ変異体の組み込み部位。配列ロゴは、標的TAジヌクレオチドの周りを中心とする、60bpウィンドウにおけるゲノム挿入遺伝子座での多数決原理コンセンサス配列を示す。y軸上の値2(log24)は、可能性のある最高頻度を示す。円グラフは、SB特異的ATATATATコンセンサスモチーフで生じる挿入パーセンテージを示す。N値は一意的にマッピング可能なSBトランスポゾン挿入数を表す。
【0028】
【
図5】ゲノム特徴およびクロマチン規定機能的セグメントにおける挿入部位の提示。(A)MLV、HIV、SB100Xおよびその変異体誘導体の組み込み遺伝子座をヒトゲノムの遺伝子関連セグメントでカウントした。数字は、理論的ランダム対照(1に設定)と比較した挿入頻度の増加(赤色)または減少(青色)変化倍率を示す。左のデンドログラムは行の平均頻度値に基づく。K248R、P247RおよびH187V変異体対SB100Xの値で測定した統計的有意(フィッシャーの正確確率検定)を星印で示す;* p<0.05、** p<0.001、ns:非有意。(B)エピジェネティックシグナルパターンにより定義した機能的ゲノムセグメントにおける挿入部位の表示。カラーコード、デンドログラムおよび統計的有意はパネル(A)について示したとおり。H187VおよびK248Rにより触媒される単純反復組み込みの濃縮をパネル(C)に示し、ATATATAT、H187Vバリアントへの組み込みの優先性をパネル(D)として示す。これらゲノム領域への挿入の全体的パーセンテージを(E)に示す。
【0029】
【
図6】ゲノムセーフ・ハーバーにおける挿入頻度。(A)数字は下表に挙げるセーフ・ハーバーサブカテゴリーにおける挿入のパーセンテージ表示を示す。色が濃いほど、100%の理想とは逆に、あるセーフ・ハーバーカテゴリーにおける挿入頻度が低いことを示す。** p<0.001、SB100Xと比較したフィッシャーの検定。(B)ゲノムセーフ・ハーバーにおける挿入の全体的表示。
【0030】
【
図7】トランスポゾン挿入部位でのヌクレオソーム占有率。ヒトHepG2細胞におけるMNase-Seqデータにより決定したヌクレオソームと関連する部位へのSB100XおよびK248R、P247RおよびH187V変異体による挿入の相対的頻度。頻度は、トランスポゾン組み込み部位から500bp上流および500bp下流に伸びるウィンドウに示す。
【0031】
【
図8】H187、P247およびK248トランスポザーゼ変異体、好ましくは標的TAリッチゲノム領域。パネル(A)は、H187VおよびK248R挿入が一般にヒストン修飾を欠くことを示す。エクソン、特にコーディングエクソンはTAジヌクレオチドが相対的に少ない(
図8B)。しかしながら、エクソンは、SB転位の好ましい標的部位である。
【0032】
【
図9】ゲノム特徴でのさらなるSB100x変異体の挿入部位の表示。MLV、HIV、SB100Xおよびその変異体誘導体の組み込み遺伝子座H187P、H187R、H187E、H187S、H187T、P247S、P247A、P247C、P247S、K248C、K248IおよびK248Vをヒトゲノムの遺伝子関連セグメントでカウントした。数字は理論的ランダム対照(1に設定)と比較した挿入頻度の増加(赤色)または減少(青色)変化倍率を示す。左のデンドログラムは行の平均頻度値に基づく。
【発明を実施するための形態】
【0033】
発明の詳細な記載
本発明を下に詳細に記載する前に、本発明はここに記載される特定の方法、プロトコールおよび試薬が変わり得るため、これらだけに限定されないことは理解されるべきである。また、ここで使用する用語は特定の実施態様を説明することのみを目的とするものであり、添付する特許請求の範囲によってのみ限定されるべき本発明の範囲を限定する意図がないことも理解されるべきである。他に異なって定義されない限り、ここで使用する全ての技術的および科学的用語は、当業者により共通して理解されるのと同じ意味を有する。
【0034】
好ましくは、ここで使用する用語は"A multilingual glossary of biotechnological terms: (IUPAC Recommendations)", Leuenberger, H.G.W, Nagel, B. and Klbl, H. eds. (1995)、Helvetica Chimica Acta, CH-4010 Basel, Switzerland)およびAxel Kleemann and Jurgen Engelによる"Pharmaceutical Substances: Syntheses, Patents, Applications"、Thieme Medical Publishing, 1999; "Merck Index: An Encyclopedia of Chemicals, Drugs, and Biologicals", Susan Budavari et al.編, CRC Press, 1996およびthe United States Pharmcopeial Convention, Inc., Rockville Md.出版の米国薬局方25/National Formulary-20, 2001に記載されるとおりである。
【0035】
本発明の実施は、特に断らない限り、当分野における文献で説明される、化学、生化学、細胞生物学、免疫学および組み換えDNA技術の慣用方法を用いる。
【0036】
本明細書および後続の特許請求の範囲をとおして、文脈から他の解釈が必要ではない限り、用語「含む」および「含み」および「含んで」などのその変形は、記載される整数もしくは工程または整数もしくは工程の群の包含を意味するが、任意の他の整数もしくは工程または整数もしくは工程の群の除外は意味しない。以下の記載において、本発明の種々の態様がより詳細に定義される。このように定義された各態様は、明らかにこれに反する記載がない限り、任意の1以上の他の態様と組み合わせ得る。特に、任意的、好ましいまたは有利として示される任意の特性を、任意的、好ましいまたは有利として示される任意の他の1以上の特性と組み合わせ得る。
【0037】
以下において、本発明の要素を記載する。これらの要素を具体的実施態様と共に記載される。しかしながら、それらを任意の様式および任意の数で組み合わせて、さらなる実施態様を作り得ることが理解されるべきである。種々に記載される例および好ましい実施態様は、本発明を明示的に記載される実施態様にのみ限定するものと解釈してはならない。この記載は、明示的に記載される実施態様と任意の数の開示されたおよび/または好ましい要素を組み合わせる実施態様を支持および包含すると理解されるべきである。さらに、本明細書において記載される全ての要素の任意の並べ替えおよび組み合わせは、文脈から異なる解釈が必要とされない限り、本明細書により開示されたものと解釈されるべきである。
【0038】
定義
次に、この明細書で汎用される用語の定義を提供する。これらの用語は、それが使用される各々の場合、本明細書の他の箇所においても、各々定義された意味および好ましい意味を有する。
【0039】
この明細書および添付する特許請求の範囲で使用される単数表現は、明らかに文脈に反しない限り、複数対象を含む。
【0040】
ここで使用する用語「トランスポザーゼ」は、転位できる機能的核酸-タンパク質複合体の要素であり、転位に介在する、酵素をいう。用語「トランスポザーゼ」はまたレトロトランスポゾンからのまたはレトロウイルス起源のインテグラーゼも意味する。ここで使用する「転位反応」は、トランスポゾンが標的核酸に挿入される反応をいう。転位反応の主体はトランスポゾンおよびトランスポザーゼまたはインテグラーゼ酵素である。
【0041】
用語「天然に存在するトランスポザーゼ」または「野生型トランスポザーゼ」は、本明細書において、天然に存在する種から単離されているトランスポザーゼの非修飾アミノ酸配列として、本明細書で相互交換可能に使用される。そのようなアミノ酸配列は、EBIまたはNCBIから容易に入手できる。Sleeping Beautyは用語「天然に存在するトランスポザーゼ」に包含されることを意図する。
【0042】
ここで使用する用語「転位活性」は、転位反応で評価できる、あるトランスポザーゼの活性をいう。適当な実験設定はここでの実験セクションに記載されまたはIvics, 1997 Cell 91: 501-510に記載の古典的二成分転位アッセイを使用し得る。
【0043】
用語「トランスポザーゼ」は、天然に存在する完全長トランスポザーゼの転位活性、例えば、活性の少なくとも1%、活性の少なくとも10%、活性の少なくとも20%、活性の少なくとも50%または最適には活性の100%またはそれ以上を有する一続きのアミノ酸をいう。トランスポザーゼは天然に存在する完全長トランスポザーゼの1~10個のNおよび/またはC末端アミノ酸配列を欠き得る。好ましくは、トランスポザーゼがトランスポザーゼのN末端に他のタンパク質を含む融合タンパク質に含まれるならば、M1位のメチオニンを欠き得る。
【0044】
本明細書において使用する用語「置換」は、1個のヌクレオチドまたはアミノ酸と、それぞれ核酸配列の1個のヌクレオチドおよびアミノ酸配列の1個のアミノ酸の置き換えをいう。
【0045】
本明細書で使用する用語「コンセンサス配列」は、2以上の配列間の配列アラインメントにおける各位置で見られる、ヌクレオチドまたはアミノ酸の最も頻繁な残基の計算された順序いう。関連配列が互いに比較され、類似配列モチーフが計算される、複数配列アラインメントの結果を表す。保存配列モチーフは、コンセンサス配列として記載され、同一アミノ酸、すなわち比較配列間で同一のアミノ酸、保存アミノ酸、すなわち比較アミノ酸配列間で変化するが、全アミノ酸がアミノ酸のある機能的または構造上の群、例えば極性または中性に属しているものである、アミノ酸および可変アミノ酸、すなわち比較配列間で明確な関連性を示さないアミノ酸を示す。
図1は、Tc1/マリナートランスポザーゼスーパーファミリーの一部の転位活性メンバーを含むトランスポザーゼの配列のアラインメントを記載し、アラインメントの下に、由来するコンセンサス配列を記載する。記載するアラインメントの作成に使用したアラインメントアルゴリズムは、次の設定を使用するCLUSTAL Omegaである:脱アライン入力配列:no、mbed様クラスタリング系統樹:yes、mbed様クラスタリングイテレーション:yes、組合せイテレーション数:デフォルト、最高系統樹イテレーション:デフォルト、最高hmmイテレーション:デフォルト。アミノ酸保存はMViewで強調される。
図2は
図1と同じアラインメントを記載するが、ESPript3.0で強調されるSBトランスポザーゼの触媒ドメインについて得た二次構造情報(PDBエントリーコード:5CR4)を伴う。
【0046】
本明細書で使用する用語「対応する位置」は、天然に存在する完全長対照トランスポザーゼのアミノ酸配列、好ましくは配列番号1のSBの完全長アミノ酸配列とのアミノ酸配列のアラインメントにおいて整列するアミノ酸をいう。対照トランスポザーゼの位置は、最初のN末端アミノ酸から決定される。従って、配列番号1の完全長アミノ酸配列内のSBの187位は「H」である。故に、他のトランスポザーゼにおけるSBの187位に対応するアミノ酸位置は、
図1および2に例示されるとおり、アラインメントにおける配列番号1の187位でのSBの「H」と整列するアミノ酸である。同様に、SBの247位に対応するアミノ酸位置は、配列番号1の247位でSBの「P」と整列されるものであり、SBの248位に対応する位置は、配列番号1の248位でSBの「K」と整列されるものである。
【0047】
本発明において、タンパク質またはポリペプチドの「一次構造」は、ポリペプチド鎖におけるアミノ酸配列である。タンパク質の「二次構造」は、タンパク質の局所セグメントの一般的三次元形状である。しかしながら、三次構造であると考えられる三次元空間における特異的原子位置は記載しない。タンパク質において、二次構造は、主鎖アミド基とカルボキシル基の間の水素結合パターンにより決定される。タンパク質の「三次構造」は、原子座標により決定されるタンパク質の三次元構造である。「四次構造」は、多サブユニット複合体の複数の折り畳まれたまたはコイル状のタンパク質またはポリペプチド分子の配置である。
【0048】
ここで使用する用語「折り畳み」または「タンパク質折り畳み」は、タンパク質がその三次元形状または構造を取る、すなわちそれによりタンパク質が水素結合、金属配位、疎水性力、ファン・デル・ワールス力、パイ-パイ相互作用、静電効果および/または分子内Cys結合によるなどの、しかし、これに限定されない非共有結合および/または共有結合相互作用を介して特異的三次元形状を形成するよう指示される、過程をいう。故に、用語「折り畳まれたタンパク質」は、その二次、三次または四次構造などのタンパク質の一部または全ての三次元形状をいう。
【0049】
本明細書で使用する用語「ベータストランド」は、主鎖におけるN-Cα-C-Nのねじれ角が約120°であるポリペプチド鎖内の5~10アミノ酸長セクションをいう。あるタンパク質配列内のベータストランドは、(複数)配列アラインメント(例えばClustal omegaを使用)後、pdbファイルからアノテーションを検索することにより予測され得る。ベータストランドの予測は、JPredなどの一般に利用可能なソフトウェアツールを使用して実施できる。7個のベータストランドの開始および終了位を、pyMolを使用するPDBファイルのさらなる構造的アラインメントにより確認できる。
【0050】
本明細書で相互交換可能に使用される用語「βシート」または「ベータシート」は、βシートを形成する2個のβストランドをいう。βシートは、タンパク質における規則正しい二次構造の一般的モチーフである。ペプチド鎖がN末端およびC末端により方向が与えられているため、βストランドもまた方向性であるということができる。通常タンパク質トポロジー図においてC末端を指す矢印により示される。隣接βストランドは、逆平行、平行または混合配置で水素結合を形成できる。逆平行配置で、連続的βストランドは、一方のストランドのN末端が隣のC末端に隣接するよう交互方向である。これが、カルボニルとアミンの間のストランド間水素結合が、好ましい配向である平面的であることを可能とするため、最強ストランド間安定性をもたらす配置である。β構造は長く伸びるポリペプチド鎖により特徴づけられる。βストランドのアミノ酸組成は、疎水性(水を恐れる)アミノ酸残基を好む傾向にある。これら残基の側鎖は、より親水性(水を好む)残基より水への可溶性が低い傾向にある。β構造は、ストランド間の水素結合が水分子の競合から保護される、タンパク質のコア構造内部に見られる傾向にある。
【0051】
本明細書において相互交換可能に使用される用語「αヘリックス」または「アルファヘリックス」は、タンパク質の二次構造における一般的モチーフをいい、全主鎖N-H基水素がタンパク質配列に沿って4残基前に位置するアミノ酸の主鎖C=Oに結合している右手側ヘリックス構造である。タンパク質の局所構造タイプの中で、αヘリックスは最も極端であり、配列から最も予測可能であり、かつ最も多い。
【0052】
本明細書で相互交換可能に使用する用語「介在領域」または「ループ」は、2個のβシート間またはβシートとαヘリックス間のアミノ酸残基をいう。一般に、「介在領域」または「ループ」はほとんど構造化されていないかまたは全く構造化されておらず、それが柔軟性を提供する。
【0053】
あるアミノ酸配列内の置換をいうとき、次の命名「XNo.Z」が使用され、元のアミノ酸配列の特定の位置「No.」数字のアミノ酸「X」がアミノ酸「Z」で置換されていることを意味し、ここで、「XNo.Z/X’No.’Z’/X”No.”Z”」は、元のアミノ酸「X」、「X’」および「X”」が、位置「No.」でそれぞれ「Z」、「Z’」および「Z”」で表される数個の異なるアミノ酸で選択的に置換されていてよいことを意味する。アミノ酸位置は、特定の長さのアミノ酸配列、好ましくは特定のトランスポザーゼの野生型、完全長配列に関して示される。
【0054】
用語「ベクター」または「発現ベクター」は相互交換可能に使用され、細胞、好ましくは哺乳動物細胞に導入されるまたは本発明の核酸のコレクションまたは本発明の核酸のコレクションの一部である1個の核酸を導入することができるポリヌクレオチドまたはポリヌクレオチドとタンパク質の混合物をいう。ベクターの例は、プラスミド、コスミド、ファージ、ウイルスまたは人工染色体を含むが、これらに限定されない。特に、ベクターを、プロモーターおよび核酸のコレクションまたは本発明の核酸のコレクションの一部である1個の核酸の適当な宿主細胞への輸送に使用できる。発現ベクターは、宿主細胞における発現ベクターの自律複製を促進する「レプリコン」ポリヌクレオチド配列を含み得る。宿主細胞に入ると、発現ベクターは宿主染色体DNAと無関係にまたは同時に複製し得て、数コピーのベクターおよびその挿入DNAが産生され得る。複製不全発現ベクターを使用するとき - しばしば安全性の理由による - ベクターは複製できず、単に核酸の発現を指示し得る。発現ベクターのタイプにより、発現ベクターは細胞から失われる、すなわち一過性にのみ核酸によりコードされるネオ抗原を発現し得るかまたは細胞で安定であり得る。発現ベクターは、典型的に発現カセット、すなわち核酸のmRNA分子への転写を可能とする必須要素を含み得る。
【0055】
用語「ウイルスベクター」は、本明細書において、感染性ウイルス粒子に集合できる一本鎖または二本鎖核酸配列をいう。この核酸配列は、完全または部分的ウイルスゲノムであり得る。後者の場合、ウイルスゲノムは、好ましくは1以上の異種遺伝子を含む。一部ウイルス粒子について、ウイルスゲノムの極く短い配列が、感染性ウイルス粒子の集合をさせるのに必要である。例えば、感染性アデノ随伴ウイルス粒子の集合のために、異種核酸の5’および3’に配置された短(約200bp長)反復配列ある長さ(典型的にアデノ随伴ウイルスについて4.5~5.3kB)のみが、感染性アデノ随伴ウイルス粒子の集合を可能とする。あるウイルスの集合のための最小核酸配列は周知である。ウイルスゲノムが大きく、感染性ウイルス粒子のための最小ウイルス配列が小さいほど、ウイルスベクターに挿入できる異種遺伝子が大きい。
【0056】
「配列類似性」は、同一または保存的アミノ酸置換を表すアミノ酸のパーセンテージを示す。2個のアミノ酸配列間の用語「配列同一性」は、2個のその配列間で同一であるアミノ酸のパーセンテージを示す。配列類似性、好ましくは配列同一性を決定するためのアラインメントは既知ツールで、好ましくは最良配列アラインメントを使用して、例えば、CLC main Workbench(CLC bio)またはAlignを使用して、標準設定、好ましくはEMBOSS::needle、Matrix:Blosum62、Gap Open 10.0、Gap Extend 0.5を使用して、実施できる。同一性パーセンテージは、比較に使用する完全長配列を参照して決定し、単に最高類似性の配列または配列ストレッチに対してではない。故に、比較で使用する100アミノ酸長配列の50連続アミノ酸と100%配列同一性を共有するアミノ酸は、50%配列同一性しか有しない(50連続アミノ酸外で何らかの同一性を共有するさらなるアミノ酸がないとの仮定の下に)。
【0057】
ここで使用する用語「薬学的に許容される」は、好ましくは、医薬組成物の活性剤の作用と相互作用しない、物質の非毒性の性質をいう。特に、「薬学的に許容される」は、連邦政府もしくは州政府の規制当局により承認されている米国薬局方、欧州薬局方または他の一般に認識されている薬局方において動物、より具体的にヒトにおける使用について挙げられていることを意味する。
【0058】
用語「担体」は、活性成分の適用を促進する、増強するまたは可能とする目的で組み合わせる、天然または合成された有機または無機成分をいう。本発明によると、用語「担体」はまた対象への投与に適する1以上の適合性の固体または液体充填剤、希釈剤、添加物または封入物質も含む。可能性のある担体物質(例えば、希釈剤)は、例えば、無菌水、リンゲル液、乳酸リンゲル液、生理食塩水、静菌性食塩水(例えば、0.9%ベンジルアルコール含有食塩水)、リン酸緩衝化食塩水(PBS)、ハンクス溶液、固定油、ポリアルキレングリコール、水素化ナフタレンおよび生体適合性ラクチドポリマー、ラクチド/グリコリドコポリマーまたはポリオキシエチレン/ポリオキシ-プロピレンコポリマーである。ある実施態様において、担体はPBSである。得られた溶液または懸濁液は、好ましくはレシピエントの血液と等張である。適当な担体およびその製剤は、Remington’s Pharmaceutical Sciences, 17th ed., 1985, Mack Publishing Co.に極めて詳細に記載されている。
【0059】
用語「細胞」は、本明細書では、細菌細胞、酵母細胞または哺乳動物細胞、好ましくはヒト、マウス、ラット、ウサギ、イヌ、サルまたはネコの細胞などの真核生物または原核生物細胞をいうために使用する。
【0060】
本発明の態様および好ましい実施態様
次に、本発明の種々の態様をさらに詳細に定義する。このように定義される各態様は、明らかにこれに反する指示がない限り、任意の他の態様または態様と組み合わせ得る。特に、好ましいまたは有利として示される任意の特性を、好ましいまたは有利として示される他の1以上の特性と組み合わせ得る。
【0061】
本発明に至る研究において、驚くべきことにトランスポザーゼ活性を有するポリペプチドのバリアントが、ゲノムへの組み込み特性の顕著な獲得を示すことが見出された。
【0062】
本発明は、配列番号1のsleeping beauty(SB)トランスポザーゼのアミノ酸248位、247位および/または187位に対応するアミノ酸位置が異なるアミノ酸で置換されている、Tc1/マリナースーパーファミリーのトランスポザーゼを含むまたはそれからなる転位活性を有するポリペプチドであって、ここで、トランスポザーゼがゲノムへの組み込みの特異性を獲得している、ポリペプチドを提供する。ポリペプチドは、sleeping beautyトランスポザーゼまたは配列番号1と少なくとも70%配列同一性を有するそのバリアントであり得る。
【0063】
「特異性の獲得」は、好ましくはポリペプチドでの転位により、エクソンへの組み込み事象数が、配列番号1のSBを使用したとき観察されるエクソンへの組み込み事象数と比較して、少なくとも10%、好ましくは、少なくとも25%減少することを意味する。
【0064】
ポリペプチドは、ある実施態様において、SBトランスポザーゼのアミノ酸248位に対応するアミノ酸位置に置換を含み得て、ここで、好ましくは、該置換はK248R、K248S、K248V、K248IおよびK248Cからなる群から選択される。
【0065】
ポリペプチドは、ある実施態様において、SBトランスポザーゼのアミノ酸247位に対応するアミノ酸位置の置換を含み得て、ここで、好ましくは、該置換はP247R、P247C、P247AおよびP247Sからなる群から選択される。
【0066】
ポリペプチドは、ある実施態様において、SBトランスポザーゼのアミノ酸187位に対応するアミノ酸位置の置換を含み得て、ここで、好ましくは、該置換はH187A、H187N、H187C、H187Q、H187G、H187I、H187L、H187M、H187S、H187V、H187W、H187K、H187R、H187E、H187PおよびH187Tからなる群から選択される。
【0067】
ポリペプチドはまた、好ましくは、記載された置換の、これらの位置の置換の組み合わせを含む。他の変異、例えば、転位活性を増強させる変異(例えば、下記)も含まれ得る。
【0068】
本発明のポリペプチドは次の置換の1以上を含み得る:
(i)H187V、H187P、H187R、H187E、H187TまたはH187S、H187A、H187N、H187C、H187Q、H187G、H187I、H187L、H187M、H187S、H187W、H187K、好ましくはH187P、H187VまたはH187T、より好ましくはH187V;および/または
(ii)P247R、P247S、P247CまたはP247A、好ましくはP247RまたはP247Sおよび/または
(iii)K248R、K248S、K248V、K248IまたはK248C;好ましくはK248R;
またはそのバリアントの対応する位置での置換。
【0069】
ある態様において、本発明はまた次の:
α1ヘリックス-α2ヘリックス-β1シート-β2シート-β3シート-β4シート-β5シート-α3ヘリックス-β6シート-η1-α4ヘリックス-η2-α5ヘリックス-α6ヘリックス-α7ヘリックス-α8ヘリックス
(ここで、
(i)β3シートとβ4シートを接続するループにおける天然に存在するHはV、A、N、C、Q、G、I、L、M、F、P、R、S、T、W、K、YまたはE、好ましくはV、PまたはTで置換されているかまたは
β3シートとβ4シートを接続するループの天然に存在するFはV、A、N、C、Q、G、I、L、M、P、R、S、T、W、K、H、EまたはY、好ましくはV、PまたはTで置換されているかまたは
β3シートとβ4シートを接続するループの天然に存在するYはV、A、N、C、Q、G、I、L、M、F、P、R、S、T、W、H、EまたはK、好ましくはV、PまたはTで置換されているかまたは
β3シートとβ4シートを接続するループの天然に存在するLはV、A、N、C、Q、G、I、M、F、P、R、S、T、W、H、Y、EまたはK、好ましくはV、PまたはTで置換されているかまたは
β3シートとβ4シートを接続するループの天然に存在するSはV、A、N、C、Q、G、I、L、M、F、P、R、T、W、H、Y、EまたはK、好ましくはV、PまたはTで置換されている;
および/または
(ii)β6シートとα4ヘリックスを接続するβ6シートにおける少なくとも1個の天然に存在するQ、P、SまたはTはR、S、CまたはA、好ましくはRまたはSで置換されている;
および/または
(iii)β6シートとα4ヘリックスを接続するβ6シートにおける少なくとも1個の天然に存在するK、I、S、T、V、PまたはCは好ましくはR、I、VまたはCで置換されている)
二次構造要素を有する天然に存在するトランスポザーゼのバリアントを含む、それから本質的になるまたはそれからなる転位活性を有するポリペプチドであって、ここで、天然に存在するトランスポザーゼのバリアントが置換(i)、(ii)または(iii)の少なくとも1個を含むものを提供する。
【0070】
本発明は、トランスポザーゼにおけるあるアミノ酸の置換が、非ヌクレオソームDNAで豊富な標的部位のDNA柔軟性を増強し、ヒトゲノムにおける遺伝子のエクソンおよび転写制御領域を脱標的化する、ゲノム、特にパリンドロームAT反復標的配列への組み込みの特異性を獲得したトランスポザーゼに至るとの驚くべき発見に基づく。これら全ての性質は、遺伝子療法適用における本発明のポリペプチドの安全性および実用性の増強に寄与する。これら性質は、発現遺伝子を不活性または変異させる可能性が低いため、トランスポザーゼに極めて好都合である。改善された組み込みパターンは、本明細書の実施例3および7に記載する実験により評価でき、それぞれ
図5および9に示す。故に、ポリペプチドが配列番号1のSBのバリアントを含むまたはそれからなるならば、配列番号1のSBを使用したとき観察されるエクソンへの組み込み事象の数と比較したとき、エクソンへの組み込み事象の数が、本発明のポリペプチドで少なくとも10%、良好には、少なくとも25%、より好ましくは少なくとも40%またはより好ましくは少なくとも50%低減するのが好ましい。
【0071】
好ましくは本発明のバリアントは、完全長野生型トランスポザーゼの転位活性を保持する、すなわちバリアントのベースである完全長野生型トランスポザーゼの転位活性の少なくとも1%、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも50%、少なくとも75%、所望により100%以上、好ましくは配列番号1のSBの転位活性の75%、所望により100%を有する。
【0072】
図1および
図2は、SBと種々の程度の関連性のトランスポザーゼのアミノ酸配列のアラインメントを記載する。アミノ酸配列は、少なくとも
図1のアラインメントに含まれる一部トランスポザーゼとSBの間で相当違うが、全トランスポザーゼは類似の二次構造を共有する。それらはある順番およびある長さのαヘリックスおよびβシートなどの二次構造の要素を含む。
図1および2は、これらアミノ酸配列内のα1ヘリックス-α2ヘリックス-β1シート-β2シート-β3シート-β4シート-β5シート-α3ヘリックス-β6シート-η1-α4ヘリックス-η2-α5ヘリックス-α6ヘリックス-α7ヘリックス-α8ヘリックスの位置を示す。SBに関して、要素α1ヘリックス-α2ヘリックス-β1シート-β2シート-β3シート-β4シート-β5シート-α3ヘリックス-β6シート-η1-α4ヘリックス-η2-α5ヘリックス-α6ヘリックス-α7ヘリックス-α8ヘリックスは配列番号1の次のアミノ酸に及ぶ:
α1ヘリックス:配列番号1のAA128~138;
α2ヘリックス:配列番号1のAA143~147;
β1シート:配列番号1のAA149~158;
β2シート:配列番号1のAA169~171;
β3シート:配列番号1のAA173~176;
β4シート:配列番号1のAA191~199;
β5シート:配列番号1のAA202~208;
α3ヘリックス:配列番号1のAA215~233;
β6シート:配列番号1のAA240~241;
η1:配列番号1のAA247~250;
α4ヘリックス:配列番号1のAA252~260;
η2:配列番号1のAA273~275;
α5ヘリックス:配列番号1のAA278~291;
α6ヘリックス:配列番号1のAA297~309;
α7ヘリックス:配列番号1のAA313~321;
α8ヘリックス:配列番号1のAA323~332。
【0073】
故に、他のトランスポザーゼのα1ヘリックス-α2ヘリックス-β1シート-β2シート-β3シート-β4シート-β5シート-α3ヘリックス-β6シート-η1-α4ヘリックス-η2-α5ヘリックス-α6ヘリックス-α7ヘリックス-α8ヘリックスは、SB内の上に示すアミノ酸位置に対応するアミノ酸位置で始まり、そして終わる。これにより、当業者があるトランスポザーゼ内の二次構造要素:α1ヘリックス-α2ヘリックス-β1シート-β2シート-β3シート-β4シート-β5シート-α3ヘリックス-β6シート-η1-α4ヘリックス-η2-α5ヘリックス-α6ヘリックス-α7ヘリックス-α8ヘリックスを決定し、あるトランスポザーゼ内のβ3シートとβ4シートを接続するループおよびβ6シートとα4ヘリックスを接続するη1におけるアミノ酸をそれに応じて決定することが可能である。
【0074】
さらに、当業者は、三次元構造およびアミノ酸配列を、他のトランスポザーゼにおけるその構造に関連して分析でき、三次元構造に基づきアミノ酸のアラインメントを予測できる。さらに、コンピュータプログラムは、目的のタンパク質またはポリペプチド、すなわち例えば目的の任意の他のトランスポザーゼの二次構造の決定を助け得る。一つの方法は、相同性モデリングに基づく。通常、30%を超える配列同一性または40%を超える類似性を有する2個のポリペプチドまたはタンパク質は、しばしば類似する構造トポロジーを有する。タンパク質構造データベース(PDB)の発展により、ポリペプチドまたはタンパク質構造内の可能性のある折り畳み数を含み、二次構造の予測性が拡大されてきている。タンパク質およびポリペプチドの二次構造を予測するさらなる方法は当分野で知られ、例えばスレッディング、プロファイル分析および漸進的結合を含む。故に、当業者は、アラインメントにこのスーパーファミリーのさらなるトランスポザーゼを容易に加え、これらトランスポザーゼにおけるSBのアミノ酸187位、247位および248位および/またはあるトランスポザーゼのβ3シートとβ4シートを接続するループにおけるアミノ酸またはあるトランスポザーゼのβ6シートとα4ヘリックスを接続するη1におけるアミノ酸に対応するアミノ酸の同定を可能とし得る。
【0075】
あるトランスポザーゼのβ3シートとβ4シートを接続するループは、天然に存在する配列にH、F、L、SまたはYを含み得る。この場合、これらのアミノ酸をトランスポザーゼのタンパク質-DNA相互作用を変更する可能性がある他のアミノ酸で置換するのが好ましい。
【0076】
β3シートとβ4シートを接続するループの天然に存在するアミノ酸がHであるならば、このアミノ酸がV、A、N、C、Q、G、I、L、M、F、P、R、S、T、W、K、YまたはE、好ましくはV、I、L、M、P、SまたはT、より好ましくはV、I、L、TまたはP、最も好ましくはV、PまたはTで置換されているのが好ましい。
【0077】
β3シートとβ4シートを接続するループの天然に存在するアミノ酸がFであるならば、このアミノ酸がV、A、N、C、Q、G、I、L、M、P、R、S、T、W、KまたはY、好ましくはV、I、L、M、P、SまたはT、より好ましくはV、I、L、TまたはP、最も好ましくはV、PまたはTで置換されているのが好ましい。
【0078】
β3シートとβ4シートを接続するループの天然に存在するアミノ酸がYであるならば、このアミノ酸がV、A、N、C、Q、G、I、L、M、F、P、R、S、T、WまたはK、好ましくはV、I、L、M、P、SまたはT、より好ましくはV、I、L、TまたはP、最も好ましくはV、PまたはTで置換されているのが好ましい。
【0079】
β3シートとβ4シートを接続するループの天然に存在するアミノ酸がLであるならば、このアミノ酸がV、A、N、C、Q、G、I、M、F、P、R、S、T、W、H、YまたはK、好ましくはV、PまたはTで置換されているのが好ましい。
【0080】
β3シートとβ4シートを接続するループの天然に存在するアミノ酸がSであるならば、このアミノ酸がV、A、N、C、Q、G、I、L、M、F、P、R、T、W、H、YまたはK、好ましくはV、PまたはTで置換されているのが好ましい。
【0081】
あるトランスポザーゼのβ6シートとα4ヘリックスを接続するη1は、天然に存在する配列K、I、S、T、V、PまたはC(SBの248位)またはQ、P、SまたはT(SBの247位)を含み得る。この場合、これらのアミノ酸をトランスポザーゼのタンパク質-DNA相互作用を変更する可能性のある他のアミノ酸で置換するのが好ましい。
【0082】
β6シートとα4ヘリックスを接続するη1における天然に存在するアミノ酸が少なくとも1個の天然に存在するQ、P、SまたはTであるならば、このアミノ酸をR、C、SまたはA、好ましくはRまたはSで置換するのが好ましい。
【0083】
β6シートとα4ヘリックスを接続するη1における天然に存在するアミノ酸が少なくとも1個の天然に存在するK、I、S、T、V、PまたはCであるならば、このアミノ酸をR、V、I、C、A、PまたはQ、好ましくはI、CまたはR、最も好ましくはRで置換するのが好ましい。
【0084】
さらに好ましい実施態様において、β6シートとα4ヘリックスを接続するη1における天然に存在するQ、P、SまたはTおよびK、I、S、T、V、PまたはCの両方が上記のとおり置換されている、好ましくは両方がRで置換されている。
【0085】
さらなる実施態様または他の本発明の態様において、置換はまた天然に存在するトランスポザーゼのバリアントでも生じ得る。用語「天然に存在するトランスポザーゼのバリアント」は、天然に存在するトランスポザーゼのトランスポザーゼのアミノ酸配列、好ましくは配列番号1~17のトランスポザーゼの一つと少なくとも70%アミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列をいう。より好ましくは、上記の1以上の置換によりさらに修飾されているトランスポザーゼのバリアントは、天然に存在するトランスポザーゼのトランスポザーゼのアミノ酸配列、好ましくは配列番号1~17のトランスポザーゼの一つ、最も好ましくは配列番号1のSBトランスポザーゼと少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%配列同一性を有する。本発明における置換がバリアントまたは天然に存在するトランスポザーゼの状況であるならば、同一性の程度は、本発明の置換の非存在下で決定される。故に、天然に存在するトランスポザーゼのバリアントは、配列番号1に70%アミノ酸配列同一性を有し、さらに、上記(i)、(ii)および/または(iii)の置換を有し得る。
【0086】
エクソンへの組み込み事象の数が、それぞれ配列番号1~17のトランスポザーゼを使用したときに観察されるエクソンへの組み込み事象の数と比較したとき、本発明のポリペプチドが配列番号1~17のトランスポザーゼのバリアントを含むまたはそれからなるならば、配列番号1~17のアミノ酸配列に基づく本発明のポリペプチドにおいて、例えば、少なくとも25%、より好ましくは少なくとも40%またはより好ましくは少なくとも50%低減しているのが好ましい。
【0087】
好ましい実施態様において、本発明のポリペプチドは天然に存在する完全長トランスポザーゼを含む、それからなるまたは本質的にそれからなる、好ましくは配列番号1~17の天然に存在する完全長トランスポザーゼまたはそのバリアントを含む、それからなるまたは本質的にそれからなる。この好ましい実施態様において、バリアントの決定のための対照アミノ酸配列は完全長配列である。故に、本発明のポリペプチドのこの好ましい実施態様において、バリアントは天然に存在するトランスポザーゼのアミノ酸配列、好ましくは配列番号1~17のトランスポザーゼ、最も好ましくは配列番号1のトランスポザーゼSBと少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、それからなるまたは本質的にそれからなる。同様に、天然に存在するトランスポザーゼのバリアントのアミノ酸配列同一性は、(i)、(ii)および/または(iii)の本発明の置換の非存在下に決定される。
【0088】
上記の例の各々において、本発明のバリアントは、天然に存在するまたは野生型トランスポザーゼの転位活性を保持する。アミノ酸変化は、得られたトランスポザーゼの生産可能性および/または安定性に影響し得るかまたは他の活性、例えば転位活性に影響し得る。トランスポザーゼ、特にSBの転位活性を増強させる置換は下にさらに記載し、WO2009/003671に先に記載されている。上記(i)、(ii)および/または(iii)の置換に加えて、このような置換が存在するのが特に好ましい。
【0089】
本発明の第一の態様のある実施態様において、天然に存在するトランスポザーゼは、Sleeping Beauty(SB)(配列番号1)、Tdr1(配列番号2)、ZB(配列番号3)、FP(配列番号4)、Passport(配列番号5)、TCB2(配列番号6)、S(配列番号7)、Quetzal(配列番号8)、Paris(配列番号9)、Tc1(配列番号10)、Minos(配列番号11)、Uhu(配列番号12)、Bari(配列番号13)、Tc3(配列番号14)、Impala(配列番号15)、Himar(配列番号16)またはMos1(配列番号17)からなる群から選択され、好ましくはトランスポザーゼはSB(配列番号1)、ZB(配列番号3)、FP(配列番号4)、Passport(配列番号5)またはMinos(配列番号11)である。最も好ましい実施態様において、トランスポザーゼはSB(配列番号1)である。
【0090】
特定の好ましい実施態様においてまたは本発明のさらなる態様において、本発明のポリペプチドは、配列番号1~17のトランスポザーゼまたは上記(i)、(ii)または(iii)の置換の少なくとも1個を含むそのバリアントを含む、それからなるまたは本質的にそれからなる。
【0091】
SBと密接に関連するトランスポザーゼは、上に示す順番で配置される二次構造要素を共有するだけでなく、DNA-タンパク質相互作用に関与する、ある鍵となる領域に著しいアミノ酸類似性または同一性も有する。故に、SBと密接に関連するトランスポザーゼのこのサブグループにおける本発明の置換は、SBの187位のアミノ酸周囲のコンセンサスアミノ酸配列により特徴づけられ得る。このコンセンサス配列は、X1X2X3X12X4X5GX6(配列番号18)であり、変数は下に示す意味を有する。SBの247位および248位のアミノ酸配列周囲の他のコンセンサスアミノ酸配列はX7X8DX9X10X13X11X14H(配列番号19)であり、変数は下に定義する意味を有する。SBと密接に関連するあるトランスポザーゼは、配列番号18または配列番号19または両方のコンセンサス配列を満たすアミノ酸配列を含み得る。SBと密接に関連するトランスポザーゼが両コンセンサス配列を向いた満たすアミノ酸配列を含むのが好ましい。そのようなトランスポーズは、SBのアミノ酸187位周囲ならびにアミノ酸247位および248位周囲の領域両方がSBと高度に類似する。故に、本発明の置換(i)、(ii)および/または(iii)は、好ましくはそれぞれ配列番号18および配列番号19のコンセンサスを満たす2連続アミノ酸配列を含む、トランスポザーゼを含む。従って、ある実施態様において、本発明の第一の態様またはあるいは本発明の他の態様のポリペプチドは、天然に存在するトランスポザーゼのバリアントを含む、それから本質的になるまたはそれからなる転位活性を有するポリペプチドであって、
(i)第一アミノ酸ストレッチ:
X1X2X3X12X4X5GX6(配列番号18)
(ここで、
X1はT、F、PまたはRであり、
X2はI、T、N、R、K、QまたはVであり、
X3はK、N、L、RまたはQ、好ましくはKであり、
X4はG、N、P、AまたはQ、好ましくはGであり、
X5はG、K、Aまたは非存在であり、好ましくはX5はGであり、
X6はSまたは非存在であり、そして
X12は野生型タンパク質におけるF、H、Y、LまたはSであり、そして
X12が天然に存在するトランスポザーゼにおけるX12であり、非置換であるかまたはA、N、C、Q、G、I、L、M、P、R、S、T、V、W、K、EまたはY、好ましくはV、PまたはTで置換されているとき;
X12が天然に存在するトランスポザーゼにおけるX12であり、非置換であるかまたはA、N、C、Q、G、I、L、M、F、P、R、S、T、V、W、K、EまたはY、好ましくはV、PまたはTで置換されているとき;
X12が天然に存在するトランスポザーゼにおけるX12であり、非置換であるかまたはA、N、C、Q、G、I、L、M、F、P、R、S、T、V、W、EまたはK、好ましくはV、PまたはTで置換されているとき;
X12が天然に存在するトランスポザーゼにおけるX12であり、非置換であるかまたはA、N、C、Q、G、I、F、M、P、R、S、T、V、W、K、EまたはY、好ましくはV、PまたはTで置換されているとき;
X12が天然に存在するトランスポザーゼにおけるX12であり、非置換であるかまたはA、N、C、Q、G、I、L、F、M、P、R、T、V、W、K、EまたはY、好ましくはV、PまたはTで置換されているとき);
および/または
(ii)第二アミノ酸ストレッチ:
X7X8DX9X10X13X11X14H(配列番号19)
(ここで、
X7はQ、L、M、HまたはYであり、そして
X8はM、QまたはHであり、
X9はN、HまたはGであり、
X10はAまたはDであり、
X11は非存在、V、TまたはK(好ましくは、非存在)であり、そして
X13は天然に存在するトランスポザーゼにおけるQ、P、SまたはTであり、非置換であるかまたはR、S、CまたはA、好ましくはRまたはSで置換されており、
および/または
X14は天然に存在するトランスポザーゼにおけるK、I、S、T、V、PまたはCであり、非置換であるかまたはR、I、C、V、A、PまたはQ、好ましくはRで置換されており、
ここで、X12、X13およびX14の少なくとも1個は置換されている)
を含む、ポリペプチドに関する。
【0092】
好ましい実施態様において、
X1はTであり、
X2はVまたはI、好ましくはVであり、
X3はKまたはQ、好ましくはKであり、
X4はGであり、
X5はGであり、
X6はSであり、そして
X12は野生型タンパク質におけるF、H、Y、LまたはSであり、そして
X12が天然に存在するトランスポザーゼにおけるX12であり、非置換であるかまたはA、N、C、Q、G、I、L、M、P、R、S、T、V、W、K、EまたはY、好ましくはV、PまたはTで置換されているとき;
X12が天然に存在するトランスポザーゼにおけるX12であり、非置換であるかまたはA、N、C、Q、G、I、L、M、F、P、R、S、T、V、W、K、EまたはY、好ましくはV、PまたはTで置換されているとき;
X12が天然に存在するトランスポザーゼにおけるX12であり、非置換であるかまたはA、N、C、Q、G、I、L、M、F、P、R、S、T、V、W、EまたはK、好ましくはV、PまたはTで置換されているとき;
X12が天然に存在するトランスポザーゼにおけるX12であり、非置換であるかまたはA、N、C、Q、G、I、F、M、P、R、S、T、V、W、K、EまたはY、好ましくはV、PまたはTで置換されているとき;
X12が天然に存在するトランスポザーゼにおけるX12であり、非置換であるかまたはA、N、C、Q、G、I、L、F、M、P、R、T、V、W、K、EまたはY、好ましくはV、PまたはTで置換されているとき;
および/または
X7はQであり、
X8はM、QまたはHであり、
X9はN、HまたはGであり、
X10はAまたはDであり、
X11は非存在であり、
X13は天然に存在するトランスポザーゼにおけるPであり、非置換であるかまたはR、S、CまたはA、好ましくはRまたはSで置換されておりおよび/または
X14は天然に存在するトランスポザーゼにおけるKであり、非置換であるかまたはR、I、C、V、A、PまたはQ、好ましくはRで置換されており、そして
ここで、X12、X13およびX14の少なくとも1個は置換されている。
【0093】
本発明のポリペプチドで置換が1個のみであるならば、好ましくはH187F、H187YまたはK248Aではない。
【0094】
トランスポザーゼのバリアントにこれら置換のいずれかが存在するとき、バリアントの各野生型トランスポザーゼ配列に対する配列同一性は、同様に(i)、(ii)および/または(iii)の置換の導入前に決定される。
【0095】
ある実施態様において、本発明のポリペプチドは、配列番号1または転位活性を有し、配列番号1と少なくとも70%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%配列同一性を有するそのバリアントを含み、配列番号1またはそのバリアントは、次の置換の1以上を含む:
(i)H187A、H187N、H187C、H187Q、H187G、H187I、H187L、H187M、H187F、H187S、H187V、H187W、H187K、H187Y、H187R、H187E、H187PまたはH187T、好ましくはH187P、H187VまたはH187T、より好ましくはH187V;および/または
(ii)P247R、P247C、P247AまたはP247S;好ましくはP247RまたはP247Sおよび/または
(iii)K248R、K248A、K248S、K248V、K248IまたはK248C;好ましくはK248R;
またはそのバリアントの対応する位置での置換。
【0096】
好ましい実施態様において、本発明のポリペプチドは配列番号1または転位活性を有し、配列番号1と少なくとも70%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%配列同一性を有するそのバリアントを含み、ここで、配列番号1またはそのバリアントはその転位活性を増強する置換を含み、ここで、該置換は好ましくは上記置換の1以上である。転位活性の増強は、wtSBまたは配列番号1のSBの活性と比較した増強であり得る。上記のとおり、種々の天然に存在するトランスポザーゼのバリアントが記載されている。例えば、WO2009/003671は、超活性である、すなわち野生型トランスポザーゼ、特にSBと比較して転位活性が増強したトランスポザーゼ、特にSBのバリアントを記載する。トランスポザーゼの1以上の性質、特に転位活性を増強する置換または置換群を含む本発明の置換が、トランスポザーゼのバリアントに導入されるのが好ましい。故に、ある実施態様において、本発明のポリペプチドは、さらに次の置換または置換群の少なくとも1個:
(1)K14R、K13D、K13A、K30R、K33A、T83A、I100L、R115H、R143L、R147E、A205K/H207V/K208R/D210E、H207V/K208R/D210E、R214D/K215A/E216V/N217Q;M243Q、E267D、T314Nおよび/またはG317E;
(2)K14R//R214D/K215A/E216V/N217Q;
(3)K33A/R115H/R214D/K215A/E216V/N217Q/M243H;
(4)K14R/K30R/A205K/H207V/K208R/D210E/R214D/K215A/E216V/N217Q/M243H;
(5)K13D/K33A/T83N/H207V/K208R/D210E/M243Q;
(6)K13A/K33A/R214D/K215A/E216V/N217Q;
(7)K33A/T83N/R214D/K215NE216V/N217Q//G317E;
(8)K14R/T83A/M243Q;
(9)K14R/T83A/I100L/M243Q;
(10)K14R/T83A/R143L/M243Q;
(11)K14R/T83A/R147E/M243Q;
(12)K14R/T83A/M243Q/E267D;
(13)K14R/T83A/M243Q/T314N;
(14)K14R/K30R/I110L/A205K/H207V/K208R/D210E/R214D/K215A/E216V/N217Q/M243H;
(15)K14R/K30R/R143L/A205K/H207V/K208R/D210E/R214D/K215A/E216V/N217Q//M243H;
(16)K14R/K30R/R147E/A205K/H207V/K208R/D210E/R214D/K215A/E216V/N217Q/M243H;
(17)K14R/K30R/A205K/H207V/K208R/D210E/R214D/K215A/E216V/N217Q//M243H/E267D;
(18)K14R/K30R/A205K/H207V/K208R/D210E/R214D/K215A/E216V/N217Q/M243H/T314N;
(19)K14R/K30R/A205K/H207V/K208R/D210E/R214D/K215A/E216V/N217Q//M243H/G317E;
(20)K14R/K33A/R115H/R214D/K215A/E216V/N217Q/M243H;
(21)K14R/K30R/R147E/A205K/H207V/K208R/D210E/R214D/K215A/E216V/N217Q//M243H/T314N;
(22)K14R/K30R/R143U/A205K/H207V/K208R/D210E/R214D/K215A/E216V/N217Q//M243H/E267D;
(23)K14R/K30R/R143L/A205K/H207V/K208R/D210E/R214D/K215A/E216V/N217Q//M243H/T314N;
(24)K14R/K30R/R143L/A205K/H207V/K208R/D210E/R214D/K215A/E216V/N217Q//M243H/G317E;
(25)K14R/K33A/R115H/R143L/R214D/K215A/E216V/N217Q/M243H;
(26)K14R/K33A/R115H/R147E//R214D/K215A/E216V/N217Q/M243H;
(27)K14R/K33A/R115H/R214D/K215A/E216V/N217Q//M243H/E267D;
(28)K14R/K33A/R115H/R214D/K215A/E216V/N217Q//M243H/T314N;
(29)K14R/K33A/R115H/R214D/K215A/E216V/N217Q//M243H/G317E;
(30)K14R/T83A/M243Q/G317E;または
(31)K13A/K33A/T83N/R214D/K215A/E216V/N217Q;
またはそのバリアントの対応する位置での次の置換または置換群の少なくとも1個を含む。好ましくは、本発明の置換に加えて、上記置換または置換群は、Tdr1(配列番号2)、ZB(配列番号3)、FP(配列番号4)、Passport(配列番号5)、TCB2(配列番号6)、S(配列番号7)、Quetzal(配列番号8)、Paris(配列番号9)、Tc1(配列番号10)、Minos(配列番号11)、Uhu(配列番号12)、Bari(配列番号13)、Tc3(配列番号14)、Impala(配列番号15)、Himar(配列番号16)またはMos1(配列番号17)からなる群から選択される天然に存在するトランスポザーゼ号17)の対応する位置に導入され(好ましくはトランスポザーゼは、ZB(配列番号3)、FP(配列番号4)、Passport(配列番号5)またはMinos(配列番号11)である)、好ましくは(i)K248R、H187A、H187N、H187C、H187Q、H187G、H187I、H187L、H187M、H187F、H187S、H187V、H187WまたはH187Y、好ましくはH187I、H187VまたはH187L、より好ましくはH187V;および/または(ii)P247R;および/または(iii)K248AまたはK248S;好ましくはK248R;またはTdr1(配列番号2)、ZB(配列番号3)、FP(配列番号4)、Passport(配列番号5)、TCB2(配列番号6)、S(配列番号7)、Quetzal(配列番号8)、Paris(配列番号9)、Tc1(配列番号10)、Minos(配列番号11)、Uhu(配列番号12)、Bari(配列番号13)、Tc3(配列番号14)、Impala(配列番号15)、Himar(配列番号16)またはMos1(配列番号17)の対応する位置の置換(好ましくはトランスポザーゼはSB(配列番号1)、ZB(配列番号3)、FP(配列番号4)、Passport(配列番号5)またはMinos(配列番号11)である)。
【0097】
本発明の第一の態様のポリペプチドは、最も好ましくは配列番号1に基づき、次のアミノ酸が配列番号1のアミノ酸配列内で置換されている、アミノ酸配列を含むまたはそれからなる:
(1)転位活性を増強させるK14RおよびH187I、H187V、H187E、H187T、H187PまたはH187L、好ましくはH187Vおよび/またはP247R、P247S、P247CまたはP247A、好ましくはP247R;および/またはK248R、K248A、K248S、K248V、K248IまたはK248C;好ましくはK248R;
(2)転位活性を増強させるK13DおよびH187I、H187V、H187E、H187T、H187PまたはH187L、好ましくはH187Vおよび/またはP247R、P247S、P247CまたはP247A、好ましくはP247R;および/またはK248R、K248A、K248S、K248V、K248IまたはK248C;好ましくはK248R;
(3)転位活性を増強させるK13AおよびH187I、H187V、H187E、H187T、H187PまたはH187L、好ましくはH187Vおよび/またはP247R、P247S、P247CまたはP247A、好ましくはP247R;および/またはK248R、K248A、K248S、K248V、K248IまたはK248C;好ましくはK248R;
(4)転位活性を増強させるK30RおよびH187I、H187V、H187E、H187T、H187PまたはH187L、好ましくはH187Vおよび/またはP247R、P247S、P247CまたはP247A、好ましくはP247R;および/またはK248R、K248A、K248S、K248V、K248IまたはK248C;好ましくはK248R;
(5)転位活性を増強させるK33AおよびH187I、H187V、H187E、H187T、H187PまたはH187L、好ましくはH187Vおよび/またはP247R、P247S、P247CまたはP247A、好ましくはP247R;および/またはK248R、K248A、K248S、K248V、K248IまたはK248C;好ましくはK248R;
(6)転位活性を増強させるT83AおよびH187I、H187V、H187E、H187T、H187PまたはH187L、好ましくはH187Vおよび/またはP247R、P247S、P247CまたはP247A、好ましくはP247R;および/またはK248R、K248A、K248S、K248V、K248IまたはK248C;好ましくはK248R;
(7)転位活性を増強させるI100LおよびH187I、H187V、H187E、H187T、H187PまたはH187L、好ましくはH187Vおよび/またはP247R、P247S、P247CまたはP247A、好ましくはP247R;および/またはK248R、K248A、K248S、K248V、K248IまたはK248C;好ましくはK248R;
(8)転位活性を増強させるR115HおよびH187I、H187V、H187E、H187T、H187PまたはH187L、好ましくはH187Vおよび/またはP247R、P247S、P247CまたはP247A、好ましくはP247R;および/またはK248R、K248A、K248S、K248V、K248IまたはK248C;好ましくはK248R;
(9)転位活性を増強させるR143LおよびH187I、H187V、H187E、H187T、H187PまたはH187L、好ましくはH187Vおよび/またはP247R、P247S、P247CまたはP247A、好ましくはP247R;および/またはK248R、K248A、K248S、K248V、K248IまたはK248C;好ましくはK248R;
(10)転位活性を増強させるR147EおよびH187I、H187V、H187E、H187T、H187PまたはH187L、より好ましくはH187Vおよび/またはP247R、P247S、P247CまたはP247A、好ましくはP247R;および/またはK248R、K248A、K248S、K248V、K248IまたはK248C;好ましくはK248R;
(11)転位活性を増強させるA205K/H207V/K208R/D210EおよびH187I、H187V、H187E、H187T、H187PまたはH187L、好ましくはH187Vおよび/またはP247R、P247S、P247CまたはP247A、好ましくはP247R;および/またはK248R、K248A、K248S、K248V、K248IまたはK248C;好ましくはK248R;
(12)転位活性を増強させるH207V/K208R/D210EおよびH187I、H187V、H187E、H187T、H187PまたはH187L、好ましくはH187Vおよび/またはP247R、P247S、P247CまたはP247A、好ましくはP247R;および/またはK248R、K248A、K248S、K248V、K248IまたはK248C;好ましくはK248R;
(13)転位活性を増強させるR214D/K215A/E216V/N217QおよびH187I、H187V、H187E、H187T、H187PまたはH187L、好ましくはH187Vおよび/またはP247RまたはP247S、P247CまたはP247A、好ましくはP247R;および/またはK248R、K248A、K248S、K248V、K248IまたはK248C;好ましくはK248R;
(14)転位活性を増強させるM243QおよびH187I、H187V、H187E、H187T、H187PまたはH187L、好ましくはH187Vおよび/またはP247R、P247S、P247CまたはP247A、好ましくはP247R;および/またはK248R、K248A、K248S、K248V、K248IまたはK248C;好ましくはK248R;
(15)転位活性を増強させるE267DおよびH187I、H187V、H187E、H187T、H187PまたはH187L、好ましくはH187Vおよび/またはP247R、P247S、P247CまたはP247A、好ましくはP247R;および/またはK248R、K248A、K248S、K248V、K248IまたはK248C;好ましくはK248R;
(16)転位活性を増強させるT314NおよびH187I、H187V、H187E、H187T、H187PまたはH187L、好ましくはH187Vおよび/またはP247R、P247S、P247CまたはP247A、好ましくはP247R;および/またはK248R、K248A、K248S、K248V、K248IまたはK248C;好ましくはK248R;
(17)転位活性を増強させるG317EおよびH187I、H187V、H187E、H187T、H187PまたはH187L、より好ましくはH187Vおよび/またはP247R、P247S、P247CまたはP247A、好ましくはP247R;および/またはK248R、K248A、K248S、K248V、K248IまたはK248C;好ましくはK248R;
(18)(1)~(18)の下に示す転位活性を増強させる一置換または置換群の2以上の組み合わせを置換H187I、H187V、H187E、H187T、H187PまたはH187L、好ましくはH187Vおよび/またはP247R、P247S、P247CまたはP247A、好ましくはP247R;および/またはK248R、K248A、K248S、K248V、K248IまたはK248C;好ましくはK248Rと組み合わせる;
(1)~(18)の下に示す転位活性を増強させる置換と本発明の置換の好ましい組み合わせは次のとおりである:
(19)転位活性を増強させるK14R//R214D/K215A/E216V/N217QおよびH187I、H187V、H187E、H187T、H187PまたはH187L、好ましくはH187Vおよび/またはP247R、P247S、P247CまたはP247A、好ましくはP247R;および/またはK248R、K248A、K248S、K248V、K248IまたはK248C;好ましくはK248R;
(20)転位活性を増強させるK33A/R115H/R214D/K215A/E216V/N217Q/M243HおよびH187I、H187V、H187E、H187T、H187PまたはH187L、好ましくはH187Vおよび/またはP247R、P247S、P247CまたはP247A、好ましくはP247R;および/またはK248R、K248A、K248S、K248V、K248IまたはK248C;好ましくはK248R;
(21)転位活性を増強させるK14R/K30R/A205K/H207V/K208R/D210E/R214D/K215A/E216V/N217Q/M243HおよびH187I、H187V、H187E、H187T、H187PまたはH187L、好ましくはH187Vおよび/またはP247R、P247S、P247CまたはP247A、好ましくはP247R;および/またはK248R、K248A、K248S;好ましくはK248R;
(22)転位活性を増強させるK13D/K33A/T83N/H207V/K208R/D210E/M243QおよびH187I、H187V、H187E、H187T、H187PまたはH187L、好ましくはH187Vおよび/またはP247R、P247S、P247CまたはP247A、好ましくはP247R;および/またはK248R、K248A、K248S、K248V、K248IまたはK248C;好ましくはK248R;
(23)転位活性を増強させるK13A/K33A/R214D/K215A/E216V/N217QおよびH187I、H187V、H187E、H187T、H187PまたはH187L、好ましくはH187Vおよび/またはP247R、P247S、P247CまたはP247A、好ましくはP247R;および/またはK248R、K248A、K248S;好ましくはK248R;
(24)転位活性を増強させるK33A/T83N/R214D/K215NE216V/N217Q//G317EおよびH187I、H187V、H187E、H187T、H187PまたはH187L、好ましくはH187Vおよび/またはP247R、P247S、P247CまたはP247A、好ましくはP247R;および/またはK248R、K248A、K248S、K248V、K248IまたはK248C;好ましくはK248R;
(25)転位活性を増強させるK14R/T83A/M243QおよびH187I、H187V、H187E、H187T、H187PまたはH187L、好ましくはH187Vおよび/またはP247R、P247S、P247CまたはP247A、好ましくはP247R;および/またはK248R、K248A、K248S、K248V、K248IまたはK248C;好ましくはK248R;
(26)転位活性を増強させるK14R/T83A/I100L/M243QおよびH187I、H187V、H187E、H187T、H187PまたはH187L、好ましくはH187Vおよび/またはP247R、P247S、P247CまたはP247A、好ましくはP247R;および/またはK248R、K248A、K248S、K248V、K248IまたはK248C;好ましくはK248R;
(27)転位活性を増強させるK14R/T83A/R143L/M243QおよびH187I、H187V、H187E、H187T、H187PまたはH187L、好ましくはH187Vおよび/またはP247R、P247S、P247CまたはP247A、好ましくはP247R;および/またはK248R、K248A、K248S、K248V、K248IまたはK248C;好ましくはK248R;
(28)転位活性を増強させるK14R/T83A/R147E/M243QおよびH187I、H187V、H187E、H187T、H187PまたはH187L、好ましくはH187Vおよび/またはP247RまたはP247S、P247、好ましくはP247R;および/またはK248R、K248A、K248S、K248V、K248IまたはK248C;好ましくはK248R;
(29)転位活性を増強させるK14R/T83A/M243Q/E267DおよびH187I、H187V、H187E、H187T、H187PまたはH187L、好ましくはH187Vおよび/またはP247R、P247S、P247CまたはP247A、好ましくはP247R;および/またはK248R、K248A、K248S、K248V、K248IまたはK248C;好ましくはK248R;
(30)転位活性を増強させるK14R/T83A/M243Q/T314NおよびH187I、H187V、H187E、H187T、H187PまたはH187L、好ましくはH187Vおよび/またはP247R、P247S、P247CまたはP247A、好ましくはP247R;および/またはK248R、K248A、K248S、K248V、K248IまたはK248C;好ましくはK248R;
(31)転位活性を増強させるK14R/K30R/I110L/A205K/H207V/K208R/D210E/R214D/K215A/E216V/N217Q/M243HおよびH187I、H187V、H187E、H187T、H187PまたはH187L、好ましくはH187Vおよび/またはP247R、P247S、P247CまたはP247A、好ましくはP247R;および/またはK248R、K248A、K248S、K248V、K248IまたはK248C;好ましくはK248R;
(32)転位活性を増強させるK14R/K30R/R143L/A205K/H207V/K208R/D210E/R214D/K215A/E216V/N217Q//M243HおよびH187I、H187V、H187E、H187T、H187PまたはH187L、好ましくはH187Vおよび/またはP247R、P247S、P247CまたはP247A、好ましくはP247R;および/またはK248R、K248A、K248S、K248V、K248IまたはK248C;好ましくはK248R;
(33)転位活性を増強させるK14R/K30R/R147E/A205K/H207V/K208R/D210E/R214D/K215A/E216V/N217Q/M243HおよびH187I、H187V、H187E、H187T、H187PまたはH187L、好ましくはH187Vおよび/またはP247R、P247S、P247CまたはP247A、好ましくはP247R;および/またはK248R、K248A、K248S、K248V、K248IまたはK248C;好ましくはK248R;
(34)転位活性を増強させるK14R/K30R/A205K/H207V/K208R/D210E/R214D/K215A/E216V/N217Q//M243H/E267DおよびH187I、H187V、H187E、H187T、H187PまたはH187L、好ましくはH187Vおよび/またはP247R、P247S、P247CまたはP247A、好ましくはP247R;および/またはK248R、K248A、K248S、K248V、K248IまたはK248C;好ましくはK248R;
(35)転位活性を増強させるK14R/K30R/A205K/H207V/K208R/D210E/R214D/K215A/E216V/N217Q/M243H/T314NおよびH187I、H187V、H187E、H187T、H187PまたはH187L、好ましくはH187Vおよび/またはP247R、P247S、P247CまたはP247A、好ましくはP247R;および/またはK248R、K248A、K248S、K248V、K248IまたはK248C;好ましくはK248R;
(36)転位活性を増強させるK14R/K30R/A205K/H207V/K208R/D210E/R214D/K215A/E216V/N217Q//M243H/G317EおよびH187I、H187V、H187E、H187T、H187PまたはH187L、好ましくはH187Vおよび/またはP247R、P247S、P247CまたはP247A、好ましくはP247R;および/またはK248R、K248A、K248S、K248V、K248IまたはK248C;好ましくはK248R;
(37)転位活性を増強させるK14R/K33A/R115H/R214D/K215A/E216V/N217Q/M243HおよびH187I、H187V、H187E、H187T、H187PまたはH187L、好ましくはH187Vおよび/またはP247R、P247S、P247CまたはP247A、好ましくはP247R;および/またはK248R、K248A、K248S、K248V、K248IまたはK248C;好ましくはK248R;
(38)転位活性を増強させるK14R/K30R/R147E/A205K/H207V/K208R/D210E/R214D/K215A/E216V/N217Q//M243H/T314NおよびH187I、H187V、H187E、H187T、H187PまたはH187L、好ましくはH187Vおよび/またはP247R、P247S、P247CまたはP247A、好ましくはP247R;および/またはK248R、K248A、K248S、K248V、K248IまたはK248C;好ましくはK248R;
(39)転位活性を増強させるK14R/K30R/R143U/A205K/H207V/K208R/D210E/R214D/K215A/E216V/N217Q//M243H/E267DおよびH187I、H187V、H187E、H187T、H187PまたはH187L、好ましくはH187Vおよび/またはP247R、P247S、P247CまたはP247A、好ましくはP247R;および/またはK248R、K248A、K248S、K248V、K248IまたはK248C;好ましくはK248R;
(40)転位活性を増強させるK14R/K30R/R143L/A205K/H207V/K208R/D210E/R214D/K215A/E216V/N217Q//M243H/T314NおよびH187I、H187V、H187E、H187T、H187PまたはH187L、好ましくはH187Vおよび/またはP247R、P247S、P247CまたはP247A、好ましくはP247R;および/またはK248R、K248A、K248S、K248V、K248IまたはK248C;好ましくはK248R;
(41)転位活性を増強させるK14R/K30R/R143L/A205K/H207V/K208R/D210E/R214D/K215A/E216V/N217Q//M243H/G317EおよびH187I、H187V、H187E、H187T、H187PまたはH187L、好ましくはH187Vおよび/またはP247R、P247S、P247CまたはP247A、好ましくはP247R;および/またはK248R、K248A、K248S、K248V、K248IまたはK248C;好ましくはK248R;
(42)転位活性を増強させるK14R/K33A/R115H/R143L/R214D/K215A/E216V/N217Q/M243HおよびH187I、H187V、H187E、H187T、H187PまたはH187L、好ましくはH187Vおよび/またはP247R、P247S、P247CまたはP247A、好ましくはP247R;および/またはK248R、K248A、K248S、K248V、K248IまたはK248C;好ましくはK248R;
(43)転位活性を増強させるK14R/K33A/R115H/R147E//R214D/K215A/E216V/N217Q/M243HおよびH187I、H187V、H187E、H187T、H187PまたはH187L、好ましくはH187Vおよび/またはP247R、P247S、P247CまたはP247A、好ましくはP247R;および/またはK248R、K248A、K248S、K248V、K248IまたはK248C;好ましくはK248R;
(44)転位活性を増強させるK14R/K33A/R115H/R214D/K215A/E216V/N217Q//M243H/E267DおよびH187I、H187V、H187E、H187T、H187PまたはH187L、好ましくはH187Vおよび/またはP247R、P247S、P247CまたはP247A、好ましくはP247R;および/またはK248R、K248A、K248S、K248V、K248IまたはK248C;好ましくはK248R;
(45)転位活性を増強させるK14R/K33A/R115H/R214D/K215A/E216V/N217Q//M243H/T314NおよびH187I、H187V、H187E、H187T、H187PまたはH187L、好ましくはH187Vおよび/またはP247R、P247S、P247CまたはP247A、好ましくはP247R;および/またはK248R、K248A、K248S、K248V、K248IまたはK248C;好ましくはK248R;
(46)転位活性を増強させるK14R/K33A/R115H/R214D/K215A/E216V/N217Q//M243H/G317EおよびH187I、H187V、H187E、H187T、H187PまたはH187L、より好ましくはH187Vおよび/またはP247R、P247S、P247CまたはP247A、好ましくはP247R;および/またはK248R、K248A、K248S、K248V、K248IまたはK248C;好ましくはK248R;
(47)転位活性を増強させるK14R/T83A/M243Q/G317EおよびH187I、H187V、H187E、H187T、H187PまたはH187L、好ましくはH187Vおよび/またはP247R、P247S、P247CまたはP247A、好ましくはP247R;および/またはK248R、K248A、K248S、K248V、K248IまたはK248C;好ましくはK248R;または
(48)転位活性を増強させるK13A/K33A/T83N/R214D/K215A/E216V/N217QおよびH187I、H187V、H187E、H187T、H187PまたはH187L、好ましくはH187Vおよび/またはP247R、P247S、P247CまたはP247A、好ましくはP247R;および/またはK248R、K248A、K248S、K248V、K248IまたはK248C;好ましくはK248R。
【0098】
好ましい実施態様において、第一の態様のポリペプチドは配列番号1のアミノ酸を含むかまたはそれからなり、ここで、次のアミノ酸は転位活性を増強させる置換:K14R、K33A、R115H、R214D/K215A/E216V/N217Q、M243HおよびT314Nをされており、次の本発明の置換H187I、H187V、H187E、H187T、H187PまたはH187L、好ましくはH187Vおよび/またはP247R、P247S、P247CまたはP247A、好ましくはP247R;および/またはK248R、K248A、K248S、K248V、K248IまたはK248C;好ましくはK248Rを含む。特に、本発明の第一の態様のポリペプチドの好ましい実施態様は配列番号1を含むまたはそれからなるアミノ酸配列を有し、ここで、次のアミノ酸が置換されている:置換:
転位活性を増強させるためのK14R、K33A、R115H、R214D/K215A/E216V/N217Q、M243HおよびT314NおよびH187V;または
転位活性を増強させるためのK14R、K33A、R115H、R214D/K215A/E216V/N217Q、M243HおよびT314NおよびP247R;または
転位活性を増強させるためのK14R、K33A、R115H、R214D/K215A/E216V/N217Q、M243HおよびT314NおよびK248R;または
転位活性を増強させるためのK14増強R、K33A、R115H、R214D/K215A/E216V/N217Q、M243HおよびT314NおよびP247RおよびK248R;好ましくは
転位活性を増強させるためのK14R、K33A、R115H、R214D/K215A/E216V/N217Q、M243HおよびT314NおよびH187V;または
転位活性を増強させるためのK14R、K33A、R115H、R214D/K215A/E216V/N217Q、M243HおよびT314NおよびH187P;または
転位活性を増強させるためのK14R、K33A、R115H、R214D/K215A/E216V/N217Q、M243HおよびT314NおよびH187T;または
転位活性を増強させるためのK14R、K33A、R115H、R214D/K215A/E216V/N217Q、M243HおよびT314NおよびH187S;または
転位活性を増強させるためのK14R、K33A、R115H、R214D/K215A/E216V/N217Q、M243HおよびT314NおよびH187E;または
転位活性を増強させるためのK14R、K33A、R115H、R214D/K215A/E216V/N217Q、M243HおよびT314NおよびP247R;または
転位活性を増強させるためのK14R、K33A、R115H、R214D/K215A/E216V/N217Q、M243HおよびT314NおよびP247S;または
転位活性を増強させるためのK14R、K33A、R115H、R214D/K215A/E216V/N217Q、M243HおよびT314NおよびK248R;
転位活性を増強させるためのK14R、K33A、R115H、R214D/K215A/E216V/N217Q、M243HおよびT314NおよびK248C;
転位活性を増強させるためのK14R、K33A、R115H、R214D/K215A/E216V/N217Q、M243HおよびT314NおよびK248I;
転位活性を増強させるためのK14R、K33A、R115H、R214D/K215A/E216V/N217Q、M243HおよびT314NおよびK248V。
【0099】
当然他の置換も含まれ得るが、好ましくは、配列番号1との配列同一性は少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%または少なくとも95%である。
【0100】
転位活増強と本発明の置換の性質が組み合わさった特に好ましい本発明のトランスポザーゼは、次のとおりである(転位活性を増強させるアミノ酸置換は太字+下線で強調し、本発明のアミノ酸置換は太字、下線および斜体で強調する):
H187VおよびK14R、K33A、R115H、R214D/K215A/E216V/N217Q、M243HおよびT314N(配列番号20):
【化1】
P247RおよびK14R、K33A、R115H、R214D/K215A/E216V/N217Q、M243HおよびT314N(配列番号21):
【化2】
K248RおよびK14R、K33A、R115H、R214D/K215A/E216V/N217Q、M243HおよびT314N(配列番号22):
【化3】
【0101】
本発明のポリペプチド(トランスポザーゼバリアント)は、先行技術におけるアプローチと比較していくつかの利点を有し、最も顕著には卓越したゲノムへの組み込みの特性の獲得を示す。
【0102】
第二の態様において、本発明は、第一の態様のポリペプチドをコードする核酸配列を含む核酸に関する。
【0103】
第二の本発明の態様のある実施態様において、(コード化)核酸配列は、少なくとも1個の転写制御単位と操作可能に連結される。
【0104】
本発明の核酸のある実施態様において、核酸は、少なくとも1個のオープンリーディングフレームを含む。他の実施態様において、核酸はさらに少なくとも遺伝子の制御領域を含む。好ましくは、制御領域は、転写制御領域、より具体的に、制御領域は、プロモーター、エンハンサー、サイレンサー、遺伝子座調節領域および境界要素からなる群から選択される。本発明の核酸は、典型的にmRNA、DNA、cDNA、染色体DNA、染色体外DNA、プラスミドDNA、ウイルスDNAまたはRNAを含み、また組み換えウイルスベクターも含むリボ核酸である。本発明の核酸のある実施態様において、核酸はDNAまたはRNAであり、他の好ましい実施態様において、核酸はプラスミドまたは組み換えウイルスベクターの一部である。本発明の核酸は、好ましくは本発明のポリペプチドのアミノ酸配列をコードする任意の核酸配列から選択される。従って、全核酸バリアントは、遺伝子コードの縮重により種々のヌクレオチド配列を有する核酸バリアントを含む上記した本発明の変異ポリペプチドバリアントをコードする。特に選択宿主生物でコード化融合タンパク質の発現の改善をもたらす核酸バリアントのヌクレオチド配列が好ましい。宿主細胞の特異的転写/翻訳機構のために核酸配列を適切に調節するテーブルは、当業者に知られる。一般に、ヌクレオチド配列のG/C含量を特異的宿主細胞条件に適合させるのが好ましい。ヒト細胞における発現のために、最大G/C含量(各本発明のペプチドバリアントをコード)のG/C含量を少なくとも10%、より好ましい少なくとも20%、30%、50%、70%、より好ましくは90%増強させるのが好ましい。このような核酸および/または誘導体の製造および精製は、通常、標準的手法により実施される。
【0105】
これらの配列バリアントは、好ましくは転位活性を有する対応するポリペプチドの天然核酸配列と比較して、少なくとも1個のアミノ酸が置換されている、配列番号1~17、好ましくは配列番号1のアミノ酸配列を含む、本発明の転位活性を有する本発明のポリペプチドまたは該ポリペプチドのバリアントから選択されるタンパク質を導く。従って、本発明の核酸配列は、該ポリペプチドの修飾(非天然)バリアントをコードする。さらに、プロモーターまたは他の発現対照領域を、ポリペプチド/タンパク質発現を定量的または組織特異的方法で制御するために、本発明のポリペプチドをコードする核酸と連結可能に制御できる。
【0106】
第三の態様において、本発明は、上記第二の態様の核酸分子を含むベクターに関する。すでに上記したとおり、本発明のポリペプチドをコードする核酸はRNAでもDNAでもよい。同様に、本発明のポリペプチドまたはトランスポゾンをコードする本発明の核酸は、線状フラグメントまたは環状、単離フラグメントであってよくまたはベクターに、好ましくはプラスミドまたは組み換えウイルスDNAとして組み込まれていてよい。
【0107】
第四の態様において、本発明は、第二の態様の核酸または第三の態様のベクターを含む細胞に関する。
【0108】
ある実施態様において、細胞は動物、好ましくは、魚類、鳥類または哺乳動物からなる群から好ましくは選択される脊椎動物、好ましくは哺乳動物、例えば、ヒト由来である。細胞は、免疫細胞、例えば、T細胞、例えば初代T細胞であり得る。腫瘍細胞でもよい。
【0109】
第五の態様において、本発明は、外来性核酸を細胞のゲノムに統合するインビトロ方法であって:
a)単離細胞を提供し;
b)細胞に本発明のポリペプチドを提供し;そして
c)細胞に外来性核酸を含む核酸またはそれを含むベクターを提供する
工程を含む、方法に関する。
【0110】
インビトロ方法のある実施態様において、ポリペプチドを、本発明の核酸またはベクターを細胞に導入することにより、該細胞に提供する。この場合、所望により、外来性核酸は核酸内に含まれるかまたは外来性核酸を含む核酸であり得る。外来性核酸を含むベクターを、あるいは細胞に別に提供し得る。
【0111】
ポリペプチドはまたポリペプチドの形態で、例えば、該ポリペプチドを細胞培養培地に添加することによっても、細胞に提供され得る。
【0112】
ある実施態様において、本発明の核酸、本発明のベクターおよび/または外来性核酸を、エレクトロポレーション、マイクロインジェクション、リポフェクションからなる群から選択される方法を使用して、細胞に提供する。エレクトロポレーションは、例えば、初代細胞の形質導入に特に有利であることが証明されている。
【0113】
細胞は、動物、好ましくは、魚類、鳥類または哺乳動物からなる群から好ましくは選択される脊椎動物、好ましくはヒトなどの哺乳動物由来である。
【0114】
第六の態様において、本発明は、対象の細胞のゲノムに外来性核酸を統合するインビボ方法であって、本発明の上記態様の何れかのポリペプチド、核酸またはベクターおよび外来性核酸を含む核酸または該核酸を含むベクターを対象に投与する過程を含む、方法に関する。
【0115】
ある実施態様において、外来性核酸は本発明の核酸またはベクターに含まれる。また別々に投与してもよい。
【0116】
ある実施態様において、本発明の核酸またはベクターまたは外来性核酸は、エレクトロポレーション、マイクロインジェクション、リポタンパク質粒子、ウイルス様粒子からなる群から選択される方法を使用して、細胞に提供される。
【0117】
外来性核酸はDNAでもRNAでもよい。
【0118】
他の態様において、本発明は、医薬、特に遺伝子療法に使用するための、記載するポリペプチド、核酸、ベクターまたは細胞に関する。
【0119】
ある実施態様において、遺伝子療法は、自己もしくは異種T細胞療法、血中の任意の細胞型をターゲティングする遺伝子療法、造血幹細胞療法、肝臓遺伝子療法、中枢神経系の遺伝子療法、眼遺伝子療法、筋肉遺伝子療法、皮膚遺伝子療法および/または癌処置のための遺伝子療法を含むが、これらに限定されない。
【0120】
一般に、本発明の治療適用は多面的であり、故に本発明のポリペプチド、核酸、ベクター、細胞および特に外来性核酸を細胞のゲノムに統合する方法も、上記のものが標的細胞のゲノムに治療核酸(「治療上興味ある核酸」)、例えば遺伝子(治療上興味ある核酸)を安定に統合させるために用いられる治療適用、すなわち遺伝子療法適用に有用であり得る。これはまた腫瘍ワクチン接種または病原体、例えばハンセン病、破傷風、百日咳、腸チフス、パラチフス、コレラ、ペスト、結核、髄膜炎、細菌肺炎、炭疽、ボツリヌス症、細菌性赤痢、下痢、食中毒、梅毒、胃腸炎、塹壕熱、インフルエンザ、猩紅熱、ジフテリア、淋病、毒素ショック症候群、ライム病、発疹チフス、リステリア症、消化性潰瘍およびレジオネラ症由来の感染症処置のため;例えば後天性免疫不全症候群、アデノウイルス科感染症、アルファウイルス感染症、アルボウイルス感染症、ボルナ病(Borne disease)、ブニヤウイルス科感染症、カリシウイルス科感染症、水痘、尖圭コンジローマ、コロナウイルス科感染症、コクサッキーウイルス感染症、サイトメガロウイルス感染症、デング、DNAウイルス感染症、膿瘡、伝染病、脳炎、アルボウイルス、エプスタイン・バールウイルス感染症、伝染性紅斑、ハンタウイルス感染症、出血熱、ウイルス、肝炎、ウイルス、ヒト、単純ヘルペス、帯状疱疹、耳帯状疱疹、ヘルペスウイルス科感染症、感染性単核症、トリインフルエンザ、インフルエンザ、ヒト、ラッサ熱、麻疹、伝染性軟属腫、流行性耳下腺炎、パラミクソウイルス科感染症、パパタシ熱、ポリオーマウイルス感染症、狂犬病、呼吸器多核体ウイルス感染症、リフトバレー熱、RNAウイルス感染症、風疹、遅発ウイルス病、天然痘、亜急性硬化性全脳炎、腫瘍ウイルス感染症、疣贅、西ナイル熱、ウイルス疾患、黄色熱をもたらすウイルス感染症の処置;例えばマラリアをもたらす原生動物感染症の処置のための病理学的抗原について、抗原提示細胞、例えば特異的腫瘍抗原、例えばMAGE-1に抗原を組み込む、ワクチン療法も対象となり得る。本発明方法を使用して、広範な治療核酸を送達できる。本発明の治療核酸は、遺伝的欠陥に基づく疾患状態を担うものなどの標的宿主細胞における欠陥遺伝子を置き換える遺伝子;癌の処置における治療実用性を有する遺伝などを含む。
【0121】
さらなる態様において、本発明は、記載するポリペプチド、核酸、ベクターまたは細胞および薬学的に許容される担体、アジュバントまたは媒体を含む、医薬組成物に関する。
【0122】
医薬組成物は、さらに1以上の担体および/または添加物を含み得て、その全てが好ましくは薬学的に許容される。本発明によると、医薬組成物は、所望の反応または所望の効果を生じるための、有効量の活性剤、例えば、ここに記載するポリペプチド、核酸、ベクターまたは細胞を含む。本発明の医薬組成物は、好ましくは無菌である。医薬組成物は、均一剤型で提供され、それ自体既知の方法で製造され得る。本発明の医薬組成物は、例えば、溶液または懸濁液の形であり得る。
【0123】
本発明の組成物で使用し得る薬学的に許容される担体、アジュバントまたは媒体は、イオン交換体、アルミナ、ステアリン酸アルミニウム、レシチン、ヒト血清アルブミンなどの血清タンパク質、リン酸などの緩衝材、グリシン、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、飽和植物脂肪酸の部分グリセリド混合物、水、塩または電解質、例えば硫酸プロタミン、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素カリウム、塩化ナトリウム、亜鉛塩、、コロイド状シリカ、三ケイ酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン、セルロースベースの物質、ポリエチレングリコール、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリアクリル酸、蝋、ポリエチレン-ポリオキシプロピレン-ブロックポリマー、ポリエチレングリコールおよび羊毛脂を含むが、これらに限定されない。本発明の医薬組成物は、経口、非経腸、吸入スプレー、局所、直腸、経鼻、頬側、膣またはインプラントしたリザーバーを介して投与し得る。ここで使用する用語非経腸は、皮下、静脈内、筋肉内、関節内、滑膜内、胸骨内、髄腔内、肝臓内、病巣内および頭蓋内注射または点滴技術を含む。好ましくは、医薬組成物は、経口、腹腔内または静脈内投与される。本発明の医薬組成物の無菌注射用形態は水性または油性懸濁液を含む。これらの懸濁液は、適当な分散または湿潤剤および懸濁化剤を使用する当分野で知られる技術により製剤化される。無菌注射用製剤はまた非毒性、非経腸的に許容される希釈剤または溶媒中の無菌注射用溶液または懸濁液、例えば1,3-ブタンジオール中の溶液であり得る。とりわけ用いられ得る許容される媒体および溶媒は、水、リンゲル液および等張塩化ナトリウム溶液である。さらに、無菌、固定油は溶媒または懸濁媒体として慣用的に用いられる。
【0124】
本発明の医薬組成物は、好ましくは疾患、特に遺伝子欠損が原因の疾患、例えば嚢胞性線維症、高コレステロール血症、血友病、例えばA、B、CまたはXIII、HIVを含む免疫不全、ハンチントン病、α-抗トリプシン欠乏症ならびに結腸癌、黒色腫、腎臓癌、リンパ腫、急性骨髄性白血病(AML)、急性リンパ系白血病(ALL)、慢性骨髄性白血病(CML)、慢性リンパ球性白血病(CLL)、消化器腫瘍、肺癌、神経膠腫、甲状腺癌、乳癌、前立腺腫瘍、肝細胞癌、種々のウイルス誘発腫瘍、例えばパピローマウイルス誘発癌(例えば子宮頸癌)、腺癌、ヘルペスウイルス誘発腫瘍(例えばバーキットリンパ腫、EBV誘発B細胞リンパ腫)、B型肝炎誘発腫瘍(肝細胞癌)、HTLV-1およびHTLV-2誘発リンパ腫、聴神経鞘腫、肺癌、咽頭癌、肛門部癌、神経膠芽腫、リンパ腫、直腸癌腫、星状細胞腫、脳腫瘍、胃癌、網膜芽細胞腫、基底細胞腫、脳転移、髄芽腫、膣癌、膵臓癌、精巣癌、黒色腫、膀胱癌、ホジキン症候群、髄膜腫、シュネーベルガー病、気管支癌腫、下垂体癌、菌状息肉、咽頭食道(gullet)癌、乳癌、聴神経腫瘍、棘細胞癌、バーキットリンパ腫、喉頭部癌、胸腺腫、体癌、骨癌、非ホジキンリンパ腫、尿道癌、CUP症候群、乏突起神経膠腫、外陰癌、腸癌、食道癌、小腸腫瘍、頭蓋咽頭腫、卵巣癌、卵巣癌、肝臓癌、白血病または皮膚もしくは眼の癌から選択される癌などの処置に適する。
【0125】
同様に意図される発明を成功裏に実施可能とする当業者が利用可能な多様な別の技術および方法がある。
【実施例】
【0126】
実施例1:Sleeping BeautyトランスポザーゼにおけるH187、P247およびK248の飽和変異誘発は転位効率が改変された変異体を同定する
転位に対する187位、247位および248位の一アミノ酸置換の相対的効果を評価するために、SB100Xトランスポザーゼを、部位特異的PCR変異誘発による全ての可能なアミノ酸の組み込みによる飽和変異誘発に付した。変異体SB100Xトランスポザーゼをコードする全構築物は、ウェスタンブロット分析によりSB100Xと同等なタンパク質発現レベルを示した。
【0127】
次に、変異体について、細胞あたり一トランスポゾン組み込みが得られるよう微調整されたヒト細胞における細胞ベースの転位アッセイの適用により、SB100Xに対する相対的転位活性を評価した。簡潔には、ピューロマイシン(puro)耐性遺伝子でマークしたトランスポゾン担持ドナープラスミドを、SB100X、不活性E279Dトランスポザーゼ(D3)またはSB100Xトランスポザーゼの変異体バリアントをコードするヘルパープラスミドと共に共トランスフェクトした。
【0128】
H187変異とは対照的に、P247変異の圧倒的多数は完全に不活性であるかまたは全体的転位(
図3B)および切除(データは示していない)活性両方について重度の低減を示した。P247Aは最も活性の変異体であり、SB100Xに比して109%の転位活性であった。注目すべきは、P247Aの相対的転位活性は相対的切除活性計算値を超えた。切除能と組み込み能の間のこの不一致は、両値を2個の独立したアッセイにより決定したとの事実による可能性がある。2番目に活性な変異体はP247Sであり、SB100Xに比して73%のトランスポゾン組み込み活性を保持し、P247R(27%、p=0.017)、P247C(7%、p=0.002)およびP247K(3%、p=0.003)が続いた(
図3B)。
【0129】
P247に類似して、248位のアミノ酸交換は、19個の変異体ほぼ全てで転位を強く低減した(
図3C)。K248Rは、現在まで、最も活性な変異体であり、SB100Xに比して77%組み込み活性を有した。K248C(4%、p=0.003)、K248I(4%、p=0.003)およびK248V(9%、p=0.003)を含む3個のさらなるK248変異体は、SB100Xに比して低レベルで転位活性を示した。最近発表されたとおり、K248変異体の一部は、トランスポゾン切除および組み込み活性の分離を示した(データは示していない)。
【0130】
実施例2:H187、P247およびK248トランスポザーゼ変異体の標的部位優先性改変
変異が標的部位選択に影響を有するか否かを調査するために、ヒトHepG2細胞におけるトランスポゾン挿入部位ライブラリー産生のために上記SB変異体の一部を使用し、これら挿入部位の局所属性ならびにゲノムワイド分布をSB100Xにより産生されたものと比較した。187位について、転位効率に顕著な影響を有する6変異体(H187R、H187E、H187S、H187T、H187V、H187P)を選択し(
図3A)、一方247位および248位について、測定可能な転位活性を示した全変異体(それぞれP247A、P247R、P247C、P247S、P247KおよびK248C、K248I、K248V、K248R)を選択した(
図3BおよびC)。トランスポゾン組み込み部位を、コンセンサス配列を報告するだけでなく、全体的配列保存(ビットで測定)および各位置のヌクレオチドの相対的頻度(ロゴ内の相対的頻度により並べられた記号の高さとして測定)の情報ももたらすSeqLogo分析により可視化した。分析により、高度に好ましいTA標的部位ジヌクレオチドは、SBについて先に示されたとおり、全変異体でA/TリッチDNAに包埋されていることを確認した(
図4)。SB100Xトランスポザーゼは、実際のTA標的ジヌクレオチドを中心とする、8bp パリンドロームAT反復配列ATA
TATATを優先する。SBがほとんど排他的にTAに統合するため、中央TAは、ロゴにおける2ビットの最高値に近づく。SB100X対照ロゴはコンセンサスの-3位におけるA塩基および+3位置におけるマッチングTの比較的強い全体的保存も示し、全体的スコアは0.6ビット(
図4)であった。これらの組み込み優先傾向は、全トランスポザーゼ変異体で類似するように見えた(
図4およびデータは示していない);しかしながら、顕著な差があった。まず、P247SおよびP247R変異体はコンセンサス標的部位のわずかな逸脱を示した[P247SについてAGATATCTおよびP247RについてATTATATAAT(
図4);コンセンサスのパリンドローム性質は維持されていることに注意]。第二に、8bpコンセンサスの交互のAT塩基上流および下流の保存は変異体H187P、H187VおよびK248Rでより明白であり、それ自体8bpコンセンサスに隣接する「ショルダー」として顕在化する(
図4)。最後に、コンセンサスの-3位のAおよび+3位のTの保存は、H187P、H187VおよびK248R変異体で約1.5ビットまで劇的に増加した(
図4)。これらの発見は、SBトランスポザーゼの187位、247位および248位のアミノ酸置換が、実際、各変異体トランスポザーゼの標的部位選択性質に影響を有し、最も著しい改変は、tDNAのA/Tリッチに対するより明白な全体的優先傾向およびコンセンサス配列内のパリンドローム塩基のより強い保存であることを示す。故に、データは、変異体の一部が、標的部位選択性質がより束縛されることになったことを示す。これは、8bp ATATATAT配列へのトランスポゾン挿入の全体的頻度の分析により、明確に確認された。
【0131】
SB100XおよびP247SおよびP247R変異体は、この特定の配列を2~3%の確率でしか標的としないが、一部の他の変異体は、著しく高いこのモチーフへの組み込みの頻度を示した(H187Pについて18%、H187Vについて21%およびK248Rについて39%、
図4)。まとめると、SBトランスポザーゼの187位、247位および248位におけるあるアミノ酸置換は、AT反復への高度に優先的な組み込みの表現型をもたらす。
【0132】
実施例3:H187、P247およびK248トランスポザーゼ変異体により触媒される挿入のゲノムワイド分布の改変
遺伝子および非遺伝子領域、癌遺伝子、エクソン、イントロン、5’-および3’-UTRおよび10kbウィンドウ内の上流および下流の配列隣接遺伝子を含むゲノム特徴への組み込みの相対的頻度を、コンピューター生成ランダムデータセットに対して決定した。SB100Xおよびその変異体により産生されたこれらゲノム特徴内への挿入の比較だけでなく、分析にMLVガンマレトロウイルスおよびHIVレンチウイルス組み込み部位も含めた。これらのウイルス系は両方とも遺伝子療法における汎用ベクターである。先に確立されているとおり、SBトランスポゾン挿入は、それぞれ転写開始部位(TSS)に隣接するおよび能動的に転写される遺伝子内である遺伝子座に濃縮されるMLVおよびHIV挿入とは対照的に、遺伝子およびそのフランキング領域にほんのわずかなバイアスしか示さない(
図5)。これら3個の遺伝子ベクター系のうち、SBの全体的挿入頻度は、予測ランダム分布に最も近い(
図5)。
【0133】
次に、変異体の小サブセット;すなわちP247R、H187VおよびK248R変異体を選択し、これら変異体がSB100Xのそれより異なると認識できるほどゲノムワイド分布プロファイルを産生するか否かを検討した。
図5Aに示すデータは意義深い。特に、H187VおよびK248R変異体は、遺伝子への挿入の著しい枯渇を示す。最も著しい差は、5’-および3’-UTRならびにコーディングエクソンを含むエクソンの中である。重要なことに、これらのゲノム領域内へのH187VおよびK248Rによるトランスポゾン組み込みは、SB100Xと比較してだけでなく、ランダムデータセットと比較して、枯渇する。これらゲノム領域への挿入の全体的パーセンテージを
図5Eに示す。組み込み頻度の最も劇的な変化は、コーディングエクソンにおけるSB100Xと比較したK248Rで見られる4倍減少である(p<0.001)(
図5A)。エクソンでの組み込みの回避だけでなく、我々の変異体によるAT反復への統合の優先傾向は、これらの挿入が反復的DNAで濃縮されたことを示す。事実、単純反復における劇的が、H187VおよびK248Rにより触媒される組み込みで検出される;ゲノムのこのコンパートメントにおける濃縮は、H187Vによりランダムデータセットの約12倍(p<0.001)およびSB100Xの約4倍(p<0.001)およびK248Rによりランダムデータセットの約21倍(p<0.001)およびSB100Xの約7倍である(p<0.001)(
図5C)。ATATATATへの組み込みの優先傾向に一致して、H187Vバリアントは、TAリッチ単純反復における、ランダムおよびSB100Xのそれぞれ24倍および約5倍の濃縮を示し(p<0.001)一方、K248R介在挿入は、TAリッチ単純反復における。ランダムおよびSB100Xのそれぞれ約43倍および約8倍濃縮であった(
図5D)。
【0134】
次に、機能的ゲノムセグメントにおけるSB100XおよびP247R、H187VおよびK248R変異体により産生された挿入をプロファイルした。これらのセグメントは、ヒトゲノムの種々の機能的区画を含むよう、コンピューター的に一緒にクラスタリングするエピジェネティックシグナルパターンの発生により定義する。ヒトHepG2細胞の25状態クロマチンモデルを使用した。上記のとおり、分析にMLVおよびHIV挿入を含めた。まず、先の観察に一致して、SBトランスポゾン挿入は、プロモーター、TSS、エンハンサーおよびオープンクロマチン構造を有する転写制御領域にわずかなバイアスしか示さず、それぞれTSSを含むプロモーター領域および転写領域に最高濃縮を示すMLVおよびHIV挿入と対照的である(
図5B)。第二に、エンハンサー、TSSを含むプロモーターおよびオープン制御領域における劇的枯渇が、H187VおよびK248Rにより触媒された組み込みで見られた;最も著しい変化は、TSSを含むプロモーターにおいてH187VによりMLV、SB100X(p<0.001)およびランダムデータセットのそれぞれ約50倍、約3倍および約5倍枯渇およびエンハンサーにおいてK248RによりMLV、SB100X(p<0.001)およびランダムデータセットのそれぞれ約14倍、4倍および約3倍枯渇である(
図5B)。まとめると、データは、P247R、H187VおよびK248R変異体は、トランスポゾン組み込みの代わりの割合を、エクソンならびにプロモーターおよびエンハンサーを含む転写制御領域から脱標的化させることを示す。
【0135】
実施例4:H187V、P247RおよびK248Rトランスポザーゼ変異体によるゲノムセーフ・ハーバーへの挿入の濃縮
ヒトゲノムにおける安全な部位への治療遺伝子構築物の組み込みは、遺伝子療法における挿入変異および付随する発癌のリスクを防止する。ゲノム「セーフ・ハーバー」(GSH)は、宿主細胞または生物に有害な影響なく、新たに統合されたDNAの予測可能な発現を受け入れることができるヒトゲノムの領域である。GSHは、次の基準を満たすならば、染色体部位または領域に生物情報学的に割り当てられ得る:(i)転写単位と重複がない、(ii)あらゆる遺伝子の5’末端から少なくとも50kbの距離である、iii)癌関連遺伝子から少なくとも300kbの距離であるおよび(iv)マイクロRNA遺伝子および(v)超保存因子(UCE)58、68外側の領域である。我々は、SBトランスポゾン系が、GSHへの挿入頻度に関して、MLVおよびHIVベースのウイルス組み込み系よりはるかに好ましい挿入プロファイルを有することを先に確立している。
【0136】
上記データは、我々のSBトランスポザーゼ変異体の一部が、挿入を遺伝子のエクソンならびに転写制御領域から著しく脱標的化することを示しており、それにより、これらの酵素により触媒される挿入の大部分がGSHに位置されることを、本質的にに意味する。GSHへの組み込みの相対的頻度に関して、P247R、H187VおよびK248Rトランスポザーゼバリアントにより挿入部位データセットを分析し、上記のとおり、MLVおよびHIV挿入を分析に含めた(
図6)。
図6Aは、デンドログラムで3個のクラスターを示す:最初のものはMLVおよびHIVにより表され、二番目はSB100X、P247RおよびH187Vにより表され、三番目はK248Rおよびランダムにより表される。SB100Xトランスポザーゼおよびその変異体による挿入のランダム様分布に向けた徐々のシフトがある。例えば、HIV挿入のわずか17%が遺伝子外にあり、一方この値はSB100Xで41%、P247Rで42%、H187Vで44%、K248Rで46%およびランダムデータセットで49%である(
図6A)。これらの観察に一致して、分析により、全5個のGSH基準の同時の適用により、GSHへの挿入頻度の増加が確認された。試験した変異体の中で、K248Rトランスポザーゼバリアントが、最もランダムに近づいた:全体的に、全K248R挿入の29%および全ランダム挿入の34%がGSHに入る(
図6B)。まとめると、分析により、1)SB系はMLVおよびHIVベースのベクターより安全、故に、好ましい導入遺伝子挿入プロファイルおよび2)ヒト細胞における治療遺伝子導入におけるP247R、H187VおよびK248Rトランスポザーゼバリアントの安全性の増強が予測される。
【0137】
実施例5:H187VおよびK248Rトランスポザーゼバリアントは組み込みのためのヌクレオソームDNAを回避する
酵母におけるHermesトランスポゾンの高密度組み込みプロファイリングは、組み込み部位とヌクレオソーム・フリー・クロマチンとの強い相関を確認した。さらに、Tc1/マリナートランスポゾンが優先的にヌクレオソーム間のリンカー領域で統合されることが最近の証拠により示されている。挿入データセットを、MNase-Seqデータにより決定したヌクレオソーム占有率に関してマッピングした。先に示されたとおり、SB100Xにより介在されるトランスポゾン挿入は、ヌクレオソームDNAで少数しか存在しない(
図7)。顕著なことに、試験した3個のトランスポザーゼ変異体中、H187VおよびK248Rバリアントは、ランダム対照とだけでなく、SB100Xデータセットと比較しても、トランスポゾン組み込み部位およびヌクレオソーム占有率の相関の劇的減少を示した(
図7)。故に、H187VおよびK248R変異は、SBトランスポザーゼの表現型;すなわち、トランスポゾン組み込みについてのヌクレオソームDNA回避を劇的に増加させる。
【0138】
実施例6:H187、P247およびK248トランスポザーゼ変異体の優先的ゲノム標的部位と関連する分子特性
上記データは、H187VおよびK248Rトランスポザーゼ変異体が遺伝子のエクソンおよび転写制御領域を脱標的化し、組み込みについてヌクレオソームDNAを回避することを確認する。しかしながら、これらのデータは、これらの独立した観察の間の因果関係に必ずしも光を当てていない。例えば、エクソンはヌクレオソームと関連する傾向にある;故に、H187VおよびK248Rによるエクソン配列における組み込みの枯渇は、これらトランスポザーゼバリアントがヌクレオソームDNAを回避することを反映しているに過ぎない可能性がある。しかしながら、エンハンサーおよびTSSを含む転写制御領域はヌクレオソームで明らかに減少した;それにも関わらず、H187VおよびK248Rがこれらゲノム領域を脱標的化することを発見し、ヌクレオソーム占有率それ自体ではH187VおよびK248R組み込みがエクソンならびに制御領域で枯渇する理由を十分に説明し得ない。ゲノムセグメントがクロマチン・マークにより定義されるため、これらセグメントにおける組み込み頻度を調節するのは局所クロマチン構造かまたは根底の一次DNA配列かとの疑問が生じた。先の発見27に一致して、SB100Xトランスポザーゼは、ヒト細胞においてほぼランダム挿入プロファイルであり、ユークロマチン・マーク(H3K4me1、H3K27ac、H3K36me3およびH3K29me2を含む)にわずかにバイアスがある(
図8A)。SB100X挿入と比較して、H187VおよびK248Rバリアントによりクロマチン・マークの有意な(p<0.001)枯渇を検出した(
図8C);しかしながら、枯渇はユークロマチン・マークに限定されない。むしろ、H187VおよびK248R挿入は、一般にマークが転写活性または抑制クロマチンであるかに関わらず、ヒストン修飾で枯渇する(
図8A);故に、可能性が低いSB100Xと比較して、H187VおよびK248Rトランスポザーゼバリアントとクロマチンの差別的相互作用を考慮した。上記発見により、H187、P247およびK248トランスポザーゼ変異体による好ましいゲノム標的の主要決定因子はDNA配列組成であるとの仮説に至った。エクソン、特にコーディングエクソンは、SB転位の好ましい標的部位であるTAジヌクレオチドが比較的少ない(
図8B)。我々の変異体の一部、特にH187VおよびK248RによるATATATAT配列モチーフへの優先傾向増強を鑑みて、これらの変異体によるエクソン配列の脱ターゲティングが、エクソン配列におけるこの配列モチーフのまれな出現により駆動されることを示す。事実、ATATATATは、エクソンにおいて著しく少数しか存在せず、特にコーディングエクソンでそうであり(
図8B)、それにより、一次DNA配列組成がH187VおよびK248R挿入のエクソン配列の回避を駆動する主要決定因子であることが示唆される。同様に、オープン制御領域、TSSおよびエンハンサーはヒトゲノムの平均塩基組成と比較して、比較的TAが乏しい(
図8C)。コーディングエクソンで見られるとおり、H187VおよびK248R変異体優先的に統合されるATATATAT配列モチーフは、これら3個のゲノムセグメントで著しく少数しか存在しない(
図8C)。データは、H187VおよびK248R変異体によるエクソンならびに転写制御領域の脱ターゲティングの主要決定因子は、これらゲノム領域における高度に好ましいATATATAT配列の低い利用可能性であることを示す。
【0139】
実施例7:H187P、H187R、H187E、H187S、H187T、P247S、P247A、P247C、P247S、K248C、K248IおよびK248Vトランスポザーゼ変異体により触媒された挿入のゲノムワイド分布改変
実施例3と同様、遺伝子および非遺伝子領域、癌遺伝子、エクソン、イントロン、5’-および3’-UTRおよび10kbウィンドウ内の上流および下流の配列隣接遺伝子を含むゲノム特徴の組み込みの相対的頻度を、コンピューター生成ランダムデータセットに対して決定した。同様に、MLVガンマレトロウイルスおよびHIVレンチウイルス組み込み部位を分析に含めた。
【0140】
今回は、さらなる変異体のサブセット:すなわちH187P、H187R、H187E、H187S、H187T、P247S、P247A、P247C、P247S、K248C、K248IおよびK248Vを分析し、同様にこれら変異体がSB100Xと認識できるほど異なるゲノムワイド分布プロファイルを産生するか否かを検討した(
図9)。P247AおよびP247C以外、試験した全変異体は、遺伝子への挿入の顕著な枯渇を多かれ少なかれ示した。同様に、最大の差は、5’-および3’-UTRならびにコーディングエクソンを含むエクソン内で見られた。組み込み頻度の最も劇的な変化は、コーディングエクソンにおけるSB100Xと比較したK248IならびにK248Cでみられる4倍減少であった(
図9)。全体として、これら2個の変異体は、実施例3で試験したK248R変異体と類似の効果を発揮した(
図5A)。興味深いことに、P247A変異体は、エクソンおよび転写制御領域への組み込みの頻度が実際増加したため、他のバリアントからの明らかな例外であると考えられる(
図9)。故に、挿入の特異性獲得だけでなく、他の変異体と比較した逆の方向の特異性獲得にも至る。
【配列表】
【国際調査報告】