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特表2024-535768抗PVRIG/TIGIT二重特異性抗体を含む医薬組成物
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-02
(54)【発明の名称】抗PVRIG/TIGIT二重特異性抗体を含む医薬組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/395 20060101AFI20240925BHJP
   A61P 31/00 20060101ALI20240925BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240925BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240925BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20240925BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20240925BHJP
   A61K 47/18 20170101ALI20240925BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20240925BHJP
   A61K 47/34 20170101ALI20240925BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20240925BHJP
   C07K 16/46 20060101ALI20240925BHJP
   C07K 16/28 20060101ALI20240925BHJP
   C12N 15/13 20060101ALI20240925BHJP
【FI】
A61K39/395 N ZNA
A61P31/00
A61P35/00
A61P43/00 105
A61K9/08
A61K47/12
A61K47/18
A61K47/26
A61K47/34
A61K47/02
C07K16/46
C07K16/28
C12N15/13
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024515316
(86)(22)【出願日】2022-09-15
(85)【翻訳文提出日】2024-03-08
(86)【国際出願番号】 CN2022118942
(87)【国際公開番号】W WO2023040935
(87)【国際公開日】2023-03-23
(31)【優先権主張番号】202111078172.7
(32)【優先日】2021-09-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TRITON
2.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】516174219
【氏名又は名称】江蘇恒瑞医薬股▲ふん▼有限公司
(71)【出願人】
【識別番号】520392096
【氏名又は名称】上海盛迪医薬有限公司
【氏名又は名称原語表記】SHANGHAI SHENGDI PHARMACEUTICAL CO., LTD
【住所又は居所原語表記】No.1288 Haike Road, Zhangjiang Town, Pudong New District, Shanghai 201210, China
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100138911
【弁理士】
【氏名又は名称】櫻井 陽子
(72)【発明者】
【氏名】楊 健健
(72)【発明者】
【氏名】田 晨敏
【テーマコード(参考)】
4C076
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4C076AA11
4C076AA96
4C076BB13
4C076BB15
4C076BB16
4C076BB21
4C076CC27
4C076CC32
4C076DD09
4C076DD23D
4C076DD38D
4C076DD41D
4C076DD41Z
4C076DD51Z
4C076EE23
4C076FF14
4C076FF16
4C076FF43
4C076FF61
4C076GG06
4C085AA14
4C085AA16
4C085BB11
4C085DD62
4C085EE01
4C085GG02
4C085GG03
4C085GG04
4C085GG06
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA41
4H045CA40
4H045DA76
4H045EA28
4H045FA74
(57)【要約】
抗PVRIG/TIGIT二重特異性抗体を含む医薬組成物である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗PVRIG/TIGIT二重特異性抗体と緩衝剤を含む医薬組成物であって、
前記抗PVRIG/TIGIT二重特異性抗体は、PVRIGに特異的に結合する第1の抗原結合ドメインと、TIGITに特異的に結合する第2の抗原結合ドメインとを含み、
前記緩衝剤は、ヒスチジン緩衝剤又は酢酸塩緩衝剤であり、
好ましくは、前記ヒスチジン緩衝剤はヒスチジン-塩酸ヒスチジン緩衝剤であり、又は
好ましくは、前記酢酸塩緩衝剤は酢酸-酢酸ナトリウム塩緩衝剤である、
医薬組成物。
【請求項2】
前記医薬組成物のpHは5.0~6.5であり、
好ましくは、前記医薬組成物のpHは5.5~6.5であり、
より好ましくは、前記医薬組成物のpHは6.0±0.2である、
請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記抗PVRIG/TIGIT二重特異性抗体の濃度は1~150 mg/mLであり、
好ましくは、前記抗PVRIG/TIGIT二重特異性抗体の濃度は1~100 mg/mLであり、
より好ましくは、前記抗PVRIG/TIGIT二重特異性抗体の濃度は50±5 mg/mLである、
請求項1又は2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記医薬組成物は界面活性剤を含み、
好ましくは、前記界面活性剤はポリソルベート又はポロキサマーであり、
より好ましくは、前記界面活性剤はポリソルベート80である、
請求項1~3の何れか1項に記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記界面活性剤の濃度は0.05~1.0 mg/mLであり、
好ましくは、前記界面活性剤の濃度は0.2~0.6 mg/mLであり、
より好ましくは、前記界面活性剤の濃度は0.4±0.1 mg/mLである、
請求項4に記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記医薬組成物は浸透圧調整剤を含み、
好ましくは、前記浸透圧調整剤は、スクロース、トレハロース、ソルビトール、アルギニン、グリシン及び塩化ナトリウムからなる群から選ばれる1つ又は複数であり、
より好ましくは、前記浸透圧調整剤はスクロースである、
請求項1~5の何れか1項に記載の医薬組成物。
【請求項7】
前記浸透圧調整剤の濃度は70~100 mg/mLであり、
好ましくは、前記浸透圧調整剤の濃度は70~90 mg/mLであり、
より好ましくは、前記浸透圧調整剤の濃度は80±5 mg/mLである、
請求項6に記載の医薬組成物。
【請求項8】
前記緩衝剤の濃度は5~100 mMであり、
好ましくは、前記緩衝剤の濃度は10~30 mMであり、
より好ましくは、前記緩衝剤の濃度は10±5 mMである、
請求項1~7の何れか1項に記載の医薬組成物。
【請求項9】
前記PVRIGに特異的に結合する第1の抗原結合ドメインは、少なくとも1つの免疫グロブリン単一可変ドメインを含み、前記免疫グロブリン単一可変ドメインはCDR1、CDR2及びCDR3を含み、前記CDR1、CDR2及びCDR3は、それぞれ配列番号3、80~84の何れか1つで示される配列中のCDR1、CDR2及びCDR3のアミノ酸配列を含み、
好ましくは、前記免疫グロブリン単一可変ドメインのCDR1、CDR2及びCDR3は、Kabat番号付けシステムによって定義され、そのうち、CDR1は配列番号10のアミノ酸配列を含み、CDR2は配列番号11のアミノ酸配列を含み、かつCDR3は配列番号151のアミノ酸配列を含み、
より好ましくは、前記免疫グロブリン単一可変ドメインは、配列番号81のアミノ酸配列を含む、
請求項1~8の何れか1項に記載の医薬組成物。
【請求項10】
前記TIGITに特異的に結合する第2の抗原結合ドメインは、重鎖可変領域(VH)及び軽鎖可変領域(VL)を含み、そのうち、
前記VHはHCDR1、HCDR2及びHCDR3を含み、そのうち、HCDR1は配列番号121のアミノ酸配列を含み、HCDR2は配列番号122のアミノ酸配列を含み、HCDR3は配列番号123のアミノ酸配列を含む、かつ
前記VLはLCDR1、LCDR2及びLCDR3を含み、そのうち、LCDR1は配列番号124のアミノ酸配列を含み、LCDR2は配列番号125のアミノ酸配列を含み、LCDR3は配列番号126のアミノ酸配列を含み、
好ましくは、前記VHは配列番号145のアミノ酸配列を含み、かつ前記VLは配列番号149のアミノ酸配列を含み、
より好ましくは、前記TIGITに特異的に結合する第2の抗原結合ドメインは重鎖と軽鎖を含み、前記重鎖は配列番号102のアミノ酸配列を含み、前記軽鎖は配列番号103のアミノ酸配列を含み、
最も好ましくは、前記抗PVRIG/TIGIT二重特異性抗体は第1のポリペプチド鎖と第2のポリペプチド鎖を含み、そのうち、前記第1のポリペプチド鎖は配列番号109のアミノ酸配列を含み、前記第2のポリペプチド鎖は配列番号103のアミノ酸配列を含む、
請求項1~9の何れか1項に記載の医薬組成物。
【請求項11】
下記の成分、即ち、
(a)1~100 mg/mLの前記抗PVRIG/TIGIT二重特異性抗体と、
(b)0.2~0.6 mg/mLのポリソルベート80と、
(c)70~90 mg/mLのスクロースと、
(d)10~30 mMのヒスチジン緩衝剤と、を含み、前記医薬組成物のpHが5.5~6.5であり、
好ましくは、前記医薬組成物は下記の成分、即ち、
(a)50~100 mg/mLの前記抗PVRIG/TIGIT二重特異性抗体と、
(b)0.2~0.6 mg/mLのポリソルベート80と、
(c)75~80 mg/mLのスクロースと、
(d)10 mMのヒスチジン-塩酸ヒスチジン緩衝剤と、を含み、前記医薬組成物のpHが5.5~6.5であり、
より好ましくは、前記医薬組成物は下記の成分、即ち、
(a)50±5 mg/mLの抗PVRIG/TIGIT二重特異性抗体であって、配列番号109で示されるアミノ酸配列の第1のポリペプチド鎖、及び配列番号103で示されるアミノ酸配列の第2のポリペプチド鎖を含む抗PVRIG/TIGIT二重特異性抗体と、
(b)0.4±0.1 mg/mLのポリソルベート80と、
(c)80±5 mg/mLのスクロースと、
(d)10±5 mMのヒスチジン-塩酸ヒスチジン緩衝剤と、を含み、前記医薬組成物のpHが6.0±0.2である、
請求項1~10の何れか1項に記載の医薬組成物。
【請求項12】
再溶解すると、請求項1~11の何れか1項に記載の医薬組成物を形成することができる、凍結乾燥製剤。
【請求項13】
請求項1~11の何れか1項に記載の医薬組成物を凍結乾燥するステップを含む、凍結乾燥製剤を調製する方法。
【請求項14】
請求項13に記載の方法によって得られる、凍結乾燥製剤。
【請求項15】
静脈注射製剤、皮下注射製剤、腹腔注射製剤又は筋肉注射製剤であり、好ましくは静脈注射製剤である、請求項1~11の何れか1項に記載の医薬組成物。
【請求項16】
疾患を治療する方法であって、前記方法は、
治療有効量の請求項1~11、15の何れか1項に記載の医薬組成物、請求項12又は14に記載の凍結乾燥製剤を、対象に投与することを含み、
好ましくは、前記疾患は増殖性疾患、感染又は敗血症であり、
より好ましくは、前記増殖性疾患は腫瘍であり、
最も好ましくは、前記腫瘍は、肺がん、前立腺がん、乳がん、頭頸部がん、食道がん、胃がん、結腸直腸がん、膀胱がん、子宮頸がん、子宮内膜がん、卵巣がん、肝がん、黒色腫、腎がん、扁平上皮がん及び血液系がんから選ばれる何れか1つである、
方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2021年09月15日に提出された中国特許出願202111078172.7の優先権を主張する。
【0002】
本開示は、医薬製剤分野に属し、具体的には、二重特異性抗体を含む医薬組成物、及びその薬剤としての使用に関する。
【背景技術】
【0003】
ここでの記載は、必ずしも従来技術を構成するものではなく、本開示に関連する背景情報のみを提供する。
【0004】
PVRIGは、CD112Rとも呼ばれ、細胞表面において発現されるタンパク質であり、TIGIT、CD96及びCD226などと同じくB7/CD28スーパーファミリーに属し、免疫系において重要な役割を果たす。
【0005】
PVRIGは、1つの細胞外領域、1つの膜貫通領域、及び1つの細胞内領域を含む。そのリガンドPVRL2(CD112とも呼ばれる)がPVRIGに結合すると、PVRIGが免疫阻害作用を果たすように、PVRIG細胞内領域におけるITIMドメインを活性化することになる。
【0006】
PVRIGは、主にCD4+T細胞、CD8+T細胞及びNK細胞の表面において発現される。PVRIG及びそのリガンドPVRL2は、肺がん、乳がん、卵巣がん、腎がん、胃がん、子宮内膜がん、頭頸部がんなどを含む多くの固形腫瘍において高発現される。これらのがんにおけるPVRIGの発現は、TIGIT及びPD-1との関連性が高い。PD-1及びTIGITと類似し、PVRIG陽性のT細胞もEomes陽性及びTbet陰性を示し、PVRIGがT細胞の枯渇に関連することが示唆される。従って、PVRIGは、PD-1及びTIGIT以外の新しい免疫チェックポイントを代表し、冗長性(redundancy)の役割を果たす可能性がある。体外細胞実験及びマウスモデルから明らかなように、マウスPVRIGをノックアウト又は阻害することにより、腫瘍の増殖を効果的に阻害するとともに、PD-1及びTIGIT阻害剤と相乗効果を生じることができる。
【0007】
TIGITは、様々な腫瘍に浸潤する腫瘍浸潤リンパ球(TIL)及びTregを含むリンパ球に高発現される。TIGITシグナル伝達とその同族リガンドPVR(CD155とも呼ばれる)の結合は、その細胞質ITIMドメインを介してNK細胞の細胞傷害性を直接阻害することが証明された。PVRは腫瘍においても広く発現され、TIGIT-PVRシグナル伝達軸ががんの主要な免疫回避メカニズムであり得ることが示唆される。
【0008】
しかし、現在、臨床に入った抗PVRIG/TIGIT二重特異性抗体薬は、まだ存在していない。従来の技術において、インビボでがん又は腫瘍の増殖を阻害可能な高親和性(avidity)、高選択性、高生物活性の抗PVRIG/TIGIT二重特異性抗体の製剤は、依然として欠けている。
【発明の概要】
【0009】
本開示は、抗PVRIG/TIGIT二重特異性抗体を含む医薬組成物を提供し、当該組成物は治療活性を有する。さらに、当該組成物は、安定性が良いといった利点を有してもよい。
【0010】
幾つかの実施形態において、本開示は、抗PVRIG/TIGIT二重特異性抗体及び緩衝剤を含む医薬組成物を提供し、そのうち、上記抗PVRIG/TIGIT二重特異性抗体は、PVRIGに特異的に結合する第1の抗原結合ドメインと、TIGITに特異的に結合する第2の抗原結合ドメインとを含み、上記緩衝剤はヒスチジン緩衝剤又は酢酸塩緩衝剤である。
【0011】
幾つかの実施形態において、上記緩衝剤は、ヒスチジン-塩酸ヒスチジン緩衝剤又は酢酸-酢酸ナトリウム塩緩衝剤である。
【0012】
幾つかの具体的な実施形態において、上記緩衝剤は、ヒスチジン-塩酸ヒスチジン緩衝剤である。
【0013】
幾つかの実施形態において、上記何れか1つに記載の医薬組成物であって、そのうち、上記医薬組成物のpHは5.0~6.5である。幾つかの実施形態において、上記医薬組成物のpHは5.5~6.5であり、幾つかの実施形態において、上記医薬組成物のpHは5.5~6.0であり、幾つかの実施形態において、上記医薬組成物のpHは約6.0である。本開示において点値に言及する場合、当該点値は、誤差範囲を含むと理解すべきである。この誤差範囲は、実験室環境、作業者による操作、機器、方法学、測定誤差などの要因によるものである。pHを例とすれば、測定値が約6.0である場合、誤差範囲を含んでいると理解すべきである。一例として、工業用pH計で製剤を測定する場合、「約6.0」は、6.0±0.2を示す。
【0014】
幾つかの実施形態において、上記医薬組成物のpHは5.0~5.5であり、幾つかの実施形態において、上記医薬組成物のpHは約5.5である。
【0015】
幾つかの実施形態において、上記医薬組成物のpHは、5.0、5.1、5.2、5.3、5.4、5.5、5.6、5.7、5.8、5.9、6.0、6.1、6.2、6.3、6.4若しくは6.5であり、又はこれらの点値間の任意の範囲である。
【0016】
一般的に、緩衝剤の置換によって得られた医薬組成物は、pHが緩衝剤pHとほぼ一致する。同時に、当業者に公知されているように、医薬製剤化の過程において、pHドリフトが存在する場合があるが、医薬製剤のpHのドリフトは一般に小さい(±0.3の範囲内)。幾つかの実施形態において、医薬製剤のpHのドリフトは、±0.1の範囲内にある。
【0017】
幾つかの実施形態において、上記何れか1つに記載の医薬組成物であって、そのうち、上記抗PVRIG/TIGIT二重特異性抗体の濃度は1~150 mg/mLである。幾つかの実施形態において、上記抗PVRIG/TIGIT二重特異性抗体の濃度は1~100 mg/mLである。幾つかの実施形態において、上記抗PVRIG/TIGIT二重特異性抗体の濃度は、40~100 mg/mLである。幾つかの実施形態において、上記抗PVRIG/TIGIT二重特異性抗体の濃度は、50~100 mg/mLである。幾つかの実施形態において、上記抗PVRIG/TIGIT二重特異性抗体の濃度は、40~60 mg/mLである。幾つかの実施形態において、上記抗PVRIG/TIGIT二重特異性抗体の濃度は、100 mg/mLである。幾つかの実施形態において、上記抗PVRIG/TIGIT二重特異性抗体の濃度は、100±8 mg/mLである。幾つかの実施形態において、上記抗PVRIG/TIGIT二重特異性抗体の濃度は、50 mg/mLである。幾つかの実施形態において、上記抗PVRIG/TIGIT二重特異性抗体の濃度は、50±5 mg/mLである。幾つかの実施形態において、上記抗PVRIG/TIGIT二重特異性抗体の濃度は、1 mg/mL、10 mg/mL、20 mg/mL、30 mg/mL、40 mg/mL、45 mg/mL、50 mg/mL、55 mg/mL、60 mg/mL、65 mg/mL、70 mg/mL、80 mg/mL、90 mg/mL、100 mg/mL、110 mg/mL、120 mg/mL、130 mg/mL、140 mg/mL若しくは150 mg/mLであり、又はこれらの点値間の任意の範囲である。
【0018】
幾つかの実施形態において、上記何れか1つに記載の医薬組成物であって、そのうち、上記医薬組成物は界面活性剤を含む。幾つかの実施形態において、上記界面活性剤は非イオン界面活性剤である。幾つかの実施形態において、上記界面活性剤は、ポロキサマー(例えば、ポロキサマー188)、ポリソルベート(例えば、ポリソルベート20、ポリソルベート80)、ポロキサマー、Triton、ドデシルスルホン酸ナトリウム、ラウリルスルホン酸ナトリウム、オクチルグルコシドナトリウム、ラウリル-スルホベタイン、ミリスチル-スルホベタイン、リノール-スルホベタイン、ステアリン-スルホベタイン、ラウリル-サルコシン、ミリスチル-サルコシン、リノール-サルコシン、ステアリン-サルコシン、リノール-ベタイン、ミリスチル-ベタイン、セチル-ベタイン、ラウラミドプロピル-ベタイン、コカミドプロピル-ベタイン、リノールアミドプロピル-ベタイン、ミリスタミドプロピル-ベタイン、パルミタミドプロピル-ベタイン、イソステアラミドプロピル-ベタイン、ミリスタミドプロピル-ジメチルアミン、パルミタミドプロピル-ジメチルアミン、イソステアラミドプロピル-ジメチルアミン、メチルココイルナトリウム、メチルオレイルタウリンナトリウム、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレン及びプロピレングリコールの共重合体などから選ばれる。幾つかの実施形態において、上記界面活性剤はポリソルベート又はポロキサマーである。幾つかの実施形態において、上記界面活性剤は、ポリソルベート80、ポリソルベート20又はポロキサマー188である。幾つかの実施形態において、上記界面活性剤はポリソルベート80である。
【0019】
幾つかの実施形態において、上記何れか1つに記載の医薬組成物であって、そのうち、上記界面活性剤の濃度は0.05~1.0 mg/mLである。幾つかの実施形態において、上記界面活性剤の濃度は、0.2~0.6 mg/mLである。幾つかの実施形態において、上記界面活性剤の濃度は、0.05 mg/mL、0.1 mg/mL、0.2 mg/mL、0.3 mg/mL、0.4 mg/mL、0.5 mg/mL、0.6 mg/mL、0.7 mg/mL、0.8 mg/mL、0.9 mg/mL若しくは1.0 mg/mLであり、又はこれらの点値間の任意の範囲である。幾つかの実施形態において、上記界面活性剤の濃度は0.4 mg/mLである。幾つかの実施形態において、上記界面活性剤の濃度は0.4±0.1 mg/mLである。
【0020】
幾つかの実施形態において、上記界面活性剤は0.4 mg/mLのポリソルベート80である。
【0021】
幾つかの実施形態において、上記何れか1つに記載の医薬組成物であって、それは浸透圧調整剤を含む。幾つかの実施形態において、浸透圧調整剤は、糖(単糖、二糖、三糖、多糖、糖アルコール、還元糖、非還元糖などを含む)、アミノ酸(アルギニン、グリシン、システイン、ヒスチジンなどを含む)又は塩類(塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウムなど)である。幾つかの実施形態において、上記浸透圧調整剤は糖であり、上記糖は、グルコース、スクロース、トレハロース、ラクトース、フルクトース、マルトース、デキストラン、グリセリン、エリトリトール、グリセロール、アラビトール、キシリトール、ソルビトール(ソルビットともいう)、マンニトール、メリビオース、メレジトース、ラフィノース、マンニノトリオース、スタキオース、マルトース、ラクツロース、マルツロース、マルチトール、ラクチトールとイソ-マルツロースから選ばれる。幾つかの実施形態において、上記浸透圧調整剤は、スクロース、トレハロース、ソルビトール、アルギニン、グリシン及び塩化ナトリウムからなる群から選ばれる1つ又は複数である。幾つかの実施形態において、上記浸透圧調整剤は非還元二糖であり、幾つかの実施形態において、上記浸透圧調整剤はトレハロース又はスクロースであり、幾つかの実施形態において、上記浸透圧調整剤はスクロースである。
【0022】
幾つかの実施形態において、上記何れか1つに記載の医薬組成物であって、浸透圧調整剤の濃度は70~100 mg/mLである。幾つかの実施形態において、浸透圧調整剤の濃度は75~100 mg/mLであり、幾つかの実施形態において、浸透圧調整剤の濃度は75~90 mg/mLであり、幾つかの実施形態において、浸透圧調整剤の濃度は70~90 mg/mLであり、幾つかの実施形態において、浸透圧調整剤の濃度は75~85 mg/mLであり、幾つかの実施形態において、浸透圧調整剤の濃度は75~80 mg/mLであり、幾つかの実施形態において、浸透圧調整剤の濃度は80 mg/mLであり、幾つかの実施形態において、浸透圧調整剤の濃度は80±5 mg/mLである。幾つかの実施形態において、浸透圧調整剤の濃度の非限定的な実例は、60 mg/mL、65 mg/mL、70 mg/mL、75 mg/mL、80 mg/mL、85 mg/mL、90 mg/mL、95 mg/mL、100 mg/mL、及びこれらの点値間の任意の範囲を含む。
【0023】
幾つかの実施形態において、上記医薬組成物は等張製剤である。幾つかの実施形態において、上記浸透圧調整剤は、上記医薬組成物の浸透圧を280~320 mOsmに制御し、幾つかの実施形態において、浸透圧は約290~300 mOsmに制御される。幾つかの実施形態において、浸透圧調整剤は、浸透圧を280 mOsm、290 mOsm、295 mOsm、300 mOsm、305 mOsm、310 mOsm、320 mOsm、及びこれらの点値間の任意の範囲に制御する。
【0024】
幾つかの実施形態において、上記浸透圧調整剤は80 mg/mLのスクロースである。
【0025】
幾つかの実施形態において、上記浸透圧調整剤は80±5 mg/mLのスクロースである。
【0026】
幾つかの実施形態において、上記何れか1つに記載の医薬組成物であって、上記緩衝剤の濃度は5~100 mMである。幾つかの実施形態において、上記緩衝剤の濃度は10~30 mMである。幾つかの実施形態において、上記緩衝剤の濃度は5~15 mMである。幾つかの実施形態において、上記緩衝剤の濃度は、5 mM、10 mM、15 mM、20 mM、25 mM、30 mM、40 mM、50 mM、60 mM、70 mM、80 mM、90 mM又は100 mM、及びこれらの点値間の任意の範囲である。幾つかの実施形態において、上記緩衝剤は10 mMのHis-HClである。幾つかの実施形態において、上記緩衝剤は10±5 mMのHis-HClである。
【0027】
幾つかの実施形態において、上記何れか1つに記載の医薬組成物であって、そのうち、上記抗PVRIG/TIGIT二重特異性抗体は、そのPVRIGに特異的に結合する第1の抗原結合ドメインが少なくとも1つの免疫グロブリン単一可変ドメイン(例えば、VHH)を含み、上記少なくとも1つの免疫グロブリン単一可変ドメイン(例えば、VHH)は3つの相補性決定領域CDR1、CDR2及びCDR3を含み、そのうち、CDR1は、配列番号7、10、13、16、19、22、25、28、31、34、37、40、43、46、49、52、55、58、61、64の何れか1つで示されるアミノ酸配列又はそれに対して3、2、1個若しくはそれ以上のアミノ酸相違を有するアミノ酸配列から選ばれ、及び/又はCDR2は、配列番号8、11、14、17、20、23、26、29、32、35、38、41、44、47、50、53、56、59、62、65の何れか1つで示されるアミノ酸配列又はそれに対して3、2、1個若しくはそれ以上のアミノ酸相違を有するアミノ酸配列から選ばれ、及び/又はCDR3は、配列番号9、12、15、18、21、24、27、30、33、36、39、42、45、48、51、54、57、60、63、66、150、151の何れか1つで示されるアミノ酸配列又はそれに対して3、2、1個若しくはそれ以上のアミノ酸相違を有するアミノ酸配列から選ばれ、そのうち、配列番号7~21は、Kabat番号付け規則に従い、配列番号22~36はChothia番号付け規則に従い、配列番号37~51はIMGT番号付け規則に従い、配列番号52~66はAbM番号付け規則に従う。
【0028】
幾つかの実施形態において、上記何れか1つに記載の医薬組成物であって、そのうち、上記抗PVRIG/TIGIT二重特異性抗体は、そのPVRIGに特異的に結合する第1の抗原結合ドメインが少なくとも1つの免疫グロブリン単一可変ドメイン(例えば、VHH)を含み、上記免疫グロブリン単一可変ドメインは配列番号2、75~79の何れか1つで示される配列中のCDR1、CDR2、CDR3を含み、又は配列番号3、80~84の何れか1つで示される配列中のCDR1、CDR2、CDR3を含み、又は配列番号4、86~90の何れか1つで示される配列中のCDR1、CDR2、CDR3を含み、又は配列番号5、91~95の何れか1つで示される配列中のCDR1、CDR2、CDR3を含み、又は配列番号6、96~100の何れか1つで示される配列中のCDR1、CDR2、CDR3を含む。幾つかの実施形態において、上記免疫グロブリン単一可変ドメインは、配列番号3、80~84の何れか1つで示される配列中のCDR1、CDR2、CDR3を含む。幾つかの実施形態において、上記免疫グロブリン単一可変ドメインは、配列番号81中のCDR1、CDR2、CDR3を含む。幾つかの実施形態において、上記CDR1、CDR2、CDR3は、Kabat、IMGT、Chothia、AbM又はContact番号付けシステムによって定義される。幾つかの実施形態において、上記CDR1、CDR2、CDR3は、Kabat番号付け規則によって決定される。幾つかの実施形態において、Kabat番号付け規則に従って、PVRIGに特異的に結合する第1の抗原結合ドメイン(例えば、VHH)は、3つの相補性決定領域CDR1、CDR2及びCDR3を含み、そのうち、CDR1、CDR2、CDR3のアミノ酸配列はそれぞれ配列番号7、8、9で示され、CDR1、CDR2、CDR3のアミノ酸配列はそれぞれ配列番号7、8、150で示され、CDR1、CDR2、CDR3のアミノ酸配列はそれぞれ配列番号10、11、12で示され、CDR1、CDR2、CDR3のアミノ酸配列はそれぞれ配列番号10、11、151で示され、CDR1、CDR2、CDR3のアミノ酸配列はそれぞれ配列番号13、14、15で示され、CDR1、CDR2、CDR3のアミノ酸配列はそれぞれ配列番号16、17、18で示され、又はCDR1、CDR2、CDR3のアミノ酸配列はそれぞれ配列番号19、20、21で示される。幾つかの実施形態において、Chothia番号付け規則に従って、PVRIGに特異的に結合する第1の抗原結合ドメイン(例えば、VHH)は、3つの相補性決定領域CDR1、CDR2及びCDR3を含み、そのうち、CDR1、CDR2、CDR3のアミノ酸配列はそれぞれ配列番号22、23、24で示され、CDR1、CDR2、CDR3のアミノ酸配列はそれぞれ配列番号25、26、27で示され、CDR1、CDR2、CDR3のアミノ酸配列はそれぞれ配列番号28、29、30で示され、CDR1、CDR2、CDR3のアミノ酸配列はそれぞれ配列番号31、32、33で示され、又はCDR1、CDR2、CDR3のアミノ酸配列はそれぞれ配列番号34、35、36で示される。幾つかの実施形態において、IMGT番号付け規則に従って、PVRIGに特異的に結合する第1の抗原結合ドメイン(例えば、VHH)は、3つの相補性決定領域CDR1、CDR2及びCDR3を含み、そのうち、CDR1、CDR2、CDR3のアミノ酸配列はそれぞれ配列番号37、38、39で示され、CDR1、CDR2、CDR3のアミノ酸配列はそれぞれ配列番号40、41、42で示され、CDR1、CDR2、CDR3のアミノ酸配列はそれぞれ配列番号43、44、45で示され、CDR1、CDR2、CDR3のアミノ酸配列はそれぞれ配列番号46、47、48で示され、又はCDR1、CDR2、CDR3のアミノ酸配列はそれぞれ配列番号49、50、51で示される。幾つかの実施形態において、AbM番号付け規則に従って、PVRIGに特異的に結合する第1の抗原結合ドメイン(例えば、VHH)は、3つの相補性決定領域CDR1、CDR2及びCDR3を含み、そのうち、CDR1、CDR2、CDR3のアミノ酸配列はそれぞれ配列番号52、53、54で示され、CDR1、CDR2、CDR3のアミノ酸配列はそれぞれ配列番号55、56、57で示され、CDR1、CDR2、CDR3のアミノ酸配列はそれぞれ配列番号58、59、60で示され、CDR1、CDR2、CDR3のアミノ酸配列はそれぞれ配列番号61、62、63で示され、又はCDR1、CDR2、CDR3のアミノ酸配列はそれぞれ配列番号64、65、66で示される。
【0029】
幾つかの実施形態において、上記何れか1つに記載の医薬組成物であって、そのうち、上記抗PVRIG/TIGIT二重特異性抗体は、そのPVRIGに特異的に結合する第1の抗原結合ドメインが少なくとも1つの免疫グロブリン単一可変ドメイン(例えば、VHH)を含み、上記免疫グロブリン単一可変ドメインはCDR1、CDR2及びCDR3を含み、上記CDR1、CDR2及びCDR3はKabat番号付けシステムによって定義され、そのうち、CDR1は配列番号10のアミノ酸配列を含み、CDR2は配列番号11のアミノ酸配列を含み、かつCDR3は配列番号151のアミノ酸配列を含む。
【0030】
幾つかの実施形態において、上記何れか1つに記載の医薬組成物であって、そのうち、上記抗PVRIG/TIGIT二重特異性抗体は、そのPVRIGに特異的に結合する第1の抗原結合ドメイン(例えば、VHH)が配列番号2~6、75~84、86~100の何れか1つで示されるアミノ酸配列を含み、又は配列番号2~6、75~84、86~100中の少なくとも1つの配列に対して少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。幾つかの実施形態において、上記抗PVRIG/TIGIT二重特異性抗体の第1の抗原結合ドメインは、配列番号81のアミノ酸配列を含む。幾つかの実施形態において、上記抗PVRIG/TIGIT二重特異性抗体の第1の抗原結合ドメインは、配列番号81に対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%又は少なくとも99%の同一性を有する配列のアミノ酸配列を含む。
【0031】
幾つかの実施形態において、上記何れか1つに記載の医薬組成物であって、そのうち、上記抗PVRIG/TIGIT二重特異性抗体では、PVRIGに特異的に結合する第1の抗原結合ドメインが第1の抗体で、VHHであり、TIGITに特異的に結合する第2の抗原結合ドメインが第2の抗体であり、幾つかの実施形態において、第2の抗体は重鎖(HC)及び軽鎖(LC)を含み、上記第1の抗体は第2の抗体の重鎖又は軽鎖のN末端及び/又はC末端に位置する。
【0032】
幾つかの実施形態において、上記何れか1つに記載の医薬組成物であって、そのうち、上記抗PVRIG/TIGIT二重特異性抗体は、1つのTIGITに特異的に結合する第2の抗体と、2つのPVRIGに特異的に結合する第1の抗体とを含み、上記第2の抗体は2つのHC及び2つのLCを含み、第2の抗体の1つのHCのVHと1つのLCのVLにより抗原結合部位が形成され、もう1つのHCのVHともう1つのLCのVLにより抗原結合部位が形成される。幾つかの実施形態において、一方の第1の抗体は第2の抗体の重鎖又は軽鎖のN末端に位置し、他方の第1の抗体は第2の抗体の重鎖又は軽鎖のC末端に位置する。幾つかの実施形態において、各第1の抗体はそれぞれ第2の抗体の2つの重鎖又は2つの軽鎖のN末端に位置し、或いは、各第1の抗体はそれぞれ第2の抗体の2つの重鎖又は2つの軽鎖のC末端に位置する。幾つかの実施形態において、各第1の抗体は、それぞれ第2の抗体の2つの重鎖のN末端に位置する。幾つかの実施形態において、各第1の抗体は、それぞれ第2の抗体の2つの重鎖のC末端に位置する。幾つかの実施形態において、上記2つの第1の抗体は同じである。幾つかの実施形態において、上記2つの第1の抗体は同じではない。
【0033】
幾つかの実施形態において、上記何れか1つに記載の医薬組成物であって、そのうち、上記抗PVRIG/TIGIT二重特異性抗体では、第2の抗体に1、2、3、4、5、6、7、8個の第1の抗体が連結され、上記第1の抗体は同じ又は異なっており、何れも第2の抗体の重鎖N末端に連結されてもよく、或いは何れも第2の抗体の重鎖C末端に連結されてもよく、或いは何れも第2の抗体の軽鎖N末端に連結されてもよく、或いは何れも第2の抗体の軽鎖C末端に連結されてもよく、或いは第2の抗体の重鎖N末端、重鎖C末端、軽鎖N末端若しくは軽鎖C末端又はそれらの任意の組み合わせに連結されてもよい。
【0034】
幾つかの実施形態において、上記何れか1つに記載の医薬組成物であって、そのうち、上記抗PVRIG/TIGIT二重特異性抗体では、第1の抗体は直接的に又はリンカーを介して第2の抗体の重鎖のN末端又はC末端に連結される。幾つかの実施形態において、上記リンカーは、例えば、(GmSn)x又は(GGNGT)x又は(YGNGT)xで示されるアミノ酸配列から選ばれ、そのうち、m、nはそれぞれ独立的に1~8の整数(例えば、1、2、3、4、5、6、7又は8)から選ばれ、xは独立的に1~20の整数(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19又は20)から選ばれる。幾つかの実施形態において、リンカーは、GS、GAP、ASGS(配列番号154)、GS(配列番号155)、(GS)(配列番号152)、(GS)(配列番号156)、(GS)(配列番号157)、(GS)(配列番号158)、(GS)(配列番号159)、YGNGT(配列番号160)、(YGNGT)(配列番号161)、(YGNGT)(配列番号162)、(YGNGT)(配列番号163)、(YGNGT)(配列番号164)又は(YGNGT)(配列番号165)で示されるアミノ酸配列である。
【0035】
幾つかの実施形態において、上記何れか1つに記載の医薬組成物であって、そのうち、上記抗PVRIG/TIGIT二重特異性抗体では、上記第2の抗体の重鎖は重鎖可変領域(VH)及び重鎖定常領域(CH)を含み、軽鎖は軽鎖可変領域(VL)及び軽鎖定常領域(CL)を含む。幾つかの実施形態において、第2の抗体は全長抗体である。幾つかの実施形態において、上記第2の抗体の重鎖はIgGアイソタイプであり、例えば、IgG1、IgG2、IgG3又はIgG4、例えば、IgG1アイソタイプであり、及び/又は上記第2の抗体の軽鎖はKappaアイソタイプである。
【0036】
幾つかの実施形態において、上記何れか1つに記載の医薬組成物であって、そのうち、上記抗PVRIG/TIGIT二重特異性抗体では、第2の抗体の2つのHCは同じCDRを含み、及び/又は第2の抗体の2つのLCは同じCDRを含む。幾つかの実施形態において、上記第2の抗体の2つのHCは同じVHを含み、及び/又は第2の抗体の2つのLCは同じVLを含む。幾つかの実施形態において、上記第2の抗体の2つのHCは同じアミノ酸配列を有し、及び/又は第2の抗体の2つのLCは同じアミノ酸配列を有する。
【0037】
幾つかの実施形態において、上記何れか1つに記載の医薬組成物であって、そのうち、上記抗PVRIG/TIGIT二重特異性抗体は2つの第1の抗体を含み、そのうち、上記2つの第1の抗体は同じ又は異なるアミノ酸配列を有する。幾つかの実施形態において、2つの第1の抗体は、同じアミノ酸配列を有する。
【0038】
幾つかの実施形態において、上記何れか1つに記載の医薬組成物であって、そのうち、上記抗PVRIG/TIGIT二重特異性抗体は2つの第1のポリペプチド鎖と2つの第2のポリペプチド鎖を含み、そのうち、各ポリペプチド鎖には、
a)第1のポリペプチド鎖はそれぞれ独立的に、第1の抗体となるVHHと、第2の抗体の重鎖(HC)とを含み、
b)第2のポリペプチド鎖は、それぞれ独立的に第2の抗体の軽鎖(LC)を含み、
ここで、VHHは、直接的に又はリンカーを介して第2の抗体のHCのN末端及び/又はC末端に連結される。或いは、i)第1のポリペプチド鎖は、それぞれ独立的に第2の抗体の重鎖(HC)を含み、かつii)第2のポリペプチド鎖は、それぞれ独立的に第1の抗体と第2の抗体の軽鎖(LC)とを含み、ここで、VHHは、直接的に又はリンカーを介して第2の抗体のLCのN末端及び/又はC末端に連結される。幾つかの実施形態において、上記抗PVRIG/TIGIT二重特異性抗体は、2つの同じ第1のポリペプチド鎖と、2つの同じ第2のポリペプチド鎖とを含む。
【0039】
幾つかの実施形態において、上記何れか1つに記載の医薬組成物であって、そのうち、上記抗PVRIG/TIGIT二重特異性抗体では、上記TIGITに特異的に結合する第2の抗原結合ドメインが任意の抗TIGIT抗体である。ここで、WO2009126688、WO2014089113、WO2015009856、WO2015143343、WO2015174439、WO2016028656、WO2016106302、WO2017053748、WO2017030823、US20160176963、US20130251720、WO2019232484、WO2019062832におけるTIGIT抗体は、全てここに組み込まれている。例えば、TIGIT抗体は、CPA.9.083.H4(S241P)、CPA.9.086.H4(S241P)、CHA.9.547.7.H4(S241P)及びCHA.9.547.13.H4(S241P)の何れか1つであってもよい(WO2019232484参照)。
【0040】
幾つかの実施形態において、上記何れか1つに記載の医薬組成物であって、そのうち、上記抗PVRIG/TIGIT二重特異性抗体では、TIGITに特異的に結合する第2の抗原結合ドメインが第2の抗体である。幾つかの実施形態において、WO2019062832における抗TIGIT抗体は、第2の抗体として全てここに組み込まれている。幾つかの実施形態において、上記第2の抗体は、重鎖可変領域がそれぞれ配列番号115、116及び117で示されるHCDR1、HCDR2及びHCDR3を含み、かつ軽鎖可変領域がそれぞれ配列番号118、119及び120で示されるLCDR1、LCDR2及びLCDR3を含み、又は重鎖可変領域がそれぞれ配列番号121、122及び123で示されるHCDR1、HCDR2及びHCDR3を含み、かつ軽鎖可変領域がそれぞれ配列番号124、125及び126で示されるLCDR1、LCDR2及びLCDR3を含み、又は重鎖可変領域がそれぞれ配列番号127、128及び129で示されるHCDR1、HCDR2及びHCDR3を含み、かつ軽鎖可変領域がそれぞれ配列番号130、131及び132で示されるLCDR1、LCDR2及びLCDR3を含み、又は重鎖可変領域がそれぞれ配列番号133、134及び135で示されるHCDR1、HCDR2及びHCDR3を含み、かつ軽鎖可変領域がそれぞれ配列番号136、137及び138で示されるLCDR1、LCDR2及びLCDR3を含み、又は重鎖可変領域がそれぞれ配列番号139、140及び141で示されるHCDR1、HCDR2及びHCDR3を含み、かつ軽鎖可変領域がそれぞれ配列番号142、143及び144で示されるLCDR1、LCDR2及びLCDR3を含む。
【0041】
幾つかの実施形態において、上記何れか1つに記載の医薬組成物であって、そのうち、上記抗PVRIG/TIGIT二重特異性抗体では、上記TIGITに特異的に結合する第2の抗原結合ドメインは重鎖可変領域(VH)及び軽鎖可変領域(VL)を含み、そのうち、上記重鎖可変領域はHCDR1、HCDR2及びHCDR3を含み、そのうち、HCDR1は配列番号121のアミノ酸配列を含み、HCDR2は配列番号122のアミノ酸配列を含み、かつHCDR3は配列番号123のアミノ酸配列を含み、また上記軽鎖可変領域はLCDR1、LCDR2及びLCDR3を含み、そのうち、LCDR1は配列番号124のアミノ酸配列を含み、LCDR2は配列番号125のアミノ酸配列を含み、かつLCDR3は配列番号126のアミノ酸配列を含む。幾つかの実施形態において、上記TIGITに特異的に結合する第2の抗原結合ドメインは、配列番号145~147の何れか1つで示されるアミノ酸配列のVHを含み、又は配列番号145~147中の少なくとも1つの配列に対して少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列のVHを含み、及び/又は配列番号148~149の何れか1つで示されるアミノ酸配列のVLを含み、又は配列番号148~149中の少なくとも1つの配列に対して少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列のVLを含む。幾つかの実施形態において、上記TIGITに特異的に結合する第2の抗原結合ドメインは、重鎖可変領域が配列番号145のアミノ酸配列を含み、軽鎖可変領域が配列番号149のアミノ酸配列を含む。幾つかの実施形態において、上記TIGITに特異的に結合する第2の抗原結合ドメインは、重鎖(HC)及び軽鎖(LC)を含む。幾つかの実施形態において、上記TIGITに特異的に結合する第2の抗原結合ドメインは、配列番号102に対して少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%又は少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列のHCと、配列番号103に対して少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%又は少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列のLCとを含む。幾つかの実施形態において、上記TIGITに特異的に結合する第2の抗原結合ドメインは、配列番号102のアミノ酸配列を含むHCと、配列番号103のアミノ酸配列を含むLCとを有する。幾つかの実施形態において、上記TIGITに特異的に結合する第2の抗原結合ドメインは、配列番号145の重鎖可変領域を含み、かつ配列番号149の軽鎖可変領域を含む。幾つかの実施形態において、上記TIGITに特異的に結合する第2の抗原結合ドメインは、配列番号102のアミノ酸配列のHCと、配列番号103のアミノ酸配列のLCとを有する。
【0042】
幾つかの実施形態において、上記何れか1つに記載の医薬組成物であって、そのうち、上記抗PVRIG/TIGIT二重特異性抗体では、上記PVRIGに特異的に結合する第1の抗原結合ドメイン又は第1の抗体(例えば、VHH)は配列番号7、8、9で示されるCDR1、CDR2、CDR3を含み、或いは配列番号7、8、150で示されるCDR1、CDR2、CDR3を含み、TIGITに特異的に結合する第2の抗原結合ドメイン又は第2の抗体は、重鎖可変領域がそれぞれ配列番号121、122、123で示されるHCDR1、HCDR2、HCDR3を含み、軽鎖可変領域がそれぞれ配列番号124、125、126で示されるLCDR1、LCDR2、LCDR3を含む。
【0043】
幾つかの実施形態において、上記何れか1つに記載の医薬組成物であって、上記抗PVRIG/TIGIT二重特異性抗体では、上記PVRIGに特異的に結合する第1の抗原結合ドメイン又は第1の抗体(例えば、VHH)は配列番号10、11、12で示されるCDR1、CDR2、CDR3を含み、又は配列番号10、11、151で示されるCDR1、CDR2、CDR3を含み、TIGITに特異的に結合する第2の抗原結合ドメイン又は第2の抗体は、重鎖可変領域がそれぞれ配列番号121、122、123で示されるHCDR1、HCDR2、HCDR3を含み、軽鎖可変領域がそれぞれ配列番号124、125、126で示されるLCDR1、LCDR2、LCDR3を含む。
【0044】
幾つかの実施形態において、上記何れか1つに記載の医薬組成物であって、そのうち、上記抗PVRIG/TIGIT二重特異性抗体では、上記PVRIGに特異的に結合する第1の抗原結合ドメイン又は第1の抗体は、配列番号6、79、81、92、98、99の1つで示されるアミノ酸配列を含むVHH、又は配列番号6、79、81、92、98、99の1つに対して少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%若しくは少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むVHHを有し、上記TIGITに特異的に結合する第2の抗原結合ドメイン又は第2の抗体は、配列番号145~147の何れか1つで示されるアミノ酸配列を含むVH、又は配列番号145~147の1つに対して少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%若しくは少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むVHと、配列番号148~149の何れか1つで示されるアミノ酸配列を含むVL、又は配列番号148~149の1つに対して少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%若しくは少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むVLとを有し、幾つかの実施形態において、上記TIGITに特異的に結合する第2の抗原結合ドメイン又は第2の抗体は、配列番号102又は配列番号102に対して少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%若しくは少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むHCと、配列番号103又は配列番号103に対して少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%若しくは少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むLCとを有する。幾つかの実施形態において、上記抗PVRIG/TIGIT二重特異性抗体は、そのPVRIGに特異的に結合する第1の抗原結合ドメイン又は第1の抗体が配列番号81で示されるVHHを有し、そのTIGITに特異的に結合する第2の抗原結合ドメインが配列番号145で示されるVHと配列番号149で示されるVLとを有する。幾つかの実施形態において、上記抗PVRIG/TIGIT二重特異性抗体は、そのPVRIGに特異的に結合する第1の抗原結合ドメイン又は第1の抗体が配列番号81で示されるVHHを有し、そのTIGITに特異的に結合する第2の抗原結合ドメインが配列番号102で示されるHCと配列番号103で示されるLCとを有する。
【0045】
幾つかの実施形態において、上記何れか1つに記載の医薬組成物であって、そのうち、上記抗PVRIG/TIGIT二重特異性抗体はFc領域を含み、幾つかの実施形態において、上記TIGITに特異的に結合する第2の抗原結合ドメイン又は第2の抗体はFc領域を含む。幾つかの実施形態において、上記FcはIgGアイソタイプFcであり、例えば、IgG1、IgG2、IgG3又はIgG4のFc領域であり、幾つかの実施形態において、上記Fcは、以下から選ばれる1つ又は複数のアミノ酸変異(変異部位はEUインデックスによる)を含む:
i)軽鎖と重鎖の組立が容易になり、或いは抗体の安定性が向上又は低下するように、CH1のヒンジ領域におけるシステイン残基の数を変更するもの、
ii)向上したADCCが引き起こされるようにFcγRIIIaとの結合を強める変異、FcγRIIbとの結合を弱める変異、例えば、236A、239D、239E、332E、332D、239D/332E、267D、267E、328F、267E/328F、236A/332E、239D/332E/330Y、239D、332E/330L、299T、297N又はそれらの任意の組み合わせ、
iii)生物学的半減期を延長するもの、例えば、T252L、T254S、T256F、428L、434A、434S、428L/434S又はそれらの任意の組み合わせ、
iv)エフェクターリガンドに対する抗体の親和性を変更するとともに、親抗体の抗原結合能を保持するための234、235、236、237、297、318、320及び322位の1つ又は複数のアミノ酸変異又はそれらの任意の組み合わせ、
v)抗体が改変したC1q結合を有し、及び/又は補体依存性細胞傷害性(CDC)を低減若しくは消去するための329、331及び322位の1つ又は複数のアミノ酸変異又はそれらの任意の組み合わせ、
vi)抗体の補体固定能力を変更するための231~239のうちの1つ又は複数のアミノ酸変異又はそれらの任意の組み合わせ、
vii)ADCCの能力を向上させ、及び/又はFcγ受容体に対する抗体の親和性を向上させるための238、239、248、249、252、254、255、256、258、265、267、268、269、270、272、276、278、280、283、285、286、289、290、292、293、294、295、296、298、301、303、305、307、309、312、315、320、322、324、326、327、329、330、331、333、334、335、337、338、340、360、373、376、378、382、388、389、398、414、416、419、430、434、435、437、438又は439のうちの1つ又は複数のアミノ酸変異又はそれらの任意の組み合わせ、
viii)S228P、F234A、L235A及び/又はK447Aのアミノ酸変異、並びに
ix)S354C、E356D、M358L及び/又はT366Wのアミノ酸変異。
【0046】
幾つかの実施形態において、上記何れか1つに記載の医薬組成物であって、そのうち、上記抗PVRIG/TIGIT二重特異性抗体は、配列番号104で示される第1のポリペプチド鎖、及び配列番号103で示される第2のポリペプチド鎖、配列番号105で示される第1のポリペプチド鎖、配列番号103で示される第2のポリペプチド鎖、配列番号102で示される第1のポリペプチド鎖、配列番号106で示される第2のポリペプチド鎖、配列番号102で示される第1のポリペプチド鎖、配列番号107で示される第2のポリペプチド鎖、又は配列番号108~112、114の何れか1つで示される第1のポリペプチド鎖、配列番号103で示される第2のポリペプチド鎖、或いは上記第1のポリペプチド鎖及び/又は第2のポリペプチド鎖に対して少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%の配列同一性を有する変異体を含む。
【0047】
幾つかの実施形態において、上記何れか1つに記載の医薬組成物であって、そのうち、上記抗PVRIG/TIGIT二重特異性抗体は、第1のポリペプチド鎖と第2のポリペプチド鎖を含み、そのうち、上記第1のポリペプチド鎖は配列番号109のアミノ酸配列を含み、上記第2のポリペプチド鎖は配列番号103のアミノ酸配列を含む。幾つかの実施形態において、上記抗PVRIG/TIGIT二重特異性抗体は、2つの同じ第1のポリペプチド鎖と、2つの同じ第2のポリペプチド鎖とを含む。
【0048】
幾つかの実施形態において、上記何れか1つに記載の医薬組成物であって、そのうち、上記抗PVRIG/TIGIT二重特異性抗体は、上記何れか1つに記載の二重特異性抗体と競合的に結合する抗PVRIG/TIGIT二重特異性抗体である。
【0049】
幾つかの実施形態において、上記何れか1つに記載の医薬組成物であって、そのうち、上記抗PVRIG/TIGIT二重特異性抗体は、下記特徴の中の少なくとも1つを有する:
(a)ヒトPVRIGに結合するKD値が1×10-7 M未満であること、
(b)PVRIGとそのリガンド(例えば、PVRL2)の相互作用を遮断すること、
(c)T細胞に対する樹状細胞の阻害作用を解除し、T細胞を活性化すること、
(d)NK細胞に対する腫瘍細胞の阻害作用を解除すること、
(e)腫瘍の増殖を阻害すること。
【0050】
幾つかの実施形態において、上記抗PVRIG/TIGIT二重特異性抗体のKD値は、1×10-7 M未満、1×10-8 M未満、1×10-9 M未満、1×10-10 M未満であってもよい。幾つかの実施形態において、上記抗PVRIG/TIGIT二重特異性抗体は、腫瘍の増殖を少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%阻害することができる。
【0051】
幾つかの実施形態において、上記何れか1つに記載の医薬組成物であって、それは下記の成分、即ち、
(a)1~100 mg/mLの上記何れか1つに記載の抗PVRIG/TIGIT二重特異性抗体と、
(b)0.2~0.6 mg/mLのポリソルベート80と、
(c)75~90 mg/mLのスクロースと、
(d)10~30 mMのヒスチジン緩衝剤と、を含み、医薬組成物のpHが5.5~6.0である。
【0052】
幾つかの実施形態において、上記医薬組成物は下記の成分、即ち、
(a)50~100 mg/mLの上記何れか1つに記載の抗PVRIG/TIGIT二重特異性抗体と、
(b)0.2~0.6 mg/mLのポリソルベート80と、
(c)80 mg/mLのスクロースと、(d)10 mMのヒスチジン-塩酸ヒスチジン緩衝剤と、を含み、上記医薬組成物のpHが5.5~6.0であり、
幾つかの実施形態において、上記医薬組成物は下記の成分、即ち、
(a)50 mg/mLの抗PVRIG/TIGIT二重特異性抗体であって、配列番号109のアミノ酸配列の第1のポリペプチド鎖、及び配列番号103のアミノ酸配列の第2のポリペプチド鎖を含む抗PVRIG/TIGIT二重特異性抗体と、(b)0.4 mg/mLのポリソルベート80と、(c)80 mg/mLのスクロースと、(d)10 mMのヒスチジン-塩酸ヒスチジン緩衝剤と、を含み、上記医薬組成物のpHが6.0である。
【0053】
幾つかの実施形態において、上記医薬組成物は下記の成分、即ち、
(a)50~100 mg/mLの上記何れか1つに記載の抗PVRIG/TIGIT二重特異性抗体と、
(b)0.2~0.6 mg/mLのポリソルベート80と、
(c)80±5 mg/mLのスクロースと、
(d)10±5 mMのヒスチジン-塩酸ヒスチジン緩衝剤と、を含み、上記医薬組成物のpHが5.5~6.0である。
【0054】
幾つかの実施形態において、上記医薬組成物は下記の成分、即ち、
(a)1~100 mg/mLの上記抗PVRIG/TIGIT二重特異性抗体と、(b)0.2~0.6 mg/mLのポリソルベート80と、(c)70~90 mg/mLのスクロースと、(d)10~30 mMのヒスチジン緩衝剤と、を含み、上記医薬組成物のpHが5.5~6.5である。
【0055】
幾つかの実施形態において、上記医薬組成物は下記の成分、即ち、
(a)50~100 mg/mLの上記抗PVRIG/TIGIT二重特異性抗体と、(b)0.2~0.6 mg/mLのポリソルベート80と、(c)75~80 mg/mLのスクロースと、(d)10 mMのヒスチジン-塩酸ヒスチジン緩衝剤と、を含み、上記医薬組成物のpHが5.5~6.5である。
【0056】
幾つかの実施形態において、上記医薬組成物は下記の成分、即ち、
(a)50±5 mg/mLの抗PVRIG/TIGIT二重特異性抗体であって、配列番号109のアミノ酸配列の第1のポリペプチド鎖、及び配列番号103のアミノ酸配列の第2のポリペプチド鎖を含む抗PVRIG/TIGIT二重特異性抗体と、
(b)0.4±0.1 mg/mLのポリソルベート80と、
(c)80±5 mg/mLのスクロースと、
(d)10±5 mMのヒスチジン-塩酸ヒスチジン緩衝剤と、を含み、上記医薬組成物のpHが6.0±0.2である。
【0057】
幾つかの実施形態において、上記の医薬組成物であって、それは下記の成分、即ち、
(a)40~60 mg/mLの上記何れか1つに記載の抗PVRIG/TIGIT二重特異性抗体(例えば、1708-30H2)と、
(b)0.2~0.6 mg/mLのポリソルベート80と、
(c)75~80 mg/mLのスクロースと、
(d)10~30 mMのヒスチジン緩衝剤と、を含み、医薬組成物のpHが5.5~6.0である。
【0058】
幾つかの実施形態において、上記の医薬組成物であって、それは下記の成分、即ち、
(a)50 mg/mLの上記何れか1つに記載の抗PVRIG/TIGIT二重特異性抗体(例えば、1708-30H2)と、(b)0.4 mg/mLのポリソルベート80と、(c)75~80 mg/mLのスクロースと、(d)10~30 mMの酢酸塩緩衝剤と、を含み、医薬組成物のpHが5.0~5.5である。
【0059】
幾つかの実施形態において、上記の医薬組成物であって、それは下記の成分、即ち、
(a)50 mg/mLの上記何れか1つに記載の抗PVRIG/TIGIT二重特異性抗体(例えば、1708-30H2)と、(b)0.4 mg/mLのポリソルベート80と、(c)80 mg/mLのスクロースと、(d)10 mMの酢酸-酢酸ナトリウム塩緩衝剤と、を含み、pHが5.0である。
【0060】
幾つかの実施形態において、上記の医薬組成物であって、それは下記の成分、即ち、
(a)50 mg/mLの上記何れか1つに記載の抗PVRIG/TIGIT二重特異性抗体(例えば、1708-30H2)、(b)0.4 mg/mLのポリソルベート80と、(c)80 mg/mLのスクロースと、(d)10 mMの酢酸-酢酸ナトリウム塩緩衝剤と、を含み、pHが5.5である。
【0061】
幾つかの実施形態において、上記の医薬組成物であって、それは下記の成分、即ち、
(a)50±5 mg/mLの上記何れか1つに記載の抗PVRIG/TIGIT二重特異性抗体(例えば、1708-30H2)と、
(b)0.4±0.1 mg/mLのポリソルベート80と、
(c)75~80 mg/mLのスクロースと、
(d)10~30 mMの酢酸塩緩衝剤と、を含み、医薬組成物のpHが5.0~5.5である。
【0062】
幾つかの実施形態において、上記の医薬組成物であって、それは下記の成分、即ち、
(a)50±5 mg/mLの上記何れか1つに記載の抗PVRIG/TIGIT二重特異性抗体(例えば、1708-30H2)と、
(b)0.4±0.1 mg/mLのポリソルベート80と、
(c)80±5 mg/mLのスクロースと、
(d)10±5 mMの酢酸-酢酸ナトリウム塩緩衝剤と、を含み、pHが5.5±0.2である。
【0063】
幾つかの実施形態において、上記の医薬組成物であって、それは下記の成分、即ち、
(a)50±5 mg/mLの上記何れか1つに記載の抗PVRIG/TIGIT二重特異性抗体(例えば、1708-30H2)と、(b)0.4±0.1 mg/mLのポリソルベート80と、(c)80±5 mg/mLのスクロースと、(d)10±5 mMの酢酸-酢酸ナトリウム塩緩衝剤と、を含み、pHが5.5である。
【0064】
幾つかの実施形態において、上記の医薬組成物であって、それは下記の成分、即ち、
(a)50 mg/mLの上記何れか1つに記載の抗PVRIG/TIGIT二重特異性抗体(例えば、1708-30H2)と、(b)0.4 mg/mLのポリソルベート80と、(c)80 mg/mLのスクロースと、(d)10 mMのヒスチジン-塩酸ヒスチジン緩衝剤と、を含み、pHが5.5である。
【0065】
幾つかの実施形態において、上記の医薬組成物であって、それは下記の成分、即ち、
(a)50 mg/mLの上記何れか1つに記載の抗PVRIG/TIGIT二重特異性抗体(例えば、1708-30H2)と、(b)0.4 mg/mLのポリソルベート80と、(c)80 mg/mLのスクロースと、(d)10 mMのヒスチジン-塩酸ヒスチジン緩衝剤と、を含み、pHが6.0である。
【0066】
幾つかの実施形態において、上記の医薬組成物であって、それは下記の成分、即ち、
(a)50 mg/mLの上記何れか1つに記載の抗PVRIG/TIGIT二重特異性抗体(例えば、1708-30H2)と、(b)0.4 mg/mLのポリソルベート80と、(c)80 mg/mLのスクロースと、(d)10 mMのヒスチジン-塩酸ヒスチジン緩衝剤と、を含み、pHが6.5である。
【0067】
幾つかの実施形態において、上記の医薬組成物であって、それは下記の成分、即ち、
(a)100 mg/mLの上記何れか1つに記載の抗PVRIG/TIGIT二重特異性抗体(例えば、1708-30H2)と、(b)0.4 mg/mLのポリソルベート80と、(c)80 mg/mLのスクロースと、(d)10 mMのヒスチジン-塩酸ヒスチジン緩衝剤と、を含み、pHが6.0である。
【0068】
幾つかの実施形態において、上記の医薬組成物であって、それは下記の成分、即ち、
(a)50 mg/mLの上記何れか1つに記載の抗PVRIG/TIGIT二重特異性抗体(例えば、1708-30H2)と、(b)0.2 mg/mLのポリソルベート80と、(c)80 mg/mLのスクロースと、(d)10 mMのヒスチジン-塩酸ヒスチジン緩衝剤と、を含み、pHが6.5である。
【0069】
幾つかの実施形態において、上記の医薬組成物であって、それは下記の成分、即ち、
(a)50 mg/mLの上記何れか1つに記載の抗PVRIG/TIGIT二重特異性抗体(例えば、1708-30H2)と、(b)0.6 mg/mLのポリソルベート80と、(c)80 mg/mLのスクロースと、(d)10 mMのヒスチジン-塩酸ヒスチジン緩衝剤と、を含み、pHが6.5である。
【0070】
幾つかの実施形態において、上記の医薬組成物であって、それは下記の成分、即ち、
(a)50 mg/mLの上記何れか1つに記載の抗PVRIG/TIGIT二重特異性抗体(例えば、1708-30H2)と、(b)0.4 mg/mLのポリソルベート20と、(c)80 mg/mLのスクロースと、(d)10 mMのヒスチジン-塩酸ヒスチジン緩衝剤と、を含み、pHが6.5である。
【0071】
幾つかの実施形態において、上記の医薬組成物であって、それは下記の成分、即ち、
(a)50 mg/mLの上記何れか1つに記載の抗PVRIG/TIGIT二重特異性抗体(例えば、1708-30H2)と、(b)0.4 mg/mLのポロキサマー188と、(c)80 mg/mLのスクロースと、(d)10 mMのヒスチジン-塩酸ヒスチジン緩衝剤と、を含み、pHが6.5である。
【0072】
幾つかの実施形態において、上記の医薬組成物であって、それは下記の成分、即ち、
(a)50 mg/mLの上記何れか1つに記載の抗PVRIG/TIGIT二重特異性抗体(例えば、1708-30H2)と、(b)0.4 mg/mLのポリソルベート20と、(c)80 mg/mLのスクロースと、(d)10 mMのヒスチジン-塩酸ヒスチジン緩衝剤と、を含み、pHが5.5である。
【0073】
幾つかの実施形態において、上記の医薬組成物であって、それは下記の成分、即ち、
(a)50 mg/mLの上記何れか1つに記載の抗PVRIG/TIGIT二重特異性抗体(例えば、1708-30H2)と、(b)0.4 mg/mLのポリソルベート20と、(c)75 mg/mLのスクロースと、(d)10 mMのヒスチジン-塩酸ヒスチジン緩衝剤と、を含み、pHが5.5である。
【0074】
幾つかの実施形態において、上記の医薬組成物であって、上記医薬組成物は液体製剤である。幾つかの実施形態において、上記液体製剤の溶媒は水である。
【0075】
本開示は、再溶解された後、上記何れか1つに記載の医薬組成物を形成することができることを特徴とする凍結乾燥製剤をさらに提供する。
【0076】
本開示は、上記何れか1つに記載の医薬組成物の凍結乾燥形態の製剤である凍結乾燥製剤をさらに提供する。
【0077】
本開示は、上記何れか1つに記載の医薬組成物を凍結乾燥するステップを含む、凍結乾燥製剤を調製する方法をさらに提供する。幾つかの実施形態において、上記何れか1つに記載の凍結乾燥は、順に予備凍結、一次乾燥及び二次乾燥のステップを含む。
【0078】
本開示は、上記何れか1つに記載の医薬組成物を凍結乾燥することにより得られる凍結乾燥製剤をさらに提供する。
【0079】
本開示は、上記何れか1つに記載の凍結乾燥製剤を再溶解して調製することにより得られることを特徴とする再溶解溶液をさらに提供する。
【0080】
本開示は、上記何れか1つに記載の凍結乾燥製剤の再溶解形態の製剤である再溶解溶液をさらに提供する。
【0081】
幾つかの実施形態において、上記何れか1つに記載の再溶解溶液であって、その成分及び含有量は、上記医薬組成物の成分及び含有量と同じである。
【0082】
幾つかの実施形態において、上記何れか1つに記載の再溶解溶液であって、それは下記の成分、即ち、
(a)1~150 mg/mLの上記何れか1つに記載の抗PVRIG/TIGIT二重特異性抗体と、(b)0.05~1.0 mg/mLのポリソルベート80と、(c)70~100 mg/mLのスクロースと、(d)5~100 mMのヒスチジン緩衝剤と、を含み、医薬組成物のpHが5.0~6.5である。
【0083】
幾つかの実施形態において、上記何れか1つに記載の再溶解溶液であって、それは下記の成分、即ち、
(a)1~100 mg/mLの上記抗PVRIG/TIGIT二重特異性抗体と、(b)0.2~0.6 mg/mLのポリソルベート80と、(c)70~90 mg/mLのスクロースと、(d)10~30 mMのヒスチジン緩衝剤と、を含み、上記医薬組成物のpHが5.5~6.5である。
【0084】
幾つかの実施形態において、上記何れか1つに記載の再溶解溶液であって、それは下記の成分、即ち、
(a)50~100 mg/mLの上記抗PVRIG/TIGIT二重特異性抗体と、(b)0.2~0.6 mg/mLのポリソルベート80と、(c)75~80 mg/mLのスクロースと、(d)10 mMのヒスチジン-塩酸ヒスチジン緩衝剤と、を含み、上記医薬組成物のpHが5.5~6.5である。
【0085】
幾つかの実施形態において、上記何れか1つに記載の再溶解溶液であって、それは下記の成分、即ち、
(a)1~100 mg/mLの上記何れか1つに記載の抗PVRIG/TIGIT二重特異性抗体と、(b)0.2~0.6 mg/mLのポリソルベート80と、(c)75~90 mg/mLのスクロースと、(d)10~30 mMのヒスチジン緩衝剤と、を含み、医薬組成物のpHが5.5~6.0である。
【0086】
幾つかの実施形態において、上記再溶解溶液は下記の成分、即ち、
(a)50~100 mg/mLの上記何れか1つに記載の抗PVRIG/TIGIT二重特異性抗体と、(b)0.2~0.6 mg/mLのポリソルベート80と、(c)80 mg/mLのスクロースと、(d)10 mMのヒスチジン-塩酸ヒスチジン緩衝剤と、を含み、上記医薬組成物のpHが5.5~6.0である。
【0087】
幾つかの実施形態において、上記再溶解溶液は下記の成分、即ち、
(a)50 mg/mLの抗PVRIG/TIGIT二重特異性抗体であって、配列番号109のアミノ酸配列の第1のポリペプチド鎖、及び配列番号103のアミノ酸配列の第2のポリペプチド鎖を含む抗PVRIG/TIGIT二重特異性抗体と、(b)0.4 mg/mLのポリソルベート80と、(c)80 mg/mLのスクロースと、(d)10 mMのヒスチジン-塩酸ヒスチジン緩衝剤と、を含み、上記医薬組成物のpHが6.0である。
【0088】
幾つかの実施形態において、上記何れか1つに記載の医薬組成物又は再溶解溶液であって、それは、静脈注射製剤、皮下注射製剤、腹腔注射製剤又は筋肉注射製剤であり、幾つかの実施形態において、上記何れか1つに記載の医薬組成物又は再溶解溶液であって、それは静脈注射製剤である。
【0089】
幾つかの実施形態において、上記何れか1つに記載の医薬組成物又は再溶解溶液であって、それは、静脈注射、皮下注射、腹腔注射又は筋肉注射に適用される。
【0090】
幾つかの実施形態において、上記何れか1つに記載の医薬組成物又は再溶解溶液又は凍結乾燥製剤であって、それは、静脈注射、皮下注射、腹腔注射又は筋肉注射の薬剤の調製に用いられる。
【0091】
本開示は少なくとも1つの容器を含むキットをさらに提供し、各容器は、上記何れか1つに記載の医薬組成物、上記何れか1つに記載の凍結乾燥製剤、又は上記何れか1つに記載の再溶解溶液を独立的に含む。
【0092】
幾つかの実施形態において、本開示は、対象の病状を診断・治療・緩和する方法であって、有効量の上記何れか1つに記載の医薬組成物、上記何れか1つに記載の凍結乾燥製剤、上記何れか1つに記載の再溶解溶液又は上記何れか1つに記載のキットを、上記対象に投与することを含む方法をさらに提供する。
【0093】
幾つかの実施形態において、本開示は、対象の細胞傷害性T細胞(CTL)を活性化する方法であって、有効量の上記何れか1つに記載の医薬組成物、上記何れか1つに記載の凍結乾燥製剤、上記何れか1つに記載の再溶解溶液又は上記何れか1つに記載のキットを、上記対象に投与することを含む方法をさらに提供し、ここで、上記対象の上記CTLのサブグループは活性化される。
【0094】
幾つかの実施形態において、本開示は、対象のNK細胞を活性化する方法であって、有効量の上記何れか1つに記載の医薬組成物、上記何れか1つに記載の凍結乾燥製剤、上記何れか1つに記載の再溶解溶液又は上記何れか1つに記載のキットを、上記対象に投与することを含む方法をさらに提供し、ここで、上記対象の上記NK細胞のサブグループは活性化される。
【0095】
幾つかの実施形態において、本開示は、対象のγδT細胞を活性化する方法であって、有効量の上記何れか1つに記載の医薬組成物、上記何れか1つに記載の凍結乾燥製剤、上記何れか1つに記載の再溶解溶液又は上記何れか1つに記載のキットを、上記対象に投与することを含む方法をさらに提供し、ここで、上記対象の上記γδT細胞のサブグループは活性化される。
【0096】
幾つかの実施形態において、本開示は、対象のTh1細胞を活性化する方法であって、有効量の上記何れか1つに記載の医薬組成物、上記何れか1つに記載の凍結乾燥製剤、上記何れか1つに記載の再溶解溶液又は上記何れか1つに記載のキットを、上記対象に投与することを含む方法をさらに提供し、ここで、上記対象の上記Th1細胞のサブグループは活性化される。
【0097】
幾つかの実施形態において、本開示は、対象のインビボでの制御性T細胞(Treg)中の少なくとも1種の細胞数及び/又は活性を活性化、減少又は消去する方法であって、有効量の上記何れか1つに記載の医薬組成物、上記何れか1つに記載の凍結乾燥製剤、上記何れか1つに記載の再溶解溶液又は上記何れか1つに記載のキットを、上記対象に投与することを含む方法をさらに提供する。
【0098】
幾つかの実施形態において、本開示は、対象のインビボでのインターフェロン-γの産生及び/又は炎症促進性サイトカインの分泌を増加する方法であって、有効量の上記何れか1つに記載の医薬組成物、上記何れか1つに記載の凍結乾燥製剤、上記何れか1つに記載の再溶解溶液又は上記何れか1つに記載のキットを、上記対象に投与することを含む方法をさらに提供する。
【0099】
幾つかの実施形態において、本開示は、対象のインビボでのPVRIGとPVLR2の相互作用を阻害する方法であって、有効量の上記何れか1つに記載の医薬組成物、上記何れか1つに記載の凍結乾燥製剤、上記何れか1つに記載の再溶解溶液又は上記何れか1つに記載のキットを、上記対象に投与することを含む方法をさらに提供する。
【0100】
幾つかの実施形態において、本開示は、疾患を治療する薬剤の調製における上記何れか1つに記載の医薬組成物、上記何れか1つに記載の凍結乾燥製剤、上記何れか1つに記載の再溶解溶液又は上記何れか1つに記載のキットの使用をさらに提供する。
【0101】
幾つかの実施形態において、本開示は、疾患を治療する方法であって、治療有効量の上記何れか1つに記載の医薬組成物、上記何れか1つに記載の凍結乾燥製剤、上記何れか1つに記載の再溶解溶液又は上記何れか1つに記載のキットを、対象に投与することを含む方法をさらに提供する。
【0102】
幾つかの実施形態において、本開示は、疾患を治療するための上記何れか1つに記載の医薬組成物、上記何れか1つに記載の凍結乾燥製剤、上記何れか1つに記載の再溶解溶液又は上記何れか1つに記載のキットをさらに提供する。
【0103】
幾つかの具体的な実施形態において、上記何れか1つに記載の疾患は、増殖性疾患(例えば、腫瘍)である。幾つかの具体的な実施形態において、上記腫瘍は、前立腺がん、肝がん(HCC)、結腸直腸がん(結腸がん、直腸がん)、卵巣がん、子宮内膜がん、乳がん(例えば、三重陰性乳がん)、膵臓がん、胃(stomach/gastric)がん、子宮頸がん、頭頸部がん、甲状腺がん、精巣がん、尿路上皮がん、肺がん(小細胞肺がん、非小細胞肺がん)、黒色腫、非黒色腫皮膚がん(扁平上皮がん及び基底細胞がん)、神経膠腫、腎がん(RCC)、リンパ腫(NHL又はHL)、急性骨髄性白血病(AML)、T細胞急性リンパ芽球性白血病(T-ALL)、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、精巣胚細胞腫瘍、中皮腫、食道がん(「食管がん」とも呼ばれる)、メルケル細胞がん(Merkel Cells cancer)、高MSIがん、KRAS変異腫瘍、成人T細胞白血病/リンパ腫及び骨髄異形成症候群(MDS)又はそれらの組み合わせから選ばれる。幾つかの具体的な実施形態において、上記疾患は、PVRIG及び/又はTIGITの異常発現に関連する疾患であってもよい。幾つかの具体的な実施形態において、上記腫瘍は、三重陰性乳がん、胃がん、肺がん(小細胞肺がん、非小細胞肺がん)、メルケル細胞がん、高MSIがん、KRAS変異腫瘍、成人T細胞白血病/リンパ腫及び骨髄異形成症候群(MDS)又はそれらの組み合わせから選ばれる。幾つかの具体的な実施形態において、上記腫瘍は、三重陰性乳がん、胃がん、肺がん(小細胞肺がん、非小細胞肺がん)、メルケル細胞がん及び高MSIがん又はそれらの組み合わせから選ばれる。幾つかの具体的な実施形態において、上記疾患の患者は、PVRIG及び/又はTIGITに関連する病態を有する。幾つかの具体的な形態において、対象の病態は、PVRIGを発現するか又は発現しないがんを含み、また、非転移性又は非浸潤性及び浸潤性又は転移性がんをさらに含み、ここで、免疫細胞、間質細胞又は病変の発生した細胞のPVRIG発現は、抗腫瘍応答と抗浸潤性免疫応答を阻害する。幾つかの具体的な形態において、上記疾患は血管新生腫瘍である。幾つかの実施形態において、上記腫瘍は、肺がん、前立腺がん、乳がん、頭頸部がん、食道がん、胃がん、結腸直腸がん、膀胱がん、子宮頸がん、子宮内膜がん、卵巣がん、肝がん、黒色腫、腎がん、扁平上皮がん、血液系がん又は制御不能な細胞増殖により特徴づけられる任意の他の疾患又は病状から選ばれる。
【0104】
幾つかの実施形態において、上記疾患は感染又は敗血症である。幾つかの具体的な形態において、上記感染は、ウィルス特異的T細胞応答の異なる程度の機能障害を特徴とする病原体感染であり、例えばHIV、HCV、HBVである。幾つかの具体的な形態において、上記敗血症は、重症敗血症、敗血性ショック、全身性炎症反応症候群(SIRS)、菌血症、セプシス、毒血症及び敗血性症候群から選ばれる。
【図面の簡単な説明】
【0105】
図1】抗PVRIG抗体のPVRIGレポーター遺伝子細胞における活性検査結果である。
図2】NK細胞殺傷実験においてNK細胞を活性化する抗PVRIG抗体の活性検出結果である。
図3】MLR実験においてT細胞を活性化する抗PVRIG抗体の活性検出結果である。
図4図4A~4Bは、ヒト化された抗PVRIG抗体のPVRIGレポーター遺伝子細胞における活性検出結果である。
図5図5A~5Bは、NK細胞殺傷実験においてNK細胞を活性化するヒト化された抗PVRIG抗体の活性検出結果である。
図6図6A~6Eは、ヒト化された抗PVRIG/TIGIT二重特異性抗体の、ヒトPVRIG組換えタンパク質、ヒトPVRIG過剰発現細胞、カニクイザルPVRIG組換えタンパク質、カニクイザルPVRIG過剰発現細胞への結合活性、及びヒトPVRIGとヒトPVRL2の結合への遮断活性の検出結果をそれぞれ示す。
図7図7A~7Eは、ヒト化された抗PVRIG/TIGIT二重特異性抗体の、ヒトTIGIT組換えタンパク質、ヒトTIGIT過剰発現細胞、カニクイザルTIGIT組換えタンパク質、カニクイザルTIGIT過剰発現細胞への結合活性、及びヒトTIGITとヒトPVRの結合への遮断活性の検出結果をそれぞれ示す。
図8】MLR実験においてT細胞を活性化するヒト化された抗PVRIG/TIGIT二重特異性抗体の活性検出結果である。
図9図9A~9Bは、ヒト黒色腫A375にヒトPBMCを混合したマウス皮下移植腫瘍モデルにおける、マウスの体重及び腫瘍体積に対する抗PVRIG/TIGIT二重特異性抗体の影響をそれぞれ示す。
図10図10A~10Bは、ヒト黒色腫A375にヒトPBMCを混合したマウス皮下移植腫瘍モデルにおける、マウスの体重及び腫瘍体積に対する抗PVRIG/TIGIT二重特異性抗体の影響をそれぞれ示す。
【発明を実施するための形態】
【0106】
用語
本開示がさらに容易に理解されるように、以下、幾つかの技術・科学用語を具体的に定義する。本明細書で特に明確な定義のない限り、本明細書に使用される他の技術・科学用語の全ては、当業者に一般的に理解されている意味を持っている。
【0107】
本開示に用いられるアミノ酸の3文字コード及び1文字コードは、J.biol.chem,243,p3558(1968)に記載された通りである。
【0108】
「PVRIG」又は「PVRIGタンパク質」又は「PVRIGポリペプチド」は、本明細書に記載の既知又は野生型PVRIG、及び任意の天然に産生したスプライス変異体、アミノ酸変異体又はアイソフォーム、特にPVRIGの可溶性細胞外ドメイン(ECD)断片を含む(が、これらに限定されない)任意のこのようなタンパク質又はその変異体、結合体若しくは断片を任意選択的に含んでもよい。ここで、ECDの定義は、特許WO2016134333に記載された通りである。完全なヒトPVRIG配列は、GenBank登録番号AAH73861.1で見出すことができる。
【0109】
「TIGIT」又は「TIGITタンパク質」又は「TIGITポリペプチド」は、本明細書に記載の既知又は野生型TIGIT、及び任意の天然に産生したスプライス変異体、アミノ酸変異体又はアイソフォームを含む(が、これらに限定されない)任意のこのようなタンパク質又はその変異体、結合体若しくは断片を任意選択的に含んでもよい。完全なTIGIT配列は、GenBank登録番号AAI01289.1で見出すことができる。
【0110】
「PVRIGに結合する」とは、PVRIG又はそのエピトープと相互作用できることを意味し、上記PVRIG又はそのエピトープは、ヒト由来であってもよい。
【0111】
「TIGITに結合する」とは、TIGIT又はそのエピトープと相互作用できることを意味し、上記TIGIT又はそのエピトープは、ヒト由来であってもよい。
【0112】
「抗原結合部位」とは、抗原における連続的又は非連続的な、本開示の抗体により認識される3次元空間部位である。
【0113】
「抗体」又は「免疫グロブリン」は、最も広義に使用され、かつ種々の抗体構造をカバーし、従来の抗体(2つの重鎖と2つの軽鎖が鎖間ジスルフィド結合によって連結されてなるテトラペプチド鎖構造抗体)、及び抗原結合活性を有するFab、Fv、sFv、F(ab’)2、線形抗体、単鎖抗体、scFv、sdAb、sdFv、ナノボディ、ペプチド抗体peptibody、ドメイン抗体(重鎖(VH)抗体、軽鎖(VL)抗体)及び多重特異性抗体(二重特異性抗体、diabody、triabodyとtetrabody、タンデムジ-scFv、タンデムトリ-scFv)を含むが、これらに限定されない。
【0114】
本開示に使用される「抗体」という用語は、全長抗体、その単一の鎖、及びその抗原結合活性を有する任意の部分(即ち、抗原結合断片)、ドメイン又は断片、並びにその単一の鎖と、抗原結合活性を有する任意の部分、ドメイン又は断片とを含む多重特異性抗体(抗原結合ドメイン又は断片、例えば、VHHドメイン又はVH/VLドメインを含むが、これらに限定されない)をカバーしようとする。従来の抗体又は免疫グロブリンは、通常、2つの同じ重鎖及び2つの同じ軽鎖が鎖間ジスルフィド結合によって連結されてなるテトラペプチド鎖構造である。重鎖定常領域のアミノ酸組成及び配列順序によって、免疫グロブリンは、5種類に分けられ、又はIgM、IgD、IgG、IgA及びIgEという免疫グロブリンのアイソタイプと呼ばれてもよく、その対応する重鎖は、それぞれμ鎖、δ鎖、γ鎖、α鎖及びε鎖である。同一種類のIgは、そのヒンジ領域のアミノ酸組成及び重鎖ジスルフィド結合の数と位置の違いによって、さらに異なるサブクラスに分けることができ、例えば、IgGは、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4に分けることができる。軽鎖は、定常領域の違いによって、κ鎖又はλ鎖に分けられる。5種類のIgのそれぞれは、何れもκ(kappa)鎖又はλ(lambda)鎖を有してもよい。幾つかの実施形態において、本開示の抗体は、PVRIG及び/又はTIGITに特異的に結合する。
【0115】
本開示の「抗原結合断片」は、(i)VL、VH、CL及びCH1ドメインからなるFab断片、(ii)VH及びCH1ドメインからなるFd断片、(iii)連結された2つのFab断片を含む2価断片であるF(ab’)2断片、(vii)2つのドメインが結合して抗原結合部位を形成することを可能にする、ペプチドリンカーによってそのうちのVHドメインとVLドメインを連結した単鎖Fv分子(scFv)(Bird et al.,1988,Science 242:423-426、Huston et al.,1988,Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 85:5879-5883)242で、援用により本明細書に完全に組み込まれている)、(iv)遺伝子融合によって構築された多価又は多重特異性断片である「二機能性抗体」又は「三機能性抗体」(Tomlinson et al.,2000,Methods Enzymol. 326:461-479、WO94/13804、Holliger et al.,1993,PNAS 90:6444-6448で、全て援用により本明細書に完全に組み込まれている)、(v)齧歯動物(例えば、WO00/29004に開示されたもの)、ナースシャークなどの他の種に由来する免疫グロブリン単一可変ドメイン及びラクダ科V-HH dAbを含む「ドメイン抗体」又は「dAb」(「免疫グロブリン単一可変ドメイン」と呼ばれる場合がある)、(vi)SMIP(小分子免疫薬)、ラクダ抗体、ナノボディ及びIgNAR、(vii)上記(i)~(vi)のヒト化抗体を含むが、これらに限定されない。
【0116】
特に明記されていない場合、本開示の抗体は、通常、Kabat番号付けシステムを使用する。KabatにおけるEU番号は、一般的に定常ドメイン及び/又はFcドメインにも使用される。
【0117】
「二重特異性抗体」という用語は、2つの異なる抗原又は同じ抗原の2つの異なる抗原エピトープに特異的に結合可能な抗体を指す。従来技術には、種々の構造の二重特異性抗体が開示されている。IgG分子の完全性によって、IgG様二重特異性抗体と抗体断片型二重特異性抗体に分けることができる。抗原結合領域の数によって、2価、3価、4価又はそれ以上の二重特異性抗体に分けることができる。構造が左右対称であるか否かによって、対称構造の二重特異性抗体と非対称構造の二重特異性抗体に分けることができる。ここで、抗体断片に基づく二重特異性抗体、例えば、Fc断片を欠くFab断片は、2つ又は複数のFab断片を1つの分子内で結合することにより、低い免疫原性を有し、分子量が小さく、高い腫瘍組織透過性を有する二重特異性抗体を形成する。当該タイプの典型的な抗体構造は、例えば、F(ab)2、scFv-Fab、(scFv)2-Fabなどの二重特異性抗体、IgG様二重特異性抗体(例えば、Fc断片を有する)である。このような抗体は、分子量が比較的大きく、Fc断片が抗体の後期精製に寄与し、かつその溶解性、安定性を向上させる。Fc部分は、また、受容体FcRnに結合して、抗体の血清半減期を増加させることが可能である。例えば、典型的な二重特異性抗体の構造モデルは、例えば、VHH-IgG、KiH、CrossMAb、Triomab quadroma、FcΔAdp、ART-Ig、BiMAb、Biclonics、BEAT、DuoBody、Azymetric、XmAb、2:1 TCBs、1Fab-IgG TDB、FynomAb、two-in-one/DAF、scFv-Fab-IgG、DART-Fc、LP-DART、CODV-Fab-TL、HLE-BiTE、F(ab)2-CrossMAb、IgG-(scFv)2、Bs4Ab、DVD-Ig、Tetravalent-DART-Fc、(scFv)4-Fc、CODV-Ig、mAb2、F(ab)4-CrossMAbなどの二重特異性抗体である(Aran F. Labrijn et al.,Nature Reviews Drug Discovery volume 18,pages585-608(2019)、Chen S1 et al.,J Immunol Res. 2019 Feb 11、2019:4516041を参照)。
【0118】
本開示に係る抗体は、ポリクローナル、モノクローナル、異種、同種異系、同系又はその修飾された形態であってもよく、そのうち、モノクローナル抗体は、特に複数の実施例に適用される。一般的に、本開示に係る抗体は組換え抗体である。本明細書に使用される「組換え」は、例えば細胞又は核酸、タンパク質又はベクターなどの製品を広義に指し、上記細胞、核酸、タンパク質又はベクターが既にヘテロ核酸又はタンパク質を導入したり、天然の核酸又はタンパク質を改変したりすることで修飾され、或いは上記細胞がこのように修飾された細胞に由来することを表す。例えば、組換え細胞は、天然(非組換え)細胞形態に存在しない遺伝子を発現し、或いは元々異常に発現され、低発現されるか又は完全に発現されていない天然遺伝子を発現する。
【0119】
「モノクローナル抗体」は、単一のB細胞クローンによって産生され、特定の抗原エピトープと相互作用することができる抗体分子集団を指す。一方、「ポリクローナル抗体」は、複数のB細胞クローンによって産生され、特定の抗原と相互作用することができる抗体分子集団を指す。モノクローナル抗体は、典型的に、それと相互作用する特定の抗原に対して単一の結合親和性を示す。
【0120】
本明細書において、抗原は、より広義に定義され、かつ一般的に、抗体によって特異的に認識される標的分子を含むことを意図する。従って、抗体を産生するための免疫化プロセス、又は抗体のライブラリースクリーニングに使用される分子又は模倣体を含む。
【0121】
「相同性」又は「同一性」は、2つのポリヌクレオチド配列間又は2つのポリペプチド間の配列の類似性を指す。2つの比較される配列における位置が何れも同じ塩基又はアミノ酸残基に占められる場合、2つのDNA分子の1つの位置がアデニンに占められると、上記分子は当該位置で相同である。2つの配列間の同一性百分率は、2つの配列の共有するマッチング又は相同位置数を比較される位置数で割って100%をかける関数である。例えば、配列が最適にアラインメントされる場合、2つの配列における10個の位置のうち6個がマッチングするか又は相同である場合、2つの配列は60%相同である。一般的に、2つの配列をアラインメントして最大の相同性百分率が得られる場合に比較する。
【0122】
ポリペプチド又はタンパク質の「ドメイン」は、タンパク質の他の部分から独立してその三次構造を維持できる折り畳みタンパク質構造を指す。一般的に、ドメインは、タンパク質の単一の機能特性を担い、かつ多くの場合に、タンパク質の他の部分及び/又はドメインの機能を失うことなく、付加され、除去され、又は他のタンパク質に移されてもよい。
【0123】
「免疫グロブリンドメイン」は、抗体鎖の球形領域を指すか、又は基本的にこのような球形領域で構成されたポリペプチドを指す。幾つかの実施形態において、「抗原結合ドメイン」の非限定的な実例は、Fab断片、Fd断片、F(ab’)2断片、scFv、全長抗体などを含む。
【0124】
「免疫グロブリン可変ドメイン」は、基本的に、「フレームワーク領域1」又は「FR1」、「フレームワーク領域2」又は「FR2」、「フレームワーク領域3」又は「FR3」、及び「フレームワーク領域4」又は「FR4」、「相補性決定領域1」又は「CDR1」、「相補性決定領域2」又は「CDR2」、及び「相補性決定領域3」又は「CDR3」から構成される免疫グロブリンドメインを指す。従って、免疫グロブリン可変ドメインの一般的な構造又は配列は、FR1-CDR1-FR2-CDR2-FR3-CDR3-FR4と示されてもよい。免疫グロブリン可変ドメインは、抗原結合部位を有するため、抗原に対する特異性が付与される。
【0125】
「抗体フレームワーク(FR)」とは、可変ドメインの抗原結合ループ(CDR)のステントとして使用される可変ドメインの一部を指す。
【0126】
CDRについての確定又は定義は、抗体の構造を解明し、及び/又は抗体-リガンド複合物の構造を解明することにより、CDRについての確実な描写又は結合部位の残基についての同定を達成することができる。これは、当業者に知られている種々の技術の何れか1つ、例えば、X線結晶学により実現することができる。種々の分析方法は、CDRの同定に使用することができ、Kabat番号付けシステム、Chothia番号付けシステム、AbM番号付けシステム、IMGT番号付けシステム、接触定義、立体配座定義を含むが、これらに限定されない。Kabat番号付けシステムは、抗体における残基に番号を付けるための基準であり、一般的にCDR領域の同定に使用される(例えば、Johnson&Wu,2000,Nucleic Acids Res.,28:214-8を参照)。Chothia番号付けシステムは、Kabat番号付けシステムと類似するが、Chothia番号付けシステムは、ある構造ループ領域の位置を考慮に入れた。(例えば、Chothia et al.,1986,J.Mol.Biol.,196:901-17、及びChothia et al.,1989,Nature,342:877-83を参照)。AbM番号付けシステムは、抗体構造をモデリングしたOxford Molecular Group製のコンピュータプログラム統合スイートを使用する(例えば、Martin et al.,1989,ProcNatl Acad Sci(USA),86:9268-9272、「AbMTM,A Computer Program for ModelingVariable Regions of Antibodies」,Oxford,UK、Oxford Molecular,Ltdを参照)。AbM番号付けシステムは、知識データベース及びab initio法の組み合わせを用いて、基本配列から抗体の三次構造をモデリングする(Samudrala et al.,1999,PROTEINS,Structure,Function and Genetics Suppl.,3:194-198における「Ab Initio Protein Structure Prediction Using a Combined Hierarchical Approach」に記載されたものを参照)。接触定義は、利用できる複雑な結晶構造の分析に基づくものである(例えば、MacCallum et al.,1996,J.Mol.Biol.,5:732-45を参照)。立体配座の定義において、CDRの位置は、抗原結合にエンタルピー(enthalpy)的寄与をする残基として同定することができる(例えば、Makabe et al.,2008,Journal of Biological Chemistry,283:1156-1166を参照)。なお、他のCDRの境界の定義は、上記の方法の1つに厳密に従わない場合があるが、特定の残基又は残基群が抗原結合に顕著に影響しないという予測又は実験の結果によって、それらは短縮又は延長可能であるとはいえ、依然としてKabat CDRの少なくとも一部と重複する。本明細書に使用されるように、CDRは、当分野で知られている任意の方法(方法の組み合わせを含む)により定義されたCDRを指すことができる。本明細書に使用される方法は、これらの方法の何れか1つにより定義されたCDRを用いることができる。CDRを1つよりも多く含む任意の所定の実施例においては、Kabat、Chothia、伸長、AbM、IMGT、接触及び/又は立体配座定義の何れか1つによりCDRを定義することができる。
【0127】
「免疫グロブリン単一可変ドメイン」は、通常、他の可変ドメインと相互作用しない場合(例えば、通常の4本鎖抗体中のVHとVLドメインの間に必要なVH/VL相互作用がない場合)に機能的抗原結合部位を形成することができる免疫グロブリン可変ドメイン(重鎖ドメイン又は軽鎖ドメインであってもよく、VH、VHH又はVLドメインを含む)を指すために使用される。「免疫グロブリン単一可変ドメイン」の実例は、ナノボディ(VHH、例えば、ヒト化VHH及び/又はラクダ化ヒトVHなどのラクダ化VHを含む)、IgNAR、ドメイン、VHドメインとしての又はVHドメインに由来する(単一ドメイン)抗体(例えば、dAbsTM)及びVLドメインとしての又はVLドメインに由来する(単一ドメイン)抗体(例えばdAbsTM)を含む。重鎖可変ドメイン(例えば、VH又はVHHドメイン)に基づく及び/又は由来する免疫グロブリン単一可変ドメインは、通常好ましい。免疫グロブリン単一可変ドメインの一具体的な実例としては、下記のように定義される「VHHドメイン」(又は、「VHH」と略称)である。
【0128】
「VHHドメイン」は、重鎖単一ドメイン抗体、VHH、VHH抗体断片、VHH抗体、ナノボディとも呼ばれ、「重鎖抗体」(即ち、「軽鎖を欠く抗体」)と呼ばれる抗原結合免疫グロブリンの可変ドメインである(Hamers-Casterman C,Atarhouch T,Muyldermans S,Robinson G,Hamers C,Songa EB,Bendahman N,Hamers R.:“Naturally occurring antibodies devoid of light chains”、Nature363,446-448(1993))。「VHHドメイン」という用語は、上記可変ドメインを通常のテトラペプチド鎖構造抗体に存在する重鎖可変ドメイン(本開示において「VHドメイン」と呼ばれる)及び軽鎖可変ドメイン(本開示において「VLドメイン」と呼ばれる)と区別するために使用される。VHHドメインは、他の抗原結合ドメインを必要とすることなく、エピトープに特異的に結合する(通常のテトラペプチド鎖構造抗体におけるVH又はVLドメインとは異なり、この場合、エピトープは、VLドメインとVHドメインの両方によって認識される)。VHHドメインは、単一免疫グロブリンドメインで形成された小さくて安定的な抗原認識ユニットである。「重鎖単一ドメイン抗体」、「VHHドメイン」、「VHH」、「VHHドメイン」、「VHH抗体断片」、「VHH抗体」(「Nanobody」はAblynx N.V.社、Ghent、Belgiumの商標である)という用語は、互換的に使用されてもよい。「VHHドメイン」は、ラクダ科動物により産生された天然抗体を含むが、これに限定されず、ラクダ科動物により抗体を産生した後にヒト化したものであってもよく、ファージディスプレイ技術によりスクリーニングしたものであってもよい。
【0129】
VHドメイン及びVHHドメインについて当分野で知られているように、各CDRにおけるアミノ酸残基の総数は、異なる可能性があり、かつKabat番号で示されるアミノ酸残基の総数に対応しない可能性がある(即ち、Kabat番号に基づく1つ又は複数の位置は、実際の配列において占められていない可能性があり、又は実際の配列にKabat番号の許容する数よりも多いアミノ酸残基を含む可能性がある)。これは、一般的に、Kabatに基づく番号は、実際の配列におけるアミノ酸残基の実際の番号に対応するか又は対応しない可能性があることを意味する。VHHに適用可能な他の番号付けシステム又は番号付け規則は、Chothia、IMGT、AbMを含む。
【0130】
VHHドメインにおけるアミノ酸残基の総数は、通常110~120の範囲であり、112~115の間にある場合が多い。しかし、小さい配列及び長い配列も本開示に記載の目的に適合することができると留意すべきである。
【0131】
VHHドメイン(単独又は大きいポリペプチドの一部として)は、通常のVH及びVLドメイン、scFv又は通常の抗体断片(例えば、Fab-又はF(ab’)2-断片)を使用する場合よりも優れた顕著な利点を多く提供する:
-単一ドメインによって高親和性及び高選択性で抗原に結合するだけでよく、2つの単独のドメインが存在する必要がなく、当該2つのドメインが適切な空間立体配座及び配置で存在することを確保する必要もない(例えば、scFvは、一般的に特に設計されたリンカーを使用する必要がある)こと、
-VHHドメインは、単一の遺伝子によって発現可能であり、かつ翻訳後に折り畳みや修飾をする必要がないこと、
-VHHドメインは、多価及び多特異的フォーマットに改変することができること、
-VHHドメインは、可溶性が高くて凝集傾向がないこと、
-VHHドメインは、熱、pH、プロテアーゼ及び変性剤に対して高度に安定的であるため、調製、貯蔵又は輸送中に、冷凍機器への依存を低減し、コストや時間の節約及び環境を達成することができること、
-VHHドメインは、調製しやすく、比較的安く、さらには生産に必要な規模でも同様であること、
-VHHドメインは、通常のテトラペプチド鎖構造抗体及びその抗原結合断片と比べ、比較的小さい(約15 kDa又は大きさが通常のIgGの1/10)ため、通常のテトラペプチド鎖構造抗体及びその抗原結合断片と比べ、高い組織浸透性を示し、かつ高用量で投与することができること、及び
-VHHドメインは、所謂キャビティ結合特性(特に、通常のVHドメインと比べ、その延長されたCDR3ループのため)を示すことができるので、通常のテトラペプチド鎖構造抗体及びその抗原結合断片が到達できない標的及びエピトープに到達することができること。
【0132】
特定の抗原又はエピトープに結合するVHHを得る方法は、この前にR.van der Linden et al.,Journal of Immunological Methods,240(2000)185-195、Li et al.,J Biol Chem.,287(2012)13713-13721、Deffar et al.,African Journal of Biotechnology Vol.8(12),pp.2645-2652,17 June,2009及びWO94/04678という文献に開示された。
【0133】
「Fc変異体」又は「変異体Fc」は、Fcドメインにアミノ酸修飾が含まれるタンパク質を指す。本開示のFc変異体は、それを構成するアミノ酸修飾に基づいて定義される。従って、例えば、S228P又は228Pは、親Fcポリペプチドに対して228位にプロリン置換を有するFc変異体であり、ここで、番号はEUインデックスに基づくものである。WTアミノ酸は明示されなくてもよく、この場合、上記変異体は228Pと呼ばれる。
【0134】
「ヒト化」の例としては、ラクダ科に由来するVHHドメインを、ヒトの通常のテトラペプチド鎖構造抗体のVHドメインにおける対応する位置に存在する1つ又は複数のアミノ酸残基で、元のVHH配列のアミノ酸配列における1つ又は複数のアミノ酸残基を置換することで、「ヒト化」を実現することができることを含む。本開示において「配列最適化」とも呼ばれ、「配列最適化」は、ヒト化以外に、潜在的な翻訳後の修飾部位の除去などの、VHHの改善された特性を与える1つ又は複数の変異によって配列に加えられた他の修飾を含んでもよい。ヒト化VHHドメインは、1つ又は複数の完全ヒトフレームワーク領域配列を含んでもよく、かつ幾つかの具体的な実施形態において、IGHV3のヒトフレームワーク領域配列を含んでもよい。「ヒト化」のさらなる例は、マウスのCDR配列をヒトの抗体の可変領域フレームワーク、即ち、異なるタイプのヒト生殖細胞系列抗体のフレームワーク配列に移植して産生した抗体を含む。キメラ抗体が大量の異種タンパク質成分を持っていることにより誘導された強い抗体可変抗体反応を克服することができる。ヒト化方法としては、例えば、タンパク質表面アミノ酸のヒト化(resurfacing)及びCDRを他の「ステント」(ヒトステント又は非免疫グロブリンステントを含むが、これらに限定されない)に「移植」する抗体ヒト化ユニバーサルフレームワーク移植法(CDR grafting to a universal framework)である。上記CDR移植に適するステント及び技術は、当分野で既知のものである。例えば、ヒト重鎖及び軽鎖可変領域遺伝子の生殖細胞系列DNA配列は、「VBase」ヒト生殖細胞系列配列データベースにおいて、及びKabat,E.A. et al.、1991 Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th editionにおいて見出すことができる。本開示のヒト化抗体は、さらにファージで提示される、CDRに対して親和性成熟を行ったヒト化抗体も含む。また、免疫原性の低下に伴う活性の低下を回避するために、上記ヒト抗体可変領域フレームワーク配列に対して最も少ない逆変異又は復帰変異を行うことにより、活性を保つことができる。
【0135】
「親和性成熟」の抗体は、1つ又は複数のCDRにおいて1つ又は複数の変化を有し、上記変化により、抗原への親和性がそれぞれの親抗体と比べて増加する。親和性成熟の抗体は、例えば、Marks et al.,1992,Biotechnology 10:779-783又はBarbas et al.,1994,Proc.Nat.Acad.Sci,USA 91:3809-3813.、Shier et al.,1995,Gene 169:147-155、Yelton et al.,1995,Immunol.155:1994-2004、Jackson et al.,1995,J.Immunol.154(7):3310-9、及びHawkins et al.,1992,J.MoI.Biol.226(3):889896、KS Johnson及びRE Hawkins,「Affinity maturation of antibodies using phage display」,Oxford University Press 1996に記載された当分野で既知の方法によって調製することができる。
【0136】
通常、本開示の抗体は、Biacore又はKinExA又はFortibioアッセイにおいて測定された、好ましくは10-7~10-10モル/リットル(M)、より好ましくは10-8~10-10モル/リットル、さらに好ましくは10-9~10-10又はそれ以下の解離定数(KD)、及び/又は少なくとも10-7 M、好ましくは少なくとも10-8 M、より好ましくは少なくとも10-9 M、さらに好ましくは少なくとも10-10 Mの会合定数(KA)で結合しようとする抗原(即ち、PVRIG)に結合する。10-4 Mよりも大きい任意のKD値は、一般的に非特異的結合を示すと見なされる。抗体の抗原又はエピトープへの特異的結合は、例えば、本開示に記載の表面プラズモン共鳴(SPR)アッセイ、Scatchardアッセイ及び/又は競合結合アッセイ(例えば、ラジオイムノアッセイ(RIA)、酵素免疫アッセイ(EIA)及びサンドイッチ競合アッセイを含む既知の任意の適切な方法によって測定することができる。
【0137】
「エピトープ」又は互換的に使用可能な「抗原決定基」は、抗体が結合する抗原上の任意の部分を指す。抗原決定基は、通常、例えば、アミノ酸又は糖側鎖などの化学的活性表面基を含み、かつ、通常、特定の3次元構造特性及び特定の電荷特性を有する。例えば、エピトープは、通常、独特な空間立体配座で少なくとも3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14又は15個の連続又は非連続のアミノ酸を含み、「線状」エピトープ又は「立体配座」エピトープであってもよい。線状エピトープにおいて、タンパク質と相互作用分子(例えば、抗体)の間における全ての相互作用部位は、タンパク質の一次アミノ酸配列に沿って線状で存在する。立体配座エピトープにおいて、相互作用する位置は、互いに離れたアミノ酸残基にある。当分野でよく知られている多くのエピトープマッピング技術により所定の抗原のエピトープを同定することができる(例えば、Epitope Mapping Protocols in Methods in Molecular Biology,第66巻,G.E.Morris,Ed.(1996),US4708871)。当業者に知られている通常の技術により、同じエピトープに対する結合で抗体を競合的にスクリーニングすることができる。例えば、競合及び交差競合研究を行うことにより、抗原への結合について互いに競合するか又は交差競合する抗体を得ることができる(ハイスループットスクリーニング方法は、例えばWO03/48731を参照する)。従って、当業者に知られている通常の技術により、PVRIG上の同じエピトープに本開示の抗体分子と競合的に結合する抗体及びその抗原結合断片を得ることができる。
【0138】
「特異的結合」、「選択的結合」は、抗体と所定の抗原上のエピトープへの結合を指す。通常、組換えヒトPVRIG、TIGIT又はそのエピトープを分析物として使用するとともに抗体をリガンドとして使用し、機器において表面プラズモン共鳴(SPR)技術によって測定する場合、抗体は、約10-7 M未満又はそれ以下の平衡解離定数(K)で所定の抗原又はそのエピトープに結合し、かつ所定の抗原又はそのエピトープへの結合親和性が、所定の抗原(又はそのエピトープ)又は密接に関連する抗原以外の非特異的抗原(例えば、BSAなど)への結合親和性の少なくとも2倍である。「抗原を認識する抗体」は、本明細書において「特異的に結合する抗体」と互換的に使用されてもよい。
【0139】
「結合親和性」は、本明細書において2つの分子(例えば、抗体又はその一部及び抗原)の間の非共有相互作用の強度の目安として使用され、一価相互作用(固有活性)を説明するために使用される。2つの分子間の結合親和性は、解離定数(K)を決定することで定量化することができる。例えば、表面プラズモン共鳴(SPR)方法(Biacore)を使用して複合物の形成及び解離の動態を測定することでKを決定することができる。一価複合物の結合及び解離に対応する速度定数は、それぞれ結合速度定数ka(又はkon)及び解離速度定数kd(又はkoff)と呼ばれる。Kは、K=kd/kaという方程式によりka及びkdに関連する。解離定数の値は、公知の方法によって直接決定することができる(Caceci et al.,1984,Byte 9:340-362、Wong&Lohman,1993,PNAS 90:5428-5432を参照)。標的抗原に対する抗体の結合能力を評価する他の標準的なアッセイは、当分野で知られているものであり、例えば、ELISA、ウエスタンブロット、RIAとフローサイトメトリー分析、及び本明細書の他の箇所に挙げられた他のアッセイを含む。これと類似し、相互作用の特異性は、標的相互作用(例えば、抗体と抗原の間の特異的相互作用)のK値と非標的相互作用(例えば、PVRIGに結合しない既知の対照抗体)のK値を決定して比較することで評価することができる。幾つかの実施形態において、本開示の抗PVRIG抗体のその標的に結合可能な親和性は、PVRIGではない他の分子に結合する親和性よりも少なくとも2倍、10倍、50倍、100倍、200倍、500倍、1,000倍又は10,000倍大きいが、ここでの定義は限定的なものではない。
【0140】
「保存的修飾」は、アミノ酸及びヌクレオチド配列に適用される。特定のヌクレオチド配列について、保存的修飾は、同じ又は基本的に同じアミノ酸配列をコードするような核酸の相互置換を指し、或いはヌクレオチドがアミノ酸配列をコードしない場合、基本的に同じヌクレオチド配列を指す。アミノ酸配列について、保存的修飾は、タンパク質の生物学的活性を変えずにアミノ酸配列を頻繁に変更することができるように、類似の特徴(例えば、電荷、側鎖の大きさ、疎水性/親水性、主鎖の立体配座及び剛性など)を有する他のアミノ酸でタンパク質におけるアミノ酸を置換することを指す。当業者に知られているように、一般的に、ポリペプチドの非必須領域における単一のアミノ酸置換によって、基本的に生物学的活性を変えることはない(例えば、Watson et al.(1987) Molecular Biology of the Gene,The Benjamin/Cummings Pub.Co.,224ページ,(4th edition)を参照)。
【0141】
「アミノ酸変異」は、最終構築体が補強された安定性、向上した活性などの所望の特性を有するように、最終構築体を実現するために、アミノ酸の置換、欠失、挿入、修飾及びそれらの任意の組み合わせを含む。アミノ酸配列の欠失及び挿入は、アミノ末端及び/又はカルボキシ末端での欠失及び挿入を含む。好ましいアミノ酸変異はアミノ酸置換である。例えば、抗PVRIG抗体の結合特性を変えるために、非保存的アミノ酸を置換し、即ち、1つのアミノ酸を異なる構造及び/又は化学的特性を有する別のアミノ酸で置換することができる。好ましいアミノ酸置換は、親水性アミノ酸で疎水性アミノ酸を置換することを含む。アミノ酸置換は、天然に存在しないアミノ酸又は20種の標準的なアミノ酸の天然に存在するアミノ酸誘導体(例えば、4-ヒドロキシプロリン、3-メチルヒスチジン、オルニチン、ホモセリン、5-ヒドロキシリジン)による置換を含む。アミノ酸変異は、部位特異的変異導入、PCR、遺伝子合成、化学修飾などの方法を含むこの分野で公知の遺伝学的又は化学的方法により生成することができる。アミノ酸変異は、抗体のCDR領域、FR領域又はFc領域で発生することができる。
【0142】
本開示の工学的な抗体又は抗原結合断片は、通常の方法により調製・精製することができる。例えば、重鎖及び軽鎖をコードするcDNA配列は、クローニングして発現ベクターに組換えることができる。組換えた免疫グロブリン発現ベクターは、CHO細胞を安定的にトランスフェクションすることができる。哺乳動物類の発現系は、特にFc領域の高度に保存的なN末端において、抗体のグリコシル化を引き起こすことになる。ヒト抗原に特異的に結合する抗体を発現することにより、安定的なクローンが得られる。陽性のクローンは、バイオリアクターの無血清培地において培養を拡大することで、抗体を産生する。抗体が分泌された培養液は、通常の技術により精製して収集することができる。抗体は、通常の方法によりろ過濃縮することができる。可溶性の混合物及び多量体は、分子ふるい、イオン交換などの通常の方法により除去されてもよい。得られた生成物は、直ちに-70℃などで冷凍し、又は凍結乾燥しなければならない。
【0143】
「任意選択的」又は「任意選択的に」とは、その後に説明される事象又は状況が生じてもよいが、生じなくてもよいことを意味し、この説明は、当該事象又は状況が生じる場合と生じない場合を含む。例えば、「任意選択的に1~3個の抗体重鎖可変領域を含む」とは、特定の配列の抗体重鎖可変領域が存在してもよいが、必ずしも存在しなくてもよいことを意味する。
【0144】
「医薬組成物」は、1種又は複数種の本明細書に記載の抗体(例えば、抗PVRIG/TIGIT二重特異性抗体)又はその生理学的/薬学的に許容される塩若しくはプロドラッグと、他の化学成分とを含む混合物を指し、ここで、他の成分の例は、例えば、生理学的/薬学的に許容されるベクター及び賦形剤である。医薬組成物は、生体への投与を促進し、活性成分の吸収に寄与してさらに生物活性を発揮するためのものである。
【0145】
「薬学的に許容されるベクター」又は「薬学的に許容される賦形剤」は、活性成分と組み合わせる場合に、当該成分が生物学的活性を保つことを許容するとともに、対象の免疫系と反応しない任意の材料を含む。例としては、任意の標準的な薬剤ベクター、例えば、リン酸緩衝生理食塩水溶液、水、油/水エマルジョンなどのエマルジョン、及び種々の湿潤剤などを含むが、これらに限定されない。幾つかの実施例において、非経口投与に用いられる希釈剤は、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)又は生理(0.9%)食塩水である。このようなベクターを含む組成物は、周知の通常方法により調製される(例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences,18th edition,edited by A.Gennaro,Mack Publishing Co.,Easton,PA,1990、及びR Remington,The Science and Practice of Pharmacy,20th edition,Mack Publishing,2000を参照)。
【0146】
「緩衝剤」は、その酸-塩基共役成分の作用によりpHの変化を調節する緩衝剤を指す。pHを適当な範囲に制御する緩衝剤の例は、酢酸塩、コハク酸塩、グルコン酸塩、ヒスチジン、シュウ酸塩、乳酸塩、リン酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩、フマル酸塩、グリシルグリシン及び他の有機酸緩衝剤を含む。
【0147】
「ヒスチジン緩衝剤」は、ヒスチジンを含む緩衝剤である。ヒスチジン緩衝剤の実例は、ヒスチジン-塩酸ヒスチジン、ヒスチジン-酢酸ヒスチジン、ヒスチジン-リン酸ヒスチジン、ヒスチジン-硫酸ヒスチジンなどの緩衝剤を含み、好ましくはヒスチジン-塩酸ヒスチジン緩衝剤である。ヒスチジン-塩酸ヒスチジン緩衝剤は、ヒスチジン及び塩酸から調製され、又はヒスチジン及び塩酸ヒスチジンから調製されてもよい。
【0148】
「酢酸塩緩衝剤」は、酢酸イオンを含む緩衝剤である。酢酸塩緩衝剤の実例は、酢酸-酢酸ナトリウム塩、ヒスチジン-酢酸ヒスチジン、酢酸-酢酸カリウム、酢酸-酢酸カルシウム、酢酸-酢酸マグネシウムなどを含む。好ましい酢酸塩緩衝剤は、酢酸-酢酸ナトリウム塩である。
【0149】
「クエン酸塩緩衝剤」は、クエン酸イオンを含む緩衝剤である。クエン酸塩緩衝剤の実例は、クエン酸-クエン酸ナトリウム、クエン酸-クエン酸カリウム、クエン酸-クエン酸カルシウム、クエン酸-クエン酸マグネシウムなどを含む。好ましいクエン酸塩緩衝剤は、クエン酸-クエン酸ナトリウムである。
【0150】
「コハク酸塩緩衝剤」は、コハク酸イオンを含む緩衝剤である。コハク酸塩緩衝剤の実例は、コハク酸-コハク酸ナトリウム塩、コハク酸-コハク酸カリウム、コハク酸-コハク酸カルシウム塩などを含む。好ましいコハク酸塩緩衝剤は、コハク酸-コハク酸ナトリウム塩である。例示的に、上記コハク酸-コハク酸ナトリウムは、コハク酸及び水酸化ナトリウムにより調製され、又はコハク酸及びコハク酸ナトリウム塩により調製されてもよい。
【0151】
「リン酸塩緩衝剤」は、リン酸イオンを含む緩衝剤である。リン酸塩緩衝剤の実例は、リン酸水素二ナトリウム-リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム-リン酸二水素カリウム、リン酸水素二ナトリウム-クエン酸などを含む。好ましいリン酸塩緩衝剤は、リン酸水素二ナトリウム-リン酸二水素ナトリウムである。
【0152】
「凍結乾燥製剤」は、液体若しくは溶液形態の医薬組成物又は液体若しくは溶液製剤に対して凍結乾燥ステップを行った後に得られた製剤又は医薬組成物を示す。
【0153】
本開示に記載の医薬組成物は、安定的な効果を達成することができ、即ち、その中の抗体(例えば、抗PVRIG/TIGIT二重特異性抗体)が貯蔵後に基本的にその物理的安定性及び/又は化学的安定性及び/又は生物学的活性を保持している医薬組成物である。好ましくは、医薬組成物は、貯蔵後にその物理的と化学的安定性、及びその生物学的活性を基本的に保持している。貯蔵期間は、一般的に医薬組成物の所定の保存期間に基づいて選択される。現在、タンパク質の安定性を測定する分析技術が複数種あり、所定の温度で、所定の期間貯蔵した後の安定性を測定することができる。
【0154】
安定した製剤は、冷蔵温度(2~8℃)で少なくとも3ヶ月、好ましくは6ヶ月、より好ましくは1年間、さらに好ましくは2年間も保存した場合に統計的に有意な変化が認められない製剤を含む。
【0155】
また、安定した液体製剤は、25℃を含む温度で1ヶ月、3ヶ月又は6ヶ月を含む期間保存した後、所望の特徴を示している液体製剤も含む。安定性の典型的な例としては、SEC-HPLCにより、凝集又は分解を発生した抗PVRIG/TIGIT二重特異性抗体が通常、約10%を超えず、好ましくは約5%を超えないことが測定される。視覚的分析によると、製剤は、淡黄色でほぼ無色透明な液体又は無色透明な液体であり、或いは清澄からやや乳白色である。上記製剤の濃度、pH及び重量モル浸透圧濃度は、±10%を超えない変化を有する。通常、約10%を超えず、好ましくは約5%を超えない減少が認められる。通常、約10%を超えず、好ましくは約5%を超えない凝集が形成される。
【0156】
幾つかの実施形態において、本開示の抗PVRIG/TIGIT二重特異性抗体製剤は、40℃の高温条件下で1ヶ月間放置し、SECモノマー%が95%以上(例えば、95%よりも大きく、96%よりも大きく、97%よりも大きく、98%よりも大きく又は99%よりも大きい)であり、及び/又はCE-SDS(NR)%が95%以上(例えば、95%よりも大きく、96%よりも大きく、97%よりも大きく、98%よりも大きく又は99%よりも大きい)である。
【0157】
色及び/又は清澄度を目視で検査したところ、又はUV光散乱、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)及び動的光散乱(DLS)により測定したところ、抗PVRIG/TIGIT二重特異性抗体が顕著な凝集の増加、沈殿及び/又は変性を示さない場合、上記抗PVRIG/TIGIT二重特異性抗体は、医薬製剤において「その物理的安定性を保持している」とする。タンパク質の立体配座の変化は、蛍光分光法(タンパク質の三次構造を確定するもの)により、及びFTIR分光法(タンパク質の二次構造を確定するもの)により評価することができる。
【0158】
抗PVRIG/TIGIT二重特異性抗体が顕著な化学的変化を示さない場合、上記抗PVRIG/TIGIT二重特異性抗体は、医薬製剤において「その化学的安定性を保持している」とする。化学的安定性は、化学的に形態が変化されたタンパク質を検出・定量することにより、評価することができる。タンパク質の化学構造を常に変化させる分解過程は、加水分解又は切断(例えば、サイズ排除クロマトグラフィー及びCE-SDSなどの方法により評価される)、酸化(例えば、質量分析法又はMALDI/TOF/MSと合わせるペプチドマッピング法などの方法により評価される)、脱アミド作用(例えば、イオン交換クロマトグラフィー、キャピラリー等電点電気泳動、ペプチドマッピング法、イソアスパラギン酸の測定などの方法により評価される)及び異性化(イソアスパラギン酸の含有量の測定、ペプチドマッピング法などにより評価される)を含む。
【0159】
抗PVRIG/TIGIT二重特異性抗体は、所定の時間での生物活性が医薬製剤の調製時に示される生物活性の所定範囲にある場合、上記抗PVRIG/TIGIT二重特異性抗体は、医薬製剤において「その生物活性を保持している」とする。
【0160】
「投与」、「与える」及び「処理」は、動物、ヒト、実験の対象、細胞、組織、器官又は生物流体に適用される場合に、外因性薬剤、治療剤、診断薬又は組成物の、動物、ヒト、対象、細胞、組織、器官又は生物流体との接触を意味する。「投与」、「与える」及び「処理」は例えば、治療、薬物動態、診断、研究及び実験方法を意味してもよい。細胞の処理は、試薬の細胞との接触、及び試薬の流体との接触を含み、そのうち、上記流体は細胞と接触する。「投与」、「与える」及び「処理」はまた、試薬、診断、組成物により、又は別種の細胞を通じて、体外及びインビトロで例えば細胞を処理することを意味する。「処理」はヒト、獣医学又は研究対象に適用される場合に、治療的処理、予防又は予防的措置、研究及び診断的使用を意味する。
【0161】
「治療」は、例えば、本開示の何れか1つの医薬組成物を含む、内用又は外用治療剤を対象に与えることを意味し、上記対象は、1種又は複数種の疾患症状を有するが、上記治療剤は、これらの症状に対して治療効果を有することが知られている。通常、治療される対象又は集団には、1種又は複数種の疾患症状を効果的に緩和する量で治療剤を与えることにより、これらの症状の解消を誘導し、又は臨床的に測定可能な任意の程度まで進行しないようにこれらの症状を阻害する。任意の具体的な疾患症状を効果的に緩和する治療剤の量(「治療有効量」とも呼ばれる)は、対象の疾患状態、年齢と体重、及び薬剤の対象に必要な治療効果を発生させる能力などの複数の要因によって、変化することができる。当該症状の重症度又は進行状況の評価に医者又は他のプロのヘルスケアプロバイダによく用いられる任意の臨床的検出方法により、疾患症状が低減されたか否かを評価することができる。本開示の実施形態(例えば、治療方法又はキット)は、それぞれの対象における目標疾患症状の緩和において無効であり得るが、この分野で知られている任意の統計学的検定方法、例えば、Student t検定、カイ二乗検定、Mann及びWhitneyによるU検定、Kruskal-Wallis検定(H検定)、Jonckheere-Terpstra検定及びWilcoxon検定により、統計的に有意な数の対象において目標疾患症状を軽減するはずであることが確認された。
【0162】
「有効量」は、医学病状の症状の改善又は予防に十分な量を含む。有効量は、さらに、診断の許容又は促進に十分な量を指す。対象に使用される有効量は、治療される病状、対象の全体的健康状態、投与の方法と経路及び用量、並びに副作用の重症度といった要因によって変化することができる。有効量は、顕著な副作用又は毒性作用が回避される最大用量又は投与計画であってもよい。本開示の対象は、動物又はヒト対象であってもよい。
【0163】
本開示に係る医薬組成物は、非経口投与、肺内投与及び鼻内投与を含む任意の適切な手段により投与することができ、かつ局所治療が必要な場合、病巣内に投与される。非経口注入は、筋肉内、静脈内、動脈内、腹膜内又は皮下投与を含む。投与は、任意の適切な経路により、例えば、静脈内又は皮下注射などの注射により行うことができる。本明細書では、様々な投与スケジュールが考慮されており、単回投与又は複数の時点での複数回投与、ボーラス投与及びパルス注入を含むが、これらに限定されない。幾つかの実施形態において、本開示の医薬組成物は、静脈内で投与される。
【0164】
本開示の医薬組成物は、良好な医療行為に適合するように調製、投薬及び投与される。この背景で考えられる要因は、治療される具体的な病状、治療される具体的な哺乳動物、個体対象の臨床状況、病状の起因、試薬の送達部位、投与方法、投与スケジュール及び医療従事者に知られている他の要因を含む。任意選択的に、医薬組成物は、上記病状の予防又は治療に使用される1種以上の他の試薬と合わせて調製されてもよい。このような他の試薬の有効量は、医薬組成物に存在する抗原結合分子の量、病状又は治療のタイプ及び他の要因に依存する。本明細書の記載と同じ用量及び投与経路で使用され、又は本明細書に記載の用量の約1%~約99%で使用され、又は任意の用量で使用され、かつ経験的/臨床的に適切と確認された任意の経路で使用されてもよい。
【0165】
上記の明細書には、本開示の1種又は複数種の実施形態の詳細が提出されている。本開示は、本明細書の記載と類似する又は同じである任意の方法と材料により実施又は試験することができるが、以下、好ましい方法及び材料を説明する。明細書及び特許請求の範囲により、本開示の他の特徴、目的及び利点は明らかになる。明細書及び特許請求の範囲において、文脈で特に明記のない限り、単数形は複数の指示対象のことを含む。特に定義のない限り、本明細書に用いられる技術・科学用語の全ては、当業者により理解されている一般的な意味を持っている。明細書に援用される特許及び出版物は、全て援用により組み込まれている。下記の実施例は、本開示の好ましい実施形態をさらに全面的に説明するために提出される。これらの実施例は、何れかの方式で、本開示の範囲を限定するものと理解すべきではなく、本開示の範囲は、特許請求の範囲により限定される。
【0166】
以下、実施例と合わせてさらに説明するが、これらの実施例は、範囲を限定するものではない。実施例又は試験例において具体的な条件が明記されていない実験方法は、一般的に通常の条件、又は原料や商品メーカーにより推奨された条件に従う。Sambrookら、分子クローニング、実験室マニュアル、コールド・スプリング・ハーバー研究所、及び現代分子生物学方法、Ausubelら著、Greene出版協会、Wiley Interscience、NYが参照される。具体的な供給源が明示されていない試薬は、市販される通常の試薬である。
【0167】
実施例-抗PVRIG/TIGIT二重特異性抗体の調製及び検出
PCT/CN2021/080470(出願日:2021.3.13、優先権特許出願番号:CN202010174835.4)は、援用により全体として本明細書に組み込まれている。
【0168】
実施例1. PVRIGタンパク質配列及び調製
hisタグ付きのヒトPVRIG(h-PVRIG-his)組換えタンパク質、マウスIgG2aのFcタグ付きのヒトPVRIG(h-PVRIG-mIgG2a Fc)組換えタンパク質、ヒトIgG1のFcタグ付きのマウスPVRIG(m-PVRIG-hIgG1 Fc)は、Acrobiosystems社から購入された精製後の市販のタンパク質試薬であり、その配列は表1に示されている。
【0169】
【表1】

hisタグ付きのカニクイザルPVRIG(cyno-PVRIG-his)組換えタンパク質配列は、以下の通りである:
TPEVWVQVQMEATELSSFTVHCGFLGPGSISLVTVSWGGPDGAGGTKLAVLHPELGTRQWAPARQARWETQSSISLALEDSGASSPFANTTFCCKFASFPEGSWESCGSLPPSSDPGLSAPPTPVPILRADHHHHHH(配列番号1)
HEK293細胞において通常の方法によって一過性トランスフェクションして組換えタンパク質を発現し、上清を収集するとともにNi-NTAによって精製した。検出したところ、cyno-PVRIG-hisを得た。
【0170】
実施例2. 抗ヒトPVRIG単一ドメイン抗体の産生
抗ヒトPVRIGモノクローナル単一ドメイン抗体は、ラクダを免疫化することによって産生された。免疫抗原は、hisタグ付きのヒトPVRIG組換えタンパク質(h-PVRIG-his)である。フロイントアジュバント(Sigma、Lot No.:F5881/F5506)で乳化し、最初に完全フロイントアジュバント(CFA)CFAを使用し、残りの追加免疫化には、不完全フロイントアジュバント(IFA)を使用した。免疫化注射時間は、0、14、28、42日目である。56日目に採血して血液検出を行い、ELISA方法によってラクダ血清を検出し、ラクダ血清における抗体価を決定した。
【0171】
200 mLのラクダ末梢血を採取し、その中のPBMCを単離し、Trizolで細胞におけるRNAを抽出し、そしてcDNAに逆転写した。PCR方法によって単一ドメイン抗体可変領域の遺伝子を増幅し、ファージベクターにクローニングすることにより、抗ヒトPVRIG単一ドメイン抗体のファージライブラリーを構築した。
【0172】
ファージライブラリーをBSAで希釈してブロッキングし、磁気ビーズDynabeads(M-280、invitrogen)とともにインキュベートし、ネガティブセレクションしてインキュベーションしたファージを収集した。ビオチンで標識したhisタグ付きのヒトPVRIGでDynabeadsを被覆してブロッキングし、ネガティブセレクション後に収集されたファージ懸濁液を上記Dynabeadsとともにインキュベートし、トリプシンでファージを溶離した。スクリーニングを3ラウンド行い、3ラウンド目にスクリーニングされた400個のクローンを選んでシークエンシングし、そのうち5つの単一ドメイン抗体の重鎖配列は表2に、異なる番号付け規則のCDRは表3に示す通りである。
【0173】
【表2】

【0174】
【表3-1】


【表3-2】

【0175】
実施例3. 全長抗PVRIG抗体の調製
実施例2の5つの抗体の重鎖可変領域をヒトIgG4重鎖Fc領域に連結し、全長抗PVRIG抗体を構築した。ここで、重鎖Fc領域はヒンジ(hinge)領域を含み、かつS228P、F234A、L235A、K447A変異(Eu命名システム)を有する。WO2016134333A1に示される抗PVRIG抗体CPA.7.021は、抗体ファージライブラリーからスクリーニングされ、そのサブタイプはIgG1であり、ヒトPVRIGに好適に結合することができるが、カニクイザルPVRIGには結合しない。CPA.7.021の重鎖及び軽鎖可変領域を、それぞれヒトIgG4重鎖定常領域(S228P、F234A、L235A、K447A変異を有する)及びヒトKappa軽鎖定常領域に連結し、陽性抗体Tab5を構築した。
【0176】
5つの抗体及び陽性抗体の全長配列は、表4に示す通りである。
【0177】
【表4-1】

【表4-2】

【表4-3】
【0178】
上記配列をコードする遺伝子配列を合成し、BamHI及びXhoIで消化した後、BamHI/XhoI酵素切断部位を介してpcDNA3.1発現ベクター(Life Technologies Cat. No. V790-20)に挿入した。発現ベクター及びトランスフェクション試薬PEI(Polysciences、Inc. Cat. No. 23966)を1:2の割合でHEK293細胞(Life Technologies Cat. No. 11625019)にトランスフェクションするとともに、COのインキュベーターに置いて4~5日間インキュベートした。発現された抗体を遠心分離によって回収した後、通常の方法によって抗体を精製し、検出したところ、目的抗体を得た。
【0179】
実施例4. 抗PVRIG抗体とPVRIG組換えタンパク質の結合実験
ELISA実験は、抗PVRIG抗体の結合特性を検出するために使用された。hisタグ付きのPVRIG組換えタンパク質で直接被覆し、抗体を加えた後、二次抗体(HRPとカップリングした抗一次抗体Fcの抗体)及びHRP基質TMBを加えることで抗体の抗原への結合活性を検出した。
【0180】
ヒト、カニクイザル又はマウスのPVRIGタンパク質で96ウェルマイクロプレートを、1 μg/mLの濃度で1ウェルあたり100 μL被覆し、4℃で一晩インキュベートした。洗浄液で3回洗浄し、1ウェルあたり250 μLであった。十分に洗浄するために、洗浄するたびに10秒間振とうした。300 μL/ウェルのブロッキング液(PBS+0.05%のTween20+1%のBSA)を加えて室温で1時間インキュベートした。洗浄液で3回洗浄し、1ウェルあたり250 μLであった。十分に洗浄するために、洗浄するたびに10秒間振とうした。各ウェルに、希釈液で希釈した測定待ちの抗PVRIG抗体100 μLを加えた。37℃で1時間インキュベートした。洗浄液で3回洗浄し、1ウェルあたり250 μLであった。各ウェルに、HRPで標識した抗ヒトIgG二次抗体(Sigma、A8667)100 μLを加えた。37℃で1時間インキュベートした。洗浄液で3回洗浄し、1ウェルあたり250 μLであった。各ウェルに100 μLのTMBを加え、暗所で15分間反応させた。50 μL/ウェルで0.16 Mの硫酸を加えた。Thermo Multiskan Fcプレートリーダーによって450 nmにおけるOD値を読み取り、抗PVRIG抗体のPVRIGへの結合EC50値を算出した。何れの抗体も、ヒト又はカニクイザルのPVRIG組換えタンパク質に対して強い結合能力を有するが、マウスPVRIG組換えタンパク質とは結合しなかった。
【0181】
【表5】

【0182】
実施例5. 抗PVRIG抗体のPVRIGを発現した細胞への結合実験
フローサイトメーター(FACS)により抗PVRIG抗体の結合特性を検出した。ヒト又はカニクイザルのPVRIGを過剰発現する細胞株を構築し、抗体を加えた後、二次抗体を加えることで抗体の抗原への結合活性を検出した。
【0183】
ヒト又はカニクイザルのPVRIG遺伝子配列を有する発現プラスミドをHEK293細胞においてトランスフェクションするとともに、抗生物質スクリーニング及び無限希釈法により過剰発現して安定的にトランスフェクションされたモノクローナル細胞株を得た。96ウェルプレートにおいて各ウェルに2×10個の過剰発現細胞を接種した。300 gで5分間遠心分離し、上清を除去し、100 μLの測定待ちの抗体を加え、4℃で1時間インキュベートした。遠心分離によって上清を除去し、200 μLの洗浄液(PBS+2%のFBS)で3回洗浄し、1:500で希釈した、Alexa Fluor 488で標識した抗ヒトIgG二次抗体(Invitrogen、A-11013)100 μLを加え、4℃で1時間インキュベートした。遠心分離によって上清を除去し、200 μLの洗浄液(PBS+2%のFBS)で3回洗浄した。100 μLのPBSで細胞を再懸濁し、フローサイトメーター(BD FACS Calibur又はBD FACS Canto_II)により検出した。何れの抗体も、細胞表面に発現されたヒト又はカニクイザルのPVRIGに対して強い結合能力を有し、陽性抗体Tab5よりも明らかに優れたが、Tab5はさらに、カニクイザルのPVRIGに完全に結合しなかった。
【0184】
【表6】

(注:N.A.は、not availableで、結合が高過ぎて、低濃度条件でも抗体が解離せず、フィッティングして正確なEC50を得ることができないことを示す。)
【0185】
実施例6. 抗PVRIG抗体のPVRIGとPVRL2の結合への遮断実験
この実験において、体外遮断実験により、スクリーニングされた抗PVRIG抗体のヒトPVRIGとそのリガンドであるヒトPVRL2との結合への遮断能力を検出した。具体的な方法としては、マウスIgG2a Fcタグ付きのヒトPVRIG組換えタンパク質(h-PVRIG-mIgG2a Fc)を96ウェルマイクロプレートに被覆し、抗PVRIG抗体を加えて十分に結合してエピトープを占めた後、hisタグ付きのPVRL2(PV2-H52E2、AcroBiosystem)を加え、hisタグを検出することにより、PVRIGとPVRL2の結合量を算出し、抗PVRIG抗体のPVRIG活性部位への遮断のIC50値を算出した。
【0186】
h-PVRIG-mIgG2a Fcタンパク質で96ウェルマイクロプレートを1 μg/mLの濃度で1ウェルあたり100 μL被覆し、4℃で一晩インキュベートした。洗浄液で3回洗浄し、1ウェルあたり250 μLであった。十分に洗浄するために、洗浄するたびに10秒間振とうした。300 μL/ウェルでブロッキング液を加えて室温で1時間インキュベートした。洗浄液で3回洗浄し、1ウェルあたり250 μLであった。十分に洗浄するために、洗浄するたびに10秒間振とうした。各ウェルに50 μLの希釈した測定待ちの抗PVRIG抗体及び50 μLのhisタグ付きのリガンドPVRL2を加え、37℃で1時間インキュベートした。洗浄液で3回洗浄し、1ウェルあたり250 μLであった。各ウェルに、1:2000倍で希釈した、HRPで標識した抗hisタグ付きの二次抗体(Genscrpit)100 μLを加えた。37℃で1時間インキュベートした。洗浄液で3回洗浄し、1ウェルあたり250 μLであった。各ウェルに100 μLのTMBを加え、暗所で15分間反応させた。50 μL/ウェルで0.16 Mの硫酸を加えた。Thermo Multiskan Fcプレートリーダーによって450 nmにおけるOD値を読み取り、PVRIGとPVRL2の結合への抗PVRIG抗体の遮断のIC50値を算出した。
【0187】
結果から明らかなように、何れの検出抗体も、ヒトPVRIGとヒトPVRL2の結合を強く阻害することができる。
【0188】
【表7】

【0189】
実施例7. 抗PVRIG抗体のPVRIGへの親和性測定
Protein Aバイオセンサー(Fortebio、#18-5010)を200 μLのKB緩衝剤(PBS、pH7.4、0.02%のtween-20、0.1%のBSA)に60秒間浸漬し、湿潤処理を行った。その後、KB緩衝剤で抗PVRIG抗体を10 μg/mLに希釈し、センサーを200 μLの当該溶液に入れ、読み取り値が1.2 nmになるまで停止した。センサーをKB緩衝剤に100秒間浸漬することにより、過剰な抗体を溶離した。hisタグ付きのヒトPVRIGをKB緩衝剤により2倍の勾配で64~4 nMの間に希釈した。センサーを当該溶液に入れて300秒間結合させた。センサーをKB緩衝剤に入れて600秒間解離した。動的1:1結合方法によりフィッティングしたところ、抗PVRIG抗体のヒトPVRIGへの親和性は表8に示す通りである。
【0190】
結果から明らかなように、何れの検出抗体も、ヒトPVRIGへの高親和性を有する。
【0191】
【表8】

【0192】
実施例8. 抗PVRIG抗体レポーター遺伝子細胞の活性実験
まず、plvx-OS8(G418耐性)プラスミドを構築し、293F細胞をトランスフェクションし、G418でスクリーニングし、フローサイトメーターによってクローン細胞OS8の発現を検出するとともに、OS8によるJurkat細胞の活性化を検出し、中等度に活性化されたクローンを選択して、293F-OS8細胞株を得て、plvx-PVRL2プラスミドを構築し、それを用いて293F-OS8細胞に感染し、フローサイトメーターによってPVRL2の発現量が最も高いクローンをスクリーニングして、293F-OS8-PVRL2細胞株を得た。
【0193】
次に、plvx-NFAT-Luc(Hygromycin耐性)を構築し、レンチウィルスにパッケージングし、Jurkat E6.1細胞に感染し、Hygromycinを加えて耐性を有するクローンをスクリーニングし、OKT3でクローンを刺激し、Luciferaseシグナルが中等度のクローンをスクリーニングして、Jurkat-NFAT-Luc細胞系を得て、plvx-PVRIG(Puromycin耐性)ベクターを構築し、レンチウィルスにパッケージングし、Jurkat-NFAT-Luc細胞に感染し、フローサイトメーターによってPVRIGの発現量が最も高いクローンをスクリーニングして、Jurkat-NFAT-Luc-PVRIG細胞株を得た。
【0194】
1E4個のJurkat-NFAT-Luc-PVRIG細胞及び測定待ちの抗体を37℃で20分間インキュベートした。1E5個の293F-OS8-PVRL2細胞を加え、37℃で5時間インキュベートした。遠心分離によって上清を除去し、Luciferase緩衝剤(Promega、E6130)を加えて細胞を溶解し、蛍光値を検出した。EC50値を算出して抗PVRIG抗体の体外細胞活性を評価した。実験の結果は図1及び表9に示す通りである。
【0195】
結果から明らかなように、何れの検出抗体も、Jurkat細胞におけるLuciferaseを活性化する能力が強く、活性が陽性抗体の3.7~18.5倍であり、これらの抗体は、PVRIGに結合するとともに、PVRL2とPVRIGの結合を遮断することができることが証明された。
【0196】
【表9】

【0197】
実施例9. 抗PVRIG抗体のNK細胞殺傷実験
PVRIGは、NK細胞において発現されるが、PVRL2は、多くの腫瘍細胞(K562細胞を含む)において発現される。抗PVRIG抗体は、PVRL2とPVRIGの結合を遮断することで、腫瘍細胞によるNK細胞への阻害作用を解除することができる。
【0198】
培養されたNK92細胞系(ヒト悪性非ホジキンリンパ腫患者のNK細胞)を洗浄液(RPMI 1640、5%のFBS、10 ng/mLのIL-2を含む)で2回洗浄するとともに、2×10個/mLの密度に再懸濁した。96ウェルプレートの各ウェルに50 μL(合計1×10個)のNK92細胞を加えた。20 nM又は100 nMの測定待ちの抗体50 μLを加え、37℃で30分間インキュベートした。洗浄液で2回洗浄し、2×10個/mLの密度に再懸濁した。50 μL(合計1×10個)のヒト慢性骨髄性白血病K562細胞を加えて、NK92細胞とK562細胞の個数の割合を10:1にした。37℃で4時間インキュベートした。CytoTox-Glo細胞傷害性系(Promega、G9292)を用いて殺傷活性を測定した。まず、50 μLのAAF-Glo試薬を加え、室温で15分間インキュベートし、NK92細胞に殺傷されたK562細胞の蛍光を測定した。さらに50 μLの溶解液を加え、室温で15分間インキュベートし、ウェルにおける全ての細胞を溶解し、全ての細胞の蛍光を測定した。それぞれ培養液のみを含む試料(対照群1)、NK92細胞のみを含む試料(対照群2)、K562細胞のみを含む150 μLの試料(対照群3)という3つの対照群を準備し、同様の操作を行った。
【0199】
下記式に基づき、殺傷活性を算出した:
殺傷活性(%)={[(R-BG)-(T-BG)-(E-BG)]/[(TL-BGL)-(T-BG)]}×100
そのうち、Rは、AAF-Gloを加えた後の蛍光値であり、BGは、対照群1のAAF-Gloを加えた後の蛍光値であり、Eは、対照群2のAAF-Gloを加えた後の蛍光値であり、Tは、対照群3のAAF-Gloを加えた後の蛍光値であり、TLは、対照群3の溶解液を加えた後の蛍光値であり、BGLは、対照群1の溶解液を加えた後の蛍光値である。
【0200】
実験の結果は図2及び表10に示す通りで、何れの検出された抗PVRIG抗体も、明らかにNK92細胞を活性化し、K562細胞を殺傷することができることが示された。
【0201】
【表10】

【0202】
実施例10. 抗PVRIG抗体の混合リンパ球反応(MLR)実験
PVRIGは、T細胞において発現されるが、PVRL2は、樹状細胞(DC細胞)において発現される。抗PVRIG抗体は、PVRL2とPVRIGの結合を遮断することで、樹状細胞によるT細胞への阻害作用を解除し、T細胞を活性化することができる。
【0203】
混合リンパ球反応とは、2つの無関係な個体で、機能が正常なリンパ球が体外で混合培養される場合、主要組織適合抗原が異なるため、相手のT細胞を増殖するように刺激することができることを指す。1つ目の個体由来の末梢血からPBMCを単離し、細胞を10%のFBSを含むRPMI 1640培地で培養し、50 ng/mLのGM-CSF(Peprotech、300-03-100UG)及び50 ng/mLのIL-4(Peprotech、200-04-100UG)の最終濃度でサイトカインを加え、2~3日ごとにサイトカインを含む新鮮な培地を加え、6日間培養した後、1 μg/mLのLPS(Sigma、L2880-25MG)を加えて24時間インキュベートし、分化成熟で得られたDC細胞を収集した。2つ目の個体由来の末梢血からPBMCを単離し、EasySepヒトCD3T細胞単離試薬キット(Stemcell、17952)を用いてその中からCD3T細胞を単離した。各ウェルに1×10個のCD3T細胞及び2×10個のDC細胞が加えられるように、CD3T細胞及びDC細胞の密度を調整した。測定待ちの抗体を加え、37℃で120時間インキュベートし、上清を取り、上清中のIFNγ含有量をELISA試薬キット(R&D、DY202)で検出した。実験の結果は図3及び表11に示す通りである。
【0204】
結果から明らかなように、対照抗体IgG4と比べ、何れの検出された抗PVRIG抗体も、明らかにT細胞を活性化してIFNγを分泌させることができる。かつ、低用量(例えば4 nM、20 nM)の場合、本開示の抗体は、陽性対照Tab5よりも効果が優れている。
【0205】
【表11】

【0206】
実施例11. 抗PVRIG抗体のヒト化改変
得られたラクダ単一ドメイン抗体20、抗体30、抗体38、抗体39及び抗体151のVHの典型的な構造に基づき、重鎖可変領域配列を抗体GermLineデータベースと比べ、相同性の高いヒト生殖細胞系列テンプレートを得た。ラクダ単一ドメイン抗体のフレームワーク領域をヒト生殖細胞系列テンプレートの重鎖フレームワーク領域で置換し、CDR(Kabat番号付けシステムによる)を保持し、さらにヒトIgGのFc領域(S228P、F234A、L235A、K447A変異を有するIgG4 Fc)と組み換えた。ラクダ単一ドメイン抗体の3次元構造に基づき、埋め込まれた残基、CDR領域と直接相互作用する残基、及び可変領域の立体配座に重要な影響を与える残基を復帰変異させるとともに、CDR領域の化学的に不安定なアミノ酸残基を最適化し、一連のヒト化単一ドメイン抗体を産生した。各単一ドメイン抗体のヒト生殖細胞系列テンプレート及びヒト化抗体重鎖可変領域配列は、表12~16に示す通りである。
【0207】
【表12】


表12によれば、抗体20H1-20H5は、TDCMG(配列番号7)で示されるCDR1、HIDSDGIPRYVDSVKG(配列番号8)で示されるCDR2及びGFKFDEDYCAPND(配列番号150)で示されるCDR3を含む。
【0208】
【表13】


表13によれば、抗体30H1-30H5は、GDCMG(配列番号10)で示されるCDR1、TIDNAGRIKYADSVKG(配列番号11)で示されるCDR2、GWTFGGQCSPAD(配列番号151)で示されるCDR3を含む。
【0209】
【表14】

【0210】
【表15】

【0211】
【表16】


上記ヒト化抗体重鎖可変領域をヒトIgG4重鎖Fc領域に連結して、全長抗PVRIG抗体を構築した。ここで、重鎖Fc領域はヒンジ(hinge)領域を含み、かつS228P、F234A、L235A、K447A変異を有する。
【0212】
>ヒトIgG4重鎖Fc領域(S228P/F234A/L235A/K447A)
ESKYGPPCPPCPAPEAAGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSQEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKGLPSSIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSQEEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSRLTVDKSRWQEGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSLGA(配列番号101)
>ヒトIgG4重鎖Fc領域(S228P/K447A)
ESKYGPPCPPCPAPEFLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSQEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKGLPSSIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSQEEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSRLTVDKSRWQEGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSLGK(配列番号153)
通常の方法によって抗体の発現及び精製を行い、検出したところ、目的抗体を得た。
【0213】
実施例12. ヒト化抗PVRIG抗体のPVRIGを発現した細胞への結合実験
実施例5の方法によって、フローサイトメーターによってヒト化抗PVRIG抗体のヒト又はカニクイザルのPVRIGへの結合を検出した。実験の結果は表17に示す通りである。
【0214】
【表17】


(注:N.T.は、not testedで、未試験である。)
【0215】
実施例13. ヒト化抗PVRIG抗体のPVRIGへの親和性測定
実施例7の方法によって、ヒト化抗PVRIG抗体のヒトPVRIGへの親和性を検出した。結果は表18に示す通りである。表に挙げられた何れの抗体も、ヒトPVRIGへの高親和性を有する。
【0216】
【表18】

【0217】
実施例14. ヒト化抗PVRIG抗体のレポーター遺伝子細胞における活性実験
実施例8の方法によって、ヒト化抗PVRIG抗体のレポーター遺伝子細胞における活性を検出した。実験の結果は図4A図4B及び表19に示す通りである。表に挙げられた抗体は、何れもJurkat細胞を活性化する能力を有する。
【0218】
【表19】

【0219】
実施例15. ヒト化抗PVRIG抗体によるNK細胞の殺傷能力の活性化実験
実施例9の方法によって、ヒト化抗PVRIG抗体のNK細胞への活性化能力を検出した。実験の結果は図5A図5B及び表20~表21に示す通りである。結果から明らかなように、本開示のヒト化抗PVRIG抗体は、何れもNK細胞を活性化する明らかな能力を有し、NK細胞の標的細胞K562への殺傷を促進した。
【0220】
【表20】

【0221】
【表21】

【0222】
実施例16. 抗PVRIG/TIGIT二重特異性抗体の調製
異なる構造の抗PVRIG/TIGIT二重特異性抗体の抗体機能への影響を調べるために、抗PVRIG単一ドメイン抗体151をGGGGSGGGGS(配列番号152)リンカーで抗TIGIT抗体1708の重鎖又は軽鎖のN末端又はC末端に連結した。1708-151-1、1708-151-2、1708-151-3、1708-151-4と命名され、それぞれ151に対応して1708の重鎖のN末端、重鎖のC末端、軽鎖のN末端及び軽鎖のC末端に連結された4つの抗PVRIG/TIGIT二重特異性抗体を形成した。抗TIGIT抗体1708は、ヒトIgG4サブタイプを採用し、かつS228P(Eu命名システム)の変異を有する。抗TIGIT抗体1708及びそれと151で形成された二重特異性抗体の配列は、下記の表22に示す通りである。抗TIGIT抗体の配列情報は表23~24に示す通りである。WO2019062832A1におけるTIGIT抗体は、全てここに組み込まれている。
【0223】
【表22-1】

【表22-2】

【表22-3】

【表22-4】
【0224】
【表23-1】


【表23-2】

【0225】
【表24】

【0226】
通常の方法によって抗体の一過性トランスフェクション、発現及び精製を行い、同定したところ、本開示の全長抗PVRIG/TIGIT二重特異性抗体を得た。二重特異性抗体の発現量及び純度は、表25に示す通りである。ナノボディを一般的なモノクローナル抗体にカップリングし、重鎖と軽鎖のN末端でもC末端でも、良好な発現量及び純度を示した。
【0227】
【表25】

【0228】
実施例17. 抗PVRIG/TIGIT二重特異性抗体のPVRIGとTIGITへの結合及び対応するリガンドへの遮断実験
1. 異なる配置の二重特異性抗体のヒトPVRIGへの結合及びリガンドPVRL2への遮断
実施例4、実施例5及び実施例6の方法によって実験を行い、結果は表26に示す通りである。結果から明らかなように、異なる配置の二重特異性抗体は、ヒトPVRIG組換えタンパク質とヒトPVRIG過剰発現細胞への結合、及びPVRL2とPVRIGの結合への遮断は、基本的に一致しており、差がない。
【0229】
【表26】

【0230】
2. 異なる配置の二重特異性抗体のヒトTIGITへの結合及びリガンドPVRへの遮断
実施例4、実施例5及び実施例6の方法(対応する受容体及びリガンドをヒトTIGIT及びヒトPVRに置換)によって、実験を行い、結果は表27に示す通りである。結果から明らかなように、異なる配置の二重特異性抗体と抗TIGIT抗体は、ヒトTIGIT組換えタンパク質及びヒトTIGIT過剰発現細胞への結合、及びTIGITとそのリガンドPVRとの結合への遮断が、基本的に一致しており、差がない。抗PVRIG抗体151の連結方式は、抗TIGIT抗体とTIGITとの結合に基本的に影響しない。
【0231】
【表27】

表26~27のデータをまとめると、抗PVRIG抗体は、抗TIGIT抗体の重鎖、軽鎖のN末端又はC末端の何れに連結されても、PVRIG及びTIGITへの結合及びリガンドへの遮断を保持し、かつ良好な発現量、純度を示した。
【0232】
実施例18. ヒト化抗PVRIG/TIGIT二重特異性抗体の調製
異なるヒト化抗PVRIG抗体(20H5、30H2、39H2、151H7、151H8)を抗TIGIT抗体1708の重鎖のN末端に連結し、即ち、1708-151-1と類似する二重特異性抗体構造を用いて二重抗体を構築し、配列は表28に示す通りである。
【0233】
【表28-1】

【表28-2】

【表28-3】

【表28-4】

通常の方法によって抗体の一過性トランスフェクション、発現及び精製を行い、同定したところ、標的二重抗体を得た。
【0234】
実施例19. ヒト化抗PVRIG/TIGIT二重特異性抗体のPVRIGとTIGITへの結合及び対応するリガンドへの遮断
実施例4、5、6の方法によって、ヒト化抗PVRIG/TIGIT二重特異性抗体のヒトとカニクイザルPVRIGへの結合、ヒトPVRIGのリガンドへの遮断を検出した。結果は、表29及び図6A~6Eに示す通りである。結果から明らかなように、各ヒト化二重特異性抗体は、何れもヒトPVRIGに結合し、PVRIGとPVRL2の結合を遮断することができる。1708-151H8は、カニクイザルPVRIGへの結合が弱い。
【0235】
【表29】

【0236】
実施例4、5、6と類似し、ヒト化抗PVRIG/TIGIT二重特異性抗体のヒト及びカニクイザルのTIGITへの結合、ヒトTIGITとリガンドの結合への遮断を検出し、ここで、PVRIGタンパク質をTIGITに置換するとともに、PVRL2をPVRに置換した。結果は、表30及び図7A図7Eに示す通りである。結果から明らかなように、各二重抗体は、何れもヒト及びカニクイザルのTIGITに結合し、TIGITとPVRの結合を遮断することができる。
【0237】
【表30】

【0238】
Biacoreによってヒト化二重特異性抗体とヒトPVRIG、カニクイザルPVRIG及びヒトTIGITへの親和性を検出した。ヒト化二重特異性抗体をBiacore機器(Biacore X100、GE)のProtein Aバイオセンサーチップ(GE lifesciences、29127557)に捕捉した後、チップ表面において一連の濃度勾配でのヒトPVRIG抗原(AcroBiosystem、PVG-H52H4)、カニクイザルPVRIG抗原(配列番号1)又はヒトTIGIT抗原(AcroBiosystem、TIT-H52H3)を流した。Biacore機器(Biacore X100、GE)によって反応シグナルをリアルタイムに検出して結合及び解離曲線を得た。実験で得られたデータは、ソフトウェアBiacoreX100 evaluation software2.0 GEを用いて(1:1)Bindingモデルでフィッティングし、親和性数値を得て、表31に示されている。
【0239】
【表31】

【0240】
実施例20. ヒト化抗PVRIG/TIGIT二重特異性抗体の混合リンパ球反応(MLR)実験
実施例10の方法によって、ヒト化抗PVRIG/TIGIT二重特異性抗体のT細胞への活性化能力を検出した。実験の結果は、図8及び表32に示す通りである。結果から明らかなように、ヒト化抗PVRIG/TIGIT二重特異性抗体1708-151H8は、T細胞を活性化する明らかな能力を有し、T細胞によるIFNγの分泌を促進する。重要なことに、二重特異性抗体の活性は、抗PVRIG抗体151H8を単独で使用する場合、抗TIGIT抗体1708を単独で使用する場合よりも強い。
【0241】
【表32】

【0242】
実施例21. ヒト黒色腫A375にヒトPBMCを混合したマウス皮下移植腫瘍モデルにおける抗PVRIG/TIGIT二重特異性抗体の抗腫瘍作用の評価
二重特異性抗体サブタイプの動物薬効における作用をさらに調べるために、上記IgG4サブタイプの二重特異性抗体以外、対応するIgG1サブタイプの抗体を合成し、動物薬効試験に使用した。当該実験で使用された、以上に説明されていない他の抗体配列は表33に示す通りである。
【0243】
【表33-1】

【表33-2】
【0244】
4~8週齢、体重約18~22 gの雌NCGマウスを、江蘇集萃薬康生物科技有限公司から購入した。全てのNCGマウスは、SPFグレードの動物飼育室のIVC恒温恒圧システムの条件で培養された。
【0245】
10%のウシ胎児血清(FBS)を含むDMEM培養液においてA375細胞を培養した。指数増殖期のA375細胞を収集し、HBSSにより、NCGマウスの皮下腫瘍接種のために適切な濃度に再懸濁した。共培養に使用されたA375細胞をMitomycin Cで2時間処理した後、PBSで3回洗浄する必要がある。正常なヒト末梢血を採取し、密度勾配遠心分離法によってヒトPBMCを単離し、カウントした。その後、RPMI1640培地(IL2及び10%のFBSを含む)でPBMCを3×10個/mLの濃度に再懸濁し、Mitomycin Cで処理したA375細胞と共培養した。6日間共培養した後、PBMCを収集すると同時に、消化したばかりのA375細胞を収集した。各マウスに、5×10個のPBMC、4×10個のA375細胞を接種し、接種体積が0.2 mL/匹(50%のMatrigelを含む)であり、雌NCGマウスの右側皮下に接種した。マウスの体重に基づいてランダムに群分けして投与し、詳細な投与方法、投与量及び投与経路を表34に示し、群分けして投与する当日を0日目とした。抗PVRIG抗体及び抗TIGIT抗体の分子量が異なるため、当該投与量は、抗PVRIG抗体と抗TIGIT抗体が同様の初期モル濃度を有することを確保した。
【0246】
【表34】

(注:N:使用された動物数、i.p.:腹腔内注射、Q2D:2日に1回、投与体積:担腫瘍マウスの体重に応じて投与体積を調整した(0.1 mL/10 g)。)
【0247】
投与開始後、マウスに対して体重及び腫瘍体積を週に2回測定した。実験の結果は、それぞれ表35~36及び図9A図9Bに示されている。
【0248】
【表35】

【0249】
【表36】


(注:対照群(hIgG1)と比べて、×P<0.05、××PP<0.01、×××P<0.001であれば、有意差があると考えられる。)
【0250】
実験終了時(投与後の26日目)、対照群と比べ、抗PVRIG抗体151単剤群は、有意差がなかった。抗TIGIT抗体1708-IgG1単剤群、抗PVRIG抗体151と抗TIGIT抗体1708-IgG1の併用群、1708-151-IgG1の二重抗体群は、腫瘍体積が減少した。その一方、1708-151-IgG4の二重抗体群は、腫瘍の増殖を完全に阻害することさえでき、他の群とは有意差があった(図9B参照)。
【0251】
マウスの体重に基づいてランダムに群分けして投与し、詳細な投与方法、投与量及び投与経路を表37に示し、群分けして投与する当日を0日目とした。
【0252】
【表37】

(注:N:使用された動物数、i.p.:腹腔内注射、Q2D:2日に1回、投与体積:担腫瘍マウスの体重に応じて投与体積を調整した(0.1 mL/10 g)。)
【0253】
投与開始後、マウスに対して体重及び腫瘍体積を週に2回測定した。実験の結果は、それぞれ表38~39及び図10A図10Bに示されている。
【0254】
【表38】

【0255】
【表39】

(注:対照群(hIgG1)と比べて、×P<0.05、××PP<0.01、×××P<0.001であれば、有意差があると考えられる。)
【0256】
実験終了時(投与後の28日目)、対照群と比べ、1708-30H2 IgG4と1708-151H7 IgG4の二重抗体群は、何れも低用量で腫瘍の増殖を効果的に阻害することができ、対照群とは有意差があった(図10A及び図10B参照)。
【0257】
調製例-抗PVRIG/TIGIT二重特異性抗体製剤
製剤の調製と検出中に使用された機器、抗体及び方法は、以下の通りである:
1.SECサイズ排除クロマトグラフィー:
ゲル細孔の孔径の大きさと高分子試料分子のコイル寸法との間の相関関係に基づいて溶質を単離する分析方法である。
SEC%(SECモノマーの含有量百分率)=Aモノマー/A全×100%(Aモノマーは試料中のメインピークモノマーのピーク面積であり、A全は全てのピーク面積の和である)。
SEC測定用機器:アジレントHPLC1260、カラム:waters、XBridge BEH200Å SEC(7.8×300 mm 3.5 μm)。
【0258】
2.NR-CE(CE-SDS(NR)ともいう)キャピラリーゲル電気泳動:
ゲルをキャピラリーに支持媒体として移動して行われる電気泳動であり、かつ一定の電圧で試料の分子量の大きさによって単離する方法である。
非還元CEの純度百分率=Aメインピーク/A全×100%(Aメインピークは、試料中のメインピークのピーク面積であり、A全は全てのピーク面積の和である。)CE測定用機器:Beckmanキャピラリー電気泳動装置 型番plus800。
【0259】
3.iCIEFイメージングキャピラリー等電点電気泳動:
タンパク質の等電点pIの違いによって単離する技術である。
iCIEF中性ピークの含有量百分率=中性ピーク面積/総面積×100%(総面積は、酸性ピーク、中性ピーク及び塩基性ピーク面積の和である)。
iCIEF測定用機器:simple protein、型番muarice。
【0260】
4.浸透圧の測定:
凝固点法により浸透圧を測定し、凝固点降下値が溶液のモル濃度に正比例することを基にして、高感度測温素子を使用し、溶液の凝固点を測定し、電気量で浸透圧に変換した。
浸透圧測定用機器:ルーザーLoser、型番OM815。
【0261】
5.タンパク質濃度の測定:
以下の調製例に採用された抗PVRIG/TIGIT二重特異性抗体は、1708-30H2である。二重特異性抗体の濃度は、タンパク質濃度計を用いた。
タンパク質濃度の測定機器:紫外可視分光光度計、型番:Nano Drop oneC、光路1 mm。
【0262】
調製例1. 抗PVRIG/TIGIT二重特異性抗体製剤緩衝系及びpH値のスクリーニング
以下の緩衝化系を用いて、約50 mg/mLのタンパク質濃度を有する抗PVRIG/TIGIT二重特異性抗体(1708-30H2)製剤を調製し、ここで、緩衝系は以下の通りである:
1)10 mMの酢酸-酢酸ナトリウム塩(AAと略す)、pH5.0
2)10 mMのAA、pH5.5
3)10 mMのコハク酸-コハク酸ナトリウム塩(SAと略す)、pH6.0
4)10 mMのヒスチジン-塩酸ヒスチジン(His-HClと略す)、pH5.5
5)10 mMのHis-HCl、pH6.0
6)10 mMのHis-HCl、pH6.5
7)10 mMのリン酸水素二ナトリウム-リン酸二水素ナトリウム塩(PBと略す)、pH8.0
8)10 mMのトロメタモール-塩酸塩(Tris-HClと略す)、pH8.0
9)10 mMのTris-HCl、pH8.5、
調製済みの製剤を滅菌ろ過し、容器に充填し、プラグを入れて、蓋をした。製剤試料を40℃の高温条件下で強制分解し、外観、SEC、CE-SDS(NR)及びiCIEFを評価指標として製剤の安定性を考査した。
【0263】
実験の結果は表40に示されている。結果から明らかなように、製剤試料を40℃の高温条件下で1ヶ月間放置した後:
-外観では、SA緩衝系群の製剤は、大量の粒子が現れ、他の緩衝系群製剤よりも劣り、
-純度では、緩衝系pH≧8.0の製剤試料は、SECモノマー及びCE-SDS(NR)が比較的多く低減され、低減範囲がそれぞれ3.3%~5.6%及び7.1%~14.9%である。また、緩衝系のpH=5.0又はpH≧8.0の製剤試料は、そのiCIEF中性ピークの純度の低減が30%を超えた。
【0264】
【表40】


注:Mは月、40℃M1は40℃で1ヶ月間恒温放置することを示す
【0265】
調製例2. 抗PVRIG/TIGIT二重特異性抗体製剤のタンパク質濃度のスクリーニング
10 mMのHis-HCl pH6.0緩衝系を用いて、タンパク質濃度がそれぞれ低濃度50 mg/mL及び高濃度100 mg/mLである製剤を調製した。調製済みの製剤を滅菌ろ過し、容器に充填し、プラグを入れて、蓋をした。試料を40℃の高温条件下で強制分解し、SEC、CE-SDS(NR)及びiCIEFを評価指標として製剤の安定性を考査した。
【0266】
実験の結果を表41に示し、実験の結果から明らかなように、製剤試料を40℃の高温条件下で1ヶ月間放置した後、異なる濃度の製剤群の純度では、高タンパク質濃度の製剤は、SEC、CE-SDS(NR)及びiCIEF値が比較的やや低かった。
【0267】
【表41】

【0268】
調製例3. 抗PVRIG/TIGIT二重特異性抗体製剤における界面活性剤の種類及び濃度のスクリーニング
10 mMのHis-HCl pH6.5の緩衝系を用いて、50 mg/mLの抗体、80 mg/mLのスクロース、及び異なる濃度の界面活性剤を含む抗PVRIG/TIGIT抗体(1708-30H2)製剤を調製し、具体的な界面活性剤の種類及び濃度は以下の通りである:
1)0.2 mg/mLのポリソルベート80、
2)0.4 mg/mLのポリソルベート80、
3)0.6 mg/mLのポリソルベート80、
4)0.4 mg/mLのポリソルベート20、
5)0.4 mg/mLのポロキサマー188、
調製済みの製剤を滅菌ろ過し、容器に充填し、プラグを入れて、蓋をした。試料を40℃の高温条件下で強制分解し、外観、SEC、CE-SDS(NR)及びiCIEFを評価指標として製剤の安定性を考査した。
【0269】
実験の結果は、表42に示されている。実験の結果から明らかなように、各実験群の製剤は何れも良好な安定性を有する。
【0270】
【表42】

【0271】
調製例4. 抗PVRIG/TIGIT二重特異性抗体製剤の糖濃度のスクリーニング
10 mMのHis-HCl pH5.5の緩衝系を用いて、50 mg/mLの抗体、0.4 mg/mLのポリソルベート80及び異なる濃度のスクロースを含む抗PVRIG/TIGIT抗体(1708-30H2)製剤を調製し、具体的なスクロース濃度は以下の通りである:
1)75 mg/mLのスクロース、
2)80 mg/mLスクロース、
調製済みの製剤の浸透圧を測定した。
【0272】
実験の結果は表43に示されている。結果から明らかなように、スクロース濃度が75~80 mg/mLである場合、浸透圧が何れも等張範囲内(280~320 mOsm)である。
【0273】
【表43】

【0274】
調製例5. 異なる緩衝系における抗PVRIG/TIGIT二重特異性抗体の安定性実験
下記の緩衝系を用いて、50 mg/mLの抗体、80 mg/mLのスクロース、0.4 mg/mLのポリソルベート80を含む抗PVRIG/TIGIT抗体(1708-30H2)製剤を調製し、ここで、緩衝系は以下の通りである:
1)10 mMのAA pH5.5
2)10 mMのHis-HCl pH5.5
調製済みの製剤を滅菌ろ過し、容器に充填し、プラグを入れて、蓋をした。試料を40℃の高温条件下で強制分解し、外観、SEC、CE-SDS(NR)及びiCIEFを評価指標として製剤の安定性を考査した。
【0275】
実験の結果を表44に示し、結果から明らかなように、製剤試料を40℃の高温条件下で1ヶ月間放置した後、His-HCl及びAAを緩衝系とする製剤は、外観、SEC、CE-SDS(NR)に有意差がなかったが、iCIEF値では、His-HCl緩衝系群の中性ピークの純度がAAよりも高いことを示した。
【0276】
【表44】

【0277】
調製例6. 抗PVRIG/TIGIT二重特異性抗体製剤の異なるpHでの安定性
下記の緩衝系を用いて、50 mg/mLの抗体、80 mg/mLのスクロース、0.4 mg/mLのポリソルベート80を含む抗PVRIG/TIGIT抗体製剤(1708-30H2)を調製し、緩衝系は以下の通りである:
1)10 mMのHis-HCl pH5.5
2)10 mMのHis-HCl pH6.0
3)10 mMのHis-HCl pH6.5
調製済みの製剤を滅菌ろ過し、容器に充填し、プラグを入れて、蓋をした。試料を40℃の高温条件下で強制分解し、外観、SEC、CE-SDS(NR)及びiCIEFを評価指標として製剤の安定性を考査した。
【0278】
実験の結果は、表45に示されている。実験の結果から明らかなように、His-HCl緩衝剤のpHが5.5~6.5の間にある場合、各群の製剤は何れも良好な安定性を有する。
【0279】
【表45】

【0280】
調製例7. 抗PVRIG/TIGIT二重特異性抗体製剤の安定性実験
10 mMのHis-HCl pH6.0の緩衝化系を用いて、50 mg/mLの抗体、0.4 mg/mLのポリソルベート80、80 mg/mLのスクロースを含む抗PVRIG/TIGIT抗体(1708-30H2)製剤を調製した。調製済みの製剤を滅菌ろ過し、容器に充填し、プラグを入れて、蓋をした。試料を25℃及び2~8℃の条件下で6ヶ月間放置し、外観、SEC、CE-SDS(NR)及びiCIEFを評価指標として製剤の安定性を考査した。
【0281】
実験の結果は、表46に示されている。結果から明らかなように、好ましい製剤は良好な安定性を有する。
【0282】
【表46】

【0283】
調製例8. 抗PVRIG/TIGIT二重特異性抗体製剤のpHドリフト実験
10 mMのHis-HCl pH6.0の緩衝系を用いて、50 mg/mLの抗体、0.4 mg/mLのポリソルベート80、80 mg/mLのスクロースを含む抗PVRIG/TIGIT抗体(1708-30H2)製剤をそれぞれ3バッチ調製した。3バッチの製剤完成品のpH値を測定し、緩衝液のpHと比べてpHドリフト様子を考査した。
【0284】
実験の結果は、表47に示されている。結果から明らかなように、製剤のpHドリフトは、統計的に有意な変化がなかった。
【0285】
【表47】

【0286】
調製例9. 抗PVRIG/TIGIT二重特異性抗体製剤における異なる界面活性剤の安定性実験
10 mMのHis-HCl pH6.0の緩衝系を用いて、50 mg/mLの抗体、80 mg/mLのスクロース及び異なる種類の界面活性を含む抗PVRIG/TIGIT抗体(1708-30H2)製剤を調製し、具体的な界面活性剤の種類及び濃度は以下の通りである:
1)0.4 mg/mLのポリソルベート80、
2)0.4 mg/mLのポリソルベート20、
3)0.4 mg/mLのポロキサマー188、
調製済みの製剤を滅菌ろ過し、容器に充填し、プラグを入れて、蓋をした。試料を2~8℃の条件下で12ヶ月間放置し、外観、SEC及びiCIEFを評価指標として製剤の安定性を考査した。
【0287】
実験の結果は、表48に示されている。結果から明らかなように、上記製剤は良好な安定性を有する。
【0288】
【表48】
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5A
図5B
図6A
図6B
図6C
図6D
図6E
図7A
図7B
図7C
図7D
図7E
図8
図9A
図9B
図10A
図10B
【配列表】
2024535768000001.xml
【国際調査報告】